IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】溶融紡糸熱可塑性ポリウレタン繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/70 20060101AFI20241128BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20241128BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20241128BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20241128BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20241128BHJP
   D01F 6/94 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
D01F6/70 B
C08G18/10
C08G18/65 011
C08G18/44
C08G18/42 069
D01F6/94 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534226
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022052336
(87)【国際公開番号】W WO2023107661
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/288,211
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スラガニ ベヌ, ラリット バルガヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ラムジー, マイケル ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ボントーシック, ジョセフ ジェイ. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】スプレイグ, クリストファー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ラン, チャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, アンジェリーナ
【テーマコード(参考)】
4J034
4L035
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC62
4J034CC65
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034DG14
4J034DM01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA32
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KC23
4J034KC35
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD08
4J034KD12
4J034KE02
4J034QA03
4J034QB13
4J034QB14
4J034QB17
4J034RA09
4L035AA05
4L035BB31
4L035GG01
4L035HH10
4L035MH02
(57)【要約】
溶融紡糸熱可塑性ポリウレタン繊維が提供される。溶融紡糸熱可塑性ポリウレタン繊維は、弾性特性を提供し、耐薬品性を呈する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融紡糸繊維であって、
(a)反応性熱可塑性ポリウレタン組成物であって、
i.ポリオール成分であって、前記ポリオール成分が第1のポリカーボネートポリオールを含む、ポリオール成分と、
ii.ヒドロキシル末端鎖延長剤成分と、
iii.第1のジイソシアネート成分と、の反応生成物を含む、反応性熱可塑性ポリウレタン組成物、
(b)第2のポリカーボネートポリオールと第2のジイソシアネート成分との反応生成物を含む、イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤、又は
(c)ポリカプロラクトンポリオールと第2のジイソシアネート成分との反応生成物を含む、イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤、を含む、溶融紡糸繊維
【請求項2】
前記ポリオール成分が、少なくとも60%の前記第1のポリカーボネートポリオールを含む、請求項1に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項3】
前記第1のポリカーボネートポリオールが、繰り返し単位-R-O-C(=O)-O-を含有し、式中、Rが、4~6個の炭素原子を含有する、請求項1又は2に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項4】
前記第1のポリカーボネートポリオールが、末端基分析によって測定された約1000~3000ダルトンの数平均分子量を有し、任意選択で、前記第1のポリカーボネートポリオールが、2-MPDカーボネート、BDO-カーボネート、DEG-カーボネート、HDO-カーボネート、又はそれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項5】
前記ポリオール成分が、前記第1のポリカーボネートポリオールからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項6】
前記鎖延長剤成分が、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン又は1,3プロパンジオールを含むか、又はそれからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項7】
前記第1のジイソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、HDI、又はそれらの混合物を含むか、又はそれらからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項8】
前記第2のジイソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、HDI、又はそれらの混合物を含むか、又はそれらからなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項9】
前記第2のポリカーボネートポリオールが、HDO-カーボネート、BDO-カーボネート、3-MPD-カーボネート、又はそれらの混合物から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項10】
前記ポリカプロラクトンポリオールが、ε-カプロラクトンを含み、二官能性開始剤と反応し得、任意選択で、前記二官能性開始剤が、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)、又はそれらの混合物から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項11】
前記反応性熱可塑性ポリウレタン組成物が、70重量%~85重量%の前記第1のポリカーボネートポリオール成分を含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項12】
前記ヒドロキシル末端鎖延長剤成分と前記第1のジイソシアネート成分とを組み合わせた重量が、前記熱可塑性ポリウレタン組成物のハードセグメントを構成し、前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、15重量%~45重量%のハードセグメント含有量を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項13】
前記イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤が、65重量%~80重量%の前記第2のポリカーボネートポリオールと20重量%~35重量%の前記第2のジイソシアネート成分との反応生成物を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項14】
85%~90%の前記TPU及び10%~15%の前記プレポリマーを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項15】
前記溶融紡糸熱可塑性ポリウレタン繊維が、ガス浸透クロマトグラフィーで測定された100,000ダルトン~300,000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項16】
前記熱可塑性ポリウレタン繊維が、ASTM D543-20によって測定されたオレイン酸への曝露後に、ASTM D2653に従って測定されたその元の引張特性の少なくとも80%を保持することができる、請求項1~15のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維を含む、布。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の溶融紡糸繊維を調製するためのプロセスであって、
(1)(a)ポリオール成分であって、前記ポリオール成分が第1のポリカーボネートポリオールを含む、ポリオール成分と、(b)鎖延長剤成分と、(c)第1のジイソシアネートと、の反応生成物である反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を調製するステップと、
(2)前記反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を乾燥させるステップと、
(3)前記反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を押出機中で溶融するステップと、
(4)イソシアネート官能性プレポリマーであって、前記イソシアネート官能性プレポリマーが第2のポリカーボネートポリオール又はポリカプロラクトンポリオールと第2のジイソシアネート成分との反応生成物を含む、イソシアネート官能性プレポリマーを押出機中に添加するステップと、
(5)前記反応性熱可塑性ポリウレタン組成物と前記イソシアネート官能性プレポリマーとを前記押出機中で混合して、架橋熱可塑性ポリウレタンポリマーを形成するステップと、
(6)前記架橋熱可塑性ポリウレタンポリマーを少なくとも1つの紡糸口金に供給して、溶融紡糸繊維を生成するステップと、
(7)前記溶融紡糸繊維を冷却するステップと、
(8)任意選択で、仕上げ油を塗布するステップと、
(9)前記溶融紡糸繊維をボビン上に巻き取るステップと、を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
熱可塑性ポリウレタン(「thermoplastic polyurethane、TPU」)繊維は、様々な用途では延伸特性及びフィット特性を提供する大きな可能性を示すが、いくつかの欠点を有する。多くのポリウレタン繊維は、溶媒中に反応性成分を溶解することを伴う乾式紡糸プロセスによって作製される。このような繊維は一般に良好な耐熱性を有するが、乾式紡糸プロセスは高価であり、時間がかかり、環境的配慮を引き起こす揮発性溶媒の使用を伴う。繊維の溶融紡糸は製造上の利点を有するが、全てのTPUが溶融紡糸条件下で繊維を形成するのに適しているわけではない。加えて、繊維に溶融紡糸することができる先行技術のTPUは、エレクトロニクス、自動車、及びアパレル用途で使用される場合など、特定の用途に十分な耐薬品性を呈さない。したがって、優れたエラストマー特性を有するが、耐薬品性も呈する溶融紡糸TPU繊維を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0002】
一実施形態では、本発明は、繊維が反応性熱可塑性ポリウレタン組成物及びイソシアネート官能性プレポリマー架橋剤を含む、溶融紡糸繊維である。繊維に使用される反応性熱可塑性ポリウレタン組成物は、(i)第1のポリカーボネートポリオールを含むか、又はそれからなるポリオール成分と、(ii)ヒドロキシル末端鎖延長剤成分と、(iii)第1のジイソシアネート成分と、の反応生成物を含む。イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤は、第2のポリカーボネートポリオール又はポリカプロラクトンポリオールと第2のジイソシアネート成分との反応生成物を含む。
【0003】
別の実施形態では、本発明は、以下のステップを有する熱可塑性ポリウレタンを調製するためのプロセスであって、(a)(a)ポリオール成分であって、ポリオール成分が第1のポリカーボネートポリオールを含むか、又はそれからなる、ポリオール成分と、(b)鎖延長剤成分と、(c)ジイソシアネートと、の反応生成物である反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を調製するステップと、(2)反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を乾燥させるステップと、(3)反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を押出機中で溶融するステップと、(4)イソシアネート官能性プレポリマーであって、イソシアネート官能性プレポリマーが第2のポリカーボネートポリオール又はポリカプロラクトンポリオールと第2のジイソシアネート成分との反応生成物を含むか、又はそれからなる、ソシアネート官能性プレポリマーを押出機中に添加するステップと、(5)反応性熱可塑性ポリウレタン組成物とイソシアネート官能性プレポリマーとを押出機中で混合して、架橋熱可塑性ポリウレタンポリマーを形成するステップと、(6)架橋熱可塑性ポリウレタンポリマーを少なくとも1つの紡糸口金に供給して、溶融紡糸繊維を生成するステップと、(7)溶融紡糸繊維を冷却するステップと、(8)任意選択で、仕上げ油を塗布するステップと、(9)溶融紡糸繊維をボビン上に巻き取るステップと、を含む、プロセスを含む。
【0004】
更に別の実施形態では、本発明は、ASTM D543-20に従って測定されたオレイン酸などの化学物質への曝露後にASTM D2653に従って測定された少なくとも80%のテナシティを保持する溶融紡糸熱可塑性ポリウレタンフィラメントを含む繊維を提供する。別の実施形態では、本発明は、オレイン酸への曝露後にASTM D2653に従って測定されたその元の引張特性の少なくとも80%を保持することができる溶融紡糸熱可塑性ポリウレタンフィラメントを含む布を提供し、繊維は、ASTM D2731に従って測定された繊維弾性率が、第5の荷重サイクル中の50%伸びで0.9グラム-フォース未満、第5の荷重サイクル中の100%伸びで2.1グラム-フォース未満、第5の荷重サイクル中の200%伸びで4.3グラム-フォース未満、第5の除荷サイクル中の200%伸びで2.8グラム-フォース未満、第5の除荷サイクル中の100%伸びで1.2グラム-フォース未満、及び第5の除荷サイクル中の50%伸びで0.4グラム-フォース未満であり、ASTM D2731に従って測定された300%極限伸びである。
【0005】
本主題の以下の実施形態が企図される。
1. (a)反応性熱可塑性ポリウレタン組成物であって、(i)ポリオール成分であって、ポリオール成分が第1のポリカーボネートポリオールを含む、ポリオール成分と、(ii)ヒドロキシル末端鎖延長剤成分と、(iii)第1のジイソシアネート成分と、の反応生成物を含む、反応性熱可塑性ポリウレタン組成物、(b)第2のポリカーボネートポリオールと第2のジイソシアネート成分との反応生成物を含む、イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤、又は(c)ポリカプロラクトンポリオールと第2のジイソシアネート成分との反応生成物を含む、イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤、を含む、溶融紡糸繊維
2. ポリオール成分が、少なくとも60%の第1のポリカーボネートポリオールを含む、実施形態1に記載の溶融紡糸繊維。
3. 第1のポリカーボネートポリオールが、繰り返し単位-R-O-C(=O)-O-を含有し、式中、Rが、4~6個の炭素原子を含有する、実施形態1又は2に記載の溶融紡糸繊維。
4. 第1のポリカーボネートポリオールが、末端基分析によって測定された約1000~3000ダルトンの数平均分子量を有する、実施形態1~3のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
5. 第1のポリカーボネートポリオールが、2-MPDカーボネート、BDOカーボネート、DEGカーボネート、HDOカーボネート、又はそれらの混合物から選択される、実施形態1~4のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
6. ポリオール成分が、第1のポリカーボネートポリオールからなる、実施形態1~5のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
7. 鎖延長剤成分が、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン又は1,3プロパンジオールを含むか、又はそれからなる、実施形態1~6のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
8. 第1のジイソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態1~7のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
9. 第1のジイソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態8に記載の溶融紡糸繊維。
10. 第1のジイソシアネート成分が、脂肪族ジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態1~7のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
11. 第1のジイソシアネート成分が、HDIを含むか、又はそれからなる、実施形態10に記載の溶融紡糸繊維。
12. 第2のジイソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態1~11のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
13. 第2のジイソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態12に記載の溶融紡糸繊維。
14. 第2のジイソシアネート成分が、脂肪族ジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態1~11のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
15. 第2のジイソシアネート成分が、HDIを含むか、又はそれからなる(consist of)、実施形態14に記載の溶融紡糸繊維。
16. 第2のポリカーボネートポリオールが、HDO-カーボネート、BDO-カーボネート、3-MPD-カーボネート、又はそれらの混合物から選択される、実施形態1~15のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
17. ポリカプロラクトンポリオールが、ε-カプロラクトンを含み、二官能性開始剤と反応し得る、実施形態1~15に記載の溶融紡糸繊維。
18. 二官能性開始剤が、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)、又はそれらの混合物から選択される、実施形態17に記載の溶融紡糸繊維。
19. 反応性熱可塑性ポリウレタン組成物が、70重量%~85重量%又は75重量%~85重量%又は80重量%~85重量%の第1のポリカーボネートポリオール成分を含有する、実施形態1~18のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
20. ヒドロキシル末端鎖延長剤成分と第1のジイソシアネート成分とを組み合わせた重量が、熱可塑性ポリウレタン組成物のハードセグメントを構成し、熱可塑性ポリウレタン組成物が、15重量%~45重量%又は20重量%~35重量%のハードセグメント含有量を有する、実施形態1~19のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
21. イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤が、65重量%~80重量%又は70重量%~80重量%の第2のポリカーボネートポリオールと、20重量%~35重量%又は20重量%~30重量%の第2のジイソシアネート成分との反応生成物を含む、実施形態1~20のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
22. 85%~90%のTPUと、10%~15%のプレポリマーと、を含む、実施形態1~21のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
23. 溶融紡糸熱可塑性ポリウレタン繊維が、ガス浸透クロマトグラフィーで測定された100,000ダルトン~300,000ダルトンの重量平均分子量を有する、実施形態1~22のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
24. 熱可塑性ポリウレタン繊維が、ASTM D543-20によって測定されたオレイン酸への曝露後に、ASTM D2653に従って測定されたその元の引張特性の少なくとも80%を保持することができる、実施形態1~23のいずれかに記載の溶融紡糸繊維。
25. 実施形態1~24のいずれかに記載の溶融紡糸繊維を含む、布。
26. 熱可塑性ポリウレタンを調製するためのプロセスであって、(1)(a)ポリオール成分であって、ポリオール成分が第1のポリカーボネートポリオールを含む、ポリオール成分と、(b)鎖延長剤成分と、(c)第1のジイソシアネートと、の反応生成物である反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を調製するステップと、
(2)反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を乾燥させるステップと、(3)反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を押出機中で溶融するステップと、(4)イソシアネート官能性プレポリマーであって、イソシアネート官能性プレポリマーが第2のポリカーボネートポリオール又はポリカプロラクトンポリオールと第2のジイソシアネート成分との反応生成物を含む、イソシアネート官能性プレポリマーを押出機中に添加するステップと、(5)反応性熱可塑性ポリウレタン組成物とイソシアネート官能性プレポリマーとを押出機中で混合して、架橋熱可塑性ポリウレタンポリマーを形成するステップと、(6)架橋熱可塑性ポリウレタンポリマーを少なくとも1つの紡糸口金に供給して、溶融紡糸繊維を生成するステップと、(7)溶融紡糸繊維を冷却するステップと、(8)任意選択で、仕上げ油を塗布するステップと、(9)溶融紡糸繊維をボビン上に巻き取るステップと、を含む、プロセス。
27. ポリオール成分が、少なくとも60%の第1のポリカーボネートポリオールを含む、実施形態26に記載のプロセス。
28. 第1のポリカーボネートポリオールが、繰り返し単位-R-O-C(=O)-O-を含有し、式中、Rが、4~6個の炭素原子を含有する、実施形態26又は27に記載のプロセス。
29. 第1のポリカーボネートポリオールが、末端基分析によって測定された約1000~3000ダルトンの数平均分子量を有する、実施形態26~28のいずれかに記載のプロセス。
30. 第1のポリカーボネートポリオールが、2-MPDカーボネート、BDOカーボネート、DEGカーボネート、HDOカーボネート、又はそれらの混合物から選択される、実施形態26~29のいずれかに記載のプロセス。
31. ポリオール成分が、第1のポリカーボネートポリオールからなる、実施形態26~30のいずれかに記載の方法。
32. 鎖延長剤成分が、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン又は1,3プロパンジオールを含むか、又はそれからなる、実施形態26~31のいずれかに記載のプロセス。
33. 第1のジイソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態26~32のいずれかに記載のプロセス。
34. 第1のジイソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態33に記載のプロセス。
35. 第1のジイソシアネート成分が、脂肪族ジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態26~32のいずれかに記載のプロセス。
36. 第1のジイソシアネート成分が、HDIを含むか、又はそれからなる、実施形態35に記載のプロセス。
37. 第2のジイソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態26~36のいずれかに記載のプロセス。
38. 第2のジイソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態37に記載のプロセス。
39. 第2のジイソシアネート成分が、脂肪族ジイソシアネートを含むか、又はそれからなる、実施形態26~36のいずれかに記載のプロセス。
40. 第2のジイソシアネート成分が、HDIを含むか、又はそれからなる(consist of)、実施形態39に記載のプロセス。
41. 第2のポリカーボネートポリオールが、HDO-カーボネート、BDO-カーボネート、3-MPD-カーボネート、又はそれらの混合物から選択される、実施形態26~40のいずれかに記載のプロセス。
42. ポリカプロラクトンポリオールが、ε-カプロラクトンを含み、二官能性開始剤と反応し得る、実施形態26~40のいずれかに記載のプロセス。
43. 二官能性開始剤が、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)、又はそれらの混合物から選択される、実施形態42に記載のプロセス
44. 反応性熱可塑性ポリウレタン組成物が、70重量%~85重量%又は75重量%~85重量%又は80重量%~85重量%の第1のポリカーボネートポリオール成分を含有する、実施形態26~43のいずれかに記載のプロセス。
45. ヒドロキシル末端鎖延長剤成分と第1のジイソシアネート成分とを組み合わせた重量が、熱可塑性ポリウレタン組成物のハードセグメントを構成し、熱可塑性ポリウレタン組成物が、15重量%~30重量%又は20重量%~25重量%のハードセグメント含有量を有する、実施形態26~44のいずれかに記載のプロセス。
46. イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤が、65重量%~80重量%又は70重量%~80重量%の第2のポリカーボネートポリオールと、20重量%~35重量%又は20重量%~30重量%の第2のジイソシアネート成分との反応生成物を含む、実施形態26~45のいずれかに記載のプロセス。
47. 溶融紡糸繊維が、85%~90%のTPU及び10%~15%のプレポリマーを含む、実施形態26~46のいずれかに記載のプロセス。
48. 溶融紡糸熱可塑性ポリウレタン繊維が、ガス浸透クロマトグラフィーで測定された100,000ダルトン~300,000ダルトンの重量平均分子量を有する、実施形態26~47のいずれかに記載のプロセス。
【0006】
これらの様々な実施形態は、以下でより詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の特性及び実施形態について、以下の非限定的な例示によって以下に説明する。
【0008】
開示される技術は、反応性熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)組成物及びイソシアネート官能性架橋剤を含む溶融紡糸繊維を含む。本発明の溶融紡糸繊維を作製するのに有用な反応性TPU組成物は、ポリオール成分と、ヒドロキシル末端鎖延長剤成分と、ジイソシアネート成分と、の反応生成物である。イソシアネート官能性架橋剤は、ポリオールと過剰のイソシアネートとの反応生成物である。これらの構成要素の各々について、以下でより詳細に説明する。
【0009】
本明細書で使用される場合、重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定され、数平均分子量(number average molecular weight、Mn)は、末端基分析によって測定される。
【0010】
熱可塑性ポリウレタン組成物
本発明の溶融紡糸繊維を作製するのに有用な反応性TPU組成物は、ポリオール成分を含み、これはまた、ヒドロキシル末端中間体として記載され得る。本発明では、ポリオール成分は、ポリカーボネートポリオールを含むか、又はそれからなる。
【0011】
好適なヒドロキシル末端ポリカーボネートとしては、グリコールをカーボネートと反応させることによって調製されるものが挙げられる。米国特許第4,131,731号は、ヒドロキシル末端ポリカーボネート及びその調製の開示について、参照により本明細書に組み込まれる。このようなポリカーボネートは線状であり、本質的に他の末端基を除いて末端ヒドロキシル基を有する。必須の反応物質は、グリコール及びカーボネートである。好適なグリコールは、4~40個及び又は更には4~12個の炭素原子を含有する脂環式及び脂肪族ジオールから、並びに1分子当たり2~20個のアルコキシ基を含有し、各アルコキシ基が2~4個の炭素原子を含有するポリオキシアルキレングリコールから選択される。好適なジオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールなどの4~12個の炭素原子を含有する脂肪族ジオール、並びに1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジオール-、1,3-ジメチロールシクロヘキサン-、1,4-エンドメチレン-2-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチルシクロヘキサン、及びポリアルキレングリコールなどの脂環式ジオールが挙げられる。反応において使用されるジオールは、最終生成物において所望される特性に応じて単一のジオールであってもジオールの混合物であり得る。ヒドロキシルを末端基とするポリカーボネート中間体は、一般に、当該技術分野及び文献において既知であるものである。好適なカーボネートは、5~7員環で構成されるアルキレンカーボネートから選択される。本明細書で使用するのに好適なカーボネートとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-エチレンカーボネート、1,3-ペンチレンカーボネート、1,4-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、及び2,4-ペンチレンカーボネートが挙げられる。また、ジアルキルカーボネート、脂環式カーボネート、及びジアリールカーボネートも本明細書において好適である。ジアルキルカーボネートは、各アルキル基中に2~5個の炭素原子を含有することができ、その具体例は、ジエチルカーボネート及びジプロピルカーボネートである。脂環式カーボネート、特に二環式脂肪族カーボネートは、各環状構造中に4~7個の炭素原子を含有し得、そのような構造は1つ又は2つ存在し得る。一方の基が脂環式である場合、他方はアルキル又はアリールのいずれかであり得る。他方、一方の基がアリールである場合、他方はアルキル又は脂環式であり得る。各アリール基に6~20個の炭素原子を含有し得る好適なジアリールカーボネートの例は、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、及びジナフチルカーボネートである。
【0012】
一実施形態では、TPU組成物中のポリオール成分は、-R-O-C(=O)-O-の繰り返し単位を含有するポリカーボネートポリオールを含むか、又はそれからなり、式中、Rは、4~6個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、ポリカーボネートポリオール成分は、2-メチルペンタンジオール(MPD)カーボネート、ブタンジオール(BDO)カーボネート、ジエチレングリコール(DEG)カーボネート、ヘキサンジオール(HDO)カーボネート、又はそれらの混合物から選択されてもよい。一実施形態では、ポリオール成分は、ポリカーボネートポリオールの混合物を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、TPU組成物のポリオール成分は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリシロキサンポリオール、又はこれらの組み合わせなどの1つ以上のコポリオールを含有してもよい。しかしながら、一実施形態では、ポリオール成分は、少なくとも60重量%のポリカーボネートポリオールを含有する。いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は更には100%のポリカーボネートポリオールを含有する。
【0014】
一実施形態では、ポリオール成分は、ポリエステルポリオールを含み得る。本発明で有用なポリエステルポリオールは、(1)1つ以上のグリコールと1つ以上のジカルボン酸若しくは無水物とのエステル化反応、又は(2)エステル交換反応、すなわち1つ以上のグリコールとジカルボン酸のエステルとの反応によって生成され得る。末端ヒドロキシル基が優勢な線状鎖を得るためには、一般に、グリコールの酸に対するモル比が1モルを超えることが好ましい。また、好適なポリエステル中間体としては、ε-カプロラクトン及び二官能性開始剤、例えばジエチレングリコールから典型的には作製されるポリカプロラクトン等の様々なラクトンが挙げられる。所望のポリエステルのジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、又はそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、単独又は混合物で使用され得るジカルボン酸は、一般に、合計4~15個の炭素原子を有し、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸などの上記のジカルボン酸の無水物も使用することができる。反応して望ましいポリエステル中間体を形成するグリコールは、脂肪族、芳香族、又はそれらの組み合わせであることができ、上記の鎖延長剤のセクションで説明したグリコールのいずれかを含み、合計で2~20個又は2~12個の炭素原子を有する。好適な例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリオール成分はまた、1つ以上のポリカプロラクトンポリエステルポリオールも含み得る。本明細書において説明されている技術に有用なポリカプロラクトンポリエステルポリオールには、カプロラクトンモノマーから誘導されたポリエステルジオールが含まれる。ポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、一級ヒドロキシル基で終端している。好適なポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、ε-カプロラクトン及び二官能性開始剤、例えば、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、又は本明細書中に列挙される他のグリコール及び/若しくはジオールのいずれかから作製され得る。いくつかの実施形態では、ポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、カプロラクトンモノマーから誘導される線状ポリエステルジオールである。
【0016】
有用な例としては、数平均分子量(Mn)2,000の線状ポリエステルジオールであるCAPA(商標)2202A、及びMn3,000の線状ポリエステルジオールであるCAPA(商標)2302Aが挙げられ、これらはいずれもPerstorp Polyols Inc.から市販されている。これらの材料はまた、2-オキセパノンと1,4-ブタンジオールとのポリマーとして説明される場合もある。
【0017】
ポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、2-オキセパノン及びジオールから調製され得、当該ジオールは、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、モノエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、ポリカプロラクトンポリエステルポリオールを調製するために使用されるジオールは、線状である。いくつかの実施形態では、ポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、1,4-ブタンジオールから調製される。いくつかの実施形態では、ポリカプロラクトンポリエステルポリオールは、500~10,000、又は500~5,000、又は1,000、若しくは更には2,000~4,000、若しくは更には3,000の数平均分子量を有する。
【0018】
一実施形態では、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールを含み得る。好適なポリエーテルポリオール中間体としては、合計2~15個の炭素原子を有するジオール又はポリオール、いくつかの実施形態では、2~6個の炭素原子を有するアルキレンオキシド、典型的には、エチレンオキシド若しくはプロピレンオキシド又はそれらの混合物を含むエーテルと反応するアルキルジオール又はグリコールに由来するポリエーテルポリオールが挙げられる。例えば、ヒドロキシル官能性ポリエーテルは、まずプロピレングリコールをプロピレンオキシドと反応させ、続いてエチレンオキシドと反応させることによって生成することができる。エチレンオキシドから得られる一級ヒドロキシル基は、二級ヒドロキシル基よりも反応性が高いので、好ましい。有用な市販のポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコールと反応したエチレンオキシドを含むポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコールと反応したプロピレンオキシドを含むポリ(プロピレングリコール)、テトラヒドロフランと反応した水を含むポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)(重合テトラヒドロフランとして説明される場合もあり、一般にはpolymerized tetrahydrofuran、PTMEGと称される)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリエーテル中間体は、PTMEGを含む。好適なポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキシドのポリアミド付加物も挙げられ、例えば、エチレンジアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むエチレンジアミン付加物、ジエチレントリアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むジエチレントリアミン付加物、及び類似のポリアミドタイプのポリエーテルポリオールを挙げることができる。コポリエーテルも、説明される組成物に利用することができる。典型的なコポリエーテルとしては、THF及びエチレンオキシド又はTHF及びプロピレンオキシドの反応生成物が挙げられる。これらは、ブロックコポリマーのPolyTHF(登録商標)B、及びランダムコポリマーのPolyTHF(登録商標)RとしてBASFから入手可能である。様々なポリエーテル中間体は、一般に、約700~約10,000、約1,000~約5,000、又は約1,000~約2,500などの約700よりも大きい平均分子量である末端官能基のアッセイによって求められる数平均分子量(Mn)を有する。いくつかの実施形態では、ポリエーテル中間体は、Mn2000及びMn1000のPTMEGのブレンドなどの、2つ以上の異なる分子量のポリエーテルのブレンドを含む。
【0019】
一実施形態では、ポリオール成分は、ポリシロキサンポリオールを含み含み得る。好適なポリシロキサンポリオールとしては、α-ω-ヒドロキシル又はアミン又はカルボン酸又はチオール又はエポキシ末端ポリシロキサンが挙げられる。例としては、ヒドロキシル又はアミン又はカルボン酸又はチオール又はエポキシ基を末端基とするポリ(ジメチルシロキサン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリシロキサンポリオールは、ヒドロキシル末端ポリシロキサンである。いくつかの実施形態では、ポリシロキサンポリオールは、300~5,000又は400~3,000の範囲の数平均分子量を有する。
【0020】
ポリシロキサンポリオールは、ポリシロキサンヒドリドと脂肪族多価アルコール又はポリオキシアルキレンアルコールとの間の脱水素反応により、アルコール性ヒドロキシ基をポリシロキサン骨格に導入することによって得られ得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、ポリシロキサンは、以下の式を有する1つ以上の化合物によって表され得る:
【0022】
【化1】
(式中、各R1及びR2は、独立して、1~4個の炭素原子のアルキル基、ベンジル、又はフェニル基であり、各Eは、OH又はNHR(式中、Rは、水素、1~6個の炭素原子のアルキル基、又は5~8個の炭素原子のシクロアルキル基である)であり、a及びbは、各々独立して、2~8の整数であり、cは、3~50の整数である)。アミノ含有ポリシロキサンにおいて、E基のうちの少なくとも1つは、NHRである。ヒドロキシル含有ポリシロキサンにおいて、E基のうちの少なくとも1つは、OHである。いくつかの実施形態では、R及びRの両方が、メチル基である。
【0023】
好適な例としては、α,ω-ヒドロキシプロピル末端ポリ(ジメチルシロキサン)及びα,ω-アミノプロピル末端ポリ(ジメチルシロキサン)が挙げられ、これらはいずれも市販の材料である。更なる例としては、ポリ(ジメチルシロキサン)材料とポリ(アルキレンオキシド)とのコポリマーが挙げられる。
【0024】
ポリオール成分としては、存在する場合、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)、ポリ(トリメチレンオキシド)、エチレンオキシドキャップドポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(テトラメチレン-co-ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタメチレンアジペート)、ポリカプロラクトンジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール、ポリ(ペンタメチレンカーボネート)グリコール、ポリ(トリメチレンカーボネート)グリコール、二量体脂肪酸系ポリエステルポリオール、植物油系ポリオール、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0025】
好適なポリエステルポリオールの調製に使用できる二量体脂肪酸の例には、Crodaから市販されているPriplast(商標)ポリエステルグリコール/ポリオール、及びOleonから市販されているRadia(登録商標)ポリエステルグリコールが含まれる。
【0026】
本発明の一実施形態では、本明細書で使用されるTPU組成物を形成するための反応混合物は、約70重量%~約85重量%、例えば、約80重量%~約85重量%のポリオール成分を含む。
【0027】
鎖延長剤成分
本明細書に記載されるTPU組成物は、鎖延長剤成分を使用して作製される。好適な鎖延長剤としては、ジオール、ジアミン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
好適な鎖延長剤としては、相対的に小さいポリヒドロキシ化合物、例えば、2~20個、又は2~12個、又は2~10個の炭素原子を有する低級脂肪族又は短鎖グリコールが挙げられる。好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール(butanediol、BDO)、1,6-ヘキサンジオール(hexanediol、HDO)、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(cyclohexanedimethanol、CHDM)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン((hydroxyethoxy)phenyl]propane、HEPP)、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン((hydroxyethoxy)benzene、HQEE)、ヘキサメチレンジオール、ヘプタンジオール、ノナンジオール、ドデカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、エチレンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、及びヒドロキシエチルレゾルシノール(hydroxyethyl resorcinol、HER)など、並びにそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、鎖延長剤は、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(HQEE)を含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、鎖延長剤は、1,3-プロパンジオールを含むか、又はそれからなる。
【0029】
イソシアネート成分
本発明のTPUは、イソシアネート成分を使用して作製される。イソシアネート成分は、1つ以上のポリイソシアネート、又はより具体的には1つ以上のジイソシアネートを含んでもよい。好適なポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、又はそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリイソシアネート成分は、1つ以上の芳香族ジイソシアネートを含む。いくつかの実施形態では、ポリイソシアネート成分は、脂肪族ジイソシアネートを本質的に含まないか、又は全く完全に含まない。他の実施形態では、ポリイソシアネート成分は、1つ以上の脂肪族ジイソシアネートを含む。いくつかの実施形態では、ポリイソシアネート成分は、芳香族ジイソシアネートを本質的に含まないか、又は全く完全に含まない。いくつかの実施形態では、脂肪族及び芳香族ジイソシアネートの混合物が有用であり得る。
【0030】
有用なポリイソシアネートの例としては、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(naphthalene diisocyanate、NDI)、m-キシレンジイソシアネート(xylene diisocyanate、XDI)、フェニレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、及びトルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate、TDI)などの芳香族ジイソシアネート、並びに1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate、IPDI)、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート(cyclohexyl diisocyanate、CHDI)、デカン-1,10-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート(lysine diisocyanate、LDI)、1,4-ブタンジイソシアネート(butane diisocyanate、BDI)、イソホロンジイソシアネート(PDI)、及びジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(dicyclohexylmethane-4,4'diisocyanate、H12MDI)などの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネートの異性体も有用であり得る。2つ以上のポリイソシアネートの混合物を使用してもよい。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、芳香族ジイソシアネートを含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、MDIを含むか、又はそれからなる。
【0031】
TPU組成物中のジイソシアネート成分と鎖延長剤成分とを組み合わせた重量パーセントは、「ハードセグメント含有量」と称される。本発明の一実施形態では、本発明において有用なTPU組成物は、15重量%~50重量%、又は更に20重量%~35重量%のハードセグメントを含む。
【0032】
任意選択的に、1つ以上の重合触媒が、TPUの重合反応中に存在してもよい。一般に、ジイソシアネートをポリオール中間体又は連鎖延長剤と反応させるために、任意の従来の触媒を利用することができる。特に、ジイソシアネートのNCO基とポリオール及び鎖延長剤のヒドロキシ基との間の反応を促進する好適な触媒の例は、先行技術から公知の従来の三級アミン(例えば、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなど)、及びまた特に、有機金属化合物(例えば、チタンエステル、鉄化合物(例えば、鉄アセチルアセトネート)、スズ化合物(例えば、二酢酸スズ、オクタン酸スズ、ジラウリン酸スズ)、ビスマス化合物(例えば、トリネオデカン酸ビスマス)、又は脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩(例えば、二酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ)など)である。触媒の通常使用される量は、ポリオール成分100重量部当たり0.001~0.1重量部である。いくつかの実施形態では、本発明のTPUを形成するための反応は、触媒を実質的に含まないか、又は完全に含まない。
【0033】
本発明において使用される反応性TPU組成物は、「ワンショット」プロセスを介して作製され得、ここで、全ての成分は、加熱された押出機に同時に又は実質的に同時に一緒に添加され、反応されてTPUを形成する。ジイソシアネートの、ヒドロキシル末端中間体及び鎖延長剤の総当量に対する当量比は、一般に、約0.95~約1.10、例えば、約0.97~約1.03、又は更に約0.98~約1.0である。一実施形態では、TPUが末端ヒドロキシル基を有して、繊維紡糸プロセス中の架橋剤との反応を高めるように、当量比は1.0未満であってもよい。TPUの重量平均分子量(MW)は、一般に、約25,000~約300,000、例えば、約50,000~約200,000、更に例えば、約75,000~約150,000である。
【0034】
別の実施形態では、TPUは、プレポリマープロセスを使用して調製され得る。プレポリマープロセスでは、ヒドロキシル末端中間体を一般に当量過剰の1つ以上のジイソシアネートと反応させて、遊離又は未反応イソシアネートをその中に有するプレポリマー溶液を形成する。続いて、本明細書に記載されるような鎖延長剤が、イソシアネート末端基並びに任意の遊離又は未反応ジイソシアネート化合物に一般に等しい当量で添加される。したがって、全ジイソシアネートの、ヒドロキシル末端中間体及び鎖延長剤の総当量に対する全当量比は、約0.95~約1.10、例えば、約0.97~約1.03、又は更に約0.98~約1.0である。一実施形態では、TPUが末端ヒドロキシル基を有して、繊維紡糸プロセス中の架橋剤との反応を高めるように、当量比は1.0未満であってもよい。典型的には、プレポリマープロセスは、押出機などの任意の従来のデバイスで実施することができる。
【0035】
任意選択の添加剤成分は、重合反応中に存在してもよく、かつ/又は加工及び他の特性を改善するために上記のTPUエラストマーに組み込まれてもよい。これらの添加剤としては、酸化防止剤、有機ホスファイト、ホスフィン及びホスホナイト、ヒンダードアミン、有機アミン、有機硫黄化合物、ラクトン及びヒドロキシルアミン化合物、殺生物剤、殺菌剤、抗菌剤、相溶化剤、電気散逸性又は帯電防止添加剤、充填剤及び強化剤(例えば、二酸化チタン、アルミナ、クレー及びカーボンブラック)、難燃剤(例えば、ホスフェート、ハロゲン化材料、及びアルキルベンゼンスルホネートの金属塩)、耐衝撃性改良剤(例えば、メタクリレート-ブタジエン-スチレン(「methacrylate-butadiene-styrene、MBS」)及びメチルメタクリレートブチルアクリレート(「methylmethacrylate butylacrylate、MBA」))、離型剤(例えば、ワックス、脂肪及び油、顔料及び着色剤、可塑剤、ポリマー)、レオロジー改良剤(例えば、モノアミン、ポリアミドワックス、シリコーン、及びポリシロキサン)、スリップ添加剤(例えば、パラフィンワックス、炭化水素ポリオレフィン、及び/又はフッ素化ポリオレフィン)、並びにUV安定剤(これらはヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizer、HALS)及び/又はUV光吸収剤(UV light absorber、UVA)タイプであってもよい)が挙げられるが、これらに限定されない。TPU組成物又はブレンド生成物の性能を向上させるために、他の添加剤が使用され得る。上記の添加剤の全てが、これらの物質の慣習的な有効量で使用され得る。
【0036】
これらの追加の添加剤は、TPU樹脂の調製のための成分に、又はTPU樹脂の調製のための反応混合物に、あるいはTPU樹脂を作製した後に組み込むことができる。別のプロセスでは、全ての材料をTPU樹脂と混合し、次いで、溶融させることができるか、又はそれらをTPU樹脂の溶融物に直接組み込むことができる。
【0037】
イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤
上記の反応性TPU組成物は、イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤と組み合わされて、本発明の溶融紡糸繊維を作製する。プレポリマー架橋剤は、第2のポリカーボネートポリオール又はポリカプロラクトンポリオールを含むか、又はそれらからなるヒドロキシル末端ポリオールと過剰のジイソシアネートとの反応生成物である。イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤を形成するのに有用なポリカーボネートポリオール又はポリカプロラクトンポリオールは、TPU組成物に関して本明細書に記載されているものから選択され得る。例えば、ポリカーボネートポリオールε-カプロラクトンは、二官能性開始剤(例えば、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、PTMEG、又は当該技術分野で公知の任意の他のグリコール及び/若しくはジオール)と反応し得る。イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤の調製に有用なジイソシアネートはまた、TPU組成物に関して本明細書中に記載されるものから選択され得る。プレポリマー架橋剤は、1.0より大きい、例えば、約1.5~2.5、更に例えば、約1.8~2.2のイソシアネート官能価を有する。イソシアネート官能性プレポリマー架橋剤は、ヒドロキシル末端中間体を当量過剰の1つ以上のジイソシアネートと反応させて、遊離又は未反応イソシアネートを有するプレポリマー溶液を形成する、本明細書に記載のプレポリマープロセスを使用して調製することができる。
【0038】
熱可塑性ポリウレタン繊維
本発明の熱可塑性ポリウレタン繊維は、約80重量%~約95重量%、又は更には約85重量%~90重量%の本明細書に記載の反応性TPUと、約5重量%~約20重量%、又は更には約10重量%~約15重量%のイソシアネート官能性プレポリマー架橋剤と、を含む。使用される架橋剤のパーセンテージは、TPU及び架橋剤の総重量に基づく重量パーセントである。
【0039】
溶融紡糸TPU繊維は、押出機中でTPU組成物を溶融し、溶融TPUに架橋剤を添加することによって作製される。架橋剤を有するTPU溶融物は、紡糸口金に供給される。溶融物は、紡糸口金を出て繊維を形成し、繊維は、冷却され、ボビン上に巻き取られる。プロセスは、以下のステップ:(1)(a)ポリオール成分であって、ポリオール成分が第1のポリカーボネートポリオールを含むか、又はそれからなる、ポリオール成分と、(b)鎖延長剤成分と、(c)ジイソシアネートと、の反応生成物である反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を調製するステップと、(2)反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を乾燥させるステップと、(3)反応性熱可塑性ポリウレタン組成物を押出機中で溶融するステップと、(4)イソシアネート官能性プレポリマーを押出機中に添加するステップと、(5)反応性熱可塑性ポリウレタン組成物とイソシアネート官能性プレポリマーとを押出機中で混合して、架橋熱可塑性ポリウレタンポリマーを形成するステップと、(6)架橋熱可塑性ポリウレタンポリマーを少なくとも1つの紡糸口金に供給して、溶融紡糸繊維を生成するステップと、(7)溶融紡糸繊維を冷却するステップと、(8)任意選択で、仕上げ油を塗布するステップと、(9)溶融紡糸繊維をボビンコア上に巻き取るステップと、を含む。このプロセスのステップについて、以下でより詳細に説明する。
【0040】
溶融紡糸プロセスは、予め形成された反応性TPUポリマーを押出機中に供給することから始まる。反応性TPUは、押出機中で溶融され、架橋剤は、TPU溶融物が押出機を出る点の近くの下流に、又はTPU溶融物が押出機を出た後に、連続的に添加される。溶融物が押出機を出た後に架橋剤が添加される場合、架橋剤は、TPUポリマー溶融物への架橋剤の適切な混合を確実にするために、静的又は動的ミキサーを使用してTPU溶融物と混合される必要がある。押出機及びミキサーを出た後、架橋剤を含む溶融TPUポリマーは、マニホールド中に流入する。マニホールドは溶融ストリームを異なるストリームに分割し、各ストリームは複数の紡糸口金に供給される。通常、マニホールドから流れる各々の異なるストリームに対して溶融ポンプが存在し、各溶融ポンプはいくつかの紡糸口金に供給する。紡糸口金は小さな孔を有し、この孔を通して溶融物が押し出され、繊維の形態で紡糸口金から出る。紡糸口金の孔のサイズは、繊維の所望のサイズ(デニール)に依存する。繊維は、紡糸口金を出るときに引き伸ばされるか又は延伸され、ボビン上に巻き取られる前に冷却される。繊維は、紡糸口金を出る繊維の速度よりも速い速度でボビンを巻き取ることによって延伸される。溶融紡糸TPU繊維について、ボビンは、通常、紡糸口金を出る繊維の速度よりも大きい速度で、例えば、いくつかの実施形態では、紡糸口金を出る繊維の速度の4~8倍の速度で巻き取られるが、特定の機器に応じて、より遅く又はより速く巻き取られ得る。典型的なボビン巻き取り速度は、100~3000メートル/分で変動し得るが、より典型的な速度は、TPU溶融紡糸繊維について300~1200メートル/分である。シリコーン油などの仕上げ油は、通常、冷却後、ボビンに巻き取られる直前に、繊維の表面に添加される。
【0041】
溶融紡糸プロセスの重要な態様は、TPUポリマー溶融物と架橋剤との混合である。適切な均一混合は、均一な繊維特性を達成し、繊維破損を経験することなく長い実行時間を達成するために重要である。TPU溶融物と架橋剤との混合は、プラグフロー、すなわち先入れ先出しを達成する方法であるべきである。適切な混合は、動的ミキサー又は静的ミキサーを用いて達成することができる。例えば、供給スクリュー及び混合ピンを有する動的ミキサーを使用することができる。米国特許第6,709,147号は、そのようなミキサーを記載しており、回転可能な混合ピンを有する。
【0042】
TPUは、繊維紡糸プロセス中にプレポリマー架橋剤と反応して、約50,000ダルトン~約400,000ダルトン、好ましくは約100,000ダルトン~約300,000ダルトンの繊維形態のTPUの重量平均分子量(MW)を与える。TPUが紡糸口金を出る点でのTPUとプレポリマー架橋剤との間の繊維紡糸プロセスにおける反応は、20%超、好ましくは約30%~約60%、より好ましくは約40%~約50%であるべきである。TPUポリマーと架橋剤との間の典型的な先行技術のTPU溶融紡糸反応は、20%未満、通常約10~15%の反応である。反応は、NCO基の消失によって決定される。本発明のより高い%反応は、溶融強度を改善し、したがって、より高い紡糸温度を可能にし、これはTPUの紡糸性を改善する。繊維は通常、分子量が横ばいになるまでボビン上でオーブン中で熟成される。
【0043】
溶融紡糸TPU繊維は、様々なデニールで作製することができる。「デニール」という用語は、9000メートルの繊維、フィラメント、又は糸のグラム単位の質量として定義される。それは、繊維、フィラメント、又は糸の単位長さ当たりの質量である線密度を記載しており、ASTM D1577、オプションBに従って測定される。典型的な溶融紡糸TPU繊維は、1080未満のデニールサイズ、例えば、10~240デニール、又は更に20、40、70、及び140デニールで作製される。
【0044】
本発明に従って作製された溶融紡糸繊維は、先行技術のTPU繊維によって呈されない独特の物理的特性を有する。いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、独特の弾性特性及び耐化学薬品性を呈する。
【0045】
布地
本発明のTPU繊維は、繊維を編む若しくは織ることによって天然若しくは合成の他の繊維と組み合わされて、種々の物品において使用され得る布地を作製する。このような布地を様々な色に染色することが望ましい。
【0046】
本発明の溶融紡糸TPU繊維は、衣類衣料品を含む様々な最終用途物品を作製するために、異なるTPU繊維、綿、ナイロン、又はポリエステルなどの他の繊維と組み合わせられ得る。
【0047】
例えば、本発明による布地は、本発明の溶融紡糸TPU繊維を、異なるTPU繊維、又はTPUから作製されておらず、かつ本明細書において「硬質糸」とも称される、本発明のTPU繊維よりも弾性の低い糸と組み合わせてもよい。硬質糸としては、例えば、異なるTPU繊維、ポリエステル、ナイロン、綿、羊毛、アクリル、ポリプロピレン、又はビスコースレーヨンが挙げられ得る。一実施形態では、硬質糸は、10%~200%、例えば、10%~75%、又は更に10%~50%、又は更に10%~30%の極限伸びを有し、本発明の溶融紡糸TPU繊維は、少なくとも300%の極限伸び、例えば、300%~650%の極限伸びを有する。繊維成分の各々は、組成物中に1~99重量%の量で含まれ得る。最終用途における溶融紡糸TPU繊維の重量%は、所望の弾性に応じて変動することができる。例えば、織布は1~8重量%、下着は2~5重量%、水着及びスポーツウェアは8~30重量%、ファンデーションは10~45重量%、医療用ホースは35~60重量%の溶融紡糸TPU繊維を有し、残りの量は硬質非弾性繊維である。これらの2つの繊維材料で作製された布地は、丸編み、経編み、製織、編組、不織布又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々なプロセスによって構成することができる。一実施形態では、本発明の繊維から作製された布地は、ASTM D4964に従って測定された50%超又は更に100%超の延伸を有し得る。
【0048】
本出願及び以下の実施例において、以下の特性は、そのような特性を測定するための方法とともに言及される。
・調製したフィルムの引張強度をASTM D412によって測定した。
・調製したフィルムの引張永久歪みをASTM D412によって測定した。
・デニールは、線密度の尺度であり、ASTM D1577、オプションBに従って測定する。
・デニールによって正規化された引張強度である弾性フィラメントのテナシティも、ASTM D2653に従って測定し、報告した。
・破断点伸びである弾性フィラメントの極限伸びも、ASTM D2653に従って測定し、報告した。
・弾性フィラメントについてASTM D2731に従って、それぞれの伸びにおいて本明細書で前述したように定義及び計算され、かつ報告される、ヒステリシス。
・非弾性であるポリエステルのような硬質糸については、テナシティ及び伸びを測定し、ASTM D2256規格を使用した。
・比較例及び発明例のオレイン酸耐薬品性を、ASTM D543-20によって測定し、報告した。
【0049】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより良く理解されるであろう。
【0050】
実施例
表1は、耐薬品性を評価するために本発明においてフィルムを最初に作製するために使用した調製したTPU組成物を列挙する。
【0051】
【表1】
【0052】
押出機を出る際に、表1からのTPU候補を、ASTM D543-20によって化学物質(オレイン酸)曝露に供し、引張強度の低下が最も低い実施例を繊維紡糸のために選択した。表2は、表1から調製された実施例のオレイン酸耐性を比較する。
【0053】
【表2】
ゲル=「ゲル」と標識された実施例は、任意の物理的特性を試験するのに不適切な完全なゲルに変化し、可塑化に起因してオレイン酸に対する非常に乏しい耐性を示唆した。
試験せず
【0054】
実施例G、H、L、及びRを、表2からのオレイン酸に対する最も高い耐性及び引張永久歪みにおける最も低い損失に起因して、繊維紡糸のために選択した。実施例M~Tも耐薬品性を提供したが、繊維紡糸中の加工を容易にするために、実施例G及びHを選択した。
【0055】
繊維紡糸のために、表3に対応して列挙された10重量%のプレポリマー架橋剤を、動的ミキサー中でTPUポリマー溶融物と混合し(90重量%のTPUポリマー溶融物/10重量%の架橋剤)、次いでマニホールドを通して紡糸口金にポンプで送った。紡糸口金から出るポリマーストリームを空気で冷却し、シリコン仕上げ油を適用し、形成された繊維をボビンに巻き取った。繊維の物理的特性を試験する前に、ボビン上の繊維を80℃で24時間熱熟成させた。表3は、繊維を作製するために使用したTPU及び架橋剤の組み合わせを要約する。
【0056】
【表3】
【0057】
表4及び表5のデータは、ポリカーボネート系TPU及びポリカーボネート系プレポリマー架橋剤並びにポリカーボネート系TPU及びポリカプロラクトン系プレポリマー架橋剤を用いて調製された繊維実施例が、予想外にも、化学曝露後に最良の性能を示すことを例示している。
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
上記で言及した文献の各々は、上記に具体的に列挙されているか否かにかかわらず、優先権が主張される任意の先行出願を含めて、参照により本明細書に組み込まれる。任意の文献の言及は、そのような文献が先行技術として適格であること、又は任意の管轄区域における当業者の一般知識を構成することを認めるものではない。実施例を除いて、又は他に明示的に示されるかどうかを除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを指定する本説明における全ての数量は、「約」という語によって修飾されるものとして理解されるべきである。本明細書に記載される量、範囲、及び比の上限及び下限は、独立して組み合わされ得ることが理解されるべきである。同様に、本発明の各要素についての範囲及び量は、他の要素のうちのいずれかについての範囲又は量と一緒に使用することができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含有する」、又は「を特徴とする」と同義である「含む(comprising)」という移行用語は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。しかしながら、本明細書における「含む」の各記載において、この用語がまた、代替的な実施形態として、「から本質的になる」及び「からなる」という句を包含することが意図され、ここで、「からなる」は、指定されていない任意の要素又はステップを排除し、「から本質的になる」は、考慮中の組成物又は方法の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の記載されていない要素又はステップの包含を許容する。
【0062】
本発明を例解する目的で、ある特定の代表的な実施形態及び詳細を示してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行うことができることが当業者には明らかであろう。これに関して、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】