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特表2024-545127変異ミオシリン疾患モデル及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】変異ミオシリン疾患モデル及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/0278 20240101AFI20241128BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241128BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20241128BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A01K67/0278 ZNA
C12N15/12
C12N15/113 Z
C12N15/09 Z
C12N15/09 110
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534253
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 US2022081149
(87)【国際公開番号】W WO2023108047
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/287,281
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パテル, ガウラン
(72)【発明者】
【氏名】ハント, チャーリーン
(72)【発明者】
【氏名】タン, ヤジュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, チン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン, グオチュン
(72)【発明者】
【氏名】フー, イン
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ, カーメロ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR90
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS40
4B063QX01
4B063QX02
4B063QX10
(57)【要約】
ヒト化MYOC遺伝子座を含む、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物、並びにそのような非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物を作製及び使用する方法が提供される。ヒト化MYOC遺伝子座を含む非ヒト動物細胞又は非ヒト動物は、ヒトミオシリンタンパク質又はキメラミオシリンタンパク質を発現し、その断片は、ヒトミオシリンに由来する。ヒトミオシリン標的化試薬及び緑内障を治療するための試薬のインビボ有効性を評価するために、ヒト化MYOC遺伝子座を含むそのような非ヒト動物を使用するための方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト化内因性MYOC遺伝子座をそのゲノムに含む、非ヒト動物であって、前記内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられており、
任意選択的に、前記内因性MYOC遺伝子座の前記領域が、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含み、前記対応するヒトMYOC配列が、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含む、非ヒト動物。
【請求項2】
前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座が、緑内障に関連する変異を含む、請求項1に記載の非ヒト動物。
【請求項3】
前記ヒトMYOC配列が、前記変異を含む、請求項2に記載の非ヒト動物。
【請求項4】
前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座が、Y437H変異を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項5】
前記ヒトMYOC配列が、前記Y437H変異を含む、請求項4に記載の非ヒト動物。
【請求項6】
前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座が、内因性MYOCプロモーターを含み、前記ヒトMYOC配列が、前記内因性MYOCプロモーターに作動可能に連結されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項7】
前記内因性MYOC遺伝子座の少なくとも1つのイントロン及び少なくとも1つのエキソンが、削除され、前記対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項8】
前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座が、ヒトMYOC 3’非翻訳領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項9】
内因性MYOC5’非翻訳領域が、削除されておらず、前記対応するヒトMYOC配列で置き換えられていない、請求項1~8のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項10】
前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座が、ヒトミオシリンタンパク質をコードする、請求項1~9のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項11】
ヒトミオシリンタンパク質配列が、配列番号4に記載される配列を含み、任意選択的に、前記ヒトミオシリンタンパク質配列が、配列番号5に記載される配列を含むコード配列によってコードされる、請求項10に記載の非ヒト動物。
【請求項12】
前記内因性MYOC遺伝子座のMYOCコード配列全体が削除され、前記対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、請求項1~11のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項13】
MYOC開始コドンからMYOC終止コドンまでの前記内因性MYOC遺伝子座の領域が、削除され、前記対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、請求項1~12のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項14】
前記MYOC開始コドンから前記MYOC終止コドンまでの前記内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、前記対応するヒトMYOC配列及びヒトMYOC 3’非翻訳領域を含むヒトMYOC配列で置き換えられており、
前記ヒトMYOC配列が、Y437H変異を含み、
前記内因性MYOC 5’非翻訳領域が、削除されておらず、前記ヒトMYOC配列で置き換えられておらず、
前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座が、内因性MYOCプロモーターを含み、前記ヒトMYOC配列が、前記内因性MYOCプロモーターに作動可能に連結されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項15】
(i)前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座における前記ヒトMYOC配列が、配列番号87に記載される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%同一の配列を含み、かつ/又は
(ii)前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座が、配列番号4に記載される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%同一の配列を含むミオシリンタンパク質をコードし、かつ/又は
(iii)前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座が、配列番号5に記載される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%同一の配列を含むミオシリンコード配列を含み、かつ/又は
(iv)前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座が、配列番号88若しくは89に記載される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%同一の配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項16】
前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座が、選択カセット又はレポーター遺伝子を含まない、請求項1~15のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項17】
前記非ヒト動物が、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座についてホモ接合性である、請求項1~16のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項18】
前記非ヒト動物が、その生殖系列に前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項19】
前記非ヒト動物が、哺乳動物である、請求項1~18のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項20】
前記非ヒト動物が、ラット又はマウスである、請求項19に記載の非ヒト動物。
【請求項21】
前記非ヒト動物が、前記マウスである、請求項20に記載の非ヒト動物。
【請求項22】
前記非ヒト動物が、ゲノムに組み込まれた発現カセットをそのゲノムに更に含み、前記ゲノムに組み込まれた発現カセットが、
(a)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含む、キメラのクラスター化した規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸と、
(b)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸と、を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項23】
1つ以上のガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを更に含み、各ガイドRNAが、前記キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、
前記1つ以上のガイドRNAの各々が、前記Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、
前記1つ以上のガイドRNAのうちの少なくとも1つが、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とし、
任意選択的に、前記1つ以上のガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットが、小柱網内にある、請求項22に記載の非ヒト動物。
【請求項24】
前記キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる、1つ以上のアダプター結合要素を各々含む、1つ以上のガイドRNAをコードする第2のゲノムに組み込まれた発現カセットを更に含み、
前記1つ以上のガイドRNAの各々が、前記Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、
前記1つ以上のガイドRNAのうちの少なくとも1つが、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする、請求項22又は23に記載の非ヒト動物。
【請求項25】
第1の発現カセットが、Rosa26遺伝子座に組み込まれ、
前記Casタンパク質が、Streptococcus pyogenes Cas9タンパク質と最適にアラインされたときにD10A及びN863Aに対応する変異を含む、Cas9タンパク質であり、
キメラCasタンパク質における1つ以上の転写活性化因子ドメインが、VP64を含み、
前記アダプタータンパク質が、MS2コートタンパク質又はその機能的断片若しくはバリアントを含み、
前記キメラアダプタータンパク質における1つ以上の転写活性化ドメインが、p65及びHSF1を含み、
前記非ヒト動物が、1つ以上のガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを更に含み、
前記1つ以上のガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットが、小柱網内にあり、
前記1つ以上のガイドRNAの各々が、前記キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる2つのアダプター結合要素を含み、
前記2つのアダプター結合要素が、前記1つ以上のガイドRNAの各々の第1のループ内の第1のアダプター結合要素、及び前記1つ以上のガイドRNAの各々の第2のループ内の第2のアダプター結合要素を含み、
前記標的配列が、転写開始部位の200塩基対上流及び前記転写開始部位の1塩基対下流の領域内にある、請求項22~24のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項26】
前記非ヒト動物が、マウスであり、前記1つ以上のガイドRNAが、配列番号90~95から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする、請求項22~25のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項27】
前記非ヒト動物が、マウスであり、前記1つ以上のガイドRNAが、配列番号93~94から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする、請求項22~25のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項28】
前記非ヒト動物が、マウスであり、前記1つ以上のガイドRNAが、配列番号93に記載されるガイドRNA標的配列を標的とする、請求項22~25のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項29】
前記非ヒト動物が、前記1つ以上のガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、眼、輪部リング、網膜、毛様体、又は小柱網において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現を有する、請求項22~28のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項30】
前記非ヒト動物が、野生型非ヒト動物又は対照非ヒト動物に対して上昇した眼圧を有する、請求項1~29のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
【請求項31】
前記非ヒト動物が、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、又は少なくとも22mmHgの眼圧を有する、請求項30に記載の非ヒト動物。
【請求項32】
前記非ヒト動物が、前記対照非ヒト動物の眼圧よりも少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6mmHg高い眼圧を有する、請求項30又は31に記載の非ヒト動物。
【請求項33】
ヒト化内因性MYOC遺伝子座をそのゲノムに含む、非ヒト動物細胞であって、前記内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられており、
任意選択的に、前記内因性MYOC遺伝子座の前記領域が、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含み、前記対応するヒトMYOC配列が、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含む、非ヒト動物細胞。
【請求項34】
前記非ヒト動物細胞が、ゲノムに組み込まれた発現カセットをそのゲノムに更に含み、前記ゲノムに組み込まれた発現カセットが、
(a)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含む、キメラのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸と、
(b)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸と、を含む、請求項33に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項35】
1つ以上のガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを更に含み、各ガイドRNAが、前記キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、
前記1つ以上のガイドRNAの各々が、前記Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、
前記1つ以上のガイドRNAのうちの少なくとも1つが、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする、請求項34に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項36】
ヒト化内因性MYOC遺伝子座をそのゲノムに含む、非ヒト動物ゲノムであって、前記内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられており、
任意選択的に、前記内因性MYOC遺伝子座の前記領域が、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含み、前記対応するヒトMYOC配列が、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含む、非ヒト動物ゲノム。
【請求項37】
前記非ヒト動物ゲノムが、ゲノムに組み込まれた発現カセットをそのゲノムに更に含み、前記ゲノムに組み込まれた発現カセットが、
(a)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含む、キメラのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸と、
(b)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸と、を含む、請求項36に記載の非ヒト動物ゲノム。
【請求項38】
ヒト化非ヒトMYOC遺伝子座をそのゲノムに含む、核酸であって、内因性MYOC遺伝子の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられており、
任意選択的に、前記内因性MYOC遺伝子の前記領域が、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含み、前記対応するヒトMYOC配列が、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含む、核酸。
【請求項39】
ヒト化内因性MYOC遺伝子座を生成するための標的化ベクターであって、前記内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられており、前記標的化ベクターが、前記内因性MYOC遺伝子座における5’標的配列を標的とする5’相同性アーム及び前記内因性MYOC遺伝子座における3’標的配列を標的とする3’相同性アームが隣接する、前記対応するヒトMYOC配列を含む挿入核酸を含み、
任意選択的に、前記内因性MYOC遺伝子座の前記領域が、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含み、前記対応するヒトMYOC配列が、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含む、標的化ベクター。
【請求項40】
ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を評価する方法であって、
(a)請求項1~32のいずれか一項に記載の非ヒト動物に前記ヒトMYOC標的化試薬又は前記候補緑内障治療剤を投与することと、
(b)前記非ヒト動物における前記ヒトMYOC標的化試薬又は前記候補緑内障治療剤の前記活性を評価することと、を含む、方法。
【請求項41】
前記非ヒト動物が、ゲノムに組み込まれた発現カセットをそのゲノムに更に含み、前記ゲノムに組み込まれた発現カセットが、
(a)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含む、キメラのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸と、
(b)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸と、を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記方法が、ステップ(a)の前に、1つ以上のガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを投与することを更に含み、各ガイドRNAが、前記キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、
前記1つ以上のガイドRNAの各々が、前記Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、
前記1つ以上のガイドRNAのうちの少なくとも1つが、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記非ヒト動物が、マウスであり、前記1つ以上のガイドRNAが、配列番号90~95から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記非ヒト動物が、マウスであり、前記1つ以上のガイドRNAが、配列番号93~94から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記非ヒト動物が、マウスであり、前記1つ以上のガイドRNAが、配列番号93に記載される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記ガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記1つ以上の発現カセットが、アデノウイルス媒介送達、レンチウイルス媒介送達、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達を介して投与される、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記1つ以上の発現カセットが、組換えAAV2.Y3F媒介送達を介して投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記1つ以上の発現カセットが、レンチウイルス媒介送達を介して投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記ガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記1つ以上の発現カセットが、硝子体内注射又は前房内注射を介して前記非ヒト動物に投与される、請求項42~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記ガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記1つ以上の発現カセットが、ステップ(a)の少なくとも1週間前又はステップ(a)の約1週間~約10週間前に前記非ヒト動物に投与される、請求項42~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(b)が、前記非ヒト動物の眼における前記ヒトMYOC標的化試薬又は前記候補緑内障治療剤の前記活性を評価することを含む、請求項40~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
ステップ(a)が、前記ヒトMYOC標的化試薬を投与することを含み、ステップ(b)が、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座によってコードされるMYOCメッセンジャーRNAの発現を測定することを含む、請求項40~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
ステップ(a)が、前記ヒトMYOC標的化試薬を投与することを含み、ステップ(b)が、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座によってコードされるミオシリンタンパク質の発現を測定することを含む、請求項40~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
ステップ(a)が、前記ヒトMYOC標的化試薬を投与することを含み、前記ヒトMYOC標的化試薬が、ゲノム編集剤であり、ステップ(b)が、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座の修飾を評価することを含む、請求項40~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
ステップ(b)が、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座内の挿入又は欠失の頻度を測定することを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記ヒトMYOC標的化試薬が、ヒトMYOC遺伝子の領域を標的とするように設計されたヌクレアーゼ剤を含む、請求項40~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記ヌクレアーゼ剤が、Casタンパク質、及び前記ヒトMYOC遺伝子中のガイドRNA標的配列を標的とするように設計されたガイドRNAを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記Casタンパク質が、Cas9タンパク質である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ステップ(a)が、前記ヒトMYOC標的化試薬を投与することを含み、前記ヒトMYOC標的化試薬が、外因性ドナー核酸を含み、前記外因性ドナー核酸が、前記ヒトMYOC遺伝子を標的とするように設計され、任意選択的に、前記外因性ドナー核酸が、AAVを介して送達される、請求項40~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記ヒトMYOC標的化試薬が、RNAi剤又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項40~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記ヒトMYOC標的化試薬が、抗原結合タンパク質である、請求項40~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記ヒトMYOC標的化試薬が、小分子である、請求項40~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記非ヒト動物における前記ヒトMYOC標的化試薬又は前記候補緑内障治療剤の前記活性を評価することが、眼圧を評価することを含む、請求項40~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記評価することが、未処置対照非ヒト動物との比較で行われる、請求項40~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
ステップ(a)が、前記候補緑内障治療剤を投与することを含み、ステップ(b)が、眼圧を評価することを含む、請求項40~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記候補緑内障治療剤が、房水形成の抑制剤である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記候補緑内障治療剤が、房水の流出を増加させる、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記候補緑内障治療剤が、ANGPTL7標的化試薬である、請求項40~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記ANGPTL7標的化試薬が、RNAi剤又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
インビボでのヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を最適化する方法であって、
(I)請求項40~69のいずれか一項に記載の方法を第1の非ヒト動物で1回目に実施することと、
(II)可変要素を変更し、前記変更された可変要素を用いてステップ(I)の方法を第2の非ヒト動物で2回目に実施することと、
(III)ステップ(I)における前記ヒトMYOC標的化試薬又は前記候補緑内障治療剤の前記活性を、ステップ(II)における前記ヒトMYOC標的化試薬又は前記候補緑内障治療剤の前記活性と比較し、より高い活性をもたらす方法を選択することと、を含む、方法。
【請求項71】
請求項1~32のいずれか一項に記載の非ヒト動物を作製する方法であって、
(a)非ヒト動物宿主胚に、ヒト化内因性MYOC遺伝子座をそのゲノムに含む遺伝子修飾された非ヒト動物胚性幹(ES)細胞を導入することであって、前記内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、導入することと、
(b)前記非ヒト動物宿主胚を代理母において妊娠させることであって、前記代理母が、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を含むF0子孫の遺伝子修飾された非ヒト動物を産生する、妊娠させることと、を含む、方法。
【請求項72】
ステップ(a)の前に、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を含むように非ヒト動物ES細胞のゲノムを修飾することを更に含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
請求項1~32のいずれか一項に記載の非ヒト動物を作製する方法であって、
(a)前記内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、ヒト化内因性MYOC遺伝子座をそのゲノムに含むように非ヒト動物1細胞期胚のゲノムを修飾し、それによって、非ヒト動物の遺伝子修飾された胚を生成することと、
(b)前記非ヒト動物の遺伝子修飾された胚を代理母において妊娠させることであって、前記代理母が、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を含むF0子孫の遺伝子修飾された非ヒト動物を産生する、妊娠させることと、を含む、方法。
【請求項74】
前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を含む前記F0子孫の遺伝子修飾された非ヒト動物を、1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含むキメラのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸を含み、かつ1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸を更に含む、ゲノムに組み込まれた発現カセットを含む非ヒト動物と交配させることを更に含む、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
請求項22~32のいずれか一項に記載の非ヒト動物を作製する方法であって、
(a)そのゲノムに、(i)内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、ヒト化内因性MYOC遺伝子座と、(ii)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含むCasタンパク質をコードする核酸、及び1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸を含む、ゲノムに組み込まれた発現カセットと、を含む、遺伝子修飾された非ヒト動物胚性幹(ES)細胞を、非ヒト動物宿主胚に導入することと、
(b)前記非ヒト動物宿主胚を代理母において妊娠させることであって、前記代理母が、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座及び前記ゲノムに組み込まれた発現カセットを含むF0子孫の遺伝子修飾された非ヒト動物を産生する、妊娠させることと、を含む、方法。
【請求項76】
ステップ(a)の前に、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座及び前記ゲノムに組み込まれた発現カセットを含むように非ヒト動物ES細胞のゲノムを修飾することを更に含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
請求項22~32のいずれか一項に記載の非ヒト動物を作製する方法であって、
(a)そのゲノムに、(i)内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、ヒト化内因性MYOC遺伝子座と、(ii)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含むCasタンパク質をコードする核酸、及び1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸を含む、ゲノムに組み込まれた発現カセットと、を含む、非ヒト動物1細胞期胚を提供することと、
(b)前記非ヒト動物1細胞期胚を代理母において妊娠させることであって、前記代理母が、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座及び前記ゲノムに組み込まれた発現カセットを含むF0子孫の遺伝子修飾された非ヒト動物を産生する、妊娠させることと、を含む、方法。
【請求項78】
前記非ヒト動物が、マウス又はラットである、請求項71~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記非ヒト動物が、前記マウスである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
非ヒト動物におけるMYOC発現を増加させる方法であって、請求項22~32のいずれか一項に記載の非ヒト動物に、1つ以上のガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを投与することを含み、各ガイドRNAが、前記キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、
前記1つ以上のガイドRNAの各々が、前記Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、
前記1つ以上のガイドRNAのうちの少なくとも1つが、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする、方法。
【請求項81】
非ヒト動物における眼圧を上昇させる方法であって、請求項22~32のいずれか一項に記載の非ヒト動物に、1つ以上のガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを投与することを含み、各ガイドRNAが、前記キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、
前記1つ以上のガイドRNAの各々が、前記Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、
前記1つ以上のガイドRNAのうちの少なくとも1つが、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする、方法。
【請求項82】
非ヒト動物における緑内障をモデル化する方法であって、請求項22~32のいずれか一項に記載の非ヒト動物に、1つ以上のガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを投与することを含み、各ガイドRNAが、前記キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、
前記1つ以上のガイドRNAの各々が、前記Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、
前記1つ以上のガイドRNAのうちの少なくとも1つが、前記ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする、方法。
【請求項83】
前記非ヒト動物が、マウスであり、前記1つ以上のガイドRNAが、配列番号90~95から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする、請求項80~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記非ヒト動物が、マウスであり、前記1つ以上のガイドRNAが、配列番号93~94から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする、請求項80~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記非ヒト動物が、マウスであり、前記1つ以上のガイドRNAが、配列番号93に記載されるガイドRNA標的配列を標的とする、請求項80~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記ガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記1つ以上の発現カセットが、アデノウイルス媒介送達、レンチウイルス媒介送達、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達を介して投与される、請求項80~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記ガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記1つ以上の発現カセットが、組換えAAV2.Y3F媒介送達を介して投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記ガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記1つ以上の発現カセットが、レンチウイルス媒介送達を介して投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記ガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする前記1つ以上の発現カセットが、硝子体内注射又は前房内注射を介して前記非ヒト動物に投与される、請求項80~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記方法が、眼、輪部リング、網膜、毛様体、又は小柱網において、増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらし、任意選択的に、前記方法が、前記1つ以上のガイドRNA、又は前記1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、眼、輪部リング、網膜、毛様体、又は小柱網において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす、請求項80~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記方法が、上昇した眼圧をもたらし、任意選択的に、前記方法が、前記対照非ヒト動物の眼圧よりも少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6mmHg高い眼圧を有する前記非ヒト動物をもたらす、請求項80~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記方法が、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、又は少なくとも22mmHgの眼圧をもたらす、請求項80~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を評価する方法であって、
(a)請求項33~35のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞に前記ヒトMYOC標的化試薬又は前記候補緑内障治療剤を投与することと、
(b)前記非ヒト動物細胞における前記ヒトMYOC標的化試薬又は前記候補緑内障治療剤の前記活性を評価することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年12月8日に出願された米国特許出願第63/287,281号の利益を主張する。
【0002】
EFS Webを介したテキストファイルとして提出された配列表への参照
ファイル588714SEQLIST.xmlに記載された配列表は、302キロバイトであり、2022年12月1日に作成され、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ミオシリン(myocilin、MYOC)における変異は、常染色体優性家族性若年性開放隅角緑内障の症例の8~10%、並びに原発性開放隅角緑内障(primary open-angle glaucoma、POAG)の症例の2~3%を占める、緑内障の最も一般的な遺伝的原因に関与している。MYOC毒性機能獲得型変異タンパク質は、細胞内で凝集し、小柱網(trabecular meshwork、TM)応力、眼圧(intraocular pressure、IOP)の上昇、及び緑内障につながる。より良好な動物モデルが、MYOCによって引き起こされる緑内障表現型を再現するために必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
ヒト化MYOC遺伝子座を含む、非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノム、並びにそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムを作製及び使用する方法が提供される。また、ヒト化非ヒト動物MYOC遺伝子、ヒト化非ヒト動物MYOC遺伝子を含む核酸、非ヒト動物MYOC遺伝子をヒト化する際に使用するための標的化ベクター、及びそのようなヒト化MYOC遺伝子を作製及び使用する方法も提供される。
【0005】
一態様では、内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、ヒト化内因性MYOC遺伝子座をそのゲノムに含む、非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムが提供される。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、内因性MYOC遺伝子座の領域は、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含み、対応するヒトMYOC配列は、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含む。
【0006】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座は、緑内障に関連する変異を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒトMYOC配列は、変異を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座は、Y437H変異を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒトMYOC配列は、Y437H変異を含む。
【0007】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座は、内因性MYOCプロモーターを含み、ヒトMYOC配列は、内因性MYOCプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、内因性MYOC遺伝子座の少なくとも1つのイントロン及び少なくとも1つのエキソンは、削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座は、ヒトMYOC 3’非翻訳領域を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、内因性MYOC 5’非翻訳領域が削除されておらず、対応するヒトMYOC配列で置き換えられていない。
【0008】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座は、ヒトミオシリンタンパク質をコードする。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒトミオシリンタンパク質配列は、配列番号4に記載される配列を含み、任意選択的に、ヒトミオシリンタンパク質配列は、配列番号5に記載される配列を含むコード配列によってコードされる。
【0009】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、内因性MYOC遺伝子座のMYOCコード配列全体が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、MYOC開始コドンからMYOC終止コドンまでの内因性MYOC遺伝子座の領域が、削除され、対応するヒトMYOC配列で置換されている。
【0010】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、MYOC開始コドンからMYOC終止コドンまでの内因性MYOC遺伝子座の領域が、削除され、対応するヒトMYOC配列及びヒトMYOC 3’非翻訳領域を含むヒトMYOC配列で置換されており、ヒトMYOC配列は、Y437H変異を含み、内因性MYOC 5’非翻訳領域は、削除されておらず、ヒトMYOC配列で置き換えられておらず、ヒト化内因性MYOC遺伝子座は、内因性MYOCプロモーターを含み、ヒトMYOC配列は、内因性MYOCプロモーターに作動可能に連結されている。
【0011】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座におけるヒトMYOC配列は、配列番号87に記載される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座は、配列番号4に記載される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含むミオシリンタンパク質をコードする。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座は、配列番号5に記載される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含むミオシリンコード配列を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座は、配列番号88又は89に記載される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む。
【0012】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座は、選択カセット又はレポーター遺伝子を含まない。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座についてホモ接合性である。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座についてヘテロ接合性である。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、非ヒト動物は、その生殖系列にヒト化内因性MYOC遺伝子座を含む。
【0013】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、非ヒト動物は、哺乳動物である。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、非ヒト動物は、ラット又はマウスである。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、非ヒト動物は、マウスである。
【0014】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムは、ゲノムに組み込まれた発現カセットをそのゲノムに更に含み、ゲノムに組み込まれた発現カセットは、(a)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含む、キメラのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats、CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸と、(b)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸と、を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムは、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを更に含み、各ガイドRNAは、キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、1つ以上のガイドRNAの各々は、Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、1つ以上のガイドRNAのうちの少なくとも1つは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする。任意選択的に、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、小柱網内にある。
【0015】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムは、キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を各々含む、1つ以上のガイドRNAをコードする第2のゲノムに組み込まれた発現カセットを更に含み、1つ以上のガイドRNAの各々は、Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、1つ以上のガイドRNAのうちの少なくとも1つは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする。
【0016】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、第1の発現カセットは、Rosa26遺伝子座に組み込まれ、Casタンパク質は、Streptococcus pyogenes Cas9タンパク質と最適にアラインされたときにD10A及びN863Aに対応する変異を含むCas9タンパク質であり、キメラCasタンパク質中の1つ以上の転写活性化因子ドメインは、VP64を含み、アダプタータンパク質は、MS2コートタンパク質又はその機能的断片若しくはバリアントを含み、キメラアダプタータンパク質中の1つ以上の転写活性化ドメインは、p65及びHSF1を含み、非ヒト動物は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを更に含み、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、小柱網内にあり、1つ以上のガイドRNAの各々は、キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる2つのアダプター結合要素を含み、2つのアダプター結合要素は、1つ以上のガイドRNAの各々の第1のループ内の第1のアダプター結合要素、及び1つ以上のガイドRNAの各々の第2のループ内の第2のアダプター結合要素を含み、標的配列は、転写開始部位の200塩基対上流及び転写開始部位の1塩基対下流の領域内にある。
【0017】
いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号90~95から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号93~94から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする。いくつかのそのような非ヒト動物、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物ゲノムでは、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号93に記載されるガイドRNA標的配列を標的とする。
【0018】
いくつかのそのような非ヒト動物又は非ヒト動物細胞は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物又は非ヒト動物細胞に対して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現を有する。いくつかのそのような非ヒト動物は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、眼、輪部リング、網膜、毛様体、又は小柱網において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現を有する。いくつかのそのような非ヒト動物は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、輪部リング又は小柱網において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現を有する。いくつかのそのような非ヒト動物は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、輪部リングにおいて少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現を有する。いくつかのそのような非ヒト動物は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、小柱網において少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現を有する。
【0019】
いくつかのそのような非ヒト動物では、非ヒト動物は、野生型非ヒト動物又は対照非ヒト動物に対して上昇した眼圧を有する。任意選択的に、非ヒト動物は、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、又は少なくとも22mmHgの眼圧を有する。任意選択的に、非ヒト動物は、対照非ヒト動物の眼圧よりも少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6mmHg高い眼圧を有する。
【0020】
別の態様では、内因性MYOC遺伝子の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、ヒト化非ヒト動物MYOC遺伝子(すなわち、上記に記載されるヒト化非ヒト動物MYOC遺伝子座)を含む、核酸が提供される。任意選択的に、内因性MYOC遺伝子の領域は、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含み、対応するヒトMYOC配列は、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含む。
【0021】
別の態様では、内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、ヒト化内因性MYOC遺伝子座(すなわち、上記に記載されるヒト化内因性MYOC遺伝子座)を生成するための標的化ベクターが提供され、標的化ベクターは、内因性MYOC遺伝子座における5’標的配列を標的とする5’相同性アーム及び内因性MYOC遺伝子座における3’標的配列を標的とする3’相同性アームに隣接する、対応するヒトMYOC配列を含む挿入核酸を含む。任意選択的に、内因性MYOC遺伝子座の領域は、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含み、対応するヒトMYOC配列は、MYOCエキソン配列及びMYOCイントロン配列の両方を含む。
【0022】
別の態様では、上記に記載される非ヒト動物及び非ヒト動物細胞におけるヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を評価する方法が提供される。いくつかのそのような方法は、(a)上記の非ヒト動物のうちのいずれかにヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤を投与することと、(b)非ヒト動物におけるヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を評価することと、を含む。いくつかのそのような方法は、(a)上記の非ヒト動物細胞のうちのいずれかにヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤を投与することと、(b)非ヒト動物細胞におけるヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を評価することと、を含む。
【0023】
いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、ゲノムに組み込まれた発現カセットをそのゲノムに更に含み、ゲノムに組み込まれた発現カセットは、(a)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含む、キメラのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸と、(b)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸と、を含む。いくつかのそのような方法は、ステップ(a)の前に、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを投与することを更に含み、各ガイドRNAは、キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、1つ以上のガイドRNAの各々は、Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、1つ以上のガイドRNAのうちの少なくとも1つは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする。
【0024】
いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号90~95から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする。いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号93~94から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする。いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号93に記載されるガイドRNA標的配列を標的とする。
【0025】
いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、アデノウイルス媒介送達、レンチウイルス媒介送達、又はアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus、AAV)媒介送達を介して投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、組換えAAV2.Y3F媒介送達を介して投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、レンチウイルス媒介送達を介して投与される。
【0026】
いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、硝子体内注射又は前房内注射を介して非ヒト動物に投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、ステップ(a)の少なくとも1週間前又はステップ(a)の約1週間~約10週間前に非ヒト動物に投与される。
【0027】
いくつかのそのような方法では、ステップ(b)は、非ヒト動物の眼におけるヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を評価することを含む。いくつかのそのような方法では、ステップ(a)は、ヒトMYOC標的化試薬を投与することを含み、ステップ(b)は、ヒト化内因性MYOC遺伝子座によってコードされるMYOCメッセンジャーRNAの発現を測定することを含む。いくつかのそのような方法では、ステップ(a)は、ヒトMYOC標的化試薬を投与することを含み、ステップ(b)は、ヒト化内因性MYOC遺伝子座によってコードされるミオシリンタンパク質の発現を測定することを含む。いくつかのそのような方法では、ステップ(a)は、ヒトMYOC標的化試薬を投与することを含み、ヒトMYOC標的化試薬は、ゲノム編集剤であり、ステップ(b)は、ヒト化内因性MYOC遺伝子座の修飾を評価することを含む。いくつかのそのような方法では、ステップ(b)は、ヒト化内因性MYOC遺伝子座内の挿入又は欠失の頻度を測定することを含む。
【0028】
いくつかのそのような方法では、ヒトMYOC標的化試薬は、ヒトMYOC遺伝子の領域を標的とするように設計されたヌクレアーゼ剤を含む。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤は、Casタンパク質及びヒトMYOC遺伝子のガイドRNA標的配列を標的とするように設計されたガイドRNAを含む。任意選択的に、Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。
【0029】
いくつかのそのような方法では、ステップ(a)は、ヒトMYOC標的化試薬を投与することを含み、ヒトMYOC標的化試薬は、外因性ドナー核酸を含み、外因性ドナー核酸は、ヒトMYOC遺伝子を標的とするように設計され、任意選択的に、外因性ドナー核酸は、AAVを介して送達される。
【0030】
いくつかのそのような方法では、ヒトMYOC標的化試薬は、RNAi剤又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかのそのような方法では、ヒトMYOC標的化試薬は、抗原結合タンパク質である。いくつかのそのような方法では、ヒトMYOC標的化試薬は、小分子である。
【0031】
いくつかのそのような方法では、非ヒト動物におけるヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を評価することは、眼圧を評価することを含む。
【0032】
いくつかのそのような方法では、評価は、未処置対照非ヒト動物との比較で行われる。
【0033】
いくつかのそのような方法では、ステップ(a)は、候補緑内障治療剤を投与することを含み、ステップ(b)は、眼圧を評価することを含む。いくつかのそのような方法では、候補緑内障治療剤は、房水形成の抑制剤である。いくつかのそのような方法では、候補緑内障治療剤は、房水の流出を増加させる。
【0034】
いくつかのそのような方法では、候補緑内障治療剤は、ANGPTL7標的化試薬である。いくつかのそのような方法では、ANGPTL7標的化試薬は、RNAi剤又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0035】
別の態様では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を最適化する方法が提供される。いくつかのそのような方法は、非ヒト動物及び非ヒト動物細胞におけるヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を評価する上記の方法のうちのいずれかを、第1の非ヒト動物又は第1の非ヒト動物細胞で1回目に実施することと、(II)可変要素を変更し、変更された可変要素を用いてステップ(I)の方法を第2の非ヒト動物又は第2の非ヒト動物細胞で2回目に実施することと、(III)ステップ(I)におけるヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を、ステップ(II)におけるヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性と比較し、より高い活性をもたらす方法を選択することと、を含む。
【0036】
別の態様では、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を含む上記の非ヒト動物のうちのいずれかを作製する方法が提供される。
【0037】
いくつかのそのような方法は、(a)非ヒト動物宿主胚に、ヒト化内因性MYOC遺伝子座をそのゲノムに含む遺伝子修飾された非ヒト動物胚性幹(embryonic stem、ES)細胞を導入することであって、内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、導入することと、(b)非ヒト動物宿主胚を代理母において妊娠させることであって、代理母が、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を含むF0子孫の遺伝子修飾された非ヒト動物を産生する、妊娠させることと、を含む。いくつかのそのような方法は、ステップ(a)の前に、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を含むように非ヒト動物ES細胞のゲノムを修飾することを更に含む。
【0038】
いくつかのそのような方法は、(a)内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、ヒト化内因性MYOC遺伝子座をそのゲノムに含むように非ヒト動物1細胞期胚のゲノムを修飾し、それによって、非ヒト動物の遺伝子修飾された胚を生成することと、(b)非ヒト動物の遺伝子修飾された胚を代理母において妊娠させることであって、代理母が、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を含むF0子孫の遺伝子修飾された非ヒト動物を産生する、妊娠させることと、を含む。
【0039】
いくつかのそのような方法は、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を含むF0子孫の遺伝子修飾された非ヒト動物を、1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含むキメラのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸を含み、かつ1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸を更に含む、ゲノムに組み込まれた発現カセットを含む非ヒト動物と交配させることを含む。
【0040】
別の態様では、ヒト化内因性MYOC遺伝子座及びゲノムに組み込まれた発現カセットを含む上記の非ヒト動物のうちのいずれかを作製する方法であって、(a)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含む、キメラのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸と、(b)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸と、を含む、方法が提供される。
【0041】
いくつかのそのような方法は、(a)そのゲノムに、(i)内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、ヒト化内因性MYOC遺伝子座と、(ii)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含むCasタンパク質をコードする核酸、及び1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸を含む、ゲノムに組み込まれた発現カセットと、を含む、遺伝子修飾された非ヒト動物胚性幹(ES)細胞を、非ヒト動物宿主胚に導入することと、(b)非ヒト動物宿主胚を代理母において妊娠させることであって、代理母が、ヒト化内因性MYOC遺伝子座及びゲノムに組み込まれた発現カセットを含むF0子孫の遺伝子修飾された非ヒト動物を産生する、妊娠させることと、を含む。いくつかのそのような方法は、ステップ(a)の前に、ヒト化内因性MYOC遺伝子座及びゲノムに組み込まれた発現カセットを含むように非ヒト動物ES細胞のゲノムを修飾することを更に含む。
【0042】
いくつかのそのような方法は、(a)そのゲノムに、(i)内因性MYOC遺伝子座の領域が削除され、対応するヒトMYOC配列で置き換えられている、ヒト化内因性MYOC遺伝子座と、(ii)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含むCasタンパク質をコードする核酸、及び1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸を含む、ゲノムに組み込まれた発現カセットと、を含む、非ヒト動物1細胞期胚を提供することと、(b)非ヒト動物1細胞期胚を代理母において妊娠させることであって、代理母が、ヒト化内因性MYOC遺伝子座及びゲノムに組み込まれた発現カセットを含むF0子孫の遺伝子修飾された非ヒト動物を産生する、妊娠させることと、を含む。
【0043】
いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウス又はラットである。いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスである。
【0044】
別の態様では、非ヒト動物におけるMYOC発現を増加させる方法が提供される。いくつかのそのような方法は、上記の非ヒト動物のうちのいずれか(ヒト化内因性MYOC遺伝子座及びゲノムに組み込まれた発現カセットであって、(a)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含む、キメラのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸と、(b)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸と、を含む、ゲノムに組み込まれた発現カセットを含む)に、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを投与することを含み、各ガイドRNAは、キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、1つ以上のガイドRNAの各々は、Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、1つ以上のRNAのうちの少なくとも1つは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする。
【0045】
いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号90~95から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする。いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号93~94から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする。いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号93に記載されるガイドRNA標的配列を標的とする。
【0046】
いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、アデノウイルス媒介送達、レンチウイルス媒介送達、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達を介して投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、組換えAAV2.Y3F媒介送達を介して投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、レンチウイルス媒介送達を介して投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、硝子体内注射又は前房内注射を介して非ヒト動物に投与される。
【0047】
いくつかのそのような方法では、本方法は、眼、輪部リング、網膜、毛様体、又は小柱網におけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、眼、輪部リング、網膜、毛様体、又は小柱網において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。いくつかのそのような方法では、本方法は、輪部リング又は小柱網におけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、輪部リング又は小柱網において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。いくつかのそのような方法では、本方法は、輪部リングにおけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、輪部リングにおいて少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。いくつかのそのような方法では、本方法は、小柱網におけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、小柱網において少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。
【0048】
いくつかのそのような方法では、本方法は、上昇した眼圧をもたらす。任意選択的に、本方法は、対照非ヒト動物の眼圧よりも少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6mmHg高い眼圧を有する非ヒト動物をもたらす。任意選択的に、本方法は、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、又は少なくとも22mmHgの眼圧をもたらす。
【0049】
別の態様では、非ヒト動物における眼圧を上昇させる方法が提供される。いくつかのそのような方法は、上記の非ヒト動物のうちのいずれか(ヒト化内因性MYOC遺伝子座及びゲノムに組み込まれた発現カセットであって、(a)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含む、キメラのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸と、(b)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸と、を含む、ゲノムに組み込まれた発現カセットを含む)に、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを投与することを含み、各ガイドRNAは、キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、1つ以上のガイドRNAの各々は、Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、1つ以上のRNAのうちの少なくとも1つは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする。
【0050】
いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号90~95から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする。いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号93~94から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする。いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号93に記載されるガイドRNA標的配列を標的とする。
【0051】
いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、アデノウイルス媒介送達、レンチウイルス媒介送達、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達を介して投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、組換えAAV2.Y3F媒介送達を介して投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、レンチウイルス媒介送達を介して投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、硝子体内注射又は前房内注射を介して非ヒト動物に投与される。
【0052】
いくつかのそのような方法では、本方法は、眼、輪部リング、網膜、毛様体、又は小柱網におけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、眼、輪部リング、網膜、毛様体、又は小柱網において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。いくつかのそのような方法では、本方法は、輪部リング又は小柱網におけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、輪部リング又は小柱網において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。いくつかのそのような方法では、本方法は、輪部リングにおけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、輪部リングにおいて少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。いくつかのそのような方法では、本方法は、小柱網におけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、小柱網において少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。
【0053】
いくつかのそのような方法では、本方法は、上昇した眼圧をもたらす。任意選択的に、本方法は、対照非ヒト動物の眼圧よりも少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6mmHg高い眼圧を有する非ヒト動物をもたらす。任意選択的に、本方法は、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、又は少なくとも22mmHgの眼圧をもたらす。
【0054】
別の態様では、非ヒト動物におけるモデル化緑内障を増加させる方法が提供される。いくつかのそのような方法は、上記の非ヒト動物のうちのいずれか(ヒト化内因性MYOC遺伝子座及びゲノムに組み込まれた発現カセットであって、(a)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を含む、キメラのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質をコードする核酸と、(b)1つ以上の転写活性化ドメインに融合したアダプタータンパク質を含むキメラアダプタータンパク質をコードする核酸と、を含む、ゲノムに組み込まれた発現カセットを含む)に、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを投与することを含み、各ガイドRNAは、キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、1つ以上のガイドRNAの各々は、Casタンパク質と複合体を形成し、それを標的遺伝子内の標的配列に誘導することが可能であり、1つ以上のRNAのうちの少なくとも1つは、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を標的とする。
【0055】
いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号90~95から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする。いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号93~94から選択される1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とする。いくつかのそのような方法では、非ヒト動物は、マウスであり、1つ以上のガイドRNAは、配列番号93に記載されるガイドRNA標的配列を標的とする。
【0056】
いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、アデノウイルス媒介送達、レンチウイルス媒介送達、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達を介して投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、組換えAAV2.Y3F媒介送達を介して投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、レンチウイルス媒介送達を介して投与される。いくつかのそのような方法では、ガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットは、硝子体内注射又は前房内注射を介して非ヒト動物に投与される。
【0057】
いくつかのそのような方法では、本方法は、眼、輪部リング、網膜、毛様体、又は小柱網におけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、眼、輪部リング、網膜、毛様体、又は小柱網において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。いくつかのそのような方法では、本方法は、輪部リング又は小柱網におけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、輪部リング又は小柱網において、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。いくつかのそのような方法では、本方法は、輪部リングにおけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、輪部リングにおいて少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。いくつかのそのような方法では、本方法は、小柱網におけるMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加をもたらす。任意選択的に、本方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上の発現カセットを含まない対照非ヒト動物に対して、小柱網において少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍増加したMYOC mRNA又はタンパク質発現をもたらす。
【0058】
いくつかのそのような方法では、本方法は、上昇した眼圧をもたらす。任意選択的に、本方法は、対照非ヒト動物の眼圧よりも少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6mmHg高い眼圧を有する非ヒト動物をもたらす。任意選択的に、本方法は、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、又は少なくとも22mmHgの眼圧をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】野生型マウスMyoc遺伝子座、野生型ヒトMYOC遺伝子座、Y437H変異を含み、自己欠失ネオマイシン(self-deleting neomycin、SDC-Neo)選択カセット(MAID 8533)を有するヒト化マウスMYOC遺伝子座の標的対立遺伝子、及びY437H変異を含み、SDC-Neo選択カセット(MAID 8534)の除去からのloxP瘢痕を有するヒト化マウスMYOC遺伝子座の標的対立遺伝子の概略図(正確な縮尺ではない)を示す。
図2】対立遺伝子喪失アッセイ(7578mTU及び7578mTD)、対立遺伝子獲得アッセイ(7578hTU、7578hTD、Cre903、及びHyg)、並びに対立遺伝子識別アッセイ(8533hAS2.WT及び8533hAS2.Mut)を含む、ヒト化マウスMYOC遺伝子座のスクリーニングのための方略の概略図(正確な縮尺ではない)を示す。
図3】ヒト及びマウスミオシリンタンパク質のアラインメントを示す。
図4A】5’から3’まで、3’スプライシング配列、第1のloxP部位、ネオマイシン耐性遺伝子、ポリアデニル化シグナル、第2のloxP部位、dCas9-NLS-VP64コード配列(NLS-dCas9-NLS-VP64)、T2Aペプチドコード配列、MCP-NLS-p65-HSF1コード配列、及びウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(Woodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element、WPRE)を含む、lox-stop-lox(LSL)dCas9相乗的活性化メディエーター(synergistic activation mediator、SAM)対立遺伝子(LSL-SAM対立遺伝子)を示す(正確な縮尺ではない)。
図4B】loxPを組み込んだネオマイシン耐性遺伝子及びポリアデニル化シグナルが除去された、図4Aからの対立遺伝子(SAM対立遺伝子)を示す(正確な縮尺ではない)。
図5図4AからのLSL-SAM対立遺伝子をRosa26(R26)遺伝子座の第1のイントロン内に標的化するための一般的な概略図を示す(正確な縮尺ではない)。
図6】テトラループ及びステムループ2が、転写活性化ドメインに融合したキメラMS2コートタンパク質(MS2 coat protein、MCP)の動員を促進するためにMS2結合アプタマーで置き換えられている、一般的なシングルガイドRNA(配列番号68)の概略図を示す。
図7】小柱網(TM)、毛様体(ciliary body、CB)、及び角膜内皮(corneal endothelium、CE)におけるAd5、AAV2.Y3F、及びレンチウイルス発現を示す。長方形のボックスは、TMを示す。
図8】マウスMyoc SAMガイドRNA標的配列の位置を示す。
図9】眼の解剖概略図を示す。
図10A】対照ガイドRNAに対する、マウスMyoc SAMガイドRNAの投与後の輪部リング(小柱網(TM)、虹彩、及び毛様体(CB)、図10A)、網膜(図10B)、及び角膜(図10C)におけるqPCRによって測定されるGapdh発現に対するマウスMyoc発現を示す。
図10B】対照ガイドRNAに対する、マウスMyoc SAMガイドRNAの投与後の輪部リング(小柱網(TM)、虹彩、及び毛様体(CB)、図10A)、網膜(図10B)、及び角膜(図10C)におけるqPCRによって測定されるGapdh発現に対するマウスMyoc発現を示す。
図10C】対照ガイドRNAに対する、マウスMyoc SAMガイドRNAの投与後の輪部リング(小柱網(TM)、虹彩、及び毛様体(CB)、図10A)、網膜(図10B)、及び角膜(図10C)におけるqPCRによって測定されるGapdh発現に対するマウスMyoc発現を示す。
図11】AAV2.Y3F-SAM-g4、AAV2.Y3F-SAM-g5、AAV2.Y3F-SAM-LacZ対照で処置されたか、又は何も処置されていない(ナイーブ)、Y437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)における眼圧(IOP)を示す。
図12】AAV2.Y3F-SAM-g4で処置されたか、又は何も処置されていない(ナイーブ)、Y437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)における眼圧(IOP)を示し、AAV2.Y3F-SAM-g4処置マウスは、その後、チモロール又はRHOPRESSA(登録商標)のいずれかで処置された。
図13】ヒト化MYOC遺伝子座についてヘテロ接合性又はホモ接合性のいずれかであるY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウスにおけるマウスMyoc SAMガイドRNA g4及びg5又はSAM LacZ対照gRNAの投与後にqPCRによって測定されるGapdh発現に対するヒトMYOC発現を示す。
図14】ヒト化MYOC遺伝子座についてヘテロ接合性又はホモ接合性のいずれかであるY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウスにおけるマウスMyoc SAMガイドRNA g4及びg5又はSAM LacZ対照gRNAの投与後にRNASCOPE(登録商標)によって測定されるヒトMYOC発現を示す。
図15A】AAV2.Y3F-SAM-g4及びLV-SAM-g4の混合物で処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)における眼圧(IOP)に対するヒトMYOC siRNA#1の効果を試験するための実験設定を示す。
図15B】AAV2.Y3F-SAM-g4で処置されたか、又は何も処置されていない(ナイーブ)、Y437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)における眼圧(IOP)を示し、AAV2.Y3F-SAM-g4処置マウスは、その後、ヒトMYOC siRNA又は対照ルシフェラーゼsiRNAのいずれかで処置された。
図16A】LV-SAM-g4で処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)における眼圧(IOP)に対するヒトMYOC siRNA#1、#2、#3、#4、及び#5の効果を試験するための実験設定を示す。
図16B】LV-SAM-g4又はPBSで処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)における眼圧(IOP)を示し、LV-SAM-g4処置マウスは、その後、ヒトMYOC siRNA#1、#2、#3、#4、又は#5で処置された。
図16C】LV-SAM-g4又はPBSで処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)におけるGapdhに対するヒトMYOC mRNA発現のパーセンテージを示す、qPCR結果を示し、LV-SAM-g4処置マウスは、その後、ヒトMYOC siRNA#1、#2、#3、#4、又は#5で処置された。
図16D-1】LV-SAM-g4又はPBSで処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)由来の眼におけるヒトMYOC mRNA発現のRNASCOPE(登録商標)分析を示し、LV-SAM-g4処置マウスは、その後、ヒトMYOC siRNA#2又は#3で処置された。
図16D-2】LV-SAM-g4又はPBSで処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)由来の眼におけるヒトMYOC mRNA発現のRNASCOPE(登録商標)分析を示し、LV-SAM-g4処置マウスは、その後、ヒトMYOC siRNA#2又は#3で処置された。
図17A】LV-SAM-g4で処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)における眼圧(IOP)に対するヒトMYOC siRNA#2及び#3の効果を試験するための実験設定を示す。
図17B】LV-SAM-g4又はPBSで処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)における眼圧(IOP)を示し、LV-SAM-g4処置マウスは、その後、ヒトMYOC siRNA#2又は#3で処置された。
図17C】LV-SAM-g4又はPBSで処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)におけるGapdhに対するヒトMYOC mRNA発現のパーセンテージを示す、qPCR結果を示し、LV-SAM-g4処置マウスは、その後、ヒトMYOC siRNA#2又は#3で処置された。
図18A】LV-SAM-g4又はPBSで処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)におけるGapdhに対するヒトMYOC mRNA発現のパーセンテージを示す、qPCR結果を示す。
図18B】LV-SAM-g4又はPBSで処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)におけるGapdhに対するAngptl7 mRNA発現のパーセンテージを示す、qPCR結果を示す。
図18C】AAV-SAM-g4で処置されたか、何も処置されていない(ナイーブ)、Y437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)におけるGapdhに対するヒトMYOC mRNA発現のパーセンテージを示す、qPCR結果を示す。
図18D】AAV-SAM-g4で処置されたか、何も処置されていない(ナイーブ)、Y437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)におけるGapdhに対するヒトAngptl7 mRNA発現のパーセンテージを示す、qPCR結果を示す。
図19A】LV-SAM-g4又はPBSで処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)における眼圧(IOP)を示し、LV-SAM-g4処置マウスは、その後、15μgのAngptl7 siRNA#1又は#2で処置された。
図19B】LV-SAM-g4又はPBSで処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)におけるGapdhに対するヒトMYOC mRNA発現のパーセンテージを示す、qPCR結果を示し、LV-SAM-g4処置マウスは、その後、15μgのAngptl7 siRNA#1又は#2で処置された。
図19C】LV-SAM-g4又はPBSで処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)におけるGapdhに対するヒトAngptl7 mRNA発現のパーセンテージを示す、qPCR結果を示し、LV-SAM-g4処置マウスは、その後、15μgのAngpt7 siRNA#1又は#2で処置された。
図20A】LV-SAM-g4で処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)における眼圧(IOP)に対するAngptl7siRNA#1及び#2の効果を試験するための実験設定を示す。
図20B】LV-SAM-g4で処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)における眼圧(IOP)を示し、LV-SAM-g4処置マウスは、その後、7.5μgのAngptl7 siRNA#1若しくは#2又はPBSで処置された。
図20C】LV-SAM-g4で処置されたY437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス、各対立遺伝子についてホモ接合性)におけるGapdhに対するAngptl7及びヒトMYOC mRNA発現のパーセンテージを示す、qPCR結果を示し、LV-SAM-g4処置マウスは、その後、7.5μgのAngptl7 siRNA#1若しくは#2又はPBSで処置された。
【発明を実施するための形態】
【0060】
定義
本明細書で互換的に使用される、「タンパク質」、「ポリペプチド」、及び「ペプチド」という用語は、コード化及び非コード化アミノ酸並びに化学的又は生化学的に修飾又は誘導体化したアミノ酸を含む、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を含む。これらの用語には、修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドなどの修飾されたポリマーも含まれる。「ドメイン」という用語は、特定の機能又は構造を有するタンパク質又はポリペプチドの任意の部分を指す。
【0061】
タンパク質は「N末端」(アミノ末端)及び「C末端」(カルボキシ末端又はカルボキシル末端)を有すると言われている。「N末端」という用語は、遊離アミン基(-NH2)を有するアミノ酸を末端に有する、タンパク質又はポリペプチドの開始部に関する。「C末端」という用語は、遊離カルボキシル基(-COOH)によって終端されたアミノ酸鎖(タンパク質又はポリペプチド)の末端部に関する。
【0062】
本明細書で互換的に使用される、「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又はそれらの類似体若しくは修飾バージョンを含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含む。これらには、一本鎖、二本鎖、及び多重鎖DNA若しくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、並びにプリン塩基、ピリミジン塩基、又は他の天然、化学的に修飾された、生化学的に修飾された、非天然、若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれる。
【0063】
1つのモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸塩がホスホジエステル結合を介して一方向で、その隣の3’酸素に結合する手法でオリゴヌクレオチドを作製するように、モノヌクレオチドが反応するため、核酸は、「5’末端」及び「3’末端」を有すると言われている。オリゴヌクレオチドの末端は、その5’リン酸塩がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に連結されていない場合、「5’末端」と称される。オリゴヌクレオチドの末端は、その3’酸素が別のモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸塩に連結されていない場合、「3’末端」と称される。核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドの内部に存在するとしても、5’及び3’末端を有するとも言われ得る。線状又は環状DNA分子のいずれかにおいて、別個の要素は、「上流」又は「下流」の5’若しくは3’要素であると称される。
【0064】
「ゲノムに組み込まれた」という用語は、ヌクレオチド配列が細胞のゲノムに組み込まれるように、細胞に導入されている核酸を指す。細胞のゲノムへの核酸の安定した組み込みのために、任意のプロトコルが使用され得る。
【0065】
「発現ベクター(expression vector)」又は「発現コンストラクト(expression construct)」又は「発現カセット(expression cassette)」という用語は、特定の宿主細胞又は生物における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要である適切な核酸配列に作動可能に連結された所望のコード配列を含む組換え核酸を指す。原核生物での発現に必要な核酸配列としては、通常、プロモーター、オペレータ(任意選択の)、及びリボソーム結合部位、並びに他の配列が挙げられる。真核細胞は、一般に、プロモーター、エンハンサー、並びに終結及びポリアデニル化シグナルを利用することが周知であり、必要な発現を犠牲にすることなく、いくつかの要素を削除し得、他の要素を追加し得る。
【0066】
「標的化ベクター」という用語は、相同組換え、非相同末端結合媒介ライゲーション、又は任意の他の組換え手段によって、細胞のゲノム中の標的位置に導入され得る組換え核酸を指す。
【0067】
「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の少なくとも1つの要素を含み、かつウイルスベクター粒子へのパッケージングに十分な、又はそれを許容する要素を含む、組換え核酸を指す。ベクター及び/又は粒子は、DNA、RNA、又は他の核酸を、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで細胞に導入する目的で利用することができる。ウイルスベクターの多くの形態が知られている。
【0068】
細胞、組織(例えば、肝臓サンプル)、脂肪滴、タンパク質、及び核酸に関して「分離された」という用語は、通常インサイチュで存在し得る他の細菌、ウイルス、細胞、又は他の成分に関して比較的精製されている細胞、組織(例えば、肝臓サンプル)、脂肪滴、タンパク質、及び核酸を含み、細胞、組織(例えば、肝臓サンプル)、脂肪滴、タンパク質、及び核酸の実質的に純粋な調製物までを含み、並びにそれらの実質的に純粋な調製物を含む。「単離された」という用語はまた、天然に存在する対応物を有していない、化学的に合成されており、したがって、他の細胞、組織(例えば、肝臓サンプル)、脂肪滴、タンパク質、及び核酸が実質的に混入していないか、又はそれらに天然に付随する(例えば、他の細胞タンパク質、核酸、又は細胞若しくは細胞外成分)ほとんどの他の成分(例えば、細胞成分又は生物成分)から分離若しくは精製されている、細胞、組織(例えば、肝臓サンプル)、脂肪滴、タンパク質、及び核酸も含む。
【0069】
「野生型」という用語は、(変異体、病変した、改変したなどとは対照的に)正常な状態又は状況で見出される構造及び/又は活性を有する実体を含む。野生型遺伝子及びポリペプチドは、多くの場合、複数の異なる形態(例えば、対立遺伝子)で存在する。
【0070】
「内因性配列」という用語は、ラット細胞又はラット内で天然に存在する核酸配列を指す。例えば、マウスの内因性Myoc配列は、マウスにおけるMyoc遺伝子座で天然に存在する天然のMyoc配列を指す。
【0071】
「外因性」分子又は配列には、その形態で細胞に通常は存在しない分子又は配列が含まれる。通常の存在には、細胞の特定の発生段階及び環境条件に関する存在が含まれる。外因性分子又は配列には、例えば、内因性配列のヒト化バージョンなど、細胞内の対応する内因性配列の変異バージョンが含まれ得るか、又は細胞内であるが、異なる形態の(すなわち、染色体内ではない)内因性配列に対応する配列が含まれ得る。対照的に、内因性分子又は配列は、その形態で、特定の細胞において、特定の発生段階で、特定の環境条件下で通常存在する分子又は配列を含む。
【0072】
核酸又はタンパク質の文脈で使用される場合の「異種」という用語は、核酸又はタンパク質が、同じ分子内で一緒に天然に存在しない少なくとも2つのセグメントを含むことを示す。例えば、「異種」という用語は、核酸のセグメント又はタンパク質のセグメントに関して使用される場合、核酸又はタンパク質が、自然界で互いに同じ関係(例えば、一緒に結合)で見出されない2つ以上のサブ配列を含むことを示す。一例として、核酸ベクターの「異種」領域は、自然界で他の分子と関連して見出されない、別の核酸分子内の、又は別の核酸分子に結合した核酸のセグメントである。例えば、核酸ベクターの異種領域は、自然界のコード配列に関連して見出されない配列に隣接するコード配列を含み得る。同様に、タンパク質の「異種」領域は、自然界の他のペプチド分子(例えば、融合タンパク質、又はタグ付きタンパク質)に関連して見出されない、別のペプチド分子内にあるか、又はそれに結合しているアミノ酸のセグメントである。同様に、核酸又はタンパク質は、異種標識又は異種分泌又は局在化配列を含むことができる。
【0073】
「コドン最適化」は、アミノ酸を指定する3塩基対のコドンの組み合わせの多様性によって示されるように、コドンの縮重を利用し、一般に、天然アミノ酸配列を維持しながら、天然配列の少なくとも1つのコドンを、宿主細胞の遺伝子においてより頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンで置き換えることによって、特定の宿主細胞における発現の増強のために核酸配列を修飾するプロセスを含む。例えば、ミオシリンタンパク質をコードする核酸は、天然に存在する核酸配列と比較して、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、又は他の任意の宿主細胞を含む、所与の原核細胞又は真核細胞においてより高い使用頻度を有する代替コドンへと修飾することができる。コドン使用頻度表は、例えば、「コドン使用頻度データベース」において容易に利用可能である。これらの表は、様々な方法で適用することができる。あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Nakamura et al.(2000)Nucleic Acids Res.28(1):292を参照されたい。特定の宿主における発現のための特定の配列のコドン最適化のためのコンピュータアルゴリズム(例えば、Gene Forgeを参照されたい)もまた利用可能である。
【0074】
「遺伝子座」という用語は、遺伝子(又は重要な配列)、DNA配列、ポリペプチドコード配列、又は生物のゲノムの染色体上の位置(position)の特定の位置(location)を指す。例えば、「MYOC遺伝子座」は、MYOC遺伝子の特定の位置、MYOC DNA配列、ミオシリンコード配列、又はそのような配列が存在する場所に関して同定されている生物のゲノムの染色体上のMYOC位置を指すことができる。「MYOC遺伝子座」は、例えば、エンハンサー、プロモーター、5’及び/若しくは3’非翻訳領域(untranslated region、UTR)、又はそれらの組み合わせを含む、MYOC遺伝子の調節要素を含み得る。
【0075】
「遺伝子」という用語は、自然に存在する場合、少なくとも1つのコーディング領域と、少なくとも1つの非コーディング領域と、を含む可能性のある染色体内のDNA配列を指す。産物(例えば、非限定的に、RNA産物及び/又はポリペプチド産物)をコードする染色体中のDNA配列は、遺伝子が完全長mRNA(5’及び3’非翻訳配列を含む)に対応するように、非コードイントロンで中断されたコード領域及び5’端と3’端との両方のコード領域に隣接して位置する配列を含むことができる。追加的に、調節配列を含む他の非コード配列(例えば、非限定的に、プロモーター、エンハンサー、及び転写因子結合部位)、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム進入部位、サイレンサー、絶縁配列、及びマトリックス結合領域も遺伝子に存在してもよい。これらの配列は、遺伝子のコード領域に近接(例えば、非限定的に、10kb以内)してもよく、又は離れていてもよく、それらは遺伝子の転写及び翻訳のレベル又は速度に影響を及ぼす。
【0076】
「対立遺伝子」という用語は、遺伝子のバリアント形態を指す。いくつかの遺伝子は、染色体上の同じ位置、又は遺伝子座に位置する様々な異なる形態を有する。二倍体生物は、各遺伝子座に2つの対立遺伝子を有する。対立遺伝子の各対は、特定の遺伝子座の遺伝子型を表す。遺伝子型は、特定の遺伝子座に2つの同一の対立遺伝子がある場合はホモ接合性であり、2つの対立遺伝子が異なる場合はヘテロ接合性であると記載される。
【0077】
遺伝子の「コード領域」又は「コード配列」は、タンパク質をコードする、エキソンで構成される遺伝子のDNA又はRNAの部分からなる。この領域は、5’末端の開始コドンで始まり、3’末端の終止コドンで終わる。
【0078】
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼIIが特定のポリヌクレオチド配列のための適切な転写開始部位でRNA合成を開始することを指示することができるTATAボックスを通常含むDNAの調節領域である。場合によっては、プロモーターは、追加的に、転写開始速度に影響を及ぼす他の領域を含み得る。本明細書に開示されるプロモーター配列は、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの転写を調節する。プロモーターは、本明細書に開示される細胞型のうちの1つ以上(例えば、マウス細胞、ラット細胞、多能性細胞、1細胞期胚、分化細胞、又はそれらの組み合わせ)において活性であり得る。プロモーターは、例えば、構成的に活性なプロモーター、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、時間的に制限されたプロモーター(例えば、発生的に調節されたプロモーター)、又は空間的に制限されたプロモーター(例えば、細胞特異的又は組織特異的プロモーター)であり得る。プロモーターの例は、例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2013/176772号において見出すことができる。
【0079】
「作動可能な連結」又は「作動可能に連結される」とは、その両方の成分が正常に機能し、かつ成分のうちの少なくとも1つが他の成分のうちの少なくとも1つに及ぶ機能を媒介し得る可能性を許すような、2つ以上の成分(例えば、プロモーター及び別の配列要素)の並列を含む。例えば、プロモーターが、1つ以上の転写調節因子の存在又は非存在に応じてコード配列の転写のレベルを制御する場合、そのプロモーターは、コード配列に作動可能に連結され得る。作動可能な連結は、そのような配列が互いに近接していること、又はトランスに作用する(例えば、調節配列が、コード配列の転写を制御するために離れて作用し得る)ことを含み得る。
【0080】
本明細書で提供される方法及び組成物は、様々な異なる成分を使用する。記載全体の一部の成分は、活性バリアント及び断片を有し得る。「機能性」という用語は、生物学的活性又は機能を示すタンパク質又は核酸(又はその断片、若しくはバリアント)の生来の能力を指す。機能的断片又はバリアントの生物学的機能は、元の分子と比較して同じであり得るか、又は実際に変更され得る(例えば、それらの特異性又は選択性又は有効性に関して)が、分子の基本的な生物学的機能を保持する。
【0081】
「バリアント」という用語は、集団で最も一般的な配列とは異なるヌクレオチド配列(例えば、1ヌクレオチド)、又は集団で最も一般的な配列とは異なるタンパク質配列(例えば、1アミノ酸)を指す。
【0082】
「断片」という用語は、タンパク質に言及する場合、完全長タンパク質よりも短いか、又は少ないアミノ酸を有するタンパク質を意味する。「断片」という用語は、核酸に言及する場合、完全長核酸よりも短いか、又は少ないヌクレオチドを有する核酸を意味する。タンパク質断片は、例えば、N末端断片(すなわち、タンパク質のC末端の一部の除去)、C末端断片(すなわち、タンパク質のN末端の一部の除去)、又は内部断片(すなわち、タンパク質のN末端及びC末端の各々の一部の除去)であり得る。核酸断片は、例えば、5’断片(すなわち、核酸の3’末端の一部の除去)、3’断片(すなわち、核酸の5’末端の一部の除去)、又は内部断片(すなわち、核酸の5’末端及び3’末端の各々の一部の除去)であり得る。
【0083】
2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」又は「同一性」は、特定の比較ウィンドウで最大の一致のためにアラインさせる場合、同じである2つの配列の残基を指す。タンパク質に関して、配列同一性のパーセンテージを使用する場合、同一ではない残基位置は多くの場合に、保存的アミノ酸置換によって異なり、その保存的アミノ酸置換では、アミノ酸残基は同様の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基で置換されており、したがって、分子の機能特性を変化させない。配列が保存的置換で異なる場合、配列同一性パーセントは、置換の保存的性質について補正するために、上方に調整され得る。そのような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」又は「類似性」を有すると言われる。この調整を行うための手段は周知である。典型的には、これは、保存的置換を完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとしてスコアリングして、それによって、配列同一性パーセンテージを増加させることを含む。したがって、例えば、同一のアミノ酸が1のスコアを与えられ、非保存的置換が0のスコアを与えられる場合に、保存的置換は、0~1のスコアを与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics、Mountain View,California)で実行されるように計算される。
【0084】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインされた配列(完全にマッチする残基の数が最大)を比較することによって決定される値を含み、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適アラインメントのための(付加又は欠失を含まない)参照配列と比較した場合に、付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列中に発生する位置の数を決定して一致した位置の数を得ること、一致した位置の数を比較のウィンドウにおける位置の総数で割ること、及び結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。別段の定めがない限り(例えば、短い方の配列が、連結された非相同配列を含む)、比較ウィンドウは、比較される2つの配列のうちの短い方の完全長である。
【0085】
特に明記しない限り、配列同一性/類似性値は、以下のパラメータを使用してGAPバージョン10を使用して得られた値を含む:GAP重み50及び長さ重み3、並びにnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを使用したヌクレオチド配列についての同一性%及び類似性%;GAP重み8及び長さ重み2、並びにBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用するアミノ酸配列についての同一性%及び類似性%;又はその任意の同等のプログラム。「同等のプログラム」は、問題の任意の2つの配列について、GAPバージョン10によって生成された対応するアラインメントと比較した場合、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基の一致及び同一のパーセント配列同一性を有するアラインメントを生成する任意の配列比較プログラムを含む。
【0086】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、配列中に通常存在するアミノ酸の、類似のサイズ、電荷、又は極性の、異なるアミノ酸との置換を指す。保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、又はロイシンなどの非極性(疎水性)残基の、別の非極性残基との置換が含まれる。同様に、保存的置換の例には、アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、又はグリシンとセリンとの間などの、1つの極性(親水性)残基の別のものとの置換が含まれる。追加的に、リジン、アルギニン、若しくはヒスチジンなどの塩基性残基から別のものへの置換、又はアスパラギン酸若しくはグルタミン酸などのある酸性残基から別の酸性残基への置換は、保存的置換の追加の例である。非保存的置換の例には、非極性(疎水性)アミノ酸残基、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、若しくはメチオニンから極性(親水性)残基、例えば、システイン、グルタミン、グルタミン酸、若しくはリジンへの、及び/又は極性残基から非極性残基への置換が含まれる。典型的なアミノ酸の分類を以下で要約する。
【0087】
【表1】
【0088】
「相同」配列(例えば、核酸配列)としては、例えば、既知の参照配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%同一であるような、既知の参照配列と同一か、又は実質的に同様である配列が挙げられる。相同配列は、例えば、オルソログ配列及びパラロガス配列を含み得る。例えば、相同遺伝子は典型的には、種分化事象(オルソログ遺伝子)又は遺伝子重複事象(パラロガス遺伝子)のいずれかを介して、共通の祖先DNA配列に由来する。「オルソログ」遺伝子には、種分化によって共通の祖先遺伝子から進化した様々な種の遺伝子が含まれる。オルソログは典型的には、進化の過程で同じ機能を保持する。「パラロガス」遺伝子には、ゲノム内の重複によって関連する遺伝子が含まれる。パラログは、進化の過程で新しい機能を進化させることができる。
【0089】
「インビトロ」という用語は、人工環境、及び人工環境(例えば、試験管又は単離された細胞若しくは細胞株)内で生じるプロセス又は反応を含む。「インビボ」という用語は、天然環境(例えば、生物若しくは身体、又は生物若しくは身体内の細胞若しくは組織)、及び天然環境内で生じるプロセス又は反応を指す。「エクスビボ」という用語は、個体の身体から取り出された細胞、及びそのような細胞内で起こるプロセス又は反応を含む。
【0090】
「レポーター遺伝子」という用語は、異種プロモーター及び/又はエンハンサーエレメントに作動可能に連結されたレポーター遺伝子配列を含むコンストラクトがプロモーター及び/又はエンハンサーエレメントの活性化に必要な因子を含む(又は含むようにすることができる)細胞に導入される場合、容易かつ定量的にアッセイされる遺伝子産物(典型的には酵素)をコードする配列を有する核酸を指す。レポーター遺伝子の例には、これらに限定されないが、ベータガラクトシダーゼ(lacZ)をコードする遺伝子、細菌クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子、ホタルルシフェラーゼ遺伝子、ベータグルクロニダーゼ(GUS)をコードする遺伝子、及び蛍光タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。「レポータータンパク質」は、レポーター遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、「蛍光レポータータンパク質」という用語は、蛍光に基づいて検出可能なレポータータンパク質を意味し、ここで、蛍光は、レポータータンパク質から直接、蛍光発生基質に対するレポータータンパク質の活性、又は蛍光タグ付き化合物への結合について親和性を有するタンパク質のいずれかからのものであり得る。蛍光タンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、eGFP、Emerald、Azami Green、単量体Azami Green、CopGFP、AceGFP、及びZsGreenl)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、eYFP、Citrine、Venus、YPet、PhiYFP、及びZsYellowl)、青色蛍光タンパク質(例えば、BFP、eBFP、eBFP2、Azurite、mKalamal、GFPuv、Sapphire、及びT-sapphire)、シアン色蛍光タンパク質(例えば、CFP、eCFP、Cerulean、CyPet、AmCyanl、及びMidoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(例えば、RFP、mKate、mKate2、mPlum、DsRedモノマー、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRedモノマー、HcRed-Tandem、HcRedl、AsRed2、eqFP611、mRaspberry、mStrawberry、及びJred)、オレンジ色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、単量体Kusabira-Orange、mTangerine、及びtdTomato)、並びにフローサイトメトリー法によって細胞内の存在を検出することができる他の好適な蛍光タンパク質が挙げられる。
【0092】
二本鎖切断(double-strand break、DSB)に応答した修復は、主に2つの保存されたDNA修復経路である相同組換え(homologous recombination、HR)及び非相同末端結合(non-homologous end joining、NHEJ)を介して生じる。あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kasparek & Humphrey(2011)Semin.Cell Dev.Biol.22(8):886-897を参照されたい。同様に、外因性ドナー核酸によって媒介される標的核酸の修復は、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換の任意のプロセスを含み得る。
【0093】
「組換え」という用語は、2つのポリヌクレオチド間で遺伝的情報を交換する任意のプロセスを含み、任意の機構によって起こり得る。組換えは、相同性指向修復(homology directed repair、HDR)又は相同組換え(HR)を介して起こり得る。HDR又はHRには、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし得る核酸修復の形式が含まれ、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経験した分子)の修復のテンプレートとして「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝的情報の伝達をもたらす。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、そのような伝達は、壊れた標的とドナーとの間に形成されるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ補正、及び/若しくはドナーが標的の一部となる遺伝的情報を再合成するために使用される合成依存性鎖アニーリング、並びに/又は関連するプロセスを伴うことができる。いくつかの場合では、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、又はドナーポリヌクレオチドのコピーの一部が標的DNAに組み込まれる。各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wang et al.(2013)Cell 153:910-918、Mandalos et al.(2012)PLoS ONE 7:e45768:1-9、及びWang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31:530-532を参照されたい。
【0094】
非相同末端結合(NHEJ)は、相同テンプレートを必要とせずに、切断末端の互いへ又は外因性配列への直接ライゲーションによる、核酸における二本鎖切断の修復を含む。NHEJによる非隣接配列のライゲーションは、多くの場合、二本鎖切断の部位の近くで欠失、挿入、又は転座をもたらし得る。例えば、NHEJはまた、切断末端を外因性ドナー核酸の末端と直接ライゲーションすることにより、外因性ドナー核酸の標的化組み込みをもたらし得る(すなわち、NHEJベースの捕捉)。そのようなNHEJ媒介標的化組み込みは、相同性指向修復(HDR)経路が容易に使用可能ではない場合(例えば、非分裂細胞、一次細胞、及び相同性に基づくDNA修復を不十分に行う細胞)、外因性ドナー核酸の挿入のために好ましくあり得る。加えて、相同性指向修復とは対照的に、切断部位に隣接する配列同一性の大きな領域に関する知識は必要なく、これは、ゲノム配列の知識が限られているゲノムを有する生物への標的化挿入を試みるときに有益であり得る。組み込みは、外因性ドナー核酸と切断されたゲノム配列との間の平滑末端のライゲーションを介して、又は切断されたゲノム配列においてヌクレアーゼ剤によって生成されたものに適合するオーバーハングに隣接する外因性ドナー核酸を使用する粘着末端(すなわち、5’又は3’オーバーハングを有する)のライゲーションを介して進行することができる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2011/020722号、国際公開第2014/033644号、国際公開第2014/089290号、及びMaresca et al.(2013)Genome Res.23(3):539-546を参照されたい。平滑末端がライゲーションされている場合、断片結合に必要なマイクロホモロジーの生成領域のために、標的及び/又はドナーの切除が必要になる場合があり、これにより、標的配列に望ましくない改変が生じ得る。
【0095】
1つ以上の列挙された要素を「含む(comprising)」又は「含む(including)」組成物又は方法は、具体的に列挙されていない他の要素を含み得る。例えば、タンパク質を「含む(comprises)」又は「含む(includes)」組成物は、タンパク質を単独で、又は他の成分との組み合わせで含み得る。「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲が、特許請求の範囲に記載された特定の要素、及び特許請求された発明の基本的かつ新規の特性に実質的に影響をしない要素を包含すると解釈されることを意味する。したがって、本発明の請求項で使用される場合の「本質的に~からなる」という用語は、「含む」と同等であると解釈されることを意図するものではない。
【0096】
「任意選択の」又は「任意選択的に」は、それに続いて記載された事象又は状況が起こっても起こらなくてもよいことであって、その記載が、当該事象又は状況が起こる場合の例及びそれが起こらない場合の例を含むことを意味する。
【0097】
値の範囲の指定は、その範囲内の、又はその範囲を定義する全ての整数、及びその範囲内の整数によって定義される全ての部分範囲を含む。
【0098】
文脈から特に明らかでない限り、「約」という用語は、記載された値の±5%である値を包含する。
【0099】
「及び/又は」という用語は、関連する列挙される項目のうちの1つ以上のありとあらゆる可能な組み合わせ、並びに代替物(「又は」)で解釈されるときの組み合わせの欠如を指し、これらを包含する。
【0100】
「又は」という用語は、特定のリストのいずれか1つのメンバーを指す。
【0101】
冠詞「a」、「an」、及び「the」の単数形は、文脈が別段に明確に規定していない限り、複数形の言及を含む。例えば、「タンパク質」又は「少なくとも1つのタンパク質」という用語は、それらの混合物を含む複数のタンパク質を含むことができる。
【0102】
統計的に有意なとは、p≦0.05を意味する。
(発明を実施するための形態)
【0103】
I.概要
本明細書では、ヒト化MYOC遺伝子座を含む、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物、並びにそのような非ヒト動物細胞及び非ヒト動物を作製及び使用する方法が開示される。いくつかのそのような非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物では、ヒト化MYOC遺伝子座は、Y437H変異などの緑内障に関連する変異を含む。いくつかのそのような非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物は、CRISPR/Cas相乗的活性化メディエーター系成分を更に含む。例えば、本明細書では、クラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)に基づく相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセット及びヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物、並びにそのような非ヒト動物細胞及び非ヒト動物を使用する方法が開示される。Y437H変異を含むMYOC遺伝子座は、Y437H変異を含むか、又はコードされたミオシリンタンパク質がヒトミオシリンと最適にアラインされた(最大数の完璧に一致した残基)ときにヒトミオシリンにおけるY437H変異に対応する変異を含む、ミオシリンタンパク質をコードするMYOC遺伝子座を指す。Y437H変異のアミノ酸位置の命名法は、シグナルペプチドを含む完全ミオシリンタンパク質における変異の位置を指す。この命名法は、この変異を記載する刊行物で使用される命名法と一致する。
【0104】
また、本明細書では、ヒト化非ヒト動物MYOC遺伝子、ヒト化非ヒト動物MYOC遺伝子を含む核酸、及び非ヒト動物MYOC遺伝子をヒト化する際に使用するための標的化ベクターも開示される。
【0105】
ヒト化MYOC遺伝子座を含む非ヒト動物細胞又は非ヒト動物は、ヒトミオシリンタンパク質、又はヒトミオシリンタンパク質の1つ以上の断片を含むキメラミオシリンタンパク質を発現する。そのような非ヒト動物細胞及び非ヒト動物は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボでヒトミオシリン標的化剤(例えば、CRISPR/Cas9ゲノム編集剤、RNAi剤、又はASO剤)の送達又は有効性を評価するために使用することができ、かつインビトロ、エクスビボ、又はインビボでのそのような薬剤の有効性の送達を最適化する方法で使用することができる。SAM発現カセットが存在する場合、それらは、例えば、より高いミオシリン発現レベルを達成するために、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで本明細書に開示されるヒト化MYOC遺伝子などの標的遺伝子の転写を上方制御するために使用することができる。そのようなモデルは、例えば、緑内障に対する候補治療試薬の送達若しくは有効性を評価するために、又は候補緑内障治療剤若しくは眼圧(IOP)を低減するための試薬の送達若しくは有効性を評価するために使用することができる。
【0106】
本明細書に開示される非ヒト動物細胞及び非ヒト動物のうちのいくつかでは、ヒトMYOCゲノムDNAのうちのいくつか若しくは大部分又は全ては、対応する非ヒト動物ヒトMYOC遺伝子座に挿入される。本明細書に開示される非ヒト動物細胞及び非ヒト動物のうちのいくつかでは、非ヒト動物ゲノムDNAのうちのいくつか若しくは大部分又は全ては、対応するヒトゲノムDNAと1対1で置き換えられる。保存された調節要素は無傷のままである可能性が高く、RNAプロセシングを受けるスプライシング転写物はcDNAよりも安定しているため、cDNAが挿入された非ヒト動物と比較して、イントロン-エキソン構造とスプライシング機構が維持されている場合、発現レベルは高くなるはずである。非ヒト動物ゲノム配列を対応するヒトゲノム配列で置き換えることは、内因性MYOC遺伝子座からの導入遺伝子の忠実な発現をもたらす可能性が高い。同様に、内因性非ヒト動物MYOC遺伝子座ではなくランダムなゲノム遺伝子座にヒトMYOCコード配列のトランスジェニック挿入を有するトランスジェニック非ヒト動物は、MYOC発現の内因性調節をそれほど正確には反映しない。非ヒト動物ゲノムDNAの大部分又は全てを1対1で対応するヒトゲノムDNAで置き換えること、又は対応する非ヒトMYOC遺伝子座にヒトMYOCゲノム配列を挿入することから生じるヒト化MYOC対立遺伝子は、ヒトMYOC標的化試薬(例えば、ヒトMYOCを標的とするように設計されたCRISPR/Cas9試薬、RNAi試薬、又はASO試薬)の真のヒト標的又は真のヒト標的の近似値を提供し、それによって、生きている動物におけるそのような薬剤の有効性及び作用機序の試験、並びにヒト化タンパク質及びヒト化遺伝子が存在するMYOCの唯一のバージョンである設定における薬物動態学及び薬力学研究を可能にする。
【0107】
本明細書に開示される方法及び組成物は、任意選択的に、成分が、構成的に利用可能であるか、又は例えば、組織特異的若しくは時間特異的様式で利用可能であり得るように、キメラCasタンパク質発現カセット、キメラアダプタータンパク質発現カセット、又は相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセット(例えば、キメラCasタンパク質コード配列及びキメラアダプタータンパク質配列)を含む、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物を採用することができる。カセットは、ゲノムに組み込むことができる。そのようなゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物はまた、本明細書の他の場所に開示されるガイドRNA発現カセット(例えば、MYOCガイドRNA発現カセット若しくはMYOCガイドRNAアレイ発現カセット)及び/又はリコンビナーゼ発現カセットを含むこともできる。代替的に、1つ以上の成分(例えば、ガイドRNA及び/又はリコンビナーゼ)を、他の手段によって細胞及び非ヒト動物に導入して、標的遺伝子(例えば、ヒト化MYOC遺伝子)の転写活性化を誘導することができる。
【0108】
ガイドRNAのみが、標的遺伝子の転写を活性化するために非ヒト動物に導入される必要があるため、SAM発現カセットを含む非ヒト動物は、標的遺伝子(例えば、ヒト化MYOC遺伝子)の発現をインビボで上方制御するためのプロセスを簡略化する。非ヒト動物がまた、ガイドRNA発現カセットも含む場合、任意の更なる成分を導入することなく、標的遺伝子活性化又は上方制御の効果を研究することができる。加えて、SAM発現カセット又はガイドRNA発現カセットは、任意選択的に、特定の組織又は発生段階において選択的に発現され得る条件付き発現カセットであり得、これは、例えば、インビボでCas媒介性毒性のリスクを低減することができる。代替的に、そのような発現カセットは、ありとあらゆる種類の細胞、組織、及び臓器における活性の試験を可能にするために構成的に発現され得る。
【0109】
ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、本明細書の他の場所に記載されるY437H変異を含む)、及びキメラCasタンパク質、キメラアダプタータンパク質、ガイドRNA、リコンビナーゼ、又はそれらの任意の組み合わせをコードする1つ以上の核酸(そのようなSAM系核酸の任意の組み合わせ)を含む、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物が提供される。非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、又は非ヒト動物は、雄又は雌であり得る。
【0110】
非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、又は非ヒト動物は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)についてヘテロ接合性又はホモ接合性であり得る。二倍体生物は、各遺伝子座に2つの対立遺伝子を有する。対立遺伝子の各対は、特定の遺伝子座の遺伝子型を表す。遺伝子型は、特定の遺伝子座に2つの同一の対立遺伝子がある場合はホモ接合性であり、2つの対立遺伝子が異なる場合はヘテロ接合性であると記載される。ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、本明細書に記載されるY437H変異を含む)を含む非ヒト動物は、その生殖系列にヒト化MYOC遺伝子座を含むことができる。
【0111】
SAM核酸若しくは発現カセットは、非ヒト動物細胞若しくは非ヒト動物のゲノムに(すなわち、染色体に)安定的に組み込むことができるか、又は染色体の外側に位置することができる(例えば、DNAを染色体外に複製する)。SAM核酸又は発現カセットは、非ヒト動物のゲノムにランダムに組み込むことができる(すなわち、トランスジェニックか、又は非ヒト動物のゲノムの所定の領域(例えば、セーフハーバー遺伝子座)に組み込むことができる(すなわち、ノックイン)。SAM核酸又は発現カセットが安定的に組み込まれる標的ゲノム遺伝子座は、核酸若しくは発現カセットについてヘテロ接合性、又は核酸若しくは発現カセットについてホモ接合性であり得る。本明細書に記載される安定的に組み込まれたSAM核酸又は発現カセットを含む非ヒト動物は、その生殖系列に核酸又は発現カセットを含むことができる。
【0112】
例えば、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、又は非ヒト動物は、本明細書に開示されるキメラCasタンパク質発現カセット、キメラアダプタータンパク質発現カセット、又は相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセット(キメラCasタンパク質コード配列及びキメラアダプタータンパク質配列の両方を含む)を含むことができる。一例では、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、又は非ヒト動物は、キメラCasタンパク質コード配列及びキメラアダプタータンパク質コード配列の両方を含む、SAM発現カセットを含む。一例では、SAM発現カセット(又はキメラCasタンパク質発現カセット若しくはキメラアダプタータンパク質発現カセット)は、ゲノムに安定的に組み込まれる。安定的に組み込まれたSAM発現カセット(又はキメラCasタンパク質発現カセット若しくはキメラアダプタータンパク質発現カセット)は、非ヒト動物のゲノムにランダムに組み込むことができる(すなわち、トランスジェニック)か、又は非ヒト動物のゲノムの所定の領域に組み込むことができる(すなわち、ノックイン)。一例では、SAM発現カセット(又はキメラCasタンパク質発現カセット若しくはキメラアダプタータンパク質発現カセット)は、セーフハーバー遺伝子座(例えば、Rosa26)などのゲノムの所定の領域に安定的に組み込まれる。SAM発現カセット(又はキメラCasタンパク質発現カセット若しくはキメラアダプタータンパク質発現カセット)が安定的に組み込まれる標的ゲノム遺伝子座は、SAM発現カセット(又はキメラCasタンパク質発現カセット若しくはキメラアダプタータンパク質発現カセット)についてヘテロ接合性又はホモ接合性であり得る。
【0113】
任意選択的に、上記に記載される非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、又は非ヒト動物は、1つ以上のガイドRNA発現カセット又はガイドRNA発現カセット(例えば、ガイドRNAアレイ発現カセット)を更に含むことができる。ガイドRNA発現カセットは、非ヒト動物細胞若しくは非ヒト動物のゲノムに(すなわち、染色体に)安定的に組み込むことができるか、又は染色体の外側に位置することができる(例えば、DNAを染色体外に複製するか、又はAAV、LNP、若しくは本明細書に開示される任意の他の手段を介して非ヒト動物細胞若しくは非ヒト動物に導入される)。ガイドRNA発現カセットは、非ヒト動物のゲノムにランダムに組み込むことができる(すなわち、トランスジェニック)か、又は非ヒト動物のゲノムの所定の領域(例えば、セーフハーバー遺伝子座)に組み込むことができる(すなわち、ノックイン)。ガイドRNA発現カセットが安定的に組み込まれる標的ゲノム遺伝子座は、ガイドRNA発現カセットについてヘテロ接合性又はホモ接合性であり得る。一例では、ゲノム、細胞、又は非ヒト動物は、SAM発現カセット(又はキメラCasタンパク質発現カセット若しくはキメラアダプタータンパク質発現カセット)及びガイドRNA発現カセットの両方を含む。一例では、両方のカセットが、ゲノムに組み込まれる。ガイドRNA発現カセットは、SAM発現カセット(又はキメラCasタンパク質発現カセット若しくはキメラアダプタータンパク質発現カセット)とは異なる標的ゲノム遺伝子座に組み込むことができるか、又は同じ標的遺伝子座(例えば、Rosa26遺伝子座の第1のイントロンに組み込まれるなど、Rosa26遺伝子座)にゲノムに組み込むことができる。例えば、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、又は非ヒト動物は、SAM発現カセット(又はキメラCasタンパク質発現カセット若しくはキメラアダプタータンパク質発現カセット)及びガイドRNA発現カセットの各々についてヘテロ接合性であり得、SAM発現カセット(又はキメラCasタンパク質発現カセット若しくはキメラアダプタータンパク質発現カセット)を含む標的ゲノム遺伝子座(例えば、Rosa26)の1つの対立遺伝子、及びガイドRNA発現カセット発現カセットを含む標的ゲノム遺伝子座(例えば、Rosa26)の第2の対立遺伝子を有する。
【0114】
任意選択的に、上記に記載される非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、又は非ヒト動物のうちのいずれかは、リコンビナーゼ発現カセットを更に含むことができる。リコンビナーゼ発現カセットは、非ヒト動物細胞若しくは非ヒト動物のゲノムに(すなわち、染色体に)安定的に組み込むことができるか、又は染色体の外側に位置することができる(例えば、DNAを染色体外に複製するか、又はAAV、LNP、HDD、若しくは本明細書に開示される任意の他の手段を介して非ヒト動物細胞若しくは非ヒト動物に導入される)。リコンビナーゼ発現カセットは、非ヒト動物のゲノムにランダムに組み込むことができる(すなわち、トランスジェニック)か、又は非ヒト動物のゲノムの所定の領域(例えば、セーフハーバー遺伝子座)に組み込むことができる(すなわち、ノックイン)。リコンビナーゼ発現カセットが安定的に組み込まれる標的ゲノム遺伝子座は、リコンビナーゼ発現カセットについてヘテロ接合性又はホモ接合性であり得る。リコンビナーゼ発現カセットは、本明細書に開示される他の発現カセットのうちのいずれかとは異なる標的ゲノム遺伝子座に組み込むことができるか、又は同じ標的遺伝子座(例えば、Rosa26遺伝子座の第1のイントロンに組み込まれるなど、Rosa26遺伝子座)にゲノムに組み込むことができる。
【0115】
本明細書に記載されるいくつかの非ヒト動物又は非ヒト動物細胞(例えば、ヒト化MYOC遺伝子座、SAM発現カセット、及びヒト化MYOC遺伝子座を標的とする1つ以上のSAMガイドRNA(又は1つ以上のSAMガイドRNA発現カセット)を含む、非ヒト動物又は非ヒト動物細胞)は、対照非ヒト動物又は非ヒト動物細胞(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物又は非ヒト動物細胞)に対して、増加したヒトMYOC mRNA又はタンパク質発現を有する。いくつかの非ヒト動物又は非ヒト動物細胞では、発現の増加は、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、又は少なくとも約15倍(例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍)である。いくつかの非ヒト動物又は非ヒト動物細胞では、増加した発現は、少なくとも約2倍~少なくとも約25倍、少なくとも約3倍~少なくとも約25倍、少なくとも約4倍~少なくとも約25倍、少なくとも約5倍~少なくとも約25倍、少なくとも約6倍~少なくとも約25倍、少なくとも約7倍~少なくとも約25倍、少なくとも約8倍~少なくとも約25倍、少なくとも約9倍~少なくとも約25倍、少なくとも約10倍~少なくとも約25倍、少なくとも約2倍~少なくとも約20倍、少なくとも約2倍~少なくとも約15倍、又は少なくとも約10倍~少なくとも約15倍である。対照非ヒト動物に対する増加したヒトMYOC mRNA又はタンパク質発現は、眼、輪部リング、網膜、毛様体、小柱網、又は角膜にあり得る。具体的な例では、増加した発現は、輪部リング(小柱網(TM)、虹彩、及び毛様体(CB))にある。
【0116】
本明細書に記載されるいくつかの非ヒト動物又は非ヒト動物細胞(例えば、ヒト化MYOC遺伝子座、SAM発現カセット、及びヒト化MYOC遺伝子座を標的とする1つ以上のSAMガイドRNA(又は1つ以上のSAMガイドRNA発現カセット)を含む、非ヒト動物又は非ヒト動物細胞)は、緑内障の1つ以上の兆候又は症状を有する。緑内障は、結果として生じる不可逆的な視力喪失を伴う、網膜神経節細胞(retinal ganglion cell、RGC)軸索の進行性喪失を特徴とする慢性視神経症である。緑内障の主な危険因子は、眼圧(IOP)の上昇である。IOPの上昇は、小柱網(TM)の構造を通した房水流出に対する抵抗の増加によって引き起こされる。房水は、毛様体によって作製され、前房を循環し、TM網を通して流出する。ほとんどの緑内障症例では、TMにおける房水に対する抵抗の増加がある。病原性MYOC変異タンパク質は、細胞内で凝集し、小柱網(TM)応力、IOPの上昇、及び緑内障につながる。ヒト緑内障TM細胞では、上昇したレベルのER応力誘導性タンパク質が検出されている。
【0117】
いくつかの非ヒト動物では、IOPは、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、若しくは少なくとも約20、少なくとも約21、又は少なくとも約22mmHg(例えば、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、又は少なくとも22mmHg)である。一例では、IOPは、約15~約22、約16~約22、約17~約22、約18~約22、約19~約22、約15~約21、約15~約20、又は約16~約21mmHg(例えば、15~22、16~22、17~22、18~22、19~22、15~21、15~20、又は16~21mmHg)である。
【0118】
いくつかの非ヒト動物では、IOPは、対照非ヒト動物(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物、又は野生型非ヒト動物)に対して増加する。一例では、IOPは、対照非ヒト動物における対照ベースラインを少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、又は少なくとも約6mmHg(例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6mmHg)上回る。一例では、IOPは、対照非ヒト動物における対照ベースラインよりも約1~約7、約2~約7、約3~約7、約4~約7、約5~約7、約1~約6、約2~約6、約3~約6、約4~約6、又は約5~約6mmHg(例えば、1~6、2~6、3~6、4~6、又は5~6mmHg)高い。対照ベースラインは、例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物におけるIOPであり得るか、若しくは野生型非ヒト動物におけるIOPであり得るか、又は本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、ヒト化MYOC遺伝子座を標的とする1つ以上のSAMガイドRNAの投与前の非ヒト動物におけるIOPであり得る。
【0119】
いくつかの非ヒト動物では、小胞体(endoplasmic reticulum、ER)応力は、対照非ヒト動物(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物、又は野生型非ヒト動物)に対して増加する。いくつかの非ヒト動物は、パターン網膜電図(pattern electroretinogram、PERG)によって測定される緑内障の兆候及び症状を示す。いくつかの非ヒト動物は、対照非ヒト動物(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物、又は野生型非ヒト動物)に対して網膜神経節細胞(RGC)喪失を示す。いくつかの非ヒト動物は、対照非ヒト動物(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物、又は野生型非ヒト動物)に対して房水の流出抵抗の増加を示す。
【0120】
ヒトミオシリンY437Hのトランスジェニック過剰発現を有するMYOC緑内障モデルは、わずか約2~3mmHgのIOP上昇を示し、MYOCは、どこでも発現される。加えて、IOP表現型は、繁殖にわたって失われる。本明細書に記載されるモデルは、発現が疾患病理の標的組織である小柱網にほとんど限定されるという利点を有する。加えて、約5~6mmHgのIOPの更なる上昇が観察される。
【0121】
II.ヒト化MYOC遺伝子座を含む非ヒト動物
本明細書に開示される核酸、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、本明細書に記載されるY437H変異を含む)を含む。ヒト化MYOC遺伝子座を含む細胞又は非ヒト動物は、天然ミオシリンタンパク質の1つ以上の断片が、ヒトミオシリンからの対応する断片で置き換えられている、ヒトミオシリンタンパク質又は部分的にヒト化されたキメラミオシリンタンパク質を発現する。
【0122】
A.ミオシリン(MYOC)
本明細書に開示される非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物は、ヒト化MYOC遺伝子座を含む。ミオシリン(小柱網誘導性グルココルチコイド応答タンパク質又はMYOCとしても知られる)は、MYOC遺伝子(GLC1A又はTIGRとしても知られる)によってコードされる。ミオシリンは、分泌性糖タンパク質(55~57kDa)である。MYOCは、培養ヒト小柱網(TM)細胞におけるグルココルチコイド誘導性遺伝子及びタンパク質として最初に報告された。ミオシリンmRNA及び/又はタンパク質は、網膜、毛様体、及び小柱網を含む眼構造において発現される。それは、細胞質内で構造的機能を果たし得るか、又はおそらく分子シャペロンとして細胞内の他の分子と会合し得る。細胞外では、それは、他の細胞外分子又はTM細胞の細胞膜に結合することによって、房水流出に対する抵抗を生成することに関与し得る。
【0123】
多くのMYOC変異は、ミオシリンをTMの細胞に蓄積させ、緑内障を誘導する。ミオシリンにおける変異は、緑内障の最も一般的な形態である、原発性開放隅角緑内障の最も一般的な遺伝的原因である。しかしながら、MYOC関連緑内障の根底にある機構は、完全には理解されていない。緑内障の主な危険因子は、TMの構造を通した房水流出に対する抵抗の増加によって引き起こされ得る、眼圧(IOP)の上昇である。ミオシリンは、TM細胞及び毛様体を含む、房水内にミオシリンを分泌することが可能である多くの眼組織において発現される。多くの異なるミオシリン変異が同定されている。Y437H変異は、IOPの上昇及び緑内障の発症に関連する1つの変異である。
【0124】
ヒトMYOCは、第1染色体上の1q24.3(NCBI RefSeq Gene ID 4653、Assembly GRCh38.p13(GCF_000001405.39)、位置NC_000001.11(171635417..171652688、補体))にマッピングする。この遺伝子は、3つのエキソンを有すると報告されている。野生型ヒトミオシリンタンパク質には、UniProtアクセッション番号Q99972が割り当てられている。正準野生型アイソフォームミオシリンの配列(NCBIアクセッション番号NP_000252.1)は、配列番号1に記載されている。正準アイソフォームをコードするmRNA(cDNA)には、NCBIアクセッション番号NM_000261.2が割り当てられており、配列番号2に記載されている。例示的なコード配列(coding sequence、CDS)は、配列番号3(CCDS ID CCDS1297.1)に記載されている。配列番号1に記載される完全長ヒトミオシリンタンパク質は、シグナルペプチド(アミノ酸1~32)及び成熟ミオシリン(アミノ酸33~504)を含む504個のアミノ酸を有し、これは、小胞体においてアミノ酸226に続くCAPN2による切断後にN末端断片(33~226)及びC末端断片(227~504)を産生する。これらのドメイン間の描写は、UniProtで指定される通りである。ヒトミオシリンの言及には、正準(野生型)形態並びに全ての対立遺伝子形態及びアイソフォームが含まれる。任意の他の形態のヒトミオシリンは、野生型形態との最大アラインメントについて番号が付けられたアミノ酸を有し、アラインされたアミノ酸は、同じ番号で指定される。Y437H変異を含む例示的なヒトミオシリンタンパク質は、配列番号4に記載されている。Y437H変異を含むヒトミオシリンタンパク質の例示的なコード配列は、配列番号5に記載されている。
【0125】
マウスMyocは、第1染色体上の1 H2.1;1 70.29 cM(NCBI RefSeq Gene ID 17926、Assembly GRCm39(GCF_000001635.27)、位置NC_000067.7(162466719..162477263))にマッピングする。この遺伝子は、3つのエキソンを有すると報告されている。野生型マウスミオシリンタンパク質には、UniProtアクセッション番号O70624が割り当てられている。正準アイソフォームの配列、NCBIアクセッション番号NP_034995.3は、6に記載されている。正準アイソフォームをコードする例示的なmRNA(cDNA)アイソフォームには、NCBIアクセッション番号NM_010865.3が割り当てられ、配列番号7に記載されている。例示的なコード配列(CDS)(CCDS ID CCDS15422.1)は、配列番号8に記載されている。配列番号6に記載される完全長マウスミオシリンタンパク質は、シグナルペプチド(アミノ酸1~18)及び成熟ミオシリン(アミノ酸19~490)を含む490個のアミノ酸を有し、これは、小胞体においてアミノ酸212に続くCAPN2による切断後にN末端断片(19~212)及びC末端断片(213~490)を産生する。これらのドメイン間の描写は、UniProtで指定される通りである。マウスミオシリンへの言及には、正準(野生型)形態並びに全ての対立遺伝子形態及びアイソフォームが含まれる。任意の他の形態のマウスミオシリンは、野生型形態との最大アラインメントに対して番号が付けられたアミノ酸を有し、アラインされたアミノ酸は同じ番号で示される。
【0126】
ラットMyocは、第13染色体上の13q22(NCBI RefSeq Gene ID 81523、Assembly mRatBN7.2(GCF_015227675.2)、位置NC_051348.1(74976730..74987128))にマッピングする。この遺伝子は、3つのエキソンを有すると報告されている。野生型ラットミオシリンタンパク質には、UniProtアクセッション番号Q9R1J4が割り当てられている。正準アイソフォームの配列、NCBIアクセッション番号NP_110492.1は、配列番号9に記載されている。正準アイソフォームをコードするmRNA(cDNA)には、NCBIアクセッション番号NM_030865.1が割り当てられ、配列番号10に記載されている。正準アイソフォームをコードする例示的なコード配列(CDS)は、配列番号11に記載されている。別のアイソフォームの配列、NCBIアクセッション番号NP_110492.2は、配列番号12に記載されている。このアイソフォームをコードするmRNA(cDNA)には、NCBIアクセッション番号NM_030865.2が割り当てられ、配列番号13に記載されている。このアイソフォームをコードする例示的なコード配列(CDS)は、配列番号14に記載されている。配列番号9に記載される正準完全長ラットミオシリンタンパク質は、シグナルペプチド(アミノ酸1~31)及び成熟ミオシリン(アミノ酸32~502)を含む502個のアミノ酸を有し、これは、小胞体においてアミノ酸225に続くCAPN2による切断後にN末端断片(32~225)及びC末端断片(226~502)を産生する。これらのドメイン間の描写は、UniProtで指定される通りである。ラットミオシリンへの言及には、正準(野生型)形態並びに全ての対立遺伝子形態及びアイソフォームが含まれる。任意の他の形態のラットミオシリンは、野生型形態との最大アラインメントについて番号が付けられたアミノ酸を有し、アラインされたアミノ酸は、同じ番号で指定される。
【0127】
B.ヒト化MYOC遺伝子座
本明細書では、内因性MYOC遺伝子座のセグメントが削除され、対応するヒトMYOC配列(例えば、対応するヒトMYOCゲノム配列)で置き換えられており、ヒト化ミオシリンタンパク質が、ヒト化内因性MYOC遺伝子座から発現される、ヒト化内因性MYOC遺伝子座が開示される。対応するヒトMYOC配列は、緑内障に関連する変異(例えば、緑内障を引き起こす変異)などの変異を含み得る。そのような変異の一例は、Y437H変異である。ほぼ100個の異なる病原性MYOC変異が同定されており、その大部分は、オルファクトメジンドメインをコードするエキソン3にクラスター化される。そのような変異の例としては、Y437H、G364V、及びQ368Xが挙げられる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lynch et al.(2018)J.Biol.Chem.293(52):20137-20156、及びJain et al.(2017)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.114(42):11199-11204を参照されたい。
【0128】
ヒト化MYOC遺伝子座は、MYOC遺伝子全体が、対応するヒトMYOC配列(例えば、対応するオルソログヒトMYOC配列)若しくは対応するヒトトMYOC配列のコドン最適化バージョンで置き換えられる、MYOC遺伝子座であり得るか、又はMYOC遺伝子の一部のみが、対応するヒトMYOC配列(すなわち、ヒト化)若しくは対応するヒトMYOC配列のコドン最適化バージョンで置き換えられる、MYOC遺伝子座であり得るか、対応するヒトMYOC遺伝子座の一部若しくは対応するヒトMYOC遺伝子座の一部のコドン最適化バージョンが挿入される、MYOC遺伝子座であり得るか、又はMYOC遺伝子の一部が削除され、対応するヒトMYOC遺伝子座の一部若しくは対応するヒトMYOC遺伝子座の一部のコドン最適化バージョンが挿入される、MYOC遺伝子座であり得る。挿入される対応するヒトMYOC遺伝子座の一部は、例えば、内因性MYOC遺伝子座から削除されるよりも多くのヒトMYOC遺伝子座を含むことができる。内因性MYOC配列の特定のセグメントに対応するヒトMYOC配列は、ヒトMYOC及び内因性MYOCが最適にアラインされた(完璧に一致する残基の最大数)ときに、内因性MYOC配列の特定のセグメントとアラインするヒトMYOCの領域を指す。対応するヒト配列は、例えば、相補的DNA(complementary DNA、cDNA)又はゲノムDNAを含むことができる。任意選択的に、対応するヒトMYOC配列のコドン最適化バージョンを使用することができ、非ヒト動物におけるコドン使用に基づいてコドン最適化されるように修飾される。置換又は挿入された(すなわち、ヒト化された)領域は、エキソンなどのコード領域、イントロンなどの非コード領域、非翻訳領域、若しくは調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、若しくは転写リプレッサー結合要素)、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。一例として、ヒトMYOC遺伝子の1、2、又は3つ全てのエキソンに対応するエキソンをヒト化することができる。例えば、ヒトMYOC遺伝子のエキソン1~3に対応するエキソンをヒト化することができる。代替的に、抗ヒトミオシリン抗原結合タンパク質によって認識されるエピトープをコードするMYOCの領域、又はヒトミオシリン標的化試薬(例えば、小分子)によって標的化される領域をヒト化することができる。同様に、ヒトMYOC遺伝子の1つ若しくは2つ全てのイントロンに対応するイントロンは、ヒト化することができるか、又は内因性のままであり得る。例えば、ヒトMYOC遺伝子のエキソン1と3との間のイントロン(すなわち、イントロン1~2)に対応するイントロンをヒト化することができる。
【0129】
調節配列を含む隣接する非翻訳領域もまた、ヒト化されるか、又は内因性のままであり得る。例えば、5’非翻訳領域(UTR)、3’UTR、若しくは5’UTR及び3’UTRの両方は、ヒト化することができるか、又は5’UTR、3’UTR、若しくは5’UTR及び3’UTRの両方は、内因性のままであり得る。ヒト5’及び3’UTRの一方若しくは両方を挿入することができ、かつ/又は内因性の5’及び3’UTRの一方若しくは両方を削除することができる。具体的な例では、ヒト3’UTRは、挿入され、5’UTRは、内因性のままである。対応するヒト配列による置換の程度に応じて、プロモーターなどの調節配列は、内因性であるか、又は置換する対応するヒト配列によって供給することができる。例えば、ヒト化MYOC遺伝子座は、内因性非ヒト動物MYOCプロモーターを含むことができる(すなわち、ヒト化MYOCコード配列の挿入されたヒトMYOC配列を、内因性非ヒト動物MYOCプロモーターに作動可能に連結することができる)。
【0130】
シグナルペプチド、成熟ミオシリン、N末端断片、若しくはC末端断片のうちの1つ以上若しくは全てを、ヒト化することができるか、又はそのような領域のうちの1つ以上は、内因性のままであり得る。マウスミオシリンシグナルペプチド、成熟ミオシリン、N末端断片、及びC末端断片の例示的なコード配列は、それぞれ、配列番号31~34に記載されている。ラットミオシリンシグナルペプチド、成熟ミオシリン、N末端断片、及びC末端断片の例示的なコード配列は、それぞれ、配列番号39~42に記載されている。ヒトミオシリンシグナルペプチド、成熟ミオシリン、N末端断片、及びC末端断片の例示的なコード配列は、それぞれ、配列番号21~24に記載されている。Y437H変異を含むヒト成熟ミオシリンの例示的なコード配列は、配列番号25に記載されている。Y437H変異を含むヒトミオシリンC末端断片の例示的なコード配列は、配列番号26に記載されている。
【0131】
例えば、シグナルペプチドをコードするMYOC遺伝子座の領域の全て若しくは一部をヒト化することができ、かつ/又はC末端断片をコードするMYOC遺伝子座の領域の全て若しくは一部をヒト化することができ、かつ/又はN末端断片ドメインをコードするMYOC遺伝子座の領域の全て若しくは一部をヒト化することができ、かつ/又は成熟ミオシリンタンパク質をコードするMYOC遺伝子座の領域の全て若しくは一部をヒト化することができる。一例では、ミオシリンタンパク質をコードするMYOC遺伝子座の領域の全て(シグナルペプチド及び成熟ミオシリンを含む)がヒト化される。任意選択的に、ヒトミオシリンタンパク質のCDSは、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列を含む。任意選択的に、ヒトミオシリンタンパク質のCDSは、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列から本質的になる。任意選択的に、ヒトミオシリンタンパク質のCDSは、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列からなる。ミオシリンタンパク質が発現され、天然ミオシリン及び/又はヒトミオシリンの活性を保持することができる。
【0132】
シグナルペプチド、成熟ミオシリンタンパク質、N末端断片、又はC末端断片をコードする領域のうちの1つ以上は、内因性のままであり得る。例えば、シグナルペプチドをコードする領域は、内因性のままであり得る。
【0133】
ヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるミオシリンタンパク質は、ヒトミオシリンタンパク質に由来する1つ以上のドメイン、及び/又は内因性(すなわち、天然)ミオシリンタンパク質に由来する1つ以上のドメインを含むことができる。マウスミオシリンシグナルペプチド、成熟ミオシリンタンパク質、N末端断片、及びC末端断片の例示的なアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号27~30に記載されている。ラットミオシリンシグナルペプチド、成熟ミオシリンタンパク質、N末端断片、及びC末端断片の例示的なコード配列は、それぞれ、配列番号35~38に記載されている。ヒトミオシリンシグナルペプチド、成熟ミオシリンタンパク質、N末端断片、及びC末端断片の例示的なアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号15~18に記載されている。Y437H変異を含むヒト成熟ミオシリンタンパク質の例示的なコード配列は、配列番号19に記載されている。Y437H変異を含むヒトミオシリンC末端断片の例示的なアミノ酸配列は、配列番号20に記載されている。
【0134】
ミオシリンタンパク質は、ヒトミオシリンシグナルペプチド、ヒトミオシリンC末端断片、ヒトミオシリンN末端断片、及びヒト成熟ミオシリンタンパク質のうちの1つ以上又は全てを含むことができる。一例として、ヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるミオシリンタンパク質は、完全ヒトミオシリンタンパク質(すなわち、シグナルペプチド及び成熟ミオシリンタンパク質)であり得る。
【0135】
ヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるミオシリンタンパク質はまた、内因性(すなわち、天然)非ヒト動物ミオシリンタンパク質に由来する1つ以上のドメインを含むこともできる。
【0136】
ヒトミオシリンタンパク質に由来するキメラミオシリンタンパク質若しくは完全ヒトミオシリンタンパク質中のドメインは、完全ヒト化配列によってコードすることができる(すなわち、そのドメインをコードする配列全体が、対応するヒトMYOC配列で置き換えられる)か、又は部分的ヒト化配列によってコードすることができる(すなわち、そのドメインをコードする配列の一部は、対応するヒトMYOC配列で置き換えられ、そのドメインをコードする残りの内因性(すなわち、天然)配列は、コードされたドメインがヒトミオシリンタンパク質中のそのドメインと同一であるように、対応するヒトMYOC配列と同じアミノ酸をコードする)。同様に、内因性ミオシリンタンパク質に由来するキメラタンパク質中のドメインは、完全内因性配列によってコードすることができる(すなわち、そのドメインをコードする配列全体が内因性MYOC配列である)か、又は部分的ヒト化配列によってコードすることができる(すなわち、そのドメインをコードする配列の一部は、対応するヒトMYOC配列で置き換えられるが、対応するヒトMYOC配列は、コードされたドメインが内因性アルブミンタンパク質中のそのドメインと同一であるように、置き換えられた内因性MYOC配列と同じアミノ酸をコードする)。
【0137】
一例として、ヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるミオシリンタンパク質は、完全ヒトミオシリンタンパク質(すなわち、シグナルペプチド及び成熟ミオシリンタンパク質)を含むことができる。ミオシリンタンパク質が発現され、天然ミオシリン及び/又はヒトミオシリンの活性を保持する。
【0138】
例えば、ヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるミオシリンタンパク質は、配列番号4と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号4と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列を含むことができる。別の例として、ヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるミオシリンタンパク質は、配列番号4と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一(例えば、配列番号4と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列から本質的になることができる。別の例として、ヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるミオシリンタンパク質は、配列番号4と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一(例えば、配列番号4と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列からなることができる。任意選択的に、ヒト化MYOC遺伝子座のMYOCコード配列(CDS)は、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%)同一である配列を含むことができる。任意選択的に、ヒト化MYOC遺伝子座のMYOCコード配列(CDS)は、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%)同一である配列から本質的になることができる。任意選択的に、ヒト化MYOC遺伝子座のMYOCコード配列(CDS)は、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号5(又はその縮退型)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%)同一である配列からなることができる。いずれの場合も、ミオシリンタンパク質が発現され、天然ミオシリン及び/又はヒトミオシリンの活性を保持することができる。
【0139】
任意選択的に、ヒト化MYOC遺伝子座は、他の要素を含むことができる。そのような要素の例としては、選択カセット、レポーター遺伝子、リコンビナーゼ認識部位、又は他の要素を挙げることができる。代替的に、ヒト化MYOC遺伝子座は、他の要素を欠き得る(例えば、選択マーカー又は選択カセットを欠き得る)。好適なレポーター遺伝子及びレポータータンパク質の例は、本明細書の他の場所に開示されている。好適な選択マーカーの例としては、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neomycin phosphotransferase、neo)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hygromycin B phosphotransferase、hyg)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(puromycin-N-acetyltransferase、puro)、ブラストサイジンSデアミナーゼ(blasticidin S deaminase、bsr)、キサンチン/グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(xanthine/guanine phosphoribosyl transferase、gpt)、又は単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(herpes simplex virus thymidine kinase、HSV-k)が挙げられる。リコンビナーゼの例としては、Cre、Flp、及びDreリコンビナーゼが挙げられる。Creリコンビナーゼ遺伝子の一例は、Creiであり、Creリコンビナーゼをコードする2つのエキソンがイントロンによって分離され、原核細胞での発現を妨げる。そのようなリコンビナーゼは、核への局在化を促進するための核局在化シグナルを更に含み得る(例えば、NLS-Crei)。リコンビナーゼ認識部位には、部位特異的リコンビナーゼによって認識され、組換え事象の基質として機能し得るヌクレオチド配列が含まれる。リコンビナーゼ認識部位の例としては、FRT、FRT11、FRT71、attp、att、rox、並びにloxP、lox511、lox2272、lox66、lox71、loxM2、及びlox5171などのlox部位が挙げられる。
【0140】
レポーター遺伝子又は選択カセットなどの他の要素は、リコンビナーゼ認識部位に隣接する自己欠失カセットであり得る。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,697,851号及び米国特許出願公開第2013/0312129号を参照されたい。例として、自己欠失カセットは、マウスPrm1プロモーターに作動可能に連結されたCrei遺伝子(イントロンによって分離されたCreリコンビナーゼをコードする2つのエキソンを含む)及びヒトユビキチンプロモーターに作動可能に連結されたネオマイシン耐性遺伝子を含み得る。Prm1プロモーターを採用することにより、F0動物の雄の生殖細胞で特異的に自己欠失カセットを削除することができる。選択マーカーをコードするポリヌクレオチドは、標的とされる細胞において活性なプロモーターに作動可能に連結され得る。プロモーターの例は、本明細書の他の場所に記載されている。別の具体的な例として、自己欠失選択カセットは、1つ以上のプロモーター(例えば、ヒトユビキチン及びEM7プロモーターの両方)に作動可能に連結されたハイグロマイシン耐性遺伝子コード配列、続いてポリアデニル化シグナル、続いて1つ以上のプロモーター(例えば、mPrm1プロモーター)に作動可能に連結されたCreiコード配列、続いて別のポリアデニル化シグナルを含むことができ、カセット全体がloxP部位に隣接している。
【0141】
ヒト化MYOC遺伝子座はまた、条件付き対立遺伝子であり得る。例えば、条件付き対立遺伝子は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2011/0104799号に記載されているように、多機能対立遺伝子であり得る。例えば、条件付き対立遺伝子は、(a)標的遺伝子の転写に関してセンス方向の作動配列、(b)センス又はアンチセンス方向の薬物選択カセット(drug selection cassette、DSC)、(c)アンチセンス方向の目的のヌクレオチド配列(nucleotide sequence of interest、NSI)、(d)逆方向の条件付き反転モジュール(conditional by inversion module、COIN、エキソン分割イントロンと反転可能な遺伝子トラップのようなモジュールを利用)を含み得る。例えば、米国特許出願公開第2011/0104799号を参照されたい。条件付き対立遺伝子は、第1のリコンビナーゼへの曝露時に再結合して、(i)作動配列及びDSCを欠き、(ii)センス方向のNSI及びアンチセンス方向のCOINを含む、条件付き対立遺伝子を形成する再結合可能なユニットを更に含むことができる。例えば、米国特許出願公開第2011/0104799号を参照されたい。
【0142】
1つの例示的なヒト化MYOC遺伝子座(例えば、ヒト化マウスMYOC遺伝子座)は、開始コドン及び終止コドンからの領域が、開始コドンから終止コドンまでの対応するヒト配列で置き換えられ、ヒトMYOC 3’UTRを含むものである。図1並びに配列番号88及び89を参照されたい。ヒト化MYOC遺伝子座の例示的な配列は、配列番号88及び89に記載されている。
【0143】
1つの具体的な例では、ヒト化内因性MYOC遺伝子座におけるヒトMYOC配列は、配列番号87に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号87と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列を含むことができる。別の具体的な例では、ヒト化MYOC遺伝子座は、配列番号4に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号4と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列を含むタンパク質をコードすることができる。別の具体的な例では、ヒト化MYOC遺伝子座は、配列番号5に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号5と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列を含むコード配列を含むことができる。別の具体的な例では、ヒト化MYOC遺伝子座は、配列番号88又は89に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号88又は89と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列を含むことができる。
【0144】
1つの具体的な例では、ヒト化内因性MYOC遺伝子座におけるヒトMYOC配列は、配列番号87に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号87と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列から本質的になることができる。別の具体的な例では、ヒト化MYOC遺伝子座は、配列番号4に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号4と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列から本質的になるタンパク質をコードすることができる。別の具体的な例では、ヒト化MYOC遺伝子座は、配列番号5に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号5と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列から本質的になるコード配列を含むことができる。別の具体的な例では、ヒト化MYOC遺伝子座は、配列番号88又は89に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号88又は89と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列から本質的になることができる。
【0145】
1つの具体的な例では、ヒト化内因性MYOC遺伝子座におけるヒトMYOC配列は、配列番号87に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号87と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列からなることができる。別の具体的な例では、ヒト化MYOC遺伝子座は、配列番号4に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号4と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列からなるタンパク質をコードすることができる。別の具体的な例では、ヒト化MYOC遺伝子座は、配列番号5に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号5と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列からなるコード配列を含むことができる。別の具体的な例では、ヒト化MYOC遺伝子座は、配列番号88又は89に記載される配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一である(例えば、配列番号88又は89と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一である)配列からなることができる。
【0146】
C.ヒト化MYOC遺伝子座を含む、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物
本明細書の他の場所に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を含む、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物が提供される。ゲノム、細胞、又は非ヒト動物は、ヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるヒト化ミオシリンタンパク質を発現することができる。ゲノム、細胞、又は非ヒト動物は、雄又は雌であり得る。ゲノム、細胞、又は非ヒト動物は、ヒト化MYOC遺伝子座についてヘテロ接合性又はホモ接合性であり得る。二倍体生物は、各遺伝子座に2つの対立遺伝子を有する。対立遺伝子の各対は、特定の遺伝子座の遺伝子型を表す。遺伝子型は、特定の遺伝子座に2つの同一の対立遺伝子がある場合はホモ接合性であり、2つの対立遺伝子が異なる場合はヘテロ接合性であると記載される。ヒト化MYOC遺伝子座を含む非ヒト動物は、その生殖系列にヒト化MYOC遺伝子座を含むことができる。
【0147】
本明細書で提供される非ヒト動物ゲノム又は細胞は、例えば、MYOC遺伝子座又はヒトMYOC遺伝子座に相同若しくはオルソログのゲノム遺伝子座を含む、任意の非ヒト動物ゲノム又は細胞であり得る。ゲノムは、真核細胞に由来し得るか、又は真核細胞であり得、これらには、例えば、動物細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、及びヒト細胞が含まれる。「動物」という用語は、例えば、哺乳類、魚類、爬虫類、両生類、鳥類、及び虫類を含む、動物界の任意のメンバーを含む。哺乳動物細胞は、例えば、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、ラット細胞、又はマウス細胞であり得る。他の非ヒト哺乳動物には、例えば、非ヒト霊長類が含まれる。「非ヒト」という用語はヒトを除外する。
【0148】
細胞はまた、任意の種類の未分化又は分化状態であり得る。例えば、細胞は、全能性細胞、多能性細胞(例えば、ヒト多能性細胞、又はマウス胚性幹(ES)細胞若しくはラットES細胞などの非ヒト多能性細胞)、又は非多能性細胞(例えば、非ES細胞)であり得る。全能性細胞には、任意の細胞型を生じさせることができる未分化細胞が含まれ、多能性細胞には、2つ以上の分化細胞型に発達する能力を有する未分化細胞が含まれる。そのような多能性及び/又は全能性細胞は、例えば、誘導多能性幹(induced pluripotent stem、iPS)細胞などのES細胞又はES様細胞であり得る。ES細胞には、胚への導入時に発達中の胚の任意の組織に寄与することができる胚由来の全能性又は多能性細胞が含まれる。ES細胞は、胚盤胞の内部細胞塊に由来し得、3つの脊椎動物胚葉(内胚葉、外胚葉、及び中胚葉)のうちのいずれかの細胞に分化することが可能である。
【0149】
本明細書で提供される細胞はまた、生殖細胞(例えば、精子又は卵母細胞)であり得る。細胞は、有糸分裂能力のある細胞又は有糸分裂的に不活性な細胞、減数分裂能力のある細胞又は減数分裂的に不活性な細胞であり得る。同様に、細胞はまた、初代体細胞又は初代体細胞ではない細胞であり得る。体細胞には、配偶子、生殖細胞、配偶子細胞、又は未分化幹細胞ではない任意の細胞が含まれる。例えば、細胞は、小柱網細胞などの眼細胞であり得る。
【0150】
本明細書で提供される好適な細胞には、初代細胞も含まれる。初代細胞には、生物、臓器、又は組織から直接単離された細胞又は細胞の培養物が含まれる。初代細胞には、形質転換も不死化もされていない細胞が含まれる。それらには、以前に組織培養で継代されなかったか、又は以前に組織培養で継代されたが、組織培養で無限に継代することができない生物、臓器、又は組織から得られた任意の細胞が含まれる。例えば、初代細胞は、小柱網細胞などの眼細胞であり得る。
【0151】
本明細書で提供される他の好適な細胞には、不死化細胞が含まれる。不死化細胞には、通常は無限に増殖することはないが、変異又は改変に起因して、正常な細胞老化を回避し、代わりに分裂を続けることができる多細胞生物からの細胞も含まれる。そのような変異若しくは改変は、自然に発生し得るか、又は意図的に誘導され得る。多くの種類の不死化細胞が周知である。不死化細胞又は初代細胞には、典型的には、培養又は組換え遺伝子若しくはタンパク質の発現に使用される細胞が含まれる。
【0152】
本明細書で提供される細胞はまた、1細胞期胚(すなわち、受精卵母細胞又は接合子)を含む。そのような1細胞期胚は、任意の遺伝的背景(例えば、マウスの場合はBALB/c、C57BL/6、129、又はそれらの組み合わせ)に由来し得、新鮮であり得るか、又は凍結することができ、自然繁殖又は体外受精に由来し得る。
【0153】
本明細書で提供される細胞は、正常で健康な細胞であり得るか、又は罹患した細胞若しくは変異体を担持する細胞であり得る。
【0154】
本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を含む非ヒト動物は、本明細書の他の場所に記載されている方法によって作製することができる。「動物」という用語は、例えば、哺乳類、魚類、爬虫類、両生類、鳥類、及び虫類を含む、動物界の任意のメンバーを含む。具体的な例では、非ヒト動物は、非ヒト哺乳動物である。非ヒト哺乳動物には、例えば、非ヒト霊長類及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。「非ヒト動物」という用語は、ヒトを除外する。好ましい非ヒト動物には、例えば、マウス及びラットなどのげっ歯類が含まれる。
【0155】
非ヒト動物は、任意の遺伝的背景からのものであり得る。例えば、好適なマウスは、129系統、C57BL/6系統、129及びC57BL/6の雑種、BALB/c系統、又はスイスウェブスター系統からのものであり得る。129系統の例には、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/Svlm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、及び129T2が含まれる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Festing et al.(1999)Mamm.Genome 10(8):836を参照されたい。C57BL系統の例には、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/Kal_wN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、及びC57BL/Olaが含まれる。好適なマウスはまた、前述の129系統及び前述のC57BL/6系統の雑種(例えば、50%129及び50%C57BL/6)からのものであり得る。同様に、好適なマウスは、前述の129系統の雑種又は前述のBL/6系統の雑種(例えば、129S6(129/SvEvTac)系統)からのものであり得る。
【0156】
同様に、ラットは、例えば、ACIラット系統、Dark Agouti(DA)ラット系統、Wistarラット系統、LEAラット系統、Sprague Dawley(SD)ラット系統、又はFisher F344若しくはFisher F6などのFisherラット系統からのものであり得る。ラットはまた、上述の2つ以上の系統の雑種に由来する系統から得ることができる。例えば、好適なラットは、DA系統又はACI系統からのものであり得る。ACIラット系統は、白い腹及び足、並びにRT1av1ハプロタイプとともに、黒いアグーチを有することを特徴としている。そのような系統は、Harlan Laboratoriesを含む様々な供給源から入手できる。Dark Agouti(DA)ラット系統は、アグーチコート及びRT1av1ハプロタイプを有することを特徴としている。そのようなラットは、Charles River及びHarlan Laboratoriesを含む様々な供給源から入手できる。いくつかの好適なラットは、近交系ラット系統に由来し得る。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0235933号を参照されたい。
【0157】
本明細書に記載されるいくつかの非ヒト動物又は非ヒト動物細胞は、緑内障の1つ以上の兆候又は症状を有する。緑内障は、結果として生じる不可逆的な視力喪失を伴う、網膜神経節細胞(RGC)軸索の進行性喪失を特徴とする慢性視神経症である。緑内障の主な危険因子は、眼圧(IOP)の上昇である。IOPの上昇は、小柱網(TM)の構造を通した房水流出に対する抵抗の増加によって引き起こされる。房水は、毛様体によって作製され、前房を循環し、TM網を通して流出する。ほとんどの緑内障症例では、TMにおける房水に対する抵抗の増加がある。病原性MYOC変異タンパク質は、細胞内で凝集し、小柱網(TM)応力、IOPの上昇、及び緑内障につながる。ヒト緑内障TM細胞では、上昇したレベルのER応力誘導性タンパク質が検出されている。
【0158】
いくつかの非ヒト動物では、IOPは、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、又は少なくとも約22mmHg(例えば、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、又は少なくとも22mmHg)である。一例では、IOPは、約15~約22、約16~約22、約17~約22、約18~約22、約19~約22、約15~約21、約15~約20、又は約16~約21mmHg(例えば、15~22、16~22、17~22、18~22、19~22、15~21、15~20、又は16~21mmHg)である。
【0159】
いくつかの非ヒト動物では、IOPは、対照非ヒト動物(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、ヒト化MYOC遺伝子座を標的とする1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物、又は野生型非ヒト動物)に対して増加する。一例では、IOPは、対照非ヒト動物における対照ベースラインを少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、又は少なくとも約6mmHg(例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6mmHg)上回る。一例では、IOPは、対照非ヒト動物における対照ベースラインよりも約1~約7、約2~約7、約3~約7、約4~約7、約5~約7、約1~約6、約2~約6、約3~約6、約4~約6、又は約5~約6mmHg(例えば、1~6、2~6、3~6、4~6、又は5~6mmHg)高い。対照ベースラインは、例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物におけるIOPであり得るか、若しくは野生型非ヒト動物におけるIOPであり得るか、又は1つ以上のSAMガイドRNAの投与前の本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有する非ヒト動物におけるIOPであり得る。
【0160】
いくつかの非ヒト動物では、小胞体(ER)応力は、対照非ヒト動物(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物、又は野生型非ヒト動物)に対して増加する。いくつかの非ヒト動物は、パターン網膜電図(PERG)によって測定される緑内障の兆候及び症状を示す。いくつかの非ヒト動物は、対照非ヒト動物(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物、又は野生型非ヒト動物)に対して網膜神経節細胞(RGC)喪失を示す。いくつかの非ヒト動物は、対照非ヒト動物(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物、又は野生型非ヒト動物)に対して房水の流出抵抗の増加を示す。
【0161】
III.相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセットを含む非ヒト動物
本明細書に開示される非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物はまた、インビトロ、エクスビボ、又はインビトロで本明細書に開示されるヒト化MYOC遺伝子などの標的遺伝子の転写を活性化する方法で使用するためのクラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)に基づく相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセットも含む。本明細書に記載されるSAM系は、キメラCasタンパク質及びキメラアダプタータンパク質を含み、本明細書に開示されるヒト化MYOC遺伝子などの標的遺伝子の転写を活性化するために、本明細書の他の場所に記載されるガイドRNAとともに使用することができる。ガイドRNAは、ゲノムに組み込まれた発現カセットによってコードすることができるか、又はAAV若しくは任意の他の好適な手段によって提供することができる。キメラCasタンパク質(例えば、キメラStreptococcus pyogenes Cas9タンパク質、キメラCampylobacter jejuni Cas9タンパク質、又はStaphylococcus aureus Cas9タンパク質に由来するキメラCas9タンパク質などのキメラCasタンパク質)、及びキメラアダプタータンパク質(例えば、ガイドRNA内のアダプター結合要素に特異的に結合するアダプタータンパク質、及び1つ以上の異種転写活性化ドメインを含む)は、本明細書の他の場所で更に詳細に記載される。
【0162】
CRISPR/Cas系には、Cas遺伝子の発現、又はその活性の指示に関与する転写産物及び他の要素が含まれる。CRISPR/Cas系は、例えば、タイプI、タイプII、タイプIII系、又はタイプV系(例えば、サブタイプV-A又はサブタイプV-B)であり得る。本明細書に開示される組成物及び方法で使用されるCRISPR/Cas系は、天然に存在しないものであり得る。「天然に存在しない」系は、系の1つ以上の成分が、それらの天然に存在する状態から改変若しくは変異されている、それらが天然に関連する少なくとも1つの他の成分を少なくとも実質的に含まない、又はそれらが天然に関連しない少なくとも1つの他の成分と関連するなど、人の手の関与を示す任意のものを含む。例えば、いくつかのCRISPR/Cas系は、天然に存在しないgRNA及びCasタンパク質を一緒に含む、天然に存在しないCRISPR複合体を採用するか、天然に存在しないCasタンパク質を採用するか、又は天然に存在しないgRNAを採用する。
【0163】
本明細書に開示される方法及び組成物は、インビボで標的ゲノム遺伝子座の転写活性化を誘導するためのCRISPR複合体(キメラCasタンパク質及びキメラアダプタータンパク質と複合体を形成しているガイドRNA(guide RNA、gRNA)を含む)の能力を使用又は試験することによって、CRISPR/Cas系を採用する。
【0164】
本明細書に開示される非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物は、キメラCasタンパク質発現カセット及び/又はキメラアダプタータンパク質発現カセットを含む。例えば、本明細書に開示される非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、及び非ヒト動物は、キメラCasタンパク質コード配列及びキメラアダプタータンパク質コード配列を含む相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセットを含むことができる。
【0165】
SAM発現カセットを含む、そのような非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、又は非ヒト動物は、標的ゲノム遺伝子座の転写活性化を誘導するためにガイドRNAの送達のみを必要とするという利点を有する。いくつかのそのような非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、又は非ヒト動物はまた、標的遺伝子の転写活性化に必要とされる全ての成分がすでに存在しているように、1つ以上のガイドRNA発現カセット又はガイドRNA発現カセットも含む。SAM系は、任意の所望の様式で標的遺伝子の発現の増加を提供するために、そのような細胞で使用することができる。例えば、1つ以上の標的遺伝子の発現は、構成的様式で、又は調節された(例えば、誘導性、組織特異的、一時的に調節されたなど)様式で増加し得る。
【0166】
A.キメラCasタンパク質
本明細書の他の場所に開示されているガイドRNAと結合して標的遺伝子の転写を活性化することができるキメラCasタンパク質が提供される。そのようなキメラCasタンパク質は、(a)ガイドRNAと複合体を形成し、標的配列に結合することが可能である、クラスター化して規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質又はその機能的断片若しくはバリアントであるDNA結合ドメイン、及び(b)1つ以上の転写活性化ドメイン又はその機能的断片若しくはバリアントを含むことができる。例えば、そのような融合タンパク質は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の転写活性化ドメイン(例えば、2つ以上の異種転写活性化ドメイン又は3つ以上の異種転写活性化ドメイン)を含むことができる。一例では、キメラCasタンパク質は、触媒的に不活性なCasタンパク質(例えば、dCas9)及びVP64転写活性化ドメイン又はその機能的断片若しくはバリアントを含むことができる。例えば、そのようなキメラCasタンパク質は、配列番号43に記載されるdCas9-VP64キメラCasタンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。しかしながら、転写活性化ドメインが他の転写活性化ドメイン又はその機能的断片若しくはバリアントを含む、かつ/又はCasタンパク質が他のCasタンパク質(例えば、触媒的に不活性なCasタンパク質)を含む、キメラCasタンパク質も提供される。他の好適な転写活性化ドメインの例は、本明細書の他の場所に提供される。
【0167】
転写活性化ドメインは、N末端、C末端、又はCasタンパク質内の任意の場所に位置することができる。例えば、転写活性化ドメインは、S.pyogenes Cas9タンパク質と最適にアラインされたときに、Streptococcus pyogenes Cas9タンパク質のRec1ドメイン、Rec2ドメイン、HNHドメイン、若しくはPIドメイン、又はオルソログCas9タンパク質若しくは相同あるいはオルソログCasタンパク質の任意の対応する領域と結合することができる。例えば、転写活性化ドメインは、S.pyogenes Cas9タンパク質の553位のRec1ドメイン、575位のRec1ドメイン、175~306位内の任意の位置のRec2ドメインと結合するか、又は175~306位内の領域の一部若しくは全体、715~901位内の任意の位置のHNHドメインを置き換えるか、又は715~901位内の領域の一部若しくは全体、あるいは1153位のPIドメインを置き換えることができる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/049258号を参照されたい。転写活性化ドメインは、本明細書の他の場所に記載されるように、片側又は両側で1つ以上のリンカーに隣接し得る。
【0168】
キメラCasタンパク質はまた、追加の異種ポリペプチドに作動可能に連結又は融合され得る。融合又は連結された異種ポリペプチドは、N末端、C末端、又はキメラCasタンパク質の内部の任意の場所に位置し得る。例えば、キメラCas-タンパク質は、核局在化シグナルを更に含み得る。Casタンパク質に対する好適な核局在化シグナル及び他の修飾の例は、本明細書の他の場所で更に詳細に記載される。
【0169】
(1)Casタンパク質
Casタンパク質は一般に、ガイドRNAと相互作用することができる少なくとも1つのRNA認識又は結合ドメインを含む。Casタンパク質の機能的断片又は機能的バリアントは、ガイドRNAと複合体を形成し、標的遺伝子の標的配列と結合する能力(例えば、標的遺伝子の転写を活性化する)を保持するものである。
【0170】
本明細書の他の場所に記載される転写活性化ドメインに加えて、Casタンパク質はまた、ヌクレアーゼドメイン(例えば、DNaseドメイン又はRNaseドメイン)、DNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、タンパク質-タンパク質相互作用ドメイン、二量体化ドメイン、及び他のドメインを含むことができる。いくつかのそのようなドメイン(例えば、DNaseドメイン)は、天然Casタンパク質に由来し得る。他のそのようなドメインを追加して、修飾Casタンパク質を作製することができる。ヌクレアーゼドメインは、核酸分子の共有結合の切断を含む、核酸切断に対する触媒活性を有する。切断は、平滑末端又は付着末端を生成することができ、一本鎖又は二本鎖であり得る。例えば、野生型のCas9タンパク質は、典型的には、平滑端切断産物を生成する。代替的に、野生型Cpf1タンパク質(例えば、FnCpf1)は、非標的鎖のPAM配列から18番目の塩基対の後及び標的鎖の23番目の塩基の後に切断が生じる、5-ヌクレオチドの5’オーバーハングを有する切断産物をもたらし得る。Casタンパク質は、完全な切断活性を有し、標的ゲノム遺伝子座で二本鎖切断(例えば、平滑末端を有する二本鎖切断)を生成することができるか、又は標的ゲノム遺伝子座で一本鎖切断を生成するニッカーゼであり得る。一例では、本明細書に開示されるキメラCasタンパク質のCasタンパク質部分は、減少したヌクレアーゼ活性を有するように(例えば、ヌクレアーゼ活性が、野生型Casタンパク質と比較して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは100%減少する)、又は実質的に全てのヌクレアーゼ活性を欠くように(すなわち、ヌクレアーゼ活性が、野生型Casタンパク質と比較して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%減少するか、又は野生型Casタンパク質のヌクレアーゼ活性の約0%以下、約1%以下、約2%以下、約3%以下、約5%以下、若しくは約10%以下を有する)修飾されている。ヌクレアーゼ不活性Casタンパク質は、その触媒(すなわち、ヌクレアーゼ)ドメインに不活性化変異であることが知られている変異を有する(例えば、Cpf1タンパク質のRuvC様エンドヌクレアーゼドメインの変異を不活性化するか、若しくはCas9中のHNHエンドヌクレアーゼドメイン及びRuvC様エンドヌクレアーゼドメインの両方の変異を不活性化する)か、又は野生型Casタンパク質と比較して少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは100%減少したヌクレアーゼ活性を有するCasタンパク質である。ヌクレアーゼ活性を低減又は実質的に排除するための異なるCasタンパク質変異の例が以下に開示される。
【0171】
Casタンパク質の例には、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9(Csn1又はCsx12)、Cas10、Cas10d、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、及びCu1966、並びにそれらの相同体又は修飾バージョンが含まれる。
【0172】
例示的なCasタンパク質は、Cas9タンパク質又はCas9タンパク質に由来するタンパク質である。Cas9タンパク質は、タイプII CRISPR/Cas系に由来するものであり、典型的には、保存されたアーキテクチャを有する4つの重要なモチーフを共有する。モチーフ1、2、及び4は、RuvC様モチーフであり、モチーフ3は、HNHモチーフである。例示的なCas9タンパク質は、Streptococcus pyogenes、Streptococcus thermophilus、Streptococcus sp.、Staphylococcus aureus、Nocardiopsis dassonvillei、Streptomyces pristinaespiralis、Streptomyces viridochromogenes、Streptomyces viridochromogenes、Streptosporangium roseum、Streptosporangium roseum、Alicyclobacillus acidocaldarius、Bacillus pseudomycoides、Bacillus selenitireducens、Exiguobacterium sibiricum、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus salivarius、Microscilla marina、Burkholderiales bacterium、Polaromonas naphthalenivorans、Polaromonas sp.、Crocosphaera watsonii、Cyanothece sp.、Microcystis aeruginosa、Synechococcus sp.、Acetohalobium arabaticum、Ammonifex degensii、Caldicelulosiruptor becscii、Candidatus Desulforudis、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Finegoldia magna、Natranaerobius thermophilus、Pelotomaculum thermopropionicum、Acidithiobacillus caldus、Acidithiobacillus ferrooxidans、Allochromatium vinosum、Marinobacter sp.、Nitrosococcus halophilus、Nitrosococcus watsoni、Pseudoalteromonas haloplanktis、Ktedonobacter racemifer、Methanohalobium evestigatum、Anabaena variabilis、Nodularia spumigena、Nostoc sp.、Arthrospira maxima、Arthrospira platensis、Arthrospira sp.、Lyngbya sp.、Microcoleus chthonoplastes、Oscillatoria sp.、Petrotoga mobilis、Thermosipho africanus、Acaryochloris marina、Neisseria meningitidis、又はCampylobacter jejuniに由来する。Cas9ファミリーメンバーの追加の例は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2014/131833号に記載されている。S.pyogenes由来のCas9(SpCas9)(SwissProtアクセッション番号Q99ZW2が割り当てられている)は、例示的なCas9タンパク質である。S.aureus由来のCas9(SaCas9)(UniProtアクセッション番号J7RUA5が割り当てられている)は、別の例示的なCas9タンパク質である。Campylobacter jejuni由来のCas9(CjCas9)(UniProtアクセッション番号Q0P897が割り当てられている)は、別の例示的なCas9タンパク質である。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kim et al.(2017)Nat.Comm.8:14500を参照されたい。SaCas9は、SpCas9よりも小さく、CjCas9は、SaCas9及びSpCas9の両方よりも小さい。Neisseria meningitidis由来のCas9(Nme2Cas9)は、別の例示的なCas9タンパク質である。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Edraki et al.(2019)Mol.Cell 73(4):714-726を参照されたい。Streptococcus thermophilus由来のCas9タンパク質(例えば、CRISPR1遺伝子座(St1Cas9)によってコードされるStreptococcus thermophilus LMD-9 Cas9又はCRISPR3遺伝子座(St3Cas9)由来の(Streptococcus thermophilus Cas9)は、他の例示的なCas9タンパク質である。Francisella novicida由来のCas9(FnCas9)又は代替PAMを認識するRHA Francisella novicida Cas9バリアント(E1369R/E1449H/R1556A置換)は、他の例示的なCas9タンパク質である。これら及び他の例示的なCas9タンパク質は、例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Cebrian-Serrano及びDavies(2017)Mamm.Genome 28(7):247-261で概説されている。
【0173】
Casタンパク質の別の例は、Cpf1(Prevotella及びFrancisella1由来のCRISPR)タンパク質である。Cpf1は、Cas9の対応するドメインに相同なRuvC様ヌクレアーゼドメインを、Cas9の特徴的なアルギニンに富むクラスターの対応物とともに含む大きなタンパク質(約1300アミノ酸)である。しかしながら、Cpf1は、Cas9タンパク質に存在するHNHヌクレアーゼドメインを欠いており、HNHドメインを含む長い挿入を含むCas9とは対照的に、RuvC様ドメインは、Cpf1配列において隣接している。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Zetsche et al.(2015)Cell 163(3):759-771を参照されたい。例示的なCpf1タンパク質は、Francisella tularensis 1、Francisella tularensis subsp.novicida、Prevotella albensis、Lachnospiraceae bacterium MC2017 1、Butyrivibrio proteoclasticus、Peregrinibacteria bacterium GW2011_GWA2_33_10、Parcubacteria bacterium GW2011_GWC2_44_17、Smithella sp.SCADC、Acidaminococcus sp.BV3L6、Lachnospiraceae bacterium MA2020、Candidatus Methanoplasma termitum、Eubacterium eligens、Moraxella bovoculi 237、Leptospira inadai、Lachnospiraceae bacterium ND2006、Porphyromonas crevioricanis 3、Prevotella disiens、及びPorphyromonas macacaeに由来する。Francisella novicida U112由来のCpf1(FnCpf1、割り当てられたUniProtアクセッション番号A0Q7Q2)は、例示的なCpf1タンパク質である。
【0174】
Casタンパク質は、野生型タンパク質(すなわち、本質的に発生するもの)、修飾Casタンパク質(すなわち、Casタンパク質バリアント)、又は野生型若しくは修飾Casタンパク質の断片であり得る。Casタンパク質はまた、野生型又は修飾Casタンパク質の触媒活性に関して、活性バリアント又は断片であり得る。触媒活性に関する活性バリアント又は断片は、野生型又は修飾Casタンパク質若しくはその一部と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%以上の配列同一性を含むことができ、活性バリアントは、所望の切断部位で切断する能力を保持し、したがって、ニック誘導又は二本鎖切断誘導活性を保持する。ニック誘導又は二本鎖切断誘導活性のアッセイが公知であり、一般に、切断部位を含むDNA基質上のCasタンパク質の全体的な活性及び特異性を測定する。
【0175】
修飾Casタンパク質の一例は、修飾SpCas9-HF1タンパク質であり、これは、非特異的DNA接触を減らすように設計された改変(N497A/R661A/Q695A/Q926A)を有するStreptococcus pyogenes Cas9の忠実度の高いバリアントである。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kleinstiver et al.(2016)Nature 529(7587):490-495を参照されたい。修飾Casタンパク質の別の例は、オフターゲット効果を低減するように設計された修飾eSpCas9バリアント(K848A/K1003A/R1060A)である。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Slaymaker et al.(2016)Science 351(6268):84-88を参照されたい。他のSpCas9バリアントには、K855A及びK810A/K1003A/R1060Aが含まれる。これら及び他の修飾Casタンパク質は、例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Cebrian-Serrano及びDavies(2017)Mamm.Genome 28(7):247-261で概説されている。修飾Cas9タンパク質の別の例は、xCas9であり、これは拡大された範囲のPAM配列を認識することができるSpCas9バリアントである。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hu et al.(2018)Nature 556:57-63を参照されたい。
【0176】
Casタンパク質は、核酸結合親和性、核酸結合特異性、及び酵素活性のうちの1つ以上を増加又は減少させるように修飾することができる。Casタンパク質は、安定性などのタンパク質の他の活性又は特性を変更するように修飾することもできる。例えば、Casタンパク質の1つ以上のヌクレアーゼドメインを修飾、欠失、若しくは不活性化することができるか、又はCasタンパク質を短縮して、タンパク質の機能に必須ではないドメインを除去することができるか、又はCasタンパク質の活性若しくは特性を最適化(例えば、増強若しくは低減)することができる。
【0177】
Casタンパク質は、DNaseドメインなどの少なくとも1つのヌクレアーゼドメインを含み得る。例えば、野生型Cpf1タンパク質は、一般に、おそらく二量体立体配座で、標的DNAの両方の鎖を切断するRuvC様ドメインを含む。Casタンパク質はまた、DNaseドメインなどの少なくとも2つのヌクレアーゼドメインを含み得る。例えば、野生型Cas9タンパク質は、一般に、RuvC様ヌクレアーゼドメイン及びHNH様ヌクレアーゼドメインを含む。RuvCドメイン及びHNHドメインは各々、二本鎖DNAの異なる鎖を切断して、DNAに二本鎖切断を行うことができる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Jinek et al.(2012)Science 337(6096):816-821を参照されたい。
【0178】
ヌクレアーゼドメインのうちの1つ以上又は全てを欠失又は変異させることができるため、それらは、もはや機能しなくなるか、又は低減したヌクレアーゼ活性を有する。例えば、Cas9タンパク質でヌクレアーゼドメインのうちの1つが欠失又は変異している場合、結果として得られるCas9タンパク質は、ニッカーゼと称され得、二本鎖標的DNA内で一本鎖切断を生成することができるが、二本鎖切断を生成することはできない(すなわち、相補的鎖又は非相補的鎖を切断することができるが、両方を切断することはできない)。ヌクレアーゼドメインの両方が欠失又は変異している場合、結果として得られるCasタンパク質(例えば、Cas9)は、二本鎖DNAの両方の鎖(例えば、ヌクレアーゼヌル又はヌクレアーゼ不活性Casタンパク質、又は触媒活性を伴わないCasタンパク質(dCas))を切断する能力が低減される。Cas9をニッカーゼに変換する変異の例は、S.pyogenes由来のCas9のRuvCドメインにおけるD10A(Cas9の位置10におけるアラニンからアスパラギン酸への)変異である。同様に、S.pyogenes由来のCas9のHNHドメインにおけるH939A(アミノ酸位置839におけるヒスチジンからアラニンへ)、H840A(アミノ酸位置840におけるヒスチジンからアラニン)、又はN863A(アミノ酸位置N863におけるアスパラギンからアラニン)は、Cas9をニッカーゼに変換することができる。Cas9をニッカーゼに変換する変異の他の例としては、S.thermophilus由来のCas9に対する対応する変異が挙げられる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sapranauskas et al.(2011)Nucleic Acids Res.39(21):9275-9282及び国際公開第2013/141680号を参照されたい。そのような変異は、部位特異的変異誘発、PCR媒介変異誘発、又は全遺伝子合成などの方法を使用して生成することができる。ニッカーゼを生成する他の変異の例は、例えば、国際公開第2013/176772号及び国際公開第2013/142578号において見出すことができ、それらの各々は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。ヌクレアーゼドメインの全てがCasタンパク質で欠失又は変異している(例えば、ヌクレアーゼドメインの両方がCas9タンパク質で欠失又は変異している)場合、結果として得られるCasタンパク質(例えば、Cas9)は、二本鎖DNAの両方の鎖(例えば、ヌクレアーゼヌル又はヌクレアーゼ不活性Casタンパク質)を切断する能力が低減される。1つの具体的な例は、D10A/H840AS.pyogenes Cas9二重変異体、又はS.pyogenes Cas9と最適にアラインされた場合の別の種からのCas9の対応する二重変異体である。別の具体的な例は、D10A/N863AS.pyogenes Cas9二重変異体、又はS.pyogenes Cas9と最適にアラインされた場合の別の種からのCas9の対応する二重変異体である。触媒的に不活性なCas9タンパク質(dCas9)の一例は、配列番号44に記載されるdCas9タンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0179】
xCas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例は、SpCas9について上に記載されるものと同じである。Staphylococcus aureus Cas9タンパク質の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も公知である。例えば、Staphylococcus aureusのCas9酵素(SaCas9)は、N580位での置換(例えば、N580A置換)及びD10位での置換(例えば、D10A置換)を含み、ヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を生成し得る。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/106236号を参照されたい。Nme2Cas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も公知である(例えば、D16A及びH588Aの組み合わせ)。St1Cas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も公知である(例えば、D9A、D598A、H599A、及びN622Aの組み合わせ)。St3Cas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も公知である(例えば、D10A及びN870Aの組み合わせ)。CjCas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も公知である(例えば、D8A及びH559Aの組み合わせ)。FnCas9及びRHA FnCas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も公知である(例えば、N995A)。
【0180】
Cpf1タンパク質の触媒ドメインにおける不活化変異の例も公知である。Francisella novicida U112(FnCpf1)、Acidaminococcus sp.BV3L6(AsCpf1)、Lachnospiraceae bacterium ND2006(LbCpf1)、及びMoraxella bovoculi 237(MbCpf1 Cpf1)由来のCpf1タンパク質に関して、そのような変異は、AsCpf1の位置908、993若しくは1263あるいはCpf1オルソログ中の対応する位置、又はLbCpf1の位置832、925、947若しくは1180あるいはCpf1オルソログ中の対応する位置における変異を含むことができる。そのような変異は、例えば、AsCpf1の変異D908A、E993A、及びD1263A若しくはCpf1オルソログの対応する変異、又はLbCpf1のD832A、E925A、D947A、及びD1180A若しくはCpf1オルソログの対応する変異のうちの1つ以上を含み得る。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0208243号を参照されたい。
【0181】
Casタンパク質はまた、融合タンパク質として異種ポリペプチドに作動可能に連結することができる。例えば、転写活性化ドメインに加えて、Casタンパク質は切断ドメイン又はエピジェネティック修飾ドメインに融合させることができる。あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2014/089290号を参照されたい。Casタンパク質は、安定性の増加又は減少を提供する異種ポリペプチドに融合することもできる。融合ドメイン又は異種ポリペプチドは、N末端、C末端、又はCasタンパク質の内部に位置し得る。
【0182】
一例として、Casタンパク質は、細胞内局在化を提供する1つ以上の異種ポリペプチドに融合され得る。そのような異種ポリペプチドは、例えば、核を標的とするための単一部分SV40 NLS及び/又は二部分アルファインポーチンNLSなどの1つ以上の核局在化シグナル(nuclear localization signal、NLS)、ミトコンドリアを標的とするためのミトコンドリア局在化シグナル、ER保持シグナルなどを含むことができる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lange et al.(2007)J.Biol.Chem.282(8):5101-5105を参照されたい。そのような細胞内局在化シグナルは、N末端、C末端、又はCasタンパク質内のどこにでも位置することができる。NLSは、一続きの塩基性アミノ酸を含むことができ、単節型配列又は双節型配列であり得る。任意選択的に、Casタンパク質は、N末端にNLS(例えば、アルファ-インポーチンNLS又は単節型NLS)及びC末端にNLS(例えば、SV40 NLS又は双節型NLS)を含む2つ以上のNLSを含み得る。Casタンパク質はまた、N末端に2つ以上のNLS及び/又はC末端に2つ以上のNLSを含み得る。
【0183】
Casタンパク質はまた、細胞透過性ドメイン又はタンパク質導入ドメインに作動可能に連結することができる。例えば、細胞透過性ドメインは、HIV-1 TATタンパク質、ヒトB型肝炎ウイルスからのTLM細胞透過性モチーフ、MPG、Pep-1、VP22、単純ヘルペスウイルスからの細胞透過性ペプチド、又はポリアルギニンペプチド配列に由来し得る。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2014/089290号及び国際公開第2013/176772号を参照されたい。細胞透過性ドメインは、N末端、C末端、又はCasタンパク質内のどこにでも位置することができる。
【0184】
Casタンパク質はまた、追跡又は精製を容易にするために、蛍光タンパク質、精製タグ、又はエピトープタグなどの異種ポリペプチドに作動可能に連結され得る。蛍光タンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、eGFP、Emerald、Azami Green、Monomeric Azami Green、CopGFP、AceGFP、ZsGreenl)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、eYFP、Citrine、Venus、YPet、PhiYFP、ZsYellowl)、青色蛍光タンパク質(例えば、eBFP、eBFP2、Azurite、mKalamal、GFPuv、Sapphire、T-sapphire)、シアン蛍光タンパク質(例えば、eCFP、Cerulean、CyPet、AmCyanl、Midoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(例えば、mKate、mKate2、mPlum、DsRed単量体、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRed-Monomer、HcRed-Tandem、HcRedl、AsRed2、eqFP611、mRaspberry、mStrawberry、Jred)、オレンジ色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、Monomeric Kusabira-Orange、mTangerine、tdTomato)、及び任意の他の好適な蛍光タンパク質が挙げられる。タグの例としては、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase、GST)、キチン結合タンパク質(chitin binding protein、CBP)、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン(thioredoxin、TRX)、ポリ(NANP)、タンデムアフィニティー精製(tandem affinity purification、TAP)タグ、myc、AcV5、AU1、AU5、E、ECS、E2、FLAG、ヘマグルチニン(hemagglutinin、HA)、nus、Softag 1、Softag 3、Strep、SBP、Glu-Glu、HSV、KT3、S、S1、T7、V5、VSV-G、ヒスチジン(histidine、His)、ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(biotin carboxyl carrier protein、BCCP)、及びカルモジュリンが挙げられる。
【0185】
Casタンパク質は、標識された核酸に係留され得る。そのような係留(すなわち、物理的連結)は、共有結合性相互作用又は非共有結合性相互作用を通して達成することができ、係留は、直接的(例えば、タンパク質若しくはインテイン修飾上のシステイン若しくはリジン残基の修飾によって達成することができる、直接融合若しくは化学的コンジュゲーションを通して)であり得るか、又はストレプトアビジン若しくはアプタマーなどの1つ以上の介在するリンカー若しくはアダプター分子を通して達成することができる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Pierce et al.(2005)Mini Rev.Med.Chem.5(1):41-55、Duckworth et al.(2007)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.46(46):8819-8822、Schaeffer and Dixon(2009)Australian J.Chem.62(10):1328-1332、Goodman et al.(2009)Chembiochem.10(9):1551-1557、及びKhatwani et al.(2012)Bioorg.Med.Chem.20(14):4532-4539を参照されたい。タンパク質-核酸コンジュゲートを合成するための非共有方略には、ビオチン-ストレプトアビジン及びニッケル-ヒスチジン法が含まれる。共有結合タンパク質-核酸コンジュゲートは、様々な化学物質を使用して適切に機能化された核酸及びタンパク質を接続することによって合成することができる。これらの化学物質のうちのいくつかは、タンパク質表面上のアミノ酸残基(例えば、リジンアミン又はシステインチオール)へのオリゴヌクレオチドの直接結合を伴うが、他のより複雑なスキームは、タンパク質の翻訳後修飾又は触媒若しくは反応性タンパク質ドメインの関与を必要とする。タンパク質の核酸への共有結合の方法には、例えば、オリゴヌクレオチドのタンパク質リジン又はシステイン残基への化学的架橋、発現されたタンパク質ライゲーション、化学酵素的方法、及び光アプタマーの使用が含まれ得る。標識された核酸は、Casタンパク質のC末端、N末端、又は内部領域に係留され得る。一例では、標識された核酸は、Casタンパク質のC末端又はN末端に係留される。同様に、Casタンパク質は、標識された核酸の5’末端、3’末端、又は内部領域に係留され得る。すなわち、標識された核酸は、任意の方向及び極性で係留され得る。例えば、Casタンパク質は、標識された核酸の5’末端又は3’末端に係留され得る。
【0186】
(2)転写活性化ドメイン
本明細書に開示されるキメラCasタンパク質は、1つ以上の転写活性化ドメインを含むことができる。転写活性化ドメインには、DNA結合ドメイン(例えば、ガイドRNAと複合体を形成している触媒的に不活性なCasタンパク質)と併せて、転写機構に直接又はコアクチベーターなどの他のタンパク質を介して接触することにより、プロモーターからの転写を活性化することができる、天然に存在する転写因子の領域が含まれる。転写活性化ドメインには、転写因子のそのような領域の機能的断片又はバリアント、及び天然の天然に存在する転写活性化ドメインに由来するか、又は標的遺伝子の転写を活性化するために人工的に生成若しくは合成される、操作された転写活性化ドメインも含まれる。機能的断片は、好適なDNA結合ドメインと作動可能に連結した場合に標的遺伝子の転写を活性化することができる断片である。機能的バリアントは、好適なDNA結合ドメインと作動可能に連結した場合に標的遺伝子の転写を活性化することができるバリアントである。
【0187】
本明細書に開示されるキメラCasタンパク質で使用するための特定の転写活性化ドメインは、VP64転写活性化ドメイン又はその機能的断片若しくはバリアントを含む。VP64は、単純ヘルペスVP16活性化ドメインからの最小活性化ドメインの四量体リピートである。例えば、転写活性化ドメインは、配列番号45に記載されるVP64転写活性化ドメインタンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。
【0188】
転写活性化ドメインの他の例には、単純ヘルペスウイルスVP16トランス活性化ドメイン、VP64(単純ヘルペスウイルスVP16の4重タンデムリピート)、NF-κB p65(NF-κBトランス活性化サブユニットp65)活性化ドメイン、MyoD1トランス活性化ドメイン、HSF1トランス活性化ドメイン(ヒト熱ショック因子1からのトランス活性化ドメイン)、RTA(Epstein BarrウイルスRトランス活性化ドメイン)、SET7/9トランス活性化ドメイン、p53活性化ドメイン1、p53活性化ドメイン2、CREB(cAMP応答要素結合タンパク質)活性化ドメイン、E2A活性化ドメイン、NFAT(活性化T細胞の核因子)活性化ドメイン、並びにそれらの機能的断片及びバリアントが含まれる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0298125号、米国特許出願公開第2016/0281072号、及び国際公開第2016/049258号を参照されたい。転写活性化ドメインの他の例には、Gcn4、MLL、Rtg3、Gln3、Oaf1、Pip2、Pdr1、Pdr3、Pho4、Leu3、並びにそれらの機能的断片及びバリアントが含まれる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0298125号を参照されたい。転写活性化ドメインの更に他の例には、Spl、Vax、GATA4、並びにそれらの機能的断片及びバリアントが含まれる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/149484号を参照されたい。他の例には、Oct1、Oct-2A、AP-2、CTF1、P300、CBP、PCAF、SRC1、PvALF、ERF-2、OsGAI、HALF-1、C1、AP1、ARF-5、ARF-6、ARF-7、ARF-8、CPRF1、CPRF4、MYC-RP/GP、及びTRAB1PC4からの活性化ドメイン、並びにそれらの機能的断片及びバリアントが含まれる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0237456号、欧州特許第3045537号、及び国際公開第2011/146121号を参照されたい。追加の好適な転写活性化ドメインも即知である。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2011/146121号を参照されたい。
【0189】
B.キメラアダプタータンパク質
本明細書の他の場所に開示されるガイドRNAと結合することができるキメラアダプタータンパク質も提供される。本明細書に開示されるキメラアダプタータンパク質は、標的遺伝子の転写を活性化するために標的遺伝子内の標的配列に指向する転写活性化ドメインの数及び多様性を増加させるために、dCas-相乗的活性化メディエーター(SAM)様系で有用である。キメラアダプタータンパク質をコードする核酸を、本明細書の他の場所に開示されるように、細胞若しくは非ヒト動物(例えば、ゲノムに組み込まれたキメラCasタンパク質発現カセットを含む細胞若しくは非ヒト動物)にゲノムに組み込むことができるか、又はキメラアダプタータンパク質若しくは核酸を、本明細書の他の場所に開示される方法(例えば、LNP媒介送達若しくはAAV媒介送達)を使用して、そのような細胞及び非ヒト動物に導入することができる。
【0190】
そのようなキメラアダプタータンパク質は、(a)ガイドRNA内のアダプター結合要素に特異的に結合するアダプター(すなわち、アダプタードメイン又はアダプタータンパク質)、及び(b)1つ以上の異種転写活性化ドメインを含む。例えば、そのような融合タンパク質は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の転写活性化ドメイン(例えば、2つ以上の異種転写活性化ドメイン又は3つ以上の異種転写活性化ドメイン)を含むことができる。一例では、そのようなキメラアダプタータンパク質は、(a)ガイドRNA内のアダプター結合要素に特異的に結合するアダプター(すなわち、アダプタードメイン又はアダプタータンパク質)、及び(b)2つ以上の異種転写活性化ドメインを含むことができる。例えば、キメラアダプタータンパク質は、(a)ガイドRNA中の1つ以上のMS2アプタマー(例えば、ガイドRNA中の別個の位置にある2つのMS2アプタマー)に特異的に結合するMS2コートタンパク質アダプター、及び(b)1つ以上(例えば、2つ以上の転写活性化ドメイン)を含むことができる。例えば、2つの転写活性化ドメインは、p65及びHSF1転写活性化ドメイン又はそれらの機能的断片若しくはバリアントであり得る。しかしながら、転写活性化ドメインが他の転写活性化ドメイン又はその機能的断片若しくはバリアントを含む、キメラアダプタータンパク質も提供される。
【0191】
1つ以上の転写活性化ドメインは、アダプターに直接融合され得る。代替的に、1つ以上の転写活性化ドメインは、リンカー若しくはリンカーの組み合わせを介して、又は1つ以上の追加のドメインを介してアダプターに連結され得る。同様に、2つ以上の転写活性化ドメインが存在する場合、それらは互いに直接融合され得るか、又はリンカー若しくはリンカーの組み合わせを介して、あるいは1つ以上の追加のドメインを介して互いに連結され得る。これらの融合タンパク質で使用され得るリンカーには、融合タンパク質の機能を干渉しない任意の配列を含み得る。例示的なリンカーは、短く(例えば、2~20アミノ酸)、典型的には、柔軟である(例えば、グリシン、アラニン、及びセリンなどの自由度の高いアミノ酸を含む)。リンカーのいくつかの具体的な例は、GGGS(配列番号46)又はGGGGS(配列番号47)からなる1つ以上の単位、例えば、任意の組み合わせで、GGGS(配列番号46)又はGGGGS(配列番号47)の2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のリピートを含む。他のリンカー配列も使用することができる。
【0192】
1つ以上の転写活性化ドメイン及びアダプターは、キメラアダプタータンパク質内で任意の順序であり得る。1つの選択肢として、1つ以上の転写活性化ドメインは、アダプターのC末端であり得、アダプターは、1つ以上の転写活性化ドメインのN末端であり得る。例えば、1つ以上の転写活性化ドメインは、キメラアダプタータンパク質のC末端にあり得、アダプターは、キメラアダプタータンパク質のN末端にあり得る。しかしながら、1つ以上の転写活性化ドメインは、キメラアダプタータンパク質のC末端になくても、アダプターのC末端であり得る(例えば、核局在化シグナルがキメラアダプタータンパク質のC末端にある場合)。同様に、アダプターは、キメラアダプタータンパク質のN末端になくても、1つ以上の転写活性化ドメインのN末端であり得る(例えば、核局在化シグナルがキメラアダプタータンパク質のN末端にある場合)。別の選択肢として、1つ以上の転写活性化ドメインは、アダプターのN末端であり得、アダプターは、1つ以上の転写活性化ドメインのC末端であり得る。例えば、1つ以上の転写活性化ドメインは、キメラアダプタータンパク質のN末端にあり得、アダプターは、キメラアダプタータンパク質のC末端にあり得る。更に別の選択肢として、キメラアダプタータンパク質が2つ以上の転写活性化ドメインを含む場合、2つ以上の転写活性化ドメインは、アダプターに隣接し得る。
【0193】
キメラアダプタータンパク質はまた、追加の異種ポリペプチドに作動可能に連結又は融合され得る。融合又は連結された異種ポリペプチドは、N末端、C末端、又はキメラアダプタータンパク質の内部の任意の場所に位置し得る。例えば、キメラアダプタータンパク質は、核局在化シグナルを更に含み得る。そのようなタンパク質の具体的な例は、MS2コートタンパク質(MCP)のp65転写活性化ドメインのC末端、及びp65転写活性化ドメインのHSF1転写活性化ドメインのC末端に(直接又はNLSを介してのいずれかで)連結されたMS2コートタンパク質(アダプター)を含む。そのようなタンパク質は、N末端からC末端まで、MCP、核局在化シグナル、p65転写活性化ドメイン、及びHSF1転写活性化ドメインを含むことができる。例えば、キメラアダプタータンパク質は、配列番号48に記載されるMCP-p65-HSF1キメラアダプタータンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。
【0194】
キメラアダプタータンパク質はまた、細胞内局在化を提供する1つ以上の異種ポリペプチドに融合又は連結することができる。そのような異種ポリペプチドは、例えば、核を標的とするためのSV40 NLS及び/又はアルファ-インポーチンNLSなどの1つ以上の核局在化シグナル(NLS)、ミトコンドリアを標的とするためのミトコンドリア局在化シグナル、ER保持シグナルなどを含むことができる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lange et al.(2007)J.Biol.Chem.282:5101-5105を参照されたい。NLSは、例えば、一続きの塩基性アミノ酸を含むことができ、単節型配列又は双節型配列であり得る。任意選択的に、キメラアダプタータンパク質は、N末端にNLS(例えば、アルファインポーチンNLS)及び/又はC末端にNLS(例えば、SV40 NLS)を含む2つ以上のNLSを含む。
【0195】
キメラアダプタータンパク質はまた、細胞透過性ドメイン又はタンパク質導入ドメインに作動可能に連結され得る。例えば、細胞透過性ドメインは、HIV-1 TATタンパク質、ヒトB型肝炎ウイルスからのTLM細胞透過性モチーフ、MPG、Pep-1、VP22、単純ヘルペスウイルスからの細胞透過性ペプチド、又はポリアルギニンペプチド配列に由来し得る。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2014/089290号及び国際公開第2013/176772号を参照されたい。別の例として、キメラアダプタータンパク質を異種ポリペプチドに融合又は連結して、安定性の増加又は減少を提供することができる。
【0196】
キメラアダプタータンパク質はまた、追跡又は精製を容易にするために、蛍光タンパク質、精製タグ、又はエピトープタグなどの異種ポリペプチドに作動可能に連結され得る。蛍光タンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、eGFP、Emerald、Azami Green、Monomeric Azami Green、CopGFP、AceGFP、ZsGreenl)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、eYFP、Citrine、Venus、YPet、PhiYFP、ZsYellowl)、青色蛍光タンパク質(例えば、eBFP、eBFP2、Azurite、mKalamal、GFPuv、Sapphire、T-sapphire)、シアン蛍光タンパク質(例えば、eCFP、Cerulean、CyPet、AmCyanl、Midoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(例えば、mKate、mKate2、mPlum、DsRed単量体、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRed-Monomer、HcRed-Tandem、HcRedl、AsRed2、eqFP611、mRaspberry、mStrawberry、Jred)、オレンジ色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、Monomeric Kusabira-Orange、mTangerine、tdTomato)、及び任意の他の好適な蛍光タンパク質が挙げられる。タグの例としては、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン(TRX)、ポリ(NANP)、タンデムアフィニティー精製(TAP)タグ、myc、AcV5、AU1、AU5、E、ECS、E2、FLAG、ヘマグルチニン(HA)、nus、Softag 1、Softag 3、Strep、SBP、Glu-Glu、HSV、KT3、S、S1、T7、V5、VSV-G、ヒスチジン(His)、ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(BCCP)、及びカルモジュリンが挙げられる。
【0197】
キメラアダプタータンパク質は、標識された核酸に係留され得る。そのような係留(すなわち、物理的連結)は、共有相互作用若しくは非共有相互作用を介して達成することができ、係留は、直接(例えば、タンパク質又はインテイン修飾上のシステイン又はリジン残基の修飾によって達成することができる直接融合又は化学的結合を介して)、又はストレプトアビジン若しくはアプタマーなどの1つ以上の介在するリンカー又はアダプター分子を介して達成することができる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Pierce et al.(2005)Mini Rev.Med.Chem.5(1):41-55、Duckworth et al.(2007)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.46(46):8819-8822、Schaeffer and Dixon(2009)Australian J.Chem.62(10):1328-1332、Goodman et al.(2009)Chembiochem.10(9):1551-1557、及びKhatwani et al.(2012)Bioorg.Med.Chem.20(14):4532-4539を参照されたい。タンパク質-核酸コンジュゲートを合成するための非共有方略には、ビオチン-ストレプトアビジン及びニッケル-ヒスチジン法が含まれる。共有結合タンパク質-核酸コンジュゲートは、様々な化学物質を使用して適切に機能化された核酸及びタンパク質を接続することによって合成することができる。これらの化学物質のうちのいくつかは、タンパク質表面のアミノ酸残基(例えば、リジンアミン又はシステインチオール)へのオリゴヌクレオチドの直接結合を含むが、他のより複雑なスキームは、タンパク質の翻訳後修飾又は触媒若しくは反応性タンパク質ドメインの関与を必要とする。タンパク質の核酸への共有結合の方法には、例えば、オリゴヌクレオチドのタンパク質リジン又はシステイン残基への化学的架橋、発現されたタンパク質ライゲーション、化学酵素的方法、及び光アプタマーの使用が含まれ得る。標識された核酸は、キメラアダプタータンパク質のC末端、N末端、又は内部領域に係留され得る。同様に、キメラアダプタータンパク質は、標識された核酸の5’末端、3’末端、又は内部領域に係留され得る。すなわち、標識された核酸は、任意の方向及び極性で係留され得る。
【0198】
(1)アダプタータンパク質又はアダプタードメイン
アダプター(すなわち、アダプタードメイン又はアダプタータンパク質)は、別個の配列を特異的に認識及び結合する(例えば、配列特異的様式でのアプタマーなどの別個のDNA及び/又はRNA配列に結合する)核酸結合ドメイン(例えば、DNA結合ドメイン及び/又はRNA結合ドメイン)である。アプタマーには、特定の三次元立体配座を採用する能力を通じて、高い親和性及び特異性で標的分子に結合し得る核酸が含まれる。そのようなアダプターは、例えば、特定のRNA配列及び二次構造に結合し得る。これらの配列(すなわち、アダプター結合要素)は、ガイドRNAに操作され得る。例えば、MS2アプタマーは、MS2コートタンパク質(MCP)に特異的に結合するようにガイドRNAに操作され得る。例えば、アダプターは、配列番号49に記載されるMCP配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。
【0199】
アダプター及び標的のいくつかの具体的な例には、バクテリオファージコートタンパク質の多様性の中に存在するRNA結合タンパク質/アプタマーの組み合わせが含まれる。例えば、以下のアダプタータンパク質又はその機能的断片若しくはバリアントを使用することができる:MS2コートタンパク質(MCP)、PP7、Qβ、F2、GA、fr、JP501、M12、R17、BZ13、JP34、JP500、KU1、M1l、MX1、TW18、VK、SP、FI、ID2、NL95、TW19、AP205、φCb5、Φ Cb8r、Φ Cb12r、ΦCb23r、7s、及びPRR1。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/049258号を参照されたい。アダプタータンパク質の機能的断片又は機能的バリアントは、特異的なアダプター結合要素と結合する能力(例えば、配列特異的な様式で特異的なアダプター結合配列と結合する能力)を保持するものである。例えば、アミノ酸68~69がSGに変異し、アミノ酸70~75が野生型タンパク質から削除されている、PP7 Pseudomonasバクテリオファージコートタンパク質バリアントを使用することができる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wu et al.(2012)Biophys.J.102(12):2936-2944、及びChao et al.(2007)Nat.Struct.Mol.Biol.15(1):103-105を参照されたい。同様に、N55K変異などのMCPバリアントを使用することもできる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Spingola and Peabody(1994)J.Biol.Chem.269(12):9006-9010を参照されたい。
【0200】
使用することができるアダプタータンパク質の他の例には、エンドリボヌクレアーゼCsy4又はラムダNタンパク質の全体又は一部(例えば、DNA結合形態)が含まれる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0312198号を参照されたい。
【0201】
(2)転写活性化ドメイン
本明細書に開示されるキメラアダプタータンパク質は、1つ以上の転写活性化ドメインを含む。そのような転写活性化ドメインは、天然に存在する転写活性化ドメインであり得るか、天然に存在する転写活性化ドメインの機能的断片若しくは機能的バリアントであり得るか、又は操作された転写活性化ドメイン若しくは合成転写活性化ドメインであり得る。使用することができる転写活性化ドメインには、本明細書の他の場所でキメラCasタンパク質で使用するために記載されたものが含まれる。
【0202】
本明細書に開示されるキメラアダプタータンパク質で使用するための特定の転写活性化ドメインは、p65及び/若しくはHSF1転写活性化ドメイン又はその機能的断片若しくはバリアントを含む。HSF1転写活性化ドメインは、ヒト熱ショック因子1(heat shock factor 1、HSF1)の転写活性化ドメインであり得る。p65転写活性化ドメインは、RELA遺伝子によってコードされる核因子NF-カッパ-B p65サブユニットとしても知られる、転写因子p65の転写活性化ドメインであり得る。一例として、転写活性化ドメインは、配列番号50に記載されるp65転写活性化ドメインタンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。別の例として、転写活性化ドメインは、配列番号51に記載されるHSF1転写活性化ドメインタンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。
【0203】
C.SAMガイドRNA及びガイドRNAアレイ
また、標的遺伝子の転写を活性化するために本明細書の他の場所に開示されるキメラCasタンパク質及びキメラアダプタータンパク質に結合することができる、ガイドRNA及びガイドRNAアレイも提供される。ガイドRNAをコードする核酸を、本明細書の他の場所に開示されるように、非ヒト動物細胞若しくは非ヒト動物(例えば、SAM対応細胞若しくは非ヒト動物)においてゲノムに組み込むことができるか、又はガイドRNA若しくは核酸を、本明細書の他の場所に開示される方法(例えば、LNP媒介送達若しくはAAV媒介送達)を使用して、そのような非ヒト動物細胞及び非ヒト動物に導入することができる。送達方法は、本明細書の他の場所に開示されるリコンビナーゼの組織特異的送達を提供するように選択され得る。
【0204】
ガイドRNA又はガイドRNAアレイをコードする核酸は、1つ以上のガイドRNAをコードすることができる(又はガイドRNAが非ヒト動物細胞又は非ヒト動物に導入される場合、1つ以上のガイドRNAを導入することができる)。例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、又は5つ以上のガイドRNAをコード又は導入することができる。各ガイドRNAコード配列を、同じプロモーター(例えば、U6プロモーター)又は異なるプロモーターに作動可能に連結することができる(例えば、各ガイドRNAコード配列が、その独自のU6プロモーターに作動可能に連結される)。ガイドRNAのうちの2つ以上は、単一標的遺伝子における異なる標的配列を標的とすることができる。例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、又は5つ以上のガイドRNAは各々、単一標的遺伝子中の異なる標的配列を標的とすることができる。同様に、ガイドRNAは、複数の標的遺伝子(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、又は5つ以上の標的遺伝子)を標的とすることができる。ガイドRNA標的配列の例は、本明細書の他の場所に開示される。
【0205】
(1)ガイドRNA
「ガイドRNA」又は「gRNA」は、Casタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)に結合し、かつCasタンパク質を標的DNA内の特定の位置に標的化するRNA分子である。ガイドRNAは、2つのセグメント:「DNA標的化セグメント」及び「タンパク質結合セグメント」を含むことができる。「セグメント」は、RNA中の連続した一続きのヌクレオチドなどの分子のセクション又は領域を含む。Cas9のものなどのいくつかのgRNAは、2つの別個のRNA分子:「アクチベーターRNA」(例えば、tracrRNA)及び「ターゲッターRNA」(例えば、CRISPR RNA又はcrRNA)含むことができる。他のgRNAは、「単一分子gRNA」、「単一ガイドRNA」又は「sgRNA」とも呼ばれ得る単一RNA分子(単一RNAポリヌクレオチド)である。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2013/176772号、国際公開第2014/065596号、国際公開第2014/089290号、国際公開第2014/093622号、国際公開第2014/099750号、国際公開第2013/142578号、及び国際公開第2014/131833号を参照されたい。ガイドRNAは、CRISPR RNA(crRNA)又はcrRNAとトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)との組み合わせのいずれかを指す。crRNA及びtracrRNAは、単一のRNA分子(単一ガイドRNA又はsgRNA)として、又は2つの別個のRNA分子(二重ガイドRNA又はdgRNA)として関連付けることができる。例えば、Cas9の場合、単一ガイドRNAは、(例えば、リンカーを介して)tracrRNAに融合したcrRNAを含み得る。例えば、Cpf1の場合、crRNAのみが、標的配列への結合を達成するために必要とされる。「ガイドRNA」及び「gRNA」という用語は、二重分子(すなわち、モジュラー)gRNA及び単一分子gRNAの両方を含む。本明細書に開示される方法及び組成物のうちのいくつかでは、gRNAは、S.pyogenes Cas9 gRNA又はその同等物である。
【0206】
例示的な2分子gRNAは、crRNA様(「CRISPR RNA」又は「ターゲッターRNA」又は「crRNA」又は「crRNAリピート」)分子及び対応するtracrRNA様(「トランス活性化CRISPR RNA」又は「アクチベーターRNA」又は「tracrRNA」)分子を含む。crRNAは、gRNAのDNA標的化セグメント(一本鎖)、及びgRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の半分を形成する一続きのヌクレオチドの両方を含む。DNA標的化セグメントの下流(3’)に位置するcrRNAテールの例は、GUUUUAGAGCUAUGCU(配列番号73)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。本明細書に開示されるDNA標的化セグメントのうちのいずれかを、配列番号73の5’末端に結合して、crRNAを形成することができる。
【0207】
対応するtracrRNA(アクチベーター-RNA)は、gRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の残りの半分を形成する一続きのヌクレオチドを含む。crRNAの一続きのヌクレオチドは、tracrRNAの一続きのヌクレオチドと相補的であり、それとハイブリダイズして、gRNAのタンパク質結合ドメインのdsRNA二重鎖を形成する。したがって、各crRNAは、対応するtracrRNAを有すると言われ得る。tracrRNA配列の例は、AGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUU(配列番号74)、AAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU(配列番号75)、又はGUUGGAACCAUUCAAAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(配列番号76)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0208】
crRNA及びtracrRNAの両方が必要とされる系では、crRNA及び対応するtracrRNAは、ハイブリダイズしてgRNAを形成する。crRNAのみが必要な系では、crRNAは、gRNAであり得る。crRNAは追加的に、標的DNAの相補的鎖にハイブリダイズする一本鎖DNA標的化セグメントを提供する。細胞内の修飾に使用される場合、所与のcrRNA又はtracrRNA分子の正確な配列は、RNA分子が使用される種に固有であるように設計することができる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Mali et al.(2013)Science 339(6121):823-826、Jinek et al.(2012)Science 337(6096):816-821、Hwang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31(3):227-229、Jiang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31(3):233-239、及びCong et al.(2013)Science 339(6121):819-823を参照されたい。
【0209】
所与のgRNAのDNA標的化セグメント(crRNA)は、以下により詳細に記載されるように、標的DNAの相補的鎖上の配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む。gRNAのDNA標的化セグメントは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対合)を介して配列特異的様式で標的DNAと相互作用する。したがって、DNA標的化セグメントのヌクレオチド配列は変化してもよく、gRNA及び標的DNAが相互作用する標的DNA内の位置を決定する。目的のgRNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA内の任意の所望の配列にハイブリダイズするように修飾され得る。天然に存在するcrRNAは、CRISPR/Cas系及び生物に応じて異なるが、しばしば、21~46ヌクレオチド長の2つの直接反復(direct repeat、DR)に隣接する、21~72ヌクレオチド長の標的化セグメントを含む(例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2014/131833号を参照されたい)。S.pyogenesの場合、DRは、36ヌクレオチド長であり、標的化セグメントは、30ヌクレオチド長である。3’に位置するDRは、対応するtracrRNAに相補的であり、それとハイブリダイズし、転じて、tracrRNAは、Casタンパク質に結合する。
【0210】
DNA標的化セグメントは、例えば、少なくとも約12、少なくとも約15、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、又は少なくとも約40ヌクレオチドの長さを有し得る。そのようなDNA標的化セグメントは、例えば、約12~約100、約12~約80、約12~約50、約12~約40、約12~約30、約12~約25、又は約12~約20ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、DNA標的化セグメントは、約15~約25ヌクレオチド(例えば、約17~約20ヌクレオチド、又は約17、約18、約19、若しくは約20ヌクレオチド)であり得る。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0024523号を参照されたい。S.pyogenes由来のCas9の場合、典型的なDNA標的化セグメントは、16~20ヌクレオチド長、又は17~20ヌクレオチド長である。S.aureus由来のCas9の場合、典型的なDNA標的化セグメントは、21~23ヌクレオチド長である。Cpf1の場合、典型的なDNA標的化セグメントは、少なくとも16ヌクレオチド長又は少なくとも18ヌクレオチド長である。
【0211】
一例では、DNA標的化セグメントは、約20ヌクレオチド長であり得る。しかしながら、より短い配列及びより長い配列も標的化セグメントに使用することができる(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ヌクレオチド長などの15~25ヌクレオチド長)。DNA標的化セグメントと対応するガイドRNA標的配列との間の同一性の程度(又はDNA標的化セグメントとガイドRNA標的配列の他の鎖との間の相補性の程度)は、例えば、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%であり得る。DNA標的化セグメント及び対応するガイドRNA標的配列には、1つ以上のミスマッチが含まれ得る。例えば、ガイドRNAのDNA標的化セグメント及び対応するガイドRNA標的配列には、1~4、1~3、1~2、1、2、3、又は4つのミスマッチが含まれ得る(例えば、ガイドRNA標的配列の全長が、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、又は少なくとも20以上のヌクレオチドである)。例えば、ガイドRNAのDNA標的化セグメント及び対応するガイドRNA標的配列には、ガイドRNA標的配列の全長が、20ヌクレオチドである、1~4、1~3、1~2、1、2、3、又は4つのミスマッチが含まれ得る。
【0212】
tracrRNAは、任意の形態(例えば、完全長tracrRNA又は活性部分tracrRNA)でああり、かつ様々な長さであり得る。それらには、一次転写物又は処理された形態が含まれ得る。例えば、tracrRNA(単一ガイドRNAの一部として、又は2分子gRNAの一部としての別個の分子として)は、野生型tracrRNA配列の全て又は一部(例えば、野生型tracrRNA配列の約20個以上、約26個以上、約32個以上、約45個以上、約48個以上、約54個以上、約63個以上、約67個以上、約85個以上、又はそれ以上のヌクレオチド)を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり得る。S.pyogenes由来の野生型tracrRNA配列の例としては、171ヌクレオチド、89ヌクレオチド、75ヌクレオチド、及び65ヌクレオチドのバージョンが挙げられる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Deltcheva et al.(2011)Nature 471(7340):602-607、国際公開第2014/093661号を参照されたい。単一ガイドRNA(sgRNA)内のtracrRNAの例としては、sgRNAの+48、+54、+67、及び+85バージョン内に見出されるtracrRNAセグメントが挙げられ、ここで、「+n」は、野生型tracrRNAの最大+nヌクレオチドがsgRNAに含まれることを示す。あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,697,359号を参照されたい。
【0213】
ガイドRNAのDNA標的化セグメントと標的DNAの相補的鎖との間の相補性パーセントは、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%)であり得る。DNA標的化セグメントと標的DNAの相補的鎖との間の相補性パーセントは、約20個の連続するヌクレオチドにわたって少なくとも60%であり得る。一例として、DNA標的化セグメントと標的DNAの相補的鎖との間の相補性パーセントは、標的DNAの相補的鎖の5’末端にある14個の連続するヌクレオチドにわたって100%であり、残りの部分にわたって0%まで低くあり得る。そのような場合、DNA標的化セグメントは、14ヌクレオチド長とみなされ得る。別の例として、DNA標的化セグメントと標的DNAの相補的鎖との間の相補性パーセントは、標的DNAの相補的鎖の5’末端にある7つの連続するヌクレオチドにわたって100%であり、残りの部分にわたって0%まで低くあり得る。そのような場合、DNA標的化セグメントは、7ヌクレオチド長とみなされ得る。いくつかのガイドRNAでは、DNA標的化セグメント内の少なくとも17ヌクレオチドがターゲットDNAの相補的鎖に相補的である。例えば、DNA標的化セグメントは、20ヌクレオチド長であり得、標的DNAの相補的鎖との1、2、又は3つのミスマッチを含むことができる。一例では、ミスマッチは、プロトスペーサー隣接モチーフ(protospacer adjacent motif、PAM)配列に対応する相補的鎖(すなわち、PAM配列の逆相補体)の領域に隣接していない(例えば、ミスマッチは、ガイドRNAのDNA標的化セグメントの5’末端にあるか、又はミスマッチは、PAM配列に対応する相補的鎖の領域から少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、若しくは少なくとも19塩基対離れている)。
【0214】
gRNAのタンパク質結合セグメントは、互いに相補的な2つの一続きのヌクレオチドを含むことができる。タンパク質結合セグメントの相補的ヌクレオチドは、ハイブリダイズして二本鎖RNA二重鎖(double-stranded RNA duplex、dsRNA)を形成する。対象のgRNAのタンパク質結合セグメントはCasタンパク質と相互作用し、gRNAは結合したCasタンパク質をDNA標的化セグメントを介して標的化DNA内の特定のヌクレオチド配列に誘導する。
【0215】
単一ガイドRNAは、DNA標的化セグメント及び足場配列(すなわち、ガイドRNAのタンパク質結合又はCas結合配列)を含み得る。例えば、そのようなガイドRNAは、3’足場配列に結合された5’DNA標的化セグメントを有することができる。例示的な足場配列は、GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU(バージョン1、配列番号77)、GUUGGAACCAUUCAAAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン2、配列番号78)、GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン3、配列番号79)、GUUUAAGAGCUAUGCUGGAAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン4、配列番号80)、GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUUU(バージョン5、配列番号81)、GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU(バージョン6、配列番号82)、又はGUUUAAGAGCUAUGCUGGAAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUU(バージョン7、配列番号83)を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。本明細書に開示されるガイドRNA標的配列のうちのいずれか(例えば、配列番号90~95のうちのいずれか)を標的とするガイドRNAは、例えば、ガイドRNAの3’末端上の例示的なガイドRNA足場配列のうちのいずれかに融合したガイドRNAの5’末端上のDNA標的化セグメント(例えば、配列番号96~101のうちのいずれか)を含むことができる。すなわち、本明細書に開示されるDNA標的化セグメントのうちのいずれかは、上記の足場配列のうちのいずれか1つの5’末端に結合して、単一ガイドRNA(キメラガイドRNA)を形成することができる。具体的な例では、配列番号93又は94を標的とするガイドRNAは、例えば、ガイドRNAの3’末端上の例示的なガイドRNA足場配列のうちのいずれかに融合したガイドRNAの5’末端上の配列番号99又は100のDNA標的化セグメントを含むことができる。別の具体的な例では、配列番号93を標的とするガイドRNAは、例えば、ガイドRNAの3’末端上の例示的なガイドRNA足場配列のうちのいずれかに融合したガイドRNAの5’末端上の配列番号99のDNA標的化セグメントを含むことができる。
【0216】
ガイドRNAは、追加の所望の特徴(例えば、修飾若しくは調節された安定性、細胞内標的化、蛍光標識による追跡、タンパク質若しくはタンパク質複合体の結合部位など)を提供する修飾又は配列を含むことができる。ガイドRNAは、1つ以上の修飾ヌクレオシド若しくはヌクレオチド、又は正準A、G、C、及びU残基の代わりに、若しくはそれに加えて使用される1つ以上の天然に存在しない及び/若しくは天然に存在する成分若しくは構成を含むことができる。そのような修飾の例としては、例えば、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニル酸キャップ(m7G))、3’ポリアデニル化テール(すなわち、3’ポリ(A)テール)、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及び/又はタンパク質複合体による安定性の制御及び/又は接近性の制御を可能にする)、安定性制御配列、dsRNA二重鎖を形成する配列(すなわち、ヘアピン)、RNAを細胞内の位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する修飾又は配列、追跡を提供する修飾又は配列(例えば、蛍光分子への直接コンジュゲーション、蛍光検出を容易にする部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列など)、タンパク質(例えば、転写活性化因子などのDNAに作用するタンパク質)に対する結合部位を提供する修飾又は配列、及びそれらの組み合わせが挙げられる。修飾の他の例には、操作されたステムループ二重構造、操作されたバルジ領域、ステムループ二重構造の操作されたヘアピン3’、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2015/0376586号を参照されたい。バルジは、crRNA様領域及び最小のtracrRNA様領域で構成される二重鎖内のヌクレオチドの対になっていない領域であり得る。バルジは、二重鎖の片側に、Xが任意のプリンであり、Yが反対側の鎖のヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成することができるヌクレオチドであり得る、対になっていない5’-XXXY-3’、及び二重鎖の反対側に対になっていないヌクレオチド領域を含むことができる。
【0217】
修飾されていない核酸は分解されやすい可能性がある。外因性核酸はまた、自然免疫応答を誘導し得る。修飾は、安定性を導入し、免疫原性を低減するのに役立ち得る。ガイドRNAは、例えば、以下のうちの1つ以上を含む、修飾ヌクレオシド及び修飾ヌクレオチドを含むことができる:(1)ホスホジエステル骨格結合における、非結合リン酸酸素の一方若しくは両方及び/又は結合リン酸酸素の1つ以上の改変又は置換、(2)リボース糖上の2’ヒドロキシルの改変又は置換などのリボース糖の成分の改変又は置換、(3)リン酸部分の脱リン酸化リンカーによる置換、(4)天然に存在する核酸塩基の修飾又は置換、(5)リボース-リン酸骨格の置換又は修飾、(6)オリゴヌクレオチドの3’末端又は5’末端の修飾(例えば、末端リン酸基の除去、修飾、若しくは置換、又は部分のコンジュゲーション)、並びに(7)糖の修飾。他の可能なガイドRNA修飾には、ウラシル又はポリ-ウラシルトラクトの修飾又は置換が含まれる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2015/048577号及び米国特許出願公開第2016/0237455号を参照されたい。同様の修飾を、Cas mRNAなどのCasコード核酸に行うことができる。例えば、Cas mRNAは、同義のコドンを使用してウリジンを枯渇させることによって修飾することができる。
【0218】
上記のホースでのような化学修飾を組み合わせて、2、3、4、又はそれ以上の修飾を有することができる残基(ヌクレオシド及びヌクレオチド)を含む修飾gRNA及び/又はmRNAを提供することができる。例えば、修飾残基は、修飾された糖及び修飾された核酸塩基を有することができる。一例では、gRNAの全ての塩基が修飾されている(例えば、全ての塩基は、ホスホロチオエート基などの修飾されたリン酸基を有する)。例えば、gRNAの全て又は実質的に全てのリン酸基をホスホロチオエート基で置換することができる。代替的又は追加的に、修飾gRNAは、5’末端又はその近くに少なくとも1つの修飾残基を含むことができる。代替的又は追加的に、修飾gRNAは、3’末端又はその近くに少なくとも1つの修飾残基を含むことができる。
【0219】
いくつかのgRNAは、1つ、2つ、3つ以上の修飾残基を含む。例えば、修飾gRNAにおける少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の位置は、修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドであり得る。
【0220】
修飾されていない核酸は分解されやすい可能性がある。外因性核酸はまた、自然免疫応答を誘導し得る。修飾は、安定性を導入し、免疫原性を低減するのに役立ち得る。本明細書に記載のいくつかのgRNAは、細胞内又は血清ベースのヌクレアーゼに対する安定性を導入するために、1つ以上の修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドを含むことができる。本明細書に記載されているいくつかの修飾gRNAは、細胞の集団に導入された場合、自然免疫応答の低減を示す可能性がある。
【0221】
本明細書に開示されるgRNAは、修飾残基のリン酸基が、酸素のうちの1つ以上を異なる置換基で置換することによって修飾され得る骨格修飾を含むことができる。修飾は、本明細書に記載されるように、修飾されていないリン酸部分を修飾されたリン酸基で大規模に置換することを含み得る。リン酸骨格の骨格修飾には、非荷電リンカー又は非対称電荷分布を有する荷電リンカーのいずれかをもたらす変化も含まれ得る。
【0222】
修飾されたリン酸基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロセレン酸、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、水素ホスホネート、ホスホロアミデート、アルキル又はアリールホスホネート及びホスホトリエステルが挙げられる。修飾されていないリン酸基のリン原子は、アキラル性である。しかしながら、非架橋酸素のうちの1つを上記の原子又は原子の基のうちの1つに置換すると、リン原子がキラルになる可能性がある。立体中心のリン原子は、「R」配置(Rp)又は「S」配置(Sp)のいずれかを有することができる。骨格は、架橋酸素(すなわち、リン酸をヌクレオシドに結合する酸素)を、窒素(架橋ホスホロアミデート)、硫黄(架橋ホスホロチオエート)、及び炭素(架橋メチレンホスホネート)で置換することによっても修飾することができる。置換は、結合酸素又は結合酸素の両方で生じる可能性がある。
【0223】
リン酸基は、特定の骨格修飾でリンを含まないコネクタに置換することができる。いくつかの実施形態では、荷電リン酸基は、中性部分によって置換することができる。リン酸基を置換することができる部分の例としては、例えば、メチルホスホネート、ヒドロキシルアミノ、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルマセタール、ホルマセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、及びメチレンオキシメチルイミノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0224】
核酸を模倣することができる足場はまた、リン酸リンカー及びリボース糖がヌクレアーゼ耐性ヌクレオシド又はヌクレオチド代用物によって置換させるように構築され得る。そのような修飾は、骨格及び糖修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸塩基は、代理骨格によってつながれ得る。例としては、モルフォリノ、シクロブチル、ピロリジン、及びペプチド核酸(peptide nucleic acid、PNA)ヌクレオシド代用物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0225】
修飾ヌクレオシド及び修飾ヌクレオチドは、糖基への1つ以上の修飾(糖修飾)を含むことができる。例えば、2’ヒドロキシル基(OH)を修飾することができる(例えば、いくつかの異なるオキシ又はデオキシ置換基で置換することができる)。2’-アルコキシドイオンを形成するためにヒドロキシルを脱プロトン化することができなくなるため、2’ヒドロキシル基への修飾は核酸の安定性を高めることができる。
【0226】
2’ヒドロキシル基修飾の例としては、アルコキシ又はアリールオキシ(又は、「R」は、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であり得る)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol、PEG)、O(CHCHO)CHCHORが挙げられ、式中、Rは、例えば、H又は任意選択的に置換されたアルキルであり得、nは、0~20(例えば、0~4、0~8、0~10、0~16、1~4、1~8、1~10、1~16、1~20、2~4、2~8、2~10、2~16、2~20、4~8、4~10、4~16、及び4~20)の整数であり得る。2’ヒドロキシル基修飾は、2’-O-Meであり得る。同様に、2’ヒドロキシル基修飾は、2’-フルオロ修飾であり得、これは2’ヒドロキシル基をフッ化物で置き換える。2’ヒドロキシル基修飾は、2’ヒドロキシルが、例えば、C1-6アルキレン又はC1-6ヘテロアルキレンブリッジによって、同じリボース糖の4’炭素に接続され得るロックされた核酸(locked nucleic acid、LNA)を含み得、例示的なブリッジは、メチレン、プロピレン、エーテル又はアミノブリッジ;O-アミノ(アミノは、例えば、NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、又はジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン又はポリアミノであり得る)及びアミノアルコキシ、O(CH-アミノ、(アミノは、例えば、NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ又はジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、又はポリアミノであり得る)を含み得る。2’ヒドロキシル基修飾は、リボース環がC2’-C3’結合を欠いているアンロックされた核酸(unlocked nucleic acid、UNA)を含み得る。2’ヒドロキシル基修飾は、メトキシエチル基(MOE)(OCHCHOCH、例えば、PEG誘導体)を含み得る。
【0227】
デオキシ2’修飾には、水素(すなわち、例えば、部分的にdsRNAのオーバーハング部分にあるデオキシリボース糖)、ハロ(例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ又はヨード)、アミノ(アミノは、例えば、NH2、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、又はアミノ酸であり得る)、NH(CHCHNH)CHCH-アミノ(アミノは、例えば、本明細書に記載されるように)、-NHC(O)R(Rは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖であり得る)、シアノメルカプト、アルキル-チオ-アルキル、チオアルコキシ、並びにアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル及びアルキニルを含み得、これらは、任意選択的に、例えば、本明細書に記載のアミノで置換することができる。
【0228】
糖修飾は、リボース中の対応する炭素とは反対の立体化学的配置を有する1つ以上の炭素を含み得る糖基を含むことができる。したがって、修飾核酸は、糖として、例えば、アラビノースを含むヌクレオチドを含み得る。修飾核酸はまた、脱塩基糖を含み得る。これらの脱塩基糖はまた、構成糖原子のうちの1つ以上で更に修飾することができる。修飾核酸はまた、L型である1つ以上の糖(例えば、L-ヌクレオシド)を含み得る。
【0229】
修飾核酸に組み込むことができる、本明細書に記載の修飾ヌクレオシド及び修飾ヌクレオチドは、核酸塩基とも呼ばれる修飾塩基を含み得る。核酸塩基の例としては、アデニン(adenine、A)、グアニン(guanine、G)、シトシン(cytosine、C)、及びウラシル(uracil、U)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの核酸塩基は、修飾核酸に組み込むことができる修飾残基を提供するために修飾され得るか、又は完全に置換され得る。ヌクレオチドの核酸塩基は、独立して、プリン、ピリミジン、プリン類似体、又はピリミジン類似体から選択することができる。いくつかの実施形態では、核酸塩基は、例えば、塩基の天然に存在する合成誘導体を含むことができる。
【0230】
二重ガイドRNAでは、crRNA及びtracrRNAの各々に修飾を含めることができる。そのような修飾は、crRNA及び/又はtracrRNAの一端又は両端にあり得る。sgRNAでは、sgRNAの一端又は両端の1つ以上の残基が化学的に修飾され得、かつ/又は内部ヌクレオシドが修飾され得、かつ/又はsgRNA全体が化学的に修飾され得る。いくつかのgRNAは、5’末端修飾を含む。いくつかのgRNAは、3’末端修飾を含む。
【0231】
本明細書に開示されるガイドRNAは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2018/107028(Al)号に開示される修飾パターンのうちの1つを含むことができる。本明細書に開示されるガイドRNAはまた、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2017/0114334号に開示される構造/修飾パターンのうちの1つを含むことができる。本明細書に開示されるガイドRNAはまた、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2017/136794号、国際公開第2017/004279号、米国特許出願公開第2018/0187186号、又は米国特許出願公開第2019/0048338号に開示される構造/修飾パターンのうちの1つを含むことができる。
【0232】
一例として、ガイドRNAの5’又は3’末端のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を含むことができる(例えば、塩基は、ホスホロチオアート基である修飾されたリン酸基を有することができる)。例えば、ガイドRNAは、ガイドRNAの5’又は3’末端の2、3、又は4つの末端ヌクレオチド間のホスホロチオエート結合を含むことができる。別の例として、ガイドRNAの5’及び/又は3’末端のヌクレオチドは、2’-O-メチル修飾を有することができる。例えば、ガイドRNAは、ガイドRNAの5’及び/又は3’末端(例えば、5’末端)の2、3、又は4つの末端ヌクレオチドに2’-O-メチル修飾を含むことができる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2017/173054(A1)号、及びFinn et al.(2018)Cell Rep.22(9):2227-2235を参照されたい。他の可能な修飾は、本明細書の他の場所でより詳細に記載される。具体的な例では、ガイドRNAには、最初の3つの5’及び3’末端RNA残基に2’-O-メチル類似体及び3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合が含まれる。そのような化学修飾は、例えば、エキソヌクレアーゼからガイドRNAへのより優れた安定性及び保護を提供し、それらが修飾されていないガイドRNAよりも長く細胞内に持続することを可能にする。そのような化学修飾はまた、例えば、RNAを積極的に分解し得るか又は細胞死につながる免疫カスケードを引き起こし得る自然細胞内免疫応答から保護することもできる。
【0233】
一例として、本明細書に記載のガイドRNAのいずれも、少なくとも1つの修飾を含むことができる。一例では、少なくとも1つの修飾は、2’-O-メチル(2’-O-methyl、2’-O-Me)修飾ヌクレオチド、ヌクレオチド間のホスホロチオエート(phosphorothioate、PS)結合、2’-フルオロ(2’-fluoro、2’-F)修飾ヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含む。例えば、少なくとも1つの修飾は、2’-O-メチル(2’-O-Me)修飾ヌクレオチドを含むことができる。代替的又は追加的に、少なくとも1つの修飾は、ヌクレオチド間のホスホロチオエート(PS)結合を含むことができる。代替的又は追加的に、少なくとも1つの修飾は、2’-フルオロ(2’-F)修飾ヌクレオチドを含むことができる。一例では、本明細書に記載のガイドRNAは、1つ以上の2’-O-メチル(2’-O-Me)修飾ヌクレオチド及びヌクレオチド間の1つ以上のホスホロチオエート(PS)結合を含む。
【0234】
修飾は、ガイドRNAの任意の場所に生じ得る。一例として、ガイドRNAは、ガイドRNAの5’末端の最初の5つのヌクレオチドのうちの1つ以上での修飾を含み、ガイドRNAは、ガイドRNAの3’末端の最後の5つのヌクレオチドのうちの1つ以上での修飾、又はそれらの組み合わせを含む。例えば、ガイドRNAは、ガイドRNAの最初の4つのヌクレオチド間のホスホロチオエート結合、ガイドRNAの最後の4つのヌクレオチド間のホスホロチオエート結合、又はそれらの組み合わせを含むことができる。代替的又は追加的に、ガイドRNAは、ガイドRNAの5’末端の最初の3つのヌクレオチドでの2’-O-Me修飾ヌクレオチドを含むことができ、ガイドRNAの3’末端の最後の3つのヌクレオチドでの2’-O-Me修飾ヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0235】
ヌクレオチド糖環に影響を与えることが示されている別の化学修飾は、ハロゲン置換である。例えば、ヌクレオチド糖環の2’-フルオロ(2’-F)置換は、オリゴヌクレオチド結合親和性及びヌクレアーゼ安定性を高めることができる。脱塩基ヌクレオチドとは、窒素塩基を欠くヌクレオチドを指す。反転した塩基とは、通常の5’から3’への結合(すなわち、5’から5’への結合又は3’から3’への結合)から反転した結合を有するものを指す。
【0236】
脱塩基ヌクレオチドは、逆結合で結合することができる。例えば、脱塩基ヌクレオチドは、5’から5’への結合を介して末端5’ヌクレオチドに結合され得るか、又は脱塩基ヌクレオチドは、3’から3’への結合を介して末端3’ヌクレオチドに結合され得る。末端の5’又は3’ヌクレオチドのいずれかにある逆脱塩基ヌクレオチドは、逆脱塩基エンドキャップとも呼ばれ得る。
【0237】
一例では、5’末端の最初の3、4、又は5ヌクレオチドのうちの1つ以上、及び3’末端の最後の3、4、又は5ヌクレオチドのうちの1つ以上が修飾されている。修飾は、例えば、2’-O-Me、2’-F、逆塩基性ヌクレオチド、ホスホロチオエート結合、又は安定性及び/又は性能を高めることが周知である他のヌクレオチド修飾であり得る。
【0238】
別の例では、5’末端の最初の4ヌクレオチド、及び3’末端の最後の4ヌクレオチドをホスホロチオエート結合で連結することができる。
【0239】
別の例では、5’末端の最初の3つのヌクレオチド、及び3’末端の最後の3つのヌクレオチドは、2’-O-メチル(2’-O-Me)修飾ヌクレオチドを含むことができる。別の例では、5’末端の最初の3つのヌクレオチド、及び3’末端の最後の3つのヌクレオチドは、2’-フルオロ(2’-F)修飾ヌクレオチドを含む。別の例では、5’末端の最初の3つのヌクレオチド、及び3’末端の最後の3つのヌクレオチドは、逆塩基性ヌクレオチドを含む。
【0240】
いくつかのガイドRNA(例えば、単一ガイドRNA)では、ガイドRNAの少なくとも1つのループ(例えば、2つのループ)は、1つ以上のアダプター(すなわち、アダプタータンパク質又はドメイン)に結合する明確に異なるRNA配列の挿入によって修飾される。そのようなアダプタータンパク質は、転写活性化ドメインなどの1つ以上の異種機能ドメインを更に動員するために使用され得る。そのようなアダプタータンパク質(すなわち、キメラアダプタータンパク質)を含む融合タンパク質の例が、本明細書の他の場所に開示される。例えば、MS2結合ループggccAACAUGAGGAUCACCCAUGUCUGCAGggcc(配列番号52)は、配列番号77、79、81、若しくは82に記載されるsgRNA足場(骨格)、又はS.pyogenes CRISPR/Cas9系のsgRNA骨格のヌクレオチド+13~+16及びヌクレオチド+53~+56に取って代わり得、これは、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/049258号、及びKonermann et al.(2015)Nature 517(7536):583-588に記載されている。例えば、図6を参照されたい。本明細書で使用されるガイドRNAの番号付けは、ガイドRNA足場配列(すなわち、ガイドRNAのDNA標的化セグメントの下流の配列)におけるヌクレオチドの番号付けを指す。例えば、ガイドRNA足場の第1のヌクレオチドは+1であり、足場の第2のヌクレオチドは+2である、などである。配列番号77、79、81、又は82中のヌクレオチド+13~+16と対応する残基は、本明細書ではテトラループと称される領域である、配列番号77、79、81、又は82中のヌクレオチド+9~+21に及ぶ領域中のループ配列である。配列番号77、79、81、又は82中のヌクレオチド+53~+56と対応する残基は、本明細書ではステムループ2と称される領域である、配列番号77、79、81、又は82中のヌクレオチド+48~+61に及ぶ領域中のループ配列である。配列番号77、79、81、又は82中の他のステムループ配列は、ステムループ1(ヌクレオチド+33~+41)及びステムループ3(ヌクレオチド+63~+75)を含む。結果として得られる構造は、テトラループ及びステムループ2配列の各々が、MS2結合ループによって置き換えられている、sgRNA足場である。テトラループ及びステムループ2は、MS2結合ループを追加することがいかなるCas9残基にも干渉すべきでないように、Cas9タンパク質から突出する。追加的に、テトラループ及びステムループ2部位のDNAへの近接は、これらの位置への局在化により、DNAと転写活性化因子などの任意の動員されたタンパク質との間に高度な相互作用がもたらされ得ることを示す。したがって、いくつかのsgRNAでは、配列番号77、79、81、又は82に記載されるガイドRNA足場の+13~+16に対応するヌクレオチド及び/若しくは+53~+56に対応するヌクレオチド、又は対応する残基は、これらの足場/骨格のうちのいずれかと最適にアラインされたときに、1つ以上のアダプタータンパク質又はドメインに結合することが可能な明確に異なるRNA配列によって置き換えられる。代替的又は追加的に、アダプター結合配列は、ガイドRNAの5’末端又は3’末端に付加され得る。テトラループ及びステムループ2領域にMS2結合ループを含む例示的なガイドRNA足場は、配列番号66又は71に記載される配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなることができる。テトラループ及びステムループ2領域にMS2結合ループを含む例示的な一般的単一ガイドRNAは、配列番号68又は72に記載される配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなることができる。
【0241】
ガイドRNAは、任意の形態で提供され得る。例えば、gRNAは、2つの分子(別個のcrRNA及びtracrRNA)又は1つの分子(sgRNA)のいずれかとしてRNAの形態で、及び任意選択的にCasタンパク質との複合体の形態で提供され得る。gRNAはまた、gRNAをコードするDNAの形態で提供され得る。gRNAをコードするDNAは、単一RNA分子(sgRNA)又は別個のRNA分子(例えば、別個のcrRNA及びtracrRNA)をコードすることができる。後者の場合、gRNAをコードするDNAは、1つのDNA分子として、又はそれぞれcrRNA及びtracrRNAをコードする別個のDNA分子として提供され得る。
【0242】
gRNAがDNAの形態で提供される場合、gRNAは、一過性に、条件付きで、又は構成的に細胞内で発現され得る。gRNAをコードするDNAは、細胞のゲノムにおいて安定して組み込まれ、細胞において活性なプロモーターに作動可能に連結され得る。代替的に、gRNAをコードするDNAは、発現コンストラクト中のプロモーターに作動可能に連結され得る。例えば、gRNAをコードするDNAは、異種核酸を含むベクター内にあり得る。そのような発現コンストラクトにおいて使用され得るプロモーターには、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、成体幹細胞、発達的に制限された前駆細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、又は1細胞期胚のうちの1つ以上において活性なプロモーターが含まれる。そのようなプロモーターは、例えば、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、又は組織特異的プロモーターであり得る。そのようなプロモーターはまた、例えば、双方向プロモーターであり得る。好適なプロモーターの特定の例には、ヒトU6プロモーター、ラットU6ポリメラーゼIIIプロモーター、又はマウスU6ポリメラーゼIIIプロモーターなどのRNAポリメラーゼIIIプロモーターが含まれる。
【0243】
代替的に、gRNAは、他の様々な方法で調製され得る。例えば、gRNAは、例えば、T7 RNAポリメラーゼを使用するインビトロ転写によって調製することができる(例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2014/089290号及び国際公開第2014/065596号を参照されたい)。ガイドRNAはまた、化学的合成によって調製された合成的に生成された分子であり得る。例えば、ガイドRNAを化学的に合成して、最初の3つの5’及び3’末端RNA残基に2’-O-メチル類似体及び3’ホスホロチオアートヌクレオチド間結合を含むことができる。
【0244】
ガイドRNA(又はガイドRNAをコードする核酸)は、1つ以上のガイドRNA(例えば、1、2、3、4、又はそれ以上のガイドRNA)と、ガイドRNAの安定性を増加させる(例えば、所定の保存条件下(例えば、-20℃、4℃、又は周囲温度)で、分解産物が閾値未満、例えば出発核酸若しくはタンパク質の0.5重量%未満のままである期間を延長する、又はインビボでの安定性を増加させる)担体と、を含む、組成物であり得る。そのような担体の非限定的な例には、ポリ(乳酸)(poly(lactic acid)、PLA)ミクロスフェア、ポリ(D,L-乳酸-コグリコール-酸)(poly(D,L-lactic-coglycolic-acid)、PLGA)ミクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質コキレート(cochleates)、及び脂質微小管が挙げられる。そのような組成物は、Cas9タンパク質などのCasタンパク質、又はCasタンパク質をコードする核酸を更に含み得る。
【0245】
(2)ガイドRNA標的配列
ガイドRNAの標的DNAには、結合に十分な条件が存在する場合に、gRNAのDNA標的化セグメントが結合するDNAに存在する核酸配列が含まれる。好適なDNA/RNA結合条件には、細胞に通常存在する生理学的条件が含まれる。他の好適なDNA/RNA結合条件(例えば、無細胞系における条件)は、当技術分野で公知である(例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,Harbor Laboratory Press 2001)を参照されたい。gRNAに相補的であり、かつそれとハイブリダイズする標的DNAの鎖は、「相補的鎖」と呼ぶことができ、「相補的鎖」に相補的である(したがって、Casタンパク質又はgRNAに相補的ではない)標的DNAの鎖は、「非相補的鎖」又は「テンプレート鎖」と呼ぶことができる。
【0246】
標的DNAは、ガイドRNAがハイブリダイズする相補的鎖上の配列と非相補的鎖上の対応する配列(例えば、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接する)の両方を含む。本明細書で使用される「ガイドRNA標的配列」という用語は、具体的には、特に、ガイドRNAが相補的鎖上でハイブリダイズする配列に対応する(すなわち、その逆相補体)非相補的鎖上の配列を指す。すなわち、ガイドRNA標的配列は、PAMに隣接する非相補的鎖上の配列(例えば、Cas9の場合、PAMの上流又は5’)を指す。ガイドRNA標的配列は、ガイドRNAのDNA標的化セグメントと同等であるが、ウラシルの代わりにチミンを含む。一例として、SpCas9酵素のガイドRNA標的配列は、非相補的鎖上の5’-NGG-3’PAMの上流の配列を指し得る。ガイドRNAは、標的DNAの相補的鎖に対して相補性を有するように設計されており、ガイドRNAのDNA標的化セグメントと標的DNAの相補的鎖との間のハイブリダイゼーションは、CRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性があれば、完全な相補性は必ずしも必要ではない。ガイドRNAが本明細書でガイドRNA標的配列を標的とするものとして言及される場合、それは、ガイドRNAが、非相補的鎖上のガイドRNA標的配列の逆相補体である標的DNAの相補的鎖配列にハイブリダイズすることを意味する。
【0247】
標的DNA又はガイドRNA標的配列は、任意のポリヌクレオチドを含み得、例えば、細胞の核又は細胞質内、あるいはミトコンドリア又は葉緑体などの細胞の細胞小器官内に位置し得る。標的DNA又はガイドRNA標的配列は、細胞に対して内因性又は外因性の任意の核酸配列であり得る。ガイドRNA標的配列は、遺伝子産物(例えば、タンパク質)をコードする配列又は非コード配列(例えば、制御性配列)であり得るか、又は両方を含み得る。
【0248】
それは標的配列が遺伝子の転写開始部位に隣接していることが好ましい場合がある。例えば、標的配列は、転写開始部位の1000、900、800、700、600、500、400、300、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、若しくは1塩基対以内、転写開始部位の1000、900、800、700、600、500、400、300、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、若しくは1塩基対上流以内、又は転写開始部位の1000、900、800、700、600、500、400、300、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、若しくは1塩基対下流以内であり得る。任意選択的に、標的配列は、転写開始部位の200塩基対上流及び転写開始部位の1塩基対下流の領域内(-200~+1)にある。
【0249】
標的配列は、転写活性化の標的となることが所望される任意の遺伝子内にあり得る。いくつかの事例では、標的遺伝子は、非発現遺伝子又は弱発現遺伝子であり得る(例えば、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、又は2倍など、バックグラウンドを超えて最小限にしか発現されない)。標的遺伝子はまた、対照遺伝子と比較して低レベルで発現されるものであり得る。標的遺伝子はまた、エピジェネティックにサイレンスされるものであり得る。「エピジェネティックにサイレンシングされる」という用語は、変異などの遺伝的変化以外の機構により、転写されていない、又は対照サンプル(例えば、正常細胞などの対応する対照細胞)における遺伝子の転写レベルに対して低下したレベルで転写されている遺伝子を指す。遺伝子サイレンシングのエピジェネティックな機構は周知であり、例えば、遺伝子転写が減少又は阻害されるような、遺伝子の5’調節領域のCpGアイランドでのCpGジヌクレオチドの高メチル化、及び例えば、ヒストンのアセチル化によるクロマチンの構造変化が含まれる。
【0250】
標的遺伝子には、特定の臓器又は組織で発現される遺伝子が含まれ得る。標的遺伝子は、疾患関連遺伝子を含み得る。疾患関連遺伝子とは、非疾患対照の組織又は細胞と比較して、疾患発症組織に由来する細胞において異常なレベル又は異常な形態で転写又は翻訳産物を産生する任意の遺伝子を指す。それは、異常に高いレベルで発現されるようになる遺伝子であり得、そこでは、改変された発現は、疾患の発生及び/又は進行と相関する。疾患関連遺伝子はまた、疾患の病因に関与する変異又は遺伝的バリエーションを所有する遺伝子を指す。転写又は翻訳された産物は、公知又は未知であり得、正常又は異常なレベルであり得る。
【0251】
そのような標的遺伝子の1つの具体的な例は、Myoc遺伝子(例えば、本明細書の他の場所に記載されるヒト化MYOC遺伝子座)である。マウスMyoc遺伝子におけるガイドRNA標的配列(PAMを含まない)の例は、配列番号90~95に記載されている。配列番号90~95に記載されるガイドRNA標的配列に対応するガイドRNA DNA標的化セグメントは、それぞれ、配列番号96~101に記載されている。ガイドRNA標的配列の具体的な例は、配列番号93又は94(それぞれ、配列番号99又は100に記載される対応するDNA標的化セグメントを有する)である。ガイドRNA標的配列の別の具体的な例は、配列番号93(配列番号99に記載される対応するDNA標的化セグメントを有する)である。
【0252】
Casタンパク質による標的DNAの部位特異的結合及び切断は、(i)ガイドRNAと標的DNAの相補的鎖との間の塩基対合相補性、及び(ii)標的DNAの非相補的鎖にある、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる短いモチーフの両方によって決定される位置で起こり得る。PAMは、ガイドRNA標的配列に隣接し得る。任意選択的に、ガイドRNA標的配列は、3’末端でPAMが隣接し得る(例えば、Cas9の場合)。代替的に、ガイドRNA標的配列は、5’末端でPAMが隣接し得る(例えば、Cpf1の場合)。例えば、Casタンパク質の切断部位は、PAM配列の上流又は下流(例えば、ガイドRNA標的配列内)の約1~約10又は約2~約5塩基対(例えば、3塩基対)であり得る。SpCas9の場合、PAM配列(すなわち、非相補的鎖上)は、5’-NGG-3’であり得、Nは、任意のDNAヌクレオチドであり、PAMは、標的DNAの非相補的鎖上のガイドRNA標的配列の3’のすぐ近くである。したがって、相補的鎖上のPAMに対応する(すなわち、逆相補体)配列は、5’-CCN-3’であり、Nは、任意のDNAヌクレオチドであり、ガイドRNAのDNA標的化セグメントが標的DNAの相補的鎖にハイブリダイズする配列の5’のすぐ近くである。いくつかのそのような場合、N及びNは、相補的であり得、N-N塩基対は、任意の塩基対であり得る(例えば、N=C及びN=G、N=G及びN=C、N=A及びN=T、又はN=T及びN=A)。Staphylococcus aureus由来のCas9の場合、PAMは、NNGRRT又はNNGRRであり得、ここでNは、A、G、C、又はTであり得、Rは、G又はAであり得る。Campylobacter jejuni由来のCas9の場合、PAMは、例えば、NNNNACAC又はNNNNRYACであり得、ここでNは、A、G、C、又はTであり得、Rは、G又はAであり得る。いくつかの場合(例えば、FnCpf1の場合)、PAM配列は、5’末端の上流にあり得、配列5’-TTN-3’を有することができる。
【0253】
ガイドRNA標的配列の例は、SpCas9タンパク質によって認識されるNGGモチーフの直前の20ヌクレオチドのDNA配列である。例えば、ガイドRNA標的配列+PAMの2つの例は、GN19NGG(配列番号84)又はN20NGG(配列番号85)である。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2014/165825号を参照されたい。5’末端のグアニンは、細胞内のRNAポリメラーゼによる転写を促進することができる。ガイドRNA標的配列+PAMの他の例は、5’末端に2つのグアニンヌクレオチド(例えば、GGN20NGG;配列番号86)を含み、インビトロでT7ポリメラーゼによる効率的な転写を容易にすることができる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2014/065596号を参照されたい。他のガイドRNA標的配列及びPAMは、4~22ヌクレオチド長の、配列番号84~86(5’G又はGG及び3’GG又はNGGを含む)を有することができる。更に他のガイドRNA標的配列+PAMは、14~20ヌクレオチド長の、配列番号84~86を有することができる。
【0254】
標的DNAにハイブリダイズしたCRISPR複合体の形成は、ガイドRNA標的配列(すなわち、標的DNAの非相補的鎖上のガイドRNA標的配列及びガイドRNAがハイブリダイズする相補的鎖上の逆相補体)に対応する領域内又は領域の近くの標的DNAの一方又は両方の鎖の切断をもたらし得る。例えば、切断部位は、ガイドRNA標的配列内にあり得る(例えば、PAM配列に対して定義された位置に)。「切断部位」は、Casタンパク質が一本鎖切断又は二本鎖切断を生成する標的DNAの位置を含む。切断部位は、一本鎖のみ(例えば、ニッカーゼが使用される場合)又は二本鎖DNAの両方の鎖上にあり得る。切断部位は、両方の鎖の同じ位置(平滑末端を生成する、例えば、Cas9)にあり得るか、又は各鎖の異なる部位(付着末端(すなわち、オーバーハング)を生成する、例えば、Cpf1)にあり得る。付着末端は、例えば、各々が異なる鎖上の異なる切断部位で一本鎖切断を生成し、それによって二本鎖切断を生成する2つのCasタンパク質を使用することによって生成され得る。例えば、第1のニッカーゼは、二本鎖DNA(dsDNA)の第1の鎖上に一本鎖切断を生成することができ、第2のニッカーゼは、オーバーハング配列が生成されるようにdsDNAの第2の鎖上に一本鎖切断を生成することができる。場合によっては、第1の鎖上のニッカーゼのガイドRNA標的配列又は切断部位は、第2の鎖上のニッカーゼのガイドRNA標的配列又は切断部位から、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、又は少なくとも1,000塩基対分離される。
【0255】
D.リコンビナーゼ及びリコンビナーゼ欠失体非ヒト動物
キメラCasタンパク質発現カセット、キメラアダプタータンパク質発現カセット、SAM発現カセット、ガイドRNA発現カセット(例えば、1つ以上のガイドRNA発現カセット)、又はカセットが本明細書に開示される部位特異的リコンビナーゼによって認識されるリコンビナーゼ認識部位に隣接するポリアデニル化シグナル若しくは転写ターミネーターの下流にあるリコンビナーゼ発現カセットを含む、細胞又は非ヒト動物は、部位特異的リコンビナーゼの発現を駆動するリコンビナーゼ発現カセットを更に含むことができる。リコンビナーゼをコードする核酸を、ゲノムに組み込むことができるか、又はリコンビナーゼ若しくは核酸を、本明細書の他の場所に開示される方法(例えば、LNP媒介送達又はAAV媒介送達)を使用して、そのような細胞及び非ヒト動物に導入することができる。送達方法は、本明細書の他の場所に開示されるリコンビナーゼの組織特異的送達を提供するように選択され得る。
【0256】
部位特異的リコンビナーゼには、2つの組換え部位が単一の核酸内又は別個の核酸上で物理的に分離されているリコンビナーゼ認識部位間の組換えを促進し得る酵素が含まれる。リコンビナーゼの例としては、Cre、Flp、及びDreリコンビナーゼが挙げられる。Creリコンビナーゼ遺伝子の一例はCreiであり、Creリコンビナーゼをコードする2つのエキソンがイントロンによって分離され、原核細胞での発現を妨げる。そのようなリコンビナーゼは、核への局在化を促進するための核局在化シグナルを更に含み得る(例えば、NLS-Crei)。リコンビナーゼ認識部位には、部位特異的リコンビナーゼによって認識され、組換え事象の基質として機能し得るヌクレオチド配列が含まれる。リコンビナーゼ認識部位の例としては、FRT、FRT11、FRT71、attp、att、rox、並びにloxP、lox511、lox2272、lox66、lox71、loxM2、及びlox5171などのlox部位が挙げられる。
【0257】
リコンビナーゼ発現カセットは、本明細書に開示される他の発現カセットとは異なる標的ゲノム遺伝子座に組み込むことができるか、又は同じ標的遺伝子座(例えば、Rosa26遺伝子座の第1のイントロンに組み込まれるなど、Rosa26遺伝子座)にゲノムに組み込むことができる。例えば、細胞又は非ヒト動物は、SAM発現カセット(又はキメラCasタンパク質発現カセット若しくはキメラアダプタータンパク質発現カセット)及びリコンビナーゼ発現カセットの各々についてヘテロ接合性であり得、SAM発現カセットを含む標的ゲノム遺伝子の1つの対立遺伝子、及びリコンビナーゼ標的カセット標的カセットを含む標的ゲノム遺伝子の第2の対立遺伝子を有する。同様に、細胞又は非ヒト動物は、ガイドRNA発現カセット(例えば、ガイドRNAアレイ発現カセット)及びリコンビナーゼ発現カセットの各々についてヘテロ接合性であり得、ガイドRNA発現カセットを含む標的ゲノム遺伝子の1つの対立遺伝子、及びリコンビナーゼ標的カセット標的カセットを含む標的ゲノム遺伝子の第2の対立遺伝子を有する。
【0258】
リコンビナーゼ発現カセット中のリコンビナーゼ遺伝子は、任意の好適なプロモーターに作動可能に連結され得る。プロモーターの例は、本明細書の他の場所に記載されている。例えば、プロモーターは、組織特異的プロモーター又は発生段階特異的プロモーターであり得る。そのようなプロモーターは、所望の組織において、又は所望の発生段階においてのみ、標的遺伝子の転写を選択的に活性化することができるため有利である。例えば、Casタンパク質の場合、これは、インビボでのCas媒介性毒性の可能性を低減することができる。マウスリコンビナーゼの例示的なプロモーターが公知であり、例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2019/0284572号及び国際公開第2019/183123号に記載されている。
【0259】
E.キメラCasタンパク質、キメラアダプタータンパク質、ガイドRNA、相乗的活性化メディエーター、又はリコンビナーゼをコードする核酸
また、キメラCasタンパク質、キメラアダプタータンパク質、ガイドRNA、リコンビナーゼ、又はそれらの任意の組み合わせをコードする核酸も提供される。キメラCasタンパク質、キメラアダプタータンパク質、及びガイドRNAは、本明細書の他の場所でより詳細に記載されている。例えば、核酸は、キメラCasタンパク質発現カセット、キメラアダプタータンパク質発現カセット、キメラCasタンパク質及びキメラアダプタータンパク質の両方をコードする核酸を含む相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセット、ガイドRNA若しくはガイドRNAアレイ発現カセット、リコンビナーゼ発現カセット、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。そのような核酸は、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(messenger RNA、mRNA))又はDNAであり得、一本鎖又は二本鎖であり得、直鎖状又は環状であり得る。DNAは、発現ベクター又は標的化ベクターなどのベクターの一部であり得る。ベクターはまた、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、及びレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターであり得る。本明細書に開示される核酸のうちのいずれかが細胞に導入されると、コードされたキメラCasタンパク質、キメラアダプタータンパク質、又はガイドRNAは、細胞内で一過性に、条件付きで、又は構成的に発現され得る。
【0260】
任意選択的に、特定の細胞又は生物におけるタンパク質への効率的な翻訳のために、核酸がコドン最適化され得る。例えば、核酸は、天然に存在するポリヌクレオチド配列と比較して、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、又は任意の他の目的の宿主細胞においてより高い使用頻度を有する代替コドンへと修飾することができる。
【0261】
核酸若しくは発現カセットは、細胞若しくは非ヒト動物のゲノムに(すなわち、染色体に)安定的に組み込むことができるか、又は染色体の外側に位置することができる(例えば、DNAを染色体外に複製する)。安定的に組み込まれた発現カセット又は核酸は、非ヒト動物のゲノムにランダムに組み込むことができる(すなわち、トランスジェニック)か、又は非ヒト動物のゲノムの所定の領域に組み込むことができる(すなわち、ノックイン)。一例では、核酸又は発現カセットは、本明細書の他の場所に記載されるように、セーフハーバー遺伝子座に安定的に組み込まれる。核酸又は発現カセットが安定的に組み込まれる標的ゲノム遺伝子座は、核酸若しくは発現カセットについてヘテロ接合性、又は核酸若しくは発現カセットについてホモ接合性であり得る。例えば、標的ゲノム遺伝子座又は非ヒト動物細胞若しくは非ヒト動物は、SAM発現カセットについてヘテロ接合性、かつガイドRNA発現カセットについてヘテロ接合性であり得、任意選択的に、各々が異なる対立遺伝子上の同じ標的ゲノム遺伝子座にある。
【0262】
本明細書に記載される核酸又は発現カセットは、非ヒト動物内のインビボ、又は細胞内のインビトロ若しくはエクスビボでの発現のための任意の好適なプロモーターに作動可能に連結され得る。非ヒト動物は、本明細書の他の場所に記載される任意の好適な動物であり得る。一例として、核酸又は発現カセット(例えば、キメラCasタンパク質発現カセット、キメラアダプタータンパク質発現カセット、又はキメラCasタンパク質及びキメラアダプタータンパク質の両方をコードする核酸を含むSAMカセット)は、Rosa26プロモーターなどの標的ゲノム遺伝子座で内因性プロモーターに作動可能に連結され得る。代替的に、カセット核酸又は発現カセットは、外因性プロモーター、例えば、構成的に活性なプロモーター(例えば、CAGプロモーター若しくはU6プロモーター)、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、時間的に制限されたプロモーター(例えば、発生的に調節されたプロモーター)、又は空間的に制限されたプロモーター(例えば、細胞特異的若しくは組織特異的プロモーター)に作動可能に連結され得る。そのようなプロモーターは周知であり、本明細書の他の場所で議論されている。発現コンストラクトにおいて使用することができるプロモーターには、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、ウサギ細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、又は接合子のうちの1つ以上において活性なプロモーターが含まれる。そのようなプロモーターは、例えば、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、又は組織特異的プロモーターであり得る。
【0263】
例えば、ガイドRNAをコードする核酸は、ヒトU6プロモーター又はマウスU6プロモーターなどのU6プロモーターに作動可能に連結され得る。好適なプロモーター(例えば、ガイドRNAを発現するための)の特定の例には、ヒトU6プロモーター、ラットU6ポリメラーゼIIIプロモーター、又はマウスU6ポリメラーゼIIIプロモーターなどのRNAポリメラーゼIIIプロモーターが含まれる。
【0264】
任意選択的に、プロモーターは、第1の遺伝子(例えば、キメラCasタンパク質をコードする遺伝子)及び第2の遺伝子(例えば、ガイドRNA又はキメラアダプタータンパク質をコードする遺伝子)の発現を他の方向に駆動する双方向プロモーターであり得る。そのような双方向プロモーターは、(1)遠位配列要素(distal sequence element、DSE)、近位配列要素(proximal sequence element、PSE)、及びTATAボックスの3つの外部制御要素を含む完全な従来の一方向Pol IIIプロモーター、並びに(2)DSEの5’末端に逆方向に融合されたPSE及びTATAボックスを含む第2の基本的なPol IIIプロモーターで構成することができる。例えば、H1プロモーターでは、DSEはPSE及びTATAボックスに隣接しており、プロモーターは、U6プロモーターに由来するPSE及びTATAボックスを追加することによって逆方向の転写が制御されるハイブリッドプロモーターを作成することにより、双方向にすることができる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0074535号を参照されたい。双方向プロモーターを使用して2つの遺伝子を同時に発現させることにより、コンパクトな発現カセットを生成して送達を容易にすることができる。
【0265】
核酸のうちの1つ以上は、マルチシストロン性発現コンストラクトにおいて一緒であり得る。例えば、キメラCasタンパク質をコードする核酸及びキメラアダプタータンパク質をコードする核酸は、バイシストロン性発現コンストラクトにおいて一緒であり得る。例えば、図4A及び図4Bを参照されたい。マルチシストロン性発現ベクターは、同じmRNA(すなわち、同じプロモーターから生成された転写物)から2つ以上の別々のタンパク質を同時に発現する。タンパク質のマルチシストロン発現のための好適な方略には、例えば、2Aペプチドの使用及び内部リボソーム進入部位(internal ribosome entry site、IRES)の使用が含まれる。例えば、そのようなコンストラクトは、(1)1つ以上のキメラCasタンパク質及び1つ以上のキメラアダプタータンパク質をコードする核酸、(2)2つ以上のキメラアダプタータンパク質をコードする核酸、(3)2つ以上のキメラCasタンパク質をコードする核酸、(4)2つ以上のガイドRNA若しくは2つ以上のガイドRNAアレイをコードする核酸、(5)1つ以上のキメラCasタンパク質及び1つ以上のガイドRNA若しくはガイドRNAアレイをコードする核酸、(6)1つ以上のキメラアダプタータンパク質及び1つ以上のガイドRNA若しくはガイドRNAアレイをコードする核酸、又は(7)1つ以上のキメラCasタンパク質、1つ以上のキメラアダプタータンパク質、及び1つ以上のガイドRNA若しくはガイドRNAアレイをコードする核酸を含むことができる。一例として、そのようなマルチシストロン性ベクターは、1つ以上の内部リボソーム進入部位(IRES)を使用して、mRNAの内部領域からの翻訳の開始を可能にすることができる。別の例として、そのようなマルチシストロン性ベクターは、1つ以上の2Aペプチドを使用することができる。これらのペプチドは、一般に18~22アミノ酸の長さを有する、小さな「自己切断」ペプチドであり、同じmRNAから等モルレベルの複数の遺伝子を産生する。リボソームは、2AペプチドのC末端でのグリシル-プロリルペプチド結合の合成をスキップし、2Aペプチドとそのすぐ下流のペプチドの間の「切断」を引き起こす。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kim et al.(2011)PLoS One 6(4):e18556を参照されたい。「切断」は、C末端にあるグリシンとプロリン残基との間で発生し、上流のシストロンが、その最後にいくつかの残基を付加し、下流のシストロンはプロリンで始まる。その結果、「切断された」下流ペプチドは、そのN末端にプロリンを有する。2A媒介切断は、全ての真核細胞で普遍的な現象である。2Aペプチドは、ピコルナウイルス、昆虫ウイルス、及びC型ロタウイルスから同定されている。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Szymczak et al.(2005)Expert Opin.Biol.Ther.5(5):627-638を参照されたい。使用することができる2Aペプチドの例には、Thoseaasignaウイルス2A(Thoseaasigna virus 2A、T2A)、ブタテッショウウイルス-1 2A(porcine teschovirus-1 2A、P2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(equine rhinitis A virus、ERAV)2A(ERAV 2A、E2A)、及びFMDV 2A(FMDV 2A、F2A)が含まれる。例示的なT2A、P2A、E2A、及びF2A配列には、以下が含まれる:T2A(EGRGSLLTCGDVEENPGP、配列番号53)、P2A(ATNFSLLKQAGDVEENPGP、配列番号54)、E2A(QCTNYALLKLAGDVESNPGP、配列番号55)、及びF2A(VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP、配列番号56)。GSG残基は、これらのペプチドのいずれかの5’末端に付加して、切断効率を向上させることができる。
【0266】
核酸又は発現カセットのうちのいずれかは、コード配列の上流にポリアデニル化シグナル又は転写ターミネーターを含むことができる。ポリアデニル化シグナル配列という用語は、転写の終結及びmRNA転写物へのポリAテールの付加を指示する任意の配列を、指す。真核生物では、転写ターミネーターはタンパク質因子によって認識され、終結の後に、ポリ(A)ポリメラーゼの存在下でmRNA転写物にポリ(A)テールを追加するプロセスである、ポリアデニル化が続く。哺乳動物のポリ(A)シグナルは、典型的には、約45ヌクレオチド長のコア配列で構成されており、切断及びポリアデニル化の効率を高めることに役立つ多様な補助配列が、隣接している場合がある。コア配列は、ポリA認識モチーフ又はポリA認識配列と称され、切断及びポリアデニル化特異性因子(cleavage and polyadenylation-specificity factor、CPSF)によって認識される、mRNA内の高度に保存された上流要素(AATAAA又はAAUAAA)、並びに定義が不十分であり、切断刺激因子(cleavage stimulation factor、CstF)によって結合される下流領域(U又はG及びUが豊富)で構成される。使用され得る転写ターミネーターの例としては、例えば、ヒト成長ホルモン(human growth hormone、HGH)ポリアデニル化シグナル、シミアンウイルス40(simian virus 40、SV40)後期ポリアデニル化シグナル、ウサギベータグロビンポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(bovine growth hormone、BGH)ポリアデニル化シグナル、ホスホグリセリン酸キナーゼ(phosphoglycerate kinase、PGK)ポリアデニル化シグナル、AOX1転写終結配列、CYC1転写終結配列、又は真核細胞における遺伝子発現の調節に好適であることが知られている任意の転写終結配列が、挙げられる。例えば、キメラCasタンパク質発現カセット、キメラアダプタータンパク質発現カセット、SAM発現カセット、ガイドRNA発現カセット、又はリコンビナーゼ発現カセットは、発現カセット内のコード配列の上流にポリアデニル化シグナル又は転写ターミネーターを含むことができる。ポリアデニル化シグナル又は転写ターミネーターは、部位特異的リコンビナーゼによって認識されるリコンビナーゼ認識部位に隣接することができる。任意選択的に、リコンビナーゼ認識部位はまた、例えば、薬物耐性タンパク質のコード配列を含む選択カセットに隣接する。任意選択的に、リコンビナーゼ認識部位は選択カセットに隣接しない。ポリアデニル化シグナル又は転写ターミネーターは、コード配列によってコードされるタンパク質又はRNA(例えば、キメラCasタンパク質、キメラアダプタータンパク質、ガイドRNA、又はリコンビナーゼ)の転写及び発現を妨げる。しかしながら、部位特異的リコンビナーゼに曝露すると、ポリアデニル化シグナル又は転写ターミネーターが切除されると、タンパク質又はRNAを発現させることができる。
【0267】
発現カセット(例えば、キメラCasタンパク質発現カセット又はSAM発現カセット)のそのような構成は、ポリアデニル化シグナル又は転写ターミネーターが組織特異的又は発生段階特異的な様式で切除される場合、発現カセットを含む非ヒト動物における組織特異的発現又は発生段階特異的発現を可能にすることができる。例えば、キメラCasタンパク質の場合、これは、細胞若しくは非ヒト動物におけるキメラCasタンパク質の長期発現、又は非ヒト動物内の望ましくない発生段階若しくは望ましくない細胞あるいは組織型におけるキメラCasタンパク質の発現に起因する毒性を低減し得る。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Parikh et al.(2015)PLoS One 10(1):e0116484を参照されたい。組織特異的又は発生段階特異的な様式でのポリアデニル化シグナル又は転写ターミネーターの切除は、発現カセットを含む非ヒト動物が、組織特異的又は発生段階特異的プロモーターに作動可能に連結された部位特異的リコンビナーゼのコード配列を更に含む場合に達成することができる。次いで、ポリアデニル化シグナル又は転写ターミネーターは、それらの組織又はそれらの発生段階でのみ切除され、組織特異的発現又は発生段階特異的発現を可能にする。一例では、キメラCasタンパク質、キメラアダプタータンパク質、キメラCasタンパク質及びキメラアダプタータンパク質、又はガイドRNAは、肝臓特異的な様式で発現され得る。非ヒト動物のそのような「リコンビナーゼ欠失体」株を開発するために使用されているそのようなプロモーターの例は、本明細書の他の場所に開示されている。
【0268】
任意の転写ターミネーター又はポリアデニル化シグナルを使用することができる。本明細書で使用される「転写ターミネーター」は、転写の終結を引き起こすDNA配列を指す。真核生物では、転写ターミネーターはタンパク質因子によって認識され、終結の後に、ポリ(A)ポリメラーゼの存在下でmRNA転写物にポリ(A)テールを追加するプロセスである、ポリアデニル化が続く。哺乳動物のポリ(A)シグナルは、典型的には、約45ヌクレオチド長のコア配列で構成されており、切断及びポリアデニル化の効率を高めることに役立つ多様な補助配列が、隣接している場合がある。コア配列は、ポリA認識モチーフ又はポリA認識配列と称され、切断及びポリアデニル化特異性因子(CPSF)によって認識される、mRNA内の高度に保存された上流要素(AATAAA又はAAUAAA)、並びに定義が不十分であり、切断刺激因子(CstF)によって結合される下流領域(U又はG及びUが豊富)で構成される。使用され得る転写ターミネーターの例としては、例えば、ヒト成長ホルモン(HGH)ポリアデニル化シグナル、シミアンウイルス40(SV40)後期ポリアデニル化シグナル、ウサギベータグロビンポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)ポリアデニル化シグナル、AOX1転写終結配列、CYC1転写終結配列、又は真核細胞における遺伝子発現の調節に適していることが周知の、任意の転写終結配列が、挙げられる。
【0269】
部位特異的リコンビナーゼには、2つの組換え部位が単一の核酸内又は別個の核酸上で物理的に分離されているリコンビナーゼ認識部位間の組換えを促進し得る酵素が、含まれる。リコンビナーゼの例としては、Cre、Flp、及びDreリコンビナーゼが挙げられる。Creリコンビナーゼ遺伝子の一例はCreiであり、Creリコンビナーゼをコードする2つのエキソンがイントロンによって分離され、原核細胞での発現を妨げる。そのようなリコンビナーゼは、核への局在化を促進するための核局在化シグナルを更に含み得る(例えば、NLS-Crei)。リコンビナーゼ認識部位には、部位特異的リコンビナーゼによって認識され、組換え事象の基質として機能し得るヌクレオチド配列が含まれる。リコンビナーゼ認識部位の例としては、FRT、FRT11、FRT71、attp、att、rox、並びにloxP、lox511、lox2272、lox66、lox71、loxM2、及びlox5171などのlox部位が挙げられる。
【0270】
本明細書に開示される発現カセットは、他の成分も含むことができる。そのような発現カセット(例えば、キメラCasタンパク質発現カセット、キメラアダプタータンパク質発現カセット、SAM発現カセット、ガイドRNA発現カセット、又はリコンビナーゼ発現カセット)は、発現カセットの5’末端にある3’スプライシング配列及び/又はコード配列(例えば、キメラCasタンパク質、キメラアダプタータンパク質、ガイドRNA、若しくはリコンビナーゼをコードする)に続く第2のポリアデニル化シグナルを更に含むことができる。3’スプライシング配列という用語は、スプライシング機構によって認識及び結合され得る3’イントロン/エキソン境界における核酸配列を指す。発現カセットは、例えば、薬物耐性タンパク質のコード配列を含む選択カセットを更に含むことができる。好適な選択マーカーの例としては、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hyg)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(puro)、ブラストサイジンSデアミナーゼ(bsr)、キサンチン/グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、又は単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-k)が挙げられる。任意選択的に、選択カセットは、部位特異的リコンビナーゼのためのリコンビナーゼ認識部位に隣接し得る。発現カセットがまた、上記のようにコード配列の上流にポリアデニル化シグナルに隣接するリコンビナーゼ認識部位を含む場合、選択カセットは、同じリコンビナーゼ認識部位に隣接し得るか、又は異なるリコンビナーゼによって認識される異なるセットのリコンビナーゼ認識部位に隣接し得る。
【0271】
発現カセットはまた、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質)などの1つ以上のレポータータンパク質をコードする核酸を含むことができる。任意の好適なレポータータンパク質が使用され得る。例えば、本明細書の他の場所で定義される蛍光レポータータンパク質を使用することができるか、又は非蛍光レポータータンパク質を使用することができる。蛍光レポータータンパク質の例は、本明細書の他の場所で提供される。非蛍光レポータータンパク質には、例えば、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ(例えば、ウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、及びNanoLucルシフェラーゼ)、及びベータ-グルクロニダーゼなどの組織化学的又は生物発光アッセイで使用することができるレポータータンパク質が含まれる。発現カセットには、フローサイトメトリーアッセイで検出できるレポータータンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質などの蛍光レポータータンパク質)及び/又は組織化学的アッセイで検出できるレポータータンパク質(例えば、ベータ-ガラクトシダーゼタンパク質)が含まれ得る。そのような組織化学的アッセイの一例は、X-Gal(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドイル-b-D-ガラクトピラノシド)の加水分解を通した組織化学的なインサイチュベータガラクトシダーゼ発現の可視化であり、これは、青色沈殿物を生じさせるか、又はベータ-メチルウンベリフェリルガラクトシド(methyl umbelliferyl galactoside、MUG)及びフルオレセインジガラクトシド(fluorescein digalactoside、FDG)などの蛍光発生基質を使用する。
【0272】
本明細書に記載の発現カセットは、任意の形態であり得る。例えば、発現カセットは、ウイルスベクターなどのベクター又はプラスミド内にあり得る。発現カセットは、タンパク質又はRNAの発現を指示することができる発現コンストラクト中のプロモーターと作動可能に連結され得る(例えば、上流のポリアデニル化シグナルの除去時)。代替的に、発現カセットは、標的化ベクター内にあり得る。例えば、標的化ベクターは、発現カセットに隣接する相同性アームを含むことができ、相同性アームは、ゲノム組み込み及び/又は内因性配列の置換を容易にするために、所望の標的ゲノム遺伝子座との組換えを指示するために好適である。
【0273】
本明細書に記載される発現カセットは、インビトロであり得るか、エクスビボで細胞(例えば、胚性幹細胞)内にあり得る(例えば、ゲノムに組み込まれるか、若しくは染色体外である)か、又はインビボで生物(例えば、非ヒト動物)内にあり得る(例えば、ゲノムに組み込まれるか、若しくは染色体外である)。エクスビボである場合、発現カセットは、胚性幹細胞(例えば、マウス若しくはラット胚性幹細胞)又は人工多能性幹細胞(例えば、ヒト人工多能性幹細胞)などの全能性細胞などの任意の生物由来の任意の種類の細胞にあり得る。インビボである場合、発現カセットは、任意の種類の生物(例えば、本明細書の他の場所に更に記載される非ヒト動物)にあり得る。
【0274】
触媒的に不活性なCasタンパク質をコードする核酸の具体的な例は、配列番号44に記載されるdCas9タンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列をコードする核酸を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。任意選択的に、核酸は、配列番号57に記載される配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなることができる(任意選択的に、配列は、配列番号44に記載されるdCas9タンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるタンパク質をコードする)。
【0275】
キメラCasタンパク質をコードする核酸の具体的な例は、配列番号43に記載されるCas9タンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列をコードする核酸を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。任意選択的に、核酸は、配列番号58に記載される配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなることができる(任意選択的に、配列は、配列番号43に記載されるdCas9タンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるタンパク質をコードする)。
【0276】
アダプターをコードする核酸の具体的な例は、配列番号49に記載されるMCP配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列をコードする核酸を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。任意選択的に、核酸は、配列番号59に記載される配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなることができる(任意選択的に、配列は、配列番号44に記載されるMCP配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるタンパク質をコードする)。
【0277】
キメラアダプタータンパク質をコードする核酸の具体的な例は、配列番号48に記載されるキメラアダプタータンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列をコードする核酸を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。任意選択的に、核酸は、配列番号60に記載される配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなることができる(任意選択的に、配列は、配列番号48に記載されるキメラアダプタータンパク質配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるタンパク質をコードする)。
【0278】
転写活性化ドメインをコードする核酸の具体的な例は、それぞれ、配列番号45、50、又は51に記載されるVP64、p65、又はHSF1配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含むか、本質的になるか、又はそれからなることができる。任意選択的に、核酸は、それぞれ、配列番号61、62、又は63に記載される配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなることができる(任意選択的に、配列は、それぞれ、配列番号45、55、又は51に記載されるVP64、p65、又はHSF1配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるタンパク質をコードする)。
【0279】
1つの例示的な相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセットは、5’から3’まで、(a)3’スプライシング配列、(b)第1のリコンビナーゼ認識部位(例えば、loxP部位)、(c)薬物耐性遺伝子のコード配列(例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)コード配列)、(d)ポリアデニル化シグナル、(e)第2のリコンビナーゼ認識部位(例えば、loxP部位)、(f)キメラCasタンパク質コード配列(例えば、dCas9-NLS-VP64融合タンパク質又はNLS-dCas9-NLS-VP64融合タンパク質)、(g)2Aタンパク質コード配列(例えば、P2A又はT2Aコード配列)、及び(e)キメラアダプタータンパク質コード配列(例えば、MCP-NLS-p65-HSF1)を含む。別の例示的な相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセットは、5’から3’まで、(a)3’スプライシング配列、(b)第1のリコンビナーゼ認識部位(例えば、loxP部位)、(c)薬物耐性遺伝子のコード配列(例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)コード配列)、(d)ポリアデニル化シグナル(例えば、PGKポリアデニル化シグナル及び3つのSV40ポリアデニル化シグナルの組み合わせなどのPGKポリアデニル化シグナル及び/又はSV40ポリアデニル化シグナル)、(e)第2のリコンビナーゼ認識部位(例えば、loxP部位)、(f)キメラCasタンパク質コード配列(例えば、dCas9-NLS-VP64融合タンパク質又はNLS-dCas9-NLS-VP64融合タンパク質)、(g)2Aタンパク質コード配列(例えば、P2A又はT2Aコード配列)、(e)キメラアダプタータンパク質コード配列(例えば、MCP-NLS-p65-HSF1)、(f)ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)、及び(g)別のポリアデニル化シグナル(例えば、BGHポリアデニル化シグナル)を含む。例えば、図4A及び配列番号64(配列番号69に記載されるコード配列及び配列番号67に記載されるコードタンパク質)を参照されたい。
【0280】
1つの例示的な一般ガイドRNAアレイ発現カセットは、5’から3’まで、(a)3’スプライシング配列、(b)第1のリコンビナーゼ認識部位(例えば、rox部位)、(c)薬物耐性遺伝子のコード配列(例えば、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(puro)コード配列)、(d)ポリアデニル化シグナル(例えば、PGKポリアデニル化シグナル及び3つのSV40ポリアデニル化シグナルとの組み合わせなどのPGKポリアデニル化シグナル及び/又はSV40ポリアデニル化シグナル)、(e)第2のリコンビナーゼ認識部位(例えば、rox部位)、(f)1つ以上のガイドRNA遺伝子を含むガイドRNAアレイ(例えば、第1のU6プロモーターに続いて第1のガイドRNAコード配列及び第1のターミネーター配列、第2のU6プロモーターに続いて第2のガイドRNAコード配列及び第2のターミネーター配列、並びに第3のU6プロモーターに続いて第3のガイドRNAコード配列及び第3のターミネーター配列)を含む。例えば、配列番号65を参照されたい。プロモーター及びガイドRNAコード配列を含む、配列番号65の領域は、配列番号70に記載されている。ガイドRNAアレイ発現カセット中のリコンビナーゼ認識部位は、SAM発現カセット中のリコンビナーゼ認識部位と同じであるか、又は異なり得る(例えば、同じリコンビナーゼ又は異なるリコンビナーゼによって認識され得る)。
【0281】
別の例示的な一般ガイドRNAアレイ発現カセットは、1つ以上のガイドRNA遺伝子(例えば、第1のU6プロモーターに続いて第1のガイドRNAコード配列、第2のU6プロモーターに続いて第2のガイドRNAコード配列、並びに第3のU6プロモーターに続いて第3のガイドRNAコード配列)を含む。そのような一般ガイドRNAアレイ発現カセットは、配列番号70に記載されている。
【0282】
F.組み込みのためのゲノム遺伝子座
本明細書に記載される核酸及び発現カセットは、非ヒト動物細胞又は非ヒト動物における標的ゲノム遺伝子座においてゲノムに組み込むことができる。遺伝子を発現することが可能な任意の標的ゲノム遺伝子座を使用することができる。
【0283】
本明細書に記載される核酸又はカセットを安定的に組み込むことができる標的ゲノム遺伝子座の例は、非ヒト動物細胞又は非ヒト動物のゲノム中のセーフハーバー遺伝子座である。組み込まれた外因性DNAと宿主ゲノムとの間の相互作用は、組み込みの信頼性及び安全性を制限し得、標的遺伝子修飾に起因するものではなく、代わりに、周囲の内因性遺伝子に対する組み込みの意図しない影響に起因する、明白な表現型効果につながり得る。例えば、ランダムに挿入された導入遺伝子は、位置効果及びサイレンシングの影響を受けやすく、その発現が信頼できず、予測できないものになり得る。同様に、外因性DNAの染色体遺伝子座への組み込みは、周囲の内因性遺伝子及びクロマチンに影響を及ぼし、それによって、細胞の挙動及び表現型を改変し得る。セーフハーバー遺伝子座には、導入遺伝子又は他の外因性核酸挿入が、細胞の挙動又は表現型を明白に改変することなく(すなわち、宿主細胞にいずれの有害な影響も及ぼすことなく)、全ての目的の組織で安定的かつ確実に発現され得る、染色体遺伝子座が含まれる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sadelain et al.(2012)Nat.Rev.Cancer 12:51-58を参照されたい。例えば、セーフハーバー遺伝子座は、挿入された遺伝子配列の発現が、隣接する遺伝子からのリードスルー発現によって乱されない遺伝子座であり得る。例えば、セーフハーバー遺伝子座には、内因性遺伝子の構造又は発現に悪影響を及ぼすことなく、外因性DNAが予測可能な方法で組み込まれて機能することができる、染色体遺伝子座が含まれ得る。セーフハーバー遺伝子座には、必須ではないか、不必要であるか、又は明白な表現型の結果なしに破壊され得る遺伝子内の遺伝子座などの遺伝子外領域又は遺伝子内領域が含まれ得る。
【0284】
例えば、ヒトにおけるRosa26遺伝子座及びその同等物は、全ての組織において開放クロマチン構成を提供し、胚発生中及び成体において遍在的に発現される。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Zambrowicz et al.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:3789-3794を参照されたい。加えて、Rosa26遺伝子座を高い効率で標的化することができ、Rosa26遺伝子の破壊は、明白な表現型を産生しない。セーフハーバー遺伝子座の他の例としては、CCR5、HPRT、AAVS1、及びアルブミンが挙げられる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,888,121号、同第7,972,854号、同第7,914,796号、同第7,951,925号、同第8,110,379号、同第8,409,861号、同第8,586,526号、並びに米国特許公開第2003/0232410号、同第2005/0208489号、同第2005/0026157号、同第2006/0063231号、同第2008/0159996号、同第2010/00218264号、同第2012/0017290号、同第2011/0265198号、同第2013/0137104号、同第2013/0122591号、同第2013/0177983号、同第2013/0177960号、及び同第2013/0122591号を参照されたい。Rosa26遺伝子座などのセーフハーバー遺伝子座の二対立遺伝子標的化には負の結果がないため、異なる遺伝子又はレポーターを2つのRosa26対立遺伝子に標的化することができる。一例では、発現カセットが、Rosa26遺伝子座の第1のイントロンなどのRosa26遺伝子座のイントロンに組み込まれる。例えば、図5を参照されたい。
【0285】
標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた発現カセットを、標的ゲノム遺伝子座で内因性プロモーターに作動可能に連結することができるか、又は標的ゲノム遺伝子座に対して異種である外因性プロモーターに作動可能に連結することができる。一例では、キメラCasタンパク質発現カセット、キメラアダプタータンパク質発現カセット、又は相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセットは、標的ゲノム遺伝子座(例えば、Rosa26遺伝子座)に組み込まれ、標的ゲノム遺伝子座で内因性プロモーター(例えば、Rosa26プロモーター)に作動可能に連結される。別の例では、ガイドRNA発現カセットは、標的ゲノム遺伝子座(例えば、Rosa26遺伝子座)に組み込まれ、1つ以上の異種プロモーター(例えば、各ガイドRNAコード配列の上流の異なるU6プロモーターなどのU6プロモーター)に作動可能に連結される。
【0286】
IV.ヒト化MYOC遺伝子座を含む非ヒト動物を使用する方法
本明細書の他の場所に記載されるヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む非ヒト動物及び非ヒト動物細胞を使用するために、様々な方法が提供される。そのような方法は、例えば、MYOC発現を増加させる、眼圧を上昇させる、緑内障をモデル化する、又はインビボ若しくはエクスビボあるいはインビトロでヒトMYOC標的化試薬(例えば、治療分子若しくは複合体)若しくは候補緑内障治療剤の送達若しくは有効性を評価若しくは最適化するためのものであり得る。非ヒト動物及び非ヒト動物細胞が、ヒト化MYOC遺伝子座を含むため、非ヒト動物及び非ヒト動物細胞は、ヒトMYOC標的化試薬の有効性をより正確に反映する。本明細書に開示される非ヒト動物は、ランダムなゲノム遺伝子座でのヒトMYOC配列のトランスジェニック挿入ではなく、ヒト化内因性MYOC遺伝子座を含み、かつヒト化内因性MYOC遺伝子座は、人工cDNA配列ではなく、コード領域及び非コード領域の両方からの(例えば、エキソン領域及びイントロン領域の両方からの)対応するヒトゲノムMYOC配列を含むため、そのような非ヒト動物及び非ヒト動物細胞は、ヒトMYOC遺伝子を標的とするように設計されたゲノム編集試薬を試験するために特に有用である。そのような非ヒト動物はまた、本明細書に開示される非ヒト動物が、緑内障患者で観察される表現型を反映する眼圧の上昇の表現型を示すため、候補緑内障治療剤を試験するために特に有用である。
【0287】
A.MYOCの発現を増加させるか、眼圧を上昇させるか、又は緑内障をモデル化する方法
ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及び本明細書の他の場所に記載されるSAM発現カセットを含む、非ヒト動物を使用して、MYOC(例えば、ヒトMYOC)の発現を増加させるか、眼圧を上昇させるか、又はインビボで緑内障をモデル化するために、様々な方法が提供される。MYOC発現を増加させるか、眼圧を上昇させるか、又は緑内障をモデル化するためのそのような方法は、本明細書の他の場所に記載される1つ以上のガイドRNA又は1つ以上のSAMガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを非ヒト動物に投与し、それによって、MYOCの発現を増加させることを含むことができる。本方法は、MYOC mRNA発現及び/又はタンパク質発現を増加させることができる。MYOC発現を増加させるためのそのような方法はまた、本明細書の他の場所に記載されるように、1つ以上のガイドRNA又は1つ以上のSAMガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを非ヒト動物細胞に投与することによって、非ヒト動物細胞におけるMYOC発現を増加させるためのものであり得る。
【0288】
1つ以上のガイドRNAの各々は、キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含むことができ、1つ以上のガイドRNAの各々は、キメラCasタンパク質及びキメラアダプタータンパク質と複合体を形成し、それらをヒト化MYOC遺伝子座内の標的配列に誘導し、それによって、ヒト化MYOC遺伝子座の発現を増加させる。
【0289】
そのような方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与した後に、ヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるMYOCメッセンジャーRNAの発現を測定すること、又はヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるミオシリンタンパク質の発現を測定することを更に含むことができる。
【0290】
いくつかの方法では、ヒトMYOC mRNA又はタンパク質発現は、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、又は少なくとも約15倍(例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍)増加する。いくつかの方法では、ヒトMYOC mRNA又はタンパク質発現は、少なくとも約2倍~少なくとも約25倍、少なくとも約3倍~少なくとも約25倍、少なくとも約4倍~少なくとも約25倍、少なくとも約5倍~少なくとも約25倍、少なくとも約6倍~少なくとも約25倍、少なくとも約7倍~少なくとも約25倍、少なくとも約8倍~少なくとも約25倍、少なくとも約9倍~少なくとも約25倍、少なくとも約10倍~少なくとも約25倍、少なくとも約2倍~少なくとも約20倍、少なくとも約2倍~少なくとも約15倍、又は少なくとも約10倍~少なくとも約15倍増加する。ヒトMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加は、眼、輪部リング、網膜、毛様体、小柱網、又は角膜にあり得る。具体的な例では、発現の増加は、輪部リングにある。
【0291】
いくつかの方法では、非ヒト動物は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAの投与後に、緑内障の1つ以上の兆候又は症状を発症する。緑内障は、結果として生じる不可逆的な視力喪失を伴う、網膜神経節細胞(RGC)軸索の進行性喪失を特徴とする慢性視神経症である。緑内障の主な危険因子は、眼圧(IOP)の上昇である。IOPの上昇は、小柱網(TM)の構造を通した房水流出に対する抵抗の増加によって引き起こされる。房水は、毛様体によって作製され、前房を循環し、TM網を通して流出する。ほとんどの緑内障症例では、TMにおける房水に対する抵抗の増加がある。病原性MYOC変異タンパク質は、細胞内で凝集し、小柱網(TM)応力、IOPの上昇、及び緑内障につながる。
【0292】
そのような方法は、1つ以上のガイドRNA又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与した後に、眼圧(IOP)を測定することを更に含むことができる。一例では、本方法は、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、又は少なくとも約22mmHg(例えば、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、又は少なくとも22mmHg)であるIOPをもたらす。一例では、本方法は、約15~約22、約16~約22、約17~約22、約18~約22、約19~約22、約15~約21、約15~約20、又は約16~約21mmHg(例えば、15~22、16~22、17~22、18~22、19~22、15~21、15~20、又は16~21mmHg)であるIOPをもたらす。
【0293】
いくつかの方法では、IOPは、1つ以上のガイドRNA若しくは1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAの投与前に対して、又は対照非ヒト動物(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のガイドRNAを投与されていない非ヒト動物、若しくは野生型非ヒト動物)に対して、ある特定の量だけ増加する。一例では、IOPは、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、又は少なくとも約6mmHg(例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6mmHg)増加する。一例では、IOPは、約1~約7、約2~約7、約3~約7、約4~約7、約5~約7、約1~約6、約2~約6、約3~約6、約4~約6、又は約5~約6mmHg(例えば、1~6、2~6、3~6、4~6、又は5~6mmHg)増加する。
【0294】
ガイドRNA又はガイドRNAをコードするDNAは、任意の形態で、任意の送達ビヒクルで、かつ任意の投与経路によって投与する(細胞に導入するか、又はガイドRNA若しくはDNAが非ヒト動物における細胞の内部へのアクセスを獲得するように動物に導入する)ことができる。例えば、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAの投与は、いくつかの方法では、アデノウイルス媒介送達(例えば、組換えアデノウイルス5型(adenovirus type 5、Ad5))、レンチウイルス媒介送達、アデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達、又は脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)媒介送達を含むことができる。一例では、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするDNAは、(例えば、約0.1mg/kg~約2mg/kgの用量で)LNP媒介送達を介して投与される。別の例では、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするDNAは、AAV媒介送達を介して(例えば、組換えAAV2.Y3Fなどの眼に送達するための血清型を有するAAVを使用して)投与される。ガイドRNAは、RNAとして投与することができるか、又はDNAとして投与することができる。DNAとして投与される場合、各ガイドRNAコード配列を、一例では、異なるU6プロモーターに作動可能に連結することができる。ガイドRNA又はガイドRNAをコードするDNAは、任意の好適な投与経路によって投与することができる。一例では、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするDNAは、硝子体内注入又は前房内注射を介して投与することができる。
【0295】
いくつかの方法では、ガイドRNAの標的配列は、ヒト化MYOC遺伝子座内に調節配列を含むことができる。例えば、調節配列は、プロモーター又はエンハンサーを含むことができる。いくつかの方法では、ガイドRNAの標的配列は、遺伝子修飾された内因性MYOC遺伝子座の転写開始部位の200塩基対内にあり得るか、又は転写開始部位の200塩基対上流及び転写開始部位の1塩基対下流の領域内にあり得る。
【0296】
いくつかの方法では、ガイドRNAは各々、キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる2つのアダプター結合要素を含む。例えば、第1のアダプター結合要素は、1つ以上のガイドRNAの各々の第1のループ内にあり得、第2のアダプター結合要素は、1つ以上のガイドRNAの各々の第2のループ内にあり得る。具体的な例では、各ガイドRNAは、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)部分に融合したCRISPR RNA(crRNA)部分を含む単一ガイドRNAであり得、第1のループは、配列番号77、79、81、又は82の残基13~16に対応するテトラループであり、第2のループは、配列番号77、79、81、又は82の残基53~56に対応するステムループ2である。別の具体的な例では、アダプター結合要素は、配列番号52に記載される配列を含む。別の具体的な例では、1つ以上のガイドRNAの各々は、配列番号66、68、71、又は72に記載される配列を含む。
【0297】
一例では、ガイドRNAは、配列番号90~95のうちのいずれか1つに記載される配列を含む、配列を標的とすることができる。同様に、ガイドRNAは、配列番号96~101のうちのいずれか1つに記載される配列を含むことができる。別の例では、ガイドRNAは、配列番号93~94のうちのいずれか1つに記載される配列を含む、配列を標的とすることができる。同様に、ガイドRNAは、配列番号99~100のうちのいずれか1つに記載される配列を含むことができる。別の例では、ガイドRNAは、配列番号93に記載される配列を含む、配列を標的とすることができる。同様に、ガイドRNAは、配列番号99に記載される配列を含むことができる。
【0298】
いくつかの方法では、1つ以上のガイドRNAは、ヒト化MYOC遺伝子座を標的とする複数のガイドRNA(例えば、ヒト化MYOC遺伝子座を標的とする少なくとも2つ又は少なくとも3つのガイドRNA)を含む。
【0299】
B.ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の有効性を試験する方法
本明細書の他の場所に記載されるヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む非ヒト動物又は非ヒト動物細胞を使用して、インビボ又はエクスビボ若しくはインビトロでヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の送達又は有効性を評価するために、様々な方法が提供される。そのような方法は、(a)非ヒト動物にヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤を導入することと、(b)ヒトMYOC標的化試薬又は候補治療剤の活性を評価することと、を含むことができる。同様に、そのような方法は、(a)非ヒト動物細胞にヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤を導入することと、(b)ヒトMYOC標的化試薬又は候補治療剤の活性を評価することと、を含むことができる。評価は、例えば、ヒトMYOC標的化試薬若しくは候補緑内障治療剤を投与されなかったヒト化MYOC遺伝子座を含む対照非ヒト動物若しくは非ヒト動物細胞と比較するか、又はヒトMYOC標的化試薬若しくは候補緑内障治療剤の投与前の非ヒト動物若しくは非ヒト動物細胞と比較することができる。
【0300】
非ヒト動物又は非ヒト動物細胞がCRISPR/Cas相乗的活性化メディエーター系成分も含む方法では、そのような方法は、ステップ(a)の前に、本明細書の他の場所に記載される1つ以上のSAMガイドRNA又は1つ以上のSAMガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを非ヒト動物又は非ヒト動物細胞に投与することを更に含むことができ、1つ以上のガイドRNAの各々は、キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる1つ以上のアダプター結合要素を含み、1つ以上のガイドRNAの各々は、キメラCasタンパク質及びキメラアダプタータンパク質と複合体を形成し、それらをヒト化MYOC遺伝子座内の標的配列に誘導し、それによって、ヒト化MYOC遺伝子座の発現を増加させる。評価するステップが、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤を投与されなかった対照非ヒト動物又は非ヒト動物細胞と比較して実施される場合、本方法は、本明細書の他の場所に記載される1つ以上のガイドRNA又は1つ以上のSAMガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを対照非ヒト動物又は非ヒト動物細胞に投与することを更に含むことができる。
【0301】
ステップ(a)の前に、本明細書の他の場所に記載される1つ以上のSAMガイドRNA又は1つ以上のSAMガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを非ヒト動物又は非ヒト動物細胞に投与することを更に含む、方法では、1つ以上のSAMガイドRNA又は1つ以上のSAMガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与するステップと、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤を投与するステップとの間に、任意の好適な時間量が生じ得る。一例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与してから少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約7日、少なくとも約8日、少なくとも約9日、少なくとも約10日、少なくとも約15日、少なくとも約20日、少なくとも約25日、又は少なくとも約30日後に投与することができる。別の例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与してから約1日~約2日、約1日~約3日、約1日~約4日、約1日~約5日、約1日~約6日、約1日~約7日、約1日~約8日、約1日~約9日、約1日~約10日、約1日~約15日、約1日~約20日、約1日~約25日、又は約1日~約30日後に投与される。別の例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与してから約1日~約30日、約2日~約30日、約3日~約30日、約4日~約30日、約5日~約30日、約6日~約30日、約7日~約30日、約8日~約30日、約9日~約30日、約10日~約30日、約15日~約30日、約20日~約30日、又は約25日~約30日後に投与される。別の例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与してから少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約9週間、少なくとも約10週間、又は少なくとも約15週間後に投与することができる。別の例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与してから約1週間~約2週間、約1週間~約3週間、約1週間~約4週間、約1週間~約5週間、約1週間~約6週間、約1週間~約7週間、約1週間~約8週間、約1週間~約9週間、約1週間~約10週間、又は約1週間~約15週間後に投与される。別の例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与してから約1週間~約15週間、約2週間~約15週間、約3週間~約15週間、約4週間~約15週間、約5週間~約15週間、約6週間~約15週間、約7週間~約15週間、約8週間~約15週間、約9週間~約15週間、又は約10週間~約15週間後に投与される。
【0302】
そのような方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与した後、かつヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤を投与する前に、ヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるMYOCメッセンジャーRNAの発現を測定すること、又はヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるミオシリンタンパク質の発現を測定することを更に含むことができる。一例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、ヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるMYOC mRNA又はミオシリンタンパク質の発現が増加するまで投与されない。
【0303】
いくつかの方法では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、1つ以上のガイドRNA若しくは1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAの投与前に対して、又は対照非ヒト動物若しくは非ヒト動物細胞(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のガイドRNAを投与されていない非ヒト動物若しくは非ヒト動物細胞)に対して、ヒトMYOC mRNA又はタンパク質発現の増加が観察されるまで、投与されない。いくつかの非ヒト動物又は非ヒト動物細胞では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、ヒトMYOC mRNA又はタンパク質発現が少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、又は少なくとも約15倍(例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも13倍、少なくとも約14倍、又は少なくとも15倍)増加するまで投与されない。いくつかの非ヒト動物又は非ヒト動物細胞では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、ヒトMYOC mRNA又はタンパク質発現が少なくとも約2倍~少なくとも約25倍、少なくとも約3倍~少なくとも約25倍、少なくとも約4倍~少なくとも約25倍、少なくとも約5倍~少なくとも約25倍、少なくとも約6倍~少なくとも約25倍、少なくとも約7倍~少なくとも約25倍、少なくとも約8倍~少なくとも約25倍、少なくとも約9倍~少なくとも約25倍、少なくとも約10倍~少なくとも約25倍、少なくとも約2倍~少なくとも約20倍、少なくとも約2倍~少なくとも約15倍、又は少なくとも約10倍~少なくとも約15倍増加するまで投与されない。対照非ヒト動物に対する増加したヒトMYOC mRNA又はタンパク質発現は、眼、輪部リング、網膜、毛様体、小柱網、又は角膜にあり得る。具体的な例では、発現の増加は、輪部リングにある。
【0304】
いくつかの方法では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、緑内障の1つ以上の兆候又は症状が観察されるまで投与される。緑内障は、結果として生じる不可逆的な視力喪失を伴う、網膜神経節細胞(RGC)軸索の進行性喪失を特徴とする慢性視神経症である。緑内障の主な危険因子は、眼圧(IOP)の上昇である。IOPの上昇は、小柱網(TM)の構造を通した房水流出に対する抵抗の増加によって引き起こされる。房水は、毛様体によって作製され、前房を循環し、TM網を通して流出する。ほとんどの緑内障症例では、TMにおける房水に対する抵抗の増加がある。病原性MYOC変異タンパク質は、細胞内で凝集し、小柱網(TM)応力、IOPの上昇、及び緑内障につながる。
【0305】
そのような方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与した後、かつヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤を投与する前に、眼圧(IOP)を測定することを更に含むことができる。一例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、IOPがある特定のレベルに達するまで投与されない。一例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、IOPが少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、又は少なくとも約22mmHg(例えば、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、又は少なくとも22mmHg)になるまで投与されない。一例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、IOPが約15~約22、約16~約22、約17~約22、約18~約22、約19~約22、約15~約21、約15~約20、又は約16~約21mmHg(例えば、15~22、16~22、17~22、18~22、19~22、15~21、15~20、又は16~21mmHg)になるまで投与されない。
【0306】
そのような方法は、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAを投与した後、かつヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤を投与する前に、眼圧(IOP)を測定することを更に含むことができる。一例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、1つ以上のガイドRNA若しくは1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAの投与前に対して、又は対照非ヒト動物(例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のガイドRNAを投与されていない非ヒト動物、若しくは野生型非ヒト動物)に対して、IOPが上昇するまで投与されない。一例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、IOPが対照ベースラインを少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、又は少なくとも約6mmHg(例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6mmHg)上回るまで投与されない。一例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、IOPが対照ベースライン(例えば、1~6、2~6、3~6、4~6、又は5~6mmHg)を約1~約7、約2~約7、約3~約7、約4~約7、約5~約7、約1~約6、約2~約6、約3~約6、約4~約6、又は約5~約6mmHg上回るまで投与されない。対照ベースラインは、例えば、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物におけるIOPであり得るか、若しくは野生型非ヒト動物におけるIOPであり得るか、又は1つ以上のSAMガイドRNAの投与前の本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有する非ヒト動物におけるIOPであり得る。
【0307】
ガイドRNA又はガイドRNAをコードするDNAは、任意の形態で、任意の送達ビヒクルで、かつ任意の投与経路によって投与する(細胞に導入するか、又はガイドRNA若しくはDNAが非ヒト動物における細胞の内部へのアックセスを獲得するように動物に導入する)ことができる。例えば、1つ以上のガイドRNA、又は1つ以上のガイドRNAをコードする1つ以上のDNAの投与は、いくつかの方法では、アデノウイルス媒介送達(例えば、組換えアデノウイルス5型(Ad5))、レンチウイルス媒介送達、アデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達、又は脂質ナノ粒子(LNP)媒介送達を含むことができる。一例では、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするDNAは、(例えば、約0.1mg/kg~約2mg/kgの用量で)LNP媒介送達を介して投与される。別の例では、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするDNAは、AAV媒介送達を介して(例えば、組換えAAV2.Y3Fなどの眼に送達するための血清型を有するAAVを使用して)投与される。ガイドRNAは、RNAとして投与することができるか、又はDNAとして投与することができる。DNAとして投与される場合、各ガイドRNAコード配列を、一例では、異なるU6プロモーターに作動可能に連結することができる。ガイドRNA又はガイドRNAをコードするDNAは、任意の好適な投与経路によって投与することができる。一例では、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするDNAは、硝子体内注入又は前房内注射を介して投与することができる。
【0308】
いくつかの方法では、ガイドRNAの標的配列は、ヒト化MYOC遺伝子座内に調節配列を含むことができる。例えば、調節配列は、プロモーター又はエンハンサーを含むことができる。いくつかの方法では、ガイドRNAの標的配列は、遺伝子修飾された内因性MYOC遺伝子座の転写開始部位の200塩基対内にあり得るか、又は転写開始部位の200塩基対上流及び転写開始部位の1塩基対下流の領域内にあり得る。
【0309】
いくつかの方法では、ガイドRNAは各々、キメラアダプタータンパク質が特異的に結合することができる2つのアダプター結合要素を含む。例えば、第1のアダプター結合要素は、1つ以上のガイドRNAの各々の第1のループ内にあり得、第2のアダプター結合要素は、1つ以上のガイドRNAの各々の第2のループ内にあり得る。具体的な例では、各ガイドRNAは、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)部分に融合したCRISPR RNA(crRNA)部分を含む単一ガイドRNAであり得、第1のループは、配列番号77、79、81、又は82の残基13~16に対応するテトラループであり、第2のループは、配列番号77、79、81、又は82の残基53~56に対応するステムループ2である。別の具体的な例では、アダプター結合要素は、配列番号52に記載される配列を含む。別の具体的な例では、1つ以上のガイドRNAの各々は、配列番号66、68、71、又は72に記載される配列を含む。
【0310】
一例では、ガイドRNAは、配列番号90~95のうちのいずれか1つに記載される配列を含む、配列を標的とすることができる。同様に、ガイドRNAは、配列番号96~101のうちのいずれか1つに記載される配列を含むことができる。別の例では、ガイドRNAは、配列番号93~94のうちのいずれか1つに記載される配列を含む、配列を標的とすることができる。同様に、ガイドRNAは、配列番号99~100のうちのいずれか1つに記載される配列を含むことができる。別の例では、ガイドRNAは、配列番号93に記載される配列を含む、配列を標的とすることができる。同様に、ガイドRNAは、配列番号99に記載される配列を含むことができる。
【0311】
いくつかの方法では、1つ以上のガイドRNAは、ヒト化MYOC遺伝子座を標的とする複数のガイドRNA(例えば、ヒト化MYOC遺伝子座を標的とする少なくとも2つ又は少なくとも3つのガイドRNA)を含む。
【0312】
ヒトMYOC標的化試薬は、ヒトMYOC標的化抗体若しくは抗原結合タンパク質、又はヒトミオシリンタンパク質を標的とする任意の他の大分子若しくは小分子であり得る。ヒトMYOC標的化試薬は、ヒトMYOC遺伝子座(ヒトMYOC遺伝子)、ヒトMYOC mRNA、又はヒトミオシリンタンパク質を標的とする任意の生物又は化学剤であり得る。同様に、候補緑内障治療剤は、抗体若しくは抗原結合タンパク質、又は任意の他の大分子若しくは小分子であり得る。代替的に、候補緑内障治療剤は、任意の生物又は化学剤であり得る。ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の例は、本明細書の他の場所に開示されている。
【0313】
候補緑内障治療剤は、既知の緑内障治療剤、推定緑内障治療剤、又は緑内障治療活性についてスクリーニングされている薬剤であり得る。一例では、候補緑内障治療剤は、房水形成を抑制するか、又は房水の流出を増加させる薬剤であり得る。一例は、チモロール(房水形成を抑制するベータ遮断薬)である。別の例は、RHOPRESSA(登録商標)(房水の流出を増加させるROCK阻害剤)である。
【0314】
一例では、候補緑内障治療剤は、ANGPTL7標的化試薬であり得る。ANGPTL7標的化試薬は、例えば、ヒトANGPTL7標的化試薬又はマウスANGPTL7標的化試薬であり得る。ANGPTL7標的化試薬は、ANGPTL7タンパク質、ANGPTL7遺伝子、又はANGPTL7mRNAを標的とする任意の試薬であり得る。ヒトANGPTL7標的化試薬は、例えば、既知のANGPTL7標的化試薬であり得るか、推定ANGPTL7標的化試薬(例えば、ANGPTL7を標的とするように設計された候補試薬)であり得るか、又はANGPTL7標的化活性についてスクリーニングされている試薬であり得る。
【0315】
アンジオポエチン関連タンパク質7(アンジオポエチン様因子、アンジオポエチン様タンパク質7、角膜由来転写産物6タンパク質、ANGPTL7、ANGX、及びCDT6としても知られている)は、ANGPTL7遺伝子(CDT6としても知られている)によってコードされる。ANGPTL7は、細胞外マトリックスの形成及び組織化において役割を有する、角膜の間質層で最初に発見されたアンジオポエチン関連ファミリーの分泌性糖タンパク質(49~55kDa)である。ANGPTL7 mRNA及び/又はタンパク質は、角膜実質細胞において豊富に発現され、血管新生の負の調節因子として角膜の無血管性及び透明性を維持することに関与する。ANGPTL7発現は、房水流出能の調節に関連する眼組織であるヒト小柱網細胞(TM)においてデキサメタゾン(dexamethasone、DEX)によって上方制御される。ゲノムワイド関連研究(genome-wide association study、GWAS)は、ANGPTL7におけるある特定の稀なタンパク質改変バリアント(Gln175His及びArg220Cysを含む)が、より低い緑内障リスクを有することを明らかにし、より低いIOPによって付与される防御機構を示唆している。
【0316】
ヒトANGPTL7は、第1染色体上の1p36.22にマッピングする(NCBI RefSeq Gene ID 10218、Assembly GRCh38.p14(GCF_000001405.40)、位置NC_000001.11(11189355..11195981))。野生型ヒトアンジオポエチン関連タンパク質7には、UniProtアクセッション番号O43827及びNCBIアクセッション番号NP_066969.1が割り当てられている。
【0317】
マウスAngptl7は、第4染色体上の4;4 E2にマッピングする(NCBI RefSeq Gene ID 654812、Assembly GRCm39(GCF_000001635.27)、位置NC_000070.7(148579737..148584919、補体))。野生型マウスアンジオポエチン関連タンパク質7には、UniProtアクセッション番号Q8R1Q3及びNCBIアクセッション番号NP_001034643.1が割り当てられている。
【0318】
ラットAngptl7は、第5染色体上の5q36にマッピングする(NCBI RefSeq Gene ID 102552055、Assembly mRatBN7.2(GCF_015227675.2)、位置NC_051340.1(158932094..158937597、補体))。野生型ラットアンジオポエチン関連タンパク質7タンパク質には、UniProtアクセッション番号D3ZDK4及びNCBIアクセッション番号XP_006239486.1が割り当てられている。
【0319】
例えば、ANGPTL7標的化試薬は、ANGPTL7タンパク質(例えば、ヒトANGPTL7タンパク質)のエピトープを標的とする抗原結合タンパク質であり得る。同様に、候補緑内障治療剤は、抗原結合タンパク質であり得る。「抗原結合タンパク質」という用語は、抗原に結合する任意のタンパク質を含む。抗原結合タンパク質の例としては、抗体、抗体の抗原結合断片、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、scFV、ビスscFV、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、V-NAR、VHH、VL、F(ab)、F(ab)、DVD(二重可変ドメイン抗原結合タンパク質)、SVD(単一可変ドメイン抗原結合タンパク質)、二重特異性T細胞エンゲージャー(bispecific T-cell engager、BiTE)、又はデイビスボディ(あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,586,713号)が挙げられる。他のヒトMYOC標的化試薬には、ヒトミオシリンタンパク質を標的とする小分子が含まれる。同様に、他の候補緑内障治療剤には、任意の好適な標的を標的とする小分子が含まれる。
【0320】
他のANGPTL7標的化試薬(例えば、ヒトNGPTL7標的化試薬)には、ANGPTL7遺伝子内の認識部位を切断するヌクレアーゼ剤(例えば、クラスター化した規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR/Cas)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc finger nuclease、ZFN)、又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(Transcription Activator-Like Effector Nuclease、TALEN))などのゲノム編集試薬が含まれ得る。同様に、ANGPTL7標的化試薬は、ANGPTL7遺伝子と再結合するように設計された外因性ドナー核酸(例えば、標的化ベクター又は一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(single-stranded oligodeoxynucleotide、ssODN))であり得る。同様に、他の候補緑内障治療剤には、ヌクレアーゼ剤又は外因性ドナー核酸などのゲノム編集試薬が含まれる。
【0321】
他のANGPTL7標的化試薬(例えば、ヒトANGPTL7標的化試薬)には、RNAi剤が含まれ得る。同様に、他の候補緑内障治療剤には、RNAi剤が含まれ得る。「RNAi剤」は、配列特異的様式でメッセンジャーRNA(mRNA)などの標的RNAの翻訳の分解又は阻害を促進することが可能な小さい二本鎖RNA又はRNA様(例えば、化学的に修飾されたRNA)オリゴヌクレオチド分子を含む組成物である。RNAi剤のオリゴヌクレオチドは、結合したヌクレオシドのポリマーであり、各々を独立して修飾することも、修飾しないこともできる。RNAi剤は、RNA干渉機構を介して機能する(すなわち、哺乳動物細胞のRNA干渉経路機構(RNA誘導サイレンシング複合体又はRISC)との相互作用を介してRNA干渉を誘導する)。RNAi剤は、その用語が本明細書で使用される場合、主にRNA干渉機構を通して作動すると考えられているが、開示されたRNAi剤は、いずれの特定の経路又は作用機序にも拘束又は限定されない。本明細書に開示されるRNAi剤は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、低分子干渉RNA(short interfering RNA、siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(micro RNA、miRNA)、ショートヘアピンRNA(short hairpin RNA、shRNA)、及びダイサー基質を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載されるRNAi剤のアンチセンス鎖は、標的RNAの配列(すなわち、標準的な命名法を使用して一連の文字で記載された核酸塩基又はヌクレオチドの連続又は順序)に少なくとも部分的に相補的である。同様に、他の候補緑内障治療剤には、RNAi剤が含まれ得る。
【0322】
他のANGPTL7標的化試薬(例えば、ヒトANGPTL7標的化試薬)には、アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide、ASO)が含まれ得る。同様に、他の候補緑内障治療剤には、ASOが含まれ得る。一本鎖ASO及びRNA干渉(RNA interference、RNAi)は、オリゴヌクレオチドがワトソン・クリック塩基対合を通して標的RNAに結合するという基本原理を共有する。理論に縛られることを望まないが、RNAiの間に、低分子RNA二重鎖(RNAi剤)がRNA誘導サイレンシング複合体(RNA-induced silencing complex、RISC)と結合し、一方の鎖(パッセンジャー鎖)が失われ、残りの鎖(ガイド鎖)が失われるRISCと協力して相補的RNAに結合する。次に、RISCの触媒成分であるアルゴノート2(Argonaute 2、Ago2)が標的RNAを切断する。ガイド鎖は、常に相補的センス鎖又はタンパク質(RISC)のいずれかに関連付けられている。対照的に、ASOは生き残り、一本鎖として機能する必要がある。ASOは、標的RNAに結合し、リボソーム若しくはスプライシング因子などの他の因子がRNAに結合するのを阻止するか、又はヌクレアーゼなどのタンパク質を動員する。異なる修飾及び標的領域が、所望の作用機序に基づいて、ASOに対して選択される。ギャップマーは、DNAの中央の8~10塩基ギャップに隣接する各末端上に2~5つの化学修飾ヌクレオチド(例えば、LNA又は2’-MOE)を含むASOオリゴヌクレオチドである。標的RNAに結合した後、DNA-RNAハイブリッドは、RNase Hの基質として作用する。ヒトMYOC標的化RNAi剤又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの例が公知である。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Ackermann et al.(2012)Amyloid Suppl 1:43-44、及びCoelho et al.(2013)N.Engl.J.Med.369(9):819-829を参照されたい。同様に、他の候補緑内障治療剤には、ASOが含まれ得る。
【0323】
他のANGPTL7標的化試薬(例えば、ヒトANGPTL7標的化試薬)には、小分子試薬が含まれる。同様に、他の候補緑内障治療剤には、小分子試薬が含まれ得る。
【0324】
そのようなヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、任意の送達方法/ビヒクル(例えば、アデノウイルス(例えば、組換えAd5)、レンチウイルス、AAV、LNP、又は注射)によって、かつ任意の投与経路(例えば、硝子体内注入又は前房内注射)によって投与することができる。複合体及び分子を送達する手段並びに投与経路は、本明細書の他の場所でより詳細に開示されている。特定の方法では、試薬は、AAV媒介送達を介して送達される。例えば、AAV2.Y3Fを使用して、眼を標的とすることができる。他の特定の方法では、試薬は、LNP媒介送達によって送達される。用量は、任意の好適な用量であり得る。
【0325】
ヒトMYOC標的化試薬の活性を評価するための方法が、周知であり、本明細書の他の場所で提供されている。活性の評価は、本明細書の他の場所に開示されるように、任意の細胞型、任意の組織型、又は任意の臓器型におけるものであり得る。いくつかの方法では、活性の評価は、眼細胞又は眼におけるものである。
【0326】
ヒトMYOC標的化試薬がゲノム編集試薬(例えば、ヌクレアーゼ剤)である場合、そのような方法は、ヒト化MYOC遺伝子座の修飾を評価することを含むことができる。一例として、評価は、ヒト化MYOC遺伝子座での非相同末端結合(NHEJ)活性を測定することを含むことができる。これは、例えば、ヒト化MYOC遺伝子座内の挿入又は欠失の頻度を測定することを含むことができる。例えば、評価は、非ヒト動物から単離された1つ以上の細胞におけるヒト化MYOC遺伝子座を配列決定すること(例えば、次世代シーケンシング)を含むことができる。評価は、非ヒト動物から標的臓器又は組織(例えば、眼)を単離すること、及び標的臓器又は組織におけるヒト化MYOC遺伝子座の修飾を評価することを含むことができる。評価はまた、標的臓器又は組織内の2つ以上の異なる細胞型におけるヒト化MYOC遺伝子座の修飾を評価することを含むことができる。同様に、評価は、非標的臓器又は組織(例えば、2つ以上の非標的臓器又は組織)を非ヒト動物から単離すること、及び非標的臓器又は組織におけるヒト化MYOC遺伝子座の修飾を評価することを含むことができる。候補緑内障治療剤がゲノム編集試薬(例えば、ヌクレアーゼ剤)である場合、そのような方法は、標的遺伝子座の修飾を評価することを含むことができる。
【0327】
そのような方法はまた、ヒト化MYOC遺伝子座によって産生されるmRNAの発現レベルを測定すること、又はヒト化MYOC遺伝子座によってコードされるタンパク質の発現レベルを測定することによるものを含むことができる。例えば、タンパク質レベルを、特定の細胞、組織、又は臓器型(例えば、眼)で測定することができる。ヒト化MYOC遺伝子座から発現されるMYOC mRNA又はミオシリンタンパク質の発現を評価するための方法が、本明細書の他の場所で提供され、周知である。
【0328】
1つの具体的な例として、ヒトMYOC標的化試薬がゲノム編集試薬(ヌクレアーゼ剤など)である場合、ヒト化MYOC遺伝子座でのゲノム編集率(例えば、溶解した細胞のプールからPCR反応で読み取られた配列の総数に対して観察された挿入又は欠失の総数)を(例えば、眼細胞において)評価することができる。同様に、候補緑内障治療剤がゲノム編集試薬(例えば、ヌクレアーゼ剤)である場合、標的遺伝子座での編集率(例えば、溶解した細胞のプールからPCR反応で読み取られた配列の総数に対して観察された挿入又は欠失の総数)を(例えば、眼細胞において)評価することができる。
【0329】
インビボで活性を評価するための上記で提供される様々な方法はまた、本明細書の他の場所に記載されるように、エクスビボで(例えば、ヒト化MYOC遺伝子座を含む眼において)、又はインビトロで(例えば、ヒト化MYOC遺伝子座を含む細胞において)ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を評価するために使用することができる。
【0330】
いくつかの方法では、ヒトMYOC標的化試薬は、ヒトMYOC遺伝子を標的とするCRISPR/Casヌクレアーゼ剤などのヌクレアーゼ剤である。そのような方法は、例えば、(a)ヒトMYOC遺伝子を切断するように設計されたヌクレアーゼ剤(又はヌクレアーゼ剤をコードする核酸)(例えば、Cas9などのCasタンパク質(又はCas9をコードする核酸)、及びヒトMYOC遺伝子中のガイドRNA標的配列を標的とするように設計されたガイドRNA(又はガイドRNAをコードするDNA))を非ヒト動物に導入することと、(b)ヒト化MYOC遺伝子座の修飾を評価することと、を含むことができる。
【0331】
例えば、CRISPR/Casヌクレアーゼの場合、ヒト化MYOC遺伝子座の修飾は、ガイドRNAがCasタンパク質と複合体を形成し、Casタンパク質をヒト化MYOCl遺伝子座に誘導し、Cas/ガイドRNA複合体がガイドRNA標的配列を切断し、(例えば、ドナー配列が存在しない場合、非相同末端結合(NHEJ)を介して)細胞による修復を誘起するときに誘導される。
【0332】
任意選択的に、各々、ヒトMYOC遺伝子内の異なるガイドRNA標的配列を標的とするように設計された、2つ以上のガイドRNA(ガイドRNAをコードするDNA)を導入することができる。例えば、2つのガイドRNAは、2つのガイドRNA標的配列の間のゲノム配列を切除するように設計することができる。ヒト化MYOC遺伝子座の修飾は、第1のガイドRNAがCasタンパク質と複合体を形成し、Casタンパク質をヒト化MYOC遺伝子座に誘導し、第2のガイドRNAがCasタンパク質と複合体を形成し、Casタンパク質をヒト化MYOC遺伝子座に誘導し、第1のCas/ガイドRNA複合体が第1のガイドRNA標的配列を切断し、第2のCas/ガイドRNA複合体が第2のガイドRNA標的配列を切断するときに誘導され、介在する配列の切除をもたらす。
【0333】
任意選択的に、ヒトMYOC遺伝子と再結合し、かつそれを修飾することが可能な外因性ドナー核酸もまた、非ヒト動物に導入される。任意選択的に、ヌクレアーゼ剤又はCasタンパク質は、本明細書の他の場所に記載されているように、外因性ドナー核酸に係留され得る。ヒト化MYOC遺伝子座の修飾は、例えば、ガイドRNAがCasタンパク質と複合体を形成し、Casタンパク質をヒト化MYOC遺伝子座に誘導し、Cas/ガイドRNA複合体がガイドRNA標的配列を切断し、ヒト化MYOC遺伝子座が外因性ドナー核酸と再結合して、ヒト化MYOC遺伝子座を修飾するときに誘導される。次いで、ヒト化MYOC遺伝子座は、例えば、相同性指向修復(HDR)又はNHEJ媒介挿入を介して、外因性ドナー核酸で修復することができる。任意の種類の外因性ドナー核酸を使用することができ、その例は本明細書の他の場所に提供されている。
【0334】
C.ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の送達又は有効性を最適化する方法
非ヒト動物細胞若しくは非ヒト動物へのヒトMYOC標的化試薬若しくは候補緑内障治療剤の送達を最適化するため、又はインビボでヒトMYOC標的化試薬若しくは候補緑内障治療剤の活性若しくは有効性を最適化するために、様々な方法が提供される。そのような方法は、例えば、(a)上記に記載されるヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の有効性を試験する方法を、第1の非ヒト動物又は第1の非ヒト動物細胞で1回目に実施することと、(b)可変要素を変更し、変更された可変要素を用いて、当該方法を(すなわち、同じ種の)第2の非ヒト動物又は第2の細胞で2回目に実施することと、(c)ステップ(a)におけるヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を、ステップ(b)におけるヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性と比較し、より高い活性をもたらす方法を選択することと、を含むことができる。
【0335】
ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の送達、有効性、又は活性を測定する方法は、本明細書の他の場所に開示されている。例えば、そのような方法は、ヒト化MYOC遺伝子座の修飾を測定することを含むことができる。ヒト化MYOC遺伝子座のより効果的な修飾は、非ヒト動物又は非ヒト動物細胞内の望ましい効果に応じて異なることを意味し得る。例えば、ヒト化MYOC遺伝子座のより効果的な修飾は、より高いレベルの修飾、より高い精度、より高い一貫性、又はより高い特異性のうちの1つ以上又は全てを意味し得る。ヒト化MYOC遺伝子座のより高いレベルの修飾(すなわち、より高い有効性)は、特定の標的細胞型内、特定の標的組織内、又は特定の標的臓器(例えば、眼)内で標的とされる細胞のより高いパーセンテージを指す。より高い精度は、ヒト化MYOC遺伝子座のより正確な修飾(例えば、同じ修飾を有するか、又は余分な意図しない挿入及び欠失(例えば、NHEJインデル)なしに所望の修飾を有する標的細胞のより高いパーセンテージ)を指す。より高い一貫性は、1つよりも多くの種類の細胞、組織、又は臓器が標的にされている(例えば、眼内のより多数の細胞型の修飾)場合、異なる種類の標的細胞、組織、又は臓器の間でヒト化MYOC遺伝子座のより一貫した修飾を指す。特定の臓器が標的にされている場合、より高い一貫性はまた、臓器(例えば、眼)内の全ての位置の全体を通したより一貫性のある修飾を指し得る。より高い特異性は、標的とされるゲノム遺伝子座若しくは複数の遺伝子座に関するより高い特異性、標的とされる細胞型に関するより高い特異性、標的とされる組織型に関するより高い特異性、又は標的とされる臓器に関するより高い特異性を指すことができる。例えば、ゲノム遺伝子座の特異性の増加は、オフターゲットゲノム遺伝子座の修飾が少ないこと(例えば、標的ゲノム遺伝子座の修飾の代わりに、又はそれに加えて、意図しないオフターゲットゲノム遺伝子座に修飾を有する標的細胞のより低いパーセンテージ)を指す。同様に、細胞型、組織、又は臓器型の特異性の増加は、特定の細胞型、組織型、又は臓器型が標的にされている場合、オフターゲットの細胞型、組織型、又は臓器型の修飾が少ないことを指す。(例えば、特定の臓器(例えば、眼)が標的とされる場合、意図された標的ではない臓器又は組織の細胞の修飾が少ない)。
【0336】
代替的に、そのような方法は、MYOC mRNA又はミオシリンタンパク質の発現を測定することを含むことができる。一例では、より効果的なヒトMYOC標的化剤又は候補緑内障治療剤は、MYOC mRNA又はミオシリンタンパク質発現の更なる低減をもたらす。代替的に、そのような方法は、ミオシリン活性を測定することを含むことができる。一例では、より効果的なヒトMYOC標的化剤又は候補緑内障治療剤は、ミオシリン活性の更なる減少をもたらす。
【0337】
代替的に、そのような方法は、緑内障の1つ以上の兆候又は症状を測定することを含むことができる。一例では、より効果的なヒトMYOC標的化剤又は候補緑内障治療剤は、緑内障の1つ以上の兆候又は症状の更なる減少をもたらす。例えば、そのような方法は、眼圧を測定することを含むことができる。一例では、より効果的なヒトMYOC標的化剤又は候補緑内障治療剤は、眼圧の更なる減少をもたらす。
【0338】
変更される可変要素は、任意のパラメータであり得る。一例として、変更された可変要素は、1つ若しくは複数のヒトMYOC標的化試薬又は1つ若しくは複数の候補緑内障治療剤が細胞又は非ヒト動物に導入される、パッケージング又は送達方法/ビヒクルであり得る。LNP及びAAVなどの送達方法/ビヒクルの例は、本明細書の他の場所に開示されている。例えば、変更された可変要素は、AAV血清型であり得る。代替的に、変更された変数は、送達されるAAVの用量(例えば、約1011、約1012、約1013、又は約1014vg/kg体重)であり得る。同様に、投与は、LNP媒介送達を含むことができ、変更された可変要素は、LNP製剤であり得る。代替的に、投与は、LNP媒介送達を含むことができ、変更された変数は、送達されるLNPの用量(例えば、約0.01mg/kg、約0.03mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、又は約10mg/kg)であり得る。別の例として、変更された可変要素は、1つ若しくは複数のヒトMYOC標的化試薬又は1つ若しくは複数の候補緑内障治療剤を細胞又は非ヒト動物に導入するための投与経路であり得る。静脈内、硝子体内、実質内、及び鼻腔内注入などの投与経路の例は、本明細書の他の場所に開示されている。
【0339】
別の例として、変更された可変要素は、導入される1つ若しくは複数のヒトMYOC標的化試薬又は1つ若しくは複数の候補緑内障治療剤の濃度又は量であり得る。別の例として、変更された可変要素は、導入される別のヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤(例えば、ガイドRNA、Casタンパク質、外因性ドナー核酸、RNAi剤、又はASO)の濃度又は量に対する、導入される1つのヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤(例えば、ガイドRNA、Casタンパク質、外因性ドナー核酸、RNAi剤、又はASO)の濃度又は量であり得る。
【0340】
別の例として、変更された可変要素は、試薬の活性又は有効性を評価するタイミングに対する、1つ若しくは複数のヒトMYOC標的化試薬又は1つ若しくは複数の候補緑内障治療剤を導入するタイミングであり得る。別の例として、変更された可変要素は、1つ若しくは複数のヒトMYOC標的化試薬又は1つ若しくは複数の候補緑内障治療剤が導入される回数又は頻度であり得る。別の例として、変更された可変要素は、導入される別のヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤(例えば、ガイドRNA、Casタンパク質、外因性ドナー核酸、RNAi剤、又はASO)の導入のタイミングに対する、導入される1つのヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤(例えば、ガイドRNA、Casタンパク質、外因性ドナー核酸、RNAi剤、又はASO)の導入のタイミングであり得る。
【0341】
別の例として、変更された可変要素は、1つ若しくは複数のヒトMYOC標的化試薬又は1つ若しくは複数の候補緑内障治療剤が導入される形態であり得る。例えば、ガイドRNAは、DNAの形態又はRNAの形態で導入することができる。Casタンパク質(例えば、Cas9)は、DNAの形態、RNAの形態、又はタンパク質の形態(例えば、ガイドRNAと複合体を形成している)で導入することができる。外因性ドナー核酸は、DNA、RNA、一本鎖、二本鎖、線状、環状などであり得る。同様に、成分の各々は、安定性のため、オフターゲット効果を低減するため、送達を容易にするためなどのための修飾の様々な組み合わせを含むことができる。同様に、例えば、RNAi剤及びASOは、安定性のため、オフターゲット効果を低減するため、送達を容易にするためなどの修飾の様々な組み合わせを含むことができる。
【0342】
別の例として、変更された可変要素は、導入される1つ若しくは複数のヒトMYOC標的化試薬又は1つ若しくは複数の候補緑内障治療剤であり得る。例えば、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤がガイドRNAを含む場合、変更された可変要素は、異なる配列(例えば、異なるガイドRNA標的配列を標的化する)を有する異なるガイドRNAを導入することであり得る。同様に、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤がRNAi剤又はASOを含む場合、変更された可変要素は、異なる配列を有する異なるRNAi剤又はASOを導入することであり得る。同様に、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤がCasタンパク質を含む場合、変更された可変要素は、異なるCasタンパク質を導入すること(例えば、異なる配列を有する異なるCasタンパク質、又は異なる配列(例えば、コドン最適化された)を有するが、同じCasタンパク質アミノ酸配列をコードする核酸を導入すること)であり得る。同様に、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤が外因性ドナー核酸を含む場合、変更された可変要素は、異なる配列を有する異なる外因性ドナー核酸(例えば、異なる挿入核酸又は異なる相同性アーム(例えば、より長い若しくはより短い相同性アーム、又はヒトMYOC遺伝子の異なる領域を標的とする相同性アーム))を導入することであり得る。
【0343】
具体的な例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、Casタンパク質、及びヒトMYOC遺伝子中のガイドRNA標的配列を標的とするように設計されたガイドRNAを含む。そのような方法では、変更された可変要素は、ガイドRNA配列及び/又はガイドRNA標的配列であり得る。いくつかのそのような方法では、Casタンパク質及びガイドRNAは各々、RNAの形態で投与することができ、変更された可変要素は、(例えば、LNP製剤中の)ガイドRNAに対するCas mRNAの比であり得る。いくつかのそのような方法では、変更された可変要素は、ガイドRNA修飾パターンであり得る(例えば、修飾を含むガイドRNAが、修飾を含まないガイドRNAと比較される)。
【0344】
別の具体的な例では、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤は、ヒトMYOCを標的とするRNAi剤又はASO剤を含む。そのような方法では、変更された可変要素は、RNAi剤若しくはASO剤配列、及び/又はRNAi剤若しくはASO剤標的配列であり得る。いくつかのそのような方法では、変更された変数は、RNAi剤又はASO剤修飾パターンであり得る。
【0345】
D.ヒトMYOC標的化試薬
ヒトMYOC標的化試薬は、ヒトミオシリンタンパク質、ヒトMYOC遺伝子、又はヒトMYOC mRNAを標的とする任意の試薬であり得る。ヒトMYOC標的化試薬は、例えば、既知のヒトMYOC標的化試薬であり得るか、推定ヒトMYOC標的化試薬(例えば、ヒトMYOCを標的とするように設計された候補試薬)であり得るか、又はヒトMYOC標的化活性についてスクリーニングされている試薬であり得る。同様に、候補緑内障治療剤は、既知の緑内障治療剤、推定緑内障治療剤、又は緑内障治療活性についてスクリーニングされている薬剤であり得る。
【0346】
例えば、ヒトMYOC標的化試薬は、ヒトミオシリンタンパク質のエピトープを標的とする抗原結合タンパク質であり得る。同様に、候補緑内障治療剤は、抗原結合タンパク質であり得る。「抗原結合タンパク質」という用語は、抗原に結合する任意のタンパク質を含む。抗原結合タンパク質の例としては、抗体、抗体の抗原結合断片、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、scFV、ビスscFV、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、V-NAR、VHH、VL、F(ab)、F(ab)、DVD(二重可変ドメイン抗原結合タンパク質)、SVD(単一可変ドメイン抗原結合タンパク質)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、又はデイビスボディ(あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,586,713号)が挙げられる。他のヒトMYOC標的化試薬には、ヒトミオシリンタンパク質を標的とする小分子が含まれる。同様に、他の候補緑内障治療剤には、任意の好適な標的を標的とする小分子が含まれる。
【0347】
他のヒトMYOC標的化試薬には、ヒトMYOC遺伝子内の認識部位を切断するヌクレアーゼ剤(例えば、クラスター化した規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)(CRISPR/Cas)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN))などのゲノム編集試薬が含まれ得る。同様に、ヒトMYOC標的化試薬は、ヒトMYOC遺伝子と再結合するように設計された外因性ドナー核酸(例えば、標的化ベクター又は一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN))であり得る。同様に、他の候補緑内障治療剤には、ヌクレアーゼ剤又は外因性ドナー核酸などのゲノム編集試薬が含まれる。
【0348】
他のヒトMYOC標的化試薬にはRNAi剤が含まれる。同様に、他の候補緑内障治療剤には、RNAi剤が含まれ得る。「RNAi剤」は、配列特異的様式でメッセンジャーRNA(mRNA)などの標的RNAの翻訳の分解又は阻害を促進することが可能な小さい二本鎖RNA又はRNA様(例えば、化学的に修飾されたRNA)オリゴヌクレオチド分子を含む組成物である。RNAi剤のオリゴヌクレオチドは、結合したヌクレオシドのポリマーであり、各々を独立して修飾することも、修飾しないこともできる。RNAi剤は、RNA干渉機構を介して機能する(すなわち、哺乳動物細胞のRNA干渉経路機構(RNA誘導サイレンシング複合体又はRISC)との相互作用を介してRNA干渉を誘導する)。RNAi剤は、その用語が本明細書で使用される場合、主にRNA干渉機構を通して作動すると考えられているが、開示されたRNAi剤は、いずれの特定の経路又は作用機序にも拘束又は限定されない。本明細書に開示されるRNAi剤は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、及びダイサー基質を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載されるRNAi剤のアンチセンス鎖は、標的RNAの配列(すなわち、標準的な命名法を使用して一連の文字で記載された核酸塩基又はヌクレオチドの連続又は順序)に少なくとも部分的に相補的である。
【0349】
他のヒトMYOC標的化試薬には、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が含まれ得る。同様に、他の候補緑内障治療剤には、ASOが含まれ得る。一本鎖ASO及びRNA干渉(RNAi)は、オリゴヌクレオチドがワトソン・クリック塩基対合を通して標的RNAに結合するという基本原理を共有する。理論に縛られることを望まないが、RNAiの間に、低分子RNA二重鎖(RNAi剤)がRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と結合し、一方の鎖(パッセンジャー鎖)が失われ、残りの鎖(ガイド鎖)が失われるRISCと協力して相補的RNAに結合する。次に、RISCの触媒成分であるアルゴノート2(Ago2)が標的RNAを切断する。ガイド鎖は常に相補的センス鎖又はタンパク質(RISC)のいずれかに関連付けられている。対照的に、ASOは生き残り、一本鎖として機能する必要がある。ASOは、標的RNAに結合し、リボソーム若しくはスプライシング因子などの他の因子がRNAに結合するのを阻止するか、又はヌクレアーゼなどのタンパク質を動員する。異なる修飾及び標的領域が、所望の作用機序に基づいて、ASOに対して選択される。ギャップマーは、DNAの中央の8~10塩基ギャップに隣接する各末端上に2~5つの化学修飾ヌクレオチド(例えば、LNA又は2’-MOE)を含むASOオリゴヌクレオチドである。標的RNAに結合した後、DNA-RNAハイブリッドは、RNase Hの基質として作用する。ヒトMYOC標的化RNAi剤又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの例が公知である。例えば、各々、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる、Ackermann et al.(2012)Amyloid Suppl 1:43-44、及びCoelho et al.(2013)N.Engl.J.Med.369(9):819-829を参照されたい。
【0350】
他のヒトMYOC標的化試薬には小分子試薬が含まれる。同様に、他の候補緑内障治療剤には、小分子試薬が含まれ得る。
【0351】
一例では、候補緑内障治療剤は、房水形成を抑制するか、又は房水の流出を増加させる薬剤であり得る。一例は、チモロール(房水形成を抑制するベータ遮断薬)である。別の例は、RHOPRESSA(登録商標)(房水の流出を増加させるROCK阻害剤)である。
【0352】
E.ヒトMYOC標的化試薬若しくは候補緑内障治療剤及び/若しくはSAMガイドRNA並びに/又はリコンビナーゼ発現カセットを非ヒト動物又は非ヒト動物細胞に投与すること
本明細書に開示される方法は、非ヒト動物又は非ヒト動物細胞に、核酸、タンパク質、核酸・タンパク質複合体、タンパク質複合体、又は小分子を含む、様々な分子(例えば、本明細書に記載される治療分子若しくは複合体及び/又はSAMガイドRNA、又はSAMガイドRNAをコードするDNA及び/若しくはリコンビナーゼあるいはリコンビナーゼをコードする核酸などのヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤)を導入することを含むことができる。「導入すること」は、細胞の内部又は非ヒト動物内の細胞の内部へのアクセスを獲得するような様式で、非ヒト動物細胞又は非ヒト動物に分子(例えば、核酸又はタンパク質)を提示することを含む。導入することは、任意の手段によって達成することができ、成分のうちの2つ以上(例えば、成分のうちの2つ、又は成分の全て)を、任意の組み合わせで同時に又は逐次的に細胞又は非ヒト動物に導入することができる。例えば、Casタンパク質は、ガイドRNAの導入前に細胞若しくは非ヒト動物に導入することができるか、又はガイドRNAの導入後に導入することができる。別の例として、外因性ドナー核酸は、Casタンパク質及びガイドRNAの導入前に導入することができるか、又はCasタンパク質及びガイドRNAの導入後に導入することができる(例えば、外因性ドナー核酸は、Casタンパク質及びガイドRNAの導入の約1、2、3、4、8、12、24、36、48、又は72時間前又は後に投与することができる)。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2015/0240263号及び米国特許出願公開第2015/0110762号を参照されたい。加えて、成分のうちの2つ以上を、同じ送達方法/ビヒクル又は異なる送達方法/ビヒクルによって細胞又は非ヒト動物に導入することができる。同様に、成分のうちの2つ以上を、同じ投与経路又は異なる投与経路によって非ヒト動物に導入することができる。
【0353】
いくつかの方法では、CRISPR/Cas系の成分が、非ヒト動物又は非ヒト動物細胞に導入される。ガイドRNAを、RNA(例えば、インビトロ転写RNA)の形態で、又はガイドRNAをコードするDNAの形態で非ヒト動物又は細胞に導入することができる。DNAの形態で導入されると、ガイドRNAをコードするDNAは、非ヒト動物の細胞内で活性のあるプロモーターに作動可能に連結することができる。例えば、ガイドRNAは、AAVを介して送達され、U6プロモーターの下で、インビボで発現され得る。そのようなDNAは、1つ以上の発現コンストラクト中にあり得る。例えば、そのような発現コンストラクトは、単一の核酸分子の成分であり得る。代替的に、それらは、2つ以上の核酸分子の間で任意の組み合わせで分離することができる(すなわち、1つ以上のCRISPR RNAをコードするDNA及び1つ以上のtracrRNAをコードするDNAは、別個の核酸分子の成分であり得る)。
【0354】
同様に、Casタンパク質は、任意の形態で提供することができる。例えば、Casタンパク質は、gRNAと複合体を形成したCasタンパク質などのタンパク質の形態で提供することができる。代替的に、Casタンパク質は、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))又はDNAなどの、Casタンパク質をコードする核酸の形態で提供することができる。任意選択的に、Casタンパク質をコードする核酸は、特定の細胞又は生物におけるタンパク質への効率的な翻訳のためにコドン最適化することができる。例えば、Casタンパク質をコードする核酸は、天然に存在するポリヌクレオチド配列と比較して、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、又は任意の他の目的の宿主細胞においてより高い使用頻度を有する代替コドンへと修飾することができる。Casタンパク質をコードする核酸が非ヒト動物に導入されると、Casタンパク質は、一過性に、条件付きで、又は構成的に細胞内で発現され得る。
【0355】
Casタンパク質又はガイドRNAをコードする核酸は、発現コンストラクト中のプロモーターに作動可能に連結され得る。発現コンストラクトは、遺伝子又は他の目的の核酸配列(例えば、Cas遺伝子)の発現を指示することができ、そのような目的の核酸配列を標的細胞に導入することができる任意の核酸コンストラクトを含む。例えば、Casタンパク質をコードする核酸は、1つ以上のgRNAをコードするDNAを含むベクター内に存在し得る。代替的に、それは、1つ以上のgRNAをコードするDNAを含むベクターとは別のベクター又はプラスミドであり得る。発現コンストラクトにおいて使用することができる好適なプロモーターとしては、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、ウサギ細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、成体幹細胞、発生が制限された前駆細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、又は1細胞期胚のうちの1つ以上において活性なプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターは、例えば、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、又は組織特異的プロモーターであり得る。任意選択的に、プロモーターは、一方向のCasタンパク質及び他の方向のガイドRNAの両方の発現を駆動する双方向プロモーターであり得る。そのような双方向プロモーターは、(1)遠位配列要素(DSE)、近位配列要素(PSE)、及びTATAボックスの3つの外部制御要素を含む完全な従来の一方向Pol IIIプロモーター、並びに(2)DSEの5’末端に逆方向に融合されたPSE及びTATAボックスを含む第2の基本的なPol IIIプロモーターからなり得る。例えば、H1プロモーターでは、DSEはPSE及びTATAボックスに隣接しており、プロモーターは、U6プロモーターに由来するPSE及びTATAボックスを追加することによって逆方向の転写が制御されるハイブリッドプロモーターを作成することにより、双方向にすることができる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0074535号を参照されたい。双方向プロモーターを使用してCasタンパク質及びガイドRNAをコードする遺伝子を同時に発現させることにより、コンパクトな発現カセットを生成して送達を容易にすることができる。
【0356】
非ヒト動物又は非ヒト動物細胞に導入された分子(例えば、Casタンパク質又はガイドRNA若しくはRNAi剤あるいはASO)は、導入された分子の安定性を増加させる担体(例えば、分解産物が閾値未満、例えば、出発核酸若しくはタンパク質の0.5重量%未満のままである、所与の保存条件下(例えば、-20℃、4℃、若しくは周囲温度)での期間を延長するか、又はインビボでの安定性を増加させる)を含む、組成物で提供することができる。そのような担体の非限定的な例としては、ポリ(乳酸)(PLA)ミクロスフェア、ポリ(D,L-乳酸-コグリコール-酸)(PLGA)ミクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質コキレート(cochleates)、及び脂質微小管が挙げられる。
【0357】
非ヒト動物細胞又は非ヒト動物への分子(例えば、核酸又はタンパク質)の導入を可能にするために、様々な方法及び組成物が本明細書で提供される。分子を様々な細胞型に導入するための方法が公知であり、例えば、安定したトランスフェクション法、一過性トランスフェクション法、及びウイルス媒介法が含まれる。
【0358】
トランスフェクションプロトコル、並びに分子を細胞に導入するためのプロトコルは異なり得る。非限定的なトランスフェクション方法としては、リポソーム;ナノ粒子;リン酸カルシウム(Graham et al.(1973)Virology 52(2):456-67,Bacchetti et al.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.」74(4):1590-4、及びKriegler,M(1991).Transfer and Expression:A Laboratory Manual.New York:W.H.Freeman and Company.pp.96-97)、デンドリマー、又はDEAE-デキストラン若しくはポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーを使用する化学ベースのトランスフェクション方法が挙げられる。非化学的方法には、エレクトロポレーション、ソノポレーション、及び光トランスフェクションが含まれる。粒子ベースのトランスフェクションには、遺伝子銃の使用、又はマグネットアシストトランスフェクション(Bertram(2006)Current Pharmaceutical Biotechnology 7,277-28)が含まれる。ウイルス法もトランスフェクションに使用することができる。
【0359】
細胞への核酸又はタンパク質の導入はまた、エレクトロポレーション、細胞質内注射、ウイルス感染、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、トランスフェクション、脂質媒介トランスフェクション、又はヌクレオフェクションによって媒介され得る。ヌクレオフェクションは、核酸基質を細胞質だけでなく核膜を介して核に送達することを可能にする改良されたエレクトロポレーション技術である。加えて、本明細書に開示される方法でのヌクレオフェクションの使用は、典型的には、通常のエレクトロポレーションよりもはるかに少ない細胞を必要とする(例えば、通常のエレクトロポレーションによる700万に対してわずか約200万)。一例では、ヌクレオフェクションは、LONZA(登録商標)NUCLEOFECTOR(商標)系を使用して行われる。
【0360】
細胞(例えば、接合子)への分子(例えば、核酸又はタンパク質)の導入は、マイクロインジェクションによっても達成され得る。接合子(すなわち、1細胞期胚)では、マイクロインジェクションは母体及び/又は父方の前核又は細胞質に行うことができる。マイクロインジェクションが1つの前核のみに行われる場合は、サイズが大きいため、父方の前核が適している。mRNAのマイクロインジェクションは、好ましくは細胞質へ(例えば、mRNAを翻訳機構に直接送達するために)のものであるが、一方で、Casタンパク質若しくはCasタンパク質をコードするか又はRNAをコードするポリヌクレオチドのマイクロインジェクションは、核/前核へのものが好ましい。代替的に、マイクロインジェクションは、核/前核及び細胞質の両方への注射によって実施することができ、針を最初に核/前核に導入し、最初の量を注射することができ、1細胞期胚から針を除去しながら、2番目の量を細胞質に注射することができる。Casタンパク質が細胞質に注入される場合、Casタンパク質は、核/前核への送達を確実にするために、核局在化シグナルを含むことが好ましい。マイクロインジェクションを実施する方法は周知である。例えば、Nagy et al.(Nagy A,Gertsenstein M,Vintersten K,Behringer R.,2003,Manipulating the Mouse Embryo.Cold Spring Harbor,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照されたい;またMeyer et al.(2010)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.107:15022-15026及びMeyer et al.(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.」109:9354-9359を参照されたい。
【0361】
分子(例えば、核酸又はタンパク質)を細胞又は非ヒト動物に導入するための他の方法には、例えば、ベクター送達、粒子媒介送達、エクソソーム媒介送達、脂質ナノ粒子媒介送達、細胞透過性ペプチド媒介送達、又は埋め込み型デバイス媒介送達が含まれ得る。具体的な例としては、核酸又はタンパク質は、ポリ(乳酸)(PLA)ミクロスフェア、ポリ(D,L-乳酸-コグリコール酸)(PLGA)ミクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質渦巻状物、又は脂質微小管などの担体中で、細胞又は非ヒト動物に導入することができる。非ヒト動物への送達のいくつかの具体的な例には、流体力学的送達、ウイルス媒介送達(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達)、及び脂質ナノ粒子媒介送達が含まれる。
【0362】
核酸の導入はまた、アデノウイルス媒介送達(例えば、組換えAd5)、AAV媒介送達(例えば、組換えAAV2.Y3F)、又はレンチウイルス媒介送達などのウイルス媒介送達によって達成することもできる。他の例示的なウイルス/ウイルスベクターには、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、及び単純ヘルペスウイルスが含まれる。ウイルスは、分裂細胞、非分裂細胞、又は分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染し得る。ウイルスは、宿主ゲノムに組み込むことができるか、又は代替的に宿主ゲノムに組み込まない。そのようなウイルスは、免疫力が低減するように操作することもできる。ウイルスは、複製可能であり得、複製欠損性(例えば、ビリオン複製及び/又はパッケージングの追加ラウンドに必要な1つ以上の遺伝子に欠損がある)であり得る。ウイルスは、一過性の発現、長期的な発現(例えば、少なくとも1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、又は3ヶ月)、又は永続的な発現(例えば、Cas9及び/又はgRNAの)を引き起こし得る。例示的なウイルス力価(例えば、AAV力価)には、1012、1013、1014、1015、及び1016ベクターゲノム/mLが含まれる。他の例示的なウイルス力価(例えば、AAV力価)には、約1012、約1013、約1014、約1015、及び約1016ベクターゲノム(vector genome、vg)/kg体重が含まれる。
【0363】
ssDNA AAVゲノムは、2つのオープンリーディングフレーム、Rep及びCapで構成され、相補的DNA鎖の合成を可能にする2つの末端逆位配列が隣接している。AAVトランスファープラスミドを構築する場合、導入遺伝子は、2つのITRの間に配置され、Rep及びCapは、トランスで供給され得る。Rep及びCapに加えて、AAVはアデノウイルス由来の遺伝子を含むヘルパープラスミドを必要とする場合がある。これらの遺伝子(E4、E2a、及びVA)はAAV複製を仲介する。例えば、トランスファープラスミド、Rep/Cap、及びヘルパープラスミドをアデノウイルス遺伝子E1+を含むHEK293細胞にトランスフェクトして、感染性AAV粒子を生成することができる。代替的に、Rep、Cap、及びアデノウイルスヘルパー遺伝子を組み合わせて単一のプラスミドとすることもできる。同様のパッケージングセル及び方法を、レトロウイルスなどの他のウイルスに使用することができる。
【0364】
AAVの複数の血清型が確認されている。これらの血清型は、感染する細胞の種類(すなわち、それらの指向性)が異なり、特定の細胞型の優先的な形質導入を可能にする。CNS組織に対する血清型には、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV8、及びAAV9が含まれる。心臓組織に対する血清型には、AAV1、AAV8、及びAAV9が含まれる。腎臓組織に対する血清型にはAAV2が含まれる。肺組織に対する血清型には、AAV4、AAV5、AAV6、及びAAV9が含まれる。膵臓組織に対する血清型にはAAV8が含まれる。光受容細胞に対する血清型には、AAV2、AAV5、及びAAV8が含まれる。網膜色素上皮組織に対する血清型には、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、及びAAV8が含まれる。骨格筋組織に対する血清型には、AAV1、AAV6、AAV7、AAV8、及びAAV9が含まれる。肝臓組織に対する血清型には、AAV7、AAV8、及びAAV9、並びに、特にAAV8が含まれる。具体的な例では、AAV2.Y3F血清型が使用される。
【0365】
指向性は、キャプシド及び異なるウイルス血清型からのゲノムの混合である偽型付けによって更に洗練することができる。例えば、AAV2/5は、血清型5のキャプシドにパッケージされた血清型2のゲノムを含むウイルスを示す。偽型ウイルスの使用は、形質導入効率を改善するだけでなく、指向性を変えることができる。異なる血清型に由来するハイブリッドキャプシドを使用して、ウイルスの指向性を改変することもできる。例えば、AAV-DJには、8つの血清型由来のハイブリッドキャプシドが含まれており、インビボで幅広い細胞型にわたって高い感染力を示す。AAV-DJ8は、AAV-DJの特性を示すが、脳への取り込みが増強された別の例である。AAV血清型は、変異によっても修飾することができる。AAV2の変異修飾の例には、Y444F、Y500F、Y730F、及びS662Vが含まれる。AAV3の変異修飾の例には、Y705F、Y731F、及びT492Vが含まれる。AAV6の変異修飾の例には、S663V及びT492Vが含まれる。他の偽型/修飾AAVバリアントには、AAV2/1、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8、AAV2/9、AAV2.5、AAV8.2、及びAAV/SASTGが含まれる。
【0366】
導入遺伝子の発現を加速するために、自己相補的AAV(self-complementary AAV、scAAV)バリアントを使用することができる。AAVは細胞のDNA複製機構に依存して、AAVの一本鎖DNAゲノムの相補的鎖を合成するため、導入遺伝子の発現が遅れる可能性がある。この遅延に対処するために、感染時に自発的にアニーリングすることができる相補的配列を含むscAAVを使用することができ、宿主細胞のDNA合成の必要性を排除する。しかしながら、一本鎖AAV(single-stranded AAV、ssAAV)ベクターも使用することができる。
【0367】
パッケージング容量を増加させるために、より長い導入遺伝子を、1つ目は3’スプライスドナー、2つ目は5’スプライスアクセプターである2つのAAVトランスファープラスミドに分割することができる。細胞の共感染時に、これらのウイルスは、コンカテマーを形成し、一緒にスプライシングされ、完全長導入遺伝子を発現させることができる。これにより、より長い導入遺伝子の発現が可能になるが、発現の効率は低下する。容量を増加させるための同様の方法は、相同組換えを利用する。例えば、導入遺伝子を2つのトランスファープラスミドに分割することができるが、共発現が相同組換え及び完全長導入遺伝子の発現を誘導するように、実質的な配列の重複がある。
【0368】
核酸及びタンパク質の導入は、脂質ナノ粒子(LNP)媒介送達によっても達成できる。例えば、LNP媒介送達は、Cas mRNA及びガイドRNAの組み合わせ、又はCasタンパク質及びガイドRNAの組み合わせを送達するために使用することができる。そのような方法による送達は、一過性のCas発現をもたらし、生分解性脂質は、クリアランスを改善し、忍容性を改善し、免疫原性を低下させる。脂質製剤は、生体分子を分解から保護すると同時に、細胞への取り込みを改善することができる。脂質ナノ粒子は、分子間力によって互いに物理的に結合した複数の脂質分子を含む粒子である。これらには、ミクロスフェア(単層及び多層ベシクル、例えば、リポソームを含む)、エマルジョン中の分散相、ミセル、又は懸濁液中の内相が含まれる。そのような脂質ナノ粒子は、送達のために1つ以上の核酸又はタンパク質をカプセル化するために使用することができる。カチオン性脂質を含む製剤は、核酸などのポリアニオンを送達するのに有用である。含めることができる他の脂質は、中性脂質(すなわち、非荷電又は両性イオン脂質)、陰イオン脂質、トランスフェクションを増強するヘルパー脂質、及びナノ粒子がインビボで存在することができる時間を増加させるステルス脂質である。好適なカチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、ヘルパー脂質、及びステルス脂質の例は、本出願において、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/010840(A1)号に、見出され得る。例示的な脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質及び1つ以上の他の成分を含むことができる。一例では、他の成分は、コレステロールなどのヘルパー脂質を含むことができる。別の例では、他の成分は、コレステロールなどのヘルパー脂質及びDSPCなどの中性脂質を含むことができる。別の例では、他の成分は、コレステロールなどのヘルパー脂質、DSPCなどの任意選択の中性脂質、及びS010、S024、S027、S031、又はS033などのステルス脂質を含むことができる。
【0369】
LNPは、以下のうちの1つ以上又は全てを含有してもよい。(i)カプセル化及びエンドソーム脱出のための脂質、(ii)安定化のための中性脂質、(iii)安定化のためのヘルパー脂質、及び(iv)ステルス脂質。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Finn et al.(2018)Cell Reports 22:1-9及び国際公開第2017/173054(A1)号を参照されたい。特定のLNPでは、カーゴは、ガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含むことができる。特定のLNPでは、カーゴは、Cas9などのCasヌクレアーゼをコードするmRNA、及びガイドRNA又はガイドRNAをコードする核酸を含むことができる。
【0370】
LNPの例示的な投与は、例えば、総RNA(例えば、Cas9 mRNA及びgRNA)カーゴ含有量に関して、約0.1、約0.25、約0.3、約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約8、又は約10mg/kg(mpk)を含む。一例では、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1~約10mg/kg、又は約0.01~約0.3mg/kgのLNP用量を使用することができる。例えば、約0.01、約0.03、約0.1、約0.3、約1、約3、又は約10mg/kgのLNP用量を使用することができる。
【0371】
インビボでの投与は、例えば、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所、鼻腔内、又は筋肉内を含む任意の好適な経路によることができる。全身投与様式には、例えば、経口及び非経口経路が含まれる。非経口経路の例には、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、皮内、皮下、鼻腔内、及び腹腔内経路が含まれる。特定の例は、静脈内注入である。鼻腔内注入及び硝子体内注射は、他の特定の例である。局所投与様式には、例えば、髄腔内、脳室内、実質内(例えば、線条体(例えば、尾状核又は被殻へ)、大脳皮質、前中心回旋、海馬(例えば、歯状回又はCA3領域)、側頭皮質、扁桃体、前頭皮質、視床、小脳、髄質、視床、視蓋、被殻、又はニグラ実質への局所的な実質内送達)、眼内、眼窩内、結膜下、硝子体内、網膜下、及び強膜を介した経路が含まれる。(全身的アプローチと比較して)有意に少量の成分は、全身的に投与された場合(例えば、静脈内)と比較して、局所的に投与された場合(例えば、実質内又は硝子体内)に効果を発揮し得る。局所投与様式はまた、治療有効量の成分が全身投与されるときに起こり得る潜在的に毒性の副作用の発生率を低減又は排除し得る。具体的な例では、インビボでの投与は、硝子体内注入又は前房内注射による。
【0372】
インビボでの投与は、例えば、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所、鼻腔内、又は筋肉内を含む、任意の好適な経路によるものであり得る。具体的な例は、静脈内注入である。ガイドRNA及び/又はCasタンパク質(若しくはガイドRNA及び/又はCasタンパク質をコードする核酸)を含む組成物は、1つ以上の生理学的及び薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又は助剤を使用して製剤化することができる。製剤は、選択した投与経路に依存し得る。「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤、賦形剤、又は補助剤が製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに実質的に有害ではないことを意味する。
【0373】
投与の頻度及び投与回数は、いくつかある要因の中でもとりわけ、投与された分子の半減期及び投与経路に依存し得る。細胞又は非ヒト動物への、核酸又はタンパク質の導入は、ある期間にわたって1回又は複数回、実施され得る。例えば、導入は、ある期間にわたって少なくとも2回、ある期間にわたって少なくとも3回、ある期間にわたって少なくとも4回、ある期間にわたって少なくとも5回、ある期間にわたって少なくとも6回、ある期間にわたって少なくとも7回、ある期間にわたって少なくとも8回、ある期間にわたって少なくとも9回、ある期間にわたって少なくとも10回、ある期間にわたって少なくとも11回、ある期間にわたって少なくとも12回、ある期間にわたって少なくとも13回、ある期間にわたって少なくとも14回、ある期間にわたって少なくとも15回、ある期間にわたって少なくとも16回、ある期間にわたって少なくとも17回、ある期間にわたって少なくとも18回、ある期間にわたって少なくとも19回、又はある期間にわたって少なくとも20回、実施され得る。
【0374】
F.インビボ又はエクスビボでのヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の送達、活性、又は有効性の測定
本明細書に開示される方法は、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤の活性を検出又は測定することを更に含むことができる。
【0375】
例えば、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤がゲノム編集試薬(例えば、ヒトMYOC遺伝子座を標的とするように設計されたCRISPR/Cas)である場合、測定は、修飾についてヒト化MYOC遺伝子座を評価することを含むことができる。標的化遺伝子修飾を有する細胞を同定するために、様々な方法を使用することができる。スクリーニングは、親染色体の対立遺伝子修飾(modification-of-allele、MOA)を評価するための定量的アッセイを含むことができる。例えば、各々は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0018626号、米国特許出願公開第2014/0178879号、米国特許出願公開第2016/0145646号、米国特許出願公開第2016/081923号、及びFrendewey et al.(2010)Methods Enzymol.476:295-307を参照されたい。例えば、定量的アッセイは、リアルタイムPCRなどの定量的PCR(quantitative PCR、qPCR)を介して実施することができる。リアルタイムPCRは、標的遺伝子座を認識する第1のプライマーセット及び非標的参照遺伝子座を認識する第2のプライマーセットを利用することができる。プライマーセットは、増幅された配列を認識する蛍光プローブを含むことができる。好適な定量的なアッセイの他の例としては、蛍光媒介インサイチュハイブリダイゼーション(fluorescence-mediated in situ hybridization、FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション、等温DNA増幅、固定化プローブ対する定量的ハイブリダイゼーション、INVADER(登録商標)プローブ、TAQMAN(登録商標)分子ビーコンプローブ、又はECLIPSE(商標)プローブ技術が挙げられる(例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開2005/0144655号を参照されたい)。次世代シーケンシング(next-generation sequencing、NGS)もまた、スクリーニングに使用することができる。次世代シーケンシングは、「NGS」又は「大規模並列シーケンシング」又は「ハイスループットシーケンシング」とも呼ばれ得る。標的化遺伝子修飾の正確な性質及びそれが細胞型又は組織型又は臓器型にわたって一貫しているかどうかを定義するために、MOAアッセイに加えてNGSをスクリーニングツールとして使用することができる。
【0376】
非ヒト動物におけるヒト化MYOC遺伝子座の修飾を評価することは、任意の組織又は臓器からの任意の細胞型におけるものであり得る。例えば、評価は、同じ組織若しくは臓器からの複数の細胞型、又は組織若しくは臓器内の複数の場所からの細胞におけるものであり得る。これは、標的組織若しくは臓器内のどの細胞型が標的とされているか、又は組織若しくは臓器のどのセクションがヒトMYOC標的化試薬によって到達されているかについての情報を提供することができる。別の例として、評価は複数の種類の組織又は複数の臓器で行うことができる。特定の組織、臓器、又は細胞型が標的とされている方法では、これは、その組織又は臓器がどれほど効果的に標的とされているか、及び他の組織又は臓器にオフターゲット効果があるかどうかについての情報を提供することができる。
【0377】
試薬が、ヒト化MYOC遺伝子座を不活化するか、ヒト化MYOC遺伝子座の発現に影響を及ぼすか、ヒト化MYOC mRNAの翻訳を防止するか、又はヒト化ミオシリンタンパク質を取り除くように設計されている場合、測定は、ヒト化MYOC mRNA又はタンパク質発現を評価することを含むことができる。この測定は、例えば、眼内、又は眼内の特定の細胞型若しくは領域内におけるものであり得る。
【0378】
ヒト化ミオシリンタンパク質の産生を、任意の既知の手段によって評価することができる。例えば、既知のアッセイを使用して、非ヒト動物の眼におけるコードされたmRNAのレベル又は非ヒト動物の眼におけるコードされたタンパク質のレベルを測定することによって、発現を評価することができる。例えば、測定は、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤が非ヒト動物におけるミオシリンレベルを低減するかどうかを判定することであり得る。
【0379】
眼圧もまた、既知の手段によって評価することができ、緑内障の他の表現型もまた、既知の手段によって評価することができる。
【0380】
非ヒト動物における評価は、任意の組織又は臓器からの任意の細胞型におけるものであり得る。例えば、評価は、同じ組織若しくは臓器(例えば、眼)からの複数の細胞型、又は組織若しくは臓器内の複数の位置からの細胞におけるものであり得る。これは、標的組織若しくは臓器内のどの細胞型が標的とされているか、又は組織若しくは臓器のどのセクションがヒトMYOC標的化試薬若しくは候補緑内障治療剤によって到達されているかについての情報を提供することができる。別の例として、評価は、複数の種類の組織又は複数の臓器におけるものであり得る。特定の組織、臓器、又は細胞型が標的とされる方法では、これは、その組織又は臓器がどれほど効果的に標的とされるか、及び他の組織又は臓器にオフターゲット効果があるかどうかについての情報を提供することができる。
【0381】
使用することができるアッセイの一例は、無傷の固定組織との関連で、単一ヌクレオチドの変化を含む、細胞特異的に編集された転写産物を定量化することができる方法である、RNASCOPE(商標)及びBASESCOPE(商標)RNAインサイチュハイブリダイゼーション(in situ hybridization、ISH)アッセイである。BASESCOPE(商標)RNA ISHアッセイは、遺伝子編集の特性評価においてNGS及びqPCRを補完することができる。NGS/qPCRは野生型及び編集された配列の定量的平均値を提供できるが、組織内の編集された細胞の不均一性又はパーセンテージに関する情報は提供しない。BASESCOPE(商標)ISHアッセイは、組織全体のランドスケープビューと、編集されたmRNA転写物を含む標的組織内の実際の細胞数を定量化することができる、単一細胞分解能での野生型対編集された転写物の定量化とを提供することができる。BASESCOPE(商標)アッセイは、非特異的なバックグラウンドなしでシグナルを増幅するためのペアオリゴ(「ZZ」)プローブを使用して、単一分子RNA検出を実現する。しかしながら、BASESCOPE(商標)プローブの設計及びシグナル増幅系により、ZZプローブを使用した単一分子RNAの検出が可能になり、無傷の固定組織における単一ヌクレオチドの編集及び変異を差次的に検出することができる。
【0382】
これらの表現型のうちのいずれかの評価は、月齢少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、又は少なくとも約12ヶ月などの非ヒト動物の任意の年齢におけるものであり得る。
【0383】
これらの表現型のうちのいずれかの評価は、対照非ヒト動物と比較して行うことができる。対照非ヒト動物は、例えば、試験非ヒト動物と同じ年齢、及び/又は試験非ヒト動物と同じ性別であり得る。これらの表現型のうちのいずれかの評価はまた、ヒトMYOC標的化試薬又は候補緑内障治療剤で治療されていないことを除いて、試験非ヒト動物と同一である対照非ヒト動物と比較して行うこともできる。
【0384】
これらの表現型のうちのいずれかの評価は、単一の非ヒト動物で行うことができ、その非ヒト動物の変化を評価することができる。代替的に、評価は、非ヒト動物の集団で行われ、例えば、特定の表現型を有する非ヒト動物のパーセンテージを比較することができる。
【0385】
G.インビボでのヒト化MYOC遺伝子座の発現のCRISPR/Cas誘導性上方制御の測定
本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される相乗的活性化メディエーター(SAM)系によるヒト化MYOC遺伝子座の発現又はヒト化MYOC遺伝子座の上方制御を評価することを更に含むことができる。
【0386】
例えば、発現を評価する方法は、コードされたMYOC mRNA及び/又はミオシリンタンパク質の発現又は活性を測定することを含むことができる。例えば、コードされたMYOC mRNA又はミオシリンタンパク質のレベルを、眼で測定することができる。RNA及びタンパク質のレベル及び活性を測定するためのアッセイが周知である。
【0387】
非ヒト動物におけるヒト化MYOC遺伝子座の発現を評価することは、任意の組織又は臓器からの任意の細胞型におけるものであり得る。例えば、ヒト化MYOC遺伝子座の発現を、同じ組織若しくは臓器からの複数の細胞型、又は組織若しくは臓器内の複数の場所からの細胞で評価することができる。これは、標的組織若しくは臓器内のどの細胞型が標的とされているか、又は組織若しくは臓器のどのセクションがCRISPR/Casによって到達されているかについての情報を提供することができる。別の例として、ヒト化MYOC遺伝子座の発現を、複数の種類の組織又は複数の臓器で評価することができる。特定の組織若しくは臓器が標的とされている方法では、これは、その組織若しくは臓器がどれほど効果的に標的とされているか、及び他の組織若しくは臓器にオフターゲット効果があるかどうかについての情報を提供することができる。
【0388】
評価は、対照非ヒト動物と比較して行うことができる。対照非ヒト動物は、例えば、試験非ヒト動物と同じ年齢及び/又は試験非ヒト動物と同じ性別であり得る。対照非ヒト動物は、野生型動物、本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、ヒト化MYOC遺伝子座を標的とする1つ以上のSAMガイドRNAを投与されていない非ヒト動物、又は本明細書に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を有するが、ヒト化MYOC遺伝子座を標的とする1つ以上のSAMガイドRNAの投与前の非ヒト動物であり得る。
【0389】
V.ヒト化MYOC遺伝子座及び/又は相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセットを作製する方法
ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、本明細書の他の場所に開示されるY437Hを含む)を含む、非ヒト動物ゲノム、非ヒト動物細胞、又は非ヒト動物を作製するために、様々な方法が提供される。同様に、ヒト化MYOC遺伝子若しくは遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を作製するため、又はヒト化MYOC遺伝子座(例えば、明細書の他の場所に開示されるY437H変異を含む)を含む非ヒト動物ゲノム若しくは非ヒト動物細胞を作製するために、様々な方法が提供される。同様に、相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセット(キメラCasタンパク質コード配列及びキメラアダプタータンパク質発現コード配列を含む)及びヒト化MYOC遺伝子座(例えば、本明細書の他の場所に開示されるY437H変異を含む)を含む、非ヒト動物を作製するために、様々な方法が提供される。遺伝子修飾された生物を産生するための任意の便利な方法又はプロトコルは、そのような遺伝子修飾された非ヒト動物を産生するために好適である。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Poueymirou et al.(2007)Nat.Biotechnol.25(1):91-99、米国特許第7,294,754号、米国特許第7,576,259号、米国特許第7,659,442号、米国特許第8,816,150号、米国特許第9,414,575号、米国特許第9,730,434号、及び米国特許第10,039,269号(遺伝子修飾されたマウスを作製するためのマウスES細胞及びVELOCIMOUSE(登録商標)方法を記載している)を参照されたい。また、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0235933(A1)号、米国特許出願公開第2014/0310828(A1)号(ラットES細胞及び遺伝子修飾されたラットを作製するための方法を記載している)も参照されたい。また、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Cho et al.(2009)Curr.Protoc.Cell.Biol.」、42:19.11.1-19.11.22(doi:10.1002/0471143030.cb1911s42)、及びGama Sosa et al.(2010)Brain Struct.Funct.214(2-3):91-109も参照されたい。そのような遺伝子修飾された非ヒト動物は、例えば、標的MYOC遺伝子座での遺伝子ノックインを通して生成することができる。
【0390】
例えば、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む非ヒト動物を産生する方法は、(1)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む多能性細胞(例えば、マウスES細胞又はラットES細胞などの胚性幹(ES)細胞)を提供することと、(2)遺伝子修飾された多能性細胞を非ヒト動物宿主胚に導入することと、(3)宿主胚を代理母において妊娠させることと、を含むことができる。
【0391】
別の例として、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む非ヒト動物を産生する方法は、(1)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含むように、多能性細胞(例えば、マウスES又はラットESなどの胚性幹(ES)細胞)のゲノムを修飾することと、(2)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む遺伝子修飾された多能性細胞を同定又は選択することと、(3)遺伝子修飾された多能性細胞を非ヒト動物宿主胚に導入することと、(4)宿主胚を代理母において妊娠させることと、を含むことができる。ドナー細胞は、胚盤胞期又は桑実胚前期(すなわち、4細胞期又は8細胞期)などの任意の段階で宿主胚に導入することができる。任意選択的に、修飾された多能性細胞(例えば、非ヒトES細胞)を含む宿主胚は、F0非ヒト動物を産生するために代理母に着床させ、妊娠させる前に胚盤胞段階までインキュベートすることができる。次いで、代理母は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む(かつ生殖細胞系列を通して遺伝子修飾を伝達することが可能である)F0世代の非ヒト動物を産生することができる。
【0392】
代替的に、本明細書の他の場所に記載される非ヒト動物を産生する方法は、(1)多能性細胞を修飾するための上記に記載される方法を使用して、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含むように、1細胞期胚のゲノムを修飾することと、(2)遺伝子修飾された胚を選択することと、(3)遺伝子修飾された宿主胚を代理母において妊娠させることと、を含むことができる。生殖細胞系列を通して遺伝子修飾を伝達することが可能である子孫が生成される。
【0393】
核移植技術もまた、非ヒト哺乳動物を生成するために使用することができる。簡潔に言えば、核移植のための方法は、(1)卵母細胞を除核するか、又は除核された卵母細胞を提供するステップと、(2)除核した卵母細胞と組み合わせられるドナー細胞又は核を単離又は提供するステップと、(3)細胞又は核を除核した卵母細胞に挿入して、再構成された細胞を形成するステップと、(4)再構成された細胞を動物の子宮に着床させて、胚を形成するステップと、(5)胚を発育させるステップと、を含むことができる。そのような方法では、卵母細胞は、一般に、死亡した動物から回収されるが、生きている動物の卵管及び/又は卵巣のいずれかからも単離され得る。卵母細胞は、除核前に様々な周知の培地で成熟させることができる。卵母細胞の除核は、多くの周知の方法で行うことができる。再構成された細胞を形成するための除核卵母細胞へのドナー細胞又は核の挿入は、融合の前に透明帯の下にドナー細胞をマイクロインジェクションすることによって行うことができる。融合は、接触/融合面を横切るDC電気パルスの印加(電気融合)、ポリエチレングリコールなどの融合促進化学物質への細胞の曝露、又はセンダイウイルスなどの不活化ウイルスによって誘導され得る。再構成された細胞は、核のドナー及びレシピエントの卵母細胞の融合の前、間、及び/又は後に、電気的及び/又は非電気的手段によって活性化することができる。活性化方法には、電気パルス、化学的に誘導されたショック、精子による浸透、卵母細胞における二価カチオンのレベルの増加、及び卵母細胞における細胞タンパク質のリン酸化の低減(キナーゼ阻害剤による)が含まれる。活性化された再構成された細胞、又は胚は、周知の培地で培養し、次いで、動物の子宮に移植することができる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2008/0092249号、国際公開第1999/005266号、米国特許出願公開第2004/0177390号、国際公開第2008/017234号、及び米国特許第7,612,250号を参照されたい。
【0394】
修飾された細胞又は1細胞期胚は、例えば、(a)例えば、5’及び3’標的部位(例えば、挿入核酸による欠失及び置換のために意図された内因性配列に隣接する標的部位)に対応する5’及び3’相同性アームに隣接する挿入核酸を含む、1つ以上の外因性ドナー核酸(例えば、標的化ベクター)を細胞に導入することであって、挿入核酸が、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を生成するためのヒトMYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む、導入することと、(b)内因性Myoc遺伝子座に組み込まれた挿入核酸をそのゲノムに含む、少なくとも1つの細胞を同定すること(すなわち、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む少なくとも1つの細胞を同定すること)とによって、組換えを通して生成することができる。同様に、修飾された非ヒト動物ゲノム又はヒト化非ヒト動物MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)は、例えば、(a)ゲノム又は遺伝子を、5’及び3’標的部位(例えば、5’及び3’相同性アームに隣接するヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を生成するための挿入核酸(例えば、ヒトMYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)による欠失及び置換のために意図された内因性配列に隣接する標的部位)に対応する5’及び3’相同性アームを含む、1つ以上の外因性ドナー核酸(例えば、標的化ベクター)と接触させることを含み、外因性ドナー核酸は、内因性非ヒト動物Myoc遺伝子座のヒト化のために設計されている。
【0395】
代替的に、修飾された多能性細胞又は1細胞期胚は、(a)細胞に、(i)ヌクレアーゼ剤であって、ヌクレアーゼ剤が、内因性Myoc遺伝子座内の標的部位にニック又は二本鎖切断を誘導する、ヌクレアーゼ剤、並びに(ii)例えば、5’及び3’標的部位(例えば、挿入核酸による欠失及び置換のために意図された内因性配列に隣接する標的部位)に対応する5’及び3’相同性アームに隣接する挿入核酸を含む、1つ以上の外因性ドナー核酸(例えば、標的化ベクター)であって、挿入核酸が、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を生成するためのヒトMYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む、外因性ドナー核酸を導入することと、(c)内因性Myoc遺伝子座に組み込まれた挿入核酸をそのゲノムに含む、少なくとも1つの細胞を同定すること(すなわち、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む少なくとも1つの核酸を同定すること)とによって、生成することができる。同様に、ヒト化非ヒト動物ゲノム又はヒト化非ヒト動物MYOC遺伝子(例えば、Y437H変異を含む)は、ゲノム又は遺伝子を、(i)ヌクレアーゼ剤であって、ヌクレアーゼ剤が、内因性Myoc遺伝子座又は遺伝子内の標的部位にニック又は二本鎖切断を誘導する、ヌクレアーゼ剤、並びに(ii)例えば、5’及び3’標的部位(例えば、挿入核酸による欠失及び置換のために意図された内因性配列に隣接する標的部位)に対応する5’及び3’相同性アームに隣接する挿入核酸(例えば、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を生成するためのヒト化MYOC配列(例えば、Y437H変異を含む))を含む、1つ以上の外因性ドナー核酸(例えば、標的化ベクター)と接触させることによって生成することができ、外因性ドナー核酸は、外因性Myoc遺伝子座のヒト化(及び例えば、Y437H変異の導入)のために設計されている。ニック又は二本鎖切断を所望の認識部位に誘導する任意のヌクレアーゼ剤を使用することができる。好適なヌクレアーゼの例には、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、及びクラスター化した規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系(例えば、CRISPR/Cas9系)又はそのような系の成分(例えば、CRISPR/Cas9)が含まれる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0309670号及び米国特許出願公開第2015/0159175号を参照されたい。一例では、ヌクレアーゼは、Cas9タンパク質及びガイドRNAを含む。別の例では、ヌクレアーゼは、Cas9タンパク質、及び2つ以上、3つ以上、又は4つ以上のガイドRNAを含む。
【0396】
ゲノムを修飾するステップは、例えば、外因性ドナー核酸(例えば、標的化ベクター)を利用して、本明細書に開示されるヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含むようにMyoc遺伝子座を修飾することができる。一例として、標的化ベクターは、内因性Myoc遺伝子座(例えば、内因性非ヒト動物Myoc遺伝子座)にヒト化MYOC遺伝子(例えば、Y437H変異を含む)を生成するためのものであり得、標的化ベクターは、内因性Myoc遺伝子座における5’標的配列を標的とする5’相同性アーム及び内因性Myoc遺伝子座における3’標的配列を標的とする3’相同性アームに隣接する、Myoc遺伝子座に組み込まれるヒトMYOC配列(例えば、Y437H変異を含む)を含む核酸挿入を含む。Myoc遺伝子座での核酸挿入の組み込みは、Myoc遺伝子座での目的の核酸配列の付加、Myoc遺伝子座での目的の核酸配列の欠失、又はMyoc遺伝子座での目的の核酸配列の置換(すなわち、内因性Myoc遺伝子座のセグメントを削除し、対応するヒトMYOC配列で置き換えること)をもたらし得る。
【0397】
外因性ドナー核酸は、非相同末端結合を介した挿入又は相同組換えのためのものであり得る。外因性ドナー核酸は、デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid、DNA)又はリボ核酸(ribonucleic acid、RNA)を含むことができ、それらは一本鎖又は二本鎖であり得、かつそれらは直線状又は環状の形態であり得る。例えば、ドナー核酸は、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)であり得る。外因性ドナー核酸はまた、標的化されていない内因性Myoc遺伝子座に存在しない異種配列を含むこともできる。例えば、外因性ドナー核酸は、リコンビナーゼ認識部位に隣接する選択カセットなどの選択カセットを含むことができる。
【0398】
1細胞期胚以外の細胞では、外因性ドナー核酸は、「大きな標的化ベクター」又は「LTVEC(large targeting vector)」であり得、これには、細胞内で相同組換えを実施することを意図している他のアプローチによって典型的に使用されるものよりも大きい核酸配列に対応し、それに由来する相同性アームを含む標的化ベクターが含まれる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0018626号、国際公開第2013/163394号、米国特許第9,834,786号、米国特許第10,301,646号、国際公開第2015/088643号、米国特許第9,228,208号、米国特許第9,546,384号、米国特許第10,208,317号、及び米国特許出願公開第2019-0112619号を参照されたい。LTVECにはまた、細胞内で相同組換えを行うことを目的とした他のアプローチによって典型的に使用されるものよりも大きい核酸配列を有する核酸挿入を含む標的化ベクターが含まれる。例えば、LTVECは、サイズの制限のために従来のプラスミドベースの標的化ベクターでは対応できない大きな遺伝子座の修飾を可能にする。例えば、標的化された遺伝子座は、従来の方法を使用して標的化可能ではないか、又はヌクレアーゼ剤(例えば、Casタンパク質)によって誘導されるニック若しくは二本鎖切断の非存在下で不正確にのみ、若しくは有意に低い効率でのみ標的化され得る細胞の遺伝子座であり得る(すなわち、5’及び3’相同性アームが対応し得る)。LTVECは、任意の長さであり得、典型的には、少なくとも10kb長である。LTVECの5’相同性アーム及び3’相同性アームの合計は、典型的には、少なくとも10kbである。VELOCIGENE(登録商標)遺伝子工学技術を使用する細菌相同組換え(bacterial homologous recombination、BHR)反応によって細菌人工染色体(bacterial artificial chromosome、BAC)DNA由来の大きな標的化ベクター(large targeting vector、LTVEC)の生成及び使用は、例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,586,251号、及びValenzuela et al.(2003)Nat.Biotechnol.21(6):652-659に記載されている。インビトロアセンブリ法を通したLTVECの生成は、例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2015/0376628号及び国際公開第2015/200334号に記載されている。
【0399】
本方法は、修飾された標的ゲノム遺伝子座を有する細胞又は動物を同定することを更に含むことができる。標的遺伝子修飾を有する細胞を同定するために、様々な方法を使用することができる。スクリーニングステップは、例えば、親染色体の対立遺伝子修飾(MOA)を評価するための定量的アッセイを含むことができる。例えば、各々、あらゆる目的のためのその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0018626号、米国特許出願公開第2014/0178879号、米国特許出願公開第2016/0145646号、国際公開第2016/081923号、及びFrendewey et al.(2010)Methods Enzymol.476:295-307を参照されたい。例えば、定量的アッセイは、リアルタイムPCRなどの定量的PCR(qPCR)を介して実施することができる。リアルタイムPCRは、標的遺伝子座を認識する第1のプライマーセット及び非標的参照遺伝子座を認識する第2のプライマーセットを利用することができる。プライマーセットは、増幅された配列を認識する蛍光プローブを含むことができる。好適な定量的アッセイの他の例としては、蛍光媒介インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション、等温DNA増幅、固定化プローブに対する定量的ハイブリダイゼーション、INVADER(登録商標)プローブ、TAQMAN(登録商標)分子ビーコンプローブ、又はECLIPSE(商標)プローブ技術が挙げられる(例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0144655号を参照されたい)。
【0400】
本明細書で提供される様々な方法は、遺伝子修飾された非ヒトF0動物の生成を可能にし、遺伝子修飾されたF0動物の細胞は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む。F0動物を生成するために使用される方法に応じて、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を有するF0動物内の細胞の数が変化することが認識される。例えば、VELOCIMOUSE(登録商標)方法を介した、マウスからの前桑実胚期胚(例えば、8細胞期マウス胚)へのドナーES細胞の導入は、F0マウスの細胞集団のより大きいパーセンテージが、標的化遺伝子修飾を有する細胞を含むことを可能にする。例えば、非ヒトF0動物の細胞寄与の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%は、標的修飾を有する細胞集団を含むことができる。遺伝子修飾されたF0動物の細胞は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)についてヘテロ接合性であり得るか、又はヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)についてホモ接合性であり得る。
【0401】
同様に、相乗的活性化メディエーター(SAM)発現カセット(キメラCasタンパク質コード配列及びキメラアダプタータンパク質発現コード配列を含む)及びヒト化MYOC遺伝子座(例えば、本明細書の他の場所に開示されるY437H変異を含む)を含む、非ヒト動物を作製するために、様々な方法が提供される。遺伝子修飾された生物を産生するための任意の便利な方法又はプロトコルは、そのような遺伝子修飾された非ヒト動物を産生するために好適である。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Poueymirou et al.(2007)Nat.Biotechnol.25(1):91-99、米国特許第7,294,754号、米国特許第7,576,259号、米国特許第7,659,442号、米国特許第8,816,150号、米国特許第9,414,575号、米国特許第9,730,434号、及び米国特許第10,039,269号(遺伝子修飾されたマウスを作製するためのマウスES細胞及びVELOCIMOUSE(登録商標)方法を記載している)を参照されたい。また、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0235933(A1)号、米国特許出願公開第2014/0310828(A1)号(ラットES細胞及び遺伝子修飾されたラットを作製するための方法を記載している)も参照されたい。また、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Cho et al.(2009)Curr.Protoc.Cell.Biol.」、42:19.11.1-19.11.22(doi:10.1002/0471143030.cb1911s42)、及びGama Sosa et al.(2010)Brain Struct.Funct.214(2-3):91-109も参照されたい。そのような遺伝子修飾された非ヒト動物は、例えば、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む第1の非ヒト動物を生成し、SAM発現カセット(例えば、ゲノムに組み込まれたSAM発現カセット)を含む第2の非ヒト動物を作製し、次いで、第1及び第2の非ヒト動物を交配させることによって、生成することができる。代替的に、そのような遺伝子修飾された非ヒト動物は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む遺伝子修飾された多能性細胞を作製し、SAM発現カセット(例えば、ゲノムに組み込まれたSAM発現カセット)を含むように多能性細胞を更に修飾し、次いで、多能性細胞から遺伝子修飾された非ヒト動物を作製することによって、生成することができる。同様に、そのような遺伝子修飾された非ヒト動物は、SAM発現カセット(例えば、ゲノムに組み込まれた発現カセット)を含む遺伝子修飾された多能性細胞を作製し、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含むように多能性細胞を更に修飾し、次いで、多能性細胞から遺伝子修飾された非ヒト動物を作製することによって、生成することができる。任意選択的に、細胞は、非ヒト動物であり、本明細書の他の場所に記載されるガイドRNA発現カセット及び/又はリコンビナーゼ発現カセットを含むように更に修飾することができる。
【0402】
例えば、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及びSAM発現カセット(並びに任意選択的にガイドRNAアレイ発現カセット)を含む非ヒト動物を産生する方法は、(1)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及びSAM発現カセット(並びに任意選択的にガイドRNAアレイ発現カセット)をそのゲノムに含む、多能性細胞(例えば、マウスES又はラットESなどの胚性幹(ES)細胞)を提供することと、(2)遺伝子修飾された多能性細胞を非ヒト動物宿主胚に導入することと、(3)宿主胚を代理母において妊娠させること(例えば、着床及び妊娠させること)と、を含むことができる。
【0403】
例えば、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む非ヒト動物を産生する方法は、(1)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含むように、多能性細胞(例えば、マウスES又はラットESなどの胚性幹(ES)細胞)のゲノムを修飾することと、(2)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む遺伝子修飾された多能性細胞を同定又は選択することと、(3)遺伝子修飾された多能性細胞を非ヒト動物宿主胚に導入することと、(4)宿主胚を代理母において妊娠させること(例えば、着床及び妊娠させること)と、を含むことができる。ドナー細胞は、胚盤胞期又は桑実胚前期(すなわち、4細胞期又は8細胞期)などの任意の段階で宿主胚に導入することができる。任意選択的に、修飾された多能性細胞(例えば、非ヒトES細胞)を含む宿主胚は、F0非ヒト動物を産生するために代理母に着床させ、妊娠させる前に胚盤胞段階までインキュベートすることができる。次いで、代理母は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含むF0世代の非ヒト動物を産生することができる。
【0404】
同様に、SAM発現カセット及び/又はガイドRNAアレイ発現カセットを含む非ヒト動物を産生する方法は、(1)発現カセットのうちの1つ以上又は全てを含むように、多能性細胞のゲノムを修飾することと、(2)発現カセットのうちの1つ以上又は全てを含む遺伝子修飾された多能性細胞を同定又は選択することと、(3)遺伝子修飾された多能性細胞を非ヒト動物宿主胚に導入することと、(4)宿主胚を代理母において妊娠させること(例えば、着床又は妊娠させること)と、を含むことができる。ドナー細胞は、胚盤胞期又は桑実胚前期(すなわち、4細胞期又は8細胞期)などの任意の段階で宿主胚に導入することができる。任意選択的に、修飾された多能性細胞(例えば、非ヒトES細胞)を含む宿主胚は、F0非ヒト動物を産生するために代理母に着床させ、妊娠させる前に胚盤胞段階までインキュベートすることができる。次いで、代理母は、発現カセットのうちの1つ以上又は全てを含むF0世代の非ヒト動物を産生することができる。次いで、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む非ヒト動物を、SAM発現カセット及び/又はガイドRNAアレイ発現カセットを含む非ヒト動物と交配させることができる。
【0405】
別の例として、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及びSAM発現カセット(並びに任意選択的にガイドRNAアレイ発現カセット)を含む非ヒト動物を産生する方法は、(1)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及びSAM発現カセット(並びに任意選択的にガイドRNAアレイ発現カセット)を含むように、多能性細胞(例えば、マウスES又はラットESなどの胚性幹(ES)細胞)のゲノムを修飾することと、(2)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及びSAM発現カセット(並びに任意選択的にガイドRNAアレイ発現カセット)を含む遺伝子修飾された多能性細胞を同定又は選択することと、(3)遺伝子修飾された多能性細胞を非ヒト動物宿主胚に導入することと、(4)宿主胚を代理母において妊娠させること(例えば、着床及び妊娠させること)と、を含むことができる。ドナー細胞は、胚盤胞期又は桑実胚前期(すなわち、4細胞期又は8細胞期)などの任意の段階で宿主胚に導入することができる。任意選択的に、修飾された多能性細胞(例えば、非ヒトES細胞)を含む宿主胚は、F0非ヒト動物を産生するために代理母に着床させ、妊娠させる前に胚盤胞段階までインキュベートすることができる。次いで、代理母は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含むF0世代の非ヒト動物を産生することができる。
【0406】
別の例として、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及びSAM発現カセットを含む非ヒト動物を産生する方法は、(1)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含むように、多能性細胞(例えば、マウスES細胞又はラットES細胞などの胚性幹(ES)細胞)のゲノムを修飾することと、(2)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む遺伝子修飾された多能性細胞を同定又は選択することと、(3)SAM発現カセットを含むように、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)遺伝子修飾された多能性細胞のゲノムを修飾することと、(4)SAM発現カセット及びヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む遺伝子修飾された多能性細胞を同定又は選択することと、(5)遺伝子修飾された多能性細胞を非ヒト動物宿主胚に導入することと、(6)宿主胚を代理母において妊娠させること(例えば、着床及び妊娠させること)と、を含むことができる。ドナー細胞は、胚盤胞期又は桑実胚前期(すなわち、4細胞期又は8細胞期)などの任意の段階で宿主胚に導入することができる。任意選択的に、修飾された多能性細胞(例えば、非ヒトES細胞)を含む宿主胚は、F0非ヒト動物を産生するために代理母に着床させ、妊娠させる前に胚盤胞段階までインキュベートすることができる。次いで、代理母は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及びSAM発現カセットを含むF0世代の非ヒト動物を産生することができる。
【0407】
別の例として、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及びSAM発現カセットを含む非ヒト動物を産生する方法は、(1)SAM発現カセットを含むように、多能性細胞のゲノムを修飾することと、(2)SAM発現カセットを含む遺伝子修飾された多能性細胞を同定又は選択すること、(3)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を更に含むように、SAM発現カセットを含む遺伝子修飾された多能性細胞のゲノムを修飾すること、(4)ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及びSAM発現カセットを含む遺伝子修飾された多能性細胞を同定又は選択すること、(5)遺伝子修飾された多能性細胞を非ヒト動物宿主胚に導入することと、(6)宿主胚を代理母において妊娠させること(例えば、着床及び妊娠させること)と、を含むことができる。ドナー細胞は、胚盤胞期又は桑実胚前期(すなわち、4細胞期又は8細胞期)などの任意の段階で宿主胚に導入することができる。任意選択的に、修飾された多能性細胞(例えば、非ヒトES細胞)を含む宿主胚は、F0非ヒト動物を産生するために代理母に着床させ、妊娠させる前に胚盤胞段階までインキュベートすることができる。次いで、代理母は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及びSAM発現カセットを含むF0世代の非ヒト動物を産生することができる。
【0408】
本方法は、修飾された標的ゲノム遺伝子座(すなわち、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及び/又はSAM発現カセット若しくはガイドRNA発現カセットを含む標的ゲノム遺伝子座)を有する細胞又は動物を同定することを更に含むことができる。標的遺伝子修飾を有する細胞を同定するために、様々な方法を使用することができる。
【0409】
スクリーニングステップは、例えば、親染色体の対立遺伝子修飾(MOA)を評価するための定量的アッセイを含むことができる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0018626号、米国特許出願公開第2014/0178879号、米国特許出願公開第2016/0145646号、国際公開第2016/081923号、及びFrendewey et al.(2010)Methods Enzymol.476:295-307を参照されたい。例えば、定量的アッセイは、リアルタイムPCRなどの定量的PCR(qPCR)を介して実施することができる。リアルタイムPCRは、標的遺伝子座を認識する第1のプライマーセット及び非標的参照遺伝子座を認識する第2のプライマーセットを利用することができる。プライマーセットは、増幅された配列を認識する蛍光プローブを含むことができる。
【0410】
好適な定量的アッセイの他の例としては、蛍光媒介インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション、等温DNA増幅、固定化プローブに対する定量的ハイブリダイゼーション、INVADER(登録商標)プローブ、TAQMAN(登録商標)分子ビーコンプローブ、又はECLIPSE(商標)プローブ技術が挙げられる(例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0144655号を参照されたい)。
【0411】
好適な多能性細胞の例は、胚性幹(ES)細胞(例えば、マウスES細胞又はラットES細胞)である。ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含む修飾された多能性細胞は、例えば、(a)5’及び3’標的部位に対応する5’及び3’相同性アームに隣接する挿入核酸を含む1つ以上の標的化ベクター又は外因性ドナー核酸を細胞に導入することであって、挿入核酸が、ヒトMYOC配列(例えば、Y437H変異を含む)を含む、導入することと、(b)内因性Myoc遺伝子座に組み込まれた挿入核酸をそのゲノムに含む、少なくとも1つの細胞を同定することとによって、組換えを通して生成することができる。代替的に、修飾された多能性細胞は、(a)細胞に、(i)ヌクレアーゼ剤であって、ヌクレアーゼ剤が、内因性Myoc遺伝子座内の標的配列にニック又は二本鎖切断を誘導する、ヌクレアーゼ剤、並びに(ii)標的配列と十分に近接して位置する5’及び3’標的部位に対応する5’及び3’相同性アームに隣接する挿入核酸を含む、1つ以上の標的化ベクターであって、挿入核酸が、ヒトMYOC配列(例えば、Y437H変異を含む)を含む、標的化ベクターを導入することと、(c)内因性Myoc遺伝子座に修飾(例えば、挿入核酸の組み込み)を含む、少なくとも1つの細胞を同定することとによって、生成することができる。ニック又は二本鎖切断を所望の標的配列に誘導する任意のヌクレアーゼ剤を使用することができる。好適なヌクレアーゼの例には、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、及びクラスター化した規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系又はそのような系の成分(例えば、CRISPR/Cas9)が含まれる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0309670号及び米国特許出願公開第2015/0159175号を参照されたい。
【0412】
同様に、SAM発現カセット及び/又はガイドRNA発現カセットを含む、修飾された多能性細胞は、例えば、(a)5’及び3’標的部位に対応する5’及び3’相同性アームに隣接する挿入核酸を含む1つ以上の標的化ベクター又は外因性ドナー核酸を細胞に導入することであって、挿入核酸が、発現カセットを含む、導入することと、(b)標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた挿入核酸をそのゲノムに含む、少なくとも1つの細胞を同定することとによって、組換えを通して生成することができる。代替的に、修飾された能性細胞は、(a)細胞に、(i)ヌクレアーゼ剤であって、ヌクレアーゼ剤が、標的ゲノム遺伝子座内の標的配列にニック又は二本鎖切断を誘導する、ヌクレアーゼ剤、並びに(ii)標的配列と十分に近接して位置する5’及び3’標的部位に対応する5’及び3’相同性アームに隣接する挿入核酸を含む、1つ以上の標的化ベクターであって、挿入核酸が、発現カセットを含む、標的化ベクターを導入することと、(c)標的ゲノム遺伝子座に修飾(例えば、挿入核酸の組み込み)を含む、少なくとも1つの細胞を同定することとによって、生成することができる。ニック又は二本鎖切断を所望の標的配列に誘導する任意のヌクレアーゼ剤を使用することができる。好適なヌクレアーゼの例には、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、及びクラスター化した規則的に散在する短い回文リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系又はそのような系の成分(例えば、CRISPR/Cas9)が含まれる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0309670号及び米国特許出願公開第2015/0159175号を参照されたい。
【0413】
1細胞期胚以外の細胞を使用するいくつかのそのような方法では、標的化ベクターは、少なくとも10kb長における大きな標的化ベクター、又は5’及び3’相同性アームの合計が少なくとも10kb長である大きな標的化ベクターであるが、他の種類の外因性ドナー核酸も使用することができ、周知である。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0018626号、国際公開第2013/163394号、米国特許第9,834,786号、米国特許第10,301,646号、国際公開第2015/088643号、米国特許第9,228,208号、米国特許第9,546,384号、米国特許第10,208,317号、及び米国特許出願公開第2019-0112619号を参照されたい。VELOCIGENE(登録商標)遺伝子工学技術を使用する細菌相同組換え(BHR)反応によって細菌人工染色体(BAC)DNA由来の大きな標的化ベクター(LTVEC)の生成及び使用は、例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,586,251号、及びValenzuela et al.(2003)Nat.Biotechnol.21(6):652-659に記載されている。インビトロアセンブリ法を通したLTVECの生成は、例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2015/0376628号及び国際公開第2015/200334号に記載されている。5’及び3’相同性アームは、それぞれ、挿入核酸によって置き換えられている領域に隣接するか、又は挿入核酸が挿入される領域に隣接する、5’及び3’標的配列に対応することができる。外因性ドナー核酸若しくは標的化ベクターは、相同組換え修復を介して標的遺伝子座と再結合することができるか、又はNHEJ媒介挿入を介して挿入されて、修飾されたゲノム遺伝子座を生成することができる。
【0414】
ドナー細胞は、胚盤胞期又は桑実胚前期(すなわち、4細胞期又は8細胞期)などの任意の段階で宿主胚に導入することができる。生殖細胞系列を通して遺伝子修飾を伝達することが可能である子孫が生成される。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,294,754号を参照されたい。
【0415】
代替的に、本明細書の他の場所に記載される非ヒト動物を産生する方法は、(1)多能性細胞を修飾するための上記に記載される方法を使用して、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含むように、1細胞期胚のゲノム(例えば、すでにSAM発現カセットを含む)を修飾することと、(2)遺伝子修飾された胚を選択することと、(3)遺伝子修飾された胚を代理母に妊娠させること(例えば、着床及び妊娠させること)と、を含むことができる。生殖細胞系列を通して遺伝子修飾を伝達することが可能である子孫が生成される。
【0416】
代替的に、本明細書の他の場所に記載される非ヒト動物を産生する方法は、(1)多能性細胞を修飾するための上記に記載される方法を使用して、SAM発現カセット(及び任意選択的にガイドRNA発現カセット)を含むように、1細胞期胚のゲノム(例えば、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)をすでに含む)を修飾することと、(2)遺伝子修飾された胚を選択することと、(3)遺伝子修飾された胚を代理母に妊娠させること(例えば、着床及び妊娠させること)と、を含むことができる。生殖細胞系列を通して遺伝子修飾を伝達することが可能である子孫が生成される。
【0417】
代替的に、本明細書の他の場所に記載される非ヒト動物を産生する方法は、(1)多能性細胞を修飾するための上記に記載される方法を使用して、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)を含むように、1細胞期胚のゲノム(例えば、ガイドSAM発現カセット(及び任意選択的にガイドRNA発現)をすでに含む)を修飾することと、(2)遺伝子修飾された胚を選択することと、(3)遺伝子修飾された胚を代理母に妊娠させること(例えば、着床及び妊娠させること)と、を含むことができる。生殖細胞系列を通して遺伝子修飾を伝達することが可能である子孫が生成される。
【0418】
代替的に、本明細書の他の場所に記載される非ヒト動物を産生する方法は、(1)そのゲノムに、(i)ヒト化MYOC遺伝子座、及び(ii)SAM発現カセットを含む、非ヒト動物1細胞期胚を提供することと、(2)非ヒト動物1細胞期胚を代理母において妊娠させることと、を含むことができる。
【0419】
核移植技術もまた、非ヒト哺乳動物を生成するために使用することができる。簡潔に言えば、核移植のための方法は、(1)卵母細胞を除核するか、又は除核された卵母細胞を提供するステップと、(2)除核した卵母細胞と組み合わせられるドナー細胞又は核を単離又は提供するステップと、(3)細胞又は核を除核した卵母細胞に挿入して、再構成された細胞を形成するステップと、(4)再構成された細胞を動物の子宮に着床させて、胚を形成するステップと、(5)胚を発育させるステップと、を含むことができる。そのような方法では、卵母細胞は一般に死亡した動物から回収されるが、生きている動物の卵管及び/又は卵巣からも単離され得る。卵母細胞は、除核前に様々な周知の培地で成熟させることができる。卵母細胞の除核は、多くの周知の方法で行うことができる。再構成された細胞を形成するための除核卵母細胞へのドナー細胞又は核の挿入は、融合の前に透明帯の下にドナー細胞をマイクロインジェクションすることによって行うことができる。融合は、接触/融合面を横切るDC電気パルスの印加(電気融合)、ポリエチレングリコールなどの融合促進化学物質への細胞の曝露、又はセンダイウイルスなどの不活化ウイルスによって誘導され得る。再構成された細胞は、核のドナー及びレシピエントの卵母細胞の融合の前、最中、及び/又は後に、電気的及び/又は非電気的手段によって活性化することができる。活性化方法には、電気パルス、化学的に誘導されたショック、精子による浸透、卵母細胞における二価カチオンのレベルの増加、及び卵母細胞における細胞タンパク質のリン酸化の低減(キナーゼ阻害剤による)が含まれる。活性化された再構成された細胞、又は胚は、周知の培地で培養し、次いで、動物の子宮に移植することができる。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2008/0092249号、国際公開第1999/005266号、米国特許出願公開第2004/0177390号、国際公開第2008/017234号、及び米国特許第7,612,250号を参照されたい。
【0420】
本明細書で提供される様々な方法は、遺伝子修飾された非ヒトF0動物の生成を可能にし、遺伝子修飾されたF0動物の細胞は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及び/又はSAM発現カセットを含む。F0動物を生成するために使用される方法に応じて、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及び/又はSAM発現カセットを有するF0動物内の細胞の数は、変化する。例えば、VELOCIMOUSE(登録商標)方法を介した、マウスからの前桑実胚期胚(例えば、8細胞期マウス胚)へのドナーES細胞の導入は、F0マウスの細胞集団のより大きいパーセンテージが、標的化遺伝子修飾を有する細胞を含むことを可能にする。例えば、非ヒトF0動物の細胞寄与の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%は、標的修飾を有する細胞集団を含むことができる。
【0421】
遺伝子修飾されたF0動物の細胞は、ヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及び/又はSAM発現カセット若しくはガイドRNA発現カセットについてヘテロ接合性であり得るか、又はヒト化MYOC遺伝子座(例えば、Y437H変異を含む)及び/又はSAM発現カセット若しくはガイドRNA発現カセットについてホモ接合性であり得る。
【0422】
上記又は下記で引用されている全ての特許出願、ウェブサイト、他の刊行物、アクセッション番号などは、各個々の項目が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列の異なるバージョンが違う時間にアクセッション番号に関連付けられている場合、本出願の有効な出願日においてアクセッション番号に関連付けられるバージョンを意味する。有効な出願日とは、該当する場合、アクセッション番号に関する実際の出願日以前又は優先出願の出願日を意味する。同様に、刊行物、ウェブサイトなどの異なるバージョンが違う時間に公開されている場合、別段の指定のない限り、本出願の有効な出願日の直近に公開されたバージョンを意味する。別段に他の指示がない限り、本発明の任意の特徴、ステップ、要素、実施形態、又は態様を、任意の他のものと組み合わせて使用することができる。本発明は、明瞭さ及び理解の目的に対し図表及び例を介していくつかの詳細が記載されているが、添付の特許請求の範囲内で、ある特定の変化及び修飾を実施することができることが明らかになろう。
【0423】
配列の簡単な説明
添付の配列表に列記されているヌクレオチド及びアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基のための標準的な文字略語、及びアミノ酸のための三文字表記を使用して示されている。ヌクレオチド配列は、配列の5’末端から始まって先へ(すなわち、各行で左から右へ)進み3’末端に至る標準規則に従っている。各ヌクレオチド配列の1本の鎖のみが示されているが、相補的鎖は、示されている鎖を任意に参照することによって含まれると理解される。アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が提供される場合、同じアミノ酸配列をコードするそのコドン縮重バリアントもまた提供されることが理解される。アミノ酸配列は、配列のアミノ末端から始まって先へ(すなわち、各行で左から右へ)進みカルボキシ末端に至る標準規則に従っている。
【0424】
【表2-1】
【0425】
【表2-2】
【実施例
【0426】
実施例1.Y437H変異を含むヒト化ミオシリン(MYOC)遺伝子座を含むマウスの生成
緑内障は、世界中で不可逆的な視力喪失の主な原因である。眼圧(IOP)の上昇は、進行性視神経損傷をもたらす。緑内障患者を治療するために使用されるIOP降下薬は、2つの機構:(1)房水の産生を減少させること、及び(2)房水流出を増加させることによって、機能する。ミオシリン(MYOC)は、常染色体優性家族性若年開放隅角緑内障及び原発性開放隅角緑内障に関連することが示された最初の遺伝子であった。Y437Hは、早発性緑内障に関連するMYOC変異である。細胞におけるMYOCの正常な機能は不明であるが、野生型ミオシリンタンパク質が分泌される一方で、変異ミオシリンタンパク質は小胞体(ER)で保持され、小柱網におけるER応力につながる。
【0427】
緑内障をモデル化するためのY437H変異を含むヒト化ミオシリン(MYOC)遺伝子座を含むマウスを生成するために、マウスMyoc遺伝子座の134kbを含む5’相同性アーム及びマウスMyoc遺伝子座の86kbを含む3’相同性アームを含む、大きな標的化ベクター(LTVEC)を生成して、マウスMyoc遺伝子由来の9.9kbの領域をヒトMYOC遺伝子の対応する配列の17.2kbで置き換えた。マウスMyoc及びヒトMYOC遺伝子についての情報が、表3に提供される。大きな標的化ベクターの生成の説明が、表4に提供される。VELOCIGENE(登録商標)遺伝子工学技術を使用する細菌相同組換え(BHR)反応によって細菌人工染色体(BAC)DNA由来の大きな標的化ベクター(LTVEC)の生成及び使用は、例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,586,251号、及びValenzuela et al.(2003)Nat.Biotechnol.21(6):652-659に記載されている。インビトロアセンブリ法を通したLTVECの生成は、例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2015/0376628号及び国際公開第2015/200334号に記載されている。
【0428】
【表3】
【0429】
【表4】
【0430】
具体的には、マウスMyocをヒトMYOCで置き換えた(マウスchr1:162639064-162649202をヒトchr1:171652412-171652611によって置き換えた)。欠失したマウス配列は、内因性5’及び3’UTRを残す、開始コドンから終止コドンまでの領域である。挿入されたヒト配列は、開始コドン(ATG)から始まり、終止コドン及び3’UTRを通して継続し、全てのエキソン及びイントロンを含む。ヒトMYOC配列は、Y437H変異ミオシリンタンパク質をコードする。自己欠失選択カセットを、ヒト3’UTRの下流に挿入した。これは、MAID 8533対立遺伝子(配列番号88)である。図1を参照されたい。カセット欠失後、loxP部位が、ヒト3’UTRの下流に残留した。これは、MAID 8534対立遺伝子(配列番号89)である。図1を参照されたい。
【0431】
マウスMYOCシグナルペプチドの配列は、配列番号27に記載され、配列番号31に記載される対応するコード配列を有する。ヒトMYOCシグナルペプチドの配列は、配列番号15に記載され、配列番号21に記載される対応するコード配列を有する。予期されるコードされたMYOCタンパク質は、完全にヒトであり、Y437H変異を含む。図1を参照されたい。マウス及びヒトMYOCタンパク質のアラインメントが図3に示される。マウスMyoc(野生型)及びヒトMYOC(Y437H)コード配列は、それぞれ、配列番号8及び5に記載されている。マウスMYOC(野生型)及びヒトMYOC(Y437H)タンパク質配列は、それぞれ、配列番号6及び4に記載されている。予期されるヒト化MYOCコード配列及び予期されるヒト化MYOCタンパク質の配列は、それぞれ、配列番号5及び4に記載されている。
【0432】
変異対立遺伝子を生成するために、上記に記載される大きな標的化ベクターをF1H4マウス胚性幹(ES)細胞に導入した。F1H4マウスES細胞は、雌のC57BL/6NTacマウスを雄の129S6/SvEvTacマウスと交配することによって産生されたハイブリッド胚に由来した。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2015-0376651号及び国際公開第2015/200805号を参照されたい。具体的には、2×10個のマウスES細胞(系統8037B-F7)を、大きな標的化ベクターでエレクトロポレーションした。75μg/mLの濃度でハイグロマイシンを使用して、抗生物質選択を実施した。抗生物質選択後、コロニーを採取し、拡大し、TAQMAN(登録商標)によってスクリーニングした。図2を参照されたい。表5に記載されるプライマー及びプローブを使用して、内因性マウス対立遺伝子の喪失を検出するために対立遺伝子喪失アッセイを実施し、ヒト化対立遺伝子の獲得を検出するために対立遺伝子獲得アッセイを実施し、Y437H変異を検出するために対立遺伝子識別アッセイを実施した。TAQMAN(登録商標)確認後、サンガー配列決定によって変異を再確認した。
【0433】
【表5】
【0434】
対立遺伝子喪失(loss-of-allele、LOA)及び対立遺伝子獲得(gain-of-allele、GOA)アッセイを含む対立遺伝子修飾(MOA)アッセイは、例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0178879号、米国特許出願公開第2016/0145646号、国際公開第2016/081923号、及びFrendewey et al.(2010)Methods Enzymol.476:295-307に記載されている。対立遺伝子喪失(LOA)アッセイは、従来のスクリーニングロジックを逆にし、変異が誘導された天然遺伝子座のゲノムDNAサンプルのコピー数を定量化する。正しく標的化されたヘテロ接合性細胞のクローンでは、LOAアッセイは、2つの天然の対立遺伝子(X又はY染色体上にない遺伝子の場合)のうちの一方を検出し、他方の対立遺伝子は、標的化された修飾によって破壊される。ゲノムDNAサンプルにおける挿入された標的化ベクターのコピー数を定量化するために、対立遺伝子獲得(GOA)アッセイと同じ原理を逆に適用することができる。
【0435】
VELOCIMOUSE(登録商標)方法を使用して、F0マウスを修飾されたES細胞から生成した。具体的には、VELOCIMOUSE(登録商標)方法を使用して、上記に記載されるMOAアッセイによって選択された上記に記載されるヒト化MYOC遺伝子座を含むマウスES細胞クローンを、8細胞期胚に注射した。例えば、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,576,259号、米国特許第7,659,442号、米国特許第7,294,754号、米国特許出願公開第2008/0078000号、及びPoueymirou et al.(2007)Nat.Biotechnol.25(1):91-99を参照されたい。VELOCIMOUSE(登録商標)方法では、標的マウスES細胞を、完全にES細胞由来のF0世代マウスを効率的にもたらす前桑実胚期胚、例えば、8細胞期胚に、レーザ支援注射を通して注射する。VELOCIMOUSE(登録商標)方法では、注射された前桑実胚期胚を、胚盤胞期まで培養し、胚盤胞期胚を代理母に導入し、懐胎させて、F0世代マウスを産生する。標的修飾についてホモ接合性であるマウスES細胞のクローンから始めると、標的修飾についてホモ接合性のF0マウスが産生される。標的修飾についてヘテロ接合性のマウスES細胞のクローンから始めると、その後に育種を行って、標的修飾についてホモ接合性のマウスを産生することができる。
【0436】
実施例2.SAMマウスの生成及び検証
内因性Rosa26プロモーターによって駆動される1つの転写物としてゲノムに組み込まれたdCas9相乗的活性化メディエーター(SAM)系成分(dCas9-VP64及びMCP-p65-HSF1)を含むマウスを、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2019/0284572号及び国際公開第2019/183123号に記載されるように生成した。最初に、dCas9 SAM系の発現は、loxPを組み込んだネオマイシン停止カセットの存在によって阻止される。Creリコンビナーゼの導入時に、停止カセットが削除され、dCas9 SAM発現がオンになる。次いで、ガイドRNA又はガイドRNAアレイ(例えば、U6プロモーターから発現される)を、構成的活性化又はより一過性の活性のためのLNP/AAV導入のために、他のRosa26対立遺伝子に導入することによって、それらを誘導することができる。dCas9 SAM対立遺伝子を様々なCre送達方法と対合することによって、遺伝子調節のタイミング及び組織特異性を制御することができる。
【0437】
発現カセット中のS.pyogenes dCas9コード配列(CDS)を、マウスでの発現のためにコドン最適化した。コードされたdCas9は、Cas9ヌクレアーゼ不活性にするための以下の変異:D10A及びN863Aを含む。NLS-dCas9-NLS-VP64-T2A-MCP-NLS-p65-HSF1発現カセットは、図4A及び配列番号64に示される。相乗的活性化メディエーター(SAM)コード配列(dCas9-VP64-T2A-MCP-p65-HSF1、又はより具体的にはNLS-dCas9-NLS-VP64-T2A-MCP-NLS-p65-HSF1は、配列番号69に記載され、配列番号67に記載されるタンパク質をコードする。発現カセットは、Rosa26遺伝子座の強力で普遍的な発現及びRosa26遺伝子座の標的化の容易性を利用するために、Rosa26遺伝子座の第1のイントロンに標的化された(図5を参照されたい)。発現カセットには、適切なスプライシングシグナル及び強力なポリアデニル化(ポリA)シグナルを有するloxPを組み込んだネオマイシン耐性カセット(ネオカセット)が先行した。5’から3’までのdCas9 SAM発現カセットの成分が、以下の表6に示される。
【0438】
【表6】
【0439】
Creリコンビナーゼの作用によるloxPを組み込んだネオマイシン耐性カセット(ネオカセット)の除去の前に、ネオマイシン耐性遺伝子が転写及び翻訳されるが、dCas9-NLS-VP64 CDS及びMCP-NLS-p65-HSF1 CDSは、一通りの転写を効果的に阻止する、強力なポリ(A)領域の存在に起因して発現されない。図4Aを参照されたい。しかしながら、Creリコンビナーゼの作用によるネオカセットの除去時に、dCas9及びMCP融合タンパク質のハイブリッドmRNAが、Rosa26プロモーターによって構成的に発現される。図4Bを参照されたい。dCas9及びMCP発現を、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2019/0284572号及び国際公開第2019/183123号に記載されるように検証した。本系を、各々、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2019/0284572号及び国際公開第2019/183123号に記載されるように、TtrガイドRNAアレイを使用してインビボで検証した。MS2ステムループを含む、SAMガイドRNAの構造の一般的概略図が、図6に示される。
【0440】
Myoc遺伝子の発現を増加させるためのツールとしてSAMマウスを検証するために、異なるウイルスベクターを、小柱網(TM)、毛様体(CB)、及び角膜内皮(CE)における発現について最初に試験した。図7は、Ad5、AAV2.Y3F、及びレンチウイルスからの発現を示す。各ウイルスは、GFP(緑色で示される)を発現し、青色は、細胞を示すDAPI染色である。試験された全てのベクターのうち、Ad5は、硝子体内(intravitreal、IVT)注射後にTMについて最も高い形質導入効率を有していたが、炎症を引き起こし、導入遺伝子発現は一過性であった。AAV2.Y3Fは、前房内(intracameral、IC)注射後にTM及びCBを形質導入した。レンチウイルスは、TM及びCEの両方を形質導入した。後続の研究は、レンチウイルスがAAV2.Y3Fと比較してTMにより特異的であることを示した。
【0441】
次に、開始コドンの上流のマウスMyoc配列を標的とするガイドRNAを使用して、SAMマウスを検証した。6つのガイドRNAによって標的とされる領域が、図8に示される。6つのガイドRNAの標的配列が、表7に示される。
【0442】
【表7】
【0443】
最初の概念実証のために、SAMマウスに、前房内経路を介して1E+13vg/mLの力価で、AAV.Y3F中の1μL(1E+10vg注射)の6つのガイドRNAを両側に注射した。4週間後、前部を図9に示されるように解剖し、RNAをqRT-PCRのために抽出した。結果は、マウスMyoc発現が、対照ガイドRNAに対してマウスMyoc SAMガイドRNAの投与後に、SAMマウスでは、輪部リング(小柱網(TM)、虹彩、及び毛様体(CB)、図10A)、網膜(図10B)、及び角膜(図10C)において増加したことを示す。
【0444】
実施例3.Y437H変異を含むヒト化ミオシリン(MYOC)遺伝子座を含むSAMマウスの生成
実施例1に示されるように、Y437H変異を含むヒト化ミオシリン(MYOC)遺伝子座を含むマウスを生成した。実施例2に示されるように、内因性Rosa26プロモーターによって駆動される1つの転写物としてゲノムに組み込まれたdCas9相乗的活性化メディエーター(SAM)系成分(dCas9-VP64及びMCP-p65-HSF1)を含むマウスを生成し、検証した。
【0445】
次に、ヒト化MYOC遺伝子座の発現を増加させるためにSAMマウスを使用しようとした。Y437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウスを、実施例1に記載されるマウスを実施例2に記載のマウスと交配することによって生成した。
【0446】
実施例4.緑内障モデルとしてのY437H変異を含むヒト化ミオシリン(MYOC)遺伝子座を含むSAMマウスの検証
Y437H変異を含むヒト化MYOC遺伝子座を含むSAMマウス(SAM-MYOCマウス)を検証するために、ヒト化MYOC遺伝子座についてホモ接合性又はヘテロ接合性のSAM-MYOCマウスを、AAV2.Y3F-SAM-g4、AAV2.Y3F-SAM-g5、AAV2.Y3F-SAM-LacZ対照で処置したか、又は何も処置しなかった(ナイーブ)。図13(qPCR)及び図14(RNASCOPE(登録商標))に示されるように、ヒト化MYOCY437H発現の遺伝子型依存性増加が、輪部リング(小柱網(TM)、虹彩、及び毛様体(CB))への注射後12週間で観察され、これはまた、図11に示されるように上昇した眼圧と相関した。これは、上昇したIOPを有する好適なMYOC疾患モデルとしてSAM-MYOCマウスを検証した。
【0447】
次いで、緑内障患者を治療するために使用されるIOP降下薬を概念実証として試験して、それらがSAM-g4を用いた処置後にSAM-MYOCマウスで観察されるIOPを降下させ得るかどうかを決定した。2つのIOP降下薬:(1)チモロール(房水形成を抑制するベータ遮断薬)、及び(2)RHOPRESSA(登録商標)(房水の流出を増加させるROCK阻害剤)を試験した。0日目に、AAV2.Y3F-SAM-g4を投与した。約10週間後、チモロール又はRHOPRESSA(登録商標)を投与した。0時間で、IOPを測定し、各眼が、1滴のチモロール又はRHOPRESSA(登録商標)のいずれかを受け、処置後2、4、6及び24時間でIOPを測定した。図12に示されるように、各薬物は、SAM-g4で処置されたSAM-MYOCマウスにおいてIOPを降下させることに効果的であった。
【0448】
次いで、ヒトMYOCを標的とするsiRNAを試験して、それがSAM-g4を用いた処置後にSAM-MYOCマウスで観察される高いIOPを降下させ得るかどうかを決定した。実験設定が、図15Aに示される。SAM-g4を0日目に前房内(IC)注射によって投与し、ベースラインIOPを測定した。次いで、IOPを次の5週間にわたって測定した。5週目に、MYOC siRNA#1(1μL、15μg用量)を、硝子体内(IVT)注射を介して投与し、IOPを、後続の週にわたって様々な時点で測定した。3つの処置群:(1)ナイーブ対照マウス、(2)ヒトMYOC siRNAで処置されたSAM-g4処置マウス、及び(3)ルシフェラーゼsiRNAで処置されたSAM-g4処置マウスが存在した。図15Bに示されるように、ヒトMYOC siRNAは、SAM-g4で処置されたSAM-MYOCマウスにおいてIOPを降下させ、siRNA注射後D7から開始してIOPを逆転させ、ベースラインレベルに戻した一方で、ルシフェラーゼsiRNAは、IOPに影響を及ぼさなかった。
【0449】
次いで、ヒトMYOCを標的とするいくつかの追加のsiRNAを低用量で試験して、それらがレンチウイルスSAM-g4を用いた処置後にSAM-MYOCマウスで観察されるIOPを降下させ得るかどうかを決定した。マウスに、SAM-g4及びsiRNAを両側に注射した。実験設定が、図16Aに示される。SAM-g4を0日目に前房内(IC)注射によって投与し、ベースラインIOPを測定した。次いで、IOPを次の5週間にわたって測定した。5週目に、MYOC siRNA#1、#2、#3、#4、及び#5(1μL、7.5μg用量)を、硝子体内(IVT)注射を介して投与し、IOPを、後続の週にわたって様々な時点で測定した。輪部リングにおけるmRNAノックダウンをqPCRによって試験し、RNASCOPE(登録商標)分析を行った。対照群は、ナイーブ対照マウス、PBS処置マウス、及びLV-SAM-g4処置マウスを含んだ。図16Bに示されるように、各ヒトMYOC siRNAは、SAM-g4で処置されたSAM-MYOCマウスにおいてIOPを降下させ、siRNA注射直後にIOPを逆転させ、ベースラインレベルに戻した。図16Cに示されるように、各ヒトMYOC siRNAは、輪部リングからのサンプルにおいてqPCRによって測定されるように、LV-SAM-g4群に対してヒトMYOC mRNA発現を減少させた。RNASCOPE(登録商標)分析は、siRNAが、SAM-MYOCマウスにおいてヒトMYOC mRNAのノックダウンを媒介することを確認した(図16D)。
【0450】
次いで、ヒトMYOC siRNA#2及び#3を更に低用量で試験して、それらがレンチウイルスSAM-g4を用いた処置後にSAM-MYOCマウスで観察されるIOPを降下させ得るかどうかを決定した。マウスに、SAM-g4及びsiRNAを両側に注射した。実験設定が、図17Aに示される。SAM-g4を0日目に前房内(IC)注射によって投与し、ベースラインIOPを測定した。次いで、IOPを次の5週間にわたって測定した。5週目に、MYOC siRNA#2及び#3(1μL、3.75μg用量又は1.87μg用量)を、硝子体内(IVT)注射を介して投与し、IOPを、後続の週にわたって様々な時点で測定した。輪部リングにおけるmRNAノックダウンをqPCRによって試験し、RNASCOPE(登録商標)分析を行った。対照群は、ナイーブ対照マウス、PBS処置マウス、及びLV-SAM-g4処置マウスを含んだ。図17Bに示されるように、各ヒトMYOC siRNAは、試験される各用量におけるSAM-g4で処置されたSAM-MYOCマウスにおいてIOPを降下させ、siRNA注射直後にIOPを逆転させ、ベースラインレベルに戻した。図17Cに示されるように、各ヒトMYOC siRNAは、試験される各用量で輪部リングからのサンプルにおいてqPCRによって測定されるように、LV-SAM-g4群に対してヒトMYOC mRNA発現を減少させた。
【0451】
ヒトミオシリンY437Hのトランスジェニック過剰発現を有する他のMYOC緑内障モデルは、わずか約2~3mmHgのIOP上昇を示し、MYOCは、どこでも発現される。加えて、IOP表現型は、繁殖にわたって失われる。本明細書に記載されるモデルは、発現が疾患病理の標的組織である小柱網にほとんど限定されるという利点を有する。加えて、約5~6mmHgのIOPの更なる上昇が観察される。
【0452】
実施例5.Y437H変異を含むヒト化ミオシリン(MYOC)遺伝子座を含むSAMマウスを用いた推定治療剤の試験
緑内障モデルとしてのSAM-MYOCマウスの検証時に、実験を実施して、追加の緑内障標的を試験するための緑内障モデルとしてSAM-MYOCマウスを検証した。小柱網(TM)は、房水の排出に対して抵抗性であり、眼圧(IOP)にとって重要である、眼の前房隅角に位置する組織である。分泌性糖タンパク質アンジオポエチン様7(angiopoietin-like 7、ANGPTL7)は、TM病理及びIOPホメオスタシスで中心的役割を果たす。ステロイド曝露、並びに上方制御されたMYOC及びTGF-B2発現を含む、緑内障に関与する様々な経路は、TM機能不全及びIOPの上昇に関連するANGPTL7発現の増加につながり得る。したがって、SAM-MYOCマウスにおいてANGPTL7の標的化を試験するための実験を設計した。
【0453】
本明細書に記載されるSAM-MYOCマウスモデルを使用して、Angptl7の発現は、MYOC過剰発現と相関してSAMマウスにおいて増加することが観察された。図18AのqPCRによって示されるように、ヒトMYOC発現は、PBS対照と比較して、Lv-SAM-g4を用いた前房内(IC)注射によって処置されたマウスでは3倍超増加した。Angptl7の発現は、図18BのqPCRによって示されるように、Gapdhに対して対応する増加を受けた。同様に、AAV-SAM-g4で処置されたマウスは、図18CのqPCRによって示されるように、未処置ナイーブマウスと比較して、Gapdhに対してヒトMYOC発現の顕著な増加を示した。Angptl7の発現はまた、図18DのqPCRによって示されるように、未処置ナイーブマウスと比較して、AAV-SAM-g4で処置されたマウスで増加した。
【0454】
MYOCの標的化への相補的アプローチに従って、Angptl7 siRNA#1及び#2を、LV-SAM-g4で処置されたSAM-MYOCマウスで試験して、Angptl7を標的化することもIOPを減少させるかどうかを決定した。図19Aに示されるように、0日目にIC注射を介してSAM-g4を投与し、ベースラインIOPを測定した。次いで、IOPを次の5週間にわたって測定した。5週目に、Angptl7 siRNA#1及び#2(15μg用量)を、硝子体内(IVT)注射を介して投与し、IOPを、後続の週にわたって様々な時点で測定した。輪部リングにおけるmRNAノックダウンをqPCRによって試験した。図19Bに示されるように、AAV-SAM-g4及びAngptl7 siRNA#1又は#2のいずれかで処置されたSAM-MYOCマウスは、PBSで処置された対照マウスと比較して、Gapdhに対してヒトMYOCの実質的に増加した発現を示した。しかしながら、AAV-SAM-g4及びAngptl7 siRNA#1又は#2のいずれかで処置されたこれらのマウスは、図19Cに示されるように、PBSで処置された対照マウスと比較して、Gapdhに対してAngptl7の著しく増加した発現を示さなかった。
【0455】
次いで、Angptl7 siRNA#1及び#2の低減した用量(7.5μg用量)を試験して、より低い用量が、レンチウイルスSAM-g4を用いた処置後にSAM-MYOCマウスで観察されるIOPを降下させ得るかどうかを決定した。マウスに、Lv-SAM-g4及びsiRNAを両側に注射した、実験設定が、図20Aに示される。図20Bに示されるように、Angptl7 siRNA#1及び#2(7.5μg用量)を注射したマウスは、未処置ナイーブマウスと同様にIOPの回復とともに、PBSで処置されたマウスと比較してIOPの大幅な減少を示した。ヒトMYOC及びAngptl7の発現を、図20Cに示されるように、未処置ナイーブマウス、並びにLV-SAM-g4及びPBS又はAngptl7 siRNA#1若しくは#2(7.5μg用量)で処置されたマウスについてqPCRによって決定した。これらの実験は更に、SAM-MYOCマウスが、緑内障の治療のための治療標的を評価するためのモデルとして首尾よく利用され得ることを示す。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図16D-1】
図16D-2】
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
【配列表】
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【国際調査報告】