(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電子回路用の筐体
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H05K7/20 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534258
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2022084502
(87)【国際公開番号】W WO2023104760
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】102021132731.8
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514189527
【氏名又は名称】コノート、エレクトロニクス、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CONNAUGHT ELECTRONICS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティーナ、ボギール
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン、ギボンズ
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA11
5E322FA04
5E322FA06
(57)【要約】
少なくとも1つの電子回路(3、4)用の筐体(1)は、内部表面(9)を有する筐体部分(2)と、筐体部分(2)の内部表面(9)に接続されているヒートスプレッダ部品(5)とを備える。ヒートスプレッダ部品(5)は、少なくとも1つの電子回路(3、4)の電子部品(4)に接続されるべき接触領域を含み、ヒートスプレッダ部品(5)は、筐体部分(2)の熱伝導率よりも熱伝導率が大きい材料を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電子回路(3、4)用の筐体(1)であって、内部表面(9)を有する筐体部分(2)を備える筐体(1)において、
前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)に接続されているヒートスプレッダ部品(5)を備え、
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記少なくとも1つの電子回路(3、4)の電子部品(4)に接続されるべき接触領域を含み、
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記筐体部分(2)の熱伝導率よりも熱伝導率が大きい材料を含み、
前記ヒートスプレッダ部品5が、増加した熱伝達率での熱伝達を可能にするために、前記電子部品4を接続するための内部接触領域と、前記内部接触領域から延在する複数のアームとを有する星形の幾何学的形状を有する
ことを特徴とする
筐体(1)。
【請求項2】
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、本質的に2次元の層として形成されている
ことを特徴とする
請求項1に記載の筐体(1)。
【請求項3】
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記接触領域を少なくとも部分的に取り囲む熱伝達領域を含む
ことを特徴とする
請求項1および2のいずれか一項に記載の筐体(1)。
【請求項4】
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記材料で作られているグリッド構造(7、8)を含む
ことを特徴とする
請求項1から3のいずれか一項に記載の筐体(1)。
【請求項5】
前記材料の前記熱伝導率が、270W/(m・K)以上であり、および/または
前記筐体部分(2)の前記熱伝導率が、250W/(m・K)以下である
ことを特徴とする
請求項1から4のいずれか一項に記載の筐体(1)。
【請求項6】
前記材料が、銅および/もしくは金および/もしくは銀を含み、ならびに/または
前記筐体部分(2)が、アルミニウムおよび/もしくはマグネシウムおよび/もしくは鋼および/もしくはプラスチック材料を含む
ことを特徴とする
請求項1から4のいずれか一項に記載の筐体(1)。
【請求項7】
前記ヒートスプレッダ部品(5)と前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)との間に配置されている接着材料を備え、前記接着材料が、前記ヒートスプレッダ部品(5)を前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)に接続し、および/または
前記ヒートスプレッダ部品(5)を前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)に接続する少なくとも1つの機械的な締結具を備える
ことを特徴とする
請求項1から6のいずれか一項に記載の筐体(1)。
【請求項8】
電子部品(4)を含む少なくとも1つの電子回路(3、4)と、前記少なくとも1つの電子回路(3、4)用の筐体(1)とを備える電子装置(11、12)において、
前記筐体(1)が、請求項1から7のいずれか一項に従って設計されており、前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記接触領域において前記電子部品(4)に接続されている
ことを特徴とする
電子装置(11、12)。
【請求項9】
前記接触領域において、前記ヒートスプレッダ部品(5)を前記電子部品(4)に接続する熱ペースト(6)を備える
ことを特徴とする
請求項8に記載の電子装置(11、12)。
【請求項10】
自動車(10)の中または上での使用に向けて設計されている
ことを特徴とする
請求項8または9に記載の電子装置(11、12)。
【請求項11】
前記自動車(10)の電子制御ユニットである
ことを特徴とする
請求項10に記載の電子装置(11、12)。
【請求項12】
前記自動車(10)のセンサシステムの一部であり、特に車載カメラである
ことを特徴とする
請求項10に記載の電子装置(11、12)。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか一項に記載の電子装置(11、12)を備える自動車(10)。
【請求項14】
電子装置(11、12)を製造するための方法であって、前記電子装置(11、12)用の少なくとも1つの電子回路(3、4)を用意することと、内部表面(9)を有する筐体部分(2)を有する筐体(1)を用意することとを含む方法において、
ヒートスプレッダ部品(5)が、設けられており、前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)に接続されており、前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記筐体部分(2)の熱伝導率よりも熱伝導率が大きい材料を含み、
前記ヒートスプレッダ部品(5)の接触領域が、前記少なくとも1つの電子回路(3、4)の電子部品(4)に接続されている
ことを特徴とする
方法。
【請求項15】
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、接着材料によって、および/もしくは少なくとも1つの機械的な締結具によって、前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)に接続されており、ならびに/または
前記接触領域が、熱ペースト(6)によって前記電子部品(4)に接続されている
ことを特徴とする
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの電子回路用の筐体に関し、筐体は、内部表面を有する筐体部分を備える。本発明はさらに、筐体を有する電子装置、電子装置を有する自動車、および電子装置を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置は、かなりの量の熱を発生させ得る電子回路および部品を備える。熱は、部品および回路の適切な機能を確実にし、部品または回路の寿命を延ばすために、発熱電子部品から離れて輸送されることがある。
【0003】
特に、自動車で使用されるように設計されている電子装置についての車載状況では、熱放散率が重要な因子である。受動冷却によって達成される熱放散率が十分でない場合、能動冷却装置を設置しなければならないことがあり、これはコストの観点および全体的な複雑さの観点から望ましくない。
【0004】
例えば、電子装置の発熱電子部品を、熱ペーストによって装置の筐体に接続することが知られている。この手法の1つの欠点は、電子部品から熱ペーストおよび筐体を介した筐体の環境への熱放散の速度が、発熱部品の直接上に位置する筐体部分の大きさによって多少制限されることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、少なくとも1つの電子回路の電子部品によって発生した熱の熱放散率を高めることを可能にする、少なくとも1つの電子回路用の筐体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項のそれぞれの主題によって達成される。さらなる実装形態および好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
本発明は、電子部品に接続することができるヒートスプレッダ部品を筐体の内部表面に置くという思想に基づいている。筐体部分の熱伝導率よりも熱伝導率が大きくなるようにヒートスプレッダ部品の材料を選ぶことによって、放散された熱の横の広がりが達成され、これにより、電子部品によって発生した箇所から離して熱をより速く輸送することがもたらされる。
【0008】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの電子回路用の筐体が提供される。筐体は、内部表面を有する筐体部分を備え、筐体は、筐体部分の内部表面に接続されているヒートスプレッダ部品を備える。ヒートスプレッダ部品は、少なくとも1つの電子回路の電子部品に接続されるべき接触領域を含む。ヒートスプレッダ部品は、筐体部分、特に筐体部分の材料の熱伝導率よりも熱伝導率が大きい材料を含み、特にそれから成る。
【0009】
筐体および少なくとも1つの電子回路は例えば、電子装置、特に自動車の電子装置または自動車用の電子装置の、それぞれの部分とみなされ得る。
【0010】
電子装置が組み立てられているとき、筐体は、少なくとも1つの電子回路が配置される囲いを形成し得る。少なくとも1つの電子回路は、回路基板を備え得、電子部品は、筐体部分の内部表面に面するように回路基板に装着され得る。次いで電子部品は、組み立てられた状態で、ヒートスプレッダ部品に接続されている。言い換えれば、ヒートスプレッダ部品は、筐体部分と電子部品との間に配置されており、それらの両方に熱的に接触して接続されている。
【0011】
ヒートスプレッダ部品は、例えば、接着剤および/または機械的な締結具によって、筐体部分に接続されてもよい。特に、接続は、ヒートスプレッダ部品から筐体部分への熱伝達が起こり得るようなものである。
【0012】
結果として、電子部品によって発生した熱は、少なくとも部分的にヒートスプレッダ部品に伝達される。熱の一部は、ヒートスプレッダ部品から、接触領域の上にある筐体部分に直接伝達されてもよい。しかしながら、熱の別の部分は、ヒートスプレッダ部品内で横方向に広がることができる。ここで、横方向とは、ヒートスプレッダ部品に接続されている電子部品の内部表面または表面に平行な方向として理解されることができる。法線方向は、電子部品の内部表面もしくは表面または横方向に対してそれぞれ直角である。
【0013】
ヒートスプレッダ部品は、特に接触領域とは別に、さらなる領域、例えば、接触領域を横に、特に完全にまたは部分的に取り囲む熱伝達領域を有する。したがって、熱流は、本質的に法線方向へと押し進められず、かなりの量まで横に広がり得る。これは特に、筐体部分の材料の熱伝導率よりも大きなヒートスプレッダ部品材料の熱伝導率を選択することによって達成される。仮にヒートスプレッダ部品の熱伝導率が筐体部分の熱伝導率よりも小さかった場合、熱は、本質的に法線方向に流れるが、かなりの量で横に広がることはないであろう。したがって、電子部品の直接上にある筐体部分およびヒートスプレッダ部品の材料は、熱伝達の速度を制限するであろう。しかしながら、本発明によれば、ヒートスプレッダ部品による熱のかなりの量の横の広がりは、説明したようにその材料の熱伝導率を選択することによって達成される。
【0014】
このようにして、電子部品によって発生した熱は、筐体部分の他の領域に分散させられまたは伝達される。したがって、ヒートスプレッダ部品の幾何学的形状を電子回路に従って適合させることにより、熱が発熱電子部品から少なくとも1つの電子回路の上にある領域に向かって伝達され、より少ない熱が発生することが達成され得る。言い換えれば、筐体の内部の潜在的により低温の領域は、より高温の領域からの熱を、ヒートスプレッダ部品を介して分散させることによって、効果的なヒートシンクとして利用され得る。
【0015】
このようにして、全体的な熱放散率の増加が達成され得、能動冷却のためのより高価またはより複雑な解決策は回避され得、またはより少ない程度しか必要でなくなり得る。このことは、電子装置の熱放散率のわずかな改善ですら、能動冷却システムを省略することを可能にし得る車載電子装置の状況で、特に有益である。
【0016】
いくつかの実装形態によれば、ヒートスプレッダ部品は、本質的に2次元の層として形成されている。
【0017】
層は、中実であってもよく、または本質的に周期的な格子もしくは不規則なメッシュであるグリッド構造を含んでもよい。いくつかの実装形態では、中実領域およびグリッド領域をともに組み合わせることができる。例えば、いくつかの実装形態では、接触領域は中実であってもよく、熱伝達領域はグリッド構造として形成されてもよい。しかしながら、他の組み合わせも可能であり得る。他の実装形態では、ヒートスプレッダ部品全体が、中実層またはグリッド層として形成されてもよい。
【0018】
ヒートスプレッダ部品が本質的に2次元層であることは、法線方向におけるヒートスプレッダ部品の均一な厚さが、横方向の延長部、特に最大横延長部よりもはるかに小さいことであるように理解され得る。例えば、ヒートスプレッダ部品の厚さは、2mm以下、好ましくは1mm以下であり得る。ヒートスプレッダ部品の横方向の延長部、言い換えれば幅および/または長さ寸法は、例えば、厚さの少なくとも10倍、特に厚さの少なくとも20倍、例えば厚さの少なくとも50倍であり得る。
【0019】
いくつかの実装形態によれば、ヒートスプレッダ部品は、少なくとも部分的に、特に横に接触領域を取り囲む熱伝達領域を含む。
【0020】
熱伝達領域は、電子部品とは接触していない。例えば、電子部品は、接触領域の中でのみ、ヒートスプレッダ部品に接続され得る。
【0021】
このようにして、電子部品によって発生した熱は、ヒートスプレッダ部品の接触領域に伝達され、そこから熱伝達領域を介して横に、ならびに直接筐体部分に輸送される。さらにその後、熱はまた、熱伝達領域から筐体部分に伝達されてもよい。
【0022】
いくつかの実装形態によれば、ヒートスプレッダ部品、特に本質的に2次元の層は、材料で作られているグリッド構造を含む。
【0023】
特に、ヒートスプレッダ部品は、グリッド構造を含みまたはグリッド構造から成る本質的に2次元の層として形成されている。グリッド構造は、複数の離間したおよび/または交差する材料の帯とみなされ得る。帯は、周期的もしくは本質的に周期的な格子、または不規則なメッシュを形成することができる。
【0024】
グリッド構造を含むようにヒートスプレッダ部品を設計することによって、横の熱伝達率をさらに増加させることができる。ヒートスプレッダ部品の総熱容量は、グリッド構造によって減少する可能性がある。しかしながら、筐体のこれらの実装形態に最も関連するのは、熱伝達率である。その一方で、減少した総熱容量は、所望であれば、ヒートスプレッダ部品の横の延長部を増加させることによって増加し得る。
【0025】
いくつかの実装形態によれば、ヒートスプレッダ部品の材料の熱伝導率は、270W/(m・K)以上である。材料の熱伝導率は、290W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0026】
特に明記しない限り、ここでおよび以下で述べる熱伝導率の値は、20℃の通常温度および1000hPaの通常空気圧力である通常条件での値として理解され得る。
【0027】
例えば、材料は、銅および/もしくは金および/もしくは銀を含み、またはそれらから成る。材料は、銅または金または銀のいずれかを含み、またはそれらから成ることが好ましい。
【0028】
銅は約386W/(m・K)の熱伝導率を有し、金は約310W/(m・K)の熱伝導率を有し、銀は約419W/(m・K)の熱伝導率を有する。
【0029】
その一方で、筐体部分または筐体部分の材料の熱伝導率は、250W/(m・K)以下である。220W/(m・K)以下であることが好ましい。
【0030】
例えば、筐体部分は、アルミニウム特に鋳造アルミニウムおよび/もしくはマグネシウムおよび/もしくは鋼および/もしくはプラスチック材料を含み、またはそれらから成る。筐体部分は、アルミニウムもしくはマグネシウムまたは鋼もしくはプラスチックのいずれかを含み、またはそれらから成ることが好ましい。
【0031】
アルミニウムは約239W/(m・K)の熱伝導率を有し、マグネシウムは約151W/(m・K)の熱伝導率を有し、鋼は、例えば、特定の合金に応じて50W/(m・K)以下の熱伝導率を有し得る。プラスチック材料は、通常、1W/(m・K)未満の熱伝導率を有する。
【0032】
特に、材料の熱伝導率は、270W/(m・K)以上600W/(m・K)未満であり得る。その一方で、いくつかの実装形態では、筐体部分の熱伝導率は、0.05W/(m・K)より大きく250W/(m・K)以下であってもよい。
【0033】
しかしながら、いずれの場合も、ヒートスプレッダ部品および筐体部分にそれぞれ使用される材料は、ヒートスプレッダ部品の材料の熱伝導率が筐体部分の材料の熱伝導率よりも大きくなるよう、それらの熱伝導率が異なることに留意されたい。
【0034】
いくつかの実装形態によれば、筐体は、ヒートスプレッダ部品と筐体部分の内部表面との間に配置されている接着材料を備え、接着材料は、ヒートスプレッダ部品を筐体部分の内部表面に接続する。
【0035】
言い換えれば、ヒートスプレッダ部品は、接着材料によって内部表面に接続されている。
【0036】
代替としてまたは加えて、筐体は、ヒートスプレッダ部品を筐体部分の内部表面に接続する少なくとも1つの機械的な締結具を備える。
【0037】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つの電子回路を備える電子装置が提供される。少なくとも1つの電子回路は、電子部品を含み、電子装置は、少なくとも1つの電子回路用の本発明による筐体を備える。ヒートスプレッダ部品は、接触領域において、接触領域の中で、または接触領域を介して、電子部品に接続されている。
【0038】
電子装置のいくつかの実装形態によれば、電子装置は、接触領域において、ヒートスプレッダ部品を電子部品に接続する熱ペーストを備える。
【0039】
このようにして、熱放散率をさらに改善することができ、それに応じて電子装置からヒートスプレッダ部品への熱の流れを導くことができる。
【0040】
いくつかの実装形態によれば、電子装置は、自動車の中または上での使用向けに設計されている。例えば、電子装置は、自動車の電子制御ユニット(ECU)、または自動車のセンサシステムの一部、例えば車載カメラであり得る。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による電子装置を備える自動車が提供される。
【0042】
本発明のさらなる態様によれば、電子装置を製造するための方法が提供される。本方法は、電子装置用の少なくとも1つの電子回路を用意することと、内部表面を有する筐体部分を有する筐体を用意することとを含む。さらに、筐体部分の熱伝導率よりも熱伝導率が大きい材料を含むヒートスプレッダ部品が提供される。ヒートスプレッダ部品は、筐体部分の内部表面に接続されており、ヒートスプレッダ部品の接触領域は、少なくとも1つの電子回路の電子部品に接続されている。
【0043】
本方法のいくつかの実装形態によれば、ヒートスプレッダ部品は、接着材料によって、および/または少なくとも1つの機械的な締結具によって、筐体部分の内部表面に接続されている。
【0044】
いくつかの実装形態によれば、接触領域は、熱ペーストによって電子部品に接続されている。
【0045】
本発明による電子装置を製造するための方法のさらなる実装形態は、本発明による筐体および本発明による電子装置の様々な実装形態から直接得られ、それぞれ、逆もまた同様である。特に、本発明による電子装置は、本発明による方法によって製造されることができる。
【0046】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲、図面、および図面の説明から明らかである。説明において上記で述べた特徴および特徴の組み合わせ、ならびに以下で図面の説明において述べられおよび/または図に示される特徴および特徴の組み合わせは、記載されるそれぞれの組み合わせだけでなく、他の組み合わせにおいても、本発明に含まれ得る。特に、最初に明確に表された請求項のすべての特徴を有さない実施形態および特徴の組み合わせも、本発明に含まれる。さらに、特許請求の範囲の列挙に記載された特徴の組み合わせを超えまたはそれから逸脱する実施形態および特徴の組み合わせが、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明による電子装置の例示的な一実装形態の概略断面図である。
【
図3】本発明による電子装置のさらなる例示的な一実装形態の一部の概略上面図である。
【
図4】本発明による電子装置のさらなる例示的な一実装形態の一部の概略上面図である。
【
図5】本発明による電子装置のさらなる例示的な一実装形態の概略上面図である。
【
図6】本発明による自動車の例示的な一実装形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、例えば、
図6に示すようなECU 11もしくは車載カメラ12または自動車10の別の部品として設計され得る、電子装置11、12の例示的な一実装形態の概略断面図を示す。
【0049】
電子装置11、12は、筐体1と、回路基板3および回路基板3の上部に装着されている電子部品4を包含する電子回路とを備える。回路基板3は、例えば、横平面または横方向として示されてもよいx-y平面に延在し得る。回路基板3の表面に直角な法線方向は、z方向と示されてもよい。
【0050】
筐体1は、x-y平面に少なくともほぼ平行な内部表面9を有する筐体部分2を備える。さらに筐体1は、ヒートスプレッダ部品5を備え、このヒートスプレッダ部品5は、本質的に2次元の層として設計されており、筐体部分2の内部表面9に接続されている。ヒートスプレッダ部品5は、接触領域の中で、例えば熱ペースト6によって、電子部品4に熱的に接続されている。
【0051】
ヒートスプレッダ部品5は、筐体部分2の熱伝導率よりも熱伝導率が大きい材料で作られている。例えば、筐体部分2は鋳造アルミニウムで作られていてもよく、一方でヒートスプレッダ部品は金または銅で作られてもよい。
【0052】
図2は、
図1の電子装置11、12の一部、すなわち、筐体部分2、ヒートスプレッダ部品5、回路基板3、および電子部品4を示す。さらに、
図2における複数の矢印は、電子部品4によって発生した熱の熱流を概略的に示している。
【0053】
仮にヒートスプレッダ部品5が存在しなければ、熱ペースト6は、電子部品4を筐体部分2に直接接続するであろう。結果として熱伝達は、熱ペースト6自体の大きさに限定されるであろう。したがって熱は、本質的にz方向にまたはz方向のみに移動するであろう。高温の電子部品4の直接上にある筐体部分2が十分速く熱を放散できない場合、発生した熱は蓄積し、横方向には非常にゆっくりと外方へ移動するのみであり得る。
【0054】
熱ペースト6と筐体部分2との間にヒートスプレッダ部品5を設けることによって、熱は、ヒートスプレッダ部品5の原寸の大きさにわたって横方向に分散されることが可能になる。ヒートスプレッダ部品5は、熱がより効果的に筐体部分2に伝達され得るように、その全表面積にわたって筐体部分2と接触している。特に、電子部品4によって発生した熱は、熱ペースト6を介してヒートスプレッダ部品5に伝達され、次いで、z方向に沿って、ならびにx-y平面における横方向に沿って移動する。この場合には、電子部品4の直接上にある筐体部分2が十分速く熱を放散できない場合でも、熱は、ヒートスプレッダ部品5を介して電子部品4から離れて横に輸送されることができる。
【0055】
図3は、本発明によるさらなる例示的な一実装形態について、内部表面9上の筐体部分2およびヒートスプレッダ部品5の概略図を示す。
【0056】
ここで、ヒートスプレッダ部品5は、増加した熱伝達率での熱伝達を可能にするために、例えば、電子部品4を接続するための内部接触領域と、内部接触領域から延在する複数のアームとを有する星形の幾何学的形状を有する。
【0057】
いくつかの実装形態では、ヒートスプレッダ部品5は、
図3の挿入図に示す規則的な格子構造7から成ってもよい。他の実装形態では、ヒートスプレッダ部品5は、
図4および対応する挿入図に概略的に示す不規則なメッシュ構造8から成ってもよい。
【0058】
そのような規則的な格子構造または不規則なメッシュ構造を選ぶことにより、特に大きな熱放散率を達成することができ、同時に、最小限の熱抵抗をもたらし、ヒートスプレッダ部品5の材料の総量を削減し、これによりコストが削減される。
【0059】
図5は、組み立てられた状態である
図3または
図4に関して示した装置11、12の例示的な実装形態を概略的に示す。筐体部分2は、電子回路およびヒートスプレッダ部品5を見えるようにするために、本質的に透明に示されている。
【0060】
説明したように、特に図面を参照すると、本発明は、筐体部分の内側に固定されているヒートスプレッダ部品を提供することによって、電子装置における熱放散率の増加を達成する。いくつかの実装形態では、ヒートスプレッダ部品と併せて、熱的なペデスタル機構が使用され得る。
【0061】
ヒートスプレッダ部品によって、大量の熱を発生させる回路基板上の電子部品の熱分布は、周囲の部品の機能に悪影響を及ぼすことなく改善される。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電子回路(3、4)用の筐体(1)であって、内部表面(9)を有する筐体部分(2)を備える筐体(1)において、
前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)に接続されているヒートスプレッダ部品(5)を備え、
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記少なくとも1つの電子回路(3、4)の電子部品(4)に接続されるべき接触領域を含み、
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記筐体部分(2)の熱伝導率よりも熱伝導率が大きい材料を含み、
前記ヒートスプレッダ部品5が、増加した熱伝達率での熱伝達を可能にするために、前記電子部品4を接続するための内部接触領域と、前記内部接触領域から延在する複数のアームとを有する星形の幾何学的形状を有する
ことを特徴とする
筐体(1)。
【請求項2】
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、本質的に2次元の層として形成されている
ことを特徴とする
請求項1に記載の筐体(1)。
【請求項3】
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記接触領域を少なくとも部分的に取り囲む熱伝達領域を含む
ことを特徴とする
請求項
1に記載の筐体(1)。
【請求項4】
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記材料で作られているグリッド構造(7、8)を含む
ことを特徴とする
請求項
1に記載の筐体(1)。
【請求項5】
前記材料の前記熱伝導率が、270W/(m*K)以上であり、および/または
前記筐体部分(2)の前記熱伝導率が、250W/(m*K)以下である
ことを特徴とする
請求項
1に記載の筐体(1)。
【請求項6】
前記材料が、銅および/もしくは金および/もしくは銀を含み、ならびに/または
前記筐体部分(2)が、アルミニウムおよび/もしくはマグネシウムおよび/もしくは鋼および/もしくはプラスチック材料を含む
ことを特徴とする
請求項
1に記載の筐体(1)。
【請求項7】
前記ヒートスプレッダ部品(5)と前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)との間に配置されている接着材料を備え、前記接着材料が、前記ヒートスプレッダ部品(5)を前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)に接続し、および/または
前記ヒートスプレッダ部品(5)を前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)に接続する少なくとも1つの機械的な締結具を備える
ことを特徴とする
請求項
1に記載の筐体(1)。
【請求項8】
電子部品(4)を含む少なくとも1つの電子回路(3、4)と、前記少なくとも1つの電子回路(3、4)用の筐体(1)とを備える電子装置(11、12)において、
前記筐体(1)が、請求項
1に従って設計されており、前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記接触領域において前記電子部品(4)に接続されている
ことを特徴とする
電子装置(11、12)。
【請求項9】
前記接触領域において、前記ヒートスプレッダ部品(5)を前記電子部品(4)に接続する熱ペースト(6)を備える
ことを特徴とする
請求項8に記載の電子装置(11、12)。
【請求項10】
自動車(10)の中または上での使用に向けて設計されている
ことを特徴とする
請求項
8に記載の電子装置(11、12)。
【請求項11】
前記自動車(10)の電子制御ユニットである
ことを特徴とする
請求項10に記載の電子装置(11、12)。
【請求項12】
前記自動車(10)のセンサシステムの一部であり、特に車載カメラである
ことを特徴とする
請求項10に記載の電子装置(11、12)。
【請求項13】
請求項
8に記載の電子装置(11、12)を備える自動車(10)。
【請求項14】
電子装置(11、12)を製造するための方法であって、前記電子装置(11、12)用の少なくとも1つの電子回路(3、4)を用意することと、内部表面(9)を有する筐体部分(2)を有する筐体(1)を用意することとを含む方法において、
ヒートスプレッダ部品(5)が、設けられており、前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)に接続されており、前記ヒートスプレッダ部品(5)が、前記筐体部分(2)の熱伝導率よりも熱伝導率が大きい材料を含み、
前記ヒートスプレッダ部品(5)の接触領域が、前記少なくとも1つの電子回路(3、4)の電子部品(4)に接続されている
ことを特徴とする
方法。
【請求項15】
前記ヒートスプレッダ部品(5)が、接着材料によって、および/もしくは少なくとも1つの機械的な締結具によって、前記筐体部分(2)の前記内部表面(9)に接続されており、ならびに/または
前記接触領域が、熱ペースト(6)によって前記電子部品(4)に接続されている
ことを特徴とする
請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】