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特表2024-545133化合物、そのような化合物を含む遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物、及びヒドロホルミル化プロセス
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  • 特表-化合物、そのような化合物を含む遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物、及びヒドロホルミル化プロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】化合物、そのような化合物を含む遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物、及びヒドロホルミル化プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/50 20060101AFI20241128BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20241128BHJP
   C07C 45/80 20060101ALI20241128BHJP
   C07F 9/145 20060101ALI20241128BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20241128BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
C07C45/50 CSP
C07C47/02
C07C45/80
C07F9/145
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534283
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022079127
(87)【国際公開番号】W WO2023114579
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/265,512
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ラロシュ、クリストフ アール.
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA05
4G169AA06
4G169AA10
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BE29A
4G169BE29B
4G169CB25
4H006AA02
4H006AC45
4H006AD16
4H006BA24
4H006BA48
4H006BB15
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BD33
4H006BD35
4H006BD36
4H006BE20
4H006BE40
4H039CA62
4H039CL45
4H050AA01
4H050AB80
4H050BB12
4H050BE50
(57)【要約】
本開示は、概して、化合物、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物、及び金属-モノホスファイト配位子錯体触媒を含むヒドロホルミル化プロセスにおけるヒドロホルミル化反応生成物流体から1つ以上の重質物を分離するためのプロセスに関する。一態様では、本開示は、以下の式(I)の化合物であって、(I)式中、R-Rが、同じであるか又は異なり、H又はアルキル部分であり、Rが、H、アルキル、アリール、O-R、-N(R、及びO(CHCHOR部分であり、Rが、アルキル又はアリール部分であり、Rが、H、アルキル、又はアリール部分である、化合物に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物であって、
【化1】

式中、R-Rが、同じであるか又は異なり、H又はアルキル部分であり、Rが、H、アルキル、アリール、O-R、-N(R、及びO(CHCHOR部分であり、Rが、アルキル又はアリール部分であり、Rが、H、アルキル、又はアリール部分である、化合物。
【請求項2】
可溶化第VIII族遷移金属-モノホスファイト錯体、有機溶媒、及び遊離モノホスファイト配位子を含む、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物であって、前記金属-モノホスファイト錯体のモノホスファイト配位子及び前記遊離モノホスファイト配位子が各々、請求項1に記載の化合物である、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物。
【請求項3】
前記金属-モノホスファイト錯体の前記モノホスファイト配位子及び前記遊離モノホスファイト配位子が、請求項1に記載の同じ化合物である、請求項2に記載の遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物。
【請求項4】
金属-モノホスファイト配位子錯体触媒、任意選択的に遊離モノホスファイト配位子、1つ以上のアルデヒド生成物、及び重質物を含むヒドロホルミル化反応生成物流体から1つ以上の重質物を分離するためのプロセスであって、前記プロセスが、
(a)反応ゾーンにおいて、前記金属-モノホスファイト配位子錯体触媒及び任意選択的に遊離モノホスファイト配位子でC~C40モノオレフィンをヒドロホルミル化して、ヒドロホルミル化反応生成物流体を提供することであって、前記金属-モノホスファイト配位子錯体触媒中の前記モノホスファイト配位子が、請求項1に記載の化合物を含む、提供することと、
(b)前記ヒドロホルミル化反応生成物流体の一部分を前記反応ゾーンから除去し、前記部分を生成物/触媒分離ゾーンに移送することであって、前記アルデヒド生成物の一部分が塔頂流として気化され、前記金属-モノホスファイト配位子錯体触媒を含む不揮発化触媒流体が塔底流として回収される、移送することと、
(c)工程(b)で得られた前記塔底流の少なくとも一部分を非極性溶媒及び極性溶媒の存在下で混合して、相分離によって、2つの相:前記極性溶媒、前記金属-モノホスファイト配位子錯体触媒、及び任意選択的に遊離モノホスファイト配位子を含む第1の相と、前記非極性溶媒、前記重質物の一部分、及び残存するアルデヒド生成物の少なくとも一部分を含む第2の相とを得ることと、
(d)前記金属-モノホスファイト配位子錯体触媒と任意の遊離モノフォサイト配位子の少なくとも一部分とを前記第1の相から回収し、回収された金属-モノホスファイト配位子錯体触媒と任意の回収された遊離モノホスファイト配位子とを前記反応ゾーンに戻すことと、を含む、プロセス。
【請求項5】
工程(d)からの前記回収された金属-モノホスファイト配位子錯体触媒及び任意の回収された遊離モノホスファイト配位子が、更に処理せずに前記反応ゾーンにおいて使用され得る、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
工程(d)において存在する前記極性溶媒が、前記回収された金属-モノホスファイト配位子錯体触媒及び任意の回収された遊離モノホスファイト配位子が前記反応ゾーンに戻される前に、前記第1の相から除去される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項7】
前記非極性溶媒が、工程(d)において前記第2の相から蒸留され、少なくとも部分的に再循環される、請求項4~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記非極性溶媒が、C-C40モノオレフィンを含み、工程(a)でヒドロホルミル化される前記モノオレフィンと同じである、請求項4~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記非極性溶媒が、工程(b)において前記塔頂流から回収される未反応モノオレフィンを含む、請求項4~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
アルデヒドを生成するためのヒドロホルミル化プロセスであって、前記プロセスが、
6~40個の炭素原子を含有するアルファ-オレフィン、6~40個の炭素原子を含有する内部オレフィン、及びそのようなアルファオレフィンと内部オレフィンとの混合物からなる群から選択されるオレフィン性不飽和化合物を、一酸化炭素及び少なくとも1つのモノホスファイト配位子と錯化したロジウムから本質的になるロジウム-モノホスファイト錯体触媒の存在下で、反応ゾーンにおいて一酸化炭素及び水素と反応させることを含み、前記少なくとも1つのモノホスファイト配位子が、請求項1に記載の化合物である、プロセス。
【請求項11】
前記反応ゾーンが、少なくとも1つの遊離モノホスファイト配位子を更に含み、前記少なくとも1つの遊離モノホスファイト配位子が、請求項1に記載の化合物である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ヒドロホルミル化反応条件が、50℃~120℃の反応温度、1~1500psiaの水素、一酸化炭素、及びオレフィン性不飽和有機化合物の全ガス圧、15~200psiaの水素分圧、並びに10~200psiaの一酸化炭素分圧を含み、前記反応ゾーンが、ロジウム1モル当たり4~200モルの前記モノホスファイト配位子を含有する、請求項10又は11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記反応ゾーンにおけるロジウムの濃度が、5~500ppmwである、請求項10~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
工程(c)で単離された非極性溶媒及び重質物を含む前記第2の相が、残留アルデヒド生成物を回収するために更に処理される、請求項4~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
工程(c)で使用される前記非極性溶媒及び/又は極性溶媒の少なくとも一部分が、工程(b)からの前記塔底流とともに提供される、請求項4~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、化合物、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物、ヒドロホルミル化プロセス、及び金属-モノホスファイト配位子体触媒を含むヒドロホルミル化プロセスにおけるヒドロホルミル化反応生成物流体から1つ以上の重質物を分離するためのプロセスに関する。
【0002】
序論
金属-有機リン配位子錯体触媒の存在下で1つ以上の反応物を反応させることによって、様々な生成物及び副生成物が生成され得ることが知られている。しかしながら、触媒及び有機リン配位子の安定化は依然として主要な関心事である。明らかに、触媒安定性は、いずれの触媒の使用においても重要な問題である。非常に高価な金属触媒の望ましくない反応に起因する触媒又は触媒活性の損失は、所望の生成物の生成にとって有害であり得る。更に、触媒の生産性が低下すると、生成物の生成コストが明らかに上昇する。
【0003】
例えば、ヒドロホルミル化プロセスにおいて、有機リン配位子の分解及び金属-有機リン配位子錯体触媒の失活の原因は、部分的には、例えば、反応生成物混合物からのアルデヒド生成物の分離及び回収において用いられることが多い気化器工程中に存在する気化器条件に起因する。プロセスのアルデヒド生成物の分離を容易にするために気化器を使用する場合、ヒドロホルミル化中に用いられるよりも高い温度及び低い一酸化炭素分圧の過酷な環境が作り出される。有機リン促進ロジウム触媒がそのような気化器条件下に置かれると、有機リン促進ロジウム触媒は、時間とともに加速したペースで失活することが見出されている。更に、この失活は、不活性又は低活性のロジウム種の形成によって引き起こされる可能性が高いと考えられる。これは、一酸化炭素分圧が非常に低いか又は存在しない場合に特に明らかである。触媒がロジウムを含む場合、ロジウムは、そのような気化器条件への長期曝露下で沈殿しやすくなることも観察されている。例えば、気化器中に存在するような過酷な条件下では、ヒドロホルミル化条件下でロジウム、有機リン配位子、一酸化炭素、及び水素の錯体を含むと考えられる活性触媒は、その配位された一酸化炭素の少なくとも一部を失い、それによって、そのような触媒的に不活性又は低活性のロジウムの形成のための経路が提供されると理論付けられる。
【0004】
これらの分解プロセスはまた、米国特許第4,599,206号及び同第5,288,918号において考察されるように、酸性種の形成を増加させる。これらの酸は、配位子加水分解の分解を加速するだけでなく、アルデヒド縮合反応を触媒する傾向があり、それにより重質物形成の増加がもたらされる。
【0005】
気化器に対する別の要件は、重質物除去である。アルデヒド生成物は、米国特許第4,148,830号及び同第4,247,486号に記載されているように、一般に重質物と称される縮合生成物(二量体、三量体など)を形成する。これらの重質物の濃度は増大し、アルデヒドの分子量が低下するにつれて、典型的には定常状態に達し、ここで、気化器を介して揮発されて除去される重質物の量は、その形成速度に等しい。しかしながら、生成物アルデヒドの分子量が増加するにつれて、重質物の揮発性は劇的に低下し、気化器は、極度の条件下であっても、もはや形成速度でそれらを除去することができない可能性がある。
【0006】
重質物のレベルが望ましくないレベルまで上昇すると、代替的な除去プロセスが典型的には使用される。そのような方法の1つは、触媒溶液の一部分をパージし、パージされた溶液を貴金属回収(precious metal recovery、PMR)設備に送り、貴重なロジウム金属を回収することである。残念ながら、含有されているいずれの生成物及び配位子もこのプロセスで失われる。加えて、このプロセスにおけるロジウムは、生成に利用不可能であり、したがってこれは遊金を表す。
【0007】
限外濾過及び膜分離技術が、生成物から活性触媒を分離するために用いられており、典型的には一部の重質物も除去する。そのような膜分離は、米国特許第5,430,194号及び同第5,681,473号に記載されているように達成され得る。しかしながら、重質物は(触媒と同様に)高分子量であるため、ロジウム及び配位子の損失を最小限に抑えようとする場合に分離が困難である。
【0008】
有機モノホスファイトは、ヒドロホルミル化に使用するための周知の配位子であり、多くの場合、特に分岐したより高分子量のオレフィンとともに非常に活性な触媒を提供する。しかしながら、それらは不安定であることも知られており、長期操作の間に貴金属の損失を被る傾向がある。反応性のための配位子設計における電子及び立体パラメータのバランスを考慮しなければならない。
【0009】
したがって、高度に活性なヒドロホルミル化触媒、並びに過酷な分離条件下で発生するような有機リン配位子の分解及び触媒の失活を防止及び/又は軽減するための成功した方法が、非常に望ましい。気化プロセスは、触媒の温度感受性に起因して制限される。相分離プロセス及び限外濾過プロセスの両方は、いずれも触媒及び/又は配位子を保持するのに100%有効ではないため、分離プロセスを介して不可避の触媒損失を別々に被る。長期間の操作にわたって触媒溶液中の許容可能な重質物レベルを維持しながら、これらの損失を最小限に抑えることが所望される。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、概して、化合物、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物、ヒドロホルミル化プロセス、及び金属-モノホスファイト配位子錯体触媒を含むヒドロホルミル化プロセスにおけるヒドロホルミル化反応生成物流体から1つ以上の重質物を分離するためのプロセスに関する。一般に、触媒-生成物分離のために2つの工程を使用することが、より良好な結果をもたらすことが見出されている。触媒富化流体中に残存する触媒から生成物の一部又は大部分を除去するために気化器又は他の分離工程を使用し、その後、得られた触媒富化流体の少なくとも一部分に対して相分離プロセスを行って大部分の重質物を除去することにより、触媒への損傷を最小限に抑えながら生成物除去のために気化器を最適化することが可能であり、更に、相分離プロセスは、ロジウム損失を最小限に抑えながら、重質物濃度を管理可能なレベルに維持する。これら及び他の利点は、本明細書で更に考察される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態は、化合物に関する。一実施形態では、本発明の化合物は、以下の式(I)による化合物であり、
【0012】
【化1】

式中、R-Rは、同じであるか又は異なり、H又はアルキル部分であり、Rは、H、アルキル、アリール、O-R、-N(R、及びO(CHCHOR部分であり、Rは、アルキル又はアリール部分であり、Rは、H、アルキル、又はアリール部分である。いくつかの実施形態では、R及びRは結合して、ナフチルなどの環状部分を形成し得る。いくつかの実施形態では、R及びRは結合して、シクロヘキシル部分などの環状部分を形成し得る。
【0013】
そのような化合物は、例えば、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物に使用することができる。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物に関する。一実施形態では、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物は、可溶化第VIII族遷移金属-モノホスファイト錯体、有機溶媒、及び遊離モノホスファイト配位子を含み、金属-モノホスファイト錯体のモノホスファイト配位子及び遊離モノホスファイト配位子は各々、式(I)による化合物である。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態は、ヒドロホルミル化反応生成物流体から1つ以上の重質物を分離するためのプロセスに関する。一実施形態では、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒、任意選択的に遊離モノホスファイト配位子、1つ以上のアルデヒド生成物、及び重質物を含むヒドロホルミル化反応生成物流体から1つ以上の重質物を分離するためのプロセスは、
(a)反応ゾーンにおいて、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒及び任意選択的に遊離モノホスファイト配位子でC~C40モノオレフィンをヒドロホルミル化して、ヒドロホルミル化反応生成物流体を提供することであって、モノホスファイト配位子が、請求項1に記載の化合物を含む、提供することと、
(b)ヒドロホルミル化反応生成物流体の一部分を反応ゾーンから除去し、その部分を生成物/触媒分離ゾーンに移送することであって、アルデヒド生成物の一部分が塔頂流として気化され、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒を含む不揮発化触媒流体が塔底流として回収される、移送することと、
(c)工程(b)で得られた塔底流の少なくとも一部分を非極性溶媒及び極性溶媒の存在下で混合して、相分離によって、2つの相:極性溶媒、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒、及び任意選択的に遊離モノホスファイト配位子を含む第1の相と、非極性溶媒、重質物の一部分、及び残存するアルデヒド生成物の少なくとも一部分を含む第2の相とを得ることと、
(d)該金属-モノホスファイト配位子錯体触媒と任意の遊離モノフォサイト(monophosite)配位子の少なくとも一部分とを第1の相から回収し、回収された金属-モノホスファイト配位子錯体触媒と任意の回収された遊離モノホスファイト配位子とを反応ゾーンに戻すことと、を含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態は、ヒドロホルミル化プロセスに関する。一実施形態では、アルデヒドを生成するためのヒドロホルミル化プロセスは、6~40個の炭素原子を含有するアルファ-オレフィン、6~40個の炭素原子を含有する内部オレフィン、及びそのようなアルファオレフィンと内部オレフィンとの混合物からなる群から選択されるオレフィン性不飽和化合物を、一酸化炭素及び少なくとも1つのモノホスファイト配位子と錯化したロジウムから本質的になるロジウム-モノホスファイト錯体触媒の存在下で、反応ゾーンにおいて一酸化炭素及び水素と反応させることを含み、少なくとも1つのモノホスファイト配位子は、式(I)による化合物である。
【0016】
これら及び他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態において、更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】重質副生成物の除去に関連する生成物/触媒分離ゾーン後の均一触媒化反応流出物の処理に使用される全溶媒系の相挙動を特定する三元図である。
図2】本発明のプロセスのいくつかの実施形態を実装するための系の概略図である。
図3】本発明のプロセスのいくつかの実施形態を実装するための系の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
開示されるプロセスは、いくつかの実施形態では、構成成分としてロジウム及び式(I)によるモノホスファイト配位子を含む触媒の存在下で少なくとも1つのアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下でCO、H、及びC~C40オレフィンを接触させることを含むヒドロホルミル化プロセスと組み合わせて使用することができる。任意選択のプロセス構成成分には、アミン及び/又は水が含まれる。
【0019】
元素の周期表及びその中の様々な族に対する全ての言及は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,72nd Ed.(1991-1992)CRC Press、page I-11で公開されたバージョンである。
【0020】
矛盾する内容が述べられていない限り、又は文脈から黙示的でない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量に基づくものであり、全ての試験方法は、本出願の出願日現在のものである。米国特許実務の目的のために、任意の参照される特許、特許出願、又は公開の内容は、特に定義の開示(具体的に本開示で提供されるいずれの定義とも矛盾しない範囲)及び当該技術分野における一般知識に関して、参照によりそれらの全体が組み込まれる(又はそれと等価な米国版がそのように参照により組み込まれる)。
【0021】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は互換的に使用される。「含む(comprise)」、「含む(include)」、及びそれらの変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に現れる場合に限定的な意味を有しない。したがって、例えば、「a」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、組成物が「1つ以上の」疎水性ポリマーの粒子を含むことを意味すると解釈することができる。
【0022】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。本発明の目的のために、当業者が理解することと一致して、数値範囲は、その範囲に含まれる可能性のある全ての部分範囲を含み、かつサポートすることを意図するということを理解されたい。例えば、1~100の範囲は、1.01~100、1~99.99、1.01~99.99、40~60、1~55などを伝達することを意図している。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ppmw」という用語は、重量百万分率を意味する。
【0024】
本発明の目的のために、「炭化水素」という用語は、少なくとも1個の水素原子及び1個の炭素原子を有する全ての許容される化合物を含むことが企図される。そのような許容される化合物は、1個以上のヘテロ原子を有していてもよい。広義の態様では、許容される炭化水素は、置換又は非置換であり得る、非環式(ヘテロ原子を含む又は含まない)及び環式、分岐及び非分岐、炭素環及び複素環の、芳香族及び非芳香族有機化合物を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、別段の指示がない限り、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが企図される。広範な態様では、許容される置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分岐状及び非分岐状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が含まれる。例示的な置換基としては、例えば、アルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル(炭素の数が1~20個以上、好ましくは1~12個の範囲であり得る)、並びにヒドロキシ、ハロ、及びアミノが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物について、1つ以上であり得、同じであり得るか又は異なり得る。本発明は、有機化合物の許容される置換基によりいかなる様式でも限定されることは意図されていない。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ヒドロホルミル化」という用語は、1つ以上の置換若しくは非置換オレフィン系化合物又は1つ以上の置換若しくは非置換オレフィン系化合物を含む反応混合物を、1つ以上の置換若しくは非置換アルデヒド又は1つ以上の置換若しくは非置換アルデヒドを含む反応混合物に転化することを伴う全てのヒドロホルミル化プロセスを含むが、これらに限定されないことが企図される。アルデヒドは、不斉又は非不斉であり得る。
【0027】
「反応流体」、「反応媒体」、及び「触媒溶液」という用語は、本明細書において互換的に使用され、(a)金属-有機リン配位子錯体触媒、(b)遊離有機リン配位子、(c)反応において形成されるアルデヒド生成物、(d)未反応の反応物、(e)該金属-有機リン配位子錯体触媒及び該遊離有機リン配位子のための溶媒、並びに任意選択的に、(f)反応において形成される、溶解及び/又は懸濁され得る1つ以上のリン酸性化合物を含む、混合物を含み得るが、これらに限定されない。反応流体は、(a)反応ゾーンにおける流体、(b)生成物/触媒分離ゾーンへの途中の流体流、(c)生成物/触媒分離ゾーンにおける流体、(d)再循環流、(e)反応ゾーン又は生成物/触媒分離ゾーンから取り出された流体、(f)フィルタ又は抽出器又は他の不混和性流体接触系などの酸除去系で処理されている、取り出された流体、(g)反応ゾーン又は生成物/触媒分離ゾーンに戻された、処理又は未処理の流体、(h)外部冷却器における流体、(i)液-液分離ゾーンにおける取り出された流体(生成物/触媒分離ゾーンの後)、(j)反応ゾーン又は生成物/触媒分離ゾーンに戻されている、液-液分離ゾーンから分離された流体((i)のような流体)、(k)系から除去されている(任意選択的に更に処理されている)重質副生成物を含む、液-液分離ゾーンから分離された流体((i)のような流体)を包含し得るが、これらに限定されない。液-液分離ゾーンは、2つの液相が存在し、本明細書で更に考察されるように分離される相分離ゾーンである。
【0028】
「加水分解性有機リン配位子」は、少なくとも1つのP-Z結合を含有する三価のリン配位子であり、ここで、Zは、酸素、窒素、塩素、フッ素、又は臭素である。例としては、ホスファイト、ホスフィノ-ホスファイト、ビスホスファイト、ホスホナイト、ビスホスホナイト、ホスフィナイト、ホスホラミダイト、ホスフィノ-ホスホラミダイト、ビスホスホラミダイト、フルオロホスファイトなどが挙げられるが、これらに限定されない。配位子はキレート構造を含み得、かつ/又はポリホスファイト、ポリホスホラミダイトなどの複数のP-Z部分、及びホスファイト-ホスホラミダイト、フルロホスファイト-ホスファイトなどの混合P-Z部分を含有し得る。
【0029】
「遊離配位子」という用語は、錯体触媒の金属、例えば、金属原子と錯化していない(結び付いていない又は結合していない)配位子を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「重質副生成物」及び「重質物」という用語は、互換的に使用され、ヒドロホルミル化プロセスの所望の生成物の標準沸点より少なくとも25℃高い標準沸点を有する副生成物を指す。そのような材料は、例えば、アルドール縮合によるものを含む1つ以上の副反応を通じた通常の操作下のヒドロホルミル化プロセスで本質的に形成されることが知られている。
【0031】
上述したように、本開示は、概して、化合物、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物、ヒドロホルミル化プロセス、及び金属-モノホスファイト配位子錯体触媒を含むヒドロホルミル化プロセスにおけるヒドロホルミル化反応生成物流体から1つ以上の重質物を分離するためのプロセスに関する。一般に、触媒-生成物分離のために2つの工程を使用することが、より良好な結果をもたらすことが見出されている。触媒富化流体中に残存する触媒から生成物の一部又は大部分を除去するために気化器又は他の分離工程を使用し、その後、得られた触媒富化流体の少なくとも一部分に対して相分離プロセスを行って大部分の重質物を除去することにより、触媒への損傷を最小限に抑えながら生成物除去のために気化器を最適化することが可能であり、更に、相分離プロセスは、ロジウム損失を最小限に抑えながら、重質物濃度を管理可能なレベルに維持する。
【0032】
商業的に実行可能なプロセスのためには、良好な反応速度及び触媒安定性も達成されなければならない。6個以上の炭素を有するモノオレフィン(「C6+モノオレフィン」)のヒドロホルミル化におけるこれらの目標の全てを達成するために、本明細書に更に記載されるような特定のモノホスファイト配位子が開発されている。モノホスファイト配位子は、いくつかの実施形態では、有利には、良好な触媒安定性、耐加水分解性、及び高反応速度を達成するための様々な因子と、重質物除去中に必要な相分離を可能にするが、ヒドロホルミル化反応系の溶液(特に、触媒濃度が最も高く温度が最も低い分離ゾーンに気化器が使用される実施形態では、気化器テール流)から出ない正しい極性とのバランスをとり得る。
【0033】
具体的には、C6+モノオレフィンのヒドロホルミル化に関連して、金属-有機リン配位子錯体触媒化プロセスの特定の群が発見されており、これらのプロセスでは、いくつかの実施形態によれば、重質物は、相分離によって触媒富化流体から選択的に抽出及び分離され得る。いくつかの実施形態によれば、気化を使用して反応生成物流体から所望の生成物を分離し、次いで、過酷な気化分離及びそれに関連する過酷な条件を使用することを必要とせずに重質物を除去することが可能である。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、気化分離のみを使用して過酷な条件下で発生し得る有機リン配位子の分解及び触媒の失活を防止及び/又は軽減する、非常に望ましい分離方法を提供し得る。
【0034】
発明は、部分的に、反応生成物流体から1つ以上の生成物だけでなく重質物を分離するためのプロセスに関し、反応生成物流体は、有機モノリン配位子の特定の群を含む金属-有機モノリン配位子錯体触媒、任意選択的に遊離有機モノリン配位子、任意選択的に非極性溶媒、任意選択的に極性溶媒、1つ以上の重質物、及び該1つ以上の生成物を含み、該プロセスは、(1)触媒溶液から生成物流を気化させることと、(2)極性溶媒及び非極性溶媒の存在下で、得られた触媒の一部分と重質物含有残留物流とを混合することと、(3)得られた混合物を相分離によって分離して、該金属-有機リン配位子錯体触媒、任意選択的に遊離有機リン配位子、及び該極性溶媒を含む極性相と、該1つ以上の生成物、重質物、及び該非極性溶媒を含む非極性相とを得ることと、(4)該非極性相から該極性相を回収することと、を含み、該有機モノリン配位子は、約2超の極性溶媒と非極性溶媒との間の分配係数を有し、重質物は、約0.5未満の極性溶媒と非極性溶媒との間の分配係数を有する。
【0035】
一実施形態では、本発明の化合物は、以下の式(I)による化合物であり、
【0036】
【化2】

式中、R-Rは、同じであるか又は異なり、H又はアルキル部分であり、Rは、H、アルキル、アリール、O-R、-N(R、及びO(CHCHOR部分であり、Rは、アルキル又はアリール部分であり、Rは、H、アルキル、又はアリール部分である。いくつかの実施形態では、R及びRは結合して、ナフチルなどの環状部分を形成し得る。いくつかの実施形態では、R及びRは結合して、シクロヘキシル部分などの環状部分を形成し得る。
【0037】
そのような化合物は、例えば、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物に使用することができる。一実施形態では、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物は、可溶化第VIII族遷移金属-モノホスファイト錯体、有機溶媒、及び遊離モノホスファイト配位子を含み、金属-モノホスファイト錯体のモノホスファイト配位子及び遊離モノホスファイト配位子は各々、式(I)による化合物である。いくつかの実施形態では、金属-モノホスファイト錯体のモノホスファイト配位子及び遊離モノホスファイト配位子は、式(I)による同じ化合物である。いくつかの実施形態では、式(I)による化合物がヒドロホルミル化プロセスにおいて配位子として使用される場合、配位子は、速いヒドロホルミル化速度、熱安定性、及び/又は極性有機溶媒への好ましい分配を容易にし得る。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態は、ヒドロホルミル化反応生成物流体から1つ以上の重質物を分離するためのプロセスに関する。一実施形態では、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒、任意選択的に遊離モノホスファイト配位子、1つ以上のアルデヒド生成物、及び重質物を含むヒドロホルミル化反応生成物流体から1つ以上の重質物を分離するためのプロセスは、
(a)反応ゾーンにおいて、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒及び任意選択的に遊離モノホスファイト配位子でC~C40モノオレフィンをヒドロホルミル化して、ヒドロホルミル化反応生成物流体を提供することであって、モノホスファイト配位子が、請求項1に記載の化合物を含む、提供することと、
(b)ヒドロホルミル化反応生成物流体の一部分を反応ゾーンから除去し、その部分を生成物/触媒分離ゾーンに移送することであって、アルデヒド生成物の一部分が塔頂流として気化され、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒を含む不揮発化触媒流体が塔底流として回収される、移送することと、
(c)工程(b)で得られた塔底流の少なくとも一部分を非極性溶媒及び極性溶媒の存在下で混合して、相分離によって、2つの相:極性溶媒、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒、任意選択的に遊離モノホスファイト配位子を含む第1の相と、非極性溶媒、重質物の一部分、及び残存するアルデヒド生成物の少なくとも一部分を含む第2の相とを得ることと、
(d)該金属-モノホスファイト配位子錯体触媒と任意の遊離モノフォサイト配位子の少なくとも一部分とを第1の相から回収し、回収された金属-モノホスファイト配位子錯体触媒と任意の回収された遊離モノホスファイト配位子とを反応ゾーンに戻すことと、を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、工程(d)からの回収された金属-モノホスファイト配位子錯体触媒及び任意の回収された遊離モノホスファイト配位子は、更に処理せずに反応ゾーンにおいて使用され得る。いくつかの実施形態では、工程(d)において存在する極性溶媒は、回収された金属-モノホスファイト配位子錯体触媒及び任意の回収された遊離モノホスファイト配位子が反応ゾーンに戻される前に、第1の相から除去される。いくつかの実施形態では、非極性溶媒は、工程(d)において第2の相から蒸留され、少なくとも部分的に再循環される。いくつかの実施形態では、非極性溶媒は、C-C40モノオレフィンを含み、工程(a)でヒドロホルミル化されるモノオレフィンと同じである。いくつかの実施形態では、非極性溶媒は、工程(b)において塔頂流から回収される未反応モノオレフィンを含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態は、ヒドロホルミル化プロセスに関する。一実施形態では、アルデヒドを生成するためのヒドロホルミル化プロセスは、6~40個の炭素原子を含有するアルファ-オレフィン、6~40個の炭素原子を含有する内部オレフィン、及びそのようなアルファオレフィンと内部オレフィンとの混合物からなる群から選択されるオレフィン性不飽和化合物を、一酸化炭素及び少なくとも1つのモノホスファイト配位子と錯化したロジウムから本質的になるロジウム-モノホスファイト錯体触媒の存在下で、反応ゾーンにおいて一酸化炭素及び水素と反応させることを含み、少なくとも1つのモノホスファイト配位子は、式(I)による化合物である。いくつかの実施形態では、反応ゾーンは、少なくとも1つの遊離モノホスファイト配位子を更に含み、少なくとも1つの遊離モノホスファイト配位子は、式(I)による化合物である。いくつかの実施形態では、ヒドロホルミル化反応条件は、50℃~120℃の反応温度、1~1500psiaの水素、一酸化炭素、及びオレフィン性不飽和有機化合物の全ガス圧、15~200psiaの水素分圧、並びに10~200psiaの一酸化炭素分圧を含み、反応ゾーンは、ロジウム1モル当たり4~100モルの該モノホスファイト配位子を含有する。いくつかの実施形態では、反応ゾーンにおけるロジウムの濃度は、5~500ppmwである。いくつかの実施形態では、工程(c)で単離された非極性溶媒及び重質物を含む第2の相は、残留アルデヒド生成物を回収するために更に処理される。いくつかの実施形態では、工程(c)で使用される非極性溶媒及び/又は極性溶媒の少なくとも一部分は、工程(b)からの塔底流とともに提供される。
【0041】
ここでヒドロホルミル化に使用される出発材料を検討すると、水素及び一酸化炭素は、石油クラッキング及び精製操作を含む任意の好適な供給源から得てもよい。
【0042】
シンガス(syngas)(合成ガス由来)は、様々な量のCO及びHを含有するガス混合物に与えられる名称である。生成方法は、周知であり、例えば、(1)天然ガス又は液体炭化水素の水蒸気改質及び部分酸化、並びに(2)石炭及び/又はバイオマスのガス化を含む。水素及びCOは、典型的には、シンガスの主要構成成分であるが、シンガスは、二酸化炭素、並びにCH、N、及びArなどの不活性ガスを含有し得る。HのCOに対するモル比は大きく変動し得るが、一般に1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1の範囲である。シンガスは、市販されており、多くの場合、燃料源として又は他の化学物質を生成するための中間体として使用される。化学物質生成のための最も好ましいH:COモル比は、3:1~1:3であり、通常、ほとんどのヒドロホルミル化用途のためには約1:2~2:1であることが目標とされる。シンガス混合物は、水素及びCOの供給源として好ましい。
【0043】
いくつかの実施形態では、オレフィン出発材料反応物は、1つ以上のC~C40オレフィンを含む。いくつかの実施形態では、本発明のヒドロホルミル化プロセスにおいて用いられ得るオレフィン出発材料反応物は、6~40個、好ましくは8~20個の炭素原子を含有する光学活性(プロキラル及びキラル)並びに非光学活性(アキラル)オレフィン系不飽和化合物の両方を含む。そのようなオレフィン系不飽和化合物は、置換若しくは非置換、末端若しくは内部不飽和、直鎖、分岐鎖、又は環状であり得る。エチレン、プロペン、ブテン、イソブテンなどのオリゴマー化から得られるようなオレフィン混合物(例えば、米国特許第4,518,809号及び同第4,528,403号に開示されているような、いわゆる二量体、三量体、又は四量体プロピレンなど)が用いられ得る。更に、そのようなオレフィン化合物は、1つ以上の追加のエチレン系不飽和基を更に含有し得、2つ以上の異なるオレフィン系不飽和化合物の混合物が、必要に応じて出発ヒドロホルミル化材料として用いられ得る。例えば、6個以上の炭素原子を含有する市販のアルファオレフィンは、少量の対応する内部オレフィン及び/又はそれらの対応する飽和炭化水素を含有し得、そのような市販のオレフィンは、ヒドロホルミル化される前に必ずしもそれらから精製される必要はない。更に、そのようなオレフィン系不飽和化合物及びそれに由来する対応するアルデヒド生成物は、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,769,498号などに記載されているような、ヒドロホルミル化プロセス又は本発明のプロセスに過度に悪影響を及ぼさない1つ以上の基又は置換基も含有し得る。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態は、6~40個、好ましくは8~20個の炭素原子を含有するアキラルアルファ-オレフィン、及び6~20個の炭素原子を含有するアキラル内部オレフィン、並びにそのようなアルファオレフィンと内部オレフィンとの出発材料混合物をヒドロホルミル化することにより、非光学活性アルデヒドの生成に特に有用である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態に従ってヒドロホルミル化され得る例示的なアルファオレフィン及び内部オレフィンとしては、例えば、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、2-オクテン、プロピレン二量体、プロピレン三量体、プロピレン四量体、2-エチル-1-ヘキセン、1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、3-シクロヘキシル-1-ブテンなどが挙げられる。
【0046】
エナンチオマーアルデヒド混合物を生成するために用いられ得る不斉ヒドロホルミル化に有用なプロキラル及びキラルオレフィンとしては、以下の式によって表されるものが挙げられ、
【0047】
【化3】

式中、R11、R12、R、及びR14は、同じであるか又は異なり(但し、R11はR12と異なるか又はR13はR14と異なる)、水素;アルキル;置換アルキルから選択される。この定義のプロキラル及びキラルオレフィンはまた、上記の一般式の分子も含み、式中、R基が結合して、環化合物、例えば、3-メチル-1-シクロヘキセンなどを形成する。
【0048】
上記のように、本発明のプロセスは、1つ以上の非極性溶媒及び1つ以上の極性溶媒の存在下で、又は1つ以上の非極性溶媒の存在下で、続いて1つ以上の極性溶媒と混合して、又は1つ以上の極性溶媒の存在下で、続いて1つ以上の非極性溶媒と混合して行われる。用いられる特定の触媒及び反応物に応じて、好適な非極性反応及び抽出溶媒としては、例えば、アルカン、シクロアルカン、アルケン、アルカジエン、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アミン、芳香族化合物、シラン、シリコーン、二酸化炭素などが挙げられる。不適切な非極性溶媒の例としては、フルオロカーボン及びフッ素化炭化水素が挙げられる。これらは、コストが高く、環境汚染のリスクがあり、多相を形成する可能性があるため、望ましくない。いくつかの実施形態では、1つ以上の反応物、金属-有機リン配位子錯体触媒、及び任意選択的に遊離有機リン配位子は、相間移動剤又は界面活性剤が必要とされないように、非極性溶媒又は極性溶媒中で十分な溶解度を呈する。
【0049】
1つ以上の異なる非極性溶媒の混合物を、必要に応じて用いてもよい。反応ゾーンにおいて用いられる極性及び/又は非極性溶媒の量は、存在する場合、本発明にとって重要ではなく、所与のプロセスに望ましい特定の金属濃度を反応媒体に提供するのに十分な量であればよい。抽出及び相分離ゾーンにおいて用いられる非極性溶媒の量は、本発明にとって重要ではなく、任意の所与のプロセスについて液-液分離ゾーンにおいて反応生成物流体から1つ以上の重質副生成物を抽出するのに十分であり、触媒構成成分の沈殿をもたらさない量であればよい。用いる非極性溶媒の量を決定する際の考慮事項を説明するために、ここで図1を参照し、図1は、重質副生成物の除去に関連する生成物/触媒分離ゾーン後の均一触媒化反応流出物の処理に使用される全溶媒系の相挙動を特定する三元図である。液-液分離ゾーンにおいて用いられる非極性溶媒の量は、相分離によって、極性相及び非極性相を含む図1の領域2、4、及び6によって示される2つの不混和性液相を得るように、かつ図1の領域5によって示される3つの不混和性液相並びに図1の領域1、3、及び7によって示される1つの均一液相の形成を防止又は最小化するように十分に制御されるべきである。一般に、用いられる非極性溶媒の量は、反応混合物の総重量に基づいて約5重量パーセント以下~約95重量パーセント以上までの範囲であり得る。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において有用な例示的な非極性反応及び抽出溶媒としては、例えば、プロパン、2,2-ジメチルプロパン、ブタン、2,2-ジメチルブタン、ペンタン、イソプロピルエーテル、ヘキサン、トリエチルアミン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソブチルイソブチレート、トリブチルアミン、ウンデカン、2,2,4-トリメチルペンチルアセテート、イソブチルヘプチルケトン、ジウソブチル(diusobutyl)ケトン、シクロペンタン、シクロヘキサン、イソブチルベンゼン、n-ノニルベンゼン、n-オクチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、p-キシレン、エチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、m-キシレン、トルエン、o-キシレン、デセン、ドデセン、テトラデセン、及びヘプタデカナールが挙げられる。本発明のいくつかの実施形態では、1つ以上の副生成物又は未反応オレフィン(新鮮なもの又は再循環されたもの)は、非極性反応溶媒として役割を果たし得る。本発明のいくつかの実施形態は、非極性溶媒の一部分として未転化オレフィンを(任意選択的に、供給原料からの炭化水素又はヒドロホルミル化プロセス中の不注意な水素化からの炭化水素とともに)回収し、再循環させることを伴い得る。いくつかの実施形態で使用することができる例示的な非極性溶媒の溶解度パラメータを、以下の表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
当業者に既知であるように、ヒドロホルミル化プロセスは、望ましくない重質物又は重質副生成物の生成をもたらし得る。本発明の実施形態では、望ましくない重質物は、非極性抽出溶媒中での抽出及び相分離によって選択的に除去され得る。上記のように、本発明のプロセスは、1つ以上の非極性溶媒及び1つ以上の極性溶媒の存在下で、又は1つ以上の非極性溶媒の存在下で、続いて1つ以上の極性溶媒と混合して、又は1つ以上の極性溶媒の存在下で、続いて1つ以上の非極性溶媒と混合して行われる。反応生成物流体からの1つ以上の反応物、金属-有機リン配位子錯体触媒、及び任意選択的に遊離有機リン配位子のいずれの抽出も最小化又は排除されるように、望ましくない重質物は、好ましくは、適切な非極性抽出溶媒の使用によって反応生成物流体から抽出される。反応生成物流体からの望ましくない重質物生成物の抽出が最大化されるように、適切な極性抽出溶媒を使用することによって、1つ以上の反応物、金属-有機リン配位子錯体触媒、及び任意選択的に遊離有機リン配位子が、好ましくは、反応生成物流体中に保持される。いくつかの実施形態では、極性溶媒は、好ましくは最大約30~40重量パーセントの水を含有する水性混合物である。他の実施形態では、極性溶媒は、最大約10重量パーセントの水を含有する水性混合物である。特定の望ましくない重質物に応じて、好適な極性反応及び抽出溶媒としては、例えば、ラクトン、ニトリル、アルカノール、環状アセタール、ピロリドン、ホルムアミド、スルホキシド、水などが挙げられる。いくつかの実施形態では、一級アルカノールはこのプロセスに望ましくないため、極性溶媒は、一級アルカノールと水との組み合わせではない。
【0053】
1つ以上の異なる極性溶媒の混合物を、必要に応じて用いてもよい。いくつかの実施形態では、極性溶媒又は1つ以上の異なる極性溶媒の混合物についてのヒルデブラント溶解度パラメータは、約13.5(cal/cm1/2又は873(kJ/m1/2未満、好ましくは約13.0(cal/cm1/2又は841(kJ/m1/2未満、及びより好ましくは約12.5(cal/cm1/2又は809(kJ/m1/2未満であり得る。反応ゾーンにおいて用いられる極性及び/又は非極性溶媒の量は、存在する場合、本発明にとって重要ではなく、所与のプロセスに望ましい特定の金属濃度を反応媒体に提供するのに十分な量であればよい。液-液分離ゾーンにおいて用いられる極性溶媒の量は、本発明にとって重要ではなく、配位子及びロジウムの損失を最小限に抑えながら、任意の所与のプロセスについて反応生成物流体からの1つ以上の重質副生成物の抽出を容易にするのに十分な量であればよい。液-液分離ゾーンにおいて用いられる極性溶媒の量は、相分離によって、図1の領域2、4、及び6によって示される極性相及び非極性相を含む2つの不混和性液相を得るように、かつ図1の領域5によって示される3つの不混和性液相並びに図1の領域1、3、及び7によって示される1つの不混和性液相の形成を防止又は最小化するように十分に制御されるべきである。一般に、用いられる極性溶媒の量は、反応生成物流体の総重量に基づいて約5重量パーセント又は最大約50重量パーセントの範囲であり得る。
【0054】
本発明の実施形態において有用な例示的な極性反応及び抽出溶媒としては、例えば、プロピオニトリル、1,3-ジオキソラン、3-メトキシプロピオニトリル、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、2-メチル-2-オキサゾリン、アジポニトリル、アセトニトリル、イプシロンカプロラクトン、グルタロニトリル、3-メチル-2-オキサゾリジノン、水、ジメチルスルホキシド、及びスルホランが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のヒドロホルミル化反応生成物は、極性溶媒として役割を果たし得る。例示的な極性溶媒の溶解度パラメータを表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
1つ以上の反応物、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒、任意選択的に遊離モノホスファイト配位子、及び非極性又は極性溶媒を含む1つの相と、1つ以上の重質副生成物及び極性又は非極性溶媒を含む少なくとも1つの他の相とを得るための抽出は、平衡プロセスである。この抽出操作における極性溶媒及び非極性溶媒又は反応生成物流体の相対体積は、使用される溶媒中の1つ以上の反応物、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒、任意選択的に遊離モノホスファイト配位子、及び1つ以上の生成物の溶解度、並びに抽出される望ましくない重質物の量によって部分的に決定される。例えば、抽出される重質物が極性又は非極性溶媒中で高い溶解度を示し、反応生成物流体中に比較的低い濃度で存在する場合、反応生成物流体に対して比較的小さい体積比で極性又は非極性溶媒を使用することによって重質物を抽出することが可能である。上記の極性及び非極性溶媒は、抽出溶媒として使用され得る。本明細書に記載されるように、極性及び非極性溶媒の両方が液-液分離ゾーンに存在する。
【0057】
一般に、抽出及び相分離プロセス(液-液分離)においてヒドロホルミル化反応温度より高い温度を用いることにはほとんど利点がなく、望ましい結果は、ヒドロホルミル化反応温度より低い抽出温度を用いることによって得ることができる。抽出は、極性溶媒及び非極性溶媒の両方が混合され、ヒドロホルミル化反応生成物流体の構成成分が異なる相に分離するときであり、相分離相は、極性相が非極性相から分離されるときである。特定のプロセスに応じて、相分離温度は、約-80℃以下~約200℃以上、好ましくは0℃~70℃、及び最も好ましくは25~50℃の範囲であり得る。圧力に関しては、一般に、流体の脱気を回避する以外に、高圧で抽出及び相分離を行うことにはほとんど利点がない。しかしながら、抽出は、ガスを溶解させておくことが望まれる場合には、高圧で行われ得る。分離ゾーンにおいて用いられる温度及び圧力は、相分離によって、図1の領域2、4、及び6によって示される極性相及び非極性相を含む2つの不混和性液相を得るように、かつ図1の領域5によって示される3つの不混和性液相並びに図1の領域1、3、及び7によって示される1つの不混和性液相の形成を防止又は最小化するように十分に制御されるべきである。
【0058】
反応生成物流体を極性又は非極性溶媒と混合するための時間(すなわち、相分離前の時間)は、2つの相が平衡状態に達するまでの速度に依存する。一般に、そのような時間は、例えば、反応生成物流体中の特定の構成成分及び使用される溶媒に依存して、1分以内から1時間以上のより長い時間まで変動し得る。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態は、化合物に関する。一実施形態では、本発明の化合物は、以下の式(I)による化合物であり、
【0060】
【化4】

式中、R-Rは、同じであるか又は異なり、H又はアルキル部分であり、Rは、H、アルキル、アリール、O-R、-N(R、及びO(CHCHOR部分であり、Rは、アルキル又はアリール部分であり、Rは、H、アルキル、又はアリール部分であり、yは、1~20である。いくつかの実施形態では、R及びRは結合して、ナフチルなどの環状部分を形成し得る。いくつかの実施形態では、R及びRは結合して、シクロヘキシル部分などの環状部分を形成し得る。そのような化合物は、有利には、本発明のいくつかの実施形態による遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物中のモノホスファイト配位子として、並びに本発明のいくつかの実施形態によるプロセス(例えば、ヒドロホルミル化反応生成物流体から1つ以上の重質物を分離するためのプロセス及びヒドロホルミル化プロセス)における金属-モノホスファイト配位子錯体触媒中のモノホスファイト配位子として使用することができる。式(I)による化合物に関する追加の情報は、配位子としてのその使用に関して以下の考察において提供され、それは、式(I)によるモノホスファイト配位子と称され得る。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態は、可溶化第VIII族遷移金属-モノホスファイト錯体、有機溶媒、及び遊離モノホスファイト配位子を含む、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物に関し、金属-モノホスファイト錯体のモノホスファイト配位子及び遊離モノホスファイト配位子は各々、式(I)による化合物である。いくつかの実施形態では、金属-モノホスファイト錯体のモノホスファイト配位子及び遊離モノホスファイト配位子は、式(I)による同じ化合物である。
【0062】
本発明のプロセスにおいて有用な金属-モノホスファイト配位子錯体触媒は、触媒金属を含む。触媒金属としては、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、及びそれらの混合物から選択される8、9、及び10族金属が挙げられ得、好ましい金属は、ロジウム、コバルト、イリジウム、及びルテニウムであり、より好ましくはロジウム、コバルト、及びルテニウム、特にロジウムである。
【0063】
そのような金属上の利用可能な配位部位の数は、当該技術分野において周知である。したがって、錯体触媒混合物を含み得る触媒種は、単量体、二量体、又はより高核性の形態を含み得、好ましくは、金属、例えば、ロジウム1分子当たり少なくとも1つの錯化したモノホスファイト含有分子(例えば、式(I)による化合物)であることを特徴とする。例えば、ヒドロホルミル化反応において用いられる好ましい触媒の触媒種は、ヒドロホルミル化反応によって用いられる一酸化炭素及び水素ガスの観点から、式(I)によるモノホスファイト配位子に加えて、一酸化炭素及び水素と錯化され得ると考えられている。
【0064】
本発明に包含されるそのようなヒドロホルミル化反応に用いることが可能な例示的な金属-モノホスファイト配位子錯体触媒としては、式(I)による化合物を使用する金属-モノホスファイト配位子錯体触媒が挙げられる。そのような触媒は、本明細書の教示に基づいて当業者に既知の技法を使用して調製され得る。一般に、そのような触媒は、事前に形成されるか、又はその場で形成され得、式(I)によるモノホスファイト配位子と錯体して組み合わせた金属から本質的になる。一酸化炭素も存在し、活性種中の金属と錯化していると考えられる。活性種はまた、金属に直接結合した水素を含有し得る。
【0065】
「錯体」という用語は、本明細書で使用される場合、各々が独立して存在できる1つ以上の電子的に乏しい分子又は原子との、独立して存在できる1つ以上の電子的に豊富な分子又は原子の結合により形成される配位化合物を意味する。例えば、式(I)によるモノホスファイト配位子は、リンドナー原子を保有し、独立して又はおそらく金属と協調して(例えば、キレート化を介して)配位結合を形成することができる電子の1つの利用可能な又は共有できない対を有する。一酸化炭素は、配位子としても適切に分類されるが、存在して金属に配位し得る。錯体触媒の最終的な組成はまた、追加の配位子、例えば、金属の配位部位又は核電荷を満たす水素又はアニオンを含有し得る。例示的な追加の配位子としては、例えば、ハロゲン(Cl、Br、I)、アルキル、アリール、置換アリール、アシル、CF、C、CN、(R)PO、及びRP(O)(OH)O(式中、各Rは同じであるか又は異なり、置換又は非置換炭化水素ラジカル、例えば、アルキル又はアリールである)、アセテート、アセチルアセトネート、SO、PF、PF、NO、NO、CH、CH=CHCH、CHCH=CHCH、CCN、CHCN、NH、ピリジン、(CN、モノオレフィン、ジオレフィン及びトリオレフィン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。錯体種は、好ましくは、触媒を被毒するか、又は触媒性能に過度の悪影響を与え得るいずれの追加の有機配位子又はアニオンも含まない。金属-モノホスファイト配位子錯体触媒化ヒドロホルミル化反応では、活性触媒が金属に直接結合しているハロゲン及び硫黄を含まないことが好ましいが、これは絶対に必要なわけではない。
【0066】
上述したように、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒のモノホスファイト配位子及び/又は遊離配位子として役割を果たし得るトリ有機ホスファイトは、以下の式(I)によるものを含み、
【0067】
【化5】

式中、R-Rは、同じであるか又は異なり、H又はアルキル部分であり、Rは、H、アルキル、アリール、O-R、-N(R、及びO(CHCHOR部分であり、Rは、アルキル又はアリール部分であり、Rは、H、アルキル、又はアリール部分である。いくつかの実施形態では、R及びRは結合して、ナフチルなどの環状部分を形成し得る。いくつかの実施形態では、R及びRは結合して、シクロヘキシル部分などの環状部分を形成し得る。上記式(I)によるそのようなモノホスファイトのR1-6ラジカルのうちのいずれかは、必要に応じて、本発明のプロセスの所望の結果に過度に悪影響を及ぼさない1~30個の炭素原子を含有する任意の好適な置換基で置換され得る。アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、及びシクロヘキシル置換基などの対応する炭化水素ラジカルに加えて、該ラジカル上に存在し得る置換基としては、例えば、-C(O)R15などのアシルラジカル、-OC(O)R15などのアシルオキシラジカル;--CON(R15及び-N(R15)COR15などのアミドラジカル;-SO15などのスルホニルラジカル;-OR15などのアルコキシラジカル;-SOR15などのスルフィニルラジカル;-P(O)(R15などのホスホニルラジカル;並びにハロ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシラジカルなどが挙げられ得、各R15ラジカルは、独立して、1~18個の炭素原子(例えば、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、及びシクロヘキシルラジカル)を有する同じ又は異なる一価炭化水素ラジカルを表すが、但し、-C(O)N(R15及び-N(R15)COR15などのアミド置換基において、Nに結合した各R15はまた、水素であり得る。特定の所与のモノホスファイトを構成する置換又は非置換炭化水素ラジカルのうちのいずれかは、同じであり得るか又は異なり得る。
【0068】
より具体的には、例示的な置換基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、neo-ペンチル、n-ヘキシル、アミル、sec-アミル、t-アミル、イソオクチル、デシル、オクタデシルなどの一級、二級、及び三級のアルキルラジカル;フェニル、ナフチルなどのアリールラジカル;ベンジル、フェニルエチル、トリフェニルメチルなどのアラルキルラジカル;トリル、キシリルなどのアルカリールラジカル;シクロペンチル、シクロヘキシル、1-メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキシルエチルなどの脂環式ラジカル;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t-ブトキシ、-OCHCHOCH、-O(CHCHOCH、-O(CHCHOCHなどのアルコキシラジカル;フェノキシなどのアリールオキシラジカル;並びに-NH、-N(CH、-NHCH、-NH(C)などのアミノラジカル;-C(O)CH、-C(O)C、-C(O)Cなどのアシルラジカル;-C(O)OCHなどのカルボニルオキシラジカル;-O(CO)Cなどのオキシカルボニルラジカル;-CONH、-CON(CH、-NHC(O)CHなどのアミドラジカル;-S(O)などのスルホニルラジカル;-S(O)CHなどのスルフィニルラジカル;-SCH、-SC、-SCなどのスルフィジルラジカル;-P(O)(C、-P(O)(CH、-P(O)(C、-P(O)(C、-P(O)(C、-P(O)(C13、-P(O)CH(C)、-P(O)(H)(C)などのホスホニルラジカルが挙げられる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態による式(I)によるモノホスパイト(monophospite)配位子のいくつかの典型的な例としては、以下が挙げられる。
【0070】
【化6】
【0071】
【化7】
【0072】
【化8】
【0073】
上記のように、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒は、本明細書の教示に基づいて当該技術分野において既知の方法によって形成され得る。金属-モノホスファイト配位子錯体触媒は、均一又は不均一形態であり得る。例えば、事前に形成されたロジウムヒドリド-カルボニル-モノホスファイト配位子触媒が調製され、ヒドロホルミル化プロセスの反応混合物に導入され得る。より好ましくは、ロジウム-モノホスファイト配位子錯体触媒は、その場での活性触媒の形成のために反応媒体に導入され得るロジウム触媒前駆体に由来し得る。例えば、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、Rh、Rh(CO)12、Rh(CO)16、Rh(NOなどのロジウム触媒前駆体は、その場での活性触媒の形成のために、式(I)によるモノホスファイト配位子とともに反応混合物に導入され得る。いくつかの実施形態では、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートをロジウム前駆体として用い、溶媒の存在下で式(I)によるモノホスファイト配位子と反応させて触媒ロジウム-モノホスファイト配位子錯体前駆体を形成し得、それを、その場で活性触媒の形成のために、過剰な(遊離)モノホスファイト配位子とともに反応器に導入する。いずれの場合でも、一酸化炭素、水素、及び式(I)によるモノホスファイト配位子は全て、金属と錯化することが可能な配位子であり、ヒドロホルミル化反応に使用される条件下で、反応混合物中に活性金属-モノホスファイト配位子触媒錯体が存在するという本発明の目的には十分である。カルボニル及びモノホスファイト配位子は、最初のロジウムとまだ錯化していない場合、ヒドロホルミル化プロセスの前又はヒドロホルミル化プロセス中にその場でロジウムと錯化され得る。
【0074】
例示として、遷移金属錯体ヒドロホルミル化触媒前駆体組成物は、可溶化ロジウムカルボニルモノホスファイト配位子錯体前駆体、溶媒、及び任意選択的に遊離モノホスファイト配位子から本質的になり、モノホスファイト配位子は、式(I)による化合物である。触媒前駆体組成物は、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、有機溶媒、及び式(I)によるモノホスファイト配位子の溶液を形成することによって調製され得る。モノホスファイト配位子は、一酸化炭素ガスの発生によって証明されるように、室温でロジウムアセチルアセトネート錯体前駆体のカルボニル配位子のうちの1つと容易に置き換わる。この置換反応は、必要に応じて、溶液を加熱することにより容易になり得る。ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート錯体前駆体及びロジウムモノホスファイト配位子錯体前駆体の両方が可溶性である任意の好適な有機溶媒が用いられ得る。そのような触媒前駆体組成物中に存在するロジウム錯体触媒前駆体、有機溶媒、及びモノホスファイト配位子、並びにそれらの好ましい実施形態の量は、本発明のヒドロホルミル化プロセスで用いることが可能なそれらの量に対応し得る。経験により、ヒドロホルミル化プロセスが開始された後、前駆体触媒のアセチルアセトネート配位子が異なる配位子、例えば、水素、一酸化炭素、又はモノホスファイト配位子で置き換えられて、上に説明されるような活性錯体触媒を形成することが示されている。ヒドロホルミル化条件下で前駆体触媒から遊離されるアセチルアセトンは、生成物アルデヒドとともに反応媒体から除去され、したがって、ヒドロホルミル化プロセスに決して有害ではない。そのような好ましいロジウム錯体触媒前駆体組成物の使用は、ロジウム前駆体及びヒドロホルミル化の開始を取り扱うための単純で経済的かつ効率的な方法を提供する。
【0075】
したがって、本発明のプロセスで使用される金属-有機ホスファイト配位子錯体触媒は、一酸化炭素及び式(I)によるモノホスファイト配位子と錯化した金属(例えば、ロジウム)から本質的になり、該配位子は、キレート化及び/又は非キレート化様式で金属に結合(錯化)されている。更に、「から本質的になる」という用語は、本明細書で使用される場合、一酸化炭素及びモノホスファイト配位子に加えて、金属と錯化した水素を除外せず、むしろそれを含む。更に、そのような用語は、金属と錯化する可能性もある他の有機配位子及び/又はアニオンの可能性を排除するものではない。触媒を過度に被毒するか又は過度に失活させる量の材料は望ましくなく、したがって、触媒は、絶対的に必要ではない可能性があるが、金属結合ハロゲンなど(例えば、塩素など)の汚染物質を含まないことが最も望ましい。活性金属-モノホスファイト配位子錯体触媒の水素及び/又はカルボニル配位子は、例えば、配位子が前駆体触媒に結合した結果として、並びに/又はヒドロホルミル化プロセスにおいて用いられる水素及び一酸化炭素ガスに起因してその場で形成された結果として存在し得る。
【0076】
上記のように、本発明の実施形態によるヒドロホルミル化プロセスは、本明細書に記載されるような金属-モノホスファイト配位子錯体触媒の使用を伴う。そのような配位子の混合物も、必要に応じて用いられ得る。本発明に包含される所与のヒドロホルミル化プロセスの反応流体中に存在する金属-モノホスファイト配位子錯体触媒の量は、用いられることが望ましい所与の金属濃度を提供するのに必要な最小量であり、関与する特定のヒドロホルミル化プロセスを触媒するのに必要な金属の少なくとも触媒量に基準を提供する最小量であればよい。一般に、反応媒体中の遊離金属として計算して5ppmw~1000ppmwの範囲の触媒金属(例えば、ロジウム)濃度は、ほとんどのプロセスに十分であるはずであるが、一般に、10~500ppmwの金属、及びより好ましくは25~350ppmwの金属を用いることが好ましい。触媒金属の濃度を測定するための分析技法は、当業者に周知であり、それには、原子吸光(atomic absorption、AA)、誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma、ICP)、及び蛍光X線(X-ray fluorescence、XRF)が含まれる。AAが典型的には好ましい。
【0077】
金属-モノホスファイト配位子錯体触媒に加えて、式(I)による遊離モノホスファイト配位子(すなわち、金属と錯化していない配位子)も、反応媒体中に存在し得る。遊離モノホスファイト配位子は、本明細書で用いることが可能であると上で考察された、式(I)による上で定義されたモノホスファイト配位子のうちのいずれかに対応し得る。遊離モノホスファイト配位子は、用いられる金属-モノホスファイト配位子錯体触媒のモノホスファイト配位子と同じであることが好ましい。しかしながら、そのような配位子は、いかなる所与のプロセスにおいても同じである必要はない。ヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中の金属1モル当たり0.1モル以下~200モル以上の式(I)の遊離モノホスファイト配位子を伴い得る。好ましくは、ヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中に存在する金属1モル当たり1~100モルの式(I)の遊離モノホスファイト配位子の存在下で実行される。該モノホスファイト配位子の量は、存在する金属に結合(錯化)しているモノホスファイト配位子の量と、存在する遊離(非錯化)モノホスファイト配位子の量との両方の合計である。必要に応じて、任意の時点でかつ任意の好適な様式で、式(I)による補給の又は追加のモノホスファイト配位子を、ヒドロホルミル化プロセスの反応媒体に供給して、例えば反応媒体中の所定のレベルの遊離配位子を維持することができる。
【0078】
有機ホスファイト配位子の加水分解及び金属-有機ホスファイト配位子錯体の失活を防止及び/又は軽減するための任意選択の水性緩衝液の使用は、米国特許第5,741,942号及び米国特許第5,741,944号に開示されており、これらは一般に弱酸の1族又は2族金属(Na、K、Caなど)塩である水性緩衝液を用いる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態は、式(I)によるモノホスファイト配位子を利用するヒドロホルミル化プロセスに関する。
【0080】
一実施形態では、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒、任意選択的に遊離モノホスファイト配位子、1つ以上のアルデヒド生成物、及び重質物を含むヒドロホルミル化反応生成物流体から1つ以上の重質物を分離するためのプロセスは、
(a)反応ゾーンにおいて、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒及び任意選択的に遊離モノホスファイト配位子でC~C40モノオレフィンをヒドロホルミル化して、ヒドロホルミル化反応生成物流体を提供することであって、モノホスファイト配位子が、請求項1に記載の化合物を含む、提供することと、
(b)ヒドロホルミル化反応生成物流体の一部分を反応ゾーンから除去し、その部分を生成物/触媒分離ゾーンに移送することであって、アルデヒド生成物の一部分が塔頂流として気化され、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒を含む不揮発化触媒流体が塔底流として回収される、移送することと、
(c)工程(b)で得られた塔底流の少なくとも一部分を非極性溶媒及び極性溶媒の存在下で混合して、相分離によって、2つの相:極性溶媒、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒、及び任意選択的に遊離モノホスファイト配位子を含む第1の相と、非極性溶媒、重質物の一部分、及び残存するアルデヒド生成物の少なくとも一部分を含む第2の相とを得ることと、
(d)該金属-モノホスファイト配位子錯体触媒と任意の遊離モノフォサイト配位子の少なくとも一部分とを第1の相から回収し、回収された金属-モノホスファイト配位子錯体触媒と任意の回収された遊離モノホスファイト配位子とを反応ゾーンに戻すことと、を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、アルデヒドを生成するためのヒドロホルミル化プロセスは、6~40個の炭素原子を含有するアルファ-オレフィン、6~20個の炭素原子を含有する内部オレフィン、及びそのようなアルファオレフィンと内部オレフィンとの混合物からなる群から選択されるオレフィン性不飽和化合物を、一酸化炭素及び少なくとも1つのモノホスファイト配位子と錯化したロジウムから本質的になるロジウム-モノホスファイト錯体触媒の存在下で、反応ゾーンにおいて一酸化炭素及び水素と反応させることを含み、少なくとも1つのモノホスファイト配位子は、式(I)による化合物である。
【0082】
ヒドロホルミル化生成物は、不斉、非不斉、又はそれらの組み合わせであり得、好ましい生成物は、非不斉である。プロセスは、任意のバッチ式、連続式、又は半連続式で行われ得、所望の触媒液及び/又はガス再循環操作を伴い得る。
【0083】
再循環手順は、一般に、触媒及びアルデヒド生成物を含有する液体反応媒体(反応生成物流体)の一部分をヒドロホルミル化反応器、すなわち反応ゾーンから連続的又は断続的に取り出すことと、米国特許第5,430,194号及び米国特許第5,681,473号に開示されているような複合膜を使用して、又は必要に応じて、常圧、減圧、若しくは高圧下の1つ以上の段階で別個の蒸留ゾーンにおいてアルデヒド生成物を蒸留するより従来型で好ましい方法、すなわち気化分離により、そこからアルデヒド生成物を回収することとを伴い、非揮発化金属触媒含有残留物は、例えば米国特許第5,288,918号に開示されるように反応ゾーンに再循環される。一実施形態では、気化器及び膜分離プロセスを直列又は並列で使用して、生成物/触媒分離を行うことができる。揮発化材料の縮合、並びに例えば更なる蒸留によるその分離及び更なる回収は、任意の従来の様式で実行することができ、粗アルデヒド生成物は、必要に応じて、更なる精製及び異性体分離のために通過させることができ、任意の回収された反応物(例えば、オレフィン系出発材料及びシンガス)は、任意の所望の様式でヒドロホルミル化ゾーン(反応器)に再循環させることができる。そのような膜分離の回収された金属触媒含有抽残液又はそのような気化分離の回収された非揮発化金属触媒含有残留物は、所望の任意の従来の様式でヒドロホルミル化ゾーン(反応器)に再循環させることができる。本開示の目的のために、気化器及び/又は膜分離プロセスを包含する生成物/触媒分離ゾーンは、気化がより一般的な方法であるため、「気化ゾーン」とも称され得る。ヒドロホルミル化プロセスからの生成物の大部分は、この生成物/触媒分離ゾーンの使用によって回収される。反応器ベントコンデンサからなどの他の生成物回収及び下流の重質物回収又はクラッキング操作は、別々に考慮される。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書で用いることが可能なヒドロホルミル化反応生成物流体は、少なくともいくらかの量の5つの異なる主要な成分又は構成成分、すなわちアルデヒド生成物、金属-モノホスファイト配位子(式(I)による)錯体触媒、式(I)による遊離モノホスファイト配位子、該触媒及び該遊離配位子のための有機可溶化剤、並びに重質物(有機可溶化剤の大部分(又は全て)に寄与し得るか、最終的それを含み得る)を含有する、任意の対応するヒドロホルミル化プロセスから誘導される任意の流体を含み、該成分は、ヒドロホルミル化反応生成物流体が誘導され得るヒドロホルミル化プロセスによって用いられ、かつ/又は生成されたものに対応する。本明細書で用いることが可能なヒドロホルミル化反応生成物流体は、ヒドロホルミル化プロセスにおいて故意に用いられているか、又は該プロセスの間にその場で形成されたものなどの少量の追加の成分を含有する可能性があり、通常は含有することになる。また存在し得るそのような成分の例としては、未反応オレフィン出発材料、一酸化炭素及び水素ガス、並びにその場で形成されるタイプの生成物、例えば、飽和炭化水素及び/又はオレフィン出発材料に対応する未反応異性化オレフィン、配位子分解化合物、並びに高沸点液体アルデヒド縮合副生物だけでなく、用いられる場合、他の不活性共溶媒タイプの材料又は炭化水素添加剤が挙げられる。
【0085】
本発明の実施形態により包含されるヒドロホルミル化プロセスの反応条件は、光学活性及び/又は非光学活性アルデヒドを生成するためにこれまで用いられてきた任意の好適なヒドロホルミル化条件を含み得る。例えば、ヒドロホルミル化プロセスの水素、一酸化炭素、及びオレフィン出発化合物の全ガス圧は、1~69,000kPaの範囲であり得る。しかしながら、一般に、プロセスは、水素、一酸化炭素、及びオレフィン出発化合物の全ガス圧14,000kPa未満、及びより好ましくは3,400kPa未満で操作されることが好ましい。最小全圧は、所望の反応速度を得るのに必要な反応物の量によって主に制限される。より具体的には、本発明のヒドロホルミル化プロセスの一酸化炭素分圧は、好ましくは1~6,900kPa、及びより好ましくは21~5,500kPaであり、水素分圧は、好ましくは34~3,400kPa、及びより好ましくは69~2,100kPaである。
【0086】
一般に、ヒドロホルミル化プロセスは、任意の操作可能な反応温度で行われ得る。有利には、ヒドロホルミル化プロセスは、-25℃~200℃の反応温度で行われ得る。一般に、50℃~120℃のヒドロホルミル化反応温度は、全てのタイプのオレフィン系出発材料に対して好ましい。非光学活性アルデヒド生成物が所望される場合、アキラルタイプのオレフィン出発材料及び有機リン配位子が用いられ、光学活性アルデヒド生成物が所望される場合、プロキラル又はキラルタイプのオレフィン出発材料及び有機リン配位子が用いられることを理解されたい。用いられるヒドロホルミル化反応条件は、所望のアルデヒド生成物のタイプによって左右される。
【0087】
本発明のヒドロホルミル化プロセスは、例えば、固定床反応器、流動床反応器、管状反応器、ベンチュリ反応器、気泡塔反応器、連続撹拌タンク反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)、又はスラリー反応器などの1つ以上の好適な反応器を使用して実行され得る。反応器の最適なサイズ及び形状は、使用される反応器のタイプに依存する。本発明で用いられる少なくとも1つの反応ゾーンは、単一の容器であり得るか、又は2つ以上の別個の容器を備え得る。本発明で用いられる少なくとも1つの液-液分離ゾーンは、単一の容器であり得るか、又は2つ以上の別個の容器を備え得る。米国特許第5,741,944号に教示されるような本発明のいくつかの実施形態において用いられ得る任意選択の少なくとも1つの緩衝液処理ゾーンは、単一の容器であり得るか、又は2つ以上の別個の容器を備え得る。本明細書で用いられる反応ゾーン、生成物/触媒分離ゾーン、及び液-液分離ゾーンは、同じ容器内又は異なる容器内に存在し得る。例えば、反応蒸留、反応膜分離などの反応分離技法は、反応ゾーンで発生し得る。
【0088】
本発明のヒドロホルミル化プロセスは、必要に応じて未消費の出発材料を再循環させながら、バッチ式又は連続式で行われ得る。反応は、単一の反応ゾーン若しくは複数の反応ゾーンで、直列若しくは並列に行われ得るか、又は細長い管状ゾーン若しくは一連のそのようなゾーンでバッチ式又は連続的に行われ得る。用いられる構成材料は、反応中、出発材料に対して実質的に不活性であるべきであり、装置の製作は、反応温度及び圧力に耐えることができるべきである。反応中、バッチ式又は連続的に反応ゾーンへと導入される出発材料又は成分を導入及び/又はその量を調整する手段は、プロセスにおいて、特に、出発材料の所望のモル比を維持するのに便宜的に利用され得る。反応工程は、出発材料の一方を他方に漸増的に添加することにより行われてもよい。また、反応工程は、出発材料の同時添加により組み合わせてもよい。出発材料は、各々又は全ての直列の反応ゾーンに添加され得る。完全な転化が所望されないか、又は得ることができない場合、出発材料は、例えば、蒸留により生成物から分離され得、次いで、出発材料は、反応ゾーンに再循環して戻され得る。そのようなタイプの再循環手順は、当該技術分野において周知であり、例えば米国特許第4,148,830号に開示されているような、所望のアルデヒド反応生成物から分離された金属-有機リン錯体触媒流体の液体再循環、又は例えば米国特許第4,247,486号に開示されているようなガス再循環手順、並びに必要に応じて液体及びガスの再循環手順の両方の組み合わせを伴い得る。本発明の特に望ましいヒドロホルミル化プロセスは、連続液体触媒再循環プロセスを含む。好適な液体触媒再循環手順は、例えば、米国特許第4,668,651号、同第4,774,361号、同第5,102,505号、及び同第5,110,990号に開示されている。
【0089】
そのようなヒドロホルミル化プロセスは、ガラスライニングされたステンレス鋼又は同様のタイプの反応装置のいずれかで行われ得る。過度の温度変動を制御するために、又は可能性のあるあらゆる「暴走」反応温度を防止するために、反応ゾーンには1つ以上の内部及び/又は外部熱交換器を取り付けてもよい。
【0090】
本発明のヒドロホルミル化プロセスは、1つ以上の工程、ゾーン、又は段階で行われ得る。反応工程、ゾーン、又は段階の正確な数は、資本コストと達成される高い触媒選択性、活性、寿命、及び操作性の容易さとの間の最良の妥協点だけでなく、当該出発材料の固有の反応性、並びに反応条件に対する出発材料及び所望の反応生成物の安定性により左右される。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明のヒドロホルミル化プロセスは、例えば米国特許第5,728,893号に記載されているような、多段階反応器において実行され得る。そのような多段階反応器は、容器1つ当たり2つ以上の理論的反応段階を作り出す内部の物理的障壁を用いて設計され得る。実際には、それは、単一の連続撹拌タンク反応容器内に多数の反応器を有するようなものである。単一の容器内の複数の反応段階は、反応容器の体積を使用する費用効果の高い方式であり得る。これにより、同じ結果を達成するのに必要とされるであろう容器の数が大幅に減少し得る。容器の数が減少すると、別個の容器及び撹拌器に必要とされる全体的な資本及び保守上の懸念が低減する。
【0092】
上記のように、一般に、本発明のヒドロホルミル化プロセスを連続式で実行することが好ましい。一般に、連続ヒドロホルミル化プロセスは、当該技術分野において周知であり、(a)溶媒、金属-有機リン配位子錯体触媒、及び遊離有機リン配位子を含む液体均一反応混合物中で、オレフィン系出発材料を一酸化炭素及び水素でヒドロホルミル化することと、(b)オレフィン系出発材料のヒドロホルミル化に適した反応温度及び圧力条件を維持することと、(c)それらの反応物が使い切られる際に、補給量のオレフィン系出発材料、一酸化炭素、及び水素を反応媒体に供給することと、(d)所望のアルデヒドヒドロホルミル化生成物を所望の任意の様式で回収することと、を伴い得る。本発明の実施形態によれば、有機リン配位子は、式(I)によるモノホスファイト配位子である。連続プロセスは、単一パスモードで実行され得、すなわち、未反応オレフィン系出発材料を含む蒸気混合物及び気化したアルデヒド生成物は、液体反応混合物から除去され、液体反応混合物からアルデヒド生成物が回収され、補給オレフィン系出発材料、一酸化炭素、及び水素が、未反応オレフィン系出発材料を再循環させずに次の単一パススルーのために液体反応媒体に供給される。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態では、アルデヒド生成物混合物は、アルデヒド混合物が生成物/触媒分離ゾーンにおいて生成されるヒドロホルミル化反応生成物流体の他の構成成分から分離される。好適な生成物/触媒分離方法としては、例えば、蒸留、気化、ワイプフィルム蒸発、流下フィルム蒸発、膜など、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0094】
上記のように、本発明のプロセスの終わりに(又はその間に)、所望のアルデヒドが、本発明のプロセスで使用されるヒドロホルミル化反応生成物流体から回収され得る。例えば、米国特許第4,148,830号及び同第4,247,486号に開示されている回収技法を使用することができる。例えば、連続液体触媒再循環プロセスでは、反応ゾーンから除去されたヒドロホルミル化反応生成物流体(アルデヒド生成物、触媒などを含有する)、すなわち、反応流体の一部分は、生成物/触媒分離ゾーン(例えば、気化器/分離器)に通過し得、所望のアルデヒド生成物は、1つ以上の段階で、常圧、減圧、又は高圧下で反応生成物流体から蒸留を介して分離され、縮合され、生成物受容器に収集され得、必要に応じて更に精製され得る。次いで、残存する非揮発化触媒を含有する液体反応混合物(塔底流)は、任意の他の揮発性材料(例えば、未反応オレフィン)を、例えば、任意の従来の様式での蒸留によって縮合アルデヒド生成物から分離した後に、塔底流中に溶解された任意の水素及び一酸化炭素とともに、必要に応じて反応器に再循環され得る。一般に、モノホスファイト配位子及び反応生成物の可能性のある分解を回避するために、減圧下及び低温で、触媒含有反応混合物から所望のアルデヒドを分離することが好ましい。アルファ-モノ-オレフィン反応物も用いられる場合、そのアルデヒド誘導体も上記方法により分離され得る。
【0095】
より具体的には、反応流体を含有する金属-有機リン錯体触媒からの所望のアルデヒド生成物の蒸留及び分離は、所望の任意の好適な温度で起こり得る。一般に、そのような蒸留は、比較的低い温度、例えば、150℃未満、及びより好ましくは50℃~140℃の範囲の温度で行われることが好ましい。そのようなアルデヒド蒸留は、例えば、低沸点アルデヒド(例えば、C)を伴う場合、ヒドロホルミル化中に用いられる全ガス圧よりも実質的に低い全ガス圧の減圧下、又は高沸点アルデヒド(例えば、C以上)を伴う場合、真空下で行われることも一般に好ましい。例えば、一般的な慣行は、ヒドロホルミル化反応器から除去された反応生成物流体を減圧に供して、反応生成物流体中に溶解された未反応ガスのかなりの部分を揮発させ、次いで、反応生成物流体を生成物/触媒分離ゾーン、例えば気化器/分離器に提供し、そこで所望のアルデヒド生成物が蒸留されることである。一般に、真空圧から最大で340kPaの全ガス圧の範囲の蒸留圧がほとんどの目的に十分であるはずである。
【0096】
ホスファイト系触媒によるヒドロホルミル化プロセスのための最近の改善は、国際公開第1997007086号、国際公開第2010003073号、国際公開第2016089602号、及び国際公開第2020240194号に開示されているようなストリッピングガス気化器を使用する。これらのプロセスは、触媒損失を低減しながら、気化プロセス中に同様に除去される重質物の量を増加させ得る。しかしながら、本発明の実施形態における所望のアルデヒド生成物は、Cアルデヒドを超えるため、そのようなストリップガス気化器が重質物をその形成速度で除去する能力は制限され得る。
【0097】
上述の生成物/触媒分離プロセスとは別のプロセスにおいて、本発明のいくつかの実施形態では、触媒含有残留物(例えば、気化器からの塔底流)又は膜残余物の一部分は、触媒及び触媒構成成分が重質物の少なくとも一部から分離される相分離プロセスに処理され得る。相分離を誘導することによって、材料の分配を得ることができ、ここで触媒及び重質物の分配係数は、触媒損失を最小限に抑えて重質物の好適な除去を行うように十分異なる。
【0098】
ヒドロホルミル化流体のための相分離プロセスは、既知であり、一般に、好ましくは不活性雰囲気下で、ガラスライニングされたステンレス鋼又は同様のタイプの装置などの好適な装置で実施される。本発明のいくつかの実施形態の抽出及び相分離工程(液-液分離)は、1つ以上の段階で行われ得る。抽出系は、好ましくは、生成物/触媒分離ゾーンからの残留物の入口点の上及び下の両方に、2つ以上の理論抽出段階を有する。段階の正確な数は、資本コスト、装置設置面積、並びに高い抽出効率及び操作の容易さに対する要望の間の最良の妥協によって左右される。抽出プロセスは、連続的に又はバッチモードで行われ得る。連続的に行われる場合、プロセスは、並流、向流、又は分別向流であり得る。
【0099】
アルデヒド生成物流が残留触媒溶液(生成物/触媒分離ゾーンからの塔底流)から分離されると、塔底流を非極性溶媒及び極性溶媒の存在下で相分離して、2つの相:極性溶媒、金属-モノホスファイト配位子錯体触媒、任意選択的に遊離モノホスファイト配位子、及びアルデヒド生成物の一部分を含む第1の相と、非極性溶媒、アルデヒド生成物の一部分、及び重質物の一部分を含む第2の相とを提供し得る。極性及び非極性溶媒の選択は、触媒及び触媒構成成分の極性並びに重質物の極性に依存する。一般に、高分子量の単官能性アルデヒドでは、得られる重質物は非極性である傾向があり、この場合、配位子及び触媒はより高い極性を有することが好ましい。配位子及びC9直鎖アルデヒドからの重質三量体の極性(溶解度パラメータとして記載される)は、米国特許第5,932,772号に記載されるようなグループ寄与アプローチ理論を使用することによって予測され得る。これら2つの化合物の効率的な分離を行うために、少なくとも0.5、好ましくは1、及び更により好ましくは1.5の計算された極性の差が必要であると考えられる。このアプローチを使用して、以下の計算された極性を決定することができる。
【0100】
【表3】
【0101】
ここで分かるように、モデルC9重質ノナナール三量体は、対照配位子(トリス(2,4-ジtertブチルフェニル)ホスファイトと事実上同じ溶解度パラメータを有し、したがって、相分離プロセスは、これらの重質物を対応する配位子又は対応するロジウム触媒から分離するのに有効ではないだろう。しかしながら、本発明の配位子A~J(式(I)による化合物(モノホスファイト配位子))は、その溶解度パラメータと重質副生成物の溶解度パラメータとの間に1.0を十分に超える差を呈するため、良好な相分離が予想される。
【0102】
相分離を使用して重質物を除去するのに好適な極性及び非極性溶媒を決定するための1つのアプローチは、触媒及び触媒構成成分(例えば、モノホスファイト配位子)損失を最小限に抑えながら、重質物の望ましい分配係数を提供する溶媒を選択することである。例えば、極性溶媒及び非極性溶媒を選択することができ、次いで、当業者に既知の技法を使用して、ガスクロマトグラフィーによって各相中の重質物の濃度を測定することができる。抽出後の重質物の分配係数は、以下のように定義され得る。Kp1
【0103】
【数1】
【0104】
いくつかの実施形態では、極性溶媒及び非極性溶媒は、0.5以下の分配係数(Kp1)を提供するように選択される。いくつかの実施形態では、極性溶媒及び非極性溶媒は、0.2以下の分配係数(Kp1)を提供するように選択される。いくつかの実施形態では、極性溶媒及び非極性溶媒は、0.1以下の分配係数(Kp1)を提供するように選択される。低いKp1値は、重質物を非極性相中に優先的に分布させる。
【0105】
上記で示唆したように、相分離のための極性及び非極性溶媒を選択する際の別の重要な因子は、ロジウムが極性相に(重質物から離れて)相分離することである。言い換えれば、本発明のいくつかの実施形態は、ロジウムを損失せずに重質物を除去することを目的とする。したがって、重質物の分配係数(Kp1)は、極性及び非極性溶媒の所与の組み合わせに対して低くあるべきであるが、ロジウムの分配係数(Kp2、以下に定義される)は、ロジウムを重質物から有効に分離するために、同じ組み合わせに対して可能な限り大きくあるべきである。ロジウムの分配係数(Kp2)を計算する際、極性相及び非極性相中のロジウムの濃度は、原子吸光、誘導結合プラズマ、及び当業者に既知の他の技法によって測定されるが、同じ測定技法を使用して両方の相中の濃度を測定するべきである。ロジウムの分配係数(Kp2)は、以下のように定義される。
【0106】
【数2】
【0107】
p2が高い場合、ロジウムは極性相中に保持されており、重質物除去流(非極性相)とともに失われずに、再循環されて反応ゾーンに戻される。相が等体積である場合、Kp2は、少なくとも2.5、好ましくは5超、及び最も好ましくは10超であるべきである。
【0108】
p2は、ロジウム-配位子錯体が配位子自体と同様の溶解度挙動を呈するため、モノホスファイト配位子の分配係数によって推定することができる。モノホスファイト配位子の濃度は、一般に、ロジウムの濃度よりもはるかに容易に測定される。式(I)によるモノホスファイトの分配係数(Kp2’)は、以下のように定義される。
【0109】
【数3】
【0110】
p2’が高い場合、ロジウムは極性相中に保持されており、重質物除去流(非極性相)とともに失われずに、再循環されて反応ゾーンに戻される。相が等体積である場合、Kp2’は、少なくとも2.5、好ましくは5超、及び最も好ましくは10超であるべきである。
【0111】
効率因子(efficiency factor、Ef)はまた、以下に示すように、ロジウムの分配係数(Kp2)を重質物の分配係数(Kp1)で割ることによって計算することができる。
【0112】
【数4】
【0113】
本発明のいくつかの実施形態では、極性及び非極性溶媒は、効率因子が最大化されるように選択されるが、これは、重質物の大部分が非極性相に分離し、配位子/ロジウムの大部分が極性相に分離したことを示すからである。いくつかの実施形態では、極性及び非極性溶媒は、25以上の効率因子(Ef)を提供するように選択される。いくつかの実施形態では、極性及び非極性溶媒は、30以上の効率因子(Ef)を提供するように選択される。いくつかの実施形態では、極性及び非極性溶媒は、100以上の効率因子(Ef)を提供するように選択される。
【0114】
図2及び図3は、本発明のプロセスのいくつかの実施形態を実装するための系の概略図である。
【0115】
図2において、シンガス(1)及びオレフィン(2)は、1つ以上のヒドロホルミル化反応ゾーン(3)に添加される。ヒドロホルミル化反応生成物流体の一部分は、ライン(4)を介して1つ以上の生成物/触媒分離ゾーン(例えば、気化器)(5)に取り出され、ここで、アルデヒド生成物の大部分を含む塔頂流(6)が除去され、触媒及び重質物を含む非揮発化流(9)が回収される。流れ(9)の一部分は、ライン(10)を介して反応ゾーン(3)に送り戻され、一部分は、ライン(10a)を介して液-液分離ゾーン(8)に送られる。極性溶媒(ライン(11)からの新鮮なもの、又は任意選択的にライン(14)を介して再循環された溶媒を含むもの)及び非極性溶媒(ライン(12)からの新鮮なもの、又は任意選択的にライン(17)を介して再循環された溶媒を含むもの)が添加され、相分離が発生する。重質物(15)を含む上部(非極性)層は除去され、塔底流(10b)は回収され、反応ゾーン(3)又は生成物/触媒分離ゾーン(5)に戻される。流れ(15)は、任意選択的に蒸留系(18)に送られて、非極性溶媒及び所望のアルデヒド生成物を回収し、再循環させる。同様に、流れ(6)は任意選択の蒸留系(7)に送られて、極性溶媒及び未反応オレフィンを回収し、ライン(14)を介して再循環させて戻され得る。両方の蒸留釜(7)及び(18)は、供給流の組成物及び蒸留条件に依存して、極性及び非極性溶媒の両方並びにいくらかの所望のアルデヒドを回収し得るが、全てが回収され、ユニット(8)において再循環される。所望のアルデヒド生成物は、ライン(13)(ユニット(7)が使用される場合)を介して、又は更なる処理のために単にライン(6)を介して除去される。望ましくない重質物は、ライン(16)(ユニット(18)が使用される場合)又は単にライン(15)を介して除去される。流れ(15)中には最小限の触媒しか存在しないため、(18)における蒸留は、触媒損失について懸念することなく、できるだけ多くの溶媒及び所望のアルデヒド生成物を有効に回収するために、より過酷であり得る。流れ(14)は、ユニット(8)への再循環の前に蒸留され得るが、典型的には、この流れが未反応オレフィンを含有する可能性があり、ひいてはいくらかのオレフィン再循環をもたらすため、生成されたままで使用される。パージ(図示せず)は、必要に応じて炭化水素又は他の不活性物質の蓄積並びにシンガス及び不活性ガスのパージに対処するように(14)上に存在し得る。
【0116】
図3は、図2の系と同様の系を示し、ここで、液-液分離ゾーン(8)からの塔底流の一部分、好ましくは大部分は、蒸留系(19)に送られて、極性溶媒及び任意選択的に任意の残存する非極性溶媒を(ライン10dを介して)回収した後、触媒流をライン(10c)を介して反応ゾーン又は生成物/触媒分離ゾーンに送り戻す。この任意選択のプロセスは、反応ゾーンにおける不活性物質の濃度を低減し得、極性溶媒が副反応(例えば、水又はアルコール)に寄与し得る場合に有用である。
【0117】
加えて、いくつかの溶媒の組み合わせは、気化及び蒸留プロセスを向上させる共沸混合物を形成し得る。例えば、生成物/触媒分離ゾーン(例えば、気化器)(5)又は蒸留釜(7)、(18)、及び/又は(19)における少量の水は、アセトニトリル及びシクロヘキサンを共沸させることができ、これは、それらの回収及び再循環を向上させる。
【0118】
本発明のヒドロホルミル化プロセスを使用して生成され得る例示的な非光学活性アルデヒド生成物としては、例えば、2-メチル1-ヘキサナール、オクタナール、2-メチル1-ヘプタナール、ノナナール、2-メチル-1-オクタナール、2-エチル1-ヘプタナール、3-プロピル1-ヘキサナール、デカナール、アジポアルデヒド、2-メチルアジポアルデヒド、3-メチルアジポアルデヒド、2-メチル-1-ノナナール、ウンデカナール、2-メチル1-デカナール、ドデカナール、2-メチル1-ウンデカナール、トリデカナール、2-メチル1-トリデカナール、2-エチル、1-ドデカナール、3-プロピル-1-ウンデカナール、ペンタデカナール、2-メチル-1-テトラデカナール、ヘキサデカナール、2-メチル-1-ペンタデカナール、ヘプタデカナール、2-メチル-1-ヘキサデカナール、オクタデカナール、2-メチル-1-ヘプタデカナール、ノノデカナール、2-メチル-1-オクタデカナール、2-エチル1-ヘプタデカナール、3-プロピル-1-ヘキサデカナール、2-メチル-1-ノナデカナール、ヘンエイコサナール、2-メチル-1-エイコサナール、トリコサナール、2-メチル-1-ドコサナール、テトラコサナール、2-メチル-1-トリコサナール、ペンタコサナール、2-メチル-1-テトラコサナール、2-エチル1-トリコサナール、3-プロピル-1-ドコサナール、ヘプタコサナール、2-メチル-1-オクタコサナール、ノナコサナール、2-メチル-1-オクタコサナール、ヘントリアコンタナール、2-メチル-1-トリアコンタナールなどが挙げられる。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例においてより詳細に説明する。
【実施例
【0120】
以下の実施例における全ての部及び百分率は、別段の指示がない限り重量による。別段の指示がない限り、圧力は絶対圧力として記載される。
【0121】
連続ヒドロホルミル化プロセスのための一般手順
ヒドロホルミル化プロセスは、連続モードで操作するガラス圧力反応器で行う。反応器は、観察のためにガラスの前面を部分的に油浴に浸した3オンスの圧力瓶からなる。この系を窒素でパージした後、約20~30mLの新たに調製したロジウム触媒前駆体溶液をシリンジで反応器に充填する。触媒前駆体溶液は、約50ppmwのロジウム(ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートとして導入される)、特定の配位子、及び溶媒としてのテトラグライムを含有する。反応器を密閉した後、系を窒素でパージし、油浴を加熱して、所望のヒドロホルミル化反応温度を提供する。ヒドロホルミル化反応を150~160psig(1034~1103kPa)の全圧で、約70℃の温度で行う。窒素、シンガス、及びプロピレンを含む供給を開始する。供給ガス(H、CO、プロピレン、N)の流量をマスフローメーターで個別に制御し、組み合わせた供給ガスを、フリット付きスパージャを介して触媒前駆体溶液に分散させる。N、H、CO、プロピレン、及びアルデヒド生成物の分圧は、GC分析及びダルトンの法則による通気流を分析することによって決定する。供給ガスの未反応部分は連続的に排出されて、ブチルアルデヒド生成物のストリッピングを可能にし、実質的に一定の液体レベルを維持する。流量及び供給ガス分圧は、1時間当たり、1リットルの反応流体当たり最大4グラムモルのアルデヒドのヒドロホルミル化反応速度を得られるように設定する。出口ガスは、GCによって連続的に分析する。反応流体の試料を、原子吸光によるロジウム分析及び/又はHPLC分析のために取り出して(シリンジを介して)、触媒組成物及び供給原料純度を確認する。実際には、供給ラインから微量の空気が除去され、油浴の熱平衡に達するため、系が定常状態に達するまでに約1日かかることがたびたび観察されている。この装置はまた、反応温度、CO及びH分圧、並びにロジウム含有量の関数としてヒドロホルミル化速度を生成することを可能にする。反応速度を一定のオレフィン分圧に変換して比較を可能にする(一次オレフィン速度論を仮定する)。
【0122】
バッチヒドロホルミル化プロセスのための一般手順
オートクレーブParr反応器に、30mLの1-オクテンを添加する。反応器を室温で200psi~50psiに5回加圧/減圧することによって、反応器をCO/Hの1:1混合物で覆う。次いで、反応器を、200psiのCO/H雰囲気(1:1)の混合物下、70℃で撹拌させる。
【0123】
試験される配位子の溶液(1mL、10当量、112μmol)を添加し、続いて、アセトニトリル溶媒中のロジウムジカルボニルアセチルアセトネート(1mL、1当量、11.2μmol)の溶液を添加する。対照配位子をトルエン溶液として供給し、本発明の配位子をアセトニトリル中で供給した。
【0124】
反応器に供給されるCO/H(1:1)混合物の体積を連続的に監視することによって反応を追跡し、Brooksトータライザを使用して反応器圧力を維持する。
【0125】
実施例1:配位子Aの合成
配位子A(上記に示す)は、式(I)による本発明の化合物の例であり、以下のように合成することができる。アセトニトリル(10mL)中の2-tertブチルヒドロキノン(2g、12mmol)及び炭酸カリウム(2.484g、18mmol、1.5当量)の撹拌溶液に、クロロアセトン(1.448mL、18mmol、1.5当量)を不活性雰囲気下、室温で滴加する。一晩撹拌した後、溶液を水で希釈し、ジエチルエーテル(3×15mL)で抽出する。組み合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。濾過後、溶媒を真空下で除去して、96%収率(2.557g、11.5mmol)の1-(3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェノキシ)プロパン-2-オンを得て、これを再結晶によって精製する。配位子A前駆体の構造は、H NMR分析及び13C NMR分析によって以下のように確認される。
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ6.89(d,1H),6.60(d,1H),6.52(dd,1H),4.48(s,2H),2.29(s,3H),1.39(s,9H)。13C NMR(101MHz,CDCl)δ206.64,151.60,149.03,137.93,116.83,114.93,111.35,73.88,34.71,29.40,26.62。
【0126】
ジクロロメタン(10mL)中の1-(3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェノキシ)プロパン-2-オン(1g、4.5mmol)及びイミダゾール(1.224g、18mmol、4当量)の撹拌溶液に、三塩化リン(0.129mL、1.5mmol、0.33当量)を室温で滴加する。溶液を一晩撹拌し、濾過し、溶媒を真空下で除去して、生成物トリス(4-ヒドロキシアセトン-2-tertブチルフェニル)ホスファイトを90%収率(0.937g、1.35mmol)で得て、これを更に精製せずに使用する。配位子Aの構造は、H NMR分析、13C NMR分析、及び31P NMR分析によって以下のように確認される。
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ7.18(dd,1H),6.93(d,1H),6.53(dd,1H),4.47(s,2H),2.26(s,3H),1.32(s,9H)。13C NMR(101MHz,CDCl)δ205.70,153.39,145.90,141.85,120.12,115.30,110.84,73.49,34.94,29.83,26.57。31P NMR(162MHz,CDCl)δ129.78。
【0127】
実施例2及び対照例1
トリス-(2-tertブチル-4-(プロポキシ-2-オン)フェニル)ホスファイト(配位子A)の反応速度を、対照配位子であるトリス-(2,4-ジtertブチルフェニル)ホスファイト(対照)(周知の先行技術の配位子)に対して比較するために、ヒドロホルミル化実験を実施する(連続反応器モード)。配位子A及び対照を等しい配位子/Rh比で行った。
【0128】
【化9】
【0129】
試験条件は、以下のとおりである。
【0130】
【表4】

反応をGCによって連続的に監視して、反応速度及びノルマルアルデヒド対イソアルデヒド(すなわち、N/I比)からの生成物選択性を得る。結果を表5に提示する。
【0131】
【表5】

表5のデータは、配位子A及び対照が、定常状態条件で同様の活性並びに同様のN/I比1.2を表すことを示す。上記のデータは、本発明のモノホスファイト配位子(式(I)による化合物)が、有効かつ安定なヒドロホルミル化触媒の調製のための有効な配位子であることを確認する。
【0132】
実施例3:配位子分配のための一般手順(Kp2’)実験:
次いで、二相性アセトニトリル(極性)及びヘキサン(非極性)の混合物中での本発明のいくつかの実施形態によるモノホスファイト配位子(式(I)による化合物)の分配を以下のように研究する:窒素充填グローブボックスにおいて、アセトニトリル(5mL)、ヘキサン(5mL)、及び100mgの試験される配位子の混合物を30分間混合する。撹拌を停止し、2つの相を更30分間放置して相分離させる。1mLシリンジを使用して、0.2mLの上部相(ヘキサン相(非極性))及び底部相(アセトニトリル相(極性))をサンプリングし、テトラグライム中のシクロヘキシルジフェニルホスフィン(cyclohexyldiphenyl phosphine、CHDPP、脱酸素剤)の1重量%溶液で1mLに希釈する。各相中の配位子含有量を決定するために予め較正された方法によりHPLC分析によって試料を分析し、上記の式を使用して分配係数(Kp2’)を計算する。得られた結果を表6に示す。
【0133】
【表6】

データは、配位子Aが、先行技術の配位子と比較して、極性相においてどのように有利に分配されるかを示す。
【0134】
実施例4~8及び比較例3~8:触媒損失を最小限に抑えた最適な重質物除去のためのEfの決定。
実施例3と同様の一連の分配実験を、多数のアルデヒド及びアルデヒド重質物のモデルを用いて行う。テキサノール(イソブチルアルデヒド三量体)を使用してC重質物をモデル化し、パルミチン酸イソプロピルを使用してC三量体をモデル化した。2-エチル-ヘキセナール及びオクタナールを使用して、それぞれ低極性C二量体及びC二量体をモデル化した。ノナナールは、非極性混合C/C二量体(例えば、混合アルドール縮合又は混合エーテル副生成物後のエン-アール)をモデル化する。分岐オクテンヒドロホルミル化に使用されるモノホスファイト触媒溶液の試料を真空下で濃縮してCアルデヒド生成物の大部分を除去し、次いでC三量体(「INA三量体」)を含むこの試料を試験する。各相の濃度をGCによって決定する(C三量体は、一緒に合計される多数のピークであった)。表7に示されるように、Kpが1.0以下である場合、相分離プロセスは、上記の表6からの配位子Aの分配係数(配位子AについてKp2’=21.9)を使用して、25超のEf値及びいくつかは100を十分超えるEf値によって示されるように、ロジウム損失を最小限に抑えながら最適な重質物除去をもたらす。極性であるエステル及びアルコール部分を有するC4三量体などの重質物(例えば、テキサノール)は、適切に分配されないが(Ef<10)、C又はC重質物などの低極性の高分子量重質物は、このプロセスを介して有効に除去される。表7において、「a」は上部(非極性)層を表し、「b」は底部(極性)層を表す。
【0135】
【表7】
【0136】
高級オレフィンに対する式(I)による本発明のモノホスファイト配位子の性能を試験するために、1-オクテンをバッチ反応器においてオレフィンとして使用する。この系によって生成される重質物は、上記の実施例6において試験されたイソノニルアルコール三量体と同じであろう(したがって、上記の表7に与えられた関連のKpは、以下のEf値を計算するために使用される)。結果を表8に示す。
【0137】
【表8】
【0138】
配位子Aの転化率、選択率、及び速度は、対照配位子に匹敵する。重要な次の工程は、ロジウム損失(Ef)を最小限に抑えて重質物を除去しながら、配位子Aを使用する触媒が、触媒混合物から有効に除去され得ることを実証することである。
【0139】
実施例8及び比較例8:比較例7及び実施例7からの反応器試料をロジウム含有量について測定し、次いで、1gの各反応器粗混合物(対照配位子又は配位子Aを有する1-オクテンヒドロホルミル化反応生成物流体)を4グラムのアセトニトリル及び4グラムのヘキサンと混合する。相を分離させた後、各相のロジウム含有量を測定する。結果を、INA三量体(実施例3)についての表7からのKpに基づいて以下に示す。
【0140】
【表9】
【0141】
配位子Aは、対照配位子と比較して明らかに優れたEf値を有し、明らかに、系の相分離は、ロジウムの大部分を有効に回収する一方で、触媒溶液から重質物を非常に有効に除去する。この結果はまた、Kp2’とKpとの相関を確認し、前者に基づく予測は実際の触媒試験によって検証される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】