(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】がん治療のための抗TfR1抗体MAb11-22.1複合体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20241128BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241128BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241128BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241128BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20241128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241128BHJP
A61K 31/537 20060101ALI20241128BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241128BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241128BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
A61K47/68
C12N15/13
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K49/00
A61K39/395 L
A61K31/537
A61K45/00
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534304
(86)(22)【出願日】2022-12-03
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 CN2022136411
(87)【国際公開番号】W WO2023103922
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524216439
【氏名又は名称】ノースイースト ファーマスーティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NORTHEAST PHARMACEUTICAL GROUP CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Kunminghu Street, Shenyang Economic Technological Development District Shenyang, Liaoning 110027, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ メイソン
(72)【発明者】
【氏名】マ チンホン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C085AA26
4C085BB12
4C085BB31
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC02
4C085CC31
4C085DD62
4C085DD63
4C085EE01
4C085GG06
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4C085KA36
4C085KB82
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、細胞表面上でトランスフェリン受容体1(TfR1)及びその変異体を過剰発現する細胞に関連するがん(AML、ALL、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、胃がん、神経膠芽腫、前立腺がん、尿路上皮がん(膀胱がん)、膵臓がん、食道がん、結腸直腸がん、卵巣がん、肝臓がんを含むが、それらに限定されない)の治療、予防、及び診断のための治療剤を提供する。前記薬剤は、抗TfR1モノクローナル抗体(mAb)であるMAb11-22.1の新規な軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のアミノ酸配列に基づくもので、前記抗TfR1モノクローナル抗体は、腫瘍細胞に対して高度に特異的で、ADCの形態であり、いくつかのヒトがん細胞株の増殖及びマウスモデルにおけるAML細胞株由来の異種移植腫瘍の成長を機能的に阻害できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖可変領域を含み、抗腫瘍剤と結合された、TfR1を標的とする結合剤であって、CDR1~CDR3は、それぞれ、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7と少なくとも70%同一の配列を有する、結合剤。
【請求項2】
前記軽鎖可変領域のCDR1~CDR3が、それぞれ、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7と同一の配列を有する、請求項1に記載の結合剤複合体。
【請求項3】
抗腫瘍剤と結合された、TfR1を標的とする結合剤であって、配列番号2と少なくとも70%同一の軽鎖可変領域を有する、結合剤。
【請求項4】
重鎖可変領域を含み、抗腫瘍剤と結合された、TfR1を標的とする結合剤であって、CDR1~CDR3は、それぞれ、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10と少なくとも70%同一の配列を有する、結合剤。
【請求項5】
前記重鎖可変領域のCDR1~CDR3が、それぞれ、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10と同一の配列を有する、請求項4に記載の結合剤複合体。
【請求項6】
抗腫瘍剤と結合された、TfR1を標的とする結合剤であって、配列番号4と少なくとも70%同一の重鎖可変領域を有する、結合剤。
【請求項7】
請求項2に記載の結合剤の軽鎖可変領域をコードする、分離されたDNA又はRNA分子。
【請求項8】
配列番号1のヌクレオチド配列を有する、分離されたDNA分子。
【請求項9】
請求項5に記載の結合剤の重鎖可変領域をコードする、分離されたDNA又はRNA分子。
【請求項10】
配列番号3のヌクレオチド配列を有する、分離されたDNA分子。
【請求項11】
前記結合剤がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の結合剤複合体。
【請求項12】
前記モノクローナル抗体がマウス、ヒト、ヒト化、キメラ、二重特異性又は多重特異性抗体である、請求項11に記載の結合剤複合体。
【請求項13】
前記結合剤がダイアボディ、単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子、VH若しくはVLドメイン、又はVHHドメインである、請求項11に記載の結合剤複合体。
【請求項14】
前記モノクローナル抗体がIgG1重鎖及びκ軽鎖を有する、請求項11に記載の結合剤複合体。
【請求項15】
前記結合剤がFab、Fab’、F(ab’)
2、rIgG、Fv又はFd断片である、請求項1に記載の結合剤複合体。
【請求項16】
前記結合剤がscFv又はsc(Fv)
2である、請求項1に記載の結合剤複合体。
【請求項17】
前記モノクローナル抗体がクラスIgD、クラスIgE、クラスIgG、クラスIgA若しくはクラスIgM、又は前記クラスの1つのサブクラスである、請求項11に記載の結合剤複合体。
【請求項18】
前記モノクローナル抗体のサブクラスがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1又はIgA2である、請求項17に記載の結合剤複合体。
【請求項19】
前記モノクローナル抗体がκ軽鎖を有する、請求項17に記載の結合剤複合体。
【請求項20】
請求項8に記載の分離されたDNA分子を含む、ベクター。
【請求項21】
CDR1~CDR3が、それぞれ、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7と同一の配列を備える軽鎖可変領域を有する、TfR1を標的とする結合剤。
【請求項22】
CDR1~CDR3が、それぞれ、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10と同一の配列を備える重鎖可変領域を有する、TfR1を標的とする結合剤。
【請求項23】
配列番号2と同一の配列を備える軽鎖を有する、TfR1を標的とする結合剤。
【請求項24】
配列番号4と同一の配列を備える重鎖を有する、TfR1を標的とする結合剤。
【請求項25】
配列番号2と同一の配列を備える軽鎖を有する、請求項24に記載の結合剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトがん細胞におけるトランスフェリン受容体1(TfR1)及びそのアイソフォームと結合し、その内在化及び活性を調節するための抗体の用途に関する。本発明は、また、TfR1及びそのアイソフォームに関連する哺乳類細胞又は病的状態の生体外、原位置及び/又は生体内での診断及び/又は治療に使用される抗体又は小分子との複合体(抗体薬物複合体、ADC)に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスフェリン受容体1(TfR1、CD71)は、760個のアミノ酸からなるII型膜貫通糖タンパク質で、2つのジスルフィド結合によって結合されて180-kDaのホモ二量体として形成され、鉄の取り込み及び細胞の生長の調節で重要な役割を果たす(BOMFORD and MUNRO.Hepatology.5:870-875,1985)。二鉄トランスフェリン(Tf)が細胞表面上のTfR1と結合すると、ホロTf-TfR1複合体はクラスリン被覆ピットによって内在化され、酸性エンドソームに送達され、そこで鉄Tf-TfR1複合体は、低pHによって引き起こされる立体構造変化を起こし、続いて鉄が放出されて細胞質に輸送される。次に、アポTf/TfR1複合体(apo-Tf/TfR1)が再循環により細胞表面に戻り、そこでアポTf(apo-Tf)は受容体から解離する(WARD.Invest Radiol.22:74-83,1987;DANIELS et al. Clin Immunol.121:144-158,2006)。TfR1の発現は、血液細胞、肝細胞、角化細胞の前駆体など、ヘム合成に鉄が強く求められる、急速に増殖する細胞で増加するが、分裂していない細胞でその発現は減少するか全くない。TfR1は、リンパ球、膵臓、胃、結腸、肺、乳房、膀胱、皮膚に由来する原発性及び転移性がん細胞で過剰発現している(GATTER et al. J Clin Pathol.36:539-545,1983;FAULK et al. Lancet.2:390-392,1980;SUTHERLAND et al. Proc Natl Acad Sci USA 78:4515-4519,1981;DANIELS et al. Clin Immunol.121:144-158,2006;JEONG et al. Biochem Biophys Res Commun.471:373-379,2016;PEER et al. Nat Nanotechnol.2:751-760,2007;QIAN et al. Pharmacol Rev.54:561-587,2002;RICHARDSON et al. Biochim Biophys Acta Gen Subj.1790:702-717,2009)。がん細胞は、鉄欠乏(iron deprivation)に対してより感受性があると考えられるため、その結合を遮断するか又はホロTf/TfR1複合体の内在化を妨害してTf又はTfR1を標的とすることにより、鉄欠乏を引き起して、悪性細胞を死滅させる。
【0003】
過去30年間の文献には、受容体の結合又は内在化の妨害においてTfと競合するために抗ヒトTfR1抗体又はTfR1結合ペプチドを開発することによる悪性疾患の治療に関する多くの試みが記述されている(概説については、TORTORELLA and KARAGIANNIS.J Membr Biol.247:291-307,2014;CANDELARIA et al. Front.Immunol.17 March 2021.doi.org/10.3389/fimmu.2021.607692を参照する)。TROWBRIDGE and LOPEZ(Proc.Natl Acad Sci USA,79,1175-1179,1982;米国特許第4,434,156号)には、非競合的メカニズムによりTfとTfR1の結合を遮断し、細胞周期のS期にあるヒトT細胞白血病細胞株の成長を生体外で阻害できる、42/6と命名されたマウス抗TfR1抗体が報告されている。42/6は、第Ia相臨床試験で患者の忍容性が良好であることが判明したが、マウスIgAアイソタイプであるため、ヒト抗マウス抗体(HSMS)を誘導し、腎臓によって速やかに排除されるため、効力の欠如が起きた(BROOKS et al. Clin Cancer Res.1:1259-1265,1995)。MOURA et al. (J Exp Med,194,417-425,2001)には、TfR1と高い親和性(KD=2.7nM)で結合することによってTfと直接競合し、TfRの発現を低下させ、TfRの再循環を阻害することによりT細胞の増殖を阻害する、より強力な中和マウス抗TfR1 IgG2b抗体(A24)が報告されている。細胞周期のS期で細胞を阻害してその抗増殖効果を発揮する42/6と対照的に、A24は、標的細胞のアポトーシスを誘導することによって作用し、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、急性骨髄性白血病(AML)及びマントル細胞リンパ腫(MCL)細胞の体外増殖を阻害した(Moura et al. Blood.103:1838-1845,2004;CALLENS et al. Leukemia.22:42-48,2008;LEPELLETIER.Cancer Res.67:1145-1154,2007)。
【0004】
近年、ヒトにおける有効性の欠如及びHAMA応答を克服するために、いくつかのキメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体が開発された。例として、マウス-ヒトIgG3キメラ抗体ch128.1は、ヒト多発性骨髄腫(MM)及びAIDS関連非ホジキンリンパ腫(AIDS-NHL)の細胞株由来異種移植(CLDX)モデルにおいて生体内抗がん活性を示しており(DANIELS.J Immunother.34:500-508,2011;DANIELS-WELLS.J Immunother.38:307-310,2015.)、そのヒト化バージョンhu128.1(IgG1)も、AIDS-NHL CLDXモデルにおいて強力である(DANIELS-WELLS.Cancer Res.80(16 Suppl):5655,2020.)。ch128.1及びhu128.1の抗がん活性は、Fcが媒介する抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)に依存すると考えられる。IgG1アイソタイプの完全ヒト中和抗体が3つ記述されている。PPMX-T003及びH7-IgG1は、様々な白血病又はリンパ腫モデルにおいて腫瘍の成長を阻害しマウスの生存期間を延長させた(SHIMOSAKI et al. Biochem Biophys Res Commun.485:144-151,2017;ZHANG et al. Cancer Res.77(13 Suppl):5586,2017)。さらに驚くべきことに、NAGAI et al. (Cancer Med.3:108-1099,2014)において開発された抗TFRCは、生体外及び生体内の両方で口腔扁平上皮がん(OSCC)細胞の増殖を阻害し(NEIVEYANS et al. MAbs.11:593-605,2019.)、これにより、TfR1は、造血器悪性腫瘍に加え、固形腫瘍の治療にも使用できる見通しがあることが示唆される。
【0005】
分裂細胞におけるTfR1の遍在的な発現プロファイルにより、抗TfR1抗体は、がん患者には耐えられない普遍的な抗増殖活性を有する可能性がある。動物モデルにおける赤血球(RBC)前駆細胞及び骨髄前駆細胞に対する抗TfR1抗体の軽度から中等度の毒性が報告されている(CANDELARIA et al. Front.Immunol.17 March 2021)。42/6以外にも、多くの抗ヒトTfR1抗体は有望な前臨床結果を示しているが、抗TfR1抗体薬物複合体(ADC)であるCX-2029だけは、臨床段階まで進んでおり、第I相臨床試験において赤血球輸血で管理可能な用量依存的な血液毒性(貧血、好中球減少症、及び白血球減少症)を示している(JOHNSON et al. Clin Cancer Res.27:4521-4530,2021)。したがって、がん治療のために、特異的にがん細胞を標的とし、正常な細胞との交差反応が最小限に抑えられる抗TfR1抗体が必要となる。
【発明の概要】
【0006】
MAb11-22.1 mAbは、複数の急性骨髄性白血病(AML)生細胞株で免疫化されたマウスから得られたハイブリドーマの1つによって産生されたモノクローナル抗体(IgG1、κ)であり、AML及び他のがん細胞で発現されたヒトTfR1に対する特異的mAbとして同定された。MAb11-22.1 mAbとTfR1との間の親和性は非常に高い(KD<1×10-12M)。生体外アッセイは、MAb11-22.1 mAbはがん細胞の増殖に対してわずかな阻害効果を有することを示した。ある生体内研究では、メルタンシン(Mertansine、DM1、N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-メイタンシン)と結合した抗体薬物複合体(ADC)形態のMAb11-22.1キメラ抗体(MAb11-22.1-S239C-DM1)はOCI/AML2異種移植腫瘍の成長を顕著に阻害した。
【0007】
MAb11-22.1 mAbの軽鎖の可変領域のコード配列は、以下の配列番号1に示すとおりである。
1 gacattgtga tgacacagtc tccatcctcc ctgactgtga cagcaggaga 50
51 gaaggtcact atgagctgca agtccagtca gagtctgtta aatagtggaa 100
101 atcaaaagaa ctacttgacc tggtaccagc agaaaccagg acagcctcct 150
151 aaactgttga tctactgggc atccacttgg gaatctaggg tccctgatca 200
201 cttcacaggc agtggatctg gaacagattt cactctcacc atcagcagtg 250
251 tgcaggctga agacctggca gtctattact gtcagaatga ttatagttat 300
301 cctctcacgt tcggtgctgg gaccaagctg gagctgaaac gggctgatgc 350
351 tgca(配列番号1)
【0008】
軽鎖の可変領域における翻訳されたアミノ酸配列は、以下の配列番号2として予測され、3つの抗原決定領域(CDR1~CDR3、左から右へ)が太字と下線で強調表示されている。
IVMTQSPSSL TVTAGEKVTM SCKSSQSLLN SGNQKNYLTW YQQKPGQPPK LLIYWASTWE SRVPDHFTGS GSGTDFTLTI SSVQAEDLAV YYCQNDYSYP LTFGAGTKLE LKRADAA(配列番号2)
【0009】
MAb11-22.1 mAbの重鎖の可変領域のコード配列は、以下の配列番号3に示すとおりである。
1 gaggtccagc tgcagcagtc tggacctgag ctggtgaagc ctggggcttc 50
51 agtgaggatt tcctgcaaga cttctggcta caccttcaca aactactata 100
101 tacactggat gaagcagagg cctggacagg gacttgagtg gattggatgg 150
151 atttatcctg gagatggtaa ttctcattac aatgagaagt tcaagggcaa 200
201 gaccacactg actgcagaca aatcctccag cacaggctac atattgctca 250
251 gcagcctgac ctctgaagac tctgcagtct atttctgtac aagagattat 300
301 gataactacg ggggatttgc ttactggggc caagggactc tggtcactgt 350
351 ctct(配列番号3)
【0010】
重鎖の可変領域における翻訳されたアミノ酸配列は、以下の配列番号4として予測され、3つの抗原決定領域(CDR1~CDR3、左から右へ)が太字と下線で強調表示されている。
EVQLQQSGPE LVKPGASVRI SCKTSGYTFT NYYIHWMKQR PGQGLEWIGWI YPGDGNSHYN EKFKGKTTLT ADKSSSTGYI LLSSLTSEDS AVYFCTRDYD NYGGFAYWGQG TLVTVSA(配列番号4)
【0011】
本発明は、MAb11-22.1と命名された抗TfR1特異的mAbの軽鎖CDR領域と少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%)同一である1つ以上の軽鎖CDR領域を含み、配列番号2と少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%)同一である軽鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体などの抗体(以下に定義される)、その断片及び誘導体を含む結合剤(以下に定義される)に関する。任意選択的に、結合剤の重鎖可変領域は、配列番号4と少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%)同一である。前記結合剤は、配列QSLLNSGNQKNYLT(配列番号5)と少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%)同一である、MAb11-22.1の軽鎖CDR1のような領域を含んでもよい。前記結合剤は、配列WASTWESR(配列番号6)と少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%)同一であるMAb11-22.1の軽鎖CDR2のような領域を含んでもよい。前記結合剤は、配列QNDYSYPLT(配列番号7)と少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%)同一であるMAb11-22.1の軽鎖CDR3のような領域を含んでもよい。前記結合剤は、配列KTSGYTFTNYYIH(配列番号8)と少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%)同一であるMAb11-22.1の重鎖CDR1のような領域を含んでもよい。前記結合剤は、配列WIYPGDGNSHYNEKFKG(配列番号9)と少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%)同一であるMAb11-22.1の重鎖CDR2のような領域を含んでもよい。前記結合剤は、配列TRDYDNYGGFAY(配列番号10)と少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%)同一であるMAb11-22.1の重鎖CDR3のような領域を含んでもよい。
【0012】
本願は、MAb11-22.1及びMAb11-22.1に関連する結合剤(以下に定義される)を用いる、TfR1を過剰発現する複数種のがんの治療に関し、前記結合剤は、MAb11-22.1の軽鎖及び重鎖のCDRの配列の1つ以上に由来し、又はMAb11-22.1の軽鎖及び重鎖のCDRの配列の1つ以上と少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%)同一である部分を含む。MAb11-22.1は、ヒトTfR1タンパク質と高い親和性で特異的に結合し、このタンパク質の内在化を誘導する。
【0013】
前記結合剤は、例えば、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳がん、神経膠芽腫、前立腺がん、尿路上皮がん(膀胱がん)、食道がん、結腸直腸がん、膵臓がん、卵巣がん、肝臓がん、胃がん(胃の扁平上皮がん、胃腺がん、胃の小細胞がん、胃扁平上皮がん、胃カルチノイド腫瘍、及び胃・十二指腸がんを含む)である原発性及び転移性がんを含む腫瘍関連疾患の治療に優先的に使用される。
【0014】
前記結合剤複合体は、好ましくは、抗腫瘍剤を含み、例えば、細胞毒素(メイタンシン若しくはその誘導体、アウリスタチン(Auristatin)若しくはその誘導体、エポチロン(epothilone)若しくはその誘導体、パクリタキセル(paclitaxel)若しくはその誘導体又はビンカアルカロイド化合物を含み、又はさらに、コンブレタスタチンA-4リン酸塩、コンブレタスタチンA-4若しくはその誘導体、インドール-サルファ化合物、ビンカアルカロイド化合物(ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンデシン(vindesine)、ビノレルビン(vinorelbine)、ビンフルニン(vinflunine)、ビングリシナート(vinglycinate)、無水ビンブラスチン(anhydrovinblastine)、ドラスタチン10及びその類似体、ハリコンドリンB及びエリブリン(Eribulin)、インドール-3-オキサリルアミド、置換インドール-3-オキサリルアミド、ポドフィロトキシン(podophyllotoxin)、7-ジエチルアミノ-3-(2’-ベンゾオキサゾリル)-クマリン(DBC)、ディスコデルモリド(discodermolide)、ラウリマライド(Laulimalide)など);DNAトポイソメラーゼ阻害剤(カンプトテシン(camptothecin)及びその誘導体、ミトキサントロン(mitoxantron)など);ミトグアゾン(mitoguazone);ナイトロジェンマスタード類似体(クロラムブシル(Chlorambucil)、クロマファジン(Chlomaphazine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、エストラムスチン(Estramustine)、イホスファミド(ifosfamide)、ムスチン(Mustine)、ナイトロミン(Nitromin)、メルファラン(Melphalan)、ノベンビチン(Novembichin)、フェナメット(Phenamet)、フェネステリン(Phenesterine)、プレドニムスチン(Prednimustine)、トロホスファミド(Trofosfamide)、ウラムスチン(Uramustine)など);ニトロソ尿素(カルムスチン(Carmustine)、ストレプトゾトシン(streptozotocin)、フォテムスチン(Fotemustine)、ロムスチン(Lomustine)、ニムスチン(Nimustine)、ラニムスチン(Ranimustine)など);抗生物質(エンジイン系抗生物質、ジネミシン(Dynemicin)、エスペラミシン(Esperamicin)、ネオカルチノスタチン(Neocarzinostatin)、アクラシノマイシン(Aclacinomycin)、アクチノマイシン(Actinomycin)、アントロアマイシン(Anthroamycin)、アザセリン(Azaserine)、ブレオマイシン(Bleomycin)、アクチノマイシンC、カラビシン(Carabicin)、イダルビシン(Idarubicin)、カルジノフィリン(Carzinophilin)、カルミノマイシン(Carminomycin)、アクチノマイシンD、ダウノマイシン(Daunorubicin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(Adriamycin)、エピルビシン(Epirubicin)、エソルビシン(Esorubicin)、イダルビシン(Idarubicin)、マルセロマイシン(Marcellomycin)、マイトマイシン(Mitomycin)、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(Nogalamycin)、オリボマイシン(Olivomycin)、ペプロマイシン(Peplomycin)、Bofeimeisu、ピューロマイシン(Puromycin)、アドリアマイシン-Fe、ロドルビシン(Rodorubicin)、ストレプトニグリン(Streptonigrin)、ストレプトゾシン(Streptozocin)、ツベルシジン(Tubercidin)、ウベニメクス(Ubenimex)、ジノスタチン(Zinostatin)、ゾルビシン(Zorubicin)など);葉酸類似体(デノプテリン(Denopterin)、メトトレキサート(Methotrexate)、プテロプテリン(Pteropterin)、トリメトレキサート(Trimetrexate)、エダトレキサート(Edatrexate)など);プリン類似体(フルダラビン(Fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン(Thiamiprine)、チオグアニン(Thioguanine)など);ピリミジン類似体(アンシタビン(Ancitabine)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、エノキサパリン(Enoxaparin)、アザシチジン(Azacitidine)、6-アザウリジン、カルモフール(Carmofur)、シタラビン(Cytarabine)、ジデオキシウリジン(dideoxyuridine)、デオキシフルオロウリジン(deoxy-fluorouridine)、フルオロウリジン(Fluoruridine)など);アンドロゲン(カルステロン(Calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン(Dromostanolone propionate)、エピチオスタノール(Epitiostanol)、メピチオスタン(Mepitiostane)、テストラクトン(Testolactone)など);副腎皮質刺激ホルモン化合物(アミノグルテチミド(Aminoglutethimide)、ミトタン(Mitotane)、トリロスタン(Trilostane)など);トリコテセン(trichothecene)(T-2トキシン、ベラキュリン(verracurin)A、ロリジン(Roridin)A及びアングイジン(Anguidine)など);アジリジン(aziridine)(ベンゾドパ(Benzodopa)、カルボコン(Carboquone)、メツレドパ(Meturedopa)及びウレドパ(Uredopa)など);白金類似体(シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(Carboplatin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、ミリプラチン(Miriplatin)、エトポシド(Etoposide)など);抗アンドロゲン薬(フルタミド(Flutamide)、ニルタミド(Nilutamide)、ビカルタミド(Bicalutamide)、リュープロレリン(Leuprolide)及びゴセレリン(Goserelin)など);プロテインキナーゼ及びプロテアソーム阻害剤)を含む。
【0015】
好ましくは、結合剤はリンカーによって抗腫瘍剤と結合される。結合は、以下のメルタンシン(Mertansine、DM1)の結合について記述したように、即ち、部位特異的結合を利用して結合剤のメルカプト基を抗腫瘍剤と結合することによって行われてもよい。他の多くの結合方法が利用できる。
【0016】
いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン及びセリンのような柔軟な残基(一つの実施例は、繰り返し出現する4つのグリシンと1つのセリン、又は単なるグリシン残基の繰り返し)によって構成されてもよく、複合体の結合に使用されてもよく、これにより、隣接するタンパク質ドメインは互いに対して自由に移動できる。ドメイン間の距離を維持してこれらが相互作用できないようにしたい場合は、剛性リンカーが好ましく、一つの実施例は、(繰り返し):グルタミン酸、3つのアラニン残基、リジンである。別の剛性リンカーは、(繰り返し):任意のアミノ酸残基及びプロリンである。リンカーは、非切断可能なリンカー(例えば、チオエーテル、SMCC、PEGリンカー)又は切断可能なリンカー(バリン-シトルリン(Val-Cit、VC)ジペプチド、グルタミン酸-バリン-シトルリン(Glu-Val-Cit、GVC)トリペプチド、及びジスルフィドリンカー)であってもよい。米国特許第9,310,373号「Molecular conjugate(分子複合体)」には、複数のヒドラジドチオールリンカー、及びそれらを用いた複合体の作製が開示されている。米国特許第8,518,891号には、アミノアリールメチル基(aminoarylmethyl)又はアミノヘテロアリール基(aminoheteroaryl)部分を有するリンカーが開示されている。二官能性リンカーも記述されている。米国特許第11,040,084号を参照する。
【0017】
適切な投与量範囲及び投与計画は、本明細書に記載された生体内及び生体外試験の結果から推定できる。結合剤は、優先的に治療用の医薬製剤として送達されるが、他の結合剤を選択するための診断、精製、又はスクリーニングに使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
特許又は出願書類は、彩色で作成された図面を少なくとも1つ含有している。彩色図面を含むこの特許又は特許出願公開の副本は、要求され、必要な料金が支払われた場合、特許庁から提供される。
【0019】
【
図1A-1C】MAb11-22.1 mAbはAML細胞株と直接結合するが、健康なヒトの末梢血単核細胞(PBMC)と結合しないことを示す。
【
図1A】蛍光活性化細胞選別(FACS)アッセイで、MAb11-22.1 mAbは9種のヒトAML細胞株と細胞表面において相互作用したが、ヒトPBMCと相互作用しなかったことを示す(左のパネル)。このアッセイでは、アイソタイプ対照抗体が陰性対照として使用された(右のパネル)。検出には、1:800希釈度のフルオレセイン標識AffiniPureヤギ抗マウスIgG、Fcγ断片特異的抗体(抗Mo IgG Fc-FITC、Jackson ImmunoResearch Laboratories)が使用された。アッセイは4℃で行われた。MFIは平均蛍光強度である。
【
図1B】NB4又はTHP-1細胞の表面と結合したMAb11-22.1 mAbの免疫細胞化学(ICC)アッセイの画像を示し(上のパネル)、アイソタイプ対照抗体はこれらの細胞を染色しなかった(下のパネル)。AML細胞は、4%のパラホルムアルデヒドにおいてサイトスピンでガラススライドに固定された。抗原賦活化後、細胞は1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSTにおいてブロックされ、次に一次抗体(primary antibodies)と共に1時間インキュベートされ、続いて1:1000希釈されたペルオキシダーゼ標識AffiniPureヤギ抗マウスIgG(サブクラス1+2a+2b+3)、Fcγ断片特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)と共に1時間インキュベートされた。細胞は3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)で染色され、ヘマトキシリンで対比染色された。
【
図1C】MAb11-22.1 mAbがALL細胞(Raji)及びAML細胞(NB4、OCI/AML2、及びTHP-1)の全細胞溶解物に存在するタンパク質バンドとハイブリダイズしたことを示すウェスタンブロットである。この標的タンパク質は、非還元条件で約250kDa(左のパネル)、又は還元条件では110kDa(右のパネル)であった。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞溶解物は陰性対照として使用された。β-アクチンは、サンプルローディング対照として特異的マウスmAbによって同時に検出された。検出には、1:10,000希釈度のペルオキシダーゼ標識AffiniPureヤギ抗マウスIgG Fcγが使用された。
【
図2A-2D】MAb11-22.1 mAbの標的としてのトランスフェリン受容体1(TfR1)の同定と確認を示す。
【
図2A】MAb11-22.1 mAbとAML全細胞溶解物の反応によって得られた免疫沈降(IP)サンプルの代表的な銀染色SDS-PAGE画像である。IPサンプルは還元され、レーン1及び2に均等ににロードされ、示されている約110kDaの標的バンドはLC-MS/MS分析用に切り出されたものである。還元されたMAb11-22.1 mAbは、対照としてレーン4に8ngロードされた。タンパク質バンドは、メーカーの手順書に従って、ProteoSilver(商標)銀染色キット(MilliporeSigma)で検出された。MWは分子量マーカーであり、HCは重鎖、LCは軽鎖である。
【
図2B】MAb11-22.1 mAb及び抗β-アクチンmAbを同時にプローブされた非還元ALL及びAML全細胞溶解物サンプルのウェスタンブロットを示す。左のレーンには、1.2μgの組み換え発現されたTfR1細胞外ドメイン(rTfR1-ECD、ACRO Biosciences)が陽性対照としてロードされ、右の2つのレーンには、2つの濃度(1×及び2×)のCHO細胞溶解物が陰性対照としてロードされた。検出には、1:20,000希釈度のペルオキシダーゼ標識AffiniPureヤギ抗マウスIgG Fcγが使用された。
【
図2C】MAb11-22.1 mAbとTfR1の細胞外ドメインとの直接相互作用をELISAで確認したことを示す。プレートは、C末端6×Hisタグを含有する0.1μg/mLの精製されたrTfR1-ECDでコーティングされた。マウス抗6×His mAb及びアイソタイプ対照抗体はそれぞれ、陽性対照、陰性対照として使用された。全ての一次抗体は、3μg/mLの開始濃度で3倍段階希釈された。検出には、1:6,000希釈度のペルオキシダーゼ標識AffiniPureヤギ抗マウスIgG Fcγが使用された。
【
図2D】細胞膜上にヒトTfR1-GFP融合タンパク質(rTfR1-GFP)の組み換え発現がある又はないCHO細胞のFACSアッセイの結果を示す。CHO細胞は、MAb11-22.1 mAb#1若しくは#2(2つの異なる精製バッチ)又は市販の抗ヒトTfR1対照mAb(R&D systems)と反応しなかった。ただし、細胞膜上にTfR1を再構成した後、MAb11-22.1 mAb#1、#2及び抗TfR1対照mAbは細胞表面と結合できた。MAb11-22.1 mAbは、抗TfR1対照mAbよりも高い親和性を有する。使用した二次抗体は、R-フィコエリトリン(R-PE)標識AffiniPureヤギ抗マウスIgG(サブクラス1+2a+2b+3)、Fcγ断片特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)で、希釈度は1:800であった。
【
図3A-3C】MAb11-22.1 mAbとrTfR1-ECDとの間の親和性及び動力学を示す、ForteBio Octet(登録商標)QKシステムからのデータ出力である。
【
図3A】fortebioソフトウェアによって生データから抽出された、20nM rTfR1-ECD(左のパネル)又は300nM ヤギ抗マウス(H+L)Fab(陽性対照、右のパネル)と結合するMAb11-22.1 mAbの結合曲線及び解離曲線を示す整列したセンサーグラムトレースである。ForteBio Octet(登録商標)QKシステムには、10nM又は50nM MAb11-22.1 mAbを固定化するための抗マウスFc捕獲(AMC)バイオセンサーが装備された。主要なステップの持続時間は、60秒間の動力学緩衝液でのベースライン、450秒間のMAb11-22.1 mAbの固定化、120秒間の動力学緩衝液でのベースライン/洗浄、450秒間の抗原結合、続いて3000秒間の動力学緩衝液での解離だけとなった。上の曲線は、10nM mAbで、下の曲線は、50nM mAbであった。
【
図3B】20nMから2.5倍段階希釈されるMAb11-22.1 mAbとrTfR1-ECDとの結合の動力学データを示す。観察期間(3000秒)内に、結合はすぐに起こり、解離は検出されなかった。
【
図3C】装置の信頼性を検証するために、段階希釈におけるMAb11-22.1 mAbと、陽性対照であるヤギ抗マウスIgG(H+L)Fabとの結合の動力学データを示す。
【
図4】MAb11-22.1 mAb及びトランスフェリン(Tf)がrTfR1-ECD上の異なる部位と結合することを示す、競合ELISAの結果である。ELISAプレートは、0.1μg/mLのrTfR1-ECDでコーティングされ、2μg/mLから4倍段階希釈された7つの濃度のHRP結合MAb11-22.1 mAbと個別に混合した5つの濃度の精製Tfタンパク質(X軸)のアレイと、異なる濃度のTf単独と共にインキュベートされた。MAb11-22.1 mAb-HRPは、rTfR1-ECDと用量依存的に結合したが、Tfの存在とは無関係であった。データは、重複サンプルの平均±標準偏差(SD)を表す。
【
図5A-5C】健康な成人のPBMC及び骨髓(BM)細胞、及びAML患者のBM細胞に対するMAb11-22.1 mAbの結合のFACS結果である。
【
図5A】MAb11-22.1 mAbは、mAbの濃度のいかんに関わらず、正常なヒトのPBMC(Stanford Blood Center)又は正常なヒトのBM細胞(Human Cells(カリフォルニア州・フリーモント))と結合しなかったことを示す。アイソタイプ対照抗体は陰性対照として働いた。mAbは、20μg/mLから8倍段階希釈され、1:800希釈された抗マウスIgG Fc-FITCで検出された。
【
図5B】MAb11-22.1 mAbは、AML患者からのBM細胞と用量依存的に結合したことを示す。
【
図5C】異なるmAbで染色されたPBMC及びBM細胞の散布図である。細胞表面マーカーが陽性か陰性を判断するためのカットオフ値は実線で示され、グラフを4つの象限に分割している。造血幹細胞に特異的なFITC標識マウス抗ヒトCD34 mAb(Miltenyi(マサチューセッツ州・ケンブリッジ))により、BMサンプルに幹細胞が存在することが確認された(左下のパネル)。MAb11-22.1 mAb及びアイソタイプ対照抗体は、BM細胞の粘着性により、少量の一部のBM細胞を染色した。
【
図5D】抗ヒトCD233-PE mAb(Miltenyi)で染色されたPBMC及びBM細胞集団に存在する赤血球は、MAb11-22.1 mAb又はアイソタイプ対照抗体と反応しなかったことを示す。
【
図5E】抗ヒトCD235a-PE(Miltenyi)で染色されたPBMC又はBM細胞集団に存在する赤血球及び赤芽球は、MAb11-22.1 mAb又はアイソタイプ対照抗体と反応しなかったことを示す。
【
図6A-6C】がん細胞株を用いるMAb11-22.1 mAbの内在化アッセイの結果である。
【
図6A】FACSアッセイにおいて異なる条件下で、MAb11-22.1 mAb、マウス抗ヒトCD20 mAb又はアイソタイプ対照抗体で個別に染色された3つの白血病細胞株(OCI/AML2、NB4、及びRaji)の細胞表面上の蛍光強度が比較される。細胞は、4℃で各mAbと共に1時間インキュベートされ、続いて冷PBSで洗浄され、4℃又は37℃で培地においてインキュベートされた。細胞染色は、それぞれ、30分間、1時間、及び2時間、抗Mo IgG Fc-FITCで行われた。4℃では、MAb11-22.1 mAbは2つのAML細胞株の表面と用量依存的に結合したが、Raji細胞と結合せず、37℃に移すと直ちに内在化された(左のパネル)。Raji細胞と相互作用したがAML細胞と相互作用しない抗CD20 mAbは、37℃でRaji細胞によって部分的に内在化された(中間のパネル)。どちらの細胞株とも結合しないアイソタイプ対照抗体は陰性対照として使用された(右のパネル)。
【
図6B】OCI/AML2細胞株と結合し、それによって内在化されるMAb11-22.1 mAbの代表的な蛍光画像である。重複した96ウェル培養プレートの細胞は、DMEM培地における異なる濃度のCF488標識MAb11-22.1 mAb又はCF488標識アイソタイプ対照抗体と共に4℃で1時間インキュベートされ、続いてmAbを除去するために氷冷PBSで洗浄された。1つのプレートの細胞は、Keyence蛍光顕微鏡を用いる400×倍率での撮影に備えて氷冷PBSに再懸濁され、重複プレートの細胞は、mAbの内在化ができるよう、温かいSFMに再懸濁され、37℃で1時間インキュベートされた。MAb11-22.1 mAb-CF488は、4℃でOCI/AML2細胞の表面と結合したが、37℃で1時間インキュベートした後は主として内在化された。対照として、CF488標識アイソタイプ対照mAbは細胞を染色せず、細胞によって内在化されてもいなかった(右のパネル)。画像は、いずれも同じ設定で撮影された。スケールバーは100μmを表す。
【
図6C】MDA-MB-231細胞によるMAb11-22.1 mAb-CF488の結合及び内在化の用量依存的な増加を示す代表的な画像である。アッセイの手順は、より高い濃度(5μg/mL)のmAbを使用したことを除き、
図6Bと同じであった。4℃では、MAb11-22.1 mAb-CF488はMDA-MB-231細胞の表面に位置するだけでなく、細胞内にも存在することから、MDA-MB-231細胞株によるMAb11-22.1 mAb-CF488の内在化の傾向が高いことが示される。37℃で1時間インキュベートした後、MAb11-22.1 mAb-CF488の大部分が内在化された。CF488標識アイソタイプ対照mAb-CF488は細胞を染色せず、又は、細胞にも取り込まれなかった(右のパネル)。画像は、同じ露出時間で400×の倍率で撮影された。スケールバーは100μmを表す。
【
図7】OCI/AML2細胞の増殖に対するMAb11-22.1 mAbの部分的な阻害効果を示す。細胞(2×10
4個の細胞/mL)は、100μg/mLのMAb11-22.1 mAb又はアイソタイプ対照抗体の存在下で、37℃で加湿5%のCO
2の雰囲気で培養された。450nmでの吸光度(OD
450)で反映される細胞の生存率は、10μLのCCK-8溶液で4時間処理することにより、24時間ごとに監視された。データは、3つの重複サンプルの平均±SDを示す。*P<0.05。
【
図8A-8B】MAb11-22.1キメラ抗体(cAb)とrTfR1-ECDとの間の親和性及び動力学を示す、ForteBio Octet(登録商標)QKシステムからのデータ出力である。
【
図8A】2.5倍段階希釈(50、20、8、3.2、及び1.28nM)におけるMAb11-22.1 cAbとrTfR1-ECDとの間の結合動力学に関する結合及び解離曲線のフィッティングビュー及びデータ表を示す。Octet QKシステムには、50nM又は10nM MAb11-22.1 cAbを固定化するための抗ヒトFc捕獲(AHC)バイオセンサーが装備された。主要なステップの持続時間は、60秒間の動力学緩衝液でのベースライン、450秒間のMAb11-22.1 cAbの固定化、120秒間の動力学緩衝液でのベースライン/洗浄、450秒間の抗原と固定化MAb11-22.1 cAbとの結合、続いて3600秒間の動力学緩衝液での解離だけとなった。解離に許容される期間に結合シグナルの減衰が検出されなかったため、MAb11-22.1 cAbとrTfR1-ECDのK
Dは1pM未満であった。
【
図8B】50nM MAb11-22.1 cAbへの結合における3倍段階希釈(300、100、33.3、11.1、及び3.7nM)に関する、陽性対照であるヤギ抗ヒト(H+L)Fabの動力学解析のフィッティングビューである。計算されたK
Dは2.18nMであった。
【
図9】生体外における、様々ながん細胞株の増殖に対するS239C変異がある又はないMAb11-22.1 cAb及びアイソタイプ対照抗体の影響を示す棒グラフである。OCI/AML2、Raji、HCC38及びMDA-MB-231細胞株は、最適な量で個別の抗体と共に5日間培養された後、CCK-8アッセイで解析された。2つの用量(100及び300μg/mL)のMAb11-22.1 cAb(斜線バー)及びMAb11-22.1-S239C cAb(灰色バー)がDM1で処理され、X軸の下方に「+」記号で示し、DM1処理を行わなかった抗体は「-」記号で示す。非結合アイソタイプ対照抗体(白色バー)は、各細胞株の増殖のベースラインを反映した。データは、3つの重複サンプルの平均±SDを示す。
【
図10】OCI/AML2細胞株由来異種移植(CLDX)マウスモデルにおける腫瘍の成長に対するMAb11-22.1-S239C-DM1の生体内有効性を示す。MAb11-22.1-S239C-DM1は、10mg/kg(低用量、n=5)又は20mg/kg(高用量、n=6)でQ4×7のスケジュール(0日目から24日目)で腹腔内に注射された(i.p.)。陰性対照群には、DM1で処理したアイソタイプ対照抗体(S239C変異なし)が20mg/kg/Q4×7/i.p.で投与された(n=5)。腫瘍体積は4日ごとに測定された。左のパネルは、各群の個別のマウスの腫瘍体積についてプロットしたもので、右のパネルは、異なる群の間の平均腫瘍体積±SDを比較したものである。4回の抗体治療後の16日目から、低用量群の平均腫瘍体積はアイソタイプ対照であるDM1群と有意に異なった(*P<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
文脈で明確な断りがない限り、単数形の「1つ/1種(a/an)」及び「前記(the)」には複数形が含まれることを理解されたい。モノクローナル抗体は「mAb」と呼ばれることがある。用語「結合剤」及び「抗体」の単数形と複数形は、入れ替えて使用される。
【0021】
本発明の結合剤には、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3のζ鎖(CD3ζ)と融合した単鎖可変断片(scFv)を含む、MAb11-22.1様若しくはMAb11-22.1に由来する抗体、抗体断片、融合タンパク質、又は抗体に由来する若しくは改変されたキメラ抗体受容体(CAR)が含まれる。CARは、T細胞、NK細胞及びマクロファージを含むが、それらに限定されないCAR免疫エフェクター細胞において発現されることが好ましい。
【0022】
用語「結合剤」には、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位によって標的抗原、例えば、胃がん細胞上の抗原と結合できる免疫グロブリン分子である抗体が含まれる(両方とも複数形で入れ替えて使用される)。本明細書で使用される場合、用語「抗体」には、完全な(即ち、全長の)ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体だけでなく、それらの抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fd、rIgG、単鎖(scFv)又はsc(Fv)2、それらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子、VH若しくはVLドメイン又はVHHドメイン、及び必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のあらゆる他の改変された配置が含まれ、前記改変された配置は、抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体、及び共有結合によって改変された抗体を含む。抗体薬物複合体も含まれる。
【0023】
抗体には、IgD、IgE、IgG、IgA又はIgM(又はそのサブクラス)などのあらゆるクラスの抗体が含まれ、抗体はいかなる特定のクラスである必要もない。免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列により、異なるクラスに割り当てられてもよい。5つの主要なクラスの免疫グロブリン、即ち、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMがあり、これらのクラスのうちのくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2に分けられる。
【0024】
本明細書に記述されている抗体は、マウス、ラット、ヒト又は任意の他の起源のものであってもよい(米国特許第7317091B2号に記述されている抗体などのキメラ抗体又はヒト化抗体が含まれ、親和性成熟によって生成されるこのような抗体も含まれる)。いくつかの実施例では、抗体は、例えば、補体媒介性溶解を誘発せず、又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を刺激しない、免疫学的に不活性な定常領域など、改変された定常領域を含む。ADCC活性は、米国特許第5,500,362号に開示されている方法で評価してもよい。
【0025】
ヒト化抗体とは、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又は非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むその抗原結合断片である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。大抵の場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、マウス、ラット又はウサギなど、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においてもインポートされたCDR又はフレームワーク配列においても発見されないが、抗体の性能の更なる改良及び最適化のために含まれる残基を含んでもよい。一般的には、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ただし、全て又は実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、且つ全て又は実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれらに対応する。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部を含む。抗体は、国際特許第WO99/58572号に記述されているような改変されたFc領域を有してもよい。他の形態のヒト化抗体は、元の抗体に対して変化された1つ以上のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ及び/又は6つ)を有する。ヒト化抗体は、親和性成熟に関わる場合がある。Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323-327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536(1988)を参照する。
【0026】
別の実施例では、本明細書に記述されている抗体は、ヒト抗体からの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含んでもよいキメラ抗体である。例えば、Morrison et al. (1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,6851;Neuberger et al. (1984)Nature 312,604;Takeda et al. (1984)Nature 314:452を参照する。キメラ抗体とは、第1の種からの可変領域又は可変領域の一部、及び、第2の種からの定常領域を有する抗体を指す。典型的には、それらのキメラ抗体において、軽鎖及び重鎖の可変領域は、いずれも、ある種の哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ラットなどの非ヒト哺乳動物)に由来する抗体の可変領域の模倣物であり、定常部分は、ヒトなどの別の哺乳動物に由来する抗体の配列と相同である。いくつかの実施形態では、可変領域及び/又は定常領域においてアミノ酸改変が行われてもよい。米国特許第4,816,567号を参照する。
【0027】
2つのアミノ酸配列の「同一性パーセント」は、本明細書で記述又は請求されているより短い配列に対して、計数及び比較することよって、又はKarlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Set USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993において修正したように利用することによって算術的に決定してよい。このようなアルゴリズムは、Altschul,et al. J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。BLASTタンパク質検索は、対象のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るためにXBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)を用いて実行されてもよい。2つの配列の間にギャップが存在する場合、Altschul et al,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記述されているギャップBLAST(Gapped BLAST)を利用してもよい。BLASTプログラム及びギャップBLASTプログラムを利用する場合、対応するプログラム(例えば、XBLAST、NBLAST)のデフォルトパラメータを使用してもよい。
【0028】
(結合剤の作製)
ヒトの生体内治療用途向けに、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体を作製するための多くの方法が開発されている。最もよく用いられる方法は、ハイブリドーマ法を利用してマウスmAbを作製し、次にmAbのVH及びVLドメイン並びに定常ドメインのフレームワーク領域をヒトVH及びVLドメインの相同なヒトフレームワーク領域並びに所望のヒトγ免疫グロブリンアイソタイプ及びサブクラスの定常領域に変換することによってmAbをヒト化することである。米国特許第5,225,539号を参照する。
【0029】
モノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ法(Kohler et al.,Nature,256:495(1975))によって作製されてもよい。ハイブリドーマ法では、マウス又は、ハムスター若しくはウサギなど他の適切な宿主動物を上記のように免疫化して、免疫化のために用いるタンパク質と特異的に結合する抗体を産生する又は産生できるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球を生体外で免疫化してもよい。
【0030】
モノクローナル抗体を作製するために、抗原で免疫化された哺乳動物から免疫細胞を収集し、上記のように血清における所望の抗体のレベルの増加を調べ、前記免疫細胞は細胞融合を受ける。細胞融合に用いる免疫細胞は、脾臓から得られることが好ましい。上記の免疫細胞と融合される他の好ましい親細胞には、例えば、哺乳動物の骨髄腫細胞が含まれ、より好ましくは、薬剤による融合細胞の選択のための獲得特性を有する骨髄腫細胞である。
【0031】
好ましい骨髄腫細胞とは、効率的に融合し、選択された抗体を産生する細胞による安定的な高レベルの抗体産生に利用でき、HAT培地などの培地に感受性のある骨髄腫細胞である。それらのうち、MOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍に由来する細胞株(Salk Institute Cell Distribution Center(米国カリフォルニア州・サンディエゴ)から利用可能)、及びSP-2細胞(American Type Culture Collection(米国メリーランド州・ロックビル)から利用可能)などのマウス骨髄腫細胞株が好ましい骨髄腫細胞株である。ヒト骨髄腫細胞株及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、ヒトモノクローナル抗体の産生のために使用されることも記述されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0032】
上記の免疫細胞及び骨髄腫細胞は、既知の方法、例えば、Milstein et al. (Galfre et al.,Methods Enzymol.73:3-46,1981)に従って融合させてもよい。ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使用してリンパ球を骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。細胞融合により得られたハイブリドーマは、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む培地)などの標準的な選択培地で培養して選択されてもよい。細胞培養は、典型的には、HAT培地で数日間から数週間継続し、時間は所望のハイブリドーマ(非融合細胞)を除く全ての他の細胞が死亡するのに十分である。次に、標準的な限界希釈を実行して、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞をスクリーニングし、クローニングする。
【0033】
このようにして作製されたハイブリドーマ細胞を適切な培地に接種し、成長させる。前記培地は、融合していない親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する1種又は複数種の物質を含有することが好ましい。例えば、親骨髄腫細胞がヒポキサンチングアニンホスホリボシル基転移酵素(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含み(HAT培地)、これらの物質はHGPRT欠損細胞の成長を阻止する。ハイブリドーマ細胞が成長する培地には、抗原に対するモノクローナル抗体の産生に関するアッセイが行われる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法又は生体外結合アッセイによって決定される。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素免疫アッセイ(EIA)、放射免疫アッセイ(RIA)及び/又は免疫蛍光法における吸光度の測定は、抗体の抗原結合活性を測定するために利用できる。
【0034】
所望の特異性、親和性及び/又は活性のある抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、限界希釈法によりクローンをサブクローニングし、標準的な方法で成長させてもよい(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。この目的に適する適切な培地として、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が挙げられる。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製方法、例えば、プロテインAセファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーにより、培地、腹水又は血清から適切に分離される。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物、例えば、マウスの腹腔内で腹水腫瘍として体内で成長できる。
【0035】
得られたモノクローナル抗体は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿法、プロテインA又はプロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー又は本発明のタンパク質が結合するアフィニティーカラムにより精製してもよい。
【0036】
このようにして得られたモノクローナル抗体は、また遺伝子工学技術を利用して組換えで作製してもよい(例えば、Borrebaeck C.A.K.and Larrick J.W.Therapeutic Monoclonal Antibodies,published in the United Kingdom by MacMillan Publishers LTD,1990を参照する)。抗体を産生するハイブリドーマ又は免疫リンパ球などの免疫細胞から抗体をコードするDNAをクローニングして、適切なベクターに挿入し、宿主細胞に導入することによって組み換え抗体を作製してもよい。組み換え技術は、以下の文献に記述されている。具体的には、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989,and Third edition,2001;Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley &Sons,New York,1987 and periodic updates;the series METHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,San Diego;Kontermann and Dubel,ANTIBODY ENGINEERING,Springer Lab manual,Springer-Verlag Berlin Heidelberg,2001)などである。
【0037】
得られた抗体を治療のためにヒトに投与する場合、免疫原性を低下させるために、ヒト抗体又はヒト化抗体が好ましい。例えば、細胞全体又はヒト細胞タンパク質又はその溶解物から選択された抗原でヒト抗体遺伝子レパートリーを有する遺伝子組換え動物を免疫化してもよい。次に、動物から抗体を産生する細胞を収集し、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを得て、そこから前記抗原に対するヒト抗体を作製できる。あるいは、免疫リンパ球など、抗体を産生する免疫細胞をがん遺伝子によって不死化し、モノクローナル抗体の作製に使用してもよい。
【0038】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の方法で(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)簡単に分離及び配列決定できる。ハイブリドーマ細胞は、このようなcDNAの好ましい供給源となる。分離した後、DNAを発現ベクター内に配置し、次に、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は他の方式で免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞に形質移入して、組み換え宿主細胞内でモノクローナル抗体を産生させてもよい。抗体をコードするDNAの細菌内での組み換え発現に関する概説的な文章として、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5:256-262(1993);Pluckthun,Immunol.Rev.,130:151-188(1992)が挙げられる。
【0039】
通常の技術により、上記のハイブリドーマ細胞によって産生される抗体をコードするDNAを遺伝学的に組み換えて、遺伝子改変抗体を産生させてもよい。従来の組み換え技術により、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、多重特異性抗体などの遺伝子改変抗体を産生させてもよい。次に、例えば、ヒト重鎖定常ドメイン及び軽鎖定常ドメインをコード配列で置換することによって相同なマウス配列を置き換え(Morrison et al.,(1984)Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851)、又は非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全体若しくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することにより、DNAを改変してもよい。前記方法により、キメラ抗体又はヒト化抗体など、標的抗原の結合特異性を有する遺伝子改変抗体を作製してもよい。
【0040】
あるいは、特定の遺伝子組換え動物(例えば、マウス)は、内因性免疫グロブリンの産生がなくても免疫化によりヒト抗体の完全なレパートリーを産生できる。例えば、キメラマウス及び生殖細胞変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失により、内因性抗体の産生が完全に阻害されることが記述されている。このような生殖細胞変異マウスにヒト生殖細胞免疫グロブリン遺伝子アレイを移入すると抗原刺激によりヒト抗体が産生される。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255-258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993)を参照する。Amgen,Inc.(カリフォルニア州・フリーモント)から提供される遺伝子組換えマウス(Xenomouse)、Medarex,Inc.(ニュージャージー州・プリンストン)によって提供されるHuMAb-MouseR(商標)、TC Mouse(商標)も参照する。別の代替の実施形態では、ファージディスプレイ技術により、組み換えで抗体を作製してもよい。例えば、米国特許第5,565,332号;第5,580,717号;第5,733,743号;第6,265,150号;Winter et al.,(1994)Annu.Rev.Immunol.12:433-455;(Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)を参照する。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552-553)を利用して、免疫化されていないドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、ヒト抗体及び抗体断片を生体外で産生してもよい。
【0041】
F(ab’)2断片は、ペプシンでの消化又は他のタンパク質での消化により完全な抗体から産生されてもよい(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992)and Brennan et al.,Science 229:81(1985)を参照する)。Fab断片は、F(ab’)2断片のジスルフィド結合を還元して生成されてもよい。現在、このような断片は、組み換え宿主細胞によって直接産生されてもよい。例えば、抗体ファージライブラリから抗体断片を分離させてもよい。あるいは、大腸菌からF(ab’)2-SH断片を直接回収し、化学的に結合させてF(ab’)2断片を形成させてもよい(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別の手法によれば、組み換え宿主細胞の培養物からF(ab’)2断片を直接分離してもよい。
【0042】
米国特許第5,932,448号には、ロイシンジッパーによって結合されたFab’部分を有する二重特異性抗体の作製が開示され、米国特許第7,538,196号には、各部分がリンカーによって結合された二重特異性抗体の作製が開示され、米国特許第8,148,496号には、ペプチドリンカーを介して互いに接続された少なくとも4つの可変ドメインを有する多重特異性Fv抗体構築物が開示されている。
【0043】
米国特許公開第20170335281号には、がん関連抗原と結合する抗原結合ドメインを含むCARを発現する遺伝子改変T細胞の作製が記述されている。同じような一般的な技術は、T細胞又は他の免疫エフェクター細胞を改変して、MAb11-22.1のCDR1、CDR2及びCDR3の1つ以上をがん治療のために抗原結合ドメインとして発現するために使用されてもよい。CARポリペプチド分子の抗原結合ドメインは、任意の抗体、抗体断片、scFv、Fv、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(SDAB)、VH若しくはVLドメイン又はVHHドメインを含んでもよい。
【0044】
単一ドメイン抗体(sdAb)分子は、国際特許第WO9404678号及びHamers-Casterman,C.et al.(1993)Nature 363:446-448に開示されている。sdAb分子は、軽鎖を欠く重鎖として知られる天然に存在する単一ドメイン抗原結合分子である。sdAbの1つのタイプでは、可変ドメインが、例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、グアナコなどのラクダ科の種に由来してもよい、天然に軽鎖を欠く重鎖分子に由来する。ラクダ科以外の他の種も、天然に軽鎖を欠く重鎖分子を産生する場合がある。sdAb分子は、組換え体、CDRグラフトされたもの、ヒト化されたもの、ラクダ化されたもの、脱免疫化されたもの、及び/又は生体外で生成された(例えば、ファージディスプレイによって選択された)ものであってもよい。
【0045】
上記の結合剤はいずれも、がん細胞に対する細胞毒素と結合させることにより、がん細胞を標的とする抗体薬物複合体(ADC)において使用することができる。米国特許第9764041号;米国特許公開第20170151343号を参照する。
【0046】
(高親和性抗体変異体)
本明細書に記載されている配列の変異体を有する抗体は、本発明の範囲内である。変異体の1つのタイプは、以下に記載の高親和性変異体である。
【0047】
抗体は、抗原に対する高い親和性及び他の有利な生物学的特性を保持したままヒト化されるべきである。この目的を達成するために、好ましい方法によれば、親配列及びヒト化配列の3次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化製品を分析するプロセスによってヒト化抗体を作製する。3次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能である。選択された候補免疫グロブリン配列のありそうな3次元立体配座構造を表示して説明するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を検査することにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割、即ち、候補免疫グロブリンのその抗原と結合する能力に影響を与える残基の分析が可能になる。このようにすれば、レシピエント配列及びインポート配列からFR残基を選択して組み合わせて、標的抗原に対する親和性の増加など、所望の抗体特性を実現できる。
【0048】
改変すべきフレームワーク領域残基の例としては、標的と非共有結合的に直接結合するもの(Amit et al. Science 233:747-753(1986))、CDRの立体配座と相互作用し又は前記立体配座に影響を与える残基(Chothia et al. J.Mol.Biol.196:901-917(1987))、及び/又はVL-VHインタフェースに関与する残基(欧州特許第EP239400B1号)が挙げられる。特定の実施形態では、このようなフレームワーク領域残基の1つ以上に対する改変は、対象の標的に対する抗体の結合親和性の向上につながる。
【0049】
アミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当分野で知られる様々な方法によって作製される。これらの方法には、オリゴヌクレオチドの媒介する(又は部位特異的)変異誘発、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)変異誘発、及び種依存性抗体の以前に作製された変異体又は非変異体形態のカセット変異誘発が含まれるが、それらに限定されない。変異体を生成するための好ましい方法は、オリゴヌクレオチドの媒介する合成である。特定の実施形態では、抗体変異体は、置換された単一の超可変領域残基だけを有し、例えば、約2種~約15種の超可変領域置換を有する。
【0050】
変異体のライブラリを生成する方法の1つは、オリゴヌクレオチドの媒介する合成である。それぞれ約100個のヌクレオチドを有する3種のオリゴヌクレオチドを、軽鎖又は重鎖可変領域全体にわたって合成してもよい。各オリゴヌクレオチドは、(1)トリプレット(NNK).sub.20によって生成される60個のアミノ酸のストレッチ(ここで、Nは任意のヌクレオチドであり、KはG又はTである)、(2)各末端における次のオリゴ又はベクター配列との約15~30個のヌクレオチドのオーバーラップを含んでもよい。PCR反応でこれらの3種のオリゴヌクレオチドをアニーリングすると、ポリメラーゼが反対の鎖を埋めて、完全な二本鎖の重鎖又は軽鎖可変領域配列を生成する。トリプレットの数は、任意の長さの繰り返しに調整してもよく、オリゴヌクレオチドにおけるその位置は、特定のCDR又はフレームワーク領域内のアミノ酸だけを置換するように選択してもよい。(NNK)を使用することにより、コード化された変異体の各位置で20個のアミノ酸すべてが可能である。5~10個のアミノ酸(15~30個のヌクレオチド)のオーバーラップ配列は置換されないが、フレームワークのスタッキング領域内に収まるように選択するか、又は単独な合成ラウンド若しくはその後の合成ラウンドによって置換されてもよい。オリゴヌクレオチドの合成方法は、当分野でよく知られており、市販されてもいる。これらのオリゴヌクレオチドから抗体変異体を生成する方法も、当分野でよく知られており、例えば、PCRである。
【0051】
配列内のランダムな位置が異なる重鎖及び軽鎖変異体のライブラリは、バクテリオファージなど、任意の発現ベクターにおいて構築してもよく、それぞれのベクターは特定の重鎖及び軽鎖変異体をコードするDNAを含有する。
【0052】
抗体変異体の産生後、親抗体に対する変異体の生物学的活性を決定する。上述したように、これは、標的に対する変異体の結合親和性の決定に関する。対象の標的に対する抗体変異体の結合能力を速やかにスクリーニングするためのハイスループット方法は数多くある。
【0053】
次に、親抗体を上回る結合親和性を得るために、この初回のスクリーニングによって選択された1種以上の抗体変異体をスクリーニングしてもよい。結合親和性を決定するための通常の方法の1つは、BIAcore表面プラズモン共鳴システム(BIAcore,Inc.)を使用して結合及び解離速度定数を評価することである。メーカー(BIAcore)の説明に従って、標的の共有結合のためにバイオセンサーチップを活性化させる。次に、標的を希釈してチップに注射し、固定化物質の応答単位(RU)でのシグナルを得る。RUでのシグナルが固定化物質の質量に比例するため、これはマトリックス上の固定化標的の密度の範囲を表す。解離データを1サイトモデルにフィッティングさせてKoff±S.D.(測定値の標準偏差)を得る。各結合曲線に対して擬似一次速度定数(Ks)を計算し、タンパク質濃度の関数としてプロットすることにより、Kon±S.D.(フィッティングの標準誤差)を得る。SPR測定により、結合の平衡解離定数KdをKoff/Konとして計算する。平衡解離定数KDがKoffに反比例するため、結合速度(Kon)がすべての変異体に対して定数であると仮定すると、親和性の向上が推定できる。
【0054】
任意選択的に、得られた高い親和性を有する候補は、向上した結合親和性を有する抗体変異体には依然として所望の治療特性が保持されていることを確認するために、例えば、以下の実施例で記述されているアッセイでテストするように、1種以上の更なる生物学的活性アッセイにかけられてもよい。最適な抗体変異体には、親抗体よりも顕著に高い結合親和性で標的と結合する能力が保持されている。
【0055】
このようにして選択された抗体変異体は、抗体の意図された用途に応じて、しばしば更なる改変を受ける場合がある。このような改変は、アミノ酸配列の更なる変化、異種ポリペプチドとの融合、及び/又は以下に詳述するような共有結合改変に関与するものであってもよい。例えば、抗体変異体の適切な立体配座の維持に関与しないいかなるシステイン残基も、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防ぐために、一般的にセリンによって置換されてもよい。逆に、システイン結合を抗体に添加してその安定性を向上させてもよい(特に、抗体はFv断片などの抗体断片である場合はそうである)。
【0056】
(製剤)
適切な抗体を作製した後、対象に投与するための製剤として調製してもよい。凍結乾燥製剤は好ましく、そのために第1のステップとして、凍結乾燥前の配合物を調製する必要がある。凍結乾燥前の配合物における抗体の量は、所望の投与量、投与方式などを考慮して決定される。タンパク質は、一般的に溶液中に存在する。例えば、タンパク質は、pHが約4~8、好ましくは約5~7のpH緩衝溶液中に存在してもよい。例示的な緩衝液としては、ヒスチジン、リン酸、トリス(Tris)、クエン酸塩、コハク酸塩、その他の有機酸が挙げられる。緩衝液の濃度は、例えば、緩衝液及び製剤(例えば、再構成製剤)の所望の等張性に応じて、約1mM~約20mM、又は約3mM~約15mMであってもよい。好ましい緩衝液は、凍結保護特性を有するヒスチジンである。コハク酸塩も有用な緩衝液である。
【0057】
凍結乾燥前の配合物に凍結乾燥保護剤が添加される。好ましい実施形態では、凍結乾燥保護剤はスクロース、トレハロースなどの非還元糖である。凍結乾燥前の配合物中の凍結乾燥保護剤の量は、一般的に、再構成の時に得られる製剤は等張性となるような量であることが好ましいが、高張性の再構成製剤も適切な場合はある。さらに、凍結乾燥保護剤の量は、凍結乾燥時に許容できない量のタンパク質の分解/凝集が起こるほど少なくしてはならない。
【0058】
凍結乾燥保護剤が糖(スクロース、トレハロースなど)であり、タンパク質が抗体である場合は、凍結乾燥前の配合物における例示的な凍結乾燥保護剤の濃度は、約10mM~約400mM、好ましくは約30mM~約300mM、最も好ましくは約50mM~約100mMである。
【0059】
凍結乾燥保護剤に対するタンパク質の比率は、タンパク質と凍結乾燥保護剤の組み合わせごとに選択される。高タンパク質濃度の等張再構成製剤を生成するために、抗体がタンパク質として選択され、糖(例えば、スクロース又はトレハロース)が凍結乾燥保護剤として使用される場合、抗体に対する凍結乾燥保護剤のモル比は、1モルの抗体に対して約100~約1500モルの凍結乾燥保護剤であってもよく、好ましくは、1モルの抗体に対して約200~約1000モルの凍結乾燥保護剤であり、1モルの抗体に対して約200~約600モルの凍結乾燥保護剤が含まれてもよい。
【0060】
好ましい実施形態では、凍結乾燥前の配合物に界面活性剤を添加することが望ましいことが分かった。あるいは、又はさらに、界面活性剤は、凍結乾燥製剤及び/又は再構成製剤に添加されてもよい。例示的な界面活性剤としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又は80)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、トリトン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、若しくはステアリル-スルホベタイン、ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、若しくはステアリル-サルコシン、リノレイル-、ミリスチル-、若しくはセチル-ベタイン、ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノレアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、若しくはイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル)、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、若しくはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、メチルココイルナトリウム、若しくはメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム、及びMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.(ニュージャージー州・パターソン))、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及びエチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体(例えば、プルロニック(登録商標)(Pluronics)、PF68など)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。添加される界面活性剤の量は、再構成タンパク質の凝集を減少させ、再構成後の粒子の形成を最小限にする量である。例えば、界面活性剤は、凍結乾燥前の配合物中に約0.001~0.5%、好ましくは約0.005~0.05%の量で存在してもよい。
【0061】
凍結乾燥前の配合物の調製には、凍結乾燥保護剤(スクロース又はトレハロースなど)と増量剤(マンニトール又はグリシンなど)の混合物を使用してもよい。増量剤により、過剰なポケットのない均一な凍結乾燥ケーキを製造できる。
【0062】
Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載されているようなその他の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさない限り、凍結乾燥前の配合物(及び/又は凍結乾燥製剤及び/又は再構成製剤)に含まれてもよい。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される用量及び濃度ではレシピエンに対して無毒であり、別の緩衝剤、防腐剤、共溶媒、抗酸化剤(アスコルビン酸、メチオニンなど)、キレート剤(EDTAなど)、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、生分解性ポリマー(ポリエステルなど)、及び/又は塩形成対イオン(ナトリウムなど)が含まれる。
【0063】
本明細書に記述されている医薬組成物及び製剤は、保存中に物理的及び化学的安定性及び完全性を保持するために安定しているものが好ましい。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術は当分野で利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991);Jones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)で概説されている。安定性は、選択された温度で選択された期間にわたって測定されてもよい。
【0064】
体内投与に使用する製剤は無菌なものでなければならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌濾過膜で濾過することにより簡単に実現できることである。あるいは、タンパク質を除く成分に対して約120℃で約30分間高圧滅菌をすることで、混合物全体の無菌性を実現できる。
【0065】
タンパク質、凍結乾燥保護剤、その他の任意選択的な成分を混合した後、配合物を凍結乾燥する。この目的には、Hull50(登録商標)(Hull、米国)又はGT20(登録商標)(Leybold-Heraeus、ドイツ)の凍結乾燥機など、様々な凍結乾燥機が利用できる。凍結乾燥は、配合物を凍結し、続いて、一次乾燥に適する温度で凍結内容物から氷を昇華させることによって行われる。この条件においては、製品の温度が製剤の共晶点又は崩壊温度より低い。
【0066】
典型的には、一次乾燥の棚温度は、適切な圧力(典型的には約50~250mTorr)では約-30~25℃の範囲である(一次乾燥中、製品が凍結したままであると仮定する)。乾燥に必要な時間は、主にサンプルを入れる容器(例えば、ガラスバイアル)の中の配合物、そのサイズ、タイプ、及び液体の量によって決まり、数時間から数日(例えば、40~60時間)の範囲になる。二次乾燥段階は、主に容器のタイプとサイズ、使用するタンパク質のタイプによって、約0~40℃で実行されてもよい。例えば、凍結乾燥の水分除去段階全体の棚温度は、約15~30℃(約20℃)であってもよい。二次乾燥に必要な時間及び圧力は、例えば、温度、その他のパラメータなどに応じて、適切な凍結乾燥ケーキが生成される時間及び圧力である。二次乾燥時間は、製品に残留したい水分レベルによって決まり、典型的には少なくとも約5時間(例えば、10~15時間)がかかる。圧力は、一次乾燥ステップで採用される圧力と同じであってもよい。凍結乾燥の条件は、配合とバイアルのサイズによって異なってもよい。
【0067】
場合によっては、移送ステップを回避するために、タンパク質の再構成を行う容器内でタンパク質製剤を凍結乾燥することが望ましいことがある。この場合に、容器は、例えば、3、5、10、20、50、又は100ccのバイアルであってもよい。一般的な提案として、凍結乾燥により、水分含有量が約5%未満、好ましくは約3%未満の凍結乾燥製剤が得られる。
【0068】
所望の段階において、典型的にはタンパク質を患者に投与するタイミングに、凍結乾燥製剤は希釈剤で再構成されてもよく、これにより、再構成された製剤中のタンパク質濃度は、凍結乾燥前の配合物のタンパク質濃度と同じようになることが好ましい。
【0069】
再構成は、完全な水和を確保するために一般的に約25℃の温度で行われるが、所望により他の温度を採用してもよい。再構成に必要な時間は、例えば、希釈剤のタイプ、賦形剤及びタンパク質の量によって決まる。例示的な希釈剤としては、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば。リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液(Ringer’s solution)、又はデキストロース溶液が挙げられる。希釈剤は、任意選択的に防腐剤を含有する。例示的な防腐剤は上記で記述されており、ベンジルアルコール又はフェノールアルコールなどの芳香族アルコールが好ましい防腐剤である。使用される防腐剤の量は、タンパク質との適合性について異なる防腐剤濃度を評価し、防腐剤の有効性をテストすることによって決定される。例えば、防腐剤が芳香族アルコール(ベンジルアルコールなど)である場合、約0.1~2.0%、好ましくは約0.5~1.5%、最も好ましくは約1.0~1.2%の量で存在してもよい。
【0070】
あるいは、結合剤と、任意の周知の担体、賦形剤、緩衝剤、安定剤、防腐剤、補助剤、及び本明細書に記述されており当分野でよく知られるその他の添加剤を含む非凍結乾燥製剤が使用されてもよい。
【0071】
(用量と投与)
上述した製剤は、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)に、静脈内、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、皮内、関節内、滑液包内、髄腔内、皮内、腫瘍内、節内、髄内、経口、吸入若しくは局所経路による投与などの適切な経路によって投与されてもよいし、又は、経口、吸入スプレー、局所、直腸、鼻腔、頬側、膣若しくは埋め込み型リザーバーによって投与されてもよく、いずれの場合も、大量瞬時投与として若しくは一定期間にわたる持続注入によって投与されてもよく、又は、1、3、若しくは6か月のデポ注射可能若しくは生分解性の材料及び方法を使用するなど、注射可能なデポ投与経路によって投与されてもよい。
【0072】
ジェットネブライザー、超音波ネブライザーなどの市販の液体製剤用ネブライザーは、投与に有用である。液体製剤は直接噴霧してもよく、凍結乾燥粉末は再構成後に噴霧してもよい。あるいは、抗体は、フルオロカーボン製剤と定量吸入器を使用してエアロゾル化されるか、凍結乾燥粉末及び粉砕された粉末として吸入されてもよい。CARが本発明に使用される場合、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の組成物を腫瘍、リンパ節、又は感染部位、又はその他の場所に直接注射してもよい。
【0073】
本明細書に記述されている方法によって治療される対象は、哺乳動物、より好ましくはヒトであってもよい。哺乳動物には、家畜、競技動物(sport animal)、愛玩動物、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、及びラットが含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
「有効量」とは、単独にせよ、1種以上の他の有効成分との組み合わせにせよ、対象に治療効果を与えるために必要な有効成分の量を指す。有効量は、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、性別、体重などの個別の患者のパラメータ、治療期間、並行治療(ある場合)の特性、特定の投与経路、及び類似する要因によって異なるが、これらがすべて当業者によく知られており、通常の試験だけでも対処できる。一般的に、個別の成分又はその組み合わせの最大用量、即ち、合理的な医学的判断による最大安全用量を使用することが好ましい。医学的理由、心理的理由、又はその他の理由により、より低い用量又は許容用量が適切な場合もある。
【0075】
抗体の半減期などの経験的考慮は、一般的に投与量の決定に寄与する。例えば、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体などのヒト免疫系に適合する抗体は、抗体の半減期を延長させ、抗体が宿主の免疫系によって攻撃されるのを防ぐために使用されてもよい。投与頻度は、治療の過程において決定及び調整されてもよく、一般的には胃がんの治療及び/又は阻害及び/又は改善及び/又は遅延に基づいて決定されるが、必ずしもそうである必要はない。あるいは、抗体の持続放出製剤が適切な場合もある。持続放出を実現するための様々な製剤及び装置は当分野で知られている。
【0076】
一実施例では、本明細書に記述されている抗体の用量は、抗体を1回以上投与された個体において経験的に決定してもよい。個体には抗体の投与量を段階的に増やしていく。抗体の有効性を評価するために、通常の方法に従って疾患の指標(例えば、腫瘍の成長)を追跡してもよい。
【0077】
一般的に、本明細書に記述されているいずれかの抗体の投与については、以下に記述される試験から初期候補投与量を推定してもよい。数日間又はそれ以上の期間にわたる反復投与の場合、状態によっては、治療は、所望の症状の阻害が生じるまで、又はがんを軽減するのに十分な治療レベルに達するまで継続される。例示的な投与計画は、最初に高用量を投与し、続いてより低い維持用量を投与することを含む。しかし、医師の実現しようとする薬物動力学的減衰のパターンによっては、他の投与計画が有用な場合はある。例えば、週1回から4回の投与が考えられる。いくつかの実施形態では、投与頻度は、週1回、2週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、若しくは10週間に1回、又は月1回、2か月に1回、若しくは3か月に1回、又はそれ以上の間隔である。この療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視できる。投与計画(使用する抗体を含む)は、時間の経過とともに変わることがある。
【0078】
治療の目標及びがんの部位によって、医薬組成物を対象に投与するために、医学分野の当業者に知られる従来の方法を用いてもよい。
【0079】
注射用組成物は、植物油、ジメチルアクタミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、及びポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)などの様々な担体を含有してもよい。
【0080】
静脈内注射の場合、水溶性抗体は点滴法で投与されてもよく、その場合、抗体及び生理学的に許容される賦形剤を含む医薬製剤が注入される。生理学的に許容される賦形剤としては、例えば、5%のデキストロース、0.9%の生理食塩水、リンゲル液、又はその他の適切な賦形剤が挙げられる。
【0081】
筋肉内製剤、例えば、抗体の適切な可溶性塩形態の滅菌製剤は、注射用水、0.9%の生理食塩水、又は5%のグルコース溶液などの医薬品賦形剤に溶解して投与されてもよい。
【0082】
一実施形態では、抗体は、部位特異性又は標的化局所送達技術によって投与される。部位特異性又は標的化局所送達技術の例としては、抗体の様々な埋め込み型デポ源若しくは局所送達カテーテル(注入カテーテル、留置カテーテル、若しくは針カテーテルなど)、合成グラフト、外膜ラップ、シャント及びステント若しくはその他の埋め込み型装置、部位特異的キャリア、直接注射、又は直接使用が挙げられる。例えば、国際特許第WO00/53211号及び米国特許第5,981,568号を参照する。
【0083】
本開示の別の実施形態では、本明細書に記述されている医薬組成物及び製剤のいずれか(例えば、抗体又は結合剤を含む)を含有し、その使用及び/又は再構成のための説明を提供する製造品が提供される。前記製造品は容器を含む。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、シリンジ(例えば、デュアルチャンバーシリンジ)及び試験管が挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は製剤を保持し、容器上の又は容器に付随するラベルには、再構成及び/又は使用の説明が示されてもよい。例えば、ラベルには、製剤が特定のタンパク質濃度に再構成されることが示されてもよい。製剤を保持する容器は、再構成された製剤を繰り返し投与(例えば、2~6回投与)することを可能にする、複数回使用のバイアルであってもよい。製造品はさらに、適切な希釈剤(例えば、BWFI)を含む第2の容器を含んでもよい。希釈剤と凍結乾燥製剤を混合すると、再構成された製剤の最終的なタンパク質濃度は一般的に少なくとも50mg/mLである。製造品はさらに、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器、使用説明を含む添付文書など、商業的及びユーザーの観点から望ましいその他の材料を含んでもよい。
【0084】
(実施例)
以下の実施例は限定的なものではなく、単なる例である。特に断りがない限り、全ての細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC、バージニア州・マナサス)から購入され、検出用の全ての二次抗体は、Jackson ImmunoResearch Laboratories(ペンシルベニア州・ウェストグローブ)から購入された。DNA及びRNAの操作には、Sambrook et al.,Molecular cloning:A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989に記述されている標準的な方法を採用する。特に断りがない限り、市販の試薬及びキットはすべてメッカーの説明に従って使用された。
【0085】
がん治療のための標的特異的抗体を探索するために、生細胞免疫化(LCI)及び生細胞ハイスループットスクリーニング(HTS)技術を使用して、ヒト腫瘍表面抗原を特異的に標的とする抗体を生成し、そしてプロテオミクス及び分子生物学的手法を組み合わせて標的を同定した。
【0086】
実施例1:AML細胞株を特異的に標的とするMAb11-22.1 mAbの生成と特性評価
細胞表面抗原上の立体配座エピトープに対するmAbを得るために、以前にも記述されたように、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の2種のヒトAML細胞株であるMV4-11とTHP-1の混合物をLCI及びLC-HTSに使用した(国際特許第WO2014146487A1号、国際特許第WO2017114204号、米国特許公開第20210139602A1号;Li et al.,PLoS One.2013,8:e77398を参照する)。BD FACSCalibur(商標)フローサイトメーターとハイスループットサンプラー(HTS)を用いる蛍光活性化細胞選別(FACS)アッセイで、ハイブリドーマ培養物上清をこの2種のAML生細胞株の混合物との相互作用についてスクリーニングし、健康な成人(Stanford Blood Center(カリフォルニア州・パロアルト))から提供されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)でカウンタースクリーニングし、FlowJo(商標)ソフトウェア(Becton Dickinson(カリフォルニア州・サンノゼ))でデータを分析した。ヒトAML細胞株に強力で特異的な結合活性を示し、ヒトPBMCに結合活性を示さないハイブリドーマコロニーを、増幅、条件培地からの離脱、及び標準的な手順に従うサブクローニングのために選択した(Kohler &Milstein,Nature 1975,256:495-497;Winter &Milstein,Nature 1991,349:293-299)。更なる特性評価のために、MabSelect(商標) SuRe(商標) LXプロテインA樹脂(GE Healthcare(マサチューセッツ州・マールボロ))を用いてこれらのコロニーによって産生されたモノクローナル抗体(mAb)を精製した。
【0087】
MAb11-22.1 mAbと命名されたmAbは、テストされた9種のヒトAML細胞株のほぼ全てに対して高い結合能力を示したが、ヒトPBMCに示さなかった(
図1A、左のパネル)。AML M3サブタイプ細胞株であるNB4細胞に対する結合シグナルが特に高く、次はKasumi-1細胞株及びHL-60細胞株であった。結合がmAbとAML細胞表面上のFc受容体(FcR)との相互作用によって媒介されないことを確保するために、FACSアッセイでヒトTruStain FcX(商標)Fc受容体ブロッキング・ソリューション(Biolegend(カリフォルニア州・サンディエゴ))を使用した。MAb11-22.1 mAbのアイソフォームはIsoStrip(商標)マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Roche Molecular Systems(カリフォルニア州・プレザントン))によって決定されたIgG1/κであるため、AML細胞株と相互作用しない無関係なIgG1a/κマウス抗体を陰性対照として使用し(アイソタイプ対照抗体、
図1A、右のパネル)、MAb11-22.1 mAbとAML細胞表面との相互作用はMAb11-22.1 mAbの可変領域によって特異的に媒介されることを確認した。
【0088】
AML細胞の表面に対するMAb11-22.1 mAbの結合を可視化するために、免疫細胞化学(ICC)に基づく細胞表面抗体結合アッセイを行った。培養されたAML細胞を、4%のパラホルムアルデヒドにおいてサイトスピン4(Thermo Fisher Scientific(マサチューセッツ州・ウォルサム))によってガラススライドに固定した。加熱による抗原賦活化の後、ヤギ血清(MilliporeSigma(ミズーリ州・セントルイス))で細胞をブロックし、次にMAb11-22.1 mAb又はアイソタイプ対照抗体と共に1時間インキュベートし、続いて1:1000希釈されたペルオキシダーゼ標識AffiniPureヤギ抗マウスIgG(サブクラス1+2a+2b+3)、Fcγ断片特異的抗体(抗Mo IgG Fc-HRP pAb、Jackson ImmunoResearch Laboratories)と共に1時間インキュベートした。細胞は3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)で染色され、ヘマトキシリンで対比染色された。
図1Bに示すように、ICCアッセイにより、MAb11-22.1 mAbの標的はNB4細胞及びTHP-1細胞の表面に位置することが確認された。NB4細胞表面のDAB染色の強度はTHP-1細胞表面の強度よりはるかに高く、FACSアッセイにおける平均蛍光強度(MFI)と相関していた(
図1A、左のパネル)。
【0089】
さらに、複数のAML細胞溶解物をMAb11-22.1 mAb及びマウス抗ヒト/マウスβ-アクチンmAb(抗β-アクチンmAb、Proteintech Group(イリノイ州・ローズモント))各5μg/mLで同時にプローブし、続いて抗Mo IgG Fc-HRP pAbの1:20,000希釈液で検出したウェスタンブロットでは、非還元条件下では約250kDaの共通バンドが示され、還元条件下では約110kDaのかすかなバンドが示された(
図1C)。急性リンパ球白血病(ALL)細胞株であるRajiの全細胞溶解物でも、強度は低いものの、同じ位置にブロットが示された。対照的に、MAb11-22.1 mAbは、ウェスタンブロット法では、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(
図1C)又はヒトPBMC細胞溶解物(データ未掲載)でバンドが一切検出されなかった。AML細胞におけるこれらのハイブリダイズタンパク質バンドの相対強度は、FACSアッセイのMFI(
図1A)及びICC染色の強度(
図1B)に一致しており、このタンパク質はMAb11-22.1 mAbの標的である可能性が高いことを示した。
【0090】
実施例2:MAb11-22.1 mAbの標的としてのヒトトランスフェリン受容体1(TfR1)の同定と検証
AML細胞溶解物は、メーカーの説明に従ってIP溶解緩衝液(Thermo Fisher Scientific)で調製された。免疫沈降用Dynabeads(商標)プロテインA(Thermo Fisher Scientific)を室温(RT)で30分間、PBS中の50μgのMAb11-22.1 mAb又はアイソタイプ対照抗体と共にインキュベートした。抗体と結合したDynabeads(商標)を洗浄し、各細胞溶解物と共にRTで30分間インキュベートし、次に0.5%のTritonX-100/PBS、PBS緩衝液でこの順に洗浄した。2-メルカプトエタノールを含む4×Laemmli変性サンプル緩衝液でビーズから免疫沈降(IP)タンパク質と抗体を分離し、95℃で5分間加熱した。タンパク質をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離し、メーカーの手順書に従ってProteoSilver(商標)銀染色キット(MilliporeSigma)で染色した。IPサンプル中のウェスタンブロットと同じ分子量を持つ単一のタンパク質バンドが銀染色によって明らかにされた(
図2A)。バンドをゲルから切り出し、トリプシンで消化した。BGI Americas Corporation(マサチューセッツ州・ケンブリッジ)による液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)で、ゲルスライスに最も豊富なタンパク質としてTfR1が同定された(#PSM=32、カバレッジ=29.6%)。
【0091】
TfR1がMAb11-22.1 mAbの標的であることを確認するために、N末端Hisタグを有する組み換え発現ヒトTfR1細胞外ドメイン(rTfR1-ECD、ACRO Biosystems(デラウェア州・ニューアーク))を、AML及びALL細胞の全細胞溶解物サンプル(陽性対照)及びCHO細胞溶解物(陰性対照)と共に、非還元条件下でSDS-PAGEで分析し、続いて一次抗体としてMAb11-22.1 mAb及び抗β-アクチンmAb各5μg/mLと、1:20,000の抗Mo IgG Fc-HRP pAbを同時に用いてウェスタンブロットプローブした(
図2B)。結果は、MAb11-22.1 mAbは、rTfR1-ECDの計算分子量77.0kDaと相関する約80kDaの単一のバンドを検出できることを示した。
図1Cに示すように、Raji、NB4、OCI/AML2、及びCHO細胞溶解物は、MAb11-22.1 mAbとの反応で一致している結果を示した。
【0092】
MAb11-22.1 mAbとrTfR1-ECDとの間の相互作用を確認するために、直接ELISAアッセイを行った。0.1μg/mLのrTfR1-ECDでコーティングされたImmulon(登録商標)マイクロタイタープレート(Thermo Fisher)を、MAb11-22.1 mAb、6×His His-Tagモノクローナル抗体(抗His mAb、Proteintech)又はアイソタイプ対照抗体の段階希釈液とRTで1時間直接反応させ、続いて1:2,000の抗Mo IgG Fc-HRP pAbと1時間反応させた。3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を加え、SpectraMaxマイクロプレートリーダー(Molecular Device(カリフォルニア州・サンノゼ))を使用して、波長450nmでの吸光度を測定した。
図2Cは、6Hisタグ付きのrTfR1-ECDとMAb11-22.1 mAb又は抗His mAbとの直接的な相互作用を示しているが、アイソタイプ対照抗体との相互作用は示されないことから、TfR1はMAb11-22.1 mAbの標的であることが証明された。
【0093】
MAb11-22.1 mAbがヒトTfR1を認識することをさらに確認するために、Integrated DNA Technologies(アイオワ州・コーラルビル)に注文したプライマーのペア(配列番号11及び配列番号12)を使用して、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によりOCI/AML2及びTHP-1細胞から、TfR1タンパク質の全長をコードするTFRC cDNAを増幅した。cDNAは、C末端に、GFPをコードするDNA断片とインフレーム融合され、次に、選択のためにヒトCMVプロモーター及びピューロマイシン耐性遺伝子(PuroR)を含有する社内発現ベクターにクローニングされた。FACSでMAb11-22.1 mAbによって染色されなかったCHO-DG44細胞にTFRC-GFP発現プラスミドを形質移入し、ピューロマイシンを添加したEX-CELL(登録商標)CD CHO無血清培地(SFM)で成長させた。高レベルのEGFPを安定的に発現するCHO細胞コロニーを分離し、サブクローニングした。4℃で、CHO/rTfR1-GFP細胞を、精製されたMAb11-22.1 mAb、抗ヒトTfR1対照mAb(R&D Systems(ミネソタ州・ミネアポリス))、及びアイソタイプ対照抗体の2つのバッチで30分間染色し、続いてR-フィコエリトリン(PE)標識AffiniPureヤギ抗マウスIgG(サブクラス1+2a+2b+3)、Fcγ断片特異的pAb(抗Mo IgG Fc-PE、Jackson ImmunoResearch)で検出した。結果は、FL1(GFP)ゲーティングにおいて、CHO/rTfR1-GFP細胞はMAb11-22.1 mAb及び抗TfR1対照mAbの両方によって染色されたが、どちらの抗体も細胞表面にrTfR-GFP発現のないCHO細胞と結合できることを示した(
図2D)。MAb11-22.1 mAbのIC
50値は、0.03~0.04μg/mLで、約0.1μg/mLである抗TfR1対照mAbのIC
50値よりはるかに低かった。MAb11-22.1 mAbによる様々なGFP活性を持つCHO/rTfR-GFP細胞の染色は、MFI-PE値とMFI-FITC値との間の正の相関関係を示し(データ未掲載)、MAb11-22.1 mAbとヒトTfR1の細胞外ドメインとの直接的な相互作用を証明した。
フォワードプライマー:5’-GAATGATGGATCAAGCTAGATCAGC-3’(配列番号11)
リバースプライマー:5’-CTCATGGAAGCTATGGGTATCAC-3’(配列番号12)
【0094】
実施例3:MAb11-22.1 mAbとrTfR1-ECDとの結合親和性の測定
バイオレイヤー干渉法(BLI)ラベルフリー技術を用い、Octet(登録商標)QKシステム(Molecular Devices(カリフォルニア州・サンノゼ))を使用してMAb11-22.1 mAbとTfR1の細胞外ドメインとの結合親和性を決定した。MAb11-22.1 mAbを抗マウスIgG Fc捕獲(AMC)バイオセンサーに450秒間固定化し、動力学緩衝液で120秒間洗浄し、続いて段階希釈液においてrTfR1-ECDと450秒間結合させ、次に動力学緩衝液において解離した。ヤギ抗マウス(H+L)Fab(Jackson ImmunoResearch)をMAb11-22.1 mAbとの結合の陽性対照として使用した。rTfR1-ECDの濃度を300nMから0.08nMまで段階希釈してアッセイを繰り返したところ、解離時間を60分間に延長しても(
図3A、左のパネル)又は反応温度を37℃に上げても(データ未掲載)、シグナルの減衰は見られなかった。したがって、MAb11-22.1 mAbとrTfR1-ECDとの相互作用親和性は非常に高く、計算されたK
D値は1pM未満であった(
図3B)。MAb11-22.1 mAbと抗マウス(H+L)Fabとの結合は規則的な動力学曲線(
図3A、右のパネル)とかなり高い親和性(K
D=1.04~1.45nM)(
図3C)を示し、MAb11-22.1 mAbとrTfR1-ECDとの間の極めて高い親和性が人為的結果ではなかったことを示す。
【0095】
実施例4:ヒトTfR1との結合に関するMAb11-22.1 mAbとトランスフェリンの競合ELISA
MAb11-22.1 mAbが、Tfの結合部位と重なるヒトTfR1と結合するかどうかを決定するために、競合ELISAを行った。メーカーの説明に従って、EZ-Linkマレイミド活性化HRPキット(Thermo Fisher Scientific)を使用してHRPでMAb11-22.1 mAbを直接標識した。Immunlonマイクロタイタープレートを0.1μg/mLのrTfR1-ECDでコーティングし、2μg/mLから2.5倍段階希釈したヒトTf(MilliporeSigma)と個別に混合された、2μg/mLから4倍段階希釈したHRP結合MAb11-22.1 mAbと共に1時間インキュベートした。様々な濃度のTfを単独で陰性対照として加えた。徹底的に洗浄した後、HRP結合MAb11-22.1 mAbの結合を検出するためにTMBを加えた。停止溶液を添加した後、SpectraMaxマイクロプレートリーダーで450nmでの吸光度を測定した。
【0096】
図4は、様々な濃度においてTfの存在とは無関係に、MAb11-22.1 mAb-HRPが、rTfR1-ECDと用量依存的に結合することを示す。2μg/mL(25μM)のTfまで添加しても、MAb11-22.1 mAb-HRPのrTfR1-ECDへの結合は有意に妨害されないことから、Tfの結合部位はMAb11-22.1 mAbの結合エピトープと重ならないことが示唆された。
【0097】
実施例5:MAb11-22.1 mAbのPBMC及び骨髓(BM)細胞への結合に関するFACS分析
他の研究者らは、殆どの抗TfR1抗体はTfの取り込みを妨害し、患者において、貧血、好中球減少症、白血球減少症などの全身血液毒性を引き起こすことを報告した(CANDELARIA et al. Front.Immunol.17 March 2021)。治療候補としてのMAb11-22.1 mAbの安全性の問題を解決するために、Stanford Blood Center(カリフォルニア州・パロアルト)から、健康なドナーからの新鮮なPBMCの複数のバッチを購入し、HumanCells Bioscience(カリフォルニア州・フリーモント)から、健康なドナー又はAML患者の凍結BM細胞を購入した。細胞をPBSで洗浄し、氷冷PBSと1%のウシ血清アルブミン(BSA)でブロックした。20μg/mLから段階希釈したMAb11-22.1 mAb及びアイソタイプ対照抗体を使用して4℃でそれらの細胞を染色し、続いて1:800のFITC又はPE結合ヤギ抗Mo IgG Fc pAbで検出した(Jackson ImmunoResearch)。さらに、抗ヒトCD34-FITC(REAL487)、抗ヒトCD233-PE(REA368)、抗ヒトCD235a-PE(REA1092)をMiltenyi Biotec(カリフォルニア州・サンノゼ)から購入し、細胞をMAb11-22.1 mAbで同時に染色した。
【0098】
FACSの結果は、使用したmAbの濃度に関わらず、MAb11-22.1 mAbは正常なPBMC又は正常なBM細胞と結合しないことを示した(
図5A)。異なるバッチ(ドナー)のPBMC及びBM細胞において一致している結果が得られた(データ未掲載)。対照的に、AML患者からのBM細胞はMAb11-22.1 mAbと反応したが、アイソタイプ対照抗体と反応しなかった(
図5B)ことから、MAb11-22.1 mAbは健康なBMとAML BM種を区別できることを示唆した。健康なBMサンプルでは、20%を超える細胞は抗ヒトCD34 mAb-FITCで染色できる造血幹細胞であったが(
図5C、左のパネル)、MAb11-22.1 mAb及びアイソタイプ対照抗体と反応する細胞はわずかであった(
図5C、中間のパネル及び右のパネル)。TfR1は一般的に有核赤血球のマーカーであると考えられるが、CD233陽性赤血球又はCD235a陽性赤血球及び赤芽球のいずれもMAb11-22.1 mAbと反応しなかった(
図5D及び
図5E、左のパネル)ことから、MAb11-22.1 mAbは悪性細胞に発現されるTfR1だけを認識し、骨髓抑制を引き起こすリスクが低いことを示唆した。
【0099】
実施例6:腫瘍細胞によるMAb11-22.1 mAbの内在化アッセイ
10%のGibcoウシ胎児血清(FBS、Thermo Fisher Scientific)を添加したDMEM培地中のOCI/AML2、NB4又はRaji細胞を2枚の96ウェル培養プレートに1×105個の細胞/ウェルで播種し、10μg/mLから1:10段階希釈したMAb11-22.1 mAb、抗CD20 mAb(R&D Systems)又はアイソタイプ対照mAbと共に4℃で1時間インキュベートした。細胞を500×gで遠心分離して氷冷PBSで2回洗浄し、未結合のmAbを除去した。1枚の96ウェルプレートの細胞を温かい培地で再懸濁し、mAbの内在化ができるよう37℃でインキュベートし、別のプレートの細胞を氷冷培地に再懸濁し、抗体の内在化を防ぐために4℃でインキュベートした。30分間、1時間、2時間後に採取したサンプルを氷冷PBS/1%のBSAで2回洗浄し、続いて1:800に希釈した抗Mo IgG Fc-FITCと共に4℃で30分間インキュベートした。氷冷PBS/1%のBSAで3回洗浄した後、1%のパラホルムアルデヒドを含有する固定液150μLに細胞を再懸濁し、FACS分析に備え、暗所で保存した。
【0100】
FACSの結果は、MAb11-22.1 mAbは4℃で用量依存的に2種のAML細胞株OCI-AML2及びNB4の表面と結合したが、37℃ではすぐに内在化されたことを示した。Raji細胞は細胞表面上にTfR1のコピー数が非常に低いように見えるが、それでも37℃でMAb11-22.1 mAbを内在化できた(
図6A、左のパネル)。対照的に、抗CD20 mAbは、4℃ではRaji細胞とだけ結合し、AML細胞と結合せず、37℃ではRaji細胞によって部分的に内在化された(
図6A、中間のパネル)。アイソタイプ対照抗体は、予想通りに3種の細胞株のいずれも染色しなかった(
図6A、右のパネル)。
【0101】
FACSベースの内在化アッセイでは、抗体抗原複合体のエンドサイトーシスの間接的な証拠しか提供できず、抗体の内在化と抗体のシェディングを区別できなかった。mAbの内在化を直接観察するために、蛍光標識mAbを使用して蛍光顕微鏡ベースの内在化分析を行った。簡単に説明すると、Mix-n-Stain(商標)抗体ラベリングキット(MilliporeSigma)を使用し、メーカーの手順書に従ってCF488色素でmAbを標識した。細胞結合は、異なる濃度のmAbのある96ウェル培養プレートにおいて、氷冷DMEM培地中4℃で1時間行った。細胞を氷冷PBSで2回洗浄した後、1枚のプレートに温かいDMEMを加えて37℃で1時間インキュベートし、もう1つのプレートの細胞を冷PBSに再懸濁して、Keyence BZ-X800オールインワン蛍光顕微鏡(Keyence(イリノイ州・アイタスカ))を使用して蛍光イメージングを行った。アイソタイプ対照抗体は、CF488で標識され、陰性対照として並行して細胞とインキュベートされた。
【0102】
4℃で1時間インキュベートした後、MAb11-22.1 mAb-CF488はOCI/AML2細胞の表面と結合して、細胞の輪郭を描く高強度の蛍光環を形成した(
図6B、上のパネル)。蛍光強度は、使用したmAbの濃度に比例した。37℃で1時間インキュベートした後、蛍光シグナルの大部分が細胞表面から細胞の内部空間に移動したことから、表面と結合したMAb11-22.1 mAb-CF488分子は主にOCI/AML2細胞によって内在化されたことを示唆した(
図6B、下のパネル)。この現象は、NB4及びTHP-1を含む他のAML細胞株において、MAb11-22.1 mAb-CF488の異なる濃度(1、0.5、0.1、及び0.05μg/mL)で一貫して観察された(データ未掲載)。CF488標識アイソタイプ対照抗体は、どの被験細胞とも結合しなかった(
図6B、右のパネル)。
【0103】
同様の用量依存的結合及び内在化の結果が、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞株であるMDA-MB-231細胞で観察され、FACS分析で明らかになるように、4℃でMAb11-22.1 mAbと強く反応した。しかし、MDA-MB-231細胞の蛍光シグナルは、予想のとおり、AML細胞上の蛍光シグナルよりはるかに強かった(
図6C)。さらに、部分的な内在化は4℃でも起こり、MAb11-22.1 mAb-CF488分子の大部分は37℃で1時間インキュベートした後に内在化されたことから、MDA-MB-231細胞膜上に発現されるTfR1タンパク質はMAb11-22.1 mAbと結合すると内在化される傾向が高いことが示唆された。
【0104】
実施例7:AML細胞株の増殖に対するMAb11-22.1 mAbの生体外作用
細胞ベースの生体外アッセイでAML細胞株の増殖に対するMAb11-22.1 mAbの作用を評価した。メーカーの手順書に従って、セルカウンティングキット-8(CCK-8、Dojindo Molecular Technologies(メリーランド州・ロックビル))を使用して細胞生存率を決定した。簡単に説明すると、DMEM/10%FBS及び100μg/mLのMAb11-22.1 mAb又はアイソタイプ対照抗体で増殖したAML細胞を7枚の96ウェル細胞培養プレートに5×103個の細胞/ウェルで3通り播種し、37℃で5%のCO2の加湿雰囲気下でインキュベートした。24時間ごとに10μL/ウェルのCCK-8溶液で4時間インキュベートし、続いてOD450を測定することで細胞生存率を評価した。
【0105】
図7に示すように、2群のOCI/AML2細胞は成長を継続したが、MAb11-22.1 mAb処理細胞の増殖率はアイソタイプ対照抗体で処理された細胞の増殖率よりはるかに低かった(P<0.05)。同様のデータが他のAML細胞株でも得られた(データ未掲載)。したがって、MAb11-22.1 mAbはOCI/AML2細胞の増殖を部分的に阻害できたが、mAb自体は強力な治療候補ではなかった。実際には、MAb11-22.1 mAbは、CLDXマウスモデルが用いられる予備的な生体内研究では何の効果も示さなかった。MAb11-22.1 mAbはヒトTfR1と極めて高い親和性を有し、がん細胞による内在化の傾向が強いことを示したため、がん療法用のADCとして開発される大きな可能性が示された。
【0106】
実施例8:MAb11-22.1ハイブリドーマの可変領域cDNAの配列決定
SMARTer RACE 5’/3’キット(Takara Bio USA(カリフォルニア州・サンノゼ))を使用するcDNA末端の5’-急速増幅(5’-RACE)技術により、MAb11-22.1ハイブリドーマ細胞の全RNAから、MAb11-22.1 mAbの軽鎖(VL)及び重鎖(VH)の可変領域をコードするcDNAを増幅した。5’-RACEのプライマーは、配列番号13及び配列番号14として示される。cDNA断片をQ5(登録商標)High-Fidelity DNAポリメラーゼで増幅し、メーカーの手順書に従ってpMiniT2.0ベクター(New England Biolabs(マサチューセッツ州・イプスウィッチ))にクローニングした。高速ミニプラスミドキット(IBI Scientific(アイオワ州・ダビューク))及びサンガー法(Sanger DNA sequencing、Genewiz(カリフォルニア州・サウス・サンフランシスコ))によるプラスミド精製のために、各形質転換体の10個の大腸菌コロニーをランダムに選択した。全ての配列は、https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiのBLAST検索及びthe international ImMunoGeneTics(IMGT)information(登録商標)(http://www.imgt.org)によりVドメインの一意性を確認した。MAb11-22.1 mAbのVL及びVHのコンセンサス配列は、発明の開示の部分でそれぞれ、配列番号1及び配列番号3として示されている。コードされたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2及び配列番号4として示されている。
軽鎖プライマー:5’-CTGCTCACTGGATGGTGGGAAGATGG-3’(配列番号13)
重鎖プライマー:5’-AGCTGGGAAGGTGTGCACAC-3’(配列番号14)
【0107】
キメラMAb11-22.1 Ab(cAb)の構築と発現:
以下の配列番号15~18で示されるプライマーのペアを使用して、配列決定されたプラスミドからMAb11-22.1 mAbのVL及びVH遺伝子をPCR増幅した。PCR断片をSpeI-NarI(VL)又はXbaI-NheI(VH)制限酵素(New England Biolabs)で消化し、それぞれ軽鎖及び重鎖の発現を制御するマウスCMVプロモーター及びヒトCMV IE1プロモーターを含有する社内発現ベクターに輸送されている、ヒトκ軽鎖(CL)又はヒトIgG1重鎖(CH1~CH3)の定常領域とそれぞれインフレーム接続した。
LV PCRフォワードプライマー:5’-AGCACTAGTGCCGCCACCATGGAATCACAGACTCAGG-3’(配列番号15)
LV PCRリバースプライマー:5’-CTGGGCGCCGCTACAGTCCGTTTCAGCTCCAGCTTGG-3’(配列番号16)
HV PCRフォワードプライマー:5’-AGCTCTAGAGCCGCCACCATGGAGACAGACACACTCCTG-3’(配列番号17)
HC PCRリバースプライマー:5’-GCCTTTGGTGCTAGCAGAGACAGTGACCAGAGTC-3’(配列番号18)
【0108】
DNA配列決定による確認後、FectoProトランスフェクション試薬(Polyplus-SA(フランス・イルキルシュ))を使用し、メーカーの手順書に従って、EX-CELL(登録商標)CD CHO SFMで高密度まで成長できる社内開発のCHO-DG44誘導体であるDux-1S-HD細胞に発現プラスミドを形質移入した。AML細胞株への結合に関するFACS分析、次にMabSelect(商標)SuRe(商標)プロテインA樹脂(GE Healthcare)でのアフィニティー精製により、EX-CELL(登録商標)CD CHO SFMにおけるMAb11-22.1 cAbの一過性発現及び分泌を検証した。
【0109】
実施例9:MAb11-22.1 cAbの特性評価
精製されたcAbは、SDS-PAGE、ELISA、FACSなどの分析でそのmAb対応物と同様の特徴を示した(データ未掲載)。MAb11-22.1 cAbとrTfR1-ECDとの間の結合動力学も、Octet(登録商標)QKシステムによって決定された。抗ヒトIgG Fc捕獲(AHC)バイオセンサーを使用してMAb11-22.1 cAbを450秒間固定化し、ヤギ抗ヒト(H+L)Fab(Jackson ImmunoResearch)をMAb11-22.1 cAbへの結合のシステム対照として使用した。2.5倍段階希釈により、rTfR1-ECDの濃度は50nM~1.28nMの範囲にあった。
図3A~
図3Cに示したMAb11-22.1 mAbに関しては、MAb11-22.1 cAbの解離(K
off)は観察後60分間以内に検出されなかったため、MAb11-22.1 cAbとrTfR1-ECDとの親和性は極めて高かった(K
D<1pM、
図8A)。MAb11-22.1 cAbと抗ヒト(H+L)Fabとの結合は、予想のとおり、規則的な動力学曲線を示しており、K
Dは2.18nMであった(
図8B)。
【0110】
実施例10:がん細胞株に対するMAb11-22.1-S239C-DM1の生体外作用
MAb11-22.1 mAbは強力な細胞傷害活性を持たなかったが、ヒトTfR1との非常に高い親和性と高い腫瘍特異性により、がん治療用の優れたADC候補となった。ADC薬として使用できるかどうかを調べるために、MAb11-22.1 cAbの軽鎖及び重鎖定常領域の表面露出残基に対してシステインスキャンを実行し、様々なペイロードの部位特異的結合による抗腫瘍効果を調査した。部位特異的変異誘発により、以下の配列番号19及び20で示されるプライマーのペアを使用して、MAb11-22.1 cAbの重鎖Fc領域のセリン239コドン(TCC)をシステインコドン(TGC)に置き換えた。MabSelect(商標)SuRe(商標)プロテインA樹脂を使用して、一過性発現MAb11-22.1-S293C cAb変異体を精製した。JUNUTULA et al. (Nat Biotechnol.26:925-932,2008)に記述されているように、室温でPBS中の10倍モル過剰のジチオトレイトール(DTT)で処理することによって、MAb11-22.1-S293C cAbのCys239と結合されたシステイン又はグルタチオンを培地から除去した。抗体はS239Cの遊離チオール基を露出するように改めて折り畳まれ、SDS-PAGEによりcAbの完全性が分析された。室温下でゆっくりと10~60分間撹拌してPBSにおいてCys239の遊離チオール基とDM1を反応させることにより部位特異的結合を行って、MAb11-22.1-S293C-DM1を生成し、理論的な薬物抗体比(DAR)が2であるADC活性を付与した。30-kDa NMW限外濾過ディスク(MilliporeSigma)が装備されたAmicon(登録商標)撹拌セルリザーバーを使用して、10倍容量のPBSに対して3回透析濾過することによって遊離DM1を除去した。次に、MAb11-22.1-S293C-DM1を0.2μmシリンジフィルター(VWR International(ペンシルベニア州・ラドノール))で濾過滅菌した。非部位特異的結合の影響を排除するために、変異していないMAb11-22.1 cAb及びアイソタイプ対照抗体も、陰性対照として並行してDM1で処理された。SDS-PAGE、ELISA及びFACSを用いて、DM1処理抗体の完全性及び結合能力を分析した。Pierce(商標)発色性エンドトキシン定量キット(Thermo Fisher)でエンドトキシンを分析した。MAb11-22.1 cAb-DM1とMAb11-22.1-S239C-DM1との間では、TfR1及びがん細胞株に対する結合親和性に関して明らかな違いが見られなかった。予想のとおり、MAb11-22.1-S239C-DM1は、未処理のMAb11-22.1-S239Cと比べて、ゲル内遊走のわずかな遅延を示した。
S239Cフォワードプライマー:5’-AACTCCTGGGTGGACCTTGCGTGTTTCTGTTCCCCCCTAAGC-3’(配列番号19)
S239Cリバースプライマー:5’-AACACGCAAGGTCCACCCAGGAGTTCAGGAGCAGGGCAAGG-3’(配列番号20)
【0111】
OCI/AML2(AMLサブタイプM4)、Raji(ALL)、HCC38(TNBC)、及びMDA-MB-231(TNBC)などの代表的ながん細胞株を、DMEM/10%FBS培地において対数増殖期になるまで培養した。0日目には、CCK-8アッセイでベースラインのOD450が約0.4になるよう、最適な量の各細胞株を個別の抗体と96ウェル細胞培養プレートにおいて3通り混合した。37℃で5%のCO2の雰囲気において細胞をインキュベートした。3日目及び5日目にそれぞれCCK-8アッセイで細胞増殖を監視した。DM1処理を行わないアイソタイプ対照抗体は、細胞増殖のベースラインを反映した。本研究では、DM1で処理した又は未処理のMAb11-22.1-S239C及びMAb11-22.1 cAbを比較した。
【0112】
図9に示すように、4種の細胞株の細胞増殖は、全てMAb11-22.1-S239C-DM1によって阻害されたが、未処理のMAb11-22.1-S239C cAbによって阻害されなかった。野生型MAb11-22.1 cAbは、DM1処理に関係なく、細胞増殖に明らかな影響がなかった。AML及びALL細胞株は、100μg/mL及び300μg/mLの両方とも細胞増殖を完全に阻害したため、MAb11-22.1-S239C-DM1に対して非常に感受性があった。2種のTNBC細胞株は、100μg/mLの濃度では部分的にしか阻害効果がないため、MAb11-22.1-S239C-DM1に対する感受性が低かった。
【0113】
実施例11:AML異種移植マウスモデルを用いたMAb11-22.1-S239C-DM1の生体内評価
MAb11-22.1-S239C-DM1がAML腫瘍の成長に与える影響を評価するために、nu/nuマウスを使用して異種移植モデルを確立した。6週齢の雄の無胸腺ヌードマウス(Charles River Laboratories(マサチューセッツ州・ウィルミントン))の右側腹部の皮下腔に、0.1mLのPBSに溶解した1.5×106個のOCI/AML2細胞を注射した。全ての腫瘍結節が見えるようになったら、マウスを無作為に3群に分け(n=5又は6)、MAb11-22.1-S239C-DM1(低用量の場合は10mg/kg b.wt、高用量の場合は20mg/kg体重(b.wt))又は同様にDM1(20mg/kg b.wt)で処理されたアイソタイプ対照抗体(S239C変異なし)を4日ごとに1回、7回(Q4×7)腹腔内(i.p.)注射して治療した。薬物投与直前に、腫瘍の体積及び体重を4日ごとに測定した。体積=1/2×(幅)2×長さという式で腫瘍体積を計算した。腫瘍体積が2000mm3を超えた場合は、又は腫瘍が壊死し若しくは皮膚を通して潰瘍になった場合は、動物の安楽死を実施した。
【0114】
OCI/AML2異種移植は、侵襲的なCLDXマウスモデルである。MAb11-22.1 mAb又はMAb11-22.1 cAbのいずれも単独ではOCI/AML2異種移植腫瘍の成長を有意に遅らせることができなった(P>0.05、データ未掲載)。現在の研究では、10mg/kg b.wt(低用量)のMAb11-22.1-S239C-DM1は、1回又は2回の投与後に完全な退縮と永続的な応答をもたらした(
図10)。20mg/kg b.wt(高用量)MAb11-22.1-S239C-DM1治療群(n=6)のマウスは異なる応答を示した。3匹のマウスは、低用量群と同様に、4日目又は8日目以降に腫瘍体積が100%減少し、別のマウスは、4日目及び8日目に腫瘍退縮を示したが、その後腫瘍が再び成長し、残りの2匹のマウスはMAb11-22.1-S239C-DM1に応答せず、しかも1匹は腫瘍の進行のため24日目に安楽死を実施した。アイソタイプ対照群(n=5)では、全ての腫瘍が継続的に成長し、2匹のマウスは腫瘍が2000mm
3を超えたため20日目に安楽死を実施した。非常に高用量のADCが使用されたにも関わらず、研究中に、バイタルサインの変化、運動能力、食欲の低下又は総体重の減少などの全身的な副作用は観察されなかった。
【0115】
腫瘍の成長に対するMAb11-22.1-S239C-DM1の効果は、アイソタイプ対照群と比べて明らかであることから、MAb11-22.1 cAbは、がん治療用ADCとして良好な候補になれることが確認された。ヒトTfR1に対する高い親和性と特異性により、循環するMAb11-22.1-S239CはTfR1陽性腫瘍細胞に蓄積し、エンドサイトーシスによりDM1を細胞内に送達する。腫瘍細胞内に高濃度のグルタチオン(GSH)が存在すると、DM1はADCから放出され、異種移植腫瘍内の周囲の細胞にバイスタンダー殺傷効果を与える可能性があり、このことからMAb11-22.1 ADCは血液悪性腫瘍だけでなく、固形腫瘍にも適用できることが示唆された。
【0116】
高用量群における有効性のばらつきの原因となるメカニズムは不明である。サンプルサイズが小さいこと、及び、腫瘍細胞表面上のTfR1の発現レベルが異なるため化合物に対する応答に個体差があることが原因だと考えられる。高用量のADC薬剤はすぐに排除され又は薬剤耐性を引き起こすことがあるため、MAb11-22.1-S239C-DM1の用量域を最適化する必要がある。それにもかかわらず、腫瘍特異性が高く抗腫瘍効力データがあることから、MAb11-22.1はADCの開発に理想的な抗TfR1抗体である。一貫したDARとがん治療のための最適な用量域を実現するためには、MAb11-22.1 ADC用の強力なペイロードと理想的なリンカーの結合技術は現在、研究中である。
【0117】
本明細書に記述されている特定の方法及び組成物は、好ましい実施形態の代表例であり、例示的であり、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。当業者であれば、本明細書を検討すれば他の目的、態様、実施形態に想到するだろうし、それらは、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神の範囲に含まれる。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書に開示されている発明に様々な代替及び改変を加えてもよいということは当業者に自明であろう。本明細書に例示的に記述されている発明は、本明細書に必須として具体的に開示されていない要素又は制限がない場合でも適切に実施できる。したがって、例えば、本明細書の各例、本発明の実施形態又は実施例において、用語「含む」「含んでいる」「含有する」「有している(having)」及び「有する(have)」のいずれも同義語として、拡張的かつ制限なしに読み取られるものとする。本明細書に例示的に記載されている方法及びプロセスは、異なるステップの順序で適切に実施してもよく、本明細書又は特許請求の範囲に示されているステップの順序に必ずしも限定されるわけではない。
【0118】
いかなる状況においても、本発明は、本明細書に具体的に開示されている特定の実施例又は実施形態又は方法に限定されると解釈されない。いかなる状況においても、本発明は、特許商標庁の審査官又はその他の職員又は従業員による声明によって限定されると解釈されないが、そのような声明が、出願人による応答書面において、具体的にかつ制限なく全体として明示的に採用されている場合は除く。
【0119】
本明細書において、本発明が広範かつ一般的に記述されている。一般的な開示に含まれるより狭い種及び亜属分類のそれぞれも、本発明の一部をなす。本明細書で使用される用語及び表現は、限定ではなく記述のために使用され、そのような用語及び表現の使用には、示され記述されている特徴又はその一部の同等物を排除する意図はないが、請求される本発明の範囲内に様々な改変が可能であることには想到できよう。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び任意選択的な特徴によって具体的に開示されているが、当業者は本明細書に開示されている概念の改変及び変更を採用することができ、そのような改変及び変更は添付の請求項によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることが理解される。
【0120】
(参照による組み込み)
本明細書に引用されている全ての特許及び特許出願は参照によりここに組み込まれ、引用される他の全ての参考文献も同様である。
【0121】
一般的に言及されている抗体関係の特許は、次のとおりである。
米国特許第7317091B2号
米国特許第5,500,362号
米国特許第4,816,567号
米国特許第5,225,539号
米国特許第5,565,332号;第5,580,717号;第5,733,743号;及び第6,265,150号
米国特許第5,932,448号
米国特許第7,538,196号
米国特許第8,148,496号
米国特許第8,518,891号
米国特許第9,310,373号
米国特許第9764041号
米国特許第11,040,084号
欧州特許第EP239400B1号
国際特許第WO00/53211号及び米国特許第5,981,568号
国際特許第WO2014146487A1号
米国特許公開第20170151343号
米国特許公開第20170335281号
国際特許第WO2017114204号
米国特許公開第20210139602A1号
【0122】
明細書に引用されている非特許文献は、以下に、著者名順にリストされている。
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【配列表】
【国際調査報告】