(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】溶解度の高いFOXY-5ヘキサペプチドの安定な組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20241128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241128BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241128BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241128BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241128BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20241128BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
A61K38/08
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 111
A61K9/14
A61K9/20
A61K47/18
A61K9/19
C07K7/06 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534336
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2022084940
(87)【国際公開番号】W WO2023104952
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520144543
【氏名又は名称】ウントレサーチ・エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリクセン、デニス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA36
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD31
4C076DD51
4C076DD54
4C076FF01
4C076FF06
4C076GG05
4C076GG06
4C076GG09
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA17
4C084CA59
4C084DC50
4C084MA34
4C084MA44
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4C084NA02
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA30
(57)【要約】
本開示は、WntヘキサペプチドFoxy-5の新規で溶解性の高い組成物に関する。さらに、本開示は、その組成物の製造方法及び安定性評価に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
For-Met-Asp-Gly-Cys-Glu-Leu-OH(配列1、Foxy-5)及び窒素塩基を含む固形組成物であって、前記窒素塩基が、アンモニア、水酸化第四級アンモニウム、アルキル化グアニジン、アミノ酸、並びに第一級及び第二級アミンから選択される化合物であり、前記固形組成物が、場合により水を含む、固形組成物。
【請求項2】
Foxy-5に対して0.5~3.1モル当量の前記窒素塩基を含有する、請求項1に記載の固形組成物。
【請求項3】
前記窒素塩基が、アミノ酸、アンモニア、並びに第一級及び第二級アミンから選択される化合物である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の固形組成物。
【請求項4】
前記窒素塩基が、アンモニア、L-リシン、L-ヒスチジン、N-メチル-D-グルカミン及びトロメタミンから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の固形組成物。
【請求項5】
Foxy-5、並びに1.50~2.49当量、例えば1.7~2.1当量、例えば1.9~2.03当量、例えば1.95~2.01当量、例えば2.0当量の、アンモニア、L-リシン、L-ヒスチジン及びトロメタミンから選択される窒素塩基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の固形組成物。
【請求項6】
Foxy-5、並びに2.5~3.1当量、例えば2.9~3.03当量、例えば2.95~3.01当量、例えば3.0当量の、L-ヒスチジン及びN-メチル-D-グルカミンから選択される窒素塩基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の固形組成物。
【請求項7】
Foxy-5のジ-アンモニウム塩、ジ-L-ヒスチジン塩、トリ-L-ヒスチジン塩、ジ-L-リシン塩、ジ-N-メチル-D-グルカミン塩、トリ-N-メチル-D-グルカミン塩及びジ-トロメタミン塩から選択され、前記塩が非晶質であり、場合によりFoxy-5に対して0~5当量の水を含む、請求項1に記載の固形組成物。
【請求項8】
前記窒素塩基がL-ヒスチジンである、請求項2に記載の固形組成物。
【請求項9】
Foxy-5及び1.50~2.49当量、例えば1.7~2.1当量のL-ヒスチジンを含む、請求項8に記載の固形組成物。
【請求項10】
Foxy-5及び2.5~3.1当量のL-ヒスチジンを含む、請求項8に記載の固形組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の固形組成物の製造方法であって、
a) i.溶媒中の懸濁液としての、又は、
ii.粉末としての
遊離酸形態のFor-Met-Asp-Gly-Cys-Glu-Leu-OH(配列1、Foxy-5)を、
iii.0.5~1.49当量の窒素塩基と混合してFoxy-5のモノ塩を製造する工程、
iv.1.50~2.49当量の窒素塩基と混合してFoxy-5のジ塩を製造する工程、又は
v.2.5~3.1当量の窒素塩基と混合してFoxy-5のトリ塩を製造する工程、
b) 反応混合物を透明な溶液が得られるまで撹拌する工程、並びに
c) 溶液を沈殿、結晶化させて、又は、溶液を凍結乾燥若しくは噴霧乾燥して、固形組成物を単離する工程、を含み、
前記窒素塩基が、アンモニア、水酸化第四級アンモニウム、アルキル化グアニジン、アミノ酸、並びに第一級及び第二級アミンから選択される化合物であり、a)~c)の全ての工程を、必要に応じて不活性雰囲気下で行う、固形組成物の製造方法。
【請求項12】
水を溶媒として用いる、請求項11に記載の固形組成物の製造方法。
【請求項13】
前記反応混合物のpHを6.0より低く保ちながら、前記窒素塩基をFoxy-5に徐々に添加する、請求項11~12のいずれか一項に記載の固形組成物の製造方法。
【請求項14】
工程b)で得た透明な溶液を凍結乾燥する、請求項11~13のいずれか一項に記載の固形組成物の製造方法。
【請求項15】
得られた固形組成物を、さらに、
i.凍結乾燥又は噴霧乾燥した生成物の溶媒又は溶媒混合物中の懸濁液を準備すること、
ii.前記懸濁液に、5℃±2℃~50℃±2℃の1~3サイクルを含むサーマルサイクリング工程を行い、続いて、前記懸濁液を5℃±2℃で1~3日間熟成させること、
iii.例えばろ過又は遠心分離によってサーマルサイクリング後の生成物を単離すること、
を含むサーマルサイクリング工程にかけ、
前記サーマルサイクリング工程では、前記懸濁液を、50℃±2℃に達するまで10℃±2℃/時で加熱し、その後、前記懸濁液を、5℃±2℃に達するまで、
a.第1サイクルでは20℃±2℃/時、
b.第2サイクルでは10℃±2℃/時、及び
c.第3サイクルでは5℃±2℃/時
で冷却し、その後、前記懸濁液を、単離前に5℃±2℃で1~3日間撹拌することにより熟成させる、請求項11~14のいずれか一項に記載の固形組成物の製造方法。
【請求項16】
有機溶媒が、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル/水(90/10)及び酢酸エチルから選択される、請求項15に記載の固形組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、WntヘキサペプチドFoxy-5の新規で溶解性の高い組成物に関する。さらに、本開示は、前記組成物の製造方法及びその安定性評価に関する。
【背景技術】
【0002】
Foxy-5は、複数の一般的ながんにおける腫瘍の拡散及び再発の防止のための薬物候補として現在開発中の、潜在的な抗転移活性を有するホルミル化されたWNT5A由来のヘキサペプチド及びWNT5A模倣物である。Foxy-5は、式For-Met-Asp-Gly-Cys-Glu-Leu-OH(配列1、
図1)を有する。
【0003】
静脈内投与されると、Foxy-5は、主にFrizzledファミリーの、WNT5Aを介したシグナル伝達を活性化するWNT5A受容体に結合し、活性化する。
【0004】
Foxy-5は、転移のリスクを減らすために、WNT5Aリガンドががん抑制因子として作用するがん患者の腫瘍組織において、タンパク質WNT5Aの欠失を補うことが意図される。ステージIIIの大腸がん患者を対象とした近年の後ろ向き研究のサブ解析により、WNT5Aの発現が少ない患者の割合が、ステージIIの大腸がん(CRC)患者を対象とした以前の研究で観察されたものよりも顕著に高いことが示されている。CRCステージIII腫瘍の患者は、主に、原発巣の近傍のリンパ節に腫瘍細胞が存在し、それによってより侵攻性でより速く進行する点でステージIIとは異なる。より進行していない腫瘍ステージの患者では約45パーセントであるのと比べて、ステージIIIの患者の70パーセント近くにおいて、低いレベルのWNT5Aが観察された。同様の知見が乳がん組織において見られ、より侵攻性でない乳がんの種類では約45%であるのと比べて、侵攻性のトリプルネガティブ乳がんの70%において、WNT5Aの欠如又は低いレベルが観察された。乳がん、結腸がん、前立腺がん及び肝細胞がんを含むいくつかの種類のがんでは、原発巣におけるWNT5Aの欠如又は低いレベルが、WNT5Aタンパク質の発現が正常又は正常に近い腫瘍と比べた場合、より速い再発と関連することが実証された。このことは、WNT5Aレベルが疾患の経過に大きく影響を与えるという仮説を裏付ける。
【0005】
第2相のための薬物候補の安全性プロファイル、薬物動態及び用量決定を記録することを目的としたFoxy-5による終了した第1b相研究に基づき、Foxy-5は現在、第2相臨床試験研究であるNeoFox研究を受けており、これは、診断時に、原発巣が外科的に切除された後、高い再発のリスクを有すると考えられたステージII/IIIの結腸がん患者を含む。確立した評価基準に従って再発のリスクの評価が行われる。研究の目的は、Foxy-5が、主にWNT5Aの発現が少ない患者において、再発のリスクを減らすことを実証することである。研究は、スペイン(16)及びハンガリー(12)の28の病院で現在進行中である。
【0006】
Foxy-5それ自体、及びその製造のための古典的な固相(SPSS)法がInternational Pat. Publication No. WO 2006/130082 (A PEPTIDE LIGAND TO IMPAIR CANCER CELL MIGRATION)に記載されている。前臨床及び初期臨床研究のための医薬品有効成分(API)は、この経路により製造された。出願人により開発されたFoxy-5の液相経路は、International Patent Publication No. WO 2020/038878 (Solution phase routes for Wnt hexapeptides) and WO 2020/120198 (Linear solution phase synthesis for Wnt hexapeptides)に開示されている。
【0007】
Foxy-5の現在の製造方法は、塩ではない原薬(DS)の水への溶解度が限られているため、凍結乾燥最終製品の濃度は3g/Lである。これは、Foxy-5の商業的製造の生産量を大幅に限定する障害になっている。
【0008】
この問題を克服する初期の試みは、溶媒として(水に換えて)30%アセトニトリル水溶液を使用した代替的な凍結乾燥過程の開発をもたらした。開発された過程が7g/LまでのDS濃度に適用されること、すなわち>100%の生産性の向上が、スケールの小さい実験で実証され、35gスケールについて検証された。この成果は印象的であるが、それでもなお、最終工程がそのような高希釈を必要とする場合に商業スケールでFoxy-5を製造するのには問題が残る。
【0009】
結果として、溶媒極性の調節よりむしろ他の可溶化技術によるバッチサイズの増大が提案された。医薬品(DP)剤形の研究から、Foxy-5の塩を含まない形態からナトリウム塩への変化が、DS溶解度を少なくとも20g/Lのレベルに上昇させることが知られていた。
【0010】
これに関して、Foxy-5は、末端アミノ基がホルミル化されていることから、3つのカルボン酸部分を含有し遊離のアミノ基は含有しないことが知られている(
図1)。したがって、Foxy-5の塩基性/アルカリ性化合物との塩を製造することのみが可能である。いくつかのファインケミカル供給元は、「Foxy-5のトリフルオロ酢酸塩」として市場に出されている化合物を提供することが知られており、これは実際には遊離のトリフルオロ酢酸を含有する単なる凍結乾燥物である。
【0011】
Foxy-5のそのナトリウム塩への変換が出願人により調査された。Foxy-5は3つのカルボン酸基(Asp
2、Glu
5、及びC-末端カルボン酸)を含有することから、Foxy-5の水性スラリー(25g/L)を1当量、2当量、及び3当量の水酸化ナトリウムで処理することにより、一、二、及び三ナトリウム塩が生成された。出発物質として、非常に少量の2つの公知の不純物である
アスパルチミド(<0.1%)及び
二量体(<0.1%)を含有するFoxy-5の遊離酸のバッチを使用した(構造は
図2を参照)。
【0012】
Foxy-5の一ナトリウム塩は完全には溶解できず、NaOHの添加(1当量、pH=3.84)後すぐにゲル形成が観察された。
【0013】
二ナトリウム塩は、NaOH(2当量、pH=4.57)添加の10分以内に完全に溶解できた。溶液のHPLC分析は、アスパルチミド不純物の含有量の増加を示したが、一方で二量体形成は、無視できるほどのレベルで検出されたのみであった。凍結乾燥後、0.07%の二量体及び0.79%のアスパルチミドが検出された。
【0014】
三ナトリウム塩は、NaOH(3当量、pH=6.76)の添加後5分以内に溶解し、アスパルチミド不純物の上昇は最低限であったが、二量体形成の上昇が観察された。凍結乾燥後、0.41%の二量体及び0.17%のアスパルチミドが検出された。
【0015】
3つの塩のうち、三ナトリウム塩は>100g/Lという最も高い溶解度を有することが分かり、したがって、当初は期待できる新たな原薬候補となるように思われた。
【0016】
しかし、40℃での安定性検査において、Foxy-5の三ナトリウム塩は、相当な量のこれまでに検討した不純物をすぐに発現させ(
図3)、40℃で4週間後に15~20%のレベルに達することが質量分析により発見された。
【0017】
異なるpH値でのFoxy-5の水溶液の更なる研究は、pH9では、アスパルチミドの含有量が完全に溶解した直後に顕著に減少することを明らかにした。pH9で2時間、Foxy-5溶液を撹拌した後(
図4を参照)、HPLCクロマトグラムにおけるアスパルチミドのピークは完全に消失した(<LOD)。高pHではアスパルチミドの開環が起こり、親化合物並びにβ-Asp及びD-Asp誘導体のいずれかの形成を引き起こすことが知られている。しかし、顕著な二量体形成が観察された(pH=9で2時間後に2.5%)。クロマトグラムにおける二量体の同定は、別々に合成された参照物質による共溶出により裏付けられた。2つの公知の不純物(アスパルチミド及び二量体)に加えて、驚くべきことに、少量ではあるが、Foxy-5の脱硫されたCys→Alaアナログ(
図2及び3を参照)として三ナトリウム塩の第3の不純物が同定された。
【0018】
要約すると、Foxy-5を三ナトリウム塩に変換することにより水への溶解度を上昇させることができるが、この化合物は、原薬としての資格を与えるにはあまりに不安定すぎる。したがって、更なる臨床試験への供給と将来の商業目的のために満足のいく溶解度及び安定性を有する、Foxy-5の異なるDS形態が依然として求められている。
【0019】
定義
本明細書では、用語「窒素塩基」は、少なくとも1つの窒素原子を含む塩基性化合物を意味する。
【0020】
本明細書では、用語「モノ塩」又は「モノ-塩」は、明細書で定義した、1当量のFoxy-5及び0.5~1.45当量の窒素塩基を含む組成物を意味する。
【0021】
本明細書では、用語「ジ塩」又は「ジ-塩」は、明細書で定義した、1当量のFoxy-5及び1.50~2.49当量の窒素塩基を含む組成物を意味する。
【0022】
本明細書では、用語「トリ塩」又は「トリ-塩」は、明細書で定義した、1当量のFoxy-5及び2.5~3.1当量の窒素塩基を含む組成物を意味する。
【0023】
本明細書では、用語HT-XRPDは、ハイスループット粉末X線回折を意味する。
【0024】
本明細書では、用語HPLC-CADとは、荷電化粒子検出器を備えたHPLCを言う。
【0025】
本明細書では、用語UPLC-MSとは、質量分析検出器を備えた超高速液体クロマトグラフィーを言う。
【0026】
本明細書では、用語「サーマルサイクリング」とは、本発明の固形組成物を、溶媒又は溶媒混合物に懸濁し、得られた懸濁液を、それぞれのサイクルで50℃±2℃に達するまで10℃±2℃/時で撹拌しながら加熱し、その後、懸濁液を、5℃±2℃に達するまで、
a.第1サイクルでは20℃±2℃/時、
b.第2サイクルでは10℃±2℃/時、及び
c.第3サイクルでは5℃±2℃/時
で冷却する1~3サイクルを行う工程を言う。最後に、懸濁液を、5℃±2℃で1~3日間撹拌することにより熟成させる。温度プロファイルを
図11で説明する。
【発明の概要】
【0027】
Foxy-5は、既に述べられたように、3つのカルボン酸基:Asp2、Glu5、及びC-末端カルボン酸基を含有する、式For-Met-Asp-Gly-Cys-Glu-Leu-OHからなるホルミル化されたヘキサペプチドであり、したがって、塩基性化合物とモノ-、ジ-及びトリ-塩を形成できる。Foxy-5が、1:1、1:2及び1:3(Foxy-5:塩基)の適切な比でさまざまな窒素塩基(本明細書では、少なくとも1つの窒素原子を含有する塩基性化合物として定義される)と溶解性の高い組成物を形成することが判明した。これらの組成物は、非晶質凍結乾燥物として単離した組成物が全て塩として適切に(化学量論的に)特徴付けられなかったとしても、便宜上、以降、Foxy-5のモノ-、ジ-及びトリ-塩という。
【0028】
驚くべきことに、40℃で測定した場合のこれらの組成物の安定性は大幅に変化することが判明し、これは以下で検討する。本発明の全ての組成物及びそれらの不純物プロファイルの概要を
図10に示す。
【0029】
第1の側面では、本発明は、For-Met-Asp-Gly-Cys-Glu-Leu-OH(配列1、Foxy-5)、並びにアンモニア、水酸化第四級アンモニウム、アルキル化グアニジン、アミノ酸、並びに第一級及び第二級アミンから選択される窒素塩基を含む固形組成物を提供する。
【0030】
第2の側面では、本発明は、第1の側面に従う組成物の製造方法であって、以下の工程:
a) i.溶媒中の懸濁液としての、又は、
ii.粉末としての
遊離酸形態のFor-Met-Asp-Gly-Cys-Glu-Leu-OH(配列1、Foxy-5)を、
iii.0.5~1.49当量の窒素塩基と混合してFoxy-5のモノ塩を製造する工程、
iv.1.50~2.49当量の窒素塩基と混合してFoxy-5のジ塩を製造する工程、又は
v.2.5~3.1当量の窒素塩基と混合してFoxy-5のトリ塩を製造する工程、
b) 反応混合物を透明な溶液が得られるまで撹拌する工程、並びに
c) 溶液を沈殿させて、又は、溶液を凍結乾燥若しくは噴霧乾燥して、固形組成物を単離する工程、を含み、
窒素塩基が、アンモニア、水酸化第四級アンモニウム、アルキル化グアニジン、アミノ酸、並びに第一級及び第二級アミンから選択される化合物であり、a~cの全ての工程を、必要に応じて不活性雰囲気下で行う、組成物の製造方法を提供する。
【0031】
本発明の第3の側面では、第2の側面の工程c)で得た固形組成物を、さらに、
i.凍結乾燥又は噴霧乾燥した生成物の溶媒又は溶媒混合物中の懸濁液を準備すること、
ii.懸濁液に、5℃±2℃~50℃±2℃の1~3サイクルを含むサーマルサイクリング工程を行い、続いて、懸濁液を5℃±2℃で1~3日間熟成させること、
iii.例えばろ過又は遠心分離によってサーマルサイクリング後の生成物を単離すること、
を含むサーマルサイクリング工程にかけ、
サーマルサイクリング工程では、懸濁液を、50℃±2℃に達するまで10℃±2℃/時で加熱し、その後、懸濁液を、5℃±2℃に達するまで、
a.第1サイクルでは20℃±2℃/時、
b.第2サイクルでは10℃±2℃/時、及び
c.第3サイクルでは5℃±2℃/時
で冷却する。最後に、懸濁液を、例えばろ過又は遠心分離による単離前に5℃±2℃で1~3日間撹拌することで熟成させる。
【0032】
サーマルサイクリング工程の温度プロファイルを
図11で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】図は、Foxy-5(配列1)の化学構造を示す。Foxy-5は、ホルミル化されたN末端を有する6つのアミノ酸からなる直鎖ペプチドである。全ての光学活性なアミノ酸残基はL-配置にある。Foxy-5の分子式はC
26H
42N
6O
12S
2、分子量は694.8g/mol(平均質量)である。
【
図2】図は、Foxy-5の主な3つの不純物の化学構造を示す: A)Foxy-5のアスパルチミド誘導体 B)Foxy-5のCys-Cys二量体誘導体 C)Foxy-5のCys→Ala-アナログ
【
図3】図は、三ナトリウム塩の3つの公知の不純物:「アスパルチミド」、「二量体」及び「Ala-アナログ」の40℃での0、2及び4週間の保管での純度(HPLC面積%)を示す。詳細については詳細な説明を参照。
【
図4】図は、HPLCによるFoxy-5の高pH処理の追跡調査を示す:出発物質(下)、溶解後(中央)及びpH9で2時間後(上)。HPLCの結果は、比較の目的でy方向にずらして示している。
【
図5】図は、本発明のトリ塩(上の図)及びジ塩(下の図)の40℃での0、2及び4週間の保管での純度(HPLC面積%)を示す。図から理解できるように、ジ塩よりもトリ塩で4週間での安定性に大きな変動がある。
【
図6】上の図は、アミノ酸(Lys、Arg及びHis)対他の塩形成体(コリン、ジエチルアミン、アンモニア、N-Me-グルカミン及びトロメタミン)で製造したトリ塩の、40℃での0、2及び4週間の保管での純度(HPLC面積%)を比較する。下の図は、ジ塩についての同様の比較を示す。図から理解できるように、アミノ酸で製造し塩は、他の塩形成体で製造した塩よりも高い安定性を有するという一般的な傾向がある。
【
図7】図は、40℃で4週間保管した後に少なくとも90%のHPLC(面積%)による純度を有する、本発明の塩のうち選択されたものの40℃での0、2及び4週間の保管での純度(HPLC面積%)を示す。
【
図8】図は、
1)添加中、pHを6未満に保ちながら、Foxy-5の水性懸濁液に塩基をゆっくりと添加するか、又は、
2)塩基の全量を一度に添加するかのいずれかの方法で製造した、凍結乾燥した直後のFoxy-5のトリ-アンモニウム(NH3)、トリ-トロメタミン(TRO)及びトリ-N-メチル-グルカミン(NMG)塩の純度(HPLC面積%)を示す。図から理解できるように、トリ-アンモニウム塩の純度は添加の方法に非常に強く影響を受け、一方でトリ-TRO及びトリ-NMG塩の純度は比較的影響を受けない。
【
図9】図は、Foxy-5の3価の塩の凍結乾燥物の粉末X線回折結果(PXRD)を示す:(下から上へ):アンモニア トリ塩、N-メチル-D-グルカミン トリ塩、トロメタミン トリ塩及びヒスチジン トリ塩。回折結果は、比較の目的でy方向にずらしている。
【
図10】図は、「ジ塩」及び「トリ塩」に分けた、単離した本発明の固形組成物をもたらす全ての実施した実験の概要の表である。それぞれの組成物及び出発物質(Foxy-5の遊離酸)の経時(40℃での0、2及び4週間の保管)での不純物プロファイルの変化を示す。
【
図11】図は、Foxy-5組成物であるHIS-GEN14、HIS-GEN15(L-ヒスチジン1:2及び1:3)及びNMG-GEN16(N-メチル-D-グルカミン(1:2))の「サーマルサイクリング」に使用する温度プロファイルを示す。試料を有機溶媒中に懸濁し、5±2℃~50℃±2℃で撹拌した。サーマルサイクリングプロファイルは、5±2℃~50℃±2℃での3サイクル、及び5℃±2℃での3日間の熟成を含んでいた。したがって、試料を、50℃±2℃に達するまで10℃/時で加熱し、次いで、5℃±2℃に達するまで20℃/時(第1サイクル)、10℃/時(第2サイクル)及び5℃/時(第3サイクル)で冷却した。最後に、懸濁液を、5℃±2℃で3日間撹拌することにより熟成させた。
【
図12】
図12は、2つの表を含む:上の表は、Foxy-5-L-ヒスチジン塩のHPLC-CAD分析の結果を示す。下の表は、Foxy-5のN-メチル-D-グルカミン塩のHPLC-CAD分析の結果を示す。図から理解できるように、HPLC-CAD法を使用して決定した比は全て1:1、1:2及び1:3の予測比に近かった。観察されたわずかな偏差は、おそらく、試料の吸湿性に起因する。
【
図13】
図13は、下から上に、実験ID GEN5、実験ID TCP7(アセトン中でサーマルサイクリングを行ったもの)、実験ID TCP9(アセトニトリル/水(90/10)中でサーマルサイクリングを行ったもの)Foxy-5-L-ヒスチジン(1:2)のHT-XRPDパターンの重ね合わせを示す。
【
図14】
図14は、下から上に、実験ID GEN8、実験ID TCP11(エタノール中でサーマルサイクリングを行ったもの)、実験ID TCP15(酢酸エチル中でサーマルサイクリングを行ったもの)Foxy-5-L-ヒスチジン(1:3)のHT-XRPDパターンの重ね合わせを示す。
【
図15】
図15は、下から上に、実験ID GEN7、実験ID TCP18(テトラヒドロフラン中でサーマルサイクリングを行ったもの)、実験ID TCP20(酢酸エチル中でサーマルサイクリングを行ったもの)Foxy-5-N-メチル-D-グルカミン(MEG)(1:2)のHT-XRPDパターンの重ね合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
概要の項で述べたように、塩を含まない原薬(DS)の水への限定された溶解度に起因したわずか3g/Lの最終凍結乾燥用の生成物濃度に関する、Foxy-5ヘキサペプチド(この明細書では、Foxy-5ともいう)のための線形液相製造法が出願人のinternational patent application WO 2020/120198に公開されている。更に既に述べられたように、この問題を克服するための初期戦略はFoxy-5の三ナトリウム塩の生成をもたらし、これは良好な水溶解度を有するが、三ナトリウム塩を新たな原薬候補として使用不可能にする極めて低い安定性を有することが分かった。
【0035】
Foxy-5がさまざまな窒素塩基と共に溶解性の高い組成物を形成することが判明した。驚くべきことに、これらの組成物のうちの多くは、Foxy-5の三ナトリウム塩よりも大幅に安定であり、これは潜在的に、Foxy-5の商業的な製造のための生産量の相当な上昇を可能にする。
【0036】
この発見は、以下の潜在的な「塩形成体」:水酸化アンモニウム、L-アルギニン、水酸化カルシウム、コリン水酸化物、ジエチルアミン、L-リシン、L-ヒスチジン、水酸化マグネシウム、N-メチル-D-グルカミン及びトロメタミンを使用して、Foxy-5の塩についてスクリーニングを行う際になされた。Foxy-5のナトリウム塩と関連する公知の問題を考慮すると、塩形成体のこの選択は、薬学的な成分及び賦形剤の規制上の要件をも最終的には満たす、化学的に異なる候補の十分な広がりを提供すると考えられた。したがって、選択された「塩形成体」は、GRAS認証及び/又はStahl第1種又は第2種指定を有する化合物から選択される(P. H. Stahl and C. G. Wermuth, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, Second Edition, Wiley-VCH: Zuerich (2011)参照)。
【0037】
これまでに説明したように、塩のスクリーニング研究で得られた組成物は、非晶質凍結乾燥物として単離した組成物が塩として適切に(化学量論的に)特徴付けられなかったとしても、便宜上、以降、Foxy-5のモノ-、ジ-及びトリ-塩ともいう。
【0038】
Foxy-5のトリ塩は、2つの異なるアプローチ:Foxy-5の遊離酸の水性懸濁液に計算量の塩基を一度に添加、又は、添加中、懸濁液のpHを6.0未満に保ちながら、塩基をゆっくりと添加して、Foxy-5の遊離酸の20~30mg/mLの水性懸濁液に約3当量の塩基を添加することで製造した。
【0039】
懸濁液のままであったカルシウム及びマグネシウム塩以外の全てについて透明な溶液が得られ、これはカルシウム及びマグネシウム塩以外の全てについて、少なくとも20g/Lの溶解度が得られたことを示す。透明な溶液は凍結乾燥され、固形の凍結乾燥物は、PXRD及びHPLCにより特性が評価された(全ての組成物の概要は実施例の項及び
図10を参照)。全てが非晶質であることが判明した(例示したPXRD図は
図9を参照)。いくつかの塩形成体については、約50g/Lの溶解度を有するトリ塩を製造する成功した試みがなされ、いくつかのトリ塩では溶解度が100g/Lを超えた。
【0040】
既に研究されている溶解性の高い三ナトリウム塩(背景技術欄を参照)もまた比較のために生成された。
【0041】
3価の塩の実験において透明な溶液をもたらした全ての塩形成体、すなわち水酸化アンモニウム、L-アルギニン、コリン水酸化物、ジエチルアミン、L-リシン、L-ヒスチジン、N-メチル-D-グルカミン及びトロメタミンにより、ジ塩も製造された。この場合も、全ての場合で透明な溶液が得られ、これはFoxy-5のジ塩も、20mg/mL以上の水への溶解度を有していたことを示す。溶液は凍結乾燥され、固形の凍結乾燥物は、PXRD及びHPLCにより特性が評価された(実施例の項を参照)。全てが非晶質であることが判明した。いくつかの塩形成体については、約50g/Lの溶解度を有するジ塩を製造する成功した試みがなされた。モノ塩が同様の方法で製造された。
【0042】
得られた凍結乾燥物は、PXRD分析により証明されたように全て非晶質固形物であった。多くの場合、固形物はわずかに吸湿性であった。
【0043】
第1の側面では、本発明は、For-Met-Asp-Gly-Cys-Glu-Leu-OH(配列1、Foxy-5)及び窒素塩基を含む固形組成物であって、窒素塩基が、アンモニア、水酸化第四級アンモニウム、アルキル化グアニジン、アミノ酸、並びに第一級及び第二級アミンから選択される化合物である、固形組成物を提供する。
【0044】
第1の側面の態様では、固形組成物は、0.5~3.1当量のアンモニア、水酸化第四級アンモニウム、アルキル化グアニジン、アミノ酸、並びに第一級及び第二級アミンから選択される窒素塩基を含有する。
【0045】
第1の側面の好ましい態様では、本発明は、Foxy-5(For-Met-Asp-Gly-Cys-Glu-Leu-OH、配列1)、並びに2.5~3.1当量のアンモニア、水酸化第四級アンモニウム、アルキル化グアニジン、アミノ酸、並びに第一級及び第二級アミンから選択される窒素塩基を含む「トリ塩」を提供する。
【0046】
第1の側面の別の好ましい態様では、本発明は、Foxy-5(For-Met-Asp-Gly-Cys-Glu-Leu-OH、配列1)、並びに1.50~2.49当量のアンモニア、水酸化第四級アンモニウム、アルキル化グアニジン、アミノ酸、並びに第一級及び第二級アミンから選択される窒素塩基を含む「ジ塩」を提供する。
【0047】
第1の側面の別の態様では、本発明は、Foxy-5(For-Met-Asp-Gly-Cys-Glu-Leu-OH、配列1)、並びに0.5~1.49当量のアンモニア、水酸化第四級アンモニウム、アルキル化グアニジン、アミノ酸、並びに第一級及び第二級アミンから選択される窒素塩基を含む「モノ塩」を提供する。
【0048】
背景技術欄で述べたように、Foxy-5の三ナトリウム塩は高い水溶解度を有するが、驚くべきことに、遊離酸形態と比較して不安定であることが判明した。ナトリウム塩の主な不純物は、
Foxy5のCysジスルフィド(二量体)、
Foxy5のCys→Ala置換、すなわち脱硫誘導体、及び
Aspアスパルチミド誘導体
であることが判明した(
図2参照)。
【0049】
本発明の第1の側面の組成物の安定性分析は、これらの組成物が、量は変化するものの公知のナトリウム塩と同じ不純物を含有することを実証した。経時での前記不純物の変化はまた、組成物間で大幅に変わる。
【0050】
40℃での2及び4週間の第1の側面に従う組成物(及び既に製造された三ナトリウム塩)の安定性研究が行われた。いくつかの一般的な傾向が判明した。
図5から理解できるように、凍結乾燥の直後に分析された場合(0週間)、並びに40℃で2及び4週間観察された場合の組成物の絶対純度は、実質的に異なることが判明した。トリ塩の純度は、ジ塩の純度よりも変化した(トリ塩の4週間でのHPLC純度78~95%対ジ塩の4週間での87~96%)。さらに、
図6から理解できるように、アミノ酸を含む組成物の絶対純度は、一般的に、他の塩形成体を含む組成物と比較した場合、40℃での4週間後により高かった(4週間での値:トリ塩について約90%対約85%、ジ塩について約95%対約90%)。
【0051】
ある態様では、本発明は、Foxy-5及び2.5~3.1当量のアミノ酸、例えば2.8~3.05当量のアミノ酸、例えば2.9~3.02当量のアミノ酸、例えば2.95~3.01当量のアミノ酸、例えば3.0当量のアミノ酸を含む組成物を提供する。
【0052】
別の態様では、本発明は、Foxy-5及び1.50~2.49当量のアミノ酸、例えば1.7~2.1当量のアミノ酸、例えば1.8~2.05当量のアミノ酸、例えば1.9~2.03当量のアミノ酸、例えば1.95~2.01当量のアミノ酸、例えば2.0当量のアミノ酸を含む組成物を提供する。
【0053】
好ましい態様では、本発明は、Foxy-5、及びリシン、アルギニン、又はヒスチジンから選択されるアミノ酸を含む組成物を提供する。
【0054】
本発明の組成物の多くは、既に述べられたように、ある程度吸湿性であり、多くは、湿度の高い空気に晒された場合に粘着性になることが判明した。しかし、元素分析と組み合わせたアッセイ分析は、本発明の組成物のうちのいくつかは、粘着性ではない二水和物及び四水和物といった水和物を形成した、適切な塩として特徴付けることができることを明らかにした(実施例欄を参照)。本発明の組成物は凍結乾燥した非晶質固形物(凍結乾燥物)として単離されたため、そのような水和物は、結晶性水和物ほど正確に定義することはできないが、そうは言っても、組成物のうちの多くは、Foxy-5と、塩を形成する塩基の1:2(「ジ塩」)又は1:3(「トリ塩」)のおおよその比を有する塩のように非常に明確に定義されることが判明した。
【0055】
最後に、
図7は、40℃で4週間保管した後に少なくとも90%のHPLC(面積%)により測定された純度を有する組成物を示す。図から理解できるように、高い安定性の本発明の組成物は特定の塩形態に限定されない。
【0056】
第1の側面の別の態様では、したがって、本発明は、窒素塩基が、アミノ酸、アンモニア、並びに第一級及び第二級アミンから選択される化合物である、組成物を提供する。
【0057】
第1の側面の好ましい態様では、用いられる窒素塩基が、アンモニア、L-リシン、L-ヒスチジン、N-メチル-D-グルカミン及びトロメタミンから選択される。
【0058】
他の好ましい態様では、本発明は、Foxy-5、並びに1.50~2.49当量、例えば1.7~2.1当量、例えば1.9~2.03当量、例えば1.95~2.01当量、例えば2.0当量の、アンモニア、L-リシン、L-ヒスチジン及びトロメタミンから選択される窒素塩基を含む組成物を提供する。
【0059】
他の好ましい態様では、本発明は、Foxy-5、並びに2.5~3.1当量、例えば2.9~3.03当量、例えば2.95~3.01当量、例えば3.0当量、例えば2.5~3.1当量の、L-ヒスチジン及びN-メチル-D-グルカミンから選択される窒素塩基を含む組成物を提供する。
【0060】
他の好ましい態様では、本発明は、Foxy-5のジ-アンモニウム塩、ジ-ヒスチジン塩、トリ-ヒスチジン塩、ジ-リシン塩、ジ-N-メチル-D-グルカミン塩、トリ-N-メチル-D-グルカミン塩及びジ-トロメタミン塩を含み、それらの塩が、場合によりFoxy-5に対して0~5当量の水を含む組成物を提供する。
【0061】
特に好ましい態様では、本発明は、Foxy-5及び1.5~3.1当量、例えば1.7~2.49当量、例えば1.7~2.1当量、又は、例えば2.5~3.1当量のL-ヒスチジンを含む組成物を提供し、それらの組成物は、場合によりFoxy-5に対して0~5当量の水を含む。
【0062】
本発明の第2の側面は、第1の側面に従う組成物の製造方法であって、以下の工程:
a) i.溶媒中の懸濁液としての、又は、
ii.粉末としての
遊離酸形態のFor-Met-Asp-Gly-Cys-Glu-Leu-OH(配列1、Foxy-5)を、
iii.0.5~1.49当量の窒素塩基と混合してFoxy-5のモノ塩を製造する工程、
iv.1.50~2.49当量の窒素塩基と混合してFoxy-5のジ塩を製造する工程、又は
v.2.5~3.1当量の窒素塩基と混合してFoxy-5のトリ塩を製造する工程、
b) 反応混合物を透明な溶液が得られるまで撹拌する工程、及び
c) 溶液を沈殿させて、又は、溶液を凍結乾燥若しくは噴霧乾燥して、固形組成物を単離する工程、を含み、
窒素塩基が、アンモニア、水酸化第四級アンモニウム、アルキル化グアニジン、アミノ酸、並びに第一級及び第二級アミンから選択される化合物であり、a)~c)の全ての工程を、必要に応じて不活性雰囲気下で行う、組成物の製造方法を提供する。
【0063】
第2の側面の好ましい態様では、工程iii)、iv)又はv)で塩形成に用いる窒素塩基は、アンモニア、L-リシン、L-ヒスチジン、N-メチル-D-グルカミン及びトロメタミンから選択される。
【0064】
好ましい態様では、工程i)におけるFoxy-5の濃度は、水中で約20~30mg/mLである。他の好ましい態様では、工程vi)で塩形成に用いる窒素塩基は、1.50~2.49当量、例えば1.7~2.1当量、例えば1.9~2.03当量、例えば1.95~2.01当量、例えば2.0当量の、アンモニア、L-リシン、L-ヒスチジン及びトロメタミンから選択される窒素塩基である。
【0065】
他の好ましい態様では、工程v)で塩形成に用いる窒素塩基は、2.5~3.1当量、例えば2.9~3.03当量、例えば2.95~3.01当量、例えば3.0当量の、L-ヒスチジン及びN-メチル-D-グルカミンから選択される窒素塩基である。
【0066】
これまでに説明したように、第1の側面に従う組成物の製造において2つの異なるアプローチを使用した:Foxy-5の遊離酸の水性懸濁液に計算量の塩基を一度に添加するか、又は、添加の間、反応混合物のpHを6.0未満に保ちながら、塩基をゆっくりと添加する。
【0067】
凍結乾燥した直後の組成物のHPLC分析では、
図8から理解できるように、「ゆっくりと」滴定することが、「素早い」アプローチを使用して製造された組成物よりも低いレベルの不純物を含有する組成物を製造することが判明した。図から理解できるように、影響はアンモニアの「トリ塩」で最も大きく、純度が約98%から95%に低下する(ゆっくりと添加→素早い添加)。これと比較して、トロメタミン及びトリ-N-メチル-グルカミンの「トリ塩」の純度は、これらの塩が素早い添加により形成される場合にわずかに低いだけである。理論に縛られることはないが、本発明者らは、この現象は塩を形成する塩基のpKaに関連するかもしれないと考えている:水酸化アンモニウムは3つの塩基のうちで最も強く、9.3のpKaを有し、一方でトロメタミンとN-メチルグルカミンの両者は8.0のpKaを有する。
【0068】
第2の側面の態様では、工程b)で塩形成に用いる窒素塩基を、Foxy-5の遊離酸の水性懸濁液に一度に添加する。第2の側面の他の態様では、工程b)で塩形成に用いる窒素塩基を、添加の間、反応混合物のpHを6未満に保ちながら、Foxy-5の遊離酸の水性懸濁液に徐々に添加する。
【0069】
第2の側面の更に他の態様では、工程bの最終的な透明な溶液を、凍結乾燥して本発明の固形組成物を得る。第2の側面の他の態様では、固形組成物を、結晶化を含む沈殿により工程bにおいて最終的な透明な溶液から得る。いくつかの態様では、沈殿又は結晶化を、1つ以上の貧溶媒の添加、蒸発、冷却又はそれらの組合せにより達成する。
【0070】
本発明の組成物のうちのいくつかが、スケールアップのために選択された。この一部として、最初に単離した非晶質生成物をサーマルサイクリング工程に供し、その工程では、非晶質生成物の有機溶媒中の懸濁液を、5℃±2℃~50℃±2℃の加熱及び冷却を交互に行う1~3サイクルにかけ、その後、懸濁液を5℃±2℃で1~3日間撹拌する熟成工程を行った。驚くべきことに、サーマルサイクリングが行われた物質は、凍結乾燥した物質よりも綿毛状ではなく静電気を帯びにくく、取り扱いが容易であることが判明した。
【0071】
本発明の第3の側面では、第2の側面の工程c)で得た固形組成物を、さらに、
i.凍結乾燥又は噴霧乾燥した生成物の溶媒又は溶媒混合物中の懸濁液を準備すること、
ii.懸濁液に、5℃±2℃~50℃±2℃の1~3サイクルを含むサーマルサイクリング工程を行い、続いて、懸濁液を5℃±2℃で1~3日間熟成させること、
iii.例えばろ過又は遠心分離によってサーマルサイクリング後の生成物を単離すること、
を含むサーマルサイクリング工程にかけ、
サーマルサイクリング工程では、懸濁液を、50℃±2℃に達するまで10℃±2℃/時で加熱し、その後、懸濁液を、5℃±2℃に達するまで、
a.第1サイクルでは20℃±2℃/時、
b.第2サイクルでは10℃±2℃/時、及び
c.第3サイクルでは5℃±2℃/時
で冷却する。最後に、懸濁液を、例えばろ過又は遠心分離による単離前に5℃±2℃で1~3日間撹拌することで熟成させる。
【0072】
サーマルサイクリング工程の温度プロファイルを
図11で説明する。
【0073】
第3の側面の好ましい態様では、有機溶媒を、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル/水(90/10)及び酢酸エチルから選択する。
【0074】
第3の側面の好ましい態様では、サーマルサイクリングが行われた生成物は、1:2及び1:3の比のFoxy-5-L-ヒスチジン塩、又は1:2の比のFoxy-5-N-メチル-D-グルカミン塩である。代表的なHT-XRPD図形を
図13~15に見ることができる。
【実施例】
【0075】
Foxy-5のpKaの決定
Foxy-5の遊離酸(ロット:1058263)のpKaを、SiriusT3Control Vers. 2.0.0.0ソフトウェアを備えたSirius T3を使用して、25℃での電位差滴定により測定した。自動化水性滴定法を使用し、1.5mLのISA水に溶解させた1.0mgの固体APIを初期値とし、同じ試料について連続して3回滴定した。全ての滴定では、試料溶液の開始pHを0.5M KOHで12に調整し、最終pHを0.5M HClで2までゆっくりと滴定した。
【0076】
SiriusT3Refine Vers. 2.0.0.0ソフトウェアを使用して滴定曲線をフィッティングさせ、対応するpKa値を計算した。理論的に予測される4か所の酸性部位の全てのpKaの値が実験的にアクセスできる範囲で測定され、RMSDは0.071であった。フィッティングの結果を表1に示す。
【0077】
ACD/Percepta 14.51.0(ビルド3382)の古典的モード及びGALASモード、並びにSirius T3 Vers. 2.0.0.0ソフトウェア内のACD_Prediction Vers. 2.0.0.0パッケージにより、理論的なpKa値も計算した。後者はpKaの測定に使用するプログラムである。計算した値の分子上の特定部位への割り当てをソフトウェアで行った。表1に示すように、3つの予測法で、0.1~0.5単位で互いに一致する値が得られた。実験値は予測値にかなり近く、システイン基のチオール及びL-アスパラギン酸のカルボン酸の測定値は、対応する予測範囲のほぼ中央にあり、末端カルボン酸及びL-グルタミン酸基のカルボン酸の測定値は、予測範囲の上限をわずかに外れている。
【0078】
【0079】
以下に、「トリ塩」、すなわち約3当量の窒素塩基を含有するFoxy-5組成物、「ジ塩」、すなわち約2当量の窒素塩基を含有するFoxy-5組成物、及び「モノ塩」、すなわち約1当量の窒素塩基を含有するFoxy-5組成物に分けて、本発明に従って製造した組成物について、詳しく説明する。
【0080】
形成された全ての組成物及び出発物質(Foxy-5遊離酸)自体の安定性試験のデータを、40℃における0、2及び4週間の保管で測定し、
図10に含める。
【0081】
安定性測定の分析条件
安定性試料の純度測定には、物質固有のUPLC法の以下のパラメーターを使用した。
【0082】
【0083】
Foxy-5塩の比の決定
単離したいくつかのFoxy-5塩、すなわちアンモニアのジ塩及びトリ塩、並びにヒスチジンのジ塩及びトリ塩(以下の実施例を参照)について、元素分析(C、H、N、O及びS)を最初に行った。これらの塩では、測定値は塩のさまざまな水和物と合理的に一致しただけであったことから、本明細書に開示した方法でFoxy-5の1:1、1:2及び1:3塩が製造されたことを明白に証明するために、比を決定する他の分析法を検討することを決定した。
【0084】
そこで、9つの異なるFoxy-5塩(1:1、1:2及び1:3の比の、L-ヒスチジン、アンモニウム及びN-メチル-D-グルカミン)の比の決定を、HPLC-CAD及び1H-NMRで試みた。
【0085】
水への溶解度
定量的溶解度法を使用して9種の塩の溶解度を決定した。物質を24時間水に懸濁させ、その後、母液の一部をUPLCで分析する。24時間後に物質が溶解した場合、溶解度は、より大きい(>)とした。
【0086】
溶解度の結果の概要を表3に示す。
【0087】
【0088】
製造した1:2及び1:3塩は全て20mg/mlを超える溶解度を示し、1:1塩は約20mg/mlの溶解度を示した。比較として、遊離のFoxy-5ヘキサペプチドの溶解度は約3mg/mlである。
【0089】
HPLC-CAD
Foxy-5-L-ヒスチジン塩及びFoxy-5-N-メチル-D-グルカミン塩の比の決定のためにHPLC-CAD法を開発した。しかし、アンモニウム塩が移動相に含まれることから、この方法はFoxy-5のアンモニウム塩には適していない。
【0090】
濃度0.1mg/mlの原液及び10種の注入量(1μl~5.5μlを0.5μl刻み)を使用して、L-ヒスチジン及びN-メチル-D-グルカミンの検量線を作成した。対イオンの濃度が約0.1mg/mlとなるように、分析に使用するFoxy-5塩の量を計算した。次いで、予測面積対実測面積を用いて比を計算した(L-ヒスチジンは
図12の上の表、N-メチル-D-グルカミンは
図12の下の表を参照)。HPLC-CAD法で決定した比は全て1:1、1:2及び1:3の予測比に近いものであった。したがって、HPLC-CADは、Foxy-5とそのそれぞれの対イオンの比を決定するのに十分に適している。このHPLC法は、Foxy-5のアンモニウム塩の比を決定できないが、HPLC移動相を適切に変更することでこの問題を回避できる。
【0091】
1
H-NMR
1H-NMRは、共形成体が有機物で1H-NMRを測定できる場合、塩のスクリーニングにおいてAPIとその共形成体の比を決定する標準的な方法である。L-ヒスチジン及びN-メチル-D-グルカミンは1H-NMRを測定できるプロトンを含有する。アンモニアはプロトンを含有するが、それは通常1H-NMRを測定できないので、定量化できない。
【0092】
したがって、1H-NMRにより、Foxy-5とL-ヒスチジン及びFoxy-5とN-メチル-D-グルカミンの比を決定することを試みた。N-メチル-D-グルカミンのメチル基は塩形成前の2.26ppmから塩形成後の2.48ppmにシフトしたことから、Foxy-5-N-メチル-D-グルカミンの1:2塩の比の決定は順調に進んだ。メチル基の積分により、GEN16で1:2.15、TCP18で1:2.01、TCP20で1:2.02の比が示された。このように、1H-NMRはFoxy-5-L-NMG塩の比を決定する優れた方法である。
【0093】
しかし、Foxy-5-L-ヒスチジン塩の比の決定は困難であった。GEN14は、予測した1:2の比であると決定された。一方、他の試料の比は、約1:0.1と決定され、これはL-ヒスチジンのDMSO-d6への溶解度が低いことによって説明できる。L-ヒスチジンは、おそらく、しばらくするとNMR溶媒中で結晶化を開始し、そのため、測定中に検出されなかった。
【0094】
新たな試料をD2O中で製造し、実際、L-ヒスチジンのプロトンは非常に強力なシグナルを示したが、Foxy-5とL-ヒスチジンの比は予測よりも低く、すなわち1:2の試料では1:1.4、1:3の試料では1:2.1であった。ペプチド自体の積分値も、分子構造から逸脱していた。したがって、緩和遅延がより長い「qNMR」と名付けられたNMR法で測定することにした。1:3の比のFoxy-5-L-ヒスチジン塩であるGEN15及びTCP11について試験した。qNMR法により、ペプチドの分子式と良好に一致するプロトン積分値が得られ、L-ヒスチジンとの比は1:3に近いことが判定された。
【0095】
結論として、比を決定する上記分析法から、水溶性が良好なFoxy-5の1:1、1:2及び1:3の塩を、この明細書で開示した方法により製造できることが示されたと言うことができる。溶解度の測定により、遊離Foxy-5ペプチドの低い溶解度(3mg/ml)から、1:1の塩の上昇した溶解度(約20mg/ml)を経て、1:2及び1:3の塩の大幅に上昇した溶解度(最大で150mg/ml)への明らかな傾向が示されている。
【0096】
Foxy-5塩のスケールアップ及びサーマルサイクリング
スケールアップのために3つの塩、すなわち1:2及び1:3の比のFoxy-5-ヒスチジン、並びに1:2の比のFoxy-5-N-メチル-D-グルカミンを選択した。これらの塩は、溶解度が31mg/mlを超え、製造中にpH<6を維持できることから選択した。水酸化アンモニウムの1:2塩もこれらの要件を満たすが、現在のところ、この塩の比の決定に利用できる正確な分析法が存在しないことから、現時点ではスケールアップには選択しなかった。
【0097】
選択した全ての塩について300mgスケールにスケールアップした。全ての場合(Foxy-5-L-ヒスチジン(1:2)、Foxy-5-L-ヒスチジン(1:3)及びFoxy-5-N-メチル-D-グルカミン(1:2))で固形物を得た。1H-NMR、UPLC-MS、HPLC-CAD及びTGMSを使用して固形物を分析した。
【0098】
得られた固形物を5種の溶媒中で温度プロファイルにかけた(
図11参照)。サーマルサイクリング実験の結果を表4に示す。
【0099】
【0100】
サーマルサイクリングを行った試料のXRPD図を
図13~15に示す。スケールアップ及びサーマルサイクリングの結果、大部分は非晶質物質となったが、いくつかの試料はサーマルサイクリングの前後で潮解性であることが判明した。HIS 1:3塩では、XRPD図に結晶化を示すいくつかのピークが含まれていた。詳しく調べたところ、ピークは、単斜晶系として沈殿した純粋なL-ヒスチジンのわずかな過剰に由来することが判明した。
【0101】
驚くべきことに、サーマルサイクリングを行った物質は、綿毛状のものが少なく、静電気を帯びにくいため、凍結乾燥した物質よりも取り扱いが容易であることが判明した。
【0102】
「トリ塩」の形成
Foxy-5のトリ塩は、一般的に、Foxy-5の水又は他の適切な溶媒中の懸濁液に、塩基を添加することで製造する。塩基は、調製中にpHを6未満に保ちながら、そのまま又は溶液中の状態で、一度に又は徐々に添加できる。
【0103】
アルギニン トリ塩
実験 ARG-P1
89.7mg(0.129mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の白色懸濁液を得た;67.7mg(3当量)のL-アルギニンをN2パージ下で添加して、pH7.31の透明無色溶液を得た;室温で2時間撹拌して、pH7.27の透明無色溶液を得た;シリンジフィルター(直径13mm、PVDF0.2μm)で10mL丸底フラスコにろ過した;得られた溶液をドライアイス中で凍らせた;18時間15分凍結乾燥し、白色固体を得た;PXRDにより特性を評価した;冷凍庫で保管し、14日後にHPLCで特性を2回評価した。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;HPLCでは、2回の注入の純度は96.47面積%及び96.40面積%である。
【0104】
カルシウム トリ塩
実験 Ca-P1
89.6mg(0.129mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の白色懸濁液を得た;28.8mg(3当量)のCa(OH)2を添加して、pH12.36の希薄白色懸濁液を得た;室温で2時間撹拌して、pH12.34の希薄白色懸濁液を得た;室温で一晩撹拌して、白色懸濁液を得た;最低限の溶解度に達しなかったため実験を終了した。
【0105】
コリン トリ塩
実験 CHO-P1
89.6mg(0.129mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、白色懸濁液を得た;95.4μL(3当量)の46%コリン水酸化物(水溶液)(密度=1.073g/L)をN2下で添加して、pH8.51のベージュ色溶液を得た;室温で2時間撹拌して、pH8.43のベージュ色溶液を得た;PVDF0.2μmのシリンジフィルターで10mL丸底フラスコにろ過した;溶液を凍らせ、凍結乾燥し、ベージュ色固体を得た;PXRDにより特性を評価した;HPLCで特性を2回評価した。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;HPLCでは、2回の注入の純度は92.14面積%及び92.08面積%である。
【0106】
ジエチルアミン トリ塩
実験 DEA-P1
90.5mg(0.130mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の白色懸濁液を得た;40.2μL(3当量)のジエチルアミン(密度=0.707g/L)をN2パージ下で添加して、pH5.43の透明無色溶液を得た;室温で2時間撹拌して、pH5.45の透明無色溶液を得た;シリンジフィルター(直径13mm、PVDF0.2μm)で10mL丸底フラスコにろ過した;得られた溶液をドライアイス中で凍らせた;18時間15分凍結乾燥し、白色固体を得た;PXRDにより特性を評価した;冷凍庫で保管し、14日後にHPLCで特性を2回評価した;この試料の一部を40℃で2週間及び4週間、密閉容器に保管し、HPLCにより試験した;40℃での2週間及び4週間の保管でガラス質の外観を有することが観察された。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;HPLCでは、2回の注入の純度は97.26面積%及び97.22面積%である。
【0107】
リシン トリ塩
実験 LYS-P1
90.3mg(0.130mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の白色懸濁液を得た;56.8mg(3当量)のL-リシンをN2パージ下で添加して、pH6.39の透明無色溶液を得た;室温で2時間撹拌して、pH6.46の透明無色溶液を得た;シリンジフィルター(直径13mm、PVDF0.2μm)で10mL丸底フラスコにろ過した;得られた溶液をドライアイス中で凍らせた;18時間15分凍結乾燥し、白色固体を得た;PXRDにより特性を評価した;冷凍庫で保管し、14日後にHPLCで特性を評価した;この試料の一部を40℃で2週間及び4週間、密閉容器に保管し、HPLCで特性を2回評価した。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;HPLCでは、2回の注入の純度は97.44面積%及び97.39面積%である。
【0108】
マグネシウム トリ塩
実験 Mg-P1
89.6mg(0.129mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の白色懸濁液を得た;22.7mg(3当量)のMg(OH)2を添加して、濃い白色懸濁液を得た(濃厚なためpHを測定できなかった);室温で2時間撹拌して、pH9.06の白色懸濁液を得た;室温で一晩撹拌して、白色懸濁液を得た;最低限の溶解度に達しなかったため実験を終了した。30g/Lを超える溶解度の塩が得られなかったため、特性評価を行わなかった。
【0109】
ナトリウム トリ塩
実験 Na-P1
90.5mg(0.130mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の白色懸濁液を得た;388.6μL(3当量)の1M NaOH(水溶液)をN2パージ下で添加して、pH8.23の透明無色溶液を得た;室温で2時間撹拌して、pH8.17の透明無色溶液を得た;シリンジフィルター(直径13mm、PVDF0.45μm)で10mL丸底フラスコにろ過した;得られた溶液をドライアイス中で凍らせた;24時間05分凍結乾燥し、白色固体を得た;冷凍庫で保管し、5日後にHPLCにより特性を評価した;試料は、極めて吸湿性であったため秤量が困難であった;この試料の一部を40℃で2週間及び4週間、密閉容器に保管し、HPLCで2回試験した;4週間の試料は、吸湿性のために秤量が困難であった。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;微量のNaClが存在する可能性がある;HPLCでは、2回の注入の純度は95.11面積%である。
【0110】
アンモニア トリ塩
実験 NH3-P8
100.3mg(0.144mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを15mLのSupelcoバイアルに量り取った;3.333mLの超純水をN2パージ下で添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の懸濁液を得た。懸濁液を500rpmで撹拌し、pH電極を挿入した。0.1MのNH4OH(水溶液)を、pHを測定するために定期的に休止しながら0.05mL/分で投入した。15分で0.50mLの塩基が添加され、pHは3.84であった;45分で合計1.34mLの塩基が添加され、pHは4.09であった;1時間06分で合計2.37mLの塩基が添加され、pHは4.42であった;1時間14分で合計2.74mLの塩基が添加され、pHは4.64であった;透明無色溶液を得た;1時間45分で合計3.74mLの塩基が添加され(2.59当量と同じ)、pHは5.81であった;投入を休止した;3時間40分でpHは6.00であった;残りの0.58mLの塩基は添加しなかった;実験を終了した。透明無色溶液を20mL丸底フラスコに入れ、ドライアイスとイソプロパノールの混合物中で凍らせ、凍結乾燥した。HPLC(2回)及び元素分析を行った。HPLCでは、2回の注入の純度は98.08面積%及び98.05面積%であり、対応するアッセイ値はそれぞれ68.76%及び68.71%である。窒素の硫黄含有量に対する比は、トリ塩では完全には適合しないが、(重量計算に基づく)添加量が、わずか2.59当量であったため、これは驚くべきことではない。生成物の元素分析(C、H、N、O及びS)(下の表)は、2.6当量のアンモニア及び2当量の水を含む塩と良好に一致する。
【0111】
【0112】
N-メチル-D-グルカミン トリ塩
実験 NMG-P5
90.3mg(0.130mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを7mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加した(抵抗率≧18.2MΩcm)。pH計を挿入し、pHが2.66であることを確認した。N2パージを行い、700rpmで撹拌した。0.78mLのN-メチル-D-グルカミンの0.5M水溶液(50mLの水に4.8803g)を、薬量計を用いてゆっくりと添加し、複数の時点でpHを測定した。0.25mLの0.5M NMG(水溶液)を添加した後、いくらかの物質が反応容器の底に存在する濁った溶液が観察された。pHは4.01であった。0.70mLの0.5M N-メチル-D-グルカミン溶液を添加した後、透明溶液を得た;pHは5.51であった。合計0.74mLの0.5M N-メチル-D-グルカミン溶液を添加した(2.85当量と同じ);pHは5.99であった。2時間撹拌した後、溶液のpHは6.01であった。透明無色溶液を20mL丸底フラスコに入れ、ドライアイス中で凍らせた;一晩凍結乾燥した。白色固体が得られ、PXRD及びHPLCにより特性を評価した。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;HPLCでは、2回の注入の純度は96.90面積%及び96.69面積%である。
【0113】
トロメタミン トリ塩
実験 TRO-P3
90.0mg(0.1295mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを7mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加した(抵抗率≧18.2MΩcm)。pH計を挿入し、pHが2.69であることを確認した。N2パージを行い、700rpmで撹拌した。懸濁液が観察された。0.39mLのトロメタミンの0.5M水溶液(20mLの水に1.2115g)を、薬量計を用い、30分かけててゆっくりと添加し、複数の時点でpHを測定した。0.29mL(1.12当量)の0.5M TRO(水溶液)を添加した後、ほぼ全ての固形物が溶解し、pHは4.04であった。0.59mLの0.5M TRO溶液(2.28当量)を添加した後、透明溶液を得た;pHは4.99であった。合計0.71mLの0.5M TRO溶液を添加した(2.74当量と同じ);pHは5.95であった。2時間撹拌した後、溶液のpHは5.97であった。透明無色溶液を20mL丸底フラスコに入れた;冷凍庫中で凍らせた;一晩凍結乾燥した。白色固体が得られ、PXRDにより特性を評価した。次いで、試料を冷凍庫で保管し、5日後にHPLCで特性を2回評価した。HPLCでは、2回の注入の純度は98.34面積%及び98.35面積%である。
【0114】
ヒスチジン トリ塩
実験 HIS-P2
100.4mg(0.145mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを7mLのSupelcoバイアルに量り取った;3.33mLの超純水をN2パージ下で添加し(抵抗率≧18.2MΩcm)、白色ゲル状固形物の懸濁液が観察された;500rpmで撹拌し、電極を挿入して、pHが2.64であることを確認した;0.0985MのL-ヒスチジン(水溶液)を、pHを測定するために休止しながら0.1mL/分で投入した;2分で0.30mLの塩基が添加され、pHは3.50であった;9分で合計1.00mLの塩基が添加され、pHは3.50であった;19分で合計2.00mLの塩基が添加され、pHは4.23であった;少しのゲル状固形物の塊があるほぼ透明な溶液が観察された;29分で合計3.00mLが添加され、pHは4.61であった;39分で合計4.00mLの塩基が添加され、pHは5.11であった;透明無色溶液が観察された;43分で合計4.38mLの塩基が添加され、pHは5.29であった;数時間撹拌した;投入開始後3時間23分にpHを測定すると5.27であり、実験を終了させた;透明無色溶液を20mL丸底フラスコに入れ、得られた溶液をドライアイス中で凍らせ、19時間05分凍結乾燥し、綿毛状の白色固体を得た;HPLC(2回)及び元素分析を行った。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された(
図8)。HPLCでは、2回の注入の純度は98.25面積%及び98.21面積%であり、対応するアッセイ値はそれぞれ62.12%及び61.95%である。生成物の元素分析(C、H、N、O及びS)(下の表)は、トリ塩四水和物である非晶質生成物と良好に一致する。
【0115】
【0116】
ヒスチジン トリ塩の溶解度の決定
12.9mgの上記ヒスチジン塩を、撹拌速度500rpm及び水投入速度0.01mL/分で水に注意深く再溶解させた。合計0.08mLの水の添加後に完全に溶解したこと観察され、これは少なくとも161g/Lの溶解度に相当する。
【0117】
実験 HIS-GEN8
70.1mg(0.101mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを5mlの水に室温でスラリー化し、0.1Mのヒスチジン(水溶液)を、約2.97~2.98モル当量となるまで撹拌しながらゆっくりと添加した。pHは5.45であった。実験を終了し、無色溶液を上述のとおりに凍結乾燥した。HT-XRPDにより試料が非晶質であることが確認された;UPLCでは純度は96.0面積%である。
【0118】
HPLC-CADにより、試料が1:3のFoxy-5ヘキサペプチド:L-ヒスチジン塩であることが確認された。
【0119】
実験 HIS-GEN15
実験HIS-P2を以下のようにスケールアップした:199.7mgのFoxy-5ヘキサペプチドを7mlの脱気水中の134.2mgのL-ヒスチジンと合わせ、出発物質が完全に溶解するまで撹拌した。pHは5.41であった。その後、溶液を一晩凍結乾燥した。白色固体が得られ、HPLC-CADでは、Foxy-5とL-ヒスチジンの比は1:3.19であったが、D2O中でのqNMRにより、1:3(Foxy-5:L-ヒスチジン)と正確に決定された。UPLC分析では、化学的純度は98.9面積%である。
【0120】
実験HIS-GEN15で得た固形物の5つの試料(それぞれ約50mg)を、1000μLのエタノール(実験TCP11)、1000μLのアセトン(実験TCP12)、1000μLのTHF(実験TCP13)、200μLのアセトニトリル/水(90:10)(実験TCP14)及び2000μLの酢酸エチル(実験TCP15)に懸濁した。サーマルサイクリングを行い、約5℃で3日間熟成させた(
図11の温度プロファイルを参照)。熟成期間の終了後、固形物を遠心分離により回収し、湿潤試料及び真空乾燥試料をHT-XRPDで分析した。サーマルサイクリング実験で得た物質は非晶質であったが、酢酸エチルから得たものは、特に凍結乾燥物と比較して、物質の取り扱いの特性が改善したことが判明した。凍結乾燥したFoxy-5は、
それ自体でも、窒素塩基との組成物でも、静電気を帯びやすいという顕著な傾向があり、微細でかさばる物質であることがよくあり、そのため(例えば秤量の間に)取り扱いが困難である。
【0121】
「ジ塩」の形成
Foxy-5のジ塩は、一般的に、Foxy-5の水又は他の適切な溶媒中の懸濁液に、塩基を添加することで製造する。塩基は、調製中にpHを6未満に保ちながら、そのまま又は溶液中の状態で、一度に又は徐々に添加できる。
【0122】
アルギニン ジ塩
実験 ARG-P2
90.5mg(0.130mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の白色懸濁液を得た;45.1mg(2当量)のL-アルギニンをN2パージ下で添加して、pH4.57の透明無色溶液を得た;室温で2時間撹拌して、pH4.55の透明無色溶液を得た;シリンジフィルター(直径13mm、PVDF0.2μm)で10mL丸底フラスコにろ過した;得られた溶液をドライアイス中で凍らせた;19時間30分凍結乾燥し、白色固体を得た;PXRDにより特性を評価した;冷凍庫で保管し、6日後にHPLCで特性を2回評価した。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;HPLCでは、2回の注入の純度は97.70面積%及び97.67面積%である。
【0123】
コリン ジ塩
実験 CHO-P2
89.1mg(0.128mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の白色懸濁液を得た;63.6μL(2当量)の46%コリン水酸化物(水溶液)(密度=1.073g/L)をN2パージ下で添加して、pH4.78のベージュ色溶液を得た;室温で2時間撹拌して、pH4.78のベージュ色溶液を得た;シリンジフィルター(直径13mm、PVDF0.2μm)で10mL丸底フラスコにろ過した;得られた溶液をドライアイス中で凍らせた;19時間30分凍結乾燥し、白色固体を得た;PXRDにより特性を評価した;HPLCで特性を2回評価した。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;HPLCでは、2回の注入の純度は94.42面積%及び94.27面積%である。
【0124】
ジエチルアミン ジ塩
実験 DEA-P2
90.1mg(0.130mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の白色懸濁液を得た;26.8μL(2当量)のジエチルアミン(密度=0.707g/L)をN2パージ下で添加して、pH4.68の希薄白色懸濁液を得た;室温で2時間撹拌して、pH4.54の透明無色溶液を得た;シリンジフィルター(直径13mm、PVDF0.2μm)で10mL丸底フラスコにろ過した;得られた溶液をドライアイス中で凍らせた;19時間30分凍結乾燥し、白色固体を得た;PXRDにより特性を評価した;冷凍庫で保管し、6日後にHPLCにより特性を評価した;この試料の一部を40℃で2週間及び4週間、密閉容器に保管し、HPLCで2回試験した。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;HPLCでは、2回の注入の純度は97.30面積%及び97.41面積%である。
【0125】
リシン ジ塩
実験 LYS-P2
89.6mg(0.129mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の白色懸濁液を得た;37.0mg(2当量)のL-リシンをN2パージ下で添加して、pH4.53の透明無色溶液を得た;室温で2時間撹拌して、pH4.52の透明無色溶液を得た;シリンジフィルター(直径13mm、PVDF0.2μm)で10mL丸底フラスコにろ過した;得られた溶液をドライアイス中で凍らせた;19時間30分凍結乾燥し、白色固体を得た;PXRDにより特性を評価した;冷凍庫で保管し、6日後にHPLCにより特性を評価した;この試料の一部を40℃で2週間及び4週間、密閉容器に保管し、HPLCで2回試験した。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;HPLCでは、2回の注入の純度は97.69面積%及び97.73面積%である。
【0126】
アンモニア ジ塩
実験 NH3-P6
100.7mg(0.145mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを7mLのSupelcoバイアルに量り取った;3.33mLの超純水をN2パージ下で添加し(抵抗率≧18.2MΩcm)、ゲル状の白色懸濁液が観察された;500rpmで撹拌し、電極を挿入して、pHが2.63であることを確認した;1MのNH4OH(水溶液)を、pHを測定するために休止しながら0.05mL/分で投入した;2分で0.10mLの塩基が添加され、pHは3.19であった;4分で合計0.20mLの塩基が添加され、pHは3.11であった;白色懸濁液の上部に無色溶液が観察された;5分で0.29mLの塩基(ジ塩化学量論)が添加され、pHは3.18であった;7分でpHは5.49で、溶液はほぼ透明であった;12分でpHは4.60で、溶液は透明であった;2時間12分でpHを測定すると4.56であり、実験を終了させた;透明無色溶液を20mL丸底フラスコに入れ、得られた溶液をドライアイス中で凍らせ、冷凍庫で5日間保管した;次いで、27時間35分凍結乾燥し、白色固体を得た;HPLC(2回)及び元素分析を行った。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された。HPLCでは、2回の注入の純度は97.62面積%及び97.66面積%であり、対応するアッセイ値はそれぞれ89.32%及び89.08%である。生成物の元素分析(C、H、N、O及びS)(下の表)は、ジ塩二水和物である非晶質生成物と良好に一致する。
【0127】
【0128】
実験 NH3-GEN6
81.3mg(0.117mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを5mlの水に室温でスラリー化し、0.1Mのヒスチジン(水溶液)を、約1.97~1.98モル当量となるまで撹拌しながらゆっくりと添加した。pHは4.36であった。実験を終了し、無色溶液を上述のとおりに凍結乾燥した。HT-XRPDにより試料が非晶質であることが確認された;UPLCでは純度は93.7面積%である。
【0129】
HPLC移動相中のアンモニアの存在のため、単離した化合物が1:2のFoxy-5ヘキサペプチド:NH3塩であることの確認は不可能であった。
【0130】
N-メチル-D-グルカミン ジ塩
実験 NMG-P6
90.2mg(0.130mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを7mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加した(抵抗率≧18.2MΩcm)。pH計を挿入し、pHが2.67であることを確認した。上部の空間をN2パージし(N2雰囲気)、700rpmで撹拌した。懸濁液が観察された。0.52mLのN-メチル-D-グルカミンの0.5M水溶液(50mLの水に4.8803g)を、薬量計を用いてゆっくりと添加し、複数の時点でpHを測定した。0.35mLの0.5M NMG(水溶液)を添加した後、ほぼ全ての固形物が溶解し、いくらか塊のある溶液が観察された。pHは4.13であった。0.50mLの0.5M N-メチル-D-グルカミン溶液を添加した後、透明溶液を得た;pHは4.57であった。合計0.52mLの0.5M N-メチル-D-グルカミン溶液を添加した(2.0当量に相当);pHは4.64であった。2時間撹拌した後、溶液のpHは4.63であった。透明無色溶液を20mL丸底フラスコに入れた;得られた溶液をドライアイス中で凍らせ、一晩凍結乾燥した。白色固体が得られ、PXRD及びHPLCにより特性を評価した。この試料の一部を40℃で2週間及び4週間、密閉容器に保管し、HPLCで2回試験した;40℃で2週間保管した後、粘着性のガラス質の外観を有することが観察された。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;HPLCでは、2回の注入の純度は96.64面積%及び96.58面積%である。
【0131】
実験 NMG-GEN7
79.3mg(0.114mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを5mlの水に室温でスラリー化し、0.5MのN-メチル-D-グルカミン溶液(水溶液)を、約1.97~1.98モル当量となるまで撹拌しながらゆっくりと添加した。pHは4.73であった。実験を終了し、無色溶液を上述のとおりに凍結乾燥した。HT-XRPDにより試料が非晶質であることが確認された;UPLCでは純度は95.0面積%である。
【0132】
HPLC-CADにより、試料が1:2のFoxy-5ヘキサペプチド:N-メチル-D-グルカミン塩であることが確認された。
【0133】
実験 NMG-GEN16
実験NMG-P6を以下のようにスケールアップした:200.3mgのFoxy-5ヘキサペプチドを7mlの脱気水中の113.5mgのN-メチル-D-グルカミンと合わせ、出発物質が完全に溶解するまで撹拌した。pHは4.68であった。その後、溶液を一晩凍結乾燥した。白色固体が得られ、UPLC、TGMS、1H-NMR及びHPLC-CADにより特性を評価した。UPLCによれば化学的純度は99.0%(面積%)である。
【0134】
NMG-GEN16の1H-NMR測定及びHPLC-CADにより、試料が1:2のFoxy-5ヘキサペプチド:N-メチル-D-グルカミン塩であることが確認された。
【0135】
得られた固形物を以下のようにサーマルサイクリングを行った。
【0136】
実験NMG-GEN16で得た固形物の5つの試料(それぞれ約50mg)を、1000μLのエタノール(実験TCP16)、1000μLのアセトン(実験TCP17)、1000μLのTHF(実験TCP18)、200μLのアセトニトリル/水(90:10)(実験TCP19)及び2000μLの酢酸エチル(実験TCP20)に懸濁した。サーマルサイクリングを行い、約5℃で3日間熟成させた(
図11の温度プロファイルを参照)。熟成期間の終了後、固形物を遠心分離により回収し、湿潤試料及び真空乾燥試料をHT-XRPDで分析した。サーマルサイクリング実験で得た物質は非晶質であったが、酢酸エチルから得たものは、特に凍結乾燥物と比較して、物質の取り扱いの特性が改善したことが判明した。凍結乾燥したFoxy-5は、
それ自体でも、窒素塩基との組成物でも、静電気を帯びやすいという顕著な傾向があり、微細でかさばる物質であることがよくあり、そのため(例えば秤量の間に)取り扱いが困難である。
【0137】
トロメタミン ジ塩
実験 TRO-P2
90.1mg(0.130mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを4mLのSupelcoバイアルに量り取った;3mLの脱気した超純水を添加して(抵抗率≧18.2MΩcm)、ガラス質の白色懸濁液を得た;31.4mg(2当量)のトロメタミンをN2パージ下で添加して、pH4.88の透明無色溶液を得た;室温で2時間撹拌して、pH4.86の透明無色溶液を得た;シリンジフィルター(直径13mm、PVDF0.2μm)で10mL丸底フラスコにろ過した;得られた溶液をドライアイス中で凍らせた;19時間30分凍結乾燥し、白色固体を得た;PXRDにより特性を評価した;冷凍庫で保管し、6日後にHPLCで特性を2回評価した。PXRDにより試料が非晶質であることが確認された;HPLCでは、2回の注入の純度は97.77面積%及び97.78面積%である。
【0138】
ヒスチジン ジ塩
実験 HIS-P3
99.2mg(0.143mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを7mLのSupelcoバイアルに量り取った;3.33mL(すなわち30mg/ml)の超純水をN2パージ下で添加し(抵抗率≧18.2MΩcm)、白色ゲル状固形物の懸濁液が観察された;500rpmで撹拌し、電極を挿入してpHが2.65であることを確認した;0.0985MのL-ヒスチジン(水溶液)を、pHを測定するために休止しながら0.1mL/分で投入した;1分で0.17mLの塩基が添加され、pHは3.10であった;10分で合計1.00mLの塩基が添加され、pHは3.90であった;20分で合計2.00mLの塩基が添加され、pHは4.40であった;ゲル状固形物の塊が少しあるほぼ透明な溶液が観察された;28分で合計2.82mLが添加され、pHは4.73であった;1時間10分では透明無色溶液が観察された;投入開始後2時間28分でpHを測定すると4.50であり、実験を終了させた;透明無色溶液を20mL丸底フラスコに入れ、得られた溶液をドライアイス中で凍らせ、19時間05分凍結乾燥し、綿毛状の白色固体を得た;HPLC及び元素分析を行った;この試料の一部を40℃で2週間及び4週間、密閉容器に保管し、HPLCにより試験した;試料を40℃で2週間及び4週間保管した後に綿毛状の白色固体のままであることを観察した。HPLCでは、2回の注入の純度は98.02面積%及び98.00面積%であり、対応するアッセイ値はそれぞれ67.88%及び67.86%である。生成物の元素分析(C、H、N、O及びS、下の表)は、ジ塩二水和物である非晶質生成物と良好に一致する。
【0139】
【0140】
ヒスチジン ジ塩の溶解度の決定
Foxy-5ヘキサペプチドの最初のスラリー化に半分の量の水(60mg/ml)を使用して上記実験を繰り返した。5.82のpHでヒスチジン ジ塩の31.6g/Lの最終濃度を得た。ヒスチジン溶液をそのまま(固形物)のFoxy-5ヘキサペプチドに添加して実験を再度繰り返し、5.78のpHで49.3g/Lの最終濃度を得た。両者の場合とも、最終溶液を凍らせ、25時間凍結乾燥し、綿毛状の白色固体を得た。
【0141】
実験 HIS-GEN5
78.4mg(0.113mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを5mlの水に室温でスラリー化し、0.1Mのヒスチジン(水溶液)を、約1.97~1.98モル当量となるまで撹拌しながらゆっくりと添加した。pHは4.61であった。実験を終了し、無色溶液を上述のとおりに凍結乾燥した。HT-XRPDにより試料が非晶質であることが確認された;UPLCでは純度は93.9面積%である。
【0142】
HPLC-CADにより、試料が1:2のFoxy-5ヘキサペプチド:L-ヒスチジン塩であることが確認された。
【0143】
実験 HIS-GEN14
実験HIS-P3を以下のようにスケールアップした:220.1mgのFoxy-5ヘキサペプチドを7mlの脱気水中の98.5mgのL-ヒスチジンと合わせ、出発物質が完全に溶解するまで撹拌した。pHは4.65であった。その後、溶液を一晩凍結乾燥した。白色固体が得られ、HPLC-CADでは、Foxy-5とL-ヒスチジンの比は1:2.10であったが、1H NMRにより、1:2.03と正確に決定された。UPLC分析では、化学的純度は98.9面積%である。
【0144】
実験HIS-GEN14で得た固形物の5つの試料(それぞれ約50mg)を、1000μLのエタノール(実験TCP6)、1000μLのアセトン(実験TCP7)、1000μLのTHF(実験TCP8)、200μLのアセトニトリル/水(90:10)(実験TCP9)及び2000μLの酢酸エチル(実験TCP10)に懸濁した。サーマルサイクリングを行い、約5℃で3日間熟成させた(
図11の温度プロファイルを参照)。熟成期間の終了後、固形物を遠心分離により回収し、湿潤試料及び真空乾燥試料をHT-XRPDで分析した。サーマルサイクリング実験で得た物質は非晶質であったが、酢酸エチルから得たものは、特に凍結乾燥物と比較して、物質の取り扱いの特性が改善したことが判明した。凍結乾燥したFoxy-5は、
それ自体でも、窒素塩基との組成物でも、静電気を帯びやすいという顕著な傾向があり、微細でかさばる物質であることがよくあり、そのため(例えば秤量の間に)取り扱いが困難である。
【0145】
「モノ塩」の形成
Foxy-5のモノ塩は、一般的に、Foxy-5の水又は他の適切な溶媒中の懸濁液に、塩基を添加することで製造する。塩基は、調製中にpHを6未満に保ちながら、そのまま又は溶液中の状態で、一度に又は徐々に添加できる。次いで、反応混合物は、出発物質が溶解するまで撹拌する。モノ塩の最終溶液は、必要に応じてろ過し、次いで、凍結乾燥又は噴霧乾燥する。
【0146】
ヒスチジン モノ塩
実験 HIS-GEN2
90.6mg(0.131mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを5mlの水に室温でスラリー化し、0.1Mのヒスチジン(水溶液)を、約0.97~0.98モル当量となるまで撹拌しながらゆっくりと添加した。pHは3.88であった。実験を終了し、わずかに乳白色の無色溶液を上述のとおりに凍結乾燥した。HT-XRPDにより試料が非晶質であることが確認された;UPLCでは純度は95.2面積%である。
【0147】
HPLC-CADにより、試料が1:1のFoxy-5ヘキサペプチド:L-ヒスチジン塩であることが確認された。
【0148】
アンモニア モノ塩
実験 NH3-GEN3
92.6mg(0.134mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを5mlの水に室温でスラリー化し、1MのNH4OH(水溶液)を、約0.99モル当量となるまで撹拌しながら0.05mL/分で投入した。pHは3.87であった。実験を終了し、わずかに乳白色の無色溶液を上述のとおりに凍結乾燥した。HT-XRPDにより試料が非晶質であることが確認された;UPLCでは純度は94.4面積%である。
【0149】
HPLC移動相中のアンモニアの存在のため、単離した化合物が1:1のFoxy-5ヘキサペプチド:NH3塩であることの確認は不可能であった。
【0150】
N-メチル-D-グルカミン モノ塩
実験 NMG-GEN4
89.5mg(0.129mmol)のFoxy-5ヘキサペプチドを5mlの水に室温でスラリー化し、0.26ml(1モル当量)のN-メチル-D-グルカミン(50mLの水に4.88g)の0.5M水溶液を撹拌しながらゆっくりと添加した。約2時間後、ほぼ透明なわずかに乳白色の溶液を得た。pHはこの時点で3.91であった。実験を終了し、溶液を上述のとおりに凍結乾燥した。HT-XRPDにより試料が非晶質であることが確認された;UPLCでは純度は94.3面積%である。
【0151】
HPLC-CADにより、試料が1:1のFoxy-5ヘキサペプチド:NMG塩であることが確認された。
【国際調査報告】