(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼ-RNA複合体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20241128BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20241128BHJP
C12N 5/04 20060101ALI20241128BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241128BHJP
C12N 1/13 20060101ALI20241128BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241128BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/85 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/113 Z
C12N5/04
C12N5/10
C12N1/13
C12N1/15
C12N1/21
C12N15/85 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534340
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 US2022081019
(87)【国際公開番号】W WO2023107946
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521476126
【氏名又は名称】エメンドバイオ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】イザール、リオル
(72)【発明者】
【氏名】ロッカー、リアット
(72)【発明者】
【氏名】マールバッハ・バール、ナダブ
(72)【発明者】
【氏名】ヘヒト、ニル
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA89X
4B065AA90X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
(57)【要約】
天然に存在しないRNA分子を含む組成物であって、前記RNA分子はRNA足場部分を含み、前記RNA足場部分は、構造:crRNAリピート配列部分-tracrRNA部分を有し、前記RNA足場部分は、OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成し、前記OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼを前記RNA分子のガイド配列部分と相補的なDNA標的部位に向ける組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然に存在しないRNA分子又は前記RNA分子をコードするポリヌクレオチド分子を含む組成物であって、前記RNA分子はcrRNAリピート配列部分及びガイド配列部分を含み、前記RNA分子は、tracrRNA配列の存在下で、OMNI-103ヌクレアーゼと複合体を形成して前記OMNI-103ヌクレアーゼをDNA標的部位に向け、前記tracrRNA配列は、前記RNA分子のtracrRNA部分又は第2のRNA分子のtracrRNA部分によってコードされる、組成物。
【請求項2】
前記crRNAリピート配列部分の長さは最大で17ヌクレオチド、好ましくは14~17ヌクレオチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記crRNAリピート配列部分は、配列番号22又は23に示す配列に対して少なくとも60~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記crRNAリピート配列部分は、配列番号22又は23のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記crRNAリピート配列は、配列番号23に示す配列以外である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記crRNAリピート配列部分及び前記ガイド配列部分を含む前記RNA分子は、前記tracrRNA部分を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記crRNAリピート配列部分は、ポリヌクレオチドリンカー部分を介して前記tracrRNA部分と共有結合している、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、前記tracrRNA部分を含む第2のRNA分子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記OMNI-103ヌクレアーゼは、配列番号1で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ガイド配列部分の長さは17~30ヌクレオチド、好ましくは22ヌクレオチドである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
天然に存在しないRNA分子を含む組成物であって、前記RNA分子はtracrRNA部分を含み、前記RNA分子は、crRNAリピート配列及びガイド配列部分の存在下で、OMNI-103ヌクレアーゼと複合体を形成して前記OMNI-103ヌクレアーゼをDNA標的部位に向け、前記crRNAリピート配列及び前記ガイド配列部分は、前記RNA分子又は第2のRNA分子によってコードされる、組成物。
【請求項12】
前記tracrRNA部分の長さは85ヌクレオチド未満、好ましくは84~80、79~75、74~70、69~65又は64~60ヌクレオチドである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記tracrRNA部分は、配列番号17~21のいずれかに示す配列のtracrRNA部分に対して少なくとも30~40%、41~50%、51~60%、61~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有する、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
前記tracrRNA部分は、配列番号17~21のいずれかに示す配列のtracrRNA部分に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項11~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記tracrRNA部分は、配列番号4又は5に示す配列のtracrRNA部分以外である、請求項11~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記tracrRNA部分は、長さが最大で19ヌクレオチド、好ましくは16~19ヌクレオチドのtracrRNAアンチリピート配列部分を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記tracrRNA部分は、配列番号24又は25のいずれかに示す配列に対して少なくとも60~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有するtracrRNAアンチリピート配列部分を含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記tracrRNA部分は、配列番号24又は25のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するtracrRNAアンチリピート配列部分を含む、請求項11~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記tracrRNA部分は、配列番号25に示す配列以外の配列を有するtracrRNAアンチリピート配列部分を含む、請求項11~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記RNA分子はtracrRNA部分を含み、リピート配列部分及びガイド配列部分を更に含む、請求項11~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記tracrRNA部分は、ポリヌクレオチドリンカー部分を介して前記crRNAリピート配列と共有結合している、請求項11~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記ポリヌクレオチドリンカー部分の長さは4~10ヌクレオチドである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチドリンカーの配列はGAAAである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は、crRNAリピート配列部分及びガイド配列部分を含む第2のRNA分子を更に含む、請求項11~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記OMNI-103ヌクレアーゼは、配列番号1で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項11~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記ガイド配列部分の長さは17~30ヌクレオチド、好ましくは22ヌクレオチドである、請求項11~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
天然に存在しないRNA分子又は前記RNA分子をコードするポリヌクレオチド分子を含む組成物であって、前記RNA分子はRNA足場部分を含み、前記RNA足場部分は、構造:
crRNAリピート配列部分-tracrRNA部分
(ここで、前記RNA足場部分は、OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成し、前記OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼを前記RNA分子のガイド配列部分と相補的なDNA標的部位に向ける)を有する、組成物。
【請求項28】
前記OMNI-103ヌクレアーゼは、配列番号1で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記RNA足場部分の長さは、110~105、104~100、99~95、94~90、89~85、84~80、79~75又は74~70ヌクレオチドである、請求項27又は28に記載の組成物。
【請求項30】
前記RNA足場部分の長さは、107、101、95、85又は79ヌクレオチドである、請求項27~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記RNA足場部分は、配列番号17~21のいずれかに示す配列に対して少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項27~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記crRNAリピート配列部分の長さは最大で17ヌクレオチド、好ましくは14~17ヌクレオチドである、請求項27~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記crRNAリピート配列部分は、配列番号22又は23に示す配列に対して少なくとも60~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有する、請求項27~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記crRNAリピート配列部分は、配列番号22又は23のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項27~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記crRNAリピート配列は、配列番号23に示す配列以外である、請求項27~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記tracrRNA部分の長さは85ヌクレオチド未満、好ましくは84~80、79~75、74~70、69~65又は64~60ヌクレオチドである、請求項27~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記tracrRNA部分は、配列番号17~21のいずれかに示す配列のtracrRNA部分に対して少なくとも30~40%、41~50%、51~60%、61~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有する、請求項27~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記tracrRNA部分は、配列番号17~21のいずれかに示す配列のtracrRNA部分に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項27~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記tracrRNA部分は、配列番号4又は5に示す配列のtracrRNA部分以外である、請求項27~38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記RNA足場部分は、前記RNA足場の構造が、
crRNAリピート配列部分-リンカー部分-tracrRNA部分
となるように、前記crRNAリピート配列部分と前記tracrRNA部分との間にリンカー部分を更に含む、請求項27~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記tracrRNA部分は、tracrRNAアンチリピート配列部分を含み、前記crRNA反復配列及び前記tracrRNAアンチリピート配列部分は、前記リンカー部分を介して共有結合している、請求項27~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記リンカー部分は、長さが4~10ヌクレオチドのポリヌクレオチドリンカーである、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記ポリヌクレオチドリンカーの配列はGAAAである、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記tracrRNA部分は、長さが最大で19ヌクレオチド、好ましくは16~19ヌクレオチドのtracrRNAアンチリピート配列部分を含む、請求項27~43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
前記tracrRNA部分は、配列番号24又は25のいずれかに示す配列に対して少なくとも60~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有するtracrRNAアンチリピート配列部分を含む、請求項27~44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記tracrRNA部分は、配列番号24又は25のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するtracrRNAアンチリピート配列部分を含む、請求項27~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記tracrRNAアンチリピート配列は、配列番号25に示す配列以外である、請求項27~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記tracrRNA部分は、前記tracrRNAアンチリピート部分と結合したヌクレオチドの第1セクションを含み、前記ヌクレオチドの第1セクションは、配列番号26~28のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項27~47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
前記tracrRNA部分は、ヌクレオチドの第1セクションと結合したヌクレオチドの第2セクションを含み、前記ヌクレオチドの第2セクションは、配列番号29~32のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項27~48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記RNA足場部分は、配列番号17~21のいずれかに示すヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有する、請求項27~49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記RNA足場部分は、V2、V2.1、V2.2、V2.3、V2.4又はV2.5 RNA足場のいずれかの予測構造を有する、請求項27~50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
前記RNA足場部分は、配列番号4又は5に示す配列以外の配列を有する、請求項27~51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項53】
ガイド配列部分は、前記RNA分子の前記crRNAリピート配列部分と共有結合しており、構造:
ガイド配列部分-crRNAリピート配列部分-tracrRNA部分
のシングルガイドRNA分子を形成する、請求項27~52のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項54】
前記ガイド配列部分の長さは17~30ヌクレオチド、より好ましくは20~23ヌクレオチド、より好ましくは22ヌクレオチドである、請求項27~53のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼを更に含み、前記OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼは、配列番号1に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有する、請求項1~54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
前記RNA分子は、インビトロ転写(IVT)又は固相人工オリゴヌクレオチド合成によって形成される、請求項1~55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項57】
前記RNA分子は修飾ヌクレオチドを含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
前記RNA分子は、配列番号17~21のいずれかに示す配列を含む、請求項1~57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
前記RNA分子は配列番号18に示す配列を含む、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記RNA分子は配列番号19に示す配列を含む、請求項58に記載の組成物。
【請求項61】
前記RNA分子は、ガイド配列部分及び配列番号17~21のいずれかに示す配列からなる、請求項58~60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
請求項1~61のいずれか一項に記載のRNA分子をコードするポリヌクレオチド分子。
【請求項63】
無細胞系又は細胞のゲノムにおけるDNA標的部位でヌクレオチド配列を改変する方法であって、前記系又は細胞に、請求項1~61のいずれか一項に記載の組成物及び配列番号1に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するCRISPRヌクレアーゼを導入することを含む、方法。
【請求項64】
前記細胞は真核細胞又は原核細胞である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記真核細胞はヒト細胞又は植物細胞である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
無細胞系又は細胞のゲノムにおけるDNA標的部位でヌクレオチド配列を改変するためのキットであって、前記系又は細胞に請求項1~61のいずれか一項に記載の組成物を導入すること、配列番号1に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するCRISPRヌクレアーゼ、並びに、前記RNA分子及び前記CRISPRヌクレアーゼを前記細胞に送達するための指示書を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国仮出願第63/286,855号(出願日:2021年12月7日)の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
この出願全体で、カッコ内のものを含め、さまざまな刊行物を参照する。この出願で言及する全ての刊行物の開示全体は、本発明で使用できる技術及び本発明が関係する技術を補足するために、参照によりこの出願に組み込まれる。
【0003】
配列表の参照
この出願は、MS-Windows(登録商標)と互換性を有するオペレーティングシステムを使用するIBM-PC機形式で2022年11月9日に作成され、この出願の一部として2022年12月6日に提出した、サイズが81KBのXMLファイルであって、ファイル名が「221206_91822-A-PCT_Sequence_Listing_AWG.xml」中の塩基配列を参照により組み込む。
【0004】
技術分野
本発明は、とりわけ、ゲノム編集のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0005】
細菌及び古細菌の適応免疫における、クラスター化され規則的に間隔が空いた短いパリンドローム反復(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)系は、タンパク質組成とゲノム遺伝子座構造の極端な多様性を示す。CRISPR系は、研究及びゲノム工学の重要なツールとなった。それにもかかわらず、CRISPR系の詳細の多くは不明であり、CRISPRヌクレアーゼの適用は、配列特異性、発現又は送達によって制限される可能性がある。異なるCRISPRヌクレアーゼには、サイズ、PAMサイト、オンターゲット活性、特異性、切断パターン(例.平滑末端、付着末端)及び切断後のインデル形成の顕著なパターンなどの多様な特徴がある。さまざまな特性の組合せがさまざまな用途に役立つ可能性がある。例えば、一部のCRISPRヌクレアーゼは、特定のゲノム遺伝子座を標的とすることが可能であるが、別の群のCRISPRヌクレアーゼは、PAMサイトの制限のために不可能である。さらに、現在使用されている一部のCRISPRヌクレアーゼは前免疫(pre-immunity)を示し、in vivoでの適用性が制限される可能性がある。Charlesworth et al., Nature Medicine (2019)及びWagner et al., Nature Medicine (2019)を参照。したがって、新規なCRISPRヌクレアーゼ、及びそれらを活性化し標的に向けるRNA分子の発見、実用化及び改良が重要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、天然に存在しないRNA分子を含む組成物であって、前記RNA分子はcrRNAリピート配列部分及びガイド配列部分を含み、前記RNA分子は、tracrRNA配列の存在下で、OMNI-103ヌクレアーゼと複合体を形成して前記OMNI-103ヌクレアーゼをDNA標的部位に向け、前記tracrRNA配列は、前記RNA分子のtracrRNA部分又は第2のRNA分子のtracrRNA部分によってコードされる組成物を提供する。
【0007】
本発明は、天然に存在しないRNA分子を含む組成物であって、前記RNA分子はRNA足場部分を含み、前記RNA足場部分は、構造:
crRNAリピート配列部分-tracrRNA部分
(ここで、前記RNA足場部分は、OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成し、前記OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼを前記RNA分子のガイド配列部分と相補的なDNA標的部位に向ける)を有する組成物も提供する。
【0008】
この明細書では、RNAスペーサー部分とも呼ばれるRNA分子のガイド配列部分に基づいてDNA標的部位を標的とするようにOMNI-103 CRISPRヌクレアーゼと特異的に結合して活性化できる足場部分を含む天然に存在しないRNA分子と、OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼを使用する、ゲノム工学、エピゲノム工学、ゲノム標的化、細胞のゲノム編集及び/又はin vitro診断に利用できる組成物及び方法を開示する。
【0009】
開示される組成物は、ゲノムDNA配列の改変に利用できる。この明細書では、ゲノムDNAは、対象とする細胞又は細胞群に存在する直鎖状及び/若しくは染色体DNA及び/若しくはプラスミド又は他の染色体外DNA配列を指す。いくつかの態様では、対象とする細胞は真核細胞である。いくつかの態様では、対象とする細胞は原核細胞である。いくつかの態様では、この方法は、ゲノムDNA配列の所定の標的部位において二本鎖切断(DSB)を引き起こし、ゲノムの標的部位においてDNA配列の変異、挿入及び/又は欠失をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1は、表3に列挙されるsgRNAの予測される二次構造である。
図1A:足場V2。
【
図2】さまざまなsgRNA足場によるHeLa細胞におけるOMNI-103編集活性である(表3)。Hela細胞を、TRAC-s91又はPDCD-s40を標的とするOMNI-103及びsgRNAプラスミドでトランスフェクトした。編集活性を次世代シーケンシング結果(棒)に基づいて計算し、トランスフェクション効率をmCherry発現のFACS分析に基づいて計算した。3つの技術的複製の平均及び標準偏差が示される。
【
図3】U2OSにおける活性である。U2OS細胞に、TRACs35及びB2Ms12を標的とするOMNI-103及びsgRNA(RNP)をエレクトロポレーションした。編集活性を、次世代シーケンシング(NGS)結果に基づいて計算した。3つの技術的複製の平均及び標準偏差が示される。
【
図4】初代T細胞における活性である。初代T細胞をPBMCから単離し、製造業者のプロトコル(Miltenyi #130-096-535, #130-091-441)に従って活性化した。活性化T細胞に、TRAC-s35及びB2M-s12を標的とするOMNI-103及びsgRNA(RNP)をエレクトロポレーションした。8日後、細胞のTCR及びB2Mの発現レベルを、フローサイトメトリーによって測定した。分析のために、生細胞及びCD3陽性細胞のみを計数した。提示した結果は代表的なものであり、全てが同様の結果を示した3つのT細胞ドナーのうちの1つである。
【
図5】T細胞活性化アッセイである。切断活性アッセイで使用するドナー試料細胞を、ビーズで72時間活性化し、FACS(CD3
+CD25
+細胞)によって測定されるように85%の初代T細胞活性化率を示した。
【
図6】RNA足場の代表的な例である。代表的なRNA足場部分は、テトラループによってtracrRNA部分と連結したcrRNA部分を含む。crRNA部分は、crRNAリピート配列を含む。tracrRNA部分は、tracrRNAアンチリピート配列及び追加のtracrRNA区画を含む。RNA分子は、RNA分子がシングルガイドRNA分子として機能するように、crRNAリピート配列と連結したガイド配列部分(すなわち、RNAスペーサー)を更に含んでいてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明は、天然に存在しないRNA分子を含む組成物であって、前記RNA分子はcrRNAリピート配列部分及びガイド配列部分を含み、前記RNA分子は、tracrRNA配列の存在下でOMNI-103タンパク質と複合体を形成して前記OMNI-103タンパク質をDNA標的部位に向け、前記tracrRNA配列は、前記RNA分子のtracrRNA部分又は第2のRNA分子のtracrRNA部分によってコードされる組成物を提供する。いくつかの態様では、OMNI-103は、ヌクレアーゼ、ニッカーゼ又は失活したヌクレアーゼである。いくつかの態様では、OMNI-103は、配列番号1に示す配列よってコードされるか、その触媒バリアントである。いくつかの態様では、OMNI-103は二本鎖DNAを切断できるヌクレアーゼである。いくつかの態様では、OMNI-103は二本鎖DNAの一本鎖のみでDNAを切断できるニッカーゼである。
【0012】
いくつかの態様では、crRNAリピート配列部分の長さは最大で17ヌクレオチド、好ましくは14~17ヌクレオチドである。
【0013】
いくつかの態様では、crRNAリピート配列部分は、配列番号22又は23に示す配列に対して少なくとも60~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有する。
【0014】
いくつかの態様では、crRNAリピート配列部分は、配列番号22又は23のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0015】
いくつかの態様では、crRNAリピート配列は、配列番号23に示す配列以外である。
【0016】
いくつかの態様では、crRNAリピート配列部分及びガイド配列部分を含むRNA分子は、tracrRNA部分を更に含む。
【0017】
いくつかの態様では、crRNAリピート配列部分は、ポリヌクレオチドリンカー部分を介してtracrRNA部分と共有結合している。
【0018】
いくつかの態様では、組成物はtracrRNA部分を含む第2のRNA分子を含む。
【0019】
いくつかの態様では、OMNI-103ヌクレアーゼは、配列番号1で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、OMNI-103ヌクレアーゼは、配列番号1に示すアミノ酸配列に対する少なくとも95%の配列同一性、並びに、D12、E776、H988、D991、D856、H857及びN880から選択される位置でのアミノ酸置換を有するニッカーゼである。いくつかの態様では、OMNI-103ヌクレアーゼは、配列番号1に示すアミノ酸配列に対する少なくとも95%の配列同一性、D12、E776、H988及びD991から選択される位置での少なくとも1つのアミノ酸置換、並びに、D856、H857及びN880から選択される位置での少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、失活したヌクレアーゼである。
【0020】
いくつかの態様では、ガイド配列部分の長さは17~30ヌクレオチド、好ましくは22ヌクレオチドである。
【0021】
本発明は、天然に存在しないRNA分子又は前記RNA分子をコードするポリヌクレオチド分子を含む組成物であって、前記RNA分子はtracrRNA部分を含み、前記RNA分子は、crRNAリピート配列及びガイド配列部分の存在下で、OMNI-103ヌクレアーゼと複合体を形成して前記OMNI-103ヌクレアーゼをDNA標的部位に向け、前記crRNAリピート配列及び前記ガイド配列部分は、前記RNA分子又は第2のRNA分子によってコードされる組成物も提供する。
【0022】
いくつかの態様では、tracrRNA部分の長さは85ヌクレオチド未満、好ましくは84~80、79~75、74~70、69~65又は64~60ヌクレオチドである。
【0023】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、配列番号17~21のいずれかに示す配列のtracrRNA部分に対して少なくとも30~40%、41~50%、51~60%、61~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有する。
【0024】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、配列番号17~21のいずれかに示す配列のtracrRNA部分に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0025】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、配列番号4又は5に示す配列のtracrRNA部分以外である。
【0026】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、長さが最大で19ヌクレオチド、好ましくは16~19ヌクレオチドのtracrRNAアンチリピート配列部分を含む。
【0027】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、配列番号24又は25のいずれかに示す配列に対して少なくとも60~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有するtracrRNAアンチリピート配列部分を含む。
【0028】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、配列番号24又は25のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するtracrRNAアンチリピート配列部分を含む。
【0029】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、配列番号25に示す配列以外の配列を有するtracrRNAアンチリピート配列部分を含む。
【0030】
いくつかの態様では、RNA分子はtracrRNA部分を含み、crRNAリピート配列部分及びガイド配列部分を更に含む。
【0031】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、ポリヌクレオチドリンカー部分を介してcrRNAリピート配列と共有結合している。
【0032】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドリンカー部分の長さは4~10ヌクレオチドである。
【0033】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドリンカーの配列はGAAAである。
【0034】
いくつかの態様では、組成物は、crRNAリピート配列部分及びガイド配列部分を含む第2のRNA分子を更に含む。
【0035】
いくつかの態様では、前記OMNI-103ヌクレアーゼは、配列番号1で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0036】
いくつかの態様では、ガイド配列部分の長さは17~30ヌクレオチド、好ましくは22ヌクレオチドである。
【0037】
本発明は、天然に存在しないRNA分子又は前記RNA分子をコードするポリヌクレオチド分子を含む組成物であって、前記RNA分子はRNA足場部分を含み、前記RNA足場部分は、構造:
crRNAリピート配列部分-tracrRNA部分
(ここで、前記RNA足場部分は、OMNI-103 CRISPRタンパク質と複合体を形成し、前記OMNI-103 CRISPRタンパク質を前記RNA分子のガイド配列部分と相補的なDNA標的部位に向ける)を有する組成物も提供する。
【0038】
いくつかの態様では、OMNI-103は、ヌクレアーゼ、ニッカーゼ又は失活したヌクレアーゼである。いくつかの態様では、OMNI-103は、配列番号1に示す配列よってコードされるか、その触媒バリアントである。いくつかの態様では、OMNI-103は二本鎖DNAを切断できるヌクレアーゼである。いくつかの態様では、OMNI-103は二本鎖DNAの一本鎖のみでDNAを切断できるニッカーゼである。
【0039】
いくつかの態様では、OMNI-103ヌクレアーゼは、配列番号1で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0040】
いくつかの態様では、RNA足場部分の長さは、110~105、104~100、99~95、94~90、89~85、84~80、79~75又は74~70ヌクレオチドである。
【0041】
いくつかの態様では、RNA足場部分の長さは、107、101、95、85又は79ヌクレオチドである。
【0042】
いくつかの態様では、前記RNA足場部分は、配列番号17~21のいずれかに示す配列に対して少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0043】
いくつかの態様では、crRNAリピート配列部分の長さは最大で17ヌクレオチド、好ましくは14~17ヌクレオチドである。
【0044】
いくつかの態様では、crRNAリピート配列部分は、配列番号22又は23に示す配列に対して少なくとも60~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有する。
【0045】
いくつかの態様では、crRNAリピート配列部分は、配列番号22又は23のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0046】
いくつかの態様では、crRNAリピート配列は、配列番号23に示す配列以外である。
【0047】
いくつかの態様では、tracrRNA部分の長さは85ヌクレオチド未満、好ましくは84~80、79~75、74~70、69~65又は64~60ヌクレオチドである。
【0048】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、配列番号17~21のいずれかに示す配列のtracrRNA部分に対して少なくとも30~40%、41~50%、51~60%、61~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有する。
【0049】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、配列番号17~21のいずれかに示す配列のtracrRNA部分に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0050】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、配列番号4又は5に示す配列のtracrRNA部分以外である。
【0051】
いくつかの態様では、RNA足場部分は、RNA足場の構造が、
crRNAリピート配列部分-リンカー部分-tracrRNA部分
となるように、crRNAリピート配列部分とtracrRNA部分との間にリンカー部分を更に含む。
【0052】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、tracrRNAアンチリピート配列部分を含み、crRNA反復配列及びtracrRNAアンチリピート配列部分は、リンカー部分を介して共有結合している。
【0053】
いくつかの態様では、リンカー部分は、長さが4~10ヌクレオチドのポリヌクレオチドリンカーである。
【0054】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドリンカーの配列はGAAAである。
【0055】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、長さが最大で19ヌクレオチド、好ましくは16~19ヌクレオチドのtracrRNAアンチリピート配列部分を含む。
【0056】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、配列番号24又は25のいずれかに示す配列に対して少なくとも60~70%、71~80%、81~90%、91~95%又は96~99%の配列同一性を有するtracrRNAアンチリピート配列部分を含む。
【0057】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、配列番号24又は25のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するtracrRNAアンチリピート配列部分を含む。
【0058】
いくつかの態様では、tracrRNAアンチリピート配列は、配列番号25に示す配列以外である。
【0059】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、tracrRNAアンチリピート部分と結合したヌクレオチドの第1セクションを含み、前記ヌクレオチドの第1セクションは、配列番号26~28のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0060】
いくつかの態様では、tracrRNA部分は、ヌクレオチドの第1セクションと結合したヌクレオチドの第2セクションを含み、前記ヌクレオチドの第2セクションは、配列番号29~32のいずれかに示す配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0061】
いくつかの態様では、RNA足場部分は、配列番号17~21のいずれかに示すヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有する。
【0062】
いくつかの態様では、RNA足場部分は、V2、V2.1、V2.2、V2.3、V2.4又はV2.5 RNA足場のいずれかの予測構造を有する。
【0063】
いくつかの態様では、RNA足場部分は、配列番号4又は5に示す配列以外の配列を有する。
【0064】
いくつかの態様では、ガイド配列部分は、RNA分子のcrRNAリピート配列部分と共有結合しており、構造:
ガイド配列部分-crRNAリピート配列部分-tracrRNA部分
のシングルガイドRNA分子を形成する。
【0065】
いくつかの態様では、ガイド配列部分の長さは17~30ヌクレオチド、より好ましくは20~23ヌクレオチド、より好ましくは22ヌクレオチドである。
【0066】
いくつかの態様では、組成物は、OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼを更に含み、前記OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼは、配列番号1に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有する。
【0067】
いくつかの態様では、RNA分子は、インビトロ転写(IVT)又は固相人工オリゴヌクレオチド合成によって形成される。
【0068】
いくつかの態様では、RNA分子は修飾ヌクレオチドを含む。
【0069】
いくつかの態様では、RNA分子は、配列番号17~21のいずれかに示す配列を含む。例えば、RNA分子は、配列番号17~21のいずれかに示す配列の足場を有するsgRNA分子であってもよい。
【0070】
いくつかの態様では、RNA分子は配列番号18に示す配列を含む。
【0071】
いくつかの態様では、RNA分子は配列番号19に示す配列を含む。
【0072】
いくつかの態様では、RNA分子は、ガイド配列部分及び配列番号17~21のいずれかに示す配列からなる。例えば、いくつかの態様では、RNA分子は、ガイド配列部分及び足場からなるsgRNA分子であり、前記足場の配列は、配列番号17~21のいずれかに示される。
【0073】
本発明は、上記態様のいずれか一つのRNA分子をコードするポリヌクレオチド分子も提供する。
【0074】
本発明は、無細胞系又は細胞のゲノムにおけるDNA標的部位でヌクレオチド配列を改変する方法であって、前記系又は細胞に、請求項1~57のいずれか一項に記載の組成物及び配列番号1に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するCRISPRヌクレアーゼを導入することを含む方法も提供する。
【0075】
いくつかの態様では、細胞は真核細胞又は原核細胞である。
【0076】
いくつかの態様では、真核細胞はヒト細胞又は植物細胞である。
【0077】
本発明は、無細胞系又は細胞のゲノムにおけるDNA標的部位でヌクレオチド配列を改変するためのキットであって、前記系又は細胞に上記態様のいずれか一つの組成物を導入すること、配列番号1に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するCRISPRヌクレアーゼ、並びに、前記RNA分子及び前記CRISPRヌクレアーゼを前記細胞に送達するための指示書を含む、キットも提供する。
【0078】
この発明の複数の態様では、天然に存在しないRNA分子は、「スペーサー」又は「ガイド配列」部分を含む。RNA分子の「スペーサー部分」又は「ガイド配列部分」は、特定の標的DNA配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列を指し、例えば、ガイド配列部分は、ガイド配列部分の長さに沿って標的とされるDNA配列に完全に相補的なヌクレオチド配列を有する。いくつかの態様では、ガイド配列部分の長さは、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29若しくは30ヌクレオチド、又は、約17~30、17~29、17~28、17~27、17~26、17~25、17~24、18~22、19~22、18~20、17~20若しくは21~22ヌクレオチドである。好ましくは、ガイド配列部分の全長は、ガイド配列部分の長さ方向に沿って標的とされるDNA配列と完全に相補的である。ガイド配列部分は、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成して活性化できる「足場部分」を有するRNA分子の一部分であり、RNA分子のガイド配列部分はCRISPR複合体のDNA標的部分として機能する。足場部分とガイド配列部分を有するRNA分子がCRISPR分子と同時に存在する場合、RNA分子はCRISPRヌクレアーゼを特定の標的DNA配列に向けることができる。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。RNA分子のスペーサー部分は、所望の配列を標的とするように特別に設計できる。
【0079】
ある態様では、ヌクレアーゼ結合RNAのヌクレオチド配列及びDNAターゲティングRNAのヌクレオチド配列(例.スペーサー又はガイド配列部分)は、シングルガイドRNA分子(sgRNA)上にあり、前記sgRNA分子は、OMNI-103CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成して、DNA標的化モジュールとして機能できる。
【0080】
ある態様では、ヌクレアーゼ結合RNAのヌクレオチド配列は第1のRNA分子上に、DNAターゲティングRNAのヌクレオチド配列は第2のRNA分子上にあり、前記第1及び第2のRNA分子は、塩基対合によって相互作用し、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成して標的化モジュールとして機能する。
【0081】
本発明のいくつかの側面では、開示した方法は、明細書に記載した態様のいずれかの組成物を細胞に導入することを含む、無細胞系又は細胞のゲノムにおける標的部位でヌクレオチド配列を改変する方法を含む。
【0082】
この発明は、細胞内のDNA標的部位でヌクレオチド配列を改変するための本発明の組成物又は方法の使用も提供する。
【0083】
この発明は、真核細胞のゲノム内の標的部位でヌクレオチド配列を改変する方法を提供する。
【0084】
この発明は、哺乳動物細胞のゲノム内の標的部位でヌクレオチド配列を改変する方法を提供する。いくつかの態様では、哺乳動物細胞はヒト細胞である。
【0085】
この発明は、植物細胞のゲノム内の標的部位でヌクレオチド配列を改変する方法を提供する。
【0086】
いくつかの態様では、この方法はex vivoで行われる。いくつかの態様では、この方法はin vivoで行われる。いくつかの態様では、この方法のいくつかの工程はex vivoで行われ、いくつかの工程はin vivoで行われる。いくつかの態様では、哺乳動物細胞はヒト細胞である。
【0087】
この発明は、改変細胞又は明細書に記載した方法で得られる細胞も提供する。ある態様では、これらの改変細胞又は細胞は、子孫細胞を生じさせることが可能である。ある態様では、これらの改変細胞又は細胞は、生着後に子孫細胞を生じさせることが可能である。
【0088】
この発明は、これらの改変細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物も提供する。また、細胞を薬学的に許容される担体と混合することを含む、前記組成物を調製するin vitro又はex vivoの方法も提供する。
【0089】
明細書に記載したヌクレアーゼ-RNAガイド複合体は、ガイドRNA分子により所望のDNA標的配列を標的とすることができる。ヌクレアーゼ-ガイド複合体は、複合体に結合した分子も標的部位に運ぶ。したがって、この開示は、CRISPRヌクレアーゼ及びDNA改変ドメイン(例.デアミナーゼ、ヌクレアーゼ、ニッカーゼ、リコンビナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、メチラーゼ、アセチラーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、転写活性化因子又は転写抑制ドメイン)を含む融合タンパク質、並びに、疾患に関連するゲノム(例.ヒト対象のゲノム)中の変異の修正、又は、遺伝子の発現を減少若しくは防止するためのゲノム(例.ヒトゲノム)中の変異の生成における前記融合タンパク質の使用も予定している。
【0090】
いくつかの態様では、本願のCRISPRヌクレアーゼは、酵素活性を有するタンパク質と融合してもよい。いくつかの態様では、酵素活性は標的DNAを改変するものである。いくつかの態様では、酵素活性は、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポザーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、フォトリアーゼ活性又はグリコシラーゼ活性である。場合によって、酵素活性はヌクレアーゼ活性である。場合によって、ヌクレアーゼ活性は、標的DNAを二本鎖切断するものである。場合によって、酵素活性は、標的DNAに関連する標的ポリペプチドを改変するものである。場合によって、酵素活性は、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性又は脱ミリストイル化活性である。場合によって、標的ポリペプチドがヒストンで、酵素活性がメチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性又は脱ユビキチン化活性である。
【0091】
したがって、明細書に記載したCRISPRヌクレアーゼ、又は、ニッカーゼ(すなわち、一本鎖DNA切断活性を有する)若しくは失活したヌクレアーゼ(すなわち、DNA鎖を切断できない)となるように改変されたヌクレアーゼのバージョンは、デアミナーゼ、逆転写酵素(例.プライム編集における使用はAnzaolone et al. (2019)を参照)、DNAのメチル化状態を改変する酵素(例.メチルトランスフェラーゼ)又はヒストンの修飾因子(例.ヒストンアセチルトランスフェラーゼ)などの塩基エディターを含むがこれらには限定されない、別のDNA調節酵素又はDNA改変酵素と(例えば、直接又はリンカーを介して)融合してもよい。実際に、明細書に記載したOMNI-103ヌクレアーゼ、ニッカーゼ、不活性ヌクレアーゼは、DNA改変酵素又はそのエフェクタードメインと融合してもよい。DNA調節因子の例には、デアミナーゼ、ヌクレアーゼ、ニッカーゼ、リコンビナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、メチラーゼ、アセチラーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、逆転写酵素、ヘリカーゼ、インテグラーゼ、リガーゼ、トランスポザーゼ、デメチラーゼ、ホスファターゼ、転写活性化因子又は転写抑制因子が含まれるが、これらには限定されない。いくつかの態様では、本願のCRISPRヌクレアーゼは、酵素活性を有するタンパク質と融合する。いくつかの態様では、酵素活性は、標的DNA分子を改変するものである。明細書に記載したCRISPRヌクレアーゼ又はその融合タンパク質は、疾患に関連する遺伝子中の1以上の変異を修正若しくは生成するために、又は、遺伝子の発現を増加、修正、減少若しくは防止するために使用してもよい。
【0092】
本発明のいくつかの側面では、開示した方法は、対象のゲノムの標的部位において塩基配列を改変することを含む、ゲノムの変異に関連する疾患に罹患している対象の治療のための明細書に記載した組成物の使用を含む。
【0093】
本発明のいくつかの側面では、開示した方法は、変異障害に関連するアレルを明細書に記載した組成物の標的とすることを含む、変異障害を有する対象を治療する方法を含む。
【0094】
いくつかの態様では、変異障害は、腫瘍形成、加齢黄斑変性、統合失調症、神経障害、神経変性疾患、運動障害、脆弱X症候群、セクレターゼ関連障害、プリオン関連障害、ALS、依存症、自閉症、アルツハイマー病、好中球減少症、炎症関連障害、パーキンソン病、血液及び凝固の疾患及び障害、細胞調節不全、腫瘍に関連する疾患及び障害、炎症及び免疫に関連する疾患及び障害、代謝、肝臓、腎臓及びタンパク質の疾患及び障害、筋肉及び骨格の疾患及び障害、皮膚の疾患及び障害、神経の疾患及び障害、角膜の疾患及び障害、網膜の疾患及び障害、並びに、眼の疾患及び障害のいずれかから選択される疾患又は障害に関連する。
【0095】
疾患及び治療
本発明のある態様は、遺伝子編集、処置又は治療方法の一形態として、ヌクレアーゼを、疾患又は障害に関連する特定の遺伝子座にターゲティングする。例えば、遺伝子の編集又はノックアウトを誘導するために特別に設計したガイドRNA分子を使用して、明細書に開示した組成物を、遺伝子の病原性変異アレルに特異的にターゲティングしてもよい。ヌクレアーゼのPAM要件を最初に考慮してガイドRNA分子を設計することが好ましく、このことは、明細書に示すように、遺伝子編集が行われる系にも依存する。例えば、OMNI-103ヌクレアーゼを標的部位に向けるように設計するガイドRNA分子は、OMNI-103 PAM配列「NGG」に隣接する領域に相補的なスペーサー領域を含むように設計される。ガイドRNA分子は、好ましくは、ヌクレアーゼの特異的活性を増大させ、オフターゲット効果を減少させるために、十分かつ好ましくは最適な長さのスペーサー領域(すなわち、標的アレルと相補的なガイドRNA分子の領域)を含むように更に設計される。例えば、OMNI-103ヌクレアーゼを標的部位に向けるように設計するガイドRNA分子は、高いオンターゲット切断活性を実現するために22ヌクレオチドのスペーサーを含むように設計してもよい。
【0096】
限定するものではない例として、ガイドRNA分子は、ヌクレアーゼによるDNA損傷時に非相同末端結合(NHEJ)経路が誘導されてフレームシフト変異の導入による変異アレルのサイレンシングがもたらされるように、ヌクレアーゼを変異アレルの特定の領域、例えば、開始コドンの近傍、を標的とするように設計してもよい。ガイドRNA分子を設計するこのアプローチは、ドミナントネガティブ変異の作用を変化させ、それによって対象を治療するのに特に有用である。別の非限定的な例として、ガイドRNA分子は、ヌクレアーゼによるDNA損傷時に相同性指向修復(HDR)経路が誘導されて変異アレルのテンプレートを介した修正がもたらされるように、変異したアレルの特定の病原性変異を標的とするように設計してもよい。ガイドRNA分子を設計するこのアプローチは、変異アレルのハプロ不全作用を変化させ、それによって対象を治療するのに特に有用である。
【0097】
疾患又は障害を治療するために改変の標的としてもよい遺伝子の限定するものではない例を以下に示す。変異障害を誘発する疾患関連遺伝子と変異が文献に記載されている。そのような変異は、DNA損傷を引き起こすことによってDNA修復経路を誘導してアレルを改変し、それによって変異障害を治療するCRISPR組成物を、疾患関連遺伝子のアレルを標的とするDNAターゲティングRNA分子を設計するために使用できる。
【0098】
ELANE遺伝子の変異は、好中球減少症に関連している。したがって、ELANEを標的とする本発明の態様は、好中球減少症に罹患した対象の治療方法で、無制限に使用してもよい。
【0099】
CXCR4は、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染における共受容体である。したがって、CXCR4を標的とする本発明の態様は、HIV-1に罹患した対象を治療する方法、又はHIV-1感染に対する耐性を対象に付与する方法において、無制限に使用してもよい。
【0100】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)の破壊は、腫瘍細胞のCAR-T細胞による死滅を促進し、PD-1ががん治療の標的となる可能性がある。したがって、PD-1を標的とする本発明の態様は、がんに罹患した対象の治療方法で、無制限に使用してもよい。ある態様では、治療は、PD-1欠損となるように本発明に従って改変されたT細胞によるCAR-T細胞療法である。
【0101】
また、BCL11Aはヘモグロビン産生抑制に関与する遺伝子である。BCL11Aを阻害することによって、グロビン産生を増加させ、サラセミアや鎌状赤血球貧血などの疾患を治療してもよい。例えば、国際公開第2017/077394号、米国特許出願公開第2011/0182867号;Humbert et al. Sci. Transl. Med. (2019)及びCanver et al. Nature (2015)を参照。したがって、BCL11Aのエンハンサーを標的とする本発明の態様は、βサラセミア又は鎌状赤血球貧血に罹患した対象の治療方法で、無制限に使用してもよい。
【0102】
本発明は、以下の表A又は表Bに列挙した疾患又は障害の調査、改変又は治療において、疾患関連遺伝子を標的とするために使用してもよい。実際、疾患関連遺伝子は、本明細書に開示のヌクレアーゼによって、調査し、改変し又は標的として、疾患関連遺伝子によって引き起こされる疾患を治療としてもよい。限定するものではない例は、米国特許出願公開第2018/0282762号及び欧州特許第3079726号(B1)に列挙されている。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
別段の定義がある場合を除き、この明細書で使用する全ての技術用語及び/又は学術用語は、本発明に関係する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料が本発明の態様の実施又は試験に使用できるが、代表的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合は、定義を含む明細書が優先される。また、材料、方法及び実施例は単に説明のためのもので、必ずしも限定することを意図したものではない。
【0108】
考察において特に言及しない限り、本発明の態様の特徴の状態又は関連性を変更する「実質的に」及び「約」などの形容詞は、状態又は関連性が、意図された用途の態様の動作に許容可能な範囲内に定義されることを意味すると理解される。特に示さない限り、明細書及び特許請求の範囲における「又は」という用語は、排他的な「又は」ではなく包括的な「又は」と見なされ、結合する項目の少なくとも1つ及び任意の組合せを示す。
【0109】
本明細書における用語「1つ」は、列挙された構成要素の「1つ以上」を指すことを理解されたい。特に断りのない限り、単数形の使用が複数形を含むことは、当業者には明らかである。したがって、用語「1つ」及び「少なくとも1つ」は、この出願では同じ意味である。
【0110】
この教示をより理解し、かつ、決して教示の範囲を限定しないために、特に断りのない限り、量、割合又は比率を示す全ての数字、及び明細書や特許請求の範囲で使用する他の数値は、全ての場合において、用語「約」で修飾されると理解すべきである。したがって、反する指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に記載の数値は、得ようとする所望の特性に応じて変化する可能性がある近似値である。少なくとも、各数値は、有効桁数を考慮し、通常の丸め手法を適用して解釈する必要がある。
【0111】
この明細書で数値範囲を記載する場合、本発明は、別段の説明をする場合を除き、上限と下限との間の各整数(上限及び下限を含む)を意図するものと理解される。
【0112】
この明細書及び特許請求の範囲において、動詞「含有する」、「含む」及び「有する」並びにそれらの活用形のそれぞれは、動詞の目的語が必ずしも動詞の主語の成分、要素又は部分の完全なリストではないことを示すために使用される。この明細書の他の用語は、当該技術分野において周知の意味であることを意味する。
【0113】
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」は、同じ意味である。それらは、任意の長さの、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、又はそれらの類似体のいずれかであるヌクレオチドのポリマーの形態を指す。ポリヌクレオチドの三次元構造はいずれであってもよく、既知又は未知の機能を発揮してもよい。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子断片のコード領域又は非コード領域、連鎖解析で確定した遺伝子座、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、単離したDNAの配列、単離したRNAの配列、核酸プローブ及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化したヌクレオチドやその類似体などの1つ以上の修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーのアセンブリの前又は後で行われてもよい。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド要素で中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後に標識成分との結合などで更に修飾してもよい。
【0114】
用語「ヌクレオチド類似体」又は「修飾ヌクレオチド」は、ヌクレオシドの窒素含有塩基(例.シトシン(C)、チミン(T)若しくはウラシル(U)、アデニン(A)又はグアニン(G))の中若しくは上に、ヌクレオシドの糖部分(例.リボース、デオキシリボース、修飾リボース、修飾デオキシリボース、6員糖類縁体又は開環糖類縁体)の中若しくは上に、又はリン酸部分に、1つ以上のさまざまな化学修飾(例.置換)を含むヌクレオチドを指す。明細書に記載したRNA配列のそれぞれは、1つ以上のヌクレオチド類似体を含んでいてもよい。
【0115】
この明細書では、以下のヌクレオチド識別子が、ヌクレオチド塩基を表すために使用される:
【0116】
【0117】
この明細書では、用語「標的化配列」又は「標的化分子」は、特定の標的配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列又は当該ヌクレオチド配列を含む分子を指し、例えば、標的化配列は、標的となる配列と少なくとも部分的に相補的であるヌクレオチド配列を有する。標的化配列又は標的化分子は、CRISPRヌクレアーゼと、例えば足場部分を介して、複合体を形成できる標的化RNA分子の一部であってもよく、標的化配列が、CRISPR複合体の標的化部分(例.スペーサー部分)としての役割を果たす。標的化配列を有するRNA分子がCRISPRヌクレアーゼと同時に存在する場合、RNA分子は、単独で又は1つ以上の別のRNA分子(例.tracrRNA分子)と組み合わせて、CRISPRヌクレアーゼを特定の標的配列に向けることができる。限定するものではない例として、CRISPR RNA分子のガイド配列部分又はシングルガイドRNA分子は、標的化分子としての役割を果たしてもよい。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。標的化配列は、所望の配列を標的とするようにカスタムデザインできる。
【0118】
この明細書では、用語「標的とする」又は「向ける」は、標的化分子又は標的化配列の、標的となるヌクレオチド配列を有する核酸との優先的なハイブリダイゼーションを指す。用語「標的とする」は、変化するハイブリダイゼーション効率を包含し、したがって、標的のヌクレオチド配列を有する核酸が優先的に標的となるが、オンターゲットハイブリダイゼーションに加えて、意図しないオフターゲットハイブリダイゼーションも生じる可能性があることは理解されている。RNA分子が配列を標的とする場合、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼ分子の複合体は、ヌクレアーゼ活性のためにその配列を標的とすることは理解されている。
【0119】
RNA分子の「ガイド配列部分」は、特定の標的DNA配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列を指し、例えば、ガイド配列部分は、ガイド配列部分に沿って標的となるDNA配列と部分的に又は完全に相補的であるヌクレオチド配列を有する。いくつかの態様では、ガイド配列部分のヌクレオチドの長さは、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49若しくは50ヌクレオチド、又は、約17~50、17~49、17~48、17~47、17~46、17~45、17~44、17~43、17~42、17~41、17~40、17~39、17~38、17~37、17~36、17~35、17~34、17~33、17~31、17~30、17~29、17~28、17~27、17~26、17~25、17~24、17~22、17~21、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~22、18~20、20~21、21~22若しくは17~20である。好ましくは、ガイド配列部分の全長は、ガイド配列部分に沿って標的となるDNA配列と完全に相補的である。ガイド配列部分は、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成できるRNA分子の一部であってもよく、ガイド配列部分がCRISPR複合体のDNA標的化部分としての役割を果たす。ガイド配列部分を有するRNA分子が、単独で又は1つ以上の別のRNA分子(例.tracrRNA分子)と組み合わせて、CRISPR分子と同時に存在する場合、RNA分子は、CRISPRヌクレアーゼを特定の標的DNA配列に向けることができる。したがって、ガイド配列部分を有するRNA分子とCRISPRヌクレアーゼを直接結合させることで、又はガイド配列部分を有するRNA分子と1つ以上のRNA分子をCRISPRヌクレアーゼに結合させることで、CRISPR複合体を形成できる。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。ガイド配列部分は、所望の配列を標的とするようにカスタムデザインできる。したがって、「ガイド配列部分」を含む分子は一種の標的化分子である。この出願全体で、用語「ガイド分子」、「RNAガイド分子」、「ガイドRNA分子」及び「gRNA分子」は、ガイド配列部分を含む分子と同義である。
【0120】
複数の細胞に存在するDNA配列を標的とする場合、標的化は、RNA分子のガイド配列部分と1つ以上の細胞における配列のハイブリダイゼーションを包含し、RNA分子と複数の細胞中の全てではない細胞における標的配列のハイブリダイゼーションも包含することが理解される。したがって、RNA分子が複数の細胞内の配列を標的とする場合、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ以上の細胞内で標的配列とハイブリダイズすると理解され、全てではない細胞で標的配列とハイブリダイズしてもよいことも理解される。したがって、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ以上の細胞の標的配列とハイブリダイゼーションして、二本鎖を切断し、かつ、全てではない細胞の標的配列とハイブリダイゼーションして、二本鎖を切断してもよいことが理解される。この明細書では、用語「改変細胞」は、標的配列とのハイブリダイゼーション、すなわちオンターゲットハイブリダイゼーションの結果として、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体によって二本鎖が切断された細胞を指す。
【0121】
この明細書では、用語「野生型」は、当業者が理解する技術用語で、バリアント又は変異体とは区別される、自然界に存在する生物、株、遺伝子又は特性の代表的な形態を意味する。したがって、この明細書では、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列が野生型の配列を指す場合、バリアントは、例えば置換、欠失、挿入を含む、その配列のバリアントを指す。この発明の複数の態様では、改変されたCRISPRヌクレアーゼは、表1に示すOMNI-103 CRISPRヌクレアーゼに対して、少なくとも1つのアミノ酸修飾(例.置換、削除及び/又は挿入)を含むCRISPRヌクレアーゼのバリアントである。
【0122】
用語「非天然」、「天然に存在しない」又は「人工」は、同じ意味で使用され、人間による改変を示す。核酸分子又はポリペプチドで使用する場合、この用語は、核酸分子又はポリペプチドが、自然界で自然に関連付けられており、かつ、自然界で見いだされる少なくとも1つの成分を少なくとも実質的に含まないことを意味してもよい。
【0123】
この明細書では、用語「アミノ酸」は、天然及び/又は非天然若しくは合成アミノ酸を含み、グリシン及びD又はIの光学異性体、並びにアミノ酸類似体及びペプチド模倣物が含まれる。
【0124】
この明細書では、「ゲノムDNA」は、対象とする細胞又は細胞群に存在する、直鎖状及び/若しくは染色体DNA及び/若しくはプラスミド又は他の染色体外DNA配列を指す。いくつかの態様では、対象とする細胞は真核細胞である。いくつかの態様では、対象とする細胞は原核細胞である。いくつかの態様では、この方法は、ゲノムDNA配列の所定の標的部位において二本鎖切断(DSB)を引き起こし、ゲノムの標的部位においてDNA配列の変異、挿入及び/又は欠失をもたらす。
【0125】
「真核」細胞は、真菌細胞(酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞及びヒト細胞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0126】
この明細書では、用語「ヌクレアーゼ」は、核酸のヌクレオチドサブユニット間のホスホジエステル結合を切断できる酵素を指す。ヌクレアーゼは、天然の供給源から単離又は誘導されてもよい。天然の供給源は、任意の生物であってもよい。あるいは、ヌクレアーゼは、ホスホジエステル結合切断活性を有する修飾タンパク質又は合成タンパク質であってもよい。
【0127】
この明細書では、用語「PAM」は、標的DNA配列の近傍に位置し、CRISPRヌクレアーゼが認識する標的DNAのヌクレオチド配列を指す。PAM配列は、ヌクレアーゼによって異なっていてもよい。
【0128】
この明細書では、用語「変異障害」又は「変異疾患」は、変異によって生じる遺伝子の機能障害に関連する障害又は疾患を指す。変異障害として現れる機能不全遺伝子は、そのアレルの少なくとも1つに変異を含み、「疾患関連遺伝子」と呼ばれる。変異は、疾患関連遺伝子の任意の部分、例えば、調節部分、コード部分又は非コード部分に存在してもよい。変異は、置換、挿入又は欠失といった変異であってもよい。疾患関連遺伝子の変異は、劣性、ドミナントネガティブ、機能獲得、機能喪失又は遺伝子産物のハプロ不全につながる変異など、任意の変異メカニズムに従って、障害又は疾患として現れてもよい。
【0129】
当業者は、この発明の態様が、OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成でき、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接する対象とする標的DNA部位を標的とするようにOMNI-103 CRISPRヌクレアーゼを活性化できる足場部分を含むRNA分子を開示することを理解する。OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼは、対象とする標的DNA部位に対して相補性を有するガイド配列部分(すなわち、RNAスペーサー)によって、前記DNA部位を標的とする。ヌクレアーゼは、その後、標的DNAの切断を介して、プロトスペーサー標的部位内に二本鎖切断を生成する。
【0130】
用語「タンパク質結合配列」又は「ヌクレアーゼ結合配列」は、CRISPRヌクレアーゼと結合してCRISPR複合体を形成できる配列を指す。当業者は、CRISPRヌクレアーゼと結合してCRISPR複合体を形成できる足場RNA又はtracrRNAが、タンパク質又はヌクレアーゼ結合配列を含むことを理解する。
【0131】
CRISPRヌクレアーゼの「RNA結合部分」は、RNA分子に結合してCRISPR複合体を形成してもよいCRISPRヌクレアーゼの部分、例えば、sgRNAのRNA足場部分のヌクレアーゼ結合配列を指す。CRISPRヌクレアーゼの「活性部分」は、例えばDNAターゲッテングRNA分子と複合体を形成する場合に、DNA分子を二本鎖切断するCRISPRヌクレアーゼの部分を指す。
【0132】
用語「RNA足場」又は「足場」は、tracrRNA部分と共有結合しているcrRNA部分を含む天然に存在しない分子の部分を指す。この明細書では、「crRNA部分」は、crRNAリピート配列を含む。この明細書では、「tracrRNA部分」は、tracrRNAアンチリピート配列を含む。tracrRNA部分は、tracrRNAアンチリピート配列と結合した別のtracrRNA配列を更に含んでいてもよい。そのような配列は、ネクサス配列、ヘアピン配列、又は、ネクサス配列、ヘアピン配列若しくはtracrRNAアンチリピート配列の上流若しくは下流の他のtracrRNA配列を含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。したがって、RNA足場のtracrRNA部分は、アンチリピート配列を含み、これは、必要に応じて、別のtracrRNAセクションと結合する。
【0133】
この明細書では、RNA足場部分及びRNAガイド配列部分(又はRNAスペーサー部分)を含むRNA分子は、シングルガイドRNA(sgRNA)分子として機能する。sgRNAのRNA足場部分は、CRISPRヌクレアーゼに特異的に結合して活性化し、sgRNAのRNAスペーサー部分は、CRISPRヌクレアーゼをDNA標的部位に向ける。例えば、sgRNA分子は、RNA足場のcrRNAリピート配列部分とガイド配列部分との共有結合によって形成されてもよい。
【0134】
したがって、この発明の複数の態様では、RNA分子は、足場部分とスペーサー部分との合成融合物として設計されてもよく、一緒になって、OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼに結合して、それを標的とすることができるシングルガイドRNA(sgRNA)を形成する。Jinek et al., Science (2012)を参照。
【0135】
この発明の複数の態様では、分離したcrRNA分子と分離したtracrRNA分子を利用してCRISPR複合体を形成してもよい。そのような態様では、crRNA分子は、crRNA分子のcrRNAリピート配列部分とtracrRNA分子のtracrRNAアンチリピート配列部分との間の少なくとも部分的なハイブリダイゼーションによって、tracrRNA分子とハイブリダイズしてもよい。このような部分的なハイブリダイゼーションは、ハイブリダイズしたRNAヌクレオチドを「上部」ステムと「下部」ステムに分離する典型的なバルジも含んでいてもよい。分離したcrRNA及びtracrRNA分子は、明細書に記載した発明のある応用において有利な可能性がある。
【0136】
この発明の複数の態様において、RNA分子の足場部分は、RNA分子の構造を更に特定する可能性がある「ネクサス」領域及び/又は「ヘアピン」領域を含んでいてもよい(Briner et al., Molecular Cell (2014)参照)。
【0137】
この明細書では、用語「直接リピート配列」は、特定のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列の2以上の反復を指す。
【0138】
この明細書では、CRISPRヌクレアーゼと「相互作用する」又は「結合する」ことができるRNA配列又は分子は、CRISPRヌクレアーゼとCRISPR複合体を形成するRNA配列又は分子の能力を指す。
【0139】
この明細書では、用語「作動可能に連結された」は、意図した方法で機能することを可能にする2つの配列又は分子の関係(すなわち、融合、ハイブリダイゼーション)を指す。この発明の複数の態様では、RNA分子がプロモーターに作動可能に連結している場合、RNA分子及びプロモーターが意図した方法で機能できる。
【0140】
この明細書では、用語「異種プロモーター」は、発現される分子と、又は、促進される経路と、天然では一緒に存在しないプロモーターを指す。
【0141】
この明細書では、分子の配列間のX%のヌクレオチド又はアミノ酸が同じで、同じ相対位置にある場合、配列又は分子は、それぞれの配列又は分子に対してX%の「配列同一性」を有する。例えば、第2のヌクレオチド配列との配列同一性が少なくとも95%の第1のヌクレオチド配列は、他の配列と同一の相対位置で少なくとも95%のヌクレオチドを有する。限定的するものではない例として、配列同一性は、例えば、Needleman-Wunschアルゴリズムを適用し、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列のアラインメントを作成することで求めてもよい。
【0142】
送達
明細書に記載したCRISPRヌクレアーゼ又はCRISPR組成物は、タンパク質、DNA分子、RNA分子、リボヌクレオタンパク質(RNP)、核酸ベクター又はそれらの組合せを含んでいてもよく、これらのものとして送達されてもよい。いくつかの態様では、RNA分子は化学修飾を含む。適切な化学修飾の限定的するものではない例には、2'-O-メチル(M)、2'-O-メチル-3'-ホスホロチオエート(MS)又は2'-O-メチル、3'-チオPACE(MSP)、シュードウリジン及び1-メチルシュードウリジンがある。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。
【0143】
明細書に記載したCRISPRヌクレアーゼ及び/又はそれをコードするポリヌクレオチド、並びに、場合によっては、追加のタンパク質(例.ZFP、TALEN、転写因子、制限酵素)及び/又はガイドRNAなどのヌクレオチド分子は、適切な手段で標的細胞に送達されてもよい。標的細胞は、単離されているか否か、培養中であるか、in vitro、ex vivo、in vivo又はin plantaであるかといった任意の環境における、真核細胞又は原核細胞などの任意の細胞であってもよい。
【0144】
いくつかの態様では、送達される組成物は、ヌクレアーゼのmRNA及びガイド分子のRNAを含む。いくつかの態様では、送達される組成物は、ヌクレアーゼのmRNA、ガイドRNA及びドナーテンプレートを含む。いくつかの態様では、送達される組成物は、CRISPRヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む。いくつかの態様では、送達される組成物は、CRISPRヌクレアーゼ、ガイドRNA、及び例えば相同性修復による遺伝子編集用のドナーテンプレートを含む。いくつかの態様では、送達される組成物は、ヌクレアーゼのmRNA、DNAターゲティングRNA及びtracrRNAを含む。いくつかの態様では、送達される組成物は、ヌクレアーゼのmRNA、DNAターゲティングRNA、tracrRNA及びドナーテンプレートを含む。いくつかの態様では、送達される組成物は、CRISPRヌクレアーゼ、DNAターゲティングRNA及びtracrRNAを含む。いくつかの態様では、送達される組成物は、CRISPRヌクレアーゼ、DNAターゲティングRNA、tracrRNA、及び、例えば相同性修復による遺伝子編集用のドナーテンプレートを含む。
【0145】
RNA組成物は、適切なウイルスベクター系を使用して送達できる。従来のウイルス及び非ウイルスベースの遺伝子導入法を使用して、核酸及び/又はCRISPRヌクレアーゼを、細胞(例.哺乳動物細胞、植物細胞など)及び標的組織に導入できる。そのような方法はまた、in vitroでコードされた核酸及び/又はCRISPRヌクレアーゼタンパク質を細胞に投与するために使用できる。ある態様では、核酸及び/又はCRISPRヌクレアーゼは、in vivo又はex vivoでの遺伝子治療のために投与される。非ウイルスベクター送達系は、裸の核酸、及びリポソーム又はポロキサマーといった送達ビヒクルと複合体を形成した核酸を含む。遺伝子治療の手順の総説については、Anderson, Science (1992); Nabel and Felgner, TIBTECH (1993);Mitani and Caskey, TIBTECH (1993);Dillon, TIBTECH (1993);Miller, Nature (1992);Van Brunt, Biotechnology (1988);Vigne et al., Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995);Kremer and Perricaudet, British Medical Bulletin (1995);Haddada et al., Current Topics in Microbiology and Immunology (1995)及びYu et al., Gene Therapy 1:13-26 (1994)を参照。
【0146】
核酸及び/又はタンパク質の非ウイルス送達法には、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティックス、パーティクルガン加速、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン若しくは脂質:核酸コンジュゲート、人工ビリオン、及び薬剤による核酸の取込み促進が含まれ、又は、バクテリア若しくはウイルス(例.アグロバクテリウム(Agrobacterium)、リゾビウム(Rhizobium)sp. NGR234、シノリゾボイウム メリロティ(Sinorhizoboium meliloti)、メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti)、タバコモザイクウイルス、ジャガイモウイルスX、カリフラワーモザイクウイルス、キャッサバベインモザイクウイルス)によって植物細胞に送達できる。例えばChung et al. Trends Plant Sci. (2006)を参照。例えば、Sonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用したソノポレーションも、核酸の送達に使用できる。タンパク質及び/又は核酸のカチオン性脂質媒介送達も、in vivo又はin vitro送達方法として予定されている。Zuris et al., Nat. Biotechnol. (2015)、Coelho et al., N. Engl. J. Med. (2013);Judge et al., Mol. Ther. (2006)及びBasha et al., Mol. Ther. (2011)を参照。
【0147】
トランスポゾンベースの系(例.組換えSleeping Beautyトランスポゾン系又は組換えPiggyBacトランスポゾン系)といった非ウイルスベクターも、標的細胞に送達して、標的細胞において、組成物の分子のポリヌクレオチド配列又は組成物の分子をコードするポリヌクレオチド配列の転位に利用してもよい。
【0148】
別の代表的な核酸送達系には、Amaxa(登録商標)Biosystems(Cologne, Germany)、Maxcyte, Inc.(Rockville, Md.)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston, Mass.)及びCopernicus Therapeutics Inc.(例えば、米国特許第6,008,336号を参照)が提供するものが含まれる。リポフェクチンは、例えば、米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号及び米国特許第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例.Transfectam(登録商標)、Lipofectin(登録商標)及びLipofectamine(登録商標)RNAiMAX)。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性及び中性脂質は、国際公開第91/17424号及び同第91/16024号に開示のものが含まれる。細胞(ex vivo投与)又は標的組織(in vivo投与)への送達が可能である。
【0149】
免疫脂質複合体などの標的リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に広く知られている(例えば、Crystal, Science (1995);Blaese et al., Cancer Gene Ther. (1995);Behr et al., Bioconjugate Chem. (1994);Remy et al., Bioconjugate Chem. (1994);Gao and Huang, Gene Therapy (1995);Ahmad and Allen, Cancer Res., (1992);米国特許第4,186,183号;同第4,217,344号;同第4,235,871号;同第4,261,975号;同第4,485,054号;同第4,501,728号;同第4,774,085号;同第4,837,028号及び同第4,946,787号を参照)。
【0150】
別の送達方法には、EnGeneIC送達ビヒクル(EDV)中に送達される核酸のパッケージングを使用することが含まれる。EDVは、抗体の一方のアームが標的組織に対して特異性を有し、もう一方のアームがEDVに対して特異性を有する二重特異性抗体を使用して、標的組織に特異的に送達する。抗体はEDVを標的細胞の表面に運び、次いで、EDVはエンドサイトーシスによって細胞内に運ばれる。細胞に入ると、内容物が放出される(MacDiamid et al., Nature Biotechnology (2009)参照)。
【0151】
核酸を送達するためのRNA又はDNAウイルスに基づく系の使用は、高度に進化した方法を利用して、ウイルスを体内の特定の細胞に標的化し、ウイルスのペイロードを核に輸送する。ウイルスベクターは、患者に直接投与でき(in vivo)、又は、in vitroで細胞を処理するために使用することもでき、改変細胞を患者に投与する(ex vivo)。核酸を送達するためのRNA又はDNAウイルスに基づく系には、遺伝子導入のための組換えレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス及び単純ヘルペスウイルスのベクターが含まれるが、これらに限定されるものではない。しかし、明細書に記載したRNA組成物の送達にはRNAウイルスが好ましい。また、さまざまな細胞及び標的組織において、高い形質導入効率が観察されている。本発明の核酸は、非組込みレンチウイルスによって送達してもよい。必要に応じて、レンチウイルスによるRNA送達が利用される。場合によっては、レンチウイルスは、ヌクレアーゼのmRNA、ガイドRNAを含む。場合によっては、レンチウイルスは、ヌクレアーゼのmRNA、ガイドRNA及びドナーテンプレートを含む。場合によっては、レンチウイルスは、ヌクレアーゼタンパク質、ガイドRNAを含む。場合によっては、レンチウイルスは、ヌクレアーゼタンパク質、ガイドRNA、及び/又は、例えば相同性修復による遺伝子編集用のドナーテンプレートを含む。場合によっては、レンチウイルスは、ヌクレアーゼのmRNA、DNAターゲティングRNA及びtracrRNAを含む。場合によっては、レンチウイルスは、ヌクレアーゼのmRNA、DNAターゲティングRNA、tracrRNA及びドナーテンプレートを含む。場合によっては、レンチウイルスは、ヌクレアーゼタンパク質、DNAターゲティングRNA及びtracrRNAを含む。場合によっては、レンチウイルスはヌクレアーゼタンパク質、DNAターゲティングRNA、tracrRNA及び例えば相同性修復による遺伝子編集用のドナーテンプレートを含む。
【0152】
これまでに説明したように、明細書に記載した組成物は、非組込みレンチウイルス粒子法(例.LentiFlash(登録商標)系)を使用して標的細胞に送達できる。そのような方法は、標的細胞へのRNAの送達が標的細胞の内部で明細書に記載した組成物がアセンブリされるように、mRNA又は他のRNAを標的細胞に送達するために使用してもよい。国際公開第2013/014537号、同第2014/016690号、同第2016/185125号、同第2017/194902号、同第2017/194903号も参照。
【0153】
レトロウイルスのトロピズムは、外来エンベロープタンパク質を組み込むことによって変更でき、標的細胞の潜在的な標的を拡大する。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入又は感染できるレトロウイルスベクターであり、通常、高いウイルス力価を生み出す。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6~10kbの外来配列をパッケージングできるシス作用性の長い末端リピート配列で構成されている。最小限のシス作用LTRが、ベクターの複製とパッケージングに十分で、その後、治療遺伝子を標的細胞に組み込んで、恒久的な導入遺伝子の発現を提供するために使用される。広く使用されているレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びそれらの組合せに基づくものが含まれる(例えば、Buchscher Panganiban, J. Virol. (1992);Johann et al., J. Virol. (1992);Sommerfelt et al., Virol. (1990);Wilson et al., J. Virol. (1989);Miller et al., J. Virol. (1991);国際公開第94/26877号を参照)。
【0154】
臨床試験において、現在、少なくとも6種のウイルスベクター法が遺伝子導入に利用でき、ヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠陥ベクターの補完を含む方法を利用して、形質導入剤を生成する。
【0155】
pLASN及びMFG-Sは、臨床試験で使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al., Blood (1995);Kohn et al., Nat. Med. (1995);Malech et al., PNAS (1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療で使用された最初の治療用ベクターである(Blaese et al., Science (1995))。MFG-Sパッケージ化ベクターでは、50%以上の形質導入効率が観察されている(Ellem et al., Immunol Immunother. (1997);Dranoff et al., Hum. Gene Ther. (1997))。
【0156】
パッケージングされる細胞は、宿主細胞に感染できるウイルス粒子を形成するために使用される。そのような細胞には、アデノウイルスAAVをパッケージする293細胞、及びレトロウイルスをパッケージするpsi.2細胞又はPA317細胞が含まれる。遺伝子治療で使用するウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子にパッケージングするプロデューサー細胞株によって得られる。ベクターは、通常、パッケージングとその後の宿主への組込み(該当する場合)に必要な最小限のウイルス配列、発現されるタンパク質をコードする発現カセットに置き換えられる他のウイルス配列を含む。不足しているウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子治療で使用するAAVベクターは、通常、パッケージングと宿主ゲノムへの組込みに必要なAAVゲノムの末端逆方向反復(ITR)配列のみを保有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、つまりrepとcapをコードするヘルパープラスミドを含む細胞株にパッケージ化されているが、ITR配列は欠いている。細胞株は、ヘルパーとしてアデノウイルスにも感染している。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製とヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列が欠如しているので大量にパッケージ化されていない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVより感受性である熱処理によって低減できる。さらに、AAVは、バキュロウイルス系を使用して臨床で使用する規模で生成できる(米国特許第7,479,554号参照)。
【0157】
多くの遺伝子治療において、遺伝子治療ベクターが特定の組織に高い特異性で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面上にウイルス外被タンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現させることによって、目的の細胞に対して特異性を有するように改変できる。リガンドは、対象とする細胞に存在することが知られている受容体に対する親和性を有するように選択される。例えば、Han et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスが、gp70に融合したヒトヘレグリンを発現するように改変でき、組換えウイルスは、ヒト上皮成長因子受容体を発現する特定のヒト乳癌細胞に感染することを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスが細胞表面受容体のリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルス-標的細胞の組合せに拡張できる。例えば、繊維状ファージは、実質的に任意の細胞受容体に対して特異的な結合親和性を有する抗体断片(例.FAB又はFv)を提示するように改変できる。この説明は主にウイルスベクターに適用されるが、同じ原則が非ウイルスベクターにも適用できる。そのようなベクターは、特定の標的細胞による取込みを促進する取込み配列を含むように改変できる。
【0158】
遺伝子治療ベクターは、通常、以下に説明する全身投与(例.静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下又は頭蓋内注入)又は局所適用により、個々の患者に投与することでin vivo送達できる。あるいは、ベクターは、個々の患者から移植した細胞(例.リンパ球、骨髄吸引液、生検組織)やユニバーサルドナーの造血幹細胞といった細胞にex vivo送達でき、次いで、通常、ベクターを組み込んだ細胞の選択後に患者に再移植される。いくつかの態様では、mRNAのin vivo及びex vivo送達、並びにRNPの送達を利用してもよい。
【0159】
診断、研究又は遺伝子治療(例.宿主生物へのトランスフェクト細胞の再注入による)のためのex vivo細胞トランスフェクションは、当業者に広く知られている。好ましい態様では、細胞は、対象生物から単離され、RNA組成物がトランスフェクトされ、対象生物(例.患者)に再注入される。ex vivoトランスフェクションに適したさまざまな細胞は、当業者に周知である(例えば、Freshney, "Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique and Specialized Applications" (6th edition, 2010)と、その患者から細胞を単離し培養する方法についての考察で引用されている参考文献を参照)。
【0160】
適切な細胞には、真核及び原核細胞及び/又は細胞株が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような細胞又はそのような細胞から生成される細胞株の非限定的な例には、COS、CHO(例.CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NSO、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例.HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)及びperC6細胞、任意の植物細胞(分化又は未分化)、並びにツマジロクサヨトウ(Spodopterafugiperda)(Sf)といった昆虫細胞、又は、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)及びシゾサッカロミセス(chizosaccharomyces)といった真菌細胞が含まれる。ある態様では、細胞株はCHO-K1、MDCK又はHEK293細胞株である。さらに、初代細胞を単離し、ヌクレアーゼ(例.ZFN又はTALEN)又はヌクレアーゼ系(例.CRISPR)で処理した後に、治療対象に再導入するために、ex vivoで使用してもよい。適切な初代細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)、及びCD4+T細胞又はCD8+T細胞などであるがこれらには限定されない血球のサブセットが含まれる。適切な細胞には、例えば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞(CD34+)、神経幹細胞及び間葉系幹細胞などの幹細胞も含まれる。
【0161】
ある態様では、幹細胞を、細胞のトランスフェクション及び遺伝子治療のex vivo手順で使用する。幹細胞を使用する利点は、in vitroで他の細胞に分化できること、又は骨髄に生着する哺乳動物(細胞のドナーなど)に導入できることである。GM-CSF、IFNγ、TNFαなどのサイトカインを使用して、in vitroでCD34+細胞を臨床的に重要な免疫細胞に分化させる方法が知られている(限定するものではない例として、Inaba et al., J. Exp. Med. (1992)を参照)。
【0162】
幹細胞は、公知の方法で形質導入及び分化のために単離される。例えば、幹細胞は、CD4+及びCD8+(T細胞)、CD45+(汎B細胞)、GR-1(顆粒球)並びにIad(分化した抗原提示細胞)などの不要な細胞に結合する抗体で骨髄細胞をパニングすることで、骨髄細胞から単離される(限定するものではない例として、Inaba et al., J. Exp. Med. (1992)を参照)。いくつかの態様では、改変した幹細胞も使用できる。
【0163】
特に、明細書に記載した組成物は、有糸分裂後の細胞又は活発に分裂していない細胞(例.停止細胞)のゲノム編集に適している可能性がある。本発明のCRISPRヌクレアーゼを使用して編集してもよい有糸分裂後の細胞の例には、筋細胞、心筋細胞、肝細胞、骨細胞及びニューロンが含まれるが、これらには限定されない。
【0164】
治療用RNA組成物を含有するベクター(例.レトロウイルス、リポソーム等)は、in vivoでの細胞の形質導入のために生物に直接投与することもできる。あるいは、裸のRNA又はmRNAを投与できる。投与は、血液又は組織細胞との最終的な接触で分子を導入するために通常使用される、注射、注入、局所適用及びエレクトロポレーションが含まれるが、これらには限定されない経路による。そのような核酸を投与する適切な方法が利用可能で、かつ、当業者に周知であって、特定の組成物を投与する複数の経路が使用できるが、多くの場合、特定の経路が、他の経路よりも迅速かつ効果的な反応が得られる。
【0165】
導入遺伝子の免疫細胞(例.T細胞)への導入に適したベクターには、非組込みレンチウイルスベクターが含まれる。例えば米国特許出願公開第2009/0117617号を参照。
【0166】
薬学的に許容される担体は、部分的には、投与する組成物によって、加えて、組成物の投与に用いる方法によって、決まる。したがって、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989に記載されているように、利用できる医薬組成物の幅広い種類の適切な製剤がある。
【0167】
相同組換えによるDNA修復
用語「相同組換え修復」又は「HDR」は、例えば、DNAの二本鎖及び一本鎖切断の修復中の、細胞内のDNA損傷を修復するメカニズムを指す。HDRは、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし、「核酸テンプレート」(この明細書では同じ意味で使用される核酸テンプレート又はドナーテンプレート)を使用して、二本鎖又は一本鎖の切断が生じた配列(例.DNA標的配列)を修復する。これは、例えば、核酸テンプレートからDNA標的配列への遺伝情報の伝達をもたらす。核酸テンプレート配列がDNA標的配列と異なり、核酸テンプレートポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの一部又は全部がDNA標的配列に組み込まれる場合、HDRは、DNA標的配列(例.挿入、削除、変異)の変更につながる可能性がある。いくつかの態様では、核酸テンプレートポリヌクレオチドの全体若しくは一部分、又は核酸テンプレートのコピーが、DNA標的配列の部位に組み込まれる。
【0168】
用語「核酸テンプレート」及び「ドナー」は、ゲノムに挿入又はコピーされるヌクレオチド配列を指す。核酸鋳型は、標的核酸に付加される、標的核酸の変化を鋳型とする、又は標的配列の改変に使用してもよい、例えば1つ以上のヌクレオチドの配列を含む。核酸テンプレート配列の長さは、任意、例えば2~10,000ヌクレオチド(又はその間若しくはそれらを超える任意の整数)、好ましくは約100~1,000ヌクレオチド(又はその間の任意の整数)、より好ましくは約200~500ヌクレオチドである。核酸テンプレートは、一本鎖核酸、二本鎖核酸であってもよい。いくつかの態様では、核酸テンプレートは、例えば目標位置の、標的核酸の野生型配列に対応する、例えば1つ以上のヌクレオチドの配列を含む。いくつかの態様では、核酸テンプレートは、例えば目標位置の、標的核酸の野生型配列に対応する、例えば1つ以上のリボヌクレオチドの配列を含む。いくつかの態様では、核酸テンプレートは修飾リボヌクレオチドを含む。
【0169】
例えば、変異遺伝子の修正又は野生型遺伝子の発現増加のための、外因性配列(「ドナー配列」、「ドナーテンプレート」又は「ドナー」ともいう)の挿入も実行できる。ドナー配列は、通常、それが配置されるゲノム配列と同一ではないということは容易に明らかである。ドナー配列は、対象とする位置で効率的なHDRを可能にするために、2つの相同領域が隣接する非相同配列を含むことができる。さらに、ドナー配列は、細胞クロマチン中の対象領域と相同ではない配列を含むベクター分子を含むことができる。ドナー分子は、細胞クロマチンと相同な不連続な領域を含むことができる。例えば、対象領域には通常存在しない配列を標的挿入するために、前記配列はドナー核酸分子中に存在でき、対象領域の配列と相同な領域に隣接できる。
【0170】
ドナーポリヌクレオチドは、一本鎖及び/又は二本鎖のDNA又はRNAであってもよく、線状又は環状の形態で細胞に導入してもよい。例えば、米国特許出願公開第2010/0047805号;同第2011/0281361号;同第2011/0207221号及び同第2019/0330620号を参照。線形の形態で導入する場合、ドナー配列の末端は、当業者に知られている方法で(例えば、エキソヌクレアーゼによる分解から)保護できる。例えば、1つ以上のジデオキシヌクレオチド残基を線状分子の3’末端に付加し、及び/又は自己相補的オリゴヌクレオチドを一方の末端又は両末端に連結する。例えば、Chang and Wilson, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1987);Nehls et al., Science (1996)を参照。外因性のポリヌクレオチドを分解から保護する他の方法には、末端アミノ基の付加、及び修飾ヌクレオチド間結合(例.ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、及びO-メチルリボース又はデオキシリボース残基)の使用が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
したがって、修復にドナー鋳型を使用する本発明の態様は、線状又は環状の形態で細胞に導入できる一本鎖及び/又は二本鎖のドナーテンプレートである、DNA又はRNAを使用してもよい。本発明の態様において、遺伝子編集組成物は、(1) 修復前に遺伝子を二本鎖切断するガイド配列を含むRNA分子、及び、(2) 修復のためのドナーRNAテンプレートを含み、ガイド配列を含むRNA分子は第1のRNA分子で、ドナーRNAテンプレートは第2のRNA分子である。いくつかの態様では、ガイドRNA分子及びテンプレートRNA分子は、1つの分子の一部としてつながっている。
【0172】
ドナー配列は、オリゴヌクレオチドであってもよく、遺伝子修正又は内在性配列の標的化による改変に使用してもよい。オリゴヌクレオチドは、ベクターにより細胞に導入しもよく、細胞にエレクトロポレーションしてもよく、又は当該技術分野において知られている他の方法で導入してもよい。オリゴヌクレオチドは、内因性遺伝子(例.βグロビンの鎌状変異)の変異配列の「修正」のために使用でき、又は、内因性遺伝子座に所望の目的で配列を挿入するために使用してもよい。
【0173】
ポリヌクレオチドは、例えば、複製起点、プロモーター及び抗生物質耐性をコードする遺伝子などの追加の配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入できる。さらに、ドナーポリヌクレオチドは、裸の核酸として、リポソーム、ポロキサマーなどの薬剤と複合体を形成した核酸として導入でき、又は組換えウイルス(例.アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス及びインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))によって送達できる。
【0174】
ドナーは、一般に、その発現が組込み部位の内因性プロモーター、すなわちドナーが挿入される内因性遺伝子の発現を駆動するプロモーターによって駆動されるように挿入される。しかし、ドナーがプロモーター及び/又はエンハンサー、例えば構成的プロモーター又は誘導性若しくは組織特異的プロモーターを含んでもよいことは明らかである。
【0175】
ドナー分子は、内因性遺伝子の全て若しくは一部が発現するように、又は全く発現しないように、内因性遺伝子に挿入されてもよい。例えば、明細書に記載した導入遺伝子は、例えば導入遺伝子との融合物として、内因性配列の一部(導入遺伝子のN末端及び/又はC末端)が発現されるか、又は全く発現されないように、内因性遺伝子座に挿入されてもよい。他の態様では、導入遺伝子(例.内因性遺伝子などの追加のコード配列の有無によらない)は、セーフハーバー遺伝子座(例.CCR5遺伝子、CXCR4遺伝子、PPP1R12c(AAVS1としても知られている)遺伝子、アルブミン遺伝子又はRosa遺伝子)など、任意の内因性遺伝子座に組み込まれる。例えば、米国特許第7,951,925号及び同第8,110,379号;米国特許出願公開第2008/0159996号;同第20100/0218264号;同第2010/0291048号;同第2012/0017290号;同第2011/0265198号;同第2013/0137104号;同第2013/0122591号;同第2013/0177983号及び同第2013/0177960号、並びに米国仮出願第61/823,689号を参照)。
【0176】
内因性の配列(内因性又は導入遺伝子の一部)を導入遺伝子と共に発現させる場合、内因性配列は全長配列(野生型又は変異体)であっても部分配列であってもよい。好ましくは、内因性配列は機能的である。これらの全長又は部分配列の機能の例には、導入遺伝子(例:治療遺伝子)によって発現され及び/又は担体として作用するポリペプチドの半減期の増加が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0177】
さらに、発現に必須ではないものの、外因性の配列は、転写又は翻訳調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム侵入部位、2Aペプチドをコードする配列及び/又はポリアデニル化シグナルも含んでいてもよい。
【0178】
ある態様では、ドナー分子は、タンパク質をコードする遺伝子(例.細胞若しくは個体で欠けているタンパク質をコードするコード配列、又はタンパク質をコードする遺伝子の別のバージョン)、調節配列及び/又はマイクロRNA若しくはsiRNAといった構造核酸をコードする配列からなる群から選択される配列を含む。
【0179】
これまでに説明した態様は互いに適用可能であることが意図されている。例えば、本発明のRNA分子又は組成物は、本発明の方法で利用してもよいことが理解される。
【0180】
この明細書では、全ての見出しは単に整理のためであって、いかなる方法でも開示を制限することを意図するものではない。個々の項の内容は、全ての項に等しく適用できる。
【0181】
本発明の追加の目的、利点及び新規な特徴は、限定を意図しない以下の実施例を検討することで、当業者に明らかになる。さらに、これまでに説明し、また、特許請求の範囲に記載する本発明のさまざまな態様及び側面のそれぞれは、以下の実施例で実験的に裏付けられている。
【0182】
明確にするために、別々の態様として説明する本発明の特徴は、一つの態様で組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、一つの態様として説明する本発明のさまざまな特徴は、別個に、適切なサブコンビネーションとして、又は本発明の他の態様で適切に提供されてもよい。態様がそれらの要素がなくては機能しない場合を除き、さまざまな態様として記述した特定の特徴は、それらの態様の本質的な特徴であると考えるべきではない。
【0183】
一般に、この明細書で使用する命名法及びこの発明で利用する実験の手順には、分子、生化学、微生物学及び組換えDNA技術が含まれる。そのような技術は文献に十分に記載されている。例えば、Sambrook et al., "Molecular Cloning: A laboratory Manual" (1989);Ausubel, R. M. (Ed.), "Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III (1994);Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989);Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988);Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York;Birren et al. (Eds.), "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998);米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号及び同第5,272,057号に示された方法;Cellis, J. E. (Ed.), "Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III (1994);Freshney, "Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique" Third Edition, Wiley-Liss, N. Y. (1994);Coligan J. E. (Ed.), "Current Protocols in Immunology" Volumes I-III (1994);Stites et al. (Eds.), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994);Mishell and Shiigi (Eds.), "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996);Clokie and Kropinski (Eds.), "Bacteriophage Methods and Protocols", Volume 1: Isolation, Characterization, and Interactions (2009)を参照、これらは全て参照により組み込まれる。この明細書中に、他の一般的な参考資料を提示している。
【0184】
本発明の完全な理解を容易くするために、以下に実施例を提供する。以下の実施例は、本発明を製造し、実施する代表的な様式を説明するものである。しかし、この発明の範囲は、これらの実施例に開示された特定の態様に限定されるものではなく、これらは例示のみを目的とするものである。
【実施例】
【0185】
実験の詳細
発明のより完全な理解を容易にするために、実施例を以下に提供する。以下の実施例は、発明の作製及び実施の代表的なモードを示している。しかし、発明の範囲は、実施例に開示の特定の実施形態に限定されず、これらの実施形態は例示のみを目的とするものである。
【0186】
方法
CRISPRリピート(crRNA)、トランス活性化crRNA(tracrRNA)及びヌクレアーゼポリペプチドのOMNI-103配列は、環境試料のメタゲノム配列データベースから予測した。スペーサー最適化した全長ガイド足場、NNRRHY PAM、及び哺乳動物における活性は、国際公開第2022/170199号(2022年8月11日公開)で検討されており、主な要素を表1に示す。
【0187】
OMNI-103タンパク質の発現
簡単に説明すると、ヌクレアーゼオープンリーディングフレームをヒトについてコドン最適化し(表1)、SV40 NLS-OMNI-103 ORF(第2のアミノ酸から、ヒトに最適化)-HAタグ-SV40 NLS-8 Hisタグを有する改変pET9aプラスミド(配列は表2に記載)にクローニングした。OMNI-103構築物をKRX細胞(PROMEGA)で発現させた。細胞を、6.66mMのラムノース(0.5Mストックからの26.4ml)と0.05%のグルコース(0.5Mからの2ml)を添加したTB+0.4%グリセロール中で増殖させ、20℃に温度を低下させた4時間後、対数期中期において発現させた。化学溶解により細胞を溶解させ、清浄化した溶解物をNi-NTA樹脂で精製した。Ni-NTA溶出画分をCEX(SO3 fractogel)樹脂で精製し、続いてSuperdex(登録商標)200 Increase 10/300 GL、AKTA Pure(GE Healthcare Life Sciences)によるSEC精製を行った。OMNI-103タンパク質を含む画分をプールし、30mg/mlストックに濃縮して、液体窒素中で急速冷凍し、-80℃で保存した。
【0188】
使用する合成sgRNA
OMNI-103の全ての合成sgRNAを、3’及び5’末端の3つの2’-O-メチル 3’-ホスホロチオエートを用いて合成した(Agilent又はSynthego)。
【0189】
哺乳動物細胞株における活性
短いsgRNAバージョンでの編集を促進するOMNI-103の能力を、ヒト細胞における特定のゲノム位置で試験した(表4)。HeLa細胞について、OMNI-103-P2A-mCherry発現ベクター(pmOMNI、表2)をsgRNA(pShuttleガイド-表2、スペーサー配列-表4)とともにトランスフェクトした。
【0190】
U2OS細胞について、RNPを、100uMのヌクレアーゼを120uMの合成ガイド及び100uMのCas9エレクトロポレーションエンハンサー(IDT)と混合することによって組み立てた。室温での10分のインキュベーション後、RNP複合体を、200,000個の予め洗浄したU2OS細胞と混合し、DN100プログラムを備えたLonza SE Cell Line 4D-Nucleofector(登録商標)X Kitを製造業者のプロトコルに従って使用してエレクトロポレーションした。72時間で細胞を溶解し、それらのゲノムDNA内容物をPCR反応に使用し、対応する推定ゲノム標的を増幅した。アンプリコンにNGSを施し、次いで生じた配列を使用して、編集の割合を計算した。
【0191】
T細胞について、RNPを、113uMのヌクレアーゼ及び160uMの合成ガイドを混合し、室温で10分間インキュベートすることによって組み立て、RNP複合体を、200,000個の初代活性化T細胞と混合し、P3 Primary Cell 4D-Nucleofector(登録商標)X Kitを使用し、EH-115パルスコードでエレクトロポレーションした。3日及び8日後に細胞を採取し、CD3及び編集したタンパク質発現をフローサイトメトリーによって測定した。
【0192】
結果
ゲノムの部位と細胞の種類全体の短いガイドの活性
OMNI-103ヌクレアーゼ活性を、短いsgRNA足場での使用のために最適化した。5つの短いsgRNA足場を、テトラループ「GAAA」及びターミネーター領域の周りに最大4つの欠失を含有する「V2」二本鎖バージョンに基づいて設計した(表3、
図1A~1F)。設計したV2足場によるOMNI-103の活性レベルを試験するために、「TRAC-s91」又は「PDCD-s40」のガイド配列部分を有するsgRNAをHeLa細胞にトランスフェクトした。編集活性をNGS結果に基づいて計算した(
図2)。全ての場合において、設計したsgRNAは、編集を可能にした。次のステップは、U2OS及び初代T細胞におけるRNPとしてのOMNI-103活性を試験することであった。OMNI-103を、V2、V2.2、又はV2.3足場を有し、「TRAC-s35」又は「B2M-s12」のガイド配列部分を有するsgRNAでエレクトロポレーションした。編集活性をNGS結果に基づいて計算した。OMNI-103活性のレベルは、足場バリアントのいずれかと使用した場合、損なわれなかったことが示された(
図3)。初代T細胞では、短い足場バリアントを利用した場合、活性が改善された。
【0193】
初代T細胞をヒトPBMCから単離し、製造業者の推奨(#130-091-441, Miltenyi)に従ってCD2、CD3及びCD28で活性化した。3日後、ほとんどの細胞は活性化された(85%を超えるCD25陽性細胞、
図5参照)。200,000個の活性化初代T細胞に、OMNI-103ヌクレアーゼ、並びに、V2、V2.2又はV2.3足場及びTRAC-s35又はB2M-s12のスペーサー配列(すなわち、ガイド配列部分)を有するガイドRNA分子を、エレクトロポレーションした。培養8日後の編集を次世代配列決定(NGS)で測定し、タンパク質発現のレベルをフローサイトメトリーで測定したところ、V2足場を有するTCR又はB2Mの著しい減少と、V2.2又はV2.3でのタンパク質発現の更に大幅な減少が示された(
図4)。
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
参考文献
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【配列表】
【国際調査報告】