(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】高核スピンイオン量子ビットの偏光非感受性状態準備
(51)【国際特許分類】
G06N 10/20 20220101AFI20241128BHJP
【FI】
G06N10/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534376
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 US2022052231
(87)【国際公開番号】W WO2023229639
(87)【国際公開日】2023-11-30
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522047446
【氏名又は名称】クオンティニュアム エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ランズフォード
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ガエブラー
(72)【発明者】
【氏名】ファンジャオ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ホステッター
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・シャッファー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・リード・スレッテン
(57)【要約】
実施形態は、原子オブジェクトのための初期化及び/又は状態準備の実行に関連している。コントローラは、第1操作源を制御して第1操作信号を提供し、第2操作源を制御して第2操作信号を提供している。第1操作信号及び第2操作信号は原子オブジェクトに入射している。原子オブジェクトは1/2超の核スピンを有する。原子オブジェクトの基底状態多様体は、1つ又は複数の選択基底多様体状態及び非選択基底多様体状態を備える。第1操作信号は、非選択基底多様体状態から原子オブジェクトの1つ又は複数の励起多様体への遷移を促進し、選択基底多様体状態からの遷移を抑制するように構成されている。第2操作信号は、原子オブジェクトが励起多様体から崩壊状態へ崩壊することを促進するように構成されており、崩壊状態が選択基底多様体状態の1つである確率は非ゼロである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクトを初期化する方法であって、前記方法は、
前記原子オブジェクト閉じ込め装置に関連するコントローラによって、第1操作源を制御し、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域へ第1操作信号を提供するステップであって、
前記原子オブジェクトは1/2超の核スピンを有し、
前記原子オブジェクトの基底状態多様体は、1つ又は複数の選択基底多様体状態と、1つ又は複数の非選択基底多様体状態を備え、
前記第1操作信号は、前記原子オブジェクトの1つ又は複数の非選択基底多様体状態の内の少なくとも1つから1つ又は複数の原子オブジェクト励起多様体への遷移を促進し、前記選択基底多様体状態からの遷移を抑制するように構成されている、ステップと、
前記コントローラによって、第2操作源を制御し、前記原子オブジェクトが前記1つ又は複数の励起多様体の内の少なくとも1つから基底多様体内の崩壊状態へと崩壊することを促進するために、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域へ第2操作信号を提供するステップであって、
前記崩壊状態が前記選択基底多様体状態の内の1つである確率が非ゼロである、ステップと、を備え、
初期化される前記原子オブジェクトは、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域に位置している、方法。
【請求項2】
前記第1操作信号の偏光は、前記1つ又は複数の選択基底多様体状態から前記1つ又は複数の励起多様体への遷移を抑制するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1操作信号の伝搬方向は、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域における磁場方向と垂直である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1操作信号は、多様体内信号と多様体間信号とを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記原子オブジェクトは1価イオンのバリウム原子であり、
前記多様体内信号は実質的に8GHzに等しい周波数によって特徴付けられており、
前記多様体間信号は実質的に1762nmに等しい波長によって特徴付けられている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ又は複数の選択基底多様体状態は、前記原子オブジェクトの複数の量子ビット状態を少なくとも部分的に定めている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
(a)前記コントローラによって制御されている量子コンピュータによる量子プログラムの実行前、又は、
(b)前記量子コンピュータによる前記量子プログラムの実行中に前記原子オブジェクトを前記量子コンピュータの量子ビット空間へと再度初期化するため、
の内の少なくとも1つに実行されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記原子オブジェクトは1価イオンのバリウム原子であり、
前記第2操作信号は、
(a)実質的に614nmと等しい波長、又は、
(b)実質的に493nmと等しい波長、
の内の少なくとも1つによって特徴付けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサ及びコンピュータ実行可能命令を記憶しているメモリを備える装置であって、
前記コンピュータ実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行される際、前記装置が、
第1操作源を制御し、原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域に第1操作信号を提供することであって、
原子オブジェクトは1/2超の核スピンを有し、
前記原子オブジェクトの基底状態多様体は、1つ又は複数の選択基底多様体状態及び1つ又は複数の非選択基底多様体状態を備え、
前記第1操作信号は、前記原子オブジェクトの前記1つ又は複数の非選択基底多様体状態の内の少なくとも1つから原子オブジェクト1つ又は複数の励起多様体への遷移を促進し、前記選択基底多様体状態からの遷移を抑制するように構成されている、ことと、
第2操作源を制御し、前記原子オブジェクトが前記1つ又は複数の励起多様体の内の少なくとも1つから基底多様体内の崩壊状態へ崩壊することを促進するために、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域に第2操作信号を提供することであって、
前記崩壊状態が、前記選択基底多様体状態の内の1つである確率が非ゼロである、ことと、の内の少なくとも1つを引き起こすように構成されており、
初期化される前記原子オブジェクトは、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域に位置している、装置。
【請求項10】
前記装置は、前記原子オブジェクト閉じ込め装置と、前記第1操作源と、前記第2操作源とを備える量子コンピュータのコントローラである、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1操作信号の偏光は、前記1つ又は複数の選択基底多様体状態から前記1つ又は複数の励起多様体への遷移を抑制するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記第1操作信号の伝搬方向は、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域における磁場方向と垂直である、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記第1操作信号は、多様体内信号及び多様体間信号を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記原子オブジェクトは1価イオンのバリウム原子であり、
前記多様体内信号は実質的に8GHzに等しい周波数によって特徴付けられており、
前記多様体間信号は実質的に1762nmに等しい波長によって特徴付けられている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記1つ又は複数の選択基底多様体状態は、前記原子オブジェクトの複数の量子ビット状態を少なくとも部分的に定めている、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記第1操作信号及び前記第2操作信号は、前記原子オブジェクトに対して、
(a)コントローラによって制御されている量子コンピュータによる量子プログラムの実行前、又は、
(b)前記量子コンピュータによる前記量子プログラムの実行中に前記原子オブジェクトを前記量子コンピュータの量子ビット空間へと再度初期化するため、
の内の少なくとも1つに適用されている、請求項9に記載の装置。
【請求項17】
前記原子オブジェクトは1価イオンのバリウム原子であり、
前記第2操作信号は、
(a)実質的に614nmと等しい波長、又は、
(b)実質的に493nmと等しい波長、
の内の少なくとも1つによって特徴付けられている、請求項9に記載の装置。
【請求項18】
システムであって、
原子オブジェクト閉じ込め装置であって、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域に原子オブジェクトを閉じ込めるように構成されている、原子オブジェクト閉じ込め装置と、
前記システムのコントローラによって制御可能であり、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域に第1操作信号を提供するように構成されている、1つ又は複数の第1操作源と、
前記システムの前記コントローラによって制御可能であり、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域に第2操作信号を提供するように構成されている、1つ又は複数の第2操作源と、
少なくとも1つのプロセッサ及びコンピュータ実行可能命令を記憶しているメモリを備える前記コントローラであって、
前記コンピュータ実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行される際、前記コントローラが、
前記第1操作源を制御し、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域に前記第1操作信号を提供することであって、
前記原子オブジェクトは1/2超の核スピンを有し、
前記原子オブジェクトの基底状態多様体は、1つ又は複数の選択基底多様体状態及び1つ又は複数の非選択基底多様体状態を備え、
前記第1操作信号は、前記原子オブジェクトの前記1つ又は複数の非選択基底多様体状態の内の少なくとも1つから原子オブジェクト1つ又は複数の励起多様体への遷移を促進し、前記選択基底多様体状態からの遷移を抑制するように構成されている、ことと、
前記第2操作源を制御し、前記原子オブジェクトが前記1つ又は複数の励起多様体の内の少なくとも1つから基底多様体内の崩壊状態へ崩壊することを促進するために、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域に前記第2操作信号を提供することであって、
前記崩壊状態が、前記選択基底多様体状態の内の1つである確率が非ゼロである、ことと、の内の少なくとも1つを引き起こすように構成されており、
初期化される前記原子オブジェクトは、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域に位置している、コントローラと、を備えるシステム。
【請求項19】
前記システムは量子コンピュータの一部であり、
前記第1操作信号及び前記第2操作信号は、前記原子オブジェクトに対して、
(a)前記コントローラによって制御されている量子コンピュータによる量子プログラムの実行前、又は、
(b)前記量子コンピュータによる前記量子プログラムの実行中に前記原子オブジェクトを前記量子コンピュータの量子ビット空間へと再度初期化するため、
の内の少なくとも1つに適用されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
(a)前記第1操作信号の偏光は、前記1つ又は複数の選択基底多様体状態から前記1つ又は複数の励起多様体への遷移を抑制するように構成されている、又は、
(b)前記第1操作信号の伝搬方向は、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域における磁場方向に垂直である、の内の少なくとも1つである、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年12月9日出願の米国仮出願第63/265175号の優先権を主張する2022年10月27日出願の米国出願第18/050186号の優先権を主張し、その全内容は参照として本願に組み込まれる。
【0002】
様々な実施形態はイオンの状態準備(state preparation)に関連している。例えば、様々な実施形態は、例えばイオントラップ型量子コンピュータに使用されている、高核スピンイオン量子ビットの偏光非感受性状態準備に関連している。
【背景技術】
【0003】
様々なイオンが、トラップ型イオン量子コンピュータの量子ビットとして使用するのに適したエネルギー構造を有する。しかし、これらのイオンの内のいくつかは、非ゼロの核スピンを有する。非ゼロの核スピンは、基底状態をいくつかの状態へとゼーマン分裂させている。イオンが量子ビットとして使用可能となる前に、イオンを量子ビット空間に初期化する必要がある。高核スピンイオンの基底準位にある多くのエネルギー状態を考慮すると、従来は高核スピンイオンの初期化という課題により、これらのイオンを量子コンピュータの量子ビットとして使用することが妨げられてきた。多大な努力、創意工夫、技術革新により、従来の状態準備技術及び/又はシステムの多くの欠陥が、本願発明の実施形態によって構造化された解決策を開発することによって解決され、その多くの例が本願明細書に詳細に記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
例示的な実施形態は、非ゼロの核スピンを有する原子オブジェクト(atomic object)の状態を実行するための量子コンピュータ、システム及び/又は装置など、及び、対応する方法を提供している。例えば、様々な実施形態は、基底多様体(ground manifold)の選択状態(selected state)において1/2超の核スピンを有する原子オブジェクト(例えば、イオン及び/又は原子など)を準備するための量子コンピュータ、システム及び/又は装置など、及び、対応する方法を提供している。様々な実施形態において、第1操作信号は、選択(selected)基底多様体状態を隔離したままにする一方で非選択(non-selected)基底多様体状態を励起する(pump out)ために、原子オブジェクトに適用されている。例えば、第1操作信号は、非選択基底多様体状態を1つ又は複数の励起(pumped)多様体の内の1つ又は複数の状態に結合させるが、選択基底多様体状態を1つ又は複数の励起多様体の内のどの状態にも結合させないように構成されている。様々な実施形態において、第2操作信号は、1つ又は複数の励起多様体の内の少なくとも1つの多様体を追い出す(flush out)ために、原子オブジェクトに適用されている。第1操作信号及び/又は第2操作信号を原子オブジェクトに適用することにより、原子オブジェクトが選択基底多様体状態の内の1つになる確率が高くなる。第1操作信号及び/又は第2操作信号の適用が継続され及び/又は繰り返されると、原子オブジェクトが選択基底多様体状態の内の1つになる確率が、実質的に100%に等しくなるまで高くなる。様々な実施形態において、第1操作信号及び/又は第2操作信号は、原子オブジェクト閉じ込め装置内の複数の原子オブジェクトに適用されている。
【0005】
1つの態様によると、原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクトを初期化する方法が開示されている。1つの例示的な実施形態において、方法は、原子オブジェクト閉じ込め装置に関連するコントローラによって、第1操作源を制御し、第1操作信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域に提供するステップを備える。原子オブジェクトは1/2超の核スピンを有する。原子オブジェクトの基底状態多様体は、1つ又は複数の選択基底多様体状態と、1つ又は複数の非選択基底多様体状態とを備える。第1操作信号は、1つ又は複数の非選択基底多様体状態の内の少なくとも1つから原子オブジェクトの1つ又は複数の励起多様体への遷移を促進し、選択基底多様体状態からの遷移を抑制するように構成されている。1つの例示的な実施形態において、方法は更に、コントローラによって、第2操作源を制御し、原子オブジェクトが1つ又は複数の励起多様体の内の少なくとも1つから、基底多様体の内の崩壊(decayed)状態へと崩壊することを促進するために、第2操作信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域へと提供するステップを備える。崩壊状態が選択基底多様体状態の内の1つであるという確率はゼロではない。初期化される原子オブジェクトは原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域に位置している。
【0006】
例示的な実施形態において、第1操作信号の偏光は、1つ又は複数の選択基底多様体状態から1つ又は複数の励起多様体への遷移を抑制するように構成されている。
【0007】
例示的な実施形態において、第1操作信号の伝搬方向は、原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域における磁場方向と垂直である。
【0008】
例示的な実施形態において、第1操作信号は、多様体内信号及び多様体間信号を備える。
【0009】
例示的な実施形態において、原子オブジェクトは1価イオンのバリウム原子であり、多様体内信号は実質的に8GHzに等しい周波数によって特徴付けられ、多様体間信号は実質的に1762nmに等しい波長によって特徴付けられている。
【0010】
例示的な実施形態において、1つ又は複数の選択基底多様体状態は、少なくとも部分的に、複数の原子オブジェクトの量子ビット状態のセットを定めている。
【0011】
例示的な実施形態において、方法は、(a)コントローラによって制御されている量子コンピュータによる量子プログラムの実行前、又は、(b)量子コンピュータによる量子プログラムの実行中に原子オブジェクトを量子コンピュータの量子ビット空間へと再度初期化するため、の内の少なくとも1つに実行されている。
【0012】
例示的な実施形態において、原子オブジェクトは1価イオンのバリウム原子であり、第2操作信号は、(a)実質的に614nmと等しい波長、又は、(b)実質的に493nmと等しい波長、の内の少なくとも1つによって特徴付けられている。
【0013】
他の態様によると、装置が提供されている。例示的な実施形態において、装置は少なくとも1つのプロセッサ及びコンピュータに実行可能な命令を記憶するメモリを備える。コンピュータに実行可能な命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行される際、装置が第1操作信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域へと提供するために第1操作源を少なくとも制御させるように構成されている。原子オブジェクトは1/2超の核スピンを有する。原子オブジェクトの基底状態多様体は、1つ又は複数の選択基底多様体状態及び1つ又は複数の非選択基底多様体状態を備える。第1操作信号は、1つ又は複数の非選択基底多様体状態の内の少なくとも1つから1つ又は複数の原子オブジェクトの励起多様体への遷移を促進し、選択基底多様体状態からの遷移を抑制するように構成されている。コンピュータに実行可能な命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行された際に、装置が、原子オブジェクトが1つ又は複数の励起多様体の内の少なくとも1つから基底多様体内の崩壊状態へと崩壊することを促進するために、第2操作源が原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域へと第2操作信号を提供するように少なくとも制御させるように構成されている。崩壊状態が選択基底多様体状態の1つである確率はゼロではない。初期化される原子オブジェクトは、原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域に位置している。
【0014】
例示的な実施形態において、装置は、原子オブジェクト閉じ込め装置と、第1操作源と、第2操作源とを備える量子コンピュータのコントローラである。
【0015】
例示的な実施形態において、第1操作信号の偏光は、1つ又は複数の選択基底多様体状態から1つ又は複数の励起多様体への遷移を抑制するように構成されている。
【0016】
例示的な実施形態において、第1操作信号の伝搬方向は、原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域における磁場方向に垂直である。
【0017】
例示的な実施形態において、第1操作信号は、多様体内信号および多様体間信号を備える。
【0018】
例示的な実施形態において、原子オブジェクトは、1価イオンのバリウム原子であり、多様体内信号は実質的に8GHzに等しい周波数によって特徴付けられ、多様体間信号は実質的に1762nmに等しい波長によって特徴付けられている。
【0019】
例示的な実施形態において、1つ又は複数の選択基底多様体状態は、少なくとも部分的に、複数の原子オブジェクトの量子ビット状態のセットを定めている。
【0020】
例示的な実施形態において、方法は、(a)コントローラによって制御されている量子コンピュータによる量子プログラムの実行前、又は、(b)量子コンピュータによる量子プログラムの実行中に原子オブジェクトを量子コンピュータの量子ビット空間へと再度初期化するため、の内の少なくとも1つに実行されている。
【0021】
例示的な実施形態において、原子オブジェクトは1価イオンのバリウム原子であり、第2操作信号は、(a)実質的に614nmと等しい波長、又は、(b)実質的に493nmと等しい波長、の内の少なくとも1つによって特徴付けられている。
【0022】
他の態様によると、システムが提供されている。例示的な実施形態において、システムは、原子オブジェクトを原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域に閉じ込めるように構成された原子オブジェクト閉じ込め装置と、システムのコントローラによって制御可能であり、第1操作信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域へと提供するように構成された1つ又は複数の第1操作源と、システムのコントローラによって制御可能であり、第2操作信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域へと提供するように構成された1つ又は複数の第2操作源と、少なくとも1つのプロセッサ及びコンピュータに実行可能な命令を記憶するメモリを備えるコントローラと、を備える。コンピュータに実行可能な命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行された際に、コントローラが、第1操作源が第1操作信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域へと提供するように少なくとも制御させるように構成されている。原子オブジェクトは1/2超の核スピンを有する。原子オブジェクトの基底状態多様体は、1つ又は複数の選択基底多様体状態及び1つ又は複数の非選択基底多様体状態を備える。第1操作信号は、1つ又は複数の非選択基底多様体状態の内の少なくとも1つから1つ又は複数の原子オブジェクトの励起多様体への遷移を促進し、選択基底多様体状態からの遷移を抑制するように構成されている。コンピュータに実行可能な命令は更に、少なくとも1つのプロセッサによって実行された際、コントローラを、原子オブジェクトが1つ又は複数の励起多様体の内の少なくとも1つから基底多様体内の崩壊状態へと崩壊することを促進するために、第2操作源が第2操作信号を原始的対象物閉じ込め装置の特定領域へと提供するように少なくとも制御させるように構成されている。崩壊状態が選択基底多様体状態の内の1つである確率はゼロではない。初期化される原子オブジェクトは、原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域に位置している。
【0023】
例示的な実施形態において、システムは量子コンピュータの一部であり、第1操作信号及び第2操作信号は、(a)コントローラによって制御されている量子コンピュータによって量子プログラムを実行する前、又は、(b)量子コンピュータによって量子プログラムを実行中に原子オブジェクトを量子コンピュータの量子ビット空間へと再度初期化するために、の内の少なくとも1つに、原子オブジェクトに適用されている。
【0024】
例示的な実施形態において、第1操作信号の偏光は、1つ又は複数の選択基底多様体状態から1つ又は複数の励起多様体への遷移を抑制するように構成されている。
【0025】
例示的な実施形態において、第1操作信号の伝搬方向は、原始的対象物閉じ込め装置の特定領域における磁場方向に垂直である。
【0026】
例示的な実施形態において、第1操作信号は、多様体内信号及び多様体間信号を備える。
【0027】
例示的な実施形態において、原子オブジェクトは、1価イオンのバリウム原子であり、多様体内信号は実質的に8GHzに等しい周波数によって特徴付けられ、多様体間信号は実質的に1762nmに等しい波長によって特徴付けられる。
【0028】
例示的な実施形態において、1つ又は複数の選択基底多様体状態は、少なくとも部分的に、複数の原子オブジェクトの量子ビット状態のセットを定めている。
【0029】
例示的な実施形態において、方法は、(a)コントローラによって制御されている量子コンピュータによる量子プログラムの実行前、又は、(b)量子コンピュータによる量子プログラムの実行中に原子オブジェクトを量子コンピュータの量子ビット空間へと再度初期化するため、の内の少なくとも1つに実行されている。
【0030】
例示的な実施形態において、原子オブジェクトは1価イオンのバリウム原子であり、第2操作信号は、(a)実質的に614nmと等しい波長、又は、(b)実質的に493nmと等しい波長、の内の少なくとも1つによって特徴付けられている。
【0031】
このように本願発明を概略的に説明した。続いて添付の図面を参照するが、これらは必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】例示的な実施形態に係る、例示的な原子オブジェクト量子コンピュータのブロック図である。
【
図2A】例示的な実施形態に係る、非選択基底多様体状態が励起されており、原子オブジェクトが選択基底多様体状態へと崩壊することが許容されている場合において、例示的な原子オブジェクトのエネルギー準位(energy level)構造の一部を示す図である。
【
図2B】例示的な実施形態に係る、非選択基底多様体状態が励起されており、原子オブジェクトが選択基底多様体状態へと崩壊することが許容されている場合において、別の例示的な原子オブジェクトのエネルギー準位構造の一部を示す図である。
【
図3】例示的な実施形態に係る、励起多様体が追い出される場合における、例示的な原子オブジェクトのエネルギー準位構造の一部を示す図である。
【
図4】例示的な実施形態に係る、第1操作信号及び第2操作信号が原子オブジェクト上に入射していることを示す模式図である。
【
図5】例示的な実施形態に係る、例えば量子コンピュータのコントローラによって実行される様々なプロセス及び/又は順序を示すフローチャートである。
【
図6】例示的な実施形態に係る、内部に原子オブジェクトを閉じ込めるように構成された原子オブジェクト閉じ込め装置を備える例示的な量子コンピュータのコントローラの模式図である。
【
図7】例示的な実施形態において使用される得る例示的な量子コンピュータシステムのコンピュータエンティティの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照して本願発明をより詳細に説明する。これらの図面には本願発明の実施形態がいくつか示されているが、全てではない。実際、本願発明は多くの異なる形態で具現化されてもよく、本願明細書に記載の実施形態に限定して解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本願開示内容が適用される法的要件を満たすように提供されている。「又は」(「/」とも表記)という用語は、特に断りのない限り、本願明細書では代替的な意味でも結合的な意味でも用いられている。「例示的(illustrative)」及び「例示的(eamplary)」という用語は、品質レベルを示すものではなく、例として使用されている。「一般的に(generally)」及び「約(approximately)」という用語は、特に断りのない限り、適用される工学的及び/又は製造上の公差の範囲内、及び/又はユーザの測定能力の範囲内を指している。同様の番号は、全体を通して同様のエレメント(element)を指している。
【0034】
様々なシナリオにおいて、原子オブジェクトは原子オブジェクト閉じ込め装置内に閉じ込められている。様々な実施形態において、原子オブジェクト閉じ込め装置は、表面イオントラップ及び/又はポール(Paul)イオントラップなどのようなイオントラップである。様々な実施形態において、原子オブジェクトは、イオン、原子、中性分子及び/又は荷電分子(charged molecule)などである。様々な実施形態において、原子オブジェクトは1/2超のスピンを有するイオンである。例示的な実施形態において、原子オブジェクトは、量子コンピュータの量子ビットとして使用されている。
【0035】
様々な実施形態において、原子オブジェクト閉じ込め装置内に閉じ込められている原子オブジェクトは、実験、制御された量子状態の展開(evolution)及び/又は量子計算などの実行に使用されている。様々な実施形態において、原子オブジェクト閉じ込め装置内に閉じ込められた原子オブジェクトが実験、制御された量子状態の展開及び/又は量子計算などの実行に使用されるように、原子オブジェクトは選択状態に準備されている必要がある。様々な実施形態において、選択状態は、原子オブジェクトの基底多様体状態である。様々な実施形態において、選択状態は、原子オブジェクトの基底多様体内に定められた量子ビット空間内である。
【0036】
1/2超の核スピンを有する原子オブジェクトにおいて、基底多様体は複数の状態を備える。例えば、原子オブジェクトの基底状態は、基底多様体を形成するための、複数の状態への分裂(例えば、ゼーマン分裂を介して)である。例えば、基底多様体は、同じ主量子数(principle quantum number)(n)及び同じ角運動量量子数(angular momentum quantum number)(l)を有する状態を備える。しかし、基底多様体の状態は、異なる磁気量子数(magnetic quantum number)(ml)を有する。核スピンによって引き起こされる磁気モーメントと原子オブジェクトの電子スピンによって引き起こされる磁気モーメントとの間の相互作用により、異なる磁気量子数(ml)を有する状態は、異なるエネルギー準位に分裂する。これらの異なるエネルギー準位は、基底多様体と原子オブジェクトのエネルギー準位構造の1つ又は複数の励起多様体との間のエネルギー差と比較して、比較的小さいエネルギーによって分離されている。
【0037】
現実のレーザは、完全に安定したディラック・デルタ関数のような周波数スペクトルを有さないことを考慮すると、既に選択基底多様体状態にある原子オブジェクトを乱さずに、非選択基底多様体状態にある原子オブジェクトを扱うことは困難である。しかし、量子コンピュータの量子ビットとして使用される及び/又は実験、制御された量子状態の展開及び/又は量子計算などの実行に使用される原子オブジェクトにとって、原子オブジェクトの初期状態は制御可能でなければならない。従って、どのようにして原子オブジェクトを選択基底多様体状態へと初期化するか、に関する技術的課題が存在している。特に、原子オブジェクトが1/2超の核スピンを有する場合、原子オブジェクトの基底多様体を微細構造及び超微細構造の両方に追加で分裂することになるため、どのようにして原子オブジェクトを選択基底多様体状態へと初期化するか、に関する技術的課題が存在している。
【0038】
本願明細書において記載される実施形態は、これらの技術的課題に対する技術的解決策を提供している。特に、様々な実施形態によると、第1操作信号が生成され、1つ又は複数の原子オブジェクトに適用されている。第1操作信号は、1つ又は複数の非選択基底多様体状態を励起多様体の状態へと結合するように構成されている。例えば、第1操作信号は、1つ又は複数の非選択基底多様体状態の内の1つにある原子オブジェクトを励起多様体状態へと励起するように構成されている。様々な実施形態において、原子オブジェクトが励起多様体状態から選択基底多様体状態へと崩壊する確率はゼロではない。第1操作信号は、選択基底多様体状態を任意の励起多様体状態へと結合しないように構成されている。例えば、磁場方向と比較した第1操作信号の伝搬方向、第1操作信号の偏光、及び/又は選択基底多様体状態に対する共振から(例えば、励起多様体状態への遷移に関して)シフトされた細線(narrow line)操作信号の使用などに基づいて、原子オブジェクトが選択基底多様体状態から結合される確率及び/又は選択基底多様体状態から遷移する確率を抑制するために使用されてもよい。様々な実施形態において、第2操作信号は生成され、原子オブジェクトに適用されている。様々な実施形態において、第2操作信号は1つ又は複数の励起多様体の少なくとも1つの多様体を追い出すために原子オブジェクトに適用されている。例えば、第2操作信号は、非ゼロの確率で原始的対象物を励起多様体状態から選択基底多様体状態へと崩壊させるように構成された双極子信号(dipole signal)であってもよい。例えば、原子オブジェクトは励起多様体状態から崩壊状態へと崩壊してもよく、崩壊状態が選択基底多様体状態の1つである確率はゼロではない。
【0039】
第1操作信号及び/又は第2操作信号の適用が継続及び/又は繰り返されると、原子オブジェクトが選択基底多様体状態の内の1つである確率が実質的に100%に等しくなるまで高まる。様々な実施形態において、第1操作信号及び/又は第2操作信号は原子オブジェクト閉じ込め装置内において複数の原子オブジェクトに適用されている。
【0040】
様々な実施形態において、選択基底多様体状態は原子オブジェクトのエネルギー準位構造の定められた量子ビット空間における状態である。例示的な実施形態において、選択基底多様体状態はml=0の状態である(例えば、F=2、ml=0、及び/又は、F=1、ml=0など)。様々な実施形態において、1つ又は複数の励起多様体は、原子オブジェクトエネルギー準位構造のD5/2多様体、P1/2多様体及び/又はP3/2多様体である。
【0041】
従って、様々な実施形態により、高核スピン原子オブジェクト(例えば、1/2超のスピンを有する原子オブジェクト)を、効率的かつ確実に初期化し、及び/又は、選択基底多様体状態に状態準備することが可能となる。様々な実施形態は、高核スピン原子オブジェクトとしてバリウムを使用して記載されている。いくつかの他の非限定的な可能性のある高核スピン原子オブジェクトの例は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ラジウム及び/又は1/2超の核スピンを有する他のエレメントを含む。加えて、様々な実施形態では、イッテルビウムなど、1/2の核スピンを有する原子オブジェクトを使用してもよい。
【0042】
例示的な量子コンピュータシステム
【0043】
原子オブジェクト(及び/又は複数の原子オブジェクト)を選択状態(例えば、選択基底多様体状態)へと初期化及び/又は準備することを望まれ得る多種多様な状況が存在している。ある例示的な状況は、量子電荷結合素子(QCCD)ベースの量子コンピュータである。
図1は例示的な量子コンピュータシステム100のブロック図を示している。様々な実施形態において、量子コンピュータシステム100はコンピュータエンティティ10と量子コンピュータ110とを備える。
【0044】
様々な実施形態において、量子コンピュータ110はコントローラ30と、閉じ込められた原子オブジェクトを有する原子オブジェクト閉じ込め装置50を取り囲む低温及び/又は真空チャンバ40と、1つ又は複数の操作源64(例えば、64A、64B、64C)と、を備える。例示的な実施形態において、1つ又は複数の操作源64は、1つ又は複数のレーザ(例えば、光学レーザ、マイクロ波源及び/又はメーザなど)又は他の操作源を備えてもよい。様々な実施形態において、1つ又は複数の操作源64は、装置50内の1つ又は複数の原子オブジェクトの制御された量子状態展開を操作及び/又は引き起こすように構成されている。例えば、第1操作源64Aは第1操作信号を生成及び/又は提供するように構成されており、第2操作源64Bは第2操作信号を生成及び/又は提供するように構成されており、第1操作信号及び第2操作信号は、共に原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクトを初期化し、及び/又は、選択基底多様体状態へと準備された状態にするように構成されている。
【0045】
様々な実施形態において、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、表面イオントラップ及び/又はポールイオントラップなどのようなイオントラップである。様々な実施形態において、原子オブジェクトはイオン、原子、中性分子及び/又はイオン性分子などである。例示的な実施形態において、原子オブジェクトは1/2超の核スピンを有する。例示的な実施形態において、原子オブジェクトは量子コンピュータの量子ビットとして使用されている。例示的な実施形態において、原子オブジェクトは1価イオンのバリウム原子である(例えば、137Ba)。
【0046】
例示的な実施形態において、1つ又は複数の操作源64はそれぞれ、操作信号(例えば、レーザービームなど)を、対応するビーム経路66(例えば、66A、66B、66C)を介して原子オブジェクト閉じ込め装置50の1つ又は複数の領域へと提供している。様々な実施形態において、少なくとも1つのビーム経路66は、ビーム経路66を介して操作信号が装置50へと提供されるように変調するように構成された変調器を備える。様々な実施形態において、量子コンピュータ110の操作源64、変調器及び/又は他の構成要素は、コントローラ30によって制御されている。
【0047】
様々な実施形態において、量子コンピュータ110は1つ又は複数の磁場生成器70(例えば、70A、70B)を備える。例えば、磁場生成器は、低温及び/又は真空チャンバ40内に位置する内部磁場生成器70A、及び/又は、低温及び/又は真空チャンバ40の外側に位置する外部磁場生成器70Bであってもよい。様々な実施形態において、磁場生成器70は永久磁石、ヘルムホルツコイル及び/又は電磁石などである。様々な実施形態において、磁場生成器70は、原子オブジェクト閉じ込め装置50の1つ又は複数の領域内に特定の大きさ及び特定の磁場方向を有する原子オブジェクト閉じ込め装置50の1つ又は複数の領域に磁場を生成するように構成されている。
【0048】
様々な実施形態において、コントローラ30は、電圧源、電気信号源及び/又は原子オブジェクト閉じ込め装置50を制御するドライバ、及び/又は原子オブジェクト閉じ込め装置50内の原子オブジェクトの移送、低温及び/又は真空チャンバ40内の温度および圧力を制御する低温システム及び/又は真空システム、操作源64、磁場生成器70、及び/又は、低温及び/又は真空チャンバ40内の環境条件(例えば、温度、湿度及び/又は圧力など)を制御する他のシステムを制御するように構成されており、及び/又は、原子オブジェクト閉じ込め装置50内の1つ又は複数の原子オブジェクトの量子状態の制御された展開を操作及び/又は引き起こすように構成されている。
【0049】
様々な実施形態において、コンピュータエンティティ10は、ユーザが量子コンピュータ110に入力を提供することができるように(例えば、コンピュータエンティティ10のユーザインターフェースを介して)、及び、量子コンピュータ110から出力を受け取り及び/又は閲覧などをすることができるように構成されている。コンピュータエンティティ10は、1つ又は複数の有線又は無線ネットワーク20を介して、及び/又は、直接的な有線及び/又は無線通信を介して、量子コンピュータ110のコントローラ30と通信する1つ又は複数の古典的コンピュータ、及び/又は、量子コンピュータ110のコントローラ30と通信可能であってもよい。例示的な実施形態において、コンピュータエンティティ10は、情報/データ、量子コンピュータアルゴリズム及び/又は量子回路などを、コントローラ30が理解及び/又は実行可能なコンピュータ言語、実行可能命令及び/又はコマンドセットなどへと、変換、構成及び/又はフォーマットなどしてもよい。
【0050】
例示的な初期化及び/又は状態準備操作
【0051】
様々な実施形態は、量子コンピュータ、システム及び/又は装置など、及び、原子オブジェクトへの状態準備を初期化及び/又は実行するための対応する方法、を提供している。様々な実施形態において、原子オブジェクトは1/2超の核スピンを有するため、原子オブジェクトのエネルギー準位構造は、相当数のゼーマン分裂生成状態が含まれている(基底多様体中を含む)。
【0052】
図2A、2Bは、3/2の核スピンを有する例示的な原子オブジェクトの部分準位図(partial level diagram)を示している。様々な核スピンを有する原子オブジェクトの超微細構造は、それに応じて変化することが理解される。部分準位
図200は、選択基底多様体状態212及び複数の非選択基底多様体状態214(例えば、214A、214B)を備える基底多様体210を示している。部分準位
図250は、選択基底多様体状態262及び複数の非選択基底多様体状態264(例えば、264A、264B、264C、264D)を備える基底多様体260を示している。部分準位
図200、250はそれぞれ、D
5/2多様体220、270、及び、P
3/2多様体230、280も示している。様々な実施形態において、励起多様体はそれぞれD
5/2多様体220、270、及び、P
3/2多様体230、280を含む。各D
5/2多様体220、270、及び、P
3/2多様体230、280はそれぞれ、それぞれの原子オブジェクトの微細構造及び/又は超微細構造の部分として分裂した複数の状態を備える。
【0053】
図2Aにおいて示されている例示的な実施形態において、第1操作信号202(例えば、202A、202B)は、非選択基底多様体状態214をそれぞれD
5/2多様体状態220へと結合するように構成されている一方、選択基底多様体状態212をD
5/2多様体状態220へと結合しないように構成されている。例えば、磁場方向と比較した第1操作信号202の伝搬方向、第1操作信号202の偏光、及び/又は選択基底多様体状態に対する共振から(例えば、励起多様体状態への遷移に関して)シフトされた細線操作信号の使用などを使用して、第1操作信号202によって、選択基底多様体状態212からD多様体220状態へと結合することを抑制してもよい。例示的な実施形態において、第1操作信号202は四極子レーザービームである。
【0054】
図2Bにおいて示されている例示的な実施形態において、第1操作信号は、多様体内操作信号256A、256B及び多様体間操作信号252を備える。多様体内操作信号256A、256Bは、第1非選択基底多様体状態を、第2非選択基底多様体状態へと結合するように構成されている。多様体間操作信号252は、第2非選択基底多様体状態をD
5/2多様体状態270へと結合するように構成されている。多様体内操作信号256A、256Bと、多様体間操作信号252との両方は、選択基底多様体状態262を他の任意の状態へと結合しないように構成されている。例えば、磁場方向に対する多様体内操作信号及び多様体間操作信号252、256A、256Bの伝搬方向、多様体内操作信号及び多様体間操作信号252、256A、256Bの偏光、及び/又は、選択基底多様体状態に対する共振から(例えば、励起多様体状態への遷移に関して)シフトされた細線操作信号の使用など、を使用することにより、多様体内操作信号及び多様体間操作信号252、256A、256Bによる選択基底多様体状態262からD多様体270状態への結合が抑制されてもよい。例えば、磁場方向に対する多様体内操作信号及び多様体間操作信号252、256A、256Bの伝搬方向を適切に選択することにより、選択基底多様体状態262を非選択基底多様体状態214及び/又はD多様体270状態へと結合することが抑制されてもよい。様々な実施形態において、第1操作信号202、252、256A、256Bはそれぞれ四極子レーザービームである。例示的な実施形態において、多様体内操作信号256A、256Bはマイクロ波トーンである(例えば、原子オブジェクトが1価イオンのバリウム原子である場合、8GHzの周波数を有する)。例示的な実施形態において、多様体間操作信号252は1762nmの波長によって特徴付けられている(例えば、原子オブジェクトが1価イオンのバリウム原子である場合)。
【0055】
様々な実施形態において、第2操作信号204、254は、原子オブジェクトに適用されている。様々な実施形態において、第2操作信号はD多様体状態220、270をP多様体状態230、280へと結合するように構成されている。例えば、第2操作信号は、励起信号として作動するように構成されてもよい。例示的な実施形態において、原子オブジェクトが1価イオンのバリウム原子である場合、第2操作信号204、254は614nmの波長によって特徴付けられている。例えば、大半の原子オブジェクトにとって、D多様体状態は長命(long-lived)である(例えば、秒オーダー)。例えば、バリウムの場合、D多様体状態の寿命は約30秒である。様々な実施形態において、第2操作信号204、254は、第2操作信号204、254の存在の元、D多様体状態が1μs未満の寿命を有するように、D多様体を追い出すように構成されている。
【0056】
図3は、第2操作信号204、254に加えて、及び/又は、第2操作信号204、254の代替として使用され得る第2操作信号302を含む別の例示的な実施形態を示している。例えば、第2操作信号302は、P
1/2多様体状態320を選択基底多様体状態212、262に結合するように構成されている。例えば、第2操作信号302は、P
1/2多様体状態320を追い出し、原子オブジェクトが選択基底多様体状態212、262へと崩壊する非ゼロの確率と共に、原子オブジェクトの基底状態多様体への崩壊を引き起こすように構成されている。例示的な実施形態において、第2操作信号302は493nmの波長を有する双極子レーザービームである。
【0057】
図4は、例示的な実施形態の状態準備操作及び/又は初期化を実行するための例示的なジオメトリを示している。
図4は、原子オブジェクト閉じ込め装置50の特定領域55に位置し及び/又は配置されている原子オブジェクト408を示している。示されたシナリオにおいて、原子オブジェクト408は原子オブジェクト閉じ込め装置50の特定領域55の高周波数ヌル(radio frequency null)450に沿って位置している。高周波数ヌル450は、原子オブジェクト閉じ込め装置50のレール及び/又は高周波電極に高周波電圧信号を印加することによって生成される擬似ポテンシャルのゼロ点線である。
【0058】
様々な実施形態において、磁場Bは、特定領域55において、磁場Bが有限及び実質的に安定な(例えば、時間とともに変化しない)振幅(例えば、例示的な実施形態において、2から10ガウス及び/又は5ガウス)を有するように生成されている。様々な実施形態において、特定領域55における磁場Bは、高周波数ヌル450と角度αをなす磁場方向を有する。例示的な実施形態において、角度αは30から60°の範囲である。例示的な実施形態において、角度αは約45°である。
【0059】
様々な実施形態において、第1操作信号202、252、256A、256Bは偏光244(例えば、直線偏光(linearly polarized))を有し、第1伝搬方向を定めている。例示的な実施形態において、第1操作信号202、252、256A、256Bの偏光244は、実質的に磁場方向と垂直である。様々な実施形態において、第1伝搬方向は高周波数ヌル450に対して横方向である。例示的な実施形態において、第1操作信号202、252、256A、256Bは、高周波数ヌル450に対して角度βを形成する第1伝搬方向に伝搬している。様々な実施形態において、角度βは30から60°の範囲である。例示的な実施形態において、角度βは約45°である。
【0060】
様々な実施形態において、第2操作信号204、254、302は偏光248(例えば、直線偏光)を有する。例示的な実施形態において、第2操作信号204、254、302の偏光248は磁場方向に対して横方向である。様々な実施形態において、第2伝搬方向は高周波数ヌル450に対して横方向である。例示的な実施形態において、第2操作信号204、254、302は高周波数ヌル450に対して角度γを形成する第2伝搬方向に伝搬している。様々な実施形態において、角度γは30から60°の範囲である。例示的な実施形態において、角度γは約45°である。
【0061】
様々な実施形態において、第1伝搬方向は第2伝搬方向に対して実質的に平行又は逆平行(anti-parallel)である。様々な実施形態において、第1伝搬方向と第2伝搬方向との両方は、磁場方向に対して横方向である。例示的な実施形態において、第1伝搬方向及び第2伝搬方向は実質的に磁場方向と垂直である。
【0062】
図4は、例示的な実施形態に係る原子オブジェクトの状態準備を実行及び/又は初期化することの例示的なジオメトリを示している。他の様々な実施形態において、他のジオメトリが使用されてもよいことが理解される。例えば、例示的な実施形態において、磁場方向は高周波数ヌル450に対して平行又は逆平行であってもよく、及び、第1伝搬方向及び第2伝搬方向は高周波数ヌル450に対して横方向及び/又は垂直である。例示的な実施形態において、第1伝搬方向及び第2伝搬方向はそれぞれ高周波数ヌル450に対して平行であり、磁場方向は高周波数ヌル450に対して横方向及び/又は垂直である。様々な実施形態において、磁場方向は第1伝搬方向及び第2伝搬方向の両方に対して横方向である。
【0063】
図5は原子オブジェクトが量子コンピュータの量子ビットである状況において、様々な実施形態に係る、原子オブジェクトの状態準備を実行及び/又は初期化するための、様々なプロセス及び/又は順序などを示すフローチャートである。様々な実施形態において、
図5において示されているプロセス及び/又は順序等は量子コンピュータ110のコントローラ30によって実行されている。
【0064】
ステップ/操作502からスタートし、コントローラ30は、磁場生成器70を制御し、磁場方向及び特定の振幅を有する特定領域55における磁場を生成している。例示的な実施形態において、磁場生成器70は永久磁石であり、コントローラ30は磁場生成器70を制御する必要はない。例示的な実施形態において、磁場生成器70は、量子コンピュータ110の操作及び/又は量子回路及び/又はアルゴリズムの実行にわたり、磁場方向及び特定の振幅を有する実質的に安定な磁場を生成及び/又は維持するように構成されている。従って、コントローラ30は、例示的な実施形態において、磁場生成器70を制御し、磁場方向及び特定の振幅を有する特定領域55における磁場を維持している。
【0065】
ブロック504において、コントローラ30は、第1操作源64Aを制御し、特定領域55に第1操作信号202、252、256A、256Bを生成し提供している。様々な実施形態において、第1操作信号202、252は、基底状態多様体210、260(例えば、非選択基底多様体状態214、264)と原子オブジェクト408のD多様体との間の遷移に対応する、少なくとも第1波長λ1によって特徴付けられている。例示的な実施形態において、第1操作信号は、非選択基底多様体状態264の低エネルギー状態を非選択基底多様体状態264の高エネルギー状態へと結合するように構成されている多様体内波長λmによって特徴付けられている。原子オブジェクトが1価イオンのバリウム原子である例示的な実施形態において、第1波長λ1は実質的に1762nmと等しく、多様体内波長λmは実質的に、8GHzで割った光速に等しい。様々な実施形態において、第1操作信号は、選択基底多様体状態212、262が任意の励起多様体状態220、230、270及び/又は280などへと結合することを抑制するように構成された偏光によって特徴付けられている。例示的な実施形態において、第1波長λ1によって特徴付けられている操作信号(例えば、252)の偏光は、実質的に磁場方向と垂直な偏光(例えば、直線偏光)である。例示的な実施形態において、周波数選択性は、この場合、選択S多様体状態262を隔離するのに十分であるため、システムは多様体内操作信号(例えば、256)の偏光に敏感ではない又は依存していない。
【0066】
ブロック506において、コントローラ30は、第2操作源64Bを制御し、第2操作信号204、254、302を生成し、特定領域55へと提供している。様々な実施形態において、第2操作信号は、第1励起多様体(例えば、D多様体220、270)と第2励起多様体(例えば、P多様体230、280)との間の遷移、及び/又は、励起多様体(例えば、P多様体320)と基底多様体310との間の遷移、に対応する少なくとも第2波長λ2によって特徴付けられている。原子オブジェクトが1価イオンのバリウム原子である例示的な実施形態において、第2波長λ2は実質的に614nm又は493nmである。
【0067】
例示的な実施形態において、ブロック504、506は、特定の回数繰り返され、順次実行されている。例示的な実施形態において、ブロック504、506は並列に実行されている(例えば、時間的に少なくとも部分的に重なっている及び/又は同時に)。第1操作信号及び/又は第2操作信号を原子オブジェクトに適用すると、原子オブジェクトが選択基底多様体状態の1つである確率が高まる。第1操作信号及び/又は第2操作信号の適用が継続及び/又は繰り返されるにつれて、原子オブジェクトが選択基底多様体状態の1つである確率が実質的に100%に等しくなるまで高まっている。様々な実施形態において、第1操作信号及び/又は第2操作信号は原子オブジェクト閉じ込め装置内の複数の原子オブジェクトに適用されている。様々な実施形態において、ブロック504、506は、量子コンピュータ110による量子プログラムの実行開始前に、1つ又は複数の原子オブジェクトが量子プログラムの実行における量子ビットとして使用されるための状態準備の実行及び/又は初期化に対応している。
【0068】
ブロック508において、コントローラ30は、量子コンピュータ110に量子回路の実行(performance)及び/又は実行(execution)を開始させている。例えば、コントローラ30は、量子コンピュータ110の電圧源、操作源64及び/又は磁場生成器70などを制御し、量子コンピュータ110に、制御された量子ビット(例えば、原子オブジェクト閉じ込め装置50によって閉じ込められた原子オブジェクト)の量子状態展開を実行させてもよい。
【0069】
ステップ/操作510において、コントローラ30は初期化トリガが特定されたかどうかを決定している。例えば、コントローラ30が量子コンピュータ110及び/又はその構成要素を制御すると、コントローラ30は初期化トリガが特定されたかどうかを決定する。例示的な実施形態において、初期化トリガは中間回路(mid-circuit)測定の実行及び/又は量子ビットの再使用の準備(例えば、原子オブジェクトを再初期化し、他の量子ビットとして使用すること)などに反応して特定されている。様々な実施形態において、様々な行動(action)及び/又は計画された行動によって、コントローラ30に、初期化トリガが特定されたかどうかを決定させてもよい。様々な実施形態において、初期化トリガは、初期化及び/又は状態準備操作が実行される原子オブジェクト閉じ込め装置50の特定領域55を示している。
【0070】
ステップ/操作512において、コントローラ30は、第1操作源64Aを制御し、第1操作信号202、252、256A、256Bを生成し、特定領域55へと提供している。様々な実施形態において、第1操作信号202、252は、基底状態多様体210、260(例えば、非選択基底多様体状態214、264)と原子オブジェクト408のD多様体との間の遷移に対応している少なくとも第1波長λ1によって特徴付けられている。例示的な実施形態において、第1操作信号は、非選択基底多様体状態264の低エネルギー状態を非選択基底多様体状態264の高エネルギー状態へと結合するように構成されている多様体内波長λmによって特徴付けられている。原子オブジェクトが1価イオンのバリウム原子である例示的な実施形態において、第1波長λ1は実質的に1762nmに等しく、多様体内波長λmは実質的に8GHzで割った光速に等しい。様々な実施形態において、第1操作信号は、選択基底多様体状態212、262が任意の励起多様体状態220、230、270及び/又は280などへと結合することを抑制するように構成されている偏光によって特徴付けられている。例示的な実施形態において、第1波長λ1によって特徴付けられている操作信号(例えば、252)の偏光は、実質的に磁場方向と垂直な偏光(例えば、直線偏光)である。例示的な実施形態において、周波数選択性は、この場合、選択S多様体状態262を隔離するのに十分であるため、システムは多様体内操作信号(例えば、256)の偏光に敏感ではない又は依存していない。
【0071】
ブロック514において、コントローラ30は、第2操作源64Bを制御し、第2操作信号204、254、302を生成し、特定領域55へと提供している。様々な実施形態において、第2操作信号は、第1励起多様体(例えば、D多様体220、270)と第2励起多様体(例えば、P多様体230、280)との間の遷移、及び/又は、励起多様体(例えば、P多様体320)と基底多様体310との間の遷移に対応している少なくとも第2波長λ2によって特徴付けられている。原子オブジェクトが1価イオンのバリウム原子である例示的な実施形態において、第2波長λ2は実質的に614nm又は493nmに等しい。
【0072】
例示的な実施形態において、ブロック512、514は、特定の回数繰り返され、順次実行されている。例示的な実施形態において、ブロック512、514は並列に実行されている(例えば、時間的に少なくとも部分的に重なっている及び/又は同時に)。第1操作信号及び/又は第2操作信号を原子オブジェクトに適用することにより、原子オブジェクトが選択基底多様体状態の1つである確率が高まる。第1操作信号及び/又は第2操作信号の適用が継続及び/又は繰り返されると、原子オブジェクトが選択基底多様体状態の1つである確率が実質的に100%に等しくなるまで高まる。様々な実施形態において、第1操作信号及び/又は第2操作信号は原子オブジェクト閉じ込め装置内の複数の原子オブジェクトに適用されている。例えば、第1操作信号及び/又は第2操作信号の適用は、例示的な実施形態において原子オブジェクトが選択基底多様体状態の1つである確率が実質的に100%と等しくなるのに対応する期間にわたり実行されてもよい。例示的な実施形態において、第1操作信号及び/又は第2操作信号の適用は、原子オブジェクトが選択基底多様体状態の1つである確率が実質的に100%に等しくなるまで向上するように、1ms及び/又は1ms未満だけ実行されてもよい。様々な実施形態において、ブロック512、514は、量子プログラムを実行(performing)及び/又は実行(executing)している最中における、1つ又は複数の原子オブジェクトのための状態準備の実行及び/又は初期化に対応している。例えば、ブロック512、514は、量子プログラムの継続的な実行において量子ビットとして使用されている原子オブジェクト(例えば、中間回路で測定されたもの)の状態準備及び/又は初期化のために実行されてもよい。
【0073】
ステップ/操作516において、コントローラ30は、量子コンピュータ110の様々なエレメント(例えば、電圧源、操作源64及び/又は磁場生成器70など)を制御し、量子回路の実行(performing)及び/又は実行(executing)を継続している。例えば、コントローラ30は、量子コンピュータ110の様々なエレメントを制御し、1つ又は複数の原子オブジェクトを、特定領域55へ、特定領域55から及び/又は特定領域55内へと移送し、1つ又は複数の原子オブジェクトに対して1つ又は複数の量子ゲートを実行し、及び/又は、1つ又は複数の原子オブジェクト及び/又は原子オブジェクトの構成要素の読み出しなど、を引き起こしてもよい。
【0074】
技術的利点
【0075】
1/2超の核スピンを有する原子オブジェクトにおいて、基底多様体は複数の状態を備える。例えば、原子オブジェクトの基底状態は、複数の状態に分裂(例えば、ゼーマン分裂)し、基底多様体を形成している。例えば、基底多様体は、同一の主量子数(n)と同一の角運動量量子数(l)とを有する状態を備える。しかし、基底多様体の状態は、異なる時期量子数(ml)を有する。核スピンによって引き起こされる磁気モーメントと原子オブジェクトの電子スピンによって引き起こされる磁気モーメントとの相互作用によって、異なる磁気量子数(ml)を有する状態は異なるエネルギー準位へと分裂している。これらの異なるエネルギー準位は、基底多様体と原子オブジェクトのエネルギー準位構造の1つ又は複数の励起多様体との間のエネルギー差と比較して相対的に小さいエネルギーによって分離されている。
【0076】
現実のレーザは、完全に安定したディラック・デルタ関数のような周波数スペクトルを有さないことを考慮すると、既に選択基底多様体状態にある原子オブジェクトを乱さずに、非選択基底多様体状態にある原子オブジェクトを扱うことは困難である。しかし、量子コンピュータの量子ビットとして使用される及び/又は実験、制御された量子状態の展開及び/又は量子計算などの実行に使用される原子オブジェクトにとって、原子オブジェクトの初期状態は制御可能でなければならない。従って、どのようにして原子オブジェクトを選択基底多様体状態へと初期化するか、に関する技術的課題が存在している。特に、原子オブジェクトが1/2超の核スピンを有する場合、原子オブジェクトの基底多様体を微細構造及び超微細構造の両方に追加で分裂することになるため、どのようにして原子オブジェクトを選択基底多様体状態へと初期化するか、に関する技術的課題が存在している。
【0077】
本願明細書において記載される実施形態は、これらの技術的課題に対する技術的解決策を提供している。特に、様々な実施形態によると、第1操作信号が生成され、1つ又は複数の原子オブジェクトに適用されている。第1操作信号は、1つ又は複数の非選択基底多様体状態を励起多様体の状態へと結合するように構成されている。例えば、第1操作信号は、1つ又は複数の非選択基底多様体状態の内の1つにある原子オブジェクトを励起多様体状態へと励起するように構成されている。様々な実施形態において、原子オブジェクトが励起多様体状態から選択基底多様体状態へと崩壊する確率はゼロではない。第1操作信号は、選択基底多様体状態を任意の励起多様体状態へと結合しないように構成されている。例えば、磁場方向と比較した第1操作信号の伝搬方向、第1操作信号の偏光、及び/又は、選択基底多様体状態に対する共振から(例えば、励起多様体状態への遷移に関して)シフトされた細線操作信号の使用などに基づいて、原子オブジェクトが選択基底多様体状態から結合される確率及び/又は選択基底多様体状態から遷移する確率を抑制するために使用されてもよい。様々な実施形態において、第2操作信号は生成され、原子オブジェクトに適用されている。様々な実施形態において、第2操作信号は1つ又は複数の励起多様体の少なくとも1つの多様体を追い出すために原子オブジェクトに適用されている。例えば、第2操作信号は、非ゼロの確率で原始的対象物を励起多様体状態から選択基底多様体状態へと崩壊させるように構成された双極子信号であってもよい。
【0078】
第1操作信号及び/又は第2操作信号の適用が継続及び/又は繰り返されると、原子オブジェクトが選択基底多様体状態の内の1つである確率が実質的に100%に等しくなるまで高まる。様々な実施形態において、第1操作信号及び/又は第2操作信号は原子オブジェクト閉じ込め装置内において複数の原子オブジェクトに適用されている。
【0079】
様々な実施形態において、選択基底多様体状態は原子オブジェクトのエネルギー準位構造の定められた量子ビット空間における状態である。例示的な実施形態において、選択基底多様体状態はml=0の状態である(例えば、F=2、ml=0;F=1、ml=0など)。様々な実施形態において、非選択基底多様体状態は、原子オブジェクトのエネルギー準位構造の定められた量子ビット空間の一部及び/又は内部ではない。様々な実施形態において、1つ又は複数の励起多様体は、原子オブジェクトエネルギー準位構造のD5/2多様体、P1/2多様体及び/又はP3/2多様体である。
【0080】
従って、様々な実施形態により、高核スピンの原子オブジェクト(例えば、1/2超のスピンを有する原子オブジェクト)を、効果的及び確実に初期化し、及び/又は、選択基底多様体状態へと状態準備することが可能になる。
【0081】
例示的なコントローラ
【0082】
様々な実施形態において、量子コンピュータ110は、量子コンピュータ110の様々なエレメントを制御するように構成されたコントローラ30を備える。様々な実施形態において、コントローラ30は、量子コンピュータ110に、様々な操作(例えば、ゲート操作、冷却操作、移送操作、量子ビット相互作用操作、量子ビット測定操作、リーク抑制/変換操作、及び/又は、量子ビット初期化及び/又は状態準備操作などのコンピュータ操作)を実行させるように構成されてもよい。例えば、コントローラ30は、第1操作信号及び/又は第2操作信号を適用させることなどによって、1つまたは複数の原子オブジェクトの状態を準備及び/又は初期化するように構成されてもよい。例えば、コントローラ30は、低温及び/又は真空チャンバ40内の温度及び圧力を制御する低温システム及び/又は真空システム、操作源64、電圧信号を原子オブジェクト閉じ込め装置50の電極へと印加するように構成された電圧源、磁場生成器70、及び/又は、低温及び/又は真空チャンバ40内の環境条件(例えば、温度、湿度及び/又は圧力など)を制御するシステム、を制御するように構成されてもよく、及び/又は、原子オブジェクト閉じ込め装置50内の1つ又は複数の原子オブジェクトの量子状態の制御された展開を操作及び/又は引き起こすように構成されてもよい。
【0083】
図6に示されるように、様々な実施形態において、コントローラ30は、プロセスエレメント605、メモリ610、ドライバコントローラエレメント615、通信インターフェース620及び/又はアナログ―デジタル変換器エレメント625などを含む様々なコントローラエレメントを備えてもよい。例えば、プロセスエレメント605は、プログラマブルロジックデバイス(CPLD,Complex Programmable Logic Device)、マイクロプロセッサ、コプロセシングエンティティ、ASIP(application-specific instruction-set processor)、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit,特定用途向け半導体)、FPGA(field programmable gate array)、PLA(programmable logic array,プログラマブルロジックアレイ)、ハードウェアアクセラレータ、他のプロセスデバイス及び/又は回路、及び/又はコントローラなどを備えてもよい。回路という単語は、完全にハードウェアの実施形態、又はハードウェアとコンピュータプログラム製品との組み合わせを指してもよい。例示的な実施形態において、コントローラ30のプロセスエレメント605は、クロックを備え、及び/又はクロックと通信している。
【0084】
例えば、メモリ610は、ハードディスク、ROM(Read Only Memory,リードオンリーメモリ)、PROM(Programmable Read Only Memory,プログラマブルリードオンリーメモリ)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、MMC(Multi Media Card,マルチメディアカード)、SDメモリカード、メモリスティック、CBRAM、PRAM、FeRAM(ferroelectric random access memory,強誘電体メモリ)、PRAM、SONOS、レーストラックメモリ、RAM(Random Access Memory,ランダムアクセスメモリ)、DRAM(Dynamic Random Access Memory,ダイナミックランダムアクセスメモリ)、SRAM(Static Random Access Memory,スタティックランダムアクセスメモリ)、FPM DRAM(Fast Page Mode DRAM)、EDO DRAM(Enhanced Data Out DRAM)、SDRAM(synchronous dynamic DRAM)、DDR SDRAM(Double-Data-Rate SDRAM)、DDR2 SDRAM(Double-Data-Rate2 Synchronous Dynamic Random Access Memory)、DDR3 SDRAM、RDRAM(Rambus DRAM)、RIMM(Rambus Inline Memory Module)、DIMM(Dual Inline Memory Module)、SIMM(Single Inline Memory Module)、VRAM(Video Random Access Memory)、キャッシュメモリ及び/又はレジスタメモリなどの内の1つ又は複数のような揮発性および/または不揮発性メモリストレージのような非一過性メモリを備えてもよい。様々な実施形態において、メモリ610は量子コンピュータの量子ビットに対応する量子ビットレコード(例えば、量子ビットレコードデータストア、量子ビットレコードデータベース及び/又は量子ビットレコードテーブルなどにおいて)、較正テーブル、実行可能キュー及び/又はコンピュータプログラムコード(例えば、1つ又は複数のコンピュータ言語および/または専用コントローラ言語などにおいて)などを記憶してもよい。例示的な実施形態において、メモリ610(例えば、プロセスエレメント605によって)に記憶されているコンピュータプログラムコードの少なくとも一部を実行することにより、コントローラ30は本願明細書に記載されている1つ又は複数のステップ、操作、プロセス及び/又は順序などを実行することができる。
【0085】
様々な実施形態において、ドライバコントローラエレメント615は、それぞれ1つ又は複数のドライバを制御するように構成されている1つ又は複数のドライバ及び/又はコントローラエレメントを含んでもよい。様々な実施形態において、ドライバコントローラエレメント615は、ドライバ及び/又はドライバコントローラを備えてもよい。例えば、ドライバコントローラは、1つ又は複数の対応するドライバに、コントローラ30によって(例えば、プロセスエレメント605によって)スケジュールおよび実行される実行可能命令及び/又はコマンドなどによって操作されるようにするように構成されていてもよい。様々な実施形態において、ドライバコントローラエレメント615は、コントローラ30に、1つ又は複数の操作源64を操作及び/又は制御させ、1つ又は複数の磁場生成器70を制御させ、及び/又は、低温及び/又は真空システムを操作させるなどしてもよい。様々な実施形態において、ドライバは、レーザドライバ、真空構成要素ドライバ、電圧源(例えば、AC(Alternating Current,交流)電源、AWG(arbitrary waveform generators,任意波形発生器)及び/又はDDS(direct digital synthesizers,ダイレクトデジタルシンセサイザ)など)、及び/又は、低温及び/又は真空システム構成要素ドライバなどであってもよい。様々な実施形態において、コントローラ30は、カメラ、MEMs(Micro Electro Mechanical Systems,微小電子機械システム)カメラ、CCD(Charge Coupled Devices,電荷結合素子)カメラ、フォトダイオード及び/又は光電子増倍管などのような1つ又は複数の光学受信構成要素からの信号を受信及び/又は通信するための手段(mean)を備える。例えば、コントローラ30は、1つ又は複数の光学受信構成要素及び/又は較正センサなどからの信号を受信するように構成された1つ又は複数のアナログーデジタル変換エレメント625を備えてもよい。例えば、コントローラ30は、原子オブジェクト閉じ込め装置50の特定領域55における条件に対応する、及び/又は、アナログーデジタル変換エレメント625を介した様々な原子オブジェクト308に対応する、測定値を受信してもよい。
【0086】
様々な実施形態において、コントローラ30は、コンピュータエンティティ10と通信及び/又はインターフェースするための通信インターフェース620を備えてもよい。例えば、コントローラ30は、コンピュータエンティティ10からの実行可能命令及び/又はコマンドセットなどを受信し、及び、量子コンピュータ110から受信した出力(例えば、光収集システム又は他の測定システムから)及び/又は出力を処理した結果をコンピュータエンティティ10へと提供するための通信インターフェース620を備えてもよい。様々な実施形態において、コンピュータエンティティ10及びコントローラ30は、直接的な有線及び/又は無線接続、及び/又は、1つ又は複数の有線及び/又は無線ネットワーク20を介して通信してもよい。
【0087】
例示的なコンピュータエンティティ
【0088】
図7は、本願発明の実施形態とともに使用され得る例示的なコンピュータエンティティ10の代表回路図を示している。様々な実施形態において、コンピュータエンティティ10は、ユーザが量子コンピュータ110に対して入力を提供し(例えば、コンピュータエンティティ10のユーザインターフェースを介して)、及び、量子コンピュータ110からの出力を受信、表示、及び/又は解析することなどを可能にするように構成されていている。例えば、ユーザは、コントローラ30が量子アルゴリズム及び/又は量子回路を受信し量子コンピュータ110に量子アルゴリズム及び/又は量子回路を実行させることができるように提供され得る、量子アルゴリズム及び/又は量子回路を生成及び/又はプログラムするために、コンピュータエンティティ10を操作してもよい。
【0089】
図7に示されるように、コンピュータエンティティ10は、アンテナ712と、送信機714(例えば、ラジオ)と、受信機706(例えば、ラジオ)と、送信機714及び受信機706それぞれへと信号を提供し、および、送信機714及び受信機706それぞれから信号を受信するプロセスデバイス及び/又はエレメント708とを含んでもよい。送信機714及び受信機706にそれぞれ提供され、そこから受信される信号は、コントローラ30及び/又は他のコンピュータエンティティ10などの様々なエンティティと通信するために、適用可能な無線システムのエアインターフェース規格に従ったシグナリング情報/データを含んでもよい。この点について、コンピュータエンティティ10は、1つ又は複数のエアインターフェース規格、通信プロトコル、モジュレーションタイプ及びアクセスタイプとともに操作可能であってもよい。例えば、コンピュータエンティティ10は、FDDI(Fiber Distributed Data Interface,光ファイバ分散データインタフェース)、DSL(digital subscriber line,デジタル加入者線)、イーサネット、ATM(asynchronous transfer mode,非同期転送モード)、フレームリレー、DOCSIS(Data Over Cable Service Interface Specification,ドクシス)又はその他の有線伝送プロトコルなどのような、有線データ伝送プロトコルを使用して通信を提供及び/又は受信するように構成されてもよい。同様に、コンピュータエンティティ10は、GPRS(General Packet Radio Service,汎用パケット無線サービス)、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System,ユニバーサル移動体通信システム)、CDMA2000(Code Division Multiple Access 2000,符号分割多元接続2000)、CDMA2000 1X(1xRTT)、WCDMA(登録商標)(Wideband Code Division Multiple Access,広帯域符号分割多重接続)、GSM(Global System for Mobile Communications)、EDGE(Enhanced Data rates for GSM Evolution,GSM進化型高速データレート)、TD-SCDMA(Time Division-Synchronous Code Division Multiple Access,時分割同期符号分割多元接続)、LTE(Long Term Evolution)、E-UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)、EVDO(Evolution-Data Optimized)、HSPA(High Speed Packet Access)、HSDPA(High-Speed Downlink Packet Access)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、Wi-Fiダイレクト(Wi-Fi Direct)、802.16(WiMAX)、UWB(ultra wideband,超広帯域)、赤外(infrared(IR))プロトコル、NFC(near field communication,近距離無線通信)プロトコル、Wibree、Bluetooth(登録商標)プロトコル、ワイヤレスUSB(wireless universal serial bus,無線ユニバーサル シリアル バス)プロトコル及び/又は他の任意の無線プロトコルなどのような様々な任意のプロトコルを使用する無線外部通信ネットワークを介して通信するように構成されてもよい。コンピュータエンティティ10は、BGP(Border Gateway Protocol,ボーダーゲートウェイプロトコル)、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol,動的ホスト構成プロトコル)、DNS(Domain Name System,ドメインネームシステム)、FTP(File Transfer Protocol、ファイル転送プロトコル)、HTTP(Hypertext Transfer Protocol,ハイパーテキスト転送プロトコル)、HTTP over TLS/SSL/Secure、IMAP(Internet Message Access Protocol)、NTP(Network Time Protocol,ネットワーク タイム プロトコル)、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol,シンプル メール トランスファー プロトコル)、テルネット、TLS(Transport Layer Security,トランスポート レイヤー セキュリティ)、SSL(Secure Sockets Layer)、IP(Internet Protocol,インターネットプロトコル)、TCP(Transmission Control Protocol,トランスミッション コントロール プロトコル)、UDP(User Datagram Protocol,ユーザ データグラム プロトコル)、DCCP(Datagram Congestion Control Protocol,データグラム輻輳制御プロトコル)、SCTP(Stream Control Transmission Protocol,ストリーム制御伝送プロトコル)及び/又はHTML(HyperText Markup Language,ハイパーテキストマークアップ言語)などを使用する、このような通信プロトコル及び規格を使用してもよい。
【0090】
このような通信規格及びプロトコルを介して、コンピュータエンティティ10は、USSD(Unstructured Supplementary Service information/data)、SMS(Short Message Service,ショートメッセージサービス)、MMS(Multimedia Messaging Service,マルチメディアメッセージングサービス)、DTMF(Dual-Tone Multi-Frequency Signaling)及び/又はSIM dialer(Subscriber Identity Module Dialer)のようなコンセプトを使用する様々な他のエンティティと通信してもよい。コンピュータエンティティ10は、例えば、ファームウェア、ソフトウェア(例えば、実行可能命令、アプリケーション、プログラムモジュールを含む)及びオペレーティングシステム、に対する変更、アドオン、アップデートをダウンロードしてもよい。様々な実施形態において、コンピュータエンティティ10は、1つ又は複数の有線及び/又は無線ネットワーク20を介して通信するように構成されているネットワークインターフェース720を備える。
【0091】
コンピュータエンティティ10は、1つ又は複数のユーザ入力/出力インターフェースを備えるユーザインターフェースデバイスも備えてもよい(例えば、ディスプレイ716、及び/又は、プロセスデバイス及び/又はエレメント708に結合されているスピーカー/スピーカードライバ、プロセスデバイス及び/又はエレメント708に結合されているタッチスクリーン、キーボード、マウス及び/又はマイクロフォン)。例えば、ユーザ出力インターフェースは、コンピュータエンティティ10上で実行される、及び/又はコンピュータエンティティ10を介してアクセス可能な、アプリケーション、ブラウザ、ユーザインターフェース、インターフェース、ダッシュボード、スクリーン、ウェブページ、ページ、及び/又は本願明細書で互換的に使用される同様の単語を提供するように構成され、情報/データの表示または音声プレゼンテーションを引き起こし、1つまたは複数のユーザ入力インターフェースを介してこれと相互作用することができる。ユーザ入力インターフェースはキーパッド718(ハード又はソフト)、タッチディスプレイ、音声/スピーチ又はモーションインターフェース、スキャナ、リーダ又は他の入力デバイスのように、コンピュータエンティティ10がデータを受信することのできるようにする任意の数のデバイスを備えてもよい。キーパッド718を含む実施形態において、キーパッド718は、従来の数字(0から9)、関連するキー(#、*)及びコンピュータエンティティ10を操作するために使用される他のキーを含む(又は表示を引き起こす)ことができ、アルファベットキーのフルセット又はアルファベットキーのフルセットを提供するために活性化され得るキーのセットを含んでもよい。入力を提供することに加え、ユーザ入力インターフェースは例えば、スクリーンセイバ及び/又はスリープモードなどのような特定の機能を活性化又は不活性化するために使用されてもよい。このような入力を通じて、コンピュータエンティティ10は情報/データ及び/又はユーザ相互作用/入力などを収集してもよい。
【0092】
コンピュータエンティティ10はまた、揮発性ストレージ又はメモリ722及び/又は不揮発性ストレージ又はメモリ724を含んでもよく、これらは、埋め込まれるてもよく、及び/又は取り外し可能であってもよい。例えば、不揮発性メモリは、ROM,PROM,EPROM,EEPROM,フラッシュメモリ,MMCs,SDメモリカード,メモリスティック,CBRAM,PRAM,FeRAM,RRAM,SONOS及び/又はレーストラックメモリなどであってもよい。揮発性メモリは、RAM,DRAM,SRAM,FPM DRAM,EDO DRAM,SDRAM,DDR SDRAM,DDR2 SDRAM,DDR3 SDRAM,RDRAM,RIMM,DIMM,SIMM,VRAM、キャッシュメモリ及び/又はレジスタメモリなどであってもよい。揮発性および不揮発性ストレージ又はメモリは、コンピュータエンティティ10の機能を実行するための、データベース、データベースインスタンス、データベース管理システムエンティティ、データ、アプリケーション、プログラム、プログラムモジュール、スクリプト、ソースコード、オブジェクトコード、バイトコード、コンパイルコード、インタープリタコード(interpreted code)、マシンコード及び/又は実行可能命令などを記憶してもよい。
【0093】
結論
【0094】
本願明細書に記載された本願発明の多くの変更形態及び他の実施形態が、前述の説明及び関連する図面に示された教示の利益を有する本願発明が属する技術分野の当業者には、思い浮かぶであろう。従って、本願発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変更形態および他の実施形態が添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されていることを理解されたい。本願明細書では特定の用語が使用されているが、これらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクトを初期化する方法であって、前記方法は、
前記原子オブジェクト閉じ込め装置に関連するコントローラによって、第1操作源を制御し、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の特定領域へ第1操作信号を提供するステップであって、
前記原子オブジェクトは1/2超の核スピンを有し、
前記原子オブジェクトの基底状態多様体は、1つ又は複数の選択基底多様体状態と、1つ又は複数の非選択基底多様体状態を備え、
前記第1操作信号は、前記原子オブジェクトの1つ又は複数の非選択基底多様体状態の内の少なくとも1つから1つ又は複数の励起多様体への遷移を促進し、前記選択基底多様体状態からの遷移を抑制するように構成されている、ステップと、
前記コントローラによって、第2操作源を制御し、前記原子オブジェクトが前記1つ又は複数の励起多様体の内の少なくとも1つから基底多様体内の崩壊状態へと崩壊することを促進するために、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域へ第2操作信号を提供するステップであって、
前記崩壊状態が前記選択基底多様体状態の内の1つである確率が非ゼロである、ステップと、を備え、
初期化される前記原子オブジェクトは、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域に位置している、方法。
【請求項2】
前記第1操作信号の偏光は、前記1つ又は複数の選択基底多様体状態から前記1つ又は複数の励起多様体への遷移を抑制するように構成されている、
又は、
前記第1操作信号の伝搬方向は、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の前記特定領域における磁場方向と垂直である、
の内の少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、
(a)前記コントローラによって制御されている量子コンピュータによる量子プログラムの実行前、又は、
(b)前記量子コンピュータによる前記量子プログラムの実行中に前記原子オブジェクトを前記量子コンピュータの量子ビット空間へと再度初期化するため、
の内の少なくとも1つに実行されている、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】