(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ジアルキルフェノールを出発物質とするポリエーテルアミン及びその使用
(51)【国際特許分類】
C10L 1/22 20060101AFI20241128BHJP
C10L 10/00 20060101ALI20241128BHJP
C10L 1/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C10L1/22
C10L10/00
C10L1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534390
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022052081
(87)【国際公開番号】W WO2023107530
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505318547
【氏名又は名称】ハンツマン ペトロケミカル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Huntsman Petrochemical LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ハイボ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ユシェン
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA23
4H015AB07
(57)【要約】
本開示は、ジアルキルフェノール開始物質から生成したポリエーテルアミンを提供し、この開始物質を最初にプロピレンオキシドでアルコキシ化し、次いで還元的アミノ化してポリエーテルアミンを形成させる。本開示のポリエーテルアミンは、様々な用途、例えば、燃料組成物の燃料添加剤等に使用可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)
【化1】
式中、各Rは、同じでも異なっていることも可能であって、最大30個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、約2~約200の整数であり、及びAは、-NH
2又はNHR
aであり、式中、R
aは、最大約30個の炭素原子を有するアルキル基である、
を有するポリエーテルアミン化合物を含む、燃料用燃料添加剤。
【請求項2】
各Rは、同じアルキル基であって、1~12個の炭素原子を有する、請求項1に記載の燃料添加剤。
【請求項3】
Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びドデシルから選択される、請求項2に記載の燃料添加剤。
【請求項4】
Aは、NH
2である、請求項1に記載の燃料添加剤。
【請求項5】
nは、約5~約50の整数である、請求項1に記載の燃料添加剤。
【請求項6】
ポリエーテルアミン化合物の製造プロセスであって、以下
以下の式(2)
【化2】
式中、各Rは、同じでも異なっていることも可能であって、最大30個の炭素原子を有するアルキル基である、
を有するジアルキルフェノール化合物をアルコキシ化反応ゾーンに投入することと、前記アルコキシ化反応ゾーン中、中間体ポリオールを得る長さの時間、前記ジアルキルフェノールをプロピレンオキシドと接触させることと、前記中間体ポリオールを還元的アミノ化ゾーンに投入することと、並びに前記還元的アミノ化ゾーン中、水素及びアンモニア又は第一級アルキルアミンの存在下、前記中間体ポリオールを還元的アミノ化触媒と接触させることと、
を含む前記プロセス。
【請求項7】
前記中間体ポリオールは、水素及びアンモニアの存在下、前記還元的アミノ化触媒と接触させられる、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項1に記載の燃料添加剤と、キャリアオイル又は溶媒と、及び任意選択で1種又は複数の性能向上用添加剤と、を含む、燃料添加剤濃厚物。
【請求項9】
前記キャリアオイルは、無機キャリアオイル又は合成キャリアオイルを含む、請求項8に記載の燃料添加剤濃厚物。
【請求項10】
前記溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はそれらの混合物を含む、請求項8に記載の燃料添加剤濃厚物。
【請求項11】
請求項1に記載の燃料添加剤を少量で含み、及び燃料を過半量で含む、燃料組成物。
【請求項12】
前記燃料は、ガソリンを含む、請求項11に記載の燃料組成物。
【請求項13】
前記燃料添加剤は、前記燃料が物流拠点から離れた後に、前記燃料に添加される、請求項11に記載の燃料組成物。
【請求項14】
エンジンにおいてデポジットを制御する方法であって、燃焼させようとする燃料に、請求項1に記載の燃料添加剤と、及び任意選択でキャリアオイル、溶媒、又は1種又は複数の性能向上用添加剤と、を添加して添加剤含有燃料を形成することと、並びに前記エンジンにおいて前記添加剤含有燃料を燃焼させることと、を含む、前記方法。
【請求項15】
前記燃料は、ガソリンを含み、及びエンジンは、ポータブル燃料噴射(「PFI」)エンジン又はガソリン直噴(「GDI」)エンジンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
エンジンの性能を改善する方法であって、燃焼させようとするガソリンに、請求項1に記載の燃料添加剤と、及び任意選択でキャリアオイル、溶媒、及び1種又は複数の性能向上用添加剤とを添加して、添加剤含有燃料を形成することと、並びに前記エンジンにおいて前記添加剤含有燃料を燃焼させることと、を含み、前記性能の改善は、燃費の改善、維持の軽減、オーバーホール又はインジェクタ交換の頻度の減少、運転性能の改善、パワー改善、又は加速改善、のうちの1つ又は複数である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願番号第63/287,995号、2021年12月10日出願、の優先権を主張する。前述の出願は、本明細書中参照として援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、概して、ジアルキルフェノールを出発物質とする(initialized)ポリエーテルアミン及びその様々な用途での使用に関する。様々な用途として、エンジンのデポジットを減少させ及び予防する、燃料組成物の燃料添加剤が挙げられるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0003】
デポジットが、エンジン稼働中、炭化水素の酸化及び重合により、エンジンの各種構成要素(例えば、キャブレターポート、絞り弁、燃料インジェクタ、吸気口、及び吸気弁)の表面に形成される可能性があることは、一般に知られている。デポジットが、空気、燃料、及び油の混合物の不完全燃焼により、燃焼室に形成される可能性があることも知られている。こうしたデポジットは、たとえ比較的少量で存在する場合でも、失速及び加速不良等の顕著な運転不具合を引き起こす可能性がある。また、こうしたデポジットは、車両の燃料消費及び排気汚染物生成を顕著に増加させる可能性がある。
【0004】
近年、キャブレターを通じて動く車両は、電子制御装置に支えられた車両へと徐々に置き換わってきている。自動車の燃料供給が電子装置により制御されている場合、エンジンの燃料インジェクタは、小さい開口、高い作業温度、及び不良な燃料潤滑性を有することになり、したがって、デポジットにより容易にブロックされて、例えば、霧化不良、スムーズではない燃料供給、燃料廃棄物、基準未満の排気等、様々な問題を引き起こす可能性がある。長期使用後、デポジットは、電子噴射エンジンの吸気弁のシール面にも形成されて、シリンダーがしっかり密閉されなくなり、エンジンパワーの低下及び不燃性ガスの漏出を引き起こすことになる。これは、燃費、エンジンの出力、及び排出される排気ガスの品質に深刻な影響を及ぼし、ひいてはエンジンの性能を低下させる。
【0005】
上記で検討した課題を解決する1つの一般的なアプローチは、燃料の燃焼前に、燃料に燃料添加剤を添加することである。一般に使用される燃料添加剤の種類の1つは、ポリイソブチルアミン等のヒドロカルビル置換アミンである。この種の燃料添加剤は、ガソリンエンジンの燃料ノズル及び吸気弁に、優れた洗浄効果を有し、エンジンのこれら部品上のデポジットを阻止し及び有効に洗浄することができる。しかしながら、この種の燃料添加剤の使用は、デポジットが、燃料取入システムから一掃されて燃焼室へと運ばれる原因となり、燃焼室中のデポジットの顕著な増加を引き起こす可能性がある。
【0006】
使用される燃料添加剤の別の種類は、ポリエーテルアミンである。典型的には、ポリエーテルアミンは、同一分子中に、アミン官能基とポリエーテル官能基の両方が存在している単成分添加剤である。当該分野の一般認識として、ポリエーテルアミン系燃料添加剤は、粒子状物質生成、窒素酸化物(NOx)排出、及び燃焼室デポジットを低減することができるため、好適である。
【0007】
先行技術のポリエーテルアミンの例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、及び特許文献14に見つけることができる。これらのポリエーテルアミンは、アルコール(直鎖若しくは分岐鎖)又はモノアルキルフェノールを出発物質に用い(initialized)、有効な燃料添加剤としてのそれらの性能が、ポリエーテル骨格中のブチレンオキシド含有量の増加とともに上昇することになることが、開示されている。しかしながら、ブチレンオキシド含有量の増加は、得られるポリエーテルアミンの費用も顕著に上昇させる。
【0008】
したがって、ブチレンオキシド含有量の高い先行技術のポリエーテルアミンのものと類似した又は改善された性能を提供することができる、新規の費用効率の高いポリエーテルアミン燃料添加剤の開発が引き続き必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,191,537号
【特許文献2】米国特許第4,261,704号
【特許文献3】米国特許第5,752,991号
【特許文献4】米国特許第4,985,047号
【特許文献5】米国特許第5,112,364号
【特許文献6】米国特許第4,609,377号
【特許文献7】米国特許第6,372,000号
【特許文献8】米国特許第6,217,624号
【特許文献9】米国特許第6,548,461号
【特許文献10】米国特許第4,747,851号
【特許文献11】米国特許第5,527,364号
【特許文献12】米国特許第5,660,601号
【特許文献13】米国特許第6,224,642号
【特許文献14】米国特許第6,548,461号
【発明の概要】
【0010】
本開示は、式(1)を有するポリエーテルアミン化合物を含む燃料用燃料添加剤を記載し、
【化1】
式中、各Rは、同じでも異なっていることも可能であって、最大30個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、約2~約200の整数であり、及びAは、-NH
2又はNHR
aであり、式中、R
aは、最大約30個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0011】
別の実施形態に従って、提供されるのは、式(1)のポリエーテルアミンと、キャリアオイル又は溶媒と、及び任意選択で1種又は複数の性能向上用添加剤と、を含む燃料添加剤濃厚物である。
【0012】
なおも別の実施形態において、提供されるのは、燃料添加剤として式(1)のポリエーテルアミンと、及び燃料と、を含む燃料組成物である。
【0013】
本開示の燃料組成物は、任意の燃料燃焼システムで燃焼させることができ、そのような燃料燃焼システムとして、例えば、任意のガソリン車両、ディーゼル電気ハイブリッド車両、ガソリン電気ハイブリッド車両、2サイクルエンジン、ありとあらゆるバーナー又は燃焼装置、例えば、固定式バーナー(家庭暖房、産業用、ボイラー、炉)、廃棄物焼却炉、ディーゼル燃料バーナー、ディーゼル燃料エンジン(噴射されるユニットおよびコモンレール)、ジェットエンジン、予混合圧縮着火エンジン、自動車ディーゼルエンジン、ガソリン燃料バーナー、ガソリン燃料エンジン、発電所発電機等が挙げられる。
【0014】
別の実施形態において、提供されるのは、燃料燃焼システムの性能の改善方法であり、本方法は、燃料に、式(1)のポリエーテルアミンを添加して、添加剤含有燃料を形成することと、及び燃料燃焼システムにおいて添加剤含有燃料を燃焼させることと、を含む。
【0015】
更に別の実施形態において、提供されるのは、燃料に、式(1)のポリエーテルアミンを添加して、添加剤含有燃料を形成し、燃料を燃料燃焼システムにおいて燃焼させることによる、デポジットの制御及び/又は燃料燃焼システムの効率改善方法である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、ジアルキルフェノールを出発物質とするポリエーテルアミン及び様々な用途でのその使用、特に、燃料で使用する燃料添加剤としての使用を提供する。理論に固執するわけではないが、結果として生成するポリエーテルアミンにジアルキル基が存在することが、ポリエーテルアミンの疎水性を上昇させると考えられる。この疎水性上昇により、ポリエーテルアミンが、燃料に添加された場合に、燃料燃焼システムにおける燃料の燃焼中、燃料単独に比べて、又は先行技術のモノアルキルフェノールを出発物質とするポリエーテルアミンと組み合わせた燃料に比べて、デポジットをより良好に制御することができるようになると考えられる。デポジット制御のこの改善は、維持費用の顕著な削減及び/又はパワーの増大及び/又は燃費の改善を招くことができる。そのうえ、ポリエーテルアミンの疎水性がジアルキル基により上昇することにより、先行技術のポリエーテルアミンのポリエーテル骨格に通常必要とされるブチレンオキシド基は、プロピレンオキシド基で一部又は全部置き換えることができ、これにより、本開示のポリエーテルアミンはより費用効率の高いものとなる。
【0017】
「含む(comprising)」という用語及びその派生語は、どのような追加の要素、工程、又は手順であれ、それが本明細書中開示されているか否かにかかわらず、その存在を排除することを意図しない。あらゆる疑問を回避する目的で、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて本明細書中特許請求される全ての要素は、反対する記述がない限り、あらゆる追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含むことができる。反対に、「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、本明細書中登場する場合、任意の他の要素、工程、又は手順について、それらが実施可能性について必須ではない場合を除いて、あらゆる後続の列挙の範囲からそれらを排除し、「~からなる(consisting of)」という用語は、使用される場合、具体的に描写又は列挙されていないどのような要素、工程、又は手順も、排除する。「又は」及び「及び/又は」という用語は、特に記載がない限り、列挙される項目を個別に指すだけでなく、任意の組み合わせで指す。例えば、Aおよび/またはBという表現は、A単独、B単独、又はA及びBを指す。
【0018】
「a」及び「an」という冠詞は、本明細書中、その冠詞の文法上の目的語が1つである又は1つより多い(すなわち少なくとも1つである)ことを指すのに使用される。例として、「ポリエーテルアミン(a polyetheramine)」は、1つのポリエーテルアミン又は1つより多いポリエーテルアミンを意味する。「1つの実施形態において」、「1つの実施形態に従って」等の語句は、その語句に続く特定の特長、構造、又は特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれていること、及び本開示の1つより多い実施形態に含まれている可能性があること、を概して意味する。重要なことは、そのような語句が、必ずしも同じ実施形態を指しているのではないことである。本明細書中、ある要素若しくは特長が、含まれている又はある特徴を有することを記述するのに、「may」、「can」、「could」、又は「might」が使用される場合、その特定の要素若しくは特長は、含まれている又はある特徴を有することを必須としない。
【0019】
「好適である」及び「好ましくは」という用語は、ある特定の状況下で、ある特定の利益を提供することが可能な実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態も、同一又は他の状況下で、好適である可能性がある。そのうえさらに、1つ又は複数の好適な実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを暗示するものではなく、他の実施形態を本開示の範囲から排除することを意図しない。
【0020】
「約」という用語は、本明細書中使用される場合、ある値又は範囲にある程度の変動性を許容することを可能にし、例えば、それは、記述される値の又は記述される範囲限度の、10%以内、5%以内、又は1%以内が可能である。
【0021】
範囲形式で表現される値は、範囲の限度として明記される数値を含むだけでなく、その範囲内に包含される個別の数値又はサブ範囲も、各数値及びサブ範囲が明記されているかのように含まれるとして、柔軟な様式で解釈されなければならない。例えば、1~6等の範囲は、1~3、2~4、3~6等のサブ範囲、並びにその範囲内に含まれる個別の数字、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示していると見なされなければならない。これは、範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0022】
「任意選択の」又は「任意選択で」という用語は、続いて記載される事象又は状況が生じる可能性も生じない可能性もあること、及びその記載には、当該事象又は状況が生じる場合及び生じない場合が含まれること、を意味する。
【0023】
「過半量」という用語は、組成物の合計重量に対して50重量%以上、例えば、約60重量%~約99.5重量%、又は約70重量%~約99重量%、又は約80重量%~約98重量%の量を意味すると解釈される。その上、本明細書中使用される場合、「少量」という用語は、組成物の合計重量に対して50重量%未満、例えば、約0.1重量%~約40重量%、又は約1重量%~約30重量%、又は約5重量%~約20重量%の量を意味すると解釈される。
【0024】
「実質的に含まない」という用語は、ある特定の構成物又は部分が、組成物全体に対して物質的な影響を有さない量で存在している、組成物を指す。一部の実施形態において、「実質的に含まない」は、ある特定の構成物又は部分が、組成物の合計重量に基づいて、約5重量%未満、又は約4重量%未満、又は約3重量%未満、又は約2重量%未満、又は約1重量%未満、又は約0.5重量%未満、又は約0.1重量%未満、又は約0.05重量%未満、又は更には約0.01重量%未満で存在している組成物、あるいは個別の組成物に存在するある特定の構成物又は部分の量がないこと、を指すことができる。
【0025】
「燃料添加剤」という用語は、燃料及び/又はエンジン及び関連する燃料操作構成要素に有益な特性を付与する添加剤を意味する。
【0026】
「アルキル」という用語は、アルカンの一価ラジカルを指す。適切なアルキル基は、例えば、最大約30個の個の炭素原子、又は最大24個の炭素原子、又は最大20個の炭素原子、又は最大16個の炭素原子、又は最大12個の炭素原子、又は最大10個の炭素原子、又は最大8個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子、又は最大3個の炭素原子を有することができる。一部の実施形態において、アルキル基は、例えば、1~30個の炭素原子、又は3~24個の炭素原子、又は8~14個の炭素原子を有することができる。アルキル基は、直鎖、分岐鎖、環状、又はそれらの組み合わせであることができる。
【0027】
デポジットを制御する、デポジット制御等は、本明細書中使用される場合、以下のうちの1つ又は複数を包含することを意図する:既存のデポジットを減少させる(「クリーンアップ」);デポジット形成を減少させる(「キープクリーン」);及びデポジットの負の影響が減少するようにそれらを修飾する。
【0028】
1つの実施形態に従って、本開示は、ジアルキルフェノールを出発物質として(initialized)式(1)を有するポリエーテルアミン化合物を含む燃料用燃料添加剤を提供し:
【化2】
式中、各Rは、同じでも異なっていることも可能であって、最大30個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、約2~約200の整数であり、及びAは、-NH
2又はNHR
aであり、式中、R
aは最大約30個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0029】
1つの実施形態において、各Rは、同じアルキル基であって、最大30個の炭素原子を有する、又は最大24個の炭素原子を有する、又は最大16個の炭素原子を有する。別の実施形態において、各Rは、異なるアルキル基であって、最大30個の炭素原子を有する、又は最大24個の炭素原子を有する、又は最大16個の炭素原子を有する。一部の実施形態において、各Rは、同じアルキル基であって、1~12個の炭素原子又は2~10個の炭素原子を有する。アルキル基の具体例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ドデシル、及びトリデシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
別の実施形態において、nは、約3~約100、又は約5~約50、又は約7~約25、又は約8~約20、又は約9~約17、又は約10~約15の整数である。
【0031】
一部の実施形態において、Aは、NH2である。他の実施形態において、Aは、-NHRaであり、式中、Raは、アルキル基であって、最大約24個の炭素原子を有する、又は最大約20個の炭素原子を有する、又は最大約12個の炭素原子を有する。他の実施形態において、Raは、アルキル基であって、1~12個の炭素原子又は2~10個の炭素原子を有する。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチルアミン、tert-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチルアミン、デシル、ドデシル、及びオクタデシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
別の実施形態に従って、各Rは、同じアルキル基であって、1~16個の炭素原子を有し、nは約5~約50の整数であり、及びAは、NH2である。別の実施形態において、各Rは、個々に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びドデシルからなる群より選択され、nは約7~約25の整数であり、並びにAは、NH2である。なおも別の実施形態において、各Rは、同じアルキル基であって、8~14個の炭素原子を有し、nは約8~約20の整数であり、及びAは、NH2である。
【0033】
ジアルキルフェノールを開始物質として(initialized)式(1)を有するポリエーテルアミン化合物は、当業者に既知の方法により調製することができる。例えば、これは、式(2)を有するジアルキルフェノール化合物
【化3】
式中、Rは上記で定義されるとおりである
を開始物質として利用して、この化合物を最初にアルコキシ化反応ゾーンに投入することで、調製することができる。
【0034】
投入後、アルコキシ化反応ゾーン中で、中間体ポリオールとするのに十分な長さの時間、ジアルキルフェノール開始物質をプロピレンオキシドと接触させる。
【0035】
開始物質と接触させるプロピレンオキシドの量は、開始物質1モルあたりプロピレンオキシドが約2~約50モル、一部の例において約10~約30モルの範囲であることが可能である。加えて、開始物質がプロピレンオキシドと接触する時間の長さは、中間体ポリオールを形成するのに十分な時間の長さであり、一部の例において約0.5時間~約24時間の範囲であることが可能である。
【0036】
アルコキシ化反応ゾーンは、閉鎖反応容器であることが可能であり、アルコキシ化は、塩基触媒又は二重金属シアニド(DMC)触媒の存在下、高温及び圧下で行われる。例えば、アルコキシ化は、約50℃~約150℃の範囲の温度及び約40psi~約100psiの範囲の圧下で行うことができる。塩基触媒は、塩基触媒反応に通常使用される任意のアルカリ化合物、例えば、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等、あるいは第三級アミン、例えば、ジメチルシクロヘキシルアミン又は1,1,3,3-テトラメチルグアニジン等が可能である。アルコキシ化後、得られる生成物を、真空蒸留して、任意の不要な成分、例えば、余分の未反応アルキレンオキシド、水、及び/又は塩基触媒を除去しつつ、得られる中間体ポリオールを残すことができる。
【0037】
次いで、中間体ポリオールを還元的アミノ化工程の原料として使用する。一部の例において、還元的アミノ化の前に、中間体ポリオールを、酸又は化学吸着剤、例えば、シュウ酸又はケイ酸マグネシウム等で中和し、濾過して不溶性材料を除去する。中間体ポリオールを、還元的アミノ化ゾーンに投入する。このゾーンで、中間体は、還元的アミノ化条件下、水素と及びアンモニア若しくは第一級アルキルアミンとの存在下、還元的アミノ化触媒、場合によっては水素化脱水素化触媒と称する触媒と接触させられ、還元的アミノ化される。還元的アミノ化条件として、例えば、約150℃~約275℃の範囲の温度及び約500psi~約5000psiの範囲の圧を挙げることができ、又は一部の実施形態において約180℃~約220℃の範囲の温度及び約100psi~約2500psiの範囲の圧が使用される。
【0038】
1つの実施形態において、第一級アルキルアミンは、1個の窒素原子と、及び約1~約30個の炭素原子、又は約1~約6個の炭素原子、又は更には約1~約4個の炭素原子と、を有する。第一級アルキルアミンの例として、N-メチルアミン、N-エチルアミン、N-プロピルアミン、N-イソプロピルアミン、N-ブチルアミン、N-イソブチルアミン、N-sec-ブチルアミン、N-tert-ブチルアミン、N-ペンチルアミン、N-シクロペンチルアミン、N-ヘキシルアミン、N-シクロヘキシルアミン、N-オクチルアミン、N-デシルアミン、N-ドデシルアミン、N-オクタデシルアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
任意の適切な水素化触媒が使用可能であり、それは例えば、米国特許第3,654,370号に記載されるもの等である。米国特許第3,654,370号の内容は、本明細書中参照として援用される。一部の実施形態において、水素化触媒は、周期表の第VIIIB族金属のうち1種又は複数、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、及び白金を、周期表の第VIB族金属の1種又は複数、例えば、クロム、モリブデン、又はタングステンと混合して含むことができる。周期表の第IB族のプロモーター、例えば、銅も含むことができる。例として、約60モルパーセント~約85モルパーセントのニッケルと、約14モルパーセント~約37モルパーセントの銅と、及び約1モルパーセント~約5モルパーセントのクロム(クロミアとして)と、を含む触媒、例えば、米国特許第3,152,998号に開示される種類の触媒を使用することができる。別の例として、米国特許第4,014,933号に開示される種類の触媒を使用することができ、この触媒は、約70重量%~約95重量%のコバルトとニッケルの混合物と、及び約5重量%~約30重量%の鉄と、を含む。別の例として、米国特許第4,152,353号に開示される種類の触媒を使用することができ、この触媒は、ニッケルと、銅と、及び第三成分と、を含み、第三成分は、鉄、亜鉛、ジルコニウム、又はそれらの混合物が可能であり、例えば、触媒は、約20重量%~約49重量%のニッケルと、約36重量%~約79重量%の銅と、及び約1重量%~約15重量%の鉄、亜鉛、ジルコニウム、又はそれらの混合物と、を含有する。なおも別の例として、米国特許第4,766,245号に開示される種類の触媒を使用することができ、この触媒は、約60重量%~約75重量%のニッケルと、及び約25重量%~約40重量%のアルミニウムと、を含む。
【0040】
還元的アミノ化は連続的に行うことができ、中間体ポリオールと、アンモニア又は第一級アルキルアミンと、及び水素とが、還元的アミノ化触媒の固定床を有する反応器に連続投入され、並びに生成物が連続して取り出される。
【0041】
再利用のため余分の水素及びアンモニア又は第一級アルキルアミンが回収できるように、生成物を適切に除圧し、次いで分留して反応副生成物の水を除去して、本発明のポリエーテルアミンを得る。
【0042】
還元的アミノ化中、同じく利用可能である還元的アミノ化条件として、中間体ポリオール原料のヒドロキシル当量あたり約4モル~約150モルのアンモニア又は第一級アミンの使用が挙げられる。水素は、中間体ポリオール原料のヒドロキシル当量あたり約0.5モル当量~約10モル当量の範囲の水素である量で使用される。反応ゾーン内の接触時間は、バッチ単位で反応が行われる場合、約0.1時間~約6時間又は約0.15時間~約2時間の範囲内が可能である。
【0043】
反応が、触媒ペレットを用いて連続的に行われる場合、反応時間は、触媒1立方センチメートルあたり1時間あたり原料が約0.1グラム~約2グラム、より好ましくは、触媒1立方センチメートルあたり1時間あたり前駆体原料が約0.3グラム~約1.6グラムであることが可能である。同じく、還元的アミノ化は、中間体ポリオール1モルあたり約1モル~約200モルのアンモニア又は第一級アルキルアミンあるいは中間体ポリオール1モルあたり約4モル~約130モルのアンモニア又は第一級アルキルアミンの存在下で行うことができる。中間体ポリオール1モルあたり約0.1モル~約50モルの水素又は中間体ポリオール1モルあたり約1モル~約25モルの水素を使用することができる。
【0044】
ジアルキルフェノールを出発物質とする(initialized)式(1)のポリエーテルアミンは、様々な用途で有用であり、そのような用途として、燃料組成物の燃料添加剤としての用途が挙げられるがこれに限定されない。他の用途として、有機及び無機の顔料、染料、及び淡色化剤用の分散剤として、セメント添加剤として、並びに石油ガス分野用途において、例えば、腐食防止剤、解乳化剤、及び酸抑制剤等としての使用を挙げることができるが、これらに限定されない。なおも他の用途において、式(1)のポリエーテルアミンは、様々な配合物、例えば、接着剤配合物、農薬配合物、コーティング配合物、エレクトロニクス配合物、家庭用-産業用-企業用(HI&I)配合物、金属加工配合物、塗料配合物、プラスチック配合物、ポリウレタン配合物、繊維製品配合物、ウッドケア配合物、並びに肌用、日光、油、頭髪、化粧、及び保存剤配合物に使用可能である。
【0045】
すなわち、1つの実施形態において、式(1)のポリエーテルアミンは、燃料組成物用の燃料添加剤として有用である可能性がある。そのような実施形態において、式(1)のポリエーテルアミンと、及び燃料と、を含む燃料組成物は、燃料燃焼システム、例えば、液体燃料エンジン及び/又は火花点火エンジンの燃料供給において有用である。燃料燃焼システムの種類は、過度に制限されることはなく、そのような燃料燃焼システムとして、Vエンジン、直列エンジン、対向エンジン、及びロータリーエンジンが挙げられるが、これらに限定されない。エンジンは、自然吸気エンジン、ブーストエンジン、Eブーストエンジン、過給エンジン、又はターボ過給エンジンであることも可能である。エンジンは、キャブレター付きエンジン又は燃料噴射ガソリンエンジンであることも可能である。そのため、エンジンは、キャブレター又はインジェクタ(ピエゾインジェクタを含む)を有することができる。
【0046】
1つの実施形態において、エンジンは、ガソリン直噴(「GDI」)エンジン(噴霧式若しくはウォールガイド式、又はそれらの組み合わせ)、ポータブル燃料噴射(「PFI」)エンジン、予混合圧縮着火(「HCCI」)エンジン、化学量論的燃焼若しくはリーンバーンエンジン、火花点火制御圧縮着火(「SPCCI」)エンジン、可変圧縮、ミラーサイクル若しくはアトキンソンサイクルエンジン、又はそれらの組み合わせ、例えば、同一エンジン中にGDIインジェクタ及びPFIインジェクタ両方を有するエンジン等であることも可能である。適切なGDI/PFIエンジンとして、ガソリン、混合ガソリン/アルコール、又は当業者に既知の任意燃料組成物を燃料とする、2ストローク又は4ストロークエンジンが挙げられる。
【0047】
なおも他の実施形態において、上記エンジンのいずれであっても、排気物質処理用、例えばNOx低減用の触媒又は装置を備えていることができる。他の実施形態において、エンジンは、1種類より多い種類の燃料、典型的には、ガソリンとエタノール又はガソリンとメタノールで稼働させることが可能なフレックス燃料エンジンであることが可能である。なおも他の実施形態において、上記エンジン種類のいずれであっても、電動機も備えたハイブリッド車両にあることができる。
【0048】
一部の実施形態において、燃料組成物は、式(1)のポリエーテルアミンを少量で、及び燃料を過半量で含むことができる。なおもさらなる実施形態において、式(1)のポリエーテルアミンは、燃料組成物に直接添加されることも可能であれば、燃料添加剤濃厚物の成分として燃料組成物に添加されることも可能であり、この燃料添加剤濃厚物は、ある量の燃料と、キャリアオイル又は溶媒と、及び任意選択で1種又は複数の性能向上用添加剤と、を含む。
【0049】
使用に適した燃料は、過度に制限されることはなく、そのような燃料として、例えば、ASTM規格D4814に規定されるとおりのガソリン、ASTM規格D975に規定されるとおりのディーゼル燃料、バイオディーゼル燃料、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。燃料は、更に、加鉛又は無鉛の自動車及び航空機用ガソリン並びにいわゆる改質ガソリンであることも可能であり、改質ガソリンとは、ガソリン沸騰範囲の炭化水素と、及び燃料溶解性含酸素ブレンド剤、例えば、アルコール、エーテル、及び他の適切な酸素含有有機化合物と、の両方を含有するものである。適切な含酸素物質として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、混合C1-C5アルコール、メチルt-ブチルエーテル、t-アミルメチルエーテル、エチルt-ブチルエーテル、混合エーテル、トランスエステル化された動植物由来の油及び/又は脂肪、例えば、菜種メチルエステル及び大豆メチルエステル等、並びにニトロメタンが挙げられる。含酸素物質が使用される場合、これは、通常、燃料中、約25体積%より少ない量で、例えば、燃料全体中約0.5~約5体積%の範囲の酸素含有量を提供する量で、存在することになる。
【0050】
使用される燃料は、より重質の燃料油、例えば、No.5及びNo.6燃料油も使用することができ、これらは、残留燃料油、重油、及び/又は炉燃料油とも称する。そのような燃料は、単独で使用することも、他のもの、典型的にはより軽質の燃料と混合して粘度の低い混合物を形成させて使用することもできる。船舶用エンジンで一般に使用されるバンカー燃料も含まれる。これらの種類の燃料は、粘度が高く、周囲条件では固体である場合もあるが、加熱されると液体になり、これを燃料とするエンジンに供給される。代替燃料として知られる他の燃料も、使用可能である。こうした燃料は、100%エタノール、含水エタノール、「E85」として知られる70%~85%エタノール等の燃料を含むことになる。
【0051】
燃料は、一般に、燃料組成物中、過半量で存在し、この量は、一部の実施形態において、燃料組成物の合計重量に基づき、約90重量%超、又は約95重量%超、又は他の実施形態において約97重量%超、又は約99.5重量%超、又は約99.9重量%超、又は更には約99.99重量%超であることが可能である。
【0052】
式(1)のポリエーテルアミンは、一般に、燃料組成物中、少量で存在し、この量は、燃料組成物の合計重量に基づき、約10重量%未満、又は約1重量%未満、又は約0.5重量%未満、又は更には約0.1重量%(1000ppmw)(重量百万分率)未満、又は約0.07重量%(700ppmw)未満、又は約0.05重量%(500ppmw)未満、又は約0.04重量%(400ppmw)未満、又は約0.03重量%(300ppmw)未満、又は約0.025重量%(250ppmw)未満、又は約0.02重量%(200ppmw)未満、又は約0.01重量%(100ppmw)未満である。
【0053】
他の実施形態において、燃料組成物中に存在する式(1)のポリエーテルアミンは、燃料組成物の合計重量に基づき、少なくとも約0.1ppmw(重量百万分率)であることが可能である。別の実施形態において、本開示の燃料組成物中に存在する式(1)のポリエーテルアミンの量は、燃料組成物の合計重量に基づき、少なくとも約1ppmw、又は少なくとも約5ppmw、又は少なくとも約10ppmw、又は少なくとも約20ppmw、又は少なくとも約30ppmw、又は少なくとも約40ppmw、又は少なくとも約50ppmw、又は少なくとも約60ppmw、又は少なくとも約70ppmw、又は少なくとも約80ppmw、又は少なくとも約90ppmw、又は少なくとも約100ppmw、又は少なくとも約1000ppmwであることが可能である。
【0054】
1つの実施形態において、式(1)のポリエーテルアミンは、燃料添加剤濃厚物の一部分である。式(1)のポリエーテルアミンを含有するそのような燃料添加剤濃厚物は、ある量の燃料、キャリアオイル、又はある種の溶媒だけでなく、任意選択で1種又は複数の性能向上用添加剤を含有する可能性がある組成物である。次いで、燃料添加剤濃厚物は、添加剤の取り扱い及び送達に好都合なやり方として、他の組成物に添加することができ、それにより上記に記載される最終燃料組成物が得られる。燃料添加剤濃厚物は、一般に、式(1)のポリエーテルアミンを、燃料添加剤濃厚物の合計重量に基づいて、約0.1重量%~約99重量%、又は約0.5重量%~約80重量%、又は約0.75重量%~約70重量%、又は約1重量%~約60重量%、又は約5重量%~約50重量%、又は約10重量%~約40重量%の量で含有することができる。
【0055】
追加の性能向上用添加剤として、以下を挙げることができるが、これらに限定されない:抗酸化剤、例えば、ヒンダードフェノール若しくはその誘導体及び/又はジアリールアミン若しくはその誘導体;腐食防止剤;及び/又は、洗浄剤/分散剤添加剤、例えば、追加のポリエーテルアミン若しくは窒素含有洗浄剤等、そのような添加剤として、PIBアミン洗浄剤/分散剤、スクシンイミド洗浄剤/分散剤、及び第四級アンモニウムイミド塩をはじめとする他の第四級塩洗浄剤/分散剤が挙げられるがこれらに限定されない。第四級アンモニウムイミド塩は、イミド基及び第四級アンモニウム塩を有する洗浄剤である。
【0056】
他の追加の性能向上用添加剤として、以下も挙げることができる:低温流動性向上剤、例えば、無水マレイン酸とスチレンのエステル化共重合体及び/又はエチレンとビニルアセテートの共重合体等;発泡阻害剤及び/又は消泡剤、例えば、液状シリコーン等;解乳化剤、例えば、ポリアルコキシ化アルコール等;潤滑剤、例えば、脂肪カルボン酸等;金属不活化剤、例えば、芳香族トリアゾール又はその誘導体等、これにはベンゾトリアゾールが含まれるが、これに限定されない;及び/又は、バルブシートリセッション添加剤、例えば、スルホコハク酸アルカリ金属塩等。
【0057】
追加の性能向上用添加剤として、以下も挙げることができる:殺生物剤;帯電防止剤、凍結防止剤、流動化剤、例えば、鉱物油及び/又はポリ(アルファ-オレフィン)及び/又はポリエーテル等、並びに燃焼改善剤、例えば、オクタン価又はセタン価向上剤等。
【0058】
追加の性能向上用添加剤は、それぞれを直接燃料添加剤濃厚物及び/又は燃料組成物に添加することが可能であるが、一般には、これらを式(1)のポリエーテルアミンと混合して燃料添加剤濃厚物を形成させ、次いでこれを燃料と混合して、燃料組成物を得る。
【0059】
燃料添加剤濃厚物は、キャリアオイル、例えば、無機キャリアオイル又は合成キャリアオイル等も含むことができる。適切な無機キャリアオイルは、原油加工処理において得られる留分、例えば、ブライトストック又は粘度が、例えば、SN500~2000クラスである基油であるが、芳香族炭化水素、パラフィン炭化水素、及びアルコキシアルカノールもそうである。同様に有用であるのは、鉱物油の精製で得られる留分であり、これは、「水素化分解油」として知られる(約360℃~500℃の沸点範囲を有する真空蒸留留分、天然鉱物油を、高圧下で触媒水素化及び異性体化し、更に脱パラフィン化して得られる)。同様に適切であるのは、上記無機キャリアオイルの混合物である。適切な合成キャリアオイルの例は、ポリオレフィン(ポリアルファオレフィン又はポリ内部オレフィン)、(ポリ)エステル、(ポリ)アルコキシレート、ポリエーテル、アルキルフェノール開始ポリエーテル、及び長鎖アルカノールのカルボン酸エステルである。
【0060】
一部の実施形態において、キャリアオイルは、燃料添加剤濃厚物中、燃料添加剤濃厚物の合計重量に基づき、約0.5重量%~約50重量%、又は約2重量%~約40重量%、又は約3重量%~約30重量%の量で存在することができる。
【0061】
燃料添加剤濃厚物は、溶媒も含むことができる。溶媒は、均一燃料添加剤濃厚物をもたらすとともに、燃料添加剤濃厚物の移送及び取り扱いを円滑にする。一部の実施形態において、溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はそれらの混合物である。
【0062】
脂肪族炭化水素として、脂肪族成分が多数を占める、様々なナフサ及びケロセン沸点留分が挙げられる。芳香族炭化水素として、ベンゼン、トルエン、キシレン、並びに芳香族成分が多数を占める、様々なナフサ及びケロセン沸点留分が挙げられる。1つの実施形態において、溶媒は、燃料添加剤濃厚物中、燃料添加剤濃厚物の合計重量に基づき、約1重量%~約90重量%、別の実施形態では約25重量%~約85重量%、更に別の実施形態では約40重量%~約80重量%で存在することができる。
【0063】
式(1)のポリエーテルアミンは、単独で又は燃料添加剤濃厚物の一部分として、サプライチェーンの任意の好都合な場所で、燃料に添加することができる。例えば、式(1)のポリエーテルアミン又は燃料添加剤濃厚物は、精製所で、物流拠点で、又は燃料が物流拠点から離れた後に、燃料に添加することができる。燃料が物流拠点から離れた後に、燃料に添加される場合、これは、アフターマーケット用途と呼ばれる。アフターマーケット用途として、配送タンカー中で、消費者のバルク貯蔵タンクに直接、又は最終使用者の車両タンクに直接等して、燃料に式(1)のポリエーテルアミン又は燃料添加剤濃厚物を添加する状況が挙げられる。アフターマーケット用途には、貯蔵タンク又は車両タンクに直接添加するのに適切な小型ボトルで式(1)のポリエーテルアミン又は燃料添加剤濃厚物を供給することが、含まれる場合がある。
【0064】
別の実施形態において、本開示は、エンジンにおいてデポジットを制御する方法を提供し、本方法は、燃焼させようとする燃料に、式(1)のポリエーテルアミンと、及び任意選択でキャリアオイル、溶媒、又は性能向上用添加剤と、を添加して、添加剤含有燃料を形成することと、並びにエンジンにおいて添加剤含有燃料を燃焼させることと、を含む。
【0065】
別の実施形態において、本開示は、エンジンの効率を改善する方法を提供し、本方法は、燃焼させようとする燃料に、式(1)のポリエーテルアミンと、及び任意選択でキャリアオイル、溶媒、又は性能向上用添加剤と、を添加して、添加剤含有燃料を形成することと、並びにエンジンにおいて添加剤含有燃料を燃焼させることと、を含む。
【0066】
更に別の実施形態において、本開示は、エンジンの性能を改善する方法を提供し、本方法は、燃焼させようとするガソリンに、式(1)のポリエーテルアミンと、及び任意選択でキャリアオイル、溶媒、又は性能向上用添加剤と、を添加して、添加剤含有燃料を形成することと、並びにエンジンにおいて添加剤含有燃料を燃焼させることと、を含み、この場合性能の改善は、以下のうちの1つ又は複数である:燃費の改善;維持の軽減;オーバーホール又はインジェクタ交換の頻度の減少;運転性能の改善;パワー改善;及び加速改善。
【実施例】
【0067】
実施例1.本開示によるジアルキルを出発物質とするポリエーテルアミンの合成。
反応器中、ジノニルフェノール4ポンドと45%KOH溶液34グラムを混合した。混合物を120℃で加熱して、混合物から水を除去し、反応器にプロピレンオキシド(PO)9.31ポンドを加えて、ジノニルフェノールをアルコキシ化した。アルコキシ化反応が完了した後、Magnesol75グラムを加えて、混合物からカリウムイオンを除去した。アルコキシ化中間体を濾過し、次いで、固定床反応器中、金属触媒の存在下、アンモニア及び水素と反応させた。次いで、アンモニアを留去して、無色透明な液体ポリエーテルアミン生成物とした。ポリエーテルアミン生成物は、引火点が240℃、合計アミン数が約0.899meq/g、及び合計アシル化可能値(acylatable value)が約0.9213meq/gであることがわかった。これらの特性に基づき、ジアルキルフェノール変換率は97.6%前後と計算され、ポリエーテルアミン生成物の平均分子量は、1085であることがわかった。
【0068】
実施例2.本開示によるジアルキルを出発物質とする(initialized)ポリエーテルアミンの合成。
反応器中、ジノニルフェノール4ポンドと45%KOH溶液50.4gを混合した。混合物を120℃で加熱しながら、混合物から水を除去した後、反応器にプロピレンオキシド(PO)16ポンドを加えて、ジノニルフェノールをアルコキシ化した。アルコキシ化反応が完了した後、Magnesol113.5グラムを加えて、混合物からカリウムイオンを除去した。アルコキシ化中間体を濾過し、次いで、固定床反応器中、金属触媒の存在下、アンモニア及び水素と反応させた。アンモニアを留去して、無色透明な液体ポリエーテルアミン生成物とした。ポリエーテルアミン生成物は、引火点が240℃、合計アミン数が約0.671meq/g、及び合計アシル化可能値が約0.7058meq/gであることがわかった。これらの特性に基づき、ジアルキルフェノール変換率は約95.1%と計算され、ポリエーテルアミン生成物の平均分子量は、1417であることがわかった。
【0069】
実施例3.本発明のポリエーテルアミンのガソリンデポジット抑制剤としての評価
この評価は、L-2自動制御式ガソリンエンジン吸気弁堆積物模擬試験機械で行った。この機械は、ガソリンエンジン吸気弁の堆積物(デポジット)生成の傾向を模倣するものである。Jeffamine(登録商標)FL-1000ポリエーテルアミンを、比較ポリエーテルアミンとして使用した。理由は、これが、デポジット制御を制御するのに一般にかなり普及しているポリエーテルアミンだからである。これは、以下の構造を有する。
【化4】
【0070】
ガソリンスタンドのRON92ガソリンを、燃料として使用した。燃料に、ポリエーテルアミンを、「キープクリーン」試験及び「クリーンアップ」試験用に、それぞれ、200ppm及び600ppmの使用量で添加した。結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0071】
上記の表1に示すとおり、実施例1及び実施例2の本発明のジアルキルを開始物質とするポリエーテルアミンは、「キープクリーン」試験及び「クリーンアップ」試験両方において、モノアルキルをを開始物質とするポリエーテルアミンよりも顕著に良好に、デポジットを制御した。
【0072】
上記は本開示の実施形態に関するものであるものの、本開示の他の及びさらなる実施形態が、本開示の基本範囲から逸脱することなく考案可能であり、本開示の範囲は、以下に続く特許請求によって決定される。
【国際調査報告】