(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】二量体化剤制御型免疫調節複合体の活性を調節するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/436 20060101AFI20241128BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241128BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241128BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241128BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20241128BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20241128BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20241128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241128BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241128BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241128BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241128BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241128BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K31/436
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/13
C12N5/0783
A61K31/675
A61K31/7076
A61P35/00
A61P37/02
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/06
A61P35/02
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534459
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 US2022081322
(87)【国際公開番号】W WO2023108158
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515045617
【氏名又は名称】シアトル チルドレンズ ホスピタル ディー/ビー/エイ シアトル チルドレンズ リサーチ インスティテュート
【住所又は居所原語表記】1900 Ninth Ave. Seattle, WA 98101 U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】アッペルバウム,ジェイコブ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】ガスタフソン,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ジェンセン,マイケル シー.
(72)【発明者】
【氏名】ロットマン,ジェームス ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ポグソン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジャルジュール,ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】アストラハン,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086DA35
4C086EA18
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB32
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
少なくとも第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質の多量体化を誘導することによって、二量体化剤制御型免疫調節複合体を形成することにより、シグナル伝達を誘導するための二量体化剤制御型免疫調節複合体をプライミングするための方法および組成物について述べる。本発明の方法および組成物は、二量体化剤の投薬スケジュールを利用し、この投薬スケジュールでは、(i)二量体化剤の所定の血中トラフ濃度の維持、(ii)免疫調節複合体の活性化、(iii)二量体化剤の潜在的な免疫抑制作用の抑制もしくは回避、(iv)免疫細胞の疲弊の抑制もしくは回避、および/または(v)免疫調節複合体の活性化に関連する副作用の抑制もしくは回避が設計されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を発現する細胞を有する対象を特定する工程と、
ラパマイシンまたはその類似体のコースを前記対象に投与する工程と
を含む方法であって、
前記DARICが、CD33単一ドメイン重鎖可変(VHH)結合ドメイン、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメイン、および膜貫通ドメインを含む第1の融合タンパク質と、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内部分を含む第2の融合タンパク質とを含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置され、
前記コースが、
前記ラパマイシンまたはその類似体の1.5ng/mL~3ng/mLの血中トラフ濃度を達成すること、
前記DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が有してから2日後または3日後から開始されること、
前記ラパマイシンまたはその類似体の毎日投与により18日間、19日間または20日間行われること、
前記対象が1.5m
2よりも大きい場合に、0.75mg以上の1日用量を投与すること、または前記対象が1.5m
2以下の場合に、0.75mg未満の1日用量を投与することを含むこと、および
前記コースの最後に、ラパマイシンまたはその類似体を前記対象に投与しない休薬期間を含むこと
を特徴とする、方法。
【請求項2】
二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を発現する細胞を有する対象を特定する工程と、
ラパマイシンまたはその類似体のコースを前記対象に投与する工程と
を含む方法であって、
前記DARICが、細胞外部分、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインもしくはFKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそれらのバリアント、および膜貫通ドメインを含む第1の融合タンパク質と、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインもしくはFKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそれらのバリアント、膜貫通ドメイン、および細胞内部分を含む第2の融合タンパク質とを含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置され、
前記コースが、
前記ラパマイシンまたはその類似体の1.5ng/mL~3ng/mLの血中トラフ濃度を達成すること、
前記DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が有してから0~4日後から開始されること、
前記ラパマイシンまたはその類似体の毎日投与により少なくとも14日間行われること、および
前記コースの最後に、ラパマイシンまたはその類似体を前記対象に投与しない休薬期間を含むこと
のいずれか1つ以上を特徴とする、方法。
【請求項3】
二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を発現する細胞を有する対象を特定する工程と、
ラパマイシンまたはその類似体のコースを前記対象に投与する工程と
を含む方法であって、
前記DARICが、細胞外部分、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインもしくはFKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそれらのバリアント、および膜貫通ドメインを含む第1の融合タンパク質と、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインもしくはFKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそれらのバリアント、膜貫通ドメイン、および細胞内部分を含む第2の融合タンパク質とを含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置され、
前記コースが、
前記ラパマイシンまたはその類似体の1.5ng/mL~3ng/mLの血中トラフ濃度を達成すること、
前記対象が1.5m
2よりも大きい場合に、0.75mg以上の1日用量を投与すること、または前記対象が1.5m
2以下の場合に、0.75mg未満の1日用量を投与することを含むこと、および
前記コースの最後に、ラパマイシンまたはその類似体を前記対象に投与しない休薬期間を含むこと
のいずれか1つ以上を特徴とする、方法。
【請求項4】
二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を発現する細胞を有する対象を特定する工程と、
ラパマイシンまたはその類似体のコースを前記対象に投与する工程と
を含む方法であって、
前記DARICが、多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質とを含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置される、方法。
【請求項5】
前記コースが、前記ラパマイシンまたはその類似体の1.0ng/mL~3ng/mLの血中トラフ濃度を達成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コースが、前記DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が有してから0~4日後から開始される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記コースが、前記DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が有してから2日後または3日後から開始される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記コースが、少なくとも14日間行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記コースが、前記ラパマイシンまたはその類似体を毎日投与することにより18日間、19日間、20日間、21日間または22日間行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記コースが、前記対象の体表面積が1.5m
2よりも大きい場合に、少なくとも0.75mgの1日用量を投与すること、または前記対象の体表面積が1.5m
2以下の場合に、0.75mg未満の1日用量を投与することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記対象の体表面積が1.5m
2よりも大きく、前記1日用量が0.75mg~3.5mgである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記対象の体表面積が1.5m
2以下であり、前記1日用量が0.25mg/m
2~0.74mg/m
2である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記対象の体表面積が1.5m
2以下であり、前記1日用量が0.50mg/m
2である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記コースが、毎日投与を行うコースの後に、ラパマイシンまたはその類似体を前記対象に投与しない休薬期間を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記休薬期間が、13日間、14日間または15日間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記休薬期間が、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも16日間、少なくとも17日間、少なくとも18日間、少なくとも19日間、少なくとも20日間、少なくとも21日間、または少なくとも22日間である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記休薬期間が少なくとも14日間である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記休薬期間が14日間である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記休薬期間の後に、ラパマイシンまたはその類似体の第2のコースを投与する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
第2のコースが、前記ラパマイシンまたはその類似体の0.5ng/mL~3ng/mLの血中トラフ濃度を達成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第2のコースが、少なくとも14日間行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
第2のコースが、前記ラパマイシンまたはその類似体を毎日投与することにより18日間、19日間、20日間、21日間または22日間行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
第2のコースが、前記対象の体表面積が1.5m
2よりも大きい場合に、少なくとも0.75mgの1日用量を投与すること、または前記対象の体表面積が1.5m
2以下の場合に、0.75mg未満の1日用量を投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
第1の融合タンパク質の多量体化ドメインが、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含み、かつ第2の融合タンパク質の多量体化ドメインが、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含むか;または
第1の融合タンパク質の多量体化ドメインが、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含み、かつ第2の融合タンパク質の多量体化ドメインが、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項25】
前記FKBP多量体化ドメインまたはそのバリアントが、FKBP12である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記FKBP多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号55もしくは56に示される配列を有するか、または配列番号55もしくは56に示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記FKBP多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号55もしくは56に示される配列を有するか、または配列番号55もしくは56に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記FKBP多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号55もしくは56に示される配列を有するか、または配列番号55もしくは56に示される配列と少なくとも98%の配列同一性を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記FRB多量体化ドメインまたはそのバリアントがFRB T2098Lである、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記FRB多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号57もしくは58に示される配列を有するか、または配列番号57もしくは58に示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記FRB多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号57もしくは58に示される配列を有するか、または配列番号57もしくは58に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記FRB多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号57もしくは58に示される配列を有するか、または配列番号57もしくは58に示される配列と少なくとも98%の配列同一性を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質が発現されると、前記FRB多量体化ドメインと前記FKBP多量体化ドメインが細胞外に局在する、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質が発現されると、前記FRB多量体化ドメインと前記FKBP多量体化ドメインが細胞内に局在する、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、結合ドメインをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項36】
前記結合ドメインが、がん抗原に結合する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記結合ドメインが、単一ドメイン重鎖可変領域(VHH)または一本鎖可変領域断片(scFv)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記結合ドメインが、受容体の細胞外ドメインまたはリガンドを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記結合ドメインが、CD33抗体の結合ドメインを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記CD33抗体の結合ドメインがVHHである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記VHHが、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21のいずれかに示される配列を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記VHHが、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21のいずれかに示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、CD33に特異的に結合する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記VHHが、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21のいずれかに示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有し、CD33に特異的に結合する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記VHHが、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21のいずれかに示される配列と少なくとも98%の配列同一性を有し、CD33に特異的に結合する、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、C型レクチン様分子1(CLL1)に結合する結合ドメインを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項46】
CLL1に結合する前記結合ドメインが、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53および54のいずれかに示される配列を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
CLL1に結合する前記結合ドメインが、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53および54のいずれかに示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、CLL1に特異的に結合する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
CLL1に結合する前記結合ドメインが、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53および54のいずれかに示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有し、CLL1に特異的に結合する、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
CLL1に結合する前記結合ドメインが、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53および54のいずれかに示される配列と少なくとも98%の配列同一性を有し、CLL1に特異的に結合する、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、細胞内部分をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞内部分が、細胞内主要シグナル伝達ドメインを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞内主要シグナル伝達ドメインが、CD3ζまたはその断片を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞内部分が、補助受容体ドメインを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞内部分が、共刺激ドメインを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記共刺激ドメインが、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、Linker for activation of T-cells family member 1(LAT)、SH2 Domain-Containing Leukocyte Protein Of 76 kD(SLP76)、T cell receptor associated transmembrane adaptor 1(TRAT1)、TNFR2、TNFRS14、TNFRS18、TNRFS25、zeta chain of T cell receptor associated protein kinase 70(ZAP70)、またはこれらの断片もしくは組み合わせを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記共刺激ドメインが、CD137(4-1BB)またはその断片もしくは組み合わせを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、膜貫通ドメインをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項58】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質の膜貫通ドメインが、CD4の膜貫通ドメインまたはCD8αの膜貫通ドメインである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、スペーサーをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項60】
(a)第1の融合タンパク質が、FRB多量体化ドメインまたはそのバリアント;CD8αの膜貫通ドメインまたはCD4の膜貫通ドメイン;CD137の共刺激ドメイン;および/またはCD3ζの主要シグナル伝達ドメインを含み;
(b)第2の融合タンパク質が、配列番号2~21のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するCD33 VHH;FKBP多量体化ドメインまたはそのバリアント;およびCD4の膜貫通ドメインまたはCD8αの膜貫通ドメインを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項61】
第1の融合タンパク質が、シグナルペプチド、CD8αの膜貫通ドメイン、CD137の共刺激ドメイン、およびCD3ζの主要シグナル伝達ドメインを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項62】
第2の融合タンパク質が、シグナルペプチドおよびCD4の膜貫通ドメインを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項63】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号32、33、34、35、36、37、38、39、40および41のいずれかに示される配列を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項64】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号32、33、34、35、36、37、38、39、40および41のいずれかに示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項65】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号40に示される配列を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項66】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号40に示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項67】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号40に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項68】
第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号40に示される配列と少なくとも98%の配列同一性を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項69】
前記ラパマイシンまたはその類似体が、ラパマイシン、AP1903、AP20187、AP21967、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダホロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムスまたはゾタロリムスである、請求項4に記載の方法。
【請求項70】
前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、造血細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項71】
前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、T細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項72】
前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、αβT細胞またはγδT細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項73】
前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、CD3+細胞、CD4+細胞またはCD8+細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項74】
前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、エフェクター免疫細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項75】
前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)またはヘルパーT細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項76】
前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項77】
前記細胞が、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来組織、腹水、胸水、脾臓組織または腫瘍から単離されたものである、請求項4に記載の方法。
【請求項78】
前記細胞が、前記DARICを発現するようにエクスビボで製造されたものである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記細胞が、前記対象の体重あたり1×10
5個/kg~2000×10
6個/kgの用量で前記対象に投与されている、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記細胞が、前記対象の体重あたり1×10
6個/kg~1000×10
6個/kgの用量で前記対象に投与されている、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記細胞が、前記対象の体重あたり1×10
6個/kg~100×10
6個/kgの用量で前記対象に投与されている、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記細胞が、前記対象の体重あたり5×10
6個/kg~500×10
6個/kgの用量で前記対象に投与されている、請求項78に記載の方法。
【請求項83】
前記細胞が、前記対象の体重あたり10×10
6個/kg~1000×10
6個/kgの用量で前記対象に投与されている、請求項78に記載の方法。
【請求項84】
前記細胞が、前記対象の体重あたり1×10
6個/kg~2×10
6個/kgの用量で前記対象に投与されている、請求項78に記載の方法。
【請求項85】
前記細胞が、前記対象の体重あたり3×10
6個/kg~5×10
6個/kgの用量で前記対象に投与されている、請求項78に記載の方法。
【請求項86】
前記細胞が、前記対象の体重あたり7.5×10
6個/kg~15×10
6個/kgの用量で前記対象に投与されている、請求項78に記載の方法。
【請求項87】
前記対象の体重あたりの前記細胞の用量が10×10
6個/kgである、請求項78に記載の方法。
【請求項88】
前記細胞が、インビボの対象において前記DARICを発現するように組換えられている、請求項4に記載の方法。
【請求項89】
前記対象が小児患者である、請求項4に記載の方法。
【請求項90】
前記対象が28歳以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項91】
前記対象が18歳以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項92】
前記対象が18~28歳である、請求項4に記載の方法。
【請求項93】
前記対象が成人患者である、請求項4に記載の方法。
【請求項94】
前記対象が少なくとも18歳である、請求項4に記載の方法。
【請求項95】
前記対象が、がん、感染症、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫不全、またはこれらに関連する状態を有しているか、これらの疾患または関連する状態であると診断されている、請求項4に記載の方法。
【請求項96】
前記対象が、固形がんを有しているか、固形がんであると診断されている、請求項4に記載の方法。
【請求項97】
前記固形がんが、肺がん、扁平上皮癌、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、甲状腺がん、膀胱がん、子宮頸がん、食道がん、卵巣がん、胃がん、子宮内膜がんまたは脳腫瘍を含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記肺がんが非小細胞肺癌である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記扁平上皮癌が頭頸部扁平上皮癌である、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
前記脳腫瘍が、神経膠腫、膠芽腫または乏突起神経膠腫を含む、請求項97に記載の方法。
【請求項101】
前記対象が、血液悪性腫瘍を有しているか、血液悪性腫瘍であると診断されている、請求項4に記載の方法。
【請求項102】
前記血液悪性腫瘍が、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記血液悪性腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、請求項4に記載の方法。
【請求項104】
前記コースを投与する前に、前記対象のリンパ球除去が行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項105】
前記リンパ球除去が、フルダラビンの用量とシクロホスファミドの用量を投与することを含む、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記フルダラビンが、30mg/m
2の用量で1日1回4日間静脈内投与され、前記シクロホスファミドが、500mg/m
2の用量で1日1回2日間静脈内投与される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記フルダラビンの投与の3日目と4日目に前記シクロホスファミドが投与される、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前記リンパ球除去が、前記コースの投与の7日前に開始される、請求項104に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月10日に出願された米国仮特許出願第63/288,468号の優先権を主張するものであり、この出願は引用によりその内容の全体が本明細書に援用される。
【0002】
配列表の参照
本願に付随する配列表は、ハードコピーではなくXMLフォーマットで提供され、この配列表は参照により本明細書に援用される。この配列表を含むXMLファイルの名称は、S281-0037PCT.xmlである。このテキストファイルは64KBであり、2022年12月9日に作成されたものであり、Patent Centerを経由して電子的に提出されたものである。
【0003】
本開示は、少なくとも第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質の多量体化を誘導することによって、二量体化剤制御型免疫調節複合体を形成することにより、二量体化剤制御型免疫調節複合体をプライミングしてシグナル伝達を誘導するための方法および組成物を提供する。本発明の方法および組成物は、二量体化剤の投薬スケジュールを利用し、この投薬スケジュールでは、(i)二量体化剤の所定の血中トラフ濃度の維持、(ii)免疫調節複合体の活性化、(iii)二量体化剤の潜在的な免疫抑制作用の抑制もしくは回避、(iv)免疫細胞の疲弊の抑制もしくは回避、および/または(v)免疫調節複合体の活性化に関連する副作用の抑制もしくは回避のうちの1つ以上が設計されている。
【背景技術】
【0004】
免疫系細胞を活性化させて、この免疫系細胞によりがん細胞や感染細胞の殺傷を行う方法は、遺伝子工学を利用することによって大きな進歩がなされてきた。例えば、T細胞を遺伝子操作して、特定の標的抗原に結合する細胞外部分と、この細胞外部分が標的抗原に結合した際にT細胞の作用を誘導する細胞内部分とを有する分子を発現させることが行われている。一例として、細胞外部分は、がん細胞や感染細胞に見られる標的抗原に結合するように設計することができ、この細胞外部分に、がん細胞や感染細胞の標的抗原が結合すると、細胞内部分がT細胞を活性化させて、細胞外部分に結合した細胞がT細胞により破壊される。そのような分子の例として、養子細胞免疫療法で使用されるキメラ抗原受容体(CAR)がある(June et al., Nat. Biotechnol. 30:611, 2012; Restifo et al., Nat. Rev. Immunol. 12:269, 2012)。抗原の結合によって、CARの細胞内セグメント上のシグナル伝達ドメインが刺激を受けて、炎症機構と細胞傷害機構を引き起こすシグナルが伝達される。CARに基づく養子細胞免疫療法は、従来の標準治療に対して難治性の腫瘍を有するがん患者の治療に使用されている(Grupp et al., N. Engl. J. Med. 368:1509, 2013; Kalos et al., Sci. Transl. Med. 3:95ra73, 2011参照)。
【0005】
CAR T細胞療法は成功を収めているにもかかわらず、安全性と有効性に問題があることが多い。安全性の問題として、サイトカイン放出症候群や神経毒性だけでなく(Mirzaei, et al., Frontiers in immunology. 2017, 8, 1850;およびSrivastava and Riddell, J Immunol. 2018, 200(2):459-468)、正常な組織でも何らかの抗原標的(例えばCD33)が発現されていることから骨髄系細胞の形成不全やその他の毒性が起こるという懸念がある。有効性の問題としては、抗原逃避およびT細胞疲弊による再発がある(Gardner et al., Blood, 2016, 127(20): p. 2406-10; Ruella and Maus, Comput Struct Biotechnol J. 2016, 14:357-362; Haneen et al., Haematologica. 2018, 103(5):e215-e218)。次世代のCAR T細胞の設計では、T細胞の活性化を制御可能なプラットフォームを提供することによって、このような懸念に対処できるようにする必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、少なくとも第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質の多量体化を誘導することによって、二量体化剤制御型免疫調節複合体(dimerizing agent regulated immunomodulatory complex(DARIC))を形成することにより、シグナル伝達を誘導するためのDARICをインビボでプライミングするための方法および組成物を利用する。より具体的は、本開示では、ラパマイシンまたはその類似体を用いて、第1の多量体化ドメイン(例えば、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)ドメインまたはFK506結合タンパク質(FKBP)ドメイン)を含む第1の融合タンパク質と、第2の多量体化ドメイン(例えば、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)ドメインまたはFK506結合タンパク質(FKBP)ドメイン)を含む第2の融合タンパク質の多量体化を調節することによって、DARICを形成させることを利用する。
【0007】
特定の実施形態において、本発明の方法および組成物は、二量体化剤の投薬スケジュールを利用し、この投薬スケジュールでは、(i)二量体化剤の所定の血中トラフ濃度の維持、(ii)免疫調節複合体の活性化、(iii)二量体化剤の潜在的な免疫抑制作用の抑制もしくは回避、(iv)免疫細胞の疲弊の抑制もしくは回避、および/または(v)免疫調節複合体の活性化に関連する副作用の抑制もしくは回避のうちの1つ以上が設計されている。
【0008】
様々な実施形態において、二量体化剤の血中トラフ濃度は、1~5ng/mLの範囲内に維持される。特定の実施形態において、二量体化剤の血中トラフ濃度は、1.5~3ng/mLの範囲内に維持される。様々な実施形態において、目標血中トラフ濃度は、1ng/mL、1.5ng/mL、2ng/mL、2.5ng/mL、3ng/mL、3.5ng/mL、4ng/mL、4.5ng/mLまたは5ng/mLである。特定の実施形態において、目標トラフ血中濃度は2ng/mLである。
【0009】
様々な実施形態において、対象(対象の体表面積)は1.5m2よりも大きく、二量体化剤(例えばラパマイシンまたはその類似体)は、これを必要とする対象に、0.75~4mgの用量範囲で投与される。特定の実施形態において、対象は1.5m2よりも大きく、二量体化剤(例えばラパマイシンまたはその類似体)は、これを必要とする対象に、0.75mg、1.0mg、1.25mg、1.5mg、1.75mg、2.0mg、2.25mg、2.5mg、2.75mg、3.0mg、3.25mg、3.5mg、3.75mgまたは4mgの用量で投与される。
【0010】
様々な実施形態において、対象は1.5m2以下であり、二量体化剤は、これを必要とする対象に0.75mg/m2未満の用量で投与される。特定の実施形態において、対象は1.5m2以下であり、二量体化剤は、これを必要とする対象に、0.30mg/m2、0.40mg/m2、0.50mg/m2、0.60mg/m2または0.70mg/m2の用量で投与される。
【0011】
様々な実施形態において、二量体化剤(例えばラパマイシンまたはその類似体)は、これを必要とする対象が、DARICを発現するインビボ細胞を有してから少なくとも16時間後から毎日投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、これを必要とする対象が、DARICを発現するインビボ細胞を有してから1日目、2日目、3日目、4日目または5日目から投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、該二量体化剤の初回投与後、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間または24日間毎日投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、これを必要とする対象が、DARICを発現するインビボ細胞を有してから2日目から21日目まで毎日投与される。
【0012】
特定の実施形態では、二量体化剤を毎日投与する第1のコースの実施後の休薬期間では、二量体化剤を対象に投与しない。特定の例では、休薬期間は、12日間、13日間、14日間、15日間または16日間である。
【0013】
特定の実施形態では、休薬期間を経た対象に、二量体化剤を毎日投与する次のコースを投与する。通常、次のコースは、DARICを発現するインビボ細胞を対象が有してから、30日未満、31日未満、32日未満、33日未満、34日未満、35日未満、36日未満、37日未満、38日未満、39日未満、40日未満、41日未満、42日未満、43日未満、44日未満または45日未満には開始されない。
【0014】
特定の実施形態において、持続性疾患を示す対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、前記疾患は白血病を含む。特定の実施形態において、寛解中の対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、グレード3以上の毒性が見られない対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、食細胞の絶対数(APC)が500個/μLを超えている寛解中の対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、DARICを発現するように組換えた細胞を対象に注入してから42日目に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、直前の二量体化剤の投与の休薬の14日後に、二量体化剤の次のコースを投与する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本願で提出された図面のいくつかは、カラーの方が理解しやすいと考えられる。本出願人らは、これらの図面のカラー版も原出願の一部と見なしており、後の手続きにおいて、図面のカラー画像を提出できる権利を保有している。
【0016】
【
図1A-1C】(
図1A)抗CD33 VHH抗体を有する二量体化剤制御型免疫調節複合体(Dimerizing Agent Regulated Immunomodulatory Complex(DARIC33))のレンチウイルスコンストラクトを示す。DARIC33では、キメラ抗原受容体(CAR)の抗原結合機能とシグナル伝達機能が分離されている。この図に示すレンチウイルスコンストラクトでは、設計のモジュール性を向上させるため、CD33の膜近傍ドメイン内の新規なエピトープを標的とするヒト化ラクダ科ナノボディ(VHH)を組み込んでいる。したがって、DARIC33は、CD33内の膜近傍エピトープを標的とする制御可能かつ可逆的な活性を有するCD33 CARである。(
図1B)シグナル伝達を誘導するためのDARIC33のプライミング機構を示す。ラパマイシン(RAPA)を添加することによって、細胞膜に埋め込まれたFK506結合タンパク質(FKBP)ドメインとFKBP-ラパマイシン結合(FRB)ドメインを介して、抗原結合鎖とシグナル伝達鎖がヘテロ二量体を形成し、これによって免疫調節受容体複合体が再構成されて、作用を発揮することができる。標的抗原の存在下では、41bbのシグナル伝達ドメインとCD3zのシグナル伝達ドメインがT細胞のエフェクター機能を活性化する。ラパマイシンを除去すると、DARIC33は不活性状態に戻り、ラパマイシンを再度添加することによって、DARIC33を再活性化することができる。(
図1C)SC-DARIC33または対照T細胞で処置後のMV4-11腫瘍の進行を示す。ラパマイシンを投与した条件またはラパマイシンを投与しなかった条件で、インビボにおけるSC-DARIC33の抗腫瘍活性を対照T細胞と比較した。ルシフェラーゼ遺伝子を発現するように腫瘍細胞株を組換え、36日間の光束(光子/秒)をグラフに示した。
【0017】
【
図2】インビトロにおけるDARIC33の活性を比較評価するため、腫瘍異種移植片としてCD19/CD33二重発現Raji細胞を使用した。NOD Sicdγ(NSG)マウスに二重発現Raji細胞を移植した後、ラパマイシンの存在下または非存在下において、対照mock T細胞、CD19 CAR T細胞またはDARIC33 T細胞でマウスを処置した。
【0018】
【
図3】-7日目にマウスをCD33
+MV4-11 AML細胞で処置し、1日目にSC-DARIC33を投与した。腫瘍を注射した後に、mock T細胞、ラパマイシンのみ、1×10
7個のDARIC33細胞、またはラパマイシンと1×10
7個のDARIC33細胞を投与した場合の、図示した期間における光束(光子/秒)をグラフに示す。
【0019】
【
図4A-4F】SC-DARIC33の活性化は可逆的である。(
図4A)ラパマイシン含有培地を洗浄した後の、様々な時点での抗原に対するDARIC33細胞のサイトカイン応答を示す。比較対照として、ラパマイシン含有培地に置換したDARIC33細胞、またはラパマイシン非含有培地であらかじめ培養したDARIC33細胞を使用した。t
1/2は、単相の指数関数減衰をカーブフィッティングすることにより求める。(
図4B)NSGマウスに1×10
6個のMV4-11.ff/luc白血病細胞を移植した7日後に、10
7個のSC-DARIC33
+細胞または同じ個数の非形質導入(UTD)対照細胞を静脈内(IV)注入した。T細胞の注入後、グラフに示した期間にわたって0.1mg/kgのラパマイシンで週3回マウスを処置し、観察した。(
図4C)1群あたりn=5のマウスにおいて、生物発光によりモニターした腫瘍の進行を示す。ラパマイシンの投与「中止」期間中に撮影した画像を示している(5番目の列の4~13行目と、6番目の列の4~5行目)。(
図4D)腫瘍の増殖の定量を示す。各点は個々のマウスの測定値を示し、ベストフィットした腫瘍の増殖曲線を示す。(
図4E)腫瘍の増殖速度を示す。各点は個々のマウスにおける増殖速度を示し、箱ひげ図は平均値と標準偏差を示し、アスタリスクは、t検定を実施後にベンジャミニ・ホッホベルク補正により多重比較検定を行った際の**p<0.01を示す。(
図4F)DARIC33細胞またはUTD細胞を注入した後に様々なラパマイシン投与スケジュールで処置した後の生存率を示す。補正していないマンテル・コックス検定(ログランク検定)のp値を示す。
【0020】
【
図5A-5E】SC-DARIC33のラパマイシン応答性をインビトロでモデル化することによって、インビボにおけるラパマイシンの標的投薬が可能となる。(
図5A)ラパマイシンの濃度上昇系列の存在下の培地または全血中で、DARIC33細胞をMV4-11 AML細胞により刺激した際のサイトカインの放出を示す。IFNγの応答性はドナーごとに正規化し、4パラメーターのロジスティック用量反応曲線を使用して見かけのEC
50を求めた。(
図5B)マウスにおけるラパマイシンの薬物動態の測定を示す。様々な用量のラパマイシンを週3回投与した際の全血中のラパマイシン濃度を上部に示し、ラパマイシンを腹腔内(IP)注射したタイミングを下部の棒線で示す。定量上限値(ULOQ=200ng/mL)と定量下限値(LLOQ=1ng/mL)もグラフに示している。(
図5C、
図5D)T細胞の注入後0~18日目に、DARIC33と様々な用量スケジュールのラパマイシンで処置したマウスにおけるAML腫瘍の進行を示す。(
図5C)実験計画を示す模式図である。(
図5D)腫瘍の増殖動態の定量を示す。各点は、個々のマウスの生物発光の測定値を示し(1群あたりn=5~10)、各線は、線形混合効果モデルを用いてモデル化した腫瘍の増殖曲線を示す。(
図5E)対照プロットとカプラン・マイヤー生存プロットにおける腫瘍の進行を示す。
【0021】
【
図6】異種移植した後に処置を行ったマウスの全血中のラパマイシン濃度を示す。
【0022】
【
図7】小児患者における全血中のラパマイシン濃度と時間経過の比較を示す。母集団モデルから得た小児患者の薬物動態(PK)データ、典型的な免疫抑制剤への曝露、インビトロにおいてSC-DARIC33を活性化させるラパマイシンのEC
50値、およびマウス異種移植片における有効性へのラパマイシンの関与に関するデータを統合することによって、小児患者においてSC-DARIC33をプライミングしてシグナル伝達を誘導すると予測されたラパマイシンの用量を推定した。ラパマイシンの1日あたりの推奨開始用量は、(体表面積が1.5m
2以下の患者では)0.50mg/m
2または(体表面積が1.5m
2よりも大きい患者では)最大で4.0mgである。いくつかの実施形態において、1日あたりの開始用量は、患者の年齢に応じて0.75mgまたは1.5mgである。患者には、小児患者、成人患者、および小児-成人移行期の患者(例えば18~28歳の患者)が含まれる。全血中のラパマイシンのトラフ濃度の推定値は、大部分の患者において1.5~3ng/mLであることが判明した。
【0023】
【
図8A-8B】リンパ球除去患者にDARIC33とラパマイシンの投与を行うプロトコールを示す。この治験計画(
図8A)では、-2日目のリンパ球除去を行う前に、アフェレーシス、SC-DARIC33 T細胞の製造、およびブリッジング療法を行うことが示されている。0日目に、対象者にSC-DARIC33 T細胞を注入する。2日目に、ラパマイシンを投与し、SC-DARIC33 T細胞の注入後21日目までラパマイシンの投与を継続する。この時点で、ラパマイシンの投与を一時中止することができる。42日目に、治療に対する対象者の応答に応じて、ラパマイシンの投与を再開または中止したままとすることができる。ラパマイシンはサイクル投与することができる。この投与プロトコールのコース中に、-5日目、14日目、28日目および/または42日目といった様々な時点で骨髄穿刺液および/または生検検体を採取する。(
図8B)別のプロトコールを示す。このプロトコールでは、再発性AMLまたは難治性AMLを有する小児患者に、フルダラビンとシクロホスファミドを用いたリンパ球除去化学療法を行った後、段階的に用量を増加しながらDARIC33細胞の投与をを行う。ラパマイシンは3~21日目に投与する。
【0024】
【
図9】いくつかのシロリムスの用量レベル(0.5mg、0.75mg、1.0mg、1.25mgおよび1.5mg)を1日1回の投与スケジュールで19~21日間にわたりシミュレーションした。
【0025】
【
図10】1.5mgの開始用量を毎日投与した場合の、幾何平均値(実線)と期待されるシロリムス濃度の10パーセンタイルと90パーセンタイル(色つきの部分)を示す曝露プロファイルを作成した。1.5mgの初回用量を毎日投与することにより、大部分の患者において、1.5~3ng/mLの目標シロリムス濃度を得ることできる。用量の調節も可能である。
【0026】
【
図11】ラパマイシン投与後の患者(体表面積が1.5m
2よりも大きい)の薬物動態(PK)データから、用量とピーク濃度およびトラフ濃度の曝露関係が示され、用量を調節することによって目標範囲を得ることができることを示す。ラパマイシンの投与は、0.75mgの用量で経口投与することにより開始し、各投与ごとに、本明細書の記載に従って臨床用のLC-MS/MSアッセイを使用してピーク濃度とトラフ濃度をモニターした。
【発明を実施するための形態】
【0027】
免疫系細胞を活性化させて、この免疫系細胞によりがん細胞や感染細胞の殺傷を行う方法は、遺伝子工学を利用することによって大きな進歩がなされてきた。例えば、T細胞を遺伝子操作して、特定の標的抗原に結合する細胞外部分と、この細胞外部分が標的抗原に結合した際にT細胞の作用を誘導する細胞内部分とを有する分子を発現させることが行われている。一例として、細胞外部分は、がん細胞や感染細胞に見られる標的抗原に結合するように設計することができ、この細胞外部分に、がん細胞や感染細胞の標的抗原が結合すると、細胞内部分がT細胞を活性化させて、細胞外部分に結合した細胞がT細胞により破壊される。そのような分子の例として、養子細胞免疫療法で使用されるキメラ抗原受容体(CAR)がある(June et al., Nat. Biotechnol. 30:611, 2012; Restifo et al., Nat. Rev. Immunol. 12:269, 2012)。抗原の結合によって、CARの細胞内セグメント上のシグナル伝達ドメインが刺激を受けて、炎症機構と細胞傷害機構を引き起こすシグナルが伝達される。CARに基づく養子細胞免疫療法は、従来の標準治療に対して難治性の腫瘍を有するがん患者(または対象)の治療に使用されている(Grupp et al., N. Engl. J. Med. 368:1509, 2013; Kalos et al., Sci. Transl. Med. 3:95ra73, 2011参照)。
【0028】
CAR T細胞療法は成功を収めているにもかかわらず、安全性と有効性に問題があることが多い。安全性の問題として、サイトカイン放出症候群や神経毒性だけでなく(Mirzaei, et al., Frontiers in immunology. 2017, 8, 1850;およびSrivastava and Riddell, J Immunol. 2018, 200(2):459-468)、正常な組織でも何らかの抗原標的(例えばCD33)が発現されていることから骨髄系細胞の形成不全が起こるという懸念がある。有効性の問題としては、抗原逃避およびT細胞疲弊による再発がある(Gardner et al., Blood, 2016, 127(20): p. 2406-10; Ruella and Maus, Comput Struct Biotechnol J. 2016, 14:357-362; Haneen et al., Haematologica. 2018, 103(5):e215-e218)。
【0029】
本開示は、免疫細胞の活性化を制御可能なプラットフォームを提供することによって、このような懸念に対処するものである。遺伝子組換えされた免疫調節分子(例えば、遺伝子組換え受容体(CARなど))の活性を制御することによって、毒性プロファイルの改善や疲弊の予防などの利点が得られる。遺伝子組換えされた免疫調節分子の活性の制御が可能であることから、骨髄形成不全が発症する懸念がある骨髄球抗原を標的とする場合にさらに重要性が増す。本開示は、少なくとも第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質の多量体化を誘導することによって、二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を形成することにより、DARICをプライミングしてシグナル伝達を誘導するための方法および組成物を提供する。より具体的には、本開示は、ラパマイシンまたはその類似体を用いて、FKBP-ラパマイシン結合性多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、FK506結合タンパク質多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質の多量体化を調節することによって、DARICを形成させ、このDARICをプライミングしてシグナル伝達を誘導することに関する。
【0030】
特定の実施形態において、治療を必要とする対象に、第1の多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と第2の多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質を含むDARICを発現する細胞の用量が投与され、次に、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインに結合する二量体化剤が投与される。
【0031】
特定の実施形態において、治療を必要とする対象に、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質とFK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質を含むDARICを発現する細胞の用量が投与され、次に、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインに結合するラパマイシンまたはその類似体が投与される。
【0032】
特定の実施形態において、治療を必要とする対象に、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質とFKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質を含むDARICを発現する細胞の用量が投与され、次に、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインに結合するラパマイシンまたはその類似体が投与される。
【0033】
特定の実施形態において、治療を必要とする対象に、第1の多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と第2の多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質を含むDARICを発現するように前記対象の細胞を編集する組成物が投与され、次に、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインに結合する二量体化剤が投与される。
【0034】
特定の実施形態において、治療を必要とする対象に、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質とFK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質を含むDARICを発現するように前記対象の細胞を編集する組成物が投与され、次に、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインに結合する二量体化剤が投与される。
【0035】
特定の実施形態において、治療を必要とする対象に、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質とFKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質を含むDARICを発現するように前記対象の細胞を編集する組成物が投与され、次に、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインに結合する二量体化剤が投与される。
【0036】
特定の実施形態において、二量体化剤を投与することにより、DARICをプライミングしてシグナル伝達を誘導する。特定の実施形態において、二量体化剤はラパマイシンである。特定の実施形態において、二量体化剤はラパマイシンの類似体である。
【0037】
特定の実施形態において、DARICは、第1の多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、第2の多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質を含む。特定の実施形態において、第1の融合タンパク質は、結合ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、および第1の多量体化ドメインを含み、第2の融合タンパク質は、第2の多量体化ドメイン、第2の膜貫通ドメイン、および細胞内部分を含む。特定の実施形態において、第1の融合タンパク質は、第1の膜貫通ドメイン、第1の多量体化ドメイン、および第1の細胞内シグナル伝達部分を含み、第2の融合タンパク質は、第2の多量体化ドメイン、第2の膜貫通ドメイン、および第2の細胞内部分を含む。特定の実施形態において、両方の融合タンパク質が発現されると、両方の多量体化ドメインが細胞外に局在する。特定の実施形態において、両方の融合タンパク質が発現されると、両方の多量体化ドメインが細胞内に局在する。
【0038】
特定の実施形態において、第1の多量体化ドメインはFRB多量体化ドメインであり、第2の多量体化ドメインはFKBP多量体化ドメインである。特定の実施形態において、第1の多量体化ドメインはFKBP多量体化ドメインであり、第2の多量体化ドメインはFRB多量体化ドメインである。特定の実施形態において、結合ドメインは、抗CD33 VHH抗体および/または抗CLL1 VHH抗体を含む。特定の実施形態において、第1の膜貫通ドメインは、CD4の膜貫通ドメインまたはCD8αの膜貫通ドメインを含む。特定の実施形態において、第2の膜貫通ドメインは、CD4の膜貫通ドメインまたはCD8αの膜貫通ドメインを含む。特定の実施形態において、細胞内部分は、CD3ζの細胞内主要シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態において、細胞内部分は、4-1BBの共刺激ドメインを含む。特定の実施形態において、細胞内部分は、OX40またはTNFR2の共刺激ドメインを含む。
【0039】
特定の実施形態において、前記対象は1.5m2よりも大きく、二量体化剤は、これを必要とする対象に、0.75mg、1.0mg、1.25mg、1.5mg、1.75mg、2.0mg、2.25mg、2.5mg、2.75mg、3.0mg、3.25mg、3.5mg、3.75mgまたは4mgの用量で投与される。特定の実施形態において、前記対象は1.5m2以下であり、二量体化剤は、これを必要とする対象に0.75mg/m2以下の用量で投与される。特定の実施形態において、前記対象は1.5m2以下であり、二量体化剤は、これを必要とする対象に、0.30mg/m2、0.40mg/m2、0.50mg/m2、0.60mg/m2または0.70mg/m2の用量で投与される。特定の実施形態において、前記対象は1.5m2以下であり、二量体化剤は、これを必要とする対象に、0.50mg/m2の用量で投与される。
【0040】
特定の実施形態において、二量体化剤は、これを必要とする対象に、1.5~3ng/mLの範囲の目標トラフ血中濃度が維持される用量で投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、これを必要とする対象に、1~4.5ng/mL、1~4ng/mL、1~3.5ng/mL、1~3ng/mL、1.5~5ng/mL、1.5~4.5ng/mL、1.5~4ng/mL、1.5~3.5ng/mLまたは1.5~3ng/mLの範囲の目標トラフ血中濃度が維持される用量で投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、これを必要とする対象に、2ng/mLの目標トラフ血中濃度が維持される用量で投与される。
【0041】
特定の実施形態において、前記対象は1.5m2よりも大きく、ラパマイシンまたはその類似体は、これを必要とする対象に0.75mgの用量で投与される。特定の実施形態において、前記対象は1.5m2以下であり、ラパマイシンまたはその類似体は、これを必要とする対象に、0.50mg/m2の用量で投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、これを必要とする対象に、2ng/mLの目標トラフ血中濃度が維持される用量で投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、これを必要とする対象に、1.5~3ng/mLの範囲の目標トラフ血中濃度が維持される用量で投与される。
【0042】
特定の実施形態において、二量体化剤(例えばラパマイシンまたはその類似体)は、これを必要とする対象が、DARICを発現するインビボ細胞を有してから少なくとも16時間後から毎日投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、これを必要とする対象が、DARICを発現するインビボ細胞を有してから1日目、2日目、3日目、4日目または5日目から投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、該二量体化剤の初回投与後、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間または24日間毎日投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、これを必要とする対象が、DARICを発現するインビボ細胞を有してから2日目から21日目まで毎日投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、これを必要とする対象が、DARICを発現するインビボ細胞を有してから3日目から21日目まで毎日投与される。
【0043】
特定の実施形態では、二量体化剤を毎日投与する第1のコースの実施後の休薬期間では、二量体化剤を対象に投与しない。特定の例では、休薬期間は、12日間、13日間、14日間、15日間または16日間である。特定の例では、休薬期間は、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、または少なくとも16日間である。特定の例では、休薬期間は21日以下である。特定の例では、休薬期間は28日以下である。特定の例では、休薬期間は、1ヶ月以下、2ヶ月以下または3ヶ月以下である。
【0044】
特定の実施形態では、休薬期間を経た対象に、二量体化剤を毎日投与する次のコースを投与する。通常、次のコースは、DARICを発現するインビボ細胞を対象が有してから、36日未満、37日未満、38日未満、39日未満、40日未満、41日未満、42日未満、43日未満、44日未満または45日未満には開始されない。
【0045】
特定の実施形態において、持続性疾患を示す対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、前記疾患は白血病を含む。特定の実施形態において、寛解中の対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、グレード3以上の毒性が見られない対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、食細胞の絶対数(APC)が500個/μLを超えている寛解中の対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、DARICを発現するように組換えた細胞を対象に注入してから42日目に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、直前の二量体化剤の投与の休薬の14日後に、二量体化剤の次のコースを投与する。
【0046】
特定の実施形態において、持続性疾患を示す対象に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、前記疾患は白血病を含む。特定の実施形態において、寛解中の対象に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、グレード3以上の毒性が見られない対象に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、食細胞の絶対数(APC)が500個/μLを超えている寛解中の対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、DARICを発現するように組換えた細胞を対象に注入してから42日目に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、直前の二量体化剤の投与の休薬の14日後に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。
【0047】
本開示の様々な態様について、さらなる選択肢とともにさらに詳しく以下で説明する。本開示の様々な態様は、以下の項目、すなわち、(i)二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC);(ii)二量体化剤;(iii)融合タンパク質;(iii-a)多量体化ドメイン;(iii-b)結合ドメイン;(iii-c)細胞内部分;(iii-d)膜貫通ドメイン;(iii-e)リンカー;(iii-f)タグおよび選択マーカー;(iv)ポリヌクレオチド;(v)遺伝子組換え細胞;(vi)製剤;(vii)治療方法;(viii)例示的な実施形態;(ix)実施例;(x)本開示を支持する配列;ならびに(xi)結語に沿って説明する。これらの見出しは、系統的に説明する目的のみで記載されており、本開示の範囲や解釈を限定するものではない。
【0048】
(i)二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)
【0049】
本開示は、二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)の構成要素を多量体化することにより、DARICをプライミングしてシグナル伝達を誘導するための方法および組成物を提供する。特定の実施形態において、DARICは、第1の多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、第2の多量体化ドメインおよび細胞内部分を含む第2の融合タンパク質とを含み、二量体化剤が第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインに結合することによって、第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質が多量体化して、活性化が可能なDARICが形成される(すなわち、DARICをプライミングしてシグナル伝達を誘導する)。
【0050】
本明細書に記載の多量体化機構を介して行われる一時的な制御は、シグナル伝達を誘導するための機構のみをプライミングする。活性化のプライミングが既に行われている従来のCARやその他の組換え受容体とは異なり、DARICは、活性化のプライミングに二量体化剤の投与を必要とする。特定の実施形態において、二量体化剤により誘導された多量体化によって、シグナル伝達が強化された受容体が再構成されるが、細胞内シグナル伝達部分の集合体は存在しないため、下流のシグナル伝達は活性化されない。したがって、融合タンパク質のうちの一方の結合ドメインによって認識される標的の有無に基づいて、空間的制御が達成される。融合タンパク質の結合ドメインは細胞外に分泌されるため(または外部から添加されるため)、標的が存在する部位のみに蓄積し、標的(例えば細胞表面抗原)と二量体化剤の両方が存在する場合にのみ、細胞が活性化される。特定の実施形態において、両方の融合タンパク質が発現されると、両方の多量体化ドメインが細胞外に局在する。特定の実施形態において、両方の融合タンパク質が発現されると、両方の多量体化ドメインが細胞内に局在する。
【0051】
特定の実施形態において、「プライミングしてシグナル伝達を誘導する」、「シグナル伝達の誘導のためのプライミング」、および「シグナル伝達の誘導のためにプライミングする」という用語、ならびにこれらに類似した用語(例えば「シグナル伝達の誘導のためにDARICをプライミングする」)は、DARICの構成要素を再構成することにより、結合ドメインを含む融合タンパク質と、細胞内部分を含む別の融合タンパク質を機能的に連結させて、形成されたDARICが標的抗原に結合した際に、組換え細胞内において活性化または下流のシグナル伝達を起こすことを意味する。本明細書のいくつかの箇所では、プライミングされてシグナル伝達が誘導されたDARICを、「活性化されている」または「活性」であると説明している。いくつかの実施形態において、DARICは結合ドメインを含んでいない。いくつかの実施形態において、結合ドメインを含んでいないDARICは、第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質のそれぞれに細胞内部分を含み、第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質が多量体化するとシグナル伝達が起こる。
【0052】
本明細書において、「組換えられた」は、異種核酸分子の導入により遺伝子改変もしくは遺伝子組換えされた細胞、微生物、生物、核酸分子もしくはベクターを指すか、または内因性核酸分子または内因性遺伝子の発現が制御できるように改変された細胞を指す。
【0053】
本明細書において、「異種」核酸分子、「異種」コンストラクトまたは「異種」配列は、これらが発現される細胞には天然に存在しない核酸分子もしくは核酸分子配列の一部、または改変もしくは変異が導入される宿主細胞に天然に存在する核酸分子もしくはその一部、または天然の発現と比べて同様の条件下での発現が改変されている核酸分子を指す。
【0054】
特定の実施形態において、DARICは、少なくとも2種のタンパク質によって形成された二量体、三量体またはそれ以上の多量体であってもよく、前記少なくとも2種のタンパク質のうち、少なくとも1種のタンパク質は、標的に特異的な結合ドメインを有し、かつ/または少なくとも1種のタンパク質は、細胞内シグナル伝達ドメイン、共刺激ドメイン、補助受容体ドメインなどの細胞内部分を有する。二量体化剤によって、関連するタンパク質とともに、前記タンパク質のうち少なくとも2種が会合すると、DARICがプライミングされてシグナル伝達が誘導される。特定の実施形態において、DARICは、細胞内シグナルの伝播または伝達を担う少なくとも1つの細胞内部分を含む。別の実施形態において、DARICは結合ドメインを含む。
【0055】
(ii)二量体化剤
【0056】
「二量体化剤」は、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインに結合して、これら2つの多量体化ドメイン同士を架橋することにより、各多量体化ドメインに付属の構成部分を架橋することができるあらゆる分子を指す。
【0057】
特定の実施形態において、二量体化剤は、ラパマイシンである(ラパミューン(登録商標)の商標名で販売されており(Amgen社、カリフォルニア州サウザンドオークス)、シロリムスの名称でも知られている)。ラパマイシン類似体(ラパログ)も用いることができる。ラパマイシン類似体の例として、米国特許第6,649,595号に開示されているものが挙げられ、この文献では様々なラパログの構造が記載されている。特定の実施形態において、二量体化剤は、ラパマイシンと比較して免疫抑制作用が大幅に低減されたラパログである。「大幅に低減された免疫抑制作用」とは、ヒトでの免疫抑制活性を調べるための臨床試験、適切なインビトロサロゲート(例えばT細胞増殖の抑制)またはインビボサロゲートで測定した場合に、等モル量のラパマイシンにおいて観察または期待される免疫抑制作用の少なくとも0.1倍未満~0.005倍の免疫抑制作用を有するラパログを指す。あるいは、「大幅に低減された免疫抑制作用」とは、インビトロアッセイでラパマイシンにおいて観察されるEC50値の少なくとも10~250倍のEC50値を有するラパログを指す。その他の例示的なラパログとして、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダホロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、ゾタロリムス、rimiducid(AP1903)、AP20187(別名:2,2’-[[2-[(ジメチルアミノ)メチル]-1,3-プロパンジイル]ビス[イミノ(2-オキソ-2,1-エタンジイル)オキシ-3,1-フェニレン[(1R)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロピリデン]]]エステル;(2S,2’S)-1-[(2S)-1-オキソ-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブチル]-2-ピペリジンカルボン酸;B/B Homodimerizer)、AP21967(別名:C16-(S)-7-メチルインドールラパマイシン;C16-AiRap)、およびBPC015が挙げられる。
【0058】
特定の実施形態において、二量体化剤として、ラパマイシン(シロリムス)もしくはそのラパログ、クーママイシンもしくはその誘導体、ジベレリンもしくはその誘導体、アブシジン酸(ABA)もしくはその誘導体、メトトレキサートもしくはその誘導体、シクロスポリンAもしくはその誘導体、FKCsAもしくはその誘導体、トリメトプリム(Tmp)-FKBPの合成リガンド(SLF)もしくはその誘導体、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0059】
別の特定の実施形態において、抗二量体化剤は、二量体化剤による少なくとも2つの第1の融合タンパク質同士の結合を阻害する。例えば、シクロスポリンまたはFK506を抗二量体化剤として用いて、二量体化剤を滴定投与すれば、二量体化剤が一方の多量体化ドメインのみに結合するため、シグナル伝達を停止させることができる。特定の実施形態において、抗二量体化剤(例えばシクロスポリンやFK506)は免疫抑制剤である。例えば、免疫抑制性の抗二量体化剤を使用することによって、本開示の融合タンパク質の機能を阻止または最小限に抑えることができ、これと同時に、臨床的に望ましくない炎症反応または病的な炎症反応を抑制または阻止することができる。
【0060】
(iii)融合タンパク質
【0061】
「融合タンパク質」は、1つ以上の親タンパク質または親ポリペプチドに由来する複数のポリペプチド部分(例えば、融合ポリペプチド)を含み、宿主細胞において天然には存在しないタンパク質を指す。融合タンパク質は、天然では起こらない様式で連結された2つ以上の天然のアミノ酸配列を含んでいる。例えば、融合タンパク質は、同じタンパク質に由来する2つ以上の部分が、細胞では通常見られない様式で連結されていてもよく、あるいは2種、3種、4種、5種またはそれ以上の種類のタンパク質に由来する複数の部分が、細胞では通常見られない様式で連結されていてもよい。融合タンパク質は、核酸分子によりコードすることができ、この核酸分子では、1つのタンパク質またはその一部をコードするヌクレオチド配列が、別の1つ以上のタンパク質またはその一部をコードする核酸分子にインフレームに付加されており、これらのヌクレオチド配列と核酸分子は、リンカー、スペーサーまたは連結アミノ酸をコードするヌクレオチドによって分離されていてもよい。特定の実施形態において、融合タンパク質をコードする核酸分子は、宿主細胞に導入されて発現される。
【0062】
本明細書において、「宿主」は、外因性核酸分子で遺伝子組換えを行うことによって、目的のポリペプチド(例えば、DARICの結合部分またはシグナル伝達部分)を産生してもよい細胞(例えば、T細胞)または微生物を指す。特定の実施形態において、宿主細胞は、融合タンパク質の生合成に関連する所望の特性または融合タンパク質の生合成に関連しない所望の特性(例えば、TCR、チェックポイントタンパク質またはその他の遺伝子の欠失、改変または切断;共刺激因子の発現の増加など)を付与する別の遺伝子改変を既に有していてもよく、またはこのような遺伝子可変を含むように組換えてもよい。特定の実施形態において、宿主細胞は、ヒトT細胞であるか、またはTCRα鎖もしくはTCRβ鎖またはその両方が、部位特異的ヌクレアーゼ(例えば、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE))でノックアウトされたヒトT細胞である。
【0063】
特定の実施形態において、DARICは、第1の多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、第2の多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質を含む。特定の実施形態において、第1の融合タンパク質は、結合ドメイン、第1の膜貫通ドメイン、および第1の多量体化ドメインを含み、第2の融合タンパク質は、第2の多量体化ドメイン、第2の膜貫通ドメイン、および細胞内部分を含む。特定の実施形態において、第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質は、リンカー、タグまたは選択マーカーを含んでいてもよい。
【0064】
融合タンパク質が融合された融合タンパク質は、2つ以上の多量体化ドメインを含んでいてもよく、このような多量体化ドメインとして、ホモ二価の二量体化剤の存在下でホモ二量体の形成を促進する多量体化ドメインが挙げられる。そのような実施形態において、二量体化剤を投与することによって、細胞外標的に結合していない条件下での基底状態のシグナル伝達がある程度促進され、例えば、活性化される前に、インビトロまたはインビボにおける細胞の増殖が促進される。T細胞では、活性化の程度が低いと増殖が促進されるが、(標的細胞上の高密度の抗原と、二量体化剤による融合タンパク質のヘテロ二量体化により起こりうる)多量体化が増加すると、細胞傷害反応の活性化が誘導されることが知られている。
【0065】
特定の実施形態において、融合タンパク質は複数の結合ドメインを有していてもよい。例えば、組換え細胞は、結合ドメインと第2の多量体化ドメインを含む第3の融合タンパク質を発現することができ、この第3の融合タンパク質は、膜貫通ドメインを含んでいてもよく、あるいは細胞内部分を有する膜貫通ドメインを含んでいてもよく、第3の融合タンパク質は、発現されると細胞外に局在する。これに関連する実施形態において、融合タンパク質は、1つの結合ドメイン、2つの結合ドメイン、3つの結合ドメインまたは4つの結合ドメインを含み、この1つの結合ドメイン、2つの結合ドメイン、3つの結合ドメインまたは4つの結合ドメインは、1つの標的または最大で4つの異なる標的に特異的である。特定の実施形態において、DARICは、CD33とCLL1に結合する結合ドメインを含む。
【0066】
融合タンパク質は、1つ以上のポリペプチドドメインまたはポリペプチドセグメントを含んでいてもよく、このような1つ以上のポリペプチドドメインまたはポリペプチドセグメントとして、シグナルペプチド、細胞透過性ペプチドドメイン(CPP)、結合ドメイン、シグナル伝達ドメインなどが挙げられ、さらに、エピトープタグ(例えば、マルトース結合タンパク質(「MBP」)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、HIS6、MYC、FLAG、V5、VSV-G、HAなど)、ポリペプチドリンカー、およびポリペプチド切断シグナルが挙げられる。融合タンパク質および融合ポリペプチドは、通常、C末端からN末端の方向に連結されるが、C末端とC末端で連結することもでき、N末端とN末端で連結することもでき、N末端からC末端の方向に連結することもできる。特定の実施形態において、融合タンパク質中に含まれるポリペプチドはどのような順番であってもよい。融合ポリペプチドまたは融合タンパク質は、融合ポリペプチドの所望の活性が保持されている限り、保存的に改変されたバリアント、多型バリアント、アレル、変異体、サブ配列、および異種間ホモログをさらに含んでいてもよい。融合ポリペプチドは、化学的合成法または2つの部分の間の化学結合によって製造してもよく、一般に、その他の標準的な技術を用いて調製してもよい。融合ポリペプチドなどの互いにライゲートされたDNA配列は、本明細書に別に開示する適切な転写調節因子または翻訳調節因子に作動可能に連結される。
【0067】
融合タンパク質および融合ポリペプチドは、ポリペプチド内の1つ以上のポリペプチドまたはドメインを連結するために用いることができる1つ以上のリンカーを含んでいてもよい。ペプチドリンカー配列は、各ポリペプチドが適切な二次構造および三次構造に確実にフォールディングされて、各ポリペプチドドメインが所望の機能を発揮することができるように、十分な距離で2つ以上のポリペプチド部分を互いに分離するため使用してもよい。このようなペプチドリンカー配列は、当技術分野の標準的な技術を用いて、融合ポリペプチドへ組み込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、(1)柔軟な伸長した立体構造を取ることができ、(2)第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドの機能性エピトープと相互作用しうる二次構造を取らず、(3)第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドの機能的エピトープと反応しうる疎水性残基または荷電残基を持たないという要因に基づいて選択してもよい。特定の実施形態において、ペプチドリンカー配列は、グリシン残基、アスパラギン残基およびセリン残基を含むことが好ましい。さらに、ThrやAlaなどのその他のほぼ中性のアミノ酸をリンカー配列に用いてもよい。リンカーとして有用に使用してもよいアミノ酸配列として、Maratea et al., Gene 40:39-46, 1985; Murphy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8258-8262, 1986; 米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に開示されているリンカーが挙げられる。特定の融合ポリペプチドセグメントが、機能ドメイン同士を分離して立体障害を阻止するために使用することができる非必須のN末端アミノ酸領域を含む場合、リンカー配列は必要とされない。特定の実施形態において、典型的には、組換え融合タンパク質の一部として合成される柔軟なアミノ酸サブ配列がリンカーとして好ましい。リンカーポリペプチドは、1~200アミノ酸長、1~100アミノ酸長、または1~50アミノ酸長であってもよく、これらの範囲に含まれるあらゆる整数値のアミノ酸長であってもよい。
【0068】
例示的なポリペプチド切断シグナルとして、プロテアーゼ切断部位などのポリペプチド切断認識部位;ヌクレアーゼ切断部位(例えば、希少制限酵素認識部位、自己切断リボザイム認識部位)、ウイルスのオリゴペプチド自己切断部位(deFelipe and Ryan, 2004. Traffic, 5(8); 616-26を参照されたい)が挙げられる。
【0069】
適切なプロテアーゼ切断部位および自己切断ペプチドは当業者に公知である(例えば、Ryan et al., 1997. J. Gener. Virol. 78, 699-722; Scymczak et al. (2004) Nature Biotech. 5, 589-594を参照されたい)。例示的なプロテアーゼ切断部位として、ポティウイルスのNIaプロテアーゼの切断部位(例えば、タバコエッチウイルスのプロテアーゼの切断部位)、ポティウイルスのHCプロテアーゼの切断部位、ポティウイルスのP1(P35)プロテアーゼの切断部位、byovirusのNIaプロテアーゼの切断部位、byovirusのRNA2によりコードされるプロテアーゼの切断部位、アフタウイルスのLプロテアーゼの切断部位、エンテロウイルスの2Aプロテアーゼの切断部位、ライノウイルスの2Aプロテアーゼの切断部位、ピコルナウイルスの3Cプロテアーゼの切断部位、コモウイルスの24Kプロテアーゼの切断部位、ネポウイルスの24Kプロテアーゼの切断部位、RTSV(イネツングロ球状ウイルス)の3C様プロテアーゼの切断部位、PYVF(パースニップイエローフレックウイルス)の3C様プロテアーゼの切断部位、ヘパリンの切断部位、トロンビンの切断部位、第Xa因子の切断部位、およびエンテロキナーゼの切断部位が挙げられる。
【0070】
特定の実施形態において、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルスの自己切断ペプチドまたはリボソームスキッピング配列である。
【0071】
リボソームスキッピング配列の具体例として、2A部位ドメインもしくはその配列、または2A様部位ドメインもしくはその配列が挙げられる(Donnelly et al., 2001. J. Gen. Virol. 82:1027-1041)。特定の実施形態において、ウイルスの2Aペプチドは、アフタウイルスの2Aペプチド、ポティウイルスの2Aペプチド、またはカルジオウイルスの2Aペプチドである。
【0072】
一実施形態において、ウイルスの2Aペプチドは、口蹄疫ウイルス(FMDV)の2Aペプチド、馬鼻炎Aウイルス(ERAV)の2Aペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)の2Aペプチド、豚テシオウイルス1(PTV-1)の2Aペプチド、タイロウイルスの2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルスの2Aペプチドを含む群から選択される。
【0073】
(iii-a)多量体化ドメイン
【0074】
本明細書において、「多量体化ドメイン」は、二量体化剤を介してまたは直接的に別の分子と選択的に相互作用または会合する分子を指し、異なる種類の多量体化ドメイン同士が相互作用することによって、多量体の形成に大きく貢献したり、多量体の形成が効率的に促進される(すなわち、二量体、三量体、または複数の部分からなる複合体が形成され、これらは、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ多量体またはヘテロ多量体であってもよい)。
【0075】
特定の実施形態において、多量体化ドメインは、二量体化剤を用いることにより会合させることができる。特定の実施形態において、二量体化剤は、ラパマイシンまたはその類似体である。例えば、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインは、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインおよびFKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメイン、またはこれらのバリアントから選択されたペアである。FRBドメインは、FKBPタンパク質およびラパマイシンまたはそのラパログと三者複合体を形成することができるポリペプチド領域(タンパク質の「ドメイン」)である。FRBドメインは、様々な天然タンパク質に存在し、例えば、ヒトおよびその他の生物種由来のmTORタンパク質(文献ではFRAP、RAPT1またはRAFTとも呼ばれる);Tor1やTor2などの酵母タンパク質;およびカンジダ属のFRAPホモログが挙げられる。これらのタンパク質のヌクレオチド配列、クローニングおよびその他の態様に関する情報は、当技術分野で公知である。例えば、ヒトmTORのタンパク質配列のアクセッション番号は、GenBankアクセッション番号L34075.1である(Brown et al., Nature 369:756, 1994)。
【0076】
特定の実施形態において、第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質が発現されると、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインが細胞外に局在する。特定の実施形態において、第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質が発現されると、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインが細胞内に局在する。
【0077】
特定の実施形態において、「FKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメイン」は、FRBポリペプチドを指す。本開示の融合タンパク質で使用されるFRBドメインは、通常、少なくとも85~100個のアミノ酸残基を含んでいる。特定の実施形態において、本開示の融合タンパク質で使用されるFRBアミノ酸配列は、2021番目のIleから2113番目のLysまでの93残基からなるアミノ酸配列を含み、GenBankアクセッション番号L34075.1と比べてT2098L変異(93残基長のFRBポリペプチドのアミノ酸配列ではT82Lに相当する)を有している。本開示の融合タンパク質で使用されるFRBドメインは、FKBPタンパク質とこれに結合した本開示のラパマイシンまたはその類似体からなる複合体に結合することができる。特定の実施形態において、FRBドメインのペプチド配列に含まれるものとして、(a)少なくとも前述のヒトmTORの93残基のアミノ酸領域または相同なタンパク質の対応する領域にまたがる天然のペプチド配列;(b) 天然のFRBペプチドの最大で10個のアミノ酸、1~5個のアミノ酸もしくは1~3個のアミノ酸、もしくは実施形態に応じて、1個のアミノ酸のみが、欠失、挿入または置換された天然のFRBのバリアント;または(c)天然のFRBドメインをコードするDNA分子に選択的にハイブリダイズすることができる核酸分子によってコードされるペプチド、もしくは遺伝子コードの縮重により、天然のFRBドメインをコードするDNA分子に選択的にハイブリダイズすることができるDNA配列によってコードされるペプチドが挙げられる。特定の実施形態において、FRBポリペプチドは、架橋因子を介してFKBPポリペプチドに結合し、三者複合体を形成する。
【0078】
特定の実施形態では、
ILWHEMWHEGLEEASRLYFGERNVKGMFEVLEPLHAMMERGPQTLKETSFNQAYGRDLMEAQEWCRKYMKSGNVKDLLQAWDLYYHVFRRISK(配列番号55)
に示されるFRB配列が利用され、特定の実施形態では、
ILWHEMWHEGLEEASRLYFGERNVKGMFEVLEPLHAMMERGPQTLKETSFNQAYGRDLMEAQEWCRKYMKSGNVKDLTQAWDLYYHVFRRISK(配列番号56)
に示される配列が利用される。
【0079】
特定の実施形態において、「FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメイン」は、FKBPポリペプチドを指す。FKBPは、FK506、FK520、ラパマイシンなどのマクロライド系抗生物質に対する細胞質ゾル内受容体であり、生物種間で高度に保存されている。本開示の目的では、FKBPは、ラパマイシンまたはその類似体に結合して、FRB含有タンパク質またはFRB含有融合タンパク質との三者複合体を形成することが可能なタンパク質またはタンパク質ドメインである。FKBPドメインは、「ラパマイシン結合ドメイン」とも呼ばれる。様々なFKBP種のヌクレオチド配列、クローニングおよびその他の態様に関する情報は、当技術分野で公知である(例えば、Staendart et al., Nature 346:671, 1990(ヒトFKBP12);Kay, Biochem. J. 314:361, 1996を参照されたい)。その他の哺乳動物種、酵母およびその他の生物の相同なFKBPタンパク質も、当技術分野で公知であり、本明細書に開示した融合タンパク質において使用してもよい。本開示で使用されるFKBPドメインのサイズは、どのFKBPタンパク質を使用するのかに応じて様々に変動する。本開示の融合タンパク質のFKBPドメインは、ラパマイシンまたはその類似体に結合して、FRB含有タンパク質との三者複合体の形成に加わることができる(そのような結合を直接的または間接的に検出する何らかの手段によってこの複合体の形成を判断してもよい)。
【0080】
本開示のFKBP融合タンパク質のFKBPドメインのペプチド配列に含まれるものとして、(a)天然のFKBPペプチド配列、好ましくは、ヒトFKBP12タンパク質に由来する天然のFKBPペプチド配列(GenBankアクセッション番号AAA58476.1)またはこの天然のFKBPペプチド配列に由来するペプチド配列、別のヒトFKBPに由来するペプチド配列、マウスもしくはその他の哺乳動物のFKBPに由来するペプチド配列、もしくはその他の動物、酵母もしくは真菌のFKBPに由来するペプチド配列;(b)天然のFKBPペプチドの最大で10個のアミノ酸、1~5個のアミノ酸もしくは1~3個のアミノ酸、もしくは実施形態に応じて、1個のアミノ酸のみが、欠失、挿入または置換された天然のFKBP配列のバリアント;または(c)天然のFKBPをコードするDNA分子に選択的にハイブリダイズすることができる核酸分子によってコードされるペプチド配列、もしくは遺伝子コードの縮重により、天然のFKBPをコードするDNA分子に選択的にハイブリダイズすることができるDNA配列によってコードされるペプチド配列が挙げられる。特定の実施形態において、FKBPポリペプチドは、FKBP12ポリペプチド、またはF36V変異を含むFKBP12ポリペプチドである。特定の実施形態において、本明細書で企図されるFKBPポリペプチドは、架橋因子を介してFRBポリペプチドに結合し、三者複合体を形成する。
【0081】
特定の実施形態では、
GVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKFDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLE(配列番号57)
に示される配列が利用され、特定の実施形態では、
GVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLE(配列番号58)
に示される配列が利用される。
【0082】
「架橋因子」は、2つ以上の多量体化ドメインと会合して、それらの間に配置される分子を指す。特定の実施形態において、多量体化ドメインは、架橋因子の存在下のみにおいて、ポリペプチド複合体の形成に大きく貢献したり、ポリペプチド複合体の形成を効率的に促進する。特定の実施形態において、多量体化ドメインは、架橋因子の非存在下では、ポリペプチド複合体の形成に貢献しないか、ポリペプチド複合体の形成を効率的に促進しない。本明細書で企図される特定の実施形態における使用に適した架橋因子の具体例として、AP21967、ラパマイシン(シロリムス)もしくはそのラパログ、クーママイシンもしくはその誘導体、ジベレリンもしくはその誘導体、アブシジン酸(ABA)もしくはその誘導体、メトトレキサートもしくはその誘導体、シクロスポリンAもしくはその誘導体、FKCsAもしくはその誘導体、トリメトプリム(Tmp)-FKBPの合成リガンド(SLF)もしくはその誘導体、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0083】
その他の多量体化ドメインのペアとして、FKBPとカルシニューリン、FKBPとシクロフィリン、FKBPと細菌由来DHFR、カルシニューリンとシクロフィリン、PYL1とABI1、もしくはGIB1とGAI、またはこれらのバリアントが挙げられる。
【0084】
特定の実施形態において、第1の多量体化ドメインはFRB多量体化ドメインであり、第2の多量体化ドメインはFKBP多量体化ドメインである。特定の実施形態において、第1の多量体化ドメインはFKBP多量体化ドメインであり、第2の多量体化ドメインはFRB多量体化ドメインである。特定の実施形態において、二量体化剤/架橋因子は、ラパマイシンおよび/またはその類似体である。
【0085】
特定の実施形態において、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインは、同じものであるか、異なるものである。
【0086】
(iii-b)結合ドメイン
【0087】
「結合ドメイン」は、標的(例えば、CD19、CD20、CD33、CLL1および/またはその他の標的抗原)を特異的に認識して、これに結合する能力を有するタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチドまたはその他の分子を指す。
【0088】
本開示において有用な融合タンパク質の結合ドメインとして、当技術分野で公知の結合ドメインもしくは本明細書に記載の結合ドメイン、または当技術分野で公知の様々な方法によって作製される結合ドメインが挙げられる(例えば、米国特許第6,291,161号および米国特許第6,291,158号を参照されたい)。例えば、融合タンパク質の結合ドメインは、目的の標的に特異的に結合するFab断片のFabファージライブラリーをスクリーニングすることによって同定してもよい(Hoet et al., Nat. Biotechnol. 23:344, 2005を参照されたい)。さらに、例えば、免疫原として標的抗原を用いた簡便な系(例えば、マウス、HuMAbマウス(登録商標)、TCマウスTM、KMマウス(登録商標)、ラマ、ヒツジ、ニワトリ、ラット、ハムスター、ウサギなど)において、ハイブリドーマを作製する従来の方法を用いて、標的特異的結合ドメインを有する抗標的抗体を作製することができる。
【0089】
別の結合ドメインは、ヒト、げっ歯類、鳥類、ヒツジといった様々な生物種由来の標的特異的な抗体可変ドメインから得ることができる(この抗体可変ドメインは、抗体、sFv、scFv、Fab、可溶性VHドメイン抗体またはドメイン抗体の形態であってもよい)。さらに、結合ドメインは、その他の生物種由来の抗体の可変ドメインから得られてもよく、このような生物種として、例えば、ラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダまたはラマ)(Ghahroudi et al., FEBS Letters 414:521, 1997; Vincke et al., J. Biol. Chem. 284:3273, 2009; Hamers-Casterman et al., Nature 363:446, 1993;およびNguyen et al., J. Mol. Biol. 275:413, 1998)、テンジクザメ(Roux et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. (USA) 95:11804, 1998)、スポッテッドラットフィッシュ(Nguyen et al., Immunogenetics 54:39, 2002)、またはヤツメウナギ(Herrin et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. (USA) 105:2040, 2008およびAlder et al., Nature Immunol. 9:319, 2008)が挙げられる。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを用いた抗原結合領域を形成できると見られ、すなわち、これらの機能的抗体は、重鎖のみのホモ二量体である(「重鎖抗体」と呼ぶ)(Jespers et al., Nat. Biotechnol. 22:1161, 2004; Cortez-Retamozo et al., Cancer Res. 64:2853, 2004; Baral et al., Nature Med. 12:580, 2006およびBarthelemy et al., J. Biol. Chem. 283:3639, 2008)。
【0090】
さらに、標的特異的結合ドメインは、ランダムペプチドライブラリーをコードする配列、または別の非抗体骨格のループ領域のアミノ酸の組換え多様体をコードする配列から得ることもでき、このようなものとして、例えば、フィブリノゲンドメイン(例えば、Weisel et al. (1985) Science 230:1388を参照されたい)、Kunitzドメイン(例えば、米国特許第6,423,498号を参照されたい)、アンキリンリピートタンパク質(DARPinsとしても知られている;Binz et al., J. Mol. Biol. 332:489, 2003およびBinz et al., Nat. Biotechnol. 22:575, 2004)、フィブロネクチン結合ドメイン(アドネクチンまたはモノボディとしても知られている;Richards et al., J. Mol. Biol. 326:1475, 2003; Parker et al., Protein Eng. Des. Sel. 18:435, 2005およびHackel et al., J. Mol. Biol. 381:1238, 2008)、システインノットミニタンパク質(Vita et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. (USA) 92:6404, 1995; Martin et al., Nat. Biotechnol. 21:71, 2002およびHuang et al., Structure 13:755, 2005)、テトラトリコペプチドリピートドメイン(Main et al., Structure 11:497, 2003およびCortajarena et al., ACS Chem. Biol. 3:161, 2008)、ロイシンリッチリピートドメイン(Stumpp et al., J. Mol. Biol. 332:471, 2003)、アンチカリン(Skerra, FEBS J. 275:2677, 2008)、リポカリンドメイン(例えば、PCT公開公報WO2006/095164、Beste et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. (USA) 96:1898, 1999およびSchonfeld et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. (USA) 106:8198, 2009を参照されたい)、アルマジロリピートタンパク質(ArmRPs;Varadamsetty et al., J. Mol. Biol. 424:68, 2012)、ダイアボディ(Manzke et al., Int. J. Cancer 82:700, 1999)、repebody(Lee et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. U.S.A. 109: 3299, 2012)、ミニボディ(Hu et al., Cancer Res. 56:3055, 1996)、シクロチド(Craik et al., J. Mol. Biol. 294:1327, 1999)、V様ドメイン(例えば、米国特許出願公開第2007/0065431号を参照されたい)、C型レクチン領域(Zelensky and Gready, FEBS J. 272:6179, 2005; Beavil et al.I, Proc. Nat'l. Acad. Sci. (USA) 89:753, 1992およびSato et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. (USA) 100:7779, 2003)、mAb2またはFcabTM(例えば、PCT公開WO2007/098934;WO2006/072620を参照されたい)、その他のもの(Nord et al., Protein Eng. 8:601, 1995; Nord et al., Nat. Biotechnol. 15:772, 1997; Nord et al., Eur. J. Biochem. 268:4269, 2001;およびBinz et al. (2005) Nat. Biotechnol. 23:1257, 2005)が挙げられる。
【0091】
さらなる実施形態において、結合ドメインは、がん(例えば、固形悪性腫瘍、血液悪性腫瘍)、炎症性疾患、自己免疫疾患または移植片対宿主病に関連する抗原である標的に特異的である。例示的な標的抗原として、α葉酸受容体(FRα)、αvβ6インテグリン、ADGRE2、BACE2、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H4、B7-H6、CA19.9、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD7、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD138、CD171、CD244、癌胎児性抗原(CEA)、C型レクチン様分子1(CLL1)、CD2サブセット1(CS-1)、CLDN6、cMET、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、CLDN18.2、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、DLL3、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、EGFR806、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、EPHB2、ERBB4、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、FLT3、FN、FN-EDB、FRβ、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン3(GPC3)、EGFRファミリー(ErbB2(HER2)を含む)、HER2p95、EGFRv3、IL-10Rα、IL-13Rα2、κ、がん/精巣抗原2(LAGE-1A)、K-Ras、K-Ras G12C、K-Ras G12D、K-Ras G12V、λ、Lewis-Y (LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、LY6G6GD、melanoma antigen recognized by T cells 1(MelanAまたはMART1)、メソテリン(MSLN)、MMP10、MUC1、MUC16、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)、MHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)、神経細胞接着分子(NCAM)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体型チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、synovial sarcoma, X breakpoint 2(SSX2)、サバイビン、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、transmembrane activator and CAML interactor(TACI)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、tumor endothelial marker 7-related(TEM7R)、TIM3、栄養膜糖タンパク質(TPBG)、UL16結合タンパク質(ULBP)1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、ULBP6、および血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)が挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原結合ドメインは、CD19、CD20、CD22、CD33、CD79A、CD79B、B7H3、Muc16、Her2、EGFR、FN-EDB、CLDN18.2、DLL3、FLT3、CLL1、CD123またはBCMAに結合する。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原結合ドメインは、CD33、CLL1、CD19、CD20、CD22、CD79A、CD79BまたはBCMAに結合する。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原結合ドメインは、CD33および/またはCLL1に結合する。特定の実施形態において、結合ドメインは抗CD33 VHH抗体である。特定の実施形態において、結合ドメインは抗CLL1 VHH抗体である。
【0093】
様々な実施形態において、1つ以上の抗原結合ドメインは、α-フェトプロテイン(AFP)、ASCL2、Bメラノーマ抗原(BAGE)ファミリーメンバー、Brother of the regulator of imprinted sites(BORIS)、がん精巣抗原、がん精巣抗原83(CT-83)、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、癌胎児性抗原(CEA)、サイトメガロウイルス(CMV)抗原、メラノーマ上の細胞傷害性T細胞(CTL)認識抗原(CAMEL)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)抗原、EPHB2、G抗原1(GAGE-1)、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7B、GAGE-8、糖タンパク質100(GP100)、B型肝炎ウイルス(HBV)抗原、C型肝炎ウイルス(HCV)の非構造タンパク質3(NS3)、ヒトパピローマウイルス(HPV)-E6、HPV-E7、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、IGF2BP3/A3、IGF2BP1、K-Ras、K-Ras G12C、K-Ras G12D、K-Ras G12V、潜在性膜タンパク質2(LMP2)、LY6G6D、メラノーマ抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、T細胞により認識されるメラノーマ抗原(MART-1)、メソテリン(MSLN)、ムチン1(MUC1)、ムチン16(MUC16)、New York esophageal squamous cell carcinoma-1(NYESO-1)、P53、P抗原(PAGE)ファミリーメンバー、PAP、PIK3CA、PIK3CA H1047R、胎盤特異的タンパク質1(PLAC1)、メラノーマにおいて選択的に発現される抗原(PRAME)、前立腺特異的抗原PSA、サバイビン、滑膜肉腫X1(SSX1)、滑膜肉腫X2(SSX2)、滑膜肉腫X3(SSX3)、滑膜肉腫X4(SSX4)、滑膜肉腫X5(SSX5)、滑膜肉腫X8(SSX8)、チログロブリン、TP53 R175H、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP)1、TRP2、UBD、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、Wnt10A、X抗原ファミリーメンバー1(XAGE1)、およびX抗原ファミリーメンバー2(XAGE2)を含む群から選択されるタンパク質に由来する標的ポリペプチドに結合する。
【0094】
(iii-c)細胞内部分
【0095】
融合タンパク質の細胞内部分は、細胞内シグナルの伝達または伝播を担う1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン、共刺激ドメインまたは補助受容体ドメインを含む。特定の実施形態において、細胞内部分は、融合タンパク質修飾細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを発生する。特定の実施形態において、細胞内部分は、リガンドの結合に基づいて刺激シグナルおよび/または共刺激シグナルを発生する。免疫エフェクター機能の例としては、細胞溶解活性およびヘルパー活性が挙げられ、これらにはサイトカインの分泌が含まれる。細胞内部分が発生するシグナルは、免疫細胞の増殖、活性化、分化などを誘導することもできる。
【0096】
「シグナル伝達ドメイン」は、セカンドメッセンジャーを発生させたり、セカンドメッセンジャーに応答するエフェクターとして機能したりすることによって、決まったシグナル伝達経路を介して細胞内の情報を伝達することにより細胞の活動を調節するタンパク質の機能性部分を指す。「刺激」は、刺激分子(例えば融合タンパク質)または共刺激分子が、その認識リガンドと結合することによって誘導される主要応答を指し、この主要応答によって、融合タンパク質の適切なシグナル伝達ドメインを介したシグナル伝達などのシグナル伝達事象が起こる。刺激によって、特定の分子の改変された発現を起こすことができる。
【0097】
細胞内シグナル伝達ドメインは、シグナル伝達ドメインの細胞内領域全体またはその機能性断片を含んでいてもよい。特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内主要シグナル伝達ドメインを含んでいてもよい。特定の実施形態において、細胞内主要シグナル伝達ドメインは、主刺激または抗原依存的刺激を担う分子に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内共刺激ドメインを含んでいてもよい。
【0098】
細胞内主要シグナル伝達ドメインは、免疫受容体活性化チロシンモチーフすなわちITAMとして知られているシグナル伝達モチーフを含んでいてもよい。ITAMを含む細胞質内主要シグナル伝達配列の例としては、CD3ζ、共通FcRγ(FCER1G)、FcγRIIa、FcRβ(FcεR1b)、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD79a、CD79b、DAP10およびDAP12に由来するものが挙げられる。
【0099】
特定の実施形態において、CD3ζ(CD247)刺激ドメインは、細胞の活性化に必要な初期シグナルを機能的に伝達するのに十分な、T細胞受容体ζ鎖の細胞質内ドメインまたはその機能性断片に由来するアミノ酸残基を含んでいてもよい。特定の実施形態において、CD3ζ刺激ドメインは、ヒトCD3ζ刺激ドメインまたはその機能性断片を含んでいてもよい。特定の実施形態において、CD3ζ分子に由来する細胞内シグナル伝達ドメインの場合、この細胞内シグナル伝達ドメインは、適切な条件下でシグナルを発生することができる十分なCD3ζ構造を保持している。
【0100】
特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内共刺激ドメインを含んでいてもよい。特定の実施形態において、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナルまたは抗原非依存性刺激を担う分子に由来する細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態において、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内部分であってもよい。「共刺激分子」は、免疫細胞上に存在し、共刺激リガンドにより認識されて、この共刺激リガンドに特異的に結合する結合パートナーであり、これによって、免疫細胞による共刺激反応(例えば増殖など)の誘導を介在する。共刺激分子は、抗原受容体やそのリガンド以外の、効率的な免疫応答に寄与する細胞表面分子を含む。共刺激分子は、TNF受容体タンパク質ファミリー、免疫グロブリン様タンパク質ファミリー、サイトカイン受容体ファミリー、インテグリンファミリー、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)ファミリーおよび活性化誘導NK細胞受容体ファミリーにおいて提示されることがある。このような共刺激分子の例として、MHCクラスI分子、Bリンパ球・Tリンパ球アテニュエーター(BTLA、CD272)、Tollリガンド受容体、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS(CD278)、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、ICAM-1、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1;CD11a/CD18)、CD2、CDS、CD7、CD287、LIGHT、NKG2C、NKG2D、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp30、NKp44、NKp46、CD160(BY55)、B7-H3(CD276)、CD19、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、IA4、CD49d、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83に特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。
【0101】
特定の実施形態において、細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン(共刺激ドメインとも呼ばれる)は、4-1BB(CD137、TNFRSF9)を含む。「4-1BB」は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーを指す。特定の実施形態において、4-1BBの共刺激ドメインは、ヒト4-1BBの共刺激ドメインまたはその機能性断片を含む。
【0102】
特定の実施形態において、細胞内共刺激シグナル伝達ドメインはCD28を含む。CD28は、T細胞の活性化、細胞増殖の誘導、サイトカインの産生およびT細胞の生存促進に関与するT細胞特異的糖タンパク質である。特定の実施形態において、CD28の共刺激ドメインは、ヒトCD28の共刺激ドメインまたはその機能性断片を含む。
【0103】
特定の実施形態において、細胞内部分は、本明細書に記載の1つ以上の刺激ドメインと1つ以上の共刺激ドメインの組み合わせを含む。特定の実施形態において、細胞内部分は、4-1BBの共刺激ドメインとCD3ζの刺激ドメインを含む。特定の実施形態において、細胞内部分は、4-1BBの共刺激ドメインとCD3ζの刺激ドメインを含む。
【0104】
特定の実施形態において、細胞内部分は、CD3ζの細胞内主要シグナル伝達ドメインとOX40の細胞内共刺激ドメインを含む。特定の実施形態において、細胞内部分は、CD3ζの細胞内主要シグナル伝達ドメインとTNFR2の細胞内共刺激ドメインを含む。
【0105】
(iii-d)膜貫通ドメイン
【0106】
融合タンパク質は、膜貫通ドメインを含むように設計することができる。膜貫通ドメインは、細胞膜に融合タンパク質を繋留させることができる。膜貫通ドメインは、その膜貫通領域に隣接した1個以上の追加のアミノ酸を含んでいてもよく、例えば、該膜貫通ドメインが由来するタンパク質の細胞外領域に関連する1個以上のアミノ酸(例えば、該膜貫通ドメインが由来するタンパク質の細胞外領域に由来する1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個またはそれ以上の個数のアミノ酸)、および/または該膜貫通タンパク質が由来するタンパク質の細胞内領域に関連する1個以上の追加のアミノ酸(例えば、該膜貫通ドメインが由来するタンパク質の細胞内領域に由来する1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個またはそれ以上の個数のアミノ酸)を含んでいてもよい。特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、細胞内部分であるシグナル伝達ドメイン、共刺激ドメイン、ヒンジドメインまたは補助受容体の由来源であるタンパク質と同じタンパク質に由来するものであってもよい。特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、融合タンパク質のその他のドメインの由来源であるタンパク質とは別のタンパク質に由来するものである。特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、融合タンパク質のその他のドメインとの結合が阻止されるように、または融合タンパク質のその他のドメインとの相互作用を最小限に抑えられるように選択することができるか、またはアミノ酸置換によってそのように改変することができる。
【0107】
特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、細胞膜内で熱力学的に安定な、通常15~30アミノ酸長の三次元構造を有する。膜貫通ドメインの構造は、αヘリックス、βバレル、βシート、βヘリックスまたはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0108】
膜貫通ドメインは、天然由来であってもよく、組換え体由来であってもよい。天然由来である場合、膜貫通ドメインは、膜結合型タンパク質由来であってもよく、膜貫通型タンパク質由来であってもよい。特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、融合タンパク質の細胞外リガンド結合ドメインに標的が結合すれば、細胞内部分にシグナルを伝達することができる。特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、T細胞受容体のα鎖、β鎖もしくはζ鎖;CD28;CD27;CD3ε;CD45;CD4;CD5;CD8;CD9;CD16;CD22;CD33;CD37;CD64;CD80;CD86;CD134;CD137;および/またはCD154の膜貫通領域を少なくとも含んでいてもよい。特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、KIRDS2;OX40;CD2;LFA-1;ICOS;4-1BB;GITR;CD40;BAFFR;HVEM;SLAMF7;NKp80;NKp44;NKp30;NKp46;CD160;CD19;IL2Rβ;IL2Rγ;IL7Ra;ITGA1;VLA1;CD49a;ITGA4;IA4;CD49D;ITGA6;VLA-6;CD49f;ITGAD;CD11d;ITGAE;CD103;ITGAL;CD11a;ITGAM;CD11b;ITGAX;CD11c;ITGB1;CD29;ITGB2;CD18;ITGB7;TNFR2;DNAM1;SLAMF4;CD84;CD96;CEACAM1;CRT AM;Ly9;CD160;PSGL1;CD100;SLAMF6(NTB-A、Ly108);SLAM;BLAME;SELPLG;LTBR;PAG/Cbp;NKG2D;および/またはNKG2Cの膜貫通領域を少なくとも含んでいてもよい。特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、CD28鎖、CD4鎖またはCD8α鎖に由来する膜貫通ドメインを含んでいてもよい。
【0109】
特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、ロイシンやバリンなどの疎水性残基で主に構成されていてもよい。特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、その両端に、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンからなるトリプレットを含んでいてもよい。特定の実施形態において、CD28、CD4またはCD8のヒンジが、膜貫通ドメインの細胞外側に配置される。
【0110】
いくつかの実施形態において、融合タンパク質(例えばDARICの結合部分)は、膜貫通ドメインまたはGPIシグナル配列を含む。さらなる実施形態において、融合タンパク質(例えばDARICの結合部分)は、GPIシグナル配列が除去されたGPI分子、またはGPIシグナル配列が付加されるように改変されたGPI分子を含む。
【0111】
特定の実施形態において、第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質は、CD4の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む。特定の実施形態において、第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質は、CD8αの膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む。
【0112】
(iii-e)リンカー
【0113】
本明細書において、融合タンパク質に含まれるリンカーは、融合タンパク質の2つのサブコンポーネントまたはドメインを連結する役割を果たす、該融合タンパク質の一部であってもよい。特定の実施形態において、リンカーは、融合タンパク質の様々な部分に柔軟性を付与することができる。scFvにおいて、抗体由来結合ドメインのVHとVLを連結するリンカーも前述している。リンカーは、スペーサー領域および連結アミノ酸をさらに含んでいてもよい。
【0114】
スペーサー領域は、その他の連結されている部分から適切な距離を取るため、かつ/またはその他の連結されている部分と比べて可動性を持たせるために使用されるリンカー領域の1種である。
【0115】
特定の実施形態において、スペーサー領域の長さは、個々の目的に応じてカスタマイズすることができる。例えば、スペーサー領域は、標的細胞上の個々の細胞マーカーに応じてカスタマイズして、融合タンパク質が結合した際の細胞による認識と破壊を最適化することができる。特定の例において、スペーサーの長さは、抗原に結合した際の融合タンパク質発現細胞の応答性が、スペーサーが存在しない場合よりも増強するような長さであってもよい。特定の実施形態において、スペーサー領域の長さは、細胞マーカーのエピトープの位置、エピトープに対する結合ドメインの親和性、ならびに/またはエクスビボおよび/またはインビボにおいて細胞マーカーの認識に応答して標的細胞を破壊する融合タンパク質組換え細胞の能力に応じて選択することができる。スペーサー領域は、融合タンパク質組換え細胞において高発現を誘導することができる。特定の実施形態において、融合タンパク質の細胞外スペーサー領域は、膜貫通ドメインと細胞外結合ドメインの間に位置していてもよい。
【0116】
例示的なスペーサーとして、10~250個のアミノ酸を有するスペーサー、10~200個のアミノ酸を有するスペーサー、10~150個のアミノ酸を有するスペーサー、10~100個のアミノ酸を有するスペーサー、10~50個のアミノ酸を有するスペーサー、または10~25個のアミノ酸を有するスペーサーが挙げられる。特定の実施形態において、スペーサー領域は、12アミノ酸長、20アミノ酸長、21アミノ酸長、26アミノ酸長、27アミノ酸長、45アミノ酸長または50アミノ酸長である。特定の実施形態において、長いスペーサーは、119アミノ酸長を超える長さであり、中程度の長さのスペーサーは、13~119アミノ酸長であり、短いスペーサーは、10~12アミノ酸長である。
【0117】
特定の実施形態において、スペーサー領域は、免疫グロブリンのヒンジ領域を含む。免疫グロブリンのヒンジ領域は、野生型の免疫グロブリンのヒンジ領域であってもよく、改変された野生型の免疫グロブリンのヒンジ領域であってもよい。特定の実施形態において、免疫グロブリンのヒンジ領域は、ヒト免疫グロブリンのヒンジ領域である。免疫グロブリンのヒンジ領域は、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgMのヒンジ領域であってもよい。IgGのヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のヒンジ領域であってもよい。特定の実施形態において、スペーサー領域は、IgG1、IgG2、lgG3、lgG4もしくはIgDに由来するヒンジ領域配列の全体もしくはその一部、またはIgG1、IgG2、lgG3、lgG4もしくはIgDに由来するヒンジ領域配列の全体もしくはその一部とCH2領域の全体もしくはその一部との組み合わせ;CH3領域の全体もしくはその一部;またはCH2領域の全体もしくはその一部とCH3領域の全体もしくはその一部との組み合わせを含んでいてもよい。本明細書において、「野生型の免疫グロブリンのヒンジ領域」は、天然の抗体の上部および中央部において、重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインの間に位置してこれらを連結するヒンジのアミノ酸配列(IgG、IgAおよびIgDの場合)、または重鎖のCH1ドメインとCH3のドメインの間に位置してこれらを連結するヒンジのアミノ酸配列(IgEおよびIgMの場合)を指す。
【0118】
例示的なスペーサーとして、IgG4のヒンジのみからなるスペーサー、CH2ドメインおよびCH3ドメインに連結されたIgG4のヒンジからなるスペーサー、またはCH3ドメインに連結されたIgG4のヒンジからなるスペーサーが挙げられる。ヒンジ領域は、意図しないパートナーとの二量体化などの、望ましくない構造的相互作用が起こらないように組換えることができる。本明細書に記載の融合タンパク質において使用することができるヒンジ領域のその他の例として、CD8α、CD4、CD28、CD7などの、1型膜タンパク質の細胞外領域に存在するヒンジ領域が挙げられ、これらの1型膜タンパク質は野生型であってもよく、そのバリアントであってもよい。
【0119】
特定の実施形態において、スペーサー領域は、II型C型レクチンのドメイン間領域(ストーク領域)のヒンジ領域、または分化抗原群(cluster of differentiation)(CD)分子のストーク領域のヒンジ領域を含む。II型C型レクチンまたはCD分子の「ストーク領域」は、II型C型レクチンまたはCD分子において、C型レクチン様ドメイン(CTLD)(例えば、ナチュラルキラー細胞受容体のCTLDに類似するもの)と疎水性部分(膜貫通ドメイン)の間に位置する細胞外ドメインの一部を指す。例えば、ヒトCD94(GenBankアクセッション番号AAC50291.1)の細胞外ドメインは、34~179番目のアミノ酸残基に相当するが、CTLDは、61~176番目のアミノ酸残基に相当し、ヒトCD94分子のストーク領域は、34~60番目のアミノ酸残基を含むことから、疎水性部分(膜貫通ドメイン)とCTLDの間に位置する(Boyington et al., Immunity 10:15, 1999を参照されたく;その他のストーク領域の説明については、Beavil et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 89:153, 1992;およびFigdor et al., Nat. Rev. Immunol. 2:11, 2002をさらに参照されたい)。これらのII型C型レクチンまたはCD分子は、ストーク領域と膜貫通領域の間またはストーク領域とCTLDの間に連結アミノ酸をさらに有していてもよい。別の一例において、233アミノ酸長のヒトNKG2Aタンパク質(UniProt ID P26715.1)は、71~93番目のアミノ酸からなる疎水性部分(膜貫通ドメイン)と94~233番目のアミノ酸からなる細胞外ドメインとを有する。ヒトNKG2Aタンパク質のCTLDは119~231番目のアミノ酸を含み、ストーク領域は99~116番目のアミノ酸を含み、このストーク領域には、追加の連結アミノ酸が隣接していてもよい。その他のII型C型レクチンもしくはCD分子、またはこれらの細胞外リガンド結合ドメイン、ストーク領域およびCTLDも、当技術分野で公知である(例えば、ヒトCD23、ヒトCD69、ヒトCD72、ヒトNKG2AおよびヒトNKG2Dの配列およびこれらの説明については、GenBankアクセッション番号:NP 001993.2;AAH07037.1;NP 001773.1;AAL65234.1;およびCAA04925.1をそれぞれ参照されたい)。
【0120】
(iii-f)タグおよび選択マーカー
【0121】
特定の実施形態において、融合タンパク質は、1つ以上のタグを含んでいてもよく、かつ/または1つ以上の選択マーカーを発現してもよい。例示的なタグとして、Hisタグ、Flagタグ、Xpressタグ、Aviタグ、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)タグ、ポリグルタミン酸タグ、HAタグ、Mycタグ、Strepタグ(以前はSTREP(登録商標)タグまたはSTREPタグIIと呼ばれていた(IBA(Institut fur Bioanalytik)社、ドイツ);例えば、米国特許公開第7,981,632号を参照されたい)、Softag 1、Softag 3およびV5が挙げられる。例示的な配列については、
図6を参照されたい。
【0122】
本明細書に開示されたタグ配列に特異的に結合して複合体を形成する結合分子は市販されている。例えば、Hisタグ抗体は、ライフテクノロジーズ、Pierce Antibodies、GenScriptなどの製造業者から市販されている。Flagタグ抗体は、Pierce Antibodies、GenScript、シグマ アルドリッチなどの製造業者から市販されている。Xpressタグ抗体は、Pierce Antibodies、ライフテクノロジーズ、GenScriptなどの製造業者から市販されている。Aviタグ抗体は、Pierce Antibodies、IsBio、Genecopoeiaなどの製造業者から市販されている。カルモジュリンタグ抗体は、サンタクルーズバイオテクノロジー、Abcam、Pierce Antibodiesなどの製造業者から市販されている。HAタグ抗体は、Pierce Antibodies、Cell Signal、Abcamなどの製造業者から市販されている。Mycタグ抗体は、サンタクルーズバイオテクノロジー、Abcam、Cell Signalなどの製造業者から市販されている。Strepタグ抗体は、Abcam、Iba、キアゲンなどの製造業者から市販されている。
【0123】
特定の実施形態において、例えば、形質導入マーカーおよび融合タンパク質のその他の部分を別々の分子として発現させることができるスキッピング配列またはIRES部位を使用して、1つ以上の形質導入マーカーを融合タンパク質と共発現させることができる。例示的な自己切断型ポリペプチドとして、豚テシオウイルス-1に由来する2Aペプチド(P2A)、Thosea asignaウイルスに由来する2Aペプチド(T2A)、馬鼻炎Aウイルスに由来する2Aペプチド(E2A)、および口蹄疫ウイルスに由来する2Aペプチド(F2A)が挙げられ、これらについては本明細書中で別記している。
【0124】
特定の実施形態において、形質導入マーカーは、マーカーに結合してそのマーカーを有する細胞の選別が可能な抗体で検出可能な、細胞表面に提示されるマーカーを含んでいてもよい。特定の実施形態において、形質導入マーカーは、切断型低親和性神経成長受容体(LNGFRF)によって細胞表面に提示される磁気選別可能なストレプトアビジン結合ペプチド(SBP)マーカーと、ストレプトアビジン標識磁気ビーズによるワンステップ選択を含んでいてもよく(Matheson et al. (2014) PloS one 9(10): e111437);または切断型ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)(tEGFR;Wang et al., Blood 118: 1255, 2011を参照されたい)を含んでいてもよい。
【0125】
いくつかの実施形態において、形質導入マーカーは、切断型EGFR(EGFRt)、切断型Her2(Her2)、切断型Her2(Her2tG)、切断型CD19(CD19t)または形質導入マーカーDHFRdmである。
【0126】
形質導入マーカーは、適切な蛍光タンパク質を含んでいてもよく、適切な蛍光タンパク質として、青色蛍光タンパク質(例えば、BFP、eBFP、eBFP2);シアン色蛍光タンパク質(例えば、eCFP、セルリアン、CyPet);緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP-2、tagGFP、turboGFP、eGFP);オレンジ色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange);赤色蛍光タンパク質(例えば、mKate、mPlum、DsRedモノマー、mCherry、mRFP1、DsRed-Express);黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、eYFP、Citrine、Venus);およびその他の適切な蛍光タンパク質(例えば、ホタルルシフェラーゼなど)が挙げられる。
【0127】
(iv)ポリヌクレオチド
【0128】
特定の実施形態において、DARIC、1つ以上のDARIC構成要素、DARICのシグナル伝達部分および/またはDARICの結合部分をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0129】
本明細書において、「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)およびDNA/RNAハイブリッドを指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよく、組換えられたポリヌクレオチド、合成されたポリヌクレオチド、単離されたポリヌクレオチドのいずれであってもよい。ポリヌクレオチドとして、プレメッセンジャーRNA(プレmRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、短鎖干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、ゲノムRNA(gRNA)、プラス鎖RNA(RNA(+))、マイナス鎖RNA(RNA(-))、tracrRNA、crRNA、シングルガイドRNA(sgRNA)、合成RNA、合成mRNA、ゲノムDNA(gDNA)、PCR増幅DNA、相補的DNA(cDNA)、合成DNAまたは組換えDNAが挙げられる。ポリヌクレオチドは、少なくとも5ヌクレオチド長、少なくとも10ヌクレオチド長、少なくとも15ヌクレオチド長、少なくとも20ヌクレオチド長、少なくとも25ヌクレオチド長、少なくとも30ヌクレオチド長、少なくとも40ヌクレオチド長、少なくとも50ヌクレオチド長、少なくとも100ヌクレオチド長、少なくとも200ヌクレオチド長、少なくとも300ヌクレオチド長、少なくとも400ヌクレオチド長、少なくとも500ヌクレオチド長、少なくとも1000ヌクレオチド長、少なくとも5000ヌクレオチド長、少なくとも10000ヌクレオチド長、もしくは少なくとも15000ヌクレオチド長、またはそれ以上の長さのヌクレオチドが重合された形態の、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、これらの種類のヌクレオチドの改変形態、ならびにあらゆる中間の長さのヌクレオチドを指す。この文脈において、「中間の長さ」とは、本明細書に記載の数値の間の長さを意味し、例えば、6、7、8、9など;101、102、103など;151、152、153など;201、202、203などを意味することは容易に理解できるであろう。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドまたはバリアントは、参照配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0130】
本明細書において、「単離されたポリヌクレオチド」は、天然の状態において隣接する配列から精製されたポリヌクレオチドを指し、例えば、通常は隣接する配列から取り出されたDNA断片を指す。また、特定の実施形態において、「単離されたポリヌクレオチド」は、自然界には存在しない人為的に作製された相補的DNA(cDNA)、組換えDNAまたはその他のポリヌクレオチドを指す。さらに、特定の実施形態において、「単離されたポリヌクレオチド」は、合成ポリヌクレオチド、半合成ポリヌクレオチド、または組換え体を供給源として取得もしくは誘導されたポリヌクレオチドである。
【0131】
様々な実施形態において、ポリヌクレオチドは、本明細書で企図されるポリペプチドをコードするmRNAを含む。特定の実施形態において、mRNAは、キャップ、1つ以上のヌクレオチド、およびポリ(A)テールを含む。
【0132】
特定の実施形態において、1つ以上のDARIC構成要素をコードするポリヌクレオチドは、コドンの最適化が行われていてもよい。本明細書において、「コドンの最適化」は、ポリペプチドの発現、安定性および/または活性が増加するように、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドンを置換することを指す。コドンの最適化に影響を及ぼす要因として、(i)2種以上の生物の間、2種以上の遺伝子の間、または合成的に構築された2つ以上のバイアス表の間でのコドンバイアスのバリエーション;(ii)生物、遺伝子または遺伝子セット内でのコドンバイアスの程度のバリエーション;(iii)隣接する配列などのコドンの体系的バリエーション;(iv)コドンを解読するtRNAよるコドンのバリエーション;(v)配列全体またはトリプレットの1つ位置のGC含有率によるコドンのバリエーション;(vi)例えば天然配列などの参照配列に対する類似性の程度のバリエーション;(vii)コドン頻度のカットオフ値のバリエーション;(viii)DNA配列から転写されたmRNAの構造特性;(ix)コドン置換セットの設計の基礎になるDNA配列の機能に関する予備的知識;(x)各アミノ酸のコドンセットの体系的バリエーション;および/または(xi)疑似翻訳開始部位の単独除去のうちの1つ以上が挙げられる。
【0133】
本明細書において、「ヌクレオチド」は、リン酸化糖がN-グリコシド結合された複素環式窒素塩基を指す。ヌクレオチドは、天然塩基および当技術分野で公知の様々な種類の修飾塩基を含む。このような塩基は、通常、ヌクレオチド糖部分の1’位に位置する。ヌクレオチドは、通常、塩基、糖およびリン酸基を含む。リボ核酸(RNA)では、糖はリボースであり、デオキシリボ核酸(DNA)では、糖はデオキシリボース、すなわち、リボースに存在する水酸基を持たない糖である。
【0134】
様々な具体的な実施形態において、本明細書で企図されるポリヌクレオチドとして、1つ以上のDARIC構成要素、組換えられた抗原受容体または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびに本明細書で企図されるポリヌクレオチドを含む発現ベクター、ウイルスベクターおよびトランスファープラスミドが挙げられる。
【0135】
本明細書において、「ポリヌクレオチドバリアント」や「バリアント」などの用語は、参照ポリヌクレオチド配列と十分な配列同一性を示すポリヌクレオチド、または後述で定義するストリンジェントな条件下で参照配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語には、少なくとも1個のヌクレオチドが付加、欠失、置換または修飾されたことによって参照ポリヌクレオチドとは区別されるポリヌクレオチドも含まれる。したがって、「ポリヌクレオチドバリアント」や「バリアント」という用語には、1個以上のヌクレオチドに別のヌクレオチドが付加されたもの、1個以上のヌクレオチドが欠失されたもの、1個以上のヌクレオチドが修飾されたもの、1個以上のヌクレオチドが別のヌクレオチドで置換されたものが含まれる。この点に関して、参照ポリヌクレオチドに、変異、付加、欠失および置換を含む特定の改変を行うことができ、改変されたポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または生物学的活性を保持しているということは当技術分野においてよく認識されている。
【0136】
本明細書において、「核酸カセット」または「発現カセット」は、RNAを発現してポリペプチドを産生することができるベクター内の遺伝子配列を指す。一実施形態において、核酸カセットは、目的の単一の遺伝子または複数の遺伝子を含み、例えば、目的の単一のポリヌクレオチドまたは複数のポリヌクレオチドを含む。別の一実施形態において、核酸カセットは、1つ以上の発現制御配列を含み、例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリ(A)配列、目的の遺伝子(例えば、目的のポリヌクレオチド)を含む。ベクターは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個、またはそれ以上の個数の核酸カセットを含んでいてもよい。核酸カセットは、その内部の核酸がRNAに転写できるように、ベクター内において適切な位置と順序で配向されており、必要に応じて、タンパク質またはポリペプチドに翻訳され、形質転換細胞での活性に必要とされる適切な翻訳後修飾を受け、適切な細胞内コンパートメントにターゲティングされて生物活性に適したコンパートメントへと移送されたり、細胞外コンパートメントへと分泌させることができる。核酸カセットは、ベクターに容易に挿入できるように構成された3'末端と5'末端を有することが好ましく、例えば、両末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有していることが好ましい。核酸カセットは、単一の単位として、プラスミドまたはウイルスベクターから取り出したり、プラスミドまたはウイルスベクター内に挿入したりすることができる。
【0137】
ポリヌクレオチドは、目的の単一のポリヌクレオチドまたは複数のポリヌクレオチドを含む。本明細書において、「目的のポリヌクレオチド」は、本明細書で述べるように、ポリペプチドもしくは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または阻害性ポリヌクレオチドの転写用の鋳型として機能するポリヌクレオチドを指す。
【0138】
本明細書で企図されるポリヌクレオチドは、本明細書に別記するように、あるいは当技術分野で知られているように、コード配列自体の長さに関係なく、例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、シグナル配列、コザック配列、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、マルチクローニングサイト、内部リボソーム侵入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP部位、FRT部位およびAtt部位)、終止コドン、転写終結シグナル、自己切断型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグなどの別のDNA配列と組み合わせてもよく、組み合わせた後の配列の全長は大幅に変動してもよい。したがって、ほぼどのような長さのポリヌクレオチド断片でも使用可能であると考えられており、その全長は、調製の容易さと、使用する組換えDNAプロトコールによる制限を受けることが好ましい。
【0139】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で公知かつ利用可能な様々な確立された技術のうちどのような技術を用いても、調製、遺伝子操作、発現および/または送達を行うことができる。所望のポリペプチドを発現させるには、このポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を適切なベクターに挿入することができる。
【0140】
ベクターの具体例として、プラスミド、自己複製配列および転移因子(例えば、Sleeping BeautyやPiggyBac)が挙げられる。
【0141】
別のベクターの具体例として、プラスミド;ファージミド;コスミド;酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、P1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体;λファージやM13ファージなどのバクテリオファージ;および動物ウイルスが挙げられる。
【0142】
ベクターとして有用なウイルスの具体例として、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(例えばSV40)が挙げられる。
【0143】
発現ベクターの具体例として、哺乳動物細胞での発現用のpClneoベクター(プロメガ社);ならびにレンチウイルスを介した哺乳動物細胞への遺伝子移入および発現用のpLenti4/V5-DESTTM、pLenti6/V5-DESTTMおよびpLenti6.2/V5-GW/lacZ(インビトロジェン社)が挙げられる。特定の実施形態において、本明細書に開示されたポリペプチドのコード配列は、哺乳動物細胞でのポリペプチド発現用のそのような発現ベクターにライゲートすることができる。
【0144】
特定の実施形態において、ベクターは、エピソーマルベクター、または染色体外で維持されるベクターである。本明細書において、「エピソーマル」は、宿主の染色体DNAに組み込まれることなく自己複製することができ、宿主細胞の分裂に伴って導入遺伝子が漸減しないベクターであり、これは、このベクターが染色体外で複製でき、すなわちエピソームとして複製できることを意味する。
【0145】
発現ベクター内に存在する「発現制御配列」、「制御因子」または「調節配列」は、発現ベクターの非翻訳領域であり、このような配列や因子として、複製開始点、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(シャイン・ダルガーノ配列またはコザック配列)、イントロン、ポリアデニル化配列、ならびに5'非翻訳領域および3'非翻訳領域が挙げられ、これらの配列や因子はいずれも宿主細胞のタンパク質と相互作用して転写と翻訳を担う。このような因子は、その強度および特異性が様々であってもよい。利用するベクターシステムおよび宿主に応じて、ユビキタスプロモーターや誘導型プロモーターなどの、どのような数の適切な転写因子や翻訳因子を使用してもよい。
【0146】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドはベクターを含み、このベクターには、発現ベクターおよびウイルスベクターが含まれる。ベクターは、例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、1つ以上の外因性制御配列、内因性制御配列または異種制御配列を含んでいてもよい。「内因性制御配列」は、天然の状態で、ゲノム内の特定の遺伝子と連結されている配列である。「外因性制御配列」は、遺伝子操作(すなわち分子生物学的技術)によって、遺伝子と並ぶように配置された配列であり、このようにして連結されたエンハンサー/プロモーターによってこの遺伝子の転写が誘導される。「異種制御配列」は、遺伝子操作を受ける細胞とは異なる生物種に由来する外因性配列である。「合成」制御配列は、1つ以上の内因性配列および/または外因性配列の因子を含んでいてもよく、かつ/または特定の治療に最適なプロモーター活性および/もしくはエンハンサー活性を提供することがin vitroもしくはin silicoで証明されている配列の因子を含んでいてもよい。
【0147】
本明細書において、「プロモーター」は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドの転写を開始する。特定の実施形態において、哺乳動物細胞で作動するプロモーターとして、転写開始部位から25~30塩基上流のATリッチ領域、および/または転写開始部位から70~80塩基上流の別の配列であるCNCAAT領域(ここで、Nは、任意のヌクレオチドである)が挙げられる。
【0148】
「エンハンサー」は、転写を増強することができる配列を含むDNAセグメントを指し、場合によっては、別の制御配列に対する方向性に関係なくその機能を発揮することができる。エンハンサーは、プロモーターおよび/またはその他のエンハンサー因子と協働的または付加的に機能することができる。「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーターの機能とエンハンサーの機能の両方を発揮することができる配列を含むDNAセグメントを指す。
【0149】
「作動可能に連結された」とは、列記されている構成要素のそれぞれが、意図された様式で機能できる関係性で順番に並んでいることを指す。一実施形態において、「作動可能に連結された」は、核酸の発現を制御する配列(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)と、第2のポリヌクレオチド配列(例えば、目的のポリヌクレオチド)の間の機能的な連結を指し、この発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写を誘導する。
【0150】
本明細書において、「構成的な発現制御配列」は、作動可能に連結された配列の持続的または連続的な転写を可能にするプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーを指す。構成的な発現制御配列は、様々な種類の細胞および組織での発現を可能にする「ユビキタスな」プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであってもよく、あるいは限られた種類の細胞および組織での発現を可能にする「細胞特異的」、「細胞の種類に特異的」、「細胞系統に特異的」、または「組織特異的」プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであってもよい。
【0151】
特定の実施形態での使用に適したユビキタスな発現制御配列の具体例としては、サイトメガロウイルス(CMV)の最初期プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)(例えば初期プロモーターまたは後期プロモーター)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)のLTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のLTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)の(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルスのH5プロモーター、P7.5プロモーターおよびP11プロモーター、伸長因子1α(EF1a)プロモーター、早期増殖応答タンパク質1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)、真核生物翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、70kDa熱ショックタンパク質5(HSPA5)、90kDa熱ショックタンパク質βメンバー1(HSP90B1)、70kDa熱ショックタンパク質(HSP70)、β-キネシン(β-KIN)、ヒトROSA26座位(Irions et al., Nature Biotechnology 25, 1477-1482 (2007))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーター/骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、ならびに負の制御領域が欠失され、dl587revプライマー結合部位が置換された(MND)U3プロモーター(Haas et al. Journal of Virology. 2003;77(17): 9439-9450)が挙げられる。
【0152】
一実施形態において、ベクターは、MNDU3プロモーターを含む。
【0153】
一実施形態において、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第1のイントロンを含むEF1aプロモーターを含む。
【0154】
一実施形態において、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第1のイントロンを欠失するEF1aプロモーターを含む。
【0155】
特定の一実施形態において、所望のポリヌクレオチド配列の細胞の種類に特異的な発現、細胞系統に特異的な発現、または組織特異的な発現を行う目的で(例えば、特定の種類の細胞のサブセットのみ、特定の細胞系統のサブセットのみ、もしくは特定の組織のサブセットのみにおいて、または特定の発生段階のみにおいて、特定のポリペプチドをコードする核酸を発現させることを目的として)、細胞特異的な発現制御配列、細胞の種類に特異的な発現制御配列、細胞系統に特異的な発現制御配列、または組織特異的な発現制御配列を使用することが望ましい場合がある。
【0156】
特定の実施形態において、T細胞特異的なプロモーターを用いて、ポリヌクレオチドを発現させることが望ましい場合がある。
【0157】
本明細書において、「条件付き発現」は、誘導型発現、抑制型発現、特定の生理学的状態、生物学的状態もしくは疾患状態にある細胞または組織での発現などの、どのような種類の条件付き発現であってもよい。この定義は、細胞の種類に特異的な発現または組織に特異的な発現を除外するものではない。特定の実施形態では、目的のポリヌクレオチドの条件付き発現が提供され、例えば、ポリヌクレオチドを発現させる処理もしくは条件、または目的のポリヌクレオチドによってコードされるポリヌクレオチドの発現が増加もしくは減少する処理または条件に、細胞、組織、生物などを曝露させることによって発現が制御される。
【0158】
誘導型プロモーター/システムの具体例として、グルココルチコイド受容体またはエストロゲン受容体をコードする遺伝子用のプロモーターなどのステロイド誘導型プロモーター(対応するホルモンを用いた処理により誘導可能)、メタロチオネインプロモーター(様々な重金属を用いた処理により誘導可能)、MX-1プロモーター(インターフェロンにより誘導可能)、「GeneSwitch」のミフェプリストン調節型システム(Sirin et al., 2003, Gene, 323:67)、cumate誘導型遺伝子スイッチ(WO2002/088346)、テトラサイクリン依存性調節システムなどが挙げられる。誘導剤としては、グルココルチコイド、エストロゲン、ミフェプリストン(RU486)、金属、インターフェロン、低分子、cumate、テトラサイクリン、ドキシサイクリンおよびこれらの派生物が挙げられる。
【0159】
本明細書において、「内部リボソーム侵入部位」すなわち「IRES」は、シストロン(タンパク質のコード領域)の開始コドン(例えばATG)に内部リボソームを直接侵入させて、キャップ非依存的な遺伝子の翻訳を起こす因子を指す。例えば、Jackson et al., 1990. Trends Biochem Sci 15(12):477-83およびJackson and Kaminski. 1995. RNA 1(10):985-1000を参照されたい。当業者によって一般に使用されているIRESの例として、米国特許第6,692,736号に記載されているものが挙げられる。当技術分野で公知の「IRES」の別の例として、ピコルナウイルスから得られるIRES(Jacksonら、1990)や、ウイルスmRNAまたは細胞mRNAから得られるIRESが挙げられ、例えば、免疫グロブリンの重鎖結合タンパク質(BiP)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)(Huez et al. 1998. Mol. Cell. Biol. 18(11):6178-6190)、線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)、インスリン様成長因子(IGFII)、翻訳開始因子であるeIF4G、酵母転写因子であるTFIIDおよびHAP4、ならびにノバジェン社から市販品を入手可能な脳心筋炎ウイルス(EMCV)(Duke et al., 1992. J. Virol 66(3):1602-9)から得られるIRES、ならびにVEGF IRES(Huez et al., 1998. Mol Cell Biol 18(11):6178-90)が挙げられる。また、IRESは、ピコルナウイルス科、ジシストロウイルス科およびフラビウイルス科のウイルスゲノムや、HCV、フレンドマウス白血病ウイルス(FrMLV)およびモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)のウイルスゲノムにも存在することが報告されている。
【0160】
一実施形態において、本明細書で企図されるポリヌクレオチドにおいて使用されるIRESは、EMCVのIRESである。
【0161】
特定の実施形態において、本明細書で企図されるポリヌクレオチドは、コンセンサス配列であるコザック配列である。本明細書において、「コザック配列」は、リボソームの小サブユニットへのmRNAの最初の結合を大幅に促進して、翻訳を増加させる短いヌクレオチド配列を指す。コンセンサス配列であるKozak配列は、(GCC)RCCATGG (配列番号59)で示され、ここでRはプリン(AまたはG)である(Kozak, 1986. Cell. 44(2):283-92およびKozak, 1987. Nucleic Acids Res. 15(20):8125-48)。
【0162】
異種核酸転写産物の効率的な転写終結とポリアデニル化を誘導することができる因子によって、異種遺伝子の発現を増加させることができる。転写終結シグナルは、通常、ポリアデニル化シグナルの下流に見られる。特定の実施形態において、ベクターは、発現されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3'末端にポリアデニル化配列を含む。本明細書において、「ポリA部位」または「ポリA配列」は、RNAポリメラーゼIIにより転写された新生RNA転写産物の転写終結とポリアデニル化の両方を誘導するDNA配列を指す。ポリアデニル化配列は、コード配列の3'末端にポリAテールを付加することによって、mRNAの安定性を向上させることができ、これによって、翻訳効率の向上に寄与する。切断とポリアデニル化は、RNA中のポリ(A)配列によって誘導される。哺乳動物のプレmRNAのコアポリ(A)配列では、切断とポリアデニル化が起こる部位に隣接して2つの認識因子が存在する。通常、ほぼ多様性を欠く6merのAAUAAAは、U残基またはGU残基が豊富な多様性の高い因子の20~50塩基上流にある。新たな転写産物の切断は、このAAUAAA配列とGUリッチ配列またはUリッチ配列の間で起こり、最大で250個のアデノシンが5'切断産物に付加される。特定の実施形態において、コアポリ(A)配列は、典型的なポリA配列(例えば、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA)である。特定の実施形態において、ポリ(A)配列は、SV40のポリA配列、ウシ成長ホルモンのポリA配列(BGHpA)、ウサギβ-グロビンのポリA配列(rβgpA)、これらのバリアント、または当技術分野で公知の別の適切な異種ポリA配列または内因性ポリA配列である。特定の実施形態において、ポリ(A)配列は、合成配列である。
【0163】
特定の実施形態において、1つ以上のポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ウイルスを用いない方法またはウイルスを用いる方法によって、エフェクター免疫細胞(例えばT細胞)に導入してもよい。特定の実施形態において、1つ以上のポリヌクレオチドの送達は、同じ方法もしくは異なる方法によって、および/または同じベクターまたは異なるベクターによって行ってもよい。
【0164】
本明細書において、「ベクター」は、別の核酸分子を移入または移送することができる核酸分子を指す。移入される核酸は、通常、ベクターの核酸分子に連結され、例えば、ベクターの核酸分子に挿入される。ベクターは、細胞の自己複製を誘導する配列を含んでいてもよく、宿主細胞のDNAへの組み込みを達成するのに十分な配列を含んでいてもよい。特定の実施形態において、非ウイルスベクターを使用して、本明細書で企図される1つ以上のポリヌクレオチドをT細胞に送達する。
【0165】
非ウイルスベクターの具体例として、プラスミド(例えば、DNAプラスミドやRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、および細菌人工染色体が挙げられる。
【0166】
特定の実施形態で企図されるポリヌクレオチドの非ウイルス性送達の具体的な方法として、エレクトロポレーション、ソノポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ナノ粒子、ポリカチオンすなわち脂質:核酸複合体、裸のDNA、人工ビリオン、DEAE-デキストランを用いた移入、遺伝子銃、および熱ショックが挙げられる。
【0167】
特定の実施形態で企図される特定の実施形態での使用に適したポリヌクレオチド送達システムの具体例として、Amaxa Biosystems社、Maxcyte社、BTX Molecular Delivery Systems社およびCopernicus Therapeutics社により提供されているものが挙げられる。リポフェクション試薬は市販されている(例えば、TransfectamTMやLipofectinTMがある)。受容体を認識するリポフェクションによりポリヌクレオチドを効率的に導入するのに適したカチオン性脂質および中性脂質は、文献に記載されている。例えば、Liu et al. (2003) Gene Therapy. 10:180-187;およびBalazs et al. (2011) Journal of Drug Delivery. 2011:1-12を参照されたい。また、特定の実施形態では、抗体を標的とした細菌由来の非生物ナノ細胞を用いた送達も想定されている。
【0168】
当業者であれば容易に理解できるように、「ウイルスベクター」という用語は、通常、細胞ゲノムへの核酸分子の移入もしくは組み込みを容易にするウイルス由来核酸因子を含む核酸分子(例えばトランスファープラスミド)、または核酸の移入を媒介するウイルス粒子を意味するために広く使用される。ウイルス粒子は、通常、様々なウイルス成分を含み、場合によっては、核酸以外の宿主細胞成分を含むこともある。「ウイルスベクター」または「レンチウイルスベクター」は、細胞に核酸を移入することができるウイルスもしくはウイルス粒子、または移入された核酸自体を指す。ウイルスベクターおよびトランスファープラスミドは、主にウイルスに由来する構造的な遺伝子因子および/または機能的な遺伝子因子を含む。
【0169】
特定の実施形態に記載のポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、後述するように、投与によって個々の患者にインビボで送達することができ、投与は、通常、全身投与(例えば、静脈内注入、腹腔内注入、筋肉内注入、皮下注入もしくは頭蓋内注入)または外用塗布により行われる。別の方法として、個々の患者から外植された細胞(例えば、動員末梢血、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検検体など)などのエクスビボの細胞またはユニバーサルドナーから得た造血幹細胞にベクターを送達することができ、次に、この細胞を患者に再移植することができる。
【0170】
一実施形態において、本明細書で企図されるポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、インビボ細胞を形質導入するために、生物または対象に直接投与される。別の方法として、裸のDNAを投与することもできる。投与は、分子を導入して血液または組織細胞と最終的に接触させる目的で通常使用される経路であれば、どのようなものであってもよく、このような経路として、注射、注入、外用塗布およびエレクトロポレーションが挙げられる。このような核酸の好適な投与方法を利用することができ、当業者であれば、そのような投与方法を熟知しているであろう。組成物の種類によっては、2つ以上の投与経路を使用できる場合もあるが、特定の経路が別の経路よりも即時性および有効性の高い反応を得られることもしばしばある。
【0171】
特定の実施形態に記載の特定の実施形態での使用に適したウイルスベクターシステムの具体例として、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびワクシニアウイルスベクターが挙げられる。
【0172】
様々な実施形態において、本明細書で企図される1つ以上のDARIC構成要素および/またはその他のポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドは、該1つ以上のポリヌクレオチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)で形質導入することによって、エフェクター免疫細胞(例えばT細胞)に導入される。
【0173】
AAVは、主にエピソームとして存在する小型(26nm)で複製欠損型の非エンベロープウイルスである。AAVは、分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染することができ、宿主細胞のゲノムに自身のゲノムを組み込むことがある。組換えAAV(rAAV)は、通常、少なくとも、導入遺伝子とその調節配列、ならびに5'末端および3'末端のAAV末端逆位反復配列(ITR)で構成されている。ITR配列の長さは145bpである。特定の実施形態において、rAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9またはAAV10から単離されたITR配列とカプシド配列を含む。
【0174】
いくつかの実施形態において、ITR配列が1種のAAV血清型から単離され、カプシド配列が別のAAV血清型から単離されたキメラrAAVが用いられる。例えば、AAV2に由来するITR配列とAAV6に由来するカプシド配列を有するrAAVは、AAV2/AAV6と呼ばれる。特定の実施形態において、rAAVベクターは、AAV2由来のITRと、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10のいずれか1種に由来するカプシドタンパク質とを含んでいてもよい。好ましい一実施形態において、rAAVは、AAV2由来のITR配列と、AAV6由来のカプシド配列を含む。好ましい一実施形態において、rAAVは、AAV2由来のITR配列と、AAV2由来のカプシド配列を含む。
【0175】
いくつかの実施形態において、組換え方法および選択方法をAAVカプシドに適用して、目的の細胞への形質導入が容易に行えるAAVカプシドを得ることができる。
【0176】
rAAVベクターの構築ならびにその製造および精製は、例えば、米国特許第9,169,494号;米国特許第9,169,492号;米国特許第9,012,224号;米国特許第8,889,641号;米国特許第8,809,058号;および米国特許第8,784,799号に開示されている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
【0177】
様々な実施形態において、本明細書で企図される1つ以上のDARIC構成要素および/またはその他のポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドは、該1つ以上のポリヌクレオチドを含むレトロウイルス(例えばレンチウイルス)で形質導入することによって、エフェクター免疫細胞(例えばT細胞)に導入される。
【0178】
本明細書において、「レトロウイルス」は、RNAウイルスであり、そのゲノムRNAが逆転写されて、二本鎖の線状DNAコピーを産生し、共有結合を介してゲノムDNAを宿主ゲノムに組み込む。特定の実施形態での使用に適したレトロウイルスの具体例として、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)およびレンチウイルスが挙げられる。
【0179】
本明細書において、「レンチウイルス」は、複雑レトロウイルス群(または複雑レトロウイルス属)を指す。レンチウイルスの具体例として、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV1型およびHIV2型を含む);ビスナ・マエディウイルス(VMV);ヤギ関節炎・脳脊髄炎ウイルス(CAEV);ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV);ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。一実施形態では、HIVに基づくベクター骨格(すなわち、HIVのシス作用性配列因子)が好ましい。
【0180】
様々な実施形態において、本明細書で企図されるレンチウイルスベクターは、アクセサリー因子として、cPPT/FLAP、Ψパッケージングシグナル、輸送因子およびポリ(A)配列のすべてまたは1つ以上と、1つ以上のLTRとを含み、本明細書に別記するように、WPREまたはHPRE、インスレーター因子、選択マーカー、および細胞自殺遺伝子を含んでいてもよい。
【0181】
特定の実施形態において、本明細書で企図されるレンチウイルスベクターは、組込み型レンチウイルス、非組込み型レンチウイルス、または組込み欠損型レンチウイルスであってもよい。本明細書において、「組込み欠損型レンチウイルス」すなわち「IDLV」は、宿主細胞のゲノムにウイルスゲノムを組込むことができないインテグラーゼを有するレンチウイルスを指しす。非組込み型ウイルスベクターは、特許出願WO2006/010834において述べられている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
【0182】
インテグラーゼ活性の抑制に適したHIV-1 pol遺伝子の変異の具体例として、H12N、H12C、H16C、H16V、S81 R、D41A、K42A、H51A、Q53C、D55V、D64E、D64V、E69A、K71A、E85A、E87A、D116N、D1161、D116A、N120G、N1201、N120E、E152G、E152A、D35E、K156E、K156A、E157A、K159E、K159A、K160A、R166A、D167A、E170A、H171A、K173A、K186Q、K186T、K188T、E198A、R199c、R199T、R199A、D202A、K211A、Q214L、Q216L、Q221 L、W235F、W235E、K236S、K236A、K246A、G247W、D253A、R262A、R263AおよびK264Hが挙げられる。
【0183】
「長鎖末端反復配列(LTR)」は、レトロウイルスのDNAの両端にある塩基対ドメインを指し、天然の配列では、直接反復配列であり、U3領域、R領域およびU5領域を含む。
【0184】
本明細書において、「FLAP因子」または「cPPT/FLAP」は、レトロウイルス(例えば、HIV-1やHIV-2)のセントラルポリプリン配列(cPPT)とセントラルターミネーション配列(CTS)を配列中に含む核酸を指す。好適なFLAP因子は、米国特許第6,682,907号およびZennou, et al., 2000, Cell, 101 :173に記載されている。
【0185】
本明細書において、「パッケージングシグナル」または「パッケージング配列」は、レトロウイルスのゲノム内に存在するΨ配列を指し、この配列は、ウイルスRNAをウイルスカプシドまたはウイルス粒子に挿入する際に必要とされる。例えば、Clever et al., 1995. J. of Virology, Vol. 69, No. 4; pp. 2101-2109を参照されたい。
【0186】
「輸送因子」は、細胞核から細胞質へのRNA転写産物の輸送を調節するシス作用性の転写後調節因子を指す。RNA輸送因子の例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のrev応答因子(RRE)(例えば、Cullen et al., 1991. J. Virol. 65: 1053;およびCullen et al., 1991. Cell 58: 423を参照されたい)、およびB型肝炎ウイルスの転写後調節因子(HPRE)が挙げられる。
【0187】
特定の実施形態において、転写後調節因子と効率的なポリアデニル化部位をウイルスベクターに組み込むことによって、ウイルスベクターにおける異種配列の発現を増加させることができ、この際に、転写終結シグナルをさらにウイルスベクターに組み込んでもよい。様々な転写後調節因子によって、前記タンパク質における異種核酸の発現を増加させることができ、このような転写後調節因子として、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節因子(WPRE;Zufferey et al., 1999, J. Virol., 73:2886);B型肝炎ウイルスの転写後調節因子(HPRE)(Huang et al., Mol. Cell. Biol., 5:3864);およびその他の転写後調節因子(Liu et al., 1995, Genes Dev., 9:1766)が挙げられる。
【0188】
レンチウイルスベクターは、LTRが組換えられていることによって、いくつかの点で安全性が向上していることが好ましい。「自己不活性型(SIN)」ベクターは、例えば、レトロウイルスベクターやレンチウイルスベクターなどの複製欠損型ベクターを指し、U3領域として知られている右側(3'側)のLTRエンハンサープロモーター領域が組換えられている(例えば欠失または置換されている)ことによって、1回のウイルス複製を超えるウイルスの転写が阻止されている。自己不活性化は、ベクターDNAの3'LTRのU3領域の欠失、すなわち、ベクターRNAの産生に利用されるDNAの欠失を導入することによって行うことが好ましい。したがって、逆転写の際に、この欠失がプロウイルスDNAの5'LTRに複製される。特定の実施形態では、U3配列を十分に除去して、LTRの転写活性を大幅に低減させるか、完全に排除することによって、形質導入細胞におけるベクターRNA全長の産生を大幅に低減させるか、完全になくすことが望ましい。HIVベースのレンチベクターの場合には、ベクターの力価を有意に低下させることなく、LTRのTATAボックスを含むU3領域の大幅な欠失(例えば、-418~-18の欠失)が可能であることが見出されている。
【0189】
ウイルス粒子の産生においてウイルスゲノムの転写を誘導する5'LTRのU3領域を異種プロモーターで置換することによって、さらに安全性を向上させることができる。使用可能な異種プロモーターの例として、例えば、シミアンウイルス40(SV40)(例えば初期または後期)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば最初期)プロモーター、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーターが挙げられる。
【0190】
本明細書において、「シュードタイプ」または「シュードタイピング」は、好ましい特性を有する別のウイルスのエンベロープタンパク質でウイルスエンベロープタンパク質が置換されたウイルスを指す。例えば、(env遺伝子によってコードされる)HIVのエンベロープタンパク質は、通常、CD4+提示細胞に対してHIVをターゲティングしているが、水疱性口内炎ウイルスのエンベロープタンパク質であるGタンパク質(VSVG)でHIVをシュードタイプ化することによって、広範な細胞にHIVが感染できるようになる。
【0191】
特定の実施形態において、レンチウイルスベクターは、公知の方法で製造される。例えば、Kutner et al., BMC Biotechnol. 2009;9:10. doi: 10.1186/1472-6750-9-10; Kutner et al. Nat. Protoc. 2009;4(4):495-505. doi: 10.1038/nprot.2009.22を参照されたい。
【0192】
本明細書に記載の特定の具体的な実施形態によれば、ウイルスベクター骨格配列のすべてまたはその大部分は、レンチウイルス(例えばHIV-1)に由来するものである。ただし、様々なレトロウイルス配列および/またはレンチウイルス配列に由来するものを使用したり、組み合わせることができ、あるいは移入ベクターが本明細書に記載の機能を発揮する能力を損なうことなく、特定のレンチウイルス配列に多数の置換や改変を組み込んでもよい。さらに、様々なレンチウイルスベクターが当技術分野で知られており、Naldiniら(1996a、1996bおよび1998);Zufferey et al., (1997);Dull et al., 1998;米国特許第6,013,516号;米国特許第5,994,136号を参照されたく、これらの文献に記載の多くを、本明細書で企図されるウイルスベクターまたはトランスファープラスミドの製造に採用してもよい。
【0193】
様々な実施形態において、本明細書で企図される1つ以上のDARIC構成要素および/またはその他のポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドは、該1つ以上のポリヌクレオチドを含むアデノウイルスで形質導入することによって、エフェクター免疫細胞に導入される。
【0194】
アデノウイルスベースのベクターは、細胞分裂を必要とすることなく、多数の種類の細胞において非常に高い形質導入効率を発揮することができる。そのようなベクターを使用することによって、高力価と高発現量を得ることができる。このようなベクターは、比較的単純な系で大量生産することができる。大部分のアデノウイルスベクターは、アデノウイルスのE1a遺伝子、E1b遺伝子および/またはE3遺伝子が導入遺伝子で置換されるように組換えられており、導入遺伝子による置換後に、この複製欠損型ベクターを、トランス因子として欠損遺伝子の機能を補うヒト293細胞で増殖させる。アデノウイルスベクターは、肝臓、腎臓、筋肉などに見られる非分裂分化細胞を含む様々な種類のインビボ組織に形質導入することができる。慣用のアデノウイルスベクターは、大きなパッケージング容量を有する。
【0195】
複製能を欠損している本発明のアデノウイルスベクターの産生と増殖は、293T細胞という名称の特殊なヘルパー細胞株を利用して行ってもよく、このT細胞は、Ad5 DNA断片によってヒト胎児腎臓細胞から形質転換されたものであり、E1タンパク質を構成的に発現する(Grahamら、1977)。E3領域は、アデノウイルスゲノムにとって重要ではないため(JonesおよびShenk、1978)、本発明のアデノウイルスベクターは、293T細胞の補助を受けながら、E1領域もしくはD3領域またはその両方に外来性DNAを挿入することができる(GrahamおよびPrevec、1991)。アデノウイルスベクターは、真核細胞での遺伝子発現(Levrero et al., 1991; Gomez-Foix et al., 1992)、およびワクチンの開発(Grunhaus & Horwitz, 1992; Graham & Prevec, 1992)に使用されている。様々な組織への組換えアデノウイルスの投与に関する研究として、気管内滴下(Rosenfeld et al., 1991; Rosenfeld et al., 1992)、筋肉内注射(Ragot et al., 1993)、末梢静脈内注射(Herz & Gerard, 1993)、および脳定位接種(Le Gal La Salle et al., 1993)が挙げられる。アデノウイルスベクターの臨床試験での使用例として、抗腫瘍免疫処置のための筋肉内注射によるポリヌクレオチド治療がある(Sterman et al., Hum. Gene Ther. 7:1083-9 (1998))。
【0196】
様々な実施形態において、本明細書で企図される1つ以上のDARIC構成要素および/またはその他のポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドは、該1つ以上のポリヌクレオチドを含む単純ヘルペスウイルス(例えば、HSV-1やHSV-2)で形質導入することによって、エフェクター免疫細胞に導入される。
【0197】
成熟HSVビリオンは、エンベロープで被われた二十面体カプシドを有し、その内部に152kbの直鎖二本鎖DNA分子を含むウイルスゲノムを含んでいる。一実施形態において、HSVベースのウイルスベクターは、1つ以上の必須HSV遺伝子または非必須HSV遺伝子が欠損している。一実施形態において、HSVベースのウイルスベクターは、複製欠損型である。複製欠損型HSVベクターの大部分では、複製を阻止するため、1つ以上の最初期HSV遺伝子、初期HSV遺伝子または後期HSV遺伝子が取り除かれた欠失を含んでいる。例えば、HSVベクターは、ICP4、ICP22、ICP27、ICP47およびこれらの組み合わせを含む群から選択される最初期遺伝子が欠損していてもよい。HSVベクターの利点としては、DNAを長期発現する潜伏期に入ることができ、かつ最大で25kbの外来性DNAインサートを収容することが可能な大型ウイルスDNAゲノムであることが挙げられる。HSVベースのベクターは、例えば、米国特許第5,837,532号、米国特許第5,846,782号および米国特許第5,804,413号、ならびに国際特許出願WO91/02788、WO96/04394、WO98/15637およびWO99/06583に記載されている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
【0198】
(v)遺伝子組換え細胞
【0199】
本開示は、二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を発現するように遺伝子組換えされた細胞を含む。本明細書において、「遺伝子組換え」、「編集」または「遺伝子操作」とは、DNAまたはRNAの形態の別の遺伝物質を細胞内に導入することを指す。また、「遺伝子組換え細胞」および「組換え細胞」という用語は、同じ意味で使用される。特定の実施形態において、DARICまたはその構成要素を発現するように遺伝子組換えされた細胞は、エフェクター免疫細胞を含む。「エフェクター免疫細胞」は、1つ以上のエフェクター機能(例えば、細胞傷害・殺傷活性、サイトカインの分泌、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)の誘導)を有する免疫系細胞を含む。エフェクター免疫細胞は、免疫細胞の亜型である。
【0200】
「発現する」または「発現」は、遺伝子の核酸配列に基づいてポリペプチドが産生されるプロセスを指す。
【0201】
本開示の免疫細胞は、自家細胞/自家由来細胞(「自己」細胞)であってもよく、非自家細胞(「非自己」細胞、例えば、同種細胞、同系細胞または異種細胞)であってもよい。「自家」細胞は、同じ対象から得られた細胞を指す。「同種」細胞は、比較対象の細胞と遺伝的に異なるが、同じ種に由来する細胞を指す。「同系」細胞は、比較対象の細胞と遺伝的に同一の別の対象に由来する細胞を指す。「異種」細胞は、比較対象の細胞とは異なる種に由来する細胞を指す。特定の実施形態において、本開示の組換え細胞は、自家細胞であってもよく、同種細胞であってもよい。
【0202】
特定の実施形態において、遺伝子組換え細胞はリンパ球を含む。特定の実施形態において、遺伝子組換え細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球/マクロファージまたはHSPCを含む。
【0203】
T細胞の大半は、2種類のペプチド鎖(α-TCR鎖とβ-TCR鎖)からなるT細胞受容体(TCR)を有する。γδT細胞は、1つのγ鎖と1つのδ鎖で構成された別の種類のT細胞受容体(TCR)を持つT細胞の小さなサブセットを指す。
【0204】
CD3は、あらゆる成熟T細胞に発現されている。T細胞は、細胞傷害性T細胞(CD8+T細胞、CTLとも呼ばれる)とヘルパーT細胞(CD4+T細胞)にさらに分類することができる。
【0205】
細胞傷害性T細胞は、ウイルス感染細胞と腫瘍細胞を破壊することができ、移植拒絶反応にも関与している。これらの細胞は、生体内のほぼすべての細胞の表面に存在するMHCクラスI分子に結合した抗原に結合することによって、その標的を認識する。
【0206】
「セントラルメモリーT細胞(TCM)」は、抗原を経験したCTLであり、ナイーブ細胞と比較して、CD62LまたはCCR7およびCD45ROを発現するが、CD45RAを発現していないか、CD45RAの発現が低下しているCTLを指す。
【0207】
「エフェクターメモリーT細胞(TEM)」は、抗原を経験したT細胞であり、セントラルメモリー細胞と比較して、CD62Lを発現していないか、CD62Lの発現が低下しており、ナイーブ細胞と比較して、CD45RAを発現していないか、CD45RAの発現が低下しているT細胞を指す。特定の実施形態において、エフェクターメモリー細胞は、ナイーブ細胞またはセントラルメモリー細胞と比較して、CD62LおよびCCR7の発現が陰性であり、CD28およびCD45RAの発現が陽性あるいは陰性である。エフェクターT細胞は、メモリーT細胞またはナイーブT細胞と比較して、グランザイムBおよびパーフォリンが陽性である。
【0208】
ヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞およびマクロファージを活性化したり、B細胞の成熟を促進したりするといった機能により、その他の免疫細胞を支援する。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面上に発現されるMHCクラスII分子によるペプチド抗原の提示を受けて活性化される。ヘルパーT細胞は、活性化されると、急速に分裂して、サイトカインを分泌することにより、活発な免疫応答の調節または支援を担う。
【0209】
ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、αβT細胞受容体を共発現し、かつNK1.1(CD161)、CD16および/またはCD56などの、ナチュラルキラー細胞に通常関連する様々な分子マーカーを発現するT細胞サブセットである。
【0210】
ナチュラルキラー細胞(K細胞およびキラー細胞としても知られている)は、CD8、CD16およびCD56を発現するが、CD3は発現しない。NK細胞は、腫瘍細胞およびウイルス感染細胞に対するNK細胞の細胞傷害機能を調節する活性化受容体(NKp46など)および抑制性受容体(NKG2Aなど)も発現する。
【0211】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、血液から腫瘍内に移動して、がん細胞を認識してこれを殺傷することができる免疫細胞を指す。骨髄浸潤リンパ球(MIL)は、抗原を経験した免疫細胞であり、骨髄に移動してそこに滞在しつづける。粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞は、粘膜、血液および二次リンパ器官(SLO)に見られ、エフェクター表現型を示す自然免疫様T細胞である。MAIT細胞は、セミインバリアントT細胞受容体(TCR)を提示し、主要組織適合遺伝子複合体関連分子であるMR1によって拘束される。
【0212】
マクロファージ(およびその前駆細胞である単球)は、生体内のあらゆる組織に存在し、アポトーシスを起こした細胞、病原体およびその他の非自己成分を貪食する。単球/マクロファージは、CD11b、F4/80、CD68、CD11c、IL-4Rαおよび/またはCD163を発現する。
【0213】
未熟な樹状細胞(すなわち前活性化状態の樹状細胞)は、末梢の抗原およびその他の非自己成分を貪食して、活性化状態となり、リンパ組織のT細胞領域に遊走してT細胞に抗原を提示する。樹状細胞は、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD21、CD35、CD39、CD40、CD86、CD101、CD148、CD209およびDEC-205を発現する。
【0214】
造血幹細胞(HSC)は、自己複製が可能であり、その他のあらゆる種類の造血細胞に分化することができる未分化の造血細胞を指す。HSCはCD34+である。
【0215】
造血前駆細胞(HPC)はHSCに由来し、成熟した細胞種にさらに分化することができる。HPCは自己複製可能であるか、または(i)骨髄系前駆細胞に分化して、最終的に、単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板または樹状細胞に分化するか、もしくは(ii)リンパ系前駆細胞に分化して、最終的に、T細胞、B細胞およびNK細胞に分化する。HPCはCD24loLin-CD117+である。
【0216】
HSPCは、HSCおよびHPCを含む細胞集団を指す。HSPC細胞集団は、CD34、CD43、CD45RO、CD45RA、CD59、CD90、CD109、CD117、CD133、CD166、HLA DRまたはこれらの組み合わせが陽性であってもよい。
【0217】
人工多能性幹細胞(iPSC)は、再プログラム化因子の導入または接触によって、非多能性細胞、通常、線維芽細胞、造血細胞、筋細胞、ニューロン、表皮細胞などの、成体の体細胞または最終分化細胞から人工的に作製された多能性幹細胞の1種を指す。
【0218】
細胞は、当技術分野で公知の方法を用いて、エクスビボおよびインビボで遺伝子組換えすることができる。特定の実施形態において、細胞を標的とした送達方法を用いて細胞の遺伝子組換えが行われる。
【0219】
特定の実施形態において、血液もしくは血液由来試料、または血液成分分離法もしくは白血球除去法により得られた試料などの試料からリンパ球を単離する。例示的な試料として、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、胸腺、がん組織、リンパ組織、脾臓またはその他の適切な供給源が挙げられる。
【0220】
HSPCの供給源として、例えば、末梢血が挙げられる(米国特許第5,004,681号;米国特許第7,399,633号;および米国特許第7,147,626号;ならびにCraddock, et al., 1997, Blood 90(12):4779-4788; Jin, et al., 2008, Journal of Translational Medicine 6:39; Pelus, 2008, Curr. Opin. Hematol. 15(4):285-292; Papayannopoulou, et al., 1998, Blood 91(7):2231-2239; Tricot, et al., 2008, Haematologica 93(11):1739-1742; およびWeaver et al., 2001, Bone Marrow Transplantation 27(2):S23-S29を参照されたい)。
【0221】
血液試料の回収方法、凝固阻止方法、処理方法などは、例えば、Alsever, et al., 1941, N.Y. St. J. Med. 41:126; De Gowin, et al., 1940, J. Am. Med. Ass. 114:850; Smith, et al., 1959, J. Thorac. Cardiovasc. Surg. 38:573; Rous and Turner, 1916, J. Exp. Med. 23:219; およびHum, 1968, Storage of Blood, Academic Press, New York, pp. 26-160に記載されている。
【0222】
特定の実施形態において、回収された細胞は、1種以上の試薬の存在下で、洗浄し、遠心分離し、かつ/またはインキュベートすることによって、例えば、不要な成分を除去したり、所望の成分を濃縮したり、特定の試薬に感受性を示す細胞を溶解または除去したりすることができる。単離は、様々な細胞調製工程および細胞分離工程のうちの1つ以上を含んでいてもよく、これらの細胞調製工程および細胞分離工程には、大きさ、密度、特定の試薬に対する感受性もしくは耐性、ならびに/または抗体もしくはその他の結合パートナーに対する親和性(例えば免疫親和性)などの1つ以上の特性に基づいた分離が含まれる。
【0223】
特定の実施形態において、本明細書で提供される方法によって試料から濃縮、単離および/または選択された1つ以上の細胞集団は、1つ以上の特定のマーカー(例えば細胞表面マーカー)が陽性の細胞(マーカー+)もしくは1つ以上の特定のマーカーを高発現する細胞(マーカーhi)、または1つ以上のマーカーが陰性の細胞(マーカー-)もしくは1つ以上のマーカーの発現が比較的低い細胞(マーカーlo)である。
【0224】
特定の実施形態において、T細胞は、赤血球を溶解し、次に、例えば、PERCOLLTM濃度勾配などを利用した遠心分離により単球を除去することによって、末梢血単核細胞(PBMC)から単離することができる。特定の実施形態において、CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RAおよびCD45ROを発現する特定のT細胞亜集団は、ポジティブ選択技術またはネガティブ選択技術によりさらに単離される。特定の実施形態において、細胞の選別および/または選択は、ネガティブ選択の対象となる細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体カクテルを用いたネガティブ磁気免疫粘着法またはフローサイトメトリーにより行われる。例えば、CD4+細胞をネガティブ選択により濃縮する場合、一般に、CD14抗体、CD20抗体、CD11b抗体、CD16抗体、HLA-DR抗体およびCD8抗体を含むモノクローナル抗体カクテルを使用することができる。
【0225】
細胞を単離および/または濃縮した後、細胞を増殖させて、その数を増やすことができる。特定の実施形態において、例えば、米国特許公開第6,352,694号;米国特許公開第6,534,055号;米国特許公開第6,905,680号;米国特許公開第6,692,964号;米国特許公開第5,858,358号;米国特許公開第6,887,466号;米国特許公開第6,905,681号;米国特許公開第7,144,575号;米国特許公開第7,067,318号;米国特許公開第7,172,869号;米国特許公開第7,232,566号;米国特許公開第7,175,843号;米国特許公開第5,883,223号;米国特許公開第6,905,874号;米国特許公開第6,797,514号;米国特許公開第6,867,041号;または米国特許公開第2006/0121005号に記載の方法を利用して、活性誘導型融合タンパク質を発現させるための遺伝子組換えを行う前またはその後に、T細胞を活性化させて増殖させることができる。
【0226】
通常、T細胞は、CD3-TCR複合体に関連するシグナルを刺激する薬剤が結合された表面と、T細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドに接触させることによって増殖させる。特定の実施形態において、PBMCまたは単離したT細胞を刺激剤および共刺激剤に接触させ、例えば、適切なサイトカインを含む培養培地中において、通常、ビーズやその他の表面に結合された抗CD3抗体および抗CD28抗体に接触させる(Berg et al., Transplant Proc. 30(8):3975-3977, 1998; Haanen et al., J. Exp. Med. 190(9): 1319-1328, 1999; Garland et al., J. Immunol Meth. 227(1-2):53-63, 1999を参照されたい)。特定の実施形態において、米国特許公開第6,040,177号;米国特許公開第5,827,642号;またはWO2012/129514に記載された方法などを利用して、フィーダー細胞と適切な抗体とサイトカインでT細胞を活性化し刺激して増殖させてもよい。
【0227】
特定の実施形態において、K562細胞、U937細胞、721.221細胞、T2細胞またはC1R細胞を組換えて人工APC(aAPC)を作製し、これを利用して、様々な共刺激分子およびサイトカインの安定な発現および分泌を誘導することができる。aAPCは、WO03/057171および米国特許公開第2003/0147869号に記載されている。
【0228】
特定の実施形態において、HSPCは、例えば、米国特許公開第7,399,633号;米国特許公開第5,004,681号;米国特許公開第2010/0183564号;WO2006/047569;WO2007/095594;WO2011/127470;もしくはWO2011/127472;Vamum-Finney, et al., 1993, Blood 101:1784-1789; Delaney, et al., 2005, Blood 106:2693-2699; Ohishi, et al., 2002, J. Clin. Invest. 110:1165-1174; Delaney, et al., 2010, Nature Med. 16(2): 232-236;もしくはRegenerative Medicine, Department of Health and Human Services, August 2006の第2章、または本明細書で引用した文献に記載の方法に従って、単離し、かつ/または増殖させることができる。本明細書に記載のその他の種類の細胞の回収および処理は、当業者に公知である。
【0229】
特定の実施形態において、前記単離工程、インキュベーション工程、増殖工程および/または組換え工程は、滅菌環境または密閉環境において、かつ/または自動化された方法で行われ、例えば、各工程が実施される装置に接続されたコンピュータの制御下で行われる。対象への投与用製剤を調製するための組換え細胞の最終的な製剤化は、当業者に公知であり、このプロセスに関連する態様は本明細書に別記されている。
【0230】
また、標的指向性を付与したウイルスベクターおよび/またはナノ粒子を用いて、インビボで免疫細胞を遺伝子組換えすることもできる。融合タンパク質をコードする遺伝子の細胞への送達に利用することができるウイルスベクター、および標的指向性が付与された様々なウイルスベクター(例えばシュードタイプのウイルスベクター)は、当業者に知られている。
【0231】
細胞を標的とする例示的なナノ粒子として、細胞を標的とするリガンド(例えば、CD3、CD4、CD8、CD34)を表面に結合させたナノ粒子があり、このナノ粒子は、細胞を標的とするリガンドが表面に結合されていることから、選択された種類の細胞によって選択的に取り込まれる。次に、ナノ粒子により遺伝子組換え部分が送達されて、DARICが発現される。
【0232】
例示的なナノ粒子として、リポソーム(水性コアを取り囲む少なくとも1層の脂質二重層が同心球を形成している微小な小胞)、リポソームナノ粒子(そのコア内に、さらに小さい別のナノ粒子を封入するために用いられるリポソーム構造)、および脂質ナノ粒子(リポソームに特徴的な連続的な脂質二重層を持たないリポソーム様構造)が挙げられる。その他のポリマー系ナノ粒子や、多孔性ネットワークを形成することができる材料で構成された多孔性ナノ粒子を用いることもできる。例示的な材料として、金属、遷移金属およびメタロイド(例えば、リチウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよびシリカ)が挙げられる。
【0233】
インビボでの送達および細胞への取り込みを目的としたナノ粒子は、荷電していないコーティングまたは負に荷電したコーティングを有していてもよく、このナノ粒子の大きさは130nm以下であってもよい。ナノ粒子の寸法は、例えば、動的光散乱法および/または電子顕微鏡法などの従来の技術を用いて測定することができる。
【0234】
(vi)製剤
【0235】
本明細書に記載の製剤には、エクスビボで組換えた細胞、エクスビボまたはインビボでの形質導入用のベクター、二量体化剤(例えば、ラパマイシンおよび/またはその類似体)が含まれていてもよい。
【0236】
「医薬」製剤または「医薬」組成物は、薬学的に許容される担体に配合された投与用の活性化合物(例えば、遺伝子組換え細胞、ウイルスベクター、ナノ粒子、薬物分子または二量体化剤)を含む。
【0237】
「薬学的に許容される」とは、妥当な医学的判断の範囲内において、合理的なベネフィット/リスク比に相応して、過度の毒性を引き起こすことなく、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適した化合物、材料および/または剤形を指す。特定の場合において、薬学的に許容される担体は、関連規制当局(例えば米国食品医薬品局(US FDA))による承認を受けたものである。
【0238】
送達される活性化合物(すなわち有効成分)および状況に応じて、「薬学的に許容される担体」は、前述の要件に見合ったアジュバント、賦形剤、流動促進剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張化剤、溶媒、界面活性剤または乳化剤を含む。例示的な薬学的に許容される担体は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990に開示されている。さらに、製剤および組成物は、米国FDAの生物製剤標準局および/またはその他の関連する他国の規制当局により要求されるような、無菌性、発熱性、一般的安全性および純度の基準を満たすように調製することができる。
【0239】
例示的な薬学的に許容される担体として、食塩水、緩衝生理食塩水、生理食塩水、水、ハンクス溶液、リンゲル溶液、Nonnosol-R(Abbott Labs)、PLASMA-LYTE A(登録商標)(Baxter Laboratories, Inc.、イリノイ州モートン・グローブ)、グリセロール、エタノールおよびこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、ヒト血清アルブミン(HSA)もしくはその他のヒト血清成分またはウシ胎児血清を担体に添加することができる。特定の実施形態において、点滴用の担体は、5%HASまたはデキストロースを添加した緩衝生理食塩水を含む。別の等張化剤として、三価糖アルコールまたはそれよりも価数の大きい糖アルコールを含む多価糖アルコールが挙げられ、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなどが挙げられる。
【0240】
さらに、治療用途用の薬学的に許容される担体も、薬学分野においてよく知られており、例えば、the Physicians Desk Reference, 62nd edition. Oradell, NJ: Medical Economics Co., 2008; Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Eleventh Edition. McGraw-Hill, 2005; Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition. Baltimore, MD: Lippincott Williams & Wilkins, 2000; and The Merck Index, Fourteenth Edition. Whitehouse Station, NJ: Merck Research Laboratories, 2006に記載されている。
【0241】
担体は、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、乳酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液および/またはトリメチルアミン塩などの緩衝剤を含んでいてもよい。
【0242】
安定剤は、容器の壁面への細胞の接着を阻止することができる添加物から増量剤といった様々な機能を有することができる幅広い種類の賦形剤を指す。典型的な安定剤として、多価糖アルコール、アミノ酸、有機糖類、糖アルコール、PEG、硫黄含有還元剤、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン、ポリビニルピロリドンおよび糖類が挙げられる。
【0243】
必要とされる場合または有益である場合、製剤は、注射部位の疼痛を緩和するために、リドカインなどの局所麻酔剤を含んでいてもよい。
【0244】
例示的な保存剤として、フェノール、ベンジルアルコール、m-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムハロゲン化物、塩化ヘキサメトニウム、アルキルパラベン類、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノールおよび3-ペンタノールが挙げられる。
【0245】
製剤中に含まれる有効成分の治療有効量は、0.1~5μg/kgまたは0.5~1μg/kgの範囲であってもよい。別の例において、用量として、1μg/kg、30μg/kg、90μg/kg、150μg/kg、500μg/kg、750μg/kg、0.1~5mg/kgまたは0.5~1mg/kgが挙げられる。別の例において、用量として、1mg/kg、10mg/kg、30mg/kg、50mg/kg、70mg/kg、100mg/kg、300mg/kg、500mg/kg、700mg/kg、1000mg/kgまたはそれ以上の用量が挙げられる。
【0246】
製剤中に含まれる、対象の体表面積あたりの二量体化剤の治療有効量は、0.1~5mgもしくは0.1~5mg/m2、または0.5~1mgまたは0.5~1mg/m2の範囲であってもよい。別の例において、用量として、0.1mg/m2、0.3mg/m2、0.75mg、0.9mg、1.5mg、0.1~5mgもしくは0.1~5mg/m2、または0.5~1mgもしくは0.5~1mg/m2が挙げられる。別の例において、用量として、0.1mg/m2、0.2mg/m2、0.3mg/m2、0.4mg/m2、0.5mg/m2、0.6mg/m2、0.7mg/m2、0.75mgもしくは0.75mg/m2、0.8mg、0.9mg、1mgまたはそれ以上が挙げられる。特定の実施形態において、製剤中に含まれる二量体化剤の治療有効量として、1.5m2よりも大きい対象に対して0.75mg~5.0mgが挙げられる。特定の実施形態において、製剤中に含まれる二量体化剤の治療有効量として、1.5m2以下の対象に対して、0.75mg/m2未満(例えば0.50mg/m2)が挙げられる。
【0247】
製剤中に含まれる二量体化剤の治療有効量は、単位血液量あたりの二量体化剤の目標トラフ血中濃度が、1~4ng/mL(例えば1.5~3ng/mL)に維持されるような用量であるべきである。別の例において、目標トラフ血中濃度として、1ng/mL、1.1ng/mL、1.2ng/mL、1.3ng/mL、1.4ng/mL、1.5ng/mL、1.6ng/mL、1.7ng/mL、1.8ng/mL、1.9ng/mL、2.0ng/mL、2.1ng/mL、2.2ng/mL、2.3ng/mL、2.4ng/mL、2.5ng/mL、2.6ng/mL、2.7ng/mL、2.8ng/mL、2.9ng/mLまたは3.0ng/mLが得られる用量であってもよい。別の例において、1ng/mL~5ng/mLの範囲の目標トラフ血中濃度が得られる用量であってもよい。特定の実施形態において、製剤中に含まれる二量体化剤の治療有効量は、単位血液量あたりの二量体化剤の目標トラフ血中濃度が、2ng/mLに維持されるような用量であるべきである。特定の実施形態において、製剤中に含まれる二量体化剤の治療有効量は、単位血液量あたりの二量体化剤の目標トラフ血中濃度が、1.5~3ng/mLに維持されるような用量であるべきである。
【0248】
特定の実施形態において、製剤を投与することによって、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに二量体化剤が結合することにより、第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質が多量体化し、DARICが形成される。
【0249】
製剤および組成物は、例えば、注射、点滴、灌流、洗浄または経口摂取での投与用に調製することができる。製剤および組成物は、骨髄注射、静脈内注射、皮内注射、動脈内注射、リンパ節内注射、リンパ管内注射、腹腔内注射、病巣内注射、前立腺内注射、膣内注射、直腸内注射、外用注射、髄腔内注射、腫瘍内注射、筋肉内注射、膀胱内注射および/または皮下注射用に製剤化することができる。特定の実施形態において、二量体化剤の投与に経口液体製剤および/または経口固形錠剤を利用する。
【0250】
(vii)治療方法
【0251】
特定の実施形態において、本開示は、免疫細胞の活性化を調節する方法であって、
免疫細胞の活性化の調節を必要とする対象に、第1の多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、第2の融合ドメインおよび細胞内部分を含む第2の融合タンパク質とを含むDARICを発現する有効量の細胞と、前記細胞においてDARICの発現を誘導する薬剤、またはこれらを含む医薬組成物を投与する工程と;
二量体化剤を投与する工程と
を含み、
前記二量体化剤が、第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインに結合することによって、DARICをプライミングしてシグナル伝達を誘導することを特徴とする方法を提供する。
特定の実施形態において、第1の融合タンパク質は、標的細胞抗原に結合する結合ドメインをさらに含む。DARICの結合ドメインが標的細胞抗原に結合すると、免疫細胞が活性化される。
【0252】
別の実施形態において、第1の融合タンパク質は結合ドメインを含んでいないが、細胞内部分をさらに含む。二量体化剤が第1の多量体化ドメインと第2の多量体化ドメインに結合すると、DARICがプライミングされてシグナル伝達が誘導され、シグナルが発生してもよい。
【0253】
「投与する」、「投与すること」または「投与」は、治療を施すこと、または治療を適用することを指す。
【0254】
本開示は、DARICをプライミングしてシグナル伝達を誘導するための方法および組成物を提供し、この方法および組成物では、少なくとも第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質の多量体化を誘導することによって、DARICを形成させる。より具体的には、本開示は、ラパマイシンまたはその類似体を用いて、FKBP-ラパマイシン結合性多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、FK506結合タンパク質多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質の多量体化を調節することによって、DARICを形成させ、このDARICをプライミングしてシグナル伝達を誘導することに関する。
【0255】
別の一態様において、本開示は、悪性腫瘍(例えば、固形悪性腫瘍または血液悪性腫瘍)の増殖、転移または転移増殖を抑制する方法であって、悪性腫瘍の増殖、転移または転移増殖の抑制を必要とする対象に、本明細書で提供されるDARICをコードする有効量の細胞と二量体化剤、またはこれらを含む組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0256】
「必要とする対象」は、本明細書で提供される非天然細胞、非天然ポリペプチド複合体、またはこれらの組成物を用いた治療または緩和が有効だと考えられる疾患、障害もしくは状態のリスクがある対象、またはこれらの疾患、障害もしくは状態に罹患している対象を指す。特定の実施形態において、対象はヒトである。特定の実施形態において、対象は小児患者である。特定の実施形態において、対象は18歳以下である。特定の実施形態において、対象は少なくとも18歳である。特定の実施形態において、対象は、通常、18~21歳と定義される後期青年期の対象である。特定の実施形態において、対象は、18歳、19歳、20歳、21歳、22歳、23歳、23歳、25歳、26歳、27歳または28歳である。特定の実施形態において、対象は16~30歳である。さらなる実施形態において、対象は、31歳以下、30歳以下、または26歳以下である。さらなる実施形態において、対象は成人(31歳を上回る年齢)である。
【0257】
特定の実施形態において、前記対象は、がん、感染症、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫不全、またはこれらに関連する状態を有しているか、これらの疾患または状態であると診断されている。
【0258】
本明細書に開示された組成物および方法による治療は、固形悪性腫瘍および血液悪性腫瘍を含む様々ながんに対して有効だと考えられる。本明細書に開示された組成物および方法による治療を行ってもよいがんの種類として、乳房、前立腺、膵臓、大腸および直腸の腺癌;あらゆる形態の気管支原性肺癌(扁平上皮癌、腺癌、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんを含む);骨髄系がん;メラノーマ;ヘパトーマ;神経芽腫;乳頭腫;アプドーマ;分離腫;鰓腫;悪性カルチノイド症候群;カルチノイド心疾患;ならびに癌腫(例えば、Walker癌、基底細胞癌、基底有棘細胞癌、Brown-Pearce癌、腺管癌、エールリッヒ腫瘍、Krebs 2癌、メルケル細胞癌、粘液癌、非小細胞性肺癌、燕麦細胞癌、乳頭状癌、硬性癌、細気管支癌、気管支原性、扁平上皮癌、および移行上皮癌)が挙げられる。治療を行ってもよい別の種類のがんとして、組織球性疾患;白血病;悪性組織球症;ホジキン病;非ホジキンリンパ腫;形質細胞腫;細網内皮症;メラノーマ;腎細胞癌;軟骨芽細胞腫;軟骨腫;軟骨肉腫;繊維腫;線維肉腫;巨細胞腫;組織球腫;脂肪腫;脂肪肉腫;中皮腫;粘液腫;粘液肉腫;骨腫;骨肉腫;脊索腫;頭蓋咽頭腫;未分化胚細胞腫;過誤腫;間葉腫;中腎種;筋肉腫;エナメル上皮腫;セメント質腫;歯牙腫;テラトーマ;胸腺腫;および栄養膜腫瘍が挙げられる。
【0259】
特定の実施形態において、対象は、固形がんを有しているか、固形がんと診断されている。特定の実施形態において、固形がんは、肺がん(例えば非小細胞肺癌)、扁平上皮癌(例えば頭頸部扁平上皮癌)、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、甲状腺がん、膀胱がん、子宮頸がん、食道がん、卵巣がん、胃がん、子宮内膜がん、および脳腫瘍(例えば、神経膠腫、膠芽腫または乏突起神経膠腫)を含む群から選択される。
【0260】
「処置」、「処置する」または「処置された」は、治療処置または予防処置を指す。処置を受ける個体の疾患の少なくとも1つの症状が改善されるか、処置によって個体の進行性疾患の悪化が遅延したり、別の関連疾患の発症が予防される場合、「処置」は治療処置である。
【0261】
さらに、治療が有効であると考えられるがんの種類として、腺腫;胆管腫;コレステリン腫;円柱腫;嚢胞腺癌;嚢胞腺腫;顆粒膜細胞腫;ギナンドロブラストーマ;ヘパトーマ;汗腺腫;膵島細胞腫瘍;ライディッヒ細胞腫;乳頭腫;セルトリ細胞腫;卵胞膜細胞腫;平滑筋腫;平滑筋肉腫;筋原細胞腫;筋腫;筋肉腫;横紋筋腫;横紋筋肉腫;上衣腫;神経節細胞腫;神経膠腫;髄芽腫;髄膜腫;神経鞘腫;神経芽腫;神経上皮腫;神経線維腫;神経腫;傍神経節腫;非クロム親和型傍神経節腫;および多形膠芽腫が考えられる。さらに、治療してもよい別の種類のがんとして、被角血管腫;好酸球性血管リンパ球増殖症;硬化性血管腫;血管腫症;グロムス血管腫;血管内皮腫;血管腫;血管周囲細胞腫;血管肉腫;リンパ管腫;リンパ管筋腫;リンパ管肉腫;松果体腫;癌肉腫;軟骨肉腫;葉状嚢胞肉腫;線維肉腫;血管肉腫;平滑筋肉腫;白血肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;筋肉腫;粘液肉腫;卵巣癌;横紋筋肉腫;肉腫;新生物;神経線維腫症;および子宮頸部異形成が挙げられる。
【0262】
さらに、本明細書に開示された組成物および方法による治療が有効であると考えられる別のがんの例として、B細胞がんが挙げられ、これには、B細胞リンパ腫[ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、中枢神経系リンパ腫などの様々な形態のB細胞リンパ腫]、白血病[急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病など]、および骨髄腫(多発性骨髄腫など)が挙げられる。さらに、B細胞がんとして、小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、孤立性骨形質細胞腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織節外性辺縁帯B細胞リンパ腫(MALT)、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、悪性化の可能性をもつB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、および移植後リンパ球増殖性疾患が挙げられる。
【0263】
特定の実施形態において、前記対象は、血液悪性腫瘍を有しているか、血液悪性腫瘍であると診断されている。特定の実施形態において、前記血液悪性腫瘍は、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である。特定の実施形態において、前記血液悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML)である。
【0264】
別の一態様において、本開示は、自己免疫疾患もしくは炎症性疾患、自己免疫障害もしくは炎症性障害または自己免疫状態もしくは炎症性状態を治療する方法であって、自己免疫疾患もしくは炎症性疾患、自己免疫障害もしくは炎症性障害または自己免疫状態もしくは炎症性状態の治療を必要とする対象に、本明細書に記載のDARICを含む有効量の細胞と二量体化剤、またはこれらを含む組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0265】
本発明の融合タンパク質、組成物またはその単位用量形態によって治療してもよい例示的な自己免疫疾患もしくは炎症性疾患、自己免疫障害もしくは炎症性障害または自己免疫状態もしくは炎症性状態として、炎症性腸疾患(例えばクローン病や潰瘍性大腸炎)、糖尿病(例えば1型糖尿病)、皮膚筋炎、多発性筋炎、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変、急性散在性脳脊髄膜炎(ADEM)、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性肝炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、全身性エリテマトーデスによる神経精神病変、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、喘息、乾癬性関節炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られている)、自己免疫性溶血性貧血、水疱性類天疱瘡、血管炎、セリアック病、慢性閉塞性肺疾患、子宮内膜症、化膿性汗腺炎、間質性膀胱炎、斑状強皮症、強皮症、ナルコレプシー、神経ミオトニー、白斑、および自己免疫性内耳疾患が挙げられる。
【0266】
特定の実施形態において、過剰増殖性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患または移植片対宿主病を治療する方法は、
(a)第1の多量体化ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内部分を含む第1の融合タンパク質をコードする第1の核酸分子と、結合ドメインおよび第2の多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質をコードする第2の核酸分子とを含む組換え細胞を投与する工程と;
(c)二量体化剤を投与する工程と
を含み、
前記二量体化剤が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインと会合して、これらの多量体化ドメインの間に配置されることにより、前記組換え細胞の表面においてDARICの形成を促進し、
前記DARICの結合ドメインが、過剰増殖性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患または移植片対宿主病の病変細胞の表面の標的に特異的に結合することによって、免疫調節反応を促進し、その結果、前記疾患を治療する。
【0267】
特定の実施形態において、過剰増殖性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患または移植片対宿主病を治療する方法は、
(a)第1の多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質をコードする第1の核酸分子と、第2の多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質をコードする第2の核酸分子とを含む1種以上の組換え細胞を投与する工程と;
(c)二量体化剤を投与する工程と
を含み、
前記二量体化剤が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインと会合して、これらの多量体化ドメインの間に配置されることにより、シグナル伝達用にプライミングされたDARIC(例えば、BiTE)の形成を促進し、
前記DARICの結合ドメインが、過剰増殖性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患または移植片対宿主病の病変細胞の表面の標的に特異的に結合することによって、免疫調節反応を促進し、その結果、前記疾患を治療する。
【0268】
特定の実施形態において、細胞は、DARICの構成要素を発現するように遺伝子組換えされている。特定の実施形態において、細胞は、第1の多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、第2の多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質を発現するように遺伝子組換えされている。特定の実施形態において、細胞は、インビボまたはエクスビボで遺伝子組換えすることができる。特定の実施形態において、遺伝子組換え細胞は、対象の体重あたりの細胞用量で対象に投与され、その用量は、1×105個/kg~2000×106個/kg、1×106個/kg~1000×106個/kg、1×106個/kg~100×106個/kg、5×106個/kg~500×106個/kg、10×106個/kg~1000×106個/kg、1×106個/kg~2×106個/kg、3×106個/kg~5×106個/kg、または7.5×106個/kg~10×106個/kgの範囲である。
【0269】
特定の実施形態において、前記遺伝子組換え細胞の投与前または前記細胞の遺伝子組換えを行う前に、前記対象のリンパ球除去が行われる。特定の実施形態において、リンパ球除去は、30mg/m2のフルダラビンを1日1回4日間静脈内投与し、500mg/m2のシクロホスファミドを1日1回2日間静脈内投与することを含む。特定の実施形態において、シクロホスファミドは、フルダラビンの投与の3日目と4日目に投与される。特定の実施形態において、リンパ球除去は、前記細胞を投与する5日前または前記細胞の遺伝子組換えを行う5日前に開始される。
【0270】
ある用量の投与が1m2あたりのグラム数で記載されている場合、この用量は、対象の体表面積に基づいて計算されたものである。例えば、「0.50mg/m2」という用量は、体表面積が1m2の患者に0.50mgの用量が投与されることを意味する。
【0271】
特定の実施形態において、二量体化剤は経口投与される。二量体化剤は、例えば、液体または固体(例えば固形錠剤)として経口投与することができる。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、0.75mg、1.0mg、1.25mg、1.5mg、1.75mg、2.0mg、2.25mg、2.5mg、2.75mg、3.0mg、3.25mg、3.5mg、3.75mgまたは4mgの用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、0.75mgまたは3.0mgの用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、少なくとも0.75mgの用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、少なくとも1mgの用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、少なくとも1.25mgの用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、少なくとも1.5mgの用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、少なくとも1.75mgの用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、少なくとも2mgの用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、少なくとも2.25mgの用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、少なくとも2.5mgの用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、少なくとも2.75mgの用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2よりも大きい対象に、3.0 mgの用量で経口投与される。
【0272】
特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2以下の対象に、0.50mg/m2の用量で経口投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、1.5m2以下の対象に、0.1~2.0mg/m2の用量で経口投与される。特定の実施形態において、この投薬は、目標トラフ血中濃度が2ng/mLに維持されるように調節する必要がある。様々な実施形態において、前記投薬は、1~4ng/mLの目標範囲内で目標トラフ血中濃度が維持されるように調節する必要がある。特定の実施形態において、前記投薬は、1.5~3ng/mLの目標範囲内で目標トラフ血中濃度が維持されるように調節する必要がある。特定の実施形態において、前記投薬は、3~9ng/mLの目標範囲内で目標トラフ血中濃度が維持されるように調節する必要がある。特定の実施形態において、前記投薬は、1~2ng/mLの目標範囲内で目標トラフ血中濃度が維持されるように調節する必要がある。
【0273】
特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、1.5m2よりも大きい対象に、0.75mg以上の用量で経口投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、1.5m2以下の対象に、0.50mg/m2の用量で経口投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、0.1~2.0 mg/m2の用量で経口投与される。特定の実施形態において、この投薬は、目標トラフ血中濃度が2ng/mLに維持されるように調節する必要がある。特定の実施形態において、前記投薬は、1.5~3ng/mLの目標範囲内で目標トラフ血中濃度が維持されるように調節する必要がある。特定の実施形態において、前記投薬は、3~9ng/mLの目標範囲内で目標トラフ血中濃度が維持されるように調節する必要がある。特定の実施形態において、前記投薬は、1~2ng/mLの目標範囲内で目標トラフ血中濃度が維持されるように調節する必要がある。
【0274】
特定の実施形態において、二量体化剤の投与は、組換え細胞産物の注入後2日目に開始される。特定の実施形態において、二量体化剤の投与は、組換え細胞産物の注入後1日目に開始される。特定の実施形態において、二量体化剤の投与は、組換え細胞産物の注入後3日目に開始される。特定の実施形態において、二量体化剤の投与は、組換え細胞産物の注入後4日目に開始される。特定の実施形態において、二量体化剤は、投与の開始後、毎日投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は1日2回投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、組換え細胞産物の注入後、2日目~21日目(または3日目~21日目)に毎日投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、投与の開始後、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間または30日間にわたり毎日投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、細胞の投与から少なくとも16時間後に投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、細胞の投与から少なくとも24時間後、少なくとも36時間後、少なくとも48時間後、少なくとも60時間後、少なくとも72時間後、または少なくとも84時間後に投与される。特定の実施形態において、二量体化剤は、細胞の投与から1~4日後、1~3日後、1~2日後、2~4日後、3~4日後、または2~3日後に投与される。特定の実施形態において、二量体化剤の投与は、二量体化剤の次のコースを投与する前の休薬期間を含む。特定の実施形態において、休薬期間は少なくとも10~45日間である。
【0275】
特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、組換え細胞産物の注入後2日目に投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、組換え細胞産物の注入後1日目に投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、組換え細胞産物の注入後3日目に投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、組換え細胞産物の注入後4日目に投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は毎日投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は1日2回投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、組換え細胞産物の注入後、2日目~21日目に毎日投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間または30日間投与される。特定の実施形態において、二量体化剤と細胞の用量は同時に投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、細胞の用量の投与と同じ日に投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、細胞の投与から少なくとも24時間後、少なくとも36時間後、少なくとも48時間後、少なくとも60時間後、少なくとも72時間後、または少なくとも84時間後に投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体は、細胞の投与から1~4日後、1~3日後、1~2日後、2~4日後、3~4日後、または2~3日後に投与される。特定の実施形態において、ラパマイシンまたはその類似体の投与は、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する前の休薬期間を含む。特定の実施形態において、休薬期間は少なくとも10~45日間である。
【0276】
「コース」は、治療または治療方法を意味することから、1回以上の別々の投与における薬物、化合物または治療の投与を指す。例えば、コースは、1日1回10日間の薬物、化合物または治療の用量を含んでいてもよい。休薬期間の後、別の治療コースを投与することができる。
【0277】
特定の実施形態において、骨髄穿刺および/または生検を実施し、疾患の分析を行う。特定の実施形態において、骨髄穿刺および/または生検は28日目に実施する。特定の実施形態において、マルチパラメーターフローサイトメトリーによる測定によって、疾患の形態学的寛解が1%未満であることが示された対象では、二量体化剤の休薬を継続する。特定の実施形態において、骨髄の評価において1%を上回る持続性疾患の持続を示すエビデンスを有する対象に、二量体化剤の次のコースを投与することができる。特定の実施形態において、前記疾患は白血病である。特定の実施形態において、前記疾患は白血病を含む。特定の実施形態において、寛解中の対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、グレード3以上の毒性が見られない対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、食細胞の絶対数(APC)が500個/μLを超えている寛解中の対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、食細胞の絶対数(APC)が400個/μLを超えている寛解中の対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、食細胞の絶対数(APC)が300個/μLを超えている寛解中の対象に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、DARICを発現するように組換えた細胞を対象に注入してから42日目に二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、DARICを発現するように組換えた細胞を対象に注入してから、28日目、29日目、30日目、31日目、32日目、33日目、34日目、35日目、36日目、37日目、38日目、39日目、40日目、41日目、42日目、43日目、44日目、45日目、46日目、47日目、48日目、49日目、50日目、51日目、52日目、53日目、54日目、55日目、56日目、57日目、58日目、59日目または 60日目に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、DARICを発現するように組換えた細胞を対象に注入した後の任意の日に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、直前の二量体化剤の投与の休薬の14日後に、二量体化剤の次のコースを投与する。特定の実施形態において、直前の二量体化剤の投与の休薬の7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、20日後、21日後、22日後、23日後、24日後、25日後、26日後、またはそれ以上の日数が経過した後に、二量体化剤の次のコースを投与する。
【0278】
特定の実施形態において、骨髄穿刺および/または生検を実施し、疾患の分析を行う。特定の実施形態において、骨髄穿刺および/または生検は28日目に実施する。特定の実施形態において、マルチパラメーターフローサイトメトリーによる測定によって、疾患の形態学的寛解が1%未満であることが示された対象では、ラパマイシンまたはその類似体の休薬を継続する。特定の実施形態において、骨髄の評価において1%を上回る持続性疾患の持続を示すエビデンスを有する対象に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与することができる。特定の実施形態において、前記疾患は白血病である。特定の実施形態において、前記疾患は白血病を含む。特定の実施形態において、寛解中の対象に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、グレード3以上の毒性が見られない対象に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、食細胞の絶対数(APC)が500個/μLを超えている寛解中の対象に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、食細胞の絶対数(APC)が400個/μLを超えている寛解中の対象に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、食細胞の絶対数(APC)が300個/μLを超えている寛解中の対象に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、DARICを発現するように組換えた細胞を対象に注入してから42日目に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、DARICを発現するように組換えた細胞を対象に注入してから、28日目、29日目、30日目、31日目、32日目、33日目、34日目、35日目、36日目、37日目、38日目、39日目、40日目、41日目、42日目、43日目、44日目、45日目、46日目、47日目、48日目、49日目、50日目、51日目、52日目、53日目、54日目、55日目、56日目、57日目、58日目、59日目または 60日目に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、DARICを発現するように組換えた細胞を対象に注入した後の任意の日に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、直前のラパマイシンまたはその類似体の投与の休薬の14日後に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。特定の実施形態において、直前のラパマイシンまたはその類似体の投与の休薬の7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、20日後、21日後、22日後、23日後、24日後、25日後、26日後、またはそれ以上の日数が経過した後に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースを投与する。
【0279】
前述した非天然細胞、融合タンパク質、二量体化剤およびその他のアクセサリー分子は、本開示の治療方法において使用してもよい。
【0280】
(viii)例示的な実施形態
例示的な実施形態-セット1
1. 二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を発現する細胞を有する対象を特定する工程と、
ラパマイシンまたはその類似体のコースを前記対象に投与する工程と
を含む方法であって、
前記DARICが、CD33単一ドメイン重鎖可変(VHH)結合ドメイン、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメイン、および膜貫通ドメインを含む第1の融合タンパク質と、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内部分を含む第2の融合タンパク質とを含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置され、
前記コースが、
前記ラパマイシンまたはその類似体の1.5ng/mL~3ng/mLの血中トラフ濃度を達成すること、
前記DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が有してから2日後または3日後から開始されること、
前記ラパマイシンまたはその類似体の毎日投与により18日間、19日間または20日間行われること、
前記対象が1.5m2よりも大きい場合に、0.75mg以上の1日用量を投与すること、または前記対象が1.5m2以下の場合に、0.75mg未満の1日用量を投与することを含むこと、および
前記コースの最後に、ラパマイシンまたはその類似体を前記対象に投与しない休薬期間を含むこと
を特徴とする、方法。
2. 二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を発現する細胞を有する対象を特定する工程と、
ラパマイシンまたはその類似体のコースを前記対象に投与する工程と
を含む方法であって、
前記DARICが、細胞外部分、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインもしくはFKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそれらのバリアント、および膜貫通ドメインを含む第1の融合タンパク質と、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインもしくはFKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそれらのバリアント、膜貫通ドメイン、および細胞内部分を含む第2の融合タンパク質とを含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置され、
前記コースが、
前記ラパマイシンまたはその類似体の1.5ng/mL~3ng/mLの血中トラフ濃度を達成すること、
前記DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が有してから0~4日後から開始されること、
前記ラパマイシンまたはその類似体の毎日投与により少なくとも14日間行われること、および
前記コースの最後に、ラパマイシンまたはその類似体を前記対象に投与しない休薬期間を含むこと
のいずれか1つ以上を特徴とする、方法。
3. 二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を発現する細胞を有する対象を特定する工程と、
ラパマイシンまたはその類似体のコースを前記対象に投与する工程と
を含む方法であって、
前記DARICが、細胞外部分、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインもしくはFKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそれらのバリアント、および膜貫通ドメインを含む第1の融合タンパク質と、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインもしくはFKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそれらのバリアント、膜貫通ドメイン、および細胞内部分を含む第2の融合タンパク質とを含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置され、
前記コースが、
前記ラパマイシンまたはその類似体の1.5ng/mL~3ng/mLの血中トラフ濃度を達成すること、
前記対象が1.5m2よりも大きい場合に、0.75mg以上の1日用量を投与すること、または前記対象が1.5m2以下の場合に、0.75mg未満の1日用量を投与することを含むこと、および
前記コースの最後に、ラパマイシンまたはその類似体を前記対象に投与しない休薬期間を含むこと
のいずれか1つ以上を特徴とする、方法。
4. 二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を発現する細胞を有する対象を特定する工程と、
ラパマイシンまたはその類似体のコースを前記対象に投与する工程と
を含む方法であって、
前記DARICが、多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質とを含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置される、方法。
5. 前記コースが、前記ラパマイシンまたはその類似体の1.0ng/mL~3ng/mLの血中トラフ濃度を達成する、実施形態4に記載の方法。
6. 前記コースが、前記DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が有してから0~4日後から開始される、実施形態4に記載の方法。
7. 前記コースが、前記DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が有してから2日後または3日後から開始される、実施形態4~6のいずれか1つに記載の方法。
8. 前記コースが、少なくとも14日間行われる、実施形態4~7のいずれか1つに記載の方法。
9. 前記コースが、前記ラパマイシンまたはその類似体を毎日投与することにより18日間、19日間、20日間、21日間または22日間行われる、実施形態4~8のいずれか1つに記載の方法。
10. 前記コースが、前記対象の体表面積が1.5m2よりも大きい場合に、少なくとも0.75mgの1日用量を投与すること、または前記対象の体表面積が1.5m2以下の場合に、0.75mg未満の1日用量を投与することを含む、実施形態4~9のいずれか1つに記載の方法。
11. 前記対象の体表面積が1.5m2よりも大きく、前記1日用量が0.75mg~3.5mgである、実施形態10に記載の方法。
12. 前記対象の体表面積が1.5m2以下であり、前記1日用量が0.25mg/m2~0.74mg/m2である、実施形態10に記載の方法。
13. 前記対象の体表面積が1.5m2以下であり、前記1日用量が0.50mg/m2である、実施形態10に記載の方法。
14. 前記コースが、毎日投与を行うコースの後に、ラパマイシンまたはその類似体を前記対象に投与しない休薬期間を含む、実施形態10に記載の方法。
15. 前記休薬期間が、13日間、14日間または15日間である、実施形態14に記載の方法。
16. 前記休薬期間が、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも16日間、少なくとも17日間、少なくとも18日間、少なくとも19日間、少なくとも20日間、少なくとも21日間、または少なくとも22日間である、実施形態14に記載の方法。
17. 前記休薬期間が少なくとも14日間である、実施形態14に記載の方法。
18. 前記休薬期間が14日間である、実施形態14に記載の方法。
19. 前記休薬期間の後に、ラパマイシンまたはその類似体の第2のコースを投与する工程をさらに含む、実施形態14に記載の方法。
20. 第2のコースが、前記ラパマイシンまたはその類似体の1.0ng/mL~3ng/mLの血中トラフ濃度を達成する、実施形態19に記載の方法。
21. 第2のコースが、少なくとも14日間行われる、実施形態19または20に記載の方法。
22. 第2のコースが、前記ラパマイシンまたはその類似体を毎日投与することにより18日間、19日間、20日間、21日間または22日間行われる、実施形態19または20に記載の方法。
23. 第2のコースが、前記対象の体表面積が1.5m2よりも大きい場合に、少なくとも0.75mgの1日用量を投与すること、または前記対象の体表面積が1.5m2以下の場合に、0.75mg未満の1日用量を投与することを含む、実施形態19~22のいずれか1つに記載の方法。
24. 第1の融合タンパク質の多量体化ドメインが、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含み、かつ第2の融合タンパク質の多量体化ドメインが、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含むか;または
第1の融合タンパク質の多量体化ドメインが、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含み、かつ第2の融合タンパク質の多量体化ドメインが、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含む、
実施形態4~23のいずれか1つに記載の方法。
25. 前記FKBP多量体化ドメインまたはそのバリアントが、FKBP12である、実施形態24に記載の方法。
26. 前記FKBP多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号55もしくは56に示される配列を有するか、または配列番号55もしくは56に示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態24に記載の方法。
27. 前記FKBP多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号55もしくは56に示される配列を有するか、または配列番号55もしくは56に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態24に記載の方法。
28. 前記FKBP多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号55もしくは56に示される配列を有するか、または配列番号55もしくは56に示される配列と少なくとも98%の配列同一性を有する、実施形態24に記載の方法。
29. 前記FRB多量体化ドメインまたはそのバリアントがFRB T2098Lである、実施形態24に記載の方法。
30. 前記FRB多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号57もしくは58に示される配列を有するか、または配列番号57もしくは58に示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態24に記載の方法。
31. 前記FRB多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号57もしくは58に示される配列を有するか、または配列番号57もしくは58に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態24に記載の方法。
32. 前記FRB多量体化ドメインまたはそのバリアントが、配列番号57もしくは58に示される配列を有するか、または配列番号57もしくは58に示される配列と少なくとも98%の配列同一性を有する、実施形態24に記載の方法。
33. 第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質が発現されると、前記FRB多量体化ドメインと前記FKBP多量体化ドメインが細胞外に局在する、実施形態24に記載の方法。
34. 第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質が発現されると、前記FRB多量体化ドメインと前記FKBP多量体化ドメインが細胞内に局在する、実施形態24に記載の方法。
35. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、結合ドメインをさらに含む、実施形態4~34のいずれか1つに記載の方法。
36. 前記結合ドメインが、がん抗原に結合する、実施形態35に記載の方法。
37. 前記結合ドメインが、単一ドメイン重鎖可変領域(VHH)または一本鎖可変領域断片(scFv)である、実施形態35または36に記載の方法。
38. 前記結合ドメインが、受容体の細胞外ドメインまたはリガンドを含む、実施形態35または36に記載の方法。
39. 前記結合ドメインが、CD33抗体の結合ドメインを含む、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
40. 前記CD33抗体の結合ドメインがVHHである、実施形態39に記載の方法。
41. 前記VHHが、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21のいずれかに示される配列を有する、実施形態40に記載の方法。
42. 前記VHHが、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21のいずれかに示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、CD33に特異的に結合する、実施形態40に記載の方法。
43. 前記VHHが、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21のいずれかに示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有し、CD33に特異的に結合する、実施形態40に記載の方法。
44. 前記VHHが、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21のいずれかに示される配列と少なくとも98%の配列同一性を有し、CD33に特異的に結合する、実施形態40に記載の方法。
45. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、C型レクチン様分子1(CLL1)に結合する結合ドメインを含む、実施形態4~44のいずれか1つに記載の方法。
46. CLL1に結合する前記結合ドメインが、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53および54のいずれかに示される配列を有する、実施形態45に記載の方法。
47. CLL1に結合する前記結合ドメインが、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53および54のいずれかに示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、CLL1に特異的に結合する、実施形態45に記載の方法。
48. CLL1に結合する前記結合ドメインが、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53および54のいずれかに示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有し、CLL1に特異的に結合する、実施形態45に記載の方法。
49. CLL1に結合する前記結合ドメインが、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53および54のいずれかに示される配列と少なくとも98%の配列同一性を有し、CLL1に特異的に結合する、実施形態45に記載の方法。
50. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、細胞内部分をさらに含む、実施形態4~49のいずれか1つに記載の方法。
51. 前記細胞内部分が、細胞内主要シグナル伝達ドメインを含む、実施形態50に記載の方法。
52. 前記細胞内主要シグナル伝達ドメインが、CD3ζまたはその断片を含む、実施形態51に記載の方法。
53. 前記細胞内部分が、補助受容体ドメインを含む、実施形態50または51に記載の方法。
54. 前記細胞内部分が、共刺激ドメインを含む、実施形態50~53のいずれか1つに記載の方法。
55. 前記共刺激ドメインが、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、Linker for activation of T-cells family member 1(LAT)、SH2 Domain-Containing Leukocyte Protein Of 76 kD(SLP76)、T cell receptor associated transmembrane adaptor 1(TRAT1)、TNFR2、TNFRS14、TNFRS18、TNRFS25、zeta chain of T cell receptor associated protein kinase 70(ZAP70)、またはこれらの断片もしくは組み合わせを含む、実施形態54に記載の方法。
56. 前記共刺激ドメインが、CD137(4-1BB)またはその断片もしくは組み合わせを含む、実施形態54に記載の方法。
57. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、膜貫通ドメインをさらに含む、実施形態4~56のいずれか1つに記載の方法。
58. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質の膜貫通ドメインが、CD4の膜貫通ドメインまたはCD8αの膜貫通ドメインである、実施形態57に記載の方法。
59. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、スペーサーをさらに含む、実施形態4~58のいずれか1つに記載の方法。
60. (a)第1の融合タンパク質が、FRB多量体化ドメインまたはそのバリアント;CD8αの膜貫通ドメインまたはCD4の膜貫通ドメイン;CD137の共刺激ドメイン;および/またはCD3ζの主要シグナル伝達ドメインを含み;
(b)第2の融合タンパク質が、配列番号2~21のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するCD33 VHH;FKBP多量体化ドメインまたはそのバリアント;およびCD4の膜貫通ドメインまたはCD8αの膜貫通ドメインを含む、
実施形態4~59のいずれか1つに記載の方法。
61. 第1の融合タンパク質が、シグナルペプチド、CD8αの膜貫通ドメイン、CD137の共刺激ドメイン、およびCD3ζの主要シグナル伝達ドメインを含む、実施形態4~60のいずれか1つに記載の方法。
62. 第2の融合タンパク質が、シグナルペプチドおよびCD4の膜貫通ドメインを含む、実施形態4~61のいずれか1つに記載の方法。
63. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号32、33、34、35、36、37、38、39、40および41のいずれかに示される配列を有する、実施形態4~62のいずれか1つに記載の方法。
64. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号32、33、34、35、36、37、38、39、40および41のいずれかに示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態4~63のいずれか1つに記載の方法。
65. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号40に示される配列を有する、実施形態4~64のいずれか1つに記載の方法。
66. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号40に示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態4~65のいずれか1つに記載の方法。
67. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号40に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態4~66のいずれか1つに記載の方法。
68. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号40に示される配列と少なくとも98%の配列同一性を有する、実施形態4~67のいずれか1つに記載の方法。
69. 前記ラパマイシンまたはその類似体が、ラパマイシン、AP1903、AP20187、AP21967、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダホロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムスまたはゾタロリムスである、実施形態4~68のいずれか1つに記載の方法。
70. 前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、造血細胞である、実施形態4~69のいずれか1つに記載の方法。
71. 前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、T細胞である、実施形態4~70のいずれか1つに記載の方法。
72. 前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、αβT細胞またはγδT細胞である、実施形態4~71のいずれか1つに記載の方法。
73. 前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、CD3+細胞、CD4+細胞またはCD8+細胞である、実施形態4~72のいずれか1つに記載の方法。
74. 前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、エフェクター免疫細胞である、実施形態4~73のいずれか1つに記載の方法。
75. 前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)またはヘルパーT細胞である、実施形態4~74のいずれか1つに記載の方法。
76. 前記特定された対象の体内の前記DARICを発現する細胞の少なくとも1つのサブセットが、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である、実施形態4~75のいずれか1つに記載の方法。
77. 前記細胞が、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来組織、腹水、胸水、脾臓組織または腫瘍から単離されたものである、実施形態4~76のいずれか1つに記載の方法。
78. 前記細胞が、前記DARICを発現するようにエクスビボで製造されたものである、実施形態77に記載の方法。
79. 前記細胞が、前記対象の体重あたり1×105個/kg~2000×106個/kgの用量で前記対象に投与されている、実施形態78に記載の方法。
80. 前記細胞が、前記対象の体重あたり1×106個/kg~1000×106個/kgの用量で前記対象に投与されている、実施形態78に記載の方法。
81. 前記細胞が、前記対象の体重あたり1×106個/kg~100×106個/kgの用量で前記対象に投与されている、実施形態78に記載の方法。
82. 前記細胞が、前記対象の体重あたり5×106個/kg~500×106個/kgの用量で前記対象に投与されている、実施形態78に記載の方法。
83. 前記細胞が、前記対象の体重あたり10×106個/kg~1000×106個/kgの用量で前記対象に投与されている、実施形態78に記載の方法。
84. 前記細胞が、前記対象の体重あたり1×106個/kg~2×106個/kgの用量で前記対象に投与されている、実施形態78に記載の方法。
85. 前記細胞が、前記対象の体重あたり3×106個/kg~5×106個/kgの用量で前記対象に投与されている、実施形態78に記載の方法。
86. 前記細胞が、前記対象の体重あたり7.5×106個/kg~15×106個/kgの用量で前記対象に投与されている、実施形態78に記載の方法。
87. 前記対象の体重あたりの前記細胞の用量が10×106個/kgである、実施形態78に記載の方法。
88. 前記細胞が、インビボの対象において前記DARICを発現するように組換えられている、実施形態4~87のいずれか1つに記載の方法。
89. 前記対象が小児患者である、実施形態4~88のいずれか1つに記載の方法。
90. 前記対象が28歳以下である、実施形態4~88のいずれか1つに記載の方法。
91. 前記対象が18歳以下である、実施形態4~88のいずれか1つに記載の方法。
92. 前記対象が18~28歳である、実施形態4~88のいずれか1つに記載の方法。
93. 前記対象が成人患者である、実施形態4~88のいずれか1つに記載の方法。
94. 前記対象が少なくとも18歳である、実施形態4~88のいずれか1つに記載の方法。
95. 前記対象が、がん、感染症、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫不全、またはこれらに関連する状態を有しているか、これらの疾患または関連する状態であると診断されている、実施形態4~94のいずれか1つに記載の方法。
96. 前記対象が、固形がんを有しているか、固形がんであると診断されている、実施形態4~95のいずれか1つに記載の方法。
97. 前記固形がんが、肺がん、扁平上皮癌、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、甲状腺がん、膀胱がん、子宮頸がん、食道がん、卵巣がん、胃がん、子宮内膜がんまたは脳腫瘍を含む、実施形態96に記載の方法。
98. 前記肺がんが非小細胞肺癌である、実施形態97に記載の方法。
99. 前記扁平上皮癌が頭頸部扁平上皮癌である、実施形態97に記載の方法。
100. 前記脳腫瘍が、神経膠腫、膠芽腫または乏突起神経膠腫を含む、実施形態97に記載の方法。
101. 前記対象が、血液悪性腫瘍を有しているか、血液悪性腫瘍であると診断されている、実施形態4~100のいずれか1つに記載の方法。
102. 前記血液悪性腫瘍が、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である、実施形態101に記載の方法。
103. 前記血液悪性腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、実施形態4~102のいずれか1つに記載の方法。
104. 前記コースを投与する前に、前記対象のリンパ球除去が行われる、実施形態4~103のいずれか1つに記載の方法。
105. 前記リンパ球除去が、フルダラビンの用量とシクロホスファミドの用量を投与することを含む、実施形態104に記載の方法。
106. 前記フルダラビンが、30mg/m2の用量で1日1回4日間静脈内投与され、前記シクロホスファミドが、500mg/m2の用量で1日1回2日間静脈内投与される、実施形態105に記載の方法。
107. 前記フルダラビンの投与の3日目と4日目に前記シクロホスファミドが投与される、実施形態104~106のいずれか1つに記載の方法。
108. 前記リンパ球除去が、前記コースの投与の7日前に開始される、実施形態104~107のいずれか1つに記載の方法。
例示的な実施形態-セット2
1. 対象を治療する方法であって、
a)多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質とを含む二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を発現する細胞の用量を投与する工程と;
b)ラパマイシンまたはその類似体のコースを投与する工程と
を含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置される、方法。
2. 対象を治療する方法であって、
a)多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質を含む二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)を発現するように対象から得た細胞を編集する工程と;
b)ラパマイシンまたはその類似体のコースを投与する工程と
を含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置される、方法。
3. 対象においてシグナル伝達を誘導するために二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)をプライミングする方法であって、
a)多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質とを含むDARICを発現する細胞の用量を投与する工程と;
b)ラパマイシンまたはその類似体のコースを投与する工程と
を含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置される、方法。
4. 対象においてシグナル伝達を誘導するために二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC)をプライミングする方法であって、
a)多量体化ドメインを含む第1の融合タンパク質と、多量体化ドメインを含む第2の融合タンパク質とを含むDARICを発現するように、対象から得た細胞を遺伝子組換えする工程と;
b)ラパマイシンまたはその類似体のコースを投与する工程と
を含み、
前記ラパマイシンまたはその類似体が、第1の融合タンパク質の多量体化ドメインと第2の融合タンパク質の多量体化ドメインに結合して、これらの多量体化ドメインの間に配置される、方法。
5. 第2の融合タンパク質が結合ドメインをさらに含む、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
6. 第1の融合タンパク質が結合ドメインをさらに含む、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
7. 前記結合ドメインががん抗原に結合する、実施形態5または6に記載の方法。
8. 前記結合ドメインが、重鎖可変領域(VHH)または一本鎖可変領域断片(scFv)である、実施形態5~7のいずれかに記載の方法。
9. 前記結合ドメインが受容体である、実施形態5~7のいずれかに記載の方法。
10. 前記受容体が、受容体の細胞外部分である、実施形態9に記載の方法。
11. 第2の融合タンパク質がスペーサーをさらに含む、実施形態1~10のいずれかに記載の方法。
12. 第1の融合タンパク質が、細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内部分をさらに含む、実施形態1~11のいずれかに記載の方法。
13. 第1の融合タンパク質の前記多量体化ドメインが、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含み、第2の融合タンパク質の多量体化ドメインが、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含む、実施形態1~12のいずれかに記載の方法。
14. 第1の融合タンパク質の多量体化ドメインが、FK506結合タンパク質(FKBP)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含み、第2の融合タンパク質の多量体化ドメインが、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)多量体化ドメインまたはそのバリアントを含む、実施形態1~12のいずれかに記載の方法。
15. 前記FKBP多量体化ドメインまたはそのバリアントが、FKBP12である、実施形態13または14に記載の方法。
16. 前記FRB多量体化ドメインまたはそのバリアントがFRB T2098Lである、実施形態13または14に記載の方法。
17. 第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質が発現されると、前記FRB多量体化ドメインと前記FKBP多量体化ドメインが細胞外に局在する、実施形態13~16のいずれかに記載の方法。
18. 前記投与によって、ラパマイシンまたはその類似体の、0.5ng/mL~5ng/mLの範囲の目標トラフ血中濃度が達成される、実施形態1~17のいずれかに記載の方法。
19. 前記投与によって、ラパマイシンまたはその類似体の、1ng/mL~5ng/mLの範囲の目標トラフ血中濃度が達成される、実施形態1~17のいずれかに記載の方法。
20. 前記投与によって、ラパマイシンまたはその類似体の、1ng/mL~4ng/mLの範囲の目標トラフ血中濃度が達成される、実施形態1~17のいずれかに記載の方法。
21. 前記投与によって、ラパマイシンまたはその類似体の、1ng/mL~3ng/mLの範囲の目標トラフ血中濃度が達成される、実施形態1~17のいずれかに記載の方法。
22. 前記投与によって、ラパマイシンまたはその類似体の、1.5 ng/mL~3ng/mLの範囲の目標トラフ血中濃度が達成される、実施形態1~17のいずれかに記載の方法。
23. 前記投与によって、ラパマイシンまたはその類似体の、0.5ng/mL、1ng/mL、1.1ng/mL、1.2ng/mL、1.3ng/mL、1.4ng/mL、1.5ng/mL、1.6ng/mL、1.7ng/mL、1.8ng/mL、1.9ng/mL、2.0ng/mL、2.1ng/mL、2.2ng/mL、2.3ng/mL、2.4ng/mL、2.5ng/mL、2.6ng/mL、2.7ng/mL、2.8ng/mL、2.9ng/mLまたは3.0ng/mLの目標トラフ血中濃度が達成される、実施形態1~22のいずれかに記載の方法。
24. 前記投与によって、ラパマイシンまたはその類似体の、2ng/mLの目標トラフ血中濃度が達成される、実施形態1~22のいずれかに記載の方法。
25. 前記対象の体表面積が1.5m2よりも大きい、実施形態1~24のいずれかに記載の方法。
26. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.75mg~4mgである、実施形態25に記載の方法。
27. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.5mg~4mgである、実施形態25に記載の方法。
28. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.75 mg~3.5mgである、実施形態25に記載の方法。
29. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.75mg~3.5mgである、実施形態25に記載の方法。
30. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.75mg~1.5mgである、実施形態25に記載の方法。
31. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.75mg~1.5mgである、実施形態25に記載の方法。
32. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.75mg~2.0mgである、実施形態25に記載の方法。
33. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.75mg~2.0mgである、実施形態25に記載の方法。
34. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.75mg~2.5mgである、実施形態25に記載の方法。
35. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.75mg~2.5mgである、実施形態25に記載の方法。
36. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.5mgである、実施形態25に記載の方法。
37. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.5mgである、実施形態25に記載の方法。
38. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.75mgである、実施形態25に記載の方法。
39. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.75mgである、実施形態25に記載の方法。
40. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、1.0mgである、実施形態25に記載の方法。
41. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、1.0mgである、実施形態25に記載の方法。
42. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、1.5mgである、実施形態25に記載の方法。
43. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、1.5mgである、実施形態25に記載の方法。
44. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、2.0mgである、実施形態25に記載の方法。
45. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、2.0mgである、実施形態25に記載の方法。
46. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、2.5mgである、実施形態25に記載の方法。
47. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、2.5mgである、実施形態25に記載の方法。
48. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、3.0mgである、実施形態25に記載の方法。
49. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、3.0mgである、実施形態25に記載の方法。
50. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、3.5mgである、実施形態25に記載の方法。
51. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、3.5mgである、実施形態25に記載の方法。
52. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.8mgである、実施形態25に記載の方法。
53. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.8mg/m2である、実施形態25に記載の方法。
54. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.7mgである、実施形態25に記載の方法。
55. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.7mgである、実施形態25に記載の方法。
56. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.6mgである、実施形態25に記載の方法。
57. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.6mgである、実施形態25に記載の方法。
58. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.75mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
59. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.75mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
60. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、1.0mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
61. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、1.0mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
62. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、1.5mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
63. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、1.5mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
64. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、2.0mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
65. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、2.0mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
66. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、2.5mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
67. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、2.5mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
68. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、3.0mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
69. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、3.0mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
70. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、3.5mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
71. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、3.5mgを超える量である、実施形態25に記載の方法。
72. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、3.0~4.0mgである、実施形態25に記載の方法。
73. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、3.0~4.0mgである、実施形態25に記載の方法。
74. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、3.5~4.5mgである、実施形態25に記載の方法。
75. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、3.5~4.5mgである、実施形態25に記載の方法。
76. 前記対象の体表面積が1.5m2以下である、実施形態1~24のいずれかに記載の方法。
77. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.2mg/m2~0.75mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
78. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.2mg/m2~0.75mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
79. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.3mg/m2~0.7mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
80. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.3mg/m2~0.7mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
81. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.4mg/m2~0.6mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
82. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.4mg/m2~0.6mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
83. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.1mg/m2~0.5mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
84. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.1mg/m2~0.5mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
85. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.5mg/m2~0.7mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
86. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.5mg/m2~0.7mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
87. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.1mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
88. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.1mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
89. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.2mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
90. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.2mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
91. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.3mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
92. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.3mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
93. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.4mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
94. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.4mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
95. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.5mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
96. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.5mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
97. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.6mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
98. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.6mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
99. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.7mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
100. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の各回の用量または大半の回の用量が、0.7mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
101. 前記コース中のラパマイシンまたはその類似体の用量が、0.75mg/m2である、実施形態76に記載の方法。
102. 前記ラパマイシンまたはその類似体の用量が1日1回投与される、実施形態26~101のいずれかに記載の方法。
103. 前記ラパマイシンまたはその類似体の用量が1日2回投与される、実施形態26~101のいずれかに記載の方法。
104. 前記コースが10~28日間の毎日投与である、実施形態1~102のいずれかに記載の方法。
105. 前記コースが11~27日間の毎日投与である、実施形態1~102のいずれかに記載の方法。
106. 前記コースが12~26日間の毎日投与である、実施形態1~102のいずれかに記載の方法。
107. 前記コースが13~25日間の毎日投与である、実施形態1~102のいずれかに記載の方法。
108. 前記コースが14~24日間の毎日投与である、実施形態1~102のいずれかに記載の方法。
109. 前記コースが15~23日間の毎日投与である、実施形態1~102のいずれかに記載の方法。
110. 前記コースが16~22日間の毎日投与である、実施形態1~102のいずれかに記載の方法。
111. 前記コースが17~21日間の毎日投与である、実施形態1~102のいずれかに記載の方法。
112. 前記コースが18~20日間の毎日投与である、実施形態1~102のいずれかに記載の方法。
113. 前記コースが、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間または28日間の毎日投与である、実施形態1~102のいずれかに記載の方法。
114. 前記コースが19日間の毎日投与である、実施形態1~113のいずれかに記載の方法。
115. 前記コースが、前記対象がDARICを発現するインビボ細胞を初めて有してから少なくとも16時間後に開始される、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
116. 前記コースが、前記対象が(例えば、DARICを発現する細胞の注入により)DARICを発現するインビボ細胞を初めて有してから少なくとも24時間は開始されない、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
117. 前記コースが、前記対象がDARICを発現するインビボ細胞を初めて有してから少なくとも36時間は開始されない、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
118. 前記コースが、前記対象がDARICを発現するインビボ細胞を初めて有してから少なくとも48時間は開始されない、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
119. 前記コースが、前記対象がDARICを発現するインビボ細胞を初めて有してから少なくとも60時間は開始されない、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
120. 前記コースが、前記対象がDARICを発現するインビボ細胞を初めて有してから少なくとも72時間は開始されない、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
121. 前記コースが、前記対象がDARICを発現するインビボ細胞を初めて有してから少なくとも84時間は開始されない、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
122. 前記コースが、DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が初めて有してから1~4日後に開始される、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
123. 前記コースが、DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が初めて有してから1~3日後に開始される、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
124. 前記コースが、DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が初めて有してから1~2日後に開始される、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
125. 前記コースが、DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が初めて有してから2~4日後に開始される、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
126. 前記コースが、DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が初めて有してから3~4日後に開始される、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
127. 前記コースが、DARICを発現するインビボ細胞を前記対象が初めて有してから2~3日後に開始される、実施形態1~114のいずれかに記載の方法。
128. 前記コースの後に、ラパマイシンまたはその類似体を投与しない休薬期間を含む、実施形態1~127のいずれかに記載の方法。
129. 前記休薬期間が10~45日間である、実施形態128に記載の方法。
130. 前記休薬期間が14~25日間である、実施形態128に記載の方法。
131. 前記休薬期間が、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間または25日間である、実施形態128に記載の方法。
132. 前記休薬期間が少なくとも14日間である、実施形態128に記載の方法。
133. 前記休薬期間の後に、ラパマイシンまたはその類似体の次のコースが前記対象に投与される、実施形態128~132のいずれかに記載の方法。
134. 前記次のコースが、先行する実施形態のいずれかに記載のコースと同じである、実施形態133に記載の方法。
135. 前記次のコースの後に第2の休薬期間が行われる、実施形態134に記載の方法。
136. 前記休薬期間が、実施形態128~135のいずれかに記載の休薬期間と同じである、実施形態135に記載の方法。
137. 第2の休薬期間の後に、ラパマイシンまたはその類似体の第2の次のコースが前記対象に投与される、実施形態135または136に記載の方法。
138. 第2の次のコースが、先行する実施形態のいずれかに記載のコースと同じである、実施形態137に記載の方法。
139. 前記ラパマイシンまたはその類似体が、ラパマイシン、AP1903、AP20187、AP21967、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダホロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、ゾタロリムス、またはBPC015である、実施形態1~138のいずれかに記載の方法。
140. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、結合ドメインを含む、実施形態1~4および11~139のいずれかに記載の方法。
141. 前記結合ドメインが、CD33抗体の結合ドメインを含む、実施形態5、6、7および140のいずれかに記載の方法。
142. 前記CD33抗体の結合ドメインがVHHである、実施形態141に記載の方法。
143. 前記VHHが、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21のいずれかに示される配列を有する、実施形態142に記載の方法。
144. 前記VHHが、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21のいずれかに示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、CD33に特異的に結合する、実施形態142に記載の方法。
145. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、C型レクチン様分子1(CLL1)に結合する結合ドメインをさらに含む、実施形態1~142のいずれかに記載の方法。
146. CLL1に結合する前記結合ドメインが、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53および54のいずれかに示される配列を有する、実施形態145に記載の方法。
147. CLL1に結合する前記結合ドメインが、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53および54のいずれかに示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、CLL1に特異的に結合する、実施形態145に記載の方法。
148. 第1の融合タンパク質がCD8aの膜貫通ドメインを含み、第2の融合タンパク質がCD4の膜貫通ドメインを含む、実施形態1~147のいずれかに記載の方法。
149. 第1の融合タンパク質が細胞内部分を含む、実施形態1~148のいずれかに記載の方法。
150. 前記細胞内部分が主要シグナル伝達ドメインを含む、実施形態149に記載の方法。
151. 前記細胞内主要シグナル伝達ドメインが、CD3ζまたはその断片を含む、実施形態150に記載の方法。
152. 前記細胞内部分が共刺激ドメインを含む、実施形態149~151のいずれかに記載の方法。
153. 前記共刺激ドメインが、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、Linker for activation of T-cells family member 1(LAT)、SH2 Domain-Containing Leukocyte Protein Of 76 kD(SLP76)、T cell receptor associated transmembrane adaptor 1(TRAT1)、TNFR2、TNFRS14、TNFRS18、TNRFS25、zeta chain of T cell receptor associated protein kinase 70(ZAP70)、またはこれらの断片もしくは組み合わせを含む、実施形態152に記載の方法。
154. 前記共刺激ドメインが、OX40もしくはTNFR2、またはこれらの断片もしくは組み合わせである、実施形態152に記載の方法。
155. (a)第1の融合タンパク質が、FRB多量体化ドメインまたはそのバリアント;CD8αの膜貫通ドメインまたはCD4の膜貫通ドメイン;CD137の共刺激ドメイン;および/またはCD3ζの主要シグナル伝達ドメインを含み;
(b)第2の融合タンパク質が、配列番号2~21のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するCD33 VHH;FKBP多量体化ドメインポリペプチドまたはそのバリアント;およびCD4の膜貫通ドメインまたはCD8αの膜貫通ドメインを含む、
実施形態1~154のいずれかに記載の方法。
156. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号32、33、34、35、36、37、38、39、40および41のいずれかに示される配列を有する、実施形態1~155のいずれかに記載の方法。
157. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号32、33、34、35、36、37、38、39、40および41のいずれかに示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態1~155のいずれかに記載の方法。
158. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号40に示される配列を有する、実施形態1~155のいずれかに記載の方法。
159. 第1の融合タンパク質および/または第2の融合タンパク質が、配列番号40に示される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態1~155のいずれかに記載の方法。
160. 前記細胞の少なくとも1つのサブセットが造血細胞である、実施形態1~159のいずれかに記載の方法。
161. 前記細胞の少なくとも1つのサブセットがT細胞である、実施形態1~160のいずれかに記載の方法。
162. 前記細胞の少なくとも1つのサブセットがαβT細胞またはγδT細胞である、実施形態1~161のいずれかに記載の方法。
163. 前記細胞の少なくとも1つのサブセットが、CD3+細胞、CD4+細胞またはCD8+細胞である、実施形態1~162のいずれかに記載の方法。
164. 前記細胞の少なくとも1つのサブセットがエフェクター免疫細胞である、実施形態1~163のいずれかに記載の方法。
165. 前記細胞の少なくとも1つのサブセットが、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)またはヘルパーT細胞である、実施形態1~164のいずれかに記載の方法。
166. 前記細胞の少なくとも1つのサブセットが、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である、実施形態1~165のいずれかに記載の方法。
167. 前記細胞が、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来組織、腹水、胸水、脾臓組織または腫瘍から単離されたものである、実施形態1~166のいずれかに記載の方法。
168. 前記細胞の用量が、前記対象の体重あたり1×105個/kg~2000×106個/kgである、実施形態1、3および5~167のいずれかに記載の方法。
169. 前記細胞の用量が、前記対象の体重あたり1×106個/kg~1000×106個/kgである、実施形態1、3および5~167のいずれかに記載の方法。
170. 前記細胞の用量が、前記対象の体重あたり1×106個/kg~100×106個/kgである、実施形態1、3および5~167のいずれかに記載の方法。
171. 前記細胞の用量が、前記対象の体重あたり5×106個/kg~500×106個/kgである、実施形態1、3および5~167のいずれかに記載の方法。
172. 前記細胞の用量が、前記対象の体重あたり10×106個/kg~1000×106個/kgである、実施形態1、3および5~167のいずれかに記載の方法。
173. 前記細胞の用量が、前記対象の体重あたり1×106個/kg~2×106個/kgである、実施形態1、3および5~167のいずれかに記載の方法。
174. 前記細胞の用量が、前記対象の体重あたり3×106個/kg~5×106個/kgである、実施形態1、3および5~167のいずれかに記載の方法。
175. 前記細胞の用量が、前記対象の体重あたり7.5×106個/kg~15×106個/kgである、実施形態1、3および5~167のいずれかに記載の方法。
176. 前記細胞の用量が、前記対象の体重あたり10×106個/kgである、実施形態1、3および5~167のいずれかに記載の方法。
177. 前記対象が小児患者である、実施形態1~176のいずれかに記載の方法。
178. 前記対象が28歳以下である、実施形態1~176のいずれかに記載の方法。
179. 前記対象が18歳以下である、実施形態1~176のいずれかに記載の方法。
180. 前記対象が18~28歳である、実施形態1~176のいずれかに記載の方法。
181. 前記対象が、がん、感染症、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫不全、またはこれらに関連する状態を有しているか、これらの疾患または状態であると診断されている、実施形態1~176のいずれかに記載の方法。
182. 前記対象が、固形がんを有しているか、固形がんであると診断されている、実施形態1~181のいずれかに記載の方法。
183. 前記固形がんが、肺がん、扁平上皮癌、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、甲状腺がん、膀胱がん、子宮頸がん、食道がん、卵巣がん、胃がん、子宮内膜がんまたは脳腫瘍を含む、実施形態182に記載の方法。
184. 前記肺がんが非小細胞肺癌である、実施形態183に記載の方法。
185. 前記扁平上皮癌が頭頸部扁平上皮癌である、実施形態183に記載の方法。
186. 前記脳腫瘍が、神経膠腫、膠芽腫または乏突起神経膠腫を含む、実施形態183に記載の方法。
187. 前記対象が、血液悪性腫瘍を有しているか、血液悪性腫瘍であると診断されている、実施形態1~186のいずれかに記載の方法。
188. 前記血液悪性腫瘍が、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である、実施形態187に記載の方法。
189. 前記血液悪性腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、実施形態188に記載の方法。
190. 前記細胞を投与する前または前記細胞を遺伝子組換えする前に、前記対象のリンパ球除去が行われる、実施形態1~189のいずれかに記載の方法。
191. 前記リンパ球除去が、フルダラビンの用量とシクロホスファミドの用量を投与することを含む、実施形態190に記載の方法。
192. 前記フルダラビンが、30mg/m2の用量で1日1回4日間静脈内投与され、前記シクロホスファミドが、500mg/m2の用量で1日1回2日間静脈内投与される、実施形態191に記載の方法。
193. 前記フルダラビンの投与の3日目と4日目に前記シクロホスファミドが投与される、実施形態190または191に記載の方法。
194. 前記細胞を投与する5日前または前記細胞の遺伝子組換えを行う5日前に、リンパ球除去が開始される、実施形態191~193のいずれかに記載の方法。
195. FRB多量体化ドメインおよびFKBP多量体化ドメイン(先行する実施形態の「前記」FRB多量体化ドメインおよび「前記」FKBP多量体化ドメインであってもよいが、これらに限定されない)を有し、第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質が発現されると、前記FRB多量体化ドメインと前記FKBP多量体化ドメインが細胞内に局在する、実施形態1~194のいずれかに記載の方法。
【実施例】
【0281】
(ix)実験例
【0282】
実施例1:抗CD33 VHH抗体を有する二量体化剤制御型免疫調節複合体(DARIC33)の作製
【0283】
CAR T細胞療法は成功を収めているにもかかわらず、安全性と有効性に問題があることが多い。安全性の問題として、サイトカイン放出症候群や神経毒性だけでなく、正常な造血組織でもCD33が発現されていることから骨髄系細胞の形成不全が起こるという懸念がある。有効性の問題としては、抗原逃避およびT細胞疲弊による再発がある。次世代の細胞療法の設計では、細胞の活性化を制御可能なプラットフォームを提供することによって、このような懸念に対処できる可能性がある。
【0284】
本実験例では、抗CD33 VHH抗体を有するDARIC結合部分とシグナル伝達部分を設計し、構築し、検証した。DARICシグナル伝達部分(CD8αのシグナルペプチド、FRBバリアント(T82L)、CD8αの膜貫通ドメイン、4-1BBの細胞内共刺激ドメイン、およびCD3ζのシグナル伝達ドメイン)と;P2A配列と;DARIC結合部分(Igκのシグナルペプチド、CD33特異的VHH結合ドメイン(ラクダ科またはヒト化)、G4Sリンカー、FKBP12ドメイン、ならびにCD4由来の膜貫通ドメインおよび切断型細胞内シグナル伝達ドメイン)とをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたMNDU3プロモーターを含むCD33特異的VHH抗体含有 DARICレンチウイルスベクターを構築した(
図1A;配列番号40)。さらに、例えば、配列番号32~41を参照されたい。さらに、WO2015/017214およびWO2020/227474を参照されたい。
図1Bは、SC-DARIC33コンストラクトと、ラパマイシンによるその活性化を示す。
【0285】
SC-DARIC33による腫瘍制御の有効性をさらに実証するため、遺伝子組換え細胞を用いた養子細胞療法により腫瘍細胞株由来の異種移植片を治療するための2種のインビボモデルを構築した。生物発光により腫瘍の進行をモニタリングできるように、ルシフェラーゼ導入遺伝子を発現するように腫瘍細胞株を組換えた。
【0286】
第1のモデルでは、免疫不全NSGマウスに急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV4-11(CD33
+)を移植し、ラパマイシンの存在下または非存在下において10×10
6個のSC-DARIC33で処置した。レンチウイルスで形質導入していない10×10
6個の対照T細胞を対照として試験に含めた。ラパマイシンの存在下または非存在下において対照T細胞で処置したマウスと、ラパマイシンの非存在下において10
6個のSC-DARIC33 T細胞で処置したマウスでは、腫瘍において光束の急速な増加が見られた。一方、ラパマイシンの存在下においてSC-DARIC33で処置したマウスでは、36日間の試験期間にわたって腫瘍の増殖が抑制された。また、SC-DARIC33で処置し、ラパマイシンを投与したマウスでは、SC-DARIC33細胞の養子移入後の試験期間を通して、腫瘍における統計学的に有意な光束の増加は見られなかった(処置前の最大値を示した時点との比較、
図1C)。
【0287】
実施例2:CAR-Tの用量の決定
【0288】
SC-DARIC33 T細胞産物の適切な開始用量を決定するため、過去に開発されたCD19 CAR T細胞産物の有効性とSC-DARIC33の有効性の比較を試みた。
【0289】
CD19を標的とするT細胞療法とCD33を標的とするT細胞療法の比較モデルを設計するため、CD33とeGFP:ff/lucの発現を誘導するベクターを非ホジキンリンパ腫Raji細胞株に形質導入して、Raji.CD33発現細胞を作製した。得られた細胞株は、CD19とCD33をほぼ同程度の抗原密度で発現して、NSGマウスに注入すると、治療しなければ通常は30日以内に死亡する播種性進行性疾患を発症する。次に、条件を一致させた臨床スケールのT細胞産物と、同じドナーに由来するmock T細胞産物を作製した。
【0290】
免疫不全マウスに、5×105個のRaji.CD33細胞を移植し、腫瘍の増殖を確認した7日後に、10×106個もしくは30×106個のSC-DARIC33 T細胞(ラパマイシンの存在下もしくは非存在下)、CD19 CAR T細胞またはmock T細胞で処置した。生物発光により腫瘍の進行を33日間モニターした。
【0291】
図2に示すように、腫瘍細胞の注入後にラパマイシンのみで処置したマウスまたは対照(mock形質導入)T細胞で処置したマウスでは、腫瘍により発現された生物発光が急激に増加した。また、ラパマイシンを投与せずにSC-DARIC33で処置したマウスでも、腫瘍において同様の速度で同程度に光束が増加した。一方、30×10
6個のSC-DARIC33 T細胞とラパマイシンで処置したマウスでは、10×10
6個のCD19 CAR T細胞で処置したマウスと同程度に腫瘍の増殖が抑制された。しかし、10×10
6個のSC-DARIC33 T細胞とラパマイシンで処置したマウスでは、腫瘍の増殖が抑制されず、この結果から、この用量のSC-DARIC33は有効性が低いことが示唆された。
【0292】
実施例3:ラパマイシンにより誘導されたDARIC33の腫瘍異種移植片に対する活性
【0293】
DARIC33を活性化させるのに最適なラパマイシンの臨床用量を決定するには、インビボにおいてDARIC33を活性化するのに必要とされるラパマイシンの濃度を決定する必要があった。
【0294】
AML細胞株(MV-4-11)(インビボでの生物発光の追跡用にルシフェラーゼを発現するように組換えたもの)をNSGマウスに養子移入した。次に、腫瘍移植マウスを、10
7個のDARIC33 T細胞または対照としての同じ個数の非形質導入T細胞で処置した。T細胞を注射した後、1~20日目に、0.01mg/kgのラパマイシンの腹腔内(IP)注射によりマウスを毎日処置した。生物発光により腫瘍の増殖を週2回追跡した。DARIC33 T細胞とラパマイシンで処置した8匹のマウスのうち6匹では腫瘍の増殖が抑制されたが、ラパマイシンで処置しなかったマウス、ラパマイシンで処置したがDARIC33 T細胞では処置しなかったマウス、および形質導入していない対照T細胞で処置したマウスはいずれも急速に腫瘍が増殖したことが観察された(
図3)。
【0295】
実施例4:ラパマイシンで誘導されるDARIC33 T細胞の活性化の可逆性の評価
【0296】
細胞を投与した後の患者においてDARIC33 T細胞のエフェクター機能を一時的に停止することができれば、毒性の緩和と造血機能の回復を制御することができる。さらに、治療用T細胞を断続的に休止させることができれば、機能疲弊を起こしにくく、メモリー細胞のコンパートメントの再増殖が可能になると考えられる。これを踏まえ、ラパマイシンを除去した場合の速度論的な効果を調べるため、50,000個のDARIC33 T細胞にラパマイシンを添加して24時間培養し、ラパマイシン非含有培地で洗浄し、ラパマイシン非含有培地中で50,000個のCD33
+MV4-11 AML標的細胞と共培養した。対照として、ラパマイシンの存在下で50,000個のDARIC33 T細胞を連続的に維持し、上記と同じMV-4-11 AML腫瘍株と1:1の比率で共培養した。共培養の開始後、37℃でインキュベーションし、様々な時点(0時間、2時間後、4時間後、6時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後および120時間後)で試料を採取して、活性を測定した。プレインキュベートしたSC-DARIC33 T細胞は、初期の時点では、IFNγの放出により測定した活性が高かったが、その後、IFNγの放出により測定した活性は徐々に低下して、96時間以内にベースラインに戻り、半減期(t
1/2)が17時間の一次速度となった(
図4A)。t
1/2は、単相の指数関数減衰をカーブフィッティングすることにより求めた。
【0297】
インビボでのSC-DARIC33 T細胞の活性化の可逆性を立証するため、生物発光画像の撮影用に組換えMV4-11由来AML異種移植片を有するマウスを、10
7個のSC-DARIC33
+T細胞または同じ個数の非形質導入(UTD)対照細胞で処置した。1×10
6個のMV4-11.ff/luc細胞をNSGマウスに移植した7日後に、T細胞を静脈内(IV)注入した。T細胞の注入後、グラフに示した期間にわたってマウスを0.1mg/kgのラパマイシンで週3回処置した。具体的には、連続投与スケジュール(1~150日目)、断続投与スケジュール(1~14日目と28~150日目)、または短縮スケジュール(1~14日目)でラパマイシンを送達した(
図4Bの投与計画を参照されたい)。UTD対照細胞(ラパマイシンの存在下または非存在下)を投与したマウスは、50日目までに腫瘍の増殖と腫瘍に関連する症状を示したが、SC-DARIC33細胞とラパマイシンで処置したマウスは、腫瘍の進行が遅延し(
図4C)、症状なしでの生存期間が延長した(
図4F)。短縮したラパマイシン投与スケジュールで処置した5匹のマウスのうち4匹は、ラパマイシンの投与を中止してから3週間後に腫瘍が再発した。これに対して、ラパマイシンの投与を再開すると、5匹のマウスのうち4匹が、観察期間の終了時まで腫瘍が抑制された。線形混合効果モデルを使用して腫瘍の増殖動態を推定したところ、不活性処置マウスではいずれも同程度の腫瘍増殖速度が示され、連続投与スケジュールでラパマイシンを投与したマウスと、断続投与スケジュールでラパマイシンを投与したマウスでは、同程度の腫瘍増殖抑制が示された(
図4Dおよび
図4E)。SC-DARIC33細胞によるAMLの増殖の抑制は、生存率の増加との相関性が見られた(
図4E)。これらのデータから、ラパマイシンの投与を中止することによってSC-DARIC33の抗腫瘍活性が一時的に停止するというモデルとの一貫性が認められ、SC-DARIC33の抗腫瘍活性は、ラパマイシンへの曝露を再開させることにより回復させることができる。
【0298】
実施例5:インビトロにおけるラパマイシンに対するDARIC33 T細胞応答のモデル化
【0299】
SC-DARIC33のファースト・イン・ヒューマン試験のためのラパマイシンの用量を選択するため、in situでのSC-DARIC33の活性化に必要とされるラパマイシンの濃度の決定を試みた。まず、ラパマイシンの濃度上昇系列の存在下において、培地(X-VIVO)中、ヒト全血中またはマウス全血中で、MV4-11 AML細胞でDARIC33細胞を一晩刺激した際のサイトカインの放出を測定した。
【0300】
具体的には、ヒト全血中もしくはマウス全血中に存在する抗原陽性(CD33+)標的細胞との共培養後、またはヒト全血もしくはマウス全血に添加された抗原陽性(CD33+)標的細胞との共培養後に、DARIC33 T細胞から放出されたIFNγサイトカインの最大半量が得られるラパマイシンの量(濃度)を定量した。
【0301】
健常ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を解凍し、抗CD3抗体と抗CD28抗体で活性化し、DARIC33 A07-LVベクターまたは対照ベクターを形質導入し、G-Rex24マルチウェル培養プレート中で増殖させた。T細胞の製造を開始してから10日目に、T細胞を回収し、洗浄し、これにより得られた50,000個のDARIC T細胞を、急性骨髄性白血病(AML)細胞株MV-4-11とともに、エフェクター:標的比を1:1としてプレートに加えた。T細胞と腫瘍細胞を直ちに遠心分離し、健常ヒトボランティアから得たヘパリン加ヒト全血またはNSGマウスから得たマウス全血で調製したラパマイシンの段階希釈系列各200μlに再懸濁した。共培養物を37℃で24時間インキュベートした後、遠心分離して血漿を分離し、Meso Scale Discovery(MSD)社製のサイトカインアッセイを使用してIFNγの放出を評価した。
【0302】
IFNγ値を利用して、DARIC33 T細胞からIFNγを放出させるラパマイシンのEC
50値を計算した。2つの実験における合計6つのT細胞と全血ドナーの組み合わせのそれぞれに対して、反復測定値を平均し、最大IFNγ濃度を1として各値を個別に正規化した。次に、正規化したデータ点をプロットし、3パラメーターの用量反応曲線にフィットさせ、ヒル係数を1.0として、GraphPad Prismソフトウエアを使用してEC
50値を計算した。計算されたラパマイシンのEC
50値は2.6nMであり、1.5~4.3nMの範囲であり、このラパマイシン濃度において、標的腫瘍細胞と共培養した際のDARIC33 T細胞からのIFNγの産生が最大値の半分になる(
図5A~5E)。このEC
50値は、健常ヒト血液中に存在するCD33
+細胞による活性化と、外来性CD33
+標的細胞を添加したヒト血液中での活性化との間で一貫性が見られた。マウス血液中でのT細胞と腫瘍細胞の共培養から得られたIFNγ値に対しても、同様の方法でデータ変換を行った。3人のPBMCドナー由来のT細胞から求めたEC
50値は2.8nMであり、1.4~4.1nMの範囲であった。
【0303】
ラパマイシンに依存したIFNγの放出の増加は、試料間で類似しており(ヒト血液中でのIFNγの放出に対するEC
50値は2.6nMであり、マウス血液中でのIFNγの放出に対するEC
50値は 2.8nMであった)、ヒトT細胞ドナー間でも類似していた(3人のT細胞ドナーと2人の血液ドナーにおいて、EC
50値は1.5nM~6.3nMの範囲であった(2連で試験、n=合計12))。
図5Aを参照されたい。これらのデータから、DARIC33のヘテロ二量体化が可能な全血中のラパマイシンの目標濃度範囲を決定した。
【0304】
次に、腫瘍ナイーブマウスにラパマイシンを単回投与または繰り返し投与した際のラパマイシンの曝露について、LC MS/MS定量全血アッセイにより測定を行った(J Chromatogr B Biomed Sci Appl, 1998 Nov 6;718(2)251-7)。様々な用量のラパマイシンを週3回投与した際の全血中のラパマイシン濃度をグラフに示し、ラパマイシンを腹腔内(IP)注射したタイミングを下部の棒線で示す(
図5B参照)。定量上限値(ULOQ=200ng/mL)と定量下限値(LLOQ=1ng/mL)もグラフに示している。ラパマイシンの血中濃度は概して用量に比例し、腹腔内(IP)投与から2時間以内にピークに達し、16~24時間の消失半減期で減少した。ラパマイシンのピーク濃度は、0.02mg/kgの用量で10ng/mLから、0.1mg/kgの用量で約100ng/mLまでの範囲であった(表1)。
【表1】
【0305】
ラパマイシンの様々な用量レベルと投与スケジュールがSC-DARIC33 T細胞の抗AML活性に及ぼす影響を調べるため、腫瘍担持マウスを、10×10
7個(1000万個)のSC-DARIC33 T細胞または10×10
6個の非形質導入(UTD)T細胞で処置した後、ラパマイシンを投与した(いずれもIP注射で、0.02mg/kg qMWF、0.05mg/kg qMWF、0.1mg/kg qMWF、または0.01mg/kg毎日を21日間投与;
図5Cの投与計画を参照されたい)。不活性になると予測された投与計画で投与を行ったマウス(例えば、処置なし、ラパマイシンのみ、UTD細胞のみ、UTD細胞投与後にラパマイシン投与、またはSC-DARIC33細胞のみ)では、腫瘍の増殖は減少しなかった(log[光束]/日=0.26~0.27、
図5E)。一方、活性が発揮されると予測された処置(例えば、SC-DARIC33細胞産物の投与後にラパマイシン投与)では、腫瘍の増殖速度が遅延し、腫瘍の増殖速度は、0.01mg/kgのラパマイシンを毎日腹腔内(IP)投与したマウスにおいて最も遅くなった(log[光束]/日=0.058)。腫瘍の増殖速度は生存率との相関性が認められた。すなわち、対照マウスでは45日目付近で腫瘍に関連する症状が示されたが、活性のある処置(DARIC33+ラパマイシン)を行ったマウスでは、同じ時点で腫瘍の進行の徴候を示したマウスはいなかった。試験したラパマイシン用量ではいずれも生存期間が延長した(p<0.001、ログランク検定)。具体的には、90日間の観察期間の終了時に、SC-DARIC33と0.01mg/kgのラパマイシンを毎日投与したマウスでは、10匹のマウスのうち5匹において腫瘍の増殖が継続的に抑制された(
図5E)。
【0306】
腫瘍担持マウスにおけるDARIC33の有効性に関連するラパマイシンの最小濃度を決定するため、インビボで抗腫瘍活性を示した最小用量のラパマイシン(0.01mg/kgのラパマイシンを腹腔内(i.p.)に毎日投与)とSC-DARIC33 T細胞で処置したマウスにおける血液中のラパマイシンの濃度を測定した。1日目と15日目のラパマイシンの投与の2時間後に採取した血液試料と、20日目のラパマイシンの投与の24時間後に採取した血液試料は、1.4mg/mL~3.3ng/mLのラパマイシンを含んでいた(LC MS/MS定量全血アッセイ、n=5匹のマウス)。興味深いことに、インビトロでのマウス全血アッセイとヒト全血アッセイでは、ラパマイシンに依存した同程度のDARIC33の活性化が示されたが、赤血球(RBC)に移行したラパマイシンと血漿タンパク質に結合した状態(PPB)のラパマイシンでは生物種間で差が認められた(表2および表3)。
【表2】
【表3】
【0307】
ヒトでは、ラパマイシンの94.5%が赤血球(RBC)に結合しており、血漿中には3.1%しか存在しない。ヒトの血漿中では、ラパマイシンの大部分がタンパク質に結合している(92%)。これに対して、マウスでは、RBCへの移行は5.5%しかなく、血漿タンパク質に結合(PPB)したラパマイシンは99%を超えており(表4)、このことから、種特異的にラパマイシンの分布に差があることから、インビトロでの生物学的に利用可能なラパマイシンの濃度も同様に差が見られたことが示唆された。まとめると、以上のデータから、ヒトにおいてDARICのヘテロ二量体化を誘導するためのラパマイシンの目標トラフ血中濃度は1.5~3ng/mLの範囲であることが判明した。
【表4】
【0308】
実施例6:処置したマウスにおける全血中ラパマイシン濃度の測定
【0309】
腫瘍の増殖の抑制を示したマウスの体内のラパマイシンの濃度を測定するため、後眼窩採血により末梢血を採取し、分析するまで-80℃で凍結保存した。定量液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LS-MS/MS)を用いて、全血試料中のラパマイシンの濃度を測定した。
図6に示すように、1日目に採取した試料では、ラパマイシンを注射した2時間後の全血中に0.916±0.896ng/mLのラパマイシンが含まれていることが分かった。15日目に採取した試料では、ラパマイシンを注射した2時間後の全血中に2.65±1.983ng/mLのラパマイシンが含まれていることが分かった。これらの知見は、マウスの体内にラパマイシンが蓄積していることとの一貫性があった。また、試料採取のタイミングは、過去の実験で観察されたラパマイシンのピーク濃度のタイミングと一致させた。21日目に採取した試料では、ラパマイシンを投与してから24時間後に平均して0.56±0.771ng/mLのラパマイシンが全血中に含まれていることが判明したが、5匹のマウスのうち3匹では、定量下限を下回った。まとめると、これらのデータから、2.65±1.983ng/mLのピーク濃度と0.56±0.771ng/mLのトラフ濃度が得られるラパマイシン用量であれば、マウスにおいてDARIC33 T細胞を活性化させて、抗AML腫瘍抑制を発揮させるのに十分であることが示唆された。
【0310】
実施例7:DARIC33のラパマイシン応答性のin silicoモデル化
【0311】
小児患者(対象者とも呼ぶ)におけるラパマイシン(シロリムス)の推奨開始用量を決定するため、公表論文(Goyal et al, Biol Blood Marrow Transplant 2013, 569-575; Wu et al, CPT: Pharmacometrics & Systems Pharmacol 2012, 1, e17, doi:10.1038/psp.2012.18)で報告されている小児患者に対するシロリムスの全血曝露を利用して、母集団薬物動態モデルを構築した。いくつかのシロリムスの用量レベルを1日1回の投与スケジュールで19~21日間にわたりシミュレーションした。幾何平均値(濃い青色の線)と期待されるシロリムス濃度の10パーセンタイルと90パーセンタイル(薄い青色の部分)を示す曝露プロファイルを作成した(
図7参照)。シロリムスの典型的な免疫抑制性トラフ濃度は、5~15ng/mLの範囲にある(赤色の破線)。毎日投与を行うスケジュールにおいて、(体表面積が1.5m
2以下の患者に対して)0.50mg/m
2のシロリムス用量または(体表面積が1.5m
2以上の患者に対して)0.75mgのシロリムス用量のシミュレーションを行った場合に最も良好な曝露範囲が得られ、最も多くの患者において1.5~3ng/ml(目標トラフ濃度範囲、緑色の部分)の範囲で一定に維持されたシロリムス曝露が得られた。
【0312】
ラパマイシンの目標トラフ濃度範囲は、全血中でのSC-DARIC33のEC50値から求めたものであり、このEC50値は、2.6nM(2.6ng/mLに相当)である。
【0313】
さらに、このラパマイシンの目標トラフ濃度範囲は、SC-DARIC33を注射した腫瘍担持免疫不全マウスにおける有効性に関連するラパマイシンの全血濃度の分析により裏付けられた。この分析では、マウスにおける遊離ラパマイシンの濃度が、小児患者における遊離ラパマイシンの等価用量の目標トラフ濃度を下回っていることが示された。
【0314】
さらに、19日間にわたり毎日投与を行うスケジュールでシミュレーションを行うことによって求められた(体表面積が1.5m2以下の患者に対する)0.50mg/m2のシロリムス用量または(体表面積が1.5m2以上の患者に対する)0.75mgのシロリムス用量を利用して、SC-DARIC33の活性化をオフにすることが可能な休薬後のシロリムスのクリアランスをシミュレーションすることができた。
【0315】
実施例8:臨床プロトコールの具体例
【0316】
ラパマイシン(またはラパログ)の投薬と目標濃度
ラパマイシンは、(体表面積が1.5m2よりも大きい患者には)0.75mg/m2の用量または(体表面積が1.5m2以下の患者には)0.50mg/m2の用量で経口投与を開始する。投薬は、1.5~3ng/mLの目標範囲内で目標トラフ血中濃度が2ng/mLに維持されるように調節する必要がある。
【0317】
DARICの活性化を示すエビデンスが存在しない場合、9ng/mLを最大目標濃度として、3ng/mLを上回る目標濃度にすることができる。
【0318】
ラパマイシンの初回スケジュール
SC-DARIC T細胞産物の注入後+2日目からラパマイシンを毎日投与して、SC-DARIC33を活性化させる。ラパマイシンの投与は+21日目まで継続する。28日目に骨髄穿刺および/または生検を実施した後、複数のパラメーターのフローサイトメトリー分析を実施し、対象者の疾患が1%未満の形態学的寛解を示した場合は、ラパマイシンの休薬を継続する。ラパマイシンの次のコースは、以下に示すように+42日目後から開始してもよい。
【0319】
42日目以前の骨髄の評価において1%を上回る白血病の持続を示すエビデンスが示されたら、ラパマイシンの次のコースを42日目に直ちに開始することができる。
【0320】
図8Aは、細胞注入と、ラパマイシンの投与と、骨髄穿刺および/または生検を実施するプロトコールを示す。
図8Bは、3~21日目にラパマイシンの投与を行う別のプロトコールを示す。
【0321】
ラパマイシンの次のコース(表5および表6)
治験責任医師の臨床判断により、ラパマイシンを用いたDARIC T細胞の活性化によるベネフィットが得られていると考えられた対象者に対して、寛解中の患者にはT細胞の注入後+42日目以降のいずれかの時点からラパマイシンの次のコースを開始し、白血病の持続を示すエビデンスがある患者には直ちにラパマイシンの次のコースを開始して、DARIC T細胞活性化のベネフィットが見られなくなるまでラパマイシンの投与を継続してもよい。ラパマイシンの次のコースを開始する要件としては、臨床的に有意であると評価され、かつDARIC T細胞に関連するグレード3以上の毒性が見られないことが挙げられる。
【0322】
寛解が持続している対象者におけるラパマイシンの次のコースでは、前回のラパマイシンの投与の休薬から少なくとも14日目から投与を開始し、この際に、患者の食細胞(APC)の絶対数が500個/μLを超えていなければならない。
【0323】
【0324】
【0325】
長期フォローアップ
FDAにより要求されているように、DARIC T細胞産物を注入してから最長で15年間にわたって対象者のフォローアップを行い、レンチウイルスで形質導入したT細胞の使用に関連して遅れて発生した有害事象を調査するとともに、疾患評価を含む追加情報を得る。造血細胞移植(HCT)ドナーが同定され、患者の目的に最も適していると判断された場合には、医師の裁量に従って、DARIC T細胞を注入した後のいずれかの時点で、移植前処置を行った後にHCTを開始することができる。実施した移植前処置、幹細胞の由来およびHCTの実施日を含むHCTに関する情報を収集する。骨髄系細胞の形成不全が持続している対象者群では、感染合併症に関する情報も収集する。フォローアップ情報は、対象者のかかりつけ医により提供されてもよい。
【0326】
実施例9
成人患者(対象者とも呼ぶ)におけるラパマイシン(シロリムス)の推奨開始用量を決定するため、公表論文(Wu et al, CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol 2012, 1, e17)で報告されている成人患者に対するシロリムスの全血曝露を利用して、母集団薬物動態モデルを構築した。いくつかのシロリムスの用量レベル(0.5mg、0.75mg、1.0mg、1.25mgおよび1.5mg)を1日1回の投与スケジュールで19~21日間にわたりシミュレーションした(
図9)。
【0327】
1.5mgの開始用量を毎日投与した場合の、幾何平均値(実線)と期待されるシロリムス濃度の10パーセンタイルと90パーセンタイル(色つきの部分)を示す曝露プロファイルを作成した(
図10)。1.5mgの初回用量を毎日投与することにより、大部分の患者において、1.5~3ng/mLの目標シロリムス濃度を得ることできる。用量の調節も可能である。
【0328】
実施例10
ラパマイシン投与後の患者(体表面積が1.5m
2よりも大きい)の薬物動態(PK)データから、用量とピーク濃度およびトラフ濃度の曝露関係が示され、用量を調節することによって目標範囲を得ることができる(
図11)。ラパマイシンの投与は、0.75mgの用量で経口投与することにより開始し、上述と同様に臨床用のLC-MS/MSアッセイを使用してピーク濃度とトラフ濃度をモニターした。ピーク曝露(投与の2時間後)は、1.5~3ng/mlの目標範囲内であったが、トラフ濃度(シロリムスによる処置の24時間後)は、アッセイの検出限界未満(1ng/ml未満)となった。0.75mgの初回用量でシロリムスを3回投与した後、目標トラフ濃度が水平な点線の境界内に収まるように、用量を1.5mgに調節した。4回投与した後でもトラフ値は目標範囲内に入らなかったため、目標トラフ値が得られるように用量を3mgに再度調節した。シロリムスを3mgの用量で2回投与したところ、トラフ濃度が目標範囲内に入っていることが検出されたため、このシロリムス用量を維持した。シロリムスを3mgの用量で8回投与した後、トラフ濃度の測定値は目標範囲を超えた。この時点で、シロリムスの投与を2日間一時中止した。シロリムスの用量を2mgに減らして3回投与し、20日目の治療後にシロリムスの投与を中止した。シロリムスの投与中止(D/C)後のシロリムスの濃度をモニターしたところ、28日目の最後の測定においてシロリムスが検出不能となった。重要な点として、このデータから、モニタリング後の用量をどのように調節すれば、1.5~3ng/mLの目標トラフ濃度範囲を達成することができるのかということが示され、このデータから前述の前臨床モデルが支持された。
【0329】
【0330】
配列番号1は、全長ヒトCD33のアミノ酸配列を示す。配列番号2~21は、抗CD33 VHHドメインのアミノ酸配列を示す。配列番号22~31は、抗CD33 VHH DARIC結合ドメインのアミノ酸配列を示す。配列番号32~41は、自己切断可能な2Aペプチドによって分離された結合ドメインと細胞内シグナル伝達部分を含む抗CD33 VHH DARIC融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。配列番号42は、細胞内シグナル伝達部分と多量体化ドメインを含むが、結合ドメインは含んでいない抗CD33 VHH DARICのアミノ酸配列を示す。
【0331】
(xi)結語
【0332】
本明細書で提供する核酸配列およびアミノ酸配列は、特許法施行規則37 C.F.R.規則1.822に規定され、WIPO標準ST.25(1998)補遺2の表1および表3にも示されているような、ヌクレオチド塩基およびアミノ酸残基に用いられる略号で示されている。各核酸配列に対して1種類の鎖のみを示しているが、その相補鎖が適切である場合、その相補鎖も実施形態に含まれる。
【0333】
本明細書において、「特異的結合親和性」、「特異的に結合する」、「特異的結合」または「特異的標的」という用語は、バックグラウンド結合よりも高い結合親和性で、1つの分子が別の分子に結合することを指す。結合ドメイン(例えば、結合ドメインを含むCARの結合ドメイン)が、例えば、105M-1以上の親和性またはKa(すなわち、1/Mの単位で示される特定の結合相互作用の平衡結合定数)で標的分子と結合または会合する場合、この結合ドメインは、この標的分子に「特異的に結合する」。特定の実施形態において、結合ドメイン(またはCAR)は、106M-1以上、107M-1以上、108M-1以上、109M-1以上、1010M-1以上、1011M-1以上、1012M-1以上または1013M-1以上のKaで標的に結合する。「高親和性」結合ドメインは、少なくとも107M-1少なくとも108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも1012M-1、少なくとも1013M-1またはそれ以上のKaを有する結合ドメインを指す。
【0334】
あるいは、親和性は、特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)(単位:M)(例えば、10-5M~10-13Mまたはこれ以下)として定義してもよい。本開示による結合ドメインおよびCARタンパク質の親和性は、例えば、競合ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ);結合(会合);標識されたリガンドを用いたディスプレイスメントアッセイ;Biacore社(ニュージャージー州ピスカタウェイ)から市販されているBiacore T100などの表面プラズモン共鳴装置を用いた測定;Corning社から市販されているEPICシステムやパーキンエルマー社から市販されているEnSpireなどの光バイオセンサー技術(例えば、Scatchard et al. (1949) Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660;米国特許公開第5,283,173号;米国特許公開第5,468,614号も参照されたい)などの従来技術を用いて容易に測定することができる。
【0335】
特定の実施形態において、特異的結合の親和性は、バックグラウンド結合の2倍、バックグラウンド結合の5倍、バックグラウンド結合の10倍、バックグラウンド結合の20倍、バックグラウンド結合の50倍、バックグラウンド結合の100倍、バックグラウンド結合の1000倍またはそれ以上である。
【0336】
当業者であれば理解できるように、本明細書に開示された各実施形態は、記載された特定の構成要素、工程、材料または成分を含むか、実質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。したがって、「含む」または「含んでいる」という用語は、「含むか、実質的に~からなるか、または~からなる」という意味を有すると解釈すべきである。「含む」という移行句は、その量が多くても、記載されていない構成要素、工程、材料または成分が含まれていることを意味するが、これに限定されない。「からなる」という移行句は、記載されていない構成要素、工程、材料、成分をすべて除外する。「実質的に~からなる」という移行句は、記載された構成要素、工程、材料または成分、および実施形態に大きな影響を及ぼさない構成要素、工程、材料または成分に、実施形態の範囲を限定する。大きな影響とは、本明細書で述べるように、ラパマイシンまたはその類似体を投与することによって、がんを統計学的に有意に減少させるような影響、またはCAR-T細胞の活性の統計学的に有意に増加させるような影響を指す。
【0337】
別段の記載がない限り、本明細書および請求項において、分子量や反応条件などの、材料の量や特性を表すあらゆる数値は、あらゆる場合において、「約」という用語で修飾されていると解釈される。したがって、別段の記載がない限り、本明細書および添付の請求項に記載の数値パラメーターは、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変動する近似値である。請求項に記載の範囲と等価の原則の適用範囲を限定するものではないが、各数値パラメーターは、少なくとも、報告された有効数字の数値に照らして、かつ通常の端数処理を行うことによって解釈されるべきである。さらに明確に述べれば、「約」という用語は、記載の数値または範囲とともに使用された場合、当業者によって合理的に解釈される意味を有し、すなわち、記載の数値の±20%の範囲;記載の数値の±19%の範囲;記載の数値の±18%の範囲;記載の数値の±17%の範囲;記載の数値の±16%の範囲;記載の数値の±15%の範囲;記載の数値の±14%の範囲;記載の数値の±13%の範囲;記載の数値の±12%の範囲;記載の数値の±11%の範囲;記載の数値の±10%の範囲;記載の数値の±9%の範囲;記載の数値の±8%の範囲;記載の数値の±7%の範囲;記載の数値の±6%の範囲;記載の数値の±5%の範囲;記載の数値の±4%の範囲;記載の数値の±3%の範囲;記載の数値の±2%の範囲;または記載の数値の±1%の範囲で、記載の数値または範囲よりもある程度多いまたは少ないことを示す。
【0338】
広範な本発明の範囲を示す数値範囲およびパラメーターは、近似値および近似範囲であるものの、具体例に記載された数値は、可能な限り正確に報告している。しかし、すべての数値は、各試験用測定に付随する標準偏差により必然的に生じる特定の誤差を本質的に含んでいる。
【0339】
本発明の説明において(特に以下の請求項の説明において)使用されている「a」、「an」、「the」およびこれらに類似した指示語は、別段の記載がない限り、または文脈上別の意味が明示されていない限り、単数ものも複数のものも包含すると解釈される。本明細書に記載の数値範囲は、その数値範囲に含まれる各数値を個別に指す簡略的な方法であることを意図している。別段の記載がない限り、各数値は、あたかも個別に本明細書に記載されているかのように、本明細書に記載されている。別段の記載がない限り、または文脈上別の意味が明示されていない限り、本明細書に記載の方法はいずれも任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるあらゆる例示の使用、または例示を示す言語(例えば「など」)は、本発明を詳しく説明することのみを目的としたものであり、請求項に記載の本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載の用語は、本発明の実施に必須の、請求項に記載されていない構成要素を示していると解釈すべきではない。
【0340】
本明細書に開示された本発明のその他の構成要素の群分けまたは本発明の様々な実施形態の群分けは、本発明を限定するものであると解釈すべきではない。各群のメンバーは、本明細書または請求項に個別に記載されていてもよく、本明細書に記載の群のその他のメンバーまたはその他の構成要素と組み合わせて本明細書または請求項に記載されていてもよい。便宜上および/または特許性の理由で、ある群の1つ以上のメンバーを別の群に加えてもよく、あるいは、ある群から1つ以上のメンバーを削除してもよいことが予想される。そのような付加や削除を行う場合、本明細書は、添付の請求項に記載のすべてのマーカッシュ群の説明を充足するように構成された群を含む。
【0341】
本発明の特定の実施形態を本明細書に記載しており、これには、本発明の実施に際して本発明者らが最良の形態であると認識している実施形態が含まれている。当然のことながら、当業者であれば、前述の詳細な説明を熟読することにより、本明細書に記載の実施形態を様々に変更できることを容易に理解できるであろう。本発明者らは、当業者がこのような変形例を適宜採用することができると予想しており、本明細書に具体的に記載された態様以外の態様で本発明が実施されることも意図している。したがって、本発明は、準拠法の範囲内で可能な限り、添付の請求項に記載の本発明の主題からのあらゆる変更および本発明の主題のあらゆる等価物を含む。さらに、別段の記載がない限り、または文脈上別の意味が明示されていない限り、あらゆる変形例における前述の構成要素のあらゆる組み合わせも本発明に含まれる。
【0342】
さらに、本明細書を通して、様々な特許、刊行物、雑誌記事およびその他の文書(本明細書の引用文献)を引用している。本明細書において引用された各文献は、本明細書の一部を構成するものとして、その引用された教示が引用により本明細書に個別に援用される。
【0343】
最後に、本明細書に開示された本発明の実施形態は、本発明の原理を説明するものであると解釈される。本発明の範囲内で、その他の変更を採用してもよい。したがって、一例として、本明細書の教示に従って、本発明の別の構成を使用してもよいが、これに限定されない。したがって、本発明は、本明細書の明示および記載に厳密に限定されるものではない。
【0344】
本明細書に記載の詳細は一例であり、本発明の好ましい実施形態を例示することのみを目的としており、最も有用なものであると考えられるものを提供するため、かつ本発明の様々な実施形態の原理と概念上の態様を容易に理解できるものするために提示している。この点に関して、本発明の基本的な理解に必要な情報よりも詳しく本発明の構造の詳細を説明することはしておらず、当業者であれば、図面および/または実施例を参照しながら本発明の説明を熟読することによって、本発明のいくつかの形態をどのようにして実際に具現化すればよいのかを容易に理解できるであろう。
【0345】
本開示において用いられる定義および説明は、実施例において明白かつ明確な変更が加えられない限り、あるいは用語の意味によって解釈が意味をなさなくなったり、実質的に意味なさなくなる場合を除いて、将来的な解釈を制御することが意図されている。用語の解釈から用語の定義が意味をなしていなかったり、実質的に意味をなしていない場合は、ウェブスター辞典(第3版)またはOxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Eds. Attwood T et al., Oxford University Press, Oxford, 2006)などの当業者に公知の辞書から用語の定義を引用されたい。
【配列表】
【国際調査報告】