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特表2024-545164高電圧空乏モード電流源、トランジスタ、及び製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】高電圧空乏モード電流源、トランジスタ、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20241128BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L29/80 E
H01L29/06 301F
H01L29/80 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534478
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 US2022052543
(87)【国際公開番号】W WO2023107738
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】17/548,426
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】マイク ペーター カウフマン
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル ルーデルス
(72)【発明者】
【氏名】チャン ソー スー
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102GA01
5F102GA16
5F102GA17
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ03
5F102GK04
5F102GL04
5F102GM04
5F102GQ01
5F102GR12
5F102GS03
5F102GS04
5F102GT03
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC15
(57)【要約】
AC/DC電力コンバータのスタートアップ回路においてプリチャージ回路として用いるための充分な精度の飽和電流を有する空乏モード電流源(426)がエンハンスメントモードのみのプロセスを用いて製造される。空乏モード電流源は、空乏モード電界効果トランジスタ(FET)をエンハンスメントモードFETと同じ集積回路(IC)上に作製するのに必要とされるように付加的なマスク又は材料を必要とすることによってエンハンスメントモードのみの作製プロセスに影響を与えることなく、窒化ガリウムFET(402)及びスタートアップ回路において用いられる抵抗性及び容量性構成要素と同じIC上に製造され得る。電流源は、二端子(428、430)間に結合される抵抗パターン化二次元電子ガス(2DEG)又は二次元ホールガス(2DHG)チャネル(432)と、端子の一方(430)から延在しチャネルのパターン化エリアに重なる1つ又は複数の金属フィールドプレート(434、436、438)とを含み、フィールドプレートは、チャネル及び互いから誘電体層(545、468、490)によって分離される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路(IC)であって、
二端子空乏モード電流源を含み、
前記端子空乏モード電流源が、
前記空乏モード電流源の第1の端子と前記空乏モード電流源の第2の端子との間に結合される二次元電子ガス(2DEG)又は二次元ホールガス(2DHG)チャネルと、
前記第1の端子に結合される導電性電極と、
を含み、
前記導電性電極が、前記2DEG又は2DHGチャネルの少なくとも一部の上方にあり、前記2DEG又は2DHGチャネルの少なくともその一部の上に延在する、
IC。
【請求項2】
請求項1のICであって、前記導電性電極の一部が、2DEG又は2DHGチャネルの或る点の上に延在し、前記2DEG又は2DHGチャネルに沿った、前記点と前記第1の端子との間の第1の距離が、前記2DEG又は2DHGチャネルに沿った、前記点と前記第2の端子との間の第2の距離よりも大きい、IC。
【請求項3】
請求項1のICであって、前記導電性電極の下側表面が、前記2DEG又は2DHGチャネルの約1,500オングストローム~約1,700オングストローム上方にある、IC。
【請求項4】
請求項1のICであって、前記導電性電極が下側導電性電極であり、前記空乏モード電流源が第2の導電性電極をさらに含み、前記第2の導電性電極が、前記下側導電性電極の上方にあり、その上に延在する、IC。
【請求項5】
請求項4のICであって、前記第2の導電性電極が中間導電性電極であり、前記空乏モード電流源が第3の導電性電極をさらに含み、前記第3の導電性電極が、前記中間導電性電極の上方にあり、その上に延在する、IC。
【請求項6】
請求項5に記載のICであって、
前記第3の導電性電極が上側導電性電極であり、
前記下側導電性電極の下側表面が、前記2DEG又は2DHGチャネルの約1,500オングストローム~約1,700オングストローム上方にあり、
前記中間導電性電極の下側表面が、前記2DEG又は2DHGチャネルの約3,900オングストローム~約4,200オングストローム上方にあり、
前記上側導電性電極の下側表面が、前記2DEG又は2DHGチャネルの約9キロオングストローム~約10キロオングストローム上方にある、IC。
【請求項7】
請求項1のICであって、エンハンスメントモード電界効果トランジスタ(FET)をさらに含む、IC。
【請求項8】
請求項7のICであって、前記エンハンスメントモードFETがp型ドープ窒化ガリウム(p‐GaN)FETである、IC。
【請求項9】
請求項8のICであって、前記電流源が、AC/DC電力コンバータ内のスタートアップ回路において、前記p‐GaN FETに、及び前記IC上に作製された金属‐絶縁体‐金属(MIM)キャパシタに結合されている、IC。
【請求項10】
請求項1のICであって、前記2DEG又は2DHGチャネルを支持するために、窒化ガリウム(GaN)半導体層と窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)半導体層との間のインタフェースをさらに含む、IC。
【請求項11】
請求項1のICであって、前記導電性電極が多層構造を含み、
前記多層構造が、
約300オングストローム~約500オングストロームの厚みを有する、チタン(Ti)の下側層と、
前記Tiの層の上に、約750オングストローム~約1,250オングストロームの厚みを有する、アルミニウム銅(AlCu)の中間層と、
前記AlCuの層の上に、約400オングストローム~約600オングストロームの厚みを有する、窒化チタン(TiN)の上側層と、
を含む、IC。
【請求項12】
請求項1に記載のICであって、
エンハンスメントモード電界効果トランジスタ(FET)と、2DEGベース又は2DHGベースの抵抗器と、金属‐絶縁体‐金属(MIM)キャパシタとを、前記空乏モード電流源を備える前記ICの上にさらに含み、
前記エンハンスメントモードFETと前記抵抗器の双方が、それぞれ、前記抵抗器の第1の端子と第2の端子との間、前記エンハンスメントモードFETのドレインとゲートとの間、及び前記エンハンスメントモードFETのゲートとソースとの間で、それぞれの2DEG又は2DHGチャネルを支持するために前記第1及び第2の半導体層を用いる、IC。
【請求項13】
集積回路(IC)を製造するための方法であって、前記方法が、
基板の上に第1の半導体層を形成することと、
前記第1の半導体層の上に第2の半導体層を形成することと、
空乏モード電流源を形成することと、
を含み、
前記第1及び第2の半導体層が、二次元電子ガス(2DEG)又は二次元ホールガス(2DHG)を支持するように構成されており、
前記空乏モード電流源を形成することが、
前記第1の半導体層の上に2DEG又は2DHGチャネルをパターン化して、前記2DEG又は2DHGチャネルのパターン化されたエリアを提供することと、
前記第2の半導体層の上に誘電体層を形成することと、
前記誘電体層をエッチングして、前記2DEG又は2DHGチャネルへの第1及び第2のコンタクト窓を開口することと、
少なくとも一部を前記第1及び第2のコンタクト窓内に、前記2DEG又は2DHGチャネルのそれぞれの端部に第1及び第2のコンタクトを提供するための1つ又は複数のコンタクト層を形成することと、
前記第1のコンタクトに第1の配線を、前記第2のコンタクトに第2の配線を設けて、前記空乏モード電流源を二端子デバイスとして提供することとによって成され、
前記第1のコンタクトが、前記誘電体層の上方にあり、前記第1のコンタクトと前記第2のコンタクトとの間で前記2DEG又は2DHGチャネルの少なくとも一部の上に延在する、導電性電極を含み、前記導電性電極の一部が前記2DEG又は2DHGチャネルの或る点の上に延在し、前記点と前記第1の端子との間の前記2DEG又は2DHGに沿った第1の距離が、前記点と前記第2の端子との間の前記2DEG又は2DHGチャネルに沿った第2の距離よりも大きい、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記誘電体層が第1の誘電体層であり、前記導電性電極が下側導電性電極であり、前記方法がさらに、
前記第1の誘電体層と、前記第1及び第2のコンタクトと、前記下側導電性電極との上に第2の誘電体層を形成することと、
前記第1及び第2の導電性コンタクト窓を、前記第2の誘電体層を介して、前記第1及び第2のコンタクトまで開口するように、前記第2の誘電体層をエッチングすることと、
少なくとも一部を前記第1及び第2の導電性コンタクト窓内に、前記第1又は第2のコンタクトにそれぞれの第1及び第2の導電性コンタクトを提供するための金属層と、前記第2の誘電体層の上方にある前記下側導電性電極の上にある前記第1又は第2の導電性コンタクトのうちの1つから延在する第2の導電性電極とを形成することと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記金属層が中間金属層であり、前記第2の導電性電極が中間導電性電極であり、前記方法がさらに、
前記第2の誘電体層と、前記第1及び第2の導電性コンタクトと、前記中間導電性電極との上に第3の誘電体層を形成することと、
前記第3の誘電体層を介して前記第1及び第2のコンタクトまで第1及び第2の窓を開口するように、前記第3の誘電体層をエッチングすることと、
少なくとも一部を前記第1及び第2の窓内に、前記第1又は第2の導電性コンタクトを前記第1及び第2の窓を介し前記第3の誘電体層を介して延在するように、及び前記第3の誘電体層の上方にある前記中間導電性電極の上を前記第1又は第2の導電性コンタクトのうちの1つから延在する上側導電性電極を形成するように、上側金属層を形成することと、
を含む、方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、前記導電性電極の下側表面が、前記2DEG又は2DHGチャネルの約1,500オングストローム~約1,700オングストローム上方にある、方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、
前記第1の半導体層が窒化ガリウム(GaN)であり、
前記第2の半導体層が窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)であり、
前記誘電体層が窒化ケイ素(SiN)であり、
前記導電性電極が多層構造を含み、
前記多層構造が、
チタン(Ti)の下側層と、
前記TIの層の上方のアルミニウム銅(AlCu)の中間層と、
前記AlCuの層の上方の窒化チタン(TiN)の上側層と、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法であって、前記方法が、前記空乏モード電流源を備える前記IC上に、エンハンスメントモード電界効果トランジスタ(FET)を作製することをさらに含み、前記方法がさらに、
前記誘電体層を形成する前に、前記第2の層の上にドープ半導体の第3の層を形成することと、
前記第3の層の上に、パッシベーション層を形成することと、
前記第3の層と前記パッシベーション層とを前記エンハンスメントモードFETのゲートのエリアに残すように、前記第3の層と前記パッシベーション層とを選択的に除去することと、
前記コンタクト層を形成した後に、前記誘電体層と前記パッシベーション層とを介して前記第3の層まで選択的にエッチングして、前記エンハンスメントモードFETの前記ゲートの前記エリアに窓をつくることと、
前記エンハンスメントモードFETの前記ゲートの前記エリアに、金属ゲートを形成することと、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記第3の層が窒化ガリウムドープのp型(p‐GaN)であり、前記パッシベーション層が窒化シリコン(SiN)であり、前記金属ゲートがタングステンチタン合金(TiW)を含む、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、
前記空乏モード電流源及び前記エンハンスメントモードFETを備える前記IC上に、2DEGベース又は2DHGベースの抵抗器と金属‐絶縁体‐金属(MIM)キャパシタとを作製することをさらに含み、
前記抵抗器が、前記抵抗器の第1の端子と前記抵抗器の第2の端子との間の抵抗性のパターン化された2DEG又は2DHGチャネルを支持するために、前記第1及び第2の半導体層を用いており、
前記方法が、前記キャパシタを形成するために、絶縁層によって分離される容量性プレートとして金属層を形成することをさらに含む、方法。
【請求項21】
集積回路(IC)であって、
エンハンスメントモード窒化ガリウム(GaN)電界効果トランジスタ(FET)と、
2次元電子ガス(2DEG)又は2次元ホールガス(2DHG)を支持する半導体間インタフェースを含む、抵抗器と、
金属‐絶縁体‐金属(MIM)キャパシタと、
空乏モード電流源と、
を含み、
前記空乏モード電流源が、
前記半導体間インタフェースが或るエリアの上にパターン化されて、 2DEG又は2DHGチャネルを前記パターン化されたエリア内に提供する、前記半導体間インタフェースと、
前記空乏モード電流源の負端子に結合される金属フィールドプレートであって、前記パターン化されたエリアの一部の上に延在する、前記金属フィールドプレートと、
を含む、
集積回路(IC)。
【請求項22】
請求項21に記載のICであって、
前記電流源の正端子が、前記GaN FETのドレインに結合されており、
前記電流源の前記負端子が、前記GaN FETのゲートと、前記MIM窒化物キャパシタの正端子とに結合されており、
前記MIM窒化物キャパシタの負端子が、前記抵抗器の負端子に結合されており、
前記GaN FETのソースが、前記抵抗器の正端子に結合されている、IC。
【請求項23】
請求項22に記載のICであって、前記GaN FETが第1のGaN FETであり、前記ICが第2のGaN FETをさらに含み、
前記第2のGaN FETが、
前記第1のGaN FETの前記ゲートと前記電流源の前記負端子と前記MIM窒化物キャパシタの前記負端子とに結合される、ドレイン、
前記第1のGaN FETの前記ソースと前記抵抗器の正端子とに結合される、ゲート、及び
前記MIM窒化物キャパシタの前記負端子と前記抵抗器の前記負端子とに結合される、ソース、
を含む、IC。
【請求項24】
請求項21に記載のICであって、前記電流源が、前記電流源にわたる約10Vを超える電圧で、約100nA~約10μAの飽和電流を有する、IC。
【請求項25】
請求項21に記載のICであって、前記電流源の前記金属フィールドプレートが、前記2DEG又は2DHGチャネルの約1,500オングストローム~約1,700オングストローム上方にある、IC。
【請求項26】
集積回路(IC)を製造するための方法であって、前記方法が、
基板の上に第1の窒化ガリウム(GaN)ベースの半導体層を形成することと、
前記第1の半導体層の上に、第2のGaNベースの半導体層を形成することと、
空乏モードトランジスタエリアに第1のエピ構造を、抵抗器エリアに第2のエピ構造を、及びエンハンスメントモードFETエリアに第3のエピ構造を形成するように、前記第1及び第2のGaNベースの半導体層をパターン化することと、
前記第2の半導体層の上に誘電体層を形成することと、
前記第1のエピ構造の相対する端部において第1及び第2のコンタクト窓を開口するように前記誘電体層をエッチングすることと、
少なくとも一部を前記第1及び第2のコンタクト窓内に、1つ又はそれ以上のコンタクト層を形成することと、
を含み、
前記1つ又はそれ以上のコンタクト層を形成することが、
第1及び第2のコンタクトと、
前記誘電体層の上方であり、前記第1のエピ構造の少なくとも一部の上に延在する、導電性ゲート電極と、
を提供するためである、
方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、前記導電性ゲート電極が、前記第1及び第2のコンタクトと連続していない、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、概して半導体製造に関し、より具体的には、高電圧空乏モード電流源、高電圧空乏モードトランジスタ、及び、エンハンスメントモードプロセスにおいて空乏モード電流源又はトランジスタを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電流源は、少なくとも或る範囲の電圧について、その電流源にわたる電圧とは独立した電流を送達又は吸収する電子回路である。単純な非理想的な電流源は、抵抗器と直列の電圧源から構成することができる。そのような電流源から提供される電流の量は、オームの法則に従って、その抵抗器にわたる電圧降下とその抵抗値との比によって求められる。
【0003】
窒化ガリウム(GaN)電界効果トランジスタ(FET)は、シリコンFETに比べて、重量、サイズ、コスト、スイッチング速度、及びエネルギー消費において利点をもたらし、5G整流器、モータドライブ、及びポータブルコンピュータに電力供給したりモバイルデバイスバッテリを充電したりするために用いられ得るAC/DC電力コンバータなどの応用例において用いられる。GaNデバイスは、エンハンスメントモード(e-GaN)と空乏モード(d-GaN)のタイプで提供される。空乏モードデバイスは、そのゲート・ソース間電圧がゼロであるときにノーマリーオンであるのに対し、エンハンスメントモードのFETは、そのゲート・ソース間電圧がゼロであるときにノーマリーオフである。エンハンスメントモードFETは、ゲート電圧を、NMOS回路においてソース電圧よりも大きく、PMOS回路においてソース電圧よりも低く維持することによって、オンにすることができる。エンハンスメントモードFETは、概して電源スイッチとして用いられる。
【0004】
固体物理学において、二次元電子ガス(2DEG)は、半導体構造内で二次元状にタイトに封じ込められている電子の気体である。電子ガスのタイトな封じ込めは、三次元における動きに対して量子化されたエネルギー準位に導く。それゆえ、電子は、三次元の半導体構造に埋め込まれた二次元状シートのように見受けられる。電子ではなく正孔の類似構造は、二次元ホールガス(2DHG)と呼ばれる。
【発明の概要】
【0005】
或る例が、二端子空乏モード電流源を含む集積回路(IC)である。電流源は、空乏モード電流源の第1の端子と空乏モード電流源の第2の端子との間に結合された、2DEG又は2DHGチャネルを含む。第1の端子に結合された導電性電極が、2DEG又は2DHGチャネルの上方にあり、少なくともその一部の上に延在する。
【0006】
ICを製造する例示の方法が、基板の上に第1の半導体層を形成することと、第1の半導体層の上に第2の半導体層を形成することと、を含む。第1及び第2の半導体層は、2DEG又は2DHGを支持するように構成され。この方法はさらに、IC上に空乏モード電流源を形成することを含む。空乏モード電流源を形成することは、第1の半導体層の上に2DEG又は2DHGチャネルをパターン化して、2DEG又は2DHGチャネルのパターン化された領域を設けることを含む。空乏モード電流源を形成することはさらに、第2の半導体層の上に誘電体層を形成することと、2DEG又は2DHGチャネルへの第1及び第2のコンタクト窓を開口するように誘電体層をエッチングすることと、を含む。空乏モード電流源を形成することはさらに、1つ又は複数のコンタクト層を、少なくともその一部を第1及び第2のコンタクト窓内に(例えば、1つ又は複数のオーミック層を堆積及びエッチングすることによって)形成して、2DEG又は2DHGチャネルのそれぞれの端部に第1及び第2のコンタクトを設けることを含み、第1及び第2のコンタクトの少なくとも一方が、誘電体層の上方であり、第1のコンタクトと第2のコンタクトとの間で2DEG又は2DHGの少なくとも一部の上を延在する、導電性電極を含む。導電性電極の一部が、2DEG又は2DHGチャネル上の或る点の上に延在する。その点と第1の端子との間の、2DEG又は2DHGに沿った第1の距離が、その点と第2の端子との間の、2DEG又は2DHGに沿った第2の距離よりも大きい。第1の配線が第1のコンタクトに設けられ、第2の配線が第2のコンタクトに設けられて、空乏モード電流源を二端子デバイスとして提供する。
【0007】
別の例が、エンハンスメントモードのGaN FETと、二次元電子ガス(2DEG)又は二次元ホールガス(2DHG)を支持する半導体間インタフェースを有する抵抗器と、金属-絶縁体-金属(MIM)キャパシタと、空乏モード電流源とを含む、ICである。電流源は、パターン化されたエリアに2DEG又は2DHGチャネルを設けるように或るエリアの上に半導体間インタフェースを含む。電流源はさらに、空乏モード電流源の負端子に結合された金属フィールドプレートを含み、金属フィールドプレートは、パターン化されたエリアの一部の上に延在する。
【0008】
別の例が、空乏モードトランジスタを含むICである。空乏モードトランジスタは、空乏モードトランジスタのドレイン端子と空乏モードトランジスタのソース端子との間に結合される2DEG又は2DHGチャネルを含む。空乏モードトランジスタのゲート端子に結合される導電性電極が、2DEG又は2DHGチャネルの上方にあり、2DEG又は2DHGチャネルの少なくとも一部の上に延在する。
【0009】
ICを製造する例示の方法が、基板の上に第1のGaNベースの半導体層を形成することと、第1の半導体層の上に第2のGaNベースの半導体層を形成することと、を含む。第1及び第2の半導体層は、例えば、2DEG又は2DHGチャネルにおいて2DEG又は2DHGを支持するように構成することができる。この方法はさらに、第1及び第2のGaNベースの半導体層をパターン化して、空乏モードトランジスタエリアに第1のエピ構造を、抵抗器エリアに第2のエピ構造を、及びエンハンスメントモードFETエリアに第3のエピ構造を形成することを含む。この方法はさらに、第2の半導体層の上に誘電体層を形成することを含む。この方法はさらに、第1のエピ構造の相対する端部において第1及び第2のコンタクト窓を開口するように、誘電体層をエッチングすることを含む。この方法はさらに、少なくとも一部を第1及び第2のコンタクト窓内に、第1及び第2のコンタクトを設けるための1つ又は複数のコンタクト層と、誘電体層の上方であり第1のエピ構造の少なくとも一部の上に延在する導電性電極と、を形成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スタートアップ回路のプリチャージ回路内に2DEG又は2DHGベースの電流源を含む、例示の電力コンバータシステムを示すブロック図である。
【0011】
図2】スタートアップ回路を含む例示の電力コンバータシステムのブロック図である。
【0012】
図3図2の電力コンバータシステムにおいて用いることができる、例示のスタートアップ回路のブロック図である。
【0013】
図4A】エンハンスメントモード製造プロセスに従って製造された4つの例示のデバイスの断面図である。
図4B】エンハンスメントモード製造プロセスに従って製造された4つの例示のデバイスの断面図である。
【0014】
図5】2DEG又は2DHGチャネルの例示の抵抗性のパターン化されたエリアの見下げ図である。
【0015】
図6】4つの異なる2DEGベースのデバイスについての例示の電流電圧曲線のグラフであり、1つは、フィールドプレートがなく、3つは、2DEGチャネルから様々な距離にあるフィールドプレートを備える。
【0016】
図7】2つの異なる2DEGベースのデバイスについての例示の電流電圧曲線のグラフであり、双方ともフィールドプレートを有するが、様々な2DEGチャネル抵抗を有する。
【0017】
図8A図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8B図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8C図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8D図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8E図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8F図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8G図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8H図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8I図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8J図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8K図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8L図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8M図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8N図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8O図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8P図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8Q図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8R図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8S図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8T図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8U図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8V図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8W図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8X図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8Y図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
図8Z図4A及び図4Bのデバイスに至る、例示の製造工程を示す断面図である。
【0018】
図9】IC上に空乏モード電流源を製造する例示の方法を示すフローチャートである。
【0019】
図10図4Aの空乏モード電流源の断面図である。
【0020】
図11】異なる例示の空乏モードトランジスタの断面図である。
図12】異なる例示の空乏モードトランジスタの断面図である。
図13】異なる例示の空乏モードトランジスタの断面図である。
図14】異なる例示の空乏モードトランジスタの断面図である。
図15】異なる例示の空乏モードトランジスタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
特定の電気回路は、デバイス充電システム用の電力供給源など、電力が印加されると開始するように設計されている。いくつかの場合において、印加された電力は高電圧の形態をとり、スタートアップ回路要素は高電圧耐性能力を有する必要がある。高電圧スタートアップ回路は、接合電界効果トランジスタ(JFET)又は他の空乏モードトランジスタなど、高電圧のノーマリーオントランジスタを含むことがある。電力が初期的に印加されると、ノーマリーオントランジスタは、補助供給電圧なしにオンになることができる。その後、ノーマリーオントランジスタは、供給電圧の許容値に到達するまで、キャパシタを充電するために用いられる。それゆえ、ノーマリーオントランジスタは、スタートアップでは電流源として動作し、他の回路要素が、スタートアップ後に、低漏洩スタートアップ後動作のために、ノーマリーオントランジスタをディセーブルすることができる。しかしながら、外部(ダイ外)JFET又は他の外部空乏モードトランジスタを用いることは、製造コスト及び回路面積の観点から高価であり、マスク数を増やしたり製造プロセスフローに他の変更を行ったりひいてはダイの製造コストを増加させたりすることなく、JFET又は他の空乏モードトランジスタをエンハンスメントモードGaN製造プロセスに統合することは未だできていない。本明細書に記載の空乏モード電流源デバイスは、付加的なマスク又は材料を必要とするなどのエンハンスメントモードプロセスへの変更を必要とすることなく、エンハンスメントモードFETの構築のために設計されたプロセスにおいて製造することができる。それゆえ、本明細書に記載の電流源デバイス及び関連する製造方法は、ダイ外空乏モードFET、又はエンハンスメントモードFETと空乏モードFETとを同じダイ上に製造するために必要となるエンハンスメントモードプロセスに対して高価な変更を必要とすることなく、例えば、AC/DC電力コンバータにおいて有用なスタートアップ回路を提供する問題を解決する。
【0022】
図1のブロック図は、電力コンバータ102内のスタートアップ回路104におけるプリチャージ回路106の全て又は一部を形成することができる電流源108を備える、電力変換のためのシステム100を図示する。電力コンバータ102は、例えば、携帯電話又は他のモバイルデバイスにおけるバッテリを充電するために用いられ得るようなAC/DC電力コンバータであり得る。電力コンバータ102は、グリッド電圧に差し込まれたときに、それ自体で起動することができる。電流源108は、パターン化された抵抗性2DEG又は2DHGチャネル110と、チャネル110の上に配置される1つ又は複数の導電性電極112(例えば、金属フィールドプレート)とを、導電性電極がチャネルの見下げ図でチャネル110の上の被覆を提供するようにして含む。このような電極の例は、図4Aに示す例示の電流源426を参照して後述し、図中に電極434、436、438が図示されている。
【0023】
チャネル110は、2DEG又は2DHGを支持することができる2つ又はそれ以上の半導体層の間のインタフェースによって形成することができ、チャネルの全て又は一部が、チャネルの見下げ図に見られるように、パターン化されたエリア内に、例えば、ダメージ注入又はメサエッチングによって、チャネルパターン、例えば蛇行チャネルパターン、に画定され得る。例示の抵抗性チャネルパターン化が図5の見下げ図に図示されている。1つ又は複数の導電性電極112は、チャネル110の抵抗性のパターン化されたエリアの全体又は実質的な部分の上に延在することができるか、又はその上にあり得る。本明細書において用いられるように、「上にある」及びその変形は、見下げ図における実質的な空間的交差を指し、導電性電極112のうちの1つの金属とチャネル110を形成する半導電性層との間の直接的な接触を必要としない。例えば、チャネル110と1つ又は複数の導電性電極112との間に、1つ又は複数の誘電体(例えば、窒化物)層があり得る。例えば、1つ又は複数の導電性電極112の少なくとも1つが、電流源108におけるチャネル110のパターン化されたエリアの少なくとも10%の上にあり得る。例えば、1つ又は複数の導電性電極112の少なくとも1つが、チャネル110のパターン化されたエリアの少なくとも20%の上にあり得る。例えば、1つ又は複数の導電性電極112の少なくとも1つが、チャネル110のパターン化されたエリアの少なくとも50%の上にあり得る。例えば、1つ又は複数の導電性電極112の少なくとも1つが、チャネル110のパターン化されたエリアの少なくとも80%の上にあり得る。いくつかの例において、1つ又は複数の導電性電極112は、チャネル110の抵抗性のパターン化された部分の全てのエリアの上にある。見下げ図における、1つ又は複数の導電性電極112の少なくとも1つとチャネル110のパターン化されたエリアとの間の空間的交差の正確なパーセンテージは、チャネルの構成、所望の飽和電流、及び電流源108のピンチオフ電圧に依存し得る。
【0024】
スタートアップ回路104はまた、1つ又は複数のエンハンスメントモードFET114と、2DEG又は2DHGチャネルを含む少なくとも1つの抵抗器と、電流源108と同じダイ上に製造された金属-絶縁体-金属(MIM)キャパシタとを含むこともできる。電力コンバータ102内のスタートアップ回路104は、高電圧で低電流のDC経路(図示せず)を含むことができる。電力コンバータがAC又はDCの電力源に結合されると(例えば、AC電力を供給する壁コンセントに差し込まれると)、DC経路は、制御電圧を印加されることなく、スタートアップ回路104からDC電流を提供する。DC電流は、待機電力要件を満たすのに充分な小ささである必要があり得る。DC電流は、起動するために、電力コンバータ102のための供給電圧の出力を上げるために用いることができる。
【0025】
抵抗器116とは対照的に、電流源108は充分に低い飽和電流を有し、それゆえ、DC経路に、400Vから例えば10μA未満の電流を供給することができる。抵抗器116がそのような目的のために(電流源として)用いられる場合は、必要とされる抵抗器は1mmを超えるダイ面積を必要とし得、そのことでダイのコストが大きく増加し得る。電流源108を備えるシステム100は、その中で空乏モードトランジスタデバイスが利用不可能であるか、付加的なフォトリソグラフィマスクを必要とし得る、エンハンスメントモードGaNプロセスなどのオールエンハンスメントモードプロセスを用いて製造された電力コンバータICにおける集積されたスタートアップ回路104を許容する。電流源108は、FET114をつくるために用いるエンハンスメントモード製造プロセスを付加的なマスク層や材料を用いて改変する必要なく、エンハンスメントモードFET114(例えば、GaN FET)と同じダイ上に製造することができ、例えば少なくとも650Vまでの、高電圧を扱うことができる電流源特性を有する空乏モードデバイスを提供する。空乏モード電流源108は、電力コンバータ102のための供給電圧を増大させるためにエンハンスメントモードトランジスタ(例えば、FET114)をオンにするためのプリチャージデバイスとして用いることができる。
【0026】
一例として、空乏モード電流源108は、1つ又は複数の導電性電極112として、本明細書中において時折フィールドプレートと称する導電性材料(例えば、金属)を、パターン化された2DEG又は2DHGチャネル110の上に置くことによって、エンハンスメントモードGaN製造プロセスにおいて形成することができる。フィールドプレート112は、電流源108の低電圧(「ソース」)端子に接続され得る。2DEG又は2DHGチャネル110と、上にあるフィールドプレート金属との間の負の電位差は、2DEG又は2DHGチャネル110を部分的に空乏化させ、フィールドプレート112なしで同様に構成され得る抵抗器116と比較して、デバイスの飽和電流が減少する。結果的に得られる電流は、パターン化された2DEG又は2DHGチャネル110の公称抵抗値によって設定することができる。電流源108の動作は空乏モードデバイスの動作と類似しており、抵抗器の高電圧端子がドレインであり、金属フィールドプレートがゲートであり、低電圧端子が縮退ソースである。電流源108は、エンハンスメントモードデバイスを製造するために用いられるもの以外の付加的なマスクなしで、エンハンスメントモードのみのプロセスにおいて実装することができる。製造された電流源の出力電流において高精度を必要としないスタートアップ回路の応用例では、約100nA~約10pAの出力電流を有する電流源の製造で充分である。
【0027】
図2のブロック図は、AC電圧VLINEを提供する(例えば、コンバータ又はコンバータを組み込むデバイスを壁コンセントに差し込むことによって)AC電力源に結合することができる、例示の電力コンバータシステム200を示す。一例として、電力コンバータは、モバイルデバイス(例えば、携帯電話又はタブレット若しくはノートブックコンピュータ)のためのコンセントに差し込み可能な電源として実装され得る。電力コンバータシステム200は、高電圧ドメイン(例えば、約400Vドメイン)において動作する高電圧部分202と、低電圧ドメイン(例えば、約5~6Vドメイン)において動作する低電圧部分204とを有する、AC/DC電力コンバータを含む。高電圧部分202は、AC/DC変換を実装するように構成することができる。降圧IC206、補助キャパシタCAUX、及びシャント抵抗器RSHUNTを含むことができる降圧レギュレータが、DC電圧VIN-GROUNDを、電力コンバータシステム200が電力を供給する電力消費デバイスによって使用可能であるより低い電圧VOUにまで降圧させるように構成される。降圧IC206は、スイッチ電圧ノードVSWとドレイン電圧ノードVDDとの間に結合されるスタートアップ回路208と、パルス幅変調器(PWM)210を含むことができ、PWM210は、例示のシステム210にFET Qとして図示され、そのゲートがPWM210の制御出力に結合されるスイッチを制御する。補助キャパシタCAUXが、ドレイン電圧ノードVDDと接地との間に結合される。ノードVSWにおけるスイッチ電圧は、コンバータの主電源FET Qによって能動的に切替えられ、それゆえ、電力スイッチQのドレインは、ノードVSWに結合される。FET Qのソースは、シャント抵抗器RSHUNTに結合される。高電圧ドメイン202における回路要素は、ダイオードブリッジ整流器212と、電磁障害(EMI)フィルタ214と、還流ダイオードDFWと、出力キャパシタCOUTと、出力インダクタLOUTとを含み得る。ダイオードブリッジ整流器212は、高電圧AC源VLINEの正端子と負端子との間に結合され、接地とEMIフィルタ214との間にも結合される。EMIフィルタ214は、ダイオードブリッジ整流器212と入力電圧ノードVINとの間に結合される。還流ダイオードDFWは、スイッチ電圧ノードVSWと入力電圧ノードVINとの間に結合される。出力キャパシタCOUTは、出力の負端子と正端子との間に、電圧差VOUTを有して結合され、正の出力端子が入力電圧ノードVINである。出力インダクタLOUTは、出力の負端子とスイッチ電圧ノードVSWとの間に結合される。コンバータシステム200の出力電圧VOUTは、出力キャパシタCOUT両端で計測される。コンバータシステム200は、PWM210の出力とFET Qのゲートとの間の接続と、FET QのソースとPWM210との間のフィードバック接続216とによって形成される制御ループを含む、スイッチング構成要素PWM210及びFET Qを動作させるために特定の最小限の供給電圧を必要とする場合がある。
【0028】
電力コンバータシステム200のためのシステム起動は、例えば、電力コンバータシステム200がまず壁コンセントに差し込まれたとき、又は別の方式でAC電圧VLINEがまず供給されたときに生じる。PWM210を含むコントローラは、その制御動作を開始するために、スタートアップ回路出力ノードVDDにおける電位が充分に低い電圧(例えば、5V、10V、又は15V)であることを必要とする場合がある。スタートアップ回路出力ノードVDDにおいて必須の電圧のレベルが利用可能になるまで、コントローラは動作することができず、起動を制御することができない。エンハンスメントモードFETは、そのゲート・ソース間電圧がゼロの時にノーマリーオフであり、起動時に、FETをオンにするように制御するために電力供給された利用可能なコントローラがないので、スタートアップ回路出力ノードVDDで必須の電圧を生成するためにエンハンスメントモードFETをオンにすることは可能でない場合がある。
【0029】
ノーマリーオンである(ゲートの下にあるチャネルが0Vゲートバイアスで部分的に又は完全にオンである)空乏モードデバイスを用いて、ノードVDDにおける電圧が、図示の例においてPWM210であるコントローラに電力供給するために充分となる(例えば、約5V~約15V)まで補助キャパシタCAUXをゆっくり充電する小電流ISMALLを起動時に提供することができる。小電流ISMALLは、AC電圧VLINEが提供されている限り(例えば、電力コンバータシステム200が壁コンセントに差し込まれている限り)、オンである。待機電力要件を満たすために、小電力ISMALLは10μAより高くないものとする。小電流ISMALLを提供するための、個別のJFET又はPCB上の他の個別の空乏モードトランジスタなどのオフチップデバイスの使用は、コンバータシステム200のコストと複雑さを増加させる。本明細書に記載するように、2DEGベースの電流源は、高電圧(例えば、650V)のe-GaN FETを製造するために用いられる同じプロセスフローを用いて製造することができるオンチップデバイス(降圧IC206上のデバイス)を提供することができる。
【0030】
図3Aは、図2のスタートアップ回路208を実装するために用いることができる、例示のスタートアップ回路300のブロック図である。スタートアップ回路300は、エンハンスメントモードトランジスタQと、電流制限トランジスタQと、電流制限抵抗器RLIMと、キャパシタCと、コンパレータ(例えば、オペアンプ)304を含む電圧レギュレーション回路要素と、を含み、コンパレータ304は、負入力端子に非ゼロ基準電圧VREFが、正の入力端子にドレイン電圧VDDが提供され、それを受けて電圧レギュレーション出力電圧VSDを印加する。エンハンスメントモードトランジスタQのドレインは、プリチャージ回路302の正端子と同様に、スイッチ電圧ノードVSWに結合される。エンハンスメントモードトランジスタQのゲートと、電流制限トランジスタQのドレインと、キャパシタCの正端子とは、電圧ノードVGS1においてプリチャージ回路303の負端子に結合される。エンハンスメントモードトランジスタQのドレインは、電圧ノードVS1において、電流制限トランジスタQのゲートと、電流制限抵抗器RLIMの第1の端子とに結合される。電流制限トランジスタQのソースは、ドレイン電圧ノードVDDにおいて、キャパシタCの負端子と、電流制限抵抗器RLIMの第2の端子とに結合される。ドレイン電圧ノードVDDと接地との間に結合される図3の補助キャパシタCAUXが、図2の補助キャパシタCAUXに対応する。システムの起動の際、プリチャージ回路302は、図2のスイッチ電圧ノードVSWに対応するスタートアップ回路入力電圧ノードVSWから小さな定電流を提供する。プリチャージ回路302は、エンハンスメントモードトランジスタQのゲートにおいて、ノードVGS1に充電を提供して、エンハンスメントモードトランジスタQをオンにする。エンハンスメントモードトランジスタQのゲートと、図2における同じ名称のノードに対応するスタートアップ回路出力ノードVDDとの間に、キャパシタCが結合される。
【0031】
スタートアップ回路入力電圧VSWにおける増加率がエンハンスメントモードトランジスタQをオンにするには不充分であったとしても、プリチャージ回路302の入力におけるスタートアップ回路入力電圧VSWの上り勾配がプリチャージ回路302をオンにし、それが、キャパシタC及びエンハンスメントモードトランジスタQのゲート・ソース間容量を充電し、そのことがエンハンスメントモードトランジスタQをオンにさせる。図3B図3Eは、互いに対する及び時間に対する、スタートアップ電圧及び電流レベルの例を図示する。図3Bは、スタートアップ回路入力ノードにおける電圧VSWの上昇を示す。図3Cは、プリチャージ回路302の出力及びエンハンスメントモードトランジスタQのゲートにおける、ノードVGS1における若干後の電圧の上昇を示す。図3Dは、スタートアップ回路入力ノードVSWとエンハンスメントモードトランジスタQのドレインとの間の、さらに後の電流ID1の上昇を示す。図3Eは、スタートアップ回路入力ノードVDDにおける、さらに後の電圧の上昇を示す。
【0032】
ノーマリーオフのエンハンスメントモードFETは、エンハンスメントモードデバイスが、そのゲート・ソース間電圧がゼロであるときに回路の起動時にオンになることができないため、プリチャージ回路302を実装するには好適なデバイスではない。プリチャージ回路302は、ノーマリーオン空乏モードFETとして実装され得る。しかしながら、エンハンスメントモードトランジスタ及び空乏モードトランジスタはその製造プロセスにおいて異なるマスクを必要とする場合があるため、例えばプリチャージ回路302を実装するために用いられ得るような、エンハンスメントモードFET Qなどのエンハンスメントモードトランジスタと、空乏モードトランジスタとの双方を、同じウェハ上に集積することは、容易にはいかない。それゆえ、空乏モードFETとしてプリチャージ回路302を実装することは、空乏モードFETをオフチップ構成要素とするか、エンハンスメントモードFET Qを製造するために用いるプロセスを空乏モードデバイスの製造に適応するように改変する必要があり得るが、これらのオプションのいずれも、スタートアップ回路300の製造のコストと複雑度を増加させる。
【0033】
図4A及び図4Bは、エンハンスメントモード製造プロセスに従って製造された、4つの例示のデバイスの断面図である。それゆえ、4つのデバイス402、412、418、426は、同じウェハ及びダイ上に製造することができ、これらのデバイスの複数の事例を一緒に製造及び有線接続して、電子回路を形成することができる。図4Aは、金属ソース端子404と、ゲート406と、金属ドレイン端子408とを有する、例示の高電圧(例えば、650V)エンハンスメントモードFET402を示す断面である。エンハンスメントモードFET402のチャネルは、非常に薄い電子のシートを有する2DEG410に適応する。2DEGは、水平破線として図4A及び図4Bに示されている。図4Aはさらに、第1の金属端子428と第2の金属端子430とを有する、空乏モード電流源426を示す。空乏モード電流源426は、エンハンスメントモードFET402によって使用されるものと同じチャネル層を用いることができる。空乏モード電流源426のチャネルは、2DEG432に適応する。空乏モード電流源426は、2DEG432の上にあるフィールドプレート434、436、438を含む。フィールドプレート434、436、438は、電流源426に、高入力電圧、例えば、最大650V又は1000Vで動作することを可能にする。一例として、中間フィールドプレート436が、下側フィールドプレート434の完全に上にあり得、上側フィールドプレート438が、中間フィールドプレート436の完全に上にあり得る。図4Bは、第1の金属端子414と第2の金属端子416とを有する、MIM窒化膜キャパシタ412を示す断面である。窒化膜キャパシタ412は、エンハンスメントモードFET402と同じプロセスフローを用いて、いくつかの例において付加的な材料若しくはマスクなしに、又は他の例において1つのみの付加的なマスク層を用いてつくることができる。図4Bはさらに、第1の金属端子420と第2の金属端子422とを有する、2DEGベースの抵抗器418を示す。2DEGベースの抵抗器418は、エンハンスメントモードFET402によって用いられるものと同じチャネル層を用いることができる。抵抗器418のチャネルは、2DEG424に適応する。2DEGベースの抵抗器418は、付加的な材料又はマスクなしで、エンハンスメントモードFET402と同じプロセスフローを用いて同様につくることができる。
【0034】
4つのデバイス402、412,418,426の全てが同じ材料及びマスクを用いることができるため、4つのデバイスの全てを、単一のICの一部として、同じウェハ及びダイ上に製造することができる。図4A及び図4Bの4つの異なるデバイス402、412、418、426を形成する際に、いくつかの材料層を用いることができる。2DEG410、424、432をつくるために用いられるエピ構造は、2DEG410、424、432が存在するインタフェースにおいて、例えばGaNの、第1の半導体層440と、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)の、第2の半導体層(バリア)層442とを含み得る。エピ構造におけるドープ半導体の第3の層444を用いて、FET402のゲート406をつくることができる。このドープ半導体は、例えば、GaNドープされたp型(p-GaN)であり得る。この第3の層444には、例えば窒化ケイ素(SiN)の薄いパッシベーション層446がその上に設けられ得る。特定の位置448において、図5に関して後述するように、デバイス402、412、418、426を互いから分離するため、及び/又は、2DEG抵抗器418及び電流源426を形成する際に用いられる蛇行パターンなどのパターンをエピ構造においてつくるために、エピ構造が損傷されるか又は層442がメサ状にエッチングされ得る。フォトリソグラフィツールがウェハに整合できるように、整合マーク450、452がエッチングされ得る。
【0035】
第1の誘電体層454は、例えば、窒化膜とし得る。2DEG410、424、432へのオーミックコンタクト404、408、420、422、428、430の一部を形成する第1のコンタクト金属層456は、チタン(Ti)の層と、Tiの層の上方のアルミニウム銅合金(AlCu)の層と、AlCuの層の上方の窒化チタン(TiN)の層と、AlCuの層の上方のチタンタングステン合金(TiW)の層とを含む、多層構造とし得る。図示の例において、第1のコンタクト金属層456は、電流源426の下側フィールドプレート434を形成する。第2の誘電体層460が、第1のコンタクト金属層456が第2のコンタクト金属層472に対して短絡することを防止する。第2の誘電体層460は、例えば、窒化膜とし得る。ゲート金属層464が、エンハンスメントモードFET402のゲートを形成し、ゲート金属層464は、例えばTiWとし得る。
【0036】
第3の誘電体層468は、例えば、窒化膜とし得る。第1の接着(glue)層472は、例えば、TiWとし得る。第2のコンタクト金属層476は、例えば、AlCuとし得る。図示の例において、第1の接着層472及び第2のコンタクト金属層476が共に、MIMキャパシタ412の底部プレート478と、電流源426の中間フィールドプレート436とを形成する。MIMキャパシタ412のプレート間誘電体を形成することができる第4の誘電体層480は、例えば、窒化膜とし得る。第2の接着層484は、例えば、TiWとし得る。第3のコンタクト金属層486は、例えば、AlCuとし得る。図示の例において、第2の接着層484及び第3のコンタクト金属層486が共に、MIMキャパシタ412の上側プレート488を形成する。
【0037】
第5の誘電体層490は、例えば、PECVD窒化膜とし得る。第3の接着層494は、例えば、TiWとし得る。第4のコンタクト金属層496は、例えば、AlCuとし得る。図示の例において、第3の接着層494及び第4のコンタクト金属層496が共に、電流源426の上側フィールドプレート438を形成する。第6の誘電体層498が、保護オーバーコート(PO)を形成することができ、例えば、下側酸化物層と上側窒化膜層を含み得る。例として、下側酸化物層は、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を用いて形成された二酸化シリコン(SiO)とし得、上側窒化膜層はSiNとし得る。他の例において、図示されていないが、POは省かれてもよく、デバイス402、412、418、426は、1つ又は複数のポリイミド被覆又は他のポリマーベースの膜で直接被覆されてもよい。
【0038】
デバイス402、418、426の任意のものの動作の間、対応する2DEG410、424、432が、第1の半導体層440と第2の半導体層442との間のインタフェースのすぐ下(例えば、第1の半導体層440がGaNの比較的厚い層であり、第2の半導体層442がAlGaNの比較的薄い層である場合、GaN/AlGaNインタフェースのすぐ下)に形成される。2DEG410、424、432は破線で示されているが、三次元において、2DEGは、例えば、第1の半導体層440と第2の半導体層442との間のインタフェースより約2nm下にあり得る、或る芯(centroid)を有する垂直次元におけるキャリア分布を有する電子雲である。いくつかの例において、2DEGを支持するエピ構造を有する代わりに、デバイス402、418、426は、例えば、上側のGaN/AlGaNインタフェースのすぐ上にホールガスが形成され得るように第2の厚いGaN層を薄いAlGaN層の上に設けることにより、2DHGを支持する(ホールガスが存在することを可能にする)エピ構造を有することができる。本明細書における2DEGの言及は、そのような代替例において2DHGを含むように理解されたい。
【0039】
図5は、例示の抵抗構成された2DEGチャネルパターン502の見下げ図であり、抵抗構成された2DEGチャネルパターン502は、抵抗器418における2DEG424、又は電流源426における2DEG432(又は2DEGの代替として2DHGを用いる例において、対応する2DHG)の全て又は一部を制限するために用いることができる。抵抗構成された2DEGパターン502は、図5に示すエリア内に制限されており、領域510内の非蛇行部分を含み、領域512内の規則的な蛇行部分を含むものとして示されているが、他の例(図示せず)において、パターン502の(例えば、図5の左下にある)第1の端部504とチャネルパターン502の(例えば、図5の右上にある)第2の端部506との間で電圧降下が観察される、同じ抵抗効果を実現する他の二次元形態をとることができる。オーミックコンタクトは、チャネルパターン502の第1の端部504及び第2の端部506に対して(例えば、図4における、抵抗器418における金属端子420及び422それぞれによって、又は電流源426における金属端子428及び430それぞれによって)成され得る。チャネル502の外側の全てのエリアを網羅し、2DEGを支持せず、抵抗構成された2DEGパターン502を画定する、エリア508は、例えば、図4A及び図4Bに示すデバイス分離部448をつくるために用いるのと同じエピ構造ダメージ又はメサ状エッチングプロセスによって、つくることができる。図4に示すように、電流源426における抵抗構成された2DEG432の上にあるフィールドプレート434、436、438は、端子430と導電接続することができ、これは、電流源426の負のポート(下側電圧ポート又は「ソース」ポート)として働くことができる。電流源426の端子428、430にわたって、特にエリア506においてではあるが、金属フィールドプレート434、436、438の下以外の任意の個所に、電圧が印加されると、抵抗構成された2DEGパターン502にわたって電流の流れと電圧降下が存在する限り、正端子428における電圧よりも低い負制御電圧が、抵抗構成された2DEGパターン502における2DEG432を部分的に空乏化させる。それにより、電流源426の飽和電流が低下し、例えば、抵抗構成された2DEGパターン502のパターン化された部分のエリアを構成することによって、設定することができる。それゆえ、フィールドプレート434、436、438は、電流源426における2DEGパターン502にわたって非常に高い抵抗を維持しながら、電流源426における(例えば、端子428で)抵抗構成された2DEGパターン502の一端(例えば、端部504)に高電圧(例えば、650V以上)を印加することを可能にする。電流供給応用例では、電力スイッチングに用いられる、FET402などのトランジスタにおいて必要とされ得る高精度の閾値電圧Vthは、電力源426には不要である。
【0040】
図示の例において、図5のエリア504は、図4Aの下側電極434の重なりに対応し、図5のエリア506は、図4Aの中間電極436の重なりに対応し、図5のエリア508は、図4Aの上側電極476の重なりに対応する。(上側電極438を形成するために用いられる)第4のコンタクト金属層496を(中間電極436を形成するために用いられる)第2のコンタクト金属層476に接続するヴィア520が、図5の右下の15個の小さな正方形によって表されている。第2のコンタクト金属層476を(下側電極434を形成するために用いられる)第1のコンタクト金属層456に接続し、ひいては2DEGチャネル432に接続するコンタクトが、図5の左下の2つの矩形によって表されている。第2のコンタクト金属層476をゲート金属層464に接続する、図5の左側の4つの矩形によって表されるコンタクトは、最下電極434(図示せず)を形成するために、又は図12に示すような空乏モードトランジスタ又は電流源のコンタクト不連続ゲート電極1203を形成するためにゲート金属層464が用いられる例において、用いることができる。
【0041】
GaNデバイスにおける2DEG(又は2DHG)チャネルは、チャネルが、制限された伝導率又は有限の抵抗を有して導電性である(伝導率は電流を電圧で除算したものとして定義され、抵抗は電圧を電流で除算したものとして定義される)点で、シリコンベースのデバイスにおけるn型(又は、2DHG実装については、p型)ドープ領域になぞらえられる。図4Bに示す2DEG(又は2DHG)抵抗器418に関して上記するように、2DEG(又は2DHG)チャネル424は、シリコンにおける抵抗チャネルを形成するためにn型(又はp型)ドープ領域を用いることができるのと同様にして、GaNにおいて抵抗器を形成するために用いることができる。比較的大きい抵抗(低電流について高電圧降下)が望ましい場合、2DEG(又は2DHG)チャネルは、電流経路に対して比較的細くて長くなるようにパターン化することができる。このような比較的細長いパターン502が図5に示されている。キャリア(2DEG及びn型シリコンにおける電子、又は2DHG及びp型シリコンにおけるホール若しくは欠陥電子)の密度、ひいてはチャネルの抵抗は、電流の流れる方向に対して直交する電界によって変調されることができ、(図11図15に関して後述するように)電流源(例えば、空乏モード電流源426)又はトランジスタが形成される。電界は、例えば、2DEG(例えば、図4Aにおける2DEG432)と、その上方にある導電性電極(例えば、電流源の例を示す、図4Aにおけるコンタクト連続電極434、436、438、又はトランジスタ若しくは電流源の例を示す、図11図15におけるコンタクト非連続電極1103、1203、1303、1403、1503、1507)から生成することができる。電界の強度は、2DEG(又は2DHG)と電極との間の電位差を、2DEG(又は2DHG)と電極との間の距離で除算して定義される。キャリア密度、ひいては2DEG(又は2DHG)の伝導率を変調するために、少なくとも最小閾値の場の強度を提供することができる。
【0042】
最小閾値電界強度はチャネルと電極との間の距離に依存するため、2DEG(又は2DHG)に対する異なる分離距離(高さ)での電極について、異なる閾値電圧があり得、電流源又はトランジスタデバイス製造プロセスにおいて異なる金属層を用いて実装され得る。例えば、図4Aにおける空乏モード電流源426の上側電極436についての閾値電圧は、-200Vであり得る。一例として、次に、チャネル502の端部506における高い400V電位と、チャネル502の電極・コンタクト接続端部504における0Vの低い電位の結果、上側電極436とその下にある2DEG432との間の-400Vの電位差がもたらされる。この電位差によって生成される電界は、2DEG432における電子密度を低下させ、その抵抗を増加させる。電子密度の低下は、上側電極436によって変調された2DEG432の抵抗が、2DEG432を介して流れる電流が2DEG432において200Vの電圧降下を引き起こすのに充分高いところで、平衡状態に落ち着く。この抵抗変調は、上側電極436と2DEG432との間に介在する導電性層がなく、上側電極436が2DEG432の上方で2DEG432に最も近い、2DEG432の領域において最も観察される。図5の図及び向きにおいて、抵抗変調のこの特定の領域は、510と標示された領域の上方に位置する。そのため、本例において、400Vから200Vへの、少なくとも200Vの降下が、チャネル502のパターン化された部分の端部506と、領域506の頂部エッジの手前にある点(図4Aの中間電極の重なりに対応する)との間に生じる。電位が200Vを下回る2DEGの部分については、上側電極438(第4のコンタクト金属層496によって形成される)は、2DEG内の電子に対して実質的に影響を与えない。
【0043】
図5の図でエリア506として示される中間電極436は、エリア506の上端とエリア504の上端との間の領域に本質的に制限されるチャネル502に影響を与える。チャネル502内のこれらの点の間で、2DEGの電位は200Vから、例えば80Vまで降下する。下側電極434は、図5の図においてエリア506として示され、図4Aにおいて第1のコンタクト金属層456から作られるものとして示され、図12のものなど、いくつかの例において、ゲート金属層464からつくることができるが、下にある2DEGの電位が80Vから、例えば2Vまで降下する、領域510の上側部分に本質的に制限されるチャネル502に影響を与える。それゆえ、下側電極434の下にあるチャネル502の長さの非常に短い距離、図示する例において最大で合計約100nm、の後、下側金属電極434の下にある2DEG432の電位は、下側電極434の閾値電圧よりも低い。電気的な観点からは、一方で、電極434、436、438の金属が2DEGのパターン化されたエリアの蛇行部分512にわたって延在しても、又は、他方で、電極434、436、438の金属が領域510内のみにしか延在しなくても、空乏モード電流源426(又は、例として、図11図15の任意のものに図示される空乏モードトランジスタ)の働きには無関係である。なぜなら、チャネル502の、領域510とチャネル端部504との間の部分においてチャネルに対する電極434、436、438の影響が無く、2DEGとゲート電極との間の電圧差が、チャネル502の、領域510とチャネル端部504との間の一部において小さいからである。蛇行にパターン化された領域512内で、チャネル502の電圧はさらに、例えば、2Vから、0Vコンタクト430に電気的に結合する、チャネル502の端部504の0V電位まで降下することができる。
【0044】
領域512内の蛇行パターン化は、比較的小さい正方形に近いエリアのみを用いて、チャネル502に抵抗を付加する。蛇行パターン化領域512の抵抗は、電流源426の電流を設定する。領域510における2DEGの電圧が2Vである場合に、電流源426によって生成された電流は、チャネル502の蛇行パターン化された部分512に対する2V降下を、チャネル502の蛇行パターン化された部分512の抵抗で除算したものと等しい。この電流は、電流源426のコンタクト428と430との間の電位差が2Vを超えることを前提に、チャネル端部506と504との間(電流源426のコンタクト428と430との間)の電圧とは実質的に独立している。高電圧端子(図4Aのコンタクト428)に近い2DEG(又は2DHG)チャネルのパターン化されたエリアの上方にある、約0V電位を有する1つ又は複数の金属電極(例えば、図4Aの電極434、436、438、又は図11図15の電極1103、1203、1303、1403、1507など)を中に含めることは、空乏モード電流源(又は、いくつかの例において、空乏モードトランジスタ)として、デバイスの上記のチャネル空乏機能及び有用性をもたらす。
【0045】
したがって、意図する空乏モード電流源又はトランジスタ機能性を提供するには、電流源又はトランジスタの1つ又は複数の金属電極は、金属電極が蛇行パターン化された領域512の上にあるかどうかに関係なく、チャネル端部506の近くの少なくとも領域510に重なるようにされ得る。チャネル端部504に(例えば、図4Aにおけるコンタクト430において)1つ又は複数の金属電極を導電結合することで、空乏モードデバイスにトランジスタよりもむしろ電流源として作用させることができる。例えば、第1の電圧で設定される第1のコンタクトと、第1の電圧よりも高い第2の電圧(例えば、第1の電圧より少なくとも400V高い、例えば、第1の電圧よりも少なくとも600V高い)で設定される第2のコンタクトとを有する、二端子電流源として構成される空乏モードデバイスにおいて、第1のコンタクトに導電結合される電極を、少なくとも、第1の(低電圧)コンタクトよりも第2の(高電圧)コンタクトに近いエリアにおいて第1のコンタクトと第2のコンタクトとの間に走る2DEG又は2DHGチャネルに重なるように構成することができる。別の例として、第1の電圧で設定される第1のコンタクトと、第1の電圧よりも高い第2の電圧(例えば、第1の電圧より少なくとも400V高い、例えば、第1の電圧よりも少なくとも600V高い)で設定される第2のコンタクトとを有する、二端子電流源として構成される空乏モードデバイスにおいて、第1のコンタクトに導電結合される電極を、第1のコンタクトと第2のコンタクトとの間に走る2DEG又は2DHGチャネル上の或る点(この点は、例えば、図5の領域510内のチャネル502上の任意の点に対応する)の上にあるように構成することができ、そのため、その点(図5における領域510内)と第1の(低電圧)コンタクト(例えば、図5のチャネル端部504に対応する)との間の2DEG又は2DHGチャネルに沿った第1の距離が、その点(図5の領域510内)と第2の(高電圧)コンタクト(図5のチャネル端部506に対応する)との間の2DEG又は2DHGチャネルに沿った第2の距離よりも大きくなるようにし得る。
【0046】
図6のグラフは、空乏モード電流源426のように製造され、フィールドプレートの様々な構成を備える、4つの異なる例示の電流源についての電流電圧(I-V)プロットを示す。I-Vプロット602は、図4の2DEG抵抗器418と構造的に類似し、電流源デバイスより所望される電流飽和行動を示さない、フィールドプレートがないデバイスに対応する。I-Vプロット604は、第1のコンタクト金属層456が、フィールドプレートとして構成されておらず、実質的に2DEG432の上にない、頂部及び中間フィールドプレート438、436のみを有する空乏モード電流源を表す。図6に示すように、I-Vプロット604によって表されるデバイスは、約15Vを超える電位差で約12μAの電流飽和を示す。I-Vプロット606は、頂部及び中間フィールドプレート438、436を有するが、下側フィールドプレートが図4に示すものより高く、第1のコンタクト金属層456によってではなくゲート金属層464によって形成される、空乏モード電流源を表す。図6に示すように、I-Vプロット606で表されるデバイスは、約10Vを超える電位差で約8μAの電流飽和を示す。I-Vプロット608は、実質的に図4に示すもののような、上側、中間、及び下側フィールドプレート438、436、434を有する空乏モード電流源を表す。図6に示すように、I-Vプロット608で表されるデバイスは、約5Vを超える電位差で約4μAの電流飽和を示す。図6によれば、概して、2DEGに対してフィールドプレートに対して金属が下にあればあるほど、飽和電流はより低く、飽和電流が到達するところでの電位差が低くなる。
【0047】
図7のグラフは、空乏モード電流源426のように製造され、様々な2DEG抵抗を有する、2つの異なる例示の電流源についてのI-Vプロットを示す。I-Vプロット702は、実質的に図4において示すような、上側、中間、及び下側フィールドプレート438、426、434を有し、500kΩの抵抗を提供するように構成された2DEGパターンを有する、空乏モード電流源に対応する。図7に示すように、I-Vプロット702で表されるデバイスは、約10Vを超える電位差で、約8.5μAの電流飽和を示す。図6のI-Vプロット608と同一であるI-Vプロット704は、実質的に図4に示すような、上側、中間、及び下側フィールドプレート438、426、434を有し、1MΩの抵抗を提供するように構成された2DEGパターンを有する、空乏モード電流源に対応する。図7に示すように、I-Vプロット704で表されるデバイスは、約5Vを超える電位差で、約4μAの電流飽和を示す。図7によれば、概して、2DEGパターンが構成されるための抵抗が高ければ高いほど、飽和電流はより低い。
【0048】
図8A図8Zは、図4A図4BのエンハンスメントモードFET402、MIMキャパシタ412、2DEG抵抗器418、及び空乏モード電流源426を製造することができる、例示の製造プロセスを集合的に示す。例示の製造プロセスは、表1に示すように、14のマスク層を用いる。
【表1】
【0049】
図8A及び図8Bは、例えばシリコン基板とし得る、基板(図示せず)上に成長又は堆積させることができる、2DEG支持的エピ構造を示す。シリコン基板の頂部上で高品質材料の成長を可能とするために、厚いバッファ層(同じく図示せず)を成長又は堆積することができる。バッファ層は、例えば、窒化アルミニウム層及びAlGaNの様々な組成物、又は窒化アルミニウム(AlN)から始まり、GaNとAlN又はAlGaNとAlNの繰り返しの周期構造を有する超格子構造、又はそれら2つの組み合わせから構成することができる。
【0050】
バッファ層の上方には、例えばGaNの、第1の半導体層440と、例えばAlGaNの、第2の半導体(バリア)層442とを少なくとも含む2DEG支持的エピ構造が、成長又は堆積される。AlGaN層442の厚みと、AlGaN層におけるアルミニウムの割合は、提供されたp型(例えば、p‐GaN)層444の選択された厚みを考慮して、エンハンスメントモードFET402の正の閾値電圧を得るように選択することができる。AlGaN層442は単一のAlGaN層とし得、又は、薄いAlN層とAlGaN層との組み合わせとし得、その場合、AlN層は、AlGaN層の下にあっても上にあってもよい。いくつかの例において、AlGaN層442はまた、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)、窒化アルミニウムインジウム(AlInN)、又はAlNの層で置換することができる。GaN層440はまた、アルミニウムを含有していてもよい。エピ構造は2DEG支持的とさせることができ、頂部上にp型層444(例えば、p‐GaN)がなく、下側層440とその上方にある層442との間で組成が異なる種々の材料を備える。
【0051】
例えばp‐GaN、p型窒化インジウムガリウム(InGaN)のドープ半導体層444、又はInGaNとAlN層との組み合わせを、2DEG支持的エピ構造の頂部上に成長又は堆積することができる。ドープ半導体層444は、例えばマグネシウム(Mg)で、約1×1017イオン/cm~約1×1020イオン/cm、例えば、約1×1019イオン/cm~約3×1019イオン/cmのドーパント濃度で、ドープすることができる。ドープ半導体層444は、例えば、約100オングストローム~3,000オングストローム、例えば、約700オングストロームの厚みを有することができる。p型ドープ半導体層444は、チャネルを空乏化し、ドープ半導体層444が存在するところでは2DEGチャネルの形成を防止する。
【0052】
任意の誘電体材料、例えばSiNの、非常に薄いパッシベーション層446を、表面を保護するために付加することができる。パッシベーション層446は、例えば、100オングストロームの厚みを有することができる。パッシベーション層446は、例えば、減圧化学気相成長(LPCVD)法によって、付加することができる。第1のフォトリソグラフィマスクPOLE0を適用することができ、フォトリソグラフィツールがウェハに整合するための、マーク452などの整合マークをつくるためにエッチングを行うことができる。
【0053】
図8C及び図8Dは、第2のフォトリソグラフィマスクPBGTの適用に続く、図8A及び図8Bの構造を示し、第2のフォトリソグラフィマスクは、ドープ層444及びパッシベーション層446をゲートの位置406以外の全ての場所で除去する(例えば、ドライエッチングする)ことによってエンハンスメントモードFETゲートを位置406に形成するために用いられる。その後、図8C及び図8Dに破線で示す2DEGチャネル447が、ドープ層444(例えば、p‐GaN)が除去されたところの全てに形成される。
【0054】
図8E及び図8Fは、第3のフォトリソグラフィマスクISO1の適用に続く、図8C及び図8Dの構造を示し、第3のフォトリソグラフィマスクは、接続されている2DEG447を領域410、424、432に分離することによってデバイスを分離するためのダメージ注入に対して用いられる。ダメージ注入は、2DEGが存在することが望ましくないエリアにおいて、層440及び/又は442にダメージを与えるために用いることができる。ダメージ注入は、ダメージを与えたエリアで2DEG447をディセーブルするためのダメージを生成するのに充分な表面フラックス及びエネルギーで注入される、例えばアルゴン(Ar)とし得る。ダメージ注入に用いることができる他のイオン種には、マグネシウム(Mg)及びフッ素(F)が含まれる。このダメージプロセスは、図5に示すように、蛇行パターン502の外にあるパターン画定領域508において、この領域508における2DEGの形成を排除するためにダメージを与えることによって、抵抗器及び電流源デバイス418、426のための2DEGチャネルをパターン化するために用いることもできる。他の例(図示せず)において、ダメージ注入プロセスを用いる代わりに、層442及び/又は層440(例えば、AlGaN及びGaN層)をエッチング除去するために、メサ状エッチを実施することができる。上側層442(例えば、AlGaN層)をエッチング除去することは、エッチングされた領域に2DEGが形成されないようにするのに充分である。
【0055】
図8G及び図8Hは、任意のトラップ表面効果を防止するために必要な、パッシベーション膜454の成長又は堆積、ソース/ドレインコンタクト408、404、2DEG抵抗器ヘッドコンタクト420、422、及び電流源ヘッドコンタクト428、430が形成される領域以外での、ソース及びドレインコンタクトのための第4のフォトリソグラフィマスクCONTSの適用、及びエッチングに続く、図8E及び図8Fの構造を示す。パッシベーション層454は、例えば、SiN、SiO、シリコン酸窒化物(SiON)、AlN、これら誘電体の任意のものの組み合わせ、又は表面トラップを潜在的にパッシベーションし得る任意の誘電体膜とし得、また、端子404、408、420、422、428、430の配置後に膜454を介する漏洩も防止する。一例として、パッシベーション膜454は、LPCVDを用いて約1,525オングストロームの厚みまで堆積された窒化物とし得る。ソース及びドレインコンタクトマスクCONTSDは、2DEGへのオーミックコンタクトが後に形成される位置において、開口窓、例えば窓802及び804、をつくるためにパターン化され得る。図8G及び図8Hの断面において、エッチングプロセスは、層442(例えば、AlGaN)のエッチング除去された部分を有するものとして示されているが、オーミックコンタクトを形成するために用いられる金属プロセスによっては、いくつかの例において、層442は保持され得、パッシベーション層454(例えば、SiN)のみが、オーミックコンタクトを後に形成するためにエッチング除去される。さらに他の例において、層442を貫通してエッチングすることによって、2DEGとオーミックコンタクトが成される。いくつかの例において、2DEG抵抗器418及び電流源426の抵抗は、オーミックコンタクト形成パラメータの選択によって調節することができる。いくつかの例において、電流源426などの空乏モードデバイスが、オーミックコンタクトについては層442内への部分的エッチングのみを用いており、FET402などのエンハンスメントモードデバイスが、オーミックコンタクトのために、層442内にエッチングする必要なく、層442の端部までのみエッチングする。
【0056】
図8I及び図8Jは、金属層456を形成するために用いられる金属堆積、第5のフォトリソグラフィマスクMETSD、エッチング、及びオーミックアニールに続く、図8G及び図8Hの構造を示す。金属層456は、エンハンスメントモードトランジスタ402のソース404及びドレイン408、2DEG抵抗器ヘッド420、422、並びに、電流源426の電流源ヘッド428、430及び下側フィールドプレート434への金属コンタクトを提供する。第1のコンタクト金属層456が、2DEG410、424、432へのオーミックコンタクト404、408、420、422、428、430の一部を形成し、チタンベースの及びアルミニウムベースのコンタクトとし得る。例えば、第1のコンタクト金属層456は、例えば約300オングストローム~約500オングストローム、例えば約400オングストローム、の厚みを有するチタン(Ti)の層と、Tiの層の上方の、例えば、約750オングストローム~約1,250オングストローム、例えば約1,000オングストローム、の厚みを有するアルミニウム銅合金(AlCu)の層と、AlCuの層の上方の、例えば約400オングストローム~約600オングストローム、例えば約500オングストローム、の厚みを有する窒化チタン(TiN)の層と、例えば約1,000オングストロームの厚みを有するTiWの層と、を含む、多層とし得る。第1の金属コンタクト層456は、他の例において、TiAl、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、又は金(Au)を含む、任意のいくつかの他の金属から形成することができる。いくつかの例において、下側フィールドプレート434の下側表面は、2DEGチャネル424より約1,500オングストローム~約1,700オングストローム上方にあり得る。
【0057】
第5のフォトリソグラフィマスクと、後続するエッチングは、2DEG及びフィールドプレート434にコンタクトを提供することが望ましい場所以外で、オーミックコンタクト層456を除去することができる。エッチングの後に、オーミックアニールが続いてもよい。
【0058】
図8K及び図8Lは、第2の誘電体層460の成長又は堆積、第6のフォトリソグラフィマスクPCONTの適用、エッチング、及びアニールに続く、図8I及び図8Jの構造を示す。第2の誘電体層460は、例えば、約740オングストロームの厚みまで、PECVDを用いて堆積された、例えば薄いUV窒化物スタックとし得る。第2の誘電体層460は、例えばSiNとし得、又は、他の例において、SiO、SiON、酸化アルミニウム(Al)、又はこれらの組み合わせとし得る。第2の誘電体層460は、オーミックコンタクト層456が、後に堆積される金属層に対して短絡することを防止する。第6のフォトリソグラフィマスクは、FETゲートドープ半導体(例えば、p‐GaN)層444までエッチングされることを許容し得、それによって、後続の金属層堆積において、ゲート金属層464がドープ半導体層444に接することを可能とする窓をつくる。
【0059】
FETゲートの位置406でコンタクトを開口した後、活性化アニールを行うことができる。FETゲートドープ半導体層444としてp‐GaNを用いる例において、SiN膜454、460の膜堆積条件に依って、p‐GaNは不活性になることができる。p‐GaNへの窓が開口すると、活性化アニールが行われ、p‐GaNが再活性化される。用語「活性化」は、本明細書ではドープシリコンベースのデバイス製造プロセスに関するものとは異なって用いられており、活性化アニールは、活性化された注入種材料が半導体の結晶構造に組み込まれることを確実にするために用いられる。本明細書では、p‐GaN内のマグネシウムは既にp‐GaN層444の結晶構造内にあるが、p‐GaN層444を電気的に不活性とし得るいくつかの水素複合体がp‐GaN層444に入っている可能性がある。導電性p‐GaN材料であることが必要なホールを形成するのではなく、p‐GaN層444の成長、又はSiN層454、460の堆積による水素の存在が、p‐GaN層444を不活性にする可能性がある。それゆえ、活性化アニールを、水素マグネシウム複合体を分解するために行うことができる。
【0060】
図8M及び図8Nは、ゲート金属層464をTi、TiN、Ni、又はAlとし得ることに続く、図8K及び図8Lの構造を示す。ゲート金属層464は、いくつかの例において、異なる材料から構成されるマルチスタックとし得る。第7のフォトリソグラフィマスク、及びそれに伴うエッチングは、FETゲートの位置406の上を除き、ゲート金属層464を除去する。
【0061】
図8O及び図8Pは、第3の誘電体層468の成長又は堆積、第8のフォトリソグラフィマスクCONTの適用、及びエッチングに続く、図8K及び図8Lの構造を示す。第3の誘電体層468は、例えば、PECVDを用いて堆積された窒化膜とし得る。第3の誘電体層468は、例えば、約1,700オングストロームの厚みに堆積されたp‐SiNとし得る。第8のフォトリソグラフィマスクとそれに伴うエッチングは、第3の誘電体層468を介して、事前に堆積されたオーミックコンタクトへ、エンハンスメントモードトランジスタ402のソース404及びドレイン408へ、2DEG抵抗器ヘッド420、422へ、並びに電流源ヘッド428、430(図4A及び図4Bに示すとおり)への窓、例えば窓806及び808を開口するために用いることができる。オーミックコンタクトへの導電性コンタクトが、後にこれらの窓の位置に形成され得る。図8Oには示されていないが、FETゲート464もまた、同じエッチングによって、FETゲート464がフィンガーエッジにおいて接続される領域におけるコンタクトに開口され得る。
【0062】
図8Q及び図8Rは、第1の接着層472の堆積、第2のコンタクト金属層476の堆積、及び第4の誘電体層480の成長又は堆積に続く、図8O及び図8Pの構造を示す。第1の接着層472は、例えば、約1100オングストロームの厚みに堆積されたTiWとし得る。第2のコンタクト金属層476は、例えば、約3,000オングストロームの厚みに堆積されたAlCuとし得る。第2の金属コンタクト層476は、他の例において、銅(Cu)又はAuとし得る。TiNの非常に薄い層(図示せず)が、第2のコンタクト金属層476の頂部上に、例えば約300オングストロームの厚みまで、配置することができる。いくつかの例において、このTiN層は省くことができ、又は後続の、例えば、図8U及び図8Vに図示するように、例えば第4の誘電体層480の堆積又はエッチングに起因して、なくし得る。薄い第4の誘電体層480が、MIMキャパシタ412のための誘電体を形成するために、金属層472、476の頂部上に成長又は堆積され得る。この第4の誘電体層480は、例えば、約740オングストロームの厚みまでPECVDを用いて堆積された窒化物層とし得る。いくつかの例において、中間フィールドプレート436の下側表面は、2DEGチャネル424より約3,900オングストローム~約4,200オングストローム上方にあり得る。
【0063】
図8S及び図8Tは、第2の接着層484の堆積、第3のコンタクト金属層486の堆積、第9のフォトリソグラフィマスクCAPDの適用、及びエッチングに続く、図8Q及び図8Rの構造を示す。第2の接着層484は、例えば、約500オングストロームの厚みに堆積されたTiWとし得る。第3のコンタクト金属層486は、例えば、約1,000オングストロームの厚みに堆積されたAlCuとし得る。第3の金属コンタクト層486は、他の例において、Cu又はAuとし得る。第2の接着層484及び第3のコンタクト金属層486が共に、MIMキャパシタ412の上側プレート488を形成する。別のTiNの非常に薄い層(図示せず)が、第3のコンタクト金属層486の頂部上に、例えば約300オングストロームの厚みに、配置することができる。いくつかの例において、このTiN層は、省かれてもよく、又は、例えば図8U及び図8Vにおいて図示するように、後続のエッチングに起因してなくしてもよい。第9のフォトリソグラフィマスクは、キャパシタ頂部上プレート488を形成するために、金属層484、486をパターン化してエッチングするために用いられる。
【0064】
図8U及び図8Vは、第10のフォトリソグラフィマスクMET1の適用、及びエッチングに続く、図8S及び図8Tの構造を示す。金属層472、476及び第4の誘電体層480は、電流源426の中間フィールドプレート436と、キャパシタ412の下側プレート478とを形成するために、並びに、FET402、抵抗器418、及び電流源426に対するオーミック接続を継続するために、選択的にエッチング除去される。
【0065】
図8W及び図8Xは、第5の誘電体層490の成長又は堆積、第11のフォトリソグラフィマスクVIA1の適用、及びエッチングに続く、図8U及び図8Vの構造を示す。第5の誘電体層490は、例えば、約5,500オングストロームの厚みまでPECVDを用いて堆積された窒化物とし得る。上側キャパシタプレート488が存在するエリアにおいて、第5の誘電体層490は上側キャパシタプレート488の上に存在する。第11のフォトリソグラフィマスクは、窓、例えば窓810及び812を、金属層へのコンタクトまでパターン化して開口するために用いられ得、コンタクトはその後、第5の誘電体層490を介して垂直に延在し得る。
【0066】
図8Y及び図8Zは、第3の接着層494の堆積、第4のコンタクト金属層496の堆積、第12のフォトリソグラフィマスクMET2の適用、及びエッチングに続く、図8W及び図8Xの構造を示す。第3の接着層494は、例えば、約3,000オングストロームの厚みまで堆積されたTiWとし得る。第4のコンタクト金属層496は、例えば、約30.4キロオングストロームの厚みまで堆積されたAlCuとし得る。第4の金属コンタクト層496は、他の例において、Cu又はAuとし得る。第3の接着層494及び第4のコンタクト金属層496が共に、電流源426の上側フィールドプレート438を形成する。別のTiNの非常に薄い層(図示せず)が、第3のコンタクト金属層486の頂部上に、例えば約300オングストロームの厚みまで配置され得る。いくつかの例において、このTiN層は、省かれてもよく、又は、後続のエッチングに起因してなくしてもよい。第12のフォトリソグラフィマスクは、端子404、408、420、422、428、430及び上側フィールドプレート438を形成するために、金属層494、496をパターン化及びエッチングするために用いられる。いくつかの例において、上側フィールドプレート438の下側表面は、約9キロオングストローム~約10キロオングストローム、例えば、約9,450オングストローム~約9,650オングストロームだけ、2DEGチャネル424より上方にあり得る。
【0067】
図4A及び図4Bは、第6の誘電体層498の成長又は堆積に続く、図8Y及び図8Zの構造を示す。第6の誘電体層498はPO膜とし得、これは、酸化物(例えば、SiO)、窒化物(例えば、SiN)、酸窒化物(例えば、SiON)、又はこれらの組み合わせを含み得る。一例として、第6の誘電体層498は、下側酸化物層と上側窒化膜層を含み得る。いくつかの例として、下側酸化物層は、PECVDを用いて約10キロオングストロームの厚みまで堆積されたTEOSを用いて製造されたSiOの層とし得、上側窒化膜層は、PECVDを用いて約20キロオングストロームの厚みまで堆積されたSiNとし得る。いくつかの例において、第6の誘電体層498の下側酸化物層には、焼結、第13のフォトリソグラフィマスクTRENCHの適用、及びエッチングが続く得、それにより、デバイスを接続するための金属ワイヤ層のためのトレンチが形成され得る。いくつかの例において、第6の誘電体層498の上側窒化膜層の堆積の後、第14のフォトリソグラフィマスクPORの適用と、エッチングとが続き得、POにパッド開口を形成して、端子404、408、420、422、428、430へのコンタクトにアクセスするための窓を開口することができる。次に、例えば、約400℃で約6時間、そして追加で6時間の、長期間の焼結が続き得る。他の例において、図示されていないが、POは省かれてもよく、デバイス402、412、418、426は、1つ又は複数のポリイミド被覆又は他のポリマーベースの膜で直接被覆されてもよい。図4A及び図4Bに示す種々の層に対する例示の材料及び厚みの概要を表2に示す。
【表2】
【0068】
図9のフローチャートは、図4Aに示す電流源426などの、IC上に空乏モード電流源を製造する例示の方法900を示す。第1の半導体層及び第2の半導体層が、基板の上に成長されるか堆積される(902)。第1の半導体層は、例えば、図4A及び図8Aの層440に対応し得、例えば、GaNとし得る。第1の半導体層の上にある第2の半導体層は、例えば、図4A及び図8Aの層442に対応し得、例えば、AlGaNとし得る。第1及び第2の半導体層は、2DEG又は2DHGを支持するように構成されている。第1及び/又は第2の半導体層の片方又は双方が、2DEG又は2DHGチャネルを、チャネルのエリアの上にパターン化するために、(例えば、ダメージ注入で)注入、又は(メサエッチングで)エッチングされる(904)。例示の分離ダメージ注入が、図8Eにおいて、分離領域448をつくるように示されている。パターンは、例えば、図5における例示のチャネルパターン502として示す蛇行パターンとし得る。
【0069】
第1の誘電体層が、第2の半導体層の上に成長又は堆積される(906)。第1の誘電体層は、図4A及び図8Gの層454に対応し得、例えば、SiNとし得る。第1の誘電体層は、2DEG又は2DHGチャネルへの第1及び第2のオーミックコンタクト窓を、例えば、チャネルのそれぞれの端部において開口するために、フォトリソグラフィによりエッチングされる(908)。例示の窓802及び805が図8Gに示されている。オーミックコンタクト窓の位置において、例えば、2DEG又は2DHGチャネルのそれぞれの端部への、第1及び第2のオーミックコンタクトを形成するために、1つ又は複数のオーミックコンタクト層が堆積及びエッチングされる(910)。第1及び第2のオーミックコンタクトの少なくとも一方が、導電性電極(例えば、フィールドプレート)、例えば、図4Aにおける下側フィールドプレート434を、第1の誘電体層の上方に含む。いくつかの例において、この導電性電極は、2DEG又は2DHGの抵抗パターン化されたエリアの少なくとも一部の上に延在し得、いくつかの例において、2DEG又は2DHGの抵抗パターン化されたエリアの全体の上に延在し得る。一例として、導電性電極の下側表面が、2DEG又は2DHGチャネルより約1,500オングストローム~約1,700オングストローム上方にあり得る。導電性電極は、電流源デバイスにおいて製造される唯一のフィールドプレートとし得、又は、1つ又は複数の付加的なフィールドプレートを製造するために方法900が継続する場合の複数のフィールドプレートを有する電流源デバイス構造における下側フィールドプレートとし得る。
【0070】
図9の方法900は、第1の誘電体層、第1及び第2のオーミックコンタクト、及び中間フィールドプレートであり得る第2の導電性電極の上の、第2の誘電体層の成長又は堆積が続き得る(912)。この第2の誘電体層は、例えば、図4A図8K、及び図8Oに示す誘電体層460又は誘電体層468のいずれか、又はその2つの組み合わせとし得、例えば、SiN又はp‐SiN、又はそれら2つの組み合わせとし得る。第1及び第2の導電性コンタクト窓、例えば図8Oにおける窓806、808を、第2の誘電体層を介して第1及び第2のオーミックコンタクトまで開口するように、第2の誘電体層がエッチングされる(914)。第1及び第2のオーミックコンタクトへのそれぞれの第1及び第2の導電性コンタクトと、第1又は第2の導電性コンタクトのうちの1つから、第2の誘電体層の上方の下側導電性電極の上に延在する第2の導電性電極とを形成するために、金属層が堆積され、エッチングされる(916)。堆積は図8Qに示すようにし得る。エッチングは図8Uに示すようにし得る。第2のフィールドプレートは、例えば、図4Aに示す中間フィールドプレート436とし得る。方法900は、この時点で終了してもよく、又は第3の上側フィールドプレートをつくるために継続してもよい。
【0071】
図9の方法900は、第2の誘電体層、第1及び第2の導電性コンタクト、及び第2の導電性電極の上への、第3の誘電体層の成長又は堆積で継続し得る。第3の誘電体層は、例えば、図4A及び図8Wに示すような層590とし得る。第3の誘電体層を介し、第1及び第2の導電性コンタクトまで、第1及び第2の窓、例えば図8Wにおける窓810及び812、を開口するために、第3の誘電体層はエッチングされる(920)。第1及び第2の導電性コンタクトを、第3の誘電体層を介する第1及び第2の窓を介して上に延在し、第3の誘電体層の上方にある中間フィールドプレートの上を第1又は第2の導電性コンタクトのうちの1つから延在する第3の導電性電極(例えば、上側フィールドプレート)を形成するために、上側金属層が堆積され、エッチングされる(922)。堆積及びエッチングの結果は、図8Yに示すとおりとすることができ、電流源端子428、430及び上側フィールドプレート438をもたらすことができる。方法900は、この時点で終了することができ、又は、PO誘電体層、ワイヤ層、及び/又は付加的なフィールドプレート(図9では示さず)を付加するように継続することができる。方法900はまた、様々な他のエッチング、アニール、及び/又は焼結(同じく図9に示さず)を含み得る。方法900はまた、付加的な、より高い導電性電極(例えば、フィールドプレート)をつくるために、付加的な金属層を含み得る。方法900はまた、例えば図10図15に示すように、空乏モード電流源の端子に結合するために1つ又は複数の金属層上の配線を提供することを含み得る。例えば、方法900は、空乏モード電流源を二端子デバイスとして提供するために、第1のオーミックコンタクトへの第1の配線と、第2のオーミックコンタクトへの第2の配線とを含み得る。
【0072】
図4A及び図4Bのデバイスは、図3Aのスタートアップ回路300のようなスタートアップ回路を形成するために、配線層を用いて共に配線され得、図4Aの空乏モード電流源426は、図3Aのプリチャージ回路302を実装するために用いられ、図4AのエンハンスメントモードFET402は、図3AのトランジスタQ及びQを実装するために用いられ、図4BのMIMキャパシタ412は、図3AのキャパシタCを実装するために用いられ、図4Bの2DEG抵抗器418は、図3Aの電流制限抵抗器RLIMを実装するために用いられ得る。FET Qのドレイン端子408は、1つ又は複数の配線層(図示せず)において、電流源の正端子428に配線によって結合され得、こういった結合が、図3AにおけるノードVSWに対応する電気ノードを形成する。FET Qのゲートは、電流源の負端子430に結合され得、こういった結合が、図3AにおけるノードVGS1に対応する電気ノードを形成する。キャパシタCの第1の(例えば、正)端子414が、同様にノードVGS1に結合され得る。キャパシタCの第2の(例えば、負)端子416が、2DEG抵抗器RLIMの第2の端子422に結合され得る。2DEG抵抗器RLIMの第1の端子420が、図3AにおけるノードVS1に対応する電気ノードにおいて、FET Qのドレイン端子404に結合され得る。図3AのFET Qは、FET Qをつくるために用いられる同じプロセスを用いて、同じダイ上に製造することができ、図3Aの図に従って示されるのと同様に配線層を用いて接続することができ、FET Qのドレイン端子は、ノードVGS1において電流源の負端子430とFET Qのゲートとに結合され、FET Qのソース端子は、ノードVDDでおいて2DEG抵抗器RLIMの端子422とキャパシタCの第2の端子416とに結合され、FET Qのゲートは、ノードVS1においてFET Qのソース端子404と2DEG抵抗器RLIMの端子420とに結合される。
【0073】
図8A図8Z及び図4A図4Bに示すプロセスは、単一基板上に、空乏モード電流源426を、高電圧p‐GaN FET402、2DEG抵抗器418、及びMIM窒化物キャパシタ412と併せて製造することと、空乏モード電流源426と高電圧p‐GaN FET402とを形成するために異なるマスクや材料を必要とせずに、空乏モード電流源426をプリチャージ回路として用いてスタートアップ回路を構築することとを可能にする。2DEG抵抗器418は、抵抗素子として、シリコンクロム(SiChrome、SiCr)又はニッケルクロム(NiChrome、NiCr)のような薄い金属膜を用いる必要がない。空乏モード電流源426において下側フィールドプレート(2DEG 432に空間的に近い)を設ける結果、電流源426のより低い飽和電流をもたらし、いくつかの例において約5μAであり、約-40℃~125℃の温度範囲にわたって1,000Vまで破壊しない。より高い温度では、より低い飽和電流が電流源426で予期され得る。いくつかの例において、上側フィールドプレート438は、空乏モード電流源426から省くことができる。いくつかの例において、中間フィールドプレート436及び上側フィールドプレート438は、空乏モード電流源426から省くことができる。最下フィールドプレート(例えば、フィールドプレート434)の、2DEG432のチャネルへの近さは、スタートアップ回路300の電流要件によって決定することができる。2DEG電流源426の幅もまた、電流源426外の電流密度を調整するために調節することができ、そのパラメータは、互いにおよそ線形の関係性を有することができる。
【0074】
見下げ図における、空乏モード電流源426のフィールドプレート434、436、438が2DEG432のチャネルの上方に設ける被覆とは対照的に、2DEG抵抗器418の金属層は、2DEGチャネルの抵抗パターン化されたエリアの上に延在しない。電流源426におけるフィールドプレートの被覆は、低い方の電圧フィールドプレートと、フィールドプレートの下にあるパターン化された2DEGチャネルの最高電圧部分との間の電位差が、2DEGチャネルの上にあるフィールドプレートを用いて形成されるキャパシタのピンチオフ電圧よりも大きくなるようにし得る。電流源426におけるフィールドプレートの被覆の拡張は、ピンチオフが、半導電性2DEGチャネルの真性飽和の前に生じるようにし得る。一例として、ピンチオフ電圧が20Vである場合、フィールドプレート被覆(見下げ図において)は、フィールドプレートの長さが、パターン化された2DEGチャネルにわたって20V低下させるのに必要な長さよりも多く被覆し、フィールドプレートの被覆の拡張が20Vを降下させるのに必要なパターン化されたチャネルよりも短い場合、クランプ効果と結果的に得られる電流飽和は弱くなるか、観察されなくなる。2DEG抵抗器418の金属層の(左右寸法における)幅は、上側金属層(層494を含む)が、抵抗器418において下側金属層(層472を含む)よりも幅が広いという設計規則を例示する目的で、図4Bにおいて誇張されている。図4Bは、抵抗器418内のフィールドプレートを示すものとして、又は抵抗器418内の2DEGチャネルの抵抗性のパターン化されたエリアの上に金属層が延在しているものとして示すように解釈しないものとする。
【0075】
図10は、図4Aの空乏モード電流源426に対応し得る、例示の空乏モード電流源1000を示し、空乏モード電流源1000の端子を導電結合するように作製された配線1008、1010を有する。図10におけるドレイン領域1002が、図4Aの第1の金属端子428に対応するものを介して、配線1008に導電結合される。図10におけるソース領域1004が、図4Aの第2の金属端子430に対応するものを介して、ワイヤ1010に導電結合される。ドレイン領域1002及びソース領域1004は、上述のように、いくつかの例において2DHGチャネルであり得る、抵抗性2DEGチャネル1006を介して電気的に結合されている。図10におけるフィールドプレート1016、1018が、それぞれ、図4Aのフィールドプレート436、438に対応し得る。いくつかの例において、図4Aの第6の誘電体層498に対応する上側誘電体層1020が、領域1002、1004の、配線1008、1010への導電結合を提供するように開口され得、配線1008、1010が、付加的な金属層上に置かれ得る。他の例(図示せず)において、配線1008、1010は、フィールドプレート1016を作製するために用いられる第2のコンタクト金属層476、又はフィールドプレート1018を作製するために用いられる第4のコンタクト金属層496など、電流源デバイス1000において既に存在する金属層のうちの1つの上に提供され得る。例えば、このような配線は、図10の描画平面の前又は後ろに位置し得る。
【0076】
それゆえ、図10の空乏モード電流源1000は、二端子デバイスである。一例として、図3Aの例示のスタートアップ回路300において、プリチャージ回路302の一部又は全てとして空乏モード電流源1000が用いられており、配線1008はスイッチ電圧ノードVSWに結合され得、配線1010はノードVGS1に結合され得る。空乏モード電流源1000は、約I=Vth/Rsourceで電流を提供するための電流源として作用し、ここで、Vthは空乏モード電流源1000の閾値電圧であり、Rsourceは、ドレイン領域1002とソース領域1004との間の2DEG又は2DHGチャネルのソース帰還抵抗であり、空乏モード電流源1000にわたって印加される電圧に非常に弱くしか依存しない。ソース帰還抵抗は、主に、1005と標示されている領域における2DEG又は2DHGチャネルの抵抗パターン化によって提供され得る。すなわち、このような例において、図10の領域1005内でのみ、2DEG又は2DHGチャネル1006が、図5におけるエリア512と同様に抵抗性のパターン化される。図10は必ずしも縮尺どおりではなく、領域1005は、図10及び関連する図面に示す他の例示された特徴と比べ、実際にもっと長くてもよい。より高レベルのフィールドプレート1016、1018は、空乏モード電流源1000の所望の電圧定格(例えば、650V)を得るために提供され得る。最も下のフィールドプレートの遠位端1003は、この遠位端1003のみが、チャネル1006の空乏に影響を与えるという点で、フィールドプレートのアクティブゲート領域として考えることができる。アクティブゲート領域1003の下にあるチャネル1006の部分は、例えば、そのチャネルのエリアが蛇行パターン化されていない、図5における領域510に対応し得る。
【0077】
図10の例示の空乏モード電流源1000の例示の動作において、ドレイン配線1008が約400Vの電位であり、ソース配線1010が約5Vの電位である場合、ドレイン領域1002の位置におけるチャネル1006の電位は同様に約400Vとなり、ソース領域1104の位置におけるチャネル1006の電位は同様に約5Vとなる。導電性であるチャネル1106は、ドレイン領域1102からソース領域1004への方向に流れる電流を搬送する。ソース領域1004に導電結合されており、それゆえ、ソース領域1004と略等電位のアクティブゲート領域1003は、アクティブゲート領域1003の下にあるチャネル1006の領域における電位に比べて負の電位を有する。アクティブゲート領域1003の下のこの点でのチャネル1006は、例えば、ドレイン領域1002の下にある点から約95Vの潜在的な降下を経験している可能性があり、アクティブゲート領域1003の下にあるチャネル1006の電位は、例えば約305Vになる。この約300Vの、アクティブゲート領域1003(約5V)と、チャネル1006の下にある領域と(約305V)の間の電位差は、チャネル1006の下にあるエリアとアクティブゲート領域1003との間に電界を生成し、それがチャネル1006を空乏化させて、ドレイン配線1008とソース配線1010との間の伝導率を低下させる。アクティブゲート領域1003は、図4Aの下側フィールドプレート434に対応する、フィールドプレート434が延在するコンタクト430から最も遠位の、数ナノメートルのみが、チャネル1006の空乏に影響を与えるため、そのように本明細書では表現されている。
【0078】
図11は、空乏モード電流源1000と同様に製造されるが、図4Aの下側フィールドプレート434に対応するものを、2つの個別の電極1103,1004として不連続的に作製することによって三端子デバイスを提供する、例示の空乏モードトランジスタ1100を示す。配線1008、1010、1112は、空乏モードトランジスタ1100の3つの端子、ドレイン、ソース、及びゲートに、それぞれ、導電結合するように作製される。ドレイン、ゲート、及びソース領域1002、1102、1004の、配線1008、1112、1010へのそれぞれの導電結合を提供するように、上側誘電体層1020が開口され得る。ドレイン領域1002は、ドレイン配線1008に導電結合される。ソース領域1004が、ソース配線1010に導電結合される。アクティブゲート領域1103は、下にあるチャネル1006に影響を与える。アクティブゲート領域1103は、アクティブゲート領域1103の上方のフィールドプレート1016、1018と三次元空間内で物理的に交差しないように(例えば、点線1114に沿うが、図11に示す断面の面の後ろ又は前に)配置される、ゲート配線1112に導電結合される。ドレイン領域1002及びソース領域1004は、上述のように、いくつかの例において2DHGチャネルであり得る、2DEGチャネル1006を介して互いに電気的に結合されている。空乏モードトランジスタ1100において、空乏モード電流源1000と比較して、ソース帰還抵抗はゼロ近くまで低減され(例えば、2DEGチャネルの抵抗パターン化された部分512の長さ1005をゼロ近くまで低減することによって)、ゲートコンタクトはソースコンタクトから分離される。いくつかの例において、空乏モードトランジスタ1100は、図4Aのエンハンスメントモードトランジスタ402と同様に製造することができるが、空乏モードトランジスタ1100はゲートスタックにp型ドープGaN444を含まず、結果的に負の閾値電圧となり、よって空乏モードトランジスタの特性となる。それゆえ、エンハンスメントモードGaNプロセスに、付加的なマスクやプロセス工程を導入することなく、空乏モードトランジスタ1100を形成し得る。
【0079】
ゲート配線1112における電位は、ドレイン配線1008とソース配線1010との間の空乏モードトランジスタ1100の抵抗率を、アクティブゲート領域1103がチャネル1006を空乏化させる度合いを調節することで、制御することができる。チャネル1006とアクティブゲート領域1103内のゲート電極との間の距離が、下にあるチャネル1006を完全に空乏化させるのに必要な最小負電圧を定義する。
【0080】
上記の例において、エンハンスメントモードFET402、キャパシタ412、抵抗器418、及び空乏モード電流源426又は1000及び/又は空乏モードトランジスタ1100を製造するために用いることができるエンハンスメントモードプロセスフローにおいて用いられる任意の後続の層、すなわち、第1のコンタクト金属層456、ゲート金属層464、第2のコンタクト金属層476、及び第4のコンタクト金属層496を、空乏モードトランジスタの個別のゲート電極として構成することができる。図11の例示の空乏モードトランジスタ1100において、ゲート電極1103として構成されているのは、第1のコンタクト金属層456である。図12は、ゲート金属層464がゲート電極1203として構成された層である、別の例示の空乏モードトランジスタ1200を示す。図13は、第2のコンタクト金属層476がゲート電極1303として構成された層である、さらに別の例示の空乏モードトランジスタ1300である。図14は、第4のコンタクト金属層496がゲート電極1403として構成された層である、さらに別の例示の空乏モードトランジスタ1400を示す。
【0081】
図11の例示の空乏モードトランジスタ1100において、第1のコンタクト金属層456は、空乏モードトランジスタゲートの関連する領域において第1の誘電体層454を介してエッチングする事前の工程なしで形成することができ、その結果、図6の測定曲線608に対応する、約-2V~約-3Vの閾値電圧を有する空乏モードトランジスタゲートが得られる。図11の例において、ゲート電極1103とチャネル1006のその下にある部分との間の電位差が、この約-2V~約-3Vの閾値電圧であるかそれを下回るときに、チャネル1006は空乏化する。
【0082】
図12の例示の空乏モードトランジスタ1200において、エンハンスメントモードFET402のゲートを形成するために用いることができるゲート金属層464は、第2の誘電体層460の頂部上に個別のゲート電極1203として形成することができる。結果として、この空乏モードトランジスタゲート電極1203は、トランジスタ1100のゲート電極1103が有するよりも若干大きな、2DEGチャネル1006までの距離を有し、図6の測定曲線606に対応する、約-4V~約-5Vの一層大きな負の閾値を提供する。図12の例において、ゲート電極1203と、チャネル1006のその下にある部分との間の電位差がこの約-4V~約-5Vの閾値電圧であるかそれを下回るときに、チャネル1006は空乏化する。ゲート電極1203は配線1112に導電結合してもよく、空乏モードトランジスタ1200は、空乏モードトランジスタ1100に関して上記するように別の方式で機能することもできる。
【0083】
第2のコンタクト金属層476及び第4のコンタクト金属層496は、半導体チップ上のデバイス間の電気相互接続に用いることができるが、それぞれ、フィールドプレート436、438として、空乏モード電流源426又は1000において、若しくは、図13又は図14の空乏モードトランジスタ1300及び1400において、それぞれ、個別のゲート電極1303及び1403として、構成することができる。図13の例示の空乏モードトランジスタ1300において、第2のコンタクト金属層476は、第3の誘電体層468の頂部上に個別のゲート電極1303として形成することができる。結果として、空乏モードトランジスタゲート電極1303は、トランジスタ1200のゲート電極1203が有するよりもさらに大きな、2DEGチャネル1006までの距離を有し、約-15V~約-40Vのさらに大きな負の閾値電圧を提供する。図14の例示の空乏モードトランジスタ1400において、第4のコンタクト金属層496は、第5の誘電体層490の頂部上に個別のゲート電極1403として形成することができる。結果として、空乏モードトランジスタゲート電極1403は、トランジスタ1300のゲート電極1303が有するよりもさらに大きな、2DEGチャネルまでの距離を有し、約-200V~約-300Vのさらに大きな負の閾値電圧を提供する。
【0084】
網羅的には図示していないが、他の例が、図11図12図13、及び図14の例示の空乏モードトランジスタ1100、1200、1300、及び1400の各々に基づくことができ、1つ又は複数の重なるフィールドプレート1016、1018が、個別のゲート電極として作製されており、又は、より多い及び/若しくはより高いフィールドプレート若しくは個別のゲート電極を設けて、さらにいっそう高い電圧応用例を可能とするように、付加的な金属層を含んでいてもよい。いくつかの例(図示せず)において、第4のコンタクト金属層496の上方の付加的な導電性(例えば、金属)層は、例えば、約900V~約1200の範囲又は約2000Vで動作する、付加的な、より高い電圧の応用例を可能にするために提供され得る。
【0085】
複数の層上に形成される個別の電極の単なる一例として、図15は、下側フィールドプレート434及び中間フィールドプレート436が、個別のゲート電極1503、1507として作製されている、空乏モードトランジスタ1500を示す。任意のこのような例において、ゲートとして作用する電極は、存在する最も低い電極である。これは、2DEGチャネル1006までの距離が最小であり、それゆえ、最も低い閾値電圧(0Vに最も近い閾値電圧)を示すためである。空乏モードトランジスタ1500の動作において、第1のコンタクト金属層456を用いて作製されたゲート電極1503は、そのゲート電圧が約-2V~約-3Vであるときに、2DEGチャネル1006を空乏化させ、一方で、第2のコンタクト金属層476を用いて作製されたゲート電極1507は、そのゲート電圧が約-40V~約-50Vであるときに、2DEGチャネル1006を空乏化させる。後者の場合において、ドレイン1002とソース1004とを接続するトランジスタチャネル1006は、ゲート電極1503が既に2DEGチャネル1006を空乏化させているため、既に開口している(非導電性である)。しかしながら、ゲート電極1507の一層大きな負の閾値電圧であるかそれを超える(それより低い)場合、ゲート電極1507は、破線1511で示すように、ドレイン1002に面するゲート端部から2DEGチャネル1006をさらに離して空乏化させ、それに比べ、破線1509では、このゲート端部において電界を低減させ、結果的に、図4Aの空乏モード電流源426のフィールドプレート436、438の働きと一貫して、図6に関して上記したように、空乏モードトランジスタ1500の最大ドレイン・ソース間/ドレイン・ゲート間電圧対応を向上させる。このような効果が観察されるには、第2のコンタクト金属層476が、図15に示すように個別のゲート電極1507として構成されるか、又はトランジスタ1500のソース1004に接続されたフィールドプレートとして構成されるかは、トランジスタ1500のドレイン1002に比べて低い電圧電位である限り、実質的に無関係である。複数の層上に個別のゲート電極を有する図15のような例において、最も下側にある導電性(例えば、金属)層のみがトランジスタゲートとして機能し、その上方にある全ての導電性層は、それらが、例えば、ゲート配線1112又はソース配線1010に、若しくは、ドレイン1002の電位よりも実質的に低い別の電位になど、低電圧電位に導電結合されている限り、フィールドプレートとして作用する。
【0086】
それゆえ、例えば、約-5Vの閾値電圧を有する上記の例に従った空乏モードトランジスタが所望とされる場合、ゲート・チャネル間距離が所望の閾値電圧を結果的に得るためには、空乏モードトランジスタゲートは、図12に示すように、第1のコンタクト金属層456を用いて作製される任意のフィールドプレート又はゲート電極を省いて、ゲート金属層464を用いて作製することができる。このような空乏モードトランジスタにおいて第1のコンタクト金属層456を省くことに失敗した場合、約-2V~約-3Vの一層低い閾値電圧を提供する。同様に、約-40Vの閾値電圧を有する上記の例に従った空乏モードトランジスタが所望とされる場合、ゲート・チャネル間距離が所望の閾値電圧を結果的に得るためには、空乏モードトランジスタゲートは、図13に示すように、第1のコンタクト金属層456又はゲート金属層464を用いて作製されるいずれのフィールドプレート又はゲート電極を省いて、第2のコンタクト金属層476を用いて作製することができる。
【0087】
上記の例1100、1200、1300、1400、1500又はそれらを拡張したものの任意のものと一貫する空乏モードトランジスタは、図9のフローチャートに関して上記したものと実質的に同様の方法で、導電性電極分離と上記のチャネル抵抗パターン化低減(例えば、ほぼゼロ)区別を組み込むことで、作製することができる。上記の例1100、1200、1300、1400、1500又はそれら拡張したものの任意のものと一貫する空乏モードトランジスタは、図1における電流源108として、図2におけるスタートアップ回路208内で、又は図3Aにおけるプリチャージ回路302内で、用いることができる。図3Aのプリチャージ回路302などのように、三端子空乏モードトランジスタが二端子デバイスとして用いられる場合、三端子空乏モードトランジスタは、例えば、配線層の配線によって空乏モードトランジスタのゲートを空乏モードトランジスタのソースに導電結合することで、効果的に二端子電流源にさせることができる。例えば、図11の空乏モードトランジスタ1100において、ゲート配線1112をソース配線1010とつなげることで二端子デバイスをつくることができる。
【0088】
下にある2DEG又は2DHGチャネルを空乏化させるための電極(例えば、金属フィールドプレート)を含む、本明細書に記載するような空乏モード電流源又はトランジスタは、エンハンスメントモードのみのプロセスで、エンハンスメントモードトランジスタを作成するために用いたもの以外の付加的なマスクなしで、作製することができる。それゆえ、本明細書に記載するような空乏モード電流源又はトランジスタは、同じ機能性を得るために個別に作製された(例えば、異なるIC上に作製された)空乏モートランジスタを必要とすることなく、及びエンハンスメントモード作製プロセスフローにおいて付加的なマスクを必要とすることなく、エンハンスメントモードのみのGaN作製プロセスにおいて、単一のIC上に、強固なスタートアップ回路を実装することを可能とする。したがって、プロセスコストは低く保たれる。空乏モード電流源特性を得るために、高品質で良好に制御された絶縁体は必要とされない。電流源における下側金属フィールドプレートが、より低い飽和電圧及び電流源の閾値電圧Vthを提供する。より高い電圧対応能力を得るために複数のフィールドプレートを用いることもできる。そのため、スタートアップ回路は、約400Vを超える、例えば、約650Vを超える、例えば、約1,000Vを超える高電圧で、降伏なく動作することができるようになる。
【0089】
本記載において、「~に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。また、本記載において、「結合する」という用語は、間接的又は直接的な、有線又は無線の接続のいずれかを意味する。それゆえ、第1のデバイス、素子、又は構成要素が、第2のデバイス、素子、又は構成要素に結合する場合、その結合は、直接結合を通じたもの、或いは、他のデバイス、素子、又は構成要素及び接続を介した間接結合を通じたものであり得る。同様に、第1の構成要素又は位置と第2の構成要素又は位置との間に結合されるデバイス、素子、又は構成要素は、直接接続を通じて、或いは、他のデバイス、素子、又は構成要素、及び/若しくは結合を介した間接接続を通じていてもよい。特許請求の範囲内で、記載された実施例における改変が可能であり、その他の実施例が可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
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図8Z
図9
【国際調査報告】