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特表2024-545168集中的かつ持続可能な果実生産のために、植木鉢中で高い水消費を伴う果樹を栽培する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】集中的かつ持続可能な果実生産のために、植木鉢中で高い水消費を伴う果樹を栽培する方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 17/00 20060101AFI20241128BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20241128BHJP
   A01G 24/25 20180101ALI20241128BHJP
   A01G 24/28 20180101ALI20241128BHJP
【FI】
A01G17/00
A01G7/00 601C
A01G24/25
A01G24/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534506
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-08-07
(86)【国際出願番号】 CL2022050120
(87)【国際公開番号】W WO2023102672
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】3304-2021
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524217975
【氏名又は名称】マルティン・アブラハム・ギロフ・サルバドール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・アブラハム・ギロフ・サルバドール
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB15
2B022BA12
2B022BA15
2B022DA08
2B022DA19
(57)【要約】
本発明は、以下の多変数の管理を介した、含有されている高い水消費を伴う果樹、例えばアボカド樹木を栽培するための、集中的かつ持続可能な栽培の方法に関する:植物構造、栄養分、動的密度、人工受粉、並びに、生産への早期移行、表面積単位あたりの最大収量、及び果実収穫時間の制御を可能にするそれぞれの生物季節学的状態について特定の波長の使用。集中的果実生産のために、高い水消費を伴う果樹(例えば、とりわけ、アボカド、柑橘類、リンゴ、マンゴー、セイヨウナシ、モモ、キーウィ樹木)を容器内で栽培する方法は、高い絶対密度を有するアボカド樹木植物を通気された容器内に配置する段階と、加速された根成長のための基質を容器内に配置する段階と、植物発生、開花、及び結実の早期化を与える栄養液を用いて容器を養液栽培する段階と、容器を、1.0×1.5メートルの密度から3.5×2.5メートルの密度まで変動する動的密度条件下に配置する段階と、LED光システムを用いた、時間とともに周期的に、植物位置空間内で作動する、断続的な波長パルスを用いた照射によって、植物の生物季節学的サイクルを制御する段階と、スプレーシステムを用いてそれぞれの花の円錐花序に花粉を塗布することによって、花を人工的に受粉させる段階と、誘引及び剪定によって樹木の大きさを制御して、多軸植物構造を形成する段階と、微生物を用いた生物的防除によって疫病及び病害を防除する段階と、小さなサイズの種子を有する大きな内径の果実を栽培する段階とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集中的果実生産のために容器内でアボカド樹木を育てる方法であって、前記方法が、以下の段階:
- 通気容器内に高い根密度のアボカド植物を配置する段階、
- 開放空気条件下で、可動構造体上に前記容器を置く段階、
- 加速された根成長のための基質を前記容器内に配置する段階、
- 前記植物の早期の植物発生、開花、及び結実をもたらす栄養液を用いて前記容器を養液栽培する段階、
- 1.0×1.5メートルの密度から3.5×2.5メートルの密度まで変動する動的密度の条件下に前記容器を配置する段階、
- 前記植物の上方の高位上部グリッドに配置され、時間とともに周期的に作動し、前記植物が位置する空間内にある、400~1500nmで変動する波長の断続パルスを伴うLED光のシステムを用いて、光を照らすことによって、前記植物の生物季節学的サイクルを制御する段階、
- それぞれの花の円錐花序にスプリンクラーシステムを通じて花粉を塗布することによって、花を人工的に受粉させる段階、
- トレーニング及び剪定によって樹木の大きさを制御して、多軸植物構造を形成する段階、
- 微生物を用いた生物的防除によって害虫及び病害を防除する段階、並びに
- 大きな内径及び小さな種子サイズを有する果実を育てる段階
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
通気容器内の高い根密度のアボカド植物が、5つの不定根を含む根構造を用いてクローン繁殖することを特徴とする、請求項1に記載の容器内でアボカドを育てる方法。
【請求項3】
前記根構造において、前記不定根が、らせん状に分布し、周期的な様式で発生する細根の塊を生じることを特徴とする、請求項2に記載の容器内でアボカドを育てる方法。
【請求項4】
前記通気容器が、多量の通気を与えるココナツ線維と泥炭との不活性基質混合物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項5】
栄養液を用いる前記容器の養液栽培が、それぞれの成長段階に特異的な頻度及び量で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項6】
前記栄養液が、リン酸、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、及び硫酸マグネシウムを主に含むことを特徴とする、請求項5に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項7】
最初の高密度分布の後、前記植物が、その発生度合及び果実荷重のレベルに応じた動的密度で分布され、前記密度が、1.5×2.0メートル~3.0×2.0メートルの密度で変動することを特徴とする、請求項1に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項8】
前記植物の動的密度の分布において、列間の距離1m×列の上方1.5mから、別の列間の距離2m×列の上方3mのスキームでこれらを配置することができることを特徴とする、請求項7に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項9】
前記led光システムが、15分間~3時間の範囲のサイクルで施用されることを特徴とする、請求項1に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項10】
前記植物の生物季節学的サイクルの制御が、前記果実の発生のために、温度及び相対湿度に関して最適環境条件の瞬間に集中的な様式で前記植物の開花を同期させることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項11】
前記人工受粉が、開花時に前記樹木に直接施用する手動及び/又は機械的スプリンクラーによって実施されることを特徴とする、請求項1に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項12】
樹木の大きさの制御が、果実を2年間実らせたそれぞれの枝を剪定することによって達成されることを特徴とする、請求項1に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項13】
毎年、剪定された生産的な木がリサイクルされ、根覆いとして使用されることを特徴とする、請求項12に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項14】
害虫及び病害の制御を、モニタリング及び手動制御によって毎日行うことを特徴とする、請求項1に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項15】
前記生物的防除が、トリコデルマ・ハルジアナムT-78及びグロムス・イラニカム・テヌイハイファリム変種、白きょう病菌、並びにメタリジウム・アニソプリエの種類の微生物によって、また、真菌抽出物、酵母、又は海洋藻類も用いて実施されることを特徴とする、請求項1に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項16】
前記果実の栽培が、手動で又は機械的に実施されることを特徴とする、請求項1に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【請求項17】
前記アボカド植物が、ハス品種のものであることを特徴とする、請求項16に記載の容器内でアボカド樹木を育てる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野
本発明は、農耕学、水資源、及び環境影響の分野に着目し、一般に、本発明は、水の使用を最適化し、生産を最大にする、高い水消費を伴う果樹の栽培方法に関する。特に、本発明は、以下の多変数管理を介した、制限下における高い水消費を伴う樹木(例えば、とりわけ、アボカド、柑橘類、リンゴ、マンゴー、セイヨウナシ、モモ、キーウィ)の集中的かつ持続可能な栽培の方法に関する:植物構造、栄養分、動的密度、人工受粉、並びに、生産への早期移行、単位面積あたりの収量の最大化、及び果実収穫のタイミングの制御を可能にするそれぞれの生物季節学的段階について特定の光波長の使用。特に、発明の特許は、1.集中的果実生産のための、容器内でのアボカド樹木の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
農業は全世界で取水された水の70%を使用し、農業活動が、作物の蒸発散が原因で更により高い割合の「消費水量」を占めると推定されている。全世界において、3億3千万ヘクタール超が灌漑されている。灌漑農業は全栽培面積の20%を占め、世界中の全食料生産の40%に貢献する。水資源の競争は将来増加すると予想され、農業に特に圧力がかけられている。人口増加、都市化、産業化、及び気候変動が原因で、改善された水利用効率は、25%~40%の水ストレスを与えられた地域における水の再配分を伴う必要がある。(https://www.bancomundial.org/es/topic/water-in-agriculture)。
【0003】
UNは、2025年までに、18億人の人々が絶対的水危機にある国又は地域に住んでいるであろうと推定している。気候変動の現在の状況下では、2030年までに、世界の人口のほぼ半数が、水ストレスを与えられた地域に住んでいるであろうと予想される。この状況において、チリは、主に近年に起きた干ばつ及び新鮮な水の不足によってその発展が制限されている国であり、水ストレスに苦しんでいる国のうちの1つである。チリの林業及び家畜セクターは明らかに輸出志向であり、果樹栽培及び林業が支配的な役割を果たしている。したがって、チリは、その経済成長が依然として天然資源の活用に基づいており、水が農業などのセクターの基礎的な要素であると述べることができる(https://www.elmostrador.cl/agenda-pais/2019/08/30/como-la-escasez-de-agua-estaria-afectando-la-agricultura-de-nuestro-pais/)。
【0004】
世界資源研究所によれば、25%を超える世界中の作物が重篤な水危機を有する地域で育てられており、世界中における5つの最も水大量消費作物は、1)米国カリフォルニア州のアーモンド、2)チリのペトルカのアボカド、3)パキスタンのサトウキビ、4)インドのパンジャブのコメ、及び5)ドミニカ共和国のバナナである。(https://agriculturers.com/los-5-cultivos-que-mas-agua-consumen-en-el-mundo/)。
【0005】
ここで、果実作物に注目すると、これらは、その水消費に応じて、干ばつに対して耐性、寛容、又は感受性であるかに応じたその水要求に応じて分けることができる。必須の灌漑を必要とする、いくつかの干ばつ感受性果樹が存在する:i)750mmの水/年を必要とするサクランボ、アンズ、モモ、セイヨウナシ、後期リンゴ(late apple)、アボカド、及びチェリモヤ、ii)800~1,300mmの水/年を必要とするブラックベリー、柑橘類、及びラズベリー、iii)1,800mmの水/年を必要とするパパイヤ、iv)2,000mmの水/年を必要とするキーウィ、並びにv)2,500~3,000mmの水/年を必要とするヘーゼルナッツ。(http://blog.agrologica.es/necesidades- hidricas-de-las-principales-especies-frutales-riego-tabla-resistentes-sequia/)。
【0006】
上に示したように、チリにおける水危機及びアボカド栽培の象徴的な例はペトルカの町であり、この地域は、残念なことに、莫大なヘクタール数のアボカド樹木栽培を有し、人間が消費するために十分な水がないことで注目されている地域である。しかし、この地域には柑橘類栽培樹木に対応する大きな緑地面積も存在するため、この水不足は、アボカド栽培樹木にのみ起因させることができない。したがって、アボカド展開に使用される水は、柑橘類又はクルミ樹木の栽培よりもさほど多くなく、生産する種より先は、問題は、過剰な作付けヘクタール数である。
【0007】
しかし、資源の最適化の真の戦略を策定することを望むならば、なぜ特定の種類の樹木が他のものよりも商業的に関心がもたれるのか、及びなぜこれらの一部がこれほど大量の水を消費するのかの先は、これらの高い水消費を伴う果樹の生活環及び繁殖をより徹底的に理解することが必要である。
【0008】
これらの樹木の典型的な例はアボカドであり、これは、数百万個の花を咲かすことができるが、それらのうち1%未満しか果実とならない。受精前期(花粉が柱頭に達した時から受精が起こるまで)及び初期果実発生中に起こる、非効率的な受粉から有害な環境条件までの範囲の一連の事象が原因である。アボカド樹木に対して行われる作業により、胚珠の近傍に花粉管を有する花の百分率は、柱頭に達する花粉粒の数によって影響を受けるが、その胚珠が受精されたすべての花が最終的に果実へと発生するわけではないことが示されている。他方では、花粉を手動で施用した後、結実は増加するが、果実へと変換される花の百分率は依然として非常に低く、非効率的な受粉が、低い結実に関与している要因のうちの1つである可能性があることを示唆しているが、これは唯一ではなく;他の要因は、花の生殖的成功、例えば花自体の品質に関与している可能性があり、立ち代ってこれは効率的な栄養分に依存する。受精前期は、環境条件、特に温度に対して非常に感受性があり、これは、柱頭の受容性、花粉管の成長速度、及び胚珠の生存度の調整において重要な役割を果たす。他方では、アボカド樹木では、受精が起こるためには少なくとも20個の花粉粒の堆積が必要であることが記載されている。したがって、その胚珠が受精された花が自然に果実へと変換されるためには多くの要因が併発しなければならないことを指摘することが重要であり、これが、樹木が長期間にわたってそのように多数の花を生成する理由であり、これが関与する、その結果としてのエネルギー的効果を伴う。
【0009】
アボカド栽培樹木の果実として得られるアボカドに関して、2000年の280万トンから2019年のおよそ700万トンへの生産概算量の、近年の大幅な消費の増加に注目されたい。チリの場合、異なる品種のアボカド栽培は、農業及び経済の発展の重要な焦点となっており、その生産の約70%を輸出し、国内消費も大きい。したがって、チリ内のアボカドの消費の先に、アボカド生産は、人間の食品の必要性を満たす以外に、重要な数の直接及び間接的な仕事を生じるため、国家経済において重要な役割を果たす。他方では、そのほとんどが輸出されるアボカドの生産は、このセクターを、チリが国際市場においてフードパワーであるという国家目標に置く。
【0010】
したがって、果樹を栽培して最適な果実生産を得る際に作用するすべての変数を理解及び操作して、国際市場においてチリを強化することと同時に、これらの種の水消費を減らし、より持続可能な農耕学を作ることによって社会的目標を満たす、新しい栽培方法及び生産物を開発することが必要である。発明の特許の方法の開発はチリの現実に基づいて実施されているが、その応用は、アボカド樹木の場合のように高い水消費の樹木が栽培されている世界の任意の地理的位置において実施することができる。
【0011】
その結果、いくつかのイノベーションが、水消費を減らし、果樹作物の収量を改善させるための解決策として出現している。したがって、様々な特許及び刊行物が最新技術において示されており、これらは農耕学目的の新しいイノベーションに基づいており、例えば実用新案CN203968874は実験的実生栽培装置を指す。実験的実生栽培装置は栽培溝を備えており、ここで、開口部が栽培溝の上部に形成されており、その後、凹面空間が栽培溝内に内向きに形成され、水又は栄養液を含有するための内部空洞が栽培スロットの下部に形成され、交差結合されたグリッドプレートが栽培スロットの内向きに凹面である空間内に配置され、栽培スロットは、グリッドプレートによって複数の格納スロットへと分割されており、格納スロットの下部の内部空洞とそれぞれ連通する通し穴がそれぞれ形成される。栄養マトリックスを含有するための実生培養ボックスが格納スロット中に含有され、水口穴が実生培養ボックスの下部に形成され、吸水綿ロッドが実生に配置される。栽培スロット開口部の位置はカバーフィルムによって覆われる。実験的実生栽培装置によって、異なる植物の実生成長の水要件の条件及び照射の度合を好都合に判断することができる。
【0012】
実用新案CN205993179は、鉢本体、フック、ベースプレート、ユニバーサル車輪、受水ディスク、及び吸引カップを備えることを特徴とする、多機能鉢を開示している。鉢本体及びユニバーサル車輪は、ベースプレートの上端及び下端の面に個々に取り付けられており、フックは鉢本体に固定して取り付けられており、ドリップトレイは吸引カップによってベースプレートに取り付けられており、ドリップトレイはフックの下部に位置する。鉢本体が開示されており、内トラフ、外トラフ、及び土壌膨軟プレートを備える。鉢本体及び内トラフは外トラフ体内に置かれ、自由流動空間が両者の間に形成され、土壌膨軟プレートが外トラフの側壁に取り付けられている。
【0013】
特許US2492152は、植木鉢アセンブリを開示しており、その目的のうちの1つに、植物の脱水及び飽水に対する十分な保護を提供するアセンブリの提供がある。そのような鉢アセンブリは、望ましくない条件を防止し、鉢を取り囲む湿った雰囲気を提供する。穴の開いていない壁を有する開口上部を有する容器と、多孔性の壁及びその上部付近にフランジを有するプランターとを備えるプランターアセンブリが提供され、プランターは、容器内で、その壁が容器の壁から間隔をあけて、かつ鉢の底部が容器の底部から相当な距離の上方に配置されるように支持され、水の蓄積のために、容器内の前記鉢の底部の下方に空間が確保される。鉢のこの配置によって、鉢の底部が容器の底部にある水と接触しないため、飽水が防止される。この特長に加えて、鉢の上部と容器との間に取外し可能なシーリングが提供され、これは、鉢の周りに湿った雰囲気条件を常に維持し、したがって鉢内の土壌の乾燥を防ぐ効果を有する。
【0014】
特許出願US2017/027118は、アボカド種子プランターを開示しており、これは、アボカド種子が水の入った広口瓶又はビーカー内で根を生じる間それを保持する再利用可能な装置である。種子が発根した後、これを鉢から取り出し、土壌を有する鉢に植えて観葉植物として育てることができる、又は所望する場合は屋外に植えて育てることができる。
【0015】
特許EP2103212は、植物成長調節物質及びその使用のための技法を開示している。具体的に言うと、この発明は、グルタチオンを使用することによって収穫率を増加させることができる植物成長調節物質、及び植物成長調節物質を使用するための技法に関する。
【0016】
特許出願WO2013/044208は、植物種子又は種子から発芽する植物を、有効量の少なくとも1つのキトオリゴ糖で処理することを含む、植物成長を改善させる方法を示し、収穫の際に、植物は、未処理の植物又は未処理の種子から収穫された植物と比較して、少なくとも、ブッシェル/エーカーあたりで測定した植物収量の増加、根の数の増加、根の長さの増加、根の質量の増加、根の体積の増加、及び葉面積の増加を示す。
【0017】
特許出願KR20200102232は、微孔質技法に基づいた通気鉢を示す。微孔質技法に基づく鉢は、成長が妨げられるほど、植物を収容するためには空間を流れる空気が乏しく、空間が水分を保持しないという既存の問題を、他の流通鉢と比較してより高い通気性を有し、植物成長を助けるために水分を微小孔中に保持することによって、克服する。
【0018】
特許出願CN105766644は、オクラ(Abelmoschus esculentus)の組織培養の方法を示し、植物生物学の技術分野に属する。この方法は、外植片を調製し、成熟及び全オクラ種子を選択し、オクラ種子を水道水で2~3時間洗浄し、その後、オクラ種子を70パーセントのアルコールで、クリーンベンチ上で30秒間消毒し、0.1%の昇汞で8~10分間消毒し、滅菌水で5~6回すすぎ、消毒した種子を滅菌水に12~24時間浸す工程と、浸した種子を1/2 MS培養培地中に接種し、蛍光ランプの光の下で5~7日間育てる工程と、葉を平らにした後、1.5~25cmの末端苗条を部分胚軸と共に切断し、末端苗条を0.05mg/LのNAAを含有するMS培養培地中に接種し、青色-赤色のLED(発光ダイオード)光の下で育てる工程とを含む。1対3対1の青色-赤色-黄色の組合せ比のLED光である、35日間の1対3対1の黄色の組合せ比が、オクラ組織培養実生の成長に適切である。
【0019】
特許出願KR20170123079は、様々なLED発光ダイオードを使用して、ヤクシソウ(Crepidiastrum denticulatum)の生物活性物質及び成長を増加させる方法を示す。医薬品の原材料として使用される薬用作物であるヤクシソウの生物活性物質及び成長を増加させるための、最適化されたLED技術を確実にすることによって、本発明の方法は、高度に機能的な植物原材料を生産する技術として応用することができる。
【0020】
理解することができるように、高い水消費を伴う樹木(例えばアボカド樹木)の集中的かつ持続可能な栽培のために管理又は操作することができる異なる変数の同定を可能にするいくつかの説明が存在するが、(高い水消費を要するものである)陸上での大量栽培を置き換える、又は高い水消費を伴う果樹の異なる種を横断する方法を策定することが可能となっていないため、これらの樹木の栽培は問題が残ったままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】実用新案CN203968874
【特許文献2】実用新案CN205993179
【特許文献3】特許US2492152
【特許文献4】特許出願US2017/027118
【特許文献5】特許EP2103212
【特許文献6】特許出願WO2013/044208
【特許文献7】特許出願KR20200102232
【特許文献8】特許出願CN105766644
【特許文献9】特許出願KR20170123079
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】https://www.bancomundial.org/es/topic/water-in-agriculture
【非特許文献2】https://www.elmostrador.cl/agenda-pais/2019/08/30/como-la-escasez-de-agua-estaria-afectando-la-agricultura-de-nuestro-pais/
【非特許文献3】https://agriculturers.com/los-5-cultivos-que-mas-agua-consumen-en-el-mundo/
【非特許文献4】http://blog.agrologica.es/necesidades- hidricas-de-las-principales-especies-frutales-riego-tabla-resistentes-sequia/
【非特許文献5】Frolich及びPlath、Method.、1972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、水利用効率(WUE)を改善することができる、この種類の樹木のより良好な栽培方法の必要性が依然として存在する。更に、樹木が陸上での樹木と同様の収量を生産しなければ、生産者に利益をもたらさないため、方法は、WUEを改善させ、環境的に持続可能であることに加えて、果実生産に関して商業的に魅力的でもなければならないことが理由で、樹木の果実生産に影響を与えずに、又はそれを減らさずに、環境及び持続可能性に対するその影響を改善させ、農薬(栄養又は植物衛生用)の使用を減らす、作物の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の概要
したがって、高い水消費の果樹を通気容器内、効率的かつ均一な根構造、WUEの分析及び改善、環境的持続可能性、人工受粉、通気容器の使用、位置の距離、並びに葉曝露の光周期及び光強度で栽培するために扱うべき基本的な指針に関する方法を提供することが、本発明の一目的である。樹木が通気容器中に配置される条件は、必要な水が容器内で濃縮されるため、WUEを改善させる。他方では、樹木が容器内にある場合、i)最良の栄養素が樹木によって効率的に捕捉されること、及びii)栄養素が容器内で濃縮されたまま保たれるため、樹木を地面に直接植えた場合のように周辺の環境に直接の影響がないことが理由で、栄養素の使用に持続可能性がある。すべての上記変数が、早期の植物発生、開花、及び結実、並びに植物の生物季節学的制御、集中的な様式の開花の同期及び果実発生のために最適環境条件を達成するために共同的及び相乗的に作用する。
【0025】
その結果、本発明は、最新技術において公知の栽培技術に関して注目すべき技術的利点を示し、これらの利点は、以下のものが際立って、制限下にあり、多変数管理を通じて、高い水消費を伴う果樹の集中的かつ持続可能な栽培方法に基づいて達成される:植物構造、栄養分、動的密度、人工受粉、及び生産へと入る早熟を可能にするそれぞれの生物季節学的状態について特定の波長の使用、単位面積あたりの収量の最大化、並びに果実収穫の時期の制御。集中的果実生産のために果樹、例えば容器内でアボカド樹木を育てる方法(ただし、これは、とりわけ、柑橘類樹木、リンゴ樹木、マンゴー、セイヨウナシ樹木、モモ、キーウィにも適用可能である場合がある)は、通気容器内の高い根密度を有するクローン植物からの段階と、加速された根成長のための基質を容器内に提供する段階と、植物の植物発生、開花、及び結実の早熟をもたらす栄養液を用いて容器を養液栽培する段階と、容器を、1.0×1.5メートルの密度から3.5×2.5メートルの密度まで変動する動的密度の条件下に配置する段階と、時間とともに周期的に作動し、植物の位置空間内にある波長の断続パルスを伴うLED光システムを用いて、光を照らすことによって、植物の生物季節学的サイクルを制御する段階と、スプレーシステムによってそれぞれの花の円錐花序に花粉を塗布することによって、花を人工的に受粉させる段階と、トレーニング(training)及び剪定によって樹木の大きさを制御して、多軸型の植物構造を形成する段階と、微生物を用いた生物的防除を通じて害虫及び病害を防除する段階と、小さな種子サイズを有する大きな内径(caliber)の果実を栽培すること段階とを含む。
【0026】
図面の簡単な説明
本発明の詳細な説明を、本出願の一部である図面と併せて行う。
【0027】
図面は、すべての構成要素を実際又は比例スケールで表さずに、本発明をより良好に理解するための支援要素としてのみ役割を果たすことを示すことが重要である。図中に見られるものは、栽培方法の基本的な側面を理解するための先験的要素を教授的な様式で表され、最新技術において一般知識である要素を含まない場合があるため、本発明は、図中に見られるもののみに限定することができない。したがって、以下の図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】多軸植物を示す模式図である。主軸(A)及び2本以上の二次枝(B)がそれから出現する、多軸植物のレイアウトを示す。
図2】クローン根系を示す略図である。この系は、主不定根がそれから出現し、二次及び三次根がその上に生じる、主茎を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の詳細な説明
本発明のより良好な理解のために以下の定義を提供する必要があり、これらは、本技術分野の特定の技術的特徴の理解を助ける要素としてのみ理解されるべきである。
【0030】
本発明中で使用する用語「高い根密度のクローン植物」とは、植物の様々な構造によって要求される水及び栄養素を常に供給することができる多数の吸収根を有する、はるかにより効率的な根系を有する植物をいう。これらがクローン繁殖されているということにより、これらに、均一性及びこの制限下に起こり得る病原体発生の条件に対する耐用性の利点が与えられる。
【0031】
本発明中で使用する用語「通気容器」とは、水を保持しない一方で、植物を土壌から離してそれを通気された基質環境に保つことを可能にする、すべての種類のプランター、鉢、及び他の種類の容器に対応する。
【0032】
本発明中で使用する用語「養液栽培(fertigation)」とは、水の使用を分配し、溶液中の肥料を植物の根系の近くに置くことを可能にする技法であり、これを用いると、栄養要素と根とのより速くより直接的な接触が起こり、したがって、肥料のより良好な吸収及び使用が起こる。また、作物の発生段階を考慮すると、受精を分割し、環境汚染及び生産費用を減らすために、作物の要求に応じて肥料の量を減らす又は増やすことができる。養液栽培は、同時に、局所化された様式で供給されるため、水及び栄養素の使用をより効率的にする。最も注目すべき利点の中には、肥料の節約、栄養素の分割供給、及びより高い水の利用効率がある。
【0033】
本発明中で使用する用語「植物発生」とは、花も果実も生産されず、小枝及び葉のみがある植物の生活環をいう。
【0034】
本発明中で使用する用語「開花」とは、植物の生殖期の始まりをいい、その成功はそれが起こる瞬間によって決定され、これは、その発生内及び最適環境条件下で最も適切でなければならない。これは、柱頭及び雄蕊を露呈させる、花の萼片及び花弁の成長及び分離のプロセスからなり、開花期としても同定される。これに伴い、花が開いて、受粉、受精、種子の出現、及び最後に果実の形成が可能となる。
【0035】
本発明中で使用する用語「結実」とは、果実の変換をもたらす着花のプロセスである。
【0036】
本発明中で使用する用語「動的密度」とは、空間利用を最大にするために時間とともに変動する、樹木間の距離に対応する。密度とは、1ヘクタールあたりの樹木の数をいい、最初の高密度分布の後、最適な光及び最大の生産的表面積を可能にするために、植物の間隔をあけ、より低い密度で分布させることを意味する。
【0037】
本発明中で使用する用語「生物季節学」とは、器官又は構造の発生、分化、及び開始を研究する科学であり、特定の周期的リズム、例えば、とりわけ、出芽、開花に関連する生物学的現象、並びに、それをそれらが起こる環境と関連付ける研究をいう(Hodges、1991年、Mullinsら、1992年)。この事例では、植物の「生物季節学的サイクル」は、気候要因と植物サイクルとの間の関係性と関連している。これは、具体的には植物性及び生殖性の構造の周期的生産に関係する。
【0038】
本発明中で使用する用語「花の円錐花序」は円錐花序としても知られ、頂部に向かってサイズが小さくなる房から構成される総状花序である。言い換えれば、これは、枝自体が房である、枝分かれした花の房である。これは房の房として分類され、主花軸を有し、これが二次花軸へと更に分割され、これから小花柄を有する花が分離する。
【0039】
本発明中で使用する用語「多軸」は生い茂った系としても知られ、所望の生産レベルに必要な最適な葉体積のために樹木の生産的表面を最大にするために最初に1回のみ固定する、樹木枝トレーニングの一種である。出現する活発な苗条を選択し、適切に分布した4~5個を選択し、これが茂み又は群葉を形成する。
【0040】
本発明中で使用する用語「クローン繁殖」は、様々な所望の台木の黄化した茎を掻爬し、ホルモン溶液に施用することによって、発根させることからなる(Frolich及びPlath、Method.、1972)。
【0041】
本発明中で使用する用語「根構造」とは、植物根の構造、及びこれらがどのように茎から出現する不定根から発生するかをいう。根系の立体構造は、異なるレベルの土壌プロファイルでの水及び栄養素の取り込みを可能にするため、植物において必須の適応側面である。林業種では、根構造は、容器植物培養及び他の管理側面についても関連している。
【0042】
本発明中で使用する用語「不定根」とは、胚の小根から生じず、植物の他の箇所、例えば、苗条の何らかの部分、地下茎、及び古い根から生じる根をいう。
【0043】
本発明中で使用する用語「根覆い」とは、植物の周りの地面上に置き、土壌中で起こる主に湿度及び温度の気候変化からの保護層として作用する、通常は有機である任意の材料である。根覆いは、蒸発を減らし、より多くの湿度を保持し、栄養素の維持を改善させる能力を有しており、土壌構造を維持することを可能にするため、水不足の期間に有益である。
【0044】
したがって、以前の段落中に示した通り、商業的に関心がもたれる果樹を、鉢内で、果実(例えば、とりわけ、アボカド、柑橘類、リンゴ、マンゴー、セイヨウナシ、モモ、キーウィ)の集中的かつ持続可能な生産のために栽培する異なる種類の方法が存在するが、本発明中に開示する栽培方法を対等に開示する文書が存在しない。
【0045】
その結果、本発明の利点のうちの1つは、WUE及び環境的持続可能性の問題に取り組んでいるという点であり、これは、本発明は、通常の土壌条件下で栽培したものと同じ果実収量指数を、より少ない樹木あたりの水消費を確実にする条件下で提示し、更により高い高密度化を可能にし、したがって、生産的表面のより多くの使用を達成する、果樹、特にアボカド樹木を生産するためにより少ない水を必要とする栽培方法を開示するためである。言い換えると、本発明の栽培方法によって、限定的な表面において、従来の栽培システムと比較して高い内径及び高い体積の収穫物であるが、低下した水消費によって、周囲に環境的な影響を与えずに、果実(アボカド)を得ることが可能である。
【0046】
更に、本発明を通じて、通気容器内での、高い根密度のクローン植物及びled光を用いた、資源、植物、水、栄養分、及び光の高い利用効率、並びに環境に有害な農薬の少ない使用に関して利点を提示する、栽培方法が開発され、本方法は、低い環境影響及び高い栄養的価値で果実生産を得る利点を与える。
【0047】
本発明の方法の別の利点は、人工受粉が開発されることであり、これは、花粉が正しい時間に到着し、より高い受粉率をもたらすため、非常に有用である。他方では、殺虫剤の無差別の使用及び病害によって蜂の数が減っているために蜂を通じた自然の受粉はより複雑となっているため、受粉の代替方法は、高い水消費を伴う果樹の栽培におけるブレイクスルーであり、より持続可能な受粉を可能にする。したがって、本発明の方法の低い環境影響及び有害な農薬製品の少ない使用は、蜂及びその再増殖の保護及び世話に貢献する別の利点である。
【0048】
本発明の別の注目すべき特長は、従来技術において、特許請求した方法において使用した要素の一部が別々に開示されているが、引用した文書はいずれも、本発明の方法中に含まれるすべての要素及び段階を用いた、それによって水の使用が最適化され、果実生産が最大となる方法を記載していないことである。本発明の栽培方法を構成するすべての特徴は共同的かつ相乗的に適用されて、早期の植物発生、開花、及び結実、並びに植物の生物季節学的制御、集中的な様式の開花の同期及び果実発生のために最適環境条件を達成し、これが、生産への早期移行、単位面積あたりの収量の最大化、及び果実収穫の時期の制御を、すべて低下した水消費で可能にする。
【0049】
更に、実施例セクションに記載するように、本方法の別の利点は、果実生産を最適化するために個体間の作物距離の最適な関係性を決定し、それぞれの個体が空気、光、及び育成空間資源への最適なアクセスを有する、生産空間を改善させることが可能であったことである。
【0050】
最後に、本発明の方法は、使用する通気容器及び植物材料(アボカド)と一緒に、細根の塊を生じさせる技術的利点並びに早期の植物発生、開花、及び結実を達成する人工受精方法を提示する一方で、led光システムの使用により、植物の生物季節学的サイクルを制御することができ、より低い資源の費用でより良好な果実生産がもたらされる。
【0051】
したがって、本発明の技術的利点は、そのそれぞれが適用される特長の残りのものによって増強される技術的貢献を行う、段階及び特殊特長の結合を通じて達成される。
【0052】
したがって、例えば、図1では、多軸型の植物構造を表し、樹木の大きさがトレーニング及び剪定によって制御されて主軸(A)が形成され、これから2本以上の二次枝(B)が生じ、立ち代ってこれらは三次の枝又は軸へと分割され、ここで果実が成長及び発生する。
【0053】
したがって、本発明による、集中的果実生産のために、高い水消費を伴う果樹、特に容器内でアボカド樹木を栽培する方法は、(i)高い根密度のクローン植物を通気容器内に配置する段階と、(ii)容器を可動構造体(パレット)上に、屋外条件下で置く段階と、(iii)容器内に最適細根成長の基質を配置する段階と、iv)植物の早期の植物発生、開花、結実、並びに果実発生をもたらす栄養液を用いて容器を養液栽培する段階と、v)容器を、植物間の最初の距離である1.0×1.5メートルから3.5×2.5メートルの最大距離まで変動する動的密度の条件下に配置する段階と、vi)時間とともに周期的に作動し、植物が位置する空間内にある波長の断続パルスを伴うLED光システムを用いて光を照らすことによって、植物の生物季節学的サイクルを制御する段階と、vii)スプリンクラーシステムを通じてそれぞれの花の円錐花序に花粉を塗布することによって、花を人工的に受粉させる段階と、viii)トレーニング及び剪定によって樹木の大きさを制御して、多軸植物構造を形成する段階と、ix)微生物を用いた生物的防除によって害虫及び病害を防除する段階と、x)小さな種子サイズを有する大きな果実を育てる段階とを含む。
【0054】
本発明の栽培方法は、植物を通気容器内に配置することから開始し、果実の収穫に終わる、連続的なサイクルで実施し、したがって、それぞれの植物又は樹木の特定の条件を考慮すると、前記連続的なサイクルの期間はそれぞれの樹木について時間変動を有し得ることを強調することが適切であるが、本方法によってカバーされる全サイクルの実現のために、時間範囲は常に確立される。
【0055】
クローン植物は、元は苗床で見つかり、これらがおよそ80センチメートルの高さの時に通気容器へと移植され、ここで、これらを5つの不定根を含む根構造を用いてクローン繁殖させ、不定根は、らせん状形態で分布し、周期的な様式で発生する細根の塊を生じる。通気容器は、例えばココナツ線維及び泥炭(peat)からなり得る不活性基質の混合物を含有し、根の十分な通気を可能にする。このクローン繁殖の方法を用いて、主茎から生じる冠根が得られ、ここから、開放角で主根が出現し、これが、表面上の根系(50cmの最大深度)並びに多数の二次及び三次の根(吸収根)を生じる。図2中に示すように、根は、およそ6mmの直径を有する主根(1)、それから出現するおよそ2mmの直径を有する二次根(2)、及びそれから出現するおよそ1mmの直径を有する三次根(3)から構成される。
【0056】
本発明の植物は常に容器内に保たれ、隔離された容器内での栽培は、持続可能性(より少ない水消費、より高い栄養素、肥料、及び農薬の利用効率、並びに生物季節学的側面のより良好な制御に関する利点を可能にし、したがって、植物は常に、決定された土地の表面上の鉢又は容器内にある。
【0057】
他方では、本方法は、栄養液を用いる容器の養液栽培を含み、これは、それぞれの成長段階について特定の頻度及び量で実施し、頻度は、日々発達及びモニタリングする特徴に従って評価し、これには、リン酸、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、及び硫酸マグネシウムを主に含む栄養液を、それぞれの植物の要求に応じて調節する量で加える。
【0058】
本方法の作物密度については、最初の高密度分布の後、植物が、その発生度合及び果実荷重のレベルに応じた動的密度で分布され、この密度が1.5×2.0メートルの最初の距離から3.0×2.0メートルの最大間隔まで変動する。植物を動的密度で配置するということは、植物の成長段階中にその最大の成長を可能にする間隔を暗示する。これは、植物間の距離が時間とともに増加することを意味する。最初の密度は1.5m×2.0mであり、生産段階における最大間隔である3.0m×2.0mに達し、これは、整列小路(alignment alley)に向かって3.0m及び植樹帯又は線の上方に2.0mである。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、植物の動的密度の分布は、列の間隔スキームが2.0m×列の上方1.5mから、別の、列間の距離が2.0m×列の上方3.0mを用いて配置することができる。
【0060】
更に、LED光システムは、植物の上方の高位トップグリッドに配置し、LED光のフラッシュパルスは、時間とともに周期的な様式で、かつ植物位置空間内で作動する、400~1500nmの範囲の波長を有する。断続パルスの施用は、15分間から3時間まで変動するサイクルで実行する。これは、植物の生物季節学的サイクルを調節する、すなわち、植物成長及び開花の間の変化を制御する。これは、花の発生及び結実のために、植物の開花を集中的な様式で、温度及び相対湿度に関して最適環境条件の瞬間に同期させることを含む。
【0061】
この制御は、開花時に樹木に直接施用する手動及び/又は機械的スプリンクラーによって実施する人工受粉によって有利となる。
【0062】
本発明の別の態様では、樹木の大きさの制御は、果実を2年間実らせたそれぞれの枝を剪定することによって達成され、毎年、剪定された生産的な木はリサイクルされ、根覆いとして使用される。
【0063】
本発明の別の重要な態様では、害虫防除は環境に優しい様式で行い、害虫及び病害の制御は、モニタリング及び手動制御によって、具体的には害虫の生物的防除によって、毎日行い、これは、これらの病原体を排除する植物のために有益な微生物によって実施し、これらの微生物は、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)T-78及びグロムス・イラニカム・テヌイハイファリム変種(Glomus iranicum var. tenuihypharym)、白きょう病菌(Beauveria bassiana)、及びメタリジウム・アニソプリエ(Metarhizium anisopliae)の中から選択することができるが、害虫防除は、真菌抽出物、酵母、又は海洋藻類を使用しても実施することができる。
【0064】
最後に、果実は手動で又は機械的に収穫する。これらは、平地及び傾斜地のどちらでも栽培することができる。本発明の栽培方法は、高い水消費を伴う果樹、例えば、とりわけ、アボカド、マンダリン、柑橘類、リンゴ、マンゴー、セイヨウナシ、モモ、キーウィで再現することができる。チリの農業において特に関心がもたれているのは、アボカド樹木(特にハス品種)の栽培及び柑橘類(例えばオレンジ及びマンダリン)の栽培である。
【実施例
【0065】
実施例
容器内で育てるステップ・バイ・ステップの方法及びこれらの生産レベルを示すための厳格な試験の説明を、以下の比較例を通じて実証する。
【0066】
(実施例1)
アボカド樹木を容器内、制御条件下で育てる方法。
方法のこの実施例は、ハスアボカド樹木の使用を含み、これは、台木を有さず直接根を下ろすクローン繁殖した高い根密度の植物であり、らせん状で分布する5つの主不定根を含む根構造を有し、本技術において広く知られている通気容器(エアポット)内で周期的かつ豊富な様式で発生する細根の塊を生じる。
【0067】
本方法は、空気の通過を可能にし、その構造的特徴並びに水及び空気に対する透過性を劣化させずに少なくとも10年間存続するために十分な強度を有する、任意の容器の使用を含む。
【0068】
容器内での栽培方法は、養液栽培システムを通る機械的な酸素注入システムを使用することができる。根レベルでの酸素の利用可能性は、異なる優先的な代謝プロセス、例えば、炭水化物代謝、硝酸還元、共生窒素固定、タンパク質再生、プロトン勾配の維持、及び根による栄養素吸収に必要であり、これらの植物が置かれる制限的状況を考慮すると、最適植物発生における主要な要因であるため、最適植物発生に必須である。この目的のために、本発明者らは、最良の酸素/水比を提供する基質、並びにこれらの栽培システムにおける収量の増加を可能にする通気容器及び含酸素栄養液(酸素養液栽培)を用いて作業する。
【0069】
使用した基質は、等割合のココナツ線維/泥炭の、ココナツ線維及び泥炭から構成される不活性基質の混合物であった。鉢を可動構造体上に開放空気条件下で置き、早期の植物発生、開花、及び結実を可能にする、リン酸、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、及び硫酸マグネシウムを主に含む栄養液を用いて養液栽培した。
【0070】
植物は、最初に高密度(1.5m×1.5mの間隔)で置き、その後、その発生度合及び果実荷重のレベルに応じた動的密度で作業する。動的密度は列間の距離が1.5m×列の上方1.5mから開始し、列間の距離が2m×列の上方3mとなる。
【0071】
その発生を最適化するために、これらを、時間とともに周期的に作動し、植物が位置する空間内にある波長の断続パルスを伴うLED光システムを使用して育てる。LED光システムは、植物の上方の高位トップグリッドに配置し、断続パルスは、400~1500nmの範囲の波長を有し、これは時間とともに周期的に作動し、植物配置空間内にある。光の施用は、可動構造、及び、樹木が、従来の植え付けよりも顕著に小さな空間内で大量の樹木をカバーすることを可能にする、非常に高密度にあるということにより、達成される。LED光パルスの施用サイクルは、植物の目的及び生物季節学的年齢に応じて調節する。光の範囲に応じて、施用時間は15分間~3時間で変動する。これは、植物の生物季節学的サイクルを制御し、集中的な様式で、かつ果実発生に最適環境条件の瞬間に開花を同期させることによって達成される。
【0072】
植物の生物季節学的サイクルは、ホルモンの使用、栄養素、LED光の使用、及び剪定を通じて植物の開花を集中的な様式で同期させることによって制御し、これは、年間の特定の時間ウィンドウ内での果実発生及び収穫を達成するために、温度及び相対湿度に関して最適環境条件の時点で行うべきであり、これは、樹木が位置する場所の環境条件によって決定される。開花から結実までの時間は、10°ベースでおよそ1500~2000度日/年の範囲がかかるはずである。
【0073】
花の有効な受粉を達成するために、大きな内径の果実及びより小さな種子サイズを有する、円錐花序あたりの結実の顕著な増加を可能にする人工受粉システムを使用する。人工受粉は、開花時に樹木に直接施用する手動及び/又は機械的スプリンクラーによって実施し、これは、現地での毎日の環境条件に依存する。これは、着花することができる花の数を増加させ、樹木の生産的な潜在性を増加させ、飛翔活性が外気温に依存する蜂の群れ(bee hive)への直接依存を回避する。
【0074】
樹木の大きさを制御し、生産を最大にするために、多軸植物構造を生じるトレーニング及び剪定システムを使用し、生産的な木は毎年リサイクルされ、それぞれの枝は2年間生産させ、その後、剪定する。
【0075】
害虫及び病害の制御には、生物的防除及び微生物を使用して、病原体レベルを制御下に保って殺虫剤又は殺昆虫剤の使用を必要としないレベルまでにする。生物的防除は、トリコデルマ・ハルジアナムT-78、グロムス・イラニカム・テヌイハイファリム変種、白きょう病菌、及びメタリジウム・アニソプリエの種類の微生物によって実施する。当分野で公知の他の方法は、真菌抽出物、酵母、又は海藻を用いるものである。
【0076】
植物資源、水、栄養分、及び光の高い利用効率、並びに環境に有害な農薬の非使用を考慮すると、アボカド生産が低い環境影響及び高い栄養的価値で達成される。
【0077】
(実施例2)
台地(plateau)及び土壌条件下でアボカドを育てる方法の比較。
この比較試験には、平地で育てたハスアボカドの植え付けを検討した。チリ内で見つかる土地の種類、及び国のほとんどが広範囲の山脈を有することが原因で、果樹の栽培に利用可能な多くのヘクタールの平地を見つけることは容易ではなく、近年では、樹木を有害な気候条件から保護するために、北向きの傾斜面への植え付けが好ましいと決定されている。
【0078】
このため、土地を下げて栽培台地を形成した丘陵斜面での栽培樹木の利点は不明であったため、チリで長年の間、育てられてきた多くのアボカド栽培樹木では、栽培樹木は平地で実施されていた。
【0079】
この圃場試験では、生産収量を比較するために、平地で育てた、本発明による容器内のアボカド樹木を使用し、典型的な土壌条件下で育てたアボカド樹木と比較した。
【0080】
結果:研究により、通気容器内での栽培は、樹木の植物衛生状態の改善、顕著により大きな果実サイズ(正の商業的影響)、通常よりも早く生産に入ることを可能にする、樹木のより高い植物成長、及びより少ない水要件を可能にすることが示された。
【0081】
得られた別の改善は水の使用であり、これは、植物が容器内に配置されると、植物の根を容器内で水分補給させるためにちょうど足りるだけの水が使用されるが、土壌作物では、はるかにより多くの水が、必ずしも樹木の根によってではなく周囲の土壌によって失われて吸収されるためであった。それぞれの栽培方法で使用された水のリットル数を定量することによって、本発明に従って容器内でアボカド樹木を育てた場合に、少なくとも50%の使用された灌漑水の低下があったと決定することが可能であった。これは、既に示したように、世界中の水不足、及びアボカド樹木が人間による使用に意図されるよりも多くの水を消費すると想定されるチリの多くの地域における問題を考慮すると、非常に関連性がある。
【0082】
最後に、評価した最後のパラメータは生産性であり、これは、アボカド樹木が十分な大きさまで育つことができ、気候条件に耐え、成熟段階に達したとしても、これらはすべて、果実の収量が土壌で育てたアボカドと同じでなければほとんど役に立たないためであった。
【0083】
結果は、土壌中で育てたアボカド樹木と比較して、容器(本発明による)内で育てたアボカド樹木において開花のレベルが顕著に改善されたことを示した。両事例における果実生産のレベルは同じであったが、ヘクタールあたりにより多数の樹木を有することによって、より高い高密度化がもたらされ、生産的表面のより多くの使用及び樹木あたりの水消費の顕著な低下(50%を超える)をもたらす。上記のすべてが、ヘクタールあたりの作物収量に対して正の影響を持ちつつ、本発明の栽培及び受粉方法を用いて、水利用効率(WUE)を改善させることが可能であり、栄養分又は植物衛生の農薬の使用を減らすことによって環境的に持続可能な方法が利用可能であることを示すであろう。
【0084】
当該技術の方法に従って土壌中で育てたアボカド樹木及び本発明の方法に従って育てたものにおいて得られた、植物あたりの収量は同じであり、以下であった:生産の1年目は4kg/植物、2年目は10kg/植物、3年目は15kg/植物、4年目は18kg/植物、5年目は20kg/植物。
【0085】
その結果、本発明の方法は、i)より少ない水を必要とする持続可能な栽培戦略であること、ii)殺虫剤を必要としないため環境に優しいこと、iii)水費用、殺虫剤の使用、取扱い、及び維持管理を倹約するため、より経済的であること、並びにiv)樹木あたり同じレベルの果実生産を達成するが、生産面積あたりの収量を増加させるため、収益が高いことが証明される。
【0086】
したがって、本発明の上記の実施例及び説明は、集中的果実生産のために、高い水消費の果樹を容器内で育てる方法を支持する。したがって、詳述し、以前の段落中に示した本明細書中の説明から本発明の他の設計及び立体構造を与えることができるため、記載した発明の範囲は、実施例中に言及した構成要素、例えばアボカドのみに限定されるべきでない。農業分野において経済的に関心がもたれ、水危機によって影響も受ける、他の高い水消費の果樹は、柑橘類樹木であり、本方法は、アボカド以外の樹木に適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
A 主軸
B 二次枝
1 主根
2 二次根
3 三次根
図1
図2
【国際調査報告】