(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】水溶性マメ科植物タンパク質
(51)【国際特許分類】
A23J 1/14 20060101AFI20241128BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A23J1/14
A23J3/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534531
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 DE2022100943
(87)【国際公開番号】W WO2023104250
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202021106752.7
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508071319
【氏名又は名称】エムスランド-シュテルケ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Emsland-Staerke GmbH
【住所又は居所原語表記】Emslandstrasse 58, 49824 Emlichheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラインス,ニコ
(57)【要約】
本発明は、大規模に産生することができる、水溶性マメ科植物タンパク質であって、マメ科植物種子を破砕すること、必要に応じて、破砕されたマメ科植物種子を脱脂すること、破砕されたマメ科植物種子を水と混合して、マメ科植物のスラリーを産生すること、マメ科植物のスラリーのpH値を6.8~7.5、好ましくは7.0~7.4のpH値に調整すること、遠心分離又は濾過によってデンプンと繊維を分離し、上清としてタンパク質水溶液を産生すること、分離されたタンパク質溶液のpH値を7.2~8のpH値に調整すること、pH調整タンパク質溶液を限外濾過すること、限外濾過保持液を、透析濾過なしの透過液の導電率の30%以下の透析濾過物の導電率、すなわち1~3mS/cmの導電率へと、pH値7.5~8.2の水と透析濾過すること、透析濾過された限外濾過タンパク質保持液を取得すること、及び限外濾過保持液を乾燥、冷却又は凍結すること、により取得される、水溶性マメ科植物タンパク質、及びその産生方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性マメ科植物タンパク質であって、
マメ科植物種子を破砕すること、
必要に応じて、破砕されたマメ科植物種子を脱脂すること、
破砕されたマメ科植物種子を水と混合して、マメ科植物のスラリーを産生すること、
マメ科植物のスラリーのpH値を6.8~7.5、好ましくは7.0~7.4のpH値に調整すること、
遠心分離又は濾過によってデンプンと繊維を分離し、上清としてタンパク質水溶液を産生すること、
分離されたタンパク質溶液のpH値を7.2~8.5、好ましくは7.5~8.3のpH値に調整すること、
pH調整タンパク質溶液を限外濾過すること、
限外濾過保持液を、pH値が7.5~8.2の淡水及び脱塩水から選択された水で透析濾過し、透析濾過物の導電率が透析濾過なしの透過液の導電率の30%以下、すなわち導電率が1~3mS/cmになるようにすること、及び
透析濾過された限外濾過タンパク質保持液を取得すること、
限外濾過保持液を乾燥、冷却又は凍結すること、
により産生される、水溶性マメ科植物タンパク質。
【請求項2】
乾燥することが、噴霧乾燥、フリーズドライ、凍結乾燥から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の水溶性マメ科植物タンパク質。
【請求項3】
水性限外濾過保持液が、活性炭、ケイ酸塩及び吸着剤樹脂から選択される吸着剤で処理されることを特徴とする、請求項1~2の一項に記載の水溶性マメ科植物タンパク質。
【請求項4】
フィチン酸塩の沈殿が、タンパク質溶液のデンプン及び繊維の分離後に行われることを特徴とする、請求項1~3の一項に記載の水溶性マメ科植物タンパク質。
【請求項5】
マメ科植物が、緑豆、エンドウ豆、ヒヨコマメ、ルピナス、レンズ豆含むマメから選択されることを特徴とする、請求項1~4の一項に記載の水溶性マメ科植物タンパク質。
【請求項6】
限外濾過保持液が、UHT、HTSTから選択される温度処理をされていることを特徴とする、請求項1~5の一項に記載の水溶性マメ科植物タンパク質。
【請求項7】
限外濾過膜のカットオフが5kDa~100kDaであることを特徴とする、請求項1~6の一項に記載の水溶性マメ科植物タンパク質。
【請求項8】
動物飼料のための出発産物及び/又は最終産物、及び/又は乳化剤、及び/又は塗膜形成要素及び/又は泡安定剤、及び/又はヒト及び動物の栄養のための食品又は添加物、グルテン出発材料、又はフルーツジュース及びそれから産生される飲料のための清澄剤である、請求項1~7の一項に記載の水溶性マメ科植物タンパク質。
【請求項9】
請求項1~8の一項に記載の可溶性マメ科植物タンパク質を産生する方法であって、
破砕されたマメ科植物種子を事前播種する工程、
必要に応じて、破砕されたマメ科植物種子を脱脂する工程、
破砕されたマメ科植物種子を水と混合して、マメ科植物のスラリーを産生する工程、
マメ科植物のスラリーのpH値を6.8~7.5、好ましくは7.0~7.4のpH値に調整する工程、
遠心分離又は濾過によってデンプンと繊維を分離し、上清としてタンパク質水溶液を産生する工程、
タンパク質水溶液のpH値を7.2~8.5、好ましくは7.5~8.3のpH値に調整する工程、
pH調整タンパク質溶液を限外濾過する工程、
限外濾過保持液を、pH値が7.5~8.2の淡水及び脱塩水から選択された水で透析濾過し、透析濾過物の導電率が透析濾過なしの透過液の導電率の30%以下になるようにする工程、
透析濾過された限外濾過タンパク質保持液を取得する工程、
必要に応じて、UF保持液のHTST処理、及び
限外濾過保持液を乾燥、冷却又は凍結する工程、
を含む、方法。
【請求項10】
10~100kDaのカットオフでUF膜を使用することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性マメ科植物タンパク質及びその産生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願の文脈において、マメ科植物タンパク質は、マメ科植物羊水から得られたタンパク質混合物を意味すると理解される。
【0003】
マメ科植物羊水は、マメ科植物種子を破砕し、懸濁粒子及び水不溶性物質を機械的に分離した後、水でスラリー化したときに、溶液に残る濁った水溶液である。
【0004】
Food Res.lnt.2010,43,414-431,Pulse proteins:Processing,characterization,functional properties and applications in food and feed,doi:10.1016/j.foodres.2009.09.003、又はBarac et.al.in lnt.J.Mol.Sci.2010,11,4973-4990,doi:10.3390/ijms11124973、又はTaherian in Food Res.lnt.2011,44,2505-2514,Comparative study of functional properties........によって説明されているように、マメ科植物タンパク質には様々な産生方法がある。これらの産生及び抽出方法は、タンパク質の使用に重要なパラメータ、すなわち溶解度、乳化性、発泡挙動、塗幕形成挙動、口当たり、味覚などに影響を及ぼす。M.C.Tulbek,R.S.H Lamらは、“Sustainable Protein Sources” 2017,chapter 9,pages 145-164,https://doi.org/10.1016/B978-0-12-802778-3.00009-3に、高機能タンパク質が、等乳化剤、発泡剤、ゲル化剤及び塗膜形成要素として求められていると記載した。A.Singhal、A.C.Karaca、R.Tyler及びM.Nickersonはまた、2015年に、“Grain Legumes”,Chapter 3:“Pulse Proteins:From Processing to Structure-Function Relationships”,doi:10.5772/61382.において穀粒マメ科植物タンパク質の優れた概要を発表した。
【0005】
本発明は、エンドウ豆(ピスム・サティバム(pisum sativum))、豆及びレンズ豆について言及しながら以下に説明されるが、この方法は、例えば以下のような他の穀物マメ科植物種子にも同様に適している。
【0006】
インゲンマメ種(Phaseolus ssp):
・リマビーン(Lima bean)、ムーンビーン(moon bean)(ファシオラス・ルテーナスL.(Phaseolus lunatus L.))、ポルトガル語でfeijao-de-lima
・テパリービーン(Tepary bean)(ファシオラス・アクチフォリアスA.グレイ(Phaseolus acutifolius A.Gray))
・スカーレット・ランナー・ビーン(Scarlet runner bean)(ファシオラス・コクチニアスL.(Phaseolus coccineus L.))、スペイン語でayocote、ポルトガル語でfeijao-da-espanha/feijoca
・コモンビーン(Common bean)(ファシオラス・ヴルガリスL.(Phaseolus vulgaris L.))、スペイン語でfrijol、ポルトガル語でFeijao
・ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max))、スペイン語でsoja、ポルトガル語でsoja
・キマメ(カジャナス・カジャン(Cajanus cajan))、スペイン語でguandul、ポルトガル語でguandu
・ヒヨコマメ(サイサー・アリエチナム(Cicer arietinum))、スペイン語でGarbanzo、ポルトガル語でgraodebico
・レンズ豆(レンズ・クルリナリス(Lens culinaris))、スペイン語でLentejaポルトガル語でlentilha
・フィールドビーン(ヴィシア・ファバ(Vicia faba))、スペイン語でFaba、ポルトガル語でfava
ヴィニア(Vigna)種(Vigna ssp.)
・ササゲ、(ヴィニア・アンギキュラタ(Vigna unguiculata))、ポルトガル語でfeijao-fradinho
・アズキ(ヴィニア・アングラリス(Vigna angularis))
・緑豆、(ヴィニア・マンゴ(Vigna mungo)
ルピナス属(Lupinus ssp.)
・シロバナルピナス(ルピナス・アルバス(Lupinus albus)
・アンデアン・ルピン(Andean lupine)(ルピナス・ムタビリス(Lupinus mutabilis))
・黄花ルピナス(ルピナス・ルチアス(Lupinus luteus))
・青花ルピナス(ルピナス・アングスチフォリウス(Lupinus angustifolius))
・多葉のルピナス(ルピナス・ポリプィルス(Lupinus polyphyllus))
【0007】
局所のみの重要な種には、いくつかの熱帯国のニューワールド・ジャック・ビーン(カナヴァリア・エンシフォルミスL.(Canavalia ensiformis L.))及びオルドワールド・ソードビーン(カナヴァリア・グラジアタ(Canavalia gladiata))が含まれる。ヘルメットビーン(ラブラ・プープリアス(Lablab purpureus))は、アフリカ、インド及び東南アジアのいくつかの国で栽培されている。平坦なエンドウ豆(ラチルス・サティヴス(Lathyrus sativus))は、非常に干ばつ耐性があると考えられているため、インドでは主に重要である。挽いた豆(マクロトリマ・ゲオカルパム(Macrotolyma geocarpum))は西アフリカでのみ固有のものであり、ピーナッツと同様に土壌の基質で熟する。他の植物には、ウママメ(マクロトリマ・ユニフロルム(Macrotolyma uniflorum))、ヤムビーン(Pachyrhizus erosus(パカライザス・エロスス))、ゴア又はウイングマメ(ソフォカルプス・テトラゴノボルス(Psophocarpus tetragonobolus))及び塊茎マメ又はアフリカヤムビーン(スフェノスタイリス・ステノカルパ(Sphenostylis stenocarpa))が含まれる。
【0008】
ここでのマメ科植物種子は、エンドウ豆、ヒヨコマメ、レンズ豆、マメ-例えばフィールドビーン、緑豆、ダイズ及びルピナス種子など-の穀物マメ科を意味すると理解される。
【0009】
すべての穀物マメ科植物の果実は、高いタンパク質含有量を特徴とする。このタンパク質は、多種多様な用途によって関心を引いている。通常、タンパク質は、動物性タンパク質に可能な限り似た挙動をし(すなわち、レシピで動物性たんぱく質にとって代わるはずである)、好ましくはホイップ可能であり、乳化効果を有し、フィルム及びゲルを形成する。これらの特性のおかげで、動物性タンパク質の代わりに結合剤(例えば肉製品)、ベーキングプロセスにおける発泡剤、及びマメ科植物タンパク質を添加することによってホイップすることができる模倣乳(例えば、スチームミルク又は野菜クリーム代替品のようなもの)として用いることができる。。しかしながら、マメ科植物タンパク質は、化粧品及び技術においても要求されている。それらはまた、接着剤及び接着剤原料として、例えばフォトレジストにおいて、又は接着剤置換材料、浮遊助剤及び乳化剤のために使用される。
【0010】
今までのところ、多くのマメ科植物タンパク質の使用はフラボノイド、アルデヒド、ケトン及びアルコールなどの副産物を含有しているため失敗してきた。これは、風味及び溶解性の両方の問題につながる。その結果、技術的方法を使用して得ることができる可溶性タンパク質の収量及び純度の程度を改善することができ、以前にマメ科植物種子から得られたタンパク質の質は、塗幕形成、乳化能力、ホイッピング能力及びゲル形成能力に関して食品産業の要件を満たさないことが多かった。別の問題は、いくつかのマメ科植物種子が非常に高い脂肪含有量を有し、とりわけタンパク質の溶解度に影響を及ぼすことである。したがって、ダイズについて知られているように、これらのマメ科植物種子に脱脂方法が使用される。当業者は、マメ科植物種子を様々な溶媒で脱脂することに精通している。高い機能性を有するタンパク質、すなわち変性がほとんど又はまったくなく、したがって高い水溶性を有するタンパク質が特に望ましいので、これらを達成するための工業的方法を見出す試みがなされてきた。しかしながら、工業的に利用可能な簡便な方法で、完全に水溶性の形態のマメ科植物タンパク質を工業的規模で高収率で得ることはいまだ可能ではなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Food Res. lnt.2010, 43, 414 - 431, Pulse proteins:Processing, characterization, functional properties and applications in food and feed, doi:10.1016/j.foodres.2009.09.003
【非特許文献2】Barac et. al. in lnt.J.Mol. Sci.2010, 11, 4973-4990, doi:10.3390/ijms11124973
【非特許文献3】Taherian in Food Res. lnt.2011, 44, 2505 - 2514, Comparative study of functional properties
【非特許文献4】M.C.Tulbek, R.S.H Lam,et. al.“Sustainable Protein Sources” 2017, chapter 9, pages 145 - 164, https://doi.org/10.1016/B978-0-12-802778-3.00009-3
【非特許文献5】A.Singhal, A.C.Karaca, R.Tyler and M.Nickerson, 2015,“Grain Legumes”, Chapter 3:“Pulse Proteins:From Processing to Structure-Function Relationships”, doi:10.5772/61382
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、高い機能性及び高い収率で、工業規模で、完全水溶性マメ科植物タンパク質を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1の特徴を有する水溶性マメ科植物タンパク質によって本発明により達成される。本発明はさらに、請求項10に記載の方法に関する。有利な発展は、従属請求項から生じる。
【0014】
本発明による水溶性マメ科植物タンパク質は、以下により産生され得る。
【0015】
脱殻されたマメ科植物種子を破砕すること、
必要に応じて、破砕されたマメ科植物種子を脱脂し、マメ科植物のスラリーのpH値を6.8~7.5のpH値に調整しながら、粉砕されて任意選択で脱脂したマメ科植物種子を水と混ぜて、マメ科植物のスラリーを形成すること、
遠心力又は濾過(天然産物からのデンプン回収の当業者に公知の方法)によってスラリーを固体及び水溶性タンパク質を含むタンパク質水溶液に分離することであって、濾過はゲル濾過及び/又は遠心力分離も含む、分離すること、
濾液又は遠心上清のpH値を7.2~8.5、好ましくは7.5~8.3のpH値に調整すること
このようにして分離されたタンパク質溶液を限外濾過すること、
透析濾過物が透析濾過なしの透過液の30%未満の導電率を有するまで、淡水及び脱塩水から選択される7.5~8.2のpH値に調整された水で限外濾過保持液を透析濾過すること。ここで、出発材料に応じて、1.0~3.0mS/cmの導電率である。
【0016】
90%を超えるタンパク質の固形分を有する透析濾過された限外濾過保持液溶液を得ること(Kjeldahlによる)。
【0017】
熱ストレスのない精製工程は、限外濾過保持液として完全に可溶性の濁ったタンパク質溶液を産生し、これは滑らかな膜を形成し、よく発泡し、乳化し、そのまま又は乾燥タンパク質に加工することができる。この限外濾過保持液はまた、水溶液として使用され得るか、又はさらに処理され得る(例えば、分画熱又はpH沈殿によって異なるタンパク質の型に分解され得る)。それは、他の食品又は化粧品に溶解形態で添加して、それらに所望の特性を与えることができる。質にとって特に重要なのは、破壊的なイオン、オリゴ糖、糖及びアミノ酸を除去するpH調整脱塩水による透析濾過である。食品用途に認可された一般的なアルカリ性材料、例えばNaOH、KOH、Ca(OH)2、NH4OH、Mg(OH)2を、透析濾過水のpH値を調整するための適切な材料として使用することができる。
【0018】
その固形分が90%以上のタンパク質含有量を有する限外濾過保持液の調製の後に、凍結乾燥及び/又は溶液の冷却若しくは凍結を含む乾燥又はフリーズドライから選択される限外濾過保持液の保存工程が続き得る。限外濾過透過液は、塩、糖及びオリゴ糖、アミノ酸及び小さなペプチドを回収するために使用することができ、塩及びイオンのみを透過させ、炭水化物及びアミノ酸を保持する逆浸透に供することができる。これはまた、廃水汚染を低減するという利点を有する。
【0019】
抽出中のタンパク質の穏やかな処理は、他の目的に使用することができる高度に機能的で完全に水溶性のタンパク質をもたらす。これには、タンパク質のさらなる分離、又は例えば飲料における直接的なタンパク質のプロセシング及びマーケティングが含まれる。
【0020】
タンパク質の分野では、「高機能」は、高い水溶性及び水結合能力、並びに良好な乳化特性を有するものを指す。
【0021】
好ましい実施形態によれば、本発明は、特定の用途に対するそれらの適合性に応じて個別に又は様々な組み合わせで含まれ得る追加の特徴を含む。
【0022】
したがって、本発明は、脱殻されたマメ科植物種子を破砕すること、破砕された、場合により脱脂したマメ科植物種子を水と混ぜて、マメ科植物のスラリーを産生すること、マメ科植物のスラリーのpH値を6.8~7.5のpH値に調整すること、遠心力又は濾過によってマメ科植物のスラリーをデンプン及び繊維内に、例えば分離器、デカンタ、遠心分離機、ハイドロサイクロン、フィルタ遠心分離機又は真空回転フィルタ/圧力回転フィルタ、プレスフィルタ、フィルタプレス、バッグフィルタ、キャンドルフィルタ、シートフィルタ(当業者に知られているようなもの)、及びタンパク質水溶液によって、分離すること、このようにして分離されたタンパク質溶液のpH値を7.2~8.5のpH値に調整すること、pH調整されたタンパク質溶液を限外濾過すること、淡水及び脱塩水から選択されるpH7.5~8.2に調整された水で限外濾過保持液を透析濾過し、透析濾過された限外濾過保持液を回収すること、及び限外濾過保持液を溶液の水溶性マメ科植物タンパク質として、又は乾燥材料として乾燥又は冷却又は凍結させることによって産生できる水溶性マメ科植物タンパク質に関する。
【0023】
冷却されたタンパク質溶液は、そのままで使用することができるが、例えば、異なる分子量のタンパク質にさらに分離するためにも使用することができる。しかしながら、異なるタンパク質群は異なる等電点を有するため、等電点沈殿を分画して分離することも可能である。乾燥タンパク質として、タンパク質粉末を食品に混合する、又はそのまま販売することができる-乾燥方法はタンパク質の機能性にとって重要であり、できるだけ穏やかであるべきである。湿った(wet又はmoist)UF保持液は、冷蔵用カウンターから半湿性、又は新鮮な状態で販売されるアイスクリーム又はTVPなどの粘性の製品に、添加することができる。
【0024】
多くの用途では、水溶性マメ科植物タンパク質は、噴霧乾燥、フリーズドライ及び凍結乾燥によって、完全に水溶性で保存可能な粉末に変換される。
【0025】
水性限外濾過保持液タンパク質溶液を、抗栄養成分(レクチン、プロテアーゼ阻害剤、フィチン酸塩、タンニン、サポニン、アルカロイド、アルデヒド)の除去及び味の改善のための吸着剤、例えば活性炭、フラボノイド吸着樹脂、ケイ酸塩及び当業者に公知の他の適切な吸着剤で処理すること、特に着色剤及び特定のフラボノイド、望ましくない抗栄養物質を除去することが有用である。アルデヒド、アルコール、ケトンなどの味及び匂いに悪影響を及ぼす揮発性成分(C.Murat,M.-H.Bard,C.Dhalleine,N.Cayot,J.Food Research 2013,53,31-41を参照されたい)も、真空抽出又は既知の吸着剤への吸着によって除去又は少なくとも低減することができる。タンパク質溶液中に存在するフィチン酸塩は、例えば、デンプン/繊維分離後に、二価イオン、通常はカルシウム又はマグネシウムカチオンによる沈殿によって、それ自体公知の方法で沈殿及び除去することができる。
【0026】
水溶性マメ科植物タンパク質、すなわち透析濾過された限外濾過保持液は、貯蔵寿命のためのHTST処理(高温短期処理)又は別の保存工程に供することもできる。
【0027】
限外濾過膜のカットオフは、当業者が決定するのが容易な収率と選択性との間の妥協点により、1~100kDaであり得る。塩、糖、アミノ酸、及び他の成分の浸出は、タンパク質溶液を加熱及び冷却したときの粘度の展開の図表として、
図13に示すように、タンパク質の機能性に有益である。試料をそれらのタンパク質含有量(左上-タンパク質含有量が低いエンドウ豆羊水、右下-タンパク質含有量が最も高い保持液VCR3、2BV(本発明によるタンパク質))に従って選別する。略語VCR(体積濃度因子)は、溶液の濃度因子を表し、体積(供給物)/体積(保持液)の商から計算される。300Lの流入体積及び100Lの保持液の濾過の場合、VCR=3という結果になる。略語BV(バッチ体積)は、透析濾過中に添加される水の量の尺度である。BVは、ある時間にシステムを循環する体積を表す。透析濾過中に、どの程度の水が添加されたかを表すために呼称が付けられる。この時点で、40Lという保持液の体積で透析濾過を開始すると仮定する(1BV=40L)。次に、2BV Diaという表示は、40Lの水をバッチに2回添加したことを意味する。これらは保持液の挙動を示す実験値であり、大規模プロセスでは、この情報は連続プロセスを最適化するためにのみ必要である。
【0028】
図13において、提示された曲線は以下のように示される:上の実線の曲線は、VCR3、2BVで洗浄されたエンドウ豆果実羊水UF保持液であり、約70℃からの温度の範囲で粘度の明確な増加が見られ、これは90℃でプラトーに達する。下の点線の曲線は透析濾過されたUF保持液であり、これはまた水pH7.5のVCR3で透析濾過されたが、1BVで3倍に濃縮されただけであった。バッチ体積(BV)を2倍にすると、経時的に粘度又は達成可能な活性化温度が大幅に低下することが分かる。これは、製品がより高い温度に調理又は加熱される用途において重要であり得る。下の曲線(長い破線)は、VCR4.7で透析濾過されたUF保持液の挙動を示しており、粘度挙動又はゲル化挙動のさらなる明確な低下が分かる。以下の一点鎖線は、VCR3で透析濾過されただけのUF保持液であり、次いでゲル化する傾向がさらに低いことを示す。下の曲線(短い破線)は、VCR2が温度と共に粘度のさらに小さい増加をもたらし、下の曲線が透析濾過又は濃縮されていないエンドウ豆羊水(長い二点鎖線)であることを示す。温度処理による粘度への影響はほとんどなく、粘度のごくわずかな上昇が認められている。
【0029】
粘度プロファイルを以下のように、つまり脱塩水の産物の15%溶液を調製したと記録した。Anton Paar Physica MCR 301(標準インサート、撹拌機ST24-2D、60rpm)に、温度プロファイルに従って溶液35mLを添加した(開始:25℃、加熱6.5℃/分、90℃で12分間保持、4.3℃/分で冷却、25℃で10分間保持。
【0030】
全エンドウ豆タンパク質試料を水道水で準備した。この方法を脱塩水で再度検証した。定性的な差は見られなかった。
【0031】
本発明による水溶性マメ科植物タンパク質は、タンパク質分離出発産物及び/又は供給物として、タンパク質補給用食品において、乳化剤、塗膜形成要素、泡安定剤、接着剤及び接着剤出発材料、ゲル化剤、凝集剤、清澄剤として使用することができる。
【0032】
本発明は、図面及び実施例を参照して以下に説明されるが、それらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施例1Aによる水溶性マメ科植物タンパク質混合物を得るための方法の工程を概略的に表現したものである。
【
図2】実施例1Aによる本発明の水溶性エンドウ豆タンパク質及び市販のエンドウ豆タンパク質のSDS PAGEゲルを示す。
【
図4】DE102006050619A1によるフィールドビーン単離物、低分子量エンドウ豆タンパク質及びエンドウ豆タンパク質単離物から得た水溶性タンパク質のSDS PAGEゲルを示す。
【
図5】タンパク質単離物及び濃縮物を含む、フィールドビーン及び緑豆羊水の限外濾過から得られた様々な材料のSDS PAGEゲルを示す。
【
図6】エンドウ豆羊水由来の水溶性タンパク質のSDS-PAGEゲルを示す。
【
図7】本発明による緑豆、フィールドビーン及びエンドウ豆タンパク質のHPLCを示す。
【
図8】様々な前処理のフィールドビーンタンパク質溶液のHPLCを示す。
【
図9】様々な前処理の緑豆タンパク質のHPLCを示す。
【
図10】様々な前処理のエンドウ豆タンパク質のHPLCを示す。
【
図11】異なるpH値での熱処理の有無によるエンドウ豆タンパク質のテクスチャ測定を示す。
【
図12】熱処理されたエンドウ豆タンパク質及び熱処理されていないエンドウ豆タンパク質のDSCの図表を示す。
【
図13】本発明による異なる透析濾過処理エンドウ豆タンパク質限外濾過保持液の粘度の測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、様々な穀物マメ科植物、特に緑豆、フィールドビーン及びエンドウ豆タンパク質について言及しながら、以下により詳細に説明される。
【実施例】
【0035】
[実施例1]水溶性エンドウ豆タンパク質の産生
[実施例1A]
産生方法のこの実施形態は、
図1に概略的に示されている。
【0036】
乾燥エンドウ豆1kgを粉砕し、水2.5kgと混合してエンドウ豆のスラリーを産生する。スラリーのpH値をNaOHでpH6.8~7.2に調整する。得られたエンドウ豆のスラリーをふるい分けして殻の残渣を除去し、次いで、遠心分離機システム(ハイドロサイクロン)を使用してデンプン及び繊維を除去する。遠心分離/ハイドロサイクロン分離からのオーバーフロー/上清を、NaOHを用いてpH値を7.5~8.5のpH値に再度調整する。
【0037】
次に、得られた上清をCaCl2と接触させてフィチン酸塩を沈殿させ、吸着剤樹脂と接触させてアルデヒドを分離し、不溶性物質を遠心分離する。遠心上清、すなわち残りのタンパク質水溶液は、ここでは40kDaのカットオフの限外濾過システムを介して、保持液としてのタンパク質水溶液及び透過液としての塩/アミノ酸/糖溶液に、今や分離されている。ここで、限外濾過保持液は、限外濾過透過液の30%以下の透過液の導電率が達成されるまで、pH7.5~8.0に調整された水道水/脱塩水で透析濾過/洗浄される。典型的な導電率の範囲は、1~3mS/cmの間である。これにより、塩、糖、糖タンパク質及びアミノ酸、並びにMW<40kDaの小タンパク質の一部が洗い流され、タンパク質含有量及び純度、すなわち他の分子の非存在が改善される。この限外濾過保持液タンパク質溶液を噴霧乾燥して、水に完全に溶解する淡色のタンパク質粉末を得る。
【0038】
[実施例1B]
高度に水溶性のエンドウ豆タンパク質を産生するために、乾燥した淡いエンドウ豆を脱殻し、粉砕し、水中でスラリー化した。懸濁液を重力分離(遠心分離)し、上清をタンパク質抽出用のタンパク質に富む羊水として使用する。
【0039】
タンパク質含有溶液を再度遠心分離し、微細な懸濁粒子を溶液から除去する。精製されたタンパク質含有溶液を7.0~8.0のpH値に調整し、次いで限外濾過し、脱塩水で透析濾過して1.5~3.0mS/cmの導電率にする。本発明によるタンパク質は、限外濾過保持液から得られるが、塩、糖及びアミノ酸は、限外濾過透過液中に残る。この目的のために、UF保持液をHTSを用いて滅菌し、次いで噴霧乾燥する。このようにして産生された淡色のタンパク質粉末の分析により、以下が明らかになった:
【0040】
【0041】
本発明によるエンドウ豆タンパク質はゲルを形成し(熱又は酸誘導性)、強い乳化効果を有する(
図11も参照されたい)。94.7%の溶解度では、これは透明な溶液ではなく、完全に溶解した濁った溶液である。
【0042】
図2において、本発明によるエンドウ豆タンパク質のSDS-PAGEゲルを市販のエンドウ豆タンパク質と比較する。様々な粉砕エンドウ豆由来の、本発明によるエンドウ豆タンパク質(レーン2及び3)は、約6kDa~約120kDaのMWのタンパク質を有することが明確に分かる。市場で入手可能なエンドウ豆タンパク質Pisane C9(Cosucra)(レーン4)は、より高い分子量のタンパク質を含有する。Nurtralys S 85XF(レーン5)、Nutralys S 85 F(レーン6)(Roquette)は、より高い分子量又はより低い分子量に向かう明確なタンパク質のスペクトルのシフトを示す。ドイツの特許DE102006050619B1に従って等電沈殿及び温度上昇によって得られた、EMSLAND Starchによって産生されたレーン9のエンドウ豆タンパク質は、中程度及びより高い分子量のタンパク質を示し、様々なエンドウ豆タンパク質の分子量の比率の明確なシフトが目に見える。しかしながら、SDS-PAGEゲルは、定量的な分析ではなく、定性的な特性に関する記述のみを可能にするので、情報は相対的である。
【0043】
120kDa超のMWのタンパク質は、水溶液から沈殿する傾向があり、乳化能力がそれほど際立ったものではないため、多くの用途で適切さが劣っている。実施例1によるエンドウ豆タンパク質溶液(すなわち、限外濾過の限外濾過及び水で透析濾過した保持液)を変性SDSゲルクロマトグラフィーで分離した。本発明によるタンパク質混合物には、10kDa未満の分子量であるタンパク質のバンドは存在せず、150kDaを超える分子量であるタンパク質も存在しないことが明確に分かる。本発明によるエンドウ豆タンパク質は、150kDa~約14kDaの分子量を有し、約14、40及び97kDaの重心を有する異なる分子量のタンパク質を有する。対照的に、比較産物Pisane C9は、116kDaを超える分子量である多くのタンパク質を依然として含有しており、これは水への溶解を妨げる。Nutralys S 85産物はまた、これらの大きなタンパク質を含有する。対照的に、Nutralys S85 Plus産物は、30~約3kDaの分子量である。より高い分子量のタンパク質は明らかに少量しか存在しない。
【0044】
DE102006050619A1による産物のタンパク質スペクトルは、結局、より高い分子量のタンパク質の割合がより高い。
【0045】
120kDaを超える分子量であるタンパク質は、水に不完全にしか溶けないと仮定される。これは、Pisane及びNutralys S85にも当てはまる。一方、Nutralys S85は、30kDaを超える分子量であるエンドウ豆タンパク質は、タンパク質収率を犠牲にして欠損している、すなわち、それはエンドウ豆タンパク質の異なる画分であることを示唆している。したがって、本発明による水溶性タンパク質混合物は、市場で入手可能な製品とは異なる新しいタンパク質スペクトルを有すると述べることができ、これは本発明による穏やかな単離プロセスによるものである。
【0046】
本発明による卵白の場合の味覚試験は、中性のゲル様の味又は食感を残した。
【0047】
図6では、熱ストレスの低いエンドウ豆タンパク質の分離が調べられている。この目的のために、エンドウ豆のスラリーの濾液をSDS-PAGE分析に供した。レーン2及び3は濾液を示し、レーン4は透析濾過されていないUF膜の保持液を示し、レーン5は透析濾過された保持液を示し、レーン6及び7は本発明による生成された熱的に未処理の産物F-1140を示す。100kDaの膜の透過液(レーン8)では、MW>30kDaのタンパク質がごく少量しか存在しないが、MW<40kDaのタンパク質が主に見られることが明確に分かる。ここでも、透過液の熱処理(噴霧乾燥)はより高い分子量の凝集又は凝固タンパク質をもたらすが(レーン9)、レーン8の非熱処理透過液(高希釈)はそのようなタンパク質をほとんど示さないことが分かる。SDS-PAGEの検出限界は約1g/Iであり、試料の希釈によりゲルが得られ、そのバンドは検出限界のわずかすぐ上であることに留意されたい。
【0048】
図6の分析条件は、以下の表において見ることができる。
【0049】
【0050】
[実施例2A]緑豆タンパク質の産生
乾燥した緑豆1kgを粉砕し、水3kgと混合して、緑豆のスラリーを産生する。次いで、スラリーのpH値をNaOHでpH6.8~7.2に調整する。緑豆のスラリーをふるい分けして殻の残渣を除去し、次いで、遠心分離機システムを使用してデンプン及び繊維を除去する。遠心分離からの上清を、再び7.5~8.2のpH値に調整する。
【0051】
得られた上清をCaCO3で処理してフィチン酸塩を沈殿させ、吸着剤樹脂で処理し、沈殿した固体を遠心分離によって分離する。残りのタンパク質水溶液は、ここでは15kDaのカットオフを有する限外濾過システムを介して、保持液としてのタンパク質濃縮物と、いくつかのより小さなタンパク質(MG<15kDa)を含む塩/アミノ酸/糖溶液とに分離される。限外濾過保持液を、2mS/cm未満の導電率が達成されるまで、pH=8の脱塩水で洗浄する。今や、この限外濾過保持液溶液を、水に完全に溶解する淡色のタンパク質粉末に噴霧乾燥する。
【0052】
得られたタンパク質混合物のSDS-PAGEゲルを
図5のレーン8及び9に示す。結果として、ほとんどの水溶性タンパク質は40kDa~55kDaの分子量であるが、他の分子量のタンパク質はあまり頻繁には生じない。
【0053】
本発明に従って産生された緑豆タンパク質(レーン2)、フィールドビーンタンパク質(レーン3)、及びレーン6及びレーン9での熱沈殿によるDE202021102596.4に従って産生された低分子量エンドウ豆タンパク質、DE102006050619B1による等電点沈殿後のエンドウ豆タンパク質の比較を示す
図4からも、特定の分子サイズの範囲のタンパク質が、沈殿又は限外濾過によって得られ、それらの特性に応じて商用に使用可能であることが明らかである。
図6の緑豆タンパク質及びエンドウ豆タンパク質並びにフィールドビーンタンパク質のHPLCも、この挙動を示す:緑豆タンパク質(実施例2Bに従って産生可能)及びフィールドビーンタンパク質(実施例4Bに従って産生可能)は、10~15分という範囲の保持時間でより多くの量のタンパク質を有するが、本発明による膜を介して単離されたエンドウ豆タンパク質は、15~25分の保持時間のタンパク質と比較すると、比例して少ない量のこれらのタンパク質を有する。
【0054】
[実施例2B]高水溶性の緑豆タンパク質の産生
高度に水溶性の緑豆タンパク質を産生するために、乾燥した緑豆を脱殻し、粉砕し、水中でスラリー化した。懸濁液を重力分離(遠心分離)し、上清をタンパク質抽出用のタンパク質に富む羊水として使用する。
【0055】
タンパク質含有溶液をpH値7.0~8.0に調整し、再度遠心分離して、溶液から微細な懸濁粒子を除去する。精製されたタンパク質含有溶液を限外濾過し、脱塩水で透析濾過して、1.5~3.0mS/cmの導電率にする。本発明によるタンパク質は、限外濾過保持液で得られるが、塩、糖及びアミノ酸は、限外濾過透過液に残る。
【0056】
限外濾過保持液及びその後の噴霧乾燥は、以下を示した:
【0057】
【0058】
本発明による緑豆タンパク質はゲルを形成し(熱又は酸誘導性)、強い乳化効果を有する。
【0059】
[実施例3]レンズ豆タンパク質の産生
乾燥させ、粉砕し、脱脂したレンズ豆1kgを水2.6kgと混合して、レンズ豆スラリーを産生する。次いで、スラリーのpH値をNaOHでpH6.8~7.2に調整する。レンズ豆スラリーをふるい分けして殻の残渣を除去し、次いで、遠心分離機システムを使用してデンプン及び繊維を除去する。遠心分離からの上清を、7.5~8.2pH値に、KOHで再度pH値調整に供する。
【0060】
得られた上清をCaCl2と接触させてフィチン酸塩を沈殿させ、アルデヒド吸着剤樹脂と接触させ、沈殿した固体を遠心分離によって分離する。残りのタンパク質水溶液は、ここでは70kDaのカットオフを有する限外濾過システムを介して、保持液としてのタンパク質溶液及び塩/アミノ酸/糖溶液に分離される。透過液の導電率が限外濾過で使用されるタンパク質溶液の導電率の約20%になるまで、限外濾過保持液をpH7の水道水で透析濾過する。この限外濾過保持液は、ここで、染料の吸着及び香味料なしのために活性炭で処理され、次いで、水に完全に可溶性の軽質タンパク質粉末に凍結乾燥される。
【0061】
[実施例4A]フィールドビーンタンパク質の産生
乾燥したフィールドビーン1kgを粉砕し、水3kgと混合してフィールドビーンのスラリーを産生する。次いで、スラリーのpH値をNaOHでpH6.8~7.2に調整する。フィールドビーンのスラリーをふるい分けして殻の残渣を除去し、次いで、遠心分離機システムを使用してデンプン及び繊維を除去する。遠心分離からの上清を、再び6.8~8.3のpH値に調整する。
【0062】
得られた上清をCaCl2と接触させてフィチン酸塩を沈殿させ、吸着剤樹脂と接触させ、沈殿した固体を遠心分離によって分離する。残りのタンパク質水溶液は、ここでは15kDaのカットオフを有する限外濾過システムを介して、保持液としてのタンパク質濃縮物及び塩/アミノ酸/糖溶液に分離される。2mS/cm未満の導電率が達成されるまで、限外濾過保持液をNH4OHでpH7.8に調整した淡水で洗浄する。今やこの限外濾過保持液溶液を、水に完全に溶解する淡色のタンパク質粉末に噴霧乾燥する。
【0063】
[実施例4B]高水溶性のフィールドビーンタンパク質の産生
高度に水溶性のフィールドビーンタンパク質を産生するために、乾燥したフィールドビーンを脱殻し、粉砕し、水中でスラリー化した。懸濁液を重力分離(遠心分離)し、上清をタンパク質抽出用のタンパク質に富む羊水として使用する。
【0064】
タンパク質含有溶液を再度遠心分離し、微細な懸濁粒子を溶液から除去する。精製されたタンパク質含有溶液を7.0~8.0のpH値に調整し、次いで限外濾過し、脱塩水で透析濾過して1.5~3.0mS/cmの導電率にする。本発明によるタンパク質は、限外濾過保持液で得られるが、塩、糖及びアミノ酸は、限外濾過透過液に残る。UF保持液のその後の噴霧乾燥によって得られた限外濾過保持液は、以下を示した:
【0065】
【0066】
本発明によるフィールドビーンタンパク質はゲルを形成し(熱又は酸誘導性)、強い乳化効果を有する。
【0067】
本発明によるタンパク質混合物の産生中に生じるフィールドビーン産物のHPLC分析を
図8に示す。濾過され遠心分離された羊水が、はっきりと見える(点線)。UFの透過液は実線として示されており、10~15分の保持時間と15~25分の保持時間との間のピークの比率は、より長い保持時間であるタンパク質に向かって劇的にシフトし、より短い保持時間のタンパク質はもはや検出できない。対照的に、フィールドビーン単離物(破線)は、主に、10~15分の保持時間に相当する分子量であるタンパク質を含有し、これらは既に濾液に主に存在していた。したがって、HPLCは、UFを使用して18分を超える保持時間でタンパク質の分離に成功したことを示す。
【0068】
本発明によるマメ科植物タンパク質並びにフィールドビーン及び緑豆からのタンパク質抽出の中間体及び副産物を、SDS-PAGEによって分析した(
図5)。UF膜上での本発明による透析濾過後のこれらの豆の羊水(レーン2=フィールドビーン羊水;レーン6=緑豆羊水)は、約40kDa未満のいずれかのバンドを示さないUF保持液(フィールドビーンについてはレーン4及び5、緑豆についてはレーン8及び9)を生じることが見出された。100kDaの限外濾過膜のUF透過液は、特に>40kDaの範囲の非常に弱いバンドのみ(フィールドビーンについてはレーン3、緑豆についてはレーン7)を示した。
【0069】
図7は、緑豆タンパク質単離物(破線、実施例2Bに従って産生可能)、フィールドビーン単離物(実線、実施例4Bに従って産生可能)及び本発明によるエンドウ豆タンパク質(点線)のHPLCを示す。すべてのタンパク質を、100kDaのUF膜を使用して本発明の方法に従って産生した。緑豆及びフィールドビーン単離物は、約10~15分の保持時間の分子量である多くのタンパク質を有するが、エンドウ豆タンパク質UF保持液も、15~20分の保持時間でタンパク質を有することが明確に分かる。
【0070】
図10のHPLCを使用したエンドウ豆タンパク質の産生の分析はまた、本発明によるエンドウ豆タンパク質(点線)において、9~19分の範囲に保持のピークがあるタンパク質のみが存在するが、限外濾過はこれを超える保持時間のタンパク質を分離することを示した。透過液(実線)は18~26分の範囲のタンパク質のみを示す。これは、UF保持液に由来する本発明によるエンドウ豆タンパク質(点線)が20分の保持時間までのタンパク質を主に含有するので、UF膜の分離効率を示している。
【0071】
図9は、
図10と同様の緑豆タンパク質のHPLCの図表を示す。ここでも、UF保持液(点線)では強度のピークが10~15分に向かって明確にシフトしているが、透過液(短い破線)は本質的に、18~27分の保持時間についてタンパク質を含有するのみである。遠心分離された緑豆羊水のHPLCの図表(長い破線)は、依然として、18~27分の明確なバンドを含有しているが、10~15分のピークが他のピークと比較して小さい。透過液(短い破線)は、20~30分の分子量の範囲のタンパク質を主に含み、これらは本発明によるタンパク質においてほぼ完全に分離されている。
【0072】
図8は、
図10と同様のフィールドビーンタンパク質のHPLCの図表を示す。ここでも、フィールドビーン濾液(点線)の強度のピークが保持液(一点鎖線)において10~15分に向かって明確にシフトしているが、透過液(実線)は本質的に18~27分の保持時間について、タンパク質を含有するのみである。
【0073】
図7は、本発明によるエンドウ豆(点線)、フィールドビーン(実線)及び緑豆(破線)のタンパク質単離物のHPLCの比較の図表を示す。これらのマメ科植物はすべて類似のタンパク質のピークを有することが分かり、この場合、エンドウ豆は、フィールドビーン又は緑豆よりも、17~25分のタンパク質に対する10~15分のタンパク質のピークが比較的少ないように見える。
【0074】
図11にゲル形成挙動の試験を示す。本発明によるマメ科植物タンパク質は、長時間弾性である熱的に活性化可能なゲルを形成するが、pH値によっても活性化可能なゲルを形成する。ゲルの特性は、室温でプランジャ(SMS P 05)(経路:20mm、前進試験、及び戻り速度:1.0mm/秒;剥離力:20g)を用いて、TA XT plusテクスチャアナライザーによるテクスチャ分析によって調べた。
【0075】
・2つの試料の調製:タンパク質(6g又は12gの産物)を調製し、脱灰H2O(34g又は68g)を添加し、タンパク質が溶解するまで撹拌する
・穴付きの金属シリンダー(H-CC27-D)を備えたAnton Paarレオメーターに、試料溶液30mLを注ぐ
・試料溶液を沸騰させる:開始温度25℃、加熱段階:6.5℃/分の加熱速度での90℃までの加熱、90℃で15分の保持時間、冷却段階:4.0℃の冷却速度での25℃への冷却、25℃で10分間での保持時間。
・煮沸した試料溶液を室温で24時間保存
・TA XTプラステクスチャアナライザーによるテクスチャ分析
【0076】
この測定方法では、第1のピークに対応する調製された試料溶液にプランジャをゆっくりと押し込む。プランジャをゲル内に移動させるとき、プランジャがゲルを完全に貫通するまで力を加えなければならない。したがって、負の力は、プランジャの後退及びゲルの弾性的な締め付けに対応する。次いで、プロセスが繰り返され、プランジャがゲルに2回目に浸透する。第1のプロセスによってゲルの強度が依然として損なわれるので、最大の力は通常、第2のプロセスではより低い。ピークが類似するほど、ゲルの弾性は大きくなる。ゲルを浸透させるために異なる力が必要であり、ゲルの強度はpH値に強く依存することが明確に分かる。ゲルの強度は、pH値6まで酸性化することによって増加するが、pH値をさらに低下させることによって減少する。これは
図11から明確に分かる:実線は、pHの低下のない本発明によるエンドウ豆タンパク質溶液(pH=7.6)、破線はpH=6、点線はpH=5、点線はpH=4を意味する。
【0077】
示差走査熱量測定(DSC)分析(
図12)は、SDSゲルから既に知られているように、熱処理(HTST)がタンパク質を変化させたことを示した。DSC測定を行って、タンパク質の熱の特性を調査し、タンパク質の変性状態について結論を引き出すことができた。乾燥試料又は液体試料を加熱し、それらの吸熱を試験した温度範囲にわたって測定する。測定のために、滅菌なしの本発明によるタンパク質及び変性EMPRO E86 HV、つまりDE102006050619A1による、噴霧乾燥前に8.2~9.2のpH値に調整された、市販の熱処理された低温殺菌タンパク質の50%溶液を、脱塩水で調製して100μIアルミニウムるつぼに充填した。測定は、窒素雰囲気下、Mettler Toledo(R)製のDSC+Star
e Systemで行った。10℃/分の加熱速度で25~105℃の温度範囲を調査した。
図12は、本発明によるエンドウ豆タンパク質が、変性の開始(T
開始)に対応する約84℃の温度から熱を吸収することを示す。熱吸収は約98℃で終了し、約91℃の変性ピーク温度(T
dピーク)をもたらす。これは、本発明によるエンドウ豆タンパク質が先に熱処理されておらず、したがって依然として天然タンパク質を含有することを示す。比較すると、Emslandデンプンエンドウ豆タンパク質Empro E 86 HVの変性試料(pHの調整及び熱による凝固、並びに低温殺菌)は、このタンパク質が既に熱変性しているので、吸熱を示さない。変性温度がより高いことは、通常、タンパク質がより大きくより複雑であることに起因する。
【0078】
本発明によるタンパク質の可能な使用を示すさらなる適用例を以下に示す。さらなる適用は当業者にとって明らかである。
【0079】
[実施例5]タンパク質豊富化パスタ
【0080】
【0081】
産生:
1.すべての乾燥成分を十分に混合する
2.約30~34%の湿度に達するまで冷たい水道水を添加する。
3.Haussler(R)PN300 VXS麺用機で約15分間混合/混練する
4.単軸押出機により結合及び成形する
5.含水量<13%まで乾燥する
【0082】
本発明によるエンドウ豆タンパク質を使用することにより、グルテンフリーのタンパク質豊富化パスタを産生することができた。本発明によるエンドウ豆タンパク質を使用することのさらなる利点は、より暗い色を有するジャガイモタンパク質Empro Kよりも明るい色であったこと、及びジャガイモタンパク質Empro K及びエンドウ豆タンパク質Empro E 86 HV(EM SLAND STARKE製の変性温度処理エンドウ豆タンパク質)よりも心地よく苦味が少ないことである。異なるタンパク質を組み合わせて使用することにより、異なる質感/一貫性を達成することができる。
【0083】
[実施例6]スライス可能なビーガン用イミテーションチーズ:
【0084】
【0085】
1.すべての乾燥物質の混合
2.水及び脂肪を加熱可能な撹拌容器に入れ、低速(300rpm)で50℃に加熱して脂肪を溶融させた
3.乾燥混合物を添加し、撹拌しながら(約500rpm)80~85℃に加熱し、温度を5分間保持する
4.型に注入し、6~8℃の冷所で5日間保存する
本発明によるエンドウ豆タンパク質を用いることにより、タンパク質含有量が牛乳のチーズに非常に近い、スライス可能なイミテーションチーズを産生することができた。
【0086】
[実施例7]ビーガン用アイスクリーム
【0087】
【0088】
1.水と乳をThermomix(R)に入れる
2.乾燥物質を混合し、レベル4で撹拌し、1分後にレベル3.5に低下させる
3.グルコースシロップをマイクロ波で加熱する(2分、800W)
4.コンロの上の鍋で、先に加熱したグルコースシロップと共にココナッツの脂肪を溶かし、完全に溶解するまで撹拌する。
5.混合物をパンに注ぎ、1分間撹拌する
6.90℃まで加熱し、この温度を10分間保持する
7.ウォーターバスを使用して混合物を15℃に冷却する
8.香味料を添加し、冷所(6℃)で一晩保存する
9.アイスクリームマシンにおける処理
【0089】
本発明によるエンドウ豆タンパク質を使用することによって、クリーミーな食感及び心地よいわずかにナッツのような味を有するビーガン用アイスクリームを産生することが可能であった。このようにして産生されたアイスクリームもタンパク質が豊富である。
【0090】
[実施例8]ビーガン用バーガー
【0091】
【0092】
1.TVPを水素化する
2.必要に応じてTVPを破砕する
3.他のすべての成分を添加し、すべての成分を混合する
4.バーガーパテを成形する
【0093】
成形されたバーガーパテは、直接揚げるか、又は最初に冷凍し、後で作製することができる。冷凍-揚げる処理の後でさえ、本発明によるタンパク質の機能性は保持されている。本発明によるタンパク質は、パテの産物結合及び硬度を改善するのに寄与する。
【0094】
[実施例9]ビーガン用ソーセージ
【0095】
【0096】
1.すべての乾燥成分を混合する
2.湿式押出物を破砕する
3.混合した成分を水及び酢に添加し、すべてを一緒に混合する
4.粉砕された湿式押出物を添加し、混合する
5.ソーセージハスクに混合物を充填する
6.ビーガン用ソーセージを対流式オーブン内で90℃で1.5時間加熱する
7.7℃に冷却し、この温度で約48時間貯蔵する。
【0097】
本発明によるエンドウ豆タンパク質を使用してプラントベースのソーセージを産生した。本発明によるタンパク質を使用することにより、より低い粘度を有し、したがって加工性の点で利点をもたらすということから、他のエンドウ豆タンパク質よりも高いタンパク質の豊富化が達成され得る。
【0098】
本開示の説明は、本質的に単なる例示であり、したがって、本開示の内容から逸脱しない例は、本開示の範囲内であることが意図される。そのような例は、本開示の精神及び範囲からの逸脱とみなされるべきではない。本開示の広範な教示は、様々な形態で実施することができる。したがって、本開示は特定の例を含むが、本開示の真の範囲はそれに限定されるべきではなく、図面、説明及び以下の特許請求の範囲を検討すると、他の修正形態が明らかになる。
【国際調査報告】