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特表2024-545179スラリー重合によるエチレンポリマーの製造方法
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  • 特表-スラリー重合によるエチレンポリマーの製造方法 図1
  • 特表-スラリー重合によるエチレンポリマーの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】スラリー重合によるエチレンポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20241128BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C08F2/01
C08F10/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534605
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2022086851
(87)【国際公開番号】W WO2023118046
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21216856.1
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】ダム,エルケ
(72)【発明者】
【氏名】プラング,ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】クール,ラインハルト
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA01
4J011AB02
4J011AB04
4J011DA04
4J011DB13
4J011DB16
4J011DB23
4J011DB32
4J100AA02P
4J100AA04Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA06
4J100FA09
4J100FA19
4J100FA47
(57)【要約】
【解決手段】 重合反応器と、重合反応器の外側に配置された1つまたは複数の第1熱交換器と、第1熱交換器を冷却または加熱するための温度調節媒体の閉ループと、を含む反応器システムにおけるスラリー重合でエチレンを重合または共重合するプロセスであって、閉ループには、温度調節媒体を冷却するための第2熱交換器と、温度調節媒体を加熱するための第3熱交換器が装備されており、重合中、スラリーは第1熱交換器で冷却され、第1熱交換器を冷却する温度調節媒体の温度は20℃~50℃の範囲であり、温度調節媒体は、第2熱交換器で、-20℃~45℃の温度の冷却剤によって冷却される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合触媒の存在下、40~150℃の温度および0.1~5MPaの圧力でスラリー重合によりエチレンを重合するか、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンを共重合するプロセスであって、
前記プロセスは、反応器システムで実行され、前記反応器システムは、
-内容物が液体状となるように構成された重合反応器と、
-反応器内容物を撹拌するための撹拌器と、
-前記重合反応器の外側に配置され、前記反応器内容物を冷却または加熱するための1つまたは複数の第1熱交換器と、
-前記重合反応器から前記反応器内容物を取り出し、1つまたは複数の前記第1熱交換器を通して前記反応器内容物を循環させるための1つまたは複数の循環ポンプと、
-1つまたは複数の前記第1熱交換器を冷却または加熱するための温度調節媒体の閉ループであって、前記閉ループには、前記温度調節媒体を冷却するための第2熱交換器が装備されており、前記温度調節媒体を加熱するための第3熱交換器が装備されている、前記閉ループと、を含み、
前記エチレンの重合中、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンとの共重合中に、
-前記重合反応器には、炭化水素希釈剤を含む液体媒体中のエチレンポリマー粒子のスラリーが充填されており、
-前記スラリーは、前記重合反応器から前記スラリーを取り出し、1つまたは複数の前記第1熱交換器で前記スラリーを冷却し、冷却された前記スラリーを前記重合反応器に戻すことによって冷却され、
-前記1つまたは複数の第1熱交換器を冷却する温度調節媒体の温度は、20℃~50℃の範囲であり、
-前記温度調節媒体は、第2熱交換器で-20℃~45℃の温度の冷却剤によって冷却されるプロセス。
【請求項2】
前記反応器システムは、前記重合反応器と、前記重合反応器の外側に配置され、前記反応器内容物を冷却または加熱するための1つまたは複数の第1熱交換器とをそれぞれ含む、2つ、3つ、またはそれ以上の反応器システムの一部である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1熱交換器は二重管熱交換器であり、好ましくは、ASME B46.1に従って測定された表面粗さRが5μm未満である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記重合反応器では、前記反応器の外側にさらに温度調節ジャケットが装備されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記温度調節ジャケットは、前記重合反応器の外側に取り付けられた一連のハーフパイプで構成されている、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記温度調節ジャケットを冷却または加熱するための温度調節媒体は、1つまたは複数の前記第1熱交換器を冷却または加熱するための温度調節媒体である、請求項4又は5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記重合反応器を洗浄するステップ、1つまたは複数の前記第1熱交換器を洗浄するステップ、または前記重合反応器と1つまたは複数の前記第1熱交換器とを洗浄するステップを含む請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセスであって、洗浄ステップは、
反応器システム内で前記エチレンの重合またはエチレンと1種以上のC~C12-1-アルケンとの共重合を停止し、前記反応器システムが空になるまで前記エチレンポリマー粒子のスラリーを前記反応器システムから排出するサブステップと、
空になった前記反応器システムに炭化水素溶媒を導入し、それによって前記反応器システム内に洗浄充填物を形成するサブステップと、
前記反応器システム内の前記洗浄充填物を100~180℃の温度に加熱するサブステップであって、
-前記重合反応器内の撹拌器を作動させ、
-前記洗浄充填物の一部を重合反応器から取り出し、1つまたは複数の前記第1熱交換器内で洗浄充填物の一部を加熱し、加熱された洗浄充填物の一部を重合反応器に戻すことによって、前記洗浄充填物を加熱し、
-前記第3熱交換器に150℃~250℃の温度を有する加熱媒体を供給することによって、前記第3熱交換器内で温度調節媒体を加熱する、前記サブステップと、
前記洗浄充填物を1つまたは複数の前記第1熱交換器を通して継続的に循環させ、前記撹拌器を継続的に作動させながら、前記反応器システム内の前記洗浄充填物を100℃~180℃の温度に4~120時間維持するサブステップと、
前記反応器システムが空になるまで、前記反応器システムから洗浄充填物を排出するサブステップと、
前記反応器システム内でエチレンの重合またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンとの共重合を再開するサブステップと、を含む、プロセス。
【請求項8】
前記エチレンポリマー粒子の前記スラリーを前記反応器システムから排出した後、前記洗浄充填物を前記反応器システムに導入する前に、前記炭化水素希釈剤で前記反応器システムをフラッシュするサブステップが実行される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記炭化水素溶媒は、前記重合反応器内の洗浄充填物の液面が、重合中に前記重合反応器内のスラリーの液面と少なくとも同じ高さになるまで、前記空の反応器システムに導入される、請求項7または8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応器システム内に前記洗浄充填物が形成された後に前記炭化水素溶媒の前記反応器システムへの導入が終了した後前記、反応器システム内の前記洗浄充填物を100℃~180℃の温度に維持し、前記反応器システムから前記洗浄充填物を排出するが、前記炭化水素溶媒を追加で導入する必要はない、請求項7~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記反応器システム内の前記洗浄充填物を100℃~180℃の温度に維持する間、前記炭化水素溶媒が前記反応器システム内に連続的に導入され、前記洗浄充填物が前記反応器システムから連続的に排出される、請求項7~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
重合を再開する前に前記反応器システムを空にするために、前記重合反応器から1つまたは複数の前記第1熱交換器を通る前記洗浄充填物の循環を終了した後、1つまたは複数の前記第1熱交換器および前記重合反応器の前記内容物を排出する、請求項7~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記反応器システムから排出された前記洗浄充填物は、前記炭化水素溶媒を含む前記液体媒体から前記炭化水素溶媒を蒸発させることによって取り出すことができるように構成された前記撹拌蒸発容器に移送される、請求項7~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記反応器システムから前記撹拌蒸留容器への前記洗浄充填物の排出は、前記反応器システム内の前記洗浄充填物と前記撹拌蒸留容器との間の圧力差によって起こる、請求項13記載のプロセス。
【請求項15】
得られたエチレンポリマーは、二峰性または多峰性エチレンポリマーである、請求項2~14のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラリー重合でエチレンを重合するか、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンを共重合するプロセスを提供する。本開示は、特に、重合反応器と、重合反応器の外側に配置された1種以上の熱交換器とを含む反応器システムで行われるスラリー重合でエチレンを重合するか、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンを共重合するプロセスを提供する。本開示はさらに、洗浄ステップを含むスラリー重合でエチレンを重合するか、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンを共重合するプロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
エチレンポリマーを製造するためのスラリー重合プロセスは、エチレンポリマーを製造するための確立された方法であり、例えば、欧州公開第0905152A1号または国際公開第2012/028591 A1号に開示されている。このようなプロセスは、一連の反応器で実行されることが多く、そのため、重合反応器で異なる反応条件を設定し、それによって個々の重合反応器で異なるポリマー組成物を製造することができる。このようにして製造される多峰性エチレンコポリマーは、例えば、製品特性と加工性の良好な組み合わせを有することを特徴とする。エチレンポリマーを製造するためのスラリープロセスでは、通常、炭化水素または炭化水素混合物を希釈剤として使用する。したがって、スラリーは、通常、主成分である炭化水素希釈剤の他に、溶解したエチレン、コモノマー、アルミニウムアルキル、水素などのさらなる成分、およびオリゴマーやワックスなどの溶解した反応生成物も含む液体媒体中のエチレンポリマー粒子の懸濁液である。一連の反応器内でのスラリー重合で多峰性エチレンコポリマーを製造する原理は、例えば、F. Alt et al., Macromol. Symp.2001, 163, 135-143 に開示されている。
【0003】
エチレンポリマーを製造するスラリー重合システムは、反応器再循環ループ内の外部熱交換器を使用して、エチレン重合反応で発生する熱を除去することができる。低温での溶解性が低下するため、反応器で副産物として生成される低分子量ワックスは、スラリーが冷却器を流れ、熱交換器の冷壁に接触すると固化する可能性がある。これにより、熱交換器が汚染される可能性がある。つまり、前記熱交換器の冷壁にオリゴマー層またはポリマー層が蓄積し、前記熱交換器内の熱伝達が低下し、熱除去効率が低下することがある。このような不要な壁層の蓄積は、重合反応器の壁にも発生する可能性がある。熱交換器や反応器壁の汚れを低減するための様々な方法が開示されている。たとえば、国際公開第2015/197561 A1号には、外部熱交換器が29℃以上の温度の冷却剤で冷却されるポリエチレンの製造プロセスが開示されている。ただし、壁層の蓄積を完全に回避することはできず、重合システムの洗浄が時々必要になる場合がある。
【0004】
エチレンポリマーを製造するための重合システムを洗浄する方法には、重合システムを常温で炭化水素により洗浄することが含まれる。しかし、このような洗浄では、内壁の表面にある遊離粒子しか除去できない。別の選択肢は、例えばハイドロジェット装置による機械的洗浄である。しかし、重合システムの内面は、例えば錆の形成によって悪影響を受ける可能性がある。さらに、機械的洗浄には多大な労力が必要である。反応器を開けて反応器システムに入り、その後、反応器システムから水と湿気の痕跡をすべて除去できるように、反応器システムを入念に準備する必要がある。
【0005】
エチレンポリマーを製造するための重合システムを洗浄するための好ましい方法は、反応器システムを高温の炭化水素で洗浄することである。例えば、国際公開第2015/197561号A1には、重合反応器と、重合反応器の外側に配置された1つ以上の熱交換器とを含む反応器システムの熱交換器を洗浄するために、熱交換器を通常隔離し、通常約155℃のヘキサンなどの高温炭化水素を熱交換器に循環させて堆積物を再溶解することが開示されている。
【0006】
米国特許第10370,307 B2号には、エチレンをオリゴマー化してアルファオレフィンにするプロセスが開示されており、エチレンのオリゴマー化のステップ、触媒の不活性化のステップ、および生成物の分離のステップが含まれている。反応器には冷却ループが設けられており、この冷却ループによって反応流出物の少なくとも一部が少なくとも2つの切り替え可能な熱交換器を通過し、これらの熱交換器は統合された洗浄装置によって交互に洗浄される。
【0007】
高温炭化水素による反応器システムの洗浄は洗浄効率が高く、反応器システムを開ける必要がなく、重合システムの内面に影響を与えず、限られた人員で比較的短時間で実行できる。高温炭化水素による反応器システムの洗浄には、反応器システム内のスラリーを炭化水素または炭化水素混合物に置き換え、炭化水素を適切な温度に加熱する必要がある。これは、外部熱交換器および/または反応器冷却ジャケットをヒーターとして使用して実行でき、また、これらの温度調整デバイスを冷却剤で冷却する代わりに、通常、低圧または中圧の蒸気を使用してデバイスを加熱する。ただし、蒸気を加熱媒体として使用すると、反応器システムの温度をスムーズかつ簡単に制御できず、キャビテーションによる蒸気ハンマーを避けることはできない。さらに、温度調整媒体を冷却剤(通常は水)から蒸気に、またはその逆に繰り返し変更すると、外部熱交換器および重合反応器冷却ジャケットが腐食する可能性がある。熱交換器の腐食は、一方では壁面の粗さが増すため熱伝達を低下させ、他方では腐食がひどいと温度調節媒体の漏れを引き起こし、熱交換器または熱交換器の部品を定期的に交換する必要が生じることもある。
【0008】
したがって、反応器システム内でスラリー重合によりエチレンを重合するか、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンを共重合するプロセスであって、故障した外部熱交換器または重合反応器冷却ジャケットを交換する必要なく、制御された方法で容易にかつ迅速に高温炭化水素で反応器システムを洗浄でき、しかも操作上の問題がないプロセスで目標とするポリマー特性の組み合わせを有するエチレンポリマーを製造できるプロセスを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、重合触媒の存在下、40~150℃の温度および0.1~5MPaの圧力でスラリー重合によりエチレンを重合するか、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンを共重合するプロセスであって、
前記プロセスは、反応器システムで実行され、前記反応器システムは、
-内容物が液体状となるように構成された重合反応器と、
-反応器内容物を撹拌するための撹拌器と、
-前記重合反応器の外側に配置され、前記反応器内容物を冷却または加熱するための1つまたは複数の第1熱交換器と、
-前記重合反応器から前記反応器内容物を取り出し、1つまたは複数の前記第1熱交換器を通して前記反応器内容物を循環させるための1つまたは複数の循環ポンプと、
-1つまたは複数の前記第1熱交換器を冷却または加熱するための温度調節媒体の閉ループであって、前記閉ループには、前記温度調節媒体を冷却するための第2熱交換器が装備されており、前記温度調節媒体を加熱するための第3熱交換器が装備されている、前記閉ループと、を含み、
前記エチレンの重合中、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンとの共重合中に、
-前記重合反応器には、炭化水素希釈剤を含む液体媒体中のエチレンポリマー粒子のスラリーが充填されており、
-前記スラリーは、前記重合反応器から前記スラリーを取り出し、1つまたは複数の前記第1熱交換器で前記スラリーを冷却し、冷却された前記スラリーを前記重合反応器に戻すことによって冷却され、
-前記1つまたは複数の第1熱交換器を冷却する温度調節媒体の温度は、20℃~50℃の範囲であり、
-前記温度調節媒体は、第2熱交換器で-20℃~45℃の温度の冷却剤によって冷却される、プロセスを提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記反応器システムは、前記重合反応器と、前記重合反応器の外側に配置され、前記反応器内容物を冷却または加熱するための1つまたは複数の第1熱交換器とをそれぞれ含む、2つ、3つ、またはそれ以上の反応器システムの一部である
【0011】
いくつかの実施形態では、前記第1熱交換器は二重管熱交換器であり、好ましくは、ASME B46.1に従って測定された表面粗さRが5μm未満である。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記重合反応器では、前記反応器の外側にさらに温度調節ジャケットが装備されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記温度調節ジャケットは、前記重合反応器の外側に取り付けられた一連のハーフパイプで構成されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記温度調節ジャケットを冷却または加熱するための温度調節媒体は、1つまたは複数の前記第1熱交換器を冷却または加熱するための温度調節媒体である。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記プロセスは、前記重合反応器を洗浄するステップ、1つまたは複数の前記第1熱交換器を洗浄するステップ、または前記重合反応器と1つまたは複数の前記第1熱交換器とを洗浄するステップを含み、前記洗浄ステップは、
反応器システム内で前記エチレンの重合またはエチレンと1種以上のC~C12-1-アルケンとの共重合を停止し、前記反応器システムが空になるまで前記エチレンポリマー粒子のスラリーを前記反応器システムから排出するサブステップと、
空になった前記反応器システムに炭化水素溶媒を導入し、それによって前記反応器システム内に洗浄充填物を形成するサブステップと、
前記反応器システム内の前記洗浄充填物を100~180℃の温度に加熱するサブステップであって、
-前記重合反応器内の撹拌器を作動させ、
-前記洗浄充填物の一部を重合反応器から取り出し、1つまたは複数の前記第1熱交換器内で洗浄充填物の一部を加熱し、加熱された洗浄充填物の一部を重合反応器に戻すことによって、前記洗浄充填物を加熱し、
-前記第3熱交換器に150℃~250℃の温度を有する加熱媒体を供給することによって、前記第3熱交換器内で温度調節媒体を加熱する、前記サブステップと、
前記洗浄充填物を1つまたは複数の前記第1熱交換器を通して継続的に循環させ、前記撹拌器を継続的に作動させながら、前記反応器システム内の前記洗浄充填物を100℃~180℃の温度に4~120時間維持するサブステップと、
前記反応器システムが空になるまで、前記反応器システムから洗浄充填物を排出するサブステップと、
前記反応器システム内でエチレンの重合またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンとの共重合を再開するサブステップと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記エチレンポリマー粒子の前記スラリーを前記反応器システムから排出した後、前記洗浄充填物を前記反応器システムに導入する前に、前記炭化水素希釈剤で前記反応器システムをフラッシュするサブステップが実行される。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記炭化水素溶媒は、前記重合反応器内の洗浄充填物の液面が、重合中に前記重合反応器内のスラリーの液面と少なくとも同じ高さになるまで、前記空の反応器システムに導入される。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記反応器システム内に前記洗浄充填物が形成された後に前記炭化水素溶媒の前記反応器システムへの導入が終了した後、前記反応器システム内の前記洗浄充填物を100℃~180℃の温度に維持し、前記反応器システムから前記洗浄充填物を排出するが、前記炭化水素溶媒を追加で導入する必要はない。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記反応器システム内の前記洗浄充填物を100℃~180℃の温度に維持する間、前記炭化水素溶媒が前記反応器システム内に連続的に導入され、前記洗浄充填物が前記反応器システムから連続的に排出される。
【0020】
いくつかの実施形態では、重合を再開する前に前記反応器システムを空にするために、前記重合反応器から1つまたは複数の前記第1熱交換器を通る前記洗浄充填物の循環を終了した後、1つまたは複数の前記第1熱交換器および前記重合反応器の前記内容物を排出する。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記反応器システムから排出された前記洗浄充填物は、前記炭化水素溶媒を含む前記液体媒体から前記炭化水素溶媒を蒸発させることによって取り出すことができるように構成された前記撹拌蒸発容器に移送される。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記反応器システムから前記撹拌蒸留容器への前記洗浄充填物の排出は、前記反応器システム内の前記洗浄充填物と前記撹拌蒸留容器との間の圧力差によって起こる。
【0023】
いくつかの実施形態では、得られたエチレンポリマーは、二峰性または多峰性エチレンポリマーである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、スラリー重合プロセスによって3つの重合反応器で多峰性エチレンポリマーを製造するためのセットアップを概略的に示す。
図2図2は、本開示のエチレン又はエチレンと、1種以上のC~C12--1アルケンとを共重合するプロセスを実施する反応器システムの概略的な構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、重合触媒の存在下、40~150℃の温度および0.1~20MPaの圧力でスラリー重合によりエチレンを重合するか、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンを共重合するプロセスを提供する。C~C12-1アルケンは、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。好ましいC~C12-1アルケンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン等の直鎖状C~C10-1アルケン、または4-メチル-1-ペンテン等の分岐状C~C10-1アルケンである。エチレンと2種以上のC~C12-1-アルケンとの混合物を共重合してもよい。好ましいコモノマーは、C~C-1アルケン、特に1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン及び/又は1-オクテンである。製造されたエチレンコポリマーにおいて、コモノマーを導入した単位の量は、0.01~25重量%が好ましく、0.05~15重量%がより好ましく、特に0.1~12重量%が好ましい。特に好ましいのは、エチレンを0.1重量%~12重量%の1-ヘキセンおよび/または1-ブテン、特に0.1重量%~12重量%の1-ブテンと共重合するプロセスである。
【0026】
重合は、通常のオレフィン重合触媒のすべてを使用して実施することができる。つまり、重合は、例えば、酸化クロムをベースとするフィリップス触媒、チタンをベースとするチーグラー触媒またはツィーグラー・ナッタ触媒、シングルサイト触媒、またはそのような触媒の混合物を使用して実施することができる。本開示の目的において、シングルサイト触媒は、化学的に均一な遷移金属配位化合物をベースとする触媒である。さらに、オレフィンの重合にこれらの触媒の2種以上の混合物を使用することも可能である。このような混合触媒は、しばしばハイブリッド触媒と呼ばれる。オレフィンの重合のためのこれらの触媒の調製および使用は、一般に知られている。
【0027】
好ましい触媒は、チーグラー型であり、好ましくはチタンまたはバナジウムの化合物、マグネシウムの化合物、および任意選択で電子ドナー化合物および/または担体材料としての微粒子無機酸化物を含む。
【0028】
チーグラー型の触媒は、通常、共触媒の存在下で重合される。好ましい共触媒は、元素周期表の1、2、12、13または14族の金属の有機金属化合物、特に13族の金属の有機金属化合物、とりわけ有機アルミニウム化合物である。好ましい共触媒は、例えば、有機金属アルキル、有機金属アルコキシド、または有機金属ハロゲン化物である。
【0029】
好ましい有機金属化合物は、リチウムアルキル、マグネシウムまたは亜鉛アルキル、マグネシウムアルキルハロゲン化物、アルミニウムアルキル、シリコンアルキル、シリコンアルコキシドおよびシリコンアルキルハロゲン化物を含む。より好ましくは、有機金属化合物は、アルミニウムアルキルおよびマグネシウムアルキルを含む。さらにより好ましくは、有機金属化合物は、アルミニウムアルキル、最も好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物またはアルキル基がハロゲン原子、例えば塩素または臭素で置き換えられたこのタイプの化合物を含む。このようなアルミニウムアルキルの例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、またはそれらの混合物がある。
【0030】
本開示のプロセスは、スラリー重合として行われる重合プロセスである。懸濁重合とも呼ばれるこのようなスラリー重合は、炭化水素希釈剤を含む液体媒体中で行われ、生成されるエチレンポリマーは不溶性であり、固体粒子を形成する。それぞれの重合反応器内の条件に応じて、スラリーのそれ以外の液体媒体は、重合反応器内の条件下で超臨界状態になることもできる。スラリーの固形分含有量は、一般に10~80重量%の範囲であり、好ましくは20~40重量%の範囲である。
【0031】
好ましい実施形態では、液体媒体は、主成分としての炭化水素希釈剤の他に、例えば溶解したモノマーまたはコモノマー、溶解した共触媒または捕捉剤(アルミニウムアルキルなど)、溶解した反応助剤(水素など)、または溶解した重合反応生成物(オリゴマーまたはワックスなど)などのさらなる成分を含む。適切な炭化水素希釈剤は不活性であるべきであり、すなわち、反応条件下で分解すべきではない。このような炭化水素希釈剤は、例えば、3~12個の炭素原子を有する炭化水素、特にイソブタン、ブタン、プロパン、イソペンタン、ペンタン、ヘキサンまたはオクタンなどの飽和炭化水素、またはこれらの混合物である。好ましい実施形態では、炭化水素希釈剤は炭化水素混合物である。原材料から炭化水素混合物を製造するためには、特定の炭化水素を製造する場合よりも原材料の成分を分離する必要が少なく、したがって炭化水素混合物は希釈剤として経済的により魅力的であるが、特定の炭化水素と同じ希釈剤性能を示す。しかしながら、炭化水素混合物は、沸点範囲を有してもよい。
【0032】
炭化水素希釈剤は、好ましくは、これらの出発材料を混合物から蒸留によって回収できるようにするために、使用されるモノマーおよびコモノマーの沸点とは大幅に異なる沸点を有する。このような炭化水素希釈剤は、例えば、沸点が40℃を超える、または60℃を超える炭化水素、またはこれらの炭化水素を高割合で含む混合物である。したがって、本開示の好ましい実施形態では、重合は、0.1MPaで60℃を超える沸点を有する飽和炭化水素を50重量%以上含む、または0.1MPaで60℃を超える沸点を有する飽和炭化水素を80重量%以上含む液体媒体中で行われる。
【0033】
本開示のプロセスは、40~150℃、好ましくは50~130℃、特に好ましくは60~90℃の範囲の温度、0.1~5MPa、好ましくは0.15~3MPa、特に好ましくは0.2~2MPaの圧力で実施され、これらの圧力は、本発明で示されるすべての圧力と同様に、絶対圧力、すなわち、MPa(abs)の次元を有する圧力であると理解されなければならない。
【0034】
本開示の好ましい実施形態では、重合は、直列に接続された少なくとも2つの重合反応器の直列で実施される。このような直列の反応器の数に制限はないが、好ましくは、直列は2つ、3つまたは4つの反応器からなり、最も好ましくは2つまたは3つの反応器からなる。本開示のプロセスにおいて一連の重合反応器が使用される場合、重合反応器における重合条件は、例えばコモノマーの性質および/または量によって、または水素などの重合助剤の異なる濃度によって異なり得る。
【0035】
エチレンポリマーは通常、粉末として、すなわち小さな粒子の形で得られる。粒子は、通常、触媒の形態およびサイズ、ならびに重合条件に応じて、多かれ少なかれ規則的な形態およびサイズを有する。使用される触媒に応じて、ポリオレフィン粉末の粒子は、通常、数百から数千マイクロメートルの平均直径を有する。クロム触媒の場合、平均粒子直径は通常約300から約1600μmであり、チーグラー型触媒の場合、平均粒子直径は通常約50から約3000μmである。好ましいポリオレフィン粉末は、100から250μmの平均粒子直径を有する。粒度分布は、例えば、ふるい分けによって有利に決定することができる。適切な技術は、例えば、振動ふるい分析または空気ジェット下でのふるい分析である。
【0036】
本開示のプロセスによって得られる好ましいエチレンポリマーの密度は、0.90g/cm~0.97g/cmである。好ましくは、密度は0.920~0.968g/cmの範囲であり、特に0.945~0.965g/cmの範囲である。密度は、DIN EN ISO 1183-1:2004、方法A(浸漬)に従って、厚さ2mmの圧縮成形板を180℃、20MPaで8分間プレスし、続いて沸騰水中で30分間結晶化させて測定した密度であると理解される。
【0037】
好ましい実施形態では、本開示のプロセスによって製造されるエチレンポリマーは、DIN EN ISO 1133:2005、条件Gに従って測定した、温度190℃、荷重21.6kgでのMFR21.6が0.5~300g/10分、より好ましくは1~100g/10分、さらに好ましくは1.2~100g/10分、特に1.5~50g/10分である。
【0038】
本開示のプロセスによって得られるエチレンポリマーは、単峰性、二峰性、または多峰性エチレンポリマーであってもよい。好ましくは、エチレンポリマーは、二峰性または多峰性エチレンポリマーである。「多峰性」という用語は、ここで、得られるエチレンコポリマーの様式を指し、この様式がゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)曲線において分離された最大値として認識できるかどうかに関係なく、エチレンコポリマーが異なる反応条件下で得られる少なくとも2つのポリマー画分を含むことを示す。異なる重合条件は、例えば、異なる水素濃度を使用することにより、および/または異なる重合反応器で異なるコモノマー濃度を使用することにより達成することができる。このようなポリマーは、異なる反応条件下で一連の2つ以上の重合反応器でオレフィンを重合することにより得ることができる。しかしながら、混合触媒を使用することにより、このような二峰性または多峰性のポリオレフィンを得ることも可能である。分子量分布に加えて、ポリオレフィンはコモノマー分布も有することができ、好ましくは、より高い分子量を有するポリマー鎖の平均コモノマー含有量は、より低い分子量を有するポリマー鎖の平均コモノマー含有量よりも高い。本明細書で使用される用語「多峰性」には、「二峰性」も含まれるものとする。
【0039】
本開示のプロセスの好ましい実施形態では、重合は一連の重合反応器で行われ、エチレンホモポリマー、好ましくは低分子量エチレンホモポリマーが最初の重合反応器で製造され、エチレンコポリマー、好ましくは高分子量エチレンコポリマーが次の重合反応器で製造される。第1重合反応器でエチレンホモポリマーを製造できるようにするため、コモノマーは、直接的にも、または一連の重合反応器の第1重合反応器に導入される供給流またはリサイクル流の成分としても、第1重合反応器に供給されない。このようにして得られた多峰性エチレンコポリマーは、好ましくは、第1重合反応器で製造されたエチレンホモポリマーの重量比35~65%と、後続の重合反応器で製造されたエチレンコポリマーの重量比35~65%を含む。一連の重合反応器が1つまたは複数の予備重合反応器を含む場合、予備重合は、好ましくは、コモノマーを添加せずに行われる。
【0040】
本開示の他の好ましい実施形態では、エチレンポリマーは、一連の3つの重合反応器、すなわち、第1重合反応器と2つの後続の重合反応器で製造され、第1重合反応器で製造されるエチレンポリマーはエチレンホモポリマー、好ましくは低分子量エチレンホモポリマーであり、後続の重合反応器の1つで製造されるエチレンポリマーはエチレンコポリマー、好ましくは高分子量コポリマーであり、他の後続の重合反応器で製造されるエチレンポリマーは、より高分子量、好ましくは超高分子量コポリマーのエチレンコポリマーである。このようにして得られた多峰性エチレンコポリマーは、好ましくは、第1重合反応器で製造されたエチレンホモポリマーの重量比で30~60%、より好ましくは45~55%、1つの後続の重合反応器で製造されたエチレンコポリマーの重量比で30~65%、より好ましくは20~40%、および他の後続の重合反応器で製造されたより高分子量のエチレンコポリマーの重量比で1~30%、より好ましくは15~30%を含む。
【0041】
図1は、スラリー重合プロセスによって3つの重合反応器のシリーズで多峰性エチレンポリマーを製造するためのセットアップを概略的に示す。
【0042】
第1重合反応器(1)内のスラリー中のエチレンの重合またはエチレンと1種以上のC~C12-1-アルケンとの共重合用の希釈剤は、供給ライン(2)を介して反応器に供給される一方、触媒、エチレン、可能なコモノマーおよび重合助剤などの反応混合物の他の成分は、1種以上の供給ライン(3)を介して反応器に供給される。反応器(1)での重合の結果として、液体媒体中の固体ポリオレフィン粒子のスラリーが形成される。このスラリーは、ライン(4)を介して第2重合反応器(5)に供給され、そこでさらに重合が行われる。反応混合物の新鮮なコモノマーまたはさらなる成分は、1種以上の供給ライン(6)を介して反応器(5)に供給することができる。反応器(5)のスラリーは、その後、ライン(7)を介して第3重合反応器(8)に供給され、そこでさらに重合が行われる。1つまたは複数の供給ライン(9)により、反応混合物の共単量体または他の成分を反応器(8)に補充的に供給できる。
【0043】
反応器(8)で生成された液体媒体中の固体ポリオレフィン粒子のスラリーは、ライン(10)を介して収集容器(15)に連続的に移送される。次に、スラリーはライン(20)を介して遠心分離機(21)に送られ、そこで固体ポリオレフィン粒子が液体媒体から分離される。分離されたポリオレフィン粒子は、液体媒体を除去した後も、残留水分、すなわち残留液体媒体が10~30重量%残っており、ライン(22)を介して乾燥機(図示せず)に移送され、その後ペレット化ユニット(図示せず)に移送される。
【0044】
分離された液体媒体は、ライン(23)を介して別の収集容器(24)に移送され、そこからポンプ(25)によってライン(26)を介して重合反応器(1)、(5)、および/または(8)に移送される。液体媒体の反応器(1)、(5)、および/または(8)への移送を制御および調整するために、ライン(26)およびその分岐には、バルブ(27)、(28)、および(29)が装備されている。
【0045】
本開示のプロセスは、内容物が液体形態であるように構成された重合反応器を含む反応器システムで実行され、すなわち、内容物は、例えば、液体媒体中のポリマー粒子のスラリーまたは溶媒中のポリマーの溶液であってもよい。反応器システムは、反応器内容物を撹拌するための撹拌器をさらに含む。このような反応器システムの反応器は、一般に撹拌タンク反応器と呼ばれる。
【0046】
好ましい重合反応器は、円筒形の反応器壁、円筒形の反応器壁に底部接線で接続された底部反応器ヘッド、および円筒形の反応器壁に上部接線で接続された上部反応器ヘッドを含む円筒形の重合反応器である。円筒形の重合反応器は、好ましくは、円筒形の反応器壁の内径に対応する内径Dと、円筒形の重合反応器の中心軸に沿って測定された底部接線から上部接線までの距離である高さHとを有する。このような円筒形重合反応器は、好ましくは高さ/直径比(H/D)が1.5~4、より好ましくは高さ/直径比(H/D)が2.5~3.5である。好ましい実施形態では、重合反応器は、スラリーと接触する内面を有し、その表面粗さRは、ASME B46.1に従って測定して5μm未満、好ましくは3μm未満、特に1.5μm未満である。
【0047】
本開示の反応器システムの撹拌器は、反応器内容物の流れを誘導し、反応器内容物を混合することができる。好ましい実施形態では、撹拌器は反応器の中央に配置され、好ましくは、上部反応器ヘッドに位置するモーター、反応器の中心軸に沿って延びる回転軸、および1段以上の撹拌ブレードを含む。好ましくは、回転軸に取り付けられた撹拌ブレードは2~6段である。より好ましくは、撹拌ブレードは4段または5段である。撹拌ブレードの1段は通常、複数の撹拌ブレードで構成される。撹拌ブレードの好ましい段は2枚から4枚のブレードで構成される。
【0048】
好ましい実施形態では、モーターが撹拌シャフトと取り付けられた撹拌ブレードを回転させる。ブレードの回転により、主に、撹拌器シャフトの周りの円形断面で反応器内容物の垂直流が誘発される。反応器内容物のこの垂直流は、好ましくは下向きの流れである。底部ヘッドで、この流れは方向を変え、最初は反応器壁に向かって外側に流れ、次に上向きに戻って上部に流れ、再び方向を変えて重合反応器の中心に戻る。撹拌器の回転により、反応器内容物の反応器内での二次的な流れパターンも生じる。この二次的な流れは、撹拌器の回転方向の円形の流れである。この円形の流れを制御するために、重合反応器には、好ましくは1つまたは複数のバッフルが装備されている。
【0049】
本開示のプロセスの反応器システムは、エチレンおよび任意で1つまたは複数のコモノマーのスラリー重合をサポートし、重合反応器と、重合反応器の外側に配置された1つまたは複数の第1熱交換器とを含む。
【0050】
本開示のプロセスを実行するための反応器システムは、反応器内容物を冷却または加熱するために重合反応器の外側に配置された1つまたは複数の第1熱交換器を含む。重合中、重合反応器からスラリーを取り出し、1つまたは複数の第1熱交換器でスラリーを冷却し、冷却されたスラリーを重合反応器に戻すことによって、重合反応器から重合熱が除去される。1つまたは複数の第1熱交換器は、本明細書に記載の流体に関係する温度および圧力で通常使用されるもののいずれかであり得、例えば、熱交換器は、二重管、シェル&チューブ、プレート、プレート&シェル、およびスパイラル熱交換器から選択されてもよい。
【0051】
好ましくは、第1熱交換器は二重管熱交換器である。基本的には、ジャケット付きの長いパイプであり、通常、長さは約100mから600mである。パイプの内径は通常、約150mmから400mmの範囲である。好ましくは、二重管熱交換器は、個別のジャケット付きセグメントで構成される。これらのセグメントは、直接または曲げによって分離されて、好ましくはフランジで接合される。好ましい曲げは、180°曲げである。好ましくは、直線状の個々のセグメントの長さは6mから12mである。各二重管熱交換器は、好ましくは4から50、より好ましくは5から40、特に10から35の個々のジャケット付きセグメントから構成される。二重管熱交換器のジャケットを通る反応器内容物の流れおよび温度調節媒体の流れは、並流、向流、または並流/向流の組み合わせであってもよい。好ましくは、第1熱交換器内の流れは、並流/向流の組み合わせである。
【0052】
本開示の好ましい実施形態では、第1熱交換器は、ASME B46.1に従って測定された表面粗さRが5μm未満、好ましくは3μm未満、特に1.5μm未満である、スラリーと接触する内面を有する二重管熱交換器である。二重管熱交換器を、表面粗さRが5μm未満の内面で設計すると、壁層の堆積が最小限に抑えられまる。本開示で定義される表面粗さRは、たとえば、機械研磨または電解研磨などの研磨によって実現できる。
【0053】
反応器システムは、重合反応器の外側に1つの第1熱交換器を備えることができる。ただし、反応器システムは、重合反応器の外側に2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の第1熱交換器を備えることもできる。反応器システムは、2つまたは3つの第1熱交換器<264/>を備えるのが好ましい。
【0054】
本開示のプロセスを実行するための反応器システムは、さらに、重合反応器から反応器内容物を取り出し、1つまたは複数の第1熱交換器を通して反応器内容物を循環させるための1つまたは複数の循環ポンプを備えている。温度調節媒体は、循環ポンプによって循環されるのが好ましく、循環ポンプの出口で温度調節媒体の流量がほぼ一定となる。1つまたは複数の循環ポンプは、1つまたは複数の第1熱交換器の上流、すなわち、重合反応器から取り出された反応器内容物が重合反応器から出る重合反応器の出口と、1つまたは複数の第1熱交換器との間に配置されるのが好ましい。好ましい循環ポンプは、電解研磨されたステンレス鋼で作られた半開放型インペラを備えた遠心ポンプである。
【0055】
本開示のプロセスでは、1つまたは複数の第1熱交換器を冷却または加熱するための温度調節媒体は、閉ループで循環される。反応器システムが1つまたは複数の第1熱交換器を含む場合、好ましくは、反応器システムのすべての第1熱交換器は、循環する温度調節媒体の1つの閉ループ内で並列に動作される。重合反応器の外側に配置された1つまたは複数の第1熱交換器は、重合反応器内容物を加熱するのと同様に、重合反応器内容物を冷却するのにも役立つ。機能に応じて、重合反応器内容物を冷却するときには第1熱交換器に冷却媒体が備えられ、重合反応器内容物を加熱するときには第1熱交換器に加熱媒体が備えられなければならない。本開示のプロセスでは、両方のタスクは、1つまたは複数の第1熱交換器を冷却し、1つまたは複数の第1熱交換器を加熱する役割を果たす温度調節媒体によって実行される。温度調節媒体の閉ループには、温度調節媒体を冷却するための第2熱交換器と、温度調節媒体を加熱するための第3熱交換器の2つのさらなる熱交換器が装備されている。
【0056】
温度調節媒体の冷却、すなわち温度調節媒体を冷却剤として使用することは、重合反応器内でエチレンの重合中、またはエチレンと1種以上のCC~C12-1-アルケンとの共重合中に行われ、重合熱が除去される。温度調節媒体を冷却するための第2熱交換器は、冷却剤(好ましくは水)によって冷却される。冷却剤は、冷却剤供給ラインを介して供給され、第2熱交換器を通過し、次いで冷却剤出口ラインを介して排出される。好ましくは、温度調節媒体を冷却するための第2熱交換器は、プレート熱交換器である。本開示の好ましい実施形態では、第2熱交換器は、並列に動作する多数のプレート熱交換器、例えば、並列に動作する2、3、4、5、6、7、8、9、または10のプレート熱交換器のバッテリーに分割される。他の好ましい実施形態では、温度調節媒体を冷却するための第2熱交換器は、例えば、大気冷却塔などの冷却塔である。
【0057】
重合中、循環される温度調節媒体の温度は、冷却剤供給ラインまたは好ましくは冷却剤出口ラインに配置された制御バルブによって第2熱交換器を通る冷却剤の流量を調整することによって維持することができる。好ましい実施形態では、循環する温度調節媒体の温度の制御は、第2熱交換器に運ばれる温度調節媒体の流れを2つの部分に分割することによって行われる。1つの部分は第2熱交換器を通過して冷却剤によって冷却され、第2部分は第2熱交換器をバイパスして温度調節媒体を循環させる循環ポンプの入口側に直接戻る。バイパスを通る温度調節媒体の流量は、バイパスラインに配置された制御バルブによって調整されることが好ましい。制御バルブの開度を変えると、第2熱交換器を通過する温度調節媒体の部分と第2熱交換器をバイパスする部分の比率が変わり、したがって、これら2つの部分を再び一緒にした後の結合された温度調節媒体の温度が変わる。
【0058】
温度調節媒体の加熱、すなわち重合反応器内容物用の加熱媒体としての温度調節媒体の使用は、例えば、重合の開始時または反応器システムの洗浄中に行われる。温度調節媒体を加熱するための第3熱交換器は、好ましくは蒸気である加熱媒体によって加熱される。次に、加熱媒体は、加熱媒体供給ラインを介して供給され、第3熱交換器を通過し、次に加熱媒体出口ラインを介して取り出される。温度調節媒体を加熱するための第3熱交換器は、シェルアンドチューブ熱交換器であることが好ましい。
【0059】
2つ、3つまたはそれ以上の反応器システムの組み合わせでマルチ反応器重合としてエチレンポリマーを製造するプロセスを実施する場合、すべての第1熱交換器が、1つの閉ループシステムで循環される温度調節媒体によって冷却または加熱され、すべての第1熱交換器が、1つの第2熱交換器によって冷却される循環温度調節媒体の閉ループ内で並列に操作されることが特に好ましい。
【0060】
本開示の好ましい実施形態によれば、重合反応器内のスラリーは、重合反応器の外側に位置する1つまたは複数の第1熱交換器で冷却または加熱されるだけでなく、重合反応器の外側にある温度調節ジャケットによっても冷却または加熱される。好ましくは、温度調節ジャケットも、反応器内容物の冷却または加熱に使用される1つまたは複数の第1熱交換器を冷却または加熱する温度調節媒体によって温度調節される。温度調節ジャケットは、好ましくは、重合反応器の外側に取り付けられた一連のハーフパイプからなる。さらに、第1熱交換器および重合反応器の外側にある温度調節ジャケットは、循環温度調節媒体の閉ループ内で並列に操作されることが好ましい。2つ、3つ、またはそれ以上の反応器システムの組み合わせでマルチ反応器重合としてエチレンポリマーを製造するプロセスを実行する場合、好ましくは、各反応器反応器は、反応器の外側に温度調節ジャケットを備える。特に好ましくは、すべての第1熱交換器およびすべての冷却ジャケットは、循環温度調節媒体の閉ループ内で並列に操作される。
【0061】
エチレンの重合中、またはエチレンと1種以上のC~C12-1-アルケンとの共重合中、重合反応器は、炭化水素希釈剤を含む液体媒体中のエチレンポリマー粒子のスラリーで満たされ、スラリーは、重合反応器からスラリーを抜き出し、1つまたは複数の第1熱交換器でスラリーを冷却し、冷却されたスラリーを重合反応器に戻すことによって冷却される。
【0062】
本発明のプロセスによれば、エチレンの重合中、またはエチレンと1種以上のC~C12-1-アルケンとの共重合中、1種以上の第1熱交換器を冷却する温度調節媒体の温度は20℃~50℃、好ましくは25℃~45℃、より好ましくは29℃~40℃の範囲であり、温度調節媒体は、第2熱交換器内で、-20℃~45℃、好ましくは15℃~40℃、より好ましくは20℃~36℃の温度を有する冷却剤によって冷却される。
【0063】
本開示のプロセスの好ましい実施形態では、エチレンを重合するプロセス、またはエチレンと1種以上のC~C12-1-アルケンとを共重合するプロセスは、重合反応器を洗浄するステップ、1つまたは複数の第1熱交換器を洗浄するステップ、または重合反応器と1つまたは複数の第1熱交換器を洗浄するステップを含む。洗浄ステップは、好ましくは、重合を停止するステップ、炭化水素溶媒を反応器システムに導入して洗浄充填物を形成するステップ、洗浄充填物を加熱し、重合反応器内の撹拌器を作動させながら反応器システム内で洗浄充填物を循環させるステップ、反応器システムから洗浄充填物を排出するステップ、および反応器システム内でエチレンの重合またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンとの共重合を再開するステップのサブステップを含む。
【0064】
反応器システムにおけるエチレンの重合またはエチレンと1種以上C~C12-1-アルケンとの共重合の終了は、好ましくは、反応器システムまたは二重管反応器システムの組み合わせへのすべての供給流を停止することによって行われ、その一方で、好ましくは、循環ポンプまたは循環ポンプの運転を継続する。供給流の終了は、エチレン、コモノマー、触媒、水素および炭化水素希釈剤が反応器システムに供給されなくなることを意味する。その後、液体媒体中のエチレンポリマー粒子のスラリーは、反応器システムが空になるまで反応器システムから排出される。液体媒体中のエチレンポリマー粒子のスラリーをマルチ反応器スラリー重合システムから排出するための好ましい方法は、例えば、国際開示第2018/127472 A1号に開示されている。
【0065】
反応器システムをスラリーから空にした後、スラリーが排出された後に反応器システム内に残っている可能性があるエチレンポリマー粒子を除去するために、反応器システムを炭化水素でフラッシュすることが好ましい。反応器システムをフラッシュするための炭化水素は、好ましくは、重合において希釈剤として使用される炭化水素である。好ましい実施形態では、残留エチレンポリマー粒子を除去するための炭化水素が反応器システムに導入され、次いで、1つまたは複数の循環ポンプによって、1つまたは複数の第1熱交換器を介して、例えば10分から3時間循環される。その後、重合反応器の撹拌器は好ましくは停止され、循環ポンプは1時間から12時間、より好ましくは1.5時間から8時間、特に2時間から4時間作動される。その後、循環ポンプは好ましくは停止され、反応器内容物は好ましくは重合反応器の底部出口から排出される。好ましい実施形態では、反応器システムの洗浄に使用された炭化水素の一部が重合反応器内にまだ残っている間に、重合反応器の撹拌器が再起動される。好ましくは、重合反応器の少なくとも底部は、まだ残っているエチレンポリマー粒子を除去するために炭化水素で2度目に洗浄される。
【0066】
反応器システムを洗浄するために、炭化水素溶媒が空になった反応器システムに導入され、それによって反応器システム内に洗浄充填物が形成される。反応器システムを洗浄するための炭化水素溶媒は、好ましくは重合に使用された炭化水素希釈剤である。炭化水素溶媒は、好ましくは、重合反応器内の洗浄充填物の液面が、重合中の重合反応器内のスラリーの液面と少なくとも同じ高さに達するまで、空の反応器システムに導入される。好ましい実施形態では、反応器システムは炭化水素溶媒で完全に満たされる。
【0067】
その後、反応器システム内の洗浄充填物は、好ましくは、重合反応器内の撹拌器を作動させながら、100℃~180℃、好ましくは110℃~170℃、より好ましくは120℃~160℃の温度に加熱される。加熱は、好ましくは、重合反応器から洗浄充填物の一部を取り出し、取り出した洗浄充填物を1つまたは複数の第1熱交換器で加熱し、加熱された洗浄充填物を重合反応器に戻すことによって行われる。温度調節媒体は、好ましくは、第3熱交換器に150℃~250℃、好ましくは170℃~230℃、より好ましくは180℃~210℃の温度を有する加熱媒体を供給することによって、第3熱交換器内で加熱される。第3熱交換器を加熱するための加熱媒体は、好ましくは0.6MPa~1.5MPaの圧力を有する蒸気であり、より好ましくは0.7MPa~1.1MPaの圧力を有する。好ましい実施形態では、洗浄充填物は、洗浄充填物の一部を加熱された1つまたは複数の第1熱交換器に通過させることによって加熱されるだけでなく、重合反応器の外側にある温度調節ジャケットを加熱することによっても加熱される。
【0068】
加熱された洗浄充填物は、好ましくは、1つまたは複数の第1熱交換器を通して洗浄充填物が継続的に循環され、撹拌器が継続的に作動された状態で、反応器システム内で、100℃~180℃、好ましくは110℃~170℃、より好ましくは120℃~160℃の温度で4時間~120時間、好ましくは10時間~80時間、より好ましくは15時間~50時間維持される。
【0069】
好ましくは、洗浄充填物は、反応器システムが空になるまで、その後反応器システムから排出される。その後、エチレンの重合、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンとの共重合が反応器システム内で再開される。
【0070】
重合反応器内容物および1つまたは複数の第1熱交換器の内容物は、反応器システムの1つの出口から一緒に排出されてもよい。好ましくは、重合反応器内容物および1つまたは複数の第1熱交換器の内容物は、反応器システムの2つ以上の出口から別々に排出される。好ましい実施形態では、1つまたは複数の第1熱交換器を通る重合反応器からの洗浄充填物の循環が終了し、1つまたは複数の第1熱交換器および重合反応器内容物が、その後、反応器システムの2つ以上の出口から排出される。
【0071】
本開示のプロセスの好ましい実施形態では、反応器システム内に洗浄充填物が形成された後に炭化水素溶媒の反応器システムへの導入が終了され、その後、反応器システム内の洗浄充填物を100℃~180℃の温度に維持し、反応器システムから洗浄充填物を排出することが、追加の炭化水素溶媒の導入なしに行われる。
【0072】
本開示のプロセスの他の好ましい実施形態では、反応器システム内に洗浄充填物が形成された後に炭化水素溶媒の反応器システムへの導入が終了されず、反応器システムから洗浄充填物を排出することによって重合反応器内の洗浄充填物の液面が維持される。炭化水素溶媒を連続的に導入し、反応器システムから洗浄充填物を連続的に取り出すことにより、オリゴマーまたはポリマー壁層の溶解による反応器システム内の洗浄充填物の粘度増加がそれほど顕著でなくなり、溶解した壁層による洗浄充填物の飽和は起こらないか、少なくとも後で達する。
【0073】
本開示の好ましい実施形態では、反応器システムから排出される洗浄充填物は、炭化水素溶媒を含む液体媒体から蒸発によって炭化水素溶媒を抜き出すことができるように構成された撹拌蒸発容器に移される。反応器システムから撹拌蒸留容器への洗浄充填物の排出は、好ましくは、反応器システム内の洗浄充填物と撹拌蒸留容器との間の圧力差によって行われる。本開示の好ましい実施形態では、高温の洗浄充填物の減圧は、蒸発容器に入る間に行われ、その結果、相当量の炭化水素が蒸発するとともに、かなりの温度低下が生じる。
【0074】
好ましくは、蒸発容器は、反応器システムから排出される洗浄充填物で最初に充填され、その後、炭化水素溶媒の蒸発が開始される。好ましくは、蒸発は、先に溶解したオリゴマーおよびポリマー材料と残りの炭化水素溶媒との濃縮混合物が形成されるまで継続される。通常、先に溶解したオリゴマーおよびポリマー材料の少なくとも一部は沈殿している。残りの濃縮混合物を排出した後、蒸発容器は、反応器システムから排出された洗浄充填物で再び充填することができる。好ましい実施形態では、反応器システムから排出された洗浄充填物は、蒸発容器が完全に満たされているために攪拌蒸発容器に供給することができなくなり、攪拌蒸発容器が再び空になるまで排出を中断するのではなく、第2攪拌蒸発容器に供給される。
【0075】
図2は、エチレンを重合するか、またはエチレンと1種以上のCC~C12-1-アルケンとを共重合するための本開示のプロセスを実行するための反応器システムのセットアップを概略的に示す。
【0076】
重合反応器(100)は、反応器内容物を撹拌するための撹拌器(101)を含む。撹拌器(101)は、モーター(102)、反応器(100)の中央にほぼ垂直に設置された回転軸(103)、および少なくとも1つのインペラ(104)を備える。重合反応器(100)には、反応器(100)の外面に温度調節ジャケット(105)が装備されており、温度調節ジャケット(105)を通じて温度調節媒体が流れる。反応器内容物は、重合反応器(100)からライン(106)を介して循環ポンプ(107)に取り出され、循環ポンプは反応器内容物をライン(108)を介して第1熱交換器(109)に送り込む。第1熱交換器(109)を通過した調整された反応器内容物は、ライン(110)を通って重合反応器(100)に戻る。第1熱交換器(109)を調整するための調整媒体は、ライン(111)を通って来る。
【0077】
反応混合物の成分、例えば触媒成分、エチレン、可能なコモノマー、水素、炭化水素希釈剤は、1つまたは複数の供給ライン(112)を通って反応器に供給される。重合反応器(100)におけるエチレンの重合またはエチレンと1種以上のC~C12-1-アルケンとの共重合中、スラリーは重合反応器(100)から取り出され、第1熱交換器(109)は冷却器として作動する。スラリーは、さらにライン(113)を通って下流の反応器または生成物回収に送られる。
【0078】
重合中、バルブ(163)、(165)、(180)および(181)は閉じられる。第1熱交換器(109)を冷却するための冷却された温度調節媒体は、第2熱交換器(120)から来る。ライン(130)を通って第2熱交換器(120)を出た冷却された温度調節媒体は、第2循環ポンプ(121)によって、ライン(122)および(123)、バルブ(124)、およびライン(111)を通って、第1熱交換器(109)に循環され、次に、バルブ(125)および(126)、制御バルブ(127)、およびライン(128)および(129)を通って、第2熱交換器(120)に戻る。
【0079】
重合中、好ましくは、重合反応器(100)の温度調節ジャケット(105)も温度調節媒体によって冷却される。温度調節ジャケット(105)を冷却するために、第2循環ポンプ(121)は、第2熱交換器(120)から出た冷却された温度調節媒体を、ライン(130)、ライン(122)および(131)、バルブ(132)、ライン(133)を経由して温度調節ジャケット(105)に循環させ、その後、ライン(134)、バルブ(135)、制御バルブ(136)、ライン(129)を経由して第2熱交換器(120)に戻す。
【0080】
重合反応器(100)の温度を制御するために、温度トランスデューサ(140)は、重合反応器(100)の温度を表す温度信号(141)を生成する。温度コントローラ(142)は、重合反応器(100)の所望の温度を表す設定値(SP)とともに温度信号(141)を受信する。温度信号(141)に応じて、温度コントローラ(142)は、温度信号(141)と反応器温度の設定値との差に応じた出力信号(143)および(144)を提供する。第1熱交換器(109)および温度調節ジャケット(105)から第2熱交換器(120)への温度調節媒体の流れを制御する制御バルブ(127)および(136)は、信号(143)および(144)に応じて操作される。
【0081】
温度調節媒体は、ライン(150)を介して第2熱交換器(120)に入り、ライン(151)を介して第2熱交換器(120)から出る冷却剤を使用して、第2熱交換器(120)内で冷却される。第1熱交換器(109)を冷却する温度調節媒体の温度を制御するために、ライン(129)を通して運ばれる温度調節媒体の一部は、第2熱交換器(120)を通過せず、ライン(152)を通して第2熱交換器(120)をバイパスする。第2熱交換器(120)をバイパスする温度調節媒体の流量は、制御バルブ(153)によって調整される。温度トランスデューサ(154)は、第2熱交換器(120)を通過する温度調節媒体の一部と、ライン(152)を通して第2熱交換器(120)をバイパスする温度調節媒体の部分を合流させた後の、複合温度調節媒体の温度を表す温度信号(155)を生成する。温度コントローラ(156)は、第2循環ポンプ(121)に入る温度調節媒体の所望の温度を表す設定値(SP)とともに、温度信号(155)を受信する。温度信号(155)に応じて、温度コントローラ(156)は、温度信号(155)とライン(130)を流れる温度調節媒体の温度の設定値との差に応じた出力信号(157)を提供する。制御バルブ(153)は、信号(157)に応じて操作される。
【0082】
重合反応器を洗浄するため、1つまたは複数の第1熱交換器を洗浄するため、または重合反応器および1つまたは複数の第1熱交換器を洗浄するため、第1熱交換器(109)は、重合反応器(100)から取り出され、第1熱交換器(109)を通って循環する反応器内容物の部分を加熱するためのヒーターとして作動する。
【0083】
重合反応器(100)の内容物を加熱するために、バルブ(124)、(126)、(132)、および(135)は閉じられ、第1熱交換器(109)を加熱するための温度調節媒体は、第3熱交換器(160)から供給される。温度調節媒体は、第3循環ポンプ(161)によって、第3熱交換器(160)、ライン(162)、バルブ(163)、ライン(111)を通って第1熱交換器(109)に循環され、その後、バルブ(125)、ライン(164)、バルブ(165)、ライン(166)を通って第3循環ポンプ(161)に戻る。
【0084】
温度調節媒体は、第3熱交換器(160)で、好ましくはライン(170)を通って第3熱交換器(160)に入る中圧蒸気を使用して加熱される。中圧蒸気は、ライン(171)を通って制御バルブ(172)に流れ、中圧蒸気の流れが調整される。中圧蒸気は、次に、ライン(170)を通って第3熱交換器(160)に流れ込み、第3熱交換器(160)を通過し、ライン(173)を通って第3熱交換器(160)から出る。第1熱交換器(109)を加熱する温度調節媒体の温度を制御するために、温度トランスデューサ(174)は、ライン(162)を通って第3熱交換器(160)から出る温度調節媒体の温度を表す温度信号(175)を生成する。温度コントローラ(176)は、ライン(162)を流れる温度調節媒体の所望の温度を表す設定値(SP)とともに温度信号(175)を受信する。温度信号(175)に応答して、温度コントローラ(176)は、温度信号(175)とライン(162)を流れる温度調節媒体の温度の設定値との差に応答する出力信号(177)を提供する。制御バルブ(172)は、信号(177)に応答して操作される。
【0085】
さらに、温度調節媒体を使用して温度調節ジャケット(105)を加熱することもできる。次に、温度調節媒体は、第3循環ポンプ(161)によって、第3熱交換器(160)、ライン(162)、バルブ(180)およびライン(133)を介して温度調節ジャケット(105)に循環され、その後、ライン(133)、バルブ(181)、ライン(164)、バルブ(165)およびライン(166)を介して第3循環ポンプ(161)に戻る。
【0086】
反応器システムを洗浄した後、循環ポンプ(107)および(161)の動作を停止し、バルブ(190)および(191)を開き、第1熱交換器(109)の内容物をライン(108)、循環ポンプ(107)、バルブ(190)、ライン(192)および(193)、およびバルブ(191)を介して蒸発容器(194)に排出する。第1熱交換器(109)が空になると、バルブ(190)が閉じられ、バルブ(195)が開かれ、重合反応器(100)の内容物がバルブ(195)、ライン(196)および(193)、ならびにバルブ(191)を介して蒸発容器(194)に排出される。
【0087】
蒸発容器(194)には、反応器内容物を撹拌するための撹拌器(197)が含まれる。撹拌器(197)は、モーター(198)、蒸発容器(194)の中央に実質的に垂直に設置された回転軸(199)、および少なくとも1つのインペラ(200)を含む。蒸発中、蒸発した炭化水素溶媒はライン(201)を通してオフガスシステム(図示せず)に引き出される。蒸発後、先に溶解したオリゴマーおよびポリマー材料と残りの炭化水素溶媒の濃縮混合物はライン(202)を通して引き出され、廃棄される。
【0088】
本開示のプロセスは、反応器システムを高温炭化水素で迅速かつ経済的に洗浄することを可能にし、特に、第1熱交換器および温度調節ジャケットの冷却から第1熱交換器および温度調節ジャケットの加熱への迅速な移行、およびその逆を可能にする。このプロセスは制御が容易であり、欠陥のある外部熱交換器または重合反応器温度調節ジャケットを随時交換する必要がない。それにもかかわらず、このプロセスは、操作上の問題なく、目標とするポリマー特性の組み合わせを持つエチレンポリマーを調製することを可能にする。
【実施例
【0089】
比較例A
エチレンポリマーは、図1に示すように、それぞれが重合反応器を含む商業的に操作される一連の3つの反応器システムで連続的に製造された。各重合反応器は、重合熱を除去するために重合反応器の外側に配置された2つの並列の第1熱交換器をさらに含む反応器システムの一部であった。すべての第1熱交換器は、それぞれ長さが12mの直線ジャケットセグメントで構成され、これらのセグメントは互いにフランジ接続されていた。重合反応器には、さらに温度調節ジャケットが装備されていた。重合反応器の最初の熱交換器と温度調節ジャケットはすべて、閉ループで循環する冷却剤によって冷却され、その冷却剤は第2熱交換器で冷却された。5年以上にわたり、チーグラー型触媒の存在下、スラリー中でエチレンと1-ブテンを共重合し、反応器温度65℃~85℃、反応器圧力0.2MPa~1.3MPaでさまざまなグレードのポリエチレンを製造してきた。グレードに応じて、生産速度は30~41t/hの範囲で変化した。
【0090】
この期間中、第1熱交換器内の壁層の蓄積により、熱交換器内の熱伝達の低下が定期的に観察された。第1熱交換器内の壁層を除去するために、反応器システムは平均して年に2回、高温炭化水素で洗浄された。洗浄中に反応器内容物を加熱するために、第1熱交換器と温度調節ジャケットは循環冷却剤の閉ループから切り離され、圧力0.8MPaの飽和蒸気の供給に接続された。重合反応器の第1熱交換器と温度調節ジャケットの各洗浄には、重合の終了から反応器システムの洗浄後の重合の再開まで5日間かかった。
【0091】
年の期間の終わりに、第1熱交換器の検査が行われ、第1熱交換器の直線セグメントの約20%がひどく腐食していたため、次の将来に冷却剤の漏れが排除できなかったため、セグメントを交換する必要があった。
実施例1
【0092】
エチレンポリマーは、図1に示すように、それぞれが重合反応器を含む3つの反応器システムの一連の商業的に操作されたシリーズで連続的に製造された。各重合反応器は、図2に示すように反応器システムの一部でしたが、重合熱を除去するために、図2に示すように1つではなく、重合反応器の外側に配置された2つの並列の第1熱交換器で構成されていた。すべての第1熱交換器は、それぞれ長さが12mの直線ジャケットセグメントで構成され、セグメントは互いにフランジ接続されていた。重合反応器には、さらに、温度調節ジャケットが装備されていた。第1熱交換器と重合反応器の温度調節ジャケットはすべて、閉ループで循環する温度調節媒体によって冷却された。重合中、温度調節媒体は第2熱交換器で冷却された。5年以上にわたり、エチレンと1-ブテンを共重合モノマーとしてスラリー中でチーグラー型触媒の存在下、反応器温度65℃~85℃、反応器圧力0.2MPa~1.3MPaで重合し、さまざまなグレードのポリエチレンを製造した。グレードに応じて、生産速度は30~41t/hの範囲で変化した。
【0093】
この期間中、第1熱交換器内の壁層の蓄積により、熱交換器内の熱伝達の低下が定期的に観察された。第1熱交換器内の壁層を除去するために、反応器システムは平均して年に2回、高温炭化水素で洗浄された。反応器内容物を加熱するために、循環する温度調節媒体の閉ループには、圧力0.9MPaの飽和蒸気供給源に接続された第3熱交換器が装備されていた。重合反応器の最初の熱交換器と温度調節ジャケットの洗浄には、重合の終了から反応器システムの洗浄後の重合の再開まで3日かかった。
【0094】
5年間の終わりに、最初の熱交換器の検査が行われた。最初の熱交換器の直線セグメントはどれも、セグメントを交換する必要があるほどひどく腐食していなかった。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合触媒の存在下で、40~150℃の温度および0.1~5MPaの圧力でスラリー重合によりエチレンを重合するか、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンを共重合するプロセスであって、
前記プロセスは、反応器システムで実行され、前記反応器システムは、
-内容物が液体状となるように構成された重合反応器と、
-反応器の内容物を撹拌するための撹拌器と、
-前記重合反応器の外側に配置され、前記反応器の内容物を冷却または加熱するための1つまたは複数の第1熱交換器と、
-前記重合反応器から前記反応器内容物を取り出し、1つまたは複数の前記第1熱交換器を通して前記反応器内容物を循環させるための1つまたは複数の循環ポンプと、
-1つまたは複数の前記第1熱交換器を冷却または加熱するための温度調節媒体の閉ループであって、前記閉ループには、前記温度調節媒体を冷却するための第2熱交換器が装備されており、前記温度調節媒体を加熱するための第3熱交換器が装備されている、前記閉ループと、を含み、
前記エチレンの重合中、またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンとの共重合中に、
-前記重合反応器には、炭化水素希釈剤を含む液体媒体中のエチレンポリマー粒子のスラリーが充填されており、
-前記スラリーは、前記重合反応器から前記スラリーを取り出し、1つまたは複数の前記第1熱交換器で前記スラリーを冷却し、冷却された前記スラリーを前記重合反応器に戻すことによって冷却され、
-前記1つまたは複数の第1熱交換器を冷却する温度調節媒体の温度は、20°C~50°Cの範囲であり、
-前記温度調節媒体は、第2熱交換器で-20℃~45℃の温度の冷却剤によって冷却されるプロセス。
【請求項2】
前記反応器システムは、前記重合反応器と、前記重合反応器の外側に配置され、前記反応器の内容物を冷却または加熱するための1つまたは複数の第1熱交換器とをそれぞれ含む、2つ、3つ、またはそれ以上の反応器システムの一部である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記重合反応器では、前記反応器の外側にさらに温度調節ジャケットが装備されている、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記温度調節ジャケットは、前記重合反応器の外側に取り付けられた一連のハーフパイプで構成され、および/または、前記温度調節ジャケットを冷却または加熱するための温度調節媒体は、1つまたは複数の前記第1熱交換器を冷却または加熱するための温度調節媒体である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記重合反応器を洗浄するステップ、1つまたは複数の前記第1熱交換器を洗浄するステップ、または前記重合反応器と1つまたは複数の前記第1熱交換器とを洗浄するステップを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセスであって、洗浄ステップは、
反応器システム内で前記エチレンの重合またはエチレンと1種以上のC~C12-1-アルケンとの共重合を停止し、前記反応器システムが空になるまで前記エチレンポリマー粒子のスラリーを前記反応器システムから排出するサブステップと、
空になった前記反応器システムに炭化水素溶媒を導入し、それによって前記反応器システム内に洗浄充填物を形成するサブステップと、
前記反応器システム内の前記洗浄充填物を100~180℃の温度に加熱するサブステップであって、
-前記重合反応器内の撹拌器を作動させ、
-前記洗浄充填物の一部を重合反応器から取り出し、1つまたは複数の前記第1熱交換器内で洗浄充填物の一部を加熱し、加熱された洗浄充填物の一部を重合反応器に戻すことによって、前記洗浄充填物を加熱し、
-前記第3熱交換器に150℃~250℃の温度を有する加熱媒体を供給することによって、前記第3熱交換器内で温度調節媒体を加熱する、前記サブステップと、
前記洗浄充填物を1つまたは複数の前記第1熱交換器を通して継続的に循環させ、前記撹拌器を継続的に作動させながら、前記反応器システム内の前記洗浄充填物を100℃~180℃の温度に4~120時間維持するサブステップと、
前記反応器システムが空になるまで、前記反応器システムから洗浄充填物を排出するサブステップと、
前記反応器システム内でエチレンの重合またはエチレンと1種以上のC~C12-1アルケンとの共重合を再開するサブステップと、を含む、プロセス。
【請求項6】
前記エチレンポリマー粒子の前記スラリーを前記反応器システムから排出した後、前記洗浄充填物を前記反応器システムに導入する前に、前記炭化水素希釈剤で前記反応器システムをフラッシュするサブステップが実行され、および/または、前記炭化水素溶媒は、前記重合反応器内の洗浄充填物の液面が、重合中に前記重合反応器内のスラリーの液面と少なくとも同じ高さになるまで、前記空の反応器システムに導入される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応器システム内の前記洗浄充填物を100℃~180℃の温度に維持する間、前記炭化水素溶媒が前記反応器システム内に連続的に導入され、前記洗浄充填物が前記反応器システムから連続的に排出され、および/または、前記反応器システム内に前記洗浄充填物が形成された後に前記炭化水素溶媒の前記反応器システムへの導入が終了した後、前記反応器システム内の前記洗浄充填物を100℃~180℃の温度に維持し、前記反応器システムから前記洗浄充填物を排出するが、前記炭化水素溶媒を追加で導入する必要はない、請求項5または6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
重合を再開する前に前記反応器システムを空にするために、前記重合反応器から1つまたは複数の前記第1熱交換器を通る前記洗浄充填物の循環を終了した後、1つまたは複数の前記第1熱交換器および前記重合反応器の前記内容物を排出する、請求項5または6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記反応器システムから排出された前記洗浄充填物は、前記炭化水素溶媒を含む前記液体媒体から前記炭化水素溶媒を蒸発させることによって取り出すことができるように構成された前記撹拌蒸発容器に移送されるる、請求項5または6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応器システムから前記撹拌蒸留容器への前記洗浄充填物の排出は、前記反応器システム内の前記洗浄充填物と前記撹拌蒸留容器との間の圧力差によって起こる、請求項9に記載のプロセス。

【国際調査報告】