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特表2024-545192生理学的基質アブレーション標的の予測のための、非侵襲的システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】生理学的基質アブレーション標的の予測のための、非侵襲的システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/33 20210101AFI20241128BHJP
   A61B 5/347 20210101ALI20241128BHJP
   A61B 5/349 20210101ALI20241128BHJP
   A61B 5/361 20210101ALI20241128BHJP
   A61B 5/364 20210101ALI20241128BHJP
【FI】
A61B5/33 110
A61B5/347
A61B5/349
A61B5/361
A61B5/364
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534733
(86)(22)【出願日】2022-12-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2022062028
(87)【国際公開番号】W WO2023105495
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/288,633
(32)【優先日】2021-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/078,658
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】507148294
【氏名又は名称】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】バル-オン・タル・ハイム
(72)【発明者】
【氏名】バル-タル・メイル
(72)【発明者】
【氏名】ハヤム・ガル
(72)【発明者】
【氏名】シャピラ・エイナット
(72)【発明者】
【氏名】ベンードール・アミール
(72)【発明者】
【氏名】ナンタクマル・クマラスワミー
(72)【発明者】
【氏名】マッセ・ステファヌ
(72)【発明者】
【氏名】ニリ・アハメド
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127DD04
4C127GG02
4C127GG09
4C127GG11
4C127GG18
4C127HH13
(57)【要約】
心臓内の異常な電気的伝播を非侵襲的に検出するシステム及び方法が、開示されている。本システム及び本方法(700)は、患者の心臓に印加されるペーシング信号を受信するためのインターフェースであって、ペーシング信号(710)が、(i)洞調律間隔よりも短い一連の規則的なペーシング刺激と、(ii)規則的なペーシング刺激よりも短い間隔での1つ以上の追加のペーシング(extra pacing)刺激とを含む、インターフェースと、プロセッサであって、規則的なペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価し(720)、1つ以上の追加のペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価し(740)、追加のペーシング刺激後の評価された構成要素を、規則的なペーシング刺激後の評価された構成要素と比較する(750)、プロセッサと、を含む。インターフェースは、心臓内の催不整脈性の領域及びアブレーション標的の指標として比較を出力する(760)ように、構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓内の電気的伝播の評価のためのシステムであって、前記システムは、
インターフェースであって、
患者の心臓に印加されるペーシング信号であって、前記ペーシング信号が、(i)洞調律間隔よりもわずかに速い一連の規則的なペーシング刺激と、(ii)規則的な速度の間隔よりも短い異常な間隔での1つ以上の期外刺激と、を含む、ペーシング信号と、
前記ペーシング信号に応答して、体表面ECGによって感知される、心臓信号と、を受信するように構成された、インターフェースと、
プロセッサであって、
前記規則的なペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価し、
前記規則的なペーシング刺激中に得られた前記体表面ECG構成要素の安定度を評価し、
前記期外刺激後の体表面ECG構成要素の前記包絡線を評価し、
前記期外刺激後の前記評価された構成要素を、前記規則的なペーシング刺激後の前記評価された構成要素と比較するように、構成されている、プロセッサと、を含み、
前記インターフェースは、前記患者の心臓内の減少誘発電位(DeEP)の存在の指標として前記比較を出力するように、更に構成されている、システム。
【請求項2】
前記評価された構成要素は、前記QRS包絡線の持続時間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記評価された構成要素は、体表面ECG構成要素の持続時間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記評価された構成要素は、電圧である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記評価された構成要素は、曲線下面積である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記評価された構成要素は、勾配である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記評価された構成要素は、周波数解析である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記評価された構成要素は、前記包絡線の高さである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
0~10ミリ秒の間のDeEPについての前記ECG構成要素は、アブレーション標的がないことを示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
10~50ミリ秒の間のDeEPについての前記ECG構成要素は、DeEP陽性を示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
50ミリ秒を超えるDeEPについての前記ECG構成要素は、顕著なDeEPの前記存在を示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
洞調律間隔での前記一連の規則的なペーシング刺激は、前記心臓の正常な洞調律を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記1つ以上の異常なペーシング刺激は、心室性期外収縮を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
心臓内の異常な電気的伝播を非侵襲的に検出する方法であって、前記方法は、
患者の心臓に印加されるペーシング信号を受信することであって、前記ペーシング信号が、(i)洞調律よりもわずかに速い一連の規則的なペーシング刺激と、(ii)規則的な速度の間隔よりも短い異常な間隔での1つ以上の期外刺激と、を含む、患者の心臓に印加されるペーシング信号を受信することと、
前記規則的なペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価することと、
前記規則的なペーシング刺激中に得られた前記体表面ECG構成要素の安定度を評価することと、
前記期外刺激後の体表面ECG構成要素の前記包絡線を評価することと、
前記期外刺激後の前記評価された構成要素を、前記規則的なペーシング刺激後の前記評価された構成要素と比較することと、
前記患者の心臓内の減少誘発電位(DeEP)の存在の指標として前記比較を出力することと、を含む、方法。
【請求項15】
前記評価された構成要素は、前記QRS包絡線の持続時間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記評価された構成要素は、体表面ECG構成要素の持続時間である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記評価された構成要素は、電圧である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記評価された構成要素は、曲線下面積である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記評価された構成要素は、勾配である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記評価された構成要素は、周波数解析である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記評価された構成要素は、前記包絡線の高さである、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
0~10ミリ秒の間のDeEPについての前記ECG構成要素は、アブレーション標的がないことを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
10~50ミリ秒の間のDeEPについての前記ECG構成要素は、DeEP陽性を示す、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
50ミリ秒を超えるDeEPについての前記ECG構成要素は、顕著なDeEPの前記存在を示す、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
洞調律間隔での前記一連の規則的なペーシング刺激は、前記心臓の正常な洞調律を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ以上の異常なペーシング刺激は、心室性期外収縮を含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月12日に出願された、米国仮特許出願第63/288,633号の利益を主張するものであり、当該特許文献は、あたかも本明細書に漏れなく記述されているかのように、参照により組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、電気生理学的(EP)信号に関し、具体的には、侵襲的EP処置について患者をスクリーニングするために利用され得る、心臓内の異常な電気的伝播を非侵襲的に検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
減少誘発電位(DeEP)は、心室頻脈(VT)を誘発する必要なく、VT基質アブレーション標的を特定するために使用される。これらの電位は、侵襲的心臓内マッピングプロトコルによって特定される。侵襲的処置の前に、どの患者が、このような生理学的マッピングプロトコルにとって理想的であるかを予測することは、実用的な利益である。処置前又は処置中に、12誘導ECG(心電図)におけるDeEPのより高い確率を予測するための非侵襲的ツールは存在せず、アブレーションを行う電気生理学者にとって有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
心臓内の電気的伝播の評価のための方法が、開示されている。本方法は、患者の心臓に印加されるペーシング信号を受信することであって、ペーシング信号は、(i)洞調律間隔よりもわずかに狭い間隔での一連の規則的なペーシング刺激(S1ペース)と、(ii)規則的なペーシング間隔よりも短い間隔での1つ以上の期外刺激である早期ペーシング刺激(S2、S3などの、ペース)と、を含む、患者の心臓に印加されるペーシング信号を受信することと、規則的なペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価することと、期外刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価することと、期外刺激後の評価された構成要素を、規則的なペーシング刺激後の評価された構成要素と比較することと、患者の心臓内の減少誘発電位(decrement-evoked potential、DeEP)の存在の指標として比較を出力することと、を含む。
【0005】
心臓内の異常な電気的伝播を非侵襲的に検出するシステムが、開示されている。本システムは、例えば、自動植込み型電気除細動器(Automatic Intracardiac Cardioverter-Defibrillator、AICD)又はペースメーカなどの、既存の植込み型デバイスを用いて、患者の心臓に印加されるペーシング信号を受信するように構成された、インターフェースを含み、ペーシング信号は、(i)洞調律間隔よりもわずかに狭い間隔での一連の規則的なペーシング刺激(S1ペース)と、(ii)規則的なペーシング間隔よりも短い間隔での1つ以上の期外刺激である早発性ペーシング刺激(S2、S3などの、ペース)と、ペーシング信号に応答して、体表面ECGによって感知される、心臓信号と、を含む。本システムは、規則的なペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価し、期外刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価し、期外刺激後の評価された構成要素を規則的なペーシング刺激後の評価構成要素と比較するように構成されたプロセッサを含む。インターフェースは、患者の心臓内のDeEPの存在の指標として比較を出力するように、更に構成されている。
【0006】
本システム及び本方法は、体表面ECG構成要素特性、例えば、QRS包絡線の持続時間、電圧、曲線下面積、勾配、周波数解析、及び包絡線の高さの測定を含む、少なくとも1種のシステム構成要素を含む。本システム及び本方法は、アブレーション標的がないことを示す0~10ミリ秒のQRS包絡線持続時間と、DeEP陽性を示す10~50ミリ秒のQRS包絡線持続時間と、顕著なDeEPの存在を示す50ミリ秒を超えるQRS包絡線持続時間と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
図1】一実施形態による、多チャンネル心電図(ECG)信号測定システムの略図である。
図2】例示的な実施形態による、心臓内の減少誘発電位(DeEP)を有する患者を示す複数の体表面ECG信号の一実施例を示す。
図3図3A図3B、及び図3Cとして集合的に示される、例示的な実施形態による、DeEPの存在を示す症例に関連付けられたQRS拡幅を有する、複数の体表面ECG信号の実施例を提供する。
図4】一実施形態による、DeEPの存在について体表面ECGを自動的に評価する方法を示す。
図5】ペーシングが冠状静脈洞から実行される場合の、患者の複数の体表面ECG信号の実施例を示す。
図6】ペーシングが右心室尖部から実行される場合の、図5の患者についての複数の体表面ECG信号の実施例を示す。
図7】異なる位置からのペーシングを使用して、DeEPの存在について体表面ECGを自動的に評価する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
心室頻脈(Ventricular Tachycardia、VT)又は心房頻脈などの心臓頻脈は、心腔内の異常な電気信号によって引き起こされる、心拍律動障害(不整脈)である。例えば、VTは、心臓の下部チャンバ(心室)内の異常な電気信号によって、引き起こされる場合がある。VTは、瘢痕組織などの心室組織における局所電気生理学的(EP)伝導欠陥によって、引き起こされる場合がある。例えば、アブレーションによって、このような不整脈発生部位を発見して治療するために、心室は、VTを引き起こしている可能性のある異常な組織位置(例えば、DeEPを示す位置)を特定するために、ペーシングされ、また体表面ECG及び/又は心臓内カテーテルを使用して、EPマッピングされてもよい。
【0009】
特に、EPマッピングは、催不整脈性チャネル及び催不整脈性部位を標的とする治療アプローチをサポートするために行われる場合があるが、これは、瘢痕の全域にわたって瘢痕組織をアブレーションするために有用であることがわかっている。アブレーション的治療の背後にある動機は、生じた瘢痕内で生存する、連結が不十分な心室組織繊維を標的とすることである。これらの束は、VTの原因であると考えられている遅い伝導(瘢痕峡部)を呈するEP経路を生成すると考えられている。
【0010】
頻脈に至る経路と回路のEPマッピングを行うために、1つのシナリオでは、EP検査中に、頻脈が開始され得る。しかしながら、VTは、多くの場合、非誘導性又は血液力学的に不安定であり、したがって、多くの場合、基質マッピングが必要である。基質マッピングでは、洞調律又は心室ペーシングにおける組織の特性は、組織の不整脈原性に関連している。
【0011】
DeEPマッピングは、基質マッピング技術である。本方法の基礎は、減少期外刺激を伴う減少伝導を示す心室組織が、異常なVT回路により特異的であるように思われるということである。DeEP情報は、典型的には、心室のEPマップ上に重ね合わされたDeEPデータ層として提示される。
【0012】
開示された技術において、心室は、洞調律よりもわずかに速い規則的な脈拍の短いシーケンスでペーシングされる。短いシーケンスは、より短い脈拍間間隔を有する1つ以上の脈拍(典型的には、最大3つ)で終了する。一般的な表記法は、これを、S1ペースのトレイン(常にではないが、通常600ミリ秒サイクル長を有する)と、それに続く、新しい活動電位が通常は開始できない期間(一般に不応期と称される)の直後(例えば、20ミリ秒後)に送達される1つ以上の減少期外刺激(S2、S3など)を有するペーシングとして定義し、それによって、異常な組織で探索されている不整脈原性応答を刺激する。
【0013】
本明細書では、「洞調律よりも速い規則的な脈拍(regular pulses faster than sinus rhythm)」という表現は、事前定義された変動幅まで等距離にある脈拍に及ぶ。例えば、間隔600±6ミリ秒の脈拍のシーケンスが、定義に含まれる。より一般的には、任意の所与の等距離間隔(例えば600ミリ秒より遅い又は速い、例えば、500ミリ秒及び700ミリ秒)の脈拍が、事前定義された変動幅まで連続したものを、本明細書では、以後、「洞調律よりも速い規則的な脈拍」とみなす。典型的には、事前定義された変動幅は、指定された等距離間隔の1%の水準に制限される。それぞれの減少期外刺激は、上記の等距離間隔に関して定義される。例えば、規則的なペーシングの脈拍が600ミリ秒の周期で行われる場合、1つ以上の短い間隔のペーシング刺激は、規則的な速度の刺激に続いて、400ミリ秒間隔で適用され得る。「脈拍(pulses)」及び「刺激(stimuli)」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0014】
上記のシーケンスは、催不整脈性組織におけるDeEPsを呼び出すための、早期拍動(心室性心室収縮、PVC(Premature Ventricle Contraction))をシミュレートする。一般に、早期拍動は、比較的、一般的なものである。早期拍動の結果としてより遅い伝導を示す組織のように、早期拍動が催不整脈性組織に遭遇する場合のみ、異常なVT回路が開始され得、維持され得る。
【0015】
規則的な洞調律ペーシング脈拍に応答して、誘発電位は、刺激後の正常な時間遅延で、それぞれ1つ発生する。ペーシング脈拍とその結果として生じる誘発電位との間のこの正常な遅延は、本明細書では、以後、「第1の時間遅延(first time delay)」と称される。EPマッピング方法のこの部分は、正常な組織を特徴付けるために十分である。
【0016】
期外刺激に応答して、誘発電位は、(第1の時間遅延に対して)波速が低下するにつれて、遅延する場合がある。意味のある相対遅延(例えば、10ミリ秒超)が存在する領域は、異常なVT回路に特化したものと考えられる。発生する場合、対応する期外刺激ペーシング脈拍に対する、これらの誘発電位の第1の時間遅延よりも大幅な遅延は、本明細書では、以後、「第2の時間遅延(second time delay)」と称される。心臓の表面上に存在するこの遅延は、体表面ECG上で、例えば、QRS拡幅の形態で測定され得る。
【0017】
プロセッサは、得られた体表面ECG信号を分析して、DeEPの存在を予測する。いくつかの実施形態では、プロセッサは、以下の工程を実行する。規則的なペース(S1)を生成し、次に、DeEPを潜在的に引き起こす1つ以上の期外刺激を生成する工程と、S1に対する体表面ECG応答を抽出し、律動安定度を確認するために、これらの応答を、互いに相関させる工程と、本明細書では、以後、S1 QRS構成要素と称される、最後のS1ペースに対するECG応答を抽出し、本明細書では、以後、S2 QRS構成要素と称される、最初の期外刺激(S2ペース)に対するECG応答を抽出する。S1 QRS構成要素及びS2 QRS構成要素の幅を計算する工程と、S2 QRS構成要素の幅をS1 QRS構成要素の幅と比較して、DeEPの存在を示す工程。
【0018】
より一般的には、プロセッサは、機械学習を使用することによってなど、当該技術分野で周知の任意のその他の方法によって相関の程度を推定し、スコアリングを定義して、最高スコアリングとの相関を発見し得る。例えば、スコアリングは、L1などの事前指定されたメトリックに基づいてもよい。
【0019】
典型的には、プロセッサは、プロセッサが、上で概略されるプロセッサ関連工程及び機能のそれぞれを実施することを可能にする特定のアルゴリズムを含むソフトウェアに、プログラム化されている。
【0020】
VTを誘発する局所的な心臓(例えば心室)組織位置の存在を評価するために、自動化DeEP予測アルゴリズムを適用することによって、開示された非侵襲的心臓診断法は、診断カテーテル処置の安全性及び価値を、向上させる場合がある。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態による、多チャンネル心電図(ECG)信号測定システム10の略図を示す。
【0022】
簡潔性及び明瞭性のために、以下の説明は、特に記述のない限り、システム10が、被験者26の心臓34から身体表面上の電気信号を感知する、調査手順を想定する。
【0023】
身体表面上の電気信号を感知するために、電極30A、電極30B、電極30C、...は、それぞれのリード線31A、リード線31B、リード線31C、...によって、被験者26の皮膚に取り付けられる。本開示では、電極30A、電極30B、電極30C、...は、これらを総称して電極30と称され、リード線31A、リード線31B、リード線31C、...は、これらを総称してリード線31と称される。身体表面上の電気信号のみが測定される典型的ECG手順では、標準位置において(右腕、左腕、右脚、左脚)、被験者26の皮膚に取り付けられた10個の電極30、並びに心臓34の区域内の6個の電極がある。図1では、4個の電極30A、電極30B、電極30C、及び電極30Dが図示されているが、それぞれが、被験者26の右脚、左脚、右腕、及び左腕に取り付けられると想定される。明確化のために、上に示した典型的なECG手順については、心臓34の領域内で取り付けられた6個の電極のうち2個の電極30E及び電極30Jのみが、図1に示されている。しかしながら、いくつかのECG手順では、10個を超える、又は10個よりも少ない電極30があってもよく、本発明の実施形態については、電極30の数に対する制限はない。各電極30が、システム10のそれぞれのチャンネルを画定していることが理解されよう。
【0024】
システム10は、システムプロセッサ40によって制御されてもよく、システムプロセッサ40は、メモリ44と通信する演算処理装置42を含む。プロセッサ40は、通常、制御卓46内に載置されており、制御卓46は、典型的には、マウス又はトラックボールなどのポインティングデバイス39を有する操作制御部38を含み、専門家28は、この操作制御部38を使用して、プロセッサと対話する。プロセッサは、メモリ44内に格納される、ECGモジュール36を含めた、ソフトウェアを使用して、システム10を動作させる。プロセッサ40によって実行される操作の結果は、ディスプレイ48上で専門家に提示されるが、このディスプレイ48は、典型的には、ユーザに対するグラフィック・ユーザ・インターフェース、電極30によって感知されるECG信号の視覚的表現、及び/又は調査されている間の心臓34の画像若しくはマップを提示する。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、プロセッサ40に電子形態でダウンロードされてもよく、代替的に若しくは追加的に、ソフトウェアは、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的な有形媒体で提供されてもよい、及び/又は保存されてもよい。
【0025】
ECGモジュール36は、電極30からの電気信号を受信するよう連結されている。モジュールは、信号を解析するように構成されており、ディスプレイ48上に、標準的なECG形式で、典型的には、時間と共に変動するグラフ式表現で、解析の結果を提示してもよい。モジュール36の構造及び動作は、図2図4に関して、以下により詳細に説明される。
【0026】
図1に示す例示的な図示は、単に概念を明確にするために選択されたものである。その他のタイプの、電気生理学的感知カテーテルの幾何学形状が用いられてもよい。
【0027】
非侵襲的測定技術である体表面ECGを利用することによって、本システム及び本方法は、侵襲的処置が行われる前に心室内にDeEPが存在するかどうかを医師が知る方法を提供し、医師が、侵襲的DeEP処置の必要性を予測することを可能にする。医師は、多くの危急的な患者をスクリーニングし得、それによって、心臓内手技が利用される前に、患者のより良好なスクリーニングを可能にする。
【0028】
図2は、例示的な実施形態による、心臓内DeEPを有する患者を示す、複数の体表面ECG信号200の実施例を示す。体表面ECG信号は、個々の電極信号を含み、当業者によって理解されるように、本明細書において集合的に説明されている。図示されるように、S1ペース210が周期的に提供され(S1ペース信号210.1、210.2、210.3として図2に示され、集合的にS1ペース210と称される)、体表面ECG信号220が測定される。本説明は、S1ペース210を特定するが、正常な洞調律が使用されてもよい。体表面ECG信号220から、QRS包絡線などのS1体表面ECG構成要素230が測定される。
【0029】
S2期外刺激240が提供され、体表面ECG信号220が測定される。本説明は、S2期外刺激240を特定するが、心室性期外収縮(Premature Ventricular Contraction、PVC)が、使用されてもよい。体表面ECG信号220から、QRS包絡線などのS2体表面ECG構成要素250が測定される。
【0030】
例えば、QRSなどの体表面ECG構成要素230(S1の場合)、250(S2の場合)の包絡線は、S1ペース210及びS2期外刺激240の両方について評価される。QRS包絡線230(S1の場合、250(S2の場合)などの、体表面ECG構成要素の包絡線のパラメータが比較されてもよい。これらのパラメータはまた、例えば、持続時間、電圧、曲線下面積、勾配、周波数解析、及び包絡線の高さを含んでもよい。パラメータの比較を使用して、パラメータ比較のうちの少なくとも1つを検査することによって、本システム及び本方法は、心室頻脈(VT)に対する生理学的基質アブレーション標的の存在を予測する。典型的には、臨床的に有意であるために、パラメータの比較における差異は、数単位を十分に上回るべきである。
【0031】
例として、体表面ECG予測は、S2 QRS包絡線250などのS2のECG包絡線の幅から、S1 QRS包絡線230などのS1のECG包絡線の幅を減算することによって計算され得る。例として、特定の閾値を上回る(例えば、20ミリ秒を上回る)包絡線幅のECG QRS拡幅は、DeEP標的の存在を示す。本システム及び本方法は、心室頻脈(VT)の生理学的基質アブレーション標的を予測する。
【0032】
理解されるように、複数のS1応答の安定度のチェックもまた、計算されてもよい。体表面ECG信号220は、S1ペース210のそれぞれの後(210.1、210.2、210.3として示される、個々のS1ペースの後など)に測定される。体表面ECG信号220から、QRS包絡線230などのS1体表面ECG構成要素が測定される。(210.1、210.2、210.3として示される、個々のS1ペースの後などの)S1ペース210から生じる包絡線のパラメータが比較されてもよい。この比較は、S1応答の安定度を提供し得る。比較の標準偏差が所与の閾値未満である場合、応答のタイミングは、明確かつ有用であると考えられる。閾値は、例えば、臨床医によって設定されてもよい。閾値は、拍動が類似しているかどうかを決定するためのガイドであり、拍動に対する特異点などの測定の安定度を示す。一実施例では、安定した構成を特定するために、0.85の閾値が使用されてもよい。理解されるように、0.85は例示的であり、08.、0.75、0.9、又はそれを上回るものなどの、その他の安定度測定値は、測定のための安定構成を示し得る。閾値はまた、所与の測定中に所望される安定度を満たすように、臨床医によって変更されてもよい。3つのS1応答の平均などのS1応答の平均、又は最新のS1応答が、QRS拡幅又はその他のパラメータの後続の計算において使用されてもよい。
【0033】
図3は、図3A図3B、及び図3Cとして集合的に示される、例示的な実施形態による、DeEPの存在を示す症例に関連付けられたQRS拡幅を有する、複数の体表面ECG信号の実施例を提供する。図2のように、信号は、S1ペーシング210及びS2期外刺激240を使用して、体表面ECG220によって測定される。この場合も、体表面ECG信号は、個々の電極信号を含み、当業者によって理解されるように、本明細書において集合的に説明されている。図3Cは、表面QRS拡幅(y軸)と3つのDeEP分類との間の関係を示す。
【0034】
図3Aを参照すると、S1 310ペーシング構成及びS2 340ペーシング構成の両方に対する体表面信号300が示されている。QRS包絡線の表面幅を目的のパラメータとして使用すると、S1ペーシング信号310後の表面幅は152ミリ秒として示され、S2期外刺激340後の表面幅は150ミリ秒として示される。図3Aに示されるこのシナリオでは、差異は、事実上0ミリ秒であり、アブレーション標的が存在しないことを示す。
【0035】
図3Bを参照すると、S1 310ペーシング構成及びS2 340ペーシング構成の両方に対する体表面信号360が、示されている。図3Aのように、QRS包絡線の表面幅を目的のパラメータとして使用すると、S1ペーシング信号310後の表面幅は168ミリ秒として示され、S2期外刺激340後の表面幅は195ミリ秒として示されている。図3Bに示されるこのシナリオでは、差異は、事実上30ミリ秒であり、顕著なDeEPが存在することを示す。
【0036】
図3Cを参照すると、表面QRS拡幅(y軸)と3つのDeEP分類カテゴリとの間の関係のプロット375が示されている。0~10ミリ秒の間のDeEPを有する「アブレーション標的なし(No ablation targets)」380の第1のカテゴリが示されている。「DeEP陽性(DeEP positive)」390の第2のカテゴリは、10ミリ秒と50ミリ秒との間のDeEPを有するように示されている。50ミリ秒より高いDeEPを有する「顕著なDeEP(Prominent DeEP)」395の第3のカテゴリが示されている。
【0037】
図4は、一実施形態による、心臓内の異常な電気的伝播を非侵襲的に検出する方法400の基本工程を示す。
【0038】
方法400は、工程410において、患者の心臓に印加されるペーシング信号を受信することを含む。ペーシング信号は、(i)洞調律よりもわずかに速い一連の規則的なペーシング刺激と、(ii)規則的な速度の間隔よりも短い異常な間隔での1つ以上の異常なペーシング刺激と、を含む。
【0039】
工程420において、方法400は、規則的なペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価することを含む。評価された構成要素は、例えば、QRS包絡線の持続時間、体表面ECG構成要素の持続時間、電圧、曲線下面積、勾配、周波数解析、及び/又は包絡線の高さである。
【0040】
工程430において、方法400は、規則的なペーシング刺激中に得られた体表面ECG構成要素の安定度を評価することを含む。
【0041】
工程440において、方法400は、異常なペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価することを含む。一実施例では、評価された構成要素は、工程420において評価された構成要素と同一である。評価された構成要素は、例えば、QRS包絡線の持続時間、体表面ECG構成要素の持続時間、電圧、曲線下面積、勾配、周波数解析、及び/又は包絡線の高さである。
【0042】
工程450において、方法400は、異常なペーシング刺激後の評価された構成要素を、規則的なペーシング刺激後の評価された構成要素と比較することを含む。例えば、2つの信号のQRS信号の幅の差異である。
【0043】
工程460において、方法400は、患者の心臓内のDeEPの存在の指標として比較を出力することを含む。
【0044】
本システム及び本方法は、アブレーション手技の前に、12誘導ECGに基づいて、基質アブレーション標的を有する患者の検出を提供する。更に、この予測ルールは、催不整脈性電位との関連に基づいて、VTの症状発現をしていない外来患者が、VTを発症しやすい可能性があることを予測することができる。この概念は、より大きなデータセットにおいて検証されるべきであり、人工知能アルゴリズムを有する表面ECG包絡線を使用する訓練及び試験にとって理想的である。
【0045】
図4に示す例示的なフローチャートは、純粋に概念を明確にする目的で選択されたものである。本実施形態はまた、アルゴリズムの追加的な工程も含み得る。本工程及びその他の可能な工程は、より単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書における開示内容から意図的に省略されている。
【0046】
ペーシングは、異なる位置から生じてもよい、及び/又はペーシング信号の位置は変動されてもよい。図5及び図6は、ペーシングが異なる位置から実行される場合の、12誘導BS ECGの構成の結果を示す。例として、所与の患者について、ペーシング信号の複数の位置が、信号(測定値)を記録する際に使用されてもよい。例えば、図5では、ペーシングは冠状静脈洞から提供され、結果として記録された体表面ECG信号が得られ、図6では、ペーシングは右心室尖部から提供され、結果として記録された体表面ECG信号が得られる。図5及び図6のそれぞれにおいて、QRS包絡線の特性、又はQRS包絡線が変化する程度は、同じ患者の場合であっても異なり得る。
【0047】
図5は、ペーシングが冠状静脈洞から実行される場合の、患者の複数の体表面ECG信号500の実施例を示す。図5には、2つの拍動にわたって繰り返される、QRS包絡線の特性が示されている。この場合も、体表面ECG信号は、個々の電極信号を含み、当業者によって理解されるように、本明細書において集合的に説明されている。このQRS包絡線は、上述したように、S1及びS2を含む。例えば、QRSなどのS1及びS2に対する体表面ECG構成要素の包絡線は、説明したように、S1ペース及びS2期外刺激の両方に対して評価される。QRS包絡線S1、S2などの体表面ECG構成要素の包絡線のパラメータを比較してもよい。S1 310ペーシング構成及びS2 340ペーシング構成の両方についての体表面信号500が示されている。上述したように、QRS包絡線の表面幅を目的のパラメータとして使用して、S1ペーシング信号310後の表面幅を測定してもよく、S2期外刺激340後の表面幅を測定してもよい。このシナリオでは、差異は、アブレーション標的が存在するかどうかを決定するために、説明されるように比較されてもよい。
【0048】
図6は、ペーシングが右心室尖部から実行される場合の、図5の患者の複数の体表面ECG信号600の実施例を示す。この場合も、体表面ECG信号は、個々の電極信号を含み、当業者によって理解されるように、本明細書において集合的に説明されている。図6には、2つの拍動にわたって繰り返される、QRS包絡線の特性が示されている。このQRS包絡線は、上述したように、S1及びS2を含む。例えば、QRSなどのS1及びS2に対する体表面ECG構成要素の包絡線は、説明したように、S1ペース及びS2期外刺激の両方に対して評価される。QRS包絡線S1、S2などの体表面ECG構成要素の包絡線のパラメータを比較してもよい。体表面信号600は、S1ペーシング構成及びS2ペーシング構成の両方に関する。上述したように、QRS包絡線の表面幅を目的のパラメータとして使用して、S1ペーシング信号後の表面幅を測定してもよく、S2期外刺激後の表面幅を測定してもよい。このシナリオでは、差異は、アブレーション標的が存在するかどうかを決定するために、説明されるように比較されてもよい。
【0049】
図7は、異なる位置からのペーシングを使用して、DeEPの存在について体表面ECGを自動的に評価する方法700を示す。図4に関して上述した方法と同様に、方法700は、工程710において、異なる位置で患者の心臓に印加されるペーシング信号を受信することを含む。ペーシング信号は、(i)洞調律よりもわずかに速い一連の規則的なペーシング刺激と、(ii)規則的な速度の間隔よりも短い異常な間隔での1つ以上の異常なペーシング刺激と、を含む。ペーシング信号は、患者の心臓の周りの異なる位置において提供されてもよい。
【0050】
工程720において、方法700は、規則的なペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価することを含む。評価された構成要素は、例えば、QRS包絡線の持続時間、体表面ECG構成要素の持続時間、電圧、曲線下面積、勾配、周波数解析、及び/又は包絡線の高さである。
【0051】
工程730において、方法700は、規則的なペーシング刺激中に得られた体表面ECG構成要素の安定度を評価することを含む。
【0052】
工程740において、方法700は、異常なペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価することを含む。一実施例では、評価された構成要素は、工程720において評価された構成要素と同一である。評価された構成要素は、例えば、QRS包絡線の持続時間、体表面ECG構成要素の持続時間、電圧、曲線下面積、勾配、周波数解析、及び/又は包絡線の高さである。
【0053】
工程750において、方法700は、異常なペーシング刺激後の評価された構成要素を、規則的ペーシング刺激後の評価された構成要素と比較することを含む。例えば、2つの信号のQRS信号の幅の差異である。
【0054】
方法700は、異なるペーシング信号の存在下で、2つの信号のQRS信号の幅の差異を更に測定するために、追加のペーシング位置に対して繰り返されてもよい。
【0055】
工程760において、方法700は、異なるペーシング位置について測定されたQRS信号に基づいて、患者の心臓内のDeEPの存在に対する指標として比較を出力することを含む。
【0056】
本システム及び本方法は、アブレーション手技の前に、12誘導ECGに基づいて、基質アブレーション標的を有する患者の検出を提供する。更に、この予測ルールは、催不整脈性電位との関連に基づいて、VTの症状発現をしていない外来患者が、VTを発症しやすい可能性があることを予測することができる。この概念は、より大きなデータセットにおいて検証されるべきであり、人工知能アルゴリズムを有する表面ECG包絡線を使用する訓練及び試験にとって、理想的である。
【0057】
図7に示す例示的なフローチャートは、純粋に概念を明確にする目的で選択されたものである。本実施形態はまた、アルゴリズムの追加的な工程も含み得る。本工程及びその他の可能な工程は、より単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書における開示内容から、意図的に省略されている。
【0058】
本明細書に記載された実施形態は、主として、心臓診断用途に対処するものであるが、本明細書に記載された方法及びシステムはまた、その他の医療用途においても使用され得る。
【0059】
上記の実施形態は例として引用したものであり、本発明は、上記で特に図示及び説明されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に説明される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形形態及び修正例を含むものである。
【0060】
〔実施の態様〕
(1) 心臓内の異常な電気的伝播を非侵襲的に検出する方法であって、前記方法は、
患者の心臓に印加されるペーシング信号を受信することであって、前記ペーシング信号が、(i)洞調律よりもわずかに速い一連の規則的なペーシング刺激と、(ii)規則的な速度の間隔よりも短い異常な間隔での1つ以上の期外刺激と、を含む、患者の心臓に印加されるペーシング信号を受信することと、
前記規則的なペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価することと、
前記規則的なペーシング刺激中に得られた前記体表面ECG構成要素の安定度を評価することと、
前記期外刺激後の体表面ECG構成要素の前記包絡線を評価することと、
前記期外刺激後の前記評価された構成要素を、前記規則的なペーシング刺激後の前記評価された構成要素と比較することと、
前記患者の心臓内の減少誘発電位(decrement-evoked potentials)(DeEP)の存在の指標として前記比較を出力することと、を含む、方法。
(2) 前記評価された構成要素は、前記QRS包絡線の持続時間である、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記評価された構成要素は、体表面ECG構成要素の持続時間である、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記評価された構成要素は、電圧である、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記評価された構成要素は、曲線下面積である、実施態様1に記載の方法。
【0061】
(6) 前記評価された構成要素は、勾配である、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記評価された構成要素は、周波数解析である、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記評価された構成要素は、前記包絡線の高さである、実施態様1に記載の方法。
(9) 0~10ミリ秒の間のDeEPについての前記ECG構成要素は、アブレーション標的がないことを示す、実施態様1に記載の方法。
(10) 10~50ミリ秒の間のDeEPについての前記ECG構成要素は、DeEP陽性(DeEP positive)を示す、実施態様1に記載の方法。
【0062】
(11) 50ミリ秒を超えるDeEPについての前記ECG構成要素は、顕著なDeEPの前記存在を示す、実施態様1に記載の方法。
(12) 洞調律間隔での前記一連の規則的なペーシング刺激は、前記心臓の正常な洞調律を含む、実施態様1に記載の方法。
(13) 前記1つ以上の異常なペーシング刺激は、心室性期外収縮を含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 心臓内の電気的伝播の評価のためのシステムであって、前記システムは、
インターフェースであって、
患者の心臓に印加されるペーシング信号であって、前記ペーシング信号が、(i)洞調律間隔よりもわずかに速い一連の規則的なペーシング刺激と、(ii)規則的な速度の間隔よりも短い異常な間隔での1つ以上の期外刺激と、を含む、ペーシング信号と、
前記ペーシング信号に応答して、体表面ECGによって感知される、心臓信号と、を受信するように構成された、インターフェースと、
プロセッサであって、
前記規則的なペーシング刺激後の体表面ECG構成要素の包絡線を評価し、
前記規則的なペーシング刺激中に得られた前記体表面ECG構成要素の安定度を評価し、
前記期外刺激後の体表面ECG構成要素の前記包絡線を評価し、
前記期外刺激後の前記評価された構成要素を、前記規則的なペーシング刺激後の前記評価された構成要素と比較するように、構成されている、プロセッサと、を含み、
前記インターフェースは、前記患者の心臓内の減少誘発電位(DeEP)の存在の指標として前記比較を出力するように、更に構成されている、システム。
(15) 前記評価された構成要素は、前記QRS包絡線の持続時間である、実施態様14に記載のシステム。
【0063】
(16) 前記評価された構成要素は、体表面ECG構成要素の持続時間である、実施態様14に記載のシステム。
(17) 前記評価された構成要素は、電圧である、実施態様14に記載のシステム。
(18) 前記評価された構成要素は、曲線下面積である、実施態様14に記載のシステム。
(19) 前記評価された構成要素は、勾配である、実施態様14に記載のシステム。
(20) 前記評価された構成要素は、周波数解析である、実施態様14に記載のシステム。
【0064】
(21) 前記評価された構成要素は、前記包絡線の高さである、実施態様14に記載のシステム。
(22) 0~10ミリ秒の間のDeEPについての前記ECG構成要素は、アブレーション標的がないことを示す、実施態様14に記載のシステム。
(23) 10~50ミリ秒の間のDeEPについての前記ECG構成要素は、DeEP陽性を示す、実施態様14に記載のシステム。
(24) 50ミリ秒を超えるDeEPについての前記ECG構成要素は、顕著なDeEPの前記存在を示す、実施態様14に記載のシステム。
(25) 洞調律間隔での前記一連の規則的なペーシング刺激は、前記心臓の正常な洞調律を含む、実施態様14に記載のシステム。
【0065】
(26) 前記1つ以上の異常なペーシング刺激は、心室性期外収縮を含む、実施態様25に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】