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特表2024-545204絶縁層を有するケーブルを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】絶縁層を有するケーブルを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/14 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H01B13/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535260
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 CN2021139003
(87)【国際公開番号】W WO2023108588
(87)【国際公開日】2023-06-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヤービン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ガオシャン
(72)【発明者】
【氏名】リー ピー シャン、コリン
(72)【発明者】
【氏名】パーソン、ティモシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ウェンシン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、カイナン
(72)【発明者】
【氏名】ジー、ジエ
【テーマコード(参考)】
5G325
【Fターム(参考)】
5G325GA01
5G325GA19
5G325GB01
5G325GC04
(57)【要約】
本開示は、方法を提供する。一実施形態では、本方法は、初期ケーブルコアを用意することを含む。初期ケーブルコアは、(i)導体と、(ii)初期絶縁層と、を含む。初期絶縁層は、(a)(1)エチレンモノマー、(2)任意選択のα-オレフィンコモノマー、及び(3)任意選択のオルガノシロキサンコモノマーから構成されるエチレン系ポリマーから構成される架橋性ポリマー組成物を含む。架橋性ポリマー組成物は、(b)ジクミルペルオキシド(DCP)と、(c)Si-H含有(AP)捕捉剤と、(d)任意選択の硬化助剤と、(e)任意選択の酸化防止剤と、を更に含む。本方法は、初期ケーブルコアを、架橋性ポリマー組成物を架橋して、架橋絶縁層を有するケーブルコアを形成するのに十分な架橋手順に供することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
前記方法が、
(i)導体と、
(ii)架橋性ポリマー組成物を含む初期絶縁層と、を含む初期ケーブルコアを用意することと、
前記初期ケーブルコアを、前記架橋性ポリマー組成物を架橋して、架橋絶縁層を有するケーブルコアを形成するのに十分な架橋手順に供することと、
を含み、
前記架橋性ポリマー組成物が、
(a)
(1)エチレンモノマー、
(2)任意選択のα-オレフィンコモノマー、
(3)任意選択のオルガノシロキサンコモノマーを含むエチレン系ポリマーと、
(b)ジクミルペルオキシド(DCP)と、
(c)Si-H含有(AP)捕捉剤と、
(d)任意選択の硬化助剤と、
(e)任意選択の酸化防止剤と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記架橋絶縁層を有するケーブルコアを周囲温度まで冷却して、架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコアを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記架橋手順が、クミルアルコール(CA)、アセトフェノン(AP)、メタン、アルファメチルスチレン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるジクミルペルオキシド分解副生成物を形成し、
前記方法が、
前記架橋絶縁層を有するケーブルコアを周囲温度まで冷却して、0.57未満のRAP/CA値を有する架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコアを形成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却ケーブルコアの前記架橋絶縁層が、前記架橋手順及び周囲温度への冷却の1分後から、架橋手順及び周囲温度への冷却の60分後までの時間において、0.57未満のRAP/CA値を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコアが、組成物(C)であり、類似の組成物(SC)が、成分(c)、すなわち前記Si-H含有(AP)捕捉剤を含有しないことを除いて(C)と同一の組成物と定義され、
組成物(C)が、RAP/CAを有し、組成物(SC)が、RAP/CA(SC)を有し、
組成物(C)が、式5
式5
AP/CAの低下%=[(RAP/CA(C)-RAP/CA(SC))/RAP/CA(SC)]×100%
によって決定される、RAP/CA(SC)よりも少なくとも2.0%大きいRAP/CAの低下を有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記冷却後に、前記架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコアを脱気することと;
前記架橋絶縁層中のアセトフェノンの量を1000ppm未満まで減少させることと、を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記Si-H含有(AP)捕捉剤が、以下の(s1)~(s20)
【化1】

及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ケーブルコアを含むケーブルであって、
前記ケーブルコアが、
(i)導体と、
(ii)架橋絶縁層と、を含み、前記架橋絶縁層が、
(a)
(1)エチレンモノマー、
(2)任意選択のα-オレフィンコモノマー、
(3)任意選択のオルガノシロキサンコモノマーを含むエチレン系ポリマーと、
(b)ジクミルペルオキシド(DCP)と、
(c)Si-H含有(AP)捕捉剤と、
(d)任意選択の硬化助剤と、
(e)任意選択の酸化防止剤と、を含む架橋性ポリマー組成物から形成されている、ケーブル。
【請求項9】
前記Si-H含有(AP)捕捉剤が、以下の(s1)~(s20)
【化2】

及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載のケーブル。
【請求項10】
前記架橋絶縁層が、
95重量%~99.9重量%のエチレンホモポリマーと、
0.1重量%~1.0重量%の前記Si-H含有(AP)捕捉剤と、を含む、請求項8又は9に記載のケーブル。
【請求項11】
0.1重量%~1.0重量%の硬化助剤を含む、請求項10に記載のケーブル。
【請求項12】
前記架橋絶縁層が、
95重量%~99.9重量%のエチレン/オルガノシロキサンコポリマーと、
0.1重量%~1.0重量%の前記Si-H含有(AP)捕捉剤と、を含む、請求項8又は9に記載のケーブル。
【請求項13】
前記ケーブルコアが、
クミルアルコール(CA)、アセトフェノン(AP)、メタン、アルファメチルスチレン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される分解副生成物を含む架橋絶縁層を含む、冷却ケーブルコアであり、
前記冷却ケーブルコアの前記架橋絶縁層が、架橋手順及び周囲温度への冷却の1分後から、架橋手順及び周囲温度への冷却の60分後までの時間において、並びに脱気手順の前において、0.57未満のRAP/CA値を有する、請求項8~12のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項14】
前記架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコアが、組成物(C)であり、
類似の組成物(SC)が、成分(c)、すなわち前記Si-H含有(AP)捕捉剤を含有しないことを除いて(C)と同一の組成物と定義され、
組成物(C)が、RAP/CA(C)を有し、組成物(SC)が、RAP/CA(SC)を有し、
組成物(C)が、RAP/CAの低下を有し、これは、式5
式5
AP/CAの低下%=[(RAP/CA(C)-RAP/CA(SC))/RAP/CA(SC)]×100%
によって決定されたときに、RAP/CA(SC)よりも少なくとも2.0%大きい、請求項13に記載のケーブル。
【請求項15】
第1の架橋ポリマー半導電層と
任意選択の第2の架橋ポリマー半導電層と、を含む、請求項7~14のいずれか一項に記載のケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
過酸化物架橋エチレン系ポリマー(crosslinked ethylene-based polymer、XLPE)は、HVAC(high voltage alternating current)(高電圧交流)及びHVDC(high voltage direct current)(高電圧直流)の両方を含む工業用送電ケーブル及び都市送電ケーブルにおける絶縁材料として広く使用されている。XLPEの直流(direct current、DC)導電率は、HVDC絶縁材料にとって重要なパラメータであり、HVDC絶縁材料において、ケーブルにわたる電界分布及び空間電荷蓄積は導電率に依存する。架橋に使用される過酸化物(例えば、ジクミルペルオキシド(dicumyl peroxide)、「DCP」)は、メタン、アセトフェノン、アルファメチルスチレン、及びクミルアルコールなどの副生成物を創出する。アセトフェノン(acetophenone、AP)の存在は、絶縁層の導電率を増加させ、HVDCケーブルに不利益をもたらす。絶縁層中のAPの量を許容可能なレベルまで減少させるため、従来のHVDCケーブル製造プロトコルは、典型的には、(i)架橋密度及び/又ははるかに長い脱気時間を犠牲にして、DCP添加量を少なくする必要がある。従来のXLPEから作製されたHVDCケーブルが脱気して、アセトフェノンを好適な低レベルまで低減するのに、典型的には、少なくとも30日を要する。しかし、架橋中のDCP添加量を少なくすることは問題である。その理由は、そうすることで、架橋密度がより低くなるために絶縁層の熱抵抗が低下し、HVDCケーブルの最大動作温度も70℃まで低下するが、HVDCのより効率的な動作温度は90℃以上である必要があるためである。
【0002】
当該技術分野では、過酸化物副生成物の生成を減少させ、電力ケーブル絶縁層中の架橋密度を増加させることができる電力ケーブル製造における方法の必要性が認識されている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、方法を提供する。一実施形態では、本方法は、初期ケーブルコアを用意することを含む。初期ケーブルコアは、(i)導体と、(ii)初期絶縁層と、を含む。初期絶縁層は、(a)(1)エチレンモノマー、(2)任意選択のα-オレフィンコモノマー、及び(3)任意選択のオルガノシロキサンコモノマーから構成されるエチレン系ポリマーから構成される架橋性ポリマー組成物を含む。架橋性ポリマー組成物は、(b)ジクミルペルオキシド(DCP)と、(c)Si-H含有(AP)捕捉剤と、(d)任意選択の硬化助剤と、(e)任意選択の酸化防止剤と、を更に含む。本方法は、初期ケーブルコアを、架橋性ポリマー組成物を架橋して、架橋絶縁層を有するケーブルコアを形成するのに十分な架橋手順に供することを含む。
【0004】
本開示は、ケーブルを提供する。一実施形態では、ケーブルは、ケーブルコアを含む。ケーブルコアは、(i)導体と、(ii)架橋絶縁層と、を含む。架橋絶縁層は、(a)(1)エチレンモノマー、(2)任意選択のα-オレフィンコモノマー、及び(3)任意選択のオルガノシロキサンコモノマーから構成されるエチレン系ポリマーから構成される架橋性ポリマー組成物から形成される。架橋性ポリマー組成物は、(b)ジクミルペルオキシド(DCP)と、(c)Si-H含有(AP)捕捉剤と、(d)任意選択の硬化助剤と、(e)任意選択の酸化防止剤と、を更に含む。
【0005】
定義
元素周期表に対する任意の言及は、CRC Press,Inc.,1990年~1991年によって出版された元素周期表に対する言及である。この表の元素群に対する言及は、群に番号を付けるための新しい表記法によるものである。
【0006】
米国特許実務の目的のために、任意の参照される特許、特許出願又は刊行物の内容は、特に定義の開示(本開示で具体的に提供されるいずれの定義とも矛盾しない範囲)及び当該技術分野における一般知識に関して、参照によりそれらの全体が組み込まれる(又はそれと等価な米国版がそのように参照により組み込まれる)。
【0007】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値から上限値までの全ての値(下限値及び上限値を含む)を含む。明示的な値(例えば、1若しくは2、又は3~5、又は6、又は7)を含有する範囲の場合、任意の2つの明示的な値の間のあらゆる部分範囲が含まれる(例えば、上記の1~7の範囲には、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などの部分範囲が含まれる)。
【0008】
反対の記載があったり、文脈から暗示的であったり、当該技術分野において慣習的であったりしない限り、全ての部及びパーセントは、重量に基づいており、全ての試験方法は、本開示の出願日の時点で現行のものである。
【0009】
「組成物」という用語は、当該組成物を構成する材料の混合物、並びに当該組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0010】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、それが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、任意の追加の成分、工程、又は手順の存在を除外することを意図するものではない。疑義を避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求される全ての組成物は、反対の記載がない限り、ポリマーであるか否かにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる他の成分、工程、又は手順をあらゆる前出の記載の範囲から除外する。「からなる」という用語は、具体的に描写も列挙もされていないあらゆる成分、工程、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に記載しない限り、列挙されたメンバーを個別に、及び任意の組み合わせで指す。単数形の使用には複数形の使用が含まれ、その逆もまた同様である。
【0011】
「エチレン系ポリマー」又は「エチレンポリマー」は、ポリマーの重量に基づいて過半量の重合エチレンを含有し、かつ任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含み得るポリマーである。エチレン系ポリマーは、典型的には、(重合性モノマーの総量に基づいて)少なくとも50モルパーセント(mol%)のエチレン由来の単位を含む。
【0012】
「炭化水素」(又は「ヒドロカルビル」「ヒドロカルビル基」)は、水素原子及び炭素原子のみを含有する化合物である。
【0013】
「ヘテロ炭化水素」(「ヘテロヒドロカルビル」又はヘテロヒドロカルビル基」)という用語及び類似の用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1個の炭素原子が、ヘテロ原子基(例えば、Si、O、N、又はP)で置換されているそれぞれの炭化水素を指す。
【0014】
「置換炭化水素」(又は「置換ヒドロカルビル」若しくは「置換ヒドロカルビル基」)という用語は、1個以上の水素原子が、独立して、ヘテロ原子基で置換されている炭化水素を指す。「置換ヘテロ炭化水素」(「置換ヘテロヒドロカルビル」又は「置換ヘテロヒドロカルビル基」)という用語及び類似の用語は、本明細書で使用される場合、1個以上の水素原子が、独立して、ヘテロ原子基で置換されているそれぞれのヘテロ炭化水素を指す。
【0015】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーである。したがって、インターポリマーという総称的な用語は、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、及び3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0016】
「オレフィン系ポリマー」又は「ポリオレフィン」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)過半のモルパーセントの重合オレフィンモノマーを含有し、かつ任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。オレフィン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレン系ポリマー及びプロピレン系ポリマーが挙げられる。代表的なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、及びこれらの様々なインターポリマーが挙げられる。
【0017】
「ポリマー」は、同じ種類のモノマーであるか異なる種類のモノマーであるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物である。したがって、ポリマーという総称的な用語は、「ホモポリマー」という用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下、1種類のモノマーのみから調製されるポリマーを指すために用いられる)、及び本明細書において以下に定義される「インターポリマー」という用語を包含する。微量の不純物、例えば触媒残留物が、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれる可能性がある。それはまた、例えば、ランダム、ブロックなどの全ての形態のコポリマーを包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」及び「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ、エチレン又はプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーとを重合することから調製される、上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製される」、特定のモノマー又はモノマーの種類に「基づく」、特定のモノマー含量を「含有する」などとして言及されるが、本文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残基を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意されたい。概して、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものとして言及される。
【0018】
「プロピレン系ポリマー」は、ポリマーの重量に基づいて過半量の重合プロピレンを含有し、かつ任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含み得るポリマーである。プロピレン系ポリマーは、典型的には、(重合性モノマーの総量に基づいて)少なくとも50モルパーセント(mol%)のプロピレン由来の単位を含む。
【0019】
試験方法
ASTM D792、方法B(g/cc又はg/cm)に従って密度を測定する。
【0020】
示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)
示差走査熱量測定(DSC)は、エチレン系(PE)ポリマーサンプル及びプロピレン系(PP)ポリマーサンプルのT、T、T、及び結晶化度を測定するために使用される。各サンプル(0.5g)を、190℃で2分間にわたって5000psiで圧縮成形してフィルムにした。約5~8mgのフィルムサンプルを秤量し、DSCパンに入れた。蓋をパンに圧着して、密閉雰囲気を確保した。別途記載されない限り、サンプルパンは、DSCセルに入れ、次いで、10℃/分の速度で、PEの場合は180℃(PPの場合は230℃)の温度まで加熱した。サンプルをこの温度で3分間保った。次いで、サンプルを10℃/分の速度で、PEの場合は-90℃(PPの場合は-60℃)まで冷却し、その温度で3分間等温に保った。次に、サンプルを、完全に溶融するまで10℃/分の速度で加熱した(第2の加熱)。別途記載されない限り、各ポリマーの融点(T)及びガラス転移温度(T)は第2の加熱曲線から決定し、結晶化温度(T)は第1の冷却曲線から決定した。T及びTのそれぞれのピーク温度を記録した。結晶化度パーセントは、第2の加熱曲線から決定した融解熱(heat of fusion、H)を、PEの場合は292J/g(PPの場合は165J/g)の理論融解熱で除し、この量に100を乗じることによって計算することができる(例えば、結晶化度%=(Hf/292J/g)×100(PEの場合))。DSC測定では、複数のTピークが観察されることが一般的であり、ここで、ポリマーのTとして最も高い温度ピークが記録される。
【0021】
ゲル浸透クロマトグラフィー
クロマトグラフィーシステムは、内部IR5赤外線検出器(IR5)を備えたPolymerChar GPC-IR(Valencia,Spain)高温GPCクロマトグラフからなった。オートサンプラーオーブンコンパートメントを摂氏160°に設定し、カラムコンパートメントを摂氏150°に設定した。カラムは、4つのAGILENT「Mixed A」30cm、20ミクロン直線状混床式カラムであった。クロマトグラフィー溶媒は、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)を含有する1,2,4-トリクロロベンゼンであった。溶媒源を、窒素スパージした。使用された注入容量は、200マイクロリットルであり、流量は、1.0ミリリットル/分であった。
【0022】
GPCカラムセットの較正を、個々の分子量の間に少なくとも10倍の間隔を有する6つの「カクテル」混合物中に準備した580~8,400,000の範囲の分子量を有する21の狭分子量分布ポリスチレン標準物質を用いて実施した。標準物質は、Agilent Technologiesから購入した。ポリスチレン標準物質を、1,000,000以上の分子量については溶媒「50ミリリットル中0.025グラム」で、1,000,000未満の分子量については溶媒「50ミリリットル中0.05グラム」で調製した。ポリスチレン標準物質を、摂氏80度で30分間穏やかに撹拌しながら溶解した。ポリスチレン標準物質のピーク分子量を、式1(EQ1)(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり):
ポリエチレン=A×(Mポリスチレン(EQ1)
(式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4315の値を有し、Bは、1.0に等しい)を使用して、ポリエチレン分子量に変換した。
【0023】
五次多項式を使用して、それぞれのポリエチレン等価較正点に当てはめた。Aに対してわずかな調整(およそ0.375~0.445)を行い、線状ホモポリマーポリエチレン標準物質が120,000Mwで得られるように、カラム分解能及びバンド拡張効果を補正した。デカン(TCB「50ミリリットル中0.04g」で調製し、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて、GPCカラムセットの総理論段数計数を行った。理論段数(式2、EQ2)及び対称性(式3、EQ3)を、200マイクロリットル注入で以下の式:
【0024】
【数1】

(式中、RVは、ミリリットル単位での保持容量であり、ピーク幅は、ミリリットル単位でのものであり、ピーク最大値は、ピークの最大高さであり、1/2高さは、ピーク最大値の高さの1/2である)、及び
【0025】
【数2】

(式中、RVは、ミリリットル単位での保持容量であり、ピーク幅は、ミリリットル単位でのものであり、ピーク最大値は、ピークの最大位置であり、1/10高さはピーク最大値の高さの1/10であり、後方ピークは、ピーク最大値よりも後の保持容量でのピークテールを指し、前方ピークは、ピーク最大値よりも前の保持容量でのピークフロントを指す)に従って測定した。クロマトグラフィーシステムの理論段数は、18,000超になるべきであり、対称性は、0.98~1.22となるべきである。
【0026】
サンプルを、PolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動様式で調製し、サンプルを2mg/mLで重量標的化し、溶媒(200ppmのBHTを含有)を、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付バイアルに添加した。サンプルを、「低速」振盪下で、摂氏160度で2時間溶解した。
【0027】
Mn(GPC)、Mw(GPC)、及びMz(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、各等間隔のデータ収集点(i)におけるベースラインを減じたIRクロマトグラム、及び式1の点(i)についての狭い標準較正曲線から得られたポリエチレン等価分子量を使用した、式4~6に従った、PolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用したGPC結果に基づいた。式4~6(EQ4~EQ6)は、以下のとおりである:
【0028】
【数3】
【0029】
経時的な偏差をモニタリングするために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して、各サンプルに流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(flowrate marker、FM)を使用して、サンプル内のそれぞれのデカンピークのRV(RV(FMサンプル))を狭い標準較正内のデカンピークのRV(RV(FM較正済み))と整合させることによって、各サンプルのポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に補正した。次いで、デカンマーカーピークの時間の任意の変化を、ラン全体の流量(流量(有効))の線形シフトに関連していると仮定した。流速マーカー(flow marker)ピークのRV測定の最高精度を容易にするために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流速マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に当てはめた。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置について解いた。流速マーカーピークに基づいてシステムを較正した後、有効流量(狭い標準較正に関する)を、式7:流量(有効)=流量(見かけ)×(RV(FM較正済み)/RV(FMサンプル))(式7)として計算した。流速マーカーピークの処理を、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを介して行った。許容可能な流量補正は、有効流量を見かけの流量の±0.7%以内とするようなものである。
【0030】
MDR試験は、ASTM D5289-12,Standard Test Method for Rubber Property--Vulcanization Using Rotorless Cure Metersに従ってトルクの変化をモニタリングしながら、180℃で20分間、MDR2000(Alpha Technologies)で行った。最小の測定トルク値を、デシニュートンメートル(deciNewton-meter、dN-m)で表される「ML」として示す。硬化又は架橋が進行するにつれて、測定トルク値が増加し、最終的に最大トルク値に達する。最大又は最高の測定トルク値を、dN-mで表される「MH」として示す。全ての他の条件が等しい場合、MHトルク値が大きいほど、架橋の程度が大きくなる。T90架橋時間を、MHからMLを減じた差(MH-ML)の90%、すなわちMLからMHまでの距離の90%に等しいトルク値を達成するのに必要な時間(分)として決定する。T90架橋時間が短いほど、すなわちトルク値がMLからMHまでの距離の90%になるのが早いほど、試験サンプルの硬化速度は速くなる。逆に、T90架橋時間が長いほど、すなわち、トルク値がMLからMHまでの距離の90%になるのにかかる時間が多いほど、試験サンプルの硬化速度は遅くなる。
【0031】
メルトインデックス
エチレン系ポリマーのメルトインデックス(又は「I2」)は、ASTM D-1238、条件190℃/2.16kgに従って測定される(メルトインデックス(I10)は、190℃/10.0kg)。I10/I2を、I10のI2に対する比から計算した。プロピレン系ポリマーのメルトフローレートMFRは、ASTM D-1238、条件230℃/2.16kgに従って測定される。
【0032】
ターポリマーの核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)特性評価
13C NMR実験のために、サンプルを、10mmのNMRチューブ中で、テトラクロロエタン-d(0.025MのCr(acac)を含むか又は含まない)に溶解した。濃度は、およそ300mg/2.8mLであった。次いで、各チューブを110℃に設定した加熱ブロック内で加熱した。サンプルチューブを繰り返しボルテックスし、加熱して、均質な流動流体を得た。13C NMRスペクトルを、10mm C/H DUALクライオプローブを備えたBRUKER AVANCE 600MHz分光計で得た。以下の取得パラメータを使用した:60秒の緩和時間、12.0μsの90度パルス、256回のスキャン。スペクトル中心は100ppmであり、スペクトル幅は250ppmであった。全ての測定は、110℃でサンプルを回転させずに行った。13C NMRスペクトルは、溶媒の共鳴ピークについて「74.5ppm」を基準とした。Crを含むサンプルの場合は、「7秒の緩和時間」及び1024回のスキャンでデータを取得した。
【0033】
H NMR実験のために、各サンプルを、8mmのNMRチューブ中で、テトラクロロエタン-d(0.001MのCr(acac)を含むか又は含まない)に溶解した。濃度はおよそ100mg/1.8mLであった。次いで、各チューブを110℃に設定した加熱ブロック内で加熱した。サンプルチューブを繰り返しボルテックスし、加熱して、均質な流動流体を得た。H NMRスペクトルを、10mm C/H DUALクライオプローブを備えたBRUKER AVANCE 600MHz分光計で得た。標準的な単一パルスH NMR実験を行った。以下の取得パラメータを使用した:70秒の緩和時間、17.2μsの90度パルス、32回のスキャン。スペクトル中心は1.3ppmであり、スペクトル幅は20ppmであった。全ての測定は、110℃でサンプルを回転させずに行った。H NMRスペクトルは、溶媒(残留プロトン化テトラクロロエタン)の共鳴ピークについて「5.99ppm」を基準とした。Crを含むサンプルの場合は、「16秒の緩和時間」及び128回のスキャンでデータを取得した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、方法を提供する。一実施形態では、本方法は、初期ケーブルコアを用意することを含む。初期ケーブルコアは、(i)導体と、(ii)初期絶縁層と、を含む。初期絶縁層は、(a)(1)エチレンモノマー、(2)任意選択のα-オレフィンコモノマー、及び(3)任意選択のオルガノシロキサンコモノマーから構成されるエチレン系ポリマーから構成される架橋性ポリマー組成物を含む。架橋ポリマー組成物は、(b)ジクミルペルオキシド(DCP)と、(c)Si-H含有アセトフェノン(AP)捕捉剤と、(d)任意選択の硬化助剤と、(e)任意選択の酸化防止剤と、を更に含む。本方法は、初期ケーブルコアを、架橋性ポリマー組成物を架橋して、架橋絶縁層を有するケーブルコアを形成するのに十分な架橋手順に供することを含む。
【0035】
1.初期ケーブルコア
本方法は、初期ケーブルコアを用意することを含む。初期ケーブルコアは、(i)導体と、(ii)第1のポリマー半導電層と、(iii)架橋性ポリマー組成物から構成される初期絶縁層と、を含む。「導体」は、本明細書で使用される場合、熱、光、及び/又は電気を伝導するための1つ以上のワイヤ又はファイバである。導体は、単一ワイヤ/ファイバであっても複数ワイヤ/ファイバであってもよく、撚り線形態であっても管状形態であってもよい。好適な導体の非限定的な例としては、銀、金、銅、炭素、及びアルミニウムなどの金属が挙げられる。導体はまた、ガラス又はプラスチックのいずれかから作製された光ファイバであってもよい。「ケーブル」は、本明細書で使用される場合、シース、例えば、絶縁被覆又は保護外側ジャケット内の少なくとも1つのワイヤ又は光ファイバを意味する。典型的には、ケーブルは、典型的には共通の絶縁被覆及び/又は保護ジャケット内で一緒に結合された2つ以上のワイヤ又は2つ以上の光ファイバである。シースの内部の個々のワイヤ又はファイバは、むき出しとすることができるか、被覆することができるか、又は絶縁することができる。組み合わせケーブルは、電気ワイヤ及び光ファイバの両方を含有し得る。ケーブルは、低電圧、中電圧、及び/又は高電圧用途に設計することができる。交流ケーブルは、本開示に従って調製され得、低電圧、中電圧、高電圧、又は超高電圧ケーブルであり得る。更に、直流ケーブルは、本開示に従って調製され得、高電圧又は超高電圧ケーブルを含み得る。絶縁導電体は、通常、絶縁層で被覆された導電性コアを含む。導電性コアは、固体又は編組(例えば、糸の束)であり得る。いくつかの絶縁導電体はまた、半導体層(複数可)及び/又は保護カバー(例えば、巻線、テープ、若しくはシース)などの1つ以上の追加の要素を含有し得る。例は、低電圧(low voltage、「LV」、>0~<5キロボルト(kilovolt、kV)配電/送電用途)、中電圧(medium voltage、「MV」、5~<69kV)、高電圧(high voltage、「HV」、69~230kV)、及び超高電圧(extra-high voltage、「EHV」、>230kV)で使用するものを含む、被覆された金属ワイヤ及び電気ケーブルである。電力ケーブル評価は、AEIC/ICEA規格及び/又はIEC試験方法を使用することができる。
【0036】
初期ケーブルコアは、第1の架橋性ポリマー半導電層及び任意選択の第2の架橋性ポリマー半導電層を含む。一実施形態では、第1の架橋性ポリマー半導電層は、架橋性ポリマー組成物から構成される絶縁層と導体との間に挿入され、第2の架橋性ポリマー半導電層は、架橋性ポリマー組成物から構成される絶縁層を取り囲む。あるいは、初期絶縁層は、導体に直接接触する。第1の架橋性半導電層及び第2の架橋性ポリマー半導電層は、同じ組成物から構成されても、異なる組成物から構成されてもよい。加えて、各架橋性ポリマー半導電層は、架橋されてもよく、したがって、初期に架橋性ポリマー組成物を含んでもよい。
【0037】
第1の架橋性ポリマー半導電層及び/又は第2の架橋性ポリマー半導電層における使用に好適なポリマーとしては、これらに限定されないが、エチレン系ポリマー(上記のものなど)、エチレンエチルアクリレートコポリマー(「EEA」)、エチレンブチルアクリレートコポリマー(「EBA」)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(「EVA」)、ポリオレフィンエラストマー、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0038】
一実施形態では、導電性フィラーは、第1の架橋性ポリマー半導電層及び/又は第2の架橋性ポリマー半導電層中に存在する。導電性フィラーは、それぞれの架橋性半導電層の総重量に基づいて1~50重量%の範囲の量で存在し、導電性カーボンブラック、導電性炭素(例えば、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、及び膨張グラファイトプレートレット)、及び金属粒子を含む。任意選択の添加剤としては、酸化防止剤、安定剤、及び加工助剤が挙げられる。
【0039】
2.絶縁層
初期ケーブルコアは、架橋性ポリマー組成物から構成される初期絶縁層を含む。架橋性ポリマー組成物は、a)(1)エチレンモノマー、(2)任意選択のα-オレフィンコモノマー、及び/又は(3)任意選択のオルガノシロキサンコモノマーから構成されるエチレン系ポリマーを含む。架橋性ポリマー組成物は、(b)ジクミルペルオキシド(DCP)と、(c)Si-H含有AP捕捉剤と、(d)任意選択の硬化助剤と、(e)任意選択の酸化防止剤と、を更に含む。
【0040】
初期絶縁層の架橋性ポリマー組成物中のエチレン系ポリマーは、(1)エチレンモノマー、(2)任意選択のα-オレフィンコモノマー(例えば、エチレン/C~Cα-オレフィンコポリマー)、及び/又は(3)任意選択のオルガノシロキサンコモノマーから構成される。
【0041】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、
(i)0.90g/cc~0.93g/cc、若しくは0.91g/cc~0.92g/ccの密度、及び/又は
(ii)0.1g/10分~10.0g/10分、若しくは0.5g/10分~5.0g/10分、若しくは1.0g/10分~3.0g/10分のMIを有するエチレンホモポリマーである。
【0042】
好適なエチレンホモポリマーの非限定的な例としては、Dow,Inc.から入手可能なLDPE DXM-446及びLDPE 505iが挙げられる。
【0043】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、テレケリックエチレン系ポリマー又はモノケリックエチレン系ポリマーである。「テレケリックエチレン系ポリマー」は、式I:A(式中、
は、エチレン/α-オレフィンコポリマー(例えば、エチレン/C~Cα-オレフィンコポリマー)であり(L(二価)は、A及びLに結合していることに留意されたい)、
は、以下:
a)ビニル基、
b)式CH=C(Y)-のビニリデン基、
c)式YCH=CH-のビニレン基、
d)ビニル基と、式YCH=CH-のビニレン基との混合物、
e)ビニル基と、式CH=C(Y)-のビニリデン基との混合物、
f)式CH=C(Y)-のビニリデン基と、式YCH=CH-のビニレン基との混合物、及び
g)ビニル基と、式CH=C(Y)-のビニリデン基と、式YCH=CH-のビニレン基との混合物からなる群から選択され、
は、出現ごとに独立して、C~C30ヒドロカルビル基であり、
は、C~C32ヒドロカルビレン基であり、
は、ヒンダード二重結合を含むヒドロカルビル基である)のエチレンとα-オレフィンコモノマーとのコポリマー(例えば、エチレン/C~Cα-オレフィンコポリマー)である。
【0044】
「モノケリックエチレンポリマー」は、式II:A(式中、
は、Lは、エチレン/α-オレフィンコポリマー、例えばエチレン/C~Cα-オレフィンコポリマーであり(L(一価)は、Aに結合していることに留意されたい)、
は、以下:
a)ビニル基、
b)式CH=C(Y)-のビニリデン基、
c)式YCH=CH-のビニレン基、
d)ビニル基と、式YCH=CH-のビニレン基との混合物、
e)ビニル基と、式CH=C(Y)-のビニリデン基との混合物、
f)式CH=C(Y)-のビニリデン基と、式YCH=CH-のビニレン基との混合物、及び
g)ビニル基と、式CH=C(Y)-のビニリデン基と、式YCH=CH-のビニレン基との混合物からなる群から選択され、Y1は、出現ごとに独立して、C~C30ヒドロカルビル基である)のエチレンとα-オレフィンコモノマーとのコポリマー(例えば、エチレン/C~Cα-オレフィンコポリマー)である。
【0045】
テレケリックポリマー及びモノケリックポリマーは、国際公開第2020/140058号及び同第2020/140067号に開示されており、これらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。テレケリックポリマー及びモノケリックポリマーは、互換的に「不飽和POE」又は「UPOE」と呼ばれる。
【0046】
一実施形態では、初期絶縁層の架橋性ポリマー組成物中のエチレン系ポリマーは、エチレン/オルガノシロキサンコポリマーである。エチレン/オルガノシロキサンコポリマーは、(i)エチレン由来の単位、(ii)0.01重量%~0.5重量%のコモノマー由来の単位、及び(iii)任意選択的に、ターモノマー由来の単位を含む。コモノマーは、式(3)
[R,RSiO2/2
(式中、nは、3以上の整数であり、
各Rは、独立して、(C~C)アルケニル又はHC=C(R1a)-C(=O)-O-(CH-であり、
1aが、H又はメチルであり、
mが、1~4の整数であり、
各Rは、独立して、H、(C~C)アルキル、フェニル、又はRである)の単環式オルガノシロキサン(monocyclic organosiloxane、MOCOS)である。式(3)の単環式オルガノシロキサン(MOCOS)を有するエチレン系ポリマーは、互換的に「エチレン/MOCOSコポリマー」と称される。
【0047】
一実施形態では、一実施形態では、式(3)のMOCOSは、以下の構造(B)を有する2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニル-シクロトリシロキサン、「(DVi」(CAS番号3901-77-7)である:
【0048】
【化1】
【0049】
一実施形態では、式(3)のMOCOSは、以下の構造(C)を有する2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニル-シクロテトラシロキサン、「(DVi」(CAS番号2554-06-5)である:
【0050】
【化2】
【0051】
一実施形態では、式(3)のMOCOSは、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10-ペンタビニル-シクロペンタシロキサン、(DViである。
【0052】
式(3)のMOCOSコモノマーは、0.01重量%~2重量%、又は0.01重量%~0.5重量%、又は0.05重量%~0.45重量%、又は0.1重量%~0.40重量%、又は0.3重量%~0.5重量%、又は0.15重量%~0.30重量%、又は0.05重量%~0.15重量%の量でエチレン系ポリマー中に存在する。重量パーセントは、エチレン系ポリマー組成物、すなわち、エチレン/MOCOSコポリマーの総重量に基づく。
【0053】
初期絶縁層中の架橋性ポリマー組成物は、0.1重量%~2.4重量%、又は0.1重量%~2.0重量%、又は0.7重量%~1.5重量%、又は0.7重量%~1.2重量%のジクミルペルオキサイド(DCP)を含む。重量パーセントは、架橋性ポリマー組成物の総重量に基づく。
【0054】
初期絶縁層中の架橋性ポリマー組成物は、Si-H含有AP捕捉剤を含む。「Si-H含有AP捕捉剤」は、本明細書で使用される場合、式4:
【0055】
【化3】

(式中、R、R及びRは、同じであるか又は異なり、各R、R及びRは、H、置換ヒドロカルビル、非置換ヒドロカルビル、置換ヘテロヒドロカルビル、非置換ヘテロヒドロカルビル又はシロキサンから個々に選択される)の有機ケイ素化合物である。Si-H含有(AP)捕捉剤は、エチレン系ポリマーとは別個の異なる成分である。架橋性ポリマー組成物において、Si-H含有(AP)捕捉剤は、エチレン系ポリマーに対するコモノマーではない。式4の好適なSi-H含有(AP)捕捉剤の非限定的なサンプルとしては、以下のs1)~s20):
【0056】
【化4】

及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
一実施形態では、Si-H含有(AP)捕捉剤としては、SiH基を含有する多面体オリゴマーシルセスキオキサン、及び/又はSiH基を含有する無機シリカ、例えばジメチルハイドロジェンシロキシ変性シリカなどが挙げられる。
【0058】
架橋性ポリマー組成物は、任意選択的に硬化助剤を含み得る。好適な硬化助剤の非限定的な例としては、トリアリルイソシアヌレート(triallyl isocyanurate、「TAIC」)、トリアリルシアヌレート(triallyl cyanurate、「TAC」)、トリアリルトリメリテート(triallyl trimellitate、「TATM」)、N2,N2,N4,N4,N6,N6-ヘキサアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン(N2, N2, N4, N4, N6, N6-hexaallyl-1, 3, 5-triazine-2, 4, 6-triamine、「HATATA」)、オルトギ酸トリアリル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、クエン酸トリアリル、及びアコニット酸トリアリル、α-メチルスチレンダイマー(α-methyl styrene dimer、「AMSD」)、アクリレート系助剤、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate、「TMPTA」)、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート(trimethylolpropane trimethylacrylate、「TMPTMA」)、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、及びプロポキシル化グリセリルトリアクリレート、ビニル系助剤、例えば、1,2-ビニル含量が高いポリブタジエン、トリビニルシクロヘキサン(trivinyl cyclohexane、「TVCH」)4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニル-シクロトリシロキサン(VD3)、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニル-シクロテトラシロキサン(VD4)。2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10-ペンタビニル-シクロペンタシロキサン、VD5が挙げられる。存在する場合、硬化助剤は、架橋性ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%超~5重量%、又は0.1重量%~2.5重量%、又は0.2重量%~2重量%、又は0.3重量%~1.5重量%、又は0.4重量%~1.0重量%の量で存在する。
【0059】
架橋性ポリマー組成物は、任意選択の酸化防止剤を含む。架橋性ポリマー組成物中に存在する場合、酸化防止剤は、酸化を阻害する有機分子又は酸素分子の集合体である。酸化防止剤は、ポリオレフィン組成物及び/又は架橋ポリオレフィン生成物に酸化防止特性を付与するように働く。好適な酸化防止剤の非限定的な例としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;2-(tert-ブチル)-4,6-ジメチルフェノール;2-(tert-ブチル)-4-エチル-6-メチル-フェノール;2-(tert-ブチル)-4-イソプロピル-6-メチルフェノール;2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェノール;2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-イソプロピルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;2-(tert-ブチル)-6-メチルフェノール;2,6-ジイソプロピル-4-メチルフェノール;2-イソプロピル-4,6-ジメチルフェノール;4-エチル-2-イソプロピル-6-メチルフェノール;2,4-ジイソプロピル-6-メチルフェノール;4-(tert-ブチル)-2-イソプロピル-6-メチルフェノール;2-(tert-ブチル)-6-イソプロピル-4-メチルフェノール;2-(tert-ブチル)-4-エチル-6-イソプロピルフェノール;2-(tert-ブチル)-4,6-ジイソプロピルフェノール;2,4-ジ-tert-ブチル-6-イソプロピルフェノール;2-(tert-ブチル)-4-メチル-6-(tert-ペンチル)フェノール;4-メチル-2,6-ジ-tert-ペンチルフェノール;2,4-ジメチル-6-(tert-ペンチル)フェノール;2-エチル-4-メチル-6-(tert-ペンチル)フェノール;2-(tert-ブチル)-6-エチル-4-メチルフェノール;2-エチル-6-イソプロピル-4-メチルフェノール;2,6-ジエチル-4-メチルフェノール;オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IRGANOX1076);ペンタエリスリトールテトラキス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート(IRGANOX1010);1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(IRGANOX3114);(1,3,5-トリメチル-2,4,5-トリス(3’,5’-ジtert-ブチル)-4’-ヒドロキシベンジル)-ベンゼン(IRGANOX1330);ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IRGANOX259);ベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7~C9分岐アルキルエステル(IRGANOX1135);3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸チオジー2,1-エタンジイルエステル(IRGANOX1035);N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド](IRGANOX1098);1,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナモイル)ヒドラジン(IRGANOX1024);2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール(IRGANOX565);エチレンビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)-プロピオネート)(IRGANOX245);4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(IRGANOX1520);4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール(IRGANOX1726);3,5-トリス(4-(tert-ブチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(CYANOX1790);フェノール、2-(5-クロロ-2H-ベントトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチル(TINUVIN326);フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル(TINUVINP);2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジtertペンチルフェノール(TINUVIN328);2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(TINUVIN329);フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-ドデシル(TINUVIN571);2,2’-メチレンビス(6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール)(TINUVIN360);2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(TINUVIN1577);2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(TINUVIN234);4,4’’-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール(TBM-6);3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-1-ベンゾピラン-6-オール(IRGANOX E201)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。存在する場合、架橋性ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%超~5重量%、又は0.01重量%~2重量%、又は0.05重量%~1重量%、又は0.1重量%~0.5重量%、又は0.15重量%~0.3重量%の量で存在する酸化防止剤。
【0060】
架橋性ポリマー組成物は、加工助剤、フィラー、カーボンブラック、ナノ粒子、カップリング剤、紫外線吸収剤又は安定剤、帯電防止剤、核剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダーオイル、酸捕捉剤、難燃剤、及び金属不活性化剤を含むがこれらに限定されない他の添加物も含有し得る。存在する場合、フィラー以外の添加剤は、典型的には、架橋性ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~10重量%、又は0.01重量%~7重量%、又は0.05重量%~5重量%、又は0.1重量%~3重量%の範囲の量で使用される。フィラーが存在する場合、フィラーは、架橋性ポリマー組成物の総重量に基づいて、1重量%~50重量%、又は2重量%~40重量%、又は5重量%~30重量%、又は10重量%~20重量%の量で存在する。好適なフィラーの非例示的な例としては、15ナノメートルよりも大きい典型的な算術平均粒径を有する、粘土、沈降シリカ及びシリケート、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、粉砕鉱物、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、並びにカーボンブラックが挙げられる。
【0061】
3.架橋手順
本方法は、初期ケーブルコアを、架橋性ポリマー組成物を架橋して、架橋絶縁層を有するケーブルコアを形成するのに十分な架橋手順に供することを含む。内側及び外側の半導電層及び絶縁層を含有する初期ケーブルコアは、様々な型の押出機、例えば一軸又は二軸型で調製され得る。従来の押出機の記載は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,857,600号に見出すことができる。共押出及び押出機の非限定的な例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,575,965号に見出すことができる。典型的な押出機は、その上流端にホッパーを有し、その下流端にダイを有する。ホッパーは、スクリューを含有するバレル内に供給する。下流端には、スクリューの端部とダイとの間にスクリーンパック及びブレーカープレートが存在する。押出機のスクリュー部分は、供給セクション、圧縮セクション、及び計量セクションの3つのセクションと、背面加熱ゾーン及び前面加熱ゾーンの2つのゾーンとに分割されると考えられ、そのセクション及びゾーンは、上流から下流にわたる。代替例では、上流から下流にわたる軸に沿って複数の(3つ以上の)加熱ゾーンが存在してもよい。押出機が2つ以上のバレルを有する場合、バレルは直列に接続される。各バレルの長さ対直径の比は、15:1~30:1の範囲である。
【0062】
一実施形態では、ケーブルコアは、単一の押出機、加硫チューブ及び冷却チューブから構成される連続加硫ラインから調製される。
【0063】
押出後に、得られた初期ケーブルコアは、初期絶縁層中の架橋性ポリマー組成物を架橋する架橋手順に供されるか、又は他の方法でその架橋手順を受ける。初期ケーブルコアは、押出ダイの下流の加熱硬化ゾーン内に入り得る。加熱硬化ゾーンは、150℃~400℃、又は160℃~350℃、又は170℃~300℃の範囲の温度に維持される。加熱硬化ゾーンは、加圧蒸気によって加熱されるか、又は加圧窒素ガスで誘導加熱される。架橋手順は、架橋性ポリマー組成物からの架橋絶縁層を用意する。
【0064】
一実施形態では、第1の(内側)ポリマー半導電層及び/又は第2の(外側)ポリマー半導電層の一方又は両方は、架橋手順中に架橋される。
【0065】
一実施形態では、架橋手順後、本方法は、架橋絶縁層を有するケーブルコアを周囲温度まで冷却して、架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコアを形成することを含む。「周囲温度」という用語は、本明細書で使用される場合、20℃~24℃、又は21℃~23℃の温度である。
【0066】
架橋手順は、架橋絶縁層中にジクミルペルオキシド分解副生成物(又は「DCP分解副生成物」)を形成するか、又は他の方法で創出する。「ジクミルペルオキシド分解副生成物」という用語は、ジクミルペルオキシドの分解及び反応によって、架橋ステップ中及び/又は硬化ステップ中及び/又は冷却ステップ中に形成される分解生成物を意味する。DCP分解副生成物としては、クミルアルコール(cumyl alcohol、CA)、アセトフェノン(AP)、メタン、アルファメチルスチレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。Si-H含有(AP)捕捉剤は、架橋手順並びに/又は任意のその後の硬化及び/若しくは冷却中に生成されるアセトフェノンと反応するか、それを抑制するか、又は他の方法でクエンチする。
【0067】
架橋手順後に、本方法は、架橋絶縁層を有するケーブルコアを周囲温度まで冷却して、0.57未満のRAP/CA値を有する架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコアを形成することを含む。アセトフェノン及びクミルアルコールのそれぞれの量は、以下の実施例のセクションに記載のとおり、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー/水素炎イオン化検出によって決定される。「架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコア」という用語は、本明細書で使用される場合、架橋手順直後の時点、具体的には、ケーブルコアが周囲温度まで冷却されるか、又はそうでなければ周囲温度に達してから1分~60分後の架橋絶縁層を有するケーブルコアであり、「架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコア」は、周囲温度に到達してから1分~60分、及び脱気手順前の、後架橋ケーブルコアである。「冷却架橋XLPEプラーク」(及び/又は「冷却架橋POEプラーク」)は、本明細書で使用される場合、実施例のセクション(以下)において架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコアを複製するために使用される架橋エチレン系ポリマープラーク、すなわち、架橋手順直後の時点、具体的には、プラークが周囲温度まで冷却されるか、又はそうでなければ周囲温度に達してから1分~60分後の冷却架橋XLPEプラーク(及び/又は冷却架橋POEプラーク)であり、「冷却架橋XLPE(及び/又は「冷却架橋POEプラーク」)」は、周囲温度に到達してから1分~60分、及び脱気手順前の、後架橋プラークである。RAP/CA値は、本方法におけるAPの低下を示す。同じDCP添加量である場合、AP対CAの比を低下させる(すなわち、RAP/CA値が小さくなる)ことにより、AP濃度が低下する。
【0068】
一実施形態では、架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコアは、「組成物(C)」であり、「類似の組成物(SC)」は、「成分(c)、すなわちSi-H含有(AP)捕捉剤を含有しないことを除いて組成物(C)と同一の組成物」と定義される。組成物(C)は、RAP/CA値「RAP/CA(C)」を有し、組成物(SC)は、RAP/CA値(SC)「RAP/CA(SC)」を有する。組成物(C)は、以下の式5:
式5
AP/CAの低下%=[(RAP/CA(C)-RAP/CA(SC))/RAP/CA(SC)]×100%
によって決定される、RAP/CA(SC)よりも少なくとも2.0%大きいRAP/CAの低下、又は「RiRAP/CA」を有する。
【0069】
一実施形態では、架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコア、すなわち組成物(C)は、2.0%以上~35%以下、又は5%以上~30%以下、又は10%以上~25%以下、又は10%以上~20%以下であるRAP/CAの低下を有する。
【0070】
一実施形態では、本方法は、50℃~80℃の温度で架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコアを脱気して、架橋絶縁層中のアセトフェノンの量を1000ppm未満まで減少させることを含み、ここで、脱気時間は2%超、又は5%超、又は10%超、又は15%超、又は20%超、又は30%超、又は35%超、又は40%超、又は45%超短縮している。
【0071】
4.ケーブル
本開示は、ケーブルを提供する。一実施形態では、ケーブルは、ケーブルコアを含む。ケーブルコアは、(i)導体と、(ii)架橋絶縁層と、から構成される。架橋絶縁層は、a)(1)エチレンモノマー、(2)任意選択のオルガノシロキサンコモノマー、及び/又は(3)任意選択のオルガノシロキサンコモノマーから構成されるエチレン系ポリマーから構成される架橋性ポリマー組成物から形成される。架橋性ポリマー組成物は、b)ジクミルペルオキシド(DCP)、及びSi-H含有(AP)捕捉剤と、(c)Si-H含有(AP)捕捉剤と、(d)任意選択の硬化助剤と、(e)任意選択の酸化防止剤と、を更に含む。
【0072】
DCPは、架橋中に消費されて、ケーブルの架橋絶縁層を形成することが理解される。ケーブルの架橋絶縁層において、Si-H含有(AP)捕捉剤は、以下の(s1)~(s20)
【0073】
【化5】

及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0074】
一実施形態では、ケーブルは、95重量%~99.9重量%のエチレンホモポリマーと、0.1重量%~2.0重量%、又は0.2重量%~1.5重量%、又は0.3重量%~1.0重量%、又は0.4重量%~0.8重量%のSi-H含有(AP)捕捉剤と、から構成される架橋絶縁層を有するケーブルコアを含む。重量パーセントは、架橋絶縁層の総重量に基づく。更なる実施形態では、架橋絶縁層は、0.1重量%~2重量%、又は0.2重量%~1.5重量%、又は0.3重量%~1重量%、又は0.4重量%~0.8重量%の硬化助剤を含む。エチレンホモポリマー、Si-H含有(AP)捕捉剤及び任意選択の硬化剤は、合計で架橋絶縁層の100重量%になることが理解される。
【0075】
一実施形態では、ケーブルは、95重量%~99.9重量%のテレケリックエチレン/C~Cα-オレフィンコポリマーと、0.1重量%~2.0重量%、又は0.2重量%若しくは1.5重量%、若しくは0.3重量%~1.0重量%、又は0.4重量%~0.8重量%のSi-H含有(AP)捕捉剤と、から構成される架橋絶縁層を有するケーブルコアを含む。重量パーセントは、架橋絶縁層の総重量に基づく。更なる実施形態では、架橋絶縁層は、0.1重量%~2.0重量%、又は0.2重量%~1.5重量%、又は0.3重量%~1重量%、又は0.4重量%~0.8重量%の硬化助剤を含む。テレケリックエチレン/C~Cα-オレフィンコポリマー、Si-H含有(AP)捕捉剤及び任意選択の硬化剤は、合計で架橋絶縁層の100重量%になることが理解される。
【0076】
一実施形態では、ケーブルは、95重量%~99.9重量%のモノケリックエチレン/C~Cα-オレフィンコポリマーと、0.1重量%~2.0重量%、又は0.2重量%若しくは1.5重量%、若しくは0.3重量%~1.0重量%、又は0.4重量%~0.8重量%のSi-H含有(AP)捕捉剤と、から構成される架橋絶縁層を有するケーブルコアを含む。重量パーセントは、架橋絶縁層の総重量に基づく。更なる実施形態では、架橋絶縁層は、0.1重量%~2.0重量%、又は0.2重量%~1.5重量%、又は0.3重量%~1.0重量%、又は0.4重量%~0.8重量%の硬化助剤を含む。モノケリックエチレン/C~Cα-オレフィンコポリマー、Si-H含有(AP)捕捉剤及び任意選択の硬化剤は、合計で架橋絶縁層の100重量%になることが理解される。
【0077】
一実施形態では、ケーブルは、95重量%~99.9重量%のエチレン/オルガノシロキサンコポリマーと、0.1重量%~2.0重量%、又は0.2重量%若しくは1.5重量%若しくは0.3重量%~1.0重量%、又は0.4重量%~0.8重量%のSi-H含有(AP)捕捉剤と、から構成される架橋絶縁層を有するケーブルコアを含む。エチレン/オルガノシロキサンコポリマーは、本明細書で先に開示された任意のエチレン/MOCOSコポリマーである。重量パーセントは、架橋絶縁層の総重量に基づく。更なる実施形態では、架橋絶縁層は、0.1重量%~2.0重量%、又は0.2重量%~1.5重量%、又は0.3重量%~1.0重量%、又は0.4重量%~0.8重量%の硬化助剤を含む。エチレン/オルガノシロキセンコポリマー、Si-H含有(AP)捕捉剤及び任意選択の硬化剤は、合計で架橋絶縁層の100重量%になることが理解される。
【0078】
一実施形態では、架橋絶縁層は、導体と直接接触する。「直接接触する」という用語は、架橋絶縁層が導体に直接隣接して位置しており、導体と架橋絶縁層との間に、介在層も介在構造も存在しない層構成を指す。
【0079】
一実施形態では、ケーブルは、第1の架橋ポリマー半導電層が架橋絶縁層と導体との間に配置されているか、又はそうでなければ挿入されているケーブルコアを含む。第1の架橋ポリマー半導電層は導体を取り囲み、架橋絶縁層は、第1の架橋半導電層を取り囲む。更なる実施形態では、第2の架橋ポリマー半導電層が、架橋絶縁層を取り囲む。第1の架橋ポリマー半導電層及び第2の架橋ポリマー半導電層は、本明細書において先に開示されたように、同じ組成物から構成されても、異なる組成物から構成されてもよい。
【0080】
一実施形態では、ケーブルは、冷却ケーブルコア、すなわち、架橋直後のケーブルコアを含む。冷却ケーブルコアは、クミルアルコール(CA)、アセトフェノン(AP)、メタン、アルファメチルスチレン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される分解副生成物を有する架橋絶縁層を含む。冷却ケーブルコアの架橋絶縁層は、架橋手順及び周囲温度への冷却の1分後から、架橋手順及び周囲温度への冷却の60分後までの時間において、並びに脱気手順の前において、0.57未満のAP/CA比を有する。
【0081】
一実施形態では、ケーブルは、組成物(C)として同定される架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコアを含む。類似の組成物「(SC)」(本明細書で先に定義したとおり)は、成分(c)、すなわちSi-H含有(AP)捕捉剤を含有しないことを除いて(C)と同一の組成物である。組成物(C)は、RAP/CA(C)を有し、組成物(SC)は、RAP/CA(SC)を有する。組成物(C)は、以下の式5:
式5
AP/CAの低下%=[(RAP/CA(C)-RAP/CA(SC))/RAP/CA(SC)]×100%
によって決定される、RAP/CA(SC)よりも少なくとも2.0%大きいRAP/CAの低下、又は「RiRAP/CA」を有する。
【0082】
一実施形態では、架橋絶縁層を有する冷却ケーブルコア、すなわち組成物(C)は、2.0%以上~50%以下、又は5%以上~40%以下、又は10%以上~30%以下、又は10%以上~20%以下であるRAP/CAの低下を有する。
【0083】
限定するものではなく例として、これから、本開示のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳述する。
【0084】
1.材料
比較サンプル(comparative sample、CS)及び本発明の実施例(inventive example、IE)で使用した材料を、下記の表1A~1Cに提供する。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
2.AP及びCAの測定のための較正曲線設定
2.1:AP及びCAを含まない架橋ブランクシートの調製(Luperox101は、AP及びCAを生成しない)
a.1重量%のLuperox101をPOEブランクシートに50℃で6時間(hr)浸漬した。1重量%のLuperox101をLDPEブランクシートに70℃で6hr浸漬した。
b.POEブランクシート及びLDPEブランクシートをそれぞれ180℃で圧縮成形して、2つのそれぞれの架橋プラークを調製し、各プラークは1mmの厚さを有する。
c.各プラークを70℃の真空オーブンで1日間脱気する。
【0089】
2.2:架橋POE較正サンプル及びXLPE較正サンプルの調製
a.架橋POEブランク又はXLPEブランクシートから1グラム(g)のサンプルを切り取り、20ミリリットル(mL)のヘッドスペースバイアルに入れる。
b.0.005gのAP標準化学物質を、1gのPOE又はXLPEサンプルを含有するヘッドスペースバイアルに注入して、較正標準を調製した。次いで、ヘッドスペースバイアルをクリンプキャップで密封し、以下、「較正サンプル」と称する。
c.0.005gのCA標準化学物質を、1gのPOE/XLPEサンプルを含有するヘッドスペースバイアルに注入して、較正標準を調製した。次いで、ヘッドスペースバイアルをクリンプキャップで密封し、以下、「較正サンプル」と称する。
【0090】
2.3:HSGCからのピーク面積と較正サンプル中のAP又はCA濃度との間の相関関係を得る分析のために表1の条件で較正サンプルをHSGCに添加する。
【0091】
【表4】
【0092】
3.AP及びCAの測定のためのサンプル調製
3.1 実施例の化合物から架橋プラークを調製するための圧縮成形
a.ペレット形態の約30gのサンプル化合物を、厚さ1mmの金型の2枚のPETフィルムの間に入れる。次いで、この充填された金型をホットプレス機(LabTech)に入れる。
b.120℃で10分間予熱する。
c.それぞれについて8回及び0.2秒間通気する。
d.プラテンを閉じて、15MPaの圧力を20分間金型に印加する。その間に、6.5分以内に温度を182℃まで上昇させる。
e.金型を引き続き15Mpaに保ち、24℃まで冷却する。
f.機械から金型を取り出す。
【0093】
3.2 ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography、GC)サンプルの調製
a.2枚のPETフィルムが両側に貼られた硬化プラークを金型から取り外す。
b.PETフィルムをすばやく剥がす。
c.プラークの中心部の2枚のシート(約1g)を切り取り、それらを2つのヘッドスペースGCバイアルに入れ、すぐにバイアルを密封する。
d.密封されたGCヘッドスペースバイアルを秤量し、サンプル重量は、空のバイアルとサンプルを含むバイアルとの差によって計算され得る。
【0094】
4.AP及びCAの測定
1gのプラークサンプルを含む密封されたヘッドスペースバイアルをヘッドスペースオートサンプラーに移して、150℃で30分間(min)コンディショニングした。次いで、ヘッドスペースバイアル中の1mlのガスサンプルのアリコートを注入し、GC/FID(gas chromatography/flame ionization detector)(ガスクロマトグラフィー/水素炎イオン化検出器)で直接分析した。GCオーブンを、15℃ min-1で50℃(2min)~220℃(8min)にプログラムした。FID温度は250℃であり、水素流量は40mL min-1、空気流量は400mL min-1、窒素流量は25mL min-1であった。注入口は、50:1の比で、スプリットモードにおいて250℃で操作し、分離カラムは、30m×内径0.32mm×0.50μmのDB-WAXキャピラリーカラムであり、ヘリウムキャリアガスの流量は、2mL min-1であった。
【0095】
5.計算
アセトフェノン及びクミルアルコールの濃度を、以下の表2Bの以下の式に従って計算した。
【0096】
【表5】

POEは、冷却架橋POEプラークを指し、**XLPEは、冷却架橋XLPEプラークを指す。
【0097】
例として、表2Cは、CS-2、IE-10、及びIE-11に関する(i)AP及び(ii)CAの計算結果を提供する。CS-2、IE-10、及びIE-1の各サンプルについて2つの試験片を採取する。最終AP値及び最終CA値は、これら2つの試験片の数の平均である。RAP/CA値は、各サンプルについて最終AP値を最終CA値で除したものである。
【0098】
【表6】

**XLPEは架橋プラークを指す。
【0099】
【表7】

**XLPEは架橋プラークを指す。
【0100】
5.結果及び考察:
前述したとおり、DCPは、硬化ステップにおいて分解されて、クミルオキシルラジカルを生成する。クミルオキシルラジカルの一部は、ベータ切断を受けて、AP及びメチルラジカルを形成する。クミルオキシルラジカル及びメチルラジカルの両方がポリエチレンから水素を引き抜き、ポリマーの架橋を開始し、CA及びメタンを形成する。新たに硬化したサンプル中のこれらの副生成物の濃度は、DCP添加量によって決定される。DCPの添加量が多いほど、副生成物濃度が高くなる。
【0101】
表3に示すとおり、3000ppmのAP及び5200ppmのCAが、1.2%のDCPを含有する新たに硬化したCS-1サンプル(冷却架橋プラーク)中に存在し、RAP/CA値は0.573である。本発明者らは、驚くべきことに、SiH-1、SiH-2、SiH-3及びSiH-4の存在下で(すなわち、IE-1、IE-2、IE-3、IE-4及びIE-5において)、RAP/CA値が減少し、特に、0.7%のSiH-4を有するIE-3については、CS-1と比較して、RAP/CAの35.7%の低下を達成することを見出した。特定の理論に拘束されるものではないが、系中の活性ラジカルによって開始されたSiラジカルが、APのカルボニル基に付加し、Si-O-C結合を介して、Si-H捕捉剤に結合すると考えられる。
【0102】
より高いDCP添加量、すなわち表3のIE-6及び7では、SiH-4はAPを効果的に低下させる。IE-6及びIE-7のRAP/CA値(0.372~0.378)は、IE-3(0.369)と同様である。
【0103】
TAIC及びVD4のような追加の硬化助剤は、IE-8及びIE-9に示すとおり、APの低下に影響を与えない。
【0104】
【表8】
【0105】
表3に示すとおり、IE-1、IE-2、IE-3、IE-4、IE-5、IE-6、IE-7、IE-8、IE-9のそれぞれとCS-1との比較は、SiH-1、SiH-2、SiH-3、SiH-4がRAP/CAを低下させ、IE-1~IE-9が、0.57未満、又は0.350~0.559のRAP/CA値及び13%~38%のRiRAP/CAを呈することを示す(冷却架橋プラークに関して)。
【0106】
【表9】
【0107】
表4に示すとおり、SiH-4は、34%~39%のRiRAP/CAを達成し、対応するRAP/CA値は、0.340~0.390であった(エチレンとVD4とのコポリマーから構成される冷却架橋プラークに関して)。
【0108】
【表10】
【0109】
表5に示すとおり、IE-14、IE-15のそれぞれとCS-6との比較は、SiH-5(ビニル基を含有する)もRAP/CAを低下させ、IE-14及びIE-15が、0.400~0.470のRAP/CA値及び15%~30%のRiRAP/CAを呈することを示す(冷却架橋プラークに関して)。
【0110】
IE16、IE-17のそれぞれとCS-7との比較は、SiH-4がRAP/CAを低下させ、IE-16及びIE-17が、酸化防止剤の存在下で、0.470~0.480のRAP/CA値及び10%~12%のRiRAP/CAを呈することを示す(冷却架橋プラークに関して)。
【0111】
【表11】
【0112】
表6に示すとおり、SiH-4は、POE(UPOE)においてAPの低下を達成する。IE18及びIE-19のそれぞれとCS-8及びCS-9との比較は、SiH-4がRAP/CAを低下させ、IE-18及びIE-19が、0.370~0.420のRAP/CA値及び28%~40%のRiRAP/CAを呈することを示す。
【0113】
表3~6のデータは、SiH含有(AP)捕捉剤が、異なるポリマーマトリックスプラットフォームにおいて、並びに硬化助剤及び酸化防止剤などの異なる成分と組み合わせて、アセトフェノンを低下させるのに有効であることを示す。
【0114】
本開示は、本明細書に含有される実施形態及び例示に限定されず、実施形態の一部、及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含むそれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲に該当する範囲で含むことが、特に意図されている。
【国際調査報告】