(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】鉄鉱石金属の還元および前記還元のための反応器
(51)【国際特許分類】
C21B 13/02 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
C21B13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024535324
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 SE2022051197
(87)【国際公開番号】W WO2023121540
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506004399
【氏名又は名称】ルオッサバーラ-キールナバーラ アーベー
【氏名又は名称原語表記】LUOSSAVAARA-KIIRUNAVAARA AB
【住所又は居所原語表記】Box 952 SE-971 28 LULEA SWEDEN
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラクダワラ,シャビル タヘルバイ
(72)【発明者】
【氏名】クマール テルキチェルラ,カメシュ サンディープ
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012DC01
4K012DC02
4K012DC03
4K012DC05
(57)【要約】
還元反応器および鉄鉱石材料の還元鉄材料への還元を行うプロセス。プロセスは、鉄鉱石材料を、還元反応器(1)の頂部(1a)において還元反応器(1)に供給して、頂部(1a)から軸方向下向きに還元反応器(1)の底部(1b)に向かう還元反応器内の材料の重力流を作り出す、ステップ(101)と、加熱された還元ガスが還元反応器(1)内の材料の重力流との並流を作り出すように、還元ガスを、還元反応器の頂部(1a)において還元反応器(1)に供給するステップ(102)と、還元ガスによって、還元反応器内で、鉄鉱石材料を還元鉄材料へと還元するステップ(103)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石材料の還元鉄材料への還元を行うプロセスであって、
還元反応器(1)を用意するステップ(100)と、
鉄鉱石材料を、前記還元反応器(1)の頂部(1a)において前記還元反応器(1)に供給して、前記頂部(1a)から軸方向下向きに前記還元反応器(1)の底部(1b)に向かう前記還元反応器内の前記鉄鉱石材料の重力流を作り出す、ステップ(101)と、
加熱された還元ガスが前記還元反応器(1)内の前記材料の前記重力流との並流を作り出すように、前記還元ガスを、前記還元反応器の前記頂部(1a)において前記還元反応器(1)に供給するステップ(102)と、
前記還元ガスによって、前記還元反応器内で、前記鉄鉱石材料を還元鉄材料へと還元するステップ(103)と、
前記還元反応器の下方セクション(1c)にあるガス出口(13)において、前記還元反応器から使用済み還元ガスを取り出すステップ(104)と、
前記還元反応器(1)の前記底部(1b)において、前記還元反応器から還元鉄材料を取り出すステップ(105)と
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記還元反応器(1)に供給される時の前記鉄鉱石材料が、0~1300℃の温度を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記還元反応器(1)に供給される時の前記還元ガスが、500~1000℃の温度を有する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記還元反応器(1)から取り出された前記使用済み還元ガスの温度が、少なくとも600℃であり、前記還元反応器(1)から取り出された還元鉄材料の温度が、少なくとも600℃である、請求項1から3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記還元反応器に供給された前記還元ガスが、体積で90%以上の水素を含む、請求項1から4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記鉄鉱石材料が、等温または等温に近い還元プロセスにおいて、前記還元反応器内で鉄材料へと還元される(103)、請求項1から5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
乾燥破砕固体が、前記還元反応器(1)から取り出された(104)使用済み還元ガスから分離され(104b)、前記還元反応器(1)内の前記材料の重力流の方向から見て前記還元反応器(1)の前記ガス出口(13)より下にある点に配置された破砕固体入口(20)において、前記還元反応器(1)に再投入される(104c)、請求項1から6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
鉄鉱石材料の還元鉄材料への還元のための還元反応器(1)であって、
前記還元反応器の頂部(1a)に配置され、鉄鉱石材料を前記還元反応器に供給するために構成された、材料投入口(11)と、
前記還元反応器(1)の前記頂部(1a)に配置され、加熱された還元ガスを前記還元反応器に供給するために構成された、ガス投入口(12)であり、前記還元反応器(1)、前記材料投入口(11)、および前記ガス投入口(12)が、前記鉄鉱石材料が前記還元反応器内で還元されるように、前記材料投入口を通じて供給された材料および前記ガス投入口を通じて供給された還元ガスが前記頂部(1a)から軸方向下向きに前記還元反応器(1)の底部(1b)に向かう並流を作り出すように、配置されている、ガス投入口(12)と、
前記還元反応器(1)の下方セクション(1c)に配置され、前記還元反応器(1)から使用済み還元ガスを取り出すために構成された、ガス出口(13)と、
前記還元反応器(1)の底部(1b)に配置され、前記還元反応器(1)から還元鉄材料を取り出すために構成された、材料排出口(14)と
を備える、還元反応器(1)。
【請求項9】
前記使用済み還元ガスから乾燥破砕固体を分離するために、前記ガス出口(13)に/前記ガス出口(13)の後に配置された分離器(15)をさらに備える、請求項8に記載の還元反応器(1)。
【請求項10】
前記分離器(15)と連結して配置され、前記使用済み還元ガスから分離された乾燥破砕固体を、前記還元反応器(1)内の前記材料の重力流の方向から見て前記ガス出口(13)より下にある点に配置された破砕固体入口(20)において、前記還元反応器(1)に再投入するように配置された、固体リサイクラ(16)をさらに備える、請求項9に記載の還元反応器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄鉱石材料の還元鉄材料への還元を行うプロセス、および、鉄鉱石材料の還元鉄材料への還元のための還元反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
直接還元鉄(DRI:direct reduction iron)プロセスでは、鉱石の酸素含有を還元することによって、鉄鉱石ペレットの還元が起こる。酸化鉄を金属鉄へと還元するための従来の装置および方法は、例えば米国特許第3748120号に示されている。鉄鉱石材料は、竪型シャフト型還元炉の上部に供給され、炉の底から取り出される。少なくとも約800℃の温度を有し、H2およびCOを主成分とする高温の還元性ガスが、炉の入口と出口の間にある入口を通じて、炉内の材料の重力流に対して付加され、ペレットに対して向流関係で流れ、ガスが酸化鉄粒子を通過しペレットを加熱および還元した後で、炉の頂において炉から出る。ペレットなどの鉄鉱石材料は、炉からの放出の前に冷却され得る。
【0003】
このようなプロセスにおける実際の収率は、一般的に約68~69%である。収率を高めるために、従来のDRI竪型シャフト炉を発展させるための様々な戦略がとられてきた。
【0004】
収率を高める1つの方策は、プロセス中の微粒子の生成を少なくすることであり得る。鉱石の取り扱い操作中、ペレットの物理的摩耗および破損によって微粒子が生じる場合があり、微粒子は、材料が炉に投入される前に、ふるいを介してふるい落とされ、その結果、収率が低下する。さらに、シャフト炉内での還元によって、熱およびプロセスによる破砕によって、さらなる微粒子が生成される可能性があり、「スラリー」として生産チェーンを出て、それによってプロセスの収率を低下させる。
【0005】
米国特許第6132489号において、粗粒子と微粒子の両方を含む鉄鉱石装入物が、1つの単独の竪型反応器シャフトにおいて連続的に処理され、移動床反応器の粒子床における詰まりを減少しつつ、高い金属化率を達成する、直接還元プロセスが提示されている。竪型還元反応器は、粒子が流動床と移動床の2種類の床を形成する、少なくとも1つの還元領域を有する。粒子および微粒子は、流動床に誘導される。約700℃より高い温度の還元性ガスが、還元領域を通じて上向きに流され、還元性ガスが、粒子の第1の部分を含む流動床、および非流動床を形成し、第1の部分の粒子の平均サイズは、第2の部分の粒子の平均サイズより小さい。金属鉄含有粒子は、流動床からオーバーフローさせられ、流動床の上部に入口端を有する放出管を通じて脱落する。
【0006】
米国特許第9273368号において、DRIプロセスの収率を高めるための別の戦略が示されている。ここでは、鉱物溶液で被覆された酸化鉄ペレットまたは塊が、予備還元領域、移行領域、金属化領域、および冷却領域に供給される、その間に、化学量論的量以下の空気との外部の部分燃焼によって生成され、向流において予備還元領域を通じる上向きの濃厚な燃料ガスを通過して、被覆された装入物が約1000~1300℃の範囲の温度まで予熱され、被覆された装入物が部分的に還元され、そして並流において金属化領域を通じる下向きの還元性ガスを通過して、酸化鉄の金属鉄への還元を終える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
DRIプロセスおよび炉を改善するために様々な戦略がとられてきたが、引き続き、鉄鉱石材料の還元鉄材料への還元を行う改善されたプロセスに対する要請が、存在する。
【0008】
本開示の目的は、先行技術の還元プロセスの短所の少なくともいくつかを緩和または克服する、鉄鉱石材料の還元鉄材料への還元を行うプロセスを提供することである。さらなる目的は、そのような鉄鉱石材料の還元のための還元反応器を提供することである。
【0009】
本発明は、添付の独立請求項によって定義される。非限定的実施形態が、従属請求項、添付の図面、および以下の説明から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によると、鉄鉱石材料の還元鉄材料への還元を行うプロセスが、提供される。プロセスは、還元反応器を用意するステップと、鉄鉱石材料を、還元反応器の頂部において還元反応器に供給して、頂部から軸方向下向きに還元反応器の底部に向かう還元反応器内の鉄鉱石材料の重力流を作り出す、ステップとを含む。加熱された還元ガスが還元反応器内の材料の重力流との並流を作り出すように、還元ガスが、還元反応器の頂部において還元反応器に供給される。還元ガスによって、還元反応器内で、鉄鉱石材料が、還元鉄材料へと還元される。還元反応器の下方セクションにあるガス出口において、還元反応器から、使用済み還元ガスが、取り出され、還元反応器の底部において、還元反応器から、還元鉄材料が、取り出される。
【0011】
還元反応器の頂部に付加される鉄鉱石材料は、非還元鉄鉱石材料であってもよく、すなわち材料を還元反応器に付加する前に予備還元は起こらない。
【0012】
鉄鉱石材料は、鉄鉱石ペレット、鉄鉱石塊、および/または鉄鉱石塊成鉱であってもよい。ここでは、ペレットとは、典型的には6~16mmの球、または3~18mmもしくは6~18mmの直径を有する球を意味する。
【0013】
還元反応器の頂部において付加された鉄鉱石材料は、重力によって還元反応器を通じて下降する材料の充填床を形成する。
【0014】
還元ガスは、鉄鉱石材料および後に還元反応器内で形成される還元鉄材料の重力流との並流を作り出す。
【0015】
還元反応器は、還元炉または竪型還元炉であってもよい。
【0016】
還元反応器に供給される時に、鉄鉱石材料は、0~1300℃の温度を有してもよい。したがって、鉄鉱石材料は、付加される時に低温でもよく、加熱されていてもよい。加熱される場合、高温材料の熱ポテンシャル/エネルギーを還元反応器において利用することができる。
【0017】
還元反応器の頂部に供給される時に、加熱された還元ガスは、500~1000℃の温度を有してもよい。
【0018】
上記のプロセスは、加熱された鉄鉱石材料を効率的に処理することができる還元プロセスである。加熱された鉄鉱石材料を還元反応器に供して、還元鉄材料/金属化材料へと処理することができるため、本方法は、ペレット化プラントの直後およびライン内において使用/統合することができる。
【0019】
プロセスの熱エネルギー要件を釣り合わせるため、および、還元プロセス中の温度の大きな低下がなく、反応器内の鉄鉱石材料の床の上下のガス温度間の差が最小限である、等温または等温に近い還元プロセスを、すなわち、還元の速さを向上させ、還元時間を短縮することが期待されるプロセスを、得るために、付加される還元ガスの温度は、付加される鉄鉱石材料の温度に関連して調節される必要があり得る。
【0020】
プロセスの収率を高めるために、温度選択は、450~650℃の間で最も支配的/顕著であるヘマタイトからマグネタイトへの変態中の低温崩壊を克服すべきことが好ましい。還元反応器内の還元/金属化中にこの範囲より温度を高くすると、鉄還元プロセスの収率を高めることが期待される。ヘマタイトからマグネタイトへの変態中の低温崩壊を回避することによって、プロセスにおいて、鉄鉱石材料から形成される破砕固体の割合を、減少させることができる。発生する破砕固体の量を少なくすることで、より高い収率を得ることができる。ここでは、破砕固体とは、約6mmより小さいものなど、粉塵/微粒子/小粒子材料などの任意の形態およびサイズの破砕固体を意味する。
【0021】
低温フィード装入の場合、すなわち、200℃以下の温度を有する鉄鉱石材料の場合、上記の要件を満たすためには、対応する還元ガス温度を、950~1000℃とすべきである。
【0022】
還元反応器に供給される鉄鉱石材料の温度が高い場合、すなわち、1200~1300℃の範囲にある場合、プロセスのこのようなエネルギー要件を釣り合わせるために必要とされる対応する還元ガス温度は、より低く、400~700℃の範囲などである。
【0023】
上記のプロセスでは、還元プロセスの速度は、先行技術のプロセスと比較してより高速にすることができ、結果として、低容積高スループットの反応器であり得る還元反応器設計につながる。したがって、出力は、鉄鉱石材料温度および還元ガス温度の選択に直接依存する。
【0024】
反応器を通じた加熱されたガスと材料との並流が存在するように、還元反応器の頂部に還元ガスを供給することによって、従来の還元プロセスと比較して、より効率的な還元プロセスをもたらし、高速化することができ完了までにより短い時間しか必要としない還元プロセスをもたらす。本プロセスを使用すると、結果として還元/金属化は、94%以上程の高さにすることができる。さらに、今日標準的なものより小さなサイズの/より短い還元反応器を、使用することができる。
【0025】
還元ガスが還元反応器の頂部において投入されると、還元反応器の上部において低温崩壊が最も支配的であるため、ガスが還元反応器の頂において出る場合と比較して、破砕固体となり失われる材料をより少なくすることができる。破砕固体の発生量を少なくすると、結果として収率が高くなる。
【0026】
還元反応器から取り出された使用済み還元ガスは、600~900℃の温度を有してもよい。
【0027】
還元反応器から取り出された還元鉄材料/金属化材料は、600~850℃の温度を有してもよい。
【0028】
下方セクションは、底部から還元反応器の中央部まで延在する。還元反応器のガス出口は、還元反応器の底部に位置してもよい。あるいは、ガス出口は、還元反応器内の材料の重力流の方向から見て、還元反応器の底部より上または直上に位置する還元反応器の部分/セクションに位置してもよい。
【0029】
還元反応器に供給される時の鉄鉱石材料は、0~1300℃の温度を有してもよい。
【0030】
鉄鉱石材料は、0~1300℃、30~1300℃、100~1300℃、200~1300℃、300~1300℃、400~1300℃、500~1300℃、600~1300℃、700~1300℃、800~1300℃、900~1300℃、1000~1300℃、1100~1300℃、1200~1300℃、0~1200℃、0~1100℃、0~1000℃、0~900℃、0~800℃、0~700℃、0~600℃、0~500℃、0~400℃、0~300℃、0~200℃、0~100℃、500~900℃、または800~1100℃の温度を有してもよく、好ましくは800℃以上である。
【0031】
還元反応器に供給される時の還元ガスは、500~1000℃の温度を有してもよい。
【0032】
還元ガスの温度は、好ましくは500~900℃であってもよい。上で議論したように、還元ガス温度の選択は、還元反応器に付加される鉄鉱石材料の温度に依存する。
【0033】
低温鉄鉱石材料の場合、必要とされる還元ガス温度は、より高くなり、950~1000℃からの範囲にある。このような高温は、この高温を得るために、還元ガスへの酸素注入を必要とする可能性がある。より低い温度では、酸素注入は必要とされなくてもよい。さらに、還元可能性が低下しない。酸素注入システムがないと、より高いガス温度に到達するための酸化による有意な量の還元ガス消耗を抑えることが期待される。
【0034】
還元反応器から取り出された使用済み還元ガスの温度は、少なくとも600℃であってもよく、還元反応器から取り出された還元鉄材料の温度は、少なくとも600℃であってもよい。
【0035】
還元反応器から取り出された使用済み還元ガスおよび還元鉄材料の温度がそれぞれ少なくとも600℃である場合、還元/金属化は、450~650℃の間で最も支配的/顕著であるヘマタイトからマグネタイトへの変態中の深刻な低温崩壊よりも高い温度において、還元反応器内で起こる。
【0036】
取り出された還元鉄材料の温度は、少なくとも600℃の温度を有するため、この高温の還元鉄材料は、下流プロセスユニットに直接装入することができ、下流プロセスにおいて有意な量の熱エネルギーを節約することができる。
【0037】
1つの例では、取り出された高温還元鉄材料から、高温成形ブリケットを形成することができる。ブリケットの物理的品質に支配的な主因がブリケッティング機へのフィードの温度であるため、このことは、還元プロセス直後のブリケッティングプロセスに対して顕著な利点につながる。フィード温度が高いほど、密度およびタンブル強度に関するブリケットの物理的品質が高い。
【0038】
従来、ペレットなどの鉄鉱石材料は、反応器内の温度が900℃より高い場合、還元プロセス中の密集/固着を避けるために被覆される(バインダとして石灰石、ドロマイトおよびカンラン石、ならびにベントナイトなどの材料を使用)。
【0039】
本方法では、鉄鉱石材料のそのような被覆が必要とされなくてもよく、無被覆材料を使用することができる。本プロセスでは、鉄鉱石材料の還元後の反応器内で、900℃以上の温度に達する場所がない。これによって、還元材料のゆるい、または鉄同士の焼結によって、反応器内で密集/固着は存在しないか、ほぼ存在せず、したがって反応器内で材料の密集/固着は存在しないか、ほぼ存在しない。被覆が必要とされない場合、鉄鉱石材料は、乾式および無被覆で使用することができる。このことによって、被覆の処理および操業コストを節約する。
【0040】
還元反応器に供給された還元ガスは、体積で90%以上の水素を含んでもよい。
【0041】
還元反応器に供給された還元ガスは、体積で90%以上のH2を含んでもよく、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%のH2を含んでもよく、好ましくは少なくとも97%のH2を含んでもよい。残部は、H2O、および可能性としてはN2などの他のガスである。
【0042】
純H2または純粋に近いH2を使用すると、より少量の水素しか含まない還元ガスを使用する場合と比較して、還元速度はより高速になり得、還元時間はより短くなり得る。このことによって、プロセスの生産性またはスループットが高まる。さらに、プロセスにおける破砕固体の生成がより少なくなり得る。H2を使用すると、還元ガスがCOを含む場合(標準的な還元プロセスのように)と比較して、鉄鉱石材料の膨潤がより少なくなる。ここで使用される還元ガスは、炭素非含有ガス成分を含んでもよい。
【0043】
還元反応器への加熱された還元ガスは、反応器の頂部における高圧点において導入される。
【0044】
鉄鉱石材料は、等温または等温に近い還元プロセスにおいて、還元反応器内で鉄材料へと還元されてもよい。
【0045】
等温または等温に近い還元プロセスでは、還元の速さが向上し、還元時間が短縮される。等温還元プロセスでは、還元プロセス中の温度の大きな低下がなく、反応器内の鉄鉱石材料の床の上下のガス温度間の差が最小限に、または可能な限り低くなる。プロセスの熱エネルギー要件を釣り合わせるため、および等温または等温に近い還元プロセスを得るために、付加される還元ガスの温度は、付加される鉄鉱石材料の温度に関連して調節される必要があり得る。1つの例では、還元反応器に供給された還元ガスの温度は、約900℃であってもよく、還元反応器に供給された鉄鉱石材料の温度は、約800℃であってもよい。
【0046】
乾燥破砕固体が、還元反応器から取り出された使用済み還元ガスから分離されてもよく、還元反応器内の材料の重力流の方向から見て還元反応器のガス出口より下にある点に設けられた破砕固体入口において、還元反応器に再投入されてもよい。
【0047】
乾燥破砕固体を再注入することで、プロセスの材料/固体の収率を高めることが期待される。
【0048】
第2の態様によると、鉄鉱石材料の還元鉄材料への還元のための還元反応器が、提供される。還元反応器は、還元反応器の頂部に配置され、鉄鉱石材料を還元反応器に供給するために構成された、材料投入口と、還元反応器の頂部に配置され、加熱された還元ガスを還元反応器に供給するために構成された、ガス投入口であり、還元反応器、材料投入口、およびガス投入口が、鉄鉱石材料が還元反応器内で還元されるように、材料投入口を通じて供給された材料とおよびガス投入口を通じて供給された還元ガスが頂部から軸方向下向きに還元反応器の底部に向かう並流を作り出すように、配置されている、ガス投入口とを備える。ガス出口が、還元反応器の下方セクションに配置され、還元反応器から使用済み還元ガスを取り出すために構成され、材料排出口が、還元反応器の底部に配置され、還元反応器から還元鉄材料を取り出すために構成される。
【0049】
使用済み還元ガスは、ガス出口において還元反応器から取り出される。ガス出口は、還元反応器における低圧点である。ガス出口は、微粒子/粉塵/ペレットなどの破砕固体の使用済み還元ガスへのキャリーオーバーを避けるように、適当に配置/設計されることが好ましい。
【0050】
還元反応器は、使用済み還元ガスから乾燥破砕固体を分離するために、ガス出口に/ガス出口の後に配置された分離器をさらに含んでもよい。
【0051】
還元反応器は、分離器と連結して配置され、使用済み還元ガスから分離された乾燥破砕固体を、還元反応器内の材料の重力流の方向から見て使用済み還元ガス出口より下にある点に配置された破砕固体入口において、還元反応器に再投入するように配置された、固体リサイクラをさらに含んでもよい。
【0052】
分離された乾燥破砕固体は、リサイクラエジェクタを使用して還元反応器に再投入されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図2】鉄鉱石材料の還元鉄材料への還元を行うプロセスを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
鉄鉱石還元プロセスおよびそのような還元のために使用される反応器を向上させるために、様々な戦略がとられてきた。標準的還元プロセスと比較して、還元の速度をより高速とすることができ、金属化度を向上することができ、プロセスの材料/固体の収率を高めることができる、プロセスおよび還元反応器を以下に説明する。このプロセスおよび還元反応器は、高温鉄鉱石材料の効率的な処理のためにさらに構成することができる。これによって、例えばペレットなどの、高温鉄鉱石材料を、ペレット化プラントから直接還元反応器に付加することができる。
【0055】
図1に、そのような新規な還元反応器1を示し、
図2に、鉄鉱石ペレット、鉄鉱石塊、および/または鉄鉱石塊成鉱などの鉄鉱石材料の還元鉄材料への還元を行うプロセスを示す。100において用意される還元反応器1は、還元反応器の頂部1aに配置された材料投入口11を有し、材料投入口11は、101において、鉄鉱石材料を還元反応器に供給するために構成されている。還元反応器の頂部において付加された鉄鉱石材料は、0~1300℃の温度を有してもよく、重力によって頂部1aから底部1bに向かって還元反応器を通じて下降する材料の充填床を形成する。ガス投入口12が、還元反応器1の頂部1aに配置され、102において、500~1000℃の温度を有する加熱された還元ガスを還元反応器1に供給するために構成されている。還元反応器に供給された還元ガスは、体積で90%以上のH
2を含んでもよく、好ましくは97%以上のH
2を含んでもよい。残部は、H
2O、および可能性としてはN
2などの他のガスである。
【0056】
材料投入口11を通じて供給された材料およびガス投入口を通じて供給された還元ガス12は、鉄鉱石材料が103において還元反応器内で還元されるように、頂部1aから軸方向下向きに還元反応器1の底部1bに向かう並流を作り出す。ガス出口13が、還元反応器1の下方セクション1cに配置され、104において、還元反応器1から使用済み還元ガスを取り出すために構成されている。材料排出口14が、還元反応器1の底部1bに配置され、105において、還元反応器1から還元鉄材料を取り出すために構成されている。破砕固体入口20が、還元反応器内の材料の重力流の方向から見て還元反応器のガス出口13より下にある点に配置されている。
【0057】
プロセスの熱エネルギー要件を釣り合わせるため、および還元反応器1内での等温または等温に近い還元プロセスを得るために、反応器に付加される還元ガスの温度は、付加される鉄鉱石材料の温度に関連して調節される必要があり得る。等温プロセスによって、非等温プロセスよりも制御された還元反応をもたらすことが期待され、還元の速さを向上させ、還元時間を短縮することが期待される。等温還元プロセスでは、還元プロセス中の温度の大きな低下がなく、反応器内の鉄鉱石材料の床の上下のガス温度間の差が最小限である。
【0058】
ヘマタイトからマグネタイトへの変態中の低温崩壊は、450~650℃の間で最も支配的/顕著である。還元反応器内の還元/金属化中にこの範囲より温度を高くすると、鉄還元プロセスの収率を高めることが期待される。
【0059】
この要件を実現するために、104において還元反応器から取り出された使用済み還元ガスは、600~900℃の温度を有してもよく、105において還元反応器1から取り出された還元鉄材料/金属化材料は、600~850℃の温度を有してもよい。
【0060】
低温フィード装入の場合、すなわち、200℃以下の温度を有する鉄鉱石材料の場合、上記の要件を満たすためには、対応する還元ガス温度を、950~1000℃とすべきである。還元反応器に供給される鉄鉱石材料の温度が高い場合、すなわち、1200~1300℃の範囲にある場合、プロセスのこのようなエネルギー要件を釣り合わせるために必要とされる対応する還元ガス温度は、より低く、400~700℃の範囲などである。
【0061】
還元反応器の公称作動圧力は、還元プロセスの経済的/集約設計を考慮して、約1~7barの範囲内であってもよい。
【0062】
105において還元材料を還元反応器1から取り出した後、プロセスは、還元/金属化材料を冷却するさらなる工程を含んでもよい。
【0063】
104bにおいて、使用済み還元ガス出口13に/使用済み還元ガス出口13の後に配置された分離器15を使用して、104において還元反応器1から取り出された使用済み還元ガスから、乾燥破砕固体が、分離されてもよい。分離された乾燥破砕固体は、その後104cにおいて、ガス出口13より下にある点に配置された破砕固体入口20において還元反応器1に再投入されてもよい。例えば乾式サイクロン分離器またはバッフル分離器15を使用して、微粒子/粉塵/ペレットなどの乾燥破砕固体を、使用済み還元ガスから分離することができる。使用済み還元ガスから回収された乾燥破砕固体は、高含鉄であり、性質としてより大きな摩擦係数を有する粗いものであることが予想される。回収された固体の還元反応器の下部へのシームレスなリサイクルを容易にするために、リサイクラエジェクタ16を使用することができる。
【0064】
使用済み還元ガスからの乾燥破砕固体の分離は、ガスが次の処理ユニットに進む前の、ガスの予備洗浄/分離工程であり得る。使用済み還元ガスからの熱は、還元ガス加熱器19への途中にある、低温還元ガス18を使用することによるガス-ガス熱交換器17を介して回収することができ、それによってプロセスの熱効率を高める。
【0065】
使用済み還元ガスから分離された乾燥破砕固体を還元反応器へとリサイクルするために、注入の媒体として、高圧高温還元ガスの小ストリームを使用することができる。この還元ガスの定流が、その後、エジェクタの連続機能/動作を保証する駆動流体媒体となる。リサイクルされた固体が代替/外部システムへと転用される場合、固体エジェクタを駆動する/作動させるためのガスは、窒素などの代替ガスによって駆動することができる。還元反応器の底部における還元材料の高嵩密度流の出口速度によって回収された破砕固体を産品に巻き込み、蓄積/上向流を防ぐことが期待されるため、この閉ループ内において、固体は、経時的に増加または蓄積することが予想されない。
【0066】
HSC Chemistry(登録商標)ソフトウェアを使用して、様々な材料温度およびガス温度に対して上記のプロセスおよび還元反応器をシミュレートした。シミュレーションに使用した様々なパラメータおよびパラメータ値を、表1に要約する。
【0067】
【0068】
これらのシミュレーションにおいて、還元反応器に供給された鉄鉱石材料は、標準的な形態および組成の鉄またはペレットであり、1.410トン/hの質量流量を使用した。還元反応器に投入される時のペレットフィードの温度は、それぞれ1300℃、800℃、200℃、および0℃に設定し、還元反応器に投入される時の還元ガスの温度は、それぞれ685℃、900℃、950℃、および1000℃に設定した。シミュレートされたガスは、反応器に供給される時に、97%のH2および3%のH2Oの組成を有した。この場合、出力される材料の温度は、それぞれ810℃、820℃、660℃、642℃であり、使用済み還元ガスの温度は、それぞれ810℃、821℃、660℃、642℃であった。このように最適化されたパラメータを用いて、還元材料金属化率は、94%と計算された。
【0069】
テスト2において使用したパラメータ値である、ペレットフィード温度800℃および、反応器に供給される時の還元ガス温度900℃によって、上で議論したような等温または等温に近い還元プロセスおよび低温崩壊の低いレベルの双方をもたらすことが期待される。他のテストにおいて使用したパラメータ値でも、満足な還元材料金属化レベルをもたらすが、テスト2に使用したパラメータ値を用いて得ることができるのと同等の高い収率または高い還元速さはもたらさない可能性がある。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石
ペレットおよび/または鉄鉱石塊成鉱の形態の鉄鉱石材料の、還元鉄材料への還元を行うプロセスであって、
還元反応器(1)を用意するステップ(100)と、
100~1300℃の温度を有する鉄鉱石材料を、前記還元反応器(1)の頂部(1a)において前記還元反応器(1)に供給して、前記頂部(1a)から軸方向下向きに前記還元反応器(1)の底部(1b)に向か
って前記還元反応器内
を下降する鉄鉱石材料の
充填床の重力流を作り出す、ステップ(101)と、
加熱された還元ガスが前記還元反応器(1)内の前記材料の前記重力流との並流を作り出すように、前記還元ガスを、前記還元反応器の前記頂部(1a)において前記還元反応器(1)に供給するステップ(102)と、
前記還元ガスによって、前記還元反応器内で、前記鉄鉱石材料を還元鉄材料へと還元するステップ(103)と、
前記還元反応器の下方セクション(1c)にあるガス出口(13)において、前記還元反応器から使用済み還元ガスを取り出すステップ(104)と、
前記還元反応器(1)の前記底部(1b)において、前記還元反応器から還元鉄材料を取り出すステップ(105)と
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記還元反応器(1)に供給される時の前記還元ガスが、500~1000℃の温度を有する、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記還元反応器(1)から取り出された前記使用済み還元ガスの温度が、少なくとも600℃であり、前記還元反応器(1)から取り出された還元鉄材料の温度が、少なくとも600℃である、請求項
1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記還元反応器に供給された前記還元ガスが、体積で90%以上の水素を含む、請求項1
または2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記鉄鉱石材料が、等温または等温に近い還元プロセスにおいて、前記還元反応器内で鉄材料へと還元される(103)、請求項1
または2に記載のプロセス。
【請求項6】
乾燥破砕固体が、前記還元反応器(1)から取り出された(104)使用済み還元ガスから分離され(104b)、前記還元反応器(1)内の前記材料の重力流の方向から見て前記還元反応器(1)の前記ガス出口(13)より下にある点に配置された破砕固体入口(20)において、前記還元反応器(1)に再投入される(104c)、請求項1
または2に記載のプロセス。
【請求項7】
鉄鉱石
ペレットおよび/または鉄鉱石塊成鉱の形態の鉄鉱石材料の
、還元鉄材料への還元のための還元反応器(1)であって、
前記還元反応器の頂部(1a)に配置され、
100~1300℃の温度を有する鉄鉱石材料を前記還元反応器に供給するために構成された、材料投入口(11)と、
前記還元反応器(1)の前記頂部(1a)に配置され、加熱された還元ガスを前記還元反応器に供給するために構成された、ガス投入口(12)であり、前記還元反応器(1)、前記材料投入口(11)、および前記ガス投入口(12)が、前記鉄鉱石材料が前記還元反応器内で還元されるように、前記材料投入口を通じて供給された材料が
前記還元反応器内を下降する鉄鉱石材料の充填床の重力流を作り出し、前記ガス投入口を通じて供給された還元ガスが前記頂部(1a)から軸方向下向きに前記還元反応器(1)の底部(1b)に向かう
前記還元反応器内の前記材料の前記重力流との並流を作り出すように、配置されている、ガス投入口(12)と、
前記還元反応器(1)の下方セクション(1c)に配置され、前記還元反応器(1)から使用済み還元ガスを取り出すために構成された、ガス出口(13)と、
前記還元反応器(1)の底部(1b)に配置され、前記還元反応器(1)から還元鉄材料を取り出すために構成された、材料排出口(14)と
を備える、還元反応器(1)。
【請求項8】
前記使用済み還元ガスから乾燥破砕固体を分離するために、前記ガス出口(13)に/前記ガス出口(13)の後に配置された分離器(15)をさらに備える、請求項
7に記載の還元反応器(1)。
【請求項9】
前記分離器(15)と連結して配置され、前記使用済み還元ガスから分離された乾燥破砕固体を、前記還元反応器(1)内の前記材料の重力流の方向から見て前記ガス出口(13)より下にある点に配置された破砕固体入口(20)において、前記還元反応器(1)に再投入するように配置された、固体リサイクラ(16)をさらに備える、請求項
8に記載の還元反応器(1)。
【国際調査報告】