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特表2024-545225原油エマルションブレーカーのための相乗的溶媒
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  • 特表-原油エマルションブレーカーのための相乗的溶媒 図1
  • 特表-原油エマルションブレーカーのための相乗的溶媒 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】原油エマルションブレーカーのための相乗的溶媒
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/05 20060101AFI20241128BHJP
   C10G 33/04 20060101ALI20241128BHJP
   C08L 61/14 20060101ALI20241128BHJP
   C08K 5/03 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B01D17/05 501M
C10G33/04
C08L61/14
C08K5/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535579
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 US2022052646
(87)【国際公開番号】W WO2023114174
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】17/550,804
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイネル、ギョーム ロバート ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】アル-タラク、ムスタファ
【テーマコード(参考)】
4H129
4J002
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA01
4H129DA08
4H129HA20
4H129HB01
4H129NA01
4H129NA45
4J002CC091
4J002EA046
4J002FD206
4J002GD00
4J002GD04
(57)【要約】
本開示は、1又は複数の解乳化ポリマー及びアルキルカルボン酸溶媒を含有する解乳化剤組成物、及び油中水型エマルションを分離するための組成物の使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解乳化ポリマー;及び
1個~8個の炭素原子のアルキル鎖、約2~約7のpKa、及び約0.1を超えるKowを有するアルキルカルボン酸である、溶媒を含む、
解乳化剤組成物。
【請求項2】
前記解乳化ポリマーが、アルコキシル化フェノールポリマー又はアルコキシル化ポリアルコールである、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項3】
前記アルコキシル化フェノールポリマーが、飽和炭化水素鎖でパラ置換されている、
請求項2に記載の解乳化剤組成物。
【請求項4】
前記飽和炭化水素鎖が、パラ-三級-アルキル、パラ-二級-アルキル、パラ-イソ-アルキル、パラ-シクロアルキル、及びパラ-n-アルキルから選択される、
請求項3に記載の解乳化剤組成物。
【請求項5】
前記飽和炭化水素鎖が、パラ-三級-ブチルフェノール、パラ-三級-アミルフェノール、パラ-三級-ヘキシルフェノール及びパラ-三級-ヘプチルフェノールから選択される、
請求項3に記載の解乳化剤組成物。
【請求項6】
前記アルコキシル化フェノールポリマーが、構造:
【化1】

を有しており、
式中、
Rは、1個~8個の炭素を有する飽和炭化水素鎖であり;
R’及びR’’は、それぞれ独立して、H及びC-Cアルキルから選択され;
式中、R、R’及びR’’中の炭素原子の総数は3~8であり;
PPOは、式:
【化2】

を有するポリプロピレンオキシドであり;
PEOは、式:
【化3】

を有するポリエチレンオキシドであり;
xは、0~10の整数であり;
yは、0~10の整数であり;及び
nは、3~10の整数である、
請求項2に記載の解乳化剤組成物。
【請求項7】
前記解乳化ポリマーが、構造:
【化4】

を有する、
請求項6に記載の解乳化剤組成物。
【請求項8】
前記解乳化ポリマーが、構造:
【化5】

を有する、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項9】
前記解乳化剤組成物が、約25重量%~約50重量%の解乳化ポリマーを含む、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項10】
前記解乳化剤組成物が、約20重量%~約60重量%の溶媒を含む、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項11】
前記アルキルカルボン酸の前記アルキル鎖が、直鎖又は分岐鎖である、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項12】
前記pKaが、約3~約6である、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項13】
前記アルキルカルボン酸が、約15℃以下の融点を有する、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項14】
前記アルキルカルボン酸が、約10℃以下の融点を有する、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項15】
前記アルキルカルボン酸が、約80℃以上の沸点を有する、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項16】
前記アルキルカルボン酸が、約90℃以上の沸点を有する、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項17】
前記溶媒が、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖、約2~約7のpKa、約0.1を超えるKow、約15℃以下の融点、及び約80℃以上の沸点を有するアルキルカルボン酸である、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項18】
前記溶媒が、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖、約3~約6のpKa、約0.1を超えるKow、約10℃以下の融点、及び約90℃以上の沸点を有するアルキルカルボン酸である、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項19】
清澄剤をさらに含む、
請求項1に記載の解乳化剤組成物。
【請求項20】
前記清澄剤が、1,2,4-トリメチルベンゼン、ナフタレン、及びそれらの組み合わせから選択される、
請求項19に記載の解乳化剤組成物。
【請求項21】
前記清澄剤が、約0.1重量%~約10重量%の前記解乳化剤組成物を含む、請求項19に記載の解乳化剤組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の解乳化剤組成物を油中水型エマルションに添加し、前記エマルションから水を分離することを含む、
油中水型エマルションの脱水方法。
【請求項23】
前記油中水型エマルションが、原油エマルションである、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記原油エマルションが、製油所脱塩エマルションである、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記原油エマルションが、原油生産エマルションである、
請求項23に記載の方法。
【請求項26】
エマルションを含む生成石油を処理する方法であって、
前記エマルションを含む前記生成石油を請求項1に記載の解乳化剤組成物と接触させて、前記エマルションを低減又は排除することを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2021年12月14日に出願された米国特許出願第17/550,804号の優先権を請求し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、溶媒及び解乳化ポリマーを含有する湿潤原油エマルション解乳化剤組成物を記載する。溶媒及び解乳化ポリマーは、相乗的効果を示し、解乳化剤組成物は湿潤原油エマルションを解乳化するのに有効である。
【背景技術】
【0003】
原油は、典型的には、様々な濃度の分散水と共に抽出される。油中水型(water-in-oil、W/O)エマルションは、最初に、多孔質貯留岩を通って生産井に油及び水が移動し、その後、相分離のために生産施設に輸送される間に形成されと考えられる。水及び油のさらなる乳化は、生産流を管理するために使用される生産ヘッダーでのチョークバルブにわたる圧力降下によって起こり得、これは著しい撹拌及び乱流エネルギーをもたらす。
【0004】
分散水滴は、樹脂、アスファルテン、固体粒子、有機酸及び有機塩基などの油中に天然に存在する表面活性化合物(界面活性剤)によって安定化される。これらの界面活性剤は、油-水界面に移動し、水滴の周りに膜を形成し、液滴間の合体の自然なプロセスを遅くする。膜は、エマルションが容易に分離するか(ゆるいエマルション)、自発的に分離しない(密なエマルション)かに大きく影響する。密なエマルションは、0.2体積%の塩基性沈殿物と水(basic sediment and water、BS&W)及び1000バレルの油あたり(per thousand barrels、PTB)10ポンドの総溶解塩の輸出仕様内で原油を生産するために、エマルションを分離又は破壊するためのプロセス及び化学的介入において石油会社による多大な投資を必要とする。したがって、原油の組成は、生産分野ごとに大きく異なる可能性があり、独特の効果を有するこれらのパラメータの異なる組み合わせをもたらす。いくつかの特に密な油エマルションでは、保持、加熱、及び電気合体などの物理的方法だけでは水を分離することはできない。そのような場合、所望の水分離を達成するために、物理的方法及び化学的方法の組み合わせが必要とされる。
【0005】
原油生産施設では、W/Oエマルションから水を迅速かつ効率的に分離して湿潤原油を生成し、次いでこれをさらなる精製(脱塩及び脱水)のために送ることが必要である。解乳化剤又は解乳化ポリマーと呼ばれる化合物及び溶媒を含有する配合物又は組成物が、このような原油-水エマルションを破壊するために使用されてきた。高性能解乳化配合物(例えば、迅速であり、大量に脱水することができる)を有することにより、より多くの仕様上の乾燥原油の製造並びに全体的なプロセス(例えば、脱水機の負荷)のより良好な制御が可能になる。
【0006】
したがって、既知の解乳化剤組成物よりも、湿潤原油エマルションの脱水においてより速く、より効率的な解乳化剤組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示では、解乳化剤組成物が提供される。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、解乳化ポリマー;及び溶媒を含有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖、約2~約7のpKa、及び約0.1を超えるKowを有するアルキルカルボン酸である。
【0008】
いくつかの実施形態では、解乳化ポリマーは、アルコキシル化フェノールポリマー又はアルコキシル化ポリアルコールである。いくつかの実施形態では、アルコキシル化フェノールポリマーは、飽和炭化水素鎖でパラ置換されている。いくつかの実施形態では、飽和炭化水素鎖は、パラ-三級-アルキル、パラ-二級-アルキル、パラ-イソ-アルキル、パラ-シクロアルキル、及びパラ-n-アルキルから選択される。いくつかの実施形態では、飽和炭化水素鎖は、パラ-三級-ブチルフェノール、パラ-三級-アミルフェノール、パラ-三級-ヘキシルフェノール及びパラ-三級-ヘプチルフェノールから選択される。
【0009】
いくつかの実施形態では、アルコキシル化フェノールポリマーは、構造:
【化1】

を有しており、
式中、Rは、1個~8個の炭素を有する飽和炭化水素鎖であり;R’及びR’’は、それぞれ独立して、H及びC-Cアルキルから選択され;式中、R、R’及びR’’中の炭素原子の総数は3~8であり;PPOは、式:
【化2】

を有するポリプロピレンオキシドであり;PEOは、式:
【化3】

を有するポリエチレンオキシドであり;xは、0~10の整数であり;yは、0~10の整数であり;及びnは、3~10の整数である。
【0010】
いくつかの実施形態では、解乳化ポリマーは、構造:
【化4】

を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、解乳化ポリマーは、構造:
【化5】

を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、約25重量%~約50重量%の解乳化ポリマーを含有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、約20重量%~約60重量%の溶媒を含有する。
【0014】
解乳化剤組成物のいくつかの実施形態では、アルキルカルボン酸のアルキル鎖は直鎖又は分岐鎖である。
【0015】
解乳化剤組成物のいくつかの実施形態では、pKaは約3~約6である。
【0016】
解乳化剤組成物のいくつかの実施形態では、アルキルカルボン酸は約15℃以下の融点を有する。いくつかの実施形態では、アルキルカルボン酸は約10℃以下の融点を有する。
【0017】
解乳化剤組成物のいくつかの実施形態では、アルキルカルボン酸は約80℃以上の沸点を有する。いくつかの実施形態では、アルキルカルボン酸は約90℃以上の沸点を有する。
【0018】
解乳化剤組成物のいくつかの実施形態では、溶媒は、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖、約2~約7のpKa、約0.1を超えるKow、約15℃以下の融点、及び約80℃以上の沸点を有するアルキルカルボン酸である。
【0019】
解乳化剤組成物のいくつかの実施形態では、溶媒は、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖、約3~約6のpKa、約0.1を超えるKow、約10℃以下の融点、及び約90℃以上の沸点を有するアルキルカルボン酸である。
【0020】
いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、清澄剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、清澄剤は、1,2,4-トリメチルベンゼン、ナフタレン、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、清澄剤は、約0.1重量%~約10重量%の解乳化剤組成物を含む。
【0021】
油中水型エマルションの脱水方法も本開示において提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、本開示の解乳化剤組成物を油中水型エマルションに添加すること、及びエマルションから水を分離することを含む。いくつかの実施形態では、油中水型エマルションは、原油エマルションである。いくつかの実施形態では、原油エマルションは、製油所脱塩エマルションである。いくつかの実施形態では、原油エマルションは、原油生産エマルションである。
【0022】
エマルションを含む生成石油を処理する方法も本開示において提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、エマルションを含む生成石油を本開示の解乳化剤組成物と接触させて、エマルションを低減又は排除することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】様々な溶媒から調製された50ppm解乳化剤組成物の30℃での水分離性能を示すグラフである。
図2】様々な溶媒から調製された解乳化剤組成物の水分離性能対水係数分配(Kow)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、開示された主題の特定の実施形態を詳細に参照する。開示された主題は、列挙された特許請求の範囲と共に説明されるが、例示された主題は、特許請求の範囲を開示された主題に限定することを意図しないことが理解されよう。
【0025】
製造プロセスに関与する多くの要因のために、油と水が混合し、エマルションが作成される。原油を精製する際、水は製油所を損傷し、腐食を誘発し、原油蒸留プロセスの効率を低減させ得るため、原油はできるだけ乾燥しているべきであるため、このことは望ましくない。本開示では、原油-水エマルションを破壊するために使用することができる解乳化剤組成物が提供される。本開示の解乳化剤組成物は、解乳化ポリマー及び溶媒、例えば本開示に記載の溶媒を含有する。いくつかの実施形態では、溶媒は酸である。いくつかの実施形態では、溶媒は、直鎖又は分岐鎖のアルキルカルボン酸であり、アルキル鎖は、1個~8個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、約15℃未満、例えば約10℃未満の融点を有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、約2~約7、例えば約3~約6のpKaを有する。いくつかの実施形態において、溶媒は、約0.1を超えるKow(n-オクタノールと水との間の分配係数)を有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、約80℃より高い沸点、例えば約90℃より高い沸点を有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、非毒性であるか、高度に可燃性でないか、又はその両方である。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、清澄剤を含有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物は、本開示の溶媒を含有しない他の解乳化剤組成物と比較して、改善された水分離性能を示す。いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物は、本開示の溶媒を含有しない他の解乳化剤組成物よりも迅速に油から水を分離する。いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物は、本開示の溶媒を含有しない他の解乳化剤組成物よりも、湿潤原油エマルションの脱水において効率的である。例えば、本開示の解乳化剤組成物は、本開示に記載の溶媒とは異なる溶媒を含有するものなどの他の解乳化剤組成物よりも大量の水の脱水を可能にする。いくつかの実施形態では、本開示の溶媒を含有する解乳化剤組成物は、メタノール、ジエチレングリコール、キシレンなどの既知の解乳化剤溶媒を含有する組成物と比較して、水分離においてより効率的である。
【0027】
本開示の解乳化剤組成物は、本開示の溶媒とは異なる溶媒を含有する他の解乳化剤組成物よりも、湿潤原油エマルションから水を分離するのにより速く、より効率的であることが示されている。したがって、本開示では、本開示の解乳化剤組成物をエマルションに添加することを含む、湿潤原油エマルションから水を分離する方法が提供される。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は安定なエマルションを破壊する。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、ガス油分離プラント(gas-oil separation plant、GOSP)での油田生産中の原油中水型エマルションに使用される。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、製油所で原油中水型エマルションを脱塩するために使用される。
【0028】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、本開示に記載される溶媒の特定の特性の組み合わせは、水分離の予想外の改善をもたらすと考えられる。
【0029】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本出願で使用するための方法及び材料は本明細書に記載されており;当技術分野で公知の他の適切な方法及び材料も使用することができる。材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が制御する。
【0030】
範囲形式で表された値は、範囲の限界として明示的に列挙された数値を含むだけでなく、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含されるすべての個々の数値又は部分範囲を含むように柔軟に解釈されるべきである。例えば、「約0.1%~約5%」又は「約0.1%~5%」の範囲は、約0.1%~約5%だけでなく、示された範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%、及び4%)及び部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むと解釈されるべきである。「約X~Y」は、特に断らない限り「約X~約Y」と同義である。同様に「約X、Y、又は約Z」との記載は、特に断らない限り「約X、約Y、又は約Z」と同義である。
【0031】
本開示で使用される「約」という用語は、値又は範囲のある程度の変動、例えば、記載された値又は記載された範囲の限界の10%以内、5%以内、又は1%以内を可能にすることができる。
【0032】
本開示で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という用語は、文脈上他に明確に指示されない限り、1つ又は1つよりも多くを含むように使用される。「又は」という用語は、特に明記しない限り、非排他的な「又は」を指すために使用される。「A及びBの少なくとも一方」という記載は、「A、B、又はAとB」と同義である。さらに、本開示で使用される、他に定義されていない表現又は用語は、説明のみを目的としており、限定を目的としていないことを理解されたい。セクションの見出しの任意の使用は、文書の読み取りを助けることを意図しており、限定するものとして解釈されるべきではない。セクションの見出しに関連する情報は、その特定のセクションの内部又は外部で発生し得る。
【0033】
本開示に記載の方法では、時間的順番又は動作的順番が明示的に記載されている場合を除いて、動作は任意の順序で実行することができる。さらに、明示的な請求項の文言が個別に実行されることを明記していない限り、指定された動作は同時に実行することができる。例えば、Xを行う特許請求された動作及びYを行う特許請求された動作は、単一の操作内で同時に行うことができ、結果として生じるプロセスは、特許請求されたプロセスの文字通りの範囲内に入る。
【0034】
「エマルションブレーカー」としても知られる「解乳化剤」は、原油を水から分離するために使用される化学物質である。解乳化剤は、乳化剤の安定化効果を中和するように設計された化学物質である。解乳化剤は、エマルションに添加されると、油/水界面に移動し、硬い膜を破裂させるか又は弱め、水滴の合体を促進する表面活性化合物である。油及び水のエマルションを分離するプロセスは「解乳化」として知られており、化学的解乳化剤のエマルションへの添加を含む様々な方法で行うことができる。いくつかの実施形態では、解乳化剤は、本明細書で「解乳化ポリマー」と呼ばれるポリマーである。
【0035】
本明細書で使用される「脱水」は、原油から水を除去又は分離するプロセスである。いくつかの実施形態では、水は、油中水型エマルションであるエマルションから除去又は分離される。
【0036】
本開示で使用される場合、「地下地層」という用語は、海洋の底部の表面下を含む、地球の表面下の任意の材料を指すことができる。例えば、地下地層又は材料は、坑井の任意のセクション及び坑井と流体接触している地下石油又は地下水を生成する地層又は領域の任意のセクションであり得る。地下地層に材料を配置することは、材料を坑井の任意のセクション又は坑井と流体接触している任意の地下領域と接触させることを含むことができる。地下材料は、セメント、ドリルシャフト、ライナー、チューブ、ケーシング、又はスクリーンなど、坑井に配置される任意の材料を含むことができる。材料を地下地層に配置することは、そのような地下材料と接触することを含むことができる。いくつかの例では、地下地層又は材料は、液体若しくは気体の石油材料、水を生成することができる地面下領域、又は液体若しくは気体の石油材料若しくは水と流体接触している地面下の任意のセクションであり得る。いくつかの実施形態では、地下地層は油井である。
【0037】
解乳化剤組成物
本開示では、解乳化ポリマー及びアルキルカルボン酸溶媒を含有する解乳化剤組成物が提供され、アルキルカルボン酸は、1個~8個の炭素原子及びカルボン酸官能基を含有するアルキル鎖、約2~約7のpKa、及び0.1を超えるKowを有する。解乳化剤組成物は、湿潤原油エマルションを脱水するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示の解乳化ポリマー及び溶媒を含有する組成物は、本開示の溶媒を含有しないが、他の既知の解乳化溶媒を含有する組成物と比較して、湿潤原油エマルションを脱水する際により効率的であり、より速い。
【0038】
解乳化ポリマー
本開示の解乳化剤組成物は、解乳化ポリマーを含有する。当業者に公知の任意の解乳化ポリマーを、本開示の解乳化剤組成物に使用することができる。適切な解乳化ポリマーの例には、アルコキシル化ポリアルコール、アルコキシル化ポリグリコール、及びアルコキシル化フェノールが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、解乳化ポリマーは、アルコキシル化フェノールポリマー又はアルコキシル化ポリアルコールである。
【0039】
いくつかの実施形態では、解乳化ポリマーは、アルコキシル化フェノールポリマーである。アルコキシル化フェノールポリマーは、ホルムアルデヒド-フェノール骨格並びに親油性ポリプロピレンオキシド(lipophilic polypropylene oxide、PPO)セクション及び親水性ポリエチレンオキシド(hydrophilic polyethylene oxide、PEO)セクションから構成され、ホルムアルデヒド-フェノール骨格は、飽和炭化水素鎖でパラ置換されたフェノールから構成される。いくつかの実施形態では、飽和炭化水素鎖は、4個~9個の炭素、例えば4個~8個、4個~7個、4個~6個、5個~9個、5個~8個、5個~7個、6個~9個、6個~8個、7個~9個、又は4個、5個、6個、7個、8個、若しくは9個の炭素を含有する。いくつかの実施形態では、アルコキシル化フェノールポリマーは、飽和炭化水素鎖でパラ置換されている。いくつかの実施形態では、飽和炭化水素鎖は、パラ-三級-アルキル、パラ-二級-アルキル、パラ-イソ-アルキル、パラ-シクロアルキル、及びパラ-n-アルキルから選択される。いくつかの実施形態では、飽和炭化水素鎖は、パラ-三級-ブチルフェノール、パラ-三級-アミルフェノール、パラ-三級-ヘキシルフェノール及びパラ-三級-ヘプチルフェノールから選択される。いくつかの実施形態では、解乳化ポリマーは、飽和アルキル基によって2位(プロパン鎖の中央)で置換されたプロパンセグメントで構成される炭化水素鎖を有する。適切な解乳化ポリマーの例としては、米国特許第2,499,370号明細書及び米国特許第2,557,081号明細書に開示されているものが挙げられ、これらの各々は参照によりその全体が組み込まれる。
【0040】
いくつかの実施形態では、解乳化ポリマーは、構造:
【化6】

を有する化合物であり、
式中、
Rは、1個~8個の炭素を有する飽和炭素鎖であり;
R’及びR’’は、それぞれ独立して、H及びC-Cアルキルから選択され;
式中、R、R’及びR’’中の炭素原子の総数は3~8の間であり;
PPOは、式:
【化7】

を有するポリプロピレンオキシドであり;
PEOは、式:
【化8】

を有するポリエチレンオキシドであり;
xは、0~10の整数であり;
yは、0~10の整数であり;及び
nは、3~10の整数である。
【0041】
いくつかの実施形態では、Rは、1個~8個の炭素原子、例えば、1個~7個、1個~6個、1個~5個、1個~4個、1個~3個、2個~8個、2個~7個、2個~6個、2個~5個、2個~4個、3個~8個、3個~7個、3個~6個、3個~5個、4個~8個、4個~7個、4個~6個、5個~8個、5個~7個、及び6個~8個の炭素原子を有する飽和炭化水素(アルキル)鎖である。いくつかの実施形態では、Rは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子を有するアルキル鎖である。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、直鎖である。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、分岐鎖である。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、イソ-、ネオ-又はアンテイソ-分岐パターンを有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、R’及びR’’は、それぞれ独立して、H及びC-Cアルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R’及びR’’は、それぞれ独立して、H及びメチルから選択される。いくつかの実施形態では、R’及びR’’は、それぞれHである。いくつかの実施形態では、R’及びR’’は、それぞれC-Cアルキルである。いくつかの実施形態では、R’及びR’’は、それぞれメチルである。いくつかの実施形態では、R’及びR’’は、それぞれエチルである。いくつかの実施形態では、解乳化ポリマーは、パラ位でフェノール骨格上に置換された2-イソ-アルキル-プロピル基を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、R、R’及びR’’の炭素原子の総数は、3~8、例えば3~7、3~6、3~5、4~8、4~7、4~6、5~9、5~8、5~7、6~9、6~8、7~9、又は3、4、5、6、7、8、又は9である。いくつかの実施形態では、Rは、1個~8個の炭素原子を有するアルキル鎖である。いくつかの実施形態では、Rは、1個~8個の炭素原子を有するアルキル鎖であり、R’は、C-Cアルキルであり、R’’は、C-Cアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは1個~8個の炭素原子を有するアルキル鎖であり、R’はメチルであり、R’’はメチルである。いくつかの実施形態では、Rは3個~8個の炭素原子を有するアルキル鎖であり、R’はHであり、R’’はHである。
【0044】
いくつかの実施形態では、PPO、すなわちポリプロピレンオキシドは、式:
【化9】

によって表され、式中、xは、0~10の整数、例えば0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、5~10、5~9、5~8、5~7、6~10、6~9、6~8、7~10、7~9、及び8~10である。いくつかの実施形態では、xは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。
【0045】
いくつかの実施形態では、PEO、すなわちポリエチレンオキシドは、式:
【化10】

によって表され、式中、yは、0~10の整数、例えば0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、0~3、0~2、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、5~10、5~9、5~8、5~7、6~10、6~9、6~8、7~10、7~9、及び8~10である。
【0046】
いくつかの実施形態では、x及びyは同じである。いくつかの実施形態では、x及びyは異なる。
【0047】
いくつかの実施形態では、解乳化ポリマーのフェノール骨格は、メチレンリンカーを介して連結された反復フェノール単位で構成される。いくつかの実施形態では、nは、3~10の整数、例えば3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、5~10、5~9、5~8、5~7、6~10、6~9、6~8、7~10、7~9、及び8~10である。
【0048】
本開示の解乳化剤組成物のいくつかの実施形態では、解乳化ポリマーは、構造:
【化11】

を有しており、
式中、R、x、y、及びnは、本出願に開示されている通りである。
【0049】
本開示の解乳化剤組成物のいくつかの実施形態では、解乳化ポリマーは、構造:
【化12】

を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、約25重量%~約50重量%、例えば約25重量%~約45重量%、約25重量%~約40重量%、約25重量%~約35重量%、約25重量%~約30重量%、約30重量%~約50重量%、約30重量%~約45重量%、約30重量%~約40重量%、約30重量%~約35重量%、約35重量%~約50重量%、約35重量%~約45重量%、約35重量%~約40重量%、約40重量%~約50重量%、約40重量%~約45重量%、約45重量%~約50重量%、又は約25重量%、約30重量%、約35重量%、約37重量%、約39重量%、約40重量%、約45重量%、若しくは約50重量%の解乳化ポリマーを含有する。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、約35重量%~約45重量%の解乳化ポリマーを含有する。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、約37重量%~約40重量%の解乳化ポリマーを含有する。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、約37重量%の解乳化ポリマーを含有する。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、約39重量%の解乳化ポリマーを含有する。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、約40重量%の解乳化ポリマーを含有する。
【0051】
溶媒
本開示の解乳化剤組成物は、溶媒を含有し、溶媒は、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖及びカルボン酸官能基を有するアルキルカルボン酸である。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、既知の解乳化剤組成物で使用される他の溶媒と比較して、湿潤原油エマルションから水を効率的に分離する能力をもたらすのは、本開示に記載の特性及び特徴などの、溶媒の特性及び特徴の組み合わせであると考えられる。いくつかの実施形態では、既知の解乳化剤組成物で使用される他の溶媒と比較して、湿潤原油エマルションから水を効率的に分離する能力をもたらすのは、アルキル鎖長、カルボン酸官能基、融点、沸点、pKa及びKowの1又は複数の組み合わせである。いくつかの実施形態では、溶媒と解乳化ポリマーとの組み合わせは、湿潤原油エマルションを解乳化する場合に相乗的効果をもたらす。
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示に記載される溶媒は、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖及びカルボン酸官能基を有するアルキルカルボン酸である。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、1個~8個の炭素原子、例えば1個~7個、1個~6個、1個~5個、1個~4個、1個~3個、2個~8個、2個~7個、2個~6個、2個~5個、2個~4個、3個~8個、3個~7個、3個~6個、3個~5個、4個~8個、4個~7個、4個~6個、5個~8個、5個~7個、6個~8個、又は1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、若しくは8個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、1個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、2個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、3個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、4個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、5個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、6個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、7個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、8個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、直鎖である。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、分岐鎖である。いくつかの実施形態では、アルキル鎖は、それだけに限らないが、イソ-、ネオ-、アンテイソ-、及び2-アルキル-2-プロピル基を含む分岐パターンを有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、本開示に記載されるアルキルカルボン酸溶媒は、地下地層で典型的に見られる操作温度で溶媒が液体であることを可能にする融点を有する。いくつかの実施形態では、操作温度は、約30℃~約70℃である。したがって、いくつかの実施形態では、溶媒は、約30℃未満の融点、例えば約25℃未満、約20℃未満、約15℃未満、約10℃未満、又はそれ未満の融点を有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、約10℃未満~約15℃未満の融点を有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、約15℃未満の融点を有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、約10℃未満の融点を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示に記載されるアルキルカルボン酸溶媒は、地下地層で典型的に見られる操作温度で溶媒が実質的に蒸発しないように沸点を有する。いくつかの実施形態では、操作温度は、約30℃~約70℃である。したがって、いくつかの実施形態では、溶媒は、約70℃超の沸点、例えば約75℃超の沸点、約80℃超の沸点、約85℃超の沸点、約90℃超の沸点、又はそれよりも高い沸点を有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、約80℃超~約90℃の沸点を有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、約80℃超の沸点を有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、約90℃超の沸点を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示に記載されるアルキルカルボン酸溶媒は、約2~約7、例えば約2~約6.5、約2~約6、約2~約5.5、約2~約5、約2~約4.5、約2~約4、約2~約3.5、約2~約3、約2~約2.5、約2.5~約7、約2.5~約6.5、約2.5~約6、約2.5~約5.5、約2.5~約5、約2.5~約4.5、約2.5~約4、約2.5~約3.5、約2.5~約3、約3~約7、約3~約6.5、約3~約6、約3~約5.5、約3~約5、約3~約4.5、約3~約4、約3~約3.5、約3.5~約7、約3.5~約6.5、約3.5~約6、約3.5~約5.5、約3.5~約5、約3.5~約4.5、約3.5~約4、約4~約7、約4~約6.5、約4~約6、約4~約5.5、約4~約5、約4~約4.5、約4.5~約7、約4.5~約6.5、約4.5~約6、約4.5~約5.5、約4.5~約5、約5~約7、約5~約6.5、約5~約6、約5~約5.5、約5.5~約7、約5.5~約6.5、約5.5~約6、約6~約7、約6~約6.5、約6.5~約7、又は約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、若しくは約7のpKaを有する。いくつかの実施形態では、本開示に記載されるアルキルカルボン酸溶媒は、約3~約6のpKaを有する。いくつかの実施形態では、本開示に記載されるアルキルカルボン酸溶媒は、約4~約5のpKaを有する。溶媒のpKaは、一般に約2以上、例えば約2~約7である。約2のpKa未満では、溶媒の酸性度は、解乳化ポリマー、例えばアルコキシル化フェノールポリマーを分解する可能性があり、機器(タンク、ポンプ、パイプ)を腐食させる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、溶媒は、スルホン酸又は炭素数1~8のアルキル鎖を有するモノエステル硫酸ではない。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示に記載されるアルキルカルボン酸溶媒は、親水性よりも親油性である。この特性は、オクタノール及び水の係数分配(Kow)によって定量することができる。いくつかの実施形態では、本開示の溶媒は、約0.1を超えるKowを有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、約0.3を超える、約0.5を超える、約1.0を超える、約1.25を超える、約1.5を超える、約2を超える、約2.5を超える、約3を超える、又はそれよりも大きなKowを有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本開示に記載されるアルキルカルボン酸溶媒は、使用するのに安全である。いくつかの実施形態では、溶媒は非毒性である。いくつかの実施形態では、溶媒は高度に可燃性ではない。
【0058】
本開示の例示的な溶媒は、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖及びカルボン酸官能基、並びに約2~約7のpKa、0.1を超えるKow、約15℃以下の融点及び約80℃以上の沸点のうちの1又は複数を有するアルキルカルボン酸を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は吉草酸である。いくつかの実施形態では、溶媒はカプリル酸である。いくつかの実施形態では、溶媒は酢酸である。いくつかの実施形態では、溶媒はプロピオン酸である。
【0059】
いくつかの実施形態では、溶媒は、アルキル鎖中に、ヒドロキシ基を有するカルボン酸(例えば、乳酸)、1又は複数の芳香環を有するカルボン酸、又は8個を超える炭素を有するカルボン酸ではない。いくつかの実施形態では、溶媒はピバル酸ではない。
【0060】
いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物中の溶媒の総量は、約20重量%~約60重量%、例えば約20重量%~約55重量%、約20重量%~約50重量%、約20重量%~約45重量%、約20重量%~約40重量%、約20重量%~約35重量%、約20重量%~約30重量%、約20重量%~約25重量%、約25重量%~約60重量%、約25重量%~約55重量%、約25重量%~約50重量%、約25重量%~約45重量%、約25重量%~約40重量%、約25重量%~約35重量%、約25重量%~約30重量%、約30重量%~約60重量%、約30重量%~約55重量%、約30重量%~約50重量%、約30重量%~約45重量%、約30重量%~約40重量%、約30重量%~約35重量%、約35重量%~約60重量%、約35重量%~約55重量%、約35重量%~約50重量%、約35重量%~約45重量%、約35重量%~約40重量%、約40重量%~約60重量%、約40重量%~約55重量%、約40重量%~約50重量%、約40重量%~約45重量%、約45重量%~約60重量%、約45重量%~約55重量%、約45重量%~約50重量%、約50重量%~約60重量%、約50重量%~約55重量%、約55重量%~約60重量%、又は約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約49重量%、約50重量%、約52重量%、約55重量%、若しくは約60重量%である。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物中の溶媒の総量は、約45重量%~約55重量%である。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物中の溶媒の総量は、約49重量%である。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物中の溶媒の総量は、約50重量%である。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物中の溶媒の総量は、約52重量%である。
【0061】
いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、1又は複数の清澄剤を含有する。適切な清澄剤の例には、トリメチルベンゼン、ナフタレン、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、清澄剤は、トリメチルベンゼンである。いくつかの実施形態では、清澄剤は、1,2,4-トリメチルベンゼンである。いくつかの実施形態では、清澄剤は、ナフタレンである。いくつかの実施形態では、清澄剤は、1,2,4-トリメチルベンゼンとナフタレンとの混合物である。
【0062】
いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物中の清澄剤の量は、約0.1重量%~約10重量%、例えば約0.1重量%~約9重量%、約0.1重量%~約8重量%、約0.1重量%~約7重量%、約0.1重量%~約6重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.1重量%~約4重量%、約0.1重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%、約0.1重量%~約1重量%、約0.1重量%~約0.5重量%、約0.5重量%~約10重量%、約0.5重量%~約9重量%、約0.5重量%~約8重量%、約0.5重量%~約7重量%、約0.5重量%~約6重量%、約0.5重量%~約5重量%、約0.5重量%~約4重量%、約0.5重量%~約3重量%、約0.5重量%~約2重量%、約0.5重量%~約1重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約9重量%、約1重量%~約8重量%、約1重量%~約7重量%、約1重量%~約6重量%、約1重量%~約5重量%、約1重量%~約4重量%、約1重量%~約3重量%、約1重量%~約2重量%、約2重量%~約10重量%、約2重量%~約9重量%、約2重量%~約8重量%、約2重量%~約7重量%、約2重量%~約6重量%、約2重量%~約5重量%、約2重量%~約4重量%、約2重量%~約3重量%、約3重量%~約10重量%、約3重量%~約9重量%、約3重量%~約8重量%、約3重量%~約7重量%、約3重量%~約6重量%、約3重量%~約5重量%、約3重量%~約4重量%、約4重量%~約10重量%、約4重量%~約9重量%、約4重量%~約8重量%、約4重量%~約7重量%、約4重量%~約6重量%、約4重量%~約5重量%、約5重量%~約10重量%、約5重量%~約9重量%、約5重量%~約8重量%、約5重量%~約7重量%、約5重量%~約6重量%、約6重量%~約10重量%、約6重量%~約9重量%、約6重量%~約8重量%、約6重量%~約7重量%、約7重量%~約10重量%、約7重量%~約9重量%、約7重量%~約8重量%、約8重量%~約10重量%、約8重量%~約9重量%、約9重量%~約10重量%、又は約0.1重量%、約0.5重量%、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、若しくは約10重量%である。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物中の清澄剤の量は、約5重量%~約10重量%である。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物中の清澄剤の量は、約0.1重量%~約5重量%である。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物中の清澄剤の量は、約10重量%である。いくつかの実施形態では、清澄剤は、1,2,4-トリメチルベンゼンである。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物は、本開示の溶媒に加えて、1又は複数の他の溶媒をさらに含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、乳化剤の応答を増加させる(より少ない遅延時間)ために1又は複数の追加の溶媒を含有する。いくつかの実施形態では、1又は複数の追加の溶媒は、アルコール、アルキレングリコール、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、1又は複数の追加の溶媒は、メタノール、ジエチレングリコール、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物は、カプリル酸、メタノール、及びジエチレングリコールを含有する。
【0064】
したがって、本開示に記載の解乳化ポリマー及び溶媒を含有する解乳化剤組成物が本開示で提供される。いくつかの実施形態では、溶媒は、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖、約2~約7のpKa、約0.1を超えるKow、約15℃以下の融点、及び約80℃以上の沸点を有するアルキルカルボン酸である。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、清澄剤を含有する。
【0065】
本開示に記載の解乳化ポリマー及び溶媒を含有する解乳化剤組成物も本開示で提供される。いくつかの実施形態では、溶媒は、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖、約3~約6のpKa、約0.1を超えるKow、約15℃以下の融点、及び約80℃以上の沸点を有するアルキルカルボン酸である。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、清澄剤を含有する。
【0066】
本開示に記載の解乳化ポリマー及び溶媒を含有する解乳化剤組成物も本開示で提供される。いくつかの実施形態では、溶媒は、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖、約3~約6のpKa、約0.1を超えるKow、約10℃以下の融点、及び約90℃以上の沸点を有するアルキルカルボン酸である。
【0067】
いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、約25重量%~約50重量%の解乳化ポリマー、約20重量%~約60重量%の本開示に記載の溶媒、及び約0.1重量%~約10重量%の清澄剤を含有する。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、約35重量%~約45重量%の解乳化ポリマー、約45重量%~約55重量%の本開示に記載の溶媒、及び約10重量%~約15重量%の清澄剤を含有する。
【0068】
解乳化ポリマーを含有する解乳化剤組成物の使用方法
解乳化ポリマーと、1個~8個の炭素原子のアルキル鎖及びカルボン酸官能基を有するアルキルカルボン酸である溶媒とを含有する本開示の解乳化剤組成物は、アルコール、アルコールエーテル、及びナフサ(芳香族、長鎖及び環状アルカン、並びに重質炭化水素)などの解乳化剤組成物に一般的に見られる他の溶媒を含有するものなどの既知の解乳化剤組成物よりも、湿潤原油エマルションの脱水に対して高い活性を有する。驚くべきことに、本開示の溶媒は、解乳化ポリマーと組み合わせて、本開示の解乳化剤組成物の水分離活性を有意に増加させることが見出された。いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物は、同じエマルションでの水分離にほとんど又は全く効果を示さなかったものを含む既知の解乳化剤組成物よりも油中水型エマルションから水を分離するのに有効である。いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物は、掘削作業のための地下地層の油中水型エマルションに使用される。いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物は、ガス-油分離プラントでの油田生産に使用される。いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物は、製油所での脱塩に使用される。したがって、本開示では、そのような用途のために本開示の溶媒を含有する解乳化剤組成物を使用する方法が提供される。
【0069】
本方法のいくつかの実施形態では、本開示の解乳化ポリマー及び溶媒を含有する解乳化剤組成物は、50ppm及び30℃で約60分後に分離される約10mLを超える水、例えば約11mL、約12mL、約13mL、約14mL、約15mL、約16mL、約17mL、約18mL、約19mL、約20mL、約21mL、約22mL、約23mL、約24mL、約25mL、又はそれを超える水を生じる。いくつかの実施形態では、本開示の解乳化ポリマー及び溶媒を含有する解乳化剤組成物は、50ppm及び30℃で約60分後に油中水型エマルションから少なくとも約35体積%、例えば少なくとも約40体積%、約45体積%、約50体積%、約55体積%、約60体積%、約65体積%、約70体積%、約75体積%、約80体積%、約85体積%、約90体積%、約95体積%、又はそれを超える水を除去する。いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物を使用して油中水型エマルションから分離される水の体積は、本開示の溶媒以外の溶媒を含有する公知の解乳化剤組成物を使用して油中水型エマルションから分離される水の体積の少なくとも約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、又はそれを超える。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物は、原油生産で遭遇するエマルションを分解するために使用される。いくつかの実施形態では、本開示の解乳化剤組成物は、GOSPに入る前に注入することによって、脱塩の前に原油に注入することによって、又は石油生産と最終石油貯蔵タンクとの間の時点で原油プロセス流に注入することによって、原油エマルションに導入される。解乳化剤組成物は、連続的に又はバッチ方式で注入することができる。いくつかの実施形態では、注入は、電気ポンプ又はガスポンプを使用して達成される。
【0071】
注入後、いくつかの実施形態では、処理された原油エマルションは、水と油の別個の層への所望の分離が生じるまで静止状態で放置される。水と油の別個の層への分離が行われると、当業者に知られている任意の手段を利用して、遊離水を取り出し、原油を分離することができる。
【0072】
油中水型エマルションの脱水方法も本開示において提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、本開示に記載の解乳化ポリマー及び溶媒を含む解乳化剤組成物を油中水型エマルションに添加することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、エマルションから水を分離することを含む。いくつかの実施形態では、油中水型エマルションは、原油エマルションである。いくつかの実施形態では、原油エマルションは、製油所脱塩エマルションである。いくつかの実施形態では、原油エマルションは、原油生産エマルションである。
【0073】
本開示では、エマルションを含有する生成石油を処理する方法も提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、エマルションを含有する生成石油を解乳化剤組成物と接触させて、エマルションを低減又は排除することを含む。いくつかの実施形態では、解乳化剤組成物は、本開示に記載の解乳化ポリマー及び溶媒を含有する。
【実施例
【0074】
実施例1-解乳化剤配合物の調製
アルコキシル化フェノール系解乳化ポリマー、清澄剤及び一連の溶媒を含有する一連の解乳化剤配合物を調製した。
【0075】
配合物に使用された解乳化アルコキシル化フェノールポリマーは、親油性ポリプロピレンオキシド(PPO)セクション及び親水性ポリエチレンオキシド(PEO)セクションを有するホルムアルデヒド-フェノール骨格を含有した。PEO及びPPOのモノマー反復は、4単位を中心として3~6の範囲であった(H-NMRによって決定)。ホルムアルデヒド-フェノール骨格は、7個の炭素から構成されるパラ飽和炭化水素鎖を有するフェノールから構成され、パラ-三級-アルキル部分を形成した。フェノール骨格は、7単位を中心として5~10のフェノール単位で構成されていた(H-NMRによって決定)。解乳化ポリマーは、4278g/molの数平均分子量(Mn)(GPC及びMALDI-TOFによって決定)及び構造:
【化13】

を有していた。
【0076】
解乳化アルコキシル化フェノールポリマーを、清澄剤及び溶媒と表1に示す量で組み合わせた。
【表1】
【0077】
清澄剤は1,2,4-トリメチルベンゼンであったが、ナフタレン又はこれらの化合物の組み合わせも使用することができた。
【0078】
実施例2-エマルションのボトル試験
アラビア中質原油で作られたエマルションについて、ボトル試験を行った。ボトル試験のサイズは100mLであった。この試験で使用されたアラビア中質原油は、API比重が28.8°であり、30重量%の飽和炭化水素、34重量%の芳香族、11重量%の樹脂(NSO)、及び25重量%のアスファルテンで構成されていた。湿潤原油エマルションは、80℃の高温まで非常に安定である。ボトル試験の方法論は、Raynel et al.(Oil Gas Sci.Technol.-Rev.IFP Energies Nouvelles(2021)76:19)に記載のものであった。
【0079】
50ppm及び30℃での様々な解乳化剤配合物の水分離性能を図1に示す。すべての既知の溶媒(表1のエントリ1~6)は、60分後に分離されたおよそ10mLの水を生じた。本開示の溶媒(表1のエントリ8~11)は、炭素数の増加に伴って水分離性能の増加を示した。メタンスルホン酸(MeSOH)では水分離は観察されなかったが、カプリル酸では22mLの水分離が観察された。エマルションの水含有量は30体積%の水であった。カプリル酸は、60分後にエマルションから72体積%の水を除去した。
【0080】
分離された水と、これらの酸性溶媒のオクタノール及び水の係数分配(Kow)との間に線形回帰を描くことができる(図2の対角線)。
【0081】
同じアルコール系列間の関係は観察されなかったが、市販の溶媒で分離できる水の上限があるようであった(エントリ1~6)。
図1
図2
【国際調査報告】