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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】カテーテル安定化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/02 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A61M25/02 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535656
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 IB2022061656
(87)【国際公開番号】W WO2023111747
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/290,927
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】アラン アール.ドムブロースキー
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB04
4C267BB19
4C267BB23
4C267BB32
4C267BB40
4C267CC01
4C267CC08
4C267GG02
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG08
4C267GG14
4C267HH08
(57)【要約】
カテーテル取付システムは、接着性取付層と、カテーテルを保持するためのポリマー硬質物品100とを含む。ポリマー硬質物品は、2つのインターロッキング部材を含む、ヒンジ式物品である。第1の部材は、カテーテルのハブを保持するように設計された固定表面を有する保持部材120である。固定表面は、0.5以上の値の高い摩擦係数を有する適合層である。第2の部材130は、保持部材にヒンジ式に連結されたカバー部材であり、カバー部材は、閉じられたときに保持部材の固定表面の少なくとも一部に接触して、カテーテルのハブを保持するように設計されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルを患者に取り付けるための取付システムであって、
第1の主表面と第2の主表面とを有する接着性取付層であって、前記第1の主表面が、哺乳動物の皮膚への取付に適した接着表面を含む、接着性取付層と、
カテーテルを保持するためのポリマー硬質物品と、を備え、前記ポリマー硬質物品が、
第1の主表面と第2の主表面とを有するベース層であって、
前記第1の主表面は、前記接着性取付層の前記第2の主表面と接触している、ベース層と、
少なくとも2つのインターロッキング部材を含むヒンジ式物品と、を備え、前記ヒンジ式物品が、
2つの主表面を有する保持部材である第1の部材であって、前記保持部材の前記第1の主表面が、前記ベース層の前記第2の主表面と接触しているか、又は、
前記保持部材の前記第1の主表面が、前記ベース層であり、前記保持部材の前記第2の主表面が、カテーテルのハブを保持するように設計された固定表面を含み、かつ前記保持部材の前記第2の主表面が、0.5以上の値の高い摩擦係数を有する適合層を少なくとも含む、第1の部材と、
前記保持部材にヒンジ式に連結されたカバー部材である第2の部材であって、前記カバー部材は、2つの主表面を備え、前記カバー部材の前記第1の主表面は、閉じられたときに、前記保持部材の前記第2主表面の少なくとも一部と接触するように設計されており、閉じられたときに、前記ヒンジ式物品がカテーテルの前記ハブを保持するようになっており、かつ前記カバー部材の前記第1の主表面が、適合層を含む、第2の部材と、を含む、取付システム。
【請求項2】
前記接着性取付層は、多層引き伸ばし除去可能物品を含み、前記多層引き伸ばし除去可能物品は、
少なくとも3つの層を備える多層伸長性バッキング基材であって、
第1の主表面及び第2の主表面を有する第1のプラスチックスキン層と、
第1の主表面及び第2の主表面を有するコアエラストマー層と、
第1の主表面及び第2の主表面を有する第2のプラスチックスキン層と、を含み、
前記コアエラストマー層は、前記第1のプラスチックスキン層の前記第2の主表面及び前記第2のプラスチックスキン層の前記第1の主表面と接触する、多層伸長性バッキング基材と、
前記第1のプラスチックスキン層と接触する第1の接着剤層であって、前記第1の接着剤層が、哺乳動物の皮膚への取付に適している、第1の接着剤層と、
前記第3のプラスチックスキン層と接触する第2の接着剤層であって、前記第2の接着剤層が、前記多層引き伸ばし除去可能物品を、ポリマー硬質物品に取り付ける、第2の接着剤層と、を備える、請求項1に記載の取付システム。
【請求項3】
前記非伸長性材料が、ポリエステル、ポリウレタン、(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の取付システム。
【請求項4】
前記コアエラストマー層が、SEBS、SEPS、SIS、SBS、ポリウレタン、エチルビニルアセテート(EVA)、エチルメチルアクリレート(EMA)、超低密度ポリエチレン(ULLDPE)、水素化ポリプロピレン、及びこれらの組み合わせ又はブレンドのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の取付システム。
【請求項5】
前記第1のスキン層又は前記第2のスキン層が、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリウレタン、EVA、EMA、及びこれらの組み合わせ又はブレンドを含む、請求項2に記載の取付システム。
【請求項6】
前記伸長性基材の周辺部分に1つ以上のタブを更に含む、請求項2に記載の取付システム。
【請求項7】
前記ヒンジ式物品が、前記ベース層から取り外し可能であり、かつ前記ベース層に再取り付け可能である、請求項1に記載の取付システム。
【請求項8】
前記保持部材の前記第2の主表面が、第1の(縁部)セクション、第2の(中央)セクション、及び第3の(縁部)セクションを含む、少なくとも3つのセクションを含み、前記第2のセクションが、前記第1のセクション及び前記第3のセクションに対して窪みをなしている、請求項1に記載の取付システム。
【請求項9】
前記保持部材の前記第2の主表面の少なくとも一部が、前記保持部材上に配設されかつ適合層を含む第1の層と、前記第1の層上に配設されかつ高摩擦係数表面を含む第2の層とを含む、少なくとも2つの層を含む、請求項1に記載の取付システム。
【請求項10】
前記第1の層は、発泡体又はゴムポリマーを含む、請求項9に記載の取付システム。
【請求項11】
前記保持部材の前記第2の主表面の少なくとも前記固定部分の前記表面は、微細構造化表面を含む、請求項1に記載の取付システム。
【請求項12】
前記カバー部材の前記第1の主表面が、0.5以上の値の高い摩擦係数を有する層を含む、請求項1に記載の取付システム。
【請求項13】
医療用構造物であって、
患者の哺乳動物の皮膚を含む表面と、
前記患者に取り付けられたカテーテルであって、前記カテーテルはハブを備える、カテーテルと、
前記患者の前記哺乳動物の皮膚に取り付けられ、前記カテーテルハブを保持する取付システムであって、前記取付システムは、
第1の主表面と第2の主表面とを有する接着性取付層であって、前記第1の主表面が、哺乳動物の皮膚への取付に適した接着表面を含む、接着性取付層と、
カテーテルを保持するためのポリマー硬質物品と、を備え、前記ポリマー硬質物品が、
第1の主表面と第2の主表面とを有するベース層であって、前記第1の主表面は、前記接着性取付層の前記第2の主表面と接触している、ベース層と、
少なくとも2つのインターロッキング部材を含むヒンジ式物品と、を備え、前記ヒンジ式物品が、
2つの主表面を有する保持部材である第1の部材であって、前記保持部材の前記第1の主表面が、前記ベース層の前記第2の主表面と接触しているか、又は、
前記保持部材の前記第1の主表面が、前記ベース層であり、前記保持部材の前記第2の主表面が、カテーテルのハブを保持するように設計された固定表面を含み、かつ前記保持部材の前記第2の主表面が、0.5以上の値の高い摩擦係数を有する適合層を少なくとも含む、第1の部材と、
前記保持部材にヒンジ式に連結されたカバー部材である第2の部材であって、前記カバー部材は、2つの主表面を備え、前記カバー部材の前記第1の主表面は、閉じられたときに、前記保持部材の前記第2主表面の少なくとも一部と接触するように設計されており、閉じられたときに、前記ヒンジ式物品がカテーテルの前記ハブを保持するようになっており、かつ前記カバー部材の前記第1の主表面が、0.5以上の値の高い摩擦係数を有する適合層を含む、第2の部材と、を含む、医療用構造体。
【請求項14】
前記接着性取付層は、多層引き伸ばし除去可能物品を含み、前記多層引き伸ばし除去可能物品は、
少なくとも3つの層を備える多層伸長性バッキング基材であって、
第1の主表面及び第2の主表面を有する第1のプラスチックスキン層と、
第1の主表面及び第2の主表面を有するコアエラストマー層と、
第1の主表面及び第2の主表面を有する第2のプラスチックスキン層と、を含み、
前記コアエラストマー層は、前記第1のプラスチックスキン層の前記第2の主表面及び前記第2のプラスチックスキン層の前記第1の主表面と接触する、多層伸長性バッキング基材と、
前記第1のプラスチックスキン層と接触する第1の接着剤層であって、前記第1の接着剤層が、哺乳動物の皮膚への取付に適している、第1の接着剤層と、
前記第3のプラスチックスキン層と接触する第2の接着剤層であって、前記第2の接着剤層が、前記多層引き伸ばし除去可能物品を、ポリマー硬質物品に取り付ける、第2の接着剤層と、を備える、請求項13に記載の医療用構造体。
【請求項15】
前記伸長性基材の周辺部分に1つ以上のタブを更に含む、請求項14に記載の医療用構造体。
【請求項16】
前記1つ以上のタブが、前記ポリマー硬質物品内に折り込まれる、請求項15に記載の医療用構造体。
【請求項17】
前記取付システムの少なくとも一部及び前記哺乳動物の皮膚の一部を覆うカバーフィルム物品を更に備える、請求項13に記載の医療用構造体。
【請求項18】
前記ヒンジ式物品が、前記ベース層から取り外し可能であり、かつ前記ベース層に再取り付け可能である、請求項13に記載の医療用構造体。
【請求項19】
前記保持部材の前記第2の主表面の前記固定部分が、前記保持部材の前記第2の主表面の残りの部分に対する窪みを含む、請求項13に記載の医療用構造体。
【請求項20】
前記保持部材の前記第2の主表面の少なくとも前記固定部分が、前記保持部材上に配設されかつ適合層を含む第1の層と、前記第1の層上に配設されかつ0.5以上の値を有する高摩擦係数表面を含む第2の層とを含む、少なくとも2つの層を含む、請求項13に記載の医療用構造体。
【請求項21】
前記第1の層は、発泡体又はゴムポリマーを含む、請求項20に記載の医療用構造体。
【請求項22】
前記保持部材の前記第2の主表面の少なくとも前記固定部分の前記表面は、微細構造化表面を含む、請求項13に記載の医療用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カテーテルを患者に取り付けるための取付システム、及びそのような取付システムを含む医療用構造体が、本明細書で開示される。
【発明の概要】
【0002】
いくつかの実施形態において、取付システムは、第1の主表面及び第2の主表面を有する接着性取付層であって、第1の主表面が、哺乳動物の皮膚への取付に好適な接着表面を含む、接着性取付層と、カテーテルを保持するためのポリマー硬質物品とを含む。ポリマー硬質物品は、第1の主表面及び第2の主表面を有するベース層であって、第1の主表面が、接着性取付層の第2の主表面と接触している、ベース層と、少なくとも2つのインターロッキング部材を含むヒンジ式物品とを含む。ヒンジ式物品は、2つの主表面を含む保持部材である第1の部材を含み、保持部材の第1の主表面は、ベース層の第2の主表面と接触しているか、又は保持部材の第1の主表面はベース層であって、かつ保持部材の第2の主表面は、カテーテルのハブを保持するように設計された固定表面を含む。保持部材の第2の主表面は、0.5以上の値の高い摩擦係数を有する適合層を少なくとも含む。第2の部材は、保持部材にヒンジ式に連結されたカバー部材であり、カバー部材は2つの主表面を備え、カバー部材の第1の主表面は、閉じられたときに、保持部材の第2の主表面の少なくとも一部に接触するように設計されており、閉じられたときに、ヒンジ式物品がカテーテルのハブを保持するようになっている。カバー部材の第1の主表面は、適合層を含む。
【0003】
また患者の哺乳動物の皮膚を含む表面と、患者に取り付けられたカテーテルであって、カテーテルはハブを含む、カテーテルと、患者の哺乳動物の皮膚に取り付けられかつカテーテルハブを保持する、取付システムと、を含む医療用構造体も、本明細書で開示される。取付システムは、上記で説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本出願は、添付の図面に関連させて本開示の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することで、より完全に理解され得る。
図1A】本開示の硬質物品の斜視図である。
図1B】本開示の硬質物品の斜視図である。
図2】本開示の別の硬質物品の斜視図である。
図3A】使用中の本開示のカテーテル安定化装置の斜視図である。
図3B】使用中の本開示のカテーテル安定化装置の斜視図である。
図3C】使用中の本開示のカテーテル安定化装置の斜視図である。
図4A】使用中の本開示の別のカテーテル安定化装置の斜視図である。
図4B】使用中の本開示の別のカテーテル安定化装置の斜視図である。
【0005】
図示された実施形態の以下の説明では、本開示が実施され得る種々の実施形態が例証として示される、添付図面を参照する。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態を利用することができ、構造上の変更を行うことができるということを理解されたい。図面は必ずしも縮尺どおりではない。図中で使用されている同様の番号は、同様の構成要素を指す。しかしながら、所与の図における構成要素を指すための番号の使用は、同じ番号でラベル付けされた別の図におけるその構成要素を限定することを意図するものではないということが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0006】
様々な医療装置が患者に取り付けられる。例えば、チューブ、モニタ、センサ、又はカテーテルが皮膚に固定される。刺激、脱落、及び感染への潜在的曝露を制限するために、医療装置は、患者にしっかりと取り付けられるべきである。接着剤及び接着テープは、装置を皮膚に固定するために、一般的に使用される。非常に強い接着剤は、除去時に皮膚に外傷を引き起こす可能性がある。非常に弱い接着剤は、皮膚から容易に除去されるが、医療装置を固定するのに十分な強度を有しない可能性がある。したがって、強力に接着するが、皮膚の損傷又は疼痛を引き起こすことなく除去可能である医療用接着物品が必要とされている。
【0007】
最近開発されたものの中には、皮膚からの接着剤物品の除去を可能にするための引き伸ばし除去可能性の使用がある。これらの物品では、表面に固定することができる固定用接着剤を有する伸長性基材と、伸長性基材を引き伸ばして下にある表面から接着剤を除去するためのタブとを有するフィルムバッキングが使用される。伸長性基材を引き伸ばすと、固定接着剤が下にある表面から容易にかつ外傷を引き起こすことなく剥離される。したがって、強力な接着剤を使用することができる。
【0008】
このメカニズムは「引き伸ばし剥離」として知られている。引き伸ばし剥離テープは、物品を、壁などの表面に固定する際に使用されることが知られている。例えば、3M COMMANDテープは、強い接着剤で両面がコーティングされた発泡体基材を有する引き伸ばし剥離テープである。2019年10月4日に出願された米国特許出願第62/910667号には、このような引き伸ばし剥離可能な医療用テープ物品が記載されている。
【0009】
患者に取り付けられる医療物品の中には、血管装置がある。血管装置は、採血、中心静脈圧の読み取り、薬剤及び流体の投与、完全静脈栄養(TPN)、及び輸血などの、診断又は治療上の理由で静脈に挿入される装置である。血管装置の中には、中心静脈アクセス装置(CVAD)又は中心静脈カテーテル(CVC)があり、これらは、流体、血液製剤、薬剤及び他の治療を血流に投与することを可能にするために静脈を通して体内に挿入される装置である。CVADは、鎖骨下静脈又は頸静脈に挿入することができ(埋め込みポート、トンネルカテーテル)、又は上肢の末梢静脈の1つに挿入することができ、末梢挿入中心静脈カテーテル(PICC)と呼ばれる。
【0010】
種々のタイプのカテーテル(例えば、静脈カテーテル、動脈カテーテル)が、病院の患者に日常的に配置され、典型的には、縫合糸、テープ、包帯、又は固定装置を使用して固定される。挿入されたカテーテルの移動は、静脈の炎症及び他の合併症につながる可能性があり、カテーテルを早すぎるタイミングで除去し、異なる静脈へカテーテルを挿入することを必要とする。これは、医療用品及び労働の両方における資源の浪費、並びに長期の患者ケア及び不快感をもたらす。更に、各患者は、その有するカテーテル挿入部位の数には限りがあるので、患者の新しい挿入部位でカテーテルを繰り返し再配置することは、このプロセスが、利用可能な挿入部位を使い果たしてしまうことから、望ましくない。
【0011】
「ユニバーサル」(これは、広範な異なるカテーテルタイプを確実に保持することができることを意味する)」であるカテーテル取付装置を有することが望ましい。カテーテルハブには、多くの異なる製造業者が存在し、これらのハブサイズは様々であり、同じ製造業者内でも様々なサイズのハブを製造している。したがって、臨床医は、多種多様なカテーテルを収容することができる固定装置を好む。典型的には、これらの製品は、接着剤除去剤又はアルコールを使用して除去されなければならない、侵襲性の高い接着剤を利用することが多い。したがって、使用が容易であり、安定した固定を提供し、皮膚への有害な反応を伴わずに穏やかに除去できる、広い範囲の血管装置のための取付システムの必要性が残っている。
【0012】
多くの異なるカテーテルの適切な固定を可能にする硬質物品設計と、患者からシステムを皮膚に優しく除去するのを可能にする、引き伸ばし除去可能なフィルム層とを含むシステムが、本明細書で開示される。取付システムは、接着性取付層と、カテーテルを保持するためのポリマー硬質物品とを含む。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「接着剤」は、2つの被着体を一緒に接着するのに有用なポリマー組成物を指す。接着剤の例は、感圧接着剤で及びゲル接着剤である。
【0014】
感圧接着剤組成物は、以下を含む特性を有することが当業者に周知である。(1)強力かつ永久的な粘着性、(2)指圧以下の圧力による接着、(3)被着体上に保持する十分な能力、及び(4)被着体からきれいに除去するのに十分な凝集力。感圧接着剤として良好に機能することが見出されている材料は、必要な粘弾性特性を示すように設計及び配合されたポリマーであり、粘着性、剥離接着力、及びせん断保持力の望ましいバランスをもたらす。特性の適切なバランスを得ることは容易なプロセスではない。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「ゲル接着剤」は、1つ以上の基材に接着することができる液体又は流体を含有する粘着性半固体架橋マトリックスを指す。ゲル接着剤は、感圧接着剤と共通のいくつかの特性を有し得るが、それらは感圧接着剤ではない。「ヒドロゲル接着剤」は、架橋マトリックス内に含有される流体として水を有するゲル接着剤である。
【0016】
用語「(メタ)アクリレート」は、アルコールのモノマーアクリル酸又はメタクリル酸エステルを指す。アクリレート及びメタクリレートモノマー又はオリゴマーは、本明細書では集合的に「(メタ)アクリレート」と称される。「(メタ)アクリレート官能性」と呼ばれる材料は、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含有する材料である。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「シロキサン系」は、シロキサン単位を含有するポリマー又はポリマーの単位を指す。シリコーン又はシロキサンという用語は、互換的に使用され、ジアルキル又はジアリールシロキサン(-SiRO-)繰り返し単位を有する単位を指す。
【0018】
用語「室温」及び「周囲温度」は、20℃~25℃の範囲の温度を意味するために互換的に使用される。
【0019】
2つの層に言及するときに本明細書で使用される用語「隣接する」は、2つの層が、それらの間に介在する開放空間なしに互いに近接していることを意味する。それらは互いに直接接触していてもよく(例えば、一緒に積層されていてもよく)、又は介在層があってもよい。
【0020】
用語「ポリマー」及び「高分子」は、化学におけるそれらの一般的な用法と一致して本明細書で使用される。ポリマー及び高分子は、多くの反復サブユニットから構成される。用語「高分子」は、本明細書で使用するとき、複数の繰り返し単位を有するモノマーに結合した基を説明するために使用される。用語「ポリマー」は、重合反応から形成される結果として得られる材料を説明するために使用される。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「微細構造化構成」は、微細構造を含有する表面を指し、用語「微細構造化」は、表面に微細構造化構成を付与することを指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「微細構造」という用語は、表面の特徴的形状の少なくとも2つの寸法が微視的である、表面の特徴的形状の構成を意味する。表面の特徴的形状の局所及び/又は断面図は、顕微鏡的なものでなければならない。微細構造は、表面に意図的に付与された特徴的形状であり、表面の自然な表面粗さとは異なる。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「顕微鏡的」は、その形状を決定するために任意の平面から見た場合に裸眼に対する視覚補助を必要とするような、十分に小さい寸法の表面の特徴的形状をいう。1つの基準は、W.J.SmithによるModem Optic Engineering,McGraw-Hill,1966,pages 104-105に見られ、それによれば、視力は、「認識され得る最小の文字の角度サイズで定義され、測定される」。正常な視力は、最小の認識可能な文字が網膜上の弧の5分の角度高さに対するものである場合であると考えられる。250mm(10インチ)の典型的な作動距離において、これは、この物体に対して0.36mm(0.0145インチ)の横方向寸法をもたらす。
【0024】
カテーテルを患者に取り付けるための取付システムが本明細書で開示される。取付システムは、接着性取付層と、カテーテルを保持するためのポリマー硬質物品とを含む。接着性取付層は、第1の主表面及び第2の主表面を有し、第1の主表面は、哺乳動物の皮膚への取付に好適な接着表面を含み、第2の主表面は、ポリマー硬質物品と接触して接着される接着表面を含む。ポリマー硬質物品は、ベース層及びヒンジ式物品を含む。ベース層は、第1の主表面及び第2の主表面を有し、第1の主表面は、接着性取付層の第2の主表面と接触している。ヒンジ式物品は、ベース層を含んでもよく、又はベース層から取り外し可能であってもよい。ヒンジ式物品は、少なくとも2つのインターロッキング部材を含み、第1の部材は保持部材であり、第2の部材は保持部材にヒンジ式に連結されたカバー部材である。保持部材は2つの主表面を含み、保持部材の第1の主表面はベース層の第2の主表面と接触しているか、又は保持部材の第1の主表面はベース層である。保持部材の第2の主表面は、カテーテルのハブを保持するように設計された固定表面を備える。保持部材の第2の主表面は、0.5以上の値の高い摩擦係数を有する適合層を少なくとも含む。カバー部材は2つの主表面を備え、カバー部材の第1の主表面は、閉じられたときに、保持部材の第2の主表面の少なくとも一部に接触するように設計されており、閉じられたときに、ヒンジ式物品がカテーテルのハブを保持するようになっている。カバー部材の第1の主表面は、0.5以上の値の高い摩擦係数を有する適合層を含む。
【0025】
接着性取付層は、多層引き伸ばし除去可能物品を含む。いくつかの実施形態では、多層引き伸ばし除去可能物品は、多層伸長性バッキング基材と、2つの接着剤層とを含む。いくつかの実施形態では、多層延伸性裏材基材は、少なくとも3つの層を含む。これらの層は、第1の主表面及び第2の主表面を有する第1のプラスチックスキン層と、第1の主表面及び第2の主表面を有するコアエラストマー層と、第1の主表面及び第2の主表面を有する第2のプラスチックスキン層とを含む。
【0026】
コアエラストマー層は、第1のプラスチックスキン層の第2の主表面と、第2のプラスチックスキン層の第1の主表面とに接触している。好適な多層伸長性バッキング基材の例は、米国特許出願第62/910667号に記載されている。多層伸長性バッキング基材において、コアはエラストマー材料を含む。「エラストマー(性)」とは、材料が、変形を引き起こす力が除去された後に、その元の形状又はサイズに少なくとも部分的に戻る、少なくともいくらかの能力を示すことを意味する。エラストマー材料の例としては、エラストマーポリマー、SEBS、SEPS、SIS、SBS、ポリウレタン、エチルビニルアセテート(EVA)、エチルメチルアクリレート(EMA)、超低密度ポリエチレン(ULLDPE)、水素化ポリプロピレン、及びこれらの組み合わせ又はブレンドが挙げられる。
【0027】
多層伸長性バッキング基材のスキン層は、同じであっても異なっていてもよく、典型的には同じである。いくつかの実施形態では、スキン層は塑性変形材料を含む。塑性変形とは、材料が、特定の値(降伏値)を超える応力を受けたときに、形状又はサイズが永久的に変化することを意味する。塑性変形材料の例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリウレタン、エチルビニルアセテート(EVA)、エチルメチルアクリレート(EMA)、及びこれらの組み合わせ又はブレンドが挙げられる。
【0028】
コア層及びスキン層は、例えば、コア及びスキン層の共押出、共成形、押出コーティング、接着剤組成物による接合、加圧下での接合、加熱下での接合、及びこれらの組み合わせを含む、任意の好適な機構を使用して互いに結合することができる。
【0029】
伸長性基材は、低いFn弾性率を有する。Fn弾性率は、伸長性基材を長く引き伸ばすのに必要な力である。Fn弾性率は、試験片を特定のパーセント(n)だけ長く引き伸ばすのに必要な力(F)である。Fn弾性率は、通常、フィルムの比較のために10%、50%、及び100%の伸びについて記録される。
【0030】
皮膚への適用に特に好適な伸長性基材は、25.4mm幅当たり20N未満のF(50%)弾性率を有する。いくつかの実施形態では、伸長性基材は、50%歪みで25.4mm幅当たり10N未満のF(50%)弾性率、又は25.4mm幅当たり5N未満のF(50%)弾性率さえ有する。
【0031】
伸びは、試験サンプルが破断点まで到達した歪みの最大パーセントである。伸長性基材は、伸長性基材を引き伸ばして引っ張るのに必要な距離を最小限に抑えるために低い伸びを有する。非常に高い伸びは、伸長性基材が、表面から剥離する前に引き伸ばされる距離が長いことを意味する。過度の引き伸ばしは、空間が制約される設定において不都合である。弾性率及び伸びは、典型的には、PSTC-31、ASTMのD882及びD3759試験方法に基づく方法によって、周囲条件(25℃及び相対湿度50%)下で測定される。試験は、一定速度の伸長/引張試験機(Instron、Zwick、又は同等物など)で行うことができる。典型的には、伸長性基材110は、600%未満の伸びを有する。いくつかの実施形態では、伸長性基材は、500%未満の伸び、300%未満の伸び、又は更には少なくとも100%の伸びを有する。
【0032】
伸長性基材の変形の大部分が塑性変形であり、その弾性変形が最小限であることが望ましい。弾性は、変形を引き起こす力が除去されたときに、変形した材料本体がその元の形状及びサイズに戻る能力である。対照的に、可塑性は、特定の値(降伏値)を超える応力を受けたときに、形状又はサイズが永久的に変化する、固体の特性である。高弾性フィルムは、フィルムが引き伸ばされるにつれて、かなりの量のエネルギーがその中に貯蔵されるので、フィルムを表面から除去するための引き伸ばし中にハザードを呈する場合がある。引き伸ばしフィルムが固定されていない場合、表面からフィルムを剥離する際に、このエネルギーが、フィルム及び任意の取り付けられた装置を、フィルムを引き伸ばしている手に向かって加速させて、場合によっては、負傷又は装置の破損をもたらす。
【0033】
塑性変形は、伸長性基材の元の長さ(Lo)、加えられた応力下で伸長性基材が到達した長さ(Ls)、及び応力が除去された後に伸長性基材が弛緩した長さ(Lr)を使用して計算される。
パーセント塑性変形=(Lr-Lo)/(Ls-Lo)×100
【0034】
例えば、5インチ(Ls)に引き伸ばされた1インチ(Lo)の長さのフィルムが、加えられた応力が除去されて4インチ(Lr)の長さに弛緩したという場合には、その塑性変形率は、75%である。((4-1)/5-1)×100)。
【0035】
伸長性基材の塑性変形は、伸長性基材へ入力されたエネルギーが、弾性構造中にポテンシャルエネルギーとして蓄積されるのではなく、フィルム形態を再配列することによって消費されるので、応力除去時に放出されるエネルギーを減少させる。蓄積されたエネルギーが少ないと、伸長性基材で定位置に保持された装置の除去中の安全性が改善される。低い弾性率と大きな程度の塑性変形とが組み合わさると、伸長性基材が、それを除去しようとする手に痛みを伴って折れるというハザードなしに、伸長性基材を片手で引き伸ばして表面から除去することを可能にする。
【0036】
伸長性基材は、少なくとも50%の塑性変形率を有する。いくつかの実施形態では、伸長性基材は、少なくとも60%、又は更には少なくとも70%の塑性変形率を有する。
【0037】
多層伸長性バッキング基材は、伸長性基材の周囲部分にタブを更に備えてもよい。このタブは非粘着性であり、接着剤物品の引き伸ばし除去に影響を与えるためにユーザーによって把持されるように設計されている。いくつかの実施形態では、タブは、接着剤を含まないフィルムバッキングの一部及び縁部である。他の実施形態では、タブは、粘着性接着剤を含まない、第1の主表面の一部を形成するための固定接着剤を覆うカバーである。したがって、ユーザーは、伸長性基材をそれが接着されている表面から取り外すために、伸長性基材を下にある表面から容易に引っ張ることができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、引き伸ばし除去可能物品は、物品の第1のタブとは反対側の端部に、第2のタブを更に備える。第2のタブは、第1のタブと同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
接着性取付層はまた、多層伸長性裏材基材上に配設された2つの接着剤層を含む。これらの接着剤層を第1接着剤層、第2接着剤層と記載する。第1の接着剤層は、第1のプラスチックスキン層と接触しており、第1の接着剤層は、哺乳動物の皮膚への付着に適している。第2の接着剤層は、第3のプラスチックスキン層と接触しており、第2の接着剤層は、多層引き伸ばし除去可能物品をポリマー硬質物品に取り付ける。
【0040】
第1の接着剤層は、連続していても不連続であってもよく、引き伸ばし除去可能な物品をヒトの皮膚に接着するのに適している。典型的には、固定接着剤は感圧接着剤である。好適な種類の感圧接着剤としては、ゴム系接着剤、シロキサン系接着剤、及び(メタ)アクリレート系接着剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、接着剤としては、天然ゴムなどの粘着付与ゴム接着剤、オレフィン、シロキサン、例えばシリコーンポリ尿素、合成ゴム接着剤、例えばポリイソプレン、ポリブタジエン、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロックコポリマーとスチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、及び他の合成エラストマー;並びに粘着付与された又は粘着付与されていない(メタ)アクリレート接着剤、例えばイソオクチルアクリレートとアクリル酸とのコポリマーであって、放射線、溶液、懸濁液、又はエマルジョン技術によって重合することができるもの、ポリウレタン、シリコーンブロックコポリマー、及び上記の組み合わせを挙げることができる。接着剤は、例えば、国際特許出願公開第2015/035556号、国際特許出願公開第2015/035960号、及び米国特許出願公開第2015/034104号に記載されている接着剤のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、接着剤は粘着付与剤などの添加剤を含む。いくつかの例示的な粘着付与剤としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、ロジンエステル、及び/又はロジン酸が挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1の接着剤層は、ゲル接着剤であってもよい。「ゲル接着剤」は、1つ以上の基材に接着することができる液体又は流体を含有する粘着性の半固体架橋マトリックスである。ゲル接着剤は、感圧接着剤と共通のいくつかの特性を有し得るが、それらは感圧接着剤ではない。
【0042】
第1の接着剤層は、様々な添加剤を含んでもよいが、ただし、その添加剤は、接着剤層の接着特性を妨げないものでなければならない。特に好適な添加剤としては、抗菌添加剤が挙げられ、これは、第1の接着剤層を抗菌接着剤層にするものである。
【0043】
広範囲の抗菌剤が、第1の接着剤層における使用に適している。好適な抗菌添加剤としては、塩化ベンザルコニウム、銅、銀、四級アンモニウム化合物、ポリヘキサメチレンビグアニド、グルコン酸クロルヘキシジン、脂肪酸モノエステルが挙げられる。
【0044】
第2の接着剤層は、連続であっても不連続であってもよく、多層引き伸ばし除去可能物品をポリマー硬質物品に取り付ける。典型的には、この層は感圧接着剤である。第2の接着剤層は、第1の接着剤層とは異なることが多いが、それは、第2の接着剤層は、哺乳動物の皮膚用の接着剤ではないからである。広範囲の感圧接着剤が好適である。第2の接着剤層に有用な感圧接着剤としては、粘着付与天然ゴム、合成ゴム、粘着付与スチレンブロックコポリマー、ポリビニルエーテル、アクリル、ポリ-o-オレフィン、及びシリコーンが挙げられる。
【0045】
第1の接着剤層は、様々な添加剤を含んでもよいが、ただし、その添加剤は、接着剤層の接着特性を妨げないものでなければならない。特に好適な添加剤としては、抗菌添加剤が挙げられ、これは、第1の接着剤層を抗菌接着剤層にするものである。
【0046】
広範囲の抗菌剤が、第1の接着剤層における使用に適している。好適な抗菌添加剤としては、塩化ベンザルコニウム、銅、銀、四級アンモニウム化合物、ポリヘキサメチレンビグアニド、グルコン酸クロルヘキシジン、脂肪酸モノエステルが挙げられる。
【0047】
取付システムはまた、硬質物品を含む。ポリマー硬質物品は、ベース層及びヒンジ式物品を含む。いくつかの実施形態において、ベース層は、ヒンジ式物品の一部であり、他の実施形態において、ベース層は、別体のユニットであり、ヒンジ式物品は、ベース層から取り外し可能である。これらの実施形態の各々を以下に説明する。
【0048】
ベース層は、第1の主表面及び第2の主表面を有し、第1の主表面は、上述の接着性取付層の第2の主表面と接触している。ベース層が別体のユニットである実施形態では、ベース層の第2の主表面は、ヒンジ式物品が取り外し可能に接着される表面である。他の実施形態では、ベース層はヒンジ式物品の一部である。
【0049】
ベース層が別体のユニットである実施形態では、ベース層は典型的には平面物品である。これらの実施形態では、ベース層は患者に取り付けられたままであることができる一方で、ヒンジ式物品は所望に応じて取り付けられ、かつまた取り外されることができる。ベース層は、ヒンジ式物品をベース層に保持するための取り外し可能な取付システムを含む。典型的には、この取り外し可能な取付システムは、スナップ式、留め金式などの機械的システムである。
【0050】
ヒンジ式物品は、ベース層を含むかベース層とは別体であるかにかかわらず、その設計が類似している。ヒンジ式物品は、少なくとも2つのインターロッキング部材を含み、第1の部材は保持部材であり、第2の部材は保持部材にヒンジ式に連結されたカバー部材である。保持部材は2つの主表面を含み、保持部材の第1の主表面はベース層の第2の主表面と接触しているか、又は保持部材の第1の主表面はベース層である。保持部材の第2の主表面は、カテーテルのハブを保持するように設計された固定表面を備える。保持部材の第2の主表面は、0.5以上の値の高い摩擦係数を有する適合層を少なくとも含む。カバー部材は2つの主表面を備え、カバー部材の第1の主表面は、閉じられたときに、保持部材の第2の主表面の少なくとも一部に接触するように設計されており、閉じられたときに、ヒンジ式物品がカテーテルのハブを保持するようになっている。カバー部材の第1の主表面は、0.5以上の値の高い摩擦係数を有する適合層を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、保持部材の固定表面は、単一の表面ではなく、異なるサブセクションに細分される。これは、カテーテルハブを保持するのを助け、ハブのための受け入れ空間を提供するのに有用であり得る。多くの実施形態では、カテーテルハブは、より厚い中央セクションと、このより厚い中央セクションに取り付けられた2つのウイングセクションとを有する。カテーテルハブのこれらのセクションを収容するために、いくつかの実施形態では、固定表面は少なくとも3つのサブセクションを含む。いくつかの実施形態では、3つのセクションは、第1の(縁部)セクション、第2の(中央)セクション、及び第3の(縁部)セクションを含み、第2のセクションが第1のセクション及び第3のセクションに対して窪みをなしている。この窪みは、ハブのより厚い中央セクションのための受け入れ空間を形成し、2つの縁部分は、ハブのウイングセクションを固定するための場所を形成する。固定表面のサブセクションは、以下に記載されるような同じ材料(単数又は複数)から調製され得るか、又はサブセクションは、異なる材料から調製され得る。
【0052】
保持部材の固定表面は、サブセクションに分割されており、多層面であってもよい。保持部材は、閉じられたときにカテーテルハブを保持するように設計されたヒンジ式物品であるので、保持部材の表面が適合性であることが望ましい。これにより、ハブを保持するときにハブをしっかりと保持するように表面が曲がることが可能になる。更に、固定されたハブの移動を防止するために、固定表面が、高い摩擦係数を有することが望ましい。いくつかの実施形態では、単一の材料が、これらの2つの特徴、適合性及び高い摩擦係数を提供し、他の実施形態では、固定表面は、少なくとも2つの層を備え、組み合わせられた2つの層が、それらの特徴を提供する。いくつかの実施形態では、固定表面は、2つの層を備え、第1の層は、保持部材上に配設され、かつ適合層を備え、第2の層は、第1の層上に配設され、高摩擦係数表面を備える。このようにして、ハブは、適合性材料によって覆われた高摩擦係数の表面に接触する。
【0053】
広範囲の材料が、第1の適合層に適している。適切な材料の中には、発泡材料、ゴムポリマーなどがある。同様に、広範囲の材料が、第2の高摩擦係数の表面に適している。様々な材料に加えて、高摩擦係数の第2の層は、様々な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、高摩擦係数の第2の層は、本質的に平滑であり、他の実施形態では、高摩擦係数の第2の層は、微細構造化構成を有する。カテーテルハブに接触する表面の微細構造化は、ハブの固定力を増大させることができる。ハブの固定力を増加させる好適な微細構造化特徴部の例としては、米国特許第7,703,169号、同第6,610,382号、及び同第6,904,615号に記載されているものが挙げられる。典型的には、微細構造化表面は、微細構造化金型を用意し、表面材料を高温でその金型に接触させて、表面に微細構造化を付与することによって調製される。微細構造化表面は、一連の凸部及び凹部を有し、凸部は一般に、少なくとも1.25のアスペクト比(高さ対幅の比)を有する。
【0054】
保持部材にヒンジ式に連結されるカバー部材の第1の主表面もまた、広範囲の材料から調製することができる。保持部材の固定表面と同様に、カバー部材の第1の主表面は、適合性があり、かつ高い摩擦係数を有する。このようにして、カテーテルの蕾状部は、高い摩擦係数を有する2つの表面によって接触されるので、しっかりと保持される。カバー部材の第1の主表面は、保持部材の固定表面と同じ材料から構成されてもよく、又は異なる材料から構成されてもよい。一般に、カバー部材の第1の主表面は、固定表面のようにサブセクションに細分されることはないが、その理由は、ヒンジ式物品が閉じられたときにカテーテルハブの固定を提供するためには、カバー部材の第1の主表面が連続的であることが、典型的に望ましいからである。固定表面と同様に、カバー部材の第1の主表面は、単一材料であってもよく、又は多層の表面であってもよい。いくつかの実施形態では、カバー部材の第1の主表面は、2つの層を備え、第1の層は、保持部材上に配設され、かつ適合層を備え、第2の層は、第1の層上に配設され、高摩擦係数表面を備える。このようにして、ハブは、適合性材料によって覆われた2つの高摩擦係数表面によって、所定の位置に保持される。
【0055】
また医療用構造体も、開示される。いくつかの実施形態では、医療用構造体は、患者の哺乳動物の皮膚を含む表面と、患者に取り付けられたカテーテルであって、ハブを含むカテーテルと、患者の哺乳動物の皮膚に取り付けられ、かつカテーテルハブを保持する取付システムとを含む。取付システムは、上記で詳細に説明されている。上述したように、取付システムは、哺乳動物の皮膚に取り付けられた接着性取付層と、カテーテルハブを保持するためのポリマー硬質物品とを含む。ポリマー硬質物品は、ベース層及びヒンジ式物品を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、医療用構造体は、上記で詳細に説明したような、多層引き伸ばし除去可能物品を含む。上述したように、接着性取付層は、接着性取付層の伸長性基材の周辺部分に、1つ以上のタブを更に含む。いくつかの実施形態では、これらのタブのうちの1つ以上がポリマー硬質物品内に折り込まれていることが望ましい。このようにして、タブは、装置が使用されている間、及び更なる操作がカテーテルを用いて実行される場合、邪魔にならない。
【0057】
いくつかの実施形態では、医療用構造体は、取付システムの少なくとも一部及び哺乳動物の皮膚の一部を覆うカバーフィルム物品を更に備える。カバーフィルム物品は、支持的な取付を提供し、かつ血管装置を環境への曝露から保護することができる。これは、カテーテル取付け部位を清潔に保ち、汚染物質がない状態に保つのに役立ち得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、カバーフィルム物品は、第1の主表面及び第2の主表面を有するカバーフィルムと、第3の接着剤層とを含み、第3の接着剤層は、第1の主表面及び第2の主表面を有する。第3の接着剤層の第2の主表面は、カバーフィルムの第1の主表面と接触しており、第3の接着剤層の第1の主表面は、ポリマー硬質物品の第2の主表面及び哺乳動物の皮膚と接触している。
【0059】
典型的には、フィルム物品のフィルムは、その下にある取付物品を見て監視することができるように、光学的に透明であるか、又は光学的に透き通ったものであることが望ましい。好適なフィルム材料としては、ポリエステル、ポリウレタン、(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、又はこれらの組み合わせなどの、標準的なフィルム形成材料が挙げられる。一般に、フィルムは、25マイクロメートル(1ミル)を超える厚さを有する。
【0060】
第3の接着剤層は、典型的には感圧接着剤である。いくつかの実施形態では、第3の接着剤層は、その下にある取付物品を見て監視することができるように、光学的に透明であるか、又は光学的に透き通ったものであることが望ましい。広範囲の好適な接着剤が、好適である。第2の接着剤層に有用な感圧接着剤としては、粘着付与天然ゴム、合成ゴム、粘着付与スチレンブロックコポリマー、ポリビニルエーテル、アクリル、ポリ-α-オレフィン、及びシリコーンが挙げられる。
【0061】
本開示は、本開示の実施形態を示す図面に照らして、より完全に理解され得る。
【0062】
図1Aは、硬質物品100の斜視図を示す。硬質物品100は、ベース層110と、保持部材120と、カバー部材130とを有する。保持部材120は、高い摩擦係数の表面122を有する適合層121を有する。カバー部材130は、高い摩擦係数の表面132を有する適合層131を有する。保持部材120の適合層121は、セグメント126、127、及び128を有する。セグメント127は、セグメント126及び128に対して窪んでいる。
【0063】
図1Bは、カテーテル及びハブ物品が内部に配設された硬質物品100を示す。カテーテル150は、カテーテルハブウィング155によってカテーテルハブ151に取り付けられている。ハブ151は窪んだセグメント127内に配設され、ウィング155はセグメント126及び128上に配設される。
【0064】
図2は、別の硬質物品200の斜視図を示す。硬質物品200は、ベース層210と、保持部材220と、カバー部材230とを有する。保持部材220は、高い摩擦係数の表面222を有する適合層221を有する。
【0065】
図3A図3Cは、使用中のカテーテル安定化装置の斜視図を示す。図3Aは、タブ341及び342を含む取付物品340と、硬質物品のベース層310とを示す。この実施形態では、ベース層310は、硬質物品とは別体であり、硬質物品は、ベース層310に対して着脱可能である。図3Bは、ベース層に取り付けられた硬質物品300を示し、硬質物品は、保持部材320及びカバー部材330を含む。図3Cは、カテーテル及びハブ350が取り付けられた図3Bの物品を示す。
【0066】
図4A及び図4Bは、使用中のカテーテル安定化装置の斜視図を示す。図4Aは、タブ441及び442を含む取付物品440を、硬質物品400が取り付けられた状態で示す。硬質物品400は、保持部材420とカバー部材430とを含む。カテーテル及びハブ450は、硬質物品400によって保持される。図4Bは、図4Aの物品を、タブ441及び442が硬質物品400に折り畳まれた状態で示す。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
【国際調査報告】