(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電源ライン及びそのような電源ラインを備えた装置
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H02G3/04 037
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535969
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2022085005
(87)【国際公開番号】W WO2023110626
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021214443.8
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516017178
【氏名又は名称】レオニ ボルトネッツ-ジステーメ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨナタン マーケルト
(72)【発明者】
【氏名】ベルント シュナイダー
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DA05
5G357DB01
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD06
5G357DE03
5G357DE08
(57)【要約】
本発明は、動作電位の異なる2つの導体アセンブリ(16A、16B)からなり、導体アセンブリが互いに電気的に絶縁されている、特に自動車用の電気供給ライン(2)に関する。2つの導体アセンブリ(16A、16B)は、それぞれ1つの導体層内に配置され、互いに重ねて配置される。各導体アセンブリ(16A、16B)は、複数の個別導体(14)を有する。導体アセンブリ(16A、16B)は、個別導体(14)のそれぞれについて、横方向のセパレータ(10)を有する個別チャネル(12)を形成するケーブルダクト(4)内にガイドされている。複数の個別導体(14)はそれぞれ、個別導体が互いに対して固定されるように、2つのセパレータ(10)の間に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車用の電源ライン(2)であって、
異なる動作電位用に電気的に分離された2つの導体アセンブリ(16A、16B)を備え、前記2つの導体アセンブリ(16A、16B)は、それぞれ1つの導体層内に1つずつ配置されている、電源ライン(2)において、
各導体アセンブリ(16A、16B)は、複数の個別導体(14)を有し、
前記導体アセンブリ(16A、16B)は、ケーブルダクト(4)内にガイドされており、そのケーブルダクト(4)は、前記個別導体(14)ごとに横方向のセパレータ(10)を有する個別チャネル(12)を形成するものであり、
前記複数の個別導体(14)は、互いに、2つのセパレータ(10)の間に固定されて配置されていることを特徴とする、電源ライン(2)。
【請求項2】
前記複数の個別導体(14)は、それぞれの個別チャネル(12)内にクランプされていることを特徴とする、請求項1に記載の電源ライン(2)。
【請求項3】
各導体層は、正確には、1つの動作電位のために、正確には、1つの導体アセンブリ(16A、16B)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項4】
1つの導体層の前記複数の個別導体(14)は、電気的に互いに接続されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の電源ライン(2)。
【請求項5】
導電性接続は、共通の接続要素(18)への、前記複数の個別導体(14)の材料結合的な接続、又は機械的な接続を介して形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の電源ライン(2)。
【請求項6】
特に押出成形物として形成されている一体型ケーブルダクト(4)であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の電源ライン(2)。
【請求項7】
前記複数の個別導体(14)が丸型導体であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の電源ライン(2)。
【請求項8】
前記複数の個別導体(14)が、密に詰まった複数の導体、又はソリッドの導体であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の電源ライン(2)。
【請求項9】
前記複数の個別導体(14)が、絶縁されていない裸の導体であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の電源ライン(2)。
【請求項10】
前記複数の個別導体(14)が、異なる導体断面を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の電源ライン(2)。
【請求項11】
一方の導体層の前記複数の個別導体(14)は、他方の導体層の前記複数の個別導体(14)よりも小さい導体断面を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の電源ライン(2)。
【請求項12】
一方の導体層、特に、より小さい導体断面を有する前記複数の個別導体(14)が配置された導体層において、2つの隣接する個別導体(14)の間に空チャネル(22)が形成されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の電源ライン(2)。
【請求項13】
一方の導体層の前記複数の個別導体(14)は、互いに隣接して配置され、隙間領域(20)を形成し、
他方の導体層の前記複数の個別導体(14)は、前記隙間領域(20)の範囲に配置されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の電源ライン(2)。
【請求項14】
前記ケーブルダクト(4)は、前記導体アセンブリ(16A、16B)を互いに分離する中間床(8)を有し、前記中間床(8)は波形に形成されていることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の電源ライン(2)。
【請求項15】
前記ケーブルダクト(4)には、支持部品に固定するための固定手段が設けられていることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の電源ライン(2)。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の電源ライン(2)を有する装置、特に自動車であって、
前記導体アセンブリ(16A、16B)は、異なる電気基準電位に接続されており、
前記電源ライン(2)が特に直流配線として形成されており、
一方の導体アセンブリ(16A、16B)は往路配線として形成され、他方の導体アセンブリ(16A、16B)は帰路配線として形成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ライン、及び、そのような電源ラインを備えた装置、特に自動車に関する。その電源ラインは、異なる動作電位のための2つの電気的に分離された導体アセンブリを有し、その際、その2つの導体アセンブリは、それぞれ1つの導体層内に1つずつ配置されている。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102012200979A1号明細書に、このタイプの電源ラインが記載されており、それぞれの導体アセンブリがバスバーとして形成されている。その電源ラインは直流配線として使用され、バッテリを負荷に接続する。
【0003】
そのような電源ラインは、例えば、自動車の、いわゆるバックボーンとして使用される。その電源ラインは、車載電気系統電圧が12V又は48Vの低電圧車載電気系統の場合にも、又は例えば、数100Vの範囲、例えば300V~1000Vの範囲の電圧を有する電気モータ駆動自動車に関連した高電圧用途に対しても、使用することができる。
【0004】
特に直流配線に大電流が流れる場合、強磁場が発生することがあり、その強磁場は、好ましくない場合には、車室内に許容できない高磁場を発生させる可能性がある。この問題は、特に電気モータ駆動の自動車においても生じ、その自動車においては、トラクションバッテリが車体の床下に配置され、電気供給配線が車室内に敷設されることがよくある。この場合、本来あるべき車体床による遮蔽効果は得られない。
【0005】
このような干渉磁場を回避し、EMC(電磁両立性)を改善するために、独国特許出願公開第102012200979A1号明細書は、導体レールの特殊な層状配置を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このことに由来し、本発明は、コンパクトな構成において良好なEMCを有する、特に自動車内の直流配線用の代替的な電源ラインを提示するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題は、電源ライン、及び、そのような電源ラインを備えた装置、特に自動車、によって解決される。電源ラインは、異なる動作電位のための2つの、好ましくは、正確には、2つの電気的に分離された導体アセンブリを備える。特に、その電源ラインは直流配線として形成され、一方の電源ラインは往路導体として形成され、他方の電源ラインは帰路導体として形成されている。一方の電源ラインは、例えばバッテリの正電位又は一般に車載電気系統の電源電圧に接続され、他方の導体アセンブリは負極又はアース電位に接続される。2つの導体アセンブリは、それぞれ1つの導体層内に層状に1つずつ配置されている。原理的には、複数の導体アセンブリを2つ以上の導体層に配置することも可能である。しかしながら、好ましくは、詳細には、2つの導体層が設けられている。
【0008】
この電源ラインは、各導体アセンブリが複数の個別導体を有し、また、それら導体アセンブリがケーブルダクト内にガイドされていることを特徴とする。その際、そのケーブルダクトは、個別導体ごとに横方向のセパレータを有する個別チャネルを形成し、それによって、複数の個別導体が、2つのセパレータの間において互いに対して固定された位置に配置される。大きな断面を有する単一の導体を、それぞれ小さな断面を有する複数の個別導体に分割することで、複数の個別導体の大きな表面積によって、放熱性を向上させる。
【0009】
複数の個別導体が好ましくはプラスチック製のケーブルダクトと個別に接触することによって、複数の個別導体とケーブルダクトとの間に大きな接触面が形成され、そのことは、ケーブルダクトの材料が典型的には空気よりも熱伝導率が良いため、特に空気と比較して、良好な熱放散にも寄与する。
【0010】
従って、この実施形態の場合には、従来技術と比べて、ソリッドの(massiv)バスバーを使用する必要がない。それぞれのバスバーによって形成される個々の導体は、導体層内に形成される導体アセンブリによって置き換えられ、その導体アセンブリは、複数の個別導体によって構成されている。
【0011】
良好なEMC特性、特に磁場の回避又は低減を考慮して、個々の個別導体は規定の位置に保持される。さらに、個々の個別導体は、ケーブルダクト内に、できるだけコンパクトに配置されている。これら両方の要因により、動作中に往路導体及び帰路導体によって発生する磁場が少なくとも部分的に相殺され、それによって、結果として生じる磁場が少なくとも低くなる。それぞれの導体アセンブリを複数の個別導体に分割することによって、互いに隣接してガイドされ且つそれぞれが単一の丸型導体として形成された2つの導体アセンブリと比較して、改善されたEMCが達成される。
【0012】
動作時に逆方向に電流が流れる2つの導体層において、複数の個別導体を近接して配置するこの実施形態は、逆方向に電流が流れる導体の磁場が補償し合うことを考慮したものである。
【0013】
可能な限り良好な補償を達成するためには、複数の個別導体をできるだけ正確に、且つ互いに近接して配置することが重要である。そのため、複数の個別導体は、それぞれ、好ましくは、個別チャネル内に正確に、従って遊びなく位置決めされている。
【0014】
好ましくは、複数の個別導体は、それぞれの個別チャネル内にクランプされている。例えば、ケーブルダクトは所定の弾性を有することで、クランプ効果が得られる。代替的又は付加的に、それぞれの個別導体がそのような個別チャネルにスナップ留めされ(eingeschnappt)、また、そのとき、好ましくはそれぞれの個別チャネルに形状結合的に保持されるように、個別チャネルが適切に形成されることも可能である。
【0015】
好ましい一実施形態においては、各導体層に、正確には、1つの動作電位のために、正確には、1つの導体アセンブリが配置されている。そのため、動作中において、1つの導体層内には、正確には、1つの動作電位が存在する。
【0016】
特にこの目的のために、それぞれの導体アセンブリの複数の個別導体、従って特にそれぞれの導体層のすべての個別導体が互いに電気的に接続されることが提供される。そのため、導体アセンブリ/導体層の複数の個別導体は互いに並列に接続されている。
【0017】
導電性接続は、好ましくは、複数の個別導体の材料結合的な接続又は機械的な接続のいずれかによって互いに直接行われるが、好ましくは、共通の接続要素を介して行われる。複数の個別導体は、それぞれ、共通の接続要素に導電的に接続されており、この接続要素を介して間接的に互いに電気的に接続される。材料結合的な接続を形成するために、特に溶接、特別には抵抗溶接が用いられる。機械的な接続には、例えば、圧着又は他の従来の機械的なプラグ接続又はねじ接続が提供される。接続要素は、例えばプレス部品である。さらに、個々の個別導体に対して共通の電気的接続を有する接続プラグのような従来の接続要素を使用することもできる。このような接続プラグは、電源ラインを電気部品、例えば負荷に(プラグ)接続するための接続プラグを形成する。代替的には、接続要素は、特に、例えば、バッテリの接続端子への接続のためのケーブルラグの形をした接続要素である。
【0018】
ケーブルダクトは、一般に、複数の個別導体のための個々のガイドチャネルを有して、導体アセンブリ方向に延びるガイド要素であると解される。ケーブルダクトは、導体アセンブリの長さの大部分、すなわち導体アセンブリの長さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%にわたって延びている。好ましくは、ケーブルダクトは、必要な接続部を除けば、導体アセンブリの全長にわたって延び、従って、電源ライン全体にも延びる。一般に、電源ライン、ひいてはケーブルダクトは、典型的に、1m以上、又は、1.5m以上の長さも有する。
【0019】
ケーブルダクトは、好ましくは一体型のモノリシックケーブルダクトである。特に、ケーブルダクトは、成形物、例えば押出成形物として形成される。少なくとも、ケーブルダクトは、2つの導体層及び複数の個別チャネルを画定するモノリシックなベース部を有する。このベース部は、典型的には、2つの隣接する導体層内のそれぞれの個別導体用のセパレータが両側に突出する中間床を有する。
【0020】
それぞれの導体層の複数の個別導体は、少なくとも断面又は全体として見たときに、好ましくは、それぞれ一平面内に、従って同一レベルに隣り合って配置されている。
【0021】
好ましい実施形態においては、複数の個別導体は丸型導体である。これらは、設置技術的に取り扱いが容易である。特に、複数の個別導体は、密に詰まった複数の導体、特に、密に詰まった撚り導体、又は、代替的には、ソリッドの導体である。それによって、全体的にコンパクトな構造形態が得られる。
【0022】
好ましい実施形態においては、複数の個別導体は絶縁されていない裸導体である。電気絶縁は、ケーブルダクトを介して、特に中間床とセパレータを介して行われる。
【0023】
特に好ましい一実施形態によれば、複数の個別導体は異なる導体断面を有する。この措置によって、複数の個別導体の、互いに特にコンパクトな形態及び配置が可能となる。
【0024】
その際、特に、一方の導体層の(全ての)個別導体は、他方の導体層の(全ての)個別導体よりも小さい導体断面を有することが提供される。その際、それぞれの導体層の複数の個別導体は、好ましくは一定の導体断面、及び特に直径を有する。それによって、平坦な構造方式が得られる。
【0025】
特に導体断面が小さい複数の個別導体を、特に、他の導体層の(より大きい)複数の個別導体との関係において規定された相対位置に配置するために、ケーブルダクトは、好ましい実施形態において、空チャネルを有する。この空チャネルは、2つの隣接する個別チャネルの間に形成され、その個別チャネルには、1つの個別導体がそれぞれガイドされる。好ましくは、このような空チャネルは、それぞれ、個別チャネルと交互に配置される。さらに、このような空チャネルは、好ましくは、導体層の一方にのみ、好ましくは導体断面積のより小さい複数の個別導体を有する導体層にのみ形成される。
【0026】
特に円形導体としての個別導体の実施形態の場合には、複数の個別導体は、互いに隣接して配置され、中間領域又は隙間領域を形成する。可能な限りコンパクトな配置、及び良好なEMC特性を達成するために、第2の導体層の複数の個別導体、従って、第2の導体アセンブリの複数の個別導体は、これらの隙間領域の範囲に配置される。これは、一方の導体層の複数の個別導体が、他方の導体層の複数の個別導体に対して横方向にオフセットしていることを意味する。
【0027】
特にこの実施形態においては、2つの導体層における個別導体の数は異なることが好ましい。特に、一方の導体層における個別導体の数は、他方の導体層における数に比べて正確に1つだけ増加される。
【0028】
好ましくは、2つの電源ラインの各々の総導体断面は同一である、又は少なくともほぼ同一である。2つの電源ラインは、特に、同一の許容電流量に形成される。
【0029】
上記したように、ケーブルダクトは中間床を有し、その中間床によって、2つの導体層、従って、複数の個別導体を有する2つの導体アセンブリが互いに分離されている。第1の一実施形態によれば、中間床は、少なくとも断面で見たときに平坦であり、好ましくはケーブルダクトの全長にわたって平坦に形成されている。好ましい一実施形態においては、この中間床は、代替的に、断面で見たときに波形に、例えば正弦波状に波形になっており、周期的に波の谷と波の山が交互になるように形成されている。好ましくは、それぞれの個別導体は、その導体層から見て、それぞれ波の谷に位置する。横方向にオフセットした配置との組み合わせによって、複数の個別導体は、ほとんど垂直方向において互いに揃うため、特にコンパクトな構造方式となる。同時に、このようなコンパクトな配置は、望ましい良好なEMC特性にとって有利である。
【0030】
電源ラインを支持部品、特に車体部品に固定するために、好適な固定手段が設けられることが好ましい。そのために、特に、ケーブルダクトには、クリップ又は受け穴(Lochaufnahmen)のような固定手段が固定要素のために配置又は形成される。
【0031】
特にケーブルダクトが成形品として形成されている場合に、例えば、複数のブラケットクリップ(Buegelclipse)が提供される。これらは、好ましい実施形態においては、同時に、ケーブルダクト内の複数の個別導体の保持のために使用される。そのため、ブラケットクリップは、ケーブルダクト内の複数の個別導体の保持と、同時に、それらを支持部品に固定するために形成されている。
【0032】
冒頭において説明したように、この種の電源ラインは特に2極の直流配線として使用される。電源ラインは、特に、典型的には、数10A、又は数100Aの大電流の伝送のために使用される。従って、それぞれの電源ラインは、そのような大電流の伝達に適した寸法とされる。
【0033】
電源ラインは、特に非鉄道道路交通用の自動車における使用を意図しており、そのような自動車、特に乗用車に搭載された状態において使用される。電源ラインは、自動車の車載電気系統の2つの電気部品を接続する。その際、ケーブルダクトは、2つの部品間の全長の大部分(75%以上、90%以上)にわたって延びている。2つの部品は、例えば、一方においては(第1の)配電部品/電源であり、他方においては(第2の)配電部品/負荷である。電源ラインは、特に、自動車におけるいわゆるバックボーンである。電源ラインは、概して、自動車の前部と後部とを接続する。電源ラインは、多くの場合、自動車の中央を、例えば、中央のケーブルトンネル内に延びる。電気モータ駆動自動車においては、電源ラインは、例えば電気駆動装置に電力を供給するために使用される。電源ラインは、例えば、トラクションドライブに電気エネルギーを供給するトラクションバッテリに沿って、又はその上に敷設される。
【0034】
本発明の一実施例を、図を参照して以下に詳細に説明する。これらの図は簡略化して示される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】このような電源ラインを有する装置の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図に示す電源ライン2は、絶縁材料から成るケーブルダクト4を備えている。電源ライン2は、概して、長手方向L、横方向T及び垂直方向Vに延びている。
【0037】
ケーブルダクト4は、ベース部6から形成される、又は、ケーブルダクト4は、例えば押出し成形物として形成される少なくとも1つのそのようなベース部6を有する。ケーブルダクト4は、好ましくは、両端の接続部まで、電源ライン2の全長にわたって延びている。ケーブルダクト4は中間床8を有し、そこから両側にセパレータ10が延びている。
図1に示す実施例においては、中間床8は平坦である。特に、セパレータ10は、中間床8に対して垂直に配置されている。したがって、ケーブルダクト4は、中間床8の両側に導体層を有する。中間床8の両側には、複数の個別チャネル12が形成されており、これらのチャネル12は、中間床8によって、また、セパレータ10によって横方向に境をなしている。個別チャネル12は自由な受入空間を形成し、中間床と反対側においてそれぞれ開口している。複数の個別導体14は、それぞれ、個別チャネル12内に挿入されており、この複数の個別導体14は、本実施例においては、丸型導体、好ましくはソリッドの、且つ裸の丸型導体によって形成されている。
【0038】
それぞれの導体層の複数の個別導体14は、共同して導体アセンブリ16A、16Bを形成する。それぞれの導体アセンブリ16A、16Bの複数の個別導体14は、電気的に互いに接続され、それによって並列に接続されている。そのために、各導体アセンブリ16A、16Bに対して、好ましくは電源ライン2の端部の両側において、共通の接続要素18が配置されている(特に
図2参照)。それぞれの導体アセンブリ16A、16Bの複数の個別導体14は、この共通の接続要素18を介して互いに電気的に接続されている。そのため、動作中、2つの導体アセンブリ16A、16Bは、典型的には、異なった電圧、したがって動作電位にある。
【0039】
複数の個別チャネル12は、好ましくは、概して、それぞれの個別導体14がその中にクランプされて保持されるように形成されている。このために、複数の個別チャネル12は、例えば、個別導体14の幅(直径)以下の幅を有する。一実施変形によれば、付加的又は代替的に、複数の個別導体14がそれぞれの個別チャネル12にスナップ留めされることが提供される。このために、例えば、セパレータ10は好適に形成され、中間床8と反対側の端部に、詳細には図示しないスナップ要素を有する。
【0040】
基本的に、ケーブルダクト4は、ベース部6に加えて少なくとも1つのカバーを有することが可能であり、このカバーは、少なくとも1つの導体層の複数の個別チャネル12を閉じるために使用することができる。本実施例においては詳細に図示されていないが、このようなカバーは、例えば、ベース部にスナップ留めされる。
【0041】
図1の実施例においては、それぞれの導体アセンブリ16A、16Bの複数の個別導体14が異なる導体断面積、したがって異なる直径を有する特別な一実施変形例が示される。
図1によれば、上方の導体アセンブリ16Aの複数の個別導体14は、下方の導体アセンブリ16Bの複数の個別導体14よりも大きな直径を有する。さらに、2つの導体アセンブリ16A,16Bの複数の個別導体14は、横方向Tにおいて互いにオフセットして配置されている。
【0042】
上方の導体層の複数の個別導体14は、互いに直接隣接しており、すなわち、正確には、1つのセパレータによってのみ互いに分離されている。丸型導体として形成されているため、隣接する個別導体14の間には隙間領域20が形成されている。第2の電源ライン16Bの複数の個別導体14は、これらの隙間領域20の範囲に配置されるように、横方向Tにオフセットされており、特に、それぞれのより小さい個別導体14の中心線が、横方向Tに見て、より大きい個別導体14の2つの間の幾何学的中心に対応する横方向位置に配置されるように、横方向Tにオフセットされている。
【0043】
より小さい個別導体14の所望の横方向位置を確保するために、それらはセパレータ10によって所望の横方向位置に固定される。このために、複数の空チャネル22が形成されている。これらは、複数の個別導体14が配置される個別チャネル12と交互に配置されている。
【0044】
本実施例においては詳細に示されていない、好ましい一実施変形例によれば、中間床8は波形に形成されており、それによって、複数の個別導体14がそれぞれ波の谷に位置し、その結果、両方の電源ライン2の複数の個別導体14が垂直方向Vにおいて可能な限り近接するようになる。
【0045】
電源ライン2は、好ましくは、自動車、例えば乗用車における使用を意図している。このために、それは、アース面28、例えば車体部品/車体パネル、特に車両床パネルに沿ってガイドされ、その結果、このアース面28によって遮蔽効果が達成される。車体部品は、例えば、電気自動車のトラクションモータ用のトラクションバッテリのハウジングである。そのため、電源ラインは、そのケーブルダクト4とともにこのアース面上に位置し、その際、下方の導体アセンブリ16Bの個別チャネル12は、例えば、アース面28に対して下向きに開口している。例えば、電源ライン2は、車体の床下、したがって、車室の外においてガイドされている。アース面28として示された部品によって、例えば車両床パネルによって形成される車体アースに対するケーブルダクト4の例示的な位置が示唆される。
【0046】
図2によれば、電源ライン2の一端が、例えば負荷、インバータ、(第2の)配電部品等の電気部品30に接続される応用が、非常に簡略化して示される。その他端は、例えばエネルギー源、特に、バッテリ、又は(第1の)配電部品等に接続される。
【0047】
部品30は、例えば、(電力)配電部品であり、その配電部品には、負荷又は他の電気部品を接続するための複数の接続部32が配置されている。部品30は、例えば、電動モータ、或いはその上流に接続されたインバータのような、直接の負荷であり得る。
【0048】
そのような場合、電源ライン2は、特に、いわゆるバックボーンとして形成されている。
【0049】
さらに
図2から確認されるように、2つの導体アセンブリ16A、16Bは、長手方向Lの端部接続領域において、長手方向Lに、或いはその反対方向に、両側において、ケーブルダクト4から突出している。この突出する部分領域において、それぞれの導体アセンブリ16A、16Bの複数の個別導体14は、接続要素18を介して互いに電気的に接続されている。部品30に面する側において、接続要素18は、例えば、プラグ接続によって部品30に接続される接続プラグとして形成される。その際、それぞれの接続領域は、電源ライン2の残りの長さと比べて、例えば最大20%、特に最大10%の短い長さしかない。それぞれの接続部の長さは、典型的には最大20cm~40cmであるのに対し、電源ライン2の全長は、典型的には1.5m~数m、例えば3m、の範囲である。
【0050】
電源ライン2は、好ましくは、自動車に設置するために使用される。電源ライン2は、例えば、三次元的な設置構造を有し、すなわち、その長手方向及び延伸方向に、傾斜部及び/又は湾曲部を有することもできる。代替的には、その全長にわたって平坦に形成される。
【0051】
電源ライン2を支持部品、特に車体部品に固定するために、適切な固定手段が提供される。例えば、クリップ又は固定手段用の受け穴のような固定手段が、ケーブルダクトに配置又は形成される。
【0052】
特にケーブルダクトが成形物として形成されている場合、例えばブラケットクリップが設けられ、このブラケットクリップは、好ましくは、チャネル内の複数の個別導体を保持すると同時に、それらを支持体に固定するように形成される。
【0053】
本発明は、上記した実施例に限定されるものではない。むしろ、本発明の他の変形例も、本発明の目的から逸脱することなく、当業者によって導き出すことができる。特に、実施例に関連して説明した個別の特徴はすべて、本発明の趣旨を逸脱することなく、他の方法によって互いに組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0054】
2 電源ライン
4 ケーブルダクト
6 ベース部
8 中間床
10 セパレータ
12 個別チャネル
14 個別導体
16A、B 導体アセンブリ
18 接続要素
20 隙間領域
22 空チャネル
28 アース面
30 部品
32 接続部
V 垂直方向
T 横方向
L 長手方向
【手続補正書】
【提出日】2024-08-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車用の電源ライン(2)であって、
異なる動作電位用に電気的に分離された2つの導体アセンブリ(16A、16B)を備え、前記2つの導体アセンブリ(16A、16B)は、それぞれ1つの導体層内に1つずつ配置されている、電源ライン(2)において、
各導体アセンブリ(16A、16B)は、複数の個別導体(14)を有し、
前記導体アセンブリ(16A、16B)は、ケーブルダクト(4)内にガイドされており、そのケーブルダクト(4)は、前記個別導体(14)ごとに横方向のセパレータ(10)を有する個別チャネル(12)を形成するものであり、
前記複数の個別導体(14)は、互いに、2つのセパレータ(10)の間に固定されて配置されていることを特徴とする、電源ライン(2)。
【請求項2】
前記電源ライン(2)が直流配線として形成されており、
一方の導体アセンブリ(16A)を往路配線として、他方の導体アセンブリ(16B)を帰路配線として備えていることを特徴とする、請求項1に記載の電源ライン(2)。
【請求項3】
前記複数の個別導体(14)は、それぞれの個別チャネル(12)内にクランプされていることを特徴とする、請求項1に記載の電源ライン(2)。
【請求項4】
各導体層は、正確には、1つの動作電位のために、正確には、1つの導体アセンブリ(16A、16B)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項5】
1つの導体層の前記複数の個別導体(14)は、電気的に互いに接続されていることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項6】
導電性接続は、共通の接続要素(18)への、前記複数の個別導体(14)の材料結合的な接続、又は機械的な接続を介して形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の電源ライン(2)。
【請求項7】
特に押出成形物として形成されている一体型ケーブルダクト(4)であることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項8】
前記複数の個別導体(14)が丸型導体であることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項9】
前記複数の個別導体(14)が、密に詰まった複数の導体、又はソリッドの導体であることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項10】
前記複数の個別導体(14)が、絶縁されていない裸の導体であることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項11】
前記複数の個別導体(14)が、異なる導体断面を有することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項12】
一方の導体層の前記複数の個別導体(14)は、他方の導体層の前記複数の個別導体(14)よりも小さい導体断面を有することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項13】
一方の導体層、特に、より小さい導体断面を有する前記複数の個別導体(14)が配置された導体層において、2つの隣接する個別導体(14)の間に空チャネル(22)が形成されていることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項14】
一方の導体層の前記複数の個別導体(14)は、互いに隣接して配置され、隙間領域(20)を形成し、
他方の導体層の前記複数の個別導体(14)は、前記隙間領域(20)の範囲に配置されていることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項15】
前記ケーブルダクト(4)は、前記導体アセンブリ(16A、16B)を互いに分離する中間床(8)を有し、前記中間床(8)は波形に形成されていることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項16】
前記ケーブルダクト(4)には、支持部品に固定するための固定手段が設けられていることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)。
【請求項17】
請求項
1又は2に記載の電源ライン(2)を有する装置、特に自動車であって、
前記導体アセンブリ(16A、16B)は、異なる電気基準電位に接続されており、
前記電源ライン(2)が特に直流配線として形成されており、
一方の導体アセンブリ(16A、16B)は往路配線として形成され、他方の導体アセンブリ(16A、16B)は帰路配線として形成されている、装置。
【国際調査報告】