(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】防曇コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20241128BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241128BHJP
C08J 7/054 20200101ALI20241128BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/63
C08J7/054 CER
C08J7/054 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536029
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 IB2022061623
(87)【国際公開番号】W WO2023111743
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524184415
【氏名又は名称】エスシージー ケミカルズ パブリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティーヤピーブーンチャイヤー チュラット
(72)【発明者】
【氏名】ブーン ヒー コック
(72)【発明者】
【氏名】タナラット ソムバット
(72)【発明者】
【氏名】サイ-リム チャンタナ
(72)【発明者】
【氏名】ニンヌエック ニワット
【テーマコード(参考)】
4F006
4J038
【Fターム(参考)】
4F006AA12
4F006AA35
4F006AB03
4F006AB66
4F006BA10
4F006EA05
4J038BA021
4J038DF012
4J038GA03
4J038GA13
4J038JC13
4J038KA09
4J038MA08
4J038NA06
4J038PA06
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、親水性ポリマAとアニオン界面活性剤Bとを含む防曇コーティング組成物に関するものであり、前記アニオン界面活性剤Bの分子構造は、炭化水素、スルホン酸基、およびヒドロキシル基を含む。本発明は更に、基材と、前記防曇コーティング組成物とを含む物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリマAとアニオン界面活性剤Bとを含む防曇(anti-fogging)コーティング組成物であって、前記アニオン界面活性剤Bの分子構造が、炭化水素、スルホン酸基、およびヒドロキシル基を含むことを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の防曇コーティング組成物であって、前記アニオン界面活性剤Bの分子構造中のスルホン酸基がスルホン酸塩の形であり、前記塩が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、および第三級アミン(amino)塩、望ましくはアルカリ金属塩、最も望ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、またはこれらの混合物より選ばれることを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の防曇コーティング組成物であって、前記アニオン界面活性剤Bの分子構造中の炭化水素が、3~20個、望ましくは5~20個、より望ましくは12~18個、最も望ましくは14~16個の範囲の炭素原子を含むことを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項4】
請求項1または3に記載の防曇コーティング組成物であって、前記アニオン界面活性剤Bの分子構造中の炭化水素が、アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、シクロアルケン、芳香族炭化水素、およびこれらの混合物、望ましくはアルカン、より望ましくは直鎖アルカンから成る群より選ばれることを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項5】
請求項1、3、または4のいずれかに記載の防曇コーティング組成物であって、前記アニオン界面活性剤Bの分子構造中の炭化水素が、望ましくは、14~16個の範囲の炭素原子を含む直鎖アルカンであることを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項6】
前記請求項のいずれかに記載の防曇コーティング組成物であって、前記アニオン界面活性剤Bが、望ましくはヒドロキシアルカンスルホン酸ナトリウム、より望ましくはヒドロキシ(C
14~C
16)アルカンスルホン酸ナトリウム、最も望ましくは3-ヒドロキシ(C
14~C
16)アルカン-1-スルホン酸ナトリウムであることを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の防曇コーティング組成物であって、前記親水性ポリマAが、変性セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、およびポリビニルアルコール、望ましくは変性セルロース、より望ましくはヒドロキシアルキルメチルセルロース(このとき、アルキルは1~5個の範囲の炭素原子を含む)、最も望ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースから成る群より選ばれることを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項8】
前記請求項のいずれかに記載の防曇コーティング組成物であって、前記防曇コーティング組成物がアニオン界面活性剤Cを更に含み、前記アニオン界面活性剤Cが望ましくはアルケンスルホン酸アニオン界面活性剤、望ましくはα-オレフィンスルホン酸アニオン界面活性剤であることを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の防曇コーティング組成物であって、前記アニオン界面活性剤Cが、3~20個、望ましくは5~20個、より望ましくは12~18個、 最も望ましくは14~16個の範囲の原子炭素を含むことを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項10】
請求項8または9に記載の防曇コーティング組成物であって、前記アニオン界面活性剤Cが、望ましくは(C
14~C
16)アルケンスルホン酸ナトリウム、より望ましくは(C
14~C
16)α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、最も望ましくは(C
14~C
16)アルカ-2-エン-1-スルホン酸ナトリウムであることを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項11】
前記請求項のいずれかに記載の防曇コーティング組成物であって、前記防曇コーティング組成物が溶媒を更に含み、前記溶媒が、望ましくは水、より望ましくはイオンおよび/または不純物を含まない水であることを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項12】
前記請求項のいずれかに記載の防曇コーティング組成物であって、全てのアニオン界面活性剤と親水性ポリマAとの質量比が、1~4.5:1、望ましくは1.5~3.7:1、より望ましくは1.5~2.4:1、最も望ましくは1.8~2.4:1の範囲であることを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項13】
前記請求項のいずれかに記載の防曇コーティング組成物であって、アニオン界面活性剤Bとアニオン界面活性剤Cとの質量比が、5~50:50~95、望ましくは10~40:60~90、より望ましくは10~30:70~90、最も望ましくは15~25:75~85の範囲であることを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項14】
前記請求項のいずれかに記載の防曇コーティング組成物であって、pHが5~10、望ましくは6~9.5、最も望ましくは6~7.5の範囲であることを特徴とする防曇コーティング組成物。
【請求項15】
基材(substrate)と、請求項1から14のいずれかに記載の防曇コーティング組成物とを含むことを特徴とする物品。
【請求項16】
請求項15に記載の物品であって、請求項1から14のいずれかに記載の防曇コーティング組成物が、前記基材上に被覆されていることを特徴とする物品。
【請求項17】
請求項15または16に記載の物品であって、前記基材が、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリラート、およびこれらの混合物、望ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、またはポリスチレンから成る群より選ばれることを特徴とする物品。
【請求項18】
請求項15から17のいずれかに記載の物品であって、前記物品が、フィルム、シート、ブロック、マスク構成要素、保護目がね構成要素、包装または食品雑貨類(grocery)包装の構成要素、バリヤ構成要素、ヘルメットバイザ、広告付きの箱(advertising box)、ショーウィンド(displaying shop window)、車両窓、風防、または温室構成要素であることを特徴とする物品。
【請求項19】
物品を製造する方法であって、
前記製造法が、
基材を製造する工程と、
請求項1から14のいずれかに記載の防曇コーティング組成物を調製する工程と、
請求項1から14のいずれかに記載の防曇コーティング組成物を前記基材上に被覆する工程と
を含むことを特徴とする、物品の製造法。
【請求項20】
請求項19に記載の、物品の製造法であって、前記被覆工程が、ワイヤロッドコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、輪転グラビアコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、キャスティング、刷毛塗り、印刷、およびエアナイフコーティングから選ばれることを特徴とする製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
防曇コーティング組成物の化学的性質に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマの特性のひとつは透明または清澄であることであり、この特性により、様々な用途、例えば、見える必要のある物品を入れた包装(特に食品包装)、農業的用途(温度を制御し、光を通すための覆いとして透明プラスチックを使用する温室など)、公衆衛生用途(透明サージカルマスクなど)等に採用されている。しかし、このような透明材料を使用する際、材料表面に曇りが生じて、材料の透明度が低下してしまうという問題が見られる。このため、材料表面の曇りの発生を防ぐ方法を求めて、多くの研究が成されてきた。
【0003】
例えば、国際出願第US2009/065703号は、親水性ポリマと、ポリマを100質量%として0.5~25質量%の範囲の量のアニオン界面活性剤と、ポリマを100質量%として0~60質量%の範囲の量の無機酸化物粒子と、水性溶媒とを含む防曇コーティング組成物を開示している。
【0004】
欧州特許第0600053B1号は、温置しておいても水に溶けず、防曇性を示すポリマ組成物を開示している。このポリマ組成物は、(a)20,000から200,000の平均分子量を持つ水溶性ポリビニルアルコールポリマおよび30,000から400,000の平均分子量を持つ水溶性ポリビニルピロリドンポリマと、(b)組成物に含まれる不揮発性成分の質量に対して50質量%までの量の、メラミン、鉱酸、または有機強酸を含む架橋剤とを含むものである。
【0005】
しかし、前述の特許は、本発明のような防曇コーティング組成物を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際出願第US2009/065703号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第0600053B1号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明は、親水性ポリマAとアニオン界面活性剤Bとを含み、アニオン界面活性剤Bの分子構造が、炭化水素、スルホン酸基、およびヒドロキシル基を含んでいる防曇コーティング組成物に関する。
【0008】
本発明はまた、基材(substrate)と前記防曇コーティング組成物とを含む物品に関する。
【0009】
本発明の防曇コーティング組成物は良好な防曇性を持つため、様々な基材(構成要素としてポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、またはポリスチレンを含む基材など)に使用することに適しており、被覆した基材を霞ませたり曇らせたり(hazy or cloudy)することがなく、また、基材表面に油膜を生じることがない。更に、この防曇コーティング組成物は長い貯蔵寿命も持つ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
別途指定のない限り、用語“界面活性剤(surfactant)”は、同一分子内に親水性(極性)部分と疎水性(無極性)部分とを含んでいる分子を指し、これにより防曇コーティング組成物は低い表面張力を持つものとなる。
【0011】
用語“曇り(fog/fogging)”は、材料または基材の表面の水滴を指し、これにより前記材料または基材を通した視界が妨害され、例えば、視覚的透明度が下がり、光透過率が低下する。
【0012】
語句“~の範囲(in a range of)”は、始点および終点の値と、始点および終点の間の値を包含する。
【0013】
本発明は、親水性ポリマAとアニオン界面活性剤Bとを含み、アニオン界面活性剤Bの分子構造が、炭化水素、スルホン酸基、およびヒドロキシル基を含む、防曇コーティング組成物を開示するものである。
【0014】
本発明のある実施形態において、アニオン界面活性剤Bの分子構造は、1~3個のスルホン酸基、望ましくは1~2個のスルホン酸基、最も望ましくは1個のスルホン酸基を含む。
【0015】
本発明のある実施形態において、アニオン界面活性剤Bの分子構造は、1~3個のヒドロキシル基、望ましくは1~2個のヒドロキシル基、最も望ましくは1個のヒドロキシル基を含む。
【0016】
本発明のある実施形態において、アニオン界面活性剤Bの分子構造中のスルホン酸基はスルホン酸塩の形であり、この塩は、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、またはこれらの混合物である)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩である)、アンモニウム塩、第三級アミン(amino)塩など、望ましくはアルカリ金属塩、最も望ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、またはこれらの混合物より選ばれる。
【0017】
本発明のある実施形態において、アニオン界面活性剤Bの分子構造中の炭化水素は、3~20個、望ましくは5~20個、より望ましくは12~18個、最も望ましくは14~16個の範囲の炭素原子を含む。
【0018】
本発明のある実施形態において、アニオン界面活性剤Bの分子構造中の炭化水素は、アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、シクロアルケン、芳香族炭化水素、およびこれらの混合物、望ましくはアルカン、より望ましくは直鎖アルカンから成る群より選ばれる。
【0019】
本発明の好ましいある実施形態において、アニオン界面活性剤Bの分子構造中の炭化水素は、14~16個の範囲の炭素原子を含む直鎖アルカンである。
【0020】
本発明のある実施形態において、アニオン界面活性剤Bは、望ましくは、次の構造式(I)で示されるような構造を持つ。
(化1)
R-CH(OH)(CH2)m-(SO3
-X+)n (I)
式中、
Rは、1~19個、望ましくは1~17個、より望ましくは8~15個、最も望ましくは11~13個の範囲の炭素原子を含む、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、またはこれらの混合物であり、
mは0~3、望ましくは2~3、より望ましくは2であり、
nは1~3、望ましくは1であり、
Xは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、または第三級アミン基、望ましくはアルカリ金属、より望ましくは、ナトリウム、カリウム、またはこれらの混合物、最も望ましくはナトリウムであり、
望ましくは、Rは、8~15個、より望ましくは11~13個の範囲の炭素原子を含むアルキルであり、mは2~3、望ましくは、mは2であり、nは1であり、Xはアルカリ金属、望ましくは、ナトリウムまたはカリウム、より望ましくはナトリウムである。
【0021】
より望ましくは、Rは、8~15個、より望ましくは11~13個の範囲の炭素原子を含むアルキルであって、直鎖形であり、mは2~3、望ましくは、mは2であり、nは1であり、Xはアルカリ金属、望ましくは、ナトリウムまたはカリウム、より望ましくはナトリウムである。
【0022】
本発明の好ましいある実施形態において、アニオン界面活性剤Bは、ヒドロキシアルカンスルホン酸ナトリウム、より望ましくはヒドロキシ(C14~C16)アルカンスルホン酸ナトリウム、最も望ましくは3-ヒドロキシ(C14~C16)アルカン-1-スルホン酸ナトリウムである。
【0023】
本発明のある実施形態において、親水性ポリマAは、変性セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、およびポリビニルアルコール、望ましくは変性セルロース、より望ましくはヒドロキシアルキルメチルセルロース(このとき、アルキルは1~5個の範囲の炭素原子を含む)、最も望ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースから成る群より選ばれる。
【0024】
本発明の防曇コーティング組成物は、アニオン界面活性剤Cを更に含み、このアニオン界面活性剤Cは、望ましくはアルケンスルホン酸アニオン界面活性剤、より望ましくはα-オレフィンスルホン酸アニオン界面活性剤である。
【0025】
本発明のある実施形態において、アニオン界面活性剤Cは、3~20個、望ましくは5~20個、より望ましくは12~18個、最も望ましくは14~16個の範囲の炭素原子を含む。
【0026】
本発明のある実施形態において、アニオン界面活性剤Cの炭素は直鎖形である。
【0027】
本発明のある実施形態において、アルケンスルホン酸アニオン界面活性剤またはα-オレフィンスルホン酸アニオン界面活性剤のスルホン酸基はスルホン酸塩の形であり、この塩は、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、またはこれらの混合物である)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩である)、アンモニウム塩、第三級アミン塩など、望ましくはアルカリ金属塩、最も望ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、またはこれらの混合物より選ばれる。
【0028】
本発明の好ましいある実施形態において、アニオン界面活性剤Cは、(C14~C16)アルケンスルホン酸ナトリウム、より望ましくは(C14~C16)α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、最も望ましくは(C14~C16)アルカ-2-エン-1-スルホン酸ナトリウムである。
【0029】
本発明の防曇コーティング組成物は更に、溶媒、望ましくは水、より望ましくは、イオンおよび/または不純物を含まない水を含む。
【0030】
本発明のある実施形態において、本防曇コーティング組成物は、親水性ポリマAとアニオン界面活性剤Bとアニオン界面活性剤Cと溶媒とから成り、このとき、アニオン界面活性剤Bの分子構造は、炭化水素、スルホン酸基、およびヒドロキシル基を含み、アニオン界面活性剤Cはアルケンスルホン酸アニオン界面活性剤、望ましくはα-オレフィンスルホン酸アニオン界面活性剤であり、溶媒は望ましくは水である。
【0031】
本発明のある実施形態において、本防曇コーティング組成物は、ヒドロキシアルキルメチルセルロース(このとき、アルキルは1~5個の範囲の炭素原子を含む)と、ヒドロキシ(C14~C16)アルカンスルホン酸ナトリウムと、(C14~C16)アルケンスルホン酸ナトリウム(望ましくは(C14~C16)α-オレフィンスルホン酸ナトリウム)と、溶媒(望ましくは水)とから成る。
【0032】
本発明のある実施形態において、本防曇コーティング組成物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、3-ヒドロキシ(C14~C16)アルカン-1-スルホン酸ナトリウムと、(C14~C16)アルカ-2-エン-1-スルホン酸ナトリウムと、水とから成る。
【0033】
本発明のある実施形態において、全てのアニオン界面活性剤と親水性ポリマAとの質量比は、1~4.5:1、望ましくは1.5~3.7:1、より望ましくは1.5~2.4:1、最も望ましくは1.8~2.4:1の範囲である。
【0034】
本発明の好ましいある実施形態において、アニオン界面活性剤Bおよびアニオン界面活性剤Cと、親水性ポリマAとの質量比は、1~4.5:1、望ましくは1.5~3.7:1、より望ましくは1.5~2.4:1、最も望ましくは1.8~2.4:1の範囲である。
【0035】
本発明のより好ましいある実施形態において、ヒドロキシ(C14~C16)アルカンスルホン酸ナトリウムおよび(C14~C16)α-オレフィンスルホン酸ナトリウムと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとの質量比は、1~4.5:1、望ましくは1.5~3.7:1、より望ましくは1.5~2.4:1、最も望ましくは1.8~2.4:1の範囲である。
【0036】
本発明の更に好ましいある実施形態において、3-ヒドロキシ(C14~C16)アルカン-1-スルホン酸ナトリウムおよび(C14~C16)アルカ-2-エン-1-スルホン酸ナトリウムと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとの質量比は、1~4.5:1、望ましくは1.5~3.7:1、より望ましくは1.5~2.4:1、最も望ましくは1.8~2.4:1の範囲である。
【0037】
本発明のある実施形態において、アニオン界面活性剤Bとアニオン界面活性剤Cとの質量比は、5~50:50~95、望ましくは10~40:60~90、より望ましくは10~30:70~90、最も望ましくは15~25:75~85の範囲である。
【0038】
本発明のある実施形態において、ヒドロキシ(C14~C16)アルカンスルホン酸ナトリウムと(C14~C16)α-オレフィンスルホン酸ナトリウムとの質量比は、5~50:50~95、望ましくは10~40:60~90、より望ましくは10~30:70~90、最も望ましくは15~25:75~85の範囲である。
【0039】
本発明のある実施形態において、3-ヒドロキシ(C14~C16)アルカン-1-スルホン酸ナトリウムと(C14~C16)アルカ-2-エン-1-スルホン酸ナトリウムとの質量比は、5~50:50~95、望ましくは10~40:60~90、より望ましくは10~30:70~90、最も望ましくは15~25:75~85の範囲である。
【0040】
本発明のある実施形態において、アニオン界面活性剤Bと親水性ポリマAとの質量比は、0.1~1.0:1、望ましくは0.2~0.8:1、より望ましくは0.3~0.6:1、最も望ましくは0.4~0.5:1の範囲である。
【0041】
本発明のある実施形態において、ヒドロキシ(C14~C16)アルカンスルホン酸ナトリウムとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの質量比は、0.1~1.0:1、望ましくは0.2~0.8:1、より望ましくは0.3~0.6:1、最も望ましくは0.4~0.5:1の範囲である。
【0042】
本発明のある実施形態において、3-ヒドロキシ(C14~C16)アルカン-1-スルホン酸ナトリウムとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの質量比は、0.1~1.0:1、望ましくは0.2~0.8:1、より望ましくは0.3~0.6:1、最も望ましくは0.4~0.5:1の範囲である。
【0043】
本発明のある実施形態において、本防曇コーティング組成物のpHは、5~10、望ましくは6~9.5、最も望ましくは6~7.5の範囲である。
【0044】
本発明のある実施形態において、本防曇コーティング組成物は、従来の防曇コーティング組成物の調製法を用いて調製されるが、そのような方法に限定されるものではない。例えば、本発明の防曇コーティング組成物は、所定量の親水性ポリマAとアニオン界面活性剤Bとアニオン界面活性剤Cと溶媒とを混合する工程と、均一な溶液となるまで良く撹拌する工程とによって調製される。
【0045】
本発明には、良好な防曇コーティング組成物、例えば、良好な防曇性と長い貯蔵寿命を持ち、様々な基材に塗布することのできる防曇コーティング組成物を得るため、前述のような本発明の実施形態の少なくとも1つを組み入れたものが含まれる。
【0046】
本発明は更に、基材と、前述の防曇コーティング組成物とを含む物品も開示する。
【0047】
本発明の好ましいある実施形態において、この物品は、基材上に被覆した、前述の防曇コーティング組成物を含む。
【0048】
本発明のある実施形態において、この物品は、良好な透明性、光学的特性、または視覚的特性(vision property)が必要とされる用途を目的としている。
【0049】
本発明のある実施形態において、基材は、ポリオレフィン(ポリプロピレンおよびポリエチレンである)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレングリコールナフタレンジカルボキシラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリカルボナート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリラート、ポリメタクリラート(ポリメタクリル酸メチルである)、またはこれらの混合物である。
【0050】
本発明のある実施形態において、基材は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリラート、およびこれらの混合物、望ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、またはポリスチレンから成る群より選ばれる。
【0051】
本発明の好ましいある実施形態において、物品は、例えば、フィルム、シート、ブロック、マスク構成要素、保護目がね構成要素、包装または食品雑貨類(grocery)包装の構成要素、バリヤ構成要素、ヘルメットバイザ、広告付きの箱(advertising box)、ショーウィンド(displaying shop window)、車両窓、風防、または温室構成要素である。
【0052】
本発明の好ましいある実施形態において、物品および/または基材は、熱成形、押出成形、ブローフィルム押出成形、ブロー成形、射出成形、射出ブロー成形、キャストフィルム、カレンダ加工などの方法で製造される。
【0053】
本発明は更に、
基材を製造する工程と、
前述の防曇コーティング組成物を調製する工程と、
前述の防曇コーティング組成物を基材上に被覆する工程と
を含む、物品の製造法も開示する。
【0054】
本発明のある実施形態において、基材を製造する工程は、基材表面にコロナ処理を行って基材表面の極性を高め、これにより、基材と、コーティングとして用いる防曇コーティング組成物との付着性を良くする工程を含む。
【0055】
本発明のある実施形態において、被覆工程は、ワイヤロッドコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、輪転グラビアコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、キャスティング、刷毛塗り、印刷、エアナイフコーティング、その他同様の被覆法から選ばれる。
【0056】
以下の実施例で本発明を詳しく説明する。これらの実施例は、本発明の実行されるべき態様および使用の効果を述べることを目的として提示するものであり、この点において請求項で別途指定されない限り、本発明の範囲を制限しようとするものではない。本発明に対して行われる可能性のある変形や変更も全て本発明の範囲内にあるものとする。
【実施例】
【0057】
[使用する物質]
ヒドロキシ(C14~C16)アルカンスルホン酸ナトリウム
(C14~C16)α-オレフィンスルホン酸ナトリウム
ポリグリセリル-10-オレアート
ラウリル硫酸ナトリウム
C14~C17第二級アルキルスルホン酸ナトリウム
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
ラウリルエーテル硫酸ナトリウム
ヒドロキシプロピルメチルセルロース
【0058】
[防曇コーティング組成物の実施例および比較例]
表1および2に示す比で成分を混合し、均一な溶液となるまで70℃で撹拌して、防曇コーティング組成物の実施例および比較例(実施例1~8および比較例1~6)を調製する。
【0059】
[防曇コーティング組成物を被覆したシートの実施例および比較例]
1.防曇コーティング組成物を被覆したポリプロピレン(PP)シートの実施例およびPPシート比較例(PPシート1~8および比較用PPシート1~6)の調製
ステップ1:40ダインの表面張力となるよう(表面張力は、ダインテストペンを用いて試験する)、厚さ0.35mmのポリプロピレンシートの片面にコロナ処理を行う。
ステップ2:防曇コーティング組成物と、イオンおよび不純物を含まない水との比が1:4となるよう、先に調製した防曇コーティング組成物を、イオンおよび不純物を含まない水とを混合する。
ステップ3:ステップ1で得られた、表面処理したポリプロピレンシートに、防曇コーティング組成物の膜の湿潤厚さが12μm(マイクロメートル:microns)となるよう、ワイヤバーコータNo.2を用いて、ステップ2で得られた防曇コーティング組成物を被覆する。
ステップ4:ステップ3で得られた、防曇組成物を被覆したポリプロピレンシートを、75~80℃の温度で15分間加熱する。
【0060】
2.防曇コーティング組成物を被覆したポリエチレンテレフタラート(PET)シートの実施例およびPETシート比較例(PETシート1~8および比較用PETシート1~6)の製造
ステップ1:厚さ0.37mmのポリエチレンテレフタラートシートを製造する。
ステップ2:防曇コーティング組成物と、イオンおよび不純物を含まない水との比が1:4となるよう、先に調製した防曇コーティング組成物を、イオンおよび不純物を含まない水と混合する。
ステップ3:ステップ1で得られたポリエチレンテレフタラートシートに、防曇コーティング組成物の膜の湿潤厚さが12μmとなるよう、ワイヤバーコータNo.2を用いて、ステップ2で得られた防曇コーティング組成物を被覆する。
ステップ4:ステップ3で得られた、防曇組成物を被覆したポリエチレンテレフタラートシートを、60~65℃の温度で15分間加熱する。
【0061】
[試験法]
1.高温防曇試験
1.1 直径68mm、高さ90mmの250mLのビーカーに50mLの水を加え、防曇コーティング組成物を被覆した側が下向きになるよう、実施例のシートでビーカーを覆う。
1.2 温度を60±1℃に調節した湯浴にビーカーを入れる。湯浴の水とビーカー中の水は同じ高さでなければならない。
1.3 シート表面の変化を観察し、水滴が試験表面全体を覆い始めた時間を記録する。
【0062】
2.低温防曇試験
2.1 直径68mm、高さ90mmの250mLのビーカーに200mLの水を加え、防曇コーティング組成物を被覆した側が下向きとなるよう、実施例のシートでビーカーを覆う。
2.2 温度を2±1℃に調節したチャンバにビーカーを入れる。
2.3 シート表面の変化を観察し、水滴が試験表面全体を覆い始めた時間を記録する。
【0063】
3.pH試験:METTLER TOLEDO Seven Compact pHメータを使用
【0064】
4.ヘーズ試験:Data Color Datacolor Spectro 700分光光度計を使用
【0065】
5.貯蔵寿命試験
5.1 500gのコーティング組成物を500mLの円筒形容器に入れて蓋を閉める。
5.2 ステップ5.1の容器を、室内、室温で保存する。
5.3 コーティング組成物の変化(色、曇り/透明度、沈殿/分離、粘度、pHなど)を観察し、変化が生じた時間を記録する。
【0066】
表1および2から、本発明の防曇コーティング組成物(実施例1~8)は、変質や分離を起こすことなく、6ヶ月以上も貯蔵できることが分かった。一方、ポリグリセリル-10-オレアートとラウリルエーテル硫酸ナトリウムとの混合物である界面活性剤を含む比較例5は、貯蔵の僅か2週間後には分離が見られ、これは、ポリグリセリル-10-オレアートが水に溶けにくく、貯蔵の間に分離したためである。
【0067】
表3および4から、PPシート1~8およびPETシート1~8のヘーズ値は、防曇コーティング組成物を被覆していないPPシートおよびPETシートと同程度(防曇コーティング組成物を被覆していないPPシートおよびPETシートのヘーズ値はそれぞれ6.2および2.3である)、つまり、本発明のコーティング組成物は、基材であるPPシートおよびPETシートを曇らせないことが分かった。一方、比較用PPシート2~6および比較用PETシート2~6のヘーズ値は、防曇コーティング組成物を被覆していないPPシートおよびPETシートよりも高く、つまり、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PPシート2および3、比較用PETシート2および3)、C14~C17第二級アルキルスルホン酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PPシート4、比較用PETシート4)、ポリグリセリル-10-オレアートとラウリルエーテル硫酸ナトリウムとの混合物である界面活性剤(比較用PPシート5、比較用PETシート5)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PPシート6、比較用PETシート6)を含む防曇コーティング組成物は、基材であるPPシートおよびPETシートを曇らせる。更に、比較用PPシート4~5および比較用PETシート4~5の表面には異常が見られ、つまり、汚れおよび油が見られた。
【0068】
試験結果から、更に、本発明のコーティング組成物(PPシート1~8)は、高温条件下、ポリプロピレンである基材に対し、ラウリル硫酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PPシート1)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PPシート2および3)、C14~C17第二級アルキルスルホン酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PPシート4)、ポリグリセリル-10-オレアートとラウリルエーテル硫酸ナトリウムとの混合物である界面活性剤(比較用PPシート5)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PPシート6)を含む防曇コーティング組成物よりも、良好な防曇効果を持つことが分かった。
【0069】
本発明のコーティング組成物(PPシート1~8およびPETシート1~8)は、低温条件下で、ポリプロピレンである基材に対し、また、高温条件下で、ポリエチレンテレフタラートである基材に対して、C14~C17第二級アルキルスルホン酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PPシート4および比較用PETシート4)、ポリグリセリル-10-オレアートとラウリルエーテル硫酸ナトリウムとの混合物である界面活性剤(比較用PPシート5および比較用PETシート5)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PPシート6および比較用PETシート6)を含む防曇コーティング組成物よりも、良好な防曇効果を持つ。
【0070】
本発明のコーティング組成物(PETシート1~8)は、低温条件下、ポリエチレンテレフタラートである基材に対し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PETシート2および比較用PETシート3)、C14~C17第二級アルキルスルホン酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PETシート4)、ポリグリセリル-10-オレアートとラウリルエーテル硫酸ナトリウムとの混合物である界面活性剤(比較用PETシート5)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムである界面活性剤(比較用PETシート6)を含む防曇コーティング組成物よりも、良好な防曇効果を持つ。
【0071】
全体として、本発明のコーティング組成物は、高温および低温条件下で、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタラート基材の両方に対し、良好な防曇効果を持つことが分かった。これは、本発明のコーティング組成物がヒドロキシル基を含むことで、基材表面の親水性を高め、また、付着する水滴の表面張力を小さくし、これにより、水を水滴として集めて基材表面を曇らせる代わりに、水を散開させてシートを透明に保つためである。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
本発明の最良実施態様は、発明を実施するための形態の項に述べられているとおりである。
【国際調査報告】