(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】効率的なワクチン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20241128BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/49 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/51 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/44 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/38 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/48 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/37 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/45 20060101ALI20241128BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20241128BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20241128BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20241128BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20241128BHJP
A61K 39/29 20060101ALI20241128BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241128BHJP
C07K 14/52 20060101ALN20241128BHJP
C07K 14/165 20060101ALN20241128BHJP
C07K 14/18 20060101ALN20241128BHJP
C07K 14/155 20060101ALN20241128BHJP
C07K 14/11 20060101ALN20241128BHJP
C07K 14/045 20060101ALN20241128BHJP
C07K 14/02 20060101ALN20241128BHJP
C07K 14/025 20060101ALN20241128BHJP
C07K 14/115 20060101ALN20241128BHJP
A61P 31/14 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/50
C12N15/49
C12N15/51
C12N15/44
C12N15/38
C12N15/31
C12N15/63 Z
C12N15/48
C12N15/37
C12N15/45
A61K39/12
A61K39/00 H
A61K39/145
A61K39/215
A61K39/29
A61P37/04
C07K14/52
C07K14/165
C07K14/18
C07K14/155
C07K14/11
C07K14/045
C07K14/02
C07K14/025
C07K14/115
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536100
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2022046430
(87)【国際公開番号】W WO2023113016
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524226450
【氏名又は名称】VLP Therapeutics Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】赤畑 渉
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ジョナサン エフ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,ジェファリー レオ
(72)【発明者】
【氏名】関田 隆
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA51
4C085BA55
4C085BA71
4C085BA87
4C085BA89
4C085BB01
4C085BB17
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA01
4H045CA02
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4H045CA11
4H045EA20
4H045EA31
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、構造タンパク質nsp1、nsp2、nsp3およびnsp4と、シグナル配列、膜貫通ドメインならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドに融合された抗原タンパク質を含むポリペプチドとをコードする、単離されたポリヌクレオチドが提供される。このポリヌクレオチドは、ウイルス感染、とりわけ、COVID-19感染に対するワクチンの製造、がんおよび/または炎症性疾患の処置に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたポリヌクレオチドであって、アルファウイルス非構造タンパク質nsp1、nsp2、nsp3およびnsp4と、
シグナル配列、膜貫通ドメインならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドに融合された抗原タンパク質を含むポリペプチドと
をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記抗原タンパク質が、CD4+ T細胞エピトープに融合されており、
前記CD4+ T細胞エピトープがPan-DRエピトープ(PADRE)である、
請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記抗原タンパク質が、ウイルス、がんまたはサイトカインに由来するタンパク質である、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記抗原タンパク質が、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、エボラウイルス、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、インフルエンザウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、チクングニアウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、デングウイルス、オルトミクソウイルス科ウイルス、および結核菌からなる群から選択されるウイルスまたは細菌に由来するタンパク質である、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記抗原タンパク質が、CD8+ T細胞エピトープにさらに融合されており、
前記CD8+ T細胞エピトープは、前記抗原タンパク質が由来する前記ウイルスに由来するペプチドである、
請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記抗原タンパク質がコロナウイルスに由来する、請求項4または5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記抗原タンパク質が、コロナウイルススパイク(S)タンパク質に由来する、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記抗原タンパク質が、前記コロナウイルススパイク(S)タンパク質におけるS1サブユニットおよび/またはS2サブユニットである、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記抗原タンパク質が、前記コロナウイルススパイク(S)タンパク質におけるS1サブユニットである、請求項8に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記抗原タンパク質が、前記コロナウイルスS1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)である、請求項9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記膜貫通ドメインが、インフルエンザヘマグルチニン(HA)、CD80、または前記抗原タンパク質に由来する改変膜貫通ドメインに由来する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記膜貫通ドメインがインフルエンザヘマグルチニン(HA)に由来する、請求項11に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記改変膜貫通ドメインが、COVID-19スパイク(S)タンパク質の膜近傍ドメインおよび膜貫通ドメインを含む、請求項11に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記膜貫通ドメインおよび/またはシグナル配列が、リンカーを通して前記抗原タンパク質に融合されている、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記コロナウイルスがCOVID-19である、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項1に記載の前記ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項18】
プロモーター、
5’UTR、
アルファウイルス非構造タンパク質nsp1、nsp2、nsp3およびnsp4をコードするポリヌクレオチド、
SGプロモーター、
シグナル配列、膜貫通ドメインならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドに融合された抗原タンパク質を含むポリペプチドをコードする目的遺伝子、
3’UTRならびに
ポリAテールを含む、
請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
請求項1に記載の前記ポリヌクレオチドまたは請求項1に記載の前記ポリヌクレオチドを含むベクター、および医薬的に許容されるデリバリー媒体を含む、ワクチン組成物。
【請求項20】
前記デリバリー媒体が、1つもしくは複数のアルファウイルス構造タンパク質からなる粒子または脂質デリバリー系である、請求項18に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
請求項19に記載の前記ワクチンの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、
前記対象において抗原に対して処置する、予防するおよび/または免疫を付与する方法。
【請求項22】
アルファウイルス非構造タンパク質nsp1、nsp2、nsp3およびnsp4と、
シグナル配列、膜貫通ドメインならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドに融合された抗原タンパク質を含むポリペプチドと
をコードする、単離されたポリヌクレオチドであって、
修飾ヌクレオシドを含む、
ポリヌクレオチド。
【請求項23】
前記修飾ヌクレオシドが修飾シチジンおよび/または修飾ウリジンである、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
前記修飾シチジンが5-メチル-シチジンであり、前記修飾ウリジンがN1-メチル-シュードウリジンである、請求項23に記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
前記ポリヌクレオチド中のシチジンの実質的に100%が修飾シチジンである、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
前記ポリヌクレオチド中のウリジンの100%未満が修飾ウリジンである、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全体として、アルファウイルスレプリコンおよび抗原を含む効率的なワクチンの分野にならびに抗原を処置するおよび/またはそれに対して免疫を付与する方法および組成物に関する。特に、本開示は、SARS-CoV-2(COVID-19)などのコロナウイルス用のワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスは、風邪のように軽度~中等度の上気道疾患を通常には引き起こすウイルスの大きなファミリーである。しかし、過去20年にわたり新規な3種のコロナウイルスが動物感染源から出現して、重篤かつ広範な病気と死を引き起こしてきた。
【0003】
コロナウイルスは数百種あり、そのほとんどはブタ、ラクダ、コウモリおよびネコなどの動物の間を循環している。時々、これらのウイルスがヒトに感染しいわゆるスピルオーバーイベントと呼ばれる疾患を引き起こすおそれがある。ヒトを病気にする既知の7種のコロナウイルスのうち4種は、軽度~中等度の疾患のみを引き起こす。3種が、より重篤な、さらには致命的な疾患を引き起こすおそれがある。SARSコロナウイルス(SARS-CoV)は2002年11月に出現し、重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こした。そのウイルスは2004年までには消失した。中東呼吸器症候群(MERS)は、MERSコロナウイルス(MERS-CoV)によって引き起こされる。ラクダの動物感染源から伝染したMERSは、2012年9月に確認され、散発的かつ局地的なアウトブレイクを引き続き引き起こしている。今世紀に出現した第3の新型コロナウイルスは、SARS-CoV-2と呼ばれる。そのウイルスはコロナウイルス感染症2019(COVID-19)を引き起こすが、この感染症は2019年12月に中国から出現し、2020年3月11日に世界保健機関によって世界的大流行(パンデミック)と宣言された。(Coronaviruses: https://www.niaid.nih.gov/diseases-conditions/coronaviruses)
【0004】
SARS-CoV-2ウイルスに感染したほとんどのヒトは、軽度~中等度の呼吸器系の疾患を経験し、特別な処置を必要とせずに回復する。高齢者や心血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患およびがんのような基礎疾患を有するヒトは、深刻な疾患を発症する可能性がより高い。誰しもがCOVID-19にかかり、どの年齢でも重症化や死亡の可能性はある。(Coronavirus disease (COVID-19): https://www.who.int/health-topics/coronavirus#tab=tab _1)
【0005】
オミクロン(B.1.1.529変異型)は、2021年11月24日に新規なSARS-CoV-2変異型として南アフリカからWHOに初めて報告された。
【0006】
予備的な証拠によると、懸念される他の変異型と比較して、オミクロンによる再感染のリスクが増大するおそれがあることを示唆する(すなわち、以前にCOVID-19に感染したことのある人々は、オミクロンにより再感染しやすくなる可能性がある)。(Update on Omicron: https://www.who.int/news/item/28-11-2021-update-on-omicron)
【0007】
現在のところ、COVID-19に対するワクチンはいくつか承認されている。特に、mRNAワクチンは95%を超える有効性を示す。しかし、このパンデミックを防止するためには、より多くのワクチンを世界中に供給する必要がある。いかなる変異型にも効率的なワクチンを世界中に供給するためには、いっそうのワクチン開発が、特に、いかなる変異型にも効率的なワクチンを短時間で製造することができる技術に基づいたワクチンが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の目的の一つは、感染症またはがんを予防するかまたは処置するために有効であるウイルス抗原、がん抗原等の抗原に対するワクチンを開発するための新たな設計概念を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、抗原に対する免疫応答を誘導することができる新規な抗原的に活性なタンパク質/ポリペプチドに関する。本明細書に開示のタンパク質/ポリペプチドは、シグナル配列、膜貫通ドメインならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドに融合された抗原タンパク質を含む。抗原タンパク質は、コロナウイルス構造タンパク質またはその断片に由来するタンパク質であり得る。
【0011】
コロナウイルス構造タンパク質は、スパイク(S)タンパク質、ヌクレオカプシド(N)タンパク質、膜(M)タンパク質および小エンベロープタンパク質(E)を含み得る。抗原タンパク質は、構造タンパク質のいずれかまたはそれらの組合わせに由来し得る。抗原タンパク質の具体例として、スパイクタンパク質のS1サブユニットおよび/またはS2サブユニット、特にS1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)を挙げることができる。
【0012】
別の態様では、本開示は、抗原タンパク質に対する防御を誘導することができる上述の新規な抗原的に活性なタンパク質/ポリペプチドをコードする新規のポリヌクレオチドに関する。
【0013】
別の態様では、本開示は、上述の抗原的に活性なタンパク質/ポリペプチドを発現することができる新規のアルファウイルスレプリコンに関する。アルファウイルスレプリコンは、アルファウイルス非構造タンパク質nsp1、nsp2、nsp3およびnsp4をコードするRNAなどのポリヌクレオチドと、目的遺伝子として上述の抗原的に活性なタンパク質/ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、を含む。
【0014】
さらに別の態様では、本開示は、上述のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含むワクチンに関する。特に、本開示は、アルファウイルス非構造タンパク質nsp1、nsp2、nsp3およびnsp4と、シグナル配列、膜貫通ドメインならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドに融合された抗原タンパク質を含むポリペプチドと、をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを提供する。CD4+ T細胞エピトープはユニバーサルエピトープであり得る。抗原タンパク質がウイルス構造タンパク質に由来するタンパク質である場合、ワクチンは、ウイルス感染から対象を予防するおよび/または処置するために使用することができる。
【0015】
さらに別の態様では、本開示は、上述のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、ウイルス感染から対象を免疫を付与するか、予防するかまたは処置するための方法に関する。
【0016】
さらに別の態様では、本開示は、医薬の製造のための上述のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの使用に関する。
【0017】
さらなる態様では、本開示は、アルファウイルス非構造タンパク質nsp1、nsp2、nsp3およびnsp4と、抗原ペプチドを含むポリペプチドと、をコードする新規なポリヌクレオチドであって、修飾ヌクレオシド(例えば、N1-メチル-シュードウリジンもしくは5-メチル-シチジンまたは両方)を含む、ポリヌクレオチドに関する。
【0018】
この効率的なワクチン設計はまた、がんまたは炎症性疾患の処置用のワクチンを開発するために適用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】アルファウイルスレプリコンのコンストラクト。
【
図2】SARS-CoV-2変異型のRBDタンパク質に対するELISA。
【
図4】自然免疫における修飾ヌクレオシドを有するポリヌクレオチドの効果。
【
図5】COVID-19 野生株またはガンマ変異型に曝露されたハムスターの体重に対するワクチン組成物(compositions)の効果。
【
図6】SARS-COV-2野生株またはガンマ変異型に曝露されたハムスターにおけるSARS-CoV-2の定量的RT-PCRアッセイに対するワクチン組成物の効果
【
図7】SARS-COV-2野生株またはガンマ変異型に暴露されたハムスターの肺の病理組織学的解析に対するワクチン組成物の効果。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用される場合、「抗原」とは、抗体またはT細胞受容体(TCR)が結合することができる分子を指す。抗原は加えて、免疫系が認識することができ、かつ/または、Bおよび/もしくはTリンパ球の活性化をもたらす液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を誘導することができる。抗原には、本明細書で使用される場合、それらに限定されないが、ウイルス、アレルゲン、自己抗原、ハプテン、がん抗原(すなわち腫瘍抗原)および結核菌(Mycobacterium tuberculosis)などの感染性疾患抗原とともに乱用性薬物(ニコチンのような)などの有機小分子、ならびにそれらの断片および誘導体が含まれる。さらに、本開示に使用される抗原は、ペプチド、タンパク質、ドメイン、炭水化物、アルカロイド、例えばステロイドホルモンなどの脂質または小分子およびそれらの断片および誘導体、自己抗体およびサイトカインそれ自体であり得る。本明細書で使用される場合、「抗原ペプチド」とは、抗原として作用することができるタンパク質またはペプチドを指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「ウイルス」とは、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、エボラ、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、チクングニアウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、デングウイルス、またはオルトミクソウイルス(orthymyxoviridae)科ウイルスであり得るが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「コロナウイルス」とは、コロナウイルス科(Coronaviridae)の科に属する一本鎖のポジティブセンスRNAウイルスを指すこととする。例示的なコロナウイルス科ウイルスには、それらに限定されないが、SARS-Cov、MERS-CovおよびSARS-CoV-2(COVID-19)が含まれる。SARS-CoV-2(COVID-19)は、既知および未知の突然変異型を含むことができる。既知の突然変異型として、SARS-CoV-2 E484K_N501Y_K417T突然変異型(ガンマ、ブラジル変異型(valiant))、T478K_L452R(デルタ、インド変異型)、E484K_N501Y_K417N突然変異型(ベータ、南アフリカ変異型)、E484K突然変異型およびK417N_S477N_T478K_E484A_Q493K_G446S_N501Y_Y505H_G496S_Q498R_N440K_G339D_S375F_S373P_S371L突然変異型(オミクロン)を挙げることができる。コロナウイルスゲノムは、多数の非構造タンパク質と、スパイク(S)、ヌクレオカプシド(N)、膜(M)および小エンベロープ(E)タンパク質を含む主要な4つの構造タンパク質と、をコードする。大きなエンベロープ糖タンパク質であるスパイク(S)タンパク質は、S1サブユニットおよびS2サブユニットから構成される。「受容体結合ドメイン(RBD)」はS1サブユニットに位置する。本明細書で使用される抗原タンパク質の好ましい例とは、コロナウイルスRBD、その断片またはその突然変異型である。COVID-19のスパイクタンパク質、スパイクタンパク質のS1サブユニットおよびS2サブユニットおよびRBDならびにその突然変異型が特定され、公開されてきた(Wrapp et al., Science Vol. 367, issue 6483(2020) pp.1260-1263 10.1126/science.abb2507、Z. Wang et al., Nature Vol 592(2021) pp616-622 引用文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0023】
本明細書において使用される「コロナウイルス構造タンパク質」は、天然に存在するウイルス構造タンパク質である場合もあり、その改変タンパク質である場合もある。改変タンパク質は、天然に存在するウイルス構造タンパク質の断片であっても、その突然変異型であってもよい。一実施形態では、改変タンパク質は、天然に存在するウイルス構造タンパク質またはその断片と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%のアミノ酸配列同一性を有する。一実施形態では、改変タンパク質は、天然に存在するウイルスエンベロープタンパク質またはその断片に対して、アミノ酸のうちの多くても10%が欠失、置換および/または付加されている突然変異型である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「膜貫通ドメイン(TM)」とは、天然の起源に由来するかまたは合成の起源に由来するかいずれかであるタンパク質である。起源が天然である場合、一部の態様におけるドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する。一態様では、膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質は、抗原ペプチドのオリジンに対して異種のタンパク質である。膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質の例として、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータの各鎖、CD28、CD3エプシロン、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154;ヒトにおけるTLR1~TLR10およびマウスにおけるTLR1~TLR9、TLR11~TLR13などのトール様受容体(TLR);GPCRケモカイン受容体に属するIL-1-28受容体、RANTES受容体(CCR1、CCR3、CCR5)、MIP-1受容体、PF4受容体、M-CSF受容体およびNAP-2受容体などのインターロイキン(IL)受容体;赤血球凝集素(ヘマグルチニン、HA)が挙げられる。別の態様では、膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質は、COVID-19スパイクタンパク質などのCOVID-19に由来するタンパク質である。
【0025】
膜貫通タンパク質の例として、以下のもの:5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質、ABCトランスポーター、ACBP、アミロイドベータ(A4)、Bcl-2阻害剤、BNIP、CAAXプロテアーゼ、シトクロムP450、E-NPP、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、脂肪酸デサチュラーゼ、ガンマセクレターゼ、グルコーストランスポーター、グリコフォリン、GPCR、HER2/ErbB2、HER3/ErbB3、HER4/ErbB4、HSD-11β、低酸素誘導タンパク質、免疫グロブリン、インスリン受容体、インテグリン、イオンチャネル、MAPEG、MFS、MinKファミリー、MPP、ペプチダーゼAD、ペプチダーゼファミリーM48、ペプチダーゼMA、プロテインジャギド、受容体型キナーゼ、SNARE複合体、スルファターゼ、TNF受容体、膜貫通タンパク質14、トランスポーター、TROBP、VEGF受容体、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アンモニアおよび尿素トランスポーター、FMN結合酸化還元酵素、ロイシンリッチリピート(LRR)含有膜貫通タンパク質、ロイコトリエンC4シンターゼ、リソソーム関連膜糖タンパク質、主要内在性タンパク質(Major Intrinsic Protein)(MIP)/FNTスーパーファミリー、ミクロソームプロスタグランジンEシンターゼ、N-(デオキシ)リボシルトランスフェラーゼ様膜タンパク質、中性/アルカリセラミダーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、五量体リガンド依存性イオンチャネル、ロドプシン様受容体およびポンプ、単一ヘリックスATPase調節因子、スクアレン/フィトエンシンターゼ、ステアロイル-CoAデサチュラーゼ1、スタニン(SNN)膜タンパク質、T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖、テトラトリコペプチドリピート(TPR)アルファ-ヘリカルリピートタンパク質、NAD(P)結合ロスマンフォールドドメインを有する膜貫通タンパク質、も挙げられる。
【0026】
加えて、脂質二重層または他の内在性タンパク質およびペプチドに付着されているモノタイプ/周辺タンパク質も、膜貫通タンパク質として使用することができる。例として、アルファ/ベータ-ヒドロラーゼ、アネキシン、Bet V1様タンパク質、C1ドメイン含有タンパク質、C2ドメイン含有タンパク質、CoA依存性アシルトランスフェラーゼ、CRAL-TRIOドメイン含有タンパク質、DNase I様タンパク質、フィブリノーゲン、FYVE/PHDジンクフィンガータンパク質、ガラクトース結合ドメイン様タンパク質、糖脂質転移タンパク質、免疫グロブリン様スーパーファミリー(Eセット)タンパク質、リポカリン、リポキシゲナーゼ、PGBDスーパーファミリー、PHドメイン様タンパク質、ホスファチジルイノシトール3-/4-キナーゼ、PLC様ホスホジエステラーゼ、ホスホチロシンタンパク質ホスファターゼII、Pループ含有ヌクレオシド三リン酸加水分解酵素、プロテインキナーゼスーパーファミリー、PXドメイン含有タンパク質、サポシン、シヌクレインおよび転写因子タビーを挙げられる。
【0027】
本開示の一態様では、膜貫通ドメインは、膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質の少なくとも膜貫通領域を含む。加えて、膜貫通ドメインはまた、膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質の膜近傍ドメイン(JMD)および/または細胞質側末端も含むことができる。
【0028】
あるいは、一部の実施形態での膜貫通ドメインは合成である。一部の態様では、合成膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を優勢に含む。一部の態様では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端に見出されることになる。
【0029】
好ましい膜貫通ドメインは、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、CD80、Toll様受容体4(TLR4)またはCOVID-19スパイクタンパク質に由来するものであり得る。具体例として、インフルエンザウイルスヘマグルチニン「HA(フレキシブル-TM-Cyt)」のフレキシブル膜近傍領域またはフレキシブルリンカー、膜貫通ドメインおよび細胞質側末端を含むタンパク質;ヒトCD80の膜貫通ドメインおよび細胞質側末端からなるタンパク質;膜貫通ドメイン(TM)およびToll/インターロイキン-1受容体ドメイン(TIR)からなるタンパク質、ならびにCOVID-19スパイク(S)タンパク質の膜近傍ドメイン(JMD)および膜貫通ドメインからなるタンパク質が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド」とは、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)、ウリジン(U)、シチジン(C)、またはそれらの修飾ヌクレオシドからなる分子を指す。
【0031】
修飾ヌクレオシドには、それらに限定されないが、シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、5-メチル-ウリジン、シュードシチジン、N1-メチル-シュードシチジンおよび5-メチル-シチジンが含まれる。
【0032】
シュードウリジンまたはシュードシチジンは、ウラシルまたはシトシンが窒素-炭素グリコシド結合ではなく炭素-炭素を介して付着している、ウリジンまたはシチジンの異性体である。
【0033】
一実施形態では、修飾ヌクレオシドは、N1-メチル-シュードウリジンまたは5-メチル-シチジンから独立して選択される。一実施形態では、mRNAまたはsaRNAに含まれるシチジンおよびウリジンの実質的に100%が、それぞれ修飾シチジン(例えば5-メチル-シチジン)および修飾ウリジン(例えばN1-メチル-シュードウリジン)である。一実施形態では、シチジンの100%が修飾シチジンであり、80%のウリジンが修飾ウリジンであり、別の実施形態では、シチジンの50%が修飾シチジンであり、ウリジンの50%が修飾ウリジンである。さらに別の実施形態では、saRNA中の100%未満のウリジンが修飾ウリジンである。
【0034】
本明細書で使用される場合、「シグナル配列」(シグナルペプチド、ターゲティングシグナル、局在化シグナル、局在化配列、トランジットペプチド、リーダー配列またはリーダーペプチドと呼ばれることもある)とは、文脈に応じて、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。シグナル配列は、約9個から200個までのヌクレオチドまたは3~70個のアミノ酸の長さであり、コード領域またはタンパク質の5’またはN末端に適宜、組み込まれている。一部のシグナル配列は、タンパク質が所望の部位に輸送された後、例えばシグナルペプチダーゼによってタンパク質から切断される。
【0035】
一部の実施形態では、IL-2のシグナル配列、特にヒトIL-2を用いることができる。別の実施形態では、COVID-19スパイクタンパク質のシグナル配列を用いることができる。
【0036】
本明細書で使用される場合、CD4+ T細胞エピトープとは、主要組織適合性複合体(MHC)クラスII分子(MHC-II)に結合し、CD4+ T細胞免疫応答を誘発するペプチドである。CD4+ T細胞エピトープは、抗原タンパク質が由来するウイルスに由来するペプチドであり得る。ウイルスタンパク質に由来するCD4+ T細胞エピトープは、既知のエピトープマッピング手順によって特定することができる。本開示では、「AA」などのリンカーによって連結された多重のCD4+ T細胞エピトープからなるペプチドを、「CD4+ T細胞エピトープ」として使用することができる。あるいは、CD4+ T細胞エピトープはPan-DRエピトープ(PADRE)であり得る。
【0037】
本開示で使用される「PADRE」という表現は、Pan HLA DR結合エピトープまたはユニバーサルエピトープ、HLAハプロタイプにかかわりなくほとんど全てのCD4+ T細胞を活性化するペプチドを意味する。種々のペプチドがPADREとして特定され、既知のPADREのいずれかを本開示で使用することができる。PADREの一例は、AKFVAAWTLKAAA(配列番号1)である。
【0038】
本明細書で使用される場合、CD8+ T細胞エピトープとは、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子(MHC-I)に結合し、CD8+ T細胞免疫応答を誘発するペプチドである。CD8+ T細胞エピトープは、抗原タンパク質が由来するウイルスに由来するペプチドであり得る。ウイルスタンパク質に由来するCD8+ T細胞エピトープは、既知のエピトープマッピング手順によって特定することができる。本開示では、「AA」などのリンカーによって連結された多重のCD8+ T細胞エピトープからなるペプチドを、「CD8+ T細胞エピトープ」として使用することができる。
【0039】
抗原タンパク質、シグナル配列、膜貫通ドメインならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドは、直接に融合されていても、間接に融合されていてもよい。一実施形態では、1つまたは2つのリンカーがそれらの間に介在してもよい。
【0040】
また、コロナウイルス構造タンパク質、シグナル配列、膜貫通ドメインならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドを切断し、短いリンカーによって置き換えることができる。一部の実施形態では、コロナウイルス構造タンパク質、膜貫通ドメインおよび/またはシグナル配列は、1つまたは複数のペプチドリンカーを含む。
【0041】
短いリンカーの例は、2個から25個までのアミノ酸(例えば2個、3個、4個、5個または6個のアミノ酸)からなる。通常、それは、SG、GS、SGG、GGS SGSGおよびTRGGSなどの長さは2個から15個までのアミノ酸の長さである。ある特定の状況では、リンカーは、グリシン(G)、セリン(S)およびシステイン(C)などの1個のアミノ酸のみからなることができる。
【0042】
コロナウイルス構造タンパク質が化学架橋リンカーを通してシグナル配列、膜貫通ドメインならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドに化学的にコンジュゲートされている場合、架橋リンカーの例として、それらに限定されないが、SMPH、スルホ-MBS、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMPB、スルホ-SMCC、SVSB、およびSIAが挙げられる。市場で入手可能な化学架橋リンカーも用いることができる。
【0043】
IgG由来の物質もリンカーとして使用することができる。IgG由来物質の例として、(i)完全(ヒンジ-CH2CH3)(ii)ハーフ(ヒンジ-CH3)および(iii)短(12aaヒンジのみ)を含むIgG1~IgG4が挙げられる。好ましい例はIgG4-CH3である。
【0044】
本明細書で使用される場合、「アルファウイルス」とは、ウイルスのトガウイルス(Togaviridae)科に属するRNA含有ウイルスを指すこととする。例示的なトガウイルスとして、それらに限定されないが、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、エバーグレーズウイルス、ムカンボウイルス、ピクスナウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、ミドルバーグウイルス、チクングニアウイルス(CHIKV)、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、バーマ森林ウイルス、ゲタウイルス、サギヤマウイルス、ベバルウイルス、マヤロウイルス、ウナウイルス、アウラウイルス、ワタロアウイルス、ババンキウイルス、キジラガチウイルス、ハイランドJウイルス、フォートモーガンウイルス、ヌドゥムウイルス、バギークリークウイルスおよびオケルボウイルスが挙げられる。
【0045】
「アルファウイルス構造タンパク質」とは、天然に存在するウイルスカプシドまたはエンベロープタンパク質と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドまたはその断片を意味する。一実施形態では、アルファウイルス構造タンパク質は、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、エバーグレーズウイルス、ムカンボウイルス、ピクスナウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、ミドルバーグウイルス、チクングニアウイルス(CHIKV)、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、バーマ森林ウイルス、ゲタウイルス、サギヤマウイルス、ベバルウイルス、マヤロウイルス、ウナウイルス、アウラウイルス、ワタロアウイルス、ババンキウイルス、キジラガチウイルス、ハイランドJウイルス、フォートモーガンウイルス、ヌドゥムウイルス、またはバギークリークウイルス、と少なくとも約85%、90%、95%またはそれ超のアミノ酸配列同一性を有する。アルファウイルス構造タンパク質の野生型アミノ酸配列は、GenBankから取得することができる。
【0046】
具体的な実施形態では、アルファウイルスは、CHIKV、例えばCHIKV株37997またはLR2006 OPY-1である。他の実施形態では、アルファウイルスは、VEEV、例えばVEEV株TC-83である。
【0047】
「アルファウイルスレプリコン」とは、標的細胞においてインビボ(in vivo)でそれ自体の増幅を誘導することができるRNA分子を意味する。レプリコンは、RNA増幅を触媒するポリメラーゼ(nspl、nsp2、nsp3、nsp4)をコードするとともに、コードされたポリメラーゼによって認識されかつ利用される、複製に必要とされるシスRNA配列を含有する。アルファウイルスレプリコンは通常、以下の順序のエレメント:5’UTR、アルファウイルス非構造タンパク質(nsp1、nsp2、nsp3、nsp4)をコードする配列、3’UTRおよびポリA末端を含有する。アルファウイルスレプリコンは、目的遺伝子の発現を誘導する1つまたは複数のウイルスサブゲノム(SG)プロモーターも含有する。これらの配列は、先行技術において教示の1つまたは複数の突然変異を有することができる。
【0048】
本開示によって提供されるアルファウイルスレプリコンは、
図1に示すコンストラクトを有することができる。
【0049】
本開示において、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」および「有すること(having)」等は、米国特許法のそれらに帰する意味を有することができ、かつ、「含む(includes)」、「含むこと/含めて(including)」等を意味することができ;「から本質的になる(consisting essentially of)」または「本質的になる(consists essentially)」も同様に米国特許法に帰する意味を有するが、その用語はオープンエンドであり、したがって、記載されているものの基本的または新規な特徴が記載されているものを超える存在によって変更されない限り、記載されているものを超える存在を許容するが、先行技術の実施形態を除外する。
【0050】
「断片」とは、タンパク質、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部分を意味する。この一部分は、好ましくは、参照の核酸分子またはポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含有する。断片は、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、または100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、または1000個のヌクレオチドまたはアミノ酸を含有することができる。
【0051】
「参照」とは、標準または対照の条件を意味する。
【0052】
「参照配列」とは、配列比較用の基準として使用される規定された配列である。参照配列は、ある特定の配列のサブセットであっても全体であってもよい;例えば、完全長cDNAもしくは遺伝子配列のセグメントであってもよく、または完全なcDNAもしくは遺伝子配列であってもよい。ポリペプチドに関して、参照ポリペプチド配列の長さは概して、少なくとも約16個のアミノ酸、好ましくは少なくとも約20個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも約25個のアミノ酸、さらにより好ましくは約35個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、または約100個のアミノ酸となる。核酸に関して、参照核酸配列の長さは概して、少なくとも約50個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約60個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約75個のヌクレオチド、さらにより好ましくは約100個のヌクレオチドもしくは約300個のヌクレオチドまたはそれら付近もしくはそれらの間の任意の整数である。
【0053】
配列同一性は通常、配列解析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Avenue、Madison、Wis.53705、BLAST、BESTFIT、GAP、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を使用して測定される。かかるソフトウェアによって、相同性の程度を種々の置換、欠失、および/または他の改変に割り当てることにより同一または類似の配列を整合させる。保存的置換には通常、以下の群内の置換が含まれる:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を決定する例示的なアプローチでは、BLASTプログラムを使用することができ、この場合、e<”3>とe<”100>との間の確率スコアによって、密接に関連した配列が指示される。
【0054】
「有効量」とは、未処置の患者に対して疾患の症状を寛解させるのに必要とされる作用剤の量を意味する。疾患の予防または処置のために本開示を実践するのに使用される活性化合物の有効量は、投与様式、対象の年齢、体重、および全体的な健康に応じて変化する。最終的に、主治医または獣医が適当な量および投薬レジメンを決定することになる。かかる量を「有効」量と称する。
【0055】
満足のいく効果は、1~4回の全身投与、例えば筋肉内投与、皮下投与または静脈内投与によって、103~1010感染単位(IU)または1回当たり0.01~500μg、好ましくは1回当たり105~1010IUまたは0.1~100μg、例えば1回あたり107~109IUまたは1~50の量で得ることができる。レプリコンは、好ましくは、従来の様式での投与に適したワクチン組成物に製剤化することができる。本開示は、本明細書に開示のアルファウイルスレプリコンを含むワクチン組成物を提供する。
【0056】
「対象」とは、それらに限定されないが、ヒトまたはウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、もしくはネコなどの非ヒト哺乳動物を含めて、哺乳動物を意味する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置すること」、「処置」等の用語は、障害および/またはそれに関連する症状を軽減させるかまたは寛解させることを指す。妨げられるものではないが、障害または状態を処置することは、障害、状態またはそれらに関連する症状が完全に解消されることを必要としないことを理解されたい。
【0058】
本明細書で使用される場合、「予防する」、「予防すること」、「予防」、「予防的処置」等の用語は、障害または状態を有さないが、障害または状態を発症するリスクがあるかまたは発症しやすい対象における障害または状態を発症する可能性を低減させることを指す。
【0059】
具体的に明記されていないかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「または」という用語は包括的であると理解される。
【0060】
具体的に明記されていないかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、単数または複数であると理解される。
【0061】
当業者であれば、本明細書および特許請求の範囲に記載のポリヌクレオチド配列が、代表的なDNA配列において「T」を列挙するが、配列がRNAを表す場合、「T」は「U」で置き換えられることを承認するであろう。
【0062】
本明細書で提供される任意のワクチン組成物または方法は、本明細書中で提供されるその他のワクチン組成物および方法のうちのいずれか1つまたは複数と組み合わせることができる。
【0063】
「ベクター」という用語は、手段であって、これによって核酸配列を生物体間、細胞間、または細胞成分間で伝播および/または導入することができる手段を指す。ベクターには、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、人工染色体等が含まれ、それらは自律的に複製するかまたは宿主細胞の染色体に統合することができる。ベクターはまた、ネイキッドRNAポリヌクレオチド、ネイキッドDNAポリヌクレオチド、同一鎖内のDNAとRNAの両方から構成されるポリヌクレオチド、ポリ-リジンコンジュゲートDNAまたはRNA、ペプチドコンジュゲートDNAまたはRNA、リポソームコンジュゲートDNA等であり得るが、それらは自律的に複製しない。多くの、全てではないが、一般的な実施形態では、本開示のベクターはプラスミドまたはバクミドである。
【0064】
通常には、発現される核酸分子は、プロモーターおよび/またはエンハンサーに「作動可能に連結され」ており、プロモーターおよび/またはエンハンサーによる転写調節制御の支配下にある。
【0065】
トランスフェクションの方法および発現媒体の選択は、選択される宿主系に依存することになる。トランスフェクション方法は、例えば、Ausubel et al.(上掲)に記載されている;発現媒体は、例えばCloning Vectors: A Laboratory Manual(P. H. Pouwels et al., 1985, Supp. 1987)に提供されているものから選択することができる。この段落に引用されている参考文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
本開示のコンストラクトの生成向けに様々な発現系が存在する。コンストラクトを生成するのに有用な発現ベクターとして、限定されないが、染色体、エピソーム、およびウイルス由来の各ベクター、例えば、細菌プラスミドに由来する、バクテリオファージに由来する、トランスポゾンに由来する、酵母エピソームに由来する、挿入エレメントに由来する、酵母染色体エレメントに由来する、アルファウイルス[例えばチクングニアウイルス(CHIKV)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)]、バキュロウイルス、SV40などのパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルスに由来するベクター、ならびにそれらの組合せに由来するベクターが挙げられる。
【0067】
本明細書で使用されるコンストラクトおよび/またはベクターは、非構造タンパク質nsp1、nsp2、nsp3およびnsp4をコードするアルファウイルスポリヌクレオチドと、上述の、シグナル配列および/または膜貫通ドメインに融合されたコロナウイルス構造タンパク質を含むポリペプチドをコードする目的遺伝子と、を含む。
【0068】
ベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスの各ベクターであり得る。ヌクレオチドを含むコンストラクトおよび/またはベクターは、非限定的な例であるが、CMVプロモーター、ファージラムダPLプロモーター、大腸菌(E.coli)lac、phoAおよびtacプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、ならびにレトロウイルスLTRのプロモーターなどの、適当なプロモーターに作動可能に連結されていることが求められる。他の適切なプロモーターは、宿主細胞および/または所望の発現率に応じて当業者に知られている。発現コンストラクトは、転写開始、終結のための部位、および転写領域では、翻訳のためのリボソーム結合部位をさらに含有する。コンストラクトによって発現される転写産物のコード部分は、好ましくは、翻訳開始コドンを最初に含み、翻訳されるポリペプチドの末端に適切に配置された終止コドンを含む。
【0069】
ベクターは好ましくは少なくとも1つの選択マーカーを含む。かかるマーカーには、真核細胞培養のためのジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418またはネオマイシン耐性、ならびに大腸菌および他の細菌において培養するためのテトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピシリンの各耐性遺伝子が含まれる。ベクターのうちで好ましいのは、バキュロウイルス、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アビポックスウイルス、カナリア痘ウイルス、鶏痘ウイルス、アライグマ痘ウイルス、豚痘ウイルス等)、アデノウイルス(例えば、イヌアデノウイルス)、ヘルペスウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルスベクターである。本開示とともに使用することができる他のベクターは、細菌において使用するためのベクターを含み、これは、pQE70、pQE60およびpQE-9、pBluescriptベクター、Phagescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5を含む。好ましい真核生物ベクターのうちには、pFastBacl pWINEO、pSV2CAT、pOG44、pXTlおよびpSG、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLがある。他の適切なベクターは当業者にとって容易に明らかになるであろう。
【0070】
組み換えコンストラクトは、調整され得、本明細書に記載のものを含むウイルスタンパク質を真核細胞および/または原核細胞にトランスフェクトし、発現させるために使用することができる。したがって、一実施形態では、本開示は、カプシド、E3、E2、6K、およびElまたはそれらの一部を含むアルファウイルス構造タンパク質をコードする核酸を含有する一ベクター(または複数のベクター)、ならびに、アルファウイルスnsp1、nsp2、nsp3およびnsp4をコードする核酸と、アルファウイルスレプリコン粒子の形成を可能にする条件下でシグナル配列、コロナウイルスRBD、膜貫通ドメインならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドを含むポリペプチドをコードする目的遺伝子とを含む一ベクターを含む、宿主細胞を提供する。
【0071】
一実施形態では、前記ベクターは組換えバキュロウイルスである。別の実施形態では、前記組換えバキュロウイルスを昆虫細胞にトランスフェクトする。好ましい実施形態では、前記細胞は昆虫細胞である。別の実施形態では、前記昆虫細胞はSf9細胞である。
【0072】
ポリペプチド生成向けの特定の一細菌発現系は大腸菌pET発現系(Novagen,Inc.、Madison、Wis)である。この発現系によれば、ポリペプチドをコードするDNA を、発現を可能とするように設計された方向でpETベクターに挿入する。かかるポリペプチドをコードする遺伝子はT7調節シグナルの制御下にあるので、ポリペプチドの発現は宿主細胞におけるT7 RNAポリメラーゼの発現を誘導することによって行われる。このことは通常には、IPTG誘導に応答してT7 RNAポリメラーゼを発現する宿主株を使用することによって行われる。いったん生成されると、組換えポリペプチドは次いで、当技術分野において知られている標準法、例えば、本明細書に記載の方法に従って単離される。
【0073】
選択されたベクターおよび宿主細胞に応じて、コンストラクトは、組換えタンパク質が発現されかつアルファウイルスレプリコンが生成される条件下で、ベクターによりトランスフェクトされた宿主細胞を増殖させることにより産生され、アルファウイルス構造タンパク質の粒子でパッケージされたアルファウイルスレプリコンを含むコンストラクトが形成される。一実施形態では、コンストラクトを生成する方法であって、アルファウイルス非構造タンパク質nsp1、nsp2、nsp3およびnsp4をコードするポリヌクレオチドと、シグナル配列および/または膜貫通ドメインに融合されたコロナウイルス構造タンパク質を含むポリペプチドをコードする少なくとも1つの目的遺伝子とを含むベクター、ならびに、少なくとも1つのアルファウイルス構造タンパク質をそれぞれコードする少なくとも1つのベクターを、適切な宿主細胞内に共トランスフェクトすること、ならびにコンストラクト形成を可能とする条件下で前記アルファウイルス構造タンパク質を発現させることを伴う、方法が提供される。別の実施形態では、真核細胞は、酵母、昆虫、両生類、鳥類または哺乳動物の各細胞からなる群から選択される。適当な増殖条件の選択は当技術分野または当業者の範囲内である。
【0074】
本開示のアルファウイルスレプリコン粒子を産生する細胞を増殖させる方法には、それらに限定されないが、バッチ、バッチ供給、連続および潅流細胞培養の各技法が含まれる。一実施形態では、アルファウイルスレプリコンをコードするベクターとカプシドをコードするポリペプチドを含むベクターと、CHIKVまたはVEEVに由来するものなどのエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターとを、共トランスフェクトした細胞が、細胞を増やしかつ精製および単離に向けてタンパク質(例えば、組換えタンパク質)を発現させるバイオリアクターまたは発酵チャンバ内で、増殖される。通常、細胞培養は、無菌で、制御された温度および大気の条件下で実施される。バイオリアクターとは、温度、大気、撹拌および/またはpHなどの環境条件をモニタリングすることができる、細胞を培養するのに使用されるチャンバである。一実施形態では、バイオリアクターはステンレス鋼チャンバである。別の実施形態では、前記バイオリアクターは、予め滅菌されたプラスチックバッグ(例えば、Cellbag(登録商標)、Wave Biotech、Bridgewater、N.J.、引用文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる)である。他の実施形態では、前記予め滅菌されたプラスチックバッグは約10L~1000Lのバッグである。
【0075】
別の実施形態では、アルファウイルスレプリコンなどのRNA分子は、鋳型DNA配列から、当技術分野に知られている従来の手順によって創り出すことができる。インビトロ(In vitro)転写(IVT)方法は、RNA分子の鋳型による(template-directed)合成を可能にする。IVT方法は、大量のRNA転写産物の合成を可能にする。一般に、IVTは、目的の配列の上流のプロモーター配列を含むDNA鋳型を利用する。プロモーター配列は、最も普通には、T7、T3、またはSP6の各プロモーター配列などのバクテリオファージ起源であるが、デノボで設計されたものを含めて、他の多くのプロモーター配列を許容することができる。DNA鋳型の転写は通常、特異的バクテリオファージプロモーター配列に対応するRNAポリメラーゼを使用することによって最適に行われる。例示的なRNAポリメラーゼには、それらに限定されないが、とりわけ、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、またはSP6 RNAポリメラーゼが含まれる。IVTは一般に、dsDNAで開始されるが、一本鎖上で進行することができる。T7転写キット[RiboMax(商標)Express Large Scale RNA production System、Promega(WI米国)]などのインビトロ転写用キット。
【0076】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される担体」という用語は、ヒトまたは他の脊椎動物への投与に適切である1種または複数の適合性の固体または液体の充填剤、希釈剤または封入物質を意味し、当業者に知られているように、それには、あらゆる水性溶媒(例えば、水、アルコール性/水性溶液、生理食塩水、非経口媒体、例えば塩化ナトリウム、およびリンゲルデキストロース)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および注射用有機エステル、例えばエチルオレイン酸)、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガス)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、風味剤、染料、輸液および栄養補充薬、そのような材料およびそれらの組合せが含まれる。ワクチン組成物中の種々の成分のpHおよび正確な濃度は、よく知られているパラメータに従って調整される。
【0077】
封入物質とは、ポリヌクレオチドまたはベクターがパッケージングされているデリバリー媒体、例えば、レプリコン粒子(例えば米国特許公開第2019/0185822号に記載のアルファウイルスレプリコン粒子、同文献の内容は参照により組み込まれる)および脂質デリバリー系(例えばリポソーム)、を指す。
【0078】
一部の実施形態では、本開示のワクチン組成物または製剤は、脂質デリバリー系、例えば、リポソーム、リポプレックス(lioplexes)、脂質ナノ粒子、またはそれらの任意の組合せを含む。本明細書に記載のアルファウイルスレプリコンなどのポリヌクレオチドは、1つまたは複数のリポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子を使用して製剤化することができる。リポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子を使用して、ポリヌクレオチド指向性タンパク質の生成の有効性を改善することができるが、こういった製剤は、ポリヌクレオチドによる細胞トランスフェクションを高めることができるからであり、および/またはコードされたタンパク質の翻訳を高めることができるからである。リポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子を使用して、ポリヌクレオチドの安定性を高めることもできる。
【0079】
リポソームとは、脂質二重層から主として構成することができ、医薬製剤の投与向けのデリバリー用媒体として使用することができる、人工的に調製された小胞である。リポソームは、様々なサイズのものであり得る。多層ラメラ小胞(MLV)は、数百ナノメートルの直径とすることができ、狭い水性コンパートメントによって隔てられた一連の同心二重層を含有することができる。小型の単一セル小胞(SUV)は、直径50nmよりも小さい場合があり、大型の単一ラメラ小胞(LUV)は、直径50~500nmの間である場合がある。リポソーム設計は、それらに限定されないが、オプソニンまたはリガンドを含んで、非健常組織へのリポソームの付着を改善することができるか、またはそれに限定されないがエンドサイトーシスなどの事象を活性化することができる。リポソームは、医薬製剤のデリバリーを改善するために、低pH値を含有しても、高pH値を含有してもよい。
【0080】
封入される医薬製剤およびリポソーム成分、脂質小胞が分散される媒体の性質、封入される物質の有効濃度およびその潜在的な毒性、小胞の適用および/もしくはデリバリー中に付随するさらなる任意のプロセス、意図される適用に最適な小胞のサイズ、多分散性および貯蔵寿命、ならびに安全かつ効率的なリポソーム生成物のバッチごとの再現性およびスケールアップ生産性等によって、リポソームの形成が左右されてもよい。
【0081】
一部の実施形態では、本明細書に記載のアルファウイルスレプリコンなどのポリヌクレオチドは、リポソームによって封入されてもよく、および/または、リポソームによって次いで封入することができる水性コア中に含有させてもよい。
【0082】
一部の実施形態では、本明細書に記載のアルファウイルスレプリコンなどのポリヌクレオチドは、カチオン性の水中油型エマルジョンで製剤化することができ、ここで、エマルジョン粒子は、油性のコアおよびカチオン性脂質を含み、これらが、ポリヌクレオチドと相互作用し、その結果、分子をエマルジョン粒子に係留することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、親水性相が分散されている連続疎水性相を含む油中水型エマルジョンで製剤化することができる。
【0083】
一部の実施形態では、本明細書に記載のアルファウイルスレプリコンなどのポリヌクレオチドは、脂質ポリカチオン複合体で製剤化することができる。非限定的な例として、ポリカチオンとして、カチオン性ペプチドまたはポリペプチド、例えば、それらに限定されないが、ポリリジン、ポリオルニチンおよび/またはポリアルギニンならびにカチオン性ペプチドを挙げることができる。
【0084】
一部の実施形態では、本明細書に記載のアルファウイルスレプリコンなどのポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子(LNP)で製剤化することができる。
【0085】
脂質ナノ粒子製剤は通常、1つまたは複数の脂質を含む。一部の実施形態では、脂質はカチオン性またはイオン化可能な脂質である。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子製剤は、リン脂質、構造脂質、第四級アミン化合物、および粒子の凝集を低減することができる分子、例えば、PEGまたはPEG修飾脂質を含めて、他の成分をさらに含む。一部の実施形態では、脂質組成物中のカチオン性およびイオン化可能な脂質の量は、約0.01mol%から約99mol%までの範囲である。
【0086】
LNPはpH感受性イオン化可能なカチオン性脂質を含有し、この脂質は、アニオン性核酸を引き付けて自己集合性ナノ粒子のコアを形成し、その結果、高カプセル化を確実にする。生理的pHにて、LNPは中性であり、常にカチオン性である分子によって見られる毒性のメカニズムを排除する。
【0087】
これらの同じpH感受性脂質は、エンドソームの酸性環境に応答することおよびエンドソームの破壊と細胞への核酸の放出とを誘発すること、に関与する。
【0088】
本レプリコンベースのワクチン技術は、RNAが自己増幅してワクチン抗原を生成することができかつ細胞性臓器にデリバリーすることができるので、ワクチン接種のための独特なプラットフォーム技術である。さらに、本レプリコンベースのワクチン技術によれば、ゲノム統合のリスクまたは投与に必要な高用量およびデバイス、例えばエレクトロポレーションなどの、DNAベースのワクチンに共通して関連する課題が克服されるとともに、mRNA技術に勝る、自己複製システムに基づく最小用量をもってしてより高い免疫原性が期待される。また、本発明者らは、シグナル配列、膜貫通ドメインならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドを有する受容体結合ドメイン(RBD)に基づいて、抗原を設計した。好ましい実施形態には、免疫原性を増強するために、PADREなどのCD4+ T細胞のユニバーサルエピトープが含まれる。
【0089】
一実施形態では、ワクチン組成物は、一種類のアルファウイルスレプリコンのみを含有する、一価であってもよい。別の実施形態では、ワクチン組成物は二価であり、異なる株または変異型に由来する抗原タンパク質をコードする二種類のアルファウイルスレプリコンを含みうる。
【0090】
本開示によれば、新規な抗原的に活性なタンパク質/ポリペプチドはまた、コロナウイルスに対する診断および防御向けの抗体を生成するためにも、一方、ADEの可能性を最小とするためにも、有用である。本明細書に開示のタンパク質/ポリペプチドは、免疫原性を最大化し、ADEを最小化することを意図した、シグナル配列、膜貫通ドメイン(TMD)ならびにCD4+ T細胞エピトープおよびCD8+ T細胞エピトープから選択される少なくとも1つのペプチドに融合されたコロナウイルスRBDをコードする最小配列を含む。
【0091】
こういった効率的なワクチン設計はまた、がんまたは炎症性疾患に対するワクチンの開発にも適用され得る。
【0092】
本発明を以下の実施例を参照して詳細に説明するが、それらは本出願の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0093】
下に示すコンストラクト1をコードする遺伝子は、Integrated DNA Technologies,Inc.(https://www.idtdna.com/pages)によって合成された。
【0094】
コンストラクト1
【化1】
コンストラクト1の全アミノ酸は以下のとおりである:
MFVFLVLLPLVSSVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGTIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVKGFNCYFPLQSYGFQPTYGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTGVKLESMGIYQILAIYSTVASSLVLLVSLGAISFWMCSNGSLQCRICIAKFVAAWTLKAAA(配列番号2)
シグナル配列COVID19(1-13):
MFVFLVLLPLVSS(配列番号3)
COVID-19-RBD[ブラジル(ガンマ)変異型]:
VRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGTIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVKGFNCYFPLQSYGFQPTYGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKST(配列番号4)
HAリンカー:
GVKLESMGIY(配列番号5)
HA TM:
QILAIYSTVASSLVLLVSLGAISFWMCSNGSLQCRICI(配列番号6)
PADRE:
AKFVAAWTLKAAA(配列番号1)
【実施例2】
【0095】
下に示すコンストラクト2および3をコードする遺伝子は、Integrated DNA Technologies,Inc.(https://www.idtdna.com/pages)によって合成された。
コンストラクト2
【化2】
全アミノ酸:
MFVFLVLLPLVSSVRFPNITNLCPFDEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNLAPFFTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGNIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNKLDSKVSGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGNKPCNGVAGFNCYFPLKSYSFRPTYGVGHQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTGVKLESMGIYQILAIYSTVASSLVLLVSLGAISFWMCSNGSLQCRICIAKFVAAWTLKAAA*(配列番号7)
シグナル配列:
MFVFLVLLPLVSS(配列番号3)
COVID-19-RBD(オミクロン変異型):
VRFPNITNLCPFDEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNLAPFFTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGNIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNKLDSKVSGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGNKPCNGVAGFNCYFPLKSYSFRPTYGVGHQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKST(配列番号8)
HAリンカー:
GVKLESMGIY(配列番号5)
HA TM:
QILAIYSTVASSLVLLVSLGAISFWMCSNGSLQCRICI(配列番号6)
PADRE:
AKFVAAWTLKAAA(配列番号1)
コンストラクト3
【化3】
全アミノ酸:
MFVFLVLLPLVSSVRFPNITNLCPFDEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNLAPFFTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGNIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNKLDSKVSGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGNKPCNGVAGFNCYFPLKSYSFRPTYGVGHQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTGVKLESMGIYQILAIYSTVASSLVLLVSLGAISFWMCSNGSLQCRICIAKFVAAWTLKAAAgaaVYFLQSINFNAASPRWYFYYLNARLNEVAKNLKFIAGLIAIVNAAANFKDQVILLGAAAVLQSGFRKGAAAYYQLYSTQLNLITGRLQSLKLQLPQGTTLNAAKTFPPTEPKKAAGDAALALLLLNAAAMEVTPSGTWLGAGVAMPNLYKKAATLACFVLAAVNAAGLMWLSYFIGLWLLWPVTLNKQFDTYNLW*(配列番号9)
リンカー:
gaa
CD8エピトープ:
VYFLQSINFNAASPRWYFYYLNARLNEVAKNLKFIAGLIAIVNAAANFKDQVILLGAAAVLQSGFRKGAAAYYQLYSTQLNLITGRLQSLKLQLPQGTTLNAAKTFPPTEPKKAAGDAALALLLLNAAAMEVTPSGTWLGAGVAMPNLYKKAATLACFVLAAVNAAGLMWLSYFIGLWLLWPVTLNKQFDTYNLW(配列番号10)
【実施例3】
【0096】
レプリコンベクターの調製
アルファウイルスレプリコンの概略のコンストラクトを
図1に示す。
【0097】
実施例1で調製した目的のDNAの遺伝子を、サブゲノム(SG)プロモーターの制御下でVEEVレプリコンベクターにクローニングした。各断片をコードするVEEVレプリコンプラスミドをAscIおよびSbfI制限部位にての挿入により作製し、完全長VEEV TC-83レプリコンコンストラクトを得た。
【0098】
SGプロモーター、5’UTR、3’UTRおよびポリAテールのヌクレオチド配列は以下のとおりである。RNA配列は、それらのDNA配列を鋳型として使用することによって得た。
SGプロモーター:cctgaatggactacgacatagtctagtccgccaag(配列番号11)
5’UTR:ataggcggcgcatgagagaagcccagaccaattacctacccaaa(配列番号12)
3’UTR:gcgatcgcatacagcagcaattggcaagctgcttacatagaactcgcggcgattggcatgccgccttaaaatttttattttatttttcttttcttttccgaatcggattttgtttttaatatttc(配列番号13)
ポリAテール:aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa(配列番号14)
【0099】
VEEV TC-83レプリコンnsP1-4のアミノ酸配列は以下のとおりである。
MEKVHVDIEEDSPFLRALQRSFPQFEVEAKQVTDNDHANARAFSHLASKLIETEVDPSDTILDIGSAPARRMYSKHKYHCICPMRCAEDPDRLYKYATKLKKNCKEITDKELDKKMKELAAVMSDPDLETETMCLHDDESCRYEGQVAVYQDVYAVDGPTSLYHQANKGVRVAYWIGFDTTPFMFKNLAGAYPSYSTNWADETVLTARNIGLCSSDVMERSRRGMSILRKKYLKPSNNVLFSVGSTIYHEKRDLLRSWHLPSVFHLRGKQNYTCRCETIVSCDGYVVKRIAISPGLYGKPSGYAATMHREGFLCCKVTDTLNGERVSFPVCTYVPATLCDQMTGILATDVSADDAQKLLVGLNQRIVVNGRTQRNTNTMKNYLLPVVAQAFARWAKEYKEDQEDERPLGLRDRQLVMGCCWAFRRHKITSIYKRPDTQTIIKVNSDFHSFVLPRIGSNTLEIGLRTRIRKMLEEHKEPSPLITAEDIQEAKCAADEAKEVREAEELRAALPPLAADFEEPTLEADVDLMLQEAGAGSVETPRGLIKVTSYAGEDKIGSYAVLSPQAVLKSEKLSCIHPLAEQVIVITHSGRKGRYAVEPYHGKVVVPEGHAIPVQDFQALSESATIVYNEREFVNRYLHHIATHGGALNTDEEYYKTVKPSEHDGEYLYDIDRKQCVKKELVTGLGLTGELVDPPFHEFAYESLRTRPAAPYQVPTIGVYGVPGSGKSGIIKSAVTKKDLVVSAKKENCAEIIRDVKKMKGLDVNARTVDSVLLNGCKHPVETLYIDEAFACHAGTLRALIAIIRPKKAVLCGDPKQCGFFNMMCLKVHFNHEICTQVFHKSISRRCTKSVTSVVSTLFYDKRMRTTNPKETKIVIDTTGSTKPKQDDLILTCFRGWVKQLQIDYKGNEIMTAAASQGLTRKGVYAVRYKVNENPLYAPTSEHVNVLLTRTEDRIVWKTLAGDPWIKILTAKYPGNFTATIEEWQAEHDAIMRHILERPDPTDVFQNKANVCWAKALVPVLKTAGIDMTTEQWNTVDYFETDKAHSAEIVLNQLCVRFFGLDLDSGLFSAPTVPLSIRNNHWDNSPSPNMYGLNKEVVRQLSRRYPQLPRAVATGRVYDMNTGTLRNYDPRINLVPVNRRLPHALVLHHNEHPQSDFSSFVSKLKGRTVLVVGEKLSVPGKKVDWLSDQPEATFRARLDLGIPGDVPKYDIVFINVRTPYKYHHYQQCEDHAIKLSMLTKKACLHLNPGGTCVSIGYGYADRASESIIGAIARQFKFSRVCKPKSSHEETEVLFVFIGYDRKARTHNPYKLSSTLTNIYTGSRLHEAGCAPSYHVVRGDIATATEGVIINAANSKGQPGGGVCGALYKKFPESFDLQPIEVGKARLVKGAAKHIIHAVGPNFNKVSEVEGDKQLAEAYESIAKIVNDNNYKSVAIPLLSTGIFSGNKDRLTQSLNHLLTALDTTDADVAIYCRDKKWEMTLKEAVARREAVEEICISDDSSVTEPDAELVRVHPKSSLAGRKGYSTSDGKTFSYLEGTKFHQAAKDIAEINAMWPVATEANEQVCMYILGESMSSIRSKCPVEESEASTPPSTLPCLCIHAMTPERVQRLKASRPEQITVCSSFPLPKYRITGVQKIQCSQPILFSPKVPAYIHPRKYLVETPPVEETPESPAENQSTEGTPEQPALVNVDATRTRMPEPIIIEEEEEDSISLLSDGPTHQVLQVEADIHGSPSVSSSSWSIPHASDFDVDSLSILDTLDGASVTSGAVSAETNSYFARSMEFRARPVPAPRTVFRNPPHPAPRTRTPPLAHSRASSRTSLVSTPPGVNRVITREELEALTPSRAPSRSASRTSLVSNPPGVNRVITREEFEAFVAQQQXRFDAGAYIFSSDTGQGHLQQKSVRQTVLSEVVLERTELEISYAPRLDQEKEELLRKKLQLNPTPANRSRYQSRRVENMKAITARRILQGLGHYLKAEGKVECYRTLHPVPLYSSSVNRAFSSPKVAVEACNAMLKENFPTVASYCIIPEYDAYLDMVDGASCCLDTASFCPAKLRSFPKKHSYLEPTIRSAVPSAIQNTLQNVLAAATKRNCNVTQMRELPVLDSAAFNVECFKKYACNNEYWETFKENPIRLTEENVVNYITKLKGPKAAALFAKTHNLNMLQDIPMDRFVMDLKRDVKVTPGTKHTEERPKVQVIQAADPLATADLCGIHRELVRRLNAVLLPNIHTLFDMSAEDFDAIIAEHFQPGDCVLETDIASFDKSEDDAMALTALMILEDLGVDAELLTLIEAAFGEISSIHLPTKTKFKFGAMMKSGMFLTLFVNTVINIVIASRVLRERLTGSPCAAFIGDDNIVKGVKSDKLMADRCATWLNMEVKIIDAVVGEKAPYFCGGFILCDSVTGTACRVADPLKRLFKLGKPLAVDDEHDDDRRRALHEESTRWNRVGILPELCKAVESRYETVGTSIIVMAMTTLASSVKSFSYLRGAPITLYG(配列番号15)
nsp3に相当するアミノ酸配列は下線が引かれている。
【実施例4】
【0100】
脂質ナノ粒子(LNP)に封入された自己増幅RNA(saRNA)の調製
実施例1および2で調製したコンストラクト1~3をコードするDNA配列を含むベクターを使用した。DNAを直鎖化し、鋳型として使用した。T7インビトロ転写を、T7転写キット[RiboMax(商標) Express Large Scale RNA production System、Promega、(WI米国)]によって提供されるプロトコルに基づいて実施した。直鎖DNA鋳型をT7酵素およびrNTPと混合してRNAを合成した。修飾ヌクレオチドを含有するRNAの合成の場合、5-メチル-シチジンおよびN1-メチル-シュードウリジン三リン酸などの修飾NTPをインビトロ転写反応混合物に添加した。精製RNA生成物をワクシニアキャッピング酵素を使用してキャッピングし、その結果、自己増幅RNAを得た。
【0101】
上と同じ様式で、COVID19シグナル配列、Wuhan(武漢)株のCOVID-19-RBD、HAリンカーおよびHA TMからなる対照コンストラクト「RBD(Wuhan)-TM」をコードする目的遺伝子を含むsaRNA、ならびに、COVID19シグナル配列、ブラジル(ガンマ)変異型のCOVID-19-RBD、HAリンカーおよびHA TMからなるコンストラクト「RBD(ブラジル)-TM」をコードする目的遺伝子を含むsaRNAも得た。
【0102】
「RBD(Wuhan)-TM」のアミノ酸配列は以下のとおりである:
MFVFLVLLPLVSSVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTGVKLESMGIYQILAIYSTVASSLVLLVSLGAISFWMCSNGSLQCRICI(配列番号16)
【0103】
上記において、Wuhan株のCOVID-19-RBDのアミノ酸配列は以下のとおりである:
VRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKST(配列番号17)
【0104】
得られたsaRNAを脂質ナノ粒子に封入して、saRNA粒子を得た。得られたsaRNA粒子を以下の実施例で使用した。
【実施例5】
【0105】
免疫
方法:ゴールデンシリアンハムスター(1群あたりn=12)に、0週および4週に、HA膜貫通を有するSARS-CoV-2スパイクRBD(Wuhan株)(RBD(Wuhan)-TM)、HA膜貫通を有するRBDブラジル(ガンマ)[RBD(ブラジル)-TM]および実施例1のコンストラクト1、すなわちHA膜貫通+PADREを有するRBD[ブラジル(ガンマ)][RBD(ブラジル)-TM-PADRE]を発現するsaRNA LNP 10ug、またはPBS(プラセボ)、を筋肉内に2回免疫した。第2の免疫の4週間後(55日目)の免疫ハムスターからの血清の抗体価を、Wuhan株、ブラジル変異型、インドデルタ変異型、インドデルタ+変異型およびコロンビアMu変異型のSARS-CoV-2RBDタンパク質に対して、ELISAによって評価した。結果を
図2に示す。
【0106】
結果:RBD[ブラジル(ガンマ)]-TM-PADREで免疫した血清中の抗体は、RBD[ブラジル(ガンマ)]-TMで免疫した血清中の抗体と比較して、各RBD変異型に対して3倍超のより高い抗体(IC50力価)を誘導した。
【実施例6】
【0107】
ACE2阻害アッセイ
方法:市販のキット(Genscript L00847)を使用して、RBD変異型とACE2との結合に対する、実施例4で調製したワクチンで免疫したハムスターから得た血清の阻害効果について試験した。血清を、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされたRBD変異型とともに37℃で30分間インキュベートした。混合物をACE2コーティングの96ウェルプレートに添加し、37℃で15分間インキュベートした。プレートを洗浄した後、TMB基質を添加し、室温で15分間インキュベートした。450nmにての吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。吸光度から下の式に従って阻害を算出した。
阻害(%)=(1-試料の吸光度/陰性対照の平均の吸光度)×100
結果を
図3に示す。
【0108】
結果:全てのワクチンが、SARS-CoV-2オミクロンBA.2変異型およびWuhan株に対して阻害効果を有し、中でもブラジルのガンマPADREワクチンが最も高い阻害効果を示した。
【実施例7】
【0109】
自然免疫における修飾ヌクレオシドの効果
方法:IFN-Stimulated Response Elements(ISRE)と組み合わせたインターフェロン刺激遺伝子(ISG)54の最小プロモーターの制御下で分泌型ルシフェラーゼ(Luca遺伝子)を特徴とする、THP-1 Dual cell(InvivoGen)を使用した。実施例1のコンストラクト1(試料1)とシチジンの代わりに5-メチル-シチジンが使用されたことを条件とする実施例1のコンストラクト1(試料2)とのIFN調節因子(IRF)誘導効果について試験した。継代培養のTHP-1デュアル細胞を回収し、培養培地(RPMI-1640+10%FBS)を用いて細胞懸濁液5.6×105個細胞/mLを調製した。この細胞懸濁液180μLを96ウェル培養プレートの各ウェルに播種した。次いで、リン酸緩衝生理食塩水(対照)、またはリポフェクタミン(Lipofectamine(商標)RNAiMAX Transfection Reagent)と試料1もしくは試料2との混合物、20μLをウェルごとに添加した。細胞を37℃、5%CO2下で24時間インキュベートした。
【0110】
培養上清20μLを別の96ウェル白色プレートへと小分けし、発泡性試薬(QUANTI-Luc、InvivoGen)溶液50μLを各ウェルに添加し、発光強度を添加直後に測定した。
【0111】
発光強度から、各試料の増加倍率を下の式に従って算出し、IRF誘導の指標として使用した。
増加倍率=(試料の発光強度)/(対照の発光強度)
結果を
図4に示す。
【0112】
試料1(シチジンを使用)と比較して、試料2(5-メチル-シチジン、修飾ヌクレオシドを使用)のIRF誘導はより低く、自然免疫刺激作用の明らかな低下が認められた。
【実施例8】
【0113】
動物試験
ゴールデンシリアンハムスター(各群N=6)に、実施例4で調製したsaRNA 10ugを筋肉内に2回注射した。この実施例で使用したsaRNAは、0週および4週にての、RBD(Wuhan)-TM、RBD(ブラジル)-TM、およびRBD(ブラジル)-TM-PADREであった。ハムスターを、56日目に生のSARSCoV-2 Wuhan株(WT)またはブラジル株(ガンマ)変異型に暴露させた。
【0114】
体重測定
方法:
体重を曝露後毎日記録し、試験56日目から試験64日目の終了まで体重変化の平均パーセンテージを記録した。
【0115】
結果:
結果を
図5に示す。RBD(ガンマ)-TM-PADREで免疫した群は、WT株曝露ハムスターにおいて、RBD(ガンマ)-TMまたはRBD(WT)-TMの免疫群と同様のレベルまでハムスターの体重減少を防止した(左パネル)。他方、ガンマ型曝露動物のRBD(ガンマ)-TM-PADREでは体重の減少は観察されなかったが、一方、他の2つの群は軽度の減少を呈した(右パネル)。
【0116】
SARS-CoV-2の定量的RT-PCRアッセイ
方法:
口腔スワブを、曝露後の選択時点で麻酔動物から採取し、1mL当たりのSARS-CoV2 RNAコピー量について検査した。このアッセイの検出下限は50RNAコピー/mLである。
【0117】
結果:
結果を
図6に示す。WT株(左のパネル)またはガンマ型(右のパネル)の各曝露後の、RBD(ガンマ)-TMまたはRBD(WT)-TMの各免疫群と比較して、RBD(ガンマ)-TM-PADRE免疫群では口腔スワブウイルスRNA量のより大幅な減少が観察された。
【0118】
組織学
方法:
剖検時に、左肺を採取し、組織病理学的解析用に10%中性緩衝ホルマリンに入れた。組織切片をトリミングし、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色スライドへと処理した。
【0119】
結果:
結果を
図7に示す。RBD(ガンマ)-TM-PADREで免疫した群では、WT株(左から第3の列、上)またはガンマ型(左から第3の列、下)の各曝露後の肺組織において病理学的所見の発生が防止された。
【国際調査報告】