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▶ サン−ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアンの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】アルミナベースの溶融粒
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/107 20060101AFI20241128BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20241128BHJP
   B24D 3/28 20060101ALI20241128BHJP
   B24D 3/14 20060101ALI20241128BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C04B35/107
B24D3/00 320A
B24D3/28
B24D3/14
B24D3/00 340
C09K3/14 550C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536107
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2022086096
(87)【国際公開番号】W WO2023111156
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】2113564
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【弁理士】
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】フリデリッヒ,ナディア
【テーマコード(参考)】
3C063
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AA03
3C063AB02
3C063BB03
3C063BC03
3C063BD01
3C063EE15
3C063FF23
(57)【要約】
本発明は、酸化物に基づく重量パーセントとしで表される、下記の化学組成を有する溶融粒:MgO:2.5%~5.8%;Cr2O3:0.2%~4.5%;MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物≦1.5%;Al2O3:100%までの残り。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の酸化物に基づく重量パーセントとして、下記の化学分析を有する溶融粒:
MgO:2.5%~5.8%;
Cr2O3:0.2%~4.5%;
MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物≦1.5%;
Al2O3:100%までの残り。
【請求項2】
Cr2O3≦4.0%、及び/又は
MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物の含有量が1.3%未満である、
請求項1に記載の溶融粒。
【請求項3】
MgO:2.5%~5.5%;
Cr2O3:0.2%~3%;
MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物≦1%;
Al2O3:100%までの残り
である、請求項2に記載の溶融粒。
【請求項4】
MgO≧2.9%、及び/又は
MgO≦5.5%、及び/又は
Cr2O3≧0.3%、及び/又は
酸化化合物の含有量が、前記溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして96%超である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の溶融粒。
【請求項5】
MgO≧3.1%、及び/又は
MgO≦5.2%、及び/又は
Cr2O3≧0.4%、及び/又は
MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物の含有量が、1.0%未満であり、及び/又は
酸化化合物の含有量が、前記溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして97%超である、
請求項4に記載の溶融粒。
【請求項6】
MgO≧3.5%、及び/又は
MgO≦5.1%、及び/又は
Cr2O3≧0.7%、及び/又は
Cr2O3≦3.0%、及び/又は
MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物の含有量が0.5%未満である、
請求項5に記載の溶融粒。
【請求項7】
MgO≧4.0%、及び/又は
MgO≦5.0%、及び/又は
Cr2O3≧1.0%、及び/又は
Cr2O3≦2.5%、及び/又は
MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物の含有量が0.4%未満である、
請求項6に記載の溶融粒。
【請求項8】
酸化物に基づく重量パーセントとして、Na2O≦0.3%、及び/又は
酸化物に基づく重量パーセントとして、SiO2≦0.3%
である、請求項1~7のいずれか1項に記載の溶融粒。
【請求項9】
酸化物に基づく重量パーセントとしてNa2O≦0.1%、及び/又は
酸化物に基づく重量パーセントとしてSiO2≦0.1%
である、請求項8に記載の溶融粒。
【請求項10】
炭素含有量が、前記溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして、20ppm超であり且つ0.5%未満であり、及び/又は
前記粒からなる混合物の、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が、15cm3/100g超且つ500cm3/100g未満である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の溶融粒。
【請求項11】
前記炭素含有量が、前記溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして50ppm超であり、及び/又は
前記炭素含有量が、前記溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして0.3%未満であり、及び/又は
前記粒からなる混合物の、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が30cm3/100g超であり、及び/又は
前記粒からなる混合物の、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が400cm3/100g未満である、
請求項10に記載の溶融粒。
【請求項12】
前記炭素含有量が、前記溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして0.15%未満であり、及び/又は
前記粒からなる混合物の、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が50cm3/100超であり、及び/又は
前記粒からなる混合物の、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が300cm3/100g未満である、
請求項11に記載の溶融粒。
【請求項13】
前記炭素含有量が、前記溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして0.1%未満であり、及び/又は
前記粒からなる混合物の、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が200cm3/100g未満である、
請求項12に記載の溶融粒。
【請求項14】
前記溶融粒がアルミナ結晶から実質的になる微細構造を有し、ここで、前記結晶は、少なくとも部分的に金属形態の元素Crが位置しているところの境界によって分離されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の溶融粒。
【請求項15】
前記粒からなる混合物について、粒100g当たりのガスの体積として表される、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が15cm3/100g超且つ500cm3/100g未満であり、及び/又は
前記溶融粒が、前記溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして20ppm超且つ0.4%未満の炭素含有量を有する、
請求項14に記載の溶融粒。
【請求項16】
前記溶融粒が、アルミナ結晶から実質的になる微細構造を有し、ここで、前記結晶は、MgO、好ましくは、実質的に全体が非化学量論的及び/又は化学量論的なMgAl2O4スピネル形態及び/又は非化学量論的及び/又は化学量論的なMgCr2O4スピネル形態であるところの境界によって分離されており、Cr元素の少なくとも一部がアルミナ結晶の結晶格子内に挿入されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の溶融粒。
【請求項17】
前記粒からなる混合物について、粒100g当たりのガスの体積として表される、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が15cm3/100g未満であり、及び/又は
前記溶融粒が、前記溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして500ppm未満の炭素含有量を有する、請求項16に記載の溶融粒。
【請求項18】
重量パーセントとして、請求項1~17のいずれか1項に記載の溶融粒を80%超含む、粒の混合物。
【請求項19】
請求項18に記載の、溶融粒の混合物を製造する方法であって、該方法は、
a)粒の前記混合物の製造の為に適した供給原料を形成するように原材料を混合すること、
b)溶融材料が得られるまで前記供給原料を還元媒体中で溶融すること、
c)前記溶融材料を3分未満で完全に固化するように冷却して、固形塊を得ること
の連続工程を含む、前記方法。
【請求項20】
工程c)の後に、工程c)の終わりに得られた固体塊を粉砕する工程d)、及び/又は粒子サイズを選択する工程e)を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程c)の後、又は工程d)の後、又は工程e)の後に、800℃超且つ1700℃未満の温度で焼成する工程f)を含まない、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
800℃超且つ1700℃未満の温度で焼成する工程f)を含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項23】
前記焼成工程f)が酸化性雰囲気において実行される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記焼成温度が1280℃以下である、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記焼成温度が1280℃超である、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項26】
表面を処理する為の方法であって、請求項18に記載の粒の混合物で又は請求項19~25のいずれか1項に記載の方法に従って製造される粒の混合物で前記表面を研磨する操作を含む、前記方法。
【請求項27】
前記表面が硬鋼であり、及び粒の前記混合物が、重量パーセントとして、請求項14に記載の溶融粒を80%超含み、及び/又は請求項24に記載の方法に従って製造されたものであり、又は
前記表面がステンレス鋼であり、及び粒の前記混合物が重量パーセントとして、請求項16に記載の溶融粒を80%超含み、及び/又は請求項25に記載の方法に従って製造されたものである、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
研磨工具であって、該研磨工具は、結合剤によって結合され且つ支持体上に結合又は堆積されたところの粒を含み、前記粒のうちの少なくとも1部分が請求項1~17のいずれか1項に従う溶融粒である、前記研磨工具。
【請求項29】
請求項1~17のいずれか1項に記載の溶融粒を80%超含む、請求項28に記載の研磨工具。
【請求項30】
砥石、ベルト又はディスクの形態である、請求項28又は29に記載の研磨工具。
【請求項31】
研磨工具を製造する方法であって、該製造方法は、粒に結合剤を添加し、引き続き、粒を凝集させること又は粒を裏打ち材上に堆積させることを含み、該粒のうちの少なくとも1部分、好ましくは実質的に全ての粒、が、請求項19~25のいずれか1項に記載の方法に従って製造された溶融粒である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナをベースとする溶融粒(fused grain)に、該粒の混合物に、該粒を製造する方法に、及び粒の該混合物を含む研磨工具に関する。本発明はまた、鋼表面(steel surfaces)を研磨する為の本発明に従う粒(grains)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨工具は一般的に、砥粒(abrasive grains)の調整方法によって、遊離砥粒(free abrasives)(該砥粒の粉末、裏打ち材(backing)に付着していないもの、噴霧で又は懸濁で使用される)、コーティングされた砥粒(coated abrasives)(布又は紙の裏打ち材、該布又は紙の裏打ち材上に砥粒が数層に配置されている)、及び結合された砥粒(bonded abrasives)(円形砥石、スティック等)に分類される。
【0003】
結合された砥粒において、該砥粒は有機結合剤又はガラス質結合剤、慣用的には、本質的に珪酸化された酸化物からなる結合剤でプレスされる。該砥粒は、それ自体が良好な機械的研磨特性を有し、該結合剤と良好な機械的結合力(mechanical cohesion)を有さなければならない。すなわち、界面が固体でなければならない。
【0004】
該砥粒のうち、異なる微細構造を有するところの、溶融粒(fused grains)と焼結粒(sintered grains)とは区別される。それ故に、焼結砥粒と溶融砥粒がもたらす問題、及びそれを解決する為に採用される技術的解決策は一般的に異なる。それ故に、溶融粒を製造する為に開発された組成物は、同じ特性を有する焼結粒を製造する為に先験的に使用されることができず、又はその逆も同様である。
【0005】
国際公開第WO2004/094554号パンフレットは、酸化物に基づく重量パーセントで、1.5%~6.5%のMgOを含むアルミニウム溶融粒(aluminous fused grains)を記載する。
【0006】
米国特許第US2,279,260号明細書は、8重量%超のCr2O3を含むアルミニウム溶融粒を記載する。粒内のスピネル(spinel)の形成を制限する為に、2%超のMgOの存在は、少なくとも1つの酸性酸化物、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2又はB2O3、の存在を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故に、アルミナベースの溶融の性能を向上させる為に、特には、
溶融粒が研磨剤として使用される用途において、従来技術の粒のエネルギー効率(energy efficiency)よりも高いか又は実質的に同等のエネルギー効率を維持しながら、有効性(efficacy)を高める為に、又は
同様に、従来技術の粒の有効性(efficacy)よりも高いか又は実質的に同等の効能を維持しながら、上記エネルギー効率(energy efficiency)を高める為に
その必要性が続いている。
【0008】
本発明の目的の1つは、少なくとも部分的にこの必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従うと、この目的は、任意的に焼成されていてもよい溶融粒によって達成され、該溶融粒は、酸化物に基づく重量パーセントで下記の化学分析を有する:
MgO:2.5%~5.8%;
Cr2O3:0.2%~4.5%;
MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物≦1.5%;
Al2O3:100%までの残り。
【0010】
本明細書の残りの部分においてより詳細に見られるように、本発明者等は、上記の化学組成が、既知のアルミナ溶融粒の有効性及び/又はエネルギー効率よりも高い有効性及び/又はエネルギー効率を付与することを発見した。
【0011】
本発明に従う溶融粒はまた、下記の任意の特性の1以上を有することができる:
酸化物に基づく重量パーセントとして、MgO≧2.7%、好ましくはMgO≧2.9%、好ましくはMgO≧3.1%、好ましくはMgO≧3.5%、好ましくはMgO≧4.0%、及び/又は好ましくはMgO≦5.5%、好ましくはMgO≦5.2%、好ましくはMgO≦5.1%、好ましくはMgO≦5%;
酸化物に基づく重量パーセントとして、Cr2O3≧0.3%、好ましくはCr2O3≧0.35%、好ましくはCr2O3≧0.4%、好ましくはCr2O3≧0.7%、好ましくはCr2O3≧1.0%、及び/又はCr2O3≦4.0%、好ましくはCr2O3≦3.5%、好ましくはCr2O3≦3.0%、好ましくはCr2O3≦2.7%、好ましくはCr2O3≦2.5%、好ましくはCr2O3≦2.2%、好ましくはCr2O3≦2%;
MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物の含有量は、酸化物に基づく重量パーセントとして、1.4%未満、好ましくは1.3%未満、好ましくは1.0%未満、好ましくは0.9%未満、好ましくは0.8%未満、好ましくは0.7%未満、好ましくは0.6%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.4%未満であり;
酸化物に基づく重量パーセントとして、Na2O≦0.3%、好ましくはNa2O≦0.1%;
酸化物に基づく重量パーセントとして、SiO2≦0.3%、好ましくはSiO2≦0.1%;
該炭素含有量が、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして、20ppm超、好ましくは50ppm超、好ましくは100ppm超、及び/又は0.5%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.15%未満、好ましくは0.1%未満、であり;
熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が、15cm3/100g超、好ましくは30cm3/100g超、好ましくは50cm3/100g超、及び/又は500cm3/100g未満、好ましくは400cm3/100g未満、好ましくは300cm3/100g未満、好ましくは200cm3/100g未満であり;
酸化化合物の含有量が、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして、96%超、好ましくは97%超、であり;
該溶融粒がアルミナ結晶から実質的になる微細構造を有し、ここで、該結晶は、少なくとも部分的に金属形態で元素Crが位置しているところの境界によって分離されており、
及び好ましくは、
該粒からなる混合物について、粒100g当たりのガスの体積として表される、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が15cm3/100g超且つ500cm3/100g未満であり、及び/又は
該溶融粒が、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして20ppm超且つ0.4%未満の炭素含有量を有し;
該溶融粒アルミナ結晶から実質的になる微細構造を有し、ここで、該結晶が、MgO、好ましくは、実質的に全体が非化学量論的及び/又は化学量論的なMgAl2O4スピネル形態及び/又は非化学量論的及び/又は化学量論的なMgCr2O4スピネル形態であるところの境界によって分離されており、Cr元素の少なくとも一部が、好ましくはCr3+形態で、アルミナ結晶の結晶格子内に挿入されており、及び好ましくは、
該粒からなる混合物について、粒100g当たりのガスの体積として表される、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が15cm3/100g未満であり、及び/又は
該溶融粒が、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして500ppm未満の炭素含有量を有する。
【0012】
特定の実施態様において、
MgO≧2.9%且つMgO≦5.5%、及びCr2O3≧0.3%且つCr2O3≦4.0%、並びに、MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物の含有量が1.3%未満であり;
MgO≧3.1%且つMgO≦5.2%、及びCr2O3≧0.4%且つCr2O3≦3.5%、並びに、MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物の含有量が1.0%未満であり;
MgO≧3.5%且つMgO≦5.1%、及びCr2O3≧0.7%且つCr2O3≦3.0%、並びに、MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物の含有量が0.5%未満であり;
MgO≧4.0%且つMgO≦5.0%、及びCr2O3≧1.0%且つCr2O3≦2.5%、並びに、MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物の含有量が0.4%%未満であり;
酸化化合物の含有量が、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして、各回で96%超、好ましくは97%超、である。
【0013】
1つの実施態様において、本発明に従う溶融粒は、該酸化物の重量に基づく重量パーセントとして、下記の化学分析を有する:
MgO:2.5%~5.5%;
Cr2O3:0.2%~3%;
MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物≦1%;
Al2O3:100%までの残り。
【0014】
本発明はまた、重量パーセントで、本発明に従う溶融粒を80%超含む、粒の混合物に関する。
【0015】
本発明はまた、溶融粒の混合物を製造する方法であって、該方法は、
a)該粒の混合物の製造の為に適した供給原料(feedstock)を形成するように原材料(raw materials)を混合すること、
b)溶融材料が得られるまで該供給原料を還元媒体(reducing medium)中で溶融すること、
c)該溶融材料を3分未満で完全に固化するように冷却して、固形塊を得ること、
d)任意的に、特には工程c)で粒が得られない場合には、該固体塊を粉砕すること、
e)任意的に、粒子サイズの選択すること
の連続工程を含む上記の方法に関する。
【0016】
Cr元素は、Mg又はAl供給源中の不純物として、溶融粒中の含有量が0.2%を超える為に十分な量では、慣用的に導入されない。好ましくは、Cr元素は意図的に、好ましくは制御された添加によって、供給原料内に、好ましくは90重量%超、好ましくは95重量%超、のCr2O3含有量を有する粉末の添加によって、導入される。
【0017】
本発明に従う製造工程はまた、下記の任意の特徴の1以上を有することができる:
該工程は、工程c)の後、好ましくは工程d)の後、該方法が工程e)を含む場合に好ましくは工程e)の後、生成された粒の混合物を焼成する工程f)を含み、ここで、該焼成は好ましくは、酸化性雰囲気中で、好ましくは800℃超、好ましくは1700℃未満、の温度で行われ、ここで、該焼成の間に達する最高温度が、好ましくは少なくとも30分間維持され;
1つの実施態様において、該焼成が、酸化性雰囲気中で実行され、1280℃超、好ましくは1700℃未満、の温度であり、ここで、焼成の間に達する最高温度が好ましくは、少なくとも30分間維持され:得られた該焼成された溶融粒が、アルミナ結晶から実質的になる微細構造を有し、ここで、該結晶は、MgO、好ましくは、実質的に全体が非化学量論的及び/又は化学量論的なMgAl2O4スピネル形態及び/又は非化学量論的及び/又は化学量論的なMgCr2O4スピネル形態であるところの境界によって分離されており、Cr元素の少なくとも一部が、好ましくはCr3+形態で、アルミナ結晶の結晶格子内に挿入されており;工程f)の前に得られた溶融粒が上述された好ましい実施態様に従うものである場合、粒100g当たりのガスの体積として表される、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が15cm3/100g未満であり、及び/又は該焼成された溶融粒が、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして500ppm未満の炭素含有量を有し;
該方法は、工程c)の後、該方法が工程d)を含む場合に工程d)の後、該方法が工程e)を含む場合に工程e)の後、好ましくは酸化性雰囲気中で、好ましくは800℃超、又は1280℃以下、の温度で焼成する工程f)を含み、ここで、該焼成の間に達する最高温度が、好ましくは少なくとも30分間維持され;次に、得られた該焼成された溶融粒が、アルミナ結晶から実質的になる微細構造を有し、ここで、該結晶は、少なくとも部分的に金属形態で元素Crが位置しているところの境界によって分離されており;工程f)の前に得られた溶融粒が上述された好ましい実施態様に従うものである場合、粒100g当たりのガスの体積として表される、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が15cm3/100g超且つ500cm3/100g未満であり;及び/又は、該焼成された溶融粒が、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして30ppm超且つ0.4%未満の炭素含有量を有する。
【0018】
1つの実施態様において、該方法は、工程c)の後、又は工程d)の後、又は工程e)の後に、800℃超且つ1700℃未満の温度で焼成する工程f)を含まない。言い換えれば、該溶融粒は砥粒として使用され、特には結合剤によって結合され、焼成されること無しに研磨工具を形成するように凝集され又は裏打ち材上に堆積される。
【0019】
本発明はまた、研磨工具であって、該研磨工具は、結合剤によって結合され且つ支持体上に結合又は堆積されたところの粒を含み、該粒は例えば、砥石の形態であり、又は裏打ち材上、例えばベルト若しくはディスク上、に堆積される、上記の研磨工具に関し、この工具は、該溶融粒の少なくとも一部、好ましくは重量パーセントとして、50%超、好ましくは70%超、好ましくは80%超、好ましくは90%超、好ましくは95%超、好ましくは99%超、好ましくは全て、が本発明に従っている点で注目される。
【0020】
該研磨工具は特には、ツルーイング砥石(truing grinding wheel)、精密砥石(precision grinding wheel)、研ぎ砥石(sharpening grinding wheel)、切断砥石(cut-off grinding wheel)、本体からの加工の為の砥石(grinding wheel for machining from the body)、フェッティング砥石(fettling grinding wheel)若しくは粗研ぎ砥石(roughing grinding wheel)、調整砥石(regulating grinding wheel)、携帯用砥石(portable grinding wheel)、鋳造用砥石(foundry grinding wheel)、ドリル砥石(drill grinding wheel)、取り付け砥石(mounted grinding wheel)、円柱砥石(cylinder grinding wheel)、円錐砥石(cone grinding wheel)、ディスク砥石(disk grinding wheel)、又は分割された砥石(segmented grinding wheel)、或いは他の任意の種類の砥石でありうる。
【0021】
一般的に、本発明は、表面、好ましくは鋼(steel)製の表面、を処理する為の方法であって、該方法は、本発明に従う粒の混合物又は本発明に従う方法に従って製造された粒で該表面を研磨する操作を含むところの上記方法に関する。
【0022】
好ましくは、該方法は、
本発明に従う粒の混合物を製造すること、好ましくは本発明に従う製造工程に従って本発明に従う粒の混合物を製造すること、次に、
粒の該混合物を用いて、好ましくは本発明に従う研磨工具の形態で、該表面を研磨する操作
を含む。
【0023】
本発明に従う粒は特には、鋼、特にはステンレス鋼(stainless steels)及び硬鋼(hard steels)、の加工の為に推奨される。
【0024】
1つの実施態様において、該表面は硬鋼で作られており、及び該混合物の溶融粒は、アルミナ結晶から実質的になる微細構造を有し、ここで、該結晶は、少なくとも部分的に金属形態で元素Crが位置しているところの境界によって分離されており、粒100g当たりのガスの体積として表される、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量の、15cm3/100g超且つ500cm3/100g未満を有し、及び/又は該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして20ppm超且つ0.4%未満、好ましくは500ppm未満、の炭素含有量を有し、及び/又は好ましくは酸化性雰囲気で実行され、1280℃以下の焼成温度で焼成する工程f)を含む方法に従って製造される。好ましくは、該溶融粒は、下記において詳述されている第1の特定の実施態様に従うものである。
【0025】
1つの実施態様において、該表面はステンレス鋼で作られており、次に、得られた該焼成された溶融粒は、アルミナ結晶から実質的になる微細構造を有し、ここで、該結晶は、MgO、好ましくは、実質的に全体が非化学量論的及び/又は化学量論的なMgAl2O4スピネル形態及び/又は非化学量論的及び/又は化学量論的なMgCr2O4スピネル形態であるところの境界によって分離されており、Cr元素の少なくとも一部がアルミナ結晶の結晶格子内に挿入されており、好ましくは、粒100g当たりのガスの体積として表される、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量の、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして15cm3/100g未満を有し、及び/又は該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして500ppm未満の炭素含有量を有し、及び/又は好ましくは酸化性雰囲気で実行され、1280℃超、好ましくは1700℃未満、の焼成温度で焼成する工程f)を含む方法に従って製造される。好ましくは、該溶融粒は、下記において詳述されている第2の特定の実施態様に従うものである。
【0026】
定義
【0027】
本発明に従う粒の酸化物の含有量は、「MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物」を含み、業界の標準的な慣例に従って、最も安定な酸化物の形態で表される、対応する化学元素の各々についての全体的な含有量に関する。従って、上記された元素の、亜酸化物、及び任意的に、窒化物、酸窒化物、炭化物、酸炭化物、炭窒化物、又は金属種が包含される。
【0028】
語「不純物」は、原材料(raw materials)と共に必然的に混入する不可避的な成分を意味する。特には、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、酸炭化物、炭窒化物、並びにナトリウム及び他のアルカリ金属、鉄及びバナジウムの金属種の群に属する化合物が不純物である。例として、AlとMgの供給源において、SiO2、Fe2O3又はNa2Oが挙げられうる。
【0029】
酸化物の「前駆体」は、本発明に従う粒又は粒の混合物の製造の間に、該酸化物を提供することができる成分を意味すると理解される。
【0030】
「粒」は、全ての寸法が20mm未満である粒子である。
【0031】
「アルミナベースの粒」は、酸化物に基づくパーセンテージとして、85重量%超のアルミナを含む粒を云う。
【0032】
「溶融粒」又はより広義の「溶融製品」は、溶融材料の冷却による固化によって得られる固体粒(又は製品)を意味すると理解される。
【0033】
「溶融材料」は、供給原料を加熱することによって液状になった塊であり、それは、固形粒子をわずかに含みうるが、それらの量は該塊に構造を与える為には不十分である。その形状を保持する為に、溶融材料は容器内に収容されなければならない。本発明に従う酸化物をベースとする溶融粒は、慣用的に、1900℃超で溶融することによって得られる。
【0034】
粉末の「メジアン径」は、粒子を重量が等しい第1の集団と第2の集団に分ける大きさを云い、ここで、これらの第1の集団と第2の集団は、メジアン径以上、又は個々にメジアン径未満の大きさを有する粒子のみを含む。粉末の該メジアン径は、レーザーパーティクルサイザーを用いて作成された粒度分布を用いて決定されることができる。
【0035】
本明細書において、特に言及されない限り、粒の組成は全て、該粒の酸化物の総重量に基づく重量パーセントとして与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の説明は例示を目的としたものであり、本発明を限定するものでない。
【0037】
溶融粒
【0038】
本発明に従う溶融粒、好ましくは本発明に従う粒の混合物、の化学組成は好ましくは、下記の任意の特徴の1以上を有する:
酸化物に基づく重量パーセントとして、MgO≧2.7%、好ましくはMgO≧2.9%、好ましくはMgO≧3.1%、好ましくはMgO≧3.5%、好ましくはMgO≧4.0%、及び/又は好ましくはMgO≦5.5%、好ましくはMgO≦5.2%、好ましくはMgO≦5%;
酸化物に基づく重量パーセントとして、Cr2O3≧0.3%、好ましくはCr2O3≧0.35%、好ましくはCr2O3≧0.4%、好ましくはCr2O3≧0.7%、好ましくはCr2O3≧1.0%、及び/又はCr2O3≦4.0%、好ましくはCr2O3≦3.5%、好ましくはCr2O3≦3.0%、好ましくはCr2O3≦2.7%、好ましくはCr2O3≦2.5%、好ましくはCr2O3≦2.3%、好ましくはCr2O3≦2.2%、好ましくはCr2O3≦2%;
MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の酸化物の含有量は、酸化物に基づく重量パーセントとして、好ましくは1.4%未満、好ましくは1.3%未満、好ましくは1.0%未満、好ましくは0.9%未満、好ましくは0.8%未満、好ましくは0.7%未満、好ましくは0.6%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.4%未満、であり;
MgO、Cr2O3及びAl2O3以外の該酸化物は好ましくは、不純物であり;
該Na2O含有量は、酸化物に基づく重量パーセントとして、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.25%未満、好ましくは0.2%未満、好ましくは0.15%未満、好ましくは0.1%未満、であり;
該SiO2含有量は、酸化物に基づく重量パーセントとして、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.2%未満、好ましくは0.15%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.08%未満、好ましくは0.05%未満、であり;
酸化化合物の含有量は、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして、96%超、好ましくは97%超、好ましくは98%超、又は99%超、又は99.4%超、又は99.5%超、又は99.6%超、又は99.7%超、であり;
1つの実施態様において、該溶融粒は未焼成であり、及び該炭素含有量が、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして、20ppm超、好ましくは30ppm超、好ましくは50ppm超、好ましくは100ppm超、及び/又は好ましくは0.5%未満、好ましくは0.4%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.25%未満、好ましくは0.2%未満、好ましくは0.15%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.08%未満、である。
【0039】
1つの実施態様において、該溶融粒が、焼成された溶融粒である。粒100g当たりのガスの体積として表される、該熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が、溶融粒の焼成が行われた条件に依存する。それは実施例において詳述されたように測定される。
【0040】
1つの実施態様において、該溶融粒は未焼成であり、好ましくは、該粒からなる混合物について、粒100g当たりのガスの体積として表される、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が、15cm3/100g超、好ましくは30cm3/100g超、好ましくは50cm3/100g超、及び/又は好ましくは500cm3/100g未満、好ましくは400cm3/100g未満、好ましくは300cm3/100g未満、好ましくは200cm3/100g未満、であるようなものである。
【0041】
第1の特定の実施態様において、該溶融粒がアルミナ結晶から実質的になる微細構造を有し、該結晶は、少なくとも部分的に金属形態で元素Crが位置しているところの境界によって分離されている。好ましくは、Al2O3、MgO及びCr2O3以外の酸化物は、実質的に全体が該境界に位置している。
【0042】
好ましくは、該粒からなる混合物について、粒100g当たりのガスの体積として表される、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が、15cm3/100g超、好ましくは30cm3/100g超、好ましくは50cm3/100g超、及び好ましくは500cm3/100g未満、好ましくは400cm3/100g未満、好ましくは300cm3/100g未満、好ましくは200cm3/100g未満、であるようなものである。
【0043】
この第1の特定の実施態様において、該溶融粒は好ましくは、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして、20ppm超、好ましくは30ppm超、好ましくは50ppm超、好ましくは70ppm超、好ましくは100ppm超、及び、好ましくは0.4%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.2%未満、好ましくは0.15%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは800ppm未満、好ましくは600ppm未満、好ましくは500ppm未満、の炭素含有量を有する。
【0044】
この第1の実施態様に従う溶融粒は好ましくは、炭素含有量及び熱酸エッチングによる水素ガスの放出量を除いて、上述されたものと同じ好ましさを有する化学分析を有する。
【0045】
第1の特定の実施態様に従う溶融され且つ焼成された粒は好ましくは、酸化性雰囲気中、好ましくは800℃超、好ましくは900℃超、及び好ましくは1280℃以下、好ましくは1200℃未満、好ましくは1150℃未満、好ましくは1100℃未満、の温度で、焼成する工程f)を含む本発明に従う方法に従って製造され、ここで、該焼成の間に達する最高温度は好ましくは、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、維持される。
【0046】
第1の特定の実施態様に従う溶融され且つ焼成された粒は特には、硬鋼の機械加工の為に特に十分に適している。従って、本発明は、第1の特定の実施態様に従う溶融され且つ焼成された粒が硬鋼からなる表面に適用され、それを研磨するところの、本発明に従う研磨方法に関する。
【0047】
第2の特定の実施態様において、該溶融粒がアルミナ結晶から実質的になる微細構造を有し、ここで、該結晶は、MgO、好ましくは、実質的に全体が非化学量論的及び/又は化学量論的なMgAl2O4スピネル形態及び/又は非化学量論的及び/又は化学量論的なMgCr2O4スピネル形態であるところの境界によって分離されており、Cr元素の少なくとも一部が、好ましくはCr3+の形態で、アルミナ結晶の結晶格子内に挿入されている。好ましくは、Al2O3、MgO及びCr2O3以外の酸化物が、実質的に全体が該境界に位置している。
【0048】
好ましくは、該粒からなる混合物について、粒100g当たりのガスの体積として表される、熱酸エッチングによる水素ガスの放出量が、15cm3/100g未満、好ましくは10cm3/100g未満、好ましくは5cm3/100g未満、好ましくは1cm3/100g未満、であるようなものである。
【0049】
この第2の特定の実施態様において、該溶融粒は好ましくは、該溶融粒の重量に基づく重量パーセントとして、0ppm以上且つ500ppm未満、好ましくは400ppm未満、好ましくは300ppm未満、好ましくは200ppm未満、の炭素含有量を有する。
【0050】
この第2の実施態様に従う溶融粒は好ましくは、炭素含有量及び熱酸エッチングによる水素ガスの放出量を除いて、上述されたものと同じ好ましさを有する化学分析を有する。
【0051】
第2の特定の実施態様に従う溶融され且つ焼成された粒は好ましくは、酸化性雰囲気中、1280℃超、好ましくは1300℃超、好ましくは1700℃未満、好ましくは1600℃未満、好ましくは1500℃未満、の温度で、焼成する工程f)を含む本発明に従う方法に従って製造され、ここで、該焼成の間に達する最高温度は好ましくは、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、維持される。
【0052】
第2の特定の実施態様に従う溶融され且つ焼成された粒は特には、ステンレス鋼の機械加工の為に特に十分に適している。従って、本発明は、第2の特定の実施態様に従う溶融され且つ焼成された粒がステンレス鋼からなる表面に適用され、それを研磨するところの、本発明に従う研磨方法に関する。
【0053】
それ故に、本発明に従う溶融粒は、硬鋼及びステンレス鋼の両方で、特にはそれらに適用される焼成処理の関数として、高性能の機械加工を得ることを驚くべきことに可能にする。
【0054】
粒の混合物
【0055】
本発明に従う粒の混合物は、重量パーセントとして、好ましくは85%超、好ましくは90%超、好ましくは95%超、好ましくは99%超、好ましくは実質的に100%、の本発明に従う溶融粒を含む。
【0056】
好ましくは、本発明に従う粒の混合物は、FEPA規格43-GB-1984、R1993及びFEPA規格42-GB-1984、R1993によって規定されている混合物又はグリット(grit)の粒度分布に準拠する。
【0057】
好ましくは、本発明に従う粒混合物は、Ro-Tap登録商標篩い振とう機を用いて測定された、16mmスクリーン上、好ましくは9.51mmスクリーン上、の重量オーバーサイズが、重量パーセントとして1%未満である。
【0058】
本発明に従う溶融粒の混合物を製造する方法
【0059】
本発明に従う溶融粒は、溶融アルミナベースの粒の製造の為の慣用されている上述された工程a)~e)に従って製造されうる。パラメータは例えば、下記の実施例の為に使用されるプロセスの値をとりうる。
【0060】
工程a)において、所望の組成になるように原材料(raw materials)が慣用的に計量され、そして次に、混合して供給原料を形成する。
【0061】
供給原料中のAl、Mg及びCrは、溶融粒中に実質的に完全に存在する。しかしながら、Mg元素及びCr元素は特には、酸化物の形態で、溶融の間に飛散する現象(fly-off phenomena)を起こす可能性がある。当業者は、その結果として供給原料の組成を調整する方法を知っている。
【0062】
従って工程c)の最後に得られる固形塊が本発明に従う粒の組成に従う組成を有するように、供給原料(feedstock)の原材料(raw materials)を選択することは、当業者にとって何ら困難なことではない。
【0063】
Mg及びCr元素は好ましくは、酸化物MgO及びCr2O3の形態で供給原料内へと導入される。それらはまた、慣用的に、これらの酸化物の前駆体の形態で、例えばMgCO3及び/又は水酸化クロムの形態で、導入されることができる。元素Alは好ましくは、少なくとも部分的に、Al2O3の形態で、及び/又はこの酸化物の前駆体の形態で、例えば水酸化アルミニウム及び/又はベーマイト(boehmite)の形態で、供給原料内へと導入される。好ましくは、Al元素は、部分的にAl2O3の形態で、及び部分的に金属の形態で、供給原料内へと導入される。
【0064】
好ましい実施態様において、該供給原料は、溶融の間に還元媒体を生成する化合物を含む。
【0065】
好ましくは、該化合物は、炭素源、金属及びそれらの混合物から選択される。好ましくは、該炭素源は、炭素、石油コークス、ピッチ、石炭及びそれらの混合物から選択され、好ましくは石油コークスである。好ましくは、該金属はアルミニウムである。
【0066】
より好ましくは、溶融の間に還元媒体を生成し及び供給原料において使用されるところの化合物は石油コークス及びアルミニウムである。
【0067】
当業者であれば、工程b)において還元媒体中での溶融を得るために、該供給原料中の、溶融の間に還元媒体を生成するところの化合物の量を決定する為の方法を知っている。
【0068】
好ましくは、該供給原料は、溶融の間に還元媒体を形成するところの化合物の量を、該供給原料に対して1重量%超、好ましくは1.5重量%超、及び好ましくは5重量%未満、好ましくは4重量%未満、含む。
【0069】
工程b)において、電気アーク炉(electric arc furnace)、好ましくはグラファイト電極を有するエルー(Heroult)型、が好ましくは使用されるが、それらが還元性媒体中で該供給原料を溶融することを可能にするものであれば、既知の任意の炉、例えば誘導炉又はプラズマ炉、が使用されうる。
【0070】
還元媒体中で溶融することは好ましくは、該供給原料中に、溶融の間に還元媒体を生成するところの化合物が存在すること、及び/又は電極が溶融材料の浴中に浸漬されていることによって得られる。
【0071】
好ましくは、該供給原料(feedstock)は、溶融の間に還元媒体を生成するところの元素を含む。
【0072】
好ましくは、該原材料(raw materials)は大気圧で溶融される。
【0073】
好ましくは、容量70リットルの容器を備えており、鋳造前の溶解エネルギーが220kW超の電力で原材料(raw materials)1kg当たり2kWh超を有する電気アーク炉、又は同等の条件下で使用される異なる容量を有する電気アーク炉が使用される。当業者は、そのような同等の条件を決定する為の方法を知っている。
【0074】
工程c)において、冷却は急速でなければならず、すなわち、溶融材料が3分未満で完全に固化されるようになければならない。例えば、冷却は、米国特許第US3,993,119号に記載されているように鋳型内への鋳造により、又はクエンチング(quenching)により結果として生じうる。
【0075】
好ましくは、該溶融材料は2分未満、好ましくは1分未満、好ましくは40秒未満、好ましくは30秒未満、で完全に固化される。
【0076】
工程c)において、粒の混合物を直接得ることができない場合に、又はこれらの粒が標的とする用途の為に適した粒径を有しない場合に、慣用的な技術に従って粉砕(工程d)が実行されうる。
【0077】
工程e)において、先の工程が標的とする用途の為に適した粒径を有する粒の混合物を得ることができない場合に、粒径選別、例えばスクリーニング又はサイクロンによる粒径選別、が実施されうる。
【0078】
本発明に従う方法は好ましくは、工程c)の後に、又は好ましくは、該方法が工程d)を含む場合には工程d)の後に、又は好ましくは、該方法が工程e)を含む場合には工程e)の後に、焼成する工程f)を含む。
【0079】
該焼成温度は、研磨されるべき表面の性質に、特にはこの表面が鋼製の場合に、適合する。
【0080】
該焼成は好ましくは、800℃超及び好ましくは1700℃未満の温度で、酸化性雰囲気中で行われ、ここで、該焼成の間に達する最高温度は、好ましくは少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、の期間維持される。
【0081】
好ましくは、工程f)は大気圧で行われる。
【0082】
好ましくは、工程f)は空気中で行われる。
【0083】
有利には、工程f)を実施することにより、本発明に従う溶融粒の有効性及び/又はエネルギー効率を更に向上させることが可能である。
【0084】
第1の実施態様において、特には、溶融粒が、硬鋼を機械加工すること、特には研磨工具内に組み込まれた後に硬鋼を機械加工すること、が意図されている場合に、該方法は、好ましくは800℃超、好ましくは900℃超、及び1280℃以下、好ましくは1200℃未満、好ましくは1150℃未満、好ましくは1100℃未満、の温度で、好ましくは酸化性雰囲気中で、好ましくは空気中で、焼成する工程f)を含み、ここで、焼成の間に達する最高温度は、好ましくは少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、の期間維持される。
【0085】
第2の実施態様において、特には、溶融粒が、ステンレス鋼を機械加工すること、特には研磨工具内に組み込まれた後にステンレス鋼を機械加工すること、が意図されている場合に、該方法は、好ましくは1280℃超、好ましくは1300℃超、及び好ましくは1700℃未満、好ましくは1600℃未満、好ましくは1500℃未満、の温度で、酸化性雰囲気中で、好ましくは空気中で、焼成する工程f)を含み、ここで、焼成の間に達する最高温度は、好ましくは少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、の期間維持される。
【0086】
本発明に従う研磨工具を製造する為の方法
【0087】
研磨工具を製造する為の方法は周知であり、本発明に従う研磨工具を製造する為に使用されることができる。
【0088】
該研磨工具は特には、本発明に従う粒を結合剤によって、特に砥石の形態で、例えばプレスによって、凝集させることによって形成されてもよく、又は本発明に従う粒を結合剤によって、裏打ち材(backing)、例えばベルト(belt)又はディスク(disk)、に付着させることによって形成されてもよい。
【0089】
該結合剤は、無機物、特にはガラス(例えば、酸化物からなる結合剤、実質的に1以上のケイ酸塩からなる結合剤、が使用されることができる)又は有機物であることができる。
【0090】
有機結合剤が非常に適している。該結合剤は特には、熱硬化性樹脂でありうる。該結合剤は好ましくは、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール-フルフラール樹脂、アニリン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール-アルデヒド樹脂、レゾルシノール-アルデヒド樹脂、尿素-アルデヒド樹脂又はメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0091】
該結合剤にはまた、有機充填剤若しくは無機充填剤、例えば水和無機充填剤(例えば、三水和アルミニウム又はベーマイト)又は非水和無機充填剤(例えば、酸化モリブデン)、氷晶石、ハロゲン、蛍石、硫化鉄、硫化亜鉛、マグネシア、炭化ケイ素、塩化ケイ素、塩化カリウム、二塩化マンガン、ホウフッ化カリウム(potassium fluoroborate)若しくはホウフッ化亜鉛(zinc fluoroborate)、フルオロアルミン酸カリウム(potassium fluoroaluminate)、酸化カルシウム、硫酸カリウム、塩化ビニリデンと塩化ビニルとのコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、及びそれらの混合物が組み込まれていてもてよい。該結合剤はまた、強化繊維、例えばガラス繊維、を含んでいてもよい。
【0092】
慣用的に、本発明に従う粒の混合物は結合剤と混合され、及び任意的に、有機充填剤又は無機充填剤と混合される。結合剤が慣用的に体積比で2%~60%、好ましくは20%~40%、を占めるところの得られた該混合物は、成形され、例えば、型に入れられるか又は裏地上に堆積される。次に、該結合剤が、例えば加熱によって活性化されて、該粒を互いに結合させ、及び/又は任意の裏打ち材と結合させる。該結合剤の硬化後に、そして任意的に、該型から取り外した後に、本発明に従う研磨工具が得られる。
【0093】
実施例
【0094】
下記の非限定的な実施例は、本発明を説明する目的の為に与えられている。
【0095】
測定プロトコル
【0096】
下記の測定プロトコルは、融合粒の混合物の或る特性を決定する為に使用された。該測定プロトコルにより、それらが摩耗の為に使用された場合の粒の実際の挙動が見事にシミュレーションされることができる。
【0097】
粒の混合物の研磨性能を評価する為に、この混合物の1グラムの単層が直径12.7cmを有する金属砥石に施与され、ここで、該溶融粒がフェノール樹脂を使用して結合された。
【0098】
次に、20.5cm×7.6cm×6.0cmの寸法を有する52100硬鋼(hard steel)又は304Lのステンレス鋼(stainless steel)からなる板の表面が、得られた砥石で、水での噴霧下、切削深さ20μm及び砥石の回転速度3600rpmを一定に保ちながら、一定速度で往復運動させながら機械加工される。機械加工の間に砥石によって発生された総エネルギーEtotが記録される。
【0099】
該砥石が完全に摩耗した後に、機械加工された鋼(steel)の重量(すなわち、研削作業によって除去された鋼の重量)「Ma」、消費された砥石の重量「Mm」、及び研削作業によって除去された鋼の体積「Va」が測定される。
【0100】
有効性を評価する為に、機械加工された鋼の重量を機械加工の間に消費された粒の重量で割った比Sが慣用的に計算される(S=Ma/Mm)。
【0101】
エネルギー効率を評価する為に、単位体積の鋼を除去する為に必要とされるエネルギーに等しい、機械加工の比エネルギーEsが慣用的に計算される(Es=Etot/Va)。
【0102】
該溶融粒の組成を決定する為に、これらの粒の混合物のビーズが、該混合物を溶融することによって製造され、次に、炭素含有量の測定を除いて、X線蛍光によって化学分析が行われる。
【0103】
該溶融粒の炭素含有量は、LECOによって販売されているCS744モデルの炭素-硫黄分析器を用いて測定される。
【0104】
粉末のメジアン径は、Horibaによって販売されているLA950V2モデルレーザーパーティクルサイザー(LA950V2 model laser particle sizer)を用いて慣用的に測定される。
【0105】
塩酸とフッ化水素酸との混合液での該粒の熱エッチング(hot etching)の後に、熱酸エッチング(hot acid etching)によって放出される水素ガスの量が決定される。従って、亜酸化種(suboxidized species)(金属までの亜酸化物)の再酸化が評価される。
【0106】
この目的の為に、磁気分離(magnetic separation)の後、粒が、酸化された材料(例えば、アルミナ-ジルコニア-シリカ溶融材料)でできた粉砕室(milling chamber)中で、160μmの目開きを有する正方形のメッシュを持つ篩いを通過する粉末が得られるまで粉砕される。該粉末の5gが取り出され、そして、100cm3の容積を有するポリプロピレン製反応器内に入れられ、そして次に、下記の酸混合物25mlが加えられる:(1リットルに対して)40%のHF 250ml、37%のHCl 375ml、及び水375ml。該反応器が閉じられた後、定期的に攪拌しながら、水浴中、85℃で25分間エッチングが行われる。該反応器を冷却した後、およそ約0.5mlがセプタムを通じてシリンジを用いて抜き取られ、そして、熱伝導度検出器付きのガスクロマトグラフ(分離カラム用の5オングストローム分子篩い、及びキャリアガスとしてアルゴンを有する)内に注入される。結果が、粉砕された粒100g当たりの通常条件下でのガス量として表される。
【0107】
この放出量は、「熱酸エッチングによる水素ガスの放出量」として言及される。
【0108】
製造プロトコル
【0109】
下記の実施例の混合物は、下記の原材料(raw materials)から調製された:
不純物である、Na2O、CaO、Fe2O3、MgO、TiO2、SiO2を含み、及び80μmのメジアン径を有する、純度99.6重量%超のアルミナ粉末;
LanxessによってBayoxide登録商標C GN-Rの名称下で販売されている、98.5重量%超のCr2O3含有量を有する顔料性酸化クロムCr2O3粉末;
99重量%超の純度を有し、粒の85重量%超が45μmのスクリーンのメッシュを通過するマグネシア粉末。
【0110】
本発明外である参考例1(「参考」)は、国際公開第WO2004/094554号パンフレットの教示に従った溶融粒の混合物であり、例2との比較としての役割を果たす。
【0111】
例2の、粒の混合物は、本発明に従って、下記の製造方法に従って調製された:
a) 原材料(raw materials)を混合して供給原料(feedstock)を形成すること、ここで、該供給原料は1重量%のアルミニウム金属チップと0.5重量%の石油コークス(petroleum coke)を含む、
b) 炉容器(furnace vessel)の0.8mの直径、125Vの電圧、1800Aの電流及び充電された2kWh/kgの供給される特定の電気エネルギーを有するグラファイト電極を備えているエルー(Heroult)型の単相電気アーク炉(single-phase electric arc furnace)において、該供給原料を溶解すること、
c) 米国特許第US-A-3,993,119号明細書において示されているような、薄い金属板間の鋳造の為の装置によって該溶融材料を急冷して、固体塊を構成する完全に固体のシートを得ること、
d) 工程c)において冷やされた該固形塊を粉砕して、粒の混合物を得ること、
e) Ro-Tap登録商標篩い振とう機を用いて、500~600μmの大きさを有する粒を選別することによって選択すること。
【0112】
下記の表1は、これらの混合物の化学組成と得られた結果である。
【0113】
S比における改善パーセントは、下記の式によって計算される:
100×(検討されるべき例の混合物の比S-参考例1の混合物の比S)/参考例1の混合物の比S。
【0114】
比エネルギーが有意に増加すること無しに、好ましくは比エネルギーにおける減少(後述されている比エネルギーEsにおける減少パーセンテージの正の値)を伴う、比Sにおける有意な改善のパーセンテージの正の且つ高い値が求められる。本発明者等は、比Sにおいて5%超の改善を有意であるとみなす。
【0115】
好ましくは、比Sは10%超、好ましくは15%超、好ましくは20%超、好ましくは25%超、好ましくは30%超、好ましくは35%超、改善される。
【0116】
比エネルギーにおける減少パーセンテージEsは、下記の式によって計算される:
100×(参考例1の混合物でのEs-検討されるべき例の混合物のEs)/参考例1の混合物のEs。
【0117】
試験の間の比エネルギーEsにおける減少パーセンテージは、劣化無しに、好ましくは参照と比較して比Sにおける改善を伴う、正の且つ高い値が求められる。本発明者等は、比エネルギーEsにおける5%超の減少を有意であるとみなす。好ましくは、該比エネルギーは、(参照と比較して)10%超、好ましくは15%超、減少する。
【0118】
【表1】
【0119】
参考例1と本発明に従う例2との比較は、2.5%~5.8%のMgOを含む混合物中に0.4%のCr2O3の存在による肯定的な影響を示す。そのようなCr2O3の含有量の場合に、52100硬鋼を機械加工する場合に、比Sが4%改善され、及び比エネルギーが12%低減される。
【0120】
例2は、未焼成の溶融粒が比エネルギーを低減することを可能にし、該比Sは有意に増加しないことを示す。
【0121】
下記の追加の例が作成された。例1の粒の混合物及び例2の粒の混合物に対して焼成熱処理が行われ、夫々、例3に従う粒の混合物及び例4に従う粒の混合物を得た。上記焼成は、空気中1000℃で行われ、1000℃の温度は2時間維持され、1000℃の温度への上昇速度は300℃/時間に等しかった。
【0122】
これらの混合物で得られた結果が下記の表2において提供されている。
【0123】
【表2】
【0124】
参考例3と本発明に従う例4との比較は、0.4%のCr2O3の存在と、特には1000℃の温度で実施される焼成工程との影響を示す:52100硬鋼を機械加工する場合に、比Sが47%改善され、及び比エネルギーが45%低減される。
【0125】
例4の粒は、アルミナ結晶から実質的になる微細構造を有し、ここで、該結晶は、少なくとも部分的に金属形態で元素Cr、並びにAl、Mg及びCr以外の実質的に全ての元素が位置しているところの境界によって分離されている。
【0126】
下記の追加の例が作成された。例1の粒の混合物及び例2の粒の混合物に対して焼成熱処理が行われ、夫々、例5に従う粒の混合物及び例6に従う粒の混合物を得た。上記焼成は、空気中1400℃で行われ、1400℃の温度は2時間維持され、1400℃の温度への上昇速度は300℃/時間に等しかった。
【0127】
これらの混合物で得られた結果が下記の表3において提供されている。
【0128】
【表3】
【0129】
参考例5と本発明に従う例6との比較は、0.4%のCr2O3の存在と、特には1400℃の温度で実施される焼成工程との影響を示す:304Lのステンレス鋼を機械加工する場合に、比Sが32%改善され、及び比エネルギーが21%低減される。
【0130】
下記の追加の例が作成された。
【0131】
例7~例11の、粒の混合物は、下記の製造方法に従って調製された:
a) 原材料(raw materials)を混合して供給原料(feedstock)を形成すること、ここで、該供給原料は2重量%のアルミニウム金属チップと0.5重量%の石油コークス(petroleum coke)を含む、
b) 炉容器(furnace vessel)の0.8mの直径、215Vの電圧、1040Aの電流及び充電された3kWh/kgの供給される特定の電気エネルギーを有するグラファイト電極を備えているエルー(Heroult)型の単相電気アーク炉(single-phase electric arc furnace)において、該供給原料を溶解すること、
c) 米国特許第US-A-3,993,119号明細書において示されているような、薄い金属板間の鋳造の為の装置によって該溶融材料を急冷して、固体塊を構成する完全に固体のシートを得ること、
d) 工程c)において冷やされた該固形塊を粉砕して、粒の混合物を得ること、
e) Ro-Tap登録商標篩い振とう機を用いて、500~600μmの大きさを有する粒を選別することによって選択すること。
【0132】
下記の表4は、これらの混合物の化学組成を提供する。
【0133】
【表4】
【0134】
下記の表5は、参考例1並びに例2、7、8及び9の粒の混合物について得られた結果が、これら実施例の各々についての、MgO及びCr2O3の含有量の残部を提供する。
【0135】
【表5】
【0136】
参考例1、並びに本発明に従う例2、7及び8、並びに本発明外の例9の比較は、3.1%~4.1%のMgOを含む混合物におけるCr2O3の存在の影響を示す:
0.4%~4.1%のCr2O3の含有率の場合に、比Sは例2、7及び8で夫々、4%、31%及び19%改善され、並びに比エネルギーは例2、7及び8で夫々、12%、6%及び15%減少した、
5%のCr2O3含有量を有する例9の場合に、比Sは25%改善されたが、比エネルギーが17%増加した。
【0137】
参考例1と本発明に従う実施例7(夫々、3.6%及び3.1%のMgO含有量を有する)との比較は、実施例7の粒が、参考例1の粒と比較して、比Sが31%改善され及び比エネルギーが6%低減されていることを示す。
【0138】
下記の表6は、参考例1並びに例10及び11の粒の混合物について得られた結果が、これらの実施例の各々についての、MgO及びCr2O3の含有量の残部を提供する。
【0139】
【表6】
【0140】
参考例1、並びに本発明に従う例10、並びに本発明外の例11の比較は、MgO含有量7%、Cr2O3含有量1.7%を有する例11の粒は、例10の粒と異なり、参照の粒と比較して、比Sの34%の減少及び比エネルギーにおける7%の減少を示し、ここで、例10の粒は、MgO含有量5.2%及びCr2O3含有量2%を有し、参照の粒と比較して、比Sの9%の減少及び比エネルギーにおける6%の減少を示す。
【0141】
今明らかにされたように、本発明は、既知のアルミナベースの粒よりもより良い効力及びエネルギー効率を有するアルミナベースの溶融粒の混合物を提供する。
【0142】
勿論、本発明は、例示及び非限定的な例によって提供される記載された実施態様に限定されるものでない。
【0143】
特には、本発明に従う溶融粒は、特定の形状又は寸法に限定されるものでない。
【国際調査報告】