(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】任意の傾斜余弦θ(CCT)磁石のための、任意の多極子配置を有する、テープのような構造の形態の導体の巻線を含むアレイ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/20 20060101AFI20241128BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20241128BHJP
H01F 6/06 20060101ALI20241128BHJP
H02K 55/04 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
H01F7/20 D
H01F5/00 D
H01F5/00 F
H01F6/06 110
H02K55/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024536130
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 GR2022000068
(87)【国際公開番号】W WO2023111601
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524226737
【氏名又は名称】コラツィノス・ミハイル
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】コラツィノス・ミハイル
(57)【要約】
任意の多極子の配置を有する、任意の傾斜余弦θ(CCT)磁石のための導体の巻線を含むアレイであって、テープが組み込まれた構造の形態のアレイにおいて、磁石の長さ方向に対して垂直な平面におけるCCT磁石の導体のテープトレースは、従来のCCTの場合のような円ではなく、「レーストラック」である。このレーストラックは直線部分と曲線部分で構成されている。
これは、基本的な多極子の次数の2倍に等しい数の直線部分(双極子の場合は2つ、四極子の場合は4つ、六極子の場合は6つなど)と、同数の曲線部分(双極子の場合は2つ、四極子の場合は4つ、六極子の場合は6つなど)を含んでいる。
本発明の利点は、このようにして高温超電導テープでCCT磁石を作製することが可能になり、したがって、あらゆる磁石、ひいてはモータや発電機を作製することも可能になることである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の多極子配置を有する、任意の傾斜余弦θ(CCT)磁石のための、テープのような構造形態の導体の巻線を含むアレイであって、
当該アレイは、導体テープのスタックの内部若しくは外部、又は中間の一端の中央にあるテープトレースによって特徴付けられ、磁石の長さ方向に対して垂直な平面における導体のテープトレースの投影が、曲線部分によって接合された直線部分から構成されており、
前記直線部分は、これらの数、位置、長さ、および最大の凸状の特徴によって特徴付けられており、
前記直線部分の数が、磁石の基本的な多極子の次数の2倍であり、すなわち、双極子に対して2つの直線部分、四極子に対して4つの直線部分、六極子に対して6つの直線部分などであり、
直線部分が、通常の多極子の場合にsin(n
Bθ)=0の地点に位置し、およびスキュー多極子の場合にcos(n
Aθ)=0の地点に位置し、θは巻き角度であり、n
Aとn
Bはスキュー多極子および通常の多極子の次数(n
A,n
B=1,2,3,・・・)であり、
ここで、前記直線部分の長さは、導体テープの幅以上であるか、又は導体テープの幅と同等であり、
ここで、磁石の長さ方向に対して垂直な平面における前記直線部分の投影の曲率半径は、磁石の平均半径/(囲まれた曲率半径)の2倍より大きいか、又は負であり、
前記直線部分の軸線は、磁石の本体軸線に対して常に角度をなしており、
アレイの鉛直の断面は、双極子の場合に、古典的な陸上競技用のレーストラックに似ており、
アレイの鉛直の断面は、四極子の場合に、縁部における直角は、丸みを帯びた縁部および/または先細の縁部によって置き換えられている正方形の形状に似ており、
アレイの鉛直の断面は、六極子の場合に、丸みを帯びた縁部を有する六角形の形状に似ている、などであり、
導体の巻線の全体的な概念は、「レーストラック設計」と呼ぶことができる、
アレイ。
【請求項2】
請求項1に記載の任意の多極子配置を有する、任意の傾斜余弦θ(CCT)磁石のための、テープのような構造形態の導体の巻線を含むアレイであって、
磁石を構成し、巻線アレイを含み、かつ組み込む、アレイ。
【請求項3】
請求項1及び2に記載の任意の多極子配置を有する、任意の傾斜余弦θ(CCT)磁石のための、テープのような構造形態の導体の巻線を含むアレイであって、
双極子、四極子、六極子および他の多極子磁石、規則的または傾斜を含む、すべてのタイプの磁石を構成し、それらの任意の混合のために、直線状または曲線状磁石を構成する、アレイ。
【請求項4】
請求項1から3に記載の任意の多極子配置を有する、任意の傾斜余弦θ(CCT)磁石のための、テープのような構造形態の導体の巻線を含むアレイであって、
装置が逆に動作される、すなわち、モータ、発電機などの場合のように、外部磁場から前記導体内に電流が生成される、アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超伝導体(HTS)の巻線の問題を、テープの形態での傾斜余弦θ(CCT)型の磁石で解決することである。
【0002】
今日のCCT磁石の巻線の最新の従来技術はHTSテープの巻線を許容しない。本発明は、巻線が規定される方法を改良し、HTSテープの使用を可能にすることである。これは、磁石の長さ方向に対して垂直な面内のCCT巻線形状の規定を、円から、直線および曲線部分から構成される「レーストラック」パターンへと変形することに基づいている。
【背景技術】
【0003】
「二重らせん」磁石として知られているCCT電磁石は、機械的な支持構造に溝を切った設計に基づいており、この「磁石形成器」は、ケーブル-導体の位置と電流の流れを正確に決定し、これらが磁石の特性を決定する。磁場は、中空である磁石形成器の内部に形成される。溝の位置(したがって導体の位置)を規定する方程式を以下に示す。CCT磁石の設計の最初の言及は70年代に見られる。CCT磁石は、自動旋盤技術(CNC機械)、および三次元印刷機の出現、ならびにそれらの単純さ、優れた磁気品質、低コストおよび構築速度のために、この数十年(2010~2020年)間で磁石設計者の間で普及し始めた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高温超伝導体(HTS)テープを傾斜余弦θ(CCT)磁石形成器に使用することを可能にする新しい巻線アレイを導入する。さらに、CCT磁石形成器の新しい設計は、このような特定の巻線を可能にする。それがなければ、HTS導体を有するCCT磁石を構築することは非現実的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
HTS材料は、従来の低温超伝導体材料と比較して高効率を提供しており、現在、ますます使用されつつある。しかし、HTS超伝導体の通常の形態はHTSテープであり、円筒形断面の伝統的な導体(ケーブル)ではない。これらのテープは、通常、幅4~12mm、厚さ50~100ミクロンであり、最大数キロメートルの長さを有することができる。
【0006】
テープは従来の円筒形断面の導体とは異なり、それらテープの幅方向に平行な方向には柔軟であるが、それらテープの厚さ方向に平行な方向には非常に硬く壊れやすい。
【0007】
より高い磁場を達成するため、そしてHTSテープが非常に薄いという事を考慮すると、テープのスタック(stack、積層物)を使用することができる。本発明は、1つのスタック(単一ストリップ)を含むHTSテープのスタックに関する。
【0008】
磁石の磁場は、その長さ方向に対して垂直な面内で、スキュー成分と正規多極子の成分の混合によって特徴づけられている。多極子は双極子、四極子、六極子などである。ほとんどの磁石は、主多極子の成分を有し、他の全ては、磁気欠陥を表すように、非常に弱い(主多極子の強度の1000分の1程度以下)。
【0009】
CCT磁石は、中空の円柱の形状での中空形状の形成器に溝があり、その中心は、最下点において次の式で与えられる。
【数1】
ここで、Rはコイルの半径、n
Aおよびn
Bはスキューおよび正規多極子の次数である。次数1は双極子の磁場、2は四極子、3は六極子、などを表す。
【数2】
は、所望される多極子ごとの垂直面に対する溝の最小角度(スキュー角度と呼ばれる)である。それらは、その成分の強度に反比例する。90度の角度は、関連する多極子成分を保証しないであろうが、最小角度(最大多極子場を与える)は、実用的な考慮によって(溝は、それ自体が動くことはできない)、約25度に制限されている。θは巻き角度であり、
【数3】
であり、ここで、ntは巻き数である。ωは導体ピッチ(連続する巻線間の距離)である。
【0010】
導体サイズがRに比べて非常に小さい限界(すなわち、溝は幅と深さがゼロで、導体は単なる線である)においては、端部から離れた無限に長い磁石の結果として生じる場が、式[1]の多極子の混合の完全な反映であり、多極子の誤差はない。
【0011】
最も一般的な磁石は双極子(nB=1を除くすべての角度αはπ/2である)、四極子(nB=2を除くすべての角度αはπ/2である)および六極子(nB=3を除くすべての角度αはπ/2である)である。CCT磁石は、主多極子に加えて、少量の他の多極子を含むように設計することができる。
【0012】
この配列は、また、縦方向(z)に沿った磁場を生成し、これは、ほとんどの場合望ましくないので、形成器の厚さに依存してRがわずかに増加し、反対の巻線方向およびスキュー角度が逆符号の第2のCCT層が組み込まれる。外側層の開始部および内側層の終了部は、互いの上に配置されている。この第2の層は、第1の層とは逆方向に流れる同じ電流を有する。その結果、2つの層の縦磁場は相殺され、意図された多極子の寄与は同じ符号を有する。CCT設計は、2つの層のために「二重らせん」と呼ばれることがある。いずれの場合も、2つの層は概念が同一であるため、ここでは1つの層のみを参照する。全く同じ方法を他の層に組み込むことができる。
【0013】
式[1]によると、(x,y)平面では、溝は円を記述し、三次元では円柱の表面上に位置する。zθ空間では、溝は特定の多極子に対する正弦曲線カーブを記述する。
【0014】
最近では、いくつかのCCT磁石が、曲線経路をたどり、磁石の中心(式[1]には(x,y)=(0,0)が存在する)は、半径R
curvedを有する(x,y)平面内の円を表し、ここでは、
【数4】
である。
【0015】
HTSテープ用のCCT磁石巻線:本発明
【0016】
本発明の好ましい一実施形態は、以下の部品および特徴を備える。
【0017】
1. 高温超伝導体(HTS)テープ(1)
2. 磁石形成器(2)
3. テープトレース(3)
4. 直線部分(4)
5. 曲線部分(5)
6. 閉じた曲率半径(6)
7. 巻き角度θ(7)
【0018】
以下の図は、本明細書に添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】HTSテープ(1)のスタック、(濃い色、左)、磁石形成器(2)の溝に続く四極子のCCT磁石(右)。ターンの半分が示されており、テープのスタックが磁石形成器とは別個に示されている。
【
図1B】「レーストラック」のCCTパスに続くテープのスタック(ハーフターン)とテープトレース(3)(黒い線)の透明な略図。
【
図2A】(x,y)平面内のHTSテープトレース(3)の幾何学的部位は、円(破線)である従来のタイプのCCT設計と比較した、「レーストラック」形状(実線)を形成する。この「レーストラック」は、多数の直線部分(4)および曲線部分(5)からなる。この実施例は、四極子磁石の場合であり、寸法は、説明するために誇張されている。双極子の「レーストラック」には、2つの直線部分、四極子、六極子などがある。
【
図2B】弧の中心が(0,0)の同じ点にある代替的な設計(多くのうちの1つ)。
【
図3A】
図3Aには(x,y)平面内の投影図が示されており、本発明は、(x,y)平面内のテープトレース(3)として円形形状の代わりに「レーストラック」の側面を使用する。HTSテープのスタックの半回転が表示される。(一般的な磁石は巻き数が多い)。
【
図3B】
図3Bは等角図法で示されており、本発明は、(x,y)平面内のテープトレース(3)として円形形状の代わりに「レーストラック」の側面を使用する。HTSテープスタックの半回転が表示される。(一般的な磁石は巻き数が多い)。
【
図3C】
図3Aと同様の透明なスケッチ。テープトレース(3)を見ることができる。これは、直線部分によって接続された曲線部分を有する「レーストラック」の形状を有する。
【
図4】本発明における「レーストラック」の直線部分(4)の真直度要件は、より容易に理解するための特定の実施例を伴う。四極子の「レーストラック」CCT設計は、xy平面の投影(実線)で示されている。これは、(x,y)面内のテープトレース(3)の投影である。直線部分は長さ20mmを有し、凸部分は直径20mmの円で形成されている。「トラック」の全幅は40mmであり、円周が点線で示されている。これにより、平均径45.46mm、平均半径R
mean=22.73mmとなる。曲線は、曲率直径が90.93mmである頂部(破線)の直線部分に現れる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前述の式[1]は、円筒形の断面の細い巻線などの柔軟な導体に対して完全に機能する。しかし、HTS導体には、前述したように、幅数ミリメートル(4~12mm)、厚さ数十マイクロメートル(50~100μm)のテープの形状因子が付属している。2方向の寸法差が大きいため、テープは、大きな方向性を示す。すなわち、その幅に平行な方向を中心にして非常に少ない労力で曲げることができるが、その厚さに平行な方向を中心にしては、(非常に高い剛性を示す)ため、曲げることができない。同じことが、テープのスタックにも当てはまる。剛性の高い平面内で弾性限界を超えてテープを強制的に曲げようとすると、テープが損傷し、場合によっては超電導性能を失う可能性がある。
【0021】
式[1]に記載されているCCTの式は、固体ではなく、線に適用される。直径が磁石の半径Rよりもずっと小さい丸い導体は、直線で非常によく近似できる。しかし、一般的にテープは不可能である。テープトレース(3)は、テープのスタックの一端又は中央の中心として定義される。この端部は、磁石の中心に最も近いもの(線(x,y)=(0,0)に沿って定義される(
図1Bの(3)))とみなされるが、端部が磁石の中心から最も遠いものである場合、またはテープの中央である場合、全く同じ独立変数が適用される。テープトレース(3)は、式[1]に従うものである。
【0022】
テープ、またはテープのスタックが、シリンダーの表面上の曲線経路を辿ろうとすると、座屈し、テープは、シリンダーの表面に対して垂直ではない。CCTの場合のように、連続的に曲げるには、テープのスタックを、
図1Aに示すように、正の曲げ半径(凹)から負の半径(凸)に変える必要がある。連続する2回転の間に、テープをねじれなければならない。しかし、曲線状の表面に追従しながらねじることは、テープの非屈曲軸線に沿った屈曲を必要とするため、一般的には不可能である。
【0023】
本発明は、
図2に示されているように、(x,y)面内のテープトレース(3)の幾何学的な場所(式[1]の場合は、従来のCCT磁石に対して円である)では「レーストラック」形状を使用する。直線部分(4)は、例えば円弧のような曲線部分(5)によって接合されている。これらの円の中心は、
図2Aのように、磁石の中心と異なっていてもよく、または
図2Bのように一致していてもよく、または他の任意の形状を有していてもよい。直線部分は、テープが凹曲がりと凸曲がりの間でねじれることを可能にし、これは、従来のCCT磁石のように、ただ1つの円形部分がある場合には不可能である。
【0024】
直線部分(4)の数は、磁石の基本的な多極子(双極子に対しては2つの直線部分、四極子に対しては4つ、六極子に対しては6つなど)の次数系列の2倍に等しい。直線部分は、次の曲げの準備のために、テープのスタックに対してねじれる機会を与える。これらの直線部分(4)は、ノーマル多極子ではsin(nBθ)=0、スキュー多極子ではcos(nAθ)=0となる領域をとりかこむように、設計のテープのねじれ点の周囲に配置されており、ここで、θは巻き角度、nAとnBAはスキュー多極子とノーマル多極子の次数(nA,nB=1,2,3,・・・)である。
【0025】
図3は、四極子の場合の本発明の「レーストラック」の設計を示しており、(x,y)平面上の凹部および等角図が描画されており、HTSテープのスタックの小さな部分(半回転)が描画されているが、ここで説明した原理は導体に沿ってどこにでも適用される。
【0026】
円は、正確に凸部を囲む平面に適合され、同時に、直線部分の前後の曲線部分(5)に接触し、その半径が注目される。これは、磁石の長さ方向に対して垂直な平面における直線部分(4)の凸部の囲まれた曲率半径(6)である。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超伝導体(HTS)の巻線の問題を、テープの形態での傾斜余弦θ(CCT)型の磁石で解決することである。
【0002】
今日のCCT磁石の巻線の最新の従来技術はHTSテープの巻線を許容しない。本発明は、巻線が規定される方法を改良し、HTSテープの使用を可能にすることである。これは、磁石の長さ方向に対して垂直な面内のCCT巻線形状の規定を、円から、直線および曲線部分から構成される「レーストラック」パターンへと変形することに基づいている。
【背景技術】
【0003】
「二重らせん」磁石として知られているCCT電磁石は、機械的な支持構造に溝を切った設計に基づいており、この「磁石形成器」は、ケーブル-導体の位置と電流の流れを正確に決定し、これらが磁石の特性を決定する。磁場は、中空である磁石形成器の内部に形成される。溝の位置(したがって導体の位置)を規定する方程式を以下に示す。CCT磁石の設計の最初の言及は70年代に見られる。CCT磁石は、自動旋盤技術(CNC機械)、および三次元印刷機の出現、ならびにそれらの単純さ、優れた磁気品質、低コストおよび構築速度のために、この数十年(2010~2020年)間で磁石設計者の間で普及し始めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6921042号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/350957号明細書
【特許文献3】国際公開第2012/117249号
【特許文献4】米国特許第2011279215号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Garcia Fajardo, et al. (2021), in “First Demonstration of High Current CCT coils with Bi-2212 Rutherford Cables”
【非特許文献2】Peng Quanng, at al. (2020), in “Harmonic Suppression study on Twin Aperture CCT Type Superconducting Quadrupole for CEPC Interaction Region”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高温超伝導体(HTS)テープを傾斜余弦θ(CCT)磁石形成器に使用することを可能にする新しい巻線アレイを導入する。さらに、CCT磁石形成器の新しい設計は、このような特定の巻線を可能にする。それがなければ、HTS導体を有するCCT磁石を構築することは非現実的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
HTS材料は、従来の低温超伝導体材料と比較して高効率を提供しており、現在、ますます使用されつつある。しかし、HTS超伝導体の通常の形態はHTSテープであり、円筒形断面の伝統的な導体(ケーブル)ではない。これらのテープは、通常、幅4~12mm、厚さ50~100ミクロンであり、最大数キロメートルの長さを有することができる。
【0008】
テープは従来の円筒形断面の導体とは異なり、それらテープの幅方向に平行な方向には柔軟であるが、それらテープの厚さ方向に平行な方向には非常に硬く壊れやすい。
【0009】
より高い磁場を達成するため、そしてHTSテープが非常に薄いという事を考慮すると、テープのスタック(stack、積層物)を使用することができる。本発明は、1つのスタック(単一ストリップ)を含むHTSテープのスタックに関する。
【0010】
磁石の磁場は、その長さ方向に対して垂直な面内で、スキュー成分と正規多極子の成分の混合によって特徴づけられている。多極子は双極子、四極子、六極子などである。ほとんどの磁石は、主多極子の成分を有し、他の全ては、磁気欠陥を表すように、非常に弱い(主多極子の強度の1000分の1程度以下)。
【0011】
CCT磁石は、中空の円柱の形状での中空形状の形成器に溝があり、その中心は、最下点において次の式で与えられる。
【数1】
ここで、Rはコイルの半径、n
Aおよびn
Bはスキューおよび正規多極子の次数である。次数1は双極子の磁場、2は四極子、3は六極子、などを表す。
【数2】
は、所望される多極子ごとの垂直面に対する溝の最小角度(スキュー角度と呼ばれる)である。それらは、その成分の強度に反比例する。90度の角度は、関連する多極子成分を保証しないであろうが、最小角度(最大多極子場を与える)は、実用的な考慮によって(溝は、それ自体が動くことはできない)、約25度に制限されている。θは巻き角度であり、
【数3】
であり、ここで、ntは巻き数である。ωは導体ピッチ(連続する巻線間の距離)である。
【0012】
導体サイズがRに比べて非常に小さい限界(すなわち、溝は幅と深さがゼロで、導体は単なる線である)においては、端部から離れた無限に長い磁石の結果として生じる場が、式[1]の多極子の混合の完全な反映であり、多極子の誤差はない。
【0013】
最も一般的な磁石は双極子(nB=1を除くすべての角度αはπ/2である)、四極子(nB=2を除くすべての角度αはπ/2である)および六極子(nB=3を除くすべての角度αはπ/2である)である。CCT磁石は、主多極子に加えて、少量の他の多極子を含むように設計することができる。
【0014】
この配列は、また、縦方向(z)に沿った磁場を生成し、これは、ほとんどの場合望ましくないので、形成器の厚さに依存してRがわずかに増加し、反対の巻線方向およびスキュー角度が逆符号の第2のCCT層が組み込まれる。外側層の開始部および内側層の終了部は、互いの上に配置されている。この第2の層は、第1の層とは逆方向に流れる同じ電流を有する。その結果、2つの層の縦磁場は相殺され、意図された多極子の寄与は同じ符号を有する。CCT設計は、2つの層のために「二重らせん」と呼ばれることがある。いずれの場合も、2つの層は概念が同一であるため、ここでは1つの層のみを参照する。全く同じ方法を他の層に組み込むことができる。
【0015】
式[1]によると、(x,y)平面では、溝は円を記述し、三次元では円柱の表面上に位置する。zθ空間では、溝は特定の多極子に対する正弦曲線カーブを記述する。
【0016】
最近では、いくつかのCCT磁石が、曲線経路をたどり、磁石の中心(式[1]には(x,y)=(0,0)が存在する)は、半径R
curvedを有する(x,y)平面内の円を表し、ここでは、
【数4】
である。
【0017】
非特許文献1は、円形の断面の導体と、円形の導体を含むラザフォードケーブルを開示している。特許文献1も同様の組み合わせを開示している。
CCTコイルは、非特許文献2でも開示している。
特許文献2は高温超電導テープを開示している。
特許文献3は楕円形の断面を持つ同心円状の管状コイルを備えた磁石を開示している。
特許文献4は、軸線を中心に回転する繰り返しパターンを提供するために、らせん状に配置された導体を有する巻線配置を開示している。
【0018】
HTSテープ用のCCT磁石巻線:本発明
【0019】
本発明の好ましい一実施形態は、以下の部品および特徴を備える。
【0020】
1. 高温超伝導体(HTS)テープ(1)
2. 磁石形成器(2)
3. テープトレース(3)
4. 直線部分(4)
5. 曲線部分(5)
6. 閉じた曲率半径(6)
7. 巻き角度θ(7)
【0021】
以下の図は、本明細書に添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】HTSテープ(1)のスタック、(濃い色、左)、磁石形成器(2)の溝に続く四極子のCCT磁石(右)。ターンの半分が示されており、テープのスタックが磁石形成器とは別個に示されている。
【
図1B】「レーストラック」のCCTパスに続くテープのスタック(ハーフターン)とテープトレース(3)(黒い線)の透明な略図。
【
図2A】(x,y)平面内のHTSテープトレース(3)の幾何学的部位は、円(破線)である従来のタイプのCCT設計と比較した、「レーストラック」形状(実線)を形成する。この「レーストラック」は、多数の直線部分(4)および曲線部分(5)からなる。この実施例は、四極子磁石の場合であり、寸法は、説明するために誇張されている。双極子の「レーストラック」には、2つの直線部分、四極子、六極子などがある。
【
図2B】弧の中心が(0,0)の同じ点にある代替的な設計(多くのうちの1つ)。
【
図3A】
図3Aには(x,y)平面内の投影図が示されており、本発明は、(x,y)平面内のテープトレース(3)として円形形状の代わりに「レーストラック」の側面を使用する。HTSテープのスタックの半回転が表示される。(一般的な磁石は巻き数が多い)。
【
図3B】
図3Bは等角図法で示されており、本発明は、(x,y)平面内のテープトレース(3)として円形形状の代わりに「レーストラック」の側面を使用する。HTSテープスタックの半回転が表示される。(一般的な磁石は巻き数が多い)。
【
図3C】
図3Aと同様の透明なスケッチ。テープトレース(3)を見ることができる。これは、直線部分によって接続された曲線部分を有する「レーストラック」の形状を有する。
【
図4】本発明における「レーストラック」の直線部分(4)の真直度要件は、より容易に理解するための特定の実施例を伴う。四極子の「レーストラック」CCT設計は、xy平面の投影(実線)で示されている。これは、(x,y)面内のテープトレース(3)の投影である。直線部分は長さ20mmを有し、凸部分は直径20mmの円で形成されている。「トラック」の全幅は40mmであり、円周が点線で示されている。これにより、平均径45.46mm、平均半径R
mean=22.73mmとなる。曲線は、曲率直径が90.93mmである頂部(破線)の直線部分に現れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
前述の式[1]は、円筒形の断面の細い巻線などの柔軟な導体に対して完全に機能する。しかし、HTS導体には、前述したように、幅数ミリメートル(4~12mm)、厚さ数十マイクロメートル(50~100μm)のテープの形状因子が付属している。2方向の寸法差が大きいため、テープは、大きな方向性を示す。すなわち、その幅に平行な方向を中心にして非常に少ない労力で曲げることができるが、その厚さに平行な方向を中心にしては、(非常に高い剛性を示す)ため、曲げることができない。同じことが、テープのスタックにも当てはまる。剛性の高い平面内で弾性限界を超えてテープを強制的に曲げようとすると、テープが損傷し、場合によっては超電導性能を失う可能性がある。
【0024】
式[1]に記載されているCCTの式は、固体ではなく、線に適用される。直径が磁石の半径Rよりもずっと小さい丸い導体は、直線で非常によく近似できる。しかし、一般的にテープは不可能である。テープトレース(3)は、テープのスタックの一端又は中央の中心として定義される。この端部は、磁石の中心に最も近いもの(線(x,y)=(0,0)に沿って定義される(
図1Bの(3)))とみなされるが、端部が磁石の中心から最も遠いものである場合、またはテープの中央である場合、全く同じ独立変数が適用される。テープトレース(3)は、式[1]に従うものである。
【0025】
テープ、またはテープのスタックが、シリンダーの表面上の曲線経路を辿ろうとすると、座屈し、テープは、シリンダーの表面に対して垂直ではない。CCTの場合のように、連続的に曲げるには、テープのスタックを、
図1Aに示すように、正の曲げ半径(凹)から負の半径(凸)に変える必要がある。連続する2回転の間に、テープをねじれなければならない。しかし、曲線状の表面に追従しながらねじることは、テープの非屈曲軸線に沿った屈曲を必要とするため、一般的には不可能である。
【0026】
本発明は、
図2に示されているように、(x,y)面内のテープトレース(3)の幾何学的な場所(式[1]の場合は、従来のCCT磁石に対して円である)では「レーストラック」形状を使用する。直線部分(4)は、例えば円弧のような曲線部分(5)によって接合されている。これらの円の中心は、
図2Aのように、磁石の中心と異なっていてもよく、または
図2Bのように一致していてもよく、または他の任意の形状を有していてもよい。直線部分は、テープが凹曲がりと凸曲がりの間でねじれることを可能にし、これは、従来のCCT磁石のように、ただ1つの円形部分がある場合には不可能である。
【0027】
直線部分(4)の数は、磁石の基本的な多極子(双極子に対しては2つの直線部分、四極子に対しては4つ、六極子に対しては6つなど)の次数系列の2倍に等しい。直線部分は、次の曲げの準備のために、テープのスタックに対してねじれる機会を与える。これらの直線部分(4)は、ノーマル多極子ではsin(nBθ)=0、スキュー多極子ではcos(nAθ)=0となる領域をとりかこむように、設計のテープのねじれ点の周囲に配置されており、ここで、θは巻き角度、nAとnBAはスキュー多極子とノーマル多極子の次数(nA,nB=1,2,3,・・・)である。
【0028】
図3は、四極子の場合の本発明の「レーストラック」の設計を示しており、(x,y)平面上の凹部および等角図が描画されており、HTSテープのスタックの小さな部分(半回転)が描画されているが、ここで説明した原理は導体に沿ってどこにでも適用される。
【0029】
円は、正確に凸部を囲む平面に適合され、同時に、直線部分の前後の曲線部分(5)に接触し、その半径が注目される。これは、磁石の長さ方向に対して垂直な平面における直線部分(4)の凸部の囲まれた曲率半径(6)である。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.
任意の多極子配置を有する、任意の傾斜余弦θ(CCT)磁石のための、テープのような構造形態の導体の巻線を含むアレイであって、
当該アレイは、導体テープのスタックの内部若しくは外部、又は中間の一端の中央にあるテープトレースによって特徴付けられ、磁石の長さ方向に対して垂直な平面における導体のテープトレースの投影が、曲線部分によって接合された直線部分から構成されており、
前記直線部分は、これらの数、位置、長さ、および最大の凸状の特徴によって特徴付けられており、
前記直線部分の数が、磁石の基本的な多極子の次数の2倍であり、すなわち、双極子に対して2つの直線部分、四極子に対して4つの直線部分、六極子に対して6つの直線部分などであり、
直線部分が、通常の多極子の場合にsin(n
B
θ)=0の地点に位置し、およびスキュー多極子の場合にcos(n
A
θ)=0の地点に位置し、θは巻き角度であり、n
A
とn
B
はスキュー多極子および通常の多極子の次数(n
A
,n
B
=1,2,3,・・・)であり、
ここで、前記直線部分の長さは、導体テープの幅以上であるか、又は導体テープの幅と同等であり、
ここで、磁石の長さ方向に対して垂直な平面における前記直線部分の投影の曲率半径は、磁石の平均半径/(囲まれた曲率半径)の2倍より大きいか、又は負であり、
前記直線部分の軸線は、磁石の本体軸線に対して常に角度をなしており、
アレイの鉛直の断面は、双極子の場合に、古典的な陸上競技用のレーストラックに似ており、
アレイの鉛直の断面は、四極子の場合に、縁部における直角は、丸みを帯びた縁部および/または先細の縁部によって置き換えられている正方形の形状に似ており、
アレイの鉛直の断面は、六極子の場合に、丸みを帯びた縁部を有する六角形の形状に似ている、などであり、
導体の巻線の全体的な概念は、「レーストラック設計」と呼ぶことができる、
アレイ。
2.
上記1に記載の任意の多極子配置を有する、任意の傾斜余弦θ(CCT)磁石のための、テープのような構造形態の導体の巻線を含むアレイであって、
磁石を構成し、巻線アレイを含み、かつ組み込む、アレイ。
3.
上記1及び2に記載の任意の多極子配置を有する、任意の傾斜余弦θ(CCT)磁石のための、テープのような構造形態の導体の巻線を含むアレイであって、
双極子、四極子、六極子および他の多極子磁石、規則的または傾斜を含む、すべてのタイプの磁石を構成し、それらの任意の混合のために、直線状または曲線状磁石を構成する、アレイ。
4.
上記1から3に記載の任意の多極子配置を有する、任意の傾斜余弦θ(CCT)磁石のための、テープのような構造形態の導体の巻線を含むアレイであって、
装置が逆に動作される、すなわち、モータ、発電機などの場合のように、外部磁場から前記導体内に電流が生成される、アレイ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
双極子又は多極子の配置を有する改良した傾斜余弦θ(CCT)磁石であっ
て、
導電テープのスタック
を有する巻線を含む当該改良した傾斜余弦θ(CCT)磁石において、
磁石の長さ方向に対して垂直な平面における
導電テープのトレースの投影は、曲線部分によって結合された直線部分で構成されている、
改良した傾斜余弦θ(CCT)磁石。
【請求項2】
導電テープは高温超電導テープである、請求項1に記載の改良したCCT磁石。
【請求項3】
導電テープは中空形成器にその溝内で巻かれている、請求項2に記載の改良したCCT磁石。
【請求項4】
直線部分の数は双極子では2つの直線部分であり、四極子では4つの直線部分であり、六極子では6つの直線部分である、請求項1に記載の改良したCCT磁石。
【請求項5】
直線部分の数は、磁石の基本的な多極子の次数の二倍である、請求項1に記載の改良したCCT磁石。
【請求項6】
直線部分の長さは、導電テープの幅よりも大きいか、又は同等である、請求項1に記載の改良したCCT磁石。
【請求項7】
直線部分の軸線は磁石の長さ方向に対して角度をなしている、請求項1に記載の改良したCCT磁石。
【請求項8】
外部磁場中における請求項1の改良したCCT磁石の使用であって、外部磁場により導体テープに電流が発生する、改良したCCT磁石の使用。
【国際調査報告】