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特表2024-545258割り出し可能なインサートドリルのドリル本体およびそのようなドリル本体を備えるインサートドリル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】割り出し可能なインサートドリルのドリル本体およびそのようなドリル本体を備えるインサートドリル
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/06 20060101AFI20241128BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B23B51/06 E
B23B51/00 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536136
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2022077625
(87)【国際公開番号】W WO2023117168
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21216383.6
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591106875
【氏名又は名称】セコ ツールズ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リンドグレン, マティアス
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037AA02
3C037DD06
(57)【要約】
割り出し可能なインサートドリルのドリル本体(2)であって、・中間リブ(12a、12b)によってドリル本体の円周方向に互いに隔てられた少なくとも2つのチップフルート(10a、10b)であって、各々のチップフルートおよび各々のリブは、らせん状に湾曲した経路にて延びている少なくとも2つのチップフルート(10a、10b)と、・各々のチップフルートとドリル本体の前面との間の移行部に位置するインサート据え付け部と、・前記リブ(12a、12b)のうちのそれぞれのリブに配置され、それぞれのリブに沿って延びており、各々がらせん状に湾曲した経路にて延びていて、入口開口部(24a、24b)を備える上流端(21)および出口開口部(25a、25b)を備える下流端(22)を有している冷却剤ダクト(20a、20b)と、を備えるドリル本体(2)。
各々の冷却剤ダクトは、出口開口部における断面積が入口開口部における断面積よりも小さくなるように、冷却剤ダクトの軸方向に変化する断面積を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
割り出し可能なインサートドリルのドリル本体であって、前記ドリル本体(2)は、細長く、後端部(2a)および反対側の前端部(2b)を有しており、前記ドリル本体(2)の中心長手軸(4)が、前記ドリル本体の前記後端部(2a)と前記前端部(2b)との間に延在し、前記ドリル本体(2)は、
-前記ドリル本体(2)の前記後端部(2a)に位置し、工作機械に取り付けられるように構成されたシャンク部(5)と、
-前記ドリル本体(2)の前記前端部(2b)に位置するヘッド部(8)と、
-前記ヘッド部(8)から前記シャンク部(5)へと前記ドリル本体(2)の一部分に沿って互いに並んで延びている少なくとも第1のチップフルート(10a)および第2のチップフルート(10b)であって、前記チップフルート(10a、10b)は、前記ドリル本体に形成されて前記チップフルート(10a、10b)に並んで延びている中間リブ(12a、12b)によって、前記ドリル本体(2)の円周方向において互いに隔てられ、各々のチップフルート(10、10b)および各々のリブ(12a、12b)は、前記ドリル本体の関連の部分に沿ってらせん状に湾曲した経路にて延びている、少なくとも第1のチップフルート(10a)および第2のチップフルート(10b)と、
-第1の切削インサートを受け入れるように構成され、前記第1のチップフルート(10a)と前記ドリル本体(2)の前面(9)との間の移行部に配置された第1のインサート据え付け部(14a)と、
-第2の切削インサートを受け入れるように構成され、前記第2のチップフルート(10b)と前記ドリル本体(2)の前記前面(9)との間の移行部に配置された第2のインサート据え付け部(14b)と、
-前記リブ(12a、12b)のうちのそれぞれのリブ内に配置され、それぞれのリブに沿って延びている冷却剤ダクト(20a、20b)であって、各々の冷却剤ダクト(20a、20b)は、前記関連のリブ(12a、12b)の少なくとも一部分に沿ってらせん状に湾曲した経路にて延び、各々の冷却剤ダクト(20a、20b)は、前記ドリル本体(2)の前記後端部(2a)に面する入口開口部(24a、24b)を備える上流端(21)と、前記ヘッド部(8)に出口開口部(25a、25b)を備える下流端(22)とを有している、冷却剤ダクト(20a、20b)と
を備えたドリル本体において、
各々の冷却剤ダクト(20a、20b)が、前記出口開口部(25a、25b)における断面積が前記入口開口部(24a、24b)における断面積よりも小さくなるように、前記冷却剤ダクトの軸方向に変化する断面積を有することを特徴とする、
ドリル本体。
【請求項2】
各々の冷却剤ダクト(20a、20b)が、少なくともその延在の一部分に沿って、前記上流端(21)から前記下流端(22)への方向に見たときに、連続的に減少する断面積を有することを特徴とする、請求項1に記載のドリル本体。
【請求項3】
各々の冷却剤ダクト(20a、20b)が、前記上流端(21)から前記下流端(22)へと見たときに、連続的に減少する断面積を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のドリル本体。
【請求項4】
前記冷却剤ダクト(20a、20b)は、前記下流端(22)よりも前記上流端(21)において互いにより近くに位置することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のドリル本体。
【請求項5】
前記冷却剤ダクト(20a、20b)は、前記冷却剤ダクトの前記上流端(21)から前記冷却剤ダクトの前記下流端(22)への方向に見たときに広くなる1つの同じ仮想の円錐の周囲に沿ったそれぞれのらせん状に湾曲した経路にて延びていることを特徴とする、請求項4に記載のドリル本体。
【請求項6】
前記冷却剤ダクト(20a、20b)の前記入口開口部(24a、24b)は、前記ドリル本体(2)の前記長手軸(4)から同一または基本的に同一の半径方向距離に位置することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のドリル本体。
【請求項7】
各々の冷却剤ダクト(20a、20b)の前記出口開口部(25a、25b)は、前記ドリル本体(2)の前記前面(9)に配置されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のドリル本体。
【請求項8】
前記第1および第2のインサート据え付け部(14a、14b)は、前記ドリル本体の前記長手軸(4)から相互に異なる半径方向距離に位置し、前記冷却剤ダクト(20a、20b)の前記出口開口部(25a、25b)は、前記ドリル本体(2)の前記長手軸(4)から相互に異なる半径方向距離に位置することを特徴とする、請求項7に記載のドリル本体。
【請求項9】
中央冷却剤供給ダクト(26)が、前記ドリル本体(2)の後部において前記ドリル本体(2)内に設けられ、各々の冷却剤ダクト(20a、20b)は、前記中央冷却剤供給ダクト(26)へと開口することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のドリル本体。
【請求項10】
前記冷却剤ダクト(20a、20b)は、長さが等しく、前記入口開口部(24a、24b)における断面積が等しく、前記出口開口部(25a、25b)における断面積も等しく、一つの冷却剤ダクトの前記入口開口部(24a、24b)からの任意の軸方向距離における前記一つの冷却剤ダクトの断面積が、他の冷却剤ダクトまたは他の冷却剤ダクトのうちの各々の冷却剤ダクトの前記入口開口部(24a、24b)からの同じ軸方向距離における前記他の冷却剤ダクトの断面積と同じであるように、前記冷却剤ダクト(20a、20b)の断面積が前記異なる冷却剤ダクトの延在に沿って同じ様相で変化することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のドリル本体。
【請求項11】
前記冷却剤ダクト(20a、20b)のうちの少なくとも1つが、該冷却剤ダクトの延在の少なくとも一部分に沿って変化する断面形状を有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のドリル本体。
【請求項12】
各々の冷却剤ダクト(20a、20b)の内壁と前記ドリル本体の周囲表面との間の前記ドリル本体(2)の材料厚さが、前記冷却剤ダクトの全体にわたって少なくとも0.75mmであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のドリル本体。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のドリル本体(2)と、前記ドリル本体の前記インサート据え付け部(14a、14b)に取り付けられた切削インサート(15a、15b)とを備える、割り出し可能なインサートドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の冒頭部分に記載の割り出し可能なインサートドリルのドリル本体に関する。さらに、本発明は、そのようなドリル本体を備える割り出し可能なインサートドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
割り出し可能なインサートドリルは、ワークピースに孔を穿孔するために使用される穿孔工具であり、ドリル本体と、ドリル本体の前端部のヘッド部のそれぞれのインサート据え付け部に取り外し可能に取り付けられた1つ以上の割り出し可能な切削インサートとを備える。各々の個別の切削インサートは、いくつかの同一の刃先を備えることができ、それによって、各々の切削インサートを異なる作業位置に変えることが可能である。切削インサートの刃先が摩耗したとき、切削インサートを、そのインサート据え付け部において配置し直し、別の刃先を有効な切削位置に位置させる新たな作業位置に取り付けることができる。切削インサートの有効寿命を延ばすために、切削インサートとワークピースとの間の界面を、穿孔作業の最中に冷却剤の流れによって冷却および潤滑することができ、冷却剤は、ドリル本体内の1つ以上の冷却剤ダクトを通って切削インサートの領域に供給されてよい。さらに、切削インサートとワークピースとの間の界面への冷却剤の流れは、穿孔作業の最中に形成されたチップを切削インサートから離れるように移動させるのにも役立つ。
【0003】
米国特許第6 030 155号が、2つのらせん状に湾曲したチップフルートを有するドリル本体を備えた割り出し可能なインサートドリルを開示しており、2つのチップフルートは、ドリル本体に形成された中間リブによって互いに隔てられており、冷却剤ダクトが、各々のリブ内をらせん状に湾曲した経路にて延びている。
【0004】
発明の目的
本発明の目的は、上述の種類の割り出し可能なインサートドリル用のドリル本体であって、新規かつ好ましい設計を有するドリル本体を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、前記目的は、請求項1に定義される特徴を有するドリル本体によって達成される。
【0006】
本発明によるドリル本体は、細長く、後端部および反対側の前端部を有しており、ドリル本体の中心長手軸が、ドリル本体の後端部と前端部との間に延在し、ドリル本体は、
-ドリル本体の後端部に位置し、工作機械に取り付けられるように構成されたシャンク部と、
-ドリル本体の前端部に位置するヘッド部と、
-ヘッド部からシャンク部へとドリル本体の一部分に沿って互いに並んで延びている少なくとも第1のチップフルートおよび第2のチップフルートであって、チップフルートは、ドリル本体に形成されてチップフルートに並んで延びている中間リブによって、ドリル本体の円周方向において互いに隔てられ、各々のチップフルートおよび各々のリブは、ドリル本体の関連の部分に沿ってらせん状に湾曲した経路にて延びている、少なくとも第1のチップフルートおよび第2のチップフルートと、
-第1の切削インサートを受け入れるように構成され、第1のチップフルートとドリル本体の前面との間の移行部に配置された第1のインサート据え付け部と、
-第2の切削インサートを受け入れるように構成され、第2のチップフルートとドリル本体の前面との間の移行部に配置された第2のインサート据え付け部と、
-前記リブのうちのそれぞれのリブ内に配置され、それぞれのリブに沿って延びている冷却剤ダクトであって、各々の冷却剤ダクトは、関連のリブの少なくとも一部分に沿ってらせん状に湾曲した経路にて延び、各々の冷却剤ダクトは、ドリル本体の後端部に面する入口開口部を備える上流端と、ヘッド部に出口開口部を備える下流端とを有している、冷却剤ダクトと
を備える。
【0007】
各々の冷却剤ダクトは、出口開口部における断面積が入口開口部における断面積よりも小さくなるように、冷却剤ダクトの軸方向に変化する断面積を有する。各々の冷却剤ダクトの出口における断面積を入口における断面積よりも小さくすることによって、冷却剤の圧力を、冷却剤ダクトに沿ってより良好に維持することができ、その結果、冷却剤ダクトの出口における冷却剤の流れの特性が改善され、したがって冷却効果が改善される。
【0008】
ここで、冷却剤ダクトの断面積は、冷却剤ダクトの中心軸に垂直な断面において見たときの冷却剤ダクトの断面積を指す。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、各々の冷却剤ダクトは、その上流端から下流端への方向に見たときに、少なくともその延在の一部分に沿って、連続的に減少する断面積を有する。冷却剤ダクトの連続的に減少する断面積は、冷却剤ダクトの断面積の滑らかな変化を意味し、これは、冷却剤ダクト内に乱流の形成を引き起こす可能性がある断面積の急激な変化が回避されるがゆえに、冷却剤ダクトに沿った冷却剤の流れの特性に関して好ましい。とくに好ましくは、各々の冷却剤ダクトが、その上流端からその下流端へと見たときに、連続的に減少する断面積を有する。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、冷却剤ダクトは、それらの下流端よりもそれらの上流端において互いに近くに配置されている。冷却剤ダクトの入口開口部をドリル本体の長手軸に近付け、したがって互いにも近付けて配置することにより、すべての冷却剤ダクトを、ドリル本体の後部の中央に配置された1つの同じ冷却剤供給ダクトに開口させることができるようにすることが、有利となり得る。そのような場合、冷却剤は、最初に中央冷却剤供給ダクトに導入され、次いで中央冷却剤供給ダクトから各々の個別の冷却剤ダクトに分配される。好ましくは、ドリル本体のヘッド部において、冷却剤ダクトの出口開口部の位置は、各々の冷却剤ダクトの出口開口部が、関連のインサート据え付け部と本質的に同じドリル本体の長手軸からの半径方向距離に配置されるようなやり方で、インサート据え付け部の位置に合わせられる。これにより、冷却剤ダクトの出口開口部から排出された冷却剤は、ドリル本体が回転するときに、ワークピースと該当のインサート据え付け部に取り付けられた切削インサートとの間の界面に衝突する。これにより、冷却剤ダクトの出口開口部は、好ましくは冷却剤ダクトの下流端において冷却剤ダクト間にかなりの距離が存在するように、ドリル本体の長手軸の両側に、ドリル本体の長手軸から特定の距離に配置される。冷却剤ダクト間の距離をそれらの上流端よりもそれらの下流端において大きくすることを、例えば、冷却剤ダクトを、冷却剤ダクトの上流端から冷却剤ダクトの下流端への方向に見たときに広くなる1つの同じ仮想の円錐の周囲に沿ったそれぞれのらせん状に湾曲した経路にて延ばすことによって達成することができる。この場合、冷却剤ダクト間の距離は、冷却剤ダクトの上流端から下流端へと見たときに、冷却剤ダクトの軸方向に連続的に増加する。
【0011】
冷却剤ダクトの出口開口部は、好都合には、ドリル本体の前面に配置される。
【0012】
割り出し可能なインサートドリルは、多くの場合、最も半径方向外側の第1のインサート据え付け部に取り付けられた周辺部切削インサートと、前記第1のインサート据え付け部よりもドリル本体の長手軸の近くに配置された最も半径方向内側の第2のインサート据え付け部に取り付けられた中央切削インサートとを備える。これにより、周辺部切削インサートに関連する冷却剤ダクトの出口開口部は、中央切削インサートに関連する冷却剤ダクトの出口開口部よりも、ドリル本体の長手軸からより長い半径方向距離に配置される。しかしながら、冷却剤ダクトの入口開口部は、ドリル本体の長手軸から同じまたは本質的に同じ半径方向距離に配置されてよい。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、冷却剤ダクトは、長さが等しく、入口開口部における断面積が等しく、出口開口部における断面積も等しく、一つの冷却剤ダクトの入口開口部からの任意の軸方向距離におけるこの冷却剤ダクトの断面積が、他の冷却剤ダクトまたは他の冷却剤ダクトのうちの各々の冷却剤ダクトの入口開口部からの同じ軸方向距離におけるこの冷却剤ダクトの断面積と同じであるように、冷却剤ダクトの断面積が異なる冷却剤ダクトの延在に沿って同じ様相で変化する。これにより、冷却剤ダクトに沿った冷却剤の流れの特性は、すべての冷却剤ダクトにおいて同じである。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、冷却剤ダクトのうちの少なくとも1つが、その延在の少なくとも一部分に沿って変化する断面形状を有する。例えば円形の断面形状から長円形の断面形状への変化など、冷却剤ダクトの断面形状をその軸方向に変化させることによって、冷却剤ダクトを、ドリル本体内に存在しうる障害物に適合させて、冷却剤ダクトのらせん状に湾曲した経路を変更する必要なく冷却剤ダクトが障害物を通過できるようにすることができる。
【0015】
各々の冷却剤ダクトの内壁とドリル本体の周囲表面との間のドリル本体の材料厚さは、好ましくは冷却剤ダクトの全体にわたって少なくとも0.75mmであることにより、ドリル本体の充分な摩耗深さを保証する。
【0016】
本発明によるドリル本体のさらなる好都合な特徴が、従属請求項および以下の説明から明らかになるであろう。
【0017】
さらに、本発明は、上述の種類のドリル本体と、ドリル本体のインサート据え付け部に取り付けられた切削インサートとを備える割り出し可能なインサートドリルに関する。
【0018】
本発明による割り出し可能なインサートドリルのさらなる好都合な特徴が、以下の説明から明らかになるであろう。
【0019】
以下で、例として挙げられる本発明の実施形態を、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による割り出し可能なインサートドリルのさまざまな方向からの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による割り出し可能なインサートドリルのさまざまな方向からの斜視図である。
図3図1および図2の割り出し可能なインサートドリルの前部の斜視図であり、割り出し可能なインサートドリルのドリル本体の最も半径方向内側のインサート据え付け部から中央切削インサートが取り外された状態である。
図4図1および図2の割り出し可能なインサートドリルの前部の別の方向からの斜視図であり、ドリル本体の最も半径方向外側のインサート据え付け部から周辺部切削インサートが取り外された状態である。
図5図1および図2の割り出し可能なインサートドリルの側面図である。
図6A図5の線A-Aによる切断図である。
図6B図5の線B-Bによる切断図である。
図6C図5の線C-Cによる切断図である。
図6D図5の線D-Dによる切断図である。
図6E図5の線E-Eによる切断図である。
図6F図5の線F-Fによる切断図である。
図6G図5の線G-Gによる切断図である。
図7図5の方向VII-VIIによる割り出し可能なインサートドリルの後部の端面図である。
図8図5の方向VIII-VIIIによる割り出し可能なインサートドリルの前部の端面図である。
図9図1および図2の割り出し可能なインサートドリルのドリル本体に含まれる冷却剤ダクトおよび中央冷却剤供給ダクトの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態による割り出し可能なインサートドリル1が、図1図8に示される。割り出し可能なインサートドリル1は、細長いドリル本体2を備え、回転軸3を中心に回転するように構成される。ツール本体2は、後端部2aと、反対側の前端部2bとを有する。ドリル本体2の中心長手軸4は、ドリル本体の後端部2aと前端部2bとの間をドリル本体の中心を通って延び、この長手軸4は、割り出し可能なインサートドリル1の回転軸3と一致する。
【0022】
ドリル本体2の後端部2aのシャンク部5が、ドリル本体2を穿孔機または他の種類の工作機械の回転スピンドルなどへと直接、または中間ツールホルダを介して取り付けることができるようにする接続部材を形成する。図示の実施形態において、シャンク部5は、円錐形であり、ツールホルダまたはスピンドルの同様の形状の凹部に挿入されるように構成された非円形の断面形状を有する。円錐形状が、シャンク部とツールホルダ/スピンドルとの間の半径方向および軸方向の遊びのない接続を保証する一方で、非円形の断面形状は、シャンク部5のツールホルダ/スピンドルへの回転不可の固定を保証する。しかしながら、ドリル本体2のシャンク部5は、任意の他の適切な形状を有してもよい。
【0023】
カラー6が、シャンク部5の前方のドリル本体2に設けられ、シャンク部5は、カラー6の第1の側で、ドリル本体2の軸方向にカラー6から突出する。ドリル本体2は、カラー6の反対側の第2の側に配置され、ドリル本体2の軸方向に延びる細長いらせん部7をさらに備える。
【0024】
ドリル本体2は、らせん部7の前方のドリル本体の前端部2bに位置するヘッド部8を備える。第1のチップフルート10aおよび第2のチップフルート10bが、ドリル本体2に形成され、らせん部7の外周に沿って互いに並んで延びている。チップフルート10a、10bは、ヘッド部8からカラー6に向かって延びている。チップフルート10a、10bは、ドリル本体2に形成され、チップフルート10a、10bに並んでらせん部7に沿って延びている中間リブ12a、12bによって、ドリル本体2の円周方向において互いに隔てられている。各々のチップフルート10a、10bおよび各々のリブ12a、12bは、ドリル本体のらせん部7に沿ってらせん状に湾曲した経路にて延びている。
【0025】
図示の実施形態において、らせん部7は、カラー6の近くに位置する後端部を有し、らせん部7は、カラー6からドリル本体2の軸方向に突出する。この場合、チップフルート10a、10bおよびリブ12a、12bは、カラー6に近いらせん部7の後端部にて終わる。しかしながら、ドリル本体2は、代案として、カラー6とらせん部7との間に追加の細長い部分を備えてもよく、そのような追加の細長い部分において、チップフルート10a、10bおよびリブ12a、12bが、ドリル本体2の長手軸4と平行、または少なくとも本質的に平行に延び、したがって互いにも平行、または少なくとも本質的に平行に延びてよい。後者の場合、各々のチップフルート10、10bは、ドリル本体のらせん部7に沿ってらせん状に湾曲した経路で延びる第1の部分と、らせん部7とカラー6との間のドリル本体2の前記追加の細長い部分に沿って直線状の経路、または少なくとも本質的に直線状の経路で延びる隣接する第2の部分とを有し、各々のリブ12a、12bは、これに対応する様相で、ドリル本体のらせん部7に沿ってらせん状に湾曲した経路で延びる第1の部分と、らせん部7とカラー6との間のドリル本体2の追加の細長い部分に沿って直線状の経路、または少なくとも本質的に直線状の経路で延びる隣接する第2の部分とを有する。
【0026】
第1の切削インサート15aを受け入れるように構成された第1のインサート据え付け部14aが、第1のチップフルート10aとドリル本体2の前面9との間の移行部においてヘッド部8に配置され、第2の切削インサート15bを受け入れるように構成された第2のインサート据え付け部14bが、第2のチップフルート10bとドリル本体2の前面9との間の移行部においてヘッド部8に配置される。図示の実施形態において、第1のインサート据え付け部14aは、中央インサート据え付け部を構成し、第2のインサート据え付け部14bは、周辺部インサート据え付け部を構成し、第2のインサート据え付け部14bは、第1のインサート据え付け部14aよりもドリル本体2の長手軸4からより長い半径方向距離に位置する。各々のインサート据え付け部14a、14bは、インサート据え付け部に取り付けられた切削インサート15a、15bをドリル本体2の前面9を過ぎてドリル本体2の軸方向に突出させることができるように、ドリル本体2の前面9に向かって開いている。さらに、第2のインサート据え付け部14bは、第2のインサート据え付け部に取り付けられた切削インサート15bをドリル本体2の周囲を過ぎてドリル本体2の半径方向に突出させることができるように、ドリル本体2の周囲に向かって開いている。各々のチップフルート10a、10bは、意図されるドリル本体2の回転方向Rにおいて見たとき、関連のインサート据え付け部14a、14bの前方のドリル本体2内に配置される。より大きなサイズの割り出し可能なインサートドリルにおいて、ヘッド部8は、第1のチップフルート10aとドリル本体2の前面9との間の移行部において互いに隣接して配置された関連の切削インサート15aを有する2つ以上のインサート据え付け部14aと、第2のチップフルート10aとドリル本体2の前面9との間の移行部において互いに隣接して配置された関連の切削インサート15bを有する2つ以上のインサート据え付け部14bとを備えてもよい。より大きなサイズの割り出し可能なインサートドリルにおいて、例えば3つまたは4つのチップフルートなど、3つ以上のチップフルート10a、10bが、対応する数の中間リブと共にドリル本体2に存在してもよく、各々のチップフルートに、チップフルートとドリル本体の前面との間の移行部に形成される1つ以上のインサート据え付け部が組み合わせられてよい。
【0027】
図示の実施形態において、第1および第2の切削インサート15a、15bは、互いに幾何学的に同一である。図示の実施形態において、各々の切削インサート15a、15bは、関連のインサート据え付け部14a、14bに、切削インサート15a、15bの貫通孔17を通って延び、インサート据え付け部14a、14bの接線方向の支持面19のねじ孔18に係合するねじの形態の締結要素16によって、解放可能に固定される。
【0028】
冷却剤ダクト20a、20bが、上述のリブ12a、12bのそれぞれに配置され、それぞれに沿って延びている。したがって、図示の実施形態においては、第1の冷却剤ダクト20aが、リブのうちの第1のリブ12aに配置され、第2の冷却剤ダクト20bが、他方のリブ12bに配置されている。各々の冷却剤ダクト20a、20bは、ドリル本体2の後端部2aに面する入口開口部24a、24bを備える上流端21と、ヘッド部8に出口開口部25a、25bを備える下流端22とを有する。冷却剤ダクト20a、20bは、下流端22よりも上流端21において互いに近くに配置されている。
【0029】
図示の実施形態において、中央冷却剤供給ダクト26が、ドリル本体2の後部においてドリル本体2に設けられ、各々の冷却剤ダクト20a、20bは、冷却剤供給ダクト26へと開口する。したがって、この場合、各々の冷却剤ダクト20a、20bの入口開口部24a、24bは、冷却剤ダクトと冷却剤供給ダクト26との間の境界に設けられる。しかしながら、各々の冷却剤ダクト20a、20bは、代案として、ドリル本体2の全体にわたって延びてもよく、すなわちカラー6およびシャンク部5も通って延び、ドリル本体2の後面に入口開口部を有してもよい。冷却剤ダクト20a、20bの入口開口部24a、24bは、ドリル本体2の長手軸4から同じまたは本質的に同じ半径方向距離に配置されてよい。図示の実施形態において、第2の冷却剤ダクト20bの入口開口部24bは、図7に示されるように、第1の冷却剤ダクト20aの入口開口部24aよりも、ドリル本体2の長手軸4から幾分長い半径方向距離に配置される。
【0030】
冷却剤供給ダクト26は、ドリル本体2の後面27に開口し、シャンク部5およびカラー6を貫通している。
【0031】
冷却剤ダクト20a、20bおよび冷却剤供給ダクト26を明確に視覚化するために、各々の冷却剤ダクト20a、20bとドリル本体との間の境界、ならびに冷却剤供給ダクト26とドリル本体との間の境界が、図9に示されている。
【0032】
図示の実施形態において、各々の冷却剤ダクト20a、20bの出口開口部25a、25bは、ドリル本体2の前面9に配置される。しかしながら、各々の冷却剤ダクト20a、20bは、代案として、ドリル本体2の前面9に近い位置で関連のチップフルート10a、10b内に開口してもよい。冷却剤ダクト20a、20bの出口開口部25a、25bは、関連のインサート据え付け部14a、14bの半径方向位置に対応して、ドリル本体2の長手軸4から互いに異なる半径方向距離に配置される。したがって、最も半径方向内側の第1のインサート据え付け部14aに関連する第1の冷却剤ダクト20aの出口開口部25aは、最も半径方向外側の第2のインサート据え付け部14bに関連する第2の冷却剤ダクト20bの出口開口部25bよりも、ドリル本体2の長手軸4の近くに位置する。
【0033】
各々の冷却剤ダクト20a、20bは、関連のリブ12a、12bの少なくとも一部分に沿ってらせん状に湾曲した経路にて延在する。図示の実施形態において、各々の冷却剤ダクト20a、20bは、関連のリブ12a、12bの全体に沿ってらせん状に湾曲した経路にて延在する。しかしながら、リブ12a、12bの後端においてドリル本体2内に利用可能な空間が充分に存在する場合、各々の冷却剤ダクト20a、20bの後部は、互いに平行かつドリル本体2の長手軸4と平行に、直線に沿って延在するように配置されてもよい。出口開口部25a、25bに最も近い各々の冷却剤ダクト20a、20bの前部も、ドリル本体2の長手軸4と平行に、またはドリル本体2の長手軸4に対して斜めに、直線に沿って延びるように配置されてもよい。
【0034】
各々の冷却剤ダクト20a、20bは、その断面積、すなわち冷却剤ダクトの中心軸に垂直な断面において見たときの面積が、出口開口部25a、25bにおける断面積が入口開口部24a、24bにおける断面積よりも小さくなるように、冷却剤ダクトの軸方向に変化する。各々の冷却剤ダクト20a、20bは、好ましくは、その上流端21から下流端22への方向に見たとき、少なくともその延在の一部分に沿って、連続的に減少する断面積を有する。好ましくは、各々の冷却剤ダクト20a、20bは、その上流端21からその下流端22まで見たときに連続的に減少する断面積を有し、すなわち、入口開口部24a、24bから出口開口部25a、25bまで見たときに冷却剤ダクトの全体にわたって連続的に減少する断面積を有する。しかしながら、各々の冷却剤ダクト20a、20bの断面積は、冷却剤ダクトのいくつかの部分に沿って一定のままであって、冷却剤ダクトの他の部分に沿って連続的に減少してもよい。
【0035】
図示の実施形態において、第1および第2の冷却剤ダクト20a、20bは、冷却剤ダクトの上流端21から下流端22へと向かう方向に見たときに広がる1つの同じ仮想の円錐の外周に沿ったそれぞれのらせん状に湾曲した経路にて延びている。しかしながら、各々の冷却剤ダクト20a、20bは、任意の他の適切なやり方でらせん状に湾曲した経路にて延びてもよい。
【0036】
冷却剤ダクト20a、20bは、好ましくは、長さが等しく、入口開口部24a、24bにおける断面積が等しく、出口開口部25a、25bにおける断面積も等しい。さらに、第1および第2の冷却剤ダクト20a、20bの断面積は、好ましくは、第1の冷却剤ダクトの入口開口部24aからの任意の軸方向距離における第1の冷却剤ダクト20aの断面積が、第2の冷却剤ダクトの入口開口部24bからの同じ軸方向距離における第2の冷却剤ダクト20bの断面積と同じになるように、冷却剤ダクトの延在に沿って同じやり方で変化する。
【0037】
任意の冷却剤ダクト20a、20bの内壁とドリル本体2の周囲表面との間のドリル本体2の材料厚さは、冷却剤ダクトの全体に沿って少なくとも0.75mmであり、したがって、冷却剤ダクト20a、20bとドリル本体2の周囲表面との間の最小距離が0.75mmであることを意味する。
【0038】
図示の実施形態において、第2の冷却剤ダクト20bが、図6A図6Gに示されるように、その延在の一部分に沿って変化する断面形状を有する一方で、断面形状は、第1の冷却剤ダクト20aの全体に沿って本質的に円形である。図示の例において、第2の冷却剤ダクト20bは、その入口開口部24bおよび出口開口部25bにおいて円形の断面形状を有し、その中間部において長円形の断面形状を有する。また、第1の冷却剤ダクト20aも、その延在の一部分に沿って変化する断面形状を有してもよい。
【0039】
ドリル本体2は、3D印刷と、その後のドリル本体の外面の表面フライス加工およびドリル本体の種々の穴の穿孔とによって、金属材料で製造される。このため、形成すべきドリル本体2の外形に対応した形状を有する「グリーンボディ」が、3D印刷によって最初に製造される。3D印刷において、シャンク部5およびカラー6は、中央冷却剤供給ダクト26を備えずに、すなわち中実部品として形成される。しかしながら、リブ12a、12b内の冷却剤ダクト20a、20bは、グリーンボディの3D印刷で形成される。次いで、3D印刷によって製造されたグリーンボディの外面が、所望の表面仕上げを得るために機械加工され、インサート据え付け部14a、14bのねじ孔18および中央冷却剤供給ダクト26が、穿孔によってグリーンボディに形成されることによって、最終的なドリル本体2が製造される。冷却剤供給ダクト26のための穴は、冷却剤ダクトの入口開口部24a、24bがこの穴と冷却剤ダクトとの間の境界に形成されるように、各々の冷却剤ダクト20a、20bの下流端21と接触するようにグリーンボディに穿孔される。
【0040】
本発明は、当然ながら、決して上述の実施形態に限定されない。それどころか、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の基本的な概念から逸脱することなく、その修正について多くの可能性が当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7
図8
図9
【国際調査報告】