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特表2024-545261静電コアレッサデバイスのコアレッサ要素を電気誘起侵食および/または部分放電から保護する方法
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  • 特表-静電コアレッサデバイスのコアレッサ要素を電気誘起侵食および/または部分放電から保護する方法 図1a
  • 特表-静電コアレッサデバイスのコアレッサ要素を電気誘起侵食および/または部分放電から保護する方法 図1b
  • 特表-静電コアレッサデバイスのコアレッサ要素を電気誘起侵食および/または部分放電から保護する方法 図2
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  • 特表-静電コアレッサデバイスのコアレッサ要素を電気誘起侵食および/または部分放電から保護する方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】静電コアレッサデバイスのコアレッサ要素を電気誘起侵食および/または部分放電から保護する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/06 20060101AFI20241128BHJP
   G01R 31/12 20200101ALI20241128BHJP
   B01D 17/12 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B01D17/06 501B
G01R31/12 A
B01D17/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536156
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2022084985
(87)【国際公開番号】W WO2023110620
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21215521.2
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518458344
【氏名又は名称】ズルツァー・マネージメント・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フランソン, パー
(72)【発明者】
【氏名】フライバーグ, レイダー
(72)【発明者】
【氏名】モルド, スヴェイン
(72)【発明者】
【氏名】ビョークルン, エリク
【テーマコード(参考)】
2G015
【Fターム(参考)】
2G015AA26
2G015CA01
2G015CA05
(57)【要約】
静電コアレッサデバイスの動作中に電気誘起侵食および/または部分放電から静電コアレッサデバイスのコアレッサ要素を保護する方法であって、a)少なくとも2つのコアレッサ要素を含む容器を備える静電コアレッサデバイスを提供するステップであって、各コアレッサ要素が、電気絶縁体によって囲まれた電極(好ましくは導電性内部)電極を備える、ステップと、b)水/油混合物またはガス/水/油混合物を容器に送り込むステップと、c)少なくとも2つのコアレッサ要素の電極にAC電圧を供給し、それによって水/油混合物を油相および水相に分離するか、またはガス/水/油混合物を気相、油相および水相に分離するステップと、d)コアレッサ要素の少なくとも1つの電極の電気インピーダンスを時間分解決定し、電極の電気インピーダンスが所定の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したかどうかを判定し、変化した場合、電極の電気インピーダンスの変化が所定の範囲内になるまで、および/または電極の電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで、電極の電気インピーダンスの変化を判定する時点で電極に供給されたAC電圧の最大70%まで、電極に供給される電圧をクエンチまたは低減するステップとを含み、電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の時間期間の長さが最大1秒であり、所定の時間期間における電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の閾値が、少なくとも0.25%の電気インピーダンスの変化である、方法。
【選択図】図1a、図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電コアレッサデバイス(10)の動作中に電気誘起侵食および/または部分放電から前記静電コアレッサデバイス(10)のコアレッサ要素(14)を保護する方法であって、
a)少なくとも2つのコアレッサ要素(14)を含む容器(12)を備える静電コアレッサデバイス(10)を提供するステップであって、各コアレッサ要素(14)が、電気絶縁体によって囲まれた電極を備える、ステップと、
b)水/油混合物またはガス/水/油混合物を前記容器(12)に送り込むステップと、
c)前記少なくとも2つのコアレッサ要素(14)の前記電極にAC電圧を供給し、それによって前記水/油混合物を油相および水相に分離するか、または前記ガス/水/油混合物を気相、油相および水相に分離するステップと、
d)前記コアレッサ要素(14)の少なくとも1つの前記電極の電気インピーダンスを時間分解決定し、前記電極の前記電気インピーダンスが所定の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したかどうかを判定し、変化した場合、前記電極の前記電気インピーダンスの前記変化が所定の範囲内になるまで、および/または前記電極の前記電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで、前記電極の前記電気インピーダンスの前記変化を判定する時点で前記電極に供給された前記AC電圧の最大70%まで、前記電極に供給される前記電圧をクエンチまたは低減するステップと
を含み、
前記電気インピーダンスの前記変化に対するステップd)の前記所定の時間期間の長さが最大1秒であり、
前記所定の時間期間における前記電気インピーダンスの前記変化に対するステップd)の前記所定の閾値が、少なくとも0.25%の前記電気インピーダンスの変化である、方法。
【請求項2】
ステップd)の後、前記電圧が段階的に増加し、好ましくは、前記電圧が、前記時点で前記電極に供給される前記電圧の50%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下だけ段階ごとに増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気インピーダンスの前記変化に対するステップd)の前記所定の時間期間の前記長さが、最大100ミリ秒、好ましくは最大50ミリ秒、より好ましくは最大20ミリ秒、さらにより好ましくは最大10ミリ秒、さらにより好ましくは最大1ミリ秒、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒、最も好ましくは最大0.05ミリ秒である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップd)において、前記電気インピーダンスが連続する時間間隔で決定され、ある時間間隔で測定された前記電気インピーダンスの値が、次の時間間隔の前記電気インピーダンスの値が測定され、両方の値が比較されるまで少なくとも一時的に記憶され、それによって、前記電気インピーダンスが前記所定の時間期間内に前記所定の閾値を超えて変化したかどうかが決定され、前記電気インピーダンスが、ステップd)において、それぞれが最大1秒の長さを有する1つまたは複数の時間間隔、好ましくは最大100ミリ秒の長さを有する時間間隔、より好ましくは最大50ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大20ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大10ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大1ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒の長さを有する時間間隔、最も好ましくは最大0.05ミリ秒の長さを有する時間間隔で決定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップd)において、前記電気インピーダンスが重複する時間間隔で決定され、ある時間間隔で測定された前記電気インピーダンスの値が、次の時間間隔の前記電気インピーダンスの値が測定され、両方の値が比較されるまで少なくとも一時的に記憶され、それによって、前記電気インピーダンスが前記所定の時間期間内に前記所定の閾値を超えて変化したかどうかが決定され、前記電気インピーダンスが、ステップd)において、それぞれが最大10秒、好ましくは最大1秒の長さを有する1つまたは複数の時間間隔、より好ましくは最大100ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大50ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大20ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大10ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大1ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒の長さを有する時間間隔、最も好ましくは最大0.05ミリ秒の長さを有する時間間隔で決定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記電極の前記電気インピーダンスが、ステップd)において、前記電極の前記電圧および電流を測定し、そこから前記電気インピーダンスを計算することによって決定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の時間期間内の前記電気インピーダンスの前記変化に対するステップd)の前記所定の閾値が、少なくとも0.50%、好ましくは少なくとも0.75%、より好ましくは少なくとも1.00%、さらにより好ましくは少なくとも2.00%、さらにより好ましくは少なくとも5.00%、最もさらにより好ましくは少なくとも10.00%の前記電気インピーダンスの変化であり、前記電気インピーダンスの前記変化が、好ましくは、2つの連続するまたは重複する時間間隔で測定された前記電気インピーダンスの数値を比較することによって決定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップc)において、所定の周波数を有するAC電圧が前記電極に供給され、ステップd)において、前記決定された電気インピーダンスから、電気歪み、位相角の変化および/または無効電力の変化が計算され、前記電気歪みが5Wよりも大きい、前記位相角の前記変化が5°よりも大きい、および/または前記無効電力の前記変化が5VAよりも大きい場合、ステップd)において、前記電気インピーダンスが前記所定の時間期間内に前記所定の閾値を超えて変化したと結論付けられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記静電コアレッサデバイス(10)が、好ましくは前記容器(12)の外側に配置された、1つまたは複数の電源(16)および1つまたは複数の周波数変換器(18)をさらに備え、前記コアレッサ要素(14)の各々が周波数変換器(18)に接続され、各周波数変換器(18)が電源(16)に接続され、前記コアレッサ要素(14)の各々の各電極の電圧が個別に時間分解制御される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)において、各コアレッサ要素(14)が導電性内部電極および変圧器を備える、静電コアレッサデバイス(10)が提供され、前記導電性内部電極および前記変圧器が、電気絶縁体によって完全にまたは部分的に囲まれ、前記変圧器が、前記周波数変換器(18)からAC電圧を受け取り、前記変圧器が、前記コアレッサ要素(14)の前記電極にAC電圧を供給する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)において、すべてのコアレッサ要素(14)が前記水/油混合物またはガス/水/油混合物に浸漬されるように、前記水/油混合物またはガス/水/油混合物が前記容器(12)に送り込まれる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップd)において、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくはすべてのコアレッサ要素(14)の前記電気インピーダンスが決定される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
静電コアレッサデバイス(10)であって、
i)少なくとも2つのコアレッサ要素(14)を含む容器(12)であって、各コアレッサ要素(14)が、電気絶縁体によって囲まれた電極を含む、容器と、
ii)前記少なくとも2つのコアレッサ要素(14)の前記電極にAC電圧を供給するAC電源(16)と、
iii)前記静電コアレッサデバイス(10)の動作中に、前記コアレッサ要素(14)の少なくとも1つの前記電極の前記電気インピーダンスを時間分解決定し、前記電極の前記電気インピーダンスが所定の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したかどうかを判定し、変化した場合、前記電極の前記電気インピーダンスの前記変化が所定の範囲内になるまで、および/または前記電極の前記電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで、前記電極の前記電気インピーダンスの前記変化を判定する時点で前記電極に供給された前記AC電圧の最大70%まで、前記電極に供給される前記電圧をクエンチまたは低減するように具現化されたコントローラと
を備え、
前記コントローラが、前記電気インピーダンスの前記変化に対する(iii)の前記所定の時間期間の長さが最大1秒であるように具体化され、
前記所定の時間期間における前記電気インピーダンスの前記変化に対する前記所定の閾値が、少なくとも0.25%の前記電気インピーダンスの変化である、静電コアレッサデバイス(10)。
【請求項14】
前記コントローラが、前記電気インピーダンスがリアルタイムで決定されるように、前記電気インピーダンスが連続するまたは重複する時間間隔で決定されるように具現化され、電気インピーダンス値の前記決定の終了と、前記コアレッサ要素(14)がこの電気インピーダンス値を有した実際の時間との間の時間差が、最大1秒であり、より好ましくは最大100ミリ秒、さらにより好ましくは最大50ミリ秒、さらにより好ましくは最大20ミリ秒、さらにより好ましくは最大10ミリ秒、さらにより好ましくは最大1ミリ秒、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒、最も好ましくは最大0.05ミリ秒の長さを有する時間間隔内であり、その結果、時間間隔内に測定された前記電気インピーダンスの値が、次の時間間隔の前記電気インピーダンスの値が測定されるまで少なくとも一時的に記憶されて、両方の値が互いに比較され、それによって、前記電気インピーダンスが前記所定の時間期間内に前記所定の閾値を超えて変化したかどうかが判定される、請求項13に記載の静電コアレッサデバイス(10)。
【請求項15】
前記電極の前記電圧および電流を測定し、そこから前記電気インピーダンスを計算することによって前記電極の前記電気インピーダンスが決定されるように、前記コントローラが具現化される、請求項13または14に記載の静電コアレッサデバイス(10)。
【請求項16】
前記コントローラは、電気歪み、位相角の変化、無効電力の変化、およびインピーダンス位相角の変化の少なくとも1つが計算されるように具現化される、請求項13から15のいずれか一項に記載の静電コアレッサデバイス(10)。
【請求項17】
前記静電コアレッサデバイス(10)が、前記容器(12)の外側に配置された1つまたは複数の電源(16)および1つまたは複数の周波数変換器(18)をさらに備え、前記コアレッサ要素(14)の各々が周波数変換器(18)に接続され、各周波数変換器(18)が電源(16)に接続され、その結果、前記コアレッサ要素(14)の各々の各電極の前記電圧が前記コントローラによって個別に時間分解制御され、各コアレッサ要素(14)が導電性内部電極および変圧器を備え、前記導電性内部電極および前記変圧器が電気絶縁体によって完全にまたは部分的に囲まれ、前記変圧器が前記周波数変換器(18)に電気的に接続され、前記変圧器が前記コアレッサ要素(14)の前記電極に電気的に接続される、請求項13から16のいずれか一項に記載の静電コアレッサデバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電コアレッサデバイスの動作中に電気誘起侵食および/または部分放電から静電コアレッサデバイスのコアレッサ要素を保護する方法、およびこの方法を行うのに適した静電コアレッサデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
水/油混合物またはガス/水/油混合物を分離する必要性は、石油およびガス製造施設、石油精製所、化学プラント、ガスプラントおよび供給/分配設備などの複数の技術分野に存在する。例えば、粗油状物堆積物は水と混合されることが多く、および/または水を介してアクセスされなければならないので、回収された原料は、実際には、多少のガスをさらに含有し得る連続した粗油状物相中の小さな水滴のエマルジョンである。油収率を最大化するために、および粗油状物が製品品質仕様を満たすことを確実にするために、水性液滴は、油相から分離されなければならない。原理的には、この分離は、油相と水相とが両方の相の異なる密度に基づいて重力によって分離することを可能にする沈降槽内で達成され得る。しかしながら、この分離技術は非常に遅く、特に油相中に分散された水滴が微細かつ小さい場合には効果的な分離をもたらさない。したがって、相分離は、典型的には、エマルジョンの分散液滴相の合体、すなわち、個々の分散液滴の併合から生じる分散液滴のサイズの増大を促進し、したがって、重力による相分離を容易にするコアレッサによって達成される。
【0003】
そのようなコアレッサの1つの部類は、機械的コアレッサであり、これは、エマルジョン流に対する物理的障害物を使用することによって、エマルジョンの分散液滴相の合体をもたらす。例えば、水/油混合物が水平面の周りを案内されるように、水平面に対して傾斜したプレートがコアレッサ内に設けられ、連続した油相よりも密度の高い分散水相がプレート上で合体し、次いでプレートの勾配を下って出口に向かって滴下する。
【0004】
コアレッサの別の有効な分類は、エマルジョン中に高電圧電場を生成する静電コアレッサである。水、特に塩水は油よりも導電性が高いため、連続した油相中に分散された水滴は互いに引き合う双極子を形成し、水滴の合体をもたらし、したがって重力による相分離を加速する。電場は、静電コアレッサの容器内に設けられた複数の高電圧電極によって生成され、電極は静電コアレッサの動作中にエマルジョンに浸漬される。特に、ガス、および/または油の量と比較して多量の水を含有する、水/油混合物を分離する場合、高電圧電極のいずれかを電気的に絶縁することが必要であり、これは、典型的には、電気絶縁性有機化合物(例えば、フッ素化ポリマー)または無機化合物と有機化合物との複合材料(例えば、シリカが充填されたエポキシ複合材料)などの電気絶縁材料で各電極を包むことによって達成される。包まれた電極は、コアレッサ要素とも呼ばれる。このような電気絶縁体がない場合、水/油混合物中の水連続エマルジョンの局所形成は、特に、水/油混合物の転相、すなわち水中油型エマルジョンへの転相をもたらす水の量までの、30重量%の水などの多量の水を含む水/油混合物を分離する場合に、隣接するコアレッサ要素間の短絡を引き起こす。
【0005】
しかしながら、静電コアレッサデバイスの動作中、電気絶縁材料は、しばしば絶縁材料表面上またはその近くの部分放電によって引き起こされる電気誘起侵食を受ける。特にガスの存在下では、高電圧電極がガスを容易にイオン化することができ、結果として部分放電を引き起こすため、部分放電が発生する。このような部分放電は、多量のエネルギーを含み、コアレッサ要素を励磁する補助機器をシャットダウンさせるか、または、例えば絶縁材料の絶縁完全性を破壊することによってコアレッサ要素に損傷を与える。さらに、掘削流体および他の非通常製造流体などの少量の固体を水/油混合物またはガス/水/油混合物にそれぞれ含有することは、静電コアレッサデバイスの動作中に、絶縁材料表面上またはその近くに部分放電ももたらし得る、高導電性材料を含有する小さな塊の蓄積をもたらす可能性がある。ここでも、このような部分放電は、近傍領域の絶縁材料を侵食する可能性があり、フッ素化ポリマーなどのいくつかの一般的に使用される絶縁材料のように材料が柔らかい場合、侵食は数分以内に重大な絶縁不良をもたらす可能性がある。シリカが充填されたエポキシ複合材料などの他の絶縁材料は、そのような電気的侵食に長期間耐えることができるが、それでも、絶縁材料の期待耐用寿命の大幅な低減をもたらす。
【0006】
この観点から、本発明の根底にある目的は、静電コアレッサデバイスの効率を低減することなく、コアレッサ要素の耐用寿命、特にその絶縁体を増加させ、それによって、その後にコアレッサ要素を新しいコアレッサ要素と交換する必要がある時間間隔の長さを延長するように、静電コアレッサデバイスの動作中に電気誘起侵食および/または部分放電から静電コアレッサデバイスのコアレッサ要素を保護する方法を提供することである。
【0007】
本発明によれば、この目的は、静電コアレッサデバイスの動作中に電気誘起侵食および/または部分放電から静電コアレッサデバイスのコアレッサ要素を保護する方法であって、
a)少なくとも2つのコアレッサ要素を含む容器を備える静電コアレッサデバイスを提供するステップであって、各コアレッサ要素が、電気絶縁体によって囲まれた電極(導電性内部)電極を備える、ステップと、
b)水/油混合物またはガス/水/油混合物を容器に送り込むステップと、
c)少なくとも2つのコアレッサ要素の電極にAC電圧を供給し、それによって水/油混合物を油相および水相に分離するか、またはガス/水/油混合物を気相、油相および水相に分離するステップと、
d)コアレッサ要素の少なくとも1つの電極の電気インピーダンスを時間分解決定し、電極の電気インピーダンスが所定の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したかどうかを判定し、変化した場合、電極の電気インピーダンスの変化が所定の範囲内になるまで、および/または電極の電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで、電極の電気インピーダンスの変化を判定する時点で電極に供給されたAC電圧の最大70%まで、電極に供給される電圧をクエンチまたは低減するステップと
を含み、
電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の時間期間の長さが最大1秒であり、所定の時間期間における電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の閾値が、少なくとも0.25%の電気インピーダンスの変化である、方法を提供することによって満足される。
【0008】
この解決策は、コアレッサ要素の電極の電気インピーダンスの時間分解決定および電極のいずれかの電気インピーダンスの急激な変化の時間分解決定が、同等の短い時間間隔で起こった、すなわち、電気インピーダンスが所定の短い時間期間内に所定の閾値を超えて変化したかどうかを判定することによって、コアレッサ要素のいずれかにおける部分放電を確実に検出することを可能にし、その結果、適切な応答、すなわち、電極の電気インピーダンスの変化が所定の範囲内になるまで、および/または電極の電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで、電極の電気インピーダンスの変化を判定する時点で電極に供給されたAC電圧の最大70%まで、電極に供給された電圧をクエンチまたは低減することによって、部分放電による関連するコアレッサ要素の損傷を確実に回避することができるという意想外の知見に基づく。特に、同等の短い時間間隔で発生する電気インピーダンスの急激な変化のみを考慮した場合、それぞれの電極の周りの特定の条件に基づく各コアレッサ要素の各電極の最適電圧の最適制御は悪影響を受けない。これは、部分放電などの場合、関連するコアレッサ要素のみがそれぞれスイッチオフまたはシャットオフされ、部分放電などが終了するまでに非常に短い時間期間、すなわち最小時間間隔のみが必要とされるという事実に起因する。自己学習制御ルーチンを使用して、部分放電を許容可能なエネルギーレベル未満に保ちながら平均出力電圧を最大化するために、電圧レベルおよびタイミングを精緻化することができる。したがって、この方法は、保護および性能の個々の最適化を確実にし、高いシステム性能およびより長い耐用寿命をもたらす。全体として、本発明による方法は、静電コアレッサデバイスの効率を低減することなく、コアレッサ要素の耐用寿命、特にその電気絶縁体を増加させ、それによって、その後にコアレッサ要素を新しいコアレッサ要素と交換する必要がある時間間隔の長さを延長するように、静電コアレッサデバイスの動作中に電気誘起侵食および/または部分放電から静電コアレッサデバイスのコアレッサ要素を保護する。
【0009】
本発明によれば、ステップd)におけるコアレッサ要素の少なくとも1つの電極の電気インピーダンスの時間分解決定が、電極の電気インピーダンスが所定の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したという結果をもたらす場合、電極に供給される電圧は、電極の電気インピーダンスの変化が所定の範囲内になるまで、および/または電極の電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで、電極の電気インピーダンスの変化を判定する時点で電極に供給されたAC電圧の最大70%まで、それぞれクエンチまたは低減される。所定の時間間隔内の電極の電気インピーダンスの変化が所定の閾値を超えると判定した場合、電極に供給される電圧が、電極の電気インピーダンスの変化が所定の範囲内になるまで、および/または電極の電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで、電極の電気インピーダンスの変化を判定する時点で電極に供給されたAC電圧の最大50%、より好ましくは最大30%、さらにより好ましくは最大20%、最も好ましくは最大10%に低減される場合、良好な結果が特に達成される。いずれの場合でも、電極に供給される電圧が、ステップd)において、最大7kV、より好ましくは最大5kV、さらにより好ましくは最大1kV、最も好ましくは最大100Vに低減されることが好ましい。
【0010】
部分放電後の電極への電圧のクエンチまたは低減後に、関連する電極への電圧が、部分放電を維持または復活させるリスクを伴って、過度に急速に増加することを確実に回避するために、本発明の着想のさらなる発展において、ステップd)の後に、部分放電後の電極への電圧のクエンチまたは低減後に、電極の電気インピーダンスの変化が所定の範囲内になるまで、および/または電極の電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで、電圧を段階的に増加させ、それによって、電気インピーダンスおよび/または電気インピーダンスの変化が所定の範囲内になることを保証することが提案される。好ましくは、電圧は、この時点でそれぞれの電極に供給される電圧の70%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下だけ段階ごとに増加する。各段階は、好ましくは最大10分間、より好ましくは最大1分間、さらにより好ましくは最大10秒間、さらにより好ましくは最大1秒間、さらにより好ましくは最大500ミリ秒間、さらにより好ましくは最大100ミリ秒間、さらにより好ましくは最大50ミリ秒間続く。
【0011】
本発明の特定の好ましい実施形態によれば、ステップd)において、電極に供給される電圧は、電極の電気インピーダンスの変化が所定の範囲内になるまで、電極の電気インピーダンスの変化を判定する時点で電極に供給されたAC電圧の最大70%までクエンチまたは低減され、電気インピーダンスの変化の所定の範囲は、電極に供給される電圧が電極に供給されるAC電圧の最大70%までそれぞれクエンチまたは低減される直前に測定された電気インピーダンスの10~1,000%、より好ましくは100~1,000%、さらにより好ましくは200~1,000%である。
【0012】
これに加えて、またはこれに代えて、ステップd)において、電極に供給される電圧は、電極の電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで、電極の電気インピーダンスの変化を判定する時点で電極に供給されたAC電圧の最大70%までクエンチまたは低減され、電気インピーダンスの所定の範囲は、30~1,500Ω、より好ましくは100~1,500Ω、さらにより好ましくは200~1,500Ωである。
【0013】
コアレッサ要素のいずれかの電極の電気インピーダンスの変化、好ましくは急激な変化を確実に検出することを可能にするために、電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の時間期間の長さは最大1秒である。好ましくは、電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の時間期間の長さは、最大100ミリ秒、より好ましくは最大50ミリ秒、さらにより好ましくは最大20ミリ秒、さらにより好ましくは最大10ミリ秒、さらにより好ましくは最大1ミリ秒、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒、最も好ましくは最大0.05ミリ秒である。
【0014】
本発明は、所定の時間期間内の電気インピーダンスの変化の判定に関して特に限定されない。例えば、電気インピーダンスは、連続する時点で測定されてもよく、ある時点で測定された電気インピーダンスの値は、次の時点などの後の時点の電気インピーダンスの値が測定され、両方の値が比較されるまで少なくとも一時的に記憶され、それによって、電気インピーダンスが、両方の時点の間の時間差である最後の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したかどうかが判定される。ここでも、この時間期間の長さは、本発明に従って、最大1秒である。
【0015】
特定の時点で電気インピーダンスを測定する代わりに、電気インピーダンスは、ステップd)で、連続する時間間隔で決定されてもよく、ある時間間隔で測定された電気インピーダンスの値は、次の時間間隔などの後の時間間隔の電気インピーダンスの値が測定され、両方の値が比較されるまで少なくとも一時的に記憶され、それによって、電気インピーダンスが、第1の時間間隔の中間点と後続の時間間隔の中間点との間の時間差である最後の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したかどうかが判定される。ここでも、この時間期間の長さは、本発明に従って、最大1秒である。したがって、この実施形態では、電気インピーダンスは、ステップd)で、連続する時間間隔で決定され、その各々は、最大1秒、好ましくは最大100ミリ秒、より好ましくは最大50ミリ秒、さらにより好ましくは最大20ミリ秒、さらにより好ましくは最大10ミリ秒、さらにより好ましくは最大1ミリ秒、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒、最も好ましくは最大0.05ミリ秒の長さを有する。さらに好ましくは、少なくとも10個の連続する時間間隔、より好ましくは少なくとも25個の連続する時間間隔、さらにより好ましくは少なくとも50個の連続する時間間隔、さらにより好ましくは少なくとも100個の連続する時間間隔、最も好ましくは少なくとも250個の連続する時間間隔に対して各電極について決定された電気インピーダンス値が記憶される。これにより、良好な時間分解能を得ることと、電気インピーダンスの急激な変化、すなわちコアレッサ要素における部分放電の迅速かつ確実な検出を保証することとが可能になる。
【0016】
本発明の代替実施形態によれば、コアレッサ要素のいずれかの電極の電気インピーダンスの変化、好ましくは急激な変化を確実に検出することを可能にするために、電気インピーダンスは、ステップd)で、重複する時間間隔で決定されてもよく、ある時間間隔で測定された電気インピーダンスの値は、次の時間間隔などの後の時間間隔の電気インピーダンスの値が測定され、両方の値が比較されるまで少なくとも一時的に記憶され、それによって、電気インピーダンスが、ある時間間隔の中間点と次の重複する時間間隔の中間点との間の時間差である最後の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したかどうかが判定される。ここでも、この時間期間の長さは、本発明に従って、最大1秒である。しかしながら、ある時間間隔の中間点と次の重複する時間間隔の中間点との間の時間差は、重複する時間間隔の時間間隔長さよりも短いため、この実施形態では、図1a~図1bを参照して以下でさらに説明するように、重複する時間間隔の各々の長さは1秒よりも長くてもよい。好ましくは、電気インピーダンスは、ステップd)で、重複する時間間隔で決定され、その各々は、最大10秒、好ましくは最大1秒、より好ましくは最大100ミリ秒、さらにより好ましくは最大50ミリ秒、さらにより好ましくは最大20ミリ秒、さらにより好ましくは最大10ミリ秒、さらにより好ましくは最大1ミリ秒、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒、最も好ましくは最大0.05ミリ秒の長さを有する。さらに、少なくとも10個の重複する時間間隔、より好ましくは少なくとも25個の重複する時間間隔、さらにより好ましくは少なくとも50個の重複する時間間隔、さらにより好ましくは少なくとも100個の重複する時間間隔、最も好ましくは少なくとも250個の重複する時間間隔に対して各電極について決定された電気インピーダンス値が記憶されることが好ましい。あるいは、電流および電圧の固定数の時間記憶値を使用して、ある時点でのインピーダンスを決定することができ、これは、新しい値を追加し、例えば74kHzのレートで最も古い値を削除するスライド式バッファ間隔である。これは、74kHzのレートでのインピーダンスの測定が達成されることを意味する。例えば、0.05ミリ秒ごとに計算された値が使用される。
【0017】
したがって、ステップd)で電気インピーダンスの変化が判定され、所定の閾値と比較されるステップd)の所定の時間期間の長さは、好ましくは最大1秒、より好ましくは最大100ミリ秒、さらにより好ましくは最大50ミリ秒、さらにより好ましくは最大20ミリ秒、さらにより好ましくは最大10ミリ秒、さらにより好ましくは最大1ミリ秒、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒、最も好ましくは最大0.05ミリ秒である。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、電気インピーダンスは、ステップd)で、連続するまたは重複する時間間隔で決定され、時間間隔の長さは、この時点でそれぞれの電極に供給される電圧の周波数に対して予め決定されることが提案される。好ましくは、時間間隔の長さは、少なくとも、時間間隔の開始時点でそれぞれの電極に供給されるAC電圧の1サイクルの時間期間である。したがって、それぞれの電極に供給される1kHzのAC電圧の場合、時間間隔は、好ましくは、少なくとも1ミリ秒の長さを有する。より好ましくは、時間間隔の長さは、時間間隔の開始時点でそれぞれの電極に供給されるAC電圧の、好ましくは少なくとも3サイクル、より好ましくは少なくとも5サイクル、さらにより好ましくは少なくとも10サイクル、さらにより好ましくは少なくとも20サイクル、さらにより好ましくは少なくとも40サイクル、最も好ましくは少なくとも約67サイクル、例えば100サイクルに及ぶ。
【0019】
さらに、ステップd)において、すべてのコアレッサ要素の少なくとも1つおよび好ましい1つの電極の電気インピーダンスをリアルタイムで決定することが好ましい。好ましくは、電気インピーダンス値の決定の終了と、それぞれのコアレッサ要素の電極がこの電気インピーダンス値を有した実際の時間との間の時間差は、最大1秒、より好ましくは最大100ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大50ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大20ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大10ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大1ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒の長さを有する時間間隔、最も好ましくは最大0.05ミリ秒の長さを有する時間間隔である。
【0020】
電気インピーダンスは、ステップd)において、電気インピーダンスを直接測定することによって、計算することによって、または間接的に決定することによって決定することができる。例えば、電極の電気インピーダンスが、ステップd)で、電極の電圧および電流を同時に測定し、測定されたボルト単位の電圧を測定されたアンペア単位の電流で割ることにより、Ω単位の電気インピーダンスを計算することによって決定される場合、良好な結果が得られる。測定された電気インピーダンスが低いほど、電気抵抗は低くなる。
【0021】
本発明によれば、所定の時間期間内の電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の閾値は、少なくとも0.25%の電気インピーダンスの変化である。好ましくは、所定の時間期間内の電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の閾値は、少なくとも0.50%、より好ましくは少なくとも0.75%、さらにより好ましくは少なくとも1.00%、さらにより好ましくは少なくとも2.00%、さらにより好ましくは少なくとも5.00%、最もさらにより好ましくは少なくとも10.00%の電気インピーダンスの変化である。ここでも、所定の時間期間の長さは、最大1秒、好ましくは最大100ミリ秒、より好ましくは最大50ミリ秒、さらにより好ましくは最大20ミリ秒、さらにより好ましくは最大10ミリ秒、さらにより好ましくは最大1ミリ秒、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒、最も好ましくは最大0.05ミリ秒である。
【0022】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、所定の時間期間内の電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の閾値は、少なくとも0.25%、より好ましくは少なくとも0.50%、さらにより好ましくは少なくとも0.75%、さらにより好ましくは少なくとも1.00%、さらにより好ましくは少なくとも2.00%、さらにより好ましくは少なくとも5.00%、最もさらにより好ましくは少なくとも10.00%であり、所定の時間期間の長さは、最大50ミリ秒である。さらにより好ましくは、所定の時間期間内の電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の閾値は、少なくとも0.25%、より好ましくは少なくとも0.50%、さらにより好ましくは少なくとも0.75%、さらにより好ましくは少なくとも1.00%、さらにより好ましくは少なくとも2.00%、さらにより好ましくは少なくとも5.00%、最もさらにより好ましくは少なくとも10.00%であり、所定の時間期間の長さは、最大20ミリ秒である。さらにより好ましくは、所定の時間期間内の電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の閾値は、少なくとも0.25%、より好ましくは少なくとも0.50%、さらにより好ましくは少なくとも0.75%、さらにより好ましくは少なくとも1.00%、さらにより好ましくは少なくとも2.00%、さらにより好ましくは少なくとも5.00%、最もさらにより好ましくは少なくとも10.00%であり、所定の時間期間の長さは、最大10ミリ秒である。最も好ましくは、所定の時間期間内の電気インピーダンスの変化に対するステップd)の所定の閾値は、少なくとも0.25%、より好ましくは少なくとも0.50%、さらにより好ましくは少なくとも0.75%、さらにより好ましくは少なくとも1.00%、さらにより好ましくは少なくとも2.00%、さらにより好ましくは少なくとも5.00%、最もさらにより好ましくは少なくとも10.00%であり、所定の時間期間の長さは、最大1ミリ秒である。
【0023】
あるいは、電気インピーダンスの変化は、ステップd)で間接的に決定されてもよい。例えば、ステップc)において、適応周波数を有するAC電圧が電極に供給され、ステップd)において、電気インピーダンスが決定され、決定された電気インピーダンスから、電気歪み、位相角の変化および/または無効電力の変化が計算され、電気歪みが5Wより大きい、位相角の変化が5°より大きい(もしくは10°より大きいもしくは20°より大きい)、および/または無効電力の変化が5VAより大きい場合、ステップd)において、電気インピーダンスが所定の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したと結論付けられる。部分放電は、等価回路に非線形挙動をもたらし、電流信号に高調波および/または非対称性を誘起する電圧依存抵抗として数学的に表すことができる。したがって、部分放電におけるエネルギーは、高調波におけるエネルギーとして測定することができる。信号のこのような高調波は歪みとして知られており、歪みはしばしばシステム電気回路の非線形挙動によって引き起こされる。したがって、部分放電は、変圧器電極インピーダンスの急速な変動および歪み電力の突然のバーストの存在と見なされる。
【0024】
本発明の代替実施形態によれば、ステップc)において、適応周波数を有するAC電圧が電極に供給され、ステップd)において、インピーダンス位相角が測定され、コアレッサ要素のインピーダンス位相角の変化が5°よりも大きい場合、ステップd)において、電気インピーダンスが所定の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したと結論付けられる。
【0025】
導電性内部電極は、金属板であってもよい。
【0026】
本発明の別の代替実施形態によれば、ステップa)において、各コアレッサ要素が導電性内部電極および変圧器を備える静電コアレッサデバイスが提供され、導電性内部電極および変圧器は、電気絶縁体によって完全にまたは部分的に囲まれ、適応周波数を有するAC電圧が、変圧器の各々に供給され、そこから、ステップc)において、AC電圧がコアレッサ要素の電極に供給され、各変圧器に供給されるAC電圧は、組み合わされた変圧器-電極の共振周波数の90~110%の周波数を有し、ステップd)において、インピーダンス位相角が測定され、コアレッサ要素のインピーダンス位相角の変化が5°よりも大きい、より好ましくは10°よりも大きい、最も好ましくは20°よりも大きい場合、ステップd)において、電気インピーダンスが所定の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したと結論付けられる。
【0027】
変圧器は、インダクタンスLを有し、電極は、可変抵抗Rおよび可変容量Cを有する。ここで、変圧器の巻数比は、インダクタ、コンデンサおよび抵抗器の値に組み込まれる。コンデンサおよび抵抗器は時変するが、インダクタは一定である。インダクタは、変圧器のインダクタンスを表し、したがって時間的に一定である。コンデンサおよび抵抗器は、静電コアレッサデバイスの動作中に変動する。それらは、とりわけ、水-油エマルジョン中の水の量、エマルジョンの温度、エマルジョンからの水の脱落に依存する。前記時間変動のすべては、分単位の時間スケールを有する。例えば、インダクタンスLは、0.2~200mHであり、抵抗Rは、1~5,000オームであり、静電容量Cは、0.1μF~4mFである。
【0028】
本発明のさらに別の代替実施形態によれば、ステップa)において、各コアレッサ要素が電極板および変圧器を備える静電コアレッサデバイスが提供され、導電性内部電極および変圧器は、電気絶縁体によって完全にまたは部分的に囲まれ、適応周波数を有するAC電圧が、各変圧器に供給され、そこから、ステップc)において、AC電圧がコアレッサ要素の電極に供給され、各変圧器に供給されるAC電圧は、組み合わされた変圧器-電極の共振周波数の90~110%の周波数を有し、ステップd)において、決定された電気インピーダンスから電気歪み、位相角の変化および/または無効電力の変化が計算され、電気歪みが5Wよりも大きい、位相角の変化が5°より大きい、および/または無効電力の変化が5VAより大きい場合、ステップd)において、電気インピーダンスが所定の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したと結論付けられる。
【0029】
本発明の着想のさらなる発展において、静電コアレッサデバイスが、アルゴリズムを有するコントローラをさらに備え、アルゴリズムが、過去の測定を使用し、部分放電の測定を最小化しながら出力電圧を最大化する目標を達成するように電圧制御をさらに精緻化するように制御することが提案される。
【0030】
本発明は、所望の電気絶縁体を提供し、必要な機械的耐久性を有する限り、コアレッサ要素の電気絶縁体の種類に関して特に限定されない。例えば、電気絶縁体は、好ましくは、ポリマーおよび無機材料を含むポリマーまたは複合材料、好ましくはフッ素化ポリマーからなる群から選択されるポリマー、またはシリカ、セラミック、および前述の複合材料の2つ以上の任意の組み合わせが充填されたエポキシ複合材料から選択される複合材料で作られる。
【0031】
本発明の着想のさらなる発展において、静電コアレッサデバイスは、好ましくは容器の外側に配置された、1つまたは複数の電源および1つまたは複数の周波数変換器をさらに備え、コアレッサ要素の各々が周波数変換器に接続され、各周波数変換器が電源に接続され、コアレッサ要素の各々の各電極の電圧が個別に時間分解制御されることが提案される。2つ以上またはさらにはすべての周波数変換器が同じ電源に接続されてもよいが、各電極がそれ自体の周波数変換器に接続される、すなわち各周波数変換器が1つの電極のみに接続されることが好ましい。この接続では、周波数変換器は、AC電圧の周波数、特に低電圧AC電圧の周波数を別の周波数に変換することができる任意のデバイスを意味する。1つのデバイスが2つ以上のサブユニットを備え、その各々が他のサブユニットから独立して電源の周波数を所望の他の周波数に変換し、これを特定の電極に独立して供給することができる場合、各サブユニットはそれ自体の周波数変換器と見なされる。この実施形態は、各電極に供給されるAC電圧の周波数および電圧値を、電極を含むコアレッサ要素の実際の環境を考慮して最適値に調整することを可能にするので好ましい。より具体的には、各周波数変換器は、接続されている個々の電極の実際の負荷を測定し、個々の電極の実際の状況に応じて個々の電圧/電流/周波数を電極に提供することができる。すべての電極またはコアレッサ要素は、それぞれ、容器内での使用時に液体によって取り囲まれており、液体組成は容器の幅にわたって変化し、容器の高さにわたってさらに劇的に変化し、また経時的に変化する。また、温度および/または圧力は、経時的に変動し得る。これらの変化により、各電極またはコアレッサ要素は、それぞれ、異なる周囲環境を有し、したがって異なる電力および電流要件を有する。また、個々の電極の絶縁体が部分的に損傷を受け、電気特性に影響を及ぼす可能性がある。各電極が使用中に最適な電圧/電流/周波数供給を有することを保証するために、各周波数変換器は、好ましくは以下に説明するように変圧器を介して、電極の実際の負荷の実際の測定結果に基づいて個別に計算された電圧/電流/周波数を電極に送信することが好ましい。したがって、この実施形態では、実際にはほぼすべての電極に異なる交流、すなわち異なる周波数および/または異なる電圧および/または異なる電流が供給される。通常、各電極に供給される電圧値は、未決定の部分放電の場合を除いて、1kV~10kVの間、例えば5kV~10kVの間で変動し得る。しかしながら、周囲液体混合物の組成、温度および圧力の変動の結果としての使用中の電圧/電流/周波数供給の変化は、部分放電の場合の電気インピーダンスの急激な変化よりもはるかに遅いため、本発明による方法は、部分放電が発生して関連する電極への電圧の短期間のシャットダウンを必要とする場合と、周囲液体混合物の組成、温度および圧力の変動のために周波数および/または電圧値および/または電流値のわずかな調整を行わなければならない場合とを確実に区別することができる。
【0032】
本発明のさらに特定の好ましい実施形態によれば、本方法のステップa)において、各コアレッサ要素が導電性内部電極および変圧器を備える静電コアレッサデバイスが提供され、導電性内部電極および変圧器は、電気絶縁体によって完全にまたは部分的に囲まれる。変圧器は、周波数変換器からAC電圧を受け取り、変圧器は、AC電圧をコアレッサ要素の電極に供給する。この実施形態は、上述のように接続された周波数コントローラによって実行される個々の電極の実際の負荷の測定に基づいて、周囲液体混合物の組成、温度および圧力に依存して、最適な周波数、電圧値および電流値で各電極AC電圧を正確かつ確実に調整することを可能にする。
【0033】
静電コアレッサデバイスの容器内のコアレッサ要素の数は、容器のサイズおよび処理される水/油混合物またはガス/水/油混合物の量にそれぞれ依存する。例えば、静電コアレッサデバイスは、20~400個、より具体的には40~200個のコアレッサ要素を備えることができ、コアレッサ要素は、水平な1列に、または互いに重なって配置された2列もしくは3列もしくは4列もしくは5列以上の水平な列に配置することができる。静電コアレッサデバイスのすべての電極はアクティブであってもよく、すなわち、隣接する2つの電極の対または隣接するコアレッサ要素の電極には、それぞれ、同じ周波数を有するが反対の極性の電位を有するAC電圧が供給される。あるいは、2つの隣接するコアレッサ要素間に、各々の接地された導電性プレートが、コアレッサ要素と隣接する導電性接地プレートとの間に高電圧電場が設定されるように配置されることも可能である。
【0034】
好ましくは、ステップb)において、すべてのコアレッサ要素が水/油混合物またはガス/水/油混合物に浸漬されるように、水/油混合物またはガス/水/油混合物が容器に送り込まれる。動作中、水/油接触面が形成される。すべてのコアレッサ要素が水/油接触面またはその上方に配置されることが好ましい。
【0035】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ステップd)において、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくはすべてのコアレッサ要素の電気インピーダンスが決定される。
【0036】
本発明の別の態様は、静電コアレッサデバイスであって、
i)少なくとも2つのコアレッサ要素を含む容器であって、各コアレッサ要素が、電気絶縁体によって囲まれた(導電性内部)電極を備える、容器と、
ii)少なくとも2つのコアレッサ要素の電極にAC電圧を供給するAC電源と、
iii)静電コアレッサデバイスの動作中に、コアレッサ要素の少なくとも1つの電極の電気インピーダンスを時間分解決定し、電極の電気インピーダンスが所定の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したかどうかを判定し、変化した場合、電極の電気インピーダンスの変化が所定の範囲内になるまで、および/または電極の電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで、電極の電気インピーダンスの変化を判定する時点で電極に供給されたAC電圧の最大70%まで、電極に供給される電圧をクエンチまたは低減するように具現化されたコントローラと
を備え、
コントローラが、電気インピーダンスの変化に対する(iii)の所定の時間期間の長さが最大1秒であるように具体化され、所定の時間期間における電気インピーダンスの変化に対する所定の閾値が、少なくとも0.25%の電気インピーダンスの変化である、静電コアレッサデバイスである。
【0037】
好ましくは、コントローラは、電気インピーダンスの変化に対するiii)の所定の時間期間の長さが最大100ミリ秒、より好ましくは最大50ミリ秒、さらにより好ましくは最大20ミリ秒、さらにより好ましくは最大10ミリ秒、さらにより好ましくは最大1ミリ秒、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒、最も好ましくは最大0.05ミリ秒であるように具現化される。
【0038】
容器は、垂直に延びる管などの、垂直に延びるまたは水平に延びる容器であってもよい。
【0039】
本発明の着想のさらなる発展において、コントローラが、電極の電気インピーダンスの変化が所定の範囲内になるまで、および/または電極の電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで部分放電後に電極への電圧をクエンチまたは低減した後、電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで電圧が段階的に増加するように、具体化されることが提案される。
【0040】
好ましくは、コントローラは、最大1秒の長さを有する連続するまたは重複する時間間隔、より好ましくは最大100ミリ秒、さらにより好ましくは最大50ミリ秒、さらにより好ましくは最大20ミリ秒、さらにより好ましくは最大10ミリ秒、さらにより好ましくは最大1ミリ秒、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒、最も好ましくは最大0.05ミリ秒の長さを有する時間間隔で電気インピーダンスが決定されるように具現化される。上記の実施形態に代えて、またはそれに加えて、コントローラが、電気インピーダンスがリアルタイムで決定されるように具体化されることが好ましく、電気インピーダンス値の決定の終了と、コアレッサ要素がこの電気インピーダンス値を有した実際の時間との間の時間差は、最大1秒、より好ましくは最大100ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大50ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大20ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大10ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大1ミリ秒の長さを有する時間間隔、さらにより好ましくは最大0.1ミリ秒の長さを有する時間間隔、最も好ましくは最大0.05ミリ秒の長さを有する時間間隔である。上記の実施形態の一方または両方に代えて、またはそれに加えて、コントローラが、ある時間間隔で測定された電気インピーダンスの値が、次の時間間隔の電気インピーダンスの値が測定されるまで少なくとも一時的に記憶され、その結果、両方の値が互いに比較され、その結果、電気インピーダンスが所定の時間期間内に所定の閾値を超えて変化したかどうかが判定されるように具現化されることが好ましい。
【0041】
さらに、コントローラが、所定の時間期間内の電気インピーダンスの変化に対する所定の閾値が少なくとも0.50%、より好ましくは少なくとも0.75%、さらにより好ましくは少なくとも1.00%、さらにより好ましくは少なくとも2.00%、さらにより好ましくは少なくとも5.00%、最もさらにより好ましくは少なくとも10.00%の電気インピーダンスの変化であるように具現化されることが好ましい。
【0042】
電極の電圧および電流を測定し、そこから電気インピーダンスを計算することによって電極の電気インピーダンスが決定されるようにコントローラが具現化される場合、良好な結果が特に得られる。
【0043】
コントローラが、電気歪み、位相角の変化、無効電力の変化、およびインピーダンス位相角の変化の少なくとも1つが計算されるように具現化されることも可能であり、好ましい。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、静電コアレッサデバイスは、容器の外側に配置された、1つまたは複数の電源および1つまたは複数の周波数変換器をさらに備え、コアレッサ要素の各々は周波数変換器に接続され、各周波数変換器は電源に接続され、その結果、コアレッサ要素の各々の各電極の電圧は、コントローラによって個別に時間分解制御される。
【0045】
好ましくは、上述の実施形態では、各コアレッサ要素は、導電性内部電極および変圧器を備え、導電性内部電極および変圧器は、電気絶縁体によって完全にまたは部分的に囲まれ、変圧器は周波数変換器に電気的に接続され、変圧器はコアレッサ要素の電極に電気的に接続される。
続いて、本発明を、限定するものではないが例示的な図によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1a】所定の時間期間における電気インピーダンスの測定のための実施形態を示す。
図1b】所定の時間期間における電気インピーダンスの測定のための異なる実施形態を示す。
図2】本発明の一実施形態による静電コアレッサデバイスの概略図を示す。
図3】低電圧側から見た、実施例に記載された、図2に示す静電コアレッサデバイスの電気概略図を示す。
図4】実施例に記載された、部分放電中に電圧源から供給される歪み電力を示す。
図5】実施例に記載された、部分放電の前および最中の電圧源からの電圧および電流信号を示す。
図6】実施例に記載された、水位が増加したときのコアレッサ要素上の歪み電力および水位の読み取りを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1aは、2つの連続する時間間隔、すなわち第1の時間間隔2および後続の第2の時間間隔4における電気インピーダンスの測定を概略的に示す。両方の時間間隔2、4の間の時間期間における電気インピーダンスの変化を決定するために、両方の電気インピーダンスの数値が互いに比較される前に、第1の時間間隔2で測定された電気インピーダンスが記憶され、同様に第2の時間間隔4で測定された電気インピーダンスが記憶される。この時間期間は、時間間隔2、4の2つの中間点X間の距離であり、本発明によれば、所定の時間期間であるこの時間期間の長さ6は、最大1秒である。言い換えれば、2つの等しい長さの連続する時間間隔の場合、所定の時間期間6の長さは、両方の時間間隔2、4の各々の長さである。両方の数値の差、すなわち電気インピーダンスの変化が少なくとも0.25%である場合、電極に供給される電圧は、上記のようにクエンチされる。
【0048】
図1bは、2つの重複する時間間隔、すなわち第1の時間間隔2および後続の第2の時間間隔4における電気インピーダンスの測定を概略的に示す。第2の時間間隔4の始点および終点は、第1の時間間隔2の始点および終点に対してずらされ、両方の時間間隔2、4の長さは同じである。ここでも、両方の時間間隔2、4の間の時間期間における電気インピーダンスの変化を決定するために、両方の電気インピーダンスの数値が互いに比較される前に、第1の時間間隔2で測定された電気インピーダンスが記憶され、同様に第2の時間間隔4で測定された電気インピーダンスが記憶される。この時間期間は、時間間隔2、4の2つの中間点X間の距離であり、本発明によれば、所定の時間期間であるこの時間期間の長さ6は、最大1秒である。したがって、2つの重複する時間間隔2、4の場合、時間期間の長さ(すなわち、時間間隔2、4の2つの中間点X間の差)は、両方の時間間隔2、4の長さよりも短い。両方の数値の差、すなわち電気インピーダンスの変化が少なくとも0.25%である場合、電極に供給される電圧は、上記のようにクエンチされる。
【0049】
続いて、本発明を、限定するものではないが例示的な例によって説明する。
【0050】
図2に示す静電コアレッサデバイス10は、複数のコアレッサ要素14を含む容器12を備え、各コアレッサ要素14は、電気絶縁体によって囲まれた電極を備える。さらに、静電コアレッサデバイス10は、容器10の外側にAC電源16および周波数変換器18を備え、コアレッサ要素14の各々は、周波数変換器18に接続され、各周波数変換器18は、電源16に接続される。周波数変換器18の各々から、低電圧線20が電極に通じ、電極をそれぞれの周波数変換器18と接続する。さらに、静電コアレッサデバイス10は、コントローラ(図示せず)を備え、コントローラは、静電コアレッサデバイス10の動作中にコアレッサ要素14の各々の電極の電気インピーダンスを時間分解決定し、電極のいずれかについて、電極の電気インピーダンスがある時間期間内に所定の閾値を超えて変化したかどうかを判定し、変化した場合、電極の電気インピーダンスの変化が所定の範囲内になるまで、および/または電極の電気インピーダンスが所定の範囲内になるまで、電極の電気インピーダンスの変化を判定する時点で電極に供給されたAC電圧の最大70%まで、電極に供給される電圧をクエンチまたは低減するように具現化される。全体として、コアレッサ要素14の各々の各電極の電圧は、個別に時間分解制御される。
【実施例
【0051】
[実施例1]
本発明による方法および静電コアレッサデバイスの性能を試験するために実験装置を開発した。性能は、部分放電を検出する際の感度と、機器の電気インピーダンスの通常の変動の両方によって与えられる。
【0052】
低電圧側から見た、図2に示す静電コアレッサデバイスの電気概略図が図3に示されている。この図では、左側に電圧源を備え、中央および右側に変圧器および電極を備える高電圧コアレッサ要素を備え、両方とも電気絶縁体に包まれている。変圧器は、インダクタンスLを有し、電極は、可変抵抗Rおよび可変容量Cを有する。ここで、変圧器の巻数比は、インダクタ、コンデンサおよび抵抗器の値に組み込まれる。コンデンサおよび抵抗器は時変するが、インダクタは一定である。インダクタは、変圧器のインダクタンスを表し、したがって時間的に一定である。コンデンサおよび抵抗器は、静電コアレッサデバイスの動作中に変動する。それらは、とりわけ、水-油エマルジョン中の水の量、エマルジョンの温度、エマルジョンからの水の脱落に依存する。前記時間変動のすべては、分単位の時間スケールを有する。
【0053】
部分放電の形成は、コンデンサおよび抵抗器の値にも影響を及ぼす。変動は、部分放電において放出されるエネルギーの関数である。これらの放電に関連するコンデンサおよび抵抗器の変動は、秒よりも小さい時間スケールを有する。上述したように、機器をアイドル位置にしないで効率的に保護する保護方法およびデバイスを有するためには、電子機器のローパスフィルタのように、分単位の時間スケールの変化には反応せず、秒より短い時間スケールの変動には反応するデバイスを有する必要がある。また、任意のローパスフィルタと同様に、特定のエネルギーレベル未満の高周波ノイズは検出可能ではない。このエネルギートリガレベルはWpで示され、[VA]で測定される。第1の組の実験を行って、システムの無効電力を調べることによって、電気インピーダンスにおける秒単位の時間スケールの急速な変動を検出する際の一貫性を試験した。装置構成は、実際のサイズのVIEC(商標)高電圧電極(Sulzer Chemtech AG,Winterthurが販売)および直列接続放電チャンバからなっていた。放電チャンバ装置構成の設計は、放電中に放出されるエネルギーが制御され得るようなものとした。放電は高電圧リレーによって作動させた。結果は図4に示されており、部分放電中に電圧源から供給される歪み電力は、時間に依存して示されている。歪み電力が設定値Wpを超えた場合、放電事象を記録した。試験は、Wpの境界を超える無効電力の急速な変化を検出する際に100%の一貫性を示した。
【0054】
図5は、強調表示された「詳細1」とマークされた位置で図6に示すように放電が開始されるときの、部分放電(すなわち、リレーが閉じている)の直前および最中の電圧および電流信号を示す。赤色の線は電圧信号を示し、青色の線は電流信号を示す。
【0055】
次の組の実験は、分単位の時間スケールの通常の動作変動が、プログラム内でトリガ事象を引き起こすことなく通過することを証明した。これらの変動は、実際に市販されているVIEC(商標)高電圧プレートを使用し、プレート上の水位およびエマルジョン中の含水量を変動させてシミュレートした。図6は、水位が増加したときのコアレッサ要素上の歪み電力および水位の読み取りを示す。水位の変化は、要素容量および抵抗の変化を誘起した。読み取りから、これらの変化は、有意な量の歪み電力を生成しないことが分かる。
【0056】
全体として、実験は、本発明による方法および静電コアレッサデバイスが部分放電の検出を可能にし、動作条件の通常の変化が発生したときにトリガを生成しないことを示した。これにより、高電圧での動作時間を最大化しながら、必要なときに電圧を低減する自己学習アルゴリズムの実装が可能になる。
【符号の説明】
【0057】
2 第1の時間間隔
4 第2の時間間隔
6 所定の時間期間の長さ
10 静電コアレッサデバイス
12 容器
14 コアレッサ要素
16 AC電源
18 周波数変換器
20 低電圧線
X 時間間隔の中間点
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】