(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】汚染物質除去のための炭素の処理
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20241128BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20241128BHJP
C01B 32/354 20170101ALI20241128BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20241128BHJP
【FI】
C02F1/28 D
B01J20/20 E
B01J20/20 D
C01B32/354
C01B32/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536167
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 US2022081502
(87)【国際公開番号】W WO2023114807
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524226704
【氏名又は名称】アイオニック ウォーター テクノロジーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アダムソン, ジョージ ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】スタイン, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー, キャシディ レイ
(72)【発明者】
【氏名】コーン, ヴィクトリア エル.
【テーマコード(参考)】
4D624
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D624AA01
4D624AB11
4D624BA02
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4G146CB09
4G146CB12
4G146CB22
4G146CB32
4G146CB34
4G146CB35
(57)【要約】
本発明は、汚染物質を捕捉及び保持する能力を改善するために炭素を処理する方法に関し、また、そのような方法によって生成された処理済み炭素に関する。炭素の処理は、炭素を、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)Ca2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+、Al3+、B3+、及びFe3+から選択される1つ以上のカチオンに接触させることを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質除去能力を改善するために炭素を処理する方法であって、
炭素を、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)Ca
2+、Mg
2+、Zn
2+、Sr
2+、Al
3+、B
3+、及びFe
3+から選択される1つ以上のカチオンに接触させることを含む、前記方法。
【請求項2】
前記(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに前記(b)1つ以上のカチオンが、前記炭素に接触させるために単一の水性液体または2つ以上の別個の水性液体において提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(a)水酸化物及び/または過酸化物は、水酸化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記(a)水酸化物及び/または過酸化物は、過酸化水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記(a)水酸化物及び/または過酸化物は、過酸化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記(b)1つ以上のカチオンは、Ca
2+を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記Ca
2+は、水酸化カルシウムとして提供される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記(b)1つ以上のカチオンは、Al
3+を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記Al
3+は、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、またはアルミン酸ナトリウムとして提供される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記(a)水酸化物及び/または過酸化物は、第1の水性液体中で提供され、前記(b)1つ以上のカチオンは、第2の水性液体中で提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の水性液体は、前記第2の水性液体の前に前記1つ以上のイオン性汚染物質に接触する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記炭素を、(a)水酸化ナトリウム及び/または過酸化水素、ならびに(b)水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、及び/または硫酸アルミニウムに接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
酸性水溶液で前記炭素をリンスすることをさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記酸性水溶液は、塩酸、クエン酸、硫酸、硝酸、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記酸性水溶液は酸塩を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記酸リンスは、前記炭素が前記(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに前記(b)1つ以上のカチオンに接触した後に行われる、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
水で前記炭素をリンスすることをさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記水は、添加物を実質的に含まない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記水リンスは、前記炭素が前記(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに前記(b)1つ以上のカチオンに接触した後に、また適宜、前記酸リンスの後に行われる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記炭素を界面活性剤に接触させることをさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記界面活性剤は、脂肪酸、スルホン、ホスファート、ポリエーテル、スルファート、ポリオール、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、モノラウリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール(PEG)、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記(a)水酸化物及び/または過酸化物が前記炭素に接触する前に、前記界面活性剤が前記炭素に接触する、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記(a)水酸化物及び/または過酸化物が前記炭素に接触した後に、前記界面活性剤が前記炭素に接触する、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記炭素を不凍剤に接触させることをさらに含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記不凍剤は、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、リボース、スクロース、グルコース、ラムノース、キシロース、フルクトース、ラフィノース、スタキオース、低分子量ヒドロキシエチルデンプン、マルトデキストリン、セロデキストリン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記(a)水酸化物及び/または過酸化物が前記炭素に接触する前に、前記不凍剤が前記炭素に接触する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記(a)水酸化物及び/または過酸化物が前記炭素に接触した後に、前記不凍剤が前記炭素に接触する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項29】
前記炭素は、活性化炭素である、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記活性化炭素は、粒状活性化炭素である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記炭素は、炭素、窒素ドープ炭素、ケイ素ドープ炭素、ホウ素ドープ炭素、チャコール、グラファイト、バイオ炭、コークス、カーボンブラック、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される材料を含む、粉末、顆粒、ビーズ、ペレット、布地、フェルト、不織布、または複合物を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記炭素は、活性化チャコール粉末、顆粒、ペレット、ビーズ、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記炭素は、焼結炭素を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記炭素を、前記(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに前記(b)Ca
2+、Mg
2+、Zn
2+、Sr
2+、Al
3+、B
3+、及びFe
3+から選択される1つ以上のカチオンに接触させた後に乾燥させる、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
処理済み炭素であって、
前記炭素を、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)Ca
2+、Mg
2+、Zn
2+、Sr
2+、Al
3+、B
3+、及びFe
3+から選択される1つ以上のカチオンに接触させることを含む方法によって生成された、前記処理済み炭素。
【請求項36】
請求項1~34のいずれか1項に記載の方法によって生成された処理済み炭素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年12月16日出願の米国仮出願第63/290,074号の利益を主張するものであり、同米国仮出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、汚染物質を捕捉及び保持する能力を改善するために炭素を処理する方法に関し、また、そのような方法によって生成された処理済み炭素に関する。
【背景技術】
【0003】
本項は、本開示に関連する背景情報を提供するものであり、必ずしも先行技術ではない。
【0004】
水精製技術は、日常生活に関して根本的に重要である。水を飲料水または他の目的のために使用するには、汚染物質を除去して、水を許容可能なレベルまで精製しなければならない。ペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)は、特に懸念対象であり、水から除去することが特に重要なものである。PFASを含む汚染物質の除去による水精製のための既存の技術には、効率及び環境的持続可能性という問題がある。例えば、イオン交換樹脂または炭素ベッドでPFASなどの汚染物質を捕捉する技術では、現在、ベッドの交換及び使用済みベッドの埋立地への処分が必要である。空気精製もまた、我々の健康を向上させると共に環境を保護するために空気から有害な汚染物質を除去する別の重要な技術である。他の液体及び気体にも精製技術の必要性がある。
【0005】
したがって、水精製及び空気精製のような汚染物質除去のための技術は既に存在するものの、汚染物質のより効果的な除去を行う改善された技術が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本明細書で開示されるのは、汚染物質除去能力を改善するために炭素を処理する方法である。この方法は、炭素を、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)Ca2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+、Al3+、B3+、及びFe3+から選択される1つ以上のカチオンに接触させることを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)1つ以上のカチオンは、炭素に接触させるために単一の水性液体または2つ以上の別個の水性液体において提供される。いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物は、水酸化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物は、過酸化水素を含む。また、いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物は、過酸化ナトリウムを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、(b)1つ以上のカチオンは、Ca2+を含む。例えば、Ca2+は、水酸化カルシウムとして提供され得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、(b)1つ以上のカチオンは、Al3+を含む。例えば、Al3+は、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、またはアルミン酸ナトリウムとして提供され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物は、第1の水性液体中で提供され、(b)1つ以上のカチオンは、第2の水性液体中で提供される。いくつかの実施形態では、第1の水性液体は、第2の水性液体の前に1つ以上のイオン性汚染物質に接触する。他の実施形態では、この方法は、炭素を、(a)水酸化ナトリウム及び/または過酸化水素、ならびに(b)水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、及び/または硫酸アルミニウムに接触させることを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、この方法は、酸性水溶液で炭素をリンスすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、酸性水溶液は、塩酸、クエン酸、硫酸、硝酸、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。例えば、酸性水溶液は塩酸を含み得る。他の実施形態では、酸性水溶液は酸塩を含む。例えば、酸性水溶液は、FeCl2、FeCl3、またはそれらの組み合わせを含み得る。また、いくつかの実施形態では、酸リンスは、炭素が(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)1つ以上のカチオンに接触した後に行われる。
【0012】
いくつかの実施形態では、この方法は、水で炭素をリンスすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、水は、添加物を実質的に含まない。また、いくつかの実施形態では、水リンスは、炭素が(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)1つ以上のカチオンに接触した後に、また適宜、酸リンスの後に行われる。
【0013】
いくつかの実施形態では、この方法は、炭素を界面活性剤に接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、脂肪酸、スルホン、ホスファート、ポリエーテル、スルファート、ポリオール、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される。例えば、界面活性剤は、脂肪酸、スルホン、またはホスファートから選択され得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、モノラウリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール(PEG)、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物が炭素に接触する前に、界面活性剤が炭素に接触する。また、いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物が炭素に接触した後に、界面活性剤が炭素に接触する。
【0014】
いくつかの実施形態では、この方法は、炭素を不凍剤に接触させることをさらに含む。例えば、不凍剤は、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、リボース、スクロース、グルコース、ラムノース、キシロース、フルクトース、ラフィノース、スタキオース、低分子量ヒドロキシエチルデンプン、マルトデキストリン、セロデキストリン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、不凍剤はグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物が炭素に接触する前に、不凍剤が炭素に接触する。また、いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物が炭素に接触した後に、不凍剤が炭素に接触する。
【0015】
いくつかの実施形態では、炭素は、活性化炭素である。いくつかの実施形態では、活性化炭素は、粒状活性化炭素である。いくつかの実施形態では、炭素は、炭素、窒素ドープ炭素、ケイ素ドープ炭素、ホウ素ドープ炭素、チャコール、グラファイト、バイオ炭、コークス、カーボンブラック、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される材料を含む、粉末、顆粒、ビーズ、ペレット、布地、フェルト、不織布、または複合物を含む。例えば、炭素は、活性化チャコール粉末、顆粒、ペレット、ビーズ、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。また、いくつかの実施形態では、炭素は、焼結炭素を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、炭素を、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)Ca2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+、Al3+、B3+、及びFe3+から選択される1つ以上のカチオンに接触させた後に乾燥させる。
【0017】
別の態様において、本明細書で開示されるのは、処理済み炭素である。処理済み炭素は、炭素を、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)Ca2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+、Al3+、B3+、及びFe3+から選択される1つ以上のカチオンに接触させることを含む方法によって生成される。
【0018】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0019】
以下の図は、例として提供されるものであり、特許請求される発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1に係る、処理ありGAC及び処理なしGACについての流出液中のPFOA濃度を示すプロットである。
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
I.定義
【0023】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的構成を説明することのみを目的としており、限定を意図するものではない。本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形の冠詞は、文脈に明らかな別段の記載がない限り、複数形も含むことを意図し得る。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であり、したがって特徴、ステップ、動作、要素、及び/または構成要素の存在を明示するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/またはそれらの群の存在または追加を除外しない。本明細書に記述される方法ステップ、プロセス、及び動作は、実行の順序として具体的に特定されない限り、記載または図示された特定の順序でのそれらの実行を必ず必要とするものと解釈されてはならない。追加または代替のステップが用いられてもよい。
【0024】
本明細書では、様々な要素、構成要素、領域、層及び/またはセクションを記述するために、第1、第2、第3などの用語が使用され得る。これらの要素、構成要素、領域、層及び/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層またはセクションを別の領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用され得る。「第1」、「第2」などの用語、及び他の数値的な用語は、文脈によって明確に示されない限り、配列または順序を意味しない。そのため、後述される第1の要素、構成要素、領域、層またはセクションは、例示的構成の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層またはセクションと称され得る。
【0025】
前及び後という用語は、時間的に前または後に発生するが、その間に中間のプロセスステップまたは事象が発生することを許容するプロセスステップまたは他の事象を指す。直前または直後とは、中間のプロセスステップまたは事象が発生することなく、時間的に前または後に発生するプロセスステップまたは他の事象を指す。いくつかの実施形態では、本明細書において前または後として記述されるステップは、それらが言及するステップ(複数可)の直前または直後に行われる。他の実施形態では、中間ステップが発生する。
【0026】
本明細書では、上方、下方、上、下、右、左などの用語が、他の要素に対する様々な要素の位置を記述するために使用され得る。これらの用語は、例示的構成における要素の位置を表す。しかし、当業者には明らかであろうが、本開示から逸脱することなく要素を空間的に回転することができ、そのため、これらの用語は本開示の範囲を限定するために使用されるべきではない。
【0027】
本明細書で使用される場合、ある要素が別の要素に「接している」、「係合している」、「接続している」、「取り付けられている」、または「連結している」という際、それが他方の要素に直接接している、係合している、接続している、取り付けられている、または連結している場合もあれば、介在する要素が存在する場合もある。これに対し、ある要素が別の要素に「直接接している」、「直接係合している」、「直接接続している」、「直接取り付けられている」、または「直接連結している」という際、介在する要素または層は存在し得ない。要素間の関係を記述するために使用される他の単語も同様に解釈されるべきである(例えば、「~の間」と「~の間に直接」、「隣接した」と「直接隣接した」など)。本明細書で使用される場合、「及び/または」という用語は、列挙された関連する項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、「活性化炭素」という用語は、利用可能な表面積を増加させる小孔を有するように加工された炭素の形態を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「ポリフルオロアルキルイオン」とは、複数のフルオロ置換を有し、エーテル、アルコール、アミン(置換アミンを含む)、及びカルボン酸基などで適宜さらに置換されるアルキル鎖を含むイオン性化合物を指す。
【0030】
「ペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル物質」または「PFAS」は、次の物質を含むが、これらに限定されない:ペルフルオロブタン酸、ペルフルオロペンタン酸、ペルフルオロヘキサン酸(PFHxA)、ペルフルオロヘプタン酸(PFHpA)、ペルフルオロオクタン酸、ペルフルオロノナン酸(PFNA)、ペルフルオロデカン酸(PFDA)、ペルフルオロウンデカン酸(PFUnA)、ペルフルオロドデカン酸(PFDoA)、ペルフルオロトリデカン酸、ペルフルオロテトラデカン酸、ペルフルオロヘキサデカン酸、ペルフルオロオクタデカン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、ペルフルオロペンタンスルホン酸、ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)、ペルフルオロオクタンスルホン酸、ペルフルオロノナンスルホン酸、ペルフルオロデカンスルホン酸、ペルフルオロドデカンスルホン酸、ペルフルオロオクタンスルホンアミド、N-メチルペルフルオロ-1-オクタンスルホンアミド、N-エチルペルフルオロ-1-オクタンスルホンアミド、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロヘキサンスルホン酸(4:2)、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクタンスルホン酸(6:2)、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカンスルホン酸(8:2)、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロドデカンスルホン酸(10:2)、N-メチルペルフルオロオクタンスルホンアミド酢酸、N-エチルペルフルオロオクタンスルホンアミド酢酸、2-(N-メチルペルフルオロ-1-オクタンスルホンアミド)-エタノール、2-(N-エチルペルフルオロ-1-オクタンスルホンアミド)-エタノール、テトラフルオロ-2-(ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸(「GenX」)、4,8-ジオキサ-3H-ペルフルオロノナン酸、11-クロロエイコサフルオロ-3-オキサウンデカン-1-スルホン酸、または9-クロロヘキサデカフルオロ-2-オキサノン-1-スルホン酸。PFASは、部分的なフッ素化も含む。これらの酸の共役塩基は、ポリフルオロアルキルイオンの例である。PFASを捕捉することは、PFASの共役塩基を捕捉することを含む。
【0031】
「PFOS」はペルフルオロオクタンスルホン酸を指す。PFOSの捕捉/遊離は、その共役塩基であるペルフルオロオクタンスルホナートの捕捉/遊離を含む。
【0032】
「PFOA」はペルフルオロオクタン酸を指す。PFOAの捕捉/遊離は、その共役塩基であるペルフルオロオクタノアートの捕捉/遊離を含む。
【0033】
II.炭素を処理する方法
【0034】
一態様において、本明細書で提供されるのは、汚染物質除去能力を改善するために炭素を処理する方法である。この方法は、炭素を、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)Ca2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+、Al3+、B3+、及びFe3+から選択される1つ以上のカチオンに接触させることを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)1つ以上のカチオンは、炭素に接触させるために単一の水性液体または2つ以上の別個の水性液体において提供される。例えば、炭素をカラムなどの容器に入れることができ、水性液体(複数可)を容器に流すことにより、液体(複数可)中に存在する(a)水酸化物及び/または過酸化物ならびに(b)1つ以上のカチオンに炭素を接触させることができる。炭素は、炭素ベッドであり得、任意の形状を有し得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物は、水酸化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物は、過酸化水素を含む。いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物は、過酸化ナトリウムを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、(b)1つ以上のカチオンは、Ca2+を含む。いくつかの実施形態では、Ca2+は、水酸化カルシウムとして提供される。いくつかの実施形態では、Ca2+は、塩化カルシウムとして提供される。いくつかの実施形態では、(b)1つ以上のカチオンは、Al3+を含む。いくつかの実施形態では、Al3+は、硫酸アルミニウムとして提供される。いくつかの実施形態では、Al3+は、アルミン酸ナトリウムとして提供される。いくつかの実施形態では、Al3+は、水酸化アルミニウムとして提供される。いくつかの実施形態では、水酸化アルミニウムは水酸化ナトリウムと共に使用される。
【0038】
いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物は、第1の水性液体中で提供され、(b)1つ以上のカチオンは、第2の水性液体中で提供される。いくつかの実施形態では、第1の水性液体は、第2の水性液体の前に1つ以上のイオン性汚染物質に接触する。他の実施形態では、第2の水性液体は、第1の水性液体の前に1つ以上のイオン性汚染物質に接触する。
【0039】
いくつかの実施形態では、第2の水性液体は、不凍剤及び界面活性剤をさらに含む。不凍剤及び界面活性剤は、本明細書に記述されるいずれの不凍剤及び界面活性剤でもよい。いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)1つ以上のカチオンは、単一の水性液体において提供される。
【0040】
本発明に係る特定の方法は、炭素を、(a)水酸化ナトリウム及び/または過酸化水素、ならびに(b)水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、及び/または硫酸アルミニウムに接触させることを含む。
【0041】
理論に束縛されるものではないが、他の考えられる利点の中でも、(a)水酸化物及び/または過酸化物が炭素上のバイオフィルムの分解を円滑化すると考えられる。このバイオフィルムの分解により、炭素からイオン性汚染物質を効率的に除去することが可能になる。
【0042】
いくつかの実施形態では、炭素を処理する方法は、酸性水溶液で炭素をリンスすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、酸性水溶液は、塩酸、クエン酸、硫酸、硝酸、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。例えば、酸性水溶液は塩酸を含み得る。いくつかの実施形態では、酸性水溶液は酸塩を含む。例えば、酸性水溶液は、FeCl2、FeCl3、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、酸リンスは、炭素が(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)1つ以上のカチオンに接触した後に行われる。
【0043】
いくつかの実施形態では、炭素を処理する方法は、水で炭素をリンスすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、水は、添加物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、水リンスは、炭素が(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)1つ以上のカチオンに接触した後に、また適宜、酸リンスの後に行われる。
【0044】
いくつかの実施形態では、炭素を処理する方法は、炭素を界面活性剤に接触させることをさらに含む。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはそれらのいずれかの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、脂肪酸、スルホン、またはホスファートから選択される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、脂肪酸、スルホン、ホスファート、ポリエーテル、スルファート、ポリオール、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される。例えば、界面活性剤は脂肪酸を含み得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤はスルホンを含む。他の実施形態では、界面活性剤はホスファートを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はポリエーテルを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はスルファート(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はポリオールを含む。
【0045】
好適なポリエーテルは、非限定的な例として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ポリエーテルは、PEGを含む。PEGは、約1,000g/mol未満、約750g/mol未満、約600g/mol未満、または約550g/mol未満の平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、PEGは、PEG500、PEG400、PEG300、またはそれらのいずれかの組み合わせである。例えば、PEGはPEG300であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、モノラウリン酸ソルビタン、PEG、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物が炭素に接触する前に、炭素が界面活性剤に接触する。いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物が炭素に接触した後に、炭素が界面活性剤に接触する。また、いくつかの実施形態では、炭素は、水酸化物及び/または過酸化物と同時に界面活性剤に接触する。
【0048】
いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物、及び/または(b)1つ以上のカチオンが炭素に接触する前に、炭素が界面活性剤に接触する。他の実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物、及び/または(b)1つ以上のカチオンが炭素に接触した後に、炭素が界面活性剤に接触する。また、いくつかの実施形態では、炭素は、(a)水酸化物及び/または過酸化物、及び/または(b)1つ以上のカチオンと同時に界面活性剤に接触する(例えば、単一の水性液体または2つ以上の水性液体が界面活性剤を含む)。
【0049】
いくつかの実施形態では、炭素を処理する方法は、炭素を不凍剤に接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、不凍剤は、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、リボース、スクロース、グルコース、ラムノース、キシロース、フルクトース、ラフィノース、スタキオース、低分子量ヒドロキシエチルデンプン、マルトデキストリン、セロデキストリン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、不凍剤はグリセロールを含み得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物が炭素に接触する前に、炭素が不凍剤に接触する。いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物が炭素に接触した後に、炭素が不凍剤に接触する。また、いくつかの実施形態では、炭素は、水酸化物及び/または過酸化物と同時に不凍剤に接触する。
【0051】
いくつかの実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物、及び/または(b)1つ以上のカチオンが炭素に接触する前に、炭素が不凍剤に接触する。他の実施形態では、(a)水酸化物及び/または過酸化物、及び/または(b)1つ以上のカチオンが炭素に接触した後に、炭素が不凍剤に接触する。また、いくつかの実施形態では、炭素は、(a)水酸化物及び/または過酸化物、及び/または(b)1つ以上のカチオンと同時に不凍剤に接触する(例えば、単一の水性液体または2つ以上の水性液体が不凍剤を含む)。
【0052】
いくつかの実施形態では、炭素を、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)Ca2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+、Al3+、B3+、及びFe3+から選択される1つ以上のカチオンに接触させた後に乾燥させる。
【0053】
本件の方法に従って処理された炭素は、任意の形状及びサイズを有する任意の炭素材料であり得る。本発明に従って処理された炭素は、有利なことに、水精製または空気精製の用途などにおいて汚染物質を捕捉するのに好適な炭素である。以下に、炭素に関する特定の説明をさらに詳細に提供する。
【0054】
III.処理済み炭素
【0055】
一態様において、本明細書で提供されるのは、処理済み炭素である。炭素は、炭素を、(a)水酸化物及び/または過酸化物、ならびに(b)Ca2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+、Al3+、B3+、及びFe3+から選択される1つ以上のカチオンに接触させることを含む方法によって処理される。本発明の様々な実施形態に従って炭素を処理する方法を記述する。そのような様々な実施形態に従って生成された処理済み炭素もまた、本発明の範囲内にある。
【0056】
処理済み炭素は、任意の形状及びサイズを有する任意の炭素材料であり得る。いくつかの実施形態では、炭素は、活性化炭素である。様々な炭素及び活性化炭素材料が市販されており、炭素を活性化する方法は、物理的活性化(炭化及び活性化/酸化)または化学的活性化によるものなど、当該技術分野では公知である。
【0057】
いくつかの実施形態では、活性化炭素は、粒状活性化炭素(GAC)である。GACは、60×80、8×20、20×40、8×30、4×6、4×8、または4×10などのメッシュサイズのものであり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、炭素は、炭素、窒素ドープ炭素、ケイ素ドープ炭素、ホウ素ドープ炭素、チャコール、グラファイト、バイオ炭、コークス、カーボンブラック、またはそれらのいずれかの組み合わせから選択される材料を含む、粉末、顆粒、ビーズ、ペレット、布地、フェルト、不織布、または複合物を含む。いくつかの実施形態では、炭素は、活性化チャコール粉末、顆粒、ペレット、ビーズ、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、炭素は、焼結炭素を含む。いくつかの実施形態では、炭素は、Calgon CarbonによるFILTRASORB(登録商標)活性化炭素ベッドである。いくつかの実施形態では、炭素は、Cabot corporationによるBLACK PEARLS(登録商標)2000(活性化グラファイト)を含む。いくつかの実施形態では、炭素は、Cabot corporationによるPBX51(活性化グラファイト)を含む。いくつかの実施形態では、炭素は、Calgon CarbonによるF400粒状活性化炭素を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、炭素は、多孔質である。いくつかの実施形態では、炭素は、約30%~約95%の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、炭素は、活性化炭素金属酸化物複合物である。いくつかの実施形態では、炭素は、活性化グラファイトである。いくつかの実施形態では、炭素は、活性化チャコールである。いくつかの実施形態では、炭素は、活性化石炭である。いくつかの実施形態では、炭素は、活性化コークスである。いくつかの実施形態では、炭素は、約100m2/g~約2000m2/gの平均表面積を有する活性化炭素を含む。いくつかの実施形態では、炭素は、約2000m2/g~約5000m2/gの平均表面積を有する活性化炭素を含む。いくつかの実施形態では、炭素は、約0.01S/cm~約100S/cmの伝導率を有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、炭素ベッドは、その中に分散された結合剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、結合剤は、ワックス、デンプン、糖、多糖、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ワックスは、ポリエチレンワックスである。いくつかの実施形態では、ワックスは、カルナウバワックスである。
【0061】
IV.処理済み炭素の使用
【0062】
本発明の処理済み炭素は、汚染物質を捕捉するのに有用である。例えば、処理済み炭素は、水源または空気源から汚染物質を捕捉するために、すなわち、水精製または空気精製の用途で使用され得る。他の精製用途もまた、処理済み炭素に好適であり得る。
【0063】
本発明の処理済み炭素の用途には、流出物清掃、地下水浄化、飲料水濾過、空気精製、ならびに塗装、ドライクリーニング、ガソリン供給、及び他のプロセスからのVOCの捕捉のような現場及び産業プロセスの両方で空気または水流から汚染物質(または汚染因子)を除去することが含まれる。
【0064】
本明細書に記述される処理済み炭素は、ペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)を捕捉するのに特に有用である。例えば、これは、汚染水源からPFASを捕捉するのに特に有用である。本発明者らの観察によれば、ポリフッ素化化合物は、極めて疎水性の部分を保有するため、従来の等温メカニズムにより活性化炭素に吸着するとは考えられない。これらは、疎水性部分がひとつに凝集する核形成、成長、及び凝集のメカニズムに従うと考えられる。これらのドメインは、高溶液濃度で活性化炭素の表面に付着したミセルとして現れる。これらが形成されるには、まず、ペルフルオロ化合物の分子数個が、いくらかの初期親和性のある活性化炭素上の吸着部位を見出す。次に、その後のペルフルオロ化合物が、先に吸着したペルフルオロ化合物に優先的に吸着する。疎水性ドメインが成長するにつれて、ミセルが大きすぎて炭素の表面に付着した状態を保てなくなるまで、吸着のための有効表面積が増加する。この吸着メカニズムによって、ラングミュアまたはフロイントリヒの従来の吸着等温線のように見えるが、実験データをフィッティングすると明確になるように十分に異なる、吸着量対溶液濃度曲線が生じる(
図2)。核形成及び成長のモデルは、実験データにより良くフィットし、マクロスコピックなカラムの挙動をより良好に予測する。こうした吸着メカニズムの記述は、天然水源を処理する際の活性化炭素ベッドまたはカラムの消耗挙動を予測するのに有用である。これらの化合物に関する文献には混乱が存在するが、それは、ほとんどの研究者が小さな濃度範囲で得られた等温線/表面被覆メカニズムへの強引なフィッティングを行うからである。しかし、核形成及び成長のモデルは、何桁もの濃度にわたってより良くフィットし、挙動を予測する。
【0065】
理論に束縛されるものではないが、PFAS溶液への二価及び三価の金属塩の添加は、これらのミセルの安定化を引き起こすと考えられる。これは、水中に見られるほとんどのペルフルオロ化合物に、通常はペルフルオロ化合物と不溶性塩を形成する親水性部分も含まれるためである。これらの不溶性塩の効果は、ペルフルオロ化合物の有効な疎水性を増加させ、遊離ミセル形成及び表面のミセル形成の両方を安定化することである。これらの安定化ミセルのサイズは、数十ミクロンに達し得る。これらの不溶性塩は、非フッ素化化合物により生じることもある。これらの不溶性疎水性塩もまた、ペルフルオロ化合物のミセルを安定化するために使用され得る。これらのミセルが炭素上に生じると、他の有機化合物がこれらのミセルドメインに吸着されるようになり得る。こうしたペルフルオロ化合物、脂肪酸、スルホン酸、またはリン酸の不溶性塩は、炭素表面を前処理して、炭素表面での核形成及びミセル形成の安定化をもたらすのに有用である。これらは、炭素と共に金属塩及び沈殿化合物のミセルに適用されてもよく、または炭素に順次適用されてもよい。最初に金属塩を適用してから化合物を適用するか、または最初に化合物を適用してから金属塩を適用するかは問題にならない。このような炭素の前処理は、天然または工業用の水源に見出されるペルフルオロ化合物に対する炭素の吸着容量を最大70倍(例えば、2~10倍)まで増大させることができる。この前処理により、吸着反応速度が改善される可能性もあり、つまり処理時間が削減される可能性もある。
【0066】
本発明に係る炭素の処理はプロセス/適用の前に行うことができ、したがってこの処理は「前処理」ということができる。前処理の後に、炭素上に汚染物質を捕捉するためのプロセスを行うことができ、その次に、汚染物質を捕捉するために炭素を再度使用できるように、炭素上に捕捉された汚染物質を除去及び隔離する再生プロセスを行うことができる。本発明に係る前処理は、炭素の汚染物質捕捉能力、汚染物質保持能力、及び/または再生能力を改善し得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、前処理された炭素は、水性液体からのイオン性汚染物質の除去、例えば、水精製に有用である。イオン性汚染物質の例としては、イオン性部分を持つ有機末端を有するものが挙げられる。イオン性汚染物質の具体例には、ポリフルオロアルキルイオン、ボラート、ホスファート、ポリホスファート、スルファート、有機酸、脂肪酸、フミン物質、短鎖PFAS、水溶性薬剤、清浄剤、水溶性殺虫剤、水溶性殺真菌剤、水溶性殺菌剤、及びそれらのいずれかの組み合わせが含まれる。イオン性汚染物質の別の例は、ペルフルオロオクタンスルホナートまたはペルフルオロオクタノアートなどのポリフルオロアルキルイオンである。ペルフルオロオクタンスルホナートは、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の共役塩基である。ペルフルオロオクタノアートは、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)の共役塩基である。他のポリフルオロアルキルイオンは、ペルフルオロブタンスルホナート及びペルフルオロブタノアートである。ペルフルオロブタンスルホナートは、ペルフルオロブタンスルホン酸(PFBS)の共役塩基である。ペルフルオロブタノアートは、ペルフルオロブタン酸(PFBA)の共役塩基である。
【実施例】
【0068】
V.実施例
【0069】
実施例1:粒状活性化炭素の処理
【0070】
粒状活性化炭素(GAC)をロードした2つのカラムを破過試験用に準備した。第1のカラムには、未処理のGAC(「前処理なしlab F400」または「前処理なしGAC」)をロードした。第2のカラムには、以下に記述するプロトコルに従って水酸化ナトリウム、過酸化水素、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、HCl、及びDI水に接触させたGAC(「前処理ありlab F400」または「前処理ありGAC」)をロードした。
【0071】
材料:この研究では、Calgon F400 GACを使用した。GACを60×80メッシュでふるい分けた。GACから作られた炭素ベッドをカラムに装備した。流量を2.9mL/分に設定した。カラムID:1cm。ベッド高さ:3~3.2cm。ベッド重量:1.1~1.15g。
【0072】
前処理ありGACは以下のプロトコルに従って生成した。Econo-Columnを取り、50%エタノール及びDI水でリンスする。DI水でリンスする。底部フィルタが無傷であることを確認する。カラムに水を充填し、底部バルブを閉じる。0.5mmジルコニア/シリカビーズをカラムの底部に注ぎ、ビーズが底部フィルタより2~3cm上に広がるようにする。穏やかにタッピングしてビーズが十分に詰められたことを確実にし、次いでカラム底部のバルブを開け、水を排出する。ブレンダーをエタノール及び水でリンスし、これにフレッシュなF400 GACを充填する。GACをブレンドし、ASTM 60及び80メッシュふるいで湿式ふるい分けを行う。80メッシュふるいを乾燥させて、60×80メッシュのフレッシュF400を得る。60×80メッシュのフレッシュF400約1.1gをカラムに加える(エタノールでリンスしたスパチュラを使用する)。カラムの高さは3cmとする。シリンジを使用してカラム底部から水を押し上げ、タッピングしてGACが良く詰められたことを確実にする。気泡がなくなるまでタッピング及び水でのフラッシュを継続する。水をGACの2cm上まで押し上げる。十分な0.5mmジルコニア/シリカビーズを加えてPACの1~2cm上まで充填する。穏やかにタッピングして、ビーズが十分に詰められたことを確実にする。湿らせたガラスウール片をジルコニア/シリカビーズの上に加え、次にフローアダプタを装備してカラムの内容物を定位置に保持する。DI水をポンプ圧送してカラムに通し、F400を数時間湿らせる。1M NaOH流体250mLを2.8mL/分でポンプ圧送してカラムに通し、続いて250mLの12%食品グレードH2O2を通す。次に、20g/l Al(OH)3/10g/L NaOH流体2.5Lを2.9mL/分でポンプ圧送してカラムに通し、続いて同じ割合で4g/L Ca(OH)2溶液2.5Lを通す。次に、0.1M HCl溶液0.5Lを2.9mL/分でポンプ圧送してカラムに通す。最後に、2.5LのDI水を2.9mL/分でポンプ圧送してカラムに通す。再生リンス(Al(OH)3、NaOH、及びCa(OH)2)、HClリンス、及びDI水リンスを繰り返す。最終リンスにおけるDI水の量は6Lに増加させる。
【0073】
前処理なしGAC及び前処理ありGACのカラムに、おおよそ20,000BVの施設水をポンプ圧送し、サンプルを約1,000BV(おおよそ2500mL)ごとに採取した。
【0074】
図1は、代表的なPFAS化合物としてPFOAを使用した場合の、前処理なしのF400 GACカラムに対する前処理ありのF400 GACカラムの性能を示す。
【0075】
前処理ありのカラムは約7400BVで破過するが、前処理なしのカラムは1150BVで破過を示した。
【0076】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と共に説明したが、前述の説明は本発明の範囲を例示するものであって限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。他の態様、利点、及び変更は、以下の請求項の範囲に含まれる。
【国際調査報告】