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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】作図支援装置及び作図支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/12 20200101AFI20241128BHJP
   G06F 30/17 20200101ALI20241128BHJP
【FI】
G06F30/12
G06F30/17
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536318
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2022046477
(87)【国際公開番号】W WO2023120432
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202141060025
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】仲本 修司
(72)【発明者】
【氏名】バスデヴァン プラビーンクマル
(72)【発明者】
【氏名】ジャックソン ソラス
(72)【発明者】
【氏名】ゴウリ パラサド ナグル
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DA02
5B146DA07
5B146DC03
5B146DC06
5B146DE03
5B146DE05
5B146DG02
5B146DG05
5B146DG07
5B146DL08
5B146EA07
5B146EC02
(57)【要約】
作図支援装置1は、設計図面の画像データを取得して、画像データに描かれている寸法情報を検出し、画像データに描かれている矢印を検出し、画像データに描かれているラインを検出し、矢印の位置とラインの位置に基づいて、矢印とラインを組み合わせて寸法線を生成し、寸法線の位置に対応する寸法値を寸法情報から検出し、検出した寸法値を寸法線に割り当て、寸法線の端部の位置を示すガイドラインを生成し、ガイドラインを画像データに重畳して編集画面上に表示し、ガイドラインが表示された編集画面上で、オペレータが作図した設計図面のデジタルデータを出力する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計図面の画像データをデジタルデータに変換するオペレータの作図作業を支援するコントローラを備えた作図支援装置であって、
前記コントローラは、
前記設計図面の画像データを取得して、前記画像データに描かれている寸法情報を検出し、
前記画像データに描かれている矢印を検出し、
前記画像データに描かれているラインを検出し、
前記矢印の位置と前記ラインの位置に基づいて、前記矢印と前記ラインを組み合わせて寸法線を生成し、
前記寸法線の位置に対応する寸法値を前記寸法情報から検出し、検出した前記寸法値を前記寸法線に割り当て、
前記寸法線の端部の位置を示すガイドラインを生成し、
前記ガイドラインを前記画像データに重畳して編集画面上に表示し、
前記ガイドラインが表示された前記編集画面上で、前記オペレータが作図した前記設計図面のデジタルデータを出力する作図支援装置。
【請求項2】
前記寸法線の長さは、前記寸法線に割り当てられた前記寸法値に設定される請求項1に記載の作図支援装置。
【請求項3】
前記オペレータが、前記編集画面上でポインティングデバイスのカーソルを前記ガイドライン上に移動させると、
前記コントローラは、前記ガイドラインと他のガイドラインが交差する交点を強調表示し、前記オペレータが前記交点を選択すると、前記交点で交差する前記ガイドラインが選択される請求項1または2に記載の作図支援装置。
【請求項4】
前記オペレータが、前記編集画面上で前記画像データのフロントビューのエリアを選択し、前記フロントビュー以外の2つのエリアに描かれた前記ガイドラインの間の対応を指定すると、
前記コントローラは、前記フロントビュー以外の2つのエリアに描かれた寸法値を対応させる請求項1~3のいずれか1項に記載の作図支援装置。
【請求項5】
検出された前記ラインが水平または垂直でない場合には、前記ラインを回転移動させて水平または垂直に補正する請求項1~4のいずれか1項に記載の作図支援装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記画像データに描かれたタイトル情報を削除する請求項1~5のいずれか1項に記載の作図支援装置。
【請求項7】
前記寸法線に割り当てられた前記寸法値を変更することによって、前記寸法線の長さが変更される請求項1~6のいずれか1項に記載の作図支援装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記画像データに描かれているシンボルを検出し、前記シンボルの位置に対応する寸法値を前記寸法情報から検出し、検出した前記寸法値を前記シンボルに割り当て、前記シンボルの大きさを、前記シンボルに割り当てられた前記寸法値に設定する請求項1~7のいずれか1項に記載の作図支援装置。
【請求項9】
設計図面の画像データをデジタルデータに変換するオペレータの作図作業を支援するコントローラによる作図支援方法であって、
前記コントローラは、
前記設計図面の画像データを取得して、前記画像データに描かれている寸法情報を検出し、
前記画像データに描かれている矢印を検出し、
前記画像データに描かれているラインを検出し、
前記矢印の位置と前記ラインの位置に基づいて、前記矢印と前記ラインを組み合わせて寸法線を生成し、
前記寸法線の位置に対応する寸法値を前記寸法情報から検出し、検出した前記寸法値を前記寸法線に割り当て、
前記寸法線の端部の位置を示すガイドラインを生成し、
前記ガイドラインを前記画像データに重畳して編集画面上に表示し、
前記ガイドラインが表示された前記編集画面上で、前記オペレータが作図した前記設計図面のデジタルデータを出力する作図支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作図支援装置及び作図支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、CAD(Computer Aided Design)を利用した図面作成において、ラスターデータをベクトルデータに変換するサービスに関して特許文献1が開示されている。特許文献1に開示されたCADデータ変換サービス方法では、各種のCADデータ変換用ソフトをサーバに記録しておき、記録されているCADデータ変換用ソフトを利用してラスターデータをベクトルデータに変換していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-186915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、設計図面をラスターデータからベクトルデータに変換する場合には、ラスターデータに描かれている寸法値や寸法線を、オペレータが読み取って手作業でコンピュータシステムに入力する必要があった。
【0005】
そのため、オペレータの手作業による入力では、作業時間が長くなり、作業ミスが発生する可能性が高くなってしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作図支援装置及びその方法は、設計図面の画像データをデジタルデータに変換するオペレータの作図作業を支援するコントローラを備え、前記コントローラは、前記設計図面の画像データを取得して、前記画像データに描かれている寸法情報を検出し、前記画像データに描かれている矢印を検出し、前記画像データに描かれているラインを検出し、前記矢印の位置と前記ラインの位置に基づいて、前記矢印と前記ラインを組み合わせて寸法線を生成し、前記寸法線の位置に対応する寸法値を前記寸法情報から検出し、検出した前記寸法値を前記寸法線に割り当て、前記寸法線の端部の位置を示すガイドラインを生成し、前記ガイドラインを前記画像データに重畳して編集画面上に表示し、前記ガイドラインが表示された前記編集画面上で、前記オペレータが作図した前記設計図面のデジタルデータを出力する。
【0007】
上述した構成の作図支援装置及びその方法では、画像データから寸法線を生成し、寸法線の位置に対応する寸法値を寸法線に割り当て、寸法線の端部の位置を示すガイドラインを生成する。これにより、オペレータはガイドラインを利用して設計図面を作図できるので、作業時間を短縮することができ、作業ミスが発生する可能性を低くすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る作図支援装置及びその方法によれば、オペレータによる作業時間を短縮することができ、作業ミスが発生する可能性を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る作図支援装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、一実施形態に係る作図支援装置による寸法情報の検出方法を説明するための図である。
図3図3は、一実施形態に係る作図支援装置による矢印の検出方法を説明するための図である。
図4図4は、一実施形態に係る作図支援装置によるシンボルの検出方法を説明するための図である。
図5図5は、一実施形態に係る作図支援装置によって生成された寸法線とガイドラインを示す図である。
図6図6は、一実施形態に係る作図支援装置によって表示された編集画面の一例を示す図である。
図7図7は、一実施形態に係る作図支援装置による作図支援処理の処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、一実施形態に係る作図支援装置によって表示された編集画面の一例を示す図である。
図9図9は、一実施形態に係る作図支援装置によるライン補正処理の処理手順を示すフローチャートである。
図10A図10Aは、一実施形態に係る作図支援装置によるラインの補正方法を説明するための図である。
図10B図10Bは、一実施形態に係る作図支援装置によるラインの補正方法を説明するための図である。
図10C図10Cは、一実施形態に係る作図支援装置によるラインの補正方法を説明するための図である。
図10D図10Dは、一実施形態に係る作図支援装置によるラインの補正方法を説明するための図である。
図11A図11Aは、一実施形態に係る作図支援装置によって生成される寸法線の一例を示す図である。
図11B図11Bは、一実施形態に係る作図支援装置によって生成される寸法線の一例を示す図である。
図12図12は、一実施形態に係る作図支援装置によって表示された編集画面の一例を示す図である。
図13図13は、一実施形態に係る作図支援装置によって表示された編集画面の一例を示す図である。
図14図14は、一実施形態に係る作図支援装置によるシンボル生成処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した一実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る作図支援装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、作図支援装置1は、コントローラ100と、入力部200と、表示装置300とを備えている。作図支援装置1は、オペレータの作図作業を支援する装置であり、特に、ラスターデータ等の設計図面の画像データを、ベクトルデータ等のデジタルデータに変換するオペレータの作図作業を支援する。
【0012】
コントローラ100は、CAD(Computer Aided Design)図面等の設計図面の画像データをデジタルデータに変換するオペレータの作図作業を支援する作図支援処理を実行する。コントローラ100は、図1に示すように、寸法情報検出部11と、矢印検出部13と、シンボル検出部15と、ライン検出部17と、寸法線生成部19と、ガイドライン生成部21と、エディタ23を備えている。
【0013】
入力部200は、CAD図面等の設計図面の画像データを取得して、図示していないデータベースに記録する。例えば、スキャナで設計図面を読み込んで、取得したラスターデータ等の画像データを、図示していないデータベースに記録する。
【0014】
表示装置300は、コントローラ100から出力される情報を表示する装置であり、エディタ23によって表示される編集画面等を表示する。
【0015】
次に、コントローラ100の各部について説明する。寸法情報検出部11は、設計図面の画像データを取得して、画像データに描かれている寸法情報を検出する。具体的に、寸法情報検出部11は、データベースから設計図面のラスターデータを取得し、OCR(Optical Character Recognition)機械学習アルゴリズムを使用して、ラスターデータに描かれている寸法情報を検出する。
【0016】
図2を参照して、具体的な寸法情報の検出方法を説明する。図2に示すように、OCR機械学習アルゴリズム40は、予め用意された教師データ41を用いて設計図面を学習している。例えば、OCR機械学習アルゴリズムとしては、FOTS(Fast Oriented Text Spotting)という深層学習モデルを利用し、教師データ41としては、CAD図面を512×512のイメージパッチに分割したデータセットを用意する。そして、この教師データ41を用いて、CAD図面に描かれている寸法値等の寸法情報を検出できるように、FOTSを学習させておく。
【0017】
そして、学習済みのOCR機械学習アルゴリズムを利用して寸法情報を検出する。実際にラスターデータから寸法情報を検出する場合には、入力されたCAD図面のラスターデータ42を512×512のイメージパッチに分割し(43)、分割されたラスターデータ44を学習済みのOCR機械学習アルゴリズム(FOTS)45に入力する。ただし、イメージパッチは256ピクセルずつ重複するように分割されている。
【0018】
この結果、OCR機械学習アルゴリズムは、分割された画像毎に寸法値を認識し、認識した寸法値を検出結果とする(45)。そして、分割された画像毎の検出結果をマージして出力する(46)。出力は、CSV(Comma Separated Value)ファイルであり、寸法の数値と位置が記録されている。例えば、図2に示すように、CSVファイルには、「25」や「12.5」等の寸法の数値と、その数値を囲むバウンディングボックスの位置が記録されている。
【0019】
矢印検出部13は、画像データに描かれている矢印を検出する。具体的に、矢印検出部13は、データベースから設計図面のラスターデータを取得し、オブジェクト認識アルゴリズムを使用して、ラスターデータに描かれている矢印の方向と先端の位置を検出する。
【0020】
図3を参照して、具体的な矢印の検出方法を説明する。図3に示すように、オブジェクト認識アルゴリズム50は、予め用意された教師データ51を用いて設計図面を学習している。例えば、オブジェクト認識アルゴリズムとしては、YOLOというオブジェクト認識深層学習モデルを利用し、教師データ51としては、CAD図面を512×512のイメージパッチに分割したデータセットを用意する。そして、この教師データ51を用いて、CAD図面に描かれている矢印を検出できるように、YOLOを学習させておく。
【0021】
そして、学習済みのオブジェクト認識アルゴリズムを利用して矢印を検出する。実際にラスターデータから矢印を検出する場合には、入力されたCAD図面のラスターデータ52を512×512のイメージパッチに分割し(53)、分割されたラスターデータ54を学習済みのオブジェクト認識アルゴリズム(YOLO)55に入力する。ただし、イメージパッチは400ピクセルずつ重複するように分割されている。
【0022】
この結果、オブジェクト認識アルゴリズムは、分割された画像毎に矢印を認識し、認識した矢印の方向と先端の位置を算出して検出結果とする(55)。そして、分割された画像毎の検出結果をマージして出力する(56)。出力は、CSVファイルであり、認識した矢印の方向と先端の位置が記録されている。例えば、図3に示すように、CSVファイルには、矢印を示すラベル「0」と、矢印を囲むバウンディングボックスの位置と、矢印の方向(角度)が記録されている。
【0023】
シンボル検出部15は、画像データに描かれているシンボルを検出する。具体的に、シンボル検出部15は、データベースから設計図面のラスターデータを取得し、オブジェクト認識アルゴリズムを使用して、ラスターデータに描かれているシンボルの位置を検出する。シンボルとしては、例えば穴やねじが検出される。
【0024】
図4を参照して、具体的なシンボルの検出方法を説明する。図4に示すように、オブジェクト認識アルゴリズム60は、予め用意された教師データ61を用いて設計図面を学習している。例えば、オブジェクト認識アルゴリズムとしては、YOLOというオブジェクト認識深層学習モデルを利用し、教師データ61としては、CAD図面を512×512のイメージパッチに分割したデータセットを用意する。そして、この教師データ61を用いて、CAD図面に描かれているシンボルを検出できるように、YOLOを学習させておく。
【0025】
そして、学習済みのオブジェクト認識アルゴリズムを利用してシンボルを検出する。実際にラスターデータからシンボルを検出する場合には、入力されたCAD図面のラスターデータ62を512×512のイメージパッチに分割し(63)、分割されたラスターデータ64を学習済みのオブジェクト認識アルゴリズム(YOLO)65に入力する。ただし、イメージパッチは400ピクセルずつ重複するように分割されている。
【0026】
この結果、オブジェクト認識アルゴリズムは、分割された画像毎にシンボルを認識し、認識したシンボルを検出結果とする(65)。そして、分割された画像毎の検出結果をマージして出力する(66)。出力は、CSVファイルであり、認識したシンボルの種類と位置が記録されている。例えば、図4に示すように、CSVファイルには、シンボルの種類を示すラベル「3」または「4」と、シンボルを囲むバウンディングボックスの位置が記録されている。ラベル「3」はねじを示し、ラベル「4」は穴を示している。
【0027】
ライン検出部17は、画像データに描かれているラインを検出する。具体的に、ライン検出部17は、データベースから設計図面のラスターデータを取得し、ハフ変換等の画像処理を行って、ラスターデータに描かれているラインや円弧の位置を検出する。例えば、図5に示す設計図面では、ラスターデータに描かれているラインの位置をすべて検出する。
【0028】
寸法線生成部19は、矢印検出部13で検出された矢印の位置と、ライン検出部17で検出されたラインの位置に基づいて、矢印とラインを組み合わせて寸法線を生成する。例えば、図5に示すように、矢印A1、A2とラインL1が検出されている場合には、矢印A1、A2の位置とラインL1の位置が重なるので、これらを組み合わせて寸法線DL1を生成する。
【0029】
さらに、寸法線生成部19は、生成された寸法線の位置に対応する寸法値を寸法情報から検出し、検出した寸法値を寸法線に割り当てる。例えば、図5に示すように、寸法情報検出部11で検出された寸法情報の中から、生成された寸法線DL1の位置に対応する寸法値として「25」を検出して寸法線DL1に割り当てる。具体的な寸法値の検出方法としては、寸法線DL1の中点の上に位置する寸法値を検出すればよい。また、寸法線が縦線の場合には、寸法線の中点の左に位置する寸法値を検出すればよい。さらに、寸法線の最も近い位置にある寸法値を検出してもよい。
【0030】
そして、寸法線に寸法値が割り当てられると、寸法線生成部19は、寸法線の長さを、寸法線に割り当てられた寸法値に設定する。例えば、図5に示すように、寸法線DL1に寸法値「25」が割り当てられると、寸法線DL1の長さを25mmに設定する。このようにして、寸法線生成部19は、ラスターデータに描かれている寸法線をすべて生成する。
【0031】
ガイドライン生成部21は、寸法線生成部19で生成された寸法線の端部の位置を示すガイドラインを生成する。具体的に、ガイドライン生成部21は、生成された寸法線の矢印の先端を通り、寸法線に垂直なガイドラインを生成する。例えば、図5に示すように、生成された寸法線DL1の矢印A1、A2の先端を通り、寸法線DL1に垂直なガイドラインGL1、GL2を生成する。ただし、図5に点線で示したガイドラインGL1、GL2は、ラスター画像の線に重なって見えない部分があるが、上下方向に連続して伸びている。このようにして、ガイドライン生成部21は、寸法線生成部19で生成されたすべての寸法線についてガイドラインを生成する。
【0032】
エディタ23は、オペレータが設計図面を作図するための編集機能であり、ガイドライン生成部21で生成されたガイドラインを、入力されたCAD図面のラスターデータに重畳して編集画面上に表示する。例えば、図6に示すように、エディタ23が表示する編集画面上には、入力されたラスターデータのフロントビューV1とトップビューV2とサイドビューV3が表示されている。そして、このラスターデータに重畳させて、縦方向と横方向にそれぞれ多くのガイドラインGLが表示される。
【0033】
この後、オペレータは、ガイドラインGLが表示された編集画面上で、ガイドラインGLを用いてラスターデータに沿って作図する。そして、ラスターデータに描かれている図面を、オペレータが編集画面上ですべて書き終えると、ラスターデータとして入力されたCAD図面を、ベクトルデータ等のデジタルデータに変換することができる。エディタ23は、このベクトルデータを出力する。
【0034】
尚、コントローラ100は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPUを含む汎用の電子回路とメモリ等の周辺機器から構成され、設計図面の画像データをデジタルデータに変換するオペレータの作図作業を支援する機能を有する。コントローラ100の各機能は、1または複数の処理回路によって実装することができる。処理回路は、例えば電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含み、また実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置も含んでいる。
【0035】
[設計図面の作図支援方法]
次に、本実施形態に係る作図支援装置1による設計図面の作図支援方法を説明する。図7は、本実施形態に係る作図支援装置1による作図支援処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0036】
図7に示すように、ステップS101において、エディタ23は編集画面を開き、オペレータが入力部200を介して入力したCAD図面のラスターデータを表示する。このとき、エディタ23は、ラスターデータに描かれているタイトル情報を削除する。例えば、図8に示すように、ラスター画像の下側に、会社名や担当者名、品名等が記載されたタイトル情報81がある場合には、このタイトル情報を予め削除する。具体的に、エディタ23は、ラスター画像の外縁部83に接する四角形の形状を有する領域を検出し、この領域をタイトル情報81であると判断して削除する。これにより、ラスターデータに描かれている不要な情報を削除できるので、処理負荷を軽減して、処理速度を向上させることができる。
【0037】
ステップS103において、寸法情報検出部11は、CAD図面のラスターデータを取得し、ラスターデータに描かれている寸法情報を検出する。具体的に、寸法情報検出部11は、ラスターデータを学習済みのOCR機械学習アルゴリズムに入力して、ラスター画像に描かれている寸法の値と寸法の位置を検出する。
【0038】
ステップS105において、矢印検出部13は、CAD図面のラスターデータを取得し、ラスターデータに描かれている矢印を検出する。具体的に、矢印検出部13は、ラスターデータを学習済みのオブジェクト認識アルゴリズムに入力して、ラスター画像に描かれている矢印の方向と先端の位置を検出する。
【0039】
ステップS107において、シンボル検出部15は、CAD図面のラスターデータを取得し、ラスターデータに描かれているネジや穴等のシンボルを検出する。具体的に、シンボル検出部15は、ラスターデータを学習済みのオブジェクト認識アルゴリズムに入力して、ラスター画像に描かれているシンボルの種類と位置を検出する。
【0040】
ステップS109において、ライン検出部17は、CAD図面のラスターデータを取得し、ラスターデータに描かれているラインを検出する。具体的に、ライン検出部17は、ラスターデータにハフ変換等の画像処理を行って、ラスター画像に描かれているラインや円弧を検出する。
【0041】
尚、ライン検出部17は、検出したラインが水平または垂直でない場合には、ラインを回転移動させて水平または垂直に補正する。ここで、ライン検出部17によるラインの補正処理を説明する。図9は、ライン補正処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0042】
図9に示すように、ステップS201において、ライン検出部17は、ハフ変換を行ってラスター画像に描かれているラインを検出し、ステップS203において、検出したラインの中から、水平方向と垂直方向で最も長いラインを2本ずつ選択する。例えば、図10Aに示すように、検出したラインが曲がっている場合に、水平方向で最も長いラインL11、L12を2本選択し、垂直方向で最も長いラインL13、L14を2本選択する。
【0043】
ステップS205において、ライン検出部17は、ステップS203で選択したラインの交点を検出する。例えば、図10Bに示すように、ステップS203で選択したラインL11~L14を延長して、各ラインの交点P1~P4を検出する。
【0044】
ステップS207において、ライン検出部17は、各ラインの水平方向または垂直方向に対する角度を検出し、検出した角度の分だけラインを逆方向に回転させて、ラインの交点を検出する。例えば、図10Cに示すように、ラインL11が水平方向に対して曲がっている角度を検出し、検出した角度の分だけラインL11を、曲がっている方向と逆方向に回転させる。同様に、ラインL12~L14を回転させ、回転させた後の交点P11~P14を算出する。
【0045】
ステップS209において、ライン検出部17は、ステップS205で検出した交点P1~P4を、ステップS207で算出した交点P11~P14に変換するための透視変換行列を計算する。そして、計算した透視変換行列を用いて画像をアフィン変換することによって、曲がっていたラインを補正する。具体的に、図10Dに示すように、ラインの中点で曲がっている方向と逆方向にラインを回転させることによって、ラインL11~L14を水平または垂直に補正する。これにより、入力されたラスター画像のラインが曲がっている場合であっても、ラインを水平または垂直に補正することができる。
【0046】
図7のフローチャートに戻り、ステップS111において、寸法線生成部19は、ステップS105で検出された矢印の位置と、ステップS109で検出されたラインの位置に基づいて、矢印とラインを組み合わせて寸法線を生成する。例えば、図5に示すように、矢印A1、A2とラインL1が検出されている場合には、これらを組み合わせて寸法線DL1を生成する。
【0047】
ステップS113において、寸法線生成部19は、ステップS111で生成された寸法線の位置に対応する寸法値を寸法情報から検出し、検出した寸法値を寸法線に割り当てる。例えば、図5に示すように、ステップS103で検出された寸法情報の中から、生成された寸法線DL1の位置に対応する寸法値として「25」を検出して、寸法線DL1に割り当てる。
【0048】
そして、寸法線に寸法値が割り当てられると、寸法線生成部19は、寸法線の長さを、寸法線に割り当てられた寸法値に設定する。例えば、図5の場合では、寸法線DL1の長さを、割り当てられた寸法値の25mmに設定する。これにより、寸法線の長さを、割り当てられた寸法値に設定することができるので、正確な長さの寸法線を描くことができる。
【0049】
尚、寸法線生成部19で生成される寸法線の種類としては、図11Aに示すように、一般的な線状の寸法線DL20の他に、矢印と矢印で挟まれた寸法線DL21や斜めの構造線に平行に記載された寸法線DL22等がある。また、図11Bに示すように、寸法線生成部19は、黒丸で表示された点P23からの距離を示す複数の寸法線を含んだ寸法線DL23も生成することができる。寸法線DL23は、点P23からの長さが12mmの寸法線から310mmの寸法線までを含んでいる。したがって、矢印検出部13は、矢印だけではなく黒丸を検出することも可能である。この場合には、寸法線の端部として、黒丸も検出できるように、予め学習させておけばよい。尚、寸法線の端部として、黒丸の代わりに白丸が使用される場合もあるため、矢印検出部13が白丸を検出できるようにしてもよい。
【0050】
ステップS115において、ガイドライン生成部21は、ステップS111で生成された寸法線の端部の位置を示すガイドラインを生成する。具体的に、ガイドライン生成部21は、生成された寸法線の矢印の先端を通り、寸法線に垂直なガイドラインを生成する。例えば、図5に示すように、生成された寸法線DL1の矢印A1、A2の先端を通り、寸法線DL1に垂直なガイドラインGL1、GL2を生成する。
【0051】
ステップS117において、エディタ23は、板厚情報の入力を指示して、オペレータにCAD図面の作成に必要な板厚の数値を入力させる。
【0052】
ステップS119において、エディタ23は、編集画面に表示されているラスター画像からフロントビューのエリアを、オペレータに選択させる。例えば、図6に示すように、編集画面には、フロントビューV1とトップビューV2とサイドビューV3が表示されているので、この中から、オペレータはフロントビューV1のエリア71を選択する。
【0053】
ステップS121において、エディタ23は、編集画面に表示されているラスター画像に重畳させて、ステップS115で生成されたガイドラインを表示する。例えば、図6に示すように、編集画面上のラスター画像に重畳させて、縦方向と横方向にそれぞれ多くのガイドラインGLを表示する。
【0054】
ステップS123において、エディタ23は、フロントビュー以外の2つのエリアに描かれたガイドラインの間の対応を、オペレータに指定させる。例えば、図6に示すサイドビューV3のラインL3上に、オペレータがポインティングデバイスのカーソルを移動させると、エディタ23は、ラインL3に対応するガイドラインGL3を生成する。そして、オペレータがガイドラインGL3と、トップビューV2のガイドラインGL4を選択すると、サイドビューV3のガイドラインGL3とトップビューV2のガイドラインGL4が対応することが指定される。その結果、図12に示すように、トップビューV2の横方向に延びる複数のガイドラインGL20と、サイドビューV3の縦方向に延びる複数のガイドラインGL25が接続される。
【0055】
ステップS125において、エディタ23は、ステップS123で対応することが指定された2つのエリアに描かれた寸法値を対応させる。例えば、図12に示すように、トップビューV2とサイドビューV3が対応することが指定されている場合には、トップビューV2の寸法値をサイドビューV3に転送して、サイドビューV3の寸法値をトップビューV2の寸法値と一致させる。これにより、サイドビューV3に寸法値が記載されていない場合であっても、トップビューV2の寸法値を利用して、正確なサイドビューV3を描くことができる。
【0056】
ステップS127において、オペレータが編集画面上で作図作業を行う。具体的に、オペレータは、編集画面に表示されているラスター画像を見ながら、ガイドラインを利用して作図作業を行う。例えば、オペレータが編集画面上でポインティングデバイスのカーソルをガイドライン上に移動させると、図13に示すように、カーソルが置かれたガイドラインGL30を強調表示する。そして、ガイドラインGL30と交差する他のガイドラインGL32を強調表示し、さらにガイドラインGL30とGL32の交点P34を強調表示する。ここで、オペレータが交点P34を選択すると、交点P34で交差するガイドラインGL30とGL32が選択される。これにより、オペレータは、選択されたガイドラインGL30、GL32をトレースして実線や破線で作図することによって、ラスター画像に描かれた形状を容易に作図することができる。
【0057】
また、オペレータは、寸法線に割り当てられた寸法値を変更することによって、寸法線の長さを変更することができる。例えば、図13において、寸法値「84」を「60」に変更すると、寸法線DL36の長さを60mmに変更することができる。したがって、オペレータは、形状が類似した大きさの異なるパーツを容易に作図することができる。さらに、オペレータは、ラスター画像に描かれたコーナーのカット部分やR部分を作図し、必要に応じて板厚面を指定する。
【0058】
また、ネジや穴などのシンボルについては、オペレータが作図してもよいし、シンボル検出部15が検出したシンボルを利用してもよい。例えば、オペレータが作図する場合には、ガイドラインでシンボルの中心を特定し、その中心にネジや穴などのシンボルに対応する形状を配置すればよい。
【0059】
一方、シンボル検出部15で検出されたシンボルを利用する場合には、シンボル検出部15が編集画面上にシンボルを生成する。図14は、シンボルの生成処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0060】
図14に示すように、シンボル検出部15は、ステップS301において、シンボルの位置を通過するガイドラインを検出し、ステップS303において、シンボルの位置に対応する寸法値を寸法情報から検出する。
【0061】
ステップS305において、シンボル検出部15は、ステップS301で検出されたガイドラインの交点を、シンボルの中心位置に設定する。
【0062】
ステップS307において、シンボル検出部15は、ステップS303で検出した寸法値をシンボルに割り当て、シンボルの大きさを、割り当てられた寸法値に設定する。そして、設定されたシンボルを、ステップS305で設定されたシンボルの中心位置に配置する。これにより、正確な寸法値を有するシンボルを容易に作図することができ、シンボル検出部15が生成したシンボルを利用して、編集画面上にシンボルを表示することができる。
【0063】
このようにしてオペレータが編集画面上で作図作業を行い、ラスター画像に描かれている図面をすべて書き終えると、オペレータは自動寸法確認機能を使用して寸法を検証した後に作図作業を終了する。
【0064】
ステップS129において、エディタ23は、編集画面上で作図されたベクトルデータをエキスポートして、本実施形態に係る設計図面の作図支援処理を終了する。
【0065】
[実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る作図支援装置1では、画像データに描かれている矢印とラインを組み合わせて寸法線を生成し、寸法線の位置に対応する寸法値を寸法情報から検出し、検出した寸法値を寸法線に割り当てる。そして、寸法線の端部の位置を示すガイドラインを生成し、ガイドラインを画像データに重畳して編集画面上に表示し、ガイドラインが表示された編集画面上で、オペレータが作図した設計図面のデジタルデータを出力する。これにより、オペレータは編集画面上でガイドラインを利用して設計図面を作図できるので、作業時間を短縮することができ、作業ミスが発生する可能性を低くすることができる。
【0066】
また、本実施形態に係る作図支援装置1では、寸法線の長さを、寸法線に割り当てられた寸法値に設定する。これにより、寸法線の長さを、割り当てられた寸法値に設定することができるので、正確な長さの寸法線を描くことができる。
【0067】
さらに、本実施形態に係る作図支援装置1では、オペレータが編集画面上でポインティングデバイスのカーソルをガイドライン上に移動させると、ガイドラインと他のガイドラインが交差する交点をコントローラが強調表示する。そして、オペレータが交点を選択すると、交点で交差するガイドラインが選択される。これにより、オペレータは、選択されたガイドラインをトレースして作図することによって、ラスター画像に描かれた形状を容易に作図することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る作図支援装置1では、オペレータが編集画面上でフロントビューのエリアを選択し、フロントビュー以外の2つのエリアに描かれたガイドラインの間の対応を指定すると、フロントビュー以外の2つのエリアに描かれた寸法値を対応させる。これにより、例えば、サイドビューに寸法値が記載されていない場合であっても、トップビューの寸法値を利用して、正確なサイドビューを描くことができる。
【0069】
さらに、本実施形態に係る作図支援装置1では、検出されたラインが水平または垂直でない場合には、ラインを回転移動させて水平または垂直に補正する。これにより、入力されたラスター画像のラインが曲がっている場合であっても、ラインを水平または垂直に補正することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る作図支援装置1では、画像データに描かれたタイトル情報を削除する。これにより、画像データに描かれている不要な情報を削除できるので、処理負荷を軽減して、処理速度を向上させることができる。
【0071】
さらに、本実施形態に係る作図支援装置1では、寸法線に割り当てられた寸法値を変更することによって、寸法線の長さを変更する。これにより、オペレータは、形状が類似した大きさの異なるパーツを容易に作図することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る作図支援装置1では、画像データに描かれているシンボルを検出し、シンボルの位置に対応する寸法値を寸法情報から検出し、検出した寸法値をシンボルに割り当て、シンボルの大きさを、シンボルに割り当てられた寸法値に設定する。これにより、正確な寸法値を有するシンボルを容易に作図することができる。
【0073】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
1 作図支援装置
11 寸法情報検出部
13 矢印検出部
15 シンボル検出部
17 ライン検出部
19 寸法線生成部
21 ガイドライン生成部
23 エディタ
81 タイトル情報
83 外縁部
100 コントローラ
200 入力部
300 表示装置
DL1、DL20~DL23、DL36 寸法線
GL、GL1~GL4、GL20、GL25、GL30、GL32 ガイドライン
L1、L3、L11~L14 ライン
V1 フロントビュー
V2 トップビュー
V3 サイドビュー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12
図13
図14
【国際調査報告】