(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】出口端で液を誘導するための、特に三相流動床反応器のためのゾーンを有する気-液分離デバイス
(51)【国際特許分類】
B01J 8/22 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B01J8/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536371
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022085197
(87)【国際公開番号】W WO2023117497
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】アンブラール バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】バルツ ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ブラエム リム
(72)【発明者】
【氏名】マルケス ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン-ジュノ ヴァネッサ
(72)【発明者】
【氏名】アルト-ムハンド ドリス
(72)【発明者】
【氏名】ル コズ ジャン-フランソワ
【テーマコード(参考)】
4G070
【Fターム(参考)】
4G070AA05
4G070AB06
4G070BB32
4G070CA09
4G070CA12
4G070CA16
4G070CB17
4G070CC02
4G070CC11
4G070CC20
4G070DA22
(57)【要約】
本発明は、気-液分離デバイス、特に三相流動床反応器の再循環ゾーンにおける使用のための気-液分離デバイスに関する。気-液分離デバイスは、複数の分離エレメントを含み、それぞれ、入口ダクト(70)と、連続の少なくとも2個の曲がり部(71、72)とを有し、第1の曲がり部(71)は、平面(zy)内に位置し、第1の曲がり部(71)の軸は、垂直軸zに相対する配向角α:45°~315°を形成し、第2の曲がり部(72)は、第1の曲がり部(71)と第2の配向角β:1°~135°を形成する。2個の第1の連続の曲がり部(71、72)は、D/2~4Dの距離D1だけ離間されており、Dは、入口ダクト(70)の径である。各分離エレメントは、液誘導デバイス(73)を含み、これは、第2の曲げ部(72)の出口端に配置され、開口断面を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分離エレメント(27)および(28)を含んでいる気-液分離デバイスであって、当該分離エレメントは、並行して操作し、垂直に設置され、各分離エレメント(27、28)は、気-液混合物を入れるための入口パイプ(70)と、連続の少なくとも2個の曲がり部(71、72)とを有し、第1の曲がり部(71)は、実質的に垂直なz軸、およびz軸に垂直な平面(xy)に属するy軸によって規定される平面(zy)内に位置し、第1の曲がり部(71)の軸は、垂直なz軸に対する第1の配向角度α:45°~315°、好ましくは60°~300°、好ましくは80°~200°によって規定され、第2の曲がり部(72)の軸は、第1の曲がり部(71)の軸との第2の配向角度β:1°~135°、好ましくは10°~110°、好ましくは30°~100°を形成し、第1の曲がり部(71)および第2の曲がり部(72)は、D/2と4Dとの間、好ましくはD/2と2Dとの間の距離D1によって分離されており、Dは、入口パイプ(70)の径であり、各分離エレメント(27、28)は、液誘導デバイス(73)を含み、液誘導デバイス(73)は、連続の少なくとも2個の曲がり部の最後の曲がり部の出口端に配置されており、液誘導デバイス(73)は、液誘導デバイスに沿って幅広く、この液誘導デバイス内の流体の流通の方向に、入口断面(Se)から出口断面(So)まで開いており、液誘導デバイス(73)の出口断面(So)は、液誘導デバイスの入口断面(Se)の垂直下方に配置されていることを特徴とする気-液分離デバイス。
【請求項2】
第2の曲がり部(72)が形成する平面(zy)との角度は、1°~90°、好ましくは1°~45°、より好ましくは1°~20°である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
液誘導デバイス(73)は、少なくとも1個のデフレクタ(78)および/または少なくとも1個のスロット(79)を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
液誘導デバイス(73)は、液誘導デバイスの中立線に対して、開口角度(ω)60°~179°、好ましくは90°~150°、より好ましくは100°~130°で開いている、請求項1~3のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項5】
液誘導デバイス(73)の垂直高さ(H)は、D/2と8Dとの間、好ましくは2Dと5Dとの間である、請求項1~4のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項6】
液誘導デバイス(73)の入口断面(Se)および液誘導デバイス(73)の出口断面(So)は、平面(x、y)内で、回転の角度(Υ)を形成し、前記回転の角度(Υ)は、45°~200°、好ましくは90°~180°である、請求項1~5のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項7】
液誘導デバイス(73)の出口断面(So)は、楕円形プロファイル、または直線区分を形成する平坦プロファイルを有する、請求項1~6のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項8】
水素の存在中、高圧下での重質炭化水素留分の水素化転化のための三相流動床反応器であって、該反応器は、リサイクルゾーン(39)を含んでおり、リサイクルゾーン(39)は、反応器の上半球から組み立てられ、その下部において、分離された液が触媒ゾーンに戻ることを可能にするように構成された表面によって区切られており、リサイクルゾーン(39)は、請求項1~7のいずれか1つに記載の気-液分離デバイスを含んでいる、三相流動床反応器。
【請求項9】
操作条件は、以下の通りである、請求項1~8のいずれか1つに記載の気-液分離デバイスを用いた重質炭化水素留分の三相流動床水素化転化のための方法:
- 絶対圧力は、2MPa~35MPa、好ましくは5MPa~25MPa、より好ましくは6MPa~20MPaである、および
- 温度は、300℃~550℃、好ましくは350~500℃、より好ましくは370°~430℃であり、恵まれた温度範囲は、380℃~430℃にある。
【請求項10】
各入口パイプ(70)の内側で考慮される上向き流の表面速度は、0.1m/s~20m/s、好ましくは0.2m/s~15m/s、より好ましくは0.3m/s~10m/sである、請求項10に記載の重質炭化水素留分の三相流動床水素化転化のための方法。
【請求項11】
入口パイプ内の液の容積分率は、0.05~0.95、好ましくは0.1~0.8、より好ましくは0.3~0.6である、請求項10または11に記載の重質炭化水素留分の三相流動床水素化転化のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応器の上部ゾーン(液リサイクルゾーン、またはより簡単にはリサイクルゾーンとしばしば称される)内でより良好な気-液分離を得るために、H-Oil(登録商標)法においてとりわけ用いられる気-液分離器の設計を改善することにある。
【0002】
H-Oil(登録商標)法は、残渣または真空ガスオイルのタイプの重質炭化水素留分の水素化転化のための方法であり、これは、したがって、液状炭化水素相、泡の形態で分散した水素ガス相、および粒子サイズが典型的には0.2~2ミリメートルである固体粒子の形態で分散した触媒自体をまとめる。
【0003】
H-Oil(登録商標)法は、したがって、専用反応器を用いる三相流動方法である。この反応器は、反応器の上部に位置する気-液分離デバイスを備えており、液のリサイクルを可能にし、この液は、分離の後に、反応器の反応ゾーンに戻される。H-Oil(登録商標)タイプの反応器の有意な特徴の1つは、リサイクルされた液の流量対入ってくる液状供給原料の流量の比として定義されるそれらの高い液リサイクル率にあり、これは、一般に1~10の範囲内にある。
【0004】
本発明は、改善された気-液分離デバイス、とりわけH-Oil(登録商標)タイプの反応器のための気-液分離デバイスであると定義され得、これは、液の大部分を、ガスなしで、反応ゾーンに再導入することを可能にし、ガス(および液の一部も)は、反応器から除去され、気-液界面での乱流および発泡効果を制限する。
【0005】
しかしながら、気-液分離デバイスは、他の用途に用いられ得る。
【背景技術】
【0006】
特許出願(特許文献1)が知られており、らせんの回転数および水平位置に対する角度によってH-Oil(登録商標)法における気-液分離に関する「スパイラルライザ」(または「サイクロンセパレータ」)の概念が記載されている。
【0007】
当該特許出願に記載された「リサイクルカップ」は、反応器の上部に相当し、この反応器により、ガスおよび液の分離の後に、液が反応器の反応ゾーンに戻り、ガスが専用のパイプによって除去されることが可能となる。
【0008】
本文の残りの部分では、上部液リサイクルゾーン、またはより簡単には、リサイクルゾーンという表現が用いられることになる。
【0009】
特許文献1には、反応器の頂部に気-液除去パイプを有する上部リサイクルゾーンの配置も記載されている。
【0010】
図1は、従来技術によるH-Oil(登録商標)反応器、例えば、特許文献1におけるもののキーエレメントを示す代表的なダイアグラムである。この図は、触媒を含有している三相流動床に相当する反応ゾーン(22)、触媒ゾーンの上方に位置し、気-液分離ゾーン(39)と称されるゾーンを示しており、ゾーン(39)により、液が再循環ポンプ(20)によって反応器の下部にリサイクルされることが可能となる。
【0011】
気-液分離デバイスは、分離エレメント(27)および(28)によって表され、いくつかのエレメントは、気-液分離ゾーン(39)に位置するそれらの下端を有し、他のエレメントは、「リサイクルカップ」(30)の表面上に位置するそれらの下端を有する。
【0012】
三相流動床反応器(10)は、反応性液、液体/固体「スラリー」(つまり、懸濁液、つまり、それらの中に分散した微細な固体粒子を含有している液体)、固体およびガスを高温高圧でそれが処理することを可能にする適切な材料により特別に設計されており、高温高圧、すなわち、2MPa~35MPa、好ましくは5MPa~25MPa、より好ましくは6MPa~20MPaの絶対圧力、および300℃~550℃、好ましくは350℃~500℃、より好ましくは370℃~460℃の温度での液状炭化水素留分の水素による処理において好適な用途を有し、恵まれた温度範囲は、380℃~440℃にある。
【0013】
H-Oil(登録商標)タイプの三相流動床反応器(10)が設計され、これは、重質炭化水素供給原料(11)および水素を含有しているガス(13)を注入するための適切な入口パイプ(12)を有している。出口パイプは、反応器(10)の上部に配置されている。出口パイプ(40)は、一定量の液を含有する場合がある蒸気を抜き出すように設計されており、選択肢として、パイプ(24)は、主に液が抜き出されることを可能にする。反応器は、触媒粒子が導入されかつ抜き出されることを可能にするシステムも含有し、このシステムは、フレッシュな触媒(16)を導入するためのパイプ(15)、および使用済み触媒(14)を抜き出すためのパイプ(17)に概略的に相当する。
【0014】
重質炭化水素供給原料は、パイプ(11)を通して導入される一方で、水素を含有しているガスは、パイプ(13)を通して導入される。供給原料およびガス状水素の混合物は、次いで、反応器(10)内にパイプ(12)を通って反応器の下部に導入される。
【0015】
入ってくる流体は、適切な分配器を含しているプレート(18)を通過する。
【0016】
このダイアグラムにおいて、「泡キャップ」タイプの分配器(19)が示されているが、パイプ(12)から来る流体が反応器(10)の表面全体にわたって、かつ可能な限り均一に分配されることを可能にする、当業者に知られている任意の分配器が用いられることができることを理解されるべきである。
【0017】
気-液混合物は、上向きに流れ、触媒の粒子は、反応器(10)の内部または外部にある場合がある再循環ポンプ(20)によって誘発されるガス流および液流によって沸騰床運動に同伴させられる。
【0018】
ポンプ(20)によって送達される液の上向き流は、反応ゾーン内の触媒床または触媒床(22)の容積が、触媒床の静的容積(つまり、静止状態にある容積)に対して最低10%、好ましくは20~100%拡大するために十分であり、それ故に、ガスおよび液が、方向矢印(21)によって示されるように、反応器(10)中を流れることを可能にする。
【0019】
液およびガスの上向き流によって発生する摩擦力と、下向きの重力との間の平衡のために、触媒粒子の床は、拡大の上位レベルに達する一方で、液およびガス(より軽質である)は、この固体レベルを超えて反応器(10)の頂部に向かって進み続ける。ダイアグラムにおいて、触媒の最大拡大のレベルは、界面(23)に相当する。この界面(23)の下方に、触媒反応ゾーン(22)があり、これは、したがって、プレート(18)からレベル(23)まで広がり、触媒を含む。
【0020】
界面(23)の上方に、ガスおよび液のみを含有しているゾーン(39)がある。触媒反応ゾーン(22)内の触媒の粒子は、流動状態でランダムに移動し、このことは、触媒反応ゾーン(22)が、三相流動ゾーンとして適格である理由である。
【0021】
界面(23)のレベルより上の低濃度の触媒を含有しているゾーン(29)は、液および同伴されたガスで満たされている。ガスは、「リサイクルゾーン」(39)と称される反応器の上部内で液から分離され、リサイクルカップ(30)の底部にある中央出口ダクト(25)を通して液の大部分を収集し、かつリサイクルする。リサイクルカップ(30)の(漏斗としての)形状により、ガスと液との間の分離の後に液が収集され、中央出口ダクト(25)に運ばれることが可能になる。ポンプ(20)内のキャビテーションの現象を回避するために、中央出口ダクト(25)を通してリサイクルされる液は、できるだけ少ないガスを含有するか、さらにはガスを全く含まないことは重要である。
【0022】
気-液分離の後に残っている液状生成物は、パイプ(24)を通して抜き出され得る。パイプ(40)は、ガスを抜き出すために用いられる。
【0023】
パイプ(25)の上端にある拡大された部分は、液リサイクルゾーンを形成する。複数の垂直に方向づけられた分離エレメント(27)および(28)は、気-液ゾーン(29)とリサイクルゾーン(39)との間の接続を作り出す。
【0024】
気-液混合物は、分離エレメント(27)および(28)のパイプを通って上向きに流れる。分離された液のいくらかは、次いで、中央出口ダクト(25)を通って矢印(31)の方向で再循環ポンプ(20)に向けられ、したがって、プレート(18)の下の反応器(10)の下部にリサイクルされる。
【0025】
液から分離されたガスは、反応器(10)の上部に向かって流れ、上部パイプ(40)によって抜き出される。抜き出されたガス(40a)は、次いで、従来の方法で処理されて、可能な限り多くの水素を回収し、水素は、パイプ(13)を通して反応器にリサイクルされる。
【0026】
特許出願(特許文献2)も知られており、これは、H-Oil(登録商標)タイプの三相流動床反応器用の改善された気-液分離デバイスに関する。この気-液分離デバイスは、
図2および
図3におけるように、連続した2つの曲げ部で終わり、液相および気相の分離を改善する。
【0027】
図2は、反応器、例えば、
図1における反応器における特許文献2のリサイクルゾーン(39)のより正確なダイアグラムである。
【0028】
図2は、液リサイクルゾーンを示しており、このゾーンは、中央出口ダクト(25)で終わり、気-液分離の後に、液を、再循環ポンプを介して反応器の下部に戻す。気-液分離エレメント(27)および(28)は、リサイクルゾーンの円錐表面(30)に沿って設置される。気-液混合物は、入口パイプ(70)を介して入れられる。気-液分離は、分離デバイス(55)内で起こる。各分離デバイス(55)は、したがって、気-液混合物を入れるための管状入口エレメント(70)からなり、
図3に図示されるように、2つの相異なる平面内に位置する連続の2個の曲がり部で終わる:
- (yz)で示される第1の平面は、x軸に対して垂直であり、
- (xy)で示される第2の平面は、z軸に対して垂直である。
【0029】
連続の2つの曲がり部の間の遷移部では垂直方向に高さはない。第1の曲がり部の垂直測定値(z軸に沿う)と第2の曲がり部の垂直測定値(z軸に沿う)とは、実質的に同じである。「実質的に」は、気-液混合物入口パイプ(70)の径の値Dを超えない垂直オフセットを意味すると理解される。
【0030】
円錐壁(30)に沿って分離エレメントを離れた後に流れる液は、中央出口ダクト(25)によって収集され、ガスは、各分離エレメント(27)および(28)の第2の曲がり部の出口によって除去される。ガスは、したがって、気-液界面(24)の上に位置する分離ゾーン(39)の上部ゾーン(39v)を占め、出口パイプ(67)を介して反応器を離れる。
【0031】
ガスおよび液は、
図2における方向矢印(41)で示されるように上向きに流れ、入口パイプ(70)を通って導入され、そこで、それらは、第1の曲がり部および分離エレメント(27)および(28)を終える第2の曲がり部における各場合において約90°の方向変化を経験する。
【0032】
気-液界面レベル(24)は、分離されたガスを主に含有する上部(39v)をリサイクルされた液を主に含有する下部(39L)から分離する。分離エレメント(27)および(28)の第2の曲がり部から出た種々の分離済み液(45)は、円錐壁(30)を介して下向きに流れ、中央出口ダクト(25)によって収集され、再循環ポンプ(示さず)によって回収される。
【0033】
液(31)の大部分は、したがって、中央出口ダクト(25)を通して再循環ポンプにリサイクルされる。ガスおよび少量の液(67)は、パイプ(40)を通して抜き出される。パイプ(40)は、一般に、スロット(65)をその下端に有し、スロット(65)により、液気界面(24)の高さを固定することが可能になる。
【0034】
図3は、特許文献2による気-液分離デバイスの幾何学的形状を示しており、このデバイスの寸法を示すためのキーとなる幾何学的寸法を示している。
【0035】
各分離エレメントの入口パイプ(70)の径は、一般に、0.02m~0.5m、好ましくは0.05m~0.4m、好ましくは0.1m~0.3mである。
【0036】
図1における方向矢印(41)によって表される上向き流液の表面速度は、一般に、0.1m/s~20m/s、好ましくは0.2m/s~15m/s、好ましくは0.3m/s~10m/sである。
【0037】
平面(yz)内に位置する第1の曲がり部は、その角度αによって規定されるその向きを有する。角度αの値は、45°~315°、好ましくは60°~300°、好ましくは80°~200°である。
【0038】
平面(xy)内に位置する第2の曲がり部は、その角度βによって規定されるその向きを有する。角度βの値は、0°~135°、好ましくは10°~110°、好ましくは30°~100°である。
【0039】
気-液界面(24)と、平面(xy)内の第2の曲がり部との間の高さH1は、Dと10Dとの間、好ましくは2Dと5Dとの間にあり、Dは、パイプ(70)の径である。
【0040】
連続の2つの曲がり部を分ける距離D1は、D/2と4Dとの間、好ましくはD/2とDとの間であり、Dは、パイプ(70)の径である。
【0041】
図2および3における分離デバイスは、数多くの利点を有するものの、それは、乱流を発生させ、回避されるべきである泡も生じさせ得る。
【0042】
本発明は、それ故に、気-液分離デバイスによって発生する乱流を制限し、泡の発生を最小限にすることにある。これにより、反応器に再導入されるためにポンプに再循環される液による気泡の同伴のリスクがこのように最小限になり、これらの泡は、ポンプ内でキャビテーションを発生させやすく、これは、ポンプを損傷し、その耐用年数を制限し得る。
【0043】
これを行うために、本発明は、気-液分離デバイス、とりわけ、水素の存在中、高圧下の重質炭化水素留分の水素化転化のための方法において用いられる三相流動床反応器のリサイクルゾーンに設置されるためのデバイスに関し、リサイクルゾーンは、反応器の上半球から作り上げられ、分離された液が触媒ゾーンに戻ることを可能にするように構成された表面によってその下部で区切られている。本発明による気-液分離デバイスは、複数の分離エレメントを含み、当該分離エレメントは、並行して操作し、垂直に、好ましくは、分離された液が触媒ゾーンに戻ることを可能にするように構成された表面から設置され、または、デバイスが三相流動床反応器のリサイクルゾーンに設置される場合にはこの表面を通過し、各分離エレメントは、気-液混合物を入れるための(個々の)入口パイプを有する。好ましくは、気-液分離デバイスが三相流動床反応器のリサイクルゾーンに設置される場合、各分離エレメントは、分離された液が触媒ゾーンに戻る(つまり、リサイクルされる)ことを可能にするように構成された(例えば、円錐または半球形の)表面に開いていることができ、各分離エレメントは、分離ゾーン内で高さHまで上昇する。
【0044】
さらに、各分離エレメントは、連続の少なくとも2個の曲がり部を含み、当該曲がり部は、入口パイプの出口に(流体の流れの方向に)配置(固定)され、第1の曲がり部は、実質的に垂直なz軸およびz軸に垂直な平面(xy)に属するy軸によって規定される平面(zy)内に位置し、第1の曲がり部の軸は、垂直なz軸に対する第1の配向角度α:45°~315°、好ましくは60°~300°、好ましくは80°~200°によって規定され、第2の曲がり部の軸は、第1の曲がり部の軸と第2の配向角度β:1°~135°、好ましくは10°~110°、好ましくは30°~100°を形成し、連続の2個の曲がり部(したがって、第1の曲がり部と第2の曲がり部)は、D/2と4Dとの間、好ましくはD/2と2Dとの間の距離D1によって分離されており、Dは、入口パイプの径である。さらに、各分離エレメントは、液誘導デバイスを含み、液誘導デバイスは、連続の少なくとも2個の曲がり部の最後の曲がり部の出口端に配置されており、システムが垂直軸上にあり(つまり、入口パイプが垂直である場合)、かつ、液誘導デバイスの出口断面が液ガイドデバイスの入口断面の垂直下方に配置されている場合、液誘導デバイスは、入口断面から出口断面まで液誘導デバイスの全体にわたって、頂部に開いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】米国特許第4886644号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/270941号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0046】
(発明の概要)
本発明は、気-液分離デバイスに関し、当該気-液分離デバイスは、複数の分離エレメントを含み、当該分離エレメントは、並行して操作し、垂直に設置され、各分離エレメントは、気-液混合物を入れるための入口パイプと、連続の少なくとも2個の曲がり部とを有し、第1の曲がり部は、実質的に垂直なz軸、およびz軸に垂直な平面(xy)に属するy軸によって規定される平面(zy)内に位置し、第1の曲がり部の軸は、垂直なz軸に対する第1の配向角度α:45°~315°、好ましくは60°~300°、好ましくは80°~200°によって規定され、第2の曲がり部の軸は、第1の曲がり部の軸との第2の配向角度β:1°~135°、好ましくは10°~110°、好ましくは30°~100°を形成し、第1の曲がり部および第2の曲がり部は、D/2と4Dとの間、好ましくはD/2と2Dとの間の距離D1によって分離されており、Dは、入口パイプの径である。さらに、各分離エレメントは、液誘導デバイスを含み、液誘導デバイスは、連続の少なくとも2個の曲がり部の最後の曲がり部の出口端に配置されており、液誘導デバイスは、その全長にわたって、その入口断面からその出口断面まで(流体を分配するためのデバイスに沿って幅広く)、流体を分配するためのこのデバイス内の流体の流通の方向に開いており、液誘導デバイスの出口断面は、液誘導デバイスの入口断面の垂直下方に配置されている。
【0047】
好ましくは、気-液分離デバイスは、水素の存在中、高圧下での重質炭化水素留分の水素化転化のための方法において用いられる三相流動床反応器のリサイクルゾーンに設置されるように構成され、リサイクルゾーンは、反応器の上半球から組み立てられ、分離された液が触媒ゾーンに戻ることを可能にするように構成された表面によってその下部において区切られており、最後の曲がり部の出口端をリサイクルゾーン内の気-液界面から分離する距離は、Dと10Dとの間、好ましくは2Dと5Dとの間である。
【0048】
有利には、第2の曲がり部が形成する平面(zy)との角度は、1°~90°、好ましくは1°~45°、より好ましくは1°~20°である。
【0049】
本発明の1つの構成によると、液誘導デバイスは、少なくとも1個のデフレクタおよび/または少なくとも1個のスロットを含む。
【0050】
好ましくは、液誘導デバイス(液誘導デバイスのパイプ部分)は、中位線に対して、60°~179°、好ましくは90°~150°、より好ましくは100°~130°の開口角度で開いている。換言すれば、液誘導デバイスの各断面は、液誘導デバイスに沿って、その入口断面からその出口断面まで、この断面の終点(定義によって開いており、誘導デバイスは、頂部に開いている)とこの断面の中位軸の中心との間で、開口角度:60°~179°、好ましくは90°~150°、より好ましくは100°~130°を形成する。
【0051】
有利には、液誘導デバイスの垂直高さは、D/2と8Dとの間、好ましくは2Dと5Dとの間である。
【0052】
本発明の1つの実施態様によると、液誘導デバイスの入口断面および液誘導デバイスの出口断面は、平面(x,y)内に回転の角度を形成し、前記回転の角度は、45°~200°、好ましくは90°~180°である。
【0053】
好ましくは、液誘導デバイスの出口断面は、楕円形プロファイル、逆楕円形プロファイルまたは平坦プロファイルを有する(出口断面は、直線区分を形成する)。
【0054】
本発明は、水素の存在中、高圧下の重質炭化水素留分の水素化転化のための三相流動床反応器にも関し、当該反応器は、リサイクルゾーンを含み、当該リサイクルゾーンは、反応器の上半球から組み立てられ、その下部において、分離された液が触媒ゾーンに戻ることを可能にするように構成された表面によって区切られており、リサイクルゾーンは、上記のような気-液分離デバイスを含んでいる。
【0055】
本発明は、気-液分離デバイスを用いる重質炭化水素留分の三相流動床水素化転化のための方法にも関し、当該方法において、操作条件は、以下の通りである:
- 絶対圧力:2MPa~35MPa、好ましくは5MPa~25MPa、より好ましくは6MPa~20MPa、および
- 温度:300℃~550℃、好ましくは、350~500℃、より好ましくは、370°~430℃の温度;恵まれた温度範囲は、380℃~430℃にある。
【0056】
有利には、各入口パイプ内の上向き流の表面速度は、0.1m/s~20m/s、好ましくは0.2m/s~15m/s、より好ましくは0.3m/s~10m/sである。
【0057】
好ましくは、入口パイプ内の液の容積分率は、0.05~0.95、好ましくは0.1~0.8、より好ましくは0.3~0.6である。
【0058】
本発明による分離デバイス、反応器および方法の他の特徴および利点は、以下に説明される添付の図面を参照して、非限定的な例示的実施形態の以下の説明を読むと明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0059】
(図面のリスト)
図1は、従来技術による気-液分離デバイスを有する三相流動床反応器を示す。
【0060】
図2は、従来技術による連続の2個の曲がり部を有する三相流動床反応器内の気-液分離デバイスを示す。
【0061】
図3は、従来技術による2個の曲がり部を有する気-液分離デバイスを示す。
【0062】
図4は、本発明による液誘導デバイスを有する気-液分離デバイスを示す。
【0063】
図5は、本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの第1の例を示す。
【0064】
図6は、本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの異なる変形を図示する。
【0065】
図7は、本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの入口断面を示す。
【0066】
図8は、本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの半楕円形の出口断面の第1の例を示す。
【0067】
図9は、本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの逆半楕円形の出口断面の第2の例を示す。
【0068】
図10は、本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの平坦な出口断面の第3の例を示す。
【0069】
図11は、従来技術による2個の曲がり部で終わる気-液分離デバイスa)と本発明による液誘導デバイスを有する気-液分離デバイスb)との間の気-液界面での液体容積分率のプロファイルの比較を示す。
【0070】
(実施形態の説明)
本発明は、気-液分離デバイス、とりわけ、水素の存在中、高圧下での重質炭化水素留分の水素化転化のための方法において用いられる三相流動床反応器のリサイクルゾーンに設置されるための気-液分離デバイスに関し、前記方法は、H-Oil(登録商標)の名称下に知られている。
【0071】
本デバイスは、気-液分離の必要性を有する任意のタイプの設備において用いられ得る。
【0072】
気-液分離デバイスは、ガスと液との間の分離が必要である他のシステム、例えば、ISS(Internal Stage Separator)タイプまたはHHPS(Hot and High Pressure Separator)タイプの分離器において用いられることもでき、これらの分離器は、重質炭化水素留分の水素化転化のための方法において用いられる。
【0073】
三相流動床反応器のリサイクルゾーンにデバイスが設置される場合、
図1に示される流体の流通の機構は、上記のような従来技術に対して本発明において改変されない。改変された唯一のものは、
図1における分離エレメント(27)および(28)の幾何学形状である。
【0074】
表現「三相流動床方法」は、三相が反応ゾーン中に存在する方法を意味すると理解される:一般に処理対象の供給原料を構成する液相;高圧下にあり、一般に水素である気相;および固体粒子に分割された触媒に相当し、径が、通常、0.2mm~2mm、好ましくは0.7mm~1.5mmである固相。
【0075】
気-液分離デバイスが設置され得る三相流動床反応器は、リサイクルゾーンを含み、当該リサイクルゾーンは、反応器の上半球から組み立てられ、その下部において、分離された液が触媒ゾーンに戻ることを可能にするように構成された表面によって、例えば、分離された液が収集されることを可能にする中央出口ダクトを介して区切られる。分離された液が触媒ゾーンに戻ることを可能にするように構成された表面は、例えば、円錐または半球形であってよい。
【0076】
三相流動床反応器のリサイクルゾーンは、それ故に、ガスを含んでいる上部と、液を含んでいる下部とに分割される。操作中の反応器において、これら2個のゾーンは、気-液界面によって分離されている。
【0077】
気-液分離デバイスは、複数の分離エレメントを含み、当該分離エレメントは、並行して操作し、垂直に(好ましくは、分離された液が触媒ゾーンに戻ることを可能にするように構成された表面から、またはデバイスが三相流動床反応器のリサイクルゾーンに設置される場合にはこの表面を通過する)設置され、各分離エレメントは、気-液混合物の下向き流のために構成された気-液混合物を入れるための入口パイプ(デバイスが三相流動床反応器のリサイクルゾーンに設置された場合には、好ましくは、分離された液が触媒ゾーンに戻ることを可能にするように構成された表面で開いており、分離ゾーンの内側で高さHに上昇する)と、連続の少なくとも2個の曲がり部とを有し、連続の曲がり部は、互いに固定されている。入口パイプは、実質的に垂直である。連続の曲がり部は、分離エレメント内の気-液混合物の流通の方向で入口パイプの出口に配置・固定されている。用語「第1」、「第2」、「第3」、「第4」、「次」、「前」または「最後」は、それらが「曲がり部」と関連づけられる場合に、連続の少なくとも2個の曲がり部内の流体の流通の方向で理解される。それ故に、第1の曲がり部は、流体(気-液混合物)の流通の方向で、流体によって第1に通されるものであることになる。連続の少なくとも2個の曲がり部は、入口パイプの出口に配置され、入口パイプを出る流体が連続の曲がり部を通過することを強制するようにする。連続の少なくとも2個の曲がり部中の通過により、液とガスの効果的な分離が可能となる。
【0078】
「凹形の」表面は、中空を形成する表面、つまり、内側に向かって丸くなった形状を意味すると理解される。「凸形の」表面は、曲面、つまり、外側に向かって丸くなった形状を意味すると理解される。
【0079】
用語「垂直」、「水平」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「頂部」および「底部」は、(操作状況にある)操作状況にある気-液分離デバイスに関連して理解される。
【0080】
本説明において、垂直軸は、上方を向いていると考慮される;本説明において考慮される角度は、したがって、垂直軸のこの上向きの配向に対して与えられる。
【0081】
第1の曲がり部は、実質的に垂直なz軸、およびz軸に垂直な平面(xy)に属するy軸によって規定される平面(zy)内に位置する。換言すれば、平面(zy)は、実質的に垂直な平面であり、平面(xy)は、実施的に水平な平面である。第1の曲がり部の軸は、(入口パイプの軸に実質的に相当する)垂直なz軸に対する第1の配向角度α:45°~315°、好ましくは60°~300°、好ましくは80°~200°によって規定される。第1の曲がり部は、入口パイプの出口で固定されている。
【0082】
第2の曲がり部は、第1の曲がり部に(入口パイプに固定されたものと反対側の端部で)固定されている。換言すれば、それは、第1の曲がり部の継続中にある。第2の曲がり部の軸は、第1の曲がり部の軸と第2の配向角度βを形成する。第2の配向角度βは、1°~135°、好ましくは10°~110°、好ましくは30°~100°である。好ましくは、第2の曲がり部は、平面(zy)と非ゼロの角度を形成する平面内にあり、例えば、第2の曲がり部は、実質的に水平な平面(xy)内にあってよい。それ故に、第1および第2の曲がり部は、同一平面上にない。互いに交差する2つの平面内でこれらの2個の連続の曲がり部(つまり、第1および第2の曲がり部)を用いることによって、液とガスの分離が促進される。さらに、これらの2つの連続の曲がり部は、D/2と4Dとの間、好ましくは、D/2と2Dとの間の距離D1によって分離されており、Dは、入口パイプの径である。
【0083】
本発明の1つの実施態様によると、本発明の気-液分離デバイスは、10~50個の分離エレメント、好ましくは20~40個の分離エレメントを含んでよく、液とガスを分離するための能力を改善する。分離エレメントの数は、とりわけ、処理対象の流量に依存する。
【0084】
さらに、各分離エレメントは、液誘導デバイスを含み、これは、シュートの形態をとる場合がある。この液誘導デバイスの目的は、液を、出口(例えば、三相流動床反応器の中央出口ダクト)に向かって穏やかに運ぶことにある。液誘導デバイスは、連続の少なくとも2個の曲がり部の最後の曲がり部の出口端に(気-液混合物の流れの方向に)配置されている。曲がり部は、互いに連続的に固定されており、誘導デバイスは、最後の曲がり部の出口端に固定されている。例えば、連続の少なくとも2個の曲がり部が互いに固定された4個の曲がり部を含むならば、液誘導デバイスは、第4の曲がり部に固定されている;連続の少なくとも2個の曲がり部が2個の曲がり部を互いに固定されて含むならば、液誘導デバイスは、第2の曲がり部に固定されている。液誘導デバイスは、頂部に開いており、ガスが上向きに逃げることを可能にし、液を下方に向ける。それ故に、液誘導デバイスの(とりわけ、パイプ部分の)開いた部分は、上部に配置されており、ガスが逃げることを可能にする一方で、液誘導デバイスの(とりわけ、パイプ部分の)下部が液を誘導する。
【0085】
液誘導デバイスは、入口断面から出口断面に延びているパイプ部分から組み立てられてよい。
【0086】
さらに、液誘導デバイスは、頂部で開いており(液誘導デバイスのパイプ部分が開いており)、入口断面から出口断面にこの液誘導デバイス内の流体の流通の方向に液誘導デバイスに沿って幅広く(全長にわたって)流体を分配する。パイプ部分は、液誘導デバイスの全長にわたって開いており、長さは、液誘導デバイスの中立軸に沿って、入口断面から出口断面まで測定される。用語「パイプ部分」は、断面がその全長にわたって開いているパイプの形態にある部分を指す。
【0087】
全長にわたって開いているこの液誘導デバイスのおかげで、液は、デバイスの断面によって導かれ得る一方で、ガスは、頂部にある開口部のおかげで逃げることができる。これらの2つの流体の間の分離がそれで容易になる。
【0088】
さらに、液誘導デバイスの出口断面は、液誘導デバイスの入口断面の垂直下方に配置されている。それ故に、液に加えられる重力の効果によって、デバイスは、液を所望の方向に下向きに誘導する。誘導デバイスは、液を所望の方向に(例えば、三相流動床反応器のポンプへの再循環のための出口ダクトに向かって)、穏やかにそれをこの方向に運ぶことによって、同時に向け、それ故に、乱流および発泡の現象を制限する。
【0089】
液誘導デバイス(とりわけ、パイプ部分)は、とりわけ、方向変化を含んでよく、これは、入口断面から出口断面まで、デバイス内の流体の流れの方向に、好ましくは連続的であり、傾斜の切れ目を有さない。
【0090】
好ましくは、液誘導デバイスの断面は、液誘導デバイスに沿って(液誘導デバイスの全長にわたって)入口断面から出口断面まで一定であってよい。代替として、液誘導デバイスの断面は、入口断面から出口断面まで液誘導デバイスに沿って(液誘導デバイスの全長にわたって)連続的かつ切れ目なく変動してよい。
【0091】
それ故に、液誘導デバイスは、入口断面から出口断面までシュートを形成する。パイプ部分は、頂部で開いており、パイプ部分の下部は、重力によって液を導き、ガスは、頂部から、開口部によって、パイプ部分の頂部のところで逃げることができる。
【0092】
好ましくは、連続の少なくとも2個の曲がり部の最後の曲がり部の出口端を気-液界面から、例えば、三相流動床反応器のリサイクルゾーン内で分離する距離H1は、Dと10Dとの間、好ましくは、2Dと5Dとの間であってよい。これにより、ガスと液を効果的に分離することが可能になる。
【0093】
有利には、第2の曲がり部は、平面(zy)との角度1°~90°、好ましくは1°~45°、より好ましくは1°~20°を形成してよい。それ故に、第2の曲がり部は、第1の曲がり部の平面と同一平面にある平面にない。これらの2個の連続の曲がり部(つまり、第1および第2の曲がり部)を、上記の角度を特に形成する互いに交差する2つの平面内で用いることによって、液とガスの分離が促進される。
【0094】
有利には、液誘導デバイスは、少なくとも1個のデフレクタ(好ましくは、いくつかのデフレクタ)および/または少なくとも1個のスロット(好ましくは、いくつかのスロット)を含んでよい。
【0095】
デフレクタの使用は、液が最下部に集中されるのを防ぐことによって、誘導デバイスの断面にわたって液の分配を改善する。ゆえに、液の加速を制限することが可能である。
【0096】
スロットの使用も、液の速度を低下させて、出口に向かって穏やかにそれを運び、液の分配を改善する。
【0097】
液の速度を制限することによって、液の移動量を低減させること、したがって、気-液界面へのその影響(乱流、発泡)を制限することが可能である。
【0098】
本発明の有利な実施形態によると、液誘導デバイス(とりわけ、パイプ部分)は、中立線(例えば、パイプ部分の軸)に対して、開口角度60°~179°、好ましくは90°~150°、より好ましくは100°~130°で開いていてよい。この開口角度により、ガスの除去を容易にし、液を効果的に誘導するために十分に大きい断面を有することが可能になる。
【0099】
好ましくは、液誘導デバイスの垂直高さは、D/2と8Dとの間、好ましくは、2Dと5Dとの間であってよい。それ故に、液誘導デバイスの出口断面は、気-液界面の上方にあり、液誘導デバイスの高さは、液誘導デバイスが液を出口に向かって誘導するために液のためのシュートと同様に働くために十分である。
【0100】
有利には、液誘導デバイスの入口断面と液誘導デバイスの出口断面との間に形成される回転の角度は、実質的に水平な平面(xy)内で、45°~200°、好ましくは160°~190°であってよい。それ故に、液を、三相流動床反応器の中央出口ダクトに向かって効果的に向けることが可能である。さらに、液誘導デバイスは、入口断面から出口断面まで連続的でありかつ切れ目を有さない表面を含み、入口断面から到達する液を出口断面に向かって徐々に導くようにする。誘導デバイスは、このため、丸くなった(または曲がった)プロファイルを形成する。
【0101】
本発明の1つの変形によると、液誘導デバイスの出口断面は、液誘導デバイスの入口断面よりも大きくてよい。この断面の拡大により、したがって、液と液誘導デバイスとの間の接触面を大きくすることが可能になる。それ故に、誘導デバイスの出口での液の速度を制限することが可能である。例えば、液誘導デバイスの入口断面が径DDを有する半円形(または半円環)である場合、液誘導デバイスの出口断面は、径が1.2DDと2DDとの間である半円形であってよい。
【0102】
本発明の有利な実施形態によると、液誘導デバイスの出口断面は、凹形または凸形または平坦であってよい。それが凹形である場合、それは、円形(または円環)または楕円形のプロファイルを有してよい。それが凸形である場合、それは、逆楕円形または平坦のプロファイル(つまり、直線状の断面を形成する)を有してよい。
【0103】
凹形断面は、液がこの断面の中心に誘導されることを強制することによって、液の誘導を容易にする。円形プロファイルは、作製が単純である。楕円形プロファイルは、円形のプロファイルとの比較によって、プロファイルの中心での液の局所的な集中を制限することを可能にする。それ故に、液が運ばれる部分が拡大され、それ故に、液の速度およびその慣性を制限することが、とりわけ、気-液界面へのその影響に関して可能である。凹形断面は、誘導デバイスの周囲に幅広く液を効果的に分配することもできる。
【0104】
凸形断面は、液を液誘導デバイスの周囲に幅広く効果的に分配することを可能にする。分配ゾーンを大きくすることによって、一定のゾーン(比較すると凹形ゾーンの中央ゾーン)内の液の集中が回避され、液の速度およびその移動量を低減させることも可能である。逆楕円形プロファイルまたは三角形プロファイルは、とりわけ、液を液誘導デバイス全体にわたって効果的に分配することを可能にする。
【0105】
平坦プロファイル(直線断面)は、単純な実施形態を可能にする一方で、液を依然として効果的に分配する。
【0106】
本発明は、水素の存在中、高圧下での重質炭化水素留分の水素化転化のための三相流動床反応器にも関し、反応器は、リサイクルゾーンを含み、当該リサイクルゾーンは、反応器の上半球から組み立てられ、その下部において、分離された液が触媒ゾーンに戻ることを可能にするように構成された表面(例えば、円錐または半球形の表面)によって、例えば、液をリサイクルするようにポンプに向かって液を運ぶための中央出口ダクトを介して区切られている。さらに、リサイクルゾーンは、上記のような気-液分離デバイスを含む。反応器は、上記のように、気-液分離デバイスのみが改変された
図1における反応器に相当する。
【0107】
さらに、本発明は、上記のような気-液分離デバイスを用いる(好ましくは、本発明による気-液分離デバイスを含んでいる上記のような三相流動床反応器を用いる)、重質炭化水素留分の三相流動床水素化転化のための方法であって、操作条件が以下の通りである、方法にも関する:
- 絶対圧力は、2MPa~35MPa、好ましくは5MPa~25MPa、より好ましくは6MPa~20MPaである、および
- 温度は、300℃~550℃、好ましくは350~500℃、より好ましくは370℃~430℃であり、恵まれた温度範囲は、380℃~430℃にある。
【0108】
これらの圧力と温度により、水素の存在中での重質炭化水素留分の水素化転化のための効果的な加工処理が可能になる。
【0109】
有利には、各入口パイプの内側の上向き流の表面速度は、0.1m/s~20m/s、好ましくは0.2m/s~15m/s、より好ましくは0.3m/s~10m/sであってよい。
【0110】
好ましくは、入口パイプ内の液の容積分率は、0.05~0.95、好ましくは0.1~0.8、より好ましくは0.3~0.6であってよい。それ故に、システムは、広範囲の液体容積分率に適しており、液体容積分率は、入口パイプに到達する気-液混合物の全容積に対する液体容積を表す。
【0111】
図4は、本発明による気-液分離デバイスを概略的かつ非限定的に図示する。
【0112】
左の図において、入口パイプ(70)と、連続の2個の曲がり部(71)および(72)とを含んでいる気-液分離エレメントを見ることが可能である(ただし、連続の曲がり部は、2個を超える曲がり部を含むことができるだろう)。液誘導デバイスは、読者側の理解を容易にするために示されていない。
【0113】
右の図において、液誘導デバイス(73)を備えた気-液分離エレメントを見ることが可能である。
【0114】
図4における気-液分離エレメントは、
図1および2における分離エレメント(27)および(28)を置き換えてよく、気-液分離デバイスは、いくつかの気-液分離エレメントを含む。
【0115】
各分離エレメントは、入口パイプ(70)を含み、連続の2個の曲がり部(71)および(72)が続けられる:
- 第1の曲がり部(71)は、水平なx軸に垂直である(yz)で示される平面内に配置されており、z軸は、垂直軸に実質的に相当する、
- 第2の曲がり部(72)は、第1の曲がり部(71)の平面(yz)と非ゼロ角度を形成する平面内に配置されている。第2の曲がり部の軸は、水平な平面(xy)と角度θを形成する。例えば、第2の曲がり部(72)は、(xy)で示され、z軸に垂直な実質的に水平な平面内に位置してよい;このケースにおいて、角度θは、ゼロである。
【0116】
それ故に、2個の曲がり部(71)および(72)は、2つの非同一平面内にあり、これら2つの平面は、互いに交差する。
【0117】
ここで、連続の曲がり部は、2個の曲がり部から構成されるが、連続の曲がり部は、2を超える多数の曲がり部を含んでよい。
【0118】
第2の曲がり部(72)の出口(74)のところで(気-液分離エレメント内の液の流通の方向に)、気-液分離エレメントは、液誘導デバイス(73)を含み、当該液誘導デバイス(73)において、液から分離されたガスが頂部から除去されることができ、液誘導デバイス(73)は、ガスが上向きに(例えば、反応器の上部に向かって)逃げることを可能にする開いた断面を含んでいる。
【0119】
液誘導デバイス(73)のパイプ部分の開口部により、液を所望の方向に運ぶことが可能になり、液誘導デバイス(73)の表面は、液を誘導する役割を果たす。例えば、液誘導デバイス(73)は、
図1における参照符号(25)によって示されるように、液が反応器のリサイクルカップの中央出口ダクトの方に向けられるように構成されてよい。
【0120】
液誘導デバイス(73)の入口断面(第2および最後の曲がり部の出口(74)に固定された断面)は、液誘導デバイス(73)の出口断面の垂直上方に配置されている。液誘導デバイス(73)の入口断面と出口断面との間の軸の高さの差は、高さHに相当する。これにより、液をそれ自体の重力の影響下に誘導することが可能になる。
【0121】
さらに、液誘導デバイス(73)は、好ましくは、3D(3次元)エレメントであってよく、つまり、正規直交座標系の3つの軸x、yおよびz内に延びており、それは、1つの平面内に位置しておらず(つまり、それは、2D(2次元)ではない)、方向変化を含み、これは、出口へ向かって液の誘導を促進するためである。この方向変化は、好ましくは、連続的であり、斜面の切れ目を有さず、液を徐々に誘導する。換言すれば、液誘導デバイスの表面は、斜面の切れ目を有さない連続的な方向変化を形成する。
【0122】
液誘導デバイス(73)は、入口断面の軸(入口断面の中立線または中立軸に相当する)に対して測定される開口角度ωで開いている。液誘導デバイス(73)の入口断面は、半円形であるのは、それが第2および最後の曲がり部(72)の円形の出口断面(74)に接続されているからである。それは、「半円形」と称されるのは、それが開口しているからである。
【0123】
液誘導デバイス(73)の出口断面(75)も半円形であるが、他の形状も可能である。液誘導デバイス(73)の出口断面(75)は、その入口断面よりも大きい;ここで、出口断面(75)の径は、入口断面の径よりも大きい。液誘導デバイスの断面を流体の流れの方向に拡大することによって、前記流体を減速させ、それがスライドする表面を増加させることが可能であり、これにより、液の慣性が減少し、それ故に、気-液界面でのその影響が減少する。
【0124】
それ故に、液誘導デバイス(73)は、液のためのシュートを形成する。
【0125】
液誘導デバイス(73)を出た後に流れる液は、例えば、ここでは、三相流動床反応器の円錐壁に沿って到達し、中央出口ダクトによって収集される。ガスは、液誘導デバイス(73)の開いた部分を介して第2および最後の曲がり部の出口を介して除去される。ガスは、したがって、気-液界面の上方に位置する分離ゾーンの上端を占め、例えば、出口パイプ(例えば、
図1および
図2におけるパイプ(40))を介して反応器を離れてよい。
【0126】
図7は、液誘導デバイスの入口断面を概略的かつ非限定的に図示する。
【0127】
誘導デバイスの入口断面は、最後の曲がり部の径に等しい径Dを有する半円形であり、図中、連続的な黒線によって示されている。それは、入口断面の端部(80)と(81)との間の入口断面の軸(径Dを有する円の中心に相当し、かつ、入口断面の中立線または中立軸に相当する点Oによって示される軸)に対して測定される開口角度ωで開いている。
【0128】
この図において、z軸は、垂直軸に相当する。端部(80)および(81)は、垂直なz軸に対して対称ではないことが分かる。この非対称性により、液が回転の角度を介した液誘導デバイスの方向変化に供される遠心力にもかかわらず、液をより効果的に誘導することが可能になる。
【0129】
図5は、本発明による気-液分離エレメントの3D眺め図(左のダイアグラム)および同じ気-液分離エレメントの上面図(右のダイアグラム)を概略的かつ非限定的に図示する。
【0130】
気-液分離エレメントは、入口パイプ(70)を含み、互いに交差する2つの平面内の連続の2個の曲がり部(71)および(72)(ただし、連続の曲がり部は、2個を超える曲がり部を含んでよい)によって続けられ、2つの平面は、好ましくは、互いに垂直である。液誘導デバイス(73)は、第2および最後の曲がり部(72)の出口に固定されており、開いている部分(開いたパイプ部分)を有する。
【0131】
入口パイプ(70)並びに2個の曲がり部(71)および(72)は、径Dを有する円形断面のものである。液誘導デバイス(73)の半円形の入口断面Seも、Dに等しい径を有する。液誘導デバイス(73)の出口断面Soも半円形であり、入口断面の径D以上の径Lを有する。
【0132】
さらに、液誘導デバイス(73)の結果、その入口断面Seからその出口断面Soに回転が生じる。入口断面Seと出口断面Soとの間に形成される角度は、回転の角度Υ45°~200°、好ましくは90°~180°によって示される。
【0133】
図6は、気-液分離エレメントの液誘導デバイスの出口断面の異なるプロファイルを概略的かつ非限定的に図示している。
【0134】
この図において、気-液分離エレメントは、とりわけ、
図1および
図2における気-液分離エレメント(27)および(28)の代わりに設置されてよい。
【0135】
ダイアグラムa)~d)は、液誘導デバイスとしてのみ異なっている。
【0136】
ダイアグラムa)において、出口断面のプロファイルは、三角形の頂点が上向きに向けられた実質的に半三角形(76)である。「実質的に半三角形」は、三角形の頂点が湾曲を有する場合があり、三角形の第3の辺がプロファイルの部分を形成しないことを意味すると理解される;換言すれば、この半三角形プロファイルは、逆Vの形状にある。それ故に、液は、三角形の頂点に対して2つの辺の2つの方向をもった流れに分割される。好ましくは、三角形は、頂点に対して二等辺であるか、または等辺であり、同様の流量を有する2つの流れを発生させる。
【0137】
ダイアグラムb)において、出口断面のプロファイルは、平坦(77)(または線形)である。換言すれば、それは、直線区分によって形成されている。それ故に、液は、集中ゾーンを発生させることなく表面全体にわたって流れてよく、それは、出口断面周囲に幅広く分配される。液の慣性は、したがって、分配される。
【0138】
ダイアグラムc)およびd)において、出口断面のプロファイルは、半円形である。
【0139】
ダイアグラムc)において、液誘導デバイスは、液誘導デバイスをいくつかの区画に分けるデフレクタ(78)を含み、それ故に、液が単一のゾーン(例えば、中央ゾーン)に集中されるのを防ぐことを可能にする。これを行うために、デフレクタ(78)は、好ましくは、液誘導デバイスの入口断面から出口断面まで延びており、この結果、断面プロファイルの変動が生じる。デフレクタは、出口断面のプロファイルに関係なく用いられてよい。
【0140】
ダイアグラムd)において、液誘導デバイスは、液が上向きに逃げることを可能にするスロット(または開口部)を含む。それ故に、液を下向きに徐々に分配することが可能である。スロットは、出口断面のプロファイルに関係なく用いられてよい。
【0141】
誘導デバイスの断面の変動は、半円形の入口断面から出口断面まで、そのプロファイルに関係なく、漸進的かつ連続的であり、斜面の切れ目を有しない。
【0142】
デフレクタとスロットの組み合わせも、出口断面のプロファイルに関係なく、可能である。
【0143】
図8は、液誘導デバイスの凹形の出口プロファイルの第1の例を概略的かつ非限定的に図示する。
【0144】
誘導デバイスの出口断面は、半楕円形であり、図中、連続的な黒線によって示されている。破線で示された径Dを有する円は、最後の曲がり部(この曲がり部から液誘導デバイスの入口断面が始まる)の出口断面を示しており、出口断面の平面上に投影される。z軸は、垂直軸を表し、x’’軸は、水平軸を表す。
【0145】
この図のおかげで、液誘導デバイスの出口断面は、入口断面よりも大きいことが分かる。
【0146】
さらに、出口断面の楕円形プロファイルは、中心c、長さEの軸X’’に沿う半長軸および長さFのz軸に沿う半短軸を有する楕円によって規定される。軸X’’およびzは、径Dを有する曲がり部の出口の円形プロファイルによって規定される。楕円形プロファイルは、角度ψによって規定される開口部で開いている。楕円の中心cは、X’’軸から長さGだけ、z軸から長さHだけ離れており、図中、Hは、ゼロである。
・長さEは、D/4と5Dとの間、好ましくはD/2と3Dとの間である。
・長さFは、D/4と5Dとの間、好ましくはD/2と3Dとの間である。
・角度ψは、10°~350°、好ましくは90°~180°である。
・長さGは、0.1FとFとの間、好ましくは0とF/2との間である。
・長さHは、-EとEとの間、好ましくは-E/2とE/2との間である。
【0147】
この図において、出口断面の端部(82)および(83)は、垂直なz軸に対して対称であることが分かる。出口断面上のこの対称性により、液を効果的に分配することが可能になるが、この対称性は、必須ではない。
【0148】
楕円形プロファイルは、円形プロファイルに対して、液が運ばれる表面を増加させるという利点を有する。それ故に、液の速度を低減させ、それ故に、その移動量を制限することが可能である。
【0149】
図9は、液誘導デバイスの凸形の出口プロファイルの第2の例を概略的かつ非限定的に図示する。
【0150】
誘導デバイスの出口断面は、(
図8に対して)逆半楕円形のものであり、図中、連続的な黒線によって示されている。破線で示された径Dを有する円は、最後の曲がり部(この曲がり部から液誘導デバイスの入口断面が始まる)の出口断面を示しており、出口断面の平面上に投影されている。z軸は、垂直軸を表し、X’’軸は、水平軸を表す。
【0151】
この図のおかげで、液誘導デバイスの出口断面は、入口断面よりも大きいことが分かる。
【0152】
さらに、液誘導デバイスの出口断面の逆楕円形プロファイルは、中心C’、長さE1のX’’軸に沿う半長軸および長さF1のz軸に沿う半短軸を有する逆楕円によって規定される。軸X’’およびzは、径Dを有する最後の曲がり部の出口の円形プロファイルによって規定される。楕円形プロファイルは、角度ψ1によって規定される開口部で開いている。楕円の中心C’は、X’’軸から長さGbisだけ、z軸から長さH1だけ離れており、ダイアグラム中、長さH1は、ゼロである:
・長さE1は、D/4と5Dとの間、好ましくはD/2と3Dとの間である。
・長さF1は、D/4と5Dとの間、好ましくはD/2と3Dとの間である。
・角度ψ1は、10°~350°、好ましくは90°~180°である。
・長さGbisは、1.1Fと2Fとの間、好ましくはFと1.5Fとの間である。
・長さH1は、-EとEとの間、好ましくは-E/2とE/2との間である。
【0153】
このプロファイルの利点は、
図6におけるダイアグラムa)の三角形プロファイルの利点とかなり似ている:それにより、楕円S1の頂点の両側で、液の流れを2つに分割することが可能となり、楕円S1の頂点は、逆半楕円形断面の垂直最上点にある。
【0154】
この図において、出口断面の端部(84)および(85)は、垂直なz軸に対して対称であることが分かる。出口断面上のこの対称性により、液を効果的に分配することが可能になるが、この対称性は、必須ではない。
【0155】
図10は、液誘導デバイスの出口プロファイルの第3の例を概略的かつ非限定的に図示する。
【0156】
誘導デバイスの出口断面は、直線区分を平坦(または直線)に形成し、図中、連続的な黒線によって示されている。出口断面は、長さL1の直線区分によって形成されている。破線で示された径Dを有する円は、最後の曲がり部(ここから液誘導デバイスの入口断面が始まる)の出口断面を示しており、出口断面の平面上に投影されている。z軸は、垂直軸を表し、X’’軸は、水平軸を表す。
【0157】
この図のおかげで、液誘導デバイスの出口断面は、入口断面よりも大きく、長さL1は、Dよりも大きいことが分かる。
【0158】
さらに、液誘導デバイスの出口断面の直線区分を形成する平坦プロファイルは、中心cterおよび長さL1の区分によって規定される。中心cter(長さL1の区分の中央に相当する)は、X’’軸から長さGter、z軸から長さHterにあり、長さHterは、ダイアグラム中、ゼロである。長さL1の区分は、垂直軸と角度δを形成する:
・長さL1は、D/4と5Dとの間、好ましくはD/2と3Dとの間である。
・長さGterは、0.1Dと4Dとの間、好ましくはDと2Dとの間である。
・長さHterは、-2Dと2Dとの間、好ましくは、-DとDとの間である。
・角度δは、60°~120°、好ましくは80°~100°である。
【0159】
このプロファイルは、液を効果的に分配し、液集中ゾーンを回避する。
【0160】
この図において、長さL1の区分は、垂直軸に直交しており(90°に等しい角度δ)、中心cterは、垂直軸上に位置していることが分かる。それ故に、長さL1の区分は、垂直なz軸に対して対称である。
【0161】
(実施例)
図11は、従来技術の出願US 2019/270941によるシステムの気-液分離エレメント(27)を離れる液と本発明によるシュートタイプの液誘導デバイスを有する気-液分離エレメント(27)の影響の比較の例である。
【0162】
ダイアグラムa)およびb)は、気-液界面(24)の表面上の液の影響によって発生する乱流のレベルを図示する。これらのダイアグラムは、CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)数値シミュレーションによって導き出される。ダイアグラムa)は、出願US 2019/270941の従来技術に相当し、ダイアグラムb)は、本発明による
図4の構成に相当する。
【0163】
液の容積分率を示している灰色のレベルの変動は、最もクリアな灰色レベル(高純度ガス)についてゼロであり、流体が完全に液状である場合に、黒で示されている。
【0164】
表[表1]は、数値シミュレーションに用いられた幾何学的パラメータを与える。
【0165】
【0166】
これらのシミュレーションについて、気-液界面は、液誘導デバイスの出口断面の軸から0.6mに配置されている。
【0167】
以下のデータが数値モデルに用いられる:
- モデルは、泡を分散された連続的な液およびガスを有するEuler-Eulerタイプのものであり、泡の径は、1mmに等しく設定されている;
- 気-液の相互作用は、Schiller-Naumannの抗力則に従う;
- 乱流は、実現可能なk-εモデルに従う;
- 液の嵩密度は、738.6kg/m3であり、粘度は、0.48cP(cPは、単位センチポイズに相当する;1cP=0.001Pa・s)である;
- ガスの嵩密度は、50.89kg/m3であり、粘度は、0.024cP(cPは、単位センチポイズに相当する;1cP=0.001Pa・s)である;
- 分離エレメントの入口での流量は、液について7.886kg/s、ガスについて0.394kg/sである。
【0168】
従来技術のダイアグラムa)において、気-液界面(24)での顕著な波(このゾーン内の気-液混合物の証拠となるダイアグラム中の灰色の変動によって示される)の生成を見ることが可能である。それは、したがって、液の影響により気-液界面(24)のところに著しい乱流を生じさせる。この乱流は、発泡の原因である可能性がある。
【0169】
本発明のダイアグラムb)において、気-液界面(24)(灰色の変動)が乱されていないことを見ることが可能である。乱流のレベルは、したがって、本発明のデバイスのおかげで大幅に低減している。その結果、発泡のリスクを低減させることも可能である。
【0170】
それ故に、本発明により、したがって、気-液界面での乱流および発泡リスクを制限することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【
図1】従来技術による気-液分離デバイスを有する三相流動床反応器を示す。
【
図2】従来技術による連続の2個の曲がり部を有する三相流動床反応器内の気-液分離デバイスを示す。
【
図3】従来技術による2個の曲がり部を有する気-液分離デバイスを示す。
【
図4】本発明による液誘導デバイスを有する気-液分離デバイスを示す。
【
図5】本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの第1の例を示す。
【
図6】本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの異なる変形を図示する。
【
図7】本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの入口断面を示す。
【
図8】本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの半楕円形の出口断面の第1の例を示す。
【
図9】本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの逆半楕円形の出口断面の第2の例を示す。
【
図10】本発明による気-液分離デバイスの分離エレメントの液誘導デバイスの平坦な出口断面の第3の例を示す。
【
図11】従来技術による2個の曲がり部で終わる気-液分離デバイスa)と本発明による液誘導デバイスを有する気-液分離デバイスb)との間の気-液界面での液体容積分率のプロファイルの比較を示す。
【国際調査報告】