(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】酸化黒鉛、酸化グラフェン及び還元された酸化グラフェン
(51)【国際特許分類】
C01B 32/198 20170101AFI20241128BHJP
【FI】
C01B32/198
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537015
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2022016903
(87)【国際公開番号】W WO2023128209
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0188962
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】アン ウヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュチョル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン フィチャン
(72)【発明者】
【氏名】キム スンドゥ
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC16A
4G146AC16B
4G146AC17A
4G146AC17B
4G146AC20B
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AD20
4G146AD22
4G146BA02
4G146BC13
4G146BC32B
4G146CB14
(57)【要約】
本発明は、酸化黒鉛、酸化グラフェン及び還元された酸化グラフェンに関し、より詳細には、酸化グラフェンが酸素(O)を25~45at%で含みながらも効果的に酸化黒鉛から剥離され、還元後優れた粉体伝導度の実現が可能な酸化黒鉛、酸化グラフェン及び還元された酸化グラフェンに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素(O)を25~45at%で含む、酸化グラフェン(Graphene oxide)。
【請求項2】
炭素(C)と酸素(O)の原子比が1.2:1~3:1である、請求項1に記載の酸化グラフェン。
【請求項3】
ラマン分光器によるラマンスペクトルにおいて(Dピークの強度)/(Gピークの強度)(D/G ratio)が0.80~0.90である、請求項1に記載の酸化グラフェン。
【請求項4】
以下の数式1を満たす、請求項1に記載の酸化グラフェン
[数式1]
前記数式1において、
H1は、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)分析で得られたデータグラフにおいて最大ピークが2θの10°~12°範囲で観察される酸化グラフェンに対するピーク(peak) 値であり、
H2は、XRD分析によって得られたデータグラフにおいて最大ピークが2θの25°~28°範囲で観察される未反応黒鉛のピーク(peak) 値である。
【請求項5】
請求項1~4の内、いずれか一項の酸化グラフェンを含む酸化黒鉛(Graphite oxide)。
【請求項6】
前記酸化黒鉛は、前記酸化グラフェンを複層で含み、前記酸化グラフェンの平均層間距離が0.7~0.9nmである、請求項5に記載の酸化黒鉛(Graphite oxide)。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の酸化グラフェンが還元された、還元された酸化グラフェン(reduced Graphene Oxide)。
【請求項8】
全含量に対して酸素(O)を、0at%を超えて、5at%以下で含む、請求項7に記載の還元された酸化グラフェン。
【請求項9】
XRD(X-ray diffraction) スペクトルの20~26.5°領域におけるピークの最大半値幅が0.5~5°である、請求項7に記載の還元された酸化グラフェン。
【請求項10】
温度が25℃から500℃まで昇温したときの重量減少率が0at%を超えて、
20wt%以下である、請求項7に記載の還元された酸化グラフェン。
【請求項11】
密度0.001~0.1g/mLである、請求項7に記載の還元された酸化グラフェン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化黒鉛、酸化グラフェン及び還元された酸化グラフェンに関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛は炭素原子は六角形に連結されて二次元の層構造を成し、この層が幾重にも積み重なって層状構造をなした積層構造である。この黒鉛の一つの層をグラフェンと称する。
【0003】
グラフェンは引張強度が鋼より200倍、電子移動度はシリコンの1,000倍、熱伝導度は銅より10倍優れていることを特徴として、2,000年初めから夢の新素材と称される。
【0004】
前記のようなグラフェンの特徴により、ナノ素材分野でインク、バリア、放熱、エネルギー、半導体、透明電極などの様々な応用分野に適用するための研究が進行中である。
【0005】
グラフェンは様々な剥離法で製造でき、その中で化学的剥離法が大量生産に容易な工法として知られている。グラフェン化学的剥離法は、黒鉛を酸化させて溶液内で黒鉛を剥離させ、以後還元工程を介して伝導性を回復させる方法でグラフェンを製造する。化学的剥離法は、酸化剤を黒鉛層間に効率的に挿入させてグラフェン表面の欠陥を最小化して剥離後それを効率的に還元させる技術が重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、還元されたグラフェンの欠陥を最小化することができる酸化グラフェンを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、還元されたグラフェンの欠陥を最小化することができる酸化黒鉛を提供することである。
【0008】
本発明のまた他の目的は、粉体伝導率に優れた還元された酸化グラフェンを提供することである。
【課題解決手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一実施例に係る酸化グラフェン(Graphene oxide)は、酸素(O)を25~45at%で含むことを特徴とする。
【0010】
このとき酸化グラフェンは炭素(C)と酸素(O)の原子比が1.2:1~3:1で あり得る。
【0011】
前記酸化グラフェンは、ラマン分光器によるラマンスペクトルにおいて(Dピークの強度/(Gピークの強度)(D/G ratio)が0.80~0.90であり得る。
【0012】
前記酸化グラフェンは、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)分析で得られたデータを用いたとき、下記数式1を満たす特性を有することができる。
【0013】
[数式1]
【0014】
【0015】
前記数式1において、H1は、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)分析で得られたデータグラフにおいて最大ピークが2θの10°~12°範囲で観察される酸化グラフェンのピーク(peak)値であり、H2は、XRD分析で得られたデータグラフにおいて最大ピークが2θの25°~28°範囲で観察される未反応黒鉛のピーク(peak)値である。
【0016】
本発明の他の実施例に係る酸化黒鉛は、前記酸化グラフェンを含むものである。
【0017】
前記酸化黒鉛は前記酸化グラフェンを複層として含み、前記酸化グラフェンの平均層間距離が0.7~0.9nmであり得る。
【0018】
本発明のまた他の実施例に係る還元された酸化グラフェンは、前記酸化グラフェンが還元されたものである。
【0019】
前記還元された酸化グラフェンは、全含量に対して酸素(O)を0at%超え、5at%以下で含むものであり得る。
【0020】
前記還元された酸化グラフェンは、XRD(X-ray diffraction)スペクトルの20~26.5°領域におけるピークの最大半値幅が0.5~5°の特性を示すことができる。
【0021】
前記還元された酸化グラフェンは、温度が25℃から500℃まで昇温するとき重量減少率が0at%超え、20wt%以下である特性が現れるものであり得る。
【0022】
前記還元された酸化グラフェンは、密度が0.001~0.1g / mLであり得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る酸化グラフェンは、少ない酸化反応器の比率でも効果的に酸化黒鉛から剥離されることができ、少ない酸化反応器を有する酸化グラフェンを還元させた本発明の還元された酸化グラフェンは、優れた粉体伝導度を実現することができる。
【発明の実施のための形態】
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語または単語は、通常的であるかまたは辞書的な意味に限定して解釈されるべきではなく、発明者はその自身の発明を最も最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念と解釈されなければならない。
【0025】
したがって、本明細書に記載された実施例及び製造例に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願時点においてこれらは置き換えることができる様々な均等物と変形例があり得ることがあることを理解すべきである。
【0026】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかしながら、本発明は多様の異なる形態で実現され得、ここで説明する製造例及び実施例に限定されない。
【0027】
酸化グラフェンの酸素は、グラフェン表面に形成された酸化反応器から由来されたものである。グラフェン表面に形成された酸化反応器は、グラフェンを剥離させる過程で形成されるが、グラフェンを剥離させた後、酸化グラフェンを再還元しなければならず、酸化グラフェンの酸化反応器を還元させる工程でグラフェン表面に欠陥が発生し還元された酸化グラフェンの伝導特性の低下を引き起こす位だけ形成されで、できるだけ少なく含まれるほどよい。
【0028】
本発明の一実施例に係る酸化グラフェンは、酸素(O)を25~45at%で含むものである。すなわち、前記酸化グラフェンは、全原子の内25~45%の原子が酸素(O)からなるものである。前記酸化グラフェンの酸素含量は従来の酸化グラフェンの酸素含量である50at%より低い数値として、本発明の実施例に係る酸化グラフェンは還元すべき酸化反応器の比率が従来に比べて少なく酸化グラフェンの還元過程で発生するグラフェンの伝導特性を低下させる欠陥(defect)を大きく低減することができる。
【0029】
本発明の酸化グラフェンが酸素を25at%未満で含む場合、グラフェンを剥離させることができる程度の酸化反応器が形成されなかったことで、酸化反応器を介したグラフェンの剥離が十分にならない問題があり、 酸化グラフェンが酸素を45at%を超えて含む場合、従来の酸化グラフェンの含量と大きな差を見られず、酸化グラフェンを還元させる過程で従来の酸化グラフェンのように電気伝導度が大きく低下する問題が現れる。 従来の酸化グラフェンとの効果の違いをさらに顕著に示すために、前記酸化グラフェンが酸素を25~35at%含ませることが好み得る。
【0030】
酸化グラフェンの低酸素含量を実現するためには、グラフェンの積層構造である黒鉛を酸化させる過程で酸化剤の量を少なく使用しながらも効果的にグラフェンを剥離する技術が必要であり、例えば、黒鉛に酸化剤を投入して酸化させる過程で黒鉛に物理的な力を課してこれを解決することができる。さらに具体的には、前記物理的な力は剪断応力であり得、黒鉛を酸化させる過程で酸化剤と共に剪断応力を付加する場合、酸化剤が単純拡散に比べて効果的に黒鉛の中心部まで投入されながら効率的な酸化剤使用が可能であり、少ない 酸化剤量でも黒鉛を効果的に剥離させることができる。
【0031】
前記酸化グラフェンの酸素含量は、X線光電子分光法(XPS,X-ray Photoelectron Spectroscopy)を介して分析することができ、XPSを介して酸化グラフェンの炭素と酸素の含量の比率を知ることができる。
【0032】
前記酸化グラフェンの酸素比率は原子比率であるat%で示したとき25~45at%であり、これを酸化グラフェンの主な構成である炭素(C)と酸素(O)の原子比(炭素:酸素)で示す場合、炭素と酸素の原子比(原子数比)が1.2:1~3:1であり得る。前記炭素はグラフェンの基本原子として、前記原子比より酸素の比率が少ない場合黒鉛の積層構造から酸化グラフェンが単層構造に十分に剥離できないという問題があり、前記原子比に比べて酸素の原子比がさらに高い場合、還元された酸化グラフェンを製造する過程でグラフェン表面欠陥が頻繁に発生し、還元された酸化グラフェンの伝導特性が大きく低下する問題があり得る。
【0033】
酸化グラフェンの酸素含量はラマン分光器によるラマンスペクトルを介して確認することができ、酸素を25~45at%の範囲で含む本発明の実施例に係る酸化グラフェンはラマンスペクトルで(Dピークの強度 )/(Gピークの強度)すなわち、D/G比率(D/G ratio)が0.80~0.90で現れることができる。ラマンスペクトルでD/G比率は炭素構造体の規則化の変化程度意味し、酸化グラフェンのD/G比率が0.80未満で現れる場合、酸化グラフェンが黒鉛から十分に剥離されない問題があり得、 酸化グラフェンのD/G比が0.90を超える場合、酸化グラフェン上に酸化反応器が不必要に多く形成され、酸化グラフェンを還元させた後、還元された酸化グラフェンの電気伝導特性が不必要に減少される問題があり得る。
【0034】
前記酸化グラフェンは 黒鉛(Graphite)を酸化させた酸化黒鉛(Graphite oxide)を剥離して製造することができ、具体的には酸化黒鉛で層間距離が広がり、層間結合エネルギーが弱い部分を超音波粉砕機などの物理的な方法を用いて酸化グラフェンで剥離できる。
【0035】
前記酸化グラフェンの平均層間距離をX線回折(X-Ray Diffraction;XRD)分析を通じて確認することができる。XRD分析はブラッグ法則(Bragg's law)を用いたもので、ブラッグ方程式(Bragg's equation)を用いてXRDの2θ(2 theta)値を計算して層間距離に換算し、元素材黒鉛の場合26.3°の領域でピーク((peak)点が現れ、黒鉛の層間距離が遠くなるほどピーク点はXRDグラフで左側に移動(shift)するようになる。本発明の実施例に係る酸化グラフェンは、XRD分析を用いる際に以下の数式1を満たすことができる。
【0036】
[数式1]
【0037】
【0038】
前記数式1において、H1は、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)分析で得られたデータグラフにおいて最大ピークが2θの10°~12°範囲で観察される酸化グラフェンのピーク(peak) 値であり、H2は、XRD分析で得られたデータグラフにおいて最大ピークが2θの25°~28°範囲で観察される未反応黒鉛のピーク(peak)値である。
【0039】
本発明の他の実施例に係る酸化黒鉛(Graphite oxide)は、黒鉛を酸化させた後、前記本発明の実施例に係る酸化グラフェンで剥離される前の状態である。本発明の酸化グラフェンの低酸素含量は酸化黒鉛の特性から由来したものであり、本発明の酸化黒鉛を構成する個々の酸化グラフェン層は、従来の酸化黒鉛に比べて低い酸素含量を有しながらも、酸化黒鉛の中心部まで 均一に酸化反応器が形成された特徴を有する。
【0040】
前記本発明の実施例に係る酸化黒鉛の特徴は、酸化黒鉛の層間距離を介して確認することができる。酸化グラフェンが複層で積層された酸化黒鉛構造において、酸化グラフェンの平均層間距離は、隣接する酸化グラフェン間の距離を意味する。本発明の実施例に係る酸化黒鉛は、従来の酸化黒鉛に比べて少ない酸素比率により、酸化グラフェンの平均層間距離が従来の酸化グラフェンの平均層間距離に比べて狭くすることができ、具体的に本発明の実施例に係る酸化グラフェンの平均層間距離は、0.7~0.9nmであり得る。酸前記化グラフェンの平均層間距離が0.7nm未満の場合、酸化黒鉛の剥離が容易にならないという問題が発生することがあり、前記酸化グラフェンの平均層間距離が0.9nmを超える場合、これはグラフェン上に不要に多くの酸化反応器が形成されたことを意味し、この後還元された酸化グラフェンを形成する過程で多くの欠陥を形成することができ、還元された酸化グラフェンの電気伝導特性を低下させる問題を引き起こすことがある。
【0041】
本発明の他の実施例に係る還元された酸化グラフェン(reduced Graphene Oxide, rGO)は、前記本発明の実施例に係る酸化グラフェンが還元されたもので、剥離された酸化グラフェンを還元させて電気伝導特性が与えられたのである。本発明の実施例に係る還元された酸化グラフェンは、酸素比率が低い(25~45at%)酸化グラフェンを還元させたもので酸化グラフェンを還元させる過程で還元された酸化反応器の比率が従来の酸化グラフェンに比べて少なく、還元過程で発生する電気伝導特性損失が少なく、還元された酸化グラフェンの電気伝導度(粉体伝導度)が従来の還元された酸化グラフェンに比べて向上された特徴がある。
【0042】
前記本発明の実施例に係る還元された酸化グラフェンは、低い酸素含量を有する酸化グラフェンから由来され、還元された酸化グラフェンの酸素含量もまた非常に低い特徴を有し、具体的に還元された酸化グラフェンは炭素を含む全含量に対して酸素(O)を0at%超え、5at%以下と非常に低く含むことができる。還元された酸化グラフェンに含まれた酸素は、酸化グラフェンを還元する過程で還元されなくて残った酸化反応器から由来されたもので、還元された酸化グラフェンで酸化反応器が全く含まれないことはない(0 at% 超え)。しかしながら、本発明の実施例に係る還元された酸化グラフェンは、酸素比率が低い(25~45at%)酸化グラフェンを還元させたものであり、還元された酸化グラフェンが酸素を5at%以下で含むことができ、還元された酸化グラフェンが酸素を5at%を超えて含む場合、還元された酸化グラフェンの電気伝導特性が大きく低下する問題があり得る。
【0043】
還元された酸化グラフェンの酸素含量はXRD(X-ray diffraction)スペクトルを介して確認することができ、本発明の還元された酸化グラフェンは低酸素含量の酸化グラフェンから由来され、酸素比率が従来還元された酸化グラフェンに比べて低いし、これは、XRD(X-ray diffraction)スペクトルの20~26.5°領域におけるピークの最大半値幅が0.5~5°であることに介して確認することができる。
【0044】
還元された酸化グラフェンは、表面に残存する酸化反応器のため、昇温過程で酸化反応器によって重量減少が生じる。本発明の実施例に係る還元された酸化グラフェンは、酸化グラフェンに由来された残存する酸化反応器の比率が従来還元された酸化グラフェンに比べて非常に少ない特性のため、高い温度に昇温しても重量減少率が微微の特徴が現れることがある。例えば、本発明の実施例に係る還元された酸化グラフェンは、温度が25℃から500℃まで昇温したときの重量減少率が0at%超え、20wt%以下であり得る。前記重量減少率分析は、熱重量分析(TGA)を介して確認することができる。
【0045】
本発明の実施例に係る還元された酸化グラフェンは、密度が0.001~0.1g / mLであり得る。本発明の還元された酸化グラフェンは低酸素含量を有し、これは従来の還元された酸化グラフェンと比較して低い密度から確認することができる。
【0046】
以下、実施例を介して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が下記実施例によって限定されるものではない。
【0047】
[製造例1:酸化黒鉛の製造]
【0048】
二重ジャケット反応槽に1Lの硫酸溶液と40gの黒鉛を撹拌させ反応槽温度を10℃に冷却させる。
【0049】
硫酸溶液の中心部まで十分に冷却させた後、過マンガン酸カリウム160gを局所的に温度が向上しない程度にゆっくりと投入する。過マンガン酸カリウム投入完了時点から30分間反応槽で撹拌し、その間は外部の水分と反応しないように反応槽を塞いでおく。
【0050】
30分間攪拌を進行して過マンガン酸カリウムの反応を安定化させた後、溶液に剪断応力を印加してくれる。剪断応力を印加する1つの例示的な方法で、本製造例ではクエットテイラー反応器(Couette-Taylor reactor)を用いて黒鉛に剪断応力を印加させる。前記剪断応力を印加するために、クエットテイラー反応器に含まれた内部円筒の回転速度は1500rpmであり、回転時間は60分に設定された。
【0051】
酸化剤(過マンガン酸カリウム)を剪断応力印加とともに黒鉛中心部まで酸化剤が挿入されるまで酸化反応させ、例えば黒鉛150μm粒子基準で1時間反応させれば中心部まで挿入させることができる。
【0052】
前記酸化反応が終了すると、過マンガン酸カリウムの酸化反応を終結させるために過酸化水素水を投入する。過酸化水素水を通じて気泡が発生しなくなるまで投入させ、酸化黒鉛を生成させることができる。
【0053】
前記生成された酸化黒鉛以外の金属不純物及び酸イオンを除去する。金属イオンを除去するために、塩酸などの酸を用いて金属をイオン化させ、フィルターを通して酸化黒鉛と金属イオンを分離させる。十分な洗浄が終わったら、酸を洗浄するために蒸留水で中和させ、フィルターを通して酸化黒鉛と酸イオンを分離させ酸化黒鉛(実施例1)を得ることができる。
【0054】
前記実施例1の酸化黒鉛に対して酸化剤(過マンガン酸カリウム)の量と酸(硫酸)の量のみを異なるようにして、実施例2~4及び比較例1~2を製造したし、下記表1に示した。
【0055】
【0056】
[実験例1-1:酸化黒鉛の層間距離比較]
【0057】
前記製造例1の表1の実施例1~4及び比較例1~2について、XRD(LabX XRD-6100、SHIMADZU社)分析を行い、酸化黒鉛の平均層間距離を下記表2に示した。
【0058】
[実験例1-2:酸化黒鉛の粉体伝導度比較]
【0059】
粉体伝導度は、粉末状態のグラフェンの電気伝導度を粉末形態で分析するために測定する。同じ量の粉末(0.1g)を測定セルに入れ、荷重を加えながら伝導度プローブ(Conductivity probe)を介して荷重に応じて変化する伝導度値を読み取ることができ、結果は2,000kgf条件での粉体伝導度値を比較する。
【0060】
前記表1の実施例1~4及び比較例1~2の酸化黒鉛について粉体抵抗特性測定器(HPRM-FA2、HANTech社)を用いて粉体伝導度を測定して下記表2に示した。
【0061】
【0062】
前記表2を参照すると、本発明の実施例に係る酸化黒鉛が低い酸素含量により、粉体伝導度が比較例に比べて高いことが確認できる。
【0063】
前記表2の比較例1は、過マンガン酸カリウムの含量が少なすぎて酸化剤の酸化力が十分に確保されないため、黒鉛中心部まで酸化させることができない問題がある。すなわち、炭素/酸素原子比が高くD/G比(D/G ratio)が低いが、これは未反応黒鉛が多く、粉体伝導度特性が低く現れることが確認できる。
【0064】
反面、比較例2は、過マンガン酸カリウムの含量を過剰に投入する場合、酸化剤の酸化力は十分であるが、過剰の酸化剤により黒鉛が過酸化され、これは還元時に多くの欠陥(defect)が生ずるようになって、粉体伝導度の特性が低下されることを確認できる。
【0065】
[製造例2:酸化グラフェンの製造
【0066】
前記製造例1で製造した酸化黒鉛は、層間距離が広がって結合力が弱くなったところに超音波粉砕機等を介して物理的エネルギーを印加して酸化グラフェンで剥離させることができる。700W反応器基準で1時間以上剥離工程を通じて酸化グラフェンで剥離させ酸化グラフェン(実施例1)を得ることができる。
【0067】
前記実施例1で製造した製造した酸化黒鉛に対して酸化剤(過マンガン酸カリウム)の量と酸(硫酸)の量のみを異なりして、実施例2~15及び比較例1~3を製造し、下記表3に示した。
【0068】
【0069】
[実験例2-1:酸化グラフェンの酸素含量比較]
【0070】
XPS分析は、酸化グラフェンの炭素及び酸素含量を分析する用途に使用する。炭素、酸素含量比率は、XPS wide scan値で確認される結合強度値の比率を計算し、C1s、O1s領域における結合強度を比率でC/O比率(ratio)に換算して結果を確認する。
【0071】
前記製造例2の実施例1~17及び比較例1~3について、XPSを介して酸化グラフェンの酸素含量(at%)、炭素と酸素の原子比(C/O ratio)を下記表4に示した。
【0072】
[実験例2-2:酸化グラフェンのXRD分析比較]
【0073】
前記製造例2の実施例1~17及び比較例1~3についてXRD(LabX XRD-6100、SHIMADZU社)分析を行い(H2)/(H1+H2)値を下記表4に示した。 この時、H1はX線回折(X-Ray Diffraction;XRD)分析で得られたデータグラフにおいて最大ピークが2θの10°~12°範囲で観察される酸化グラフェンのピーク(peak)値であり、H2はXRD分析によって得られたデータグラフにおいて、最大ピークが2θの25°~28°範囲で観察される未反応黒鉛のピーク(peak)値である。
【0074】
[実験例2-3:酸化グラフェンのラマンスペクトル分析の比較]
【0075】
ラマン(Raman)分析は、黒鉛層(layer)の上に欠陥及び反応器などで発生する黒鉛構造の規則化の変化の程度を確認する。一般的に、酸化グラフェンは反応器と結合が多いほどD/G比率(D/G ratio)が大きくなり、還元後層の構造が回復するとD/G比率が回復される。
【0076】
前記製造例2の実施例1~17及び比較例1~3についてラマン分光器(LabRAM HR Evolution, HORIBA社)によるラマンスペクトルにおけるD/G比率(D/Gratio)を下記表4に示した。
【0077】
[実験例2-4:酸化グラフェンの粉体伝導度比較]
【0078】
前記製造例2の実施例1~17及び比較例1~3の酸化グラフェンについて粉体抵抗特性測定器(HPRM-FA2、HANTech社)を用いて粉体伝導度を測定し、下記表4に示した。
【0079】
【0080】
前記表4を参照すると、酸化反応器の比率が少ない実施例1~17の粉体伝導度が比較例1~3の粉体伝導度より優れていることが確認できる。
【0081】
[製造例3:還元された酸化グラフェンの製造]
【0082】
前記製造例2で製造された酸化グラフェンを凍結乾燥のために酸化グラフェン溶液を十分に凍結させた後、-80℃、0.05mTorr条件で乾燥工程を行う。 乾燥時間はサンプル投入量及び表面積によって異なるが、1日以上行う。
【0083】
乾燥した酸化グラフェンの電気伝導度回復のために酸化反応器を除去しなければならない。本製造例では酸化グラフェン還元のためにマイクロ波波長を注入させたし、2.45GHz波長領域を1,000Wで5~10秒間照射して還元グラフェンを得た(実施例1)。
【0084】
前記実施例1で製造した製造した還元された酸化グラフェンに対して酸化剤(過マンガン酸カリウム)の量と酸(硫酸)の量、そしてマイクロ波注入時間を異にして実施例2~26及び比較例1~3を製造し、下記表5に示した。
【0085】
【0086】
[実験例3-1:還元された酸化グラフェンの酸素含量比較]
【0087】
前記製造例3の実施例1~26及び比較例1~3について、XPSを介して還元された酸化グラフェンの酸素含量(at%)を下記表6に示した。
【0088】
[実験例3-2:還元された酸化グラフェンのXRD分析比較]
【0089】
前記製造例3の実施例1~26及び比較例1~3について、XRDスペクトルの20°~26.5°領域におけるピークの最大半値幅を下記表6に示した。
【0090】
[実験例3-3:還元された酸化グラフェンの重量減少率分析の比較]
【0091】
前記製造例3の実施例1~26及び比較例1~3について、温度が25℃から500℃まで昇温したときの重量減少率を下記表6に示した。
【0092】
[実験例3-4:還元された酸化グラフェンの密度比較]
【0093】
前記製造例3の実施例1~26及び比較例1~3について密度を測定して下記表6に示す。
【0094】
[実験例3-5:還元された酸化グラフェンの粉体伝導度比較]
【0095】
前記製造例3の実施例1~26及び比較例1~3について、粉体伝導度を粉体抵抗特性測定器(HPRM-FA2、HANTech社)を用いて測定して下記表6に示した。
【0096】
【0097】
以上において、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の種々の変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。
【国際調査報告】