(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】拡張可能なインプラントと椎弓根内に固定するためのアンカー要素とを含むデバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A61F2/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537516
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 US2022053335
(87)【国際公開番号】W WO2023122005
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506410062
【氏名又は名称】ストライカー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】オグラザ,ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ハーシュマン,ガブリエル,ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA10
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC03
4C097CC18
(57)【要約】
椎骨を拡張するためのデバイスである。本デバイスは、拡張可能なインプラントと椎弓根アンカーとを含む。椎弓根アンカーは、アンカー本体に移動可能に連結された少なくとも1つのアンカー要素を含む。アクチュエータは、アンカー要素を展開して椎弓根と係合させるように、アンカー本体内で移動可能である。アンカー要素は、拡張可能なインプラントの組織支持スキーと同一平面内で展開し得る。アクチュエータは、ナックルまたはカムを含むロッドであり得る。組織支持スキーは、デバイスの外側輪郭から凹み得る。拡張可能なインプラントの支柱は、挿入形態において組織支持スキーに向かって角度を付けられ得る。本デバイスは、楕円形状であり、椎弓根アンカーに対して拡張可能なインプラントを回転させるため、および拡張可能なインプラントを所定の向きで移動を阻止するための手段を提供し得る。デバイスを展開する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎体および椎弓根を含む椎骨を拡張するためのデバイスであって、
長手方向軸を画定する遠位端要素および近位端要素と、組織支持スキーと、前記遠位端要素および前記組織支持スキーに連結された遠位支柱と、前記近位端要素および前記組織支持スキーに連結された近位支柱とを備える拡張可能なインプラントであって、前記遠位端要素を前記近位端要素に向かって移動させて、前記遠位支柱および前記近位支柱が前記組織支持スキーを前記長手方向軸から離れるように移動させることによって、前記椎体内で展開されるように構成されている拡張可能なインプラントと、
前記拡張可能なインプラントに連結され、アンカー本体と、前記アンカー本体に移動可能に連結された少なくとも1つのアンカー要素とを備える椎弓根アンカーと、
前記椎弓根アンカーの前記アンカー本体および前記拡張可能なインプラント内で移動可能なアクチュエータであって、ユーザによって作動されて前記アンカー要素を前記椎弓根と係合するように展開するように構成されているアクチュエータと
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記遠位端要素に固定されており、前記アンカー本体は、前記近位端要素に連結されており、前記アクチュエータは、前記椎弓根アンカーによる前記近位端要素からの抵抗に抗して前記遠位端要素を前記近位端要素に向かって引き寄せるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記アンカー本体はボアを画定し、前記アクチュエータは前記ボアを通って延びるロッドである、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
椎体および椎弓根を含む椎骨を拡張するためのデバイスであって、
長手方向軸を画定する遠位端要素および近位端要素と、組織支持スキーと、前記遠位端要素および前記組織支持スキーに連結された遠位支柱と、前記近位端要素および前記組織支持スキーに連結された近位支柱とを備える拡張可能なインプラントと、
ボアを画定するアンカー本体と、前記アンカー本体に移動可能に連結された少なくとも1つのアンカー要素とを備える椎弓根アンカーと、
前記ボアを通って延び前記拡張可能なインプラントの前記遠位端要素に固定されたロッドを備えるアクチュエータであって、前記アンカー要素を前記アンカー本体に対して移動させて前記椎弓根と係合させ、さらに、前記遠位端要素を前記近位端要素に向かって移動させて前記遠位支柱および前記近位支柱が前記組織支持スキーを前記長手方向軸から離れるように移動させることによって、前記拡張可能なインプラントを前記椎体内で展開するように、ユーザによって作動されるように構成されているアクチュエータと
を備える、デバイス。
【請求項5】
前記ロッドは、前記アンカー本体に対する前記ロッドの近位への移動によって前記アンカー要素の内面と係合するように移動するように構成されたナックルを備える、請求項3または4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ナックルは、前記アンカー要素の相補的な機能部と不可逆的に干渉係合するように移動するように構成された返しを備える、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記組織支持スキーおよび前記アンカー要素の各々は、同一の拡張平面内で移動するように構成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記拡張可能なインプラントの展開は、前記椎弓根アンカーの展開と同時であるように構成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
椎体および椎弓根を含む椎骨を拡張するためのデバイスであって、
長手方向軸を画定する遠位端要素および近位端要素と、組織支持スキーと、前記遠位端要素および前記組織支持スキーに連結された遠位支柱と、前記近位端要素および前記組織支持スキーに連結された近位支柱とを備える拡張可能なインプラントであって、前記遠位端要素を前記近位端要素に向かって移動させて、前記遠位支柱および前記近位支柱が前記組織支持スキーを前記長手方向軸から離れるように移動させることによって、前記椎体内で展開されるように構成されている拡張可能なインプラントと、
前記拡張可能なインプラントに連結され、アンカー本体と、前記アンカー本体に移動可能に連結された少なくとも1つのアンカー要素とを備える椎弓根アンカーであって、前記椎弓根と係合するように展開されるように構成されている椎弓根アンカーと、
前記拡張可能なインプラントおよび前記椎弓根アンカーに連結されたアクチュエータであって、(i)前記椎弓根アンカーの展開なしに前記拡張可能なインプラントを展開させること、および(ii)前記拡張可能なインプラントの展開なしに前記椎弓根アンカーを展開させることのうちの1つを行うように、ユーザによって作動されるように構成されているアクチュエータと
を備える、デバイス。
【請求項10】
前記アクチュエータはロッドであり、前記ロッドは、前記アンカー本体に対する前記ロッドの回転によって前記アンカー要素の内面と係合するように回転するように構成されたカムを備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ロッドは、前記カムが前記アンカー要素と整列する軸方向位置まで前記アンカー本体内で移動するように構成されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記ロッドの移動は、前記拡張可能なインプラントを展開するように構成されている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
椎体および椎弓根を含む椎骨を拡張するためのデバイスであって、
長手方向軸を画定する遠位端要素および近位端要素と、組織支持スキーと、前記遠位端要素および前記組織支持スキーに連結された遠位支柱と、前記近位端要素および前記組織支持スキーに連結された近位支柱とを備える拡張可能なインプラントであって、前記遠位端要素を前記近位端要素に向かって移動させて、前記遠位支柱および前記近位支柱が前記組織支持スキーを前記長手方向軸から離れるように移動させることによって、前記椎体内で展開されるように構成されている拡張可能なインプラントと、
前記拡張可能なインプラントに固定して連結され、アンカー本体と、前記アンカー本体に移動可能に連結され、前記遠位支柱、前記近位支柱および前記組織支持スキーが展開によって移動する同一平面に沿って前記椎弓根内に展開されるように前記拡張可能なインプラントに対して方向付けられた少なくとも1つのアンカー要素と、を備える椎弓根アンカーと
を備える、デバイス。
【請求項14】
前記同一平面は尾頭平面である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記アンカー要素は、前記アンカー本体と一体的に形成された材料ウェブから延びるスパイクまたはフィンガーを備える、請求項1から14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
椎体および椎弓根を含む椎骨を拡張するためのデバイスであって、
前記椎体内で展開されるように構成された拡張可能なインプラントと、
前記拡張可能なインプラントに固定して連結され、ボアを画定するアンカー本体と、アンカー要素とを備える椎弓根アンカーであって、前記アンカー要素が、前記アンカー本体と一体的に形成された材料ウェブから延びている、椎弓根アンカーと、
ロッドを備え、前記ロッドが、前記アンカー本体の前記ボアを通って延び、前記拡張可能なインプラントに連結されているアクチュエータであって、前記ロッドを前記アンカー要素と係合するように移動させることで、前記アンカー要素が前記椎弓根と係合した状態で前記材料ウェブを塑性変形させるように、ユーザによって作動されるように構成されているアクチュエータと
を備える、デバイス。
【請求項17】
前記組織支持スキーに連結された支柱ハブをさらに備え、前記遠位支柱は前記遠位端要素と前記支柱ハブとの間で延び、前記近位支柱は前記近位端要素と前記支柱ハブとの間で延びる、請求項1から16のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記遠位端要素および前記支柱ハブに固定された第2の遠位支柱と、
前記近位端要素および支柱ハブに固定された第2の近位支柱と
をさらに備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記遠位端要素および前記近位端要素に固定された下部支柱をさらに備える、請求項1から18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記遠位端要素と前記遠位支柱の上面とに固定された遠位トラスと、
前記近位端要素と前記近位支柱の上面とに固定された近位トラスと
をさらに備える、請求項1から19のいずれか1項に記載の拡張可能なインプラント。
【請求項21】
前記遠位端要素および前記近位端要素の各々は、楕円柱である前記拡張可能なインプラントの外側輪郭を画定するように楕円形であり、前記拡張可能なインプラントおよび前記椎弓根アンカーの各々は係合機能部を含み、前記アクチュエータは、前記拡張可能なインプラントを前記椎弓根アンカーに対して第1の方向に回転させるようにさらに構成され、前記係合機能部は、前記椎弓根アンカーに対する前記拡張可能なインプラントの前記第1の方向とは反対の第2の方向の回転を防止するように構成されている、請求項1から20のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項22】
椎体および椎弓根を含む椎骨を拡張するためのデバイスであって、
前記椎体内で展開されるように構成され、遠位端要素と、前記遠位端要素と同軸に位置合わせされた近位端要素とを備えるとともに、近位係合機能部を備える、拡張可能なインプラントであって、前記遠位端要素および前記近位端要素の各々は、楕円柱である前記拡張可能なインプラントの外側輪郭を画定するように楕円形である、拡張可能なインプラントと、
前記拡張可能なインプラントの前記外側輪郭と相補的な外側輪郭を有するアンカー本体と、前記アンカー本体に連結された遠位係合機能部とを備える椎弓根アンカーと、
前記拡張可能なインプラントに連結され、前記拡張可能なインプラントを展開するように構成され、前記拡張可能なインプラントを前記椎弓根アンカーに対して第1の方向に回転させるようにさらに構成されたアクチュエータであって、前記椎弓根アンカーの前記遠位係合機能部と係合する前記拡張可能なインプラントの前記近位係合機能部は、前記椎弓根アンカーに対する前記拡張可能なインプラントの前記第1の方向とは反対の第2の方向の回転を防止するように構成されている、アクチュエータと
を備える、デバイス。
【請求項23】
前記椎弓根アンカーは阻止機能部をさらに備え、前記アクチュエータは、前記椎弓根アンカーの前記阻止機能部と係合し、前記拡張可能なインプラントの前記第1の方向の所定の角度よりも大きい角度の回転を防止するように構成された、相補的な阻止機能部をさらに備える、請求項21または22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記近位係合機能部および前記遠位係合機能部は、相補的な一方向の歯である、請求項22または23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記アクチュエータはロッドを備え、前記相補的な阻止機能部は、断面が非円形であり、前記椎弓根アンカーによって画定されたボア内に配置された前記阻止機能部と干渉するように構成された、前記ロッドの一部である、請求項22から24のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項26】
椎体を含む椎骨を拡張するための拡張可能なインプラントであって、
遠位端要素と、
前記拡張可能なインプラントの長手方向軸を画定するために前記遠位端要素と同軸に位置合わせされた近位端要素であって、前記遠位端要素および前記近位端要素の各々は、円柱体または楕円柱である前記拡張可能なインプラントの外側輪郭を画定するように、円形または楕円形である、近位端要素と、
組織支持スキーと、
前記遠位端要素および前記組織支持スキーに連結された遠位支柱と、
前記近位端要素および前記組織支持スキーに連結された近位支柱と
を備え、
前記組織支持スキーは、少なくとも実質的に平面であり、前記拡張可能なインプラントの前記外側輪郭から凹んでいる、組織接触面を備える、
拡張可能なインプラント。
【請求項27】
前記組織接触面は、前記拡張可能なインプラントの前記外側輪郭の弦を画定するように、前記長手方向軸からオフセットしている、請求項26に記載の拡張可能なインプラント。
【請求項28】
前記遠位端要素および前記近位端要素に固定された下部支柱をさらに備える、請求項26または27に記載の拡張可能なインプラント。
【請求項29】
前記組織支持スキーに固定された支柱ハブをさらに備え、前記遠位支柱は、前記遠位端要素と前記支柱ハブとの間で延び、前記近位支柱は、前記近位端要素と前記支柱ハブとの間で延びている、請求項26から28のいずれか1項に記載の拡張可能なインプラント。
【請求項30】
椎体を含む椎骨を拡張するための拡張可能なインプラントであって、
遠位端要素と、
前記遠位端要素と同軸に位置合わせされた近位端要素であって、前記遠位端要素および前記近位端要素の各々は、円柱体または楕円柱である前記拡張可能なインプラントの外側輪郭を画定するように、円形または楕円形である、近位端要素と、
組織接触面を備える組織支持スキーと、
前記組織接触面とは反対側である前記組織支持スキーの下面に固定された支柱ハブと、
前記支柱ハブに固定され、未展開形態において前記組織支持スキーに向かって角度が付けられるように前記遠位端要素に角度をなしてさらに固定された遠位支柱と、
前記支柱ハブに固定され、前記未展開形態において前記組織支持スキーに向かって角度が付けられるように角度をなして前記近位端要素にさらに固定された近位支柱と
を備える、拡張可能なインプラント。
【請求項31】
前記遠位端要素および前記近位端要素に固定された下部支柱をさらに備える、請求項30に記載の拡張可能なインプラント。
【請求項32】
前記下部支柱は、前記遠位端要素に隣接する遠位材料ウェブと、前記近位端要素に隣接する近位材料ウェブと、中央材料ウェブとを備え、これら材料ウェブは、前記拡張可能なインプラントの展開中に塑性変形するように構成されている、請求項31に記載の拡張可能なインプラント。
【請求項33】
前記遠位端要素および前記支柱ハブに固定された第2の遠位支柱と、
前記近位端要素および支柱ハブに固定された第2の近位支柱と
をさらに備える、請求項29から32のいずれか1項に記載の拡張可能なインプラント。
【請求項34】
前記組織接触面はテクスチャ加工されている、請求項26から33のいずれか1項に記載の拡張可能なインプラント。
【請求項35】
前記組織支持スキーは、前記組織接触面に隣接し互いに対向する両側部を備え、前記両側部は、前記拡張可能なインプラントの前記外側輪郭に輪郭付けられている、請求項26から34のいずれか1項に記載の拡張可能なインプラント。
【請求項36】
前記遠位支柱および前記近位支柱は、前記組織接触面の反対側である前記組織支持スキーの下面に連結されている、請求項26から35のいずれか1項に記載の拡張可能なインプラント。
【請求項37】
前記遠位端要素と前記遠位支柱の上面とに固定された遠位トラスと、
前記近位端要素と前記近位支柱の上面とに固定された近位トラスと
をさらに備える、請求項26から36のいずれか1項に記載の拡張可能なインプラント。
【請求項38】
椎体および椎弓根を含む椎骨を拡張するためのシステムであって、
請求項1から37のいずれか1項に記載の拡張可能なインプラントと、
請求項1から25のいずれか1項に記載の椎弓根アンカーと、
前記椎弓根アンカーに連結されるように構成された後方要素と、
任意選択的に、脊椎固定術において前記後方要素に連結されるよう構成される脊椎ロッドと
を備える、システム。
【請求項39】
椎体および椎弓根を含む椎骨を拡張するためのシステムであって、
請求項1から37のいずれか1項に記載の拡張可能なインプラントと、
請求項1から25のいずれか1項に記載の椎弓根アンカーと、
前記椎弓根内にパイロット孔を作成するように構成された第1の材料除去デバイスと、
前記パイロット孔を、前記椎弓根を通る楕円形のボアに拡張するように構成されている第2の材料除去デバイスと
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2021年12月20日に出願された米国仮特許出願第63/291,712号の優先権およびすべての利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背痛の一般的な原因は、弱体化したかまたは損傷した椎体が高さを失うかまたは圧潰する、椎骨圧迫骨折である。椎体の弱体化は、急性の損傷に起因する場合もあれば、より多くは骨粗鬆症などの退行性変化に起因する場合もある。圧迫骨折は、側面X線写真では、前方ほど高さを失った楔形の変形として現れることが多い。
【0003】
椎骨拡張術(vertebral augmentation procedure)は、椎体の高さを上昇または回復させ、その上昇または回復した高さで安定させる治療モダリティである。これを行う1つの方法は、椎体内にインプラントを展開することを含む。インプラントは、椎体の高さを上昇または回復させるために拡張するように構成されている。インプラントは椎体内部に留まって、上昇または回復した高さにおいて椎体の構造的完全性を促進および維持することができる。それを行うための例示的なインプラントおよびシステムは、とりわけ、内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2010年12月7日に発行された本出願人が共同所有する米国特許第7,846,206号に記載されており、Stryker Corporation(ミシガン州カラマズー)からSpineJackという商品名で販売されている。
【0004】
SpineJackインプラントは、その名称が暗示するように、シザージャッキのような方式で尾頭(caudocranial)方向に上部プレートおよび下部プレートを動かすように構成された少なくとも2対の支持体(または組織支持スキー(tissue support ski))を含む。インプラントは作業カニューレを通して展開され、このカニューレ自体は、椎骨の椎弓根を通して経皮的に挿入される。作業カニューレは、約10ゲージ、6ゲージ、またはさらには4ゲージであってもよく、インプラントは、それに対応して、作業カニューレの内径よりも小さいサイズとなる。したがって、上部組織支持スキーおよび下部組織支持スキーの表面はアーチ形であって、作業カニューレを通して展開されるように、折り畳まれたまたは挿入形態にあるインプラントに円柱状輪郭を与えることができる。最大1,000ニュートンの拡張力を提供することができるインプラントでは、展開形態への拡張中にアーチ形表面からの椎体終板にかかる圧力を制限することが望ましい。
【0005】
いくつかの既知のデバイスが、椎体内インプラントを椎弓根に固定することができる。それを行うための例示的なシステムは、2014年7月22日に発行された米国特許第8,784,491号、および2020年3月31日に発行された、本出願人が共同所有する米国特許第10,603,080号に記載されており、これら各特許の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。それらのシステムは、インプラントが椎弓根アンカーに動作可能に連結された状態で、椎弓根にねじ込み可能に固定されるように構成された雄ねじを含む椎弓根アンカーを含む。しかしながら、作業カニューレは管状であるが、椎弓根自体は楕円形または長円形により近い形状である。したがって、椎弓根の一部は十分に利用されておらず、所与の解剖学的構造に対して最大限の許容されるインプラントは、椎弓根アンカーの雄ねじの円柱状輪郭によって制約されている。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本技術分野において、圧迫骨折およびその後遺症の治療を改善する方法で椎弓根に固定され、任意選択的に骨セメントを使用せずにそれを行うことができる、椎間インプラントが継続的に必要とされている。
【0007】
椎骨の椎体を拡張(augmenting)するためのデバイス。本デバイスは、椎弓根内に固定(anchor)され、椎体内で展開されるように構成された拡張可能なインプラントを含むように構成されている。本デバイスを椎弓根内に固定することにより、骨セメントの必要性をなくし、拡張可能なインプラントの設計を簡略化することができる。本デバイスは、拡張可能なインプラントと、拡張可能なインプラントに連結されて拡張可能なインプラントを所望の位置に支持する椎弓根アンカーとを含む。組織支持スキーは、拡張可能なインプラントの挿入形態から展開形態への展開により移動して、隣接する海綿骨を圧迫し、椎体の上部終板を上昇または回復した高さに移動させる。アクチュエータが、拡張可能なインプラントを通って延び、拡張可能なインプラントを挿入形態から展開形態に展開するように構成することができる。
【0008】
拡張可能なインプラントは、遠位端要素、近位端要素、および支柱を含む。拡張可能なインプラントは、組織支持スキーの下面に直接接続もしくは固定された、または下面と一体的に形成された支柱ハブを含むことができる。支柱は、支柱ハブに直接接続もしくは固定する、または支柱ハブと一体的に形成することができる。支柱の1つ、2つ以上、またはすべては、拡張可能なインプラントが展開される際に塑性変形するように構成された厚さ低減部分である、少なくとも1つの材料ウェブを含むことができる。支柱は、挿入形態において組織支持スキーに向かって角度が付けられるように、遠位端要素または近位端要素に固定することができる。この角度により、支柱が適切な方向に座屈して、組織支持スキーを長手方向軸から離れるように上方に付勢することが確実になる。支柱を、遠位端部分または近位端部分の下面に連結して、支柱に角度を付けるのに必要な隙間を提供することができる。いくつかの実施態様では、拡張可能なインプラントは、遠位端要素および遠位支柱に固定された遠位トラスと、近位端要素および近位支柱に固定された近位トラスとを含むことができる。
【0009】
組織支持スキーの組織接触面は、外側輪郭から凹んでいてもよい。組織接触面は、長手方向軸からオフセットし、拡張可能なインプラントの円柱状の外形輪郭の幾何学的な弦(chord)を画定することができる。組織接触面は、部分的にまたは全体的に平面であり得る。組織支持スキーは、椎体内で海綿骨に遭遇する前に、凹部にほぼ等しい最初の持ち上げ(lifting)によって移動させることができる。組織接触面は、リッジ(ridge)、溝、窪み、隆起など、テクスチャ加工されてもよい。デバイスの表面またはサブコンポーネントは、骨の内部成長を促進するために多孔質材料で形成することができる。
【0010】
椎弓根アンカーは、アンカー本体と、アンカー本体に移動可能に連結された少なくとも1つのアンカー要素とを含む。アンカー要素は、アンカー本体を越えて外側に展開されて、椎弓根と係合するかまたは椎弓根に突き刺さるように構成されている。アンカー本体はボア(bore)を画定することができ、ボア内に、アクチュエータのロッドを移動可能に配置することができる。ロッドはナックル(knuckle)を含むことができ、ロッドによって画定された空洞によってナックルを分離することができる。アンカー要素は、挿入形態では内縁面が空洞内に配置され、外面がアンカー本体の外側輪郭内に配置されるような形状である。アンカー要素は、アンカー本体と一体的に形成することができ、材料の薄肉部分(thinned portion)によって形成されたリビングヒンジを含むことができる。ナックルは、ロッドの公称外径を越えて延びる突起であってもよい。設けられるナックルの数は、アンカー要素の数に対応してもよく、または、ナックルのうちの1つが、対向する一対のアンカー要素を展開するように構成されていてもよい。ロッドの移動(並進)により、ナックルがアンカー要素の内面と係合し、ナックルとアンカー要素との間の干渉により、アンカー要素がリビングヒンジを中心に外側に枢動または屈曲する。ナックルは、アンカー要素の相補的な機能部と不可逆的に干渉係合(interference engagement)するように移動するように構成された、少なくとも1つの歯または返し(barb)を含むことができる。アンカー要素は、デバイスを左半分と右半分とに分離する長手方向中心平面を中心として配置されるか、または半径方向(radially)にオフセットしている。組織支持スキーおよびアンカー要素は、同一の拡張平面内で移動させることができる。ロッドの移動(並進)によって、組織支持スキーが長手方向軸から離れるように移動し、したがってロッドの移動(並進)によって、拡張可能なインプラントと椎弓根アンカーとを同時に展開することができる。
【0011】
いくつかの実施態様では、アンカー要素は、アンカー本体と一体的に形成されたフィンガーを含むことができる。フィンガーは、アンカー本体にスロットを画定することによって形成することができる。アクチュエータのロッドは、ロッドの互いに対向する両側部から外方へ延びるカムを含む。カムは、アンカー要素の内面と係合するように移動して、デバイスを挿入形態からアンカー形態に移動させるように構成されている。カムとアンカー要素の内面との干渉により、フィンガーは、アンカー本体の外側輪郭を越えて外側に屈曲または枢動する。フィンガーは、椎弓根に突き刺さってこれと係合するのに十分鋭利な、スロットによって画定されたエッジを含むことができる。拡張可能なインプラントおよび椎弓根アンカーを順次展開することは、ロッドを移動(並進)させて拡張可能なインプラントを挿入形態から展開形態に移動させるための、アクチュエータへの第1の入力と、ロッドを回転させて椎弓根アンカーを挿入形態からアンカー形態に移動させるための、第2の入力とを含むことができる。ロッドが第1の軸方向位置にある状態で、カム遠位端が、アンカー要素のうちの最も遠位のものに対して遠位に位置決めされる。アクチュエータへの第1の入力は、ロッドを第1の軸方向位置から第2の軸方向位置に移動(並進)させ、この第2の軸方向位置において、カムは、カムを回転させてアンカー要素を展開するとともに椎弓根アンカーをアンカー形態に移動させる第2の入力のために、アンカー要素のうちの最も近位のものと軸方向に位置合わせするように移動する。
【0012】
いくつかの実施態様では、遠位端部分および近位端部分は、楕円柱(oval prism)として外側輪郭を画定するように長円形または楕円形であってもよい。拡張可能なインプラントの幅は、楕円形の形状を形成するためにその高さよりも大きい。組織接触面は、高さよりも大きい幅に沿うかまたは幅に平行となるように方向付けられ得る。本デバイスは、椎弓根アンカーに対して拡張可能なインプラントを回転させるための手段を含む。拡張可能なインプラントは、椎弓根アンカーに対して約90度回転させることができる。拡張可能なインプラントは、椎弓根アンカーに対する第1の回転方向の回転を許容にし、椎弓根アンカーに対する第2の回転方向の回転を防止するために、椎弓根アンカーの遠位係合機能部に動作可能に係合する近位係合機能部を含むことができる。アクチュエータのロッドは、拡張可能なインプラントのキー溝と係合して拡張可能なインプラントの回転を提供するように構成されたヘッド部分を含むことができる。ヘッド部分は非円形であり得る。本デバイスは、拡張可能なインプラントが所定の角度よりも大きい角度へ第1の回転方向にさらに回転することを防止する阻止機能部を含むことができる。所定の角度は、約90度、またはより一般的には80度から100度の範囲内であり得る。阻止機能部は、アンカー本体のボアの遠位端に画定された突出部であってもよい。突出部は、ロッドが所定の角度にあるとき、ロッドのヘッド部分と干渉するように半径方向に向けられる。
【0013】
本発明の利点は、添付の図面と関連して考慮されるとき、以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるにつれて、容易に認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】椎体内に展開された拡張可能なインプラントと、椎弓根と係合した椎弓根アンカーとを含むデバイスの断面立面図である。
【
図3A】
図1のデバイスの背面断面斜視図であり、椎弓根アンカーのアンカー要素が、概して椎弓根の最大寸法に沿って展開されている。
【
図3B】椎弓根の図の上に重ねられた本開示のデバイスおよび既知のデバイスの概略図である。雄ねじとは対照的に、アンカー要素を尾頭方向に向けることにより、所与の椎弓根に対してより大きいインプラントを使用することができる。
【
図5】挿入形態にある
図5のデバイスの断面立面図である。
【
図6】切断線6-6に沿った
図5のデバイスの断面立面図である。デバイスは展開形態にある。
【
図7】本デバイスの別の実施態様の正面斜視図である。
【
図9A】切断線9-9に沿った
図7のデバイスの断面立面図である。拡張可能なインプラントおよび椎弓根アンカーは挿入形態にある。
【
図9B】
図7のデバイスの断面立面図である。拡張可能なインプラントは展開形態にあり、椎弓根アンカーは挿入形態にある。
【
図9C】
図7のデバイスの断面立面図である。拡張可能なインプラントおよび椎弓根アンカーは展開形態にある。
【
図10】本デバイスの別の実施態様の分解図である。
【
図11】使い捨てインプラントの挿入後、拡張可能なインプラントが椎弓根アンカーに対して回転した状態の
図10のデバイスの立面図である。
【
図12B】
図11のデバイスの別の拡張可能なインプラントの立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図3は、椎体(VB)および椎弓根(VP)を含む椎骨(V)内に展開されたデバイス20の図である。椎体は、海綿骨を有する内部領域を画定している。デバイス20は、アクセスカニューレと、デバイス20が取り外し可能に連結されるように構成されているイントロデューサデバイスとを含むシステムと共に使用することができる。デバイス20は、椎体の少なくとも1つの終板が移動する上昇または回復した高さまで椎体を拡張する(augment)ように構成されており、これにより、骨粗鬆症性変性、圧迫骨折、または脊椎の他の関連する障害に関連する痛みおよび他の後遺症を軽減または除去することができる。デバイス20を展開するのに好適なアクセスカニューレ、イントロデューサデバイス、および他の器具の例は、2015年3月24日に発行された本出願人が共同所有する米国特許第8,986,386号に開示されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示では、標準的な医学的慣例に従って、解剖学的方向、すなわち、患者の頭部または上方に向かう頭側、患者の足または下方に向かう尾側、患者に最初に挿入される(または施術者から離れる)デバイスの端部に向かう遠位、および施術者に向かう近位も参照する場合があることに留意されたい
【0016】
図1に最もよく示すように、デバイス20は拡張可能なインプラント22を含み、拡張可能なインプラント22は、上部終板(UE)を下部終板(LE)から離れるように移動させるために、椎体の内部で頭側方向に展開されるように構成されている。デバイス20は椎弓根アンカー24を含み、椎弓根アンカー24は、拡張可能なインプラント22に連結され、デバイス20を固定する(anchor)ために椎弓根と係合するように構成されている。椎弓根アンカー24は、拡張可能なインプラント22を所望の位置で支持し、骨セメントの必要性をなくすことができる。言い換えれば、デバイス20を含むシステムは、セメントレスシステムであり、それにより、骨セメントの準備および投与の煩雑なステップを省くことができる。セメントレスシステムはまた、脊椎に動的荷重をかけやすい生活様式を有する若く活動的な個人の場合の長期的な術後合併症の可能性を低減させるために、特に有利であり得る。
【0017】
拡張可能なインプラント22は組織支持スキー26を含む。組織支持スキー26は、拡張可能なインプラント22の展開によって、後述する挿入形態から展開形態に移動するように構成されている。組織支持スキー26は、隣接する海綿骨を圧迫し、椎体の上部終板を上昇または回復した高さまで移動させる。椎弓根アンカー24が拡張可能なインプラント22を所望の位置で支持している状態で、単一の組織支持スキー26を使用して、セメントレスシステムにおいて所望の高さの回復を達成することができる。椎体内で完全に展開される、すなわち椎弓根への固定のない従来のデバイスでは、通常、骨セメントと共に、放射状に展開されたインプラントまたは互いに対向するスキーが必要であった。説明される態様では、単一の組織支持スキー26を使用することにより、組織支持スキー26が拡張可能なインプラント22の外側輪郭から凹み、それにより、組織支持スキー26の耐荷重面を大きくすることができる。耐荷重面が大きくなることにより、デバイス20からの上部終板に対する圧力が低減し、それにより、外科的合併症および術後合併症の可能性が低減する。代替的に、拡張可能なインプラント22が下部支柱49または第2の組織支持スキーを含むことができることも考えられる。
【0018】
図4~
図7を同時に参照すると、拡張可能なインプラント22は、遠位端要素28および近位端要素30を含む。遠位端要素28および近位端要素30は、デバイス20の長手方向軸を画定することができる。遠位端要素28は、デバイス20の遠位端を画定することができ、近位端要素30は、拡張可能なインプラント22の近位端を画定することができる。遠位端要素28および組織支持スキー26に、遠位支柱34または支持体が連結され、近位端要素30および組織支持スキー26に、近位支柱36または支持体が連結されている。拡張可能なインプラント22は、組織支持スキー26の下面に直接接続もしくは固定されるか、または当該下面と一体的に形成された、支柱ハブ32を含むことができる。遠位支柱34および近位支柱36は、支柱ハブ32に直接接続もしくは固定するか、または支柱ハブ32と一体的に形成することができる。
図4に最もよく示すように、拡張可能なインプラント22は、いくつかの追加の支柱を含むことができる。遠位端要素28および支柱ハブ32に、第2の遠位支柱38を連結することができ、近位端要素30および支柱ハブ32に、第2の近位支柱40を連結することができる。第1の遠位支柱34および第2の遠位支柱38は、遠位端要素28と組織支持スキー26との間において互いに隣接して配置されるとともに互いに沿って延びることができ、第1の近位支柱36および第2の近位支柱40もまた、近位端要素30と組織支持スキー26との間において互いに隣接して配置されるとともに互いに沿って延びることができる。後述するアクチュエータ50の反対側に、支柱の鏡面対称の配置を設けることができる。いくつかの実施態様において、遠位端要素28および支柱ハブ32に、第3の遠位支柱42および第4の遠位支柱44が連結され、近位端要素30および支柱ハブ32に、第3の近位支柱46および第4の近位支柱48が連結される。
【0019】
支柱34~48は、拡張可能なインプラント22の展開中に組織支持スキー26に所望の動きを与えるような大きさおよび形状である。アクチュエータ50は、遠位端要素28に固定され、(ユーザを介して)イントロデューサデバイスからの入力を受けて遠位端要素28を近位端要素30に向かって引き寄せるように構成されている。支柱34~48は、遠位端要素28を近位端要素30に向かって引き寄せることにより、組織支持スキー26をデバイス20の長手方向軸から離れるように上方に付勢する方法で支柱34~48が関節動作するように、十分に剛性のある材料から形成されている。支柱34~48のうちの1つ、2つ以上、またはすべては、拡張可能なインプラント22が椎体内で展開される際に塑性変形するように構成された厚さ低減部分である、(図を通していくつかが特定されている)少なくとも1つの材料ウェブ52を含むことができる。言い換えれば、支柱34~48の一部の厚さは、材料ウェブ52の厚さよりも大きく、拡張可能なインプラント22が挿入形態から展開形態に移動する際、応力が局所化して材料ウェブ52に曲げを付与するようになっている。曲げの効果は、遠位端要素28および組織支持スキー26の各々に対する遠位支柱34、38、42、および44の関節運動と、近位端要素30および組織支持スキー26の各々に対する近位支柱36、40、46、48の関節運動とである。拡張可能なインプラント22は、長手方向軸に対して横断する平面を中心に対称であってもよく、したがって、対をなす遠位支柱および近位支柱は、相補的に関節運動して、挿入形態および展開形態の両方において、および場合によっては挿入形態と展開形態との間のすべての運動中に、組織支持スキー26をデバイス20の長手方向軸に対して平行になるようにする。
【0020】
図12Aおよび
図12Bから最もよく理解されるように、支柱34~48は、挿入形態において組織支持スキー26に向かって角度が付けられるように、遠位端要素28または近位端要素30に固定することができる。第1の遠位支柱34は、拡張可能なインプラント22の長手方向軸(A)に対して角度αに向けられているように示されている。残りの支柱36~48についても、同一の角度または異なる角度を与えることができる。この角度は、わずかであるが、支柱34~48が適切な方向に座屈し、組織支持スキー26を長手方向軸から離れて上方に付勢することを確実にするのに十分である。角度は、1~10度、より具体的には1~5度であり得る。単一の組織支持スキー26の使用により、支柱34~48に前述の方法で角度を付けるために必要な隙間を提供することができる。より具体的には、挿入形態にある支柱34~48の角度付けをもたらすために、支柱34~48は、遠位端要素28または近位端要素30の下方面に連結することができ、これは、独自の関連する支柱を必要とする第2の組織支持スキーを有するインプラントでは、本来は実現不可能である可能性がある。たとえば、
図12Aおよび
図12Bは、長手方向軸に沿って遠位端要素28および近位端要素30の一方にそれぞれ連結された第1の遠位支柱34および第1の近位支柱36の端部と、組織支持スキー26から長手方向軸とは反対側の遠位端要素28および近位端要素30の一方(すなわち、遠位端要素28下面または近位端要素30の下面)にそれぞれ連結された第2の遠位支柱38および第2の近位支柱40の端部とを示す。組織支持スキー26は、挿入形態において、デバイス20の外側輪郭を越えて延びるべきではないことが分かっているため、支柱34~48の比較的低い連結箇所は、そのような制約を考慮して支柱34~48の上向きの角度付けのみのためだけでなく、デバイス20の外側輪郭からの組織支持スキー26の凹部(R)のための隙間も提供する。
【0021】
引き続き
図12Aを参照し、さらに
図13を参照すると、組織支持スキー26は、その下面と反対側の上面または組織接触面54を含むことができる。遠位端要素28は、少なくとも円柱状部分を含むことができ、近位端要素30は、円柱状であり得る。慣例として、拡張可能なインプラント22の外側輪郭は、遠位端要素28の円柱状部分と近位端要素30の円柱体とによって画定される円柱体であり得る、すなわち、
図12Aの鎖線は、外側輪郭の上面を表す。代替的に、遠位端要素28および近位端要素30は、長円形または楕円形であり、楕円柱(oval prism)として外側輪郭を画定してもよいことが考えられる。
図13は、拡張可能なインプラント22の幅(W)がその高さ(H)よりも大きく、楕円形状を形成する、そのような1つの実施態様を示す。組織支持スキー26の組織接触面54は、外側輪郭から凹んでいる(R)。たとえば、組織接触面54は、長手方向軸からオフセットして、拡張可能なインプラント22の円柱状の外側輪郭の幾何学的な弦(chord)を画定することができる。組織接触面54が外側輪郭から凹んでいることの技術的利点は、少なくとも4つある。第1に、組織接触面54は、部分的にまたは全体的に平面とすることができる。
図13は、形状が全体的に平面でありかつ矩形である組織接触面54を示している。第2に、組織接触面54は、比較的大きくすることができる。言い換えれば、拡張可能なインプラント22の幅の大部分を組織接触面54として利用することができる。これは特に、拡張可能なインプラント22が楕円形状である実施態様の場合である。言い換えれば、
図10および
図13の拡張可能なインプラント22の組織接触面54は、
図4および
図7の拡張可能なインプラント22の組織接触面54よりも広い。圧力は単位面積当たりの力であるため、平面状のより大きい組織接触面54により、デバイス20の展開中と体内(in situ)に一旦置かれた後との両方で、上部終板にかかる圧力が低減する。圧力の低減により、より大きい力が上部終板に加わることが可能になり、それにより、終板が損なわれる心配が少なく、高さのより大きな回復が実現される。体内(in situ)に置かれると、焦点圧力を増大させることなく、組織接触面54からの上部終板にかかるより大きい静的な力および動的な力に耐えることができ、それにより、より堅牢なデバイスを提供することができる。第3に、組織支持スキー26は、椎体内の海綿骨に遭遇する前に、凹部(R)にほぼ等しい最初の持ち上げによって移動させることができる。海綿骨からの抵抗を受けると、最初の持ち上げにより、挿入具からより大きい機械的利点が提供される。さらに、その後の海綿骨との遭遇は、外科医によって触覚フィードバックとして知覚され得、したがって、外科医は、拡張可能なインプラント22自体からの内部抵抗と海綿骨からの抵抗とを区別することができる。第4に、組織接触面54は、上部終板との係合を改善し、骨の内部成長を促進するために、テクスチャ加工することができる。たとえば、組織接触面54は、概して
図12Bの55で表す、リッジ(ridge)、溝、窪み、隆起などを含むことができる。追加的にまたは代替的に、組織接触面54、および/またはデバイス20の表面のうちのいずれかの部分は、骨の内部成長を促進するために多孔質材料から形成されてもよい。
【0022】
図12Aを参照して説明した拡張可能なインプラント22の前述した特徴のありとあらゆるものが、本明細書に記載する拡張可能なインプラント22の他の実施態様に含まれるか、または含まれてもよいことが理解されるべきである。
図12Aの拡張可能なインプラント22の実施態様は、遠位端要素28および遠位支柱34に固定された遠位トラス56と、近位端要素30および近位支柱36に固定された近位トラス58とをさらに含むことができる。遠位端要素28および近位端要素30に沿った支柱34~48間の前述した下方の連結箇所により、遠位トラス56および近位トラス58は、拡張可能なインプラント22の展開中に遠位端要素28および近位端要素30が外向きに広がること(flaring)を防止するように構成されている。言い換えれば、遠位端要素28が海綿骨からの抵抗および拡張可能なインプラント22自体の内部抵抗に抗して近位端要素30に向かって引き寄せられる際、(たとえば、支柱34~48から)遠位端要素28および近位端要素30の下方部分にかかる力により、遠位端要素28および近位端要素30の上方部分が、望ましくないように外向きに広がる(flare)可能性がある。遠位トラス56および近位トラス58は、遠位端要素28と近位端要素30との間の平行な位置合わせを維持する形で力を分散させる。
図12Bの拡張可能なインプラント22の実施態様は、下部支柱49をさらに含むことができる。下部支柱49は、遠位端要素28および近位端要素30のそれぞれに連結された両端部を含むことができる。下部支柱49は、組織支持スキー26とは反対の方向に長手方向軸から離れる下部支柱49の動きを付与するようなサイズおよび形状である、材料ウェブ52を含むことができる。下部支柱49は、第2の組織支持スキーおよびそれに関連する支柱を提供するために必要な隙間を必要とすることなく、体内(in situ)での拡張可能なインプラント22の安定性の追加をもたらし得る。
【0023】
上述したように、デバイス20は、椎弓根内に固定(anchor)されるように構成された椎弓根アンカー24を含む。
図1~
図6に戻ると、椎弓根アンカー24は、アンカー本体60と、アンカー本体60に移動可能に連結された少なくとも1つのアンカー要素62とを含む。複数のアンカー要素62について後述するが、単一のアンカー要素を設けてもよい。アンカー要素62は、
図1~
図3Aに示すように、椎弓根と係合するようにアンカー本体60を越えて外側に展開されるように構成されている。アンカー要素62は、椎弓根の皮質骨に突き刺さるのに十分な形状である、尖端、エッジ、角部などを含むことができる。たとえば、アンカー要素62は、皮質骨と係合して椎骨に対するデバイス20の移動を防止し、特に、一旦固定された後のデバイス20の「引き抜き」を防止するように構成された、後縁部64を含むことができる。
【0024】
図5は、組織支持スキー26およびアンカー要素62がデバイス20の外側輪郭内に位置決めされている挿入形態にあるデバイス20を示している。
図6は、組織支持スキー26が上方に移動した展開形態及びアンカー要素62がアンカー本体60を越えて外側に移動したアンカー形態にあるデバイス20を示す。挿入形態と展開形態との間でデバイス20を移動させるために、アクチュエータ50に入力が提供される。イントロデューサデバイス(図示せず)に取り外し可能に連結されたロッド66を含むことができるアクチュエータ50は、遠位端要素28を近位端要素30に向かって引き寄せるように移動(並進)することができる。近位端要素30は、アンカー本体60の遠位端に連結されるかまたはそこに当接していてもよく、したがって、アンカー本体60は、近位端要素30が対応する態様で移動しないように抵抗する。遠位端要素28および近位端要素30からの圧縮力は、支柱34~48に伝達され、局所化した応力によって、材料ウェブ52が座屈し、支柱34~48を関節運動させて組織支持スキー26を長手方向軸から離れるように移動させる。
【0025】
アンカー本体60はボア68を画定することができ、ボア68内にロッド66を移動可能に配置することができる。ロッド66はナックル(knuckle)70を含むことができ、ナックル70は、ロッド66によって画定された空洞72によって分離することができる。アンカー要素62は、挿入形態では内縁部または内面74が空洞72内に配置され、後縁部64を含む外面がアンカー本体60の外側輪郭内にあるような形状である。アンカー要素62は、いくつかの好適な配置のうちの任意の1つにおいて、アンカー本体60に移動可能に連結することができる。たとえば、アンカー要素62は、アンカー本体60と一体的に形成することができ、材料の薄肉部分(thinned portion)によって形成されたリビングヒンジ76を含むことができる。別の例では、アンカー要素を、ピボットピンなどでアンカー本体60に連結してもよい。ナックル70は、ロッド66の公称外径を越えて延びる突起であってもよい。設けられるナックル70の数は、アンカー要素62の数に対応してもよく、または、ナックル70のうちの1つは、対向する一対のアンカー要素62を展開するように構成されていてもよい。
図5および
図6は、4つのアンカー要素62(アンカー本体60の上面(upper aspect)に移動可能に配置された2つ、およびアンカー本体60の下面(lower aspect)に移動可能に配置された2つ)と、2つのナックル70とを示すが、いずれか一方をより多くまたはより少なく設けてもよい。
【0026】
挿入形態とアンカー形態との間でデバイス20を移動させるために、ロッド66を移動(並進)させる入力がアクチュエータ50に提供される。本実施態様では、この入力は、拡張可能なインプラント22を展開する入力と同一の入力であってもよく、したがって、拡張可能なインプラント22およびアンカー要素62は、少なくともほぼ同時に展開することができる。ロッド66の移動(並進)により、ナックル70がアンカー要素62の内面74と係合し、ナックル70とアンカー要素62との間の干渉により、アンカー要素62がリビングヒンジ76を中心に外側に枢動または屈曲し、それにより後縁部64が椎弓根に突き刺さる。ナックル70は、アンカー要素62の相補的な機能部と不可逆的に干渉係合(interference engagement)するように移動するように構成された、少なくとも1つの歯または返し(barb)78を含むことができる。特に、アンカー形態では、返し78は、アンカー要素62の内面74の縁部と干渉係合する。その結果、ロッド66は、アンカー本体60に対して遠位へ移動(並進)することができず、そうでない場合、アンカー要素62が内側に枢動または屈曲することが可能になり固定効果が損なわれる。アンカー要素62に対する空洞72の設計に応じて、ナックル70は任意選択的であり得ることが理解されるべきである。言い換えれば、空洞72がアンカー要素62を受けるのに十分な深さがあり、十分に大きい場合、ロッド66の外面自体がアンカー要素62を展開するための所望の効果を提供することができる。
【0027】
上述したように、アンカー要素62は、アンカー本体60の上面(upper aspect)および下面(lower aspect)に配置することができる。この配置により、椎弓根と係合するために雄ねじを使用する従来のデバイスと比較して技術的な利点が実現される。
図3Aは、椎弓根の断面斜視図を示し、椎弓根が非円形であることが容易に理解される。特に、椎弓根は、形状が長円形または楕円形に最も近く、これは、
図3Bにおいて椎弓根(VP)として概略的に表されている。
図3Bの右側の概略図は、外側輪郭(OP)および雄ねじ(ET)を有する代表的な既知のデバイス(KD)であり、左側の概略図は、外側輪郭およびアンカー要素(AE)を有するデバイス20である。所与の椎弓根に対して、既知のデバイスは、雄ねじが椎弓根の外面に侵入するため、本開示のデバイス20と同一のサイズの外側輪郭に適応することができない。その結果、拡張可能な部分を含む既知のデバイスは、椎弓根に適合するために小さくする必要があり、既知のデバイスの拡張可能な部分が小さくなると、椎体を所望の回復した高さまで拡張するには不十分である場合がある。対照的に、デバイス20のアンカー要素は、椎弓根の外面に侵入することなく、より大きい外側輪郭を提供する。簡単に言えば、デバイス20は、有利には、椎弓根の利用可能な解剖学的形状をより多く利用して、より大きい作業カニューレ、したがって、より大きい拡張可能なインプラントの選択肢を提供する。
【0028】
デバイス20の図示した実施態様は、デバイス20を左半部と右半部とに分離する長手方向中心平面を中心にして配置されたアンカー要素62を含む。このような配置では、組織支持スキー26およびアンカー要素62は、同一の拡張平面内で移動するように構成されている。たとえば、組織支持スキー26を頭側に展開することができ、アンカー要素62を尾頭方向に展開することができる。しかしながら、複数のアンカー要素62のうちの1つまたは複数の半径方向の向き(radial orientation)の変更が考えれることが理解されるべきである。アンカー要素62は通常、アンカー本体60の上面および下面に配置され得るが、アンカー要素62は長手方向中心平面から半径方向に(radially)オフセットしていてもよい。個々の患者であるか擬人化データの調査であるかに関わらず、椎弓根の解剖学的形状に基づいて、アンカー要素62のうちの1つまたは複数を、長手方向中心平面から3度、5度、10度、もしくは15度またはそれ以上移動させることが望ましい場合がある。1つの例では、具体的な寸法を決定することができるコンピュータ断層撮影スキャンで個々の患者の椎弓根の解剖学的形状を分析した後、外科医は、各々がアンカー要素62の異なる配置を有する多くのデバイス20のカタログからデバイス20のうちの1つを選択することができる。選択されたものは、椎弓根の最大寸法に沿って最適であり得る。代替的な実施態様では、アンカー要素62は、三角形、十字形、星形、五角形、六角形、または別の幾何学的配置にあってもよい。代替的に、アンカー要素62の一部は、脆弱であって、展開中にアンカー本体60から分離するように構成してもよい。このような例としては、脆弱セクションを有するアンカー本体60を3次元印刷することを含むことができる。さらなる代替例としては、指示された場合にデバイス20の取り外しを容易にするように、アンカー要素62の外面にねじ山および/または他の幾何学的形状が形成されることを含む。
【0029】
ここで
図7~
図9Cを参照すると、デバイス20の別の実施態様が示されており、ここでは、アンカー要素62およびそれらの展開機構が前述したものとは異なっている。拡張可能なインプラント22は、前述したものと同様または同一であってもよく、参照により本明細書に組み込まれる。アンカー要素62は、アンカー本体60と一体的に形成されたフィンガー80を含むことができる。フィンガー80は、アンカー本体60に移動可能に連結されている。フィンガー80は、アンカー本体60にスロット82を画定することによって形成することができる。図示する実施態様は、スロット82がU字型であり、フィンガー80の3つの側部を画定し、第4の側部としてリビングヒンジまたは材料ウェブを提供することを示す。さらに、図示する実施態様は、フィンガー80のうち4つがアンカー本体60の上面(upper aspect)に配置され、フィンガー80のうち4つがアンカー本体60の下面(lower aspect)に配置されていることを示す。より多いまたはより少ないフィンガー80が設けられていてもよく、フィンガー80は、前述したように、長手方向中心平面上に配置されていてもよく、または長手方向中心平面から半径方向にオフセットしていてもよい。
【0030】
図8および
図9A~
図9Cは、カム84を含むアクチュエータ50のロッド66を示す。特に、ロッド66の一部は、ロッド66の互いに対向する両側部(一方が図示されている)から外方に向かって延びるカム84を含むことができる。カム84は、デバイスを挿入形態からアンカー形態に移動させるために、アンカー要素62の内面74と係合するように移動するように構成されている。
図9Aおよび
図9Cに最もよく示すように、ロッド66が第1の回転向きにあるとき、カム84は横方向(側方)に向けられ、ロッド66の公称外径は、内面74によって画定される内径よりも小さい。ロッド66は、第1の回転向きから、カム84が上方および下方に向けられる第2の回転向きに移動するように構成されている。カム84とアンカー要素62の内面74との間の干渉により、フィンガー80は、アンカー本体60の外側輪郭を越えて外側に屈曲または枢動する。フィンガー80は、椎弓根に突き刺さってこれと係合するのに十分鋭利な、スロット82によって画定されたエッジを含むことができる。
【0031】
デバイス20の本実施態様によって、拡張可能なインプラント22および椎弓根アンカー24を順次展開することができる。アクチュエータ50には、2つの別個の入力、すなわち、ロッド66を移動(並進)させて拡張可能なインプラント22を挿入形態から展開形態に移動させるための第1の入力と、ロッド66を回転させて椎弓根アンカー24を挿入形態からアンカー形態に移動させるための第2の入力とを提供することができる。順次展開することにより、有利には、デバイスを椎弓根に固定する前(または固定した後)に、展開形態における拡張可能なインプラント22の位置決めを確認することができる。言い換えれば、外科医は、拡張可能なインプラント22を椎体内で展開し、拡張可能なインプラント22をX線透視法で可視化し、拡張可能なインプラント22の軸方向位置または回転向きに対して任意の所望の調整を行い、その後、デバイス20を所望の位置に固定することができる。
【0032】
カム84は、カム遠位端86およびカム近位端88を含む。カム遠位端86およびカム近位端88は、カム84の長さを画定することができ、この長さは、アンカー要素62のうちの最も遠位のものとアンカー要素62のうちの最も近位のものとの間の距離に対応することができる。対応する長さは、(複数の)アンカー要素62を同時に展開するための単一の入力(すなわち、第2の入力)を提供する。代替的に、カム84は、全てのアンカー要素62よりも少ない数の段階的な展開を提供するように寸法が設計されるかまたは輪郭付けられていてもよい。
図9Aから開始すると、拡張可能なインプラント22および椎弓根アンカー24の各々は挿入形態にある。ロッド66は、カム遠位端86がアンカー要素62のうちの最も遠位のものに対して遠位に位置決めされる第1の軸方向位置にある。アクチュエータ50への第1の入力により、ロッド66は、第1の軸方向位置から第2の軸方向位置に移動(並進)し、この第2の軸方向位置では、組織支持スキー26が前述した方法で長手方向軸から離れるように移動する。拡張可能なインプラント22は展開形態にあり、椎弓根アンカー24は挿入形態のままである。ロッド66の第2の軸方向位置への移動(並進)により、拡張可能なインプラント22が展開することに加えて、
図9Bに示すように、カム84がアンカー要素62のうちの最も近位のものと軸方向に位置合わせするように移動する。拡張可能なインプラント22の位置決めが確認されると、第2の入力により、ロッド66が回転してカム84を回転させ、アンカー要素62を展開し、椎弓根アンカー24をアンカー形態に移動させる。本実施態様は、デバイス20の展開に不可逆性を与えるためのロック機構を含むこともできる。
【0033】
ここで
図10~
図13を参照すると、デバイス20の別の実施態様が示されており、ここでは、前述したように、デバイス20の外側輪郭は長円形または楕円形であり得る。楕円形のボアが椎弓根を通って確立される場合、本開示のデバイス20は、楕円形のボアを通って導入することができる。特に、アンカー本体60が楕円形であることにより、アンカー本体60と椎弓根内の楕円形のボアとの間の相対回転が防止される。これによって、
図10に示すように、アンカー要素62の必要性を低減させるかまたはなくすことができるが、椎骨に対するデバイス20の軸方向移動を防止するために、アンカー要素62またはその変更形態を含めてもよい。
【0034】
上述したように、拡張可能なインプラント22が楕円形であることにより、組織接触面54が大きくなる。組織接触面54は、
図13に示すように、高さよりも大きい幅に沿ってまたは幅に平行に配向する。この配置により、拡張可能なインプラント22が楕円形のボアを通って椎体内に挿入された後、組織支持スキー26が横方向(側方)に向けられることになる。しかしながら、前述したように、組織支持スキー26は、椎体の上部終板を所望の回復した高さまで頭側に付勢するために上方に移動することが好ましい。このように、本実施態様は、楕円形のボア内で回転しないように拘束されたままである椎弓根アンカー24に対して、拡張可能なインプラント22を回転させる手段を提供する。1つの例では、拡張可能なインプラント22は椎弓根アンカー24に対して約90度回転され得る。
【0035】
拡張可能なインプラント22は、椎弓根アンカー24の遠位係合機能部92と動作可能に連結されるように構成された近位係合機能部90を含むことができる。より具体的には、近位端要素30の近位面に歯を形成することができ、アンカー本体60の遠位面に相補的な歯を形成することができる。歯は、ラチェットのような効果を提供するために、一方向に偏心した形状であり得る。言い換えれば、拡張可能なインプラント22は、椎弓根アンカー24に対する第1の回転方向の回転を許容し、椎弓根アンカー24に対する第1の回転方向とは反対の第2の回転方向の回転を防止するように構成することができる。
【0036】
椎弓根アンカー24に対する拡張可能なインプラント22の回転を促進するために、アクチュエータ50のロッド66はヘッド部分94を含むことができる。ヘッド部分94は断面が非円形である。拡張可能なインプラント22、より具体的には近位端要素30は、ロッド66のヘッド部分94と概して相補的な態様で断面が非円形である、キー溝96を画定している。たとえば、
図10は、ヘッド部分94が矩形であり、キー溝96の少なくとも一部が矩形であることを示す。非円形の要素同士の係合により、相対回転が防止され、したがって、ロッド66を第1の回転方向に回転させるためのアクチュエータ50への入力により、拡張可能なインプラント22が相応して回転する。拡張可能なインプラント22は、
図10に示す向きで椎体内に導入することができ、その後、椎弓根アンカー24に対する拡張可能なインプラント22の回転により、
図11に示す向きになる。アンカー本体60の楕円形の形状は、上方および下方を向いたままであるが、拡張可能なインプラント22の組織支持スキー26も、このとき、所望のように頭側を向いている。
【0037】
図11に示す構成では、椎弓根アンカー24に対する第2の回転方向の拡張可能なインプラント22の相対回転は、遠位係合機能部90と近位係合機能部92との係合によって防止される。しかしながら、椎弓根アンカー24に対する第1の回転方向の拡張可能なインプラント22のさらなる回転は完全には防止されない。拡張可能なインプラント22を頭側に向けるのに必要な回転の所望の大きさは、大抵の場合、デバイスの設計に基づいて既知であり、デバイス20は、拡張可能なインプラントの第1の回転方向の、所定の角度よりも大きい角度へのさらなる回転を防止するように構成された阻止機能部98を含むことができる。所定の角度は、約90度、またはより一般的には80度から100度の範囲内であり得る。阻止機能部98は、アンカー本体60のボア68の遠位端に画定された突出部であってもよい。突出部は、ロッド66が所定の角度にあるときに、ロッド66のヘッド部分94と干渉するように半径方向(radially)に向けられる。ある意味では、ロッド66のヘッド部分94は、相補的な阻止機能部である。阻止機能部98は、椎弓根アンカー24に対する拡張可能なインプラント22の双方向の相対回転を所定の範囲内で許容する。しかしながら、遠位係合機能部90および近位係合機能部92は、第2の回転方向の相対回転を防止し、したがって、阻止機能部98と協働して、拡張可能なインプラント22を所望の回転向きに有効にロックする。言い換えれば、たとえば、拡張可能なインプラント22が椎弓根アンカー24に対して第1の回転方向に90度だけ回転すると、第1の回転方向のさらなる回転が阻止機能部98によって防止され、第2の回転方向の回転が遠位係合機能部90および近位係合機能部92によって防止される。
【0038】
デバイス20を利用して椎骨を拡張するためのシステムが考えられる。アクセスカニューレおよびイントロデューサデバイスに加えて、本システムは、拡張可能なインプラントに連結されるように構成された後方要素と、任意選択的に、脊椎固定術(spinal fusion procedure)において後方要素に連結されるように構成された脊椎ロッドとを含むことができる。後方要素および脊椎ロッドは、デバイス20が隣接する椎骨に展開される脊椎固定術のために適応することができる。1つの例では、後方要素はアンカー本体60に固定される。いくつかの実施態様では、本システムは、楕円形のボアを作成するように構成された器具を含むことができる。本システムは、椎弓根内にパイロット孔(pilot hole)を作成するように構成された第1の材料除去デバイスと、パイロット孔を、椎弓根を貫通する楕円形のボアまで拡張するように構成された第2の材料除去デバイスとを含むことができる。第1の材料除去デバイスは、ドリル、リーマなどであってもよく、第2の材料除去デバイスは、バー(bur)、きり(awl)などであってもよい。多くの実施態様では、本システムはセメントレスであってもよく、本システムは、骨セメントを、椎弓根アンカー24を通して椎体内に送達して、拡張可能なインプラント22および海綿骨と互いにかみ合わせるように構成された、骨セメント送達システムを含んでもよいことが理解される。
【0039】
いくつかの発明方法は、以下の例示的な条項を参照して説明することができる。
【0040】
条項1-拡張可能なインプラントと、拡張可能なインプラントに連結された椎弓根アンカーと、アクチュエータとを含むデバイスを用いて椎骨を拡張する方法であって、椎弓根アンカーのアンカー本体内でロッドを移動させて、拡張可能なインプラントを、組織支持スキーがデバイスの外側輪郭内に位置する挿入形態から展開形態へ移動させるための入力をアクチュエータに提供するステップであって、前記展開形態において、(i)遠位端要素が近位端要素に向かって移動して、遠位支柱および近位支柱が組織支持スキーをデバイスの長手方向軸から離れる方向に移動させ、(ii)少なくとも1つのアンカー要素が、アンカー本体を越えて延びるようにアンカー本体に対して移動して椎骨の椎弓根と係合する、ステップを含む方法。
【0041】
条項2-前記入力は、拡張可能なインプラントと椎弓根アンカーとを同時に展開するための単一の入力である、条項1に記載の方法。
【0042】
条項3-前記入力は、第1の入力および第2の入力であり、本方法は、アンカー本体内でロッドを移動(並進)させて拡張可能なインプラントを挿入形態から展開形態に移動させ、ロッドのカムを少なくとも1つのアンカー要素と軸方向に位置合わせするように、第1の入力をアクチュエータに提供するステップと、アンカー本体内でロッドを回転させて、カムと少なくとも1つのアンカー要素との間に干渉を生じさせるように、第2の入力をアクチュエータに提供するステップとを含む、条項1に記載の方法。
【0043】
条項4-第1の入力を提供するステップの後、かつ、第2の入力を提供するステップの前に、拡張可能なインプラントの位置を確認するステップをさらに含む、条項3に記載の方法。
【0044】
条項5-拡張可能なインプラントと、拡張可能なインプラントに連結された椎弓根アンカーと、アクチュエータとを含むデバイスを用いて椎骨を拡張する方法であって、拡張可能なインプラントおよび椎弓根アンカーは楕円形の形状であり、前記方法は、拡張可能なインプラントを、椎弓根内の楕円形のボアを通して椎体内に導くステップと、拡張可能なインプラントを椎弓根アンカーに対して回転させるための第1の入力をアクチュエータに提供するステップと、椎弓根アンカーのアンカー本体内でロッドを移動させて拡張可能なインプラントを椎体内で展開するための第2の入力をアクチュエータに提供するステップと、を含む、方法。
【0045】
条項6-前記第1の入力を提供するステップは、ロッドのヘッド部分を第1の回転方向に回転させることをさらに含み、ここで、ヘッド部分は、拡張可能なインプラント内で回転方向に拘束される、条項5に記載の方法。
【0046】
条項7-前記第1の入力を提供するステップは、拡張可能なインプラントの阻止機能部がロッドの第1の回転方向のさらなる回転を防止するまで、ヘッド部分を回転させることをさらに含む、条項6に記載の方法。
【0047】
条項8-第1の回転方向とは反対の第2の回転方向にロッドを回転させようとすることによって、椎弓根アンカーに対する拡張可能なインプラントの相対回転が防止されることを確認するステップをさらに含み、拡張可能なインプラントと椎弓根アンカーとの相補的な係合機能部が第2の回転方向の回転を防止する、条項7に記載の方法。
【0048】
条項9-第1の材料除去を用いて椎弓根内にパイロット孔を作成するステップと、第2の材料除去デバイスを用いてパイロット孔を楕円形のボアに拡張するステップとをさらに含む、条項5から8のいずれか1項に記載の方法。
【0049】
条項10-椎弓根アンカーに後方要素を連結するステップと、後方要素に脊椎ロッドを連結するステップとをさらに含む、条項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【0050】
前述した開示は、網羅的であることも、本発明を何らかの特定の形態に限定することも意図されていない。使用した用語は、限定ではなく、説明のための文言の範疇にあるように意図されている。上記の教示に鑑みて、多くの変更形態および変形形態が可能であり、本発明は、具体的に記載した以外の方法で実施することができる。
【国際調査報告】