(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】粉末組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/00 20060101AFI20241128BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241128BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241128BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20241128BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P11/00
A61K9/14
A61K9/28
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024537878
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 GB2022053305
(87)【国際公開番号】W WO2023118839
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508080986
【氏名又は名称】コンバテック リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ムンロ,ヒュー センプル
(72)【発明者】
【氏名】ブート,ニック
(72)【発明者】
【氏名】ホーナー,アラン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA42
4C076BB11
4C076BB21
4C076CC15
4C076DD41
4C076GG09
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA07
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4C086MA02
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA65
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA59
(57)【要約】
(i)亜硝酸塩および1個以上のプロトン源を含む粒子;または(ii)1個以上の亜硝酸塩を含む粒子および1個以上のプロトン源を含む粒子を含む、粒子の凝集物を含む、固体粉末組成物。固体粉末組成物を含む医薬組成物、固体粉末組成物を製造する方法、固体粉末組成物を含む物質およびデバイス、その製造方法およびそれをヒトまたは動物身体にインプラントする方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)亜硝酸塩および1個以上のプロトン源を含む粒子;または
(ii)粒子の凝集物であって、1個以上の亜硝酸塩を含む粒子および1個以上のプロトン源を含む粒子を含む、粒子の凝集物
を含む、固体粉末組成物。
【請求項2】
(i)1個以上の亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物の噴霧乾燥により形成された粒子;
(ii)1個以上の亜硝酸塩粒子および1個以上のプロトン源粒子を含む混合物であって、亜硝酸塩粒子が亜硝酸塩溶液の噴霧乾燥により形成され、そしてプロトン源粒子がプロトン源溶液の噴霧乾燥により形成された混合物;または
(iii)亜硝酸塩固体とプロトン源固体の一緒の微粉化により形成された1個以上の粒子
を含む、固体粉末組成物。
【請求項3】
疎水性物質に被覆された粒子を含む固体粉末組成物であって、ここで、被覆された粒子が
(i)亜硝酸塩およびプロトン源を含み、疎水性物質で被覆された粒子;および/または
(ii)疎水性物質で被覆された粒子の凝集物であって、(a)亜硝酸塩およびプロトン源を含む粒子および/または(b)1個以上の亜硝酸塩を含む亜硝酸塩粒子および1個以上のプロトン源を含むプロトン源粒子の混合物を含む粒子の凝集物
である、固体粉末組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れかの固体粉末組成物および所望により1個以上の添加物および/またはアジュバントを含む、医薬組成物。
【請求項5】
亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物を噴霧乾燥して固体粉末を形成する工程を含む、固体粉末組成物を産生する方法。
【請求項6】
固体粉末組成物を製造する方法であって、
(i)亜硝酸塩溶液を噴霧乾燥して、亜硝酸塩粒子を形成し;
(ii)プロトン源溶液を噴霧乾燥して、プロトン源粒子を形成し;そして
(iii)亜硝酸塩粒子およびプロトン源粒子を混合する
工程を含む、方法。
【請求項7】
固体粉末組成物を製造する方法であって、亜硝酸塩固体をプロトン源固体と一緒に微粉化して、固体粉末組成物を産生する工程を含む、方法。
【請求項8】
疎水性物質に被覆された粒子を含む固体粉末組成物を製造する方法であって、
(ii)亜硝酸塩およびプロトン源を含む粒子を疎水性物質でコーティングする;または
(iii)1個以上の亜硝酸塩を含む亜硝酸塩粒子および1個以上のプロトン源を含むプロトン源粒子を合わせ、次いで、混合物をコーティングする
工程を含む、方法。
【請求項9】
呼吸器疾患または障害を処置または予防する方法に使用するための、請求項1~3の何れかの固体粉末組成物または請求項4の医薬組成物。
【請求項10】
治療有効量の請求項1~3の固体粉末組成物または請求項4の医薬組成物を投与することを含む、呼吸器疾患または障害を処置または予防する方法。
【請求項11】
固体粉末組成物の粒子が基質に組み込まれているまたは封入されている、基質および請求項1~3の何れかの固体粉末組成物を含む、物質。
【請求項12】
(i)請求項1~3の何れかの固体粉末組成物と基質または基質前駆体を含む非水性液体を混合して、液体-粒子混合物を形成し、そして(ii)液体-粒子混合物を固化して請求項1~3の何れかの固体粉末組成物を組み込むまたは封入する物質を形成する工程を含む、第一または第二の態様の固体粉末組成物を基質に組み込むまたは封入する方法。
【請求項13】
物質またはデバイスであって、基質および基質の外面に噴霧乾燥されたコーティングを含み、該噴霧乾燥されたコーティングは亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物の噴霧乾燥により形成されているものである、物質またはデバイス。
【請求項14】
物質またはデバイスであって、基質および基質の外面にコーティングを含み、コーティングは亜硝酸塩およびプロトン源を含む均質固体であるものである、物質またはデバイス。
【請求項15】
亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物を基質の外面に噴霧乾燥して、物質またはデバイスを提供する工程を含む、物質またはデバイスを提供する方法。
【請求項16】
請求項14または請求項15の物質またはデバイスをヒトまたは動物の身体にインプラントする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜硝酸塩およびプロトン源を含む粉末組成物に関する。本発明は、そのような粉末組成物の製造方法、粉末組成物を含む製品、製品における粉末組成物の使用および粉末組成物が関与する処置方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化窒素(NO)および一酸化窒素前駆体は、薬剤の可能性があるとして、広範に試験されている。一酸化窒素、他の窒素酸化物およびその前駆体の効率的産生および処置のための生物および細胞への送達に関連した相当な課題が残っている。一酸化窒素の産生のために広く採用されている系は、酸などのプロトン源を使用した亜硝酸塩の酸性化を使用して、まず亜硝酸(HNO2)を産生し、次いで、その亜硝酸は容易に分解して、一酸化窒素およびニトレートに加えて水素イオンおよび水となることに依存する。この分解は、次の平衡式(1)により表され得る:
3 HNO2→2 NO+NO3
-+H++H2O (1)
【0003】
酸および亜硝酸塩は、典型的に予定された濃度の別々の水溶液として提供される。これらの2種の溶液は、故に、2成分系として提供され、必要となる前に一酸化窒素が放出されることを阻止するために、2個の別々の溶液を必要となった時点で組み合わせることを可能とする。
【0004】
必要となった時点での2成分系の組み合わせは、例えば、2成分を合わせるときの投薬の不正確さをもたらす可能性がある。単一成分として亜硝酸塩および酸性化源を提供することが望ましい。さらに、単一成分製品の提供は、包装を低減し得る。しかしながら、亜硝酸塩の酸性化における古典的2成分溶液アプローチは、系が製造段階でその一酸化窒素を相当量喪失し、必要な時点で充分な一酸化窒素を提供できない可能性のために、単一成分系として提供できない。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明者らは、亜硝酸塩の酸性化による一酸化窒素の送達のための単一成分系の提供を探索するだけでなく、この系のための固体形態であって、該固体形態が水性環境と接触したときに、相当量の一酸化窒素を送達する、固体形態の提供も探索した。
【0006】
最も一般的には、本発明は、固体形態で亜硝酸塩およびプロトン源を含み、亜硝酸塩の少なくとも一部およびプロトン源の少なくとも一部が媒体中または表面上に分散されたとき、分離不可能である、固体粉末組成物を提供する。この方法で、亜硝酸塩の少なくとも一部およびプロトン源の少なくとも一部は、極めて接近(または密接に関連)したままであり、水性環境と接触したとき、亜硝酸塩の酸性化を提供する。
【0007】
粉末組成物は、プロトン源の溶液と亜硝酸塩源の溶液を混合し、亜硝酸塩の顕著な酸性化が起こる前に溶媒を除去することにより、酸性し売る。この方法で、組成物は、1個以上の粒子を含み得て、それは同じ粒子に亜硝酸塩およびプロトン源両方の有効量を含む。
【0008】
別の方法として、粉末組成物を、亜硝酸塩の少なくとも一部およびプロトン源の少なくとも一部が媒体への分散により分離不可能となるように、1個以上の亜硝酸塩を含む粒子および1個以上のプロトン源を含む粒子を合わせることにより製造し得る。
【0009】
第一の態様において、本発明は、
(i)亜硝酸塩および1個以上のプロトン源を含む粒子;または
(ii)粒子の凝集物であって、1個以上の亜硝酸塩を含む粒子および1個以上のプロトン源を含む粒子を含む、粒子の凝集物
を含む、固体粉末組成物を提供する。
【0010】
第二の態様において、本発明は、
(i)亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物から1秒未満(例えば噴霧乾燥による)および/または反応遅延条件下(例えば凍結乾燥)に溶媒を除去することにより形成された1個以上の粒子;または
(ii)亜硝酸塩含有固体とプロトン源含有固体を合わせて形成させた粒子の凝集物(ここで、粒子の凝集物が1個以上の亜硝酸塩を含む粒子および1個以上のプロトン源を含む粒子を含む)
を含む固体粉末組成物を提供する。
【0011】
粒子の凝集物を形成するための亜硝酸塩含有固体とプロトン源含有固体の組み合わせは、例えば、(a)1個以上の亜硝酸塩粒子と1個以上のプロトン源粒子を混合する(ここで、亜硝酸塩粒子は亜硝酸塩溶液の噴霧乾燥により形成され、そしてプロトン源粒子はプロトン源溶液の噴霧乾燥により形成される);または(b)亜硝酸塩固体とプロトン源固体の一緒の微粉化により1個以上の粒子を形成することにより達成され得る。
【0012】
第三の態様において、本発明は、疎水性物質に被覆された粒子を含む固体粉末組成物であって、ここで、被覆された粒子が
(i)亜硝酸塩およびプロトン源を含み、疎水性物質で被覆された粒子;および/または
(ii)疎水性物質で被覆された粒子の凝集物であって、(a)亜硝酸塩およびプロトン源を含む粒子および/または(b)1個以上の亜硝酸塩を含む亜硝酸塩粒子および1個以上のプロトン源を含むプロトン源粒子の混合物を含む粒子の凝集物
である、固体粉末組成物を提供する。
【0013】
この方法で、被覆された粒子は同じコーティング内に亜硝酸塩およびプロトン源を含む。
【0014】
第四の態様において、本発明は、第一、第二または第三の態様の固体粉末組成物および所望により1個以上の添加物および/またはアジュバントを含む、医薬組成物を提供する。
【0015】
第五の態様において、本発明は、亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を混合後、固体を提供するために30秒未満(例えば噴霧乾燥による)に溶媒を除去するおよび/または溶媒除去中かつ亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合前、混合中および/または混合直後に反応遅延条件(例えば凍結乾燥)を提供する工程を含む、固体粉末組成物を製造する方法を提供する。
【0016】
第六の態様において、本発明は、固体粉末組成物を製造する方法であって、
(i)亜硝酸塩溶液を噴霧乾燥または凍結乾燥して、亜硝酸塩粒子を形成し;
(ii)プロトン源溶液を噴霧乾燥または凍結乾燥して、プロトン源粒子を形成し;そして
(iii)亜硝酸塩粒子およびプロトン源粒子を混合する
工程を含む、方法を提供する。
【0017】
第七の態様において、本発明は、固体粉末組成物を製造する方法であって、亜硝酸塩固体をプロトン源固体と一緒に微粉化して、固体粉末組成物を産生する工程を含む、方法を提供する。
【0018】
第八の態様において、本発明は、疎水性物質に被覆された粒子を含む固体粉末組成物を製造する方法であって、
(i)亜硝酸塩およびプロトン源を含む粒子を疎水性物質でコーティングする;または
(ii)1個以上の亜硝酸塩を含む亜硝酸塩粒子および1個以上のプロトン源を含むプロトン源粒子を合わせて、亜硝酸塩粒子およびプロトン源粒子を含む粒子の凝集物を形成させ、次いで、粒子の凝集物をコーティングする
工程を含む、方法を提供する。
【0019】
第九の態様において、本発明は、呼吸器疾患または障害を処置または予防する方法に使用するための、第一、第二または第三の態様の固体粉末組成物または第四の態様の医薬組成物を提供する。
【0020】
第十の態様において、本発明は、治療有効量の第一、第二または第三の態様の固体粉末組成物または第四の態様の医薬組成物の投与を含む、呼吸器疾患または障害を処置または予防する方法を提供する。
【0021】
第十一の態様において、本発明は、基質および第一、第二または第三の態様の固体粉末組成物を含む物質であって、該固体粉末組成物の粒子が該基質に組み込まれているまたは封入されている、物質を提供する。
【0022】
第十二の態様において、本発明は、第一または第二の態様の固体粉末組成物を基質に組み込むまたは封入する方法であって、第一、第二または第三の態様の固体粉末組成物と、基質または基質前駆体を含む非水性または非極性液体を混合して、液体-粒子混合物を形成し、そして(ii)液体-粒子混合物を固化して、第一、第二、第三の態様の固体粉末組成物を組み込んだまたは封入した物質を形成させる工程を含む、方法を提供する。
【0023】
第十三の態様において、本発明は、物質またはデバイスであって、基質および基質の外面に噴霧乾燥されたコーティングを含み、該噴霧乾燥されたコーティングは亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物の噴霧乾燥により形成されているものである、物質またはデバイスを提供する。
【0024】
第十四の態様において、本発明は、物質またはデバイスであって、基質および基質の外面にコーティングを含み、コーティングは亜硝酸塩およびプロトン源を含む均質固体であるものである、物質またはデバイスを提供する。
【0025】
第十五の態様において、本発明は、亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物を基質の外面に噴霧乾燥して、物質またはデバイスを提供する工程を含む、物質またはデバイスを提供する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
第十六の態様において態様、本発明は、ヒトまたは動物身体に第十四または第十五の態様の物質またはデバイスを埋め込む方法を提供する。
【0027】
詳細な記載
本発明を、これからさらに詳細に記載する。実施例および次の図は本発明の例を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】ハンクス平衡塩溶液およびpH指示薬(フェノールレッド)を用いるアガロース上の実施例1A、2、3および4の粉末の沈着パターンを示す。
【0029】
【
図2】実施例1A、2、3および4のNO累積生産を示す。
【0030】
【
図3】基底対照と比較した、球状体あたりの長さの累積(CSL)を決定するための画像解析系により定量した施例1Bおよび6Aで処理したHUVEC球状体の発芽強度を示す。
【0031】
【
図4】ここに記載する噴霧乾燥された粉末のSEM画像を示す。
【0032】
【
図5】ここに記載する噴霧乾燥された粉末のEDX分析を示す。
【0033】
【
図6】ここに記載する噴霧乾燥された粉末の、2000倍の顕微鏡倍率での反射電子像(BSE)に対する窒素(緑色)および炭素に対する窒素(青色)のEDXマップを示す。
【0034】
一酸化窒素、所望により他の窒素酸化物および/または所望によりその前駆体を産生する、1個以上の亜硝酸塩およびプロトン源の間の反応を、ここでは、「NOx産生反応」または「NOxを産生するための反応」または類似表現としていい、「NOx」を使用して、亜硝酸塩、特に一酸化窒素、他の窒素酸化物およびその前駆体の酸性化の生成物を、個々におよび任意の組み合わせでいう。産生されたNOxの各成分はガスとして発生させ得るかまたは反応混合物で溶液になり得るかまたは最初に溶液になり、その後ガスとして発生させ得るかまたはこれらの任意の組み合わせであることは理解される。
【0035】
用語「約」は、ここでは、数値が厳密に限定されないことを示すために使用し、当業者は、該値がその数値についての当業者の理解と一致する正確な範囲の上下(適宜)に拡長され得ることを理解する。用語「約」は、数値の最大±10%までの値を示し得る。
【0036】
特に断らない限り、ここに記載する粒子径は体積平均直径(VMD)をいう。
【0037】
固体粉末組成物
本発明の固体粉末組成物は、亜硝酸塩およびプロトン源を含む。この方法で、固体粉末組成物は、水性環境または大気中の湿気に暴露されると、亜硝酸塩の酸性化により一酸化窒素を放出し得る。
【0038】
亜硝酸塩
亜硝酸塩の選択は、特に限定されない。亜硝酸塩は、1個以上のアルカリ金属亜硝酸塩またはアルカリ性金属亜硝酸塩から選択され得る。例えば、1個以上の亜硝酸塩は、LiNO2、NaNO2、KNO2、RbNO2、CsNO2、FrNO2、AgNO2、Be(NO2)2、Mg(NO2)2、Ca(NO2)2、Sr(NO2)2、Mn(NO2)2、Ba(NO2)2、Ra(NO2)2およびそれらの任意の混合物から選択され得る。亜硝酸塩は、NaNO2またはKNO2であり得る。亜硝酸塩は、NaNO2であり得る。
【0039】
亜硝酸塩は薬学的に許容されるグレードの亜硝酸塩であり得る。換言すると、亜硝酸塩は、亜硝酸塩についての1個以上の有効な薬局方モノグラフに従い得る。例えば、亜硝酸塩は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方または日本薬局方の1個以上のモノグラフに従い得る。
【0040】
特に、使用する亜硝酸塩は、引用によりその開示を全体として本願明細書に包含させるWO2010/093746の段落[0032]~[0060]および/または段落[0204]の表1に提供される特徴の1個以上を有する。
【0041】
プロトン源
プロトン源は、亜硝酸塩の酸性化のためのプロトン源として作用し得る任意の種である。プロトン源の選択は特に限定されない。プロトン源は、例えば、酸であり得る。
【0042】
酸は、1個以上の有機カルボン酸または有機非カルボン酸系還元酸(reducing acids)から選択され得る。
【0043】
ここでの表現「有機カルボン酸」は、分子に1個以上の-COOH基を含む、あらゆる有機酸をいう。有機カルボン酸は直鎖でも分岐鎖でもよい。カルボン酸は飽和でも不飽和でもよい。カルボン酸は脂肪族でも芳香族でもよい。カルボン酸は非環状でも環状でもよい。カルボン酸はビニル性カルボン酸であり得る。
【0044】
有機カルボン酸は、1個以上の置換基、例えば1個以上のヒドロキシル基を担持し得る。本発明で使用し得るヒドロキシル置換有機カルボン酸の例は、α-ヒドロキシ-カルボン酸、β-ヒドロキシ-カルボン酸およびγ-ヒドロキシ-カルボン酸を含む。
【0045】
ここでの表現「有機非カルボン酸系還元酸」は、分子に-COOH基を含まないあらゆる有機還元酸をいう。有機非カルボン酸系還元酸は直鎖でも分岐鎖でもよい。非カルボン酸系還元酸は飽和でも不飽和でもよい。非カルボン酸系還元酸は脂肪族でも芳香族でもよい。非カルボン酸系還元酸は非環状でも環状でもよい。非カルボン酸系還元酸はビニル性であり得る。
【0046】
有機非カルボン酸系還元酸は、1個以上の置換基、例えば1個以上のヒドロキシル基を担持し得る。本発明で使用し得るヒドロキシル置換有機非カルボン酸系還元酸の例は、酸性レダクトン、例えば還元酸(2.3-ジヒドロキシ-2-シクロペンタノン)を含む。
【0047】
1個以上の有機カルボン酸または非カルボン酸系還元酸は、約7未満のpKa1を有し得る。
【0048】
1個以上の有機カルボン酸は1個以上の還元カルボン酸を含む、それからなるまたはそれであり得る。有機カルボン酸は、例えば、サリチル酸、アセチルサリチル酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、マンデル酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、α-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシ-β-酪酸、ナフトエ酸、オレイン酸、パルミチン酸、パモ(エンボン)酸、ステアリン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルクロン酸、ラクトビオン酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、オロト酸、グリセリン酸、グリチルリチン酸、ソルビン酸、ヒアルロン酸、アルギン酸、シュウ酸、その塩およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0049】
有機カルボン酸はクエン酸またはその塩であり得る。
【0050】
カルボン酸は、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸または乳酸とグリコール酸のコポリマーなどのポリマーまたは重合カルボン酸であるまたはそれを含み得る。は、有機カルボン酸の部分または完全エステルまたはその部分または完全塩も、それらが本発明の使用においてプロトン源として役立つ限り、包含する。
【0051】
有機非カルボン酸系還元酸は、例えば、アスコルビン酸;パルミチン酸アスコルビン酸(パルミチン酸アスコルビル);3-O-エチルアスコルビン酸、他の3-アルキルアスコルビン酸、6-O-オクタノイルアスコルビン酸、6-O-ドデカノイルアスコルビン酸、6-O-テトラデカノイルアスコルビン酸、6-O-オクタデカノイルアスコルビン酸および6-O-ドデカンジオイルアスコルビン酸などのアスコルビン酸誘導体;還元酸などの酸性レダクトン;エリソルビン酸;その塩;およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0052】
有機非カルボン酸系還元酸はアスコルビン酸またはその塩であり得る。
【0053】
プロトン源の1個以上の有機カルボン酸または有機非カルボン酸系還元酸は、適切にそれらの共役塩基(conjugate base)と共に存在し得る。酸およびその共役塩基は、水性環境と接触したときまたはそれに曝されたとき、緩衝液を適切に形成し得る。酸およびその共役塩基は、水性環境に曝されたとき、所望のpHを達成する比率で提供され得る。
【0054】
緩衝液系は、水性環境への暴露により、NOx産生反応が進行するように所望のpHを達成しかつ維持するように選択され得る。緩衝液系を、反応のpHが約3~9、例えば約4~8の範囲であり得るように選択し得る。生理学的接触または生存細胞および生物との接触について、反応のpHは約5~約8の範囲であり得る。共役塩基は、存在するとき別々に添加してよくまたは酸および/または塩基、例えば無機酸および/または無機塩基の使用によりpHを調節することによりプロトン源からインサイチュで産生させてよい。
【0055】
プロトン源は、クエン酸/クエン酸緩衝液系、例えばおよびクエン酸/クエン酸三ナトリウム緩衝液系であり得る。
【0056】
酸成分/プロトン源の選択は、固体粉末組成物の所望の使用に依存して選択され得ることは、当業者には理解される。
【0057】
固体粉末組成物中の粒子
固体粉末組成物は、
(a)亜硝酸塩およびプロトン源両方を含む粒子;および/または
(b)粒子の凝集物であって、1個以上の亜硝酸塩を含む亜硝酸塩粒子および1個以上のプロトン源を含むプロトン源粒子を含む、粒子の凝集物
であり得る。
【0058】
この方法で、プロトン源成分および亜硝酸塩成分は、粉末が分散されるときでも(例えば、粉末の吸入を介する)、極めて接近したままであり得る。粒子がプロトン源および亜硝酸塩両方を含むとき、粒子は亜硝酸塩およびプロトン源を同じ粒子内に含み得ることは理解される。
【0059】
表現「凝集する」、「凝集」および「一緒に凝集」は、ここでは、特定可能な集団挙動を示す一次粒子の集合または集団をいう。本発明において、一次粒子は亜硝酸塩を含む亜硝酸塩粒子、プロトン源を含むプロトン源粒子または亜硝酸塩およびプロトン源両方を含む粒子であり得る。本発明において、特定可能な集団挙動は機械的分離に抵抗性であってよく、すなわち、粒子は互いに付着していてよい。
【0060】
固体組成物の粒子または凝集物は、所望の用途または適用に適する粒子径であり得る。例えば、固体組成物の粒子または凝集物は、約10μm以下、例えば、約5μm以下、約4μm以下、約3μm以下、約2μm以下または約1μm以下の粒子径を有し得る。
【0061】
あるいは、固体組成物の粒子または凝集物は5μmを有する粒子径を有し得る。例えば、固体組成物の粒子または凝集物は、50μm超、100μm超、250μm超、500μm超、750μm超、1000μm超の粒子径を有し得る。
【0062】
固体組成物中の亜硝酸塩:プロトン源の重量比は、約1:1~約1:99の範囲、例えば、約1:4~約1:49または約1:7~約1:24の範囲であり得る。
【0063】
固体粉末組成物は、結合剤または有機ポリオールなどのさらなる任意の添加剤を含み得る。
【0064】
結合剤
固体粉末組成物は、1個以上の結合剤を実質的に含まなくてよい。あるいは、固体粉末組成物は1個以上の結合剤をさらに含み得る。ここで使用する「結合剤」は、粒子の付着を促進する薬剤、すなわち粒子の凝集物の形成を促進する薬剤をいう。
【0065】
適当な結合剤は、糖、天然結合剤または合成または半合成ポリマー結合剤を含み得る。糖種は、例えば、スクロースまたは液体グルコースを含み得る。天然結合剤は、例えば、アカシア、トラガカント、ゼラチン、デンプンペースト、アルファ化デンプン、アルギン酸またはセルロースを含み得る。合成または半合成ポリマー結合剤は、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸を含み得る。結合剤は、1-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー(コポビドン)であり得る。結合剤は微結晶セルロースであり得る。
【0066】
結合剤は、組成物に約5%w/w~約30%w/wの%w/wで組み込まれ得る。例えば、結合剤は、組成物に約10%w/w~約25%w/wの%w/wで組み込まれ得る。
【0067】
有機ポリオール
固体粉末組成物は1個以上の有機ポリオールを実質的に含まなくてよい。あるいは、固体粉末組成物はさらに1個以上の有機ポリオールを含み得る。固体粉末組成物が1個以上の有機ポリオールを含むとき、有機ポリオールを、溶媒除去が関与する何れかの工程後(例えば、噴霧乾燥または凍結乾燥工程後)、組成物に添加するのが好ましい。換言すると、ポリオールを亜硝酸塩および1個以上のプロトン源を含む粒子を含む組成物に添加し得る;または1個以上の亜硝酸塩を含む粒子および/または1個以上のプロトン源を含む粒子を含む組成物に添加し得る(これらの粒子の凝集物の形成前または後いずれか)。
【0068】
ここでの表現「有機ポリオール」は、特に亜硝酸塩反応のためのプロトン源ではなく、サッカリドまたは多糖ではない、2個以上のヒドロキシル基を有する有機分子をいう(用語「サッカリド」および「多糖」はオリゴサッカリド、グリカンおよびグリコサミノグリカンを含む)。有機ポリオールは、故に、約7以上のpKa1を有する。
【0069】
ここでの表現「有機ポリオール」は、好ましくは還元剤を除外する。2個以上のヒドロキシル基を有する有機分子であり、サッカリドまたは多糖ではない還元剤の例は、チオグリセロール(例えば、1-チオグリセロール)、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、アスコルビン酸、アスコルベート、エリソルビン酸およびエリソルベートである。チオグリセロール(例えば、1-チオグリセロール)、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、アスコルベートおよびエリソルベートは、故に、還元剤であるため、好ましくは表現「有機ポリオール」から除外される。アスコルビン酸およびエリソルビン酸は、特に亜硝酸塩反応のためのプロトン源であるため、いずれにしてもこの表現から除外される。
【0070】
有機ポリオールは環状でも非環状でもよく、または1個以上の環状有機ポリオールおよび1個以上の非環状有機ポリオールの混合物でもよい。例えば、1個以上の有機ポリオールは、1個以上の2個以上のOH基で置換されたアルカン、1個以上の2個以上のOH基で置換されたシクロアルカン、1個以上の2個以上のOH基で置換されたシクロアルキルアルカンおよびそれらの任意の組み合わせから選択され得る。有機ポリオールは、OH以外の如何なる置換基も担持し得ない。
【0071】
1個以上の有機ポリオールは1個以上の非環状有機ポリオールであり得る。1個以上の非環状有機ポリオールは、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個の炭素原子を有する糖アルコールから選択され得る。1個以上の非環状有機ポリオールは、アルジトール、例えば4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個の炭素原子を有するアルジトールから選択され得る。1個以上の有機ポリオールは、サポニン、サポゲニン、ステロイドまたはステロイド性グリコシドを含み得ない。
【0072】
あるいは、1個以上の有機ポリオールは1個以上の環状有機ポリオールであり得る。1個以上の環状有機ポリオールは環状糖アルコールまたは環状アルジトールであり得る。例えば、1個以上の環状ポリオールは4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個の炭素原子を有する環状糖アルコールまたは4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個の炭素原子を有する環状アルジトールであり得る。環状ポリオールの具体例はイノシトールである。
【0073】
1個以上の有機ポリオールは7個以上のヒドロキシ基を有し得る。1個以上の有機ポリオールは7個以上のヒドロキシ基を有する糖アルコールまたはアルジトールであり得る。1個以上の有機ポリオールは9個以上のヒドロキシ基を有し得る。1個以上の有機ポリオールは9個以上のヒドロキシ基を有する糖アルコールまたはアルジトールであり得る。1個以上の有機ポリオールは20個以下のヒドロキシル基を有し得る。1個以上の有機ポリオールは20個以下のヒドロキシル基を有する糖アルコールまたはアルジトールであり得る。1個以上の有機ポリオールは15個以下のヒドロキシル基を有し得る。1個以上の有機ポリオールは15個以下のヒドロキシル基を有する糖アルコールまたはアルジトールであり得る。1個以上の有機ポリオールは、7~20の範囲、例えば、9~15の範囲の数のヒドロキシル基を有し得る。1個以上の有機ポリオールは9個、12個、15個または18個のヒドロキシ基を含み得る。
【0074】
1個以上の有機ポリオールは、1個以上の単糖単位および1個以上の非環状糖アルコール単位を含む、例えばそれからなる、糖アルコール化合物であり得る。1個以上の有機ポリオールは、1個以上の単糖単位および1個以上の非環状糖アルコール単位の直鎖または1個以上の単糖単位および1個以上の非環状糖アルコール単位の分岐鎖を含む、例えば、それからなる、糖アルコール化合物であり得る。
【0075】
ここで使用する「単糖単位」は、化合物における少なくとも1個の他の単位(他の単糖単位または非環状糖アルコール単位何れか)に共有結合で結合する単糖をいう。ここで使用する「非環状糖アルコール単位」は、化合物における少なくとも1個の他の単位(他の単糖単位または他の非環状糖アルコール単位何れか)に共有結合で結合する非環状糖アルコールをいう。化合物における単位はエーテル結合を介して結合され得る。単糖単位の1個以上は、グリコシド結合を介して化合物の他の単位に共有結合で結合し得る。単糖単位の各々は、化合物の他の単位にグリコシド結合を介して共有結合で結合し得る。糖アルコール化合物は、単糖またはオリゴサッカリドグリコンおよび非環状糖アルコールアグリコンを有するグリコシドであり得る。
【0076】
非環状糖アルコール単位は、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個の炭素原子を有する糖アルコール単位であり得る。非環状糖アルコール単位は、エリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトールおよびボレミトールの単位からなる群から選択され得る。
【0077】
単糖単位の1個以上はC5またはC6単糖単位、すなわち、ペントースまたはヘキソース単位であり得る。各単糖単位はC5またはC6単糖単位であり得る。糖アルコール単位の1個以上はC5またはC6糖アルコール単位であり得る。各糖アルコール単位はC5またはC6糖アルコール単位であり得る。
【0078】
糖アルコール化合物は、n個の単糖単位およびm個の非環状糖アルコール単位を含み得、例えば、それからなり得て、ここで、nは整数であり、少なくとも1であり、mは整数であり、少なくとも1であり、(n+m)は10を超えない。糖アルコール化合物は、1個の非環状糖アルコール単位で終わるn個の単糖単位の鎖を含み得、例えば、それからなり得て、ここで、nは1~9の整数である。単糖単位の鎖はグリコシド結合により共有結合で結合され得る。各単糖単位はグリコシド結合により他の単糖単位または非環状糖アルコール単位に共有結合で結合され得る。糖アルコール化合物は1個の非環状アルコール単位で終わる1個、2個または3個の単糖単位の鎖を含み得、例えば、それからなり得る。1個、2個、3個または各単糖単位はC5またはC6単糖単位であり得る。非環状アルコール単位はC5またはC6糖アルコール単位であり得る。糖アルコール化合物の例は、イソマルト、マルチトールおよびラクチトール(n=1);マルトトリイトール(n=2);およびマルトテトライトール(n=3)を含むが、これらに限定されない。
【0079】
このような糖アルコール化合物は、由来の糖アルコールとして記載され得る。ここで使用する「オリゴサッカリド」は、3~10個の単糖単位からなるサッカリドをいう。二糖またはオリゴサッカリド由来の糖アルコールは、二糖、オリゴサッカリドまたは多糖(例えば加水分解および水素化)から合成され得るが(例えば水素化による)、二糖、オリゴサッカリドまたは多糖から合成された化合物に限定されない。例えば、二糖由来の糖アルコールは、単糖および糖アルコールの脱水反応により形成され得る。1個以上の有機ポリオールは、二糖、三糖または四糖由来の糖アルコールであり得る。二糖由来の糖アルコールの例は、イソマルト、マルチトールおよびラクチトールを含むが、これらに限定されない。三糖由来の糖アルコールの例は、マルトトリイトールを含むが、これに限定されない。四糖由来の糖アルコールの例は、マルトテトライトールを含むが、これに限定されない。
【0080】
有機ポリオールは、エリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトールおよびそれらの任意の組み合わせから選択され得る。グリセロールは、1個以上の他の有機ポリオール、例えばエリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトールまたはそれらの任意の組み合わせと共に使用でき、存在するとき、好ましくは共にある。
【0081】
多くの有機ポリオールが1個以上のキラル中心を含み、故に、立体異性形態で存在する。有機ポリオールの全ての立体異性形態および光学異性体ならびに異性体混合物は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。特に、全キラル有機ポリオールのDおよび/またはL形態およびそれらの全混合物が使用され得る。
【0082】
粒子の凝集物
粒子の凝集は、当業者に知られる任意の適当な手段により達成され得る。
【0083】
粒子の凝集は機械的手段により、例えば、粒子を機械的に一緒にすることにより達成され得る。機械的手段による凝集は、亜硝酸塩の粒子およびプロトン源の粒子の一緒の微粉化により達成され得る。あるいは、機械的手段による凝集は、実質的に静電気がない粒子を得ることにより達成され得る。
【0084】
粒子の凝集は、化学的手段、例えば、付着の化学的促進または化学的コーティングにより達成され得る。化学的手段による凝集は、付着促進因子、例えば、湿気により達成され得る。あるいは、化学的手段による凝集は、亜硝酸塩の一次粒子とプロトン源の一次粒子を両者に結合する物質によるコーティングによって達成され得る。適当な結合剤は先に記載しており、適当なコーティング物質は、後記の「被覆された粒子」のセクションに記載される。
【0085】
被覆された粒子
固体粉末組成物は、疎水性物質で被覆された粒子を含み得る(ここでは被覆された粒子とも称する)。
【0086】
被覆された粒子は、亜硝酸塩およびプロトン源を含む単一粒子を含み、疎水性物質で被覆されていてよい。
【0087】
あるいは、被覆された粒子は、疎水性物質で被覆された粒子の凝集物であって、(a)亜硝酸塩およびプロトン源を含む粒子および/または(b)1個以上の亜硝酸塩を含む亜硝酸塩粒子および1個以上のプロトン源を含むプロトン源粒子の混合物を含む粒子の凝集物であり得る。
【0088】
この方法で、被覆された粒子は同じコーティング内に亜硝酸塩およびプロトン源を含む。
【0089】
疎水性物質は、粒子または凝集物が疎水性層で被覆されるように、粒子または凝集物をコーティングできる任意の物質であり得る。疎水性物質はポリマー物質、例えば有機ポリマー物質であり得る。疎水性物質は、両親媒性種、例えば、界面活性剤型種、例えば、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性界面活性剤型種であり得る。疎水性物質は無機鉱物性物質、例えば3Dフレームワークを形成する無機鉱物性物質であり得る。疎水性物質は生体適合性であり得る。疎水性物質は、ポリ(乳-コ-グリコール酸)(PLGA)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ステアリン酸マグネシウムおよびメソ多孔質シリカの1個以上を含み得る。疎水性物質は、酸末端基がないポリマー物質ポリ(乳-コ-グリコール酸)(PLGA)を含み得るかまたは酸末端基を有するポリマー物質ポリ(乳-コ-グリコール酸)(PLGA)を含み得る。
【0090】
ここで使用する「界面活性剤」は、媒体中の種の表面張力または媒体間の界面張力を低減できる、界面活性剤をいう。界面活性剤種は、一般に、親水性頭部および疎水性尾部を有する。
【0091】
疎水性物質は、粒子または凝集物に化学結合または静電もしくは分子間力により付着し得る。
【0092】
被覆された粒子または被覆粒子の凝集物のコーティングは、被覆された粒子または被覆された凝集物が水性環境に暴露されたときの、亜硝酸塩の酸性化の反応動力学、例えば反応動態に影響し得る。
【0093】
固体組成物の被覆された粒子または被覆された凝集物の粒子は、所望の用途または適用のための適当な粒子径であり得る。固体組成物の被覆された粒子または被覆された凝集物の粒子は、約10μm以下、例えば、約5μm以下、約4μm以下、約3μm以下、約2μm以下または約1μm以下の粒子径を有し得る。あるいは、固体組成物の被覆された粒子または被覆された凝集物の粒子は、約5μmを超える粒子径を有し得る。例えば、固体組成物の粒子または凝集物は、約50μm超、約100μm超、約250μm超、約500μm超、約750μm超、約1000μm超の粒子径を有し得る。
【0094】
亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物からの粒子の形成
固体粉末組成物の粒子は、亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物から形成され得る。このように形成された粒子は、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後、短時間(例えば、30秒以下)の溶媒の除去によりおよび/または混合物を亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後および溶媒除去のために反応遅延条件(例えば溶媒の凝固点未満の温度)下に置くことにより形成されるべきである。この方法で、溶媒を、亜硝酸塩の酸性化を最小化しながら、混合物から除去する。有効量の亜硝酸塩およびプロトン源が、それゆえに得られた粉末組成物に存在し得る。
【0095】
溶媒を亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後短時間で除去するとき、溶媒を、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後30秒以下で除去し得る。いくつかの例において、溶媒を、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後、10秒以下、5秒以下、2秒以下または1秒以下で除去する。いくつかの例において、溶媒を、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後、500ミリ秒以下、100ミリ秒以下、50ミリ秒以下または10ミリ秒以下で除去する。
【0096】
ある例において、粒子を亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物の噴霧乾燥により形成させ得る。混合物の噴霧乾燥は、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後30秒以下の時間での溶媒の除去を可能とし得る。物質の噴霧乾燥はそれ自体知られる。
【0097】
混合物は、典型的に亜硝酸塩水溶液とプロトン源水溶液の混合物である。水溶液を使用するとき、2種の水溶液の混合の間の時間を亜硝酸塩の酸性化を抑制するために、最小化する。亜硝酸塩水溶液および酸水溶液を、噴霧乾燥の実施前、インラインで約1~約10ミリ秒、例えば約3~約5ミリ秒混合し得る。亜硝酸塩溶液と酸溶液の混合直後、噴霧乾燥を実施し得る。記載の亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液を含む混合物の混合および噴霧乾燥は、プロトン源と亜硝酸塩成分の間の潜在的反応時間を制限することは理解される。
【0098】
亜硝酸塩溶液および酸溶液を含む混合物の噴霧乾燥により形成された粒子は、約10μm以下、例えば、約5μm以下、約4μm以下、約3μm以下、約2μm以下または約1μm以下の粒子径を有し得る。
【0099】
記載の亜硝酸塩溶液および酸溶液を含む混合物の噴霧乾燥は、各粒子が亜硝酸塩成分およびプロトン源成分を含む、固体粉末組成物をもたらし得る。
【0100】
亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物の噴霧乾燥により形成された粒子は任意の適当な形態であり得る。例えば、亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物の噴霧乾燥により形成された粒子は、結晶形態または非晶質形態であり得る。亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物の噴霧乾燥により形成された粒子は非晶質形態であり得る
【0101】
これに加えてまたはこれとは別に、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合物を、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合の前、途中または直後におよび溶媒除去のために、反応遅延条件(例えば溶媒の凝固点未満の温度)下に置く。この方法で、亜硝酸塩の酸性化は、溶媒が除去されるまで遅延される。特に、溶媒は水性溶媒であり得る。
【0102】
反応遅延条件の特定の例は、溶媒の凝固点以下の混合物の温度である。この方法で、亜硝酸塩の酸性化の反応速度は、溶媒が除去される間遅延され得る。混合物の温度が溶媒の凝固点を下回るとき、亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を、典型的に混合物の温度が溶媒の凝固点まで下がる前に、溶媒の凝固点より上の温度で混合する。この方法で、溶液の良好な混合が起こり得る。
【0103】
いくつかの例において、溶媒除去を、低いガス圧で行い得る。特に、溶媒除去を、除去する溶媒の凝固点より低い温度と組み合わせた低いガス圧で行い得る。
【0104】
反応遅延条件下の溶媒除去の特に有用な技術は凍結乾燥(「フリーズドライ」とも称される)である。
【0105】
ここで使用する用語「溶媒除去」および/または「乾燥」は、固体粉末組成物の達成のためであることは留意すべきである。これらの用語は、溶媒の完全な除去を含むが、これに限定されない。いくつかの例において、固体粉末組成物は、微量の残留溶媒を含み得る。例えば、粉末組成物は、約10%までの残留溶媒、例えば約5%までの残留溶媒、約3%までの残留溶媒または約1%までの残留溶媒を含み得る。真空乾燥などのさらなる乾燥技術を、固体粉末組成物を提供するために、最初の溶媒除去後に用い得る。
【0106】
粒子の凝集物を形成するための固体の組み合わせ
固体粉末組成物は、亜硝酸塩含有固体とプロトン源含有固体を合わせて粒子の凝集物を形成させることにより形成され得て、ここで、粒子の凝集物が1個以上の亜硝酸塩を含む粒子および1個以上のプロトン源を含む粒子を含む。
【0107】
粒子の凝集物を形成するための亜硝酸塩含有固体とプロトン源含有固体の組み合わせは、例えば、(a)1個以上の亜硝酸塩粒子と1個以上のプロトン源粒子を混合する(ここで、亜硝酸塩粒子は亜硝酸塩溶液の噴霧乾燥により形成され、そしてプロトン源粒子はプロトン源溶液の噴霧乾燥により形成される);または(b)亜硝酸塩固体とプロトン源固体の一緒の微粉化により1個以上の粒子を形成することにより達成され得る。
【0108】
噴霧乾燥された亜硝酸塩粒子および噴霧乾燥された酸粒子の混合
固体粉末組成物は、亜硝酸塩粒子およびプロトン源粒子の混合物であってよく、ここで、亜硝酸塩粒子は亜硝酸塩溶液の噴霧乾燥により形成され、そしてプロトン源粒子はプロトン源溶液の噴霧乾燥により形成される。噴霧乾燥された亜硝酸塩粒子および噴霧乾燥されたプロトン源粒子を当業者に知られる標準的手段で混合して、混合された固体粉末組成物を提供し得る。
【0109】
噴霧乾燥された亜硝酸塩粒子および噴霧乾燥されたプロトン源粒子を、約1:1~約1:99、例えば約1:4~約1:49または約1:7~約1:24の範囲内の亜硝酸塩:プロトン源重量比で混合し得る。
【0110】
亜硝酸塩の噴霧乾燥粒子およびプロトン源の噴霧乾燥粒子を、約5~約60分間、例えば約10~約40分間または約15~約30分間混合し得る。亜硝酸塩の噴霧乾燥粒子およびプロトン源の噴霧乾燥粒子を、約20分間混合し得る。
【0111】
記載のとおり亜硝酸塩溶液により、酸溶液の噴霧乾燥およびこれら成分の混合により形成された粒子は、約10μm以下、例えば、約5μm以下、約4μm以下、約3μm以下、約2μm以下または約1μm以下の粒子径を有し得る。
【0112】
記載のとおりの亜硝酸塩溶液の噴霧乾燥およびプロトン源溶液の噴霧乾燥ならびにこれらの成分の混合は、粒子の凝集物を含む固体粉末組成物をもたらし得て、ここで、凝集物は1個以上の亜硝酸塩を含む粒子および1個以上のプロトン源を含む粒子を含む。
【0113】
亜硝酸塩溶液の噴霧乾燥およびプロトン源溶液の噴霧乾燥ならびにこれらの成分の混合により形成された粒子は任意の適当な形態であり得る。例えば、硝酸塩溶液の噴霧乾燥およびプロトン源溶液の噴霧乾燥ならびにこれらの成分の混合により形成された粒子は、結晶形態または非晶質形態であり得る。亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物の噴霧乾燥により形成された粒子は非晶質形態であり得る
【0114】
亜硝酸塩固体と酸固体の一緒の微粉化により形成された粒子
粒子は、亜硝酸塩固体とプロトン源固体の一緒の微粉化により形成され得る。
【0115】
ここで使用する表現「微粉化」は、固体組成物の平均粒子径を、典型的にマイクロメートル規模範囲内まで減少させる過程をいう。微粉化は、当業者に知られる標準法により達成され得る。例えば、微粉化は、粒子の製粉もしくは粉砕または超臨界流体の利用により行い得る。
【0116】
プロトン源が緩衝化酸系であるとき、プロトン源固体は2成分、固体酸成分および固体共役塩基成分であり得る。亜硝酸塩固体およびプロトン源固体を、約1:1~約1:99比、例えば、約1:4~約1:49または約1:7~約1:24の範囲、例えば1:9w/w亜硝酸塩:プロトン源に微粉化し得る。
【0117】
亜硝酸塩固体とプロトン源固体の一緒の微粉化により形成された粒子は、約10μm以下、例えば、約5μm以下、約4μm以下、約3μm以下、約2μm以下または約1μm以下の粒子径を有し得る。
【0118】
記載する亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の一緒の微粉化は、亜硝酸塩を含む粒子およびプロトン源を含む粒子の固体粉末組成物をもたらし得る。記載する亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の一緒の微粉化は、亜硝酸塩を含む粒子およびプロトン源を含む粒子を含む凝集物を含む固体粉末組成物をもたらし得る。
【0119】
亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の一緒の微粉化により形成された粒子は任意の適当な形態であり得る。例えば、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の一緒の微粉化により形成された粒子は、結晶形態または非晶質形態であり得る。亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の一緒の微粉化により形成された粒子は結晶形態であり得る。
【0120】
微粉化により形成された粒子は、上記のとおり任意的添加剤の1個以上(プロトン源および亜硝酸塩に加えて)を含み得る。特に、微粉化により形成された粒子は上記結合剤を含み得る。結合剤を亜硝酸塩固体およびプロトン源固体と一緒に微粉化し得る。
【0121】
医薬組成物
ここに開示する固体粉末組成物は、所望により1個以上の薬学的に許容される担体、添加物および/またはアジュバントと共に、医薬組成物に含まれ得る。このような担体、添加物および/またはアジュバントは、インビボでの使用が所望であるとき、生理学的に適合性であり得る。
【0122】
生理学的に適合性である担体および/または添加物、例えば担体およびまたは添加物の例は、ラクトース、デンプン、リン酸二カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムなどを含むが、これらに限定されない。
【0123】
一般的に言って、意図する投与方法によって、医薬組成物は、重量で、約0.005%~約95%、好ましくは約0.5%~約50%の本発明の組み合わせもしくは組成物またはその成分を含む。そのような投与形態を製造する実際の方法は当業者に知られるかまたは当業者には明らかである。
【0124】
添加物は、意図する使用または反応剤および/または反応製品が一酸化窒素、所望により他の窒素酸化物および/または所望によりその前駆体の送達のための標的部位に送達される反応剤および/または反応製品の投与経路に依存して、既知添加物から選択され得る。例えば、クリーム、ローションおよび軟膏を、クリーム、ローションおよび軟膏基剤または他の濃化剤および増粘剤(例えばオイドラギットL100、カーボポール、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシメチルセルロース)などの添加物に、亜硝酸塩を組み込むことにより製剤化し得る。プロトン源を、カーボポール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エタノール、ラクトースから選択される添加物または水性塩基に組み込み得る。フィルムを形成することが望まれるとき、例えば、プロピレングリコール、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ゼラチン、グアーガムおよびシェラックなどのフィルム形成添加物を使用し得る。
【0125】
任意の付加的成分は、例えば、甘味剤、矯味剤、濃化剤、増粘剤、湿潤剤、滑沢剤、結合剤、フィルム形成剤、乳化剤、可溶化剤、安定剤、着色剤、付臭剤、塩、コーティング剤、抗酸化剤、薬学的活性剤および防腐剤から選択され得る。このような成分は当分野で周知であり、それらの詳細な記載は当業者には不要である。湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、結合剤および可溶化剤などの湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、結合剤および可溶化剤の例は、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンアセテート、トリエタノールアミンオレエートなどを含む。甘味剤または矯味剤は、経口または吸入製剤がレシピエントを刺激(例えば咳または咽喉炎または他の望まない副作用を起こすことにより、例えば、送達用量を低減するかまたは処方された治療レジメンへの患者のコンプライアンスに不利に作用する可能性がある)する傾向を低減するための、例えば、味、後味、感知される不快な塩味、酸味または苦味に有益に作用する糖、サッカリン、アスパルテーム、スクラロース、ネオテームまたは他の化合物を含み得る。特定の矯味剤は、亜硝酸塩の1個以上と複合体を形成し得る。濃化剤、増粘剤およびフィルム形成剤の例は、上に示している。
【0126】
本発明の成分および組成物に組み込み得るまたは共投与し得る薬学的活性剤の例は、抗生物質、ステロイド、麻酔剤(例えばリグノカイン(リドカイン)、アメトカイン(テトラカイン)、キシロカイン、ブピバカイン、プリロカイン、ロピバカイン、ベンゾカイン、メピバカイン、コカインまたはそれらの任意の組み合わせなどの局所麻酔剤)、鎮痛剤、抗炎症剤(例えば非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs))、抗感染剤、ワクチン、免疫抑制剤、抗痙攣剤、抗認知症薬物、プロスタグランジン、解熱剤、抗真菌剤(anticycotics)、抗乾癬剤、抗ウイルス剤、血管拡張剤または血管収縮剤、日焼け止(例えばPABA)、抗ヒスタミン剤、エストロゲン、プロゲステロンまたはアンドロゲンなどのホルモン剤、抗脂漏剤、アルファもしくはベータブロッカーまたはロゲインなどの心血管処置剤、ビタミン剤、皮膚軟化剤、酵素、肥満細胞安定化剤、疥癬虫殺虫剤、殺シラミ剤、角質溶解剤、滑沢剤、麻酔剤、シャンプー、抗アクネ製剤、熱傷処置製剤、クレンジング剤、脱臭剤、脱色剤、おむつかぶれ処置製品、軟化剤、保湿剤、感光剤、ツタウルシまたはウルシまたはウルシ科製品、日焼け処置製剤、タンパク質、ペプチド、プロテオグリカン、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(例えばDNA、RNAなど)、ミネラル、増殖因子、タール含有製剤、ハチミツ含有製剤(例えば、マヌカハニー含有製剤)、疣贅処置製剤、湿布、創傷ケア製品またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0127】
特定の例は、イブプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナク、アセチルサリチル酸、パラセタモール、プロプラノロール、メトプロロールおよびオキシコドンなどの鎮痛剤;甲状腺放出ホルモン;エストロゲン、プロゲステロンおよびテストステロンなどの性ホルモン;インスリン;ベラパミル;バソプレッシン;ヒドロコルチゾン;スコポラミン;ニトログリセリン;硝酸イソソルビド;テルフェナジンなどの抗ヒスタミン;クロニジン;ニコチン;シクロスポリン、メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノレート、シクロホスファミド、TNF-αアンタゴニストおよび抗IL5、抗IL4Ra、抗IL6、抗IL13、抗IL17、抗IL23サイトカインモノクローナル抗体などの非ステロイド性免疫抑制剤;抗痙攣剤;およびアパモルヒネおよびリバスチグミンなどのアルツハイマー、認知症および/またはパーキンソン病のための薬物を含む。
【0128】
ここに開示する固体粉末組成物を含む医薬組成物に任意の添加物を添加するならば、これらの任意的添加物は、固体状態、例えば、乾燥粒子形態であり得る。
【0129】
固体粉末組成物を製造する方法
溶媒除去により固体粉末組成物を製造する方法
固体粉末組成物を製造する方法は、粉末組成物形成前の酸性化を最小化するような方法で、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合物から溶媒を除去することを含み得る。
【0130】
ある例において、方法は、固体を形成するための亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後、30秒未満の溶媒の除去(例えば噴霧乾燥による)の工程を含む。
【0131】
他の例において、方法は、溶媒除去中ならびに亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液の混合前、途中および/または直後の反応遅延条件(例えば凍結乾燥)の提供を含む。
【0132】
ある例において、方法は、固体粉末を形成するための、亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む水性混合物からの溶媒の除去の工程を含み得る。
【0133】
亜硝酸塩水溶液は、約0.1M~約5Mの範囲の濃度を有し得る。亜硝酸塩水溶液は、少なくとも約0.1M、少なくとも約0.2M、少なくとも約0.5M、少なくとも約0.75Mまたは少なくとも約1Mの濃度を有し得る。亜硝酸塩水溶液は、最大約5M、最大約4M、最大約3Mまたは最大約2Mの濃度を有し得る。例えば、亜硝酸塩水溶液は、約1M~約2Mの範囲、例えば約1.5Mの濃度を有し得る。亜硝酸塩水溶液は、約6.5~約9、例えば、約7~約8のpHを有し得る。
【0134】
プロトン源水溶液は、約0.1M~約5Mの範囲の濃度を有し得る。亜硝酸塩水溶液は、少なくとも約0.1M、少なくとも約0.2M、少なくとも約0.5M、少なくとも約0.75Mまたは少なくとも約1Mの濃度を有し得る。亜硝酸塩水溶液は、最大約5M、最大約4M、最大約3Mまたは最大約2Mの濃度を有し得る。例えば、亜硝酸塩水溶液は、約0.5M~約1.5Mの範囲、例えば約1Mの濃度を有し得る。クエン酸水溶液は、約4~6のpHを有し得る。プロトン源水溶液のpHは、例えば水酸化ナトリウムなどの無機塩基を使用して、調節し得る。
【0135】
いくつかの例において、溶媒除去の工程は、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後、20秒以下、10秒以下、5秒以下、2秒以下または1秒以下かかる。いくつかの例において、溶媒を、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後、500ミリ秒以下、100ミリ秒以下、50ミリ秒以下または10ミリ秒以下で除去する。
【0136】
噴霧乾燥
固体粉末組成物は、亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液の噴霧乾燥により産生し得る。
【0137】
亜硝酸塩水溶液および酸水溶液を、噴霧乾燥の実施前、インラインで約1~約10ミリ秒、例えば約3~約5ミリ秒混合し得る。噴霧乾燥を、亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液の混合直後に行い得る。記載の亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物の混合および噴霧乾燥は、プロトン源と亜硝酸塩成分の間の反応の可能性を大きく制限し、湿気の迅速な除去により反応を完全に停止させることは理解される。
【0138】
噴霧乾燥を、約60~約80℃、例えば約65~約75℃または約68~約70℃の範囲の出口温度で実施し得る。噴霧乾燥を、約1~6バールの範囲の噴霧圧力で行い得る。噴霧乾燥を、約1~約5g/分、例えば約2g/分~約4g/分の範囲または約3g/分の液体供給速度で行い得る。
【0139】
反応遅延条件
別の方法として、方法は、溶媒除去中および亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液の混合前、途中および/または直後に反応遅延条件(例えば凍結乾燥)を提供することを含み得る。
【0140】
反応遅延条件の特定の例は、溶媒の凝固点以下の混合物の温度である。この方法で、亜硝酸塩の酸性化の反応速度は、溶媒が除去される間遅延され得る。混合物の温度が溶媒の凝固点を下回るとき、亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を、典型的に混合物の温度が溶媒の凝固点まで下がる前に、溶媒の凝固点より上の温度で混合する。この方法で、溶液の良好な混合が起こり得る。
【0141】
いくつかの例において、溶媒除去を、低いガス圧で行い得る。特に、溶媒除去を、除去する溶媒の凝固点より低い温度と組み合わせた低いガス圧で行い得る。
【0142】
反応遅延条件下の溶媒除去の特に有用な技術は凍結乾燥(「フリーズドライ」とも称される)である。
【0143】
遅延反応条件下で亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後溶媒除去に要する時間は、約10分以下であり得る。これらの条件下、溶媒(例えば水)をこのように迅速に除去することはあまり重要ではない可能性がある。しかしながら、比較的短い時間枠での溶媒の除去は、亜硝酸塩の酸性化をさらに制限するためにも望まれ得る。いくつかの例において、溶媒は、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後、反応遅延条件で約8分以下、例えば、約7分以下、約6分以下、約5分以下、約4分以下、約3分以下または約2分以下で除去される。さらなる例において、溶媒除去の工程は、亜硝酸塩溶液とプロトン源溶液の混合後、約1分以下、約30秒以下、約20秒以下、約15秒以下または約10秒以下を要する。
【0144】
ここで使用する用語「溶媒除去」および/または「乾燥」は、固体粉末組成物の達成のためであることは留意すべきである。これらの用語は、溶媒の完全な除去を含むが、これに限定されない。いくつかの例において、固体粉末組成物は、微量の残留溶媒を含み得る。例えば、粉末組成物は、約10%までの残留溶媒、例えば約5%までの残留溶媒、約3%までの残留溶媒または約1%までの残留溶媒を含み得る。真空乾燥などのさらなる乾燥技術を、固体粉末組成物を提供するために、最初の溶媒除去後に用い得る。
【0145】
粒子を合わせて、粒子の凝集物を形成する方法
亜硝酸塩を含む粒子およびプロトン源を含む粒子を含む粒子の凝集物の形成は、いくつかの方法により達成され得る。
【0146】
ある例において、方法は、
(i)亜硝酸塩溶液を噴霧乾燥または凍結乾燥して、亜硝酸塩粒子を形成し;
(ii)プロトン源溶液を噴霧乾燥または凍結乾燥して、プロトン源粒子を形成し;そして
(iii)亜硝酸塩粒子およびプロトン源粒子を混合する
工程を含み得る。
【0147】
亜硝酸塩水溶液は、約0.1M~約5Mの範囲の濃度を有し得る。亜硝酸塩水溶液は、少なくとも約0.1M、少なくとも約0.2M、少なくとも約0.5M、少なくとも約0.75Mまたは少なくとも約1Mの濃度を有し得る。亜硝酸塩水溶液は、最大約5M、最大約4M、最大約3Mまたは最大約2Mの濃度を有し得る。例えば、亜硝酸塩水溶液は、約1M~約2Mの範囲、例えば約1.5Mの濃度を有し得る。亜硝酸塩水溶液は、約6.5~約9、例えば、約7~約8のpHを有し得る。
【0148】
プロトン源水溶液は、約0.1M~約5Mの範囲の濃度を有し得る。亜硝酸塩水溶液は、少なくとも約0.1M、少なくとも約0.2M、少なくとも約0.5M、少なくとも約0.75Mまたは少なくとも約1Mの濃度を有し得る。亜硝酸塩水溶液は、最大約5M、最大約4M、最大約3Mまたは最大約2Mの濃度を有し得る。例えば、亜硝酸塩水溶液mayは、約0.5M~約1.5Mの範囲、例えば約1Mの濃度を有し得る。クエン酸水溶液は、約4~6のpHを有し得る。プロトン源水溶液のpHは、例えば水酸化ナトリウムなどの無機塩基を使用して、調節し得る。
【0149】
噴霧乾燥を、約60~約80℃、例えば約65~約75℃または約68~約70℃の範囲の出口温度で実施し得る。噴霧乾燥を、約1~6バールの範囲の噴霧圧力で行い得る。噴霧乾燥を、約1~約5g/分、例えば約2g/分~約4g/分の範囲または約3g/分の液体供給速度で行い得る。
【0150】
いくつかの例において、噴霧乾燥粒子は、さらに、例えば、真空乾燥により乾燥される。
【0151】
噴霧乾燥または凍結乾燥亜硝酸塩粒子および噴霧乾燥または凍結乾燥プロトン源粒子を当業者に知られる標準手段で混合して、混合された固体粉末組成物を提供し得る。
【0152】
噴霧乾燥または凍結乾燥亜硝酸塩粒子および噴霧乾燥または凍結乾燥プロトン源粒子を、約1:1~約1:99の範囲、例えば約1:4~約1:49または約1:7~約1:24の範囲の亜硝酸塩:プロトン源の重量比で混合し得る。
【0153】
亜硝酸塩の噴霧乾燥粒子およびプロトン源の噴霧乾燥粒子を、約5~約60分間、例えば約10~約40分間または約15~約30分間混合し得る。亜硝酸塩の噴霧乾燥粒子およびプロトン源の噴霧乾燥粒子を、約20分間混合し得る。
【0154】
微粉化により固体粉末組成物を製造する方法
固体粉末組成物を製造する方法は、亜硝酸塩固体とプロトン源固体を混合微粉化して、固体粉末組成物を形成する工程を含む。微粉化はそれ自体知られる。微粉化を、当業者に知られる標準法により達成し得る。例えば、微粉化は、粒子の製粉もしくは粉砕または超臨界流体の利用により行い得る。
【0155】
亜硝酸塩固体を、プロトン源固体と一緒に約5~約30分間、例えば約5~約20分間または約5~約15分間微粉化し得る。亜硝酸塩固体をプロトン源固体と一緒に約10分間微粉化し得る。
【0156】
亜硝酸塩固体を、プロトン源固体と一緒に、8バールのベンチュリ圧力および2バールの粉砕圧力で微粉化し得る。
【0157】
本発明者らは、亜硝酸塩固体とプロトン源固体の一緒(すなわち同時)の微粉化により、別に微粉化された亜硝酸塩粉末および別に微粉化されたプロトン源粉末の混合により形成された固体粉末組成物よりも、水性環境に曝されたとき、一酸化窒素を良好に放出する固体粉末組成物が産生され得ることを発見した。
【0158】
被覆された粒子を有する固体粉末組成物を製造する方法
疎水性物質で被覆された粒子を含む固体粉末組成物を製造し得る。方法は
(i)亜硝酸塩およびプロトン源を含む粒子を疎水性物質でコーティングする;または
(ii)1個以上の亜硝酸塩を含む亜硝酸塩粒子および1個以上のプロトン源を含むプロトン源粒子を合わせ、次いで、混合物をコーティングする
いずれかの工程を含み得る。
【0159】
疎水性物質は、上記と同じ疎水性物質であり得る。
【0160】
粒子または粒子の凝集物を、当業者に知られる任意の適当な方法で被覆し得る。
【0161】
粒子または粒子の凝集物は、疎水性物質を含む溶液中に分散させ、その溶液を乾燥させて疎水性物質の層で被覆された粒子または粒子の凝集物を得るために被覆されてよい。いくつかの例において、溶液は非極性溶媒を含む。具体例において、溶液極性溶媒(例えばメタノール)を含まない。このような極性溶媒は、粒子の少なくとも一部を溶解し得る。特に、溶液は水フリー(aqueous-free)であり得る。
【0162】
疎水性物質は、例えば、PLGAであり得る。粒子または粒子の凝集物は疎水性物質と1:1w/w比で乾燥されてよい。粒子または粒子の凝集物が分散または懸濁された溶液はDCMおよび疎水性物質の溶液であり得る。
【0163】
具体的実施態様において、疎水性物質溶液中の粒子の懸濁液は、噴霧乾燥により乾燥される。粒子または粒子の凝集物が分散している疎水性物質を含む溶液は、約28~30℃の出口温度で噴霧乾燥され得る。粒子または凝集物が分散している疎水性物質を含む溶液を、約1バールの噴霧圧力で噴霧乾燥し得る。粒子または凝集物が分散している疎水性物質を含む溶液を、約2g/分の液体供給速度で噴霧乾燥し得る。
【0164】
被覆された粒子または被覆粒子の凝集物は、約10μm未満、例えば約9μm未満、例えば約8μm未満、約7μm未満、約6μm未満または約5μm未満の粒子径を有し得る。
【0165】
粒子または粒子の凝集物を粒子または粒子の凝集物と疎水性物質を混合し、疎水性物質の層で被覆された粒子または凝集物を提供することにより、被覆し得る。疎水性物質は、例えば、DPPC、ステアリン酸マグネシウム、メソ多孔質シリカまたはそれらの組み合わせであり得る。粒子または凝集物を、疎水性物質と1:1w/w比で混合し得る。疎水性物質を混合前に篩過させ得る。あるいは、疎水性物質を混合前に篩過させなくてよい。
【0166】
粒子または粒子の凝集物を、約10~約40分間または約15~約30分間、疎水性物質と混合し得る。亜硝酸塩の噴霧乾燥粒子およびプロトン源の噴霧乾燥粒子を、約20分間混合し得る。
【0167】
水性環境
本発明の固体粉末組成物は、典型的に、水性環境と接触したとき、NOxを放出する。水性環境は特に限定されない。
【0168】
水性環境は、体液などの水性生物学的液体であり得る。このような体液は、創傷排出物、気道表面液体(例えば呼吸器粘液)および/または血液(例えば血漿、血清)を含み得る。
【0169】
あるいは、水性環境は無菌水溶液であり得る。水性環境は食塩水溶液であり得る。
【0170】
ある実施態様において、固体粉末組成物は、空気からの湿気を吸収するのに十分に吸湿性であり得て、それはNOxの放出の開始に十分である。
【0171】
処置または予防の方法
呼吸器疾患または障害の処置または予防の方法
本発明は、ここに開示する固体粉末組成物または医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、呼吸器疾患または障害を処置または予防する方法を含む。
【0172】
さらに、本発明は、呼吸器疾患または障害を処置または予防する方法に使用するためのここに開示する固体粉末組成物または医薬組成物を提供する。
【0173】
固体組成物の粒子または粒子の凝集物または医薬組成物は、肺深部吸入および呼吸器適用に適する粒子径を有し得る。固体粉末組成物中の粒子は、呼吸器疾患または障害の処置または予防に使用するとき、10ミクロン以下の平均粒子径を有し得る。例えば、固体組成物の粒子または粒子の凝集物または医薬組成物は、約10μm以下、例えば、約5μm以下、約4μm以下、約3μm以下、約2μm以下または約1μm以下の粒子径を有し得る。
【0174】
本発明を使用して処置可能な状態は、例えば、ウイルス感染、例えばインフルエンザ、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2、肺動脈性高血圧、移植に含まれる心臓、脳および臓器の虚血性再灌流傷害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(特に、気腫、慢性気管支炎)、重症喘息ならびに喘息のウイルスおよび細菌誘発増悪および難治性(非可逆性)喘息を含む喘息、鼻腔内または肺細菌感染、例えば、肺炎、結核、非結核性抗酸菌症および他の細菌およびウイルス肺感染、例えば呼吸管のウイルス感染後の二次性細菌感染を含み得る。
【0175】
一酸化窒素が血管拡張を誘導する性質は、本発明の固体粉末組成物または医薬組成物およびそこから発生するNOxガスを使用する処置のいくつかを特徴づける。
【0176】
血管拡張に応答性の疾患、障害および状態の特定の例は、虚血に関連する状態を含むが、これに限定されない。
【0177】
組織虚血と関連する状態は、レイノー症候群、重度一次血管痙攣および組織虚血、例えば手術、敗血症性ショック、放射または末梢血管疾患(例えば糖尿病および他の慢性全身性疾患)が原因の組織虚血を含む。
【0178】
ある実施態様において、呼吸器疾患または障害は、処置対象における1以上の微生物の存在と関連し得る。換言すると、呼吸器疾患または障害は、対象における1以上の微生物感染と関連し得る。水性環境に曝されたときに、固体粉末組成物または医薬組成物から発生されるNOxガスは潜在的に広範囲の微生物に殺生物性または静生物性を有し、多くの抗微生物処置をもたらし得る。微生物は、細菌細胞、ウイルス粒子および/または真菌細胞または寄生微生物から選択される任意の1以上であり得て、個々の細胞、生物またはコロニーであり得る。
【0179】
微生物がヒトまたは他の動物の細菌感染、真菌感染、ウイルスまたは寄生微生物感染に存在するとき、感染は、例えば、一般的な風邪、インフルエンザ、結核、SARS、COVID-19、肺炎または麻疹などの疾患の状況にあり得る。
【0180】
細菌は病原性細菌種であり得る。微生物感染は、グラム陽性およびグラム陰性、好気性および嫌気性、抗生物質感受性および抗生物質耐性細菌を含む病原性細菌種により引き起こされる感染であり得る。
【0181】
本発明を使用して標的とし得る細菌種の例は、アクチノマイセス属、バシラス属、バルトネラ属、ボルデテラ属、ボレリア属、ブルセラ属、カンピロバクター属、クラミジア属、クラミドフィラ属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、エンテロコッカス属、エシェリヒア属、フランシセラ属、ヘモフィルス属、ヘリコバクター属、レジオネラ属、レプトスピラ属、リステリア属、マイコバクテリウム属、マイコプラズマ属、ナイセリア属、シュードモナス属、リケッチア属、サルモネラ属、シゲラ属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、トレポネーマ属、ウレアプラズマ属、ビブリオ属またはエルシニア属の種を含み得る。それらの任意の組み合わせもまた本発明により標的とし得る。
【0182】
微生物は、コリネバクテリウム属、マイコバクテリウム属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、シュードモナス属の病原性種またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0183】
標的とする微生物は、アクチノマイセス・イスラエリ、バシラス・アンシラシス、バクテロイデス・フラジリス、ボルデテラ・パーツシス、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・ガリニ;ボレリア・アフゼリ;ボレリア・リカレンティス;ブルセラ・アボルタス;ブルセラ・カニス;ブルセラ・メリテンシス;ブルセラ・スイス;カンピロバクター・ジェジュニ;クラミジア・ニューモニエ;クラミジア・トラコマチス;クラミドフィラ・プシタッシ;クロストリジウム・ボツリナム;クロストリジウム・ディフィシル;クロストリジウム・パーフリンジェンス;クロストリジウム・テタニ;コリネバクテリウム・ジフテリア;エーリキア・カニス;エーリキア・シャフェンシス;エンテロコッカス・フェカリス;エンテロコッカス・フェシウム;大腸菌O157:H7を含む毒素原性大腸菌(ETEC)、腸管病原性大腸菌、侵入性大腸菌(EIEC)および腸管出血性大腸菌(EHEC)などのエシェリヒア・コリ;フランシセラ・ツラレンシス;ヘモフィルス・インフルエンザ;ヘリコバクター・ピロリ;クレブシエラ・ニューモニエ;レジオネラ・ニューモフィラ;レプトスピラ属種;リステリア・モノサイトゲネス;マイコバクテリウム・レプラエ;マイコバクテリウム・ツベルクローシス;マイコバクテリウム・アブセッサス;マイコバクテリウム・ウルセランス;マイコプラズマ・ニューモニエ;ナイセリア・ゴノレエ;ナイセリア・メニンギティデス;シュードモナス・アエルギノーザ;ノカルジア・アステロイデス;リケッチア・リケッチア;サルモネラ・ティフィ;サルモネラ・ティフィムリウム;シゲラ・ソネイ;シゲラ・ディセンテリアエ;スタフィロコッカス・アウレウス;スタフィロコッカス・エピデルミディス;スタフィロコッカス・サプロフィティカス;ストレプトコッカス・アガラクチアエ;ストレプトコッカス・ニューモニエ;ストレプトコッカス・ピオゲネス;ストレプトコッカス・ヴィリダンス;トレポネーマ・パリダム亜種パリダム;ビブリオ・コレラエ;エルシニア・ペスティス;およびそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0184】
微生物はクラミジア・ニューモニエ、バシラス・アンシラシス、コリネバクテリウム・ジフテリア、ヘモフィルス・インフルエンザ、マイコバクテリウム・レプラエ、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・アブセッサス、マイコバクテリウム・ウルセランス、シュードモナス・アエルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウス、ストレプトコッカス・ニューモニエまたはそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0185】
微生物は、細菌種の抗生物質耐性または抗生物質感受性病原性細菌種または抗生物質耐性または抗生物質感受性株であり得る。メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)およびメチシリン感受性スタフィロコッカス・アウレウス(MSSA)の処置のための一酸化窒素の使用は、例えば、開示を引用により本明細書に包含させる、WO02/20026に記載される。本発明を使用して殺すまたは処置することができる抗生物質耐性または抗生物質感受性病原性細菌種の例は、故に、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)またはメチシリン感受性スタフィロコッカス・アウレウス(MSSA)である。
【0186】
微生物は病原性真菌種であり得る。微生物感染は、病原性酵母を含む病原性真菌種により引き起こされる感染であり得る。
【0187】
本発明を使用して標的とし得る真菌種の例はアスペルギルス、ブラストミセス、カンジダ(例えばカンジダ・アウリス)、コクシジオイデス、クリプトコッカス(特に、クリプトコッカス・ネオフォルマンスまたはクリプトコッカス・ガティ)、ヒストプラスマ、ムルコマイセテス、ニューモシスティス(例えばニューモシスティス・イロベチイ)、スポロスリクス、タラロマイセスの種またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0188】
真菌感染の例は、アスペルギルス症(例えばアレルギー性気管支肺アスペルギルス症)、足白癬(水虫)、病原性種のカンジダにより引き起こされる感染、例えば膣酵母感染、真菌足爪感染およびおむつかぶれ、頑癬(いんきんたむし)および体部白癬(輪癬)を含む。
【0189】
微生物はウイルス粒子であり得る。感染は病原性ウイルスにより引き起こされ得る。
【0190】
本発明を使用して標的とし得るウイルスの例は、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、アストロウイルスおよび肝臓ウイルスを含む。本発明の組成物を、H1N1インフルエンザウイルス、感染性ウシ鼻気管炎ウイルス、ウシ呼吸器多核体ウイルス、ウシパラインフルエンザ-3ウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2およびそれらの任意の組み合わせから選択される群の一つにより引き起こされる感染の処置または予防に使用し得る。
【0191】
本発明を、ウイルス感染により引き起こされる疾患または障害の処置のために適用し得る。本発明が標的とし得るそのような疾患の例は、呼吸器ウイルス疾患、消化器ウイルス疾患、発疹性ウイルス疾患、肝臓ウイルス疾患、皮膚ウイルス疾患、出血性ウイルス疾患および神経ウイルス疾患を含む。
【0192】
呼吸器ウイルス感染は、インフルエンザ、ライノウイルス(すなわち通常の風邪ウイルス)、呼吸器多核体ウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス感染、例えば、COVID-19および重症急性呼吸器症候群(SARS)を含む。消化器ウイルス疾患は、ノロウイルス感染、ロタウイルス感染、アデノウイルス感染およびアストロウイルス感染を含む。発疹性ウイルス疾患は、麻疹、風疹、水痘、帯状疱疹、突発性発疹、天然痘、伝染性紅斑およびチクングニアウイルス疾患を含む。肝臓ウイルス疾患は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎およびE型肝炎を含む。皮膚ウイルス疾患は、性器疣贅などの疣贅、口唇ヘルペス、性器ヘルペスおよび伝染性軟属腫を含む。出血性ウイルス疾患は、エボラ、ラッサ熱、デング熱、黄色熱、マールブルグ出血熱およびクリミア・コンゴ出血熱を含む。本発明を使用して標的とし得る神経ウイルス疾患は、ポリオ、ウイルス髄膜炎、ウイルス脳炎および狂犬病を含む。
【0193】
微生物は寄生性微生物(寄生微生物)であり得る。感染は病原性寄生性微生物により引き起こされ得る。
【0194】
本発明を使用して標的とし得る寄生性微生物の例は、原生動物を含む。
【0195】
特に、本発明は、肉質虫亜門(例えばアメーバ、例えばエントアメーバ・ヒストリチカまたはエントアメーバ・ディスパーなどのエントアメーバ属)、鞭毛虫亜門(例えば鞭毛虫、例えばジアルジアおよびリーシュマニア)、繊毛虫門(例えば繊毛虫、例えばバランチジウム属)、胞子虫綱(例えばプラスモジウム属およびクリプトスポリジウム属)およびそれらの任意の組み合わせの原生動物群を標的とし得る。
【0196】
本発明を使用して処置し得る寄生性感染は、マラリア、アメーバ赤痢およびリーシュマニア症(例えば皮膚リーシュマニア症、皮膚粘膜リーシュマニア症または内臓リーシュマニア症)を含む。
【0197】
特に、呼吸器疾患または障害は結核であり得る。
【0198】
対象は動物またはヒト対象であり得る。ここでの用語「動物」は一般にヒトを含み得る;しかしながら、用語「動物」が、表現「動物またはヒト対象」などで記載されるとき、文脈から特に非ヒト動物をいうのかまたは「ヒト」の言及が、誤解を避けるために動物がヒトであり得るとの選択肢を単に特定化するのか理解される。
【0199】
対象はヒト対象であり得る。ヒト対象は幼児または成人対象であり得る。
【0200】
対象は脊椎動物対象であり得る。脊椎動物は、無顎綱(無顎類)、軟骨魚綱(軟骨魚類)、硬骨魚綱(硬骨魚)、両生綱(両生類)、爬虫綱(爬虫類)、鳥綱(鳥類)または哺乳綱(哺乳類)であり得る。対象は、哺乳綱または鳥綱の動物対象であり得る。
【0201】
対象は飼育種の動物であり得る。飼育種の動物の例は、
-ヒトの生態学的地位に適応した片利共生生物(例えば、イヌ、ネコ、モルモット)
-食用が意図されるまたはそのために飼育される餌または家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ);および
-主に牽引目的の動物(例えば、ウマ、ラクダ、ロバ)
の一つであり得る。
飼育動物の例は、アルパカ、アダックス、バイソン、ラクダ、カナリヤ、カピバラ、ネコ、ウシ(バリ牛を含む)、ニワトリ、クビワペッカリー、シカ(ダマジカ、ニホンジカ、クチジロジカおよびオジロジカを含む)、イヌ、ラクダ、ハト、アヒル、エランド、エルク、エミュー、フェレット、ガヤル、ヤギ、ガチョウ、ホロホロチョウ、モルモット、ネジツノカモシカ、ウマ、ラマ、ミンク、ムース、マウス、ラバ、ジャコウウシ、ダチョウ、オウム、ブタ、ドバト、ウズラ、ウサギ、ラット(アフリカアシネズミを含む)、トナカイ、シロオリックス、ヒツジ、シチメンチョウ、スイギュウ、ヤクおよびコブウシを含むが、これらに限定されない。
【0202】
基質への固体粉末組成物の組み込みまたは封入
ここに提供されるのは、基質およびここに開示する固体粉末組成物を含む物質であって、ここで、固体粉末組成物の粒子が基質に組み込まれているまたは封入されている、物質である。この方法で、固体粉末組成物は、湿気または水性環境に曝されるまで、基質により物質内に保持され得る。
【0203】
基質は合成または天然ポリマー種であり得る。基質は、例えば、ポリカプロラクトン、ポリウレタンまたはポリアクリロニトリルであり得る。基質は、例えば、セルロースであり得る。
【0204】
物質は、基質の繊維および繊維状物質に組み込まれたまたは封入された固体粉末組成物の粒子を含む、繊維状物質であり得る。固体粉末組成物の粒子は、基質繊維表面に露出または一部露出していてよく、または繊維網および繊維断面に完全に封入されていてよい。
【0205】
いくつかの例において、基質は多孔性であり、固体粉末組成物の粒子の少なくとも一部が基質の孔にある。換言すると、基質は多孔性であり、固体粉末組成物の粒子を含侵し得る。いくつかの例において、基質は、基質表面に孔を含むことにより、多孔性である。他の例において、基質はポリマー繊維などの基質要素の多孔性メッシュであり得て、粒子は基質要素間の隙間にある。特定の例として、固体粉末組成物の粒子は、ポリマー繊維メッシュの隙間に含侵され得る。
【0206】
固体組成物の粒子または粒子の凝集物は、ゲル化繊維に分散するための適当な粒子径であり得る。固体組成物の粒子または凝集物は、約10μm超の粒子径を有し得る。例えば、固体組成物の粒子または凝集物は、約50μm超、約100μm超、約250μm超、約500μm超、約750μm超、約1000μm超の粒子径を有し得る。
【0207】
粒子径を大きくするために、粒子または粒子の凝集物を造粒し得る。「造粒」は、顆粒として知られる大型粒子を形成するように、粒子種を合わせる過程をいう。造粒は、例えば、粒子または凝集物を圧縮して、その後に顆粒に破壊できる錠剤を提供することにより、行い得る。粒子または凝集物は約1~約10(メートルトン)で圧縮でき、例えば、約3~約7MTで圧縮できる。粒子または凝集物は約3.8MTで圧縮できる。粒子または凝集物は約6.5MTで圧縮できる。錠剤を、篩、例えば、1mm篩を使用して、顆粒に破壊できる。
【0208】
圧縮を促進するために、粒子または凝集物に結合剤を添加し得る。適当な結合剤は、糖、天然結合剤または合成または半合成ポリマー結合剤を含み得る。糖種は、例えば、スクロースまたは液体グルコースを含み得る。天然結合剤は、例えば、アカシア、トラガカント、ゼラチン、デンプンペースト、アルファ化デンプン、アルギン酸またはセルロースを含み得る。合成または半合成ポリマー結合剤は、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸を含み得る。結合剤は、1-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー(コポビドン)であり得る。結合剤は微結晶セルロースであり得る。
【0209】
結合剤は、組成物に約5%w/w~約30%w/wの重量%で組み込まれ得る。例えば、結合剤は、組成物に約10%w/w~約25%w/wの重量%で組み込まれ得る。
【0210】
あるいは、組成物は結合剤を実質的に含まなくてよい。
【0211】
粒子径を、粒子または凝集粒子を繊維間に確実に捕捉(組み込みまたは封入)させるために、このような手段で増大させ得る。
【0212】
固体粉末組成物の粒子を、基質を産生するとき、基質に組み込み得る。ここに提供されるのは、(i)ここに開示する固体粉末組成物と基質または基質前駆体を含む非極性液体を混合して、液体-粒子混合物を形成させ、そして(ii)液体-粒子混合物を固化して、ここに開示する固体粉末組成物が組み込まれたまたは封入された物質を形成する工程を含む、第一または第二の態様の固体粉末組成物を基質に組み込むまたは封入する方法である。
【0213】
液体-粒子混合物を、混合物を繊維に紡ぐことにより、固化させ得る。繊維を紡ぐための当業者に知られる技術を使用し得る。例えば、液体-粒子混合物を乾式紡糸、湿式紡糸、ゲル紡糸または電界紡糸により固化させ得る。液体-粒子混合物を電界紡糸により固化させ得る。「電界紡糸」は、電気力を使用して、ポリマー溶液またはポリマー溶融物を繊維直径まで引き伸ばす繊維生成方法をいう。液体-粒子混合物をゲル紡糸により固化させ得る。「ゲル紡糸」は、固化のための温度誘発物理的ゲル化を利用する繊維生成方法をいう。
【0214】
あるいは、固体粉末の粒子を、基質が形成された後、基質に組み込み得る。例えば、固体粉末の粒子を、繊維状メッシュ基質などの多孔性基質に含侵させ得る。これらの例において、基質は既に形成されており、固体粉末組成物がそれに添加される。固体粉末組成物を多孔性基質に含侵する特定の例は、EP2331309に記載されているものを含む(およびFibroline Franceから入手可能な他の技術)。
【0215】
いくつかの例において、上記物質は局所包帯材、例えば創傷包帯の成分である。別の実施態様において、物質は、生物学的に植え込み可能な物質またはデバイスであるかまたはその一部を形成し得る。例えば、生物学的に植え込み可能な物質またはデバイスは、血管および他のステント、カテーテル、ペースメーカー、除細動器、心臓補助デバイス、人工弁、電極、整形外科用スクリューおよびピンおよび他の薄い医療および/または植え込み可能物品であり得る。
【0216】
被覆物質またはデバイス
ここに開示されているのは、物質またはデバイスであって、基質および基質の外面に噴霧乾燥されたコーティングを含み、該噴霧乾燥されたコーティングは亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物の噴霧乾燥により形成されているものである、物質またはデバイスである。
【0217】
ここに開示されているのはまた、物質またはデバイスであって、基質および基質の外面にコーティングを含み、コーティングは亜硝酸塩およびプロトン源を含む均質固体であるものである、物質またはデバイスである。
【0218】
そのようなものとして、ここに開示されるのは、亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物を基質の外面に噴霧乾燥して、物質またはデバイスを提供する工程を含む、物質またはデバイスを提供する方法である。
【0219】
物質またはデバイスは局所包帯材、例えば、創傷包帯またはバンデージであり得る。
【0220】
物質またはデバイスは吸入器(手持ち式およびネブライザー)であり得る。
【0221】
物質またはデバイスは生物学的に植え込み可能な物質またはデバイスであり得る。例えば、物質またはデバイスは、血管および他のステント、カテーテル、ペースメーカー、除細動器、心臓補助デバイス、人工弁、電極、整形外科用スクリューおよびピンおよび他の薄い医療および/または植え込み可能物品であり得る。
【0222】
ここに開示されるのは、ここに開示する物質またはデバイスをヒトまたは動物身体にインプラントする方法である。
【0223】
上記の好ましいまたは特定の特性を、そのような特性および態様が適合する限り、本発明の各および全態様に適用し得る。
【実施例】
【0224】
固体粉末組成物の製造
材料および分析的方法
次の材料を、商業的供給源から得た:亜硝酸ナトリウムはHoneywellから、クエン酸はSigma Aldrichから、クエン酸三ナトリウムはMerckから、水酸化ナトリウムはFisherから、PLGA RG 502 HはSigma Aldrichから、メソ多孔質シリカ(Syloid 244FP)はGraceから、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)はAvantiから、Kollidon VA64 FineはBASFから、微結晶セルロースはJRS Pharmaからおよびジクロロメタン(DCM)はSigma Aldrichから。脱イオン(DI)水(18.2MΩ)は、ELGA水精製系を使用して調製した。
【0225】
特に断らない限り、次の分析的方法を使用した。
【0226】
Sympatecによる乾燥粉末粒子径分布(PSD)
噴霧乾燥粉末のレーザー粒子径分析を、R3レンズ(0.5~175.0μm範囲)/R5レンズ(0.5~875.0μm範囲)およびASPIROS分散ユニットを備えたSympatec HELOS粒子径アナライザーを使用して、実施した。3.00バール圧の圧縮空気および60mbarの低気圧を使用して、分散を達成した。ASPIROSガラス管に低湿気環境(<25%RH)で粉末を満たし、測定を行うまでパラフィルムでシールした。断らない限り測定はトリプリケートで行い、平均データを記載した。
【0227】
実施例1:固体粉末組成物を形成させるための亜硝酸塩溶液およびプロトン源溶液を含む混合物の噴霧乾燥
1.5M亜硝酸ナトリウムの供給溶液(供給溶液1)を、必要な亜硝酸ナトリウム量を脱イオン水に溶解することにより調製した。pH4に調節した1Mクエン酸の供給溶液(供給溶液2)を、必要なクエン酸量を脱イオン水に溶解し、pHを10M水酸化ナトリウム水溶液で4に調節することにより、調製した。溶液のpHを、Mettler Toledo Seven Compact pHメーターを使用して測定した。
【0228】
供給溶液1および2を、Buchi二流体ノズルを備えたBuchi B290噴霧乾燥機を使用して、噴霧乾燥した。2つの供給溶液を、Yピースフィティングおよび単一Masterflex蠕動ポンプに接続した供給ライン(プラチナ硬化シリコーンL/S 14管)を使用して同時にポンプ輸送し、これにより噴霧化直前に供給溶液を合わせた。標準Buchiサイクロンおよび回収ポットを、製品回収のために設置した。
【0229】
【0230】
次いで、両バッチを25℃に設定したEdwards Super Modulyo凍結乾燥機を使用して24時間真空乾燥した。
【0231】
粒子径分布測定を、次いで、R3レンズ(0.5~175.0μm範囲)およびASPIROS分散ユニットを備えたSympatec HELOS粒子径アナライザーを使用して、両バッチで行った。分散を3.00バール圧の圧縮空気および60バールの低気圧を使用して達成した。測定をトリプリケートで行った。
【0232】
得られた粒子サイズ分布測定値は次のとおりであった。
VMD=体積平均直径
【0233】
実施例2:亜硝酸塩およびプロトン源の別々の噴霧乾燥と続く固体組成物を製造するための混合
1.5M亜硝酸ナトリウム溶液を、脱イオン水に必要な亜硝酸ナトリウム塊を溶解して、産生した。
【0234】
pH5.6に調節した1Mクエン酸溶液を、脱イオン水に必要なクエン酸塊を溶解し、10M水酸化ナトリウム水溶液を使用してpHを5.6に調節することにより、製造した。溶液のpHを、Mettler Toledo Seven Compact pHメーターを使用して測定した。
【0235】
これらの供給溶液を次の条件下、Buchi B290噴霧乾燥機を使用して、別々に噴霧乾燥した。
【表1】
【0236】
次いで、全パッチを25℃に設定したEdwards Super Modulyo凍結乾燥機を使用して24時間真空乾燥した。
【0237】
次いで、R3レンズ(0.5~175.0μm範囲)およびASPIROS分散ユニットを備えたSympatec HELOS粒子径アナライザーを使用して、3バッチの粒子径分布測定を実施した。分散を3.00バール圧の圧縮空気および60バールの気圧低下を使用して達成した。測定をトリプリケートで行った。
【表2】
【0238】
次いで、噴霧乾燥された亜硝酸塩固体(成分2A)およびpH5.6の噴霧乾燥されたクエン酸固体(成分2C)を、Turbula T2Fミキサーを使用して、46rpmで20分間9:1w/w クエン酸固体:亜硝酸塩固体比で混合して、実施例2の粉末組成物を得た。
【0239】
実施例3:固体粉末組成物を産生するためのプロトン源固体と一緒の亜硝酸塩固体の微粉化
亜硝酸ナトリウム、クエン酸およびクエン酸三ナトリウムを、次の重量比で一緒に合わせた:それぞれ10.79%、14.74%および74.47%。混合物を、Turbula T2Fミキサーを使用して、47rpmで10分間混合した。
【0240】
混合物をベンチュリ圧力8バールおよび粉砕圧力2バールのAtritor M3流体エネルギーミルを使用して微粉化した。混合物を約2g/分の目標供給速度でホッパーに直接供給した。産生された粉末(実施例3)を、低湿度(20%RH)下に一個のコレクション・ジャーに集めた。
【0241】
次いで、粒子径分布測定を、R3レンズ(0.5~175.0μm範囲)およびASPIROS分散ユニットを備えたSympatec HELOS粒子径アナライザーを使用して、実施した。分散を3.00バール圧の圧縮空気および60バールの低気圧を使用して達成した。測定をトリプリケートで行った。
【0242】
得られた粒子サイズ分布測定値は次のとおりであった。
【表3】
VMD=体積平均直径
【0243】
参考例4:亜硝酸塩およびプロトン源の個々の微粉化と続く固体組成物を製造するための混合
ベンチュリ圧力8バールおよび粉砕圧力2バールのAtritor M3流体エネルギーミルを使用して、亜硝酸ナトリウムを微粉化した。亜硝酸ナトリウムを約2g/分の目標供給速度でホッパーに直接供給した。産生された粉末(成分4A)を、低湿度(20%RH)下に一個のコレクション・ジャーに集めた。
【0244】
クエン酸およびクエン酸三ナトリウムを、それぞれ16.51%および83.49%の重量比で合わせた。混合物を、Turbula T2Fミキサーを使用して、47rpmで10分間混合した。
【0245】
混合物をベンチュリ圧力8バールおよび粉砕圧力2バールのAtritor M3流体エネルギーミルを使用して微粉化した。混合物を約2g/分の目標供給速度でホッパーに直接供給した。産生された粉末(成分4B)を、低湿度(20%RH)下に一個のコレクション・ジャーに集めた。
【0246】
微粉化亜硝酸塩固体(成分4A)および微粉化クエン酸固体(成分4B)を9:1w/wクエン酸固体:亜硝酸塩固体の比でTurbula T2Fミキサーで46rpmで20分間混合して、参考例4の粉末組成物を得た。
【0247】
NOx発生
実施例1A、2、3および4のものを、ハンクス平衡塩溶液およびpH指示薬(フェノールレッド)含有アガロースを含むペトリ皿(9.8cm直径)の上30cmにリグで支持されたAPTAR Unidose鼻腔用スプレー(https://www.aptar.com/products/pharmaceutical/uds/)に入れた。
図1は、粒子落下位置による局所的pH修飾を示す粉体沈着パターンを示す。
【0248】
適用直後、プレートを密閉チャンバーに移し、窒素酸化物(NOx)を15分間にわたりSingle Ion Flow Tube Mass Spectrometry(SIFT-MS)により測定した。全ての粉末は、製造方法に関わらず、一酸化窒素を産生した。しかしながら、15分間にわたり4種の粉末間で発生されるNOxの総量に差異が見られた。
【0249】
アガロースを中性乃至わずかにアルカリpHに緩衝化し、これは、反応を阻害するが、粒子は短時間でこの緩衝作用を克服でき、局所領域で緩衝化に拮抗することは留意すべきである。下表および
図2は、実施例1A、2、3および4の累積的NO産生を示す。累積的NO/nmol/亜硝酸塩mgは粉末中の亜硝酸塩%の実験結果を正規化する。
【表4】
被覆固体粉末組成物
【0250】
実施例5:疎水性物質DPPCまたはメソ多孔質シリカで被覆した粒子
実施例1Bのものをメソ多孔質シリカと1:1w/wの比でTurbula T2Fミキサーを使用して46rpmで20分間混合して、実施例5Aの粉末組成物を得た。
【0251】
実施例1BのものをDPPCと1:1w/wの比でTurbula T2Fミキサーを使用して46rpmで20分間混合して、実施例5Bの粉末組成物を得た。
【0252】
実施例3のものをメソ多孔質シリカと1:1w/wの比でTurbula T2Fミキサーを使用して46rpmで20分間混合して、実施例5Cの粉末組成物を得た。
【0253】
実施例3のものをDPPCと1:1w/wの比でTurbula T2Fミキサーを使用して46rpmで20分間混合して、実施例5Dの粉末組成物を形成した。
【0254】
実施例6:PLGAで被覆した粒子
PLGA RG 502 H溶液を1.5gのPLGAを約30mLのDCMに溶解して、無色透明溶液を形成することにより調製した。1.5gの施例1Bのものを撹拌しながらこの溶液に添加して、外見上均一な白色懸濁液として1:1w/w比供給懸濁液6Aを産生した。
【0255】
同様に、別々のPLGA RG 502 H溶液を1.5gのPLGAを約30mLのDCMに溶解して、無色透明溶液を形成することにより調製した。1.5gの実施例3のものを撹拌しながらこの溶液に添加して、見た目上均一な白色懸濁液として、1:1w/w比供給溶液6Bを形成した。
【0256】
供給懸濁液を、上に詳述する方法により、Buchi B290噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥した。噴霧乾燥パラメータを下に要約する。
【表5】
【0257】
低湿度環境(28%RH)でサンプルバイアルを個々の計量ボートに水平に維持した。蓋を外し、開口部を孔が空いたホイルで覆った(針を使用して穿刺)。サンプルを25℃に設定したEdwards Super Modulyo凍結乾燥機に移し、24時間真空乾燥した(観察された最高真空圧は約0.1mbarであった)。真空乾燥後、サンプルを低湿度(約24%RH)環境に移し、窒素で重層した。次いでバイアルをパラフィンで密封し、乾燥剤と共にホイルのポーチに密閉して、2~8℃で保管した。
【0258】
次いで、粒子径分布測定を、R3レンズ(0.5~175.0μm範囲)およびASPIROS分散ユニットを備えたSympatec HELOS粒子径アナライザーを使用して、実施した。分散を3.00バール圧の圧縮空気および60バールの低気圧を使用して達成した。測定をトリプリケートで行った。
【0259】
得られた粒子サイズ分布測定値は次のとおりであった。
【表6】
VMD=体積平均直径
【0260】
実施例7:被覆された粒子のNOx発生
一定量の粉末サンプル(30mg)を60mmペトリ皿に乗せた。セルロース濾紙(50mm直径)をサンプルの上に軽度の圧で乗せた。リン酸ナトリウム溶液(10mM、250μl)をセルロース濾紙上に加えた。サンプルを直ぐに650mlチャンバーに入れ、密閉し、次いで、30分間650ml/分でチャンバーに湿潤空気を通した。アウトフィードからの気流をSingle Ion Flow Tube Mass Spectrometry(SIFT-MS)で分析した。
【表7】
【0261】
固体粉末組成物の生物学的評価
実施例8:シュードモナス・アエルギノーザに対する4種の製剤の有効性の評価
ニュートリエント寒天(NA、AcuMediaから入手可能)を含むペトリ皿を調製し、固化させた。シュードモナス・アエルギノーザ(ATCC 9027)接種材料をリン酸緩衝化食塩水(PBS、Sigma-Aldrich)中に調製し、最終濃度1×105CFU mL-1まで連続希釈した。100mLの接種材料をNAプレートにピペット移送し、広げ、室温で15分間乾燥させた。接種した寒天プレートから蓋を外し、開けたプレートをAptar Unidose鼻腔用スプレー内に入れた。
【0262】
実施例1A、実施例3、参考例4または実施例2粉末のいずれかを含むAptar送達デバイスをAptar鼻腔用スプレーデバイスに接続し、粉末を寒天プレートに噴霧(約50mg量)した。下表は各製剤で使用した実施例を示す。
【表8】
【0263】
5秒後、寒天プレートの蓋を戻し、寒天プレートを16時間、37℃±2℃でインキュベートした。インキュベーション後、プレートの写真を撮った。全プレートで、3個の生検パンチを寒天プレート中心の2x2cm領域から採った。PBSで示された滅菌スワブを使用して各政権から細菌を除去し、すべての細胞を10mL PBSに懸濁し、その後5分間音波処理し、連続希釈し、NA培地に播種した。
【0264】
噴霧粉末に暴露されなかった陰性対照および1mL漂白剤を添加している陽性対照プレートも同時に試験した。全試験を5回実施した。
【0265】
各試験品について、無作為に3複製を選択し、製造業者の指示に従いDN easy Blood & tissue Kit(Qiagen)を使用して、生検あたり400μLからDNAを抽出した。サンプルを最終体積100μLでAE緩衝液に溶出した。
【0266】
各抽出物について、製造業者の指示に従いQuantiNova Pathogen and IC kit(Qiagen)を使用して、qPCRをトリプリケートで実施した。個々の反応チューブは、各プライマーについて最終濃度16μMおよび5μM標識プローブを含んだ。
【0267】
サイクル条件は次のとおりであった:50℃で10分間、95℃で2分間、35サイクルの95℃で5秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間。各アッセイランを陽性(シュードモナス・アエルギノーザ)および陰性(RNase不含水)対照で検証した。データをQ-Rexソフトウェア(Qiagen)を使用して分析して、予め決定した閾値からCq値を得た。各サンプルについて、平均Cq値を1×102~1×108CFU mL-1の確立された範囲の標準曲線と比較し、Log10CFU mL-1で最終サンプル濃度を計算した。
【0268】
表1:未処理陰性対照と比較した、製剤1、2、3、4および漂白剤で処理後、1×10
5CFU mL
-1で播種したニュートリエント寒天の中心から採った3個の生検パンチのシュードモナス・アエルギノーザの平均回収および減少(N=5)。
【表9】
SD=標準偏差、CFU=コロニー形成単位、N/A=該当無し、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001。
【0269】
陰性対照プレートから採った生検で平均7.44±0.17 Log10CFU mL-1のシュードモナス・アエルギノーザ回収が観察された。製剤2および3が取った生検で3.52±3.12および1.36±2.13 Log10CFU mL-1の平均シュードモナス・アエルギノーザ回収率が観察された。製剤1および4または陽性対照プレートから採った生検から生存可能シュードモナス・アエルギノーザは回収されなかった。
【0270】
表2:未処理陰性対照と比較した、製剤1、2、3、4および漂白剤で処理後の1×10
5CFU mL
-1で播種したニュートリエント寒天から採った生検パンチのシュードモナス・アエルギノーザの分子定量化
【表10】
SD=標準偏差、CFU=コロニー形成単位。
#=定量化は検出限界以下であった。
~=陽性対照サンプル定量化をN=1に対して実施し、故に、標準偏差は計算しなかった。N/A=該当無し、**=p<0.01、***=p<0.001。
【0271】
製剤1および製剤4で処理後、1×105CFU mL-1接種材料を播種したニュートリエント寒天プレートから採った生検で生存可能シュードモナス・アエルギノーザの回収の有意な減少が観察された。粉末を、生存可能シュードモナス・アエルギノーザが回収されなかったため、未処理陰性対照と比較した。分子定量化はコロニーカウントからの回収を反映する。
【0272】
実施例9:球状体ベースの細胞血管形成アッセイにおけるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の発芽に対する粉末組成物の影響。
【0273】
実施例1Bおよび6Aの10倍の濃度の保存溶液/懸濁液を、規定培地(サプリメントおよびFCSなし)中、ボルテックス処理およびピペッティングにより調製した。その後、片対数希釈シリーズを同じ培地で調製した。
【表11】
【0274】
内皮細胞
細胞:HUVEC、初代ヒト臍帯静脈内皮細胞(PromoCell, Heidelberg, Germany)、継代3~4。
形態学:付着、単層として丸石様増殖
培地:内皮細胞増殖および基底培地(ECGM/ECBM, PromoCell)
継代培養:分割1:3;3~5日毎、約1×104細胞/cm2で播種して出す
インキュベーション:37℃で5%CO2
倍加時間:24~48時間
保存:約1×106細胞/アンプルで70%培地、20%FCS、10%DMSOと凍結
起源:ヒト臍帯静脈、プールしたドナー
【0275】
試験方法
実験を、本来の公開されたプロトコールを修飾して実施した(Korff and Augustin: J Cell Sci 112: 3249-58, 1999)。簡潔には、プラスチック皿上の懸滴中400個のHUVECをピペッティングして、一夜、球状体凝集させることにより記載(Korff and Augustin: J Cell Biol 143: 1341-52, 1998)のとおり球体を調製した。次いで、50個のHUVEC球状体を0.9mlのコラーゲンゲルに播種し、24ウェルプレートの個々のウェルにピペット輸送して、重合させた。プレインキュベートした試験サンプルを、30分後に、100μlの10倍濃度作業溶液を重合化ゲルの上部にピペット輸送することにより添加した(最終アッセイ濃度表1参照)。プレートを37℃で24時間インキュベートし、4%PFA(Roth, Karlsruhe, Germany)の添加により固定した。
【0276】
定量化
試験サンプルで処理したHUVEC球状体の発芽強度を、球状体あたりの累積的な芽の長さ(CSL)を決定する画像解析系により定量した。一球状体の写真を倒置顕微鏡およびデジタル画像ソフトウェアNIS-Elements BR 3.0(Nikon)を使用して採った。その後、旧状態の写真をWimasis社のホームページにアップロードして、画像解析した。各球状体の累積的芽の長さを、画像分析ツールWimSproutを使用して、決定した。10個の無作為に選択した球状体の累積的芽の長さの平均を個々のデータ点から分析した。各トリプリケートの平均およびSD値を基底対照%に変換した。
【0277】
結果
図3は実施例1Bおよび6Aの基底対照に対するCSLを示す。実施例1B(コーティングがない噴霧乾燥粒子)の効果は基底対照と比較して小さい。対照的に、実施例6AのPLGA被覆粒子は、基底対照と比較して、有意な用量依存的効果を示す。これは、被覆された粒子が、実質的に中性環境にあるにも関わらず、亜硝酸塩の酸性化が可能な局所環境を提供することを示す。
【0278】
実施例10:噴霧乾燥粉末のSEM/EDX試験
SEM/EDXを使用して、実施例1の方法により製造した粉末の最終製剤における、種々の成分の微小構造および寄与を評価した。
【0279】
実験
噴霧乾燥された粉末を冷凍庫に保管し、その後サンプリングした。SEM/EDX試験の最初の調製は、SEM試料台上の炭素付着性ディスクへの粉末の散布を含む。その後、より明瞭な元素マッピング適用のために、類似するアプローチであるが、粉末の穏やかな圧縮を用いた。
【0280】
両者とも、FEI Quanta FEG 250 environmental SEMと関連する元素分析のためのQuantax 200微量分析系を使用して、調製した切片を非被覆および低真空モードで、試験した。
【0281】
結果
噴霧乾燥された粉末を、主に直径がサブミクロンから約6ミクロンまたは7ミクロンである、観察される別個の球体であることがSEM画像で示された。これらの画像を
図4に示す。
【0282】
またEDX分析は炭素、酸素、ナトリウムおよび窒素を示した。窒素の存在は亜硝酸塩成分の指標であり、炭素の存在はクエン酸の存在の指標である。EDX分析を
図5に示す。
【0283】
図6の画像は、噴霧乾燥製剤についての2000倍の顕微鏡倍率での反射電子像(BSE)に対する窒素(緑色)および炭素に対する窒素(青色)のEDXマップを示す。付随するBSE画像も、粒子特性を同定するために包含させる。この増加した倍率で、この噴霧乾燥製剤の均一性は明白であり、個々の粒子は炭素および窒素両方からの寄与を示すとみられる。
【国際調査報告】