(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】物質の樹皮下注入装置
(51)【国際特許分類】
A01G 7/06 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A01G7/06 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537928
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2022086890
(87)【国際公開番号】W WO2023118071
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524233768
【氏名又は名称】セウテウヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ストゥーペラート ジャン
(72)【発明者】
【氏名】レニエ アデリン
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022EB03
(57)【要約】
本発明は、植物に物質を樹皮下注入する装置に関する。該装置は、注入器ヘッド及び打撃機構(10)を含み、注入器ヘッドは、(i)針ホルダー(4)及び(iii)ガイド(3)を含み、針ホルダー(4)は、装置の縦軸を規定する略直線状の(ii)針(5)が内部に保持され、前記針(5)の中央部には、前記縦軸(A)に沿ってチャンネルが穿設され、該チャンネルは、植物に入り込む先端の代わりに該先端に近い前記針(5)の側にある少なくとも1つの孔に通じ、ガイド(3)は、キャビティを有し、針ホルダー(4)及び針(5)が装置(1)の縦軸(A)に沿ってキャビティを移動可能であり、前記キャビティはまた、針(5)が植物の樹皮に挿入されるように針(5)の通過を許可する開口を有し、打撃機構(10)は、針(5)の植物の樹皮の下への挿入を容易にするように、10ジュール未満の力で針ホルダー(4)に衝撃可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは植物に物質を樹皮下注入する装置である注入装置(1)であって、
本体(2)と、
前記装置の縦軸(A)を規定する略直線状の針(5)が内部に保持され、前記針(5)の中央部には、植物に入り込む先端の代わりに前記針(5)の側壁にある少なくとも1つの孔を通過して開口するチャンネルが穿設される、針ホルダー(4)と、前記針ホルダー(4)及び前記針(5)が前記装置(1)の前記縦軸(A)に沿って移動可能なキャビティを有し、前記キャビティが前記針(5)の通過及び前記針(5)の植物の樹皮への挿入を許可する開口を有するガイド(3)と、を含む注入器ヘッドと、
タンク(8)に貯蔵された物質を加圧し、該物質を前記針(5)によりチャンネルを経由して植物に注入することを許可するように、前記タンク(8)に作用可能である第1アクチュエータ(9)と、
前記装置の前記縦軸に配置可能であり、前記針(5)に近接して位置し、好ましくは、前記針(5)の通過を許可するオリフィスを有する、前記装置(1)を植物に支持する支持具(6)と、
前記針(5)の植物への挿入後の引き抜きを許可するように、前記支持具(6)に作用可能である第2アクチュエータ(7)と、を含む注入装置(1)において、
前記支持具(6)はまた、前記針(5)の前記先端の保護スリープとして機能し、
前記第2アクチュエータ(7)はまた、前記針(5)が植物に挿入される時に前記支持具(6)を後退させることが可能であり、
前記注入装置(1)は、前記針(5)の植物への挿入を許可するように、10ジュール未満、好ましくは1.0ジュールより大きい力で前記針ホルダー(4)を打撃可能な打撃機構(10)を更に含む、ことを特徴とする注入装置(1)。
【請求項2】
前記打撃機構(10)は、電気機械システム又は電空システムである、ことを特徴とする請求項1に記載の注入装置(1)。
【請求項3】
前記針ホルダー(4)及び前記針(5)は、前記装置の前記本体(2)と一体であり、前記本体(2)との間に、前記装置(1)の前記縦軸(A)に沿って2~15mmの隙間を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の注入装置(1)。
【請求項4】
前記支持具(6)は、植物の樹皮に接触可能な支持ジャッキ(15)を含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の注入装置(1)。
【請求項5】
前記支持具(6)から植物の樹皮へ加えられた作用力を測定可能な第1力センサ(16)と、
i)起動値に対応する最小力が検出されると、前記支持具(6)を後退させ、前記針(5)の植物の樹皮への挿入を許可するように前記第2アクチュエータ(7)の起動を可能にし、
ii)前記作用力が打撃値と呼ばれる閾値未満になると、前記打撃機構(10)の起動を可能にし、
iii)前記作用力が限界値未満になると、前記第2アクチュエータ(7)の停止を可能にする少なくとも1つのマイクロコントローラと、を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の注入装置(1)。
【請求項6】
前記針(5)の植物の樹皮への挿入深さを測定可能であり、前記第2アクチュエータ(7)に関連付けられた第1位置センサと、前記針(5)が挿入される植物の目標深さに到達すると、前記第2アクチュエータ(7)及び前記打撃機構(10)の停止、好ましくは、前記タンク(8)に貯蔵された物質を加圧するように前記タンク(8)に作用可能な前記第1アクチュエータ(9)の起動、及び前記針(5)による物質の植物への注入を許可する少なくとも1つのマイクロコントローラと、を更に含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の注入装置(1)。
【請求項7】
前記打撃機構(10)は、1.2~8ジュール、好ましくは、1.2~4ジュールの力を有する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の注入装置(1)。
【請求項8】
前記ガイド(3)は、前記本体(2)に対して、前記装置の前記縦軸(A)に垂直である横軸(B)の回りに回動可能に取り付けられる、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の注入装置(1)。
【請求項9】
前記針ホルダーは、フレームを含み、前記フレームは、前記針ホルダー(4)と一体である部分であるか、又は前記針ホルダー(4)に固定された個別の部分である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の注入装置(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の装置(1)を植物の樹皮に当てるステップと、
前記針(5)の植物の樹皮の下への挿入及び後続の物質の樹皮下注入を許可するように前記装置(1)を起動するステップと、
前記装置(1)の前記第2アクチュエータ(7)を起動することにより、前記針(5)を植物から引き抜くステップと、を含む、物質の樹皮下注入により植物を治療する方法。
【請求項11】
植物の樹皮の下への物質の注入を許可する請求項1~9のいずれか一項に記載の装置(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔優先権の主張〕
この特許出願は、2022年12月22日に出願されたフランス出願特許FR2114202の優先権を主張するものであり、その内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、注入(注射。injection)の分野に関し、より具体的には、植物に物質を樹皮下注入する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
殺虫剤、抗生物質、殺菌剤、栄養溶液又は成長調整剤などの物質を植物に投与することは、植物治療の分野でよく知られており、特に、昆虫、細菌、真菌感染症、栄養素不足又は成長問題に対応する。
【0004】
このような投与は、物質を植物に直接注入し、つまり、樹皮の下に(即ち、樹皮下に)、できるだけ植物内部組織に近く、木部(xylem)とも呼ばれ、繊維及び樹液を輸送する維管束系(vascular system)を含む部位に注入することにより行うことができる。このようにして、この維管束系は、物質を幹から葉及び果実までの標的器官に輸送することを確保する(ensure)。
【0005】
このような注入による応用は、特に、植物の樹皮の下に物質を注入する装置を開示する国際出願WO/2020/208189から知られており、該装置は、本体と、針(注射針。needle)と、タンクと、針の挿入及び/又は物質の注入を可能にするアクチュエータと、該装置から植物への作用力(applied force)、針の樹皮への挿入力(insertion force)、及び/又は、タンク内に存在する物質量の加圧力(pressurizing force)を測定する力センサと、センサによって測定された力に応じてアクチュエータを動作させ変調するマイクロコントローラと、を含む。
【0006】
現在、国際出願WO/2020/208189A1に記載された装置では、物質を、樹木、特に硬い木部を有する樹木に注入することが困難であることが明らかになった。また、上記装置の操作は、装置の重量及び挿入を可能にするのに必要な作用力により、ユーザにとって困難であることが証明されていることもある。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、ストライカー(striker)(少なくとも1.0ジュールより僅かに大きいエネルギーを提供する限り)を用いることにより、どのような種類の樹木でも針を容易に挿入するとともに、装置がアクチュエータを用いて針を挿入する場合に大きな力を加える必要性を取り除き、樹木の樹皮又は形成層への損傷を防止することを可能にすることを証明した。このようなエネルギー必要量は、商業用ストライカーが電気機械(electromechanical)ストライカーに約10ジュールのエネルギーを提供し、電空(electropneumatic)ストライカーに最大30ジュールのエネルギーを提供することから考えると、比較的低く、予想外のものである。
【0008】
また、本発明者らは、新規な装置を開発しており、該装置では、注入器ヘッド(injector head)は、装置の本体と一体であり、装置の本体との間に、針の樹皮に挿入する軸に対応する縦軸(長手方向軸。longitudinal axis)に沿って1cm程度の隙間を有する。したがって、装置は、特にコンパクトであり、使用上、ユーザが操作しやすくなるとともに、非常に有効であり、信頼性があることが証明される。
【0009】
このため、本発明は、植物の最も硬い樹皮に物質を注入することができる、よりコンパクトで、より堅牢で、使用しやすい、注入装置に関する。
【0010】
このために、本発明は、注入装置に関し、好ましくは植物に物質を樹皮下注入する装置に関し、該装置は、
本体と、
装置の縦軸を規定する略直線状の針が内部に保持され、針の中央部には、植物に入り込む先端の代わりに針の側壁(即ち、後部)にある少なくとも1つの孔を通過して開口するチャンネルが穿設される(pierced)、針ホルダーと、針ホルダー及び針が装置の縦軸に沿って移動可能なキャビティ(cavity)を有し、キャビティが針の通過及び針の植物の樹皮への挿入を許可する開口を有するガイドと、を含む注入器ヘッドと、
注入される物質を収容し、針ホルダーを介して針のチャンネルに接続されたタンクと、
タンクに貯蔵された物質を加圧し、該物質を前記針(5)によりチャンネルを経由して植物に注入することを許可するように、タンクに作用可能である第1アクチュエータと、
装置の縦軸に配置可能であり、針に近接して位置し、好ましくは、針の通過を許可するオリフィスを有する、装置を植物に支持するツールと、
針の植物への挿入後の引き抜きを許可するように、支持具(support tool)に作用可能である第2アクチュエータと、を含む注入装置に関する。
【0011】
本発明に係る注入装置は、
1)支持具はまた、針の先端の保護スリープとして機能し、
2)第2アクチュエータはまた、針が植物に挿入される時に支持具を後退させることが可能であり、
3)注入装置(1)はまた、針の植物への挿入を許可するように、10ジュール未満の力で針ホルダーに衝撃可能な打撃機構を更に含む、ことを特徴とする。
【0012】
このような微小な打撃力は、最も硬い植物の木部に衝突することにより針を挿入するのに十分であり、同時に、植物の完全性を維持することができる。
【0013】
好ましい実施形態において、針ホルダー及び針は、装置の本体と一体であり、本体との間に、装置の縦軸に沿って2~15mm、好ましくは3~10mm、より好ましくは4~8mm、一般的には5mm程度の隙間を有する。
【0014】
本発明者らは、実際に、低衝撃力と関連して針ホルダー及び針を縦軸に沿って数ミリメートルだけ往復運動することは、上記針の衝突により上記針を植物の樹皮に良好に挿入することを確保するのに十分であり、そして、装置が非常にコンパクトで軽量であり、ユーザにとって評価できることを確保することを確定(established)している。
【0015】
針/針ホルダーアセンブリと装置の本体との接続は、ガイドによって確保される。この場合、このガイドはまた、既定の隙間間隔に応じて本体に対する注入ヘッドの運動を制限するストッパを構成する。
【0016】
また、本発明は、物質の樹皮下注入により植物を治療する方法に関し、該方法は、
上記装置を植物の樹皮に当てるステップと、
針の植物の木部内の挿入を許可して(allow)から、針の物質の樹皮下注入を許可するように後者を起動するステップと、
前記装置の第2アクチュエータを起動することにより、針を植物の木部から引き抜くステップと、を含む。
【0017】
最後に、本発明は、植物の樹皮の下への物質の注入を許可することを目的とする上記装置の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】装置起動前の注入器ヘッドの側視断面図である。
【
図6】挿入ステップ開始時の注入器ヘッドの側視断面図である。
【
図7】挿入ステップ中の注入器ヘッドの側視断面図である。
【
図8】挿入ステップ終了時の注入器ヘッドの側視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
注入される物質は、いくつかの種類あり、殺生物剤(例えば、殺虫剤、抗生物質、抗真菌剤及び/又は抗寄生虫剤)、栄養素又は成長調整剤又は植物防御刺激剤のファミリーに属する。ここでは、本発明に係る装置の目的により、注入される物質は、植物衛生物質となる。
【0020】
打撃機構としては、好ましくは、1.0ジュールより大きい力、好ましくは、1.2~8ジュールの力、特に好ましくは、1.2~4ジュールの力を有する。
【0021】
このような打撃機構は、電気機械システム又は電空システムであってもよい。
【0022】
また、上記打撃機構は、直接衝突(percussion)システム又は間接衝突システムであってもよい。
【0023】
例として、打撃機構は、回転ストライカーシステムであってもよい。しかしながら、このようなシステムでは、針及び針ホルダーは、縦軸方向に回転しない。実際には、欧州特許EP 3332630 B1によって確定されているように、植物の繊維の方向に対する針の針先の向きは、注入効率、特に、針の挿入時の植物への損傷の制限に重要である。
【0024】
一般的には、この打撃機構は、ユーザが操作可能なトリガーなどの起動手段に左右される。この起動手段は、挿入の開始を許可し、デッドマン型の安全を提供することもできる。この場合、永久的に起動しない限り、装置を停止させる。
【0025】
支持具について、装置の縦軸方向にガイド手段に関連することが有利である。このガイド手段は、装置の縦軸に沿った支持具のメンテナンス及びセンタリングを確保する。
【0026】
好ましくは、支持具は、植物の樹皮に接触可能な支持先端部を含む。この支持先端部は、樹皮が滑らかである場合(例えば、スズカケノキ)に平らな形状となり、樹皮がひびの入った場合(例えば、マツ)に3次元形状、特に円錐形状となる。このような支持先端部は、任意の適切な材料、特にプラスチック、特にナイロンなどのポリアミドで作られてもよい。実際には、ナイロンは、植物の樹皮との接触時に、摩耗しないか又は植物の樹皮との摩擦により僅かに摩耗するような抵抗材料である。
【0027】
好ましい実施形態では、注入装置は、支持具から植物の樹皮への作用力を測定可能な第1力センサと、以下の1)~2)を可能にする少なくとも1つのマイクロコントローラと、を更に含む。
【0028】
1)起動値(activation value)に対応する最小力が検出されると、支持具を後退させ、針の植物の樹皮への挿入を許可するように第2アクチュエータを起動する。有利には、この起動値は、少なくとも2daNである。好ましくは、第2アクチュエータを起動することにより、少なくとも10mm/s、一般的には20mm/s程度の速度で支持具を後退させることができる。
【0029】
2)支持力が打撃値(strike value)と呼ばれる閾値未満になると、打撃機構を起動する。このような支持力の減少は、針の樹木への挿入と同時に関連しない第2アクチュエータの起動に起因する。実際には、この変位により、支持具と樹皮の表面との間に距離が発生し、この距離により、針が屈曲する(ねじれる。twist)リスクを増加させる。有利には、この衝撃値(impact value)は、250N未満であり、好ましくは、150Nである。有利には、マイクロコントローラは、第2アクチュエータの速度を低減することにより、支持具の後退速度を低減する。一般的には、支持具の後退速度を、少なくとも2倍、好ましくは4倍低減する。
【0030】
打撃機構自体としては、好ましくは、1.2~4ジュール、より好ましくは、1.2~2ジュールの力を有する。
【0031】
有利には、マイクロコントローラは、
3)支持力が限界値未満になると、第2アクチュエータの停止を可能にする。このような停止により、針の損傷リスクを制限することに役立つ。好ましくは、この限界値は、50N未満である。有利には、マイクロコントローラは、打撃機構の力を増加させる。一般的には、打撃機構の力を、50%以上、好ましくは100%以上増加させる。
【0032】
打撃機構としては、好ましくは、2~8ジュール、特に好ましくは、2~4ジュールの力を有する。
【0033】
また有利には、マイクロコントローラは、
4)押圧力が5秒を超えて、好ましくは、2秒を超えて限界値未満になると、打撃機構の停止を可能にする。
【0034】
この第1力センサとマイクロコントローラとの組み合わせにより、針の植物の木部への最適な挿入、ひいては装置の動作に必要な要素が構成される。
【0035】
好ましい実施形態では、注入装置は、針の植物の樹皮への挿入深さを測定可能であり、第2アクチュエータに関連付けられた第1位置センサを更に含む。
【0036】
有利には、マイクロコントローラは、この第1位置センサによって送信された情報に関して、
1)針が挿入する植物の目標深さに到達すると、第2アクチュエータ及び打撃機構の停止を許可する。有利には、マイクロコントローラは、そして、タンクに貯蔵された物質を加圧するようにタンクに作用可能な第1アクチュエータの起動、及び針による物質の植物への注入を許可する。
【0037】
例として、このような目標深さは、クリの木、クリの木又はマツなどの大きな樹木では45mm、リンゴの木などの果樹では38mm、或いは、桜の木などの細く硬い樹木では25mmである。
【0038】
有利には、マイクロコントローラは、作用力が5秒を超えて、好ましくは、2秒を超えて限界値未満になるので、打撃機構が停止された後、以下の2)~3)を許可する。
【0039】
2)針が挿入する植物の限界深さに到達すると、タンクに貯蔵された物質を加圧するようにタンクに作用可能な第1アクチュエータを起動して、針による物質の植物への注入を開始する。
【0040】
3)針が挿入する植物の限界深さに到達しないと、挿入手順が失敗したことをユーザに通知する。このような情報は、ライト指示器(indicator)及び/又は音指示器によって提供することができる。
【0041】
実際には、限界深さ以下であると、物質の注入圧力により樹皮が剥離するので、物質の注入により形成層の基部に損傷を与えるリスクがある。例えば、このような深さ限界は、クリの木、クリの木又はマツなどの大きな樹木では33mm、リンゴの木などの果樹では29mm、或いは、桜の木などの細く硬い樹木では18mmである。
【0042】
そして、マイクロコントローラは、第2アクチュエータを起動して、樹木の樹皮から針を引き抜くことにより、樹皮の別の箇所での新たな挿入/注入手順の開始を許可する。
【0043】
針自体について、直径は、1~3mm、好ましくは、1.5~2mmである。実際には、小さい直径は、注入時に針が植物の樹皮を通過することに伴う植物の損傷の治癒を促進する。
【0044】
上記針の長さは、2~20cm、好ましくは、2~10cm、より好ましくは、3~7cmである。上記針の形状としては、円筒形状であってもよい。
【0045】
植物を貫通する先端の代わりに針の側壁に存在する少なくとも1つの孔としては、この先端部から1cm未満、5mm未満、特に4mm未満、3mm未満離れて配置されてもよい。
【0046】
ここでは、針は、チャンネルからの多くの出口を形成し、物質の植物中の分散を許可するいくつかの先端孔を含んでもよい。
【0047】
針は、特に後述する支持具により適切な位置に理想的に保持され、植物の樹皮に衝突して挿入されるときに良好に抵抗する。
【0048】
針ホルダーでの針の配置及び交換を容易にするために、針ホルダーは、フレームを含む。不明瞭に(Indistinctly)、このフレームは、針ホルダーと一体である部分であってもよく(即ち、針ホルダーと共に一部分として形成する)、針ホルダーに固定された個別の部分であってもよい。後者の場合、針用フレームと針ホルダーとは、水密に(watertight manner)(必要に応じて、シールを追加して)かつ可逆的な固定(例えば、ねじ止め、軸受け、又は任意の形態の簡易脱着)により関連付けられる。
【0049】
フレームが針ホルダーと一体である部分を形成する場合、針は、針ホルダーと可逆的に(例えば、止めねじ、サークリップ、ねじ止めなど)関連付けられる。フレームが針ホルダーから分離可能である場合、針は、フレームと可逆的に又は不可逆的に(例えば、接合、溶接、半田付けなど)関連付けられてもよい。
【0050】
針とフレームは、5mm~35mm、特に15mm~25mm、より特に20mmの長さにわたって組み合わされる。
【0051】
ストッパとして機能するガイドに関して、一般的にはばねの形態をとる復帰手段に関連する。この復帰手段は、針ホルダーが打撃機構によって打撃されて装置の縦軸に沿って前進した後、針ホルダーを打撃機構に向けて戻して新たな衝突を受けることを許可する。ここでは、本発明者らは、このような復帰手段が必要ではないことと、針の挿入時の植物への作用力が針ホルダーを打撃機構に対して迅速に戻すのに十分であることとを示している。
【0052】
有利には、このストッパとして機能するガイドは、除去できる。
【0053】
好ましくは、このガイドは、本体に対して、装置の縦軸に垂直である横軸(transverse axis)の回りに回動可能に(pivotally)取り付けられる。このように、ユーザは、針及び/又は針ホルダーをより簡単かつ迅速に変換することができる。
【0054】
好ましくは、ガイドの回動はまた、注入される物質のタンクへのアクセスを許可する。そして、このタンクを補充したり、タンクが有利に移動可能に取り付けられた場合にタンクを交換したりすることができる。
【0055】
タンクについて、それは、針ホルダーに接続されるため、有利にホースの形態をとる導管を介して針及びそのチャンネルに接続される。
【0056】
タンクは、好ましくは、可動容器、特にシリンジの形態をとる。
【0057】
タンクに貯蔵された物質を加圧し、上記物質を針によりチャンネルを経由して植物に注入することを可能にするように、タンクに作用可能である第1アクチュエータについて、それは、理想的にジャッキ(jack)の形態をとる。
【0058】
好ましい実施形態では、注入装置は、タンクに貯蔵された物質の加圧力を測定可能な第2力センサと、以下の1)~2)を許可する少なくとも1つのマイクロコントローラと、を更に含む。
【0059】
1)第2力センサによって測定された力に応じて、第1アクチュエータによるタンク内の物質量の圧縮、ひいてはこの物質の植物への注入を調節する。
【0060】
2)加圧力が大きすぎると、第1アクチュエータを停止することにより注入を中断する。このような過剰な加圧力は、100daN以上、好ましくは200daN以上の力に対応する。このような過剰な加圧力は、例えば、植物の硬すぎる領域又は針の孔の閉塞に起因する場合がある。そして、大面積の回復不可能、とりわけ治療に許容できない損傷を引き起こす形成層の基部の分離により、木の幹、場合によって、タンク又は装置に損傷を与えるリスクがある。
【0061】
3)加圧力が小さすぎるため、第1アクチュエータを停止することにより注入を中断する。この小さすぎる加圧力は、5daN以下の力に対応する。このような弱すぎる加圧力は、例えば、植物への内部損傷に起因する場合がある。そして、無効注入(ineffective injection)を行い、とりわけ外部環境に衛生的な植物生産物を不必要に分散させるリスクがある。
【0062】
これら最後の2つの注入手順が中断した場合、マイクロコントローラは、中断をユーザに通知することができる。このような情報は、ライト指示器及び/又は音指示器によって提供することができる。そして、樹皮の別の箇所での新たな挿入/注入手順を開始するために、マイクロコントローラは、第2アクチュエータを起動して、樹木の木部から針を引き抜くことができる。
【0063】
本発明に係る装置はまた、第2位置センサを含んでもよく、該第2位置センサは、第1アクチュエータに関連付けられ、植物に導入された物質量をユーザ、潜在的に装置に通知することを可能にする。マイクロコントローラは、この第2位置センサによって提供された情報に基づいて、所望の物質量が植物に注入された後に注入段階を中断したり、上記いずれかの理由により注入が中断された場合に実際に導入された物質量を記録したりすることができる。
【0064】
これにより、例えば、ユーザによって指定された治療対象の植物に応じて、注入される物質量を調節することができる。
【0065】
装置は、セクター(sector)又はバッテリーに接続された形態をとる電源によって駆動される。
【0066】
装置は、装置の動作パラメータと、注入対象の植物に応じて使用されるパラメータとを記憶するメモリを任意に含んでもよい。
【0067】
理想的には、本発明に係る装置は、指示灯(LED)などの動作指示器(operating indicator)を含む。
【0068】
有利には、本発明に係る装置は、ユーザが装置を持ちやすいために、ハンドルなどの把持手段を含む。
【0069】
本発明に係る装置は、ユーザに対して装置の重量を軽減するために、ストラップなどの運搬手段を更に含んでもよい。
【0070】
装置は、有利には、制御画面、できるだけタッチスクリーンなどの視覚インタフェースを含み、ユーザは、該視覚インタフェースを介して制御パラメータ(打撃力、回転速度、力測定値、アクチュエータモータ強度など)を選択することができる。また、視覚インタフェースは、バッテリー残量、タンク内の物質量などをユーザに知らせる。また、視覚インタフェースは、装置の何らかの動作異常(例えば、過剰な力が検出されたこと、ホースの漏れなど)をユーザに警告する。
【0071】
装置はまた、落下したときに装置を保護する保護パッドなど、外装体を保護する手段を含む。
【0072】
装置は、データ転送用の通常のUSBタイプコネクタなどを含む。上記転送は、Wi-Fi(登録商標)又はブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)などの無線接続を介して実行されてもよい。
【0073】
上述した装置を用いた注入により植物を治療する方法に関しては、挿入ステップは、好ましくは、1.0ジュールより大きく、一般的には1.2~8ジュール、より好ましくは、1.2~4ジュールの打撃機構の力で実行される。
【0074】
最後に、上述した装置を用いて物質の樹皮下注入を許可することについて、打撃機構の力は、好ましくは、1.0ジュールより大きく、一般的には1.2~8ジュール、より好ましくは、1.2~4ジュールである。
【0075】
本発明は、添付の図面を参照しながら、非限定的な例示のみを目的として提供される以下の説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【0076】
図1において、注入装置1は、水平に保持され、目標物に向けられる。注入装置1の前部は、注入器ヘッドに対応し、装置の後部は、ユーザが装置を持ち、特に注入前に植物の樹皮に支持力を加えることを許可する。
【0077】
図1を参照すると、注入装置1は、本体2を含み、本体2は、シャーシ(chassis)又はフレームとも呼ばれ、上記装置の各種構成要素の支持体として機能する機械加工部品に対応する。上記本体は、できるだけ軽くなるように、様々な箇所に穿孔されてもよい。
【0078】
針ホルダー4/針5アセンブリをロック又は締結するために、注入装置1の前端は、注入器ヘッドのストッパ3に対応する容器には、フック付きラッチなどのロック/ロック解除システム13が取り付けられる。
【0079】
このストッパ3は、突出する円筒の形態であり、針ホルダー4の反対の形態のキャビティが機械加工される。また、上記円筒の中央部には、上記キャビティに連通し、針5が通過できる開口を構成する孔が機械加工される。
【0080】
針5は、注入装置1の縦軸Aを規定する。
【0081】
反対の形態では、ストッパ3が注入装置1の本体2に固定又は締結された場合、針ホルダー4の可能な構造を
図3に示す。この針ホルダーでは、針フレームは、針ホルダーと一体である部分であり、中空円筒の形態であり、例えば、長さが20mmであり、直径が5mmであり、針5のハウジングを構成する穴が機械加工されている。針5がフレームに配置されると、針5のチャンネルは、針ホルダー4内に機械加工され、ホース12を介して装置1のタンク8に接続された他のチャンネルに開口する。この他のチャンネルは、針5を固定する手段を更に含み、該手段は、針5に当接するねじの形態をとり、このねじは、ホース12内の物質が針5のチャンネルに向けて通過することを許可するように、その中央部に穿孔される。
【0082】
針ホルダー4の他の可能な構造を
図4に示す。この他の針ホルダー4では、針5は、常に、針5が(例えば、接着により)固定される穴が機械加工された中空円筒に対応して取り付けられる。ここでは、このフレームは、針ホルダー4の組立を許可するように、水密性Oリング接合部により相補的な形状で針ホルダー4の本体に収容される。針ホルダー5でのフレームのロックは、止雌ねじ(grub screw)によって固定される。針5/針ホルダー取付アセンブリが所定の位置に配置されると、針5のチャンネルは、針ホルダー4内に機械加工され、ホース12を介して装置1のタンク8に接続された他のチャンネルに開口する。
【0083】
また、注入器ヘッドのガイド3は、注入器装置1の本体2に対して、縦軸Aに垂直である横軸Bの回りに回動可能に取り付けられる。したがって、ユーザがガイド3のロックシステム13のロックを解除するとき、ガイド3は、重力によって横軸Bの周りに傾く。ガイド3と本体2との接触を検出しなくなり、注入装置1を固定する。
【0084】
そして、ユーザは、装置1の上部に位置する縦軸(A)に沿ったタンク8に物質を充填したり、このタンク8が取り外し可能である場合にそれをより容易に変換したりすることができる。
【0085】
ガイド3が装置1の所定の位置に再びロックされ、固定システムがロックされると、ホース12とタンク8とは、ガイド3内に機械加工された接続部によって、ガイド3の上部を介して接続され、該接続部は、タンク8の出口とホース12の入口との水密接続を許可する。
【0086】
図5から
図8に示すように、ユーザは、まず、支持具6、より具体的には、縦軸Aに配置された支持ジャッキ15を植物の樹皮に当てる。この支持ジャッキ15は、樹皮の種類に合わせた形状を有し、特に、樹皮が滑らかである場合に平らな形状を有する。また、この支持ジャッキ15には、針5の通過のための孔が機械加工されてもよい。支持具6は、植物の樹皮に対する支持具6の支持力を測定する力センサ16に関連付けられる。
【0087】
起動値に対応する最小力が第1力センサ16によって検出されると、マイクロコントローラは、支持具6を(20mm/sの速度で)後退させ、針5の植物の樹皮への挿入を可能にするように第2アクチュエータ7を起動する。
【0088】
そして、針5は、植物の樹皮に徐々に入り込む。第2アクチュエータ7が支持具6を後退させることに比べて、針5が植物に入り込むことが緩やかであると、第1力センサ16によって検出された作用力が小さくなる。
【0089】
検出された作用力が一般的には150Nの衝撃値と呼ばれる閾値を下回ったとき、マイクロコントローラは、装置1の縦軸Aに沿って針ホルダー4に衝撃する打撃機構10(上記機構の詳細は
図1に示さない)を起動し、針ホルダー4にガイド3内を往復運動させ、これは、針5を植物の樹皮に挿入することを許可する。
【0090】
この往復運動時に、作用力により、針ホルダー4を打撃機構10に向けて戻す。打撃機構10の打撃は、機械伝動装置又は空気伝動装置(mechanical or pneumatic transmission)によって行われる。ストライカーは、往復運動が運動学的に制御されるピストン又は圧縮空気によって推進される。
【0091】
したがって、この打撃機構10では、ストライカーは、ハウジング内で自由に移動するチゼル(chisel)を打撃し、そして、このチゼルは、縦軸A方向に針ホルダー4を打撃する。この機構は、間接衝突システムである。
【0092】
また、チゼルは、ハウジング内で自由に移動することなく、針ホルダー4に接触する。そして、チゼルに接触するストライカーによって生成された打撃エネルギーは、針ホルダー4に最適に伝達される。それは、より効率的な間接衝突システムである。
【0093】
打撃機構10が直接衝突システムである場合、ストライカーは、縦軸A方向に針ホルダー4に直接衝突する。針ホルダー4に接触するストライカーによって生成された打撃エネルギーは、より強力である。
【0094】
したがって、直接衝突システムは、間接衝突システムよりも効率的である。
【0095】
これらの衝突システムでは、チゼル又は針ホルダー4に接触するストライカーによって生成された打撃エネルギーは、針5の衝突により、針5の挿入時に植物の樹皮に伝達される。
【0096】
各種試験を行う時に、通常、1.2~2ジュールの打撃機構10の力が使用される。同時に、マイクロコントローラは、第2アクチュエータ7の速度(一般的には5mm/s)を低減することにより、支持具6の後退速度を低減し、針5の屈曲するリスクを制限する。
【0097】
作用力が再び衝撃値より大きくなると、マイクロコントローラは、打撃機構10を停止させ、第2アクチュエータ7を介して支持具6の後退速度を初期速度に戻す。特定の状況で、衝撃値を下回った後も、作用力は、打撃機構10の起動にもかかわらず、減少し続ける。それ以降、限界値(通常50N)が規定され、限界値を下回ると、マイクロコントローラは、第2アクチュエータ7を停止させるとともに、打撃機構10の力(通常2~4ジュール)を増加させる。
【0098】
この手順により、針5の挿入を改善することができ、作用力がこの限界値を超えると、該手順を停止させる。
【0099】
針5が植物の木部へ目標深さだけ挿入されると、マイクロコントローラは、物質の注入を開始することができる、目標深さは、第1位置センサによって識別される。
【0100】
このため、アクチュエータ9は、植物の木部に注入される物質の加圧力を測定する力センサ17の制御の下で、タンク8に作用する。そして、物質は、植物に注入される前に、タンク8からホース12に入って針ホルダー4を経て針5に送られる。
【0101】
必要な量の物質が注入されると、第1アクチュエータ9に関連付けられた第2位置センサによって決定されるように、アクチュエータ7は、支持具6に作用して、針5が植物の樹皮から完全に出るまで、支持具6を縦軸A方向に植物の樹皮に対して前進させる。
【0102】
この目的で、支持具6は、その下部には、縦軸Aに沿って、アクチュエータ7のロッドを収容するハウジングを含む。好ましくは、支持具6の下部にあるハウジングは、アクチュエータ7のロッドが支持具6に非永久磁気的に接続されるように磁化される。このような構成により、アクチュエータ7のロッドと支持具6との係合を、ツールを用いることなく容易に解除することができる。
【0103】
この引き抜きステップ(extraction step)の間に、ガイド手段14は、例えばスライドして、装置1の縦軸Aに沿って支持具6に同行する。したがって、それぞれが注入ヘッドの下部の両側に縦軸Aに沿って、縦軸Aに平行に配置された2つのスライドは、小石(pebbles)又はボールにより、注入装置1の本体2内に固定されたレールをスライドする。
【0104】
この同じ引き抜きステップの間に、アクチュエータ7のロッドを保護することを目的とする保護ベローズなどの保護手段を考えることができる。
【0105】
引き抜きが完了すると、支持ジャッキ15は、ユーザがスライドにある支持具6を取り外すことなく支持ジャッキ15を交換することができるように、支持具6から取り外すことができる。
【国際調査報告】