(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】フランジカルボン酸系化合物、フランジカルボン酸系化合物の製造方法、ポリエステル、およびポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 307/68 20060101AFI20241128BHJP
C08G 63/18 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07D307/68
C08G63/18 ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538066
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2022021247
(87)【国際公開番号】W WO2023128498
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0189995
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0177249
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ミ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,ダ キョン
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ジ ミン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ミ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ノ ウ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,チュン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク,キ ヒョン
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB04
4J029AB07
4J029AC01
4J029AD01
4J029AE01
4J029BA03
4J029CF19
4J029HA01
4J029HB01
4J029JB131
4J029JF321
4J029KC01
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE03
4J029KE06
(57)【要約】
ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物からヒドロキシルフルフラル化合物を製造する段階と、ヒドロキシルフルフラル化合物を不均一触媒の存在下で酸化反応させてフランジカルボン酸系化合物を製造する段階とを含む、フランジカルボン酸系化合物の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物からヒドロキシルフルフラル化合物を製造する段階と、
前記ヒドロキシルフルフラル化合物を不均一触媒の存在下で酸化反応させてフランジカルボン酸系化合物を製造する段階と
を含む、フランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物は、クロロメチルフルフラル(chloromethyl furfural、CMF)、2,5-ジホルミルフラン(2,5-diformylfuran、DFF)、5-アセトメチルフルフラル(5-acetoxymethylfurfural、AMF)、またはこれらの混合物を含み、
前記ヒドロキシルフルフラル化合物は、5-ヒドロキシメチルフルフラル(hydroxymethyl furfural、HMF)、5-ヒドロキシメチルフルフラルエステル、5-ヒドロキシメチルフルフラルエーテル、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシルフルフラル化合物を製造する段階は、前記ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物および溶媒を含む溶液を100rpm~500rpmで撹拌しながら、20℃~90℃で、1分~60分間転換反応させる、請求項1に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項4】
前記製造されたヒドロキシルフルフラル化合物に溶媒を添加した後、濾過してフミン(Humin)を除去する段階をさらに含む、請求項1に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項5】
前記酸化反応は、前記ヒドロキシルフルフラル化合物および溶媒を含む溶液を固体塩基および前記不均一触媒の存在下で酸化剤と接触させて行われる、請求項1に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項6】
前記不均一触媒は、Fe、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Au、Pt、これらの合金、またはこれらの混合物を含む活性金属、および前記活性金属を担持する担体を含む、請求項1に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項7】
前記固体塩基は、MgO、CaO、CaCO
3、ハイドロタルサイト(Hydrotalcite)、またはこれらの混合物を含む、請求項5に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒は、水、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、メタノール、t-ブチル次亜塩素酸塩、またはこれらの混合物を含む、請求項5に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項9】
前記酸化反応は、6bar~50barの圧力および80℃~200℃の温度で1時間~24時間行われる、請求項1に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項10】
前記酸化反応の生成物は、2,5-フランジカルボン酸(FDCA)および5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)を含み、
前記酸化反応の生成物を不均一還元触媒および溶媒の存在下で水素と接触させて、前記5-ホルミルフランカルボン酸を除去する精製段階をさらに含む、請求項1に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項11】
前記精製段階は、5bar~15barおよび100℃~200℃で1時間~10時間行われる、請求項10に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項12】
前記酸化反応の生成物から金属成分を除去する金属精製段階をさらに含む、請求項1に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項13】
前記金属成分は、Fe、Cr、Ni、Cu、Zn、Mo、Ti、Cd、Co、Mn、Na、Mg、K、Ca、Al、As、Sb、Pb、Sn、B、Si、またはこれらの混合物を含む、請求項12に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項14】
前記金属精製段階は、イオンフィルタを用いて行われる、請求項12に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のフランジカルボン酸系化合物の製造方法により製造され、
金属成分を全体重量に対して200ppm未満で含む、
フランジカルボン酸系化合物。
【請求項16】
請求項15に記載のフランジカルボン酸系化合物とジオール系化合物とをエステル化反応させた後、重合反応させてポリエステルを製造する段階を含む、ポリエステルの製造方法。
【請求項17】
下記の化学式7で表される繰り返し単位を含み、
金属成分を全体重量に対して200ppm未満で含み、
CIE1976 L*a*b*表色系によるb*値が14以下である、ポリエステル。
【化1】
前記化学式7中、
前記A
11は、直鎖または分枝鎖の炭素数1~15の2価の炭化水素基であり、
前記R
11は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアルキル基であり、
前記n
11は、繰り返し単位の繰り返し回数であり、
前記n
12は、0~2の整数である。
【請求項18】
前記ポリエステルは、全体重量に対して、フミン(Humin)を3重量%以下で含む、請求項17に記載のポリエステル。
【請求項19】
前記ポリエステルは、全体重量に対して、5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸(THFDCA)、またはこれらの混合物を10重量%未満で含む、請求項17に記載のポリエステル。
【請求項20】
前記ポリエステルは、CIE1976 L*a*b*表色系によるL*値が93以上であり、a*値が-0.5~0であり、b*値が14以下である、請求項17に記載のポリエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジカルボン酸系化合物の製造方法、これにより製造されたフランジカルボン酸系化合物、ポリエステルの製造方法、およびこれにより製造されたポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
温室ガスの削減のために、米国、欧州のような先進国は二酸化炭素排出規制を強化している。したがって、既存の化石原料資源への依存度を低くし、温室ガスを削減できるバイオ化学産業に対する需要が増加している。つまり、化学産業が石油依存型からバイオ依存型に変化している。
【0003】
一例として、飲料瓶や食品保管容器に主に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)をバイオ-PET(bio-PET)に代替する技術が活発に研究中である。
【0004】
バイオ-PETの製造において単量体として有用なジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物は、通常、5-ヒドロキシメチルフルフラル(5-hydroxymethyl furfural、HMF)を酸化させて製造される誘導体である。5-ヒドロキシメチルフルフラルは糖から得られるため、自然で広範囲に利用可能な原料の誘導体である。
【0005】
参照として、5-ヒドロキシメチルフルフラルに対する酸化反応は、次の反応式1に示すように、2,5-フランジカルボン酸(furandicarboxylic acid、FDCA)および2-カルボキシ-5-ホルミルフラン(5-formyl-2-furoic acid、FFCA)を含むモノカルボン酸またはジカルボン酸の芳香族ヘテロ環化合物が主な生成物として得られる。
【0006】
【0007】
モノカルボン酸またはジカルボン酸の芳香族ヘテロ環化合物が主な生成物として得られる5-ヒドロキシメチルフルフラルの酸化工程は文献に公知である。例えば、米国登録特許第4,977,283号(Hoechst)には、水性環境下、白金族に属する金属触媒により行われる5-ヒドロキシメチルフルフラルの酸化方法が記述されている。
【0008】
また、米国特許公開第2008-0103318号(Battelle)には、担持体に支持された白金によって促進される5-ヒドロキシメチルフルフラルの酸化方法が記述されている。
【0009】
しかし、このような5-ヒドロキシメチルフルフラルの酸化方法は、製造コストが高い方であり、バッチ式(batch)反応で行うようになるが、このようなバッチ式反応では、原料の投入、反応温度までの加熱、反応生成物の排出など実質的に反応とは無関係な時間を必要とし、反応器の生産性が低くなる問題がある。
【0010】
また、触媒を繰り返し使用するためには、触媒と生成物との分離工程が必要であり、また、温度などの変化による触媒の早期活性低下が起こる問題がある。
【0011】
一方、5-ヒドロキシメチルフルフラルの酸化により製造される2,5-フランジカルボン酸は、熱安定性が低い化合物であって、これをジオール成分とエステル化反応させてポリエステルを製造する過程で黄変、褐変などの熱変色を誘発し、5-ヒドロキシメチルフルフラルの酸化過程で発生する2-カルボキシ-5-ホルミルフランは、ポリエステルの主な変色要因である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国登録特許第4,977,283号(1990年12月11日)
【特許文献2】米国特許公開第2008-0103318号(2008年5月1日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一実施例は、不均一系触媒を用いてフランジカルボン酸系化合物を製造しながらも、ポリエステルの変色要因になる不純物を除去することによって、ポリエステルの変色を防止可能であり、分子量がより大きいポリエステルを製造できるフランジカルボン酸系化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
他の実施例は、フランジカルボン酸系化合物の製造方法により製造されたフランジカルボン酸系化合物を提供することを目的とする。
【0015】
さらに他の実施例は、フランジカルボン酸系化合物を用いてポリエステルを製造する方法を提供することを目的とする。
【0016】
さらに他の実施例は、ポリエステルの製造方法により製造されたポリエステルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一実施例によれば、ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物からヒドロキシルフルフラル化合物を製造する段階と、ヒドロキシルフルフラル化合物を不均一触媒の存在下で酸化反応させてフランジカルボン酸系化合物を製造する段階とを含む、フランジカルボン酸系化合物の製造方法を提供する。
【0018】
ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物は、クロロメチルフルフラル(chloromethyl furfural、CMF)、2,5-ジホルミルフラン(2,5-diformylfuran、DFF)、5-アセトメチルフルフラル(5-acetoxymethylfurfural、AMF)、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0019】
ヒドロキシルフルフラル化合物は、5-ヒドロキシメチルフルフラル(hydroxymethyl furfural、HMF)、5-ヒドロキシメチルフルフラルエステル、5-ヒドロキシメチルフルフラルエーテル、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0020】
ヒドロキシルフルフラル化合物を製造する段階は、ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物および溶媒を含む溶液を100rpm~500rpmで撹拌しながら、20℃~90℃で、1分~60分間転換反応させて行われる。
【0021】
転換反応後、エチルアセテート(ethyl acetate、EA)、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone)、ジエチルエーテル(Diethyl ether)、クロロホルム(chloroform)、水、またはこれらの混合物を含む抽出溶媒を用いてヒドロキシルフルフラル化合物を抽出することができる。
【0022】
抽出溶媒は、5℃~30℃で、10Torr~40Torrに減圧しながら揮発させて除去することができる。
【0023】
フランジカルボン酸系化合物の製造方法は、製造されたヒドロキシルフルフラル化合物に溶媒を添加した後、濾過してフミン(Humin)を除去する段階をさらに含むことができる。
【0024】
酸化反応は、ヒドロキシルフルフラル化合物および溶媒を含む溶液を、固体塩基および不均一触媒の存在下、酸化剤と接触させて行われる。
【0025】
不均一触媒は、Fe、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Au、Pt、これらの合金、またはこれらの混合物を含む活性金属、および活性金属を担持する担体を含むことができる。
【0026】
不均一触媒は、ヒドロキシルフルフラル化合物1モルに対して、触媒中の活性金属を基準として600モル以下で含まれる。
【0027】
固体塩基は、MgO、CaO、CaCO3、ハイドロタルサイト(Hydrotalcite)、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0028】
固体塩基は、ヒドロキシルフルフラル化合物100重量部に対して、10重量部~40重量部含まれる。
【0029】
酸化剤は、酸素、空気、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0030】
溶媒は、水、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、メタノール、t-ブチル次亜塩素酸塩、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0031】
溶媒は、ヒドロキシルフルフラル化合物100重量部に対して、1000重量部~9000重量部含まれる。
【0032】
酸化反応は、6bar~50barの圧力および80℃~200℃の温度で1時間~24時間行われる。
【0033】
酸化反応の生成物は、2,5-フランジカルボン酸(FDCA)および5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)を含むことができる。
【0034】
フランジカルボン酸系化合物の製造方法は、酸化反応の生成物を不均一還元触媒および溶媒の存在下で水素と接触させて、5-ホルミルフランカルボン酸を除去する精製段階をさらに含むことができる。
【0035】
精製段階は、5bar~15barおよび100℃~200℃で1時間~10時間行われる。
【0036】
不均一還元触媒は、Cu、Ni、Co、Pd、Pt、Ru、Ag、Au、Rh、Os、Ir、これらの合金、またはこれらの混合物を含む活性金属、および活性金属を担持する担体を含むことができる。
【0037】
フランジカルボン酸系化合物の製造方法は、酸化反応の生成物から金属成分を除去する金属精製段階をさらに含むことができる。
【0038】
金属成分は、Fe、Cr、Ni、Cu、Zn、Mo、Ti、Cd、Co、Mn、Na、Mg、K、Ca、Al、As、Sb、Pb、Sn、B、Si、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0039】
金属精製段階は、イオンフィルタを用いて行われる。
【0040】
他の実施例によれば、フランジカルボン酸系化合物の製造方法により製造され、金属成分を全体重量に対して200ppm未満で含む、フランジカルボン酸系化合物を提供する。
【0041】
フランジカルボン酸系化合物は、全体重量に対して、フミン(Humin)を3重量%以下で含むことができる。
【0042】
フランジカルボン酸系化合物は、全体重量に対して、5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸(THFDCA)、またはこれらの混合物を10重量%未満で含むことができる。
【0043】
さらに他の実施例によれば、フランジカルボン酸系化合物とジオール系化合物とをエステル化反応させた後、重合反応させてポリエステルを製造する段階を含む、ポリエステルの製造方法を提供する。
【0044】
さらに他の実施例によれば、下記の化学式7で表される繰り返し単位を含み、金属成分を全体重量に対して200ppm未満で含み、CIE1976 L*a*b*表色系によるb*値が14以下である、ポリエステルを提供する。
【0045】
【0046】
化学式7中、A11は、直鎖または分枝鎖の炭素数1~15の2価の炭化水素基であり、R11は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアルキル基であり、n11は、繰り返し単位の繰り返し回数であり、n12は、0~2の整数である。
【0047】
金属は、Fe、Cr、Ni、Cu、Zn、Mo、Ti、Cd、Co、Mn、Na、Mg、K、Ca、Al、As、Sb、Pb、Sn、B、Si、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0048】
ポリエステルは、全体重量に対して、フミン(Humin)を3重量%以下で含むことができる。
【0049】
ポリエステルは、全体重量に対して、5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸(THFDCA)、またはこれらの混合物を10重量%未満で含むことができる。
【0050】
ポリエステルは、CIE1976 L*a*b*表色系によるL*値が93以上であり、a*値が-0.5~0であり、b*値が14以下であってもよい。
【発明の効果】
【0051】
一実施例によるフランジカルボン酸系化合物の製造方法によれば、不均一系触媒を用いてフランジカルボン酸系化合物を製造しながらも、ポリエステルの変色要因になる不純物を除去することによって、ポリエステルの変色を防止可能であり、分子量がより大きいポリエステルを製造することができる。
【0052】
他の実施例によるポリエステルは、色(黄色度)が改善され、分子量が大きくなるにつれて分子量の分散範囲が狭くなって、強度に優れ、分子量が均一である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】実施例1で製造された2,5-フランジカルボン酸を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した結果を示すグラフである。
【
図2】比較例1で製造された2,5-フランジカルボン酸を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した結果を示すグラフである。
【
図3】比較例2で製造された2,5-フランジカルボン酸を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した結果を示すグラフである。
【
図4】比較例3で製造された2,5-フランジカルボン酸を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した結果を示すグラフである。
【
図5】比較例4で製造された2,5-フランジカルボン酸を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に説明する技術の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は詳細に後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、実現される形態は以下に開示される実施例に限定されないといえる。他に定義がなければ、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、当該技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解できる意味で使用できる。また、一般に使用される辞書に定義されている用語は明らかに特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解釈されない。明細書全体においてある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。さらに、単数形は、文言で特に言及しない限り、複数形も含む。
【0055】
一実施例によるフランジカルボン酸系化合物の製造方法は、ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物からヒドロキシルフルフラル化合物を製造する転換反応段階と、ヒドロキシルフルフラル化合物を不均一触媒の存在下で酸化反応させてフランジカルボン酸系化合物を製造する酸化反応段階とを含む。
【0056】
ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物は、下記の化学式1で表される芳香族ヘテロ環化合物原料であってもよい。
【0057】
【0058】
化学式1で表される芳香族ヘテロ環化合物原料は、木質から転換された化合物であって、フランジカルボン酸系化合物の製造時に最初に使用される化合物である。一例として、芳香族ヘテロ環は、フラン、チオフェン、ピロール、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0059】
化学式1中、R1およびR2のいずれか1つは、アルデヒド基であり、残りの1つは、水素基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、アセトキシ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のC1-C20アルキル基、または置換もしくは非置換のC1-C20アルコキシ基であってもよい。つまり、化学式1中、R1がアルデヒドの場合、R2は、水素基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、アセトキシ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のC1-C20アルキル基、または置換もしくは非置換のC1-C20アルコキシ基であってもよい。また、一例として、C1-C20アルキル基またはC1-C20アルコキシ基は、非置換であるか、1種以上のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0060】
例えば、ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物は、化学式2~化学式4で表される化合物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。つまり、ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物は、クロロメチルフルフラル(chloromethyl furfural、CMF)、2,5-ジホルミルフラン(2,5-diformylfuran、DFF)、5-アセトメチルフルフラル(5-acetoxymethylfurfural、AMF)、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
ヒドロキシルフルフラル化合物は、5-ヒドロキシメチルフルフラル(hydroxymethyl furfural、HMF)、5-ヒドロキシメチルフルフラルエステル、5-ヒドロキシメチルフルフラルエーテル、またはこれらの混合物を含むことができ、例えば、5-ヒドロキシメチルフルフラルは、化学式5で表される。
【0065】
【0066】
転換反応段階では、ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物からヒドロキシルフルフラル化合物を製造する。
【0067】
一例として、転換反応は、溶媒と混合した後、撹拌して行われる。
【0068】
溶媒は、水、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、メタノール、t-ブチル次亜塩素酸塩、またはこれらの混合物を含むことができ、例えば、水を使用する場合、OH-を供与してヒドロキシル-フリーフルフラル化合物を5-ヒドロキシメチルフルフラルに転換させることができる。また、ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物がクロロメチルフルフラルの場合、疎水性(Hydophobic)であるので、水に溶解しにくいことから、一部の極性有機溶媒を混合して水によく溶解できるようにする。
【0069】
転換反応の撹拌は、100rpm~500rpm、例えば、150rpm~350rpmで行われる。転換反応の撹拌が100rpm未満の場合、ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物が十分に溶媒に撹拌されず、ヒドロキシルフルフラル化合物への転換に困難があり、500rpm超過の場合、スターラー(Stirrer)の溶媒との摩擦熱によってスターラーと反応物との接触面で過度な温度上昇でフミン(Humin)化が進行して、収率低下の原因になりうる。
【0070】
転換反応は、20℃~90℃、例えば、40℃~90℃で行われる。転換反応の温度が20℃未満の場合、反応が進行せず、90℃超過の場合、ヒドロキシルフルフラル化合物に転換後、高い温度によって自己重合をして、ダイマー(Dimer)、トリマー(Trimer)、フミン(Humin)が生成されて、収率が低下しうる。
【0071】
転換反応は、1分~60分、例えば、2分~30分間行われる。転換反応の時間が1分未満の場合、反応が開始されず、60分超過の場合、ダイマー(Dimer)、トリマー(Trimer)、フミン(Humin)が生成されて、収率が低下しうる。
【0072】
一例として、ヒドロキシル-フリーフルフラル化合物がクロロメチルフルフラルの場合、転換反応では、塩素(chlorine)が塩素イオン(chloride ion)になり水の水素イオン(H+)と出会ってHClが形成され、水のヒドロキシルイオン(OH-)がCl-サイトに置換されて5-ヒドロキシメチルフルフラルが生成される。
【0073】
選択的に、転換反応後、生成されたヒドロキシルフルフラル化合物を抽出する段階をさらに含むことができる。
【0074】
生成されたヒドロキシルフルフラル化合物の抽出は、エチルアセテート(ethyl acetate、EA)、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone)、ジエチルエーテル(Diethyl ether)、クロロホルム(chloroform)、水、またはこれらの混合物を含む抽出溶媒を用いて行われる。
【0075】
また、選択的に、ヒドロキシルフルフラル化合物を抽出した後、抽出に使用された抽出溶媒を除去する段階をさらに含むことができる。
【0076】
一例として、抽出段階は、ヒドロキシルフルフラル化合物を抽出した後、抽出溶媒を5℃~30℃で、10Torr~40Torrに減圧しながら揮発させて除去する段階をさらに含むことができる。
【0077】
抽出溶媒除去時の温度が5℃未満の場合、抽出溶媒が揮発されずにヒドロキシルフルフラル化合物に一部残ってしまい、30℃超過の場合、内部圧力により内部温度が急激に上昇してヒドロキシルフルフラル化合物の自己重合が進行して、収率が低下しうる。
【0078】
抽出溶媒除去時の圧力を10Torr未満に維持することは容易ではなく、圧力が40Torr超過の場合、抽出溶媒が完全に揮発されずにヒドロキシルフルフラル化合物に一部残ってしまうことがある。
【0079】
選択的に、生成されたヒドロキシルフルフラル化合物からフミン(Humin)を除去する段階をさらに含むことができる。
【0080】
5-ヒドロキシメチルフルフラルは、酸性pH、高い温度などで不安定で、5-ヒドロキシメチルフルフラル同士で重合したり、反応出発物質または反応副生成物などと重合して鎖長に応じて可溶性または不溶性であり、反応溶液の褐色から黒色までの変色をもたらすフミンを生成することがある。ここで、反応出発物質は、クロロメチルフルフラル(chloromethyl furfural、CMF)、2,5-ジホルミルフラン(2,5-diformylfuran、DFF)、5-アセトメチルフルフラル(5-acetoxymethylfurfural、AMF)、またはこれらの混合物であってもよく、反応副生成物は、5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸(THFDCA)、またはこれらの混合物であってもよい。
【0081】
一例として、フミンを除去する段階は、ヒドロキシルフルフラル化合物に溶媒を添加した後、濾過して行われる。
【0082】
溶媒は、水、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、メタノール、t-ブチル次亜塩素酸塩、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0083】
濾過は、例えば、常温、常圧下で行われる。
【0084】
酸化反応段階では、ヒドロキシルフルフラル化合物を不均一触媒の存在下で酸化反応させてフランジカルボン酸系化合物を製造する。
【0085】
一例として、酸化反応は、ヒドロキシルフルフラル化合物および溶媒を含む溶液を固体塩基および不均一触媒の存在下で酸化剤と接触させて行われる。
【0086】
不均一触媒は、活性金属、および活性金属を担持する担体を含むことができる。
【0087】
活性金属は、ヒドロキシルフルフラル化合物からフランジカルボン酸系化合物の製造時に生成物収率の向上に寄与する活性を有する。
【0088】
活性金属は、多様な酸化数を有することができるFe、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Au、Pt、またはこれらの組み合わせを含むことができ、例えば、Ru、Pd、Pt、またはAuを含むことができる。
【0089】
不均一触媒は、不均一触媒の全体重量に対して、活性金属を0.1重量%~10重量%含むことができ、例えば、0.1重量%~5重量%含むことができる。活性金属の含有量が0.1重量%未満の場合、酸化反応が進行せず、10重量%超過の場合、連続工程反応上反応に必要な含有量以上になるため、不必要な含有量によって経済的損失があり、担体に活性金属が均一に担持(deposition)されずに活性金属同士でかたまっていることがある。
【0090】
担体は、金属酸化物、炭素質物質、金属ケイ酸塩、金属炭化物、またはこれらの混合物を含むことができる。金属酸化物は、例えば、シリカ、ジルコニア、アルミナ、またはこれらの混合物を含むことができる。炭素質物質は、例えば、カーボンブラックであってもよい。
【0091】
一例として、担体は、塩基性金属酸化物担体であってもよい。塩基性金属酸化物担体は、ヒドロキシルフルフラル化合物と配位結合して錯体を形成できる塩基性金属酸化物を含む。
【0092】
一例として、フランジカルボン酸系化合物は、ヒドロキシルフルフラル化合物を不均一触媒の存在下で極性溶媒中で酸化反応させて製造できるが、生成されたフランジカルボン酸系化合物は白色パウダー(powder)であって、反応過程で液状状態で存在してこそ、反応器内で析出しない。この時、塩基性金属酸化物は、フランジカルボン酸系化合物と配位結合して反応が終わるまで生成物を液状に維持させる役割を果たす。
【0093】
フランジカルボン酸系化合物と配位結合して錯体を形成できる塩基性金属酸化物は、BaO、Nd2O3、Cs2O、CsX(XはOH、Cl、Br、またはIである)、塩基性ゼオライト、塩基性複合金属酸化物、金属-有機骨格体(Metal-Organic Frameworks、MOFs)、ハイドロタルサイト(hydrotalcite)、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0094】
一例として、塩基性ゼオライトは、シリカ/アルミナ(SiO2/Al2O3)のモル比が20~1000のハイシリカベータまたはモルデナイト酸性ゼオライトの水素がNa、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、またはこれらの組み合わせを含むイオンで置換されたゼオライトであってもよい。
【0095】
一例として、塩基性複合金属酸化物は、Mg2Al2O4、ZnAl2O4、BaTiO3、ZnTiO3、MgO-SiO2、CaO-SiO2、SrO-SiO2、BaO-SiO2、MgO-Al2O3、CaO-Al2O3、SrO-Al2O3、BaO-Al2O3、MgO-TiO2、CaO-TiO2、SrO-TiO2、BaO-TiO2、MgO-ZnO、CaO-ZnO、SrO-ZnO、BaO-ZnO、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0096】
一例として、金属-有機骨格体は、Zr系MOFs、Mg系MOFs、Ca系MOFs、Sr系MOFs、Ba系MOFs、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0097】
一例として、ハイドロタルサイトは、[Mg4Al2(OH)12(CO3)・4H2O]、[Mg6Al2(OH)16(CO3)・4H2O]、[Mg4Zn2Al2(OH)16(CO3)・4H2O]、[Ca4Al2(OH)12(NO3)2・xH2O]、[Ca6Al2(OH)16(NO3)2・xH2O]、[Ca4Zn2Al2(OH)16(CO3)・4H2O]、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0098】
不均一触媒の使用量は、例えば、ヒドロキシルフルフラル化合物1モルに対して、触媒中の活性金属を基準として600モル以下、または50モル~600モル使用できる。
【0099】
固体塩基は、MgO、CaO、CaCO3、ハイドロタルサイト(Hydrotalcite)、またはこれらの混合物を含むことができる。固体塩基は、キレート(chelate)として作用してフランジカルボン酸系化合物を塩(salt)形態で水に溶解する役割を果たす。これによって、酸化反応生成物のpHは変化しない。
【0100】
固体塩基は、ヒドロキシルフルフラル化合物100重量部に対して、10重量部~40重量部、例えば、15重量部~35重量部含まれる。固体塩基の含有量が10重量部未満の場合、酸化反応が進行してフランジカルボン酸系化合物が析出し、40重量部超過の場合、フランジカルボン酸系化合物の結晶化段階で過剰のHCl水溶液を使用して、環境汚染と過剰の廃水が生じて製造価格が上昇しうる。
【0101】
合成時の内部pHは、6~8であってもよい。このpH範囲内で進行させる場合、フランジカルボン酸系化合物が生成されながら析出しない。フランジカルボン酸系化合物の析出は、回分式反応器では大して問題にならないが、連続式管型反応器の内部でフランジカルボン酸系化合物が析出すると、管型反応器を連結するノズル詰まりの原因になりうる。
【0102】
酸化剤は、酸素、空気、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0103】
溶媒は、水、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、メタノール、t-ブチル次亜塩素酸塩、またはこれらの混合物を含むことができ、例えば、水を使用する場合、酸素をより良く溶解できる。
【0104】
溶媒は、ヒドロキシルフルフラル化合物100重量部に対して、1000重量部~9000重量部含まれる。溶媒の含有量が1000重量部未満の場合、ヒドロキシルフルフラル化合物の溶解が十分でなくて、酸化反応が開始されないことや注入される酸化剤が十分に溶存しないことがあり、9000重量部超過の場合、ヒドロキシルフルフラル化合物の濃度低下で反応物の濃度が低くなって、工程全体での経済的損失がありうる。
【0105】
酸化反応の温度は、80℃~200℃、例えば、100℃~180℃であってもよい。酸化反応温度が80℃未満の場合、反応が開始されず、200℃超過の場合、ヒドロキシルフルフラル化合物の自己重合が起きて副反応が進行することがある。
【0106】
酸化反応の圧力は、6bar~50bar、例えば、8bar~30barであってもよい。酸化反応の圧力が6bar未満の場合、フランジカルボン酸系化合物を生成するための十分な酸素が供給されずに収率が低下し、30bar超過の場合、内部温度が高くなって副反応が進行することがある。
【0107】
酸化反応は、1時間~24時間、例えば、1時間~12時間行われる。酸化反応時間が1時間未満の場合、反応しないことがあり、24時間超過の場合、副反応が進行してフミン(Humin)が生成されることがある。
【0108】
酸化反応段階により得られた反応生成物は、ヒドロキシルフルフラル化合物とフランジカルボン酸系化合物を含む粗質(crude)組成物であってもよい。
【0109】
一例として、フランジカルボン酸系化合物として目的とする化合物は、下記の化学式6で表される2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid、FDCA)であってもよい。
【0110】
【0111】
この時、反応生成物は、意図せず化学式1で表されるヒドロキシルフルフラル化合物(一例として、化学式2~化学式4で表される化合物)を含むことができる。
【0112】
つまり、反応は、前述した原料を用いた不均一触媒の存在下での酸化反応であって、これらの反応から得られる芳香族ヘテロ環化合物の酸化物(以下、フランジカルボン酸系化合物または反応生成物という)は、バックボーンに含まれている不飽和基が酸化して、反応式1に示すように、主に2,5-フランジカルボン酸(FDCA)を含むが、反応中間物の5-ヒドロキシメチル-2-フランカルボン酸(HMFCA)と5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)などを含むことができる。
【0113】
また、5-ヒドロキシメチル-2-フランカルボン酸(HMFCA)と5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)を精製する過程で発生するテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸(THFDCA)を含むことができる。
【0114】
これらの副生成物は、一般に、ヒドロキシルフルフラル化合物よりも融点が高いため、溶融状態で反応器から取り出しにくくて、精製または結晶化などの後処理を必要とする。
【0115】
したがって、選択的に、酸化反応の生成物を不均一還元触媒および溶媒の存在下で水素と接触させて、5-ホルミルフランカルボン酸を除去する精製段階をさらに含むことができる。例えば、5-ホルミルフランカルボン酸は、反応生成物を溶媒に溶解して、5-ホルミルフランカルボン酸は、水素化反応(水添反応)によりフラン環(Furan ring)の二重結合を乱して溶媒の水に溶解して除去し、水に溶けないフランジカルボン酸系化合物を得ることができる。
【0116】
精製段階で使用される不均一還元触媒は、活性金属、および活性金属を担持する担体を含むことができる。
【0117】
不均一還元触媒の活性金属は、Cu、Ni、Co、Pd、Pt、Ru、Ag、Au、Rh、Os、Ir、これらの合金、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0118】
担体は、金属酸化物、炭素質物質、金属ケイ酸塩、金属炭化物、またはこれらの混合物を含むことができる。金属酸化物は、例えば、シリカ、ジルコニア、アルミナ、またはこれらの混合物を含むことができる。炭素質物質は、例えば、カーボンブラックであってもよい。
【0119】
不均一還元触媒の使用量は、例えば、酸化反応の生成物1モルに対して、不均一還元触媒中の活性金属を基準として50モル~300モル使用できる。
【0120】
溶媒は、水、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、メタノール、t-ブチル次亜塩素酸塩、またはこれらの混合物を含むことができ、例えば、水を使用する場合、溶媒中の酸素の溶存量が多くて酸化反応が容易であり得る。
【0121】
溶媒の含有量は、酸化反応の生成物100重量部に対して、1000重量部~9000重量部、例えば、2000重量部~8000重量部であってもよい。溶媒の含有量が1000重量部未満の場合、反応が開始されず、9000重量部超過の場合、経済性が低下しうる。
【0122】
精製反応の温度は、100℃~200℃、例えば、100℃~180℃であってもよい。精製反応温度が100℃未満の場合、反応が開始されないことがあり、200℃超過の場合、副反応が進行することがある。
【0123】
精製反応の圧力は、5bar~15bar、例えば、6bar~13barであってもよい。精製反応圧力が5bar未満の場合、水素不足で二重結合が乱れないことがあり、15bar超過の場合、内部温度上昇で副反応が進行することがある。
【0124】
精製反応は、1時間~10時間、例えば、1時間~6時間行われる。精製反応時間が1時間未満の場合、5-ホルミルフランカルボン酸がヒドロキシメチルフランカルボン酸に十分に転換されず、10時間超過の場合、副反応が進行することがある。
【0125】
選択的に、酸化反応の生成物から金属成分を除去する金属精製段階をさらに含むことができる。酸化反応段階で不均一触媒を用いることによって、フランジカルボン酸系化合物が金属成分を含むことができ、これはポリエステルの変色要因になりうる。
【0126】
金属成分は、Fe、Cr、Ni、Cu、Zn、Mo、Ti、Cd、Co、Mn、Na、Mg、K、Ca、Al、As、Sb、Pb、Sn、B、Si、またはこれらの混合物を含むことができる。特に、金属成分は、Fe、Cr、Ni、Cu、Zn、Mo、Ti、Cd、Co、Mn、またはこれらの混合物を含む遷移金属であってもよい。遷移金属は、ポリマー重合時に変色に影響を与える。また、遷移金属の場合、熱を加えると金属酸化物に変換され、金属酸化物の場合、固有の色を有する。例えば、Feは、熱を加えるとFe2O3(Iron(III) oxide)に変化しやすく、これは暗褐色(dark brown)の色を有するようになる。したがって、フランジカルボン酸系化合物から金属成分を除去することによって、ポリエステルの変色を防止可能である。
【0127】
一例として、金属精製段階は、イオンフィルタ方法を用いて行われる。イオンフィルタは、常温で、金属成分の含有量が200ppm未満、例えば、190ppm、180ppm未満、170ppm未満、160ppm未満、150ppm未満、140ppm未満、130ppm未満、120ppm未満、110ppm未満、100ppm未満、90ppm未満、80ppm未満、70ppm未満、60ppm未満、50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、9ppm未満、7ppm未満、5ppm未満、3ppm未満、1ppm未満、0.9ppm未満、0.8ppm未満、0.7ppm未満、0.6ppm未満、0.5ppm未満、0.4ppm未満、0.3ppm未満、0.2ppm未満、0.1ppm未満、0.09ppm未満、0.08ppm未満、または0.073ppm以下になるまで進行させることができる。金属成分の含有量が200ppm以上の場合、ポリマーを重合する過程で変色の問題を引き起こしてポリエステルチップ(Chip)のb*値の上昇をもたらすことがある。
【0128】
以後、反応生成物をHClなどの酸で滴定した後、水(DIW)で水洗して再結晶化工程を経て、精製されたフランジカルボン酸系化合物を得ることができる。
【0129】
他の実施例によるフランジカルボン酸系化合物は、上述したフランジカルボン酸系化合物の製造方法により製造される。
【0130】
フランジカルボン酸系化合物の製造方法において金属精製段階をさらに含むことによって、フランジカルボン酸系化合物は、全体重量に対して、金属成分、特に、遷移金属成分を200ppm未満、例えば、190ppm、180ppm未満、170ppm未満、160ppm未満、150ppm未満、140ppm未満、130ppm未満、120ppm未満、110ppm未満、100ppm未満、90ppm未満、80ppm未満、70ppm未満、60ppm未満、50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、9ppm未満、7ppm未満、5ppm未満、3ppm未満、1ppm未満、0.9ppm未満、0.8ppm未満、0.7ppm未満、0.6ppm未満、0.5ppm未満、0.4ppm未満、0.3ppm未満、0.2ppm未満、0.1ppm未満、0.09ppm未満、0.08ppm未満、または0.073ppm以下であってもよく、0ppm以上であってもよい。フランジカルボン酸系化合物が全体重量に対して金属成分を200ppm以上含む場合、ポリマーを重合する過程で変色の問題を引き起こしてポリエステルチップ(Chip)のb*値の上昇をもたらすことがある。
【0131】
また、フランジカルボン酸系化合物の製造方法においてフミンを除去する段階をさらに含むことによって、フランジカルボン酸系化合物は、全体重量に対して、フミン(Humin)を3重量%以下、例えば、1重量%~3重量%含むことができる。フランジカルボン酸系化合物が全体重量に対してフミン(Humin)を3重量%超過で含む場合、フランジカルボン酸系化合物のb*値が上昇し、これは重合時の変色の主な要因として作用する。
【0132】
また、フランジカルボン酸系化合物の製造方法において精製段階をさらに含むことによって、フランジカルボン酸系化合物は、全体重量に対して、5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸(THFDCA)、またはこれらの混合物を10重量%未満で含むことができる。フランジカルボン酸系化合物が全体重量に対して5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸(THFDCA)、またはこれらの混合物を10重量%以上含む場合、ポリマーの分子量が目標とする数値に上昇せず、以後、チップ(chip)化が行われないことがある。
【0133】
他の実施例によるポリエステルの製造方法は、フランジカルボン酸系化合物とジオール系化合物とをエステル化反応させた後、重合反応させてポリエステルを製造する段階を含む。
【0134】
エステル化反応段階では、フランジカルボン酸系化合物を含む芳香族ジカルボン酸系化合物およびジオール系化合物を反応させてオリゴマーを製造する。
【0135】
芳香族ジカルボン酸系化合物は、フランジカルボン酸系化合物のほか、追加的な芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、またはこれらの混合物をさらに含むことができる。
【0136】
芳香族ジカルボン酸は、炭素数8~20、例えば、炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸、またはこれらの混合物であってもよく、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、4,4’-スチルベンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、または2,5-チオフェンジカルボン酸などであってもよい。テレフタル酸は、テレフタル酸などのジカルボン酸、そのアルキルエステル(モノメチル、モノエチル、ジメチル、ジエチルまたはジブチルエステルなど炭素数1~4の低級アルキルエステル)および/またはこれらの酸無水物(acid anhydride)を含み、ジオール成分と反応してテレフタロイル部分(terephthaloyl moiety)などのジカルボン酸部分(dicarboxylic acidmoiety)を形成することができる。
【0137】
脂肪族ジカルボン酸は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸、ブラシル酸、テトラデカンジ酸、フマル酸、2、2-ジメチルグルタル酸、スベリン酸、マレイン酸、イタコン酸、またはマレイン酸などであってもよい。特に、脂肪族ジカルボン酸系化合物は、コハク酸またはアジピン酸であってもよい。
【0138】
ジオール系化合物は、例えば、脂肪族ジオールであってもよい。脂肪族ジオールは、ポリエステルに優れた相溶性および延長特性(elongation)を付与できる。
【0139】
一例として、脂肪族ジオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオ-ル(1,2-プロパンジオ-ル、1,3-プロパンジオールなど)、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール(1,6-ヘキサンジオールなど)、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロブタンジオールなどの線状、分枝状または環状脂肪族ジオール成分が挙げられる。
【0140】
エステル化反応中に消失したり未反応の物質の量を考慮して、目的とする共重合体の組成よりジオール系化合物を過剰量使用することができる。
【0141】
一例として、エステル化反応段階で、ジカルボン酸系化合物10モル部を基準として、ジオール系化合物10モル部~50モル部を反応させることができ、例えば、12モル部~45モル部、14モル部~40モル部、16モル部~35モル部、または18モル部~30モル部を反応させることができる。ジオール系化合物を50モル部超過で使用すれば、エステル化反応速度の低下や、最終ポリエステルの物性および生産性の低下が起こり得る。これに対し、ジオール系化合物を10モル部未満で使用すれば、ジカルボン酸系化合物の未反応成分が過度に残留して、エステル化反応終了時点の正確な確認が不可能である。これによって、エステル化反応を長く進行させて最終ポリエステルの熱変色を誘発したり、最終ポリエステルの物性および明度を低下させることがある。
【0142】
エステル化反応段階は、窒素(N2)雰囲気、160℃~260℃の温度範囲で、1時間~8時間行われる。エステル化反応段階は、原料配合比、目的とするポリエステルの具体的な特性などにより適切に調節可能である。例えば、エステル化反応段階は、それぞれ独立して、180℃以上、160℃以上、170℃以上、または180℃以上かつ、260℃以下、240℃以下、220℃以下の温度範囲で行われる。また、エステル化反応段階は、それぞれ独立して、1時間以上、1.5時間以上、または2時間以上かつ、8時間以下、7時間以下、または6時間以下で行われる。
【0143】
エステル化反応段階の各温度、圧力、反応時間などが各範囲未満であれば、反応収率が低かったり十分な反応が起こらず、最終製造されるポリエステルの物性が低下しうる。エステル化反応の温度、圧力、反応時間などが各範囲を超えると、製造されるポリエステルの外観が黄変(yellow)する可能性が高くなったり解重合反応が進行して、製造方法でポリエステルが合成されないことがある。
【0144】
エステル化反応段階は、それぞれ独立して、バッチ(batch)式または連続式で行われる。
【0145】
一方、エステル化反応段階は、それぞれ独立して、エステル化反応触媒の存在下で行われてもよい。特に、エステル化反応触媒は、エステル化反応段階に投入して、反応初期から反応速度を改善し、ポリエステルが熱に露出する時間を短縮させることができる。
【0146】
一例として、エステル化反応触媒は、チタン系触媒であるチタンオキシド、チタンブトキシド、またはチタンアルコキシドなどであってもよい。
【0147】
エステル化反応触媒は、合成されるポリエステル中の中心金属原子を基準として10ppm~1000ppm使用できる。エステル化反応触媒の含有量が過度に小さければ、エステル化反応の効率が大きく向上しにくく、反応に参加しない反応物の量が大きく増加することがある。また、エステル化反応触媒の含有量が過度に多ければ、製造されるポリエステルの外観物性が低下することがある。さらに、エステル化反応触媒の含有量が過度に多ければ、製造されるポリエステルの黄変発生および外観物性が低下しうる。
【0148】
重合段階では、エステル化反応段階で製造されたオリゴマーを重合させる。一例として、重合段階は、オリゴマーを予備重合させる予備重合段階と、予備重合された重合体を重縮合反応させる重縮合段階とを含むことができる。
【0149】
予備重合段階では、オリゴマーを予備重合させて、エステル化反応生成物より重合度が高い重合体を製造する。
【0150】
予備重合段階、重縮合段階、またはこれら両者ともを含む重合段階は、触媒の存在下で行われる。
【0151】
重合反応触媒は、合成されるポリエステル中の中心金属原子を基準として2ppm~100ppm使用できる。重合反応触媒の含有量が過度に小さければ、反応に参加しない反応物の量が大きく増加し、重合反応触媒の含有量が過度に多ければ、不活性粒子として残留してポリマーの物性を低下させることがある。
【0152】
一方、予備重合過程では熱安定剤を使用することができ、これを使用すれば、予備重合過程はもちろん、その後の重縮合反応中の熱変色を最小化することができる。
【0153】
具体的には、熱安定剤は、トリメチルホスホノアセテート(trimethyl phosphonoacetate)、トリエチルホスホノアセテート(triethyl phosphonoacetate)、リン酸(phosphoric acid)、亜リン酸(phosphorous acid)、ポリリン酸(polyphosphric acid)、トリメチルホスフェート(trimethyl phosphate:TMP)、トリエチルホスフェート(triethyl phosphate)、トリメチルホスフィン(trimethyl phosphine)、トリフェニルホスフィン(triphenyl phosphine)を含むリン系熱安定剤の群より選択される1つ以上を含むことができる。
【0154】
例えば、熱安定剤は、エステル化反応触媒対比約2倍の量で投入可能である。熱安定剤を範囲で使用すれば、予備重合および重縮合反応中の熱変色を最小化することができる。
【0155】
予備重合は、温度制御条件下で行われる(Thermal pre-condensation)。
【0156】
具体的には、予備重合は、220℃~260℃の温度範囲に到達するまで昇温させる段階と、到達温度を維持し、第2エステル化反応生成物を予備重合させる段階とを含んで行われる。
【0157】
また、昇温時の圧力が0atm~0.3atmに到達するまで減圧させた後、到達温度の維持時、到達圧力も維持できる。
【0158】
予備重合段階は、後述する重縮合反応(Vacuum)へ進む前に事前に常圧から真空に変更する段階であって、常圧(1atm)から真空(0atm)へ段階的に変更する段階であってもよい。予備重合段階が省かれると、急激な真空状態に変わる過程でエステル化反応生成物が揮発して、突沸現象を誘発し、最終ポリエステルの収率を減少させ、その物性にも悪影響を及ぼすことがある。
【0159】
予備重合後、予備重合された重合体を重縮合反応させる。
【0160】
重縮合反応(poly-condensation)段階は、真空雰囲気、220℃~300℃の温度範囲および0.8torr~0.4torr以下の圧力下、2時間~6時間行われる。
【0161】
重縮合反応段階は、0atmよりも少し真空度が高い状態で行われる。真空ゲージで真空度を測定し、通常、0.8torr~0.4torrの範囲で重合を進行させる。
【0162】
重縮合時、重縮合反応触媒を使用することができる。
【0163】
重縮合触媒は、重縮合反応の開始前にエステル化反応の生成物に添加されてもよく、エステル化反応前にジオール成分およびジカルボン酸成分を含む混合物に添加されてもよいし、エステル化反応段階の途中に添加されてもよい。
【0164】
重合反応触媒および重縮合触媒は、それぞれ独立して、チタン系化合物、ゲルマニウム系化合物、アンチモン系化合物、アルミニウム系化合物、スズ系化合物、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0165】
チタン系化合物としては、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、ラクテートチタネート、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセティックエステルチタネート、イソステアリルチタネート、チタンジオキシド、チタンジオキシド/シリコンジオキシド共重合体、チタンジオキシド/ジルコニウムジオキシド共重合体などが挙げられる。
【0166】
ゲルマニウム系化合物としては、ゲルマニウムジオキシド(germanium dioxide、GeO2)、ゲルマニウムテトラクロライド(germanium tetrachloride、GeCl4)、ゲルマニウムエチレングリコキシド(germanium ethyleneglycoxide)、ゲルマニウムアセテート(germanium acetate)、これらを用いた共重合体、これらの混合物などが挙げられる。
【0167】
他の実施形態によれば、下記の化学式7で表される繰り返し単位を含むポリエステルを提供する。
【0168】
【0169】
化学式7中、A11は、それぞれ独立して、直鎖または分枝鎖の炭素数1~15の2価の脂肪族炭化水素基であり、R11は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアルキル基であり、n11は、各繰り返し単位の繰り返し回数であり、n12は、0~2の整数である。
【0170】
一例として、n11は、ポリエステルの分子量により適切に調節可能であり、例えば、n11は、それぞれ独立して、1~20の整数であってもよい。
【0171】
一方、ポリエステルは、全体重量に対して、金属成分、特に、遷移金属成分を200ppm未満、例えば、190ppm、180ppm未満、170ppm未満、160ppm未満、150ppm未満、140ppm未満、130ppm未満、120ppm未満、110ppm未満、100ppm未満、90ppm未満、80ppm未満、70ppm未満、60ppm未満、50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、9ppm未満、7ppm未満、5ppm未満、3ppm未満、1ppm未満、0.9ppm未満、0.8ppm未満、0.7ppm未満、0.6ppm未満、0.5ppm未満、0.4ppm未満、0.3ppm未満、0.2ppm未満、0.1ppm未満、0.09ppm未満、0.08ppm未満、または0.073ppm以下であってもよく、0ppm以上で含むことができる。ポリエステルが全体重量に対して金属成分を200ppm以上含む場合、ポリマーを重合する過程で変色の問題を引き起こしてポリエステルチップ(Chip)のb*値の上昇をもたらすことがある。
【0172】
また、ポリエステルは、全体重量に対して、フミン(Humin)を3重量%以下、例えば、1重量%~3重量%含むことができる。ポリエステルが全体重量に対してフミン(Humin)を3重量%超過で含む場合、ポリエステルチップ(Chip)のb*値の上昇をもたらすことがある。
【0173】
また、ポリエステルは、全体重量に対して、5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸(THFDCA)、またはこれらの混合物を10重量%未満で含むことができる。ポリエステルが全体重量に対して5-ホルミルフランカルボン酸(FFCA)、ヒドロキシメチルフランカルボン酸(HMFCA)、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸(THFDCA)、またはこれらの混合物を10重量%以上含む場合、ポリマーの分子量が目標とする数値に上昇せず、以後、チップ(chip)化が行われないことがある。
【0174】
ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が25,000g/mol~65,000g/mol、例えば、30,000g/mol~63,000g/mol、35,000g/mol~61,000g/mol、38,000g/mol~60,000g/mol、または40,000g/mol~58,000g/molであってもよい。
【0175】
ポリエステルの数平均分子量が25,000g/mol未満であれば、包装材に用いるためのフィルム化加工が難しいだけでなく、所望のモジュラスを達成できないことがある。これとは異なり、65,000g/mol超過の場合、粘度が高くなって生産性および収率が低くなりうる。
【0176】
ポリエステルは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比、つまり、分子量分布(Molecular weight distribution、MWD)は、1.1~3.0、例えば、1.4~2.7、1.6~2.5、または1.79~2.4であってもよい。
【0177】
ポリエステルの分子量分布が1.1未満であれば、工程のコントロールが難しくて不良率が高くなり、工程費用が上昇する。それに対し、ポリエステルの分子量分布が3.0超過の場合、不均一な分子量分布によって、製品の製造時に不良を誘発しうる。
【0178】
ポリエステルは、CIE1976 L*a*b*表色系によるL*値が93以上であり、a*値が-0.5~0であり、およびb*値が14以下であってもよく、例えば、CIE1976 L*a*b*表色系によるL*値が100以上であり、a*値が-0.5~0であり、およびb*値が7以下、5以下、3以下、1以下、または0~-1であってもよい。
【0179】
例えば、ポリエステル表色系の測定方法は、次の通りである。ポリエステル試料2gをHexafluoroisopropanol(HFIP)20mlに溶かす(0.1g/ml in HFIP)。Konica Minolta社のCM-3700A製品で溶液表色系測定専用のTuartz cellに試料溶液の表色系を測定する。
【0180】
L*値は、高い値を有するほど、白色に近い色を示すことができる。ただし、ポリエステルを適用した製品の用途、目的などに応じて、L*値は、93以上、93.5以上、94以上、または94.5以上かつ、100以下、99以下、98以下、97以下、または96以下の範囲内で、明度を制御することができる。
【0181】
a*値の場合、0以下の範囲でその値が小さくなるほど、赤色は薄くなり、緑色が濃くなる。ただし、ポリエステルを適用した製品の用途、目的などに応じて、a*値は、0以下、-0.03以下、-0.06以下、または-0.1以下かつ、-0.5以上、-0.52以上、-0.54以上、または-0.56以上の範囲内で、赤色と緑色の程度を制御することができる。
【0182】
b*値の場合、14以下の範囲でその値が小さくなるほど、黄色は薄くなり、青色が濃くなる。特に、後述する試験例によれば、すべての実施例は、b*値が14以下であって、その製造過程中の黄変、褐変などの熱変色が抑制されたことが分かる。ただし、ポリエステルを適用した製品の用途、目的などに応じて、b*値は、14以下の範囲内で、黄色と青色の程度を制御することができる。
【0183】
ポリエステルは、25℃での固有粘度が0.6dl/g~2.0dl/g、例えば、0.7dl/g~1.08dl/gであってもよい。
【0184】
また、ポリエステルは、35℃での固有粘度が0.4dl/g~1.6dl/g、例えば、0.6dl/g~0.7dl/gであってもよい。
【0185】
一例として、ポリエステルは、ガラス転移温度(Tg)が-40℃~50℃であってもよい。
【実施例】
【0186】
以下、発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載された実施例は発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これによって発明の範囲が制限されてはならない。
【0187】
[製造例1:2,5-フランジカルボン酸(FDCA)の製造]
【0188】
(実施例1)
クロロメチルフルフラル(CMF)を水(H2O)と混合し、約85℃で3分間反応させて5-ヒドロキシメチルフルフラルに転換させる。エチルアセテート(EA)を用いて5-ヒドロキシメチルフルフラル(HMF)を抽出する。常温で減圧しながらロータリー蒸発器(rotary evaporator)でエチルアセテートを揮発させて除去し、固形分100%の5-ヒドロキシメチルフルフラルを製造する。
【0189】
Ru/C触媒、固体塩基MgOを連続反応器に満たし、溶媒H2Oおよび空気を供給しながら、30bar、140℃(WHSV=0.3h-1)で5-ヒドロキシメチルフルフラルを酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸(FDCA)を約97%の収率で得る。この時、pH変化は7に維持されることを確認する。これは、固体塩基のMgOが2,5-フランジカルボン酸を塩形態で水に溶解することを意味する。
【0190】
酸化反応終了後、HCl水溶液で滴定して2,5-フランジカルボン酸を結晶化させ、パウダー形態の2,5-フランジカルボン酸を得る。
【0191】
一方、2,5-フランジカルボン酸をオートクレーブ(autoclave)で150℃、9bar H2で3時間反応させて5-ホルミルフランカルボン酸およびヒドロキシメチルフランカルボン酸を除去し、この時発生するテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸を精製し、イオンフィルタを用いて金属成分を除去する。
【0192】
(比較例1)
実施例1において、5-ホルミルフランカルボン酸およびヒドロキシメチルフランカルボン酸を除去する精製過程および金属成分を除去する精製過程を経由しないことを除けば、実施例1と同様に実施して2,5-フランジカルボン酸を製造する。
【0193】
(比較例2)
実施例1において、ヒドロキシメチルフランカルボン酸のみを除去し、金属成分を除去する精製過程を経由しないことを除けば、実施例1と同様に実施して2,5-フランジカルボン酸を製造する。
【0194】
(比較例3)
実施例1において、5-ホルミルフランカルボン酸およびヒドロキシメチルフランカルボン酸を除去し、5-ホルミルフランカルボン酸およびヒドロキシメチルフランカルボン酸を除去する過程で発生するテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸を除去せず、金属成分を除去する精製過程を経由しないことを除けば、実施例1と同様に実施して2,5-フランジカルボン酸を製造する。
【0195】
(比較例4)
実施例1において、金属成分を除去しないことを除けば、実施例1と同様に実施して2,5-フランジカルボン酸を製造する。
【0196】
[実験例1:2,5-フランジカルボン酸の成分分析]
実施例および比較例で製造された2,5-フランジカルボン酸を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて成分分析し、その結果をそれぞれ
図1~
図5に示す。
【0197】
また、実施例および比較例で製造された2,5-フランジカルボン酸を誘導結合プラズマ分光分析法(icp-oes)で金属成分の含有量を測定し、その結果を表1にまとめる。
【0198】
誘導結合プラズマ分光分析法は、液体の試料をプラズマに導入し、光線が単色化/多色化装置から放出されると検出器に焦点が合わされ、この時、誘導される信号を処理して元素の組成を定量化する。
【0199】
【0200】
図1は、FDCA精製後のHPLC結果であり、
図2~
図5は、FDCA精製前にFFCAピーク(Peak)が存在するHPLC結果である。
図1~
図5で左側に最も高いピークがFDCAを示し、その右側に小さいピークがFFCAを示す。FFCAを3%以上含む場合、ポリエステル重合時のエンドキャッピング(End capping)として作用して分子量が大きくならないようにし、変色の主な要因として作用する。
【0201】
[製造例2:ポリエステルの製造]
10Lオートクレーブ(Autoclave)反応器ホッパーに2,5-フランジカルボン酸0.9molとエチレングリコール(EG)1.2molを投入した後、Ti系触媒(物質名:Titanium isopropoxide)を、Ti系金属ベースで50ppmを投入し、210℃の温度範囲および2.5barの窒素雰囲気で3時間エステル化反応を進行させる。
【0202】
エステル化反応終了後、反応器の内部温度を1時間昇温させて240℃の温度範囲に到達させた後、真空ポンプを用いて1時間段階的に圧力を低くして反応器の内部圧力を0.7Torr以下に減圧し、オートクレーブのTorque meterに伝達される負荷が80%Torqueに到達された時にドレインして、ポリエステルを得る。
【0203】
[実験例2:ポリエステルの分析]
実施例1および比較例1の2,5-フランジカルボン酸を用いて製造されたポリエステルに対してゲル透過クロマトグラフィー(GPC)の測定結果を表2にまとめる。
【0204】
【0205】
表2を参照すれば、5-ホルミルフランカルボン酸などを精製しない比較例1の2,5-フランジカルボン酸を用いて製造されたポリエステルは、PDI(=Mw/Mn)が約2.34であり、5-ホルミルフランカルボン酸などを精製した実施例1の2,5-フランジカルボン酸を用いて製造されたポリエステルは、PDI(=Mw/Mn)が約1.81に減少することを確認できる。
【0206】
また、実施例1の2,5-フランジカルボン酸を用いて製造されたポリエステルの場合、低分子ピーク(peak)が減少し、Mnが高分子量にシフト(shift)され、全体PDIが狭くなってより単分散(monodisperse)ポリマーが得られたことが分かる。
【0207】
さらに、実施例1、比較例1、および比較例4で製造された2,5-フランジカルボン酸を用いて製造されたポリエステルに対してFFCAの含有量、粘度(IV)、およびb*値を測定し、その結果を表3にまとめる。
【0208】
【0209】
表3を参照すれば、全体遷移金属の含有量が200ppm以下の時、ポリエステルの変色がないことが分かる。
【0210】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本開示は、不均一系触媒を用いてフランジカルボン酸系化合物を製造しながらも、ポリエステルの変色要因になる不純物を除去することによって、ポリエステルの変色を防止可能であり、分子量がより大きいポリエステルを製造できるフランジカルボン酸系化合物の製造方法を提供することができる。
【国際調査報告】