(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】CXCL12に対する抗体及びそれを含む脱毛治療用組成物
(51)【国際特許分類】
C07K 16/24 20060101AFI20241128BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241128BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20241128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
A61P17/14
A61K39/395 N
A61K39/395 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538090
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2022021227
(87)【国際公開番号】W WO2023128494
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0188304
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522051971
【氏名又は名称】エピ バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チェン,メイ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、CXCL12に対する中和抗体を含む脱毛治療用組成物に関し、CXCL12に対する中和抗体がCXCL12を抑制し、毛髪の成長を促進する効果を有するので、脱毛の予防または治療のための用途に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、
配列番号4のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、
CXCL12に特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、
配列番号4のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項1に記載のCXCL12に特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項3】
配列番号1のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、
配列番号4のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項1に記載のCXCL12に特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項4】
配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、
配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項1に記載のCXCL12に特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項5】
配列番号1のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、
配列番号4のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列と90%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、
CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項6】
配列番号1のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、
配列番号4のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列と95%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項5に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、
配列番号4のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列と99%以上の配列相同性を有する配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項5に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項8】
配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、
配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項5に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項9】
配列番号7~配列番号9のアミノ酸配列のいずれかの配列と90%以上の配列相同性を有する配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号10~配列番号12のアミノ酸配列のいずれかの配列と90%以上の配列相同性を有する配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項10】
配列番号7~配列番号9のアミノ酸配列のいずれかの配列と95%以上の配列相同性を有する配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号10~配列番号12のアミノ酸配列のいずれかの配列と95%以上の配列相同性を有する配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項11】
配列番号7~配列番号9のアミノ酸配列のいずれかの配列と99%以上の配列相同性を有する配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号10~配列番号12のアミノ酸配列のいずれかの配列と99%以上の配列相同性を有する配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項12】
配列番号7~配列番号9のアミノ酸配列のいずれかの配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号10~配列番号12のアミノ酸配列のいずれかの配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項13】
配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項14】
配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項15】
配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項16】
配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項17】
配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項18】
配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項19】
配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項20】
配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項21】
配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、
請求項9に記載のCXCL12に特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項22】
請求項1~21のいずれかに記載の抗体を含む、脱毛の予防または治療用薬学組成物。
【請求項23】
前記脱毛が、円形脱毛、遺伝性アンドロゲン性脱毛、休止期脱毛、外傷性脱毛、抜毛癖、圧迫性脱毛、成長期脱毛、粃糠性脱毛、梅毒性脱毛、脂漏性脱毛、症候性脱毛、瘢痕性脱毛、先天性脱毛、及び薬物副作用による脱毛からなる群から選択されることを特徴とする、
請求項22に記載の脱毛の予防または治療用薬学組成物。
【請求項24】
前記薬物副作用による脱毛が、抗癌剤、抗凝固剤、抗うつ剤及びホルモン剤からなる群から選択される薬物による脱毛であることを特徴とする、
請求項23に記載の脱毛の予防または治療用薬学組成物。
【請求項25】
前記抗癌剤が、黒色腫、上皮癌、乳癌、子宮頸癌、固形癌、尿路上皮細胞癌、非小細胞肺癌、膵臓腺癌、腎臓癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、食道癌及び消化管癌からなる群から選択される癌の治療のための抗癌剤であることを特徴とする、
請求項24に記載の脱毛の予防または治療用薬学組成物。
【請求項26】
請求項1~21のいずれかに記載の抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項27】
請求項26に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CXCL12に対する新規な抗体及びそれを含む脱毛治療用組成物に関する。具体的には、本発明は、CXCL12に対する中和抗体またはヒト化抗体に関し、前記抗体は、CXCL12を抑制することにより毛髪の成長を促進する効果を有する。
【背景技術】
【0002】
マウスの毛髪は、成長期(anagen)、退化期(catagen)及び休止期(telogen)の3段階周期を経て成長、維持及び脱落する。一般に、成長期後の10日~14日間に全般的な毛嚢細胞の細胞死(apoptosis)が起こり、毛嚢が縮小する段階である退化期(catagen)、平均3カ月の次の成長期を準備する段階である休止期(telogen)を経て毛髪が抜ける。部位によって毛髪の長さが異なる理由は、各部位によって毛嚢の固有の特徴である成長期の持続期間が異なるからである。
【0003】
ヒトの毛髪も一定の毛髪成長周期(hair growth cycle)を有するので、常に一定の数の毛髪が維持される。しかしながら、脱毛が進むと毛根に存在する毛乳頭が小さくなり、毛乳頭が小さくなると髪の毛の太さが細くなり、それと同時に毛髪成長周期も短くなる。よって、脱毛が進むと髪の毛は非常に細くなり、毛髪成長周期はさらに短くなるので、少し成長すると抜けてしまう。
【0004】
脱毛の原因としては、遺伝的な原因、男性ホルモンの作用だけでなく、内分泌疾患、栄養欠乏、薬物使用、出産、発熱、手術などの激しい身体的、精神的ストレスなどの要因が複合的に作用することが知られている。最近は、男性型脱毛だけでなく、食生活の変化、社会環境などによるストレスの増加に伴って女性の脱毛人口も増加する傾向にあり、年齢も低くなっている。
【0005】
現在、韓国で最も頻繁に用いられている脱毛治療剤としては、フィナステリド(finasteride;商品名Propecia(登録商標))、デュタステリド(dutasteride;商品名Avodart(登録商標))、ミノキシジル(minoxidil;商品名マイノクシル(登録商標)またはRogaine(登録商標))などが挙げられる。フィナステリド及びデュタステリドは、5α還元酵素阻害薬(5α-reductase inhibitor)であり、男性ホルモン(testosterone)が5α-dihydrotestosterone(DHT)に変換されることを阻害する。しかしながら、これらの製品は、性欲減退、勃起不全、運転及び遂行能力喪失などの副作用を引き起こす。一方、ミノキシジルは、いまだその機序が完全には解明されていないが、細胞膜を過分極(hyperpolarization)させるカリウムチャネル開口薬(potassium chaennel opener)であり、血管拡張及びカリウムチャネル開口により毛嚢への酸素、血液、栄養素などの供給を増加させ、毛嚢を健康にするものと考えられている。しかしながら、この製品も塗布部位のかゆみ、紅斑、皮膚の刺激、目の刺激などの副作用を引き起こし、頭以外の他の身体部位での望ましくない毛髪の成長も観察されている。また、近年、重症の脱毛患者を対象に毛髪移植術が試みられているが、高価な費用と施術後の副作用による限界が指摘されている。
【0006】
一方、ケモカイン(chemokine)は、白血球走化性因子であり、身体の様々な組織に白血球を誘引する役割を果たすが、その過程は炎症及び感染に対する身体反応の全てにおいて必須である。ケモカイン及びその受容体は、免疫調節、炎症性及び感染性疾患の病理生理学において中心となるだけでなく、近年、ケモカイン及びその受容体の種類に応じて自己免疫疾患をはじめとする特定病症に対する特異的な役割が示されており、特定のケモカインまたはその受容体の活性を調節する治療的アプローチが提示されている。
【0007】
よって、本発明者らは、新規な脱毛治療剤を開発すべく努力した結果、ケモカインの一種であるCXCL12に対する抗体で処理すると、毛嚢及び毛髪の成長が促進されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Tran PB et al.,Chemokine receptors in the brain:a developing story.J.Comp.Neurol.2003;457:1-6.
【非特許文献2】Zou YR et al.,Function of the chemokine receptor CXCR4 in haematopoiesis and in cerebellar development.Nature.1998;393:595-599.
【非特許文献3】Michel et al.Study of gene expression alteration in male androgenetic alopecia:evidence of predominant molecular signaling pathways.British journal of dermatology.2017;177:1322-1336.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、CXCL12に対する抗体を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、CXCL12に対する抗体を含む、脱毛の予防または治療用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、CXCL12に特異的に結合する抗体、CXCL12に特異的に結合する抗体を含む、脱毛の予防または治療用薬学組成物、並びにCXCL12に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチド及びそれを含むベクターを提供する。
【0012】
前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するモノクローナル抗体であってもよく、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0013】
前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよく、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であることが好ましい。
【0014】
前記抗体は、配列番号7~配列番号9のアミノ酸配列のいずれかの配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を含む重鎖可変領域と、配列番号10~配列番号12のアミノ酸配列のいずれかの配列と少なくとも90%、95%または99%の配列相同性を有する配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよく、配列番号7~配列番号9のアミノ酸配列のいずれかの配列を含む重鎖可変領域と、配列番号10~配列番号12のアミノ酸配列のいずれかの配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であることが好ましい。
【0015】
前記抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよく、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよく、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよい。
【0016】
前記抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよく、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよく、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよい。
【0017】
前記抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよく、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよく、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよい。
【0018】
前記脱毛は、円形脱毛、遺伝性アンドロゲン性脱毛、休止期脱毛、外傷性脱毛、抜毛癖、圧迫性脱毛、成長期脱毛、粃糠性脱毛、梅毒性脱毛、脂漏性脱毛、症候性脱毛、瘢痕性脱毛、先天性脱毛、または薬物副作用による脱毛であってもよい。また、前記薬物副作用による脱毛は、抗癌剤、抗凝固剤、抗うつ剤またはホルモン剤による脱毛であってもよく、前記抗癌剤は、黒色腫、上皮癌、乳癌、子宮頸癌、固形癌、尿路上皮細胞癌、非小細胞肺癌、膵臓腺癌、腎臓癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、食道癌及び消化管癌からなる群から選択される癌の治療のための抗癌剤であってもよい。
【0019】
本発明は、前記CXCL12に特異的に結合する抗体を含む、脱毛の予防または治療用途のための組成物を提供する。
【0020】
本発明は、前記CXCL12に特異的に結合する抗体を含む、脱毛の予防または治療のための組成物の用途を提供する。
【0021】
本発明は、脱毛を有する対象体に、前記CXCL12に特異的に結合する抗体を投与して脱毛を治療する方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、CXCL12に対する新規な抗体及びそれを含む脱毛治療用組成物に関するものであり、CXCL12に対する抗体がCXCL12を抑制し、毛髪の成長を促進する効果を有するので、脱毛の予防または治療のための用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ヒト毛嚢培養モデルにおける、本発明のCXCL12に対する中和抗体処理による毛嚢成長の結果を示す図である。
【
図2】ヒト毛嚢培養モデルにおける、本発明のCXCL12に対する中和抗体処理による毛嚢成長の結果を示す図である。
【
図3】マウス成長期誘導モデルにおける、本発明のCXCL12に対する中和抗体処理による毛髪成長の結果を示す図である。
【
図4】マウス成長期誘導モデルにおける、本発明のCXCL12に対する中和抗体処理による毛髪成長の結果を示す図である。
【
図5】本発明のCXCL12に対するヒト化抗体の抗原結合親和性を分析した結果を示す図である。
【
図6】マウスヒゲ培養モデルにおける、本発明のCXCL12に対するヒト化抗体処理による毛嚢成長の結果を示す図である。
【
図7】マウスヒゲ培養モデルにおける、本発明のCXCL12に対するヒト化抗体処理による毛嚢成長の結果を示す図である。
【
図8】マウス成長期誘導モデルにおける、本発明のCXCL12に対するヒト化抗体処理による毛髪成長の結果を示す図である。
【
図9】マウス成長期誘導モデルにおける、本発明のCXCL12に対するヒト化抗体処理による毛髪成長の結果を示す図である。
【
図10】円形脱毛動物モデルにおける、本発明のCXCL12に対するヒト化抗体処理による毛髪成長の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態及び実施例について詳細に説明する。しかしながら、本発明は様々な形態で実現することができ、本明細書における実施形態及び実施例に限定されるものではない。
【0025】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは特に断らない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0026】
本発明は、CXCL12に対する中和抗体またはヒト化抗体、及びCXCL12に対する抗体を含む脱毛治療用組成物に関する。
【0027】
前記CXCL12に対する中和抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するモノクローナル抗体であってもよく、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよく、配列番号7~配列番号9のアミノ酸配列のいずれかの配列を含む重鎖可変領域と、配列番号10~配列番号12のアミノ酸配列のいずれかの配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CXCL12に特異的に結合するヒト化抗体であってもよい。
【0028】
本発明における「CXCL12(C-X-C motif chemokine 12)」とは、ケモカインの一種である間質細胞由来因子1(Stromal cell-derived factor 1,SDF1)であり、C-X-Cケモカイン受容体CXCR4のリガンドとしてCXCR4と相互作用することが知られており、CXCR7(RDCI)のリガンドとしても報告されている。CXCL12は、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、脳、骨格筋、内皮細胞、上皮組織、幹細胞など、様々な組織タイプにおいて広範囲に発現する。
【0029】
本発明における「ケモカイン」とは、白血球遊走作用、活性化作用を有する塩基性でヘパリン結合性の低分子タンパク質を意味する。ケモカイン分子中には4つのシステイン残基が存在し、最初の2つの分子中のシステイン残基の存在形式により、CXC(CXCL)、CC(CCL)、CX3C(CX3CL)、C(XCL)の4つの亜科に分類され、現在、少なくとも40種が同定されている。
【0030】
本発明における「中和抗体」とは、粒子状であるか、分子状であるかに関わらず、抗原が生体に対して感染力、または毒性、酵素活性などの生物学的活性を有する場合に、抗原特異的に結合して活性を消失または減退させる抗体を意味する。
【0031】
本発明における「ヒト化抗体」とは、ヒトにより生産された抗体のものに相当するアミノ酸配列を有する抗体、及び/または本発明で開示されたヒト抗体作製技術により作製された抗体を意味する。
【0032】
前記「抗体」とは、天然免疫グロブリン、または部分的もしくは全体的に合成により生産された免疫グロブリンを意味する。また、前記用語には、抗体の抗原結合ドメインを含む任意のポリペプチドまたはタンパク質が含まれる。抗原結合ドメインを含む抗体断片は、Fab、scFv、Fv、dAb、Fd、ダイアボディ(diabody)などの分子である。「抗体」なる用語は、広範囲の意味で用いられ、具体的には、完全なモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの完全な抗体から形成された多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)が含まれるものであり、所望の生物学的活性を示すものであれば、抗体断片も含まれるものである。抗体は、2つの重鎖(heavy chain)と、2つの軽鎖(light chain)とから構成され、対象抗原の種類に応じてアミノ酸配列が変化する可変領域(variable region)と、配列が変化しない定常領域(constant region)とを有する。
【0033】
前記軽鎖及び重鎖の可変領域は、「相補性決定領域(complementarity-determining region,CDR)」と呼ばれる非常に可変的な3つの領域を含む。CDRは抗原のエピトープ(epitope)に結合し、各鎖のCDRは典型的に3つの領域(CDR1、CDR2及びCDR3)を有する。
【0034】
本発明における「特異的に結合する(specifically binding)」とは、当業者に周知であるが、具体的には、抗原及び抗体が特異的に相互作用して抗原抗体複合体を形成すると共に、免疫学的反応を引き起こすことを意味する。
【0035】
本発明における「脱毛」とは、その原因には関係なく、正常に毛髪が存在すべき部位に毛髪が存在しない状態を意味し、円形脱毛、遺伝性アンドロゲン性脱毛、休止期脱毛、外傷性脱毛、抜毛癖、圧迫性脱毛、成長期脱毛、粃糠性脱毛、梅毒性脱毛、脂漏性脱毛、症候性脱毛、瘢痕性脱毛、先天性脱毛、または薬物副作用による脱毛であるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明における「予防」とは、組成物の投与により疾患の発病を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味し、「治療」とは、組成物の投与により疾患の発症個体及びその疑いのある個体の症状を好転または有利に変化させるあらゆる行為を意味する。
【0037】
本発明の薬学組成物は、それぞれ通常の方法で散剤、顆粒剤、錠剤、軟質または硬質カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口剤形、軟膏、クリームなどの皮膚外用剤、坐剤、注射剤、フィラー、滅菌注射溶液などをはじめとして、製剤に適したいかなる形態に剤形化して用いてもよい。
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は単に本発明を説明するものにすぎず、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0039】
CXCL12に対する中和抗体の作製
1-1.免疫化したマウスの作製
sinobiologics社から購入した組換えhuman CXCL12タンパク質(cat#13511-HNCE)50μg(マウス1匹分)を同じ体積の完全フロイントアジュバント(Freund’s Adjuvant)(sigma,USA)と混合してエマルジョンを作製した。このように作製したエマルジョンを7週齢の雌BALB/Cマウス6匹の腹腔内に注入した。抗原50μgを総容積500μLとして各マウスに注入した。1週間及び2週間経過後に、それぞれ不完全フロイントアジュバント(Sigma,USA)と抗原を混合したエマルジョンをマウスの腹腔内にさらに注入した。
【0040】
1-2.抗体産生の確認
前記方法により免疫化したマウスの眼球から血液を採取して1.5mLのマイクロ遠心分離チューブに入れ、その後13,000rpmで10分間遠心分離した。血清を分離し、抗体産生を確認する実験を行うまで-20℃で保管した。抗原タンパク質を用いた酵素免疫測定法により抗体産生を確認し、その後細胞融合の3日前に、不完全フロイントアジュバント(Sigma,USA)と抗原を混合したエマルジョンをマウスの腹腔内に再度注入した。
【0041】
1-3.ハイブリドーマの作製
抗体産生を確認し、その後マウスを屠殺した。脾臓細胞を分離し、骨髄腫細胞P3X63Ag8.653(ATCC CRL-1580)と融合させてハイブリドーマを作製した。具体的には、10%ウシ胎児血清を補充したRPMI1640培地を用いて、培養プレート内でマウスのP3X63Ag8.653細胞を培養した。細胞融合を行うために、P3X63Ag8.653細胞を無血清RPMI1640培地(Hyclone,USA)で2回洗浄し、1×107の細胞濃度となるように調整した。マウスを頸椎脱臼により屠殺して脾臓を採取し、その後メッシュ容器(Sigma,USA)に入れて細胞を分離した。脾臓細胞の懸濁液を作製し、その後遠心分離により懸濁液を洗浄した。脾臓細胞溶液をTris-NH4Cl(TRIS 20.6g/L,NH4Cl 8.3g/L)に曝露して赤血球細胞を溶解させた。完全に分離した抗体産生細胞を400×gで5分間遠心分離した。その後、無血清培地で2回洗浄し、10mLの培地に再懸濁させた。リンパ細胞を血球計で計数し、リンパ球1×108を無血清培地中でP3X63Ag8.653細胞1×10(10:1)と混合した。400×gで5分間遠心分離し、その後37℃に加温した50%(M/V)ポリエチレングリコール1500(sigma,USA)を用いて、1mLの溶液を滴下して1分間混合した。このように作製した融合混合溶液を無血清RPMI1640で希釈し、400×gで3分間遠心分離した。20%ウシ胎児血清及びHAT(100μMヒポキサンチン,0.4μMアミノプテリン、16μMチミジン)を補充したRPMI1640選択培地35mLに細胞を懸濁させた。1日前にフィーダー細胞(RPMI1640を用いて腹腔から分離したマクロファージ)でコーティングした96ウェルプレートに懸濁液100μLをローディングし、37℃、5%CO2で培養した。5日後から、HAT培地を2~3日間隔で交換し、細胞を14日間培養した。14日後に、20%ウシ胎児血清及びHT(HATから0.4μMアミノプテリンを除去した培地)を補充したRPMI1640培地に交換し、2次培養を行った。
【0042】
1-4.抗体産生融合細胞の選択及び分離
前述したように作製した融合細胞の培養液の上清を収集し、酵素免疫測定法により、前述したように作製した抗原に対して特異的な抗体産生の有無を確認した。陰性対照群に比べて4倍以上の適正濃度を示す融合細胞の培養液を選択し、24ウェルプレートに移して培養した。さらに、96ウェルプレートに1ウェル当たり1つの細胞が入るように希釈して(limiting dilution)培養し、その後培養液を回収し、96ウェルプレートに抗原として用いるCXCL12タンパク質を1ウェル当たり0.1μgとなるようにコーティングした。その後、酵素免疫測定法により、最終的にモノクローナル抗体を産生する融合細胞を選択した。
【0043】
1-5.モノクローナル抗体の分析
前記過程で得られたCXCL12に対する中和抗体を2B12と命名した。配列分析の結果、表1に示すように、配列番号1の配列を有するCDRH1、配列番号2の配列を有するCDRH2、及び配列番号3の配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域と、配列番号4の配列を有するCDRL1、配列番号5の配列を有するCDRL2、及び配列番号6の配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域とを含むことが確認された。
【0044】
【実施例2】
【0045】
ヒト毛嚢培養モデルにおける、CXCL12に対する中和抗体処理による毛嚢成長促進効果の確認
実施例1で作製したCXCL12に対する中和抗体を対象に、毛嚢成長促進効果を次のように確認した。
【0046】
30代の男性の毛嚢を整えて器官培養した。毛嚢を48ウェルプレートで1ウェル当たり1つとなるように培養し、陰性対照群、陽性対照群(市販抗体50ng/mL,500ng/mL)及び2B12処理群(0.05ng/mL,0.5ng/mL,5ng/mL)の計6グループに分けてヒト毛嚢をそれぞれ処理し、次いで培養器にて4日間培養した。
【0047】
図1及び
図2に示すように、ヒト毛嚢の培養実験の結果、本発明のCXCL12に対する中和抗体2B12で処理すると、毛嚢の成長が促進されることが確認され、それは、陽性対照群と同等またはより優れたレベルであることが確認された。
【0048】
よって、本発明のCXCL12に対する中和抗体は、CXCL12を抑制することにより、毛嚢の成長を促進し、優れた発毛効果を有することが分かる。
【実施例3】
【0049】
マウス成長期誘導モデルにおける、CXCL12に対する中和抗体処理による毛髪成長促進効果の確認
実施例1で作製したCXCL12に対する中和抗体を対象に、毛髪成長促進効果を次のように確認した。
【0050】
生後7週齢の雄C3H/HeNマウス17匹の毛を除毛機械により短くし、除毛剤により残った毛を完全に除去し、その後1日間馴化して実験に用いた。1グループ5~6匹ずつに分けて実験を行った。陰性対照群(IgG1,5μg/head)、陽性対照群(市販抗体5μg/head)及び2B12抗体投与群(5μg/head)の計4グループに分け、グループ別にマウスの背部に4日間隔で計4回皮下注射した(総投与量20μg/head)。各抗体の注入後17日間にわたって、前記マウスの背部の発毛の程度を追跡観察した。17日後に、発毛したマウスの背部を剃刀で剃り、得られた毛の重量を測定した。
【0051】
図3及び
図4に示すように、マウスにおける毛髪成長促進効果を評価した結果、本発明のCXCL12に対する中和抗体2B12を投与すると、毛髪の成長が促進されることが確認された。
【0052】
よって、本発明のCXCL12に対する中和抗体は、CXCL12を抑制することにより、毛髪の成長を促進し、優れた発毛効果を有することが分かる。
【実施例4】
【0053】
CXCL12に対する中和抗体に基づくヒト化抗体の作製
4-1.ヒト化抗体の作製
実施例1のCXCL12に対する中和抗体をヒトに対応する構造に変更したヒト化抗体(humanized antibody)を作製するために、マウス抗体のCDRをヒト抗体に移植するCDRグラフティング(CDR grafting)法により作製した。作製したヒト化抗体の配列を分析した結果を表2に示す。
【0054】
【0055】
4-2.ヒト化IgGの構築及び生産
ヒト化IgG抗体を構築するために、キメラ及びヒト化抗体の重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列を合成し、pcDNA3.4ベクターに挿入して全長hIgGの発現プラスミドを構成した。前記重鎖及び軽鎖プラスミドは、GenScriptProbioの標準作業手順書(SOP)に従ってトランスフェクションし、抗体発現はExpi293F細胞培養において行った。表3に示すように、重鎖及び軽鎖可変領域に対する計9つの組み合わせのヒト化抗体が発現した。
【0056】
【0057】
4-3.精製したヒト化IgGの抗原結合親和性の確認(ELISA)
前記9つの組み合わせのヒト化抗体の抗原結合親和性を次のように確認した。
【0058】
全ての抗体の初期濃度を100μg/mLとし、1/3ずつシリアルダイリューションしてウェルプレートに1ウェル当たり100μLとなるように4℃でO/N培養し、翌日3%のNonfat Milkと共に37℃で1時間培養した。その後、プレートを洗浄緩衝液で洗浄し、次いで2μg/mLの濃度の抗原(SDF-1α)100μLと共に室温で2時間培養した。2時間後に、洗浄緩衝液でウェルプレートを洗浄し、その後2次抗体(0.1μg/mL His-[HRP])を添加して45分間処理した。その後、洗浄したウェルプレートに100μLのTMB-substrateを添加して10分間反応させ、次いで50μLの1M HCLを添加して反応を停止させた。分光光度計を用いて450nmで吸光度を測定し、結合親和性を分析した。
【0059】
図5に示すように、抗原結合親和性を分析した結果、前記9つの組み合わせのヒト化抗体は抗原結合親和性に優れることが確認され、特に4つのヒト化抗体は抗原結合親和性がキメラ(chimeric)抗体より優れることが確認された。
【実施例5】
【0060】
マウスヒゲモデルにおける、CXCL12に対するヒト化抗体処理による毛嚢成長促進効果の確認
実施例4で作製したCXCL12に対するヒト化抗体を対象に、毛嚢成長促進効果を次のように確認した。
【0061】
C57BL/6雌マウスの硬毛を整えて器官培養した。毛嚢を48ウェルプレートで1ウェル当たり1つとなるように培養し、陰性対照群、キメラ(chimeric)抗体処理群(50ng/mL,500ng/mL)及びIgGヒト化抗体処理群(50ng/mL,500ng/mL)の計21グループに分けて硬毛をそれぞれ処理し、次いで37℃の培養器で2日間培養した。
【0062】
図6及び
図7に示すように、マウス毛嚢の培養実験の結果、本発明のCXCL12に対するヒト化抗体で処理すると、全て毛嚢の成長が促進されることが確認された。
【0063】
よって、本発明のCXCL12に対するヒト化抗体は、CXCL12を抑制することにより、毛嚢の成長を促進し、優れた発毛効果を有することが確認された。
【実施例6】
【0064】
マウス成長期誘導モデルにおける、CXCL12に対するヒト化抗体処理による毛髪成長促進効果の確認
実施例4で作製したCXCL12に対するヒト化抗体を対象に、毛髪成長促進効果を次のように確認した。
【0065】
生後7週齢の雄C3H/HeNマウス23匹の毛を除毛機械により短くし、除毛剤により残った毛を完全に除去し、その後1日間馴化した。1グループ5~6匹ずつに分けて実験を行った。グループは次の通りである。
グループ1:対照群(IgG1,50μg/head),5匹
グループ2:キメラ(chimeric)抗体(50μg/head)投与群,6匹
グループ3:(#1)VH1-VL1抗体(50μg/head)投与群,6匹
グループ4:(#3)VH1-VL3抗体(50μg/head)投与群,6匹
グループ5:(#4)VH2-VL1抗体(50μg/head)投与群,6匹
【0066】
前記グループ別にマウスの背部に1回皮下注射し(投与量50μg/head)、各抗体の注入後17日間にわたって、前記マウスの背部の発毛の程度を追跡観察した。17日後に、発毛したマウスの背部を剃刀で剃り、得られた毛の重量を測定した。
【0067】
図8及び
図9に示すように、マウスにおける毛髪成長促進効果を評価した結果、本発明のCXCL12に対するヒト化抗体で処理すると、毛髪の成長が促進されることが確認された。
【0068】
よって、本発明のCXCL12に対するヒト化抗体は、CXCL12を抑制することにより、毛髪の成長を促進し、優れた発毛効果を有することが確認された。
【実施例7】
【0069】
円形脱毛動物モデルにおける、CXCL12に対するヒト化抗体処理による毛髪成長促進効果の確認
実施例4で作製したCXCL12に対するヒト化抗体を対象に、毛髪成長促進効果を次のように確認した。
【0070】
Eddy Hsi Chun Wangらが、10週齢のC3H/HeJ動物モデルにおける円形脱毛(alopecia areata)動物由来のskin-draining lymph node cell(LNC)の移植を行って円形脱毛動物モデルを確保し、実験を行った。1グループ3匹ずつに分けて実験を行った。グループは次の通りである。
グループ1:対照群(IgG1,100μg/head),3匹
グループ2:VH1-VL3抗体(100μg/head)投与群,3匹
【0071】
実験開始1日目及び10日目に、前記グループ別にマウスのabdominal skin部分に計2回皮下注射し(投与量50μg/head/time)、6週間にわたって脱毛部位を写真撮影し、マウスの皮膚の発毛状態を観察した。
【0072】
図10に示すように、円形脱毛動物モデルにおける毛髪成長促進効果を評価した結果、本発明のCXCL12に対するヒト化抗体で処理すると、毛髪の成長が促進されることが確認された。
【0073】
よって、本発明のCXCL12に対するヒト化抗体は、CXCL12を抑制することにより、毛髪の成長を促進し、優れた発毛効果を有することが確認され、特に円形脱毛の治療効果を有することが確認された。
【配列表】
【国際調査報告】