(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】フォームマトリックスに埋め込まれたフォームの個別ユニットを含むフォームの調製
(51)【国際特許分類】
D21J 3/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
D21J3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538097
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 IB2022062666
(87)【国際公開番号】W WO2023119215
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2022-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2022-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2022-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コクルカヤ, オルチ
(72)【発明者】
【氏名】フルト トロン, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ガーナードポー, マルヤム
(72)【発明者】
【氏名】スターナー, マーティン
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AF09
4L055AH29
4L055AH36
4L055BE08
4L055BF08
4L055EA08
4L055GA05
4L055GA21
(57)【要約】
本発明は、固体フォームの調製のための方法であって、フォームの個別ユニットを表面に堆積させて、第1のフォーム堆積を得ることと、続いて後続のフォーム堆積を得るために個別ユニット間に湿潤フォームを堆積させ、湿潤フォームを乾燥させることとを含む、方法に関する。本発明は、フォームマトリックスに埋め込まれたフォームの個別ユニットを含む固体フォームにさらに関する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体フォームの調製のための方法であって、フォームの個別ユニットを表面に堆積させて第1のフォーム堆積を得ることと、湿潤フォームを個別ユニット間に堆積させて後続のフォーム堆積を得ることと、湿潤フォームを乾燥させて固体フォームを得ることとを含み、フォームの個別ユニットがフォームマトリックスに埋め込まれている、方法。
【請求項2】
個別ユニットの高さが、後続のフォーム堆積における湿潤フォームの高さの70~100%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
後続のフォーム堆積における湿潤フォームが、湿潤フォームの総重量に対して計算した場合、少なくとも10重量%のセルロースを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
個別ユニットが、表面に個別ユニットとして湿潤フォームを分配し、続いて湿潤フォームを乾燥させることによって得られる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
個別ユニットが、湿潤フォームを押し出し、フォームを乾燥させ、乾燥したフォームを個別ユニットに切断し、個別ユニットを表面に堆積させることによって得られる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
個別ユニットにおいて使用される湿潤フォームが、湿潤フォームの総重量に対して計算した場合、少なくとも10重量%のセルロースを含む、請求項4から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
湿潤フォームが、70~600kg/m
3の密度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
固体フォームが、フォームの総重量に対して計算した場合、75~95重量%のセルロースファイバーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
固体フォームが、10~60kg/m
3の密度を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
個別ユニットにおけるフォームの密度が、フォームマトリックスの密度よりも高い、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
各個別ユニットの幅が、その高さの1.3倍未満である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
コーティングが、個別ユニットおよび/または固体フォームの少なくとも1つの外面に塗布される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
固体フォームであって、フォームマトリックスに埋め込まれたフォームの個別ユニットを含み、固体フォームが、フォームの総重量に対して計算して、少なくとも75~95重量%のセルロースファイバーを含むことを特徴とする、固体フォーム。
【請求項14】
個別ユニットの高さが、フォームマトリックスの高さの70~100%である、請求項13に記載の固体フォーム。
【請求項15】
固体フォームが、10~60kg/m
3の密度を有する、請求項13または14のいずれか一項に記載の固体フォーム。
【請求項16】
各個別ユニットが、フォームの緻密化層によって囲まれている、請求項13から15のいずれか一項に記載の固体フォーム。
【請求項17】
個別ユニットにおけるフォームの密度が、フォームマトリックスの密度よりも高い、請求項13~16のいずれか一項に記載の固体フォーム。
【請求項18】
各個別ユニットの幅が、その高さの1.3倍未満である、請求項13から17のいずれか一項に記載の固体フォーム。
【請求項19】
個別ユニットおよび/または固体フォームの外面にコーティングが設けられている、請求項13~18のいずれか一項に記載の固体フォーム。
【請求項20】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって調製された固体フォーム。
【請求項21】
包装または大型建造物における、または水耕栽培植物の生育培地としての、請求項13から19のいずれか一項に記載の固体フォームの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体フォームの調製のための方法であって、フォームの個別ユニットを表面に堆積させて第1の堆積を得ることと、続いて湿潤フォームを個別ユニット間に堆積させて後続の堆積を得ることと、湿潤フォームを乾燥させて固体フォームを得ることとを含み、フォームの個別ユニットがフォームマトリックスに埋め込まれている、方法に関する。本発明は、フォームマトリックスに埋め込まれたフォームの個別ユニットを含む固体フォームにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、湿潤フォーム材料を堆積させ、低密度の厚いフォーム材料を製造するために様々な技法が使用されている。国際公開第2020011587号パンフレットでは、セルロースファイバーおよびグルテンの多孔質材料は、セルロースファイバーおよびグルテンの通気湿潤フォームをモールドに一度に堆積させ、続いて乾燥させて、モールドの形状およびバルク全体にわたる均一なファイバーネットワークを有する乾燥多孔質材料を得ることによって調製される。国際公開第2015036659号パンフレットでは、湿潤ファイバーフォームがモールドに供給され、そこでフォームに含有される水の一部が機械的に引き抜かれて固化した湿ったファイバー組成物を生成し、水を蒸発させて乾燥ファイバー製品を生成する。これらの技法は、最終フォームシートがシートの面に高密度化された層を提示し得るが、フォームシートのコアは密度のより低い均一なファイバーネットワークであるという点で同様である。
【0003】
粒子フォームまたはファイバーフォームが崩壊すると、張力が粒子またはファイバーを一緒に引っ張るため、フォームシートの厚さは収縮する。乾燥収縮はセルロースの固有の特性であり、これは、水がシステムから除去されるとファイバーが互いに崩壊するためである。空気衝突とIR乾燥機の組合せなどのより複雑な乾燥システムでも、10%を超える収縮が予想される。
【0004】
従来の製紙技法と同様に、フォーム形成はスクリーン上に排水される必要がある。この場合、材料は排水中に水平になるため、材料の形状およびサイズが制限される。試料の密度および厚さは、通常1~4重量%である湿潤ファイバーフォーム濃度および乾燥前の排水量によって決定される。一般に、乾燥含有量は、排水後に約1%~8%である。効率的な排水を行うためには、水を効率的に抽出するために懸濁液の粘度をかなり低く保つ必要がある。任意の可溶型結合剤は、低濃度に制限され、過剰な損失を回避するためにファイバー上に保持することができる。したがって、排水により、この種のプロセスで使用することができる添加剤の数は制限される。厚い低密度フォームで形成される紙の強度は、材料のバルクによって主に制御される。ここで強度を改善する主な手段は、排水特性に基づいて、ファイバー配向をある程度制限して密度を増加させることである。
【0005】
国際公開第2020011587号パンフレットなどの大量のタンパク質ベースのフォーム剤から製造されたフォームなどのより高い乾燥含有量の技法では、材料の大部分が水溶性でないか、または製品から容易に洗い流されないため、リサイクル性が妨げられる。本方法は、タンパク質粒子が凝集し始め、気泡が合体すると、湿潤状態で泡が徐々に崩壊するため、湿潤フォーム安定性に乏しいことにも悩まされる。この事実により、本方法は自立式湿潤フォーム堆積の不適切な候補となる。
【0006】
収縮を避けるために、フォームは張力下で乾燥する必要があるが、非常に大きな表面積を乾燥させる場合、フレームまたはモールドによって得られる張力は、モールドに最も近い領域に制限される。よって、特に大きな表面積を乾燥させる場合、収縮が問題となる。湿潤フォームと乾燥フォームの両方が断熱性であるため、フォームの乾燥時間は典型的には長い。費用効率の高いプロセスを可能にするために、短い乾燥時間が望ましい。よって、フォームを調製するための代替方法が依然として必要とされている。さらに、調製されたフォームは、より重い物体の保護も可能にする包装材料として使用される場合に高い耐衝撃性を有するべきである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、フォームの収縮が低減されたフォームの調製に適した方法を提供することである。本方法は、制御された湿式堆積技術によって、厚い低密度フォーム材料の構造制御を可能にし、セルロースフォームシートの調製に特に適している。好ましくは、本方法はまた、フォームのより短い乾燥時間を可能にする。
【0008】
さらなる目的は、良好な寸法安定性を有する軽量固体フォームを提供することである。
【0009】
より詳細には、本発明は、セルロースフォームマトリックスに埋め込まれたセルロースフォームの個別ユニットを含むセルロースフォーム材料であって、低密度を有する、セルロースフォーム材料に関する。個別ユニットを囲むセルロースフォームマトリックスは、個別ユニットと同じフォーム組成物から構成されてもよい。個別ユニットは、緻密化層によってマトリックスと区別されてもよい。さらに、このフォーム材料は、各堆積後に乾燥工程を有する2つ以上の個々の堆積工程によって作製することができる。本方法は、高密度化されたセルロースファイバー壁の作成および制御を可能にする。乾燥すると、ファイバーを水に再分散させることができ、結果として、通常の紙リサイクルの流れでフォームをリサイクルすることができる。
【0010】
よって、本発明は、セルロースフォームマトリックスに埋め込まれたセルロースフォームの個別ユニットを含む特徴的なマクロ構造を有するセルロースフォームと、多工程の堆積および乾燥方法を含むフォームを得るための方法との両方に関する。
【0011】
セルロースフォームは、緩衝材としての保護包装、コールドチェーンロジスティクスのための断熱、および建築材料、防音パネル、水耕栽培植物の生育培地、および軽量で高性能なバイオ系材料を必要とする他の用途における技術に貢献ことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】A)は、上部と下部が緻密化した先行技術のフォーム板の概略図を示し、B)は、バルク全体にわたってより密度の低い均一なファイバーネットワークを含むそのようなフォーム板の内部バルクの概略図を示す。
【
図2】幅対高さのアスペクト比が収縮に及ぼす影響を示す、乾燥後の比較フォームの断面の概略図である。
【
図3】a)は、比較セルロースフォームの単一の大きなブロックの乾燥から得られたグラフを示し、緻密化層、すなわち外皮の乾燥厚さ(-)を左のY軸に、収縮プロファイル(○)を右のy軸に、乾燥中の液体水の蒸気への変換%の関数として示し、b)は、湿潤環境(灰色領域)および乾燥中の2つのファイバー(白丸)の断面を例示する。
図3b)の工程A)、B)およびC)は、
図3a)のゾーンA)、B)およびC)の状況に対応する。
【
図4】i)個別ユニットとしてのセルロースフォームの第1の堆積、ii)個別ユニットを乾燥させてiii)セルロースフォームの自立する個別ユニットを作成する間欠的な乾燥工程、iv)セルロースフォームの個別ユニット間のセルロースフォームの第2の堆積、およびv)vi)セルロースフォームの個別ユニットを含むセルロースフォーム材料を得るための第2の乾燥工程を有する2工程の堆積を例示する。
【
図5】本発明の方法に従って製造された固体フォームシートの概略図を示し、A)は、上部と下部に緻密化層を有する固体フォームを黒色で例示し、他の技法で製造されたフォームシートと外観が類似しており、B)は、緻密化された上部と下部の下方の材料のバルクを例示し、バルクは、セルロースフォームの個別ユニット(黒色の直方体)を含有し、各個別ユニットは、セルロースの緻密化層によって周囲のフォームマトリックスから区別され、C)は、黒色で例示されるセルロースの緻密化層(左)、および緻密化層の内側の均質なセルロースフォーム(右)によって囲まれた1つの個別ユニットを示す。
【
図6】(a)単一ブロックおよび(b)多工程の堆積の乾燥中の張力発生(より暗い領域でより高い張力)の差異を例示する。
【
図7】同じ密度のフォーム(30kg/m
3)について、実施例2に従って調製された単一工程の堆積(下側破線曲線)および実施例1に従って調製された多工程の堆積(上側実線曲線)を示す圧縮曲線の一例を示す。
【
図8】
図8a~
図8bは、異なるサイズの個別ユニットを有するセルロースフォーム板の乾燥時間を示し、単一工程のフォーム堆積の乾燥時間と比較している。8aは、幅が変化し、高さが2.1cmの個別ユニットの乾燥時間を示す。8bは、8aの個別ユニットを囲む後続の湿潤フォーム堆積の乾燥時間を例示し、後続の湿潤フォーム堆積の高さは2.1cmである。
【
図9】本発明による固体フォームの衝撃中の緩衝性能を示し、この緩衝性能は、フォームの上部に加速度計を含有する荷重でフォームを落下試験することによって測定される。
【
図10】本発明による固体フォームの衝撃中の緩衝性能を示し、この緩衝性能は、フォームの上部に加速度計を含有する荷重でフォームを落下試験することによって測定される。
【
図11】本発明による固体フォームの衝撃中の緩衝性能を示し、この緩衝性能は、フォームの上部に加速度計を含有する荷重でフォームを落下試験することによって測定される。5回の落下後の相対圧縮(
図9)として測定した、落下1(
図10)および落下2~5の平均(
図11)のピーク加速および劣化の結果を示す。セルロースフォームマトリックスと比較して同じかまたは異なる密度を有するフォームの個別ユニットから構成されるセルロースフォーム試料を試験し、単一工程で堆積したフォーム試料と比較した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の態様では、本発明は、固体フォームの調製のための方法であって、表面にフォームの個別ユニットを堆積させて、第1のフォーム堆積を得ることと、個別ユニット間に湿潤フォームを堆積させて、後続のフォーム堆積を得ることと、後続のフォーム堆積中の湿潤フォームを乾燥させて、固体フォームを得ることとを含み、フォームの個別ユニットがフォームマトリックス中に埋め込まれている、方法を提供する。
【0014】
「フォーム」という用語は、本明細書で使用される場合、固体または液体の内部に空気または気泡を捕捉することによって作製される物質を指す。典型的には、ガスの体積は液体または固体の体積よりもはるかに大きく、薄膜がガスポケットを分離している。フォームを形成するためには、3つの要件が満たされなければならない。表面積を増大させるためには機械的な作業が必要である。これは、撹拌、大量の気体の液体への分散、または気体を液体に注入することによって起こり得る。第2の要件は、表面張力を低下させるために、発泡剤、典型的には両親媒性物質、界面活性剤または表面活性成分が存在しなければならないことである。最後に、フォームは、破壊されるよりも迅速に形成されなければならない。フォームは、湿っていても乾燥していてもよく、すなわち固体であってもよい。
【0015】
「個別ユニット」という用語は、本明細書で使用される場合、固体フォーム内の個々のフォームユニットを指す。個別ユニットは、別個のフォームユニットとして堆積される。固体フォーム中の個別ユニット間の空間は、個別ユニットがフォームマトリックスに埋め込まれるように、フォームで満たされる。個別ユニットは、互いに、およびフォームマトリックスから区別可能である。
【0016】
一実施形態では、固体フォームはセルロースフォームであり、個別ユニットにおけるフォームおよびフォームマトリックスにおけるフォームは両方ともセルロースフォームである。「セルロースフォーム」という用語は、セルロース、ならびに増粘剤、界面活性剤および添加剤などの他の成分を含むフォームを指す。セルロースフォームの主成分はセルロースであり、セルロースは、セルロースフォームの固形分の少なくとも70重量%、または75~95重量%を構成する。セルロースはファイバーの形態であり、よって、フォームはファイバーフォームまたはセルロースファイバーフォームであると定義することもできる。フォームは、湿っていても乾燥していてもよい。
【0017】
個別ユニットにおいて使用される湿潤フォームは、ファイバーフォームであってもよい。個別ユニットにおいて使用される湿潤フォームは、湿潤フォームの総重量に対して計算して、少なくとも10重量%のセルロースファイバー、または少なくとも11重量%のセルロースファイバーを含み得る。湿潤フォームは、湿潤フォームの総重量に対して計算して、10~40重量%、11~40重量%、10~30重量%、11~30重量%、10~20重量%、または11~20重量%のセルロースファイバーを含み得る。セルロースファイバーは、木材パルプ、再生セルロースファイバー、または、竹、綿、麻、亜麻、およびジュート由来のファイバーなどの植物ファイバーから選択されてもよい。好ましくは、セルロースファイバーは、木材パルプ、例えば、針葉樹クラフト漂白パルプ、化学サーモメカニカルパルプ、溶解パルプ(例えば、漂白木材パルプまたはコットンリンター)、および広葉樹パルプ、より好ましくは、針葉樹クラフト漂白パルプおよび化学サーモメカニカルパルプ、ならびに最も好ましくは針葉樹クラフト漂白パルプから選択される。
【0018】
一実施形態では、個別ユニットは、個別ユニット内の湿潤フォームを表面に分配し、続いて個別ユニットを乾燥させることによって作製することができる。個別ユニットを形成する湿潤フォームは、70~600kg/m3、または100~500kg/m3、または100~400kg/m3、または125~375kg/m3、または140~375kg/m3の密度を有し得る。多数の小さな気泡は、フォームに安定性を与え、低密度を提供する。本方法で使用される湿潤フォームは、乾燥される前に崩壊しない個別ユニットの形成を可能にするのに十分に高い粘度および低い密度を有する。よって、各個別ユニットは、乾燥される前に崩壊することなく自立することができる。さらに、各個別ユニットは、乾燥中に崩壊することなく自立することができる。湿潤フォームの個別ユニットの乾燥は、少なくとも、外皮、すなわちセルロースファイバーの薄い緻密化層が個別ユニットの外面、例えば個別ユニットの各面に形成されるまで行われる。緻密化層は、乾燥中にフォームの非常に外側の表面に形成される非常に薄い層である。緻密化層は、二次元平面(x-y平面)に主に配向されたセルロースファイバーで構成され、フォームのバルク中のファイバーは、クラスター間により多くの空きスペースを有する三次元空間に配向されたファイバーのクラスターを含む。緻密化層のセルロースファイバーの二次元構造は、急速に、しかし徐々に、フォームのバルクに見られる三次元構造に移行する。緻密化層の薄い厚さは、フォームの全体的な密度に実質的に影響を及ぼさないが、個別ユニットの良好な機械的特性に依然として寄与することを意味する。
【0019】
任意選択的に、個別ユニットのさらなるフォーム堆積が、表面に、好ましくは第1の堆積の個別ユニット間に作製されてもよい。さらなる堆積において個別ユニットを形成する湿潤フォームは、70~600kg/m3、または100~500kg/m3、または100~400kg/m3、または125~375kg/m3、または140~375kg/m3の密度を有し得る。さらなる堆積において使用される湿潤フォームの密度は、第1の堆積における湿潤フォームと同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0020】
セルロースファイバーを含むフォームの個別ユニットが乾燥されると、それらのコアは密度を有する均一なファイバーネットワークからなり、それらの底面、上面および側面などのそれらの外面は、より高密度に充填されたファイバーネットワークからなる。第1のフォーム堆積において堆積した個別ユニットの面における高密度化層の形成は、個別ユニットをより強くし、湿潤フォームが個別ユニット間に堆積される場合に、後続のフォーム堆積中にそれらが崩壊するのを防止する。乾燥した個別ユニットは、10~60kg/m3または20~50kg/m3の全体密度を有し得る。一実施形態では、乾燥した個別ユニットは、10~80kg/m3の全体密度を有し得る。
【0021】
代替的な実施形態では、個別ユニットは、湿潤フォームを押出成形または鋳造することと、湿潤フォームを乾燥させて乾燥フォームを得ることと、前記乾燥フォームを個別ユニットに切断することと、前記個別ユニットを表面に堆積させることとによって作製することができる。好ましくは、湿潤フォームは、ボード、板、バーまたはロッドに押し出される。ボード、板、バーまたはロッドは、表面に堆積され得る個別ユニットに切断することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、フォームの個別ユニットは、後続のフォーム堆積の湿潤フォームが堆積されるときに少なくとも部分的に乾燥される。いくつかの実施形態では、フォームの個別ユニットは、後続のフォーム堆積の湿潤フォームが堆積される場合に完全に乾燥される。
【0023】
各個別ユニットは、円筒または多面体などの3次元形状を有し得る。対称多面体の例は、立方体、直方体、および六角柱である。個別ユニットの対称性の小さな変動は、フォームに安定性を付与するためにそれらの主目的を変更することなく存在し得る。例えば、円柱、立方体、直方体、および六角柱は、それらの対向する基部が常に正確に平行であり、互いに重なっているとは限らないように、わずかに歪んでいる場合がある。いくつかの実施形態では、各個別ユニットは円筒の形状を有する。「円筒」という用語は、曲面によって接続された2つの主に平行な合同の円形または楕円形の基部を有する閉じた固体として一般に定義される幾何学的図形に対して本明細書で使用される。いくつかの実施形態では、各個別ユニットは直方体の形状を有する。
【0024】
さらなるフォーム堆積において得られた個別ユニットは、第1の堆積で得られた個別ユニットと同じかまたは異なる三次元形状を有し得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、個別ユニットの高さは、ユニットが堆積した表面に対して垂直に測定される。本明細書で使用される場合、幅、または長さおよび幅の平均は、個別ユニットの下の部分で測定される。個別の下の部分は、個別ユニットが堆積した表面に最も近い個別ユニットの部分を指す。円形の個別ユニットでは、幅は個別ユニットの直径に対応する。個別ユニットの形状に応じて、個別ユニットの幅は、個別ユニットの高さ全体に沿って同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
個別ユニットの幅は、その高さの0.5~3倍、またはその高さの0.5~2倍、もしくは0.5~1.5倍、もしくは0.8~3倍、もしくは0.8~2倍、もしくは0.8~1.5倍、もしくは1~3倍、もしくは1~2倍、もしくは1~1.5倍であり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、個別ユニットの幅は、その高さの1.3倍未満、例えばその高さの1.2倍、または0.5~1.3倍、もしくは0.5~1.2倍、もしくは0.7~1.3倍、もしくは0.7~1.2倍、もしくは0.9~1.3倍、もしくは0.9~1.2倍未満である。個別ユニットの幅がその高さの1.3倍未満である場合、固体フォームに対する湿潤フォームの総乾燥時間は短縮される。
【0028】
「総乾燥時間」という用語は、本明細書で使用される場合、フォームが乾燥するのにかかる総時間、すなわち、個別ユニットの乾燥時間とフォームマトリックスの乾燥時間との合計を指す。
【0029】
いくつかの実施形態では、個別ユニットの幅は、上の部分よりも個別ユニットの下の部分の方が大きい。例えば、個別ユニットは、円錐、円錐台、角錐、または角錐台の形状を有し得る。いくつかの実施形態では、各個別ユニットはピラミッドの形状を有する。
【0030】
個別ユニットの幅が個別ユニットの上の部分よりも個別ユニットの下の部分で大きいいくつかの実施形態では、隣接する個別ユニットの下の部分は、互いに部分的に接触していてもよい。接触は、個別ユニットの下の部分の全周囲に沿って、または周囲の一部に沿っていてもよい。残りの高さ、すなわち、下の部分の上方に位置する個別ユニットの高さの一部では、個別ユニットは互いに分離されている、すなわち接触していない。例えば、個別ユニットは、個別ユニットが堆積した表面から垂直に測定した場合に、個別ユニットの高さの30%未満、または20%未満、または10%未満、または5%未満に沿って、1つまたはいくつかの隣接する個別ユニットと部分的に接触していてもよい。個別ユニットは別個のユニットとして堆積されるが、個別ユニットのサイズおよび形状は堆積技法に依存する。堆積した個別ユニットの下の部分は、個別ユニットにおける湿潤フォームの降伏応力に打ち勝つように十分に大きなせん断応力が加えられると、外側に流れるようにされてもよい。よって、隣接する個別ユニットの下の部分は互いに接触することができる。また、個別ユニットが部分的に接触している実施形態では、個別ユニットは、乾燥前と乾燥後の両方で互いに区別可能である。接触場所の異なる個別ユニットからの湿潤フォーム間で混合は生じない。
【0031】
湿潤フォームの後続の堆積は、既に乾燥された個別ユニット間で行われる。この後続の堆積における湿潤フォームの高さは、個別ユニットの高さよりわずかに高いかまたはそれに等しくてもよい。いくつかの実施形態では、個別ユニット間のフォームの前記堆積後、個別ユニットの高さは、前記個別ユニットを囲むフォームマトリックスの高さの90~100%、または95~100%、または98~100%であってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、個別ユニットの高さは、前記個別ユニットを囲むフォームマトリックスの高さの70~100%、または70~95%、または75~90%であってもよい。個別ユニットの高さが周囲のフォームマトリックスの高さよりも低い実施形態では、固体フォームの滑らかな上面が得られる。そのような実施形態では、個別ユニットは、フォームマトリックスによって覆われているため、固体フォームの上面からは見えない。
【0033】
いくつかの実施形態では、湿潤フォームの堆積はまた、個別ユニットの上部に、個別ユニットの湿潤フォームの前述の堆積と同時に、または連続的な堆積で行われてもよい。湿潤フォームの後続の堆積の表面は、乾燥前に削られて平らな表面を与えることができる。
【0034】
後続の堆積における湿潤フォームは、ファイバーフォームであってもよい。湿潤フォームは、湿潤フォームの総重量に対して計算して、少なくとも10重量%のセルロースファイバー、または少なくとも11重量%のセルロースファイバーを含み得る。湿潤フォームは、湿潤フォームの総重量に対して計算して、10~40重量%、11~40重量%、10~30重量%、11~30重量%、12~30重量%、10~20重量%、または11~20重量%、または12~20重量%のセルロースファイバーを含み得る。後続の堆積において使用されるセルロースファイバーは、異なる種類の木材パルプ、再生セルロースファイバー、または、竹、綿、麻、亜麻、およびジュート由来のファイバーなどの植物ファイバーから適切に選択される。好ましくは、セルロースファイバーは、木材パルプ、例えば、針葉樹クラフト漂白パルプ、化学サーモメカニカルパルプ(CTMP)、溶解パルプ(例えば、漂白木材パルプまたはコットンリンター)、および広葉樹パルプ、より好ましくは、針葉樹クラフト漂白パルプおよび化学サーモメカニカルパルプ、ならびに最も好ましくは針葉樹クラフト漂白ファイバーから選択される。後続の堆積において使用されるセルロースファイバーは、以前の堆積、すなわち第1の堆積および任意選択的にさらなる堆積の個別ユニットにおいて使用されるセルロースファイバーと同じ種類のものであり得る。
【0035】
後続の堆積において使用される湿潤フォームは、70~600kg/m3、または100~500kg/m3、または100~400kg/m3、または125~375kg/m3、または140~375kg/m3の密度を有し得る。本発明による方法で調製された固体フォームは、10~60kg/m3、または20~50kg/m3の密度を有し得る。一実施形態では、本発明による方法で調製された固体フォームは、10~80kg/m3の密度を有し得る。
【0036】
湿潤フォームにおいて、抵抗力はセルロースファイバーを定位置に保つ(
図3b、Aに例示される)。乾燥中、ファイバー間の水位が低下し、毛細管力がフォーム材料の内部に蓄積し、毛細管力が抵抗力を超えると、ファイバーが滑る(
図3b、B)。水が蒸発すると、抵抗力が増加し、乾燥前よりも互いに近い位置でファイバーが詰まり、材料が収縮する(
図3b、C)。巨視的レベルでは、フォームの幾何学的形状は、乾燥中に材料内に蓄積する引張ベクトルの方向および大きさに影響を及ぼす。フレームまたは穿孔面などの接触点は、反対方向の張力をもたらし、正味の張力に影響を与える。収縮などの変形は、正味の張力、すなわち張力ベクトルが、
図2および
図6aの個別ユニットがない比較例のフォームについて例示される任意の特定の方向に優勢である場合に生じる。よって、セルロースフォーム板の高さに対する幅または表面積の比は、乾燥時のフォーム材料における正味の張力の分布に影響を及ぼし、比が大きいほど、生じる正味の張力が大きくなる。
【0037】
本発明の方法による発泡材料を調製すると、乾燥時に材料に生じる正味の張力は低下し、よって材料の収縮を緩和することができる。
図4は、本発明の方法の一実施形態を例示し、湿潤ファイバーフォームは、小さな個別ユニットとして表面に堆積して、第1の堆積(i)を得る。各個別ユニットは、幅対高さのアスペクト比が低く、個別ユニットを乾燥させた場合に各個別ユニットの収縮を排除するかまたは大幅に低減する(ii)。個別ユニットが乾燥すると、個別ユニットは、均一なファイバーネットワークを含むコアと、高密度化された外面(すなわち、上部、下部、および側面部)とからなる(iii)。よって、湿潤フォームの後続の堆積は、既に乾燥された個別ユニット間の表面に作製される(iv)。後続の堆積の湿潤フォームが乾燥されると(v)、表面に既に分配されている第1の堆積の個別ユニットは、後続の堆積における湿潤フォームの幅対高さ比を低くする。各個別ユニットの張力は、互いに作用し、よって、後続の堆積のフォームにおける正味の張力を低下させ、乾燥中の張力の蓄積を抑制し、その結果、得られた固体フォームの外形寸法に対する収縮の影響を緩和する(vi)。よって、本発明の方法は、特にz方向の収縮が低減された固体フォーム体の形成をもたらす。さらに、本方法は、壁を有するモールドを使用する必要なく発泡体の形成を可能にし、これは、建物などの大型建築物および他の大型構造物において使用するためのボードまたは板などの非常に大きな物体がこの方法で製造され得ることを意味する。
【0038】
製造される固体フォーム体のサイズは、第1の堆積、および任意選択にさらなる堆積において配置することができる個々の個別ユニットの数およびそれらの間の距離に依存し得る。本方法は、少なくとも60*60cm、または少なくとも100*100cm、または少なくとも200*200cm、または少なくとも300*300cm、または少なくとも400*400cmの発泡板の製造を可能にする。発泡板の厚さは、1~20cm、または1~10cm、または1~5cmの範囲であってもよい。一例では、発泡板は5cmの厚さを有する。発泡板の厚さは、堆積フォームの高さに対応する。堆積した個別ユニットの数は、製造される発泡板のサイズ、個別ユニットのサイズおよび間隔、ならびに堆積方法に依存する。例えば、100*100cmのフォーム板は、少なくとも100個の個々の個別ユニットを含み得る。本発明による多工程の堆積方法により、単一工程の堆積で得られる同様の発泡体と比較して、収縮が低減した発泡体を製造することができる。本方法は、連続発泡ウェブなどの発泡体の連続形成を伴うプロセスも可能にする。
【0039】
本発明は、セルロースフォームマトリックスに埋め込まれた、より堅い緻密化されたセルロースファイバー壁を有するセルロースフォームの個別ユニットを含む低密度セルロースフォームを提供する。固体フォーム中の構造要素として個別ユニットを組み込むことにより、同じ低密度を維持しながらより硬いフォームの形成が可能になる。個別ユニットは、個別ユニットおよび周囲のフォームマトリックスを含む発泡材料の総体積の30~80%、または総体積の40~80%もしくは50~80%、または総体積の60~80%、または総体積の40~78%、または総体積の50~78%、または総体積の40~75%、または総体積の50~75%を構成する。一実施形態では、個別ユニットは、個別ユニットおよび周囲のフォームマトリックスを含む発泡材料の総体積の10~90%を構成する。
【0040】
一実施形態では、フォームの個別ユニットの密度は、フォームマトリックスの密度よりも高い。例えば、固体フォーム中の個別ユニットの密度は、フォームマトリックスの密度よりも少なくとも110%、例えば130%、または150%または200%高くてもよい。一実施形態では、固体フォーム中の個別ユニットの密度は、フォームマトリックスの密度よりも105~500%、または110~330%、または110~250%、または110~200%、または150~330%高い範囲であってもよい。
【0041】
個別ユニットに使用されるフォームの湿潤フォーム密度が、周囲のフォームマトリックスに使用されるフォームの湿潤フォーム密度よりも高い場合、フォームの総乾燥時間が減少し、よって、より効率的なプロセスを可能にすることが分かった。さらに、フォームの高密度領域(すなわち、個別ユニット)は、低密度領域(すなわち、フォームマトリックス)と比較して、異なる特性、例えば剛性を有する。これは、異なる領域で異なる特性を有するフォームを提供するために使用することができる。
【0042】
第1の堆積における湿潤フォームの密度が後続の堆積における湿潤フォームの密度よりも高い本発明の実施形態では、フォームの総乾燥時間が、第1および後続の堆積における湿潤フォームの密度によって影響を受けることが分かった。密度Dを有するセルロースフォームが所望される場合、これは、第1の堆積および後続の堆積におけるフォームを、乾燥後に密度Dを有する固体セルロースフォームを達成するのと同じ密度にすることによって提供することができる。あるいは、密度Dは、固体セルロースフォームの平均密度が乾燥後にDと等しくなるように選択された、第1の堆積のためのより高密度の湿潤セルロースフォームおよび後続の堆積のためのより低密度の湿潤セルロースフォームを使用することによって得ることができる。セルロースフォームの総乾燥時間は、第1の堆積と後続の堆積の両方に対して同じ密度を有する湿潤フォームを使用して調製されたフォームと比較して、第1の堆積における湿潤フォームが、後続の堆積における湿潤フォームよりも高い密度を有する場合、より短い。第1の堆積の乾燥時間は、第1の堆積の個別ユニットの表面の大部分が空気に曝されるため、後続の堆積の乾燥時間よりも常に著しく速い。低密度の湿潤フォームの方が乾燥が速いため、その後の堆積に比較的低密度の湿潤フォームを使用することにより、後続の堆積の乾燥時間、ひいては固体セルロースフォームの総乾燥時間を削減することができる。したがって、場合によっては、比較的短い乾燥時間で、第1の堆積に高密度の湿潤フォームを使用し、後続の堆積に低密度の湿潤フォームを使用することが有利である。
【0043】
本発明による方法において堆積に使用される湿潤フォームは、セルロースファイバーおよび1つ以上の増粘剤を水中で混合して流動性ファイバー混合物を得、界面活性剤混合物を添加し、撹拌して湿潤フォームを得ることによって調製することができる。水中のセルロースファイバーと1つ以上の増粘剤との混合物は、十分に流動可能な凝集していないファイバーペーストを形成し得る。混合物は、界面活性剤混合物の添加および機械的撹拌などによる撹拌によって通気することができる。通気は、ファイバーを分離する微細なミクロンサイズの気泡を形成し得る。ミクロンサイズの気泡は、フォームを安定化させ、個別ユニットの乾燥中の形状の維持に寄与する。
【0044】
セルロースファイバーは高濃度で混合されるので、排水工程は必要ない。これにより、本方法の全体的な時間およびコストを削減し、製造中に添加される水溶性物質の漏れを防止することができ、それによって最終フォーム中により高い濃度の水溶性添加剤を許容する。
【0045】
乾燥フォームの性能は、使用される増粘剤の量、したがって乾燥材料のファイバー-ファイバー結合強度によって調整することができる。増粘剤の量は、フォーム中の固形分の重量当たりで計算して、4~24%または5~20%であり得る。本発明による方法は、増粘剤およびより安定な界面活性剤の組合せを使用して湿潤フォームの安定性の調整を可能にし、自立型セルロースフォームの提供を可能にする。さらに、この方法は、異なる種類の添加剤の単純な包含を可能にする。
【0046】
湿潤フォームの密度は、発泡中に含まれる空気の量に依存する。低密度が望まれる場合、比較的多くの空気が含まれるべきである。高密度が望まれる場合、比較的少ない空気が含まれるべきである。湿潤フォームの密度は、乾燥後の固体フォームの密度に直接影響を及ぼす。よって、第1の堆積と後続の堆積との湿潤フォーム間の密度差は、固体フォームにも残る。
【0047】
個別の自立フォームユニットの乾燥中に、各個別ユニットのフォームの表面に高密度化された層が形成され、個別ユニットの形状を維持するのに役立つ。フォームの自立する個別ユニットを乾燥した後、乾燥した個別ユニット間の隙間を埋めるために、新しい湿潤フォームを添加することができる(
図4の(iv)によって例示される)。これにより、より堅い緻密化セルロースファイバー壁を有する個別ユニットに分割された低密度セルロースフォームの作成が可能になる。緻密化された薄層を組み込むことにより、最終的なフォームを、同じ軽量を維持しながらより剛性にすることができる。さらに、このプロセスは、幅対高さのアスペクト比がより低い湿潤フォームの多くのユニットをもたらし、乾燥中の張力上昇の影響を最小限に抑え、その結果として、板の外形寸法に対する収縮の影響を緩和する(
図6)。
【0048】
本発明による方法により固体フォームを調製するのに適したフォーム組成物は、自立型であり、崩壊しないフォームである。他のフォーム、例えば、国際公開第2016068771号パンフレット、国際公開第2016068787号パンフレット、および国際公開第2020011587号パンフレットに記載されているフォームおよび多孔性固体材料を、押出および個別ユニットへの切断のために、または個別ユニット間の堆積のために使用することができる。
【0049】
一実施形態では、後続のフォーム堆積を堆積させる前に、コーティングが個別ユニットの外面に塗布される。コーティングは、個別ユニットが少なくとも部分的に乾燥された場合に個別ユニットの外面に塗布され、その結果、コーティングが塗布された場合に個別ユニットの外面は緻密化層を含む。あるいは、完全に乾燥した個別ユニットの外面にコーティングが塗布されてもよい。コーティングは、固体フォームの少なくとも1つの外面に適用されてもよい。よって、一実施形態では、コーティングは、個別ユニットおよび/または固体フォームの少なくとも1つの外面に塗布される。
【0050】
コーティングは、好ましくは液体コーティング組成物の形態で塗布され、1つまたはいくつかのコーティング層を塗布することができる。コーティング層の組成は、同じであっても異なっていてもよい。個別ユニットに塗布される場合、コーティングは、後続のフォーム堆積を堆積させる前に乾燥されることが好ましい。コーティングは、少なくとも1つの粒状材料および少なくとも1つの成膜材料を含んでもよい。粒状材料は、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)、セルロースファイバー、または粘土もしくは炭酸カルシウムなどの鉱物粒子のうちの少なくとも1つから選択することができる。MFCは、本出願の文脈において、20nm~1000nmの幅または直径を有するセルロース粒子、ファイバーまたはフィブリルを意味する。成膜材料は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、セルロースエーテル、デンプン、ポリビニルアルコール、またはアクリルもしくはスチレン-ブタジエンラテックスなどの合成ラテックスの少なくとも1つから選択することができる。コーティングは、例えば、蜜蝋またはカルナウバ、アルキルケテンダイマー(AKD)またはアルキルコハク酸無水物(ASA)などのワックスの少なくとも1つから選択される少なくとも1つの疎水剤を含み得る。
【0051】
コーティングの塗布により、フォームの表面の孔がコーティングで塞がれるため、フォームの通気性が低下する。これにより、真空を含む様々な処理および変換操作が容易になる。さらに、コーティングの種類によっては、コーティングの塗布によりフォームの強度および疎水性などの特性が変化する場合がある。コーティングは、好ましくは、緻密化層を含む表面に塗布される。
【0052】
一実施形態では、MFCを含むコーティング組成物は、少なくとも部分的に乾燥された個別ユニットの外面に塗布され、疎水剤を含むコーティング組成物は、フォームマトリックスに埋め込まれた個別ユニットを含む固体フォームの外面に、すなわち後続の堆積工程および乾燥工程の後に塗布される。
【0053】
コーティング組成物は、ローラーコーティング、ブレード/ナイフコーティング、ブラッシング、フレキソローラー、およびスプレーコーティングなどのコーティングに使用される任意の適切な方法を使用して塗布することができる。
【0054】
別の態様では、本発明は、フォームの個別ユニットと、前記個別ユニットを囲むフォームマトリックスとを含む固体フォームに関する。各個別ユニットは、フォームの緻密化層によって囲まれていてもよい。全固体フォーム、ならびに個別ユニットおよびフォームマトリックスは、乾燥フォームの総重量に対して計算して、75~95重量%、または80~95重量%、または85~92重量%、または85~90重量%のセルロースファイバーを含んでもよい。個別ユニットの高さは、90~100%、または95~100%、または98~100%、または調製された全固体フォームの高さに等しくてもよい。一実施形態では、個別ユニットの高さは、調製された全固体フォームの高さの70~100%、または70~95%、または75~90%であってもよい。固体フォームは、10~60kg/m3、または20~50kg/m3の密度を有し得る。一実施形態では、固体フォームは、10~80kg/m3の密度を有し得る。
【0055】
最終的な固体フォームの密度および特性は、フォームマトリックスと同じまたは異なる密度を有する個別ユニットを使用することによって調整することができる。個別ユニットはまた、異なる位置で異なる密度を有する固体フォームを提供するために、互いに異なり得る密度を有してもよい。固体フォーム中の個別ユニットの密度は、前記個別ユニットを囲むフォームマトリックスの密度の83%~500%、または60%~150%、または90%~110%であってもよい。好ましくは、個別ユニットは、前記個別ユニットを囲むフォームマトリックスの密度の90%~110%の密度を有する。
【0056】
一実施形態では、フォームの個別ユニットの密度は、フォームマトリックスの密度よりも高い。例えば、固体セルロースフォーム中の個別ユニットの密度は、セルロースフォームマトリックスの密度よりも少なくとも110%、例えば130%、または150%または200%高くてもよい。一実施形態では、固体セルロースフォーム中の個別ユニットの密度は、セルロースフォームマトリックスの密度よりも105~500%、または110~330%、または110~250%、または110~200%、または150~330%高い範囲であってもよい。
【0057】
各個別ユニットは、円筒または多面体などの3次元形状を有し得る。対称多面体の例は、立方体、直方体(cuboid)(直方体(rectangular cuboid)など)、および六角柱である。個別ユニットの対称性の小さな変動は、フォームに安定性を付与するためにそれらの主目的を変更することなく存在し得る。いくつかの実施形態では、各個別ユニットは円筒の形態を有する。個別ユニットの直径、または幅は、その高さの0.5~3倍、またはその高さの0.5~2倍、もしくは0.5~1.5倍、もしくは0.8~3倍、もしくは0.8~2倍、もしくは0.8~1.5倍、もしくは1~3倍、もしくは1~2倍、もしくは1~1.5倍であり得る。
【0058】
一実施形態では、各個別ユニットの幅は、その高さの1.3倍未満、例えばその高さの1.2倍未満、または0.5~1.3倍、もしくは0.5~1.2倍、もしくは0.7~1.3倍、もしくは0.7~1.2倍、もしくは0.9~1.3倍、もしくは0.9~1.2倍未満である。各個別ユニットの幅がその高さの1.3倍未満である場合、個別ユニットにおけるフォームの乾燥時間が短縮され、よって、フォームの総乾燥時間も短縮される。異なる位置で異なる特性を有する固体フォームを提供するために、フォーム中の個別ユニットの幅もまた、互いに異なっていてもよい。しかしながら、フォーム中の各個別ユニットの幅は、その幅の1.3倍未満であることが依然として好ましい。
【0059】
いくつかの実施形態では、個別ユニットの幅は、上の部分よりも個別ユニットの下の部分の方が大きい。例えば、個別ユニットは、円錐、円錐台、角錐、または角錐台の形状を有し得る。そのような実施形態では、隣接する個別ユニットの下の部分は、部分的に接触していてもよい。接触は、個別ユニットの下の部分の全周囲に沿って、または周囲の一部に沿っていてもよい。残りの高さ、すなわち、下の部分の上方に位置する個別ユニットの高さの一部では、個別ユニットは互いに分離されている、すなわち接触していない。例えば、個別ユニットは、個別ユニットが堆積した表面から垂直に測定した場合に、個別ユニットの高さの30%未満、または20%未満、または10%未満、または5%未満に沿って、1つまたはいくつかの隣接する個別ユニットと部分的に接触していてもよい。個別ユニットは、固体フォームにおいて互いに視覚的に区別可能である。
【0060】
一実施形態では、個別ユニットおよび/または固体フォームの少なくとも1つの外面にコーティングが設けられている。コーティングの存在は、固体フォームの強度、疎水性、通気性および表面光沢などの特性に影響を及ぼし得る。
【0061】
さらなる態様では、本発明は、本発明による方法によって調製された固体フォームに関する。本発明によるフォームは、大きなシートで使用することができる。
【0062】
次に、本発明を、本発明を何ら限定するものではない以下の実施例によって説明する。本明細書で言及されるすべての引用文献および参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【実施例】
【0063】
実施例1
多工程の堆積
個別ユニットにおける湿潤フォームの第1の堆積のために、水中に12重量%のセルロースパルプおよび増粘剤を含む均一な湿潤ペーストを調製した。222kg/m3の湿潤フォーム密度が得られるまで、ペーストに界面活性剤混合物を通気した。
【0064】
高さ5cmおよび直径6.6cmの寸法を有する円筒形のモールドを使用して、フォームの12個の個別ユニットを平坦な表面(寸法が27*37*5cmのフレームを有するオーブントレイ)に堆積させた。モールドは、所望の形状および寸法でフォームを堆積させるためにのみ使用され、乾燥前に除去される。個別ユニットを、通常の対流式オーブン中、120℃で1~2時間乾燥させた。
【0065】
第2の堆積では、第1の堆積で使用した湿潤フォームについての上記の説明に従って、湿潤フォームの新しいバッチを調製した。湿潤フォームを個別ユニット間の空間に充填し、オーブンフレーム内の空隙を除外しなかった。表面を削って余分なフォームを除去し、フレームの高さまで表面を平らにした。最後に、フォームをオーブン内で120℃で8時間乾燥させた。
【0066】
乾燥した個別ユニットの密度および最終的なフォーム体の密度は、約30~31kg/m3であった。フォーム体の最終的な厚さは約5cmであり、収縮は観察されなかった。
【0067】
実施例2(比較例)
単一工程の堆積
水中12重量%のセルロースパルプおよび増粘剤を含む均一な湿潤ペーストを調製した。222kg/m3の湿潤フォーム密度が得られるまで、ペーストに界面活性剤混合物を通気した。
【0068】
27*37*5cmのモールドに通気された湿潤フォームを充填し、表面をこすって余分なフォームを除去し、フレームの高さまで表面を平らにした。最後に、通常の対流式オーブンでフォームを120℃、8時間乾燥させる。
【0069】
乾燥したフォーム体の密度は約30kg/m3であり、フォーム体の中心で20%の収縮が観察された。収縮は、フォームの中心およびフォームの縁部付近の厚さの差に基づいて計算される。
【0070】
実施例3
フォーム体の調製
水中12重量%のセルロースパルプおよび増粘剤を含む均一な湿潤ペーストを調製した。界面活性剤混合物をペーストに添加し、得られた混合物を押し出し、同時に通気して、密度が222kg/m3のを押し出された湿潤フォームを得た。押し出されたフォームを乾燥させてフォーム体を得た。フォーム体を4*4cmの正方形片および約5cmの高さに切断した。正方形のピースを27*37*5のモールド全体に分配させた。実施例1の記載に従って調製した湿潤フォームをモールドに充填した。その後、表面を削って余分なフォームを除去し、フレームの高さまで平らにした。次いで、フォーム体を通常の対流式オーブン内で120℃で8時間乾燥させた。
【0071】
乾燥して切断された個別ユニットの密度および最終フォームの密度は、約30~31kg/m3であった。フォーム体の最終的な厚さは約5cmであり、収縮は観察されなかった。
【0072】
実験方法、実施例1~3
特徴づけ
実施例2により調製された比較フォームは、シートの上面、底面および側面で緻密化を示し(
図1Aに例示されるように)、フォームシートのコアは、より低い密度の均一なファイバーネットワークである(
図1B)。
【0073】
実施例1に従って製造したフォームはまた、シートの上面、底面および側面に緻密化を示すが(
図5Aに例示されるように)、材料のバルクは、緻密化セルロースファイバー材料の境界壁によってフォームマトリックスと区別されるフォームの個別ユニットを含む(
図5B)。
【0074】
実施例1による多工程で堆積したフォームおよび実施例2に従って調製された単一工程で堆積したフォームについて圧縮曲線を得た(
図7)。乾燥した固体フォームを、高さ5cmの10cm角の試験片に切断した。圧縮試験は、Instron 5969ユニバーサル試験機を用いて、23℃および50%相対湿度の調整された部屋で行った。試験前に、試料を23℃および50%相対湿度で48時間調整した。直径15cmの500 Nロードセルを、元の試料の厚さの100%/分の圧縮速度で使用した。最終的な歪みは、元の標本の高さの70%に選択した。多工程で堆積したフォームは、単一工程で堆積したフォームについて得られた破線曲線下面積と比較して、実線曲線下面積が大きいことによって実証されるように、改善されたエネルギー吸収を提供する。
【0075】
実施例4
個別ユニットの幅対高さ比
水中12重量%のセルロースパルプおよび増粘剤を含む均一な湿潤ペーストを調製した。208kg/m3の湿潤フォーム密度が得られるまで、ペーストに界面活性剤混合物を通気した。フォームを有孔トレイ上のフレームに充填し、表面を削って余分なフォームを除去し、フレームの高さまで表面を平らにした。高さを設定するフレームを使用して、高さ2.1cmのフォームを調製した。フォームから湿潤フォームの正方形を切り取って除去し、2つおきの正方形が充填されていない正確な正方形パターンの堆積材料のパターンを残し、チェス盤の白い正方形のみを充填した。使用した正方形幅は、2.5cm、5cmおよび10cmであった。フレームは、パターン43*24.5cmの数回の反復を可能にするのに十分な大きさであった。
【0076】
実施例4の湿潤フォームを、3つのシナリオを試験した乾燥研究に使用した。
(1)均一な正方形に分割されて堆積した材料を乾燥させる。
(2)正方形間の各空隙に新しいフォームを充填し、表面を再度削って、第2の堆積を乾燥させる。
(3)フレーム全体に1回の単一の堆積を充填し、これを削って、乾燥させる(比較例)。
【0077】
フォームを一定間隔で乾燥させながら秤量し、乾燥曲線としてプロットした。これらの乾燥曲線は、
図8a~
図8bに見られる。
図8aから、個別ユニットの幅が減少すると乾燥時間が減少することが明らかである。これは、個別ユニットの体積が小さいためである。また、単一工程の堆積の乾燥時間が著しく長いことも明らかである。
図8bから、個別ユニットを囲む後続のフォーム堆積の乾燥時間も、単一工程の堆積の乾燥時間よりも速いことが明らかである。よって、総乾燥時間、すなわち第1のフォーム堆積と後続のフォーム堆積との組合せ乾燥時間は、単一工程の堆積と比較して、その高さの1.3倍未満の幅を有する個別ユニットが使用される場合、より短い。
【0078】
実施例5
個別ユニットのフォームの密度およびフォームマトリックス
水中12重量%のセルロースパルプおよび増粘剤を含む均一な湿潤ペーストを調製した。所望の湿潤フォーム密度が得られるまで、ペーストに界面活性剤混合物を通気した。異なる密度の湿潤フォーム(表1を参照のこと)を調製した。寸法が高さ5cmおよび直径6.6cmまたは9.2cmの円筒形モールドを使用して、フォームの4個の個別ユニットを平坦な表面(寸法が20*20*5cmのフレームを有するオーブントレイ)に堆積させた。直径6.6cmのモールドを用いる4つの堆積は、フレーム体積のおよそ1/3を覆い、一方、9.2cmの直径のモールドでは、フレーム体積の2/3を覆う。モールドは、各モールドとフレーム壁との間の距離が等しくなるように対称に配置した。モールドは、所望の形状および寸法でフォームを堆積させるためにのみ使用され、乾燥前に除去された。個別ユニットを、通常の対流式オーブン中、120℃で完全に乾燥するまで乾燥させた。第1の堆積個別ユニットが乾燥し、室温まで長時間冷却された場合、第2の堆積を適用して個別ユニット間の空隙を充填した。フレームに完全に充填し、削って、完全に乾燥するまで120℃のオーブンで乾燥させた。
【0079】
第2の堆積中のフォームは、典型的には、第1の堆積中のフォームとは異なる密度を有した。目的は、乾燥材料のほぼ同様の端部密度に達することであり、したがって、湿潤フォーム密度を使用して、フレーム内にほぼ同じ総量の材料を常に入れた。使用した湿潤フォーム密度を表1に記載する。
【0080】
フレーム内のフォームの総乾燥時間が、第1の堆積におけるフォームが第2の堆積におけるフォームよりも高い密度を有する場合に短いことが分かった。
【0081】
試料片はまた、単一工程で堆積したフォームを有する同じフレーム20×20×5cmで作製した。これらの片を参照物質として使用して、2工程で堆積した材料の緩衝特性を単一工程で堆積した材料と比較した。これらの試験片をある範囲の密度で製作した。
【0082】
試料片を23℃および50%RH(相対湿度)で3日間コンディショニングし、落下試験用の試料片として使用した。
【0083】
試料密度の関数としての落下試験、劣化およびピーク加速度の結果は、
図9(劣化)、
図10(落下1のピーク加速度)および
図11(落下2~5のピーク加速度)に見られる。試験で使用した異なるフォームを表1にさらに説明する。使用される記号を説明するために、図中の(□)は、直径6.6cmの個別ユニットに堆積した84kg/m
3の密度を有するフォームの第1の堆積と、268kg/m
3の密度を有するフォームの第2の堆積とから形成されたセルロースフォームを表す。点線の記号はその逆であり、同じ例では、点線の白い四角は、9.2cmの直径を有する個別ユニットに堆積した268kg/m
3の密度を有するフォームの第1の堆積と、84kg/m
3の密度を有するフォームの第2の堆積とから形成されたセルロースフォームを表す。
【0084】
実験方法、実施例5
落下試験データは、20×20×5cmの供試材の片を試験する「TrueDrop-160」自由落下試験機を使用して作成した。材料は、側面にPEフォームを支持して水平方向の所定の位置に保持した状態で、段ボール箱の底部に配置される。供試材の上に、4.8kgの金属ウエイトを置く。金属ウエイトは、20×20cmの底面を有し、よって、12g/cm2の荷重を試料に分配する。金属ウエイトはまた、支持PEフォームによって水平方向の所定位置に保持される。金属ウエイトの上には、落下試験を実施しながら加速度を記録する加速度計が配置される。落下試験を実施する場合、試料および金属ウエイトを含有する箱を真っ直ぐな垂直方向に落下させ、金属床に衝突する前に76cmの自由落下を可能にした。これを1試料につき5回実施し、2つの結果を記録する。
1:ピーク加速度:金属ウエイトに置かれた加速度計が記録している最大加速度である。高加速は、衝撃後に、供試材が金属ウエイトの落下を破壊するためにそのクッション能力を使用している場合に生じる。低ピーク加速は、本発明によるセルロースフォームなどの緩衝材にとって陽性の結果であると考えられる。
2:劣化:落下前の試料片の開始高さと5回連続した落下後の試料片の高さとの差。高さは、平均高さを計算するために、片側に1つおよび中央に1つの5つの位置で測定するキャリパーを用いて測定した。
劣化=1-(5回の落下後の高さ/開始高さ)。
【0085】
第1の高さが5cm、5回連続した落下後の高さが4cmの片の場合、劣化は次のようになる:1-(4/5)=20%
【0086】
試料片を23℃および50%RH(相対湿度)で3日間コンディショニングした後、それらについて測定を実施した。
【0087】
結果(
図9~
図11)は、2工程の堆積法を使用して製造されたセルロースフォームが、1工程の堆積から製造されたセルロースフォームよりも良好なクッション性能を有することを示す。本発明による2工程の堆積法を使用して製造したフォームは、第2の堆積と比較して密度の低い第1の堆積を用いて製造したセルロースフォーム、または両方の堆積で同様の密度で製造されたフォームと同様の挙動を示す。これにより、乾燥時間の短縮がセルロースフォームのクッション性能に影響を与えないことが判明する。
【0088】
第1および第2の堆積に関する異なる密度のすべての組合せは、劣化(5回の落下後の相対的な圧縮)を低減することになった場合、単一工程の堆積セルロースフォームよりも良好な性能を示した。第1および第2の堆積の異なる密度のすべての組合せもまた、1回目の落下のピーク加速のための単一工程で堆積した板と同様の性能を示し、落下2~5の単一工程で堆積した材料と比較して、落下2~5の平均のピーク加速を低下させた。これらの比較に関する記述は、同様の密度を有する材料を比較することを指す。
【0089】
実施例6
フォーム板の調製
水中14%のパルプ、1.6%のCMCおよび0.08%の界面活性剤を含む組成物(組成物の総重量に基づく全量)を、機械的撹拌を使用して発泡させて湿潤フォームとした。湿潤フォームは、182kg/m3の最終密度および15.7%の最終乾燥含有量を有していた。フォームの第1の堆積を、フォームを個別ユニットとして平坦な金属トレイ上に分配することができる堆積器を使用して堆積させた。フォームの個別ユニットをピラミッド形状で堆積させた。個別ユニットをトレイに沿って列状に堆積させ、幅方向に75mm、長さ方向に37.5mm離して配置した(列間のオフセットは45°)。堆積装置の出力圧力およびトレイまでの距離を調節することによって、個別ユニット内のフォームの流れプロファイルを、トレイ上で外側に流れるように、または高さを構築するように調整した。堆積中に高圧を印加して、各個別ユニットの下の部分のフォームが流れて、広がり始め、隣接する個別ユニットと接触するようにした。第1の堆積の後、湿潤フォームを対流乾燥機を使用して80℃で、フォームが完全に乾燥するまで乾燥させた。個別ユニットは、乾燥後、隣接する個別ユニット間の接触箇所においても互いに区別可能であった。接触箇所で混合は観察されなかった。第1の乾燥工程の後、乾燥した個別ユニット間の空隙を、個別ユニットに使用したのと同じ組成を有する湿潤フォームで充填した。同じ堆積器を使用し、個別ユニット間のすべての隙間が充填されるように圧力を調整して、湿潤フォーム板を形成した。続いて、堆積した湿潤フォーム板の表面を削って、板に平坦な表面を与えた。フォーム板のサイズは80*120cmであった。フォーム板の厚さは、トレイから測定して5cmであった。その後、フォーム板が完全に乾燥するまで、対流乾燥機を使用して80℃で乾燥を行った。
【国際調査報告】