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特表2024-545324自立型ウェット低密度セルロース繊維フォーム
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  • 特表-自立型ウェット低密度セルロース繊維フォーム 図1a
  • 特表-自立型ウェット低密度セルロース繊維フォーム 図1b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】自立型ウェット低密度セルロース繊維フォーム
(51)【国際特許分類】
   D21J 3/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
D21J3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538100
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 IB2022062664
(87)【国際公開番号】W WO2023119213
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2151606-7
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コクルカヤ, オルチ
(72)【発明者】
【氏名】フルト トロン, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ガーナードポー, マルヤム
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA01
4L055AA02
4L055AA03
4L055AA05
4L055AA11
4L055AC03
4L055AC06
4L055AC08
4L055AC09
4L055AF09
4L055AG46
4L055AH29
4L055AH36
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA31
4L055EA32
(57)【要約】
本発明は、セルロース繊維、水溶性増粘剤、および界面活性剤を含むフォーム組成物に関する。フォーム組成物は、制約なしに乾燥して三次元物体を形成できるフォームを調製するために使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーム組成物であって、
a)組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算されて71~95重量%のセルロース繊維、
b)組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算されて4~24重量%の水溶性増粘剤、および
c)少なくとも2つの界面活性剤
を含む、フォーム組成物。
【請求項2】
界面活性剤のうちの1つが、7~9のpHを有する溶液中で3.2~3.8の見かけのpKaを有するアニオン界面活性剤である請求項1に記載のフォーム組成物。
【請求項3】
界面活性剤のうちの1つが補助界面活性剤である請求項1または2に記載のフォーム組成物。
【請求項4】
補助界面活性剤が、7~9のpHを有する溶液中で8の見かけのpKaを有する界面活性剤、または両性ベタインから選択される、請求項3に記載のフォーム組成物。
【請求項5】
アニオン界面活性剤対補助界面活性剤とのモル比が0.2:1~3:1である請求項3または4に記載のフォーム組成物。
【請求項6】
少なくとも2つの界面活性剤の合計量が、組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算されて0.6~5重量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載のフォーム組成物。
【請求項7】
セルロース繊維が、木材パルプ;再生セルロース繊維;および植物繊維から選択され、好ましくは、針葉樹クラフト漂白パルプ、化学熱機械パルプ、および、溶解パルプ、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のフォーム組成物。
【請求項8】
ウェット組成物の全重量に基づいて計算されて12~40重量%の全固形分含有量を有するウェットフォーム組成物である、請求項1から7のいずれか一項に記載のフォーム組成物。
【請求項9】
密度が140~500kg/mである、請求項8に記載のフォーム組成物。
【請求項10】
少なくとも80Paの降伏応力を有する、請求項8または9に記載のフォーム組成物。
【請求項11】
10~60kg/mの密度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のフォーム組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のフォーム組成物の製造方法であって、
a)セルロース繊維を水中で解砕してセルロース繊維のスラリーを得るステップ、
b)a)で得られたスラリーに水溶性増粘剤を添加して、水中の水溶性増粘剤とセルロース繊維の混合物を得るステップ、
c)b)で得られた混合物に少なくとも2つの界面活性剤を添加して繊維懸濁液を得るステップ、
d)c)で得られた懸濁液をエアレーションしてウェットフォームを得るステップ
を含み、ウェットフォームが、ウェットフォームの全重量に基づいて計算されて、10~38重量%のセルロース繊維、0.5~10重量%の水溶性増粘剤、および0.1~2重量%の界面活性剤を含み、ウェットフォームが、140~500kg/mの密度および少なくとも80Paの降伏応力を有する、方法。
【請求項13】
d)で得られたウェットフォームを乾燥させてドライセルロースフォームを得ることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水溶性増粘剤を、4~12重量%の増粘剤を含む溶液として、ステップ(a)で得られたスラリーに添加する、請求項12から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一項に記載の方法により得られるフォーム。
【請求項16】
請求項13に記載の方法で調製されるフォームであって、フォームが、10~60kg/mの密度を有する、フォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維、水溶性増粘剤、および界面活性剤を含むフォーム組成物に関する。フォーム組成物は、制約なしに乾燥して三次元物体を形成できるフォームを調製するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
日常生活においては、マクロ多孔質材料とマイクロ多孔質材料がさまざまな形や組成で使用されている。これらの材料は一般的に石油由来のポリマーをベースにしているが、再生可能材料を使用する必要性に対する認識が高まったため、石油由来のポリマーを再生可能資源からのポリマーに置き換える取り組みが行われている。現在、セルロース繊維フォーム材料を製造するためにさまざまな技術が使用されている。国際公開第2020011587号では、セルロース繊維とグルテンを含むセルロース繊維ペーストをエアレーションし、ウェットフォームを型に入れて乾燥させ、続いて型の形状と全体にわたって均一な繊維ネットワークを備えた乾燥した多孔質材料を得ることによって、セルロース繊維とグルテンの多孔質材料が製造される。国際公開第2015036659号では、繊維、添加剤、界面活性剤を水中で混合してウェット繊維フォームを作製され、機械的な作業または圧力のいずれかを使用して特定の厚さまでドレインされる液体空気フォームを生成する。次に、ウェット繊維フォームは、従来の乾燥技術により型を使用して固められる。
【0003】
米国特許出願公開第2020240080号には、軽量板紙の製造のための、繊維状およびフィブリル化材料、架橋剤、界面活性剤を含む発泡構造を形成する組成物が提示されている。米国特許第5612385号には、繊維状材料、発泡剤、安定剤、水、および一定量のガスを含むエアレーションされた繊維スラリー組成物が示されている。エアレーションされた繊維スラリーは、乾燥して弾力性のあるフォームとすることができる。
【0004】
繊維、増粘剤を含む結合剤系、および発泡剤を含む水性フォーム組成物が、米国特許第4613627号に開示されている。フォームは、所望の形状に鋳造または成形することができる。米国特許出願公開第2015114581号は、水と界面活性剤とを含むフォームを提示しており、その中には、マイクロフィブリル化セルロース(MFC)と、より長い繊維長のパルプが組み込まれている。フォームは、フォームを成形布に塗布し、脱水および乾燥することによって、紙または板紙の繊維ウェブの製造に使用される。
【0005】
従来の製紙技術に基づくフォーム成形では、フォームがスクリーンまたは成形布上にドレインされる必要がある。この場合、ドレイン時に平らになるため、材料の形状とサイズに制限がある。効率的なドレインを行うには、水を効率的に抽出できるよう液体の粘度をある程度低く保つ必要がある。したがって、可溶型バインダーは低濃度に制限され、過度の損失を避けるために繊維上に保持できる必要がある。したがって、ドレインにより、このタイプのプロセスで使用できる添加剤の数が制限される。厚手の低密度発泡紙の強度は、主に材料の嵩によって決まる。ここで強度を向上させる主な手段は、ドレイン特性に基づいて繊維の配向をある程度制御しながら密度を高めることである。
【0006】
大量のタンパク質ベースの発泡剤から作られたフォーム(例えば、国際公開第2020011587号)などの高乾燥含有量技術では、材料の大画分が水溶性でなく、製品から簡単に洗い流されないため、リサイクル性が妨げられる。さらに、ウェットフォームの安定性は、タンパク質粒子が凝集し始め、気泡が合体し、湿潤状態でフォームが徐々に崩壊するため、型なしでフォームを乾燥させるには不十分である。この事実により、自立型ウェットフォーム堆積には適さない候補となる。
【0007】
したがって、リサイクル可能で、湿潤状態ですでに寸法が安定しており、より効率的なプロセスで製造できる代替フォーム組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、制約なく乾燥して三次元物体を形成できる自立型のウェット低密度セルロース繊維フォーム組成物を提供することである。
【0009】
第1の態様において、本発明は、フォーム組成物であって、
a)組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算されて71~95重量%のセルロース繊維、
b)組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算されて4~24重量%の水溶性増粘剤、および
c)少なくとも2つの界面活性剤、
を含む、フォーム組成物に関する。
【0010】
本発明によるフォーム組成物は、ウェット組成物の全重量に基づいて計算されて12~40重量%の範囲の総固形分含有量を有するウェットフォーム組成物であってもよい。本発明によるフォーム組成物は、組成物の全重量に基づいて計算されて95~100重量%の範囲の固形分含有量を有するようなドライフォームであってもよい。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、第1の態様による組成を有するフォームの製造方法であって、
a)セルロース繊維を水中で解砕してセルロース繊維のスラリーを得るステップ、
b)a)で得られたスラリーに水溶性増粘剤を添加して、水中の増粘剤とセルロース繊維の混合物を得るステップ、
c)b)で得られた混合物に少なくとも2つの界面活性剤を添加して繊維懸濁液を得るステップ、および
d)c)で得られた繊維懸濁液をエアレーションしてウェットフォームを得るステップ
を含み、ウェットフォームが、ウェットフォームの全重量に基づいて計算されて、10~38重量%のセルロース繊維、0.5~10重量%の水溶性増粘剤、および0.1~2重量%の界面活性剤を含み、フォームの密度が140~500kg/mであり、降伏応力が少なくとも80Paである、
方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a図1a-bは、異なる固形分含有量を有するウェットフォームの降伏応力を示す。異なる固形分含有量を有するように調製されたウェットフォーム用のウェットフォーム組成物の湿潤密度の関数としての降伏応力を示す。
図1b図1aで得られた直線グラフの傾きが、ウェットフォームの固形分含有量に対してプロットされている。図中の実線は降伏線、つまり厚さ5cmの試料の重力応力を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の態様において、本発明は、フォーム組成物であって、
a)組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算されて71~95重量%のセルロース繊維、
b)組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算されて4~24重量%の水溶性増粘剤、および
c)少なくとも2つの界面活性剤、
を含む、フォーム組成物に関する。
【0014】
本発明によるフォーム組成物は、ウェット組成物の全重量に基づいて計算されて、12~40重量%、または12~25重量%、または13~20重量%の範囲の総固形分含有量を有するウェットフォーム組成物であってもよい。このようなウェットフォーム組成物の密度は、140~500kg/m、または140~400kg/mであってもよい。一部の実施形態では、このようなウェットフォーム組成物の降伏応力は、少なくとも80Pa、または少なくとも100Pa、または少なくとも150Pa、または80~500Pa、または100~500Pa、または150~500Paであってもよい。一部の実施形態では、ウェットフォーム組成物の降伏応力は、20~200Pa、または50~150Pa、または70~150Paであってもよい。
【0015】
本発明によるフォーム組成物は、組成物の全重量に基づいて計算されて、95~100重量%、または98~100重量%の範囲の固形分含有量を有するようなドライフォームであってもよい。本発明によるフォーム組成物は、密度が10~60kg/mであるドライフォームであってもよい。一部の実施形態では、フォーム組成物は、密度が10~80kg/mであるドライフォームであってもよい。
【0016】
本発明はまた、固体フォームにおけるフォーム組成物の使用に関する。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、第1の態様による組成を有するフォームの製造方法であって、
a)セルロース繊維を水中で解砕してセルロース繊維のスラリーを得るステップ、
b)a)で得られたスラリーに水溶性増粘剤を添加して水中の増粘剤とセルロース繊維の混合物を得るステップ、
c)b)で得られた混合物に少なくとも2つの界面活性剤を添加して繊維懸濁液を得るステップ、および
d)c)で得られた繊維懸濁液をエアレーションしてウェットフォームを得るステップ
を含み、
ウェットフォームが、ウェットフォームの全重量に基づいて計算されて、10~38重量%のセルロース繊維、0.5~10重量%の水溶性増粘剤、および0.1~2重量%の界面活性剤を含み、フォームが、140~500kg/mの密度および少なくとも80Paの降伏応力を有する、
方法に関する。
【0018】
ここで使用される「フォーム」という用語は、固体または液体の内部に空気またはガスの泡を閉じ込めることによって作られた物質を指す。通常、ガスの体積は液体や固体の体積よりもはるかに大きく、ガスポケットは薄い膜で区切られている。フォームが形成されるためには、3つの要件を満たさなければならない。表面積を増やすには機械的な作業が必要である。これは、撹拌、大量のガスを液体に分散させること、またはガスを液体に注入することによって発生させ得る。2番目の要件は、フォーム形成剤、典型的には両親媒性物質、界面活性剤、または表面活性成分が、表面張力を低下させるために存在しなければならないということである。最後に、フォームは壊れるよりも速く形成されなければならない。
【0019】
本発明において、「フォーム」という用語は、第1の態様によるフォーム組成物を有し、さらなる態様による方法によって得ることができるセルロースフォームを指す。したがって、本発明によるフォームは、セルロース、水溶性増粘剤、および少なくとも2つの界面活性剤を含むセルロースフォームを指す。フォームの主成分はセルロースであり、セルロースはセルロースフォームの固形分含有量の少なくとも70重量%、またはセルロースフォームの固形分含有量の71~95重量%を構成する。セルロースは繊維の形をしており、したがってフォームは繊維フォームまたはセルロース繊維フォームとして定義することもできる。フォームは湿っていても乾いていてもよい。
【0020】
本明細書で使用される「ウェットフォーム」または「ウェットフォーム組成物」という用語は、セルロース、水溶性増粘剤、および少なくとも2つの界面活性剤を含むウェットフォームを指す。ウェットフォームの中にはガス泡が存在する。ウェットフォームは自立しており、粘弾性固体として振る舞う。これは、ウェットフォームが粘性と弾性の両方の特性を有することを意味する。ウェットフォームは、流れ始めて粘性物質のように振る舞うほどの十分な力が加えられない限り、固体として振る舞い、したがって自立する。適用されるせん断応力の大きさと時間スケールに応じて、ウェットフォームは主に粘性または弾性の挙動を示し得る。
【0021】
本明細書で使用される「ドライフォーム」または「ドライフォーム組成物」という用語は、ウェットセルロースフォームから形成された乾燥した固体の多孔質セルロース材料、すなわちフォーム形成材料を指す。乾燥プロセス中に、クローズドウェットセルロースフォームがオープンドライセルロースフォームに変換される。乾燥中にセルロース繊維のネットワークが崩壊するのを防ぐ。結果として、ドライフォームは、ウェットフォームの形状にほぼ一致する形状になる。ドライフォームの固形分含有量は、ドライフォームの全重量に基づいて計算すると少なくとも95重量%である。ドライフォームの形状と密度は、非拘束状態でも保持される。ドライフォームは連続気泡構造になっており、フォーム内の気孔に空気が入るようになっている。ドライフォームは、固体フォーム、多孔質材料、または低密度材料とも表記し得る。
【0022】
ここで使用される「降伏応力」は、懸濁液、ウェットフォーム、ペーストなどの複雑な流体内でニュートン流動の形で連続的な運動を開始するために必要な応力の量を示す。降伏応力は、制御されたせん断速度で翼形状を取り付けた粘度計で測定でき、ここに、一定の回転速度が翼に適用され、結果として生じるトルクが時間の関数として測定される。回転速度は通常0.1~8rpmに設定される。降伏応力は、翼の連続回転を引き起こすために必要な応力を指す。
【0023】
本発明によるフォームは、組成物中の固形分含有量の全重量に基づいて計算されて、71~95重量%、または75~95重量%のセルロース繊維を含むことができる。セルロース繊維は、木材パルプ、再生セルロース繊維、および、竹、綿、麻、亜麻、黄麻などからの繊維のような植物繊維、から選択することができる。好ましくは、セルロース繊維は、針葉樹クラフト漂白パルプ、広葉樹パルプ、化学熱機械パルプなどの木材パルプ、および溶解パルプ、またはこれらの1つ以上の組み合わせから選択される。より好ましくは、セルロースパルプ繊維は、針葉樹パルプ、化学熱機械パルプ、または溶解パルプからのものである。最も好ましくは、セルロースパルプ繊維は、針葉樹クラフト漂白パルプなどの針葉樹パルプからのものである。本発明による方法の第1のステップa)で得られるセルロース繊維のスラリーは、スラリーの全重量に基づいて計算されて、10~30重量%、または12~25重量%のセルロース繊維を含み得る。
【0024】
水溶性増粘剤は、フォーム内の液相の粘度を高める。水溶性増粘剤を使用することで、気泡間のナノメートルサイズの液膜の粘度が高まり、粘性減衰によってシステムがさらに安定する。マイクロフィブリルセルロースやその他の粒子ベースの増粘剤などの非水溶型増粘剤は、密度の高いフォームの気泡間の薄い液膜内には入らない。水溶性増粘剤は、機械的撹拌中のせん断力を増加させると同時に、固体繊維粒子の抗凝集剤としても機能する。さらに、粘度を高めることでシステムの拡散速度が最小限に抑えられ、気泡の合体速度が遅くなる。水溶性増粘剤を使用すると、十分な空気を取り込むことができ、最大5cmまたは10cmの厚さのフォームの重量を支えるのに十分高い降伏応力を有する高密度のフォームを生成できる。高い粘度を設定するもう一つの側面は、液体のドレインを遅くすることで、フォーム構造全体にわたって均一な濃度を維持することである。
【0025】
増粘剤の電荷密度も、システムのさまざまな成分間のイオン相互作用により、ウェットフォームの安定性に重要な役割を果たす。電荷密度が低い増粘剤を使用すると、セルロース繊維が搬送ボードと互いに両者付着し、不良率も高くなり、材料のリサイクルが複雑になる。増粘剤の電荷密度が高いほど、その溶解度が高くなる。
【0026】
セルロース繊維が高濃度で混合されているため、ドレインステップは必要なく、水溶性のバイオベースの増粘剤を高濃度で使用することができる。したがって、増粘剤は水溶性増粘剤であってもよい。水溶性増粘剤は、例えば通常の紙のリサイクルストリームでフォーム組成物をリサイクルする場合にも利点がある。増粘剤は、組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算されて、4~24重量%、または5~20重量%の量で存在することができる。増粘剤は、分子量が80000~250000g/mol、または83000~197000g/molであってもよい。例示的な水溶性増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、デンプン、キサンタン、グアーガム、キシログルカン、またはそれらの混合物から選択される。増粘剤は、ステップ(a)で得られたスラリーに、4~12重量%、または4~6重量%の増粘剤を含む溶液のような溶液として添加することができる。好ましくは、増粘剤を含む溶液は水溶液である。
【0027】
本発明によるフォームは、少なくとも2つの界面活性剤の混合物を含む。少なくとも2つの界面活性剤のうちの1つは、機械的撹拌中に空気と水の界面に素早く沈降する速効性界面活性剤であることが好ましく、これにより高密度および高粘度のフォームの形成に寄与し、したがって自立型フォームが可能になる。この目的に適した界面活性剤は、アニオン界面活性剤であり、好ましくは低分子量アニオン界面活性剤である。アニオン界面活性剤は、pHが7~9、好ましくはpHが8である溶液中で、見かけのpKaが3.2~3.8、好ましくは3.4~3.6、または見かけのpKaが3.5であってもよい。低分子量アニオン界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸カリウム、ラウレス硫酸ナトリウム(SLES)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ココイルサルコシン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムから選択することができる。低分子量アニオン界面活性剤は、好ましくは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、p-n-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ココイルサルコシン酸ナトリウム、およびラウロイルサルコシン酸ナトリウムから選択される。より好ましくは、低分子量アニオン界面活性剤はココイルサルコシン酸ナトリウムである。アニオン界面活性剤は生分解性であってもよい。
【0028】
少なくとも2つの界面活性剤のうちのもう1つは、好ましくは補助界面活性剤である。本明細書で使用される「補助界面活性剤」という用語は、別の主要な界面活性剤を補完する界面活性剤を指す。補助界面活性剤は主界面活性剤とは異なる特性を持っているため、界面活性剤の作用が互いに補完し合い、したがって界面活性剤システムの全体的な有効性が向上する。界面活性剤システムは、複数の主界面活性剤と複数の補助界面活性剤を含み得る。
【0029】
遅効性補助界面活性剤は、空気-水界面に沈殿した速効性界面活性剤の荷電界面活性剤ヘッドグループを分離し、したがって、脂肪族炭素鎖のより密なパッキングを可能にし、それによって空気-水界面に形成される脂質層の弾性率を向上させることができる。補助界面活性剤を導入することにより、排水半減期(t1/2)も、例えば3倍以上に改善され得る。適切なpKaと長い炭素鎖を有する補助界面活性剤は、安定した繊維懸濁液と安定したウェットフォームに貢献する。補助界面活性剤は、pHが7~9、好ましくはpHが8である界面活性剤溶液中で見かけのpKaが少なくとも8、または少なくとも9である界面活性剤、および両性ベタインを含む群から選択することができる。補助界面活性剤は、最大見かけのpKa10を有し得る。補助界面活性剤は、好ましくは長い炭素鎖を有し、より好ましくは14個の炭素原子(C14)を有する炭素鎖を有する。補助界面活性剤は、植物由来原料由来などの高pKa脂肪酸、例えばテトラデカン酸(ミリスチン酸)、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸;アルキルグリコシド、アルキルポリグルコシド、アルキルチオグリコシド、アルキルマルトシドなどの脂肪族炭素末端を有するグルコースベースの補助界面活性剤;コカミドプロピルベタイン(CAPB)、およびココイミノジプロピオン酸ナトリウム(CADP)などの両性ベタイン;ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、すなわちTween(登録商標)(例えば、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80、Tween(登録商標)85)、およびポリエチレングリコールドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、およびオクタエチレングリコールモノドデシルエーテルなどのポリオキシエチレンラウリルエーテルから選択することができる。
【0030】
したがって、フォーム組成物中に使用される少なくとも2つの界面活性剤は、好ましくは、アニオン界面活性剤と補助界面活性剤との混合物を含む。アニオン界面活性剤対補助界面活性剤のモル比は、0.2:1~3:1、好ましくは0.5:1~2:1であり得る。フォーム組成物中の少なくとも2つの界面活性剤の合計量は、フォームの固形分含有量の全重量に基づいて計算されて、0.6~5重量%、または0.8~2.0重量%であってもよい。界面活性剤は、溶液、例えば3~25重量%、好ましくは5~20重量%の界面活性剤を含む溶液として、ステップ(b)で得られた混合物に添加することができる。界面活性剤溶液のpHは、好ましくは7~9であり、より好ましくは8である。好ましくは、界面活性剤を含む溶液は水溶液である。より好ましくは、溶液は水である。アルコールは消泡効果を有し得る。
【0031】
セルロース繊維は、20~30ミクロンの幅であるため、十分に小さい、つまりミクロンサイズの気泡のみが個々の繊維を浮遊させることができ、それによってフォームの抗凝集特性がさらに向上する。水溶性増粘剤と遅効性補助界面活性剤はどちらも、より細かく安定した泡の形成に寄与し、ドライフォームの表面粗さの低減に貢献する。大きな気泡を含むフォームや気泡サイズの分布が大きいフォームなどの粗いフォームでは、繊維が凝集する傾向があり、表面の粗さが高くなる。本発明によるセルロース繊維、増粘剤および少なくとも2つの界面活性剤を含む組成物は、エアレーションにより、非常に安定したウェット繊維フォームを形成する。エアレーションは機械的撹拌によって行うことができる。エアレーションにより相当量の空気が材料に取り込まれ、ガス体積分率φは0.6~0.85の範囲になる。界面活性剤によって泡の形成が促進される。エアレーション前、組成物は、非凝集ペーストの粘稠度を有するなど、高粘度および高降伏応力を有する。
【0032】
増粘剤と界面活性剤の組み合わせを使用してウェットフォームの安定性を調整することにより、架橋剤やフィブリル化セルロースを使用せずに自立型セルロースフォームを製造できる。フォームの良好な安定性が、熟成、すなわち泡の大きさの変化やドレインを防ぐ。自立型セルロースフォームを形成するには、フォームの見かけの降伏応力が重力によってフォームに加わる応力を上回る必要がある。
【0033】
湿潤状態では、本発明の組成物のフォームは、機械的負荷が加えられると流動する高濃度ハイドロコロイド懸濁液であると考えられる。しかしながら、降伏応力未満ではフォームは流れない。したがって、ステップd)で得られた組成物から調製されたウェットフォームは自立型であり、乾燥時にその形状を保持するために型または成形布を必要としない。したがって、本発明の組成物は、支持型がなくても崩壊することなく乾燥できるほど十分に安定した自立型フォームに発泡させることができる。その結果、型を使わずに物体が成形され、乾燥され得る。
【0034】
ステップd)で得られたウェットフォームは、得られた繊維懸濁液の全重量に基づいて計算されて、10~38重量%、または10~30重量%、または11~30重量%、または12~30重量%、または10~20重量%、または11~20重量%、または12~20重量%のセルロース繊維、0.5~10重量%、または0.5~5重量%、または1~5重量%、または2~5重量%、または1~3重量%の水溶性増粘剤、および0.1~2重量%の界面活性剤を含み得る。ステップd)で得られたウェットフォームを乾燥させて、ドライセルロースフォームを得ることができる。本発明による組成物から製造されたウェットフォームは、固形分含有量が高いため、乾燥前に脱水する必要がない。フォームは、室温または40~140℃などの高温でエバポレーションさせることにより乾燥できる。ドライセルロースフォームは、10~60kg/mの密度を有し得る。一実施形態では、ドライセルロースフォームは、10~80kg/mの密度を有し得る。
【0035】
水溶性増粘剤と遅効性補助界面活性剤の使用は、3D構造を崩壊させることなく繊維フォームから水分のエバポレーションを可能にし、繊維の凝集を回避または遅延させる。これにより、表面の粗さが大幅に低減され、乾燥固化ステップ後の高品質な製品が可能になる。泡粒子分散液の降伏応力や粘度などのレオロジープロファイルを制御することで、繊維の凝集を遅らせることができる。これには、気泡サイズ(R)、ガス体積分率(φ)、表面張力(γ)などのパラメータの調整を含む。この方法のウェットエンドにおける繊維の良好な分散は、フォームが乾燥するときの表面の粗さを低減し、製品の切片の空隙構造をより細かくし、体積全体にわたる密度のばらつきを少なくすることに貢献する。
【0036】
ウェットフォームは、制約や収縮なしに三次元物体に乾燥させることができる。フォームの乾燥は、2段階堆積法を用いて行うことができ、ステップd)で得られたウェットフォームの最初の堆積は、表面上に個別のユニットとして堆積させ、個別のユニットを乾燥させ;ウェットフォームの第2の調製は、ステップa)~d)に従って調製され;ステップd)で得られたウェットフォームの第2の堆積は、最初の堆積のドライセルロースフォームの個別のユニットの間にウェットフォームを充填することによって行われ;および、フォームを乾燥させて、フォームマトリックス内に埋め込まれたフォームの個別のユニットを含む固体フォームを得る。個別ユニットの初期乾燥段階では、フォームの表面に高密度の繊維層が形成される。このクラストのような層は、乾燥中に機械的なサポートを提供し、個別のユニットの形状を維持するのに役立つ。
【0037】
増粘剤は、主に水素結合を通じて、ドライフォーム内の繊維-繊維の結合強度を向上させ得る。したがって、フォーム組成物中の増粘剤の量は、ドライフォームの機械的性能、特に材料の嵩に影響を与える。増粘剤の含有量が多いほど、材料の硬度が高くなる。したがって、増粘剤は機械的特性の調整を可能にする。本発明による組成物から製造されたドライフォーム、ならびにウェットフォームは、両方とも水中に再分散することができ、その結果、通常の紙リサイクルストリームでリサイクル可能となる。
【0038】
本発明のさらなる態様は、請求項13に記載の方法で製造され、そのフォームが10~60kg/mの密度を有するフォームである。
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。本明細書で言及されているすべての文献および参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【実施例
【0040】
材料
化学薬品
針葉樹漂白クラフトパルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、溶解パルプ、カルボキシメチルセルロース(Nouryon社製Finnfix WRM、CP KelcoからのFinnfix30、Finnfix150、Finnfix300、Finnfix700)、ココイルサルコシン酸ナトリウム、ミリスチン酸、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム(CrodaからのCrodasinic LS95NT)
【0041】
実施例1
増粘剤の量の違い
表1に示すように、さまざまな組成から調製された試料を調べることにより、カルボキシメチルセルロース(CMC)含有量が泡の安定性に及ぼす影響を調査した。試料1は、ドライフォーム中のCMC含有量が10重量%である最もよく使用される組成物であった。
針葉樹漂白クラフトパルプ(120g)を、Kビーターを備えたケンウッドシェフXLチタンミキサーを使用して水(602g)中で解砕し、繊維懸濁液を生成した。CMC(13.5g)をVitamixerを使用して水(256.5g)に溶解し、ゲル状の高粘性溶液を得た。次に、ゲルを繊維懸濁液に加え、均一なペーストになるまでKビーターで混合した。その後、ココイルサルコシン酸ナトリウム:ミリスチン酸を1:1のモル比で含む界面活性剤溶液(20重量%、6ml)をペーストに加えた。添加された全固形界面活性剤の量は、表1に示すように1.2gであり、これは組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算すると0.9重量%に相当する。次に、ケンウッドミキサーのバルーンホイッパーを使用して、所望量の空気(フォームの総体積の78体積%)を混合物に機械的に導入し、約222kg/mのウェットフォーム密度が得られるまでペーストをエアレーションした。
【0042】
固体フォームを、次の2段階の堆積方法によって製造した:
最初の堆積ステップでは、直径6.7cm、高さ5.2cmの円筒形の型を使用して、調製されたウェットフォームを、27×37×5cmのフレームを有する平らな穴あきオーブントレイ(穴の直径3mm)上に12個の個別ユニットで最初に堆積した。型はフォームを特定の形状と寸法で堆積するためにのみ使用され、フォームを乾燥する前に取り除いた。その後、個別のユニットは通常の対流オーブン中、120℃で1~2時間乾燥した。この方法で製造されたウェットフォームは高い安定性を示し、乾燥中だけでなく型を取り外したときでも堆積した形状と高さが維持された。続いて2回目の堆積ステップでは、最初の堆積で使用したフォームと同じ方法で新しいバッチのフォームを調製した。乾燥した個別ユニット間の空間は隙間なくオーブンのフレームを完全に満たすように新しいウェットフォームで埋めた。次に、表面を削って余分なフォームを取り除き、フレームの高さに合わせて表面を平らにした。フォームは最終的にオーブン中、120℃で8時間乾燥した。乾燥した個別ユニットの密度も最終的なフォーム板の密度も、約30kg/mであった。最終的なフォーム板の厚さは、約5cmであった。
【0043】
試料2、3、および4については、使用したCMCの量を表1に従って変え、ドライフォーム中のCMC含有量が、組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算したときに、それぞれ5重量%、15重量%、または20重量%になるようにした。すべての試料のドライフォーム中の界面活性剤含有量は、組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算されて0.9重量%に維持した。ウェットフォーム中の固形分含有量は、表1に示すように、すべての試料についてウェット組成物の全重量に基づいて計算されて13.5重量%に維持した。試料1と同様に、試料2、3、および4も上記の2段階堆積手順に従って調製し、各配合において個別のユニットを型なしで乾燥させることができ、乾燥中に初期形状を維持できるほどにフォームのウェット安定性が十分に高かった。
【0044】
実施例2
異なる主界面活性剤と補助界面活性剤のモル比
表2に示す配合を検討することにより、主界面活性剤、ココイルサルコシン酸ナトリウム対補助界面活性剤、ミリスチン酸のモル比の影響を調査した。試料2は、ココイルサルコシン酸ナトリウム対ミリスチン酸のモル比が1:1であり、最もよく使用される配合である。
【0045】
針葉樹漂白クラフトパルプ(120g)を、Kビーターを備えたケンウッドシェフXLチタンミキサーを使用して水(602g)中で解砕し、繊維懸濁液を生成した。CMC(13.5g)を、Vitamixerを使用して水(256.5g)に溶解し、ゲル状の高粘性溶液を得た。次に、ゲルを繊維懸濁液に加え、均一なペーストになるまでKビーターで混合した。その後、ココイルサルコシン酸ナトリウム:ミリスチン酸を1:1のモル比で含む界面活性剤溶液(20重量%、6ml)をペーストに加えた。添加された全固形界面活性剤の量は、表2に示すように1.2gであり、これはフォームの固形分含有量の全重量に基づいて計算すると0.9重量%に相当する。次に、ケンウッドミキサーのバルーンホイッパーを使用して、所望量の空気(フォームの総体積の78体積%)を混合物に機械的に導入し、約222kg/mのウェットフォーム密度になるまでペーストをエアレーションした。
【0046】
ウェットフォームは、実施例1に記載された2段階の堆積法に従って固体フォーム板を調製するために使用された。
【0047】
最初の堆積におけるウェットフォームは高い安定性を示したため、最初の堆積における個別ユニットの形状と高さは、乾燥中だけでなく、型を取り外したときでも維持された。2回目の堆積では、最初の堆積で使用したフォームの上記の説明に従って、新しいバッチのフォームを準備した。乾燥した個別ユニットの密度も最終的なフォーム板の密度も、約30kg/mであった。最終的なフォーム板の厚さは約5cmであった。
【0048】
試料1および3については、ココイルサルコシン酸ナトリウム:ミリスチン酸のモル比を表2に従って変更した。すべての試料の総界面活性剤含有量は、組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算されて0.9重量%に維持した。この実施例のすべての試料について、ウェットフォームの全固形分含有量は、ウェット組成物の全重量に基づいて計算されて13.5重量%に維持した。試料2と同様に、試料1および3も、上記の2段階の堆積手順に従って調製した。各配合は高いウェットフォーム安定性を示し、個別ユニットを型なしで乾燥させ、乾燥中に初期形状を維持することができた。
【0049】
実施例3
セルロース繊維のさまざまな供給源
表3に示す配合を検討することにより、セルロース繊維の種類の影響を調査した。針葉樹漂白クラフトパルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、または溶解パルプを使用して、3つ類の異なるフォームを製造した。3つの試料のそれぞれは、実施例2に記載の試料2に従ってフォームを調製した。3つの異なるフォームのそれぞれは、固体フォーム板を製造するための実施例1に記載された2段階堆積法に従って製造した。報告された各繊維源を使用して調製されたウェットフォームは非常に安定しており、最初のステップで堆積された個別のユニットは、乾燥中に形状を維持しながら、型を使用せずに乾燥することができた。試料1、2、および3の乾燥した個別ユニットの密度も最終的なドライフォーム板の密度も、約30kg/mであった。試料1および3の最終的なフォーム板の厚さは5cmであった。試料2の最終的なフォーム板の厚さは2.5cmであった。
【0050】
実施例4
異なる密度
セルロース繊維(120g、針葉樹漂白クラフトパルプ繊維)を、Kビーターを装備したケンウッドシェフXLチタンミキサーを使用して水(602g)中で解砕した。CMC(13.5g)をVitamixerを使用して水(256.5g)に溶解し、ゲル状の高粘性溶液を得た。次に、CMCゲルをセルロース繊維懸濁液に加え、Kビーターで均一な混合物になるまで混合した。その後、ココイルサルコシン酸ナトリウム:ミリスチン酸を1:1のモル比で含む界面活性剤溶液(20重量%、6ml)をセルロース繊維/CMC溶液混合物に加えた。添加された全固形界面活性剤の量は、表4に示すように1.2gであり、これは組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算すると0.9重量%に相当する。次に、ケンウッドミキサーのバルーンホイッパーを使用して、混合物に所望の量の空気が機械的に導入されるまで、混合物をエアレーションした(表4を参照)。ウェットフォームは、実施例1に記載された2段階堆積法に従って固体フォーム板を調製するために使用した。この方法で製造されたウェットフォームは高い安定性を示し、最初の堆積後に型を取り外したときや最初の堆積の乾燥中であっても、個別ユニットの形状と高さが維持された。2番目のステップの堆積では、最初の堆積で使用したフォームの上記の説明に従って、新しいバッチのフォームを調製した。特定の体積増加(つまり、フォームの総体積に対するフォーム内の空気含有量の体積%)に対して計算されたドライフォームの密度が、表4からわかる。フォームの低湿密度(つまり、低乾燥密度)に達するのに必要な時間は、フォームの高密度に達する時間に比べてより長い。
【0051】
試料1、2、3、および4については、組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算された総界面活性剤含有量は0.9重量%に維持した。この実施例のすべての試料について、ウェットフォームの固形分含有量(濃度)は、ウェット組成物の全重量に基づいて計算されて13.5重量%に維持した。すべての試料は、上記の2段階の堆積手順に従って調製した。各配合は高いウェットフォーム安定性を示し、個別ユニットを型なしで乾燥させ、乾燥中に初期形状を維持することができた。
【0052】
実施例5
増粘剤のさまざまな分子量
セルロース繊維(針葉樹漂白クラフトパルプ繊維、120g)を、Kビーターを備えたケンウッドシェフXLチタンミキサーを使用して水(691g)中で解砕し、繊維懸濁液を生成した。異なる分子量のCMC(CP Kelco社のFinnfix30、Finnfix150、Finnfix300、およびFinnfix700)(6.4g)を、Vitamixerを使用して水(121.2g)に溶解し、ゲル状の高粘性CMC溶液を得た。次に、CMCゲルをセルロース繊維懸濁液に加え、Kビーターで均一な混合物になるまで混合した。その後、ココイルサルコシン酸ナトリウム:ミリスチン酸のモル比を1:1で含む界面活性剤溶液(20重量%、6ml)をセルロース繊維/CMC溶液混合物に加えた。添加された全固体界面活性剤の量は、表5に示すように1.2gであり、これは乾燥フォーム含有量の0.9%に相当する。次に、ケンウッドミキサーのバルーンホイッパーを使用して、所望量の空気(フォームの総体積の78体積%)を混合物に機械的に導入し、約222kg/mのウェットフォーム密度が得られるまで、混合物をエアレーションした。ウェットフォームは、実施例1に記載された2段階堆積法に従って固体フォーム板を調製するために使用した。この方法で製造されたウェットフォームは高い安定性を示し、乾燥中だけでなく型を取り外したときでも堆積した形状と高さが維持された。2回目の堆積では、最初の堆積で使用したウェットフォームの上記の説明に従って、ウェットフォームの新しいバッチを調製した。
【0053】
試料1、2、3、および4の場合、ドライフォーム中の界面活性剤の総含有量は0.9%に維持し、ウェットフォームの乾燥含有量(濃度)は、この実施例のすべての試料で13.5%に維持した。すべての試料は、上記の2段階の堆積手順に従って調製した。各配合は高いウェットフォーム安定性を示し、個別ユニットを型なしで乾燥させ、乾燥中に初期形状を維持することができた。同じ溶液濃度の場合、増粘剤の分子量が増加すると、増粘剤の粘度も増加する。同じ濃度の高分子量増粘剤を使用してフォームを調製した場合、ウェットフォームの安定性はプラスの傾向を示すが、フォームの体積を増やすのに必要な時間(つまり、同じウェットフォーム密度に達するまでの時間)は、高分子量を有する増粘剤を使用して調製したフォームの方が長くなる。ウェットフォームの安定性は、ドライフォームの機械的強度と相関関係を示す。
【0054】
実施例6
比較例:ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを発泡剤として使用
ココイルサルコシン酸ナトリウムとミリスチン酸の組み合わせとの比較として、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム(Croda社製LS95NT)を単独界面活性剤として使用し、ウェットフォーム安定性への影響を調べた。この場合に使用した配合は、実施例2の試料2で説明したものと似ているが、ココイルサルコシン酸ナトリウム-ミリスチン酸溶液の代わりに、同じ濃度のLS95NT溶液を発泡剤として使用した。
【0055】
Kビーターを備えたケンウッドシェフXLチタンミキサーを使用して、針葉樹漂白クラフトパルプ(120g)を水(602g)で解砕し、繊維懸濁液を生成した。カルボキシメチルセルロース(CMC)(13.5g)をVitamixerを使用して水(256.5g)に溶解し、ゲル状の高粘性溶液を得た。次に、ゲルを繊維懸濁液に加え、均一なペーストになるまでKビーターで混合した。その後、LS95NTのみを含む界面活性剤溶液(20重量%、6ml)をペーストに加え、添加された固体界面活性剤の量が1.2gになるようにした。次に、ペーストはケンウッドミキサーのバルーンホイッパーを使用して、湿潤密度が約222kg/mに達するまでエアレーションした。この段階ですでに、ココイルサルコシン酸ナトリウム-ミリスチン酸を使用して調製したウェットフォームとの違いが明確に観察された。希望する泡立ちの量とボリュームの増加に達するまでの時間は短かったものの、ウェットフォームをケンウッドのボウルからオーブントレイに移して広げるとすぐに、小さな気泡が合体して大きな気泡になり、結果として得られるウェットフォームは安定性とクリーミーさに欠けるように見えた。気泡が継続的に破裂するため、ウェットフォームは、型に入れるときも乾燥するときも室温で十分に安定していなかった。これにより、乾燥中に崩壊と収縮が発生し、最終的な表面が粗くなった。したがって、この配合は、単一ステップまたは2段階の堆積技術のいずれにも適していないと考えられた。
【0056】
実施例7
比較例:増粘剤の少量と多量の使用
セルロース繊維(針葉樹漂白クラフトパルプ繊維、120g)を、Kビーターを備えたケンウッドシェフXLチタンミキサーを使用して水(733g)中で解砕し、セルロース繊維懸濁液を生成した。CMC(Nouryon社製Finnfix WRM、3.1g)をVitamixerを使用して水(59g)に溶解し、ゲル状の高粘性CMC溶液を得た。次に、CMCゲルをセルロース繊維懸濁液に加え、Kビーターで均一な混合物になるまで混合した。その後、ココイルサルコシン酸ナトリウム:ミリスチン酸を1:1のモル比で含む界面活性剤溶液(20重量%、6ml)をセルロース繊維/CMC溶液混合物に加えた。添加された全固体界面活性剤の量は、表6に示すように1.2gで、ドライフォーム含有量の0.9%に相当する。次にケンウッドミキサーのバルーンホイッパーを使用して、所望量の空気(78%)を混合物に機械的に導入し、約222kg/mのウェットフォーム密度になるまで混合物をエアレーションした。目標密度(すなわち、フォームの空気含有量)に達するのに必要な時間は、実施例1で調製された試料と比較して短かったが、ウェットフォームは、実施例1で調製されたフォームと比較して安定性が低かった。空気を含んだ混合物は、直径6.7cm、高さ5.2cmの円筒形の型に移し、調製されたフォームを、27×37×5cmのフレームを有する平らな穴あきオーブントレイ(穴の直径3mm)上に12個の個別ユニットに堆積した。型はフォームを特定の形状と寸法で堆積するためにのみ使用され、フォームが乾燥する前に取り除いた。ウェットフォームは粘度が低く、質感が不安定だったため、型を取り外した後にフォームが崩壊する原因となった。型を使用して形成されたフォームの個別ユニットは徐々に劣化した。その後、個別のユニットは通常の対流オーブンで120℃で1~2時間乾燥した。ウェットフォームは乾燥中に収縮した。ドライフォームは、実施例1で調製されたフォームと比較して機械的強度が低かった。
【0057】
セルロース繊維(針葉樹漂白クラフトパルプ繊維、120g)を、Kビーターを備えたケンウッドシェフXLチタンミキサーを使用して水(328g)中で解砕し、セルロース繊維懸濁液を生成した。CMC(Nouryon社製Finnfix WRM、35.2g)をVitamixerを使用して水(669.7g)に溶解し、ゲル状の高粘性CMC溶液を得た。次に、CMCゲルをセルロース繊維懸濁液に加え、Kビーターで均一な混合物になるまで混合した。その後、ココイルサルコシン酸ナトリウム:ミリスチン酸を1:1のモル比で含む界面活性剤溶液(20重量%、6ml)をセルロース繊維/CMC溶液混合物に加えた。添加された全固形界面活性剤の量は、表6に示すように1.2gであり、これは組成物の固形分含有量の全重量に基づいて計算すると0.9重量%に相当する。次に、ケンウッドミキサーのバルーンホイッパーを使用して、所望量の空気(78%)を混合物に機械的に導入し、約222kg/mのウェットフォーム密度になるまで混合物をエアレーションした。目標密度(すなわち、フォームの空気含有量)に達するのに必要な時間は、実施例1で調製された試料と比較して長く、ウェットフォームは安定性が低く、実施例1で調製されたフォームと比較してセルロース繊維束が識別された。次に、空気を含んだ混合物を直径6.7cm、高さ5.2cmの円筒形の型に移し、準備したフォームを27×37×5cmのフレームを有する平らな穴あきオーブントレイ(穴の直径3mm)上に12個の個別ユニットとして堆積させた。型はフォームを特定の形状と寸法で堆積するためにのみ使用され、フォームが乾燥する前に取り除いた。ウェットフォームは不安定な質感になり、その結果、フォームの崩壊を引き起こした。型を使用して形成されたフォームの個別ユニットは徐々に劣化した。その後、個別のユニットは通常の対流オーブン中、120℃で1~2時間乾燥した。ウェットフォームは乾燥中に収縮した。
【0058】
試料1および2の場合、ドライフォーム中の界面活性剤の総含有量は0.9%に維持され、ウェットフォームの乾燥含有量(濃度)は、この実施例のすべての試料のウェット組成物の全重量に基づいて計算されて13.5重量%に維持した。すべての試料は、上記の2段階の堆積手順に従って調製した。各配合はウェットフォーム安定性が低く、個別のユニットを型なしで乾燥させることができず、乾燥中に初期形状を維持することができなかった。フォームが固形分含有量の全重量に基づいて計算された低(すなわち2.5重量%)または高(すなわち22.5重量%)CMC含有量のいずれかを用いて調製した場合、ウェットフォームの安定性は、負のトレンドを示した。CMC含有量の増加が、乾燥後のフォームの剛性を増加させた。CMC含有量の増加は、また、乾燥後のフォームのリサイクル性も低下させた。
【0059】
実施例8
スラリーの固形分含有量に関連したウェットフォームの降伏応力の評価
フォームの固形分含有量が降伏応力に及ぼす影響を評価するために、異なる固形分含有量(10%、11%、12.6%、14.5%、16.1%)のウェットフォーム組成物を調製した。フォーム組成物はすべて、フォーム組成物の固形分含有量の全重量に基づいて、10%のCMC、1%の界面活性剤、および89%のセルロース繊維を含んだ。全体の固形分含有量は添加した水の量によって調整した(表7参照)。セルロース繊維(120g、針葉樹漂白クラフトパルプ繊維)を、Kビーターを備えたケンウッドシェフXLチタンミキサーを使用して水中で解砕した(加えた水の量については表7を参照)。固形分含有量が14.5%および16.1%の場合、600mlの水でパルプ化した後に水を絞り出し、増粘剤を添加した後、上記の固形分含有量を達成した。CMC(13.5g)をVitamixerを使用して水(256.5g)に溶解し、ゲル状の高粘性溶液を得た。次に、CMCゲルを脱水セルロース繊維懸濁液に加え、Kビーターで均一な混合物になるまで混合した。その後、ココイルサルコシン酸ナトリウム:ミリスチン酸を1:1のモル比で含む界面活性剤溶液(20重量%、6ml)を、セルロース繊維/CMC溶液混合物に少しずつ(0.5ml)加えた。次に、ケンウッドミキサーのバルーンホイッパーを使用して、混合物に所望の量の空気が機械的に導入されるまで、混合物をエアレーションした。混合後、フォームを250mlのプラスチックカップに集め、降伏応力をBrookfield DVNext、0.5RPMの翼スピンドルV73およびV72、および組み込みの降伏応力試験を使用して測定した。結果は図1a-bに示す。図1a-bの実線は、厚さ5cmのフォームの降伏線、つまり重力応力を表す。降伏線の下では、ウェットフォームは十分な応力を受けると粘性液体のように動作し、底部でたるみが生じることが予想される。一方、降伏線より上では、ウェットフォームは固体のように動作する。図1aから、固形分含有量が10%および11%のウェットフォームは降伏線より下にあるのに対し、固形分含有量が12.6%、14.5%、または16.1%のウェットフォームはすべて降伏線より上にあることがわかる。図1bは、ウェットフォーム中の固形分含有量の関数として、図1aの曲線の直線勾配を示している。降伏応力の変化と固形分含有量の関係は直線的である。したがって、針葉樹クラフトパルプを含むウェットフォーム組成物の場合、液体から固体への挙動の遷移は、固形分含有量が約12.5%のときに発生する。
図1a
図1b
【国際調査報告】