(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 9/04 20060101AFI20241128BHJP
F04B 53/00 20060101ALI20241128BHJP
F04B 53/18 20060101ALI20241128BHJP
F16C 19/54 20060101ALI20241128BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20241128BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F04B9/04 C
F04B53/00 E
F04B53/18
F16C19/54
F16J15/3204 201
F16C33/78 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538104
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 CN2021140070
(87)【国際公開番号】W WO2023115330
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524234215
【氏名又は名称】張 帆
【氏名又は名称原語表記】ZHANG, Fan
【住所又は居所原語表記】Room 501, Unit 3, Building 36, Yuanyangshanshui Community Shijingshan District Beijing 100040, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張 帆
【テーマコード(参考)】
3H071
3H075
3J006
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB01
3H071BB12
3H071CC12
3H071DD51
3H071DD89
3H075AA06
3H075BB03
3H075BB13
3H075CC18
3H075DA04
3H075DB01
3H075DB24
3J006AE15
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB19
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA05
3J216CB02
3J216CB03
3J216CC14
3J216CC70
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA73
3J701BA77
3J701GA29
(57)【要約】
本発明は、転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプを開示し、高圧水ポンプの技術分野に関する。転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプは、駆動機構、ハウジング、転がり軸受、隔離構造、少なくとも1つのプランジャおよびプランジャチャンバを含む。駆動機構は、主軸と、少なくとも1つの偏心構造とを含み、主軸が少なくとも一側で転がり軸受を介してハウジングに回転可能に接続される。偏心構造は、ハウジングの第1キャビティに位置し、第1キャビティが水または水溶液を充填するために用いられる。転がり軸受は、ハウジングの第2キャビティに位置し、隔離構造は、前記ハウジング内の水または水溶液を前記第2キャビティに進入させないように封止する。偏心構造は、回転する時、プランジャを押してプランジャチャンバ内で移動させることにより、水または水溶液に対する加圧を実現することができる。本発明による駆動機構は潤滑油を利用せず、主軸の支持構造に伝統的な転がり軸受を利用し、静圧支持を回避し、構造が簡単である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプであって、
駆動機構、ハウジング、転がり軸受、隔離構造、少なくとも1つのプランジャおよびプランジャチャンバを含み、
前記駆動機構は、主軸と、前記主軸に設けられる少なくとも1つの偏心構造とを含み、前記主軸が少なくとも一側で前記転がり軸受を介して前記ハウジングに回転可能に接続され、
前記偏心構造は、前記ハウジングの第1キャビティに位置し、前記第1キャビティは水または水溶液を充填するために用いられ、
前記転がり軸受は、前記ハウジングの第2キャビティに位置し、
前記隔離構造は、前記ハウジング内の水または水溶液を前記第2キャビティに進入させないように封止し、
前記偏心構造は、回転する時、前記プランジャを押して前記プランジャチャンバ内で移動させることにより、水または水溶液に対する加圧を実現する、
ことを特徴とする転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項2】
前記隔離構造はシール構造であり、前記シール構造が接触式シール構造である、
ことを特徴とする請求項1に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項3】
前記転がり軸受は、グリースで潤滑される、
ことを特徴とする請求項2に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項4】
それぞれの前記偏心構造の外側には推力構造が外嵌され、前記推力構造は前記ハウジングの前記第1キャビティに位置し、前記推力構造と前記偏心構造が相対回転可能であり、前記推力構造と前記偏心構造が第1摺動摩擦対偶を構成し、水または水溶液が前記第1キャビティにおける前記第1摺動摩擦対偶に進入することができ、
前記偏心構造が回転する時、前記推力構造は、前記プランジャを押して前記プランジャチャンバ内で移動させて水または水溶液に対する加圧を実現する、
ことを特徴とする請求項2に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項5】
前記推力構造の、前記主軸の軸線に垂直な断面の外縁曲線は、第1曲線と第2曲線を含み、前記第1曲線における点から前記主軸の軸線までの垂直距離は、前記第1曲線の一端から前記第1曲線の他端へ徐々に増大し、前記第2曲線における点から前記主軸の軸線までの垂直距離は、前記第1曲線の他端に接続される前記第2曲線の一端から前記第1曲線の一端に接続される前記第2曲線の他端へ徐々に減少する、
ことを特徴とする請求項4に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項6】
前記偏心構造の外面および/または前記推力構造の内面には、第1減摩層が設けられ、
前記第1減摩層は、プラスチック製である、
ことを特徴とする請求項5に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項7】
前記プランジャはプランジャ本体を含み、前記プランジャ本体の一端が前記プランジャチャンバに挿入され、前記プランジャ本体と前記プランジャチャンバは第2摩擦対偶を構成し、前記プランジャ本体の外面および/または前記プランジャチャンバの内面には第2減摩層が固定され、
前記第2減摩層は、プラスチック製である、
ことを特徴とする請求項2に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項8】
前記隔離構造と前記転がり軸受との間に排水チャンバが設けられ、前記排水チャンバ内には、前記主軸に外嵌される止水リングが設けられ、前記排水チャンバと前記ハウジングの流体通路とが連通し、前記排水チャンバ内の水または水溶液が前記流体通路を通じて前記ハウジングの外部に排出される、
ことを特徴とする請求項1に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水ポンプの技術分野に関し、特に、転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧水ポンプは、高圧水を生産するために用いられ、コア部材として、高圧洗浄、微細ミスト消火、噴霧、海水淡水化、機械部品のバリ取りなどの分野で広く応用されている。
【0003】
現在広く応用されている高圧水ポンプは、往復動ポンプ、水潤滑アキシャルプランジャポンプがある。
【0004】
往復動ポンプは、長い歴史を持ち、高圧水を生産するために広く用いられ、主にクランクシャフト、コンロッド、クロスヘッド、プランジャなどの部材からなる。往復動ポンプは、潤滑油で動力端を潤滑するために、接触式シール構造で加圧水を封止するとともに、水と潤滑油を遮断する必要がある。このようなポンプの最も肝心な問題は、潤滑油を定期的に交換する必要があり、しかも潤滑油が環境を汚染すること、および、シール構造の寿命が短くて交換が面倒であることにある。
【0005】
前世紀の90年代では、ダンフォスを代表として、商業化された水潤滑アキシャルプランジャポンプの発表に成功した。水潤滑アキシャルプランジャポンプは、往復動ポンプと比べれば、環境にやさしく、エネルギ効率が高いなどの利点を有する。主な移動部材は、流体静圧支持を利用し、最大16MPaの圧力出力を実現した。また、中国特許出願CN105240237Aには、水潤滑プランジャポンプが提出されている。
【0006】
動力端水潤滑技術により実現される高圧水ポンプは、環境保全性および高効率を有し、間違いなく高圧水ポンプの重要な発展方向である。しかし、水の粘度が低く、水に適する高性能材料が制限されるため、適切な運動対偶の設計が困難である。このため、より高い圧力を有し、環境適応性が強く、経済性が良い水潤滑高圧水ポンプの商業化は、未だに実現されていない。
【0007】
ここで、動力端水潤滑高圧水ポンプの発展を制約する重要な問題の1つが、主軸の支持問題である。負荷条件でカムシャフトまたはクランクシャフトに撓み変形が生じるため、従来の油潤滑機械主軸の両端の支持は、一般的に、撓み変形によく適応できる転がり軸受を利用する。水環境の条件で、GCr15などの経済的な軸受鋼材料は腐食に耐えることができない。潤滑に乏しく、かつ従来のステンレス鋼材料の接触疲労強度が長寿命の使用要求を満たすにはほど遠いため、高価なセラミック転動体軸受以外、水環境における高頻度使用の要求を満たす経済的な転がり軸受は存在しない。また、すべり軸受は、寿命が長く、耐食が可能であるが、軸のたわみ変形に敏感であり、特に低粘度流体環境条件で使用し難い。このため、中国特許CN105240237Aにおいては、水ポンプ主軸の支持として流体静圧支持を利用せざるを得ない。その結果、構造が著しく複雑になり、また高圧流体の漏れ、汚染物に敏感であるなどの問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来の高圧水ポンプ主軸が著しく撓み変形した場合でも、経済的かつ確実な支持を実現することができる、転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
本発明は、転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプを提供する。該転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプは、駆動機構、ハウジング、転がり軸受、隔離構造、少なくとも1つのプランジャおよびプランジャチャンバを含む。前記駆動機構は、主軸と、前記主軸に設けられる少なくとも1つの偏心構造とを含み、前記主軸が少なくとも一側で前記転がり軸受を介して前記ハウジングに回転可能に接続される。前記偏心構造は、前記ハウジングの第1キャビティに位置し、前記第1キャビティは水または水溶液を充填するためにも用いられる。前記転がり軸受は、前記ハウジングの第2キャビティに位置し、前記隔離構造は、前記ハウジング内の水または水溶液を前記第2キャビティに進入させないように封止する。前記偏心構造は、回転する時、前記プランジャを押して前記プランジャチャンバ内で移動させることにより、水または水溶液に対する加圧を実現することができる。
【0011】
好ましくは、前記隔離構造はシール構造であり、前記シール構造が接触式シール構造である。
【0012】
好ましくは、前記転がり軸受は、グリースで潤滑される。
【0013】
好ましくは、それぞれの前記偏心構造の外側には推力構造が外嵌され、前記推力構造は前記ハウジングの前記第1キャビティに位置し、前記推力構造と前記偏心構造が相対回転可能であり、前記推力構造と前記偏心構造が第1摺動摩擦対偶を構成し、水または水溶液が前記第1キャビティにおける前記第1摺動摩擦対偶に進入することができ、前記偏心構造が回転する時、前記推力構造は、前記プランジャを押して前記プランジャチャンバ内で移動させて水または水溶液に対する加圧を実現することができる。
【0014】
好ましくは、前記推力構造の前記主軸の軸線に垂直な断面の外縁曲線は、第1曲線と第2曲線を含み、前記第1曲線における点から前記主軸の軸線までの垂直距離は、前記第1曲線の一端から前記第1曲線の他端へ徐々に増大し、前記第2曲線における点から前記主軸の軸線までの垂直距離は、前記第1曲線の他端に接続される前記第2曲線の一端から前記第1曲線の一端に接続される前記第2曲線の他端へ徐々に減少する。
【0015】
好ましくは、前記偏心構造の外面および/または前記推力構造の内面には、第1減摩層が設けられ、前記第1減摩層は、プラスチック製である。
【0016】
好ましくは、前記プランジャはプランジャ本体を含み、前記プランジャ本体の一端が前記プランジャチャンバに挿入され、前記プランジャ本体と前記プランジャチャンバは第2摩擦対偶を構成し、前記プランジャ本体の外面および/または前記プランジャチャンバの内面には第2減摩層が固定され、前記第2減摩層は、プラスチック製である。
【0017】
好ましくは、前記隔離構造と前記転がり軸受との間に排水チャンバが設けられ、前記排水チャンバ内には、前記主軸に外嵌される止水リングが設けられ、前記排水チャンバと前記ハウジングの流体通路とが連通し、前記排水チャンバ内の水または水溶液が前記流体通路を通じて前記ハウジングの外部に排出される。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、従来技術に対して以下の技術的効果を奏する。
【0019】
本発明に係る高圧水ポンプ駆動機構は、水および水溶液によって潤滑を実現するとともに、水および水溶液によって移動対偶の放熱問題を効果的に解決することができる。転がり軸受が所在するハウジング空間(第2キャビティ)を隔離構造で隔離することにより、転がり軸受に対する水または水溶液の影響を回避する。これにより、経済的な従来の転がり軸受構造を主軸の支持構造に適用することが可能になり、高圧水ポンプの主軸の撓み支持課題を解決する。また、転がり軸受が所在する第2キャビティに対応するハウジングは、転がり軸受の動作により発生した熱を水または水溶液に伝達して、熱の蓄積を回避することができ、これにより、高圧水ポンプは高荷重条件で長時間連続して作動することができる。本発明に係る高圧水ポンプの駆動機構は、潤滑油を利用せず、潤滑油を交換するメンテナンス作業を定時に行う必要がなく、出力圧力が30MPaを超え、環境保全にも極めて有意義である。本発明の主軸の支持構造は、従来の転がり軸受を利用し、静圧支持を回避し、構造が簡単で、経済性が良く、かつ流量損失がなく、高圧水ポンプの圧力および容積効率のさらなる向上に寄与し、耐汚染性も著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の実施例または従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例において使用される必要がある図面を簡単に紹介する。言うまでもないが、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労働をせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本発明に係る転がり支持を利用する水潤滑高圧ポンプの内部構造の模式図である(実施例1)。
【
図2】本発明の
図1のA-A断面図である(実施例1に係る、オイルシール構造を利用した隔離構造1)。
【
図3】本発明の
図1のA-A断面図である(実施例1に係る、補償機能を有するリップシール構造を利用した隔離構造2)。
【
図4】本発明の
図1のA-A断面図である(実施例1に係る、メカニカルシール構造を利用した隔離構造3)。
【
図5】本発明に係る駆動機構の模式
図1(実施例1)である。
【
図7】本発明に係る駆動機構の模式
図2(実施例2)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例に係る図面に関連して、本発明の実施例に係る技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。言うまでもないが、説明する実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに得られるすべての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に該当する。
【0022】
本発明の目的は、従来の高圧水ポンプ主軸が著しく撓み変形した場合でも、経済的かつ確実な支持を実現することができる、転がり支持を用いる水潤滑高圧ポンプを提供することである。
【0023】
本発明の上記目的、構成および利点をより明らかにするために、以下、図面および具体的な実施形態に関連して本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
[実施例1]
図1~
図6に示すように、本実施例は、転がり支持を用いる水潤滑高圧ポンプ100を提供する。転がり支持を用いる水潤滑高圧ポンプ100は、駆動機構4、液圧シリンダ1、反発構造9、転がり軸受17、少なくとも1つのプランジャ21およびプランジャチャンバ12を含む。液圧シリンダ1は、ポンプヘッドとも呼ばれ、従来の往復動ポンプの液圧シリンダ1と同様に機能し、ポンプにおいて液圧を受ける主な部品の1つである。液圧シリンダ1内には高低圧流体通路および逆止弁37が配置され、1つのプランジャ21は、1つの吸入弁と1つの排出弁に対応して流体の分配を実現し、低圧水の入力と高圧水の出力を実現する。プランジャチャンバ12は、液圧シリンダ1またはハウジング2に設けられてもよい。液圧シリンダ1は、一体化して成形加工されてもよく、複数の部品が組み合わせて形成されてもよい。ハウジング2は、液圧シリンダ1の右端に固定接続され、液圧シリンダ1とハウジング2は、着脱可能に接続されるかまたは一体成形で製造されてもよい。ハウジング2は、複数の部材が組み合わせて固定されて形成されてもよい。駆動機構4は、主軸5と、主軸5に設けられる少なくとも1つの偏心構造32とを含み、本実施例において、偏心構造32は、カム6であり、好ましくは偏心輪の態様である。主軸5は、少なくとも一側で転がり軸受17を介してハウジング2に回転可能に接続される。転がり軸受17は、内輪が主軸5に外嵌され、外輪がハウジング2の内部に嵌設される。転がり軸受17は好ましくは、グリースで潤滑される。
【0025】
それぞれのカム6の外側には推力構造7が外嵌され、推力構造7とカム6は、相対回転可能であり、第1摺動摩擦対偶を構成する。推力構造7の、主軸5の軸線に垂直な断面の外縁曲線は、第1曲線22と第2曲線23を含み、第1曲線22における点から主軸5の軸線までの垂直距離は、第1曲線22の一端から第1曲線22の他端にかけて徐々に増大し、第2曲線23における点から主軸5の軸線までの垂直距離は、第1曲線22の他端に接続される第2曲線23の一端から第1曲線22の一端に接続される第2曲線23の他端にかけて徐々に減少する。
【0026】
カム6および推力構造7はいずれもハウジング2の第1キャビティ18に位置し、転がり軸受17はハウジング2の第2キャビティ19に位置し、第1キャビティ18と第2キャビティ19との間には隔離構造14が設けられる。第1キャビティ18はさらに、水または水溶液を充填するために用いられ、水または水溶液は、第1摺動摩擦対に進入して第1摺動摩擦対偶の潤滑および放熱を改善することができる。偏心構造32が回転する時、推力構造7はプランジャ21を押してプランジャチャンバ12内で移動させて水または水溶液に対する加圧を実現する。それぞれのプランジャ21は、左端が液圧シリンダ1内に位置し、右端が推力構造7に接触し、プランジャ21には反発構造9が設けられる。主軸5の一端が動力機器(例えば、モータ)に接続され、主軸5がカム6を回転させる時、推力構造7は、プランジャ21の接触面に当接しながらプランジャ21の接触面において転がり(ある程度摺動する可能性がある)、接触によってプランジャ21を押して液体シリンダ1のプランジャチャンバ12内で液体シリンダ1の方向へ移動させ、水または水溶液を加圧し、水を排出する。また、反発構造9の作用により、プランジャ21が戻り行程で推力構造7との接触を維持し、並びに水を吸い込むことを保証する。
【0027】
図2~
図4に示すように、隔離構造14は、偏心構造32が所在する第1キャビティ18の空間を、転がり軸受17が所在する第2キャビティ19の空間から隔離する。隔離構造14は、ハウジング2と主軸5との間に取り付けられ、最外端にある偏心構造32と転がり軸受17との間に位置し、転がり軸受17の外側には弾性止めリング16が設けられる。隔離構造14は、ハウジング2の第1キャビティ18における水が第2キャビティ19の転がり軸受17の取付空間に進入することを防止できる。隔離構造14は、オイルシール構造、補償機能を有するリップシール構造、またはメカニカルシール構造などから選択することができる。動作中、従来の接触式シール構造は、水を完全に封止し難いため、微量の水または水溶液が隔離構造14を介して第1キャビティ18から第2キャビティ19に進入するリスクがある。水または水溶液による転がり軸受17の浸食を防止するために、隔離構造14と転がり軸受17との間に位置する主軸5には止水リング15が固定され、止水リング15は排水チャンバ20内にも位置し、排水チャンバ20にはハウジング2の外部まで流体通路24が設けられる。止水リング15は漏れた水または水溶液が軸方向に沿って転がり軸受17に到達することをより確実に阻止できるとともに、漏れた水または水溶液は流体通路24を介して排水チャンバ20からハウジング2の外部に排出されることにより、転がり軸受17が完全に水または水溶液から遮断されることを確保する。接触式シール構造が消耗部材であるため、止水リング15および排水チャンバ20の設置は、接触式シール部材が損傷する時に転がり軸受17の保護に寄与する。
【0028】
本実施例において、カム6の外面および/または推力構造7の内面には、第1減摩層8が設けられる。第1減摩層8は具体的に、接着またはしまりばめによってカム6または推力構造7に固定されてもよく、あるいは射出、スプレーなどのプロセスによって表面に直接に成形されてもよい。水または水溶液は、第1摺動摩擦対偶に進入して流体動圧潤滑効果を奏する。
【0029】
第1減摩層8は、プラスチックで製造され、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリアリールエーテルなどの熱可塑性材料が好ましい。プラスチックに繊維、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレンなどを添加することにより、摩擦性能を効果的に改善することができる。
【0030】
本実施例において、カム6と主軸5は、一体部材として製造されてもよく、個別部材に製造されてから組み立てて固定されてもよい。これによりカム6と主軸5を同期回転させることができる。それぞれの推力構造7は、それぞれのカム6にそれぞれ外嵌される。本実施例においては、主軸5に3つのカム6が設けられ、それぞれのカム6が1つのプランジャ21を押して水または水溶液を加圧する。回転方向において、3つのカム6の間には互いに120度の位相差がある。
【0031】
プランジャ21は、単一部品または複数の部品の組み合わせによって構成されてもよく、本実施例において、プランジャ21はプランジャ本体3を含む。各プランジャ本体3はすべて主軸5の同一側に配置されるため、構造が簡素化され、製造しやすくなる。プランジャ本体3は、一端が液圧シリンダ1のプランジャチャンバ12内に挿入され、プランジャ本体3とプランジャチャンバ12は第2摩擦対偶を構成し、第2摩擦対偶に1μm~30μmの隙間が設けられる。隙間は、プランジャ本体3がプランジャチャンバ12内でスムーズに移動することを保証するとともに、プランジャチャンバ12内の高圧流体が低圧端まで漏れることを抑制する。水または水溶液は、隙間において摩擦対偶に対する潤滑作用を果たし、さらに摩擦熱を放出させる。
【0032】
本実施例において、プランジャ本体3の外面および/またはプランジャチャンバ12の内面には、第2減摩層13が固定されている。第2減摩層13は、プラスチックであり、例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリアリールエーテルなどの熱可塑性材料が好ましい。プラスチックに繊維、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレンなどを添加することにより、摩擦性能を効果的に改善することができる。
【0033】
本実施例において、第2減摩層13は、接着またはしまりばめによってプランジャ本体3の外面またはプランジャチャンバ12の内面に固定されてもよく、あるいは射出、スプレーなどのプロセスによって第2摩擦対偶の表面に直接に成形されてもよい。
【0034】
本実施例において、反発構造9は、第1バッフル板10と第1弾性素子11を含む。第1バッフル板10は、プランジャ本体3の右端に固定される。第1弾性素子11は、一端が液圧シリンダ1に当接し、他端が第1バッフル板10に当接する。
【0035】
本実施例は、構造が簡単であり、駆動機構4に潤滑油を必要とせず、メンテナンスが便利であり、30MPaを超える圧力出力を実現することができる。
【0036】
[実施例2]
図7~
図8に示すように、本実施例は、以下の点で実施例1と相違する。本実施例において、偏心構造32はクランクシャフトであり、コンロッドジャーナル35はいずれもクランク36を介して主軸5に接続され、推力構造7はコンロッドジャーナル35の外周に外嵌され、第1減摩層8はコンロッドジャーナル35の外面および/または推力構造7の内面に設けられる。
【0037】
本明細書では、具体的な例で本発明の原理および実施形態について述べたが、以上の実施例の説明は、本発明の方法およびその主旨を理解しやすくするためのものに過ぎない。また、当業者であれば、本発明の思想に基づいて、具体的な実施形態および応用範囲のいずれかに対して一部を変更してもよい。よって、本明細書の記載は、本発明を限定するものと理解すべきではない。
【符号の説明】
【0038】
100 転がり支持を用いる水潤滑高圧ポンプ
1 液圧シリンダ
2 ハウジング
3 プランジャ本体
4 駆動機構
5 主軸
6 カム
7 推力構造
8 第1減摩層
9 反発構造
10 第1バッフル板
11 第1弾性素子
12 プランジャチャンバ
13 第2減摩層
14 隔離構造
15 止水リング
16 弾性止めリング
17 転がり軸受
18 第1キャビティ
19 第2キャビティ
20 排水チャンバ
21 プランジャ
22 第1曲線
23 第2曲線
24 流体通路
32 偏心構造
35 コンロッドジャーナル
36 クランク
37 逆止弁
54 ハウジング入水口
55 液圧シリンダ入水口
【手続補正書】
【提出日】2024-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプであって、
駆動機構、ハウジング、転がり軸受、隔離構造、少なくとも1つのプランジャおよび
前記少なくとも1つのプランジャに一対一対応する少なくとも1つのプランジャチャンバを含み、
前記駆動機構は、主軸と、前記主軸に設けられる
、前記少なくとも1つのプランジャに一対一対応する少なくとも1つの偏心構造とを含み、前記主軸
の少なくとも一
端が前記転がり軸受を介して前記ハウジングに回転可能に接続され、
前記偏心構造は、前記ハウジングの第1キャビティに位置し、前記第1キャビティは水または水溶液を充填するために用いられ、
前記転がり軸受は、前記ハウジングの第2キャビティに位置し、
前記隔離構造は、前記ハウジング内の水または水溶液を前記第2キャビティに進入させないように封止し、
前記偏心構造は、回転する時、前記プランジャを押して前記プランジャチャンバ内で移動させることにより、水または水溶液に対する加圧を実現する、
ことを特徴とする転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項2】
それぞれの前記偏心構造の外側には推力構造が外嵌され、前記推力構造は前記ハウジングの前記第1キャビティに位置し、前記推力構造と前記偏心構造が相対回転可能であり、前記推力構造と前記偏心構造が第1摺動摩擦対偶を構成し、水または水溶液が前記第1キャビティにおける前記第1摺動摩擦対偶に進入することができ、
前記偏心構造が回転する時、前記推力構造は、
前記プランジャの接触面に当接しながら前記接触面において転がって、前記プランジャを押して前記プランジャチャンバ内で移動させて水または水溶液に対する加圧を実現する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項3】
前記推力構造の、前記主軸の軸線に垂直な断面の外縁曲線は、第1曲線と第2曲線を含み、前記第1曲線における点から前記主軸の軸線までの垂直距離は、前記第1曲線の一端から前記第1曲線の他端へ徐々に増大し、前記第2曲線における点から前記主軸の軸線までの垂直距離は、前記第1曲線の他端に接続される前記第2曲線の一端から前記第1曲線の一端に接続される前記第2曲線の他端へ徐々に減少する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項4】
前記偏心構造の外面および/または前記推力構造の内面には、第1減摩層が設けられ、
前記第1減摩層は、プラスチック製である、
ことを特徴とする請求項
2に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項5】
前記プランジャはプランジャ本体を含み、前記プランジャ本体の一端が前記プランジャチャンバに挿入され、前記プランジャ本体と前記プランジャチャンバは第2摩擦対偶を構成し、前記プランジャ本体の外面および/または前記プランジャチャンバの内面には第2減摩層が固定され、
前記第2減摩層は、プラスチック製である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項6】
前記隔離構造はシール構造であり、前記シール構造が接触式シール構造である、
ことを特徴とする請求項1に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項7】
前記隔離構造と前記転がり軸受との間に排水チャンバが設けられ、
前記排水チャンバと前記ハウジングの流体通路とが連通し、前記排水チャンバ内の水または水溶液が前記流体通路を通じて前記ハウジングの外部に排出される、
ことを特徴とする請求項
1ないし6のいずれか一項に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項8】
前記排水チャンバ内には、前記主軸に外嵌される止水リングが設けられ、前記止水リングは前記排水チャンバ内の水または水溶液が前記主軸の方向に沿って前記転がり軸受まで到達することを阻止する、
ことを特徴とする請求項7に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【請求項9】
前記転がり軸受は、グリースで潤滑される、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプを提供する。該転がり支持を用いた水潤滑高圧ポンプは、駆動機構、ハウジング、転がり軸受、隔離構造、少なくとも1つのプランジャおよび前記少なくとも1つのプランジャに一対一対応する少なくとも1つのプランジャチャンバを含む。前記駆動機構は、主軸と、前記主軸に設けられる、前記少なくとも1つのプランジャに一対一対応する少なくとも1つの偏心構造とを含み、前記主軸の少なくとも一端が前記転がり軸受を介して前記ハウジングに回転可能に接続される。前記偏心構造は、前記ハウジングの第1キャビティに位置し、前記第1キャビティは水または水溶液を充填するためにも用いられる。前記転がり軸受は、前記ハウジングの第2キャビティに位置し、前記隔離構造は、前記ハウジング内の水または水溶液を前記第2キャビティに進入させないように封止する。前記偏心構造は、回転する時、前記プランジャを押して前記プランジャチャンバ内で移動させることにより、水または水溶液に対する加圧を実現することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
好ましくは、それぞれの前記偏心構造の外側には推力構造が外嵌され、前記推力構造は前記ハウジングの前記第1キャビティに位置し、前記推力構造と前記偏心構造が相対回転可能であり、前記推力構造と前記偏心構造が第1摺動摩擦対偶を構成し、水または水溶液が前記第1キャビティにおける前記第1摺動摩擦対偶に進入することができ、前記偏心構造が回転する時、前記推力構造は、前記プランジャの接触面に当接しながら前記接触面において転がって、前記プランジャを押して前記プランジャチャンバ内で移動させて水または水溶液に対する加圧を実現することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
[実施例1]
図1~
図6に示すように、本実施例は、転がり支持を用いる水潤滑高圧ポンプ100を提供する。転がり支持を用いる水潤滑高圧ポンプ100は、駆動機構4、液圧シリンダ1、反発構造9、転がり軸受17、少なくとも1つのプランジャ21およびプランジャチャンバ12を含む。液圧シリンダ1は、ポンプヘッドとも呼ばれ、従来の往復動ポンプの液圧シリン
ダと同様に機能し、ポンプにおいて液圧を受ける主な部品の1つである。液圧シリンダ1内には高低圧流体通路および逆止弁37が配置され、1つのプランジャ21は、1つの吸入弁と1つの排出弁に対応して流体の分配を実現し、低圧水の入力と高圧水の出力を実現する。プランジャチャンバ12は、液圧シリンダ1またはハウジング2に設けられてもよい。液圧シリンダ1は、一体化して成形加工されてもよく、複数の部品が組み合わせて形成されてもよい。ハウジング2は、液圧シリンダ1の右端に固定接続され、液圧シリンダ1とハウジング2は、着脱可能に接続されるかまたは一体成形で製造されてもよい。ハウジング2は、複数の部材が組み合わせて固定されて形成されてもよい。
ハウジング2にはハウジング入水口54が形成されてもよく、液圧シリンダ1には液圧シリンダ入水口55が形成されてもよい。駆動機構4は、主軸5と、主軸5に設けられる少なくとも1つの偏心構造32とを含み、本実施例において、偏心構造32は、カム6であり、好ましくは偏心輪の態様である。主軸5は、少なくとも一
端が転がり軸受17を介してハウジング2に回転可能に接続される。転がり軸受17は、内輪が主軸5に外嵌され、外輪がハウジング2の内部に嵌設される。転がり軸受17は好ましくは、グリースで潤滑される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
カム6および推力構造7はいずれもハウジング2の第1キャビティ18に位置し、転がり軸受17はハウジング2の第2キャビティ19に位置し、第1キャビティ18と第2キャビティ19との間には隔離構造14が設けられる。第1キャビティ18はさらに、水または水溶液を充填するために用いられ、水または水溶液は、第1摺動摩擦対に進入して第1摺動摩擦対偶の潤滑および放熱を改善することができる。偏心構造32が回転する時、推力構造7はプランジャ21を押してプランジャチャンバ12内で移動させて水または水溶液に対する加圧を実現する。それぞれのプランジャ21は、左端が液圧シリンダ1内に位置し、右端が推力構造7に接触し、プランジャ21には反発構造9が設けられる。主軸5の一端が動力機器(例えば、モータ)に接続され、主軸5がカム6を回転させる時、推力構造7は、プランジャ21の接触面に当接しながらプランジャ21の接触面において転がり、接触によってプランジャ21を押して液体シリンダ1のプランジャチャンバ12内で液体シリンダ1の方向へ移動させ、水または水溶液を加圧し、水を排出する。また、反発構造9の作用により、プランジャ21が戻り行程で推力構造7との接触を維持し、並びに水を吸い込むことを保証する。
【国際調査報告】