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特表2024-545328減衰手段を備えた不連続ねじ回し装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】減衰手段を備えた不連続ねじ回し装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B25B21/02 D
B25B21/02 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538125
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2022085768
(87)【国際公開番号】W WO2023117609
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114181
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507284031
【氏名又は名称】エタブリスマン・ジョルジュ・ルノー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ギルボ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ムジュ,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ルシュール,イヴォン
(57)【要約】
本発明は、
・ロータ(111)を備えたモータ(11)と、
・連続する加速フェーズにおいて運動エネルギーを蓄積するために、前記ロータ(111)によって回転駆動されることが可能な慣性要素と、
・ネジ止めされる要素を回転駆動可能であり、少なくとも1つの第1の打撃面(1250、320)を備える出力シャフト(124)と、
を備える不連続ねじ回し装置に関し、前記慣性要素は、
・前記ロータ(111)に連結され、且つ前記出力シャフト(124)の前記少なくとも1つの第1の打撃面(1250、320)に接触することができない、少なくとも1つの駆動要素と、
・連続する衝撃フェーズにおいて前記出力シャフト(124)の前記少なくとも1つの第1の打撃面と接触することが意図された少なくとも1つの第2の打撃面(1250、320)を備える、少なくとも1つの打撃要素と、
を備える。
本発明によれば、前記少なくとも1つの駆動要素と前記少なくとも1つの打撃要素とは、少なくとも1つの減衰要素によって連結される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ロータを備えたモータと、
・連続する加速フェーズにおいて運動エネルギーを蓄積するために、前記ロータによって回転駆動されることが可能な慣性要素と、
・ネジ止めされる要素を回転駆動可能であり、少なくとも1つの第1の打撃面を備える出力シャフトと、
を備える不連続ねじ回し装置であって、
前記慣性要素は、
・前記ロータに連結され、且つ前記出力シャフトの前記少なくとも1つの第1の打撃面に接触することができない、少なくとも1つの駆動要素と、
・連続する衝撃フェーズにおいて前記出力シャフトの前記少なくとも1つの第1の打撃面と接触することが意図された少なくとも1つの第2の打撃面を備える、少なくとも1つの打撃要素と、
を備え、
前記少なくとも1つの駆動要素と前記少なくとも1つの打撃要素とは、少なくとも1つの減衰要素によって連結される、ことを特徴とする不連続ねじ回し装置。
【請求項2】
前記慣性要素は、
・前記ロータに回転自在に連結されたケージと、
・前記少なくとも1つの第2の打撃面を備えた前記打撃要素を備える少なくとも1つの可動部材であって、当該可動部材は、前記減衰要素によって前記打撃要素に固定された前記ケージへの接続のための部分を備え、前記可動部材は、少なくとも、
・前記少なくとも1つの第2の打撃面が前記少なくとも1つの第1の打撃面と接触して前記出力シャフトにトルクを伝達することができる、係合位置と、
・前記慣性要素が自由に加速できるように、前記少なくとも1つの第2の打撃面が前記少なくとも1つの第1の打撃面と接触できない、係合解除位置と、
の間で前記ケージに対して相対移動可能である、可動部材と、
を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記可動部材は、前記モータの回転軸に平行な軸に沿って、その係合位置と係合解除位置との間で回転移動可能である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記可動部材は、前記モータの回転軸に平行な軸に沿って、その係合位置と係合解除位置との間で並進移動可能である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの可動部材は、2つの側方プレートと、前記減衰要素によって前記側方プレートに固定された中央プレートとを備え、前記少なくとも1つの可動部材は、前記モータの回転軸に平行な針によって前記ケージに回転可能に連結され、前記中央プレートは、前記側方プレートの一方から他方への接触なしに前記針の通過を可能にする室部を備えている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記減衰要素は、前記中央プレートと前記側方プレートの各々との間に配置された2枚のシート状の減衰材を備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの可動要素は、前記ケージへの接続のための部分を備える軸と、前記減衰要素によって連結された前記少なくとも1つの第2の打撃面を備える打撃部分とを備え、前記打撃部分は、前記可動部材の位置のいずれにおいても前記ケージに接触しない、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの可動要素は、軸を備え、前記ケージは、前記ロータへの固定のための部分と、前記軸を駆動するための部分とを備え、前記ケージの当該2つの部分は、前記減衰要素によって互いに固定される、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項9】
前記慣性要素は、
・前記ロータに回転可能に連結されたベルと、
・前記少なくとも1つの第2の打撃面を備えた前記打撃要素を備えるリングと、
を備え、
前記リングと前記ベルとは、前記減衰要素によって連結される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記慣性要素は、前記衝撃フェーズの各々が完了したときにねじ抜きする方向に回転可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記減衰要素は、エラストマ材料で作られている、請求項1から10のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記エラストマ材料は、
・天然ゴム、
・合成ゴム、
・ネオプレン、および
・ニトリル、
を含む群に属する、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明の分野は、衝撃式ねじ回し装置の設計及び製造に関するものである。
【0002】
より詳細には、本発明は、衝撃減衰及びそのような装置により発生される騒音の減衰に関する。
【背景技術】
【0003】
2.先行技術
インパクトレンチまたはパルスねじ回し工具とも呼ばれる衝撃式ねじ回し装置は、組立品のねじ込み及び/又はねじ抜きを行うために、様々な分野で一般的に使用されている。
【0004】
従来、インパクトレンチ又はパルスねじ回し工具は、出力シャフトと打撃機構を継続的又は断続的に回転駆動可能なロータを備えたモータとを備え、当該打撃機構は、加速フェーズにおいて運動エネルギーを蓄積し、且つその後に連続的な衝撃フェーズにおいて出力シャフトに運動エネルギーを伝えて、出力シャフトにトルクを伝達することができる。このように、ねじ止めすべき要素と協働することができる駆動要素を駆動する出力シャフトは、各衝撃時に、ねじ止めすべき要素にトルクを伝達し、その締め付けを確実にする。
【0005】
インパクトレンチ及びパルスねじ回し工具は、当該工具を保持している作業者の手に低強度の反動だけを誘発させながら、高いトルクレベルでの締め付けを効率的に行うことができる。
【0006】
それにもかかわらず、インパクトレンチ及びパルスねじ回し工具は、場合によっては騒音公害を引き起こす可能性のあるノイズを発生させるという欠点がある。
【0007】
打撃機構における各衝撃で発生したノイズは、以下のいくつかの伝達経路、すなわち、
・音響エネルギーが空気中に直接伝達されることを誘導する空中経路;
・音響エネルギーが最終的に放射され且つ空気中に伝達される前に、接触している固体を通して徐々に伝達されることを誘導する固体経路
をたどって反響する可能性がある。
【0008】
ノイズの伝播を制限するために、様々な技術的解決策が検討されてきた。
【0009】
文献DE-A1-102004032789に記載されている1つの技術は、ケーシングへのノイズの伝達を制限するように、インパクトレンチのケーシングと衝撃機構との間に減衰要素を配置することにある。
【0010】
文献US-A1-2006225909及びJP-A-200807379に記述されているもう1つの技術は、インパクトレンチの構成部品の共鳴が組立品に伝達することを制限するために、減衰要素によって結合された2つの部分を備える出力シャフトを備えることにある。
【0011】
これらの解決策により、インパクトレンチを用いてねじ込み/ねじ抜き作業を行う際に発生するノイズの伝播を低減することができる。
【0012】
それにもかかわらず、これらの策は、実現される減衰点の上流に配置された部品によって伝達される打撃機構によって発生されるノイズを減衰させることはできない。
【0013】
したがって、これらのノイズの伝搬をさらに低減することが可能である。
【発明の概要】
【0014】
3.発明の目的
特に、本発明の目的は、これらの異なる問題の少なくともいくつかに対する効果的な解決策を提供することである。
【0015】
特に、少なくとも1つの実施の形態によれば、本発明の目的は、衝撃機構によって発生するノイズの伝達が減衰されるパルスねじ回し工具を提供することである。
【0016】
特に、本発明の目的は、少なくとも1つの実施の形態によれば、打撃機構において発生するノイズの伝達を、当該ノイズの放出源に最も近い位置で減衰させることに寄与する、そのようなパルスねじ回し工具を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、少なくとも1つの実施の形態によれば、当該ノイズ放出源からの、すなわち衝撃機構の部品が互いに打ち当たることからの、ノイズの空気中伝達を防止することを可能にするようなパルスねじ回し工具を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、少なくとも1つの実施の形態において、簡単及び/又はコンパクト及び/又は堅牢及び/又は効果的である、そのようなパルスねじ回し工具を提供することである。
【0019】
4.発明の開示
この目的のために、本発明は、
・ロータを備えたモータと、
・連続する加速フェーズにおいて運動エネルギーを蓄積するために、前記ロータによって回転駆動されることが可能な慣性要素と、
・ネジ止めされる要素を回転駆動可能であり、少なくとも1つの第1の打撃面を備える出力シャフトと、
を備える不連続ねじ回し装置であって、
前記慣性要素は、
・前記ロータに連結され、且つ前記出力シャフトの前記少なくとも1つの第1の打撃面に接触することができない、少なくとも1つの駆動要素と、
・連続する衝撃フェーズにおいて前記出力シャフトの前記少なくとも1つの第1の打撃面と接触することが意図された少なくとも1つの第2の打撃面を備える、少なくとも1つの打撃要素と、
を備える、不連続ねじ回し装置を提供する。
【0020】
本発明によれば、前記少なくとも1つの駆動要素と前記少なくとも1つの打撃要素とは、少なくとも1つの減衰要素によって連結される。
【0021】
従って、本発明のこの態様によれば、打撃要素とそれをロータに連結する構造体との間、すなわち、互いに打ち当たるときにノイズを発生させる部分に、減衰要素が介在される。
【0022】
このようにして、本発明は、ノイズ発生源におけるノイズの発生を制限し、インパクトレンチの異なる構成部材によるノイズの空中伝達を低減することに寄与する。
【0023】
可能な変形例によれば、前記慣性要素は、
・前記ロータに回転自在に連結されたケージと、
・前記少なくとも1つの第2の打撃面を備えた前記打撃要素を備える少なくとも1つの可動部材であって、当該可動部材は、前記減衰要素によって前記打撃要素に固定された前記ケージへの接続のための部分を備え、前記可動部材は、少なくとも、
・前記少なくとも1つの第2の打撃面が前記少なくとも1つの第1の打撃面と接触して前記出力シャフトにトルクを伝達することができる、係合位置と、
・前記慣性要素が自由に加速できるように、前記少なくとも1つの第2の打撃面が前記少なくとも1つの第1の打撃面と接触できない、係合解除位置と、
の間で前記ケージに対して相対移動可能である、可動部材と、
を備えている。
【0024】
可能な変形例によれば、前記可動部材は、前記モータの回転軸に平行な軸に沿って、その係合位置と係合解除位置との間で回転移動可能である。
【0025】
可能な変形例によれば、前記可動部材は、前記モータの回転軸に平行な軸に沿って、その係合位置と係合解除位置との間で並進移動可能である。
【0026】
可能な変形例によれば、前記少なくとも1つの可動部材は、2つの側方プレートと、前記減衰要素によって前記側方プレートに固定された中央プレートとを備え、前記少なくとも1つの可動部材は、前記モータの回転軸に平行な針によって前記ケージに回転可能に連結され、前記中央プレートは、前記側方プレートの一方から他方への接触なしに前記針の通過を可能にする室部を備えている。
【0027】
可能な変形例によれば、前記減衰要素は、前記中央プレートと前記各側方プレートの各々との間に配置された2枚のシート状の減衰材を備える。
【0028】
可能な変形例によれば、前記少なくとも1つの可動要素は、前記ケージへの接続のための部分を備える軸と、前記減衰要素によって連結された前記少なくとも1つの第2の打撃面を備える打撃部分とを備え、前記打撃部分は、前記可動部材の位置のいずれにおいても前記ケージに接触しない。
【0029】
可能な変形例によれば、前記少なくとも1つの可動要素は軸を備え、前記ケージは、前記ロータへの固定のための部分と、前記軸を駆動するための部分とを備え、前記ケージの当該2つの部分は、前記減衰要素によって互いに固定される。
【0030】
可能な変形例によれば、前記慣性要素は、
・前記ロータに回転可能に連結されたベルと、
・前記少なくとも1つの第2の打撃面を備えた前記打撃要素を備えるリングと、
を備え、
前記リングと前記ベルとは、前記減衰要素によって連結される。
【0031】
可能な変形例によれば、前記慣性要素は、前記衝撃フェーズの各々が完了したときにねじ抜きする方向に回転可能である。
【0032】
可能な変形例によれば、前記減衰要素は、エラストマ材料で作られている。
【0033】
可能な変形例によれば、前記エラストマ材料は、
・天然ゴム、
・合成ゴム、
・ネオプレン、および
・ニトリル、
を含む群に属する。
【0034】
5.図の説明
本発明の他の特徴及び利点は、簡単な例示的かつ非限定的な例として示される以下の特定の実施の形態の説明を読むこと、および添付の図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、ツインハンマー型打撃機構を備える第1の実施の形態によるねじ込み/ねじ抜き装置の縦断面図を示す。
図2図2は、図1の装置の打撃機構の分解図を示す。
図3図3は、ハンマーが解除位置にある図1の装置の軸A-Aによる断面図を示す。
図4図4は、ハンマーが係合位置にある図1の装置の軸A-Aによる断面図を示す。
図5図5は、図2の機構のハンマーの斜視図を示す。
図6図6は、図5のハンマーの分解図を示す。
図7図7は、ハンマーの中央プレートを通る平面による図2の打撃機構の断面図を示す。
図8図8は、第2の実施の形態で実施されるドッグクラッチ式打撃機構の分解図を示す。
図9図9は、図8の打撃機構の断面図を示す。
図10図10は、第3の実施の形態で実施されるピン型打撃機構の分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
6.特定の実施の形態の説明
6.1.第1の実施の形態:ツインハンマー
図1から図7を参照して、「ツインハンマー」型の衝撃機構を導入する本発明によるインパクトレンチの第1の実施例を説明する。
【0037】
このようなインパクトレンチ1は、電動モータ11を収容するケーシング10と、衝撃機構12と、ねじ込み/ねじ抜きブッシュと協働することが意図された回転出力部材(又は角材)13とを備える。インパクトレンチは作動トリガー14を備える。
【0038】
モータ11は、ロータ111とステータ110とを備える。当該モータは、電動モータからなる。好ましくは、前記モータは永久磁石同期型である。或いは、当該モータは、例えば、直流モータ、非同期モータ、可変リラクタンスモータ、ステッパモータなどのような他のタイプの電気モータからなるものとしてもよい。当該モータは、単相でも多相でもよい。前記モータは空気圧モータからなる可能性もある。
【0039】
ロータ111は、衝撃機構12の入力に直接接続されていても、直接接続されていなくてもよい。その場合、前記ロータと衝撃機構12の入力との間の伝達比は1に等しい。
【0040】
衝撃機構12は「ツインハンマー」型である。
【0041】
衝撃機構12は、ここでは回転自在に接続されるロータ111と直接係合して回転移動可能なケージ120を備える。故に、当該接続は、前記ロータと前記ケージとの間で固定されている。当該係合が直接的でない場合には、前記ロータと前記ケージとの間に歯車伝動装置を介在させてもよい。
【0042】
ケージ120は中空であり、ベルの回転軸、すなわち前記モータの回転軸に実質的に平行な軸を中心として回転移動可能に当該ケージに固定された2つのハンマー121を、ベル120にこの目的のために形成されたノッチ123に嵌合される針122によって、収容する。
【0043】
衝撃機構12は、ハンマー121およびベル120の内側に部分的に延びる出力シャフト124を備える。出力シャフト124は、回転出力部材13と回転可能に接続される。当該出力シャフトは、それぞれ対向する2つの側面に形成された2つの打撃面1250を画定する1つ又は複数のアンビル125を備える。これにより、ねじ込みおよびねじ抜きを確実に行うことができる。1つの単一打撃面により構成して、ねじ込み又はねじ抜きの動作タイプのみを確実にすることも可能である。
【0044】
ハンマー121はまた、出力角材の対応する打撃面1250を打撃することが意図された2つの打撃面1210を備える。前記出力角材と同様に、前記ハンマーは1つの打撃面だけを備えていてもよい。
【0045】
各ハンマーは、針122の通過を可能にする通路1211及び1212を備える。ノッチ1212は、各ハンマーが2つの位置、すなわち次の2つの位置の間でベルに対して移動可能であるように、スライドを形成するように延びている。
・ケージとハンマーが、ハンマーの打撃面が出力角材の打撃面に当たることなく、出力角材を中心に回転することができる、係合解除位置;
・ハンマーの打撃面が出力角材の打撃面に当たることができる、係合位置
【0046】
従来は
・ケージは、ハンマーが解除位置を占有する間にモータによって回転駆動され、運動エネルギーを蓄える;
・ハンマーおよび出力シャフトの形状が理由で、各ハンマーはそれらの係合位置に配される
・ケージおよびハンマーが衝撃角位置に到達すると、係合位置におけるそれらの位置が理由で、ハンマーの打撃面は、出力角材の打撃面に接触し、回転駆動される出力シャフトにトルクが伝達されるように、出力角材の打撃面に対するトルク衝撃を発生させる;
・それらの形状が理由で、ハンマーは係合解除位置になり、ケージは運動エネルギーを再び蓄えるためにいかなる衝撃を発生させることなく回転することができる。
【0047】
このようにして、組立品が適切に締められたり緩められたりするまで、いくつかのサイクルが互いに続く。
【0048】
一般に、衝撃機構は、
・慣性要素又はフライホイール(本明細書において、ケージ120)
・アンビル125(出力角材124に繋げられている)
・フライホイールとアンビル(本明細書において、打撃要素を備える可動要素を形成するハンマー121)との間の機械的接続装置
を備える。
【0049】
本明細書において、各ハンマー121は、2つの側方プレート1213を備え、これらプレート間には中央プレート1214が配される。側方プレート1213は、減衰要素1215によって中央プレート1214に固定される。この減衰要素1215は、本明細書においては、シート状である。当該減衰要素は、エラストマにより作られ、好ましくは、
・天然ゴム;
・合成ゴム;
・ネオプレン;
・ニトリル;
を含む群に属する。
【0050】
各ハンマー121の中央プレート1214は、一方の側方プレート1213から他方の側方プレート1213まで接触せずに針122の通過を可能にする室部1216を備える。
【0051】
このように、側方プレート1213は、中央プレート1214により形成された打撃部分に減衰要素1215を用いて固定された、ケージへの接続のための部分を形成する。
【0052】
したがって、中央プレート12147は、針122と直接接触状態になっていない。側方プレート1213だけが直接接触状態である。
【0053】
逆に、中央プレート1214のみが衝撃の間に出力シャフトと接触しており、側方プレート1213は接触面を有さない。
【0054】
このように、針およびケージへの衝撃の伝達は、減衰要素を介して行われ、この伝達は、音響エネルギーの伝達を大幅に制限する。このようにして、発生したノイズは、その発生源で低減される。
【0055】
6.2.第2の実施の形態:ドッグクラッチ
図8及び図9を参照して、ドッグクラッチ型の衝撃機構を備えた本発明によるインパクトレンチの第2の実施例を説明する。
【0056】
以下、第1の実施の形態と第2の実施の形態との間の主な相違点のみを説明する。
【0057】
この実施の形態では、衝撃機構は、モータに接続された慣性要素を形成するベル20と、出力シャフト124の打撃面1250に打撃可能な打撃面211を有する半径方向突出部210を備えた打撃要素を備えるリング21とを備える。
【0058】
リング21とベル20とは、減衰要素22によって連結されている。減衰要素22は、本明細書において、エラストマ製の円筒形リングの形をしている。
【0059】
従来、ドッグクラッチ型打撃機構の動作は、次の通りである。
・ベルは、モータによって回転駆動され、リングの打撃面が出力シャフトの打撃面と接触していない自由加速フェーズにおいて運動エネルギーを蓄積する;
・ベルが出力シャフトに対して所定の角度位置に到達すると、モータの駆動は動力供給を停止し、次いで、リングの打撃面は、出力シャフトの打撃面に接触して出力シャフトに対しトルク衝撃を発生させ、回転駆動される出力シャフトにトルクが伝達される;
・ベルとモータのロータとは「バウンス」し、つまり、モータに電力が供給されないので、それらは、後方の位置に到達するまで逆回転する;
・その後、モータに再び電力が供給され、モータは再びベルを駆動する
【0060】
このようにして、組立品が適切に締められ又は緩められるまで、いくつかのサイクルが互いに続く。
【0061】
モータに連結されたベル20と、出力シャフトと衝突する打撃面を備えるリング21とが減衰要素21によって分離される限りにおいて、音響エネルギーは、衝撃に最も近い位置で吸収される。このことは、さらに下流の部品への音響エネルギーの伝達を制限し、その結果、ノイズの伝播を制限する。
【0062】
6.3.第3の実施の形態:ピンクラッチ
図10を参照して、「ピンクラッチ」型の衝撃機構を備える本発明によるインパクトレンチの第2の実施例を説明する。
【0063】
以下、第1の実施の形態と第2の実施の形態と間の主な相違点のみを説明する。
【0064】
本明細書において、ケージに対して相対的に移動可能でかつ打撃面を含む部材は、次の2つの位置の間でケージに対してモータの軸に沿って並進移動可能な軸30を備える:
・軸30が出力シャフト124の打撃面1250と衝突することができない解除位置;
・軸30が出力シャフト124の打撃面1250と接触し得る係合位置。
【0065】
各軸30は、ケージ120に接続するための部分31と、少なくとも1つの打撃面320を備える打撃部分32とを備える。これら2つの部分は、減衰要素33によって連結されており、当該打撃部分は、当該軸の位置のいずれにおいてもケージと接触しない。
【0066】
代替的または相補的に、前記軸は一体的に作られているが、ケージは、ロータに固定するための部分121と当該軸を駆動するための部分122とを備えており、これらの部分において、当該軸はそれら2つの位置の間で移動可能に連結されている。ケージの当該2つの部分は、減衰要素123によって互いに固定される。
【0067】
6.4.その他の変形例
本発明による原理は、モータによって駆動される衝撃機構の部分と出力シャフトに対して当たる部分との間に減衰要素を介在させることにある。この原理は、特に、揺動ドッグ、二爪、ばね装填カムなどの他のタイプの衝撃機構でも実現することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ロータを備えたモータと、
・連続する加速フェーズにおいて運動エネルギーを蓄積するために、前記ロータによって回転駆動されることが可能な慣性要素と、
・ネジ止めされる要素を回転駆動可能であり、少なくとも1つの第1の打撃面を備える出力シャフトと、
を備える不連続ねじ回し装置であって、
前記慣性要素は、
・前記ロータに連結され、且つ前記出力シャフトの前記少なくとも1つの第1の打撃面に接触することができない、少なくとも1つの駆動要素と、
・連続する衝撃フェーズにおいて前記出力シャフトの前記少なくとも1つの第1の打撃面と接触することが意図された少なくとも1つの第2の打撃面を備える、少なくとも1つの打撃要素と、
を備え、
前記少なくとも1つの駆動要素と前記少なくとも1つの打撃要素とは、少なくとも1つの減衰要素によって連結される、ことを特徴とする不連続ねじ回し装置。
【請求項2】
前記慣性要素は、
・前記ロータに回転自在に連結されたケージと、
・前記少なくとも1つの第2の打撃面を備えた前記打撃要素を備える少なくとも1つの可動部材であって、当該可動部材は、前記減衰要素によって前記打撃要素に固定された前記ケージへの接続のための部分を備え、前記可動部材は、少なくとも、
・前記少なくとも1つの第2の打撃面が前記少なくとも1つの第1の打撃面と接触して前記出力シャフトにトルクを伝達することができる、係合位置と、
・前記慣性要素が自由に加速できるように、前記少なくとも1つの第2の打撃面が前記少なくとも1つの第1の打撃面と接触できない、係合解除位置と、
の間で前記ケージに対して相対移動可能である、可動部材と、
を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記可動部材は、前記モータの回転軸に平行な軸に沿って、その係合位置と係合解除位置との間で回転移動可能である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記可動部材は、前記モータの回転軸に平行な軸に沿って、その係合位置と係合解除位置との間で並進移動可能である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの可動部材は、2つの側方プレートと、前記減衰要素によって前記側方プレートに固定された中央プレートとを備え、前記少なくとも1つの可動部材は、前記モータの回転軸に平行な針によって前記ケージに回転可能に連結され、前記中央プレートは、前記側方プレートの一方から他方への接触なしに前記針の通過を可能にする室部を備えている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記減衰要素は、前記中央プレートと前記側方プレートの各々との間に配置された2枚のシート状の減衰材を備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの可動要素は、前記ケージへの接続のための部分を備える軸と、前記減衰要素によって連結された前記少なくとも1つの第2の打撃面を備える打撃部分とを備え、前記打撃部分は、前記可動部材の位置のいずれにおいても前記ケージに接触しない、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの可動要素は、軸を備え、前記ケージは、前記ロータへの固定のための部分と、前記軸を駆動するための部分とを備え、前記ケージの当該2つの部分は、前記減衰要素によって互いに固定される、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの可動要素は、軸を備え、前記ケージは、前記ロータへの固定のための部分と、前記軸を駆動するための部分とを備え、前記ケージの当該2つの部分は、前記減衰要素によって互いに固定される、請求項4に記載の装置。
【請求項10】
前記慣性要素は、
・前記ロータに回転可能に連結されたベルと、
・前記少なくとも1つの第2の打撃面を備えた前記打撃要素を備えるリングと、
を備え、
前記リングと前記ベルとは、前記減衰要素によって連結される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記慣性要素は、前記衝撃フェーズの各々が完了したときにねじ抜きする方向に回転可能である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記減衰要素は、エラストマ材料で作られている、請求項1から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記エラストマ材料は、
・天然ゴム、
・合成ゴム、
・ネオプレン、および
・ニトリル、
を含む群に属する、請求項12に記載の装置。
【国際調査報告】