IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボーズ・コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特表-ヘッドホンオーディオコントローラ 図1
  • 特表-ヘッドホンオーディオコントローラ 図2
  • 特表-ヘッドホンオーディオコントローラ 図3
  • 特表-ヘッドホンオーディオコントローラ 図4
  • 特表-ヘッドホンオーディオコントローラ 図5
  • 特表-ヘッドホンオーディオコントローラ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ヘッドホンオーディオコントローラ
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20241128BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G10K11/178 120
H04R1/10 104Z
H04R1/10 101Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538202
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 US2022044702
(87)【国際公開番号】W WO2023129228
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】17/562,142
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オーレ・マティス・ニールセン
【テーマコード(参考)】
5D005
5D061
【Fターム(参考)】
5D005BA13
5D061FF02
(57)【要約】
ユーザの耳に送達される音を発生させるために音響変換器を使用するように構成され、音響変換器によって発生させた音を感知するように構成されたフィードバックマイクロホンを備えるヘッドホンのためのオーディオコントローラを決定する方法、並びに関連するコンピュータプログラム製品及びシステム。音響変換器とフィードバックマイクロホンとの間の第1のオーディオ伝達関数が測定される。フィードバックコントローラが適用された状態で、音響変換器とフィードバックマイクロホンとの間の第2のオーディオ伝達関数が決定される。オーディオコントローラは、第1のオーディオ伝達関数及び第2のオーディオ伝達関数の両方に基づいて計算される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの耳に送達される音を発生させるために音響変換器を使用するように構成され、前記音響変換器によって発生させた音を感知するように構成されたフィードバックマイクロホンを備えるヘッドホンのためのオーディオコントローラを決定する方法であって、
前記音響変換器と前記フィードバックマイクロホンとの間の第1のオーディオ伝達関数を測定することと、
フィードバックコントローラが適用された状態で、前記音響変換器と前記フィードバックマイクロホンとの間の第2のオーディオ伝達関数を決定することと、
前記第1のオーディオ伝達関数及び前記第2のオーディオ伝達関数の両方に基づいて前記オーディオコントローラを計算することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1のオーディオ伝達関数を測定することは、音を生成するために前記音響変換器を動作させるように構成されたオーディオ信号を提供することと、前記フィードバックマイクロホンを使用して前記音を感知することと、前記オーディオ信号及び前記感知された音に基づいて前記第1のオーディオ伝達関数を計算することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のオーディオ伝達関数を決定することは、フィードバックコントローラが適用された状態で、前記音響変換器と前記フィードバックマイクロホンとの間のオーディオ伝達関数を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フィードバックコントローラが適用された状態で、前記音響変換器と前記フィードバックマイクロホンとの間のオーディオ伝達関数を測定することは、音を生成するために前記音響変換器を動作させるように構成されたオーディオ信号を提供することと、前記フィードバックマイクロホンを使用して前記音を感知することと、前記オーディオ信号、前記感知された音、及び前記フィードバックコントローラに基づいて前記第2のオーディオ伝達関数を計算することと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のオーディオ伝達関数を決定することは、前記第1のオーディオ伝達関数及び前記フィードバックコントローラの両方に基づいて前記第2のオーディオ伝達関数を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記オーディオコントローラは、イコライゼーション(EQ)コントローラを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オーディオコントローラは、前記ヘッドホンの外部の音が前記音響変換器によって再生されるヘッドホン使用モードのためのコントローラを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
人の外耳道内に配置されたマイクロホンについて測定されたパワースペクトルを提供することと、前記人の頭部に配置されたマイクロホンについて測定されたパワースペクトルを提供することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記オーディオコントローラの前記計算は、人の外耳道内に配置されたマイクロホンについての前記測定されたパワースペクトルと、前記人の頭部に配置されたマイクロホンについての前記測定されたパワースペクトルとの両方に更に基づく、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記オーディオコントローラの前記計算は、音響変換器と、人の外耳道内に配置されたマイクロホンとの間の第3のオーディオ伝達関数に更に基づく、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
人の外耳道内のフィードバックマイクロホンの第1の位置と前記人の頭部上の第2の位置との間の第3のオーディオ伝達関数を提供することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記音響変換器と人の外耳道内のフィードバックマイクロホンの前記第1の位置との間の第4のオーディオ伝達関数を提供することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1及び第2の定数値を提供することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の定数値は、前記第3及び第4のオーディオ伝達関数の両方に基づいて計算される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の定数値は、複数の異なる人への前記ヘッドホンの複数の異なるフィッティングでの前記第3及び第4のオーディオ伝達関数の両方に基づいて計算される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1及び第2の定数値は、周波数依存複素量を表す、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
符号化されたコンピュータプログラム論理を含む非一時的コンピュータ可読媒体を有するコンピュータプログラム製品であって、ユーザの耳に送達される音を発生させるために音響変換器を使用するように構成され、前記音響変換器によって発生させた音を感知するように構成されたフィードバックマイクロホンを備えるヘッドホン上で実行されると、前記コンピュータプログラム論理は、前記ヘッドホンに、
前記音響変換器と前記フィードバックマイクロホンとの間の第1のオーディオ伝達関数を測定させ、
フィードバックコントローラが適用された状態で、前記音響変換器と前記フィードバックマイクロホンとの間の第2のオーディオ伝達関数を決定させ、
前記第1のオーディオ伝達関数及び前記第2のオーディオ伝達関数の両方に基づいてオーディオコントローラを計算させる、
コンピュータプログラム製品。
【請求項18】
前記オーディオコントローラは、イコライゼーション(EQ)コントローラと、前記ヘッドホンの外部の音が前記音響変換器によって再生されるヘッドホン使用モードのためのコントローラとのうちの少なくとも1つを備える、請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
前記第1のオーディオ伝達関数は、音を生成するために前記音響変換器を動作させるように構成されたオーディオ信号を提供し、前記フィードバックマイクロホンで前記音を感知し、前記オーディオ信号及び前記感知された音に基づいて前記第1のオーディオ伝達関数を計算することによって測定され、更に、前記第2のオーディオ伝達関数は、前記第1のオーディオ伝達関数及び前記フィードバックコントローラの両方に基づいて計算される、請求項18に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
人の外耳道内に配置されたマイクロホンについて測定されたパワースペクトルを提供することと、前記人の頭部に配置されたマイクロホンについて測定されたパワースペクトルを提供することとを更に含み、前記オーディオコントローラの計算は、前記人の外耳道内に配置されたマイクロホンについて前記測定されたパワースペクトルと、前記人の頭部に配置されたマイクロホンについて前記測定されたパワースペクトルと、音響変換器と人の外耳道内に配置されたマイクロホンとの間の第3のオーディオ伝達関数とに更に基づく、請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月27日に出願された米国特許出願第17/562,142号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ヘッドホンオーディオコントローラに関する。
【背景技術】
【0003】
本開示は、オーディオヘッドホンの制御に関する。
【0004】
ヘッドホンは、特にイコライズされた音を提供する目的で制御することができる。アクティブノイズリダクション(ANR)を備えたヘッドホンは、外部音が外部マイクロホンによって感知され、ユーザに対して再生される透過又は認識モードを含むことがある。そのようなヘッドホンはまた、所望の透過音プロファイルを提供するように制御され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様及び例は、ヘッドホンイコライゼーション(EQ)モード及びヘッドホン認識モードの一方又は両方のためのオーディオコントローラを決定することを対象とする。コントローラは、ヘッドホンの音響変換器と、変換器出力を感知するマイクロホン(例えば、ANRヘッドホンにおけるフィードバックマイクロホン)との間で測定されるオーディオ伝達関数に少なくとも部分的に基づいて、更に、この同じ伝達関数であるが、オンにされたフィードバックコントローラで決定される伝達関数に基づいて、使用中に(オンザフライで)計算される。その結果、EQ及び認識モードコントローラは、特定のユーザに対してカスタマイズされ、ユーザ又は他のユーザによって行われる必要のあるアクションはない。これは、ユーザの大きな母集団にわたってより一貫したリスニング体験を提供する。
【0006】
下記で言及される全ての例及び特徴は、任意の技術的に可能な方式で組み合わせることができる。
【0007】
一態様では、ユーザの耳に送達される音を発生させるために音響変換器を使用するように構成され、音響変換器によって発生させた音を感知するように構成されたフィードバックマイクロホンを備えるヘッドホンのためのオーディオコントローラを決定する方法は、音響変換器とフィードバックマイクロホンとの間の第1のオーディオ伝達関数を測定することと、フィードバックコントローラが適用された状態で、音響変換器とフィードバックマイクロホンとの間の第2のオーディオ伝達関数を決定することと、第1のオーディオ伝達関数及び第2のオーディオ伝達関数の両方に基づいてオーディオコントローラを計算することと、を含む。
【0008】
いくつかの例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一例では、第1のオーディオ伝達関数を測定することは、音を生成するために音響変換器を動作させるように構成されたオーディオ信号を提供することと、フィードバックマイクロホンを使用して音を感知することと、オーディオ信号及び感知された音に基づいて第1のオーディオ伝達関数を計算することと、を含む。一部の例では、第2のオーディオ伝達関数を決定することは、フィードバックコントローラが適用された状態で、音響変換器とフィードバックマイクロホンとの間のオーディオ伝達関数を測定することを含む。一例では、フィードバックコントローラが適用された状態で、音響変換器とフィードバックマイクロホンとの間のオーディオ伝達関数を測定することは、音を生成するために音響変換器を動作させるように構成されたオーディオ信号を提供することと、フィードバックマイクロホンを使用して音を感知することと、オーディオ信号、感知された音、及びフィードバックコントローラに基づいて第2のオーディオ伝達関数を計算することと、を含む。
【0009】
いくつかの例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一部の例では、第2のオーディオ伝達関数を決定することは、第1のオーディオ伝達関数及びフィードバックコントローラの両方に基づいて第2のオーディオ伝達関数を計算することを含む。一例では、オーディオコントローラは、イコライゼーション(EQ)コントローラを含む。一例では、オーディオコントローラは、ヘッドホンの外部の音が音響変換器によって再生されるヘッドホン使用認識モードのためのコントローラを含む。
【0010】
いくつかの例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一部の例では、方法は、人の外耳道内に配置されたマイクロホンについて測定されたパワースペクトルを提供することと、人の頭部に配置されたマイクロホンについて測定されたパワースペクトルを提供することと、を更に含む。一部の例では、パワースペクトルは、複数の異なる人について測定される。次に、このデータセットからの値の平均の編集物又はソートをヘッドホンで使用することができる。一例では、オーディオコントローラの計算は、人の外耳道内に配置されたマイクロホンについての測定されたパワースペクトルと、人の頭部に配置されたマイクロホンについての測定されたパワースペクトルとの両方に更に基づく。一例では、オーディオコントローラの計算は、音響変換器と、人の外耳道内に配置されたマイクロホンとの間の第3のオーディオ伝達関数に更に基づく。
【0011】
いくつかの例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一部の例では、方法は、人の外耳道内のフィードバックマイクロホンの第1の位置と人の頭部上の第2の位置との間の第3のオーディオ伝達関数を提供することを更に含む。一例では、方法は、音響変換器と人の外耳道内のフィードバックマイクロホンの第1の位置との間の第4のオーディオ伝達関数を提供することを更に含む。一例では、第2、第3、及び第4のオーディオ伝達関数はそれぞれ、オーディオ信号を音響変換器に提供し、変換された音をマイクロホンで感知し、オーディオ信号及び感知された音に基づいて伝達関数を計算することによって計算される。一部の例では、オーディオ伝達関数は、ユーザに対してリアルタイムで測定される。以下で更に説明するように、一部の例では、制御された環境内の複数の人に対して行われた測定から導出されたデータが、測定された伝達関数と共に使用されて、認識モード及びEQオーディオコントローラの一方又は両方を計算する。
【0012】
いくつかの例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一例において、方法は、第1及び第2の定数値を提供することを更に含む。一例では、第1及び第2の定数値は、第3及び第4のオーディオ伝達関数の両方に基づいて計算される。一例では、第1及び第2の定数値は、複数の異なる人へのヘッドホンの複数の異なるフィッティングでの第3及び第4のオーディオ伝達関数の両方に基づいて計算される。一例では、第1及び第2の定数値は、周波数依存複素量を表す。
【0013】
別の態様では、符号化されたコンピュータプログラム論理を含む非一時的コンピュータ可読媒体を有するコンピュータプログラム製品であって、ユーザの耳に送達される音を発生させるために音響変換器を使用するように構成され、音響変換器によって発生させた音を感知するように構成されたフィードバックマイクロホンを備えるヘッドホン上で実行されると、コンピュータプログラム論理は、ヘッドホンに、音響変換器とフィードバックマイクロホンとの間の第1のオーディオ伝達関数を測定させ、フィードバックコントローラが適用された状態で、音響変換器とフィードバックマイクロホンとの間の第2のオーディオ伝達関数を決定させ、第1のオーディオ伝達関数及び第2のオーディオ伝達関数の両方に基づいてオーディオコントローラを計算させる。
【0014】
いくつかの例は、上記及び/若しくは下記の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一例では、オーディオコントローラは、イコライゼーション(EQ)コントローラと、ヘッドホンの外部の音が音響変換器によって再生されるヘッドホン認識使用モードのためのコントローラとのうちの少なくとも1つを備える。一例では、第1のオーディオ伝達関数は、音を生成するために音響変換器を動作させるように構成されたオーディオ信号を提供し、フィードバックマイクロホンで音を感知し、オーディオ信号及び感知された音に基づいて第1のオーディオ伝達関数を計算することによって測定され、更に、第2のオーディオ伝達関数は、第1のオーディオ伝達関数及びフィードバックコントローラの両方に基づいて計算される。一例では、コンピュータプログラム製品は、人の外耳道内に配置されたマイクロホンについて測定されたパワースペクトルを提供することと、人の頭部に配置されたマイクロホンについて測定されたパワースペクトルを提供することとを更に含み、オーディオコントローラの計算は、人の外耳道内に配置されたマイクロホンについて測定されたパワースペクトルと、人の頭部に配置されたマイクロホンについて測定されたパワースペクトルと、音響変換器と人の外耳道内に配置されたマイクロホンとの間の第3のオーディオ伝達関数とに更に基づく。
【0015】
少なくとも1つの例の様々な態様を、添付図面を参照して、以下で考察するが、これらの図面は、縮尺どおりに描かれることを意図しない。これらの図は、様々な態様と例の図示、及び更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するが、本発明の制約の定義として意図されない。図において、様々な図で図示される同一の、又はほとんど同一の構成要素は、同様の文字又は数字で表記され得る。明瞭にするために、全ての図において、全ての構成要素が、必ずしもラベル付けされていない場合がある。図中、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ヘッドホンの部分断面図である。
図2】ヘッドホンの態様のブロック図である。
図3】ヘッドホンを着用する人の概略図である。
図4】オーディオコントローラを計算する方法を示すフローチャートである。
図5】例示的なオーディオコントローラを有する及び有さないANRイヤホンにおける、1/3オクターブ平滑化された認識モード挿入利得の対数標準偏差のプロットである。
図6】例示的なオーディオコントローラを有する及び有さないANRイヤホンにおける、1/3オクターブ平滑化されたEQモード挿入利得の対数標準偏差のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で説明されるシステム、方法、及び機器の実施例は、以下の説明に記載されるか、又は添付の図面に図示される構成要素の構成及び配置の詳細に適用することに限定されない。システム、方法及び機器は、他の実施例で実装可能であり、様々な方式で実施又は実行可能である。具体的な実施例は、例示目的のみのために本明細書で提供され、限定を意図するものではない。具体的には、任意の1つ以上の実施例に関連して考察される機能、構成要素、要素、及び特徴は、任意の他の実施例において同様の役割から除外されることを意図するものではない。
【0018】
本明細書で開示する例は、本明細書に開示される原理の少なくとも1つと一致する任意の様式で、他の例と組み合わせることができ、更に、「一実施例(an example)」、「いくつかの実施例(some examples)」、「代替例(an alternate example)」、「様々な実施例(various examples)」、「一実施例(one example)」などへの言及は、必ずしも互いに独占的ではなく、説明される特定の特徴、構造、又は特性は、少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを示すように意図される。本明細書におけるこうした用語の出現は、必ずしも全てが同じ実施例を示すわけではない。
【0019】
また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明目的のみを目的としており、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書において単数で言及されるコンピュータプログラム製品、システム及び方法の実施例、構成要素、要素、行為、又は機能に対する任意の言及はまた、複数を含む実施形態を包含してもよく、本明細書における任意の実施例、構成要素、要素、動作、又は機能に対する複数形での任意の言及もまた、単数形のみを含む実施例を包含してもよい。したがって、単数形又は複数形の参照は、本開示のシステム又は方法、それらの構成要素、行為、又は要素を制限することを意図するものではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、並びに、それらの変形形態の使用は、以下で列挙する項目とその等価物、並びに、他の項目を包含することを意味する。「又は(or)」への言及は、「又は(or)」で記載された全ての用語が、記載された用語の単一、複数、及び、全ての用語のいずれかを示せるよう、包括的であると解釈され得る。
【0020】
本開示は、部分的に、オンイヤー、オーバーイヤー又は耳内ヘッドホンなどのヘッドホンのためのオーディオコントローラを決定することを対象とする。オーディオコントローラは、ヘッドホンイコライゼーション(EQ)及びヘッドホン認識モードコントローラの一方又は両方であり得る。コントローラは、既存のヘッドホン構成要素及び処理を使用して、ヘッドホンの使用中に計算される。計算は、ヘッドホンの音響変換器と、変換器出力を感知するマイクロホン(例えば、ANRヘッドホンにおけるフィードバックマイクロホンであって、フィードバックマイクロホンは、典型的には、変換器とユーザの鼓膜との間に位置する)との間で測定されるオーディオ伝達関数に少なくとも部分的に基づく。計算は更に、この同じ伝達関数に基づくが、フィードバックコントローラをオンにして決定される。この決定は、測定された伝達関数に基づいて計算することができる。このリアルタイムコントローラ計算の結果は、EQ及び認識モードコントローラが、ヘッドホンの使用中に、単一の測定されたオーディオ伝達関数に基づいて、特定のユーザのためにカスタマイズされることである。これは、主題のヘッドホンのユーザの大きな母集団にわたってより一貫したリスニング体験を提供する。
【0021】
一例では、第1のオーディオ伝達関数は、ヘッドホンの音響変換器を動作させ、フィードバックマイクロホンで音を感知することによって決定される。第1のオーディオ伝達関数は、変換器に提供されるオーディオ信号に基づいて、及び感知された音に基づいて計算される。第2のオーディオ伝達関数は、音響変換器とフィードバックマイクロホンとの間のオーディオ伝達関数を測定することによって決定されるが、今回は、ヘッドホンフィードバックコントローラが適用される。一例では、第2の伝達関数は、オーディオ信号、感知された音、及びフィードバックコントローラに基づいて計算される。一例では、第2のオーディオ伝達関数は、第1のオーディオ伝達関数及びフィードバックコントローラの両方に基づいて計算することによって決定される。
【0022】
より具体的な例では、オーディオコントローラの計算は、コントローラ計算方式の設計中に得られたデータに基づく。そのようなデータは、実験室又は別の制御された環境において、複数の異なる人々及び各人の両耳へのヘッドホン使用の複数のフィッティングにわたって測定されることができる。異なる人々について測定することにより、多くの異なる耳形状に関するデータが提供される。一例では、このデータは、(鼓膜に近い)外耳道内に配置されたマイクロホンの測定されたパワースペクトルと、ヘッドホンと干渉しない位置で人の頭部に配置されたマイクロホンの別個の測定されたパワースペクトルとを含む。データセットは、人間の被験者の耳にマイクロホンを配置し、被験者の頭部にマイクロホンを配置することによって作成することができる。測定は、ヘッドホンを用いて及び用いずに行われる。
【0023】
一例では、実験室で行われる3つの測定があり、測定のための2つの音源がある。1つの測定では、ヘッドホン内のドライバを使用して、ヘッドセットを装着しながら、ドライバからフィードバックマイクロホン及びカナルマイクロホンへの伝達関数を測定する。他の2つの測定は、測定室内のスピーカから音を再生することによって行われる。これは、ヘッドセットを装着した場合と装着しない場合の両方で行われる。EQについては、ドライバ測定及びオープンルームノイズ測定のみが使用される。認識モードでは、ヘッドセットが装着されているときの外部(フィードフォワード)マイクロホンの応答が必要とされるため、3つ全てが使用される。
【0024】
一例では、検査データは2つの定数値によって表される。これらの定数値は、以下で更に説明するように導出することができる。
【0025】
本開示は、ヘッドホンオーディオデバイスに関する。本開示のいくつかの非限定的な実施例は、イヤホンとして知られるタイプのヘッドホンを記載する。イヤホンは、概して、音を生成するための電気音響変換器を含み、ユーザの外耳道に音を直接送達するように構成される。イヤホンは、無線又は有線であることができる。本明細書に記載の非限定的な例では、イヤホンは、変換器によって生成される音を感知する1つ以上のフィードバックマイクロホンを含む。例はまた、ハウジングの外側の外部音を感知するフィードフォワード(外部)マイクロホンを含む。フィードバック及びフィードフォワードマイクロホンは、外部音が聞こえないようにキャンセルされるアクティブノイズリダクション(ANR)、及び外部音がユーザのために再生される透過モード動作などの機能のために使用され得る。本開示に含まれないイヤホン及びヘッドホンの他の種類の態様は、図示又は説明されない。
【0026】
ヘッドホンは、通常、耳の周り、耳上、又は耳内に嵌めて装着し、外耳道の中に音響エネルギーを直接又は間接的に放射するデバイスを指す。ヘッドホンは、ときには、イヤホン、イヤピース、ヘッドセット、小型イヤホン、又はスポーツヘッドホンと称され、有線式又は無線式とすることができる。ヘッドホンは、電子オーディオ信号を音響エネルギーに変換するドライバ(音響変換器)を含む。ドライバは、頭部又は耳の上に位置するように、あるいはユーザの外耳道に直接挿入されるように構成された、イヤカップ又はハウジングに収納されてもされなくてもよい。ヘッドホンは、各耳に1つずつ、単一の独立型ユニット、又は一対の(各々が少なくとも1つの音響ドライバを含む)ヘッドホンのうちの一方であってもよい。ヘッドホンの一方は、例えば、ヘッドバンドによって、及び/又はヘッドホン内の音響ドライバにオーディオ信号を伝えるリード線によって、ヘッドホンの別の一方に機械的に接続され得る。ヘッドホンは、オーディオ信号を無線で受信する構成要素を含み得る。ヘッドホンは、ANRシステムの構成要素を含むことができ、その構成要素としては、ヘッドホンハウジング内の内部マイクロホンと、ハウジングの外側の音を拾う外部マイクロホンとを挙げることができる。ヘッドホンはまた、ANRシステム用の追加のマイクロホン、又はユーザの声を拾うために使用される1つ以上のマイクロホンなど、他の機能を含むことができる。
【0027】
本明細書に記載のシステム及び方法のうちの1つ以上は、様々なフォームファクタの多種多様なヘッドホンにおいて、様々な実施例及び組み合わせで使用され得る。1つのそのようなフォームファクタは、イヤホンである。別のものは、オンイヤー又はオーバーイヤーヘッドホンである。
【0028】
オーディオを音響的に出力する目的を主に果たすヘッドホンの具体的な実装形態は、ある程度の詳細が提示されているが、そのような特定の実装形態の提示は、実施例の提供を通じて理解を容易にすることを意図するものであり、開示の範囲又は特許請求の範囲のいずれかを限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0029】
いくつかの実施例では、ヘッドホンは、ユーザのために音を生成するように構成された電気音響変換器と、変換器を保持するハウジングと、音が鼓膜に到達する前にハウジング内の音を検出するように構成されたフィードバックマイクロホンとを含む。ヘッドホンのプロセッサシステムは、イコライゼーション(EQ)コントローラ及び認識モードコントローラなどのオーディオコントローラを決定する方法を達成するようにプログラムされる。
【0030】
図1は、無線耳内イヤホン10の斜視図である。イヤホンは、ヘッドホンデバイスの非限定的な例である。イヤホン10は、イヤホンのアクティブ構成要素を収納する本体又はハウジング12を含む。ハウジング12は、可動ダイアフラム16を介して音を生成する電気音響変換器(オーディオドライバ)14を収容する。ハウジング12は、前部ハウジング部分22と、後部ハウジング部分23とを含む。ダイアフラム16は、前部ハウジングキャビティ18内に音圧を作るために駆動される。音はまた、後部ハウジングキャビティ20内で生成される。音圧は、前部ハウジング部分22を出てキャビティ18から音出口24を介して外に向けられる。内部マイクロホン32は、ハウジング12の内部に位置する。例示的なマイクロホン32は、図1に示すように、ハウジング部分12内にある。外部マイクロホン34は、ハウジング12の外部の音を感知するように構成されている。例示的な外部マイクロホン34は、ハウジングの内側に配置され、環境音をマイクロホン34に到達させるハウジング開口部36を介して、外部環境に音響的に結合される。例示的な内部マイクロホン32は、アクティブノイズリダクション(ANR)のためのフィードバックマイクロホンとして使用され、外部マイクロホン34は、ANRのためのフィードフォワードマイクロホンとして、及び/又は透過モード動作のために使用され、透過モードでは、ユーザが外部の環境により気付きやすいように、他の人が話しているのを聞くことができるように、環境音が感知され、ユーザに対して再生される。イヤホンはまた、典型的には、ハウジング部分22のネック25と係合されて音を外耳道内に向けるのを助ける、柔軟な先端(図示せず)を含む。イヤホン10及びその動作の詳細は、技術分野において周知であるため、本明細書ではこれ以上説明しないことに留意されたい。また、イヤホン10の詳細は、ヘッドホンの例示的な態様であり、本開示の範囲を限定するものではないことに留意されたい。なぜなら、本オーディオコントローラは、様々なタイプ及び設計の小型イヤホン及びイヤホン、並びに他のヘッドホンにおいて使用することができるからである。
【0031】
イヤホン10はまた、プロセッサ30も含む。一部の例では、プロセッサ30は、マイクロホン32及び34の出力を処理するように構成される。当業者には明らかであろうが、一部の例では、プロセッサは、イヤホンによって再生されるデジタルサウンドファイルの処理など、イヤホン機能に必要な他の処理を実施するために使用される。一例では、プロセッサは、本明細書に開示されるオーディオコントローラを計算し、次いで適用するように構成される。EQ及び認識モードオーディオコントローラの使用は、当該技術分野で知られている。
【0032】
一部の例では、プロセッサは、変換器14とフィードバックマイクロホン32との間のオーディオ伝達関数に基づいてEQコントローラ及び/又は認識モードコントローラを計算するようにプログラムされる。伝達関数は、ANRフィードバックコントローラが適用される場合と適用されない場合の両方で決定される。
【0033】
図2は、ヘッドホンデバイス60の態様のブロック図である。一例では、デバイス60はイヤホンであるが、本開示は、本明細書に記載されているような他のタイプのヘッドホンにも適用されるため、これは本開示の限定ではない。デバイス60は、無線送受信機68を介して外部ソースからオーディオデータを受信するプロセッサ66を含む。プロセッサ66はまた、フィードバックマイクロホン(複数可)70及びフィードフォワードマイクロホン(複数可)72の出力を受信する。プロセッサ66は、オーディオドライバ64に供給されるアナログ信号に変換されるオーディオデータを出力する。例示的なデバイス60は、プロセッサによって実行されると、オーディオコントローラの計算及び適用、並びに本明細書で説明される他の処理を達成する命令を備えるメモリを含む。一部の例では、デバイス60は、非一時的コンピュータ可読媒体を使用して、コンピュータプログラム製品を記憶するように構成され、その媒体は、(例えば、プロセッサによって)ヘッドホンデバイス上で実行されると、本明細書で説明するようにヘッドホンデバイスにオーディオコントローラを決定させる、その上に符号化されたコンピュータプログラム論理を含む。ウェアラブルオーディオデバイス60の詳細は、ヘッドホンの例示的な態様であり、本開示の範囲を限定するものではないことに留意されたい。なぜなら、本オーディオコントローラ技法は、様々なタイプ及び設計のイヤホン及びヘッドホンにおいて使用することができるからである。また、本オーディオコントローラ技法に関与しないヘッドホンデバイス60の態様は、簡略化のために図2には示されていないことに留意されたい。
【0034】
ヘッドホンは、典型的には、音楽が再生されているときと、認識モード又は透過モードの使用中との両方において、予め設定された製造業者が設計したオーディオ応答を提供することを目的とする制御方式で設計される。イコライゼーションオーディオコントローラは、少なくとも理想的には、再生音が所望のスペクトル応答を有するように、所望のターゲット曲線イコライゼーション(EQ)を達成するのを助けるように設計される。透過モードコントローラは、所望の透過サウンド再生の達成を助けるために使用される。コントローラは通常、感知された外部音を正確に再生するように設計されている。一部の例では、これらのオーディオコントローラの一方又は両方は、デバイスメモリに記憶され、デバイスコントローラによって適用される。オーディオコントローラ及びヘッドホンにおけるそれらの使用は、オーディオエンジニアリングの分野においてよく知られている。
【0035】
しかしながら、ヘッドホンが実際に使用されるとき、ユーザの解剖学的構造(耳の解剖学的構造等)並びにヘッドホンが装着される方法は、人によって実際に送達される音に高度の変動性を生じさせる。したがって、設計及びインストールされたEQ及び認識(透過)モードオーディオコントローラによって意図されるターゲットサウンドプロファイルを実際に受信する人は、あったとしてもごくわずかである。
【0036】
本オーディオ制御システム及び方法では、EQオーディオコントローラ及び透過度オーディオコントローラの一方又は両方が、ヘッドホンの使用中にリアルタイムで計算され、適用される。その結果、ユーザ体験は、ユーザごとのばらつきを考慮しても、ヘッドホン製造業者によって意図されたものにより近くなる。一部の例では、オーディオコントローラの計算は、ヘッドホンがユーザによって使用されている間に測定されるオーディオ伝達関数に基づく。この伝達関数は、ヘッドホン音響変換器又はドライバと、ドライバ出力を受信する1つ以上のヘッドホンマイクロホンとの間にある。ANRヘッドホンでは、このマイクロホンは、ドライバとユーザの鼓膜との間に配置されるフィードバックマイクロホンであり得る。一例では、イヤホンにおいて、このフィードバックマイクロホンは、典型的には、音が外耳道内に直接送達されるノズル内に位置する。オーディオ伝達関数及びそれらの計算は、オーディオ分野においてよく知られているので、詳細には説明しない。また、ヘッドホンのプロセッサによるオーディオコントローラの適用は、一般的にヘッドホンで広く使用されているため、詳細には説明しない。
【0037】
図3は、ヘッドホンオーディオコントローラを理解するのに有用なユーザの頭部80の概略図である。右ヘッドホン86は、外耳道83を有する右耳82の上、上部、又は中に配置される。左ヘッドホン88は、外耳道85を有する左耳84の上、上部、又は中に配置される。また、マイクロホン90は、ヘッドホンと干渉しない位置でユーザの頭部80上に配置されて示されている。ヘッドホン及びマイクロホン(複数可)の配置は、以下で更に説明するように、オーディオコントローラの態様に対して有用である。
【0038】
図4に示される例では、ヘッドホンデバイスのためのオーディオコントローラを決定する方法100は、図2のプロセッサ66、フィードバック(又は他の)マイクロホン70、及びドライバ64などの既存のヘッドホン制御及びサウンド送達システムを使用して達成される。ステップ102において、音響変換器64とマイクロホン70との間のオーディオ伝達関数が測定される。当該技術分野で知られているように、一部の例におけるオーディオ伝達関数測定は、変換器を駆動するために使用されている既知のオーディオ信号、マイクロホンによる結果として生じる音の受信、及びドライバとマイクロホンとの間の伝達関数の計算に基づく。方法100では、ステップ104において、第2のオーディオ伝達関数が決定され、今回は、既存のヘッドホンANRシステムのためのフィードバックコントローラが適用される。少なくとも1つの測定が必要であり、他の測定は、フィードバックコントローラの知識を用いて計算することができる。フィードバックコントローラは、ANRを有するヘッドホンで使用され、技術分野において周知であるため、本明細書ではこれ以上説明しない。ステップ106において、関連するオーディオコントローラ(複数可)(EQコントローラ及び透過モードコントローラの一方又は両方)が、第1及び第2の伝達関数の両方に基づいて計算される。
【0039】
例示的な認識モードコントローラKawにおいて、パッシブ挿入利得及び有効ANRによる無視できる直接音経路を仮定し、外耳道内に配置されたマイクロホンのパワースペクトルSccがパワースペクトルScc,openに等しい場合(「open」は、測定中にヘッドホンが装着されていないことを意味する)、認識モードコントローラ(「セミカスタム」又は「sc」コントローラと呼ばれる)は、以下の式(1)によって表され得る。
【0040】
【数1】
ここで、Gは伝達関数を示し、Gがチルダと共に使用されるとき、それはフィードバックコントローラが適用された伝達関数を示す。ここで使用される下付き文字は次のように定義される。d:ドライバ/スピーカ信号。s:「システム」/フィードバックマイクロホン。c:カナルマイクロホン(外耳道内に配置されたマイクロホンであり、鼓膜のためのスタンドインである)。o:「外部」/フィードフォワードマイクロホン。r:ヘッドホン/ヘッドセットの有無がそれに音響的に影響を及ぼさない位置における頭部上の基準マイクロホン。角括弧は、その中に囲まれた量の平均値を示す。
【0041】
伝達関数添字注釈標準は、第2の添字から第1の添字までである。したがって、Gsdは、ドライバからフィードバックマイクロホンへの伝達関数である。パワースペクトルに関して、それらは一般に、下付き文字が、ヘッドセットが着用されていないときの測定値を意味する「オープン」を含まない限り、ヘッドセットが着用されているときの測定値を指す。Srrは、ヘッドセットが装着されているときの基準マイクロホンの測定値である。コントローラに関しては、Kawは認識モードコントローラであり、Keqはオーディオコントローラである。場合によっては、コントローラの絶対値が定義される。これは、不要な位相が加算されない限り、それらの位相は一般に問題にならないからである。換言すれば、それらは最小位相であるべきである。音楽の場合、これはよく知られている。しかし、認識モードコントローラについては、この事実は、耳に到達する直接雑音が非常に低く、認識モードコントローラがオンにされたときに耳で聞こえるものがKawから来る信号によって完全に支配されるのに十分である総雑音低減(受動+フィードバック+フィードフォワード)に依存する。これは一般的に多くのANRヘッドセットの場合である。
【0042】
例示的なセミカスタムEQコントローラは、以下の式(2)によって表され得る。
【0043】
【数2】
【0044】
したがって、変換器とヘッドホンの1つ以上のマイクロホンとの間の伝達関数を測定することによって(ANRフィードバックコントローラが適用されている場合と適用されていない場合の両方)、認識モード及びEQコントローラは、ヘッドホンが使用されている間にオンザフライで計算され適用され得る。
【0045】
認識モード及びEQコントローラは、実験室データに関連して上述したように、ヘッドホンの複数のフィッティングで複数の被験者から測定されたデータを考慮するように修正される場合、複数のユーザにわたってより均一に動作し得る。現場でユーザからオープンイヤー情報を得る方法がないため、適切な検査データをオープンイヤー情報の代わりに使用することができる。一部の例では、Gsdは、関係Sss,open/Srr,openを推定するために使用される(ここで、Sss,openは、イヤホンが取り外されたときにフィードバックマイクロホンが外耳道の同じ位置に依然として残されていた場合に、フィードバックマイクロホンにおいて予想されるパワースペクトルである。フィードバックマイクロホンはヘッドセットと共に取り外されるので、Sss,openは、そのような想像された状況におけるものの推定値である)。一例では、Sss,openは、イヤホンによって遮断される耳の部分の平均伝達行列に基づいてGsdから推定され、行列は、実験室データから推定される。一例では、定数α及びβは、実験室データから導出される頻度依存複素量を表すために使用される。これらの定数は、Gsdと、外部基準マイクロホン(ユーザの頭部上)と挿入されたイヤホンのフィードバックマイクロホンの位置で外耳道内にあるマイクロホンとの間の伝達関数(Gp1p2)とに基づいて決定される。一例では、Gsd.Gcd及びScc,openが測定され、Gp1p2がこれらの3つの測定値に基づいて推定される。
【0046】
一例では、定数値は以下のように導出することができる。
【0047】
基準マイクロホンが#1と呼ばれ、フィードバックマイクロホンが#2と呼ばれる場合、外部雑音に対する1から2への伝達関数は、Gp1p2と呼ばれ、すなわち、(a):
【0048】
【数3】
【0049】
単純なモデル化から、以下の(b)を主張することができる。
【0050】
【数4】
【0051】
また、実験室データから、以下の(c)を推定することができる。
【0052】
【数5】
【0053】
次に、最良のα及びβを解くために、a及びcを組み合わせて、(d)を導出する。
【0054】
【数6】
【0055】
p1p2周辺の絶対値を除去するために、(d)の右側の式に何らかの位相が加えられる。可能な例は、全ての周波数で0位相を与えること、又は大きさに一致する最小位相を計算することである。結果は、実験室データにおける全てのフィッティングについてGp1p2である。
【0056】
理想的には全てのフィッティングが異なるα及びβを有するべきであっても、各々がヘッドホンで使用するために選択され、これは平均してデータに対する最良のフィッティングを開発することによって達成することができる。
【0057】
ここで、(b)を整理して(e)とする。
【0058】
【数7】
【0059】
全てのフィッティングに対してこの式(e)を使用して、以下のタイプの行列方程式
Ax=b
【0060】
を設定することができる。次に、Aの擬似逆行列を使用して最良最小平均二乗適合を解く。
x=A
【0061】
又は、上記の式に関して、実験室データにおける全てのフィッティングを使用して、以下のとおりである。
【0062】
【数8】
【0063】
これは、平均して母集団全体にわたって最良に機能する最適化された解を与える。
【0064】
このようにして実験室データを考慮に入れることは、それぞれ式(3)及び(4)に記載される、修正された又は「強化された」認識モード及びEQコントローラにつながる。所望のコントローラ形状は、コントローラ設計に基づいて周波数ごとに計算されることに留意されたい。
【0065】
【数9】
【0066】
理論上の「最適」又は「opt」コントローラは、外耳道内にマイクロホンを含み、したがって、ヘッドホンユーザに実装することができない。最適なコントローラは、本明細書に開示されるセミカスタムコントローラ及び強化されたコントローラの理解に有用である。最適認識モード及びEQコントローラ方程式は、それぞれ、方程式(5)及び(6)に記載される。
【0067】
【数10】
これは、全体的なターゲット形状によって更に乗算される(例えば、ヘッドセットの近くで手を動かすときの不安定性を回避するために、音声帯域未満の低周波数及び高周波数をフィルタ除去する)。
【0068】
【数11】
これは、部屋の中のスピーカのためのターゲット曲線と同様であり得るが、ヘッドセットが使用されていることを考慮するといくつかの微調整を伴う、全体的ターゲットによって更に乗算される。
【0069】
図5は、式(1)及び(2)に記載された例示的なセミカスタム及び強化された認識モードコントローラを有するイヤホン及び有さないイヤホン(「アンサンブルモード」と呼ばれる)の総挿入利得(dB単位)の標準偏差を示す。これは、約700Hzから約7kHzまで、これらの認識モードコントローラのいずれかを使用して性能が改善されることを証明している。
【0070】
図6は、式(3)及び(4)に記載された例示的なセミカスタム及び強化されたEQモードコントローラを有するイヤホン及び有さないイヤホン(「アンサンブルモード」と呼ばれる)の総挿入利得(dB単位)の標準偏差を示す。これは、約300Hzから約5kHzまで、これらのEQモードコントローラのいずれかを使用して性能が改善されることを証明している。
【0071】
主題のオーディオコントローラ決定及び適用によって、ヘッドホンのEQ及び認識モード使用の両方を改善することが可能である。コントローラ(複数可)の計算は、ヘッドホンのオーディオ変換器と、変換器出力を受信するように構成されたヘッドホンの1つ以上のマイクロホンとの間のオーディオ伝達関数のリアルタイム測定に基づく。したがって、コントローラ(複数可)は、ヘッドホンの特定のユーザ及びヘッドホンの現在の使用のために少なくとも部分的にカスタマイズされる。その結果、ヘッドホンの認識モード及び/又はEQ性能は、所望の設計目標性能に明らかに近くなる。したがって、ヘッドホンは、プリセットの認識モード及びEQコントローラを有するヘッドホンと比較して、異なるユーザにわたって標準により近い性能を提供する。
【0072】
ヘッドセット内に適切なマイクロホンがある限り、オーディオコントローラを決定する本手法は、EQモードのためのフィードバックループの存在に限定されないことに留意されたい。認識モードの場合、外部からの全ての直接雑音を除去する必要性は、フィードバックループが存在しなければありそうにないかもしれないが、受動的な音減衰を伴うフィードフォワードループのみが潜在的に十分であり得る。
【0073】
また、本開示は、(認識モードのための)ヘッドセットの外側を含む複数のマイクロホンを使用することができ、これは、それらを単純に追加すること、又は指向性認識モード/聴取を有するようにアレイ方式でそれらを使用すること、並びに複数のフィードバックマイクロホンを含むことに留意されたい。
【0074】
更に、本EQ及び認識モードコントローラは、2つの場所、すなわち、ドライバ(外乱注入)又はフィードバックコントローラの前(コマンド注入)に注入することができる。両方とも、適所に相補的フィルタを用いて使用することができる。
【0075】
図面の要素は、ブロック図の個別要素として図示及び説明される。これらの要素は、アナログ回路又はデジタル回路の1つ以上として実装され得る。代替的に、又は追加的に、これらの要素は、1つ以上のマイクロプロセッサがソフトウェア命令を遂行して実装され得る。ソフトウェア命令は、デジタル信号処理命令を含むことができる。動作は、アナログ回路により、又はマイクロプロセッサが、アナログ動作と同等の動作を実行するソフトウェアを遂行することにより実行することができる。信号ラインは、個別のアナログ信号ライン又はデジタル信号ラインとして、別個の信号を処理することができる適切な信号処理を行う個別のデジタル信号ラインとして、及び/又は無線通信システムの要素として実装され得る。
【0076】
ブロック図でプロセスが表現又は示唆されるときに、ステップは、1つの要素又は複数の要素によって実行され得る。これらのステップは、一括して実行される、又は異なる時点で行われ得る。活動を実行する要素は、物理的に同じであり得るか、若しくは互いに近接し得るか、又は物理的に別個であり得る。1つの要素は、1つのブロックよりも多くの活動を実行し得る。オーディオ信号は、符号化される場合又は符号化されない場合があり、デジタル形式又はアナログ形式のいずれかで伝送され得る。従来のオーディオ信号処理装置及び動作は、図面から省略されている場合がある。
【0077】
本明細書において説明されるシステム及び方法の例は、当業者には明白であろうコンピュータ構成部品及びコンピュータによる実装ステップを含む。例えば、コンピュータ実装ステップが、例えば、ハードディスク、光ディスク、フラッシュROM、不揮発性ROM、及びRAMなどのコンピュータ可読媒体にコンピュータ実行可能命令として記憶され得ることが当業者によって理解されるべきである。更に、コンピュータ実行可能命令が、例えば、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、ゲートアレイなどの様々なプロセッサ上で実行され得ることが当業者によって理解されるべきである。説明を容易にするために、システム及び方法の全てのステップ又は要素が、コンピュータシステムの一部として本明細書で説明されるわけではないが、各ステップ又は要素が、対応するコンピュータシステム又はソフトウェアコンポーネントを有し得ることを、当業者は認識するであろう。したがって、このようなコンピュータシステム及び/又はソフトウェアコンポーネントは、それらの対応するステップ又は要素(すなわち、それらの機能性)を説明することによって可能になり、かつ本開示の範囲内にある。
【0078】
様々な態様及び実施例に従って本明細書に開示される方法及びシステムの機能、方法、及び/又は構成要素は、本明細書に開示される態様及び実施例に従って、信号処理及び他の機能を実行するのに好適なデジタル信号プロセッサ(DSP)及び/又は他の回路、アナログ若しくはデジタルで実装又は実行されてもよい。追加的に又は代替的に、マイクロプロセッサ、論理コントローラ、論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(複数可)(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、汎用コンピューティングプロセッサ(複数可)、マイクロコントローラ(複数可)など、又はこれらの任意の組み合わせが好適であり得、任意の特定の実装に関して、アナログ若しくはデジタル回路構成要素及び/又は他の構成要素を含んでもよい。
【0079】
本明細書に開示される機能及び構成要素は、デジタルドメイン、アナログドメイン、又は2つの組み合わせで動作し得、特定の実施例は、様々な図におけるADC又はDACの説明の欠如にもかかわらず、適切な場合、アナログデジタル変換器(ADC)及び/又はデジタルアナログ変換器(複数可)(DAC)を含む。更に、本明細書に開示される機能及び構成要素は、時間領域、周波数領域、又は2つの組み合わせで動作することができ、特定の実施例は、様々なドメインにおける処理に適応するために、様々な形態のフーリエ又は類似の分析、合わせ、及び/又は変換を含む。
【0080】
ファームウェアなどを含む任意の好適なハードウェア及び/又はソフトウェアは、本明細書に開示される態様及び実施例の構成要素を実行又は実装するように構成されてもよく、態様及び実施例の様々な実装は、開示されるものに加えて構成要素及び/又は機能を含んでもよい。様々な実装は、回路が、少なくとも部分的に、本明細書に記載される機能を実行することを可能にするためのデジタル信号プロセッサ及び/又は他の回路の記憶された命令を含んでもよい。
【0081】
少なくとも1つの実施例に関するいくつかの態様について述べてきたが、当業者であれば、様々な変更、修正、並びに、改良が容易に思い付くことが、理解されるであろう。こうした変更、修正、及び改善は、本開示の一部であり、本発明の範囲内であることが意図される。したがって、前述の説明及び図面は、例に過ぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の適切な構成、並びに、それらの均等物から判定されるはずである。
【符号の説明】
【0082】
10 無線耳内イヤホン
12 ハウジング
14 電気音響変換器
16 可動ダイアフラム
18 前部ハウジングキャビティ
20 後部ハウジングキャビティ
22 前部ハウジング部分
23 後部ハウジング部分
24 音出口
25 ネック
30 プロセッサ
32 内部マイクロホン
34 外部マイクロホン
36 ハウジング開口部
60 ヘッドホンデバイス
64 オーディオドライバ
66 プロセッサ
68 無線送受信機
70 フィードバックマイクロホン
72 フィードフォワードマイクロホン
80 頭部
82 右耳
83 外耳道
84 左耳
85 外耳道
86 右ヘッドホン
88 左ヘッドホン
90 マイクロホン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】