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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】エンドミル
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B23C5/10 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538305
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2022082185
(87)【国際公開番号】W WO2023117223
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21217363.7
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506297474
【氏名又は名称】ヴァルター アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マルクス, マルティン
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022KK02
3C022KK06
3C022KK23
3C022KK25
3C022KK28
(57)【要約】
本体(1)を備える金属切削用のエンドミルであって、当該本体は前端(2)から軸方向後方に延在する切削部(6)を備え、切削部(6)は、半径方向に突出するとともに軸方向に延在する複数の歯部(7)を備える。複数の歯部(7)の各歯部(7)は、前方切削刃(13)であって、対応の切削刃(12)の軸方向最前方点(14、14a)から軸方向後方かつ半径方向外向きに延在する前方切削刃(13)を備える。本体(1)が回転すると、各歯部(7)の切削刃(12)は、中心長手方向軸(4)を含む中心平面において交差線を形成する。各前方切削刃(13)は、前方切削刃(13)と分断を行う切屑分割溝(17)との交差線が、仮想凸曲線(24)上に位置する外側山部(22)と、少なくとも2つの内側谷部(23)と、少なくとも2つの谷部(23)のうち1つの対応の谷部(23)から軸方向に最も近い対応の2つの山部(22)のうち1つまで延在する湾曲部(25)とを備えるように、少なくとも2つの切屑分割溝(17)によって分断されている。各湾曲部(25)は、山部(22)から内向きに延在するとともに常に0.1mmより大きい曲率半径(27)を有する凸状に湾曲した外側部分(26)を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(1)を備える金属切削用のエンドミルであって、前記本体(1)が、
前端(2)、後端(3)、および前記前端から前記後端まで延在する中心長手方向軸(4)であって、前記本体(1)が前記中心長手方向軸(4)の周囲を回転方向(5)に回転可能であるように構成される、前端(2)、後端(3)、および中心長手方向軸(4)と、
前記前端(2)から軸方向後方に延在する切削部(6)であって、半径方向に突出するとともに軸方向に延在する複数の歯部(7)を備える切削部(6)とを備え、
前記切削部において、
前記複数の歯部の各歯部は、すくい面(11)、逃げ面(10)、および前記すくい面(11)と前記逃げ面(10)との交差部にある切削刃(12)を備え、
前記複数の歯部の各前記切削刃は、前方切削刃(13)であって、対応の前記切削刃(12)の軸方向最前方点(14、14a)から軸方向後方かつ半径方向外向きに延在する前方切削刃(13)を備え、
前記本体(1)が回転すると、各前記歯部(7)の前記切削刃(12)は、前記中心長手方向軸(4)を含む中心平面において交差線を形成する、前記エンドミルにおいて、
各前記前方切削刃(13)は、前記前方切削刃(13)と分断を行う切屑分割溝(17)との交差線が、
仮想曲線(24)上にそれぞれ位置する少なくとも3つの外側山部(22)であって、前記仮想曲線(24)が前記中心平面において延在し凸状である、少なくとも3つの外側山部(22)、
前記少なくとも3つの山部(22)のうち軸方向に最も近い対応の2つの山部(22)間にそれぞれ位置する少なくとも2つの内側谷部(23)、および
前記少なくとも2つの谷部(23)のうち1つの対応の谷部(23)から前記軸方向に最も近い対応の2つの山部(22)のうち1つまでそれぞれ延在する湾曲部(25)を備えるように、
少なくとも2つの前記切屑分割溝(17)によって分断されており、
各前記湾曲部(25)は、凸状に湾曲した外側部分(26)であって、
前記山部(22)から内向きに延在するとともに、
すべての位置において0.1mmより大きな曲率半径(27)を有する、凸状に湾曲した外側部分(26)を含むことを特徴とする、エンドミル。
【請求項2】
前記凸状に湾曲した外側部分の前記曲率半径が最小値を有し、前記最小値での前記曲率半径が0.3mmより小さい曲率半径である、請求項1に記載のエンドミル。
【請求項3】
各前記歯部の前記逃げ面(10)が、前記切削刃(12)に最も近い第1の逃げ角εを有し、
前記前方切削刃(13)のそれぞれの軸方向延長部に沿ったあらゆる軸方向位置において、すべての前記逃げ面(10)が同じ前記第1の逃げ角εを有する、請求項1または2に記載のエンドミル。
【請求項4】
各前記歯部(7)の前記逃げ面(10)が、前記切削刃(12)に最も近い補強ベベルを備え、
前記前方切削刃(13)のそれぞれの前記軸方向延長部に沿ったあらゆる軸方向位置において、前記第1の逃げ角(10)が前記補強ベベルの逃げ角であり、前記第1の逃げ角が最低0.5°かつ最大5°である、請求項3に記載のエンドミル。
【請求項5】
前記前方切削刃(13)のそれぞれの軸方向最前方点(14、14a)から、前記前方切削刃の前記軸方向延長部に沿って軸方向後方に、前記第1の逃げ角εが一定であるか、連続的に増加するか、または連続的に減少する、請求項3または4に記載のエンドミル。
【請求項6】
前記エンドミルが前記歯部(7)ごとの最大送り量に対して構成され、前記前方切削刃(13)のそれぞれにおいて、各前記湾曲部(25)の内向き延長部が、少なくとも前記歯部(7)ごとの最大送り量である、請求項1~5のいずれか一項に記載のエンドミル。
【請求項7】
各前記湾曲部(25)の前記内向き延長部が、前記仮想曲線(24)の周期的弧長(28)の最大20%であり、前記周期的弧長(28)が、前記軸方向に最も近い対応の2つの山部(22)の第1の山部から第2の山部まで延在する、請求項6に記載のエンドミル。
【請求項8】
前記前方切削刃(13)の第1の前方切削刃が、軸方向前方に切削を行う前部(16)を有し、前記前方切削刃(13)の少なくとも第2の前方切削刃が、非切削凹部(15)の軸方向後方に前記最前方点(14a)を有し、前記前部(16)が、
前記中心長手方向軸(4)の前記軸方向最前方点(14)から、少なくとも前記非切削凹部(15)の軸方向長さに対応する軸方向距離だけ軸方向後方に延在し、かつ
前記少なくとも2つの切屑分割溝(17)をすべて欠いている、請求項1~7のいずれか一項に記載のエンドミル。
【請求項9】
前記仮想曲線(28)が円弧状であり、2~12.5mmの曲率半径を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のエンドミル。
【請求項10】
前記本体(1)がボールノーズ前端を備え、前記前方切削刃(13)のそれぞれが前記ボールノーズ前端上に位置する、請求項1~9のいずれか一項に記載のエンドミル。
【請求項11】
各前記前方切削刃(13)が3~6つの切屑分割溝(17)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のエンドミル。
【請求項12】
前記切削刃(12)のうち少なくとも1つが、前記前方切削刃(13)の軸方向後端から軸方向後方に延在する後方切削刃(29)を備え、少なくとも1つの前記後方切削刃(29)の交差線(19)の少なくとも半径方向外側部分(22)が仮想直線(31)上に位置する、請求項1~11のいずれか一項に記載のエンドミル。
【請求項13】
各前記後方切削刃(29)は、前記後方切削刃(29)の前記交差線(19)が、
前記仮想直線上にそれぞれ位置する少なくとも3つの半径方向外側の山部(22)と、
前記少なくとも3つの山部(22)のうち軸方向に最も近い対応の2つの山部(22)間にそれぞれ位置する少なくとも2つの半径方向内側の谷部(23)と、
前記少なくとも2つの谷部(23)のうち1つの対応の谷部(23)から前記軸方向に最も近い対応の2つの山部(22)のうち1つまでそれぞれ延在する湾曲部(25)と
を備えるように、
少なくとも2つの切屑分割溝(17)によって分断されており、
各前記湾曲部(25)が、凸状に湾曲した外側部分(26)であって、
前記山部(22)から半径方向内向きに延在するとともに、
すべての位置において0.1mmより大きい曲率半径(27)を有する、凸状に湾曲した外側部分(26)を備える、請求項12に記載のエンドミル。
【請求項14】
仮想直線(31)の周期長(32)が、前記軸方向に最も近い対応の2つの山部(22)の第1の山部から第2の山部まで延在し、前記前方切削刃(13)のうち1つおよび後方切削刃(29)のうち1つを備える各前記切削刃(12)において、前記周期長(32)が前記周期的弧長(28)に等しい、請求項7および13に記載のエンドミル。
【請求項15】
前記前方切削刃(13)のうち少なくとも2つが異なる軸方向位置に対応の切屑分割溝(17)を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のエンドミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削用のエンドミルに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な成分が、金属、複合材、またはそれらの組合せなど多くの異なる種類の材料から機械加工される。これに応じて、様々な異なる切削工具、具体的にはエンドミルなどのミリング工具が開発されている。従来、エンドミルは、工具に沿って軸方向に延在する複数の切削刃を備える。例えばボールノーズエンドミルなどの一部のエンドミルは、前端の半径方向内側の位置から始まって、そこから半径方向外向きかつ軸方向後方に延在する切削刃を有する。このような切削刃は、典型的に前端において主に前方に切削を行う部分と、工具の軸方向部に沿って主に半径方向に切削を行う部分とを備える。このため、切削刃は、前端に、および/または前方に切削を行う前部と半径方向に切削を行う部分との間の移行部に湾曲部分を備える。
【0003】
このような公知のエンドミルには、一部の用途において、切削刃の湾曲部分によって切削された切屑が排出されにくく、工具と機械加工中の加工対象物との間に詰まりが生じ、それによって工具に振動が生じ、かつ/または加工対象物および/もしくはエンドミルに損傷が生じ得るという問題が伴う。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、上記の問題を少なくとも部分的に解決することである。この目的は、本発明に従い請求項1に記載のエンドミルによって達成される。
【0005】
本発明は、本体を備えるエンドミルであって、当該本体は、
前端、後端、および前端から後端まで延在する中心長手方向軸であって、本体が中心長手方向軸の周囲を回転方向に回転可能であるように構成される、前端、後端、および中心長手方向軸と、
前端から軸方向後方に延在する切削部であって、半径方向に突出するとともに軸方向に延在する複数の歯部を備える切削部とを備え、
上記切削部において、
複数の歯部の各歯部は、すくい面、逃げ面、およびすくい面と逃げ面との交差部にある切削刃を備え、
複数の歯部の各切削刃は、前方切削刃であって、対応の切削刃の軸方向最前方点から軸方向後方かつ半径方向外向きに延在する前方切削刃を備え、
本体が回転すると、各歯部の切削刃は、中心長手方向軸を含む中心平面において交差線を形成する、上記エンドミルにおいて、
各前方切削刃は、前方切削刃と分断を行う切屑分割溝との交差線が、
仮想曲線上にそれぞれ位置する少なくとも3つの外側山部であって、仮想曲線が中心平面において延在し凸状である、少なくとも3つの外側山部、
少なくとも3つの山部のうち軸方向に最も近い対応の2つの山部間にそれぞれ位置する少なくとも2つの内側谷部、および
少なくとも2つの谷部のうち1つの対応の谷部から軸方向に最も近い対応の2つの山部のうち1つまでそれぞれ延在する湾曲部を備えるように、
少なくとも2つの切屑分割溝によって分断されており、
各湾曲部は、凸状に湾曲した外側部分であって、
山部から内向きに延在するとともに、
すべての位置において0.1mmより大きな曲率半径を有する、凸状に湾曲した外側部分を含む、エンドミルに関する。
【0006】
このため、対象のエンドミルは、中心長手方向軸を含む中心長手方向平面におけるその像によって画定される形状をそれぞれが呈する、前方切削刃を備える。対応の切削刃の像は、切削刃が中心平面に交差線を形成するように中心長手方向軸の周囲でエンドミルを回転させることによって得られる。この像では、前方切削刃の半径方向外側の頂部は交差線の山部として視認可能であり、切屑分割溝の底部は交差線の谷部として視認可能である。仮想曲線は、交差線の山部を接続する。仮想曲線の曲率は、前方切削刃の曲率を表す。切削刃のうち、外側頂部から切屑分割溝の底部まで延在する部分は、像中、交差線の山部から谷部まで延在する湾曲部として視認可能である。
【0007】
対象のエンドミルによれば、交差線の各湾曲部は、湾曲部のすべての位置において0.1mmより大きな曲率半径を有する。これは、切屑分割溝を有する切削刃が、強度に悪影響を及ぼし得る鋭利な角を欠いていることを表す。湾曲した前方切削刃での切削条件が例えば軸方向に延在する切削刃に沿う切削条件よりも困難であることから、エンドミルの湾曲した前方切削刃においては強度が特に重要である。このことは、例えば、半径方向に延在する湾曲した前方切削刃の半径方向内側および半径方向外側の位置において速度と切削力が変動することに起因する。本明細書に記載の切屑分割溝の特殊な設計により、湾曲した前方切削刃において強度が特に重要であっても、仮想曲線によって表される曲率を有する前方切削刃に切屑分割溝を設けることができる。こうして、より良好な切屑排出特性および強固な前方切削刃を有することにより、動作中の振動が低減されるようになる、改良されたエンドミルを得ることが可能となる。
【0008】
対象のエンドミルは、前端と、後端と、前端から後端まで延在する中心長手方向軸とを備える本体を有する。好ましくは、本体は中心長手方向軸の長手方向に細長い形状である。本体は、中心長手方向軸の周囲を回転方向に回転可能であるように構成される。本体の中心は、中心長手方向軸にある。
【0009】
エンドミルの本体は、前端に切削部を有する。好ましくは、切削部は本体の軸方向長さ部分であり、この部分は本体の最前方部分である。一実施形態によれば、本体は、取付け接触面を設けるために後端に結合部などのさらなる部分を備える。任意選択で、取付け接触面は、回転可能な機械主軸に、または回転可能な機械主軸用のアダプタに結合されるように設計される。好ましくは、結合部はロッドであり、ロッドおよび切削部は、ともに本体と一体化された必須部分で構成される。
【0010】
切削部は、複数の半径方向に突出する歯部を備える。複数の歯部の各歯部は、すくい面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面との交差部にある切削刃とを備える。各歯部は本体に沿って半径方向かつ軸方向に延在し、切削刃は対応の歯部の延長部に追従する。
【0011】
一実施形態によれば、切削部は、本体の切削部の半径方向外向きの外周面に配置される、軸方向に延在する切屑フルートを備える。複数の歯部のそれぞれは、1つの対応の切屑フルートと関連付けられ、好ましくは各歯部と切屑フルートは互いに並行して延在する。任意選択で、切屑フルート/歯部は、中心長手方向軸と平行に、中心回転軸に対して傾斜して、または曲線、例えば螺旋に沿って配置される。中心長手方向軸と平行な切屑フルートは、軸方向に直線の切屑フルートとも称され、切屑をより小さな片に分解するのに都合が良い。傾斜した、または螺旋状の切屑フルートは、切屑を工具に沿って後方に搬送し、より容易な切削工具を得るのに都合が良い。
【0012】
逃げ面は、対応の切削刃から回転方向後方に延在する。切屑フルートを含む一実施形態では、エンドミルの本体は、回転方向に進む切削刃と回転方向後方に最も近い後続の切屑フルートとの間に延在する包絡面を備え、逃げ面は包絡面のうち回転方向に進む部分である。すくい面は、当該切削刃の回転方向前方に最も近い切屑フルートの半径方向外側部分である。
【0013】
各歯部の切削刃は、対応の歯部の延長部に沿って延在する。各切削刃は、最前方点から延在する前方切削刃を備える。任意選択で、前方切削刃の最前方点は中心長手方向軸軸にあり、すなわち中心長手方向軸の中、またはその付近にある。
【0014】
一実施形態によれば、前方切削刃のうち2つは、中心長手方向を横切って延在するとともに中心長手方向軸においてこれらの2つの前方切削刃を相互に接続する中心切削刃、例えばチゼルエッジを備える。本実施形態または他の実施形態において他の前方切削刃は、任意選択で中心長手方向軸から半径方向外向きに最前方点を有し、最前方点と中心長手方向軸との間には非切削凹部が存在する。このような設計は、前方切削刃のうち数本しか中心に刃を有していないことから都合が良く、この刃は、中心での切削速度が遅いことによって生じる高い切削力に起因して、より損傷を受けやすい。
【0015】
好ましくは、対象のエンドミルは、金属製加工対象物を切削するのに好適である。好ましくは、エンドミルは、前方切削刃に1~32mmの最大切削直径を有するように設計される。
【0016】
各歯部の前方切削刃は、少なくとも2つの切屑分割溝によって分断されている。2~8つ、より好ましくは3~6つ、最も好ましくは4~5つの切屑分割溝の数範囲が、エンドミルの好ましい直径に好適であると見出されている。一部の用途では、溝が多いと対応の前方切削刃の強度に悪影響を及ぼすことがあり、場合によっては表面に凹凸を残してしまう。溝が少ない前方切削刃は、一部の用途では、適切な切屑排出のために、十分に小さな切屑で切削できない場合がある。
【0017】
一実施形態によれば、少なくとも1つの前方切削刃のそれぞれは、軸方向前方に切削を行う前部を有し、当該前部は、
中心長手方向軸において点の形にある軸方向最前方点から延在し、その長さに沿ったあらゆる位置において、中心長手方向軸に対して少なくとも75°の角度を形成し、少なくとも2つの切屑分割溝すべてを欠いている。軸方向前方に切削を行う前部が切屑分割溝を欠いているため、前方切削刃の強度は、中心における回転速度が遅いことによって生じる高い切削力に供される場合に増加する。
【0018】
一実施形態によれば、切屑分割溝は、逃げ面において前方切削刃から回転方向後方に延在する。任意選択で切屑分割溝は、逃げ面の一部、または逃げ面全体で回転方向後方に延在し、後続の切屑フルートにおいて終端となる。
【0019】
好ましくは、少なくとも1つの前方切削刃は、別の前方切削刃の対応する切屑分割溝とは異なる軸方向位置に少なくとも1つの切屑分割溝を有する。一実施形態によれば、前方切削刃のうち少なくとも2つが、異なる軸方向位置に対応の切屑分割溝を有する。好ましくは、複数の切削刃の前方切削刃の切屑分割溝は、互い違いに配置される。好ましくは、第1の前方切削刃の切屑分割溝は、工具が回転するとエンドミルが切削部の延長部全体に沿って切削を行うために、他の前方切削刃の半径方向外側の頂部が切屑分割溝と同じ軸方向位置に位置するように配置される。好ましくは、各前方切削刃の外側頂部は、前方切削刃の切屑分割溝と重なり合うための曲率および軸方向延長部を有し、この設計は、所望の表面仕上げにより最適化され得る。
【0020】
本出願では、線は細長い図形要素であり、任意選択で直線および/または曲線である。線の曲率は、線の各点において、対応の点における曲率半径として測定することができる。「凸状(convex)」および「凹状(concave)」は、本体の中心から外向きの方向、例えば半径方向外向きまたは軸方向前方に見られる。
【0021】
「外向き(outward)」、「外側(outer)」、「内向き(inward)」、「内側(inner)」などの用語は、本体の中心、例えば本体の中枢領域に対して見られる。半径方向外向きは、工具または中心平面において中心長手方向軸に対して見られる。軸方向は、中心長手方向軸の方向である。
【0022】
各切削刃の少なくとも前方切削刃は、前方切削刃が仮想曲線によって画定される全体的な曲率を呈するように、半径方向と軸方向の両方に延長部を有する。好ましくは、前方切削刃は、主として軸方向最前方点において軸方向前方に切削を行い、かつ、主として半径方向、さらに軸方向後方に切削を行う。
【0023】
任意選択で前方切削刃は、例えば一定の半径方向距離で本体の周囲で円周方向に湾曲するなど、他の方向に湾曲して設計される。例えば、螺旋状の歯部および切屑フルートを含む実施形態では、関連付けられる前方切削刃は、仮想曲線の湾曲によって表される全体的な湾曲に加えて、円周方向に螺旋状の湾曲も呈する。しかし、像中、中心平面に円周方向の螺旋状の湾曲を視認できない。
【0024】
一実施形態によれば、仮想曲線は円弧である。好ましくは、この円弧は、0.5~16mm、より好ましくは2~12.5mm、最も好ましくは5~12.5mmの曲率半径を有する。一部の用途では、切屑の排出は、仮想曲線の円弧によって画定される曲率を有する切削刃では特に困難である。より小さな曲率半径は、多くの場合に本質的に薄い切屑を形成する前方切削刃を表し、より大きな曲率は、切屑の排出および強度があまり問題とならない前方切削刃を表す。
【0025】
一実施形態によれば、本体はボールノーズ前端を備えており、このとき、前方切削刃のそれぞれはボールノーズ前端上に位置する。ボールノーズエンドミルを構成するエンドミルでは、前方切削刃は円弧を有する中心平面に仮想曲線を作り出し、前方切削刃における切屑の排出および強度が特に問題となる。そのため、対象の前方切削刃は、ボールノーズエンドミルにおいて特に都合が良い。
【0026】
好ましくは、ボールノーズエンドミルのボールノーズエンドは、中心長手方向軸を含む中心平面において、仮想曲線の各位置において中心長手方向軸に対して角度を形成するボール半径を有する。一実施形態によれば、前方切削刃の前方に切削を行う前部は、0~15°の角度で切屑分割溝を欠いている。前方切削刃のうち少なくとも1つが中心長手方向軸から一定の距離に最前方点を有し、最前方点と中心長手方向軸との間に非切削凹部が存在する実施形態では、好ましくは、別の前方切削刃の前方に切削を行う前部は、非切削凹部と同じ長さで延在する。
【0027】
一実施形態によれば、切削刃のうち少なくとも1つは、前方切削刃の軸方向後端から軸方向後方に延在する後方切削刃を備え、少なくとも1つの後方切削刃の交差線の少なくとも半径方向外側部分は、仮想直線上に位置する。ボールノーズエンドミルの形態にある例示的な実施形態では、各切削刃は、ボール上に位置する前方切削刃と、切削部のシャフト部分に沿って延在する後方切削刃とを備える。切削部のシャフト部分は、例えば、各後方切削刃の交差線が回転中心軸と平行な直線であるように、または軸方向後方の方向に回転中心軸に向かって発散もしくはそこから収束する直線であるように、円筒形または円錐形である。好ましくは、各後方切削刃は主として半径方向に切削を行う。
【0028】
任意選択で、後方切削刃のうち少なくとも1つは、関連付けられた前方切削刃と同様の切屑分割溝を設けられる。
【0029】
中心平面において、前方切削刃は交差線によって表され、交差線は、山部、谷部、湾曲部分、および任意選択で直線部分を含む。好ましくは、山部は半径方向外向きに位置し、谷部は半径方向内向きに位置する。湾曲部分は湾曲部を含んでおり、それぞれ、好ましくは山部から半径方向内向きに延在する凸状に湾曲した外側部分を含む。好ましくは、凸状に湾曲した外側部分はそれぞれ、対応の湾曲した外側部分の長さに沿った最小値を有する曲率を有し、最小値の曲率は0.3mmよりも小さい。このため、好ましくは最小値の曲率は、0.3mmより小さく0.1mmより大きい。それによって、有利には同時に、切屑分割溝の十分に強固な半径方向外側の角部と、切削された切屑が分解される連結の十分な分断部とが達成される。
【0030】
一実施形態によれば、湾曲部の凸状に湾曲した外側部分は、半径方向内側端部において、それぞれ凹状に湾曲した半径方向内側部分に接続する。凹状に湾曲した内側部分はそれぞれ、そこから谷部の対応の1つまで半径方向内向きに延在する。谷部において、凹状に湾曲した内側部分はそれぞれ、軸方向に最も近い凸状に湾曲した内側部分の別の凹状に湾曲した内側部分と当接する。
【0031】
一実施形態によれば、軸方向に最も近い2つの凸状に湾曲した外側部分は、少なくとも3つの山部の軸方向中心山部と当接する。あるいは、交差線は、両側で軸方向に最も近い2つの凸状に湾曲した外側部分に接続する直線部分の形で山部を含む。
【0032】
このような各前方切削刃の像は、中心平面において波形の交差線を構成する。
【0033】
好ましくは、エンドミルは歯部ごとの最大送り量に対して構成され、前方切削刃のそれぞれにおいて、各湾曲部の内向き延長部は少なくとも歯部ごとの最大送り量である。好ましくは、最大内向き延長部は、少なくとも0.1mmである。これにより、切屑分割溝は切削刃が分割切屑を作り出すのに十分な深さとされる。
【0034】
好ましくは、前方切削刃のそれぞれが、切削を行う半径方向外側頂部、および非切削の半径方向内側底部を備えるように、切屑分割溝の底部は非切削である。
【0035】
交差線は、軸方向に最も近い対応の2つの山部のうち第1の山部から第2の山部まで延在する少なくとも1つの弧長、すなわち周期的弧長(period arc length)を含む。2つより多くの切屑分割溝を含む実施形態では、交差線はいくつかの周期的弧長を含む。任意選択で、すべての周期的弧長は同一であるか、または前方切削刃のうち1つまたはすべての軸方向延長部に沿って異なる。交差線が波形である実施形態では、弧長は波の周期に対応する。
【0036】
一実施形態によれば、各湾曲部の内向き延長部、例えば半径方向内向きの延長部は、仮想曲線の周期的弧長の最大20%である。それによって、一方では軸方向に最も近い2つの谷部間の距離と、他方では所望の用途で切屑分割を達成するのに十分な深さとの間に、好適な関係が見出されている。好ましくは、各湾曲部の内向き延長部、例えば半径方向内向きの延長部は、仮想曲線の周期的弧長の最大10%である。これは、ボールノーズエンドミルに仕上げ処理を行う実施形態で均一な表面を作り出すのに好適である。
【0037】
各歯部の逃げ面は、切削刃に最も近い第1の逃げ角を有する。逃げ面は、その回転方向後方において、第2の逃げ角またはさらなる逃げ角を有してもよい。逃げ面が前方切削刃の1つに追従する、逃げ面の一点における逃げ角を測定するために、交差線と仮想曲線とを含む中心平面が確認される。仮想曲線は、逃げ面内の点の位置に対応する点の交差線を通過する半径を有する。この半径上の仮想曲線の接線は、エンドミル内の逃げ面の対応する点の逃げ角を測定するために平面に対して垂直である。
【0038】
好ましくは、前方切削刃のそれぞれの軸方向延長部に沿うあらゆる軸方向位置において、逃げ面はすべて同じ第1の逃げ角を有する。換言すると、第1の軸方向位置で第1の切削刃の後方の逃げ面の逃げ角は、他の対応の前方切削刃に追従する他のすべての逃げ面において同一である。第1の軸方向位置に切屑分割溝を有する前方切削刃は、頂部を有する前方切削刃と同じ逃げ角を切屑分割溝に有する。これにより、所望の逃げ角が両方の切屑分割溝に存在し、エンドミルのより予測可能な切削性能を可能にする部分を作り出す。これにより、安定性を高めることができる。
【0039】
好ましくは、第1の逃げ角は、最低0.5°かつ最大5°である。これにより、振動を回避するための良好な支持とともに強固な前方切削刃が達成される。さらに、エンドミルが詰まるのを回避するのに十分な逃げが存在する。一実施形態によれば、各歯部の逃げ面は、好ましくは、好ましい範囲内に第1の逃げ角を有する、切削刃に最も近い補強ベベルを備える。好ましくは、小さな第1の逃げ角または補強ベベルを含む実施形態は、回転方向後方に第2の逃げ面を有する。第2の逃げ面の第2の逃げ角は、好ましくは最低6°かつ最大14°である。
【0040】
任意選択で、前方切削刃のそれぞれの軸方向最前方点から、前方切削刃の軸方向延長部に沿って軸方向後方に、第1の逃げ角は一定であるか、連続的に増加するか、または連続的に減少する。このため、エンドミルの前方切削刃の切削特性は、前方切削刃の軸方向延長部に沿った異なる切削特性により最適化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
以下、例示的な実施形態をより詳細に、添付の図面を参照しつつ説明する。
図1】仕上げ用のボールノーズエンドミルの形態にある対象のエンドミルの第1の実施形態の側面図である。
図2】切削部を示す図1の拡大図である。
図3図2の拡大図である。
図4図1の実施形態の逃げ面の逃げ角を測定するための平面の図である。
図5図1の実施形態の前端を示す斜視図である。
図6図1の実施形態の正面端面図である。
図7図1の実施形態の前方切削刃のグラフ表示の図である。
図8図7による前方切削刃のうち1つのグラフ表示の拡大図である。
図9】荒削り用のボールノーズエンドミルの形態にある対象のエンドミルの第2の実施形態の側面図である。
図10図9の第2の実施形態に関する図7に対応するグラフ表示の図である。 すべての図は概略的であって必ずしも縮尺通りではなく、全体的にそれぞれの実施形態を明瞭するために必要な部分のみを示し、一方で他の部分は省略されるか、または単に示唆される場合がある。別途指示がない限り、同様の参照符号は、異なる図の同様の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1~8を参照すると、仕上げ用のボールノーズエンドミルの形態にある対象のエンドミルの第1の実施形態が示される。エンドミルは、前端2と、後端3と、中心長手方向軸4とを有する本体1を備える。エンドミルは、中心長手方向軸4の周囲を回転方向5に回転可能に構成される。切削部6は、前端2から軸方向後方に延在する。結合部8は、切削部6の後端から本体1の後端3まで軸方向後方に延在する。結合部8は、機械主軸に取付け可能であるように構成される。切削部6は、半径7.8mmである半球状のボールノーズの形態にある前端を備える。
【0043】
切削部6は、半径方向に突出するとともに軸方向に延在する複数の4つの歯部7を備える。切削部6は、切削部6の半径方向外向きの外周面に凹みを有する、軸方向に延在する切屑フルート9を備える。各歯部7は1つの対応の切屑フルート9と関連付けられ、各歯部7と切屑フルート9は、互いに並行して螺旋状に延在する。ねじれ角は30°である。
【0044】
各歯部7は、逃げ面10と、すくい面11と、逃げ面10とすくい面11との交差部にある切削刃12とを備える。逃げ面10は、対応の切削刃12から回転方向を辿る次の切屑フルート9まで、回転方向後方に延在する。
【0045】
各切削刃12は、軸方向最前方点14、14aから軸方向後方かつ半径方向外向きに延在する前方切削刃13を備える。各前方切削刃13は、ボールノーズの半球形状に沿って半径方向外向きかつ軸方向後方に対応の螺旋線に追従する。前方切削刃13のうち2つは、中心刃16の一部の形態にある前部を備える。中心において、中心刃16は中心長手方向軸4を横切って延在し、対応する2つの前方切削刃13は中心に最前方点14を有し、そこから反対方向に延在する。4つの前方切削刃13のうち残り2つは、中心長手方向軸4から半径方向外向きに距離を置いて最前方点14aを有する。エンドミルは、これら前方切削刃13の最前方点14aの前方に非切削凹部15を有する。前方切削刃13の最大切削直径は、15.6mm(ボールノーズエンドの直径)である。
【0046】
中心切削刃16は、その長さに沿ったあらゆる位置に、中心長手方向軸4に対して少なくとも75°の角度αを有する。例示的な実施形態では、中心切削刃16は、10°の角度βの角円弧(angular arc)にわたって延在する。
【0047】
各前方切削刃13は、少なくとも2つの切屑分割溝17、例示的な実施形態では4つの切屑分割溝17によって分断される。中心に最前方点14を有する2つの前方切削刃13は、さらに切屑分割溝17を有する。中心切削刃16は、切屑分割溝17を欠いている。切屑分割溝17は、逃げ面において各前方切削刃13から回転方向後方に延在する。
【0048】
各前方切削刃13、およびそこから延在する逃げ面10は、軸方向に最も近い2つの切屑分割溝17間にある半径方向外側の頂部20と、それぞれの対応の切屑分割溝17内にある底部21とを有する。
【0049】
4つすべての前方切削刃13は、異なる軸方向位置に対応の切屑分割溝17を有する。
【0050】
各切削刃12に沿った各位置において、逃げ面10は、切削刃12に最も近い第1の部分18を含む。第1の部分18の逃げ面10は切削刃12に最も近い第1の逃げ角εを有しており、図4を参照されたい。例示的な実施形態では、第1の逃げ角εは前方切削刃13に沿って連続的に変動し、第1の逃げ角εは、中心長手方向軸4では8°、半球形のボールノーズエンドの軸方向後端では12°である。半球形のボールノーズエンドの軸方向後端では、ボールノーズエンドの半径は、中心長手方向軸に対して90°の角度を形成する。逃げ面10の第1の部分18の回転方向後方では、逃げ面10の逃げ角εは増大する。
【0051】
エンドミルのボールノーズエンドの軸方向延長部に沿ったあらゆる軸方向位置では、前方切削刃13のそれぞれが同じ第1の逃げ角εを有する。
【0052】
例示的なエンドミルの切削刃12の前方切削刃13は、図7および図8にグラフ表示される。対応の切削刃12の像またはグラフ表示は、各前方切削刃13が中心平面に交差線19を形成するように中心長手方向軸4の周囲でエンドミルを回転させることによって得られる。この図では、前方切削刃13の半径方向外側の頂部20(図3を参照)は交差線19の山部22として視認可能であり、切屑分割溝の底部21(図3を参照)は交差線19の谷部23として視認可能である。湾曲部25は、それぞれ対応の谷部23から対応の山部22まで延在する。各湾曲部25は、1つの対応の山部22から内向きに延在するとともに、すべての位置において0.1mmより大きな曲率半径27を有する、凸状に湾曲した外側部分26を含む。例示的なボールノーズエンドミルでは、曲率半径27は0.2mmである。
【0053】
仮想曲線24は、交差線19の山部22を接続する。仮想曲線24は、半径方向外向きに凸状である。仮想曲線24の曲率半径は、例示的な実施形態ではボールノーズエンドの半径、すなわち7.8mmに相当する。
【0054】
山部22、谷部23、および湾曲部25は、波形の交差線19を作り出す。軸方向に最も近い2つの山部22間の弧長は、周期的弧長28を構成する。各前方切削刃13の周期的弧長28は、すべて同じ長さを呈する。各湾曲部25の内向き延長部、すなわち、対応の山部22から対応の溝23までの半径方向距離は、周期的弧長28の最大10%であり、例示的な実施形態では0.2mmである。
【0055】
4つすべての前方切削刃13は、異なる軸方向位置に対応の切屑分割溝17を有するため、図7では4つの交差線として視認可能である。確認できるように、それぞれの交差線19の山部22と谷部は、異なる軸方向位置にある。これは、頂部22が底部21と重なっている前方切削刃13を表しており、それによって、切削対象である加工対象物に対して所望の表面仕上げを達成できる。このため、同じ軸方向位置で4つすべての前方切削刃13を見ると、4つすべての前方切削刃13は、その軸方向位置に1つの対応の湾曲部25の様々な点を有する。さらに、上述したように前方切削刃はすべて、同じ軸方向位置に同じ第1の逃げ角εを有する。
【0056】
図3で確認できるように、前方切削刃13に沿った選択位置における第1の逃げ角εは、図4の平面において測定される。前方切削刃13の選択位置は、交差線19および仮想曲線24を含む中心平面に見られる。選択位置における仮想曲線24の接線は、図4の平面に対して垂直である。中心4の逃げ角εを測定する場合、関連する平面は長手方向平面であり、ボールノーズの軸方向後端の逃げ角εを測定する場合、関連する平面は軸方向平面である。
【0057】
図9には、荒削り用のボールノーズエンドミルの形態にある対象のエンドミルの第2の実施形態が示されており、切削部6がシャフト部分30を備えている点、および切削刃12の形状において第1の実施形態とは異なる。
【0058】
切削刃12は、それぞれ後方切削刃29を備える。後方切削刃29は、それぞれ1つの対応の前方切削刃13から軸方向後方に、シャフト部分30に沿って螺旋状に延在する。各後方切削刃29は、前方切削刃13と同様に切屑分割溝17によって分断される。ここで、各後方切削刃29は、後方切削刃29の交差線19が、仮想直線31上にそれぞれ位置する少なくとも3つの半径方向外側の山部22と、少なくとも3つの山部22のうち軸方向に最も近い対応の2つの山部22間にそれぞれ位置する少なくとも2つの半径方向内側の谷部23と、少なくとも2つの谷部23のうち1つの対応の谷部23から軸方向に最も近い対応の2つの山部22のうち1つまでそれぞれ延在する湾曲部25とを備えるように、少なくとも2つの切屑分割溝17を備えており、各湾曲部は、山部から半径方向内向きに延在するとともにすべての位置において0.1mmより大きい曲率半径27を有する凸状に湾曲した外側部分26を備える。
【0059】
仮想直線の周期長32は、軸方向に最も近い対応の2つの山部の第1の山部から第2の山部まで延在しており、前方切削刃13のうち1つおよび後方切削刃29のうち1つを備える切削刃12それぞれにおいて、周期長32は周期的弧長28に等しい。
【0060】
切削刃12の頂部22は、それぞれ第1の実施形態の切削刃12の頂部よりも大きな曲率を有する。これにより、図10で確認できるように、より波形の交差線19が得られ、これは表面仕上げがあまり良好でない荒削り工具を表す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】