(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法
(51)【国際特許分類】
A23B 7/10 20060101AFI20241128BHJP
A23B 7/04 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A23B7/10
A23B7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538412
(86)(22)【出願日】2022-10-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 CN2022123785
(87)【国際公開番号】W WO2023124349
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111651921.0
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523470371
【氏名又は名称】浙江大学中原研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】呉 迪
(72)【発明者】
【氏名】鄭 丹丹
(72)【発明者】
【氏名】孫 崇徳
(72)【発明者】
【氏名】陳 昆松
【テーマコード(参考)】
4B169
【Fターム(参考)】
4B169AB05
4B169CA02
4B169HA11
4B169KA01
4B169KB01
4B169KC34
4B169KD10
(57)【要約】
【課題】ヤマモモ収穫後の鮮度保持の減薬処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】成熟したヤマモモを摘み取った後、中空の射出成形包装容器に入れ、ヤマモモを中空の射出成形包装容器内に間隔をあけて均等に配置する収穫後の包装工程(1)と、ヤマモモの表面に0.1%過酢酸を噴霧する低濃度過酢酸処理工程(2)と、低濃度過酢酸処理をしたヤマモモに大気プラズマを導入して5分間処理し、処理が完了した後4℃の冷蔵庫に入れて一時貯蔵する大気プラズマ処理工程(3)とを含む。本発明は、過酢酸と大気プラズマを併用して、過酢酸の使用量を効果的に削減し、有効性を高めることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟したヤマモモを摘み取った後、中空の射出成形包装容器に入れ、前記ヤマモモを前記中空の射出成形包装容器内に間隔をあけて均等に配置する収穫後の包装工程(1)と、
前記ヤマモモの表面に0.1%過酢酸を噴霧する低濃度過酢酸処理工程(2)と、
低濃度過酢酸処理をした前記ヤマモモに大気プラズマを導入して5分間処理し、処理が完了した後4℃の冷蔵庫に入れて一時貯蔵する大気プラズマ処理工程(3)と
を含むことを特徴とする、ヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法。
【請求項2】
前記工程(2)において、前記ヤマモモの上下前後左右6面から計6回、前記過酢酸を噴霧する、請求項1に記載のヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法。
【請求項3】
前記工程(3)において、前記大気プラズマは、作動ガスとして空気を用い、ガス流速は1.05m
3/分であり、電極管に注入され、0.3mmの放電ギャップ内にプラズマを生成する、請求項1に記載のヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法。
【請求項4】
前記工程(3)における前記大気プラズマ処理は、室温でのプラズマの輸送と低温処理した後のプラズマの輸送を交互に行い、具体的には最初の1分間は低温処理した後のプラズマを輸送し、2分目は室温でプラズマを輸送し、3分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、4分目は室温でプラズマを輸送し、5分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、前記低温処理した後のプラズマの輸送は生成された大気プラズマを氷と水の混合物を通して冷却することにより達成される、請求項1に記載のヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物の鮮度保持の技術分野に関し、特に、ヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤマモモは、中国を原産とする亜熱帯の果物で、主に中国東部と南部で栽培されている。果実は、多汁質で、栄養分が豊富に含まれ、魅力的な赤紫色と独特な風味で知られている。またヤマモモには、アントシアニン、フラボノイド、その他のフェノール化合物などの酸化剤が大量に含まれており、人体内の低密度リポタンパク質とリポソームの酸化を抑制することができる。
【0003】
ヤマモモの成熟期は、一般的に高温多雨季節で、収穫後、微生物感染により腐敗、変敗(特に、機械的損傷を受けた場合)しやすく、品質保持期限が非常に短くなる。ヤマモモの実の生産には、季節性、地域性の特徴が存在することで、長期保存及び北方への輸送が難しく、賞味期限及び販売範囲に制限が生じていた。
【0004】
これにより経済的で効率的かつ無公害の鮮度保持技術を模索することが、ヤマモモ産業の持続可能な発展の鍵となっていた。
【0005】
荷電粒子、電場、紫外光子、及び活性種からなるイオン化ガスである非熱プラズマは、効果的な滅菌方法として広く認識されている。うち活性酸素種(ROS)は、プラズマ不活性化の鍵となる物質と考えられていた。
【0006】
過酢酸(PAA)は、低濃度で幅広い抗菌活性を有し、強力な殺菌、殺ウイルス、殺真菌、殺胞子作用を示し、温度及びpH値の変化の影響を受けず、タンパク質残基の影響をほぼ受けることなく、短時間の暴露でも効果がある。
【0007】
過酢酸は、室温で安定し、有機物の影響が少なく、残留毒性がなく、価格も手頃で使いやすく、過酢酸処理後、速やかに酸素、酢酸、水に分解され、これら物質は微生物により速やかに代謝されることができるため、環境への影響はほとんどない。生産の際に一般的に使用される過酢酸の濃度は、0.5%であるが、使用量が少ないほど安全性は高くなる。そのため、ヤマモモの収穫後の鮮度保持時の鮮度保持剤の使用量を如何に削減するかがが喫緊の課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、過酢酸と大気プラズマを併用して、過酢酸の使用量を効果的に削減し、有効性を高めることができるヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記技術的課題を解決するために技術的手段として、
ヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法であって、
成熟したヤマモモを摘み取った後、中空の射出成形包装容器に入れ、ヤマモモを中空の射出成形包装容器内に間隔をあけて均等に配置する収穫後の包装工程(1)と、
ヤマモモの表面に0.1%過酢酸を噴霧する低濃度過酢酸処理工程(2)と、
低濃度過酢酸処理をしたヤマモモに大気プラズマを導入して5分間処理し、処理が完了した後4℃の冷蔵庫に入れて一時貯蔵する大気プラズマ処理工程(3)と
を含む、方法を採用する。
【0010】
工程(2)において、ヤマモモの上下前後左右6面から計6回、過酢酸を噴霧する。
【0011】
工程(3)において、大気プラズマは、作動ガスとして空気を用い、ガス流速は1.05m3/分であり、電極管に注入され、0.3mmの放電ギャップ内にプラズマを生成する。
【0012】
工程(3)における大気プラズマ処理は、室温でのプラズマの輸送と低温処理した後のプラズマの輸送を交互に行い、具体的には最初の1分間は低温処理した後のプラズマを輸送し、2分目は室温でプラズマを輸送し、3分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、4分目は室温でプラズマを輸送し、5分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、低温処理した後のプラズマの輸送は生成された大気プラズマを氷と水の混合物を通して冷却することにより達成される。
【0013】
ヤマモモの従来の大気プラズマ処理には、一つの問題があり、つまり空気が励起されてプラズマを形成した後、温度が上昇し、噴出されたプラズマ気流が室温でパイプラインを通じてヤマモモの実に到達した後の温度が40℃程度に達し、このような温度でのヤマモモのプラズマ気流処理は良好な殺菌効果を有するが、やはり果肉の変質が容易に生じてしまい、温度が低下すると、プラズマが不活性になり、滅菌効果が理想的でなくなる。したがって、ヤマモモの従来の大気プラズマ処理の欠点を解決するため、本発明は大気プラズマ処理方法を改良し、室温でのプラズマの輸送と低温処理した後のプラズマの輸送を交互に行う方式を用い、室温でプラズマを輸送し、プラズマ気流温度は40℃程度で良好な滅菌効果を確保し、また果肉の品質に対する高温の影響を軽減するため、低温処理した後のプラズマを輸送する方式を用いており、低温では殺菌効果が弱まるが、同時に果肉の品質への影響も軽減され、殺菌効果及び品質保証の両方を配慮することができる。なお、本発明が室温でのプラズマの輸送と低温処理した後のプラズマの輸送を交互に行う方式を採用するのは、最後が低温処理した後のプラズマの輸送でなければならず、これは、大気プラズマ処理後、ヤマモモを冷蔵庫に入れて冷蔵する必要があるためである。40℃程度のプラズマ処理した後、温度差が大きいため果肉の品質や食感が損なわれやすく、凍傷が発生する。最後の低温処理した後のプラズマの輸送は、ヤマモモのプラズマ処理温度が低く、冷蔵温度との差が小さく、品質と食感がより保証される。本発明は、室温でのプラズマの輸送と低温処理した後のプラズマの輸送を交互に行う方式を用いており、交互にかかる時間が長くないため、果実温度の急激な変動が生じない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有利な効果としては、過酢酸と大気プラズマを併用して、過酢酸の使用量を効果的に削減し、有効性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、具体的実施形態を通じて本発明の技術的手段をさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明において、採用する原料及び設備等は、特に断りのない限り、商業的に入手することができるもの又は当分野で一般に使用されるものである。下記の実施形態における方法は、特に明記しない限り、均しく当分野における従来の方法である。
【0018】
(第1の実施形態)
ヤマモモ収穫後の鮮度保持の減薬処理方法であって、次の工程を含む。
【0019】
(1)収穫後の包装工程:成熟したヤマモモを摘み取った後、中空の射出成形包装容器に入れ、ヤマモモを中空の射出成形包装容器内に間隔をあけて均等に配置する。中空の射出成形包装容器を
図1に示す。
【0020】
(2)低濃度過酢酸処理工程:ヤマモモの表面に0.1%過酢酸を噴霧する。ヤマモモの上下前後左右6面から計6回、過酢酸を噴霧する。
【0021】
(3)大気プラズマ処理工程:低濃度過酢酸処理をしたヤマモモに大気プラズマを導入して5分間処理し、処理が完了した後4℃の冷蔵庫に入れて一時貯蔵する。大気プラズマシステムは、関数発生器(南京蘇曼電子有限公司、中国)、チャンバ及び交流電源(CTP 2000 K、南京蘇曼電子有限公司、中国)で構成された。関数発生器は、9本の電極管を備える。各電極管は、中空で、内層のステンレス電極と外層の石英電極からなる。交流電源(220V、50Hz)により発生された高電圧(30kVに達する)が電極に結合された。容器のサイズは、30×25×15cmで、ポリプロピレンで製造され、厳密に密封された。DBD法によりプラズマを生成した。作動ガスとして空気を用い、ガス流速は1.05m3/分であり、電極管に注入し、0.3mmの放電ギャップ内にプラズマを生成し、その後、チャンバ内に輸送して処理した。前記大気プラズマ処理は、室温でのプラズマの輸送と低温処理した後のプラズマの輸送を交互に行い、具体的には最初の1分間は低温処理した後のプラズマを輸送し、2分目は室温でプラズマを輸送し、3分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、4分目は室温でプラズマを輸送し、5分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、前記低温処理した後のプラズマの輸送は生成された大気プラズマを、氷と水の混合物を通して冷却することにより達成される。
【0022】
室温でのプラズマの輸送と低温処理した後のプラズマの輸送の実現方法は、プラズマ生成後、2本のパイプを通じて輸送し、1つのパイプラインは室温環境にあって室温でのプラズマの輸送を実現し、もう1つのパイプラインは氷と水の混合物を通過し、このようにしてパイプライン内のプラズマ気流が冷却されてからヤマモモを処理することができる。
【0023】
<鮮度保持試験>
方法
午前中、浙江仙居に行って摘みたての東魁ヤマモモを実験室に運び、午後は果実を選別して群に分け(機械的損傷がなく、表面にカビの菌糸がなく、大きさと成熟度がほぼ同じヤマモモを選択する)、夜には各実験群を処理した。
CK:何の処理も行わない。
【0024】
A群:大気プラズマ処理5分間(生成した大気プラズマを大きな密閉箱に導入し、箱の前端に2本のパイプが接続され、後端に1本のパイプが接続され、前端の2本のパイプはどちらも大気プラズマを生成する発生装置に接続され、前端の2本のパイプのうち1本を室温環境に晒し、もう1本のパイプの一部を氷と水の混合物に浸し、後端のパイプは発生したオゾンを排除するため、室外に配置された。前記大気プラズマ処理は、室温でのプラズマの輸送と低温処理した後のプラズマの輸送を交互に行い、具体的には最初の1分間は低温処理した後のプラズマを輸送し、2分目は室温でプラズマを輸送し、3分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、4分目は室温でプラズマを輸送し、5分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、総処理時間は5分間であった)。
【0025】
B群:0.5%過酢酸をヤマモモの各面に1回ずつ、6回噴霧した(実験では、ヤマモモを15つのセルを有する中空の射出成形包装容器(包装形態を
図1に示す)に入れ、まず包装容器の上半分を取り外し、容器の上部、前後左右に過酢酸を1回ずつ噴霧し、次に包装容器の上半分を被せた後ヤマモモを裏返して、包装容器の上半分を再度取り外し、過酢酸を容器の上にもう1回噴霧した。これは、各ヤマモモの6面に過酢酸を噴霧できるようにするためであった。
【0026】
C群:ヤマモモに0.5%過酢酸を6回噴霧してから大気プラズマで5分間処理し、大気プラズマ処理はA群と同じであった。
【0027】
D群:0.1%過酢酸をヤマモモの各面に1回ずつ、6回噴霧した。
【0028】
E群:ヤマモモに0.1%過酢酸を6回噴霧した後、大気プラズマで5分間処理し、大気プラズマ処理はA群と同じであった。
【0029】
全ての組み合わせ処理は、いずれもまず過酢酸を噴霧してから大気プラズマを導入することである。これを行う主な目的は2つあり、(1)先に過酢酸を噴霧してヤマモモの表面を湿らせてから大気プラズマを導入する場合も、乾燥されず、(2)先に過酢酸を噴霧してから大気プラズマを導入する場合、過酢酸がヤマモモに作用した後に残った分を分解させることができた。
【0030】
処理した後の全てのヤマモモを4℃の冷蔵庫に入れて貯蔵し、0日目、3日目、6日目、9日目、12日目にそれぞれ微生物の塗抹標本や計数を実施して、細菌コロニー数を数えた。
【0031】
(2)結果
2.1天然微生物(非菌接種、元々果実の表面に存在していた真菌又は酵母)の広域スペクトル殺菌
貯蔵期間中、各処理群と対照群組とを比較したところ、各処理群のコロニー数は有意に減少した。表1に示すように、A群とC群或いはA群とE群の比較から、プラズマと過酢酸の併用効果はプラズマのみを使用するより良いことが分かり、B群とC群或いはD群とE群の比較から、プラズマと過酢酸の併用効果は過酢酸のみを使用するより良いことが分かり、B群とE群の比較から、0.5%過酢酸と0.1%過酢酸+5分間プラズマ処理の効果がほぼ同じで、どちらも1.8Lg程度減少し、減薬の作用を働かせたことを示している。
【0032】
表1は、広域スペクトルの各処理群のコロニー数の状況(CK:未処理ヤマモモ、A:5分間プラズマ処理、B:0.5%過酢酸、C:0.5%過酢酸+5分間プラズマ処理、D:0.1%過酢酸、E:0.1%過酢酸+5分間プラズマ処理)を示し、Lg値Xはコロニー数に換算すると、10XCFU/gであり、例えばLg値が5.7710の場合、105.771CFU/gになる。
【0033】
【0034】
2.2重量減少率の変化状況
貯蔵前期では、各処理群と対照群の重量減少率は、ほぼ同じであったが、貯蔵後期では各処理群の重量減少率は対照群より低かった(表2)。
【0035】
A群とC群或いはA群とE群の比較から、プラズマと過酢酸の併用効果はプラズマのみを使用するより良かったことが分かった(ヤマモモの重量減少は、呼吸をすることで自分自身の養分を消費する以外に、微生物によって果物が腐って水分が失われる可能性もあり、プラズマ及び過酢酸には微生物及び果実の呼吸作用を抑制する効果があり、また処理時先に過酢酸を噴霧するため、ヤマモモの表面を湿った状態に保ち、プラズマヲ導入するときに果実の表面から水分が失われることを防止できる)。
【0036】
貯蔵後期では、B群とC群或いはD群とE群の比較から、プラズマと過酢酸の併用効果は過酢酸のみを使用するより良かったことが分かった。
【0037】
表2は、各処理群の重量減少率の状況(CK:未処理ヤマモモ、A:5分間プラズマ処理、B:0.5%過酢酸、C:0.5%過酢酸+5分間プラズマ処理、D:0.1%過酢酸、E:0.1%過酢酸+5分間プラズマ処理)を示し、重量減少率の単位は%である。
【0038】
【0039】
2.3硬度の変化状況
ヤマモモの果実が貯蔵中に容易に軟化し、硬度が低下するのは、主にヤマモモが真菌感染を受けやすくて腐敗することによるためであり、過酢酸及びプラズマはどちらも真菌の増殖を抑制できるため、果実の軟化を遅らせ、ヤマモモの鮮度を保持できた。
【0040】
貯蔵期間中、各処理群の硬度は、いずれも対照群より高く、特に貯蔵後期ではより有意に高い(表3)。
【0041】
A群とC群或いはA群とE群の比較から、プラズマと過酢酸の併用効果は、特に貯蔵前期でプラズマのみを使用するより良かったことが分かった。
【0042】
B群とC群或いはD群とE群の比較から、プラズマと過酢酸の併用効果は、特に貯蔵前期で過酢酸のみを使用するより良かったことが分かった。
【0043】
【0044】
<菌接種試験>
菌接種:午前中、浙江仙居に行って摘みたての東魁ヤマモモを実験室に運び、午後は果実を選別して群に分け、夜には全ての果実に菌接種(ペニシリウム・シトリナム)処理を施し、
75%エタノールを各処理群の果実及び対照群の果実の表面に消毒噴霧し、ヤマモモを自然換気してエタノールを蒸発揮散させ、滅菌済みステンレス針で各ヤマモモの表面に0.1mmの深さの傷を付ける単針付傷接種法を使用した。各果実に、ペニシリウム・シトリナムを含む胞子懸濁液20μLをピペットを介して接種した。
【0045】
接種したヤマモモをきれいな作業台上で1時間乾燥させ、接種後に各群を処理した。
【0046】
CK:何の処理も行わない。
【0047】
A群:大気プラズマ処理5分間(生成した大気プラズマを大きな密閉箱に導入し、箱の前端に2本のパイプが接続され、後端に1本のパイプが接続され、前端の2本のパイプはどちらも大気プラズマを生成する発生装置に接続され、前端の2本のパイプのうち1本を室温環境に晒し、もう1本のパイプの一部を氷と水の混合物に浸し、後端のパイプは発生したオゾンを排除するため、室外に配置された。前記大気プラズマ処理は、室温でのプラズマの輸送と低温処理した後のプラズマの輸送を交互に行い、具体的には最初の1分間は低温処理した後のプラズマを輸送し、2分目は室温でプラズマを輸送し、3分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、4分目は室温でプラズマを輸送し、5分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、総処理時間は5分間であった)。
【0048】
B群:0.5%過酢酸をヤマモモの各面に1回ずつ、6回噴霧した。
【0049】
C群:ヤマモモに0.5%過酢酸を6回噴霧してから大気プラズマで5分間処理した。
【0050】
全てのヤマモモを20℃の冷蔵庫に入れて貯蔵し、0日目、3日目、6日目、9日目、12日目にそれぞれ微生物の塗抹標本や計数を実施して、細菌コロニー数の計数及び腐敗率の測定を実施した。
【0051】
結果
表4に示すように、対照群と比較して、各処理群のコロニー数は有意に減少し、
B群とC群の比較から、貯蔵前期の効果がほぼ同じで、減薬の作用を働かせ、貯蔵後期C群のコロニー数はB群よりも多く減少し、減薬及び有効性向上の作用を働かせたことを示している。
【0052】
A群とC群の比較から、貯蔵期間には有意性がないが、貯蔵期間にC群のコロニー数はA群よりも少なく、プラズマと過酢酸の併用効果は、プラズマのみを使用するより良かったことを示している。
【0053】
表4:菌(ペニシリウム・シトリナム)接種後の各処理群のコロニー数の状況
【表4】
【0054】
菌接種による腐敗率
A群とC群の比較から、貯蔵期間にC群の腐敗率は、A群より低く、プラズマと過酢酸の併用効果は、プラズマのみを使用するより良かったことを示している。
【0055】
B群とC群の比較から、貯蔵期間にC群の腐敗率は、B群より低く、減薬及び有効性向上の作用を働かせたことを示している(表5)。
【0056】
表5:菌(ペニシリウム・シトリナム)接種後の各処理群の腐敗率の状況
【表5】
【0057】
意義
本発明は、物理的技術と化学的鮮度保持剤の併用により、減薬や有効性向上の効果を奏すことができ、ヤマモモの表面上の微生物(主に真菌及び酵母)の効果的な減少を保証することで、腐敗率を低下させ、果実の保存可能期間を延ばすだけではなく、化学的鮮度保持剤の使用量も減少でき、グリーンな鮮度保持を実現した。
【0058】
上述の実施形態は、本発明の好ましい解決手段に過ぎず、いかなる形でも本発明を限定する意図で用いられるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的手段から逸脱することなく、他の変形及び改良を加えることもできる。
【0059】
[付記]
[付記1]
成熟したヤマモモを摘み取った後、中空の射出成形包装容器に入れ、前記ヤマモモを前記中空の射出成形包装容器内に間隔をあけて均等に配置する収穫後の包装工程(1)と、
前記ヤマモモの表面に0.1%過酢酸を噴霧する低濃度過酢酸処理工程(2)と、
低濃度過酢酸処理をした前記ヤマモモに大気プラズマを導入して5分間処理し、処理が完了した後4℃の冷蔵庫に入れて一時貯蔵する大気プラズマ処理工程(3)と
を含むことを特徴とする、ヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法。
【0060】
[付記2]
前記工程(2)において、前記ヤマモモの上下前後左右6面から計6回、前記過酢酸を噴霧する、付記1に記載のヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法。
【0061】
[付記3]
前記工程(3)において、前記大気プラズマは、作動ガスとして空気を用い、ガス流速は1.05m3/分であり、電極管に注入され、0.3mmの放電ギャップ内にプラズマを生成する、付記1に記載のヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法。
【0062】
[付記4]
前記工程(3)における前記大気プラズマ処理は、室温でのプラズマの輸送と低温処理した後のプラズマの輸送を交互に行い、具体的には最初の1分間は低温処理した後のプラズマを輸送し、2分目は室温でプラズマを輸送し、3分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、4分目は室温でプラズマを輸送し、5分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、前記低温処理した後のプラズマの輸送は生成された大気プラズマを氷と水の混合物を通して冷却することにより達成される、付記1に記載のヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟したヤマモモを摘み取った後、中空の射出成形包装容器に入れ、前記ヤマモモを前記中空の射出成形包装容器内に間隔をあけて均等に配置する収穫後の包装工程(1)と、
前記ヤマモモの表面に0.1%過酢酸を噴霧する低濃度過酢酸処理工程(2)と、
低濃度過酢酸処理をした前記ヤマモモに大気プラズマを導入して5分間処理し、処理が完了した後4℃の冷蔵庫に入れて一時貯蔵する大気プラズマ処理工程(3)と
を含
み、
前記工程(3)における前記大気プラズマ処理は、室温でのプラズマの輸送と低温処理した後のプラズマの輸送を交互に行い、具体的には最初の1分間は低温処理した後のプラズマを輸送し、2分目は室温でプラズマを輸送し、3分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、4分目は室温でプラズマを輸送し、5分目は低温処理した後のプラズマを輸送し、前記低温処理した後のプラズマの輸送は生成された大気プラズマを氷と水の混合物を通して冷却することにより達成されることを特徴とする、ヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法。
【請求項2】
前記工程(2)において、前記ヤマモモの上下前後左右6面から計6回、前記過酢酸を噴霧する、請求項1に記載のヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法。
【請求項3】
前記工程(3)において、前記大気プラズマは、作動ガスとして空気を用い、ガス流速は1.05m
3/分であり、電極管に注入され、0.3mmの放電ギャップ内にプラズマを生成する、請求項1に記載のヤマモモの収穫後の鮮度保持の減薬処理方法。
【国際調査報告】