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特表2024-545352アリル系難燃性プレポリマー、樹脂組成物、複合樹脂、プリプレグ及び積層板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】アリル系難燃性プレポリマー、樹脂組成物、複合樹脂、プリプレグ及び積層板
(51)【国際特許分類】
   C08L 61/34 20060101AFI20241128BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20241128BHJP
   C08L 39/00 20060101ALI20241128BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241128BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C08L61/34
C08K5/5313
C08L39/00
C08K3/013
C08J5/24 CFC
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538969
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2022143373
(87)【国際公開番号】W WO2023125802
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111679479.2
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521550460
【氏名又は名称】グァンドン ヒンノ-テック カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524240630
【氏名又は名称】リサーチ インスティテュート オブ チンファ パール リバー デルタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チー シァオロン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン ウェンイェン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュ ヤンジェ
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD27
4F072AE01
4F072AE02
4F072AE07
4F072AF06
4F072AF14
4F072AF15
4F072AF23
4F072AF27
4F072AF29
4F072AG03
4F072AG19
4F072AH02
4F072AJ22
4F072AK14
4F072AL13
4J002BH02X
4J002CC27W
4J002CM02Y
4J002DE077
4J002DE107
4J002DE137
4J002DE147
4J002DE187
4J002DF017
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DK007
4J002EW136
4J002FD017
4J002FD136
4J002GF00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、アリル系難燃性プレポリマー、樹脂組成物、複合樹脂、プリプレグ及び積層板を開示する。本発明に係るアリル系難燃性プレポリマーは、100:(20~80)の質量部の比を有するアリルベンゾオキサジン系化合物とアリルリン含有化合物とを予備重合してなる。本発明に係るアリル系難燃性プレポリマーを用いて製造された樹脂組成物、複合樹脂、プリプレグ及び積層板は、難燃性能が強く、高温弾性率性能が優れ、優れた耐熱性及び吸水率を有し、かつ誘電特性が極めて優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100質量部のアリルベンゾオキサジン系化合物及び20~80質量部のアリルリン含有化合物を含み、
前記アリルリン含有化合物の構造式は、
【化1】

であり、
前記アリルベンゾオキサジン系化合物は、下記構造式で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
【化2】

Xは、独立して、-CHR-、-CR-、-SO-又は-O-から選ばれ、
、R、Rは、それぞれ独立して、-H又は-CHから選ばれる、ことを特徴とするアリル系難燃性プレポリマー。
【請求項2】
前記アリルベンゾオキサジン系化合物の構造式は以下に示すものである、ことを特徴とする請求項1に記載のアリル系難燃性プレポリマー。
【化3】
【請求項3】
10~20質量部の無リン型アリル化合物をさらに含み、
前記無リン型アリル化合物は、アリルビスフェノールA、アリルビスフェノールS及びアリルジフェニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアリル系難燃性プレポリマー。
【請求項4】
前記アリルベンゾオキサジン系化合物と前記アリルリン含有化合物とを混合し、100℃~130℃で1~3時間加熱して得られる、ことを特徴とする請求項1に記載のアリル系難燃性プレポリマー。
【請求項5】
質量部で、組成成分として、請求項1~4のいずれか一項に記載のアリル系難燃性プレポリマー10~30部、ビスマレイミド樹脂50~100部、シアネートエステル樹脂30~80部、機能性樹脂5~30部、及び無機フィラー10~60部を含む、ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
前記ビスマレイミド樹脂は、分子構造中に2つ以上のマレイミド構造が含まれる有機化合物から選ばれ、及び/又は、
前記シアネートエステル樹脂は、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、多官能型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールM型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びジシクロペンタジエンビスフェノール型シアネートエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記機能性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル及び炭化水素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記無機フィラーは、バナジン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ハフニウム、結晶化ガラス、ユークリプタイト、シリカ、石英、マイカ粉、二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク粉、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化モリブデン、硫酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、粘土、及びカオリンなどからなる群より選ばれる少なくとも1種である、 ことを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
1~5質量部の助剤をさらに含み、前記助剤は、硬化促進剤、カップリング剤及び強化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載のアリル系難燃性プレポリマー、又は請求項5~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、ことを特徴とする複合樹脂。
【請求項9】
補強材と、前記補強材に担持された樹脂材料とを含み、前記樹脂材料は、請求項8に記載の複合樹脂である、ことを特徴とするプリプレグ。
【請求項10】
製造原料として、請求項9に記載のプリプレグを含む、ことを特徴とする積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅張積層板の技術分野に属し、具体的には、アリル系難燃性プレポリマー、樹脂組成物、複合樹脂、プリプレグ及び積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
銅箔張積層板(銅張積層板)は、補強材に樹脂を含浸させ、片面又は両面に銅箔を被覆し、加熱プレスして製造された板状材料である。プリント回路基板において、銅張積層板は、相互接続導通、絶縁及び支持の役割を果たすことができ、回路における信号の伝送速度、エネルギー損失及び特性インピーダンスなどに大きな影響を与える。通信技術のさらなる発展に伴い、銅張積層板に対する要求も多様化してきている。
【0003】
ビスマレイミド樹脂(BMI)は、新規な高性能の樹脂材料として、優れた耐熱性と高温弾性率保持率を有するが、単独で使用すると、硬化温度が高すぎ、溶解性が低いなどの欠点がある。変性後のビスマレイミド(BMI)は、上記欠点の一部を克服し、銅張積層板基材の製造に広く用いられるが、その難燃性が不十分であり、UL-94V0レベルに達することができない。銅張積層板の難燃性能を実現するために、一般的に、難燃性元素、例えば、P、N、Siなどを含む樹脂を配合成分に添加する。最も難燃効果があるのは、リン含有エポキシ樹脂及びホスファゼン化合物などのリン含有難燃剤を添加することである。しかしながら、リン含有難燃剤の添加量が高すぎると、基材の耐熱性や高温弾性率保持率に悪影響を与える。
【0004】
特許文献CN109504087Aには、変性ビスマレイミドプレポリマーを原料とする樹脂組成物が開示されており、製造された銅張積層板は、一定の耐熱性及び難燃性を有するが、靭性が不足し、高温弾性率保持率が低い。特許文献CN106336662Aには、配合成分にアリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂を添加した熱硬化性樹脂組成物が開示されており、製造された積層板は、難燃性が高いが、ガラス転移温度が低く(約200℃)、BT樹脂基板の平均値(200℃~300℃)より低く、かつ剥離強度が理想的ではない。
【0005】
これに鑑みて、総合性能に優れた樹脂組成物を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第109504087号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第106336662号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アリル系難燃性プレポリマー、樹脂組成物及び複合樹脂、並びにそれによって製造されたプリプレグ及び積層板を提供することを目的としている。該積層板は、難燃性が高く、剥離強度が大きく、吸水率が低く、高温弾性率保持率が高い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、100質量部のアリルベンゾオキサジン系化合物及び20~80質量部のアリルリン含有化合物を含み、
前記アリルリン含有化合物の構造式は、
【化1】

であり、
前記アリルベンゾオキサジン系化合物は、下記構造式で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
【化2】

Xは、独立して、-CHR-、-CR-、-SO-又は-O-から選ばれ、
、R、Rは、それぞれ独立して、-H又は-CHから選ばれる、アリル系難燃性プレポリマーを提供する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、前記アリル系難燃性プレポリマーにおいて、前記アリルベンゾオキサジン系化合物の構造式は以下に示すものである。
【化3】
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、前記アリル系難燃性プレポリマーにおいて、10~20質量部の無リン型アリル化合物をさらに含み、
前記無リン型アリル化合物は、アリルビスフェノールA、アリルビスフェノールS及びアリルジフェニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、前記アリル系難燃性プレポリマーは、前記アリルベンゾオキサジン系化合物と前記アリルリン含有化合物とを混合し、100℃~130℃で1~3時間加熱して得られる。
【0012】
本発明の第2態様は、質量部で、組成成分として、本発明の第1態様に記載のアリル系難燃性プレポリマー10~30部、ビスマレイミド樹脂50~100部、シアネートエステル樹脂30~80部、機能性樹脂5~30部、及び無機フィラー10~60部を含む樹脂組成物を提供する。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、前記樹脂組成物において、前記ビスマレイミド樹脂は、分子構造中に2つ以上のマレイミド構造が含まれる有機化合物から選ばれ、及び/又は、
前記シアネートエステル樹脂は、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、多官能型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールM型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びジシクロペンタジエンビスフェノール型シアネートエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記機能性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル及び炭化水素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記無機フィラーは、バナジン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ハフニウム、結晶化ガラス、ユークリプタイト、シリカ、石英、マイカ粉、二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク粉、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化モリブデン、硫酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、粘土、及びカオリンなどからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、前記樹脂組成物は、1~5質量部の助剤をさらに含み、前記助剤は、硬化促進剤、カップリング剤及び強化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0015】
本発明の第3態様は、本発明の第1態様に係るアリル系難燃性プレポリマー、又は本発明の第2態様に係る樹脂組成物を含む、複合樹脂を提供する。
【0016】
本発明の第4態様は、補強材と、前記補強材に担持された樹脂材料とを含み、前記樹脂材料が本発明の第3態様に係る複合樹脂である、プリプレグを提供する。
【0017】
本発明の第5態様は、製造原料として、本発明の第4態様に係るプリプレグを含む、積層板を提供する。
【発明の効果】
【0018】
ビスマレイミドを主な樹脂材料とする銅張積層板は、優れた耐熱性を備えるが、難燃性能が不十分である。その難燃性を向上させるために、配合成分に多量の難燃剤や無機フィラーを添加するか、又は原料樹脂を変性させるなどの前処理を行うことが多い。本発明は、適切な添加量のアリル系難燃性プレポリマーを用いて、ビスマレイミドと他の機能性樹脂、無機フィラー、助剤などの成分と組み合わせることにより、樹脂組成物の難燃耐熱性を総合的に向上させ、該樹脂を用いて製造された積層板(銅張積層板)は、難燃性を有するだけでなく、優れた総合性能を有する。
【0019】
本発明において、アリルベンゾオキサジン系化合物及びアリルリン含有化合物を用いて予備重合して、アリル基に富んだ難燃性プレポリマーを得て、ビスマレイミド樹脂に添加し、他の成分と共に樹脂組成物を構成する。該樹脂組成物中のアリル基同士が互いに結合することにより、ベンゾオキサジンの直鎖を延長し、反応過程における応力を低減し、樹脂組成物の靭性を向上させ、樹脂組成物の膨縮を低減することができる。
【0020】
本発明に係る樹脂組成物において、窒素・リン元素は、相乗的に効果を発揮し、その難燃性能をさらに向上させることができる。
【0021】
本発明に係る積層板は、全体的な難燃レベルがUL-94V0に達することができ、ガラス転移温度が高く(Tg>300℃)、剥離強度が高く、高温弾性率保持率が高く(曲げ弾性率、貯蔵弾性率)、熱膨張係数が低く(CTE)、吸水率が低く、かつ誘電特性が極めて強い。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態及び実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。また、本発明が説明した内容を読んだ後、当業者は本発明に対して様々な変更や修正を行うことができ、これらの等価形式も同様に本願の特許請求の範囲に含まれる。
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で用いられる用語は、具体的な実施例を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。
【0024】
[用語]
本明細書で使用される用語又は表現は、別段の説明又は矛盾がない限り、以下の意味を有する。
【0025】
本明細書で使用される用語「及び/又は」、「又は/及び」、「並びに/若しくは」の選択範囲は、2つ以上の関連する列挙された項目のうちのいずれか1つの項目を含み、関連する列挙された項目の任意かつ全ての組み合わせをさらに含み、前記任意かつ全ての組み合わせは、任意の2つの関連する列挙された項目、任意のより多くの関連する列挙された項目、又は全ての関連する列挙された項目の組み合わせを含む。なお、「及び/又は」、「又は/及び」、「並びに/若しくは」から選択される少なくとも2つの接続詞の組み合わせで少なくとも3つの項目を接続する場合、理解できるように、本願において、当該技術的手段は、いずれも「論理積」で接続される技術的手段を含み、さらに、いずれも「論理和」で接続される技術的手段を含むことは言うまでもない。例えば、「A及び/又はB」は、A、B及びA+Bの3つの意味を含む。また例えば、「A及び/又はB及び/又はC及び/又はD」という技術的手段は、A、B、C及びDのうちのいずれか1つ(即ち、全てが「論理和」で接続される技術的手段)を含み、A、B、C及びDの任意かつ全ての組み合わせを含み、即ち、A、B、C及びDのうちのいずれか2つ又は3つの組み合わせを含み、さらに、A、B、C及びDの4つの組み合わせ(即ち、全てが「論理積」で接続される技術的手段)を含む。
【0026】
本明細書において、「好ましくは」、「より好ましくは」、「さらに好ましくは」は、より効果的な実施形態又は実施例を説明するためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0027】
本発明において、「さらに」、「またさらに」、「特に」などは、目的を説明するためのものであり、内容の差異を示すが、本発明の保護範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
【0028】
本願において、「第1態様」、「第2態様」、「第3態様」、「第4態様」、「第5態様」などにおいて、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」、「第5」などの用語は説明するためにのみ用いられており、相対的な重要性や量を示したり暗示したりするものとして理解されるべきではなく、示された技術的特徴の重要性や量を暗黙的に示すものとして理解されるべきではない。また、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」、及び「第5」などは、非網羅的な列挙説明の目的のみを果たし、数に対するクローズド型限定を構成しないことを理解されたい。
【0029】
本発明において、オープン形式で記載された技術的特徴には、リストされた特徴からなるクローズド型技術案もリストされた特徴を含むオープン型技術案も含まれる。
【0030】
本発明において、数値区間(即ち、数値範囲)について、特に断らない限り、選択可能な数値分布は、上記数値区間内で連続すると見なされ、当該数値範囲の2つの数値端点(即ち、最小値及び最大値)、及び当該2つの数値端点間の各数値を含む。特に明記しない限り、数値区間が当該数値区間内の整数のみを指す場合、当該数値範囲の2つの端点の整数、及び2つの端点の間の各整数を含む。また、特徴や特性を説明する範囲が複数ある場合には、それらを組み合わせてもよい。換言すれば、特に断らない限り、本明細書に開示される範囲は全て、その中に包摂されるありとあらゆるサブ範囲を包含するものと理解されるべきである。
【0031】
本発明において、少なくとも1種は、その数を含み、1種又は1種以上として理解されるべきである。
【0032】
本発明における温度パラメータは、特に断らない限り、恒温処理であってもよく、一定の温度区間内で変動してもよい。前記恒温処理は、機器制御の精度範囲内で温度が変動することを許容することを理解されたい。例えば、±5℃、±4℃、±3℃、±2℃、±1℃の範囲での変動が許容される。
【0033】
本発明において、特に限定されない限り、サイズ、粒径、直径は、一般的に平均値を意味する。
【0034】
本発明の第1態様は、アリル系難燃性プレポリマーを提供する。
【0035】
本発明において、アリルベンゾオキサジン系化合物及びアリルアミン系リン含有化合物をアリル系難燃性プレポリマーに予備重合し、樹脂組成物に添加することにより、優れた難燃効果を得ることができ、樹脂組成物の靭性を向上させ、優れた総合性能を備えさせることができる。
【0036】
本発明の第1態様は、100質量部のアリルベンゾオキサジン系化合物及び20~80質量部のアリルリン含有化合物を含み、
前記アリルリン含有化合物の構造式は、
【化4】

であり、
前記アリルベンゾオキサジン系化合物は、下記構造式で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
【化5】

Xは、独立して、-CHR-、-CR-、-SO-又は-O-から選ばれ、
、R、Rは、それぞれ独立して、-H又は-CHから選ばれる、アリル系難燃性プレポリマーを提供する。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、アリル系難燃性プレポリマーにおいて、アリルベンゾオキサジン系化合物とアリルリン含有化合物との質量部の比は、100:(20~80)であり、さらに100:(40~60)であってもよい。例えば、質量部の比は、100:20、100:25、100:30、100:35、100:40、100:45、100:50、100:55、100:60、100:65、100:70、100:75、又は100:80などである。
【0038】
本発明のいくつかの実施例では、アリル系難燃性プレポリマーにおいて、アリルベンゾオキサジン系化合物とアリルリン含有化合物との質量部の比は、100:50である。
【0039】
本発明において、アリル系難燃性プレポリマーにおいて、アリルベンゾオキサジン系化合物及びアリルリン含有化合物中のアリル基が互いに結合することにより、ベンゾオキサジンの直鎖を延長し、反応過程における応力を低減し、樹脂組成物の靭性を向上させ、樹脂組成物の膨縮を低減することができる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、アリル系難燃性プレポリマーにおいて、前記アリルベンゾオキサジン系化合物の構造式は以下に示すものである。
【化6】
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、アリル系難燃性プレポリマーにおいて、10~20質量部の無リン型アリル化合物をさらに含む。いくつかの実施例では、無リン型アリル化合物は、アリルビスフェノールA、アリルビスフェノールS及びアリルジフェニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0042】
本発明のいくつかの実施例では、アリル系難燃性プレポリマーにおいて、10質量部のアリルビスフェノールAをさらに含む。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、アリルベンゾオキサジン系化合物100質量部に対して、難燃性プレポリマーにおける無リン型アリル化合物の質量部は、10~20部であり、例えば、10、12、15、18、又は20部などである。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、アリルベンゾオキサジン系化合物とアリルリン含有化合物とを混合し、100℃~130℃で1~3時間加熱して、アリル系難燃性プレポリマーを得る。いくつかの実施例では、アリルベンゾオキサジン系化合物とアリルリン含有化合物とを混合した後、100℃~130℃で加熱し、さらに、加熱の温度は、100℃~120℃、100℃~110℃、100℃~105℃、110℃~120℃、120℃~130℃などから選ばれてもよく、例えば、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、又は130℃などであってもよい。いくつかの実施例では、加熱の時間は、1~3時間であり、さらに1~3時間、1~2時間、1~1.5時間、2~3時間、2.5~3時間などから選ばれてもよく、例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、又は3時間などであってもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施例では、アリルベンゾオキサジン系化合物とアリルリン含有化合物とを混合し、120℃で2.5時間加熱して、前記アリル系難燃性プレポリマーを得る。
【0046】
本発明の第2態様は、難燃性能が高く、高温弾性率保持率が高く、かつ極めて強い誘電特性を有する樹脂組成物(BT樹脂組成物)を提供する。
【0047】
本発明の第2態様は、質量部で、組成成分として、本発明の第1態様に記載のアリル系難燃性プレポリマー10~30部、ビスマレイミド樹脂50~100部、シアネートエステル樹脂30~80部、機能性樹脂5~30部、及び無機フィラー10~60部を含む樹脂組成物を提供する。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、ビスマレイミド樹脂50~100質量部に対して、樹脂組成物におけるアリル系難燃性プレポリマーの質量部は、10~30部であり、さらに10~20部であってもよく、例えば、10、12、15、18、20、22、25、28、又は30部などであってもよい。
【0049】
本発明において、ビスマレイミド樹脂は、分子構造中に2つ以上のマレイミド構造が含まれる有機化合物から選ばれる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、ビスマレイミド樹脂は、N-フェニルマレイミド基、N-(2-メチルフェニル)マレイミド基、N-(4-メチルフェニル)マレイミド基、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド基、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン基、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン基、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン基、ポリフェニルメタンビスマレイミド基及びビフェニル構造含有マレイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0051】
本発明のいくつかの実施例では、ビスマレイミド樹脂は、N,N’-(4,4’-メチレンジフェニル)ビスマレイミドである。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態では、アリル系難燃性プレポリマー10~30質量部に対して、樹脂組成物におけるビスマレイミド樹脂の質量部は、50~100部であり、さらに50~75部であってもよく、例えば、50、55、60、65、70、75、85、90、又は100部などであってもよい。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態では、シアネートエステル樹脂は、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、多官能型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールM型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びジシクロペンタジエンビスフェノール型シアネートエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0054】
本発明のいくつかの実施例では、シアネートエステル樹脂は、ビスフェノールA型シアネートエステルである。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、ビスマレイミド樹脂50~100質量部に対して、樹脂組成物におけるアリル系難燃性プレポリマーの質量部は、30~80部であり、さらに30~60部であってもよく、例えば、30、35、40、45、50、55、60、70、又は80部などであってもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、機能性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル及び炭化水素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0057】
本発明のいくつかの実施例では、機能性樹脂は、エポキシ樹脂である。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態では、ビスマレイミド樹脂50~100質量部に対して、樹脂組成物における機能性樹脂の質量部は、5~30部であり、さらに5~20部であってもよく、例えば、5、8、10、12、15、17、20、25、又は30部などであってもよい。
【0059】
本発明のいくつかの実施例では、無機フィラーは、バナジン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ハフニウム、結晶化ガラス、ユークリプタイト、シリカ、石英、マイカ粉、二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク粉、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化モリブデン、硫酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、粘土、及びカオリンなどからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0060】
本発明のいくつかの実施例では、無機フィラーは、シリカである。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態では、ビスマレイミド樹脂50~100質量部に対して、樹脂組成物における無機フィラーの質量部は、10~60部であり、さらに40~50部であってもよく、例えば、10、20、30、35、38、40、42、45、50、55、又は60部などであってもよい。
【0062】
本発明において、樹脂組成物には、助剤が含まれていても、含まれていなくてもよい。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態では、助剤は、硬化促進剤、カップリング剤及び強化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0064】
本発明のいくつかの実施例では、助剤は、硬化促進剤であり、さらに、硬化促進剤は、イミダゾール、例えば、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4メチルイミダゾールから選ばれてもよく、有機金属塩、例えば、オクチル酸亜鉛、イソオクタン酸亜鉛、オクチル酸第一スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、アルミニウムアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、銅アセチルアセトナートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。カップリング剤は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、有機クロム錯体カップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。強化剤は、ゴム、シリコン樹脂、ポリブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0065】
本発明のいくつかの実施例では、助剤は、2-メチルイミダゾール硬化促進剤である。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態では、ビスマレイミド樹脂50~100質量部に対して、樹脂組成物における助剤は、1~5質量部であり、さらに2~5部であってもよく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8部などであってもよい。
【0067】
いくつかの実施例では、前記樹脂組成物は、質量部で、組成成分として、アリル系難燃性プレポリマー10~30部、ビスマレイミド樹脂50~100部、シアネートエステル樹脂30~80部、機能性樹脂5~30部、無機フィラー10~60部及び助剤0~5部を含む。アリル系難燃性プレポリマーの質量部は、独立して、10~30部であってもよく、例えば、10、12、15、18、20、25、28、又は30部などであってもよく、ビスマレイミド樹脂の質量部は、独立して、50~100部であってもよく、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100部などであってもよく、シアネートエステル樹脂の質量部は、独立して、30~80部であってもよく、例えば、30、40、50、60、70、又は80部などであってもよく、機能性樹脂の質量部は、独立して、5~30部であってもよく、例えば、5、8、10、12、15、18、20、25、28、又は30部などであってもよく、無機フィラーの質量部は、独立して、10~60部であってもよく、例えば、10、20、30、50、50、又は60部などであってもよく、助剤の質量部は、独立して、0~5部であってもよく、さらに1~5部であってもよく、またさらに2~5部であってもよく、例えば、0、1、2、3、4、又は5部などであってもよい。
【0068】
本発明の第3態様は、本発明の第1態様に係るアリル系難燃性プレポリマー、又は本発明の第2態様に係る樹脂組成物を含む、複合樹脂を提供する。該複合樹脂は、優れた難燃耐熱性を有し、高温弾性率性能に優れる。
【0069】
本発明の第4態様は、本発明の第3態様に係る複合樹脂を含むプリプレグを提供する。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態では、プリプレグは、補強材と、補強材に担持された樹脂材料とを含み、樹脂材料は、上記複合樹脂であってもよい。
【0071】
本発明の第5態様は、本発明の第4態様に係るプリプレグを含む、積層板を提供する。
【0072】
本発明において、積層板の難燃レベルは、UL94V0に達し、さらに優れた総合性能を有する。いくつかの実施例では、積層板のガラス転移温度Tg>250℃であり、さらに、Tg>280℃である。いくつかの実施例では、積層板の剥離強度>5.6lb/inである。いくつかの実施例では、積層板のスズめっき耐熱性>300sである。いくつかの実施例では、積層板は、飽和蒸気圧試験(PCT)に合格する。いくつかの実施例では、積層板の200℃貯蔵弾性率>30Gpaである。いくつかの実施例では、積層板の吸水率は、0.1%~0.12%である。以下、具体的な実施例を示す。
【実施例
【0073】
以下の具体的な実施例に記載されていない実験パラメータは、本願に記載されたガイドを優先的に参照し、本分野の実験マニュアル又は本分野の既知の他の実験方法を参照し、又はメーカーで薦めている実験条件を参照してもよい。
【0074】
以下の具体的な実施例に係る原料及び試薬は、市販されているか、又は当業者が既知の手段に従って製造することができる。
【0075】
原料:
ビスマレイミド樹脂とは、洪湖双馬場製、BMI-01であり、
シアネートエステル樹脂とは、ロンザグループ製、BA-3000Sであり、
リン含有エポキシ樹脂とは、宏昌電子製、589K75であり、
ホスファゼン化合物とは、大塚化学株式会社製、SPB100であり、
エポキシ樹脂とは、日本化薬株式会社製、NC3000Hである。
【0076】
アリルリン含有化合物の製造:
ステップ1では、1molの2-メチルアリルアミンを取って溶媒と混合し、80℃~120℃に昇温し、0.5molのテレフタルアルデヒドを添加し、窒素雰囲気下で3~8時間反応させた。
【0077】
ステップ2では、反応液を室温まで冷却し、吸引ろ過して粗生成物を得て、さらに水で再結晶(4~7回)を行い、さらに再結晶後の生成物を60℃~90℃で24時間乾燥させ、中間生成物を得た。
【0078】
ステップ3では、0.5molの中間生成物、1molの9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)及び溶媒を混合し、100℃~150℃に昇温し、窒素雰囲気下で5~7時間反応させて反応液を室温まで冷却し、さらに水で再結晶(4~7回)を行い、さらに再結晶後の製品を60℃~90℃で24時間乾燥させ、アリルリン含有化合物を得た。
【0079】
アリル系難燃性プレポリマー1の製造:
100質量部のアリルベンゾオキサジン系化合物と、50質量部のアリルリン含有化合物とを三口フラスコに入れ、有機溶媒を添加して混合した後、オイルバスで120℃に加熱し、2.5時間撹拌し続け、アリル系難燃性プレポリマー1を得た。
【0080】
アリルベンゾオキサジン系化合物の構造式を以下に示す。
【化7】
【0081】
アリル系難燃性プレポリマー2の製造:
100質量部のアリルベンゾオキサジン系化合物と、50質量部のアリルリン含有化合物と、10質量部のアリルビスフェノールAとを三口フラスコに入れ、有機溶媒を添加して混合した後、オイルバスで120℃に加熱し、2.5時間撹拌し続け、アリル系難燃性プレポリマー2を得た。
【0082】
アリルベンゾオキサジン系化合物の構造式を以下に示す。
【化8】
【0083】
アリル系難燃性プレポリマー3の製造:
100質量部のアリルベンゾオキサジン系化合物と、100質量部のアリルリン含有化合物とを三口フラスコに入れ、有機溶媒を添加して混合した後、オイルバスで120℃に加熱し、2.5時間撹拌し続け、アリル系難燃性プレポリマー3を得た。
【0084】
アリルベンゾオキサジン系化合物の構造式を以下に示す。
【化9】
【0085】
プリプレグの製造:
表1における各成分の配合比率に従って各原料を均一に混合し、エマルジョン液を得て、その後、2116ガラスクロスを用いてエマルジョン液に浸漬し、オーブンで160℃、3minベーキングした後、エマルジョン含有量が55%のプリプレグを得た。
【0086】
【表1】
【0087】
積層板の製造:
10枚のプリプレグを積層し、該積層体の上下両面に1枚の厚さが18μmの電解銅箔をそれぞれ被覆し、温度・圧力がプログラム制御可能な真空プレス機に入れ、30kgf/cm2の圧力の真空状態(真空度<10mBar)で、段階的に加熱して硬化させ、まず180℃で1時間加熱し、次に220℃に昇温して2時間加熱し続け、次に240℃に昇温して2時間加熱し続け、冷却し、厚さ1.0mmの銅箔張積層板を得た。
【0088】
性能試験:
それぞれ以下の試験基準に従って、実施例1~3、比較例1~4で製造された積層板に対して性能試験を行った。
【0089】
ガラス転移温度(Tg)/貯蔵弾性率について、IPC-TM650 2.4.25Dに準拠して試験した。
【0090】
剥離強度について、試験方法は、IPC-TM-650 2.4.8に準拠して試験した。
【0091】
スズめっき耐熱性について、IPC-TM650 2.4.6に準拠して試験した。
【0092】
PCTについて、IPC-TM650 2.6.23に準拠して試験した。
【0093】
曲げ弾性率について、IPC-TM650 2.4.4に準拠して試験した。
【0094】
難燃レベルについて、IPC-TM650 2.3.10に準拠して試験した。
【0095】
吸水率について、IPC-TM650 2.6.2.1に準拠して試験した。
【0096】
誘電特性について、IPC-TM650 2.5.5.9に準拠して試験した。
【0097】
上記試験の試験結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
表2のデータから分かるように、本発明に係るアリル系難燃性プレポリマーを用いた樹脂組成物は、難燃性能が強く、UL94V0レベルに達することができ、耐熱性・耐湿性が高く、高温弾性率の変化率が低く、吸水率が低く、さらに極めて強い誘電特性を備える。
【0100】
表2のデータから分かるように、プレポリマーの組成を変更すると、剥離強度が低下し、吸水率が上昇し、弾性率性能にも影響を与える。配合成分にアリルビスフェノールAを添加すると、粘度を向上させ、剥離強度を向上させることができるが、アリル系難燃性プレポリマーの添加量が多すぎると、高温弾性率性能が著しく低下し、吸水率が上昇し、積層板の総合性能に深刻な影響を与える。本発明に係るアリル系難燃性プレポリマーを使用しないか、又は通常のリン含有樹脂を難燃添加剤として使用すると、吸水率が著しく上昇し、弾性率性能及び誘電特性が著しく低下する。
【0101】
本発明において言及される全ての文献は、各々の文献が個別に参照により組み込まれるのと同じように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の目的及び/又は技術的手段と矛盾しない限り、本発明に係る引用文献は、その全体が、かつ全ての目的で本明細書に組み込まれる。本発明において、引用文献に関する場合、関連する技術的特徴、用語、名詞、フレーズなどの引用文献における定義も併せて組み込まれる。本発明において、引用文献に関する場合、組み込まれる関連する技術的特徴の例、好ましい実施形態も参照として本願に組み込まれてもよいが、本発明を実施できるものに限定される。引用内容が本願の説明と矛盾する場合、本願を基準として、又は本願の説明に従って、適応的に修正することを理解されたい。
【0102】
上記実施形態及び実施例の各技術的特徴を任意に組み合わせることができ、説明を簡潔にするために、上記実施形態及び実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせについて説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、それらの全ては、本明細書の範囲と見なされるべきである。
【0103】
以上の実施例は、本発明のいくつかの実施形態のみを説明しており、本発明の特許範囲を限定するものと理解すべきではない。なお、当業者にとって、本発明の趣旨を離脱しない限り、本発明に対して各種の変形及び改良を行うことができ、これらの変形及び修正も本発明の範囲に属する。また、理解できるように、本発明の上記説明内容を読んだ後、当業者は本発明に対して様々な変更や修正を行うことができ、これらの等価形式も本発明の保護範囲に含まれる。当業者が本発明によって提供される技術的手段に基づいて、論理的な分析、推論、又は限定的な実験により取得した技術的手段は、いずれも本発明に添付される特許請求の範囲内にあることを理解されたい。よって、本発明の特許の保護範囲は、添付する特許請求の範囲に依るものであり、明細書は、特許請求の範囲の内容を説明するためのものである。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100質量部のアリルベンゾオキサジン系化合物及び20~80質量部のアリルリン含有化合物を含み、
前記アリルリン含有化合物の構造式は、
【化1】

であり、
前記アリルベンゾオキサジン系化合物は、下記構造式で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
【化2】

Xは、独立して、-CHR-、-CR-、-SO-又は-O-から選ばれ、
、R、Rは、それぞれ独立して、-H又は-CHから選ばれる、ことを特徴とするアリル系難燃性プレポリマー。
【請求項2】
前記アリルベンゾオキサジン系化合物の構造式は以下に示すものである、ことを特徴とする請求項1に記載のアリル系難燃性プレポリマー。
【化3】
【請求項3】
10~20質量部の無リン型アリル化合物をさらに含み、
前記無リン型アリル化合物は、アリルビスフェノールA、アリルビスフェノールS及びアリルジフェニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のアリル系難燃性プレポリマー。
【請求項4】
前記アリルベンゾオキサジン系化合物と前記アリルリン含有化合物とを混合し、100℃~130℃で1~3時間加熱して得られる、ことを特徴とする請求項1に記載のアリル系難燃性プレポリマー。
【請求項5】
質量部で、組成成分として、請求項1~4のいずれか一項に記載のアリル系難燃性プレポリマー10~30部、ビスマレイミド樹脂50~100部、シアネートエステル樹脂30~80部、機能性樹脂5~30部、及び無機フィラー10~60部を含む、ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
前記ビスマレイミド樹脂は、分子構造中に2つ以上のマレイミド構造が含まれる有機化合物から選ばれ、及び/又は、
前記シアネートエステル樹脂は、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、多官能型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールM型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びジシクロペンタジエンビスフェノール型シアネートエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記機能性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル及び炭化水素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記無機フィラーは、バナジン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ハフニウム、結晶化ガラス、ユークリプタイト、シリカ、石英、マイカ粉、二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク粉、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化モリブデン、硫酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、粘土、及びカオリンなどからなる群より選ばれる少なくとも1種である、 ことを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
1~5質量部の助剤をさらに含み、前記助剤は、硬化促進剤、カップリング剤及び強化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項5に記載の樹脂組成物を含む、ことを特徴とする複合樹脂。
【請求項9】
補強材と、前記補強材に担持された樹脂材料とを含み、前記樹脂材料は、請求項8に記載の複合樹脂である、ことを特徴とするプリプレグ。
【請求項10】
製造原料として、請求項9に記載のプリプレグを含む、ことを特徴とする積層板。
【国際調査報告】