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特表2024-545353スーパーオキシドディスムターゼおよびそのドライアイの予防又は治療用用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】スーパーオキシドディスムターゼおよびそのドライアイの予防又は治療用用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/44 20060101AFI20241128BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20241128BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241128BHJP
   A23K 20/189 20160101ALI20241128BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20241128BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
A61K38/44
A61P27/04
A23L33/135
A23K20/189
C12N9/02 ZNA
C12N1/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538978
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-26
(86)【国際出願番号】 KR2022007003
(87)【国際公開番号】W WO2023128078
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0189048
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0047204
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】519166224
【氏名又は名称】ジェノフォーカス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GENOFOCUS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】524026333
【氏名又は名称】バイオムロジック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パン,ジェイ ク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウィ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イン イク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン ヒュン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C084
【Fターム(参考)】
2B150AB10
2B150DF11
4B018MD85
4B018MD90
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF13
4B065AA15X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA28
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DC24
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA33
(57)【要約】
本発明は、スーパーオキシドディスムターゼおよびドライアイの予防又は治療のためのその用途に関する。より具体的には、本発明は、ドライアイの予防又は治療のための薬学組成物又は治療方法に関する。本発明による組成物および方法は、涙液分泌量の増加、涙膜破壊時間の増加、眼球表面損傷の最小化、結膜内杯細胞の保護、角膜及び結膜内免疫細胞及び炎症性サイトカイン数の減少、角膜、結膜及び涙腺における酸化ストレスの減少、及び角膜上皮細胞死滅の減少のうち1つ以上をもたらすことにより、ドライアイを予防又は治療することに効果的に使用することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase;SOD)を有効成分として含む、ドライアイの治療又は予防するための薬学組成物。
【請求項2】
前記組成物は、涙液分泌量の増加、涙膜破壊時間の増加、眼球表面損傷の最小化、結膜内杯細胞の保護、角膜又は結膜内免疫細胞又は炎症性サイトカイン数の減少、角膜、結膜又は涙腺における酸化ストレスの減少、および角膜上皮細胞死の減少のうち1つ以上を示す、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
前記SODは、単離又は精製された酵素である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記SODは、菌株溶解物(lysate)、菌株培養物、菌株培養濃縮液、菌株培養エキス又はその乾燥形態で含まれる、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記SODは、Mn-SODである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記SODは、脱アミド化されたMn-SODである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項7】
前記SODは、バチルス種菌株に由来する、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項8】
前記SODは、バチルスアミロリクェファシエンスGF423菌株(KCTC 13222 BP)に由来する、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項9】
前記SODは、配列番号2を基準として73番目及び136番目のアミノ酸残基がAspで置換されている、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項10】
前記SODは、配列番号4で示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項11】
前記ドライアイは、シェーグレン症候群又は非シェーグレン症候群ドライアイである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項12】
前記組成物は、経口投与される、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項13】
前記組成物は、SODがコーティング剤でコーティングされている、請求項12に記載の薬学組成物。
【請求項14】
前記コーティング剤は、シェルラック(shellac)を含む、請求項13に記載の薬学組成物。
【請求項15】
スーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase;SOD)を有効成分として含む、ドライアイの治療又は予防するための獣医学的組成物。
【請求項16】
スーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase;SOD)を有効成分として含む、ドライアイの改善又は予防のための食品組成物。
【請求項17】
スーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase;SOD)を有効成分として含む、ドライアイの改善又は予防のための飼料組成物。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか1項に記載の薬学組成物又はスーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase;SOD)を対象に投与するステップを含む、ドライアイの予防又は治療するための方法。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか1項に記載の薬学組成物又はスーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase;SOD)のドライアイの予防又は治療用用途。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか1項に記載の薬学組成物又はスーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase; SOD)のドライアイの予防又は治療用の薬剤を製造するための用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーオキシドディスムターゼおよびドライアイの予防、改善又は治療のためのその用途に関する。より具体的には、本発明は、ドライアイの予防、改善又は治療のためのスーパーオキシドディスムターゼ、組成物又は方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイは、韓国成人の約20%を占めるほど頻度が高くなっている主要な疾患である。最近になってドライアイの概念が変わり、ドライアイは不快感、視力障害、涙液膜の不安定性及び眼球表面の損傷を引き起こし、涙液浸透圧の増加及び眼球表面の炎症を伴う涙液膜と眼球表面の多因子疾患として定義されている。
【0003】
ドライアイ発生の病理学的機序はまだ明確に解明されていないが、涙の高オスモル濃度(hyperosmolarity)による眼球表面の炎症性変化と関連があり、様々な炎症因子がドライアイの病理学的進行過程だけでなく、眼球の不快感にも寄与するという様々な研究が報告されている。シェーグレン症候群患者の涙液と結膜上皮内のIL-1、IL-6、IL-8、TNF-α、IFN-γなどの炎症性サイトカインと、HLA-DR、ICAM-1などの結膜上皮細胞内の免疫活性と癒着物質、そしてTh-1又はTh-17炎症経路に関連するサイトカインの発現が増加し、そのほか、ドライアイでマトリックスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase)の濃度と活性が増加し、眼球表面上皮の細胞自滅が増加する所見を示し、ドライアイは眼球表面の炎症と直接的な関係があることが明らかになった。したがって、ドライアイの治療のためには、涙液の高オスモル濃度による眼球表面の炎症を抑制することが重要である。
【0004】
現在使用されているドライアイの治療は、環境調節、人工涙液剤、ステロイド又はシクロスポリンなどの抗炎症治療、涙液分泌促進剤、涙点閉鎖術、血清点眼薬、治療用コンタクトレンズ、手術などの方法があり、疾患の中等度によって選択されて使用されているが、まだ確実な治療法はないのが現状である。このうち、人工涙液剤と抗炎症点眼薬の混合投与がドライアイの治療に最も広く使われる薬物治療方法である。人工涙液剤は、ドライアイの症状を一時的に緩和させることはできるが、眼球表面の炎症を根本的に治療することはできず、抗炎症製剤の中でステロイドは緑内障、白内障などの深刻な合併症を引き起こす可能性があるという欠点があり、新しいドライアイの治療製剤の開発が必要である。
【0005】
一方、2006年に米国アラガン(Allergan)社は、免疫調節剤であるシクロスポリン(cyclosporine)を利用したドライアイ症治療薬であるレスタシス(Restasis)点眼液を開発した。レスタシス点眼液は、乾性角結膜炎(keratoconjunctivitis sicca)に関連する免疫細胞の生成と活性化を抑制し、涙液分泌量を増加させることが報告された。しかし、前記製剤は抗炎症作用を通じて薬効を示すため、満足できるレベルの効能を得るためには数ヶ月間繰り返し使用する必要があり、代表的な副作用である灼熱感が約17%程度と高く発現する問題がある。
【0006】
したがって、点眼投与による副作用の発現頻度が低く安全でありながら、単に症状を緩和する対症療法剤ではなく、より根本的にドライアイ症を予防又は治療できる製剤の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決することをその目的とする。
本発明の他の目的は、ドライアイの予防、改善又は治療のためのスーパーオキシドディスムターゼを提供することである。
本発明の他の目的は、ドライアイの予防、改善又は治療のための経口投与の効能および安全性を確保したバチルスアミロリクェファシエンス由来のスーパーオキシドディスムターゼを提供することである。
本発明の他の目的は、ドライアイの予防又は治療のために生産するのに便利に細胞外分泌されるバチルス由来又はバチルスアミロリクェファシエンス由来のスーパーオキシドディスムターゼを提供することである。
本発明の他の目的は、ドライアイの予防又は治療のための薬学組成物又は治療方法を提供することである。
本発明の他の目的は、ドライアイの予防又は改善のための食品又は飼料組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、ドライアイの予防、改善又は治療のためのスーパーオキシドディスムターゼを含む経口投与用組成物を提供することである。
本発明の目的は、前記目的に限定されない。本発明の目的は、以下の説明によってより明確になり、特許請求の範囲に記載された手段及びその組み合わせにより実現される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明の代表的な構成は以下の通りである。
本発明の一実施態様によれば、ドライアイの予防、改善又は治療のための改善されたスーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase; SOD)が提供される。
【0009】
本発明の他の実施態様によれば、ドライアイの予防、改善又は治療のための、一般に安全とみなされる(generally regarded as safe, GRAS)細菌、例えば、バチルス由来のスーパーオキシドディスムターゼが提供される。
【0010】
本発明の他の実施態様によれば、ドライアイの予防、改善又は治療のために生産するのに便利に細胞外分泌されるバチルス由来又はバチルスアミロリクェファシエンス由来のスーパーオキシドディスムターゼが提供される。
【0011】
本発明の他の実施態様によれば、経口投与された場合でも、ドライアイの予防、改善又は治療効果を示す改善されたスーパーオキシドディスムターゼが提供される。
【0012】
本発明の他の実施態様によれば、前記スーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase;SOD)を有効成分として含むドライアイの予防又は治療のための薬学組成物が提供される。
【0013】
本発明の他の実施態様によれば、前記スーパーオキシドディスムターゼを有効成分として含むドライアイの改善又は予防のための食品又は飼料組成物が提供される。
【0014】
本発明の他の実施態様によれば、前記スーパーオキシドディスムターゼを有効成分として含むドライアイの予防、改善又は治療のための経口投与用組成物が提供される。
【0015】
本発明の他の実施態様によれば、前記スーパーオキシドディスムターゼ又は前記組成物を対象に投与するステップを含むドライアイの予防、改善又は治療のための方法が提供される。
【0016】
本発明の他の実施態様によれば、前記スーパーオキシドディスムターゼのドライアイの予防又は治療のための用途が提供される。
【0017】
本発明の他の実施態様によれば、前記スーパーオキシドディスムターゼのドライアイの予防又は治療用薬剤を製造するための用途が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるスーパーオキシドディスムターゼ、組成物および方法は、涙液分泌量の増加、涙膜破壊時間の増加、眼球表面損傷の最小化、結膜内杯細胞の保護、角膜及び/又は結膜内免疫細胞及び/又は炎症性サイトカイン数の減少、角膜、結膜及び/又は涙腺における酸化ストレスの減少、及び角膜上皮細胞死滅の減少のいずれか1つ以上の効果により、ドライアイを予防、改善又は治療するために効果的に使用することができる。特に、本発明によるスーパーオキシドディスムターゼは、経口投与された場合でも、ドライアイの予防、改善又は治療に効果的であることが確認された。
【0019】
本発明によるスーパーオキシドディスムターゼは、一般に安全とみなされる(generally regarded as safe,GRAS)細菌であるバチルス又はバチルスアミロリクェファシエンスに由来し、経口投与の効能及び安全性が確保されるだけでなく、培養時に上澄み液から直接回収できるという生産上の利点も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1.1で行われた二重交差組換えのための模式図を示す図である。
図2】発現宿主GFBS220と生産菌株BSBA310でPCRを用いて欠損遺伝子を確認した結果を示す。Wは野生型B.subtilis KCTC 3135を示し、220は発現宿主GFBS220を示し、310はSodA2生産菌株BSBA310を示す。
図3】SodA(バチルスアミロリクェファシエンス(Bacillus amyloliquesfaciens)菌株GF423の培養上澄み液からN末端シーケンシングにより確認されたMn-SOD)と本発明のスーパーオキシドディスムターゼ(SodA2)のアミノ酸配列を比較した図である。
図4】sodA2遺伝子の過剰発現のための発現ベクターを示す。ここで、rrnB T1T2は転写終結因子を示し、rep(pBR322)は大腸菌(E.coli)で機能するpBR322からのレプリコンを示し、rep(pUB110)は枯草菌(B. subtilis)で機能するpUB110からのレプリコンであり、Kanはカナマイシン耐性遺伝子(アミノグリコシドO-ヌクレオチジルトランスフェラーゼ)を示し、BJ27 promoterは枯草菌(B.subtilis)に対する強力なプロモーターを示す。
図5】生産菌株BSBA310を製造するための全体の手順を示す図である。
図6】本発明の実施例で行われた涙液分泌量(tear volume)の測定結果を示す図である。
図7】本発明の実施例で行われた涙膜破壊時間(tear film break-up time,TBUT)の測定結果を示す図である。
図8】本発明の実施例で行われた角膜蛍光染色スコア(corneal fluorescent staining score)の測定結果を示す図である。
図9】本発明の実施例で行われた免疫細胞数の測定結果を示す図である。
図10】本発明の実施例で行われた活性酸素発生の結果を示す図である。
図11】本発明の実施例で行われた結膜内杯細胞(goblet cell)数の測定結果を示す図である。
図12】本発明の実施例で行った細胞死滅測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
後述する本発明の詳細な説明は、本発明を実施できる特定の実施態様について、特定の図面を参照して説明されるが、本発明はこれに限定されず、適切に説明されれば、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その特許請求の範囲に記載されているものと同等のすべての範囲に限定される。本発明の様々な実施態様は互いに異なるが、相互に排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、本明細書に記載されている特定の形状、構造、および特性は、本発明の精神および範囲をはずれることなく、一実施態様から他の実施態様に変更したり、実施態様を組み合わせて実施することができる。本発明を説明する際に提示された用語は、特に明記しない限り、一般にその通常の意味として理解されるべきであり、その用語が定義された発明の態様又は実施態様だけでなく、本明細書で使用された同じ用語にもすべて適用される。本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、単数形で使用される用語は、適切な場合には複数形を含み、その逆もまた同様である。
【0022】
定義
本明細書で使用される「約」という用語は、当該技術分野で当業者に知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。
【0023】
「対象」という用語は、「患者」と互換的に使用され、ドライアイの予防又は治療を必要とする哺乳動物、例えば、霊長類(例えば、ヒト)、ペット(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)、および実験動物(例えば、ラットマウス、モルモットなど)であってもよい。本発明の一実施態様では、対象体はヒトである。
【0024】
「治療」という用語は、予防的及び/又は治療的処置を含む。前記予防的および/又は治療的処置は、当業界で認められているあらゆる種類の処置を含み、例えば、本発明の薬学組成物又はSODを対象に投与することを含む。所望しない又は望ましくない状態(例えば、疾患又は対象における他の所望しない又は望ましくない状態)の臨床症状の前に投与される場合、そのような処置又は治療は、予防的処置又は治療である(例えば、対象における所望しない又は望ましくない状態の進行から対象を保護すること)。一方、所望しない又は望ましくない状態の臨床症状の後に投与される場合、そのような処置又は治療は、存在する所望しない又は望ましくない状態又はその副作用を軽減、緩和又は安定させるなどの治療的処置である。
【0025】
「予防」という用語の意味は当業界に周知である。ドライアイなどの医学的状態に関連して使用される場合、本発明の薬学組成物又はSODを投与することにより、それを投与されていない対象と比較して医学的状態(例えば、不快感、視力障害、涙液膜の不安定性、眼球表面の損傷、涙液浸透圧の上昇、眼球表面の炎症など)の頻度を減少させるか、又は発症および症状を遅延させることを意味する。
【0026】
「投与」という用語は、対象に予防的又は治療的目的(例えば、ドライアイの予防又は治療)を達成するための有効成分を提供することを意味する。
【0027】
ドライアイ
本発明は、少なくとも部分的に、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の投与、特に経口投与がドライアイの予防又は治療に効果的であるという発見に基づいている。したがって、本発明の一実施態様によれば、SODのドライアイの予防、改善又は治療用用途が提供される。
【0028】
「ドライアイ」という用語は、乾性眼又はドライアイ症と互換的に使用され、様々な原因、例えば、涙液の不足、涙液膜の過度の蒸発、涙液の構成成分の不均衡、涙液分泌過程に関与する組織の炎症性変化による眼球表面の損傷により、目の不快感、乾燥感、異物感、かゆみ、痛み、視力低下などの様々な症状を示す眼疾患を指す。
【0029】
また、本発明において、ドライアイは、シェーグレン症候群のような他の基礎疾患によって引き起こされたものであってもよく、眼瞼炎又は眼内の異物の合併症であってもよい。また、本発明において、ドライアイは、感染症の結果であったり、投薬の副作用であったり、毒素、化学物質又は他の物質への露出の結果であってもよい。したがって、本発明におけるドライアイは、シェーグレン症候群によるドライアイ又は非シェーグレン症候群によるドライアイの両方を含んでもよい。
【0030】
本発明によるSODは、涙液分泌量の増加、涙膜破壊時間の増加、眼球表面損傷の最小化、結膜内杯細胞の保護、角膜および/又は結膜内免疫細胞および/又は炎症性サイトカイン数の減少と、角膜、結膜および/又は涙腺における酸化ストレスの減少、および角膜上皮細胞死滅の減少からなる群から選択される1つ以上をもたらすことができる。
【0031】
スーパーオキシドディスムターゼ(Superoxide dismutase;SOD)
本発明の他の実施態様によれば、ドライアイの予防、改善又は治療のための改善されたスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)が提供される。
【0032】
スーパーオキシドディスムターゼ(Superoxide dismutase;SOD)は、スーパーオキシドラジカル(O-)の一般分子酸素(O)と過酸化水素(H)へのディスミューテイション(dismutation)を交互に触媒する酵素であり、SODは活性酸素種を除去して酸化ストレスを減らすのに重要な役割を果たす。SODは原核細胞と真核細胞に広く分布しており、様々なタイプの金属中心(銅/亜鉛、ニッケル、マンガン、および鉄)に応じて4つのクラスに分類される。マンガン含有SOD[Mn-SOD]は、様々な細菌、真核細胞の葉緑体、ミトコンドリア、および細胞質に広く存在する。「SOD」という用語は、スーパーオキシドディスムターゼ活性を有するポリペプチドと互換的に使用することができる。
【0033】
一実施態様では、前記SODは、マンガン結合型(Mn-SOD)であってもよい。具体的には、前記SODは、脱アミド化されたMn-SODであってもよい。より具体的には、前記SODは、配列番号2を基準として73番目及び136番目のアミノ酸残基がAspで置換されたものであってもよい。さらに具体的には、前記SODは、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むか、又はこれにより構成されてもよい。
【0034】
本発明のSOD又はSOD活性を有するポリペプチドは、前記アミノ酸配列に対して実質的な同一性を示すアミノ酸配列も含むものと解釈される。前記実質的同一性とは、当業界で通常利用されるアルゴリズムを用いて整列された配列を解析した場合、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を意味する。
【0035】
他の実施態様では、SODは、SOD酵素活性を有する修飾(modified又はengineered)ポリペプチドであり、様々な側面(イン・ビボ、イン・ビトロ、又はエクス・ビボでの安定性、均一性、および/又は形態的変化)に影響を及ぼすか、又は及ぼさない1つ以上の変異、例えば、1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、又は置換を含んでもよい。さらに、前記ポリペプチドは、精製、検出、又は安定性を高めるための異種物質(例えば、HISタグ、Haタグ、mycタグを含む当業界で知られているタグ、GFCおよび/又は抗体のFcドメイン)をさらに含んでもよい。
【0036】
一実施態様では、SODは、天然又は組換え微生物に由来してもよく、様々な供給源から単離又は精製されるプロセスを経て製造された酵素であってもよい。
【0037】
一実施態様では、SODは、天然又は組換え微生物に由来してもよい。例えば、SODは、細菌に由来してもよい。好ましくは、SODは、薬物又は食品に使用するために一般に安全とみなされる(generally regarded as safe,GRAS)細菌から供給されてもよい。具体的には、SODは、バチルス種菌株に由来してもよい。より具体的には、前記SODは、バチルスアミロリクェファシエンス菌株に由来するものであってもよい。例えば、前記SODは、バチルスアミロリクェファシエンスGF423菌株(KCTC 13222 BP)に由来するものであってもよい。GF423菌株(KCTC 13222 BP)は、2017年3月6日付で韓国生命工学研究院に寄託されたものである。また、前記SODは、図4に示す発現ベクターを含む組換え菌株に由来するものであってもよい。また、前記SODは、図5に示す方法を含む方法によって製造された組換え菌株に由来するものであってもよい。前記組換え菌株は、配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、下記遺伝子が欠失したバチルス種菌株であってもよい:AprE、NprE、Bpr、Epr、NprB、Vpr、Mpr、IspA、SrfAC、spoIIAc、EpsEおよびXpf。前記菌株の製造のための詳細なプロセスは、実施例1を参照する。
【0038】
前記菌株由来のSODは、細胞外に分泌される酵素であるため、前記菌株を利用してSODを製造する場合、高価な精製過程(例えば、カラム精製)を経ることなく、ヒトへの安全性が確保されたSODを大量に生産することができるので、効率的な生産が可能である。
【0039】
一実施態様では、SODは、天然又は組換え宿主を含む様々な供給源から単離又は精製してもよい。例えば、ドライアイを予防又は治療する活性を有するSODは、バチルスアミロリクェファシエンス菌株GF423の培養上澄み液から抽出することができる。簡単に言えば、まず、バチルスアミロリクェファシエンス菌株GF423を様々なタイプの培地で培養して培養液を得ることができる。例えば、複合培地(pH 6.0~7.0)を使用して、前記菌株を約25℃~約42℃で約1日~約4日間成長させる。バチルスアミロリクェファシエンス菌株GF423を培養するための他の好適な培地には、LB(Luria-Bertani)培地、ISP(International Streptomyces Project)培地、NA(nutrient agar)培地、BHI(brain heart infusion agar)培地、SDA(sabouraud dextrose agar)培地、PDA(potato dextrose agar)培地、NB(nutrient broth)培地などが含まれる。好ましくは、LB培地、ISP培地、BHI培地、SDA培地、又はNB培地を用いてもよい。さらに、SODは、PubMed又はBRENDA(ワールドワイドウェブのbrenda-enzymes.org)などのデータベースに提供される情報を使用して、他の天然又は組換え宿主から供給することができる。
【0040】
一実施態様では、前記SODは、単離又は精製された酵素であってもよい。このとき、単離又は精製されたSOD又はその生物学的に活性な部分には、それが由来する細胞又は組織供給源からの細胞物質又は他の汚染タンパク質が実質的に含まない。例えば、精製物は、菌株培養物から限外濾過(Ultrafiltration)、硫酸アンモニウム処理、カラム精製、濃縮などによって純粋に分離されたもの、又は限外濾過、濃縮などによって得られた培養濃縮液であってもよい。「細胞物質を実質的に含まない」という文言は、タンパク質が単離されるか、又はタンパク質が組換え的に生産される細胞の細胞成分からそのようなタンパク質が分離されたタンパク質の製造物を含む。一実施態様では、「細胞物質を実質的に含まない」という文言は、所望しないタンパク質が乾燥重量に基づいて約30%未満、好ましくは約20%未満、より好ましくは約10%未満、そして最も好ましくは約5%未満のタンパク質の製造物を含む。
【0041】
他の実施態様では、SODは、以下の精製方法で精製することが望ましい場合があるが、これに限定されない。バチルスアミロリクェファシエンス菌株GF423を培養して得られた培養液を遠心分離して培養上澄み液を収集する。上澄み液分画を固相抽出で前処理し、次いでクロマトグラフィーで分離して精製する。このとき、SODは様々な方式のクロマトグラフィーを使用して精製してもよい。好ましくは、疎水性相互作用クロマトグラフィーが使用される。
【0042】
他の実施態様では、前記SODは、菌株溶解物(lysate)、菌株培養物、菌株培養濃縮液、菌株培養抽出物又はその乾燥形態で含まれてもよい。このとき、「菌株溶解物」とは、菌株を培養して機械的又は化学的に破砕して得られたものを意味し、これから抽出、希釈、濃縮、精製などの追加行程を介したものをすべて含んでもよい。「菌株培養物」とは、菌株を培養して得られた培養液そのもの又はその上澄み液を意味する。「菌株培養濃縮液」とは、菌株培養物から限外濾過、硫酸アンモニウム処理、カラム精製、濃縮等により純粋に分離されたもの、又は限外濾過、濃縮等により得られた培養濃縮液を指す。「菌株培養抽出物」とは、前記培養液又はその濃縮液から抽出したものを意味し、抽出液、抽出液の希釈液又は濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はその粗精製物又は精製物、これを分画した分画物を含んでもよい。前記乾燥形態は、凍結乾燥形態を含んでもよい。
【0043】
一実施態様では、本発明のSODは、ドライアイの予防又は治療を必要とする個体に経口投与され、涙液分泌量の増加、涙膜破壊時間の増加、眼球表面損傷の最小化、結膜内杯細胞の保護、角膜および/又は結膜内免疫細胞および/又は炎症性サイトカイン数の減少と、角膜、結膜および/又は涙腺における酸化ストレスの減少、および角膜上皮細胞死滅の減少のうち1つ以上の効果を示した。
【0044】
薬学組成物
本発明の一実施態様によれば、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)を有効成分として含むドライアイの治療又は予防するための薬学組成物が提供される。
【0045】
一実施態様では、本発明によるSODは、薬学的に許容される担体、賦形剤および/又は希釈剤と組み合わせて、ドライアイの予防又は治療のための薬学組成物を形成することができる。本発明の薬学組成物は、ヒト以外の動物に適用される場合、獣医学的組成物という用語と互換的に使用してもよい。
【0046】
本発明の薬学又は獣医学的組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤および希釈剤からなる群から選択される1つ以上をさらに含んでもよい。前記薬学的に許容される担体、賦形剤および/又は希釈剤は、当業界で通常使用されるものであってもよい。担体、賦形剤又は希釈剤としては、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシ安息香酸塩、プロピルヒドロキシ安息香酸塩、プロピルヒドロキシ安息香酸塩、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び二酸化ケイ素等の鉱物油等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
製剤化する場合には、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの添加剤を使用して調剤してもよい。前記製剤化のための添加剤は、薬剤分野で通常使用されるものから適切なものを選択してもよい。
【0048】
また、本発明の薬学又は獣医学的組成物は、使用方法に応じて、好ましい形態で剤形化することができ、特に哺乳動物に投与された後に活性成分の迅速、持続又は遅延放出を提供するために、当業界で知られている方法を採用して剤形化することができる。そのような剤形の具体的な例としては、錠剤、丸剤、酸剤、顆粒剤、シロップ剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、注射液、硬膏剤(Plasters)、ローション剤、リニメント剤、リモナーデ剤、エアロゾル剤、エキス剤(Extracts)、エリキシル剤、軟膏剤、流動エキス剤、浸剤、クリーム剤、軟質又は硬質ゼラチンカプセル、パッチ剤などが挙げられる。
【0049】
さらに、本発明の薬学又は獣医学的組成物は、当該技術分野で公知の適切な方法を用いて、又はレミントンの文献(Remington’s Pharmaceutical Science(最新版)、Mack Publishing Company, Easton PA)に開示されている方法を用いて好適に剤形化することができる。
【0050】
一実施態様では、前記SODは、経口又は非経口で投与してもよい。経口投与の場合、SODは、胃酸からの保護のためにシェラック(shellac)でコーティングしてもよいが、コーティング剤はこれに限定されない。本発明で使用するのに適したコーティング剤の例には、シェラック、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ゼイン(zein)、Eudragit、およびそれらの組み合わせが含まれる。SODがコーティングされる場合、SODは溶液中でコーティングされてもよい。具体的には、精製された溶液とシェラック含有溶液を混合し、次いで凍結乾燥される。この凍結乾燥されたサンプルは粉末になり、使用するまで約4℃で保存することができる。経口投与用の固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、これらの固形製剤は、複合組成物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混合して調製してもよい。また、単純な賦形剤に加えて、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用してもよい。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが含まれ、一般に使用される単純な希釈剤である水、液体パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを使用してもよい。
【0051】
非経口投与の場合、舌下投与、硝子体内投与を含む眼内投与、鼻腔内噴霧、皮膚外用、パッチ剤、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射又は胸腔内注射の注入方法を選択してもよい。
【0052】
また、本発明の薬学又は獣医学的組成物は、薬学的又は獣医学的に有効な量で投与される。「薬学的に有効な量」又は「獣医学的に有効な量」という用語は、医学的又は獣医学的治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者又は動物の体重、性別、年齢、健康状態、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路および排出率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要因、およびその他の医学分野でよく知られている要因に基づいて決定することができる。
【0053】
本発明の薬学又は獣医学的組成物は、個別の治療剤として投与しても、他の治療剤と併用して投与してもよく、順次又は同時に投与してもよい。また、前記薬学組成物は、必要に応じて単回又は複数回投与してもよい。前記要因をすべて考慮し、副作用なしに最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、このような量は、当業者によって容易に決定することができる。
【0054】
予防又は治療方法
本発明の他の実施態様によれば、本発明によるSOD又は薬学組成物を、ドライアイを有するか、又はその危険性のある対象に投与するステップを含む、ドライアイの治療又は予防するための方法が提供される。
【0055】
また、スーパーオキシドディスムターゼを対象に投与するステップを含む、ドライアイの治療又は予防するための方法が提供される。前記SOD、ドライアイ、治療又は予防に関する内容は、薬学組成物に関して上述したとおりである。
【0056】
「投与」という用語は、目的とする作用を実行することによって治療を可能にする任意の様々な投与を含む。前記投与は、経口投与を含んでもよい。経口投与については、前記薬学組成物に関する説明を参照する。投与経路は、経口、非経口、吸入、局所又は局所投与(例えば、病変内投与)であってもよい。例えば、非経口投与は、静脈内、皮下、腹腔内、動脈内、眼内投与を含んでもよいが、これらに限定されない。経口投与の場合、前述のように、SODは、シェラックなどのコーティング剤でコーティングされた形態で投与してもよい。
【0057】
本発明によるSODの有効量又は効果的な無毒性量は、通常の実験によって決定することができる。例えば、本発明のSODの治療活性量は、疾患の病期、疾患の重症度、対象体の年齢、性別、医学的合併症、および体重などの要因に応じて変化する可能性がある。本発明のSODの投与量および投与療法は、最適な治療反応を提供するように調整してもよい。例えば、毎日、毎週、2週ごと、3週ごと、4週ごとなど、いくつかの分割用量を投与してもよく、又は、治療状況の緊急性に応じて、用量を比例して減少又は増加させてもよい。
【0058】
一実施態様では、前記方法は、ドライアイを治療又は予防するための1つ以上の追加の製剤を投与することを含んでもよい。前記1つ以上の追加の製剤は、前記SOD又は薬学組成物と同時に、順次又は逆の順序で投与してもよい。また、個々の成分は、同じ経路又は異なる経路で対象体に投与してもよい。
【0059】
食品組成物
本発明の他の実施態様によれば、スーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase;SOD)を有効成分として含むドライアイの改善又は予防のための食品組成物が提供される。このような食品組成物は、医療用又はニュートラシューティカル(nutraceutical)食品組成物を含む。
【0060】
「医療用食品」又は「ニュートラシューティカル食品」という用語は、人体に有益な機能をする可能性のある原料又は成分で製造された食品で、正常な機能を維持したり、人体の生理学的機能を活性化させることで健康を維持又は改善させる食品として食品医薬品安全処により規定されているが、これに限定されず、任意の通常の健康食品をその意味から除外しない。
【0061】
また、前記食品には、各種食品類、食品添加物、飲料(例えば、機能性飲料、天然果汁及び野菜飲料)、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康機能食品、その他の機能性食品などが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
前記食品は、当業界に知られている通常の方法で製造してもよい。例えば、前記医療用食品、ニュートラシューティカル食品又は健康機能食品は、ドライアイを予防又は改善する目的で、前記SODに加え、担体、希釈剤、賦形剤及び添加剤の1種以上をさらに含んで、錠剤、丸剤、酸剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤及び液剤剤形からなる群から選択される1つに剤形化してもよい。前記担体、賦形剤、希釈剤及び添加剤の具体的な例は当業界によく知られており、当業者はその剤形に応じて適切な成分を組み合わせて製造してもよい。
【0063】
前述した剤形中の有効成分としての本発明によるスーパーオキシドディスムターゼの含量は、使用形態及び目的、患者の状態、症状の種類及び重症度等によって適宜調整してもよく、固形分重量基準で約0.001~約99.9重量%、好ましくは約0.01~約50重量%であってもよいが、これに限定されない。
【0064】
本発明の食品の投与量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態及び疾患の程度によって異なり、医師又は薬剤師の判断により、一定時間間隔で1日1回ないし数回に分けて投与してもよい。例えば、有効成分含量に基づいて1日の投与量が10~1000mg/kgであってもよい。前記投与量は平均的な場合を例示したものであり、個人差によってその投与量が高くなったり低くなったりすることがある。本発明の健康機能食品の1日の投与量が前記投与量未満であれば、有意義な効果を得ることができない場合があり、それ以上の場合、非経済的であるだけでなく、通常の投与量の範囲を超えるため、望ましくない副作用が現れる可能性がある。
【0065】
飼料組成物
本発明の他の実施態様によれば、本発明によるSODを有効成分として含むドライアイの予防又は改善のための飼料組成物が提供される。本発明において、食品組成物は、飼料組成物を含んでもよい。このような飼料組成物は、当業界で通常利用される任意の剤形で製造してもよい。例えば、本発明の飼料組成物は、アミノ酸、無機塩類、ビタミン、抗生物質、抗菌物質、抗酸化物質、抗真菌酵素、他の生菌形態の微生物製剤などの補助剤成分;穀物、例えば、粉砕又は破砕された小麦、オート麦、大麦、トウモロコシおよび米;植物性タンパク質飼料、例えば、アブラナ、大豆およびヒマワリを主成分とするもの;動物性タンパク質飼料、例えば、血粉、肉粉、骨粉、魚粉;糖分及び乳製品、例えば、各種粉ミルク及びホエイパウダからなる乾燥成分;脂質、例えば、加熱により任意に液化された動物性脂肪及び植物性脂肪などの主成分;栄養補助剤、消化吸収改善剤、成長促進剤、疾病予防剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0066】
本発明の飼料組成物は、粉末又は液体状態の製剤形態であってもよく、飼料添加用賦形剤(例えば、炭酸カルシウム、末粉、ゼオライト、玉粉又は米糠など)を含んでもよい。
【0067】
ポリヌクレオチド、発現ベクターおよび宿主細胞
本発明の他の実施態様によれば、前記スーパーオキシドディスムターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。具体的には、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるポリペプチドをコードする核酸が提供される。
【0068】
本発明の他の実施態様によれば、前記核酸を含む発現ベクターが提供される。具体的には、前記ベクターは、図4に示す発現ベクターであってもよい。
【0069】
本発明の他の実施態様によれば、前記核酸又は前記発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。具体的には、前記宿主細胞は、細菌細胞である。より具体的には、前記宿主細胞は、バチルス種菌株である。
【0070】
本発明の他の実施態様によれば、配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、下記遺伝子が欠失したバチルス種菌株が提供される:AprE、NprE、Bpr、Epr、NprB、Vpr、Mpr、IspA、SrfAC、spoIIAc、EpsEおよびXpf。前記菌株の製造のための詳細なプロセスは、下記実施例1を参照する。
【0071】
以下、本発明を下記実施例によりさらに詳細に説明する。下記実施例は、本発明の理解を助けるために提示されたものであり、いかなる方法でもその範囲を制限することを意図するものではなく、制限するものと解釈されるべきではない。
【0072】
実施例1.スーパーオキシドディスムターゼ(SodA2)を発現する組換え菌株の調製
実施例1.1.発現宿主GFBS220の作製
発現宿主GFBS220はBacillus subtilis KCTC 3135を用いて製造した。B.subtilis KCTC 3135は、韓国生命工学研究院の生物資源センター(KCTC)から分譲された。後工程を容易にするために、B.subtilis KCTC 3135のゲノムから下記表1に示す遺伝子を除去した。
【0073】
【表1】
【0074】
遺伝子の除去は、ゲノム上で二重交差組換え(double cross-over recombination)を用いて行った(図1)。具体的には、温度感受性複製起点を有するベクターpUCori-ts-cmに、操作対象遺伝子の両側のDNA塩基配列と相同性を有するDNA断片(up frag.およびdown frag.)をクローニングした。クローニングに使用したPCR条件およびプライマーをそれぞれ表2および表3に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
このように調製されたベクターを枯草菌(B.subtilis)細胞に導入した後、37℃(非複製温度)でクロラムフェニコール含有培地を用いて形質転換体(単一交差相同組換え)を選別した。選別された形質転換体を、抗生物質を含まないLB培地で30℃(複製許容温度)で培養(第2交差)した後、抗生物質を含まないLB寒天培地で39℃で培養した。生成されたコロニーを対象に、クロラムフェニコール感受性のある菌株(plasmid curing)を選別した。選別されたコロニーを対象にPCRを行い、二重交差組換え体(double cross-over recombinant)を確保し、2次純分離を行い、最終組換え体を選別し、GFBS220と命名した。
【0078】
GFBS220の欠損遺伝子部位は、表4に示したプライマーとPCRを用いて増幅した後、アガロースゲル電気泳動を利用して確認した。発現宿主GFBS220でPCRを用いて欠損遺伝子を確認した結果を図2に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
実施例1.2.発現ベクターpBE1-sodA2の作製
バチルスアミロリクェファシエンス(Bacillus amyloliquesfaciens)菌株GF423の培養上澄み液からN末端シーケンシング(文献[Kang et al., 2018])によりMn-SODを確認した。前記GF423菌株は、韓国生命工学研究院にそれぞれ2017年3月6日付で寄託されたものである(受託番号KCTC 13222 BP)。前記Mn-SODの遺伝子は、細菌SODの命名法に従ってsodAと命名され、そのアミノ酸配列は図3及び配列番号2を参照する(そのヌクレオチド配列は配列番号1を参照する)。酵素製造物のLC-UV-MS/MSペプチドマッピングは100%のアミノ酸配列カバレッジを生成したが、Asn73およびAsn136残基でそれぞれ73%および17%の存在比で脱アミド化が観察された。したがって、精製された酵素の均質性を改善するために、両方のAsn残基をAspで置換した。SodA2と命名されたこの変異体sodAのアミノ酸配列は、図3および配列番号4(そのヌクレオチド配列は配列番号3を参照する)を参照する。
【0081】
4つのプライマー(表5)とテンプレートであるバチルスアミロリクェファシエンスGF423ゲノムを用いる重複伸長PCRを用いてsodA2遺伝子を増幅した。AsnのAspへの置換のためのヌクレオチドには下線が引かれている。
【0082】
【表5】
【0083】
sodA2遺伝子を含む増幅されたDNA断片とNdeIおよびHindIII処理により線形化されたプラスミドpBE1をSLIC法(文献[Jeong et al. 2012])によりインビトロでアセンブルし、次いで得られた作製物をE. coli C2984H内に形質転換した。制限酵素マッピングで正確なクローンをスクリーニングし、ヌクレオチドシーケンシングで確認した。このように生成された発現ベクターpBE1-sodA2を図4に示す。
【0084】
実施例1.3.生産菌株BSBA310の作製
発現ベクターpBE1-sodA2をB.subtilis GFBS220内に形質転換した。形質転換体から菌株を選択し、LB2培地で2回の単一コロニー分離手順により純粋なクローンを確立した。選択した菌株をBSBA310と命名し、グリセロールストック法で-80℃で保存した。この生産菌株BSBA310からPCRを用いて欠損遺伝子を確認した結果を図2に示す。また、生産菌株BSBA310を製造するための全手順を図5にまとめた。
【0085】
実施例2.生産菌株BSBA310からのスーパーオキシドディスムターゼ(SodA2)の分離および精製
実施例2.1.生産菌株BSBA310の培養
実施例1で得られた生産菌株BSBA310の培養のために、LB寒天培地(LB(Luria-Bertani)寒天;トリプトファン10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl 10g/L、寒天 15g/L)で形成された単一コロニーをLB培地30mlに接種し、37℃で12時間培養した。この種培養液(seed culture)を再び1mM硫酸マンガン(MnSO4)を含むLB培地3Lに接種し、37℃で20時間培養した。
【0086】
実施例2.2.SodA2の分離および精製
実施例2.1で得られた細胞培養液を4℃、3,578×gで20分間遠心分離して上澄み液を取り、超微細濾過(Ultrafiltration、以下UF、MWCO 10,000)を用いて10倍濃縮した。濃縮された細胞培養液1L当たり390gの硫酸アンモニウムを加え、20分間攪拌し、遠心分離して上澄み液を取った。採取した上澄み液を、フェニルセファロースHPカラムを用いて精製を行った。精製過程は、2M硫酸アンモニウム濃度の50mMリン酸カリウムpH 7.0を使用してカラムを平衡化し、その後、硫酸アンモニウムを加えて得られた上澄み液をカラムに通過させ、カラムに付着したSodA2を1.6M硫酸アンモニウムを含む50mMリン酸カリウムpH 7.0を使用して回収した。カラムを通して精製した精製液を集め、超微細濾過を通じて精製過程で形成された高濃度塩を除去し、濃縮を行った。濃縮液を除菌フィルターで濾過した後、凍結乾燥した。SodA2の活性はSOD分析キット(Cayman Chemical, Michigan, USA)を用いて分析した。SOD活性1単位(unit)はスーパーオキシドラジカルを50%抑制する酵素の量として定義される。乾燥されたSodA2酵素の活性は1000~1200 U/mgであった。
【0087】
実施例3.投与物質の製造
シェラック(Shellac)(EXCELACS co., LTD., Bangkok)を3%エタノール濃度になるように溶かし、0.2um無菌フィルターを使用して除菌した。エタノールで溶かしたシェラックをPBSで希釈した。凍結乾燥したSodA2を20mg/mlに溶解し、シェラック溶液とSOD溶液を1:1で混合した後、凍結乾燥させた。凍結乾燥されたシェラックコーティングSodA2にデキストリンを使用して1:9~12(シェラックコーティングSodA2:デキストリン)の割合で混合し、動物実験に使用した物質を調製した。最終物質のSOD活性は90~110U/mgになるようにした。
【0088】
実施例4.ドライアイの治療又は予防効果の確認
本実施例では、実験的ドライアイ(Experimental dry eye,EDE)を誘発したC57BL/6マウスモデルにおいて、2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kg濃度の経口用SodA2が涙液分泌量、涙膜破壊時間、眼球表面損傷、結膜杯細胞、眼球表面の炎症性サイトカイン、CD4+ T免疫細胞、酸化ストレス及び活性酸素種、角膜上皮細胞死滅(apoptosis)に及ぼす効果について分析しようとした。
【0089】
実施例4.1.実験的ドライアイ(EDE)の動物モデルの調製
実験的ドライアイを誘発させるために、7週齢から8週齢のC57BL/6マウス(入手先:DAMOOL SCIENCE)を1日18時間換気装置にさらした状態で、1日3回0.5mg/0.2mlのスコポラミン塩酸塩を皮下注射した。湿度は30%、温度は25℃に維持した。投与する経口薬物の濃度により、C57BL/6マウスを表6のように7群に分類した。
【0090】
【表6】
【0091】
実施例4.2.薬物の投与および試験手順
sss実験用マウスに実験的ドライアイを誘発した後、治療群に実施例3で調製した薬物を1回当たり2μLずつ1日1回経口投与した(毎日13時30分に投与)。全てのマウスの両眼において、ベースライン、5日目及び10日目に涙液分泌量、涙膜破壊時間を測定し、角膜蛍光色素染色スコアを調査した。その後、マウスを犠牲にし、組織分析を行った。各群で動物は6匹とした。
【0092】
涙液分泌量(tear volume)の測定
涙液分泌量は、マウスの外眼角側の結膜嚢にフェノールレッドを含浸させた綿糸(cotton thread)を20秒間接触させ、SMZ顕微鏡検査を利用してその長さを測定した後、決められた式に代入して体積に変換した(文献[Villareal AL, Farley W, Pflugfelder SC. Effect of topical ophthalmic epinastine and olopatadine on tear volume in mice. Eye Contact Lens.2006; 32:272-6]参照)。
【0093】
涙膜破壊時間(tear film break-up time)の測定
ドライアイにおいて最も重要な臨床因子として知られている涙膜安定性(tear film stability)を評価するために涙膜破壊時間を測定した。マウスの下側の結膜嚢に1%蛍光染色液(fluorescein)1μlを点眼した後、3回程度のまばたきをさせた後、穏やかに開いた後、コバルトブルーフィルター(cobalt blue filter)が装着された細隙灯顕微鏡(slit lamp)を通して染色された涙液膜に最初の欠損が生じるまでの時間(秒)を測定した。これを3回繰り返して平均値を求めた。
【0094】
角膜蛍光染色スコア(corneal fluorescent staining score)の測定
1%蛍光染色液1μlを点眼後、生理食塩水で洗浄した後、マウスの角膜を細隙灯顕微鏡で観察し、上皮損傷の程度(蛍光染色が起こる程度)をスコア化した。このため、角膜を4つの区域に分けた後、各等分を表7のように0~4点まで評価した後、合計した(合計0~16点)(文献[Poly A, Brignole-Baudouin F, Labbe A, Liang H, Warnet JM, Baudouin C: New tools for the evaluation of toxic ocular surface changes in the rat. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2007; 48:5473-83]参照)。
【0095】
【表7】
【0096】
ELISAによるマロンジアルデヒド(MDA)の測定
組織の分析に必要な両眼である各群当たり3匹の6眼から角膜、結膜および涙腺を切除した。PBSでサンプルを均質化した後、溶解物を4℃で10分間10000 x gで遠心分離した。そして、上澄み液を採取した後、ブラッドフォード(Bradford)検査法でタンパク質の総量を測定した。MDAは、製造商品のマニュアルに従い、捕捉および検出抗体を含むELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)キット(メーカー:Quantikine, R&D Systems, Minneapolis, MN)を使用して検出した。ELISAにより角膜、結膜、涙腺のMDA数値をそれぞれ測定し、記録した。
【0097】
ルミネックスマルチプレックス染色ビーズ検査(Luminex multiplex immunobead assay)による炎症性サイトカインの測定
各群当たり3匹の6眼から結膜組織を切除採取し、これを、プロテアーゼ阻害剤を含む溶解緩衝液に30分間浸漬した後、遠心分離し、-80℃で保管した。その後、ルミネックスマルチプレックス染色ビーズ検査を用いて角膜および結膜内のIFN-γ、IL-1β、TNF-αの濃度を分析した。
【0098】
フローサイトメトリー(flow cytometry)による免疫細胞数及び活性酸素種(DCF-DA)の測定
角膜と結膜、涙腺を切除し、ハサミで裂いた後、0.5 mg/mlのコラゲナーゼタイプD(メーカー:Roche Applied Science, Indianapolis, IN, USA)で37℃で60分間振盪した。組織を粉砕した後、セルストレーナー(cell strainer)に通した後、遠心分離を行った。フルオレセイン結合抗CD4抗体とフィコエリトリン結合抗IFN-γ抗体を用いてフローサイトメトリーを行い、CD4+IFN-γ+T細胞を計算し、CM-H2DCFDAキット(メーカー:Thermo fisher scientific, Waltham, MA, USA)を用いてDCF-DA細胞の数を計算した。
【0099】
組織学的分析(histology)
各群当たり1匹、1眼から目と付属組織を切除し、4%パラホルムアルデヒドに固定し、パラフィンに包埋した後、組織の断面2切片についてPAS染色を行った。各断面から顕微鏡と画像解析ソフトウェアを利用して結膜内杯細胞の密度を計算した。
【0100】
免疫蛍光染色(immunofluorescent staining)
各群当たり1匹、1眼から目と付属組織を切除し、4%パラホルムアルデヒドに固定し、パラフィンに包埋した後、組織の断面2切片についてTUNEL染色を行った。各断面で顕微鏡(Leica TCS SP5 AOBS laser scanning confocal microscope (Zeiss GmbH))と画像分析ソフトウェア(NIS Elements version 4.1; Nikon, Melville, NY, USA)を用いて結膜の細胞死滅の程度を確認した。
【0101】
統計的分析
SPSS 22.0を分析に利用し、連続型変数の結果値は平均±S.D.で表記した。正規性はShapiro-wilk検定で確認した。群間の比較は、一元分散分析(ANOVA)後、FisherのL.S.D.事後検定で事後分析した。P-値が0.05未満の場合、統計的に有意であるとみなした。
【0102】
実施例4.3.結果
涙液分泌量
涙液分泌量は、薬物投与前のUT群で0.046±0.004μL、EDE群で0.023±0.004μL、ビヒクル群で0.024±0.003μL、0.05% CsA(シクロスポリンA)群で0.023±0.003μL、2.5mg/kg経口用SodA2群で0.024±0.003μL、5mg/kg経口用SodA2群で0.022±0.004μL、10mg/kg経口用SodA2群で0.023±0.004μLであった。
【0103】
投与5日目には、UT群で0.045±0.006μL、EDE群で0.02±0.003μL、ビヒクル群で0.021±0.003μL、0.05% CsA群で0.026±0.004μL、2.5mg/kg経口用SodA2群で0.026±0.005μL、5mg/kg経口用SodA2群で0.026±0.005μL、10mg/kg経口用SodA2群で0.026±0.005μLであった。
【0104】
投与10日目には、UT群で0.043±0.005μL、EDE群で0.017±0.003μL、ビヒクル群で0.018±0.003μL、0.05% CsA群で0.027±0.005μL、2.5mg/kg経口用SodA2群で0.027±0.005μL、5mg/kg経口用SodA2群で0.03±0.005μL、10mg/kg経口用SodA2群で0.028±0.004μLであった。
【0105】
投与5日目と10日目に、0.05% CsA、2.5mg/kg経口用SodA2、5mg/kg経口用SodA2、10mg/kg経口用SodA2群のすべてにおいてEDEおよびビヒクル群に比べて涙液分泌量の有意な増加が見られ、特に5mg/kg経口用SodA2群では0.05% CsA群よりも有意な増加を示した。このような涙液分泌量の測定結果を図6に示す。
【0106】
涙膜破壊時間
涙膜破壊時間は、薬物投与前のUT群で2±0.45秒、EDE群で1.43±0.19秒、ビヒクル群で1.43±0.23秒、0.05% CsA群で1.46±0.13秒、2.5mg/kg経口用SodA2群で1.44±0.15秒、5mg/kg経口用SodA2群で1.42±0.16秒、10mg/kg経口用SodA2群で1.41±0.25秒であった。
【0107】
投与5日目には、UT群で2.21±0.4秒、EDE群で1.02±0.2秒、ビヒクル群で1.06±0.23秒、0.05% CsA群で1.3±0.2秒、2.5mg/kg経口用SodA2群で1.23±0.2秒、5mg/kg経口用SodA2群で1.31±0.3秒、10mg/kg経口用SodA2群で1.28±0.3秒であった。
【0108】
投与10日目には、UT群で2.1±0.4秒、EDE群で0.91±0.2秒、ビヒクル群で0.93±0.2秒、0.05% CsA群で1.39±0.2秒、2.5mg/kg経口用SodA2群で1.21±0.3秒、5mg/kg経口用SodA2群で1.28±0.3秒、10mg/kg経口用SodA2群で1.3±0.3秒であった。
【0109】
投与5日目と10日目に、0.05% CsA、2.5mg/kg経口用SodA2、5mg/kg経口用SodA2、10mg/kg経口用SodA2群のすべてにおいてEDEおよびビヒクル群に比べて涙膜破壊時間の有意な増加が見られ、特に5mg/kg経口用SodA2と10mg/kg経口用SodA2群は0.05% CsA群と同様に涙膜破壊時間を増加させた。このような涙膜破壊時間の測定結果を図7に示す。
【0110】
角膜蛍光染色スコア
角膜蛍光色素染色スコアは、薬物投与前のUT群で1.8±1.1点、EDE群で9.5±1.8点、ビヒクル群で9.1±2点、0.05% CsA群で9.1±2点、2.5mg/kg経口用SodA2群で9.2±1.7点、5mg/kg経口用SodA2群で9.4±1.7点、10mg/kg経口用SodA2群で9.3±1.7点であった。
【0111】
投与5日目には、UT群で2.9±1.4点、EDE群で12.1±2.1点、ビヒクル群で11.7±2.2点、0.05% CsA群で10.4±2.5点、2.5mg/kg経口用SodA2群で10.4±1.9点、5mg/kg経口用SodA2群で9.9±2.5点、10mg/kg経口用SodA2群で10.1±2.9点であった。
【0112】
投与10日目には、UT群で3.6±1.4点、EDE群で14.1±1.8点、ビヒクル群で13.5±1.6点、0.05% CsA群で8.9±2点、2.5mg/kg経口用SodA2群で8.8±2点、5mg/kg経口用SodA2群で7.8±1.9点、10mg/kg経口用SodA2群で8.2±1.9点であった。
【0113】
投与5日目と10日目に、0.05% CsA、2.5mg/kg経口用SodA2、5mg/kg経口用SodA2、10mg/kg経口用SodA2群のすべてにおいてEDEおよびビヒクル群に比べて角膜蛍光染色スコアの有意な減少が見られ、特に5mg/kg経口用SodA2群では0.05% CsAよりも有意な減少を示した。このような角膜蛍光染色スコアの測定結果を図8に示す。
【0114】
マロンジアルデヒド(MDA)の濃度
角膜(cornea)、結膜(conjunctiva)、および涙腺(lacrimal gland)のMDA濃度を測定した結果を表8に示す。単位はpmol/mlである。
【0115】
【表8】
【0116】
表8に示すように、CsAおよび経口用SodA2治療群の角膜、結膜、および涙腺のすべてにおいて、EDEおよびビヒクル群に比べてMDAの濃度が減少した。特に10mg/kg経口用SodA2は、0.05% CsAと同等(角膜、涙腺)又はそれ以上の効能を示した(結膜)。
【0117】
炎症性サイトカイン
角膜と結膜の炎症性サイトカインを測定した結果を表9に示す。単位はpg/mlである。
【表9】
【0118】
前記表9に示すように、CsAと経口用SodA2治療群の角膜と結膜において、EDEとビヒクル群に比べてIFN-γ、IL-1β、TNF-αの濃度が減少する傾向を示した。特に、すべての用量の経口用SodA2は、CsAよりも炎症性サイトカインをより減少させる傾向を示した。
【0119】
フローサイトメトリーによる免疫細胞(CD4+IFN-γ T細胞)の数測定
角膜におけるCD4+IFN-γ+ T細胞の割合は、UT群で16.53±1.65%、EDE群で48.39±1.34%、ビヒクル群で47.02±0.04%、0.05% CsA群で26.05±0.18%、2.5mg/kg経口用SodA2群で21.18±0.15%、5mg/kg経口用SodA2群で23.87±0.17%、10mg/kg経口用SodA2群で30.24±1.33%であった。
【0120】
一方、結膜におけるCD4+IFN-γ+ T細胞の割合は、UT群で17.40±3.43%、EDE群で46.63±1.27%、ビヒクル群で43.65±2.68%、0.05%CsA群で22.67±0.47%、2.5mg/kg経口用SodA2群で21.00±0.63%、5mg/kg経口用SodA2群で22.87±2.47%、10mg/kg経口用SodA2群で25.83±0.27%であった。
【0121】
角膜と結膜では、CsAと経口用SodA2のすべてにおいて、EDE及びビヒクル群に比べてCD4+IFN-γ+ T細胞の割合が有意に減少し、特に角膜では2.5mg/kg経口用SodA2群で0.05% CsA群に比べて有意に低いCD4+IFN-γ+ T細胞の割合を示した。このような角膜及び結膜におけるCD4+IFN-γ+ T細胞数を分析した結果をそれぞれ図9a及び図9bに示す。
【0122】
活性酸素の測定
ドライアイによる角膜における活性酸素の発生は、UT群で33.93±24.62%、EDE群で87.43±49.83%、ビヒクル群で76.25±49.54%、0.05% CsA群で50.27±11.27%、2.5mg/kg経口用SodA2群で33.57±26.51%、5mg/kg経口用SodA2群で54.53±13.53%、10mg/kg経口用SodA2群で57.38±23.43%であった。
【0123】
結膜では、UT群で42.25±23.23%、EDE群で97.69±54.19%、ビヒクル群で95.48±54.54%、0.05% CsA群で58.16±5.54%、2.5mg/kg経口用SodA2群で55.13±7.41%、5mg/kg経口用SodA2群で57.63±8.16%、10mg/kg経口用SodA2群で53.29±1.19%であった。
【0124】
一方、涙腺では、UT群で36.88±26.91%、EDE群で100.90±80.95%、ビヒクル群で114.26±65.19%、0.05% CsA群で58.66±11.11%、2.5mg/kg経口用SodA2群で59.05±10.77%、5mg/kg経口用SodA2群で56.03±6.37%、10mg/kg経口用SodA2群で49.92±4.19%であった。
【0125】
角膜、結膜、および涙腺のすべてにおいて、SodA2治療群はCsA治療群と同様又はそれ以上の活性減少の効果を示し、特に角膜において2.5mg/kg経口用SodA2群はCsA群に比べてより優れた活性酸素発生の減少効果を示した。このような角膜、結膜、および涙腺における活性酸素発生に対する結果をそれぞれ図10a、図10bおよび図10cに示した。
【0126】
結膜内杯細胞数の測定
結膜内杯細胞数は、UT群で52.1±9.6cells/100μm、EDE群で14.1±3.6cells/100μm、ビヒクル群で14.6±2.4cells/100μmであった。0.05% CsA群で25.2±3.4cells/100μm、2.5mg/kg経口用SodA2群で27.9±6.9cells/100μm、5mg/kg経口用SodA2群で35.8±10.2cells/100μm、10mg/kg経口用SodA2群で32.2±3.9cells/100μmで、処理群のすべてにおいて杯細胞数の有意な増加を示した。特に、5mg/kg経口用SodA2群では、0.05% CsA群よりも有意に杯細胞の数が増加した。このような結膜内杯細胞数を測定した結果を図11a(PAS染色画像)及び図11b(杯細胞数)に示す。
【0127】
細胞死滅の測定
角膜内壊死細胞の数はUT群で1.6±0.5cells/100μm、EDE群で14.8±3.3 cells/100μm、ビヒクル群で12.1±3.0cells/100μmとドライアイ刺激により大きく増加した。一方、0.05%CsA群は6.1±2.1cells/100μm、2.5mg/kg経口用SodA2群は6.2±1.1cells/100μm、5mg/kg経口用SodA2群は4.0±1.3cells/100μm、10mg/kg経口用SodA2群は4.6±1.3cells/100μmで、CsAと経口用SodA2処理群のすべてにおいて、EDEおよびビヒクル群に比べて角膜内で死滅する細胞数が有意に減少した。このような細胞死滅の測定結果を図12a(TUNEL染色画像)及び図12b(細胞死滅陽性細胞数)に示す。
【0128】
実施例4.4.結論
以上の結果を要約すると、ドライアイを誘発したマウスにおいて、経口用SodA2は眼球表面の涙液分泌量、涙膜破壊時間、そして角膜上皮損傷を改善した。また、角膜及び結膜の炎症性T細胞とサイトカインを減少させる傾向を示した。さらに、角膜、結膜及び涙腺の酸化ストレスを減少させ、結膜内杯細胞数を増加させることができ、角膜上皮細胞死滅を減少させることができることが分かった。また、経口用SodA2は、角膜蛍光色素染色スコア、角膜の炎症性T細胞、結膜内杯細胞密度において、0.05%シクロスポリン(Cyclosporin)と比較して同等又は優れた効能を示すことができると判断される。新たに開発された経口用SodA2は、眼球表面の損傷を最小限に抑え、炎症を減少させることができ、今後、ドライアイ患者の治療において有用に使用できると判断される。
図1
図2
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図4
図5
図6
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図12
【配列表】
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【国際調査報告】