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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電流保護型半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/329 20060101AFI20241128BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L29/88 F
H01L29/91 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538981
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2022071710
(87)【国際公開番号】W WO2023123564
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111609485.0
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524240870
【氏名又は名称】南京芯舟科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING SINNOPOWER TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Du, Wenfang Room 502, Tower A, New City Headquarters Building, No. 1 Pukou Avenue, Pukou District Nanjing, Jiangsu 210096 China
(74)【代理人】
【識別番号】100167184
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼ 信江
(72)【発明者】
【氏名】朱 旭▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】社 文芳
(57)【要約】
本発明は電流保護型半導体装置が開示され、半導体装置に係る。当該半導体装置の内部抵抗は、回路過負荷電流の発生時にローインピーダンスからハイインピーダンスに瞬時に切り替えることができ、これにより、サージ電流を遮断し、回路における他の素子を保護するという目的を実現し、応答時間はマイクロ秒レベルひいてはナノ秒レベルとなる。電流保護型半導体装置は、N+型の半導体基板001を含み、N+型の半導体基板001の上方に、装置に対して主に耐圧する層であるN型の耐圧層002が設けられている。N型の耐圧層002の上面には、少なくとも1つのN型の転流領域007と、少なくとも1つのP型のソース領域004と、が設けられる。N型の耐圧層002内には、さらに少なくとも1つのP型の埋め込み層003が設けられ、当該P型の埋め込み層003はN型の耐圧層002によって囲まれている。TBCの両端間の異なる電圧の下で、TBC装置の内部抵抗は、ローインピーダンスとハイインピーダンスとの2種の異なる状態の間で切り替える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのセル構造を含む、電流保護型半導体装置であって、
前記セル構造は、基板領域と、を含み、前記基板領域の上方に第1の導電型の耐圧層が設けられ、
前記耐圧層の上面には、第1の導電型の転流領域と、少なくとも1つの第2の導電型のソース領域とが設けられ、前記耐圧層内には、少なくとも1つの第2の導電型の埋め込み層が設けられ、前記埋め込み層は、前記耐圧層によって囲まれ、
前記基板領域の底部には、第1の電極が接続され、前記耐圧層の上面には、第2の電極と、フローティングオーミック接触電極とが設けられ、前記第2の電極は、前記ソース領域に接続され、前記フローティングオーミック接触電極は、前記転流領域と前記ソース領域にそれぞれ接続され、
前記基板領域の導電型は第1の導電型又は第2の導電型であり、前記基板領域が第1の導電型である場合、前記基板領域の不純物濃度は、前記耐圧層の不純物濃度以上である、
ことを特徴とする電流保護型半導体装置。
【請求項2】
前記基板領域が第2の導電型である場合、前記基板領域と前記耐圧層との間に、第1の導電型のストップ層が設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電流保護型半導体装置。
【請求項3】
前記基板領域内には、第1の導電型のアノード短絡領域が設けられ、前記アノード短絡領域の一方側は、前記ストップ層に接続され、他方側は前記第1の電極に接続される、
ことを特徴とする請求項2に記載の電流保護型半導体装置。
【請求項4】
前記耐圧層には、第1の導電型と第2の導電型が交互に配列されるスーパージャンクション構造が設けられる、
ことを特徴とする請求項1-3のいずれかの1項に記載の電流保護型半導体装置。
【請求項5】
前記ソース領域内の頂部には、第1の導電型の電荷補償領域が設けられる、
ことを特徴とする請求項1-3のいずれかの1項に記載の電流保護型半導体装置。
【請求項6】
前記ソース領域の外部の上面には、平面型の金属-媒体-半導体構造が設けられ、前記平面型の金属-媒体-半導体構造の金属層は第3の電極である、
ことを特徴とする請求項1-3のいずれかの1項に記載の電流保護型半導体装置。
【請求項7】
前記ソース領域内の上面には、トレンチ型の金属-媒体-半導体構造が設けられ、前記トレンチ型の金属-媒体-半導体構造の金属層は第3の電極である、
ことを特徴とする請求項1-3のいずれかの1項に記載の電流保護型半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特に高圧及び/又は大電力に係る電流保護型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の保護装置は、家電製品、白家電、産業制御、パワーエレクトロニクス,及び防衛電子装備などの分野に広く用いられている。余った電圧又は電流を瞬間に放出する電子部品として、正常状態において、保護装置は主回路の補助素子とされるのみで、主回路の正常の回路機能に関与せず、又は影響を与えない。保護装置の両端の電圧又は保護装置を流れる電流が所定の閾値を超えた場合のみに、主回路を保護するという目的を達成するために、保護装置は、保護作業状態に入る。
【0003】
現在、保護装置の保護モードの多くは、電圧型保護であり、即ち、保護されている回路の両端の電圧が過負荷になると、保護装置の等価インピーダンスが変化され、電圧のオーバーシュートを制御し、回路を保護する効果を奏する(図1の破線で示したように)。しかし、回路において過電流が発生した場合、電圧型保護装置の保護効果が限られているため、電流型保護装置又は電流・電圧型の組み合わせ保護システムを採用する必要がある。
【0004】
現在の電流型保護装置の多くは、温度に係る熱電素子であり、熱電素子を流れる電流が所定の値を超えた後に、当該素子の温度が上昇し、その等価インピーダンスが大きくなり、過電流が弱くなることにより保護の目的を達成している。明らかに、熱電型の電流保護装置は、温度が変化することにより保護効果を奏するので、その反応速度が遅すぎて、例えば高速デジタル通信インターフェースの雷サージ等に対する防護などの、短い反応時間を求める応用分野には適合ではない。そのため、高い応答速度(マイクロ秒レベル、ひいてはナノ秒レベル)の電流型防護半導体装置が早急に求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、超急速電流過渡抑制半導体二端装置(Transient Blocking Blocking Component、以下TBCと略称する)である電流保護型半導体装置を開示する。その目的は、回路が正常に動作している初期状態において電流過渡抑制器TBCがローインピーダンス状態となり、回路の電流がTBCの最大ピーク電流を超えた場合、TBCの等価インピーダンスがマイクロ秒レベルひいてはナノ秒レベルの時間内にローインピーダンスからハイインピーダンスに切り替えることにより、回路のサージ電流(TBCの電流-電圧出力特性曲線は図1の実線で示される)を遮断し、サージ電圧が印加されなくなり又は電流過渡抑制器の両端の電圧が小さい場合、TBCの等価インピーダンスがハイインピーダンスからローインピーダンスに回復することである。
【0006】
本開示の上記技術的目的は、以下の技術案で実現される。
電流保護型半導体装置は、少なくとも1つのセル構造を含み、前記セル構造は、基板領域と、を含み、前記基板領域の上方に第1の導電型の耐圧層が設けられ、前記耐圧層の上面には、第1の導電型の転流領域と、少なくとも1つの第2の導電型のソース領域とが設けられ、前記耐圧層内には、少なくとも1つの第2の導電型の埋め込み層が設けられ、前記埋め込み層は、前記耐圧層によって囲まれ、前記基板領域の底部には、第1の電極が接続され、前記耐圧層の上面には、第2の電極と、フローティングオーミック接触電極とが設けられ、前記第2の電極は、前記ソース領域に接続され、前記フローティングオーミック接触電極は、前記転流領域と前記ソース領域にそれぞれ接続され、前記基板領域の導電型は第1の導電型又は第2の導電型であり、前記基板領域が第1の導電型である場合、前記基板領域の不純物濃度は、前記耐圧層の不純物濃度以上である。
【0007】
さらに、前記基板領域が第2の導電型である場合、前記基板領域と前記耐圧層との間に、第1の導電型のストップ層が設けられる。
【0008】
さらに、前記基板領域内には、第1の導電型のアノード短絡領域が設けられ、前記アノード短絡領域の一方側は、前記ストップ層に接続され、他方側は前記第1の電極に接続される。
【0009】
さらに、前記耐圧層には、第1の導電型と第2の導電型が交互に配列されるスーパージャンクション構造が設けられる。
【0010】
さらに、前記ソース領域内の頂部には、第1の導電型の電荷補償領域が設けられる。
【0011】
さらに、前記ソース領域の外部の上面には、平面型の金属-媒体-半導体構造が設けられ、前記平面型の金属-媒体-半導体構造の金属層は第3の電極である。
【0012】
さらに、前記ソース領域内の上面には、トレンチ型の金属-媒体-半導体構造が設けられ、前記トレンチ型の金属-媒体-半導体構造の金属層は第3の電極である。
【0013】
本開示の有益な効果はいかのようである:本開示に記載の電流保護型半導体装置は、基板領域と、を含み、前記基板領域の上方に第1の導電型の耐圧層が設けられ、前記耐圧層の上面には、第1の導電型の転流領域と、少なくとも1つの第2の導電型のソース領域とが設けられ、前記耐圧層内には、少なくとも1つの第2の導電型の埋め込み層が設けられ、前記埋め込み層は、前記耐圧層によって囲まれる。前記基板領域の底部には、第1の電極が接続され、前記耐圧層の上面には、第2の電極と、FOC電極とが設けられ、前記第2の電極は、前記ソース領域に接続され、前記FOC電極は、前記転流領域と前記ソース領域にそれぞれ接続される。
上記の電流保護型半導体装置によれば、当該半導体装置の内部抵抗は、回路過負荷電流の発生時にローインピーダンスからハイインピーダンスに瞬時に切り替えることができ、それにより、サージ電流を早速に遮断し、回路における他の素子保護する目的を実現できる。応答時間はマイクロ秒レベルひいてはナノ秒レベルとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、電圧保護型半導体装置(破線)及び本発明に係る電流保護型半導体装置(実線)の電流-電圧出力特性曲線の模式図である。
図2図2は、本発明に係る電流過渡抑制器のチップのセル構造の模式図である。
図3図3は、本発明に係る実施例1の構造模式図である。
図4図4は、本発明に係る実施例2の構造模式図である。
図5図5は、本発明に係る実施例3の構造模式図である。
図6図6は、本発明に係る実施例4の構造模式図である。
図7図7は、本発明に係る実施例5の構造模式図である。
図8図8は、本発明に係る実施例6の構造模式図である。
図9図9は、本発明に係る実施例7の構造模式図である。
図10図10は、本発明に係る実施例8の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本開示の技術的案について詳細に説明する。本願の説明において、「第1」、「第2」、「第3」という用語は、単に目的を説明するためのものであり、相対的な重要性を指示又は暗示したり、示す技術的特徴の数を暗黙的に指示したりするものではなく、異なる構成部分を区別するのみに使用されるものである。本願の説明において、第1の導電型はN型とP型とを含み、第2の導電型は同じくN型とP型とを含み、第1の導電型がN型である場合、第2の導電型はP型であり、第1の導電型がP型である場合、第2の導電型はN型である。
【0016】
また、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「頂部」、「底部」、「側壁」、「垂直」、「水平」、「上面」等の用語が示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本発明をより説明しやすく及び説明を簡単にするためのものであり、示す装置又は素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構造及び操作されることを指示又は暗示するものではないため、本発明を制限するものと理解すべきではない。
【0017】
図面および説明は、本質上模式的であって、限定的なものではない。図面において、似たような構成の要素には同一の符号を付与している。また、図面に示された各アセンブリの寸法及び厚さは、理解及び説明の便宜のため、任意に示されているが、本願はこれに限定されない。
【0018】
図面では、明瞭、理解および説明の便宜のため、設備、システム、アセンブリ、及び回路の配置範囲を誇張している。理解すべきこととして、アセンブリが他のアセンブリの「上」に「位置」するとした場合、前記アセンブリは、前記他のアセンブリの上に直接位置することを示してもよく、又は中間アセンブリがあってもよい。
【0019】
また、説明において、明確に反対的に記載されていない限り、「含む」という言葉は、当該アセンブリを含むことに解釈されるべきであり、他のアセンブリを排除しないことに解釈される。なお、明細書において、「・・・の上に位置する」という記載は、対象アセンブリの上方又は下方に位置することを意味し、必ずしも重力方向の頂部上に位置することを意味しない。
【0020】
本願は、所定の発明の目的を達成するために採用される技術的手段及び効果を更に説明するために、以下、図面及び具体的な実施例を参照して、本願による高圧及び/又は大電力の能動防護型半導体装置について、その具体的な実施形態、構造、特徴及びその効果を詳細に説明する。
【0021】
図1は、電圧保護型半導体装置(破線)及び本発明に係る電流保護型半導体装置(実線)の電流-電圧出力特性曲線の模式図である。電圧保護型半導体装置の両端のバイアス電圧が小さい場合、装置はハイインピーダンスの特性を現し、装置の両端電圧が臨界トリガ最大電圧Vmaxに達した場合、装置は瞬間的にローインピーダンスに切り替え、電圧が抑制される。一方、電流保護型半導体装置において、当該装置を流れる電流が小さい場合、装置はローインピーダンスの特性を現し、装置を流れる電流が臨界トリガ最大電流Imaxに達した場合、装置は瞬間的にハイインピーダンスに切り替え、電流が遮断され、回路をサージ電流による衝撃から保護することを実現する。
【0022】
図1に示すような電流保護型半導体装置の電圧-電流出力特性曲線を得るために、本発明は、超急速電流過渡抑制半導体二端装置を提供する。当該装置は、複数のセルユニットから構成され、図2は、本発明に係る超急速電流過渡状態抑制半導体二端装置(TBC)の1つのセル構造の断面模式図である。具体的な実施例として、セル構造は、N+型の半導体基板001と、N+型の半導体基板001の上方に設けられ、耐圧層として装置に対して主に耐圧する層であるN型の耐圧層002と、を含む。N型の耐圧層002の上面には、少なくとも1つのN型の転流領域007と、少なくとも1つのP型のソース領域004と、が設けられる。N型の耐圧層002内には、さらに少なくとも1つのP型の埋め込み層003が設けられ、当該P型の埋め込み層003はN型の耐圧層002によって囲まれている。第1の電極T及び第2の電極Sは、金属材料を含むか又は金属材料からなる。第1の電極Tは、N+型の半導体基板001に直接に接触し、第2の電極Sは、P型のソース領域004に直接に接触する。また、さらに少なくとも1つのフローティングオーミック接触電極(Floating Ohmic Contact、以下FOC電極と略称する)を含み、FOC電極は、少なくとも一部のN型の転流領域007及び少なくとも一部のP型ソース領域004に接触し、FOC電極は、N型の転流領域007とP型のソース領域004とそれぞれオーミック接触を形成する。前記P型の埋め込み層003の電位は、第2の電極Sの電位と等しい。
【0023】
以下、図2に示す実施例に基づいて、本発明に係る超急速電流過渡抑制半導体装置の主な電気的特性を説明する。
【0024】
(1)、第1の電極Tと第2の電極Sとのバイアス電圧VSTがゼロから増加し且つVSTの値が小さい場合、図2に示す実施例において、第1の電極Tと第2の電極Sとの間がローインピーダンスの特性を示す。その理由は以下のようである:VSTの値が小さい場合、ほとんどのN型の耐圧層002が空乏化されず、この時のN+型の半導体基板001、中性のN型の耐圧層002及びN型の転流領域007の3者の電位は等しく、即ち、FOC電極と第1の電極Tとの電位が等しいため、FOC電極とS電極との間の電圧はVSTの値とが等しく、P型のソース領域004にはFOC領域から電極Sに向かう電界が存在する。この時、P型のソース領域004において、多数キャリア(正孔)がFOC電極から出発し、P型のソース領域004を介して電極Sに到達することが明らかである。それと同時に、電流の連続性を保つため、N型の耐圧層002において、多数キャリア(電子)がFOC電極から出発し、N型の転流領域007、N型の耐圧層002、及びN+型半導体基板001を介して第1の電極Tに到達することで、電極Tと電極Sの間で継続的な電流を形成する。VSTが小さい場合、直列されているP型のソース領域004、N型の転流領域007、N型の耐圧層002、及びN+型の半導体基板001の抵抗である装置の等価抵抗がローインピーダンスの特性を示すことは明らかである。
【0025】
(2)、第1の電極Tと第2の電極Sとのバイアス電圧VSTが所定値まで増加した場合、第1の電極Tと第2の電極Sとの間が突然ハイインピーダンスの特性に切り替える。その理由は以下のようである:VSTの増加に伴い、N型の耐圧層002のP型の埋め込み層003とP型のソース領域004にそれぞれ近い付近の領域が徐々に空乏化される同時に、P型の埋め込み層003とP型のソース領域004内にも対応の空乏領域が現し、且つ空乏領域の幅がVSTの増加につれて増加する。空乏領域がP型の埋め込み層003とP型のソース領域004との間のN型の耐圧層002がすべて空乏化されるように拡散された場合、N型の転流領域007、N型の耐圧層002、及びN+の型半導体基板001との間には、線形の抵抗の特性を示さなくなり、N型の耐圧層002内の電子電流の通路は、高次微分の抵抗の特性を示す。VSTがさらに増加するに伴い、P型の埋め込み層003及びP型のソース領域004内の空乏層が徐々に拡散され、VSTが増加されてP型のソース領域004のほとんどの部分を空乏化された場合、P型のソース領域004内の正孔電流の通路も高次微分の抵抗の特性を現し、この時電極Tから電極Sに流れる電流がピーク値に達する(図1に示されるIMAX)。VSTがさらに増加するに伴い、空乏化されたN型の耐圧層002の領域内のイオン化ドナーの正電荷が発する電気力線のほとんどは、空乏化されたP型のソース領域004の領域内のイオン化アクセプターの負電荷によって吸収されることで、P型のソース領域004の領域内の電界分布を変える。P型のソース領域004の領域内の電界の方向が当初のFOCから電極Sに向かう方向から電極SからFOCに向かう方向に変更した場合、電極Tと電極Sの間には電流の通路が存在しなくなり、即ち、電極Tと電極Sの間は遮断(ハイインピーダンス)の特性を現し、図1に示すように、電圧が大きい場合、電流が大幅に低下される。
【0026】
(3)、第1の電極Tと第2の電極Sとの等価抵抗の抵抗値が低抵抗から高抵抗に切り替える速度は、マイクロ秒レベルひいてはナノ秒レベルとなる。それは、半導体内部の空乏層の構成と対応する各半導体領域内部の電界分布の変更がナノ秒レベルであるからである。
【0027】
図2に示す実施例において、多数キャリアを導電キャリアとしている。ただし、多数キャリアと少数キャリアとが同時に導電(双極型)するものであってもよい。図3は、図2における実施例を双極型導電に改善した具体的な実施形態を示す。図3における実施例の基板領域がP型の基板領域020を採用していることが図2における実施例との相違点である。図2における実施例の原理と類似で、VSTの値が小さい場合、ほとんどのN型の耐圧層002が空乏化されず、この時、P型のソース領域004内に多数キャリア(正孔)がFOC電極から出発してP型のソース領域004を介して電極Sに達する。それと同時に、電流の連続性を保証するために、N型の耐圧層002内に多数キャリア(電子)がFOC電極から出発してN型の転流領域007、及びN型の型耐圧層002を介してP型の基板領域020に達し、最終的に第1の電極Tに達する。電子がP型の基板領域020に注入されることに伴い、さらに少数キャリア(正孔)がP型の基板領域020からN型の耐圧層002に注入されることになり、最終的にP型のソース領域004に達することにより、電極Tと電極Sとの間に持続的な電流が形成される。2種類のキャリアによって同時に導電するため、図3の実施例は、図2の実施例よりもっと小さい等価抵抗を有する。VSTがさらに増加することに伴い、N型の耐圧層002、P型の埋め込み層003、及びP型のソース領域004の一部の領域が徐々に空乏化され、最終的に電極Tと電極Sとの間は遮断(ハイインピーダンス)の特性を示すことになる。抵抗値が変化する原理は図2における実施例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0028】
図4は、図3に基づいてN型の電界ストップ層005が追加された実施例の構造模式図である。同じ耐圧で、図4におけるN型の電界ストップ層005の導入によって、N型の耐圧層002の厚さをより小さくすることができ、それにより、デバイスのオン抵抗を低減することができる。
【0029】
図5は、図4に基づいてP型の基板領域内にN型のアノード短絡領域008が追加された実施例の構造模式図である。N型のアノード短絡領域008は、一方側がN型の電界ストップ層005に接し、他方側が電極Tに直接に接している。N型の領域008の存在によって、P型のソース領域004、N型の耐圧層002、及びN型の電界ストップ層005とN型のアノード短絡領域008との間に、PNダイオード構造が形成されるため、図5は、電極Sから電極T方向への電流の導通能力を有する。
【0030】
特に説明しない限り、以下に提供される実施例はいずれも図2において実施例の基板構造を例として説明するが、これは本発明の保護範囲をいかなる方式で限定するものではない。以下に係る実施例は、図3図5に示す基板構造にも同様に適用される。
【0031】
図6は、図2における実施例に基づいて、2つのP型の埋め込み層003を用いた実施例の構造模式図である。図2における実施例の原理説明により、P型の埋め込み層003とP型のソース領域004との間のN型の耐圧層002の空乏領域の幅が、本発明のTBC装置の出力電気特性を決めることが分かる。図6は、2つのP型の埋め込み層003を用いることで、空乏層の拡散範囲をさらに最適化し、図2における実施例の電気特性がより容易に得られる。P型の埋め込み層003は複数存在してもよいことは明らかであるので、ここでは説明を省略する。
【0032】
図7は、図2における実施例に基づいて、N型の耐圧層002内にスーパージャンクション(Super-Junction)構造を採用した模式図である。図7の主な特徴は、N型の耐圧層002内にNPNPNPが交互に配列されるスーパージャンクション構造を採用していることにある。スーパージャンクション(Super-Junction)構造を採用することで、同じ耐圧で、より低いオン抵抗を得ることができることは周知である。
【0033】
図8は、図2における実施例に基づいて、P型のソース領域004内にN型の補助電荷補償領域010が設けられている構造模式図である。図2における実施例の原理説明により、VST値が大きい場合、空乏化されたN型002領域内のイオン化ドナーの正電荷が発する電気力線のほとんどは、空乏化されたP型のソース領域004の領域内のイオン化アクセプターの負電荷によって吸収されることで、P型のソース領域004の領域内の電界分布を変えた。P型のソース領域004の領域内の電界の方向が当初のFOCから電極Sに向かう方向から電極SからFOCに向かう方向に変更した場合、電極Tと電極Sの間には電流の通路が存在しなくなり、即ち、電極Tと電極Sの間は遮断(ハイインピーダンス)の特性を示すことが分かる。図8における実施例では、P型のソース領域004内にN型の補助電荷補償領域010を設けることで、P型のソース領域004の有効電荷量を低下させ、P型のソース領域004の空乏領域の拡散速度を向上させ、より図1に示すような電気特性を容易に得られる。
【0034】
図9は、図2における実施例に基づいて、平面の「金属-媒体-半導体」(MIS)構造が採用された模式図である。一部のP型のソース領域004の上に誘電体層101が被覆され、誘電体層101の上に電極Mが被覆される。電極Mに所定の電圧を印加することによって、P型のソース領域004の空乏領域の幅を容易に変化させ、これにより、P型のソース領域004の有効電荷量を調整することができる。
【0035】
図10は、図2における実施例に基づいて、トレンチの「金属-媒体-半導体」(MIS)構造が採用された模式図である。一部のP型のソース領域004の内部の上面に誘電体層101が設けられ、誘電体層101とソース領域004との間に内部電極Mが設けられる。電極Mに所定の電圧を印加することによって、P型のソース領域004の空乏領域の幅を容易に変化させ、これにより、P型のソース領域004の有効電荷量を調整することができる。明らかに、トレンチユニットは1つ又は複数あってもよい。
【0036】
以上は、本開示の例示的な実施例であり、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】