(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】粘液型/円形細胞型脂肪肉腫患者の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20241128BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20241128BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241128BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20241128BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241128BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241128BHJP
C12Q 1/6841 20180101ALN20241128BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20241128BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALN20241128BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20241128BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20241128BHJP
C07K 1/107 20060101ALN20241128BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20241128BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20241128BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20241128BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20241128BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
A61K39/00 H
C12Q1/04
A61P35/00
G01N33/48 M
G01N33/48 P
G01N33/574 A
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C12Q1/6841 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
C07K16/30
C07K1/107
C07K16/46
C12N5/10
C12N5/0783
C12N15/62 Z
C12N15/867 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024556329
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 US2022079885
(87)【国際公開番号】W WO2023091909
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524184024
【氏名又は名称】ソティオ・バイオテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sotio Biotech Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ワイス,グレン ジェイ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA26
2G045BA14
2G045BB25
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4H045EA28
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4H045EA54
(57)【要約】
本発明は、抗GPC3治療剤で粘液型/円形細胞型脂肪肉腫と診断された患者を治療する方法を提供する。本発明はまた、免疫染色アッセイによって粘液型/円形細胞型脂肪肉腫と診断された患者の組織試料におけるGPC3発現の定量化、及び抗GPC3治療剤を投与するための患者の選択と相関するGPC3発現レベルの特定に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘液型/円形細胞型脂肪肉腫と診断された患者を治療する方法であって、前記方法が、前記患者に、抗グリピカン-3(GPC3)治療剤を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記患者が、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫を診断することによって治療のために選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粘液型/円形細胞型脂肪肉腫が、GPC3を発現する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粘液型/円形細胞型脂肪肉腫と診断された前記患者が、免疫染色によって、任意選択的に、免疫組織化学(IHC)染色によって、好ましくは、30を超える細胞質/膜Hスコアで選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、
(a)腫瘍生検試料から組織切片を得ることであって、前記切片が、3μm~15μmの厚さを有する、得ることと、
(b)好ましくは、GPC3に特異的に結合する抗体で、より具体的には、抗体GC33を使用して、IHCによって免疫染色することと、
(c)細胞質/膜Hスコアを決定することと、
(d)前記治療のために30を超えるHスコアを有する患者を選択することと、を含むプロセスによって診断される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
選択が、前記患者からの腫瘍試料におけるGPC3の免疫染色、好ましくは免疫組織化学染色を含み、GPC3発現レベルが、決定され、所定の閾値レベルのGPC3発現と比較され、前記患者が前記所定の閾値レベル以上のGPC3発現レベルを有する場合、前記患者が治療のために選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記治療剤が、抗GPC3結合ドメイン、好ましくは、GPC3への結合を保持する抗GPC3抗体又はその機能的断片を含み、好ましくは、前記治療剤が、抗CD3結合ドメイン又は免疫刺激ポリペプチドでGPC3に結合する、抗GPC3抗体、抗GPC3抗体-薬物コンジュゲート、抗GPC3抗体-放射性核種コンジュゲート、又は抗GPC3抗体若しくは抗体誘導体の融合タンパク質の投与を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記治療剤が、抗GPC3キメラ受容体ポリペプチド(CAR)を発現する遺伝子操作された造血細胞の投与を含み、前記CARポリペプチドが、
(a)GPC3に結合する細胞外結合ドメインと、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)細胞質シグナル伝達ドメインと、を含み、
任意選択的に、前記造血細胞が、固形腫瘍微小環境における前記造血細胞の生存能及び/又は機能性を改善する遺伝子を外因的に発現する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記造血細胞が、
i.同じタイプの野生型造血細胞と比較して改善されたグルコース取り込み活性であって、一方、前記造血細胞が、グルコース輸入ポリペプチドを外因的に発現し、好ましくは、前記グルコース輸入ポリペプチドが、グルコーストランスポーター(GLUT)又はナトリウム-グルコースコトランスポーター(SGLT)であり、好ましくは、前記グルコース輸入ポリペプチドが、GLUT1、GLUT3、GLUT1 S226D、SGLT1、SGLT2、GLUT8、GLUT8 L12A L13A、GLUT11、GLUT7、及びGLUT4からなる群から選択される、改善されたグルコース取り込み活性、
ii.前記同じタイプの野生型造血細胞と比較して調節されたKrebs回路であって、一方、前記造血細胞が、Krebs回路調節ポリペプチドを外因的に発現し、
好ましくは、Krebs回路調節因子が、
a.前記Krebs回路における反応を触媒する酵素、
好ましくはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、若しくはホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)、
b.Krebs回路代謝産物を基質として使用する酵素、
好ましくはグルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)若しくはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1(PCK1)、又は
c.前駆体をKrebs回路代謝産物に変換する酵素、
好ましくはホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH1)、グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ1(GPT1)、若しくはグルタミナーゼ(GLS)である、調節されたKrebs回路、並びに/あるいは
iii.前記同じタイプの野生型造血細胞と比較して増強された細胞内乳酸濃度であって、一方、前記造血細胞が、乳酸調節ポリペプチドを外因的に発現し、
好ましくは、前記乳酸調節ポリペプチドが、
a.モノカルボン酸トランスポーター(MCT)、好ましくはMCT1、MCT2、若しくはMCT4、
b.乳酸合成に関与する酵素、好ましくは乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)、又は
c.乳酸合成基質と競合する経路を阻害するポリペプチド、好ましくはピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ1(PDK1)である、増強された細胞内乳酸濃度、を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞外抗原結合ドメインが、GPC3に結合する一本鎖抗体断片(scFv)であり、好ましくは、前記scFvが、GC33抗体に由来し、任意選択的に、前記scFvが、配列番号2の配列を有する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記CARポリペプチドが、
(i)CD28膜貫通ドメイン、好ましくは配列番号6、CD28ヒンジドメイン、若しくはそれらの組み合わせ、好ましくは配列番号4と組み合わせた、CD28共刺激ドメイン、又は
(ii)CD8膜貫通ドメイン、CD8ヒンジドメイン、若しくはそれらの組み合わせ(配列番号3)と組み合わせた、4-1BB共刺激ドメイン、好ましくは配列番号5を含み、
より好ましくは、前記CARポリペプチドが、配列番号8又は配列番号9のアミノ酸配列を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(c)の前記細胞質シグナル伝達ドメインが、CD3ζの細胞質ドメイン、好ましくは配列番号7、又はFcεR1γである、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記造血細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、又はT細胞であり、好ましくは、前記造血細胞が、T細胞であり、内因性T細胞受容体、内因性主要組織適合複合体、内因性β-2-ミクログロブリン、又はそれらの組み合わせの発現が、阻害又は排除されており、
前記造血細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞(HSC)、又は誘導性多能性幹細胞(iPSC)に由来し、
好ましくは、前記造血細胞が、前記患者にとって自己由来である、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記造血細胞が、核酸又は核酸のセット、好ましくはDNA分子又はDNA分子のセットを含み、これらが、集合的に、
(a)前記グルコース輸入ポリペプチド、前記Krebs回路調節ポリペプチド、及び/又は前記乳酸調節ポリペプチドをコードする、第1のヌクレオチド配列と、
(b)前記キメラ抗原受容体ポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列であって、
好ましくは、前記造血細胞が、前記第1のヌクレオチド配列及び前記第2のヌクレオチド配列の両方を含む前記核酸を含む、第2のヌクレオチド配列と、
(c)任意選択的に、前記第1のヌクレオチド配列と前記第2のヌクレオチド配列との間に位置する第3のヌクレオチド配列であって、前記第3のヌクレオチド配列が、リボソームスキッピング部位、内部リボソーム進入部位(IRES)、又は第2のプロモーターをコードし、
好ましくは、前記第3のヌクレオチド配列が、P2Aペプチドであるリボソームスキッピング部位をコードする、第3のヌクレオチド配列と、を含み、
好ましくは、
(i)前記核酸又は核酸セットが、好ましくは発現ベクター若しくは発現ベクターのセットであるベクター若しくはベクターのセット内に含まれ、かつ/又は
(ii)前記ベクター又はベクターのセットが、より好ましくはレンチウイルスベクター若しくはレトロウイルスベクターである1つ以上のウイルスベクターを含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
1kg当たり少なくとも約5×10
4個の抗GPC3-CAR T細胞が、前記患者に投与され、好ましくは、約5×10
4~約1×10
12個の抗GPC3-CAR T細胞/kgが、前記患者に投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療剤が、抗GPC3標的化ポリペプチド又はポリペプチド融合物、好ましくは抗GPC3抗体、抗GPC3二重特異性若しくは多重特異性タンパク質、又は抗GPC3抗体-薬物コンジュゲートを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗GPC3治療剤の前記投与が、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンによって測定される場合、RECISTによる安定した疾患の達成に有効である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗GPC3治療剤の前記投与が、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンによって測定される場合、RECISTによる客観的応答を達成する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、前記治療剤と並行して又は連続して、少なくとも1つの免疫調節剤を前記患者に投与することを更に含み、好ましくは、前記免疫調節剤が、免疫チェックポイント阻害剤又は免疫刺激サイトカインである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、好ましくはシクロホスファミド及びフルダラビンから選択されるリンパ球低減治療を施すことを更に含む、請求項1~15及び17~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月16日に出願された米国仮特許出願第63/279,797号の出願日の利益を主張し、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
軟部組織肉腫(STS)を含む肉腫は、小児固形腫瘍全体の約20%及び成人の固形腫瘍の約1%を占める間葉起源のまれな悪性腫瘍群である(Abaricia & Hirbe,2018;Hui,2016)。STSの最も一般的なタイプである脂肪肉腫(LPS)は、脂肪組織から生じ、脂肪分化に影響を及ぼす悪性腫瘍である。粘液型/円形細胞型脂肪肉腫(MRCLS)は、LPSの約30%を占め、やや若い年齢層で発生する傾向があり、発生率のピークは40代である。
【0003】
MRCLSの標準治療は、局所的な原発性疾患の外科的切除からなる。MRCLSは、他のLPSサブタイプと比較して、放射線療法及び細胞障害性化学療法に対する感受性が高いことで知られている。しかしながら、適切な局所治療にもかかわらず、約40%の患者が再発する。それでも、MRCLS患者の治療選択肢は依然として乏しく、この高い医療ニーズの適応症には新しい療法の選択肢が必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、少なくとも部分的には、グリピカン3(GPC3)がMRCLSの診断バイオマーカー及び治療標的として機能することができるという予期せぬ発見に基づいている。GPC3陽性腫瘍有病率をよりよく理解し、抗GPC3療法の適応症の優先順位付けを行うために、がん患者からの固形腫瘍生検におけるGPC3の発現プロファイルを調査すると、複数の組織試料及びスコアリングを行う病理学者にわたってGPC3の発現レベルを正確かつ確実に定量化するための新しいスコアリングルールを利用して、LPSのサブグループ(すなわち、MRCLS)が、比較的高いGPC3を発現する患者集団として特定される。この所見は、抗GPC3抗体(GC33)で染色された様々な腫瘍組織切片で観察された染色パターンの複雑さを考慮すると、予想外であり、抗GPC3治療剤による治療にはMRCLSが優先され、かつ/又は選択されることを示唆する。
【0005】
したがって、本開示は、いくつかの態様では、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫と診断された患者を治療する方法を特徴とし、本方法は、抗グリピカン-3(GPC3)治療剤を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、患者は、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫を診断することによって治療のために選択される。いくつかの例では、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫は、GPC3を発現する。
【0006】
いくつかの実施形態では、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫と診断された患者は、例えば、免疫組織化学(IHC)染色による免疫染色によって選択される。いくつかの例では、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫と診断された患者は、患者が30を超える細胞質/膜Hスコアを有する場合に選択される。
【0007】
いくつかの実施形態では、患者は、
(a)腫瘍生検試料から組織切片を得ることであって、切片が、3μm~15μmの厚さを有する、得ることと、
(b)好ましくは、GPC3に特異的に結合する抗体で、より具体的には、抗体GC33を使用して、IHCによって免疫染色することと、
(c)細胞質/膜Hスコアを決定することと、
(d)治療のために30を超えるHスコアを有する患者を選択することと、を含むプロセスによって診断され得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、選択は、免疫染色、例えば、患者からの腫瘍試料におけるGPC3の免疫組織化学染色を含み得る。GPC3発現レベルが、決定され、GPC3発現の所定の閾値レベルと比較され得る。患者が所定の閾値レベル以上のGPC3発現レベルを有する場合、患者は治療のために選択される。
【0009】
いくつかの実施形態では、治療剤は、抗GPC3結合ドメイン、例えば、抗GPC3抗体、例えば、GPC3への結合を保持する全長抗体又はその機能的断片を含む。いくつかの事例では、治療剤は、抗CD3結合ドメイン又は免疫刺激ポリペプチドでGPC3に結合する、抗GPC3抗体、抗GPC3抗体-薬物コンジュゲート、抗GPC3抗体-放射性核種コンジュゲート、又は抗GPC3抗体若しくは抗体誘導体の融合タンパク質を含み得る。いくつかの例では、治療剤は、抗GPC3キメラ受容体ポリペプチド(CAR)を発現する遺伝子操作された造血細胞を含み、これは、
(a)GPC3に結合する細胞外結合ドメインと、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)細胞質シグナル伝達ドメインと、を含み得る。
【0010】
いくつかの例では、造血細胞は、固形腫瘍微小環境における造血細胞の生存能及び/又は機能を改善する遺伝子を更に外因的に発現し得る。いくつかの事例では、造血細胞は、同じタイプの野生型造血細胞と比較して、改善されたグルコース取り込み活性を有し得るが、造血細胞は、グルコース輸入ポリペプチドを外因的に発現する。いくつかの例では、グルコース輸入ポリペプチドは、グルコーストランスポーター(GLUT)又はナトリウム-グルコースコトランスポーター(SGLT)である。例としては、GLUT1、GLUT3、GLUT1 S226D、SGLT1、SGLT2、GLUT8、GLUT8 L12A L13A、GLUT11、GLUT7、及びGLUT4が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
いくつかの事例では、造血細胞は、同じタイプの野生型造血細胞と比較して、調節されたKrebs回路を有し得るが、造血細胞は、Krebs回路調節ポリペプチドを外因的に発現する。いくつかの例では、Krebs回路調節因子は、Krebs回路における反応を触媒する酵素である。例としては、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、又はホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、Krebs回路調節因子は、Krebs回路代謝産物を基質として使用する酵素、例えば、グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)又はホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1(PCK1)である。代替的に、Krebs回路調節因子は、前駆体をKrebs回路代謝産物に変換する酵素であり得る。例としては、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH1)、グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ1(GPT1)、又はグルタミナーゼ(GLS)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
いくつかの事例では、造血細胞は、同じタイプの野生型造血細胞と比較して、増強された細胞内乳酸濃度を有し得るが、造血細胞は、乳酸調節ポリペプチドを外因的に発現する。いくつかの例では、乳酸調節ポリペプチドは、モノカルボン酸トランスポーター(MCT)、例えば、MCT1、MCT2、又はMCT4である。他の例では、乳酸調節ポリペプチドは、乳酸合成に関与する酵素、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)である。代替的に、乳酸調節ポリペプチドは、乳酸合成基質と競合する経路を阻害するポリペプチド、例えば、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ1(PDK1)である。
【0013】
本明細書に開示される方法のうちのいずれかでは、細胞外抗原結合ドメインは、GPC3に結合する一本鎖抗体断片(scFv)である。いくつかの例では、scFvは、GC33抗体に由来する。一例では、scFvは、配列番号2の配列を含み得る(例えば、それからなる)。いくつかの例では、抗GPC3 CARポリペプチドは、CD28膜貫通ドメイン、CD28ヒンジドメイン、又はそれらの組み合わせ(例えば、配列番号4)と組み合わせて、CD28共刺激ドメインを含み得る。代替的に、抗GPC3 CARポリペプチドは、CD8膜貫通ドメイン、CD8ヒンジドメイン、又はそれらの組み合わせ(例えば、配列番号3)と組み合わせて、4-1BB共刺激ドメイン(例えば、配列番号5)を含み得る。代替的に又は加えて、抗GPC3 CARポリペプチドは、(c)の細胞質シグナル伝達ドメインを含み得、これは、CD3ζ、好ましくは配列番号7、又はFcεR1γの細胞質ドメインであり得る。特定の例では、抗GPC3 CARは、配列番号8又は配列番号9のアミノ酸配列を含み得る。
【0014】
本明細書に開示される造血細胞のうちのいずれかは、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、又はT細胞であり得る。いくつかの例では、造血細胞は、T細胞である。いくつかの事例では、そのようなT細胞において、内因性T細胞受容体、内因性主要組織適合複合体、内因性β-2-ミクログロブリン、又はそれらの組み合わせの発現が、阻害又は排除されている。いくつかの例では、造血細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞(HSC)、又は人工多能性幹細胞(iPSC)に由来し得る。いくつかの例では、造血細胞は、患者にとって自己由来である。他の例では、造血細胞は、患者に対して同種である。
【0015】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、核酸又は核酸のセット、例えば、DNA分子又はDNA分子のセットを含み得、これらは、集合的に、(a)グルコース輸入ポリペプチド、Krebs回路調節ポリペプチド、及び/又は乳酸調節ポリペプチドをコードする、第1のヌクレオチド配列と、(b)キメラ抗原受容体ポリペプチドをコードする、第2のヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例では、造血細胞は、第1のヌクレオチド配列及び第2のヌクレオチド配列の両方を含む核酸を含み得る。いくつかの事例では、核酸は、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間に位置する第3のヌクレオチド配列を含み得る。第3のヌクレオチド配列は、リボソームスキッピング部位、内部リボソーム進入部位(IRES)、又は第2のプロモーターをコードし得る。いくつかの例では、第3のヌクレオチド配列は、リボソームスキッピング部位、例えば、P2Aペプチドをコードする。いくつかの例では、核酸又は核酸セットは、ベクター又はベクターのセット、例えば、発現ベクター又は発現ベクターのセット内に含まれ得る。特定の例では、ベクター又はベクターのセットは、1つ以上のウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、1kg当たり少なくとも約5×104個の抗GPC3-CAR T細胞が患者に投与される。いくつかの例では、約5×104~約1×1012個の抗GPC3-CAR T細胞/kgが患者に投与される。
【0017】
いくつかの実施形態では、治療剤は、抗GPC3標的化ポリペプチド又はポリペプチド融合物、例えば、抗GPC3抗体、抗GPC3二重特異的若しくは多特異的タンパク質、又は抗GPC3抗体-薬物コンジュゲートを含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗GPC3治療剤の投与は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンによって測定される場合、RECIST(例えば、RECIST1.1)による安定した疾患を達成するのに有効である。代替的に、又は加えて、抗GPC3治療剤の投与は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンによって測定される場合、RECIST(例えば、RECIST1.1)による客観的応答を達成している。
【0019】
本明細書に開示される方法のうちのいずれかは、治療剤に並行して又は連続して、患者に少なくとも1つの免疫調節剤を投与することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、免疫調節剤は、免疫チェックポイント阻害剤又は免疫刺激サイトカインであり得る。代替的に、又は加えて、本方法は、患者を、シクロホスファミド、フルダラビン、又はそれらの組み合わせを含み得るリンパ球低減治療に供することを更に含み得る。
【0020】
また、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫と診断された患者の治療に使用するための抗GPC3治療剤(例えば、本明細書に開示されるもの)、並びに粘液型/円形細胞型脂肪肉腫と診断された患者の治療に使用するための薬剤を製造するための本明細書に開示される抗GPC3治療剤のうちのいずれの使用も、本開示の範囲内である。
【0021】
更に、本開示はまた、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫を有する患者を診断するための方法、又は疾患の治療のために患者を選択するための方法を提供する。本方法は、
(a)患者候補から得られた腫瘍生検試料から組織切片を得ることであって、切片が、3μm~15μmの厚さを有する、得ることと、
(b)好ましくは、GPC3に特異的に結合する抗体で、より具体的には、抗体GC33を使用して、IHCによって免疫染色することと、
(c)細胞質/膜Hスコアを決定することと、
(d)Hスコアに基づいて、患者候補を粘液型/円形細胞型脂肪肉腫を有するか、又は有する疑いがあると診断することと、を含み得る。
【0022】
いくつかの事例では、30を超えるHスコアは、疾患の発生を示す。いくつかの事例では、30を超えるHスコアを有する患者は、治療のために選択され得る。
【0023】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に示されている。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明、並びに添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】抗体GC33でIHCによって染色された粘液型/円形細胞型脂肪肉腫のFFPE組織切片の画像を示し、ボックスは、(A)1倍、(B)4倍、及び(C)20倍の倍率で観察した特定の視野を示す。各視野内の細胞を、弱い染色を1+、中程度の染色を2+、及び強い染色を3+としてスコアリングした。(C)において、1+、2+、及び3+の例をボックスで示す。
【
図2】20倍の倍率での、(A)乳房、(B)心臓、(C)胃、及び(D)腎臓の健康なFFPE組織切片における、抗体GC33によるIHC染色の画像を示す。
【
図3】20倍の倍率での、(A)平滑筋(陰性対照;Hスコア-0)、様々なタイプのがん、すなわち、(B)肝細胞がん(Hスコア-280)、(C)非小細胞肺がん(Hスコア-260)、(D)メルケル細胞がん(Hスコア-130)、及び(E)脂肪肉腫(Hスコア-120)のFFPE組織切片における、抗体GC33によるIHC染色の画像を示す。全ての染色領域は、膜及び細胞質GPC3染色の両方を示す。
【
図4】20倍の倍率での、脂肪肉腫のサブタイプ、すなわち、(A)粘液型/円形細胞型脂肪肉腫(Hスコア-140)、(B)多形性脂肪肉腫(Hスコア-0)、(C)高分化型脂肪肉腫(Hスコア-0)、及び(D)混合型脂肪肉腫(Hスコア-0)のFFPE組織切片における、抗体GC33によるIHC染色の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
略語
本発明の詳細な説明及び実施例全体を通して、以下の略語が使用される。
【表1】
【0026】
定義
動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、臓器、又は生体液に適用される「投与」及び「治療」という用語は、動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器、又は生体液に対する外因性医薬品、治療薬、診断剤、又は組成物の接触を指す。細胞の処理は、試薬の細胞への接触、並びに試薬の流体(流体が細胞と接触している)への接触を包含する。「投与」及び「治療」はまた、インビトロ及びエクスビボ処置、例えば、試薬、診断剤、結合化合物、又は別の細胞による、細胞のインビトロ及びエクスビボ処置を意味する。本明細書で使用される場合、「治療」は、治療されている個体又は細胞の自然経過を変更しようとする試みにおける臨床介入を指し、臨床病理学の経過前又は経過中に行うことができる。治療の望ましい効果としては、疾患又はその状態若しくは症状の発生又は再発を予防すること、疾患若しくは状態の発症を遅延すること、疾患の状態若しくは症状を緩和すること、疾患の任意の直接的若しくは間接的な病理学的結果を軽減すること、疾患進行の速度を低減すること、疾患状態を改善又は緩和すること、並びに寛解を達成すること又は改善された予後が挙げられる。
【0027】
「免疫グロブリン」(Ig)とも呼ばれる「抗体(antibodies)」又は「抗体(antibody)」という用語は、一般に、4つのポリペプチド鎖である2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含み、したがって、多量体タンパク質であるか、又はそれらの同等のIgホモログ(例えば、重鎖、単一ドメイン抗体(sdAb)又は重鎖若しくは軽鎖のいずれかに由来し得るナノボディのみを含むラクダ科抗体)を含む。「抗体」という用語は、抗体ベースの結合タンパク質、標的結合能力を保持する修飾抗体形式を含む。「抗体」という用語はまた、Ig分子の本質的なエピトープ結合特徴を保持し、二重特異性(dual specific)、二重特異性(bispecific)、多重特異性、及び二重可変ドメインIgを含む、完全長の機能的な変異体、バリアント、又はそれらの誘導体(マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全ヒト抗体を含むが、これらに限定されない)を含む。Ig分子は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)及びアロタイプのものであり得る。Ig分子はまた、例えば、Fcγ受容体又は新生児Fc受容体(FcRn)に対する親和性を増強又は低減するために、変異導入され得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」という用語は、完全長ではなく、標的結合を示す抗体に由来する少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む分子に関する。抗体断片は、対応する完全長抗体と同じエピトープ又は標的に結合することができる。抗体断片としては、(i)Fab断片:可変軽(VL)ドメイン、可変重(VH)ドメイン、定常軽(CL)ドメイン、及び定常重1(CH1)ドメインからなる一価断片である、(ii)F(ab’)2断片:ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片である(F(ab’)2断片の還元により、遊離スルフヒドリル基を有する2つのFab’断片が生じる)、(iii)Fab(Fa)断片の重鎖部分:VHドメイン及びCH1ドメインからなる、(iv)可変断片(Fv)断片:抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなる、(v)ドメイン抗体(dAb)断片:単一可変ドメインを含む、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、(vii)単鎖Fv断片(scFv)、(viii)ダイアボディ:VHドメイン及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、そのドメインが別の鎖の相補ドメインと対合され、2つの抗原結合部位が生成される、二価の二重特異性抗体である、(ix)直鎖状抗体:相補性軽鎖ポリペプチドと共に、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む、(x)二重可変ドメイン免疫グロブリン、(xi)単独又は任意の組み合わせの免疫グロブリン重鎖及び/又は軽鎖の他の非完全長部分、又はその変異体、バリアント、若しくは誘導体、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明で使用される場合、「抗体ベースの結合タンパク質」という用語は、少なくとも1つの抗体由来VH、VL、又はCH免疫グロブリンドメインを、他の非免疫グロブリン又は非抗体由来成分との関連で含有する任意のタンパク質を表し得る。かかる抗体ベースのタンパク質には、(i)免疫グロブリンCHドメインの全て又は一部を有する受容体又は受容体成分を含む結合タンパク質のFc融合タンパク質、(ii)VH及び/又はVLドメインが代替分子足場に結合される結合タンパク質、又は(iii)免疫グロブリンVH、及び/若しくはVL、及び/若しくはCHドメインが、天然に存在する抗体若しくは抗体断片に通常見られない様式で組み合わされる及び/又は組み立てられる分子、が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
「抗体-薬物コンジュゲート」又は「ADC」という用語は、毒素(又は薬物)が連結されている抗体又は抗体断片を指す。ADCでは、毒素が、切断可能又は切断不可能なリンカーによって抗体又は抗体断片にコンジュゲートされる。
【0031】
「抗GPC3治療剤」という用語は、GPC3を標的とする治療剤を指す。望ましい効果又は有益な効果には、(a)がん細胞の更なる増殖又は拡散の阻害、(b)がん細胞の死滅、(c)がん再発の阻害、(d)がん関連症状(疼痛など)の緩和、低減、緩和、若しくは阻害、又は症状の頻度の低減、並びに(e)患者の生存率の改善、が含まれる。標的化治療剤は、腫瘍細胞上に発現されるGPC3抗原に特異的に結合する結合部分を含む。抗GPC3治療剤のいくつかの非限定的な例としては、キメラ抗原受容体ポリペプチド、抗GPC3抗体及び/又は抗体-薬物コンジュゲートを有する遺伝子改変細胞が挙げられる。
【0032】
「補助診断」という用語は、本明細書では、LPS又は非LPSなどのがんの特定のタイプの症状又は状態の存在、程度、又は他の性質に関する臨床的決定を行うのを補助する方法を指すために使用される。LPSなどのがん又はMRCLSなどのそのサブタイプの診断は、当業者が使用するであろう任意のプロトコルに従って行われ得る。「明視野型画像」又は「仮想染色画像」(VSI)という用語は、明視野染色プロトコルから得られた画像のものをシミュレートする生体試料の画像を指す。画像は、明視野画像と同様のコントラスト、強度、及び配色を有する。これにより、核、上皮、間質、又は任意のタイプの細胞外マトリックス材料の特徴を含むがこれらに限定されない、生体試料内の特徴を、あたかも明視野染色プロトコルが生体試料に直接使用されたかのように特徴付けることを可能にする。
【0033】
「がん」、「がん性」、「腫瘍」、又は「悪性」という用語は、典型的には、無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか又は説明する。がんの例としては、がん腫、リンパ腫、白血病、芽腫、及び肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。そのようながんのより具体的な例としては、扁平上皮がん、骨髄腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胃腸(管)がん、腎臓がん、卵巣がん、肝臓がん、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、前立腺がん、甲状腺がん、黒色腫、膵臓がん、多形性膠芽腫、胃がん、膀胱がん、及び肉腫が挙げられる。
【0034】
「化学剤」という用語は、フルオロフォア又はフルオロフォアと結合剤との間の切断可能なリンカー(存在する場合)を修飾することができる1つ以上の化学物質を含み得る。化学剤は、固体、溶液、ゲル、又は懸濁液の形態でフルオロフォアと接触させることができる。シグナルを改変するのに有用な好適な化学剤としては、pHを修飾する薬剤(例えば、酸又は塩基)、電子供与体(例えば、求核剤)、電子受容体(例えば、求電子剤)、酸化剤、還元剤、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
「キメラ抗原受容体」又は「CAR」という用語は、免疫エフェクター細胞で発現されるように操作され、細胞表面抗原に特異的に結合し、1つ以上のシグナル伝達分子を用いてそのような免疫エフェクター細胞を活性化する人工の抗原受容体を指す。免疫エフェクター細胞がT細胞である場合、活性化は、細胞殺傷、増殖、及び/又はサイトカイン産生をもたらし得る(Jena et al.,2010)CARは、養子細胞移入を伴う療法として使用され得る。造血細胞、例えば、PBMCは、患者から取り出され、CARを発現するように改変される。CARは、細胞外抗原結合ドメイン、例えば、scFvによって媒介される腫瘍関連抗原に対して特異性に発現され得、認識は、ヒト白血球抗原(HLA)の提示、又は依然としてHLA提示ペプチドを認識する操作されたT細胞受容体とは独立している(Zhang & Wang,2019)。本発明では、HLA提示とは独立して腫瘍関連抗原に結合することができる、抗原結合ドメイン(例えば、一本鎖可変断片(scFv))を有する狭義のCARが好ましい。CARは、細胞内活性化ドメイン、膜貫通ドメイン、及び任意選択的に、ヒンジドメインを更に含む。CARの特異性の設計は、受容体(例えば、ペプチド)のリガンドに由来し得る。
【0036】
「切断可能なリンカー」という用語は、腫瘍環境内で細胞外で切断されるように、又はリソソーム内で細胞内で切断されるように設計され得る 切断可能なリンカーは、標的細胞の外部又は内部のいずれかに存在し得る還元力又は酵素分解の異なる条件を利用する。抗体-薬物コンジュゲートのいくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、ジペプチド(例えば、バリン-シトルリン及びアラニン-アラニン)であり得る。
【0037】
「蛍光マーカー」という用語は、特定の細胞内区画を選択的に染色するフルオロフォアを指す。好適な蛍光マーカー(及び該当する場合、それらの標的細胞、細胞内区画、又は細胞成分)の例は、当該技術分野で周知である。
【0038】
「フルオロフォア」という用語は、特定の波長の光に曝露することによって励起されるときに(異なる波長で)光を放出する化合物を指す。「蛍光」、「蛍光」、又は「蛍光シグナル」という用語は全て、励起された蛍光団による光の放出を指す。蛍光団は、それらの放出プロファイル、又は「色」の観点から説明され得る。例えば、緑色フルオロフォア(例えば、Cy3、FITC、及びオレゴングリーン)は、一般に515~540ナノメートルの範囲の波長でのそれらの放射によって特徴付けられ得る。赤色フルオロフォア(例えば、テキサスレッド、Cy5、及びテトラメチルローダミン)は、一般に590~690ナノメートルの範囲の波長でのそれらの放射によって特徴付けられ得る。フルオロフォアの例は、当該技術分野で周知である(WO2011/138462A1;(Giepmans et al.,2006;Zhang et al.,2002)。
【0039】
「結合剤」という用語は、生体試料中の1つ以上の標的に結合し得る生体分子を指す。結合剤は、標的に特異的に結合し得る。好適な結合剤は、天然又は修飾ペプチド、タンパク質(例えば、抗体、アフィボディ、又はアプタマー)、核酸(例えば、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、又はアプタマー)、多糖類(例えば、レクチン、糖類)、脂質、酵素、酵素基質又は阻害剤、リガンド、受容体、抗原、ハプテンなどのうちの1つ以上を含み得る。好適な結合剤は、分析される試料及び検出に利用可能な標的に応じて選択され得る。例えば、試料における標的は、リガンドを含んでもよく、結合剤は、受容体を含んでもよく、又は標的は、受容体を含んでもよく、プローブは、リガンドを含んでもよい。同様に、標的は、抗原を含み得、結合剤は、抗体又は抗体断片を含み得、又はその逆であり得る。
【0040】
「インサイツ」という用語は、一般に、元の位置(例えば、無傷の臓器若しくは組織)、又は臓器若しくは組織の代表的なセグメントで発生する事象を指す。いくつかの実施形態では、標的のインサイツ分析は、生物、臓器、組織試料、又は細胞培養物を含む様々な供給源に由来する細胞に対して行われ得る。インサイツ分析は、標的がその起源の部位から取り出される場合に失われ得るコンテキスト情報を提供する。したがって、標的のインサイツ分析は、標的に結合したプローブが細胞内に残っている場合に細胞膜が完全に無傷であるか又は部分的に無傷であるかにかかわらず、細胞全体又は組織試料内に位置する標的に結合したプローブの分析を説明する。更に、本明細書に開示される方法は、固定されているか又は固定されていない細胞又は組織試料における標的をインサイツで分析するために用いられ得る。
【0041】
「診断」という用語は、分子的若しくは病理学的状態、疾患若しくは状態の特定又は分類を指すために本明細書で使用される。例えば、「診断」とは、特定のタイプの肉腫の特定を指し得る。「診断」はまた、LPSの特定のサブタイプの分類を指す場合がある。
【0042】
「相同性」という用語は、2つのポリペプチド配列が最適にアライメントされているときのそれらの間の配列類似性を指す。2つの比較される配列の両方における位置が、同じアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合、例えば、2つの異なるAbの軽鎖CDRにおける位置が、アラニンによって占められている場合、2つのAbは、その位置で相同である。相同性の割合は、2つの配列が共有する相同的な位置の数を、比較する位置の総数で割り、100倍したものである。例えば、配列が最適にアライメントされるときに、2つの配列における10箇所の位置のうちの8箇所が一致する又は相同である場合、その2つの配列が、80%相同である。一般に、2つの配列が最大のパーセント相同性を与えるようにアラインメントされる場合に比較が行われる。例えば、比較は、BLASTアルゴリズムによって行うことができ、アルゴリズムのパラメータが、それぞれの参照配列の全長にわたって、それぞれの配列間で最大の一致を与えるように選択される。
【0043】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体集団を指し、すなわち、集団を構成する抗体分子は、少量で存在し得る可能な天然に存在する変異を除いて、アミノ酸配列が同一である。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的には、それらの可変ドメイン(特に、それらのCDR)に異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を含み、多くの場合、異なるエピトープに対して特異的である。修飾された「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。
【0044】
「多重特異性」、「多重特異性抗原結合」、及び/又は「多重特異性分子」という用語は、互換的である。それらは、第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインを含み、それらの各々が、各々標的分子と称される異なる分子に結合する。標的分子は、内在化エフェクタータンパク質であり得る。本明細書で使用される場合、「同時結合」という表現は、多重特異性抗原結合分子の文脈では、多重特異性抗原結合分子が、生理学的に適切な条件下で標的分子(T)と内在化エフェクタータンパク質(E)との両方を少なくとも一定期間接触させて、TとEとの間の物理的結合を促進させることを意味する。多重特異性抗原結合分子のT成分及びE成分への結合は、逐次的であり得る。例えば、多重特異性EP3,722,318A1抗原結合分子は、最初にTに結合してからEに結合してもよく、又は最初にEに結合してからTに結合してもよい。いずれにしても、T及びEの両方が多重特異性抗原結合分子によって一定期間(結合の順序にかかわらず)結合される限り、多重特異性抗原結合分子は、本開示の目的のために、T及びEに「同時に結合する」とみなされる。理論に拘束されるものではないが、Tの強化された不活性化は、Eへの物理的結合による細胞内のTの内在化及び分解的再ルーティングによって引き起こされると考えられる。したがって、本発明の多重特異性抗原結合分子は、標的分子の機能を直接遮断又は拮抗することなく、標的分子の活性及び/又は細胞外濃度を、不活性化及び/又は低減するのに有用である。多重特異性分子は、単一の多官能性ポリペプチドであり得るか、又は互いに共有結合的若しくは非共有結合的に会合する2つ以上のポリペプチドの多量体複合体であり得る。当業者には既知であろうが、多重特異性分子又はそのバリアントのうちのいずれも、標準的な分子生物学的技法(例えば、組換えDNA及びタンパク質発現技術)を使用して構築することができる。
【0045】
「修飾抗体形式」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、ポリアルキレンオキシド修飾scFv、モノボディ、ダイアボディ、ラクダ科抗体、ドメイン抗体、二重、三重、若しくは多重特異性抗体、IgA、又はJ鎖及び分泌成分によって結合された2つのIgG構造、サメ抗体、新世界ザルフレームワーク及び非新世界ザルCDR、ヒンジ領域が除去されたIgG4抗体、CH3ドメインに組み込まれた2つの追加の結合部位を有するIgG、Fcガンマ受容体に対する親和性を強化又は低減するように改変されたFc領域を有する抗体、CH3、VL、及びVHを含む二量体化した構築物などを包含する。
【0046】
「切断不可能なリンカー」という用語は、ADCが内在化されることを必要とするリンカーを指し、抗体-リンカー成分は、毒素が放出されるためにリソソームプロテアーゼによって分解される必要がある。リンカーの抗体へのコンジュゲーションも異なり得る。コンジュゲーションは、コンジュゲーションの点として、抗体のポリペプチド構造内のリジン及びシステイン残基の存在に依存し得る。リンカー上の反応性基は、例えば、アミド又はアミジン結合の形成を介して、リジン残基の側鎖にコンジュゲートされ得る。システイン残基を介したコンジュゲーションは、抗体の部分的な還元を必要とする。代替的に、部位特異的な酵素コンジュゲーションを使用してもよい。これには、抗体と反応し、部位又はアミノ酸配列特異的修飾を誘導することができる酵素が必要である。これらの酵素によって認識されるペプチド配列は、コンジュゲートされる遺伝子操作された抗体又は断片に挿入されなければならない場合がある。かかる目的に使用されている酵素は、ソルターゼ、トランスグルタミナーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、及びチューブリンチロシンリガーゼである。ADCリンカーコンジュゲーション及び毒素の概要は、(Ponziani et al.,2020)に見出すことができる。抗体断片への毒素のコンジュゲーションの概要は、(Aguiar et al.,2018)に見出すことができる。毒素を抗体又は抗体断片にコンジュゲートするために使用されるリンカーのタイプ及びコンジュゲーションの方法により、薬物対抗体比(DAR)を決定することができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、少なくとも約7ヌクレオチド長であり、約250ヌクレオチド長未満である、短い一本鎖ポリヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは、合成であってもよい。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互いに排他的ではない。ポリヌクレオチドについての上記の説明は、オリゴヌクレオチドに等しくかつ完全に適用可能である。
【0048】
「薬学的に許容される」という用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与された場合、生理学的に許容され、典型的には有害な反応を引き起こさない、かかる組成物の分子実体及び他の成分を指す。好ましくは、本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、哺乳動物、特にヒトにおける使用に関して、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められた薬局方に収載されていることを意味する。「許容される」とは、担体が組成物の活性成分(例えば、核酸、ベクター、細胞、又は治療用抗体)と適合性があり、組成物が投与される対象に悪影響を及ぼさないことを意味する。本方法で使用される薬学的組成物のうちのいずれかは、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤を含むことができる。緩衝液を含む薬学的に許容される担体は、当該技術分野で周知であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸、抗酸化物質(アスコルビン酸及びメチオニンを含む)、防腐剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなど)、アミノ酸、疎水性ポリマー、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物、金属錯体、並びに/又は非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0049】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、本明細書で互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又は塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチド構造に対する修飾が存在する場合、ポリマーの構築前又は構築後に修飾が付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、当該技術分野で記載されているような標識化成分とのコンジュゲーションによって、重合後に更に修飾され得る(例えば、WO2013/148448を参照されたい)。
【0050】
「一次抗GPC3抗体」という用語は、組織切片においてGPC3(例えば、GC33)に特異的に結合する抗体を指し、一般に、腫瘍試料におけるGPC3の発現の免疫染色アッセイ(例えば、免疫組織化学及び免疫蛍光)で使用される最初の抗体である。
【0051】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、及び/又は生理学的特性に基づいて特徴付けられる及び/又は特定される細胞及び/又は他の分子実体を含む、患者から得られる又は患者に由来する組成物を指す。
【0052】
「二次抗体」という用語は、一次抗GPC3抗体に特異的に結合し、それによって、GPC3の発現の免疫染色アッセイ(例えば、IHC及びIF、又はインサイツハイブリダイゼーション)において、一次抗体と後続の検出試薬(存在する場合)との間に架橋を形成する抗体を指す。
【0053】
「対象」という用語は、任意の生物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、カニクイザル、及びヒト)を含む。「患者」又は「対象」とは、療法が望まれる、又は臨床試験、疫学研究に参加する、又は対照として使用される任意の単一の対象を指し、ヒト、並びにマウス、ラット、及びカニクイザルなどの哺乳動物の獣医学的患者を含む。本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、ヒト又は非ヒト動物を指す。典型的には、「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、対象に関して本明細書において互換的に使用され得る。したがって、「患者」には、がんなどの疾患の治療及び/又は診断を受けているヒト又は非ヒト哺乳動物が含まれる。
【0054】
「組織試料」という用語は、対象の組織から得られた類似の細胞のコレクションを意味する。組織試料の供給源は、新鮮な、凍結された、及び/又は保存された組織試料からの固形組織であり得る。組織試料はまた、個体から採取された及び/又は個体に由来する初代又は培養細胞又は細胞株であり得る。組織試料は、保存剤、抗凝固剤、緩衝液、固定剤、栄養素、抗生物質などの、自然界では組織と自然に混ざり合っていない化合物を含有し得る。組織試料はまた、対象から単離された流体であり得る。非限定的な態様では、そのような試料の例としては、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、全血又は任意の血液画分、血液製剤、血液細胞、腫瘍、洗浄によって得られた任意の試料(例えば、気管支に由来する試料)、及びインビトロで細胞培養物を構成する成分の試料が挙げられる。
【0055】
「治療剤」という用語は、がんの治療において有用な化学化合物又は生体分子である。治療剤のクラスとしては、アルキル化剤、抗代謝物質、キナーゼ阻害剤、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞傷害性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、光増感剤、並びに腫瘍の維持及び/又は増殖を支持する任意の生物学的経路におけるリガンド/受容体シグナル伝達を遮断する抗体及び融合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の治療方法で有用な治療剤としては、細胞分裂阻害剤、細胞傷害性剤、抗体-薬物コンジュゲート、キメラ抗原受容体ポリペプチド、及び免疫療法剤が挙げられる。
【0056】
「治療有効量」という用語は、例えば、がん細胞数の減少、腫瘍サイズの減少、末梢臓器へのがん細胞の浸潤率の減少、及び腫瘍転移率又は腫瘍増殖率の減少などの少なくとも1つの肯定的な治療効果を達成することによって、対象又は哺乳動物におけるがんを「治療する」ために有効な治療剤の量を指す。がんにおける肯定的な治療効果は、いくつかの方式で測定することができる(Weber,2009を参照されたい)。
【0057】
「組織切片」という用語は、組織試料の単一の部分又は部分、例えば、正常組織又は腫瘍の試料から切り取られた組織の薄いスライスを指す。
【0058】
「毒素」という用語は、合成分子、植物分子、真菌分子、又は細菌分子に基づき得る細胞傷害性剤及び/又は細胞分裂阻害剤を指す。細胞傷害性又は細胞分裂阻害性とは、それらが、細胞、特に典型的にはそれらの代謝回転の増加に起因する悪性細胞の増殖を阻害し、かつ/又は細胞の複製を阻害し、かつ/又は細胞を死滅させることを意味する。
【0059】
「治療する」又は「治療すること」という用語は、治療剤(例えば、本発明の抗体又は抗原結合断片のうちのいずれか)を含有する組成物を、その薬剤が治療活性を有する、1つ以上の疾患症状を有する又は疾患を有する疑いのある対象若しくは患者に、内用又は外用で投与することを意味する。典型的には、薬剤は、そのような症状の退行を誘導するか、又は任意の臨床的に測定可能な程度まで進行を阻害することによって、治療された対象又は集団における1つ以上の疾患症状を緩和するのに有効な量で投与される。任意の特定の病気の症状を緩和するのに有効な治療剤の量(「治療有効量」とも称される)は、患者の疾患状態、年齢、及び体重などの要因、並びに対象において所望の応答を引き出す薬物の能力によって異なり得る。疾患症状が緩和されているかどうかは、その症状の重症度又は進行状態を評価するために、医師又は他の熟練した医療提供者によって典型的に使用される任意の臨床測定によって評価することができる。
【0060】
詳細な説明
肉腫は、小児固形腫瘍全体の約20%及び成人の固形腫瘍の約1%を占める間葉起源のまれな悪性腫瘍群である(Abaricia & Hirbe,2018;Hui,2016)。肉腫は、(i)軟部組織肉腫(STS)及び(ii)骨肉腫に大別される。STSは10万人当たり約3.4人の発生率を有し、診断年齢の中央値が59歳であることが報告されている(米国国立がん研究所のサーベイランス、疫学、及び最終結果プログラムによると、骨肉腫は更にまれであり、全てのがん診断の約0.2%である(Hui,2016)。脂肪肉腫(LPS)は、脂肪組織から生じ、脂肪分化に影響を及ぼす悪性腫瘍である。これは、STSの最も一般的なタイプであり、新たに診断された成人肉腫全体の17~25%を占める(Dodd,2012;Henze & Bauer,2013;Singhi & Montgomery,2011)。世界保健機関(WHO)は、LPSを、組織学的に以下の4つのサブタイプに分類している:すなわち、(i)異型脂肪腫様腫瘍(ALT)/高分化型LPS(WDLPS;LPS全体の40~45%;低悪性度、5年生存率が93%)、(ii)脱分化型LPS(DDLPS;高悪性度、5年生存率が45%)、(iii)粘液型LPS(MLPS;低悪性度だが、10%の患者が転移を発症し、10年生存率が60%)/円形細胞型脂肪肉腫LPS(RCLPS;LPS全体の30~35%;高悪性度)、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫(MRCLS)、(iv)多形性LPS(PLP);LPS全体の15%未満;予後不良の高悪性度)。混合型LPSとして知られている第5のサブタイプは、1つ以上のサブタイプの組織学的組み合わせからなる。WDLPS及びDDLPSは両方とも、同じ基礎的な遺伝子変化を共有し、同様の臨床的特徴を示すため、今日では一緒に分類されている(Amer et al.,2020;Henze & Bauer,2013;Jo & Fletcher,2014)。
【0061】
粘液型/円形細胞型脂肪肉腫(MRCLS)は、LPSの約30%を占め、やや若い年齢層で発生する傾向があり、発生率のピークは40代である。これらの腫瘍は、大腿又は膝窩腔内の下肢で優先的に発症し(75%)、一方、後腹膜ではほとんど発症しない。全体的に、MRCLSについて報告された局所再発率は、15%~30%の範囲である。いくつかの研究では、遠隔転移の20~40%のリスクが報告されている。興味深いことに、MRCLSは、DDL及び他のSTSと比較して、他の軟部組織部位、腹腔内/後腹膜腔又は骨への転移が一般的であり(66%)、孤立した肺転移の割合が低い(34%)という異常な転移パターンを有する。MRCLSについて報告された疾患特異的死亡率は、12%~30%の範囲である。細胞遺伝解析及び分子解析では、MRCLSは、症例の95%以上でFUS-DDIT3遺伝子融合をもたらす反復的な相互転座t(12;16)(q13;p11)を特徴とする。これらの融合タンパク質の阻害を標的とする療法は、MRCLSの治療のために開発されている(Lee et al.,2018)。
【0062】
MRCLSの標準治療には、局所的な原発性疾患の外科的切除が含まれる。進行性又は転移性疾患を有する患者において、MRCLSは、他のLPSサブタイプと比較して、放射線療法及び細胞傷害性化学療法に対する感受性が高いことで知られている。しかしながら、適切な局所治療にもかかわらず、約40%の患者が再発する。化学療法は、通常、進行性又は切除不能な疾患に対して投与される。通常、これには、第一選択療法として、単独で又はイホスファミドとの併用で、ドキソルビシン、及び第二選択療法として、トラベクテジンが含まれる。MRCLSにおけるドキソルビシンベースのレジメンで行われた研究は、45~50%の全奏効率を示した。トラベクテジンは、MRCLSにおいて非常に活性であることが証明された。今日、トラベクテジンは、STSの第二選択療法として承認されており、STSのいわゆる「組織学主導型」医学療法において重要な役割を果たしている。MRCLSでは、トラベクテジンは、標準的な寸法基準によって評価した場合、50%の範囲の奏効率、及び80%の範囲の6ヶ月の無増悪生存期間(PFS)を得ることができる。ただし、これは、ドキソルビシン及びトラベクテジンの2つの薬物に当てはまる。腫瘍がこれらの薬物に耐性である場合、現時点では、MRCLS患者において顕著な活性を有する他の医療選択肢はない(Regina & Hettmer,2019;Sanfilippo et al.,2013)。チロシンキナーゼ阻害剤であるパゾパニブ及びスンチニブを評価したが、MRCLSの治療では、それらを単独で使用することを保証することができなかった。最近、MRCLS患者に対して遺伝子改変T細胞を使用する免疫療法レジメンが開始されている(例えば、ClinicalTrials.gov Identifier:NCT03450122及びClinicalTrial.gov identifier NCT03399448を参照されたい)(Abaricia & Hirbe,2018;Lee et al.,2018;Regina & Hettmer,2019;Suarez-Kelly et al.,2019)。それでも、手術不可能な又は転移性のMRCLSを有する患者の治療選択肢は、依然として乏しく、この高い医療ニーズの適応症には新しい療法の選択肢が必要である。
【0063】
本明細書において、抗GPC3抗体(GC33)で染色された様々な腫瘍組織切片で観察される染色パターンの複雑さのために、スコアリングを行う複数の組織試料及び病理学者にわたってGPC3発現レベルを正確かつ確実に定量化するために新しいスコアリングルールが必要であったことが報告される。また、GPC3陽性腫瘍有病率をよりよく理解し、抗GPC3療法の適応症の優先順位付けを行うために、がん患者からの固形腫瘍生検におけるGPC3の発現プロファイルを調査すると、驚くべきことに、LPSのサブグループ(すなわち、MRCLS)が、比較的高いGPC3発現患者集団として特定され、これは、この適応症(すなわち、MRCLS)が、抗GPC3治療剤による治療のために優先及び/又は選択されることを示唆する。
【0064】
グリピカン-3(GPC3は、DGSX、GTR2-2、MXR7、OCI-5、SDYS、SGB、SGBS、及びSGBS1とも呼ばれる)は、がん胎児性腫瘍抗原であり、これは、正常組織における発現が高度に制限され、いくつかの成人及び小児固形腫瘍における罹患率が高いため、抗GPC3療法の魅力的な標的である(Ho & Kim,2011)。GPC3の発現は、様々なヒトがん、例えば、卵巣がん、腎臓がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、及び黒色腫で観察されている。したがって、適格な患者の亜集団を定量化及び特定し、それによって、抗GPC3治療に利益をもたらすアプローチは、成功のために重要になる。
【0065】
本開示は、LPSのニッチサブタイプとしてのMRCLSが、高頻度で陽性のGPC3発現の増加を示すという驚くべき発見に基づいている。このサブタイプのLPS患者におけるGPC3発現の頻度により、臨床的利益が得られる可能性が高い抗GPC3治療剤で治療されるべき、満たされていない医療ニーズが高いMRCLS患者の選択が可能になる。したがって、本開示の一態様は、MRCLSと診断された患者を治療する方法を特徴とし、本方法は、抗グリピカン-3(GPC3)治療剤を患者に投与することを含む。そのような特許は、腫瘍組織試料におけるGPC3の存在を検出するための本明細書に開示される診断方法のうちのいずれかによって特定され得る。
【0066】
一実施形態では、患者は、MRCLSを診断することによって治療のために選択される。脂肪肉腫は、高GPC3発現について記載されておらず、そのサブグループも記載されていない。本発明者らは、驚くべきことに、そのような標的GPC療法を成功させることを可能にする比較的高いGPC3発現を有する患者群としてMRCLSを特定し、GC33抗体に基づくスコアリングルールを使用して、腫瘍におけるそのようなGPC3発現を見出すために、複数の組織試料にわたってGPC3発現を確実に正確に定量化する。MRCLS患者におけるGPC3発現の陽性率が比較的高いために、抗GPC3治療剤で実質的な奏効率を達成するために、GPC3発現に対する患者の層別化を必要としない場合がある。MRCLSは、一般に、CT又はMRIなどの画像モダリティ、続いて、主に、生検試料のFFPE組織切片に対するマトキシリン&エオシン染色後の組織学的評価によって診断される。組織学的には、MRCLSは、ヒアルロン酸の粘液状基質と、低い中心細胞性と、繊細な叢状毛細血管網を伴う紡錘状又は円形細胞の末梢細胞性の増加を含む印環脂肪芽細胞とからなる、多結節性腫瘤として特徴付けられる。これらの腫瘍は、分化を失うにつれて、細胞性が増加した領域を発達させる。次に、MRCLSと診断された患者の大部分は、FUS-DDIT3(CHOP)をもたらす相互転座t(12;16)(q13;p11)を有するため、例えば、FFPE切片でDDIT3(CHOP)に対するFISHを使用して、高い信頼性で診断を確認することができる(Fritchie et al.,2012)。MRCLS患者を診断するための別の非限定的な例は、NY-ESO-1に対するIHC染色によるものである(Hemminger & Iwenofu,2013)。
【0067】
本発明において、組織中のGPC3の発現レベルの検出に使用される生体試料の好ましい例としては、対象由来の調製物が挙げられる。対象由来の調製物は、好ましくは対象から得られた組織であり、より好ましくはMRCLS患者の組織である。MRCLS患者におけるGPC3の発現レベルは、免疫染色及び/又はインサイツハイブリダイゼーションによって決定され得る。好ましい実施形態では、MRCLSの治療のために選択された患者は、GPC3を発現する。非限定的な態様では、本発明はまた、抗GPC3治療剤の有効性を決定するための方法、又は遊離GPC3の濃度から抗GPC3治療剤の継続を決定するための方法、並びに、以下に記載の方法によって組織で検出されるGPC3の発現レベルを決定するための方法を提供し得る。
【0068】
免疫染色及びインサイツハイブリダイゼーションの方法は当該技術分野で周知である(Lu et al.,2021、Wang et al.,2018、Zhou et al.,2018、WO2006/006693、WO2009/116659、WO2013/148448、WO2014/165422、WO2014/097648を参照されたい)。診断アッセイのいずれかは、共通の手順ステップを有し得る。
【0069】
I.抗GPC3治療剤による治療のためのMRCLS患者の特定
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示される抗GPC3治療剤(例えば、抗GPC3 CAR-T細胞療法)のうちのいずれかによる治療に好適な、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫(MRCLS)患者を診断するための方法を特徴とする。簡潔に述べると、腫瘍生検試料は、候補患者から採取され、生検試料におけるGPC3の存在及び/又はGPC3のレベルについて、例えば、免疫染色アッセイを介して検査され得る。GPC3又は特定のレベルのGPC3の存在を示す腫瘍生検試料が特定され得、生検試料が得られる患者は、抗GPC3療法(例えば、本明細書に開示されるもの)による治療に好適な患者として特定され得る。いくつかの実施形態では、固定組織試料は、本明細書に開示される診断アッセイで使用され得る。代替的に、流体試料が使用され得る。
【0070】
更に、GPC3のレベルは、本明細書に開示される治療方法のうちのいずれかの有効性を評価するためのバイオマーカーとしても使用され得る。したがって、本開示はまた、MRCLSの治療(例えば、本明細書に開示される抗GPC3療法のうちのいずれか)を受けている又は受けようとしているMRCLS患者の治療有効性を評価するための方法を提供する。MRCLS患者からの好適な生体試料中のGPC3のレベルは、本明細書に開示されるアッセイ方法又は当該技術分野で既知のアッセイ方法のうちのいずれかを使用して測定され得る。本明細書に開示されるMRCLS患者に対するGPC3標的化薬物療法の有効性は、患者の抗GPC3治療剤の開始前、又は抗GPC3療法の継続前に決定され得る。例えば、医師は、例えば、本明細書に開示されるGPC3発現スコアを、抗GPC3治療剤による治療に感受性のあるMRCLS型と診断されている患者を治療する方法を決定する際のガイドとして使用することができる。いくつかの事例では、医師は、上に開示された方法のうちのいずれかで、診断検査を使用して、抗GPC3治療剤及び/又は他の化学療法剤による治療の開始前に患者から取り出された腫瘍組織試料中のGPC3発現を決定することができるが、医師は、個体が第1の用量の抗GPC3治療剤を投与された後にいつでも次の検査を指示することができることが想定される。
【0071】
A.固定組織試料を使用する診断アッセイ
(i)組織切片の試料採取及び調製
MRCLS患者からの腫瘍生検を使用して、GPC3発現をスコアリングするための染色組織切片を調製する。生検は、典型的には、抗GPC3治療剤による治療を開始する前に、対象から採取される。更に、生検は、GPC3陽性を確認するか、又はその発現の上方調節を観察するために、治療中に得ることができる。したがって、腫瘍試料は、一定期間にわたって対象から採取され得る。腫瘍試料は、外科的切除、吸引、又は生検を含むがこれらに限定されない、様々な手順によって得ることができる。いくつかの実施形態では、組織試料が切片化され得るように、組織試料は、最初に固定され、次いで、上昇系列のアルコールによって脱水され、浸潤され、パラフィン又は他の切片化媒体で包埋され得る。代替の実施形態では、組織試料は、切片化され、その後固定され得る。いくつかの実施形態では、組織試料は、パラフィンに包埋され、処理され得る。中性緩衝ホルマリン、グルタルアルデヒド、ブイン、又はパラホルムアルデヒドは、固定剤の非限定的な例である。好ましい実施形態では、組織試料は、ホルマリンで固定される。いくつかの実施形態では、固定組織試料はまた、パラフィンに包埋されて、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)組織試料を調製する。パラフィンの例としては、Paraplast、Broloid、及びTissuemayが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
単一の組織試料の複数の切片が、本発明に従って調製及び分析され得ることが理解される。各組織切片は、3μm~15μm、好ましくは3μm~8μmの厚さを有する。一実施形態では、組織切片は、腫瘍生検試料から得られ、切片は、3μm~15μmの厚さを有する。一実施形態では、腫瘍試料におけるGPC3発現のIHCアッセイでは、5μmの厚さのFFPE固定組織切片を使用した。別の実施形態では、腫瘍試料におけるGPC3発現のISHアッセイでは、6μmの厚さのFFPE固定組織切片を使用した。いくつかの実施形態では、本発明のスコアリングプロセスは、約3μm~8μm、好ましくは5μmのFFPE組織切片で行われ、これらは、顕微鏡スライド上にマウントされ、乾燥される。
【0073】
(ii)免疫染色に使用される抗GPC3抗体
本明細書で使用される場合、一次抗体は、IHC及びIFの両方で免疫染色に使用された抗GPC3抗体(マウスモノクローナルAbGC33;カタログ番号790-4564;Ventana)である。GC33抗体は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンGPC3に対して特異的に指向される。抗GPC3抗体は、他の抗原と比較してヒトGPC3への優先的な結合を示すが、この特異性は、絶対的な結合特異性を必要としない。抗hGPC3抗体は、その結合が試料におけるヒトGPC3の存在を決定する場合、例えば、IHC診断アッセイで偽陽性などの望ましくない結果を生じさせることなく、ヒトGPC3に特異的であるとみなされる。本発明のプロセス及び方法における一次抗体として有用な抗体又はその結合断片は、任意の非GPC3タンパク質との親和性よりも少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、最も好ましくは少なくとも100倍高い親和性でヒトGPC3に結合する。ヒト対象由来の腫瘍試料の組織切片は、GC33 Abによって産生される、ヒト由来の腫瘍試料のFFPE切片又は凍結組織切片で本質的に同じ染色結果をもたらす任意の抗hGPC3 Abを使用して、GPC3発現についてスコアリングされ得る。
【0074】
典型的には、IHCアッセイによってヒトGPC3の発現をスコアリングするのに有用な抗GPC3 Ab又は抗原結合断片は、GC33抗体と同じ程度のヒトGPC3に対する特異性を示し、その親和性がモル濃度基準で表される場合、そのヒトGPC3の結合親和性の少なくとも80%、85%、90%、95%、又は100%を保持する。本発明で有用な抗GPC3抗体又は抗原結合断片は、その結合特異性又は親和性を実質的に変化させないGC33 Ab又はGC33からの保存的アミノ酸置換又は非保存的アミノ酸置換を含み得ることも意図される。
【0075】
(iii)免疫染色によるGPC3発現の診断検査
本発明は、増強されたGPC3発現を有するLPS集団内のニッチサブタイプMRCLSを特定した。これは、IHC又はIFアッセイで抗GPC3抗体で免疫染色されているMRCLS腫瘍組織切片におけるGPC3発現をスコアリングするためのプロセスを更に提供する。一実施形態では、MRCLSと診断された患者は、好ましくはGPC3に特異的に結合する抗体で、より具体的には抗体GC33を使用して、IHCによって免疫染色することによって治療のために選択される。これらのスコアリングプロセスの結果は、抗GPC3治療剤による治療のために患者を選択するために使用され得る。
【0076】
IHC又はIFアッセイは、典型的には、抗原賦活化から始まり、これは、試薬及び方法の点で異なる場合がある。抗原賦活化プロセスの例は当該技術分野で周知である(例えば、Leong,1996を参照されたい)。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ処理は、抗原賦活化に使用される。好ましい実施形態では、パラフィン包埋(FFPE)組織切片は、熱誘発抗原賦活化プロセスに供される。IHC又はIFの両方を、直接的又は間接的なアッセイで使用することができる。直接IHC又はIFアッセイにおいて、標的抗原への抗体の結合は、直接決定される。この直接アッセイは、蛍光タグ又は酵素標識一次抗体などの標識された試薬を使用し、これは、更なる抗体相互作用なしで視覚化することができる。典型的な間接アッセイでは、非コンジュゲート一次抗体は、抗原に結合し、次いで、標識された二次抗体が、一次抗体に結合する。
【0077】
一実施形態では、好ましくは組織切片においてGPC3に特異的に結合する一次抗GPC3抗体は、GC33である。これは、一般に、腫瘍試料におけるGPC3発現の免疫染色アッセイ(例えば、IHC及びIF)で使用される最初の抗体である。一実施形態では、一次抗体は、IHCアッセイで使用される唯一の抗体である。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートされる場合、発色性基質又は蛍光性基質を添加して、抗原の可視化を提供する。いくつかの二次抗体が一次抗体上の異なるエピトープ又は同じエピトープのいずれかと反応し得るため、シグナル増幅が生じる。二次抗体は、一次抗GPC3抗体に特異的に結合し、それによって、GPC3発現の免疫染色アッセイ(例えば、IHC及びIF又はインサイツハイブリダイゼーション)において、存在する場合、一次抗体と後続の検出試薬との間に架橋を形成する。一実施形態では、二次抗体は、一般に、腫瘍試料におけるGPC3発現のIHCアッセイで使用される第2の抗体である。
【0078】
IHC又はIFに使用される一次及び/又は二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識されるであろう。いくつかの実施形態では、一次抗体は、検出可能な標識(例えば、常磁性イオン、放射性同位体、蛍光色素、及びNM検出可能物質)に連結され、スライドは、適切な撮像装置を使用してGPC3染色について評価される。他の実施形態では、GPC3と一次抗体との間の免疫複合体は、検出可能な標識に連結された第2の結合剤を使用して検出され得る。第2の結合剤は、好ましくは、二次抗体であり、これは、二次免疫複合体の形成を可能にするのに十分な濃度及び期間でスライドに適用される。次いで、典型的には、スライドを洗浄して、非特異的に結合したあらゆる二次抗体を除去し、二次免疫複合体における標識を検出する。二次抗体は、蛍光色素(染色)、発光色素又は非蛍光色素などの検出可能な部分で独立して標識されているアビジン、ストレプトアビジン、又はビオチンを使用して標識され得る。多くの標識が利用可能であり、これらは一般に、(a)放射性同位体、(b)コロイド金粒子、及び(c)蛍光又は化学発光標識に分類することができる。検出可能な部分の例は、WO2013/148448に広く開示されている。いくつかの例としては、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、フィコエリトリン、フィコシアニン、又は市販のフルオロフォア(例えば、SPECTRUM ORANGE(登録商標)及びSPECTRUM GREEN(登録商標)、並びに/又は上記のうちのいずれか1つ以上の誘導体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
様々な酵素-基質標識が利用可能であり、US4,275,149は、これらのいくつかの概説を提供する。酵素は、一般に、様々な技法を使用して測定され得る発色性基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、基質の色の変化を触媒し得、これは、明視野顕微鏡下で評価され得る。一実施形態では、MRCLSにおけるGPC3の発現を、明視野顕微鏡下で、好ましくはスキャナ(Lecia又はVentana、例えば、Ventana DP 200スキャナ、Aperio AT2)で、IHC発色アッセイで評価した。別の実施形態では、MRCLSにおけるGPC3の発現を、蛍光顕微鏡、好ましくは蛍光スキャナ下で、IFアッセイで評価した。蛍光顕微鏡の例は、限定されないが、倒立顕微鏡、複合顕微鏡、実体顕微鏡、偏光顕微鏡、好ましくは共焦点顕微鏡(Leica)、及び走査型顕微鏡(Leica及びVentana、例えば、Ventana DP 200スキャナ)である。
【0080】
代替的に、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変化させ得る。蛍光の変化を定量化するための技術は、上に記載されている。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、次いで、(例えば、化学発光計を使用して)測定され得るか又は蛍光アクセプターにエネルギーを供与し得る光を放出することができる。酵素標識の非限定的な例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;US4,737,456;WO2013/095896A1)、ルシフェリン、ペルオキシダーゼ(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP))、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされる。当業者は、これを達成するための様々な技術を認識するであろう。例えば、抗体を、ビオチンとコンジュゲートすることができ、上述の標識の4つの広いカテゴリーのうちのいずれかを、アビジンとコンジュゲートすることができ、又はその逆も可能である。酵素を抗体にコンジュゲートするための技術は、O’Sullivan & Marks,1981に記載されている。
【0081】
当業者は、多数の酵素-基質の組み合わせを利用することができる。これらの一般的な概説については、US4,275,149及びUS4,318,980を参照されたい。酵素-基質の組み合わせの例は、
(i)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と、基質としての水素ペルオキシダーゼ(水素ペルオキシダーゼが、例えば、茶色の最終生成物を産生する3,3’ジアミノベンジジン(DAB)、酸化時に薔薇色の最終生成物を形成する3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、青色の最終生成物として沈殿する4-クロロ-l-ナプトール(napthol)(CN)、及び青色~黒色の生成物を生成するp-フェニレンジアミン二塩酸塩/ピロカテコール(pyrocatecol)、オルトフェニレンジアミン(OPD)及び3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB)などの色素前駆体を酸化する)、
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と、パラ-ニトロフェニルホスフェート、ナフトールAS-MXホスフェート、Fast Red TR及びFast Blue BB、ナプトールAS-BIホスフェート、ナプトールAS-TRホスフェート、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル(indoxyl)ホスフェート(BCIP)、Fast Red LB、Fast Garnet GBC、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、及びヨードニトロテトラゾリウムバイオレット(INT)、並びに
(iii)β-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)と、発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-P-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル-P-D-ガラクトシダーゼ)である。
【0082】
抗体分子を様々な部分にコンジュゲートするための当該技術分野で既知の任意の方法が用いられ得、David & Reisfeld,1974、Nygren,1982、Pain & Surolia,1981に記載されている方法が含まれる。
【0083】
(iv)免疫染色スコアリングプロセス
MRCLS患者の組織切片の染色プロセスを完了した後、スライドを、ヒト(例えば、病理医)又は特異的染色結果と非特異的染色結果を区別するようにプログラムされたコンピュータのいずれかによって、GPC3染色について分析する。この分析は、低倍率、中倍率(例えば、10~20倍)、及び高倍率(例えば、40~63倍)で顕微鏡を通してスライドを直接観察することによって、又は低、中、及び高倍率で撮影されたスライドの高解像度画像を観察することによって行うことができる。典型的には、染色された腫瘍細胞の検出し全体像のために、低倍率及び中倍率を使用する。典型的には、中倍率及び高倍率を使用して、個々の腫瘍細胞を検査して、GPC3の細胞膜への少なくとも部分的な局在化(頂端及び円周)及び細胞質染色を示す生存細胞の数及び強度を推定する。小管の染色パターンも記録された。好ましい実施形態では、IHCアッセイされた各染色組織切片に、Hスコアが割り当てられる。Hスコアは、(i)試験した切片の全てにおける生存GPC3染色腫瘍細胞の全てにわたって、染色なし、弱い染色(+1)、中程度の染色(+2)、及び強い染色(+3)を有する細胞の4つの別個のパーセンテージを推定することを含み、細胞が、弱い染色、中程度の染色、又は強い染色のパーセンテージに含まれる少なくとも部分的な膜及び/又は細胞質染色を有しなければならず、4つのパーセンテージの合計が100に等しく、(ii)推定される割合を1*(1+の染色強度を有する腫瘍細胞のパーセンテージ)+2*(2+の染色強度を有する腫瘍細胞のパーセンテージ)+3*(1+の染色強度を有する腫瘍細胞のパーセンテージ)の式に入力し、Hスコアとして、式の結果を組織切片に割り当てる。Hスコアは、染色強度の成分と、0~500、好ましくは0~300の範囲を有する陽性細胞のパーセンテージを組み合わせたものである。腫瘍細胞における総(細胞質及び膜)Hスコア>30のカットオフを使用して、GPC3(GC33)IHCアッセイで染色された検体の陽性/陰性状態を決定する。
【0084】
このような染色手順を使用して、GPC3治療剤による治療のための標的抗原GPC3の存在により、患者を選択することができる。一実施形態では、MRCLS患者は、細胞質/膜Hスコアを決定することによって選択される。いくつかの実施形態では、MRCLS組織試料におけるGPC3発現の所定の閾値は、30~300である。したがって、好ましい実施形態では、MRCLSと診断された患者を治療する方法は、免疫染色、好ましくは免疫組織化学(IHC)染色によって、好ましくは30を超える細胞質/膜Hスコアで選択される。別の実施形態では、MRCLS患者は、治療のために30を超えるHスコアで選択される。
【0085】
いくつかの実施形態では、IHCアッセイによる組織切片の調製及び分析に関与する個人は、その試料が試験されている対象の身元を知らない、すなわち、検査室によって受け取られた試料は、検査室に送られる前に、何らかの様式で匿名にされる。例えば、試料は、単に番号又はいくつかの他のコード(「試料ID」)によって特定され得、IHCアッセイの結果は、試料IDを使用して検査を依頼する当事者に報告される。好ましい実施形態では、対象の身元と対象の組織試料との間の関連性は、個人又は個人の医師のみが知っている。
【0086】
いくつかの実施形態では、試験結果が得られた後、診断検査室は、以下の結果のうちのいずれか1つ以上を含み得る検査報告書を作成する:組織試料は、閾値Hスコアに基づいてGPC3発現に対して陽性又は陰性であった。検査報告には、対象が抗GPC3治療剤に応答する可能性が高いかどうかを予測するための結果を解釈する方法に関するガイダンスも含まれ得る。例えば、一実施形態では、患者の腫瘍は、MRCLSに由来し、Hスコアがカットオフ閾値以上である場合、検査報告書は、患者が、抗GPC3治療剤による治療への応答又はより良好な応答と相関するGPC3発現スコアを有することを示してもよく、一方、Hスコアがカットオフ閾値未満である場合、試験報告書は、患者が、抗GPC3治療剤による治療への無応答又は不良な応答と相関し得るGPC3発現スコアを有することを示してもよい。好ましい実施形態では、MRCLSと診断された患者を治療する方法であり、選択が、患者からの腫瘍試料におけるGPC3の免疫染色、好ましくは免疫組織化学染色を含み、GPC3発現レベルが、決定され、所定の閾値レベルのGPC3発現と比較され、患者が所定の閾値レベル以上のGPC3発現レベルを有する場合、患者が治療のために選択される。
【0087】
(v)インサイツハイブリダイゼーションによるGPC3発現の診断検査
免疫染色アッセイを補助するか又は追加的に補完するかのいずれかの、MRCLSにおけるGPC3の発現を評価する別のアプローチは、インサイツハイブリダイゼーションアッセイによる。試料検体収集及び組織切片調製は、免疫染色アッセイの場合、上に開示されたものと同様である。本発明は、概して、発色又は免疫蛍光検出を発色又は蛍光ベースの核酸分析を個別に及び/又は組み合わせる、分析、診断、又は予後用途に適用可能な方法に関する実施形態を含む。開示される方法は、概して、単一の生体試料からの異なる種類の標的(すなわち、タンパク質及び/又は核酸)の検出及び相関に関する。いくつかの実施形態では、同じ検出チャネルを使用して同じ種類の複数の標的(すなわち、それぞれ、タンパク質及び/又は核酸)を検出する方法が開示される。そのような実施形態では、相関関係が、複数の異なる種類の標的間で導かれる。
【0088】
一実施形態では、標的は、核酸を含んでもよく、結合剤は、相補的な核酸を含んでもよい。いくつかの実施形態では、標的及び結合剤の両方は、互いに結合することができるタンパク質を含んでもよい。いくつかの実施形態では、生体試料中の複数の標的を検出する方法は、生体試料中の標的を逐次的に検出することを含む。本方法は、概して、生体試料において第1の標的を検出するステップと、任意選択的に、第1の標的からのシグナルを修飾するステップと、生体試料において第2の標的を検出するステップと、を含む。本方法は、第1又は第2の標的からのシグナルの修飾のステップを繰り返し、続いて、生体試料中の異なる標的を検出することなどを更に含み得る。インサイツハイブリダイゼーションアッセイの設計及び実施の詳細な方法は、当該技術分野で周知である。これは、1つの長いストレッチのオリゴヌクレオチドと共に使用してもよく、又はプローブとして短いストレッチのオリゴヌクレオチドを含んでもよい(WO2013/148448;(Wang et al.,2012)を参照されたい)。全体として、アッセイは以下からな。
(a)生体試料中の核酸分子(例えば、GPC3)に含まれる目的の配列である標的核酸配列を開発すること。核酸分子は、生体試料の細胞の核(例えば、染色体DNA)に存在し得るか、又は細胞質(例えば、mRNA)に存在し得る。いくつかの実施形態では、核酸分子は、生体試料の表面に本質的に存在せず、核酸分子をプローブによってアクセス可能にさせるように、生体試料を処理しなければならない場合がある。いくつかの実施形態では、分析は、生体試料中のGPC3遺伝子の発現レベルに関する情報を提供し得る。ある特定の実施形態では、標的核酸配列は、GPC3をコードする遺伝子配列の一部である配列を含む。他の実施形態では、標的核酸配列は、GPC3をコードする遺伝子配列の一部である配列を含まない。したがって、標的核酸配列は、標的タンパク質とは異なるタンパク質をコードする遺伝子配列の一部である配列を含み得る。
(b)プローブ-上で定義された標的核酸配列を検出するために使用される。プローブが、目的の配列(例えば、GPC3)を含む核酸分子の領域に特異的に結合することが望ましい。したがって、いくつかの実施形態では、プローブは、GPC3配列特異的である。配列特異的プローブは、核酸を含み得、プローブは、ヌクレオチド又はその誘導体の特定の線形配置を認識することが可能であり得る。いくつかの実施形態では、線形配置は、各々がプローブにおける対応する相補ヌクレオチドに結合し得る連続したヌクレオチド又はその誘導体を含み得る。代替的な実施形態では、配列は、プローブ上に対応する相補的な残基を有していなくてもよい1つ、2つ以上のヌクレオチドが存在してもよいため、連続していなくてもよい。プローブの好適な例としては、DNA若しくはRNAオリゴヌクレオチド若しくはポリヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)配列、ロックド核酸(LNA)配列、又はアプタマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、好適なプローブは、ジオキシゲニンdCTP、ビオチンdCTP、7-アザグアノシン、アジドチミジン、イノシン、又はウリジンなどの核酸類似体を含み得る。いくつかの実施形態では、プローブは、核酸プローブ、ペプチド核酸プローブ、ロックド核酸プローブ、又はmRNAプローブを含んでもよい。
【0089】
プローブの長さは、結合の特異性を決定し得る。いくつかの実施形態では、より長いプローブはミスマッチをより受けやすい場合があり、条件に応じて核酸に結合し続ける場合があるため、より小さいプローブのハイブリダイゼーションが、より長いプローブのハイブリダイゼーションよりも特異的である場合がある。プローブは、追加の核酸配列(例えば、スペーサー、ヘッド、及び/又はテール配列)から更になることができる。いくつかの実施形態では、プローブは、約4ヌクレオチド~約12ヌクレオチド、約12ヌクレオチド~約25ヌクレオチド、約25ヌクレオチド~約50ヌクレオチド、約50ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、約100ヌクレオチド~約250ヌクレオチド、約250ヌクレオチド~約500ヌクレオチド、又は約500ヌクレオチド~約1000ヌクレオチドの範囲の長さを有し得る。いくつかの実施形態では、プローブは、約1000ヌクレオチドよりも大きい範囲の長さを有し得る。一実施形態では、設計されたGPC3標的化リボプローブは、長さ1~1000bp、好ましくは300~700bpである。別の実施形態では、設計されたGPC3標的化プローブは、長さ1~100bp、好ましくは15~30bpの複数の短いアプタマーを含む。別の実施形態では、設計されたGPC3標的化プローブは、追加の核酸配列から更になる。
【0090】
次に、核酸(例えば、mRNA)回収プロセスは、当該技術分野で周知の処理を含み得る((Chen et al.,2004;Leong,1996;Patil et al.,2005;Wang et al.,2012)を参照されたい)。一般に、間接アッセイは、ISHで使用される。典型的な間接アッセイでは、センス又はアンチセンス核酸は、標識され得る(例えば、ジゴキシゲニン及びFITCに対して)。非コンジュゲート一次プローブ及び/又はアプタマーは、標的核酸配列に結合する。ISHに使用される二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識されるであろう。標識された二次抗体は、一次プローブに結合し、二次抗体は、酵素標識にコンジュゲートされ、発色性又は蛍光性基質が添加されて、抗原の視覚化を提供する(例えば、HRPコンジュゲート抗DIG)。多数の標識、酵素基質、顕微鏡/スキャナによる検出が利用可能であり、免疫染色内の例は、上に列挙され、開示されている。いくつかの実施形態では、標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされる。当業者は、これを達成するための様々な技術を認識するであろう。一次抗体での場合、いくつかの二次抗体が異なる又は同じエピトープのいずれかと反応し得るため、シグナル増幅が生じる。代替的に、複数のプローブを使用する場合、プローブの各々は、異なるフルオロフォア又は酵素にコンジュゲートされ得、それによって、アッセイ内での一次プローブの検出を可能にする。
【0091】
ある特定の実施形態では、生体試料は、プローブを使用してISHに供され得るMRCLS腫瘍組織試料を含み得る。いくつかの実施形態では、MRCLS組織試料を、免疫蛍光(IF)に加えてISHに供して、組織試料に関する所望の情報を得ることができる。いくつかの実施形態では、そのような核酸(例えば、DNA)は、そのための適切な化学を使用して直接化学標識され得る。
【0092】
ハイブリダイゼーションなどの核酸配列の検出のための方法は周知である。ある特定の実施形態では、特定の核酸配列は、FISH、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(又はインサイツPCRなどのPCRのバリエーション)、RCA(ローリングサークル増幅)又はPRINS(プライムドインサイツ標識)(WO2013/148448に詳細に開示される)によって検出される。例示的な一実施形態では、特定の核酸配列は、FISHによって検出される。好ましいISHアッセイは、Wang et al.(2012)に開示されているように、市販のRNAscope蛍光多重ACD Biotechnie(商標)を用いる。標的核酸配列は、その存在、不在、発現、又は増幅レベルによって分析され得る。タンパク質発現データ及び核酸分析データを更に比較して、組み合わせたデータセットを提供することができる。
【0093】
B.流体試料を使用した診断アッセイ
本発明では、MRCLS患者に対するGPC3発現分析は、流体試料に対する様々な方法によって行われ得る。非限定的な例では、GPC3濃度は、MRCLS患者で単離された血清又は血漿で測定され得る。好ましい実施形態では、ELISAによってMRCLSと診断された患者から単離された血清又は血漿中のGPC3濃度を測定した。例えば、ヒトグリピカン-3ELISAキット(BioMosaics Inc.)を使用して、全血清中の遊離GPC3を定量化した。遊離GPC3をアッセイするための好ましい方法の例としては、GPC3に存在するエピトープに結合することができる抗体を使用する免疫学的方法が挙げることができ、WO2006/006693、WO2009/116659、WO2014/097648、(Hippo et al.,2004)に開示されている。
【0094】
更に、別の非限定的な例では、GPC3濃度は、循環腫瘍DNA(ctDNA)又は無細胞DNA(cfDNA)又は循環RNA(ctRNA、例えば、マイクロRNA)、循環腫瘍細胞(CTC)、及び/又は細胞外小胞(EV、例えば、エクソソーム)を含む液体生検で非侵襲的に評価され得る(Maravelia et al.,2021を参照されたい)。一実施形態では、MRCLS患者の循環細胞は、好ましくは腫瘍細胞であり、非侵襲的な方法によって得ることができる。別の実施形態では、MRCLS患者の循環細胞は、密度に基づいて、好ましくはFicoll-paqueによって単離される。別の実施形態では、単離された循環細胞、好ましくは腫瘍細胞を、抗GPC3抗体GC33で染色した。好ましい実施形態では、単離されたCTCを、好ましくはフローサイトメトリー及び/又は免疫染色によって、抗GPC3抗体GC33で染色した。別の実施形態では、CTCを、抗GPC3プローブを用いたインサイツハイブリダイゼーションに供した。ctDNA又はctRNAは、例えば、CTCについての循環細胞から、又はMRCLS患者の液体生検試料から直接単離され得る。一実施形態では、MRCLS患者から単離された生体試料中のGPC3の変異又は発現の変化(増加又は減少)を確認するステップは、好ましくは、qRT-PCR、次世代配列決定方法、デジタルPCR、デジタル液滴PCRなどによってである。ただし、それが、ctDNAの配列を解析するため又はctDNAの量を測定するために使用される一般的な方法である場合、これに限定されるものではない。本発明の別の実施形態では、本方法は、抗GPC3治療剤による更なる治療を決定するのに役立つ、診断、再発、進行期などの全体的な疾患の進行に関するMRCLSに関する情報を提供し得る。加えて、本発明は、(a)抗GPC3治療剤が投与されるMRCLS患者の生体試料から循環腫瘍DNA(ctDNA)を抽出するステップと、(b)抗GPC3治療剤を投与するステップと、(c)抗GPC3治療剤が投与される同じMRCLS患者から循環腫瘍DNA(ctDNA)を抽出するステップと、を含み得る。CTC又はctDNAをアッセイするための好ましい方法の例は、WO20150/58079、WO2016/179530、WO2020/112566、(Cree et al.,2017、Ge et al.,2021、Ono et al.,2015、Yi et al.,2021)に開示されている。
【0095】
また、本明細書に開示される検出剤(例えば、抗GPC3抗体)のうちのいずれも、流体試料に対して実施される診断アッセイにおいて使用され得る。
【0096】
II.抗GPC3治療剤によるMRCLSの治療
MRCLSには中程度のリスクがあり、患者の約3分の1が転移を発症し、最終的に、それらの腫瘍で死亡する。MRCLSと他のタイプの脂肪肉腫及び他のほとんどの軟部組織肉腫を区別する別の特徴は、それらが体幹及び四肢、後腹膜、胸壁、胸膜、並びに心膜を含む他の軟部組織部位に転移するその傾向である。組織学的に、MRCLS切除検体は、純粋に粘液型、又は円形細胞成分を有する粘液型に分類される。純粋に粘液型のサブグループ内の腫瘍は、細胞性及び脂質分化の点で広い形態学的スペクトルを示す。円形細胞成分は、境界がはっきりした結節、又は粘液型脂肪肉腫の細胞領域からの緩やかな移行のいずれかとみなされる。円形細胞成分は、核細胞質比が増加し、通常は核小体が顕著である原始的な円形細胞を有する非常に細胞性の高い領域として定義される。Trojaniグレーディングシステムによれば、純粋な粘液型脂肪肉腫はグレード2であるが、顕著な円形細胞成分を有する腫瘍はグレード3である(Haniball et al.,2011)。MRCLSは、脊椎及び他の軟部組織(例えば、後腹膜、四肢、及び腋窩)の骨への異常なパターンの転移に関連するが、他の軟部組織肉腫は、肺に転移する傾向があり、一方、他の部位は、典型的には、疾患の進行期に関与することが知られている。更に、肺外転移は、少数のMRCLS患者でのみ観察された(Asano et al.,2012)。
【0097】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に提供されるものなどの抗GPC3治療剤でMRCLS患者を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、MRCLS患者を抗GPC3治療剤で治療するための方法は、グレード1としてステージングされ得る。別の実施形態では、MRCLS患者を抗GPC3治療剤で治療するための方法は、グレード2としてステージングされ得る。別の実施形態では、MRCLS患者を抗GPC3治療剤で治療するための方法は、グレード3としてステージングされ得る。更に、好ましい実施形態では、MRCLS患者を抗GPC3治療剤で治療するための方法は、進行性及び切除不能としてステージングされ得る。いくつかの例では、抗GPC3治療剤は、本明細書に開示される抗GPC3 CAR-T細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗GPC3療法を受けた患者は、本明細書に開示される診断方法のうちのいずれかを使用して特定され得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、医師は、GPC3発現に対してMRCLS腫瘍検査が陽性である患者に適応される医薬品で患者を治療するかどうかを検討することができる。一実施形態では、治療剤は、抗GPC3結合ドメイン、好ましくは、GPC3への結合を保持する抗GPC3抗体又はその機能的断片を含み、好ましくは、治療剤は、抗CD3結合ドメイン又は免疫刺激ポリペプチドでGPC3に結合する、抗GPC3抗体、抗GPC3抗体-薬物コンジュゲート、抗GPC3抗体-放射性核種コンジュゲート、又は抗GPC3抗体若しくは抗体誘導体の融合タンパク質の投与を含む。
【0099】
個々の患者の治療においてGPC3検査結果をどのように使用するかを決定する際、医師は、治療されるMRCLSの病期、患者の年齢、体重、性別、遺伝的背景、人種など、他の関連状況も考慮に入れる場合があり、これには、医師が療法及び/又はその療法による治療レジメンを選択する際のガイドとなるモデルに、これらの要因と検査結果の組み合わせを入力することが含まれる。抗GPC3治療剤のいくつかの非限定的な例としては、キメラ抗原受容体ポリペプチド、抗体-薬物コンジュゲート、二重特異性及び多重特異性が挙げられる。抗GPC3治療剤は、好ましくは経口組成物として、静脈内、皮内、腹腔内、及び/又はカプセル化されて投与され得る。
【0100】
A.抗GPC3治療剤
GPC3を標的とする任意の治療剤は、本明細書に開示される方法において使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、MRCLSの治療に使用するための抗GPC3治療剤は、抗GPC3抗体であり得る。代替的に、抗GPC3治療剤は、抗GPC3キメラ抗原受容体(CAR)及びそのようなものを発現する免疫細胞(例えば、T細胞)などの造血細胞であってもよい。
【0101】
(i)抗GPC3抗体
非限定的な態様では、本発明の抗GPC3治療剤として使用され得る抗GPC3抗体の例としては、細胞毒性毒素とコンジュゲートされた1G12抗体(WO2003/100429)(BioMosaics Inc.によりカタログ番号B0134Rで販売されている)を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)(WO2007/137170)が挙げられ得る。抗GPC3 ADCの他の例は、WO2017/196764及びCN110577600に開示されている。抗原結合分子は、適切なリンカーなどを介してこれらの化合物とコンジュゲートされる。
【0102】
代替的な非限定的な態様では、抗GPC3抗体の例としては、WO2006/006693、WO2009/041062、WO2013/070468に記載されるヒト化抗GPC3抗体が挙げられる。
【0103】
更なる代替的な非限定的な態様では、抗GPC3抗体の例としては、GPC3及びASGPR1を標的とする抗体(WO2016/086813)、並びにGPC3及びCD40を標的とする抗体(WO2020/230901)などの抗GPC3抗体を含む二重特異性抗体が挙げられる。
【0104】
(ii)抗GPC3 CAR及びそれを発現する遺伝子改変された造血細胞
他の実施形態では、本明細書に開示される抗GPC3治療剤は、抗GPC3キメラ抗原受容体(CAR)、及びそのような抗GPC3 CARを発現する免疫細胞(例えば、T細胞)などの造血細胞、例えば、WO2015/172341、CN105949324、及びWO2016/049459に記載されるものであってもよい。
【0105】
本明細書に記載のCARポリペプチドは、細胞ベースの免疫療法において使用される。本明細書に記載のCARポリペプチドは、GPC3への結合親和性を有するscFvを含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、CD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインと、を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、N末端からC末端へ、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、任意選択的な1つ以上の共刺激ドメイン(例えば、CD28共刺激ドメイン、4-1BB共刺激シグナル伝達ドメイン、OX40共刺激シグナル伝達ドメイン、CD27共刺激シグナル伝達ドメイン、又はICOS共刺激シグナル伝達ドメイン;配列番号5、配列番号6、配列番号20、配列番号21、配列番号22)、及びCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0106】
代替的に又は加えて、本明細書に記載のCARポリペプチドは、互いに連結され得るか、又は細胞質シグナル伝達ドメインによって分離され得る2つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。CARポリペプチドにおける細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、任意選択的な共刺激シグナル伝達ドメイン、及び細胞質シグナル伝達ドメインは、直接又はペプチドリンカーを介して互いに連結され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドのうちのいずれも、N末端にシグナル配列を含み得る。
【0107】
いくつかの例では、改変された造血細胞は、GPC3に結合するキメラ受容体ポリペプチドを発現し得る。かかる抗GPC3 CARは、(a)GPC3に結合する細胞外標的結合ドメイン、(b)膜貫通ドメイン、及び(c)細胞質シグナル伝達ドメイン(例えば、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含む細胞質ドメイン)を含み得る。いくつかの例では、(c)は、キメラ受容体ポリペプチドのC末端に位置する。いくつかの事例では、キメラポリペプチドは、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインを更に含み得る。他の事例では、キメラ受容体ポリペプチドは、共刺激シグナル伝達ドメインを含まなくてもよい。他の事例では、CARポリペプチドは、共刺激シグナル伝達ドメインを含まなくてもよい。本明細書に記載のCARポリペプチドのうちのいずれかは、(a)のC末端及び(b)のN末端に位置するヒンジドメインを更に含み得る。他の例では、キメラ受容体ポリペプチドは、任意のヒンジドメインを含まなくてもよい。一実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、GPC3に結合する一本鎖抗体断片(scFv)であり、好ましくは、scFvは、GC33抗体に由来する。いくつかの例では、scFvは、配列番号2の配列を有する。いくつかの実施形態では、CAR内の(b)の膜貫通ドメインは、一回膜貫通タンパク質、例えば、CD8α、CD8β、4-1BB、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16A、OX40、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、CD32、CD64、VEGFR2、FAS、及びFGFR2B(それぞれ、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45)のものであり得る。CD16Aは、CD16A多型バリアントCD16158F(配列番号16及び配列番号17)及びCD16158V(配列番号18及び配列番号18)を包含する(Arriga et al.,2020)。代替的に、(b)の膜貫通ドメインは、天然に存在しない疎水性タンパク質セグメントであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドの少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインは、該当する場合、例えば、4-1BB、CD28、CD28LL→GGバリアント、OX40、ICOS、CD27、GITR、HVEM、TIM1、LFA1、及びCD2(それぞれ、配列番号5、配列番号6、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27)のものであり得る、共刺激分子のものであり得る。
【0108】
いくつかの例では、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28共刺激シグナル伝達ドメイン又は4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインである。いくつかの事例では、共刺激シグナル伝達ドメインの一方は、CD28共刺激シグナル伝達ドメインであり、他方の共刺激ドメインは、4-1BB共刺激シグナル伝達ドメイン、OX40共刺激シグナル伝達ドメイン、CD27共刺激シグナル伝達ドメイン、又はICOS共刺激シグナル伝達ドメインであり得る。特定の例としては、CD28及び4-1BB、又はCD28LL→GGバリアント及び4-1BBが挙げられるが、これらに限定されない。代替的に、キメラ受容体ポリペプチドのうちのいずれかは、任意の共刺激シグナル伝達ドメインを含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドは、(i)CD28膜貫通ドメイン、CD28ヒンジドメイン、又はそれらの組み合わせ(配列番号4)と組み合わせたCD28共刺激ドメイン(配列番号6)、又は(ii)CD8膜貫通ドメイン、CD8ヒンジドメイン、又はそれらの組み合わせ(配列番号3)と組み合わせた4-1BB共刺激ドメイン、好ましくは配列番号5を更に含み得、より好ましくは、CARポリペプチドは、配列番号8又は配列番号9のアミノ酸配列を含む。
【0109】
一実施形態では、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインであり、そのうちの1つが、CD28共刺激シグナル伝達ドメイン又は4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインであり得る。CARポリペプチドは、宿主細胞上で発現されるとき、細胞外抗原結合ドメインが標的分子に結合するために細胞外に位置し、細胞内にシグナル伝達するために、CD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインが細胞内に位置するように構成される。共刺激シグナル伝達ドメインは、活性化及び/又はエフェクターシグナル伝達を誘発するために、細胞質に位置し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドのうちのいずれかにおける(c)の細胞質シグナル伝達ドメインは、CD3ζ(配列番号7)又はFcεR1γの細胞質ドメインであり得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARポリペプチドのヒンジドメインは、適用可能な場合、CD28、CD16A、CD8α、又はIgGのものであり得る。他の例では、ヒンジドメインは、天然に存在しないペプチドである。例えば、天然に存在しないペプチドは、伸長組換えポリペプチド(XTEN)又は(Gly4Ser)nポリペプチド(式中、nは、3~12の整数である(境界値を含む))であってもよい。いくつかの例では、ヒンジドメインは、最大60個のアミノ酸残基を含み得る短いセグメントである。
【0111】
特定の例では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、(i)CD28共刺激ドメイン又は4-1BB共刺激ドメイン、及び(ii)CD28膜貫通ドメイン、CD28ヒンジドメイン、又はそれらの組み合わせを含み得る。更なる特定の例では、本明細書に記載のCARポリペプチドは、(i)CD28共刺激ドメイン又は4-1BB共刺激ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、CD8ヒンジドメイン、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【表2】
【0112】
例えば、CARポリペプチドは、配列番号8及び配列番号9から選択されるアミノ酸配列を含み得る。例示的なCARポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に提供される。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗GPC3 CARを発現する造血細胞は、免疫細胞などの造血細胞におけるグルコース代謝に影響を与える因子(例えば、外因性因子)を更に発現するか又は過剰に発現し得る(WO2020/0370666、WO2020/097346、及びWO2020/010110を参照されたい(その各々の関連する開示が、本明細書で参照される主題及び目的に関して、参照により本明細書に組み込まれる))。そのような因子を使用して、免疫細胞などの造血細胞における糖解経路からグルコース代謝産物を迂回又は再誘導することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、糖解経路からのグルコース代謝産物の再誘導は、本明細書に記載されるもののような1つ以上の因子(例えば、タンパク質又は核酸)を造血細胞(例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞)で発現させる(例えば、過剰発現させる)ことによって達成され得る。そのような遺伝子操作された造血細胞は、同じタイプの天然の造血細胞と比較して、例えば、低グルコース、低アミノ酸、低pH、及び/又は低酸素環境(例えば、腫瘍微小環境)において、増強された代謝活性を有することが予想される。したがって、造血細胞及びキメラ受容体ポリペプチドにおける糖解経路からグルコース代謝産物を再誘導する1つ以上の因子(例えば、ポリペプチド又は核酸)を共発現するHSC又は免疫細胞などの造血細胞は、CARの存在下、(例えば、低グルコース、低アミノ酸、低pH、及び/又は低酸素条件下で)優れた生物活性、例えば、細胞増殖、活性化(例えば、サイトカイン産生の増加、例えば、IL-2若しくはIFNγの産生)、細胞毒性、及び/又はインビボ抗腫瘍活性を示すであろう。
【0115】
したがって、本明細書において、同じタイプの天然造血細胞と比較して、特に、例えば、低グルコース、低アミノ酸、低pH、及び/又は低酸素状態で、調節されたKrebs回路を有する改変された(例えば、遺伝子改変された)造血細胞(例えば、造血幹細胞、例えば、T細胞又はナチュラルキラー細胞などの免疫細胞)が提供される。改変された造血細胞は、Krebs回路調節ポリペプチドを発現するか、又は過剰に発現し得る。いくつかの実施形態では、Krebs回路調節ポリペプチドは、Krebs回路の反応を触媒する酵素であり得る。例としては、IDH1又はIDH2などのイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)、MDH1又はMDH2などのリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、又はホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)が挙げられるが、こられに限定されない。他の実施形態では、Krebs回路調節ポリペプチドは、Krebs回路代謝産物を基質として使用する酵素である。例としては、GOT1(例えば、配列番号13)若しくはGOT2(例えば、配列番号12)などのグルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)(アスパラギン酸トランスアミナーゼ又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼとしても知られている)又はホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1(PCK1)が挙げられるが、これらに限定されない。更に他の実施形態では、Krebs回路調節ポリペプチドは、前駆体をKrebs回路代謝産物に変換する酵素である。例としては、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH1)、グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ1(GPT1)、又はグルタミナーゼ(GLS)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例では、免疫細胞などの改変された造血細胞のうちのいずれかで使用される糖解経路からグルコース代謝産物を再誘導するポリペプチドは、WO2020/037066に以前に開示されたようなGOT2であり得る。他の実施形態は、WO2020/010110に開示されているグルコース輸送体(GLUT1、GLUT3)、又はWO2020/051493に開示されているモノカルボン酸輸送体(MCT1、MCT2、MCT4)などの乳酸モジュレーターなどのグルコース輸入ポリペプチドを有する免疫細胞などの改変された造血細胞であり得る。
【0116】
いくつかの例では、抗GPC3 CARとグルコース代謝に影響を与える因子とを共発現する造血細胞は、同じタイプの野生型造血細胞と比較して、改善されたグルコース取り込み活性を有し得る。いくつかの事例では、造血細胞は、グルコース輸入ポリペプチド、例えば、グルコーストランスポーター(GLUT)又はナトリウム-グルコースコトランスポーター(SGLT)を外因的に発現し得る。例としては、GLUT1、GLUT3、GLUT1 S226D、SGLT1、SGLT2、GLUT8、GLUT8 L12A L13A、GLUT11、GLUT7、及びGLUT4が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
他の例では、抗GPC3 CARとグルコース代謝に影響を与える因子とを共発現する造血細胞は、同じタイプの野生型造血細胞と比較して、調節されたKrebs回路を有し得る。いくつかの事例では、造血細胞は、Krebs回路調節ポリペプチドを外因的に発現し得る。いくつかの例では、Krebs回路調節因子は、Krebs回路における反応を触媒する酵素であり得る。例としては、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、又はホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)が挙げられるが、これらに限定されない。他の事例では、Krebs回路調節ポリペプチドは、Krebs回路代謝産物を基質として使用する酵素であり得る。例としては、グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)又はホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1(PCK1)が挙げられるが、これらに限定されない。更に他の事例では、Krebs回路調節ポリペプチドは、前駆体をKrebs回路代謝産物に変換する酵素であり得る。例としては、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH1)、グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ1(GPT1)、又はグルタミナーゼ(GLS)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
更に他の例では、抗GPC3 CARとグルコース代謝に影響を与える因子とを共発現する造血細胞は、同じタイプの野生型造血細胞と比較して、増強された細胞内乳酸濃度を有し得る。いくつかの事例では、造血細胞は、乳酸調節ポリペプチドを外因的に発現し得る。いくつかの例では、乳酸調節ポリペプチドは、モノカルボン酸トランスポーター(MCT)、好ましくはMCT1、MCT2、又はMCT4であり得る。いくつかの例では、乳酸調節ポリペプチドは、乳酸合成に関与する酵素、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)であり得る。更に他の例では、乳酸調節ポリペプチドは、乳酸合成基質と競合する経路を阻害するポリペプチド、例えば、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ1(PDK1)であり得る。
【0119】
Krebs回路調節ポリペプチドは、好適な種(例えば、ヒト又は非ヒト霊長類)に由来するものなどの哺乳動物Krebs回路調節ポリペプチドからの天然に存在するポリペプチドであり得る。このような天然に存在するポリペプチドは、当該技術分野で既知であり、例えば、上記のアミノ酸配列のうちのいずれかを、例えば、GenBankなどの公的に利用可能な遺伝子データベースを検索するためのクエリとして使用して、得ることができる。本開示で使用するKrebs環調節ポリペプチドは、例示的なタンパク質GOT1(配列番号13)及びGOT2(配列番号12)のうちのいずれか、好ましくはGOT2(配列番号12)と、少なくとも85%(例えば、90%、95%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を共有し得る。
【0120】
抗GPC3 CAR及び任意選択的に本明細書に記載のグルコース輸入ポリペプチドのうちのいずれかを発現する造血細胞を構築するために、グルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドの安定又は一過性発現のための発現ベクターは、本明細書に記載される従来の方法を介して作製され、免疫宿主細胞に導入され得る。例えば、グルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドをコードする核酸は、好適なプロモーターに作動可能に連結されたウイルスベクターなどの1つ又は2つの好適な発現ベクターにクローニングされ得る。いくつかの事例では、キメラ受容体ポリペプチド及びグルコース輸入ポリペプチドの各コード配列は、2つの別個の核酸分子上にあり、2つの別個のベクターにクローニングされ得、これらは、好適な宿主細胞に同時に又は順次導入され得る。
【0121】
代替的に、キメラ受容体ポリペプチド及びグルコース輸入ポリペプチドのコード配列は、1つの核酸分子上にあり、1つのベクターにクローニングされ得る。キメラ受容体ポリペプチド及びグルコース輸入ポリペプチドのコード配列は、2つのポリペプチドの発現が異なるプロモーターによって制御されるように、2つの異なるプロモーターに作動可能に連結され得る。代替的に、キメラ受容体ポリペプチド及びグルコース輸入ポリペプチドのコード配列は、2つのポリペプチドの発現が単一のプロモーターによって制御されるように、1つのプロモーターに作動可能に連結され得る。好適な配列は、2つの別個のポリペプチドが単一のmRNA分子から翻訳され得るように、2つのポリペプチドのコード配列間に挿入され得る。そのような配列、例えば、IRES又はリボソームスキッピング部位は、当該技術分野で周知である。
【0122】
核酸及びベクターは、好適な条件下で、制限酵素と接触させて、互いに対合し、リガーゼと連結され得る、各分子上に相補的な末端を作製することができる。代替的に、合成核酸リンカーは、グルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドをコードする核酸の末端にライゲーションすることができる。合成リンカーは、ベクター内の特定の制限部位に対応する核酸配列を含み得る。発現ベクター/プラスミド/ウイルスベクターの選択は、グルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドの発現のための宿主細胞のタイプに依存するであろうが、真核細胞における組み込み及び複製に好適である必要がある。
【0123】
限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモーター、ウイルスLTR(例えば、ラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1 LTR)、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、ヒトEF1-アルファプロモーター、又は単純ヘルペスtkウイルスプロモーターを含む様々なプロモーターが、本明細書に記載のグルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドの発現に使用され得る。グルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドの発現のための追加のプロモーターには、造血細胞における任意の構成的に活性なプロモーターが含まれる。代替的に、その発現が造血細胞内で調節され得るように、任意の調節可能なプロモーターが使用され得る。
【0124】
加えて、ベクターは、例えば、宿主細胞における安定又は一過性トランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子又はカナマイシン遺伝子などの選択可能なマーカー遺伝子、高レベルの転写のためのヒトCMVの最初期遺伝子由来のエンハンサー/プロモーター配列、ヒトEF1-α遺伝子のイントロン配列、mRNA安定性のためのSV40由来の転写終結シグナル及びRNAプロセシングシグナル、適切なエピソーム複製のためのSV40ポリオーマウイルス複製起点及びCo1E1、内部リボソーム結合部位(IRESe)、多用途の多重クローニング部位、センス及びアンチセンスRNAのインビトロ転写のためのT7及びSP6 RNAプロモーター、作動すると、ベクターを保有する細胞を死滅させる「自殺スイッチ」又は「自殺遺伝子」(例えば、HSVチミジンキナーゼ又は誘導性カスパーゼ(iCasp9など))、並びにグルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリプチドの発現を評価するためのレポーター遺伝子のいくつか又は全てを含み得る。
【0125】
導入遺伝子を含むベクターを生成するための好適なベクター及び方法は、当該技術分野で既知であり、利用可能である。グルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドの発現のためのベクターの調製の例は、例えば、US2014/0106449(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。本明細書に記載のグルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターのうちのいずれかは、本開示の範囲内である。そのようなベクター又はそれに含まれるグルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドをコードする配列は、任意の好適な方法によって、宿主造血細胞などの宿主細胞に送達され得る。ベクターを造血細胞に送達する方法は、当該技術分野で周知であり、DNAエレクトロポレーション、RNAエレクトロポレーション、リポソームなどの試薬を使用するトランスフェクション、又はウイルス形質導入(例えば、レンチウイルス形質導入などのレトロウイルス形質導入)を含み得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、グルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドの発現のためのベクターは、ウイルス形質導入(例えば、レンチウイルス形質導入などのレトロウイルス形質導入)によって宿主細胞に送達される。例示的なウイルスの送達のための方法としては、限定されないが、組換えレトロウイルスが挙げられる(例えば、WO90/07936、WO94/03622、WO93/25698、WO93/25234、WO93/11230、WO93/10218、及びWO91/02805、US5,219,740、及びUS4,777,127、GB2,200,651、及びEP0345242、アルファウイルスベースのベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、WO94/12649、WO93/03769、WO93/19191、WO94/28938、WO95/11984、及びWO95/00655を参照されたい)。いくつかの実施形態では、グルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドの発現のためのベクターは、レトロウイルスである。いくつかの実施形態では、グルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドの発現のためのベクターは、レンチウイルスである。レトロウイルス形質導入を記載している参考文献の例としては、US5,399,346、(Mann et al.,1983)、US4,650,764、US4,980,289、(Markowitz et al.,1988)、US5,124,263、WO95/07358、(Kuo et al.,1993)が挙げられる。WO95/07358は、初代Bリンパ球の高効率の形質導入を記載している。また、WO2016/040441A1を参照されたい(本明細書で参照される目的及び主題に関して、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0127】
グルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドをコードするベクターが、ウイルスベクターを使用して宿主細胞に導入される例では、造血細胞を感染させることができ、ベクターを運ぶウイルス粒子は、当該技術分野で既知の任意の方法によって産生され得、例えば、WO1991/002805A2、WO1998/009271A1、及びUS6,194,191に見出すことができる。ウイルス粒子は、細胞培養上清から回収され、ウイルス粒子を造血細胞と接触させる前に単離及び/又は精製され得る。他の事例では、グルコース輸入ポリペプチドをコードする核酸及びキメラ受容体ポリペプチドをコードする核酸を、同じ発現ベクターにクローニングしてもよい。キメラ受容体ポリペプチド及びグルコース輸入ポリペプチドの発現のためのポリヌクレオチド(そのようなポリヌクレオチドが少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に結合されているベクターを含む)も、本開示の範囲内である。本開示の有用なベクターの非限定的な例としては、例えば、レトロウイルスベクター(ガンマレトロウイルスベクターを含む)、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)、及びレンチウイルスベクターなどのウイルスベクターが挙げられる。いくつかの事例では、グルコース輸入ポリペプチド及び/又はキメラ受容体ポリペプチドをコードする核酸は、トランスポゾンを介して宿主細胞内に送達され得る。いくつかの事例では、コード核酸は、例えば、CRISPR、TALEN、ZFN、又はメガヌクレアーゼによって、遺伝子編集を介して宿主細胞に送達され得る。
【0128】
いくつかの事例では、本明細書に記載の核酸は、2つのコード配列を含み得、一方は、本明細書に記載されるキメラ受容体ポリペプチドをコードし、他方は、グルコース輸入を増強することができるポリペプチド(すなわち、グルコース輸入ポリペプチドポリペプチド)をコードする。本明細書に記載の2つのコード配列を含む核酸は、2つのコード配列によってコードされるポリペプチドが独立した(かつ物理的に別個の)ポリペプチドとして発現され得るように構成され得る。この目標を達成するために、本明細書に記載の核酸は、第1のコード配列と第2のコード配列との間に位置する第3のヌクレオチド配列を含み得る。この第3のヌクレオチド配列は、例えば、リボソームスキッピング部位をコードし得る。リボソームスキッピング部位は、正常なペプチド結合形成を損なう配列である。この機構は、1つのメッセンジャーRNAからの追加のオープンリーディングフレームの翻訳をもたらす。この第3のヌクレオチド配列は、例えば、P2A、T2A、又はF2Aペプチドをコードし得る(例えば、Kim et al.,2011を参照されたい)。非限定的な例として、例示的なP2Aペプチドは、ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号14)のアミノ酸配列を有し得る。別の実施形態では、第3のヌクレオチド配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)をコードし得る。IRESは、末端に依存しない様式で翻訳開始を可能にし、また、1つのメッセンジャーRNAからの追加のオープンリーディングフレームの翻訳を可能にするRNAエレメントである。代替的に、第3のヌクレオチド配列は、第2のポリペプチドの発現を制御する第2のプロモーターをコードし得る。第3のヌクレオチド配列はまた、複数のリボソームスキッピング配列、IRES配列、追加のプロモーター配列、又はそれらの組み合わせをコードし得る。いくつかの例では、核酸又は核酸セットは、発現ベクター又は発現ベクターのセット(例えば、レンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターなどのウイルスベクター)であり得るベクター又はベクターのセット内に含まれる。核酸セット又はベクターセットは、各々が目的のポリペプチドのうちの1つをコードする、2つ以上の核酸分子又は2つ以上のベクターの群を指す(すなわち、解糖経路及びCARポリペプチドからグルコース代謝産物を再誘導するポリペプチド又は核酸)。本明細書に記載の核酸のうちのいずれかは、本開示の範囲内である。
【0129】
本明細書に記載の造血細胞は、グルコース輸入ポリペプチドを発現する免疫細胞であってもよく、ナチュラルキラー細胞、単球/マクロファージ、好中球、好酸球、又はT細胞であってもよい。更に、造血細胞、好ましくは免疫細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、又は組織(例えば、脾臓、リンパ節、胸腺、幹細胞、若しくは腫瘍組織)などの任意の供給源から得ることができる。代替的に、造血細胞は、幹細胞、例えば、造血幹細胞及び人工多能性幹細胞(iPSC)に由来し得る。所望のタイプの宿主細胞を得るのに好適な供給源は、当業者には明らかであろう。いくつかの実施形態では、造血細胞、好ましくは免疫細胞は、本明細書に記載の治療を必要とする患者(例えば、ヒト患者)から得られ得るPBMCに由来する。非限定的な例として、抗CD3、抗CD28抗体、IL-2、IL-15、フィトヘマグルチニン、又は操作された人工刺激細胞若しくは粒子を、T細胞の増殖に使用してもよい。好ましい実施形態では、いくつかの例では、免疫細胞は、内因性T細胞受容体、内因性主要組織適合複合体、内因性β-2-ミクログロブリン、又はそれらの組み合わせの発現が阻害又は排除されているT細胞である。グルコース代謝産物及び任意選択的にキメラ受容体ポリペプチドを再誘導する因子(例えば、ポリペプチド又は核酸)を発現する本明細書に記載の造血細胞は、造血幹細胞又はその子孫であり得る。いくつかの実施形態では、造血細胞は、ナチュラルキラー細胞、単球/マクロファージ、好中球、好酸球、又はT細胞などの免疫細胞であり得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、又はT細胞であり、好ましくは、造血細胞は、T細胞であり、内因性T細胞受容体、内因性主要組織適合複合体、内因性β-2-ミクログロブリン、若しくはそれらの組み合わせの発現が阻害又は排除されており、かつ/又は造血細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞(HSC)、又は人工多能性幹細胞(iPSC)に由来し、好ましくは、造血細胞は、患者にとって自己由来である。
【0131】
本明細書に記載の遺伝子改変造血細胞(例えば、HSC又は免疫細胞)のうちのいずれかは、核酸又は核酸セットを含み得、これらは、集合的に、(a)グルコース代謝産物を再誘導する因子(例えば、ポリペプチド又は核酸)をコードする、第1のヌクレオチド配列と、(b)キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードする、第2のヌクレオチド配列と、を含む。核酸又は核酸セットは、DNA及び/又はRNA分子又はDNA及び/又はRNA分子のセットである。いくつかの事例では、造血細胞は、第1のヌクレオチド配列及び第2のヌクレオチド配列の両方を含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、グルコース代謝産物を再誘導する因子(例えば、ポリペプチド又は核酸)のコード配列は、CARポリペプチドのコード配列の上流にある。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドのコード配列は、グルコース代謝産物を再誘導する因子のコード配列の上流にある。そのような核酸は、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間に位置する第3のヌクレオチド配列を更に含み得、第3のヌクレオチド配列は、リボソームスキッピング部位(例えば、P2Aペプチド)、内部リボソーム進入部位(IRES)、又は第2のプロモーターをコードする。
【0132】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、核酸又は核酸のセット(例えば、DNA分子又はDNA分子のセット)を含み得、これらは、集合的に、
(a)グルコース輸入ポリペプチド、Krebs回路調節ポリペプチド、及び/又は乳酸調節ポリペプチドをコードする、第1のヌクレオチド配列と、
(b)キメラ抗原受容体ポリペプチドをコードする、第2のヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例では、造血細胞は、第1のヌクレオチド配列及び第2のヌクレオチド配列の両方を含む核酸を含む。いくつかの例では、核酸は、(c)第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間に位置する第3のヌクレオチド配列、を更に含み得る。第3のヌクレオチド配列は、リボソームスキッピング部位をコードするか、又は内部リボソーム進入部位(IRES)若しくは第2のプロモーターを含み得る。一例では、第3のヌクレオチド配列は、リボソームスキッピング部位をコードする。1つの特定の例では、リボソームスキッピング部位は、P2Aペプチドである。
【0133】
いくつかの実施形態では、核酸又は核酸セットは、ベクター又はベクターのセット内に含まれ得る。いくつかの例では、ベクター又はベクターセットは、発現ベクター又は発現ベクターのセットであり得る。他の例では、ベクター又はベクターセットは、1つ以上のウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターを含み得る。
【0134】
B.薬学的組成物
本明細書に開示される抗GPC3治療剤のうちのいずれかは、本明細書に開示される治療方法で使用するための、薬学的に許容される薬学的組成物に製剤化され得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、抗GPC治療剤に加えて、好適な担体、緩衝液、及び/又は賦形剤を含んでもよい。好ましくは、薬学的組成物は、本明細書に記載の造血細胞のうちのいずれかと、薬学的に許容される担体及び賦形剤と、を含む。
【0135】
本開示の組成物に関連して使用される「薬学的に許容される」という語句は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与された場合、生理学的に許容され、典型的には、有害な反応を引き起こさないかかる組成物の分子実体及び他の成分を指す。好ましくは、本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、哺乳動物、特にヒトにおける使用に関して、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められた薬局方に収載されていることを意味する。「許容される」とは、担体が組成物の活性成分(例えば、核酸、ベクター、細胞、又は治療用抗体)と適合性があり、組成物が投与される対象に悪影響を及ぼさないことを意味する。本方法で使用される薬学的組成物のうちのいずれかは、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤を含むことができる。
【0136】
緩衝液を含む薬学的に許容される担体は、当該技術分野で周知であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸、抗酸化物質(アスコルビン酸及びメチオニンを含む)、防腐剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなど)、アミノ酸、疎水性ポリマー、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物、金属錯体、並びに/又は非イオン性界面活性剤を含み得る。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hooverを参照されたい。
【0137】
本開示の薬学的組成物はまた、治療される特定の適応症に必要な1つ以上の追加の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含み得る。考えられる追加の活性化合物の非限定的な例としては、例えば、IL-2、並びに当該分野で既知であり、以下の併用治療の考察に列挙される様々な薬剤が挙げられる。
【0138】
C.MRCLSの治療
更に、本明細書において提供されるのは、MRCLSを有し得るか又は有している疑いがある対象における、GPC3を発現する細胞を阻害する(例えば、そのような細胞の数を低減する、細胞増殖を遮断し、かつ/又は細胞活性を抑制する)ための方法である。本方法は、本明細書に記載の造血細胞集団を必要とする対象に、それを投与することを含み得、造血細胞集団は、グルコース代謝産物及びCARポリペプチドを再誘導する因子(例えば、ポリペプチド又は核酸)を共発現することができる。対象(例えば、がんに罹患しているヒト患者などのヒト患者)は、抗がん療法(例えば、抗がん剤)で治療されたことがあるか又は治療されている可能性がある。いくつかの例では、標的抗原を発現する細胞の少なくともいくつかは、低グルコース環境、低アミノ酸(例えば、低グルタミン酸)環境、低pH環境、及び/又は低酸素環境、例えば、腫瘍微小環境に位置する。
【0139】
本明細書に記載の方法は、治療有効量の抗体及び治療有効量の免疫細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)などの遺伝子操作された造血細胞を、対象に導入することを含み得、免疫細胞は、本開示の固形腫瘍微小環境における造血細胞の生存能及び/又は機能性を改善する遺伝子と、本開示のCARポリペプチドとを共発現する。いくつかの例では、免疫細胞は、自己由来である。他の例では、免疫細胞は、同種である。本明細書に記載の方法のうちのいずれかでは、造血細胞は、エクスビボで活性化され得るか、増殖され得るか、又はその両方であり得る。いくつかの事例では、免疫細胞は、抗CD3抗体、抗CD28抗体、IL-2、IL-15、フィトヘマグルチニン、及び操作された人工刺激細胞又は粒子のうちの1つ以上の存在下で活性化されるT細胞を含む。他の事例では、造血細胞は、4-1BBリガンド、抗4-1BB抗体、IL-15、抗IL-15受容体抗体、IL-2、IL-12、IL-21、及びK562細胞、操作された人工刺激細胞又は粒子のうちの1つ以上の存在下で活性化されるナチュラルキラー細胞を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、対象に、標的抗原を発現する細胞を少なくとも20%及び/又は少なくとも2倍阻害するのに有効な量、例えば、標的抗原を発現する細胞を50%、80%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍以上阻害するのに有効な量で投与される。本明細書に記載される細胞ベースの免疫療法の有効性は、当該技術分野で既知の任意の方法によって評価され得、熟練した医療専門家には明らかであろう。例えば、細胞ベースの免疫療法の有効性は、対象又はその組織若しくは試料における対象の生存率又は腫瘍若しくはがん負荷によって評価され得る。いくつかの実施形態では、造血細胞は、グルコース輸入ポリペプチドを発現しない同じタイプの造血細胞を使用した有効性と比較して、細胞ベースの免疫療法の有効性を少なくとも10%及び/又は少なくとも2倍増強するのに有効な量、例えば、免疫療法の有効性を50%、80%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍以上増強するのに有効な量で、治療を必要とする対象に投与される。
【0141】
本明細書に記載の組成物又は方法のうちのいずれかでは、造血細胞(例えば、NK及び/又はT細胞)は、対象にとって自己由来であり得、すなわち、造血細胞は、治療を必要とする対象から得られ得る。代替的に、宿主細胞は、同種細胞であり、すなわち、細胞は、第1の対象から得られ、本明細書に記載されるように遺伝子操作され、第1の対象とは異なるが同じ種の第2の対象に投与される。自己又は同種造血細胞のいずれかは、対象への送達前にエクスビボで活性化及び/又は増殖され得る。
【0142】
本開示によれば、患者は、体重1キログラム当たり約104~1010個以上の細胞(細胞/kg)の範囲で、治療有効用量の、本開示のグルコース輸入ポリペプチド及び/又はCARポリペプチドを含むTリンパ球又はNK細胞などの造血細胞を注入することによって治療され得る。注入は、患者が治療にそれ以上応答しなくなるまで、例えば、進行性疾患が診断されるまで、患者が耐えることができる頻度及び回数だけ繰り返すことができる。適切な注入用量及びスケジュールは、患者によって異なるが、特定の患者の治療医によって決定され得る。好ましい実施形態では、1kg当たり少なくとも約5×104個の抗GPC3-CAR T細胞が、MRCLSを有する選択された患者に投与され、好ましくは、約5×104個~約1×1012個の抗GPC3-CAR細胞/kgが、MRCLSを有する患者に投与される。
【0143】
本明細書に記載の組成物又は方法の有効性は、当該技術分野で既知の任意の方法によって評価され得、熟練した医療専門家には明らかであろう。例えば、本明細書に記載の組成物又は方法の有効性は、対象又はその組織若しくは試料における対象の生存率又はがん負荷によって評価され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、対象における治療の安全性又は毒性(例えば、本明細書に記載のGPC3標的造血細胞、抗体-薬物コンジュゲート、二重特異性又は多重特異性標的化GPC3の投与)に基づいて、例えば、対象の全体的な健康状態及び/又は有害事象若しくは重篤な有害事象の存在によって評価され得る。一実施形態では、抗GPC3治療剤の投与は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンによって測定される場合、腫瘍サイズを少なくとも10%減少させるのに有効である。別の実施形態では、抗GPC3治療剤の投与は、RECIST(例えば、RECIST1.1)による安定した疾患が達成される場合、すなわち、新しい測定可能な病変なしに、総腫瘍直径の合計が19%増加し得るか又は29%減少し得る場合に有効である。好ましくは、RECISTによる客観的応答(例えば、RECIST1.1)が達成され、すなわち、新しい測定可能な病変なしに、総腫瘍直径が30%以上減少する。好ましくは、腫瘍は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンによってステージングされる。別の態様では、切除可能な腫瘍は、組織学的にステージングされる。
【0144】
いくつかの例では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、グレード1、グレード2、グレード3、例えば、転移性MRCLS又は進行性切除不能MRCLSとしてステージングされたMRCLSに罹患しているヒト患者である。一実施形態では、GPC3特異的CAR-Tは、グレード1としてステージングされたMRCLSに罹患している患者に投与される。別の実施形態では、GPC3特異的CAR-Tは、グレード2としてステージングされたMRCLSに罹患している患者に投与される。更に、別の実施形態では、GPC3特異的CAR-Tは、グレード3としてステージングされたMRCLSに罹患している患者に投与される。好ましい実施形態では、GPC3特異的CAR-Tは、MRCLS、例えば、転移性MRCLS又は進行性切除不能MRCLSに罹患している患者に投与される。
【0145】
また、MRCLSを治療するための本明細書に記載の抗GPC3治療剤の使用、及びその意図される医学的治療用の医薬品を製造するためのその使用は、本開示の範囲内である。
【0146】
いくつかの実施形態では、本開示の固形腫瘍微小環境における造血細胞の生存能及び/又は機能を改善する遺伝子を発現する遺伝子操作された造血細胞は、MRCLS細胞(例えば、MRCLS細胞)に特異的な天然の造血細胞に由来し得る。そのような遺伝子操作された造血細胞(例えば、腫瘍浸潤リンパ球又はTIL)は、いかなるキメラ受容体ポリペプチドも共発現せず、標的疾患細胞、例えば、MRCLS細胞を破壊するために使用され得る。キメラ受容体ではなく、生存能及び/又は機能性を改善する当該遺伝子を発現するこれらの遺伝子操作されたTILは、標的腫瘍細胞及びTIL(BiTE)に結合することができる二重特異性抗体と共用され得る。
【0147】
更に、本開示に記載の組成物及び方法は、好ましくは、MRCLSについてAbaricia & Hirbe,2018、Lee et al.,2018、Regina & Hettmer,2019、Sanfilippo et al.,2013、Suarez-Kelly et al.,2019に開示されるような、例えば、ドキソルビシン、イホスファミド、トラベクテジンについての確立された標準治療と共に、化学療法、手術、放射線、遺伝子療法などのがんに対する他のタイプの療法と併用して利用され得る。かかる療法は、本開示による免疫療法と同時に又は連続して(任意の順序で)投与され得る。
【0148】
追加の治療剤と併用投与される場合、相加作用又は相乗作用により、各薬剤の好適な治療有効用量が減少され得る。本開示の治療は、例えば、治療用ワクチン(GVAX、DCベースのワクチンなどが含まれるが、これらに限定されない)、チェックポイント阻害剤(CTLA-4、PD-1、LAG-3、TIM-3などを遮断する薬剤を含むが、これらに限定されない)、又は活性化剤(41BB、OX40などを増強する薬剤が含まれるが、これらに限定されない)などの他の免疫調節治療と組み合わせることができる。本開示の免疫療法との併用に有用な他の治療剤の非限定的な例としては、(i)抗血管新生剤(例えば、TNP-470、血小板因子4、トロンボスポンジン-1、組織メタロプロテアーゼ阻害物質(TIMP1及びTIMP2)、プロラクチン(16kD断片)、アンジオスタチン(プラスミノーゲンの38kD断片)、エンドスタチン、bFGF可溶性受容体、形質転換増殖因子β、インターフェロンα、可溶性KDR及びFLT-1受容体、胎盤プロリフェリン関連タンパク質、並びにCarmeliet & Jain,2000に列挙されているもの、(ii)VEGFアンタゴニスト又はVEGF受容体アンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体、VEGFバリアント、可溶性VEGF受容体断片、VEGF又はVEGFRを遮断することができるアプタマー、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼの阻害剤、及びそれらの任意の組み合わせ、並びに(iii)化学療法化合物、例えば、ピリミジン類似体(5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、及びシタラビン)、プリン類似体、葉酸アンタゴニスト、及び関連する阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、及び2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン)などの天然物を含む抗増殖剤/抗有糸分裂剤、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン、及びナベルビン、エピジポドフィロシトキシ(エトポシド及びテニポシド)、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロランブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミン、オキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メルクロレタミン(merchlorehtamine)、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びエトポシド(VP16));ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラシリン(anthracyline)、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、及びマイトマイシンなどの抗生物質;酵素(L-アスパラギンを全身的に代謝し、それら自体のアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を取り除くL-アスパラギナーゼ);抗血小板剤;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及び類似体、メラファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、アルキルスルホネート-ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン-ダカルバジニン(dacarbazinine)(DTIC);葉酸類似体(メトトレキサート)などの抗増殖性/抗有糸分裂性代謝拮抗物質;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)及びアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩、及びその他のトロンビン阻害剤);線維素溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレフェルジン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506))、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(例えば、TNP-470、ゲニステイン、ベバシズマブ)及び増殖因子阻害剤(例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤及び分化誘導剤(トレチノイン);AKT阻害剤(例えば、MK-22062HC1、ペリフォシン(KRX-0401)、GSK690693、イパタセルチブ(GDC-0068)、AZD5363、ウプロセルチブ、アフレセルチブ、又はトリシリビン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、及びイリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、及びプレドニゾロン);増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘発剤及びカスパーゼ活性化剤;並びにクロマチン破壊剤が挙げられる。
【0149】
一実施形態では、本方法は、治療剤に並行して又は連続して、患者に少なくとも1つの免疫調節剤を投与することを更に含み、好ましくは、免疫調節剤が、免疫チェックポイント阻害剤又は免疫刺激サイトカインである。免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、CARを発現する造血細胞(例えば、T細胞又はNK細胞などの免疫細胞)との抗GPC3治療剤の作用様式を負に干渉し得る微小腫瘍環境における阻害シグナルを取り除き、そのため、免疫チェックポイントが造血細胞の活性を低下させ、それによって、それらの活性を低下又は遮断し得ることが期待される。いくつかの実施形態では、本方法は、好ましくはシクロホスファミド及びフルダラビンから選択されるリンパ球減少治療を投与することを更に含む。そのようなリンパ枯渇治療は、注入された細胞のより大きいT細胞の増殖を可能にするために、CARを発現する造血細胞の注入の前に適用されることが好ましい(Shank et al.,2017)。
【0150】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に示されている。本開示の他の特徴又は利点は、いくつかの実施形態の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0151】
一般的な技術
本開示の実施は、別段の指示がない限り、当業者の範囲内である分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技術を用いる。かかる技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987)、Introuction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Black-well,eds.):Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)、Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997)、Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.IRL Press,1988-1989)、Monoclo-nal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using antibod-ies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999)、The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995)、DNACloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985)、Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985≫、Transcription and Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984≫、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986≫、Immobi-lized Cells and Enzymes(IRL Press,(1986≫、及びB.Perbal,A practical Guide To Molecular Cloning(1984)、F.M.Ausubel et al.(eds.)などの文献に詳しく説明されている。
【0152】
更に詳述することなく、当業者は、上記の説明に基づいて、本開示を最大限に活用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例解として解釈されるべきであり、いかなる形であれ決して本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用される全ての刊行物は、本明細書で参照される目的又は主題のために参照により組み込まれる。
【実施例】
【0153】
以下の実施例は、本発明による方法及び実施形態を例解することのみを意図しており、したがって、特許請求の範囲に限定を課すものとして解釈されるべきではない。
【0154】
実施例1.抗GPC3モノクローナル抗体GC33によるFFPE組織切片のIHCアッセイ
GPC3に特異的な抗体によるIHC染色は、従来のプロトコルに従って行った。ヒト生検検体(腫瘍及び健康な組織)、異種移植片生検検体(腫瘍及び健康な組織)、及び細胞株検体を中性緩衝10%ホルマリン溶液に24時間固定し、標準的な手順に従ってパラフィンに包埋した。標準試料サイズは、0.5cm×1cm×1cmであった。5μmの厚さの組織切片を、ミクロトーム(Leica)で切断し、正に帯電したスライド上に載せた。スライドを風乾し、研究期間全体を通して室温で保存した。組織切片を、EZ prep(Ventana)中で脱パラフィン化し、続いて、熱水浴(98℃、60分)中で、標的回収溶液(Ventana)を用いて抗原賦活化した。内因性ペルオキシダーゼを、一次ペルオキシダーゼ阻害剤(Ventana)で室温で5分間ブロッキングした。その後、切片を、一次抗GPC3抗体(抗体GC33;Ventana#790-4564)と32分間インキュベートし、続いて、酵素活性を顕色した(OptiView DAB検出キット、Ventana)。切片を、室温で30秒間、ヘマトキシリン(Ventana)で対比染色した。染色の特異性は、適切なアイソタイプ対照を使用して決定した。腫瘍切片全体の画像は、Leica Aperio AT2スキャナー(Leica)を使用して取得した。
【0155】
実施例2.抗GPC3モノクローナル抗体GC33によるFFPE組織切片のIFアッセイ。
GPC3に特異的な抗体でのIF染色が、従来のプロトコルに従って行われる場合。ヒト生検検体(腫瘍及び健康な組織)、異種移植片生検検体(腫瘍及び健康な組織)、及び細胞株検体を中性緩衝10%ホルマリン溶液に24時間固定し、標準的な手順に従ってパラフィンに包埋する。標準試料サイズは、0.5cm×1cm×1cmである。5μmの厚さの組織切片を、ミクロトーム(Leica)で切断し、正に帯電したスライド上に載せる。スライドを風乾し、研究期間全体を通して室温で保存する。簡潔に述べると、組織切片を脱パラフィン化し、下降アルコール系列(100、96、70、及び50%)で再水和し、続いて予熱した水浴(97℃、30分)中の標的回収溶液(Leica)を用いて抗原賦活化を行う。切片を、30分間室温まで冷却する。次いで、切片を、シグナルエンハンサー(Fisher Thermoscientific)で、室温で30分間処理し、続いて、ブロッキング緩衝液で、室温で60分間処理する。抗GPC3抗体(抗体GC33;Ventana#790-4564)を、室温で2時間適用する。次に、スライドを、適切なフルオロフォア標識二次抗体で、室温で1時間インキュベートする。最後に、切片を、TrueBlack(登録商標)Lipofuscin自家蛍光消光剤クエンチャー(Biotium)で30秒間処理し、DAPI(Thermo Fisher Scientific)を含有するProLong Gold退色防止試薬を用いて封入した。染色の特異性は、適切なアイソタイプ対照を使用して決定される。腫瘍切片全体の画像は、Leica Aperio AT2スキャナー(Leica)を使用して取得した。
【0156】
実施例3.GPC3発現についての異なるがんタイプからのFFPE組織切片のIHCスコアリング
実施例1を、詳細なスコアリングプロセスを使用して、GPC3発現についてスコアリングした。図面の簡単な説明は、単に例解的な目的のために各組織切片の個々の視野に割り当てられた様々なスコアを列挙している。しかしながら、スコアリングプロセスは、スライド上の組織切片全体を調べることによって行われ、実際には、病理医は、低、中、及び高倍率でスライド上の組織切片を観察することによって、GPC3の発現についてスライドをスコアリングした。低倍率及び中倍率を使用して、染色された腫瘍細胞を検出した。中倍率及び高倍率を使用して、個々の腫瘍細胞を検査して、少なくとも部分的な膜及び細胞質染色を示す生存腫瘍細胞の数及び強度を推定した。各染色された組織切片には、Hスコアを割り当てた。Hスコアは、(i)試験した染色組織切片の全てにおける生存腫瘍細胞の全てにわたって、染色なし、弱い染色(+1)、中程度の染色(+2)、及び強い染色(+3)を有する細胞の4つの別個のパーセンテージを推定することを含み、細胞が、弱い染色、中程度の染色、又は強い染色のパーセンテージに含まれる少なくとも部分的な膜及び/又は細胞質染色を有しなければならず、4つのパーセンテージの合計が100に等しく、(ii)推定される割合を1*(1+の染色強度を有する腫瘍細胞のパーセンテージ)+2*(2+の染色強度を有する腫瘍細胞のパーセンテージ)+3*(1+の染色強度を有する腫瘍細胞のパーセンテージ)の式に入力し、Hスコアとして、式の結果を組織切片に割り当てた。
【0157】
実施例4.GPC3発現についての異なるがんタイプからのFFPE組織切片のIFスコアリング。
実施例2は、詳細なスコアリングプロセスを使用して、GPC3発現についてスコアリングされ得る。図面の簡単な説明は、単に例解的目的のために各組織切片の個々の視野に割り当てられた様々なスコアを列挙している。しかしながら、スコアリングプロセスは、スライド上の組織切片全体を調べることによって行われ、実際には、病理医は、低、中、及び高倍率でスライド上の組織切片を観察することによって、GPC3の発現についてスライドをスコアリングする。低倍率及び中倍率を使用して、染色された腫瘍細胞を検出する。中倍率及び高倍率を使用して、個々の腫瘍巣を検査して、少なくとも部分的な膜及び細胞質染色を示す生存腫瘍細胞の数及び強度を推定する。各染色された組織切片には、Hスコアを割り当てる。Hスコアは、(i)試験した染色組織切片の全てにおける生存腫瘍細胞の全てにわたって、染色なし、弱い染色(+1)、中程度の染色(+2)、及び強い染色(+3)を有する細胞の4つの別個のパーセンテージを推定することを含み、細胞が、弱い染色、中程度の染色、又は強い染色のパーセンテージに含まれる少なくとも部分的な膜及び/又は細胞質染色を有しなければならず、4つのパーセンテージの合計が100に等しく、(ii)推定される割合を1*(1+の染色強度を有する腫瘍細胞のパーセンテージ)+2*(2+の染色強度を有する腫瘍細胞のパーセンテージ)+3*(1+の染色強度を有する腫瘍細胞のパーセンテージ)の式に入力し、Hスコアとして、式の結果を組織切片に割り当てる。
【0158】
実施例5.GPC3に特異的なプローブを用いたFFPE組織切片のISHアッセイ。
標的遺伝子GPC3のインサイツハイブリダイゼーション染色は、従来のプロトコルに従って行うことができる(Wang et al.,2012)。ヒト生検検体(腫瘍及び健康な組織)、異種移植片生検検体(腫瘍及び健康な組織)、及び細胞株検体を中性緩衝10%ホルマリン溶液に24時間固定し、標準的な手順に従ってパラフィンに包埋する。標準試料サイズは、0.5cm×1cm×1cmである。6μmの厚さの組織切片を、ミクロトーム(Leica)で切断し、正に帯電したスライド上に載せる。各試料の組織品質を、従来のプロトコルに従って、ハウスキーピング遺伝子であるユビキチンC(UBC)のmRNAに対するRNAハイブリダイゼーションを行うことによって評価する(Wang et al.,2012)。プロトコルは、スライドを風乾することから始まり、研究期間全体を通して室温で保存される。簡潔に述べると、組織切片を脱パラフィン化し、下降アルコール系列(100、96、70、及び50%)で再水和し、続いて、室温で5分間風乾する。スライドを、40℃で30分間プレハイブリダイゼーション緩衝液中で前処理し、続いて、ペルオキシダーゼを、室温で10分間クエンチする(ACD Biotechnie)。スライドを、標的賦活化液に40℃で30分間浸し、続いて、40℃で30分間プロテアーゼ処理する。スライドを、標的プローブと共にインキュベートし、40℃で2時間インキュベートし、続いて、適切な緩衝液(ACD Biotechnie)中で過剰なプローブを洗い流す。プローブの検出は、発色アッセイの場合、例えば、ファストレッド(fast red)溶液中で、室温で10分間インキュベートすることによって行われる。切片を、室温で30秒間、ヘマトキシリン(Ventana)で対比染色する。染色の特異性は、適切なアイソタイプ対照を使用して決定される。腫瘍切片全体の画像は、Leica Aperio AT2スキャナー(Leica)を使用して取得する。
【0159】
実施例6.無細胞DNA(cfDNA)の単離及び標的化次世代配列決定(NGS)による分析。
血液試料は、疑わしい患者の術前又は術後に単離され得る。更に、それらは、原発性及び/又は二次性腫瘍組織生検の患者と一致し得る。血液試料は、採取後24時間以内に単離及び処理することができる。血液を、まず、1700gで10分間遠心分離して、血漿及び血球を分離する。分離された血漿を、12,000gで更に10分間遠心分離し、細胞残屑を除去する。血漿を採取し、1バイアル当たり2mlアリコートし、更に処理するまで-80℃で保存する。cfDNAを、循環核酸キット(Qiagen)を使用して、440μl~4ml(中央値3.95ml)の血漿から単離し、続いて、30μlの溶出緩衝液に溶出する。ctDNA濃度は、2μlのctDNAを使用して、Qubit(商標)1×dsDNA HSアッセイキット(Thermo Fisher scientific)によって決定される。
【0160】
配列決定は、Ion540チップにロードされた分子バーコードを有するctDNAアッセイを使用して、Ion Torrent S5XL次世代配列決定(NGS)システム上でイオン半導体配列決定によって行われ得る。実験は、製造業者のプロトコル(Thermo Fisher Scientific/Life Technologies)に従って行われる。いくつかのctDNAパネルを使用して、MRCLSに関連する複数の遺伝子の変異ホットスポットをカバーすることができる(例えば、Oncomine(商標)結腸ctDNAパネル、Thermo Fisher Scientific/Life Technologies)分析及びカットオフは、(Ge et al.,2021)に従って行われる。
【0161】
実施例7.循環腫瘍細胞RNA(ctRNA)の単離及びRT-PCRによる分析。
循環腫瘍細胞(CTC)は、密度勾配に基づいて、7.5mlの全血から単離され得る。等量の全血及びPBSを、反転させて慎重に混合し、Ficoll-paque上に重層し、続いて、室温で、400gで30分間遠心分離する。CTCは、プラズマ層から回収される(Low & Wan Abas,2015を参照されたい)。RNAは、製造業者のプロトコル(QIAGEN)に従ってCTCから抽出される。Invitrogen Superscript III逆転写酵素及びプライマーとしてランダムヘキサマー(Invitrogen)を使用して、37℃で1時間逆転写を行うことができ、続いて、95℃で5分間不活性化する。後続のPCR反応には、cDNA(5μl)を使用する。GPC3特異的プライマー及びPCR反応は、(Wang et al.,2011)に記載されているように実行される。
【0162】
配列
配列番号1-CD8αシグナル配列
配列番号2-GC33に由来するGPC3 scFv
配列番号3-CD8ヒンジ及び膜貫通ドメイン
配列番号4-CD28ヒンジ及び膜貫通ドメイン
配列番号5-4-1BB共刺激ドメイン
配列番号6-CD28共刺激ドメイン
配列番号7-CD3ζシグナル伝達ドメイン
配列番号8-GPC3 CARポリペプチド(シグナル配列を斜体で示す)(CD8α/GC33 scFv/CD8α-CD8α/4-1BB/CD3ζ)
配列番号9-成熟GPC3 CARポリペプチド(GC33 scFv/CD8α-CD8α/4-1BB/CD3ζ)
配列番号10-GPC3-CARポリペプチド(シグナル配列を斜体で示す)(CD8α/GC33 scFv/CD28-CD28/CD3ζ)-刺激ドメインなし
配列番号11-成熟GPC3-CARポリペプチド(GC33 scFv/CD28-CD28/CD3ζ)-刺激ドメインなし
配列番号12-GOT2
配列番号13-GOT1
配列番号14-P2A
配列番号15-GLUT1
配列番号16-CD16A
158Fポリペプチド(シグナル配列を斜体で示す)
配列番号17-成熟CD16A
158Fポリペプチド
配列番号18-CD16A
158Vポリペプチド(シグナル配列を斜体で示す)
配列番号19-成熟CD16A
158V
配列番号20-OX-40共刺激ドメイン
配列番号21-CD27共刺激ドメイン
配列番号22-ICOS共刺激ドメイン
配列番号23-GITR共刺激ドメイン
配列番号24-HVEM共刺激ドメイン
配列番号25-TIM1共刺激ドメイン
配列番号26-LFA-1共刺激ドメイン
配列番号27-CD2共刺激ドメイン
配列番号28-CD8α膜貫通ドメイン
配列番号29-CD8β膜貫通ドメイン
配列番号30-4-IBB膜貫通ドメイン
配列番号31-CD28膜貫通ドメイン
配列番号32-CD34膜貫通ドメイン
配列番号33-CD4膜貫通ドメイン
配列番号34-FcεRIγ膜貫通ドメイン
配列番号35-OX-40膜貫通ドメイン
配列番号36-CD3ζ膜貫通ドメイン
配列番号37-CD3ε膜貫通ドメイン
配列番号38-CD3γ膜貫通ドメイン
配列番号39-CD3δ膜貫通ドメイン
配列番号40-TCR-α膜貫通ドメイン
配列番号41-CD32膜貫通ドメイン
配列番号42-CD64膜貫通ドメイン
配列番号43-VEFGR2膜貫通ドメイン
配列番号44-FAS膜貫通ドメイン
配列番号45-FGFR2B膜貫通ドメイン
【0163】
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【0164】
他の実施形態
本明細書に開示される全ての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書で開示される各特徴は、同一、同等、又は同様の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えることができる。したがって、別段の明示的な記載がない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等又は同様の特徴の例にすぎない。
【0165】
上記の説明から、当業者は、本開示の本質的な特徴を容易に確認することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示の様々な変更及び修正を行って、様々な用途及び条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲の範囲内にある。
【0166】
均等物
本明細書において、いくつかの本発明の実施形態を説明及び例解してきたが、当業者は、本明細書で説明した機能を実行し、かつ/又は結果及び/若しくは利点のうちの1つ以上を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想像し、また、そのような変形及び/又は修正の各々は、本明細書に記載された本発明の実施形態の範囲内にあるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載された全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が本発明の教示が使用される特定の用途(複数可)に依存するであろうことを容易に理解するであろう。当業者であれば、本明細書に記載の特定の本発明の実施形態に対する多くの均等物を、通常の実験のみを使用して認識するか、又は確定することができるであろう。したがって、前述の実施形態は例としてのみ提示されており、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に説明及び特許請求されたもの以外の方法で実施することができることを理解されたい。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載の個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。加えて、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせは、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0167】
本明細書で定義及び使用されるとき、全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書における定義、及び/又は定義された用語の通常の意味に対して優先されるものと理解されるべきである。
【0168】
本明細書に開示される全ての参考文献、特許、及び特許出願は、場合によっては文書全体を包含する、各々が引用される主題に関して参照により組み込まれる。
【0169】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、不定冠詞「a」及び「an」は、そうでないことが明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0170】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「及び/又は」という語句は、そのように結合された要素の「いずれか又は両方」、すなわち、ある場合は結合的に存在し、他の場合は分離的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」で列挙された複数の要素は、同じように解釈されるべきであり、つまり、そのように結合された要素の「1つ以上」である。「及び/又は」節によって具体的に特定される要素以外に、他の要素が、具体的に特定されるそれらの要素に関連するか又は関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」などの非限定的な言語と併せて使用される場合、一実施形態では、Aのみを指すことができ(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみを指すことができ(任意選択的にA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、A及びBの両方を指すことができる(任意選択的に他の要素を含む)。
【0171】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「又は」は、上で定義された「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離する場合、「又は」あるいは「及び/又は」は、包含的である、すなわち、少なくとも1つの要素が含まれるだけでなく、いくつかの要素若しくはリストの要素のうちの1つ以上も含まれると解釈されるものとする。「のうちの1つのみ」若しくは「のうち1つだけ」、又は特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」などの、そうでないことが明確に示されている用語のみが、いくつかの要素若しくはリストの要素のうちの1つの要素だけが含まれることを指す。一般に、本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、又は「のうちの1つだけ」などの排他的な用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方であるが、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるものとする。「から本質的になる」とは、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0172】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「少なくとも1つの」という語句は、1つ以上の要素のリストを参照して、要素のリストにおける要素のうちのいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、ただし、要素のリスト内に具体的に列挙されているあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素のリストにおける要素の任意の組み合わせを除外するものではない。この定義はまた、具体的に特定されるそれらの要素に関連するか又は関連しないかにかかわらず、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が任意選択的に存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は同等に「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、任意選択的に、Bが存在せず(かつ任意選択的にB以外の要素を含む)複数のAを含む、少なくとも1つを指すことができ、別の実施形態では、任意選択的に、Aが存在せず(かつ任意選択的にA以外の要素を含む)複数のBを含む、少なくとも1つを指すことができ、更に別の実施形態では、任意選択的に、複数のAを含む(かつ任意選択的に他の要素を含む)、少なくとも1つ、及び任意選択的に、複数のBを含む(かつ任意選択的に他の要素を含む)、少なくとも1つを指すことができる。
【0173】
また、そうでないことが明確に示されない限り、複数のステップ又は行為を含む本明細書で特許請求される任意の方法において、本方法のステップ又は行為の順序は、必ずしも本方法のステップ又は行為が列挙される順序に限定されないことも理解されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】