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特表2024-545368Gq共役シグナル伝達および/または細胞の活性化のための超光感受性ニューロオプシンベースの光遺伝学的ツール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】Gq共役シグナル伝達および/または細胞の活性化のための超光感受性ニューロオプシンベースの光遺伝学的ツール
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/705 20060101AFI20241128BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241128BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20241128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K35/76
A61K35/761
A61K48/00
A61P43/00 105
A61P37/06
A61P25/00
A61P11/00
A61P3/00
A61P9/00
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024558169
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2022140440
(87)【国際公開番号】W WO2023116720
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/139751
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524232484
【氏名又は名称】ジェンアンス バイオテクノロジー カンパニー, リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GENANS BIOTECHNOLOGY CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ユー, タオ
(72)【発明者】
【氏名】ダイ, ルイチォン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ダンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ, ミンミン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC211
4C084ZC212
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZB08
4C087ZB21
4C087ZC21
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045CA53
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、Gシグナル伝達および/または細胞を迅速、可逆的且つ正確に活性化するための単離された光感受性オプシンに関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された光感受性オプシンであって、
シグナル伝達および/または細胞の活性化のために使用されることを特徴とする、単離された光感受性オプシン。
【請求項2】
生物に由来する単離されたオプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の単離されたオプシン。
【請求項3】
前記生物における野生型オプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の単離されたオプシン。
【請求項4】
動物に由来する単離されたオプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の単離されたオプシン。
【請求項5】
前記動物における野生型オプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたオプシン。
【請求項6】
前記生物は、脊椎動物であることを特徴とする、請求項2に記載の単離されたオプシン。
【請求項7】
前記脊椎動物は、鳥類、爬虫類または魚類、両生類または哺乳類動物であり、
好ましくは、前記動物は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、レア、シギ、ヒクイドリ、七面鳥、ウズラ、ニワトリ、フォルコンリー、タカ、ハヤブサ、ハト、インコ、冠オウム、コンゴウインコ、オウム、スズメ目(例えば、鳴き鳥)、カケス、クロウタドリ、フィンチ、ウグイスおよびスズメを含むが、これらに限定されない鳥類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、トカゲ、ヘビ、アリゲーター(alligator)、海亀、ワニおよびリクガメを含むが、これらに限定されない爬虫類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、ナマズ、ウナギ、サメおよびメカジキを含むが、これらに限定されない魚類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、ヒキガエル、カエル、イモリおよびサンショウウオを含むが、これらに限定されない両生類であることを特徴とする、請求項6に記載の単離されたオプシン。
【請求項8】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、ニワトリに由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、ニワトリに由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたオプシン。
【請求項9】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、海亀に由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、海亀に由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたオプシン。
【請求項10】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列(cOpn5)またはその断片または変異体を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列(cOpn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたオプシン。
【請求項11】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列(tOpn5)またはその断片または変異体を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列(tOpn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたオプシン。
【請求項12】
前記光は、360~520nm、好ましくは450~500、より好ましくは460~480nmの範囲、特に470nmの波長を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたオプシン。
【請求項13】
単離された核酸であって、
請求項1~12のいずれか1項に記載の単離されたオプシンをコードすることを特徴とする、単離された核酸。
【請求項14】
キメラ遺伝子であって、
請求項13に記載の単離された核酸配列を含み、前記核酸配列は、適切な調節配列に作動可能に連結されることを特徴とする、キメラ遺伝子。
【請求項15】
ベクターであって、
請求項13に記載の単離された核酸または請求項14に記載のキメラ遺伝子を含むことを特徴とする、ベクター。
【請求項16】
前記ベクターは、真核ベクター、原核発現ベクター、ウイルスベクターまたは酵母ベクターであることを特徴とする、請求項15に記載のベクター。
【請求項17】
前記ベクターは、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターまたはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたは昆虫ベクターであり、好ましくは、ここで、前記ベクターは、組み換えされたAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVS、AAVOまたはAAV10であることを特徴とする、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
発現ベクターまたは遺伝子治療ベクターであることを特徴とする、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
単離された細胞または細胞培養物であって、
請求項13に記載の単離された核酸、請求項14に記載のキメラ遺伝子または請求項15~18のいずれか1項に記載のベクターを含むことを特徴とする、単離された細胞または細胞培養物。
【請求項20】
シグナル伝達および/または細胞の活性化によって媒介される疾患または病症、またはGシグナル伝達および/または細胞の活性化が関与する疾患または病症の治療における、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離されたオプシン、請求項13に記載の単離された核酸、請求項14に記載のキメラ遺伝子、請求項15~18のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項19に記載の単離された細胞または細胞培養物の用途。
【請求項21】
被験者におけるGシグナル伝達および/または細胞の活性化によって媒介される疾患または病症、またはGシグナル伝達および/または細胞の活性化が関与する疾患または病症を治療する方法であって、
請求項1~12のいずれか1項に記載の単離されたオプシン、請求項13に記載の単離された核酸、請求項14に記載のキメラ遺伝子、請求項15~18のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項19に記載の単離された細胞または細胞培養物を投与することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項22】
前記Gシグナル伝達および/または細胞の活性化によって媒介される疾患または病症、またはGシグナル伝達および/または細胞の活性化が関与する疾患または病症は、Gシグナル伝達および/または細胞の活性化から恩恵を受ける、例えば、アストロサイトの活性化、強力なATP放出または増加されたニューロン活性から恩恵を受ける疾患または病症を含むが、これらに限定されないことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記Gシグナル伝達および/または細胞の活性化によって媒介される疾患または病症、またはGシグナル伝達および/または細胞の活性化が関与する疾患または病症は、例えば膵島細胞、免疫細胞、例えば中枢ニューロン、アストロサイト、グリア細胞等の神経細胞、筋細胞、骨格細胞、内皮細胞、上皮細胞、神経系細胞、皮膚細胞、肺細胞、腎臓細胞および肝臓細胞、心筋細胞または血管内皮細胞のような活性化細胞から恩恵を受ける疾患または病症を含むが、これらに限定されないことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患または病症は、自己免疫疾患、発達疾患、代謝性疾患、精神疾患、呼吸器系疾患または心血管疾患であることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、波長範囲が360~550nm、好ましくは450~500nm、より好ましくは460~480nm、特に470nmである青色光を印加することを含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、波長が≧920nmである光を使用して二光子活性化を実行することをさらに含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、多くの細胞内シグナル伝達経路を調節し、最も集中的に研究されている薬物ターゲットポイントのいくつかを表す(Hauserら、2017)。リガンドが結合した後、GPCRは、構造変化を起こし、且つそれをヘテロ三量体Gタンパク質に伝達し、後者は、Gαサブユニットと緊密に結合したGβγサブユニットとを含むマルチサブユニット複合体である。ヘテロ三量体GαサブユニットのサブファミリーであるGタンパク質は、GPCRのクラスに共役し、全身の神経伝達物質、感覚刺激およびホルモンに対する細胞応答を媒介する。それらの主な下流シグナル伝達ターゲットポイントは、リン脂質ホスファチジルイノシトールニリン酸(PIP)のイノシトール三リン酸(IP)およびジアシルグリセロール(DAG)への加水分解を触媒するホスホリパーゼCβ(PLC-β)酵素を含む。IPは、細胞内に蓄積されたCa2+の細胞質への放出を引き起こし、Ca2+は、DAGとともにプロテインキナーゼC(PKC)を活性化する。G共役GPCRおよび細胞内Ca2+放出のシグナル伝達メカニズムおよび生理学的機能を研究するために、化学遺伝学および光活性化可能な小分子を含むいくつかのツールを開発した。
【0002】
光遺伝学は、光応答性タンパク質を利用して、遺伝的特異性および高い時空間精度で細胞活動の光学的制御摂動を実現する。光感受性イオンチャネルおよびトランスポーターを使用した光遺伝学的ツールの初期の発見以来、様々な技術を開発しており、現在では細胞内のセカンドメッセンジャー、タンパク質の相互作用と分解、並びに遺伝子転写への光学的介入をサポートしている。創造的に設計されたG共役ロドプシン-GPCRキメラであるOpt-a1ARは、長時間の光刺激(60s)に応答して、細胞内Ca2+の増加を誘導することができる(Airanら、2009)。しかしながら、このようなツールは、おそらく光感受性および反応速度論に関連する制限性(Tichyら、2019)のため、広く使用されていない。ほとんどの動物は、GPCRベースの光受容体を使用して光を検出し、ここで、光受容体は、タンパク質部分(オプシン)と、リガンドおよび発色団の両方として機能するビタミンA誘導体(レチナール)とを含む。これまでに数千のオプシンが同定されている。最近の2件の研究では、ニューロンのシナプス前終末抑制に蚊およびヤツメウナギ由来のGベースのオプシンを使用したことが報告されており、特定の天然に存在する光受容体の効率的な光遺伝学的ツールとしての使用に適していることが簡単に実証される。Gシグナル伝達に関しては、哺乳動物の網膜神経節細胞の亜集団におけるメラニン(Opn4)は、G共役オプシンである。画像を形成しない視覚機能を媒介する。しかしながら、Opn4を異種発現するHEK293またはNeuro-2a細胞は、弱い光応答を示し、培地中に追加のレチナールを必要とする。多くの脊椎動物におけるOpn5(ニューロオプシン(neuropsin))およびそのオルソログは、Gタンパク質に共役した紫外線(UV)感受性オプシンであることが報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、Gシグナル伝達および/または細胞を迅速、可逆的且つ正確に活性化するための単離された光感受性オプシンに関する。
【0004】
第1の態様において、本発明は、Gシグナル伝達および/または細胞の活性化ために使用される、単離された光感受性オプシンに関する。
【0005】
いくつかの実施形態において、前記光は、360~520nm、好ましくは450~500、より好ましくは460~480nmの範囲内の波長を有する。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシンは、生物に由来する単離されたオプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシンは、前記生物における野生型オプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記生物は、動物である。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシンは、動物に由来する単離されたオプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、前記動物における野生型オプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記動物は、脊椎動物である。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記動物は、鳥類、爬虫類または魚類、両生類または哺乳類動物である。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記動物は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、レア(rhea)、シギ(kiwi)、ヒクイドリ、七面鳥、ウズラ、ニワトリ、フォルコンリー、タカ、ハヤブサ、ハト、インコ、冠オウム、コンゴウインコ、オウム、スズメ目(例えば、鳴き鳥)、カケス、クロウタドリ、フィンチ、ウグイスおよびスズメを含むが、これらに限定されない鳥類である。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記動物は、トカゲ、ヘビ、アリゲーター(alligator)、海亀、ワニおよびリクガメを含むが、これらに限定されない爬虫類である。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記動物は、ナマズ、ウナギ、サメおよびメカジキを含むが、これらに限定されない魚類である。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記動物は、ヒキガエル、カエル、イモリおよびサンショウウオを含むが、これらに限定されない両生類である。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、ニワトリに由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、前記ニワトリに由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、海亀に由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、前記海亀に由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列(cOpn5)またはその断片または変異体を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列(cOpn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列(tOpn5)またはその断片または変異体を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、前記SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列(tOpn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0025】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、細胞内Gシグナル伝達および/または細胞を正確に活性化するための便利な光遺伝学的ツールとして使用されることができる。
【0026】
第2の態様において、本発明は、第1の態様に記載の単離されたオプシンをコードする、単離された核酸に関する。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記単離された核酸は、生物における野生型オプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体をコードし、それらのGシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有する。
【0028】
第3の態様において、本発明は、第2の態様に記載の単離された核酸配列を含む、キメラ遺伝子に関し、当該核酸配列は、適切な調節配列に作動可能に連結される。
【0029】
第4の態様において、本発明は、第2の態様に記載の単離された核酸または第3の態様に記載のキメラ遺伝子を含む、ベクターに関する。
【0030】
前記ベクターは、真核ベクター、原核発現ベクター、ウイルスベクターまたは酵母ベクターである。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターまたはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたは昆虫ベクターである。
【0032】
好ましくは、前記ベクターは、組み換えAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVS、AAVOまたはAAV10である。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、発現ベクターである。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、遺伝子治療ベクターである。
【0035】
第5の態様において、本発明は、第2の態様に記載の単離された核酸、第3の態様に記載のキメラ遺伝子または第4の態様に記載のベクターを含む、単離された細胞または細胞培養物に関する。
【0036】
例えば、HEK293T細胞におけるcOpn5の発現は、青色光によって引き起こされる細胞内蓄積物からのG依存性Ca2+の増加を強力に媒介する。
【0037】
例えば、マウスの脳におけるcOpn5発現アストロサイトの光遺伝学的活性化は、大量のATP放出を誘導する。
【0038】
第6の態様において、本発明は、Gシグナル伝達および/または細胞の活性化によって媒介される疾患または病症、またはGシグナル伝達および/または細胞の活性化が関与する疾患または病症の治療における、第1の態様に記載の単離されたオプシン、第2の態様に記載の単離された核酸、第3の態様に記載のキメラ遺伝子、第4の態様に記載のベクターまたは第5の態様に記載の単離された細胞または細胞培養物の用途に関する。
【0039】
cOpn5媒介性光遺伝学は、回路依存性の方法で、ニューロンを活性化し、且つ動物行動を制御するために使用されることができる。
【0040】
第7の態様において、本発明は、被験者におけるGシグナル伝達および/または細胞の活性化によって媒介される疾患または病症,またはGシグナル伝達および/または細胞の活性化が関与する疾患または病症を治療する方法に関し、前記方法は、第1の態様に記載の単離されたオプシン、第2の態様に記載の単離された核酸、第3の態様に記載のキメラ遺伝子、第4の態様に記載のベクターまたは第5の態様に記載の単離された細胞または細胞培養物を投与することを含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記Gシグナル伝達および/または細胞の活性化によって媒介される疾患または病症、またはGシグナル伝達および/または細胞の活性化が関与する疾患または病症は、Gシグナル伝達および/または細胞の活性化から恩恵を受ける、例えば、アストロサイトの活性化、強力なATP放出または増加されたニューロン活性から恩恵を受ける疾患または病症を含むが、これらに限定されない。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記Gシグナル伝達および/または細胞の活性化によって媒介される疾患または病症、またはGシグナル伝達および/または細胞の活性化が関与する疾患または病症は、例えば膵島細胞、免疫細胞、例えば中枢ニューロン、アストロサイト、グリア細胞等の神経細胞、筋細胞、骨格細胞、内皮細胞、上皮細胞、神経系細胞、皮膚細胞、肺細胞、腎臓細胞および肝臓細胞、心筋細胞または血管内皮細胞のような活性化細胞から恩恵を受ける疾患または病症を含むが、これらに限定されない。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記疾患または病症は、糖尿病、免疫抑制性疾患、アルツハイマー病、うつ病、不安神経症、脳出血等を含むが、これらに限定されない。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記方法は、波長範囲が360~550nm、好ましくは450~500、より好ましくは460~480nmである青色光を印加することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記方法は、長波長(≧920nm)の光を使用して二光子活性化を実行することをさらに含む。
【0046】
本発明に記載の単離されたオプシンは、波長が360~550nm、好ましくは450~500、より好ましくは460~480nmの範囲内である光感受性である。具体的には、470nmの青色光は、細胞内で最も強いCa2+トランジェントを誘発し、これは、本発明に記載の単離されたオプシンが波長470nmの光に超感受性であることを意味する。
【0047】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態のすべての組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】HEK 293T細胞におけるcOpn5が光誘導性Gシグナル伝達の強力な活性化を媒介することを示す。
図2】cOpn5がGシグナル伝達には共役するが、Gシグナル伝達には共役しないことを示す。
図3】cOpn5が高い時空間分解能でGシグナル伝達の光学的制御を高感度に媒介することを示す。
図4】cOpn5がopto-a1AR、hM3Dqまたはopn4よりも光に対してより迅速且つ敏感な応答を媒介することを示す。
図5】cOpn5がアストロサイトの活性化を効率的に媒介することを示す。
図6】cOpn5媒介性アストロサイトの活性化が、インビボで大量のATPフラッシュおよびニューロンの活性化を誘導することを示す。
図7】cOpn5がアストロサイトにおける持続的且つ確実なATP放出および末梢ニューロンの活性化を媒介することを示す。
図8】cOpn5媒介性光遺伝学が神経回路依存性方法でマウスの行動を改変させることを示す。
図9】cOpn5媒介性光遺伝学がニューロンを確実に活性化することを示す。
図10】光ファイバーの注入位置および配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明では、複数の種に由来するオプシン、特にOpn5オルソログの能力を試験し、多くのオプシンが光誘導性Gシグナル伝達および/または細胞の活性化を感受性且つ強力に媒介することが発見された。
【0050】
好ましくは、前記Opn5オルソログは、ニワトリオルソログ(cOpn5と略記)または海亀オルソログ(tOpn5と略記)である。
【0051】
Opn5、特にcOpn5に対する詳細な特性評価により、それは、青色光に対して超敏感であり(μW/mmレベル、既存のG共役オプシンベースのツールopto-a1ARおよびopn4感度が~3桁高い)、高い時間(10ms光パルスに応答し、opto-a1ARまたはopn4よりも~3桁速い)および空間(亜細胞(subcell)レベル)分解能を有し、発色団を添加する必要もない。具体的には、内因性レチナールで十分であり、レチナールを添加する必要はない。
【0052】
本発明はさらに、cOpn5光遺伝学が、効率的な方法として、インビボでアストロサイトを活性化して大量のATP放出を誘導し、ニューロンを活性化して自由に動くマウスでロバストネス行動変化を生み出すために用いられることを証明する。これらの発見により、cOpn5およびおそらく他のOpn5オルソログは、強力な光遺伝学的ツールとして使用されることができ、非興奮性細胞および興奮性細胞の両方におけるGシグナル伝達および/または細胞の活性化に関連する生理学的および行動的機能の実験的研究をサポートする。
【0053】
cOpn5がGシグナル伝達の光遺伝学的活性化および/または細胞の活性化を媒介する
具体的には、本発明では、ニワトリ、海亀、ヒトおよびマウスに由来するOpn5オルソログを試験して(それらは、互いに80~90%のタンパク質配列同一性を有する)、それらがHEK 293T細胞における青色光誘導性Gシグナル伝達活性化を媒介する能力を有するかどうかを決定するために試験する。青色光を刺激に使用し、赤色細胞内カルシウム指示薬CalbryteTM630AM染料を使用して、モニタリング相対的なCa2+応答をモニタリングする。ニワトリ(cOpn5)および海亀(tOpn5)に由来するOpn5オルソログは、Ca2+シグナル(~3ΔF/F)伝達の即時且つ強力な光誘導性増加を媒介するが、ヒトまたはマウスOpn5オルソログを発現する細胞では、ヒト又はマウスのOpn5オルソログを発現する細胞では光の影響が観察されない。ニワトリオルソログで例示されるように、cOpn5は、EGFP-CAAX膜マーカーと共局在しており、これは、細胞膜に効率的に輸送されることを示す。培地に外因性レチナールを添加する必要なく、これは、内因性レチナールがcOpn5を機能させるのに十分であることを示唆する。Ca2+シグナルは、細胞外Ca2+の除去に耐性があるため、これは、細胞内蓄積からのCa2+の放出を示す。両方のcOpn5発現細胞において、Gタンパク質阻害剤(例えば、YM-254890、高選択性Gタンパク質阻害剤)のプレインキュベーションは、光誘導性Ca2+トランジェントを可逆的に除去する。cOpn5を発現するがヒトOPN5を発現しない細胞において、IPの迅速分解産物であるイノシトールリン酸(IP1)レベルの光誘導性の増加が検出され、さらに、YM-254890による治療では、このような増加の程度が減少する。cOpn5発現細胞(例えば、HEK293T細胞)において、青色光も、PKC活性に依存性方式でMARCKSタンパク質(推定PKCターゲットポイント)のリン酸化を引き起こす。対照的に、レチナールの存在下で、青色光照射は、ヒトおよびマウスOpn5を発現する細胞におけるcAMPレベルを効率的に低下させるが、レチナールの非存在下で、青色光照射は、cOpn5を発現する細胞においてこのような効果がない。総合すると、これらのデータは、HEK293T細胞において、青色光照射がcOpn5とGシグナル伝達経路との共役を可能にしていることが裏付ける。
【0054】
敏感且つ正確であるcOpn5媒介性光遺伝学
具体的には、本発明では、cOpn5の光活性化特性を特徴付ける。cOpn5を細胞(例えば、HEK293T細胞)で異種発現することができる。Opn5は、これまで紫外線(UV)感受性光受容体であると考えられているが、固定光強度(100μW/mm)で365~630nmの範囲内の一連の波長をプロットすると、470nmの青色光が最も強いCa2+トランジェントを引き起こすことを示すが、UVA光(365および395nm)は、効率が低く、より長い波長の可視光(561nmまたは以上)は、まったく効果がない。cOpn5発現HEK293T細胞に対する様々な光持続時間の影響を試験し、短い光パルス(1、5、10、20、50ms、16μW/mm、470nm)による刺激では、光持続時間が10msを超える際にCa2+応答が飽和モードに達することを示す。この光強度(16μW/mm、470nm)下で、光持続時間を長くしても、Ca2+シグナル振幅をさらに増加させまい。異なる強度で470nmの光を照射すると、~4.8μW/mmおよび16μW/mmの青色光がそれぞれ最大の約半分および最大応答を生成することが分かる。これらのデータは、cOpn5の光感受性が、一般的な光遺伝学的ツールであるチャネルロドプシン-2(ChR2)の報告値より2~3桁高いことを示す。総合すると、本発明の結果は、cOpn5がレチナールを追加しなくても単一成分の光遺伝学的ツールとして機能できること、cOpn5が青色光に超敏感であること、その完全な活性化には低い光強度(16μW/mm)と短い持続時間(10ms)が必要であることを示す。
【0055】
cOpn5の性能をopto-a1ARの性能と比較し、ここで、opto-a1ARは、ロドプシンをG共役アドレナリン受容体と混合することによって操作されたキメラGPCRである。以前に報告されたプロトコールに従って、opto-a1AR発現HEK293T細胞におけるゆっくりと小さな(~0.5ΔF/F)Ca2+シグナル増加を引き起こすには、非常に長時間の強い照射(60s、7mW/mm)への曝露が必要であり、15秒の照射では効果がないことが発見される。cOpn5の性能をopn4の性能と比較し、opn4は、Gシグナル伝達活性化のツールであると報告されている天然オプシンである。opn4発現HEK293T細胞におけるゆっくりとした(~1ΔF/F)Ca2+シグナル増加を引き起こすには、強い照射(25s、40mW/mm)への長時間の曝露および追加のレチナールが必要であることが発見される。従って、既存オプシンベースのツール(opto-a1ARおよびopn4)と比較して、cOpn5は、光感受性がはるかに高く(感度が~3桁高い)、必要な曝露時間(10ms vs. 60s)がはるかに短く、より強い応答を生成する。
【0056】
さらに、cOpn5の性能を、一般的なG共役化学遺伝学ツールhM3Dqの性能と比較し、ここで、hM3Dqは、外因性小分子リガンドクロザピン-N-オキシド(CNO)を添加することによって活性化される。cOpn5発現HEK293T細胞の光誘導性活性化、およびhM3Dq発現HEK293T細胞のCNO誘導性活性化は、類似なCa2+シグナルのピーク値応答振幅を有する。同時に、hM3Dq発現HEK293T細胞と比較して、cOpn5発現HEK293T細胞は、より速く、より時間的に正確な応答を示し、より速い回復時間を示す。これらの結果は、cOpn5媒介性光遺伝学がhM3Dqよりも時間的精度の点でより制御可能であることを示す。
【0057】
cOpn5光遺伝学により、細胞活動を空間的に正確に制御することができる。個々のcOpn5発現HEK293T細胞の亜細胞領域に短時間の光刺激(63ms)を限定すると、個々の細胞が即時に活性化される。興味深いことに、細胞が高度に密集した領域では、Ca2+シグナルが周囲の細胞に伝播し、それによりまだ未確認のメカニズムによるHEK293T細胞間の細胞間コミュニケーションが示唆される。新生児マウスの脳から調製された初代アストロサイト培養物において、cOpn5およびEGFPマーカータンパク質のバイシストロン性発現のためのAAVベクターを使用してcOpn5を発現する。Calbryte 630 AM染料を使用してCa2+レベルをモニタリングしたところ、青色光を使用してcOpn5発現アストロサイトに照射すると、強力なCa2+トランジェント(~8ΔF/F)が生じることが分かる。光刺激(63ms)が個々のcOpn5発現アストロサイトの亜細胞領域のみに正確に制限される場合、Ca2+シグナルが個々の細胞内で伝播されることが観察される。HEK293T細胞での試験と同様に、刺激されたアストロサイトからより遠位の刺激されていないアストロサイトへのCa2+シグナルの緩やかな波状伝播が観察される。従って、これらの実験は、cOpn5光遺伝学によって正確な空間制御が可能であることを確認し、最初に神経化学的および機械的刺激を使用して発見したアストロサイトネットワークの動態を研究することが有用である可能性があることを示唆する。
【0058】
インビボで大量のATP放出およびニューロン活性化を誘導するアストロサイトのcOpn5光遺伝学的活性化
cOpn5媒介性光遺伝学のインビボでの性能を試験する。アストロサイトは、中枢神経系における非興奮性細胞の重要な集団を表し、これまでに光遺伝学的ツールは当該集団で限られた成功しか収めていない。ATPは、アストロサイト間のコミュニケーションメッセンジャーであることが知られているが、ATP放出に対する細胞内Ca2+のリアルタイムの影響はまだ視覚化されていない。最近報告されたGPCR活性化ベースの超高感度ATPセンサーGRABATPを使用して、細胞外ATPレベルの変化をモニタリングする。具体的には、GfaABC1Dプロモーター(アストロサイトの遺伝子発現を駆動するために一般に使用される)含有AAVベクターを注入した後、マウスS1感覚皮質でcOpn5およびGRABATPセンサーを発現する。
【0059】
頭を固定して覚醒し、正常に行動するマウスからのGRABATPシグナルを二光子イメージングする。驚くべきことに、イメージングのために送達された920nmの光自体は、cOpn5およびGRABATPを発現するマウスでは大量のATPフラッシュを引き起こすが、ATPセンサーを発現するがcOps5発現が欠くマウスではそうではない。ATPシグナルを刺激するために青色光パルスは必要ない。個々のATPフラッシュの直径は、通常20~100μmの範囲内であり、且つ~1分間持続する。~1分間の最初の静止期間の後、フラッシュ周波数は、徐々に増加し、~5分間内にピーク値に達し、イメージング領域(640×640μm)内で~50回フラッシュ/分間のレベルに達する。さらに、繰り返しの試験では、高周波ATPフラッシュも発生する。GRABATPのみを発現するマウスでは、散発的なATPイベント(イメージング領域内で~0.3回フラッシュ/分間)が観察され、リポ多糖類(LPS)の腹腔内注射による炎症誘発性治療後の8時間、ATPフラッシュイベントは、基礎条件(~2回フラッシュ/分間)のほぼ6倍に増加するが、かなり安定した周波数を示し、これは、炎症が脳内でATP放出を誘導することが確認される。cOpn5発現マウスで観察されたATPフラッシュ周波数は、Opn5を発現しないマウスの炎症誘発性治療後のフラッシュ周波数よりも~25倍高いことを考えると、cOpn5媒介性アストロサイトの光活性化がインビボで連続して大量のATP放出を誘導することを実証する。
【0060】
アストロサイトは、ATPを放出し、他のグリア伝達物質もニューロン受容体に作用して、ニューロン活性を調節する。cOpn5媒介性アストロサイト活性化を使用して、頭を固定し、覚醒し、正常に行動するマウスにおけるニューロンCa2+シグナルを二光子イメージングする。cOpn5発現細胞(n=406)は、GFAP染色(n=397)と共局在するが、GCaMP7b発現ニューロンとは共局在しない。生の追跡例およびコホートデータは、cOpn5媒介性アストロサイトの活性化が0~5分間と比較して15~20分間のニューロン活性を有意に増加させることを示す。cOpn5は、アストロサイトで厳密に発現され、これは、cOpn5発現細胞およびGFAP染色シグナル(ニューロンにおけるGCaMP7bシグナルとは異なる)の共局在によって確認される。cOpn5媒介性アストロサイトの光活性化がインビボで末梢ニューロンの活性を増加させることが実証される。さらに、本発明は、二光子イメージングに使用されるパルスレーザーの長波長(920nm)光がcOpn5を活性化できることを示し、cOpn5が二光子光遺伝学を有する可能性があることを示唆する。
【0061】
ニューロンを活性化し且つ動物行動を調節するcOpn5光遺伝学
ニューロンにおけるcOpn5媒介性光遺伝学の応用を調査する。まず、cOpn5が光誘導性Ca2+シグナルを媒介できるかどうかを検査する。AAVおよび汎ニューロンSYNプロモーターを使用して、マウス皮質ニューロンでcOpn5および遺伝的にコードされたCa2+センサーjRGECO1aを発現する(図8a)。脳切片サンプルでは、青色光パルス(10s、100μW/mm、473nm)を印加することにより、ニューロンにおけるCa2+トランジェントを確実に誘発する(図8b、図8c)。従って、cOpn5は、ニューロンにおいて光誘導性活性化を実現することもできる。
【0062】
運動皮質、海馬および背側線条体からの切片サンプルにおけるニューロンの電気生理学的性質に対する光誘導性cOpn5活性化の影響を研究する(図8d)。2種類の活性化パターンが観察される。記録されたほとんどのニューロンでは、青色光パルスは、電圧クランプモードで小さな脱分極電流(~20pA)を誘導し、電流クランプモードで活動電位の遅延するが活発な放電を誘発する(図8e、左側、n=12個のニューロン)。より高い周波数の光パルスでは、cOpn5は、最初の光パルスの後、より短い潜伏期間(約5秒~約3秒)でより多くのスパイクを駆動するが、内部向き電流は、顕著な影響を受けない(図9a)。別のニューロン亜集団において、短時間の光パルスは、急速に強力な内部向き電流(100~1000pA)を引き起こし、活動電位のバースト発火(burstingfiring)を駆動する(図8e、右側、n=6個のニューロン)。ニューロンは、10Hz、10ms/パルスで繰り返し刺激され、光刺激の繰り返しの試験において発火速度(firingrate)の非減衰パターンを示す(図9b)。注意すべきことに、ChR2光遺伝学によって生成される活動電位とは異なり、cOpn5光刺激によって誘発される活動電位は、光パルスに時間ロックされていない。最後に、動物行動の調節におけるcOpn5媒介性光遺伝学の用途を評価する。外側視床下部(LH)は、報酬の処理および摂食行動に機能することが知られている脳の中枢である。VGAT-CreマウスのLHGABA作動性ニューロンでcOpn5を発現させ、光パルスを自由に行動するマウスのLHに送達するために光ファイバーを移植する(図8g)。LHGABAニューロンの活性化が摂食行動56を駆動するという以前に発見と一致し、光刺激(20Hz、5ms/パルス、473nm、0.75mW、線維先端から出力する)は、cOpn5発現マウスにおいて食物摂取の顕著な増加を誘発するが、EGFPを発現する対照マウスにおいて食物摂取の顕著な増加を引き起こさない(図8h)。食物採餌行動課題を使用して、不定帯(ZI)におけるcOpn5媒介性GABAニューロンの光遺伝学的活性化の効果も試験し(図8i)、ここで、不定帯は、既知の強迫的な摂食を駆動する領域である。EGFP発現マウスと比較して、cOpn5発現マウスは、繰り返した光刺激後、高脂肪食物ペレットの採餌時間が顕著な増加する(図8j)。応答プロファイルを特徴付けるために、LHおよびZIのcOpn5発現ニューロンから電気生理学的記録を実行する。全脳切片により、光ファイバーの注入部位および配置を確認する(図10a~10c)。注意すべきことに、マウスは、点灯時に前記行動(摂食行動または高脂肪食物の採餌行動)を維持し、消灯すると即時にこのような行動を停止する。従って、cOpn5は、動物の行動状態を迅速、正確且つ可逆的に効率的に調節する。
【0063】
ここで、本発明は、Gシグナル伝達および/または細胞の活性化のための極めて効果的な光遺伝学的ツールとしての本発明のOpn5の用途を実証する。以前の研究では、哺乳動物Opn5がUV感受性G共役オプシンとして特徴付けられ、Opn5(例えば、cOpn5を発現するか、またはtOpn5を発現する)を発現する哺乳動物細胞において、可視青色光は、急速なCa2+トランジェント、IP蓄積およびPKC活性化を誘導する可能性があるという驚くべき発見を提示する。本発明のOpn5(特にcOpn5)は、マウスのアストロサイトにおいて、インビボでの光による強力なATP放出を効果的に媒介し、ニューロン活性を増加させる。本発明は、Opn5、特にcOpn5が、ニューロンの迅速、強力且つ可逆的な光学活性化を可能にし、動物行動の選択的調節に適用されることを示す。重要なことに、本発明におけるOpn5(例えば、cOpn5)は、外因性発色団を必要としない、強力で使いやすい単一の成分系である。本発明は、Opn5ベースの光遺伝学、例えば、cOpn5ベースの光遺伝学が、非興奮性細胞および興奮性細胞におけるG共役シグナル伝達および/または活性化細胞によって調節される重要な生理学的および行動的機能を研究するために使用できる技術となることを想定する。
【0064】
表6は、cOpn5と他の光遺伝学的ツールとの応答振幅、光感受性、時間分解能および追加の発色団の必要性を直接比較することにより、cOpn5の可能にする特性を示す。cOpn5発現細胞では、強度16μW/mmの10ms青色光パルスのみが、ピーク値振幅3~8ΔF/FのCa2+シグナルの急速な増加を引き起こすことができる。対照的に、本発明に先立って、opto-a1ARまたは哺乳動物Opn4(Gシグナル伝達のために提案された2種の光遺伝学的ツール)の活性化には、約3倍の光強度(7~40mW/mm)および長時間の露光(20~60秒)が必要であり、弱いCa2+シグナル(0.25~0.5ΔF/F)しか生成しないことが明らかになる。従って、opto-a1ARまたは哺乳動物Opn4は、内因性G共役受容体の急速な活性化プロファイルを模倣することはできず、ここで、内因性G共役受容体は、通常、対応するリガンドの印加後サブ秒内に強いGシグナル伝達を引き起こす。cOpn5媒介性アストロサイトおよびニューロンの光学活性化に応答してインビボで示される顕著な生理学的および行動的効果は、cOpn5光遺伝学の能力を裏付ける。対照的に、最近の体系的な特徴付けでは、opto-a1AR-およびOpn4媒介性光遺伝学的刺激は、Ca2+シグナルの振幅を増加せず、長時間の照射後でも、Ca2+トランジェントおよびシナプスイベントの周波数をわずかに調節するだけであることを示す(Gerasimovら、2021、Mederosら、2019)。opto-a1ARおよびOpn4媒介性光遺伝学に関連する光感受性、時間分解能および応答振幅の制限を克服することにより、本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)は、大量の細胞および組織におけるGシグナル伝達および/または細胞の活性化のメカニズムおよび機能の研究において幅広い適用性を有するであろう。
【0065】
本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)に基づく光遺伝学は、安全性および利便性の利点も有する。多くの種のOpn5がUV応答性であることが報告されているが(Kojimaら、2011)、cOpn5は、470nmの青色光によって最適に活性化され、青色光の透過性は、UVの透過性よりも優れ、UVに関連する細胞毒性を回避する。光に対する超感受性により、潜在的な加熱アーチファクト(heatingartifact)も最小限に抑えられる。長波長(≧920nm)光を使用して二光子活性化することができ、これは、パルスレーザーを使用してより深い組織活性化に適していることを示す。cOpn5またはtOpn5は、外因性レチナールを必要とせずに、光によって強力且つ再現可能に活性され、これは、cOpn5またはtOpn5が内因性レチナールに共有結合する双安定オプシンであるため、光漂白に耐性があるためと考えられる(KoyanagiおよびTerakita、2014、TsukamotoおよびTerakita、2010)。対照的に、Opn4の哺乳動物実験では、追加のレチナールが必要であり、応答時間が長く、且つ光感受性が低い。本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)は、実験中に化合物を組織に送達する負担を回避するため、単一成分系としてインビボ研究に特に有用である。
【0066】
化学遺伝学およびアンケージング(uncaging)ツールと比較して、本発明のOpn5の光遺伝学(特にcOpn5またはtOpn5の光遺伝学)は、いくつかの重要な利点をさらに提供する。時間的にははるかに正確であり、単細胞または亜細胞の空間分解能を提供する。CNO/hM3Dq媒介性化学遺伝学は、非興奮性細胞例(例えば、脳内のアストロサイト)の生理学的および行動的機能(Agulhonら、2013、Shenら、2021)の研究に使用されているが、インビボでの使用には、通常、CNOが標的細胞および組織に到達するまで数分を必要とすることがよくある。化合物の拡散性の性質は、細胞および亜細胞の分解能でのGシグナル伝達の化学遺伝学的刺激がほぼ不可能であることを示唆する。本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)は、ケージド化合物ベースの「アンケージング」ツール(例えば、ケージドカルシウムおよびケージドIP)とも異なり、これらのツールは、化合物の事前ロードを必要とし、且つGシグナル伝達および/または細胞の活性化に関連するCa2+関連経路を部分的にしか模倣しないためである。例えば、内因性GPCRを標的とするケージドグルタミン酸塩およびケージドATP(Ellis-Davies、2007、Lezmyら、2021)等の他の「アンケージング」ツールも存在する。しかしながら、これらのケージド化合物は、細胞外培地または細胞内の細胞質への導入を必要とするため、行動動物への応用を制限する(AdamsおよびTsien、1993b)。「アンケージング」ツールに対する本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)の利点は、実験によって明らかに実証され、本発明のOpn5(特にcOps5またはtOpn5)は、既存のChR2ベースのツールと同様であり、動物行動を調節するために同様に容易に使用されることができる。
【0067】
本発明のOpn5(特にcOps5またはtOpn5)の光遺伝学は、細胞内のGシグナル伝達および/または細胞の正確な活性化に特に適しており、その後細胞内に蓄積されたCa2+の放出を引き起こし、且つPKCを活性化する。本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)は、例えば、細胞膜を貫通して陽イオンを輸送するChR2またはその変異体等の現在のチャネルベースの光遺伝学的ツールとは異なる。細胞膜電位、ひいては活動電位の放電を制御することにより、ChR2およびその変異体は、神経回路の解剖に多大な貢献をしているが、それらの成功は、活動電位を生成する活性イオンチャネルを欠く非興奮性細胞の研究においてはさらに限定的である(Gourineら、2010)。非興奮性細胞に応用されることに加えて、本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)の光遺伝学は、ニューロンにおけるGシグナル伝達および/またはニューロンの活性化を刺激し、回路依存的に動物行動を制御することもできる。注意すべきことに、G共役GPCRは、Gタンパク質を無差別に動員し、受容体および細胞特異的な方法で可変の下流シグナル伝達を生成する可能性がある。実際に、同じ光照明パラメーターが異なるニューロンで異なる活性化パターンを生成することが観察される。本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)媒介性光遺伝学的活性化は、ChR2のようにニューロンにおいて厳密に時間ロックされた活動電位発火(firing)を正確に生成するわけではない。これは、人工的に同期されたニューロンの活性化を回避できるため、有用である可能性がある。しかしながら、活動電位発火の正確な時間制御が必要な場合、イオンチャネルベースの光遺伝学的ツールの使用を勧める。
【0068】
技術の進歩に加えて、我々の発見は、インビボでのアストロサイトのシグナル伝達および/または活性化に対していくつかの機能的な効果がある可能性がある。ATPは、重要なグリア伝達物質であると考えられているが、以前の研究により複数の放出メカニズムが明らかになり、これらの放出メカニズムは、処理方法、細胞外Ca2+の存在、並びに細胞および組織調製サンプルの正確な形態に依存する(Figueiredoら、2014、HamiltonおよびAttwell、2010)。さらに、通常、ATP放出の存在を間接的にモニタリングする。アストロサイトの活性化がATP放出を引き起こすかどうか、もしそうであればこのような放出がインビボでどのように現れるかは不明である。ここで、我々は、アストロサイト内のGシグナル伝達経路の刺激がATPフラッシュの形態で大量のATP放出を引き起こすことを初めで実証した。本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)の光遺伝学は、ATP放出の分子および細胞メカニズムを研究するための理想的な技術を提供する。ATPに加えて、アストロサイトの活性化により、D-セリン、グルタミン酸およびGABA等の他のグリア伝達物質の放出も引き起こす。ATPは、アデノシン等の他の代謝産物にも変換される。グリア伝達物質およびその代謝産物は、ニューロンの興奮性およびシナプス強度に複雑な調節効果を及ぼす可能性がある。例えば、ATPは、様々なP2XおよびP2Y受容体を介してニューロンを活性化することができるが、アデノシンは、A1受容体を介してニューロンを強力に阻害する(Lezmyら、2021、Zhangら、2003)。これらの異なる効果がどのように統合されて、インビボでニューロン活動を調節するのかは不明である。ここで、我々は、cOpn5発現アストロサイトの光遺伝学的活性化がマウスS1皮質におけるニューロンを顕著に刺激することを明らかにする。従って、本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)の光遺伝学は、アストロサイトとニューロンとの間の複雑な相互作用の分子、細胞および回路メカニズムを分析するための基礎を築く。インビボ実験は、本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)が光遺伝学的プローブおよびイメージングセンサー(例えば、遺伝的にコードされたCa2+指示薬およびGPCRベースの神経伝達物質センサー)と適合性があることを示す。本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)は、これらのセンサーとともに、Gシグナル伝達および/または細胞を一時的に活性化し、同時に関連効果をモニタリングするための全光学的アプローチを可能にする可能性がある。
【0069】
総合すると、本発明は、本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)が、Gシグナル伝達および/または細胞を迅速、可逆的且つ正確な活性化するための青色光感受性オプシンとして作用することを実証する。本発明は、本発明のOpn5(特にcOpn5またはtOpn5)を、非興奮性細胞およびニューロンを活性するための強力で使いやすい光遺伝学的ツールとして確立する。G共役GPCRの重要性を考慮すると、cOpn5は、すべての主な細胞種類および組織におけるGシグナル伝達のメカニズムおよび機能の詳細な解明に幅広い応用が期待される。
【0070】
特定の実施形態および実施例の説明は、例示として提供されるものであり、限定するものではない。当業者であれば、実質的に同様の結果を生み出すために、様々な重要でないパラメーターを変更または修正できることが容易に理解されるであろう。
【0071】
実施例
材料および方法:
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
【表6-1】
【表6-2】
【0077】
実施例1.Gシグナル伝達の光遺伝学的活性化を媒介するcOpn5
ニワトリ、海亀(turtle)、ヒトおよびマウスからのOpn5オルソログ(互いに80~90%のタンパク質配列同一性を有する)の異種発現は、HEK293T細胞における青色光誘導性Gシグナル伝達活性化を媒介する能力を有するかどうかを試験する(図1aおよび表7)。青色光を使用して刺激し、赤色細胞内のカルシウム指示薬CalbryteTM630AM染料を使用して、相対的なCa2+応答をモニタリングする(図1b)。ニワトリ(cOpn5)および海亀(tOpn5)からのOpn5オルソログは、Ca2+シグナルの即時且つ強力な光誘導性の増加(約3ΔF/F)を媒介するが、ヒトまたはマウスのOpn5オルソログを発現する細胞では、光効果が観察されない(図1dおよび図2a、図2b)。ニワトリオルソログによって例示されるように、cOpn5は、EGFP-CAAX膜マーカーと共局在し、これは、それが細胞膜に効率的に輸送されることを示す(図1c)。培地に外因性レチナールを添加せず、これは、内因性レチナールがcOpn5を機能させるのに十分であることを示す。Ca2+シグナルは、細胞外Ca2+の除去に耐性があるため、細胞内蓄積からのCa2+の放出を示す(図2c)。YM-254890(高選択性Gタンパク質阻害剤33)のプレインキュベーションにより、両方のcOpn5発現細胞における光誘導性Ca2+トランジェントが可逆的に消失される(図1e)。cOpn5(ヒトOPN5ではない)発現細胞において、IPの急速分解産物であるイノシトールリン酸塩(IP1)レベルの光誘導性増加が検出され、さらに、YM-254890での治療により、当該増加の程度が減少される(図1fおよび図2d)。cOpn5発現HEK293T細胞において、青色光も、PKC活性依存性の方法で、MARCKSタンパク質(PKCの知られたターゲットポイント34)のリン酸化を引き起こす(図1gおよび図2e)。対照的に、レチナールの存在下でのヒトおよびマウスOpn5発現細胞において、青色光照射は、cAMPレベルを効率的に低下させるが、レチナールなしのcOpn5発現細胞ではこのような効果がない(図2f)。総合すると、これらのデータは、HEK293T細胞において、青色光照射がGシグナル伝達経路にcOpn5を共役させることを裏付けている。
【0078】
【表7】
【0079】
図1は、cOpn5がHEK293T細胞における光誘導性Gシグナル伝達の強力な活性化を媒介することを示す。
a.光誘導性cOpn5活性化に応答した推定の細胞内シグナル伝達の概略図。PLC:ホスホリパーゼC、PIP2:ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸、IP:イノシトール-1,4,5-三リン酸、IP:イノシトール一リン酸;DAG:ジアシルグリセロール、PKC:プロテインキナーゼC、YM-254890:選択性Gタンパク質阻害剤。
【0080】
b.3種(セキショクヤケイ(Gallus gallus)、ホモサピエンス(Homo sapiens)およびマウス(Mus musculus))のOpn5発現HEK293T細胞において、青色光刺激(10s、100μW/mm、488nm)の前後にCa2+シグナルの擬似カラー画像。スケールバー、10μm。
【0081】
c.HEK293T細胞において、Cy3対比染色されたV5-cOpn5融合タンパク質(赤色)が膜タグEGFP-CAAX(緑色)と共局在する。DAPI対比染色(青色)は、細胞核を支持する。スケールバー、10μm。
【0082】
d.cには、細胞の光誘発Ca2+シグナルの経時的変化を示す。
【0083】
e.Gタンパク質阻害剤YM-254890(10nM)は、cOpn5媒介性光誘導性Ca2+シグナルを可逆的にブロックする。
【0084】
f.cOpn5発現HEK293T細胞において、YMは、連続光刺激(3分間、100μW/mm、470nm)によって誘発されるIP蓄積(左)を阻害する。***P<0.0001、*P=0.0128、Tukey′s多重比較検定。
【0085】
g.対照群(光刺激なし)、光刺激群および光+スタウロスポリン(ST、PKC阻害剤)群において、cOpn5発現HEK293T細胞におけるMARCKSのリン酸化。同じ画分中のp-MARCKSの量を、α-チューブリンの量に対して正規化する。**P=0.0096、***P=0.0004、Tukey′s多重比較検定。
【0086】
図2は、cOpn5がGシグナル伝達に共役するが、Gシグナル伝達に共役しないことを示す。
a.海亀種(アオウミガメ(Chelonia mydas))からのOpn5発現HEK293T細胞において、青色光刺激(10s、100μW/mm、488nm)の前後のCa2+シグナルの擬似カラー画像。スケールバー、10μm(左);応答細胞における誘発されたCa2+シグナルの経時的変化(右)。
【0087】
b.Gタンパク質阻害剤YM-254890(10nM)が、cOpn5および海亀Opn5媒介性光誘導性Ca2+シグナルを可逆的にブロックするグループデータ。****P<0.0001、一元配置分散分析。エラーバーは、S.E.M.を示す。
【0088】
c.細胞外Ca2+の非存在下で、光刺激(10ms、16μW/mm、470nm)を使用して産生されたCa2+シグナルの経時的変化。
【0089】
d.光刺激の油有無にかかわらず、ヒトOpn5発現HEK293T細胞におけるIP1蓄積(右)。n.s.、有意差なし、対応のないt検定。
【0090】
e.対照群(光刺激なし)、光刺激群および光+スタウロスポリン群において、cOpn5発現HEK293T細胞におけるMARCKSのリン酸化の代表的な結果。同じ画分中のp-MARCKSの量をα-チューブリンの量に対して正規化する。
【0091】
f.培地中にレチナールを追加しない場合、光は、cOpn5発現HEK293T細胞におけるcAMPレベルに影響を及ぼさない(10μMフォルスコリンプレインキュベーション)(左図)。右図は、10μMレチナールプレインキュベーション後、四つの異なる種のOpn5発現HEK293T細胞におけるcAMP濃度に対する光刺激の影響を示す。
【0092】
dおよびfにおけるエラーバーは、S.E.M.を示す。
【0093】
実施例2. 好感度且つ正確であるcOpn5媒介性光遺伝学
HEK293T細胞で異種発現するcOpn5の光活性化性質に対して特徴付ける。Opn5は、これまでに紫外線(UV)感受性の光受容体27であると考えられているが、固定光強度(100μW/mm)下で365~630nm範囲の一連の波長をプロットすると、470nmの青色光が最も強いCa2+トランジェントを引き起こすのに対し、UVA光(365および395nm)は、効率が低く、より長い波長の可視光(561nmまたは以上)は、まったく効果がない(図3a)。cOpn5発現HEK293T細胞に対する異なる光持続時間の影響を試験する。短時間光パルス(1、5、10、20、50ms、16μW/mm、470nm)による刺激は、光持続時間が10msを超えるとCa2+応答が飽和モードに達することを示す(図3b)。当該光強度(16μW/mm、470nm)下で、光持続時間を長くしてもCa2+シグナル振幅はさらに増加されない(図4a)。異なる強度で470nmの光を照射すると、約4.8μW/mmおよび16μW/mmの青色光は、それぞれ約半分および最大の応答を生成することが分かる(図3cおよび図4b)。従って、cOpn5の光感受性は、光感受性G共役GPCRの報告値よりも3~4桁高く、一般に使用される光遺伝学的ツールであるチャネルロドプシン-2(ChR2)の数値よりも2~3桁高くさえある(Lin、2011、Zhangら、2006)(表8)。総合すると、これらの結果によると、cOpn5がレチナールを追加しなくても単一成分の光遺伝学的ツールとして機能できること、完全な活性には低い光強度(16μW/mm)および短い持続時間(10ms)が必要であるため、cOpn5が青色光に対して超敏感であることを示す。
【0094】
【表8-1】
【表8-2】
【0095】
cOpn5の性能をopto-a1ARの性能と比較し、ここで、opto-a1ARは、ロドプシンとG共役アドレナリン受容体とを混合することによって操作されたキメラGPCRである。以前に報告14されたプロトコールに従って、opto-a1AR発現HEK293T細胞でCa2+シグナルのゆっくりとした小さな(~0.5ΔF/F)増加を引き起こすには、非常に長時間の強い照射(60s、7mW/mm)に曝露する必要があり、15秒間の照射では効果がないことが発見された(図4c、図4d)。cOpn5の性能をopn4の性能と比較し、ここで、opn4は、天然オプシンであり、Gシグナル伝達活性化に使用されるツールであると報告されている。強い照射への長時間曝露(25s、40mW/mm)および追加のレチナールは、opn4発現HEK293T細胞におけるゆっくりとした(~1ΔF/F)Ca2+シグナルの増加を引き起こすことが発見される(図4e、図4f)。従って、既存のオプシンベースのツール(opto-a1ARおよびopn4)と比較して、cOpn5は、光感受性がはるかに高く(感度が約3桁高い)、必要な曝露時間(60sに対する10ms)がはるかに短く、より強い応答を生成する。
【0096】
さらに、cOpn5の性能を、一般的なG共役化学遺伝学ツールhM3Dqの性能と比較し、後者は、外因性小分子リガンドであるクロザピン-N-オキシド(CNO)を添加することによって活性化される37-39。cOpn5発現HEK293T細胞の光誘導性活性化およびhM3Dq発現HEK293T細胞のCNO誘導性活性化は、類似なCa2+シグナルのピーク値応答振幅を有する。同時に、hM3Dq発現HEK293T細胞と比較して、cOpn5発現HEK293T細胞は、より速く、より時間的に正確な応答を示し、より速い回復時間を示す(図4g~図4i)。これらの結果は、cOpn5媒介性光遺伝学が時間的精度の点でhM3Dqよりも制御可能であることを示す。
【0097】
cOpn5光遺伝学により、細胞活動を空間的に正確に制御できる。短時間の光刺激(63ms)を個々のcOpn5発現HEK293T細胞の亜細胞領域に制限すると、個々の細胞が即時に活性化される。興味深いことに、細胞が高度に密集された領域において、Ca2+シグナルは、周囲の細胞に伝播することにより、まだ未確認のメカニズムによるHEK293T細胞間の細胞間コミュニケーションの存在が示唆される(図3d、図3e)。前記発見は、初代細胞培養物にも拡張される。新生児マウスの脳から調製された初代アストロサイト培養物において、cOpn5およびEGFPマーカータンパク質のバイシストロン性発現のためのAAVベクターを使用してcOpn5を発現する(図5a)。Calbryte630AM染料を使用して、Ca2+レベルをモニタリングしたところ、青色光をcOpn5発現アストロサイトに照射すると、強力なCa2+トランジェントが賛成することが分かる(~8ΔF/F)(図5b、図5c)。光刺激(63ms)が個々のcOpn5発現アストロサイトの亜細胞領域にのみ正確に制限される場合、Ca2+シグナルが個々の細胞内で伝播されることが観察される(図3f)。HEK293T細胞での試験と同様に、刺激されたアストロサイトからより遠位の未刺激のアストロサイトへのCa2+シグナルの緩やかな波状伝播が観察される(図3g、図3h)。従って、これらの実験は、cOpn5光遺伝学により正確な空間制御が可能であることを確認し、且つ最初に神経化学的および機械的刺激を使用して発見されたアストロサイトネットワークの動態を研究することが有用である可能性があることを示唆する40、41
【0098】
図3は、cOpn5が高い時間的および空間的分解能でGシグナル伝達の光学的制御を感度に媒介することを示す。
a.異なる波長での光刺激に応答した、選択された波長(365、395、470、515、561、590および630nm、左図)およびcOpn5発現HEK293T細胞のCa2+シグナルの振幅(2s、100μW/mm、右図)の概略図。エラーバーは、S.E.M.を示す。
【0099】
b.異なる光刺激持続時間(1、5、10、20または50ms、16μW/mm、470nm)下での応答振幅。エラーバーは、S.E.M.を示す。
【0100】
c.異なる光強度下でのcOpn5媒介性Ca2+シグナルの経時的変化(0、4.8、8、16または32μW/mm、10ms、470nm、10msの16μW/mm刺激の場合、10%ピーク値活性=1.36±0.55s、90%ピーク値活性=2.37±0.87s、減衰時間τ=18.66±4.98s、平均値±S.E.M.、n=10個の細胞)。
【0101】
d.cOpn5発現HEK293T細胞における光誘導性(63ms、17μW、矢印は、刺激領域を指す)Ca2+シグナル伝播の画像。スケールバー、10μm。
【0102】
e.dの経時的なCa2+シグナルの伝播を示す擬似カラー画像(フレームN/(N-1)>1)。フレーム間隔は、500msであり、各フレームは、1回カウントされる。
【0103】
f.亜細胞領域で刺激された個々のcOpn5発現初代アストロサイトにおける光誘導性Ca2+シグナル伝播の画像(刺激サイズは、4×4μmであり、フレーム間隔は、300msである)。スケールバー、10μm。
【0104】
g.cOpn5発現初代アストロサイトにおける光誘導性Ca2+シグナル伝播の画像。スケールバー、10μm。
【0105】
h.gの経時的なCa2+シグナルの伝播を示す擬似カラー画像(フレームN/(N-1)>1)。フレーム間隔は、500msであり、各フレームは、1回カウントされる。
【0106】
図4は、cOpn5がopto-a1AR、hM3Dqまたはopn4よりも光に対して迅速且つ敏感な応答を媒介することを示す。
a.光パルス(16μW/mm、470nm、1、5、10、20または50ms)を使用する場合のCa2+シグナルの経時的変化。
【0107】
b.10ms、470nmでの異なる光強度(0、4.8、8、16または32μW/mm)下での応答振幅。
【0108】
c.opto-a1AR発現HEK293T細胞において、ベースラインおよびピーク値Ca2+シグナル(ΔF/F0)の擬似カラー画像。培地緩衝液は、10μMのオールトランスレチナールを含む。スケールバー、30μm。
【0109】
d.opto-a1AR発現HEK293T細胞において、Ca2+に対する60sの光刺激の影響(n=15個の細胞、上図)、15sの光刺激は、Ca2+シグナルに影響を与えない(下図)。
【0110】
e.ヒトOPN4発現HEK293T細胞において、ベースラインおよびピーク値Ca2+シグナル(ΔF/F0)の擬似カラー画像。培地緩衝液は、10μMのオールトランスレチナールを含む。スケールバー、30μm。
【0111】
f.opn4発現HEK293T細胞において、Ca2+に対する10uMのATR下での25sの光刺激の影響(n=12個の細胞、赤線)、ATRの非存在下でCa2+シグナルに影響を与えない(黒色図)。
【0112】
g.cOpn5発現HEK293T細胞におけるCa2+シグナルに対する光刺激の影響。上図は、ベースラインおよびピーク値応答の擬似カラー画像を示す。下図は、5回の連続試験にわたるcOpn5発現HEK293T細胞におけるcOpn5媒介性光遺伝学的刺激によって誘発されるCa2+シグナルのヒートマップを示す。スケールバー、20μm。
【0113】
h.hM3Dq発現HEK293T細胞において、Ca2+シグナルに対する化学遺伝学的刺激の影響。
【0114】
i.それぞれcOpn5媒介性光遺伝学的刺激(10s)およびCNOパフを使用した(100nM、10s)hM3Dq媒介性化学遺伝学的刺激によって誘発されるCa2+シグナルの経時的変化。
【0115】
図5は、cOpn5がアストロサイトの活性化を効率的に媒介することを示す。
a.AAV-cOpn5-T2A-EGFP(緑色)を使用して、培養初代アストロサイトでcOpn5を発現する。GFAP免疫染色(赤色)によってアストロサイトの同一性を確認する。スケールバー、20μm。
【0116】
b.光刺激後のcOpn5発現アストロサイトにおけるベースラインおよびピーク値Ca2+シグナルの擬似カラー画像。スケールバー、20μm。
【0117】
c.Ca2+シグナルの図および試験全体にわたるCa2+シグナルのヒートマップ(n=25個の細胞)。
【0118】
実施例3.インビボで大量のATP放出およびニューロン活性化を誘導するアストロサイトにおけるcOpn5光遺伝学的活性化
cOpn5媒介性光遺伝学のインビボでの性能を試験する。アストロサイトは、中枢神経系における非興奮性細胞の重要な集団を表し、これまでに、光遺伝学的ツールは、当該集団で限られた成功しか収めていない42。ATPは、アストロサイト間のコミュニケーションメッセンジャーであることが知られているが、ATP放出に対する細胞内Ca2+のリアルタイムの影響はまだ視覚化されていない。GPCR活性化ベースの超高感度ATPセンサーGRABATPを使用して、細胞外のATPレベルの変化をモニタリングする。具体的には、GfaABC1Dプロモーター(アストロサイトにおける遺伝子発現を駆動するために一般に使用される)含有AAVベクターを注入した後、マウスS1感覚皮質でcOpn5およびGRABATPセンサーが発現される(図6a)。
【0119】
頭を固定して覚醒し、正常に行動するマウスからのGRABATPシグナルを二光子イメージングする(図6a)。二光子イメージングに使用されるパルスレーザーの920nm光に加えて、ATPシグナルを刺激するには、青色光パルスが必要であると当初予想される。驚くべきことに、イメージングのために送達された920nmの光自体は、cOpn5およびGRABATPを発現するマウスでは大量のATPフラッシュを引き起こすが、ATPセンサーを発現するがcOps5発現を欠くマウスではそうではATPフラッシュを引き起こさない。個々のATPフラッシュの直径は、通常、20~100μmの範囲内であり、約1分間持続する。約1分間の最初の停止期間の後、フラッシュ周波数は、徐々に増加し、約5分間以内にピーク値に達し、イメージング領域(640×640μm)内で約50回のフラッシュ/分間のレベルに達する(図6b、図6cおよび図7a)。さらに、繰り返しの試験では高周波ATPフラッシュも現れる(図7b)。GRABATPのみを発現するマウスでは、散発的なATPイベント(イメージング領域内で約0.3回のフラッシュ/分間)が観察され、リポ多糖類(LPS)の腹腔内注射による炎症誘発性治療後の8時間の場合、ATPフラッシュイベントは、基礎条件(約2回のフラッシュ/分間)のほぼ6倍に増加するが、かなり安定した周波数を示し、これは、炎症が脳内でATP放出を誘導することが確認される。cOpn5発現マウスで観察されたATPフラッシュ周波数がOpn5を発現しないマウスで炎症誘発性治療後のフラッシュ周波数よりも約25倍(図6d、図7c)高かったことを考慮すると、cOpn5媒介性アストロサイトの光活性化がインビボで連続して大量のATP放出を誘導することを実証する。
【0120】
アストロサイトは、ATPを放出し、他のグリア伝達物質も、ニューロン受容体に作用してニューロン活性を調節する。cOpn5媒介性アストロサイト活性化を使用して、頭を固定して覚醒し、正常に行動するマウスにおけるニューロンCa2+シグナルを二光子イメージングする(図6e)。cOpn5発現細胞(n=406)は、GFAP染色(n=397)と共局在するが、GCaMP7b発現ニューロンとは共局在しない(図6f)。生の追跡例およびコホートデータは、cOpn5媒介性アストロサイト活性化が0~5minと比較して15~20minのニューロン活性を顕著に増加させることを示す(図6g、図6hおよび図7d)。cOpn5は、アストロサイトで厳密に発現され、これは、cOpn5発現細胞およびGFAP染色シグナル(ニューロンにおけるGCaMP7bシグナルとは異なる)の共局在によって確認される。我々は、cOpn5媒介性アストロサイトの光活性化がインビボで末梢ニューロンの活性を増加させることを実証した。さらに、我々のデータは、二光子イメージングに使用されるパルスレーザーからの長波長(920nm)光がcOpn5を活性化できることを示し、これは、cOpn5が二光子光遺伝学を有する可能性があることを示唆する。
【0121】
図6は、cOpn5媒介性アストロサイトの活性化がインビボで大量のATPフラッシュおよびニューロン活性化を誘導することを示す。
a.cOpn5媒介性アストロサイト活性化後、ATP放出のインビボ二光子イメージング(920nm)の実験設定の概略図。画像は、マウスS1皮質内において、アストロサイトにおけるcOpn5(赤色)の発現およびアストロサイトにおけるGRABATPセンサー(緑色)の発現を示す。スケールバー、100μm。
【0122】
b.対照マウス(cOpn5発現なし)、LPS処理マウス(cOpn5発現なし)およびcOpn5発現マウス(右側)におけるアストロサイトATPフラッシュイベントの数の経時的変化(0~10min)。
【0123】
c.対照マウス(cOpn5発現なし)、LPS処理マウス(cOpn5発現なし)およびcOpn5発現マウスにおける総ATPフラッシュイベント。左の列は、基礎レベル(光照射前)での生のGRABATP画像を示し、中央の列は、5分でのGRABATPシグナルを示し、右の列は、0~20分間に蓄積された擬似色分けされたATPフラッシュイベントを示す。
【0124】
d.cに示されるデータに対応し、アストロサイトATPフラッシュイベントの経時的なラスタープロット。
【0125】
e.cOpn5媒介性アストロサイト活性化後、ニューロンカルシウムイメージングに対してインビボ二光子イメージング(920nm)を実行する実験設定の概略図。画像は、マウスS1皮質内において、アストロサイトにおけるcOpn5(赤色)の発現およびアストロサイトにおけるGCaMP7b(緑色)の発現を示す。スケールバー、100μm。
【0126】
f.cOpn5発現細胞(赤色)は、647nm染料で対比染色したGFAP細胞(紫色)と共局在し、GCaMP7b発現細胞(緑色)は、ニューロンである。406個の赤色細胞および397個の紫色細胞、スケールバー、100μm。
【0127】
g.cOpn5媒介性アストロサイト活性化と共役する、0~5minおよび15~20min内の10個のGCaMP7b発現ニューロンの時間トレース。
【0128】
h.cOpn5媒介性アストロサイト活性化と共役する、0~5minおよび15~20min内のGCaMP7b発現ニューロンのカルシウムイベント分析。N=193個のニューロン、****P<0.0001、対応のないt検定。
【0129】
図7は、cOpn5がアストロサイトにおける持続的且つ確実なATP放出および末梢ニューロンの活性化を媒介することを示す。
a.異なる色で個々のフラッシュを示す、cOpn5発現マウスで検出されたアストロサイトATPフラッシュイベントの例。
【0130】
b.1時間後の繰り返しの試験において、cOpn5発現マウスにおけるATPフラッシュイベント(0~20min)。
【0131】
c.対照、LPSおよびcOpn5群におけるATPフラッシュイベントの数の定量化。対照-LPS比較、**P=0.0066、LPS-cOpn5比較、**P=0.0031、対照-cOpn5比較、***P=0.0002、対応のないt検定。
【0132】
d.cOpn5媒介性アストロサイト活性化と共役する、0~5minおよび15~20min内のGCaMP7b発現ニューロンのデコードスパイク発火速度の分析。N=193個のニューロン、***P<0.0001、対応のないt検定。
【0133】
実施例4.ニューロンを活性化し、且つ動物行動を調節するcOpn5光遺伝学
ニューロンにおけるcOpn5媒介性光遺伝学の応用を調査する。まず、cOpn5が光誘導性Ca2+シグナルを媒介できるかどうかを検査する。AAVおよび汎ニューロンSYNプロモーターを使用して、マウス皮質ニューロンでcOpn5および遺伝的にコードされたCa2+センサーjRGECO1aを発現する(図8a)。脳切片サンプルにおいて、青色光パルス(10s、100μW/mm、473nm)の印加により、ニューロンにおけるCa2+トランジェントを確実に誘導する(図8b、図8c)。従って、cOpn5は、ニューロンにおいて光誘導性活性化も実現することができる。
【0134】
運動皮質、海馬および背側線条体からの切片サンプルにおけるニューロンの電気生理学的性質に対する光誘導性cOpn5活性化の影響を研究する(図8d)。2種類の活性化パターンが観察される。記録されたほとんどのニューロンにおいて、青色光パルスは、電圧クランプモードで小さな脱分極電流(約20pA)を誘導し、且つ電流クランプモードで活動電位の遅延するが活発な放電を誘導する(図8e、左側、n=12個のニューロン)。より高い周波数の光パルス下では、cOpn5は、最初の光パルス後、より多くのスパイクを駆動し、より短い潜伏期間(約5s~約3s)を有し、内部向き電流は、顕著な影響を受けない(図9a)。別のニューロンの亜集団において、短時間の光パルスは、急速に強力な内部向き電流(100~1000pA)を引き起こし、且つ活動電位のバースト発火を駆動する(図8e、右側、n=6個のニューロン)。ニューロンは、10Hz、10ms/パルスで繰り返し刺激され、光刺激の繰り返しの試験において発火速度の非減衰パターンを示す(図9b)。注意すべきことに、ChR2光遺伝学によって53生成される活動電位とは異なり、cOpn5光刺激によって誘発される活動電位は光パルスに時間ロックされていない。
【0135】
最後に、動物行動の調節におけるcOpn5媒介性光遺伝学の有用性を評価する。外側視床下部(LH)は、報酬の処理および摂食行動における機能があることが知られている脳中枢である54,55。VGAT-CreマウスのLHGABA作動性ニューロンでcOpn5を発現させ、光ファイバーを移植し、自由に行動するマウスのLHに光パルスを送達する(図8g)。LHGABAニューロンの活性化が摂食行動56を駆動するという以前の発見と一致し、光刺激(20Hz、5ms/パルス、473nm、0.75mW、線維先端からの出力)は、cOpn5発現マウスにおいて食物摂取の顕著な増加を引き起こすが、EGFP発現対照マウスにおいては食物摂取の顕著な増加を引き起こさない(図8h)。食物採餌行動課題を使用して、不定帯(ZI)におけるcOpn5媒介性GABAニューロンの光遺伝学的活性化の効果も試験し(図8i)、ここで、不定帯は、強迫的な摂食を駆動することが知られて入る領域である57。EGFP発現マウスと比較して、cOpn5発現マウスは、光刺激を繰り返した後、高脂肪食物ペレットの採餌に費やされる時間の顕著な増加を示す(図8j)。応答プロファイルを特徴付けるために、LHおよびZIのcOpn5発現ニューロンから電気生理学的記録を実行する。全脳切片により、光ファイバーの注入部位および配置を確認する(図10a~図10c)。注意すべきことに、マウスは、点灯時に前記行動(摂食行動または高脂肪食物採餌行動)を維持し、消灯すると即時にこのような行動を停止する。従って、cOpn5は、動物の行動状態を効率的に迅速、正確且可逆的に調節できる。
【0136】
図8は、cOpn5媒介性光遺伝学が神経回路に依存的方法でマウスの行動を変化させることを示す。
a.光遺伝学的刺激およびCa2+イメージングのための実験設定を示す概略図。
【0137】
b.光刺激(10s、100μW/mm、473nm)の前後のCa2+シグナルを示す擬似カラー画像。スケールバー、10μm。
【0138】
c.bの6個のニューロンのCa2+シグナルトレースを示す図。
【0139】
d.皮質、線条体および海馬におけるcOpn5発現ニューロンの光遺伝学的刺激および全細胞パッチクランプ記録を示す概略図。
【0140】
e.2種類のニューロンの代表的図、ここで、光パルス(1Hz、5s、10ms/パルス)に応答して、強力な、遅延した活動電位発火、および小さな持続的な内部向き電流を示し、もう一方は、急速な膜電位脱分極および大きな内部向き電流を示す。
【0141】
f.473nmの光刺激のパルスシグナル(1Hz、5s)を印加した後、ニューロンの発火速度を増加する(***P=0.0005、n=18、対応のないt検定)。
【0142】
g.光遺伝学および食物摂取測定に使用される実験設定の概略図。VGAT-Creマウスの外側視床下部(LH)内のGABA作動性ニューロンでcOpn5-EGFPを発現する。EGFPを対照として発現させる。
【0143】
h.光誘導性(20Hz、5ms/パルス、473nm、0.75mW、線維先端からの出力)cOpn5媒介性摂食行動の活性化の概要。***P=0.0003、n.s.、顕著でなく、n=6匹のマウス、対応のないt検定。エラーバーは、S.E.Mを表す。
【0144】
i.食物採餌行動に使用される実験設定の概略図。高脂肪食物ペレットを使用する。マウスの不定帯(ZI)内のGABA作動性ニューロンでcOpn5-EGFPを発現する。EGFPを対照として発現させる。
【0145】
j.cOpn5媒介性採餌行動の概要。光刺激を受けてからマウスが隠れた食物を発見するまで、採餌時間の割合を計算する。****P<0.0001、n=6匹のマウス、対応のないt検定。エラーバーは、S.E.M.を示す。
【0146】
図9は、cOpn5媒介性光遺伝学がニューロンを確実に活性化することを示す。
a.1、10および20Hzの光パルス(5s、10ms/パルス)に応答する一つの代表的なニューロン。
【0147】
b.信頼性と繰り返し可能なcOpn5媒介性ニューロン光活性化を示す生のトレース。
【0148】
c.光刺激の繰り返しの試験における発火速度の概要。
【0149】
図10は、光ファイバーの注入位置および配置を示す。
a.LHにおけるEGFP対照の発現およびcOpn5のバイシストロン性発現(白色破線)を示す画像。病変部位および青色破線は、光ファイバーの配置を示す。スケールバー、500μm。
【0150】
b.ZIにおける注入位置および光ファイバーの配置。スケールバー、500μm。
【0151】
c.LHおよびZIにおけるcOpn5発現ニューロンの電気生理学的記録は、cOpn5媒介性光活性化を特徴付ける。
【0152】
実施例5
実験の説明:以下の表9は、本発明で試験された脊椎動物亜門(vertebrata)からのcOpn5オルソログの部分的なリストである。脊椎動物亜門(円形動物(rotundia)、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類および哺乳類を含む脊椎動物亜門)由来の報告されているすべてのオプシン5オルソログの完全な遺伝子を合成し、HEK293T細胞で発現される。光に対するオプシン5オルソログの感度を試験するために、470nmの青色光刺激を使用するか、または使用しない状況でカルシウムイメージングを実行する。光誘導性カルシウムシグナルの経時的変化は、Gシグナル伝達経路の的活性化の程度およびこれらのオルソログの感受性を明らかにする。
【0153】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表9-5】
【表9-6】
【表9-7】
【表9-8】
【表9-9】
【表9-10】
【表9-11】
【表9-12】
【表9-13】
【表9-14】
【表9-15】
【表9-16】
【表9-17】
【0154】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された光感受性オプシンであって、
シグナル伝達および/または細胞の活性化のために使用され、好ましくは、前記光は、360~520nm、好ましくは450~500、より好ましくは460~480nmの範囲、特に470nmの波長を有することを特徴とする、単離された光感受性オプシン。
【請求項2】
生物に由来する単離されたオプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有し、好ましくは、
前記生物における野生型オプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G シグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有し、および/または
動物に由来する単離されたオプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、G シグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有し、好ましくは、
前記動物における野生型オプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G シグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の単離されたオプシン。
【請求項3】
前記生物は、脊椎動物であり、好ましくは、
前記脊椎動物は、鳥類、爬虫類、魚類、両生類または哺乳類動物であり、
好ましくは、前記動物は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、レア、シギ、ヒクイドリ、七面鳥、ウズラ、ニワトリ、フォルコンリー、タカ、ハヤブサ、ハト、インコ、冠オウム、コンゴウインコ、オウム、スズメ目(例えば、鳴き鳥)、カケス、クロウタドリ、フィンチ、ウグイスおよびスズメを含むが、これらに限定されない鳥類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、トカゲ、ヘビ、アリゲーター(alligator)、海亀、ワニおよびリクガメを含むが、これらに限定されない爬虫類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、ナマズ、ウナギ、サメおよびメカジキを含むが、これらに限定されない魚類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、ヒキガエル、カエル、イモリおよびサンショウウオを含むが、これらに限定されない両生類であることを特徴とする、請求項2に記載の単離されたオプシン。
【請求項4】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、ニワトリに由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、ニワトリに由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有し、および/または
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、海亀に由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、G シグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、海亀に由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G シグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有することを特徴とする、請求項2に記載の単離されたオプシン。
【請求項5】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列(cOpn5)またはその断片または変異体を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列(cOpn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gシグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有し、および/または
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列(tOpn5)またはその断片または変異体を有し、G シグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列(tOpn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G シグナル伝達および/または細胞を活性化する活性を有することを特徴とする、請求項2に記載の単離されたオプシン。
【請求項6】
単離された核酸であって、
請求項1に記載の単離されたオプシンをコードすることを特徴とする、単離された核酸。
【請求項7】
キメラ遺伝子であって、
請求項6に記載の単離された核酸配列を含み、前記核酸配列は、適切な調節配列に作動可能に連結されることを特徴とする、キメラ遺伝子。
【請求項8】
ベクターであって、
請求項6に記載の単離された核酸または請求項7に記載のキメラ遺伝子を含み、好ましくは、
前記ベクターは、真核ベクター、原核発現ベクター、ウイルスベクターまたは酵母ベクターであり、好ましくは、
前記ベクターは、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターまたはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたは昆虫ベクターであり、好ましくは、ここで、前記ベクターは、組み換えされたAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVS、AAVOまたはAAV10であり、好ましくは、
発現ベクターまたは遺伝子治療ベクターであることを特徴とする、ベクター。
【請求項9】
単離された細胞または細胞培養物であって、
請求項6に記載の単離された核酸または請求項7に記載のキメラ遺伝子を含むことを特徴とする、単離された細胞または細胞培養物。
【請求項10】
シグナル伝達および/または細胞の活性化によって媒介される疾患または病症、またはGシグナル伝達および/または細胞の活性化が関与する疾患または病症の治療に使用するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離されたオプシン、請求項6に記載の単離された核酸、または請求項7に記載のキメラ遺伝子であって、
好ましくは、前記治療は、波長範囲が360~550nm、好ましくは450~500nm、より好ましくは460~480nm、特に470nmである青色光を印加することを含み、および/または、波長が≧920nmである光を使用して二光子活性化を実行することを含み、
好ましくは、前記G シグナル伝達および/または細胞の活性化によって媒介される疾患または病症、またはG シグナル伝達および/または細胞の活性化が関与する疾患または病症は、G シグナル伝達および/または細胞の活性化から恩恵を受ける、例えば、アストロサイトの活性化、強力なATP放出または増加されたニューロン活性から恩恵を受ける疾患または病症を含み、
好ましくは、前記G シグナル伝達および/または細胞の活性化によって媒介される疾患または病症、またはG シグナル伝達および/または細胞の活性化が関与する疾患または病症は、例えば膵島細胞、免疫細胞、例えば中枢ニューロン、アストロサイト、グリア細胞等の神経細胞、筋細胞、骨格細胞、内皮細胞、上皮細胞、神経系細胞、皮膚細胞、肺細胞、腎臓細胞および肝臓細胞、心筋細胞または血管内皮細胞のような活性化細胞から恩恵を受ける疾患または病症を含み、
好ましくは、前記疾患または病症は、自己免疫疾患、発達疾患、代謝性疾患、精神疾患、呼吸器系疾患または心血管疾患であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離されたオプシン、請求項6に記載の単離された核酸、または請求項7に記載のキメラ遺伝子
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
実施例
材料および方法:
【表1】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024545368000001.xml
【国際調査報告】