(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】光感受性GQ共役ニューロオプシン(オプシン5)による光遺伝学的視覚の回復
(51)【国際特許分類】
C07K 14/705 20060101AFI20241128BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20241128BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241128BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20241128BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241128BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241128BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
A61K38/17
A61K48/00
A61P27/02
A61P27/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024558170
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2022140490
(87)【国際公開番号】W WO2023116729
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/139750
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524232484
【氏名又は名称】ジェンアンス バイオテクノロジー カンパニー, リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GENANS BIOTECHNOLOGY CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ユー, タオ
(72)【発明者】
【氏名】ダイ, ルイチォン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ダンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ, ミンミン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
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4B065CA24
4B065CA44
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4C084AA13
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4C084ZA33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA70
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を迅速、可逆的且つ正確に回復する、単離された光感受性オプシンを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された光感受性オプシンであって、
G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復することを特徴とする、単離されたオプシン。
【請求項2】
前記単離されたオプシンは、生物に由来する単離されたオプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の単離されたオプシン。
【請求項3】
前記生物における野生型オプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の単離されたオプシン。
【請求項4】
前記単離されたオプシンは、動物に由来の単離されたオプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の単離されたオプシン。
【請求項5】
前記動物における野生型オプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたオプシン。
【請求項6】
前記生物は、脊椎動物であることを特徴とする、請求項2に記載の単離されたオプシン。
【請求項7】
前記脊椎動物は、鳥類、爬虫類または魚類、両生類または哺乳類動物であり、
好ましくは、前記動物は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、レア、シギ、ヒクイドリ、七面鳥、ウズラ、ニワトリ、ハヤブサ、タカ、ハヤブサ、ハト、インコ、冠オウム、コンゴウインコ、オウム、スズメ目(例えば、鳴き鳥)、カケス、クロウタドリ、フィンチ、ウグイスおよびスズメを含むが、これらに限定されない鳥類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、トカゲ、ヘビ、アリゲーター(alligator)、海亀、ワニおよびリクガメを含むが、これらに限定されない爬虫類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、ナマズ、ウナギ、サメおよびメカジキを含むが、これらに限定されない魚類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、ヒキガエル、カエル、イモリおよびサンショウウオを含むが、これらに限定されない両生類であることを特徴とする、請求項6に記載の単離されたオプシン。
【請求項8】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、ニワトリに由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、ニワトリに由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたオプシン。
【請求項9】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、海亀に由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、海亀に由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたオプシン。
【請求項10】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列(cOpn5)またはその断片または変異体を有し、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列(cOpn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたオプシン。
【請求項11】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列(tOpn5)またはその断片または変異体を有し、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列(tOpn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有することを特徴とする、請求項4に記載の単離されたオプシン。
【請求項12】
前記光は、360nm~520nm、好ましくは450~500nm、より好ましくは460~480nmの波長、特に470nmの波長を有することを特徴とする、請求項1に記載の単離されたオプシン。
【請求項13】
前記網膜細胞は、光受容細胞、網膜桿体細胞、網膜錐体細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、神経節細胞、水平細胞、多極ニューロン、ミュラー細胞、アマクリン細胞またはメチルニトロソウレアであることを特徴とする、請求項1に記載の単離されたオプシン。
【請求項14】
単離された核酸であって、
請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたオプシンをコードすることを特徴とする、単離された核酸。
【請求項15】
キメラ遺伝子であって、
請求項14に記載の単離された核酸配列を含み、当該核酸配列は、適切な調節配列に作動可能に連結され、
好ましくは、前記キメラ遺伝子は、マーカー、例えば蛍光タンパク質をコードする遺伝子をさらに含むことを特徴とする、キメラ遺伝子。
【請求項16】
ベクターであって、
請求項14に記載の単離された核酸または請求項15に記載のキメラ遺伝子を含むことを特徴とする、ベクター。
【請求項17】
前記ベクターは、真核ベクター、原核発現ベクター、ウイルスベクターまたは酵母ベクターであることを特徴とする、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
前記ベクターは、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、またはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたは昆虫ベクターであり、好ましくは、前記ベクターは、組み換えされたAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVS、AAVOまたはAAV10であることを特徴とする、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
前記ベクターは、発現ベクターまたは遺伝子治療ベクターであることを特徴とする、請求項16に記載のベクター。
【請求項20】
単離された細胞または細胞培養物であって、
請求項14に記載の単離された核酸、請求項15に記載のキメラ遺伝子または請求項16~19のいずれか1項に記載のベクターを含むことを特徴とする、単離された細胞または細胞培養物。
【請求項21】
G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性の喪失によって媒介される疾患または病症、または光に対する網膜細胞感受性の喪失に関する疾患または病症の治療または予防における、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたオプシン、請求項14に記載の単離された核酸、請求項15に記載のキメラ遺伝子、請求項16~19のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項20に記載の単離された細胞または細胞培養物の用途。
【請求項22】
被験者におけるG
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性の喪失によって媒介される疾患または病症、または光に対する網膜細胞の感受性の喪失に関する疾患または病症を治療または予防する方法であって、
請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたオプシン、請求項14に記載の単離された核酸、請求項15に記載のキメラ遺伝子、請求項16~19のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項20に記載の単離された細胞または細胞培養物を投与することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項23】
前記光に対する網膜細胞の感受性の喪失によって媒介される疾患または病症、または光に対する網膜細胞の感受性の喪失に関する疾患または病症は、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復して恩恵を受ける疾患または病症を含むが、これらに限定されないことを特徴とする、請求項21に記載の用途または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記光に対する網膜細胞の感受性の喪失によって媒介される疾患または病症、または光に対する網膜細胞の感受性の喪失に関する疾患または病症は、網膜細胞の活性化によって恩恵を受ける疾患または病症を含み、ここで、前記網膜細胞は、例えば、光受容細胞、網膜桿体細胞、網膜錐体細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、神経節細胞、水平細胞、多極ニューロン、ミュラー細胞、アマクリン細胞またはメチルニトロソウレアであることを特徴とする、請求項21に記載の用途または請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患または病症は、網膜外層の損傷、光受容体の喪失または変性、網膜変性疾患、光に対する感受性の喪失または光知覚の喪失、不十分な光知覚または感受性による視力喪失、および/または失明を含むことを特徴とする、請求項21に記載の用途または請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患または病症は、網膜神経節細胞(RGC)の変性および/または死亡に関連する疾患を含むが、これらに限定されず、
好ましくは、前記疾患または病症は、網膜色素変性症(RP)、黄斑変性症、加齢関連性黄斑変性症(AMD)、常染色体優性視神経萎縮症(ADOA)および/または緑内障を含むことを特徴とする、請求項21に記載の用途または請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、cOpn5発現AAVベクターの網膜下または硝子体内投与を含み、好ましくは、前記AAVベクターは、蛍光タンパク質をさらに発現することを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、波長範囲が360nm~550nm、好ましくは450~500nm、より好ましくは460~480nm、特に470nmである青色光を印加することをさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、波長が≧920nmである光を使用して二光子活性化を実行することをさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、多くの細胞内シグナル伝達経路を調節し、最も集中的に研究されている薬物ターゲットポイントのいくつかを表す(Hauserら、2017)。リガンドが結合した後、GPCRは、構造変化を起こし、且つそれをヘテロ三量体Gタンパク質に伝達し、後者は、Gαサブユニットと緊密に結合したGβγサブユニットとを含むマルチサブユニット複合体である。ヘテロ三量体GαサブユニットのサブファミリーであるGqタンパク質は、GPCRのクラスに共役し、全身の神経伝達物質、感覚刺激およびホルモンに対する細胞応答を媒介する。それらの主な下流シグナル伝達ターゲットポイントは、リン脂質ホスファチジルイノシトールニリン酸(PIP2)のイノシトール三リン酸(IP3)およびジアシルグリセロール(DAG)への加水分解を触媒するホスホリパーゼCβ(PLC-β)酵素を含む。IP3は、細胞内に蓄積されたCa2+の細胞質への放出を引き起こし、Ca2+は、DAGとともにプロテインキナーゼC(PKC)を活性化する。Gq共役GPCRおよび細胞内Ca2+放出のシグナル伝達メカニズムおよび生理学的機能を研究するために、化学遺伝学および光活性化可能な小分子を含むいくつかのツールを開発した。
【0002】
光遺伝学は、光応答性タンパク質を利用して、遺伝的特異性および高い時空間精度で細胞活動の光学的制御に対する摂動を実現する。光感受性イオンチャネルおよびトランスポーターを使用した光遺伝学的ツールの初期の発見以来、様々な技術を開発しており、現在では細胞内のセカンドメッセンジャー、タンパク質の相互作用および分解、並びに遺伝子転写への光学的介入をサポートしている。創造的に設計されたGq共役ロドプシン-GPCRキメラであるOpt-a1ARは、長時間の光刺激(60s)に応答して、細胞内Ca2+の増加を誘導することができる(Airanら、2009)。しかしながら、このようなツールは、おそらく光感受性および反応速度論に関連する制限性(Tichyら、2019)のため、広く使用されていない。ほとんどの動物は、GPCRベースの光受容体を使用して光を検出し、ここで、光受容体は、タンパク質部分(オプシン)と、リガンドおよび発色団の両方として機能するビタミンA誘導体(レチナール)とを含む。これまでに数千のオプシンが同定されている。最近の2件の研究では、ニューロンのシナプス前終末抑制に蚊およびヤツメウナギ由来のGiベースのオプシンを使用したことが報告されており、特定の天然に存在する光受容体の効率的な光遺伝学的ツールとしての使用に適していることが簡単に実証される。Gqシグナル伝達に関しては、哺乳動物の網膜神経節細胞の亜集団におけるメラニン(Opn4)は、Gq共役オプシンである。画像を形成しない視覚機能を媒介する。しかしながら、Opn4を異種発現するHEK293またはNeuro-2a細胞は、弱い光応答を示し、培地中に追加のレチナールを必要とする。多くの脊椎動物におけるOpn5(グリアリン)およびそのオルソログは、Giタンパク質に共役した紫外線(UV)感受性オプシンであることが報告されている。
【0003】
視覚障害のある患者の視覚機能を回復するには、理想的な光遺伝学的ツールが緊急に必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復するために使用される、単離された光感受性オプシンに関する。前記単離された光感受性オプシンは、網膜外層の損傷、光受容体の喪失または変性、網膜変性疾患、光に対する感受性の喪失または光知覚の喪失、視覚喪失または失明を患う被験者を治療するために使用されることができる。
【0005】
第1の態様において、本発明は、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復するために使用される、単離された光感受性オプシンに関する。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記光は、360nm~520nm、好ましくは450~500nm、より好ましくは460~480nmの範囲内の波長、特に470nmの波長を有する。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシンは、生物に由来する単離されたオプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシンは、前記生物における野生型オプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記生物体は、動物である。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシンは、動物に由来する単離されたオプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、前記動物における野生型オプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記動物は、脊椎動物である。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記動物は、鳥類、爬虫類または魚類、両生類または哺乳類動物である。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記動物は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、レア(rhea)、シギ(kiwi)、ヒクイドリ、七面鳥、ウズラ、ニワトリ、ハヤブサ、タカ、ハヤブサ、ハト、インコ、冠オウム、コンゴウインコ、オウム、スズメ目(例えば、鳴き鳥)、カケス、クロウタドリ、フィンチ、ウグイスおよびスズメを含むが、これらに限定されない鳥類である。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記動物は、トカゲ、ヘビ、アリゲーター(alligator)、海亀、ワニおよびリクガメを含むが、これらに限定されない爬虫類である。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記動物は、ナマズ、ウナギ、サメおよびメカジキを含むが、これらに限定されない魚類である。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記動物は、ヒキガエル、カエル、イモリおよびサンショウウオを含むが、これらに限定されない両生類である。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、ニワトリに由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、前記ニワトリに由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、海亀に由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、前記海亀に由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列(cOpn5)またはその断片または変異体を有し、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列(cOpn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列(tOpn5)またはその断片または変異体を有し、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記単離されたオプシン5(Opn5)は、前記SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列(tOpn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0026】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、網膜細胞において細胞内のGqシグナル伝達を正確に活性化するための便利な光遺伝学的ツールとして使用されることができる。
【0027】
前記網膜細胞は、光受容細胞、網膜桿体細胞、網膜錐体細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、神経節細胞、水平細胞、多極ニューロン、ミュラー細胞、アマクリン細胞またはメチルニトロソウレアであり得る。
【0028】
第2の態様において、本発明は、第1の態様に記載の単離されたオプシンをコードする、単離された核酸に関する。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記単離された核酸は、生物における野生型オプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体をコードし、それらは、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有する。
【0030】
第3の態様において、本発明は、適切な調節配列に作動可能に連結された第2の態様に記載の単離された核酸の配列を含む、キメラ遺伝子に関する。
【0031】
前記キメラ遺伝子は、マーカー(例えば、蛍光タンパク質)をコードする遺伝子をさらに含む。
【0032】
第4の態様において、本発明は、第2の態様に記載の単離された核酸または第3の態様に記載のキメラ遺伝子を含む、ベクターに関する。
【0033】
前記ベクターは、真核ベクター、原核発現ベクター、ウイルスベクターまたは酵母ベクターである。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターまたはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたは昆虫ベクターである。
【0035】
好ましくは、前記ベクターは、組み換えAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVS、AAVOまたはAAV10である。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、発現ベクターである。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、遺伝子治療ベクターである。
【0038】
第5の態様において、本発明第2の態様に記載の単離された核酸、第3の態様に記載のキメラ遺伝子または第4の態様に記載のベクターを含む、単離された細胞または細胞培養物に関する。
【0039】
例えば、HEK293T細胞におけるcOpn5の発現は、青色光によって引き起こされる細胞内蓄積物からのCa2+のGq依存性増加を強力に媒介する。
【0040】
例えば、マウスの脳におけるcOpn5発現アストロサイトの光遺伝学的活性は、大量のATP放出を誘導する。
【0041】
第6の態様において、本発明は、光に対する網膜細胞の感受性の喪失によって媒介される疾患または病症、または光に対する網膜細胞の感受性の喪失に関する疾患または病症の治療または予防における、第1の態様に記載の単離されたオプシン、第2の態様に記載の単離された核酸、第3の態様に記載のキメラ遺伝子、第4の態様に記載のベクターまたは第5の態様に記載の単離された細胞または細胞培養物の用途に関する。
【0042】
cOpn5を網膜細胞に投与することができ、前記網膜細胞は、光によって活性化されることができる。前記光は、360nm~520nm、好ましくは450~500nm、より好ましくは460~480nm範囲内の波長、特に470nmの波長を有する。
【0043】
例えば、cOpn5-t2a-EGFP発現AAVベクターを網膜下または硝子体内に投与し、網膜神経節細胞においてcOpn5およびEGFPを発現させる。
【0044】
第7の態様において、本発明は、被験者における光に対する網膜細胞の感受性の喪失によって媒介される疾患または病症、または光に対する網膜細胞の感受性の喪失に関する疾患または病症を治療または予防する方法に関し、前記方法は、第1の態様に記載の単離されたオプシン、第2の態様に記載の単離された核酸、第3の態様に記載のキメラ遺伝子、第4の態様に記載のベクターまたは第5の態様に記載の単離された細胞または細胞培養物を投与することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記光に対する網膜細胞の感受性の喪失によって媒介される疾患または病症、または光に対する網膜細胞の感受性の喪失に関する疾患または病症は、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復して恩恵を受ける疾患または病症を含むが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記光に対する網膜細胞の感受性の喪失によって媒介される疾患または病症、または光に対する網膜細胞の感受性の喪失に関する疾患または病症は、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光受容細胞、網膜桿体細胞、網膜錐体細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、神経節細胞、水平細胞、多極ニューロン、ミュラー細胞、アマクリン細胞またはメチルニトロソウレアなどの網膜細胞の活性化によって恩恵を受ける疾患または病症を含むが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記疾患または病症は、網膜外層の損傷、光受容体の喪失または変性、網膜変性疾患、光に対する感受性の喪失または光知覚の喪失、不十分な光知覚または感受性による視力喪失、または失明を含むが、これらに限定されない。
【0048】
いくつかの実施形態において、本発明におけるOpn5は、網膜神経節細胞が完全に死亡していない限り、光に対する網膜細胞感受性を回復するために使用されることができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明におけるOpn5は、網膜神経節細胞(RGC)の変性および/または死亡に関連する疾患を治療または予防するために使用されることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、本発明におけるOpn5は、網膜色素変性症(RP)、黄斑変性症、加齢関連性黄斑変性症(AMD)、常染色体優性視神経萎縮症(ADOA)および/または緑内障を治療または予防するために使用されることができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、前記方法は、波長範囲が360nm~550nm、好ましくは450~500nm、より好ましくは460~480nmである光を印加することをさらに含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、前記方法は、長波長(≧920nm)の光を使用して二光子活性化を実行することをさらに含む。
【0053】
本発明に記載の単離されたオプシンは、波長が360~550nm、好ましくは450~500nm、より好ましくは460~480nmの範囲内である光感受性である。具体的には、470nmの青色光は、細胞内で最も強いCa2+トランジェントを誘発し、これは、本発明に記載の単離されたオプシンが波長470nmの光に超感受性であることを意味する。
【0054】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態のすべての組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】HEK293T細胞におけるcOpn5が光誘導性G
qシグナル伝達の強力な活性化を媒介することを示す。
【
図2】cOpn5がG
qシグナル伝達には共役するが、G
iシグナル伝達には共役しないことを示す。
【
図3】cOpn5が高い時空間分解能でG
qシグナル伝達の光学的制御を高感度に媒介することを示す。
【
図4】cOpn5がopto-a1AR、hM3Dqまたはopn4よりも光に対してより迅速且つ敏感な応答を媒介することを示す。
【
図5】cOpn5がアストロサイトの活性化を効率的に媒介することを示す。
【
図6】健康な網膜にはいくつかの細胞層が含まれていることを示す。
【
図7】MNU処置前の正常なマウスは迅速な瞳孔光反応を有するが、C3H/HeNCrlマウスは、生まれつき瞳孔光反応を有さないことを示す。
【
図8】AAV注射4週間後の網膜全体におけるEGFPを示す。
【
図9】MNU処置マウスおよびC3H/HeNCrlマウスの両方が瞳孔光反応を回復したことを示す。
【
図14】オープンフィールド回避試験を概略的に示す。
【
図15】オープンフィールド回避試験の結果を示す。
【
図16】それぞれ7週間(A)および9ヶ月(B)後のAAV-cOPN5処置rd1/rd1マウスの眼内における光感受性の回復を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明では、複数の種に由来するオプシン、特にOpn5オルソログの能力を試験し、多くのオプシンが光誘導性Gqシグナル伝達の活性化および/または細胞の活性化を感受性且つ強力に媒介することが発見される。前記単離された光感受性オプシンは、網膜外層の損傷、光受容体の喪失または変性、網膜変性疾患、光に対する感受性の喪失または光知覚の喪失、視覚喪失または失明を患う被験者を治療するために使用されることができる。
【0057】
好ましくは、前記Opn5オルソログは、ニワトリオルソログ(cOpn5と略記)または海亀オルソログ(tOpn5と略記)である。
【0058】
Opn5、特にcOpn5に対する詳細な特性評価により、それは、波長が450~500nm、より好ましくは460~480nmである青色光の超高感度(μW/mm2レベル、既存のGq共役オプシンベースのツールopto-a1ARおよびopn4よりも約3桁感度が高い)であり、高い時間的(10ms光パルスに対する応答、opto-a1ARまたはopn4よりも約3桁高速)および空間的(亜細胞(subcell)レベル)分解能を有し、発色団の添加を必要としない。具体的には、内因性レチナールで十分であり、レチナールを添加する必要はない。
【0059】
cOpn5がGqシグナル伝達の光遺伝学的活性化および/または細胞の活性化を媒介する
具体的には、本発明では、ニワトリ、海亀、ヒトおよびマウスに由来するOpn5オルソログを試験して(それらは、互いに80~90%のタンパク質配列同一性を有する)、それらがHEK293T細胞における青色光誘導性Gqシグナル伝達活性化を媒介する能力を有するかどうかを決定するために試験する。青色光を刺激に使用し、赤色細胞内カルシウム指示薬CalbryteTM630AM染料を使用して、モニタリング相対的なCa2+応答をモニタリングする。ニワトリ(cOpn5)および海亀(tOpn5)に由来するOpn5オルソログは、Ca2+シグナル(約3ΔF/F)伝達の即時且つ強力な光誘導性増加を媒介するが、ヒトまたはマウスOpn5オルソログを発現する細胞では、ヒト又はマウスのOpn5オルソログを発現する細胞では光の影響が観察されない。ニワトリオルソログで例示されるように、cOpn5は、EGFP-CAAX膜マーカーと共局在しており、これは、細胞膜に効率的に輸送されることを示す。培地に外因性レチナールを添加する必要なく、これは、これは、内因性レチナールがcOpn5を機能させるのに十分であることを示唆する。Ca2+シグナルは、細胞外Ca2+の除去に耐性があるため、これは、細胞内蓄積からのCa2+の放出を示す。二種のcOpn5発現細胞において、Gqタンパク質阻害剤(例えば、YM-254890、高選択性Gqタンパク質阻害剤)のプレインキュベーションにより、光誘導性Ca2+トランジェントを可逆的に除去する。cOpn5を発現するがヒトOPN5を発現しない細胞において、IP3の迅速分解産物であるイノシトールリン酸(IP1)レベルの光誘導性の増加が検出され、さらに、YM-254890による治療では、このような増加の程度が減少する。cOpn5発現細胞(例えば、HEK293T細胞)において、青色光も、PKC活性に依存性方式でMARCKSタンパク質(推定PKCターゲットポイント)のリン酸化を引き起こす。対照的に、レチナールの存在下で、青色光照射は、ヒトおよびマウスOpn5を発現する細胞におけるcAMPレベルを効率的に低下させるが、レチナールを添加しない場合、青色光照射は、cOpn5を発現する細胞においてこのような効果がない。総合すると、これらのデータは、HEK293T細胞において、青色光照射がcOpn5とGqシグナル伝達経路との共役を可能にしていることが裏付ける。
【0060】
敏感且つ正確であるcOpn5媒介性光遺伝学
具体的には、本発明では、cOpn5の光活性化特性を特徴付ける。cOpn5を細胞(例えば、HEK293T細胞)で異種発現することができる。Opn5は、これまで紫外線(UV)感受性光受容体であると考えられているが、固定光強度(100μW/mm2)で365~630nmの範囲内の一連の波長をプロットすると、470nmの青色光が最も強いCa2+トランジェントを引き起こすことを示すが、UVA光(365および395nm)は、効率が低く、より長い波長の可視光(561nmまたは以上)は、まったく効果がない。cOpn5発現HEK293T細胞に対する様々な光持続時間の影響を試験し、短い光パルス(1、5、10、20、50ms、16μW/mm2、470nm)による刺激では、光持続時間が10msを超える際にCa2+応答が飽和モードに達することを示す。この光強度(16μW/mm2、470nm)下で、光持続時間を長くしてもCa2+シグナル振幅をさらに増加させまい。異なる強度で470nmの光を照射すると、約4.8μW/mm2および16μW/mm2の青色光がそれぞれ最大の約半分および最大応答を生成することが分かる。これらのデータは、cOpn5の光感受性が、一般的な光遺伝学的ツールであるチャネルロドプシン-2(ChR2)の報告数値より2~3桁高いことを示す。総合すると、本発明の結果は、cOpn5がレチナールを追加しなくても単一成分の光遺伝学的ツールとして機能できること、cOpn5が青色光に超敏感であること、その完全な活性化には低い光強度(16μW/mm2)と短い持続時間(10ms)が必要であることを示す。
【0061】
cOpn5の性能をopto-a1ARの性能と比較し、ここで、opto-a1ARは、ロドプシンをGq共役アドレナリン受容体と混合することによって操作されたキメラGPCRである。以前に報告されたプロトコールに従って、opto-a1AR発現HEK293T細胞におけるゆっくりと小さな(約0.5ΔF/F)Ca2+シグナル増加を引き起こすには、非常に長時間の強い照射(60s、7mW/mm2)への曝露が必要であり、15秒の照射では効果がないことが発見される。cOpn5の性能をopn4の性能と比較し、opn4は、Gqシグナル伝達活性化のツールであると報告されている天然オプシンである。opn4発現HEK293T細胞におけるゆっくりとした(約1ΔF/F)Ca2+シグナル増加を引き起こすには、強い照射(25s、40mW/mm2)への長時間の曝露および追加のレチナールが必要であることが発見される。従って、既存オプシンベースのツール(opto-a1ARおよびopn4)と比較して、cOpn5は、光感受性がはるかに高く(感度が約3桁高い)、必要な曝露時間(60sに対する10ms)がはるかに短く、より強い応答を生成する。
【0062】
さらに、cOpn5の性能を、一般的なGq共役化学遺伝学ツールhM3Dqの性能と比較し、ここで、hM3Dqは、外因性小分子リガンドクロザピン-N-オキシド(CNO)を添加することによって活性化される。cOpn5発現HEK293T細胞の光誘導性活性化、およびhM3Dq発現HEK293T細胞のCNO誘導性活性化は、類似なCa2+シグナルのピーク値応答振幅を有する。同時に、hM3Dq発現HEK293T細胞と比較して、cOpn5発現HEK293T細胞は、より速く、より時間的に正確な応答を示し、より速い回復時間を示す。これらの結果は、cOpn5媒介性光遺伝学がhM3Dqよりも時間的精度の点でより制御可能であることを示す。
【0063】
cOpn5光遺伝学により、細胞活動を空間的に正確に制御することができる。個々のcOpn5発現HEK293T細胞の亜細胞領域に短時間の光刺激(63ms)を限定すると、個々の細胞が即時に活性化される。興味深いことに、細胞が高度に密集した領域では、Ca2+シグナルが周囲の細胞に伝播し、それによりまだ未確認のメカニズムによるHEK293T細胞間の細胞間コミュニケーションが示唆される。新生児マウスの脳から調製された初代アストロサイト培養物において、cOpn5およびEGFPマーカータンパク質のバイシストロン性発現のためのAAVベクターを使用してcOpn5を発現する。Calbryte 630 AM染料を使用してCa2+レベルをモニタリングしたところ、青色光を使用してcOpn5発現アストロサイトに照射すると、強力なCa2+トランジェント(約8ΔF/F)が生じることが分かる。光刺激(63ms)が個々のcOpn5発現アストロサイトの亜細胞領域のみに正確に制限される場合、Ca2+シグナルが個々の細胞内で伝播されることが観察される。HEK293T細胞での試験と同様に、刺激されたアストロサイトからより遠位の刺激されていないアストロサイトへのCa2+シグナルの緩やかな波状伝播が観察される。従って、これらの実験は、cOpn5光遺伝学によって正確な空間制御が可能であることを確認し、最初に神経化学的および機械的刺激を使用して発見したアストロサイトネットワークの動態を研究することが有用である可能性があることを示唆する。
【0064】
ここで、本発明は、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復するための極めて効果的な光遺伝学的ツールとしての本発明のOpn5の用途を実証する。以前の研究では、哺乳動物Opn5がUV感受性Gi共役オプシンとして特徴付けられ、Opn5(例えば、cOpn5を発現するか、またはtOpn5を発現する)を発現する哺乳動物細胞において、可視青色光は、急速なCa2+トランジェント、IP1蓄積およびPKC活性化を誘導する可能性があるという驚くべき発見を提示する。
【0065】
表6は、cOpn5と他の光遺伝学的ツールとの応答振幅、光感受性、時間分解能および追加の発色団の必要性を直接比較することにより、cOpn5の可能にする特性を示す。cOpn5発現細胞では、強度16μW/mm2の10ms青色光パルスのみが、ピーク値振幅3~8ΔF/FのCa2+シグナルの急速な増加を引き起こすことができる。対照的に、本発明に先立って、opto-a1ARまたは哺乳動物Opn4(Gqシグナル伝達のために提案された2種の光遺伝学的ツール)の活性化には、約3倍の光強度(7~40mW/mm2)および長時間の露光(20~60秒)が必要であり、弱いCa2+シグナル(0.25~0.5ΔF/F)しか生成しないことが明らかになる。従って、opto-a1ARまたは哺乳動物Opn4は、内因性Gq共役受容体の急速な活性化プロファイルを模倣することはできず、ここで、内因性Gq共役受容体は、通常、対応するリガンドの印加後サブ秒内に強いGqシグナル伝達を引き起こす。対照的に、最近の体系的な特徴付けでは、opto-a1ARおよびOpn4媒介性光遺伝学的刺激は、Ca2+シグナルの振幅を増加せず、長時間の照射後でも、Ca2+トランジェントおよびシナプスイベントの周波数をわずかに調節するだけであることを示す(Gerasimovら、2021、Mederosら、2019)。
【0066】
本発明のOpn5、特にcOpn5またはtOpn5に基づく光遺伝学は、安全性および利便性の利点も有する。多くの種のOpn5がUV応答性であることが報告されているが(Kojimaら、2011)、cOpn5は、470nmの青色光によって最適に活性化され、青色光の透過性は、UVの透過性よりも優れ、UVに関連する細胞毒性を回避する。光に対する超感受性により、潜在的な加熱アーチファクト(heatingartifact)も最小限に抑えられる。cOpn5またはtOpn5は、外因性レチナールを必要とせずに、光によって強力且つ再現可能に活性され、これは、cOpn5またはtOpn5が内因性レチナールに共有結合する双安定オプシンであるため、光漂白に耐性があるためと考えられる(KoyanagiおよびTerakita、2014、TsukamotoおよびTerakita、2010)。対照的に、Opn4の哺乳動物実験では、追加のレチナールが必要であり、応答時間が長く、且つ光感受性が低い。本発明のOpn5、特にcOpn5またはtOpn5は、実験中に化合物を組織に送達する負担を回避するため、単一成分系としてインビボ研究に特に有用である。
【0067】
化学遺伝学およびアンケージング(uncaging)ツールと比較して、本発明のOpn5の光遺伝学、特にcOpn5またはtOpn5の光遺伝学は、いくつかの重要な利点をさらに提供する。時間的にははるかに正確であり、単細胞または亜細胞の空間分解能を提供する。本発明のOpn5、特にcOpn5またはtOpn5は、ケージド化合物ベースの「アンケージング」ツール、例えば、ケージドカルシウムおよびケージドIP3とも異なり、これらのツールは、化合物の事前ロードを必要とし、且つGqシグナル伝達および/または細胞の活性化に関連するCa2+関連経路を部分的にしか模倣しないためである。例えば、内因性GPCRを標的とするケージドグルタミン酸塩およびケージドATP(Ellis-Davies、2007、Lezmyら、2021)等の他の「アンケージング」ツールも存在する。しかしながら、これらのケージド化合物は、細胞外培地または細胞内の細胞質への導入を必要とするため、行動動物への応用を制限する(AdamsおよびTsien、1993b)。
【0068】
本発明のOpn5、特にcOps5またはtOpn5の光遺伝学は、細胞内のGqシグナル伝達および/または細胞の正確な活性化に特に適しており、その後細胞内に蓄積されたCa2+の放出を引き起こし、且つPKCを活性化する。本発明のOpn5、特にcOpn5またはtOpn5は、例えば、細胞膜を貫通して陽イオンを輸送するChR2またはその変異体等の現在のチャネルベースの光遺伝学的ツールとは異なる。
【0069】
本発明のOpn5の強い光感受性に基づいて、本発明はさらに、本発明のOpn5が、Gqシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復するために使用することができ、従って、網膜外層の損傷、光受容体の喪失または変性、網膜変性疾患、光に対する感受性の喪失または光知覚の喪失、不十分な光知覚または感受性による視力喪失、または失明を治療または緩和するために使用され得ることを実証する。
【0070】
いくつかの実施形態において、本発明のOpn5は、前記網膜神経節細胞が完全に死亡していない限り、光に対する網膜細胞の感受性を回復するために使用されることができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明におけるOpn5は、網膜神経節細胞(RGC)の変性および/または死亡に関連する疾患を治療または予防するために使用されることができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、本発明のOpn5は、網膜色素変性症(RP)、黄斑変性症、加齢関連性黄斑変性症(AMD)、常染色体優性視神経萎縮症(ADOA)および/または緑内障を治療または予防するために使用されることができる。
【0073】
本発明において、cOpn5、cOPN5、O5およびニワトリopn5mは、交換可能に使用される。
【0074】
本発明において、opn5、OPN5、オプシンおよびOpn5は、交換的に使用される。
【0075】
特定の実施形態および実施例の説明は、例示として提供されるものであり、限定するものではない。当業者であれば、実質的に同様の結果を生み出すために、様々な重要でないパラメーターを変更または修正できることが容易に理解されるであろう。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
実施例1.G
qシグナル伝達の光遺伝学的活性化を媒介するcOpn5
ニワトリ、海亀(turtle)、ヒトおよびマウスからのOpn5オルソログ(互いに80~90%のタンパク質配列同一性を有する)の異種発現は、HEK293T細胞における青色光誘導性G
qシグナル伝達活性化を媒介する能力を有するかどうかを試験する(
図1aおよび表7)。青色光を使用して刺激し、赤色細胞内のカルシウム指示薬Calbryte
TM630AM染料を使用して、相対的なCa
2+応答をモニタリングする(
図1b)。ニワトリ(cOpn5)および海亀(tOpn5)からのOpn5オルソログは、Ca
2+シグナルの即時且つ強力な光誘導性の増加(約3ΔF/F)を媒介するが、ヒトまたはマウスのOpn5オルソログを発現する細胞では、光効果が観察されない(
図1dおよび
図2a、
図2b)。ニワトリオルソログによって例示されるように、cOpn5は、EGFP-CAAX膜マーカーと共局在し、これは、それが細胞膜に効率的に輸送されることを示す(
図1c)。培地に外因性レチナールを添加せず、これは、内因性レチナールがcOpn5を機能させるのに十分であることを示す。Ca
2+シグナルは、細胞外Ca
2+の除去に耐性があるため、細胞内蓄積からのCa
2+の放出を示す(
図2c)。YM-254890(高選択性G
qタンパク質阻害剤
33)のプレインキュベーションにより、二種のcOpn5発現細胞における光誘導性Ca
2+トランジェントが可逆的に消失される(
図1e)。cOpn5(ヒトOPN5ではない)発現細胞において、IP
3の急速分解産物であるイノシトールリン酸塩(IP
1)レベルの光誘導性増加が検出され、さらに、YM-254890での治療により、当該増加の程度が減少される(
図1fおよび
図2d)。cOpn5発現HEK293T細胞において、青色光も、PKC活性依存性の方法で、MARCKSタンパク質(PKCの知られたターゲットポイント
34)のリン酸化を引き起こす(
図1gおよび
図2e)。対照的に、レチナールの存在下でのヒトおよびマウスOpn5発現細胞において、青色光照射は、cAMPレベルを効率的に低下させるが、レチナールなしのcOpn5発現細胞ではこのような効果がない(
図2f)。総合すると、これらのデータは、HEK293T細胞において、青色光照射がG
qシグナル伝達経路にcOpn5を共役させることを裏付けている。
【0083】
【0084】
図1は、cOpn5がHEK293T細胞における光誘導性G
qシグナル伝達の強力な活性化を媒介することを示す。
a.光誘導性cOpn5活性化に応答した推定の細胞内シグナル伝達の概略図。PLC:ホスホリパーゼC、PIP2:ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸、IP
3:イノシトール-1,4,5-三リン酸、IP
1:イノシトール一リン酸;DAG:ジアシルグリセロール、PKC:プロテインキナーゼC、YM-254890:選択性G
qタンパク質阻害剤。
【0085】
b.3種(セキショクヤケイ(Gallus gallus)、ホモサピエンス(Homo sapiens)およびマウス(Mus musculus))のOpn5発現HEK293T細胞において、青色光刺激(10s、100μW/mm2、488nm)の前後にCa2+シグナルの擬似カラー画像。スケールバー、10μm。
【0086】
c.HEK293T細胞において、Cy3対比染色されたV5-cOpn5融合タンパク質(赤色)が膜タグEGFP-CAAX(緑色)と共局在する。DAPI対比染色(青色)は、細胞核を支持する。スケールバー、10μm。
【0087】
d.cには、細胞の光誘発Ca2+シグナルの経時的変化を示す。
【0088】
e.Gqタンパク質阻害剤YM-254890(10nM)は、cOpn5媒介性光誘導性Ca2+シグナルを可逆的にブロックする。
【0089】
f.cOpn5発現HEK293T細胞において、YMは、連続光刺激(3分間、100μW/mm2、470nm)によって誘発されるIP1蓄積を阻害する(左)。***P<0.0001、*P=0.0128、Tukey’s多重比較検定。
【0090】
g.対照群(光刺激なし)、光刺激群および光+スタウロスポリン(ST、PKC阻害剤)群において、cOpn5発現HEK293T細胞におけるMARCKSのリン酸化。同じ画分中のp-MARCKSの量を、α-チューブリンの量に対して正規化する。**P=0.0096、***P=0.0004、Tukey’s多重比較検定。
【0091】
図2は、cOpn5がG
qシグナル伝達に共役するが、G
iシグナル伝達に共役しないことを示す。
a.海亀種(アオウミガメ(Chelonia mydas))からのOpn5発現HEK293T細胞において、青色光刺激(10s、100μW/mm
2、488nm)の前後のCa
2+シグナルの擬似カラー画像。スケールバー、10μm(左);応答細胞における誘発されたCa
2+シグナルの経時的変化(右)。
【0092】
b.Gqタンパク質阻害剤YM-254890(10nM)が、cOpn5および海亀Opn5媒介性光誘導性Ca2+シグナルを可逆的にブロックするグループデータ。****P<0.0001、一元配置分散分析。エラーバーは、S.E.M.を示す。
【0093】
c.細胞外Ca2+の非存在下で、光刺激(10ms、16μW/mm2、470nm)を使用して産生されたCa2+シグナルの経時的変化。
【0094】
d.光刺激の油有無にかかわらず、ヒトOpn5発現HEK293T細胞におけるIP1蓄積(右)。n.s.、有意差なし、対応のないt検定。
【0095】
e.対照群(光刺激なし)、光刺激群および光+スタウロスポリン群において、cOpn5発現HEK293T細胞におけるMARCKSのリン酸化の代表的な結果。同じ画分中のp-MARCKSの量をα-チューブリンの量に対して正規化する。
【0096】
f.培地中にレチナールを追加しない場合、光は、cOpn5発現HEK293T細胞におけるcAMPレベルに影響を及ぼさない(10μMフォルスコリンプレインキュベーション)(左図)。右図は、10μMレチナールプレインキュベーション後、四つの異なる種のOpn5発現HEK293T細胞におけるcAMP濃度に対する光刺激の影響を示す。
【0097】
dおよびfにおけるエラーバーは、S.E.M.を示す。
【0098】
実施例2. 好感度且つ正確であるcOpn5媒介性光遺伝学
HEK293T細胞で異種発現するcOpn5の光活性化性質に対して特徴付ける。Opn5は、これまでに紫外線(UV)感受性の光受容体
27であると考えられているが、固定光強度(100μW/mm
2)下で365~630nm範囲の一連の波長をプロットすると、470nmの青色光が最も強いCa
2+トランジェントを引き起こすのに対し、UVA光(365および395nm)は、効率が低く、より長い波長の可視光(561nmまたは以上)は、まったく効果がない(
図3a)。cOpn5発現HEK293T細胞に対する異なる光持続時間の影響を試験する。短時間光パルス(1、5、10、20、50ms、16μW/mm
2、470nm)による刺激は、光持続時間が10msを超えるとCa
2+応答が飽和モードに達することを示す(
図3b)。当該光強度(16μW/mm
2、470nm)下で、光持続時間を長くしてもCa
2+シグナル振幅はさらに増加されない(
図4a)。異なる強度で470nmの光を照射すると、約4.8μW/mm
2および16μW/mm
2の青色光は、それぞれ約半分および最大の応答を生成することが分かる(
図3cおよび
図4b)。従って、cOpn5の光感受性は、光感受性G
q共役GPCRの報告値よりも3~4桁高く、一般に使用される光遺伝学的ツールであるチャネルロドプシン-2(ChR2)の数値よりも2~3桁高くさえある(Lin、2011、Zhangら、2006)(表8)。総合すると、これらの結果によると、cOpn5がレチナールを追加しなくても単一成分の光遺伝学的ツールとして機能できること、完全な活性には低い光強度(16μW/mm
2)および短い持続時間(10ms)が必要であるため、cOpn5が青色光に対して超敏感であることを示す。
【0099】
【0100】
cOpn5の性能をopto-a1ARの性能と比較し、ここで、opto-a1ARは、ロドプシンとG
q共役アドレナリン受容体とを混合することによって操作されたキメラGPCRである。以前に報告
14されたプロトコールに従って、opto-a1AR発現HEK293T細胞でCa
2+シグナルのゆっくりとした小さな(~0.5ΔF/F)増加を引き起こすには、非常に長時間の強い照射(60s、7mW/mm
2)に曝露する必要があり、15秒間の照射では効果がないことが発見された(
図4c、
図4d)。cOpn5の性能をopn4の性能と比較し、ここで、opn4は、天然オプシンであり、G
qシグナル伝達活性化に使用されるツールであると報告されている。強い照射への長時間曝露(25s、40mW/mm
2)および追加のレチナールは、opn4発現HEK293T細胞におけるCa
2+シグナルのゆっくりとした(~1ΔF/F)増加を引き起こすことが発見される(
図4e、
図4f)。従って、既存のオプシンベースのツール(opto-a1ARおよびopn4)と比較して、cOpn5は、光感受性がはるかに高く(感度が約3桁高い)、必要な曝露時間(60sに対する10ms)がはるかに短く、より強い応答を生成する。
【0101】
さらに、cOpn5の性能を、一般的なG
q共役化学遺伝学ツールhM3Dqの性能と比較し、後者は、外因性小分子リガンドであるクロザピン-N-オキシド(CNO)を添加することによって活性化される
37~39。cOpn5発現HEK293T細胞の光誘導性活性化およびhM3Dq発現HEK293T細胞のCNO誘導性活性化は、類似なCa
2+シグナルのピーク値応答振幅を有する。同時に、hM3Dq発現HEK293T細胞と比較して、cOpn5発現HEK293T細胞は、より速く、より時間的に正確な応答を示し、より速い回復時間を示す(
図4g~
図4i)。これらの結果は、cOpn5媒介性光遺伝学が時間的精度の点でhM3Dqよりも制御可能であることを示す。
【0102】
cOpn5光遺伝学により、細胞活動を空間的に正確に制御できる。短時間の光刺激(63ms)を個々のcOpn5発現HEK293T細胞の亜細胞領域に制限すると、個々の細胞が即時に活性化される。興味深いことに、細胞が高度に密集された領域において、Ca
2+シグナルは、周囲の細胞に伝播することにより、まだ未確認のメカニズムによるHEK293T細胞間の細胞間コミュニケーションの存在が示唆される(
図3d、
図3e)。前記発見は、初代細胞培養物にも拡張される。新生児マウスの脳から調製された初代アストロサイト培養物において、cOpn5およびEGFPマーカータンパク質のバイシストロン性発現のためのAAVベクターを使用してcOpn5を発現する(
図5a)。Calbryte630AM染料を使用して、Ca
2+レベルをモニタリングしたところ、青色光をcOpn5発現アストロサイトに照射すると、強力なCa
2+トランジェントが賛成することが分かる(~8ΔF/F)(
図5b、
図5c)。光刺激(63ms)が個々のcOpn5発現アストロサイトの亜細胞領域にのみ正確に制限される場合、Ca
2+シグナルが個々の細胞内で伝播されることが観察される(
図3f)。HEK293T細胞での試験と同様に、刺激されたアストロサイトからより遠位の未刺激のアストロサイトへのCa
2+シグナルの緩やかな波状伝播が観察される(
図3g、
図3h)。従って、これらの実験は、cOpn5光遺伝学により正確な空間制御が可能であることを確認し、且つ最初に神経化学的および機械的刺激を使用して発見されたアストロサイトネットワークの動態を研究することが有用である可能性があることを示唆する
40、41。
【0103】
図3は、cOpn5が高い時間的および空間的分解能でG
qシグナル伝達の光学的制御を高感度に媒介することを示す。
a.異なる波長での光刺激に応答した、選択された波長(365、395、470、515、561、590および630nm、左図)およびcOpn5発現HEK293T細胞のCa
2+シグナルの振幅(2s、100μW/mm
2、右図)の概略図。エラーバーは、S.E.M.を示す。
【0104】
b.異なる光刺激持続時間(1、5、10、20または50ms、16μW/mm2、470nm)下での応答振幅。エラーバーは、S.E.M.を示す。
【0105】
c.異なる光強度下でのcOpn5媒介性Ca2+シグナルの経時的変化(0、4.8、8、16または32μW/mm2、10ms、470nm、10msの16μW/mm2刺激の場合、10%ピーク値活性=1.36±0.55s、90%ピーク値活性=2.37±0.87s、減衰時間τ=18.66±4.98s、平均値±S.E.M.、n=10個の細胞)。
【0106】
d.cOpn5発現HEK293T細胞における光誘導性(63ms、17μW、矢印は、刺激領域を指す)Ca2+シグナル伝播の画像。スケールバー、10μm。
【0107】
e.dの経時的なCa2+シグナルの伝播を示す擬似カラー画像(フレームN/(N-1)>1)。フレーム間隔は、500msであり、各フレームは、1回カウントされる。
【0108】
f.亜細胞領域で刺激された個々のcOpn5発現初代アストロサイトにおける光誘導性Ca2+シグナル伝播の画像(刺激サイズは、4×4μm2であり、フレーム間隔は、300msである)。スケールバー、10μm。
【0109】
g.cOpn5発現初代アストロサイトにおける光誘導性Ca2+シグナル伝播の画像。スケールバー、10μm。
【0110】
h.gの経時的なCa2+シグナルの伝播を示す擬似カラー画像(フレームN/(N-1)>1)。フレーム間隔は、500msであり、各フレームは、1回カウントされる。
【0111】
図4は、cOpn5がopto-a1AR、hM3Dqまたはopn4よりも光に対して迅速且つ敏感な応答を媒介することを示す。
a.光パルス(16μW/mm
2、470nm、1、5、10、20または50ms)を使用する場合のCa
2+シグナルの経時的変化。
【0112】
b.10ms、470nmでの異なる光強度(0、4.8、8、16または32μW/mm2)下での応答振幅。
【0113】
c.opto-a1AR発現HEK293T細胞において、ベースラインおよびピーク値Ca2+シグナル(ΔF/F0)の擬似カラー画像。培地緩衝液は、10μMのオールトランスレチナールを含む。スケールバー、30μm。
【0114】
d.opto-a1AR発現HEK293T細胞において、Ca2+に対する60sの光刺激の影響(n=15個の細胞、上図)、15sの光刺激は、Ca2+シグナルに影響を与えない(下図)。
【0115】
e.ヒトOPN4発現HEK293T細胞において、ベースラインおよびピーク値Ca2+シグナル(ΔF/F0)の擬似カラー画像。培地緩衝液は、10μMのオールトランスレチナールを含む。スケールバー、30μm。
【0116】
f.opn4発現HEK293T細胞において、Ca2+に対する10uMのATR下での25sの光刺激の影響(n=12個の細胞、赤線)、ATRの非存在下でCa2+シグナルに影響を与えない(黒色図)。
【0117】
g.cOpn5発現HEK293T細胞におけるCa2+シグナルに対する光刺激の影響。上図は、ベースラインおよびピーク値応答の擬似カラー画像を示す。下図は、5回の連続試験にわたるcOpn5発現HEK293T細胞におけるcOpn5媒介性光遺伝学的刺激によって誘発されるCa2+シグナルのヒートマップを示す。スケールバー、20μm。
【0118】
h.hM3Dq発現HEK293T細胞において、Ca2+シグナルに対する化学遺伝学的刺激の影響。
【0119】
i.それぞれcOpn5媒介性光遺伝学的刺激(10s)およびCNOパフを使用した(100nM、10s)hM3Dq媒介性化学遺伝学的刺激によって誘発されるCa2+シグナルの経時的変化。
【0120】
図5は、cOpn5がアストロサイトの活性化を効率的に媒介することを示す。
a.AAV-cOpn5-T2A-EGFP(緑色)を使用して、培養初代アストロサイトでcOpn5を発現する。GFAP免疫染色(赤色)によってアストロサイトの同一性を確認する。スケールバー、20μm。
【0121】
b.光刺激後のcOpn5発現アストロサイトにおけるベースラインおよびピーク値Ca2+シグナルの擬似カラー画像。スケールバー、20μm。
【0122】
c.Ca2+シグナルの図および試験全体にわたるCa2+シグナルのヒートマップ(n=25個の細胞)。
【0123】
実施例3.光感受性G
q共役ニューロオプシン(オプシン5)を使用した光遺伝学的視覚の回復
動物モデル:
1.健康な網膜は、網膜色素上皮、錐体光受容細胞、桿体光受容細胞、水平細胞、双極細胞、ミュラー細胞、アマクリン細胞、神経節細胞等のいくつかの細胞層を含む(
図6)。メチルニトロソウレア(MNU)は、動物も光受容体(桿体および錐体光受容体)の損傷を引き起こし、その後網膜変性を誘導する。我々は、マウスのMNU誘導性網膜変性(retinal degeneration)を動物モデルとして使用する。60mg/kg体重の用量で、MNUを1回腹腔内注射することによって網膜変性を誘導する。
【0124】
2.C3H/HeNCrlマウスは、遺伝製網膜変性モデルである。当該株は、網膜変性を引き起こすPde6brd1突然変異がホモ接合であることを特徴とする。
【0125】
我々は、頭を固定したマウスの瞳孔光反応を使用して、動物が光を知覚できるかどうかを試験し、我々は、AAVベクターを使用してマウス網膜神経節細胞でcOpn5を発現させて、この2種のマウスモデルをレスキューする。マウスの瞳孔光反応の回復により、我々のcOpn5媒介性失明治療方法が検証される。
【0126】
実験および結果:
1.我々は、IR遮断機能を有するカメラを使用して、頭を固定したマウスの瞳孔の画像を自動的に取得する。光ファイバーを調整して、光(470nmLED光源)が同じ光強度でマウスの瞳孔に直接あたるように確保する。
【0127】
2.MNU処置前の正常なマウスは、瞳孔光反応が速い(
図7)。C3H/HeNCrlマウスは、瞳孔光反応を持たずに生まれた(
図7)。
【0128】
3.C3H/HeNCrlまたはMNUで処置した網膜変性マウスは、瞳孔光反応機能を失う。
【0129】
4.我々は、cOpn5-t2a-EGFPを発現するAAVベクターを使用して、マウス網膜神経節細胞で、画像は、AAV注射4週間後の網膜全体でのEGFPを示す(
図8)。
【0130】
5.マウス網膜神経節細胞でcOpn5を発現させた後、我々は、瞳孔光反応試験を再度実行する。治療したMNUマウスは、瞳孔光反応を回復した(
図9)。C3H/HeNCrlマウスは、瞳孔光に反応する能力を取得する(
図9)。
【0131】
6.
図10は、瞳孔光反応試験において、正常なマウス(黒色実線)の瞳孔サイズが光に反応して急速に減少することを示す(X軸:時間(秒)、Y軸:正規化された瞳孔サイズ)。MNU処置後、マウスは、瞳孔光反応試験で機能を失う(灰色実線)。cOpn5を発現するAAVベクターを使用してこれらのMNU処置マウスの網膜神経節細胞(RGC)で4週間後ところ、マウスは、瞳孔光反応能力を部分的に回復する(中間の実線)。
【0132】
これらの結果は、動物の網膜神経節細胞でcOpn5を発現する我々の方法が網膜変性を回復できることを実証している。
【0133】
実施例4
実験の説明:以下の表9は、本発明で試験された脊椎動物亜門(vertebrata)からのcOpn5オルソログの部分的なリストである。脊椎動物亜門(円形動物(rotundia)、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類および哺乳類を含む脊椎動物亜門)由来の報告されているすべてのオプシン5オルソログの完全な遺伝子を合成し、HEK293T細胞で発現される。光に対するオプシン5オルソログの感度を試験するために、470nmの青色光刺激を使用するか、または使用しない状況でカルシウムイメージングを実行する。光誘導性カルシウムシグナルの経時的変化は、Gqシグナル伝達経路の的活性化の程度およびこれらのオルソログの感受性を明らかにする。
【0134】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表9-5】
【表9-6】
【表9-7】
【表9-8】
【表9-9】
【表9-10】
【表9-11】
【表9-12】
【表9-13】
【0135】
実施例5
動物:
8~16週齢のrd1/rd1網膜色素変性症(RP)モデルマウスを、12/12の明暗サイクル(午後8時に消灯)で飼育する。
【0136】
AAVベクターの構築:
AAVウイルスのパッケージングに必要なプラスミドは、pAAV-mSNCG-ニワトリopn5m-t2a-EGFP、pAAV-mSNCG-ニワトリopn5m-t2a-mcherry、pAAV-mSNCG-ニワトリopn5mおよびpAAV-mSNCG-EGFPを含む。
【0137】
アデノ随伴ウイルス(AAV)のパッケージングおよび生産:
プラスミドの共トランスフェクションによって組み換えAAVを調製する。AAV2.7M8およびAAV2/8サブタイプは、個別にパッケージングされる。それらの両方は、mSNCG-ニワトリopn5m-t2a-EGFP、mSNCG-ニワトリopn5m-t2a-mcherry、mSNCG-ニワトリopn5mおよびmSNCG-EGFPを含む。
【0138】
マウスの眼内に注射されたAAV:
麻酔後、極細ガラス電極を用いて強膜を通過させた後、1μlのAAVをマウスの硝子体腔に注射し、数秒後に電極を抜き取る。AAV注射4週間後に追跡実験を実施する。
【0139】
免疫蛍光:
AAVが網膜細胞に正常に感染するかどうかを確認し、且つ様々なサブタイプ間の感染効率およびウイルス特異性を比較するために、免疫蛍光実験を実行する必要がある。AAV注射4週間後、マウス網膜を取り出し、且つ4%パラホルムアルデヒドで30分間固定する。固定し且つ洗浄した網膜を包埋し、且つライカ(Leica)ガラスナイフメーカーを使用して15μmの厚さに垂直に切断する。切片をPBSで洗浄し、その後室温で3%BSA(ウシ血清アルブミン)を使用して1時間密封する。その後抗EGFPの一次抗体を3%BSAで1:500に希釈し、且つ4℃で48時間インキュベートする。一次抗体を洗浄した後、それを蛍光標識二次抗体とともに2時間インキュベートし、染色された網膜切片をスライドガラスに移し、密封後に共焦点走査を実行して蛍光画像を取得する。網膜神経節細胞(RGC)に対する各AAVの感染効率およびEGFPの蛍光強度を分析および比較し、高感染率が高く、特異性が良好であるAAVサブタイプを選択して、次の段階の実験に使用する。
【0140】
電気生理学的試験:
AAVの発現が成功した後、cOPN5がRGC細胞でその生理学的活性を維持するかどうかをさらに確認するために、電気生理学的実験を実行する必要がある。感染率が高く、特異性が良好であるAAVをrd1/rd1(GemPharmatechCo.,Ltdから購入される)マウスの眼内に注射する。ウイルス注射4週間後、マウスの網膜を取り出し、網膜切片を電気生理学的記録チャンバーに置く。網膜のRGC層は、上を向く。網膜への光損傷を防止するために、蛍光顕微鏡でGFP発現体細胞を同定した後にレーザーをオフにする。異なる光強度の488nmレーザーで細胞を刺激した後、電流強度を記録する。
【0141】
行動試験:
Rd1/rd1マウスの視覚受容体細胞は、すでに変性している。失われた視覚機能を回復するために感染した神経節細胞を介して視覚情報を脳に伝達できるかどうかを検証するためには、いくつかの視覚機能試験を選択する。
【0142】
(1)瞳孔光反射(PLR)
Rd1/rd1マウスにおいて、瞳孔は、強光にのみに対して反応する。AAVをマウス眼内に注射してから4週間後にPLR実験を実施する。異なる強度の光を使用して、cOPN5発現マウスおよびEGFP発現マウスの瞳孔を刺激し、瞳孔の変化程度を記録し、瞳孔の変化程度を通じて光に対するマウスの感受性を評価する。
【0143】
(2)オープンフィールド回避試験
正常なマウスは、開けた明るい空間を避ける。このような生まれつきの傾向は、それらの視覚能力に対して簡単な試験の基礎となる。実験において、マウスを明るい空間に置き、暗いシェルターも存在する。マウスが費やした時間の割合を測定することによって、それらの視覚能力を評価する。
【0144】
安全性試験:
遺伝子の長期にわたる異種発現は、発現された組織に対して様々な影響を及ぼす。異種発現の安全性を評価し、且つ異種発現された遺伝子が組織内で長期にわたって安定して発現されるかどうかを試験するには、長期実験が必要である。AAVを6か月間眼内に注射し、且つ1年後に上記の免疫蛍光、電気生理学的試験および行動試験を繰り返し、cOPN5の発現レベルおよび長期発現による生理活性の変化の有無を検出し、且つ網膜組織における炎症反応の存在を検出する。
【0145】
結果:
図11に示されるように、Aは、rd1/rd1マウスの網膜神経節細胞におけるcOPN5タンパク質の発現を示し、
Bは、注射後の網膜切片におけるミクログリアマーカーIba1の染色を示す。H
2O
2を注射したマウス(陽性対照)は、ミクログリアの強力な活性を示す。AAV-cOPN5-t2a-EGFPを注射した網膜において、基礎的なIba1シグナルは、注射1か月後にはほとんど観察されず、これは、AAV-EGFPを注射した網膜、AAV-cOPN5-t2a-EGFPを10か月間注射した網膜、および注射しなかった網膜で観察されたものと同様である。赤色は、Iba1であり、緑色は、cOPN5またはEGFPであり、青色は、細胞核のDAPI(4’,6-ジミジル-2-フェニルインドール)シグナルを示す。スケールバー、50μm、
Cは、RGCマーカーbrn3aの網膜切片の染色を示す。赤色は、brn3aであり、緑色は、cOPN5であり、青色は、細胞核のシグナルを示す。スケールバー、50μm、
Dは、眼底蛍光イメージングを示す。
【0146】
図12に示されるように、Aは、異なる出力での488nmレーザー刺激中の、AAV-Copn5-t2a-EGFPを注射したC3HマウスからのRGCの代表的な応答を示し、
Bは、異なる出力での561nmレーザー刺激中の、AAV-Copn5-t2a-EGFPを注射したC3HマウスからのRGCの代表的な応答を示し、
Cは、RGCの信頼性および再現性のある光活性化を媒介するcOpn5の生のトレースを示し、
DおよびEの群データは、異なる出力での488nmレーザー刺激後のRGCの励起率を示し(n=6)、
Fの群データは、異なる出力での488nmレーザー刺激後の遅延時間を示す(n=6)。
【0147】
図13に示されるように、Aは、2秒間の200lux光刺激中のC57マウスからのv1ニューロンの代表的な応答を示し、
Bは、2秒間の200lux光刺激中のAAV-EGFPを注射したC3Hマウスからのv1ニューロンの代表的な応答を示し、
Cは、2秒間の200lux光刺激中のAAV-cOPN5-t2a-EGFPを注射したC3Hマウスからのv1ニューロンの代表的な応答を示し、
Dに示されたヒートマップは、C57マウスのv1ニューロンからの刺激周囲時間ヒストグラム(peristimulus time histogram)データのROCプロットを示し、前記ニューロンは、2秒間の200lux光刺激を使用して試験され(n=107)、
Eに示されたヒートマップは、AAV-EGFPを注射したC3Hマウスのv1ニューロンからの刺激周囲の時間ヒストグラムデータのROCプロットを示し、前記ニューロンは、2秒間の200lux光刺激を使用して試験され(n=133)、
Fに示されたヒートマップは、AAV-cOPN5-t2a-EGFPを注射したC3Hマウスのv1ニューロンからの刺激周囲時間ヒストグラムデータのROCプロットを示し、前記ニューロンは、2秒間の200lux光刺激を使用して試験され(n=100)、
Gは、2秒間の光照射下でのC57(上)、AAV-EGFPを注射したrd/rdマウス(中央)およびAAV-cOPN5-EGFPを注射したrd1/rd1の視覚誘発電位(VEP)を示す。
【0148】
図14は、オープンフィールド回避試験を概略的に示す。
方法:明暗ボックス(45×27×25cm)は、有機ガラスで製造され、二つのチャンバーで構成され、この二つのチャンバーは、隔壁の中央にある地面レベルの開口部(4×5cm)で接続される。明ボックスは、明暗ボックス全体の2/3を占め、暗ボックスは、明暗ボックス全体の1/3を占める。試験場は、200luxで拡散照射される。マウスを飼育ケージに入ったまま試験室に持ち込む。マウスが暗いシェルターに2分間順応時間(この場合、暗空間から明空間への開口部を閉じる)後に、試験を開始する。その後、マウスをシェルターから出して、照明された領域を5分間探索させる。各マウスについては、動物がボックスの照明側で過ごした時間の長さを記録する。ボックスの中央上に配置されたビデオカメラは、マウスの行動を永続的に記録する。その後マウスをボックスから取り出し、且つ飼育ケージに戻す。
【0149】
オープンフィールド回避試験の結果は、
図15にしめされ、ここで、
図15Aは、7週間後、盲目(rd/rd)マウスがその時間の約80%を明ボックス内で過ごし、対照マウス(正常なマウス)がその時間の約50%を明ボックスで過ごし、AAV-EGFPを注射したrd1/rd1マウスがその時間の約30%を明ボックスで過ごすことを示し、また
図15Bは、9ヶ月後、盲目(rd/rd)マウスがその時間の約80%を明ボックスで過ごし、対照マウス(正常なマウス)がその時間の約50%を明ボックスで過ごし、AAV-EGFPを注射したrd1/rd1マウスがその時間の約20%を明ボックスで過ごすことを示す。
【0150】
図16は、それぞれ7週間後(A)および9ヶ月後(B)のAAV-cOPN5治療rd1/rd1マウスの眼内における光感受性の回復を示す。AAV-cOPN5治療rd1/rd1マウス(C3H_O5)は、正常なマウス(C57)と同様の%瞳孔収縮(面積)を有することが判明されるが、rd1/rdlマウス(C3H_EGFP)は、%瞳孔収縮(面積)をほとんど示さない。
【0151】
参照文献
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【手続補正書】
【提出日】2024-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された光感受性オプシンであって、
G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する
ものであり、
好ましくは、前記光は、360nm~520nm、好ましくは450~500nm、より好ましくは460~480nmの波長、特に470nmの波長を有し、
好ましくは、前記網膜細胞は、光受容細胞、網膜桿体細胞、網膜錐体細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、神経節細胞、水平細胞、多極ニューロン、ミュラー細胞、アマクリン細胞またはメチルニトロソウレアで処理された細胞であることを特徴とする、
光感受性オプシン。
【請求項2】
前記単離されたオプシンは、生物に由来する単離されたオプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有
し、好ましくは、
前記生物における野生型オプシン、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G
q
シグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有し、および/または
前記単離されたオプシンは、動物に由来の単離されたオプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体であり、G
q
シグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有し、好ましくは、
前記動物における野生型オプシン5(Opn5)、そのホモログ、そのオルソログ、そのパラログ、その断片または変異体と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G
q
シグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有し、
好ましくは、前記生物は、脊椎動物であることを特徴とする、請求項1に記載の単離されたオプシン。
【請求項3】
前記脊椎動物は、鳥類、爬虫類または魚類、両生類または哺乳類動物であり、
好ましくは、前記動物は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、レア、シギ、ヒクイドリ、七面鳥、ウズラ、ニワトリ、ハヤブサ、タカ、ハヤブサ、ハト、インコ、冠オウム、コンゴウインコ、オウム、スズメ目(例えば、鳴き鳥)、カケス、クロウタドリ、フィンチ、ウグイスおよびスズメを含むが、これらに限定されない鳥類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、トカゲ、ヘビ、アリゲーター(alligator)、海亀、ワニおよびリクガメを含むが、これらに限定されない爬虫類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、ナマズ、ウナギ、サメおよびメカジキを含むが、これらに限定されない魚類であるか、又は
好ましくは、前記動物は、ヒキガエル、カエル、イモリおよびサンショウウオを含むが、これらに限定されない両生類であることを特徴とする、請求項
2に記載の単離されたオプシン。
【請求項4】
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、ニワトリに由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、ニワトリに由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有
し、および/または
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、海亀に由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)またはその断片または変異体であり、G
q
シグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有するか、又は
前記単離されたオプシン5(Opn5)は、海亀に由来する野生型オプシン5(Opn5)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、G
q
シグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復する活性を有し、
好ましくは、前記ニワトリに由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を有するか、又は
好ましくは、前記海亀に由来する単離された野生型オプシン5(Opn5)は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項
3に記載の単離されたオプシン。
【請求項5】
単離された核酸であって、
請求項
1に記載の単離されたオプシンをコードすることを特徴とする、単離された核酸。
【請求項6】
キメラ遺伝子であって、
請求項
5に記載の単離された核酸配列を含み、当該核酸配列は、適切な調節配列に作動可能に連結され、
好ましくは、前記キメラ遺伝子は、マーカー、例えば蛍光タンパク質をコードする遺伝子をさらに含むことを特徴とする、キメラ遺伝子。
【請求項7】
ベクターであって、
請求項
5に記載の単離された核酸または請求項
6に記載のキメラ遺伝子を含
み、
好ましくは、前記ベクターは、真核ベクター、原核発現ベクター、ウイルスベクターまたは酵母ベクターであり、
好ましくは、前記ベクターは、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、またはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたは昆虫ベクターであり、好ましくは、前記ベクターは、組み換えされたAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVS、AAVOまたはAAV10であり、
好ましくは、前記ベクターは、発現ベクターまたは遺伝子治療ベクターであることを特徴とする、ベクター。
【請求項8】
単離された細胞または細胞培養物であって、
請求項
5に記載の単離された核酸または請求項
6に記載のキメラ遺伝
子を含むことを特徴とする、単離された細胞または細胞培養物。
【請求項9】
G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性の喪失によって媒介される疾患または病症、または光に対する網膜細胞感受性の喪失に関する疾患または病症の治療または予防
に使用するための、請求項1
~4のいずれか1項に記載の単離されたオプシン、請求項
5に記載の単離された核酸、
または請求項
6に記載のキメラ遺伝子
。
【請求項10】
前記光に対する網膜細胞の感受性の喪失によって媒介される疾患または病症、または光に対する網膜細胞の感受性の喪失に関する疾患または病症は、G
qシグナル伝達を活性化することによって、光に対する網膜細胞の感受性を回復して恩恵を受ける疾患または病症を含むが、これらに限定され
ず、および/または、
前記光に対する網膜細胞の感受性の喪失によって媒介される疾患または病症、または光に対する網膜細胞の感受性の喪失に関する疾患または病症は、網膜細胞の活性化によって恩恵を受ける疾患または病症を含み、ここで、前記網膜細胞は、例えば、光受容細胞、網膜桿体細胞、網膜錐体細胞、網膜神経節細胞、双極細胞、神経節細胞、水平細胞、多極ニューロン、ミュラー細胞、アマクリン細胞またはメチルニトロソウレアで処理された細胞であり、および/または、
前記疾患または病症は、網膜外層の損傷、光受容体の喪失または変性、網膜変性疾患、光に対する感受性の喪失または光知覚の喪失、不十分な光知覚または感受性による視力喪失、および/または失明を含み、および/または、
前記疾患または病症は、網膜神経節細胞(RGC)の変性および/または死亡に関連する疾患を含むが、これらに限定されず、
好ましくは、前記疾患または病症は、網膜色素変性症(RP)、黄斑変性症、加齢関連性黄斑変性症(AMD)、常染色体優性視神経萎縮症(ADOA)および/または緑内障を含み、
好ましくは、前記治療または予防は、cOpn5発現AAVベクターの網膜下または硝子体内投与を含み、好ましくは、前記AAVベクターは、蛍光タンパク質をさらに発現し、および/または、
好ましくは、前記治療または予防は、波長範囲が360nm~550nm、好ましくは450~500nm、より好ましくは460~480nm、特に470nmである青色光を印加することを含み、および/または、
好ましくは、前記治療または予防は、波長が≧920nmである光を使用して二光子活性化を実行することを含むことを特徴とする、
請求項9に記載の単離されたオプシン、単離された核酸、またはキメラ遺伝子。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】