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特表2024-545386細胞の修復を促進し、高い保湿美白効果を有する燕窩ペプチドの製造方法及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】細胞の修復を促進し、高い保湿美白効果を有する燕窩ペプチドの製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20241129BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20241129BHJP
   C07K 14/465 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 35/57 20150101ALI20241129BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 38/01 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20241129BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241129BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C12P21/02 B
A23L33/18
C07K14/465
A61K35/57
A61P17/00
A61K38/01
A61K8/98
A61Q19/00
A61Q19/02
A61K8/64
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518368
(86)(22)【出願日】2023-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 CN2023110809
(87)【国際公開番号】W WO2024098848
(87)【国際公開日】2024-05-16
(31)【優先権主張番号】202211398048.3
(32)【優先日】2022-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524107034
【氏名又は名称】厦門市燕之屋絲濃食品有限公司
【氏名又は名称原語表記】XIAMEN YAN PALACE SEELONG FOOD CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 301, NO.3 Xiangming Road, (Xiang’an) Industrial Zone, Xiamen Torch Hi-Tech Zone, Xiamen, Fujian 361100 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】範 群艶
(72)【発明者】
【氏名】柳 訓材
(72)【発明者】
【氏名】郭 宝忠
(72)【発明者】
【氏名】白 偉娟
(72)【発明者】
【氏名】連 建梅
(72)【発明者】
【氏名】李 有泉
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4C083
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD22
4B018MD69
4B018ME04
4B018ME06
4B018MF12
4B064AG01
4B064CA21
4B064CB01
4B064CC01
4B064CC06
4B064CC07
4B064CD21
4B064CE06
4B064DA01
4B064DA10
4C083AA071
4C083AA072
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC02
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE16
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA41
4C084NA14
4C084ZA89
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087BB54
4C087CA03
4C087CA47
4C087NA14
4C087ZA89
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA01
4H045EA20
4H045FA16
4H045FA70
4H045GA01
4H045GA10
(57)【要約】
本願は、燕窩と水を混合して煮込み、煮込んだ燕窩を調製するステップと、煮込んだ燕窩を均質化処理して、燕窩ペーストを調製するステップと、アルカリプロテアーゼで燕窩ペーストを酵素分解し、酵素を失活させて、酵素分解物を調製するステップと、酵素分解物を遠心分離し、上澄み液を回収して、燕窩ペプチドの粗試料溶液を調製するステップと、燕窩ペプチドの粗試料溶液に対して限外ろ過を行い、限外ろ過液を回収するステップと、を含み、遠心分離の条件は、速度が約10000~15000rpmで、時間が約10~30minであることを含み、限外ろ過に用いられる膜の孔径は、約100~200nmである、燕窩ペプチドの製造方法に関する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燕窩と水を混合して煮込み、煮込んだ燕窩を調製するステップと、
前記煮込んだ燕窩を均質化処理して、燕窩ペーストを調製するステップと、
アルカリプロテアーゼで前記燕窩ペーストを酵素分解し、酵素を失活させて、酵素分解物を調製するステップと、
前記酵素分解物を遠心分離し、上澄み液を回収して、燕窩ペプチドの粗試料溶液を調製するステップと、
前記燕窩ペプチドの粗試料溶液に対して限外ろ過を行い、限外ろ過液を回収して、燕窩ペプチドを調製するステップと、を含み、
遠心分離の条件は、速度が約10000rpm~15000rpmで、時間が約10min~30minであることを含み、
限外ろ過に用いられる膜の孔径は、約100nm~200nmであり、好ましくは、限外ろ過に用いられる膜の孔径は、約150nm~200nmである、ことを特徴とする燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項2】
100mLあたりの前記水に対応する前記燕窩の使用量は、約10g~50gであり、好ましくは、100mLあたりの前記水に対応する前記燕窩の使用量は、約25g~35gである、ことを特徴とする請求項1に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項3】
煮込み時間は、約0.5~2時間であり、好ましくは、煮込み時間は、約1.75~2時間である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項4】
均質化処理の条件は、パワーが約10MPa~30MPaで、時間が約10min~30minであることを含み、好ましくは、均質化処理の条件は、パワーが約25MPa~30MPaで、時間が約20min~30minであることを含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項5】
酵素分解の条件は、温度が約50℃~60℃で、pH値が約8.0~10.0で、時間が約10min~30minで、1gあたりの燕窩に対応する前記アルカリプロテアーゼの使用量が約6U~9Uであることを含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項6】
酵素失活の方法は、加熱による酵素失活であり、加熱による酵素失活の条件は、酵素分解により得られた反応系を約80℃~100℃に加熱し、約10min~30min保持することを含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項7】
前記限外ろ過液中の溶媒を除去するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項8】
前記溶媒を除去するステップは、前記限外ろ過液を濃縮し、得られた濃縮物を噴霧乾燥させるステップを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項9】
前記溶媒を除去するステップは、
(1)前記濃縮物の体積が前記限外ろ過液の体積の約1/3~約1/8であること、
(2)噴霧乾燥の条件は、吸気温度が約150℃~200℃で、排気温度>約70℃であることを含み、好ましくは、噴霧乾燥の条件は、吸気温度が約165℃~175℃で、排気温度>約90℃であることを含むこと、という技術的特徴のうちの1つ以上を有する、ことを特徴とする請求項8に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項10】
前記燕窩ペプチドにおいて、総アミノ酸含有量が約66.75wt%~68.89wt%であり、シアル酸含有量が約6.14wt%~6.64wt%であり、水分含有量が約11.01wt%~12.01wt%である、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法により製造される、ことを特徴とする燕窩ペプチド。
【請求項12】
請求項11に記載の燕窩ペプチドの、医薬品又は保湿、美白、修復及び/又は抗酸化効果を有する食品又はスキンケア製品の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2022年11月9日に出願された、出願番号が2022113980483であり、名称が「細胞の修復を促進し、高い保湿美白効果を有する燕窩ペプチドの製造方法及び応用」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容全体は参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本願は、食品加工の技術分野に関し、特に、細胞の修復を促進し、高い保湿美白効果を有する燕窩ペプチドの製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0003】
研究者は、燕窩がプロテアーゼにより加水分解された後に生成した燕窩ペプチドが、優れた血圧降下、抗ウイルスなどの効果を有することを見出した。特に、燕窩ペプチドは、いくつかの機能において燕窩よりも優れている。また、燕窩ペプチドは、比較的低い分子量を有するため、人体に吸収されやすく、経皮吸収される能力を有すると考えられる。以上の利点に基づいて、燕窩ペプチドは、食品、医薬品、スキンケア製品などの分野において、消費者、製造業者、研究者から期待されており、広い応用の将来性を有する活性物質であると考えられる。
【0004】
従来の燕窩ペプチドの製造方法は、例えば、以下のとおりである。
【0005】
CN107668312Aには、燕窩を水に入れて煮込んだ後に得られた燕窩液を、まず、0.1mol/LのNaHCO溶液でpH値8に調整するステップと、次に、アルカリプロテアーゼを添加して、部分的に酵素分解し、沸騰水で酵素を3min失活させた後に冷却するステップと、さらに、真空高低速ホイップと高低温脱泡を3回繰り返し処理するステップと、を含む、燕窩タンパク液の複合脱泡方法が記載される。
【0006】
CN111528332Aには、乾燥燕窩を精製水で浸漬した後に不純物を除去し、粉砕し、乾燥させて、使用に備えるという燕窩の浸漬、選別のステップ(1)と、ステップ(1)で浸漬した燕窩に精製水を添加して煮込み、そして、細かく粉砕して、燕窩ペーストを得るという煮込み、すりつぶしのステップ(2)と、ステップ(2)で製造された燕窩ペーストの濃度及びpHを調整し、そして、調製後の燕窩ペーストに中性プロテアーゼを添加し、撹拌して酵素分解した後、酵素を失活させ、冷却して100~200メッシュのふるいにかけた後、1回目の酵素分解液を得るという1回目の生物酵素分解のステップ(3)と、ステップ(3)で製造された1回目の酵素分解液を均質化処理し、粗ろ過して酵素分解均質化処理液を得るという均質化処理、ろ過のステップ(4)と、ステップ(4)で製造された酵素分解均質化処理液の濃度及びpHを調整し、そして、調製後の酵素分解均質化処理液に複合プロテアーゼを添加し、撹拌して酵素分解した後、酵素を失活させ、冷却して2回目の酵素分解液を得るという2回目の生物酵素分解のステップ(5)と、ステップ(5)で製造された2回目の酵素分解液を精密ろ過し、RO膜で逆浸透濃縮した後、噴霧乾燥させ、燕窩ペプチドを得るという精製、噴霧乾燥のステップ(6)と、を含む、燕窩ペプチドの製造方法が記載される。
【0007】
CN112006276Aには、乾燥燕窩を精製水で浸漬した後に不純物を除去し、粉砕し、乾燥させた後にふるいにかけ、使用に備えるという燕窩の浸漬、選別のステップ(1)と、ステップ(1)でふるいにかけた燕窩にアルギニン溶液を添加して燕窩液を調製し
、湯煎後に冷却するという燕窩液調製、煮込みのステップ(2)と、ステップ(2)で処理した溶液のpH値を8~10に調整し、アルカリプロテアーゼを添加して、部分的に酵素分解し、そして、高温沸騰水で酵素を失活させ、酵素分解液を得るという酵素分解のステップ(3)と、ステップ(3)で調製した酵素分解液を低温真空でホイップした後、超音波で脱泡し、高圧均質化処理して酵素分解均質化処理液を得るという超音波脱泡、高圧均質化処理のステップ(4)と、ステップ(4)で調製した酵素分解均質化処理液に氷砂糖及びクエン酸を添加して、そして、真空で噴霧乾燥させ、燕窩粉末を得るという噴霧乾燥のステップ(5)と、ステップ(5)で調製した燕窩粉末の表面にリン脂質をスプレーして、湯戻しインスタント燕窩粉末を得るというリン脂質スプレーのステップ(6)と、を含む、湯戻しインスタント燕窩粉末の製造方法が記載される。
【0008】
CN113564218Aには、乾燥燕窩を熱水中で加熱処理して原料液を得て、使用に備えるという原料前処理のステップ(1)と、前記原料液を酵素分解タンクに入れ、pHを調整した後、昇温加熱し、プロテアーゼを添加して酵素分解を行って酵素分解液を得るという酵素分解のステップ(2)と、前記酵素分解液を沸騰水浴中で失活させ後、限外ろ過を行い、ろ過液を回収するという酵素失活、限外ろ過のステップ(3)と、前記ろ過液を噴霧乾燥させて、前記美白活性小分子燕窩ペプチド粉末を得るステップ(4)と、を含む、美白活性小分子燕窩ペプチドの製造方法が記載される。
【0009】
CN111019984Aには、燕窩原料を乾燥させ、粉砕処理した後、前処理済みの燕窩を得るという前処理のステップIと、前処理済みの燕窩に前処理済みの燕窩体積の10~30倍の水を添加し、均一に撹拌してから、30~45℃で15~40min超音波処理して、燕窩ペーストを得て、次に、燕窩ペーストにトリプシン、アルカリプロテアーゼ、フレーバーザイム、ペプシン、及び酵素安定化剤を添加し、前記燕窩ペースト、トリプシン、アルカリプロテアーゼ、フレーバーザイム、ペプシン、及び酵素安定化剤の質量比が100:(0.5~1):(0.5~1):(0.5~1):(0.5~1):(0.01~0.05)であり、40~60℃で2~7h酵素分解し、100~105℃で酵素を5~10min失活させ、冷却し、酵素分解液を得るという抽出のステップIIと、上記酵素分解液を遠心分離処理し、得られた上澄み液をろ過し、真空凍結乾燥処理した後、製品を得るというろ過、乾燥のステップIIIと、を含む、燕窩中のシアル酸の効率的な抽出方法が記載される。
【0010】
CN115226886Aには、砕かれた燕窩を水で浸漬し、ミリオーダーの顆粒になるまで湿式研磨し、そして、超音波破砕した後、アルカリプロテアーゼを添加して酵素分解を行い、酵素を失活させた後、遠心分離し、ろ過してシアル酸に富んだ抽出液を得るというシアル酸抽出液調製のステップ(1)と、再添加した乾燥燕窩を前記抽出液で浸漬してから、超音波装置に入れて超音波膨潤を行い、最後に、糸状になるようにホイップし、不純物を除去し、脱水し、煮込んだ後、高シアル酸の燕窩製品を得るという抽出液再添加のステップ(2)と、を含む、抽出液の再添加法による高シアル酸の燕窩製品の製造方法が記載される。
【0011】
CN111096462Bには、1:40の比で燕窩に水を添加して常温で5~12h浸漬するという燕窩の浸漬のステップS1と、浸漬後の燕窩を95℃~100℃の水浴で1~2h湯煎するという煮込みのステップS2と、煮込んだ燕窩水溶液を降温させた後、ホモジナイザーで1~2回均質化処理するという均質化処理のステップS3と、均質化処理液にアルカリプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、フレーバーザイムを順に添加し、50~65℃で4~8h酵素分解するステップであって、前記アルカリプロテアーゼの成分は、45~60%の水、5~10%のプロテアーゼA、35~45%のプロピレングリコール及び0.2~0.4%の塩化カルシウムを含み、前記中性プロテアーゼは、35~50%の水、5~10%のプロテアーゼB、33~45%のソルビトール、7~10%のプロピ
レングリコール及び5%の塩化ナトリウムを含み、プロテアーゼAは、バチルス・リケニフォルミスの生成物であり、プロテアーゼBは、バチルス・アミロリケファシエンスの生成物であるという酵素分解のステップS4と、得られた酵素分解液を80~90℃で15~20min失活させるという酵素失活のステップS5と、失活後の上澄み液を降温させた後、ろ過膜でろ過するステップであって、ろ過範囲が100~120mmであるというろ過膜ろ過のステップS6と、ろ過後の上澄み液を遠心分離して残渣を除去するステップであって、遠心分離の回転数は、3000~5000rpmであるという遠心分離のステップS7と、遠心分離後の上澄み液を回収して、上澄み液を得るという上澄み液取りのステップS8と、燕窩の上澄み液とβ-シクロデキストリンの1:4~6の質量比で、β-シクロデキストリン溶液を調製するというマイクロカプセル化のステップS9と、-35℃~-36℃に安定させた後、凍結乾燥を行い、粉砕してマイクロカプセル化燕窩ペプチド製品を得るという凍結乾燥のステップS10と、を含む、バイオ酵素分解・精製した無公害の燕窩ポリペプチド及びその脱苦味法が記載される。
【0012】
CN109852656Aには、燕窩を燕窩粉末に粉砕し、1:15の固液比で燕窩粉末を水に入れて浸漬し、フレンチプレスで破砕処理して、燕窩ペーストを得るステップ(1)と、前記燕窩ペーストに3%の前記燕窩粉末重量のプロテアーゼを添加して、3h酵素分解し、沸騰水浴中で酵素を失活させ、遠心分離処理して、酵素分解後の上澄み液Y1と沈殿物Y2を得るステップ(2)と、前記沈殿物Y2を取って1:20の固液比で水に入れて再懸濁して燕窩再懸濁液に調製し、さらに燕窩再懸濁液に1%の前記燕窩粉末重量のプロテアーゼを添加して、2h酵素分解し、沸騰水浴中で酵素を失活させ、遠心分離処理して、酵素分解後の上澄み液Y3と沈殿物Y4を得るステップ(3)と、前記酵素分解後の上澄み液Y1と酵素分解後の上澄み液Y3を混合して、酵素分解後の上澄み液Y5を得るステップ(4)と、前記酵素分解後の上澄み液Y5を逆浸透膜で脱塩処理し、膜ろ過装置でろ過処理して、燕窩ポリペプチド精製液を得るステップ(5)と、前記燕窩ポリペプチド精製液を凍結乾燥させて、燕窩ポリペプチド粉末を得るステップ(6)と、を含む、燕窩ポリペプチド粉末の製造方法が記載される。
【0013】
しかしながら、従来の製造方法で製造された燕窩ペプチドと燕窩原料とは、成分的には、一致しないことが多く、その機能特性及び応用分野は、特性評価及び明確化されていない。本願は、このような事情に鑑みて提案されたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これにより、本願の様々な実施例によれば、細胞の修復を促進し、高い保湿美白効果を有する燕窩ペプチドの製造方法及び応用を提供し、技術的手段は、以下のとおりである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の第1態様では、
燕窩と水を混合して煮込み、煮込んだ燕窩を調製するステップと、
前記煮込んだ燕窩を均質化処理して、燕窩ペーストを調製するステップと、
アルカリプロテアーゼで前記燕窩ペーストを酵素分解し、酵素を失活させて、酵素分解物を調製するステップと、
前記酵素分解物を遠心分離し、上澄み液を回収して、燕窩ペプチドの粗試料溶液を調製するステップと、
前記燕窩ペプチドの粗試料溶液に対して限外ろ過を行い、限外ろ過液を回収して、燕窩ペプチドを調製するステップと、を含み、
遠心分離の条件は、速度が約10000rpm~15000rpmで、時間が約10min~30minであることを含み、
限外ろ過に用いられる膜の孔径は、約100nm~200nmである、燕窩ペプチドの製
造方法を提供する。
【0016】
本願のいくつかの実施形態では、限外ろ過に用いられる膜の孔径は、約150nm~200nmである。
【0017】
本願のいくつかの実施形態では、100mLあたりの前記水に対応する前記燕窩の使用量は、10g~50gである。
【0018】
本願のいくつかの実施形態では、100mLあたりの前記水に対応する前記燕窩の使用量は、25g~35gである。
【0019】
本願のいくつかの実施形態では、煮込み時間は、0.5~2時間であり、好ましくは、煮込み時間は、1.75~2時間である。
【0020】
本願のいくつかの実施形態では、均質化処理の条件は、パワーが10MPa~30MPaで、時間が10min~30minであることを含み、好ましくは、均質化処理の条件は、パワーが25MPa~30MPaで、時間が20min~30minであることを含む。
【0021】
本願のいくつかの実施形態では、酵素分解の条件は、温度が50℃~60℃で、pH値が5.0~9.0で、時間が10min~30minで、1gあたりの燕窩に対応する前記アルカリプロテアーゼの使用量が6U~9Uであることを含む。
【0022】
本願のいくつかの実施形態では、酵素失活の方法は、加熱による酵素失活であり、加熱による酵素失活の条件は、酵素分解により得られた反応系を80℃~100℃に加熱し、10min~30min保持することを含む。
【0023】
本願のいくつかの実施形態では、前記製造方法は、前記限外ろ過液中の溶媒を除去するステップをさらに含む。
【0024】
本願のいくつかの実施形態では、前記溶媒を除去するステップは、前記限外ろ過液を濃縮し、得られた濃縮物を噴霧乾燥させるステップを含む。
【0025】
本願のいくつかの実施形態では、前記溶媒を除去するステップは、
(1)前記濃縮物の体積が前記限外ろ過液の体積の1/3~約1/8であること、
(2)噴霧乾燥の条件は、吸気温度が約150℃~200℃で、排気温度>約70℃であることを含むこと、という技術的特徴のうちの1つ以上を有する。
【0026】
本願のいくつかの実施形態では、噴霧乾燥の条件は、吸気温度が165℃~175℃で、排気温度>90℃であることを含む。
【0027】
本願のいくつかの実施形態では、前記燕窩ペプチドにおいて、総アミノ酸含有量が66.75wt%~68.89wt%であり、シアル酸含有量が6.14wt%~6.64wt%であり、水分含有量が11.01wt%~12.01wt%である。
【0028】
本願の第2態様では、第1態様に記載の製造方法により製造される燕窩ペプチドを提供する。
【0029】
本願の第3態様では、第2態様に記載の燕窩ペプチドの、医薬品又は保湿、美白、修復及び/又は抗酸化効果を有する食品又はスキンケア製品の製造における応用を提供する。
【0030】
本願の1つ又は複数の実施例の詳細は、以下の説明で述べられ、本願の他の特徴、目的及び利点は、明細書及びその特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本願の実施例における技術的手段をより明確に説明し、本願及びその有益な効果をより完全に理解するために、以下、実施例の説明に使用される必要がある図面を簡単に説明する。明らかなように、以下の説明における図面は、本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労働をせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0032】
図1】実施例1における燕窩ペプチドのGPC保持スペクトルである。
図2】実施例1における燕窩ペプチドの化学抗酸化能を示す図であり、図Aは、異なる濃度の燕窩ペプチドのDPPHラジカル消去率であり、図Bは、異なる濃度の燕窩ペプチドのABTSラジカル消去率であり、図Cは、異なる濃度の燕窩ペプチドのヒドロキシラジカル消去率であり、図Dは、異なる濃度の燕窩ペプチドの総抗酸化能値である。
図3】実施例1における燕窩ペプチドのHaCat細胞、B16細胞及びMRC-5細胞に対する毒性であり、図Aは、異なる燕窩ペプチド濃度でのHaCat細胞の生存率であり、図Bは、異なる燕窩ペプチド濃度でのB16細胞の生存率であり、図Cは、異なる燕窩ペプチド濃度でのMRC-5細胞の生存率であり、図Dは、H損傷のHaCat細胞の生存率に対する燕窩ペプチドの影響であり、図Eは、HaCat細胞のヒアルロン酸含有量に対する燕窩ペプチドの影響であり、図Fは、B16細胞内のメラニン産生に対する燕窩ペプチドの抑制率である。
図4】実施例1における燕窩ペプチドのMRC-5細胞傷跡に対する修復作用である。
図5】実施例2における燕窩ペプチドのGPC保持スペクトルである。
図6】実施例2における燕窩ペプチドの化学抗酸化能を示す図であり、図Aは、異なる濃度の燕窩ペプチドのDPPHラジカル消去率であり、図Bは、異なる濃度の燕窩ペプチドのABTSラジカル消去率であり、図Cは、異なる濃度の燕窩ペプチドのヒドロキシラジカル消去率であり、図Dは、異なる濃度の燕窩ペプチドの総抗酸化能値である。
図7】実施例2における燕窩ペプチドのHaCat細胞、B16細胞及びMRC-5細胞に対する毒性であり、図Aは、異なる燕窩ペプチド濃度でのHaCat細胞の生存率であり、図Bは、異なる燕窩ペプチド濃度でのB16細胞の生存率であり、図Cは、異なる燕窩ペプチド濃度でのMRC-5細胞の生存率であり、図Dは、H損傷のHaCat細胞の生存率に対する燕窩ペプチドの影響であり、図Eは、HaCat細胞のヒアルロン酸含有量に対する燕窩ペプチドの影響であり、図Fは、B16細胞内のメラニン産生に対する燕窩ペプチドの抑制率である。
図8】実施例2における燕窩ペプチドのMRC-5細胞傷跡に対する修復作用である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面、実施形態及び実施例を参照しながら、本願をさらに詳細に説明する。これらの実施形態及び実施例は、本願を説明するためのものに過ぎず、本願の範囲を限定するものではなく、これらの実施形態及び実施例を提供する目的は、本願の開示内容に対する理解をより完全かつ全面的にすることである。さらに、本願は、本明細書に記載されている実施形態及び実施例に限定されるものと解釈されるべきではなく、多くの異なる形態で実現することが可能であり、当業者であれば、本願の趣旨を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができ、これらの均等な形成も本願の保護範囲に含まれることを理解されたい。また、以下の記載においては、多くの具体的な詳細が本願の完全な理解を与えるために述べられる。本願は、これらの具体的な詳細の一部又は全てがなくても実施できることを理解されたい。
【0034】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本願が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本願の説明において、本明細書で用いられる用語は、実施形態及び実施例を説明することのみを目的としており、本願を限定することを意図したものではない。
用語
【0035】
本明細書で使用される用語又は表現は、別段の説明又は矛盾がない限り、以下の意味を有する。
【0036】
本明細書で使用される用語「及び/又は」、「又は/及び」、「並びに/若しくは」の選択範囲は、2つ以上の関連する列挙された項目のうちのいずれか1つの項目を含み、関連する列挙された項目の任意かつ全ての組み合わせをさらに含み、前記任意かつ全ての組み合わせは、任意の2つの関連する列挙された項目、任意のより多くの関連する列挙された項目、又は全ての関連する列挙された項目の組み合わせを含む。なお、「及び/又は」、「又は/及び」、「並びに/若しくは」から選択される少なくとも2つの接続詞の組み合わせで少なくとも3つの項目を接続する場合、理解できるように、本願において、当該技術的手段は、いずれも「論理積」で接続される技術的手段を含み、さらに、いずれも「論理和」で接続される技術的手段を含むことは言うまでもない。例えば、「A及び/又はB」は、A、B及びA+Bの3つの意味を含む。また例えば、「A及び/又はB及び/又はC及び/又はD」という技術的手段は、A、B、C及びDのうちのいずれか1つ(即ち、全てが「論理和」で接続される技術的手段)を含み、A、B、C及びDの任意かつ全ての組み合わせを含み、即ち、A、B、C及びDのうちのいずれか2つ又は3つの組み合わせを含み、さらに、A、B、C及びDの4つの組み合わせ(即ち、全てが「論理積」で接続される技術的手段)を含む。
【0037】
本願において、「複数」、「複数種」、「複数回」、「多様」などは、特に断らない限り、数量が2つ以上であることを指す。例えば、「1つ又は複数」は、1つ又は2つ以上を示す。
【0038】
本明細書において使用される「その組み合わせ」、「その任意の組み合わせ」、「その任意の組み合わせ方式」などは、列挙された項目のうちの任意の2つ以上の項目の全ての適切な組み合わせ方式を含む。
【0039】
本明細書において、「適切な組み合わせ方式」、「適切な方式」、「任意の適切な方式」などに記載の「適切」は、本願の技術的手段を実施し、本願の技術的課題を解決し、本願の所望の技術的効果を奏することができることを基準とする。
【0040】
本明細書において、「好ましい」、「より好ましい」、「さらに好ましい」、「最も好ましい」は、より効果的な実施形態又は実施例を説明するためのものに過ぎず、本願の保護範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0041】
本願において、「さらに」、「またさらに」、「特に」などは、目的を説明するためのものであり、内容の差異を示すが、本願の保護範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
【0042】
本願において、「選択的に」、「選択的な」、「選択的」は、存在しても、存在しなくてもよく、つまり「存在する」又は「存在しない」2つの並列案から選択されるいずれかを指す。1つの技術的手段において、特に断らない限り、また、矛盾や相互の制約関係がない限り、「選択的」が複数存在する場合、各「選択的」は、それぞれ独立している。
【0043】
本願において、「第1態様」、「第2態様」、「第3態様」、「第4態様」などにおいて、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などの用語は説明目的でのみ用いられており、相対的な重要性や量を示したり暗示したりするものとして理解されるべきではなく、示された技術的特徴の重要性や量を暗黙的に示すものとして理解されるべきではない。また、「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」などは、非網羅的な列挙説明の目的のみを果たし、数量に対するクローズド型限定を構成しないことを理解されたい。
【0044】
本願において、オープン形式で記載された技術的特徴には、列挙された特徴からなるクローズド型技術的手段も、列挙された特徴を含むオープン型技術的手段も含まれる。
【0045】
本願において、数値区間(即ち、数値範囲)について、特に断らない限り、選択可能な数値分布は、上記数値区間内で連続すると見なされ、当該数値範囲の2つの数値端点(即ち、最小値及び最大値)、及び当該2つの数値端点間の各数値を含む。特に断らない限り、数値区間は、当該数値区間内の整数のみを指す場合、当該数値範囲の2つの端点の整数、及び2つの端点間の各整数を含み、本明細書において、各整数を直接列挙することに相当し、例えば、tが1~10から選ばれる整数であることは、tが1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10からなる整数群から選ばれるいずれか1つの整数であることを表す。また、特徴や特性を説明する範囲が複数ある場合には、それらを組み合わせてもよい。換言すれば、特に断らない限り、本明細書に開示される範囲は全て、その中に包摂されるありとあらゆるサブ範囲を包含するものと理解されるべきである。
【0046】
本願における温度パラメータは、特に断らない限り、恒温処理であってもよく、一定の温度区間内で変動してもよい。前記恒温処理は、機器制御の精度範囲内で温度が変動することを許容することを理解されたい。例えば、±5℃、±4℃、±3℃、±2℃、±1℃の範囲での変動が許容される。
【0047】
本願において、%(w/w)とwt%は、いずれも重量百分率を表し、%(v/v)は、体積百分率を指し、%(w/v)は、質量体積百分率を指す。
【0048】
本願において言及される全ての文献は、各々の文献が個別に参照により組み込まれるのと同じように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本願の目的及び/又は技術的手段と矛盾しない限り、本願に係る引用文献は、その全体が、かつ全ての目的で本明細書に組み込まれる。本願において、引用文献に関する場合、関連する技術的特徴、用語、名詞、フレーズなどの引用文献における定義も併せて組み込まれる。本願において、引用文献に関する場合、組み込まれる関連する技術的特徴の例、好ましい実施形態も参照として本願に組み込まれてもよいが、本願を実施できるものに限定される。引用内容が本願の説明と矛盾する場合、本願を基準として、又は本願の説明に従って、適応的に修正することを理解されたい。
本願の第1態様
【0049】
本願は、
燕窩と水を混合して煮込み、煮込んだ燕窩を調製するステップと、
前記煮込んだ燕窩を均質化処理して、燕窩ペーストを調製するステップと、
アルカリプロテアーゼで前記燕窩ペーストを酵素分解し、酵素を失活させて、酵素分解物を調製するステップと、
前記酵素分解物を遠心分離し、上澄み液を回収して、燕窩ペプチドの粗試料溶液を調製するステップと、
前記燕窩ペプチドの粗試料溶液に対して限外ろ過を行い、限外ろ過液を回収して、燕窩ペプチドを調製するステップと、を含み、
遠心分離の条件は、速度が約10000rpm~15000rpmで、時間が約10mi
n~30minであることを含み、
限外ろ過に用いられる膜の孔径は、約100nm~200nmである、燕窩ペプチドの製造方法を提供する。
【0050】
本願における遠心分離の条件は、速度(rpm)が、例えば、10000、11000、12000、13000、14000、15000であり、時間(min)が、例えば、10、12、15、17、20、22、25、28、30である。
【0051】
本願における限外ろ過に用いられる膜の孔径(nm)は、例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200である。好ましくは、限外ろ過に用いられる膜の孔径は、150nm~200nmである。
【0052】
好ましくは、100mLあたりの前記水に対応する前記燕窩の使用量は、10g~50g(例えば、10g、15g、20g、25g、30g、35g、40g、45g、50g)である。
【0053】
好ましくは、100mLあたりの前記水に対応する前記燕窩の使用量は、25g~35g(例えば、25g、26g、27g、28g、29g、30g、31g、32g、33g、34g、35g)である。
【0054】
好ましくは、煮込み時間は、0.5h~2h(例えば、0.5h、0.6h、0.7h、0.8h、0.9h、1h、1.1h、1.2h、1.3h、1.4h、1.5h、1.6h、1.7h、1.8h、1.9、2h)であり、好ましくは、煮込み時間は、1.75h~2hである。
【0055】
好ましくは、均質化処理の条件は、パワーが10MPa~30MPa(例えば、10MPa、11MPa、12MPa、13MPa、14MPa、15MPa、16MPa、17MPa、18MPa、19MPa、20MPa、21MPa、22MPa、23MPa、24MPa、25MPa、26MPa、27MPa、28MPa、29MPa、30MPa)で、時間が10min~30min(例えば、10min、12min、15min、17min、20min、22min、25min、28min、30min)であることを含み、好ましくは、均質化処理の条件は、パワーが25MPa~30MPaで、時間が20min-30minであることを含む。
【0056】
好ましくは、酵素分解の条件は、温度が50℃~60℃(例えば、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃)で、pH値が8.0~10.0(例えば、8、8.5、9、9.5、10)で、時間が5h~6h(例えば、5h、5.1h、5.2h、5.3h、5.4h、5.5h、5.6h、5.7h、5.8h、5.9h、6h)で、1gあたりの燕窩に対応する前記アルカリプロテアーゼの使用量が6U~9U(例えば、6U、6.5U、7U、7.5U、8U、8.5U、9U)であることを含む。
【0057】
好ましくは、酵素失活の方法は、加熱による酵素失活であり、加熱による酵素失活の条件は、酵素分解により得られた反応系を80℃~100℃(例えば、80℃、82℃、84℃、86℃、88℃、90℃、92℃、94℃、96℃、98℃、100℃)に加熱し、10min~30min(例えば、10min、12min、15min、17min、20min、22min、25min、28min、30min)保持することを含む。
【0058】
好ましくは、前記製造方法は、前記限外ろ過液中の溶媒を除去するステップをさらに含む。
【0059】
好ましくは、前記溶媒を除去するステップは、前記限外ろ過液を濃縮し、得られた濃縮物を噴霧乾燥させるステップを含む。
【0060】
好ましくは、前記溶媒を除去するステップは、
(1)前記濃縮物の体積が前記限外ろ過液の体積の1/3~1/8(例えば、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8)であること、
(2)噴霧乾燥の条件は、吸気温度が150℃~200℃(例えば、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃)で、排気温度>70℃(例えば、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃)であることを含み、好ましくは、噴霧乾燥の条件は、吸気温度が165℃~175℃であり、排気温度>90℃であることを含むこと、という技術的特徴のうちの1つ以上を有する。。
【0061】
好ましくは、総アミノ酸含有量が66.75wt%~68.89wt%であり、シアル酸含有量が6.14wt%~6.64wt%であり、水分含有量が11.01wt%~12.01wt%である。
【0062】
好ましくは、100gあたりの前記燕窩ペプチドにおいて、66.75%~68.89%のアミノ酸を含有し、前記アミノ酸に占める質量割合として、必須アミノ酸の含有量が39.34%~44.89%であり、半必須アミノ酸の含有量が11.19%~11.34%であり、非必須アミノ酸の含有量が43.99%~49.31%であり、非極性アミノ酸の含有量が34.83%~37.49%であり、極性アミノ酸の含有量が25.29%~30.40%であり、酸性アミノ酸の含有量が13.06%~17.02%であり、塩基性アミノ酸の含有量が16.55%~24.23%であり、芳香族アミノ酸の含有量が11.42%~18.78%であり、
前記アミノ酸に占める質量割合として、前記必須アミノ酸中のリジンの含有量が5.21%~13.03%であり、フェニルアラニンの含有量が4.75%~7.76%であり、ロイシンの含有量が3.90%~7.67%であり、前記非必須アミノ酸中のチロシンの含有量が6.67%~9.66%であり、
前記ポリペプチドに占める質量割合として、数平均分子量が2914~2919Daであるポリペプチドの含有量は、6.08%~8.07%であり、数平均分子量が1576~1589Daであるポリペプチドの含有量は、11.36%~11.60%であり、数平均分子量が710~715Daであるポリペプチドの含有量は、34.11%~34.69%であり、数平均分子量が207~210Daであるポリペプチドの含有量は、46.22%~47.87%である。
本願の第2態様
【0063】
本願は、第1態様に記載の製造方法により製造される燕窩ペプチドを提供する。
本願の第3態様
【0064】
本願は、第2態様に記載の燕窩ペプチドの、医薬品又は保湿、美白、修復及び/又は抗酸化効果を有する食品又はスキンケア製品の製造における応用を提供する。
具体的な実施例
【0065】
以下、実施例を参照しながら、本願の実施形態を詳細に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本願の範囲を限定するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されていない実験方法は、本願により提供される案内を優先的に参照し、本分野の実験マニュアル又は通常の条件に従って行ってもよく、メーカーで薦めている条件に従って行ってもよく、本分野の既知の実験方法を参照してもよ
い。
【0066】
下記具体的な実施例において、原料成分の用量パラメータについて、特に断らない限り、秤量精度範囲内のわずかな偏差が存在する可能性がある。温度及び時間パラメータについて、機器の検査精度又は操作精度による許容可能な偏差が許容される。
【実施例1】
【0067】
1 材料と方法
1.1 材料
HaCat細胞、MRC-5細胞は、中国の武漢普諾賽生命科技有限公司(Procell Life Science&Technology Co.,Ltd.)から購入した。CCK-8は、米国のAPExBIO社から購入した。TACキット(ab65329)は、英国のAbcam社から購入した。ヒアルロン酸ELISAキット(EU2556)は、中国のFineTest社から購入した。シアル酸標準品、トリプトファン標準品は、米国のSigma-Aldrich社から購入し、アミノ酸標準品は、北京世紀奥科生物技術有限公司から購入した。他の試薬は、分析用試薬以上の純度を有するものであり、米国のSigma-Aldrich社から購入した。
【0068】
1.2 燕窩ペプチドの生産
燕窩ペプチドの生産プロセスは、原料洗浄、煮込み、すりつぶし、均質化処理、pH調整、酵素分解、酵素失活、冷却、遠心分離、限外ろ過、濃縮、乾燥、及び小分けである。具体的には、可食の燕窩原料(30%w/v)を洗浄した後、二重釜に入れて沸騰水で2時間煮込んだ。その後、煮込んだ可食の燕窩を30MPaの条件下で30min均質化処理した。均質化処理された可食の燕窩ペーストを酵素分解タンクに入れて、0.01%の炭酸ナトリウムで反応系のpHを9.0の範囲に安定化させた。酵素分解タンクに6U/gのアルカリプロテアーゼを添加し、酵素分解温度を51℃に維持して6時間酵素分解反応させた。酵素分解の終了後、反応系の温度を85℃に調整し、20min保持して酵素を十分に失活させた。酵素失活の終了後、試料を13000rpmの条件下で30min遠心分離して、可食の燕窩ペプチドの粗試料溶液を得た。可食の燕窩ペプチド溶液を200nmの限外ろ過膜でろ過して、可食の燕窩ペプチド溶液を得た。最後に、該溶液を噴霧乾燥させて可食の燕窩ペプチド粉末を得て、噴霧乾燥の吸気温度は、170℃であり、排気温度>90℃であった。
【0069】
1.3 燕窩ペプチドの成分の特性評価
1.3.1 燕窩ペプチド中のシアル酸の特性評価
液体クロマトグラフィーにより、燕窩ペプチド中のシアル酸に対して特性評価を行い、特性評価方法は、中国国家標準規格(GB 30636-2014)を参照した。
【0070】
1.3.2 燕窩ペプチド中のアミノ酸の特性評価
液体クロマトグラフィー-質量分析計(LCMS 8050、島津)により、燕窩ペプチド中のアミノ酸に対して特性評価を行った。アミノ酸標準試料を前処理した後、機器により検出して対照とした。具体的には、移動相で燕窩ペプチド試料(100mg/mL)を調製し、0.22μmのポリエーテルスルホン樹脂フィルムでろ過した後、機器により検出した。液体クロマトグラフィーの条件は、カラムが島津C18-AQ、2.1mm×100mm、1.9μmで、流速が300μL/minで、カラム温度が40℃で、試料注入量が5μLで、分析時間が16minで、移動相Aが0.05%ギ酸溶液で、移動相Bがメタノールで、溶出手順を表1に示すことである。質量分析条件は、イオン源がエレクトロスプレーイオン源ESIで、モニタリング方式が正イオン多重反応モニタリング(MRM)であり、インタフェース電圧が2.5kVで、霧化ガス流量が3L/minで、加熱ガス流量が10L/min、インタフェース温度が300℃で、DL温度が250℃で
、加熱ブロック温度が400℃、乾燥ガス流量が10L/minで、CIDガスが270kPaであることである。
【表1】
【0071】
1.3.3 燕窩ペプチド中の水分の特性評価
直接乾燥法により、燕窩ペプチド中の水分に対して特性評価を行い、特性評価方法は、中国国家標準規格(GB 5009.3-2016)を参照した。
【0072】
1.3.4 燕窩ペプチドの分子量の特性評価
ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)により、燕窩ペプチドの分子量に対して特性評価を行い、特性評価方法は、中国国家標準規格(GB 31645-2018)を参照した。
【0073】
1.4 燕窩ペプチドの化学抗酸化能の評価
1.4.1 DPPHラジカル消去能の評価
DPPHラジカル溶液調製:DPPHを無水エタノールで0.04mg/mLのDPPH溶液に調製した。試料調製:燕窩ペプチド試料を、超純水で異なる濃度の燕窩ペプチド溶液(50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、1000μg/mL、2500μg/mL)に調製した。測定対象溶液調製:A0)試験管に2mLの無水エタノール及び2mLのDPPHラジカル溶液を添加し、A1)試験管に2mLの燕窩ペプチドの試料溶液及び2mLのDPPHラジカル溶液を添加し、A2)試験管に2mLの燕窩ペプチドの試料溶液及び2mLの無水エタノールを添加した。上記測定対象溶液を均一に混合し、室温で30min放置した。最後に、混合溶液を5000r/minで10min遠心分離した。遠心分離後の上澄み液の517nmでの吸光度値を測定して、試料のDPPHラジカルに対する消去率を算出した。試料のDPPHラジカルに対する消去率は、下記式により算出した。
【数1】
式中、A0は、2mLの無水エタノール+2mLのDPPHラジカル溶液の吸光度値であり、
A1は、2mLの燕窩ペプチドの試料溶液+2mLのDPPHラジカル溶液の吸光度値であり、
A2は、2mLの燕窩ペプチドの試料溶液+2mLの無水エタノールの吸光度値である。
【0074】
1.4.2 ABTSラジカル消去能の評価
ABTSラジカル溶液調製:7mmol/LのABTS水溶液と2.45mmol/Lの過硫酸カリウムを1:1(v/v)で混合し、室温遮光下で12-16時間反応させた。その後、10mmol/LのPBSで希釈し、734nmでの吸光度値を0.70±0.02にした。試料調製:燕窩ペプチド試料を、超純水で異なる濃度の燕窩ペプチド溶液(50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、1000μg/mL、2500μg/mL)に調製した。測定対象溶液調製:A0)試験管に0.4mLの超純水及び4mLのABTSラジカル溶液を添加し、A1)試験管に0.4mLの燕窩ペプチドの試料溶液及び4mLのABTSラジカル溶液を添加し、A2)試験管に0.4mLの燕窩ペプチドの試料溶液及び4mLの超純水を添加した。上記溶液を均一に混合し、遮光下で6min反応させた後、734nmで吸光度値を測定して、試料のABTSラジカルに対する消去率を算出した。試料のABTSラジカルに対する消去率は、下記式により算出した。
【数2】
式中、A0は、0.4mLの超純水+4mLのABTSラジカル溶液の吸光度値であり、A1は、0.4mLの燕窩ペプチドの試料溶液+4mLのABTSラジカル溶液の吸光度値であり、
A2は、0.4mLの燕窩ペプチドの試料溶液+4mLの超純水の吸光度値である。
【0075】
1.4.3 ヒドロキシラジカル消去能の評価
試料調製:燕窩ペプチド試料を、超純水で異なる濃度の燕窩ペプチド溶液(50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、1000μg/mL、2500μg/mL)に調製した。測定対象溶液調製:A0)試験管に1mLの硫酸第一鉄、1mLのサリチル酸、11mLの超純水及び1mLの過酸化水素水溶液を添加し、A1)試験管に1mLの燕窩ペプチドの試料溶液、1mLの硫酸第一鉄、1mLのサリチル酸、10mLの超純水及び1mLの過酸化水素水溶液を添加し、A2)試験管に1mLの燕窩ペプチドの試料溶液、1mLの硫酸第一鉄、1mLのサリチル酸及び11mLの超純水を添加した。上記溶液を均一に混合し、37℃で60min水浴した後、510nmで吸光度値を測定して、試料のヒドロキシラジカルに対する消去率を算出した。試料のヒドロキシラジカルに対する消去率は、下記式により算出した。OH
【数3】
式中、
A0は、1mLの硫酸第一鉄+1mLのサリチル酸+11mLの超純水+1mLの過酸化水素水溶液であり、
A1は、1mLの燕窩ペプチドの試料溶液+1mLの硫酸第一鉄+1mLのサリチル酸+10mLの超純水+1mLの過酸化水素水溶液であり、
A2は、1mLの燕窩ペプチドの試料溶液+1mLの硫酸第一鉄+1mLのサリチル酸+11mLの超純水である。
【0076】
1.4.4 総抗酸化能の評価
総抗酸化能(TAC)は、市販の検出キット(Abcam ab65329)で測定した。
【0077】
1.5 燕窩ペプチドの細胞内効果の評価
1.5.1 燕窩ペプチドのHaCat細胞、B16細胞及びMRC-5細胞に対する毒性の評価
燕窩ペプチドのHaCat細胞、B16細胞及びMRC-5細胞に対する毒性は、CCK-8によって測定され、それにより、燕窩ペプチドの細胞内の安全濃度範囲を決定した。具体的には、対数期のHaCat細胞、B16細胞及びMRC-5細胞を5×10個/mLで懸濁し、それぞれ96ウェルプレートに接種し、各ウェルに100μL接種し、37℃、5%COのインキュベーター(CCL-170B-8、シンガポールESCO)に入れて24時間培養し、細胞を完全に接着させた。培地を除去し、PBS緩衝液で2回洗浄し、MEMで調製した異なる濃度の燕窩ペプチドの試料溶液(50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、1000μg/mL)を添加し、37℃、5%COのインキュベーターに入れて24時間インキュベートした。インキュベート終了後、各ウェルに10μLのCCK-8を添加し、37℃で1時間インキュベートした。最後に、450nmで吸光度値を測定して、細胞の生存率を算出した。細胞の生存率は、下記式により算出した。
【数4】
試料群は、燕窩ペプチド試料+細胞であり、
対照群は、MEM培地+細胞であり、
ブランク群は、MEM培地である。
【0078】
1.5.2 Hにより誘導されるHaCat細胞損傷に対する燕窩ペプチドの保護作用の評価
まず、HのHaCat細胞に対する毒性を測定して、細胞損傷を誘導するHの濃度を決定した。具体的には、対数期のHaCat細胞を5×10個/mLで懸濁し、96ウェルプレートに接種し、各ウェルに100μL接種し、37℃、5%COのインキュベーターに入れて24時間培養し、細胞を完全に接着させた。その後、培地を除去し、PBS緩衝液で2回洗浄し、MEMで調製した異なる濃度のH溶液(50μmol/mL、100μmol/mL、200μmol/mL、300μmol/mL、500μmol/mL)を添加し、37℃、5%COのインキュベーターに入れて2時間インキュベートした。インキュベート終了後、各ウェルに10μLのCCK-8を添加し、37℃で1時間インキュベートした。最後に、450nmで吸光度値を測定して、細胞の生存率を算出した。本実施例は、HaCat細胞損傷を誘導するHの濃度が300μmol/Lであることを実験により決定した。
【0079】
その後、Hにより誘導されるHaCat細胞損傷に対する燕窩ペプチドの保護作用を測定した。具体的には、対数期のHaCat細胞を5×10個/mLで懸濁し、96ウェルプレートに接種し、各ウェルに100μL接種し、37℃、5%COのインキュベーターに入れて24時間培養し、細胞を完全に接着させた。その後、培地を除去し、PBS緩衝液で2回洗浄し、MEMで調製した異なる濃度の燕窩ペプチドの試料溶液(50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、1000μg/mL)を添加し、37℃、5%COのインキュベーターに入れて2時間インキュベートした。インキュベート終了後、各ウェルに10μLのCCK-8を添加し、37℃で1時間インキュベートした。最後に、450nmで吸光度値を測定して、細胞の生存率を算出した。計算式は、1.5.1欄に記載される計算式と同じである。
【0080】
1.5.3 HaCat細胞内のヒアルロン酸含有量に対する燕窩ペプチドの影響の評価HaCat細胞内のヒアルロン酸含有量は、市販のヒアルロン酸ELISAキット(EU
2556)で測定した。
【0081】
1.5.4 B16細胞メラニン産生に対する燕窩ペプチドの抑制作用の評価
B16細胞メラニン産生抑制試験は、団体標準(T/SHRH 027-2019)を参考に測定した。
【0082】
1.5.5 MRC-5細胞傷跡に対する燕窩ペプチドの修復作用の評価
対数期のMRC-5細胞を5×10個/mLで懸濁し、6ウェルプレートに接種し、各ウェルに2mL接種し、37℃、5%COのインキュベーターに入れて24時間培養し、細胞を完全に接着させた。その後、ピペットチップを用いて細胞培養プレートにおいて細胞傷跡を残し、培地を除去し、PBS緩衝液で2回洗浄し、MEMで調製した異なる濃度の燕窩ペプチドの試料溶液(50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、1000μg/mL)を添加し、撮影した。その後、37℃、5%COのインキュベーターに入れてインキュベートし、定期的に取り出して撮影した(12時間、24時間)。
【0083】
1.6 データ分析
全ての実験において、新たに調製した試料を用いて、少なくとも2回繰り返した。統計分析は、SPSS(26.0バージョン、SPSS社、米国)で行った。Tukey’s検定、単変量分析(ANOVA)で平均値の比較を行い、5%レベルでの有意差が認められた。
【0084】
2 結果と検討
2.1 燕窩ペプチドの成分
【表2】
燕窩ペプチドの基本成分を表2に示した。本実施例のプロセスで試作された燕窩ペプチドは、総アミノ酸含有量が69.10%で、シアル酸含有量が6.64%で、水分含有量が11.01%である。
【0085】
【表3】
備考:非極性アミノ酸は、Ala、Val、Met、Phe、Ile、Leu、Pro、Tryであり、(*は、無荷電を表す)極性アミノ酸は、Ser、Thr、Tyr、Cys、Glyであり、酸性アミノ酸は、Asp、Gluであり、塩基性アミノ酸は、His、Arg、Lysであり、芳香族アミノ酸は、Tyr、Phe、Tryである。
【0086】
表3は、燕窩ペプチド中の18種のアミノ酸の組成及び含有量を示した。まず、燕窩ペプチド中のアミノ酸含有量は、68.89g/100gであり、リジンは、燕窩ペプチド中
の最も豊富なアミノ酸であり、総アミノ酸(total amino acids、TAA)の13.03%を占め、次は、チロシン(9.66%)、フェニルアラニン(7.76%)、ロイシン(7.67%)である。特に、燕窩ペプチド中の総必須アミノ酸は、30.90g/100gになり、総アミノ酸の44.89%を占め、鶏卵(4.7~7.0g/100g)及び牛乳(1.1g/100g)などの他のタンパク質に富んだ食物よりも明らかに高い。なお、燕窩ペプチド中の乳児の成長に必要なヒスチジンは、2.62g/100gになる。FAO/WHOによって推奨されるアミノ酸栄養基準によれば、必須アミノ酸(essential amino acid、EAA)とTAAとの比が約0.4であり、かつEAAと非必須アミノ酸(nonessential amino acids、NEAA)との比が0.6以上であるタンパク質は、良質なタンパク質である。表3から分かるように、燕窩ペプチド中のEAA/TAAは、0.44であり、EAA/NEAAは、1.02であり、FAO/WHO基準よりもはるかに優れている。したがって、燕窩ペプチドは、単純に必須アミノ酸を補う観点から見ても、良質な必須アミノ酸由来であると考えられる。
【0087】
2.2 燕窩ペプチドの分子量
【表4】
本実施例で得られた燕窩ペプチドのGPC保持スペクトルを図1に示し、対応する相対分子質量分布を表4に示した。本実施例において使用した生産プロセスによって得られた燕窩ペプチド全体の数平均分子量は、355Daである。それをさらに細分化すると、燕窩ペプチドは、4つの成分に細分化されてもよく、F1の数平均分子量は、2914Daであり、8.07%を占め、F2の数平均分子量は、1576Daであり、11.60%を占め、F3の数平均分子量は、710Daであり、34.11%を占め、F4の数平均分子量は、207Daであり、46.22%を占める。タンパク質の酵素加水分解産物は、その分子量によりオリゴペプチド(<1000Da)、メソペプチド(1000~5000Da)、マクロペプチド(5000~10000Da)、及びタンパク質(>10000Da)(10.3390/gels8010024)に分類される。したがって、結果は、本実施例において使用した生産プロセスによって得られた燕窩ペプチドが主にオリゴペプチドであることを示した。
【0088】
2.3 燕窩ペプチドの化学抗酸化能
検出結果を図2に示し、図Aは、異なる濃度の燕窩ペプチドのDPPHラジカル消去率であり、図Bは、異なる濃度の燕窩ペプチドのABTSラジカル消去率であり、図Cは、異なる濃度の燕窩ペプチドのヒドロキシラジカル消去率であり、図Dは、異なる濃度の燕窩ペプチドの総抗酸化能値である。
【0089】
抗酸化は、老化防止能の基礎であると考えられている。そのため、EBNPの抗酸化能は、生化学及び細胞レベルから検討されている。DPPH-、ABTS及び-OHは、3
つの有名なラジカルであり、それらは、抗酸化剤によって消去されることにより、特徴色を消失させる。したがって、吸光度の変化により、抗酸化剤のDPPH-、ABTS、-OHに対する消去能を求めることができる。EBNPのDPPH-、ABTS、-OHに対する消去能を、それぞれ、図2のA、B、Cに示した。EBNPのDPPH-、ABTS及び-OHに対する消去能は、50~2500μg/mLの濃度範囲において、濃度の増加に伴って高くなった。したがって、この結果は、EBNPがDPPH-、ABTS及び-OHを消去する能力を有することを示した。
【0090】
EBNPの抗酸化能をより直感的に表現するために、Trolox(水溶性のα-トコフェロール類似体、既知の抗酸化剤である)をターゲットとして、さらにEBNPの総抗酸化能に対して定量的特性評価を行った。総抗酸化能は、異なる活性成分の様々なラジカルに対する消去作用の総和である。結果を図2のDに示し、結果の単位は、mmol Trolox当量/Lである。他の3つのラジカル消去能の傾向と一致するため、この結果から、EBNPが抗酸化能を有し、かつEBNPの総抗酸化能が50~2500μg/mLの間で濃度の増加に伴って高くなることが実証された。EBNPの濃度が2500μg/mLの場合、その総抗酸化能は、28.41mmol/L Troloxに相当する。
【0091】
2.4 細胞内効果
2.4.1 燕窩ペプチドのHaCat細胞、B16細胞及びMRC-5細胞に対する毒性
検出結果を図3に示し、図Aは、異なる燕窩ペプチド濃度でのHaCat細胞の生存率であり、図Bは、異なる燕窩ペプチド濃度でのB16細胞の生存率であり、図Cは、異なる燕窩ペプチド濃度でのMRC-5細胞の生存率であり、図Dは、H損傷のHaCat細胞の生存率に対する燕窩ペプチドの影響であり、図Eは、HaCat細胞のヒアルロン酸含有量に対する燕窩ペプチドの影響であり、図Fは、B16細胞内のメラニン産生に対する燕窩ペプチドの抑制率である。
【0092】
細胞実験において、細胞の生存率は、実験結果に影響を与えるため、予め毒性実験により細胞実験中の各物質の安全な添加濃度を決定する必要がある。実験により決定された燕窩ペプチドの各細胞内の安全濃度の結果を図3のA、B、Cに示した。50~1000μg/mLの濃度範囲において、各細胞の生存率は、いずれも90%を超えた。このような結果は、50~1000μg/mLの濃度範囲において、燕窩ペプチドが各細胞に対していずれも細胞毒性がなく、細胞実験を行う安全な濃度であることを示した。
【0093】
2.4.2 Hにより誘導されるHaCat細胞損傷に対する燕窩ペプチドの保護作用
により誘導される細胞酸化損傷実験は、介入物の細胞内抗酸化能を評価するために、広く使用されている細胞実験プロトコールである。燕窩ペプチドの保護下でHによって誘導されるHaCat細胞の生存率を図3のDに示した。結果は、燕窩ペプチドの保護下でのHaCat細胞の生存率が高いほど、燕窩ペプチドのHaCat細胞内の抗酸化活性がより高いことを示した。したがって、結果は、燕窩ペプチドがHaCat細胞内での抗酸化能を有し、50~1000μg/mLの濃度範囲において、燕窩ペプチドの細胞内抗酸化能が濃度の増加に伴って高くなり、250μg/mL以上の濃度において、顕著な細胞内抗酸化活性を有することを示した(p<0.05)。
【0094】
2.4.3 HaCat細胞内のヒアルロン酸含有量に対する燕窩ペプチドの影響
ヒアルロン酸は、天然保湿因子であり、皮膚の保湿に関与し、細胞外マトリックスの重要な組成成分である。ヒト細胞内のヒアルロン酸含有量は、加齢に伴って減少する。ヒト細胞は、細胞の湿度を保証するためにヒアルロン酸を積極的に合成し、重要な例として、HaCat細胞がヒアルロニダーゼの触媒下で細胞膜の内表面にヒアルロン酸を生成する。
したがって、細胞内のヒアルロン酸含有量の測定は、細胞の保水能力をある程度反映して、関与する細胞保湿能力を評価することができる。
【0095】
燕窩ペプチドの影響下でのHaCat細胞内のヒアルロン酸含有量を図3のEに示した。結果は、100μg/mL以下の燕窩ペプチドが、HaCat細胞内のヒアルロン酸含有量(p>0.05)を顕著に増加させることができず、250μg/mL以上の燕窩ペプチドが、HaCat細胞内のヒアルロン酸含有量(p<0.05)を顕著に増加させることができることを示した。また、燕窩ペプチドの濃度が高いほど、HaCat細胞内のヒアルロン酸の含有量が高い。したがって、結果は、燕窩ペプチドが細胞保湿能を有することを示し、燕窩ペプチドが保湿機能を有する化粧品に用いられる可能性があることをさらに証明した。
【0096】
2.4.4 B16細胞メラニン産生に対する燕窩ペプチドの抑制作用
B16細胞メラニン産生抑制試験は、燕窩ペプチドの美白効果に最も直接的な証拠を提供することができ、B16細胞メラニン産生に対する燕窩ペプチドの抑制率を、図3のFに示した。結果は、燕窩ペプチドがB16細胞メラニン産生に対する抑制能力を有し、50~1000μg/mLの濃度範囲において、燕窩ペプチドの細胞内でのメラニン産生抑制能力が濃度の増加に伴って高くなり、50μg/mL以上の濃度において、顕著な細胞内でのメラニン抑制活性を有することを示した(p<0.05)。
【0097】
2.4.5 MRC-5細胞傷跡に対する燕窩ペプチドの修復作用
結果を図4に示した。本実施例において、MRC-5細胞傷跡試験により、燕窩ペプチドの細胞修復、増殖促進能力を評価した結果を図4に示した。明らかに、燕窩ペプチドの介入なしに、MRC-5細胞は、24時間培養後でも明らかな傷跡が残った。逆に、燕窩ペプチドの介入下で、MRC-5細胞は、24じk案培養後に傷跡面積が小さくなった。特に、250μg/mL以上の濃度の燕窩ペプチドの介入下で、MRC-5細胞は、24時間培養後、明らかな傷跡が残らなかった。したがって、結果は、燕窩ペプチドがMRC-5細胞内での修復、増殖促進能力を有するとともに、燕窩ペプチドの細胞内での修復、増殖促進能力が濃度の増加に伴って高くなることを示した。細胞修復、増殖促進能力は、介入物に応用面での想像力を付与することができ、例えば、皮膚創傷治癒、組織修復を促進する医薬品、化粧品などの機能性製品を開発することができる。したがって、傷跡試験の結果に基づいて、燕窩ペプチドは、医薬品、化粧品などの分野への応用の可能性があるとさらに考えられる。
【0098】
3 結論
要するに、本実施例は、成熟した燕窩ペプチドの生産プロセスを提供し、当該プロセスで製造された燕窩ペプチドに対して体系的な評価を行った。基本的な性質について、燕窩ペプチドは、総アミノ酸が68.89%で、シアル酸が6.64%であり、特に、燕窩ペプチドは、30.90g/100gの必須アミノ酸を含有し、その総アミノ酸含有量の44.89%を占め、良質な必須アミノ酸由来である。機能的性質について、燕窩ペプチドは、抗酸化(DPPHラジカル、ABTSラジカル、ヒドロキシラジカルの消去を含む)の能力を有する。最も重要となるのは、燕窩ペプチドが、細胞抗酸化、細胞保湿、細胞美白、細胞傷跡修復、増殖促進の機能を有することである。以上の結果から、該燕窩ペプチドは、食品、医薬品、化粧品などの分野への応用の可能性がある。本実施例のプロセスに基づく燕窩ペプチドの開発及び利用は、燕窩産業のさらなる高値化発展に有利である。
【実施例2】
【0099】
1 材料と方法
1.1 材料
材料は、実施例1と同じである。
【0100】
1.2 燕窩ペプチドの生産
燕窩ペプチドの生産プロセスは、原料洗浄、煮込み、すりつぶし、均質化処理、pH調整、酵素分解、酵素失活、冷却、遠心分離、限外ろ過、濃縮、乾燥、及び小分けである。具体的には、可食の燕窩原料(30%w/v)を洗浄した後、二重釜に入れて沸騰水で1.75時間煮込んだ。その後、煮込んだ後の可食の燕窩を25MPaの条件下で20min均質化処理した。均質化処理された可食の燕窩ペーストを酵素分解タンクに入れて、0.01%の炭酸ナトリウムで反応系のpHを10.0に安定化させた。酵素分解タンクにアルカリプロテアーゼ(1gあたりの燕窩に対応するアルカリプロテアーゼの使用量が9Uである)を添加し、酵素分解温度を60℃に維持して5時間酵素分解反応させた。酵素分解の終了後、反応系の温度を85℃に調整し、20min保持して酵素を十分に失活させた。酵素失活の終了後、試料を15000rpmの条件下で10min遠心分離して、可食の燕窩ペプチドの粗試料溶液を得た。可食の燕窩ペプチド溶液を150nmの限外ろ過膜でろ過して、可食の燕窩ペプチド溶液を得た。最後に、該溶液を噴霧乾燥させて可食の燕窩ペプチド粉末を得て、噴霧乾燥の吸気温度は、175℃であり、排気温度>90℃であった。
【0101】
1.3 燕窩ペプチドの成分及び機能の特性評価
具体的な方法は、実施例1と同じである。
【0102】
1.4 データ分析
データ分析方法は、実施例1と同じである。
【0103】
2 結果と検討
2.1 燕窩ペプチドの成分
【表5】
燕窩ペプチドの基本成分を表4に示した。本研究のプロセスで試作された燕窩ペプチドは、総アミノ酸含有量が69.10%で、シアル酸含有量が6.14%で、水分含有量が12.01%である。
【0104】
【表6】
備考:非極性アミノ酸は、Ala、Val、Met、Phe、Ile、Leu、Pro、Tryであり、(*は、無荷電を表す)極性アミノ酸は、Ser、Thr、Tyr、Cys、Glyであり、酸性アミノ酸は、Asp、Gluであり、塩基性アミノ酸は、His、Arg、Lysであり、芳香族アミノ酸は、Tyr、Phe、Tryである。
【0105】
表5は、燕窩ペプチド中の18種のアミノ酸の組成及び含有量を示した。まず、燕窩ペプチド中のアミノ酸含有量は、66.75g/100gであり、セリンは、燕窩ペプチド中
の最も豊富なアミノ酸であり、総アミノ酸(total amino acids、TAA)の9.68%を占め、次は、グルタミン酸(9.30%)、スレオニン(9.17%)、アルギニン(8.12%)である。表5から分かるように、燕窩ペプチド中のEAA/TAAは、0.39であり、EAA/NEAAは、0.80であり、FAO/WHO基準よりもはるかに優れている。したがって、燕窩ペプチドは、単純に必須アミノ酸を補う観点から見ても、良質な必須アミノ酸由来であると考えられる。
【0106】
2.2 燕窩ペプチドの分子量
【表7】
本実施例で得られた燕窩ペプチドのGPC保持スペクトルを図5に示し、対応する相対分子質量分布を表7に示した。本実施例において使用した生産プロセスによって得られた燕窩ペプチド全体の数平均分子量は、350Daである。それをさらに細分化すると、燕窩ペプチドは、4つの成分に細分化されてもよく、F1の数平均分子量は、2919Daであり、6.08%を占め、F2の数平均分子量は、1589Daであり、11.36%を占め、F3の数平均分子量は、715Daであり、34.69%を占め、F4の数平均分子量は、210Daであり、47.87%を占める。タンパク質の酵素加水分解産物は、その分子量によりオリゴペプチド(<1000Da)、メソペプチド(1000~5000Da)、マクロペプチド(5000~10000Da)、及びタンパク質(>10000Da)(10.3390/gels8010024)に分類される。したがって、結果は、本実施例において使用した生産プロセスによって得られた燕窩ペプチドが主にオリゴペプチドであることを示した。
【0107】
2.3 燕窩ペプチドの化学抗酸化能
検出結果を図6に示し、図Aは、異なる濃度の燕窩ペプチドのDPPHラジカル消去率であり、図Bは、異なる濃度の燕窩ペプチドのABTSラジカル消去率であり、図Cは、異なる濃度の燕窩ペプチドのヒドロキシラジカル消去率であり、図Dは、異なる濃度の燕窩ペプチドの総抗酸化能値である。
【0108】
DPPH-、ABTS及び-OHに対する燕窩ペプチドの消去能を、それぞれ、図6のA、B及びCに示した。DPPH-、ABTS及び-OHに対する燕窩ペプチドの消去能は、50~2500μg/mLの濃度範囲において、濃度の増加に伴って高くなった。したがって、この結果は、燕窩ペプチドがDPPH-、ABTS及び-OHを消去する能力を有することを示した。
【0109】
燕窩ペプチドの抗酸化能をより直感的に表現するために、Trolox(水溶性のα-トコフェロール類似体、既知の抗酸化剤である)をターゲットとして、さらに燕窩ペプチドの総抗酸化能に対して定量的特性評価を行った。総抗酸化能は、様々なラジカルに対する異なる活性成分の消去作用の総和である。結果を図6のDに示し、結果の単位は、mmo
l Trolox当量/Lである。他の3つのラジカル消去能の傾向と一致するため、この結果から、燕窩ペプチドが抗酸化能を有し、かつ燕窩ペプチドの総抗酸化能が50~2500μg/mLの間で濃度の増加に伴って高くなることが実証された。燕窩ペプチドの濃度が2500μg/mLの場合、その総抗酸化能は、26.41mmol/L Troloxに相当する。
【0110】
2.4 細胞内効果
2.4.1 HaCat細胞、B16細胞及びMRC-5細胞に対する燕窩ペプチドの毒性
検出結果を図7に示し、図Aは、異なる燕窩ペプチド濃度でのHaCat細胞の生存率であり、図Bは、異なる燕窩ペプチド濃度でのB16細胞の生存率であり、図Cは、異なる燕窩ペプチド濃度でのMRC-5細胞の生存率であり、図Dは、H損傷のHaCat細胞の生存率に対する燕窩ペプチドの影響であり、図Eは、HaCat細胞のヒアルロン酸含有量に対する燕窩ペプチドの影響であり、図Fは、B16細胞内のメラニン産生に対する燕窩ペプチドの抑制率である。
【0111】
細胞実験において、細胞の生存率は、実験結果に影響を与えるため、予め毒性実験により細胞実験中の各物質の安全な添加濃度を決定する必要がある。実験により決定された燕窩ペプチドの各細胞内の安全濃度の結果を図7のA、B、Cに示した。50~1000μg/mLの濃度範囲において、各細胞の生存率は、いずれも90%を超えた。このような結果は、50~1000μg/mLの濃度範囲において、燕窩ペプチドが各細胞に対していずれも細胞毒性がなく、細胞実験を行う安全な濃度であることを示した。
【0112】
2.4.2 Hにより誘導されるHaCat細胞損傷に対する燕窩ペプチドの保護作用
により誘導される細胞酸化損傷実験は、介入物の細胞内抗酸化能を評価するために、広く使用されている細胞実験プロトコールである。燕窩ペプチドの保護下でHによって誘導されるHaCat細胞の生存率を図7のDに示した。結果は、燕窩ペプチドの保護下でのHaCat細胞の生存率が高いほど、燕窩ペプチドのHaCat細胞内の抗酸化活性がより高いことを示した。したがって、結果は、燕窩ペプチドがHaCat細胞内での抗酸化能を有し、50~1000μg/mLの濃度範囲において、燕窩ペプチドの細胞内抗酸化能が濃度の増加に伴って高くなり、250μg/mL以上の濃度において、顕著な細胞内抗酸化活性を有することを示した(p<0.05)。
【0113】
2.4.3 HaCat細胞内のヒアルロン酸含有量に対する燕窩ペプチドの影響
ヒアルロン酸は、天然保湿因子であり、皮膚の保湿に関与し、細胞外マトリックスの重要な組成成分である。ヒト細胞内のヒアルロン酸含有量は、加齢に伴って減少する。ヒト細胞は、細胞の湿度を保証するためにヒアルロン酸を積極的に合成し、重要な例として、HaCat細胞がヒアルロニダーゼの触媒下で細胞膜の内表面にヒアルロン酸を生成する。したがって、細胞内のヒアルロン酸含有量の測定は、細胞の保水能力をある程度反映して、関与する細胞保湿能力を評価することができる。
【0114】
燕窩ペプチドの影響下でのHaCat細胞内のヒアルロン酸含有量を図7のEに示した。結果は、100μg/mL以下の燕窩ペプチドが、HaCat細胞内のヒアルロン酸含有量(p>0.05)を顕著に増加させることができず、250μg/mL以上の燕窩ペプチドが、HaCat細胞内のヒアルロン酸含有量(p<0.05)を顕著に増加させることができることを示した。また、燕窩ペプチドの濃度が高いほど、HaCat細胞内のヒアルロン酸の含有量が高い。したがって、結果は、燕窩ペプチドが細胞保湿能を有することを示し、燕窩ペプチドが保湿機能を有する化粧品に用いられる可能性があることをさらに証明した。
【0115】
2.4.4 B16細胞メラニン産生に対する燕窩ペプチドの抑制作用
B16細胞メラニン産生抑制試験は、燕窩ペプチドの美白効果に最も直接的な証拠を提供することができ、B16細胞メラニン産生に対する燕窩ペプチドの抑制率を、図7のFに示した。結果は、燕窩ペプチドがB16細胞メラニン産生に対する抑制能力を有し、50~1000μg/mLの濃度範囲において、燕窩ペプチドの細胞内でのメラニン産生抑制能力が濃度の増加に伴って高くなり、50μg/mL以上の濃度において、顕著な細胞内でのメラニン抑制活性を有することを示した(p<0.05)。
【0116】
2.4.5 MRC-5細胞傷跡に対する燕窩ペプチドの修復作用
結果を図8に示した。本研究において、MRC-5細胞傷跡試験により、燕窩ペプチドの細胞修復、増殖促進能力を評価した結果を図8に示した。明らかに、燕窩ペプチドの介入なしに、MRC-5細胞は、24時間培養後でも明らかな傷跡が残った。逆に、燕窩ペプチドの介入下で、MRC-5細胞は、24時間培養後に傷跡面積が小さくなった。特に、250μg/mL以上の濃度の燕窩ペプチドの介入下で、MRC-5細胞は、24時間培養後、明らかな傷跡が残らなかった。したがって、結果は、燕窩ペプチドがMRC-5細胞内での修復、増殖促進能力を有するとともに、燕窩ペプチドの細胞内での修復、増殖促進能力が濃度の増加に伴って高くなることを示した。細胞修復、増殖促進能力は、介入物に応用面での想像力を付与することができ、例えば、皮膚創傷治癒、組織修復を促進する医薬品、化粧品などの機能性製品を開発することができる。したがって、傷跡試験の結果に基づいて、燕窩ペプチドは、医薬品、化粧品などの分野への応用の可能性があるとさらに考えられる。
【0117】
3 結論
要するに、本実施例は、成熟した燕窩ペプチドの生産プロセスを提供し、当該プロセスで製造された燕窩ペプチドに対して体系的な評価を行った。基本的な性質について、燕窩ペプチドは、総アミノ酸が66.75%で、シアル酸が6.14%であり、特に、燕窩ペプチドは、26.26g/100gの必須アミノ酸を含有し、その総アミノ酸含有量の39.34%を占め、良質な必須アミノ酸由来である。機能的性質について、燕窩ペプチドは、抗酸化(DPPHラジカル、ABTSラジカル、ヒドロキシラジカルの消去を含む)の能力を有する。最も重要となるのは、燕窩ペプチドが、細胞抗酸化、細胞保湿、細胞美白、細胞傷跡修復、増殖促進の機能を有することである。以上の結果から、該燕窩ペプチドは、食品、医薬品、化粧品などの分野への応用の可能性がある。本実施例のプロセスに基づく燕窩ペプチドの開発及び利用は、燕窩産業のさらなる高値化発展に有利である。
【0118】
上記実施形態及び実施例の各技術的特徴を任意に組み合わせることができ、説明を簡潔にするために、上記実施形態及び実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせについて説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、それらの全ては、本明細書の範囲と見なされるべきである。
【0119】
上記実施例は、本願のいくつかの実施形態のみを説明しており、本願の技術的手段を具体的かつ詳細に理解することを容易にするが、本願の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。なお、当業者にとって、本願の趣旨から逸脱することなく、いくつかの変形及び改良を加えることができ、これらはいずれも本願の保護範囲に属する。また、理解できるように、本願の上記説明内容を読んだ後、当業者は本願に対して様々な変更や修正を行うことができ、これらの等価形式も本願の保護範囲に含まれる。当業者が本願によって提供される技術的手段に基づいて、論理的な分析、推論、又は限定的な実験により取得した技術的手段は、いずれも本願に添付される特許請求の範囲内にあることをさらに理解されたい。よって、本願の特許の保護範囲は、添付する特許請求の範囲の内容に依るものであり、明細書及び図面は、特許請求の範囲の内容を説明するためのものであ
る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燕窩と水を混合して煮込み、煮込んだ燕窩を調製するステップと、
前記煮込んだ燕窩を均質化処理して、燕窩ペーストを調製するステップと、
アルカリプロテアーゼで前記燕窩ペーストを酵素分解し、酵素を失活させて、酵素分解物を調製するステップと、
前記酵素分解物を遠心分離し、上澄み液を回収して、燕窩ペプチドの粗試料溶液を調製するステップと、
前記燕窩ペプチドの粗試料溶液に対して限外ろ過を行い、限外ろ過液を回収して、燕窩ペプチドを調製するステップと、を含み、
遠心分離の条件は、速度が約10000rpm~15000rpmで、時間が約10min~30minであることを含み、
限外ろ過に用いられる膜の孔径は、約100nm~200nmであり、好ましくは、限外ろ過に用いられる膜の孔径は、約150nm~200nmである、ことを特徴とする燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項2】
100mLあたりの前記水に対応する前記燕窩の使用量は、約10g~50gであり、好ましくは、100mLあたりの前記水に対応する前記燕窩の使用量は、約25g~35gである、ことを特徴とする請求項1に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項3】
煮込み時間は、約0.5~2時間であり、好ましくは、煮込み時間は、約1.75~2時間である、ことを特徴とする請求項に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項4】
均質化処理の条件は、パワーが約10MPa~30MPaで、時間が約10min~30minであることを含み、好ましくは、均質化処理の条件は、パワーが約25MPa~30MPaで、時間が約20min~30minであることを含む、ことを特徴とする請求項に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項5】
酵素分解の条件は、温度が約50℃~60℃で、pH値が約8.0~10.0で、時間が約10min~30minで、1gあたりの燕窩に対応する前記アルカリプロテアーゼの使用量が約6U~9Uであることを含む、ことを特徴とする請求項に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項6】
酵素失活の方法は、加熱による酵素失活であり、加熱による酵素失活の条件は、酵素分解により得られた反応系を約80℃~100℃に加熱し、約10min~30min保持することを含む、ことを特徴とする請求項に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項7】
前記限外ろ過液中の溶媒を除去するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項8】
前記溶媒を除去するステップは、前記限外ろ過液を濃縮し、得られた濃縮物を噴霧乾燥させるステップを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項9】
前記溶媒を除去するステップにおいて
(1)前記濃縮物の体積が前記限外ろ過液の体積の約1/3~約1/8であ
及び/又は
(2)噴霧乾燥の条件は、吸気温度が約150℃~200℃で、排気温度>約70℃であ、好ましくは、噴霧乾燥の条件は、吸気温度が約165℃~175℃で、排気温度>約90℃であることを特徴とする請求項8に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項10】
前記燕窩ペプチドにおいて、総アミノ酸含有量が約66.75wt%~68.89wt%であり、シアル酸含有量が約6.14wt%~6.64wt%であり、水分含有量が約11.01wt%~12.01wt%である、ことを特徴とする請求項に記載の燕窩ペプチドの製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法により製造される、ことを特徴とする燕窩ペプチド。
【請求項12】
請求項11に記載の燕窩ペプチドの、医薬品又は保湿、美白、修復及び/又は抗酸化効果を有する食品又はスキンケア製品の製造における使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
1.4 燕窩ペプチドの化学抗酸化能の評価
1.4.1 DPPHラジカル消去能の評価
DPPHラジカル溶液調製:DPPHを無水エタノールで0.04mg/mLのDPPH溶液に調製した。試料調製:燕窩ペプチド試料を、超純水で異なる濃度の燕窩ペプチド溶液(50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、1000μg/mL、2500μg/mL)に調製した。測定対象溶液調製:A0)試験管に2mLの無水エタノール及び2mLのDPPHラジカル溶液を添加し、A1)試験管に2mLの燕窩ペプチドの試料溶液及び2mLのDPPHラジカル溶液を添加し、A2)試験管に2mLの燕窩ペプチドの試料溶液及び2mLの無水エタノールを添加した。上記測定対象溶液を均一に混合し、室温で30min放置した。最後に、混合溶液を5000r/minで10min遠心分離した。遠心分離後の上澄み液の517nmでの吸光度値を測定して、試料のDPPHラジカルに対する消去率を算出した。試料のDPPHラジカルに対
する消去率は、下記式により算出した。
【数1】
式中、A0は、2mLの無水エタノール+2mLのDPPHラジカル溶液の吸光度値であり、
A1は、2mLの燕窩ペプチドの試料溶液+2mLのDPPHラジカル溶液の吸光度値であり、
A2は、2mLの燕窩ペプチドの試料溶液+2mLの無水エタノールの吸光度値である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
1.4.2 ABTSラジカル消去能の評価
ABTSラジカル溶液調製:7mmol/LのABTS水溶液と2.45mmol/Lの過硫酸カリウムを1:1(v/v)で混合し、室温遮光下で12-16時間反応させた。その後、10mmol/LのPBSで希釈し、734nmでの吸光度値を0.70±0.02にした。試料調製:燕窩ペプチド試料を、超純水で異なる濃度の燕窩ペプチド溶液(50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、1000μg/mL、2500μg/mL)に調製した。測定対象溶液調製:A0)試験管に0.4mLの超純水及び4mLのABTSラジカル溶液を添加し、A1)試験管に0.4mLの燕窩ペプチドの試料溶液及び4mLのABTSラジカル溶液を添加し、A2)試験管に0.4mLの燕窩ペプチドの試料溶液及び4mLの超純水を添加した。上記溶液を均一に混合し、遮光下で6min反応させた後、734nmで吸光度値を測定して、試料のABTSラジカルに対する消去率を算出した。試料のABTSラジカルに対する消去率は、下記式により算出した。
【数2】
式中、A0は、0.4mLの超純水+4mLのABTSラジカル溶液の吸光度値であり、A1は、0.4mLの燕窩ペプチドの試料溶液+4mLのABTSラジカル溶液の吸光度値であり、
A2は、0.4mLの燕窩ペプチドの試料溶液+4mLの超純水の吸光度値である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
1.4.3 ヒドロキシラジカル消去能の評価
試料調製:燕窩ペプチド試料を、超純水で異なる濃度の燕窩ペプチド溶液(50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、1000μg/mL、2500μg/mL)に調製した。測定対象溶液調製:A0)試験管に1mLの硫酸第一鉄、1mLのサリチル酸、11mLの超純水及び1mLの過酸化水素水溶液を添加し、A1)試験管に1mLの燕窩ペプチドの試料溶液、1mLの硫酸第一鉄、1mLのサリチル酸、10mLの超純水及び1mLの過酸化水素水溶液を添加し、A2)試験管に1mLの燕
窩ペプチドの試料溶液、1mLの硫酸第一鉄、1mLのサリチル酸及び11mLの超純水を添加した。上記溶液を均一に混合し、37℃で60min水浴した後、510nmで吸光度値を測定して、試料のヒドロキシラジカルに対する消去率を算出した。試料のヒドロキシラジカルに対する消去率は、下記式により算出した。OH
【数3】
式中、
A0は、1mLの硫酸第一鉄+1mLのサリチル酸+11mLの超純水+1mLの過酸化水素水溶液の吸光度値であり、
A1は、1mLの燕窩ペプチドの試料溶液+1mLの硫酸第一鉄+1mLのサリチル酸+10mLの超純水+1mLの過酸化水素水溶液の吸光度値であり、
A2は、1mLの燕窩ペプチドの試料溶液+1mLの硫酸第一鉄+1mLのサリチル酸+11mLの超純水の吸光度値である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
1.5 燕窩ペプチドの細胞内効果の評価
1.5.1 燕窩ペプチドのHaCat細胞、B16細胞及びMRC-5細胞に対する毒性の評価
燕窩ペプチドのHaCat細胞、B16細胞及びMRC-5細胞に対する毒性は、CCK-8によって測定され、それにより、燕窩ペプチドの細胞内の安全濃度範囲を決定した。具体的には、対数期のHaCat細胞、B16細胞及びMRC-5細胞を5×10個/mLで懸濁し、それぞれ96ウェルプレートに接種し、各ウェルに100μL接種し、37℃、5%COのインキュベーター(CCL-170B-8、シンガポールESCO)に入れて24時間培養し、細胞を完全に接着させた。培地を除去し、PBS緩衝液で2回洗浄し、MEMで調製した異なる濃度の燕窩ペプチドの試料溶液(50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、1000μg/mL)を添加し、37℃、5%COのインキュベーターに入れて24時間インキュベートした。インキュベート終了後、各ウェルに10μLのCCK-8を添加し、37℃で1時間インキュベートした。最後に、450nmで吸光度値を測定して、細胞の生存率を算出した。細胞の生存率は、下記式により算出した。
【数4】
試料群は、燕窩ペプチド試料+細胞であり、
対照群は、MEM培地+細胞であり、
ブランク群は、MEM培地である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0103
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0103】
2 結果と検討
2.1 燕窩ペプチドの成分
【表5】
燕窩ペプチドの基本成分を表に示した。本研究のプロセスで試作された燕窩ペプチドは、総アミノ酸含有量が66.75%で、シアル酸含有量が6.14%で、水分含有量が12.01%である。
【国際調査報告】