(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-06
(54)【発明の名称】充填シリコーンフォーム層、組成物及びそれらの製造方法、並びに充填シリコーンフォーム層を含む物品
(51)【国際特許分類】
C08J 9/32 20060101AFI20241129BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20241129BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20241129BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241129BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20241129BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241129BHJP
C08K 7/22 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C08J9/32 CFH
C08L83/07
C08L83/05
C08L101/00
C08L83/04
C08K3/013
C08K7/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525663
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 US2022047532
(87)【国際公開番号】W WO2023076140
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521138305
【氏名又は名称】ロジャーズ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・ヴオン
(72)【発明者】
【氏名】マックス・クリスティ
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・マズィク
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA91
4F074AA95
4F074AC26
4F074AC32
4F074AC36
4F074AF03
4F074AG01
4F074BB23
4F074CB62
4F074CB73
4F074CB84
4F074DA08
4F074DA33
4F074DA47
4J002AA003
4J002AE034
4J002CP034
4J002CP04X
4J002CP14W
4J002DE236
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DL006
4J002DM006
4J002FA103
4J002FD014
4J002FD016
4J002GQ00
(57)【要約】
非常に薄い充填シリコーンフォーム層が、アルケニル置換ポリオルガノシロキサン、ヒドリド置換ポリオルガノシロキサン、及び硬化触媒を含む硬化性ポリシロキサン組成物と、フォームの厚さを下回る最大寸法を有する複数の発泡ポリマーミクロスフェアと、充填剤組成物とを含む硬化性充填組成物から形成され、充填剤組成物の各成分は、フォームの厚さを下回る最大寸法を有し、充填剤組成物は、微粒子セラミック充填剤、微粒子炭酸カルシウム充填剤、若しくは板状形態を有する微粒子アルミノシリケートクレイ充填剤、若しくは中空管状形態を有する微粒子アルミノシリケートクレイ充填剤、微粒子ポリマーシルセスキオキサン充填剤、若しくは微粒子メチル-フェニルMQ充填剤、若しくは複数のガラスミクロスフェア、若しくは微粒子パラフィンワックス、又はそれらの組合せを含み、硬化性充填組成物は、400,000センチストーク未満、又は100,000~350,000センチストークの粘度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~300マイクロメートルの厚さを有する充填シリコーンフォーム層の製造のための硬化性充填組成物であって、
アルケニル置換ポリオルガノシロキサン、ヒドリド置換ポリオルガノシロキサン、及び硬化触媒を含む硬化性ポリシロキサン組成物と、
フォームの厚さを下回る最大寸法を有する複数の発泡ポリマーミクロスフェアと、
充填剤組成物と
を含み、
充填剤組成物の各成分が、フォームの厚さを下回る最大寸法を有し、
充填剤組成物が、
微粒子セラミック充填剤、若しくは
微粒子炭酸カルシウム充填剤、若しくは
板状形態を有する微粒子アルミノシリケートクレイ充填剤、若しくは
中空管状形態を有する微粒子アルミノシリケートクレイ充填剤、若しくは
微粒子ポリマーシルセスキオキサン充填剤、若しくは
微粒子メチル-フェニルMQ充填剤、若しくは
複数のガラスミクロスフェア、若しくは
微粒子パラフィンワックス、又は
それらの組合せ
を含み、
硬化性充填組成物が、400,000センチストーク未満、又は100,000~350,000センチストークの粘度を有する、硬化性充填組成物。
【請求項2】
硬化性ポリシロキサン組成物が、少なくとも2個のアルケニル基を有し且つその主鎖中にフェニル基を更に含む共硬化性ポリオルガノシロキサン、好ましくはその主鎖上にフェニル基を更に含むアルケニルを末端基とするポリオルガノシロキサンを更に含む、請求項1に記載の硬化性充填組成物。
【請求項3】
発泡ポリマーミクロスフェアがドライである、請求項1又は2に記載の硬化性充填組成物。
【請求項4】
発泡ポリマーミクロスフェア、充填剤、又は両方が、表面前処理を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の硬化性充填組成物。
【請求項5】
充填剤組成物が、
中空チューブナノ構造を有するアルミノシリケートクレイ、又は
炭酸カルシウム及び小板状構造を有するアルミノシリケートクレイ
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の硬化性充填組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の硬化性充填組成物の硬化生成物を含む硬化性の充填シリコーンフォーム層であって、20~300マイクロメートル、又は50~250マイクロメートル、又は60~200マイクロメートルの厚さを有する、充填シリコーンフォーム層。
【請求項7】
吸収されたシリコーン油、吸収された水、吸収された非反応性溶媒、又はそれらの組合せを更に含む、請求項6に記載の充填シリコーンフォーム層。
【請求項8】
25%の撓みで、ASTM D3574-17に従って決定して、1平方インチ当たり0~25ポンド(0~172キロパスカル)、好ましくは1平方インチ当たり0~15ポンド(0~103キロパスカル)の圧縮力撓み、及び
ASTM D 3574-95 Test Dに従って70℃で決定して、0~5%の圧縮永久歪
を有する、請求項6又は7に記載の充填シリコーンフォーム層。
【請求項9】
試料を50℃で24時間加熱し、次いで試料を室温で水に30秒間浸漬することによる吸水率が2質量%未満、及び
ガラス転移温度が-115℃未満
である、請求項6から8のいずれか一項に記載の充填シリコーンフォーム層。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一項に記載の充填シリコーンフォーム層を含む電子物品。
【請求項11】
電子デバイスのスクリーンを含み、好ましくはスクリーンがフレキシブルである、請求項10に記載の電子物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月1日出願の米国特許仮出願第63/274,094号に基づく優先権及び利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、充填シリコーンフォーム層の製造のための組成物、組成物から作製された硬化(cured)充填シリコーンフォーム層及びその製造方法、並びに充填シリコーンフォーム層を含む物品に関する。
【背景技術】
【0003】
スマートデバイス、特に有機発光ダイオード(OLED)及びフレキシブルOLEDスクリーン構成を有するものを含めて、携帯用電子デバイスにおいては、外からの物理的衝撃又は熱的極値による衝撃を低減、吸収及び防止する必要が拡張している。携帯用電子機器の薄型化に対する需要が高く、その結果としてより薄い緩衝材による解決策に対する望みも実現されなければならない。電子デバイスの外部設計に伝えられた衝撃は、スクリーン自体及び/又はその内部コンポーネントへの損傷を生じる可能性がある。デバイスの外部環境も起因する熱的効果又は長期使用は、現行市場緩衝材製品のガラス転移温度が高く、性能の低下を生じるために、それらの能力に影響する可能性がある。衝撃又は応力が、スクリーンの巻き取り可能、折り畳み可能、又は柔軟な機能によるスクリーンの曲げの際に圧点が導入されるデバイスの使用の形態でも出現するおそれがあり、ディスプレイの品質を維持するために軽減されなければならない。スクリーンと衝撃力とのランダムで瞬間的な接触は、亀裂、凹み、又は材料破壊を引き起こすおそれがある。この衝撃及び熱の軽減には、典型的により大型の用途には適用されない製造及び製剤化の限界にあるマイクロメートルの規模の解決策の使用が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
充填シリコーンフォーム層の製造のための組成物は、アルケニル置換ポリオルガノシロキサン、ヒドリド置換ポリオルガノシロキサン、及び硬化触媒を含む硬化性ポリシロキサン組成物と、フォームの厚さを下回る最大寸法を有する複数の発泡ポリマーミクロスフェアと、充填剤組成物とを含み、充填剤組成物の各成分は、フォームの厚さを下回る最大寸法を有し、充填剤組成物は、微粒子セラミック充填剤、微粒子炭酸カルシウム充填剤、若しくは板状形態を有する微粒子アルミノシリケートクレイ充填剤、若しくは中空管状形態を有する微粒子アルミノシリケートクレイ充填剤、微粒子ポリマーシルセスキオキサン充填剤、若しくは微粒子メチル-フェニルMQ充填剤、若しくは複数のガラスミクロスフェア、若しくは微粒子パラフィンワックス、又はそれらの組合せを含み、硬化性充填組成物は、400,000センチストーク未満、又は100,000~350,000センチストークの粘度を有する。
【0005】
充填シリコーンフォーム層は、硬化済み硬化性組成物を含み、20~300マイクロメートルの厚さを有する。
【0006】
充填シリコーンフォーム層を含む物品、特に電子デバイス用のスクリーンが開示される。
【0007】
上記及び他の特徴は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲によって例示される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、衝撃と、低圧縮力撓み、低圧縮永久歪、低吸水率、低ガラス転移温度及び表面平滑性を含む他の特性との優れた組合せを有する、非常に薄い充填シリコーンフォーム層を開発した。特性のこの組合せは、シリコーンマトリックス、発泡ポリマーミクロスフェア、及び特定の充填剤組成物を含むフォーム層によって達成される。シリコーンマトリックスは、少なくとも低圧縮力撓み、低圧縮永久歪、低吸水率、低ガラス転移温度、及び表面平滑性をもたらす。発泡ポリマーミクロスフェア及び特定の充填剤組成物は、低圧縮力撓み及び低吸水率に更に寄与し、耐衝撃性をもたらすのに大いに効果的である破砕帯も提供する。特徴のこの組合せにより、電子デバイス、特に非常に薄型の電子デバイスでの使用に特に適した充填シリコーンフォーム層が作製される。
【0009】
特に、発泡ポリマーミクロスフェア及び充填剤組成物は、硬化性ポリシロキサン組成物内に分散され、ヒドロシリル化硬化組成物を使用して、固体ではあるが多孔性のシリコーンシートに形成される。マトリックス(ネットワーク形成ポリマー)としてのシリコーンの使用は、さまざまな熱的条件下で一定である柔らかさや物理的特徴等の現行市場のニーズに応じる多くの利点をもたらす。例えば、ポリウレタンフォーム又はハイブリッドポリマー系では達成不可能なはるかに高いレベルの充填剤添加も可能にする。ある態様において、シリコーンは、シロキサン鎖に懸垂(ペンダント結合)している非反応性基、例えばフェニル基を有することができる。シリコーンフォーム層中の発泡ポリマーミクロスフェア及び充填剤は、シリコーン鎖との最適な相互作用を促進することができる濃度及び組合せで存在し、それによって、破砕帯が衝撃をできる限り吸収できるようになる。充填剤の中には、破砕の影響をより受けやすくするおそれがある形状及びモジュラスを有するものもありうる。
【0010】
シリコーンフォーム層の製造のための硬化性充填組成物は、発泡ポリマーミクロスフェア及び特定の充填剤組成物に加えて、硬化性アルケニル置換ポリシロキサン、共硬化性ヒドリド置換ポリシロキサン、及び硬化触媒を含む硬化性ポリシロキサン組成物を更に含む。硬化性ポリシロキサン組成物の成分は、発泡ポリマーミクロスフェア及び充填剤組成物の取り込み並びに非常に薄い層の形成を可能にする液体硬化性ポリシロキサン組成物を提供するように選択される。
【0011】
硬化性ポリシロキサン組成物の成分は、例えば電子デバイススクリーンコンポーネント間に挿入される材料に、目標となる圧縮-撓み特性を有するシリコーンフォーム層を提供するために、エラストマーとなるように更に選択される。硬化性ポリシロキサン組成物の成分は、その弾性的挙動を多くの圧縮撓みサイクル中ずっと、例えばスクリーンの寿命にわたって維持する硬化済みシリコーンマトリックスを提供するように更に選択される。これは、選択された好ましいエラストマー群の応力緩和及び圧縮永久歪によって反映される特性である。硬化済みシリコーンの低ガラス転移温度に起因するさまざまな熱的条件にわたって一貫した性能は、適用においても利点をもたらす。
【0012】
硬化性ポリシロキサン組成物
シリコーンフォーム層の有利な特性、特に応力緩和、低圧縮永久歪、及び高耐久性の組合せを得るには、シリコーン成分、特に以下に更に詳細に記載されているより高い分子量のアルケニル置換ポリオルガノシロキサン、より低い分子量のアルケニル置換ポリオルガノシロキサン、及びヒドリド置換ポリオルガノシロキサンの特定の組合せが使用される。任意選択の低粘度不揮発性ポリオルガノシロキサンコポリマーの使用により、硬化性ポリシロキサン組成物(ひいては硬化性充填組成物)の粘度並びに硬化済みシリコーン層の表面特性及びテクスチャーの更なる調整が可能になりうる。硬化性ポリシロキサン組成物中の各成分の相対量は、硬化済みシリコーンフォーム層における他の特性に影響しうる組成物の粘度、ひいては充填剤レベルの適合を可能にするように調整されうる。特に、高分子量及び低ビニル含有量の高粘性液体(例えば、80,000~150,000センチストーク(cSt))アルケニル置換ポリジメチルシロキサンは、全体の架橋密度を低減し、充填剤含有量のために高密度を有するにもかかわらず都合よくより軟質な材料をもたらす、硬化性ポリシロキサン組成物の大部分をもたらす。より低い分子量のアルケニル置換ポリ(メチルフェニル)シロキサンは、衝撃特性を更に改善するために存在する。特定の理論に拘泥されるものではないが、これらの2成分の反応によって生成されたネットワークは、所望の低吸水率、低圧縮永久歪、及び低ガラス転移温度をもたらすと思われる。
【0013】
アルケニル基によって置換されている好適なポリオルガノシロキサンは、一般に次式:
MaDbTcQd
[式中、下付き文字a、b、c、及びdは、下付き文字a及びbが共に0である場合、下付き文字cは2以上であるという制約の下で、0又は正の整数であり;Mは、式R3SiO1/2を有し;Dは、式R2SiO2/2を有し;Tは、式RSiO3/2を有し;Qは、式SiO4/2を有し、R基は、R基のうちの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個がアルケニルR基であるという制約の下で、それぞれ独立的に水素、末端置換C1~6アルケニル基、1~40個、又は1~6個の炭素原子をそれぞれ有する1価の置換及び非置換炭化水素基を表す]
によって表される。好適なアルケニルR基は、ビニル、アリル、1-ブテニル、1-ペンテニル、及び1-ヘキセニルによって例示され、ビニルが特に有用である。アルケニル基は、分子鎖末端において、分子鎖のペンダント位において、又は両方において結合されうる。ある態様において、アルケニル基は、末端基、例えば分子鎖末端において結合しているビニル基、すなわち、アルケニルを末端基とするポリオルガノシロキサンである。
【0014】
アルケニル置換ポリオルガノシロキサン中に他のケイ素結合有機基が存在する場合それらは、1~40個の炭素原子を有する1価の置換及び非置換炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシル等のアルキル基;フェニル、トリル、及びキシリル等のアリール基;ベンジルやフェネチル等のアラルキル基;並びに3-クロロプロピルや3,3,3-トリフルオロプロピル等のハロゲン化アルキル基によって例示される。メチル及びフェニルが、特に有用である。アルケニル置換ポリオルガノシロキサン鎖樹脂中に存在するフェニル基の濃度は、衝撃からのエネルギー吸収を増加させるように最適化される。
【0015】
アルケニル含有ポリオルガノシロキサンは、直鎖、部分分枝状直鎖、分枝鎖、若しくはネットワーク分子構造を有することができ、又はそのような構造の混合物とすることができる。アルケニル置換ポリオルガノシロキサンは、ビニルで末端封鎖されたポリジメチルシロキサン;ビニルで末端封鎖されたジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー;ビニルで末端封鎖されたジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー;ビニルで末端封鎖されたジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー;ビニルで末端封鎖されたジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー;ビニルジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー;ビニルで末端封鎖されたメチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー;ビニルで末端封鎖されたジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー;ジメチルビニルシロキシで末端封鎖されたメチルビニルポリシロキサン;ジメチルビニルシロキシで末端封鎖されたメチルビニルフェニルシロキサン;ジメチルビニルシロキシで末端封鎖されたジメチルビニルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー;ジメチルビニルシロキシで末端封鎖されたジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー;ジメチルビニルシロキシで末端封鎖されたジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー;又はそれらの組合せによって例示される。
【0016】
硬化性ポリシロキサン組成物としては、好ましくは、上記のアルケニル置換ポリオルガノシロキサンのより高い分子量を有するもの及びより低い分子量を有するものの少なくとも2つの組合せが挙げられる。各化合物の相対量は、その特定の分子量によって決まり、したがって大きく異なりうる。同様に、各化合物の分子量は、化合物の量及び硬化済みシリコーンの所望の特徴に応じて変わりうる。低分子量の方の成分によって、混合物の全体の粘度の低減が可能になり、流延、被覆、延展、及び担体への流延を含むさまざまなテクスチャリング方法が容易になる。或いは、低分子量の方の化合物は、シロキサン主鎖中にメチル基とフェニル基を両方含む、アルケニルを末端基とするポリジオルガノシロキサンとすることができる。ある態様において、高分子量の方のアルケニル置換ポリジオルガノシロキサンは、ビニルを末端基とするポリジメチルシロキサンであり、低分子量の方のアルケニル置換ポリジオルガノシロキサンは、ビニルを末端基とするジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、ビニルを末端基とするジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、ビニルを末端基とするジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、又はそれらの組合せである。
【0017】
2種(又はそれ以上)の硬化性アルケニル置換ポリオルガノシロキサンを使用して、硬化性シリコーン組成物を製剤化する場合、それぞれの相対量は、各成分のタイプ及び量、並びに硬化済みシリコーンフォーム層の所望の特徴によって決まる。一般に、硬化性ポリシロキサン組成物は、硬化性シリコーン組成物の総質量に対してそれぞれ、40~99質量%(wt%)、又は65~95質量%の第1の高分子量の方の硬化性シリコーン組成物、及び10~50質量%、又は15~35質量%の第2の低分子量の方のシリコーン組成物を含むことができる。
【0018】
1分子当たり少なくとも2個の珪素結合水素原子を有する好適なポリオルガノシロキサンは、一般に次式:
M'aD'bT'cQ'd
[式中、下付き文字a、b、c、及びdは、下付き文字a及びbが共に0である場合、下付き文字cは2以上であるという制約の下で0又は正の整数であり;M'は、式R3SiO1/2を有し;D'は、式R2SiO2/2を有し;T'は、式RSiO3/2を有し;Q'は、式SiO4/2を有し、R基は、R基のうちの少なくとも2個が水素であるという制約の下で、それぞれ独立的に水素、1~40個、又は1~6個の炭素原子をそれぞれ有する1価の置換及び非置換炭化水素基を表す]
によって表される。好ましくは、1分子当たり少なくとも2個の珪素結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンのR基のそれぞれは独立的に、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、アリール、フェニル、トリル、キシリル、アラルキル、ベンジル、フェネチル、ハロゲン化アルキル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又はそれらの組合せから選択される。メチル及びフェニルが好ましい。
【0019】
水素は、分子鎖末端において、分子鎖のペンダント位において、又は両方において珪素に結合されうる。ある態様において、水素は、末端位置において置換されている。別の態様において、1分子当たり少なくとも3~4個の水素が存在する。水素含有ポリオルガノシロキサン成分は、直鎖、部分分枝状の直鎖、分枝鎖、環式、若しくはネットワーク分子構造を有することができ、又は例示された分子構造を有する異なる2種以上のポリオルガノシロキサンの混合物とすることができる。
【0020】
水素含有ポリオルガノシロキサンは、トリメチルシロキシで末端封鎖されたメチル水素ポリシロキサン;トリメチルシロキシで末端封鎖されたジメチルシロキサン-メチル水素シロキサンコポリマー;トリメチルシロキシで末端封鎖されたメチル水素シロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー;トリメチルシロキシで末端封鎖されたジメチルシロキサン-メチル水素シロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー;ジメチル水素シロキシで末端封鎖されたジメチルポリシロキサン;ジメチル水素シロキシで末端封鎖されたメチル水素ポリシロキサン;ジメチル水素シロキシで末端封鎖されたジメチルシロキサン-メチル水素シロキサンコポリマー;ジメチル水素シロキシで末端封鎖されたジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー;及びジメチル水素シロキシで末端封鎖されたメチルフェニルポリシロキサンによって例示される。
【0021】
ヒドリド含有ポリオルガノシロキサン成分は、組成物を硬化させるのに十分な量で、好ましくは、アルケニル含有ポリオルガノシロキサン成分中のアルケニル基1個当たり1.0~10個の珪素結合水素原子を提供する量で使用される。アルケニル基1個当たりの珪素結合水素原子の数が10を超える場合、硬化の際に気泡を生成する可能性があり、得られた硬化済みシリコーンの耐熱性がだんだんと低下するおそれがある。
【0022】
硬化性充填組成物を製剤化するのに好都合な1つの方法は、アルケニル含有成分及びヒドリド含有成分をそれぞれ含む異なる2つの二液型硬化性シリコーン組成物を組み合わせる方法である。好適な硬化性ポリシロキサン組成物は、例えば400,000センチストーク未満(cSt)、例えば100,000~250,000cStの粘度を有することができる。そのような二液型製剤は、個別に製剤化することができ、又は市販されている。
【0023】
硬化性ポリシロキサン組成物は、反応性ポリオルガノシロキサン、すなわち、ポリオルガノシロキサンに共有結合されうるアルケニル基又は反応性Si-H基と異なる反応性基を有するポリオルガノシロキサンを更に任意選択で含むことができる。特定の理論に拘泥されるものではないが、反応性ポリオルガノシロキサンは、硬化済みシリコーン層の特に裏打ち層への結合を増強すると仮定される。この態様において、反応性オルガノシロキサンは、次式:
M"aD"bT"cQ"d
[式中、下付き文字a、b、c、及びdは、下付き文字a及びbが共に0である場合、下付き文字cは2以上であるという制約の下で0又は正の整数であり;M"は、式R3SiO1/2を有し;D"は、式R2SiO2/2を有し;T"は、式RSiO3/2を有し;Q"は、式SiO4/2を有し、R基は、シリコーン中に存在するいかなるアルケニル基及び/又は反応性ヒドリド基に加えて、R基のうちの1個又は複数が反応性有機基であるという制約の下で、それぞれ独立的に水素、アルケニル基、1~40個、又は1~10個の炭素原子をそれぞれ有する1価の置換及び非置換炭化水素基を表す]
によって表すことができる。好適な反応性基としては、例えば、アクリレート、メタクリレート、及びエポキシ基が挙げられる。
【0024】
そのような反応性基を含むポリオルガノシロキサンは、反応性基を含むポリオルガノシロキサンの合成の際に反応性基を含むトリアルコキシシランモノマーの反応によって誘導されうる。或いは、反応性基は、別個の成分として(例えば、トリアルコキシシランモノマーの形で)、以上に記載された二液型系と混和して提供されうる。反応性基を含むジアルコキシアルキルシラン及びアルコキシジアルキルシランモノマーが、代替として使用されうる。上記のモノマーのアルコキシ及び/又はアルキル基は、1~10個、又は1~6個、又は1~3個の炭素原子を有することができる。好適な1種のアルコキシシランモノマーは、式(1):
【0025】
【0026】
[式中、R1、R2、及びR3は独立的に、水素又はC1~10炭化水素基であり;R4及びR5は独立的に、C1~10アルキレン又はC1~10アルキリデン基であり;R6、R7、及びR8は独立的に、C1~10炭化水素基である]
によって表されるエポキシシランである。炭化水素基は、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を含むことができる。これらの炭化水素基は、アルキルとすることができる。アルキレン又はアルキリデン基R4及びR5は、好ましくは1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子、又は1個若しくは2個の炭素原子を含む。アルキレン及びアルキリデン基は、メチレン、エチレン、プロピレン等とすることができる。
【0027】
アルコキシシランモノマーは、式(2):
【0028】
【0029】
[式中、R9、R10、及びR11は独立的に、水素又はC1~10炭化水素基であり;R12は、C1~10アルキレン又はC2~10アルキリデン基であり;R13、R14及びR15は独立的に、C1~10炭化水素基である]
によって表される(メタ)アクリル酸系のシランとすることもできる。炭化水素基は、好ましくは1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を含む。これらの炭化水素基は、好ましくはアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル等)である。アルキレン及びアルキリデン基は、好ましくは1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を含む。アルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
【0030】
特定の態様において、反応性基は、グリシドキシプロピルトリ(C1~3アルコキシ)シラン、グリシドキシプロピルジ(C1~3アルコキシ)(C1~3アルキル)シラン、2,3-エポキシシクロヘキシル-4-エチルトリ(C1~3アルコキシ)シラン、2,3-エポキシシクロヘキシル-4-エトキシエチルジ(C1~3アルコキシ)(C1~3アルキル)シラン、又はそれらの組合せから誘導されうる。反応性基は、ポリオルガノシロキサンの分子鎖末端において、分子鎖のペンダント位において、又は両方において結合されうる。別の特定の態様において、反応性基は、上記のモノマーの1種又は複数を硬化性ポリオルガノシロキサン組成物と組み合わせることによって提供される。
【0031】
反応性オルガノシロキサンは、珪素含有モノマー1モル当たりのモル基準で、反応性オルガノシロキサンのオルガノシロキサン中の珪素含有モノマー単位100mol%に対して0.1~50モル%(mol%)、又は0.5~45mol%、又は1~40mol%、又は2~40mol%の反応性基を含むことができる。
【0032】
硬化性ポリシロキサン組成物中の反応性オルガノシロキサンの量は、反応性基及びエラストマーの所望の特性に応じて大きく異なりうる。例えば、硬化性ポリシロキサン組成物は、硬化性ポリシロキサン組成物の総質量に対して0.05~50質量%、又は0.1~45質量%、又は0.5~40質量%、又は1~40質量%の反応性オルガノシロキサンを含むことができる。
【0033】
硬化性ポリシロキサン組成物は、硬化性ポリシロキサン組成物の粘度を調整し、硬化性充填組成物の寿命を延ばし、又は柔らかさ等特定の特性を硬化生成物にもたらすためにシリコーン流体を更に含むことができる。好適なポリオルガノシロキサン流体は、3,000cSt未満の粘度を有する。そのようなポリオルガノシロキサン流体は、組成物の粘度を低下させ、それによって、所望の場合、充填剤添加の増加、充填剤濡れの増強、及び充填剤分布の増強、並びに被覆及び流延特性の改善のうちの少なくとも1つが可能になる。シリコーン流体は、好ましくは硬化反応、すなわち付加反応を実質的には抑制しない。
【0034】
シリコーン流体は、非反応性であってよく、又は他のオルガノシロキサン成分と共硬化することができる。好適な非反応性シリコーン流体の沸点は、それがポリマーマトリックスに分散され、硬化の際又は後に蒸発せず、表面への移動もガス放出も行わないように十分高い。硬化シリコーン層の使用の際にガス放出が低く、表面にほとんど又は全く移動しないように更に選択される。好適な非反応性シリコーン流体は、260℃(500°F)以上の沸点を有し、分枝状でも、直鎖状でもよい。非反応性シリコーン流体の例としては、Dow Corning Corporation社のDC 200が挙げられる。
【0035】
シリコーン流体が共硬化性である場合、シリコーン流体は、共有結合によってポリマーマトリックスの一部分になることができ、それによってガス放出及び/又は表面移動が最小化される。シリコーン流体は、アルケニル含有ポリオルガノシロキサン、及び少なくとも2個の珪素結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンと共硬化性であってよく、ひいてはそれら自体、アルケニル基又は珪素結合水素基を含むことができる。そのような化合物は、アルケニル含有ポリオルガノシロキサン及び少なくとも2個の珪素結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンと関連させて以上に記載されたものと同じ構造を有することができるが、更に1,000cSt未満の粘度を有し、好ましくは付加硬化反応の硬化温度より高い、すなわち260℃(500°F)以上の沸点を有する。
【0036】
硬化性ポリシロキサン組成物は、一般に1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを含む部分の成分として、硬化触媒、具体的にはヒドロシリル化反応触媒を更に含む。効果的な触媒は、珪素結合水素のアルケニル多重結合への付加を促進して、硬化を加速する。そのような触媒としては、例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、又はそれらの組合せ等貴金属を挙げることができる。触媒としては、活性炭、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、ポリマー樹脂、又はそれらの組合せ等の支持材料も挙げることができる。シリコーン組成物を硬化するのに効果的な量の触媒が使用され、それは、反応性オルガノシロキサン成分の合わせた量に対して一般に0.1~1,000質量百万分率(ppmw)の金属(例えば、白金)である。
【0037】
白金及び白金含有化合物が好ましく、それらとしては、例えば白金黒、アルミナ担持白金粉末、シリカ担持白金粉末、炭素担持白金粉末、クロロ白金酸、クロロ白金酸のアルコール溶液、白金-オレフィン錯体、白金-アルケニルシロキサン錯体、及びメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、シリコーン等のポリマー樹脂中における触媒の分散体の微粒子化によって得られた触媒が挙げられる。異なる触媒の組合せも使用することができる。白金触媒による系が使用される場合、触媒の毒作用が生じることがあり、強度が低い、未硬化又は不十分に硬化されたシリコーン組成物の形成を引き起こすことがある。追加の白金を添加することができるが、大量の白金を添加して、硬化を改善する場合、可使時間又は稼動時間に悪影響を与えるおそれがある。メチルビニル環式化合物、例えばDow Corning社の1-2287硬化抑制剤を硬化遅延剤として使用することができる。そのような材料は、室温で白金を結合させて、硬化を防止し、したがって、稼動時間を改善するが、白金をより高い温度で放出して、必要とされた時間に硬化に影響する。白金及び硬化遅延剤のレベルを調整して、硬化時間及び稼動時間/可使時間を変更することができる。過剰な白金レベルが使用される場合、典型的にポリオルガノシロキサン混合物及び充填剤並びに他の添加剤の総質量の1質量%以下である。好ましくは、この範囲内で、追加の白金濃度(すなわち、必要とされた量を超える量)は、ポリオルガノシロキサン混合物の総質量に対して0.05質量%以上、又は0.15質量%以上である。この範囲内でも、追加の白金濃度は、使用された充填剤のタイプ及び量に応じて0.6質量%以下又は0.45質量%以下である。
【0038】
硬化遅延剤濃度(硬化遅延剤が使用される場合)は、全組成物の0.3質量%以下である。この範囲内で、硬化遅延剤濃度は、ポリオルガノシロキサン混合物の総質量に対して0.005質量%以上、又は0.025質量%以上である。この範囲内でも、硬化遅延剤濃度は、必要とされた稼動時間又は可使時間に応じて、硬化性ポリシロキサン組成物の総質量に対して0.2質量%以下、又は0.1質量%以下である。
【0039】
他の添加剤、例えば、紫外線(UV)安定剤、帯電防止剤、顔料、抗菌剤若しくは抗ウイルス剤等、又はそれらの組合せは、硬化性ポリシロキサン組成物のいずれかの部分中に存在することができる。添加剤が存在する場合、使用量は、硬化済みシリコーン組成物の所望の特性に添加剤の存在が悪影響を与えないように選択される。
【0040】
発泡ポリマーミクロスフェア及び充填剤組成物の添加、取り込み、及び濡れを可能にするためには、(発泡ポリマーミクロスフェア及び充填剤を除く)硬化性ポリシロキサン組成物の合わせた成分の粘度は、100,000cSt未満、又は85,000cSt未満、又は75,000cSt未満である。或いは、又は更に、(発泡ポリマーミクロスフェア及び充填剤を除く)硬化性ポリシロキサン組成物の合わせた成分は、ASTM C-603-98に従って測定して500グラム未満/分の純押出速度を有する。
【0041】
最後に、硬化性ポリシロキサン組成物の成分は、低ガラス転移温度(Tg)、例えば0℃未満、-50℃未満、又は-115℃未満のTgを有する硬化済みフォームを提供するように選択される。
【0042】
発泡ポリマーミクロスフェア
硬化性ポリシロキサン組成物に加えて、充填シリコーンフォーム層の製造のための硬化性充填組成物は、複数の発泡ポリマーミクロスフェアを更に含む。本明細書では「発泡ポリマーミクロスフェア」は、ガスを封じ込めるポリマーシェルを指し、完全な球状ではないシェルを含み、例えば、これらのシェルは、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって切り開き、見られるときに半半球形状であるように見えるものを有する。発泡ポリマーミクロスフェアは、ガスをポリマー状シェル内に封じ込めるために予め構築されたフォーム様セルとして働くことができる。
【0043】
封じ込められたガスとしては、例えば、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素、又はそれらの組合せを挙げることができる。ガスは、イソブタン、イソペンタン、又はそれらの組合せ等有機ガスとすることができる。ポリマーシェルがガスを収容し、ポリマー状シェルは、加圧下でガスを収容することができる。ポリマーシェルの例としては、ポリアクリロニトリル/メタクリロニトリルシェルやポリ(ビニリデンジクロリド)/ポリアクリロニトリルシェル等の熱可塑性ポリマーが挙げられる。シェルには、シリケート、カルシウム含有又はマグネシウム含有粒子等の無機粒子を組み入れることができ、ポリマーミクロスフェアの分離を容易にすることができる。
【0044】
本明細書で使用されるミクロスフェアは、発泡性ではなく発泡(すなわち、予備発泡)されていることを理解すべきである。発泡性ミクロスフェアは市販されており、加工の際に発泡されることが多い。しかし、製剤化又は硬化の際に現場で発泡する発泡性ミクロスフェアの使用によって、質感のある表面又は望ましくない表面欠陥が生じることが見出された。落球衝撃試験によって調べると、望ましくない質感を含んだ製剤は、エネルギー吸収が低下した。
【0045】
発泡ポリマーミクロスフェアは対照的に、硬化性ポリシロキサン組成物に組み込まれる前に発泡される。発泡ポリマーミクロスフェアの使用によって、マイクロメートルレベルで一貫した厚さを維持しながら、フォーム層への衝撃の効果を低減する機構が提供される。発泡ポリマーミクロスフェアは、予備発泡時に、20~200マイクロメートル(μm)の最終平均直径に対して例えば10~60%成長することができる。しかし、平滑面を有するシリコーンフォーム層を製造するためには、最良の総合結果は、発泡ポリマーミクロスフェアの最大直径がフォームの厚さを下回る場合に達成される。上記に鑑み、発泡ポリマーミクロスフェアは、フォームの所期厚さに応じて300μm未満、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は50マイクロメートル以下の最大直径を有する。この絶対粒径を満たす発泡ポリマーミクロスフェアは、10~200μm、又は20~150μm、又は10~100μmのD50を有することができる。ある態様において、発泡ポリマーミクロスフェアは、10~80μmのD50、例えば20~60μmのD50を有する。発泡ポリマーミクロスフェアは、最大直径を超えないことを条件として、中心粒径の多峰性分布を任意選択で示すことができる。
【0046】
発泡ポリマーミクロスフェアは、硬化性充填組成物への添加時にドライでも、ウェットでもよい。すなわち、水性溶液、有機溶液、又はそれらの組合せに懸濁されていても、懸濁されていなくてもよい。発泡ポリマーミクロスフェア(ウェット又はドライ)は、例えば、シラン、フルオロアルキル、8~30個の炭素原子を有する長鎖カルボン酸、シリカ、炭酸カルシウム、又はそれらの組合せを用いた表面前処理を任意選択で有することができる。長鎖カルボン酸は、10~20個の炭素原子を有することができ、分枝でも、非分枝でも、飽和でも、不飽和でもよい。例としては、ステアリン酸が挙げられる。前処置用のシランは、反応性有機官能性シラン、例えばアルケニル基、ヒドロキシ基、C1~12アルコキシ基、ハリド、メルカプト基、又はそれらの組合せを有するシランとすることができる。さまざまな表面前処理を用いた又は用いない発泡ポリマーミクロスフェアが、Nouryon社から販売名EXPANCELで市販されている。
【0047】
ドライ前処理ミクロスフェア、特にドライ前処理ミクロスフェアは、破砕帯として働くだけでなく、いかなる理論にも拘泥されることを望むものではないが、処理物は、マトリックス中に存在する他の充填剤に対して接着剤としてではなく潤滑剤としても働くことができると考えられる。また、いかなる理論にも拘泥されることを望むものではないが、シリコーンマトリックス中で放散されたエネルギーの一部は、破砕帯としても働きながら、互いに擦れあって、処理充填剤と表面との摩擦による運動エネルギーが熱エネルギーの形として排出(消費)されることに起因すると考えられる。
【0048】
硬化性充填組成物中の発泡ポリマーミクロスフェアの量は、シリコーン成分、発泡ポリマーミクロスフェアのタイプ、以下に記載される充填剤組成物の量及びタイプ、並びに所望の特性に応じて変わりうる。発泡ポリマーミクロスフェアの量は、体積分率計算に更に基づくことができ、体積分率計算は、最良の衝撃吸収を生じ、衝撃の運動エネルギーから最多のジュールを放散する量を示す。例えば、硬化性充填組成物は、それぞれ硬化性充填組成物の総質量に対して0.1~10質量部(pbw)、又は0.5~8pbw、又は1~5pbwの量で含めることができる。
【0049】
微粒子充填剤組成物
発泡ポリマーミクロスフェアに加えて、薄いシリコーンフォームの製造のための硬化性充填組成物は、微粒子充填剤組成物を含む。また、平滑面を有するシリコーンフォーム層を製造するために、使用された充填剤のそれぞれの最大寸法は、フォームの所期厚さに応じて200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は50マイクロメートル以下である。この絶対粒径を満たすことができる微粒子充填剤組成物の直径(本明細書に定義されるように、等価球径を意味することができる)は、100マイクロメートル以下、又は70マイクロメートル以下のD50を有することができる。好適な特定の充填剤組成物の直径は、それに応じて10~100μm、又は20~100μmのD50を有することができる。ある態様において、微粒子充填剤組成物の直径は、10~80μmのD50、例えば20~60μmのD50を有する。微粒子充填剤組成物は、最大直径を超えないことを条件として、中心粒径の多峰性分布を任意選択で示してもよい。多峰性分布は、異なる2種の微粒子充填剤、又は二峰性の単一の充填剤を使用した結果でありうる。
【0050】
充填剤組成物における使用に可能な充填剤は、微粒子であり、それらとしては、セラミック、クレイ、シリケート、複数のセラミック若しくはガラスミクロスフェア等の無機充填剤;又はポリマーシルセスキオキサン若しくはメチル-フェニルMQ樹脂等の有機充填剤;又はそれらの組合せが挙げられる。
【0051】
ある態様において、粒子は、任意の規則正しい又は不規則な形状、例えば、円盤、繊維、フレーク、小板、棒(内実又は中空)、球(内実又は中空)、又はウィスカーとすることができる。別の態様において、粒子は、破砕の影響をより受けやすくするおそれがある形状及びモジュラスを有し、改善された破砕特性をもたらす。そのような形状としては、例えば、小板及び中空棒が挙げられる。
【0052】
好適な有機充填剤は、微粒子パラフィンワックスである。当技術分野において公知のように、パラフィンワックスは、融点が48℃~66℃(120°F~150°F)の範囲である固体直鎖炭化水素の混合物を含む。パラフィンワックスは、軽質潤滑油ストックを脱ワックスすることによって石油から得ることができる。
【0053】
好適な無機充填剤としては、アルミナ、アルミナ3水和物、窒化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、ベリリア、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、コランダム、マグネシア、水酸化マグネシウム、ガラス、マイカ、ナノクレイ、石英、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、タルク、二酸化チタン(ルチルやアナターゼ等)、ウォラストナイト等が挙げられる。
【0054】
ある態様において、充填剤組成物は、ヒュームドシリカ等のシリカを含む。炭酸カルシウムを使用することができる。
【0055】
ある態様において、充填剤組成物は、カオリン等、板状の積層形態を有するクレイを含む。カオリンは、いくつかの供給業者から市販されているアルミノケイ酸塩水和物である。六角形板状物の使用によって、独自の幾何形状を系に導入して、潜在的な破砕帯の存在を増加させることができる。
【0056】
別の態様において、具体的には破砕帯として働くために、中空管状形態を有するクレイを使用することができる。中空チューブ幾何形状と組み合わせたクレイによって、この充填剤を優れたエネルギー吸収体にすることができる。というのは、中空チューブのモジュラスが低く、いくつかの衝撃試験条件下では破断するのがかなり容易であるからである。クレイは、中空管状ナノ構造を示すアルミノシリケートクレイであるハロイサイトとすることができる。ハロイサイトチューブは、0.5~3.0μm未満の範囲の長さ、50~70ナノメートルの範囲の外部直径及び15~30ナノメートルの範囲の内径(ルーメン)を有する。ハロイサイトは、1つの水分子層がアルミナとシリカの層間に存在しているカオリンクレイ(Al2Si2O5(OH)4×nH2O)と化学的に同じである。ハロイサイトは、商品名DRAGONITE(商標)でApplied Materials, Inc.社によって市販されている。
【0057】
別の態様において、充填剤組成物は、ガラス又はセラミックミクロスフェア、特に中空ガラスミクロスフェア、すなわち、ホウケイ酸ナトリウムガラス等のアルカリボロシリケートガラス等のガラスから作製された中空球状ガラス粒子を含む。中空ガラスミクロスフェアは、低比重、良好な耐熱性、断熱特性、圧力-抵抗性(例えば、破砕強度)及び耐衝撃性を有することができる。中空ガラスミクロスフェアのそれぞれは、本質的に球状の形及び本質的に球状の内部空隙を有することができる。中空ガラスミクロスフェアは、10~200μmの平均直径を有することができる。
【0058】
別の態様において、ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(通常は「POSS」と呼ばれる)が、充填剤組成物中に存在しうる。POSSは、不活性又は反応性の官能基を表面に有することができるシリカコアを含むナノサイズの無機材料である。シルセスキオキサンは、珪素原子を頂点に含み、酸素原子を相互接続する立方体又は立方体様構造を有することができる。珪素原子のそれぞれは、ペンダントR基に共有結合することができる。シルセスキオキサンは、R基がそれぞれ独立的に、水素、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、又はアルケニル基でありうるように、置換されていても、置換されていなくてもよく、R基は、1~12個の炭素原子及び1個又は複数のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、リン、珪素、又はハロゲンの少なくとも1個)を有することができる。R基はそれぞれ独立的に、アルコール、エポキシ基、エステル、アミン、ケトン、エーテル、ハリド、又はそれらの組合せの少なくとも1つ等の1個又は複数の反応性基を含むことができる。R基はそれぞれ独立的に、シラノール、アルコキシド、又はクロリドの少なくとも1つを含むことができる。1つの態様において、R基の1個又はすべては、水素、メチル、又はそれらの組合せである。シルセスキオキサンの例は、オクタ(ジメチルシロキシ)シルセスキオキサンである。
【0059】
上記の充填剤の1種又は複数は、ドライでも、ウェットでもよく、例えば、ステアリン酸、シリカ、炭酸カルシウム、又はそれらの組合せ等シラン、フルオロアルキル、10~30個の炭素原子を有する長鎖カルボン酸を用いた表面前処理を任意選択で有することができる。発泡ポリマーミクロスフェア、特にドライ前処理ミクロスフェアと同様に、そのような充填剤は、破砕帯として働くだけでなく、いかなる理論にも拘泥されることを望むものではないが、前処置は、マトリックス中に存在する他の充填剤に対して接着剤としてではなく潤滑剤としても働くことができると考えられる。また、いかなる理論にも拘泥されることを望むものではないが、シリコーンマトリックス中で放散されたエネルギーの一部は、破砕帯としても働きながら、互いに擦れあって、前処理充填剤と表面との摩擦により運動エネルギーを熱エネルギーの形として排出されることが原因であると思われる。別の有利な特徴においては、表面前処理の使用によって、硬化性充填組成物における充填剤の分散が改善され、発泡ミクロスフェア及び充填剤の添加を高めることが可能になりうる。特に、分散が完全に均一というわけではない場合、表面前処理は、3%体積分率を超える充填シリコーンフォーム層を含む製剤におけるエネルギー放散の予防措置として働くことができる。
【0060】
最後に、充填剤組成物は、微粒子メチルフェニルシリコーン樹脂、すなわち、メチルフェニルMQ樹脂を含むことができ、ここで、M"はR3SiOであり、QはSiO4単位であり、Rは、メチル及びフェニルの組合せである。予想外なことに、メチルフェニルMQ樹脂の存在によって、改善されたエネルギー吸収衝撃がもたらされることが見出された。したがって、MQ樹脂中に存在するフェニル基の濃度は、衝撃からのエネルギー吸収を押し上げるように最適化される。
【0061】
メチルフェニルMQ樹脂は、室温で固体であり、粉末又はフレークの形態とすることができる。メチルフェニルMQ樹脂は、取扱いを容易にするために、以上に記載されたアルケニルを末端基とするオルガノシロキサンと組み合わせて提供されうる。メチルフェニルMQ樹脂は、微粒子固体として硬化性充填組成物に提供されるが、アルケニルを末端基とするオルガノシロキサン、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物、又は硬化性充填組成物を含む成分は、粒子を少なくとも部分又は完全溶解するように加工されうる。例えば、アルケニルを末端基とするオルガノシロキサンを含む成分は、メチルフェニルMQ樹脂を含むさまざまな材料を80℃の温度で4時間せん断ブレンドし、樹脂フレークを容器中で溶融し、ポリマー中にブレンドし、又はベンゼン若しくはトルエン等の溶媒を使用して、溶解度を改善し、次いでブレンドした後に溶媒をストリッピングすることによって形成されうる。
【0062】
製造方法
硬化性充填組成物は、さまざまな成分をいずれか好適な順序で組み合わせることによって製造されうる。ある態様において、第1のパートとして、アルケニル置換ポリオルガノシロキサン、触媒、充填剤、及び任意の添加剤を含む成分を混合し、次いで第2のパートとして、ヒドリド含有ポリオルガノシロキサンと組み合わせる。
【0063】
硬化性充填組成物は、使用された組成物及び硬化方法に応じて、数分から1週間にわたる可使時間を有することができる。本明細書では用語「可使時間」は、硬化プロセスが(例えば、共硬化性成分を触媒の存在下で組み合わせることによって)開始される時間から、流動及び/又は使用可能性の望ましい特性がもはや製造プロセスに有用な範囲でないポイントまで硬化が進行して、好適な生成物をもたらす時間までの間の時間量を意味する。シリコーン組成物の可使時間によって影響される特性としては、例えば、押出性、流動、コートの品質、コートの均一性、被覆厚さ、及び欠陥数が挙げられる。可使時間は、典型的に室温で評価され、ある態様において、シリコーン組成物の共硬化性成分といずれか好適な触媒の最初の接触の時点から測定して、4時間以上、又は6時間以上、又は8時間以上、又は10時間以上、又は12時間以上でありうる。特定の態様において、シリコーン組成物は、12時間~9日の可使時間を有する。
【0064】
充填シリコーンフォーム層は、硬化性充填組成物を流延し、次に流延組成物の硬化を行うことによって形成されうる。充填シリコーンフォーム層を硬化性充填組成物から調製するのに好都合な方法は、異なる成分を均質になるまで混合し、空気を真空下で脱気除去する工程を含む。
【0065】
硬化性充填組成物の硬化時間は、望ましくは高温で短い。したがって、高温で1~25分、又は5~20分、又は7~15分、又は10~12分の硬化時間が有用である。そのような硬化時間は、組成物の急速で効率的な混合、加熱、及び/又は硬化、並びに自動分注が使用される場合に望ましい。
【0066】
好適な硬化性充填組成物は、可使時間(pot life)の短い、より速い硬化性シリコーン組成物に比べて、室温硬化時間を1~20分から7日以上に増加させるのに十分な、より低いレベルの硬化剤、より高いレベルの触媒抑制剤、シリコーン組成物におけるより高い質量含有量の活性架橋基(アルケニル基や活性水素化ケイ素基等)、又はそれらの組合せを有することができる。室温での硬化時間がこの程度に増加される場合、硬化をもたらす温度又は他の手段は、シリコーン組成物前硬化の操作を必要とする製造プロセスでの使用に適している制御可能なより短い使用寿命(working lifetime)を可能にすることができ、硬化が制御可能な一連の条件下でもたらされる。熱、紫外線、可視光線、圧力、又はそれらの組合せの使用を用いて、硬化を行うことができる。ある態様において、硬化性充填組成物は、80℃以上、又は90℃以上、又は100℃以上、又は125℃以上、又は150℃以上の温度で硬化される。好適な硬化性充填組成物は、100℃で30分未満、又は25分未満、又は20分未満、又は15分以下の使用寿命を可能にすることができる。別の態様において、好適な硬化性充填組成物は、125℃で12分未満、又は10分未満、又は9分未満、又は8分未満の使用寿命を可能にすることができる。別の態様において、好適な硬化性充填組成物は、150℃で10分未満、又は8分未満、又は6分未満、及び又は5分未満の使用寿命を可能にすることができる。
【0067】
或いは、段階的硬化方法、例えばより低い温度(例えば、60~80℃)で第1の時間(例えば、5~15分)の第1の硬化、次により高い温度(例えば、90~130℃)で第2の時間(例えば、5~20分)の硬化を用いることができる。上記の硬化レジームのいずれか、例えば80~150℃、又は100~140℃である時間(例えば、30分~3時間)の後硬化を用いることができる。後硬化は、シリコーンフォーム層のいずれか好適な裏打ち層への接着を増強するのに特に有用である。
【0068】
硬化性充填組成物を裏打ち層、接着剤組成物、又は剥離ライナに流延することができ、組成物を室温(例えば、25℃)で保持することによって、又は以上に記載されたように加熱することによって硬化することができる。非反応性オルガノシロキサン流体が存在する場合、硬化の際に流体の除去を実質的に防止するように、硬化は流体の沸点未満の温度で行われる。好ましくは、硬化温度は、流体成分の沸点未満の少なくとも20℃、又は少なくとも50℃、又は少なくとも80℃である。反応性流体を使用する場合、硬化温度は、流体が追い払われる前に硬化するような温度である。任意選択の後硬化操作を用いることができる。硬化済みシリコーン層が担体上に形成される場合、それは、接着剤で被覆され、又は裏打ち層に移動される。移動は、積層、圧延、又はカレンダリングによって行うことができる。
【0069】
連続法では、硬化性充填組成物は、移動担体に移動される。別の担体フィルム層が、任意選択で混合物の上に引っ張られ、次いでサンドイッチされた混合物がコーターを通して引っ張られ、最終エラストマーの厚さが決定される。次いで、組成物が硬化され、次に任意選択の後硬化が行われる。ある態様において、その後の製造を容易にするため、コストを下げるため、ロールの形での連続的製造が用いられる。これは、よりよい厚さの許容差でさまざまな厚さのシートの形の連続ロールを流延することによって、充填シリコーン層の液体組成物からの製造を可能にする。
【0070】
好ましくは、平滑(質感のない剥離)層が使用される。任意選択で、接着剤を、硬化性充填組成物に向き合っている剥離層の側面に塗布することができる。或いは、硬化性充填組成物は、剥離層上に流延され、硬化前に、裏打ち層が反対側に塗布される。別の態様において、硬化前に反対側に塗布された裏打ち層は、接着剤及び剥離ライナを含む。2つの裏打ち層の使用は、1層がシリコーン組成物の硬化を抑制することができる場合に有利である。例えば、硬化性充填組成物が、硬化の際に又はそれより前にポリウレタン裏打ち層上に直接配置されている場合、シリコーン組成物の完全硬化が抑制されうる。硬化触媒の増量、可能な場合には抑制剤添加の減少、ポリウレタンの表面の不動態化、又はシリコーン組成物中の反応部位の増量を用いて、硬化性シリコーン組成物とポリウレタンの間の界面における反応性のいずれの減少も克服することができる。或いは、必要に応じて、硬化性充填組成物とポリウレタンの間において裏打ち層を使用すると、具体的には裏打ち層がシリコーン組成物の硬化に干渉するおそれがある反応性官能基を有しない場合、硬化のいずれの難点も克服することができる。
【0071】
硬化後、ある態様において、充填シリコーンフォーム層は、液体、例えば水、非反応性溶媒、又は低分子量シリコーン油で吸収されて、衝撃性能を更に改善する。ある態様において、低分子量の非反応性シリコーン油が吸収されて、衝撃性能を更に改善する。シリコーン油は、衝撃からの大量のエネルギーを隣接側面又はシリコーンマトリックス内に移すことなく、エネルギーを吸収することができる。好適な油は非反応性であり、1,000cSt未満、又は750cSt未満、又は600cSt未満、又は500cSt未満の粘度を有することができる。例示的なシリコーン油としては、ジメチルシリコーン油、メチルフェニルシリコーン油、ジフェニルシリコーン油及びメチル水素シリコーン油が挙げられる。特に有用なシリコーン油は、一般にホモポリマー、特にジメチルシロキサンである。他の有用なシリコーン油としては、アルキル又はフルオロアルキル変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、メチルスチリル変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、脂肪酸変性シリコーン油、アルコキシル変性シリコーン油及びフッ素変性シリコーン油;並びにフッ素変性シリコーン油等のストレートシリコーン油が挙げられる。シリコーン油を、液浸、被覆、浸漬、又は他の技法によって吸収することができ、所望の厚さを超えて充填シリコーン層を著しく膨潤させない。例えば、フォーム層を、真空下でシリコーン油中に好適な時間の長さ置くことができる。
【0072】
充填シリコーンフォーム層特性
硬化性充填組成物から得られた硬化済み充填シリコーンは、柔軟で圧縮可能なフォームである。本明細書では「フォーム」は、気泡構造を有する材料を指す。硬化済みシリコーンフォームは、例えば、1立方フィート当たり(pcf)55ポンド未満(1立方メートル当たり881キログラム(kg/m3))、又は25pcf(200kg/m3)未満の密度、シリコーンフォームの全容量に対して少なくとも5~99%、好ましくは30%以上の空隙容量含有率、又はそれらの組合せを有することができる。フォームの密度は、フォームのより厚い試料、例えば1インチ(2.54センチメートル(cm))の厚さを有するシートで測定することができる。
【0073】
充填シリコーンフォーム層は、有利には非常に薄いが、それにもかかわらず優れた衝撃特性を保持する。充填シリコーンフォーム層は、20~300μm、又は40~200μm、又は50~250μm、好ましくは60~200μmの厚さを有することができる。
【0074】
充填シリコーンフォームは、フォームの圧縮力撓み及び圧縮永久歪によって反映される特性であるその弾性的挙動を多くの圧縮撓みサイクル中ずっと、フォームの寿命にわたって維持することができる。良好な耐圧縮永久歪性を有するフォームは、緩衝材を提供し、それらの本来の形状又は厚さを荷重下で長期間維持する。ある態様において、充填シリコーンフォームは、それぞれ25%の撓みで、ASTM D3574-17に従って決定して、1平方インチ当たり(psi)0~25ポンド(0~172キロパスカル(kPa))、好ましくは0~15psi(0~103kPa)の圧縮力撓みを有する。充填シリコーンフォームは、ASTM D 3574-95 Test Dに従って70℃で決定して、0~5%の圧縮永久歪を有することができる。
【0075】
充填シリコーンフォームの衝撃吸収に対する適合性を決定するために、落球試験を実施例に記載のように行うことができる。ステンレス鋼4.5グラム(g)の球及び衝撃までの距離0.1メートル(m)を用いることができる。他の鋼球質量及び衝撃までの距離、例えば28.5gの鋼球で0.3mを用いて、フォームがより厳しい条件下で有用であることを示すことができる。
【0076】
充填シリコーンフォームは、試料を50℃で24時間加熱し、次いで試料を室温で水に30秒間浸し、吸収された水の質量を決定することによって吸水率を決定して、低吸水率、例えば5質量%未満、又は3質量%未満、又は2質量%未満の吸水率を有することができる。ある態様において、吸水率は、試料サイズ100mm×100mmの試料を裁断し、50℃で少なくとも24時間貯蔵し、次いで試料をW1として秤量することによって決定することができる。試料を室温で水に30秒間浸漬し、水から取り出す。水を試料の表面から除去し、その質量をW2として記録する。吸水率(%)は、方程式((W2-W1)/W1)*100を用いて計算する。
【0077】
充填シリコーンフォームは、25%の撓みで、ASTM D3574-17に従って決定して、1平方インチ当たり0~25ポンド(0~172キロパスカル)、好ましくは1平方インチ当たり0~15ポンド(0~103キロパスカル)の圧縮力撓み、及びASTM D 3574-95 Test Dに従って70℃で決定して、0~5%の圧縮永久歪の組合せを有することができる。
【0078】
ある態様において、充填シリコーンフォームは、上記の特性、例えば低ガラス転移温度、例えば-115℃未満、低圧縮永久歪、ASTM D 3574-95 Test Dに従って70℃で決定して、例えば0~5%、圧縮力撓み、25%の撓みで、ASTM D3574-1に従って決定して、0~15psi(0~103kPa)、及び低吸水率、以上に記載のように決定して、例えば2質量%未満の組合せを有することができる。
【0079】
好ましい態様において、充填シリコーンフォーム層は、60~200μmの厚さを有し、高分子量のビニルを末端基とするポリジメチルシロキサン(PDMS)、それぞれ充填シリコーンフォーム層の総質量に対して3~7質量%、好ましくは4~6質量%のより低質量のビニルを末端基とするポリ(メチルフェニル)シロキサン、0.5~2質量%、又は0.8~1.2質量%のドライの任意選択で処理した予備発泡ポリマーミクロスフェア、1~3質量%、好ましくは1.8~2.2質量%のカオリンクレイ、好ましくは中空チューブナノ構造を有するカオリンから形成される。
【0080】
別の好ましい態様において、充填シリコーンフォーム層は、60~200μmの厚さを有し、高分子量のビニルを末端基とするPDMS、それぞれ充填シリコーンフォーム層の総質量に対して3~7質量%、好ましくは4~6質量%のより低質量のビニルを末端基とするポリ(メチルフェニル)シロキサン、0.5~2質量%、又は0.8~1.2質量%のドライのシリカ処理した予備発泡ポリマーミクロスフェア、2~8質量%、好ましくは3~7質量%のステアリン酸処理した炭酸カルシウム、及び2~8質量%、好ましくは3~7質量%のビニルを末端基とするシラン処理した六角形板状カオリンから形成される。
【0081】
シリコーンフォーム層は、携帯型又は手持ち型電子デバイス等スクリーンを有する電子デバイスにおいて特に有用である。特に有用な適用は、液晶ディスプレイ(LCD)又はOLEDスクリーンを有する手持ち型デバイスにおける適用である。スクリーンは、可撓性であり、すなわち、曲げ可能、巻き取り可能、折り畳み可能等である。そのようなデバイスにおけるさまざまな層は公知であり、互いに完全に又は部分的に覆うことができる。さまざまな層は、(直接設置された)隣接する層と物理的に直接接触することができ、又はいずれか好適な介在層、例えば接着剤層が存在することができるように互いに設置されうることも理解されている。
【0082】
いかなる理論にも拘泥されることを望むものではないが、本発明者らは、「破砕帯」を提供する製剤を開発し、破砕帯幾何形状、広範囲の温度にわたる熱的性能の重要性、最小粒子の粒子相互作用に対して最適な添加レベル、及び高充填媒体中で互いに擦れあう被覆充填剤の摩擦が、マイクロメートルのレベルで最大のエネルギーを放散するためのモードとして働くと思われる。対照的に、先行技術は、初期の接触時における衝撃を軽減するために、所与の材料の熱的特性、具体的にはガラス転移温度及び固有エラストマー特性に取り組み、並びに衝撃を軽減するために、硬度、密度、及び充填剤含有量等の特性に取り組む。
【0083】
要するに、充填シリコーンフォーム層は、発泡ポリマーミクロスフェア、及び特定の充填剤パッケージ組合せを含む単層のシリコーンフォームであり、「破砕帯」をマイクロメートルのレベルで提供し、衝撃のエネルギーを著しく低減、放散、又は吸収することができる。ポリマーミクロスフェア及び充填剤パッケージは、ヒドロシリル化硬化パッケージを使用してポリジメチルシロキサンのマトリックス内に分散され、固体ではあるが多孔性のシリコーンシートに形成される。したがって、硬化性充填組成物の成分中に存在するフェニル基の濃度は、衝撃からのエネルギー吸収を押し上げるように最適化される。シリコーンフォームに含まれているミクロスフェア及び充填剤は、シリコーン鎖との最適な相互作用を促進し、ひいては破砕帯ができる限り衝撃を吸収することができるようにある特定の濃度及び組合せで存在する。シリコーンの媒体又はネットワーク形成ポリマーとしての使用は、柔らかさや同じことをさまざまな熱的条件下で行う能力等の現行市場のニーズを満たす多くの利点をもたらす。例えば、ポリウレタンフォーム、(メタ)アクリレート、又は先行技術のハイブリッド(メタ)アクリレートポリマー系では達成不可能なはるかに高いレベルの充填剤添加も可能にする。これら先行技術の組成物は、不十分な圧縮永久歪、充填シリコーンフォームより高い吸水率及び高いTgを有し、熱変化、特に低温に更に敏感になる。
【0084】
以下の実施例は例示にすぎず、組成物、層、又は作製された物品を実施例に記述される材料、条件、若しくはプロセスパラメータに限定するものではない。
【実施例】
【0085】
材料
実施例では、以下の材料を使用した。
【0086】
【0087】
方法
シリコーン層は、以下の製剤に示す成分を組み合わせ、次に層形成を行うことによって調製した。各成分の量は、単位が質量部であり、列挙された成分の総質量も示す。各製剤は、0.00163質量部の抑制剤(DC1~2287)を更に含み、示された総質量に追加される。いずれの百分率値も単位は質量%である。
【0088】
別段の指示がない限り、各例の成分を手で混合して、アルケニル含有ポリオルガノシロキサン、触媒、添加剤及び充填剤を含む第1のパート、並びにヒドリド含有ポリオルガノシロキサンを硬化剤として含む第2のパートを形成した。第1及び第2のパートを、第1のパート:第2のパートの質量比25:1~100:1で組み合わせた。次いで、製剤を、剥離ライナの2層間のロールオーバーロールコーターに被覆し、70℃~130℃で、例えば10~25分間硬化して、所望の最終厚さに等しい厚さを有する層を形成した(化学発泡剤を使用しなかった)。
【0089】
硬化済み層を、落球装置を用いて試験した。認められた慣例に従って、硬化済みシリコーンフォーム層を、高頻度Data Acquisition(DAQ)及び力測定ソフトウェアに連結された荷重センサに置いた。荷重センサを落球試験治具に置き、ステンレス鋼4.5グラム(g)の球を置き、試料の上0.1メートル(m)で落とした。次いで、ソフトウェアは、力読取値を登録及び報告し、次いでフォーム/エラストマー試料が存在していない対照落球と比較する。他の鋼球質量及び衝撃までの距離、例えば28.5gの鋼球で0.3メートル(m)も試験した。以下の表において、「合格」は、落球装置で合格の結果を示し、「不合格」は、不合格の結果を示す。合格も不合格も記載されていない場合、試料はこの試験では評価されなかった。
【0090】
製剤及び結果
Table 1(表2)は、ビニルシリコーンポリマーを増加する量のウェット発泡ポリマーミクロスフェアと共に含む製剤を示す。
【0091】
【0092】
Table 1(表2)からわかるように、充填剤組成物が存在しない場合試料はすべて、不合格であった。
【0093】
Table 2(表3)は、異なる3つのタイプのフェニル含有シロキサンの1つを同じ量のウェット発泡ポリマーミクロスフェアと共に含む硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を含む製剤を示す。製剤は、微粒子充填剤を、低粘度コポリマーと共に又は低粘度コポリマーなしで更に含むことができる。
【0094】
【0095】
Table 2(表3)からわかるように、高容量のウェット発泡ポリマーミクロスフェアの使用は、落球試験で合格の結果をもたらすことができる。しかし、望ましい特性の組合せを得るために、発泡ポリマーミクロスフェア及び充填剤の組合せを試験した。炭酸カルシウム充填剤と、フェニル主鎖基を有するビニルシロキサンとの使用も、落球試験で合格の結果をもたらした。
【0096】
Table 3(表4)は、低粘度ビニル含有オルガノシロキサン(Vi-350)を含む硬化性ポリオルガノシロキサン組成物、同じ量のウェット発泡ポリマーミクロスフェアを、炭酸カルシウム微粒子充填剤と共に又は炭酸カルシウム微粒子充填剤なしで含む製剤を示す。
【0097】
【0098】
Table 3(表4)からわかるように、両試料共に、落球装置試験で不合格であった。
【0099】
Table 4(表5)は、フェニル置換シリコーンをドライの処理した発泡ポリマーミクロスフェア又はウェットの発泡ポリマーミクロスフェアと共に任意選択で含む硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を含み、充填剤組成物(炭酸カルシウム、カオリン、ヒュームドシリカ、又はPOSSのうちの1種又は複数)を任意選択で含む製剤を示す。いくつかの製剤は、低粘度コポリマーを更に含むものであった。
【0100】
【0101】
Table 5(表6)は、フェニル含有シリコーンを、発泡ポリマーミクロスフェア、任意選択の低粘度コポリマーと共に含む硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を含み、充填剤組成物(炭酸カルシウム、カオリン、又はヒュームドシリカ)を任意選択で含む製剤が落球試験に合格することができることを示す。
【0102】
【0103】
Table 5(表6)からわかるように、ヒュームドシリカを含む試料及びカオリンを含む試料の両方を試験し、合格した。
【0104】
Table 6(表7)は、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物をドライの無処理発泡ポリマーミクロスフェア共に含み、カオリン不含、カオリン含有、又は固体フェニルメチルMQポリマー含有のうちのいずれか1つである製剤を示す。
【0105】
【0106】
Table 6(表7)からわかるように、すべての試料が落球試験で合格した。
【0107】
Table 7(表8)は、フェニル含有シリコーンをドライの処理した発泡ポリマーミクロスフェア又はウェットの発泡ポリマーミクロスフェアと共に含む硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を含む製剤を示す。組成物は、ガラスミクロスフェア、炭酸カルシウム、カオリン、ヒュームドシリカ、POSS、又はそれらの組合せを任意選択で更に含む。いくつかの製剤は、低粘度コポリマーを更に含むものであった。
【0108】
Table 7(表8)において「†」印を付けた試料は、「パック入り」であり、すなわち、より高い量の、発泡ポリマーミクロスフェア、充填剤、又は両方を(組成物全体の最大で約2容量%まで)含む。
【0109】
【0110】
Table 7(表8)からわかるように、実施例29は、大量の充填剤が硬化性充填組成物中に存在しうることを示す。
【0111】
Table 8(表9)は、フェニル含有シリコーンをドライの処理した発泡ポリマーミクロスフェア又はウェットの発泡ポリマーミクロスフェアと共に含む硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を含む製剤を示す。組成物は、ガラスミクロスフェア、クレイ、又はそれらの組合せを任意選択で更に含む。製剤は、低粘度コポリマーを更に含むものであった。
【0112】
【0113】
Table 8(表9)からわかるように、発泡性ミクロスフェア及びハロイサイトクレイとの組合せであって、ガラスミクロスフェアを含むか又は含まない組合せは、落球試験で合格する。
【0114】
Table 9(表10)は、フェニル含有ビニルシリコーン、並びにフェニルメチルシリコーンフレークとビニルシリコーンとのブレンド(Vi-100000)、を含む硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を含む製剤を示す。製剤は、ドライの処理した発泡ポリマーミクロスフェア、ガラスミクロスフェア、及びクレイを更に含む。低粘度コポリマーも存在する。
【0115】
【0116】
Table 9(表10)からわかるように、両試料が落球試験で合格した。
【0117】
本開示の非限定的態様を以下に記載する。
【0118】
態様1. 20~300マイクロメートルの厚さを有する充填シリコーンフォーム層の製造のための硬化性充填組成物であって、アルケニル置換ポリオルガノシロキサン、ヒドリド置換ポリオルガノシロキサン、及び硬化触媒を含む硬化性ポリシロキサン組成物と、フォームの厚さを下回る最大寸法を有する複数の発泡ポリマーミクロスフェアと、充填剤組成物とを含み、充填剤組成物の各成分が、フォームの厚さを下回る最大寸法を有し、充填剤組成物が、微粒子セラミック充填剤、若しくは微粒子炭酸カルシウム充填剤、若しくは板状形態を有する微粒子アルミノシリケートクレイ充填剤、若しくは中空管状形態を有する微粒子アルミノシリケートクレイ充填剤、若しくは微粒子ポリマーシルセスキオキサン充填剤、若しくは微粒子メチル-フェニルMQ充填剤、若しくは複数のガラスミクロスフェア、若しくは微粒子パラフィンワックス、又はそれらの組合せを含み、硬化性充填組成物が、400,000センチストーク未満、又は100,000~350,000センチストークの粘度を有する、硬化性充填組成物。
【0119】
態様2. 硬化性ポリシロキサン組成物が、少なくとも2個のアルケニル基を含み且つその主鎖中にフェニル基を更に含む共硬化性ポリオルガノシロキサン、好ましくはその主鎖上にフェニル基を更に含むアルケニルを末端基とするポリオルガノシロキサンを更に含む、態様1に記載の硬化性充填組成物。
【0120】
態様3. 発泡ポリマーミクロスフェアがドライである、態様1又は2に記載の硬化性充填組成物。
【0121】
態様4. 発泡ポリマーミクロスフェア、充填剤、又は両方が、表面前処理を含む、態様1から3のいずれかに記載の硬化性充填組成物。
【0122】
態様5. 充填剤組成物が、中空チューブナノ構造を有するアルミノシリケートクレイ;又は炭酸カルシウム及び小板状構造を有するアルミノシリケートクレイを含む、態様1から4のいずれかに記載の硬化性充填組成物。
【0123】
態様6. 態様1から5のいずれかに記載の硬化性充填組成物の硬化生成物を含む硬化性の充填シリコーンフォーム層であって、20~300マイクロメートル、又は50~250マイクロメートル、又は60~200マイクロメートルの厚さを有する、充填シリコーンフォーム層。
【0124】
態様7. 吸収されたシリコーン油、吸収された水、吸収された非反応性溶媒、又はそれらの組合せを更に含む、態様6に記載の充填シリコーンフォーム層。
【0125】
態様8. 25%の撓みで、ASTM D3574-17に従って決定して、1平方インチ当たり0~25ポンド(0~172キロパスカル)、好ましくは1平方インチ当たり0~15ポンド(0~103キロパスカル)の圧縮力撓み、及びASTM D 3574-95 Test Dに従って70℃で決定して、0~5%の圧縮永久歪を有する、態様6又は7に記載の充填シリコーンフォーム層。
【0126】
態様9. 試料を50℃で24時間を加熱し、次いで試料を室温で水に30秒間浸漬することによる吸水率が2質量%未満、及びガラス転移温度が-115℃未満である、態様6から8のいずれかに記載の充填シリコーンフォーム層。
【0127】
態様10. 態様6から9のいずれかに記載の充填シリコーンフォーム層を含む電子物品。
【0128】
態様11. 電子デバイスのスクリーンを含み、好ましくはスクリーンがフレキシブルである、態様10に記載の電子物品。
【0129】
組成物、方法、及び物品は、代替として、本明細書に開示されたいずれか適切な材料、工程、又は成分を含み、それからなり、又はそれから本質的になることができる。組成物、方法、及び物品を、更に又は代替として、組成物、方法、及び物品の機能又は目的の達成に別段必要のない任意の材料(又は種)、工程、若しくは成分を欠き、又は実質的に含まないように構築することができる。
【0130】
用語「a」及び「an」は、量の限定を表さず、むしろ言及された事項が少なくとも1つ存在することを表す。用語「又は」は、文脈によって異なることが明確に指示されていない限り、「及び/又は」を意味する。本明細書全体にわたって「ある態様」、「1つの態様」、「別の態様」、「いくつかの態様」等への言及は、態様と関連させて記載されている特定の要素(例えば、特徴(feature)、構造、工程、又は特徴(characteristic))が、本明細書に記載されている少なくとも1つの態様に含まれ、他の態様に存在してもしなくてもよいことを意味する。更に、記載された要素は、さまざまな態様においていずれか好適な形で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。また、用語「組合せ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物等を含む。代替として使用可能な種のリストにおいて、「それらの組合せ」は、組合せが、リストの少なくとも1つの要素と列挙されていない同様の1つ又は複数の要素との組合せを含むことができることを意味する。また、「~の少なくとも1つ」は、リストが、各要素を個別に、並びにリストの2つ以上の要素の組合せ、及びリストの少なくとも1つの要素と列挙されていない同様の要素との組合せを含むことを意味する。
【0131】
本明細書において、そうでないことが明記されていない限り、すべての試験標準は、本出願の出願日、又は優先権を主張する場合、試験標準が出現する最先の優先権出願の出願日に効力を発する最新標準品である。
【0132】
本明細書では粒子の「直径」は、球体の直径、又は粒径分析装置、若しくは電子顕微鏡分析の二次元画像、例えばImage J等のプログラムを使用して分析された透過型電子顕微鏡画像から得られた等価直径を指す。表記「Dx」は、中心粒径を指し、ここで、xは中央値である。例えば、5μmのD50を有する粒子集団とは、粒子の50%が5μmより大きく、50%が5μmより小さいことを意味する。ある態様において、「サイズ」は、単一粒子のサイズ又は粒子若しくは粒子集団の(例えば、平均又は中央値)平均を指す。
【0133】
層、フィルム、領域、又は基材等の要素が、別の要素の「上(on)」にあると述べられているとき、他の要素の直接上にあってもよく、又は介在要素存在していてもよい。対照的に、ある要素が別の要素の「直接上に」あると述べられているとき、介在要素は存在しない。
【0134】
同じ成分又は特性を対象にするすべての範囲の端点は、端点を含み、独立的に組合せ可能であり、すべての中間点及び範囲を含む。例えば、「25質量%まで、又は5~20質量%」の範囲は、10~23質量%等の「5~25質量%」の範囲の端点及びすべての中間値を含む。
【0135】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられている科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解しているのと同じ意味を有する。
【0136】
すべての引用された特許、特許出願、及び他の参考文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。しかし、本出願中の用語が組み込まれた参考文献中の用語と一致しない又は矛盾する場合、組み込まれた参考文献の矛盾する用語より本出願の用語が優先される。
【0137】
特定の実施形態を説明してきたが、現在予期されていない又は予期されていない可能性がある代替形態、修正形態、変形形態、改良形態、及び実質的な均等形態が、出願人ら又は他の当業者に生起することがある。したがって、出願され、補正されることがある添付の特許請求の範囲は、このような代替形態、修正形態、変形形態、改良形態、及び実質的な均等形態すべてを含むように意図される。
【国際調査報告】